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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】第2高調波発生結晶
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/37 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
G02F1/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550933
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2021054917
(87)【国際公開番号】W WO2021170843
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】16/801,857
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514323268
【氏名又は名称】コヒーレント レーザーシステムズ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ゼーラート, ヴォルフ
(72)【発明者】
【氏名】フォン エルム, リュディガー
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA07
2K102AA08
2K102AA32
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102CA00
2K102CA23
2K102DA01
2K102DB01
2K102DC05
2K102DC07
2K102DD06
2K102EB20
(57)【要約】
光学系(10)は、可視レーザ放射のビームから紫外線レーザ放射のビームを生成し、紫外線レーザビームを可視レーザビームから空間的に分離させる。光学系(10)は、平面状界面(16)に沿って接触接合された、同一の光学非線形材料製の2つの結晶(12、14)を含む。一方の結晶(12)は、タイプI第2高調波発生のために配向された主結晶軸を有する。紫外線レーザビームは、他方の結晶(14)のコーティングされていない表面(26)を通して光学系(10)から出る。2つの結晶(12、14)の主結晶軸は、異なる配向を有し、平面状界面(16)に関する反射対称性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基本波長を有する放射を、第2高調波波長を有する放射に変換するための光学系であって、
主結晶軸を有する光学非線形材料製の第1の結晶であって、前記第1の結晶の主結晶軸は、第2高調波発生によって基本放射を第2高調波放射に変換するように配向される、第1の結晶と、
前記第1の結晶と同一の光学非線形材料製の第2の結晶であって、前記第1の結晶および前記第2の結晶は、第1の平面状界面に沿って共に接合され、前記第1の平面状界面は、前記基本放射に対して傾斜している、第2の結晶と
を備え、
前記第1および第2の結晶の主結晶軸は、相互角度分離を有し、前記第1の平面状界面に関する反射対称性を有し、前記第1および第2の結晶の熱膨張係数は、それによって、前記第1の平面状界面に沿って整合される、光学系。
【請求項2】
前記第1および第2の結晶の主結晶軸は、前記基本放射が屈折させられず、かつ、前記第2高調波放射が前記第1の平面状界面において屈折させられるように、配向される、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記基本放射は、前記基本放射に対してブルースター角で、コーティングされていない入力表面を通して前記光学系に入る、請求項1または請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記基本放射は、前記基本放射に対してブルースター角で、コーティングされていない出力表面を通して前記光学系から出る、請求項1~3のいずれかに記載の光学系。
【請求項5】
前記基本放射に対する前記第1の平面状界面の傾斜角度、および、前記第1の平面状界面と前記出力表面との間の距離が、前記出力表面上で前記基本放射を前記第2高調波放射から分離するように選択される、請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記基本放射に対する前記第1の平面状界面の傾斜角度、および、前記第1の平面状界面と前記出力表面との間の距離が、前記出力表面上で前記基本放射および前記第2高調波放射を重複させるように選択される、請求項4に記載の光学系。
【請求項7】
前記第2高調波放射は、前記第2高調波放射に対してブルースター角で、別のコーティングされていない出力表面を通して前記光学系から出る、請求項4~6のいずれかに記載の光学系。
【請求項8】
前記基本放射は、前記基本放射に対してブルースター角で、平行なコーティングされていない表面を通して前記光学系に入り、出る、請求項1~7のいずれかに記載の光学系。
【請求項9】
前記第1および第2の結晶は、光学的接触接合によって共に接合される、請求項1~8のいずれかに記載の光学系。
【請求項10】
前記第1および第2の結晶と同一の光学非線形材料製の第3の結晶をさらに含み、前記第3の結晶は、第2の平面状界面に沿って前記第1の結晶に接合され、前記第2の平面状界面は、前記第1の平面状界面に平行であり、前記第1および第3の結晶の主結晶軸は、相互角度分離を有し、前記第2の平面状界面に関する反射対称性を有し、前記第1および第3の結晶の熱膨張係数は、それによって、前記第2の平面状界面に沿って整合される、請求項1~9のいずれかに記載の光学系。
【請求項11】
前記第2および第3の結晶のそれぞれの主結晶軸は、同一の配向を有する、請求項10に記載の光学系。
【請求項12】
前記第1および第3の結晶は、光学的接触接合によって共に接合される、請求項10に記載の光学系。
【請求項13】
前記第1および第2の結晶の主結晶軸は、少なくとも5°だけ相互に分離されている、請求項1~12のいずれかに記載の光学系。
【請求項14】
前記第1および第2の結晶の主結晶軸は、少なくとも12°だけ相互に分離されている、請求項13に記載の光学系。
【請求項15】
前記第2高調波発生は、タイプI第2高調波発生である、請求項1~14のいずれかに記載の光学系。
【請求項16】
前記光学非線形材料は、ベータバリウムボレート(BBO)、リチウムトリボレート(LBO)、およびセシウムリチウムボレート(CLBO)から成る群から選択される、請求項1~15のいずれかに記載の光学系。
【請求項17】
前記基本放射は、約426ナノメートルの波長を有し、前記第2高調波放射は、約213ナノメートルの波長を有する、請求項1~16のいずれかに記載の光学系。
【請求項18】
第2高調波波長においてレーザ放射のビームを生成するためのレーザ装置であって、
前記第2高調波波長の2倍である基本波長においてレーザ放射のビームを送達するレーザと、
基本レーザビームを受け取るインピーダンス整合された共振増強空洞であって、前記共振増強空洞は、複数の空洞ミラーによって画定され、前記複数の空洞ミラーは、前記基本波長において高度の反射性を有し、前記共振増強空洞内の閉経路に沿って前記基本レーザビームを指向するように配列される、共振増強空洞と、
前記共振増強空洞の閉ビーム経路に位置する光学系であって、前記光学系は、同一の光学非線形材料製の第1の結晶および第2の結晶を含み、前記光学非線形材料は、主結晶軸を有し、前記第1の結晶の主結晶軸は、第2高調波発生によって、前記基本波長におけるレーザ放射を前記第2高調波長におけるレーザ放射に変換するように配向され、前記第1および第2の結晶は、前記基本レーザビームに対して傾斜している平面状界面に沿って共に接合される、光学系と
を備え、
前記第1および第2の結晶の主結晶軸は、少なくとも2°の角度で相互に分離されており、前記第1および第2の結晶の主結晶軸は、前記平面状界面に関する反射対称性を有し、前記第1および第2の結晶の熱膨張係数は、それによって、前記平面状界面に沿って一致させられる、レーザ装置。
【請求項19】
前記基本レーザビームは、コーティングされていない入力表面を通して前記光学系に入り、平行なコーティングされていない出力表面を通して前記光学系から出て、前記入力表面および前記出力表面は、前記基本レーザビームに対してブルースター角にある、請求項18に記載の光学系。
【請求項20】
前記基本レーザビームに対する前記平面状界面の傾斜角度、および、前記平面状界面と前記出力表面との間の距離が、前記出力表面上で前記基本レーザビームを前記第2高調波レーザビームから分離するように選択される、請求項19に記載の光学系。
【請求項21】
前記第1および第2の結晶は、光学的接触接合によって共に接合される、請求項18~20のいずれかに記載の光学系。
【請求項22】
前記第2高調波発生は、タイプI第2高調波発生である、請求項18~21のいずれかに記載の光学系。
【請求項23】
第1の基本波長を有する放射と第2の基本波長を有する放射とを、和周波波長を有する放射に変換するための光学系であって、
主結晶軸を有する光学非線形材料製の第1の結晶であって、前記第1の結晶の主結晶軸は、和周波発生によって第1の基本波放射および第2の基本波放射を和周波放射に変換するように配向される、第1の結晶と、
前記第1の結晶と同一の光学非線形材料製の第2の結晶であって、前記第1および第2の結晶は、平面状界面に沿って共に接合されており、前記平面状界面は、前記第1および第2の基本放射に対して傾斜している、第2の結晶と
を備え、
前記第1および第2の結晶の主結晶は、相互角度分離を有し、前記平面状界面に関する反射対称性を有し、前記第1および第2の結晶の熱膨張係数は、それによって、前記平面状界面に沿って一致させられる、光学系。
【請求項24】
前記第1および第2の基本放射は、前記第1および第2の基本放射に対してブルースター角で、コーティングされていない出力表面を通して前記光学系から出る、請求項23に記載の光学系。
【請求項25】
前記第1および第2の基本放射に対する前記平面状界面の傾斜角度、および、前記平面状界面と前記出力表面との間の距離が、前記出力表面上で前記和周波放射から前記第1および第2の基本放射を分離するように選択される、請求項24に記載の光学系。
【請求項26】
前記第1および第2の結晶は、光学的接触接合によって共に接合される、請求項23~25のいずれかに記載の光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:ヴォルフ ゼーラートおよびリュディガー フォン エルム
(優先権)
本願は、2020年2月26日に出願された米国特許出願第16/801,857号に対する優先権を主張し、その開示は、その全体として本明細書に援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、概して、第2高調波放射を発生させるための光学素子に関する。本発明は、特に、可視波長放射の高調波変換によって紫外線波長放射を発生させ、残りの可視放射から紫外線波長放射を分離するための光学的非線形結晶に関する。
【0003】
(背景分野の議論)
紫外線波長放射を提供するためのレーザデバイスにおいて、光学的非線形結晶内での可視放射を高調波変換することによって紫外線(UV)放射を生成することが一般的である。典型的には、可視放射は、近赤外線(NIR)波長放射の第2高調波変換によって生成され、近赤外線波長放射は、光ポンプ式半導体(OPS)レーザ等のソリッドステートレーザで発生させられる。
【0004】
例として、連続波UV放射を生成するための1つの一般的な配置では、可視放射は、ソリッドステートレーザ内のNIR放射の空洞内第2高調波変換によって生成される。可視放射は、可視放射のためのインピーダンス整合された共振増強空洞に結合される。共振空洞内の光学的非線形結晶は、次いで、タイプI第2高調波変換によって、可視放射をUV放射に変換する。OPSソリッドステートレーザを使用して、266ナノメートル(nm)以下の波長のUV放射を生成することが可能である。タイプI第2高調波変換の難点は、生成されたUV放射と残りの可視放射との間に固有の空間的分離がないことである。
【0005】
典型的には、UV放射は、薄膜誘電体コーティングを有するダイクロイックミラーによって共振空洞から外に方向付けられる。このダイクロイックミラーは、共振器ミラーの1つとしての役割を果たし、可視放射を反射し、UV放射を透過し得る。代替的には、ダイクロイックミラーは、別個の空洞内素子であり得、可視放射を透過し、UV放射を共振空洞の外に反射し得る。
【0006】
上で説明されるレーザ配置の特定の制限は、UV放射によって引き起こされる薄膜誘電体コーティングへの損傷である。この制限は、短波長UV放射に関してより問題となる。空洞内素子が平行移動させられ、損傷領域を放射の外に遷移させ、未使用領域を暴露することが可能であり、そのような遷移は、レーザデバイスに著しい複雑さおよびコストを追加する。さらに、まだ損傷していないコーティングでさえも、典型的には、層厚における製造的ばらつきに起因する損失、または、コーティングの材料による吸収に起因する損失を有する。そのような損失は、空洞内高調波発生を用いた共振空洞の効率性を低減させ、最終的に、これらの共振空洞の耐用寿命を低減する。
【0007】
これらの制限を克服する装置は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第10,474,004号に記載されており、その完全な開示は、参照により本明細書に援用される。コーティングされていない複屈折プリズムは、光学的非線形結晶によって発生させられた可視放射UV放射を受け取る。可視放射およびUV放射は、直交する線形偏光を有する。複屈折結晶は、可視放射のためにブルースター角で配向されかつUV放射の内部全反射のために配向される。複屈折結晶は、比較的高い精密さで配向されなければならない光学表面を有する付加的要素である。可視放射およびUV放射の両方は、複屈折結晶の2つの表面を通過しなければならず、不可避の反射損失を伴う。
【0008】
UV放射を発生させかつUV放射を可視放射から分離するレーザデバイスであって、任意のコーティングをUV放射に暴露しないものの必要性が存在する。好ましくは、発生および分離は、最小限の光学素子、光学表面、複雑さ、およびコストをレーザデバイスに追加しながら達成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明による、基本波長を有する放射を、第2高調波波長を有する放射に変換するための光学系は、光学非線形材料製の第1の結晶を備える。第1の結晶は、第2高調波発生によって基本放射を第2高調波放射に変換するように配向された主結晶軸を有する。第1の結晶と同一の光学非線形材料製の第2の結晶が、提供される。第1および第2の結晶は、第1の平面状界面に沿って共に接合される。第1の平面状界面は、基本放射に対して傾斜している。第1および第2の結晶の主結晶軸は、相互角度分離を有し、第1の平面状界面に関する反射対称性を有する。第1および第2の結晶の熱膨張係数は、これによって、第1の平面状界面に沿って整合させられる。
【0010】
別の態様では、本発明による、第2高調波波長におけるレーザ放射のビームを生成するためのレーザ装置は、第2高調波波長の2倍である基本波長におけるレーザ放射のビームを送達するレーザを備える。インピーダンス整合された共振増強空洞が、提供され、基本レーザビームを受信する。共振増強空洞は、複数の空洞ミラーによって画定され、複数の空洞ミラーは、基本波長において高度の反射率を有し、共振増強空洞内の閉経路に沿って基本レーザビームを指向するように配列される。光学系が、提供され、共振増強空洞の閉ビーム経路に位置する。光学系は、同一の光学非線形材料製の第1の結晶および第2の結晶を含む。光学非線形材料は、主結晶軸を有する。第1の結晶の主結晶軸は、第2高調波発生によって基本放射を第2高調波放射に変換するように配向される。第1および第2の結晶は、基本レーザビームに対して傾斜している平面状界面に沿って共に接合される。第1および第2の結晶の主結晶軸は、少なくとも2°の角度だけ相互に分離されている。第1および第2の結晶の主結晶軸は、平面状界面に関する反射対称性を有する。第1および第2の結晶の熱膨張係数は、これによって、平面状界面に沿って一致させられる。
【0011】
さらに別の態様では、本発明による、第1の基本波長を有する放射と第2の基本波長を有する放射とを、和周波波長を有する放射に変換するための光学系は、光学非線形材料製の第1の結晶を備える。第1の結晶は、和周波発生によって第1の基本放射および第2の基本放射を和周波放射に変換するように配向された主結晶軸を有する。第1の結晶と同一の光学非線形材料製の第2の結晶が、提供される。第1および第2の結晶は、平面状界面に沿って共に接合される。平面状界面は、第1および第2の基本放射に対して傾斜している。第1および第2の結晶の主結晶軸は、相互角度分離を有し、平面状界面に関する反射対称性を有する。第1および第2の結晶の熱膨張係数は、これによって、平面状界面に沿って一致させられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を模式的に示しており、上に与えられた一般的説明および下に与えられる好ましい実施形態の詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するのに役立つ。
【0013】
図1図1Aは、斜視図であり、図1Bは平面図であり、図1Cは、本発明による光学系の好ましい一実施形態を模式的に示す側面図であり、光学系は、基本放射のビームを第2高調波放射のビームに変換し、2つのビームを分離させるためのものであり、平面状界面に沿って第2の結晶に接合された第1の結晶を含み、分離されたビームは、コーティングされていない出力表面を通して光学系から出る。
図2図2Aは、断面平面図であり、図2Bは、図1A図1Cの光学系のさらなる詳細を模式的に示した断面側面図である。
図3図3は、図1A図1Cの光学系のさらなる詳細を示す拡大断面側面図である。
図4図4Aは、断面平面図であり、図4Bは、図1A図1Cの光学系と同様であるが、別の平面状界面に沿って第1の結晶に接合される第3の結晶を含む、本発明による光学系の別の好ましい実施形態を模式的に示す断面側面図である。
図5図5は、本発明による、図4Aおよび図4Bの光学系を製造するための方法を模式的に示す側面図である。
図6A図6Aは、出力表面上で基本放射のビームと第2高調波放射のビームとの間の分離を最大限にするように選択された角度で傾斜している主結晶軸および平面状界面を有する図1A図1Cの光学系の例である。
図6B図6Bは、出力表面上で基本放射のビームおよび第2高調波放射のビームの重複を最大限にするように選択された角度で傾斜している主結晶軸および平面状界面を有する図1A~1Cの光学部品の一例である。
図7図7Aは、斜視図であり、図7Bは、平面図であり、図7Cは、本発明による光学系のさらに別の好ましい実施形態を概略的に示す側面図であり、図1A図1Cの光学系と同様であるが、基本放射のビームは、1つのコーティングされていない出力表面を通して光学系から出て、第2高調波のビームは、別のコーティングされていない出力表面を通して出る。
図8図8は、本発明によるレーザシステムの一実施形態を模式的に示しており、レーザ、共振増強空洞、および図1A図1Cの光学系を含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の詳細な説明
ここで図面を参照すると、同様の構成要素は、同様の数字によって指示されており、図1A図1Cは、本発明による光学系10の好ましい実施形態を模式的に示している。図1Aは、斜視図であり、図1Bは、平面図であり、図1Cは、光学系10の側面図である。光学系10の外側縁部は、図面において太線で強調されている。光学系10は、同一の透明な光学非線形材料で作製されている第1の結晶12および第2の結晶14を含む。第1の結晶12および第2の結晶14は、平面状内部界面16に沿って共に接合されている。
【0015】
第1の結晶12は、タイプI第2高調波発生によって、基本波長を有する基本放射ビーム18を第2高調波波長を有する第2高調波放射ビーム20に変換するように配向および配置されている。基本ビーム18の2つの光子は、第2高調波ビーム20の各光子に変換される。基本波長は、エネルギー保存のために、第2高調波波長の2倍である。タイプI第2高調波発生では、当技術分野において知られているように、基本放射は、常線形偏光を有し、第2高調波放射は、異常線形偏光を有する。
【0016】
ここで、「配向」とは、運動量保存または「位相整合」を達成するために、基本ビーム18の偏光平面および伝搬方向に対して主結晶軸を配向することを指す。位相整合は、光学非線形材料の複屈折を利用し、効率的な第2高調波発生のために必要である。第2の結晶14の主結晶軸は、基本ビーム18に対して異なる配向を有する。従って、結晶14は、位相整合されておらず、有意な第2高調波放射を生成しない。
【0017】
ここで、基本ビーム18は、コーティングされていない入力表面22を通して光学系10に入り、これは、反射損失を最小限にするために、基本放射の内部ブルースター角βで配向される。代替的な配置は、反射損失を最小限にするために、基本ビーム18に対して垂直入射での入力表面22と、入力表面22上の反射防止コーティングとを有する。基本ビーム18は、第1の結晶12を通して伝搬している間に、第2高調波ビーム20に部分的に変換される。第2高調波ビームおよび残りの基本放射ビーム24は、図1Bの平面では垂直入射で、図1Cの平面では非垂直入射角γで、内部界面16に入射する。光学非線形材料は、直交偏光ビームに対して異なる屈折率を有する。常偏光基本ビームは、各結晶において同じ屈折率を有する一方で、異常偏光第2高調波ビームは、異なる屈折率を有し、その結果、第2高調波ビームは、内部界面16において残りの基本ビームから離れるように屈折される。
【0018】
残りの基本ビーム24および第2高調波ビーム20の両方は、コーティングされていない出力表面26を通して光学部品10を出て、これは、基本波長における反射損失を最小限にするために残りの基本ビームに対して内部ブルースター角βで配向される。入力表面22および出力表面26は、光学系10全体が基本放射の角度変位を引き起こさないように平行であり、すなわち、基本ビーム18および残りの基本ビーム24は、光学系10の外側で同じ方向に伝搬する。直交偏光された第2高調波および残りの基本ビームの異なる屈折率は、出力表面26によって異なる角度で屈折されるべきこれらのビームを引き起こし、図1Bに描写される第2高調波波長における付加的内部反射ビーム28を作成する。屈折された残りの基本ビーム24および第2高調波ビーム20は、それらが光学系10の出力表面26から離れて伝搬するにつれて、発散し、空間的に分離されるようになる。
【0019】
図2Aおよび図2Bは、光学系10のさらなる詳細を模式的に示す断面図である。図2Aは、平面図であり、図2Bは、側面図である。これらの図面において、図示を明確にするために、内部ビームは、省略されている。図2Aは、出力表面26から現れる基本ビーム18の外部ブルースター角αおよび第2高調波ビーム20の外部角αSHを示す。これらのビームは、図2Aの平面において角度Δαで、図2Bの平面において角度δで発散する。
【0020】
図2Aおよび図2Bに描写されるように、主結晶軸x、y、およびzが、第1の結晶12および第2の結晶14において配向される。主結晶軸は、内部界面16に対して対称に配向される。具体的には、主結晶軸は、内部界面16に関する反射対称性を有する。この対称的な配置の1つの特定の利点は、第1および第2の結晶の熱膨張係数が内部界面において全ての方向で一致することである。
【0021】
結晶を共に接合するとき、熱膨張係数を一致させることが重要である。結晶は、市販のポリマー接着剤を使用して接合されることが可能である。例えば、光硬化光学接着剤の1つが、ニュージャージー州クランブリーのNorland Products Inc.から販売されている。これらの接着剤は、比較的広い波長範囲にわたって名目上透明であり、室温で硬化されることが可能であり、接着剤自体は、加熱によって接合部に応力が加えられるとき、ある適合性を提供する。しかしながら、そのような接着剤層は、依然として弱く吸収し、高出力紫外線放射によって劣化する。また、光学的放射または他の態様による十分な加熱は、結晶が異なる熱膨張係数を有する場合、接合不良を引き起こす。
【0022】
接合部が(特に、高出力用途のために)紫外線放射に暴露される場合、光学的接触接合が好まれる。接触接合は、結晶間に直接的化学接合を形成し、中間接着剤層を排除し、それ故、極めて信頼性および耐久性がある。接触接合は、極めて平坦な研磨表面を比較的高温で共に押圧することによって、達成される。例えば、ベータバリウムボレート(BBO)を接合するとき、800℃を超える温度である。それ故、熱膨張係数における小さい差でさえ、冷却中に著しい応力を引き起こし、結晶を分離させるまたはひび割れさせる。BBOは、直交結晶軸に沿った熱膨張係数間で9倍の差異を有する。本発明の光学系は、内部界面16における熱膨張係数を一致させるように配向された同一材料製の結晶を有し、熱応力によるそのような不具合なしに高温で接触接合されることが可能である。
【0023】
光学系10の別の利点は、常偏光を有するビームがそこを通して伝搬するときに屈折率の変化がないため、内部界面16における基本ビーム18の最小の反射が存在することである。基本ビームの出力損失を最小限にすることは、光学系10をレーザ共振器または共振増強空洞内へ組み込まれる場合に特に重要である。循環基本ビームの損失は、そのような共振器の効率を著しく減少させ、そのような損失の影響は、第2高調波発生の非線形性によって増進される。
【0024】
図3は、図2Bの断面側面図に描かれているような内部界面16の拡大図である。第1の結晶12および第2の結晶14の主結晶軸は、内部界面に関するそれらの対称性を強調するために、図面において内部界面上の中心に置かれている。第1の結晶12のz軸は、内部界面に対して角度φ傾斜しており、第2の結晶14のz軸は、内部界面に対して反対方向に角度φ’傾斜している。これらの傾斜角φおよびφ’は、熱膨張係数を一致させるために同じである。第1の結晶のz軸は、位相整合を実現するために選択された基本ビーム18に対して角度θにある。第2の結晶のz軸は、基本ビーム18に対して異なる角度θ’にある。第2高調波ビーム20は、図面の平面において、近軸近似における
【数1】
である内角だけ残りの基本ビーム24から離れて屈折される。ここでnは、両方の結晶における基本ビームの屈折率であり、nSH(θ)は、第1の結晶における第2高調波ビームの屈折率であり、nSH(θ’)は、第2の結晶における第2高調波ビームの屈折率である。
【0025】
図4Aおよび図4Bは、本発明による光学系30の別の好ましい実施形態を模式的に示している。図4Aは、光学系30の断面平面図であり、図4Bは、断面側面図である。光学系30は、光学系10に類似するが、第1の結晶12および第2の結晶14と同一の光学非線形透明材料製の付加的な第3の結晶32を有する。第1の結晶12および第3の結晶32は、好ましくは内部界面16に平行である平面状内部界面34に沿って共に接合される。第3の結晶の主結晶軸は、好ましくは、第2の結晶のそれぞれの主結晶軸と同一配向を有する。コーティングされていない入力表面36は、光学系30の第3の結晶上に位置し、基本ビーム18の内部ブルースター角βで配向される。入力表面36および出力表面26は、好ましくは、平行である。
【0026】
光学系10に対する光学系30の利点は、基本ビーム18が、入力表面36に入射する場所にかかわらず、第1の結晶12内の一定の経路長Lを通して伝搬することである。この一定の経路長は、第2高調波発生の全体的な効率を変化させることなく、光学系30の平行移動を可能にする。平行な入力表面36および出力表面26は、外部ビームのいずれをも変位させることなく光学系30を平行移動させることを可能にする。そのような平行移動は、UV放射によって劣化したまたは他の態様で損傷を受けた面積または体積がビームに対して遷移させられることが可能であるので、光学系30の耐用寿命を延長するために使用されることが可能である。光学系30は、図面において二重頭矢印Tによって示されるように、二次元に平行移動させられることが可能であり、入射場所の二次元アレイを入力表面上で利用可能なようにする。入射場所の最大数は、光学系の寸法に対する基本ビームの直径に依存する。
【0027】
図5は、光学系30を効率的かつ精密に製造するための本発明による方法40を模式的に示す側面図である。第1のプレフォーム42および第2のプレフォーム44が、平面状界面46に沿って共に接合される。第1のプレフォーム42および第3のプレフォーム48が、平行な平面状界面50に沿って共に接合される。第1のプレフォーム42の主結晶軸は、第2高調波発生のための位相整合を提供するために、平行な平面状界面に対して配向される。第2のプレフォーム44および第3のプレフォーム48は、第1のプレフォーム42の主結晶軸に対して対称に配向され、かつ、各平行な平面状界面に沿った全方向の熱膨張係数を一致させるように配向される主結晶軸を有する。長さLが、第2高調波発生効率を最適化するように選択される。角度γは、後述する考察に従って選択され得る名目上の自由パラメータである。
【0028】
(2つが描かれている)複数の光学部品30が、接合されたプレフォームを切断線52に沿って切断することによって、図5の接合されたプレフォームから製造されることが可能である。第1、第2、および第3のプレフォーム内の材料は、それぞれ、各光学系30の第1、第2、および第3の結晶となる。平面状界面46は、内部界面16となり、平面状界面50は、内部界面34となる。切断された光学系の入力および出力表面は、次いで、所望の光学的品質まで研磨される。方法40は、光学系30の製造において除去される廃棄材料の総量を最小限にし、光学系のバッチを製造するために必要な離散的な操作の数を最小限にする。同様の方法が、2つの配向および接合されたプレフォームを切断することによって、複数の光学部品10を製造するために使用され得る。
【0029】
プレフォームを準備する精密な方法は、光学非線形材料の1つの大きなブロックからそれらを切断することである。第1のプレフォームは、意図された平面状界面46に沿って角度γで切断される。切断表面は、研磨され、切れ端が、第2のプレフォームとなる。第2のプレフォームは、180°だけ回転させられ、平面状界面46は、第1のプレフォームを第2のプレフォームに接触接合させることによって、形成される。同様に、第3のプレフォームは、意図された平面状界面50に沿って第1のプレフォームから切断され、切断表面は、研磨され、第3のプレフォームは、180°だけ回転され、次いで、第3のプレフォームは、第1のプレフォームに接触接合され、平面状界面50を形成する。
【0030】
図6Aは、出力表面26上の残りの基本ビーム24と第2高調波ビーム20との間の分離を最大限にするように選択された角度γを有する光学系10の例を示す断面側面図である。いくつかの光学非線形材料に関して、表面が基本放射およびUV放射に同時に暴露されたときに、損傷に関する閾値がより低いおよび/または劣化率がより高いこと、すなわち、表面が各放射に個々に暴露されたときよりもそれぞれ低いおよび高いことが知られている。従って、(特に、高出力用途において)これらの光学非線形材料を使用するとき、これらのビームを分離することが望ましい。別の利点は、基本放射がUV放射によって劣化した出力表面上の面積を通して伝搬しないことであり、これは、空洞内用途において光学系の耐用寿命を延長する。
【0031】
図6Aは、約200℃の温度での動作のためのBBO製の光学系10を有する具体例を示している。基本波長は、426nmであり、第2高調波波長は、213nmである。残りの基本ビーム24および第2高調波ビーム20は、その境界光線によって描写されている。基本ビーム18および残りの基本ビーム24は、内部界面16の近傍で約330マイクロメートル(μm)の直径を有する。角度γは、29.25°であるように選択されている。結晶12における位相整合と主結晶軸の対称性との両方を達成するように、角度θは、73.3°であり、角度θ’は、48.2°である。この例は、第1の結晶12内の基本ビームからの第二高調波ビームの空間的退場(spatial walk-off)の利点を活かしており、これは、複屈折に起因する。第2高調波ビームの片側上の境界光線は、基本ビームから約2.9°の角度で発散する。内部界面16における屈折の後、第2高調波ビームは、残りの基本ビームから約6.4°の角度で発散する。内部界面16と出力表面26との間の約3ミリメートル(mm)の距離dは、出力表面上でビームを分離するために十分である。
【0032】
図6Bは、光学系10の別の例を示す断面側面図であるが、ここでは、角度γが、出力表面26上の残りの基本ビーム24および第2高調波ビーム20の重複を最大限にするように選択される。再び、描写されている具体例において、光学系10は、BBO製である。基本波長は、426nmであり、第2高調波波長は、213nmである。基本ビーム18および残りの基本ビーム24は、内部界面16の近傍で約330μmの直径を有する。角度γは、12.5°であるように選択される。角度θは、106.7°であり、これは、等価的に、位相整合を達成するために基本ビーム18に対して73.3°の角度であるが、z軸が基本ビーム伝搬に対して反対方向に傾斜している。角度θ’は、主結晶軸の対称性を達成するために48.3°である。第1の結晶12においてz軸傾斜方向を変化させることは、その反対側上での第2高調波ビームの空間的退場を引き起こす。この第2高調波ビーム20の反対側の境界光線は、基本ビーム18から約2.9°の角度で発散する。内部界面16における屈折の後、第2高調波ビームは、約6.4°の角度で残りの基本ビームに向かって収束する。
【0033】
共に、図6Aおよび図6Bは、残りの基本ビームおよび第2高調波ビームの相互分離を操作するために、名目上自由な角度γがどのように選択されることが可能であるかを実証している。しかしながら、内部界面からの残りの基本ビームの反射と、出力表面上でのビームの分離との間に妥協点が存在することになる。さもなければ、角度γは、0°と、主結晶軸間の対称性を維持する(傾斜角度φ=傾斜角度φ’)一方でビーム上に付与される最大の許容可能な分散に対応する最大角度との間の任意の値を有することが可能である。好ましくは、接合された結晶の主結晶軸は、第2の結晶における第2高調波変換を最小限にするために、少なくとも2°の角度2φだけ相互に分離されている。より好ましくは、主結晶軸は、少なくとも5°の角度だけ、最も好ましくは少なくとも12°の角度だけ、相互に分離されている。BBOに関して、これは、2つの結晶のz軸(結晶学的c軸)の相互角度分離である一方で、x軸(結晶学的a軸の1つ)は、両方の結晶に共通である。
【0034】
本発明の光学系は、第2高調波発生に適した他の光学非線形材料製であり得、リチウムトリボレート(LBO)およびセシウムリチウムボレート(CLBO)を含む。第1の結晶12における角度θは、それぞれ、位相整合およびエネルギー保存の要件から導出され、これは、
【数2】
として表されることが可能であり、式中、kは、波ベクトルの大きさであり、λは、基本ビームおよび第2高調波ビームの波長である。図3を参照すると、波長λにおける偏光基本ビームおよび波長λSHの直交偏光第2高調波ビームの屈折率は、それぞれ、
【数3】
である。
【0035】
式(1)および(2)は、共に、n=nSH(θ)を要求するので、第1の水晶12における位相整合角θが、式(3)および(4)から決定されることが可能である。
【数4】
【0036】
図2Aを参照すると、出力表面26においてスネルの法則を適用することによって、第2高調波ビームの発散角Δαおよび屈折率は、選択された角度θ’に関して計算されることが可能である。
【数5】
【0037】
図2Bを参照すると、内部界面16においてスネルの法則を適用することによって、発散角δは、選択された角度θ’および対応する角度γに関して計算することも可能である。
【数6】
【0038】
代替的には、角度θ’および対応する角度γは、残りの基本ビームと本発明の光学系から離れて伝搬する第2高調波ビームとの間の所望の発散角Δαを達成するように決定されることが可能である。簡潔さのために、ここでは単に、角度γに関する結果が提供される一方で、式11は、単に、式8の並び替えである。
【数7】
【0039】
上の例に戻ると、基本波長は、426nmであり、第2高調波の波長は、213nmである。BBOでは、温度200℃において、屈折率は、n(426)=n(426)=1.686、n(426)=1.561、n(213)=n(213)=1.850、およびn(213)=1.671であるように計算される。426nmにおいて、内部ブルースター角は、β=30.67°、外部ブルースター角は、α=59.32°である。角度θは、73.3°であり、第1の結晶における位相整合を達成する。上記の具体例では、主結晶軸の対称性を達成するために、角度γが29.25°であるように選択され、角度θ’が48.2°であり、傾斜角は、φ=φ’=12.55°であり、発散角は、Δα=2.3°である。第2高調波ビームの屈折率は、第1の結晶においてnSH(θ)=1.684であり、第2の結晶においてnSH(θ’)=1.725である。
【0040】
図7A図7Cは、本発明による光学系80のさらに別の好ましい実施形態を模式的に示している。図7Aは、光学系80の透視図であり、図7Bは、平面図であり、図7Cは、側面図である。光学系80は、図1A図1Cの光学系10と同様であるが、第1の出力表面82および第2の出力表面84を有する。第1の出力表面82は、第2の結晶14から現れる残りの基本ビーム24に関する反射損失を最小限にするために、基本放射の内部ブルースター角βで配向される。第2の出力表面84は、第2の結晶14から出現する第2の高調波ビーム20に関する反射損失を最小限にするために、第2の高調波放射の内部ブルースター角βSHで配向される。第1の表面82上の残りの基本ビームの例示的な入射場所86および第2の表面84上の第2高調波ビームの対応する例示的な入射場所88が、図7Aに示されている。
【0041】
第2の出力表面84は、図1Bに描写されている内部反射ビーム28を本質的に排除し、第1の結晶12において発生させられた第2の高調波放射の全てが第2の表面84から現れる。光学系80の別の利点は、第2高調波ビームが、第2の表面84から現れた後に残りの基本ビームから高度に発散することである。光学系30は、同様に、第2の出力表面を伴って製造され得る。入力表面上で利用可能な入射場所は、次いで、光学系を平行移動させるときに対角線に沿って位置している。
【0042】
図8は、第2高調波レーザ放射20のビームを生成するための、本発明によるレーザシステム90の好ましい実施形態を模式的に示している。レーザシステム90は、ここでは4つの空洞ミラー96、98、100、および102によって画定されるインピーダンス整合された共振増強空洞94に基本波レーザ放射18のビームを送達するレーザ92を含む。4つの空洞ミラーは、基本波長において高反射性を有し、共振増強空洞94内の閉経路に沿って基本レーザビームを指向するように配列されている。基本波レーザビーム18は、空洞ミラー96を通して共振増強空洞に結合される。空洞ミラー98は、閉じたビーム経路の光学的長さを調整するための圧電(PZT)変換器104に搭載されている。PZTトランスデューサ104は、描写されていない電気ドライバを要求する。インピーダンス整合は、共振増強空洞の光学長の連続的な調整によって達成される。
【0043】
レーザシステム90はまた、基本レーザビーム18を第2高調波レーザビーム20に部分的に変換するために共振増強空洞94の閉ビーム経路に位置する光学系10を含む。空洞ミラー102は、基本レーザビームを反射し、発散した第2高調波レーザビームが共振増強空洞から外に伝搬することを可能にするように、位置し、配列される。レーザビームを空間的に分離する本発明の光学系は、共振増強空洞から外に第2高調波レーザビームを指向するための付加的な空洞内ダイクロイックミラーの必要性を排除する。光学系10、光学系30、または光学系80のいずれかが、レーザシステム90に組み込まれ得る。
【0044】
本明細書で上述した本発明の光学系は、タイプI第2高調波発生に特に有用である。しかしながら、当業者は、タイプII第2高調波発生および和周波発生などの他の光学非線形プロセスのために等価の光学系が製造され得ることを認識する。タイプII第2高調波発生では、基本波長と直交線形偏光を有する2つの光子が、第2高調波波長および常線形偏光を有する各光子に変換される。和周波発生では、異なる基本波長を有する2つの光子が、和周波波長を有する光子に変換される。すなわち、第1の基本波長λF1を有する放射および第2の基本波長λF2を有する放射は、和周波波長λSFを有する放射に変換される。ここで、「基本波長」とは、「和周波波長」よりも長い波長を指す。これらの波長には近似関係がある。
【数8】
【0045】
和周波発生は、共通の基本偏光を伴うタイプIのプロセス、または、異なる基本偏光を伴うタイプIIのプロセスであり得る。第2高調波発生は、和周波発生の特殊なケースであり、たった1つの基本波長と通常たった1つの基本ビームとを有することに留意されたい。
【0046】
要約すると、基本ビームを第2高調波ビームに部分的に変換し、残りの基本ビームから第2高調波ビームを空間的に分離する光学系が、開示される。本発明の光学系は、平面状界面に沿って接合される同一の光学非線形材料製の2つまたは3つの結晶を備える。結晶の主軸は、各平面状界面に関する反射対称性を有し、高出力用途のために結晶の接触接合を可能にする。本発明の光学系の出力表面は、反射損失を最小限にするために基本ビームに対してブルースター角になっており、出力表面は光損傷を最小限にするためにコーティングされていない。第2高調波ビームと残りの基本ビームの角度分離は、基本ビームに対する主結晶軸および平面状界面の傾斜角度を選択することによって決定される。重要なことに、これらのビームは、出力表面上で空間的に分離されることが可能であり、光損傷をさらに最小限にし、光学系の耐用寿命を延長する。
【0047】
本発明が、好ましい実施形態および他の実施形態に関して上述された。しかしながら、本発明は、本明細書に記載されて描写された実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
【国際調査報告】