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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】外用ジクロフェナク組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/196 20060101AFI20230406BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K31/196
A61P19/02
A61P29/00
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550963
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 NL2021050125
(87)【国際公開番号】W WO2021172987
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/982,589
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500297535
【氏名又は名称】フェリング ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】カラーラ ダリオ エヌ アール
(72)【発明者】
【氏名】グルニエ アルノー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA72
4C076CC05
4C076DD24
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD45
4C076EE08
4C076EE23
4C076EE32
4C076EE51
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA47
4C206MA48
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA10
4C206ZA08
4C206ZA96
(57)【要約】
1日1回の投与で有効である、ジクロフェナクを含む医薬組成物及びそれを使用するための治療方法が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するための方法であって、それを必要とする対象の患部に治療有効量の外用ジクロフェナク組成物を1日1回外用塗布することを含み、前記組成物は、全て前記外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、
(i)少なくとも2.7重量/重量%のジクロフェナクと、
(ii)C2~C4アルカノールと、
(iii)ポリアルコールと、
(iv)ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、
(v)約3重量/重量%~約5重量/重量%の脂肪族アルコールと
を含み、前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、方法。
【請求項2】
変形性関節症の疼痛の緩和に有効である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療前及び後のウエスタンオンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症指数(WOMAC)評価によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
治療前と比較した治療後の前記対象のWOMAC疼痛サブスコアの減少、
治療前と比較した治療後の前記対象のWOMAC身体機能サブスコア及びWOMACこわばりサブスコアの1つ以上の減少、
治療前と比較した治療後の前記対象のWOMAC体重負荷疼痛サブスコアの減少、
治療前と比較した治療後の前記対象のWOMAC免荷疼痛サブスコアの減少、及び
治療前と比較した治療後の前記対象のWOMAC総スコアの減少
の1つ以上によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
治療前に、前記対象は、0~100のスケールに標準化される場合、40以上のWOMAC疼痛サブスコアを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
治療前に、前記対象は、0~100のスケールに標準化される場合、40以上且つ90以下のWOMAC疼痛サブスコアを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
治療前及び後のWOMAC疼痛サブスコア評価によって測定されるように、同じ量の前記外用ジクロフェナク組成物の1日2回の投与と比較して、少なくとも同程度に変形性関節症の疼痛の緩和に有効である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
治療後のWOMAC評価は、1~4週間、4~8週間、8~12週間又はそれを超えるものから選択される期間にわたり、1日1回の治療後に実施される、請求項3~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記外用ジクロフェナク組成物は、ゲル化剤、酸化防止剤、溶媒及びこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記外用ジクロフェナク組成物は、全て前記外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、
約3重量/重量%の量の前記ジクロフェナクと、
約5~60重量/重量%の量の前記C2~C4アルカノールと、
約1~30重量/重量%の量の前記ポリアルコールと、
約0.2~25重量/重量%の量の前記ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、
約0.05~5重量/重量%の量のゲル化剤と、
約0.025~2.0重量/重量%の量の酸化防止剤と
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記外用ジクロフェナク組成物において、
前記C2~C4アルカノールは、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタン-1-オール及びブタン-2-オールから選択され、
前記ポリアルコールは、グリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びヘキシレングリコールから選択され、
前記ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの組み合わせから選択され、及び
前記脂肪族アルコールは、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記外用ジクロフェナク組成物は、ジクロフェナクナトリウムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記外用ジクロフェナク組成物は、
2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、
40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、
18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、
4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールと
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記外用ジクロフェナク組成物は、
約3.0重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、
40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、
18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、
4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールと
を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記外用ジクロフェナク組成物は、
2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、
40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、
18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、
4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、
1.25~1.75重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、
水と
を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記外用ジクロフェナク組成物は、
3.06重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、
46.0重量/重量%の量のエタノールと、
20重量/重量%の量のプロピレングリコールと、
5.0重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
3.0重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、
1.5重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、
水と
を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
1つの関節当たり1日1回塗布される前記外用ジクロフェナク組成物の前記治療有効量は、約0.75~約2.50グラムである、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記関節は、膝、肘又は足、足首、手、手首、股関節、肩若しくは脊椎の関節から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記関節は、膝であり、及び前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約60mg~約100mgの、1つの膝当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として1つの膝当たり約70mgのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
1つの膝当たり1日1回塗布される前記外用ジクロフェナク組成物の前記治療有効量は、約1.5~約2.5グラムである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
1つの関節当たり1日1回塗布される前記外用ジクロフェナク組成物の前記治療有効量は、約0.75~約3.5グラムである、請求項1~18又は22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供し、任意選択的に、前記関節は、膝である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
1つの関節当たり1日1回塗布される前記外用ジクロフェナク組成物の前記治療有効量は、約3.5グラムであり、任意選択的に、前記関節は、膝である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記関節は、股関節、肩又は脊椎の関節から選択され、及び前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約60mg~約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として1つの関節当たり約70mgのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
1つの関節当たり1日1回塗布される前記外用ジクロフェナク組成物の前記治療有効量は、約3.5グラムである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記関節は、肘又は足、足首、手若しくは手首の関節であり、及び前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~約70mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として1つの関節当たり約35mgのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
1つの関節当たり1日1回塗布される前記外用ジクロフェナク組成物の前記治療有効量は、約0.75~約1.50グラムである、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記外用ジクロフェナク組成物は、ゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系、ラッカー、パッチ、包帯及び閉鎖包帯から選択される形態である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記外用ジクロフェナク組成物は、ゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系及びラッカーから選択される形態である、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記外用ジクロフェナク組成物は、ゲルの形態である、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記外用ジクロフェナク組成物は、定量ディスペンサーから塗布される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記定量ディスペンサーは、定量ポンプを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記治療有効量の前記外用ジクロフェナク組成物は、前記定量ポンプの1回、又は2回、又は3回以上の作動によって提供される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状を1日1回治療するためのキットであって、外用ジクロフェナク組成物を収容する少なくとも1つの容器を含み、前記組成物は、
3.06重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、
46.0重量/重量%の量のエタノールと、
20重量/重量%の量のプロピレングリコールと、
5.0重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、
3.0重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、
1.5重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、
水と
を含む、キット。
【請求項40】
それを必要とする対象の患部に、1つの関節当たり約30mg~約100mgの前記ジクロフェナクナトリウムの1日用量を提供する治療有効量の前記組成物を1日1回外用塗布するための指示書を更に含む、請求項39に記載のキット。
【請求項41】
前記容器は、定量ディスペンサーである、請求項39又は40に記載のキット。
【請求項42】
前記定量ディスペンサーは、定量ポンプを含む、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
前記治療有効量の前記外用ジクロフェナク組成物は、前記定量ポンプの1回、又は2回、又は3回以上の作動によって提供される、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状の治療であって、それを必要とする対象の患部への1日1回の塗布による治療において使用するための外用ジクロフェナク組成物であって、全て前記外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、
(i)少なくとも2.7重量/重量%のジクロフェナクと、
(ii)C2~C4アルカノールと、
(iii)ポリアルコールと、
(iv)ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、
(v)約3重量/重量%~約5重量/重量%の脂肪族アルコールと
を含み、前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、外用ジクロフェナク組成物。
【請求項45】
前記関節は、膝、肘又は足、足首、手、手首、股関節、肩若しくは脊椎の関節から選択される、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記関節は、膝であり、及び前記1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約60mg~約100mgの、1つの膝当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、請求項44又は45に記載の組成物。
【請求項47】
定量ディスペンサーで提供され、且つそれから塗布され、任意選択的に、前記定量ディスペンサーは、定量ポンプを含み、任意選択的に、治療有効量の前記外用ジクロフェナク組成物は、前記定量ポンプの1回、又は2回、又は3回以上の作動によって提供される、請求項44~46のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2020年2月27日出願の米国仮特許出願第62/982,589号明細書に対する優先権を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
外用ジクロフェナク組成物及びそれを使用する治療方法が記載される。
【背景技術】
【0003】
ジクロフェナク(2-(2,6-ジクロロアニリノ)フェニル酢酸)は、炎症を軽減し、且つ鎮痛剤として疼痛を軽減するために用いられる非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)である。ジクロフェナクは、様々な剤形(経口錠剤、経口シロップ、外用ゲル、パップ剤、点眼薬、座薬など)のナトリウム、カリウム、エポラミン又はジエチルアミンの塩形態で入手可能である。
【0004】
よく知られた外用/経皮用ジクロフェナク製剤の例には、1%のジクロフェナクナトリウムを含むVoltaren(登録商標)ゲル1%がある。Voltaren(登録商標)ゲル1%は、外用治療が適用可能な膝及び手などの関節の変形性関節症による疼痛を緩和することが米国において示されている。最大で4gのVoltaren(登録商標)ゲル1%を下肢(膝、足首及び足を含む)に1日4回塗布することが可能であり、それにより最大で1日16g以下のVoltaren(登録商標)ゲル1%が下肢の任意の1つの関節に塗布される。最大で2gのVoltaren(登録商標)ゲル1%を上肢(肘、手首及び手を含む)に1日4回塗布することが可能であり、それにより最大で1日8g以下のVoltaren(登録商標)ゲル1%が上肢の任意の1つの関節に塗布される。全体として、Voltaren(登録商標)ゲル1%の総用量は、全ての患部関節に対して1日当たり32gを上回らないようにしなければならない。患者の立場からすれば、総量(最大で1日当たり32g)も塗布頻度(1日に4回)も満足のいくものではない。
【0005】
米国特許第7,335,379号明細書は、アルカノール、ポリアルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル及び脂肪族アルコール含有量が最大2%の脂肪族アルコールを含有するジクロフェナクなどの活性剤の経皮投与又は経粘膜投与用製剤を開示している。
【0006】
米国特許第9,999,590号明細書及び米国特許第10,117,829号明細書は、例えば、少なくとも3重量/重量%のジクロフェナク、C2~C4アルカノール、ポリアルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル及び少なくとも3重量/重量%の脂肪族アルコールを含むジクロフェナクの経皮又は経粘膜製剤を開示している。
【0007】
変形性関節症は、関節炎の最も一般的な形態であり、世界中の身体障害の主因の1つであり、10%超の50歳以上の集団がこの疾患の症状を有する。疾患の顕著な特徴としては、関節痛、身体機能の低下及び関節軟骨の進行性変性がある。変形性関節症の症状の負担を低減するために利用可能な薬剤としては、経口及び外用NSAID、パラセタモール、オピオイド及び関節腔内副腎皮質ステロイド注射が挙げられる。ジクロフェナクを含むNSAIDは、COX酵素を阻害し、プロスタグランジンを阻害することによって疼痛及び炎症を軽減する。しかしながら、現在承認されているVoltaren(登録商標)ゲル1%などのNSAIDの外用製剤は、適度な有効性を達成するために、かなりの量のゲルを1日に何度も塗布することを必要とする。
【0008】
ジクロフェナク分子は、皮膚及び深部組織の浸透に優れた物理化学的性質を有する。外用塗布されたジクロフェナクの体内吸収は、低いが、ジクロフェナクを全身投与した場合と比較すると、ジクロフェナクの濃度は、外用投与後に局所的な筋組織内で高くなることが報告されている。現在承認されているジクロフェナクナトリウム1%ゲル製剤の臨床試験では、プラセボと比較して統計的に有意な有効性が生じたことを証明するために、1日4回の塗布が必要であることが見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、外用ジクロフェナク組成物及びそれを使用した治療方法の必要性、特に1日1回の投与で有効な外用ジクロフェナク組成物及び治療方法の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様では、外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するための方法であって、それを必要とする対象の患部に治療有効量の外用ジクロフェナク組成物を1日1回外用塗布することを含み、組成物は、全て外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、(i)少なくとも2.7重量/重量%のジクロフェナクと、(ii)C2~C4アルカノールと、(iii)ポリアルコールと、(iv)ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、(v)約3重量/重量%~約5重量/重量%の脂肪族アルコールとを含み、1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量、例えば90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する、方法が提供される。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、ゲル化剤、酸化防止剤、溶媒及びこれらの任意の組み合わせの少なくとも1つを更に含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、治療前及び後のウエスタンオンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症指数(WOMAC)評価によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、治療前と比較した治療後の対象のWOMAC疼痛サブスコアの減少によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、治療前と比較した治療後の対象のWOMAC身体機能サブスコア及びWOMACこわばりサブスコアの1つ以上の減少によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、治療前と比較した治療後の対象のWOMAC体重負荷疼痛サブスコアの減少によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、治療前と比較した治療後の対象のWOMAC免荷疼痛サブスコアの減少によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、本方法は、治療前と比較した治療後の対象のWOMAC総スコアの減少によって測定されるような変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、治療前に、対象は、0~100のスケールに標準化される場合、40以上のWOMAC疼痛サブスコアを有する。いくつかの実施形態では、治療前に、対象は、0~100のスケールに標準化される場合、40以上且つ90以下のWOMAC疼痛サブスコアを有する。いくつかの実施形態では、本方法は、治療前及び後のWOMAC疼痛サブスコア評価によって測定されるように、同じ量の同一の外用ジクロフェナク組成物の1日2回の投与と比較して、少なくとも同程度に変形性関節症の疼痛の緩和に有効である。いくつかの実施形態では、治療後のWOMAC評価は、1~4週間、4~8週間、8~12週間又はそれを超えるものから選択される期間にわたり、1日1回の治療後に実施される。
【0012】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、全て外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、約3重量/重量%の量のジクロフェナクと、約5~60重量/重量%の量のC2~C4アルカノールと、約1~30重量/重量%の量のポリアルコールと、約0.2~25重量/重量%の量のジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、約0.05~5重量/重量%の量のゲル化剤と、約0.025~2.0重量/重量%の量の酸化防止剤とを含む。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタン-1-オール及びブタン-2-オールから選択されるC2~C4アルカノールと、グリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びヘキシレングリコールから選択されるポリアルコールと、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの組み合わせから選択されるジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールから選択される脂肪族アルコールとを含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、ジクロフェナクナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールとを含む。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、約3.0重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールとを含む。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、1.25~1.75重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、水とを含む。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、3.06重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、46.0重量/重量%の量のエタノールと、20重量/重量%の量のプロピレングリコールと、5.0重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、3.0重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、1.5重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、水とを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、1つの関節当たり1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、約0.75~約2.50グラム又は約0.75~約3.50グラムである。いくつかの実施形態では、関節は、膝、肘又は足、足首、手、手首、股関節、肩若しくは脊椎の関節から選択される。いくつかの実施形態では、関節は、膝、股関節、肩又は脊椎の関節であり、及び1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約60mg~約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量、例えば90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として1つの膝当たり又は股関節、肩若しくは脊椎の1つの関節当たり約70mgのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、膝又は股関節、肩若しくは脊椎の関節に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、約1.5~約2.5グラム又は約0.75~約3.50グラムである。いくつかの実施形態では、関節は、肘又は足、足首、手若しくは手首の関節であり、及び1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~約70mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、肘又は足、足首、手若しくは手首の関節への1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として1つの関節当たり約35mgのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、肘又は足、足首、手若しくは手首の関節に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、約0.75~約1.50グラムである。
【0015】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、ゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系、ラッカー、パッチ、包帯及び閉鎖包帯から選択される形態である。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、ゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系及びラッカーから選択される形態である。いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、ゲルの形態である。
【0016】
いくつかの実施形態では、ゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系又はラッカーから選択される形態の外用ジクロフェナクゲル組成物は、定量ディスペンサーから塗布される。いくつかの実施形態では、定量ディスペンサーは、定量ポンプを含む。いくつかの実施形態では、治療有効量の外用ジクロフェナク組成物は、定量ポンプの1回、又は2回、又は3回以上の作動によって提供される。
【0017】
別の態様では、外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状を1日1回治療するためのキットであって、3.06重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、46.0重量/重量%の量のエタノールと、20重量/重量%の量のプロピレングリコールと、5.0重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、3.0重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、1.5重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、水とを含む外用ジクロフェナク組成物など、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物を収容する少なくとも1つの容器を含むキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、それを必要とする対象の患部に、1つの関節当たり約30mg~約100mgのジクロフェナクナトリウムの1日用量、例えば1つの関節当たり90~110mgの1日用量を提供する治療有効量の組成物を1日1回外用塗布するための指示書を更に含む。いくつかの実施形態では、容器は、定量ディスペンサーである。いくつかの実施形態では、定量ディスペンサーは、定量ポンプを含む。いくつかの実施形態では、治療有効量の外用ジクロフェナク組成物は、1回又は2回以上の定量ポンプの作動によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本明細書に記載される方法に使用するために好適である、本明細書に記載されるようなジクロフェナクゲル組成物を調製するフローチャートを示す。
図2】実施例2に記載される臨床試験の治験デザインを示す。
図3】実施例2に記載される臨床試験に用いられるウエスタンオンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症(WOMAC)質問票である。
図4】実施例2からのウエスタンオンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症(WOMAC)疼痛サブスコアの結果におけるベースラインからの変化を示す。
図5】実施例2からのスクリーニング及びベースライン時のWOMACスコアが100のうちの≧40であった対象の亜集団の事後分析のWOMAC疼痛サブスコアの結果におけるベースラインからの変化を示す。
図6】実施例2からの治療の第1週(0日目~7日目)中のWOMAC疼痛サブスコアの結果におけるベースラインからの変化を示す。
図7】実施例2からのWOMAC機能サブスコアの結果におけるベースラインからの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1日1回の投与で有効な外用ジクロフェナク組成物及びそれらを使用する治療方法が記載される。
【0020】
定義
本明細書で使用される技術用語及び科学用語は、別段定義されない限り、当業者によって一般に理解される意味を有する。
【0021】
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、単数形のみを示すと明確に明記されていない限り、単数形及び複数形の両方を示す。
【0022】
本明細書で使用する場合、数又は範囲を限定する場合の「約」という用語は、数又は範囲が用いられる文脈に応じて当業者に理解されるとおり、数又は範囲が記載された厳密な数又は範囲に限定されず、明記された数又は範囲の前後の値を包含することを意味する。文脈又は当技術分野の慣例から別段明らかでない場合、「約」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味する(±10%)。従って、例えば本明細書で使用する場合、約30mg~約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量の開示は、約30mg~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量の開示を含み、約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量の開示は、90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量の開示を含む。
【0023】
「投与する」、「投与」又は「投与すること」という用語は、本明細書で使用する場合、医療従事者若しくはその委任代理人又はその監督下のいずれかなどにより提供、付与、投薬及び/又は処方すること並びに医療従事者又は対象若しくは患者などにより、注入、摂取又は消費することを指す。
【0024】
「対象」及び「患者」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒト、ペット及び実験動物(例えば、イヌ、ネコ、げっ歯類、ウサギ、モルモット、霊長類など)並びに農場動物及び家畜(例えば、ウマ、ラクダ、ロバ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギなど)が挙げられるが、これらに限定されないあらゆる哺乳動物を指す。
【0025】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という語句は、そのような治療、例えば疼痛の緩和を必要とする対象に投与される薬物に特定の薬理学的効果をもたらすか又はもたらすものと測定された用量を指す。しかしながら、「治療有効量」は、当業者がそのような用量を治療有効量であると見なそうとも、所与の対象の症状を治療するのに必ずしも有効であるとは限らない場合がある。成人ヒト対象に関する例示的な用量及び治療有効量が以下に示される。当業者は、特定の対象及び/又は症状を治療する必要に応じて、標準的技法に従ってそのような量を調節することができる。
【0026】
外用ジクロフェナク組成物
本明細書に記載されるジクロフェナク組成物は、局所効果又は全身効果のために外用塗布され得る。いずれの場合にも、組成物は、皮膚を通して標的組織に適用される箇所まで(局所効果のため)且つ/又は血流を通して(全身効果のため)ジクロフェナクを送達するのに有効である。特定の実施形態では、組成物は、外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するために使用され、標的組織(例えば、関節の滑液)に送達するために、対象の患部(例えば、関節上の皮膚表面)に外用塗布される(例えば、変形性関節症の膝痛を治療するために、膝に外用塗布される)。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物は、全て外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、(i)少なくとも2.7重量/重量%のジクロフェナクと、(ii)C2~C4アルカノールと、(iii)ポリアルコールと、(iv)ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、(v)約3重量/重量%~約5重量/重量%の脂肪族アルコールとを含む。組成物は、ゲル化剤、酸化防止剤及び/又は下記で説明する他の成分の1つ以上を更に含み得る。
【0028】
ジクロフェナク
上記で述べたように、本明細書に記載される組成物は、ジクロフェナクを含む。ジクロフェナクの化学名は、2-(2,6-ジクロロアニリノ)フェニル酢酸(CAS登録番号15307-86-5)である。ジクロフェナクの薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、エポラミン塩、ジエチルアミン塩及びそれらの任意の他の薬学的に許容される塩が挙げられる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような組成物は、ジクロフェナクナトリウムを含む。ジクロフェナクナトリウムの化学式は、C1410Cl2NNaO2である。別途明記しない限り、「ジクロフェナク」は、本明細書で使用する場合、2-(2,6-ジクロロアニリノ)フェニル酢酸及びその任意の薬学的に許容される塩を指す。
【0029】
上記で述べたように、本明細書に記載されるような組成物は、少なくとも2.7重量/重量%のジクロフェナクを含む。特定の実施形態では、組成物は、2.7重量/重量%~3.3重量/重量%のジクロフェナクを含み得る。非限定的な例として、組成物は、2.7重量/重量%、2.8重量/重量%、2.9重量/重量%、3.0重量/重量%、3.1重量/重量%、3.2重量/重量%又は3.3重量/重量%の量のジクロフェナクを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約3重量/重量%のジクロフェナクを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、3.06重量/重量%のジクロフェナクを含む。ジクロフェナクナトリウムを含む特定の実施形態では、組成物は、少なくとも2.7重量/重量%のジクロフェナクナトリウムを含み得る。例えば、組成物は、2.7重量/重量%~3.3重量/重量%のジクロフェナクナトリウムを含み得る。非限定的な例として、組成物は、2.7重量/重量%、2.8重量/重量%、2.9重量/重量%、3.0重量/重量%、3.1重量/重量%、3.2重量/重量%又は3.3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、約3重量/重量%のジクロフェナクナトリウムを含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、3.06重量/重量%のジクロフェナクナトリウムを含む。
【0030】
C2~C4アルカノール
上記で述べたように、本明細書に記載される組成物は、C2~C4アルカノールを含む。「C2~C4アルカノール」という用語は、本明細書で使用する場合、ヒドロキシ基(-OH)で置換された1つ以上のC2~C4アルカンを指す。C2~C4アルカノールの非限定的な例としては、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタン-1-オール及びブタン-2-オールが挙げられる。いくつかの実施形態では、C2~C4アルカノールはエタノールである。
【0031】
本明細書に記載される組成物は、約5重量/重量%~約60重量/重量%(例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60重量/重量%)の量のC2~C4アルカノールを含み得る。例えば、組成物は、約40重量/重量%~約50重量/重量%、例えば40.5重量/重量%~49.5重量/重量%、例えば46.0重量/重量%の量のC2~C4アルカノールを含み得る。エタノールを含む特定の実施形態では、組成物は、約5重量/重量%~約60重量/重量%(例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55又は60重量/重量%)の量のエタノールを含み得る。例えば、組成物は、約40重量/重量%~約50重量/重量%、例えば40.5重量/重量%~49.5重量/重量%、例えば46.0重量/重量%の量のエタノールを含み得る。エタノールを含む実施形態では、組成物は、無水エタノール又は均等な量のエタノールを提供するために例えば96v/v%の量のエタノールで製剤化され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、C2~C4アルカノール(例えば、エタノールなど)は、組成物中のジクロフェナクの一次溶媒として機能する。このような実施形態では、C2~C4アルカノールの量は、少なくともジクロフェナクを完全に可溶化するのに十分な量である。更に又は代替的に、いくつかの実施形態では、使用されるエタノールなどのC2~C4アルカノールは、ジクロフェナクにとって効率的な皮膚浸透促進剤としても機能する。いくつかの実施形態では、組成物は、下記で説明するように、追加の溶媒を更に含み得る。本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、組成物は、水を含む水性アルコール混合物中にC2~C4アルカノールを含み得る。
【0033】
ポリアルコール
上記で述べたように、本明細書に記載される組成物はポリアルコールを含む。「ポリアルコール」という用語は、本明細書で使用する場合、2つ以上のヒドロキシ基で置換された、1つ以上のC2~C6アルカン又はC2~C6アルケンを指す。ポリアルコールの非限定的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びヘキシレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ポリアルコールは、プロピレングリコールである。
【0034】
本明細書に記載される組成物は、約1重量/重量%~約30重量/重量%(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25又は30重量/重量%)の量のポリアルコールを含み得る。例えば、組成物は、18重量/重量%~22重量/重量%、例えば20重量/重量%の量のポリアルコールを含み得る。プロピレングリコールを含む特定の実施形態では、組成物は、約1重量/重量%~約30重量/重量%(例えば、約1、2、3、4、5、10、15、20、25又は30重量/重量%)の量のプロピレングリコールを含み得る。例えば、組成物は、18重量/重量%~22重量/重量%、例えば20重量/重量%の量のプロピレングリコールを含み得る。
【0035】
ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル
上記で述べたように、本明細書に記載される組成物は、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルを含む。「ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル」という用語は、本明細書で使用する場合、C1~C6アルキルエーテルで置換された1つ以上のジエチレングリコール部分を指す。ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルの非限定的な例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DOME)及びジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGMM)の一方又はその両方が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルである。
【0036】
組成物は、約0.2重量/重量%~約25重量/重量%(例えば、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、15、20又は25重量/重量%)の量のジエチレングリコールのモノアルキルエーテルを含み得る。例えば、組成物は、4.5重量/重量%~5.5重量/重量%、例えば5重量/重量%の量のジエチレングリコールのモノアルキルエーテルを含み得る。ジエチレングリコールモノエチルエーテルを含む特定の実施形態では、組成物は、約0.2重量/重量%~約25重量/重量%(例えば、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10、15、20又は25重量/重量%)の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含み得る。例えば、組成物は、4.5重量/重量%~5.5重量/重量%、例えば5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含み得る。
【0037】
脂肪族アルコール
上記で述べたように、本明細書に記載される組成物は、脂肪族アルコールを含む。「脂肪族アルコール」という用語は、本明細書で使用する場合、12個以上の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖炭素体を有する脂肪族アルコールを指す。脂肪族アルコールの非限定的な例としては、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、脂肪族アルコールは、ミリスチルアルコールである。
【0038】
組成物は、約3重量/重量%~約5重量/重量%(例えば、約3.0、3.5、4.0、4.5又は5.0重量/重量%)の量の脂肪族アルコールを含み得る。例えば、組成物は、2.7重量/重量%~3.3重量/重量%、例えば3.0重量/重量%の量の脂肪族アルコールを含み得る。ミリスチルアルコールを含む特定の実施形態では、組成物は、約3重量/重量%~約5重量/重量%(例えば、約3.0、3.5、4.0、4.5又は5.0重量/重量%)の量のミリスチルアルコールを含み得る。例えば、組成物は、2.7重量/重量%~3.3重量/重量%、例えば3.0重量/重量%の量のミリスチルアルコールを含み得る。本明細書で使用する場合及び米国薬局方(USP)及び国民医薬品集(NF)の定義によれば、「ミリスチルアルコール」は、90.0%以上のミリスチルアルコール(CH3(CH213O)を含有し、残りは主に関連するアルコールからなる製品を指す。
【0039】
本明細書に開示される実施形態のいずれかでは、組成物は、12個以上の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖の酸部分を有するか、又は12個以上の炭素原子を有する分枝鎖又は直鎖のアルコール部分を有する脂肪酸エステルを更に含み得る。
【0040】
理論に束縛されるものではないが、本明細書に開示される実施形態のいずれかでは、C2~C4アルカノール、ポリアルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル及び脂肪族アルコールを組み合わせて「透過促進系」を形成し、これにより、前記透過促進系を含まずに製剤化された外用ジクロフェナク組成物と比較して、皮膚を通して適用される箇所へのジクロフェナクの吸収及び/又は透過が定性的及び/又は定量的に促進されると考えられる。
【0041】
ゲル化剤
本明細書に記載される組成物は、ゲル化剤を任意選択的に含み得る。「ゲル化剤」という用語は、本明細書で使用する場合、組成物をゲルに転換することが可能なあらゆる薬剤を指す。ゲル化剤の例としては、CARBOPOL(登録商標)カルボマー、例えばCARBOPOL(登録商標)980NF又は940 NF、CARBOPOL(登録商標)981又は941 NF、CARBOPOL(登録商標)1382又は1342 NF、CARBOPOL(登録商標)5984又は934 NF、CARBOPOL(登録商標)ETD 2020、CARBOPOL(登録商標)934P NF、CARBOPOL(登録商標)971P NF、CARBOPOL(登録商標)974P NF、CARBOPOL(登録商標)71G NF、CARBOPOL(登録商標)Ultrez 10 NF、PEMULEN(登録商標)TR-1 NF又はTR-2 NF及びNOVEON(登録商標)AA-1 USPなどのカルボマー(カルボキシエチレン又はポリアクリル酸としても知られている)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(例えば、KLUCEL(商標)グレード)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)(例えば、NATROSOL(登録商標)グレード)、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、HPMC-P 55)及びメチルセルロース(例えば、METHOCEL(登録商標)グレード)などのセルロース誘導体、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガムなどの天然ガム及びアルギン酸塩、ポリビニルピロリドン(PVP)及びPVP誘導体(例えば、KOLLIDON(登録商標)グレード)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(例えば、LUTROL(登録商標)Fグレード68及び127)、キトサン、ポリビニルアルコール、ペクチン並びにスメクタイト粘土(例えば、VEEGUM(登録商標)グレード)から選択される1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。更に又は代替的に、トリエタノールアミン、トロラミン、トロメタミン、アミノメチルプロパノール、ジイソプロパノールアミン及びジエチルアミンの1つ以上などの第三級アミンを使用して、系を増粘及び/又は中和し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤は、カルボマーである。「カルボマー」という用語は、ペンタエリスリトールのアリルエーテル、スクロースのアリルエーテル又はプロピレンのアリルエーテルなどのいくつかのポリアルコールアリルエーテルのいずれかと任意選択的に架橋した高分子量のアクリル酸のホモポリマーの部類を指す。カルボマーの非限定的な例は、カルボマー940、カルボマー971P、カルボマー973、カルボマー974P、カルボマー980NF及びカルボマーC981 NFである(数字は、ポリマー鎖の平均分子量を示す)。
【0043】
いくつかの実施形態では、ゲル化剤が存在し、ゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。いくつかの実施形態では、ゲル化剤が存在し、ゲル化剤は、カルボマーである。
【0044】
ゲル化剤の同定及び量は、外用ゲル組成物に特に好適な粘度、例えば約8000cPs(mPa・s)~約14000cPs(mPa・s)、例えば約10000cPs(mPa・s)の粘度を有する組成物を提供するように選択され得る。例えば、1.25重量/重量%~1.75重量/重量%のKLUCEL(商標)ヒドロキシプロピルセルロースのHFグレードを使用して、約8000cPs(mPa・s)~約14000cPs(mPa・s)の粘度を有する、本明細書に記載されるような組成物を提供することができる。当業者であれば、好適な量の他のヒドロキシプロピルセルロースを選択及び使用して、当技術分野における知識及び/又は慣用的なスクリーニング方法を用いて好適な目標粘度を有する組成物を得ることができる。同様に、当業者であれば、上記に列挙したものの1つ以上を含む、好適な量の他のゲル化剤を選択及び使用して、当技術分野における知識及び/又は慣用的なスクリーニング方法を用いて好適な目標粘度を有する組成物を得ることができる。
【0045】
従って、組成物は、約0.05重量/重量%~約5重量/重量%(例えば、約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量/重量%)の量のゲル化剤を任意選択的に含み得る。例えば、組成物は、1.25重量/重量%~1.75重量/重量%、例えば1.5重量/重量%の量のゲル化剤を含み得る。ヒドロキシプロピルセルロースを含む特定の実施形態では、組成物は、約0.05重量/重量%~約5重量/重量%(例えば、約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量/重量%)の量のヒドロキシプロピルセルロース(例えば、KLUCEL(商標)ヒドロキシプロピルセルロースのHFグレードなど)を含み得る。例えば、組成物は、1.25重量/重量%~1.75重量/重量%、例えば1.5重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースを含み得る。カルボマーを含む特定の実施形態では、組成物は、約0.05重量/重量%~約5重量/重量%(例えば、約0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5又は5重量/重量%)の量のカルボマー(例えば、CARBOPOL(登録商標)ETD 2020ポリマーなど)を含み得る。例えば、組成物は、0.5重量/重量%~2.0重量/重量%、例えば1重量/重量%の量のカルボマーを含み得る。
【0046】
酸化防止剤
本明細書に記載される組成物は、酸化防止剤又は安定剤を任意選択的に含み得る。「酸化防止剤」又は「安定剤」という用語は、本明細書で互換的に使用され、製剤中の酸素、過酸化物又はフリーラジカルによって促進される酸化又は反応を防止することが可能なあらゆる物質を指す。好適な酸化防止剤の例としては、トコフェロール及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、没食子酸プロピル、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム並びにそれらの誘導体から選択される1つ以上が挙げられる。いくつかの実施形態では、酸化防止剤が存在し、酸化防止剤は、メタ重亜硫酸ナトリウムであるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、酸化防止剤が存在し、酸化防止剤は、没食子酸プロピルであるか又はそれを含む。いくつかの実施形態では、酸化防止剤が存在し、酸化防止剤は、エデト酸四ナトリウムであるか又はそれを含む。
【0047】
従って、組成物は、典型的に、約0.025重量/重量%~約2重量/重量%(例えば、約0.025、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06、0.065、0.07、0.075、0.08、0.085、0.09、0.095、0.1重量/重量%、0.15重量/重量%又は0.2重量/重量%)の量の酸化防止剤を任意選択的に含み得る。例えば、組成物は、0.025重量/重量%~0.10重量/重量%の量又は最大で0.05重量/重量%の量の酸化防止剤を含み得る。特定の実施形態では、組成物は、約0.025重量/重量%~約0.10重量/重量%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムを含む。更に又は代替的に、特定の実施形態では、組成物は、最大で約0.05重量/重量%の量の没食子酸プロピルを含む。更に又は代替的に、特定の実施形態では、組成物は、最大で約0.05重量/重量%の量のエデト酸四ナトリウムを含む。更に又は代替的に、特定の実施形態では、組成物は、約0.025重量/重量%~約0.10重量/重量%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムと、最大で約0.05重量/重量%の量の没食子酸プロピルとを含む。更に又は代替的に、特定の実施形態では、組成物は、約0.025重量/重量%~0.10重量/重量%の量のメタ重亜硫酸ナトリウムと、最大で約0.05重量/重量%の量のエデト酸四ナトリウムとを含む。
【0048】
追加の溶媒
上記で述べたように、いくつかの実施形態では、C2~C4アルカノール(例えば、エタノールなど)は、組成物中のジクロフェナクの一次溶媒として機能する。いくつかの実施形態では、上記に列挙した他の成分の1つ以上もジクロフェナクの溶媒又は共溶媒として機能する。いくつかの実施形態では、組成物は、追加の溶媒を更に含み得る。「溶媒」は、本明細書で使用する場合、本明細書に記載されるような外用製剤に使用するのに好適な任意の種類の溶媒、例えば水を包含し得る。
【0049】
追加の賦形剤
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される組成物は、例えば緩衝剤、保湿剤、湿潤剤、界面活性剤、中和剤、キレート剤、軟化剤又は芳香剤などの1つ以上の外用医薬組成物に使用するのに好適な、1つ以上の追加の成分又は賦形剤を更に含む。
【0050】
例示的な組成物
本明細書で開示されるような外用ジクロフェナク組成物は、上記に記載した任意の量のジクロフェナクと、上記に記載した任意の量のあらゆるC2~C4アルカノールと、上記に記載した任意の量のあらゆるポリアルコールと、上記に記載した任意の量のあらゆるジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、上記に記載したような任意の量のあらゆる脂肪族アルコールと、任意選択的に、任意の量のゲル化剤、酸化防止剤、追加の溶媒及び/又は上記に記載した他の賦形剤とをそれらの任意の組み合わせで含み得る。以下を特定の例示的な実施形態として開示する。
【0051】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、全て外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、(i)少なくとも2.7重量/重量%のジクロフェナクと、(ii)C2~C4アルカノールと、(iii)ポリアルコールと、(iv)ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、(v)約3重量/重量%~約5重量/重量%の脂肪族アルコールとを含む。いくつかの実施形態では、C2~C4アルカノールは、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタン-1-オール及びブタン-2-オールから選択され、ポリアルコールは、グリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール及びヘキシレングリコールから選択され、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの組み合わせから選択され、及び脂肪族アルコールは、ミリスチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール及びステアリルアルコールから選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、全て外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、約3重量/重量%の量のジクロフェナクと、約5~60重量/重量%の量のC2~C4アルカノールと、約1~30重量/重量%の量のポリアルコールと、約0.2~25重量/重量%の量のジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、約0.05~5重量/重量%の量のゲル化剤と、約0.025~2.0重量/重量%の量の酸化防止剤とを含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、全て外用ジクロフェナク組成物の総重量を基準として、約3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、約5~60重量/重量%の量のC2~C4アルカノールと、約1~30重量/重量%の量のポリアルコールと、約0.2~25重量/重量%の量のジエチレングリコールのモノアルキルエーテルと、約0.05~5重量/重量%の量のゲル化剤と、約0.025~2.0重量/重量%の量の酸化防止剤とを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクと、40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールとを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールとを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクと、40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、1.25~1.75重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、水とを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、2.7~3.3重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、40.5~49.5重量/重量%の量のエタノールと、18~22重量/重量%の量のプロピレングリコールと、4.5~5.5重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、2.7~3.3重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、1.25~1.75重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、水とを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、3.06重量/重量%の量のジクロフェナクと、46.0重量/重量%の量のエタノールと、20重量/重量%の量のプロピレングリコールと、5.0重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、3.0重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、1.5重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、水とを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、外用ジクロフェナク組成物は、3.06重量/重量%の量のジクロフェナクナトリウムと、46.0重量/重量%の量のエタノールと、20重量/重量%の量のプロピレングリコールと、5.0重量/重量%の量のジエチレングリコールモノエチルエーテルと、3.0重量/重量%の量のミリスチルアルコールと、1.5重量/重量%の量のヒドロキシプロピルセルロースと、水とを含む。
【0060】
組成物は、皮膚表面への外用塗布に好適なあらゆる形態、例えばゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系、ラッカー、パッチ、包帯又は閉鎖包帯の形態で調製され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、皮膚表面への外用塗布に好適なゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系又はラッカーの形態である。いくつかの実施形態では、組成物は、皮膚表面への外用塗布に好適なゲルの形態である。特定の実施形態では、組成物は、明澄透明なゲルの形態である。
【0061】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下の少なくとも1つの形態である:明澄(透明)な製剤、水洗性製剤、冷感製剤、速乾製剤、塗り広げられる製剤及びべとつかない製剤。
【0062】
方法/使用
本明細書に記載されるような組成物を使用した治療方法も本明細書で提供される。特定の実施形態では、本方法は、例えば、本明細書に記載されるような治療有効量の外用ジクロフェナク組成物を対象の皮膚に外用塗布(投与)することにより、それを必要とする患者に、本明細書に記載されるような組成物を1日1回投与することを含む。特定の実施形態では、対象は、筋肉痛又は関節痛に苦しんでいる。特定の実施形態では、対象は、変形性関節症に苦しんでいる。特定の実施形態では、対象は、変形性関節症と診断されている。本明細書に記載されるような組成物は、例えば、ゲル、ローション、軟膏、乳剤、懸濁剤、クリーム、リポソーム系、ラッカー、スプレー、エアロゾル若しくは閉鎖包帯(いくつかの実施形態)などとして製剤化されている場合、皮膚に直接塗布することができるか、又は例えばパッチ、包帯若しくは閉鎖包帯(いくつかの実施形態)などに製剤化されている場合、間接的に塗布することができる。
【0063】
特定の実施形態によれば、外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するための方法であって、それを必要とする対象の患部に、治療有効量の、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物を1日1回外用塗布することを含む方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、関節は、膝、足、足首、手、手首又は肘の関節である。いくつかの実施形態では、関節は、股関節、肩又は脊椎の関節である。特定の実施形態では、関節は、膝である。他の特定の実施形態では、関節は、肘である。他の特定の実施形態では、関節は、手の関節である。対象が2つ以上の患部関節を有する(例えば、両膝、一方の膝及び一方の肘などの2つ以上の関節で変形性関節症痛を含む疼痛に苦しんでいるような)実施形態では、本明細書に記載される方法は、各関節の患部(例えば、両膝、患部の膝及び肘など)への、本明細書に記載されるような1日1回の投与を含み得る。
【0064】
1日1回投与される組成物の量は、関節痛又は関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するのに有効な任意の量であり得る。典型的な量は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~約100mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量、例えば約30mg~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量又は約30mg~約110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する量の範囲で変動し得る。典型的には、量は、治療する関節に依存する可能性があり、より小さい関節(例えば、肘又は手、足首、足の関節)を治療するには、より少ない量が治療上有効であり、より大きい関節(例えば、膝、股関節、肩)又は脊椎の関節を治療するには、より多い量が治療上有効である。更に又は代替的に、量は、治療する症状、例えば疼痛の重症度又は変形性関節症の徴候及び症状に依存し得る。
【0065】
膝の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約60mg~約100mg、例えば約60mg~110mgの、1つの関節当たり(例えば、1つの膝当たり)のジクロフェナクの1日用量又は約60mg~約110mgの、1つの関節当たり(例えば、1つの膝当たり)のジクロフェナクの1日用量、例えばジクロフェナクナトリウムを基準として約60、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg、約100mg、例えば90~110mg又は約110mg、例えば110mgを提供する。いくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、1つの膝当たり)1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約70mg、例えば70mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、1つの膝当たり)1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約100mg、例えば90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、1つの膝当たり)1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約110mg、例えば110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。例えば、股関節、肩又は脊椎の関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約60mg~約100mgの、1つの関節当たり(例えば、股関節、肩又は脊椎の1つの関節当たり)のジクロフェナクの1日用量、例えばジクロフェナクナトリウムを基準として約60、約65mg、約70mg、約75mg、約80mg、約85mg、約90mg、約95mg又は約100mg、例えば90~110mg又は約110mg、例えば110mgを提供する。いくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、股関節、肩又は脊椎の1つの関節当たり)1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約70mg、例えば70mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、股関節、肩又は脊椎の1つの関節当たり)1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約100mg、例えば90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、股関節、肩又は脊椎の1つの関節当たり)1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約110mg、例えば110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。
【0066】
手、手首、肘、足又は足首の関節などのより小さい関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約30mg~約70mgの、1つの関節当たり(例えば、1つの手、手首又は肘当たり)のジクロフェナクの1日用量、例えばジクロフェナクナトリウムを基準として約30、約35mg、約40mg、約45mg、約50mg、約55mg、約60mg、約65mg又は約70mgを提供する。代替的に、手、手首、肘、足又は足首の関節などのより小さい関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、1つの関節当たり1日1回の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約100mg、例えば90~110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量又はジクロフェナクナトリウムを基準として約110mg、例えば110mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。いくつかの実施形態では、1日1回の1つの関節当たり(例えば、1つの手、手首、肘、足又は足首当たり)の塗布は、ジクロフェナクナトリウムを基準として約35mg、例えば35mgの、1つの関節当たりのジクロフェナクの1日用量を提供する。
【0067】
本明細書に記載されるような1日1回の治療方法に使用される組成物は、上記の本明細書若しくは以下の実施例に記載の任意の組成物又はその内容が参考として本明細書に組み込まれる米国特許第9,999,590号明細書若しくは米国特許第10,117,829号明細書に記載される任意の組成物であり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、皮膚表面への外用塗布に好適なゲルの形態である。特定の実施形態では、組成物は、明澄透明なゲルの形態である。
【0068】
関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するために、1つの関節当たり1日1回塗布される、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物(例えば、少なくとも2.7重量/重量%若しくは2.7~3.3重量/重量%又は約3.0重量/重量%のジクロフェナクを含む)の治療有効量は、約0.75~約2.5グラム又は約0.75~約3.5グラムである。
【0069】
膝の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、1つの膝当たり)1日1回塗布される、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約1.5~約2.5グラム又は約1.5~約3.5グラム、例えば組成物の約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4又は約3.5グラムである。いくつかの実施形態では、膝に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約2.3グラムである。いくつかの実施形態では、膝に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約3.5グラムである。例えば、股関節、肩又は脊椎の関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、1つの関節当たり(例えば、股関節、肩又は脊椎の1つの関節当たり)1日1回塗布される、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約1.5~約2.5グラム又は約1.5~約3.5グラム、例えば組成物の約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4又は約3.5グラムである。いくつかの実施形態では、例えば、股関節、肩又は脊椎の関節に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約2.3グラムである。いくつかの実施形態では、例えば、股関節、肩又は脊椎の関節に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約3.5グラムである。
【0070】
手、手首、肘、足又は足首の関節などのより小さい関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、関節(例えば、手、手首又は肘)に1回塗布される、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約0.75~約1.5グラム、例えば組成物の約0.75、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4又は約1.5グラムである。いくつかの実施形態では、例えば、手、手首又は肘に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約1.15グラムである。代替的に、手、手首、肘、足又は足首の関節などのより小さい関節の変形性関節症の徴候及び症状を治療するためのいくつかの実施形態では、1つの関節当たり1日1回塗布される、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約1.5~約2.5グラム、例えば組成物の約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4又は約2.5グラムである。いくつかの実施形態では、より小さい関節に1日1回塗布される外用ジクロフェナク組成物の治療有効量は、組成物の約2.3グラムである。
【0071】
いくつかの実施形態では、組成物は、定量ディスペンサーから塗布される。例えば、ゲル、ローション、クリーム、スプレー、エアロゾル、軟膏、乳剤、懸濁剤、リポソーム系又はラッカーの形態の組成物が定量ディスペンサーから塗布され得る。いくつかの実施形態では、定量ディスペンサーは、定量ポンプを含む。定量ポンプを含む定量ディスペンサーから組成物が塗布される任意の実施形態では、治療有効量(例えば、1つの関節当たりの1日用量)の外用ジクロフェナク組成物は、1回又は2回以上の定量ポンプの作動、例えば1回、2回、3回以上の定量ポンプの作動によって提供され得る。膝を治療するためのいくつかのそのような実施形態では、治療有効量の外用ジクロフェナク組成物は、2回の定量ポンプの作動によって提供される。膝を治療するためのいくつかのそのような実施形態では、治療有効量の外用ジクロフェナク組成物は、3回の定量ポンプの作動によって提供される。例えば、股関節、肩又は脊椎の関節を治療するためのいくつかのそのような実施形態では、治療有効量の外用ジクロフェナク組成物は、2回の定量ポンプの作動によって提供される。例えば、股関節、肩又は脊椎の関節を治療するためのいくつかのそのような実施形態では、治療有効量の外用ジクロフェナク組成物は、3回の定量ポンプの作動によって提供される。より小さい関節を治療するなどのいくつかのそのような実施形態では、治療有効量の外用ジクロフェナク組成物は、1回の定量ポンプの作動によって提供される。いくつかの実施形態では、組成物がゲルの形態であり、定量ディスペンサー、例えば定量ポンプを含む定量ディスペンサーから塗布され、治療有効量(例えば、1つの関節当たりの1日用量)の外用ジクロフェナクゲル組成物は、治療する関節及び/又はその症状に依存して、1回又は2回以上の定量ポンプの作動、例えば1回、2回、3回以上の定量ポンプの作動、例えば1回、又は2回、又は3回の定量ポンプの作動によって提供され得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような1日1回の方法は、関節の変形性関節症痛を含む関節痛を治療するのに有効である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような1日1回の方法は、下記に記載する疼痛を評価するためのツールの1つ以上によって測定されるような変形性関節症の疼痛などの疼痛の緩和に有効である。
【0073】
変形性関節症痛を評価するための主要なツールは、ウエスタンオンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症指数(WOMAC)である。例えば、Bellamy et al.,“Validation study of WOMAC:a health status instrument for measuring clinically important patient relevant outcomes to antirheumatic drug therapy in patients with osteoarthritis of the hip or knee,”J Rheumatol.1988;15:1833-1840を参照されたい。下記の実施例2に例示されるように、WOMAC評価を治療前及び後に行い、疼痛の治療を評価し得る。WOMAC質問票は、変形性関節症治療の臨床試験で広く使用されており、広範に検証されている。考え得る最悪の変形性関節症の症状を示す最大可能総スコアは、240点である。
【0074】
【表1】
【0075】
24問のWOMAC質問票は、異なる活動又は体位(5問=疼痛サブスコア)、関節のこわばりの程度及びタイミング(2問=こわばりサブスコア)並びに日々の活動を行うにあたって経験する難易度の程度(すなわち身体機能)(17問=機能サブスコア)によって経験する疼痛の程度に対処するものである。例えば、図3を参照されたい。
【0076】
本明細書で説明される全てのWOMACスコア(サブスコアを含む)は、0~100点スケールに標準化されている(標準化スコア=(スコア/最大可能値)*100)。WOMAC機能サブスコアの臨床的に重要な変化の最小量(MCID)は、100のうちの約10であると報告されている。従って、本明細書で評価されるWOMAC疼痛サブスコアなどのWOMACサブスコアの臨床的に重要な変化は、100のうちの10の標準化サブスコアであると見なされ得る(例えば、生の疼痛サブスコアは、50のうちの5である)。いくつかの実施形態では、治療前に、対象は、0~100の標準化スケールで40以上(≧40)のWOMAC疼痛サブスコアを有する。いくつかの実施形態では、治療前に、対象は、0~100の標準化スケールで90以下(≦90)のWOMAC疼痛サブスコアを有する。いくつかの実施形態では、治療前に、対象は、0~100の標準化スケールで≧40且つ≦90のWOMAC疼痛サブスコアを有する。
【0077】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような1日1回の方法は、(i)治療前と比較した治療後の対象のWOMAC疼痛サブスコアの減少、(ii)治療前と比較した治療後の対象のWOMAC身体機能サブスコアの減少、(iii)治療前と比較した治療後の対象のWOMACこわばりサブスコアの減少、(iv)治療前と比較した治療後の対象のWOMAC疼痛体重負荷サブスコアの減少、(v)治療前と比較した治療後の対象のWOMAC疼痛免荷サブスコアの減少、及び(vi)治療前と比較した治療後の対象のWOMAC総スコアの減少のいずれか1つ以上によって測定されるような変形性関節症の疼痛などの疼痛の緩和に有効である。そのような結果の例は、下記の実施例2に例示されている。
【0078】
疼痛(及びその緩和)を評価するための他のツールとしては、健康関連の生活の質(QoL)の標準化された一般的な基準であるEuroQol-5ドメイン質問票(EQ-5D質問票)が挙げられる。質問票は、5次元:移動、身の回りの管理、日常活動能力、痛み/不快感及び不安/ふさぎ込みにおける現在の全体的な健康状態について質問するものであり、各々が5つのレベル(問題なし、軽度の問題、中等度の問題、重度の問題及び極端な問題)において対象の主観的健康感の視覚的アナログスケール(VAS)で測定される。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような1日1回の方法は、治療前及び後のEQ-5D評価、例えば治療前及び後のEQ-5D VAS評価によって測定されるような疼痛の緩和に有効である。
【0079】
疼痛(及びその緩和)を評価するための別のツールは、労働生産性及び活動性障害(WPAI)質問票である。WPAIは、特定の疾患による生産性/アブセンティーイズムを評価するために用いられる患者報告アウトカム(PRO)の手段である。この手段は、下記の6つの質問から構成されており、1つの質問は、雇用状態に関するものであり、5つの質問は、対象の疾患及び他の理由によって損なわれた生産性及び時間に関するものである。WPAIアウトカムは、傷害率として表され、数字が大きいほど、より大きい障害及びより低い生産性、すなわち悪化したアウトカムを示す。
1.現在雇用されている(はい/いいえ)
2.健康問題によって損なわれた時間
3.他の理由によって損なわれた時間
4.実際に労働した時間
5.労働中の生産性に及ぼす健康状態の程度(0~10の11点スケール)
6.通常の活動に及ぼす健康状態の程度(0~10の11点スケール)
【0080】
WPAIによって導出される評価項目としては、損なわれた労働時間(Q2/(Q2+Q4))、労働中の損失(Q5/10)、総労働損失(Q2/(Q2+Q4)+[(1-(Q2/(Q2+Q4)))×(Q5/10)])及び活動性障害(Q6/10)の1つ以上が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書で開示されるような1日1回の方法は、治療前及び後のいずれか1つ以上のWPAIによって導出された評価項目、例えば活動性障害及び/又は総労働損失のWPAI評価によって測定されるような疼痛の緩和に有効である。
【0081】
いくつかの実施形態では、上記で概説したツールのいずれか1つ以上による「治療後」の評価は、1週間、4週間、8週間、12週間又はそれを超えて1日1回の治療後に実施される。更に又は代替的に、「治療後」の評価は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、16、24、36、48及び/又は96週間などにわたり、1日1回の治療後に実施される。例えば、WOMAC疼痛サブスコア評価及び/又は本明細書に記載される任意の他の評価などの治療後の評価は、1~4週間、4~8週間、8~12週間又はそれを超えるものから選択される期間にわたり、1日1回の治療後に実施され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、変形性関節症の疼痛などの疼痛を緩和する方法の有効性は、治療前及び後のWOMAC疼痛サブスコア、WOMAC総スコア又はいずれか1つ以上の他のWOMACサブスコアなどの上記で概説した評価のいずれか1つ以上により、例えば1日2回の治療後に報告される任意の減少と比較した、1日1回の治療後の対象のWOMAC疼痛サブスコアの更に大きい減少並びに/又はEQ-5D及び/若しくはWPAI評価によって測定され得るように、同じ量の同一の外用ジクロフェナク組成物の1日2回の投与と少なくとも同程度に有効である。そのような相対的な有効性を評価するために、1日1回の治療と1日2回の治療とを同一の対象若しくは同一の対象プールで(例えば、クロスオーバーデザインで)実施し得るか、又は比較可能な対象若しくは対象プールで(例えば、無作為化したマルチアームデザインで)実施し得る。いくつかの実施形態では、「治療後」の評価は、4週間にわたり、1日1回の治療後に実施される。更に又は代替的に、「治療後」の評価は、1、2、3、4、5、6、8、10、12、16、24、36、48及び/又は96週間などにわたり、1日1回の治療後に実施される。
【0083】
1日1回の投与は、1日の任意の時刻であり得る。いくつかの実施形態では、1日1回の投与は、朝、例えば日々の活動を開始する前である。いくつかの実施形態では、1日1回の投与は、夜、例えば入眠前である。1日1回の反復投与を含む治療方法の場合、1日1回の投与は、毎日およそ同じ時刻であり得るか、又は毎日異なる時刻であり得る。1日1回の反復投与を含む治療方法のいくつかの実施形態では、1日1回の投与は、1日のおよそ同じ時刻である。
【0084】
本明細書で開示される1日1回の方法による治療は、対象がそれを必要とする限り、例えば1、2、3、4、5、6若しくは7日間、1、2、3、4、5若しくは6週間、1、2、3、4、5若しくは6ヶ月又はそれを超える期間、例えば9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月、48ヶ月若しくはそれを超えてなどにわたって実施され得る。変形性関節症などの慢性症状を治療するために、本明細書に記載されるような1日1回の方法を使用する場合、対象が臨床的に重要な好転、例えば臨床的に重要な疼痛の緩和を経験した後に治療期間を継続し得る。例えば、慢性疼痛の持続的な緩和をもたらすために治療を持続し得る。
【0085】
特定の実施形態では、ジクロフェナクナトリウムを基準として1日当たり1つの関節当たり90~110mgのジクロフェナクの用量を提供する1日1回のプロトコルにおいて、膝、股関節、肩又は脊椎の関節などの関節の変形性関節症を有する対象を治療するために、本明細書で開示されるような外用ジクロフェナク組成物が使用される。例えば、2.7~3.3%(w/w)のジクロフェナクナトリウムを含有する本明細書で開示されるような組成物は、1日当たり1つの関節当たり90~110mgのジクロフェナクの用量を提供する量で1日1回塗布される。そのような組成物は、定量ディスペンサー、例えば1回の作動について約1グラムの組成物、例えば1回の作動について1.15グラムの組成物を分注する定量ディスペンサーで提供され得、患部関節の皮膚表面に組成物の何回かのポンプ作動を1日1回適用することによって1日1回投与され得、これにより合計で1日当たり1つの関節当たり90~110mgのジクロフェナクナトリウムの治療による塗布がもたらされることになる(例えば、3回のポンプ作動)。更なる塗布指示は、ゲルを患部の膝の前面、内側面及び外側面(後面ではない)に優しく塗擦し、塗布後、少なくとも10分間にわたって塗布部位を布で覆わず、塗布後、少なくとも4時間にわたってシャワー又は入浴を避けることを任意選択的に含み得る。極めて具体的な例示的実施例では、実施例1の式I、下記の表2の外用ジクロフェナクゲル組成物(又は同じような量のジクロフェナクナトリウムを有する比較可能な製剤)は、1回の作動について約1グラム、例えば1回の作動について1.15グラムの組成物を分注する定量ディスペンサーから3回の作動で1日1回分注され、約105mgのジクロフェナクナトリウムの1日1回用量(3.45g×3.06%=105.6mg)が塗布される。これらの1日1回のプロトコルは、本明細書で説明される評価項目の1つ以上又はその全てによって評価されるOAを治療するのに有効である。
【0086】
キット
本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物を収容する1つ以上の容器を含むキットも提供される。いくつかの実施形態では、キットは、容器を含み、これは、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の、1つの関節当たり1回以上の1日用量を収容する定量ポンプ(上記に記載したような)を任意選択的に含む定量ディスペンサーである。他の実施形態では、キットは、1つ以上の容器を含み、各々が本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の単回の1日用量(例えば、単一の関節のための1日用量)を収容する。他の実施形態では、キットは、1つ以上の容器を含み、各々が本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の複数の1日用量(例えば、単一の関節のための複数の1日用量、又は複数の関節のための単回の1日用量、又は複数の関節の複数の1日用量)を収容する。
【0087】
本明細書に記載されるようなキットで提供される組成物は、上記の本明細書若しくは以下の実施例に記載の任意の組成物又はその内容が参考として本明細書に組み込まれる米国特許第9,999,590号明細書若しくは米国特許第10,117,829号明細書に記載される任意の組成物であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、キットは、それを必要とする対象の患部に、上記で説明した任意のジクロフェナクの用量/組成物の量などの治療有効量の組成物を1日1回外用塗布するための指示書を更に含む。いくつかの実施形態では、キットは、それを必要とする対象の患部に、治療有効量の組成物を1日1回外用塗布することを含む、外用治療が適用可能な関節の変形性関節症の徴候及び症状を1日1回治療するための指示書を更に含む。容器が、定量ポンプを含む定量ディスペンサーである場合、指示書により、治療有効量(例えば、1つの関節当たりの1日用量)の外用ジクロフェナクゲル組成物を、治療される関節及び/又はその症状に依存して、1回、又は2回、又は3回以上の定量ポンプの作動、例えば1回、又は2回、又は3回の定量ポンプの作動によって分注することを推奨し得る。指示書により、毎日のおよそ同じ時刻に1日1回の治療を行うことを推奨し得る。塗布指示書により、ゲルを優しく塗擦し、塗布後、少なくとも10分間にわたって塗布部位を布で覆わず、塗布後、少なくとも4時間にわたってシャワー又は入浴を避けることを推奨し得る。
【実施例
【0089】
以下の特定の実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法を例示するものとして含まれている。これらの実施例は、本開示の範囲を限定することを決して意図するものではない。本開示の他の態様は、本開示が属する技術分野の当業者に明らかであろう。
【0090】
実施例1
下記に記載するジクロフェナク組成物は、図1に概略的に示されるように調製される。ベンチスケール(10グラム~1000グラムのバッチサイズ)の場合、磁気撹拌又は船用プロペラによって混合及び均質化しながら、琥珀色のガラス瓶の中で調製を行うことができる。より大規模なバッチスケール(例えば、6kg以上、例えば6~10kg、60~100kg又は600~1000kg)の場合、継続的な真空下及び温度制御された窒素ブランケット下の制御環境で、ステンレス鋼製プラネタリーミキサーに入れて調製を行うことができる。
【0091】
例示的なジクロフェナク組成物を下記の表に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
これらの実施例にはジクロフェナクナトリウムが含まれるが、2-(2,6-ジクロロアニリノ)フェニル酢酸(「ジクロフェナク酸」)又はその任意の他の薬学的に許容される塩と共に同様の組成物を製剤化することができる。そのような組成物は、使用される形態の分子量を考慮に入れて、ジクロフェナクナトリウムについて上記に列挙した同じ量の2-(2,6-ジクロロアニリノ)フェニル酢酸若しくはその薬学的に許容される塩(例えば、3.0、3.15若しくは3.06重量/重量%)又は均等な量のジクロフェナク部分を提供する量で製剤化することができる。例えば、3.0重量/重量%のジクロフェナクナトリウムは、2.79重量/重量%のジクロフェナク酸と均等であり、3.15重量/重量%のジクロフェナクナトリウムは、2.93重量/重量%のジクロフェナク酸と均等であり、3.06重量/重量%のジクロフェナクナトリウムは、2.85重量/重量%のジクロフェナク酸と均等である。
【0094】
Voltaren(登録商標)ゲル1%には、1.00重量/重量%のジクロフェナクナトリウムと共に、以下の成分が含まれる。
【0095】
【表3】
【0096】
実施例2
試験デザイン
本試験は、変形性膝関節症(「OA」)症状を治療するための、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の多施設二重盲検無作為化プラセボ対照試験であった。治験には、Voltaren(登録商標)ゲル1%からなる単盲検構成も含まれた。治験の目的は、エックス線撮影をした片膝又は両膝の症候性膝OAを有する対象における、28日の期間中での本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物の1日1回又は1日2回の塗布について有効性及び安全性及び忍容性を評価することであった。(両膝が組み入れ基準を満たす場合、両膝を治療することができるが、一方の膝を、試験全体を通して「標的」膝として選択した)。主目的は、標的膝のWOMAC疼痛サブスコアによって評価されるような疼痛の強度の変化を評価することであった。合計で444人の対象を3:3:3:2の比率(3つの二重盲検治療群の各々に121人の対象を含み、単盲検治療群に81人の対象を含む)で無作為化した。
【0097】
図2で図示されるように、治験は、3つの期間:最大21日のスクリーニング期間、28日の治療期間及び14日の追跡調査期間で構成されていた。
【0098】
主な組み入れ基準は、スクリーニング時点(治療企図群、すなわち「ITT」群)で、臨床及びエックス線基準(例えば、1~3のケルグレン-ローレンスのエックス線の重症度)並びに100のうちの≧40且つ≦90のWOMAC疼痛サブスコア(5問)によって測定されるような膝の大腿脛骨の変形性関節症であった。本明細書に記載されるような外用ジクロフェナクゲル組成物を、28日の期間、二重盲検様式で全てのOA膝当たり2.3gの「活性な」、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナクゲル組成物を朝に使用し、且つプラセボを夜に使用して1日1回(QD)塗布するか、又は2.3gの「活性な」、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナクゲル組成物を朝と夜に使用して1日2回(BID)塗布するか、又はプラセボを1日2回使用するか、又は探索的な比較のために4gのVoltaren(登録商標)ゲル1%を単盲検様式で1日4回(QID)塗布するように、対象を無作為化した。
【0099】
主要評価項目は、標的膝のWOMAC疼痛サブスコア上で対象によって報告された疼痛におけるベースラインからの変化(治療前対治療後)であった。副次的評価項目には、WOMAC機能及びこわばりサブスコア、WOMAC疼痛体重負荷サブスコア、WOMAC疼痛免荷サブスコア、WOMAC総疼痛スコア、EuroQol-5ドメイン質問票(EQ5D)VASスコア及び労働生産性及び活動性障害(WPAI)スコアが含まれた。安全性評価項目には、有害な影響(AE)の性質、発現率及び重症度、検査機関の安全性パラメーター、生命徴候、12誘導ECGパラメーター及び体重の変化並びに塗布部位の皮膚反応の性質、発現率及び重症度が含まれた。
【0100】
上記で述べたように、選択基準には、スクリーニング時点で≧40のWOMAC疼痛サブスコアが含まれた。しかしながら、スクリーニングは、ベースライン来院の最大3週間前に行うことができる。何人かの対象は、スクリーニング時には疼痛基準を満たすものの、ベースライン来院時に20未満のWOMAC疼痛サブスコアを示したことが観察された。治験期間に潜在的な好転の程度が限定されてしまう可能性があるため、ベースライン時(0週目)に100のうちの≧40のWOMAC標準化疼痛サブスコアを有する対象には、事後のサブグループ分析を実施した。
【0101】
WOMAC質問票
自己記入された24問のWOMAC質問票第3.1版(図3を参照されたい)による治療前及び後のWOMAC評価を使用して、4週目(4週間の治療後)の標的膝のベースラインからの変化を測定した。数字が大きいほど疼痛、こわばり又は日々の活動を行うにあたっての難易度が増大することを示す、11点の数値評価スケール(0~10)上で各質問をスコア付けした。上記で述べたように、考え得る最悪のOA症状を示す最大可能WOMAC総スコアは240点である。上記で述べたように、便宜上、説明しやすくするために、全てのスコア(サブスコアを含む)をデータ解析用に0~100点スケールに標準化した。WOMAC機能サブスコアにおける臨床的に重要な変化の最小量(MCID)は、100のうちの約10であると報告されている。従って、上記で述べたように、本明細書で評価されるようなWOMAC疼痛サブスコア(5問)における臨床的に重要な変化を50点のうちの5点として定義した(標準化スケールでは100のうちの10)。
【0102】
上記で述べたように、WOMAC疼痛サブスコアの変化(質問1~5)を主要評価項目として使用するが、副次的評価項目には、WOMAC総スコア、WOMAC身体機能及びこわばりサブスコア、WOMAC疼痛体重負荷サブスコア並びにWOMAC疼痛免荷サブスコアにおける4週目のベースラインからの変化が含まれた。
【0103】
EuroQol-5ドメイン質問票
別の副次的評価項目として、4週目(治療の4週間後)に、EQ-5D質問票によって評価されるような生活の質(QoL)におけるベースラインからの変化を評価した。対象の主観的健康感の視覚的アナログスケール(VAS)を、0~100でスコア付けした(0が「想像し得る最悪の健康状態」に相当し、100が「想像し得る最高の健康状態」に相当する)。ベースライン(来院2)、3週目(来院5)及び4週目(来院6)(治療の4週間後)にEQ-5Dを評価した。
【0104】
労働生産性活動性障害スケール
別の副次的評価項目として、4週目(治療の4週間後)に、労働生産性及び活動性におけるベースラインからの変化をWPAI質問票によって評価した。WPAIアウトカムは、傷害率として表され、数字が大きいほど、より大きい障害及びより低い生産性、すなわち悪化したアウトカムを示す。ベースライン(来院2)及び1週目(来院3)、2週目(来院4)及び4週目(来院6)(治療の4週間後)にWPAIを評価した。
【0105】
治験薬及び投与
上記で述べたように、試験では、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物、すなわち実施例1の式I、上記の表2の外用ジクロフェナクゲル組成物(下記で「ジクロフェナクゲル」と称する)を使用した。組成物は、3.06%のジクロフェナクナトリウムを含有する、完全に均質、透明及び非染色性の水性アルコールゲルであった。プラセボは、ジクロフェナクナトリウム以外は同一の構成成分を有する、外観上同じゲル組成物であった。両方とも、1回の作動について1.15グラムのゲルを分注する87グラムの定量ディスペンサー内で提供された。市販のVoltaren(登録商標)ゲル1%は、100gのチューブで米国市場から供給されたものであった。
【0106】
二重盲検治療アーム(プラセボと比較した、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナクゲル組成物による1日1回又は1日2回の治療を評価する)に割り当てられた対象に、毎朝及び毎晩のほぼ同時刻で2回のポンプ作動のゲル(2×1.15グラム=2.3グラム)を患部の膝の皮膚表面に塗布するように指示した。(朝の塗布と夜の塗布との間の時間は、約10~12時間となるようにした(例えば、午前7時と午後5時))。来院日には、来院前の朝にゲルを塗布しなかった。更なる塗布指示には、ゲルを患部の膝の前面、内側面及び外側面(後面ではない)に優しく塗擦し、塗布後、少なくとも10分間にわたって塗布部位を布で覆わず、塗布後、少なくとも4時間にわたってシャワー又は入浴を避けることが含まれた。従って、それぞれの治療での塗布において、1つの膝当たり70mgのジクロフェナクナトリウムが塗布され、例えば、1日1回の治療群の対象は、毎日70mgのジクロフェナクナトリウムが塗布されたが(2.3g×3.06%=70mg)、1日2回の治療群の対象は、毎日140mgのジクロフェナクナトリウムが塗布された。
【0107】
Voltaren(登録商標)ゲル1%による治療に割り当てられた対象の場合、承認された添付文書に従い、それにより治療キットに同封された投与カードを使用して、4グラムのゲルを1日中に4回、患部の膝の皮膚表面に直接塗布するように各対象に指示した。ゲルが塗布された時点を1日にわたって分散させ、朝(例えば、午前7時)、昼(例えば、午前12時)、夜(例えば、午後5時)及び就寝前(例えば、午後10時)に対応させ、それぞれの塗布を約5時間間隔で行った。来院日には、来院前の朝にゲルを塗布しなかった。従って、Voltaren(登録商標)ゲル1%で治療した対象には、患部の1つの膝当たり16mgのジクロフェナクナトリウムを毎日塗布した。
【0108】
合計で444人の対象を無作為化した。対象の内訳及び主なベースライン特性を表4に示す。
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
主要評価項目
mITT対象全員では、ベースライン時の平均標準化WOMAC疼痛サブスコアが全ての群にわたって約52~53であり、スコアは、ジクロフェナクゲルBID群の最低値の8からジクロフェナクゲルQD群の最高値の86の範囲であった。ベースラインから4週目までの標準化WOMAC疼痛サブスコアの観測平均変化量は、プラセボ群の約-23からジクロフェナクゲルBID群の-27及びジクロフェナクゲルQD群の-28の範囲であり、この場合、スコアの低下は、疼痛の好転を示す。WOMAC疼痛サブスコアのベースラインから4週目までの変化をまとめた結果を、図4、表5及び表6に示す。これらの結果は、プラセボと比較してジクロフェナクゲルQD(1日1回)治療群で最も有意な顕著な治療効果を示している(統計的に有意)。
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
スクリーニング及びベースライン時にWOMACスコアが100のうちの≧40の対象の亜集団(事後分析サブグループ)では、平均標準化WOMAC疼痛サブスコアが全ての治療群でベースライン時に約55~56であった。WOMAC疼痛サブスコアは、ベースラインから4週目までの全ての群で改善され、平均変化量は約-24~-30であった。ベースラインから4週目までの標準化WOMAC疼痛サブスコアの平均変化量は、図5及び表7に示されるように、両ジクロフェナクゲル群(QD及びBID)対プラセボで統計的に有意に大きいものであった。
【0115】
【表8】
【0116】
図6及び表8は、mITT対象全員を対象にした治療の第1週中及びその後のWOMAC疼痛サブスコアのベースラインからの変化についてまとめたものである。これらの結果は、治療の第1週後のジクロフェナクゲルQD(1日1回)群とプラセボ群との間に統計的有意差があることを示している。
【0117】
【表9】
【0118】
副次的評価項目
表9は、mITT対象全員を対象にした4週(4週間の治療後)でのWOMAC総スコアのベースラインからの変化についてまとめたものである。全ての治療群にわたり、ベースライン時の標準化平均WOMAC総スコアが約50~52であり、ベースラインから4週目までの観測平均変化量は、好転を示す-22~-24の範囲であった。これらの結果は、ジクロフェナクゲルQD(1日1回)群及びBID(1日2回)群の両群のベースラインにおける変化が、プラセボ群のベースラインにおける変化よりも大きいものであったことを示している。
【0119】
【表10】
【0120】
図7及び表10は、4週での(4週間の治療後)のWOMAC機能サブスコアのベースラインからの変化についてまとめたものである。全ての治療群にわたり、ベースライン時の標準化平均WOMAC機能サブスコアが約49~51であり、ベースラインから4週目までの観測平均変化量は、好転を示す-21~-24の範囲であった。これらの結果は、ジクロフェナクゲルQD(1日1回)群及びBID(1日2回)群の両群のベースラインにおける変化が、プラセボ群のベースラインにおける変化よりも大きいものであったことを示している。
【0121】
【表11】
【0122】
表11は、WOMACこわばりサブスコアのベースラインから4週目まで(4週間の治療後)の変化についてまとめたものである。全ての治療群にわたり、ベースライン時の標準化平均WOMACこわばりサブスコアが約50~53であり、ベースラインから4週目までの観測平均変化量は-21~-24の範囲であった。これらの結果は、ジクロフェナクゲル群(QD及びBID)の両群のベースラインにおける変化が、プラセボ群に対して大きいものであったことを示している。
【0123】
【表12】
【0124】
表12は、WOMAC疼痛体重負荷サブスコアのベースラインから4週目まで(4週間の治療後)の変化についてまとめたものである。全ての治療群にわたり、ベースライン時の標準化平均WOMAC疼痛体重負荷サブスコアは約56~57であった(全体の疼痛サブスコアよりもわずかに高かった)。ベースラインから4週目までの観測平均変化量は、プラセボ群の約-23から両ジクロフェナクゲル群の-28の範囲であった。これらの結果は、ジクロフェナクゲル群(QD及びBID)の両群のベースラインにおける変化が、プラセボ群のベースラインにおける変化よりも大きいものであったことを示しており、ジクロフェナクゲルQD(1日1回)の差は統計的に有意なものであった。
【0125】
【表13】
【0126】
表13は、WOMAC疼痛免荷サブスコアのベースラインから4週目まで(4週間の治療後)の変化についてまとめたものである。全ての治療群にわたり、ベースライン時の標準化平均WOMAC疼痛免荷サブスコアは約46であった(全体の疼痛サブスコアよりもわずかに低かった)。ベースラインから4週目までの観測平均変化量は、プラセボ群の約-23からジクロフェナクゲルQD(1日1回)群の-28の範囲であった。これらの結果は、ジクロフェナクゲル群(QD及びBID)の両群のベースラインにおける変化が、プラセボ群のベースラインにおける変化によりも大きいものであったことを示している。
【0127】
【表14】
【0128】
表14は、ED-5Dの全体的な生活の質のベースラインから4週目まで(4週間の治療後)の変化についてまとめたものである。全ての治療群にわたり、ベースラインの平均VASスコアは、100のうちの約64~67であり、スコアが高いほど、より良好な健康状態を表す。VASスコアはベースラインから4週目までに改善し、全ての治療群で観測スコアの平均値が約11~12増加した。
【0129】
【表15】
【0130】
表15は、ベースラインから4週目まで(4週間の治療後)のWPAI活動性障害率についてまとめたものである。ベースラインでは、全ての群は、健康問題に起因してほぼ50%の通常の活動に平均的な障害を有した。4週目に、平均活動性障害率は、全ての治療群で約14~20%ポイントだけ著しく減少した。これらの結果は、ジクロフェナクゲルQD(1日1回)群とプラセボ群との間に統計的有意差があることを示している。
【0131】
【表16】
【0132】
表16は、ベースラインから4週目まで(4週間の治療後)のWPAI総労働損失率についてまとめたものである。ベースラインでは、全ての群で、健康問題に起因する、ある程度の総労働損失があった。4週目に、全ての治療群で総労働損失率が減少した。これらの結果は、ジクロフェナクゲルQD(1日1回)群とプラセボ群との間に統計的有意差があることを示している。
【0133】
【表17】
【0134】
ジクロフェナクの暴露
表17は、2週目と4週目のジクロフェナクの血漿濃度データについてまとめたものである。幾何平均ジクロフェナク濃度は、ジクロフェナクゲルQD(1日1回)群で最も低く、Voltarenゲル1%群では中程度であり、ジクロフェナクゲルBID(1日2回)群で最も高かった。3つの実薬治療群において、幾何平均ジクロフェナク血漿濃度は、2週目よりも4週目でわずかに低くなった。2週目及び4週目の両方で、ジクロフェナク濃度は、ジクロフェナクゲルQD群と比較してジクロフェナクゲルBID群で統計的に有意に高かった。4週目ではなく2週目では、ジクロフェナクゲルQD群の血漿濃度がVoltarenゲル1%群よりも低かった。これらの結果は、本明細書に記載されるようなジクロフェナク組成物による1日1回の治療が、他の治療レジメンよりもジクロフェナクへの全身暴露が低い結果となることを示している。
【0135】
【表18】
【0136】
全ての治療にわたって治療の中断につながる有害事象の頻度が同様に低かった(2.8%~6.6%の範囲)ため、他の安全性及び忍容性パラメーターの評価は好ましいものであった。最も一般的な治療下で発現した有害事象は、塗布部位の乾燥(ジクロフェナクゲルQDの場合には10.7%、ジクロフェナクゲルBIDの場合には14.9%、溶媒の場合には13.2%及びVoltaren(登録商標)ゲル1%の場合には6.2%の頻度)並びに塗布部位の紅斑(ジクロフェナクゲルQDの場合には12.4%、ジクロフェナクゲルBIDの場合には9.1%、溶媒の場合には33.1%及びVoltaren(登録商標)ゲル1%の場合には4.9%の頻度)であり、これは、溶媒のわずかな刺激効果をジクロフェナクによって減少させ得ることを示唆している。治験中に重篤な有害事象が報告されることはなかった。
【0137】
結論
これらの結果は、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物による1日1回の治療が、上記で説明したあらゆる評価項目においてプラセボよりも優れていたことを示している。更に、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物による1日1回の治療は、以下で評価されるように、疼痛の治療においてプラセボよりも統計的に有意に優れていた:ベースラインから4週目までのWOMAC疼痛サブスコアの変化(図4、表5)、スクリーニング及びベースライン時にWOMAC疼痛サブスコアが≧40の亜集団(事後サブグループ)を対象にした、ベースラインから4週目までのWOMAC疼痛サブスコアの変化(図5、表7)、治療の第1週中及びその後のベースラインからのWOMAC疼痛サブスコア(それぞれ図6及び表8)、ベースラインから4週目までのWOMAC疼痛体重負荷サブスコアの変化(表12)、ベースラインから4週目までのWPAI活動性障害率(表15)並びにベースラインから4週目までのWPAI総労働損失率(表16)。
【0138】
結果は、本明細書に記載されるような同一の外用ジクロフェナク組成物による1日2回の治療に対して1日1回の治療との間に統計的有意差がないことも示し、これは、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物による1日1回の治療が、同一の外用ジクロフェナク組成物による1日2回の治療と少なくとも同程度に有効であることを示している。
【0139】
総括して見ると、これらの結果は、本明細書に記載されるような外用ジクロフェナク組成物による1日1回の治療が、他の治療レジメンよりもジクロフェナクへの全身暴露が低く、且つ忍容性及び安全性プロファイルが良好な、変形性関節症の膝痛の有効な治療をもたらすことを示している。結果は、本明細書に記載される1日1回の治療方法が安全且つ有効であることを示しており、驚くべきことに、1日2回の治療と比較して、1日1回の治療がジクロフェナクの1日用量の半分を投与することを含む場合でも、同一の外用ジクロフェナク組成物による1日2回の治療と少なくとも同程度に有効であり(例えば、WOMAC疼痛サブスコアで評価した場合)、表17に例示されるようにジクロフェナクへの全身暴露がはるかに低い結果となることを示している。
【0140】
実施例3
ジクロフェナクナトリウムを基準として1つの膝当たり90~110mgのジクロフェナクの1日1回用量を提供するプロトコルでは、片方又は両膝の膝の変形性関節症を有する対象を治療するために、上記の実施例1の式I、表2に開示されるような外用ジクロフェナク組成物が使用される。詳細には、実施例1の式I、表2の外用ジクロフェナクゲル組成物は、実施例2で使用したような定量ディスペンサー(1回の作動について1.15gの組成物を分注する)から、3回のポンプ作動で1日1回分注され、約105mgのジクロフェナクナトリウムの1日1回用量(3.45g×3.06%=105.6mg)が塗布される。更なる塗布指示は、ゲルを患部の膝の前面、内側面及び外側面(後面ではない)に優しく塗擦し、塗布後、少なくとも10分間にわたって塗布部位を布で覆わず、塗布後、少なくとも4時間にわたってシャワー又は入浴を避けることを含み得る。この1日1回のプロトコルは、上記で説明した評価項目の1つ以上又はその全てによって評価されるOAを治療するのに有効である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】