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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】マルチキナーゼ阻害剤の新規用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/551 20060101AFI20230406BHJP
   C07D 471/14 20060101ALI20230406BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20230406BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K31/551
C07D471/14
C07D487/04 154
C07D519/00 301
A61K31/5517
A61P35/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551006
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2021077394
(87)【国際公開番号】W WO2021169933
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202010112976.3
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522116524
【氏名又は名称】薬捷安康(南京)科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】TRANSTHERA SCIENCES (NANJING), INC.
【住所又は居所原語表記】Floor 3, Building 9, Accelerator Phase 2, Biotech and Pharmaceutical Valley, Jiangbei New Area, Nanjing, Jiangsu 210032, China
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】彭鵬
(72)【発明者】
【氏名】強曉妍
(72)【発明者】
【氏名】呉永謙
【テーマコード(参考)】
4C050
4C065
4C072
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050AA07
4C050BB05
4C050CC11
4C050DD10
4C050EE04
4C050FF05
4C050GG01
4C050HH04
4C065AA05
4C065BB05
4C065CC08
4C065DD05
4C065EE03
4C065HH01
4C065HH02
4C065HH06
4C065JJ01
4C065JJ03
4C065JJ08
4C065JJ09
4C065KK03
4C065LL01
4C065PP03
4C065PP07
4C065PP12
4C065PP15
4C065PP16
4C065PP17
4C072MM10
4C072UU01
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC032
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB11
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、胆道癌を治療するための、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形、それらを含む医薬組成物、それらを使用して胆道癌を治療する方法、胆道癌を治療するための用途、及び胆道癌を治療するための薬物の調製における用途を提供するものである。前記一般式の各変数は、明細書で定義された通りである。研究によると、一般式(I)に示されるマルチキナーゼ阻害剤化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形は、胆道癌に対して治療作用があり、特に胆管癌に対して顕著な治療作用を有する。
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆道癌を治療するための薬物の調製における、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形の用途であって、
【化1】

但し、Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素、アミノ基、シアノ基、ハロゲン、C1-4アルキル基、及びトリフルオロメチル基から選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素又はC1-4アルキル基であり、
R4は-(CH2n-(5~11)員ヘテロ環基であり、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される、
用途。
【請求項2】
Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素及びハロゲンから選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は-(CH2n-(5~6)員モノヘテロ環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合ヘテロ環基から選ばれ、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される、
ことを特徴とする請求項1に記載の用途。
【請求項3】
R4
【化2】
であり、n=0-3、但し、ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される、
ことを特徴とする請求項2に記載の用途。
【請求項4】
前記化合物は以下の構造の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形から選ばれることを特徴とする請求項3に記載の用途:
【化3】
【請求項5】
前記化合物は
【化4】

又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形であることを特徴とする請求項4に記載の用途。
【請求項6】
前記胆道癌とは、胆管癌を指し、好ましくはFGFRに媒介される胆管癌であり、より好ましくはFGFR1、FGFR2、FGFR3の何れか1つ又はそれらの任意の組合せにより媒介される胆管癌であることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の用途。
【請求項7】
前記胆管癌とは、非FGFR変異型胆管癌を指すことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項8】
前記胆管癌とは、FGFR変異型胆管癌を指し、好ましくはFGFR2変異型胆管癌及び/又はFGFR3変異型胆管癌であることを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項9】
前記胆管癌とは、FGFR融合、FGFR突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指すことを特徴とする請求項8に記載の用途。
【請求項10】
前記胆管癌とは、FGFR2融合、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指すことを特徴とする請求項9に記載の用途。
【請求項11】
前記胆管癌とは、FGFR変異陽性はあるが、FGFR阻害剤に反応しない耐薬性のある胆管癌、又はFGFR阻害剤使用後耐薬性のある胆管癌を指すことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項12】
前記胆管癌とは、肝内胆管癌、肝門部胆管癌及び遠位胆管癌の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを指すことを特徴とする請求項6に記載の用途。
【請求項13】
前記胆道癌を治療するための薬物は、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を含むことに加えて、薬学的に許容可能な担体も含むことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の用途。
【請求項14】
前記胆道癌を治療するための薬物は、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を含むことに加えて、1つ又は複数の第2治療活性剤を含み、前記第2治療活性剤は代謝拮抗物質、増殖因子阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン類、アルキル化剤類、金属プラチナ系、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、免疫調節剤、腫瘍抑制遺伝子、癌ワクチン、免疫チェックポイント阻害剤の何れか1つ又はそれらの任意の組合せであることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載の用途。
【請求項15】
前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、連続的、同時又は複合製剤調製の方式で治療が必要な患者又は受験者に投与されることを特徴とする請求項14に記載の用途。
【請求項16】
前記患者又は受験者とは、哺乳動物を指すことを特徴とする請求項15に記載の用途。
【請求項17】
前記患者又は受験者とは、ヒトを指すことを特徴とする請求項16に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は医薬技術分野に属し、具体的に、胆道癌を治療するためのマルチキナーゼ阻害剤化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形、それらを含む医薬組成物、それらを使用して胆道癌を治療する方法、胆道癌を治療するための用途、及び胆道癌を治療するための薬物の調製における用途に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
胆道癌(biliary tract cancer、BTC)は、胆管上皮細胞に由来する悪性腫瘍であり、臨床的には比較的稀で発症率は低いが、近年徐々に増加する傾向にある。その初期の臨床症状は特異性に乏しく、受診時において後期となることが多い。解剖学的位置に基づいて、胆管癌(cholangiocarcinoma、CCA)と胆嚢癌(gallbladder carcinoma、GBC)に区別することができる。
【0003】
胆管癌(cholangiocarcinoma)は、胆道に形成される非常に不均一な悪性腫瘍であり、全ての消化器系腫瘍の約3%を占める。病巣の解剖学的部位に応じて、胆管癌は肝内胆管癌(intrahepatic cholangiocarcinoma、iCC)、肝門部胆管癌(perihilar cholangiocarcinom、pCC)、及び遠位胆管癌(distal cholangiocarcinoma、dCC)を含む3種類に分類できる。その内、肝内胆管癌は肝実質に位置し、約10~20%を占め、肝門部胆管癌及び遠位胆管癌は何れも肝外胆管癌に属し、胆管癌の約80%を占める(Rizvi, S., & Gores, G. J. (2013). Pathogenesis, Diagnosis, and Management of Cholangiocarcinoma. Gastroenterology, 145(6), 1215-1229)。胆管癌の予後は非常に悪く、患者は初期段階で明らかな臨床症状を示さず、通常、診断時に転移が既に発生している。胆管癌は化学療法に顕著な抵抗性があるため、化学療法は緩和ケアによく使用され、一般的に効果的な治療手段は外科的切除及び/又は肝移植である。手術は、胆管癌を切除できる主要な治療方法であり、術後生存率は主に、腫瘍辺縁陰性、血管浸潤とリンパ節転移無し、及び機能的に十分な残存肝臓に依存する。ほとんどの患者は進行性疾患と診断されているため、再発は一般的であり、外科的切除後2~3年以内に再発率は約49%~64%である。外科的切除後の5年生存率も低く、肝内胆管癌で22%~44%であり、肝門部胆管癌で11%~41%であり、遠位胆管癌で27%~37%である。局所腫瘍浸潤、腹膜又は遠隔転移、胆道再建オプションの欠如及び術後残存肝臓の不足予測などの理由により、1/3未満の患者しか外科的切除できる機会を有しない。外科的切除不能な胆管癌の患者の場合、別の治療選択肢は肝移植である。しかし、肝移植は患者の選択基準が非常に厳しく、利用可能性が限られており、肝移植を受けることができる患者であっても、予後は悪く、再発率も高く、生存率は10%~25%に過ぎない。現在、切除不能又は転移性腫瘍の患者に推奨される治療選択肢には、1)臨床試験、2)フルオロウラシルベース又はゲムシタビンベースの化学療法、又は3)最善の支持療法を含む。
【0004】
胆管癌の発症率と死亡率は年々増加する傾向にある。現在の研究では、胆管癌の発生と治療は複数の標的に関連している可能性があることが示されている。
【0005】
線維芽細胞増殖因子受容体(Fibroblast Growth Factor Receptor、FGFR)は細胞の生存と増殖を調節することができ、複数の研究により、FGFR変異は様々な腫瘍の潜在的な治療標的であることが示唆されている。FGFR2融合は胆管癌の重要な誘発因子の1つであり、この遺伝子は肝内胆管癌によく見られ、肝内胆管癌の約15%を占める。FGFR融合変異に加えて、胆管癌において一連のFGFR変異、例えばFGFR2 N549H、FGFR2 V564F、FGFR3 K650E、FGFR3 R248Cなどは耐薬性があることも見出されている(Shiao MS, Chiablaem K, Charoensawan V, et al. Emergence of Intrahepatic Cholangiocarcinoma: How High-Throughput Technologies Expedite the Solutions for a Rare Cancer Type. Frontiers in Genetics. 2018;9:309.)。
【0006】
Janusキナーゼ/シグナル伝達物質及び転写活性化因子(JAK/STAT)経路は、IL6によって癌細胞の増殖に関与し、腫瘍微小環境を調節することができる(Labib PL, Goodchild G, Pereira SP. Molecular Pathogenesis of Cholangiocarcinoma. BMC Cancer. 2019;19(1):185)。研究により、STAT3の構成的リン酸化は、7種の異なる遺伝的特徴を有するヒト胆管癌細胞株パネルで観察されることが報告されており、IL-6/JAK/STAT3経路の負のフィードバックループが胆管癌細胞においてエピジェネティックに遺伝子サイレンシングされ、それにより持続的なシグナル伝達を引き起こすことを実証する(Isomoto H, Mott JL, Kobayashi S, et al. Sustained IL-6/STAT-3 signaling in cholangiocarcinoma cells due to SOCS-3 epigenetic silencing. Gastroenterology. 2007;132(1):384-396)。
【0007】
オーロラキナーゼA(Aurora A)の発現も胆管癌でアップレギュレーションされる可能性があり、無増悪生存期間と全生存期間の低下に関連している(Ding X, Huang T, Ahn KS, et al. Su1459 - Aurora Kinase A Sustains Cholangiocarcinoma Proliferation and Represents a New Therapeutic Target. Gastroenterology. 2018;154(6):S-1153)。WO2018108079A1では、Auroraキナーゼ及びVEGFRキナーゼなどの1つ又は複数のプロテインキナーゼの活性を阻害、調節及び/又は制御することができ、それによって抗腫瘍効果を発揮することができるマルチキナーゼ阻害剤化合物を開示する。
【0008】
要約すると、胆管癌術後の最適な補助療法戦略は依然として不確実であり、標準的な補助療法レジメンを支持する臨床転帰は非常に限られている。現在、胆管癌に対する標的阻害剤が臨床的に研究されているが、FGFR変異のない胆管癌患者は依然として多く、その効果的な標的療法も急務であるため、FGFR変異型、非FGFR変異型胆管癌及びFGFR野生型胆管癌に対して巨大な未満足臨床治療ニーズがあり、胆管癌に対する効果的な標的薬剤の開発が臨床的に急務となっている。
【発明の概要】
【0009】
発明の概要
1、発明の概要
本発明は癌の分野における、以下の一般式(I)に示されるマルチキナーゼ阻害剤化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形の新規用途を研究する。研究によると、一般式(I)に示されるマルチキナーゼ阻害剤化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形は、胆道癌に対して治療作用があり、特に胆管癌に対して顕著な治療作用を有することが分かる。
【0010】
そのため、本発明の目的は、胆道癌の治療における、一般式(I)に示されるマルチキナーゼ阻害剤化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形の新規用途を提供することである。
【0011】
従って、本発明の第1の態様では、胆道癌を治療するための薬物の調製における、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形の用途を提供する:
【0012】
【化1】
【0013】
但し、Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素、アミノ基、シアノ基、ハロゲン、C1-4アルキル基、及びトリフルオロメチル基から選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素及びC1-4アルキル基から選ばれ、
R4は-(CH2n-(5~11)員ヘテロ環基であり、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0014】
本発明の第2の態様では、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形の胆道癌を治療するための用途を提供する:
【0015】
【化2】
【0016】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0017】
本発明の第3の態様では、胆道癌を治療するための、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を提供する:
【0018】
【化3】
【0019】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0020】
本発明の第4の態様では、必要がある患者に治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を投与することを含む、胆道癌を治療する方法を提供する:
【0021】
【化4】
【0022】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0023】
本発明の第5の態様では、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を含み、且つ任意選択的に薬学的に許容可能な担体を含む、胆道癌を治療するための医薬組成物を提供する:
【0024】
【化5】
【0025】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0026】
2、発明の詳細
上記のように、本発明の第1態様では、胆道癌を治療するための薬物の調製における、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形の用途を提供する:
【0027】
【化6】
【0028】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0029】
1つの実施形態において、Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素及びハロゲンから選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は-(CH2n-(5~6)員モノヘテロ環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合ヘテロ環基から選ばれ、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0030】
更なる実施形態において、前記(5~6)員モノヘテロ環基は(5~6)員飽和モノヘテロ環基であり、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和縮合ヘテロ環基である。1つの好ましい実施形態において、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和結合ヘテロ環基、(7~11)員飽和スピロヘテロ環基又は(7~11)員飽和架橋ヘテロ環基である。
【0031】
1つの実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0032】
【化7】
【0033】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。好ましい実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0034】
【化8】
【0035】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0036】
1つの実施形態において、前記一般式(I)の化合物は表1に示す化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0037】
【表1-1】
【0038】
【表1-2】
【0039】
【表1-3】
【0040】
【表1-4】
【0041】
【表1-5】
【0042】
1つの好ましい実施形態において、前記一般式(I)の化合物は
【0043】
【化9】
【0044】
又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0045】
1つの実施形態において、前記胆道癌とは、胆管癌を指す。
【0046】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFRに媒介される胆管癌を指す。好ましい実施形態において、前記FGFRに媒介される胆管癌とは、FGFR1、FGFR2、FGFR3の何れか1つ又はそれらの任意の組合せにより媒介される胆管癌を指す。
【0047】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、非FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記非FGFR変異型胆管癌とは、非FGFR2変異型胆管癌を指す。
【0048】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記FGFR変異型胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異型胆管癌を指す。
【0049】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR融合、FGFR突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。その内、FGFR突然変異は、FGFR点突然変異及びFGFR挿入/欠失突然変異を含む。
【0050】
1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2 N549H、FGFR2 V564F、FGFR3 K650Eの何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。
【0051】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異陽性はあるが、FGFR阻害剤に反応しない耐薬性のある胆管癌、又はFGFR阻害剤使用後耐薬性のある胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異耐薬性を有する胆管癌を指す。
【0052】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌、肝門部胆管癌及び遠位胆管癌の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝門部胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、遠位胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2変異型肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2融合を有する肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、非FGFR変異型肝内胆管癌を指す。
【0053】
1つの実施形態において、前記胆管癌には、オーロラキナーゼに媒介される胆管癌、及びIL-6に媒介される異常なJAK-STATシグナル伝達経路によって引き起こされる胆管癌を含む、他のメカニズムに媒介される胆管癌も含まれる。
【0054】
1つの実施形態において、前記胆道癌を治療するための薬物は、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を含むことに加えて、薬学的に許容可能な担体を含むこともできる。
【0055】
1つの実施形態において、前記薬物は1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を含むことができ、経口、胃腸外、直腸又は経肺投与などの投与方式で、このような治療が必要な患者又は受験者に投与されることができる。経口投与に用いられる場合、医薬組成物は錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤などの通常の固体製剤に製造されてもよく、経口溶液剤、経口懸濁剤、シロップ剤などの経口液体製剤に製造されてもよい。経口製剤に製造される場合、適当な充填剤、接着剤、崩壊剤、潤滑剤などを添加することができる。胃腸外投与に用いられる場合、医薬組成物は注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む注射剤に製造されることができる。注射剤に製造される場合、従来の製薬分野での通常方法により生産することができ、注射剤を調製する場合、付加剤を加えなくてもよく、薬物の性質に応じて適当な付加剤を加えてもよい。直腸投与に用いられる場合、医薬組成物は、坐剤などに製造されることができる。経肺投与に用いられる場合、医薬組成物は、吸入剤又は噴霧剤などに製造されることができる。
【0056】
1つの実施形態において、前記胆道癌を治療するための薬物は、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を含むことに加えて、1つ又は複数の第2治療活性剤を含む。
【0057】
更なる実施形態において、前記第2治療活性剤は、代謝拮抗物質、増殖因子阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン類、アルキル化剤類、金属プラチナ系、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、免疫調節剤、腫瘍抑制遺伝子、癌ワクチン、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0058】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、併用投与により治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0059】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、連続的、同時又は複合製剤調製の方式で治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0060】
更なる実施形態において、前記患者又は受験者とは、哺乳動物を指す。1つの好ましい実施形態において、前記患者又は受験者とは、ヒトを指す。
【0061】
本発明の第2の態様では、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形の胆道癌を治療するための用途を提供する:
【0062】
【化10】
【0063】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0064】
1つの実施形態において、Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素及びハロゲンから選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は-(CH2n-(5~6)員モノヘテロ環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合ヘテロ環基から選ばれ、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0065】
更なる実施形態において、前記(5~6)員モノヘテロ環基は(5~6)員飽和モノヘテロ環基であり、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和縮合ヘテロ環基である。1つの好ましい実施形態において、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和結合ヘテロ環基、(7~11)員飽和スピロヘテロ環基又は(7~11)員飽和架橋ヘテロ環基である。
【0066】
1つの実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0067】
【化11】
【0068】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。好ましい実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0069】
【化12】
【0070】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0071】
1つの実施形態において、前記一般式(I)の化合物は表1に示す化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0072】
1つの好ましい実施形態において、前記一般式(I)の化合物は
【0073】
【化13】
【0074】
又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0075】
1つの実施形態において、前記胆道癌とは、胆管癌を指す。
【0076】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFRに媒介される胆管癌を指す。好ましい実施形態において、前記FGFRに媒介される胆管癌とは、FGFR1、FGFR2、FGFR3の何れか1つ又はそれらの任意の組合せにより媒介される胆管癌を指す。
【0077】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、非FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記非FGFR変異型胆管癌とは、非FGFR2変異型胆管癌を指す。
【0078】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記FGFR変異型胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異型胆管癌を指す。
【0079】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR融合、FGFR突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。その内、FGFR突然変異は、FGFR点突然変異及びFGFR挿入/欠失突然変異を含む。
【0080】
1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2 N549H、FGFR2 V564F、FGFR3 K650Eの何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。
【0081】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異陽性はあるが、FGFR阻害剤に反応しない耐薬性のある胆管癌、又はFGFR阻害剤使用後耐薬性のある胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異耐薬性を有する胆管癌を指す。
【0082】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌、肝門部胆管癌及び遠位胆管癌の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝門部胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、遠位胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2変異型肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2融合を有する肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、非FGFR変異型肝内胆管癌を指す。
【0083】
1つの実施形態において、前記胆管癌には、オーロラキナーゼに媒介される胆管癌、及びIL-6に媒介される異常なJAK-STATシグナル伝達経路によって引き起こされる胆管癌を含む、他のメカニズムに媒介される胆管癌も含まれる。
【0084】
1つの実施形態において、前記用途は、必要がある患者又は受験者に治療有効量の一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を投与することを含む。
【0085】
1つの実施形態において、治療有効量の一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形はまた、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体と共に、薬学的に許容可能な任意の薬物製剤を製造することができる。
【0086】
1つの実施形態において、前記薬物製剤は1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を含むことができ、経口、胃腸外、直腸又は経肺投与などの投与方式で、このような治療が必要な患者又は受験者に投与されることができる。経口投与に用いられる場合、医薬組成物は錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤などの通常の固体製剤に製造されてもよく、経口溶液剤、経口懸濁剤、シロップ剤などの経口液体製剤に製造されてもよい。経口製剤に製造される場合、適当な充填剤、接着剤、崩壊剤、潤滑剤などを添加することができる。胃腸外投与に用いられる場合、医薬組成物は注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む注射剤に製造されることができる。注射剤に製造される場合、従来の製薬分野での通常方法により生産することができ、注射剤を調製する場合、付加剤を加えなくてもよく、薬物の性質に応じて適当な付加剤を加えてもよい。直腸投与に用いられる場合、医薬組成物は、坐剤などに製造されることができる。経肺投与に用いられる場合、医薬組成物は、吸入剤又は噴霧剤などに製造されることができる。
【0087】
1つの実施形態において、前記用途はまた、必要がある患者又は受験者に、治療有効量の一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形、及び1つ又は複数の第2治療活性剤を投与することを含む。
【0088】
更なる実施形態において、前記第2治療活性剤は、代謝拮抗物質、増殖因子阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン類、アルキル化剤類、金属プラチナ系、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、免疫調節剤、腫瘍抑制遺伝子、癌ワクチン、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0089】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、併用投与により治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0090】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、連続的、同時又は複合製剤調製の方式で治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0091】
更なる実施形態において、前記患者又は受験者とは、哺乳動物を指す。1つの好ましい実施形態において、前記患者又は受験者とは、ヒトを指す。
【0092】
本発明の第3の態様では、胆道癌を治療するための、一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を提供する:
【0093】
【化14】
【0094】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0095】
1つの実施形態において、Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素及びハロゲンから選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は-(CH2n-(5~6)員モノヘテロ環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合ヘテロ環基から選ばれ、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0096】
更なる実施形態において、前記(5~6)員モノヘテロ環基は(5~6)員飽和モノヘテロ環基であり、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和縮合ヘテロ環基である。1つの好ましい実施形態において、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和結合ヘテロ環基、(7~11)員飽和スピロヘテロ環基又は(7~11)員飽和架橋ヘテロ環基である。
【0097】
1つの実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0098】
【化15】
【0099】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。好ましい実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0100】
【化16】
【0101】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0102】
1つの実施形態において、前記一般式(I)の化合物は表1に示す化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0103】
1つの好ましい実施形態において、前記一般式(I)の化合物は
【0104】
【化17】
【0105】
又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0106】
1つの実施形態において、前記胆道癌とは、胆管癌を指す。
【0107】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFRに媒介される胆管癌を指す。好ましい実施形態において、前記FGFRに媒介される胆管癌とは、FGFR1、FGFR2、FGFR3の何れか1つ又はそれらの任意の組合せにより媒介される胆管癌を指す。
【0108】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、非FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記非FGFR変異型胆管癌とは、非FGFR2変異型胆管癌を指す。
【0109】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記FGFR変異型胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異型胆管癌を指す。
【0110】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR融合、FGFR突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。その内、FGFR突然変異は、FGFR点突然変異及びFGFR挿入/欠失突然変異を含む。
【0111】
1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2 N549H、FGFR2 V564F、FGFR3 K650Eの何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。
【0112】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異陽性はあるが、FGFR阻害剤に反応しない耐薬性のある胆管癌、又はFGFR阻害剤使用後耐薬性のある胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異耐薬性を有する胆管癌を指す。
【0113】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌、肝門部胆管癌及び遠位胆管癌の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝門部胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、遠位胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2変異型肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2融合を有する肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、非FGFR変異型肝内胆管癌を指す。
【0114】
1つの実施形態において、前記胆管癌には、オーロラキナーゼに媒介される胆管癌、及びIL-6に媒介される異常なJAK-STATシグナル伝達経路によって引き起こされる胆管癌を含む、他のメカニズムに媒介される胆管癌も含まれる。
【0115】
1つの実施形態において、前記一般式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形は、治療有効量で必要がある患者又は受験者に投与される。
【0116】
1つの実施形態において、治療有効量の一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形はまた、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体と共に、薬学的に許容可能な任意の薬物製剤を製造することができる。
【0117】
1つの実施形態において、前記薬物製剤は1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を含むことができ、経口、胃腸外、直腸又は経肺投与などの投与方式で、このような治療が必要な患者又は受験者に投与されることができる。経口投与に用いられる場合、医薬組成物は錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤などの通常の固体製剤に製造されてもよく、経口溶液剤、経口懸濁剤、シロップ剤などの経口液体製剤に製造されてもよい。経口製剤に製造される場合、適当な充填剤、接着剤、崩壊剤、潤滑剤などを添加することができる。胃腸外投与に用いられる場合、医薬組成物は注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む注射剤に製造されることができる。注射剤に製造される場合、従来の製薬分野での通常方法により生産することができ、注射剤を調製する場合、付加剤を加えなくてもよく、薬物の性質に応じて適当な付加剤を加えてもよい。直腸投与に用いられる場合、医薬組成物は、坐剤などに製造されることができる。経肺投与に用いられる場合、医薬組成物は、吸入剤又は噴霧剤などに製造されることができる。
【0118】
1つの実施形態において、治療有効量の一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形はまた、1つ又は複数の第2治療活性剤と組み合わせて、必要がある患者又は受験者に投与される。
【0119】
更なる実施形態において、前記第2治療活性剤は、代謝拮抗物質、増殖因子阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン類、アルキル化剤類、金属プラチナ系、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、免疫調節剤、腫瘍抑制遺伝子、癌ワクチン、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0120】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、併用投与により治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0121】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、連続的、同時又は複合製剤調製の方式で治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0122】
更なる実施形態において、前記患者又は受験者とは、哺乳動物を指す。1つの好ましい実施形態において、前記患者又は受験者とは、ヒトを指す。
【0123】
本発明の第4の態様では、必要がある患者に治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を投与することを含む、胆道癌を治療する方法を提供する:
【0124】
【化18】
【0125】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0126】
1つの実施形態において、Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素及びハロゲンから選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は-(CH2n-(5~6)員モノヘテロ環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合ヘテロ環基から選ばれ、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0127】
更なる実施形態において、前記(5~6)員モノヘテロ環基は(5~6)員飽和モノヘテロ環基であり、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和縮合ヘテロ環基である。1つの好ましい実施形態において、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和結合ヘテロ環基、(7~11)員飽和スピロヘテロ環基又は(7~11)員飽和架橋ヘテロ環基である。
【0128】
1つの実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0129】
【化19】
【0130】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。好ましい実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0131】
【化20】
【0132】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0133】
1つの実施形態において、前記一般式(I)の化合物は表1に示す化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0134】
1つの好ましい実施形態において、前記一般式(I)の化合物は
【0135】
【化21】
【0136】
又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0137】
1つの実施形態において、前記胆道癌とは、胆管癌を指す。
【0138】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFRに媒介される胆管癌を指す。好ましい実施形態において、前記FGFRに媒介される胆管癌とは、FGFR1、FGFR2、FGFR3の何れか1つ又はそれらの任意の組合せにより媒介される胆管癌を指す。
【0139】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、非FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記非FGFR変異型胆管癌とは、非FGFR2変異型胆管癌を指す。
【0140】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記FGFR変異型胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異型胆管癌を指す。
【0141】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR融合、FGFR突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。その内、FGFR突然変異は、FGFR点突然変異及びFGFR挿入/欠失突然変異を含む。
【0142】
1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2 N549H、FGFR2 V564F、FGFR3 K650Eの何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。
【0143】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異陽性はあるが、FGFR阻害剤に反応しない耐薬性のある胆管癌、又はFGFR阻害剤使用後耐薬性のある胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異耐薬性を有する胆管癌を指す。
【0144】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌、肝門部胆管癌及び遠位胆管癌の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝門部胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、遠位胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2変異型肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2融合を有する肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、非FGFR変異型肝内胆管癌を指す。
【0145】
1つの実施形態において、前記胆管癌には、オーロラキナーゼに媒介される胆管癌、及びIL-6に媒介される異常なJAK-STATシグナル伝達経路によって引き起こされる胆管癌を含む、他のメカニズムに媒介される胆管癌も含まれる。
【0146】
1つの実施形態において、前記治療有効量の一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形はまた、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体と共に、薬学的に許容可能な任意の薬物製剤を製造することができる。
【0147】
1つの実施形態において、前記薬物製剤は1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を含むことができ、経口、胃腸外、直腸又は経肺投与などの投与方式で、このような治療が必要な患者又は受験者に投与されることができる。経口投与に用いられる場合、医薬組成物は錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤などの通常の固体製剤に製造されてもよく、経口溶液剤、経口懸濁剤、シロップ剤などの経口液体製剤に製造されてもよい。経口製剤に製造される場合、適当な充填剤、接着剤、崩壊剤、潤滑剤などを添加することができる。胃腸外投与に用いられる場合、医薬組成物は注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む注射剤に製造されることができる。注射剤に製造される場合、従来の製薬分野での通常方法により生産することができ、注射剤を調製する場合、付加剤を加えなくてもよく、薬物の性質に応じて適当な付加剤を加えてもよい。直腸投与に用いられる場合、医薬組成物は、坐剤などに製造されることができる。経肺投与に用いられる場合、医薬組成物は、吸入剤又は噴霧剤などに製造されることができる。
【0148】
1つの実施形態において、前記方法はまた、必要がある患者又は受験者に、治療有効量の一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形、及び1つ又は複数の第2治療活性剤を投与することを含む。
【0149】
更なる実施形態において、前記第2治療活性剤は、代謝拮抗物質、増殖因子阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン類、アルキル化剤類、金属プラチナ系、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、免疫調節剤、腫瘍抑制遺伝子、癌ワクチン、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0150】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、併用投与により治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0151】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、連続的、同時又は複合製剤調製の方式で治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0152】
更なる実施形態において、前記患者又は受験者とは、哺乳動物を指す。1つの好ましい実施形態において、前記患者又は受験者とは、ヒトを指す。
【0153】
本発明の第5の態様では、治療有効量の式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形を含み、且つ任意選択的に薬学的に許容可能な担体を含む、胆道癌を治療するための医薬組成物を提供する:
【0154】
【化22】
【0155】
その内、上記の一般式(I)の各変数は、上記で定義された通りである。
【0156】
1つの実施形態において、Arは、任意選択的に1~3個のR6により置換されるフェニルであり、各R6はそれぞれ独立して水素及びハロゲンから選ばれ、
YはCR3であり、
PはCR4であり、
WはNであり、
R3は水素であり、
R4は-(CH2n-(5~6)員モノヘテロ環基及び-(CH2n-(7~11)員縮合ヘテロ環基から選ばれ、但し、n=0-6、前記ヘテロ環基の環構成S原子は任意選択的にS(O)又はS(O)2に酸化され、環構成C原子は任意選択的にC(O)に酸化され、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0157】
更なる実施形態において、前記(5~6)員モノヘテロ環基は(5~6)員飽和モノヘテロ環基であり、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和縮合ヘテロ環基である。1つの好ましい実施形態において、前記(7~11)員縮合ヘテロ環基は(7~11)員飽和結合ヘテロ環基、(7~11)員飽和スピロヘテロ環基又は(7~11)員飽和架橋ヘテロ環基である。
【0158】
1つの実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0159】
【化23】
【0160】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。好ましい実施形態において、前記(5~11)員ヘテロ環基は
【0161】
【化24】
【0162】
であり、n=0-3、但し、前記ヘテロ環基は任意選択的にそれぞれ独立してC1-3アルキル基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つから複数の置換基により置換される。
【0163】
1つの実施形態において、前記一般式(I)の化合物は表1に示す化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0164】
1つの好ましい実施形態において、前記一般式(I)の化合物は
【0165】
【化25】
【0166】
又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形である。
【0167】
1つの実施形態において、前記胆道癌とは、胆管癌を指す。
【0168】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFRに媒介される胆管癌を指す。好ましい実施形態において、前記FGFRに媒介される胆管癌とは、FGFR1、FGFR2、FGFR3の何れか1つ又はそれらの任意の組合せにより媒介される胆管癌を指す。
【0169】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、非FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記非FGFR変異型胆管癌とは、非FGFR2変異型胆管癌を指す。
【0170】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異型胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記FGFR変異型胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異型胆管癌を指す。
【0171】
更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR融合、FGFR突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。その内、FGFR突然変異は、FGFR点突然変異及びFGFR挿入/欠失突然変異を含む。
【0172】
1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異、FGFR過剰発現の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2融合を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3突然変異を有する胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2 N549H、FGFR2 V564F、FGFR3 K650Eの何れか1つ又はそれらの任意の組合せを有する胆管癌を指す。
【0173】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR変異陽性はあるが、FGFR阻害剤に反応しない耐薬性のある胆管癌、又はFGFR阻害剤使用後耐薬性のある胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、FGFR2及び/又はFGFR3変異耐薬性を有する胆管癌を指す。
【0174】
もう1つの更なる実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌、肝門部胆管癌及び遠位胆管癌の何れか1つ又はそれらの任意の組合せを指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝門部胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、遠位胆管癌を指す。1つの好ましい実施形態において、前記胆管癌とは、肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2変異型肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、FGFR2融合を有する肝内胆管癌を指す。もう1つの好ましい実施形態において、前記肝内胆管癌とは、非FGFR変異型肝内胆管癌を指す。
【0175】
1つの実施形態において、前記胆管癌には、オーロラキナーゼに媒介される胆管癌、及びIL-6に媒介される異常なJAK-STATシグナル伝達経路によって引き起こされる胆管癌を含む、他のメカニズムに媒介される胆管癌も含まれる。
【0176】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形はまた、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体と共に、薬学的に許容可能な任意の薬物製剤を製造することができる。
【0177】
1つの実施形態において、前記薬物製剤は1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体を含むことができ、経口、胃腸外、直腸又は経肺投与などの投与方式で、このような治療が必要な患者又は受験者に投与されることができる。経口投与に用いられる場合、前記医薬組成物は錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤などの通常の固体製剤に製造されてもよく、経口溶液剤、経口懸濁剤、シロップ剤などの経口液体製剤に製造されてもよい。経口製剤に製造される場合、適当な充填剤、接着剤、崩壊剤、潤滑剤などを添加することができる。胃腸外投与に用いられる場合、前記医薬組成物は注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む注射剤に製造されることができる。注射剤に製造される場合、従来の製薬分野での通常方法により生産することができ、注射剤を調製する場合、付加剤を加えなくてもよく、薬物の性質に応じて適当な付加剤を加えてもよい。直腸投与に用いられる場合、前記医薬組成物は、坐剤などに製造されることができる。経肺投与に用いられる場合、前記医薬組成物は、吸入剤又は噴霧剤などに製造されることができる。
【0178】
1つの実施形態において、前記医薬組成物はまた、1つ又は複数の第2治療活性剤を含む。
【0179】
更なる実施形態において、前記第2治療活性剤は、代謝拮抗物質、増殖因子阻害剤、有糸分裂阻害剤、抗腫瘍ホルモン類、アルキル化剤類、金属プラチナ系、トポイソメラーゼ阻害剤、ホルモン剤、免疫調節剤、腫瘍抑制遺伝子、癌ワクチン、免疫チェックポイント阻害剤である。
【0180】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、併用投与により治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0181】
1つの実施形態において、前記一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形と第2治療活性剤とは、連続的、同時又は複合製剤調製の方式で治療が必要な患者又は受験者に投与される。
【0182】
更なる実施形態において、前記患者又は受験者とは、哺乳動物を指す。1つの好ましい実施形態において、前記患者又は受験者とは、ヒトを指す。
【0183】
3、定義
本発明に記載の「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素などであり、好ましくはフッ素と塩素である。
【0184】
本発明に記載の「ハロゲン化」とは、置換基の中の何れか1つの水素原子が1つ又は複数の同一又は異なるハロゲンにより置換されることである。「ハロゲン」は上記のように定義される。
【0185】
本発明に記載の「シアノ基」とは、-CN基である。
【0186】
本発明に記載の「アミノ基」とは、-NH2基である。
【0187】
本発明に記載の「C1-4アルキル基」とは、1~4個の炭素原子を有するヒドロカルビル部から1つの水素原子を除去して派生した直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などである。前記「C1-3アルキル基」とは、1~3個の炭素原子を有する上記アルキル基である。
【0188】
本発明に記載の「C3-6シクロアルキル基」とは、3~6個の炭素原子を有する単環シクロアルキル基、二環式シクロアルキル基系又は多環式シクロアルキル基系である。これらの基は、飽和であるが芳香族ではない。特段の断りがない限り、形成可能な単環と縮合環構造を含む。その実例は、シクロプロパン基、シクロブタン基、シクロペンタン基、シクロヘキサン基、ビシクロ[2.2.2]ヘキサン、ビシクロ[3.2.1]ヘキサンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0189】
本発明に記載の「5~11員ヘテロ環基」とは、5~11個の環炭素原子を有する非芳香族環状基であり、但し、少なくとも1つの環炭素原子が、O、S、Nから選ばれる1つ又は複数のヘテロ原子により置換され、好ましくは1~3個のヘテロ原子により置換され、同時に炭素原子、窒素原子と硫黄原子を含む環構成原子は酸化されることができる。
【0190】
前記「ヘテロ環基」とは、単環式ヘテロ環基、二環式ヘテロ環基系又は多環式ヘテロ環基系であり、飽和、一部飽和のヘテロ環基を含むが、アリール環を含まない。特段の断りがない限り、本発明に記載の「5~11員ヘテロ環基」は形成可能な単環と縮合環構造を含む。
【0191】
前記モノヘテロ環基は、5~7員ヘテロ環基、5~6員ヘテロ環基、5~6員酸素含有ヘテロ環基、5~6員窒素含有ヘテロ環基、5~6員飽和ヘテロ環基などであってもよい。本発明に記載の5~6員モノヘテロ環基の実例は、テトラヒドロフラン基、テトラヒドロピロリル基、テトラヒドロチエニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、1,2-オキサゾリジニル基、1,3-オキサゾリジニル基、1,2-チアゾリジニル基、1,3-チアゾリジニル基、テトラヒドロ-2H-ピラニル基、テトラヒドロ-2H-チオピラニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、1,4-ジオキサニル基、1,4-オキサチオラニル基、4,5-ジヒドロイソオキサゾリル基、4,5-ジヒドロオキサゾリル基、2,5-ジヒドロオキサゾリル基、2,3-ジヒドロオキサゾリル基、3,4-ジヒドロ-2H-ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-3H-ピラゾリル基、4,5-ジヒドロチアゾリル基、2,5-ジヒドロチアゾリル基、2H-ピラニル基、4H-ピラニル基、2H-チオピラニル基、4H-チオピラニル基、2,3,4,5-テトラヒドロピリジル基、1,2-イソオキサジニル基、1,4-イソオキサジニル基又は6H-1,3-オキサジニル基などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0192】
前記縮合ヘテロ環は、結合ヘテロ環基、スピロヘテロ環基、架橋ヘテロ環基を含み、飽和、一部飽和又は不飽和のものであってもよいが、芳香族ではない。特段の断りがない限り、本発明に記載の7~11員縮合ヘテロ環基は形成可能な結合、スピロ、架橋構造を含む。
【0193】
前記結合ヘテロ環基は、7~11員結合環基であってもよく、好ましくは7~11員飽和結合環基であり、その実例は、3,6-ジアザビシクロ[3.2.0]ヘプタン、3,8-ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン基、3,7-ジアザビシクロ[4.2.0]オクタン基、オクタヒドロピロロ[3,4-c]ピロール、オクタヒドロピロロ[3,4-b]ピロール、オクタヒドロピロロ[3,4-b][1,4]オキサジニル基、オクタヒドロ-1H-ピロロ[3,4-c]ピリジン、2,3-ジヒドロベンゾフラン-2-イル、2,3-ジヒドロベンゾフラニル-3-イル、ジヒドロインドール-1-イル、ジヒドロインドール-2-イル、ジヒドロインドール-3-イル、2,3-ジヒドロベンゾチエニル-2-イル、オクタヒドロ-1H-インドリル基、オクタヒドロベンゾフラニル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0194】
前記スピロヘテロ環基は、7~11員スピロヘテロ環基であってもよく、好ましくは7~11員飽和スピロヘテロ環基であり、その実例は、
【0195】
【化26】
【0196】
を含むが、これらに限定されるものではない。
【0197】
前記架橋ヘテロ環基は、7~11員架橋ヘテロ環基であってもよく、好ましくは7~11員飽和架橋ヘテロ環基であり、その実例は、
【0198】
【化27】
【0199】
を含むが、これらに限定されるものではない。
【0200】
本発明に記載の「薬学的に許容可能な塩」とは、薬用可能な酸と塩基の付加塩及び溶媒化物である。このような薬用可能な塩は、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸、亜硫酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硝酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、マレイン酸、ヨウ化水素酸、アルカン酸(例えば、酢酸、HOOC-(CH2)n-COOH(但し、nが0~4である))などの酸の塩を含む。このような薬用可能な塩はまた、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩などの塩基の塩を含む。当業者は、種々の無毒の薬用可能な付加塩を知っている。
【0201】
本発明に記載の全ての数値範囲は何れも当該範囲の両端点、当該範囲内の全ての整数及びこれら整数により形成されるサブ範囲を表す。例えば、「5~11員」は5、6、7、8、9、10、11員を含み、「5~6員」は5、6員を含み、「7~11員」は7、8、9、10、11員などを含む。
【0202】
置換基について、本発明に記載の「1つから複数」とは、置換基の数が置換される基の全ての化学的に置換可能な位置の数であってもよいことを示し、好ましくは1~6個であり、より好ましくは1~5個であり、更に好ましくは1~3個であり、特に好ましくは1~2個である。
【0203】
本発明に記載の「結晶形」は、結晶形を調製するための当技術分野における通常の方法によって、一般式(I)の化合物から調製されることができる。
【0204】
本発明に記載の一般式(I)の化合物の「立体異性体」とは、一般式(I)の化合物に不斉炭素原子が存在する場合、鏡像異性体が生成され、化合物に炭素-炭素二重結合又は環状構造が存在する場合、シス-トランス異性体が生成され、化合物にケトン又はオキシムが存在する場合、互変異性体が生成されるものである。一般式(I)化合物の鏡像異性体、非鏡像異性体、ラセミ異性体、シス-トランス異性体、互変異性体、幾何異性体、エピ異性体及びその混合物は、全て本発明の範囲に含まれる。
【0205】
本発明に記載の一般式(I)の化合物の調製は、WO2018108079A1の具体的な実施形態の項を参照されたい。
【0206】
本発明に記載の「治療有効量」とは、患者へ投与される時、少なくとも患者の病症の症状を緩和可能な前記化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、結晶形、及び/又は薬物製剤の量である。「治療有効量」を含む実際量は、複数の場合によって変わるが、複数の場合は、治療される特定の病症、病症の重症度、患者の体格と健康状況、及び投与経路を含むが、これらに限定されるものではない。熟練した医師は、医療分野における既知の方法によって適当な量を容易に決定することができる。
【0207】
本発明に記載の「哺乳動物」とは、乳腺を通して乳汁を分泌して幼若体を授乳する脊椎動物亜門哺乳綱に属する動物群を指す。それは人間と動物に分けることができる。動物群の哺乳動物の実例は、トラ、ヒョウ、オオカミ、シカ、キリン、ミンク、サル、オランウータン、バク、キツネ、ナマケモノ、クマ、コアラ、シロクマ、象、ジャコウウシ、サイ、マナティー、ライオン、レッサーパンダ、パンダ、イボイノシシ、アンテロープ、コアラ、オオヤマネコ、センザンコウ、アリクイ、カワウソ、イルカ、セイウチ、アザラシ、クジラ、カモノハシ、ハリネズミ、カンガルー、カバ、イタチ、アナグマ、タヌキ、馬、牛、羊、ラバ、ロバ、犬、ラット、猫、ウサギを含むが、これらに限定されるものではない。
【0208】
本発明に記載の「薬学的に許容可能な担体」は、固体担体と液体担体を含むが、これらに限定されるものではない。適当な固体担体は、セルロース、グルコース、乳糖、マンニトール、ステアリン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、ショ糖、デキストリン、タルク、澱粉、ペクチン、ゼラチン、トラントガム、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エステル、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、低融点ワックス、ココアバターなどを含むが、これらに限定されるものではない。適当な液体担体は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、グリセリド及びその混合物を含むが、これらに限定されるものではない。
【0209】
本発明に記載の「FGFR阻害剤」とは、市販されている、又は臨床研究中、又は前臨床研究中の小分子阻害剤薬物を指し、FGFRキナーゼを標的として癌の治療、特に胆管癌の治療において役割を果たすことが証明されている薬物である。例えば、Erdafitinib、BGJ-398、TAS-120、INCB-054828である。
【発明の効果】
【0210】
本発明の有益な効果
本発明の一般式(I)に示される化合物又はその薬学的に許容可能な塩、立体異性体、及び結晶形は、胆道癌に対して効果的な治療効果があり、特に胆管癌に対して顕著な治療作用を有する。研究によると、非FGFR変異型胆管癌、FGFR変異型胆管癌、様々なFGFR薬物耐性型胆管癌、及び様々な解剖学的部位の胆管癌に対して非常に優れた治療効果があることが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0211】
発明を実施するための形態
本発明の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下で本発明を更に詳細に説明する。無論、記載された実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力をせずに当業者によって得られる他の全ての実施例は、本発明の請求範囲に含まれるものとする。
【0212】
本発明に使用される略語及び英語表現は、以下の意味を有する。
【0213】
【表2】
【0214】
実験例1 本発明に係る化合物のFGFR野生型酵素に対する阻害活性試験
【0215】
試験物:本発明に係る化合物であって、その構造は表1の通りであり、調製はWO2018108079A1の具体的な実施形態の項に記載の通りである。
【0216】
試験方法
(1)化合物プレートの準備
化合物をDMSOに溶解し、最高濃度が500 μMである原液を調製した。DMSOで化合物原液を、最終濃度が500、150、50、15、5、1.5、0.5、0.15、0.05 μMになるように希釈し、化合物作動液(50×)とした。
【0217】
(2)実験手順
a)異なる反応系の調製
FGFR1(h)を8 mMのMOPS(pH 7.0)、0.2 mMのEDTA及び250 μMのKKKSPGEYVNIEFGに溶解した。
FGFR2(h)を8 mMのMOPS(pH 7.0)、0.2 mMのEDTA、2.5 mMのMnCl2及び0.1 mg/mLのpoly(Glu, Tyr)4:1に溶解した。
FGFR3(h)を8 mMのMOPS(pH 7.0)、0.2 mMのEDTA、10 mMのMnCl2及び0.1 mg/mLのpoly(Glu, Tyr)4:1に溶解した。
【0218】
b)酵素反応
10 mMの酢酸マグネシウムと10 μMの[γ-33P]-ATPを添加することによって反応を開始した。室温で40分間インキュベートした後、3%(v/v)リン酸溶液で反応を停止させた。10 μLの反応液を取り、P30ろ紙に滴下し、75 mMのリン酸溶液で3回洗浄し、毎回5分後乾燥させ、シンチレーション計数を行った。化合物溶液の代わりに2%(v/v)DMSOを陽性対照(Max)として使用し、化合物溶液の代わりに高濃度の陽性対照阻害剤(10 μMのスタウロスポリン)を陰性対照(Min)として使用した。
【0219】
試験結果
【0220】
【表3】
【0221】
表3の実験結果から分かるように、本発明に係る化合物はFGFR1-3を標的とすることができ、FGFR1-3に対して良好な阻害活性を有するため、本発明に係る化合物はFGFR1-3に媒介される疾患の治療に対して良好な臨床応用可能性がある。
【0222】
実験例2 本発明に係る化合物のFGFR野生型と変異型に対する阻害活性試験
【0223】
試験物:本発明に係る化合物であって、その構造は表1の通りであり、調製はWO2018108079A1の具体的な実施形態の項に記載の通りである。
【0224】
【表4】
【0225】
試験方法
(1)化合物プレートの準備
化合物をDMSOに溶解し、DMSOで3倍希釈して10個の濃度勾配の原液を得、これを384ウェルプレートシステムに加えて、10 μMの最終濃度から始まり、3倍勾配の濃度が低下する一連の10個の勾配の化合物濃度を得た。
【0226】
(2)実験手順
2×異なる酵素液を調製し、それらを384ウェルプレートに移し、異なる濃度の化合物と室温で10分間インキュベートした後、2×ビオチン標識チロシンキナーゼ基質/ATP混合液を加えて反応を活性化した。室温で50分間インキュベートした後、HTRF検出試薬と対応するキナーゼ抗体クリプテートを加え、室温で1時間インキュベートした後、Envision 2104多機能マイクロプレートリーダーを使用して615 nm(クリプテート)及び665 nm(HTRF検出試薬)の蛍光読み取り値を検出した。陽性化合物対照(PC)として化合物溶液の代わりに10 μM BIBF-1120を、溶媒陰性対照(VC)として化合物溶液の代わりに0.1%(v/v)DMSOを使用した。
【0227】
(3)データ処理
665/615 nmの蛍光比を計算し、酵素活性阻害率(%)を次式により計算した:
【0228】
【数1】
【0229】
化合物濃度別の阻害率の数値に基づいて、GraphPad 6.0を使用してIC50の数値をフィッティングした。
【0230】
試験結果
【0231】
【表5】
【0232】
表5の実験結果から分かるように、本発明に係る化合物はFGFR2とFGFR3野生型及び突然変異型の両方に対して有意な阻害効果を示すため、本発明に係る化合物はFGFR野生型及び突然変異型に媒介される疾患、例えば胆管癌の治療に対して良好な臨床応用可能性がある。
【0233】
実験例3 本発明に係る化合物を用いた胆管癌のオルガノイド実験
【0234】
試験物:本発明に係る化合物であって、その構造は表1の通りであり、調製はWO2018108079A1の具体的な実施形態の項に記載の通りである。
【0235】
オルガノイド情報:ヒト遠位胆管癌(dCC)、北京科途医学科技有限公司の試料バンクから提供され、コードKOBD-002
【0236】
【表6】
【0237】
試験方法
(1)化合物プレートの準備
化合物をDMSOに溶解し、3倍希釈して10個の濃度勾配の原液(1000×)を得、GAS-Ad-BD培地で100倍希釈して10×作動液を得た。
【0238】
(2)実験手順
腫瘍オルガノイドが継代できるようになったら、4℃でマトリゲルを溶かし、後で使用する。培養した腫瘍オルガノイドをパスツールピペットで収集し、トリプシン処理した腫瘍オルガノイドを加えて単細胞懸濁液を形成した。細胞数をカウントした後、GAS-Ad-BD培地で細胞濃度を8×104細胞/mLに調整し、細胞懸濁液2 mLを取り、後で使用するために氷上に置いた。細胞懸濁液とマトリゲルを混合してマトリゲル混合液を調製し、後で使用するために氷上に置き、50 μLの混合液を96ウェルプレートに加え、37℃で30分間インキュベートし、GAS-Ad-BD培地を加え、37℃で細胞インキュベーター内で2日間培養した後、腫瘍オルガノイドが形成され成長し始めるのを観察した。
【0239】
腫瘍オルガノイドが形成され成長し始めた後、10個の勾配濃度、当日に調製された10×作動液を10 μLずつ順番に加えた。37℃、5%二酸化炭素で96時間インキュベートした。各化合物の開始濃度は以下の通りであった:化合物29、10 μM、ゲムシタビン、40 μM、シスプラチン、60 μM、5-フルオロウラシル、30 μM。溶媒陰性対照群(DMSO、100%生存)及び陽性対照群(2.5 μM BEZ235、0%生存)を設定した。
インキュベーション後、70 μLのCellTiter-Glo(R)溶液を加え、説明書に従って操作してから蛍光値を測定した。
【0240】
(3)データ処理
生存率が50%の場合の対応する化合物濃度はGraphPad Prism 5ソフトウェアによって計算され、これは、これらの細胞におけるこの化合物のIC50値(絶対IC50値)であった。
【0241】
試験結果
【0242】
【表7】
【0243】
表7の実験結果から分かるように、本発明に係る化合物はKOBD-002遠位胆管癌オルガノイドに対して良好な阻害活性を有し、その阻害活性はゲムシタビン、シスプラチン及び5-フルオロウラシルよりも優れるため、本発明に係る化合物は、胆管癌、特に遠位胆管癌の治療に対して良好な臨床応用可能性がある。
【0244】
実験例4 HuPrime(登録商標)ヒト胆管癌CC6204皮下異種移植腫瘍モデルに対する本発明に係る化合物のインビボ薬効試験
【0245】
試験物:本発明に係る化合物であって、その構造は表1の通りであり、調製はWO2018108079A1の具体的な実施形態の項に記載の通りであり、ゲムシタビン塩酸塩は市販の物を購入した。
【0246】
腫瘍塊の発生源:CC6204は、胆管癌の女性患者から確立されたHuPrime(登録商標)異種移植モデルである。病理診断は、FGFR2-BICC1融合変異を伴う肝内胆管癌であった。
【0247】
動物:Balb/cヌードマウス、5~6週(接種時のマウス週齢)、雌。
【0248】
試験方法:
(1)担癌マウスの構築と群分け
HuPrime(登録商標)胆管癌異種移植モデルCC6204担癌マウスから腫瘍組織を採取し、直径2~3 mmの腫瘍塊に切断し、Balb/cヌードマウスの右前肩甲骨に皮下接種し、腫瘍の平均体積が133 mm3に達した時点で群分けして投与した。群分け方法:投与前に動物の体重を測定し、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積に従ってブロックデザインを使用して群分けし、各群に6匹のマウスを配置した。
【0249】
(2)投与レジメン
【0250】
【表8】
【0251】
(3)実験の観察指標
動物の健康状況と死亡状況を毎日モニターし、体重と腫瘍体積を週に2回測定し、最後の投与後に試料を収集した腫瘍体積の大きさに対する治療効果はTGI%で評価され、相対腫瘍抑制率TGI(%)はTGI=1-T/C(%)である。T/C(%)は、相対腫瘍増殖率であり、つまり、ある時点において対照群の相対腫瘍体積に対する治療群の相対腫瘍体積のパーセンテージ値である。TとCは、それぞれ特定の時点において治療群と対照群の相対腫瘍体積(RTV)である。
【0252】
計算公式:T/C(%)=TRTV/CRTV×100%(TRTV:治療群の平均RTV、CRTV:溶媒対照群の平均RTV、RTV=Vt/V0、V0は群分け時の動物の腫瘍体積であり、Vtは治療後の動物の腫瘍体積である)。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のガイドラインTGI≧58%によると、この薬物は効果的であると考えられる。
【0253】
試験結果
【0254】
【表9】
【0255】
【表10】
【0256】
表9及び表10の実験結果から分かるように、本発明に係る化合物は、HuPrime(登録商標)ヒト胆管癌CC6204皮下異種移植腫瘍モデルに対して顕著な阻害効果を有し、担癌動物の生存期間を効果的に延長し、臨床標準療法ゲムシタビンよりも有意に優れるため、本発明に係る化合物は、FGFR2変異型肝内胆管癌腫瘍の臨床治療に使用することができ、良好な臨床応用可能性がある。
【0257】
実験例5 HuPrime(登録商標)ヒト由来胆管癌CC6639皮下異種移植腫瘍モデルに対する本発明に係る化合物のインビボ薬効試験
【0258】
試験物:本発明に係る化合物であって、その構造は表1の通りであり、調製はWO2018108079A1の具体的な実施形態の項に記載の通りである。
【0259】
腫瘍塊の発生源:CC6639は、胆管癌の男性患者から確立されたHuPrime(登録商標)異種移植モデルである。病理診断は、FGFR2変異のない肝内胆管癌であった。
【0260】
動物:Balb/cヌードマウス、4~5週(接種時のマウス週齢)、雌。
【0261】
試験方法
(1)担癌マウスの構築と群分け
HuPrime(登録商標)胆管癌異種移植モデルCC6639担癌マウスから腫瘍組織を採取し、直径2~3 mmの腫瘍塊に切断し、Balb/cヌードマウスの右前肩甲骨に皮下接種し、腫瘍の平均体積が202 mm3に達した時点で群分けして投与した。群分け方法:投与前に動物の体重を測定し、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積に従ってブロックデザインを使用して群分けし、各群に5匹のマウスを配置した。
【0262】
(2)投与レジメンは表11に示される
【0263】
【表11】
【0264】
(3)実験の観察指標
動物の健康状況と死亡状況を毎日モニターし、体重と腫瘍体積を週に2回測定し、最後の投与後に試料を収集した腫瘍体積の大きさに対する治療効果はTGI%で評価され、相対腫瘍抑制率TGI(%)はTGI=1-T/C(%)である。T/C(%)は、相対腫瘍増殖率であり、つまり、ある時点において対照群の相対腫瘍体積に対する治療群の相対腫瘍体積のパーセンテージ値である。TとCは、それぞれ特定の時点において治療群と対照群の相対腫瘍体積(RTV)である。計算公式:T/C(%)=TRTV/CRTV×100%(TRTV:治療群の平均RTV、CRTV:溶媒対照群の平均RTV、RTV=Vt/V0、V0は群分け時の動物の腫瘍体積であり、Vtは治療後の動物の腫瘍体積である)。NIHのガイドラインTGI≧58%によると、この薬物は効果的であると考えられる。
【0265】
試験結果:
【0266】
【表12】
【0267】
表12の実験結果から分かるように、化合物29は、HuPrime(登録商標)ヒト胆管癌CC6639皮下異種移植腫瘍モデルに対して顕著な阻害効果を有するため、本発明に係る化合物は、非FGFR2変異型肝内胆管癌腫瘍の臨床治療に使用することができ、良好な臨床応用可能性がある。
【0268】
実験例6 ヒト肝門部胆管癌PDTX皮下異種移植腫瘍モデルに対する本発明に係る化合物のインビボ薬力学的試験
【0269】
試験物:本発明に係る化合物であって、その構造は表1の通りであり、調製はWO2018108079A1の具体的な実施形態の項に記載の通りである。
【0270】
腫瘍塊の発生源:このヒト由来肝門部胆管癌の腫瘍試料は女性患者から得た。
【0271】
動物:NCGマウス、5~8週、雄。
【0272】
試験方法:
(1)担癌マウスの構築と群分け
手術中に切除された腫瘍試料をP0世代としてマウスに接種し、薬効評価のためにP1世代として継代し続けた。マウスの右背に腫瘍塊を接種し、腫瘍の平均体積が100 mm3達した時点で群分けして投与した。群分け方法:投与前に動物の体重を測定し、腫瘍体積を測定した。腫瘍体積に従ってブロックデザインを使用して群分けし、各群に6匹のマウスを配置した。
【0273】
(2)表13の投与レジメンに従って投与した
【0274】
【表13】
【0275】
(3)実験の観察指標
動物の健康状況と死亡状況を毎日モニターし、体重と腫瘍体積を週に2回測定し、最後の投与後に試料を収集した腫瘍体積の大きさに対する治療効果はTGI%で評価され、相対腫瘍抑制率TGI(%)はTGI=1-T/C(%)である。T/C(%)は、相対腫瘍増殖率であり、つまり、ある時点において対照群の相対腫瘍体積に対する治療群の相対腫瘍体積のパーセンテージ値である。TとCは、それぞれ特定の時点において治療群と対照群の相対腫瘍体積(RTV)である。計算公式:T/C(%)=TRTV/CRTV×100%(TRTV:治療群の平均RTV、CRTV:溶媒対照群の平均RTV、RTV=Vt/V0、V0は群分け時の動物の腫瘍体積であり、Vtは治療後の動物の腫瘍体積である)。NIHのガイドラインTGI≧58%によると、この薬物は効果的であると考えられる。
【0276】
試験結果
【0277】
【表14】
【0278】
表14の実験結果から分かるように、化合物29は、ヒト肝門部胆管癌PDTX皮下異種移植腫瘍モデルに対して顕著な阻害効果を有し、臨床標準療法ゲムシタビン+シスプラチンよりも有意に優れるため、本発明に係る化合物は、肝門部胆管癌腫瘍の臨床治療に使用することができ、良好な臨床応用可能性がある。
【0279】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の精神及び原則の範囲内で行われる任意の修正、同等の置換、改善などは、本発明の請求範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】