(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】メチレンブルーを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 279/36 20060101AFI20230406BHJP
【FI】
C07D279/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552197
(86)(22)【出願日】2021-02-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 IB2021051604
(87)【国際公開番号】W WO2021171235
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】202021008602
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522340864
【氏名又は名称】ディシュマン・カーボゲン・アムシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Dishman Carbogen Amcis Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ヴャス,ジャンメジャイ アール
(72)【発明者】
【氏名】ドトレ,ヒマニ
(72)【発明者】
【氏名】シャー,デニシュ エイチ
(72)【発明者】
【氏名】パリク,クルナル
(57)【要約】
本開示は、式(I)の3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法を提供する。
当該方法は、有機溶媒の存在下、プロモータ、触媒およびブロモ化剤とともに、フェノチアジン(II)から、3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミドの湿潤クルード(III)を調製することと;3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミドから3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)を調製することと;3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミドから3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを調製することと、その後、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)を精製し、金属スカベンジャによって3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)から金属成分を除去することを含む。当該方法は、反応において、イオン交換カラムの追加の工程を排除して、99~99.5%の生成物の純度を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)を製造するための方法であって、当該方法は、以下の工程(a)~(d):
【化1】
(a) 有機溶媒の存在下、プロモータ、触媒およびブロモ化剤とともに、フェノチアジン(II)から、3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミドの湿潤クルード(III)を調製する工程;
(b) 3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミドから3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)を調製する工程;
(c) 3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミドから3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを調製する工程;
(d) 3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)を精製し、金属スカベンジャによって、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)から金属成分を除去する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
前記触媒が、金属触媒および三フッ化ホウ素-酢酸錯体である、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【請求項3】
前記プロモータが、p-トルエンスルホン酸(PTSA)である、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【請求項4】
試薬としてジメチルアミン(DMA)を用いる、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【請求項5】
前記ブロモ化剤が、臭素および1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインから選択されるが、これらに限定されない、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【請求項6】
前記有機溶媒が、酢酸エチル、メタノール、酢酸 イソプロピルアルコール、塩酸(HCl)、クロロホルム、ジクロロメタン、酢酸メチル、酢酸ブチルおよびそれらの混合物から選択されるが、これらに限定されない、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【請求項7】
前記金属スカベンジャが、ポリマー樹脂材料、シリカ・ベース・マイクロポア、シリシクル トリアミン、Quadrasil MP、Aliquat 336、AMPAで官能化されたシリカゲル(≧99%)、ビピリジン(ポリマー結合型)、システインで官能化されたシリカゲル、3-(ジエチレントリアミノ)プロピルで官能化されたシリカゲル、DL-ジチオトレイトール(ポリマー結合型)、DMTで官能化されたシリカゲル、DOTAで官能化されたシリカゲル、エチレンジアミン三酢酸アセトアミド(ポリマー結合型)、3-(エチレンジアミノ)プロピルで官能化されたシリカゲル、2-メルカプトエチルアミン(ポリマー結合型)、3-メルカプトプロピルで官能化されたシリカゲル、シリカゲル上での金属スカベンジャの混合物、N-プロピルジエタノールアミンで官能化されたシリカゲル(≧99%)またはQuadraPure(登録商標)AEA、QuadraPure(登録商標)AMPA(マクロ多孔性)、QuadraPure(登録商標)BDZ、QuadraPure(登録商標)BZA、QuadraPure(登録商標)EDA、QuadraPure(登録商標)IDA(マクロ多孔性)、QuadraPure(登録商標)MPA、QuadraPure(登録商標)TU(マクロ多孔性)、3-(1-チオウレイド)プロピル、四酢酸トリアミン(シリカ担持型)、四酢酸トリアミン・ナトリウム塩で官能化されたシリカゲル、四酢酸トリアミンで官能化されたシリカゲル、四酢酸トリアミン・ナトリウム塩(シリカ担持型)、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン(ポリマー結合型)、Biotage(登録商標)MP-TMT、ISOLUTE(登録商標)Si-TMT、ISOLUTE(登録商標)Si-チオール、ISOLUTE(登録商標)SCX-2、ISOLUTE(登録商標)Si-トリスアミン、ホスホンS SPM32から選択されるが、これらに限定されることはなく、<1ppm~10ppm、より好ましくは<1ppm~3ppmの範囲内である、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【請求項8】
有機不純物の割合が0.1~0.35%の範囲内である、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【請求項9】
純度の割合が、99~99.5%の範囲内である、請求項1に記載の3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)を製造(又は調製)する方法(又はプロセス)に関する。より具体的には、本発明は、以下に示す式(I)の3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)を高純度で製造(又は調製)する方法(又はプロセス)に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(メチルチオニニウム クロリド(methylthioninium chloride)、メチレンブルー、MTCとしても知られている)は、毛髪、革、セルロース繊維のためのフェノチアジン染料、酸化還元指示薬(又はレドックス・インジケータ)、一重項酸素発生のための光増感剤(又はフォトセンシタイザー)、抗酸化剤、固定された生体組織のための防腐性の染色剤、腎機能検査用の診断薬としてよく知られている。上記メチチオニニウム クロリド(Methythioninium Chloride)(MTC)(メチレンブルーとしても知られている)は、低分子量(319.86)で水溶性の三環式の有機化合物である。
【0004】
メチレンブルーは、様々な分野(例えば、生物学および化学の分野)において、多くの用途を有している。メチレンブルーは、室温では、固体で、無臭、暗緑色の粉末のように見えるが、水に溶解すると、青色の溶液を生成する。メチレンブルーは、メチルブルー(別の組織学的な染色剤である)、ニュー・メチレンブルー、メチルバイオレット(pH指示薬としてよく使用されている)と混同しないように注意しなければならない。
【0005】
メチレンブルーは、頻繁に処方される尿路鎮痛薬/抗感染症薬/鎮けい薬の成分であり、「プロセド(Prosed)」(さらに、サリチル酸フェニル、安息香酸、硫酸ヒヨスチアミン、メテナミン(別名ヘキサメチレンテトラミンであり、「メタナミン」と混同しないように留意すべきである)を含む配合薬)として知られている。
【0006】
また、メチレンブルーは、フェノチアジン染料および酸化還元指示薬としてよく知られているものであり、酸化還元メディエーターとして、ナノポーラス材料におけるインターカレーターとして、生物物理学的なシステムの光プローブとしても使用されている。例えば、Colour Index (Vol.4, 3rd edition, 1971)、Lillieら、1979、および、そこで引用されている文献を参照のこと。現在、メチレンブルーは、メトヘモグロビン血症(血液が体内の必要な場所に酸素を送れなくなったときに起こる症状)を治療するために用いられている。
【0007】
また、メチレンブルーは、医療用の染料(例えば、手術前または手術中の身体の特定部位を染色する)、診断薬(例えば、尿中に存在する特定の化合物を検出するための指示染料として)、マイルドな尿路消毒薬、粘膜表面の刺激剤、腎臓結石の治療および予防、メラノーマの診断および治療に使用されている。
【0008】
メチレンブルーは、1877年のドイツ国の特許(Badische Anilin- und Soda- Fabrik, 1877)に初めて記載されたものである。ここでは、ジメチルアニリンのニトロシル化(又はニトロシレーション)、その後の還元によるN,N-ジメチル-1,4-ジアミノベンゼンの形成、その後の硫化水素(H2S)および塩化鉄(III)(FeCl3)の存在下での酸化的カップリングによってメチレンブルーを合成している。従って、この特許では、より多くの金属イオン使用しており、それによって、製品中の金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)が増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(従来技術およびその欠点)
カナダ国の特許出願番号CA2579169Cは、化学合成および精製の分野に関し、より具体的には、特定の3,7-ジアミノ-フェノチアジン-5-イウム化合物(メチチオニニウム クロリド(Methythioninium Chloride)(MTC)(別名メチレンブルー)を含む)を合成および精製する方法に関する。この方法は、ニトロシル化(又はニトロシレーション);ニトロシル還元チオスルホン酸形成;酸化的カップリング;Cr(VI)還元;双性イオン中間体の単離および精製;閉環;クロリド塩形成の工程(又はステップ)と、スルフィド処理;ジメチルジチオカルバメート処理;カーボネート処理;エチレンジアミン四酢酸処理(EDTAT);有機抽出および再結晶のうちに1つの工程(又はステップ)を含んで成る。また、この発明は、得られる化合物、それらを含む組成物(例えば、錠剤、カプセル)、ならびに病原体の不活性化方法、医学的な処置および診断の方法等(例えば、タウオパチー、アルツハイマー病(AD)、皮膚癌、メラノーマ、ウイルス性疾患、細菌性疾患または原生動物性疾患)における使用に関する。
ここで、本発明は、最終的な式(I)において、金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)が低減した高純度のメチレンブルーの製造(又は調製)のための改良された方法(又はプロセス)を提供する。
上記の特許出願では、高純度の改良された方法を提供することに失敗している(又は開示していない)。さらに、また、3,7-ジアミノ-フェノチアジン-5-イウム化合物において、金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)を低減させることにも失敗している(又は開示していない)。
【0010】
欧州特許出願番号EP3375777A1は、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミドまたはクロリドを製造(又は調製)するための方法(又はプロセス);3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミドを3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドに変換する方法;ならびに、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドの塩酸水溶液からの結晶化による精製によって以下に示す式Iの薬学的に許容可能な3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(メチルチオニニウム クロリド(methylthioninium chloride)、メチレンブルー、MTC)をもたらすことに関する。
【0011】
【0012】
しかし、上記の特許出願は、金属触媒の存在下、フェノチアジンを用いて、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミドまたはクロリドを製造(又は調製)する方法(又はプロセス)を開示している。上記の特許出願では、精製のために、イオン交換カラムの工程(又はステップ)が追加されている。それによって、処理工程の数が増加し、プロセスのコスト増につながり、煩雑になっている。
対して、本発明は、メチレンブルーの製造(又は調製)のために改良された方法(又はプロセス)を提供する。当該方法によって、イオン交換カラムの追加の工程(又はステップ)を排除する。それによって、プロセスのコストを削減している。
したがって、上記の出願では、メチレンブルーの高純度での製造(又は調製)のために改良された方法(又はプロセス)を提供することに失敗している(又は開示していない)。
【0013】
米国特許出願番号US20090291943A1は、ジアミノフェノチアジニウム系の化合物を製造(又は調製)するための方法(又はプロセス)に関する。この方法は、誘導体を精製するための工程(又はステップ)を含むものである。
対して、本発明は、メチレンブルーの高純度および高収率での製造(又は調製)のために改良された方法(又はプロセス)を提供し、最終的な式Iにおいて、金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)を低減させるものである。
また、上記の特許出願は、メチレンブルーに存在する金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)を減少させることに失敗している(又は開示していない)。
対して、本発明では、メチレンブルーにおいて、金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)の低減を提供する。
【0014】
米国特許出願番号US20200010438A1は、3,7-ビス(ジメチルアミノ)フェノチアジン-5-イルイウム ヨージド(又はアイオダイド)を製造(又は調製)するための方法に関する。当該方法では、フェノチアジンを出発原料として用いている。当該方法は、以下の工程(又はステップ)(a)および(b)を含む。
(a)フェノチアジンを二ヨウ素(又はジイオジン)で処理すること
(b)上記工程(a)から直接的に得られる反応媒体をジメチルアミンで処理すること
しかし、上記の特許出願では、異なる試薬を用いることで異なるプロセスを開示している。また、上記の特許出願では、メチレンブルーにおいて、金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)を低減させることに失敗している(又は開示していない)。
したがって、上記の出願は、メチレンブルーの高純度での製造(又は調製)のために改良された方法(又はプロセス)を提供することに失敗している(又は開示していない)。
【0015】
従って、メチレンブルーを高収率かつ高純度で製造(又は調製)するために改良された方法(又はプロセス)の必要性が満たされていない。
【0016】
(従来技術の欠点)
以下に列挙する通り、従来のメチレンブルーの製法(又はプロセス)には、多くのデメリット(又は欠点)がある。
1. 従来の方法(又はプロセス)では、メチレンブルーを高純度で製造(又は調製)するために改良された方法(又はプロセス)を提供することができない。
2. 従来の方法(又はプロセス)のほとんどにおいて、メチレンブルーに含まれる金属の割合(%)が高い。
3. 従来の方法(又はプロセス)のほとんどでは、メチレンブルーを製造(又は調製)するために、イオン交換カラムの追加の工程(又はステップ)を使用している。
4. 既存の従来技術の方法(又はプロセス)のほとんどでは、メチレンブルーに含まれる不純物の割合(%)が高いため、効率が低下し、製品のコストが増加する。
【0017】
(発明の目的)
本発明の主たる目的は、純度の割合(%)が高いメチレンブルーを製造(又は調製)するための方法(又はプロセス)を提供することである。
本発明の別の目的は、医薬グレードを達成するメチレンブルーの製造(又は調製)のための方法(又はプロセス)を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、方法(又はプロセス)において、金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)の割合(%)が小さいメチレンブルーの製造(又は調製)のための方法(又はプロセス)を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、反応において、イオン交換カラムの追加の工程(又はステップ)を排除する、メチレンブルーの製造(又は調製)のための方法(又はプロセス)を提供することである。
本発明のさらに別の目的は、有機および無機の不純物の割合(%)を低減し、それによって、プロセスの効率を高め、プロセスのコストを低減する、メチレンブルーを製造(又は調製)するための方法(又はプロセス)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の要旨)
3,7-ビス(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)を製造(又は調製)するための方法(又はプロセス)
当該プロセスは、以下の工程(又はステップ)を含む。
【0019】
【0020】
(a) 有機溶媒の存在下、プロモータ(又は促進剤)、触媒およびブロモ化剤とともに、フェノチアジン(II)から、3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミド(III)を調製する工程;
(b) 3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミドから3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)を調製する工程;
(c) 3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミドから3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリドを調製すること;
(d) 生成物を精製し、金属スカベンジャによって、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)から金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)を除去すること。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明は、メチレンブルーを高純度で製造(又は調製)するための方法(又はプロセス)を提供する。メチレンブルーの当該方法によって、反応では、イオン交換カラムの追加の工程(又はステップ)が排除される。本発明によって、有機および無機の不純物の割合(%)が減少し、それによって、効率が向上し、当該プロセスのコストが低下する。メチレンブルーの当該プロセスは、フェノチアジン(II)からなり、このフェノチアジン(II)が、プロモータ(又は促進剤)であるp-トルエンスルホン酸(PTSA)と反応する。
【0022】
【0023】
触媒は、金属触媒および三フッ化ホウ素-酢酸錯体から選択されるが、これらに限定されるものではない。ここで、三フッ化ホウ素-酢酸錯体は、水を含む。例えば、三フッ化ホウ素・水和物(BF3・H2O)。三フッ化ホウ素-酢酸と、アルコール、エーテル、カルボン酸エステルまたはニトリルとの錯体は、フッ化ホウ素-酢酸エチル錯体(C4H8O2・BF3)、フッ化ホウ素-メチルベンゾエート錯体、フッ化ホウ素-メタノール錯体(BF3-CH3OH)、フッ化ホウ素-エタノール錯体(BF・C2H5OH)、フッ化ホウ素-グリコール錯体(BF3-(CHOH)2)、三フッ化ホウ素-エーテラート(C4H10BF3O)、三フッ化ホウ素-メチルアミルエーテル錯体(BF3・C6H14O)、三フッ化ホウ素-アニソール錯体(BF3・C6H5OCH3)、三フッ化ホウ素-テトラヒドロフラン錯体(BF3-C4H8O)、三フッ化ホウ素-ジオキサン錯体(BF3-C4H8O2)、三フッ化ホウ素-アセトニトリル錯体(BF3-CHCN)、三フッ化ホウ素-ベンゾニトリル錯体(BF3・CH5CN)、o,m,p-トルニトリル(toluonitrile)との三フッ化ホウ素錯体から選択されるが、これらに限定されるものではない。
上記の金属触媒は、周期表のVIII族金属(例えば、鉄、コバルト、ニッケル)から選択されるが、これらに限定されるものではない。
他の実施形態において、上記の金属触媒は、周期表のIB族金属(例えば、銅および/または銀)から選択されるが、これらに限定されるものではない。
他の実施形態において、上記の金属触媒は、周期表のIIIB族およびIIIA族の金属から選択される。
【0024】
ブロモ化のための化合物(又はブロモ化の化合物又はブロモ化剤)は、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインおよび臭素から選択されるが、これらに限定されるものではない。ジメチルアミン(Diemethylamine)(DMA)および有機溶媒を加えることによって、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)を調製する。有機溶媒は、極性溶媒および非極性溶媒から選択され、酢酸エチル、メタノール、酢酸 イソプロピルアルコール、水性の塩酸(又は塩酸水溶液)、塩酸(HCl)、クロロホルムならびに極性のプロトン性および非プロトン性の溶媒、例えば、ジクロロメタン、酢酸メチル、酢酸ブチルおよびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
金属スカベンジャによって、生成物から金属不純物を排除する。
金属スカベンジャは、ポリマー樹脂材料、シリカ・ベース・マイクロポア、シリシクル トリアミン(silicycle triamine)、Quadrasil MP、Aliquat 336、AMPAで官能化されたシリカゲル(≧99%)、ビピリジン(ポリマー結合型)(100~200メッシュ)、システインで官能化されたシリカゲル、3-(ジエチレントリアミノ)プロピルで官能化されたシリカゲル、DL-ジチオトレイトール(ポリマー結合型)、DMTで官能化されたシリカゲル、DOTAで官能化されたシリカゲル、エチレンジアミン三酢酸アセトアミド(ポリマー結合型)、3-(エチレンジアミノ)プロピルで官能化されたシリカゲル、2-メルカプトエチルアミン(ポリマー結合型)、3-メルカプトプロピルで官能化されたシリカゲル、シリカゲル上での金属スカベンジャの混合物、N-プロピルジエタノールアミンで官能化されたシリカゲル(≧99%)またはQuadraPure(登録商標)AEA、QuadraPure(登録商標)AMPA(マクロ多孔性)、QuadraPure(登録商標)BDZ、QuadraPure(登録商標)BZA、QuadraPure(登録商標)EDA、QuadraPure(登録商標)IDA(マクロ多孔性)、QuadraPure(登録商標)MPA、QuadraPure(登録商標)TU(マクロ多孔性)、3-(1-チオウレイド)プロピル、四酢酸トリアミン(シリカ担持型)、四酢酸トリアミン・ナトリウム塩で官能化されたシリカゲル、四酢酸トリアミンで官能化されたシリカゲル、四酢酸トリアミン・ナトリウム塩(シリカ担持型)、N,N,N’-トリメチルエチレンジアミン(ポリマー結合型)、Biotage(登録商標)MP-TMTまたはISOLUTE(登録商標)Si-TMTまたはISOLUTE(登録商標)Si-チオールまたはISOLUTE(登録商標)SCX-2またはISOLUTE(登録商標)Si-トリスアミンまたはホスホンSPM32から選択されるが、これらに限定されるものではない。上記の金属スカベンジャによって、メチレンブルーにおいて、<1ppm~10ppm、より好ましくは<1ppm~3ppmの範囲内に金属成分(又は金属含有量又は金属コンテント)が減少する。
【0026】
好ましい実施形態では、メチレンブルーを製造(又は調製)するための本発明の改善された方法(又はプロセス)は、以下の工程(又はステップ)を含むものである。
【0027】
工程(a)
フェノチアジン(II)からの3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミド(すなわち、式(III))の調製
スキーム1に示す通り、有機溶媒の存在下、P-トルエンスルホン酸(PTSA)、触媒およびブロモ化剤とともに、窒素ガス雰囲気下、丸底フラスコにフェノチアジン(II)を充填する。
ここで、触媒は、金属触媒および三フッ化ホウ素-酢酸錯体から選択されるが、これらに限定されるものではない。
ブロモ化のための化合物(又はブロモ化の化合物又はブロモ化剤)は、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインおよび臭素から選択されるが、これらに限定されるものではない。
有機溶媒は、酢酸エチル、メタノール、酢酸およびクロロホルムから選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
【0029】
-20℃から-30℃の温度で反応(物)を撹拌して、3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミド(III)を調製する。
【0030】
【0031】
工程(b)
3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)の調製
上記の工程(a)(又はステップ(a))で得られる生成物(3,7-ジブロモフェノチアジン-5-イウム ブロミド(III))に、-25℃から-30℃で反応塊を撹拌しながら、40%のジメチルアミン(DMA)溶液を有機溶媒の存在下で添加して、上記表題の生成物(3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV))を得る。
【0032】
【0033】
工程(c)
3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)の調製
上記の工程(b)(又はステップ(b))で得られる3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)を有機溶媒に溶解し、続いて、0.5MのHCl溶液を添加する。40℃~80℃の温度で2~3時間にわたって反応(物)を還流させた。金属スカベンジャを50℃の温度で反応混合物に添加し、15℃~20℃の温度で放置する。生成物を冷たい有機溶媒で洗浄し、乾燥させて、上記表題の生成物(3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I))を得る。
【0034】
【0035】
本発明は、メチレンブルーを製造(又は調製)するための方法(又はプロセス)を提供する。当該方法は、反応において、イオン交換カラムの追加の工程を排除し、99~99.5%の純度を提供する。
【実施例】
【0036】
実施例
実施例1(A)
フェノチアジン(II)(100g)を窒素ガス雰囲気下で丸底フラスコに充填した。続いて、室温で酢酸エチルを添加した。この混合物に、三フッ化ホウ素-酢酸錯体(19g)を添加した。温度を-20℃に下げた。この混合物にPTSA・H2O(p-トルエンスルホン酸)(6gm)を添加した。続いて、臭素溶液(64ml)を滴加した。-20℃から-25℃で2時間にわたって反応を維持した。この混合物にメタノールを添加した。続いて、40%の水性DMA(450g)溶液を滴加した。反応塊を酢酸エチル(200ml)溶液で洗浄して、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)をクルードとして得た。
【0037】
実施例1(B)
3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)の調製
上記のようにして得られる3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(137g)を窒素ガス雰囲気下で別の丸底フラスコに入れる。この混合物にメタノール(520ml)を添加した。1時間にわたって、一定で撹拌しながら、50~55℃で反応を維持した。このようにして得られた生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥させた。この塊に、メタノールと0.5MのHCl溶液との混合液を添加し、一定で撹拌しながら、1時間にわたって、50~55℃で反応を加熱した。反応を冷却し、続いて、濾過、そしてメタノールで洗浄して、上記の表題の生成物を得た。
【0038】
実施例2(A)
窒素ガス雰囲気下で丸底フラスコにフェノチアジン(II)(7.5kg)を充填した。続いて、室温で酢酸エチルを添加した。この混合物に塩化アルミニウム(22.5gm)を添加した。温度を-25℃に下げ、続いて、臭素溶液(15kg)を滴加した。-20℃から-25℃で2時間かけて反応を維持した。この混合物にメタノールを添加した。続いて、40%の水性DMA溶液を滴加した。反応塊を酢酸エチル(200ml)溶液で洗浄して、3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(IV)をクルードとして得た。
【0039】
実施例2(B)
3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム クロリド(I)の調製
上記のようにして得られる3,7-ビス-(ジメチルアミノ)-フェノチアジン-5-イウム ブロミド(6.35g)を窒素ガス雰囲気下で別の丸底フラスコに入れる。この混合物にメタノール(3.8l)を添加した。1時間にわたって、一定で撹拌しながら、50~55℃で反応を維持した。このようにして得られた生成物を濾過し、メタノールで洗浄し、乾燥させた。この塊に、メタノールと0.5MのHCl溶液との混合液を添加した。一定で撹拌しながら、1時間にわたって、50~55℃で反応(物)を加熱した。反応(物)を冷却し、続いて、濾過、そしてメタノールで洗浄して、上記の表題の生成物を得た。
【0040】
実施例3(A)
メチレンブルーの精製
上記の方法で得られるメチレンブルー(75g)を窒素ガス雰囲気下で丸底フラスコに充填した。続いて、室温でメタノール(137ml)を添加した。この混合物に、0.5MのHCl溶液(548ml)を添加した。一定で撹拌しながら、50~55℃で反応を加熱した。この混合物に、シリシクルトリアミン(silicycle triamine)(2.0gm)を添加した。1時間にわたって、一定で撹拌しながら、55~60℃で反応を維持した。このようにして得られた生成物を濾過し、そしてメタノールで洗浄し、乾燥させて、純粋な生成物(I)を得た。
【0041】
実施例3(B)
上記の方法で得られるメチレンブルー(75g)を窒素ガス雰囲気下で丸底フラスコに充填した。続いて、0.2MのHCl溶液(1100ml)を室温で添加した。一定で撹拌しながら、50~55℃で反応を加熱した。この混合物に、Quadrasil MP(2.0g)を添加した。1時間にわたって、一定で撹拌しながら、55~60℃で反応を維持した。このようにして得られる生成物を濾過し、そしてメタノールで洗浄し、乾燥させて、純粋な生成物(I)を得た。
【0042】
実施例3(C)
上記の方法で得られるメチレンブルー(50g)を窒素ガス雰囲気下で丸底フラスコに注入し、続いて、0.2MのHCl溶液(733ml)を室温で添加する。一定で撹拌しながら、50~55℃で反応(物)を加熱した。この混合物にAliquat 336(0.25g)を添加した。1時間にわたって、一定で撹拌しながら、55~60℃で反応を維持した。このようにして得られた生成物を濾過し、そしてメタノールで洗浄し、乾燥させて、純粋な生成物(I)を得た。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
本発明の例示は、HPLCによって行われている。ここでは、メチレンブルーについて、98~99.7%の純度が得られている。金属成分は、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)の装置によって検出する。
【国際調査報告】