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特表2023-515671免疫療法に対する腫瘍細胞の感作のための方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】免疫療法に対する腫瘍細胞の感作のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230406BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230406BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230406BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230406BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P35/00
A61K48/00
A61K31/7105
A61K31/7088
A61K31/713
A61K38/19
A61K39/395 U
A61K38/43
A61P37/04
C12N15/09 110
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552550
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 US2021020697
(87)【国際公開番号】W WO2021178556
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/985,004
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤング, タラ
(72)【発明者】
【氏名】ダリー, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】サーストン, ギャビン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA44
4C084DA25
4C084DC01
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C086ZB26
(57)【要約】
オートファジーを阻害する薬剤を対象に投与することによるがんの治療または予防(例えば、がんを有する対象の腫瘍を標的とすることによる)に関連する方法及び組成物が、本明細書で提供される。特定の態様において、がん細胞を接触させるかまたはオートファジーを阻害する薬剤を投与することにより、がん細胞を腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷に対して感作させる方法に関連する組成物の方法が、本明細書で提供される。本明細書では、オートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害することによって、T細胞殺傷(例えば、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)媒介殺傷)に対するがん細胞の感受性を増加させるための方法及び組成物が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷に対してがん細胞を感作させる方法であって、前記方法は、前記がん細胞のオートファジーを阻害する薬剤と前記がん細胞を接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記薬剤は、オートファジー遺伝子の発現または活性を阻害する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オートファジー遺伝子は、ATG12、WIPI2、RB1CC1、PIK3C3、ATG9A、ATG2A、ATG5、ATG14、EI24、NRBF2、ATG13、TAX1BP1及びATG10から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変し、前記少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変することにより前記オートファジー遺伝子の発現または活性が低下する、請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記オートファジー遺伝子の前記改変は、欠失、挿入、置換またはこれらの組み合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なガイドRNAを含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内の二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象を提供するように構成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子の開始コドンを含むか、またはそれに近接している、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガイドRNA標的配列は、前記開始コドンの約1000、500、400、300、200、100、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5ヌクレオチド内である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガイドRNAは、前記DNAターゲティングセグメント及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含むクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)RNA(crRNA)を含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ガイドRNAは、crRNA及びtracrRNAが互いにハイブリダイズする別個の分子であるモジュラーガイドRNAである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物は、Casタンパク質または前記Casタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記Casタンパク質は、転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記Cas9分子は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なガイドRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子の開始コドンを含むか、またはそれに近接している、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ガイドRNA標的配列は、前記開始コドンの約1000、500、400、300、200、100、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5ヌクレオチド内である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子のエクソン1またはエクソン2にある、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ガイドRNAは、前記DNAターゲティングセグメント及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含むクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)RNA(crRNA)を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ガイドRNAは、前記crRNA及び前記tracrRNAが互いにハイブリダイズする別個の分子であるモジュラーガイドRNAである、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物は、Casタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を更に含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質または転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記Cas9タンパク質は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記薬剤は、TALENヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記薬剤は、RNAまたはタンパク質の活性を阻害する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記薬剤は、干渉核酸である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記干渉核酸は、siRNA、shRNA、miRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記薬剤は、PI3キナーゼ阻害剤、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3)阻害剤、Unc-51様キナーゼ1(ULK1)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質18(Vps18)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質34(Vps34)阻害剤、ユビキチン特異的ペプチダーゼ(USP10またはUSP13)阻害剤、チオキサントンベースのオートファジー阻害剤、ATG4阻害剤、オートフィニブ、3-メチルアデニン、ワートマニン、塩化アンモニウム、バフィロマイシンA1、エフロルニチン、ロイペプチン、ベツリン酸、CA074、コルヒチン、タプシガルギン、バキュオリン-1、ビンブラスチン、デスメチルクロミプラミン、LY294002、PT210、GSK-2126458、スパウチン-1、SAR405、化合物31、VPS34-IN1、PIK-III、化合物6、MRT68921、SBI-0206965、ペプスタチンA、E64d、クロミプラミン、ルカントン、クロロキン、ヒドロキシクロルキン、モネンシン、Lys05、ARN5187、化合物30、MPT0L145、ROC325、ベルテポルフィン、NSC185058及びNSC377071から選択される小分子オートファジー阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記がん細胞は、肺癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、子宮頸癌細胞、膵臓癌細胞、腎癌細胞、胃癌細胞、胃腸癌細胞、肝臓癌細胞、骨癌細胞、血液癌細胞、神経組織癌細胞、黒色腫細胞、甲状腺癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、前立腺癌細胞、子宮頸癌細胞、膣癌細胞、または膀胱癌細胞である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記がん細胞は、乳癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記がん細胞は、結腸癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記がん細胞は、肺癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記がん細胞は、卵巣癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項37】
前記がん細胞は、子宮頸癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項38】
前記がん細胞は、膀胱癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項39】
前記がん細胞は、腎臓癌細胞である、請求項32に記載の方法。
【請求項40】
前記がん細胞は対象内にあり、前記がん細胞のオートファジーを阻害する前記薬剤は、前記対象に投与される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象は、ヒト対象である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷に対して対象のがん細胞を感作させる方法であって、前記方法は、前記がん細胞のオートファジーを阻害する薬剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
対象のがん細胞の腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷を増加させる方法であって、前記方法は、前記がん細胞のオートファジーを阻害する少なくとも1つの薬剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項44】
前記薬剤は、オートファジー遺伝子の発現または活性を阻害する、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記オートファジー遺伝子は、ATG12、WIPI2、RB1CC1、PIK3C3、ATG9A、ATG2A、ATG5、ATG14、EI24、NRBF2、ATG13、TAX1BP1及びATG10から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変し、前記少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変することにより前記オートファジー遺伝子の発現または活性が低下する、請求項44または請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記オートファジー遺伝子の前記改変は、欠失、挿入、置換、これらの組み合わせ、またはCasタンパク質の結合を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なガイドRNA(gRNA)を含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内の二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象を提供するように構成される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子の開始コドンを含むか、またはそれに近接している、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
前記ガイドRNA標的配列は、前記開始コドンの約1000、500、400、300、200、100、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5ヌクレオチド内である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子のエクソン1またはエクソン2にある、請求項48または49に記載の方法。
【請求項53】
前記ガイドRNAは、前記DNAターゲティングセグメント及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含むクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)RNA(crRNA)を含む、請求項48~52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記ガイドRNAは、前記crRNA及び前記tracrRNAが互いにハイブリダイズする別個の分子であるモジュラーガイドRNAである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記組成物は、Casタンパク質または前記Casタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、請求項48~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質または転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記Cas9分子は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なガイドRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項42~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子の開始コドンを含むか、またはそれに近接している、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記ガイドRNA標的配列は、前記開始コドンの約1000、500、400、300、200、100、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5ヌクレオチド内である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子のエクソン1またはエクソン2にある、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記ガイドRNAは、前記DNAターゲティングセグメント及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含むクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)RNA(crRNA)を含む、請求項59~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記ガイドRNAは、前記crRNA及び前記tracrRNAが互いにハイブリダイズする別個の分子であるモジュラーガイドRNAである、請求項3に記載の方法。
【請求項65】
前記組成物は、Casタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を更に含む、請求項63または64に記載の方法。
【請求項66】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質または転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項64~66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
前記Cas9タンパク質は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記薬剤は、TALENヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項42~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記薬剤は、RNAまたはタンパク質の活性を阻害する、請求項42~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
前記薬剤は、干渉核酸である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記干渉核酸は、siRNA、shRNA、miRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記薬剤は、PI3キナーゼ阻害剤、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3)阻害剤、Unc-51様キナーゼ1(ULK1)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質18(Vps18)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質34(Vps34)阻害剤、ユビキチン特異的ペプチダーゼ(USP10またはUSP13)阻害剤、チオキサントンベースのオートファジー阻害剤、ATG4阻害剤、オートフィニブ、3-メチルアデニン、ワートマニン、塩化アンモニウム、バフィロマイシンA1、エフロルニチン、ロイペプチン、ベツリン酸、CA074、コルヒチン、タプシガルギン、バキュオリン-1、ビンブラスチン、デスメチルクロミプラミン、LY294002、PT210、GSK-2126458、スパウチン-1、SAR405、化合物31、VPS34-IN1、PIK-III、化合物6、MRT68921、SBI-0206965、ペプスタチンA、E64d、クロミプラミン、ルカントン、クロロキン、ヒドロキシクロルキン、モネンシン、Lys05、ARN5187、化合物30、MPT0L145、ROC325、ベルテポルフィン、NSC185058及びNSC377071から選択される小分子オートファジー阻害剤である、請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項74】
前記がん細胞は、肺癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、子宮頸癌細胞、膵臓癌細胞、腎癌細胞、胃癌細胞、胃腸癌細胞、肝臓癌細胞、骨癌細胞、血液癌細胞、神経組織癌細胞、黒色腫細胞、甲状腺癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、前立腺癌細胞、子宮頸癌細胞、膣癌細胞、または膀胱癌細胞である、請求項42~73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
前記がん細胞は、乳癌細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記がん細胞は、結腸癌細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記がん細胞は、肺癌細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項78】
前記がん細胞は、卵巣癌細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項79】
前記がん細胞は、子宮頸癌細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項80】
前記がん細胞は、膀胱癌細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項81】
前記がん細胞は、腎臓癌細胞である、請求項74に記載の方法。
【請求項82】
腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷に対して対象の腫瘍を感作させる方法であって、前記方法は、前記腫瘍のオートファジーを阻害する薬剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項83】
対象の腫瘍の腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷を増加させる方法であって、前記方法は、前記腫瘍のオートファジーを阻害する少なくとも1つの薬剤を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項84】
前記薬剤は、オートファジー遺伝子の発現または活性を阻害する、請求項82または請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記オートファジー遺伝子は、ATG12、WIPI2、RB1CC1、PIK3C3、ATG9A、ATG2A、ATG5、ATG14、EI24、NRBF2、ATG13、TAX1BP1及びATG10から選択される、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変し、前記少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変することにより前記オートファジー遺伝子の発現または活性が低下する、請求項84または請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記オートファジー遺伝子の前記改変は、欠失、挿入、置換、これらの組み合わせ、またはCasタンパク質の結合を含む、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なガイドRNAを含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項82~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
前記gRNAは、前記オートファジー遺伝子内の二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象を提供するように構成される、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子の開始コドンを含むか、またはそれに近接している、請求項88または89に記載の方法。
【請求項91】
前記ガイドRNA標的配列は、前記開始コドンの約1000、500、400、300、200、100、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5ヌクレオチド内である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子のエクソン1またはエクソン2にある、請求項88または89に記載の方法。
【請求項93】
前記ガイドRNAは、前記DNAターゲティングセグメント及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含むクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)RNA(crRNA)を含む、請求項88~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記ガイドRNAは、前記crRNA及び前記tracrRNAが互いにハイブリダイズする別個の分子であるモジュラーガイドRNAである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記組成物は、Casタンパク質または前記Casタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、請求項88~94のいずれか一項に記載の方法。
【請求項96】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質または転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項94~96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
前記Cas9分子は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記Cas9分子は、S.aureus Cas9タンパク質である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なgRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項82~87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子の開始コドンを含むか、またはそれに近接している、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記ガイドRNA標的配列は、前記開始コドンの約1000、500、400、300、200、100、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5ヌクレオチド内である、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
前記ガイドRNA標的配列は、前記オートファジー遺伝子のエクソン1またはエクソン2にある、請求項100に記載の方法。
【請求項104】
前記ガイドRNAは、前記DNAターゲティングセグメント及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含むクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)RNA(crRNA)を含む、請求項100~103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
前記ガイドRNAは、前記crRNA及び前記tracrRNAが互いにハイブリダイズする別個の分子であるモジュラーガイドRNAである、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記組成物は、Casタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を更に含む、請求項100~105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質または転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項105~107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
前記Cas9タンパク質は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記薬剤は、TALENヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項82~86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項111】
前記薬剤は、RNAまたはタンパク質の活性を阻害する、請求項82~85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項112】
前記薬剤は、干渉核酸である、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記干渉核酸は、siRNA、shRNA、miRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記薬剤は、PI3キナーゼ阻害剤、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3)阻害剤、Unc-51様キナーゼ1(ULK1)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質18(Vps18)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質34(Vps34)阻害剤、ユビキチン特異的ペプチダーゼ(USP10またはUSP13)阻害剤、チオキサントンベースのオートファジー阻害剤、ATG4阻害剤、オートフィニブ、3-メチルアデニン、ワートマニン、塩化アンモニウム、バフィロマイシンA1、エフロルニチン、ロイペプチン、ベツリン酸、CA074、コルヒチン、タプシガルギン、バキュオリン-1、ビンブラスチン、デスメチルクロミプラミン、LY294002、PT210、GSK-2126458、スパウチン-1、SAR405、化合物31、VPS34-IN1、PIK-III、化合物6、MRT68921、SBI-0206965、ペプスタチンA、E64d、クロミプラミン、ルカントン、クロロキン、ヒドロキシクロルキン、モネンシン、Lys05、ARN5187、化合物30、MPT0L145、ROC325、ベルテポルフィン、NSC185058及びNSC377071から選択される小分子オートファジー阻害剤である、請求項82または請求項83に記載の方法。
【請求項115】
前記腫瘍は、腺癌、副腎腫瘍、肛門腫瘍、胆管腫瘍、膀胱腫瘍、骨腫瘍、脳/CNS腫瘍、乳房腫瘍、子宮頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮内膜腫瘍、食道腫瘍、ユーイング腫瘍、眼腫瘍、胆嚢腫瘍、胃腸腫瘍、腎臓腫瘍、喉頭または下咽頭腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、中皮腫、多発性骨髄腫、筋肉腫瘍、鼻咽頭腫瘍、神経芽細胞腫、口腔腫瘍、骨肉腫、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、陰茎腫瘍、下垂体腫瘍、原発性腫瘍、前立腺腫瘍、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺腫瘍、軟部肉腫、黒色腫、転移性腫瘍、基底細胞癌、メルケル細胞腫瘍、精巣腫瘍、胸腺腫瘍、甲状腺腫瘍、子宮腫瘍、膣腫瘍、外陰腫瘍、またはウィルムス腫瘍である、請求項82~114のいずれか一項に記載の方法。
【請求項116】
前記腫瘍は、乳房腫瘍である、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
前記腫瘍は、結腸直腸腫瘍である、請求項115に記載の方法。
【請求項118】
前記腫瘍は、肺腫瘍である、請求項115に記載の方法。
【請求項119】
前記腫瘍は、卵巣腫瘍である、請求項115に記載の方法。
【請求項120】
前記腫瘍は、子宮頸部腫瘍である、請求項115に記載の方法。
【請求項121】
前記腫瘍は、膀胱腫瘍である、請求項115に記載の方法。
【請求項122】
前記腫瘍は、腎腫瘍である、請求項115に記載の方法。
【請求項123】
前記腫瘍は、原発性腫瘍である、請求項115~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記腫瘍は、転移性腫瘍である、請求項115~122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
前記対象は、前記薬剤の投与前に化学療法薬を投与されている、請求項42~124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
前記対象は、前記化学療法薬に対して抵抗性である、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
前記薬剤は、全身的に投与される、請求項42~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
前記薬剤は、静脈内に投与される、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
前記薬剤は、皮下に投与される、請求項42~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
前記薬剤は、筋肉内に投与される、請求項42~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項131】
前記薬剤は、経口で投与される、請求項42~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項132】
前記薬剤は、局所的に投与される、請求項42~126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項133】
前記対象は腫瘍を有し、前記少なくとも1つの薬剤は、前記腫瘍または腫瘍微小環境に局所的に投与される、請求項132に記載の方法。
【請求項134】
前記方法は、前記対象に追加の抗がん療法を施すことを更に含む、請求項42~133のいずれか一項に記載の方法。
【請求項135】
前記追加の抗がん療法は、がん免疫療法である、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
前記がん免疫療法は、自己もしくは同種T細胞療法、または自己もしくは同種CAR T細胞療法を含む、請求項134または請求項135に記載の方法。
【請求項137】
前記がん免疫療法は、前記対象にTNF-αを投与することを含む、請求項135に記載の方法。
【請求項138】
前記がん免疫療法は、前記対象に免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項135に記載の方法。
【請求項139】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、BTLA、SIRPalpha(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン及びA2aRから選択される免疫チェックポイントタンパク質に特異的な抗体を含む、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、セミプリマブ(REGN2810)、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、ペムブロリズマブ(MK-3475、SCH900475)、アテゾリズマブ(MPDL3280A、RG7446、RO5541267)、デュルバルマブ(MEDI4736、MEDI-4736)、アベルマブ(MSB0010718C)、イピリムマブ(BMS-734016、IBI310、MDX-010)、SHR1210、シンチリマブ(IBI308)、スパルタリズマブ(PDR001)、チスレリズマブ(BGB-A317)、ピディリズマブ、BCD-100、トリパリマブ(JS001)、BAY1905254、ASP8374、PF-06801591、AMP-224、AB122、AK105、AMG404、BCD-100、BI754091、F520、HLX10、HX008、JTX-4014、LZM009、MEDI0680、MGA012、Sym021、TSR-042、PSB205、MGD019、MGD013、AK104、XmAb20717、RO7121661、CX-188、INCB086550、FS118、BCD-135、BGB-A333、CBT-502、CK-301、CS1001、FAZ053、HLX20、KN035、MDX-1105、MSB2311、SHR-1316、TG-1501、ZKAB001、INBRX-105、MCLA-145、KN046、M7824、LY3415244、INCB086550、CA-170、CX-072、ADU-1604、AGEN1181、AGEN1884、MK-1308、REGN4659、XmAb22841、ATOR-1015、PSB205、MGD019、AK104、XmAb20717、BMS-986249、トレメリムマブ、BMS-986258、BGB-A425、INCAGN02390、Sym023、JNJ61610588、BI754111、LAG525、MK-4280、REGN3767、Sym022、TSR-033、レラトリマブ、JTX-2011、MGD009、BMS-986207、OMP-313M32、MK-7684またはTSR-022である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記がん免疫療法は、前記対象にがんワクチンを投与することを含む、請求項135に記載の方法。
【請求項142】
対象のがんを治療する方法であって、前記方法は、前記対象のがん細胞のオートファジーを阻害する薬剤、及びがん免疫療法を前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項143】
前記がん免疫療法は、自己もしくは同種T細胞療法、または自己もしくは同種CAR T細胞療法を含む、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
前記がん免疫療法は、前記対象にTNF-αを投与することを含む、請求項142に記載の方法。
【請求項145】
前記がん免疫療法は、前記対象に免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項142に記載の方法。
【請求項146】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、BTLA、SIRPalpha(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン及びA2aRから選択される免疫チェックポイントタンパク質に特異的な抗体を含む、請求項145に記載の方法。
【請求項147】
前記免疫チェックポイント阻害剤は、セミプリマブ(REGN2810)、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、ペムブロリズマブ(MK-3475、SCH900475)、アテゾリズマブ(MPDL3280A、RG7446、RO5541267)、デュルバルマブ(MEDI4736、MEDI-4736)、アベルマブ(MSB0010718C)、イピリムマブ(BMS-734016、IBI310、MDX-010)、SHR1210、シンチリマブ(IBI308)、スパルタリズマブ(PDR001)、チスレリズマブ(BGB-A317)、ピディリズマブ、BCD-100、トリパリマブ(JS001)、BAY1905254、ASP8374、PF-06801591、AMP-224、AB122、AK105、AMG404、BCD-100、BI754091、F520、HLX10、HX008、JTX-4014、LZM009、MEDI0680、MGA012、Sym021、TSR-042、PSB205、MGD019、MGD013、AK104、XmAb20717、RO7121661、CX-188、INCB086550、FS118、BCD-135、BGB-A333、CBT-502、CK-301、CS1001、FAZ053、HLX20、KN035、MDX-1105、MSB2311、SHR-1316、TG-1501、ZKAB001、INBRX-105、MCLA-145、KN046、M7824、LY3415244、INCB086550、CA-170、CX-072、ADU-1604、AGEN1181、AGEN1884、MK-1308、REGN4659、XmAb22841、ATOR-1015、PSB205、MGD019、AK104、XmAb20717、BMS-986249、トレメリムマブ、BMS-986258、BGB-A425、INCAGN02390、Sym023、JNJ61610588、BI754111、LAG525、MK-4280、REGN3767、Sym022、TSR-033、レラトリマブ、JTX-2011、MGD009、BMS-986207、OMP-313M32、MK-7684またはTSR-022である、請求項145に記載の方法。
【請求項148】
前記がん免疫療法は、前記対象にがんワクチンを投与することを含む、請求項142に記載の方法。
【請求項149】
前記薬剤は、オートファジー遺伝子の発現または活性を阻害する、請求項142~148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項150】
前記オートファジー遺伝子は、ATG12、WIPI2、RB1CC1、PIK3C3、ATG9A、ATG2A、ATG5、ATG14、EI24、NRBF2、ATG13、TAX1BP1及びATG10から選択される、請求項149に記載の方法。
【請求項151】
前記薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変し、前記少なくとも1つのオートファジー遺伝子を改変することにより前記オートファジー遺伝子の発現または活性が低下する、請求項149または請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記オートファジー遺伝子の前記改変は、欠失、挿入、置換、これらの組み合わせ、またはCasタンパク質の結合を含む、請求項151に記載の方法。
【請求項153】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なガイドRNAを含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項142~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項154】
前記gRNAは、前記オートファジー遺伝子内の二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象を提供するように構成される、請求項153に記載の方法。
【請求項155】
前記組成物は、Casタンパク質または前記Casタンパク質をコードする核酸配列を更に含む、請求項153または154に記載の方法。
【請求項156】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質である、請求項155に記載の方法。
【請求項157】
前記Casタンパク質は、転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項155に記載の方法。
【請求項158】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項155~157のいずれか一項に記載の方法。
【請求項159】
前記Cas9分子は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
前記薬剤は、前記オートファジー遺伝子の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに有効なガイドRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物であり、前記ガイドRNAは、前記オートファジー遺伝子内のガイドRNA標的配列をターゲットとするDNAターゲティングセグメントを含む、請求項142~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項161】
前記組成物は、Casタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列を更に含む、請求項160に記載の方法。
【請求項162】
前記Casタンパク質は、ヌクレアーゼ活性型Casタンパク質である、請求項161に記載の方法。
【請求項163】
前記Casタンパク質は、転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ不活性型Casタンパク質である、請求項162に記載の方法。
【請求項164】
前記Casタンパク質は、Cas9タンパク質である、請求項161~163のいずれか一項に記載の方法。
【請求項165】
前記Cas9タンパク質は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質である、請求項164に記載の方法。
【請求項166】
前記薬剤は、TALENヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項142~152のいずれか一項に記載の方法。
【請求項167】
前記薬剤は、RNAまたはタンパク質の活性を阻害する、請求項142~150のいずれか一項に記載の方法。
【請求項168】
前記薬剤は、干渉核酸である、請求項167に記載の方法。
【請求項169】
前記干渉核酸は、siRNA、shRNA、miRNA、またはアンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項168に記載の方法。
【請求項170】
前記薬剤は、PI3キナーゼ阻害剤、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3)阻害剤、Unc-51様キナーゼ1(ULK1)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質18(Vps18)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質34(Vps34)阻害剤、ユビキチン特異的ペプチダーゼ(USP10またはUSP13)阻害剤、チオキサントンベースのオートファジー阻害剤、ATG4阻害剤、オートフィニブ、3-メチルアデニン、ワートマニン、塩化アンモニウム、バフィロマイシンA1、エフロルニチン、ロイペプチン、ベツリン酸、CA074、コルヒチン、タプシガルギン、バキュオリン-1、ビンブラスチン、デスメチルクロミプラミン、LY294002、PT210、GSK-2126458、スパウチン-1、SAR405、化合物31、VPS34-IN1、PIK-III、化合物6、MRT68921、SBI-0206965、ペプスタチンA、E64d、クロミプラミン、ルカントン、クロロキン、ヒドロキシクロルキン、モネンシン、Lys05、ARN5187、化合物30、MPT0L145、ROC325、ベルテポルフィン、NSC185058及びNSC377071から選択される小分子オートファジー阻害剤である、請求項142~148のいずれか一項に記載の方法。
【請求項171】
前記がん細胞は、肺癌細胞、乳癌細胞、結腸癌細胞、子宮頸癌細胞、膵臓癌細胞、腎癌細胞、胃癌細胞、胃腸癌細胞、肝臓癌細胞、骨癌細胞、血液癌細胞、神経組織癌細胞、黒色腫細胞、甲状腺癌細胞、卵巣癌細胞、精巣癌細胞、前立腺癌細胞、子宮頸癌細胞、膣癌細胞、または膀胱癌細胞である、請求項142~170のいずれか一項に記載の方法。
【請求項172】
前記がん細胞は、乳癌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項173】
前記がん細胞は、結腸癌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項174】
前記がん細胞は、肺癌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項175】
前記がん細胞は、卵巣癌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項176】
前記がん細胞は、子宮頸癌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項177】
前記がん細胞は、膀胱癌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項178】
前記がん細胞は、腎臓癌細胞である、請求項171に記載の方法。
【請求項179】
前記対象は、ヒトである、請求項42~178のいずれか一項に記載の方法。
【請求項180】
腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷に対して対象のがん細胞を感作させる際に使用するための、がん細胞のオートファジーを阻害する薬剤。
【請求項181】
対象のがん細胞の腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)媒介殺傷を増加させる際に使用するための、がん細胞のオートファジーを阻害する薬剤。
【請求項182】
がん細胞のオートファジーを阻害する薬剤、及びがんの治療に使用するためのがん免疫療法を含む、併用療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月4日に出願された以下の米国仮特許出願第62/985,004号の利益を主張するものであり、この内容全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2021年3月3日に作成された当該ASCIIコピーはRPB-02025_SL.txtという名称であり、14,383バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
がんは、米国で2番目に多い死因である。免疫療法はがん治療を一変させたが、これらの治療に対する腫瘍細胞の耐性は大きな課題となっている。例えば、腫瘍細胞におけるβ2ミクログロブリン(B2M)またはJAK1/JAK2の機能喪失変異は、チェックポイント遮断に対する臨床耐性と関連している。重要なことに、T細胞殺傷に対する腫瘍細胞の感受性を制御する分子メカニズムは、まだ十分に特性評価されていない。したがって、T細胞殺傷に対するがん細胞の感受性を高める治療を含む、がんの新規かつ効果的な治療の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書では、オートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害することによって、T細胞殺傷(例えば、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)媒介殺傷)に対するがん細胞の感受性を増加させるための方法及び組成物が提供される。また、本明細書では、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害することで、対象におけるがん細胞のT細胞殺傷(例えば、TNF-α媒介殺傷)に対する感受性を増大させることによって、対象(例えば、それを必要とする対象)におけるがんを治療する及び/またはがんを防ぐための方法及び組成物も提供される。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、対象にがん治療(例えば、がん免疫療法)を施すことを更に含む。
【0005】
いくつかの態様において、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、本明細書に開示される少なくとも1つの薬剤)とがん細胞を接触させることによって、がん細胞をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる方法が本明細書に提供される。特定の態様において、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する少なくとも1つの薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、対象におけるがん細胞のTNF-α媒介殺傷を増加させる方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、がん細胞は、対象内にある。いくつかの実施形態において、がん細胞は、腫瘍(例えば、対象の固形腫瘍)内にある。特定の実施形態において、方法は、対象にがん治療(例えば、がん免疫療法)を施すことを更に含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、薬剤は、オートファジー遺伝子(すなわち、阻害されると細胞内のオートファジーレベルの低下をもたらす産物をコードする遺伝子)の発現または活性を阻害することによって、オートファジーを阻害する。いくつかの実施形態において、薬剤は、オートファジー遺伝子を標的とする(例えば、薬剤はオートファジー遺伝子の配列を改変する)。特定の実施形態において、薬剤は、オートファジー遺伝子産物(例えば、オートファジー遺伝子によってコードされるRNAまたはタンパク質)を標的とする。いくつかの実施形態において、オートファジー遺伝子は、ATG12、WIPI2、RB1CC1、PIK3C3、ATG9A、ATG2A、ATG5、ATG14、EI24、NRBF2、ATG13、TAX1BP1及びATG10から選択され得る。
【0007】
いくつかの実施形態において、薬剤は、NF-κB経路遺伝子の発現または活性を阻害することによってNF-κB経路を阻害する。いくつかの実施形態において、薬剤は、NF-κB経路遺伝子自体を標的とする(例えば、薬剤は、NF-κB経路遺伝子の配列を改変する)。特定の実施形態において、薬剤は、NF-κB経路遺伝子産物(例えば、NF-κB経路遺伝子によってコードされるRNAまたはタンパク質)を標的とする。特定の実施形態において、NF-κB遺伝子は、CFLAR、UBE2L3、RNF31、IKBKB、MAP3K7、TAB1、RELA、IKKBKG、CHUK、TAB2、TBK1、MAPKAPK2、RBCK1、TRAF2、SHARPIN及びTNFAIP3から選択され得る。
【0008】
したがって、特定の実施形態において、薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子を改変することができ、少なくとも1つのオートファジー遺伝子及び/またはNF-κB遺伝子の改変は、オートファジー遺伝子産物及び/またはNF-κB遺伝子産物の発現低下及び/または活性低下をもたらす。特定の実施形態において、オートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子の改変は、欠失、挿入、置換またはこれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態において、薬剤は、CRISPR/Cas剤、TALENヌクレアーゼまたはジンクフィンガーヌクレアーゼであり得る。
【0009】
特定の実施形態において、薬剤は、オートファジー遺伝子もしくはNF-κB遺伝子によってコードされるRNAもしくはタンパク質の活性を阻害する、及び/またはそのレベルを低下させる。いくつかの実施形態において、薬剤は、オートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子によってコードされるRNA(例えば、mRNA)を標的とする干渉核酸(例えば、siRNA、shRNA、miRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド)であり得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、オートファジーまたはNF-κB経路の小分子阻害剤である。
【0010】
特定の実施形態において、本明細書で提供される方法は、追加の抗がん療法を対象に施すことを更に含む。いくつかの実施形態において、追加の抗がん療法は、がん免疫療法である。いくつかの実施形態において、がん免疫療法は、自己もしくは同種T細胞療法を対象に施すこと、自己もしくは同種CAR T細胞療法を施すこと、がんワクチンを対象に投与すること、TNF-αを対象に投与すること、及び/または免疫チェックポイント阻害剤を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態において、追加の抗がん療法は、対象へのSmac模倣物(例えば、LCL-161、APG-1387、TL32711、GDC-0917、HGS1029、AT-406)の投与を含む。
【0011】
特定の態様において、対象のがん細胞をTNF-α媒介殺傷に対して感作させるのに使用するための、がん細胞におけるオートファジーを阻害する薬剤が、本明細書で提供される。更に、いくつかの態様において、対象のがん細胞のTNF-α媒介殺傷を増加させるのに使用するための、がん細胞におけるオートファジーを阻害する薬剤が、本明細書で提供される。いくつかの態様において、がん細胞におけるオートファジーを阻害する薬剤、及びがんの治療に使用するためのがん免疫療法を含む併用療法が、本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1-1】A~Gの7つの部分を有し、ゲノム全体でのCRISPR KOスクリーニングにより、細胞傷害性T細胞による殺傷を調節する腫瘍細胞遺伝子が同定されることを示している。Aは、プールされたCRISPRスクリーニングの概略図を示す。マウスGeCKO sgRNAライブラリーで改変されたMC38癌細胞に、Ovaまたはスクランブル対照ペプチドを間欠的に投与し、次いで活性化Ova特異的細胞傷害性T細胞と培養した。T細胞殺傷の後、生き残った腫瘍細胞でのsgRNA表現をイルミナシーケンシングによって評価した。生物学的三重反復を実施した(B、D、F)。腫瘍細胞殺傷を促進する(豊富なsgRNA)または制限する(枯渇したsgRNA)いずれかの遺伝子を示す火山プロット。殺傷を促進する対象遺伝子は、Bで強調されている(例えば、抗原提示、TNFαシグナル伝達、mTORシグナル伝達)。殺傷を制限する対象遺伝子は、D及びFで強調されている(例えば、NF-κB経路、オートファジー)。X軸は、Zスコアを示す(スクランブルペプチドを間欠的に投与した細胞と比較して、Ovaを間欠的に投与した細胞の各遺伝子を標的とする6つのsgRNAの平均log倍率変化から計算)。Y軸は、MAGeCKによって計算したP値を示す(C、E、G)。ライブラリー内の129,209個のsgRNAすべてのlog倍率変化の分布(頻度ヒストグラム)。目的の遺伝子を標的とする個々のsgRNAは、Cでは斜線で、E及びGでは斜線で示される。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
図1-5】同上。
図1-6】同上。
図1-7】同上。
【0013】
図2-1】A~Gの7つの部分を有し、TNFα媒介アポトーシスがT細胞による腫瘍細胞殺傷の重要な要素であることを示す。Aは、TNFα/NF-κBシグナル伝達の簡略化されたモデルを示す。Bは、対照(MC38-mGeCKO)またはB2m KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、10μg/mlのTNFα遮断抗体またはアイソタイプ対照の存在下でOT-1マウスからのT細胞と共にインキュベートしたことを示す。24時間後に細胞生存率を測定した。棒グラフは、T細胞の非存在下で培養した細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。**P<0.005、***P<0.0005、****P<0.0001、MC38-mGeCKO+対照Abに対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。+P<0.05、MC38-B2mKO+対照Abに対して。Cは、10ng/mlのTNFαで24時間処理したMC38細胞の生存率に対するカスパーゼ阻害(25μMのz-VAD-FMK)、Tnfrsf1a KO、Fadd KOまたはRipk1 KOの効果を示す。棒グラフは、相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。標的タンパク質の枯渇を確認するウエスタンブロットは、グラフの下に示されている。*は、アッセイで使用されるRipk1 KOを示す。Dは、指定された濃度のTNFαを腫瘍細胞株に添加し、24時間後に細胞生存率を測定したことを示す。n=3。Eは、10ng/mlのTNFαを各細胞株へ添加してから24時間後に指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。F及びGは、10ng/mlのTNFαで指定された時間処理した後のMC38またはB16F10細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
図2-4】同上。
【0014】
図3-1】A~Gの7つの部分を有し、NF-κBシグナル伝達がT細胞による腫瘍細胞殺傷を制限することを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはMap3k7標的化sgRNAを発現する細胞におけるMap3k7(別名Tak1)及びβ-アクチンタンパク質レベルを示すウエスタンブロットを示す(sg5及びsg3はスクリーニングで最も顕著に枯渇しており、sg1は枯渇が最も少なかった)。Bは、対照またはMap3k7 KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、指定されたE:T比でOT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、T細胞の非存在下で培養した細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。**P<0.005、***P<0.0005、****P<0.0001、親MC38細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。++P<0.005、++++P<0.0001、Map3k7 sg5に対して。Cは、指定された細胞株のT細胞殺傷が20μg/mlのTNFα遮断抗体の存在下で行われたことを示す。Dは、細胞が指定された濃度のTNFαで処理され、24時間後に細胞生存率が測定されたことを示す。n=3。Eは、10ng/mlのTNFαで処理してから2時間後の指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。F及びGは、細胞を指定された量のドキソルビシンまたはパクリタキセルで処理し、24時間後に細胞生存率を測定したことを示す。n=3。
図3-2】同上。
【0015】
図4-1】A~Fの6つの部分を有し、オートファジーがT細胞による腫瘍細胞殺傷を制限していることを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはRb1cc1標的化sgRNAを発現する細胞におけるRb1cc1及びβ-アクチンタンパク質レベルを示すウエスタンブロットを示す(sg4及びsg5はスクリーニングで最も顕著に枯渇しており、sg3は枯渇が最も少なかった)。Bは、対照またはRb1cc1 KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、指定されたE:T比でOT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、T細胞の非存在下で培養した細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。**P<0.005、****P<0.0001、親MC38細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。++++P<0.0001、Rb1cc1 sg4に対して。Cは、指定された細胞株のT細胞殺傷が20μg/mlのTNFα遮断抗体の存在下で行われたことを示す。*P<0.05、***P<0.0005、親MC38細胞に対して。Dは、細胞が指定された濃度のTNFαで処理され、24時間後に細胞生存率が測定されたことを示す。E及びFは、細胞を指定された量のドキソルビシンまたはパクリタキセルで処理し、24時間後に細胞生存率を測定したことを示す。n=3。
図4-2】同上。
【0016】
図5-1】A~Iの9つの部分を有し、オートファジーの阻害が、NF-βBシグナル伝達への影響とは無関係に、TNFαを介したカスパーゼ8の活性化を促進することを示す。Aは、10ng/mlのTNFαで処理してから4時間後の対照またはRb1cc1 KO MC38細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Bは、10ng/mlのTNFαで処理してから30分後(Ik-Bα)または4時間後(A20)の対照またはRb1cc1 KO細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Cは、対照またはMap3k7(Tak1)KO細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Dは、25μMのz-VAD-FMK(カスパーゼ阻害剤)の存在下または非存在下で、可溶性TNFαをRb1cc1 KO細胞に24時間添加したことを示す。棒グラフは、対照細胞(TNFαなし、カスパーゼ阻害剤なし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。群は、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAによって比較した。Eは、5μMのオートフィニブの非存在下または存在下で、MC38細胞が未処理または10ng/mlのTNFαで16時間処理されたことを示す。棒グラフは、対照細胞(TNFαなし、オートフィニブなし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。Fは、5μMのオートフィニブの非存在下または存在下で、未処理または10ng/mlのTNFαで30分間(Ik-Bα)または4時間(カスパーゼ-8、p62)処理した細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Gは、5μMのオートフィニブまたは1μMのLCL-161(Smac模倣物)の非存在下または存在下で、対照、Tnfrsf1a KO、Fadd KOまたはRipk1 KO細胞が未処理または10ng/mlのTNFαで24時間で処理されたことを示す。棒グラフは、対照細胞(TNFαまたは阻害剤を含まない空のベクター細胞)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。****P<0.0001、TNFαで処理した空のベクター細胞に対して。Hは、50μMのNec-1(ネクロトーシス阻害剤)の非存在下または存在下で、TNFαをRb1cc1 KO細胞に24時間添加したことを示す。棒グラフは、対照細胞(TNFαなし、カスパーゼ阻害剤なし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。Iは、L929マウス線維芽細胞株及びMC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはRb1cc1標的化sgRNAを発現する細胞におけるホスホMLKL、総MLKL及びβ-アクチンレベルを示すウエスタンブロットを示す。細胞は、10ng/mlのTNFα、50μMのNec-1s及び20μMのZ-VAD-FMKの存在下または非存在下で30分間処理した。
図5-2】同上。
図5-3】同上。
図5-4】同上。
図5-5】同上。
【0017】
図6-1】A~Gの7つの部分を有し、腫瘍細胞におけるmTORシグナル伝達が最大のTNFα及びT細胞媒介殺傷に必要であることを示す。Aは、空のベクターで形質導入されたMC38細胞またはMlst8標的化sgRNAを発現する細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す(sg4及びsg1はスクリーニングで最も顕著に濃縮されており、sg3は最も少なく濃縮されていた)。Bは、対照またはMlst8 KO細胞が未処理または10ng/mlのTNFαで24時間処理されたことを示す。棒グラフは、対照細胞(TNFαなし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。P<0.05、**P<0.005、TNFαで処理した空のベクター細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。Cは、対照またはMlst8KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、OT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、対照細胞(T細胞なし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。P<0.05、**P<0.005、T細胞と共にインキュベートした空のベクター細胞に対して。Dは、指定された時間、200nMのラパマイシンで処理されたMC38細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Eは、ビヒクルまたは200nMのラパマイシンで前処理したウェルを次いで未処理または10ng/mlのTNFαで24時間処理したことを示す。棒グラフは、対照細胞(ビヒクル、TNFαなし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。Fは、ビヒクルまたはラパマイシンで前処理した細胞に、スクランブル対照ペプチドまたはOvaペプチドのいずれかを間欠的に投与し、OT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、対照細胞(T細胞なし、スクランブルペプチド)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。Gは、T細胞による殺傷を調節する腫瘍細胞経路を示す流れ図を示す。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
【0018】
図7-1】A~Fの6つの部分を有し、オートファジーがヒト癌細胞のCD3二重特異性抗体誘導殺傷を制限することを示す。Aは、ヒトZR-75-1乳癌細胞が、5μMのオートフィニブまたはSAR-405の非存在下または存在下で、未処理または10ng/mlのTNFαで24時間処理されたことを示す。棒グラフは、対照細胞(ビヒクル、TNFαなし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。群は、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAによって比較した。Bは、10ng/mlのTNF****の非存在下または存在下で、ZR-75-1細胞を5μMのオートフィニブまたはSAR-405で16時間処理した後の指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Dは、5μMのSAR-405の非存在下または存在下で、ZR-75-1細胞を、12ng/mlの対照または乳房腫瘍抗原xCD3(TAAxCD3(Cに示されている))二重特異性抗体の存在下で指定されたE:T比で活性化ヒトT細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、対照細胞(T細胞なし、対照二重特異性抗体)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。Eは、ZR-75-1対照またはRb1cc1 KO細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Fは、ZR-75-1対照またはRb1cc1 KO細胞を、上記のように二重特異性抗体を加えたT細胞と共にインキュベートしたことを示す。棒グラフは、対照細胞+対照bsAbと比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。**P<0.005、対照細胞に対して。****P<0.0001、対照細胞+CD3bsAbに対して。++++P<0.0001、Rb1cc1 KO+CD3bsAbに対して。
図7-2】同上。
図7-3】同上。
【0019】
図8-1】A~Gの7つの部分を有し、オートファジーの不活性化が免疫療法に対して腫瘍を感作させることを示す。Aは、EMT6対照(非標的sgRNA)またはRb1cc1 KO細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Bは、EMT6対照またはRb1cc1 KO細胞を10ng/mlのTNFαで処理し、24時間後に生存率を測定したことを示す。棒グラフは、対照細胞(対照、TNFαなし)と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。群は、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAによって比較した。Cは、EMT-6細胞(対照またはRb1cc1 KO)がBalb/cマウスに移植されたことを示す。移植の3日後、方法に記載されているように、アイソタイプ対照またはPD-1プラスCTLA-4遮断抗体のいずれかでマウスを処理した(群あたりn=10のマウス)。折れ線グラフは、各群の平均腫瘍体積±SEMを示す。群は、テューキーの多重比較検定による二元配置ANOVAによって比較した。Dは、各マウスの個々の腫瘍増殖曲線を示す。Eは、MC38対照(非標的sgRNA)またはRb1cc1 KO細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Fは、MC38細胞(対照またはRb1cc1 KO)がC57/BL6マウスに移植されたことを示す。マウスは、腫瘍が約70mmのとき無作為化され(1群あたり7~12匹のマウス)、アイソタイプ対照またはPD-1プラスCTLA-4遮断抗体のいずれかで処理した。折れ線グラフは、各群の平均腫瘍体積±SEMを示す。群は、テューキーの多重比較検定による二元配置ANOVAによって比較した。Gは、各マウスの個々の腫瘍増殖曲線を示す。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
【0020】
図9】A~Cの3つの部分を有し、CRISPR KOスクリーニング条件を最適化するために使用されるB2Mノックアウト細胞の使用に関連する。Aは、B2Mを標的とするpLenti-Cas9-Blast及びpLenti-guide-puroに感染したMC38細胞のB2Mタンパク質レベルを示すウエスタンブロットを示す。Bは、mGeCKOライブラリーを発現するように改変されたMC38細胞、または未処理もしくは+/-10ng/mlのIFNgで24時間処理したb2M KO細胞におけるH2-Kb細胞表面発現のFACS分析を示す。Cは、Ovaまたはスクランブルペプチドを間欠的に投与したMC38-Cas9-mGeCKO細胞、及びOvaペプチドを間欠的に投与したMC38-Cas9-B2Mノックアウト細胞のT細胞殺傷アッセイを示す。OT-1マウスから単離されたCD8T細胞は指定されたE:T比で細胞と共にインキュベートされ、生存率は24時間後に測定された。
【0021】
図10】枯渇したsgRNA及び豊富なsgRNAの検出を可能にする、ライブラリー表現がCRISPR KOスクリーニングの間ずっと十分に維持されていることを示す。T細胞殺傷後のスクランブル腫瘍細胞対Ovaを間欠的に投与した腫瘍細胞におけるlog正規化sgRNA数。R=0.95。
【0022】
図11】A~Bの2つの部分を有し、MC38細胞の増殖改変因子に関するCRISPR KOスクリーニングがコア必須遺伝子の高い割合を同定することを示す。参照対照細胞と比較した、12回の倍加で継代したMC38-mGeCKO細胞のLog2正規化sgRNA数(ライブラリー感染細胞の選択直後に採取)。Aは、非標的sgRNAが示されていることを示す。非標的sgRNAの5/1000だけが、参照対照と比較して2倍を超えて大幅に濃縮または枯渇していた。Bは、コア必須遺伝子を標的とするsgRNAを赤で示していることを示す。コア必須遺伝子の96%(102/106)はヒットとして同定された(少なくとも2つのsgRNAが2倍超で枯渇したと定義)。少なくとも4つのsgRNAが、コア必須遺伝子の85%超で枯渇していた。
【0023】
図12】オートファジー遺伝子の遺伝子ノックアウトがMC38細胞の増殖を阻害しないことを示す。MC38親細胞、空のベクターを発現する細胞、または指定されたオートファジー遺伝子を標的とする複数のsgRNAを発現する細胞における12回の集団倍加後の生存率アッセイ。
【0024】
図13】予め活性化されたT細胞の細胞毒性機能がTNFα遮断によって制限されないことを示す。MC38(TNFα感受性)またはB16F10(TNFα耐性)細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、20μg/mlのTNFα遮断抗体またはアイソタイプ対照抗体の存在下で、指定されたE:T比でOT-1マウス由来のT細胞と共に指定された温度でインキュベートした。24時間後に細胞生存率を測定した。棒グラフは、T細胞なしでインキュベートした腫瘍細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。P<0.05、***P<0.0005、対照抗体を含むMC38細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。
【0025】
図14】NF-κBシグナル伝達経路が、TNFα媒介殺傷に耐性のある細胞株で活性であることを示す。10ng/mlのTNFαで指定された時間処理した後のEMT6または4T1細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロット。
【0026】
図15-1】A~Gの7つの部分を有し、Rbck1 KOがT細胞による腫瘍細胞殺傷を増加させることを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはRbck1標的化sgRNAを発現する細胞におけるRbck1及びβ-アクチンレベルを示すウエスタンブロットを示す(sg5及びsg1はスクリーニングで最も顕著に枯渇しており、sg3は枯渇が最も少なかった)。Bは、対照またはRbck1 KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、指定されたE:T比でOT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、T細胞の非存在下でインキュベートした細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。****P<0.0001、親MC38細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。++++P<0.0001、Rbck1 sg5に対して。Cは、指定された細胞株のT細胞殺傷が20μg/mlのTNFα遮断抗体の存在下で行われたことを示す。P<0.05、親MC38細胞に対して。Dは、細胞が指定された濃度のTNFαで処理され、24時間後に細胞生存率が測定されたことを示す。n=3。Eは、10ng/mlのTNFαで処理してから2時間後の指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。F及びGは、細胞を指定された量のドキソルビシンまたはパクリタキセルで処理し、24時間後に細胞生存率を測定したことを示す。n=3。
図15-2】同上。
【0027】
図16-1】A~Gの7つの部分を有し、Rbla KOがT細胞による腫瘍細胞殺傷を増加させることを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはRela標的化sgRNAを発現する細胞におけるRela及びβ-アクチンレベルを示すウエスタンブロットを示す(sg2及びsg3はスクリーニングで最も顕著に枯渇しており、sg6は枯渇が最も少なかった)。Bは、対照またはRela KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、指定されたE:T比でOT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、T細胞の非存在下で培養した細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。**P<0.005、****P<0.0001、親MC38細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。++P<0.005、+++P<0.0005、Rela sg2に対して。Cは、指定された細胞株のT細胞殺傷が20μg/mlのTNFα遮断抗体の存在下で行われたことを示す。Dは、細胞が指定された濃度のTNFαで処理され、24時間後に細胞生存率が測定されたことを示す。n=3。Eは、10ng/mlのTNFαで処理してから2時間後の指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。F及びGは、細胞を指定された量のドキソルビシンまたはパクリタキセルで処理し、24時間後に細胞生存率を測定したことを示す。n=3。
図16-2】同上。
【0028】
図17-1】A~Gの7つの部分を有し、Atg9a KOがT細胞による腫瘍細胞殺傷を増加させることを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはAtg9a標的化sgRNAを発現する細胞におけるAtg9a及びβ-アクチンレベルを示すウエスタンブロットを示す(sg2及びsg1はスクリーニングで最も顕著に枯渇しており、sg4は枯渇が最も少なかった)。Bは、対照またはAtg9a KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、指定されたE:T比でOT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、T細胞の非存在下で培養した細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。**P<0.005、***P<0.0005、****P<0.0001、親MC38細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。+P<0.05、++++P<0.0001、Atg9a sg2に対して。Cは、指定された細胞株のT細胞殺傷が20μg/mlのTNFα遮断抗体の存在下で行われたことを示す。P<0.05、**P<0.005、***P<0.0005、親MC38細胞に対して。+P<0.05、Atg9a sg2に対して。Dは、細胞が指定された濃度のTNFαで処理され、24時間後に細胞生存率が測定されたことを示す。n=3。Eは、10ng/mlのTNFαで処理してから8時間後の指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Fは、細胞を指定された量のドキソルビシンまたはパクリタキセルで処理し、24時間後に細胞生存率を測定したことを示す。n=3。
図17-2】同上。
【0029】
図18-1】A~Gの7つの部分を有し、Atg12 KOがT細胞による腫瘍細胞殺傷を増加させることを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはAtg12標的化sgRNAを発現する細胞におけるAtg12及びβ-アクチンレベルを示すウエスタンブロットを示す(sg3及びsg5はスクリーニングで最も顕著に枯渇しており、sg6は枯渇が最も少なかった)。Bは、対照またはAtg12 KO細胞にOvaペプチドを間欠的に投与し、指定されたE:T比でOT-1T細胞と共に24時間インキュベートしたことを示す。棒グラフは、T細胞の非存在下でインキュベートした細胞と比較した相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。****P<0.0001、親MC38細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。Cは、指定された細胞株のT細胞殺傷が20μg/mlのTNFα遮断抗体の存在下で行われたことを示す。**P<0.005、***P<0.0005、親MC38細胞に対して。Dは、細胞が指定された濃度のTNFαで処理され、24時間後に細胞生存率が測定されたことを示す。n=3。Eは、10ng/mlのTNFαで処理してから8時間後の指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。F及びGは、細胞を指定された量のドキソルビシンまたはパクリタキセルで処理し、24時間後に細胞生存率を測定したことを示す。n=3。
図18-2】同上。
【0030】
図19】A~Bの2つの部分を有し、Rb1cc1及びAtg12 KO細胞が損なわれたオートファジー活性を示すことを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはRb1cc1標的化sgRNAを発現するMC38-Cas9細胞におけるLC3B及びβ-アクチンタンパク質レベルを示すウエスタンブロットを示す(Rb1cc1sg3は、Rb1cc1タンパク質を枯渇させる効果がsg4またはsg5よりも低かった-図4を参照)。Bは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞またはAtg12標的化sgRNAを発現するMC38-Cas9細胞におけるLC3B及びβ-アクチンレベルを示すウエスタンブロットを示す。細胞は、オートファジーが上流で阻害されない限り、LC3B-IIの蓄積をもたらす、リソソームプロテアーゼを阻害するために10μg/mlのペプスタチンA及び10μg/mlのE-64-Dで4時間処理した。LC3B-IIは、タンパク質の脂質付加型(ホスファチジルエタノールアミンに結合)を表す。
【0031】
図20】オートファジーの不活性化が、NF-βB標的遺伝子のTNFα媒介誘導を損なわないことを示す。対照またはRb1cc1 KO MC38細胞は、未処理または10ng/mlのTNFαで4時間処理した。次に、細胞溶解物をマウスサイトカインアレイでアッセイし、40種類のマウスサイトカインのレベルを測定した。TNFαによって増加したサイトカインを標識する。
【0032】
図21-1】A~Cの3つの部分を有し、オートファジーの薬理学的遮断がヒトがん細胞をTNFα及びTRAIL媒介殺傷に対して感作させることを示す。Aは、5μMのオートフィニブの非存在下または存在下で、HCT-116ヒト結腸癌細胞が、未処理または10ng/mlのTNFαまたは10ng/mlのTRAILで処理されたことを示す。24時間後に細胞生存率を測定した。Bは、5μMのオートフィニブの非存在下または存在下で、HeLaヒト子宮頸癌細胞が、未処理または50ng/mlのTRAILで処理されたことを示す。24時間後に細胞生存率を測定した。棒グラフは、相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。処理群は、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAによって比較した。Cは、5mMのオートフィニブの非存在下または存在下で、10ng/mlのTNFαまたは10ng/mのTrailで処理してから24時間後のHCT-116細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Dは、5μMのオートフィニブの非存在下または存在下で、50ng/mのTRAILで処理してから24時間後のHeLa細胞における指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロットを示す。Eは、5μMのSAR405もしくはオートフィニブの非存在下または存在下で、未処理または10ng/mlのTNFαもしくは10ng/mlのTRAILで処理したMC38細胞について観察した結果をまとめたグラフである。24時間後に細胞生存率を測定した。Fは、5μMのSAR405もしくはオートフィニブの非存在下または存在下で、未処理または10ng/mlのTNFαもしくは10ng/mlのTRAILで処理したEMT6細胞について観察した結果をまとめたグラフである。24時間後に細胞生存率を測定した。棒グラフは、相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。****P<0.0001、未処理細胞に対して、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVA。
図21-2】同上。
【0033】
図22-1】A~Bの2つの部分を有し、オートファジーの薬理学的遮断が、複数のマウス及びヒトがん細胞株をTNFα媒介殺傷に対して感作させることを示す。Aは、マウス腫瘍細胞株(EMT6、LL/2、CT26、Colon26)が、5μMのオートフィニブの非存在下または存在下にて、未処理または10ng/mlのTNFαで処理され、細胞生存率を24時間後に測定したことを示す。Bは、ヒト腫瘍細胞株(BT-20、Me-180、MDA-MB-361)が、5μMのオートフィニブもしくは5μMのSAR-405の非存在下または存在下にて、未処理または10ng/mlのTNFαで処理され、細胞生存率を24時間後に測定したことを示す。棒グラフは、相対的な細胞生存率±SD(n=3)を示す。処理群は、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAによって比較した。
図22-2】同上。
【0034】
図23-1】A~Bの2つの部分を有し、MC38細胞におけるオートファジー遺伝子のKOが、細胞表面MHC-1レベルまたはOVAペプチドの提示に影響を及ぼさないことを示す。Aは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞、またはRb1cc1、Atg9aもしくはAtg12標的化sgRNAを発現する細胞におけるMHC-1(H2-kb)細胞表面発現を示す、フローサイトメトリーヒストグラムを示す。Bは、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞、またはRb1cc1標的化sgRNAを発現する細胞におけるMHC-1(H2-kb)-Ova(SIINFEKL)細胞表面発現を示す、フローサイトメトリーヒストグラムを示す。示されるように、染色前に細胞に、Ova(SIINFEKL)ペプチドまたはスクランブルペプチドを間欠的に投与した。
図23-2】同上。
【0035】
図24】オートファジーの活性化が、重要なTNFα経路成分のレベルを増加させないことを示す。10ng/mlのTNFαで処理してから30分後の、MC38親細胞(モック)、空のベクターで形質導入されたMC38-Cas9細胞、またはRb1cc1標的化sgRNAを発現する細胞における、指定されたタンパク質のレベルを示すウエスタンブロット。
【0036】
図25】MC38腫瘍をPD-1/CTLA-4抗体で早期に治療することが、完全な腫瘍縮小をもたらすことを示す。MC38細胞をC57/BL6マウスに移植した。移植の3日後、マウスは、アイソタイプ対照またはPD-1プラスCTLA-4遮断抗体のいずれかで処理した。各マウスの個々の腫瘍増殖曲線が示される。n=15。
【0037】
図26-1】腫瘍のオートファジーの遺伝的不活性化が、白血球浸潤に影響を及ぼすことを示す。MC38及びEMT6親またはRb1cc1 KO腫瘍のCD45+、CD3+、CD4+ならびにCD8+細胞のフローサイトメトリー分析が示されている。グラフは、指定された中央値による個々の腫瘍を示す(n=4)。群は、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAによって比較した。
図26-2】同上。
【発明を実施するための形態】
【0038】
概要
本明細書の開示は、部分的には、オートファジー開始、膜物質の移動またはオートファゴソーム拡大の阻害を含むオートファジー経路の阻害が、がん細胞をTNFα媒介殺傷(例えば、T細胞による)に対して感作させたという発見に基づいている。更に、出願人は、NF-κB経路の阻害が、TNF-α媒介殺傷に対してがん細胞を感作させることを本明細書で示した。特に、本明細書に示されるように、オートファジーの遺伝的阻害は、腫瘍細胞をT細胞媒介殺傷に対してin vivoで感作させる。出願人は、オートファジー経路及びNF-κB経路が免疫療法応答性の重要な調節因子であること、ならびにこれらの経路の阻害ががん治療、特にT細胞指向治療の有効性を高めることを本明細書で示す。
【0039】
したがって、特定の態様において、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)とがん細胞を接触させることによって、がん細胞をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる方法が本明細書に提供される。いくつかの態様において、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する1つの薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、対象におけるがん細胞をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる方法が本明細書で提供される。
【0040】
他の態様において、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する少なくとも1つの薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、対象におけるがん細胞のTNF-α媒介殺傷を増加させる方法が本明細書で提供される。
【0041】
更なる態様において、本明細書に記載の方法は、腫瘍のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、対象における腫瘍をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる、または対象における腫瘍のTNF-α媒介殺傷を増加させる方法を含む。対象のがん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、及び癌免疫療法などのTNF-α媒介殺傷を誘導する第2の薬剤を対象に投与することによって、対象におけるがんを治療する方法も本明細書に提供される。
【0042】
定義
「a」及び「an」という冠詞は、その冠詞の文法上の対象が1つまたは1つより多いこと(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1つより多い要素を意味する。
【0043】
「薬剤」という用語は、本明細書では、化学化合物、小分子、化学化合物の混合物、生物学的巨大分子(核酸(例えば、干渉核酸)、抗体、抗体断片、タンパク質、ペプチドなど)、生体高分子の混合物及び/またはこれらの組み合わせを示すために使用する。特定の実施形態において、本明細書の薬剤は、CRISPR/Cas系の構成成分を含む組成物である。そのような薬剤の活性は、それらを、対象において局所的もしくは全身的に作用する生物学的、生理学的または薬理学的に活性な物質である「治療剤」として適切にすることができる。
【0044】
本明細書で使用する場合、「オートファジー遺伝子」は、阻害されると細胞内のオートファジーレベルの低下をもたらす産物をコードする遺伝子である。
【0045】
本明細書で使用する場合、「がん」という用語は、固形腫瘍及び血液由来腫瘍を含むが、これらに限定されない。がんという用語は、皮膚、組織、器官、骨、軟骨、血液、及び脈管の疾病を含む。「がん」という用語は、原発性がん及び転移性がんを更に包含する。
【0046】
「コドン最適化」は、アミノ酸を特定する3塩基対のコドンの組み合わせの多様性によって示されるように、コドンの縮重を利用し、一般に、天然アミノ酸配列を維持しながら、宿主細胞の遺伝子においてより頻繁にまたは最も頻繁に使用されるコドンで天然配列の少なくとも1つのコドンを置換することによって、特定の宿主細胞で発現を高めるために核酸配列を改変する工程を含む。例えば、Cas9タンパク質をコードするポリヌクレオチドを、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳動物細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、ハムスター細胞または任意の他の目的の宿主細胞を含む所定の原核細胞または真核細胞において天然に存在する核酸配列に比べて高い使用頻度を有するコドンで置換するように改変することができる。コドン使用表は、例えば「Codon Usage Database」で容易に入手可能である。これらの表は、様々な方法で適応させることができる。参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる、Nakamura et al.(2000)Nucleic Acids Research28:292を参照のこと。特定の宿主における発現のための特定の配列のコドン最適化のためのコンピューターアルゴリズムも利用可能である(例えば、Gene Forgeを参照)。
【0047】
核酸の「相補性」とは、核酸塩基基の配向により、核酸の一方の鎖のヌクレオチド配列が反対側の核酸鎖の別の配列と水素結合を形成することを意味する。DNAの相補的な塩基は通常、AとT及びCとGである。RNAでは、それは通常、CとG及びUとAである。相補性は、完全または実質的/十分であり得る。2つの核酸間の完全な相補性とは、2つの核酸が、二重鎖のすべての塩基がワトソン-クリック対によって相補的な塩基に結合される二重鎖を形成できることを意味する。「実質的」または「十分な」相補性とは、一方の鎖の配列が反対側の鎖の配列に完全及び/または完璧に相補的ではないが、一連のハイブリダイゼーション条件(例えば、塩濃度及び温度)で安定なハイブリッド複合体を形成するのに十分な結合が2つの鎖の塩基間で発生することを意味する。このような条件は、配列及び標準的な数学的計算を使用してハイブリダイズした鎖のTm(融解温度)を予測することによって、または日常的な方法を使用してTmを経験的に決定することによって予測できる。Tmは、2本の核酸鎖間で形成されたハイブリダイゼーション複合体の集団が50%変性する(すなわち、二本鎖核酸分子の集団が半分解離して一本鎖になる)温度を含む。Tm未満の温度では、ハイブリダイゼーション複合体の形成が促進され、Tmを超える温度では、ハイブリダイゼーション複合体中の鎖の融解または分離が促進される。Tmは、例えば、Tm=81.5+0.41(G+C%)を使用して、1MのNaCl水溶液中の既知のG+C含量を有する核酸について推定し得るが、他の既知のTm計算では、核酸の構造的特性が考慮される。
【0048】
本明細書で使用する場合、「併用投与」という語句は、以前に投与された治療薬がまだ体内で有効である間に第2の薬剤が投与される(例えば、2つの薬剤が同時に対象に有効であり、2つの薬剤の相乗効果が含まれ得る)ように、2種類以上の異なる治療薬を投与する任意の形態を指す。
【0049】
「遺伝子」という用語は、産物(例えば、RNA産物及び/またはポリペプチド産物)をコードする染色体内のDNA配列を指し、遺伝子が完全長mRNA(5’非翻訳配列及び3’非翻訳配列を含む)に対応するようにコード領域、コード領域を中断する任意の非コードイントロンならびに5’末端及び3’末端の両方でコード領域に隣接して位置決めされている配列を含む。「遺伝子」という用語はまた、調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー及び転写因子結合部位)、ポリアデニル化シグナル、内部リボソーム進入部位、サイレンサー、絶縁配列、及びマトリックス結合領域を含む、他の非コード配列も含む。これらの配列は、遺伝子のコード領域に近い(例えば、10kb以内)場合もあるか、または離れた部位にあり得、遺伝子の転写及び翻訳のレベルまたは速度に影響を及ぼす。
【0050】
「ガイドRNA」または「gRNA」は、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)に結合し、Casタンパク質を標的DNA内の特定の位置に標的化するRNA分子である。ガイドRNAは、2つのセグメント、「DNAターゲティングセグメント」及び「タンパク質結合セグメント」を含み得る。「セグメント」は、RNA中のヌクレオチドの連続伸長など分子のセクションまたは領域を含む。Cas9のgRNAなどいくつかのgRNAは、2つの別々のRNA分子「アクチベーターRNA」(例えば、tracrRNA)及び「ターゲッターRNA」(例えば、CRISPR RNAまたはcrRNA)を含み得る。他のgRNAは、単一のRNA分子(単一のRNAポリヌクレオチド)であり、「単一分子gRNA」、「シングルガイドRNA」または「sgRNA」とも称され得る。例えば、国際特許第WO2013/176772号、同第WO2014/065596号、同第WO2014/089290号、同第WO2014/093622号、同第WO2014/099750号、同第WO2013/142578号及び同第WO2014/131833号を参照し、これらのそれぞれは参照によりその全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。例えば、Cas9の場合、シングルガイドRNAは、tracrRNAに(例えば、リンカーを介して)融合させたcrRNAを含み得る。例えば、Cpf1の場合、標的配列への結合を達成するために必要なのは、crRNAだけである。「ガイドRNA」及び「gRNA」という用語は、二重分子(すなわち、モジュラー)gRNA及び単一分子gRNAの両方を含む。
【0051】
本明細書で使用する場合、「ガイドRNA標的配列」という用語は、ガイドRNAが相補鎖上でハイブリダイズする配列に対応する(すなわち、配列の逆相補)非相補鎖上の配列を特に指す。すなわち、ガイドRNA標的配列は、PAMに隣接する非相補鎖上の配列を指す(例えば、Cas9の場合、PAMの上流または5’)。ガイドRNA標的配列は、ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントに相当するが、ウラシルの代わりにチミンが含まれている。一例として、SpCas9酵素のガイドRNA標的配列は、非相補鎖上の5’-NGG-3’PAMの上流の配列を指し得る。
【0052】
「脂質粒子」という用語は、治療用核酸(例えば、gRNA)を目的の標的部位(例えば、細胞、組織、臓器など)に送達するために使用できる脂質製剤を含む。
【0053】
「脂質コンジュゲート」という用語は、脂質粒子の凝集を阻害するコンジュゲート脂質を指す。そのような脂質コンジュゲートには、例えば、ジアルキルオキシプロピルに結合したPEG(例えば、PEG-DAAコンジュゲート)、ジアシルグリセロールに結合したPEG(例えば、PEG-DAGコンジュゲート)、コレステロールに結合したPEG、ホスファチジルエタノールアミンに結合したPEG、及びセラミドにコンジュゲートしたPEG(例えば、米国特許第5,885,613号を参照)、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート(例えば、POZ-DAAコンジュゲート)、ポリアミドオリゴマー(例えば、ATTA脂質コンジュゲート)、ならびにこれらの混合物などのPEG-脂質コンジュゲートが含まれるが、これらに限定されない。POZ-脂質コンジュゲートの更なる例は、PCT公開第WO2010/006282号に記載されている。PEGまたはPOZは、脂質に直接コンジュゲートすることができるか、またはリンカー部分を介して脂質に結合し得る。例えば、非エステル含有リンカー部分及びエステル含有リンカー部分を含む、PEGまたはPOZを脂質に結合するのに適した任意のリンカー部分を使用することができる。特定の実施形態において、アミドまたはカルバマートなどの非エステル含有リンカー部分が使用される。
【0054】
本明細書で使用する場合、「NF-κB遺伝子」は、阻害されると細胞内のNF-κBシグナル伝達レベルの低下をもたらす産物をコードする遺伝子である。
【0055】
本明細書で使用する場合、「天然に存在しない」系には、天然に存在する状態から変化または変異しているか、天然的に天然に関連する少なくとも1つの他の構成要素を少なくとも実質的に含まないか、または天然的に関連しない少なくとも1つの他の構成要素と関連している系の1つ以上の構成要素など、ヒトの手の関与を示すあらゆるものが含まれる。例えば、いくつかのCRISPR/Cas系では、天然では一緒に生じないgRNA及びCasタンパク質を含む天然に存在しないCRISPR複合体を使用するか、天然では生じないCasタンパク質を使用するか、または天然では生じないgRNAを使用する。
【0056】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」という表現は、主題化合物を身体の1つの器官または部分から身体の別の器官または部分に搬送または輸送することに関与する液体充填剤もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、もしくは溶媒カプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。
【0057】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、区別なく使用される。これらは、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはその類似体のいずれかである、任意の長さのヌクレオチドの重合形態を指す。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有し得、既知または不明の任意の機能を果たし得る。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、次のとおり、遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義された遺伝子座(複数可)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ、及びプライマーである。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びヌクレオチド類似体などの修飾ヌクレオチドを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーの組立て前またはその後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌクレオチドは、標識成分との結合などによって更に修飾され得る。「組換え」ポリヌクレオチドという用語は、天然には存在しないか、もしくは非天然の配置で別のポリヌクレオチドに結合したゲノム、cDNA、半合成、または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。
【0058】
核酸は、「5’末端」及び「3’末端」を有すると言われている。これは、1つのモノヌクレオチドペントース環の5’ホスファートがホスホジエステル結合を介して一方向に隣の3’酸素に結合するような方法で、モノヌクレオチドが反応してオリゴヌクレオチドを作成するためである。オリゴヌクレオチドの末端は、その5’ホスファートがモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に結合していない場合、「5’末端」と称される。オリゴヌクレオチドの末端は、その3’酸素が別のモノヌクレオチドペントース環の5’ホスファートに結合していない場合、「3’末端」と称される。核酸配列は、より大きなオリゴヌクレオチドの内部にある場合でも、5’末端及び3’末端を有すると言うことができる。線状または環状DNA分子のいずれにおいても、別個の要素は、「下流」もしくは3’要素の「上流」または5’であると称される。
【0059】
「防ぐ」、「防ぐこと」、「防止」などの用語は、疾患、障害もしくは状態を有していないが、発症の危険性がある、もしくは発症する可能性がある対象の疾患、障害または状態を発症する可能性を低下させることを指す。
【0060】
「小分子」という用語は、当技術分野の用語であり、分子量約1000未満または分子量約500未満の分子を含む。一実施形態において、小分子はペプチド結合のみを含むわけではない。別の実施形態において、小分子はオリゴマーではない。活性についてスクリーニングし得る例示的な小分子化合物には、ペプチド、ペプチドミメティック、核酸、炭水化物、有機小分子(例えば、ポリケタイド)(Cane et al.(1998)Science282:63)、及び天然物抽出ライブラリーが含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
「小分子ヘアピン型RNA」または「低分子ヘアピン型RNA」または「shRNA」には、RNA干渉を介して遺伝子発現を停止させるために使用できるタイトなヘアピンターンを作成する、低分子RNA配列が含まれる。本明細書で提供されるshRNAは、化学的に合成されるか、またはDNAプラスミド中の転写カセットから転写され得る。shRNAヘアピン構造は、細胞機構によってsiRNAに切断され、その後、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に結合する。
【0062】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、処置もしくは治療のために選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。本明細書で提供される特定の実施形態において、対象はヒト対象である。本明細書で提供されるいくつかの実施形態において、対象は、がんを有する対象など本明細書で提供される方法を必要とする対象である。
【0063】
「ヌクレアーゼ剤の標的配列」という用語は、ヌクレアーゼ剤によりニックまたは二本鎖切断が誘導されるDNA配列が含まれる。同様に、「DNA結合タンパク質の標的配列」という用語は、DNA結合タンパク質が結合するDNA配列が含まれる。標的配列は、細胞にとって内在性(または、ネイティブ)であり得るか、または標的配列は、細胞にとって外来性であり得る。
【0064】
本明細書で使用する場合、「治療上有効な量」及び「有効量」という語句は、あらゆる医学的処置に適用される合理的な利益/リスク比で対象の細胞の少なくとも亜集団において所望の治療効果をもたらすのに有効な薬剤の量を意味する。
【0065】
対象の疾患を「治療する」または疾患を有する対象を「治療する」とは、疾患の少なくとも1つの症状が軽減されるか、または悪化が防止されるように、対象に薬物治療、例えば薬物の投与を施すことを指す。
【0066】
オートファジー及びNF-κB経路
上述したように、本明細書の開示は、部分的には、オートファジー開始、膜物質の移動またはオートファゴソーム拡大の阻害を含むオートファジー経路の阻害が、がん細胞をTNFα媒介殺傷(例えば、T細胞による)に対して感作させたという発見に基づいている。出願人は、オートファジー経路及びNF-κB経路が免疫療法応答性の重要な調節因子であること、ならびにこれらの経路の阻害ががん治療、特にT細胞指向治療の有効性を高めることを本明細書で示す。
【0067】
したがって、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、本明細書に開示される少なくとも1つの薬剤)を対象に投与することによって、またはがん細胞を接触させることによって、がん細胞をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、薬剤は、オートファジー遺伝子及び/またはNF-κB遺伝子の発現または活性を阻害する。本明細書で使用する場合、「オートファジー遺伝子」は、阻害されると細胞内のオートファジーレベルの低下をもたらす産物をコードする遺伝子を含むが、これに限定されない。オートファジー遺伝子は、例えば、ATG12、WIPI2、RB1CC1、PIK3C3、ATG9A、ATG2A、ATG5、ATG14、EI24、NRBF2、ATG13、TAX1BP1及びATG10であり得る。これらの例示的なオートファジー遺伝子のmRNA、タンパク質及びゲノム(GRCh38.p13一次アセンブリ)配列への例示的なNCBI配列参照を、表1に提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0068】
いくつかの実施形態において、薬剤は、NF-κB遺伝子の発現または活性を阻害する。本明細書で使用する場合、「NF-κB遺伝子」は、阻害されると細胞内のNF-κBシグナル伝達レベルの低下をもたらす産物をコードする遺伝子を含むが、これに限定されない。NF-κB遺伝子は、例えば、CFLAR、UBE2L3、RNF31、IKBKB、MAP3K7、TAB1、RELA、IKKBKG、CHUK、TAB2、TBK1、MAPKAPK2、RBCK1、TRAF2、SHARPINまたはTNFAIP3であり得る。これらの例示的なNF-κB遺伝子のmRNA、タンパク質及びゲノム(GRCh38.p13一次アセンブリ)配列への例示的なNCBI配列参照を、表2に提供する。


【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0069】
他の態様において、がん細胞におけるオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する少なくとも1つの薬剤(例えば、表1もしくは表2の遺伝子などの少なくとも1つのオートファジー遺伝子または少なくとも1つのNF-κB遺伝子を改変する薬剤など本明細書に開示される少なくとも1つの薬剤)を対象に投与することによって、対象におけるがん細胞のTNF-α媒介殺傷を増加させる方法が本明細書に提供される。腫瘍におけるオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、表1もしくは表2の遺伝子などの少なくとも1つのオートファジー遺伝子または少なくとも1つのNF-κB遺伝子を改変する薬剤など本明細書に開示される少なくとも1つの薬剤)を対象に投与することによって、対象の腫瘍をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる、または対象における腫瘍のTNF-α媒介殺傷を増加させる方法も本明細書に開示される。対象のがん細胞及びがん療法(例えば、がん免疫療法)でオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、表1もしくは表2の遺伝子などの少なくとも1つのオートファジー遺伝子または少なくとも1つのNF-κB遺伝子を改変する薬剤など本明細書に開示される少なくとも1つの薬剤)を対象に投与することによって、対象のがんを治療する方法も本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのオートファジー遺伝子及び/またはNF-κB遺伝子を改変することは、遺伝子の発現または活性の減少をもたらす。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのオートファジー遺伝子及び/またはNF-κB遺伝子を改変することは、遺伝子の発現または活性の消失をもたらす。
【0070】
オートファジー及びNF-κB経路の調節因子
CRISPR/Cas系
いくつかの実施形態において、オートファジー遺伝子(例えば、表1のオートファジー遺伝子)もしくはNF-κB遺伝子(例えば、表2のNF-κB遺伝子)の発現または活性を阻害する薬剤、及びその使用が、本明細書で提供される。特定の実施形態において、薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子を改変する薬剤であり得る(例えば、少なくとも1つの遺伝子を改変することは、遺伝子の発現もしくは活性を減少及び/または消失をもたらす)。いくつかの実施形態において、遺伝子の改変は、欠失、挿入、置換またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、改変プロセスは、Casタンパク質の遺伝子への結合を含む。
【0071】
特定の実施形態において、オートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)もしくはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)の発現または活性を阻害する薬剤は、ガイドRNAを含む組成物である。いくつかの実施形態において、薬剤は、ガイドRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む核酸を含む組成物である。ガイドRNAは、遺伝子内の配列を切断または結合するようにCas酵素を誘導するのに効果的であり得、ガイドRNAは、遺伝子内のガイドRNA標的配列を標的とするDNAターゲティングセグメントを含む。いくつかの実施形態において、ガイドRNAは、遺伝子内の二本鎖切断及び一本鎖切断から選択される切断事象を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、ガイドRNA標的配列は、遺伝子の開始コドンを含むか、またはそれに近接している。ガイドRNA標的配列は、開始コドンの約1000、500、400、300、200、100、50、45、40、35、30、25、20、15、10または5ヌクレオチド内であり得る。いくつかの実施形態において、gRNA標的配列は、標的化遺伝子のエクソン1に存在する。いくつかの実施形態において、gRNA標的配列は、標的化遺伝子のエクソン2に存在する。いくつかの実施形態において、オートファジー遺伝子の発現または活性を阻害する薬剤は、複数のガイドRNAを含む組成物である。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、標的化遺伝子の5’末端を標的とする第1のガイドRNA及び標的化遺伝子の3’末端を標的とする第2のガイドRNAを含む(例えば、崩壊を誘導するために)。いくつかの実施形態において、組成物は、標的化遺伝子の機能ドメインを改変または欠失するように設計された二重gRNAを含む。
【0072】
特定の実施形態において、ガイドRNAは、オートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)にハイブリダイズする少なくとも15の連続するヌクレオチドを含む。一例として、少なくとも15の連続するヌクレオチドは、表1もしく表2に提供される遺伝子配列とそれぞれ少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一である表1に列挙されるオートファジー遺伝子または表2に列挙されるNF-κB遺伝子のセグメントにハイブリダイズできる。任意選択で、ガイドRNAは、表1または表2に提供される遺伝子配列の少なくとも15の連続するヌクレオチドにハイブリダイズできる配列を含む。
【0073】
例えば、特定の実施形態において、細胞のゲノム中のオートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)に対する標的化遺伝子改変は、細胞または細胞のゲノムを、オートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)の標的ゲノム遺伝子座内の1つ以上のガイドRNA認識配列にハイブリダイズするCasタンパク質及び1つ以上のガイドRNAに接触させることにより作成され得る。すなわち、細胞のゲノム中のオートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)に対する標的化遺伝子改変は、細胞または細胞のゲノムを、オートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)の標的ゲノム遺伝子座内の1つ以上のガイドRNA標的配列を標的とするCasタンパク質及び1つ以上のガイドRNAに接触させることにより作成され得る。例えば、そのような方法は、オートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)内のガイドRNA標的配列を標的とするCasタンパク質及びガイドRNAに細胞を接触させることを含むことができる。例えば、ガイドRNA標的配列は、オートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)もしくはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙される)の開始コドン、もしくはオートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されるオートファジー遺伝子)もしくはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されるNF-κB遺伝子)の停止コドンを含むか、またはそれに近接することができる。例えば、ガイドRNA標的配列は、開始コドンもしくは終止コドンの約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500または1,000ヌクレオチド内であり得る。いくつかの実施形態において、gRNA標的配列は、標的化遺伝子のエクソン1内にある。いくつかの実施形態において、gRNA標的配列は、標的化遺伝子のエクソン2に存在する。いくつかの実施形態において、オートファジー遺伝子の発現または活性を阻害する薬剤は、複数のガイドRNAを含む組成物である。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、標的化遺伝子の5’末端を標的とする第1のガイドRNA及び標的化遺伝子の3’末端を標的とする第2のガイドRNAを含む(例えば、崩壊を誘導するために)。いくつかの実施形態において、組成物は、標的化遺伝子の機能ドメインを改変または欠失するように設計された二重gRNAを含む。
【0074】
いくつかの方法において、2つ以上のヌクレアーゼ剤を使用することができる。例えば、それぞれが開始コドンを含むか、またはこれに近接するヌクレアーゼ標的配列を標的とする、2つ以上のヌクレアーゼ剤を使用することができる。別の例として、1つが開始コドンを含むか、またはこれに近接するヌクレアーゼ標的配列を標的とし、1つが終止コドンを含むか、またはこれに近接するヌクレアーゼ標的配列を標的とする2つのヌクレアーゼ剤を使用することができ、ヌクレアーゼ剤による切断により、2つのヌクレアーゼ標的配列間のコード領域を欠失させることができる。更に別の例として、1つ以上(例えば2つ)が開始コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ標的配列を標的とし、1つ以上(例えば2つ)が終止コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ標的配列を標的とする3つ以上のヌクレアーゼ剤を使用することができ、ヌクレアーゼ剤による切断により、開始コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ標的配列と、終止コドンを含むかまたはそれに近接するヌクレアーゼ標的配列の間のコード領域を欠失させることができる。
【0075】
例示的なオートファジー遺伝子を標的とするのに有用な例示的なsgRNA配列(遺伝子名、sgRNA ID、該当する場合sgRNA番号及び配列)には、Rb1cc1、MGLibA_44688、1、AGAGTGTGTACTTACAGCGC(配列番号38);Rb1cc1、MGLibA_44689、2、CTGAACGTGGCAAAGAACTT(配列番号39);Rb1cc1、MGLibA_44690、3、TCAAGATAGACCCAATGATG(配列番号40);Rb1cc1、MGLibB_44675、4、CTCCATTGACCACCAGAACC(配列番号41);Rb1cc1、MGLibB_44676、5、ATTTGAACAGTCCTCCAGAT(配列番号42);Rb1cc1、MGLibB_44677、6、CTTTAGGAATAGCAGGTGCA(配列番号43);Atg9a、MGLibA_05661、1、CATAGTCCACACAGCTAACC(配列番号44);Atg9a、MGLibA_05662、2、TTGGGATCCGAAGAGCATGT(配列番号45);Atg9a、MGLibA05663、3、CTGCCCAAGTCTGTAGTGCC(配列番号46);Atg9a、MGLibB_05661、4、TCTATAACATTTGCTGCTAT(配列番号47);Atg9a、MGLibB_05662、5、TACATGTGAAGCCATTCTTC(配列番号48);Atg9a、MGLibB_05663、6、AGGATATTCGAGAGAAGAAG(配列番号49);Atg12、MGLibA_05619、1、TGCAGTTTCGCCCGGAACGG(配列番号50);Atg12、MGLibA_05620、2、CTCTGGAAGGCTCTCGCCGC(配列番号51);Atg12、MGLibA_05621、3、GAGCGAACCCGGACCATCCA(配列番号52);Atg12、MGLibB_05619、4、TCATCATACCAACTGTTCCG(配列番号53);Atg12、MGLibB_05620、5、CCTGCATTACTGCAAATCCC(配列番号54)及びAtg12、MGLibB_05621、6、TTCTGGCTCATCCCCATGCC(配列番号55)が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
例示的なNF-κB遺伝子を標的とするのに有用な例示的なsgRNA配列(遺伝子名、sgRNA ID、該当する場合sgRNA番号及び配列)には、Map3k7、MGLibA_30286、1、GATGATCGAAGCGCCGTCGC(配列番号16);Map3k7、MGLibA_30287、2、CGGCGCTTCGATCATCTCAC(配列番号17);Map3k7、MGLibA_30288、3、GGGACTTACTGGATTCAGGC(配列番号18);Map3k7、MGLibB_30277、4、GAGTAGTTTGCAAAGCTAAG(配列番号19);Map3k7、MGLibB_30278、5、TTAACTCAGGTTGTCGGAAG(配列番号20);Map3k7、MGLibB_30279、6、GAGGGGGGCTCATTGTATAA(配列番号21);Rbck1、MGLibA_44718、1、AGTACGCCCGGATATGACAG(配列番号22);Rbck1、MGLibA_44719、2、ACGTGTTGCGGGCTGACAGC(配列番号23);Rbck1、MGLibA_44720、3、CAGCTTACCGGTGGTGACTC(配列番号24);Rbck1、MGLibB_44705、4、AACCTGTCCTTCCGAAGCCC(配列番号25);Rbck1、MGLibB_44706、5、CGGGCGTACTGTGAGCCAAA(配列番号26);Rbck1、MGLibB_44707、6、CTGCTATCAAGTATGCCACC(配列番号27);Rela、MGLibA_45072、1、GCGATTCCGCTATAAATGCG(配列番号28);Rela、MGLibA_45073、2、TCATCGAACAGCCGAAGCAA(配列番号29);Rela、MGLibA_45074、3、GCCCAGACCGCAGTATCCAT(配列番号30);Rela、MGLibB_45059、4、CTGCCGGGATGGCTACTATG(配列番号31);Rela、MGLibB_45060、5、ACCGTGAAAGGGGTTATTGT(配列番号32)及びRela、MGLibB_45061、6、ACTTACCTGAGGGAAAGATG(配列番号33)が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態において、ガイドRNAは、DNAターゲティングセグメント及びトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)を含む、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)RNA(crRNA)を含み得る。ガイドRNAは、crRNA及びtracrRNAが互いにハイブリダイズする別個の分子であるモジュラーガイドRNAであり得る。
【0078】
いくつかの実施形態において、組成物は、Casタンパク質またはCasタンパク質をコードする核酸配列(例えば、転写抑制因子ドメインに融合したヌクレアーゼ活性Casタンパク質またはヌクレアーゼ不活性Casタンパク質)を更に含む。Casタンパク質は、Cas9タンパク質であり得る。Cas9分子は、S.aureus Cas9タンパク質、S.pyogenes Cas9タンパク質、またはN.meningitidis Cas9タンパク質であり得る。
【0079】
特定の実施形態において、本明細書に開示する方法及び組成物は、細胞内のゲノムを改変するために、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)系またはそのような系の構成要素を利用することができる。CRISPR/Cas系は、Cas遺伝子の発現に関与するか、またはその活性を誘導する転写産物及び他の要素を含む。CRISPR/Cas系は、例えば、I型、II型、III型系またはV型系(例えば、V-A亜型またはV-B亜型)であり得る。本明細書に開示する方法及び組成物は、核酸の部位特異的結合または切断のためにCRISPR複合体(Casタンパク質と複合体化したガイドRNA(gRNA)を含む)を利用することによりCRISPR/Cas系を使用することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示する組成物及び方法で使用するCRISPR/Cas系は、天然に存在しないものであり得る。
【0080】
A.Casタンパク質
いくつかの実施形態において、Casタンパク質は、一般に、ガイドRNAと相互作用することができる少なくとも1つのRNA認識ドメインまたはRNA結合ドメインを含む。Casタンパク質はまた、ヌクレアーゼドメイン(例えば、DNaseドメインまたはRNaseドメイン)、DNA結合ドメイン、ヘリカーゼドメイン、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン、二量体化ドメイン、及び他のドメインを含み得る。いくつかのそのようなドメイン(例えば、DNaseドメイン)は、天然のCasタンパク質に由来し得る。他のそのようなドメインを追加して、改変Casタンパク質を作成できる。ヌクレアーゼドメインは、核酸分子の共有結合の切断を含む、核酸切断のための触媒活性を保有している。切断により、平滑末端または付着末端を生成することができ、それは一本鎖または二本鎖であり得る。例えば、野生型Cas9タンパク質は、通常、平滑切断産物を生成する。あるいは、野生型Cpf1タンパク質(例えば、FnCpf1)は、非標的鎖のPAM配列から18番目の塩基対の後、及び標的鎖の23番目の塩基の後に切断が生じた5ヌクレオチドの5’オーバーハングを有する切断産物をもたらし得る。Casタンパク質は、標的ゲノム遺伝子座に二本鎖切断(例えば、平滑末端を有する二本鎖切断)を生じる完全な切断活性を有し得るか、または標的ゲノム遺伝子座に一本鎖切断を生じるニッカーゼであり得る。
【0081】
Casタンパク質の例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(CasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9(Csn1またはCsx12)、Cas10、Casl0d、CasF、CasG、CasH、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1(CasA)、Cse2(CasB)、Cse3(CasE)、Cse4(CasC)、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、及びCu1966、ならびにその相同体または改変体が挙げられる。
【0082】
例示的なCasタンパク質は、Cas9タンパク質またはCas9タンパク質由来のタンパク質である。Cas9タンパク質は、II型CRISPR/Cas系に由来し、通常、保存されたアーキテクチャを有する4つの重要なモチーフを共有している。モチーフ1、2及び4はRuvC様モチーフであり、モチーフ3はHNHモチーフである。例示的なCas9タンパク質は、Streptococcus pyogenes、Streptococcus thermophilus、Streptococcus種、Staphylococcus aureus、Nocardiopsis dassonvillei、Streptomyces pristinaespiralis、Streptomyces viridochromogenes、Streptomyces viridochromogenes、Streptosporangium roseum、Streptosporangium roseum、Alicyclobacillus acidocaldarius、Bacillus pseudomycoides、Bacillus selenitireducens、Exiguobacterium sibiricum、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus salivarius、Microscilla marina、Burkholderiales bacterium、Polaromonas naphthalenivorans、Polaromonas種、Crocosphaera watsonii、Cyanothece種、Microcystis aeruginosa、Synechococcus種、Acetohalobium arabaticum、Ammonifex degensii、Caldicelulosiruptor becscii、Candidatus Desulforudis、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、Finegoldia magna、Natranaerobius thermophilus、Pelotomaculum thermopropionicum、Acidithiobacillus caldus、Acidithiobacillus ferrooxidans、Allochromatium vinosum、Marinobacter種、Nitrosococcus halophilus、Nitrosococcus watsoni、Pseudoalteromonas haloplanktis、Ktedonobacter racemifer、Methanohalobium evestigatum、Anabaena variabilis、Nodularia spumigena、Nostoc種、Arthrospira maxima、Arthrospira platensis、Arthrospira種、Lyngbya種、Microcoleus chthonoplastes、Oscillatoria種、Petrotoga mobilis、Thermosipho africanus、Acaryochloris marina、Neisseria meningitidisまたはCampylobacter jejuni由来のものである。Cas9ファミリーメンバーの追加の例は、国際特許第WO2014/131833号に記載されており、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。S.pyogenes由来のCas9(SpCas9)(SwissProt登録番号Q99ZW2を付与)は、例示的なCas9タンパク質である。S.aureus由来のCas9(SaCas9)(UniProt登録番号J7RUA5を付与)は、別の例示的なCas9タンパク質である。Campylobacter jejuni由来のCas9(CjCas9)(UniProt登録番号Q0P897を付与)は、別の例示的なCas9タンパク質である。例えば、Kim et al.(2017)Nat.Commun.8:14500を参照し、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。SaCas9はSpCas9より小さく、CjCas9は、SaCas9及びSpCas9の両方より小さい。
【0083】
Casタンパク質の別の例は、Cpf1(Prevotella及びFrancisella1由来のCRISPR)タンパク質である。Cpf1は大きなタンパク質(約1300アミノ酸)であり、Cas9の対応するドメインに相同なRuvC様のヌクレアーゼドメインと、Cas9の特徴的なアルギニンリッチクラスターの対応物を有する。しかしながら、Cpf1には、Cas9タンパク質に存在するHNHヌクレアーゼドメインがなく、RuvC様ドメインは、HNHドメインを含む長いインサートを含むCas9とは対照的に、Cpf1配列内で連続している。例えば、Zetsche et al.(2015)Cell163(3):759-771を参照し、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。例示的なCpf1タンパク質は、Francisella tularensis 1、Francisella tularensis亜種novicida、Prevotella albensis、Lachnospiraceae bacterium MC2017 1、Butyrivibrio proteoclasticus、Peregrinibacteria bacterium GW2011_GWA2_33_10、Parcubacteria bacterium GW2011_GWC2_44_17、Smithella種SCADC、Acidaminococcus種BV3L6、Lachnospiraceae bacterium MA2020、Candidatus Methanoplasma termitum、Eubacterium eligens、Moraxella bovoculi 237、Leptospira inadai、Lachnospiraceae bacterium ND2006、Porphyromonas crevioricanis 3、Prevotella disiens、及びPorphyromonas macacae由来のものである。Francisella novicida U112由来のCpf1(FnCpf1;割り当てられたUniProt登録番号A0Q7Q2)は、例示的なCpf1タンパク質である。
【0084】
Casタンパク質は、野生型タンパク質(すなわち、自然界に存在するもの)、改変型Casタンパク質(すなわち、Casタンパク質バリアント)、または野生型もしくは改変型Casタンパク質の断片であり得る。Casタンパク質はまた、野生型または改変型Casタンパク質の触媒活性に関する活性型バリアントまたは断片であり得る。触媒活性に関する活性型バリアントまたは断片は、野生型もしくは改変型Casタンパク質またはその部分と、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性を含むことができ、活性型バリアントは所望の切断部位で切断する能力を保持し、したがってニック誘導活性または二本鎖切断誘導活性を保持している。ニック誘導活性または二本鎖切断誘導活性のアッセイは公知であり、一般的にそれは、切断部位を含むDNA基質上のCasタンパク質の全体的な活性と特異性を測定する。
【0085】
改変されたCasタンパク質の一例は、非特異的なDNA接触を減らすように設計された改変(N497A/R661A/Q695A/Q926A)を保有するStreptococcus pyogenes Cas9の高忠実度バリアントである、改変されたSpCas9-HF1タンパク質である。例えば、Kleinstiver et al.(2016)Nature529(7587):490-495を参照し、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。改変されたCasタンパク質の別の例は、非特異的な効果を減らすように設計された改変されたeSpCas9バリアント(K848A/K1003A/R1060A)である。例えば、Slaymaker et al.(2016)Science351(6268):84-88を参照し、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。他のSpCas9バリアントには、K855A及びK810A/K1003A/R1060Aが含まれる。
【0086】
Casタンパク質は、核酸結合親和性、核酸結合特異性及び酵素活性のうちの1つ以上を増加または減少させるように改変することができる。Casタンパク質はまた、安定性などタンパク質の任意の他の活性または特性を変更するために改変することもできる。例えば、Casタンパク質の1つ以上のヌクレアーゼドメインを改変、欠失もしくは不活性化することができるか、またはタンパク質の機能に必須ではないドメインを除去するため、もしくはCasタンパク質の活性または特性を最適化する(例えば、増強または低減する)ためにCasタンパク質を切断することができる。
【0087】
Casタンパク質は、DNaseドメインなどの少なくとも1つのヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、野生型Cpf1タンパク質は一般的に、おそらくは二量体構成で、標的DNAの両方の鎖を切断するRuvC様ドメインを含む。Casタンパク質はまた、DNaseドメインなどの少なくとも2つのヌクレアーゼドメインを含み得る。例えば、野生型Cas9タンパク質は一般的に、RuvC様ヌクレアーゼドメインとHNH様ヌクレアーゼドメインを含む。RuvC及びHNHドメインはそれぞれ、二本鎖DNAの異なる鎖を切断して、DNAの二本鎖切断を行うことができる。例えば、Jinek et al.(2012)Science337(6096):816-821を参照し、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0088】
ヌクレアーゼドメインがもはや機能しないか、またはヌクレアーゼ活性を低下させるように、ヌクレアーゼドメインの1つ以上またはすべてを、欠失または変異させることができる。例えば、ヌクレアーゼドメインのうちの1つがCas9タンパク質で欠失または変異されている場合、結果として生じるCas9タンパク質はニッカーゼと称され得、二本鎖ターゲットDNA内に一本鎖切断を生成できるが、二本鎖切断は生成できない(すなわち、相補鎖または非相補鎖を切断できるが、両方は切断できない)。両方のヌクレアーゼドメインが欠失または変異されている場合、結果として得られるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力が低下する(例えば、ヌクレアーゼ無もしくはヌクレアーゼ不活性Casタンパク質、または触媒活性を伴わないCasタンパク質(dCas))。Cas9をニッカーゼに変換する突然変異の例は、S.pyogenes由来のCas9のRuvCドメインにおけるD10A(Cas9の10位でアスパラギン酸からアラニンへ)突然変異である。同様に、S.pyogenes由来のCas9のHNHドメイン内のH939A(アミノ酸位置839でヒスチジンからアラニンへ)、H840A(アミノ酸位置840でヒスチジンからアラニンへ)、またはN863A(アミノ酸位置N863でアスパラギンからアラニンへ)は、Cas9をニッカーゼに変換できる。Cas9をニッカーゼに変換する突然変異の他の例には、S.thermophilus由来のCas9への対応する突然変異が含まれる。例えば、Sapranauskas et al.(2011)Nucleic Acids Res.39(21):9275-9282及び国際特許第WO2013/141680号を参照し、そのそれぞれは、参照によりあらゆる目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。このような突然変異は、部位特異的変異誘発、PCR媒介変異誘発、または全遺伝子合成などの方法を使用して生成することができる。ニッカーゼを作成する他の突然変異の例は、例えば、国際特許第WO2013/176772号及び同第WO2013/142578号で見いだすことができ、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。すべてのヌクレアーゼドメインがCasタンパク質で欠失または変異されている場合(例えば、Cas9タンパク質で両方のヌクレアーゼドメインが欠失または変異されている場合)、結果として得られるCasタンパク質(例えば、Cas9)は、二本鎖DNAの両方の鎖を切断する能力が低下する(例えば、ヌクレアーゼ無またはヌクレアーゼ不活性Casタンパク質)。1つの具体例は、D10A/H840A S.pyogenes Cas9二重変異体、またはS.pyogenes Cas9と最適に整列した場合の別の種のCas9の対応する二重変異体である。別の具体例は、D10A/N863A S.pyogenes Cas9二重変異体、またはS.pyogenes Cas9と最適に整列した場合の別の種のCas9の対応する二重変異体である。
【0089】
Staphylococcus aureus Cas9タンパク質の触媒ドメインにおける不活性化する突然変異の例も、知られている。例えば、Staphyloccocus aureus Cas9酵素(SaCas9)は、ヌクレアーゼ不活性Casタンパク質を生成するために、N580位での置換(例えば、N580A置換)及びD10位での置換(例えば、D10A置換)を含み得る。例えば、国際特許第WO2016/106236号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
Cpf1タンパク質の触媒ドメインにおける不活性化する突然変異の例も、知られている。Francisella novicida U112(FnCpf1)、Acidaminococcus sp.BV3L6(AsCpf1)、Lachnospiraceae bacterium ND2006(LbCpf1)、及びMoraxella bovoculi237(MbCpf1 Cpf1)由来のCpf1タンパク質に関連して、そのような変異には、AsCpf1の908、993もしくは1263位、もしくはCpf1オルソログの対応する位置、またはLbCpf1の832、925、947もしくは1180位、もしくはCpf1オルソログの対応する位置の突然変異が含まれ得る。そのような突然変異は、例えば、AsCpf1の突然変異D908A、E993A及びD1263AもしくはCpf1オルソログの対応する突然変異、またはLbCpf1のD832A、E925A、D947A及びD1180AもしくはCpf1オルソログの対応する突然変異のうちの1つ以上を含み得る。例えば、米国特許第2016/0208243号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0091】
Casタンパク質を、融合タンパク質として異種ポリペプチドに作動可能に連結することもできる。例えば、Casタンパク質を、切断ドメイン、エピジェネティック修飾ドメイン、転写活性化ドメイン、または転写抑制因子ドメインに融合させることができる。例えば、国際特許第WO2014/089290号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。転写活性化ドメインの例として、単純ヘルペスウイルスVP16活性化ドメイン、VP64(VP16の四量体誘導体)、NFκB p65活性化ドメイン、p53活性化ドメイン1及び2、CREB(cAMP応答エレメント結合タンパク質)活性化ドメイン、E2A活性化ドメイン、ならびにNFAT(活性化T細胞の核因子)活性化ドメインが挙げられる。他の例として、Oct1、Oct-2A、SP1、AP-2、CTF1、P300、CBP、PCAF、SRC1、PvALF、ERF-2、OsGAI、HALF-1、C1、AP1、ARF-5、ARF-6、ARF-7、ARF-8、CPRF1、CPRF4、MYC-RP/GP、TRAB1PC4、及びHSF1由来の活性化ドメインが挙げられる。例えば、米国特許第2016/0237456号、欧州特許第3045537号、及び国際特許第WO2011/146121を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。場合によっては、MS2-p65-HSF1と対になったdCas9-VP64融合タンパク質を含む転写活性化系を使用することができる。そのような系のガイドRNAは、sgRNAテトラループにアプタマー配列を付加し、ステムループ2を二量体化MS2バクテリオファージコートタンパク質に結合するように設計することができる。例えば、Konermann et al.(2015)Nature517(7536):583-588を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。転写抑制因子ドメインの例として、誘導性cAMP初期抑制因子(ICER)ドメイン、Kruppel関連ボックスA(KRAB-A)抑制因子ドメイン、YY1グリシンリッチ抑制因子ドメイン、Sp1様抑制因子、E(spl)抑制因子、ΙκΒ抑制因子、及びMeCP2が挙げられる。他の例として、A/B、KOX、TGF-β誘導性初期遺伝子(TIEG)、v-erbA、SID、SID4X、MBD2、MBD3、DNMT1、DNMG3A、DNMT3B、Rb、ROM2由来の転写抑制ドメインが挙げられる。例えば、欧州特許第3045537号及び国際特許第WO2011/146121号を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。Casタンパク質はまた、安定性の増加または減少を提供する異種ポリペプチドに融合させることができる。融合ドメインまたは異種ポリペプチドは、Casタンパク質のN末端、C末端、または内部に配置することができる。
【0092】
一例として、Casタンパク質は、細胞内局在化を提供する1つ以上の異種ポリペプチドに融合できる。そのような異種ポリペプチドは、例えば、1つ以上の核局在化シグナル(NLS)、例えば、核を標的とする単節型SV40 NLS及び/また双節型αインポーチンNLS、ミトコンドリアを標的とするミトコンドリア局在化シグナル、ER保持シグナルなどを含み得る。例えば、Lange et al.(2007)J.Biol.Chem.282(8):5101-5105を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。そのような細胞内局在シグナルは、N末端、C末端、またはCasタンパク質内の任意の場所に配置することができる。NLSには、一連の塩基性アミノ酸を含ませることができ、単節型配列または双節型配列であり得る。任意選択で、Casタンパク質は、N末端のNLS(例えば、αインポーチンNLSまたは単節型NLS)及びC末端のNLS(例えば、SV40 NLSまたは双節型NLS)を含む2つ以上のNLSを含むことができる。Casタンパク質はまた、N末端に2つ以上のNLS及び/またはC末端に2つ以上のNLSを含むことができる。
【0093】
Casタンパク質はまた、細胞透過性ドメインまたはタンパク質形質導入ドメインに作動可能に連結することができる。例えば、細胞透過性ドメインは、HIV-1 TATタンパク質、ヒトB型肝炎ウイルス由来TLM細胞透過性モチーフ、MPG、Pep-1、VP22、単純ヘルペスウイルス由来細胞透過性ペプチド、またはポリアルギニンペプチド配列由来のものであり得る。例えば、国際特許第WO2014/089290号及び国際特許第WO2013/176772号を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。細胞透過性ドメインは、N末端、C末端、またはCasタンパク質内の任意の場所に配置することができる。
【0094】
Casタンパク質はまた、追跡または精製を容易にするために、蛍光タンパク質、精製タグ、またはエピトープタグなどの異種ポリペプチドに作動可能に連結することができる。蛍光タンパク質の例として、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、eGFP、Emerald、Azami Green、モノマー型Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreen1)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、eYFP、Citrine、Venus、YPet、PhiYFP、ZsYellow1)、青色蛍光タンパク質(eBFP、eBFP2、Azurite、mKalamal、GFPuv、Sapphire、T-Sapphire)、シアン蛍光タンパク質(例えば、eCFP、Cerulean、CyPet、AmCyan1、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRedモノマー、mCherry、mRFP1、DsRed-Express、DsRed2、DsRed-Monomer、HcRed-Tandem、HcRed1、AsRed2、eqFP611、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、橙色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、モノマー型Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)、及び任意の他の適切な蛍光タンパク質が挙げられる。タグの例として、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン(TRX)、ポリ(NANP)、タンデムアフィニティー精製(TAP)タグ、myc、AcV5、AU1、AU5、E、ECS、E2、FLAG、赤血球凝集素(HA)、nus、Softag1、Softag3、Strep、SBP、Glu-Glu、HSV、KT3、S、S1、T7、V5、VSV-G、ヒスチジン(His)、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)、及びカルモジュリンが挙げられる。
【0095】
また、Casタンパク質を、標識した核酸に係留することもできる。そのような係留(すなわち、物理的連結)は、共有相互作用または非共有相互作用を通じて達成することができ、係留は、直接的であり得るか(例えば、直接的融合によって、あるいはタンパク質のシステインもしくはリジン残基の修飾またはインテイン修飾により達成できる化学的結合によって)、またはストレプトアビジンもしくはアプタマーなどの1つ以上の介在リンカーもしくはアダプター分子を介して達成することができる。例えば、Pierce et al.(2005)Mini Rev.Med.Chem.5(1):41-55;Duckworth et al.(2007)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.46(46):8819-8822;Schaeffer and Dixon(2009)Australian J.Chem.62(10):1328-1332;Goodman et al.(2009)Chembiochem.10(9):1551-1557;及びKhatwani et al.(2012)Bioorg.Med.Chem.20(14):4532-4539を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。タンパク質-核酸コンジュゲートを合成するための非共有結合型の戦略として、ビオチン-ストレプトアビジン法及びニッケル-ヒスチジン法が挙げられる。適切に官能化した核酸及びタンパク質を多種多様な化学を使用して結合させることにより、共有結合型のタンパク質-核酸コンジュゲートを合成することができる。これらの化学のいくつかでは、タンパク質表面のアミノ酸残基へのオリゴヌクレオチドの直接的な付加が伴う(例えば、リジンアミンまたはシステインチオール)が、一方で他のより複雑なスキームでは、タンパク質の翻訳後修飾またはタンパク質の触媒ドメインもしくは反応性ドメインの関与が必要である。タンパク質を核酸に共有結合させる方法として、例えば、オリゴヌクレオチドと、タンパク質のリシンまたはシステイン残基との化学的架橋、発現させるタンパク質のライゲーション、化学酵素法、及び光アプタマーの使用が挙げられ得る。標識化核酸を、C末端、N末端またはCasタンパク質内の内部領域に係留することができる。一例において、標識化核酸を、Casタンパク質のC末端またはN末端に係留する。同様に、Casタンパク質を、5’末端、3’末端、または標識化核酸内の内部領域に係留することができる。すなわち、標識化核酸は、任意の配向及び極性で係留することができる。例えば、Casタンパク質を、標識化核酸の5’末端または3’末端に係留することができる。
【0096】
Casタンパク質は、任意の形態で提供することができる。例えば、Casタンパク質を、タンパク質、例えばgRNAと複合体化したCasタンパク質の形態で提供することができる。あるいは、Casタンパク質を、Casタンパク質をコードする核酸、例えば、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))またはDNAの形態で提供することができる。任意選択で、Casタンパク質をコードする核酸を、特定の細胞または生物においてタンパク質へ効率的に翻訳させるために、コドン最適化することができる。例えば、Casタンパク質をコードする核酸を、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、または任意の他の目的の宿主細胞において天然のポリヌクレオチド配列に比べて高い使用頻度を有するコドンで置換するように改変することができる。Casタンパク質をコードする核酸を細胞に導入する場合、Casタンパク質は、細胞内で、一時的に、条件的に、または構成的に発現する。
【0097】
mRNAとして提供されるCasタンパク質は、安定性及び/または免疫原性特性を向上させるために修飾することができる。修飾は、mRNA内の1つ以上のヌクレオシドに対して行うことができる。mRNA核酸塩基に対する化学修飾の例には、プソイドウリジン、1-メチル-プソイドウリジン、及び5-メチル-シチジンが含まれる。例えば、N1-メチルプソイドウリジンを含有するキャッピングされかつポリアデニル化されたCas mRNAを使用することができる。同様に、同義コドンを使用してウリジンを除去することにより、Cas mRNAを修飾することができる。
【0098】
Casタンパク質をコードする核酸を、細胞のゲノムに安定的に組み込み、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結することができる。あるいは、Casタンパク質をコードする核酸を、発現構築物のプロモーターに作動可能に連結することができる。発現構築物には、遺伝子または他の目的の核酸配列(例えば、Cas遺伝子)の発現を誘導することができ、そのような目的の核酸配列を標的細胞に移入することができる任意の核酸構築物が含まれる。例えば、Casタンパク質をコードする核酸は、gRNAをコードするDNAを含むベクター内にあり得る。あるいは、それは、gRNAをコードするDNAを含むベクターとは別個のベクターまたはプラスミド内にあり得る。発現構築物に使用することができるプロモーターとして、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、非ヒト哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生的に制限された前駆細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、または1細胞ステージ胚のうちの1つ以上の活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件的プロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであり得る。任意選択で、プロモーターは、一方の向きへのCasタンパク質と、他方の向きへのガイドRNAの両方の発現を駆動する双方向性プロモーターであり得る。そのような双方向性プロモーターは、1)3つの外部制御エレメント:遠位配列エレメント(DSE)、近位配列エレメント(PSE)、及びTATAボックスを含む完全な従来型の単方向性Pol IIIプロモーター、及び2)PSE及びDSEの5’末端に逆方向に融合したTATAボックスを含む第2の基本的なPol IIIプロモーターからなり得る。例えば、H1プロモーターでは、DSEはPSE及びTATAボックスに隣接しており、U6プロモーター由来のPSE及びTATAボックスを追加することによって逆方向の転写を制御するハイブリッドプロモーターを作成することにより、プロモーターを双方向性にすることができる。例えば、米国特許第2016/0074535号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。双方向性プロモーターの使用により、Casタンパク質及びガイドRNAをコードする遺伝子を同時に発現させ、コンパクトな発現カセットを生成して送達を促進することができる。
【0099】
B.ガイドRNA
ガイドRNAは、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質)に結合し、Casタンパク質を標的DNA内の特定の位置に標的化するRNA分子である。例示的な二分子gRNAは、crRNA様(「CRISPR RNA」または「ターゲッターRNA」または「crRNA」または「crRNAリピート」)分子、及び対応するtracrRNA様(「トランス作用性CRISPR RNA」または「活性化因子RNA」または「tracrRNA」)分子を含む。crRNAは、gRNAのDNAターゲティングセグメント(一本鎖)、及びgRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の半分を形成する一連のヌクレオチドの両方を含む。DNAターゲティングセグメントの下流(3’)に位置付けられるcrRNAテールの例は、GUUUUAGAGCUAUGCU(配列番号1)を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。本明細書に開示されるDNAターゲティングセグメントのいずれも、配列番号2の5’末端に結合してcrRNAを形成することができる。
【0100】
対応するtracrRNA(活性化因子RNA)は、gRNAのタンパク質結合セグメントのdsRNA二重鎖の残りの半分を形成する一連のヌクレオチドを含む。一連のcrRNAのヌクレオチドは、一連のtracrRNAのヌクレオチドに相補的であり、一連のtracrRNAのヌクレオチドとハイブリダイズして、gRNAのタンパク質結合ドメインのdsRNA二重鎖を形成する。そのため、各crRNAは、対応するtracrRNAを有すると言うことができる。tracrRNA配列の例は、AGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUU(配列番号3)、AAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(配列番号4)、もしくはGUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(配列番号5)のうちのいずれか1つを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。
【0101】
crRNA及びtracrRNAの両方が必要な系では、crRNA及び対応するtracrRNAがハイブリダイズしてgRNAを形成する。crRNAのみが必要な系では、crRNAはgRNAであり得る。crRNAは、標的DNAの相補鎖にハイブリダイズする一本鎖DNAターゲティングセグメントを更に提供する。細胞内の修飾に使用される場合、特定のcrRNAまたはtracrRNA分子の正確な配列は、RNA分子が使用される種に特異的になるように設計され得る。例えば、Mali et al.(2013)Science339(6121):823-826;Jinek et al.(2012)Science337(6096):816-821;Hwang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31(3):227-229;Jiang et al.(2013)Nat.Biotechnol.31(3):233-239及びCong et al.(2013)Science339(6121):819-823を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0102】
特定のgRNAのDNAターゲティングセグメント(crRNA)は、以下でより詳細に説明するように、標的DNAの相補鎖上の配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。gRNAのDNAターゲティングセグメントは、ハイブリダイゼーション(すなわち、塩基の対形成)を介して、配列特異的な方法で標的DNAと相互作用する。そのため、DNAターゲティングセグメントのヌクレオチド配列は、様々に異なり得、gRNAと標的DNAが相互作用する標的DNA内の位置を決定する。対象gRNAのDNAターゲティングセグメントを、標的DNA内の任意の所望の配列にハイブリダイズするように改変することができる。天然のcrRNAは、CRISPR/Cas系及び生物によって異なるが、多くの場合、21~46の間のヌクレオチド長の2つの直列反復配列(DR)が隣接する21~72ヌクレオチド長のターゲティングセグメントを含む(国際特許第WO2014/131833号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)。S.pyogenesの場合、DRは36ヌクレオチド長であり、ターゲティングセグメントは30ヌクレオチド長である。3’に位置するDRは、対応するtracrRNAに相補的であり、対応するtracrRNAとハイブリダイズし、次いでCasタンパク質に結合する。
【0103】
DNAターゲティングセグメントは、例えば、少なくとも約12、15、17、18、19、20、25、30、35または40ヌクレオチド長を有することができる。そのようなDNAターゲティングセグメントは、例えば、約12~約100、約12~約80、約12~約50、約12~約40、約12~約30、約12~約25または約12~約20ヌクレオチドの長さを有することができる。例えば、DNAターゲティングセグメントは、約15~約25ヌクレオチド(例えば、約17~約20ヌクレオチド、または約17、約18、約19もしくは約20ヌクレオチド)であり得る。例えば、米国特許第2016/0024523号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。S.pyogenes由来のCas9の場合、一般的なDNAターゲティングセグメントは、16と20の間のヌクレオチド長または17と20の間のヌクレオチド長である。S.aureus由来のCas9の場合、一般的なDNAターゲティングセグメントは、21と23の間のヌクレオチド長である。Cpf1の場合、一般的なDNAターゲティングセグメントは、少なくとも16ヌクレオチド長または少なくとも18ヌクレオチド長である。
【0104】
TracrRNAは、任意の形態(例えば、完全長tracrRNAまたは活性部分tracrRNA)であり得、長さは様々であり得る。それらには、一次転写産物またはプロセッシング形態を含むことができる。例えば、tracrRNA(単一ガイドRNAの一部として、または二分子gRNAの一部として別個の分子として)は、野生型tracrRNA配列のすべてもしくは一部(例えば、野生型tracrRNA配列の約20、26、32、45、48、54、63、67、85またはそれ以上のヌクレオチド)を含み得る、それから本質的になる、またはそれからなり得る。S.pyogenes由来の野生型tracrRNA配列の例には、171ヌクレオチド、89ヌクレオチド、75ヌクレオチド、及び65ヌクレオチドバージョンが含まれる。例えば、Deltcheva et al.(2011)Nature471(7340):602-607、国際特許第WO2014/093661号を参照し、そのそれぞれは、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。シングルガイドRNA(sgRNA)内のtracrRNAの例には、sgRNAの+48、+54、+67及び+85バージョン内に見いだされるtracrRNAが含まれ、「+n」は、野生型tracrRNAの+nヌクレオチドまでがsgRNAに含まれることを示す。例えば、米国特許第8,697,359号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0105】
ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントと標的DNAの相補鎖との間の相補性の割合は、少なくとも60%(例えば、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)であり得る。標的DNAのDNAターゲティングセグメントと相補鎖との間の相補性の割合は、約20の連続ヌクレオチドにわたって少なくとも60%であり得る。例として、標的DNAのDNAターゲティングセグメントと相補鎖との間の相補性の割合は、標的DNAの相補鎖の5’末端の14の連続ヌクレオチドにわたって約100%であり得、残部にわたっては0%と低い場合がある。そのような場合、DNAターゲティングセグメントは、14ヌクレオチド長とみなすことができる。別の例として、標的DNAのDNAターゲティングセグメントと相補鎖との間の相補性の割合は、標的DNAの相補鎖の5’末端の7の連続ヌクレオチドにわたって約100%であり得、残部にわたっては0%と低い場合がある。そのような場合、DNAターゲティングセグメントは、7ヌクレオチド長とみなすことができる。いくつかのガイドRNAでは、DNAターゲティングセグメント内の少なくとも約17ヌクレオチドは、標的DNAの相補鎖に対して相補的である。例えば、DNAターゲティング配列は、約20ヌクレオチド長であり得、標的DNAの相補鎖に対して1つ、2つまたは3つのミスマッチを含み得る。一例において、ミスマッチは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列に対応する相補鎖(すなわち、PAM配列の逆相補体)の領域に隣接していない(例えば、ミスマッチは、ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントの5’末端にあるか、またはミスマッチは、PAM配列に対応する相補鎖の領域から少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18または19塩基対離れている)。
【0106】
gRNAのタンパク質結合セグメントは、互いに相補的な2つの一連のヌクレオチドを含むことができる。タンパク質結合セグメントの相補的なヌクレオチドはハイブリダイズして、二本鎖RNA二重鎖(dsRNA)を形成する。対象gRNAのタンパク質結合セグメントは、Casタンパク質と相互作用し、gRNAは、結合したCasタンパク質をDNAターゲティングセグメントを介して標的DNA内の特定のヌクレオチド配列に誘導する。
【0107】
単一ガイドRNAは、DNAターゲティングセグメント及び足場配列(すなわち、ガイドRNAのタンパク質結合またはCas結合配列)を含み得る。例えば、そのようなガイドRNAは、3’足場配列に結合された5’DNAターゲティングセグメントを有することができる。例示的な足場配列は、GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCU(バージョン1、配列番号6);GUUGGAACCAUUCAAAACAGCAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン2、配列番号7);GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン3、配列番号8)及びGUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC(バージョン4、配列番号9);GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUUU(バージョン5、配列番号10);GUUUUAGAGCUAGAAAUAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUU(バージョン6、配列番号11)もしくはGUUUAAGAGCUAUGCUGGAAACAGCAUAGCAAGUUUAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGCUUUUUU(バージョン7、配列番号12)を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる。本明細書に開示されるガイドRNA標的配列のいずれかを標的とするガイドRNAは、例えば、ガイドRNAの3’末端上の例示的なガイドRNA足場配列のいずれかに融合されたガイドRNAの5’末端上のDNAターゲティングセグメントを含み得る。すなわち、本明細書に開示されるDNAターゲティングセグメントのいずれかを、上記の足場配列のいずれか1つの5’末端に結合して、単一のガイドRNA(キメラガイドRNA)を形成することができる。
【0108】
ガイドRNAには、追加の望ましい特徴(例えば、改変または調節された安定性、細胞内ターゲティング、蛍光標識による追跡、タンパク質またはタンパク質複合体に対する結合部位など)を提供する修飾または配列が含まれ得る。そのような修飾の例として、例えば、5’キャップ(例えば、7-メチルグアニル酸キャップ(m7G))、3’ポリアデニル化テール(すなわち、3’ポリ(A)テール)、リボスイッチ配列(例えば、タンパク質及び/またはタンパク質複合体による調節された安定性及び/または調節されたアクセシビリティを可能にするための)、安定性制御配列、dsRNA二重鎖を形成する配列(すなわち、ヘアピン)、RNAを細胞内の位置(例えば、核、ミトコンドリア、葉緑体など)に標的化する修飾または配列、追跡を提供する修飾または配列(例えば、蛍光分子への直接結合、蛍光検出を促進する部分への結合、蛍光検出を可能にする配列など)、タンパク質に対する結合部位を提供する修飾または配列(例えば、転写活性化因子、転写抑制因子、DNAメチルトランスフェラーゼ、DNAデメチラーゼ、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼなどを含む、DNAに作用するタンパク質)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。修飾の他の例には、操作されたステムループ二重構造、操作されたバルジ領域、ステムループ二重鎖構造の操作されたヘアピン3’、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。例えば、米国特許第2015/0376586号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。バルジは、crRNA様領域と最小tracrRNA様領域で構成される二重鎖内のヌクレオチドの不対領域であり得る。バルジは、二重鎖の一方の側の不対5’-XXXY-3’(式中、Xは任意のプリンであり、Yは対向鎖上のヌクレオチドとゆらぎ対を形成することができるヌクレオチドを含む)と、二重鎖の他方の側の不対ヌクレオチド領域とを含むことができる。
【0109】
場合によっては、MS2-p65-HSF1と対になったdCas9-VP64融合タンパク質を含む転写活性化系を使用することができる。そのような系のガイドRNAは、sgRNAテトラループに付加したアプタマー配列と、二量体化MS2バクテリオファージコートタンパク質を結合するように設計したステムループ2を使用して設計することができる。例えば、Konermann et al.(2015)Nature517(7536):583-588を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
無修飾核酸は、分解しやすい可能性がある。外因性核酸はまた、自然免疫応答を誘導することもできる。修飾は、安定性を導入し、免疫原性を低下させるのに役立ち得る。ガイドRNAは、例えば、以下(1)非結合リン酸酸素及び/またはホスホジエステル主鎖結合における結合リン酸酸素の1つ以上の一方もしくは両方の変更または置換、(2)リボース糖の2’ヒドロキシルの変更または置換など、リボース糖の成分の変更または置換、(3)リン酸部分を脱リン酸リンカーで置換、(4)天然の核酸塩基の修飾または置換、(5)リボース-リン酸主鎖の置換または修飾、(6)オリゴヌクレオチドの3’末端または5’末端の修飾(例えば、末端リン酸基の除去、改変もしくは置換、または部位のコンジュゲーション)、(7)糖の修飾のうちの1つ以上を含む、修飾ヌクレオシド及び修飾ヌクレオチドを含むことができる。他の可能なガイドRNA修飾には、ウラシルまたはポリウラシルトラクトの修飾または置換が含まれる。例えば、国際特許第2015/048577号及び米国特許第2016/0237455号を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。同様の修飾は、Cas mRNAなどのCasをコードする核酸に対して行うことができる。
【0111】
一例として、ガイドRNAの5’末端または3’末端のヌクレオチドは、ホスホロチオエート結合を含むことができる(例えば、塩基は、ホスホロチオエート基である修飾リン酸基を有することができる)。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’もしくは3’末端の2、3または4末端ヌクレオチド間にホスホロチオエート結合を含むことができる。別の例として、ガイドRNAの5’及び/または3’末端のヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾を有し得る。例えば、ガイドRNAは、ガイドRNAの5’及び/または3’末端(例えば、5’末端)の2、3または4末端ヌクレオチドに2’-O-メチル修飾を含むことができる。例えば、国際特許第WO2017/173054A1号及びFinn et al.(2018)Cell Rep.22(9):2227-2235を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0112】
ガイドRNAは、任意の形態で提供され得る。例えば、gRNAは、2つの分子(別個のcrRNA及びtracrRNA)または1つの分子(sgRNA)のいずれかのRNAの形態で、及び任意選択でCasタンパク質との複合体の形態で提供することができる。gRNAはまた、gRNAをコードするDNAの形態で提供することができる。gRNAをコードするDNAは、単一のRNA分子(sgRNA)または別個のRNA分子(例えば、別個のcrRNA及びtracrRNA)をコードし得る。後者の場合、gRNAをコードするDNAは、1つのDNA分子として、またはcrRNAとtracrRNAをそれぞれコードする別々のDNA分子として提供することができる。
【0113】
gRNAをDNAの形で提供する場合、gRNAを細胞内で、一時的に、条件的に、または構成的に発現させることができる。gRNAをコードするDNAを、細胞のゲノムに安定的に組み込み、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結することができる。あるいは、gRNAをコードするDNAを、発現構築物のプロモーターに作動可能に連結することができる。例えば、gRNAをコードするDNAは、Casタンパク質をコードする核酸などの異種核酸を含むベクター内にあり得る。あるいは、それは、Casタンパク質をコードする核酸を含むベクターとは別個のベクターまたはプラスミド内にあり得る。そのような発現構築物に使用することができるプロモーターとして、例えば、真核細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、非ヒト哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞、多能性細胞、胚性幹(ES)細胞、成体幹細胞、発生的に制限された前駆細胞、人工多能性幹(iPS)細胞、または1細胞ステージ胚のうちの1つ以上の活性なプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターは、例えば、条件的プロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターであり得る。そのようなプロモーターはまた、例えば、双方向性プロモーターであり得る。適切なプロモーターの具体例として、RNAポリメラーゼIIIプロモーター、例えば、ヒトU6プロモーター、ラットU6ポリメラーゼIIIプロモーター、またはマウスU6ポリメラーゼIIIプロモーターが挙げられる。
【0114】
あるいは、gRNAは、他の様々な方法によって調製することができる。例えば、gRNAは、例えばT7 RNAポリメラーゼを使用したin vitro転写によって調製することができる(例えば、国際特許第WO2014/089290号及び同第WO2014/065596号を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)。ガイドRNAはまた、化学合成によって調製される合成的生成分子であり得る。
【0115】
ガイドRNA(または、ガイドRNAをコードする核酸)は、1つ以上のガイドRNA(例えば、1、2、3、4またはそれ以上のガイドRNA)及びガイドRNAの安定性を高める(例えば、所定の保管条件(例えば、-20℃、4℃、または周囲温度)で分解産物が閾値未満(出発核酸またはタンパク質の0.5重量%未満など)に留まる期間を延長するか、またはin vivoでの安定性を増加させる)担体を含む組成物内にあり得る。このような担体の非限定例としては、ポリ(乳酸)(PLA)マイクロスフィア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)マイクロスフィア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コクリエート及び脂質微小管が挙げられる。そのような組成物は、Cas9タンパク質などのCasタンパク質、またはCasタンパク質をコードする核酸を更に含み得る。
【0116】
C.ガイドRNA標的配列
ガイドRNAの標的DNAには、結合に十分な条件が存在する場合、gRNAのDNAターゲティングセグメントが結合するDNAに存在する核酸配列が含まれる。適切なDNA/RNA結合条件には、細胞に通常存在する生理学的条件が含まれる。他の適切なDNA/RNA結合条件(例えば、無細胞系における条件)は、当技術分野で既知である(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd Ed.(Sambrook et al.,Harbor Laboratory Press 2001)を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)。gRNAに相補的でありかつハイブリダイズする標的DNAの鎖を「相補鎖」と呼ぶことができ、「相補鎖」に相補的な標的DNAの鎖(したがって、Casタンパク質またはgRNAには相補的ではない)は「非相補鎖」または「鋳型鎖」と呼ぶことができる。
【0117】
標的DNAは、ガイドRNAがハイブリダイズする相補鎖上の配列及び非相補鎖上の対応する配列(例えば、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に隣接する)の両方を含む。ガイドRNAは、標的DNAの相補鎖に相補性を有するように設計され、ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントと標的DNAの相補鎖の間のハイブリダイゼーションは、CRISPR複合体の形成を促進する。ハイブリダイゼーションを引き起こしかつCRISPR複合体の形成を促進するのに十分な相補性があれば、必ずしも完全な相補性は必要ない。ガイドRNAがガイドRNA標的配列を標的とするものとして本明細書で言及される場合、それが意味することは、ガイドRNAは、非相補鎖上のガイドRNA標的配列の逆相補鎖である標的DNAの相補鎖配列にハイブリダイズするということである。
【0118】
標的DNAまたはガイドRNA標的配列は、任意のポリヌクレオチドを含み得、例えば、細胞の核もしくは細胞質内、またはミトコンドリアもしくは葉緑体などの細胞のオルガネラ内に配置され得る。標的DNAまたはガイドRNA標的配列は、細胞に対して内在性または外来性の任意の核酸配列であり得る。ガイドRNA標的配列は、遺伝子産物(例えば、タンパク質)をコードする配列もしくは非コーディング配列(例えば、調節配列)とすることができ、またはその両方を含ませることができる。
【0119】
DNA結合タンパク質の標的配列(例えば、ガイドRNA標的配列)は、標的遺伝子の発現を変更するのに適しているオートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されたオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されたNF-κB遺伝子)内のどこにでもあり得る。一例において、標的配列は、エンハンサーまたはプロモーターなどの調節エレメント内にあり得るか、または調節エレメントに近接させることができる。例えば、標的配列は、オートファジー遺伝子(例えば、表1に列挙されたオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、表2に列挙されたNF-κB遺伝子)の開始コドンを含むか、またはそれに近接することができる。例えば、標的配列は、開始コドンの約10、20、30、40、50、100、200、300、400、500または1,000ヌクレオチド内であり得る。
【0120】
Casタンパク質による標的DNAの部位特異的結合及び切断は、標的DNAの非相補鎖内のi)ガイドRNAと標的DNAの対応する相補鎖との間の塩基対相補性及びii)プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)と呼ばれる短いモチーフの両方によって決定される位置で起こり得る。PAMは、ガイドRNA標的配列に隣接させることができる。任意選択で、ガイドRNA標的配列は、PAMによって3’末端に隣接することができる(例えば、Cas9の場合)。あるいは、ガイドRNA標的配列は、PAMによって5’末端に隣接することができる(例えば、Cpf1の場合)。例えば、Casタンパク質の切断部位は、PAM配列の上流または下流における(例えば、ガイドRNA標的配列内の)約1~約10、または約2~約5塩基対(例えば3塩基対)であり得る。SpCas9の場合、PAM配列(すなわち、非相補鎖上の)は、5’-NGG-3’であり得、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、PAMは標的DNAの非相補鎖のガイドRNA標的配列の直近の3’側である。したがって、相補鎖のPAMに対応する配列(すなわち、逆相補鎖)は5’-CCN-3’であり、Nは任意のDNAヌクレオチドであり、ガイドRNAのDNAターゲティングセグメントが標的DNAの相補鎖上でハイブリダイズする配列の直近の5’側である。いくつかのそのような場合では、NとNは相補的であり得、N-N塩基対は任意の塩基対であり得る(例えば、N=C及びN=G、N=G及びN=C、N=A及びN=T、またはN=T及びN=A)。S.aureus由来のCas9の場合、PAMはNNGRRTまたはNNGRRであり得、NはA、G、CまたはTであり得、RはGまたはAであり得る。C.jejuni由来のCas9の場合、PAMは、例えば、NNNNACACまたはNNNNRYACであり得、NはA、G、CまたはTであり得、RはGまたはAであり得る。場合によっては(例えば、FnCpf1の場合)、PAM配列は5’の上流であり得、配列5’-TTN-3’を有し得る。
【0121】
ガイドRNA標的配列の例は、SpCas9タンパク質によって認識されるNGGモチーフの直前にある20ヌクレオチドのDNA配列である。例えば、ガイドRNA標的配列+PAMの2つの例は、GN19NGG(配列番号13)またはN20NGG(配列番号14)である。例えば、国際特許第WO2014/165825号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。5’末端のグアニンは、細胞内のRNAポリメラーゼによる転写を促進することができる。ガイドRNA標的配列+PAMの他の例は、in vitroでT7ポリメラーゼによる効率的な転写を促進するために、5’末端に2つのグアニンヌクレオチド(例えば、GGN20NGG、配列番号15)を含み得る。例えば、国際特許第WO2014/065596号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。他のガイドRNA標的配列+PAMは、5’GまたはGG及び3’GGまたはNGGを含む、4~22の間のヌクレオチド長を有し得る。更に他のガイドRNA標的配列+PAMは、14と20の間のヌクレオチド長を有し得る。例示的なsgRNA配列には、配列番号17~38、40~41、43、48及び50~55が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
標的DNAにハイブリダイズしたCRISPR複合体の形成は、ガイドRNA標的配列に対応する領域内またはその近くの標的DNAの一方または両方の鎖の切断をもたらし得る(すなわち、標的DNAの非相補鎖上のガイドRNA標的配列、及びガイドRNAがハイブリダイズする相補鎖上の逆相補鎖)。例えば、切断部位は、ガイドRNA標的配列内(例えば、PAM配列に対して定義された位置)であり得る。「切断部位」には、Casタンパク質が一本鎖切断または二本鎖切断を生じる標的DNAの位置が含まれる。切断部位は、二本鎖DNAの一方の鎖のみ(例えば、ニッカーゼを使用する場合)または両方の鎖上であり得る。切断部位は、両方の鎖の同じ位置であり得るか(平滑末端を生じる、例えば、Cas9)、または各鎖の異なる部位であり得る(ねじれ型末端(すなわち、オーバーハング)を生じる、例えば、Cpf1)。ねじれ型末端は、例えば、それぞれが異なる鎖の異なる切断部位で一本鎖切断を生じ、それによって二本鎖切断を生じる、2つのCasタンパク質を使用することによって生成され得る。例えば、第1のニッカーゼは、二本鎖DNA(dsDNA)の第1の鎖上に一本鎖切断を作成することができ、第2のニッカーゼは、オーバーハング配列が作成されるようにdsDNAの第2の鎖上に一本鎖切断を作成することができる。場合によっては、第1の鎖上のニッカーゼのガイドRNA標的配列または切断部位は、第2の鎖上のニッカーゼのガイドRNA標的配列または切断部位から少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100、250、500または1,000塩基対だけ離れている。
【0123】
追加の遺伝子修飾剤
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される薬剤は、CRISPR/Cas系以外のゲノム編集のための薬剤である。DNAの欠失は、標的遺伝子をノックアウトまたは破壊する遺伝子治療を使用して行うことができる。ノックアウトは、遺伝子ノックダウンであり得るか、または遺伝子は、これに限定されないがレトロウイルス遺伝子導入を含む、点変異、挿入、欠失、フレームシフトまたはミスセンス変異などの当技術分野で既知の技術による変異によってノックアウトされ得る。いくつかの実施形態において、薬剤は、本明細書に開示される遺伝子の少なくとも1つ(例えば、本明細書に開示されるオートファジー遺伝子などのオートファジー遺伝子、または本明細書に開示されるNF-κB遺伝子などのNF-κB遺伝子)を結合及び修飾するのに効果的なヌクレアーゼ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはTALEN)である。
【0124】
所望の標的配列にニックまたは二本鎖切断を誘導する任意のヌクレアーゼ剤または所望の標的配列に結合する任意のDNA結合タンパク質を、本明細書に開示する方法及び組成物において使用することができる。天然またはネイティブのヌクレアーゼ剤を、ヌクレアーゼ剤が所望の標的配列にニックまたは二本鎖切断を誘導する限り、使用することができる。同様に、天然またはネイティブのDNA結合タンパク質を、DNA結合タンパク質が所望の標的配列に結合する限り、使用することができる。あるいは、修飾型または改変型ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質を使用することができる。「改変型ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質」には、所望の標的配列を特異的に認識するようにその天然型から改変された(修飾または誘導された)ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質が含まれる。したがって、改変型ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質は、ネイティブの天然ヌクレアーゼ剤もしくはDNA結合タンパク質に由来するものであるか、または人工的に作成もしくは合成することができる。改変型ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質は、標的配列を認識することができ、例えば、その場合、標的配列は、ネイティブの(未改変または未修飾の)ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質によって認識されるであろう配列ではない。ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質の修飾は、タンパク質切断剤中のわずか1個のアミノ酸または核酸切断剤中のわずか1個のヌクレオチドとすることができる。標的配列または他のDNAにニックまたは二本鎖切断を生じさせることは、本明細書では、標的配列または他のDNAを「切る」または「切断する」と呼ぶことができる。
【0125】
ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質(すなわち、改変型ヌクレアーゼ剤またはDNA結合タンパク質)の活性バリアント及び断片も提供される。そのような活性バリアントは、天然のヌクレアーゼ剤もしくはDNA結合タンパク質と少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の配列同一性があり、活性バリアントは、所望の標的配列で切断する能力を保持し、そのため、ニックもしくは二重鎖切断誘導活性を保持するか、または所望の標的配列を結合する能力を保持する。例えば、本明細書に記載のヌクレアーゼ剤のいずれかを天然のエンドヌクレアーゼ配列から改変し、天然のヌクレアーゼ剤によって認識されなかった標的配列でニックまたは二本鎖切断を認識して誘導するように設計することができる。したがって、いくつかの改変型ヌクレアーゼは、対応する天然のヌクレアーゼ剤標的配列とは異なる標的配列でニックまたは二本鎖切断を誘導する特異性を有する。ニックまたは二本鎖切断誘導活性のアッセイは既知であり、一般的にそれは、標的配列を含むDNA基質上のエンドヌクレアーゼの全体的な活性及び特異性を測定する。標的配列は、細胞にとって内在性(または、ネイティブ)であり得るか、または標的配列は、細胞にとって外来性であり得る。細胞にとって外因性である標的配列は、細胞のゲノムに自然に存在するわけではない。標的配列はまた、標的遺伝子座に配置することを望む目的のポリヌクレオチドに対して外来性であり得る。場合によっては、標的配列は、宿主細胞のゲノム中に一箇所だけ存在する。
【0126】
例示する標的配列の活性バリアント及び断片も提供される。そのような活性バリアントは、所与の標的配列に対して、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%、またはそれ以上の配列同一性を有し、活性バリアントは生物活性を保持し、したがってヌクレアーゼ剤によって配列特異的な様式で認識かつ切断され得る。ヌクレアーゼ剤による標的配列の二本鎖切断を測定するアッセイは、公知である(例えば、TAQMAN(登録商標)qPCRアッセイ、Frendewey et al.(2010)Methods in Enzymology476:295-307、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0127】
標的配列の長さは様々に異なり得るが、例えば、ジンクフィンガータンパク質またはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)対に対して約30~36bp(すなわち、各ZFNに対して約15~18bp)、転写活性化因子様エフェクター(TALE)タンパク質または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)に対して約36bp、またはCRISPR/Cas9ガイドRNAに対して約20bpの標的配列が挙げられる。
【0128】
DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤の標的配列は、標的ゲノム遺伝子座の内部または近傍の任意の場所に配置することができる。標的配列は、遺伝子のコード領域内、または遺伝子の発現に影響を及ぼす制御領域内に配置することができる。DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤の標的配列は、イントロン、エクソン、プロモーター、エンハンサー、制御領域、または任意の非タンパク質コード領域に配置することができる。
【0129】
本明細書に開示する様々な方法及び組成物において使用することができるDNA結合タンパク質の1つの種類は、転写活性化因子様エフェクター(TALE)である。TALEは、例えば、エピジェネティック修飾ドメイン、転写活性化ドメイン、または転写抑制因子ドメインに融合させるか、または連結することができる。そのようなドメインの例は、Casタンパク質に関して以下に記載されており、例えば、国際特許第WO2011/145121号にも見いだすことができ、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。それに対応して、本明細書に開示する様々な方法及び組成物において使用することができるヌクレアーゼ剤の1つのタイプは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。TALエフェクターヌクレアーゼは、原核生物または真核生物のゲノムの特定の標的配列において二本鎖切断を行うために使用することができる配列特異的ヌクレアーゼのクラスである。TALエフェクターヌクレアーゼは、FokIなどのエンドヌクレアーゼの触媒ドメインに、ネイティブ型もしくは改変型転写活性化因子様(TAL)エフェクター、またはその機能部分を融合することにより作成する。ユニークなモジュラー型TALエフェクターDNA結合ドメインにより、潜在的に任意のDNA認識特異性を有するタンパク質の設計が可能になる。したがって、TALエフェクターヌクレアーゼのDNA結合ドメインを、特定のDNA標的部位を認識するように設計し、したがって、所望の標的配列において二本鎖切断を行うために使用することができる。国際特許第WO2010/079430号;Morbitzer et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.107(50:21617-21622;Scholze&Boch(2010)Virulence1:428-432;Christian et al.(2010)Genetics186:757-761;Li et al.(2011)Nucleic Acids Res.39(1):359-372;及びMiller et al.(2011)Nature Biotechnology29:143-148を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
FokIエンドヌクレアーゼの末端からの非特異的DNA切断ドメインを使用して、酵母アッセイで活性なハイブリッドヌクレアーゼを構築できる。これらの試薬は、植物細胞及び動物細胞でも活性がある。FokIドメインは二量体として機能し、適切な配向及び間隔で標的ゲノム内の部位に固有のDNA結合ドメインを備える2つの構築物を必要とする。TALEN DNA結合ドメインとFokI切断ドメインの間のアミノ酸残基数と、2つの個々のTALEN結合部位の間の塩基数の両方が、高レベルの活性を達成するためのパラメーターである。TALEN DNA結合ドメインとFokI切断ドメインとの間のアミノ酸残基の数は、複数のTALエフェクター反復配列とFokIエンドヌクレアーゼドメインとの間のスペーサー(スペーサー配列とは異なる)の導入によって改変され得る。スペーサー配列は、12~30ヌクレオチドであり得る。
【0131】
アミノ酸配列とTALEN結合ドメインのDNA認識との間の関係により、設計可能なタンパク質が可能になる。この場合、人工遺伝子合成は、TALE結合ドメインに見られる反復配列の不適切なアニーリングのために問題がある。これに対する1つの解決策は、公開されているソフトウェアプログラム(DNAWorks)を使用して、2段階PCRでのアセンブリ、オリゴヌクレオチドアセンブリとそれに続く全遺伝子増幅に適したオリゴヌクレオチドを計算することである。操作されたTALE構築物を生成するための多数のモジュラーアセンブリスキームも報告されている。どちらの方法も、ジンクフィンガーDNA認識ドメインを生成するためのモジュラーアセンブリ法と概念的に類似した、DNA結合ドメインを操作するための体系的なアプローチを提供する。
【0132】
TALEN遺伝子が組み立てられると、それらはプラスミドに挿入される。次いで、プラスミドを使用して、遺伝子産物が発現する標的細胞にトランスフェクトし、核に入ってゲノムにアクセスする。TALENは、細胞が修復メカニズムで応答する二本鎖切断(DSB)を誘導することにより、ゲノムを編集するために使用できる。
【0133】
適切なTALヌクレアーゼの例、及び適切なTALヌクレアーゼを調製するための方法は、例えば、米国特許第2011/0239315A1号、同第2011/0269234A1号、同第2011/0145940A1号、同第2003/0232410A1号、同第2005/0208489A1号、同第2005/0026157A1号、同第2005/0064474A1号、同第2006/0188987A1号及び同第2006/0063231A1号を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。様々な実施形態において、TALエフェクターヌクレアーゼは、例えば、目的のゲノム遺伝子座の標的核酸配列またはその近傍を切断するように設計され、標的核酸配列は、改変されるべき配列またはその近傍にある。
【0134】
いくつかのTALENでは、TALENの各モノマーは、2つの超可変残基を介して単一の塩基対を認識する33~35のTALリピートを含む。いくつかのTALENでは、ヌクレアーゼ剤は、FokIエンドヌクレアーゼなどの独立したヌクレアーゼに作動可能に連結したTALリピートベースのDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。例えば、ヌクレアーゼ剤は、第1のTALリピートベースのDNA結合ドメイン及び第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインを含むことができ、第1及び第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインのそれぞれは、FokIヌクレアーゼに作動可能に連結し、第1及び第2のTALリピートベースのDNA結合ドメインは、様々な長さ(12~20bp)のスペーサー配列によって分離された標的DNA配列の各鎖中の2つの隣接する標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化して、標的配列において二本鎖切断を行う活性型ヌクレアーゼを生成する。
【0135】
転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TALエフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることによって生成される人工制限酵素である。これらの試薬は、効率的でプログラム可能な特異的なDNA切断を可能にし、in situゲノム編集の強力なツールである。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、実質的にあらゆるDNA配列に結合するようにすばやく操作され得る。本明細書で使用する場合、TALENという用語は広義であり、別のTALENの支援なしに二本鎖DNAを切断できる単量体TALENを含む。TALENという用語はまた、同じ部位でDNAを切断するために協働するように操作されたTALENの対の一方または両方のメンバーを指すためにも使用される。一緒に機能するTALENは、左TALEN及び右TALENと呼ばれることがあり、これはDNAの利き手を参照している。米国特許第12/965,590号、同第13/426,991号(米国特許第8,450,471号)、同第13/427,040号(米国特許第8,440,431号)、同第13/427,137号(米国特許第8,440,432号)及び同第13/738,381号を参照し、そのすべては、参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。
【0136】
DNA結合タンパク質の別の例は、ジンクフィンガータンパク質である。そのようなジンクフィンガータンパク質は、例えば、エピジェネティック修飾ドメイン、転写活性化ドメイン、または転写抑制因子ドメインに連結するか、または融合させることができる。そのようなドメインの例は、Casタンパク質に関して以下に記載されており、例えば、国際特許第WO2011/145121号にも見いだすことができ、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。それに対応して、本明細書に開示する様々な方法及び組成物において使用することができるヌクレアーゼ剤の別の例はジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。いくつかのZFNでは、ZFNの各モノマーは3つ以上のジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含み、各ジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインは3bpの部分部位に結合する。他のZFNでは、ZFNは、FokIエンドヌクレアーゼなどの独立したヌクレアーゼに作動可能に連結したジンクフィンガーベースのDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質である。例えば、ヌクレアーゼ剤は第1のZFN及び第2のZFNを含むことができ、第1のZFN及び第2のZFNのそれぞれはFokIヌクレアーゼサブユニットに作動可能に連結し、第1及び第2のZFNは、約5~7bpのスペーサーにより分離された標的DNA配列の各鎖において2つの隣接する標的DNA配列を認識し、FokIヌクレアーゼサブユニットは二量体化して、二本鎖切断を行う活性型ヌクレアーゼを生成する。例えば、米国特許第2006/0246567号、同第2008/0182332号、同第2002/0081614号、同第2003/0021776号、国際特許第WO2002/057308A2号、米国特許第2013/0123484号、同第2010/0291048号、国際特許第WO2011/017293A2号、及び Gaj et al.(2013)Trends in Biotechnology31(7):397-405を参照し、そのそれぞれは、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0137】
干渉核酸剤
特定の実施形態において、オートファジーもしくはNF-κB遺伝子(例えば、表1または表2に列挙される遺伝子)の産物(例えば、mRNA産物)の活性または発現を選択的に標的としかつ阻害する干渉核酸分子は、本明細書で提供される、及び/または本明細書に記載の方法で使用される。いくつかの実施形態において、干渉核酸は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子または少なくとも1つのNF-κB遺伝子(例えば、表1または表2に列挙される遺伝子)の産物を発現する細胞で細胞毒性を誘導する。薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子または少なくとも1つのNF-κB遺伝子の産物(例えば、mRNA産物)の発現または活性を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%阻害し得る。本明細書に開示する薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子または少なくとも1つのNF-κB遺伝子の産物(例えば、mRNA産物)に対する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%の相補性を含み得る。
【0138】
いくつかの実施形態において、干渉核酸は、siRNA、shRNA、PNA、またはmiRNA分子である。干渉核酸は一般に、それぞれが塩基対部分を有し、塩基対形成部分がワトソン-クリック塩基対形成によって核酸(通常RNA)中の標的配列にハイブリダイズするのを可能にするサブユニット間結合によって連結され、標的配列内に核酸、オリゴマーヘテロ二重鎖を形成する環状サブユニットの配列を含む。干渉RNA分子には、アンチセンス分子、siRNA分子、一本鎖siRNA分子、miRNA分子及びshRNA分子が含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
通常、標的mRNA配列の補体の少なくとも17、18、19、20、21、22または23ヌクレオチドは、標的転写物の阻害を媒介するのに十分である。完全な相補性は必要ない。いくつかの実施形態において、干渉核酸分子は二本鎖RNAである。二本鎖RNA分子は、2ヌクレオチド3’オーバーハングを有し得る。いくつかの実施形態において、2本のRNA鎖はヘアピン構造を介して結合され、shRNA分子を形成する。shRNA分子は、microRNA分子に由来するヘアピンを含有できる。例えば、miR30 miRNA由来のヘアピンを含有するpCAG-miR30構築物内に干渉RNA配列をクローニングすることにより、RNAiベクターを構築することができる。RNA干渉分子には、RNA残基と同様にDNA残基も含まれ得る。
【0140】
本明細書で提供される干渉核酸分子は、RNA塩基、非RNA塩基、またはRNA塩基と非RNA塩基の混合物を含み得る。例えば、本明細書で提供される干渉核酸分子は、主にRNA塩基からなり得るが、DNA塩基または天然には存在しないヌクレオチドも含み得る。
【0141】
干渉核酸は、様々なオリゴヌクレオチド化学物質を利用することができる。オリゴヌクレオチド化学物質の例としては、ペプチド核酸(PNA)、連結核酸(LNA)、ホスホロチオエート、2’O-Me修飾オリゴヌクレオチド、及びモルホリノ化学物質(前述の任意のものの組み合わせを含む)が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、PNA及びLNA化学物質は、2’O-Meオリゴヌクレオチドに比べて標的結合強度が比較的高いため、より短いターゲティング配列を利用することができる。ホスホロチオエート及び2’O-Me修飾化学物質を組み合わせて、ホスホロチオエート骨格を有する2’O-Me修飾オリゴヌクレオチドを生成することがよくある。例えば、PCT公開第WO/2013/112053号及び同第WO/2009/008725号を参照し、参照によりその全体が組み込まれる。
【0142】
ペプチド核酸(PNA)は、ピリミジンまたはプリン塩基が結合したN-(2-アミノエチル)グリシン単位からなる、デオキシリボース骨格と構造的に相同な骨格のDNAの類似体である。天然のピリミジン及びプリン塩基を含有するPNAは、ワトソン-クリック塩基対形成規則に従い、相補的なオリゴヌクレオチドにハイブリダイズし、塩基対認識に関してDNAを模倣する(Egholm,Buchardt et al.1993)。PNAの骨格は、ホスホジエステル結合ではなく、ペプチド結合によって形成されるため、アンチセンス用途に適している(下の構造を参照)。骨格は帯電しておらず、通常よりも優れた熱安定性を示すPNA/DNAまたPNA/RNA二重鎖をもたらす。PNAは、ヌクレアーゼまたはプロテアーゼによって認識されない。
【0143】
自然の構造に対する根本的な構造変化にもかかわらず、PNAは、DNAまたはRNAへのらせん形状の配列特異的結合が可能である。PNAの特徴には、相補的なDNAまたはRNAに対する高い結合親和性、一塩基ミスマッチによって生じる不安定化効果、ヌクレアーゼ及びプロテアーゼに対する耐性、塩濃度に依存しないDNAまたはRNAとのハイブリダイゼーション、ならびにホモプリンDNAとの三重鎖形成が挙げられる。PANAGENE(商標)は、独自のBtsPNAモノマー(Bts、ベンゾチアゾール-2-スルホニル基)及び独自のオリゴマー化プロセスを開発した。BtsPNAモノマーを使用したPNAオリゴマー化は、脱保護、カップリング及びキャッピングの反復サイクルからなる。PNAは、当技術分野で既知の任意の技術を使用して合成的に生成することができる。例えば、米国特許第6,969,766号、同第7,211,668号、同第7,022,851号、同第7,125,994号、同第7,145,006号及び同第7,179,896号を参照のこと。またPNAの調製については、米国特許第5,539,082号、同第5,714,331号及び同第5,719,262号も参照のこと。PNA化合物の更なる教示は、Nielsen et al,Science,254:1497-1500,1991で見いだすことができる。前述のそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる。
【0144】
干渉核酸はまた、「ロックド核酸」サブユニット(LNA)も含み得る。「LNA」は、架橋核酸(BNA)と呼ばれる修飾の一種である。BNAは、リボース環の構造をC30-エンド(ノーザン)シュガーパッカーにロックする共有結合によって特性評価される。LNAの場合、架橋は、2’-Oと4’-C位の間のメチレンからなる。LNAは、骨格の事前組織化及び塩基スタッキングを強化して、ハイブリダイゼーション及び熱安定性を高める。
【0145】
LNAの構造は、例えば、Wengel,et al.,Chemical Communications(1998)455;Tetrahedron(1998)54:3607,and Accounts of Chem.Research(1999)32:301);Obika,et al.,Tetrahedron Letters(1997)38:8735;(1998)39:5401及びBioorganic Medicinal Chemistry(2008)16:9230で見いだし得る。本明細書で提供される化合物は、1つ以上のLNAを組み込むことができ、場合によっては、化合物は完全にLNAからなり得る。個々のLNAヌクレオシドサブユニットの合成及びオリゴヌクレオチドへのそれらの組み込みのための方法は、例えば、米国特許第7,572,582号、同第7,569,575号、同第7,084,125号、同第7,060,809号、同第7,053,207号、同第7,034,133号、同第6,794,499号及び同第6,670,461号に記載されており、そのそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれる。典型的なサブユニット間リンカーには、ホスホジエステル及びホスホロチオエート部分が含まれる。あるいは、リンを含有しないリンカーを使用することができる。一実施形態は、各LNAサブユニットがDNAサブユニットによって分離されているLNA含有化合物である。特定の化合物は、サブユニット間リンカーがホスホロチオエートである交互のLNAサブユニット及びDNAサブユニットからなる。
【0146】
「ホスホロチオエート」(またはS-オリゴ)は、架橋していない酸素の1つが硫黄に置き換えられた正常なDNAのバリアントである。ヌクレオチド間結合の硫化は、5’から3’及び3’から5’へのDNA POL1エキソヌクレアーゼ、ヌクレアーゼS1及びP1、RNase、血清ヌクレアーゼ、及びヘビ毒ホスホジエステラーゼを含むエンドヌクレアーゼならびにエキソヌクレアーゼの作用を低下させる。ホスホロチオエートは、次の2つの主要な経路によって、二硫化炭素中の元素状硫黄の溶液をホスホン酸水素に作用させることにより、または亜リン酸トリエステルをテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)もしくは3H-1,2-ベンソジチオール-3-オン1,1-ジオキシド(BDTD)で硫化する方法により(例えば、Iyer et al.,J.Org.Chem.55,4693-4699,1990を参照)作成される。後者の方法は、元素状硫黄がほとんどの有機溶媒に不溶であるという問題、及び二硫化炭素の毒性を回避する。TETD及びBDTD方法ではまた、より高純度のホスホロチオエートも得られる。
【0147】
「2’O-Meオリゴヌクレオチド」分子は、リボース分子の2’-OH残基にメチル基を有する。2’-O-Me-RNAは、DNAと同じ(または類似した)挙動を示すが、ヌクレアーゼ分解から保護されている。2’-O-Me-RNAは、更なる安定化のためにホスホチオエートオリゴヌクレオチド(PTO)と組み合わせることもできる。2’O-Meオリゴヌクレオチド(ホスホジエステルまたはホスホチオエート)は、当技術分野における通常の技術に従って合成することができる(例えば、Yoo et al.,Nucleic Acids Res.32:2008-16,2004を参照)。
【0148】
本明細書に記載の干渉核酸は、細胞と接触させ得るか、または生物(例えば、ヒト)に投与し得る。あるいは、干渉RNA分子をコードする構築物及び/またはベクターは、細胞または生物に接触させ得るか、または導入することができる。特定の実施形態において、ウイルス、レトロウイルス、またはレンチウイルスベクターが使用される。いくつかの実施形態において、ベクターは、心臓組織に対する向性を有する。いくつかの実施形態において、ベクターは、アデノ随伴ウイルスである。
【0149】
一実施形態において、干渉核酸分子は、siRNA分子である。そのようなsiRNA分子は、siRNA分子が標的RNAを下方制御するように、標的領域に対して十分な相同性を有する領域を含み、ヌクレオチドに関して十分な長さであるべきである。「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、修飾されたRNAまたはヌクレオチド代替物の場合、1つ以上の位置における修飾されたヌクレオチドまたは代替置換部位も指すことができる。siRNA分子と標的の間に完全な相補性がある必要はないが、標的RNAのRNAi切断などによって、siRNA分子が配列特異的なサイレンシングを誘導できるようにするのに十分な対応関係が必要である。いくつかの実施形態において、センス鎖は、分子の全体的な二本鎖特性を維持するためにアンチセンス鎖と十分に相補的であるだけでよい。
【0150】
更に、siRNA分子は修飾され得るか、またはヌクレオシド代替物を含み得る。siRNA分子の一本鎖領域は修飾され得るか、またはヌクレオシド代替物を含み得、例えば不対領域もしくはヘアピン構造の領域、例えば2つの相補的領域を連結する領域は、修飾またはヌクレオシド代替物を有し得る。例えばエキソヌクレアーゼに対して、siRNA分子の1つ以上の3’末端もしくは5’末端を安定化するための修飾、またはアンチセンスsiRNA剤がRISCに入るのを促進するための修飾も有用である。修飾には、C3(またはC6、C7、C12)アミノリンカー、チオールリンカー、カルボキシルリンカー、非ヌクレオチドスペーサー(C3、C6、C9、C12、脱塩基、トリエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール)、RNA合成中に複数のカップリングを可能にする、ホスホルアミダイトとしてかつ別のDMT保護ヒドロキシル基を有する特別なビオチンまたはフルオレセイン試薬が含まれ得る。
【0151】
shRNAの非限定的な例には、センス及びアンチセンス領域が核酸ベースまたは非核酸ベースのリンカーによって連結されている、一本鎖分子から組み立てられた二本鎖ポリヌクレオチド分子、ならびに自己相補的なセンス及びアンチセンス領域を有するヘアピン二次構造を備える二本鎖ポリヌクレオチド分子が含まれる。いくつかの実施形態において、shRNAのセンス及びアンチセンス鎖は、約1~約25ヌクレオチド、約2~約20ヌクレオチド、約4~約15ヌクレオチド、約5~約12ヌクレオチド、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25もしくはそれ以上のヌクレオチドを含むループ構造によって連結される。
【0152】
shRNA、ならびにそのようなshRNAを設計及び合成する方法に関する更なる実施形態は、米国特許出願公開第2011/0071208号に記載されており、その開示は、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0153】
いくつかの実施形態において、マイクロRNA(miRNA)が本明細書に提供される。miRNAは、生物で自然に生成される小さなRNAの大きな群を表し、そのうちのいくつかは標的遺伝子の発現を調節する。miRNAは、ダイサーによって約70ヌクレオチドの一本鎖ヘアピン前駆体転写物から形成される。miRNAはタンパク質に翻訳されるのではなく、代わりに特定のメッセンジャーRNAに結合し、それにより翻訳をブロックする。場合によっては、miRNAは、標的と不正確に塩基対を形成し、翻訳を阻害する。
【0154】
特定の実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的配列に対して100%相補的であり得るか、またはオリゴヌクレオチドと標的配列との間に形成されるヘテロ二本鎖が、細胞ヌクレアーゼの作用及びin vivoで発生し得る他の分解モードに耐えられるほど十分に安定している限り、例えば、疾患関連変異を含む対立遺伝子の選択的ターゲティングを改善するために、ミスマッチを含み得る。したがって、特定のオリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドと標的配列の間に約または少なくとも約70%の配列相補性、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列相補性を有し得る。ヌクレアーゼによる切断の影響を受けにくいオリゴヌクレオチド骨格について本明細書で説明する。存在する場合、ミスマッチは通常、ハイブリッド二本鎖の中間領域よりも末端領域に向かって不安定になりにくい。許容されるミスマッチの数は、よく理解されている二本鎖安定性の原則に従って、オリゴヌクレオチドの長さ、二重鎖中のG:C塩基対の割合、及び二重鎖中のミスマッチ(複数可)の位置に依存する。
【0155】
干渉核酸分子は、例えば、化学合成、in vitro転写、またはRnase IIIもしくはダイサーによる長いdsRNAの消化によって調製することができる。これらは、トランスフェクション、エレクトロポレーション、または当技術分野で既知の他の方法によって細胞に導入することができる。Hannon,GJ,2002,RNA Interference,Nature418:244-251;Bernstein E et al.,2002,The rest is silence.RNA7:1509-1521;Hutvagner G et al.,RNAi:Nature abhors a double-strand. Curr.Opin. Genetics&Development12:225-232;Brummelkamp,2002,A system for stable expression of short interfering RNAs in mammalian cells. Science296:550-553;Lee NS,Dohjima T,Bauer G,Li H,Li M-J,Ehsani A,Salvaterra P, and Rossi J.(2002).Expression of small interfering RNAs targeted against HIV-1 rev transcripts in human cells.Nature Biotechnol.20:500-505;Miyagishi M,and Taira K.(2002).U6-promoter-driven siRNAs with four uridine 3’overhangs efficiently suppress targeted gene expression in mammalian cells.Nature Biotechnol.20:497-500;Paddison PJ,Caudy AA,Bernstein E,Hannon GJ,and Conklin DS.(2002).Short hairpin RNAs (shRNAs) induce sequence-specific silencing in mammalian cells.Genes&Dev.16:948-958;Paul CP,Good PD,Winer I,and Engelke DR.(2002).Effective expression of small interfering RNA in human cells.Nature Biotechnol.20:505-508;Sui G,Soohoo C,Affar E-B,Gay F,Shi Y,Forrester WC,and Shi Y.(2002).A DNA vector-based RNAi technology to suppress gene expression in mammalian cells. Proc.Natl.Acad.Sci.USA99(6):5515-5520;Yu J-Y,DeRuiter SL,and Turner DL.(2002).RNA interference by expression of short-interfering RNAs and hairpin RNAs in mammalian cells.Proc.Natl.Acad.Sci.USA99(9):6047-6052を参照。
【0156】
本方法では、干渉核酸分子またはポリヌクレオチドをコードする干渉核酸を、例えば裸の核酸として、送達試薬と組み合わせて及び/または干渉核酸分子を発現する配列を含む核酸として、対象に投与することができる。いくつかの実施形態において、干渉核酸は、対象の腫瘍に直接投与される。いくつかの実施形態において、干渉核酸分子を発現する配列を含む核酸は、ベクター、例えば、プラスミド、ウイルス及び細菌ベクター内に送達される。当技術分野で既知の任意の核酸送達方法を、本明細書に記載の方法で使用することができる。適切な送達試薬には、例えば、Mirus Transit TKO親油性試薬、リポフェクチン、リポフェクタミン、セルフェクチン、ポリカチオン(例えば、ポリリジン)、アテロコラーゲン、ナノプレックス及びリポソームが含まれるが、これらに限定されない。核酸分子の送達ビヒクルとしてのアテロコラーゲンの使用は、Minakuchi et al. Nucleic Acids Res.,32(13):e109(2004);Hanai et al. Ann NY Acad Sci.,1082:9-17(2006);及びKawata et al. Mol Cancer Ther.,7(9):2904-12(2008)に記載され、それらのそれぞれは、その全体が本明細書に組み込まれる。例示的な干渉核酸送達システムは、米国特許第8,283,461号、同第8,313,772号、同第8,501,930号、同第8,426,554号、同第8,268,798号及び同第8,324,366号に提供されており、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0157】
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態において、リポソームを使用して、阻害性オリゴヌクレオチドを対象に送達する。本明細書に記載の方法での使用に適したリポソームは、一般的に中性または負荷電のリン脂質及びコレステロールなどのステロールを含む、標準的な小胞形成脂質から形成され得る。脂質の選択は一般に、リポソームの望ましいサイズや血流中のリポソームの半減期などの要因を考慮することによって行われる。リポソームの調製する様々な方法は、例えば、Szoka et al.(1980),Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号に記載されているように既知であり、これらの開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
本方法で使用するリポソームはまた、単核マクロファージ系(「MMS」)及び網内皮系(「RES」)によるクリアランスを回避するように修飾され得る。このような改変リポソームは、表面にオプソニン化阻害部位を有するか、またはリポソーム構造に組み込まれている。
【0159】
小分子剤
本明細書に開示される方法及び組成物の特定の実施形態は、小分子薬剤、例えば、がん細胞におけるオートファジー遺伝子(例えば、本明細書に開示されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、本明細書に開示されるNF-κB遺伝子)の産物の発現または活性を阻害する小分子薬剤の使用に関する。いくつかの実施形態において、小分子は、オートファジー遺伝子(例えば、本明細書に開示されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、本明細書に開示されるNF-κB遺伝子)の産物を発現する細胞の細胞毒性を誘導する。そのような薬剤には、当技術分野で既知のもの、及び本明細書に記載のスクリーニングアッセイを使用して同定されたものが含まれる。本明細書で提供される小分子は、オートファジー遺伝子(例えば、本明細書に開示されるオートファジー遺伝子)もしくはNF-κB遺伝子(例えば、本明細書に開示されるNF-κB遺伝子)の産物に対する少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または100%の特異性を有し得る。
【0160】
特定の実施形態において、薬剤は、PI3キナーゼ阻害剤、ホスホイノシチド3キナーゼ(PI3)阻害剤、Unc-51様キナーゼ1(ULK1)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質18(Vps18)阻害剤、液胞タンパク質選別タンパク質34(Vps34)阻害剤、ユビキチン特異的ペプチダーゼ(USP10またはUSP13)阻害剤、チオキサントンベースのオートファジー阻害剤、ATG4阻害剤、オートフィニブ、3-メチルアデニン、ワートマニン、塩化アンモニウム、バフィロマイシンA1、エフロルニチン、ロイペプチン、ベツリン酸、CA074、コルヒチン、タプシガルギン、バキュオリン-1、ビンブラスチン、デスメチルクロミプラミン、LY294002、PT210、GSK-2126458、スパウチン-1、SAR405、化合物31、VPS34-IN1、PIK-III、化合物6、MRT68921、SBI-0206965、ペプスタチンA、E64d、クロミプラミン、ルカントン、クロロキン、ヒドロキシクロルキン、モネンシン、Lys05、ARN5187、化合物30、MPT0L145、ROC325、ベルテポルフィン、NSC185058及びNSC377071などの小分子オートファジー阻害剤であり得る。追加のオートファジー阻害剤及びオートファジー阻害剤に関する詳細は、Waleska K.Martins and Mauricio S.Baptista(November10th2016). Autophagy Modulation for Organelle-Targeting Therapy,Autophagy in Current Trends in Cellular Physiology and Pathology,Nikolai V.Gorbunov and Marion Schneider,IntechOpen,DOI:10.5772/63976(https://www.intechopen.com/books/autophagy-in-current-trends-in-cellular-physiology-and-pathology/autophagy-modulation-for-organelle-targeting-therapyから入手可能);Pasquier,Benoit.“Autophagy inhibitors.”Cellular and Molecular Life Sciences73(2015):985-1001;米国特許第8524762号及び同第9926326号;WIPO公開第WO2011011522号に見いだされ得、これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
いくつかの実施形態において、薬剤は、NF-κB経路の阻害剤であり得る。小分子オートファジー阻害剤には、IKK及びIκBリン酸化阻害剤、IκB分解阻害剤、プロテアソーム及びプロテアーゼ阻害剤、IκBα上方制御、NF-κB核移行、ならびにNF-κB発現阻害剤、NF-κB DNA結合阻害剤、NF-κB転写活性化阻害剤、抗酸化剤、または上流標的阻害剤が含まれる。NF-κB阻害剤のリストは、Gilmore,T.,Herscovitch,M.“Inhibitors of NF-κB signaling:785 and counting.”Oncogene25,6887-6899(2006)に見いだされ得、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0162】
本明細書に開示される方法で有用な薬剤は、天然及び/または合成化合物の系統的ライブラリーを含む任意の入手可能な供給源から得ることができる。薬剤はまた、生物学的ライブラリー;ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能性を有しながら、酵素分解に対して抵抗性であり、それにもかかわらず生物活性を維持する新規な非ペプチド主鎖を備える分子のライブラリー、例えば、Zuckermann et al.,1994,J.Med.Chem.37:2678-85を参照);空間的にアドレス指定可能な並行固相または溶液相ライブラリー;逆重畳を必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;及びアフィニティークロマトグラフィー選択を使用した合成ライブラリー法を含む、当技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれかによって取得することもできる。生物学的ライブラリー及びペプトイドライブラリーのアプローチは、ペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の小分子ライブラリーに適用できる(Lam,1997,Anticancer Drug Des.12:145)。
【0163】
分子ライブラリーの合成方法の例は、当技術分野で、例えば、DeWitt et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909;Erb et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:11422;Zuckermann et al.(1994).J.Med.Chem.37:2678;Cho et al.(1993)Science261:1303;Carrell et al.(1994)Angew. Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carell et al.(1994)Angew. Chem.Int.Ed.Engl.33:2061及びGallop et al.(1994)J.Med.Chem.37:1233で見いだされ得る。
【0164】
薬剤のライブラリーは、溶液中(例えば、Houghten,1992,Biotechniques13:412-421)、またはビーズ上(Lam,1991,Nature354:82-84)、チップ(Fodor,1993,Nature364:555-556)、細菌及び/または胞子(Ladner,USP5,223,409)、プラスミド(Cull et al,1992,Proc Natl Acad Sci USA89:1865-1869)またはファージ上(Scott and Smith,1990,Science249:386-390;Devlin,1990,Science249:404-406;Cwirla et al,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.87:6378-6382;Felici,1991,J.Mol.Biol.222:301-310;Ladner,supra.)に存在し得る。
【0165】
本明細書に開示される方法に有用な薬剤は、例えば、候補薬剤または試験薬剤、例えば、オートファジー遺伝子(例えば、本明細書に開示されるオートファジー遺伝子)またはNF-κB遺伝子(例えば、本明細書に開示されるNF-κB遺伝子)の産物の活性または発現を減少させる薬剤をスクリーニングするためのアッセイを使用して同定され得る。
【0166】
薬剤送達
本明細書に開示される核酸及びタンパク質剤(例えば、CRISPR/Cas剤、TALEN剤、ZFN剤、干渉核酸剤)は、任意の利用可能な手段によって細胞(例えば、がん細胞)に導入することができる。「導入する」とは、配列が細胞の内部にアクセスできるような方法で核酸またはタンパク質を細胞に提示することが含まれる。導入は任意の手段によって達成することができ、1つ以上の成分(例えば、2つの成分、またはすべての成分)を任意の組み合わせで同時にまたは連続して細胞に導入することができる。細胞のゲノムをヌクレアーゼ剤と接触させることは、1つ以上のヌクレアーゼ剤またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸(例えば、1つ以上のCasタンパク質または1つ以上のCasタンパク質をコードする核酸、及び1つ以上のガイドRNAまたは1つ以上のガイドRNAをコードする核酸(すなわち、1つ以上のCRISPR RNA及び1つ以上のtracrRNA))を細胞内へ導入することを含み得る。細胞のゲノムとの接触(すなわち、細胞との接触)は、上記の成分のうちの1つのみ、1つ以上の成分、またはすべての成分を細胞に導入することを含み得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される核酸及びタンパク質薬剤の適切な送達方法には、エレクトロポレーション、iTOP、脂質ナノ粒子、ポリマーナノ粒子、CPP送達、DNAナノ構造、または金ナノ粒子が含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
本明細書に開示される核酸薬剤(例えば、プラスミドベースのgRNA-Cas、Ca9 mRNA、sgRNA、干渉核酸薬剤)の適切な送達方法には、エレクトロポレーション、流体力学的注入、マイクロインジェクション、機械的細胞変形、脂質ナノ粒子、AAVまたはレンチウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0169】
ヌクレアーゼ剤は、タンパク質の形態で、またはヌクレアーゼ剤をコードする核酸、例えば、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))もしくはDNAの形態で細胞に導入することができる。DNAの形態で導入する場合、DNAを、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結することができる。そのようなDNAを、1つ以上の発現構築物の中に存在させることができる。
【0170】
例えば、Casタンパク質は、タンパク質、例えば、gRNAと複合体化したCasタンパク質の形態で、またはCasタンパク質をコードする核酸、例えば、RNA(例えば、メッセンジャーRNA(mRNA))もしくはDNAの形態で細胞に導入することができる。ガイドRNAは、RNAの形態で、またはガイドRNAをコードするDNAの形態で細胞に導入することができる。DNAの形態で導入する場合、Casタンパク質及び/またはガイドRNAをコードするDNAを、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結することができる。そのようなDNAを、1つ以上の発現構築物の中に存在させることができる。例えば、そのような発現構築物は、単一の核酸分子の成分であり得る。あるいは、それらは、2つ以上の核酸分子の間で任意の組み合わせで分離することができる(すなわち、1つ以上のCRISPR RNAをコードするDNA、1つ以上のtracrRNAをコードするDNA、及びCasタンパク質をコードするDNAを、別々の核酸分子の成分とすることができる)。
【0171】
本明細書における開示はまた、オートファジーもしくはNF-kB遺伝子発現を標的とするgRNA分子の1つまたはカクテル及び薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物も提供する。例えば、本発明は、それぞれがオートファジーまたはNF-kB遺伝子を標的とする1、2、3、またはそれ以上のgRNA分子を含む、医薬組成物を提供する。
【0172】
本明細書で提供される薬剤は、脂質粒子内に包まれたgRNAを含み得る。脂質粒子内に封入されたgRNAのカクテルを含む製剤に関して、異なるgRNA分子は、同じ脂質粒子内に共封入される得るか、またはカクテル内に存在する各種類のgRNA種が別々の粒子に封入され得るか、またはいくつかのgRNA種は同じ粒子に共封入され得、他のgRNA種は製剤内の異なる粒子に封入される。特定の実施形態において、脂質粒子は、gRNA及びCasタンパク質をコードするmRNAの両方を含む。特定の実施形態において、脂質粒子の1つの集団はgRNAを含み、脂質粒子の別の集団はCasタンパク質(複数可)またはCasタンパク質(複数可)をコードするmRNAを含み、これらの脂質粒子は同じ組成物または異なる組成物であり得、同時にまたは連続して投与され得る。
【0173】
いくつかの実施形態において、脂質粒子は、カチオン性脂質、非カチオン性脂質及び任意選択で粒子の凝集を防ぐ複合脂質から形成される。核酸分子(例えば、gRNA分子)を含む脂質粒子は、核酸-脂質粒子と称される。核酸は、脂質粒子内に完全に封入され得、それによって核酸を酵素分解から保護することができる。いくつかの実施形態において、核酸-脂質粒子は、約5:1~約15:1の総脂質:gRNA質量比を有する。特定の実施形態において、核酸-脂質粒子は、約5:1~約15:1、または約5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1もしくは15:1、もしくはその一部もしくはその範囲の総脂質:gRNA質量比を有する。特定の実施形態において、核酸-脂質粒子は、約9:1の総脂質:gRNA質量比(例えば、9.1:1、9.2:1、9.3:1、9.4:1、9.5:1、9.6:1、9.7:1及び9.8:1を含む、8.5:1~10:1または8.9:1~10:1または9:1~9.9:1の脂質:薬物比)を有する。核酸-脂質粒子の投与は、例えば、経口、鼻腔内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、病巣内、気管内、皮下または皮内など当技術分野で既知の任意の経路によることができる。特定の実施形態において、核酸-脂質粒子は、例えば、経腸または非経口投与経路を介して全身的に投与される。核酸は、PCT公開第WO00/03683号に記載されているように縮合剤と複合体を形成し、脂質粒子内に封入され得、その開示は、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0174】
本明細書で提供される脂質粒子は、約30nm~約150nm、約40nm~約150nm、約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nmまで、約70nm~約100nm、約80nm~約100nm、約90nm~約100nm、約70nm~約90nm、約80nm~約90nm、約70nm~約80nm、または約30nm、35nm、40nm、45nm、50nm、55nm、60nm、65nm、70nm、75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nmもしくは150nmの平均直径を有し得る。核酸-脂質粒子及びそれらの調製方法は、例えば、米国特許公開第20040142025号及び同第20070042031号に開示されており、その開示は、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0175】
核酸-脂質粒子は、脂質コンジュゲートを含み得る。そのような脂質コンジュゲートには、例えば、ジアルキルオキシプロピルにカップリングされたPEG(例えば、PEG-DAAコンジュゲート)、ジアシルグリセロールにカップリングされたPEG(例えば、PEG-DAGコンジュゲート)、コレステロールにカップリングされたPEG、ホスファチジルエタノールアミンにカップリングされたPEG、及びセラミドにコンジュゲートしたPEG(例えば、米国特許第5,885,613号を参照)、カチオン性PEG脂質、ポリオキサゾリン(POZ)-脂質コンジュゲート(例えば、POZ-DAAコンジュゲート)、ポリアミドオリゴマー(例えば、ATTA-脂質コンジュゲート)、及びこれらの混合物などのPEG-脂質コンジュゲートが含まれるが、これらに限定されない。POZ-脂質コンジュゲートの更なる例は、PCT公開第WO2010/006282号に記載されている。PEGまたはPOZは、脂質に直接コンジュゲートし得るか、またはリンカー部分を介して脂質に結合し得る。例えば、非エステル含有リンカー部位及びエステル含有リンカー部位を含む、PEGまたはPOZを脂質にカップリングするのに適した任意のリンカー部位を使用することができる。特定の実施形態において、アミドまたはカルバマートなどの非エステル含有リンカー部位が使用される。
【0176】
いくつかの実施形態において、核酸-脂質粒子中の脂質コンジュゲートは、粒子の凝集を阻害し、例えば、本明細書に記載の脂質コンジュゲートの1つ以上を含み得る。1つの特定の実施形態において、脂質コンジュゲートは、PEG-脂質コンジュゲートを含む。PEG-脂質コンジュゲートの例には、PEG-DAGコンジュゲート、PEG-DAAコンジュゲート及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-ジアシルグリセロール(PEG-DAG)コンジュゲート、PEG-ジアルキルオキシプロピル(PEG-DAA)コンジュゲート、PEG-リン脂質コンジュゲート、PEG-セラミド(PEG-Cer)コンジュゲート及びこれらの混合物から選択される。特定の実施形態において、PEG-脂質コンジュゲートは、PEG-DAAコンジュゲートである。特定の実施形態において、脂質粒子中のPEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジデシルオキシプロピル(C10)コンジュゲート、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)コンジュゲート、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲート、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)コンジュゲート、PEG-ジステアリルオキシプロピル(C18)コンジュゲート、またはこれらの混合物を含み得る。特定の実施形態において、PEG-DAAコンジュゲートは、PEG-ジミリスチルオキシプロピル(C14)コンジュゲートである。別の実施形態において、PEG-DAAコンジュゲートは、化合物(66)(PEG-C-DMA)コンジュゲートである。別の実施形態において、脂質コンジュゲートは、POZ-DAAコンジュゲートなどのPOZ-脂質コンジュゲートを含む。
【0177】
特定の実施形態において、粒子の凝集を阻害する複合化脂質は、粒子中に存在する総脂質の約0.5モル%~約3モル%を含む。
【0178】
有用な製剤の追加の実施形態は、公開された米国特許出願公開第2011/0076335A1号及び同第2018/0245074A1号に記載されており、その開示は、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0179】
特定の実施形態において、本明細書で提供される核酸剤(例えば、Casタンパク質をコードする及び/またはgRNAをコードするDNA)は、ベクター(例えば、ウイルスベクター/ウイルスまたはプラスミド)によって送達される。
【0180】
ベクターは、Casタンパク質及び/またはgRNA分子、及び/または標的とされる領域(例えば、標的配列)に対して高い相同性を備えるドナー鋳型をコードする配列を含むことができる。特定の実施形態において、ドナー鋳型は、標的配列の全部または一部を含む。例示的なドナー鋳型は、修復鋳型、例えば遺伝子修正鋳型、または遺伝子突然変異鋳型、例えば点突然変異(例えば、単一ヌクレオチド(nt)置換)鋳型である。ベクターはまた、例えばCas分子配列に融合されたシグナルペプチド(例えば、核局在化、核小体局在化、またはミトコンドリア局在化のための)をコードする配列を含み得る。例えば、ベクターは、Cas分子をコードする配列に融合された核局在化配列(例えば、SV40由来)を含むことができる。
【0181】
1つ以上の調節/制御エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、イントロン、ポリアデニル化シグナル、コザックコンセンサス配列、内部リボソーム進入部位(IRES)、2A配列、及びスプライスアクセプターまたはドナーを、ベクターに含めることができる。特定の実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIによって認識される。他の実施形態において、プロモーターは、RNAポリメラーゼIIIによって認識される(例えば、U6プロモーター)。特定の実施形態において、プロモーターは、調節性プロモーター(例えば、誘導性プロモーター)である。特定の実施形態において、プロモーターは、構成的プロモーターである。特定の実施形態において、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。特定の実施形態において、プロモーターは、ウイルスプロモーターである。特定の実施形態において、プロモーターは、非ウイルスプロモーターである。
【0182】
特定の実施形態において、ベクターまたは送達ビヒクルは、ウイルスベクターである(例えば、組換えウイルスの生成用)。特定の実施形態において、ウイルスは、DNAウイルス(例えば、dsDNAまたはssDNAウイルス)である。特定の実施形態において、ウイルスは、RNAウイルス(例えば、ssRNAウイルス)である。特定の実施形態において、ウイルスは、分裂細胞に感染する。他の実施形態において、ウイルスは、非分裂細胞に感染する。例示的なウイルスベクター/ウイルスには、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが含まれる。
【0183】
特定の実施形態において、ウイルスは、分裂細胞に感染する。他の実施形態において、ウイルスは、非分裂細胞に感染する。特定の実施形態において、ウイルスは、分裂細胞及び非分裂細胞の両方に感染する。特定の実施形態において、ウイルスは、宿主ゲノムに組み込むことができる。特定の実施形態において、ウイルスは、例えばヒトにおいて免疫が低下するように操作される。特定の実施形態において、ウイルスは、複製可能である。他の実施形態において、ウイルスは複製欠損性であり、例えば、ビリオン複製の更なるラウンドに必要な遺伝子の1つ以上のコード領域を有する及び/または他の遺伝子で置換または削除されたものをパッケージングする。特定の実施形態において、ウイルスは、Cas分子(複数可)及び/またはgRNA分子(複数可)の一過性発現を生じさせる。他の実施形態において、ウイルスは、Cas分子(複数可)及び/またはgRNA分子(複数可)の持続的、例えば、少なくとも1週間、2週間、1か月、2か月、3か月、6か月、9か月、1年、2年または永続的な発現を生じさせる。ウイルスのパッケージング能力は、例えば、少なくとも約4kb~少なくとも約30kb、例えば、少なくとも約5kb、10kb、15kb、20kb、25kb、30kb、35kb、40kb、45kbまたは50kbで変化し得る。
【0184】
特定の実施形態において、ウイルスベクターは、特定の細胞型または組織を認識する。例えば、ウイルスベクターは、異なる/代替のウイルス外被糖タンパク質で偽型化され得る;細胞型特異的受容体で操作され得る(例えば、ペプチドリガンド、単鎖抗体または成長因子などの標的リガンドを組み込むための1つ以上のウイルス外被糖タンパク質の遺伝子修飾(複数可));及び/または一方の末端がウイルス糖タンパク質を認識し、もう一方の末端が標的細胞表面の部位を認識する二重特異性を持つ分子架橋を有するように操作され得る(例えば、リガンド受容体、モノクローナル抗体、アビジン-ビオチン及び化学結合)。
【0185】
例示的なウイルスベクター/ウイルスには、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、及び単純ヘルペスウイルスが含まれる。
【0186】
特定の実施形態において、Cas及び/またはgRNAをコードする配列は、組換えレトロウイルスによって送達される。特定の実施形態において、レトロウイルス(例えば、モロニーマウス白血病ウイルス)は、例えば、宿主ゲノムへの組み込みを可能にする逆転写酵素を含む。特定の実施形態において、レトロウイルスは、複製可能である。
【0187】
特定の実施形態において、レトロウイルスは複製欠損性であり、例えば、ビリオン複製の更なるラウンドに必要な遺伝子のより多くのコード領域のうちの1つを有する及び他の遺伝子で置換または削除されたものをパッケージングする。
【0188】
特定の実施形態において、Cas及び/またはgRNAをコードする核酸配列(任意選択でドナー鋳型核酸)は、組換えレンチウイルスによって送達される。例えば、レンチウイルスは複製欠損性であり、例えば、ウイルス複製に必要な1つ以上の遺伝子を含まない。
【0189】
特定の実施形態において、Cas及び/またはgRNAをコードする核酸配列(任意選択でドナー鋳型核酸)は、組換えアデノウイルスによって送達される。
【0190】
特定の実施形態において、アデノウイルスは、ヒトにおいて免疫が低下するように操作される。特定の実施形態において、Cas及び/またはgRNAをコードする核酸配列(任意選択でドナー鋳型核酸)は、組換えAAVによって送達される。特定の実施形態において、AAVは、そのゲノムを宿主細胞、例えば本明細書に記載の標的細胞のゲノムに組み込まない。特定の実施形態において、AAVは、そのゲノムの少なくとも一部を宿主細胞、例えば本明細書に記載の標的細胞のゲノムに組み込むことができる。特定の実施形態において、AAVは、自己相補性アデノ随伴ウイルス(scAAV)、例えば、一緒にアニーリングして二本鎖DNAを形成する両方の鎖をパッケージングするscAAVである。開示された方法で使用され得るAAV血清型には、AAV1、AAV2、改変AAV2(例えば、Y444F、Y500F、Y730F及び/またはS662Vでの改変)、AAV3、改変AAV3(例えば、Y705F、Y73IF及び/またはT492Vでの改変)、AAV4、AAV5、AAV6、改変AAV6(例えば、S663V及び/またはT492Vでの改変)、AAV8、AAV8.2、AAV9、AAVrh10が含まれ、偽型化AAV、例えばAAV2/8、AAV2/5及びAAV2/6もまた開示された方法で使用できる。特定の実施形態において、本明細書に記載の方法で使用できるAAVカプシドは、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh32/33、AAV.rh43、AAV.rh64R1またはAAV7m8由来のカプシド配列である。
【0191】
特定の実施形態において、Cas及び/またはgRNAをコードする核酸配列(任意選択でドナー鋳型核酸)は、血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV.rh8、AAV.rh10、AAV.rh32/33、AAV.rh43またはAAV.rh64R1由来のカプシド配列と例えば約50%以上、例えば約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上または約95%以上の配列相同性を備える再操作されたAAVカプシドで送達される。
【0192】
特定の実施形態において、Cas及び/またはgRNAをコードする核酸配列(任意選択でドナー鋳型核酸)は、キメラAAVカプシドによって送達される。例示的なキメラAAVカプシドには、AAV9i1、AAV2i8、AAV-DJ、AAV2G9、AAV2i8G9またはAAV8G9が含まれるが、これらに限定されない。
【0193】
特定の実施形態において、AAVは、自己相補性アデノ随伴ウイルス(scAAV)、例えば、一緒にアニーリングして二本鎖DNAを形成する両方の鎖をパッケージングするscAAVである。
【0194】
特定の実施形態において、Cas9及び/またはgRNAをコードするDNA(任意選択でドナー鋳型核酸)は、ハイブリッドウイルス、例えば、本明細書に記載のウイルスの1つ以上のハイブリッドによって送達される。特定の実施形態において、ハイブリッドウイルスは、ボカウイルス、B19ウイルス、ブタAAV、ガチョウAAV、ネコAAV、イヌAAV、またはMVMとのAAV(例えば、任意のAAV血清型)のハイブリッドである。薬剤のウイルスベクター送達に関する追加情報は、WIPO公開第WO2018081504A1号に記載されており、その全体が参照により組み込まれる。
【0195】
特定の実施形態において、送達ビヒクルは非ウイルスベクターである。特定の実施形態において、非ウイルスベクターは無機ナノ粒子である。例示的な無機ナノ粒子には、例えば、磁性ナノ粒子(例えば、Fe3Mn02)及びシリカが含まれる。ナノ粒子の外表面は、ペイロードの付着(例えば、結合または捕捉)を可能にする正荷電ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリリジン、ポリセリン)とコンジュゲートすることができる。
【0196】
いくつかの方法において、ヌクレアーゼ剤をコードするDNA(例えば、Casタンパク質及びガイドRNA)を、DNAミニサークルを介して細胞に導入することができる。例えば、国際特許第WO2014/182700号を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。DNAミニサークルは、複製起点も抗生物質選択マーカーも有していない、非ウイルス性遺伝子導入に使用できるスーパーコイルDNA分子である。したがって、DNAミニサークルは通常、プラスミドベクターよりもサイズが小さい。これらのDNAには細菌DNAが欠いており、したがって細菌DNAに見いだされる非メチル化CpGモチーフがない。
【0197】
本明細書に提供される方法は、核酸またはタンパク質を細胞に導入するための特定の方法に依存せず、核酸またはタンパク質が少なくとも1つの細胞の内部にアクセスすることのみである。核酸及びタンパク質を様々な細胞型に導入する方法は公知であり、例えば、安定的遺伝子導入法、一過性遺伝子導入法、及びウイルスを介した方法が挙げられる。
【0198】
遺伝子導入プロトコル及び核酸またはタンパク質を細胞に導入するためのプロトコルは、様々であり得る。非限定的な遺伝子導入方法には、リポソーム、ナノ粒子、リン酸カルシウム(Graham et al.(1973)Virology52(2):456-67,Bacchetti et al.(1977)Proc.Natl.Acad.Sci.USA74(4):1590-4及びKriegler,M(1991).Transfer and Expression:A Laboratory Manual.New York:W.H.Freeman and Company.pp.96-97)、デンドリマー、またはDEAE-デキストランまたはポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマーを使用する化学ベースの遺伝子導入方法が含まれる。非化学的方法としては、エレクトロポレーション、ソノポレーション、及び光遺伝子導入が挙げられる。粒子ベースの遺伝子導入方法としては、遺伝子銃、または磁石補助型トランスフェクションの使用が挙げられる(Bertram(2006)Current Pharmaceutical Biotechnology7,277-28)。ウイルスによる方法も、遺伝子導入に使用することができる。
【0199】
細胞への核酸またはタンパク質の導入は、エレクトロポレーション、細胞質内注射、ウイルス感染、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、形質移入、脂質を介した形質移入、またはヌクレオフェクションによっても媒介され得る。ヌクレオフェクションは、核酸基質を細胞質だけでなく核膜を介して核内に送達できるようにする改良されたエレクトロポレーション法である。更に、本明細書に開示する方法におけるヌクレオフェクションの使用は典型的に、通常のエレクトロポレーションよりもはるかに少ない細胞しか必要としない(例えば、通常のエレクトロポレーションが700万であるのに対して約200万で済む)。一例において、ヌクレオフェクションは、LONZA(登録商標)NUCLEOFECTOR(商標)システムを使用して行われる。
【0200】
細胞への核酸またはタンパク質の導入はまた、マイクロインジェクションによって達成することもできる。mRNAのマイクロインジェクションは好ましくは、細胞質内で実施し(例えば、mRNAを翻訳機構に直接送達するために)、一方、タンパク質、またはCasタンパク質をコードするDNAのマイクロインジェクションは好ましくは、核内で実施する。あるいは、マイクロインジェクションは、核と細胞質の両方への注射により行うこともできる:針を最初に核に導入し、第1の量を注射し、細胞から針を取り出しながら第2の量を細胞質に注射することができる。ヌクレアーゼ剤タンパク質を細胞質に注射する場合、確実に核/前核へ送達するために、核局在化シグナルをタンパク質に好ましくは含ませる。マイクロインジェクションを行う方法は既知である。例えば、Nagy et al.(Nagy A,Gertsenstein M,Vintersten K,Behringer R.,2003,Manipulating the Mouse Embryo. Cold Spring Harbor,New York:Cold Spring Harbor Laboratory Press);Meyer et al.(2010)Proc.Natl.Acad.Sci.USA107:15022-15026及びMeyer et al.(2012)Proc.Natl.Acad.Sci.USA109:9354-9359を参照のこと。
【0201】
核酸またはタンパク質を細胞に導入する他の方法として、例えば、ベクター送達、粒子を介した送達、エキソソームを介した送達、脂質ナノ粒子を介した送達、細胞透過ペプチドを介した送達、または埋め込み型装置を介した送達が挙げられる。核酸またはタンパク質を対象に投与してin vivoで細胞を改変する方法を、本明細書の他の場所に開示する。
【0202】
細胞への核酸及びタンパク質の導入は、流体力学的送達(HDD)によっても達成することができる。流体力学的送達は、in vivoでの細胞内DNA送達の方法として登場した。実質細胞への遺伝子送達では、選択した血管を介して必須のDNA配列のみを注入する必要があり、現在のウイルス及び合成ベクターに関連する安全性の懸念が排除される。血流に注入されると、DNAは、血液にアクセスできる様々な組織の細胞に到達することができる。流体力学的送達は、大量の溶液を循環中の非圧縮性血液に急速に注入することによって生成される力を利用して、大きくかつ膜不透過性の化合物が実質細胞に入るのを防ぐ内皮及び細胞膜の物理的障壁を克服する。DNAの送達に加えて、この方法は、in vivoでのRNA、タンパク質及び他の小分子化合物の効率的な細胞内送達に有用である。例えば、Bonamassa et al.(2011)Pharm.Res.28(4):694-701を参照し、参照によりすべての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0203】
核酸またはタンパク質を細胞に導入するための他の方法としては、例えば、ベクター送達、粒子を介した送達、エキソソームを介した送達、脂質ナノ粒子を介した送達、細胞透過性ペプチドを介した送達、または埋め込み型デバイスを介した送達が挙げられる。特定の例として、核酸またはタンパク質を、ポリ(乳酸)(PLA)マイクロスフィア、ポリ(D,L-乳酸-コグリコール酸)(PLGA)マイクロスフィア、リポソーム、ミセル、逆ミセル、脂質コクリエート、または脂質微小管などの担体中で、細胞に導入することができる。
【0204】
場合によっては、方法及び組成物で使用する細胞は、それらのゲノムに安定的に組み込まれたDNA構築物を有する。そのような場合、接触は、ゲノムに既に安定的に組み込まれた構築物を有する細胞を提供することを含み得る。例えば、本明細書に開示する方法において使用する細胞は、そのゲノムに安定的に組み込まれた既存のCasコード遺伝子を有していてもよい(すなわち、Cas作動可能細胞)。「安定に組み入れられる」または「安定に導入される」または「安定に組み込まれる」は、ヌクレオチド配列が細胞のゲノムに組み込まれ、その子孫によって継承されることができるように、ポリヌクレオチドを細胞に導入することを含む。DNA構築物または標的化ゲノム組み込み系の様々な成分の安定した組み込みに、任意のプロトコルを使用してもよい。
【0205】
DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤は、任意の公知の手段によって細胞に導入してもよい。DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリペプチドを、細胞に直接導入してもよい。あるいは、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを、細胞に導入することができる。DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入する場合、細胞内でDNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤を、一時的に、条件的に、または構成的に発現させることができる。例えば、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを発現カセットに含め、条件的プロモーター、誘導性プロモーター、構成的プロモーター、または組織特異的プロモーターに作動可能に連結することができる。そのようなプロモーターを、本明細書の他の場所で更に詳細に論じる。あるいは、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤を、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするmRNAとして細胞に導入することができる。
【0206】
DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを、細胞のゲノムに安定的に組み込み、細胞内で活性なプロモーターに作動可能に連結することができる。あるいは、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを、ターゲティングベクター内、またはインサートのポリヌクレオチドを含むターゲティングベクターとは別のベクターもしくはプラスミド内に存在させることができる。
【0207】
DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドの導入を介してDNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤を細胞に提供する場合、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするそのようなポリヌクレオチドを、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードする天然のポリヌクレオチド配列に比べて目的細胞内での使用頻度が高いコドンで置換するように改変することができる。例えば、DNA結合タンパク質またはヌクレアーゼ剤をコードするポリヌクレオチドを、細菌細胞、酵母細胞、ヒト細胞、非ヒト細胞、哺乳類細胞、げっ歯類細胞、マウス細胞、ラット細胞または任意の他の目的の宿主細胞を含む、所定の目的の原核細胞または真核細胞において天然のポリヌクレオチド配列に比べて使用頻度の高いコドンで置換するように改変することができる。
【0208】
治療方法
いくつかの態様において、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する1つの薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、対象におけるがん細胞をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる方法が本明細書で提供される。他の態様において、がん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する少なくとも1つの薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、対象におけるがん細胞のTNF-α媒介殺傷を増加させる方法が本明細書で提供される。更なる態様において、本明細書に記載の方法は、腫瘍のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、対象における腫瘍をTNF-α媒介殺傷に対して感作させる、または対象における腫瘍のTNF-α媒介殺傷を増加させる方法を含む。
【0209】
対象のがん細胞のオートファジー及び/またはNF-κB経路を阻害する薬剤(例えば、本明細書に開示される薬剤)を対象に投与することによって、及び追加のがん療法によって、対象におけるがんを治療する方法もまた本明細書に提供される。いくつかの実施形態において、追加のがん療法は、がん免疫療法である。特定の実施形態において、追加の療法は、がん細胞のTNF-α媒介殺傷を誘導する治療である。いくつかの実施形態において、追加の療法は、がん細胞のT細胞殺傷(例えば、がん細胞の細胞傷害性T細胞殺傷)を誘導する治療である。いくつかの実施形態において、追加のがん療法は、免疫チェックポイント阻害、TNF-α投与、T細胞免疫療法(例えば、CAR-T細胞免疫療法)及び/またはがんワクチンを含む。
【0210】
したがって、特定の実施形態において、本発明の薬剤を単独で使用するか、または別の種類の治療薬と組み合わせて投与することができる。例えば、異なる治療剤は、同時にもしくは連続して同じ製剤または別々の製剤中で投与することができる。特定の実施形態において、異なる治療剤は、互いに約1時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約72時間、または約1週間以内に投与することができる。したがって、そのような治療を受ける対象は、異なる治療薬の複合効果から利益を得ることができる。
【0211】
特定の実施形態において、組成物、例えば、薬学的に許容される担体と共に本明細書に記載される少なくとも1つの薬剤を含有する医薬組成物が提供される。一実施形態において、組成物は、本明細書に記載の複数(例えば、2つ以上、3つ以上、4つ以上または5つ以上)の薬剤の組み合わせを含む。
【0212】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、局所的にまたは全身的に投与される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、対象に存在する腫瘍または腫瘍微小環境に局所的に投与され得る。いくつかの実施形態において、薬剤または医薬組成物は、第2のがん治療剤と共に投与される。
【0213】
本明細書に記載の薬剤は、免疫療法を含む任意の他のがん療法と併用して投与することができる。追加のがん療法には、免疫チェックポイント阻害が含まれる。いくつかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質を阻害する。免疫チェックポイント阻害とは、がん細胞が免疫応答を防止または下方制御するために生成できるチェックポイントを阻害することを広く指す。免疫チェックポイントタンパク質の例は、CTLA-4、PD-1、VISTA、B7-H2、B7-H3、PD-L1、B7-H4、B7-H6、ICOS、HVEM、PD-L2、CD160、gp49B、PIR-B、KIRファミリー受容体、TIM-1、TIM-3、TIM-4、LAG-3、BTLA、SIRPalpha(CD47)、CD48、2B4(CD244)、B7.1、B7.2、ILT-2、ILT-4、TIGIT、HHLA2、ブチロフィリン、A2aR及びこれらの組み合わせである。免疫チェックポイント阻害剤は、セミプリマブ(REGN2810)、ニボルマブ(BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538)、ペムブロリズマブ(MK-3475、SCH900475)、アテゾリズマブ(MPDL3280A、RG7446、RO5541267)、デュルバルマブ(MEDI4736、MEDI-4736)、アベルマブ(MSB0010718C)、イピリムマブ(BMS-734016、IBI310、MDX-010)、SHR1210、シンチリマブ(IBI308)、スパルタリズマブ(PDR001)、チスレリズマブ(BGB-A317)、ピディリズマブ、BCD-100、トリパリマブ(JS001)、BAY1905254、ASP8374、PF-06801591、AMP-224、AB122、AK105、AMG404、BCD-100、BI754091、F520、HLX10、HX008、JTX-4014、LZM009、MEDI0680、MGA012、Sym021、TSR-042、PSB205、MGD019、MGD013、AK104、XmAb20717、RO7121661、CX-188、INCB086550、FS118、BCD-135、BGB-A333、CBT-502、CK-301、CS1001、FAZ053、HLX20、KN035、MDX-1105、MSB2311、SHR-1316、TG-1501、ZKAB001、INBRX-105、MCLA-145、KN046、M7824、LY3415244、INCB086550、CA-170、CX-072、ADU-1604、AGEN1181、AGEN1884、MK-1308、REGN4659、XmAb22841、ATOR-1015、PSB205、MGD019、AK104、XmAb20717、BMS-986249、トレメリムマブ、BMS-986258、BGB-A425、INCAGN02390、Sym023、JNJ61610588、BI754111、LAG525、MK-4280、REGN3767、Sym022、TSR-033、レラトリマブ、JTX-2011、MGD009、BMS-986207、OMP-313M32、MK-7684またはTSR-022であり得る。
【0214】
追加のがん免疫療法には、自己もしくは同種T細胞療法、または自己もしくは同種CAR T細胞療法などの養子免疫療法が含まれる。養子免疫療法は、腫瘍またはがん細胞に対する患者の免疫応答を高めるように設計された治療法である。この方法は、個体からの免疫細胞の除去、ex vivoでのエフェクター細胞の形成、臨床的に適切な数への細胞の増殖、及び細胞の患者への再注入を含む。本明細書で開示される薬剤と、クラスI MHC上に提示されるペプチド(例えば、がんペプチドもしくは対象特異的ペプチド)に特異的に結合するT細胞受容体を発現する同種または自己CTLとの同時投与を含む方法が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、CTLは、細胞バンクに由来するか、またはCTLが投与されている対象に由来する。いくつかの実施形態において、MHCはクラスI MHCである。いくつかの実施形態において、クラスII MHCは、HLA-DMA、HLA-DOA、HLA-DPA、HLA-DQAまたはHLA-DRAであるα鎖ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態において、クラスII MHCは、HLA-DMB、HLA-DOB、HLA-DPB、HLA-DQBまたはHLA-DRBであるβ鎖ポリペプチドを有する。いくつかの実施形態において、CTLは、対象に投与される前に細胞ライブラリーまたはバンクに保存される。
【0215】
いくつかの実施形態において、T細胞を、対象のがんまたは腫瘍に特異的なペプチドを提示する抗原提示細胞(APC)と接触させる。いくつかの実施形態において、APCは、B細胞、抗原提示T細胞、樹状細胞、または人工抗原提示細胞(例えば、aK562細胞)である。当該プロセスで使用する樹状細胞は、患者の試料からPBMCを採取し、それらをプラスチックに付着させることによって調製することができる。一般に、単球集団は固着し、他のすべての細胞は洗い流すことができる。次いで、付着集団をIL-4及びGM-CSFで分化させ、単球由来の樹状細胞を産生する。これらの細胞は、IL-1β、IL-6、PGE-1及びTNF-α(樹状細胞の表面で重要な共刺激分子を上方制御)の添加によって成熟し得、その後、本明細書で提供される1つ以上のペプチドで形質導入される。いくつかの実施形態において、APCは、aK562細胞などの人工抗原提示細胞である。いくつかの実施形態において、人工抗原提示細胞は、CD80、CD83、41BB-L及び/またはCD86を発現するように操作される。aK562細胞を含む例示的な人工抗原提示細胞は、米国特許第2003/0147869号に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。抗原提示細胞を作製する例示的な方法は、国際特許第WO2013088114号に見いだすことができ、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0216】
別の例示的な養子免疫療法プロトコルは、自己腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の投与を含む。TIL細胞は、殺傷力が高い。TIL細胞は、固形腫瘍においてin vivoで分化したエフェクター細胞である(がんの養子免疫療法のためのTIL細胞を生成する方法を記載する米国特許第5,126,132号を参照)。TIL細胞は、例えば、患者から腫瘍試料を採取し、腫瘍試料に浸潤していたリンパ球を単離し、これらのTIL細胞をIL-2の存在下で ex vivoで増殖させ、細胞をIL-2と共に患者に再注入することによって産生することができる。
【0217】
追加のがん治療は、CAR-T細胞療法であり得る。キメラ抗原受容体(CAR)は、腫瘍関連表面抗原に対する抗体ベースの特異性と、特異的な抗腫瘍細胞免疫活性を有するT細胞受容体活性化細胞内ドメインを組み合わせた分子である(Eshhar,1997,Cancer Immunol Immunother45(3-4)131-136;Eshhar et al.,1993,Proc Natl Acad Sci USA90(2):720-724;Brocker and Karjalainen,1998,Adv Immunol68:257-269)。これらのCARは、T細胞の活性化及び共刺激シグナルを提供する細胞内ドメインに融合した単鎖Fv(scFv)抗原特異的細胞外領域を介して、T細胞がMHCに依存しない一次活性化を達成できるようにする。第2世代及び第3世代のCARはまた、様々な固形腫瘍及び白血病モデルにおけるサイトカイン分泌ならびに抗腫瘍活性を増強する、CD28及び/またはCD137(4-1BB)細胞内活性化モチーフを介して適切な共刺激シグナルも提供する(Pinthus,et al,2004,J Clin Invest114(12):1774-1781;Milone,et al.,2009,Mol Ther17(8):1453-1464;Sadelain,et al.,2009,Curr Opin Immunol21(2):215-223)。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法には、患者の自己T細胞を遺伝子改変して腫瘍抗原に特異的なCAR を発現させた後、ex vivoで細胞を増殖させ、患者に再注入することを含む。CARは、特定のモノクローナル抗体から可変である選択された一本鎖断片と、1つ以上のT細胞受容体細胞内シグナル伝達ドメインとの融合タンパク質である。このT細胞の遺伝子改変は、ウイルスベースの遺伝子導入方法、またはDNAベースのトランスポゾン、CRISPR/Cas9技術もしくはエレクトロポレーションによるin vitroで転写されたmRNAの直接導入などの非ウイルス方法のいずれかを介して生じ得る。
【0218】
対象からT細胞を含む試料を取得し、試料から細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を単離し、ex vivoでCTLを増殖させ、増殖したCTLを少なくとも1つの薬剤(例えば、本明細書に開示される任意の薬剤)と併用して対象に投与することによって対象のがんを治療する方法もまた、本明細書で提供する。細胞傷害性T細胞は、腫瘍浸潤性リンパ球であり得る。CTLを増殖させることは、CTLをがん特異的または腫瘍特異的抗原を発現する抗原提示細胞(APC)と接触させて、抗原特異的CTLを作製することを含み得る。いくつかの実施形態において、T細胞または単離されたCTLを含む試料は、対象への投与前に刺激される。当該方法は、対象に投与する前に、CTLを抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)と接触させることを更に含み得る。他の実施形態において、方法は、対象への投与前に、CTLをヒトインターロイキン(IL)-2と接触させることを更に含む。
【0219】
いくつかの実施形態において、対象は、薬剤の投与前に化学療法薬を投与されている。対象は、化学療法薬に抵抗性であり得る。対象は、本明細書に開示される追加のがん治療剤の投与に続いてまたは同時に化学療法剤を投与され得る。化学療法薬には、アルキル化剤(例えば、チオテパ及びシクロホスファミド(Cytoxan(商標)))、アルキルスルホン酸塩(例えば、ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン)、アジリジン(例えば、ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ、及びウレドパ)、エミレルミン及びメミラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスファオルアミド、及びトリメミローロメラミンを含む)、アセトゲニン(特にブラタシン及び ブラタシノン)、カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビセレシン合成類似体を含む)、クリプトフィシン(人工クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成類似体、KW-2189及びCBI-TMIを含む)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード)、ニトロソウレア(例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン)、エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1及び親和性カリケアマイシン)、ジネマイシン(ジネマイシンAを含む)、ビスホスホネート(例えば、クロドロネート)、エスペラミシン、ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連する色素タンパク質エンジイン抗菌性クロモフォア、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルチノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(Adramycin(商標))(モルホリノドキソルビシン、シアノモルホリノドキソルビシン、2-ピロリノドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU))、葉酸類似体(例えば、デモプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート)、プリン類似体(例えば、フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン)、ピリミジン類似体(例えば、アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン)、アンドロゲン(例えば、カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン)、抗副腎剤(例えば、アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン)、葉酸補充薬(例えば、フォリン酸)、アセグラトン、アルドホスファミド配糖体、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ヘストラブシル、ビサントレン、エダトラキサート、デフォファミン、デメコルシン、ジアジクオン、エルホルミチン、エリプチニウムアセテート、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダミン、マイタンシノイド(例えば、マイタンシン及びアンサマイトシン)、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダモール、ニトラクリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(商標)、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン酸、トリアジコン、2,2’,2”-トリクオロトリエミルアミン、トリコテセン(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアングイジン)、ウレタン、ビンデシン、ダカルバジン、マンノムスチン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ピポブロマン、ガシトシン、アラビノシド(「Ara-C」)、シクロホスファミド、チオペタ、タキソイド(例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標)、Bristol Meyers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)及びドセタキセル(Taxoteret(商標)、Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France))、クロラムブシル、ゲムシタビン(Gemzar(商標))、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金類似体(例えば、シスプラチン及びカルボプラチン)、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、ビノレルビン(Navelbine(商標))、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、キセオロダ、イバンドロネート、CPT-11、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイン(例えば、レチノイン酸)、カペシタビン、ならびに上記いずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体を含む。腫瘍に対するホルモン作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤(例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(商標)を含む)、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(Fareston(商標))を含む抗エストロゲンならびに選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM));副腎内のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼ阻害剤(例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール(Megace(商標))、エキセメスタン、ホルメスタイン、ファドロゾール、ボロゾール(Rivisor(商標))、レトロゾール(Femara(商標))及びアナストロゾール(Arimidex(商標)));抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロハイド及びゴセレリン);ならびに上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体もまた「化学療法剤」の定義に含まれる。
【0220】
以下で詳細に記述されるように、本明細書で開示される医薬組成物及び/または薬剤は、固体または液体の形態での投与用に特別に製剤化され得、(1)経口投与、例えば、ドレンチ(水性または非水性の溶液または懸濁液)、錠剤、例えば、口腔粘膜、舌下、及び全身吸収を目的にしたもの、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌への塗布のためのペースト剤、または(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、くも膜下腔内、脳内もしくは硬膜外注射による、例えば、無菌の溶液もしくは懸濁液、もしくは徐放性製剤に適応されたものを含む。医薬製剤または組成物を調製する方法は、本明細書に記載の薬剤を担体及び任意選択で1つ以上の補助成分と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、本明細書に記載の薬剤を液体担体または微粉化固体担体またはその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、産物を成形することによって調製される。
【0221】
効能
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して、任意のがん性または前がん性腫瘍を含む任意のがんを治療することができる。本明細書で提供される方法及び組成物によって治療され得るがんには、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯肉、頭、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌または子宮のがんが含まれるが、これらに限定されない。更に、がんは具体的には以下の組織学的種類のものであり得るが、これらに限定されない:悪性新生物;細胞癌;未分化細胞癌;巨大及び紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母細胞癌;移行細胞癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌と胆管癌の複合;線維腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープの腺癌;家族性大腸ポリポーシス腺癌;固形がん;悪性カルチノイド腫瘍;気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状及び濾胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳道腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳房パジェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫;悪性テコーマ;悪性顆粒膜細胞腫瘍;及び悪性神経芽細胞腫;セルトリ細胞癌;悪性ライディッヒ細胞腫;悪性脂質細胞腫;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;血管球血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大な色素性母斑の悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胚性癌腫;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛癌;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管外皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル上皮歯牙肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル芽細胞性線維肉腫;悪性松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;上衣腫;星状細胞腫;原形質星状細胞腫;線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;神経膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起神経膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅覚神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;小リンパ球性悪性リンパ腫;びまん性大細胞型悪性リンパ腫;濾胞性悪性リンパ腫;菌状息肉症;他の指定された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄肉腫;及び毛様細胞白血病。
【0222】
いくつかの実施形態において、がんは、固形腫瘍を含む。いくつかの実施形態において、腫瘍は、腺癌、副腎腫瘍、肛門腫瘍、胆管腫瘍、膀胱腫瘍、骨腫瘍、血液由来腫瘍、脳/CNS腫瘍、乳房腫瘍、子宮頸部腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮内膜腫瘍、食道腫瘍、ユーイング腫瘍、眼腫瘍、胆嚢腫瘍、胃腸腫瘍、腎臓腫瘍、喉頭または下咽頭腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、中皮腫、多発性骨髄腫、筋肉腫瘍、鼻咽頭腫瘍、神経芽細胞腫、口腔腫瘍、骨肉腫、卵巣腫瘍、膵臓腫瘍、陰茎腫瘍、下垂体腫瘍、原発性腫瘍、前立腺腫瘍、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺腫瘍、軟部肉腫、黒色腫、転移性腫瘍、基底細胞癌、メルケル細胞腫瘍、精巣腫瘍、胸腺腫瘍、甲状腺腫瘍、子宮腫瘍、膣腫瘍、外陰腫瘍、またはウィルムス腫瘍である。
【0223】
特定の実施形態において、癌は、結腸癌、乳癌、卵巣癌、膀胱癌、腎臓癌または子宮頸癌から選択される。
【0224】
追加の方法
特定の態様において、試験薬剤が少なくとも1つのオートファジー遺伝子もしくはNF-κB遺伝子(例えば、表1または表2に列挙された遺伝子)の産物の発現または活性を阻害するかどうかを決定することを含む、薬剤(例えば、試験薬剤)が抗癌治療剤であるかどうかを判定する方法が本明細書で提供され、試験薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子(例えば、表1または表2に列挙された遺伝子)の産物の発現または活性を阻害する場合、試験薬剤は抗癌治療剤であると決定される。また、ガイドRNA試験薬剤がCas酵素にオートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子(例えば、表1または表2に列記された遺伝子)中の配列の切断または結合を誘導させるのに有効であるかどうかを判定することを含む、ガイドRNA薬剤が抗癌治療薬であるかどうかを判定する方法を本明細書で提供し、ガイドRNAは、オートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子内のガイドRNA標的配列を標的とするDNAターゲティングセグメントを含み、試験薬剤がCas酵素に遺伝子内の配列の切断または結合を誘導するのに有効である場合、試験薬剤は抗癌治療薬である。本明細書に開示される試験薬剤は、細胞集団の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%によって本明細書に開示される少なくとも1つの遺伝子の産物の発現を低減させ得る。
【0225】
いくつかの実施形態において、試験薬剤は、試験薬剤のライブラリーのメンバーである。試験薬剤は、gRNA、TALENまたはジンクフィンガーエンドヌクレアーゼ、干渉核酸または小分子を含む、本明細書に開示される任意の薬剤であり得る。本明細書に開示される試験薬剤は、少なくとも1つのオートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子の産物の発現または活性を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%阻害し得る。本明細書に開示される試験薬剤は、表1または表2の少なくとも1つの遺伝子の産物の発現または活性を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%阻害し得る。
【0226】
また、患者が本明細書で提供されるがん治療の候補であるかどうかを決定する方法も本明細書で提供される。いくつかの態様において、対象の腫瘍内の細胞による表1または表2に列挙された遺伝子の産物の発現は、対象が治療の候補であることを示す。いくつかの実施形態において、遺伝子産物はmRNA産物である。いくつかの実施形態において、遺伝子産物はタンパク質産物である。タンパク質産物は、タンパク質産物に特異的な抗体を使用して、IHCによって、またはフローサイトメトリー(例えば、FACS)によって検出することができる。遺伝子産物(例えば、mRNA産物)は、核酸増幅、核酸プローブ、または配列決定によって検出することができる。
【0227】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのオートファジー遺伝子またはNF-κB遺伝子(例えば、表1または表2に列記された少なくとも1つの遺伝子)の発現レベルを最初に測定することによってがん細胞または腫瘍細胞を標的にして殺傷する方法が本明細書に提供され、発現レベルが決定された閾値を超える場合、本明細書に開示される薬剤(複数可)を投与することによってがんまたは腫瘍細胞を標的にして殺傷する。遺伝子(例えば、表1または表2の遺伝子)の閾値は、これに限定されないが、疾患組織(例えば、腫瘍またはがん性組織)対健康な組織(例えば、腫瘍またはがんに関連しない組織)における遺伝子または遺伝子産物の発現を決定することを含む、多くの技術によって決定され得る。遺伝子(例えば、表1または表2の遺伝子)の閾値は、ある時点でのがん細胞または腫瘍における遺伝子産物の発現を後の時点と比較することによって決定することができる。健康な組織及び疾患組織は、対象から、または異なる個体から採取することができる。他の実施形態において、遺伝子または遺伝子産物の発現閾値は、組織バンクまたは第三者供給源からの組織の遺伝子または遺伝子産物の発現を試験することによって決定される。例えば、対象または第三者からの疾患組織からの腫瘍またはがん細胞が遺伝子産物のより高い発現を示す場合、対象は治療の候補である。後の時点からの腫瘍またはがん細胞が遺伝子産物のより高い発現を示す場合、対象は治療の候補である。
【実施例
【0228】
免疫チェックポイント阻害剤はがん治療を一変させたが、T細胞を介した殺傷に対する腫瘍細胞の感受性の分子的な決定要因は完全には解明されていないままである。T細胞による殺傷を調節する腫瘍細胞遺伝子/経路を同定するゲノム規模のCRISPRノックアウトスクリーニングを、本明細書に記載する。当該スクリーニングは、腫瘍細胞の抗原提示及びTNFαシグナル伝達を殺傷の要件として同定し、逆に、NF-κBシグナル伝達及びオートファジーを主要な保護メカニズムとして同定した。個々のオートファジー遺伝子のノックアウトまたはオートファジーの薬理学的阻害により、様々な系統の腫瘍細胞がT細胞及び/またはTNFαによる殺傷に対して感作される。逆に、オートファジー活性の増加をもたらすmTORシグナル伝達の阻害は、腫瘍細胞をT細胞の殺傷から保護した。メカニズム的に、オートファジーが損なわれた状況下での強化されたT細胞/TNFα媒介殺傷は、欠陥のあるNF-κBシグナル伝達に起因するものではなく、カスパーゼ8活性化の増加と関連しており、TNFαシグナル伝達経路の比較的初期の段階でのオートファジーの役割を示唆する。最後に、腫瘍細胞オートファジーの遺伝的不活性化は、腫瘍モデルにおけるT細胞チェックポイント阻害剤の有効性を高め、オートファジーが抗腫瘍免疫の重要な調節因子であることを示唆する。これらの知見は、保護的なNF-κBまたはオートファジー経路を標的にすることで、腫瘍をT細胞指向免疫療法に対して感作させる可能性があることを示唆する。
【0229】
T細胞殺傷に対する腫瘍細胞の感受性を調節する遺伝子/経路を体系的に明らかにするため、複数の群は、プールされたCRISPR/Cas9スクリーニングを利用した。これらのスクリーニングにより、腫瘍細胞の殺傷における抗原提示及びIFNγシグナル伝達の重要な役割が確認された。更に、これらのスクリーニングにより、チロシンホスファターゼPtpn2、アペリン受容体APLNR、Pbrm1及びSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体などの殺傷の新規の調節因子が同定された。興味深いことに、これらのスクリーニングのいくつかは、T細胞殺傷プロセスにおける腫瘍細胞のTNFαまたはTRAILシグナル伝達の重要な役割も示唆した。成功したものの、ほとんどの場合、これらのスクリーニングは、T細胞による殺傷に必要な腫瘍細胞遺伝子(すなわち、生き残った腫瘍細胞に富むシングルガイドRNA(sgRNA))を同定した。
【0230】
慎重に最適化された条件下で実施されたプールされたゲノム規模のCRISPR/Cas9ノックアウト(KO)スクリーニングにより、T細胞殺傷を制限する腫瘍細胞遺伝子の効率的な同定が可能になった。T細胞媒介腫瘍細胞殺傷の調節におけるTNFα/NF-κBシグナル伝達の重要な役割を実証することに加えて、結果は、T細胞誘導性アポトーシスから腫瘍細胞を保護するオートファジーのこれまで認識されていなかった役割を明らかにする。本明細書では、オートファジーがNF-κB経路の活性を調節することなく、TNFα依存性のカスパーゼ8の活性化を制限すること、及びオートファジーの遺伝的阻害が腫瘍をT細胞チェックポイント阻害剤に対して感作させることが示されている。したがって、オートファジー経路は免疫療法応答の重要な調節因子であると思われ、この経路の阻害がT細胞指向療法の有効性を高める可能性を示唆している。
【0231】
T細胞殺傷に対する感受性を調節する腫瘍細胞遺伝子の同定
細胞傷害性T細胞による殺傷に対する腫瘍細胞の感受性を調節する遺伝子を同定するために、MC38結腸腺癌細胞のゲノム全体でのCRISPR/Cas9スクリーニングを実施した。マウスシングルガイドRNA(sgRNA)KOライブラリーで形質導入された腫瘍細胞は、MHCクラス I制限Ovaペプチドまたはスクランブル対照ペプチドを間欠的に投与され、OT-1トランスジェニックマウス(Ovaペプチドを認識するT細胞受容体を発現する)から単離された活性化CD8T細胞とインキュベートした(図1のA)。陽性対照としてB2m KO細胞(T細胞殺傷から保護されている)を使用して、スクリーニング条件を最適化かつ検証した。目標は、スクリーニングで約90%腫瘍細胞の殺傷を達成することだった(図9)。T細胞への24時間の曝露後、生存腫瘍細胞を採取し、Ovaを間欠的に投与した腫瘍細胞対対照腫瘍細胞におけるsgRNA表現をNGSによって評価した。ライブラリーの初期提示が高いため(約2000x適用範囲)、殺傷した後でも腫瘍細胞でsgRNA提示が維持され、枯渇したsgRNAと濃縮されたsgRNAを効率的に検出できた(R=0.95、Ova対対照ペプチド間欠的投与細胞)(表3、図10)。T細胞殺傷とは無関係に腫瘍細胞増殖/生存を調節する遺伝子を同定するために、T細胞を添加せずに、12回の集団倍加のために継代したライブラリー改変腫瘍細胞を用いて、並行スクリーニングを行った。既知のコア必須遺伝子を標的とするsgRNAのかなりの割合が、この並行増殖スクリーニングで枯渇したが、非標的sgRNAの表現はほとんど変化せず(図11)、MC38細胞におけるCRISPR/Cas9媒介遺伝子改変の有効性及び特異性を確認した。
【0232】
濃縮されたsgRNAの分析により、T細胞による腫瘍細胞の殺傷に必要な重要な経路として、抗原提示及びTNFα誘導アポトーシスシグナル伝達が同定された(図1のB)。予想どおり、B2m及びMHCクラスI分子H2-K1を標的とする複数のsgRNAが大幅に濃縮され、T細胞殺傷がOvaペプチドの細胞表面提示に依存していることが確認された。H2-K1及びB2mを標的とする6つのsgRNAすべての回復は、細胞のCRISPR/Cas9媒介遺伝子改変の有効性を更に強調する。興味深いことに、Tnfrsf1a(TNF受容体1、TNFR1)、カスパーゼ-8(TNFα誘導性アポトーシスに必要)及びTradd(TNFαシグナル伝達経路の重要なアダプター分子)を標的とする複数のsgRNAも濃縮されており(図1、B及びC)、T細胞由来のTNFαが腫瘍細胞死滅に重要な役割を果たしていることを示唆した。最後に、mTORシグナル伝達経路のいくつかの遺伝子を標的とするsgRNAが濃縮された(例えば、Mtor、Mlst8、Rictor、Mapkap1、Tti2、Telo2、Tti1)。以下に示すように、mTORシグナル伝達の不活性化は、オートファジー活性の増加を生じさせることによりT細胞殺傷から腫瘍細胞を保護する。
【0233】
枯渇したsgRNAの分析により、NF-κBシグナル伝達及びオートファジーが、T細胞による腫瘍細胞殺傷を制限する2つの重要な経路であることが同定された。LUBAC(Sharpin、Rbck1及びRnf31)、TAK1(Map3k7/Tak1、Tab1、Tab2)及びNemo複合体(Chuk、Ikbkb及びIkbkg)の各メンバーを含むNF-κBシグナル伝達に関与する遺伝子を標的とする複数のsgRNAは、著しく枯渇した。更に、追加のNF-κB経路またはNF-κB標的遺伝子(Traf2、Tbk1、Mapkapk2、Rela、Cflar及びTnfaip3)を標的とするsgRNAも枯渇した(図1のD及びE)。NF-κB経路が、Cflar(c-Flip)などの生存遺伝子の転写誘導を介してTNFα依存性アポトーシスを制限する役割を十分に確立しているため、これらの知見は、T細胞媒介殺傷におけるTNFαの重要な役割と一致している。
【0234】
興味深いことに、オートファジー経路(Rb1cc1、Pik3c3、Nrbf2、Atg13、Atg14)、膜物質の移動(Atg9a、Atg2a、Tax1bp1)またはオートファゴソーム増殖(Atg5、Atg12、Atg10)の遺伝子を標的とする複数のsgRNAが大幅に枯渇していた(図1のF及びG)。これらのデータは、腫瘍細胞のオートファジー活性がT細胞殺傷に関連して保護的な役割を果たしていることを示している。オートファジーは、他の環境(例えば、栄養不足)で細胞死を制限することが知られているが、これは、T細胞誘発腫瘍細胞アポトーシスにおいてオートファジーが重要な役割を果たしていることを初めて示している。重要なことに、NF-κB経路遺伝子またはオートファジー遺伝子を標的とするsgRNAは、並行細胞増殖スクリーニングで枯渇せず、フォローアップ実験により、MC38細胞におけるオートファジー遺伝子のKOが細胞増殖を損なわないことが確認され(図12)、これらの遺伝子のKOは、特にT細胞媒介殺傷において細胞の適応度を低下させることを示している。mTORシグナル伝達はオートファジーの阻害において確立された役割を持っているため、オートファジーの保護的役割は、mTOR経路の複数の遺伝子を標的とするsgRNAがスクリーニングで濃縮されたという観察と一致している(図1のB)。
【0235】
TNFα誘導性アポトーシスシグナル伝達は、T細胞による腫瘍細胞殺傷に重要な役割を果たしている。
CRISPRスクリーニングは、腫瘍細胞の殺傷におけるT細胞由来のTNFαの重要な役割を示した。細胞傷害性T細胞による殺傷は、主にT細胞顆粒からのパーフォリン及びグランザイムの放出に起因すると考えられているが、このプロセスにおけるTNFα(及び他の細胞死受容体リガンド)の役割は以前に提唱されている。TNFαは、アポトーシス(カスパーゼ-8依存性)またはネクロトーシスのいずれかによって細胞死を促進することができるが、いくつかの分子チェックポイント(NF-κB活性化を含む)が機能して、TNFα誘導性細胞死を阻害する。したがって、TNFαに対するほとんどの細胞の既定の反応は、生存及び炎症促進性遺伝子の誘導であると考えられている。TNFα/NF-κBシグナル伝達の簡略化されたモデルについては図2のAを参照のこと。
【0236】
図2のBに示すように、T細胞殺傷アッセイにTNFα遮断抗体を添加すると、MC38細胞死が有意に減少し(CRISPR/Cas9媒介によるB2mの不活性化)、TNFαシグナル伝達の役割を確認した。アッセイ(活性化前のT細胞を使用する)における腫瘍細胞殺傷に対するTNFα遮断の効果は、TNFα遮断がTNFα非感受性腫瘍細胞の殺傷を制限しないため、T細胞機能の阻害に起因するものではないことに注意することが重要である(図13)。MC38細胞のT細胞殺傷に対するTNFαの有意な寄与と一致して、可溶性TNFαは、アポトーシス機構を介してMC38細胞死を促進した(すなわち、殺傷は、カスパーゼ阻害剤z-VAD-FMKによってブロックされた)(図2のC)。更に、CRISPR/Cas9を使用するKO細胞株の生成は、MC38細胞のTNFα媒介殺傷がTNFR1に完全に依存し、FADD(カスパーゼ8活性化複合体の構築に重要なアダプタータンパク質)及びRIPK1(カスパーゼ8と相互作用してアポトーシスを促進するキナーゼ)に部分的に依存することを確認した(図2のC)。
【0237】
腫瘍細胞株のパネルでカスパーゼ-8活性化及びアポトーシスを誘導するTNFαの能力が評価され、これらの細胞株の大部分(CT26、B16F10、4T1)はTNFαによって殺傷されなかったが、EMT6細胞(MC38と共に)はTNFα誘導性カスパーゼ8活性化及びアポトーシスを示した(図2のD及びE)。(TNFαによる殺傷に感受性のあるヒトがん細胞株の例については、図22を参照)。上述のように、NF-κBシグナル伝達は、TNFα依存性アポトーシスの制限において重要な役割を果たしていると考えられる。しかし、TNFα感受性細胞株対耐性細胞株では、NF-κB活性化に明らかな違いは見られなかった。TNFα感受性MC38及びEMT6細胞は、TNFα耐性B16F10及び4T1細胞で観察されたものと同様の、Iκ-Bα(NF-κBを細胞質に隔離することにより阻害する)の効率的な分解及びNF-κBサブユニットp65/Relaのリン酸化を示した(図2のF、図14)。更に、MC38細胞は、2つのNF-κB標的遺伝子A20及びICAM-1の強力なTNFα誘導性発現を示した(図2のG)。したがって、NF-κB経路は明らかにTNFα依存性を制限するが、TNFα誘導殺傷に対する感受性は、欠陥のあるNF-κB活性化以外の要因に明らかに起因し得る。
【0238】
NF-κBシグナル伝達は、T細胞及びTNFαによる腫瘍細胞殺傷を制限する。
T細胞によるMC38細胞の殺傷を制限する際のNF-κB経路の役割を示すスクリーニングデータを確認するために、3つの重要なNF-κB経路遺伝子(Map3k7/Tak1、Rbck1及びRela)は、スクリーニングで枯渇したsgRNAを使用して不活性化された。複数のsgRNAによるMap3k7の不活性化は、MC38細胞をT細胞殺傷に対して感作させ、異なるsgRNAによるMap3k7タンパク質の枯渇の程度は感作の程度と相関し、これらの効果が予想通りであることを示した(図3のA及びB)。Map3k7 KOはTNFαによるNF-κB標的遺伝子A20及びICAM-1の誘導を有意に阻害し、Map3k7 KOがNF-κB経路を無効にすることが確認された(図3のE)。Rbck1(図15)及びNF-κBサブユニットp65(Rela)(図16)のノックアウト時に、T細胞殺傷に対する同様の効果が観察され、NF-κBシグナル伝達の保護効果が更に検証された。
【0239】
重要なことに、飽和量のTNFα遮断抗体の存在下で、Map3k7 KO(Rbck1及びRela KOと同様に)はもはやT細胞によるMC38細胞の殺傷を増強しなかった (図3のC、ならびに図15及び図16)。これは、NF-κB経路の保護効果が、TNFα媒介アポトーシス阻害を反映していることを示す(パーフォリン/グランザイム媒介殺傷よりも)。この仮説と一致して、Map3k7、Rbck1及びRelaのKOは、TNFα誘導性カスパーゼ8の活性化及び細胞死を有意に増加させた(図3のD及びE、図15及び図16)。TNFα依存性アポトーシスに対する効果とは対照的に、Map3k7 KO(Rbck1及びRela KOと同様に)は、化学療法薬ドキソルビシン及びパクリタキセルによるMC38細胞の殺傷に影響を及ぼさず、NF-κBがこれらの細胞をいかなるアポトーシス誘導性刺激からも広く保護しなかったことを示した(図3のF、図15及び図16)。
【0240】
オートファジーは、T細胞及びTNFαによる腫瘍細胞殺傷を制限する。
T細胞による腫瘍細胞殺傷を制限するオートファジーの役割を検証するために、3つの必須オートファジー遺伝子(Rb1cc1、Atg9a及びAtg12)を、スクリーニングで枯渇したsgRNAを使用して不活性化した。複数のsgRNAによるRb1cc1(FIP200としても既知)の不活性化は、MC38細胞をT細胞殺傷に対して感作させ、Rb1cc1タンパク質の枯渇の程度は感作の程度と相関し、これらの効果が予想通りであることを確認した(図4のA及びB)。同様の結果がAtg9a(図17)及びAtg12(図18)のKOで見られ、オートファジーの保護的役割が更に検証された。重要なことに、オートファジーカーゴ受容体p62(セクエストソーム1、sqstm1としても既知)のレベルの大幅な増加(図5のA、図17及び図18)及びオートファゴソームタンパク質LC3の脂質化型であるLC3-IIのレベルの低下(図18)によって示されるように、これらの3つの主要なオートファジー成分のノックアウトは、実際にMC38細胞のオートファジー活性を損う。p62は、ユビキチン化タンパク質をオートファゴソームに結合させ、それ自体がオートファジーによって分解されるため、オートファジーが阻害されるとそのレベルが上昇する。LC3-Iは、ホスファチジルエタノールアミンへ結合を介してLC3-IIに変換され、オートファゴソームの形成と伸長が開始される。したがって、この変換の上流でオートファジーを阻害すると、LC3-IIの形成が阻害される(Deretic,2008)。
【0241】
オートファジーは、複数のメカニズムによって、例えばマイトファジー-特に外膜の透過及びアポトーシスカスケードを引き起こす可能性のある損傷したミトコンドリアの除去-を介して、アポトーシスを阻害することが提唱されている。オートファジーがT細胞による腫瘍細胞殺傷を制限するメカニズムへの洞察を得ることを目的とした一連の実験が行われた。オートファジーの遺伝的不活性化は、MC38細胞における細胞表面MHC-I発現もしくはOvaペプチドの提示にほとんどまたはまったく影響を及ぼさなかった(図23)。
【0242】
図4のCに示すように、Rb1cc1 KOは、TNFα遮断抗体の存在下で、MC38細胞の殺傷にわずかな影響しか及ぼさず、T細胞殺傷に関連するオートファジーの保護効果は、主にTNFα依存性アポトーシスの阻害によって媒介されることを示した。Atg9a及びAtg12 KO細胞でも同様の結果が見られた(図17及び図18)。これらの観察結果と一致して、Rb1cc1、Atg9aまたはAtg12のKOは、TNFα依存性カスパーゼ8の活性化及びアポトーシスを有意に増加させた(図4のD、図5のAならびに図17及び図18)。したがって、オートファジーは、カスパーゼ8活性化のレベル(任意のミトコンドリア関与の上流)で、TNFαシグナル伝達カスケードの初期段階を調節するようにみえる。この設定におけるオートファジーの特定のシグナル伝達機能と一致して、オートファジー遺伝子のKOは、化学療法薬ドキソルビシンまたはパクリタキセルによる殺傷に対してMC38細胞を感作しなかった(図4のE、図17及び図18)。
【0243】
NF-κB経路及びオートファジー経路の両方がT細胞による腫瘍細胞殺傷を制限することを考慮して、これらの経路間の機構的接続の可能性を調査した。1つの可能性は、オートファジーの不活性化がどういうわけかNF-κBシグナル伝達の異常をもたらし、それによってTNFα媒介アポトーシスに感作させることである。しかし、オートファジー遺伝子Rb1cc1のKOは、TNFαを介したIκ-Bαの分解、NF-κB標的遺伝子A20の誘導、または発現にNF-κBを必要とするいくつかのケモカインの誘導(例えば、CXCL10及びCCL2)には影響を及ぼさなかった(図5のB、図20)。したがって、オートファジーは、NF-κBの活性化に必要な役割の結果として、MC38細胞におけるTNFα媒介アポトーシスを制限しない。逆に、オートファジー受容体p62のレベルは、Map3k7 KOの影響を受けず(図5のC)、無傷のNF-κB経路がオートファジー活性に必要ないことを示唆した。
【0244】
次に、オートファジーが阻害されたときにTNFαが細胞を殺傷するメカニズムを調べた。Rb1cc1の不活性化がTNFα誘導性カスパーゼ8の活性化を増加させるという観察結果は、オートファジー経路が損なわれている状況では、TNFαがネクロトーシスではなくアポトーシスを介して細胞を殺傷することを示唆している。この主張を支持して、汎カスパーゼ阻害剤は、Rb1cc1 KO細胞におけるTNFα媒介殺傷をブロックしたが(図5のD)、ネクロプシス阻害剤は効果がなかった(図5のH)。これらの観察結果と一致して、TNFαは、Rb1cc1 KO細胞においてネクロプトーシスのメディエーターである混合型キナーゼドメイン様タンパク質(MLKL)のリン酸化を誘導しなかった(図5の1)。
【0245】
TNFα誘導性アポトーシスは、キナーゼRIPK1の関与によって区別される複数の分子メカニズムを介して発生し得る。オートファジー阻害に関連してTNFαシグナル伝達の遺伝子解析を可能にするために、脂質キナーゼVps34の選択的小分子阻害剤であるオートフィニブが採用された。それは、オートファゴソームの形成に不可欠である。オートフィニブによるMC38細胞の処理は、TNFα媒介カスパーゼ8活性化及び殺傷を増加させた(及びp62のレベルを大幅に増加させ、オートファジーの遮断を確認した)(図5のE及びF)。重要なことに、オートフィニブは、TNFαを介したIκ-Bαの分解に影響を及ぼさず(図5のF)、オートファジーの障害がNF-κB経路の欠陥にはつながらないことを示している(上述のRb1cc1 KOのデータと一致)。
【0246】
細胞がTNFα誘導性殺傷を制限する重要なメカニズムの1つが、RIPK1のアポトーシス活性の阻害であることは十分に確立されている。TNFR1シグナル伝達経路におけるこの「早期チェックポイント」に寄与する分子イベントの中に、cIAPによるRIPK1のユビキチン化がある。したがって、Smac模倣体によるcIAP機能の阻害は、FADD/RIPK1/caspase-8依存性アポトーシスを促進する(図2のAのモデルを参照)。このモデルと一致して、CRISPRを介したRipk1、FaddまたはTnfrsf1aの不活化は、Smac模倣体の存在下でTNFαによる殺傷を有意に減少させた(図5のG)。しかし、Ripk1、Tnfrsf1aまたはFaddの不活性化も、オートフィニブの存在下でTNFαによる殺傷を有意に減少させたが、Ripk1の不活性化は効果がなかった(図5のG)。したがって、オートファジーが損なわれた細胞では、TNFα誘導性アポトーシスはFADD/caspase-8依存性だが、RIPK1依存性ではなく、TNFR1シグナル伝達経路の初期チェックポイントが機能し続けていることを示唆している。したがって、オートファジーは、FADD/カスパーゼ-8複合体の形成及び/または活性を制限することにより及びRIPK1活性を制限しないことにより、TNFα誘導性アポトーシスを阻害するようにみえる。オートファジーの不活性化は、TNFR1、TRADD(TNFR1関連死ドメインタンパク質)またはFADDの総タンパク質レベルに影響を及ぼさず、TNFα誘導性アポトーシスの増強が、これらの重要な経路成分のレベル上昇によって単純に引き起こされるのではないことが示された(図24)。
【0247】
NF-κB経路及びオートファジー経路の両方がT細胞による腫瘍細胞殺傷を制限することを考慮して、これらの経路間の機構的接続の可能性を調査した。1つの可能性は、オートファジーの不活性化がNF-κBシグナル伝達の異常をもたらし、それによってTNFα媒介アポトーシスに感作させることである。しかし、Rb1cc1のKOは、TNFαを介したIκ-Bαの分解、NF-κB標的遺伝子A20の誘導、または発現にNF-κBを必要とするいくつかのケモカインの誘導(例えば、CXCL10及びCCL2)には影響を及ぼさなかった(図4のG及び図20)。したがって、オートファジーが損なわれても、NF-κBの活性化が損なわれることはない。逆に、オートファジー受容体p62のレベルは、Map3k7 KOの影響を受けず(図4のH)、無傷のNF-κB経路がオートファジー活性に必要ないことを示唆した。
【0248】
TRAILは、2つのTNFRSFファミリー受容体であるTRAIL-R1及びTRAIL-R2の活性化を通じてアポトーシスを促進する。オートファジーがTRAIL-Rの下流のアポトーシスシグナル伝達も制限できるかどうかを判断するために、オートフィニブの非存在下または存在下でがん細胞をTRAILで攻撃した。図21のA~Cに示すように、オートファジーがブロックされると、ヒトがん細胞におけるカスパーゼ-8の活性化及びTRAILによるアポトーシスの誘導が増加し、オートファジーが複数の細胞死受容体によるアポトーシスシグナル伝達を制限できることを示唆した(おそらく、TNFα及びTRAILの両方によるアポトーシスの誘導に不可欠であるFADD/caspase-8複合体の活性の効果を介して)。オートファジー阻害によりMC38細胞はTRAILに対して感作されたが、これらの細胞は、TNFαによってより効果的に殺傷される(図21のA~F)。
【0249】
腫瘍細胞mTORシグナル伝達は、T細胞/TNFα媒介殺傷に対する感受性を高める。
mTOR経路の遺伝子(例えば、Mlst8、Mtor、Rictor、Mapkap1)を標的とする複数のsgRNAがスクリーニングで濃縮され、mTORシグナル伝達が効率的な腫瘍細胞殺傷に必要であることが示唆された。mTOR経路は、細胞代謝の重要な調整因子であり、栄養レベル及び成長因子を細胞の成長及び増殖に結び付ける。細胞増殖の促進におけるその役割と一致して、mTORシグナル伝達は、複数のメカニズムを介してオートファジー活性を阻害する。オートファジーの保護的役割に関する知見を考慮すると、mTORは、オートファジーの阻害を通じて、T細胞媒介殺傷に対する腫瘍細胞の感受性を高める可能性があるようにみえる。
【0250】
スクリーニング結果を確認するために、Mlst8(mTORシグナル伝達複合体であるmTORC1及びmTORC2の両方の必須成分)は、スクリーニングで濃縮されたsgRNAを使用して不活性化された。Mlst8の不活性化は、ホスホS6の減少(mTORC1依存性)及びホスホAktレベルの減少(mTORC2依存性)によって証明されるように、mTORC1及びmTORC2の両方の活性を阻害した(図6のA)。mTORシグナル伝達によるオートファジーの阻害と一致して、Mlst8 KO細胞はp62レベルの低下を示し、オートファジー活性の増加が確認された(図6のA)。Mlst8 KO細胞におけるオートファジーの上昇は、TNFα及びT細胞媒介殺傷の両方に対する感受性の低下と関連していた(図6のB及びC)。重要なことに、腫瘍細胞殺傷に対する各Mlst8 sgRNAの効果の大きさは、Mlst8タンパク質の枯渇の程度と相関し(図6のA)、これらの効果が予想通りであることが確認された。腫瘍細胞殺傷に対するmTOR経路の影響を更に説明するために、mTORC1シグナル伝達をラパマイシンでブロックすると、ホスホS6及びp62レベルが低下した(オートファジー活性の上昇が確認された)(図6のD)。Mlst8 KOと同様に、ラパマイシンによるmTORC1の阻害は、TNFα及びT細胞媒介殺傷の両方を有意に減少させた(図6のE及びF)。
【0251】
mTOR調節の効果に関するこれらの知見は、腫瘍細胞の保護メカニズムとしてのオートファジーの重要性を更に裏付けている。スクリーニングで同定された様々なシグナル伝達経路によるT細胞媒介腫瘍細胞殺傷の調節を示す図を、図6のGに示した。
【0252】
オートファジーは、様々な系統のがん細胞をT細胞及びTNFα媒介殺傷から保護する。
オートファジーの保護的役割に関する知見を拡張するために、オートフィニブ及び別のVps34遮断剤であるSAR405を使用して、がん細胞株パネルにおけるオートファジー阻害の効果を評価した。オートフィニブ及びSAR405はどちらもVps34を標的とするが、これらの阻害剤は構造的に異なり、そのため、異なるオフターゲット効果を有する可能性がある。どちらのオートファジー阻害剤も、ベースラインでTNFαに対して感受性を示さない細胞株を含む、異なる系統(例えば、結腸、乳房、肺)の複数のマウス及びヒトがん細胞株においてTNFαによる殺傷を有意に増加させた(図7のA、図22)。オートファジー阻害剤は、p62レベルを有意に上昇させ(オートファジー遮断を確認)、ヒト乳癌細胞におけるTNFα誘導性カスパーゼ-8活性化を増強した(図7のB)。したがって、TNFα治療という観点からオートファジーの保護的役割は、広く関連しているようにみえる。
【0253】
これまでのところ、標的細胞のMHCクラスI/ペプチド複合体によるT細胞受容体の関与を通じてT細胞が活性化されると、TNFαが腫瘍細胞殺傷に寄与することが示されている。これらの条件下では、腫瘍細胞のオートファジーが実質的な保護的役割を果たすことが示されている。当該知見の潜在的な臨床的関連性を更に裏付けるために、オートファジーが、CD3二重特異性抗体による刺激後のT細胞による腫瘍細胞殺傷も調節するかどうかを求めた。新しく有望な治療クラスであるこれらの抗体は、一方のアームで腫瘍抗原に結合し、もう一方のアームでT細胞上のCD3に結合し、それによって腫瘍細胞と細胞傷害性T細胞を架橋して、腫瘍細胞殺傷死滅を可能にする(図7のC)。乳房腫瘍抗原xCD3二重特異性抗体(Regeneronで生成)を使用して、ヒトT細胞によるZR-75-1ヒト乳癌細胞の殺傷を促進した。図7のCに示すように、SAR-405によるオートファジーの阻害により、腫瘍細胞殺傷が大幅に増加した。オートファジーの薬理学的遮断の効果と一致して、Rb1cc1 KOによるオートファジーの遺伝的不活性化は、CD3二重特異性抗体誘導性殺傷を増強した(図7のD及びE)。まとめると、これらの知見は、CD3二重特異性抗体によって誘導されるT細胞殺傷に関連するオートファジーの保護的役割と、ヒト乳癌細胞におけるオートファジーの保護的役割を確認する。
【0254】
オートファジーの遺伝的不活性化は、免疫療法に対して腫瘍を感作させる。
知見の臨床的関連性を更に評価するために、オートファジーの遺伝的不活性化がT細胞チェックポイント阻害剤に対する腫瘍の応答性を高めるかどうかを求めた。EMT6マウス乳癌細胞におけるRb1cc1のKOは、p62タンパク質レベルの大幅な増加をもたらし、オートファジー活性の減少を確認し(図8のA)、TNFα誘導性アポトーシスに対するEMT6細胞の感受性を増加させた(図8のB)。対照またはRb1cc1 KO細胞をマウスに移植し、移植の3日後にマウスを対照抗体またはPD-1及びCTLA4遮断抗体の組み合わせで処理した。図8のCに示すように、PD-1とCTLA4の併用遮断は、Rb1cc1 KO腫瘍の完全な退縮を促進しつつも、対照のEMT6腫瘍に対してわずかな増殖阻害効果しかなかった。個々の腫瘍増殖曲線は、対照腫瘍の0/10と比較して、Rb1cc1 KO腫瘍の10/10が退縮したことを示す(図8のD)。
【0255】
次に、MC38腫瘍を用いて同様の実験を行った。図8のEに示すように、MC38細胞におけるRb1cc1のKOは、p62タンパク質レベルの大幅な増加によって証明されるように、オートファジーの障害をもたらした。PD-1+CTLA4の併用遮断により、対照MC38腫瘍の増殖が減少したが、Rb1cc1 KO腫瘍に対するチェックポイント遮断の効果は有意に大きかった(図8のF)。免疫療法に応答したRb1cc1 KO腫瘍対対照腫瘍の増殖の遅延は、図8のGに示されている個々の腫瘍増殖曲線から容易に明らかである。まとめると、これらの知見は、オートファジーが損なわれた腫瘍が、臨床的に関連するT細胞チェックポイント阻害剤に対する応答性の増加を示すことを示している。
【0256】
Rb1cc1 KO腫瘍との関連でTnfrsf1a(TNFR1をコードする)KOの効果を試験した。本明細書に開示されるように、Rb1cc1 KO細胞で観察されるTNFα媒介アポトーシス増加は、Rb1cc1/Tnfrsf1aダブルKO EMT6細胞では逆転した(図8のA及びB)。Tnfrsf1aのin vivo遺伝子不活性化は、Rb1cc1 KO腫瘍で観察される免疫療法に対する感作を制限した(図8のC及びD)。したがって、オートファジーが損なわれた腫瘍に関連して、Tnfrsf1a KOは保護的である。オートファジーが損なわれていない対照腫瘍では、Tnfrsf1a KOは、腫瘍を免疫チェックポイント遮断から保護しないが、実際には治療に対して感作させている(図8のC)。Tnfrsf1a KOが状況依存的に腫瘍に影響を与えることは明らかである。それにもかかわらず、データは、腫瘍細胞オートファジーが損なわれている状況では、TNFα誘導性アポトーシスが抗腫瘍免疫の重要な要素であることを示している。
【0257】
Rb1cc1 KO腫瘍への白血球浸潤を評価した。EMT6及びMC38モデルの両方で、Rb1cc1 KO腫瘍は、対照腫瘍と比較して、CD45+白血球の数が増加していた(図26)。しかし、全体的な白血球の浸潤は増加したが、CD4+またはCD8+T細胞の優先的な浸潤は観察されなかった。それにもかかわらず、白血球浸潤の増加及びT細胞媒介殺傷に対する感受性の増加の両方が、オートファジー障害腫瘍モデルで観察された免疫療法に対する応答の増強に寄与している可能性がある。
【0258】
ゲノム規模のCRISPRスクリーニングを使用して、腫瘍細胞のTNFαシグナル伝達がT細胞媒介殺傷の重要な構成要素であることを同定し、逆にNF-κB経路及びオートファジー経路の両方に対する保護的役割を同定した。本明細書に提示されたデータは、オートファジーが、ミトコンドリア関与の上流でカスパーゼ-8活性化の阻害を介して、TNFαによる腫瘍細胞殺傷を制限することを示している。より具体的には、オートファジーはFADD/カスパーゼ-8複合体の形成及び/または活性を阻害するようにみえ、これは、オートファジーがTRAILによる腫瘍細胞殺傷を制限できるという観察と一致し、これはまた、FADD/カスパーゼ-8を介した細胞毒性も誘発する。
【0259】
これらのin vivo実験は、腫瘍細胞におけるオートファジーの遺伝的不活性化がT細胞チェックポイント阻害剤の有効性を高めることを示しており、オートファジーの薬理学的阻害もそのような治療の有効性を高める可能性があることを示唆している。がんにおけるオートファジーの役割は広く研究されているが、このプロセスが腫瘍細胞の増殖/生存にとってどれほど重要であるかは不明のままである。それにもかかわらず、本明細書に提示されたデータは、オートファジー阻害剤が、腫瘍細胞増殖の潜在的な調節とは別に、がん細胞をTNFα誘導性アポトーシスに対して感作させる可能性があることを示している。
【0260】
要約すると、本明細書に提示された分析は、T細胞媒介殺傷に対する腫瘍細胞の感受性を制限するオートファジーの役割を明らかにした。オートファジーが腫瘍の免疫逃避の潜在的なメカニズムであることが同定されたことは、オートファジー阻害剤がT細胞関与免疫療法の有効性を高める可能性を示唆している。更に、本明細書に提供されたデータは、オートファジーが、ミトコンドリア関与の上流でカスパーゼ-8活性化の阻害を介して、T細胞及びTNFαによる腫瘍細胞殺傷を制限することを示している。更に、オートファジーの阻害は、腫瘍細胞を化学療法誘発性アポトーシスに感作させず、より一般的な抗アポトーシス機能(例えば、マイトファジー)ではなく、TNFαシグナル伝達の調節におけるオートファジーの比較的特異的な役割を示唆している。したがって、本明細書で提供されるデータは、オートファジー阻害剤の新しい治療的使用、すなわち、がん細胞が増殖/生存についてオートファジーに依存していない場合でも、がん細胞をT細胞殺傷の影響を受けやすくすることを示唆している。
【0261】
材料及び方法
がん細胞株
MC38マウス結腸癌細胞は、米国の国立衛生研究所(NIH)リポジトリから入手した。4T1、B16F10、CT26、EMT6、L929マウスがん細胞、及びZR75-1、HCT-116、HeLa、BT-20、Me-180、MDA-MB-361ヒトがん細胞、ならびにヒト胎児腎臓(HEK)293Tヒト細胞は、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)からのものであった。Colon26マウスがん細胞は、米国の国立がん研究所(Charles River Laboratoriesが運営)のがん治療及び診断部門からのものであった。すべての細胞は、製造元の推奨培地で培養された。すべての細胞株は、2016年にショートタンデムリピートプロファイリング(IDEXX BioResearch)によって認証された。
【0262】
マウス
OT-1 C57BL/6-Tg(TcraTcrb)1100Mjb/Jマウス(003831)、C57BL/6マウス(000664)及びBalb/cマウス(000651)は、Jackson Laboratoryからのものであった。
【0263】
CRISPRノックアウトsgRNAライブラリー及びゲノム規模のスクリーニング
マウスsgRNAライブラリー(GeCKO A及びB;約130,000sgRNA総量)及びpLentiCas9-Blastプラスミドは、GenScriptから購入した。ゲノム全体のCRISPR/Cas9スクリーニングは、レンチウイルス感染(pLentiCas9-Blast)及びブラストサイジン(12μg/ml)による選択によりCas9ヌクレアーゼを発現するように操作されたMC38細胞を使用して実施した。各sgRNAが約200個の細胞に導入されるように、MC38-Cas9細胞に、感染倍率0.3倍でマウスGeCKOライブラリー(AとBを合わせて)を感染させた。細胞は12μg/mlのピューロマイシンで3日間選択し、約1億3000万個の細胞を参照対照試料として取りわけた。感染した7日後に、T細胞殺傷アッセイを3回同じ方法で設定した。約2000xライブラリー表現でのライブラリー操作細胞は、Ovaペプチドを間欠的に投与し、約200xライブラリー表現での細胞は、対照ペプチドを間欠的に投与した。ペプチドを間欠的に投与した後、細胞を活性化CD8T細胞(OT-1マウスから単離)と1:3のE:T比で共培養した。24時間の共培養後、腫瘍細胞の約90%が殺傷されたとき、非接着細胞がPBSで洗い流され、生腫瘍細胞が採取された。その後、DNeasy血液&組織キット(Qiagen)を使用してゲノムDNA抽出を実施し、NGSライブラリーを前述のように調製した。その後、NGSライブラリーをマルチプレックスし、80塩基対(bp)シングルエンドリードを生成するNextSeq500(Illumina)で実行した。bcl2fastqソフトウェア(Illumina)でデマルチプレックスした後、sgRNAに隣接する16bpベクター配列についてリードをスクリーニングし、sgRNAカウントのために下流の20bpのsgRNAリードを抽出した。その後、MAGeCKを使用してリードをカウントし、遺伝子/sgRNA濃縮及び統計解析を実行した。T細胞を添加せずに増殖させたMC38細胞を、感染後1週間で回収し、sgRNA表現と参照対照細胞のそれを比較した。
【0264】
検証実験に使用したsgRNA配列(遺伝子名、sgRNA ID、該当する場合sgRNA番号及び配列)は以下のとおりである(個々のsgRNAはpLenti-Guide-PuroまたはpLentiCRISPR v2プラスミドのいずれかにクローニングされた):Map3k7、MGLibA_30286、1、GATGATCGAAGCGCCGTCGC(配列番号16);Map3k7、MGLibA_30288、3、GGGACTTACTGGATTCAGGC(配列番号18);Map3k7、MGLibB_30278、5、TTAACTCAGGTTGTCGGAAG(配列番号20);Rbck1、MGLibA_44718、1、AGTACGCCCGGATATGACAG(配列番号22);Rbck1、MGLibA_44720、3、CAGCTTACCGGTGGTGACTC(配列番号24);Rbck1、MGLibB_44706、5、CGGGCGTACTGTGAGCCAAA(配列番号26);Rela、MGLibA_45073、2、TCATCGAACAGCCGAAGCAA(配列番号29);Rela、MGLibA_45074、3、GCCCAGACCGCAGTATCCAT(配列番号30);Rela、MGLibB_45061、6、ACTTACCTGAGGGAAAGATG(配列番号33);Rb1cc1、MGLibA_44690、3、TCAAGATAGACCCAATGATG(配列番号36);Rb1cc1、MGLibB_44675、4、CTCCATTGACCACCAGAACC(配列番号37);Rb1cc1、MGLibB_44676、5、ATTTGAACAGTCCTCCAGAT(配列番号38);Atg9a、MGLibA_05661、1、CATAGTCCACACAGCTAACC(配列番号40);Atg9a、MGLibA_05662、2、TTGGGATCCGAAGAGCATGT(配列番号41);Atg9a、MGLibB_05661、4、TCTATAACATTTGCTGCTAT(配列番号43);Atg12、MGLibA_05621、3、GAGCGAACCCGGACCATCCA(配列番号48);Atg12、MGLibB_05620、5、CCTGCATTACTGCAAATCCC(配列番号50);Atg12、MGLibB_05621、6、TTCTGGCTCATCCCCATGCC(配列番号51);Tnfrsf1a、MGLibA_55116、GTGTCTCACTCAGGTAGCGT(配列番号52);Ripk1、MGLibA_45635、3、GTACACGTCCGACTTCTCCG(配列番号53);Fadd、MGLibA_16988、2、TAGATCGTGTCGGCGCAGCG(配列番号54);B2M、MGLibA_06111、1、AGTATACTCACGCCACCCAC(配列番号55);Rb1cc1、HGLibB_40366、6、GGCTGCAATCATGGCCAACC(配列番号56);Mlst8、MGLibA_31480、1、GACTCCGTCATAACTGATGA(配列番号57);Mlst8、MGLibA_31482、3、CGAAGCATGATTGCTGCTGC(配列番号58);Mlst8、MGLibB_31471、4、AGCACTCACGGCACTATTGA(配列番号59)。
【0265】
レンチウイルスパッケージング/形質導入及びCRISPR媒介遺伝子ノックアウト
検証実験では、目的の遺伝子を標的とするsgRNAを、pLenti-Guide-PuroまたはpLentiCrispr v2(GenScript)にクローニングした。HEK293T細胞は、Lipofectamine2000を使用して、pLenti-Cas9-BlastまたはpLenti-Guide-PuroまたはpLentiCrispr v2、ならびにパッケージングプラスミドpsPAX及びpMD2.Gで遺伝子導入された。6時間後、培地を完全増殖培地に交換した。72時間後、レンチウイルスを含有する上清を回収し、濾過し、超遠心分離によって濃縮し、-80℃で保存した。レンチウイルス形質導入のために、腫瘍細胞を、0.3のMOIにて5ug/mlのポリブレン及びレンチウイルスを含む完全培地に播種した。ライブラリー表現を維持するのに十分な数のHEK293T細胞を使用して、マウスGeCKO A及びBプラスミドライブラリーをプールし、同じ方法でレンチウイルスにパッケージングした。24時間後、培地をDNaseを含有する完全増殖培地に交換し、レンチウイルスを上述のように濃縮した。
【0266】
CD8+T細胞の単離及び活性化
CD8T細胞は、6~8週齢の雄OT-1マウスの脾臓及びリンパ節から単離された。これらのマウスには、マウスTcra-V2及びTcrb-V5遺伝子の遺伝子導入インサートが含まれている。遺伝子導入T細胞受容体は、H-2Kb MHCクラスIタンパク質との関連でオボアルブミンペプチド残基257~264を認識するように設計された。いくつかの実験において、ヒトCD8+T細胞がPBMCから単離された。T細胞は、2~3日間、1:2のビーズ:細胞比でCD3/CD28ビーズでin vitroにて活性化された。T細胞は、20ng/mlのマウスIL-2、10%の熱不活性化ウシ胎児血清、20mMのHEPES、2mMのL-グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、0.05mMの2-メルカプトエタノール及び50U/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを含有するRPMI-1640培地で活性化された。CD3二重特異性抗体を使用したヒト腫瘍細胞殺傷実験では、Dynabeads UntouchedヒトT細胞キット(Thermo Fisher Scientific)を使用して、末梢血単核細胞(PBMC)(ReachBio)からヒトT細胞を単離した。
【0267】
in vitro細胞毒性アッセイ
MC38細胞を24ウェルあたり34,000細胞で播種し、播種から24時間後に1ng/mlのOvaまたはスクランブルペプチドを間欠的に投与した。間欠的投与された細胞を、指定されたE:T比にて活性化CD8T細胞(OT-1マウスから単離)で培養した。24時間後、接着していない腫瘍細胞をPBSで洗い流し、細胞の生存率を評価した。指定されている場合、中和TNFα抗体またはアイソタイプ対照抗体を、10または20μg/mlの濃度で添加した。
【0268】
ヒトZR-75-1細胞を、24ウェルあたり100,000細胞で播種した。24時間後、5μMのオートファジー阻害剤SAR-405の非存在下または存在下で、細胞を、12ng/mlの乳房腫瘍抗原xCD3または対照(ZR-75-1細胞に結合していない)二重特異性抗体の存在下で、活性化CD8T細胞(ヒトPBMCから単離)と指定されたE:T比にて24時間インキュベートした。
【0269】
TNFα、TRAIL、ドキソルビシンまたはパクリタキセルの細胞生存率に対する効果を、指定された濃度での24時間のインキュベーション後に評価した。TNFα(10ng/ml)またはTRAIL(10ng/mlまたは50ng/ml)誘導性殺傷に対する5μMのオートフィニブまたはSAR-405の効果は、特に断りのない限り、24時間のインキュベーション後に評価した。すべての場合において、細胞生存率は、細胞のデヒドロゲナーゼ活性によって減少し、黄色のホルマザン色素(Dojindo)を生成する、CCK8細胞計数キット-8(CCK-8)試薬を使用して測定した。SpectraMaxM3マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して吸光度を測定した。
【0270】
異種移植片実験
EMT6異種移植実験では、5×10個の細胞を、6~8週齢の雌BALB/cマウスの右側腹部に皮下注射した。移植の3日後、マウスは、CTLA-4プラスPD-1遮断抗体またはアイソタイプ対照のいずれかで処理した(n=10マウス/群)。処理の初日に、CTLA-4プラスPD-1遮断抗体(5mg/kg)を腹腔内注射によって投与した。処理の3日目と6日目に、CTLA-4抗体(2.5mg/kg)を投与した。4、8、11及び15日目に、5mg/kgのPD-1抗体を投与した。腫瘍の成長は週3回ノギスで監視され、腫瘍の体積(mm3)は次の式:1/2×縦×横を使用して推定した。
【0271】
MC38異種移植実験では、3×10個の細胞を、6~8週齢の雌C57BL/6マウスの右側腹部に皮下注射した。移植から10日後、腫瘍体積が約70mm3のとき、マウスを無作為化し、上述のようにCTLA-4プラスPD-1遮断抗体またはアイソタイプ対照のいずれかで処理した(n=7~12マウス/群)。CRISPR操作細胞を使用した腫瘍実験では、Cas9タンパク質及びsgRNAは、レンチウイルス修飾に関連する免疫原性の増加を克服するために、リボ核タンパク質の一過性遺伝子導入を介して細胞に送達された。sgRNA配列は、Rb1cc1 KOの場合、CUCCAUUGACCACCAGAACC、Tnfrsf1a KOの場合、UUCUCCCGGUCACCAAG、及び非ターゲティングは、AAAUGUGAGAGAUCAGAGUAAUのとおりである。遺伝子導入の後、クローンを単離し、遺伝子KOについて試験した。MC38細胞については、8つのKOクローンのプールを腫瘍実験に使用し、EMT6細胞については、4つのKOクローンのプールを使用した。
【0272】
抗体及び試薬
PD-1遮断抗体(クローンRMP1-14)及びラットIgG2aアイソタイプ対照抗体は、BioXCell製であった。アイソタイプIgG2aによるCTLA4遮断抗体(クローン9D9)の社内バージョンは、公開された一次配列を使用して生成された。CD3二重特異性抗体は、以前に記載された方法を使用してRegeneronで生成された(Murphy et al.,2014;Smith et al.,2015)。マウス反応性TNFα中和抗体(クローンMP6-XT22)及びラットIgG1アイソタイプ対照抗体は、Biolegend製であった。ヒト反応性TNFα中和抗体(クローンMAB1)及びマウスIgG1アイソタイプ対照抗体はBiolegend製であった。組換えマウス及びヒトTNFα及びIFNγは、PeproTech製であった。組換えヒトTRAILは、Enzo製であった。Z-VAD-FMK汎カスパーゼ阻害剤は、InvivoGen製であった。Ova SIINFEKL(257~264)ペプチド及びスクランブル対照ペプチドFILKSINE(257~264)は、AnaSpec製であった。EasySepマウスCD8T細胞分離キットは、Stemcell製であった。DynabeadsマウスT-活性化因子CD3/CD28ビーズは、ThermoFishe製であった。Dynabeads untouchedヒトCD8 T細胞キットは、ThermoFisher製であった。ヒトPBMCは、ReachBioから購入した。マウスサイトカインアレイパネルAは、R&D Systems製であった。プロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤及びBCA試薬は、ThermoFisher製であった。オートフィニブはBiovision製、SAR-405はMedChemExpress製、LCL-161(Smac模倣体)はSelleckchem製であった。Nec-1sは、BioVision製であった。Cas9タンパク質及びtrueguide合成gRNAは、ThermoFisher製であった。ドキソルビシン及びパクリタキセルは、Selleckchem製であった。
【0273】
免疫ブロット
全細胞ライセートは、5%の2-メルカプトエタノールを含有するトリス-グリシンSDS試料バッファー(ThermoFisher)で調製した。ウエスタンブロッティングは、トリス-グリシンポリアクリルアミドSDSゲル(ThermoFisher)及びPVDFメンブレン(BioRad)を使用して従来の手法で実施した。ブロットは、TBS中の5%の粉乳及び0.5%のTween(登録商標)-20でブロックされ、一次抗体と共に一晩インキュベートした。二次抗体を添加した後、メンブレンをSuperSignal West Pico PlusまたはFemto基質(ThermoFisher)とインキュベートし、発光をC300撮像装置(Azure Biosystems)で保存した。TAK1、Rbck1、RelA p65、Rb1cc1、Atg12、切断型カスパーゼ-8、プロカスパーゼ-8、RIPK1、RIPK1ホスホ-Ser321、RIPK1ホスホ-Ser166、Iκ-Bα、A20、p62、ホスホ-p65、LC3B、TNFR1(CST)、Atg9a(Novus)、cIAP1(Enzo)、β2M(ThermoFisher)、FADD及びICAM(Abcam)に対する一次抗体を使用した。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合型β-アクチン抗体、ならびにマウスIgG、ウサギIgG及びヤギIgGに対する二次抗体は、Santa Cruz Biotechnology製であった。
【0274】
異種移植片実験。レンチウイルスベクターによる細胞の改変に関連する免疫原性の増加を克服するために、リボ核タンパク質の一過性遺伝子導入を介してCas9タンパク質及びsgRNAを細胞に送達した。Rb1cc1 KOに使用されたsgRNA配列は、CUCCAUUGACCACCAGAACCであり、非ターゲティングsgRNA配列は、AAAUGUGAGAUCAGAGUAAUであった。遺伝子導入の後、クローンを単離し、遺伝子ノックアウトについて試験した。MC38細胞については、8つのKOクローンのプールを腫瘍実験に使用し、EMT6細胞については、4つのKOクローンのプールを使用した。
【0275】
マウスサイトカインアレイ
対照またはRb1cc1ターゲッティングsgRNAを発現するRb1cc1KO MC38細胞を、10ng/mlのマウスTNFαで4時間処理した。処理後、細胞を氷冷したPBSで2回洗浄し、1mLの1%IGEPAL CA-630、pH8.0の20mMのトリス-HCL、137mMのNaCL、10%のグリセロール、2mMのEDTAプラス1XHaltプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤カクテルに溶解させた。4℃にて30分間回転させた後、溶解物を、14,000gで4℃にて5分間遠心分離することにより清澄化し、タンパク質濃度を標準的なBCAアッセイで測定した。サイトカイン産生を評価するには、プロテオームプロファイラーマウスサイトカインアレイパネルA(R&D Systems)を使用した。300μgの細胞溶解物を使用して、標準キットのプロトコルに従った。
【0276】
腫瘍免疫表現型及びフローサイトメトリー分析
腫瘍を採取し、機械的に断片に分解した(4mm超)、その後、マウス腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)を使用して37℃にて45分間酵素消化した。単細胞懸濁液を調製し、赤血球をACKバッファー(Lonza)で溶解した。細胞を計数し、Fcブロック(BioLegend)で氷上にて30分間ブロックし、示されているように生存率色素ならびにCD45、CD3、CD4及びCD8抗体(BioLegend)で染色した。MC38親及びオートファジーKO細胞を、MHC-I(H2-kb)もしくはアイソタイプ対照(Invitrogen)抗体、またはMHC-I(H2-kb)-Ova(SIINFEKL)またはアイソタイプ対照(BioLegend)抗体で染色した。
【0277】
定量化と統計解析
プールされたCRISPRスクリーニングの分析のために、すべての試料が同じ総リードカウントを有するように、各試料にスケーリング係数を掛けることによってデータを最初に正規化した。群を比較するために、正規化されたリードカウントテーブルをMAGeCK(バージョン0.5.8)への入力として使用し、1つの群を処理として、もう1つの群を対照として割り当てた(58)。細胞ベースのアッセイからのデータを複数の処理群と比較するために、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAを使用した。異なる処理を受けた腫瘍の成長を比較するために、テューキーの多重比較検定による一元配置ANOVAを使用した。0.05未満のP値は有意であるとみなした。GraphPad Prismを使用して、統計的比較を実施した。
【0278】
参照による組み込み
本明細書で言及されるすべての公開物、特許、及び特許出願は、それぞれ個々の公開物、特許または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示される場合と同様に、これをもって、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じる場合には、本明細書中のいかなる定義も含め、本出願が優先される。
【0279】
ワールドワイドウェブ上でThe Institute for Genomic Research(TIGR)及び/またはワールドワイドウェブ上でNational Center for Biotechnology Information(NCBI)によって維持されているものなどの公開データベースにおけるエントリーと相関する受託番号を参照する任意のポリヌクレオチド及びポリペプチド配列も参照によってそれらの全体が組み込まれる。
【0280】
均等物
当業者であれば、通常の実験を使用するだけで、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の均等物を数多く認識または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図2-1】
図2-2】
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図3-1】
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図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図5-3】
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図6-2】
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図7-1】
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図8-1】
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図8-3】
図8-4】
図9
図10
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図12
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図16-1】
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図19
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図21-1】
図21-2】
図22-1】
図22-2】
図23-1】
図23-2】
図24
図25
図26-1】
図26-2】
【配列表】
2023515671000001.app
【国際調査報告】