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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】大環状化合物の治療使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/529 20060101AFI20230406BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230406BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230406BHJP
   C07D 498/18 20060101ALI20230406BHJP
   C07K 14/71 20060101ALN20230406BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20230406BHJP
   C07K 14/715 20060101ALN20230406BHJP
【FI】
A61K31/529
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P35/02
A61P35/04
C07D498/18 CSP
C07K14/71 ZNA
C12N9/12
C07K14/715
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552626
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 US2021020255
(87)【国際公開番号】W WO2021178296
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/984,159
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516221454
【氏名又は名称】ターニング・ポイント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Turning Point Therapeutics,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マリー,ブライオン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ジャイ,ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】ツイ,ジンロン ジェイ
【テーマコード(参考)】
4B050
4C072
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD11
4B050LL01
4B050LL03
4C072AA03
4C072AA06
4C072BB03
4C072BB06
4C072CC05
4C072CC11
4C072EE09
4C072FF04
4C072GG01
4C072GG07
4C072GG08
4C072GG09
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC01
4C086ZC41
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA51
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、哺乳動物における疾患の処置における、あるジアリール大員環化合物の使用に関する。本発明はまたそのような化合物を含む組成物および哺乳動物、特にヒトにおける疾患の処置においてそのような組成物を使用する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置を必要とする患者における癌を処置する方法であって、患者に治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を投与することを含み、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものであり、ここで、化合物が式
【化1】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩であるものである、方法。
【請求項2】
化合物が式
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項1の方法。
【請求項3】
がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、請求項1または2の方法。
【請求項4】
がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、請求項1~3の何れかの方法。
【請求項5】
患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、請求項1~4の何れかの方法。
【請求項6】
がんが遺伝子改変METにより介在される、請求項1~5の何れかの方法。
【請求項7】
遺伝子改変METがc-Metタンパク質で発現される点変異をコードする、請求項5の方法。
【請求項8】
遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、請求項6~7の何れかの方法。
【請求項9】
遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、請求項6~8の何れかの方法。
【請求項10】
がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、請求項6~9の何れかの方法。
【請求項11】
患者におけるがんの処置に使用するためのMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物であって、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものであり、式
【化3】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
を有するものである、化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
化合物が式
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項11の化合物。
【請求項13】
がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、請求項11または12の使用のための化合物。
【請求項14】
がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、請求項11または12の使用のための化合物。
【請求項15】
患者が1以上の治療剤で先に処置を受けている、請求項11~14の何れかの化合物。
【請求項16】
患者における癌を処置するための医薬の製造におけるMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物の使用であって、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在され、ここで、化合物が式
【化5】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、使用。
【請求項17】
化合物が式
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項16の使用。
【請求項18】
がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、請求項16または17の使用。
【請求項19】
がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、請求項16または17の使用。
【請求項20】
患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、請求項16~19の何れかの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、哺乳動物における疾患の処置における、あるジアリール大員環化合物の使用に関する。本発明はまたそのような化合物を含む組成物および哺乳動物、特にヒトにおける疾患の処置においてそのような組成物を使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
背景
タンパク質キナーゼは、細胞成長、増殖および生存の重要な制御因子である。遺伝的および後成的改変ががん細胞に蓄積し、悪性過程を駆動するシグナル伝達経路の異常活性化に至る(Manning, G. et al, The protein kinase complement of the human genome. Science 2002, 298, 1912-1934)。これらのシグナル伝達経路の薬理学的阻害は、標的化がん治療のための有望な介入機会となる(Sawyers, C. Targeted cancer therapy. Nature 2004, 432, 294-297)。
【0003】
METは、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)とも称され、1984年に発見された(Cooper, C. S., et al Molecular cloning of a new transforming gene from a chemically transformed human cell line. Nature 1984, 311, 29-33)。肝細胞増殖因子(HGF)は細胞分散因子(SF)としても知られ、METの高親和性天然リガンドである(Bottaro DP et al. Identification of the hepatocyte growth factor receptor as the c-met proto-oncogene product. Science. 1991, 251 (4995), 802-804)。HGF/METシグナル伝達経路は、胚発生、出生後臓器再生、創傷治癒および組織再生過程の間の浸潤性成長に関与する。しかしながら、HGF/MET軸は、しばしばがん細胞により腫瘍形成、浸潤性成長および転移のために乗っ取られる(Boccaccio, C.; Comoglio, P. M. Invasive growth: a MET-driven generic programme for cancer and stem cells. Nat. Rev. Cancer 2006, 6, 637-645)。活性化変異、遺伝子増幅、過発現および自己分泌または傍分泌両者のループ制御によるMETおよび/またはHGFの調節解除は細胞成長、増殖、血管形成、侵襲、生存および転移に影響し、腫瘍形成および腫瘍進行に至る(Ma, PC et al. Expression and mutational analysis of MET in human solid cancers. Genes Chromosomes Cancer 2008, 47, 1025-1037)。METおよび/またはHGFの過発現は、肝臓、乳房、膵臓、肺、腎臓、膀胱、卵巣、脳、前立腺およびその他多数の多種多様な固形腫瘍で検出されており、しばしば転移表現型および予後不良と相関する(Maulik, G., et al. Role of the hepatocyte growth factor receptor, MET, in oncogenesis and potential for therapeutic inhibition. Cytokine Growth Factor Rev. 2002, 13, 41-59)。MET増幅は、胃食道がん、結腸直腸がん、NSCLC、髄芽腫および神経膠芽腫を含む種々のヒトがんで報告されている(Smolen, G. A., et al. Amplification of MET may identify a subset of cancers with extreme sensitivity to the selective tyrosine kinase inhibitor PHA-665752. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 2006, 103, 2316-2321)。生殖系列および体細胞両者の変異のチロシンキナーゼドメイン、膜近傍および細胞外ドメインにおけるMET変異の多様なセットが、遺伝性および散発性ヒト乳頭腎臓がん、肺がん、卵巣がん、小児肝細胞がん、頭頸部扁平上皮細胞がんおよび胃がんを含む多くの固形腫瘍で報告されている(Ghiso, E.; Giordano, S. Targeting MET: why, where and how? Curr. Opin. Pharmacol. 2013, 13, 511-518)。METエクソン14欠失は、種々のがんタイプを有する患者において、臨床的影響および治療適用の可能性がある、実用的な発がん性事象の新規クラスである(Pilotto S, MET exon 14 juxtamembrane splicing mutations: clinical and therapeutical perspectives for cancer therapy. Ann Transl Med. 2017 5(1):2)。自己分泌または傍分泌刺激は、異常MET活性化の一つの機構である。MET自己分泌活性化は、悪性黒色腫の進展および転移表現型の獲得の原因となる役割を有する(Otsuka, T., et al. MET autocrine activation induces development of malignant melanoma and acquisition of the metastatic phenotype. Cancer Res. 1998, 58, 5157-5167)。神経膠芽腫(GBM)について、HGF自己分泌発現はHGF自己分泌細胞株においてMETリン酸化レベルと相関し、インビボでMET阻害に高感受性を示し、一方HGF傍分泌環境はインビボで神経膠芽腫成長を増強できたが、MET阻害に対する感受性は示されなかった(Xie, Q., et al. Hepatocyte growth factor (HGF) autocrine activation predicts sensitivity to MET inhibition in glioblastoma. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 2012, 109, 570-575)。HGFの異常発現は、AML細胞株および臨床的サンプルの約半分のMETの自己分泌活性化をもたらす、AML病因の決定的要素である(Kentsis, A., et al. Autocrine activation of the MET receptor tyrosine kinase in acute myeloid leukemia. Nat. Med. 2012, 18, 1118-1122)。
【0004】
HGF/METシグナル伝達の上方制御は、キナーゼ標的化治療に対する耐性を付与する代償性シグナル伝達としてしばしば報告されている。MET増幅は、ゲフィチニブまたはエルロチニブ処置に対する耐性を獲得したEGFR変異を有するNSCLC患者の4%~20%で検出されている(Sequist, L. V., et al. Analysis of tumor specimens at the time of acquired resistance to EGFR-TKI therapy in 155 patients with EGFR-mutant lung cancers. Clin. Cancer Res. 2013, 19, 2240-2247)。リガンドHGFの上方制御は、EGFR-TKI耐性の他の機構を提供する。高HGF発現は、T790M変異またはMET増幅を有しなかった耐性を獲得した臨床検体およびEGFR-TKI感受性活性化EGFR遺伝子変異を有するにも関わらず一次耐性を示した症例で発見された(Yano, S., et al. Hepatocyte growth factor induces gefitinib resistance of lung adenocarcinoma with epidermal growth factor receptor-activating mutations. Cancer Res. 2008, 68, 9479-9487)。MET増幅は、抗EGFR治療中KRAS変異を獲得しなかった、転移結腸直腸がん患者におけるセツキシマブまたはパニツムマブに対する耐性獲得と関連した(Bardelli, A., et al. Amplification of the MET Receptor Drives Resistance to Anti-EGFR Therapies in Colorectal Cancer. Cancer Discov. 2013, 3, 658-673)。腫瘍微小環境からの増殖因子駆動耐性は、抗がんキナーゼ阻害剤に対する可能性のある共通機構である。間質HGFの上方制御は、BRAF変異体黒色腫細胞におけるBRAF阻害剤ベムラフェニブに対する耐性を付与する(Straussman, R., et al. Tumour micro-environment elicits innate resistance to RAF inhibitors through HGF secretion. Nature 2012, 487, 500-504)。代替的受容体チロシンキナーゼのリガンド介在活性化がMET、FGFR2またはFGFR3の何れかに元々依存していたがん細胞で観察され、HERおよびEGFRファミリーだけでなく、METからのRTKが互いの損失を代償したことが報告された(Harbinski, F., et al. Rescue screens with secreted proteins reveal compensatory potential of receptor tyrosine kinases in driving cancer growth. Cancer Discov. 2012, 2, 948-959)。それ故に、代償性リガンド発現を駆動する適応細胞応答の遮断は、最適かつ持続的抗腫瘍効果の達成に必要である。
【0005】
受容体チロシンキナーゼに対するゲノム改変は、広範ながんの発がん性駆動因子(Campbell et al 2016 Nat Genet 48, 607-16; Sadiq et al., 2013 J Clin Oncol 31, 1089-96)ならびに肺がん患者の処置のためのオシメルチニブなどの他の分子医薬に対する耐性機構である(Ko et al., 2017 Ann Transl Med 5(1), 4; Liu et al., 2018 Molecular Cancer 17, article 53)。MET標的化治療で処置された患者は、迂回シグナル伝達、METの変異によりまたは最近の文献(Recondo et al, 2020 Clin Cancer Res, doi 10.1158/1078-0432.CCR-19-3608)に記載のような未知機構によりしばしば薬物耐性を獲得する。Recondo試験において、MET標的化治療で処置した20名の患者の35%が疾患進行時MET変異を有した(例えばMET残基H1094、G1163、L1195、D1228、Y1230および高レベルのMET増幅)。すなわち、METを強力に阻害するまたは変異型のMETを強力に阻害する阻害剤は、METまたは変異型のMETが増幅された患者の臨床的利益を増強することが予測される。
【0006】
Srcは、多くのタイプのがんで下方制御され、EGFR、HER2およびc-Metを含む多くのRTKの重要な下流トランスデューサーである非受容体チロシンキナーゼである。Srcシグナル伝達の活性化は、標的化抗内分泌治療、受容体チロシンキナーゼ治療、古典的化学療法および放射線療法に対する治療耐性の発生と関連付けられている(Zhang S, et al Trends Pharmacol Sci. 2012, 33, 122)。Src阻害剤は、現在の抗がん治療に対する耐性を克服するための組み合わせレジメンおよび転移再発予防において、重要な役割を演じ得る。Srcファミリー(SFK)の細胞質チロシンキナーゼ(非受容体チロシンキナーゼとしても知られる)は、増殖因子およびインテグリンを含む数多くの細胞外刺激により誘導されるシグナル伝達において重要な役割を演ずる。SFK活性上昇は、ヒト結腸直腸がん(CRC)の80%超で見られ、劣悪な臨床的アウトカムと相関する(Summy JM, et al. Cancer Metastasis Rev. 2003, 22, 337-358)。SFKメンバーYesは、c-Srcと共有されていない、結腸がん進行に重要な特異的発がん性シグナル伝達経路を制御する(Scancier F. et al. PLoS One. 2011, 6(2): e17237)。WASF2-FGR融合遺伝子は肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がんおよび皮膚黒色腫で見られた(Stransky N, et al. Nature Communications 2014, 5, 4846)。エストロゲン受容体陽性(ER)乳がんはホルモン剥奪に順応し、抗エストロゲン治療に耐性となる。SRCファミリーキナーゼ(SFK)LYNの阻害性SH2ドメインにおける変異は、アロマターゼ阻害剤レトロゾールで処置後高度に増殖性のままであったER腫瘍と関連した。LYNは、長期エストロゲン剥奪に耐性の複数ER乳がん株で上方制御された(Schwarz LJ, et al. J Clin Invest. 2014, 124, 5490-5502)。それ故に、LYNのターゲティングは、ER乳がんの一部における抗エストロゲンからの回避に打ち勝つ合理的戦略である。LYNは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)で過発現し、AR転写活性を増強し、CRPC進行を加速させ、Lynキナーゼのターゲティングは分子シャペロンHsp90からのAR解離を誘導し、そのユビキチン化およびプロテアソーム分解をもたらすことが報告された(Zardan A., et al. Oncogenesis 2014, 3, e115)。Lynチロシンキナーゼは、CRPCの処置の治療標的の可能性がある。SrcファミリーキナーゼFYNは神経系におけるシグナル伝達経路ならびに正常な生理学的条件下のTリンパ球進展および活性化に関与する。Fynの活性化は、黒色腫、神経膠芽腫、扁平上皮細胞がん、前立腺および乳がんを含む種々のがんで観察されている(Elias D., et al. Pharmacological Research 2015, 100, 250-254)。Fynは、タモキシフェン耐性乳がん細胞株で上方制御されており、耐性機構に重要な役割を演ずる。末梢T細胞リンパ腫(PTCL)は、予後不良な攻撃的非ホジキンリンパ腫の異種群である。FYN活性化変異はPTCLで見られ、活性化FYN変異体アレル発現により形質転換された細胞の成長を促進した。SRCキナーゼ阻害剤は、PTCLの処置に重要な役割を演じ得る(Couronne L, et al. Blood 2013, 122, 811)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
疾患駆動キナーゼ阻害剤に対する活性を有する化合物、特に遺伝子改変MET、SCRおよびCSF1Rに対する活性を有する化合物の製造が望まれる。一次がん遺伝子駆動因子および二次変異、迂回シグナル伝達、EMT、がん幹細胞性および転移を含む獲得耐性機構をターゲティングする、多重薬理プロファイルを備えた新規化合物も望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
MET、SRCおよびCSF1R遺伝子産物を阻害する化合物が発見された。式I
【化1】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物が、野生型および変異体MET、SRCおよびCSF1Rに対する活性を有することが示された。
【0009】
このような化合物の例は(7S)-3-アミノ-14-エチル-11-フルオロ-7-メチル-4-オキソ-4,5,6,7,13,14-ヘキサヒドロ-1,15-エテノピラゾロ[4,3-f][1,4,8,10]ベンズオキサトリアザシクロトリデシン-12-カルボニトリル(ここでは「化合物1」とも称する)であり、式
【化2】
で表され、野生型および変異体野生型および変異体MET、SRCおよびCSF1Rに対する活性を示す強力な小分子キナーゼ阻害剤であることが示された。化合物1は、受容体および非受容体チロシンキナーゼの阻害を介して薬理学的に介在される抗腫瘍性質を含む性質を有する。式Iの化合物、特に、化合物1は、引用によりその全体として本明細書に包含させる、国際特許公開WO2019/023417に開示されている。
【0010】
ある態様において、本発明は、哺乳動物、特にヒト患者におけるがんなどの疾患を処置する方法であって、哺乳動物、特にヒト患者、治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を投与することを含み、ここで、疾患が遺伝子改変METにより介在されるものである、方法を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化3】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、哺乳動物、特にヒト患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0011】
他の態様において、本発明は、遺伝子改変METを発現することが先に示されている患者におけるがんを処置する方法であって、患者に治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を投与することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化5】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0012】
他の態様において、本発明は、患者における癌を処置する方法であって;
i. 患者における遺伝子改変METを同定し、そして
ii. 患者に治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を投与する
ことを含む、方法を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化7】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化8】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0013】
他の態様において、本発明は、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物での処置のための患者を同定する方法であって、患者が遺伝子改変METにより介在されるがんを有することを診断することを含む、方法を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化9】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化10】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0014】
他の態様において、本発明は、患者における疾患の処置用医薬の製造における、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物の使用を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化11】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化12】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0015】
他の態様において、本発明は、患者におけるがんを処置するための、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物に関する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化13】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化14】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0016】
他の態様において、本発明は、遺伝子改変チロシンまたはセリン/スレオニンキナーゼを発現することが先に示されている患者におけるがんの処置のための、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物の使用を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化15】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化16】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0017】
他の態様において、本発明は、患者におけるがんの処置のためのMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物の使用であって、ここで、患者ががん治療で先に処置されており、がんが該がん治療に対する耐性を獲得しているものである、使用を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化17】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化18】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0018】
他の態様において、本発明は、遺伝子改変チロシンまたはセリン/スレオニンキナーゼを発現することが先に示されている患者におけるがんの処置のためのMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物の使用であって、ここで、患者ががん治療で先に処置されており、がんが該がん治療に対する耐性を獲得しているものである、使用を提供する。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式I
【化19】
〔式中、R、R、RおよびRはここに記載するとおりである。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物は、式
【化20】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。ある実施態様において、患者は、1以上の治療剤での先の処置を受けている。
【0019】
ある実施態様において、遺伝子改変MET遺伝子は、c-Metタンパク質に発現される点変異を含む。ある実施態様において、遺伝子改変METは、P991、T992、D1010、V1092、H1094、G1163、T1173、H1094、N1100、Y1003、H1106、V1070、V1188、V1092、H1094、G1162、L1195、F1200、V1220、D1228、Y1230、D1231、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上にc-Metタンパク質に発現される点変異を含む。ある実施態様において、遺伝子改変METは、P991S、T992I、D1010H、D1010Y、V1092I、H1094N、H1094R、H1094Y、N1100K、N1100S、Y1003C、Y1003F、Y1003H、H1106D、V1070A、V1092I、V1188I、T1173I、H1094Y、G1163R、L1195F、F1195I、L1195V、F1200I、V1220I、D1228N、D1228H、D1228V、Y1230A、Y1230C、Y1230D、Y1230H、Y1230H、Y1230S、D1231Y、Y1235D、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248C、M1250TおよびM1268Tからなる群から選択される、c-Metタンパク質に発現される点変異を含む。ある実施態様において、遺伝子改変METは、T1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される、c-Metタンパク質に発現される点変異を含む。ある実施態様において、がんは迂回耐性を示す。ある実施態様において、迂回耐性はSRC/CSF1Rにより介在される。
【0020】
ある実施態様において、がんはがん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である。ある実施態様において、がんは、ALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍、漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される。
【0021】
ある実施態様において、患者は、がん治療で先に処置されている。ある実施態様において、患者ががん治療で先に処置されており、がんが該がん治療に対する耐性を獲得している。ある実施態様において、耐性は一次内因性耐性である。ある実施態様において、耐性は変異による獲得耐性である。ある実施態様において、耐性は迂回耐性である。ある実施態様において、耐性はEMTベースの耐性である。
【0022】
本発明のさらなる実施態様、特性および利点は、次の詳細な記載からおよび本発明の実施を介して明らかになる。本発明の化合物は、次の番号付けした項の何れにおいても実施態として記載され得る。ここに記載する実施態様の何れも、実施態様が互いに矛盾しない限り、ここに記載する他の実施態様の何れかと関連して使用し得ることは理解されるべきである。
【0023】
1. 患者における癌を処置する方法であって、患者に治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を投与することを含み、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、方法。
【0024】
2. 化合物が式
【化21】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、項1の方法。
【0025】
3. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項1または2の方法。
【0026】
4. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、項1~3の何れかの方法。
【0027】
5. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、先の項の何れかの方法。
【0028】
6. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、先の項の何れかの方法。
【0029】
7. Rがメチルである、先の項の何れかの方法。
【0030】
8. Rが-CNである、先の項の何れかの方法。
【0031】
9. Rがフルオロである、先の項の何れかの方法。
【0032】
10. RがC-Cアルキルである、先の項の何れかの方法。
【0033】
11. 化合物が式
【化22】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、先の項の何れかの方法。
【0034】
12. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、先の項の何れかの方法。
【0035】
13. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項1~12の何れかの方法。
【0036】
14. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、先の項の何れかの方法。
【0037】
15. 遺伝子改変METにより介在されるがんを有することが先に示されている患者における癌を処置する方法であって、患者に治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を投与することを含む、方法。
【0038】
16. 化合物が式
【化23】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項15の方法。
【0039】
17. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項15または16の方法。
【0040】
18. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、項15~17の何れかの方法。
【0041】
19. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、項15~18の何れかの方法。
【0042】
20. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、項15~19の何れかの方法。
【0043】
21. Rがメチルである、項15~20の何れかの方法。
【0044】
22. Rが-CNである、項15~21の何れかの方法。
【0045】
23. Rがフルオロである、項15~22の何れかの方法。
【0046】
24. RがC-Cアルキルである、項15~23の何れかの方法。
【0047】
25. 化合物が式
【化24】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項15~24の何れかの方法。
【0048】
26. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、項15~25の何れかの方法。
【0049】
27. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項15~25の何れかの方法。
【0050】
28. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、項15~27の何れかの方法。
【0051】
29. 患者におけるがんを処置するためのMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物であって、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、化合物。
【0052】
30. 患者におけるがんを処置するための化合物であって、式
【化25】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
を有するかまたはその薬学的に許容される塩であり、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、項29の化合物。
【0053】
31. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項29または30の化合物。
【0054】
32. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268からなる群から選択される点変異をコードする、項29~31の何れかの化合物。
【0055】
33. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、項29~32の何れかの化合物。
【0056】
34. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、項29~33の何れかの化合物。
【0057】
35. Rがメチルである、項29~34の何れかの化合物。
【0058】
36. Rが-CNである、項29~35の何れかの化合物。
【0059】
37. Rがフルオロである、項29~36の何れかの化合物。
【0060】
38. RがC-Cアルキルである、項29~37の何れかの化合物。
【0061】
39. 化合物が式
【化26】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項29~38の何れかの化合物。
【0062】
40. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、項29~39の何れかの化合物。
【0063】
41. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項29~39の何れかの化合物。
【0064】
42. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、項29~41の何れかの化合物。
【0065】
43. 患者における癌を処置するための医薬の製造におけるMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物の使用であって、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、使用。
【0066】
44. 患者における癌を処置するための医薬の製造における、化合物が式
【化27】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、項43の使用。
【0067】
45. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項43または44の使用。
【0068】
46. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、項43~45の何れかの使用。
【0069】
47. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、項43~46の何れかの使用。
【0070】
48. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、項43~47の何れかの使用。
【0071】
49. Rがメチルである、項43~48の何れかの使用。
【0072】
50. Rが-CNである、項43~49の何れかの使用。
【0073】
51. Rがフルオロである、項43~50の何れかの使用。
【0074】
52. RがC-Cアルキルである、項43~51の何れかの使用。
【0075】
53. 化合物が式
【化28】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項43~52の何れかの使用。
【0076】
54. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、項43~53の何れかの使用。
【0077】
55. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項43~53の何れかの使用。
【0078】
56. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、項43~55の何れかの方法。
【0079】
57. 患者における癌を処置する方法において使用するための、MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を含む医薬であって、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、医薬。
【0080】
58. 患者における癌を処置する方法において使用するための、化合物が式
【化29】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、項57の医薬。
【0081】
59. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項57または58の医薬。
【0082】
60. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、項57~59の何れかの医薬。
【0083】
61. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、項57~60の何れかの医薬。
【0084】
62. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、項57~61の何れかの医薬。
【0085】
63. Rがメチルである、項57~62の何れかの医薬。
【0086】
64. Rが-CNである、項57~63の何れかの医薬。
【0087】
65. Rがフルオロである、項57~64の何れかの医薬。
【0088】
66. RがC-Cアルキルである、項57~65の何れかの医薬。
【0089】
67. 化合物が式
【化30】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項57~66の何れかの医薬。
【0090】
68. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、項57~67の何れかの医薬。
【0091】
69. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項57~68の何れかの医薬。
【0092】
70. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、項57~69の何れかの医薬。
【0093】
71. 患者における癌を処置する方法におけるMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物の使用であって、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、使用。
【0094】
72. 患者における癌を処置する方法における、化合物が式
【化31】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、ここで、がんが遺伝子改変METにより介在されるものである、項71の使用。
【0095】
73. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項71または72の使用。
【0096】
74. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、項71~73の何れかの使用。
【0097】
75. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、項71~74の何れかの使用。
【0098】
76. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、項71~75の何れかの使用。
【0099】
77. Rがメチルである、項71~76の何れかの使用。
【0100】
78. Rが-CNである、項71~77の何れかの使用。
【0101】
79. Rがフルオロである、項71~78の何れかの使用。
【0102】
80. RがC-Cアルキルである、項71~79の何れかの使用。
【0103】
81. 化合物が式
【化32】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項71~80の何れかの使用。
【0104】
82. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、項71~81の何れかの使用。
【0105】
83. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項71~81の何れかの使用。
【0106】
84. 患者が遺伝子改変METによりコードされる変異を含むc-Metを発現することを先に示している、項71~83の何れかの使用。
【0107】
85. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、項71~84の何れかの使用。
【0108】
86. 患者における癌を処置する方法であって;
i. 患者における遺伝子改変METを同定し、そして
ii. 患者に治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物を投与する
ことを含む、方法。
【0109】
87. 化合物が式
【化33】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項86の方法。
【0110】
88. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項86または87の方法。
【0111】
89. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、項86~88の何れかの方法。
【0112】
90. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、項86~89の何れかの方法。
【0113】
91. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、項86~90の何れかの方法。
【0114】
92. Rがメチルである、項86~91の何れかの方法。
【0115】
93. Rが-CNである、項86~92の何れかの方法。
【0116】
94. Rがフルオロである、項86~93の何れかの方法。
【0117】
95. RがC-Cアルキルである、項86~94の何れかの方法。
【0118】
96. 化合物が式
【化34】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項86~95の何れかの方法。
【0119】
97. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、項86~96の何れかの方法。
【0120】
98. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項86~96の何れかの方法。
【0121】
99. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、項86~98の何れかの方法。
【0122】
100. 同定の工程が患者サンプルをFISH、IHC、PCRおよび遺伝子配列決定からなる群から選択される試験に付すことを含む、項86~99の何れかの方法。
【0123】
101. MET、SRCおよびCSF1Rを阻害する化合物での処置のための患者を同定する方法であって、患者が遺伝子改変METにより介在されるがんを有することを診断することを含む、方法。
【0124】
102. 化合物が式
【化35】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項101の方法。
【0125】
103. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質における点変異をコードする、項101または102の方法。
【0126】
104. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上の点変異をコードする、項101~103の何れかの方法。
【0127】
105. 遺伝子改変METがc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異をコードする、項101~104の何れかの方法。
【0128】
106. がんがSRC/CSF1Rにより介在される迂回耐性を示す、項101~105の何れかの方法。
【0129】
107. Rがメチルである、項101~106の何れかの方法。
【0130】
108. Rが-CNである、項101~107の何れかの方法。
【0131】
109. Rがフルオロである、項101~108の何れかの方法。
【0132】
110. RがC-Cアルキルである、項101~109の何れかの方法。
【0133】
111. 化合物が式
【化36】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、項101~110の何れかの方法。
【0134】
112. がんががん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫である、項101~111の何れかの方法。
【0135】
113. がんがALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍および漿液性および明細胞子宮内膜がんからなる群から選択される、項101~111の何れかの方法。
【0136】
114. 患者が1以上の治療剤での先の処置を受けている、項101~113の何れかの方法。
【0137】
115. 患者が、患者サンプルをFISH、IHC、PCRおよび遺伝子配列決定からなる群から選択される試験に付すことにより同定される、項101~114の何れかの方法。
【0138】
116. 診断がサンプルを患者から得て、FISH、IHC、PCRおよび遺伝子配列決定からなる群から選択される生物学的試験または生物学的アッセイを使用してサンプルを修飾し、サンプルにおける遺伝子改変METを示す測定結果を得ることを含む、項101~114の何れかの方法。
【発明を実施するための形態】
【0139】
詳細な記載
本発明をさらに説明する前に、本発明は、記載された特定の実施態様に、それが、当然変わり得るため、限定されないことは理解されるべきである。本発明の範囲が添付する特許請求の範囲によってのみ限定されるため、ここで使用する用語は特定の実施態様を説明することのみを目的しており、これを限定する意図を有するものでないことも、理解されるべきである。
【0140】
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により共通して理解されているのと同じ意味を有する。ここに引用する全ての特許、出願、公開された出願および他の刊行物は、引用によりそれらを全体として本明細書に包含させる。このセクションに示す定義がここに引用により包含される特許、出願または他の刊行物において示される定義に反するかまたはその他の点で矛盾するならば、このセクションに示す定義が、引用によりここに包含させる定義に優先する。
【0141】
ここでおよび添付する特許請求の範囲において、単数表現は、文脈からそうでないことが明らかに示されない限り、複数対象を含む。さらに、特許請求の範囲は、何らかの任意選択的要素を除外して記載されている可能性があることに留意されるべきである。すなわち、この記載は、特許請求の範囲の要素の引用に関連する「単独で」、「のみ」などの除外的用語の使用または「負の」限定の使用の前提条件として役立つことが意図される。
【0142】
ここで使用する用語「含む」、「包含する」および「含有する」は、その開放された、非限定的意味で使用される。
【0143】
より簡潔な記載を提供するために、ここに記載する定量的発現のいくつかは、用語「約」を付けずに限定されている。用語「約」が明示的に使用されていてもいなくても、ここに示す全ての量は、現実に取得された値を意味し、またその値の実験上および/または条件による等価および近似を含む、当業者により合理的に推測されるこのような近似値をも意味することは理解されるべきである。パーセンテージとして示す濃度は、異なる指示がない限り、質量比をいう。
【0144】
異なる指示がない限り、本実施態様の方法および技術は、一般に、当分野で周知の慣用法に従いおよび本明細書をとおして引用および記載する種々の一般的およびより具体的な参考文献に記載されているとおり実施される。
【0145】
定義
ここで使用する用語「アルキル」は、所望により分岐しており、1~20炭素原子を含む、炭素原子鎖を含む。ある実施態様において、アルキルは、有利にC-C12、C-C10、C-C、C-C、C-C、C-CおよびC-Cを含む限定的な長さのものである。実例として、C-C、C-C、C-CおよびC-Cなどを含むこのような特に長さが限定されたアルキル基を、「低級アルキル」と称し得る。説明的アルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどを含むが、これらに限定されない。アルキルは置換されていても非置換でもよい。典型的置換基はシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロ、カルボニル、オキソ、(=O)、チオカルボニル、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、ニトロおよびアミノを含むまたはここに提供する種々の実施態様において記載されるとおり。「アルキル」は、上記のような他の基と組み合わせて、官能化アルキルを提供し得ることは理解される。例として、ここに記載する「アルキル」基と「カルボキシ」基の組み合わせは、「カルボキシアルキル」基と称され得る。他の非限定的例は、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルなどを含む。
【0146】
ここで使用する用語「シクロアルキル」は、全炭素5員/6員または6員/6員縮合二環式環または多環式縮合環(「縮合」環系は、系の各環が隣接炭素原子対を系における各他の環と共有していることを意味する)基を含む、3~15員全炭素単環式環をいい、ここで、環の1以上は1以上の二重結合を含んでよいが、シクロアルキルは完全共役パイ電子系を含まない。ある実施態様において、シクロアルキルは、有利にC-C13、C-C、C-CおよびC-Cなど限定されたサイズであり得ることは理解される。シクロアルキルは、アルキルについて記載したとおりまたはここに提供する種々の実施態様において記載されるとおり、非置換でも置換されていてもよい。説明的シクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボロニル、ノルボルネニル、9H-フルオレン-9-イルなどを含むが、これらに限定されない。図で示すシクロアルキル基の説明的例は、適切に結合させた部分の形態で、次のものを含む。
【化37】
【0147】
ここで使用する「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OH基をいう。
【0148】
ここで使用する「ハロ」または「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素をいう。
【0149】
ここで使用する「シアノ」は、-CN基をいう。
【0150】
用語「置換」は、特定した基または部分が1以上の置換基を有することを意味する。用語「非置換」は、特定した基が置換基を有しないことを意味する。用語「置換」が構造系を説明するために使用されるとき、置換は、系のあらゆる原子価により可能な位置で起こることを意味する。ある実施態様において、「置換」は特定の基または部分が1個、2個または3個の置換基を有することを意味する。他の実施態様において、「置換」は、特定の基または部分が1個または2個の置換基を有することを意味する。さらに他の実施態様において、「置換」は、特定した基または部分が1個の置換基を有することを意味する。
【0151】
ここで使用する「任意の」または「場合により」は、その後に記載される事象または状況が必定ではないが、起こり得ることを意味し、その記載は、事象または状況が起こる場合および起こらない場合を含む。例えば、「ここで、C-Cアルキルの各水素原子」は、置換基が各置換基について水素原子の置き換わりによりC-Cアルキルに、必定ではないが、存在してよいことを意味し、この記載はC-Cアルキルが置換されている状況およびC-Cアルキルが置換されていない状況を含む。
【0152】
ここで使用する用語「薬学的に許容される塩」は、カウンターイオンが医薬において使用され得る塩をいう。一般に、S.M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts,” J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19参照。好ましい薬学的に許容される塩は、薬理学的に有効でありかつ過度の毒性、刺激またはアレルギー性応答なく対象の組織と接触させるのに適するものである。ここに記載する化合物は、十分に酸性基、十分に塩基性基、両タイプの官能基または1を超える各タイプを含み得て、従って、いくつかの無機または有機塩基および無機および有機酸と反応して、薬学的に許容される塩を形成する。このような塩は:
(1)遊離塩基の親化合物と塩酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸または酢酸、シュウ酸、(D)または(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸またはマロン酸などの有機酸の反応により得られ得る酸付加塩;または
(2)親化合物に存在する酸性プロトンが金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオンまたはアルミニウムイオンに置き換わったとき;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリメタミン、N-メチルグルカミンなどの有機塩基と配位したとき形成される塩
を含む。
【0153】
薬学的に許容される塩は当業者に周知であり、あらゆるこのような薬学的に許容される塩が、ここに記載する実施態様と関連して意図され得る。薬学的に許容される塩の例は、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4-二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、プロピルスルホン酸塩、ベシル酸塩、キシレンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、γ-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩およびマンデル酸塩を含む。他の適当な薬学的に許容される塩の一覧は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1985に見ることができる。
【0154】
塩基性窒素を含む式Iの化合物について、薬学的に許容される塩は、当分野で利用可能な何らかの適当な方法により、例えば、遊離塩基の塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸、ホウ酸、リン酸などの無機酸または酢酸、フェニル酢酸、プロピオン酸、ステアリン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、イセチオン酸、コハク酸、吉草酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ピラノシジル酸、例えばグルクロン酸またはガラクツロン酸、アルファ-ヒドロキシ酸、例えばマンデル酸、クエン酸または酒石酸、アミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸、芳香族酸、例えば安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、ナフトエ酸またはケイ皮酸、スルホン酸、例えばラウリルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはエタンスルホン酸などの有機酸またはここでの実施例に示すもののなどの何らかの適応性の酸混合物およびこの技術の通常の技術レベルに鑑みて、等価または許容される代替と見なされる何らかの他の酸およびそれらの混合物での処理により、製造し得る。
【0155】
本発明はまた式Iの化合物の薬学的に許容されるプロドラッグおよびこのような薬学的に許容されるプロドラッグを用いる処置方法にも関する。用語「プロドラッグ」は、対象への投与後、加溶媒分解または酵素切断または生理学的条件下などの化学的または生理学的過程を介してインビボで化合物を生ずる、指定された化合物の前駆体を意味する(例えば、生理学的pHにされたプロドラッグは式Iの化合物に変換される)。「薬学的に許容されるプロドラッグ」は、非毒性、生物学的に耐容性であり、他の点で対象への投与に生物学的に適するプロドラッグである。適当なプロドラッグ誘導体の選択および製造に関する説明的方法は、例えば、“Design of Prodrugs”, ed. H. Bundgaard, Elsevier, 1985に記載される。
【0156】
本発明はまた式Iの化合物の薬学的に活性な代謝物および本発明の方法におけるそのような代謝物の使用にも関する。「薬学的に活性な代謝物」は、式Iの化合物またはその塩の体内での代謝の薬理学的に活性な産物を意味する。化合物のプロドラッグおよび活性な代謝物は、当分野で知られるまたは利用可能な慣用の技術を使用して決定され得る。例えば、Bertolini et al., J. Med. Chem. 1997, 40, 2011-2016; Shan et al., J. Pharm. Sci. 1997, 86 (7), 765-767; Bagshawe, Drug Dev. Res. 1995, 34, 220-230; Bodor, Adv. Drug Res. 1984, 13, 255-331; Bundgaard, Design of Prodrugs (Elsevier Press, 1985); およびLarsen, Design and Application of Prodrugs, Drug Design and Development (Krogsgaard-Larsen et al., eds., Harwood Academic Publishers, 1991)参照。
【0157】
ここに記載するあらゆる式は、その構造式の化合物およびあるバリエーションまたは携帯を表すことを意図する。例えば、ここに示す式は、ラセミ体またはエナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体の1以上またはそれらの混合物を含むことを意図する。さらに、あらゆるここに示す式はまたこのような化合物またはそれらの混合物の水和物、溶媒和物または多形もいうことを意図する。さらに、あらゆるここに示す式は、このような化合物の水和物、溶媒和物または多形またはそれらの混合物もいうことを意図する。例えば、記号
【化38】
を含む構造式により記載される化合物は、記号
【化39】
が結合している炭素原子の両立体異性体を含む、具体的に結合
【化40】

【化41】
の意味に含まれることは理解される。
【0158】
ここで使用する用語「遺伝子改変」は、遺伝子によりコードされるタンパク質配列を変化させ得る遺伝子を構成するDNA配列の永続的な改変をいう。ここに記載する「遺伝子改変」された遺伝子は、例えば、一ヌクレオチド(別名一塩基多型、SNPまたは点変異)、多塩基多型(MNP)、遺伝子融合などの複数遺伝子を含む染色体の大セグメントなどの範囲の、DNA配列および/またはDNA配列によりコードされるタンパク質配列の変化を有し得る。遺伝子融合の例は、通常DNA配列と接続されていない2遺伝子を融合させるような1以上の遺伝子をコードする染色体DNAの一部の染色体逆位の結果であるもの、通常DNA配列と接続されていない2遺伝子を融合させるような染色体のDNA配列の一部の染色体欠失または通常DNA配列と接続されていない2遺伝子を融合させるような染色体DNAの一部のスプライスおよび同一または異なる染色体への導入である転座の結果であるものを含むが、これらに限定されない。当業者は、このような遺伝子融合が遺伝子融合が生じている個体により複数バリアントで見られ得て、このようなバリアントの各々が、ここに記載する方法により意図されることを容易に理解する。
【0159】
「遺伝子改変」遺伝子またはそのような遺伝子によりコードされるタンパク質は、親から遺伝され得て、生殖系列変異と称されることもある遺伝性変異として生じ得るかまたは「遺伝子改変」遺伝子またはそのような遺伝子によりコードされるタンパク質は、人生のある時点で生ずる獲得(または体細胞)変異として生じ得る。ある場合、「遺伝子改変」遺伝子はデノボ(新規)変異ということができ、遺伝性または体細胞何れかであり得る。「遺伝子改変」は、SNP(または点変異)および転座などのここに記載するDNA配列における1を超える変化が、一患者で同時に起こり得る状況をいうことができることはさらに理解されるべきである。このような状況は、キナーゼ阻害剤で処置されている患者の処置有効性を減ずるDNA配列における変異が発生し得る、いわゆる「獲得耐性」の結果として、単独ではないが、発生し得る。このような獲得耐性変異の非限定的例は、遺伝子改変METによりコードされるc-Metタンパク質における点変異P991S、T992I、V1092I、T1173I、F1200I、D1228N、D1228H、Y1230A、Y1230C、Y1230D、Y1230H、Y1235D、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248C、M1250TおよびM1268Tを含む。
【0160】
ここで使用する用語「内因性耐性」は、薬物処置、特に化学療法処置に対する疾患細胞、特にがん細胞の既存の耐性をいう。内因性耐性は、単一薬物、構造が関連する薬剤の小群または化学構造が異なる数薬物(いわゆる「多剤耐性」または「MDR」)に対する細胞の耐性をもたらし得ることは認識される(Monti, E. 2007. Molecular Determinants of Intrinsic Multidrug Resistance in Cancer Cells and Tumors In B. Teicher (Ed.), Cancer Drug Resistance (pp. 241-260). Totowa, New Jersey: Humana Press Inc.)。内因性耐性は、1以上の宿主関連因子および/または細胞の遺伝子構造の結果であり得ることは認識される。このような因子は、免疫調節;ADME改変または薬剤誘発性副作用に対する低耐容性により最適血清薬物レベルを達成できないなどの遺伝薬理学的因子;腫瘍部位への薬物アクセスの制限;および微小環境的キューを含むが、これらに限定されない。このような遺伝子構造因子は、薬物トランスポーター発現改変;薬物標的の質的改変;薬物標的の量的改変;細胞内薬物処理/代謝の変化;DNA修復活性の変化およびアポトーシス経路の改変を含むが、これらに限定されない(Gottesman, M.M., Annu. Rev. Med., 2002, 53, 516-527)。
【0161】
ここで使用する用語「疾患」は、がん、疼痛、炎症性疾患、例えばアレルギー、喘息、自己免疫性疾患、セリアック病、糸球体腎炎、肝炎、炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎)、虚血再灌流傷害、移植片拒絶、乾癬および関節リウマチ;真性多血症、本態性血小板血症および骨髄線維症を伴う骨髄化生を含むが、これらに限定されない。
【0162】
ここで使用する用語「がん」は、がん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がん、骨髄腫などのがんを含むが、これらに限定されない。本発明と関連する「がん」の例は、ALCL、肺がん、例えば腺がん、肺扁平上皮細胞がん、大細胞がんおよび大細胞神経内分泌腫瘍を含む非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、例えばルミナルA、ルミナルB、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER2+など、口腔がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、例えば未分化甲状腺がん、胆道がん、卵巣がん、胃がん、例えば胃腺がん、結腸直腸がん(CRC)、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、例えば皮膚黒色腫、頭頸部扁平上皮細胞がん(HNSCC)、小児神経膠腫CML、前立腺がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、子宮がん、例えば漿液性および明細胞子宮内膜がん、子宮内膜がんなど、口腔がん、内分泌がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、結腸がん、膀胱がん、骨がん、子宮頸がん、精巣がん、直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、神経内分泌腫瘍および胃がんを含むが、これらに限定されない。用語「がん」は一次がんまたは一次腫瘍および転移がんまたは転移腫瘍両者を含み、当分野で知られる全ステージのがんを含むことは認識される。例えば、転移NSCLC、転移CRC、転移膵臓がん、転移結腸直腸がん、転移HNSCC、転移子宮がんなど。用語「がん」は、小GTPase(例えばKRASなど)およびMETなどの受容体チロシンキナーゼなどの、疾患進行をもたらし得るある遺伝子の上方制御またはある遺伝子における遺伝的変異を含むがんを含むことは認識される。
【0163】
代表的実施態様
ある実施態様において、ここに記載する方法は、処置を必要とする患者に、治療有効量のMET、SRCおよびCSF1Rに対する活性を有する化合物を投与することを含む、疾患の処置に関連する。ある実施態様において、化合物は、遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rに対する活性を有する。ある実施態様において、化合物は、式I
【化42】
〔式中、
はH、重水素またはC-Cアルキルであり;
はクロロまたは-CNであり;
はH、重水素またはフルオロであり;
はHまたはC-Cアルキルであり、ここで、C-Cアルキルの各水素原子は独立して場合により重水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、-OH、-CN、-OC-Cアルキル、-NH、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cアルキル)またはC-Cシクロアルキルで置換されている。〕
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0164】
ある実施態様において、Rがメチルである。ある実施態様において、Rが-CNである。ある実施態様において、Rがフルオロである。ある実施態様において、RがC-Cアルキルである。ある実施態様において、Rがエチルである。ある実施態様において、化合物は式
【化43】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0165】
疾患は、式Iの化合物が活性を有する、ここに記載するチロシンキナーゼと関連するいくつかの疾患の何れでもよいことは認識される。例えば、ここに記載する方法は、がん、疼痛、乾癬、関節リウマチ、真性多血症、本態性血小板血症、潰瘍性大腸炎、骨髄線維症を伴う骨髄化生などの疾患の処置に使用され得る。疾患は、遺伝子改変MET、SRCまたはCSF1Rの活性と関連する疾患の何れでもよいことは認識される。ある実施態様において、疾患は、遺伝子改変METにより介在されるまたは関連するがんである。ある実施態様において、疾患は、c-Metタンパク質において発現される点変異をコードする遺伝子改変METにより介在されるまたは関連するがんである。ある実施態様において、疾患は、c-Metタンパク質においてP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上で発現される点変異をコードする遺伝子改変METにより介在されるまたは関連するがんである。ある実施態様において、疾患は、c-Metタンパク質においてT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される発現される点変異をコードする遺伝子改変METにより介在されるまたは関連するがんである。
【0166】
がんは、がん腫、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、黒色腫、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭がん、白血病、肺がん、乳がん、遺伝性ヒト乳頭腎臓がん、散発性ヒト乳頭腎臓がん、小児肝細胞がんまたは骨髄腫を含むが、これらに限定されない、遺伝子改変MET、SRCまたはSCF1Rにより介在されるまたは関連するあらゆるがんであり得ることは認識される。ある実施態様において、がんは、ALCL、NSCLC、神経芽腫、炎症性筋線維芽細胞性腫瘍、腎臓がん、成人腎細胞がん、小児腎細胞がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、トリプルポジティブ乳がん、HER乳がん、口腔がん、食道がん、喉頭がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、結腸腺がん、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、甲状腺がん、未分化甲状腺がん、内分泌がん、骨がん、胆道がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、精巣がん、胃がん、胃腺がん、結腸直腸がん、直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、血管肉腫、類上皮型血管内皮腫、肝内胆道がん、甲状腺乳頭がん、スピッツ新生物、肉腫、星状細胞腫、脳低悪性度神経膠腫、分泌性乳がん、乳腺相似がん、急性骨髄性白血病、先天性中胚葉腎腫、先天性線維肉腫、Ph様急性リンパ芽球性白血病、甲状腺がん、皮膚がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、小児神経膠腫CML、前立腺がん、肺扁平上皮がん、卵巣漿液性嚢胞腺がん、皮膚黒色腫、転移去勢抵抗性前立腺がん、ホジキンリンパ腫、神経内分泌腫瘍、漿液性および明細胞子宮内膜がんを含むが、これらに限定されない。
【0167】
ある実施態様において、本発明は、1以上の治療剤での先の処置を受けている患者において疾患を処置する方法を提供する。ある実施態様において、患者は1以上の治療剤で先に処置されている。ある実施態様において、患者は1以上の治療剤で先に処置されてかつ該処置に対する獲得耐性を生じている。ある実施態様において、患者は1以上の治療剤で先に処置されてかつ遺伝子改変METの形の該処置に対する獲得耐性を生じている。ある実施態様において、患者は1以上の治療剤で先に処置されてかつ遺伝子改変METによりコードされるc-Metタンパク質の変異として発現される該処置に対する獲得耐性を生じている。ある実施態様において、患者は1以上の治療剤で先に処置されてかつP991、T992、V1092、H1094、G1163、T1173、L1195、F1200、D1228、Y1230、Y1235、D1246、Y1248、M1250およびM1268の1か所以上でc-Metタンパク質における点変異として発現される該処置に対する獲得耐性を生じている。ある実施態様において、患者は1以上の治療剤で先に処置されてかつ遺伝子改変METによりコードされるc-Metタンパク質におけるT1173I、P991S、M1250T、T992I、V1092I、F1200I、Y1235D、Y1230H、D1246N、D1246H、Y1248D、Y1248H、Y1248CおよびM1268Tからなる群から選択される点変異として発現される該処置に対する獲得耐性を生じている。ある実施態様において、患者は1以上の化学療法剤で先に処置されてかつ該処置に対する迂回耐性を生じている。さらに他の実施態様において、患者は1以上の治療剤で先に処置されてかつSRCまたはSCF1Rにより制御される該処置に対する迂回耐性を生じている。
【0168】
ここに記載する化合物の1以上での処置前に患者が処置されている可能性のある他の化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、アドレノコルチコイドおよびコルチコステロイド、アルキル化剤、ペプチドおよびペプチド模倣体シグナル伝達阻害剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、アクラマイシンおよびアクラマイシン誘導体、エストロゲン、代謝拮抗剤、白金化合物、アマニチン、植物アルカロイド、マイトマイシン、ディスコデルモライド、微小管阻害剤、エポチロン、炎症性および炎症促進性薬剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、カンプトテシンおよびドラスタチンを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、患者がここに記載する化合物の1以上での処置前に受けている化学療法剤は、アファチニブ、アクシチニブ、アレクチニブ、ボスチニブ、ブリグチニブ、カボザンチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、トファシチニブ、テムシロリムス、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、メトトレキサート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、タモキシフェン、タキソール、パクリタキセル、ドセタキセル、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、ダウノマイシン、リゾキシン、プレドニゾン、ヒドロキシ尿素、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、カンプトテシン、イリノテカン、ゲルダナマイシン、エストラムスチンおよびノコダゾールの1以上であり得る。ある実施態様において、ここに記載する方法は、アファチニブ、アレクチニブ、アクシチニブ、ボスチニブ、ブリグチニブ、カボザンチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、トファシチニブ、テムシロリムス、トラメチニブ、バンデタニブおよびベムラフェニブからなる群から選択されるキナーゼ阻害剤で先に処置されている患者の処置を提供する、ある実施態様において、患者はクリゾチニブで先に処置されていた。
【0169】
医薬組成物
処置目的で、ここに記載する化合物を含む医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される添加物をさらに含み得る。薬学的に許容される添加物は、非毒性であり、他の点で対象への投与に生物学的に適する物質である。このような添加物はここに記載する化合物の投与を容易とし、活性成分と適合性である。薬学的に許容される添加物の例は、安定化剤、滑沢剤、界面活性剤、希釈剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤、増量剤、乳化剤または味修飾剤を含む。好ましい実施態様において、本発明の医薬組成物は無菌組成物である。医薬組成物は、当業者に知られるまたは利用可能となる配合技術により製造され得る。
【0170】
無菌組成物も、そのような組成物を管理する国および地方の規制当局に従う組成物を含み、本発明で意図される。
【0171】
ここに記載する医薬組成物および化合物は、適当な医薬溶媒または担体中の液剤、エマルジョン剤、懸濁液剤または分散剤としてまたは固体担体と共に丸剤、錠剤、ロゼンジ剤、坐薬、サシェ剤、糖衣錠剤、顆粒剤、散剤、再構築用粉末剤またはカプセル剤として、種々の投与形態について当分野で知られる慣用方法に従い製剤される。本発明の医薬組成物は、経口、非経腸、直腸、経鼻、局所または眼経路などの適当な送達経路または吸入。により投与され得る。好ましくは、組成物は静脈内または経口投与用に製剤化される。
【0172】
経口投与、化合物本発明は、錠剤もしくはカプセル剤などの固体形態または液剤、エマルジョン剤または懸濁液剤として提供され得る。経口組成物の調製のために、本発明の化合物を、例えば、1日約0.1mg~1gまたは1日約1mg~50mgまたは1日約50~250mgまたは1日約250mg~1gの投与量で製剤化され得る。経口錠剤は、希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味剤、風味剤、着色剤および防腐剤などの適合性の薬学的に許容される添加物と混合された活性成分を含む。適当な不活性充填剤は、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ラクトース、デンプン、糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどを含む。液体経口添加物の例は、エタノール、グリセロール、水などを含む。デンプン、ポリビニル-ピロリドン(PVP)、デンプングリコール酸ナトリウム、微結晶セルロースおよびアルギン酸は崩壊剤の例である。結合剤はデンプンおよびゼラチンを含み得る。滑沢剤は、存在するならば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであり得る。所望により、錠剤をモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの物質でコーティングして、消化管における吸収を遅延させ得るかまたは腸溶性コーティングでコーティングし得る。
【0173】
経口投与用カプセル剤は、硬および軟ゼラチンカプセル剤を含む。硬ゼラチンカプセルを調製するために、活性成分を固体、半固体または液体希釈剤と混合し得る。軟ゼラチンカプセル剤は、活性成分と水、ピーナツ油またはオリーブ油などの油、液体パラフィン、短鎖脂肪酸モノおよびジグリセリドの混合物、ポリエチレングリコール400またはプロピレングリコールの混合により調製し得る。
【0174】
経口投与用液体は、懸濁液、溶液、エマルジョンまたはシロップの形であってよくまたは使用前に水または他の適当な媒体での再構築のために凍結乾燥されまたは乾燥製品として提供され得る。このような液体組成物は、場合により薬学的に許容される添加物、例えば懸濁化剤(例えば、ソルビトール、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲルなど);非水性媒体、例えば、油(例えば、アーモンド油またはヤシ油)、プロピレングリコール、エチルアルコールまたは水;防腐剤(例えば、メチルまたはプロピルp-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸);湿潤剤、例えばレシチン;および所望により、風味または着色剤を含み得る。
【0175】
静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内または皮下経路を含む非経腸使用のために、本発明の薬剤は、適切なpHに緩衝化され、等張無菌水溶液または懸濁液または非経腸的許容される油で提供され得る。適当な水性媒体は、リンゲル液および等張塩化ナトリウムを含む。このような形態は、アンプルまたは使い捨て注射デバイスなどの単位用量形態、適切な用量を抽出し得るバイアルなどの多用量形態または注射用製剤の調製に使用できる固体形態または前濃縮物で提供され得る。説明的注入用量は、数分から数日の範囲の期間にわたる、医薬担体と混合された薬剤約1~1000μg/kg/分の範囲である。
【0176】
経鼻、吸入または経口投与について、本発明医薬組成物を、例えば、適当な担体も含む噴霧製剤を使用して投与し得る。本発明組成物は、坐薬として直腸投与のために製剤化され得る。
【0177】
局所適用のために、本発明の化合物は、好ましくはクリーム剤または軟膏剤または局所投与に適する類似媒体として製剤化される。局所投与のために、本発明化合物を、媒体に対して約0.1%~約10%の薬物の濃度で医薬担体と混合し得る。本発明の薬剤の他の投与方法は、経皮送達を行うためのパッチ製剤を利用し得る。
【0178】
ここに示す式の何れも、化合物の標識されていない形態および同位体標識された形態を表すことも意図される。同位体標識された化合物は、1以上の原子が選択した原子質量または質量数を有する原子で置き換えられる以外、ここに示す式により表わされる構造を有する。本発明の化合物に取り込み得る同位体の例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体、例えば、それぞれH、H、11C、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、36Clおよび125Iを含む。このような同位体標識された化合物は、代謝試験(好ましくは14C)、反応動態研究(例えばHまたはH)、薬物または基質組織分布アッセイを含む検出または造影技術[例えば陽電子放出断層撮影(PET)または単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)]または患者の放射性処置に有用である。さらに、重水素(すなわち、H)などの重い同位体での置換は、大きな代謝安定性に起因するある治療利点、例えばインビボ半減期延長または必要投与量減少を提供し得る。同位体標識された本発明の化合物およびそのプロドラッグは、一般に下記スキームまたは実施例および製造に記載する方法を、同位体標識されていない反応材を、容易に入手可能な同位体標識された反応材に変えて実施することにより、製造され得る。
【0179】
薬物組み合わせ
ここに記載する化合物を、ここに記載する疾患および障害の処置において、以上のさらなる活性成分と組み合わせて、医薬組成物または方法において使用し得る。さらに、さらなる活性成分は、意図される疾患標的の治療の有害作用を軽減する他の治療または薬剤であり得る。このような組み合わせは、本発明化合物の有効性の増大、他の疾患症状の軽減、1以上の副作用の減少または必要用量の減少に役立ち得る。さらなる活性成分を、本発明の化合物と別の医薬組成物で投与してよくまたは本発明の化合物と単一医薬組成物に包含させてよい。さらなる活性成分を、本発明の化合物の投与と同時、前または後に投与してよい。
【0180】
組み合わせ剤は、疾患に関連する他の標的に対して活性のものを含む、ここに記載する疾患および障害の処置に有効であることが知られるまたは発見されるものである、さらなる活性成分を含む。例えば、本発明の組成物および製剤、ならびに処置方法は、さらに他の薬物または医薬、例えば、標的疾患または関連症状もしくは状態の処置または軽減に有用な他の活性薬剤を含み得る。
【0181】
ここに記載する方法と組み合わせて使用するのに適する他の化学療法剤は、キナーゼ阻害剤、アドレノコルチコイドおよびコルチコステロイド、アルキル化剤、ペプチドおよびペプチド模倣体シグナル伝達阻害剤、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン、アクラマイシンおよびアクラマイシン誘導体、エストロゲン、代謝拮抗剤、白金化合物、アマニチン、植物アルカロイド、マイトマイシン、ディスコデルモライド、微小管阻害剤、エポチロン、炎症性および炎症促進性薬剤、プリンアナログ、ピリミジンアナログ、カンプトテシンおよびドラスタチンを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、ここに記載する方法における組み合わせ処置に適する化学療法剤は、アファチニブ、アレクチニブ、アクシチニブ、ボスチニブ、ブリグチニブ、カボザンチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、トファシチニブ、テムシロリムス、トラメチニブ、バンデタニブ、ベムラフェニブ、メトトレキサート、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、タモキシフェン、タキソール、パクリタキセル、ドセタキセル、シトシンアラビノシド、シクロホスファミド、ダウノマイシン、リゾキシン、プレドニゾン、ヒドロキシ尿素、テニポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エリブリン、カンプトテシン、イリノテカン、ゲルダナマイシン、エストラムスチンおよびノコダゾールの1以上を含むが、これらに限定されない。ここに記載する方法における組み合わせ処置に適する化学療法剤は、アファチニブ、アレクチニブ、アクシチニブ、ボスチニブ、ブリグチニブ、カボザンチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、エベロリムス、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ニロチニブ、ニンテダニブ、パルボシクリブ、パゾパニブ、ポナチニブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、シロリムス、ソラフェニブ、スニチニブ、トファシチニブ、テムシロリムス、トラメチニブ、バンデタニブおよびベムラフェニブからなる群から選択される1以上のキナーゼ阻害剤を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、患者はクリゾチニブで先に処置されていた。疼痛適応のために、適当な組み合わせ剤は、NSAIDなどの抗炎症剤を含む。本発明の医薬組成物は、さらにこのような活性薬剤の1以上を含んでよく、処置方法は、さらにこのような活性薬剤の1以上の有効量の投与を含む。
【0182】
投薬および投与
ここに記載する方法および組成物のある実施態様において、治療有効量の遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物の1以上、特に式Iの化合物が、がんの処置を必要とするヒト患者などの宿主動物に投与される。ここに記載する方法および組成物のある実施態様において、治療有効量の遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に化合物1が、がんの処置を必要とするヒト患者などの宿主動物に投与される。
【0183】
ここで使用する用語「治療有効量」は、処置する疾患または障害の症状の軽減を含む、患者における生物学的または医学的応答を誘導する活性化合物または薬剤の量をいう。ある態様において、治療有効量は、疾患または症状を処置または軽減する量であり得る。ある特定の患者に対する具体的治療有効用量レベルは、処置する障害および障害の重症度;用いる具体的化合物の活性;用いる具体的組成物;患者の年齢、体重、全身的健康状態、性別および食習慣:投与時間、投与経路および用いる具体的化合物の排泄速度;処置期間;用いる具体的化合物との組み合わせでまたは同時的に使用される薬物;および同様の因子を含む因子による。
【0184】
ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物における、遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1の用量の例は、約1mg~約3gまたは約1mg~約500mgまたは約50~約250mgまたは約150~約500mgまたは約150~約250mgまたは約250mg~約1gまたは約100mg~約2gまたは約500mg~約2gまたは約500mg~約1gの範囲である。上記用量範囲内の全ての可能は部分範囲がここで意図されかつ記載されることは認識される。例えば、ここに記載する方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1について提供される約40~約500mgの用量範囲は、ここに記載する治療有効量の決定のための因子に基づき必要であり得る全ての可能な用量および範囲を含み、約40mg、約50mg、約60mg、約70mg、約80mg、約90mg、約100mg、約110mg、約120mg、約130mg、約140mg、約150mg、約160mg、約170mg、約180mg、約190mg、約200mg、約210mg、約220mg、約230mg、約240mg、約250mg、約260mg、約270mg、約280mg、約290mg、約300mg、約310mg、約320mg、約330mg、約340mg、約350mg、約360mg、約370mg、約380mg、約390mg、約400mg、約410mg、約420mg、約430mg、約440mg、約450mg、約460mg、約470mg、約480mg、約490mg、約500mgの用量を含む。ある実施態様において、ここに記載する方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1は、約40mg、約80mg、約120mg、約160mg、約200mg、約240mgまたは約280mgで投与され得る。
【0185】
ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物における遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1の用量の例は、1日約1mg~約3gまたは1日約1mg~約500mgまたは1日約50~約250mgまたは約150~約500mgまたは1日約150~約250mgまたは1日約250mg~約1gまたは1日約100mg~約2gまたは1日約500mg~約2gまたは1日約500mg~約1gの範囲である。上記用量範囲内の全ての可能は部分範囲がここで意図されおよび記載されることは認識される。例えば、ここに記載する方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1について1日約40~約500mgの用量範囲は、ここに記載する治療有効量の決定のための因子に基づき必要であり得る全ての可能な用量および範囲を含み、1日約40mg、1日約50mg、1日約60mg、1日約70mg、1日約80mg、1日約90mg、1日約100mg、1日約110mg、1日約120mg、1日約130mg、1日約140mg、1日約150mg、1日約160mg、1日約170mg、1日約180mg、1日約190mg、1日約200mg、1日約210mg、1日約220mg、1日約230mg、1日約240mgおよび1日約250mg、1日約260mg、1日約270mg、1日約280mg、1日約290mg、1日約300mg、1日約310mg、1日約320mg、1日約330mg、1日約340mg、1日約350mg、1日約360mg、1日約370mg、1日約380mg、1日約390mg、1日約400mg、1日約410mg、1日約420mg、1日約430mg、1日約440mg、1日約450mg、1日約460mg、1日約470mg、1日約480mg、1日約490mg、1日約500mgの用量を含む。ある実施態様において、ここに記載する方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1は、1日約40mg、1日約80mg、1日約120mg、1日約160mg、約200mg、約240mgまたは約280mgで投与され得る。
【0186】
ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1の用量の別の例は、約0.1mg/kg~約1g/kgまたは約0.5mg/kg~約50mg/kgまたは約0.5mg/kg~約25mg/kgまたは約1.0mg/kg~約10mg/kgまたは約1.0mg/kg~約5mg/kgまたは約0.1mg/kg~約5mg/kgまたは約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは約0.1mg/kg~約0.6mg/kgの範囲である。上記用量範囲内の全ての可能な部分範囲がここで意図されおよび記載されることは認識される。例えば、ここに記載する方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1についての約1.0mg/kg~約10mg/kgの用量範囲は、ここに記載する治療有効量の決定のための因子に基づき必要であり得る全ての可能な用量および範囲を含み、約1.0mg/kg、約2.0mg/kg、約3.0mg/kg、約4.0mg/kg、約5.0mg/kg、約6.0mg/kg、約7.0mg/kg、約8.0mg/kg、約9.0mg/kgおよび約10.0mg/kgの用量を含む。
【0187】
ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1の用量の別の量は、1日約0.1mg/kg~約1g/kgまたは1日約0.5mg/kg~約50mg/kgまたは1日約0.5mg/kg~約25mg/kgまたは1日約1.0mg/kg~約10mg/kgまたは1日約1.0mg/kg~約5mg/kgまたは1日約0.1mg/kg~約5mg/kgまたは1日約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは1日約0.1mg/kg~約0.6mg/kgを含む。上記用量範囲内の全ての可能は部分範囲がここで意図されおよび記載されることは認識される。例えば、ここに記載する方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1について1日約1.0mg/kg~約10mg/kgの用量範囲は、ここに記載する治療有効量の決定のための因子に基づき必要であり得る全ての可能な用量および範囲を含み、1日約1.0mg/kg、1日約2.0mg/kg、1日約3.0mg/kg、1日約4.0mg/kg、1日約5.0mg/kg、1日約6.0mg/kg、1日約7.0mg/kg、1日約8.0mg/kg、1日約9.0mg/kgおよび1日約10.0mg/kgの用量を含む。
【0188】
遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1の投与のための種々の投薬スケジュールがここに記載する方法および組成物において適用され得ることは認識される。さらに、ここに記載する種々の方法および組成物において投与される化合物についての投薬スケジュールは投薬スケジュールのサイクルにより規定され得て、ここで、このようなサイクルは、処置日数、化合物の投与回数、化合物の総用量などにより決定され得る。ある実施態様において、処置を必要とするヒト患者などの宿主動物は、遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1を少なくとも1サイクル、少なくとも2サイクル、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクルなどが投与され得る。あるいは、ある実施態様において、処置を必要とするヒト患者などの宿主動物は、遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1を1~約50サイクル、1~約25サイクル、1~約20サイクル、1~約10サイクルなどが投与され得る。ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物において投与される化合物についての投薬スケジュールは、化合物が投与されない休薬期間を含んでよく、このような休薬期間は日数で測定され得る。ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物において投与される化合物についての投薬スケジュールは、ここに記載するある数のサイクル、続く休薬期間、続くここに記載する他の下図のサイクルにより定義され得る。
【0189】
ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物において提供される遺伝子改変MET、SRCおよびSCF1Rを阻害する化合物、特に式Iの化合物、より具体的に化合物1についての投薬スケジュールの例は、1日1回用量(QD)または分割投与量単位(例えば、BID(1日2回)、TID(1日3回)、QID(1日4回))の投与を含み得る。ある実施態様において、ここに記載する種々の方法および組成物において投与される化合物についての投薬スケジュールは、ここに記載する種々の方法および組成物で投与される化合物がある日数QD(例えば1日、2日、3日、4日QDなど)、続くある日数BID(例えば1日、2日、3日、4日BIDなど)のように、サイクル内で変わってよい。
【0190】
診断試験
ある実施態様において、本発明は、遺伝子改変METを有するとして先に同定されている患者における疾患を処置する方法を提供する。ある実施態様において、本発明は、遺伝子改変METを有するとして先に同定されている患者におけるがんを処置する方法を提供する。ある実施態様において、本発明は、(i)患者における遺伝子改変METの同定および(ii)そのような疾患の処置に有用な治療有効量の化合物の患者への投与を含む、患者における疾患を処置する方法を提供する。
【0191】
患者を遺伝子改変METを有するとする診断または同定は、当業者により知られる任意の数の診断試験により達成され得ることは認識される。例えば、このような診断試験は、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、免疫組織化学(IHC)、全ゲノムシークエンシング、次世代シークエンシング、循環腫瘍細胞などを含むが、これらに限定されない。本発明に関連する患者の診断または患者の同定は、対象が遺伝子改変METを有するか有していないかの決定に使用し得る修飾サンプルを提供するための、ある物質の状態から他の状態への、直接修飾、化学合成、直接非共有結合または他の既知手段による、生物学的サンプルの変換を含む。ある実施態様において、患者の疾患状態に関する「診断」または「同定」は、患者から得た生物学的サンプルへのFISH、PCR、IHCまたはシークエンシングなどの診断試験の適用を意味する。
【0192】
FISHは、あるヒトの細胞における遺伝物質を「マッピングする」試験であることは認識される。この試験は、特異的遺伝子または遺伝子の一部の可視化のために使用され得る。FISHは、高度な配列相補性を有する染色体の部分にのみ結合する蛍光プローブを使用する細胞遺伝学的技術である。このようなFISH試験を使用して、当分野で知られる何らかの方法により遺伝子改変METを有する患者を同定でき、このような試験を、処置患者の前もっての同定または処置のための患者の同時同定の手段として、ここに記載する方法と組み合わせて使用し得る。
【0193】
IHCは、生物学的組織における抗原に特異的に結合する抗体の探索により、組織切片の細胞における抗原(例えば、タンパク質)を検出する工程をいうことは認識される。免疫組織化学染色は、がん腫瘍において見られるなどの異常細胞の診断に広く使用される。特異的分子マーカーは、増殖または細胞死(アポトーシス)などの特定の細胞事象の特徴である。抗体-抗原相互作用の可視化は、いくつかの方法で達成され得る。最も一般的な場合、抗体を、発色反応を触媒できるペルオキシダーゼなどの酵素にコンジュゲートさせる。あるいは、抗体を、フルオレセインまたはローダミンなどのフルオロフォアでタグ付けし得る。このようなIHC試験を使用して、当分野で知られる何らかの方法により遺伝子改変METを有する患者を同定でき、このような試験を、処置患者の前もっての同定または処置のための患者の同時同定の手段として、ここに記載する方法と組み合わせて使用し得る。
【0194】
PCRは、DNAの一片の1コピーまたは数コピーを、数桁にわたり増幅して、特定のDNA配列の数千~数百万コピーを産生するために使用される、分子生物学におけるテクノロジーをいうことは認識される。このようなPCR試験を使用して、当分野で知られる何らかの方法により遺伝子改変METを有する患者を同定でき、このような試験、当分野で知られる何らかの方法により遺伝子改変METを有する患者を同定でき、このような試験を、処置患者の前もっての同定または処置のための患者の同時同定の手段として、ここに記載する方法と組み合わせて使用し得る。
【0195】
全ゲノムシークエンシングまたは次世代シークエンシングは、一回で生物のゲノムの完全DNA配列を決定する過程をいうことは認識される。これは、生物の染色体DNAならびにミトコンドリアに含まれるDNAの全てのシークエンシングを伴う。このような全ゲノムシークエンシング試験を使用して、当分野で知られる何らかの方法により遺伝子改変METを有する患者を同定でき、このような試験、当分野で知られる何らかの方法により遺伝子改変METを有する患者を同定でき、このような試験を、処置患者の前もっての同定または処置のための患者の同時同定の手段として、ここに記載する方法と組み合わせて使用し得る。
【実施例
【0196】
以下に提供する実施例および製造は、本発明の実施態様の特定の態様をさらに説明し、例示する。本発明の範囲は、いかなる方法でも以下の実施例の範囲に限定されないことは理解される。式Iの化合物、特に化合物1は国際特許公開WO2019/023417に開示され、そこに記載され、特に、式Iの化合物の製造および具体的に化合物1の製造に関して引用によりその全体として本明細書に包含させる方法により製造した。
【0197】
インビトロアッセイ
材料および方法
【0198】
化合物1を、Reaction Biology Corporation’s HotSpotキナーゼアッセイでMETおよび変異METタンパク質に対して試験した(データは表1)。各キナーゼの個々の基質を、新たに製造した反応緩衝液で調製し、必要であれば、必要な補因子を加え、続いて個々のキナーゼを加え、穏やかに混合した。化合物1のDMSO溶液を、キナーゼ反応混合物に音響技術(Echo 550)を使用して加え、次いでγ-[33P]-ATP(最終比活性0.01μCi/μL)を反応混合物に加えて、反応を開始させた。キナーゼ反応物を120分間、室温でインキュベートした。次いで、反応をP81イオン交換紙(Whatman # 3698-915)で停止させ、それを0.75%リン酸で徹底的に洗浄した。濾紙に残った放射性リン酸化基質を測定した。化合物1を、10用量IC50モードで、1μMから開始する3倍連続希釈で試験し、対照化合物、スタウロスポリンを、10用量IC50モードで、20μMから開始する4倍連続希釈および10用量IC50モードで、0.1μMから開始する3倍連続希釈両者で試験した。全反応を、10μM ATP濃度存在下で実施した。キナーゼ活性データを、媒体(ジメチルスルホキシド)反応と比較した試験サンプルにおける残存キナーゼ活性のパーセントとして表わした。IC50値およびカーブフィットを、Prism4ソフトウェア(GraphPad)を使用して得た。
【0199】
化合物1の酵素キナーゼ阻害性活性を、Eurofins Pharma Discovery Servicesにより実施される放射標識キナーゼKinaseProfilerアッセイで評価した(データは表2)。各キナーゼのアッセイの完全な詳細は、Eurofinsウェブサイトまたは添付のプロトコール書面で入手可能である。アッセイの例はMET(M1268T)についてである:ヒトMET(M1268T)タンパク質を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、1mM NaVO、5mM β-グリセロリン酸ナトリウム、250μM KKKGQEEEYVFIE(配列番号1)、10mM 酢酸Mgおよび[γ-33P]-ATP(必要な比活性および濃度)とインキュベートした。反応をMg/ATP混合物を加えて開始させる。40分間、室温でインキュベーション後、反応をリン酸を0.5%の濃度まで加えて停止させる。次いで、反応物10μLをP30フィルターマットにスポットし、4回、4分間0.425%リン酸および1回メタノールで洗浄し、その後乾燥およびシンチレーション計測する。
【0200】
Reaction Biology Corporationでの放射標識HotSpotキナーゼアッセイプラットフォームを使用するMETおよび12種の変異METタンパク質に対する化合物1の酵素阻害性活性(表1)。化合物1は、広範な種々の変異を有するMETタンパク質を強力に阻害した(表1)。試験した変異の小群(すなわち位置D1228XおよびY1230)は、試験したもので最低の効力を示した。Eurofins KinaseProfiler生化学アッセイにおいて、化合物1は、METの広範な変異体形態に対する強力な阻害性活性を有した(表2)。まとめると、化合物1は、広範な変異METタンパク質に対する強力な阻害性活性を有した。
【表1】


【表2】

【0201】
化合物1を、METおよび耐性変異を担持するMETの一団のBa/F3操作細胞モデルで試験した。操作細胞株を作るために、TPR-MET融合遺伝子およびその変異T1173I、M1250T、H1094Y、G1163R、L1195V、D1228NおよびY1230CをGenScriptで合成し、それぞれpCDH-CMV-MCS-EF1-Puroプラスミド(System Biosciences, Inc)にクローン化した。Ba/F3操作細胞を、Ba/F3細胞を、関連野生型または変異体遺伝子を含むレンチウイルスで感染させることにより作製した。Ba/F3操作細胞を、10%ウシ胎児血清、100U/mLのペニシリンおよび1μg/mL ピューロマイシン溶液、10ng/IL-3(Life Technologies)添加RPMI-1640で選択し、続いてIL-3がない同じ培地でさらに選択した。
【0202】
化合物1の細胞増殖阻害能を、TRP-MET構築物を担持するBa/F3細胞の細胞増殖アッセイを使用して測定した(表3)。細胞増殖アッセイについて、安定なBa/F3細胞を384ウェル白色プレートに播種し、続いて試験化合物を加えた。72時間のインキュベーション後、細胞増殖をCellTiter-Glo 2.0ルシフェラーゼベースのATP検出アッセイ(Promega)を、製造業者のプロトコールに従い使用して、測定した。IC50をGraphPad Prismソフトウェア(GraphPad, Inc., San Diego, CA)を使用して、決定した。
【表3】

【0203】
用量-応答分析に基づき、次の値も計算した:MET IC95=0.2nM、G1163RIC90=171nMおよびL1195VIC90=175nM。
【配列表】
2023515687000001.app
【国際調査報告】