(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】組成物および嚢胞性線維症の処置のための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20230406BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20230406BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230406BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230406BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230406BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230406BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/867 Z
A61K38/17
A61K48/00
A61P11/00
A61P1/00
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022565627
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021029365
(87)【国際公開番号】W WO2021222222
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515346639
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オブ アイオワ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】University of Iowa Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】マクレイ ジュニア、ポール ビー.
(72)【発明者】
【氏名】シン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ロサ、ラウラ マルケス
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC541
(57)【要約】
本明細書では、例えば嚢胞性線維症(CF)の処置のための、ポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、医薬組成物、ならびにそれを製造および使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項3】
配列番号1のヌクレオチド配列を含む、請求項1または2に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号2のヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項6】
配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号3のヌクレオチド配列を含む、請求項5または6に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項8】
コドンを最適化したヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたプロモータを含むレンチウイルス導入ベクターであって、嚢胞性線維症ヒト気道上皮細胞における前記コドンを最適化したヒトCFTR遺伝子の発現は、野生型ヒトCFTRと比較して、経上皮Cl
-輸送の増大をもたらすベクター。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含むレンチウイルス導入ベクター。
【請求項10】
前記プロモータがヒトホスホグリセリン酸キナーゼプロモータ(PGK)である、請求項9に記載のレンチウイルス導入ベクター。
【請求項11】
前記PGKプロモータが、配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項10に記載のレンチウイルス導入ベクター。
【請求項12】
前記プロモータがヒト伸長因子1-α(EF1α)プロモータである、請求項9に記載のレンチウイルス導入ベクター。
【請求項13】
ヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたEF1αプロモータを含むレンチウイルス導入ベクター。
【請求項14】
前記EF1αプロモータが配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項12または13に記載のレンチウイルス導入ベクター。
【請求項15】
配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含むレンチウイルス導入ベクター。
【請求項16】
前記レンチウイルスベクターの前記レンチウイルス成分がHIV-1に由来する、請求項8乃至15のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項17】
5’の長い末端反復(LTR)、3’LTR、パッケージングシグナル、Rev応答エレメント(RRE)、セントラルポリプリントラクト(cPPT)配列、および/または中央終結配列(CTS)のうちの1つ以上をさらに含む、請求項8乃至16のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項18】
前記3’LTRが自己不活性化3’LTRである、請求項17に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項19】
前記3’LTRが、逆配向のヒトアンキリン1エレメントの挿入を含む、請求項17または18に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項20】
前記3’LTRが配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項17乃至19のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項21】
前記3’LTRが配列番号13のポリヌクレオチド配列を含む、請求項20に記載のレンチウイルスベクター。
【請求項22】
請求項8乃至21のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクターを含むビリオン。
【請求項23】
薬学的に許容される担体、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド、請求項8乃至21のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター、または請求項22に記載のビリオンを含む医薬組成物。
【請求項24】
嚢胞性線維症を処置する方法であって、治療有効量の請求項1乃至7のいずれか1項に記載の単離ポリヌクレオチド、請求項8乃至21のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター、請求項22に記載のビリオン、または請求項23に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法。
【請求項25】
1つ以上の追加の治療剤を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記1つ以上の追加の治療剤が、抗生物質、粘液希釈剤、CFTR調節剤、粘液溶解剤、通常の生理食塩水、高張性生理食塩水、またはそれらの組み合わせを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記投与する工程が、吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、静脈内、皮下、または筋肉内によるものである、請求項24乃至26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記投与する工程が、吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、および/または気管支内によるものである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
嚢胞性線維症の処置に使用するための、請求項1乃至7のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項8乃至21のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター、請求項22に記載のビリオン、または請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項30】
1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与される、請求項29に記載の使用のためのポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物。
【請求項31】
前記1つ以上の追加の治療剤が、抗生物質、粘液希釈剤、CFTR調節剤、粘液溶解剤、通常の生理食塩水、高張性食塩水、またはそれらの組み合わせを含む、請求項30に記載の使用のためのポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物。
【請求項32】
吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、静脈内、皮下、または筋肉内に投与されるものである、請求項30または31に記載の使用のためのポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または薬学的組成物。
【請求項33】
吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、および/または気管支内に投与されるものである、請求項32に記載の使用のためのポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または薬学的組成物。
【請求項34】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の単離されたポリヌクレオチド、請求項8乃至21のいずれか1項に記載のレンチウイルスベクター、請求項22に記載のビリオン、もしくは請求項23に記載の医薬組成物を含む噴霧器スプレーヤまたはネブライザー。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
嚢胞性線維症(CF)は致死的な常染色体劣性遺伝疾患であり、米国だけで少なくとも3万人、世界中で少なくとも7万人が罹患する。CF患者の平均生存年齢は約40歳である。CFは、上皮細胞膜を横切って塩化物イオンと重炭酸イオンを伝導するチャネルである嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)をコードする遺伝子の突然変異によって引き起こされる。CFTR機能の障害は、気道の炎症と進行性気管支拡張症を引き起こす。CFには単一遺伝子性の病因があり、また患者集団には様々なCFTR突然変異があるので、遺伝子治療がCFの普遍的治癒をもたらす可能性がある。
【0002】
最近の研究では、CFTR遺伝子機能の部分的な修正のみが達成されたとしても、遺伝子治療はCF患者に大きな利益をもたらす可能性があることが示唆されている。しかしながら、CFの処理のための改良された組成物および方法に対する当該技術分野における必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、とりわけ、例えば、CFの処置における、単離されたポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、および医薬組成物、ならびにそれらを製造および使用する方法を提供する。
【0004】
一態様では、本開示は、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0005】
別の態様では、本開示は、配列番号2のヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
別の態様において、本開示は、配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。一部の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド配列と少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む。
【0006】
別の態様では、本開示は、コドンを最適化したヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたプロモータを含むレンチウイルス導入ベクターを提供し、嚢胞性線維症ヒト気道上皮細胞におけるコドンを最適化したヒトCFTR遺伝子の発現は、野生型ヒトCFTRと比較して、経上皮Cl-輸送の増大をもたらす。一部の実施形態では、レンチウイルス導入ベクターは、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれか1つに作動可能に連結されたプロモータを含む。
【0007】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれか1つに作動可能に連結されたプロモータを含むレンチウイルス導入ベクターを提供する。一部の実施形態では、プロモータは、ヒトホスホグリセリン酸キナーゼプロモータ(PGK)である。一部の実施形態では、PGKプロモータは、配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性)を有する。一部の実施形態では、プロモータはヒト伸長因子1-α(EF1α)プロモータである。一部の実施形態では、EF1αプロモータは、配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0008】
別の態様において、本開示は、ヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたEF1αプロモータを含むレンチウイルス導入ベクターを提供する。一部の実施形態では、EF1αプロモータは、配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有する。
【0009】
別の態様において、本開示は、配列番号2のヌクレオチド配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含むレンチウイルス導入ベクターを提供する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2のヌクレオチド配列を含む。
【0010】
前述の態様のいずれかの一部の実施形態では、レンチウイルスベクターのレンチウイルス成分は、HIV-1に由来する。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、さらに、5’の長い末端反復(LTR)、3’LTR、パッケージングシグナル、Rev応答エレメント(RRE)、セントラルポリプリントラクト(cPPT)配列、および/または中央終結配列(CTS)のうちの1つ以上を含む。
【0011】
前述の態様のいずれかの一部の実施形態では、3’LTRは、自己不活性化3’LTRである。一部の実施形態では、3’LTRは、逆配向のヒトアンキリン1エレメントの挿入を含む。一部の実施形態では、3’LTRは、配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、3’LTRは、配列番号13のポリヌクレオチド配列を含む。
【0012】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載されるレンチウイルスベクターのいずれか1つを含むビリオンを提供する。
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される薬学的に許容される担体、および単離されたポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、またはビリオンのいずれか1つを含む医薬組成物を提供する。
【0013】
別の態様では、本開示は、嚢胞性線維症の1つ以上の症状を処置または予防または抑制する方法を提供し、それを必要とする対象に、本明細書に記載される単離されたポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物のいずれか1つの治療有効量を投与することを含む。一部の実施形態では、本方法は、1つ以上の追加の治療剤を対象に投与することをさらに含む。一部の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤は、抗生物質、粘液希釈剤、CFTR調節剤、粘液溶解剤、通常の生理食塩水、高張性生理食塩水、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、投与は、吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、静脈内、皮下、または筋肉内である。一部の実施形態では、投与は、吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、および/または気管支内によるものである。
【0014】
別の態様では、本開示は、嚢胞性線維症の1つ以上の症状を処置し、または予防し、または抑制するのに使用するための、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物のいずれか1つを提供する。一部の実施形態では、嚢胞性線維症を処置するために使用するための、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物のいずれか1つを、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与する。一部の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤は、抗生物質、粘液希釈剤、CFTR調節剤、粘液溶解剤、通常の生理食塩水、高張性生理食塩水、またはそれらの組み合わせを含む。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物のいずれか1つは、吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、静脈内、皮下にまたは筋肉内に投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物のいずれか1つは、吸入、噴霧、霧化もしくは噴霧器、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、および/または気管支内に投与される。
【0015】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される、単離されたポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、もしくは医薬組成物のいずれか1つを含む噴霧器スプレーヤまたはネブライザーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】2つの膜貫通ドメイン(TMD1およびTMD2)、2つのヌクレオチド結合ドメイン(NBD1およびNBD2)、および調節ドメイン(RD)を含む、CFTRの5つの異なるタンパク質ドメインを示す概略図。
【
図1B】coCFTR1の膜貫通ドメイン1(TMD1)のコドン最適化を示すグラフ。ヌクレオチド結合ドメイン1および2(NBD1/2)、調節ドメイン(RD)、および膜貫通ドメイン2(TMD2)を含む残りのドメインは、野生型(WT)配列を保持した。
図1Bはまた、coCFTR2(配列番号1)およびcoCFTR3(配列番号2)についてCFTRドメインによるコドンの使用を示す。
【
図1C】WTCFTR、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1)、およびcoCFTR3(配列番号2)中のC、G、A、およびTであるヌクレオチドのパーセンテージを示すグラフ。
【
図1D】TMD1、NBD1、RD、NBD2およびTMD2ドメインにおけるWTCFTR、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1)、およびcoCFTR3(配列番号2)のGC
3含有率を示すグラフ。
【
図2A】WT CFTR、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1)、coCFTR3(配列番号2)、またはGFP対照を発現するpcDNA3.1(+)プラスミドを含むHEK293細胞のローディング対照として使用された異なるグリコシル化形態、バンドBおよびC、ならびにビンキュリンのウエスタンブロット分析の結果(左パネル)、ならびに各CFTRのバンドC、バンドB、およびC/B比の濃度測定分析(右パネル)。濃度測定分析は、WT CFTRと比較して、coCFTR1、coCFTR2、およびcoCFTR3によるCFTRバンドCの有意な増加を示さず、CFTRバンドBの有意な増加(
*p≦0.007)を示し、ならびにC/B比の有意な減少(
**p≦0.02)を示した。
【
図2B】すべてのプラスミドに存在するポリアデニル化配列の一部を標的とするプライマーを用いて行われたCFTR mRNAのqRT-PCR分析の結果を示すグラフ。
【
図2C】野生型WTCFTR、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1)、coCFTR3(配列番号2)、またはGFP対照を発現するpcDNA3.1(+)プラスミドでトランスフェクトされたFisher Rat Thyroid(FRT)細胞において、cAMPアゴニストであるホルスコリンおよび3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)を用いたCFTRチャネルの活性化に先立って、ナトリウムチャネルおよび非CFTRアニオンチャネルをそれぞれアミロライドおよびDIDSの逐次添加により阻害した場合に測定された経上皮電流の代表的なトレーシングを示す図。CFTR特異的電流をCFTR阻害剤GlyHの添加により検証した。
【
図2D】タンパク質機能を分析するために、WT CFTR、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1)、coCFTR3(配列番号2)またはGFPを発現するpcDNA3.1(+)プラスミドでトランスフェクトされたFisher Rat Thyroid(FRT)細胞について、cAMPアゴニストであるホルスコリンおよびIBMX(F&I)およびGlyHに応答して、経上皮的Cl
-輸送について計算された電流(ΔI
T)の変化を示すグラフ。
***p<0.0001の場合、結果は統計学的に有意であると考えられた。平均値±SEを示す。
【
図2E】WT CFTRまたはcoCFTR3(配列番号2)でトランスフェクトされたHEK293細胞において行われたパッチクランプ研究からの代表的なトレーシング、およびPKA触媒サブユニット(22nM)およびATP(1mM)が全体にわたって存在し、保持電圧が-70mVであったcoCFTR3(配列番号2)についてのチャネル開放確率、バースト持続時間、およびバースト間隔のグラフ。
【
図3A】気液界面条件下での4週間の分化後にフローサイトメトリーにより定量化した場合、単離され、PGKプロモータおよび野生型CFTR導入遺伝子、EF1αプロモータおよび野生型CFTR導入遺伝子、またはPGKプロモータおよびGFP導入遺伝子を含むHIVベースのレンチウイルスベクターを用いて、MOI0.1、0.25、0.5、または1で形質導入された3つのヒトCFドナー由来の気道基底前駆細胞の推定形質導入効率を示すグラフ。形質導入効率はGFP
+細胞のパーセントにより測定した。
【
図3B】cAMPアゴニストであるホルスコリンおよびIBMXによるCFTRチャネルの活性化に先立って、ナトリウムチャネルおよび非CFTRアニオンチャネルがそれぞれアミロライドおよび4,4’-ジイソチオシアノ-2,2’-スチルベンジスルホン酸(DIDS)で阻害された場合に測定された電流の代表的なトレーシング。
【
図3C】PGKプロモータおよび野生型CFTR導入遺伝子(各MOIの左側)またはPGKプロモータおよびcoCFTR3(配列番号2)導入遺伝子(各MOIの右側)を含むHIVベースのレンチウイルスベクターのいずれかで形質導入された細胞について、経上皮的Cl
-輸送について計算されたF&I(
図3C)に対する応答における経上皮的CFTR依存性クロライド短絡電流(ΔIsc)の変化を示す一連のグラフ。測定は1条件あたり2~3個の上皮上で行い、各ドナーはグラフ上の固有の記号で表される。HIV-PGK-coCFTR3は、HIV-PGK-WTCFTRと比較して、MOI0.1(
*p<0.04)で有意に高いクロライド電流とMOI0.5および1(
**p<0.02)でより高い重炭酸塩電流をもたらした。
*p<0.04の場合、結果は統計学的に有意であると考えられた。平均値±SEを示す。
【
図3D】PGKプロモータおよび野生型CFTR導入遺伝子(各MOIの左側)またはPGKプロモータおよびcoCFTR3(配列番号2)導入遺伝子(各MOIの右側)を含むHIVベースのレンチウイルスベクターのいずれかで形質導入された細胞について、経上皮的Cl
-輸送について計算されたGlyH(
図3D)に対する応答における経上皮的CFTR依存性クロライド短絡電流(ΔIsc)の変化を示す一連のグラフ。測定は1条件あたり2~3個の上皮上で行い、各ドナーはグラフ上の固有の記号で表される。HIV-PGK-coCFTR3は、HIV-PGK-WTCFTRと比較して、MOI0.1(
*p<0.04)で有意に高いクロライド電流とMOI0.5および1(
**p<0.02)でより高い重炭酸塩電流をもたらした。
*p<0.04の場合、結果は統計学的に有意であると考えられた。平均値±SEを示す。
【
図4A】0.04、0.4または4のMOIでレンチウイルスベクターHIV-PGK-GFPまたはHIV-EF1α-GFPで形質導入された5つのヒト非CFドナー由来の基底前駆細胞における推定形質導入効率(左パネル)およびGFP発現(右パネル)を示す一連のグラフ。GFP
+細胞および平均蛍光強度(MFI)を、形質導入後3~5日にフローサイトメトリーにより定量した。いずれの用量でも、いずれかのベクターによって形質導入されたGFP
+細胞数に有意差は認められなかった。MOI4でHIV-PGK-GFPと比較して、HIV-EF1α-GFPで形質導入された細胞でMFIの有意な増加が観察された(
*p<0.0006)。同様に、4つのヒトCFドナー由来の基底細胞を、レンチウイルスベクターHIV-PGK-WTCFTR、HIV-EF1α-WTCFTRまたはHIV-PGK-GFPで形質導入した。
【
図4B】分化の4週間後の
図4Aに記載された実験からのGFP+細胞およびMFIのパーセンテージを示す一連のグラフ。いずれの用量でも、いずれのベクターによっても形質導入されたGFP+細胞数に有意差は認められなかった。両方の時点で、MOI4でHIV-EF1α-GFPを形質導入した細胞では、HIV-PGK-GFPと比較してMFIの有意な増加が観察された(
*p<0.0006、
**p<0.002)。
【
図4C】気液界面条件下での4週間の分化後の分化上皮におけるGFP発現を示すグラフ;残りの形質導入細胞数は、フローサイトメトリーによるGFP
+の定量化を介して推定された。形質導入効率は、GFP
+細胞のパーセントを決定することによって測定した。
【
図4D】上皮ナトリウムチャネル(ENaC)および非CFTRクロライドチャネルが、それぞれ、cAMPアゴニストF&IによるCFTRチャネルの活性化前に、アミロライドおよび4,4’-ジイソチオシアノ-2,2’-スチルベンジスルホン酸(DIDS)を順次添加することにより阻害された、Ussingチャンバーで測定された経上皮Cl
-電流の代表的なトレーシングを示す図。CFTR特異的電流は、CFTR阻害剤GlyH-101を添加することにより検証された。
【
図4E】計算されたF&IおよびGlyHに応答する短絡電流変化(ΔIsc)を示し、いずれの用量においても観察された2つのベクター間に有意差を示さなかった図。グラフ上の点は、1~3個の上皮の平均を表している。各ドナーは、固有の記号で表され、平均±SEが示される。
【
図5A】導入遺伝子発現を駆動するプロモータヒトホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、自己不活性化(SIN)3’LTR内に存在する逆配向のヒトアンキリン1(Ank)インスレータエレメント、および野生型(WT)CFTR、コドン最適化CFTRバージョン3(coCFTR3)、またはGFPの導入遺伝子を含む、使用される3つのバージョンのベクターの概略図。示されるベクターは、スケール化されていない。
【
図5B】導入遺伝子発現を駆動するためのプロモータヒト伸長因子1-α(EF1α)、SIN 3’LTR内に存在する逆配向のAnkインスレータエレメント、およびWT CFTR、coCFTR3、またはGFPの導入遺伝子を含む、使用される2つのバージョンのベクターの概略図。示されるベクターは、スケール化されていない。
【
図6A】コドンを最適化したCFTR配列が、FRT細胞におけるタンパク質生成を増加させ、経上皮的クロライド電流における固有な変化を生成することを示す一連のグラフ。FRT細胞を、WT CFTR、coCFTR1、coCFTR2、coCFTR3またはGFP対照を発現するpcDNA3.1(+)プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に、細胞溶解物を回収し、CFTRをウエスタンブロットにより定量した。WT CFTRを可視化するために、通常の露光(上)およびCFTRチャネル過剰露光を伴う(下)、同じ代表的なブロットを示す。同様に、FRT細胞を同じプラスミドでエレクトロポレーションし、半透膜上に播種し、気液界面培養条件下で上皮層を形成させた。
【
図6B】コドンを最適化したCFTR配列が、FRT細胞におけるタンパク質生成を増加させ、経上皮的クロライド電流における固有な変化を生成することを示す一連のグラフ。FRT細胞を、WT CFTR、coCFTR1、coCFTR2、coCFTR3またはGFP対照を発現するpcDNA3.1(+)プラスミドでトランスフェクトした。上皮をUssingチャンバーに装着し、頂端低Cl-勾配、F&IによるCFTR活性化、およびGlyHによるCFTR阻害に応答した経上皮Cl-電流(DIT)の変化を計算した。
【
図6C】コドンを最適化したCFTR配列が、FRT細胞におけるタンパク質生成を増加させ、経上皮的クロライド電流における固有な変化を生成することを示す一連のグラフ。FRT細胞を、WT CFTR、coCFTR1、coCFTR2、coCFTR3またはGFP対照を発現するpcDNA3.1(+)プラスミドでトランスフェクトした。ベースライン経上皮電気抵抗(TEER)を定量した。いずれの処置群においても、TERに有意差は観察されなかった。平均値±SEを示す。
【
図7A】レンチウイルスベクターからの外因性CFTR発現によって分化上皮の形成が影響されないことを示す一連のグラフ。半透膜上に播種する際に、MOI0.1、0.25、0.5または1でCF基底細胞をHIV-PGK-WT CFTRまたはHIV-PGK-coCFTR3で形質導入した。気液界面培養条件下で4週間分化後、多列線毛円柱上皮が観察された。スケールバーは20μmを表す。
【
図7B】レンチウイルスベクターからの外因性CFTR発現によって分化上皮の形成が影響されないことを示す一連のグラフ。半透膜上に播種する際に、MOI0.1、0.25、0.5または1でCF基底細胞をHIV-PGK-WT CFTRまたはHIV-PGK-coCFTR3で形質導入した。Ussingチャンバーで検討した上皮のベースライン経上皮電気抵抗(TEER)を定量化し、いずれの投与群においても有意差は観察されなかった。平均値±SEを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
本明細書で使用される場合、「5’LTR」とは、導入遺伝子に対して5’の関係に位置する長い末端反復(LTR)配列を指す。5’LTRおよび3’LTRは、レンチウイルス輸送ベクター配列の宿主ゲノムへの組込みを促進する。典型的には、LTR間の配列およびLTRを含む配列は、ウイルス形質導入の際に宿主ゲノムに組み込まれる。野生型HIV-1ウイルスの5’LTRは、5’から3’にU3領域、R領域、およびU5領域を含む。野生型のHIV-1 5’LTRは、別の導入遺伝子プロモータが提供されなければ、比較的弱いTat依存性プロモータとして作用することができる。5’LTRはU3領域を欠いている可能性がある(例えば、U3領域が欠失されている可能性がある)。例えば、異種プロモータ(例えば、CMVプロモータまたはRSVプロモータなどのウイルスプロモータ)に融合されたキメラ5’LTRを使用することができる。異種プロモータは、5’LTRのU3領域を置換し得る。
【0018】
用語「約」は、本明細書において、列挙値の±10%である値を意味するために使用される。
本明細書で使用される場合、「投与する」とは、本明細書に記載される組成物(例えば、ポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、またはその医薬組成物)のある投薬量を対象に与える方法を意味する。本明細書に記載の方法において利用される組成物は、例えば、吸入、噴霧、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、または筋肉内)、経口、鼻、直腸、局所、または頬などの任意の適切な経路によって投与され得る。本明細書に記載される組成物は、噴霧器スプレーヤ(例えば、MADgic(登録商標)喉頭気管粘膜噴霧装置)またはネブライザーを用いて、気管内および/または気管支内でエアロゾル化粒子中に投与され得る。本明細書に記載される方法において利用される組成物はまた、局所的または全身的に投与され得る。1実施形態では、投与方法は、種々の因子(例えば、投与される組成物の成分、および処置される状態の重症度)に依存して変化し得る。
【0019】
用語「コドン最適化」とは、コードされたアミノ酸の配列の変化をもたらさずに、個々の核酸(例えば、野生型または他の参照配列に対して)を変化させるために核酸配列を改変することを指す。得られた核酸配列は、「コドン最適化」配列と称され得る。この方法は、発現または安定性を増強するために、本明細書に記載される任意の配列上で行うことができる。コドン最適化は、任意の適切なアプローチ、例えば、米国特許第7,561,972号、同第7,561,973号、および同第7,888,112号に記載される任意のアプローチを用いて行うことができ、各々は、その全体を本願明細書に援用する。特定の宿主細胞における発現のための特定の配列を最適化するコドンのためのコンピュータアルゴリズムもまた、Gene Forge(Aptagen;Jacobus,PA)、JCat(jcat.de)、またはBenchling(Broad Institute)などのものが利用可能である。コドン最適化のための別のアルゴリズムは、IDT、Genscript、GeneArt、およびTwist Bioscienceから入手可能である。
【0020】
「制御エレメント」または「制御配列」は、ポリヌクレオチドの複製(replication)、複製(duplication)、転写、スプライシング、翻訳、または分解を含む、ポリヌクレオチドの機能的調節に寄与する分子の相互作用に関与するヌクレオチド配列である。制御エレメントによる調節は、プロセスの頻度、速度、または特異性に影響を与えることができ、本質的に促進的または抑制的であり得る。当技術分野で知られている制御エレメントには、例えば、プロモータおよびエンハンサーなどの転写調節配列が含まれる。プロモータは、特定の条件下でRNAポリメラーゼを結合させ、通常はプロモータの下流(3’方向)に位置するコード領域の転写を開始することが可能なDNA領域である。
【0021】
「検出可能なマーカ遺伝子」は、遺伝子を担持する細胞を特異的に検出することを可能にする遺伝子である(例えば、マーカ遺伝子を保有しない細胞と区別される)。多種多様なこのようなマーカ遺伝子が当該技術分野において公知である(例えば、lacZ、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、および蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、mCherry、dsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、または当該技術分野において公知である任意の他の蛍光タンパク質))。
【0022】
「発現ベクター」は、目的とするポリペプチドまたはRNAをコードし、目的とする標的細胞におけるタンパク質またはRNAの発現に影響を与えるために使用される領域を含むベクターである。発現ベクターはまた、標的細胞における生成物の発現を促進するために、コード領域に作動可能に連結された制御エレメントを有する。発現のために作動可能に連結されている制御エレメントと遺伝子、または複数の遺伝子の組み合わせは、しばしば「発現カセット」と呼ばれ、その多くは、当該技術分野において公知であり、入手可能であるか、または当該技術分野において入手可能な成分から容易に構築することができる。
【0023】
「遺伝子」とは、転写および翻訳後に特定のタンパク質をコードすることができる少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含むポリヌクレオチドを指す。
用語「遺伝子送達」および「遺伝子導入」とは、標的化、結合、取り込み、輸送、局在化、レプリコン統合、および/または遺伝子の発現を包含し得る、細胞への外因性ポリヌクレオチドの導入を指す。
【0024】
用語「遺伝子発現」または「発現」とは、遺伝子の転写、翻訳、および/または翻訳後修飾のプロセスを指す。
「異種」とは、比較される実体の残りの部分とは遺伝子型的に異なる実体に由来することを指す。例えば、遺伝子操作技術によって異なる細胞型に導入されたポリヌクレオチドは、異種ポリヌクレオチドであり、発現される場合、異種ポリペプチドをコードすることができる。
【0025】
「宿主細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、「パッケージング細胞株」、および他のこのような用語は、真核細胞、例えばヒト細胞などの哺乳動物細胞を示し、本開示において有用であり、組換えベクター、ウイルス、または他の導入ポリヌクレオチドのレシピエントとして使用され、形質導入された元の細胞の子孫を含む。単一細胞の子孫は、(形態またはゲノムコンポーネントにおいて)必ずしも元の親細胞と完全に同一であるとは限らないことが理解される。
【0026】
「単離された」プラスミド、ウイルス、または他の物質は、ある物質または類似の物質が自然に発生するか、またはその物質が最初に調製される際に共に存在し得る他の成分の少なくともいくつかを欠いた、物質の調製物を指す。したがって、例えば、単離された物質は、精製技術を使用して、それを供給源混合物から濃縮することにより調製することができる。濃縮度は、溶液の体積あたりの重量などの絶対基準で測定することができるか、または、供給源混合物に存在する第2の潜在的に干渉する物質との関係で測定することができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「レンチウイルス」とは、典型的にはゆっくりと進行する疾患を引き起こすウイルスのレトロウイルス科の属を指す。このグループに含まれるウイルスには、ヒト後天性免疫不全症候群(AIDS)の病原因子であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV 1型およびHIV 2型を含む);ヒツジに脳炎(visna)または肺炎(maedi)を引き起こすvisna-maedi、ヤギに免疫不全、関節炎および脳症を引き起こすヤギ関節炎脳炎ウイルス:ウマに自己免疫性溶血性貧血および脳症を引き起こすウマ伝染性貧血ウイルス;ネコに免疫不全を引き起こすネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシのリンパ節腫脹、リンパ球増加症、およびおそらく中枢神経系感染症を引き起こすウシ免疫不全ウイルス(BIV);ならびにヒト以下の霊長類の免疫不全および脳症を引き起こすサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。これらのウイルスによって引き起こされる疾患は、典型的には、長期の潜伏期間および長期の経過によって特徴付けられる。通常、ウイルスは、単球およびマクロファージに潜伏感染し、そこから他の細胞に広がる。HIV、FIV、およびSIVはまたTリンパ球(すなわちT細胞)に容易に感染する。
【0028】
用語「レンチウイルスベクター」とは、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来する1つ以上の核酸配列を含むベクターを指す。レンチウイルスベクターは、レンチウイルス(例えば、HIV-1)由来の1つ以上のタンパク質の非コード配列を含み得る。
【0029】
「レンチウイルス導入ベクター」は、細胞に導入される異種核酸配列(例えば、治療用導入遺伝子などの導入遺伝子、例えば、ヒトCFTR遺伝子などのCFTR遺伝子(これはコドン最適化CFTR遺伝子であってもよい))、ならびに1つ以上のレンチウイルス遺伝子、またはその一部を含むレンチウイルスベクターである。この用語は、限定されないが、第2世代レンチウイルス導入ベクター(導入遺伝子発現がTat依存的に5’LTRによって駆動される)および第3世代レンチウイルス導入ベクター(導入遺伝子発現が導入プラスミド上の異種プロモータに融合されたキメラ5’LTRによって駆動される)、ならびにこのようなレンチウイルス導入ベクターの任意の修飾バージョンを含む、任意のタイプのレンチウイルス導入ベクターを包含する。
【0030】
「レンチウイルスパッケージングベクター」は、レンチウイルスタンパク質Gag、Pol、もしくはRev、またはその一部をコードする1つ以上の遺伝子を含むレンチウイルスベクターである。例えば、第2世代レンチウイルスパッケージングシステムにおいて、レンチウイルスパッケージングベクターは、単一プラスミド上のレンチウイルスタンパク質Gag、Pol、Rev、およびTat、またはその一部をコードする遺伝子を含む。第3世代レンチウイルスパッケージングシステムでは、GagおよびPolレンチウイルスタンパク質をコードする遺伝子、またはそれらの一部が単一プラスミド上に含まれ、一方、レンチウイルスタンパク質Revまたはその一部をコードする遺伝子が別々のプラスミド上に含まれ、レンチウイルスタンパク質Tatをコードする遺伝子が除かれる。宿主細胞を導入ベクターおよび1つ以上のパッケージングベクターでトランスフェクションすることは、ウイルスを生成させるために行うことができ、ウイルスは、標的細胞に感染するために使用することができ、したがって、1つ以上の導入遺伝子の発現を導く。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能な連結」または「作動可能に連結される」とは、それらが意図された様式で機能することを可能にするように記載された成分の物理的または機能的な並置を指す。より具体的には、例えば、作動可能に連結された2つのDNA配列は、2つのDNAが、少なくとも1つのDNA配列が他の配列に対して生理学的効果を発揮することができるような関係で配置(シスまたはトランス)されることを意味する。例えば、エンハンサーおよび/またはプロモータは、導入遺伝子(例えば、CFTR遺伝子などの治療用導入遺伝子、またはそのコドン最適化バージョン)と作動可能に連結することができる。
【0032】
本明細書で使用される「パッケージング」とは、ウイルスベクター、特にレンチウイルスベクターのアセンブリーおよびカプシド化をもたらす一連の細胞内事象を指す。したがって、適切なベクターを適切な条件下でパッケージング細胞株に導入する場合、それをウイルス粒子(本明細書では「ビリオン」とも呼ばれる)にアセンブリーすることができる。ウイルスベクター、特にレンチウイルスベクターのパッケージングに関連する機能は、本明細書および当該技術分野に記載されている。
【0033】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する「配列同一性パーセント(%)」は、最大の配列同一性パーセントを達成するように配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列中の核酸またはアミノ酸と同一である候補配列中の核酸またはアミノ酸のパーセンテージとして定義される。核酸またはアミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的での整列は、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアなどの公衆に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて、当業者の能力内にある種々の方法で達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大整列を達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。例えば、配列比較コンピュータプログラムBLASTを使用して、配列同一性パーセント値を生成することができる。例として、所与の核酸配列またはアミノ酸配列Aの、所与の核酸配列またはアミノ酸配列Bに、それとの、またはそれに対する配列同一性パーセント(あるいは、所与の核酸配列またはアミノ酸配列Bに、それとの、またはそれに対する特定の配列同一性パーセントを有する、所与の核酸配列またはアミノ酸配列Aとして表現することができる。)は以下のように計算される:
100×(X/Y比)
Xは、そのプログラムのAおよびBの整列における配列アラインメントプログラム(例えば、BLAST)によって同一マッチとしてスコア付けされたヌクレオチドまたはアミノ酸の数であり、Yは、Bにおける核酸の総数である。核酸配列またはアミノ酸配列Aの長さが、核酸配列またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AとBの配列同一性パーセントは、BとAの配列同一性パーセントと等しくないことが理解される。
【0034】
「ポリヌクレオチド」および「核酸」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体を含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を互換的に指す。ポリヌクレオチドは、メチル化またはキャップされたヌクレオチドなどの修飾ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログを含んでもよく、非ヌクレオチド成分によって中断(interrupt)され得る。存在する場合、ヌクレオチド構造への修飾は、ポリマーのアセンブリーの前または後に付与され得る。本明細書で使用されるポリヌクレオチドという用語は、二本鎖分子および一本鎖分子を互換的に指す。別段の指定または要求がない限り、二本鎖ポリヌクレオチドである本明細書に記載の本開示の任意の実施形態は、二本鎖形態、および、二本鎖形態を構成することが知られているまたは予測される2つの相補的な一本鎖形態のそれぞれを包含する。
【0035】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。この用語には、修飾されたアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、脂質化によって、または標識成分とコンジュゲーションされたものも含まれる。「CFTR」などのポリペプチドは、遺伝子治療およびそのための組成物の文脈で論じられる場合、それぞれのインタクトなポリペプチド、またはインタクトなタンパク質の所望の生化学的機能を保持するその任意のフラグメントまたは遺伝子操作された誘導体を指す。同様に、CFTR、および遺伝子治療で使用するための他のそのような遺伝子(通常、レシピエント細胞に送達される「導入遺伝子」と呼ばれる)への言及は、インタクトなポリペプチドあるいは所望の生化学的機能を有する任意のフラグメントまたは遺伝子操作された誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0036】
「医薬組成物」とは、ウイルスベクター(例えば、組換えレンチウイルスベクター)に組み込まれたか、またはウイルスベクターから独立した(例えば、リポソーム、微粒子、またはナノ粒子に組み込まれた)、治療的にまたは生物学的に活性な物質(例えば、導入遺伝子(例えば、CFTR遺伝子、例えば、コドン最適化CFTR遺伝子)を含むポリヌクレオチド)を含有する、対象への投与に適した任意の組成物を意味する。これらの製剤のいずれも、当該技術分野において周知であり、容認された方法によって調製することができる。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第21版)、編集A.R.Gennaro、Lippincott Williams & Wilkins、2005、およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、編集J.Swarbrick、Informa Healthcare、2006を参照されたい。これらの各々は本願明細書に援用する。
【0037】
「薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバント」とは、それが投与される医薬組成物の治療特性を保持しながら、対象に生理学的に受け入れられる希釈剤、賦形剤、担体、またはアジュバントを意味する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「R領域」とは、ウイルスRNAゲノム(例えば、HIV-1ゲノム)からの反復配列を含む、U3とU5領域の間に位置する長い末端反復(LTR)内の領域を指す。R領域の長さはレトロウイルスによって大きく異なり、16ヌクレオチドから228ヌクレオチドに及ぶ。レンチウイルスのR領域は、典型的には、長さが約100~200ヌクレオチドである。野生型レンチウイルスでは、5’LTR上のR領域の5’末端はプロウイルスの転写開始部位であり、これは3’LTR上のR領域の3’末端で終結し、結果として、R領域は野生型レンチウイルスの状況下での転写に必要とされ得る。第2世代レンチウイルスベクターは、Tatの結合部位として作用するトランス活性化応答エレメント(TAR)を含む5’LTR R領域を含み得る。
【0039】
ポリヌクレオチドに適用される「組換え体」とは、ポリヌクレオチドが、クローニング、制限、および/または連結工程、および/または天然に見出されるポリヌクレオチドとは異なる構築物(例えば、遺伝子合成)をもたらす他の手順の種々の組み合わせの生成物であることを意味する。組換えウイルスは、組換えポリヌクレオチドを含むウイルス粒子である。用語は、それぞれ、元のポリヌクレオチド構築物の複製および元のウイルス構築物の子孫を含む。
【0040】
「組換えレンチウイルス」または「組換えレンチウイルスベクター」とは、レンチウイルス起源ではないポリヌクレオチド配列(例えば、1つ以上のエンハンサーおよび/またはプロモータに作動可能に連結され得る導入遺伝子を含むポリヌクレオチド)を含む組換え的に生成されるレンチウイルスまたはレンチウイルス粒子を意味し、このようなベクターは、インビボ、エクスビボ、またはインビトロのいずれかで細胞に送達され得る。組換えレンチウイルスは、あらゆるレンチウイルス血清型由来の天然カプシドタンパク質を使用することができる。一部の実施形態では、レンチウイルスはシュードタイプ化される。
【0041】
「参照」とは、比較目的のために使用される任意の試料、標準、またはレベルを意味する。「正常参照試料」または「野生型参照試料」は、例えば、疾患(例えば、嚢胞性線維症)を有しない対象由来の試料であり得る。「陽性参照」試料、標準、または値は、疾患(例えば、嚢胞性線維症)を有することが知られている対象に由来する試料、標準、値、または数であり、以下の基準:年齢、体重、病期、および全体的な健康状態のうちの少なくとも1つによって対象の試料にマッチさせることができる。「参照配列」は、比較目的のために使用される任意の配列、例えば野生型配列(例えば、野生型CFTR配列)であり得る。
【0042】
「選択マーカ遺伝子」は、対応する選択剤の存在下で、遺伝子を担持する細胞をそれについてまたはそれに対して特異的に選択することを可能にする遺伝子である。例示として、抗生物質耐性遺伝子は、対応する抗生物質の存在下で宿主細胞を積極的に選択することを可能にする陽性選択マーカ遺伝子として用いることができる。種々の陽性および陰性選択マーカが当該技術分野において公知である。
【0043】
「対象」および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の哺乳類(例えば、ヒト、霊長類、ネコ、イヌ、フェレット、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、ラット、またはマウス)を指す。1実施形態では、対象はヒトである。
【0044】
「ターミネーター」は、リードスルー転写を減少させまたは防止する(すなわち、ターミネーターの一方の側で生じる転写がターミネーターの他方の側まで継続することを減少させまたは防止する)傾向があるポリヌクレオチド配列を指す。転写が妨害される程度は、典型的には、ターミネーター配列の塩基配列および/または長さに依存する。特に、多くの分子生物学的システムでよく知られているように、一般に「転写終結配列」と呼ばれる特定のDNA配列は、おそらくRNAポリメラーゼ分子を停止させおよび/または転写されているDNAから離脱させることによって、RNAポリメラーゼによるリードスルー転写を妨害する傾向がある特定の配列である。そのような配列特異的ターミネーターの典型的な例には、ポリアデニル化(「ポリA」)配列、例えば、SV40ポリAが含まれる。そのような配列特異的ターミネーターに加えて、またはそれに代えて、プロモータとコード領域との間に比較的長いDNA配列を挿入すると、概ね介在配列の長さに比例して、コード領域の転写を妨害する傾向もある。この効果はおそらく、RNAポリメラーゼ分子が転写中のDNAから切り離されるいくらかの傾向が常にあり、コード領域に到達する前にトラバースされる配列の長さが長いほど、コード領域の転写が完了する前に、場合によっては転写の開始前に切り離される可能性が高くなるためと考えられる。したがって、ターミネーターは、一方向のみ(「一方向」ターミネーター)または両方向(「双方向」ターミネーター)からの転写を防止することができ、配列特異的終結配列または配列非特異的ターミネーター、あるいはそれらの両方から構成され得る。様々なそのようなターミネーター配列が当技術分野で知られている。本開示の文脈内でのそのような配列の例示的な使用が、以下に提供される。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「U3領域」とは、長い末端反復(LTR)配列の5’領域を指し、コアエンハンサー、ウイルス遺伝子発現に影響し得る長い調節領域、およびR領域の開始から約25ヌクレオチドの位置にTATAボックスを有する基本プロモータを含む。U3領域に見られるこれらの成分は、ウイルス複製に不可欠である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「U5領域」とは、U3領域およびR領域に続く、長い末端反復(LTR)配列の3’領域を指し;それは、ウイルスRNAゲノム(例えば、HIV-1)の5’末端に由来する。U5領域は、U5-IRステム-ループ構造を含み、これは、マイナス鎖の開始を制御するためにtRNA複製プライマーと相互作用する。さらに、U5領域は転写終結において役割を果たす。
【0047】
本明細書で使用される場合、「自己不活化3’LTR」とは、LTRプロモータ活性を欠失する3’LTRを指し、結果として、自己不活化LTRを含むウイルスプラスミドは複製を受けることができない。自己不活性化3’LTRは、3’LTRのU3領域を欠失させてTATAボックスを除去することによって生成させることができ、したがって転写の開始が妨げられる。一部の実施形態では、3’LTRは、例えば、逆配向のヒトアンキリン1エレメントの挿入を含む。
【0048】
「治療遺伝子」、「予防遺伝子」、「標的ポリヌクレオチド」、「導入遺伝子」、「目的とする遺伝子」などは、一般に、標的細胞に、例えば、本開示のレンチウイルス導入ベクターを用いて導入される、異種遺伝子または複数の遺伝子を指す。典型的には、本開示の文脈において、このような遺伝子は、組換えレンチウイルス導入内に位置し、長い末端反復(LTR)領域に隣接しており、したがって、複製され、レンチウイルス粒子にカプシド化され得る。例示的な導入遺伝子には、限定されないが、所望の生化学的機能を有するコドン最適化嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)、またはその誘導体もしくは断片が含まれる。レシピエント宿主細胞における導入遺伝子の発現を効果的にするために、それ自身または異種プロモータ(例えば、PGKプロモータまたはEF1αプロモータ)のいずれかのプロモータに作動可能に連結させることができる。多数の適切なプロモータが当該技術分野において公知であり、その選択は、構成的発現、誘導性発現、細胞特異的または組織特異的発現などを望むかどうかなど、標的ポリヌクレオチドの所望の発現レベルに依存する。遺伝子産物のコード領域に加えて、導入遺伝子は、プロモータ、エンハンサー、不安定化ドメイン、応答エレメント、レポータエレメント、インスレータエレメント、ポリアデニル化シグナル、および/または他の機能エレメントなどの、発現を促進または増強するための1つ以上のエレメントを含んでもよく、またはそれらに作動可能に連結されてもよい。本開示の実施形態は、任意の公知の適切なプロモータ(例えば、PGKプロモータまたはEF1αプロモータ)、エンハンサー、不安定化ドメイン、応答エレメント、レポータエレメント、インスレータエレメント、ポリアデニル化シグナル、および/または他の機能エレメントを利用することができる。
【0049】
「治療有効量」とは、臨床的に関連する方法で、対象の状態、または障害もしくは疾患の症状、例えば嚢胞性線維症を改善、阻害、または向上するために投与される組成物の量を意味する。対象において何らかの改善が認められれば、処置を達成するのに十分であると考えられる。1実施形態では、処置するのに十分な量は、疾患または障害(例えば、嚢胞性線維症)の発生もしくは1つ以上の症状を低減、阻害、または予防する量であるか、あるいは対象が疾患または障害、例えば、嚢胞性線維症の1つ以上の症状を患っている期間、その重症度または長さを低減する量である(例えば、本明細書に記載の組成物で治療されていない対照対象と比較して、少なくとも約10%、約20%、または約30%、少なくとも約50%、約60%、または約70%、または少なくとも約80%、約90%、約95%、約99%、またはそれ以上)。本明細書に記載される方法(例えば、嚢胞性線維症の処置)を実施するために使用される医薬組成物の有効量は、投与方法、ならびに処置される対象の年齢、体重、および一般的健康に依存して変化する。医師または研究者は、適切な量および投薬レジメンを決定することができる。
【0050】
本明細書で使用される「形質導入」または「形質導入する」とは、ポリヌクレオチド、例えば、細胞内の導入遺伝子の発現を導く宿主細胞への外因性ポリヌクレオチド、例えば、組換えレンチウイルスベクター中の導入遺伝子の導入のための方法を指す用語である。この方法は、一般に、1)細胞表面受容体に結合した後のレンチウイルスベクターのエンドサイトーシス、2)細胞の細胞質中のエンドソームまたは他の細胞内コンパートメントからの脱出、3)ウイルス粒子またはウイルスゲノムの核への輸送、4)ウイルス粒子の脱被覆、および環状中間体を含む発現可能な二本鎖レンチウイルスゲノム形態の生成を含む。発現可能な二本鎖形態のレンチウイルスベクターは、核エピソームとして存続し得るか、または宿主ゲノムに組み込まれ得る。細胞表面受容体に結合した後のレンチウイルスベクターのエンドサイトーシスのいずれかまたは組み合わせの変化、エンドソームまたは他の細胞内コンパートメントから細胞のサイトゾルへの脱出、ウイルス粒子またはウイルスゲノムの核への輸送、またはウイルス粒子の脱被覆、および環状中間体を含む発現可能な二本鎖レンチウイルスゲノム形態の生成は、発現レベルの変化もしくは発現の持続性、または核への輸送の変化、または導入されたポリヌクレオチドを発現する宿主細胞もしくは細胞集団の変化したタイプもしくは相対数をもたらす可能性がある。レンチウイルスベクターを介して導入されたポリヌクレオチドの発現または持続性の変化は、限定されないが、タンパク質発現、例えば、ELISA、フローサイトメトリーおよびウエスタンブロット、ハイブリダイゼーションアッセイ、例えば、ノーザンブロット、サザンブロットおよびゲルシフト移動度アッセイによるDNAおよびRNA生成の測定を含む、当該技術分野において周知である方法によって決定することができる。
【0051】
個体または細胞の「処置」は、処置が開始された時点で個体または細胞の自然経過を変化させる試み、例えば、個体において予防的、治癒的または他の有益な効果を引き出す試みにおける任意の種類の介入である。例えば、個体の処置は、遺伝的または誘発された遺伝的欠損(例えば、嚢胞性線維症)を含む(しかし、これらに限定されない)あらゆる病的状態によって引き起こされる病理学的状態を減少または制限するために行われ得る。処置には、医薬組成物などの組成物の投与、および組成物で処置された適合性細胞の投与が含まれる(ただしこれらに限定されない)。処置は、予防的または治療的に、すなわち、病的事象の開始または病因物質との接触の前または後のいずれかに実施することができる。処置は、病的状態の1つ以上の症状を軽減し得る。例えば、嚢胞性線維症の症状は当技術分野で知られており、例えば、持続性の咳、喘鳴、息切れ、運動不耐性、繰り返される肺感染症、炎症を起こした鼻腔または鼻づまり、悪臭のまたは脂っぽい便、不十分な体重増加および成長、腸の閉塞、便秘、汗の塩分濃度の上昇、膵炎、および肺炎を含む。疾患(嚢胞性線維症など)の1つ以上の症状の改善または欠如を検出することは、処置の成功を示す。
【0052】
「バリアント」とは、天然もしくは参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチドと実質的に相同であるポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。例えば、バリアントポリヌクレオチドは、天然または参照ポリヌクレオチドと実質的に相同であるが、1つもしくは複数の欠失、挿入、および/または置換のために、天然または参照ポリヌクレオチドのものとは異なるポリヌクレオチド配列を有する。別の例では、バリアントポリペプチドは、天然または参照ポリペプチドと実質的に相同であるが、1つもしくは複数の欠失、挿入、および/または置換のために、天然または参照ポリペプチドのものとは異なるアミノ酸配列を有する。ポリヌクレオチド配列をコードするバリアントポリペプチド配列は、活性を保持するバリアントタンパク質またはその断片をコードする、天然または参照ポリヌクレオチド配列と比較した場合に、ヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、または置換を含む配列を包含する。多種多様な突然変異誘発アプローチが当該技術分野において公知であり、当業者によって適用することができる。バリアントポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列は、天然または参照配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上同一であり得る。天然配列とバリアント配列の間の相同性の程度(同一性パーセント)は、例えば、この目的のために一般的に採用される自由に利用可能なコンピュータプログラムを用いて、ワールドワイドウェブ(例えば、BLASTpまたはBLASTn、デフォルト設定)上で2つの配列を比較することによって決定することができる。
【0053】
本明細書で使用される「ベクター」とは、ポリヌクレオチドを含むまたはそれと会合し、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介するために使用され得る高分子または高分子の会合を指す。例示的なベクターには、例えば、プラスミド、ウイルスベクター、リポソーム、および他の遺伝子送達ビヒクルが含まれる。送達されるべきポリヌクレオチドは、遺伝子治療において目的とするコード配列(例えば、治療上目的とするタンパク質をコードする遺伝子)、ワクチン開発において目的とするコード配列(例えば、哺乳動物において免疫応答を誘導するのに適したタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを発現するポリヌクレオチド)、および/または選択可能もしくは検出可能なマーカを含み得る。
【0054】
ポリヌクレオチド
本開示は、導入遺伝子を含むポリヌクレオチドを提供し、例えば、導入遺伝子としてウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)に取り込まれ得るか、またはウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)の調製に使用され得る。導入遺伝子は、治療用導入遺伝子であり得る。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、嚢胞性線維症の処置のための治療用導入遺伝子である。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、コドンを最適化された導入遺伝子である。
【0055】
一態様では、本開示は、配列番号1の配列を含む単離されたポリヌクレオチド、または配列番号1のポリヌクレオチド配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を提供する。
【0056】
別の態様では、本開示は、配列番号2の配列を含む単離されたポリヌクレオチド、または配列番号2のポリヌクレオチド配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を提供する。
【0057】
別の態様では、本開示は、配列番号3の配列を含む単離されたポリヌクレオチド、または配列番号3のポリヌクレオチド配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列を提供する。
【0058】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれもレンチウイルスベクターに組み込むことができる。任意の適切なレンチウイルスベクターを使用することができる。ポリヌクレオチドのいずれも、5’LTRを含み得る。任意の適切な5’LTRを使用することができる。いずれのポリヌクレオチドも、3’LTRを含み得る。任意の適切な3’LTRを使用することができる。一部の実施形態では、3’LTRは、自己不活性化3’LTRである。一部の実施形態では、3’LTRは、逆配向のヒトアンキリン1エレメントの挿入を含む。一部の実施形態では、3’LTRは、配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、3’LTRは、配列番号13のポリヌクレオチド配列を含む。
【0059】
ポリヌクレオチドのいずれも、エンハンサーまたは転写後調節エレメント(例えば、WPREまたはHPRE)を含み得る。ポリヌクレオチドいずれもプロモータ(例えば、ヒトPGK-1プロモータ、CMVプロモータ、RSVプロモータ、EF1αプロモータ)を含み得る。任意の適切なプロモータを使用することができる。一部の実施形態では、プロモータは、ヒトPGK-1プロモータであり得る。特定の実施形態では、プロモータは、EF1αプロモータであり得る。
【0060】
ポリヌクレオチドのいずれも、ポリアデニル化部位(例えば、bGHポリA部位、SV40ポリA部位)を含み得る。任意の適切なポリアデニル化部位を使用することができる。ポリヌクレオチドはまた、1つ以上の検出可能なマーカを含み得る。種々のこのようなマーカは公知であり、例示として、細菌ベータ-ガラクトシダーゼ(lacZ)遺伝子;ヒト胎盤アルカリホスファターゼ(AP)遺伝子、およびインビトロとインビボの両方でレポータ分子として使用されている種々の細胞表面マーカをコードする遺伝子が含まれる。ポリヌクレオチドはまた、1つ以上の選択マーカを含み得る。
【0061】
さらに、本開示のポリヌクレオチドは、これらのエレメントのいずれか1つ以上を含み得る。
レンチウイルスおよびレンチウイルスベクターシステム
本開示は、レンチウイルスベクターシステムの一部としてレンチウイルスベクターに組み込むことができるポリヌクレオチドを提供する。レンチウイルスは、レトロウイルス科のサブタイプであり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、およびウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)などがあり、効率的な細胞内複製のための単純な構造的gag-pol-env遺伝子に加えて、いくつかのウイルス調節遺伝子に依存している。このように、レンチウイルスは、遺伝子調節およびウイルス複製のために古典的レトロウイルスよりも複雑な戦略を用いており、パッケージングシグナルは明らかにウイルスゲノム全体に広がっている。これらの追加的な遺伝子はレンチウイルスの生活環の間の調節機能の網を示す。例えば、HIV-1感染時には、LTR中のRNA標的(TAR)との相互作用を介して、Tatの発現によって転写が上方制御される。次に、全長およびスプライシングされたmRNAの発現は、Revの機能により調節され、Rev応答エレメント(RRE)においてgag領域およびenv領域に存在するRNAエレメントと相互作用する(Schwartzら、J.Virol.,66:150~159頁(1992))。gag-polおよびenv mRNAの核外輸送はRev機能に依存する。これら2つの不可欠な調節遺伝子であるTatおよびRevに加えて、vif、vpr、vpx、vpu、およびnefなどのアクセサリー遺伝子のリストもウイルスゲノムに存在し、効率的なウイルス生成および感染力に対するそれらの影響が実証されているが、それらはウイルス複製に絶対に必要なわけではない(Wong-Staalら、Microbial.Rev.,55:193~205頁(1991);Subbramanianら、J.Virol.68:6831~6835頁(1994);Trone、Cell 82:189~192頁(1995))。例示的レンチウイルスであるHIV-1の構造の詳細な説明は、米国特許第6,531,123号に記載される。
【0062】
本明細書に記載される方法および組成物において使用されるベクターは、レンチウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターであり得る。レンチウイルスは、7~8kbを担持し、細胞に感染することができ、高効率で宿主細胞に安定に組み込まれ遺伝物質を有するため、遺伝子導入ベクターとしての利点を有する(例えば、国際公開第95/30761号および国際公開第95/24929号を参照されたい)。1実施形態では、レンチウイルスベクターは、標的組織における感染性レンチウイルス粒子のさらなる生成を防止するために複製-欠損性である。このように、複製欠損ウイルスは標的細胞ゲノムに安定に組み込まれた捕虜導入遺伝子(captive transgene)となる。複製欠損レンチウイルスベクターは、通常、複製に不可欠なウイルスタンパク質を、導入遺伝子を含むベクター上のみにψパッケージングシグナルを含めて、別々のプラスミドに分け、ウイルス遺伝子の大部分を欠失させ、必要または有利な遺伝子のみを維持することによって達成される。欠失したウイルス遺伝子の代わりに、異種核酸を挿入することができる。異種遺伝子は、内因性異種プロモータ、標的細胞において活性な異なる異種性プロモータ、またはレトロウイルス5’LTRの制御下にあり得る。特定の実施形態では、異種遺伝子は、EF1αプロモータの制御下にある。ある実施形態では、異種遺伝子は、ヒトPGK-1プロモータの制御下にある。
【0063】
レンチウイルスベクターは、広範囲の分裂細胞型および非分裂細胞型を高効率で形質導入し、導入遺伝子の安定した長期発現をもたらす。パッケージングおよび形質導入レンチウイルスベクターの最適化戦略の概要は、Delenda、The Journal of Gene Medicine 6:S125(2004)に記載されている。レンチウイルスベースの遺伝子導入技術の使用は、典型的には、目的とする導入遺伝子が導入される、操作されたウイルスゲノムを担持する組換えレンチウイルス粒子のインビトロ生成を含む。特に、組換えレンチウイルスは、(1)パッケージング構築物、すなわち、Gag-Pol前駆体を発現するベクターおよびRevを発現するベクター;(2)異種エンベロープタンパク質であり得るエンベロープタンパク質を発現するベクター;ならびに(3)導入ベクターであって、すべてまたは実質的にすべてのオープンリーディングフレームのウイルスcDNAを欠いているが、複製、キャプシド化、および発現のための配列を、発現される配列とともに維持している(例えば、CFTR遺伝子などの導入遺伝子、そのコドン最適化バージョンを含む)導入ベクターの許容細胞株におけるトランス同時発現によって回収することができる。
【0064】
本開示は、導入遺伝子ベクター、1つ以上の適合性パッケージングベクター、エンベロープベクター、および適切な宿主細胞を含む、レンチウイルス遺伝子増幅および導入システムに導入遺伝子として組み込まれたポリヌクレオチドを意図する。使用されるベクターはレンチウイルスに由来し得る。レンチウイルスベクターは、(1)パッケージングベクターおよびエンベロープベクターを宿主細胞にトランスフェクションして、本質的にパッケージングベクター-RNAフリーウイルス粒子を生成するパッケージング細胞株を形成し、(2)導入遺伝子ベクターをパッケージング細胞株にトランスフェクションし、(3)パッケージング細胞株による導入遺伝子ベクターRNAを感染性ウイルス粒子にパッケージングし、(4)標的細胞に粒子を投与して、このような細胞を形質導入し、その後、導入遺伝子を発現することを可能にする。
【0065】
組換えレトロウイルス(例えば、レンチウイルス)粒子は、インビボで対象に直接投与することができ、または対象の細胞を除去し、粒子にインビトロで感染させ、対象の体内に戻すことができる。本開示のパッケージングベクターおよび導入遺伝子ベクターは、複製不能ウイルスを生成する。本開示の所定のベクターシステムに組み込むために選択されるベクターは、パッケージングベクターまたは導入遺伝子ベクターのさらなる突然変異なしには、同時トランスフェクトされた細胞がパッケージングベクターおよび導入遺伝子ベクター単独の相同組換えによって複製コンピテントウイルスを生成することが不可能であるようなものである。本システムで使用されるエンベロープタンパク質は、レトロウイルスエンベロープ、合成またはキメラエンベロープ、または非レトロウイルスエンベロープウイルス(例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica))由来のエンベロープであり得る。レンチウイルスの調製方法およびインビボ投与方法は、米国特許第20020037281号に記載されている。
【0066】
パッケージングベクター
本明細書に提供されるレンチウイルス導入ベクターのいずれも、1つ以上のさらなるベクターとともに細胞に同時トランスフェクトすることができる。いくつかの例において、1つ以上の追加ベクターはレンチウイルスパッケージングベクターを含み得る。ある例において、1つ以上の追加のプラスミドは、エンベローププラスミド(例えば、GP64をコードするエンベローププラスミド)を含み得る。一般に、パッケージングベクターは、レンチウイルスタンパク質(例えば、gag、pol、env、tat、rev、vif、vpu、vpr、および/もしくはnefタンパク質、またはそれらの誘導体、組み合わせ、もしくは部分)をコードする1つ以上のポリヌクレオチド配列を含む。本開示のレンチウイルス導入ベクターを用いて細胞に同時トランスフェクトされるパッケージングベクターであって、レンチウイルス導入ベクターによってコードされない1つ以上のレンチウイルスタンパク質をコードする配列を含むパッケージングベクター。例えば、レンチウイルス導入ベクターは、gagおよびpolをコードする第1のパッケージングベクター、およびrevをコードする第2のパッケージングベクターと同時トランスフェクトされ得る。したがって、このようなパッケージングベクターとレンチウイルス導入ベクターの同時トランスフェクションは、ウイルス粒子形成のためのすべての遺伝子を細胞に導入する結果となり、それによって、細胞が単離され得るウイルス粒子を生成することを可能にする。本開示において使用するための適切なパッケージングベクターは、当業者によって選択することができる。本開示において使用または使用のために適合され得るパッケージングベクターの例については、例えば、国際公開第03/064665号、国際公開第2009/153563号、米国特許第7,419,829号、国際公開第2004/022761号、米国特許第5,817,491号、国際公開第99/41397号、米国特許番号6,924,123号、米国特許第7,056,699号、国際公開第99/32646号、国際公開第98/51810号、および国際公開第98/17815号を参照されたい。いくつかの例において、パッケージングプラスミドはgagおよび/またはpolタンパク質をコードし得、任意にRRE配列(例えば、pMDLgpRREベクター;例えば、Dullら、J.Virol.72(11):8463~8471号、1998を参照されたい)を含み得る。ある場合には、パッケージングベクターは、revタンパク質(例えば、pRSV-Revベクター)をコードすることができる。
【0067】
本明細書に記載されるレンチウイルスベクターのいずれも、1つ以上のパッケージングシグナルを含み得る。本明細書で使用される場合、用語「パッケージングシグナル」または「パッケージング配列」とは、レンチウイルスゲノム内に位置する配列、またはウイルスキャプシドもしくは粒子へのウイルスまたはベクターRNAの挿入を提供する、または少なくとも容易にするベクターを指す。用語「パッケージングシグナル」はまた、便宜上、機能的パッケージングシグナルに転写されるベクターDNA配列を指すためにも使用される。ある種のパッケージングシグナルは、遺伝子の一部であってもよいが、コードされたタンパク質のペプチド部分としてではなく、RNAの形態で認識される。
【0068】
エンベロープタンパク質
任意の適切なエンベロープタンパク質を、本明細書に記載されるレンチウイルスベクター、ビリオン、および他の組成物(例えば、医薬組成物)において使用することができる。目的とする非レンチウイルスエンベロープタンパク質の例は、バキュロウイルスであるオートグラファ・カリフォルニア(Autographa californica)多核多角体病ウイルス(AcMNPV)エンベロープ糖タンパク質-64(GP64)である。GP64シュードタイプ化粒子は高濃度であり、一般的に使用されるVSV-Gエンベロープタンパク質とは異なり、細胞に対して細胞毒性を示さない。パッケージングウイルス遺伝子とは異なるエンベロープタンパク質を含むベクターは、一般にエンベロープシュードタイピングベクターと呼ばれる。
【0069】
レンチウイルスのEnvタンパク質は、他のレトロウイルス、非レトロウイルスのウイルス由来のEnvタンパク質で置き換えることができるか、またはこれらのタンパク質と水疱性口内炎ウイルス(VSV)Gタンパク質、バリアントGP64エンベロープタンパク質、エボラウイルスエンベロープタンパク質、マールブルグウイルスエンベロープタンパク質、ロスリバーウイルスエンベロープタンパク質、インフルエンザ血球凝集素エンベロープタンパク質、重症急性呼吸器症候群(SARS)Sエンベロープタンパク質、中東呼吸器症候群(MERS)Sエンベロープタンパク質、もしくはヒヒ内因性エンベロープタンパク質などの他のペプチドまたはタンパク質とのキメラで置き換えることができる。これらのエンベロープタンパク質は、レンチウイルス由来ベクターで形質導入され得る細胞の範囲を増加させ得る。
【0070】
キメラは、Envタンパク質および特定の細胞表面受容体に結合するリガンドから構成されて、ベクターをその受容体を発現する細胞に標的化することができる。例示的なキメラは、FLA16(インテグリン受容体に結合する6アミノ酸ペプチド)、エリスロポエチン(エリスロポエチン受容体に結合する)、およびヒトヘレグリン(EGFおよび関連する受容体に結合する)を含み得る。あるいは、キメラは、抗体可変軽鎖もしくは重鎖ドメイン、または適切なペプチドリンカー(いわゆる一本鎖抗体)によって連結された両方のドメインを含み得る。このような抗体ドメインは、腫瘍抗原、ヒト低密度リポタンパク質受容体、またはヒトMHCクラスI分子上の決定基などの任意の所望の細胞表面分子を標的とすることができる。
【0071】
ビリオンは、それらの細胞特異性を変化させるために、生成後に化学的、酵素的、または物理的に修飾され得る。修飾の例としては、細胞表面受容体によって認識されるリガンドの化学的または酵素的付加(例えば、ビリオンがアシアロ糖タンパク質受容体を発現するヒト肝がん細胞を形質導入するようにラクトースを添加すること)、またはベクターのEnvタンパク質に対するビオチン化抗体とウイルスをインキュベートし、次に、細胞表面受容体によって認識されるストレプトアビジン結合リガンドを添加することが挙げられる。ヘテロ二重特異性抗体を用いて、ビリオンのEnvタンパク質をこのようなリガンドに結合させることもできる。
【0072】
レンチウイルス導入ベクター
本開示は、例えば、障害(例えば、嚢胞性線維症)を患っている患者の、細胞(例えば、肺上皮細胞)、組織または臓器(例えば、肺)への1つ以上の導入遺伝子(例えば、CFTR遺伝子、例えば、ヒトCFTR遺伝子、例えば、コドン最適化ヒトCFTR遺伝子)の送達に有用なレンチウイルストランスファーベクターを提供する。
【0073】
例えば、本明細書では、コドンを最適化したヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたプロモータを有するレンチウイルスベクターが提供される。
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号1の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含む。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号1の配列を有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含む。
【0074】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号2の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含む。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号2の配列を有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含む。
【0075】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号3の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含む。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号3の配列を有するポリヌクレオチドに作動可能に連結されたプロモータを含む。
【0076】
別の実施形態では、本明細書では、コドンを最適化したヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたプロモータ(例えば、EF1αプロモータまたはPGKプロモータ)を含むレンチウイルス導入ベクターが提供され、嚢胞性線維症ヒト気道上皮細胞におけるコドンを最適化したヒトCFTR遺伝子の発現は、野生型ヒトCFTRと比較して、経上皮Cl-輸送の増大をもたらす。一部の実施形態では、レンチウイルス導入ベクターは、ヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたPGKプロモータを含む。PGKプロモータは、配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、レンチウイルス導入ベクターは、ヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結された配列番号4のヌクレオチド配列を有するPGKプロモータを含む。一部の実施形態では、レンチウイルス導入ベクターは、ヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結されたEF1αプロモータを含む。EF1αプロモータは、配列番号5のヌクレオチド配列と少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の配列同一性を有し得る。一部の実施形態では、レンチウイルス導入ベクターは、ヒトCFTR遺伝子に作動可能に連結された配列番号5のヌクレオチド配列を有するEF1αプロモータを含む。
【0077】
レンチウイルスベクターのレンチウイルス成分は、任意の適切なレンチウイルス、例えば、HIV-1、FIV、または他のレンチウイルスに由来し得る。例えば、一部の実施形態では、レンチウイルスベクターのレンチウイルス成分は、HIV-1に由来する。
【0078】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、さらに、5’LTR、3’LTR、パッケージングシグナル、Rev応答エレメント(RRE)、セントラルポリプリントラクト(cPPT)配列、および/または中央末端(CTS)のうちの1つ以上を含む。任意の適切な5’LTRを使用することができる。5’LTRは、野生型5’LTR、または非天然に存在する5’LTR、例えばキメラ5’LTRであり得る。5’LTRは、RおよびU5領域を含み得る。5’LTRはU3領域を欠いている場合がある。5’LTRは、U3領域がプロモータ(例えば、ウイルスプロモータ)で置換され得るキメラ5’LTRであってもよい。5’LTRは、任意の適切なウイルスプロモータを含み得る。
【0079】
任意の適切な3’LTRを使用することができる。5’LTRは、野生型3’LTRまたは非天然型3’LTR、例えば、自己不活性化3’LTRであり得る。3’LTRは、自己不活性化3’LTRであり得る。一部の実施形態では、自己不活化LTRは、インスレータの挿入を含む。任意の適切なインスレータ、例えばアンキリンを使用することができる。一部の実施形態では、3’LTRは、例えば、逆配向のヒトアンキリン1エレメントの挿入を含む。一部の実施形態では、3’LTRは、配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、3’LTRは、配列番号13のポリヌクレオチド配列を含む。
【0080】
また、本明細書に記載されるレンチウイルスベクターのいずれかを含むビリオンが提供される。
ビリオンは、任意の適切なエンベロープタンパク質を含み得る。一部の実施形態では、ビリオンはシュードタイプ化される。例えば、ビリオンは、野生型GP64エンベロープタンパク質、バリアントGP64エンベロープタンパク質、インフルエンザ血球凝集素エンベロープタンパク質、エボラエンベロープタンパク質、マールブルグウイルスエンベロープタンパク質、ロスリバーウイルスエンベロープタンパク質、重症急性呼吸器症候群(SARS)Sエンベロープタンパク質、中東呼吸器症候群(MERS)Sエンベロープタンパク質、またはヒヒ内在性レトロウイルスエンベロープタンパク質を用いてシュードタイプ化することができる。
【0081】
調節エレメント
調節エレメントを用いて、核酸、例えば、レンチウイルス導入ベクターの導入遺伝子、マーカおよびウイルス遺伝子の発現、またはパッケージングおよび導入ベクターの置換、ならびにエンベロープベクターの糖タンパク質遺伝子の発現を制御することができる。調節エレメントは、核酸配列の発現のある側面を制御する遺伝的エレメントを指し、限定されないが、プロモータ、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、終止シグナル、インスレータなどを含む。
【0082】
プロモータおよびエンハンサー
真核生物における例示的な転写制御シグナルには、プロモータおよびエンハンサーエレメントが含まれる。プロモータおよびエンハンサーエレメントは、酵母、昆虫および哺乳動物細胞を含む種々の原核生物および真核生物源から、ならびにウイルスから単離されている。特定のプロモータおよびエンハンサーの選択は、目的とするタンパク質を発現するために使用される細胞型に依存する。真核生物のプロモータおよびエンハンサーの中には、広い宿主域を有するものもあれば、細胞型のサブセットのみで機能するものもある(総説については、Vossら、Trends Biochem.Sci.,11:287(1986)およびManiatisら、前掲(1987)を参照されたい)。例えば、SV40初期遺伝子エンハンサーは、多くの哺乳動物種由来の広範な細胞型において非常に活性であり、哺乳動物細胞におけるタンパク質の発現に広く使用されている(Dijkemaら、EMBO J.4:761(1985))。広範囲の哺乳動物細胞型で活性のあるプロモータ/エンハンサーエレメントの他の2つの例は、ヒト伸長因子1α(EF1α)遺伝子(Uetsukiら、J.Biol.Chem.,264:5791(1989);Kimら、Gene 91:217(1990);Mizushimaら、Nuc.Acids.Res.,18:5322(1990))、およびRous肉腫ウイルス(RSV)の長い末端反復(Gormanら、Proc.Natl.Acad Sci.USA 79:6777(1982))およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)(Boshartら、Cell 41:521(1985))由来のものである。
【0083】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、例えば、作動可能に連結されたコード領域の転写の開始を促進するためのプロモータを含み得る。任意の適切なプロモータを使用することができる。使用されるプロモータは、構成的、調節性、誘導性、または抑制性であり得る。構成的プロモータとは、本質的に一定のレベルで常に活性化されるものである。構成的プロモータの例としては、CAGプロモータ、サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ、smCBAプロモータ、EF1αプロモータ、およびSV40プロモータが挙げられる。調節性プロモータは、その活性レベルが調節分子による調節に供されるものである。誘導性プロモータは、通常は実質的に不活性であるが、誘導因子がプロモータのオペレータ部位に結合することによって活性化されるものである。抑制性プロモータは、通常は活性であるが、抑制因子がプロモータのオペレータ部位に結合することによって実質的に不活性化されるものである。
【0084】
ウイルスプロモータ(例えば、RSVプロモータまたはCMVプロモータ)は、切断型5’の長い末端反復(LTR)のRおよびU5領域に作動可能に連結されて、キメラまたはハイブリッド5’LTRを生じさせ得る。
【0085】
ヒトPGK-1プロモータなどのプロモータはまた、導入遺伝子の発現を調節するために導入遺伝子に作動可能に連結され得る。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子(例えば、CFTR遺伝子、例えばコドン最適化CFTR)に作動可能に連結されたヒトPGK-1プロモータを含む。本開示の一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも90%(少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヒトPGK-1プロモータを含み得る。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号4のヌクレオチド配列を含むヒトPGK-1プロモータを含む。
【0086】
ヒトEF1αプロモータなどのプロモータはまた、導入遺伝子の発現を調節するために導入遺伝子に作動可能に連結され得る。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子(例えば、CFTR遺伝子、例えばコドン最適化CFTR)に作動可能に連結されたヒトEF1αプロモータを含む。本開示の一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号4のヌクレオチド配列と少なくとも90%(少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヒトEF1αプロモータを含み得る。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、配列番号5のヌクレオチド配列を含むヒトEF1αプロモータを含む。
【0087】
プロモータ/エンハンサーは、プロモータとエンハンサー機能(すなわち、プロモータエレメントおよびエンハンサーエレメントによって提供される機能)の両方を提供することができる配列を含むDNAのセグメントである。例えば、レトロウイルスのLTRはプロモータとエンハンサーの両方の機能を含むことができる。プロモータ/エンハンサーは、内因性、外因性、または異種性であり得る。内因性プロモータ/エンハンサーは、既存の野生型ゲノム中の所定の遺伝子と自然に連結されたものである。外因性または異種性のプロモータ/エンハンサーは、遺伝子の転写が連結されたプロモータ/エンハンサーによって方向付けられるように、遺伝子操作(例えば、クローニングおよび遺伝子合成を含む分子生物学的技術)によって遺伝子に連結されるものである。
【0088】
プロモータおよび/またはエンハンサーの活性は、エレメントから生じる転写のレベルを直接的または間接的に検出することによって測定することができる。導入遺伝子の発現を駆動するために、高い活性を有する強力なプロモータまたは低い活性を有する弱いプロモータを用いることができる。直接的検出は、そのプロモータおよび/またはエンハンサーから生成されたRNA転写物のレベルを定量することを含み得る。間接的検出は、プロモータおよび/またはエンハンサーから転写されたRNAから生成されたタンパク質のレベルの定量を含むことができる。プロモータまたはエンハンサー活性のために一般に採用されるアッセイは、レポータ遺伝子(例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、または当該技術分野において公知である他のレポータタンパク質)を利用する。プロモータおよび/またはエンハンサーは、プラスミド上に位置し得るレポータ遺伝子(例えば、CAT遺伝子)のコード領域の上流に挿入され、細胞系に導入され得る。レポータ遺伝子のレベルが測定される。CATレポータ遺伝子を利用する実施形態では、酵素活性のレベルは、細胞株によって転写されるCAT RNAの量に比例する。したがって、このようなレポータアッセイは、所与の細胞系における異なるプロモータまたはエンハンサーの相対強度の比較を可能にする。
【0089】
プロモータおよびエンハンサーは、天然配列のキメラおよびその突然変異体を含む、天然に存在する配列、またはその機能的突然変異体であり得る。例えば、あるプロモータの組織特異的、発生特異的、または他の調節性エレメントを別のプロモータに導入することができる。
【0090】
エンハンサーエレメントは、修飾されたDNA分子の発現を増加させるため、またはレンチウイルス組込み効率を増加させるために用いることができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物において使用されるレンチウイルスベクターは、nef配列を含んでもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載される方法および組成物において使用されるレンチウイルスベクターは、ベクター統合を増強するセントラルポリプリントラクト(cPPT)および中央終結配列(CTS)を含み得る。cPPTは(+)-鎖DNA合成の第二の起点として作用し、天然HIVゲノムの中央に部分的な鎖の重なりを導入する。一方、CTSは鎖合成の終結を示す。導入ベクター骨格へのcPPT配列の導入は、核輸送および標的細胞のDNAに組み込まれたゲノムの総量を増加させ得る。本明細書に記載される方法および組成物において使用されるレンチウイルスベクターは、核からの任意のスプライシングされていないウイルスゲノムRNAの放出を促進し、力価を増加させるRev応答エレメント(RRE)を含み得る。
【0091】
本明細書に記載されるベクターのいずれも、単一の核酸分子からの複数のポリペプチドの発現を可能にするエレメントを含み得る。例えば、本明細書に開示されるベクターのいずれも、単一のプロモータからの複数のポリペプチドの発現を可能にする内部リボソーム侵入部位(IRES)配列を含み得る。IRES配列に加えて、複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントが当該技術分野において公知である。本明細書に開示されるベクターのいずれも、2つ以上のポリペプチドの発現を可能にする複数のプロモータを含み得る。本明細書に記載される方法および組成物において使用されるベクターは、2つ以上のポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位を含み得る。1を超えるポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位の例は、Klumpら、Gene Ther.;8:811(2001)、Osbornら、Molecular Therapy 12:569(2005)、SzymczakおよびVignali、Expert Opin Biol Ther.5:627(2005)、およびSzymczakら、Nat Biotechnol.22:589(2004)に記載されている。将来同定される複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントが有用であり、本明細書に記載される組成物および方法とともに使用するのに適したベクター中で使用され得ることは、当業者には容易に明らかである。
【0092】
本明細書に記載される方法および組成物において使用されるベクターは、臨床グレードベクターまたは現在の良好な製造慣行(CGMP)ベクターであり得る。
転写後調節エレメント
本開示のレンチウイルス導入ベクターは、転写後調節エレメント(PRE)を含み得る。PREは、PREが位置するDNA配列の発現の調節に寄与する核酸配列である。例えば、PREは、DNA配列の残りの部分とともに転写され得る。PREから転写された、得られたmRNA分子の一部は、遺伝子産物の発現を増強する三次構造を形成し得る。PREには、場合によっては、3つの成分(アルファ、ベータ、およびガンマ)が含まれ得る。PREの活性は、いくつの成分が存在するかに依存することがある。例えば、完全な三部構成のPREは、アルファ成分単独よりも活性であり得る。本開示のレンチウイルス導入ベクターに含めるのに適したPREは、例えば、ウッドチャックB型肝炎ウイルスPRE(WPRE)および/またはヒトB型肝炎ウイルスPRE(HPRE)を含む。
【0093】
ポリアデニル化シグナル
本開示のレンチウイルス導入ベクターは、ポリアデニル化シグナルを含み得る。真核細胞における組換えDNA配列の効率的な発現は、結果として生じる転写物の効率的な終結およびポリアデニル化を指示するシグナルによって改善され得る。転写終結シグナルは一般にポリアデニル化シグナルの下流に見出され、長さは数百ヌクレオチドである。ポリアデニル化(「ポリA」とも呼ばれる)シグナルまたはポリA配列は、新生RNA転写物の終結とポリアデニル化の両方を指令するDNA配列を示す。組換え転写物の効率的なポリアデニル化は、ポリA尾部を欠く転写物が一般に不安定で迅速に分解されるので望ましい。任意の適切なポリAシグナルを、本明細書に開示されるベクターにおいて利用することができる。ベクター中で利用されるポリAシグナルは、異種性または内因性であってもよい。内因性ポリAシグナルは、ゲノム中の特定の遺伝子のコード領域の3’末端に天然に見出されるシグナルである。異種性ポリAシグナルは、ある遺伝子から単離され、別の遺伝子の3’末端に置かれたシグナルである。哺乳動物遺伝子発現に一般的に使用されるポリAシグナルには、SV40 polyA、ヒト成長ホルモン(hGH)polyA、およびウサギベータグロビン(rbGlob)polyAがある。
【0094】
インスレータ
本明細書に開示されるレンチウイルスベクターのいずれも、1つ以上のインスレータを含むことができる。インスレータは、一般に、導入遺伝子をサイレンシングおよび/または位置効果から保護するために使用され、その結果、導入遺伝子の効率が改善され、安定性が増加する。このようにして、インスレータは、導入遺伝子(例えば、CFTR、例えば、コドン最適化CFTR)の送達を保護する一方で、導入遺伝子の転写の効率を増加させるために、レンチウイルス系において作用し得る。一部の実施形態では、ニワトリ高感受性部位4(HS4)インスレータ、ヒト高感受性部位5(HS5)インスレータなどのインスレータ、またはこれらのインスレータのいずれか1つの断片をレンチウイルス導入ベクターに挿入して、導入遺伝子(例えばCTFR)の送達を保護することができ、および/または標的細胞における導入遺伝子の発現を増加させることができる。
【0095】
レンチウイルス生成のための宿主細胞
本開示のレンチウイルス導入ベクターを宿主細胞(パッケージング細胞)に導入することができる。レンチウイルス導入ベクターは、一般に、1つ以上の追加ベクター(例えば、1つ以上のパッケージングベクター)とともに宿主細胞中に同時トランスフェクトされる。1つ以上の追加ベクターは、ウイルスタンパク質および/または調節タンパク質をコードし得る。レンチウイルス導入ベクターおよび1つ以上の追加ベクターの同時トランスフェクションは、宿主細胞がレンチウイルス(例えば、レンチウイルス導入ベクターからの異種核酸配列をコードするレンチウイルス)を生成することを可能にする。本明細書に記載の宿主細胞によって生成されたレンチウイルスを用いて、別の細胞に感染させることができる。異種核酸および/または1つ以上の追加のエレメント(例えば、プロモータおよびウイルスエレメント)は、感染細胞のゲノムに組み込まれ得、それによって、細胞およびその子孫がレンチウイルス導入ベクターに由来する遺伝子を発現することを可能にする。
【0096】
レンチウイルス導入ベクター(および1つ以上のパッケージングベクター)によるトランスフェクションに適したパッケージング細胞は、哺乳動物細胞などの真核細胞であり得る。宿主細胞は、細胞系(例えば、不死化細胞系)に由来し得る。
【0097】
標的細胞は、目的とする導入遺伝子をコードするレンチウイルスベクター(レンチウイルス)に感染(形質導入)された細胞である。形質導入後、目的とする導入遺伝子を標的細胞ゲノムに安定に挿入し、PCRおよびサザンブロットなどの分子生物学的方法によって検出することができる。導入遺伝子を標的細胞中で発現させ、フローサイトメトリーまたはウエスタンブロットにより検出することができる。場合によっては、標的細胞はヒト細胞である。ある例において、宿主細胞は、目的とする特定の細胞型、例えば、初代T細胞、SupT1細胞、Jurkat細胞、または293T細胞である。
【0098】
パッケージングは、誘導性であってもよいこと、ならびに非誘導性であってもよいことが意図される。誘導性パッケージング細胞およびパッケージング細胞株において、レンチウイルス粒子は、少なくとも1つの誘導因子に応答して生成される。非誘導性パッケージング細胞株およびパッケージング細胞において、レンチウイルス粒子生成が起こるためには、誘導因子は必要とされない。
【0099】
レンチウイルスを生成する方法
本開示のレンチウイルス導入ベクターは、細胞(例えば、本明細書に記載される宿主細胞)においてレンチウイルスを生成するのに有用であり得る。本明細書に記載されるレンチウイルス導入ベクターを用いてレンチウイルスを生成する方法は、一般に、レンチウイルス導入ベクターおよび1つ以上の追加ベクター(例えば、レンチウイルスパッケージングベクター)を細胞に導入することを含む。ベクターは、当該技術分野において周知であるトランスフェクション方法を用いて細胞に導入することができる。トランスフェクション後、細胞は、レンチウイルス導入ベクターおよび/または1つ以上の追加ベクターによってコードされるウイルスタンパク質を発現させることができる(例えば、ウイルス遺伝子発現を誘導するための当該技術分野において公知である標準的条件下で細胞をインキュベートすることによる)。場合によっては、ウイルス遺伝子は構成的または誘導性プロモータの制御下で発現される。後者の場合、ウイルス遺伝子発現は、誘導性プロモータを活性化するのに適した条件下で細胞をインキュベートすることによって選択的に誘導され得る。細胞によって生成されたウイルスタンパク質は、その後、ウイルス粒子を形成することができ、ウイルス粒子は、細胞表面から出芽し、溶液から単離することができる(例えば、当該技術分野において周知である方法に従う)。ウイルスの形成中に、異種核酸の配列を含むポリヌクレオチドをウイルス粒子に取り込むことができる。したがって、このプロセスは、レンチウイルス輸送ベクターに由来する異種核酸配列を含むレンチウイルスを生じさせる。
【0100】
医薬組成物
本明細書には、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、またはビリオンのいずれかを含む医薬組成物が提供される。医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含んでもよい。本明細書に記載されるポリヌクレオチド、ベクター、およびビリオンは、本明細書に記載されるように、嚢胞性線維症を患っているヒト患者などの患者に投与するためのビヒクルに組み込むことができる。本明細書に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有する医薬組成物は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いて調製することができる。本明細書に記載されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む、レンチウイルスベクターなどのベクターを含む医薬組成物は、当該技術分野において公知である方法を用いて調製することができる。例えば、このような組成物は、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤を用いて(Remington’s Pharmaceutical Sciences 第16版、Osol,A.編集(1980);本願明細書に援用する)、および凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製することができる。
【0101】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたはベクター(例えば、レンチウイルスベクター)の混合物は、1つ以上の賦形剤、担体または希釈剤と適切に混合された水中で調製され得る。分散剤はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中、および油中で調製することもできる。一部の実施形態では、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するための保存剤を含み得る。注射可能な使用に適した医薬形態は、滅菌水溶液または分散剤、および滅菌注射可能溶液または分散剤の即時調製のための滅菌粉末を含む(例えば、米国特許第5,466,468号)。いずれの場合においても、製剤は無菌であってもよく、流体であってもよい。製剤は、製造および貯蔵の条件下で安定であり得、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保存され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、メチルセルロース、それらの適切な混合物、および/または植物油を含む溶媒もしくは分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用;分散剤の場合は粒径の維持;および界面活性剤(例えば、PLURONIC(登録商標)などのポロキサマー)の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって行うことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含み得る。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によってもたらされ得る。一部の実施形態では、組成物はメチルセルロースを含む。一部の実施形態では、組成物は、界面活性剤(例えば、PLURONIC(登録商標)などのポロキサマー)を含む。
【0102】
例えば、本明細書に記載される医薬組成物を含有する溶液は、必要であれば、適切に緩衝化され得、液体希釈剤は、まず、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にすることができる。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内投与に特に適している。これらの溶液において、採用することができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知である。例えば、1つの投薬量を1mLの等張NaCl溶液に溶解し、1000mLの皮下注射液に添加するか、または提案された注入部位に注入することができる。投薬量の変動は、処置される対象の状態に応じて生じることがある。投与責任者は、いずれにせよ、対象ごとに適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与に関しては、製剤はFDA生物学的製剤局の基準によって要求されるように、無菌性、発熱性、一般的な安全性、純度基準を満たすことができる。
【0103】
本明細書に記載される医薬組成物は、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、またはビリオンのいずれかを含むことができる。例示的な追加の治療剤には、限定されないが、抗生物質(例えば、アジスロマイシン(ZITHROMAX(登録商標))、アモキシシリンおよびクラブラン酸(AUGMENTIN(登録商標))、クロキサシリンおよびジクロキサシリン、チカルシリンおよびクラブラン酸(TIMENTIN(登録商標))、セファレキシン、セフジニル、セフプロジル、セファクロル;スルファメトキサゾールおよびトリメトプリム(BACTRIM(登録商標))、エリスロマイシン/スルフィソキサゾール、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン、バンコマイシン、イミペネム、メリペネム、コリスチメテート/COLISTIN(登録商標)、リネゾリド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、またはそれらの組み合わせ)、粘液希釈剤(例えば、高張性生理食塩水またはドルナーゼアルファ(PULMOZYME(登録商標))、CFTRモジュレータ(例えば、イバカフトール(KALYDECO(登録商標))、ルマカフトール、ルマカフトール/イバカフトール(ORKAMBI(登録商標))、テザカフトール/イバカフトール(SYMDEKO(登録商標))、またはTRIKAFTA(登録商標)(エレキサカフトール/イバカフトール/テザカフトール))、粘液溶解剤(例えば、アセチルシステイン、アンブロキソール、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エルドステイン、メシステイン、およびドルナーゼアルファ)、通常の生理食塩水、高張性生理食塩水、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0104】
典型的には、ウイルスベクターは、リンゲル平衡塩溶液(pH7.4)などの薬学的に適切な発熱物質を含まない緩衝液中にある。必要ではないが、医薬組成物は、必要に応じて、正確な量の投与に適した単位投薬形態で供給することができる。医薬組成物は一般に無菌である。
【0105】
嚢胞性線維症
嚢胞性線維症は、常染色体劣性の疾患であり、持続性の肺感染症を引き起こし、疾患が経時的に進行するにつれて呼吸能力がますます制限されるようになる。嚢胞性線維症は、CFTR遺伝子の突然変異によって引き起こされ、機能不全CFTRタンパク質をもたらす。嚢胞性線維症を引き起こすCFTRタンパク質の2,500を超える突然変異が同定されている。これらの突然変異は、それらが引き起こす問題のある影響に基づいて、クラスI、タンパク質生成突然変異;クラスII、タンパク質プロセシング突然変異;クラスIII、ゲーティング突然変異;クラスIV、伝導突然変異;およびクラスV、不十分なタンパク質突然変異を含む5つのクラスに分類されている。しかしながら、CF患者の70%はクラスII、F508欠失を有し、CFTRタンパク質の2つのヌクレオチド結合ドメインのうちの1つに影響を及ぼす。さらに、G551D突然変異はクラスIII突然変異であり、CF患者の約3%に影響を及ぼし、CFTRタンパク質の2つのATP結合ポケットのうちの1つにおけるATP結合を妨げ、ATP依存性ゲーティングを消失させる。この疾患およびその結果生じる機能不全CFTRの十分に理解された遺伝学的根拠により、CFは遺伝子治療の理想的な候補となっている。CFに関連するCFTR突然変異は、典型的には、機能不全CFTRが細胞表面にクロライドを輸送できず、細胞表面で不十分な量の水を生じさせ、したがって、細胞表面に厚く粘着性の粘液を生じさせるため、呼吸器繊毛上皮細胞においてクロライド流欠損をもたらす。結果として、CFTR機能不全は慢性感染および気道の炎症を引き起こし、CF患者の高い罹病率および死亡率をもたらす。
【0106】
アデノウイルスベクターまたはリポソームによるCFTR cDNA遺伝子導入は、CF患者の鼻上皮における欠損したCFTRチャネル活性の部分的修正を示した。最近の研究では、CFTR遺伝子機能の部分的修正のみが達成されたとしても、遺伝子治療はCF患者に大きな利益をもたらす可能性があることが示唆されている。CF患者の標的細胞は、未分化、増殖および分化、非増殖性の肺上皮細胞であり得る。例えば、分裂肺上皮細胞型と非分裂肺上皮細胞型の両方を、野生型CFTR cDNAを担持するシュードタイプ化レトロウイルスベクターによって標的化することができる。
【0107】
嚢胞性線維症を処置する方法
本開示は、CFを処置および/または予防する方法を提供する。一態様では、本明細書では、CFを処置する方法が提供され、本方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載されるいずれかのポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、および組成物(例えば、医薬組成物)の治療有効量を投与することを含む。組換えレンチウイルスベクターは、本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含み得る。レンチウイルスベクターは、薬学的に許容される担体および本明細書に記載されるレンチウイルスベクターまたはビリオンのいずれかを含む医薬組成物の一部であり得る。ポリヌクレオチドは、薬学的に許容される担体および本明細書に記載されるポリヌクレオチドのいずれかを含む医薬組成物の一部であり得る。
【0108】
本明細書に記載される組成物(例えば、ポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、またはその組成物(例えば、医薬組成物))は、インビボおよびエクスビボで使用され得る。インビボ遺伝子治療は、本開示のベクターを対象に直接投与することを含む。医薬組成物は、液体溶液または懸濁液として、エマルジョンとして、または使用前に液体中に溶解もしくは懸濁するのに適した固体形態として供給することができる。
【0109】
本明細書に記載される組成物(例えば、ポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物)は、任意の適切な経路によって、例えば、吸入、噴霧、エアロゾル化、鼻腔内、気管内、気管支内、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、または筋肉内)、経口、鼻、直腸、局所、または頬に投与することができる。また、それらは局所的または全身的に投与することもできる。気道への投与のために、1つの投与モードは、適切なエアロゾル可溶化装置とともに使用される場合に固体または液体エアロゾルのいずれかを提供する組成物を使用するエアロゾルによるものである。気道への投与の別のモードは、ベクターを注入するために可撓性光ファイバー気管支鏡を使用することである。一部の実施形態では、組成物は、噴霧器スプレーヤ(例えば、MADgic(登録商標)喉頭気管粘膜噴霧装置を用いる)を用いて、気管内および/または気管支内でエアロゾル化粒子中で投与される。他の実施形態では、組成物は、ネブライザーを用いて、気管内および/または気管支内にエアロゾル化粒子中で投与される。一部の実施形態では、組成物は、経口的に(parentally)投与される。他の実施形態では、組成物は全身的に投与される。ベクターはまた、バイオプロテーゼによって、例示として、血管グラフト(PTFEおよびダクロン)、心臓弁、血管内ステント、血管内舗装(intravascular paving)ならびに他の非血管プロテーゼによって導入することもできる。ベクター溶液の送達、頻度、組成、および用量範囲に関する一般的な技術は、当業者の範囲内である。
【0110】
吸入による上気道(鼻)または下気道への投与のために、本明細書に記載の組成物(例えば、ポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオンまたは医薬組成物)は、吹送器、ネブライザーまたは加圧パック、またはエアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から好都合に送達される。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスなどの適切な噴射剤を含み得る。加圧エアロゾルの場合、投与量の単位は、計量された量を供給するためのバルブを提供することによって決定することができる。あるいは、吸入または吹送による投与の場合、組成物は、乾燥粉末、例えば、薬剤とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末ベースとの粉末混合物の形態をとることができる。粉末組成物は、例えば、カプセルまたはカートリッジ、または吸入器、吹送器または定量吸入器の助けを借りて粉末を投与することができるゼラチンまたはブリスターパックでの単位剤形で提供することができる。鼻腔内投与の場合、薬剤は、点鼻薬、プラスチックボトルアトマイザーまたは定量吸入器などの液体スプレーを介して投与することができる。アトマイザーの典型的なものは、ミストメーター(Wintrop)およびメジヘラー(Riker)である。
【0111】
本明細書に記載の組成物(例えば、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物)の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療か予防か、および当業者に知られている他の要因に応じて、連続的または断続的であり得る。本明細書に記載の組成物は、同じ部位または異なる部位に、1回または複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上の回数)投与することができる。本開示の薬剤の投与は、事前に選択された期間にわたって本質的に連続的であり得るか、または一連の間隔を置いた投与であり得る。
【0112】
本明細書に記載される組成物(例えば、ポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物)は、単剤療法として投与することができる。本明細書に記載される組成物(例えば、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物)はまた、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与することができる。CFの標準治療を含む任意の適切な追加の治療剤を使用することができる。追加の治療剤としては、限定されないが、抗生物質、粘液希釈剤、CFTR調節剤、粘液溶解剤、通常の生理食塩水、高張性生理食塩水、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、1つ以上の追加の治療剤には、抗生物質、例えば、アジスロマイシン(ZITHROMAX(登録商標))、アモキシシリンおよびクラブラン酸(AUGMENTIN(登録商標))、クロキサシリンおよびジクロキサシリン、チカルシリンおよびクラブラン酸(TIMENTIN(登録商標))、セファレキシン、セフジニル、セフプロジル、セファクロル;スルファメトキサゾールおよびトリメトプリム(BACTRIM(登録商標))、エリスロマイシン/スルフィソキサゾール、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、チゲサイクリン、バンコマイシン、イミペネム、メリペネム、コリスチメテート/COLISTIN(登録商標)、リネゾリド、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、またはそれらの組み合わせが含まれる。一部の実施形態では、追加の治療剤には、粘液希釈剤(例えば、高張性生理食塩水またはドルナーゼアルファ(PULMOZYME(登録商標))が含まれる。一部の実施形態では、追加の治療剤には、CFTRモジュレータ、例えば、イバカフトール(KALYDECO(登録商標))、ルマカフトール、ルマカフトール/イバカフトール(ORKAMBI(登録商標))、TRIKAFTA(登録商標)(エレキサカフトール/イバカフトール/テザカフトール))、およびテザカフトール/イバカフトール(SYMDEKO(登録商標))が含まれる。一部の実施形態では、追加の治療剤には、粘液溶解剤、例えば、アセチルシステイン、アンブロキソール、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エルドステイン、メシステイン、およびドルナーゼアルファが含まれる。他の実施形態では、追加の治療剤は、生理食塩水、高張性生理食塩水、またはそれらの組み合わせである。
【0113】
本明細書に記載される組成物(例えば、ポリヌクレオチド、レンチウイルスベクター、ビリオン、または医薬組成物)は、哺乳動物に単独で、または薬学的に許容される担体と組み合わせて投与することができる。上述のように、活性成分および担体の相対的割合は、化合物の溶解度および化学的性質、選択された投与経路、および標準的な医薬実務によって決定される。
【0114】
本組成物の投薬量は、投与形態、選択された特定の化合物、および処置中の特定の患者の生理学的特徴によって変化する。毒性などの望ましくない影響のリスクを低減するために、ウイルスの最低有効濃度を利用することが望ましい。
【実施例】
【0115】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、より完全に理解されるであろう。しかしながら、それらは、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例および実施形態は、例示のみを目的としており、それらに照らして様々な修正または変更が当業者に示唆され、本願および添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲に含まれることが理解される。
【実施例1】
【0116】
CFTR遺伝子のコドン最適化
レンチウイルス遺伝子治療を進歩させ、気道におけるCF表現型の完全な修正を達成するために、導入遺伝子の発現および機能におけるCFTRコドン最適化の効果を調べた。気道上皮細胞はギャップ結合を介して相互接続されているため、本発明者らは、1つの特定の理論に拘束されることを望まないが、高レベルのCFTRを発現する少数の細胞が、CF表現型を救出するのに十分なアニオン輸送を行うことができると仮定した。
【0117】
材料および方法
プラスミド
pcDNA3.1(+)ベクター中のWT CFTRおよびcoCFTR1(GenBank MW222115)を用いた。coCFTR1の最初の356個のアミノ酸のみがコドン最適化された。coCFTR1は、タンパク質機能に影響しない1475位のメチオニンからバリンへの置換を含む(Smitら(1993).Proc Natl Acad Sci USA 90:9963-9967を参照されたい)。coCFTR2(GenBank MW116826)のコドン最適化および合成は、Bluescriptプラスミド中にGenscriptにより商業的に行われた。coCFTR2は、最初に報告されたCFTR配列に存在する833位のフェニルアラニンからロイシンへの置換を含有し、これはタンパク質の溶解度を増加させるが、タンパク質構造には影響しない(Bakerら(2007).Nat Struct Mol Biol 14:738~745頁を参照されたい)。coCFTR3(GenBank MW116827)のコドン最適化は、JCatを用いて行われ、HIV-PGK-coCFTR3ベクター中にGenscriptにより商業的に合成された。coCFTR2およびcoCFTR3をpcDNA3.1(+)にサブクローニングした。HIV-PGK-WTCFTRおよびHIV-EF1α-GFPをGenscriptにより合成し、HIV-PGK-GFP、HIV-PGK-coCFTR3およびHIV-EF1α-WTCFTRのクローニングに使用した。使用されるHIVベースのベクターは、第二世代の自己不活化(SIN)であり、サイレンシングを回避することによって長期発現を改善する3’LTR内に逆配向でヒトアンキリン1エレメントを含む。
【0118】
コドン最適化配列比較
CFTRドメインは、以下のアミノ酸位置:TMD1(1~356)、NBD1(357~678)、RD(679~840)、TMD2(841~1156)、NBD2(1157~1481)によって定義された。ヌクレオチド含有量はSeqBuilder Pro 17(DNASTAR)を用いて決定した。コドンの使用およびGC3含有量は、シークエンスマニピュレーションスイートを用いて決定した。
【0119】
Fischerラット甲状腺(FRT)エレクトロポレーションおよび上皮形成
コドン最適化または野生型のCFTR cDNAをFRT細胞にエレクトロポレーションし、フィルター上に3重にして播種した。FRT細胞を5%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したHam F-12 Coon修飾培地中、5%CO2加湿環境で37℃にて培養した。1.2×106個のFRT細胞は、4μgのpcDNA3.1(+)プラスミド(Amaxa NUCLEOFECTOR(商標)2b、NUCLEOFECTOR(商標)キットL、Lonza)でエレクトロポレーションされた。エレクトロポレーションキットに含まれるGFPプラスミドを用いてエレクトロポレーションの成功を検証し、これらの細胞をUssingチャンバー実験における陰性対照として用いた。細胞を全体積700μlに再懸濁し、200μlをコラーゲン被覆ポリカーボネート膜組織培養インサート(Corning TRANSWELL(商標)、6.5mm、0.4μm孔)の各々3つに播種し、400μl培地を基底側コンパートメント上に播種した。翌日、頂部培地を除去し、基底外側培地を置換した。7日後、経上皮的Cl-輸送およびmRNA発現を測定した。
【0120】
HEK293細胞トランスフェクション
HEK293細胞を5%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン中、5%CO2加湿環境で37℃にて培養した。1×105細胞/ウェルを6ウェルプレート上に播種した。翌日、2μgのpcDNA3.1(+)プラスミドを、Lipofectamine 2000(Invitrogen)に関する製造者の指示に従ってトランスフェクトした。コンフルエントである場合、細胞をmRNAまたはウエスタンブロット分析のために回収した。GFP対照プラスミドを用いて、トランスフェクションの成功を検証し、mRNAおよびウエスタンブロット分析において陰性対照として役立てた。
【0121】
初代ヒト気道基底細胞の形質導入および分化
すべての初代ヒト気道上皮細胞は、アイオワ大学のIn Vitro Models and Cell Culture Coreからアイオワ大学の治験審査委員会の承認を受けて入手した。提供された非CF肺から分離された匿名化された細胞、または移植後に廃棄されたCF肺から分離された細胞を提供した。CFドナーから新たに単離した8×105個の初代基底細胞を、BRONCHIALIFE(商標)上皮基底培地(Lifeline)中のコラーゲン被覆した10cmプレート上に播種した。細胞が約80%コンフルエントに達したら、TRYPLE(商標)(Gibco)を用いて細胞を解離し、1×105細胞を、最終体積200μlのウイルスベクターおよびポリブレン(2μg/ml)とともに、コラーゲン被覆ポリカーボネート膜組織培養インサート(Corning TRANSWELL(商標)、6.5mm、0.4μm孔)上に播種した。400μl規定培地(ULTROSER(商標)G)を分化プロセスを通して基底外側コンパートメントに維持した。細胞を浸漬培養条件下で48~72時間維持した。次に、頂部培地を除去し、培養物を最低4週間気液界面条件で維持した。いったん分化したら、細胞を電気生理学的分析のためにUssingチャンバー内に直接的にマウントするか、またはACCUMAX(商標)(Sigma)を用いたフローサイトメトリー分析のために解離させた。
【0122】
非CF細胞については、2×105細胞を、BronchiaLife(商標)上皮基底培地(最終体積1mL)中のウイルスベクターおよびPOLYBRENE(登録商標)(2μg/ml)とともに、コラーゲン被覆した6ウェルプレート上に播種した。細胞が形質導入後3~5日でコンフルエントに達するまで、必要に応じて培地を置換し、フローサイトメトリー分析のためにTypLEを用いて回収した。
【0123】
ウエスタンブロット分析
6ウェルプレート中の接着細胞をPBSで洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Roche COMPLETE(商標)ULTRA錠、ミニ、EDTAフリー、Basel、Switzerland)を用いて、0.5mlのRIPA緩衝液(Thermo Fisher/Gibco、Waltham、MA)を各ウェルに添加した。プレートを-80℃で10分間置き、次に、室温で融解させた。細胞溶解物を回収し、細胞残渣を遠心分離により分離した。タンパク質含有上清を回収し、-20℃で保存した。各ウエスタンブロットの前に、BCAアッセイ(Pierce BCAタンパク質アッセイキット、Thermo Fisher Scientific/Gibco、Waltham、MA)を実施し、タンパク質を定量した。試料あたり20μgのタンパク質を3~8%CRITERIONXT(商標)Tris-酢酸ゲル(Bio-Rad)中に装填し、Tris/Tricine/SDS泳動緩衝液(Bio-Rad)中で125Vで90分間泳動した。IMMOBILON(商標)-FL PVDFメンブレン(Millipore)への転写を、高グリシン転写緩衝液(2L水中の120gのグリシン、6gのTris塩基)中、110μA、4℃で一晩行った。メンブレンをPBS中の0.1%Hammarstenカゼインで1時間ブロックした。一次抗体(マウス抗ヒトCFTR UNC-596およびウサギ抗ヒトビンキュリン Thermo Fisher/Gibco、Waltham、MA)を1:2000に希釈し、室温で2時間インキュベートした。二次IRDYE(商標)抗体(LI-CORロバ-抗ウサギ680RDおよびロバ抗マウス800CW)を1:20,000に希釈し、室温で1時間インキュベートした。各工程間にTBSTで15分間、3回洗浄した。メンブレンを画像化し、LI-COR ODYSSEY(商標)システムを用いて分析した。
【0124】
mRNA測定
6ウェルプレート中の接着細胞をPBSで洗浄した。各ウェルの細胞内容物を0.5mlのTRIzol(Invitrogen)中に回収した。RNAを、DIRECT-ZOL(商標)RNAキット(Zymo Research)の製造業者の指示に従って単離した。cDNAは、pcDNA3.1(+)プラスミド5’-CTCGACTGTGCCTTCTAGTTG-3’(配列番号6)および5’-GCACCTTCCAGGGTCAAG-3’(配列番号7)のポリアデニル化配列に向けたプライマーを用いて、高容量RNA-cDNAキット(Applied Biosystems)およびqPCR(Applied Biosystems 7900HT)を用いて、Power SYBR(商標) Green PCRマスターミックス(Thermo Fisher Scientific/Gibco、Waltham、MA)を用いて作製した。GAPDHを用いて、5’-GGATTTGGTCGTATTGGG-3’(配列番号8)および5’-GGATTTGGTCGTATTGGG-3’(配列番号9)プライマーを用いて遺伝子発現を標準化した。
【0125】
パッチクランプ実験
実験は前述の通りに行った(Dongら(2008).Biophys J 95:5178~5185頁を参照されたい)。pcDNA3.1(+)ベクターを用いて、WT CFTRまたはcoCFTR3を一過性に発現する293Tヒト胚性腎細胞から切り出された裏返しのメンブレンパッチを用いた。ピペット(細胞外)溶液は、140mMのN-メチル-D-グルカミン、3mMのMgCl2、5mMのCaCl2、100mMのL-アスパラギン酸、および10mMのトリシンを含有し、HClでpH7.3とした。浴(細胞内)溶液は、140mMのN-メチル-D-グルカミン、3mMのMgCl2、1mMのCsエチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(CsEGTA)、および10mMのトリシンを含有し、HClでpH7.3とした。パッチ切除後、CFTRチャネルを22nMプロテインキナーゼA(PKA)触媒サブユニット(ウシ心臓由来、EMD Millipore Corporation、Billerica、MA)および1mMのATP(マグネシウム塩、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)で活性化した。PKA触媒サブユニットは、ATPを含むすべての細胞質溶液中に存在した。実験は室温(23~26℃)で行った。2~8チャネルを含むパッチからの記録を5kHzでデジタル化し、8極Besselフィルター(モデル900、Frequency Devices,Inc.、Haverhill、MA)を用いて500Hzでローパスフィルターで分析する前に行った。単一チャネルの開閉は、Clampfitソフトウェア(バージョン10.3、Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて、20msのバースト区切りで分析した(Carsonら(1995).J Biol Chem 270:1711~1717を参照されたい)。4ms未満のイベントは無視された。平均バースト間隔(IBI)は、式Po=(BD×Po,バースト)/(BD+IBI)を用いて計算した。ここで、Poは平均オープン状態確率であり、BDは平均バースト持続時間であり、Po,バーストはバースト内の平均オープン状態確率である(Cottonら(1998).J Biol Chem 273:31873~31879頁を参照されたい)。
【0126】
フローサイトメトリー
細胞を、2%FBSを含有する100μlのPBS中に、LIVE/DEAD(商標)固定遠赤色染色キット(Invitrogen)とともに再懸濁し、光から保護して30分間インキュベートした。PBS中の1mLの2%FBSで3回洗浄を行った後、細胞をATTUNE(商標)NxTフローサイトメータ(Invitrogen)中のフローサイトメトリー分析のために最終体積500μlに再懸濁した。ダブレットおよび死細胞は分析から除外した。
【0127】
短絡測定
CFTR機能は、cAMPアゴニストのホルスコリン(F)および3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)に応答して上皮細胞層を横切って生成された電流(ΔITまたはΔISC)の変化を測定することにより、Ussingチャンバーで定量化した。アミロライドおよび4,4’-ジイソチオシアノ-2,2’-スチルベンジスルホン酸(DIDS)をそれぞれ用いて、ナトリウムおよびアニオン交換体を阻害することにより、CFTRチャネルを単離した。本発明者らの細胞株モデルからの結果に基づき、CF初代ヒト気道上皮細胞におけるWT CFTRと比較するためにcoCFTR3を選択した。基底前駆細胞をWT CFTR、coCFTR3またはGFPを担持するレンチウイルスベクターで形質導入し、次にそれらを4週間分化させた後、経上皮Cl-電流を測定した。
【0128】
経上皮クロライド電流測定のために、上皮培養物をUssingチャンバーにマウントし、135mMのNaCl、5mMのHEPES、0.6mMのKH2PO4、2.4mMのK2HPO4、2.2mMのMgCl2、1.2mMのCaCl2、および5mMのデキストロースを含む溶液中に浸漬し、空気で泡立てた。重炭酸塩測定のために、培養物を、118.9mMのグルコン酸ナトリウム、25mMのNaHCO3、5mMのグルコン酸カルシウム、1mMのグルコン酸マグネシウム、2.4mMのK2HPO4、0.6mMのKH2PO4、5mMのブドウ糖からなる塩化物を含まない溶液に浸漬し、CO2で泡立てた。アミロライド、ENaC阻害剤、およびCl-交換阻害剤であるDIDSを、最終濃度100μMに連続的に頂端側に添加した。次に、CFTRを、それぞれ10μMおよび100μMの最終濃度で、サイクリックAMPアゴニストであるホルスコリンおよび3-イソブチル-2-メチルキサンチン(IBMX)で頂端側に活性化した。最後に、CFTR阻害剤GlyH-101(Cystic Fibrosis Foundation)を最終濃度100μMに頂端側に添加した。CFTR活性化と阻害に応答する短絡電流(ΔISC)の変化を計算した。FRT経上皮電流測定には、Cl-勾配を用いた。ホルスコリンおよびIBMX刺激前に、頂端溶液をNaClをNaC6H11O7に置換したものに置き換え、電流の変化を計算した(ΔIT)。
【0129】
統計学
すべてのデータは、GraphPad Prism 8ソフトウェアを用いて分析した。統計学的有意性は、Dunnの多重比較検定を用いた一方向ANOVA、ランクに関する一方向ANOVA(Kruskal-Wallis検定)とDunnの多重比較検定、または必要に応じてBonferroni-Dunn修正を用いた多重t検定を用いて決定された。誤差バーは平均値±SEを表す。
【0130】
結果
CFTRは2組の膜貫通ドメイン(TMD1およびTMD2)、2つのヌクレオチド結合ドメイン(NBD1およびNBD2)、および調節ドメイン(RD)で構成される(
図1A)。コドン最適化のための異なるアプローチを用いて、コドン最適化CFTR(coCFTR)遺伝子coCFTR2(配列番号1)、coCFTR3(配列番号2)および配列番号3を生成した。これらのコドン最適化CFTR遺伝子をcoCFTR1(Kimら、Science、348:6233、444~448頁)と比較した。
図1Bに示されるように、coCFTR1の膜貫通ドメイン1(TMD1)のみが最適化された。ヌクレオチド結合ドメイン1および2(NBD1/2)、調節ドメイン(RD)および膜貫通ドメイン2(TMD2)を含む残りのドメインは、野生型(WT)配列を保持した。coCFTR1を除き、コドン変化はCFTRタンパク質ドメインによって分離されなかった。coCFTR2およびcoCFTR3について、遺伝子全体を最適化した(
図1B)。coCFTR2については独自のアルゴリズム(Genscript)を使用し、coCFTR3については公衆に利用可能なアルゴリズム(Jcat)(Groteら(2005).Nucleic Acids Res 33:W526-531を参照されたい)を使用した。
図1Cは、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)またはシトシン(C)であるWT CFTR、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1)およびcoCFTR3(配列番号2)中のヌクレオチドのパーセンテージを示す。全GC含量はWT CFTRと比較してすべてのコドン最適化配列で増加したが、coCFTR3が最も増加した(42%から64%)(
図1C)。
図1Dに示されるように、他の配列と比較して配列番号2のGC含量の増加は明らかであり、coCFTR3はほぼ100%のGC
3含量を有した。3番目のヌクレオチド位置(GC
3)におけるGまたはCを用いるコドンはまた、coCFTR1の単一コドン最適化ドメイン、およびcoCFTR2(配列番号1)およびcoCFTR3(配列番号2)のすべてのドメインにおいて増加した。野生型(WT)CFTRからのcoCFTR配列の相違を表1に要約すると、coCFTR配列はコドンがWT CFTRと16~68%、ヌクレオチド配列が6~35%異なることが示される。コドン適応指数(CAI)はWT CFTRと比較してすべてのcoCFTR配列で高い。
【0131】
【0132】
予想されるように、すべての戦略は、WT CFTRと比較してCAIを増加させたが、アミノ酸配列は同じままであった(表2)。
【0133】
【0134】
【0135】
CFTRコドン最適化の治療可能性を試験するために、3つの異なるCFTR cDNA配列をモデル細胞株で比較した。各コドン最適化CFTR(coCFTR)配列をpcDNA3.1発現ベクターにクローニングし、Fischerラット甲状腺(FRT)細胞にエレクトロポレートした。FRT細胞は内因性CFTRを発現せず、極性上皮を形成することができる。1週間後、経上皮的Cl
-輸送を測定し、各々のコドン最適化配列が、Cl
-経上皮的輸送によって証明されるように、異なる程度のCFTR発現および機能の改善を提供することを見出した。これが細胞株特異的効果ではないことを確認するために、トランスフェクトしたHEK293細胞におけるmRNAおよびタンパク質生成を72時間後に測定した。GFP発現プラスミドを対照として用いた。WT CFTR、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1によりコードされる)、およびcoCFTR3(配列番号2によりコードされる)のタンパク質濃度を、対照としてGFPを用いて、
図2Aに示されるようにウエスタンブロットにより測定した。バンドBおよびCを含む異なるグリコシル化パターンを検出し、ビンクリンをローディング対照として使用した。デンシトメトリー分析は、WT CFTRと比較して、coCFTR1、coCFTR2(配列番号1)およびcoCFTR3(配列番号2)によるCFTRバンドCの有意な増加を示さず、CFTRバンドBの有意な増加(
*p≦0.007)、ならびにC/B比の減少(
*p≦0.02)を示した(
図2A)。すべてのプラスミドに存在するポリアデニル化配列の一部を標的とするプライマーを用いて、qRT-PCRによりCFTR mRNAを定量した。すべてのcoCFTR配列は、WT CFTRよりも高い平均mRNA含有量をもたらしたが、その増加倍数は、
図2Bに示されるように、いずれの配列についても統計学的に有意ではなかった。
【0136】
タンパク質機能を試験するために、Fischerラット甲状腺(FRT)細胞を同じプラスミドでエレクトロポレーションし、気液界面条件下で増殖させた。1週間後、経上皮Cl
-電流を頂端低クロライド濃度勾配条件下で測定した。
図2Dは、cAMPアゴニストのホルスコリンおよびIBMXに対する電流(ΔI
T)の変化を示す。WT CFTRと比較して、coCFTR1は機能を増加させなかったが、coCFTR2はわずかな増加を示した。coCFTR3(配列番号2)による有意な増加がWT CFTR(
*p<0.0001)と比較して観察された(
図2C~2D)。トランスフェクトされたFRT細胞で行われたウエスタンブロットは、HEK293細胞において観察されたものと同様の発現パターンを示し、すべてのcoCFTR配列はWT CFTRと比較してより多くのCFTRを生成した(
図6A~6C)。
【0137】
チャネル特性がコドン最適化によって影響されないことを確認するために、WT CFTRまたはcoCFTR3でトランスフェクトしたHEK293細胞においてパッチクランプ研究を行った。代表的なトレーシングを
図2Eに示す。チャネル開口確率、バースト持続時間、およびバースト間隔は、WT CFTRとcoCFTR3(配列番号2)の間で異ならなかったことから、コドン最適化はCFTRチャネル特性を変化させないことが示された(
図2E)。これらの知見は、coCFTR3によって生成されたCFTRチャネルがWT CFTRによって生成されたものと同じ特性を有することを示す。さらに、coCFTRに関連したCFTRバンドBの増加は、タンパク質プロセシング機構がコドン最適化により影響されると考えられるものの下流にあることから予想される。
【0138】
coCFTR3の発現は、FRT細胞アッセイにおいてタンパク質機能の最大の増加をもたらしたため、同様の効果が初代CFヒト気道上皮細胞において達成されるかどうかを調べた。FRT細胞において、WT CFTRと比較してcoCFTR3で観察された短絡電流の有意な増加を考慮して、PGKは、それが平均してEF1αよりも低い電流を生成し(実施例2を参照されたい)、コドン最適化のいずれの効果もより容易に検出することを可能にするため、プロモータとして選択された。同様の理由から、プロモータ比較実験(実施例2を参照されたい)において観察された短絡電流量応答(
図4E)に基づき、MOI≦1を使用した。5人のドナー由来のCF前駆基底細胞を、MOI0.1、0.25、0.5および1で野生型(WT)CFTR、coCFTR3(配列番号2)、またはGFPを担持するレンチウイルスベクターで形質導入し、ポリカーボネート膜上に播種した。上皮培養物を播種時に形質導入し、気液界面培養条件下で4週間分化させた(
図7Aおよび7Bも参照されたい)。これらの用量は、ある範囲の形質導入効率を達成すると予測され、最適なMOIがアニオン電流の非CFレベルを達成することを決定することを可能にした。GFP
+細胞を、GFPベクターで形質導入された上皮におけるフローサイトメトリーにより定量し、分化後に存在する形質導入細胞の数を推定した。形質導入許容性におけるドナー依存性の差が観察され、その結果、試験された用量で約2~91%のGFP
+細胞が得られた(
図3A)。CFTRベクターで形質導入した上皮をUssingチャンバーにマウントし、経上皮アニオン電流を測定した。ナトリウムおよびアニオン交換チャネルは、それぞれアミロライドおよびDIDSで阻害され、その後、cAMPアゴニストであるホルスコリンおよびIBMXでCFTRチャネルが活性化された(
図3B)。coCFTR3をコードするレンチウイルスベクターは、WT CFTRをコードするレンチウイルスベクターと比較して、最低用量(MOI0.1、p<0.04)で有意に高い経上皮クロライド電流を与え、最高用量(MOI0.05および1、p<0.02)でより高い重炭酸塩電流を与えた(
図3Cおよび3D)。
【0139】
FRT細胞において観察されたクロライド電流の顕著な増加(
図2C)は、CFTRの未成熟(バンドB)形態の顕著な増加(
図2A)およびcoCFTR3で観察された初代気道上皮におけるCFTRアニオン電流の増加(
図2B)とともに、coCFTR3がWT CFTRとは異なるチャネル特性を有する可能性を提起した。WT CFTRおよびcoCFTR3の単一チャネル特性を研究するために、本発明者らは、WT CFTRまたはcoCFTR3 cDNAをトランスフェクトしたHEK293T細胞においてパッチクランプ研究を行った(
図2E)。平均開放チャネル確率、バースト持続時間、バースト間隔に有意差は見出されなかった(
図2E)。これらの知見は、coCFTR3によって生成されたCFTRチャネルがWT CFTRによって生成されたものと同じ特性を有することを示す。さらに、coCFTRに関連したCFTRバンドBの増加は、タンパク質プロセシング機構がコドン最適化により影響されると考えられるものの下流にあることから予想される。まとめると、これらの結果は、coCFTR3がCF初代ヒト気道上皮細胞においてより多くの機能的CFTRを生成し、CFTRチャネル特性を変化させることなく、MOI<1で非CFアニオン電流の範囲に達することを確認した。
【0140】
結論
本明細書に記載されるCFTRの異なるコドン最適化戦略は、mRNAおよびタンパク質生成を増加させ、経上皮Cl-輸送の増加によって証明されるように、CFTR機能の増加をもたらした。各コドン最適化戦略は、異なるレベルの改善されたCFTR発現をもたらした。coCFTR3によるレンチウイルス形質導入は、WT CFTRと比較して、初代CFヒト気道上皮細胞における経上皮Cl-電流を増加させた。CFTRのコドン最適化は、CF遺伝子治療のいくつかの障害を克服することができる。単一タンパク質ドメインのコドン最適化はWT CFTR上での発現を改善しなかった。CFTR媒介アニオン性輸送を有意に増加させるCFTRコドン最適化戦略を同定した。全遺伝子をコドン最適化する2つの戦略のうち、GCおよびGC3含量が高いcoCFTR3をもたらしたものはまた、タンパク質機能の最大の増大をもたらした。理論に拘束されることを望まないが、これらはCFTRのためのコドン最適化の特徴である可能性がある。
【実施例2】
【0141】
CFTR遺伝子発現のためのプロモータ選択
ベクターによって生成されるタンパク質の量を、PGKまたはEF1αプロモータによって駆動されるCFTRの発現と比較するために、プロモータのみが異なるHIVベースのレンチウイルスベクター(
図5Aおよび5B)にGFPをクローン化し(HIV-PGK-GFPおよびHIV-EF1α-GFP)、VSV-Gシュードタイプ化ベクターを生成した。4人のヒト嚢胞性線維症(CF)ドナー由来の、誘導気道の前駆細胞型である基底細胞を、MOI0.04、0.4、および4でこれらのベクターで形質導入し、フローサイトメトリーにより分析した。ほぼ同数のGFP
+細胞が、形質導入から3~5日後(
図4A)および気液界面培養条件下での分化4週間後(
図4B)に、異なるMOIのうち両ベクターで<1~88%の範囲で観察された。しかしながら、HIV-EF1α-GFPで形質導入された細胞は、HIV-PGK-GFPで形質導入された細胞と比較して、試験された各用量で高い平均蛍光強度(MFI)を示し、この差はMOI4で統計学的に有意であった(
図4A、p<0.0006および
図4B、p<0.002)。
【0142】
次に、本発明者らは、HIV-PGK-WTCFTR、HIV-EF1α-WTCFTR、またはHIV-PGK-GFPを有するCFドナー由来の基底細胞を形質導入した。これらの実験では、細胞を形質導入時に透過性フィルター上に播種し、気液界面で最低4週間分化させた。分化後に存在する形質導入細胞の数は、フローサイトメトリーによりGFP
+細胞を定量することにより推定し、<1~85%の範囲であった(
図4C)。CFTR媒介性クロライド電流をUssingチャンバーで測定した(
図4D)。最初に、上皮ナトリウムチャネル(ENaC)および非CFTRクロライドチャネルを、それぞれアミロライドおよび4,4’-ジイソチオシアノ-2,2’-スチルベンジスルホン酸(DIDS)を用いて順次阻害した。次に、CFTRをホルスコリンおよびIBMXで刺激し、短絡電流の変化を計算した(ΔIsc)。最後に、CFTRはGlyH 101(GlyH)で阻害された。試験したすべてのMOIにおいて、HIV-EF1α-WTCFTRは、HIV-PGK-WTCFTRと比較して、平均してより多くのCFTR電流を生成したが、その差は統計学的に有意ではなかった(
図4E)。HIV-EF1α-GFPを用いた条件は、各CFドナーから得られる初代細胞の数が限られているため、これらの実験には含まれなかった。
【0143】
考察
いくつかの研究は、CF表現型を修正するために機能的CFTRを発現する必要がある気道上皮細胞の割合を近似することを試みており、その結果は5~50%の範囲である。レンチウイルスベクターを用いて完全な気道上皮において50%もの高い形質導入効率を達成することは困難である。CFブタモデルを用いたin vivo研究は、導入遺伝子の発現がmRNAの定量化により検出可能なレベル以下であるとしても、ある表現型の組織修正が達成可能であることを示している(Cooneyら(2016).JCI Insight 1)を参照されたい)。気道上皮はギャップ結合を介して電気化学的に結合しているため、少数の細胞における超生理学的レベルのCFTR発現が治療可能である。
【0144】
プロモータの選択およびコドンの最適化は、導入遺伝子の発現を増加させるために本明細書において評価された2つの戦略である。哺乳動物遺伝子の発現駆動に有効であり、臨床試験で安全に使用されるPGKおよびEF1αの2つの構成的プロモータを比較した。CF気道上皮において、EF1αプロモータを用いて達成されたCFTR電流は、平均してPGKで達成されたものよりも高い傾向にあったが、統計学的有意には達しなかった。非CF細胞におけるGFP発現を定量する場合、PGKまたはEF1αでほぼ同数のGFP+細胞が得られ、EF1αプロモータで達成されたMFIは各用量で平均してより高く、最高用量で統計学的有意性に達した。形質導入から3~5日後に測定したGFP+非CF細胞の割合は、同様の形質導入プロトコールに基づいて予想されたレベル内であった。しかしながら、CF GFP+細胞の割合は、分化過程の後に存在する細胞を表し、その間の個々の細胞分裂速度の差を表しており、ある値が所定のMOIの理論上の最大値を超えている理由を説明することができる。
【0145】
レンチウイルスベクターで形質導入した初代ヒトCF気道上皮におけるWT CFTRおよびcoCFTR3を比較した場合、HIV-PGK-coCFTR3は、試験した最低ベクター用量(MOI0.1)でクロライド電流を有意に増加させた(実施例1を参照されたい)。HIV-PGK-WTCFTRによるクロライド電流の用量依存的増加が観察されたが、HIV-PGK-coCFTR3で試験した全用量では非常に類似したクロライド電流が観察された(実施例1を参照されたい)。これは、非CF細胞のみで構成される上皮によって生成されるクロライド電流が、約50%の非CFおよび50%のCF細胞からなる上皮シートによって達成され、より多くの非CF細胞が添加された場合でさえも安定であることを示す以前の研究と一致する(Shahら(2016)Proc Natl Acad Sci USA 113:5382~5387頁を参照されたい)。このことは、与えられた上皮シートの最大クロライド電流がMOI0.1で達成されることを示唆し、高MOIでは追加の増加が見られない理由を説明する。同様に、HIV-PGK-WTCFTRとHIV-EF1α-WTCFTRの差が最低用量では有意ではなかったが、最高用量ではEF1αでGFP発現が有意に高かった理由も、このことによって説明できる可能性がある。すなわち、CFTR発現の尺度としてのCFTR媒介性クロライド電流は、GFP発現に関してMFIよりも低い最大限度を有する。しかしながら、CFTR重炭酸塩電流はCFTR存在量とともに増加し続け、これはHIV-PGK-WTCFTRおよびHIV-PGK-coCFTR3で観察された用量依存的増加と一致し、2つの間の差は最高用量で有意であった(
図3C)。HIV-PGK-coCFTR3を用いてMOI0.1で非CFの範囲内で経上皮アニオン電流を達成することは、表面上皮の50%未満の形質導入が予想されることから、in vivo研究に非常に関係する(
図3D)。
【0146】
EF1αはより大きなWT CFTR媒介性クロライド電流およびGFP発現を与えたが、その配列はPGK(約0.5kb)の長さの2倍以上(約1.1kb)であることが注目された。これは、レンチウイルスベクターの力価と挿入断片の長さとの間に逆関係があるため、CFTR(約4.5kb)などの大きなcDNAと組み合わせた場合に考慮すべきことである。EF1αプロモータは、野生型CFTRまたはコドン最適化CFTR(例えば、coCFTR3)のいずれかの発現を駆動するために使用することができると考えられる。あるいは、コドン最適化CFTR(例えば、coCFTR3)は、他のプロモータ(例えば、PGK)に作動可能に連結され得る。EF1α、coCFTR3、またはその両方を組み込むことにより、レンチウイルスベクターによって標的化するのに成功する必要がある細胞の割合を低下させ、臨床的に関連するCF表現型修正を提供するのに十分な遺伝子送達を促進することが期待される。
【0147】
材料および方法
プラスミド
HIV-PGK-WTCFTRおよびHIV-EF1α-GFPをGenscriptにより合成し、HIV-PGK-GFP、HIV-EF1α-coCFTR3およびHIV-EF1α-WTCFTRのクローニングに使用した。使用されたHIVベースのベクターは、第二世代の自己不活化(SIN)であり、サイレンシングを回避することによって長期発現を改善する3’LTR内に逆配向でヒトアンキリン1エレメントを含む。
【0148】
ウイルスベクター生成
すべてのウイルスベクターはアイオワ大学のViral Vector Coreによって作製された。簡単に説明すると、TRANSIT(登録商標)-Lenti試薬(Mirus)を用いて、HEK293 FT細胞において三重トランスフェクション(psPAX2、VSV-G、およびHIVベクター)を行った。細胞を、5%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM中で培養した。ベクター含有上清を、48時間および72時間で回収した。濾過(0.2μm)後、一晩の遠心分離(7000rpm、4℃)により、ベクターを750倍濃縮した。ベクターペレットを4%D-ラクトース中に再懸濁し、-80℃で保存した。ベクターは、GFPベクターについてのフローサイトメトリーにより、またはプライマー:5’-CGACTGGTGAGTACGCCAAA-3’(配列番号10)、5’-CGCACCCATCTCTCTCCTTCT-3’(配列番号11)、およびプローブ5’-ATTTTGACTAGCGGAGGC-3’(配列番号12)を用いたCFTRベクターについてのTAQMAN(登録商標)qPCR/デジタル液滴PCRにより、HT1080細胞中で力価を測定した。
【0149】
初代ヒト気道基底細胞の形質導入および分化
すべての初代ヒト気道上皮細胞は、アイオワ大学のIn Vitro Models and Cell Culture Coreからアイオワ大学の治験審査委員会の承認を受けて入手した。移植後に廃棄されたCF肺から分離された匿名化された細胞を提供した。CFドナーから新たに単離した8×105個の初代基底細胞を、BRONCHIALIFE(商標)上皮基底培地(Lifeline)中のコラーゲン被覆した10cmプレート上に播種した。細胞が約80%コンフルエントに達したら、TRYPLE(商標)(Gibco)を用いて細胞を解離し、1×105細胞を、最終体積200μlのウイルスベクターおよびPOLYBRENE(登録商標)(2μg/ml)とともに、コラーゲン被覆ポリカーボネート膜組織培養インサート(Corning TRANSWELL(商標)、6.5mm、0.4μm孔)上に播種した。400μl規定培地(ULTROSER(商標)G)を分化プロセスを通して基底外側コンパートメントに維持した。細胞を浸漬培養条件下で48~72時間維持した。次に、頂部培地を除去し、培養物を最低4週間気液界面条件で維持した。いったん分化したら、細胞を電気生理学的分析のためにUssingチャンバー内に直接的にマウントするか、またはACCUMAX(商標)(Sigma)を用いたフローサイトメトリー分析のために解離させた。
【0150】
HBE細胞の形質導入
16HBE14o-細胞を、10%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および2mMのL-グルタミンを補充したMEM中で培養した。細胞を6ウェルプレートに播種し、約80%のコンフルエントに達するまで培養した。形質導入日に、1つのウェル中の細胞をカウントして、各MOIに必要なベクター体積を計算した。ウイルスをPOLYBRENE(登録商標)(2μg/ml)で1ml培地に希釈し、一晩インキュベートした。形質導入から3日後、フローサイトメトリー分析のために細胞を回収した。
【0151】
フローサイトメトリー
細胞を、2%FBSを含有する100μlのPBS中に、LIVE/DEAD(商標)固定遠赤色染色キット(Invitrogen)とともに再懸濁し、光から保護して30分間インキュベートした。PBS中の1mLの2%FBSで3回洗浄を行った後、細胞をATTUNE(商標)NxTフローサイトメータ(Invitrogen)中のフローサイトメトリー分析のために最終体積500μlに再懸濁した。ダブレットおよび死細胞は分析から除外した。
【0152】
短絡測定
経上皮クロライド電流測定のために、上皮培養物をUssingチャンバーにマウントし、135mMのNaCl、5mMのHEPES、0.6mMのKH2PO4、2.4mMのK2HPO4、2.2mMのMgCl2、1.2mMのCaCl2、および5mMのデキストロースを含む溶液中に浸漬し、空気で泡立てた。重炭酸塩測定のために、培養物を118.9mMのグルコン酸Na、25mMのNaHCO3、5mMのグルコン酸Ca、1mMのグルコン酸Mg、2.4mMのK2HPO4、0.6mMのKH2PO4、5mMのデキストロースで構成される塩化物を含まない溶液に浸漬し、CO2で泡立てた。アミロライド、ENaC阻害剤、およびCl-交換阻害剤であるDIDSを最終濃度100μMになるように連続的に頂端側に添加した。次に、CFTRを、それぞれ10μMおよび100μMの最終濃度で、サイクリックAMPアゴニストであるホルスコリンおよび3-イソブチル-2-メチルキサンチン(IBMX)で頂端側に活性化した。最後に、CFTR阻害剤GlyH-101(Cystic Fibrosis Foundation社)を最終濃度100μMに頂端側に添加した。CFTR活性化と阻害に応答する短絡電流(ΔISC)の変化を計算した。FRT経上皮電流測定には、Cl-勾配を用いた。ホルスコリンおよびIBMX刺激前に、頂端溶液を、NaClをNaC6H11O7に置換したものに置き換え、電流の変化を計算した(ΔIT)。
【0153】
統計
すべてのデータは、GraphPad Prism 8ソフトウェアを用いて分析された。統計学的有意性は、Dunnの多重比較検定を用いた一方向ANOVA、ランクに関する一方向ANOVA(Kruskal-Wallis検定)とDunnの多重比較検定、または必要に応じてBonferroni-Dunn修正を用いた多重t検定を用いて決定された。誤差バーは平均値±SEを表す。
【0154】
免疫組織化学
上皮を4%パラホルムアルデヒド中で4℃で一晩固定した。SuperBlock(商標)(Thermo Fischer Scientific社/Gibco社、Waltham,MA)と0.2%TRITON(登録商標)X-100を用いてブロックした。上皮を1:200(Cell Signal D20G3 K40、Danvers、MA)で希釈したアセチル化α-チューブリン抗体とともにインキュベートした後、1:600に希釈した二次抗体ALEXA FLUOR(登録商標)568(Invitrogen社、A11036、Carlsbad、CA)とともにインキュベートした。次に、コンジュゲートさせたファロイジンALEXA FLUOR(登録商標)647(Invitrogen社、A22287、Carlsbad、CA)を1:100希釈で使用した。すべてのインキュベーション工程を室温で1時間行い、各工程の間にTBSTで10分間3回洗浄した。最後に、上皮を、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(Vector Laboratories社、Burlingame、CA)を含むVECTASHIELD(登録商標)マウンティング封入剤で顕微鏡スライド上にマウントした。
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他の実施形態
開示の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には、記載された開示の様々な修飾および変形が明らかである。開示は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、請求された開示は、このような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことを理解する必要がある。実際、当業者にとって自明である開示を行うための記載されたモードの種々の変更は、開示の範囲内にあることが意図される。
【0162】
他の実施形態は、特許請求の範囲に記載されている。
【国際調査報告】