(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(54)【発明の名称】抗酸化コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20230406BHJP
A61F 9/00 20060101ALI20230406BHJP
【FI】
G02C7/04
A61F9/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022565795
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 GB2021051002
(87)【国際公開番号】W WO2021219982
(87)【国際公開日】2021-11-04
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】マルツェヴァ インナ
(72)【発明者】
【氏名】ケイアー ナンシー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ルク アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース ヴィクトリア
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB01
2H006BB07
2H006BC06
2H006BC07
2H006DA00
(57)【要約】
抗酸化特性を有するコンタクトレンズと、その製造方法と、が開示される。
当該コンタクトレンズは、密封されたコンタクトレンズパッケージ内に存在し得る。
当該密封されたコンタクトレンズパッケージは、少なくとも、a)キャビティを有するプラスチックベース部材と、b)キャビティ内のコンタクトレンズパッケージング溶液と、c)キャビティ内のコンタクトレンズパッケージング溶液内に浸された、滅菌された未着用のコンタクトレンズと、d)プラスチックベース部材と液密シールを形成するカバーと、を備え得る。一例として、未着用のコンタクトレンズは、ビタミンEが存在するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。ビタミンEは、未着用のコンタクトレンズから放出不能であり、コンタクトレンズパッケージング溶液は、1ppm未満のビタミンEを有する。ビタミンEは、未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に滅菌的に密封された、未着用の抗酸化コンタクトレンズであって、
シリコーンヒドロゲルと、
前記シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた所定量のビタミンEと、
を備え、
TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供し、
(i)ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まない、あるいは、(ii)(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性と、(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ大きい前進接触角と、を有する
ことを特徴とする未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項2】
当該抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない熱安定性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項3】
完全に水和した時、前記ビタミンEの量は、当該抗酸化コンタクトレンズ25mg当たり、10μg~1000μgである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項4】
前記対照レンズの平衡含水率%(%EWC)の5%以上である平衡含水率%(%EWC)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項5】
40%~60%の間の%EWCを有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項6】
前記対照レンズのレンズ直径の±0.2mm以内のレンズ直径を有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項7】
前記対照レンズに対して5°以下だけ大きい前進接触角を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項8】
前記脂質過酸化の減少が、少なくとも80%である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項9】
抗酸化コンタクトレンズの製造方法であって、
少なくとも1つのシリコーンモノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、を含むモノマー混合物を重合化して、レンズ形状の重合生成物を提供する工程と、
0.2mg/mL~10mg/mLのビタミンEを含む有機溶媒中に前記重合生成物を抽出する工程と、
前記重合生成物を水和して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程と、
前記コンタクトレンズをパッケージ内に滅菌的に密封する工程と、
を備え、
前記抗酸化コンタクトレンズは、
(a)TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも80%の脂質過酸化の減少を提供し、
(b)前記対照コンタクトレンズの熱安定性より大きくない熱安定性を有し、
(c)ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まない
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
密封されたコンタクトレンズパッケージであって、
a)キャビティを有するプラスチックベース部材と、
b)前記キャビティ内のコンタクトレンズパッケージング溶液と、
c)前記キャビティ内の前記コンタクトレンズパッケージング溶液内に浸漬された、滅菌された未着用のコンタクトレンズと、
d)前記プラスチックベース部材と液密シールを形成するカバーと、
を備え、
前記未着用のコンタクトレンズは、当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり少なくとも10μgのビタミンEと、0μgの生物活性剤と、が存在するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、
前記ビタミンEは、前記未着用のコンタクトレンズから放出不能であり、
前記コンタクトレンズパッケージング溶液は、1ppm未満のビタミンEを有する
ことを特徴とする密封されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項11】
前記ビタミンEは、前記未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項10に記載の密封されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項12】
前記ビタミンEは、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項10または11に記載の密封されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項13】
前記未着用のコンタクトレンズは、前記ビタミンE以外に、抗酸化特性を提供する化学剤が不在である
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項14】
前記未着用のコンタクトレンズは、
(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性、または、
(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ大きい前進接触角、または、
(a)及び(b)の両方、
を有する
ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項15】
前記未着用のコンタクトレンズは、(a)ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない熱安定性を有する
ことを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項16】
前記未着用のコンタクトレンズは、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズと比較して、一晩の洗浄後に略同一の摩擦係数を有する
ことを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項17】
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、前記ビタミンEを欠く対照レンズと同一または実質的に同一である少なくとも1つのシリコーンヒドロゲル特性を有する
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項18】
前記シリコーンヒドロゲル特性は、表面湿潤性、前進接触角、%EWC、レンズ直径、または、完全に水和したコンタクトレンズを得るために必要な水もしくは水性流体の量、である、
ことを特徴とする請求項17に記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項19】
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、請求項1乃至8のいずれかに記載の未着用抗酸化コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項10乃至18のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項20】
前記ビタミンEの量は、HCEC生存率アッセイで測定される時、前記対照コンタクトレンズに対して、インビトロでH
2O
2と接触されるヒト角膜上皮細胞(HCEC)からの活性酸素種(ROS)の生成を減少させるのに有効である
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の未着用抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項21】
前記ビタミンEは、HCEC生存率アッセイで測定される時、前記対照コンタクトレンズに対して、インビトロでH
2O
2と接触されるヒト角膜上皮細胞(HCEC)からの活性酸素種(ROS)の生成を減少させるのに有効である
ことを特徴とする請求項10乃至19のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項22】
コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御する方法であって、
前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に、滅菌された未着用のコンタクトレンズを挿入する工程
を備え、
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、完全に水和された時に当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり少なくとも20μgのビタミンEであるというビタミンEの量と、0μgの生物活性剤と、を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、放出されない
ことを特徴とする方法。
【請求項23】
当該方法は、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
当該方法は、前記ビタミンE以外に抗酸化特性を提供する化学剤を用いる工程が不在である
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御するのに使用するための組成物であって、
当該組成物は、前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に挿入するための、滅菌された未着用のコンタクトレンズの形態であり、
当該組成物は、完全に水和された時に当該組成物25mg当たり少なくとも20μgのビタミンEであるというビタミンEの量と、0μgの生物活性剤と、を有するシリコーンヒドロゲルであり、
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、当該組成物から放出されない
ことを特徴とする組成物。
【請求項27】
当該組成物は、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記ビタミンEは、当該組成物内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
当該組成物は、前記ビタミンE以外に、抗酸化特性を提供する化学剤を欠く
ことを特徴とする請求項26乃至28のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、コンタクトレンズ、特には、抗酸化特性を有するコンタクトレンズ、に関しており、更には、当該コンタクトレンズを含むパッケージ、及び、当該コンタクトレンズの製造方法に関する。抗酸化特性を有する本発明のコンタクトレンズは、抗酸化コンタクトレンズとみなされ得る。
【背景技術】
【0002】
涙液は、酵素やビタミン等の様々な抗酸化分子を含んでおり、酸化を開始する可能性のある、光、紫外線、及び化学物質、の影響から眼及び眼表面を保護する。抗酸化物質の機能は、基質よりも速い速度でフリーラジカルを捕捉して反応することである。酸化ストレスが、活性酸素種の生成と当該ストレスを排除する生物系の防御メカニズムの能力との間の不均衡によって引き起こされる。フリーラジカルは、脂質、脂肪、及びタンパク質、を含む様々な標的と相互作用し得るため、ドライアイ等の眼表面疾患を含む多くの変性疾患の病因に関与している(1)。潜在的なメカニズムは、涙液脂質層への変化と、水層を蒸発から保護する能力の低下と、を含み得る。脂質の酸化及び過酸化(LPO)の生成物も、様々なタイプの炎症における重要なステップであると考えられ、痛覚受容体、すなわち、TRPV1及びTRPA1、を活性化することも示されている(2)。
【0003】
コンタクトレンズは、マイボーム腺によって分泌され、細胞膜に由来する、様々な脂質に結合する。これらの脂質は、脂質過酸化、及び、LPO生成物の生成、を受ける。抗酸化特性を備えたコンタクトレンズは、そのような脂質を過酸化から保護し得て、LPO生成物を還元し、潜在的に痛み受容体の活性化を最小化し、コンタクトレンズの快適さを向上させ得る。従って、このような抗酸化特性を提供するコンタクトレンズについて、当業界でニーズが存在する。コンタクトレンズ、特にはシリコーンヒドロゲルレンズ、によって提供される他の特性に有意な影響を与えることなく、そのような抗酸化特性を提供することが、望ましいであろう。
【0004】
背景技術の文献1は、「Wakamatsu TH, Dogru M, Tsubota K. Tearful relations: oxidative stress, inflammation and eye diseases. Arg Bras Oftalmol 2008」である。
【0005】
背景技術の文献2は、「Seung-In Choi et al., Are Sensory TRP Channels Biological Alarms for Lipid Peroxidation? Int. J. Mol. Sci. 2014」である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の特徴は、抗酸化特性を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供することである。
【0007】
本発明の更なる特徴は、シリコーンヒドロゲルであって、目に着用または置かれる時に抗酸化特性を有する、未着用の滅菌されたコンタクトレンズを提供することである。
【0008】
本発明の更なる特徴は、生物活性剤を放出することなく、抗酸化特性を提供する添加剤を放出することもない、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供することである。
【0009】
本発明の更なる特徴は、抗酸化特性を提供し、完全に水和され、ビタミンEが存在しない同一のタイプのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズと比較して完全に水和するために必要とされる水性液体の量を有意に減少させることがない、ビタミンEがその中に存在するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供することである。
【0010】
本発明の更なる特徴及び利点が、以下の説明において部分的に記載され、当該説明から部分的に明らかになる、あるいは、本発明の実践によって学習され得る。本発明の目的及び他の利点は、明細書及び添付の特許請求の範囲で特に指摘される要素及び組み合わせによって、実現及び達成される。
【0011】
これら及び他の利点を達成するために、本発明の目的に従って、本明細書で具体化されて且つ広く説明されるように、本発明は、部分的に、密閉されたコンタクトレンズパッケージに関する。当該密封されたコンタクトレンズパッケージは、少なくとも、a)キャビティを有するプラスチックベース部材と、b)前記キャビティ内のコンタクトレンズパッケージング溶液と、c)前記キャビティ内の前記コンタクトレンズパッケージング溶液内に浸漬された、滅菌された未着用のコンタクトレンズと、d)前記プラスチックベース部材と液密シールを形成するカバーと、を備える。更に、前記未着用のコンタクトレンズは、当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり少なくとも10μgまたは少なくとも20μgのビタミンEと、0μgの生物活性剤(ビタミンEは、本発明の目的上、生物活性剤とはみなされない)と、が存在するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。前記ビタミンEは、前記未着用のコンタクトレンズから放出不能である。前記コンタクトレンズパッケージング溶液は、1ppm未満のビタミンEを有する。
【0012】
本発明は、更に、パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に滅菌的に密封された、未着用の抗酸化コンタクトレンズに関する。当該コンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルと、前記シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた所定量のビタミンEと、を備え、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する。更に、当該抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まない。
【0013】
本発明は、更に、パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に滅菌的に密封された、未着用の抗酸化コンタクトレンズに関する。当該コンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルと、前記シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた所定量のビタミンEと、を備え、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する。更に、当該抗酸化コンタクトレンズは、(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性と、(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ大きい前進接触角と、を有する。
【0014】
本発明は、更に、パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に滅菌的に密封された、未着用の抗酸化コンタクトレンズに関する。当該コンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルと、前記シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた10μg~1000μgのビタミンEと、を備える。また、当該抗酸化コンタクトレンズは、(i)(a)ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まない、及び、選択的に(b)ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない(略同等の)熱安定性を有する、並びに/または、(ii)(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性と、(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ大きい前進接触角と、を有する。従って、当該抗酸化コンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルと、前記シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた10μg~1000μgのビタミンEと、を備え得て、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない(略同等の)熱安定性を有し得て、ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まない可能性がある。
【0015】
本発明は、更に、コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御する方法に関する。当該方法は、前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に、滅菌された未着用のコンタクトレンズを挿入する工程を備え得る。前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、所定量のビタミンEの量を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。例えば、完全に水和された時に当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり、少なくとも10μgまたは少なくとも20μgのビタミンEが存在し得るが、生物活性剤は0μgである。ここで説明されるビタミンEの他の量も、代わりに使用され得る。当該方法において、ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、放出されない。本発明は、更に、そのような方法に使用するためのシリコーンヒドロゲル組成物を提供し、当該組成物は、滅菌された未着用のコンタクトレンズの形態である。
【0016】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明との両方が、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明の更なる説明を提供することが意図されている、ということが理解されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
抗酸化特性を有するコンタクトレンズ、及び、それらの製造方法が、本明細書に記載される。1または複数の抗酸化特性を有する、1または複数のコンタクトレンズが、本明細書では抗酸化コンタクトレンズと称される。
【0018】
本発明において、抗酸化コンタクトレンズは、好ましくは、当該コンタクトレンズと接触し得る涙液膜からの脂質の過酸化を減少させ、これにより、少なくとも一部の着用者においてコンタクトレンズの快適性を改善し得る。
【0019】
本発明において、抗酸化特性を有するコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲル内にビタミンEが存在するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。ビタミンEは、シリコーンヒドロゲル全体に均一に分散され得る。選択肢(オプション)として、ビタミンEは不均一に分散されてもよい。例えば、ビタミンEは、コンタクトレンズの片面に、または、コンタクトレンズの両面(すなわち、後面及び前面)に、比較的多量に存在し得る。
【0020】
ビタミンEの成分に関して、ビタミンEは、ビタミンEのトコフェロール及びトコトリエノール、並びに/または、それらの塩、並びに/または、それらの誘導体、の任意の組み合わせを含み得る。ビタミンEのトコフェロールには、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及び、δ-トコフェロールがある。ビタミンEのトコトリエノールには、a-トコトリエノール、b-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、及び、δ-トコトリエノールがある。ビタミンEは、合成であり得る、または、天然に存在し得る。天然に存在するα-トコフェロールは、RRR-α-トコフェロールまたはd-αトコフェロールと呼ばれ得る。合成のα-トコフェロールは、all-rac-α-トコフェロールまたはdl-α-トコフェロールと呼ばれ得る。ビタミンEの市販の誘導体は、α-トコフェロールアセテート、α-トコフェロールスクシナート、及び、α-トコフェロールニコチネートを含む。一実施例では、ビタミンEは、少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または、99重量%、のα-トコフェロールを含む。
【0021】
本明細書において、「実施例」、「特定の実施例」、「態様」、「実施形態」、または、それらと同様の語句への言及は、抗酸化コンタクトレンズ、その構成要素、または、抗酸化コンタクトレンズの製造方法、の1または複数の特徴を紹介することが意図されている(文脈に応じて)。それらは、特定の特徴の組み合わせが相互に排他的でない限り、あるいは、文脈がそうでないことを示さない限り、前述されるまたは後述される、実施例、態様、実施形態(すなわち、特徴)の任意の組み合わせと組み合わされ得る。更に、本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明示的にそうでないことを示さない限り、複数の指示対象(例えば、少なくとも1または複数)を含む。従って、例えば、「a」「コンタクトレンズ」という言及は、単一のレンズ、及び、同一または異なる2以上のレンズ、を含む。
【0022】
シリコーンヒドロゲル内またはシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ内に存在するビタミンEは、共有結合していない。ビタミンEは、コンタクトレンズ内に、埋め込まれている、捕捉されている、分散されている、吸収されている、及び/または、(単純に)位置している。本明細書で使用される時、「シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた」または「シリコーンヒドロゲル内に存在する」という語句は、共有結合などによって化学的に結合されることとは異なり、疎水性相互作用などによってビタミンEがシリコーンヒドロゲルポリマーマトリックス内に物理的に捕捉されて保持される、ということを意味することが意図されている。
【0023】
ビタミンEは、以下に記載されるように、コンタクトレンズ材料が硬化された後の溶媒抽出工程中に、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ内に捕捉され得る。
【0024】
ビタミンEは、非放出性である。これは、ビタミンE自体が、オートクレーブ中、パッケージング溶液中での保管中、または、レンズ着用(装用)中、コンタクトレンズから放出されないことを意味する。従って、オートクレーブ前、オートクレーブ直後、その1日後、その30日後、その60日後、または、その120日後に、コンタクトレンズが浸漬されたパッケージング溶液は、当該パッケージング溶液中において、1ppm未満のビタミンEを有するか、0.1ppm未満のビタミンEを有するか、または、0ppmのビタミンEを有する。ビタミンEが、オートクレーブ中または保存中にコンタクトレンズから放出されるか否かは、以下の実施例1に記載のHPLC法を用いて、パッケージング溶液内でのビタミンEの存在を試験することによって、判定され得る。ビタミンEが、着用中にコンタクトレンズから放出され得るか否かは、3mLの5体積%のエタノール水溶液を含む容器内にレンズを35℃で3時間入れて、125rpmで混合することによって、予測され得る。次いで、当該エタノール溶液が、実施例1に記載の方法を用いて、ビタミンEの存在について、HPLCによって試験される。1ppm未満のビタミンEが検出される場合、コンタクトレンズ内のビタミンEは、非放出性と見なされる。
【0025】
抗酸化コンタクトレンズは、好適には、シリコーンヒドロゲル材料から作られる、あるいは、シリコーンヒドロゲル材料である。
【0026】
シリコーンヒドロゲル材料は、典型的には、少なくとも1つのシロキサンモノマー及び少なくとも1つの親水性モノマー、または少なくとも1つの親水性ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む重合性組成物(すなわち、モノマー混合物)を硬化することによって形成される。本明細書で使用される場合、「シロキサンモノマー」という用語は、少なくとも1つのSi-O基、及び、少なくとも1つの重合性基を含む分子である。コンタクトレンズ組成物において有用なシロキサンモノマーは、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第8,658,747号及び米国特許第6,867,245号を参照)。(本明細書において言及される全ての特許及び刊行物は、当該参照によりその全体の内容が本明細書の一部に組み込まれる(incorporated by reference)。)幾つかの実施例では、重合性組成物は、少なくとも、10重量%、20重量%または30重量%から、約40重量%、50重量%、60重量%または70重量%までの、シロキサンモノマーの総量を含む。別段の指定が無い限り、本明細書で使用される場合、重合性組成物のある成分の所与の重量パーセント(重量%)は、当該重合性組成物中の全ての重合性成分及びIPNポリマー(以下で更に説明する)の総重量に対するものである。最終的なコンタクトレンズ製品には取り込まれない成分、例えば希釈剤など、が寄与する重合性組成物の重量は、重量%の計算には含まれない。
【0027】
特定の実施例では、重合性組成物は、親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、「親水性ビニルモノマー」という用語は、アクリル基の一部では無いその分子構造中に重合性の(重合可能な)炭素-炭素二重結合(すなわち、ビニル基)を有する、シロキサンを含まない(すなわち、Si-O基を含まない)親水性モノマーである。当該ビニル基の炭素-炭素二重結合は、フリーラジカル重合下で重合可能なメタクリレート基に存在する炭素-炭素二重結合よりも反応性が低い。本明細書で使用される場合、「アクリル基」という用語は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、等に存在する重合性基である。従って、炭素-炭素二重結合は、アクリレート基及びメタクリレート基にも存在するが、本明細書で使用される場合、そのような重合性基はビニル基とはみなされない。更に、本明細書で使用されるように、標準的な振とうフラスコ法を使用して視覚的に判定されるように、少なくとも50グラムのモノマーが20℃で1リットルの水に完全に溶解する場合(すなわち、水に約5%溶解する場合)、当該モノマーは「親水性」である。様々な実施例において、親水性ビニルモノマーは、N-ビニル-N-メチルアセトアミド(VMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、1,4-ブタンジオールビニルエーテル(BVE)、エチレングリコールビニルエーテル(EGVE)、ジエチレングリコールビニルエーテル(DEGVE)、または、それらの任意の組み合わせ、である。一実施例では、重合性組成物は、少なくとも、10重量%、15重量%、20重量%または25重量%から、約45重量%、60重量%または75重量%までの、親水性ビニルモノマーを含む。本明細書で使用される場合、重合性組成物中の特定のクラスの成分(例えば、親水性ビニルモノマー、シロキサンモノマー、等)の所与の重量パーセントは、当該クラスに該当する当該組成物中の各成分の重量%の合計に等しい。従って、例えば、5重量%のBVEと25重量%のNVPとを含み他の親水性ビニルモノマーを含まない重合性組成物は、30重量%の親水性ビニルモノマーを含むと称される。一実施例では、親水性ビニルモノマーは、ビニルアミドモノマーである。例示的な親水性ビニルアミドモノマーは、VMA及びNVPである。特定の実施例では、重合性組成物は、少なくとも25重量%のビニルアミドモノマーを含む。別の特定の実施例では、重合性組成物は、約25重量%から約75重量%までの、VMA、NVP、またはそれらの組み合わせ、を含む。重合性組成物に含まれ得る追加の親水性モノマーは、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、エトキシエチルメタクリルアミド(EOEMA)、エチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(EGMA)、及び、それらの組み合わせ、である。
【0028】
親水性モノマーに対して付加的または代替的に、重合性組成物は、非重合性親水性ポリマーを含み得て、これは、非重合性親水性ポリマーがシリコーンヒドロゲルポリマーマトリックスと相互貫入した相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)を含むポリマーレンズ本体に帰結する。この実施例では、非重合性親水性ポリマーは、IPNポリマーと呼ばれ、これは、コンタクトレンズの内部湿潤剤として作用する。対照的に、重合性組成物中に存在するモノマーの重合によって形成されるシリコーンヒドロゲルネットワーク内のポリマー鎖は、IPNポリマーとはみなされない。IPNポリマーは、例えば約50,000~約500,000ダルトンの高分子量親水性ポリマーであり得る。特定の実施例では、IPNポリマーは、ポリビニルピロリドン(PVP)である。他の実施例では、重合性組成物は、ポリビニルピロリドンまたは他のIPNポリマーを実質的に含まない。
【0029】
重合性組成物は、少なくとも1つの架橋剤を更に含み得る。本明細書で使用される場合、「架橋剤」という用語は、少なくとも2つの重合性基を有する分子である。従って、架橋剤は、2以上のポリマー鎖上の官能基と反応し得て、1つのポリマーを別のポリマーに架橋し得る。当該架橋剤は、アクリル基、ビニル基、または、アクリル基とビニル基との両方、を含み得る。特定の実施例では、架橋剤は、シロキサン部分を含まない、すなわち、非シロキサン架橋剤である。シリコーンヒドロゲル重合性組成物での使用に適した様々な架橋剤が、当該技術分野で知られている(例えば、米国特許第8,231,218号を参照。当該特許は、当該参照により、本明細書に組み込まれる)。適切な架橋剤の例は、トリエチレングリコールジメタクリレートやジエチレングリコールジメタクリレート等の低級アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(低級アルキレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、低級アルキレンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテルやジエチレングリコールジビニルエーテルや1,4-ブタンジオールジビニルエーテルや1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等のジビニルエーテル、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン及びトリビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、フタル酸トリアリル、1,3-ビス(3-メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、ジアリルフタレート、並びに、それらの組み合わせ、を含むが、これらに限定されない。
【0030】
当業者に理解されるように、重合性組成物は、重合開始剤、UV吸収剤、着色剤、脱酸素剤、連鎖移動剤、等のうちの1または複数など、コンタクトレンズ配合に従来から使用されている追加の重合性または非重合性の成分を含み得る。幾つかの実施例では、重合性組成物は、光学的に透明なレンズが得られるように、当該重合性組成物の親水性成分と疎水性成分との間の相分離を防止または最小化する量で有機希釈剤を含み得る。コンタクトレンズ配合に一般的に使用される希釈剤は、ヘキサノール、エタノール、及び/または、他のアルコール、を含む。他の実施例では、重合性組成物は、有機希釈剤を含まないか、または、実質的に含まない(例えば、500ppm未満)。このような実施例では、ポリエチレンオキシド基、ペンダントヒドロキシル基、または他の親水性基、等の親水性部分を含むシロキサンモノマーの使用が、重合性組成物に希釈剤を含めることを不要にし得る。重合性組成物に含まれ得るこれらの成分及び追加の成分の非限定的な例が、米国特許第8,231,218号に提供されている。
【0031】
使用され得るシリコーンヒドロゲルの非限定的な例は、コンフィルコンA、ファンフィルコンA、ステンフィルコンA、セノフィルコンA、セノフィルコンC、ソモフィルコンA、ナラフィルコンA、デレフィルコンA、ナラフィルコンA、ロトラフィルコンA、ロトラフィルコンB、バラフィルコンA、サムフィルコンA、ガリフィルコンA、アスモフィルコンA、を含む。
【0032】
選択肢(オプション)として、本発明のコンタクトレンズを形成するシリコーンヒドロゲルは、ビタミンEが当該コンタクトレンズに添加される前において、熱安定性である別の言い方をすれば、シリコーンヒドロゲルは既に熱安定性であって、シリコーンヒドロゲル中に存在する時のビタミンEは、当該シリコーンヒドロゲルの熱安定性を変化させない。別の言い方をすれば、抗酸化コンタクトレンズは、(a)ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズよりも大きくない熱安定性を有する.
【0033】
従って、本発明の抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEの不在下で熱安定性である。本発明の目的のために、コンタクトレンズは、一般に、パッケージング溶液内でのオートクレーブ処理後の完全に水和したコンタクトレンズの直径が、オートクレーブ前の完全に水和したコンタクトレンズの直径の±0.2mm以内であれば、熱安定性があるとみなされる。本明細書で使用される場合、コンタクトレンズの直径は、弦の直径(chord diameter)を指す。「熱安定性」という用語は、シリコーンヒドロゲル材料自体、並びに、化学剤(薬剤)、放出可能ポリマーまたは任意の他の有益な添加剤など、シリコーンヒドロゲル材料内に埋め込まれ得る任意の成分、のオートクレーブ安定性を指す。埋め込まれるコンタクトレンズ成分は、オートクレーブ処理中に酸化したり劣化したりする場合、熱安定性を欠くとみなされる。一実施例では、本発明の抗酸化コンタクトレンズは、対照コンタクトレンズ(ビタミンEが存在しない)よりも大きくない熱安定性を有する。
【0034】
別の実施例では、本発明の抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEの不在下で熱安定性であるシリコーンヒドロゲル材料を含む。
【0035】
更なる実施例において、本発明の抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEの不在下で熱安定性であってカロテノイドを含まないシリコーンヒドロゲル材料を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、「対照レンズ」という用語は、当該レンズ中にビタミンEが存在しないコンタクトレンズを指すが、他の点では、同一のコンタクトレンズ配合(本明細書では「重合性組成物」とも称される)を用いて同一の製造プロセスを受けて製造されたそれが比較されるべきコンタクトレンズ(すなわち、試験レンズ)と同一である。以下に記載されるように、摩擦係数(CoF)について試験される場合、対照レンズもまた、CoF測定の前に、同一の一晩の洗浄手順を受ける。
【0037】
本発明のコンタクトレンズの抗酸化特性に関して、当該特性は、当該コンタクトレンズが着用される時の涙膜中の脂質の過酸化の減少によって証明され得る。
【0038】
従って、本発明では、抗酸化コンタクトレンズは、涙膜中の脂質の過酸化を減少させる量のビタミンEを含むことが好ましい。当該減少を確認及び/または定量化できる1つの方法は、存在するモデル脂質、例えばリノール酸、ω-6必須脂肪酸、O-アシル-ω-ヒドロキシ脂肪酸、または、1または複数の遊離脂肪酸、を測定または検討することである。一実施例において、コンタクトレンズに埋め込まれるビタミンEの量は、TBARSアッセイ(チオバルビツール酸反応性物質アッセイ)で測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、脂質過酸化の減少を、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%(数の上で(in number))、提供するのに有効である。TBARSアッセイは、主要な脂質酸化生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)のレベルを測定することによって生物系(生物学的システム)の酸化ストレスを試験するために使用されている。
【0039】
抗酸化コンタクトレンズは、酸化ストレスを受けたヒト角膜上皮細胞(HCEC)からの活性酸素種(ROS)の生成を減少させる量のビタミンEを含み得る。ROSの減少を確認及び/または定量化できる1つの方法は、実施例6に記載されるように、HCEC生存率を用いて、インビトロでH2O2と接触されるHCECからのROSの生成を比較することによる。一実施例では、コンタクトレンズに埋め込まれるビタミンEの量は、HCEC生存率アッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、ROS生成の減少を、少なくとも10%、25%、50%、または75%((数の上で(in number))、提供するのに有効である。
【0040】
選択肢(オプション)として、抗酸化コンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルと、当該シリコーンヒドロゲル中に存在する(例えば埋め込まれた)少なくとも10μg、15μg、20μg、25μg、50μgまたは100μから約500μg、750μgまたは1000μgまで存在するビタミンEと、を含む。
【0041】
選択肢(オプション)として、シリコーンヒドロゲル中に存在する(例えば埋め込まれた)ビタミンEの量は、完全に水和された時のシリコーンヒドロゲルの25mg当たり、少なくとも10μg、15μg、20μg、25μg、50μgまたは100μgから、約500μg、750μgまたは1000μgまで、である(例えば、完全に水和された時のシリコーンヒドロゲルの25mg当たり、10μgから1000μgまでである)。従って、例えば、完全に水和された時に50μgのビタミンEを有して20mgの重量であるシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、シリコーンヒドロゲルの25mg当たり、62.5μgのビタミンEを含むものとみなされる。
【0042】
ビタミンEは疎水性化合物であるため、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ中のビタミンEの量を増やすと、特にレンズ表面に眼科的に許容可能な表面湿潤性を与えるための後硬化表面処理を欠くシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの場合、当該コンタクトレンズの表面湿潤性が低下する可能性がある。表面湿潤性の低下は、感染症や眼疾患を治療するための薬物の送達など、限られた目的のために着用されるコンタクトレンズにとっては、受容可能であり得る。但し、湿潤性の低下は、着用者の視力を矯正するために日常的に着用されることが意図されたコンタクトレンズにとっては、望ましくない。
【0043】
従って、本発明の一態様として、本発明は、脂質の過酸化を減少させるが、眼科的に許容可能な表面湿潤性を有する、抗酸化コンタクトレンズに関する。
【0044】
選択肢(オプション)として、抗酸化コンタクトレンズは、硬化後の表面処理が不在であっても、眼科的に許容可能な表面湿潤性を有する。
【0045】
選択肢(オプション)として、抗酸化コンタクトレンズの表面は、対照レンズと比較して10°以下または5°以下だけ大きい前進接触角を有する。当該前進接触角は、実施例2に記載されるように、キャプティブバブル法を用いて測定される。
【0046】
示されるように、本発明の任意の選択肢または実施形態において、抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEによって減衰される放出プロフィールを有するような生物活性剤を含まない(そして、示されるように、本発明のコンタクトレンズ中に存在するビタミンEは、そのような生物活性剤とはみなされない)。
【0047】
従って、一態様として、未着用のコンタクトレンズは、(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性を有する、(b)対照レンズに対して10°以下だけ大きい前進接触角を有する、または、(a)及び(b)の両方を有する。
【0048】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料へのビタミンEの添加はまた、レンズが吸収できる水の量を減少させ得て、それによって、コンタクトレンズの平衡含水率(%EWC)を減少させ得る。本明細書で使用される場合、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズの%EWCは、実施例2に記載された方法を用いて判定される。特定の実施例では、抗酸化レンズの%EWCが、ビタミンEの添加による影響を最小限に抑えられている。特定の実施例では、抗酸化コンタクトレンズは、対照レンズの%EWCの、10%以上、または5%以上、である%EWCを有する。幾つかの実施例では、抗酸化コンタクトレンズは、少なくとも、25%、30%、または40%から、約60%、70%、または80%までの、%EWCを有し得る。様々な実施例において、抗酸化コンタクトレンズは、約25~45%、約40~55%、または、約50~75%、の%EWCを有し得る。特定の実施例において、抗酸化コンタクトレンズは、40%~60%の間の%EWCを有する。
【0049】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズ材料への比較的多量のビタミンEの添加は、対照レンズのレンズ直径と比較して、レンズ直径の増大に帰結し得る。幾つかの実施例では、抗酸化レンズの直径は、対照レンズの直径の±0.5mm以内、または±0.2mm以内、である。
【0050】
選択肢(オプション)として、本発明の未着用のコンタクトレンズは、ビタミンE以外に、抗酸化特性を提供する化学剤が不在である。
【0051】
選択肢(オプション)として、本発明において、抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズと比較して、一晩の洗浄後に略同一の摩擦係数を有する。
【0052】
「摩擦係数」という用語は、CETR社の万能トライボメータ(Universal Micro-Tribometer(UMT))または同等の装置を使用して測定される、コンタクトレンズの動的摩擦係数(CoF)を指す。コンタクトレンズの動的摩擦係数(CoF)は、好適には、CETR社の万能トライボメータ(Universal Micro-Tribometer(UMT))及びCETR社のUMT多検体試験システムソフトウェア(UMT Multi-Specimen Testing Systemソフトウェア)を使用して、周囲温度において、ピンオンディスクサンプルマウントを用いて、測定される。裏面に接着剤が付された2.5インチの円形のポリエチレンテレフタレートフィルムが、回転ディスクに接着される。当該回転ディスクが、前記UMTの取付リング上に取り付けられる。各コンタクトレンズが、ツイーザ(ピンセット)を用いてピックアップされて、サンプルホルダ上に取り付けられる。100μLのPBSが、レンズホルダの下方で、PET基板上に分配される。ピン先端のレンズの中心が、PBSで濡らされたPETフィルムに対して押し付けられて、約20℃から25℃の間の温度で、0.5mm/秒の一定の摺動速度で0.5gの一定荷重下で12秒間、移動される。CoF値が、前記ソフトウェアによって計算され、各レンズの平均値(n=3)が判定され得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「一晩洗浄」という用語は、レンズがパッケージング溶液から取り出されて、20℃から25℃(すなわち室温)で約15時間、4mLのPBSに浸される、という洗浄である。
【0054】
選択肢(オプション)として、本発明において、抗酸化コンタクトレンズは、対照レンズと同一または略同一(15%以内、10%以内、5%以内、または、1%以内)の摩擦係数を有する。選択肢(オプション)として、抗酸化コンタクトレンズは、少なくとも0.25、少なくとも0.5、少なくとも0.75、少なくとも1.0、少なくとも1.5、約0.25から約1.8まで、約0.5から約1.8まで、または、約0.5から約1.5まで、の摩擦係数(一晩洗浄後)を有する。
【0055】
本発明では、選択肢(オプション)として、コンタクトレンズ中にビタミンEが存在することに起因して望ましい抗酸化特性と共に、コンタクトレンズの特性のバランスが取られる。ビタミンEの量は、更に優れた抗酸化特性を達成するために多くされ得るが、本発明の発明者は、ビタミンEの量が多すぎる場合、コンタクトレンズのシリコーンヒドロゲル特性、例えば、表面湿潤性に関する特性、前進接触角に関する特性、%EWCに関する特性、レンズ直径に関する特性、完全に水和したコンタクトレンズを得るための水または水性流体の量に関する特性、等を有意に変えてしまい得ることを知見した。必須ではないが、好適には、本発明の抗酸化コンタクトレンズは、対照レンズ(同一のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるがビタミンEは存在しない)と同一または実質的に同一のシリコーンヒドロゲル特性の1または複数を有する。「実質的に同一」とは、測定された1つの特性、あるいは、測定された2以上の特性において、15%以内、10%以内、5%以内、または、1%以内、を意味する。
【0056】
抗酸化コンタクトレンズを製造するために、従来の方法を利用され得る。典型的には、重合可能なシリコーンヒドロゲル組成物が、コンタクトレンズの前面を画定する凹面を有する雌型部材内に分配される。コンタクトレンズの後面、すなわち角膜接触面、を画定する凸面を有する雄型部材が、前記雌型部材と組み合わされて、コンタクトレンズ型アセンブリが形成され、これがUVまたは熱硬化条件などの硬化条件にさらされる。当該硬化条件下で、硬化性組成物が、ポリマーレンズ本体に形成される。雌型部材及び雄型部材は、非極性型または極性型であり得る。型アセンブリは、分解され(すなわち脱型され)、高分子レンズ本体が、当該型から取り出されて、エタノールなどの有機溶媒と接触させられて、当該レンズ本体から未反応成分が抽出される。ビタミンEは、当該抽出工程で使用される有機溶媒に含まれ得る。当該抽出後、レンズ本体は、水溶液中で水和される。ビタミンEが抽出溶媒に含まれている場合、水和工程において当該溶媒が水に置き換わり、それによってコンタクトレンズが水和するが、ビタミンEは得られるシリコーンヒドロゲル内に埋め込まれたままである。シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを製造する例示的な方法は、米国特許第8,865,789号に記載されている。
【0057】
本発明におけるコンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、特にはソフトシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ、と考えることができる。本開示のコンタクトレンズパッケージに密封されるコンタクトレンズは、任意のレンズ着用モダリティであり得る。レンズ装用モダリティとは、レンズを外さずに連続着用できる昼夜の数を指す。一実施例では、本開示のコンタクトレンズパッケージに密封されるコンタクトレンズは、1日使い捨てレンズである。1日使い捨てレンズは、約12時間または約16時間の連続着用まで、1回の使用が指示されており、1回の使用後に廃棄される必要がある。別の実施例では、本開示のコンタクトレンズパッケージに密封されるコンタクトレンズは、日常着用レンズである。日常着用レンズは、起きている時間中、典型的には約12時間~約16時間、着用(装着)されて、就寝前に外される。日常着用レンズは、典型的には、非使用の時間中にレンズを洗浄及び消毒するためのコンタクトレンズケア液を含むコンタクトレンズケース内に保管される。日常着用レンズは、典型的には、最大30日間の着用後に、廃棄される。更に別の実施例では、コンタクトレンズは、長期着用レンズである。長期着用レンズは、典型的には、最大で、6日間、14日間、または、30日間、連続して着用される。
【0058】
本開示のコンタクトレンズパッケージ内に密封されるパッケージング溶液は、任意の従来のコンタクトレンズ適合溶液であり得る。一実施例では、パッケージング溶液は、緩衝剤及び/または等張化剤の水溶液を含むか、それらからなるか、または本質的にそれらからなる。別の実施例では、パッケージング溶液は、1または複数の追加の抗菌剤、及び/または快適剤、及び/または親水性ポリマー、及び/または界面活性剤、及び/またはレンズがパッケージに付着するのを防止する他の添加剤、などの追加の助剤を含む。パッケージング溶液は、約6.8または7.0から約7.8または8.0までの範囲のpHを有し得る。一実施例では、パッケージング溶液は、リン酸緩衝液またはホウ酸緩衝液を含む。別の実施例では、パッケージング溶液は、塩化ナトリウムまたはソルビトールから選択される等張化剤を、約200~400mOsm/kg、典型的には約270mOsm/kg~約310mOsm/kg、の範囲に浸透圧を維持する量で含む。
【0059】
コンタクトレンズパッケージに関して、このパッケージは、コンタクトレンズ及びパッケージング溶液を保持するように構成されたキャビティと、当該キャビティの周りに外向きに延在するフランジ領域と、を含むプラスチックベース部材を備え得る。密封されたコンタクトレンズパッケージを提供するために、取り外し可能なホイルがフランジ領域に取り付けられる。そのようなコンタクトレンズパッケージは、一般に「ブリスターパック」と呼ばれ、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第7,426,993号)。他の実施例では、コンタクトレンズパッケージは、少なくとも2日間の日常着用が指示されたコンタクトレンズを含み、パッケージは、着用後の一晩の保管のためのレンズの配置戻しのために、最初の開封後に再密封できるように構成されている。例えば、コンタクトレンズパッケージは、コンタクトレンズ及びパッケージング溶液を保持するように構成されたキャビティと、再密封可能なカバーと、を含むプラスチックベース部材を備え得る。本明細書で使用される場合、「再密封可能なカバー」とは、コンタクトレンズパッケージが開封された後にベース部材と共に液密シールまたはこぼれ防止シールを形成するように構成されたものである。例えば、プラスチックベース部材は、再密封可能なカバーとして機能するキャップ上の適合性のあるネジ部のセットと係合するための複数のネジ部を含み得る。このような構成は、コンタクトレンズケアケースで一般的に使用されている(例えば、米国特許第3,977,517号)。選択肢(オプション)として、コンタクトレンズパッケージは、二重の目的を果たし得る、すなわち、滅菌された未着用のコンタクトレンズ用のコンタクトレンズパッケージとして、及び、その後の着用レンズ用のコンタクトレンズキャリングケースとして、の両方である。
【0060】
当該密封されたコンタクトレンズパッケージを製造するために従来の製造方法が利用され得ることが理解されるであろう。従って、本開示の一態様は、コンタクトレンズパッケージを製造する方法であって、レセプタクル(容器)内に未着用のコンタクトレンズとコンタクトレンズパッケージング溶液とを入れる工程と、レセプタクル上にカバーを置く工程と、レセプタクル上でカバーを密封する工程と、を含む。一般に、レセプタクルは、単一のコンタクトレンズと、当該コンタクトレンズを完全に覆うのに十分な量、典型的には約0.5~1.5ml、のパッケージング溶液と、を受容するように構成される。レセプタクルは、ガラスやプラスチックなどの、任意の適切な材料から製造され得る。一実施例では、レセプタクルは、コンタクトレンズ及びパッケージング溶液を保持するように構成されたキャビティと、当該キャビティの周りに外向きに延在するフランジ領域と、を含むプラスチックベース部材を備え、カバーは、密封されたコンタクトレンズパッケージを提供するためにフランジ領域に取り付けられる取り外し可能なホイルを有する。取り外し可能なホイルは、ヒートシールまたは接着などの、任意の従来の手段によって密封(シール)され得る。別の実施例では、レセプタクルは、複数のネジ部を含むプラスチックベース部材の形態であり、カバーは、当該ベース部材のネジ部と係合するための適合性のあるネジ部のセットを含むプラスチックキャップ部材を含み、それによって再密封可能なカバーを提供する。再密封可能なパッケージを提供するために、他のタイプのパッケージングも利用され得ることを理解されたい。例えば、コンタクトレンズパッケージは、レセプタクルの適合する特徴部と係合して締まり嵌めを形成する特徴部を含むプラスチックカバーを含み得る。密封されたコンタクトレンズパッケージを製造する方法は、密封されたコンタクトレンズパッケージをオートクレーブすることによって未着用のコンタクトレンズを滅菌する工程を更に含み得る。オートクレーブ処理工程は、一般に、密封されたコンタクトレンズパッケージを少なくとも121℃の温度に少なくとも20分間さらす工程を含む。
【0061】
示されるように、抗酸化コンタクトレンズは、典型的には、パッケージング溶液内にパッケージ(包装)される。パッケージング溶液は、リン酸緩衝生理食塩水またはホウ酸緩衝生理食塩水などの緩衝生理食塩水を含み得る。パッケージング溶液は、選択的に、快適剤、親水性ポリマー、レンズが容器に付着する(くっつく)のを防ぐ添加剤、及び/または、キレート剤、などの追加成分を含み得る。幾つかの例では、パッケージング溶液は、多糖類(例えば、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、または、ポリビニルピロリドンなどの他の高分子量ポリマー、を含み得る。それらは、眼科用溶液及びコンタクトレンズパッケージング溶液において快適ポリマーまたは増粘剤として、一般的に使用されている。
【0062】
抗酸化コンタクトレンズは、未使用で提供され(すなわち、患者によって以前に使用されていない、新しいコンタクトレンズである)、パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に密封される。パッケージは、ブリスターパッケージ、ガラスバイアル、または、他の適切な容器、であり得る。パッケージは、パッケージング溶液と、未着用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと、を収容するためのキャビティを有するベース部材を備える。密封されたパッケージは、オートクレービング、ガンマ線放射、電子ビーム放射、紫外線放射、等のような、熱または蒸気を含む所定量の放射線滅菌によって、滅菌され得る。
【0063】
特定の実施例では、パッケージング(包装)された抗酸化コンタクトレンズは、オートクレーブによって滅菌される。
【0064】
最終製品は、眼科的に許容可能な表面湿潤性を有する、滅菌されてパッケージング(包装)された抗酸化シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。特定の実施例では、本発明は、パッケージング溶液及びコンタクトレンズを収容するためのキャビティを有するベース部材と、当該ベース部材の当該キャビティ内の未着用のシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズと、前記ベース部材の前記キャビティ内のパッケージング溶液と、を備えたコンタクトレンズパッケージを提供する。
【0065】
本発明の別の態様は、コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御する方法に関する。当該方法は、前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に、滅菌された未着用のコンタクトレンズを挿入する工程、を備え得る。滅菌された未着用のコンタクトレンズは、ある量のビタミンEを含むシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズである。例えば、完全に水和された時に当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり、少なくとも10μgまたは少なくとも20μgのビタミンEが存在し得るが、生物活性剤は0μgである。前述のビタミンEの他の量も、代わりに使用され得る。当該方法において、ビタミンEは、滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、当該コンタクトレンズから放出されない。
【0066】
当該方法は、選択肢(オプション)として、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供し得る。コンタクトレンズに埋め込まれるビタミンEの量は、TBARSアッセイ(チオバルビツール酸反応性物質アッセイ)で測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、脂質過酸化の減少を、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、または85%(数の上で(in number))、提供するのに有効である。TBARSアッセイは、主要な脂質酸化生成物であるマロンジアルデヒド(MDA)のレベルを測定することによって生物学的システムの酸化ストレスを試験するために使用されている。
【0067】
前述のように、当該方法では、ビタミンEは、滅菌された未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている。当該ビタミンEは、当該コンタクトレンズが人の眼に挿入されても、そのまま留まる。
【0068】
当該方法は、好ましくは、ビタミンE以外に抗酸化特性を提供する化学剤を用いる工程が不在で、実施される。
【0069】
未着用の抗酸化コンタクトレンズ、または、コンタクトレンズを含む密封されたコンタクトレンズパッケージ、の実施形態のいずれかに関して前述された、実施形態、実施例、及び、選択肢のいずれもが、本発明の方法において等しく利用され得る。
【0070】
以下の実施例は、本発明の特定の態様及び利点を説明するものであるが、それによって限定されるものではないと理解されるべきである。
【0071】
[実施例1]
【0072】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズが、ポリプロピレンコンタクトレンズ型の中で、ステンフィルコンAの配合物を硬化させることによって、調製された。硬化されたステンフィルコンAが、型から取り出され、表1に示す濃度でdl-α-トコフェロール(DSM Nutritional Products)を含有するエタノール(EtOH)に215分間浸漬させることによって、抽出された。レンズがEtOHから取り出され、50/50のEtOH/水の混合液で約36分間洗浄され、その後、3回の精製水の交換が、それぞれ、約6分間、30分間、30分間、で続いた。レンズは、PBSを含むバイアルに浸漬されて、オートクレーブされた。
【0073】
1.25mg/mL、2.5mg/mL、及び5mg/mL、のビタミンEで抽出されたオートクレーブ処理済みレンズのビタミンE含有量は、HPLC分析によって決定された。簡単に説明すると、各レンズ(各濃度でn=5)が、パッケージング溶液から取り出され、残留のパッケージング溶液を除去するために軽く吸い取られ、5mlのメタノールで37℃で16時間抽出された。キャリブレーション標準用に、エタノール中約2000ppmのビタミンEの原液(貯蔵液)が調製され、そこから、メタノール中2ppm、5ppm、10ppm、及び25ppm、の標準が作成された。C18 Symmetry 4.6×150mmカラムが、45℃で50μLの注入量で使用された。検出波長は、293nmであった。レンズ抽出物は、注入前にメタノールで希釈された。レンズに充填されたビタミンEの平均量は、表1に示されている。オートクレーブ中にビタミンEがレンズから浸出するか否かを判断するために、パッケージング溶液がメタノールで50:50(体積比)に希釈され、HPLCによって試験された。ビタミンEは、どのパッケージング溶液でも検出されず(LODは、~0.1ppm)、ビタミンEがレンズから溶出しないことを示した。2.5mg/mLのビタミンEで抽出されたレンズが、45℃で1か月間保存され、レンズとパッケージング溶液とについて、ビタミンE含有量がHPLCによって試験された。レンズ(n=5)には、平均207μgのビタミンEが含まれていて、ビタミンEはどのパッケージング溶液でも検出されず、ビタミンEを含むレンズが良好な貯蔵安定性を有することを示した。
【0074】
[実施例2]
【0075】
実施例1に従って製造されたレンズの、平均(n=5)直径、%平衡含水率、及び、前進接触角が、以下に記載される方法を用いて測定された。結果が表1に示されている。
【0076】
直径
OptimecモデルJCFコンタクトレンズ寸法分析器が、完全に水和したレンズの直径を測定するために、使用された。
【0077】
%EWC
平衡含水率(%EWC)を測定するために、過剰な表面水が拭き取られた水和レンズの重量が測定される。
当該レンズが、80℃のオーブン内で真空下で完全に乾燥され、秤量して乾燥重量を得て、水和重量と乾燥重量との間の差が計算される。レンズの%EWC=(重量差/水和重量)×100、である。
【0078】
接触角
レンズの表面湿潤性が、Maldonado-Codina,C. and Morgan,P.B.(2007),J.Biomed.Mat.Res.83A:496-502に記載されたように、室温下で、キャプティブバブル法とドロップシェイプアナライザ(DSA100、Kruess GmbH、ハンブルグ、ドイツ)とを用いて平均の前進接触角を測定することによって、判定された。表1に提供される接触角の値は、5つのレンズからの測定値の平均である。
【0079】
[実施例3]
【0080】
以下に説明されるTBARSアッセイプロトコルは、D.Impelbzzeri他(2015)Eur J Pharmacol,761:28-35 から採用された。
【0081】
サンプル調整
実施例1のレンズが、パッケージング溶液から取り出され、持ち越されたパッケージング溶液を除去するべく軽く吸い取られた。各レンズから直径6mmの円が打ち抜かれて、ペトリ皿上に置かれた。イソプロピルアルコール(IPA)中のリノール酸(LA)の20%溶液の5μlが、各打ち抜きの表面に塗布された。各打ち抜きが室温で15分間乾燥され、琥珀色のHPLCバイアル内に置かれた。リノール酸(LA)を酸化条件にさらすために、当該バイアルがプレキシガラスカバー付きの37℃のインキュベーター内に置かれ、周囲光の空気に72時間さらされた。打ち抜きからリノール酸(LA)及びリノール酸(LA)酸化生成物を抽出するために、1mLのイソプロピルアルコール(IPA)が各バイアルに加えられ、当該バイアルが室温で約45分間シェーカー上に置かれた。
【0082】
TBAR試薬の調整
以下の試薬は、dH2O(蒸留水)内で、1.15%KCl、8.1%ラウリル硫酸(LS)、20%酢酸(AA)、及び、0.8%チオバルビツール酸(TBA)、で調整される。各4.0mLのTBARS反応混合物が、100μlのKCl、200μLのLS、1.5mLのAA、1.5mLのTBA、700μLのdH2O(蒸留水)、からなる。キャリブレーション標準、マロンジアルデヒド修飾ウシ血清アルブミン(MDA-BSA)(セルバイオラボ社(Cell Biolabs, Inc.)、Cat.#STA-832)が、dH2O(蒸留水)内で1mg/mLに希釈された。
【0083】
TBARアッセイ手順
【0084】
各打ち抜きからの抽出物の25μlが、475μlのTBARS反応混合物を含有する試験管に添加される。当該試験管は、沸騰水浴に60分間置かれ、次いで当該水浴から取り出され、室温まで放冷される。各試験管が、3000xg(RCF)で10分間遠心分離される。各試験管からの200μlが、96ウェルプレートのウェルに移送され、520nmでの吸光度が測定される。標準曲線のために、10μlのMDA-BSA(1mg/ml)が、0.99mLのTBARS反応混合物に添加されて、10μg/mLのMDA-BSA標準の1.0mLを提供した。5μg/mL、2.5μg/mL、1.25μg/mL、0.625μg/mL、0.313μg/mL、及び、0.156μg/mL、の標準を提供するために、TBARS混合物に連続希釈が行われて、520nmでの吸光度が測定された。
【0085】
各レンズの打ち抜きからの抽出物中に存在するMDAの平均量は、前記標準曲線を使用して判定された。ビタミンE含有レンズによって提供される%酸化抑制は、式:100×[(μg MDC対照 - μg MDCサンプル)/μg MDC対照] によって決定された。
【0086】
【0087】
[実施例4]
【0088】
重合化されたコンフィルコンAが、レンズ型から取り出され、表2に示すビタミンEの濃度を含むエタノールで抽出された。レンズは、水和されて、オートクレーブされ、実施例3に記載のTBARSアッセイを用いて抗酸化特性について試験された。結果が表2に提供される。
【0089】
【0090】
[実施例5]
【0091】
ビタミンEが、前述のように、ステンフィルコンAレンズ及びコンフィルコンAレンズに装填された。ビタミンE装填とEWCとが測定された。結果が表3に提供される。
【0092】
【0093】
[実施例6]
【0094】
HCEC生存率アッセイ
不死化培養ヒト角膜上皮細胞(HCEC)(例えば、2.040 pRSV-T(ATCC(登録商標)CRL-11516(商標)))が、24ウェル細胞培養プレートのウェルに播種され、Loureiro他(Mol Vis 2013; 19:69-77)によって記述された補充ホルモン上皮培地(SHEM)などの適切な増殖培地を使用して、接着及びコンフルエント(confluence)まで増殖される。H2O2は、緩衝されていない0.9%生理食塩水で希釈され、0.03%~3%の範囲のH2O2溶液を提供する。増殖培地がウェルから除去され、コンフルエントなHCECを覆うのに十分な体積1mLのH2O2溶液が各ウェル(n=4)に1時間適用される。細胞生存率が、alamarBlue(商標)HS Cell Viability Reagentと、プロトコル(ThermoFisher Scientific Cat.#A50100)と、を用いて判定される。HCECの生存率を平均約70%まで低下させるH2O2濃度が、更なる試験のために選択される。
【0095】
HCEC細胞が、前述のように、細胞培養ウェル内でコンフルエント(confluence)になるまで増殖される。増殖培地がウェルから除去され、抗酸化レンズまたは対照レンズが各ウェル内に置かれて(n=4)、レンズの前面が細胞層と接触させられる。鈴木他(J.Curr Eye Res 2000; 20:2, 127-130)によって記述された、無血清維持培地(例えば、インスリン、トランスフェリン、及び、亜セレン酸ナトリウム、を含むDMEM(DMEM-ITS))の1.5mLが、各ウェル内に置かれて、細胞が一晩培養される。培地が細胞から除去され、レンズがウェルに残され、前述の濃度のH2O2溶液の1mLが、各ウェルに適用される。2時間後、H2O2溶液中の活性酸素種(ROS)の量が、実施例3で前述されたTBARS/MDAアッセイによって定量化される。
【0096】
本明細書の開示は、特定の図示された実施例に言及しているが、これらの実施例は、限定ではなく例示として提示されていることが理解されるべきである。前述の詳細な説明の意図は、例示的な実施例について論じているが、当該実施例の全ての修正、代替、均等物、を包含すると解釈されるべきである。それらは、本発明の精神及び範囲内に入り得て、付加的な開示として定義され得る。
【0097】
本開示における全ての引用文献の全内容が、本開示と矛盾しない限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。本発明は、文章及び/または段落で説明されたように、前述された及び/または特許請求の範囲で説明される様々な特徴または実施形態の任意の組み合わせを含み得る。本明細書に開示された特徴の任意の組み合わせが、本発明の一部とみなされる。組み合わせ可能な特徴に関して、限定は全く意図されていない。本発明の他の実施形態が、本明細書の考察及び本明細書に開示された本発明の実践から、当業者には明らかである。本明細書及び実施例は、例示的であると見なされることが意図されている。本発明の真の範囲及び精神は、特許請求の範囲及びその均等物によって示される。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に滅菌的に密封された、未着用の抗酸化コンタクトレンズであって、
シリコーンヒドロゲルと、
前記シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた所定量のビタミンEと、
を備え、
TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供し、
(i)ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まないで、且つ、カロテノイドを含まない、あるいは、(ii)(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性と、(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ、大きいキャプティブバブル法を用いて測定される前進接触角と、を有し、
前記シリコーンヒドロゲル材料は、ビタミンEの不在下で熱安定性であり、コンタクトレンズは、パッケージング溶液内でのオートクレーブ処理後の完全に水和した当該コンタクトレンズの直径が、オートクレーブ前の完全に水和した当該コンタクトレンズの直径の±0.2mm以内であれば、熱安定性があるとみなされる
ことを特徴とする未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項2】
当該抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない熱安定性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項3】
完全に水和した時、前記ビタミンEの量は、当該抗酸化コンタクトレンズ25mg当たり、10μg~1000μgである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項4】
前記対照レンズの平衡含水率%(%EWC)の5%以上である平衡含水率%(%EWC)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項5】
40%~60%の間の%EWCを有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項6】
前記対照レンズのレンズ直径の±0.2mm以内のレンズ直径を有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項7】
前記対照レンズに対して5°以下だけ大きい、キャプティブバブル法を用いて測定される前進接触角を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項8】
前記脂質過酸化の減少が、少なくとも80%である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項9】
抗酸化コンタクトレンズの製造方法であって、
少なくとも1つのシリコーンモノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、を含むモノマー混合物を重合化して、レンズ形状の重合生成物を提供する工程と、
0.2mg/mL~10mg/mLのビタミンEを含む有機溶媒中に前記重合生成物を抽出する工程と、
前記重合生成物を水和して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程と、
前記コンタクトレンズをパッケージ内に滅菌的に密封する工程と、
を備え、
前記抗酸化コンタクトレンズは、
(a)TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも80%の脂質過酸化の減少を提供し、
(b)前記対照コンタクトレンズの熱安定性より大きくない熱安定性を有し、
(c)ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まないで、且つ、カロテノイドを含まず、
前記シリコーンヒドロゲル材料は、ビタミンEの不在下で熱安定性であり、コンタクトレンズは、パッケージング溶液内でのオートクレーブ処理後の完全に水和した当該コンタクトレンズの直径が、オートクレーブ前の完全に水和した当該コンタクトレンズの直径の±0.2mm以内であれば、熱安定性があるとみなされる
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
密封されたコンタクトレンズパッケージであって、
a)キャビティを有するプラスチックベース部材と、
b)前記キャビティ内のコンタクトレンズパッケージング溶液と、
c)前記キャビティ内の前記コンタクトレンズパッケージング溶液内に浸漬された、滅菌された未着用のコンタクトレンズと、
d)前記プラスチックベース部材と液密シールを形成するカバーと、
を備え、
前記未着用のコンタクトレンズは、当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり少なくとも10μgのビタミンEと、0μgの生物活性剤と、が存在するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、カロテノイドを含まず、
前記ビタミンEは、前記未着用のコンタクトレンズから放出不能であり、
前記コンタクトレンズパッケージング溶液は、1ppm未満のビタミンEを有し、
前記シリコーンヒドロゲル材料は、ビタミンEの不在下で熱安定性であり、コンタクトレンズは、パッケージング溶液内でのオートクレーブ処理後の完全に水和した当該コンタクトレンズの直径が、オートクレーブ前の完全に水和した当該コンタクトレンズの直径の±0.2mm以内であれば、熱安定性があるとみなされる
ことを特徴とする密封されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項11】
前記ビタミンEは、前記未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項10に記載の密封されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項12】
前記ビタミンEは、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項10または11に記載の密封されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項13】
前記未着用のコンタクトレンズは、前記ビタミンE以外に、抗酸化特性を提供する化学剤が不在である
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項14】
前記未着用のコンタクトレンズは、
(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性、または、
(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ大きい、キャプティブバブル法を用いて測定される前進接触角、または、
(a)及び(b)の両方、
を有する
ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項15】
前記未着用のコンタクトレンズは、(a)ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない熱安定性を有する
ことを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項16】
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、請求項1乃至8のいずれかに記載の未着用抗酸化コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項17】
前記ビタミンEの量は、HCEC生存率アッセイで測定される時、前記対照コンタクトレンズに対して、インビトロでH
2O
2と接触されるヒト角膜上皮細胞(HCEC)からの活性酸素種(ROS)の生成を減少させるのに有効である
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の未着用抗酸化コンタクトレンズ。
【請求項18】
前記ビタミンEは、HCEC生存率アッセイで測定される時、前記対照コンタクトレンズに対して、インビトロでH
2O
2と接触されるヒト角膜上皮細胞(HCEC)からの活性酸素種(ROS)の生成を減少させるのに有効である
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
【請求項19】
コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御する方法であって、
前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に、滅菌された未着用のコンタクトレンズを挿入する工程
を備え、
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、完全に水和された時に当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり少なくとも20μgのビタミンEであるというビタミンEの量と、0μgの生物活性剤と、を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、放出されず、
当該方法は、前記ビタミンE以外に抗酸化特性を提供する化学剤を用いる工程が不在である
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
当該方法は、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御する組成物の使用であって、
当該組成物は、前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に挿入するための、滅菌された未着用のコンタクトレンズの形態であり、
当該組成物は、完全に水和された時に当該組成物25mg当たり少なくとも20μgのビタミンEであるというビタミンEの量と、0μgの生物活性剤と、を有するシリコーンヒドロゲルであり、
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、当該組成物から放出されない
ことを特徴とする組成物の使用。
【請求項23】
当該組成物は、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記ビタミンEは、当該組成物内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項22または23に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0097】
本開示における全ての引用文献の全内容が、本開示と矛盾しない限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる(incorporated by reference)。本発明は、文章及び/または段落で説明されたように、前述された及び/または特許請求の範囲で説明される様々な特徴または実施形態の任意の組み合わせを含み得る。本明細書に開示された特徴の任意の組み合わせが、本発明の一部とみなされる。組み合わせ可能な特徴に関して、限定は全く意図されていない。本発明の他の実施形態が、本明細書の考察及び本明細書に開示された本発明の実践から、当業者には明らかである。本明細書及び実施例は、例示的であると見なされることが意図されている。本発明の真の範囲及び精神は、特許請求の範囲及びその均等物によって示される。
なお、出願時の請求項は以下の通りである。
<請求項1>
パッケージング溶液内に浸漬され、パッケージ内に滅菌的に密封された、未着用の抗酸化コンタクトレンズであって、
シリコーンヒドロゲルと、
前記シリコーンヒドロゲル内に埋め込まれた所定量のビタミンEと、
を備え、
TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供し、
(i)ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まない、あるいは、(ii)(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性と、(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ大きい前進接触角と、を有する
ことを特徴とする未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項2>
当該抗酸化コンタクトレンズは、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない熱安定性を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項3>
完全に水和した時、前記ビタミンEの量は、当該抗酸化コンタクトレンズ25mg当たり、10μg~1000μgである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項4>
前記対照レンズの平衡含水率%(%EWC)の5%以上である平衡含水率%(%EWC)を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項5>
40%~60%の間の%EWCを有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項6>
前記対照レンズのレンズ直径の±0.2mm以内のレンズ直径を有する
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項7>
前記対照レンズに対して5°以下だけ大きい前進接触角を有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項8>
前記脂質過酸化の減少が、少なくとも80%である
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の未着用の抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項9>
抗酸化コンタクトレンズの製造方法であって、
少なくとも1つのシリコーンモノマーと、少なくとも1つの親水性モノマーと、を含むモノマー混合物を重合化して、レンズ形状の重合生成物を提供する工程と、
0.2mg/mL~10mg/mLのビタミンEを含む有機溶媒中に前記重合生成物を抽出する工程と、
前記重合生成物を水和して、シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを形成する工程と、
前記コンタクトレンズをパッケージ内に滅菌的に密封する工程と、
を備え、
前記抗酸化コンタクトレンズは、
(a)TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも80%の脂質過酸化の減少を提供し、
(b)前記対照コンタクトレンズの熱安定性より大きくない熱安定性を有し、
(c)ビタミンEによって減衰される放出プロファイルを有する生物活性剤を含まない
ことを特徴とする方法。
<請求項10>
密封されたコンタクトレンズパッケージであって、
a)キャビティを有するプラスチックベース部材と、
b)前記キャビティ内のコンタクトレンズパッケージング溶液と、
c)前記キャビティ内の前記コンタクトレンズパッケージング溶液内に浸漬された、滅菌された未着用のコンタクトレンズと、
d)前記プラスチックベース部材と液密シールを形成するカバーと、
を備え、
前記未着用のコンタクトレンズは、当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり少なくとも10μgのビタミンEと、0μgの生物活性剤と、が存在するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、
前記ビタミンEは、前記未着用のコンタクトレンズから放出不能であり、
前記コンタクトレンズパッケージング溶液は、1ppm未満のビタミンEを有する
ことを特徴とする密封されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項11>
前記ビタミンEは、前記未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項10に記載の密封されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項12>
前記ビタミンEは、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項10または11に記載の密封されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項13>
前記未着用のコンタクトレンズは、前記ビタミンE以外に、抗酸化特性を提供する化学剤が不在である
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項14>
前記未着用のコンタクトレンズは、
(a)後硬化表面処理無しで眼科的に許容可能な表面湿潤性、または、
(b)前記対照レンズに対して10°以下だけ大きい前進接触角、または、
(a)及び(b)の両方、
を有する
ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項15>
前記未着用のコンタクトレンズは、(a)ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズより大きくない熱安定性を有する
ことを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項16>
前記未着用のコンタクトレンズは、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズと比較して、一晩の洗浄後に略同一の摩擦係数を有する
ことを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項17>
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、前記ビタミンEを欠く対照レンズと同一または実質的に同一である少なくとも1つのシリコーンヒドロゲル特性を有する
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項18>
前記シリコーンヒドロゲル特性は、表面湿潤性、前進接触角、%EWC、レンズ直径、または、完全に水和したコンタクトレンズを得るために必要な水もしくは水性流体の量、である、
ことを特徴とする請求項17に記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項19>
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、請求項1乃至8のいずれかに記載の未着用抗酸化コンタクトレンズである
ことを特徴とする請求項10乃至18のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項20>
前記ビタミンEの量は、HCEC生存率アッセイで測定される時、前記対照コンタクトレンズに対して、インビトロでH2O2と接触されるヒト角膜上皮細胞(HCEC)からの活性酸素種(ROS)の生成を減少させるのに有効である
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の未着用抗酸化コンタクトレンズ。
<請求項21>
前記ビタミンEは、HCEC生存率アッセイで測定される時、前記対照コンタクトレンズに対して、インビトロでH2O2と接触されるヒト角膜上皮細胞(HCEC)からの活性酸素種(ROS)の生成を減少させるのに有効である
ことを特徴とする請求項10乃至19のいずれかに記載の密閉されたコンタクトレンズパッケージ。
<請求項22>
コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御する方法であって、
前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に、滅菌された未着用のコンタクトレンズを挿入する工程
を備え、
前記滅菌された未着用のコンタクトレンズは、完全に水和された時に当該滅菌された未着用のコンタクトレンズ25mg当たり少なくとも20μgのビタミンEであるというビタミンEの量と、0μgの生物活性剤と、を有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであり、
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、放出されない
ことを特徴とする方法。
<請求項23>
当該方法は、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
<請求項24>
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズ内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
<請求項25>
当該方法は、前記ビタミンE以外に抗酸化特性を提供する化学剤を用いる工程が不在である
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
<請求項26>
コンタクトレンズを着用する人の眼の涙液膜からの脂質過酸化を制御するのに使用するための組成物であって、
当該組成物は、前記人の前記眼の視力を矯正するために、前記人の前記眼に挿入するための、滅菌された未着用のコンタクトレンズの形態であり、
当該組成物は、完全に水和された時に当該組成物25mg当たり少なくとも20μgのビタミンEであるというビタミンEの量と、0μgの生物活性剤と、を有するシリコーンヒドロゲルであり、
前記ビタミンEは、前記滅菌された未着用のコンタクトレンズが前記眼に着用される時、当該組成物から放出されない
ことを特徴とする組成物。
<請求項27>
当該組成物は、TBARSアッセイで測定される時、ビタミンEを欠く対照コンタクトレンズに対して、少なくとも50%の脂質過酸化の減少を提供する
ことを特徴とする請求項26に記載の組成物。
<請求項28>
前記ビタミンEは、当該組成物内に、閉じ込められている、埋め込まれている、吸収されている、または、非共有結合されている
ことを特徴とする請求項26または27に記載の組成物。
<請求項29>
当該組成物は、前記ビタミンE以外に、抗酸化特性を提供する化学剤を欠く
ことを特徴とする請求項26乃至28のいずれかに記載の組成物。
【国際調査報告】