(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】骨格フィルムを含む多層複合体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/12 20060101AFI20230407BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
B32B27/12
B32B5/28 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535624
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2020087440
(87)【国際公開番号】W WO2021123426
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522355798
【氏名又は名称】ディーエスエム プロテクティブ マテリアルズ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM Protective Materials B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ルール, ブライアン
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK17C
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK41C
4F100AK42C
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AK46C
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK52A
4F100AK52B
4F100AL06A
4F100AL06B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DG01A
4F100DG01B
4F100DG12C
4F100DG15C
4F100GB66
4F100GB72
4F100GB90
4F100JA07A
4F100JA07B
4F100JB07C
4F100JD02C
4F100JK07C
4F100YY00C
(57)【要約】
本発明は、第1の方向に整列された高性能繊維及び第1のマトリックス材料を含む第1の単層と、第2の方向に整列された高性能繊維及び第2のマトリックス材料を含む第2の単層と、第1の単層と第2の単層との間に位置する第3の高分子フィルムであって、ASTM D882により測定される少なくとも0.75GPaの引張モジュラスを有する第3の高分子フィルムとを含む多層複合体に関する。好ましくは、高性能繊維はUHMWPE繊維を含む。熱可塑性ポリウレタンは第1の単層と接触して複合体の第1の外側層を形成すると共に、第2の単層と接触して、複合体の第1の外側層と反対の第2の外側層を形成する。本発明はさらに、バックパック、パック、バッグ、医療用の衣服、アウトドア用品、帆布、テント、タープ、シェルター、衣類、ポンチョ、悪天候用の衣服、マット、上着、ジャケット、寝袋、リフトバッグ、パラシュート、大型カイト、インフレータブル構造、梁、気球、バックラフト、インフレータブル衣服、救命ボート、インフレータブル彫像、飛行船(HAA:高高度飛行船)、宇宙応用、フレキシブル回路、履物及び傘における多層複合体の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に整列された高性能繊維及び第1のマトリックス材料を含む第1の単層と、
第2の方向に整列された高性能繊維及び第2のマトリックス材料を含む第2の単層と、
前記第1の単層と前記第2の単層との間に位置する内側高分子フィルムであって、ASTM D882により測定される少なくとも0.75GPaの引張モジュラスを有する内側高分子フィルムと
を含む多層複合体。
【請求項2】
前記第2の繊維方向が、前記第1の繊維方向に対して最大90度までオフセットされる、請求項1に記載の多層複合体。
【請求項3】
前記高性能繊維がポリエチレン繊維を含む、請求項1又は2に記載の多層複合体。
【請求項4】
前記高性能繊維がUHMWPE繊維を含む、請求項3に記載の多層複合体。
【請求項5】
前記内側高分子フィルムが1μm~100μmの厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層複合体。
【請求項6】
前記内側高分子フィルムが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド又はポリフッ化ビニルからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層複合体。
【請求項7】
前記内側高分子フィルムが、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はポリエチレンナフタレート(PEN)から選択される、請求項6に記載の多層複合体。
【請求項8】
前記内側高分子フィルムが織布又は不織布の形態である、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層複合体。
【請求項9】
前記内側高分子フィルムが防水性及び/又は(非)通気性フィルムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の多層複合体。
【請求項10】
少なくとも1つのマトリックス材料が、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、エチレンコポリマー、ポリアミド、ポリプロピレンの群から選択される、請求項1に記載の多層複合体。
【請求項11】
前記第1及び第2のマトリックス材料がポリウレタンを含む、請求項10に記載の多層複合体。
【請求項12】
前記第1の単層が任意選択的に第1の高分子フィルムを含み、前記第2の単層が任意選択的に第2の高分子フィルムを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多層複合体。
【請求項13】
前記第1の高分子フィルムが前記第1の単層と接触して、前記複合体の第1の外側層を形成し、前記第2の高分子フィルムが前記第2の単層と接触して、前記複合体の前記第1の外側層と反対の第2の外側層を形成する、請求項12に記載の多層複合体。
【請求項14】
前記第1及び第2の高分子フィルムがポリウレタンから選択される、請求項12又は13に記載の多層複合体。
【請求項15】
バックパック、パック、バッグ、医療用の衣服、アウトドア用品、帆布、テント、タープ、シェルター、衣類、ポンチョ、悪天候用の衣服、マット、上着、ジャケット、寝袋、リフトバッグ、パラシュート、大型カイト、インフレータブル構造、梁、気球、バックラフト、インフレータブル衣服、救命ボート、インフレータブル彫像、飛行船(HAA:高高度飛行船)、宇宙応用、フレキシブル回路、履物、スポーツ用衣料、旅行鞄;皮革商品、ジャケット、札入れ、財布、室内装飾材、手袋における、請求項1~14のいずれか一項に記載の多層複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、第1の方向に整列された高性能繊維及び第1のマトリックス材料を含む第1の単層と、第2の方向に整列された高性能繊維及び第2のマトリックス材料を含む第2の単層とを含む多層複合体に関する。また本発明は、種々の応用における多層複合体の使用にも関する。
【0002】
第1のマトリックス材料中の第1の方向に整列された高性能繊維を含む第1の単層と、第2のマトリックス材料中の第2の方向に整列された高性能繊維を含む第2の単層とを含む多層複合体は、当該技術分野において知られている。例えば米国特許出願公開第2016023428号明細書において、このような多層複合体が開示されている。さらに、これらの複合体は、複合体の両側に外側層を含み得る。この外側層は、ポリウレタンフィルムなどのフィルムであり得る。ポリウレタン外側フィルムを含むこれらの多層複合体の不都合な点は、複合体における特定量の繊維強化に対して期待され得るものと比較して、著しく低い引張強度及びせん断性能が提供されることである。
【0003】
したがって、本発明の目的は、改善された機械特性を有する軽量多層複合体を提供することである。
【0004】
本発明のさらなる目的は、改善された引張強度を有する軽量多層複合体を提供することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、改善されたせん断強度を有する軽量多層複合体を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、多層複合体が、第1の方向に整列された高性能繊維及び第1のマトリックス材料を含む第1の単層と、第2の方向に整列された高性能繊維及び第2のマトリックス材料を含む第2の単層と、第1の単層と第2の単層との間に位置する内側高分子フィルムであって、ASTM D882により測定される少なくとも0.75GPaの引張モジュラスを有する内側高分子フィルムとを含むことにおいて達成された。
【0007】
驚くべきことに、第1の単層と第2の単層との間に位置する内側高分子フィルムは、改善された引張強度を有する多層複合体を提供することが見出された。複合体の引張荷重は主に高性能繊維によって支持され、引張強度の増大は、内側高分子フィルムの引張強度寄与を超えるので、これは驚くべきことである。さらに、内側高分子フィルムを含む多層複合体は、改善されたラップせん断シーム強度を示すことが見出された。さらに、内側高分子フィルムは、多層複合体の負荷分散特性を改善し得ることが見出された。このフィルムは本質的に複合体の「骨格」を作り出し、「骨格フィルム」は脆性/低強度であるにもかかわらず、得られる複合材料は、「骨格」のない材料よりも高い強度を達成する。
【0008】
内側高分子フィルムは、ASTM D882により測定される少なくとも0.75GPaの引張モジュラスを有する。好ましくは、内側高分子フィルムは、2GPaの引張モジュラスを有する。より好ましくは、少なくとも4GPaの引張モジュラス、さらにより好ましくは、少なくとも6GPaの引張モジュラスを有する。
【0009】
内側高分子フィルム又は骨格フィルムは、好ましくは、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリアミドフィルム又はポリフッ化ビニルフィルムからなる群から選択される。好ましくは、内側フィルムは、ポリエステルフィルムから選択される。より好ましくは、ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)から選択される。内側高分子フィルムは、好ましくは、1μm~100μm、好ましくは2~50μm、より好ましくは3~40μmの厚さを有する。
【0010】
内側高分子フィルム又は骨格フィルムは、織布又は不織布の形態であり得る。好ましくは、内側フィルムは不織布の形態である。不織布は、好ましくは、炭素繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維若しくはポリエステル繊維の少なくとも1つ、又はこれらの混合物を含む。炭素繊維は多層複合体に剛性をもたらすので、不織布は、より好ましくは、炭素繊維を含む。
【0011】
別の実施形態では、内側フィルムは、防水性及び/又は(非)通気性フィルムであり得る。
【0012】
さらに好ましい実施形態では、内側高分子フィルムは、防水性/通気性(W/B)フィルムであり得る。W/Bフィルムはバリア層として機能し、水蒸気を含む気体が材料を通って移動することを可能にするが、液体水の移動を許さない。このようなフィルムには、Gore-Tex(登録商標)及びeVent(登録商標)の商標がつけられたECTFE及びEPTFE、ポリアミド、ポリエステル、PVF、PENが含まれ、UHMWPE膜、例えばSolupor(登録商標)膜など、及び微多孔質ポリプロピレン膜により特別に設計される。
【0013】
本発明におけるW/Bフィルムの特別な実施形態は織布の形態であってもよく、このような布は、マトリックス材料によって被覆又は(部分的に)含侵されて、そのW/B特性を可能にし得る。
【0014】
本発明におけるW/Bフィルムの別の特別な実施形態は不織布の形態であってもよく、このような布は、マトリックス材料によって被覆又は(部分的に)含侵されて、そのW/B特性を可能にし得る。不織布の典型的な例としては、フェルトが挙げられる。
【0015】
本発明の多層複合体の第1及び第2の単層は高性能繊維を含み、ここで、第1の層は、第1のマトリックス材料中の平行な方向の整列された高性能繊維を含み、第2の層は、第2のマトリックス材料中の平行な方向に整列された高性能繊維を含む。第2の繊維方向は、好ましくは、第1の繊維方向に対して最大90度までオフセットされる。第1及び第2の層中の高性能繊維は同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
また第1及び第2の単層は、一方向性(UD)層と称することもできる。多層複合体は、その上に結合された1つ又は複数の付加的な単層を含み、層のスタックを形成していてもよい。このようにして、多数の単層を使用することができ、繊維方向は決して繰り返されることがなくてもよいし、或いは、ある時点で層内の繊維方向がスタック内のさらに下にある単層と共に繰り返すまで、いくつかの単層は互いにオフセットされていてもよい。
【0017】
第1及び第2のマトリックス材料は、ポリアクリレート、ポリウレタン、例えばHysol US0028、ポリエステル、例えばチオコール(thiokol)Adcote、シリコーン、例えば、DOW-96-083、-X3-6930、-6858(UV硬化性)、ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、エチレンコポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、又は熱可塑性樹脂、例えば、PEEK、PPS、Radel、Rytonから選択され得る。
【0018】
好ましくは、マトリックス材料はポリウレタンを含む。ポリウレタンは、ポリエーテルジオールに基づくポリエーテル-ウレタン又はポリエステル-ウレタンを含み得る。ポリウレタンは、製品性能がさらに改善されるので、好ましくは脂肪族ジイソシアナートに基づく。
【0019】
さらに好ましい実施形態では、マトリックス材料は、アクリル系樹脂、又はアクリレート基を含むポリマーを含み得る。
【0020】
ポリオレフィンの場合、マトリックス材料は、好ましくは、エチレン及び/又はプロピレンのホモポリマー又はコポリマーを含み、ここで高分子樹脂は、ISO1183に従って測定したときに860~930kg/m3の範囲の密度、40°~140℃の範囲のピーク融解温度、及び少なくとも5J/gの融解熱を有する。
【0021】
一方向性繊維を有するマトリックス材料及び単層のさらなる詳細は、例えば、参照によってその全体が本明細書に援用される米国特許第5470632号明細書において見出すことができる。
【0022】
第1又は第2の単層中のマトリックス材料の量は、通常、10~95wt%の間であり、好ましくは20~90wt%の間、より好ましくは30~85wt%の間、最も好ましくは35~80wt%の間である。これにより、単層と、他の構成要素との間の適切な結合強度が保証され、それにより、繰り返される屈曲サイクルの後に、複合体における早期の層間剥離の可能性が低減される。
【0023】
第1及び第2の単層において使用される高性能繊維は、通常、少なくとも0.5GPa、好ましくは少なくとも0.6GPa、より好ましくは少なくとも0.8GPaの引張強度を有する。好ましい実施形態では、繊維、好ましくはポリエチレン繊維の強度は、少なくとも3.0GPa、好ましくは少なくとも3.5GPa、より好ましくは少なくとも4.0GPa、最も好ましくは少なくとも4.5GPaである。経済的な理由から、繊維の強度は、好ましくは5.5GPa未満である。繊維は、好ましくは、3.1~4.9GPaの間、より好ましくは3.2~4.7GPaの間、最も好ましくは3.3~4.5GPaの間の引張強度を有する。
【0024】
単層中の繊維の量は、通常、1~50グラム/平方メートルの間である。繊維の量は層の繊維密度と称することもできる。好ましくは、1つの単層中の繊維の量は、2~30グラム/平方メートルの間、より好ましくは3~20グラム/平方メートルの間である。これらの範囲内の繊維密度は、多層複合材料の屈曲性の維持に役立つことが見出された。
【0025】
本発明に従う多層複合材料において使用するのに適した繊維には、例えば、ポリアミド6若しくはポリアミド6.6などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、又はポリプロピレン若しくはポリエチレンなどのポリオレフィンに基づく繊維が含まれる。他の好ましい繊維には、芳香族ポリアミド繊維(アラミド繊維と呼ばれることも多い)、特にポリ(p-フェニレンテラフタルアミド(phenylene teraphthalamide));液晶ポリマー及びはしご状ポリマー繊維、例えば、ポリベンゾイミダゾール、又はポリベンゾオキサゾール、例えば、ポリ(1,4-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)(PBO)、又はポリ(2,6-ジイミダゾ[4,5-b-4’,5’-e]ピリジニレン-1,4-(2,5-ジヒドロキシ)フェニレン)(PIPD;M5とも呼ばれる);ポリエーテルエーテルケトンを含むポリアリールエーテルケトン、並びに例えば、高度に配向されたポリオレフィン、ポリビニルアルコール、及びポリアクリロニトリルの繊維、例えば、ゲル紡糸プロセスによって得られたものなどが含まれる。高配向ポリオレフィン、アラミド、PBO及びPIPD繊維、又はこれらの少なくとも2つの組合せが使用されるのが好ましい。高配向ポリオレフィン繊維はポリプロピレン又はポリエチレン繊維を含み、少なくとも1.5GPaの引張強度を有する。
【0026】
最も好ましいのは、例えば、GB2042414A号明細書又は国際公開第01/73173号パンフレットに記載されたものなどのゲル紡糸プロセスにより調製されたポリエチレンフィラメントからなる、高延伸又は配向ポリエチレン繊維とも呼ばれる高性能ポリエチレン繊維である。これらの繊維の利点は、これらが、軽量と組み合わせて非常に高い引張強度を有し、従って、極めて薄い層で使用するのに適することである。好ましくは、少なくとも4dl/gの固有粘度、より好ましくは少なくとも8dl/gの固有粘度を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の繊維が使用される。
【0027】
種々の実施形態において、第1及び第2の単層と、任意選択的に他の単層とを含む多層複合体はさらに、少なくとも、第1及び第2の単層と接触する第1及び第2の高分子フィルムを含み、例えば、多層複合体の外側層を形成することができる。このようにして、第1、第2の単層及び内側高分子フィルムのスタックは多層複合体のコアを構成し、第1及び第2の高分子フィルムは、2つの外側層として露出される。
【0028】
第1及び第2の高分子フィルムは、例えば、ポリオレフィンフィルム、例えば、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレンフィルム、ポリウレタンフィルム、又はポリエステルフィルムを含み得る。第1及び第2の高分子フィルムは同じフィルムであってもよいし、又は異なっていてもよい。好ましくは、第1及び第2の高分子フィルムはポリウレタンフィルムである。
【0029】
より好ましい実施形態では、第1及び第2の外側高分子フィルムは、二軸延伸ポリオレフィン又はポリエステルフィルムである。本明細書の例では、二軸延伸高密度ポリエチレンフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、又は二軸延伸PET若しくはPENフィルムである。
【0030】
また本発明は、少なくとも、平行に整列された繊維及び第1のマトリックス材料を含む第1の単層と、平行に整列された繊維及び第2のマトリックス材料を含む第2の単層と、第1の単層と第2の単層との間にある内側高分子フィルムとをスタックさせることによる、多層複合体の製造プロセスにも関し、アセンブリは第1及び第2の高分子フィルムを含む2つの外側表面を有し、それにより、アセンブリは、1.05バール~5バールの間の絶対圧力、好ましくは1.1バール~4バールの間の絶対圧力、より好ましくは1.2バール~3バールの間の絶対圧力で圧縮される。これらの条件下での圧縮は、オートクレーブを含む静的プレスにおいて達成される。好ましくは、カレンダー又は連続ベルトプレスの形態の連続プレスが使用される。圧縮中の温度は、好ましくは、35°~120℃の間である。より好ましくは、プレス中の温度は40~100℃の間であり、最も好ましくは、プレス中の温度は45~90℃の間である。1バール~5バールの間の圧力、及び35~120℃の間の温度で圧縮される。加圧及び温度処理の時間は意図される最終用途によって異なり、簡単な試行錯誤実験によって最適化することができる。
【0031】
多層複合材料の製造プロセスの特別な型では、複合体の第1及び第2の高分子フィルム表面の少なくとも1つ又は両方は、加圧及び温度処理の間、好ましくは取外し可能なカバーと接触する。カバーはガラス繊維強化PTFEシートであってもよいし、又は例えば、連続ベルトプレス内のスチールベルトであってもよく、任意選択的に、例えばシリコーン処理紙の形態の剥離層を有する。このような取外し可能なカバーの代替的な形態は、ゴムに基づく軟質材料を含む。ISO7619によるデュロメーター試験で決定したときに、ゴムのショアA値は、95未満、より好ましくは80未満、好ましくは少なくとも50である。
【0032】
第1及び第2の単層は、複数の繊維を一平面内で平行な形で配向させる、例えば、繊維ボビンフレームからコームを通して複数の繊維又は糸を引っ張り、配向前、配向中又は配向後に、当業者に知られている方法で繊維をマトリックス材料で含侵させることによって得ることができる。このプロセスでは、例えば、取扱い中に繊維を保護するため、又は単層のプラスチック上への繊維のより良好な接着を得るために、繊維には、プラスチックマトリックス材料以外の少なくとも1つの成分又はポリマーによる仕上げが提供されていてもよい。ここで繊維は、仕上げの前、又は繊維をマトリックス材料と接触させる前に、表面処理されていてもよい。このような処理は、酸化剤又はエッチング剤などの化学薬剤による処理を含み得るが、好ましくは、プラズマ又はコロナ処理を含む。
【0033】
多層複合材料の特性をさらに微調整するために、隣接の単層と接触され、それに対して回転されて繊維方向がオフセットされた、第3の単層及びそれに続く単層、最大n個の単層を追加することを決定し得る。種々の実施形態において、単層の総数nは、約4~約8の間であり得る(4<n<8)。適用に応じて、nの値は、特定の応用又は最終用途に適合するように選択され得る。本発明に従う多層複合材料において、各単層は、前の単層に対して回転され得る。
【0034】
本発明はさらに、バックパック、パック、バッグ、医療用の衣服、アウトドア用品、帆布、テント、タープ、シェルター、衣類、ポンチョ、悪天候用の衣服、マット、上着、ジャケット、寝袋、リフトバッグ、パラシュート、大型カイト、インフレータブル構造、梁(beam)、気球、バックラフト(backraft)、インフレータブル衣服、救命ボート、インフレータブル彫像、飛行船(HAA:高高度飛行船)、宇宙応用、フレキシブル回路、履物、インフレータブル(レドーム)、張力構造又は傘における、本発明に従う多層複合体の使用に関する。
【0035】
[結果]
[測定方法]
以下は、本明細書において言及される試験方法である:
引張強度はASTM D3039に従って測定され、均一な測定幅の材料ストリップが上部及び下部ボラードグリップに把持され、破損するまで3インチ/分の速度の張力で引っ張られる。
【0036】
高分子フィルムの引張モジュラスは、フィルム供給業者により報告されるように、ASTM D882によって測定される。
【0037】
フィルム供給業者により特定されるフィルム厚さは、携帯用デジタルマイクロメートルによって測定される。
【0038】
積層体重量は、0.0001グラムまでの表示精度の化学天秤を用いて12×12インチの積層体サンプルを秤量することによって、ASTM D3776-07に従って測定される。積層体重量は、グラム/平方メートル(gsm)に関して報告される。
【0039】
[実施例]
0°方向に配向されたポリウレタン(PUR)マトリックス中の高性能繊維(超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))を含む第1の単層と、90°方向に配向されたPURマトリックス中のUHMWPE繊維を含む第2の単層とを含み、高性能繊維の第1の単層と第2の単層との間に内側高分子フィルムを有し、さらに任意選択的に、上部積層体表面上の第1の外側高分子フィルムと、下部積層体表面上の同一の第2の高分子フィルムとを含む、複合体積層体を製造する。複合体は標的の1インチ幅ストリップ及び26インチ長さにカットされ、長さは0°方向に平行する。各サンプルの実際の幅を測定し、記録する。サンプルの長さ方向の各端部をボラード型グリップにより把持し、得られる試験サンプルのゲージ長は10インチである。機械的試験フレームにより、予想される積層体破損荷重の5%までサンプルに予め張力をかける。サンプルが破損するまで3インチ/分の一定の伸長速度で、サンプルを引張強度について試験する。試験期間中のサンプルの最大引張荷重を記録し、サンプルの幅で除して、荷重/幅に関して引張強度を決定する。
【0040】
表Iから、内側高分子フィルムの厚さ、重量、及びモジュラスの間にバランスがあることは明らかである。
【0041】
表2には、比較例;内側又は骨格フィルムのない多層複合体が提示される。
【0042】
【0043】
【国際調査報告】