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特表2023-515763抗HPV T細胞受容体および操作された細胞
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】抗HPV T細胞受容体および操作された細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230407BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALI20230407BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230407BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230407BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230407BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230407BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230407BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230407BHJP
   C12N 15/37 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/867 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/0783
C07K19/00
C07K14/725
A61K35/17
A61K45/00
A61P35/00
A61P31/12
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K35/76
A61K48/00
A61K39/395 E
C12N15/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547722
(86)(22)【出願日】2021-02-05
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2021075388
(87)【国際公開番号】W WO2021155830
(87)【国際公開日】2021-08-12
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/074366
(32)【優先日】2020-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521063052
【氏名又は名称】ティーシーアールキュア バイオファーマ コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】521232359
【氏名又は名称】グアンドン ティーシーアールキュア バイオファーマ テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ザオ リシア
(72)【発明者】
【氏名】チェン ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ブライソン ポール
(72)【発明者】
【氏名】リ シ
(72)【発明者】
【氏名】ウー ハイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ス ジェンボ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA92Y
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065AC12
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C085EE03
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB33
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA22
4H045EA28
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原を認識するかまたはそれに結合するT細胞受容体、遺伝子操作された細胞、および細胞ベースの治療法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変α(Va)領域を含むα鎖および可変β(Vb)領域を含むβ鎖を含む、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合断片であって、
該Va領域が、相補性決定領域1(CDR-1)、相補性決定領域2(CDR-2)、および相補性決定領域3(CDR-3)を含み、該Va領域CDR-1が、選択されたVa領域CDR-1アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、該Va領域CDR-2が、選択されたVa領域CDR-2アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、該Va領域CDR-3が、選択されたVa領域CDR-3アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み;
該Vb領域が、相補性決定領域1(CDR-1)、相補性決定領域2(CDR-2)、および相補性決定領域3(CDR-3)を含み、該Vb領域CDR-1が、選択されたVb領域CDR-1アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、該Vb領域CDR-2が、選択されたVb領域CDR-2アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、該Vb領域CDR-3が、選択されたVb領域CDR-3アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み;
該選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列、ならびに該選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、
(1)該選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示され、かつ該選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:8、9、および10に示される;
(2)該選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:27、28、および29に示され、かつ該選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:30、31、および32に示される;
(3)該選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:33、34、および35に示され、かつ該選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:36、37、および38に示される;
(4)該選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:39、40、および41に示され、かつ該選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列が、それぞれSEQ ID NO:42、43、および44に示される
のうちの1つである、TCRまたはその抗原結合断片。
【請求項2】
前記Va領域が、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;かつ前記Vb領域が、それぞれSEQ ID NO:8、9、および10に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む、請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項3】
前記Va領域が、SEQ ID NO:1またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記Vb領域が、SEQ ID NO:2またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項2記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項4】
前記Va領域が、それぞれSEQ ID NO:27、28、および29に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;かつ前記Vb領域が、それぞれSEQ ID NO:30、31、および32に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む、請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項5】
前記Va領域が、SEQ ID NO:45またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記Vb領域が、SEQ ID NO:46またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項4記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項6】
前記Va領域が、それぞれSEQ ID NO:33、34および35に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;かつ前記Vb領域が、それぞれSEQ ID NO:36、37、および38に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む、請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項7】
前記Va領域が、SEQ ID NO:47またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記Vb領域が、SEQ ID NO:48またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項6記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項8】
前記Va領域が、それぞれSEQ ID NO:39、40、および41に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;かつ前記Vb領域が、それぞれSEQ ID NO:42、43、および44に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む、請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項9】
前記Va領域が、SEQ ID NO:49またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記Vb領域が、SEQ ID NO:50またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項8記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項10】
前記α鎖がマウスα鎖定常領域を含み、かつ前記β鎖がマウスβ鎖定常領域を含む、請求項1~9のいずれか一項記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項11】
前記α鎖が、SEQ ID NO:15またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記β鎖が、SEQ ID NO:16またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項12】
前記α鎖が、SEQ ID NO:51またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記β鎖が、SEQ ID NO:52またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項13】
前記α鎖が、SEQ ID NO:53またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記β鎖が、SEQ ID NO:54またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項14】
前記α鎖が、SEQ ID NO:55またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;かつ
前記β鎖が、SEQ ID NO:56またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、
請求項1記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項15】
主要組織適合性複合体(MHC)分子によって提示されるE6のペプチドエピトープ(SEQ ID NO:19)に結合するかまたはそれを認識する、請求項1~14のいずれか一項記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項16】
前記MHC分子がHLA-A2分子である、請求項15記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項17】
T細胞の表面に発現したときに、標的がん細胞に対する細胞傷害活性を刺激する、請求項1~16のいずれか一項記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項18】
前記標的がん細胞が、HPV DNA配列を含むか、またはE6を発現する、請求項17記載のTCRまたはその抗原結合断片。
【請求項19】
可変α(Va)領域を含むα鎖および可変β(Vb)領域を含むβ鎖を含む、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合断片であって、
該Va領域が、相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)を含み、該Vb領域が、CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、
(1)該Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:1中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、かつ該Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:2中の相補性決定領域1、2、および3と同一であるか;
(2)該Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:45中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、かつ該Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:46中の相補性決定領域1、2、および3と同一であるか;
(3)該Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:47中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、かつ該Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:48中の相補性決定領域1、2、および3と同一であるか;または
(4)該Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:49中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、かつ該Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3が、それぞれSEQ ID NO:50中の相補性決定領域1、2、および3と同一である、
TCRまたはその抗原結合断片。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項記載のTCRまたはその抗原結合断片をコードする核酸を含む、ベクター。
【請求項21】
発現ベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、請求項20記載のベクター。
【請求項22】
a)ヒト抗E6 TCRのα鎖可変領域およびα鎖定常領域を含むTCRα鎖をコードする第1の核酸配列と;
b)ヒト抗E6 TCRのβ鎖可変領域およびβ鎖定常領域を含むTCRβ鎖をコードする第2の核酸配列と
を含む、ベクター。
【請求項23】
前記α鎖定常領域がヒトTCRα鎖定常領域であり、かつ前記β鎖定常領域がヒトTCRβ鎖定常領域である、請求項22記載のベクター。
【請求項24】
前記α鎖定常領域がマウスTCRα鎖定常領域であり、かつ前記β鎖定常領域がマウスTCRβ鎖定常領域である、請求項22記載のベクター。
【請求項25】
前記第1の核酸配列および前記第2の核酸配列が、リンカー配列によって連結されている、請求項22~24のいずれか一項記載のベクター。
【請求項26】
前記リンカー配列がP2A配列である、請求項25記載のベクター。
【請求項27】
(1)前記第1の核酸配列が、SEQ ID NO:17またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;かつ前記第2の核酸配列が、SEQ ID NO:18またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含むか;
(2)前記第1の核酸配列が、SEQ ID NO:57またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;かつ前記第2の核酸配列が、SEQ ID NO:58またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含むか;
(3)前記第1の核酸配列が、SEQ ID NO:59またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;かつ前記第2の核酸配列が、SEQ ID NO:60またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含むか;あるいは
(4)前記第1の核酸配列が、SEQ ID NO:61またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;かつ前記第2の核酸配列が、SEQ ID NO:62またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含む、
請求項22~26のいずれか一項記載のベクター。
【請求項28】
チェックポイント阻害剤をコードする第3の核酸配列をさらに含む、請求項22~27のいずれか一項記載のベクター。
【請求項29】
前記チェックポイント阻害剤が抗体である、請求項28記載のベクター。
【請求項30】
前記チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体scFvまたは抗CTLA4抗体scFvである、請求項28記載のベクター。
【請求項31】
前記抗体が、
SEQ ID NO:11と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;および
SEQ ID NO:12と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
を含む、請求項29記載のベクター。
【請求項32】
前記第3の核酸配列が、
SEQ ID NO:13と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸配列;および
SEQ ID NO:14と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸配列
を含む、請求項28~31のいずれか一項記載のベクター。
【請求項33】
発現ベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである、請求項22~32のいずれか一項記載のベクター。
【請求項34】
前記レトロウイルスベクターがpMP71である、請求項33記載のベクター。
【請求項35】
(1)SEQ ID NO:20に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列;
(2)SEQ ID NO:63に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列;
(3)SEQ ID NO:64に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列;または
(4)SEQ ID NO:65に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列
を含む、請求項22~34のいずれか一項記載のベクター。
【請求項36】
請求項20~35のいずれか一項記載のベクターを含む、操作された細胞。
【請求項37】
請求項1~19のいずれか一項記載のTCRまたはその抗原結合断片を含む、操作された細胞。
【請求項38】
前記TCRまたはその抗原結合断片が、前記細胞に対して異種である、請求項37記載の操作された細胞。
【請求項39】
細胞株である、請求項36~38のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項40】
対象(例えば、ヒト対象)から得られた初代細胞である、請求項36~38のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項41】
T細胞である、請求項36~40のいずれか一項記載の操作された細胞。
【請求項42】
前記T細胞が、ヒト対象から単離されたT細胞である、請求項41記載の操作された細胞。
【請求項43】
前記T細胞がCD8+である、請求項41記載の操作された細胞。
【請求項44】
前記T細胞がCD4+である、請求項41記載の操作された細胞。
【請求項45】
請求項20~35記載のベクターをインビトロまたはエクスビボで細胞に導入する段階を含む、操作された細胞を作製するための方法。
【請求項46】
前記ベクターがウイルスベクターであり、前記導入する段階が形質導入によって行われる、請求項45記載の方法。
【請求項47】
請求項36~44のいずれか一項記載の操作された細胞を、HPVに関連する疾患または障害を有する対象に投与する段階を含む、疾患または障害を治療する方法。
【請求項48】
前記HPVに関連する疾患または障害が、がんである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記がんが、頭頸部、子宮頚部、中咽頭、肛門、肛門管、直腸肛門、膣、陰門、または陰茎のがんである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
対象における腫瘍を治療する方法であって、
それを必要とする対象に、
(a)HPV抗原に特異的に結合するTCRまたはその抗原結合断片をコードする核酸を含む、操作されたT細胞;および
(b)チェックポイント阻害剤
を投与する段階を含む、方法。
【請求項51】
前記腫瘍がHPV誘発腫瘍である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
請求項1~19のいずれか一項記載のTCRまたはその抗原結合断片と交差競合する、TCRまたはその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年2月5日に出願された国際出願第PCT/CN2020/074366号の恩典を主張する。前記出願の全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本開示は、がん抗原を認識するかまたはそれに結合するT細胞受容体、操作された細胞、および細胞ベースの治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
がんは、年齢、性別、遺伝子変異、UV照射などの環境曝露、職業上のリスク要因、発がん性物質、アスベスト、放射性物質、およびウイルス感染(例えば、HPV、EBV、HBV、HCV、HTLV-1およびKSHV)などの、生物学的および環境的要因によって引き起こされる最もよく知られた細胞異常の1つである(Margaret E et al., "Viruses Associated With Human Cancer," Biochimica et Biophysica Acta.1782:127-150 (2008)(非特許文献1))。特に、いくつかのがん(例えば、予宮頸がん)は、主にウイルス(例えば、ヒトパピローマウイルス、HPV)感染によって引き起こされる(Stanley et al., "HPV: >From Infection To Cancer." Biochemical Society Transactions: 35: part 6 (2007)(非特許文献2))。
【0004】
化学療法などの治療の進歩にもかかわらず、HPV関連がんを含め、がんに対する様々な治療の有効性は、相対的に低い。したがって、有効ながん療法に対する満たされていない必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Margaret E et al., "Viruses Associated With Human Cancer," Biochimica et Biophysica Acta.1782:127-150 (2008)
【非特許文献2】Stanley et al., "HPV: >From Infection To Cancer." Biochemical Society Transactions: 35: part 6 (2007)
【発明の概要】
【0006】
概要
本開示は、腫瘍抗原ヒトパピローマウイルス(HPV)E6を認識するかまたはそれに結合するT細胞受容体、遺伝子操作された細胞、およびHPV関連がんを治療するための細胞療法に関する。
【0007】
一局面では、本開示は、可変α(Va)領域を含むα鎖および可変β(Vb)領域を含むβ鎖を含む、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合断片に関する。いくつかの態様では、Va領域は、相補性決定領域1(CDR-1)、相補性決定領域2(CDR-2)、および相補性決定領域3(CDR-3)を含む;いくつかの態様では、Va領域CDR-1は、選択されたVa領域CDR-1アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、Va領域CDR-2は、選択されたVa領域CDR-2アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、Va領域CDR-3は、選択されたVa領域CDR-3アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む;そして、いくつかの態様では、Vb領域は、相補性決定領域1(CDR-1)、相補性決定領域2(CDR-2)、および相補性決定領域3(CDR-3)を含む;いくつかの態様では、Vb領域CDR-1は、選択されたVb領域CDR-1アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、Vb領域CDR-2は、選択されたVb領域CDR-2アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、Vb領域CDR-3は、選択されたVb領域CDR-3アミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列、ならびに選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、以下のうちの1つである:
(1)選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示され、選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:8、9、および10に示される;
(2)選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:27、28、および29に示され、選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:30、31、および32に示される;
(3)選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:33、34、および35に示され、選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:36、37、および38に示される;
(4)選択されたVa領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:39、40、および41に示され、選択されたVb領域CDR-1、CDR-2、およびCDR-3アミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:42、43、および44に示される。
【0008】
いくつかの態様では、Va領域は、それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;Vb領域は、それぞれSEQ ID NO:8、9、および10に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む。
【0009】
いくつかの態様では、Va領域は、SEQ ID NO:1またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;Vb領域は、SEQ ID NO:2またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
いくつかの態様では、Va領域は、それぞれSEQ ID NO:27、28、および29に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;Vb領域は、それぞれSEQ ID NO:30、31、および32に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む。
【0011】
いくつかの態様では、Va領域は、SEQ ID NO:45またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;Vb領域は、SEQ ID NO:46またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
いくつかの態様では、Va領域は、それぞれSEQ ID NO:33、34および35に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;Vb領域は、それぞれSEQ ID NO:36、37、および38に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む。
【0013】
いくつかの態様では、Va領域は、SEQ ID NO:47またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;Vb領域は、SEQ ID NO:48またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
いくつかの態様では、Va領域は、それぞれSEQ ID NO:39、40、および41に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含み;Vb領域は、それぞれSEQ ID NO:42、43、および44に示されるアミノ酸配列を有するCDR-1、CDR-2、およびCDR-3を含む。
【0015】
いくつかの態様では、Va領域は、SEQ ID NO:49またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;Vb領域は、SEQ ID NO:50またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの態様では、α鎖は、マウスα鎖定常領域を含み、β鎖は、マウスβ鎖定常領域を含む。
【0017】
いくつかの態様では、α鎖は、SEQ ID NO:15またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;β鎖は、SEQ ID NO:16またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
いくつかの態様では、α鎖は、SEQ ID NO:51またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;β鎖は、SEQ ID NO:52またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0019】
いくつかの態様では、α鎖は、SEQ ID NO:53またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;β鎖は、SEQ ID NO:54またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0020】
いくつかの態様では、α鎖は、SEQ ID NO:55またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含み;β鎖は、SEQ ID NO:56またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。
【0021】
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合断片は、主要組織適合性複合体(MHC)分子によって提示されるE6のペプチドエピトープ(SEQ ID NO:19)に結合するかまたはそれを認識する。
【0022】
いくつかの態様では、MHC分子は、HLA-A2分子である。
【0023】
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合断片は、T細胞の表面に発現したときに、標的がん細胞に対する細胞傷害活性を刺激する。
【0024】
いくつかの態様では、標的がん細胞は、HPV DNA配列を含むか、またはE6を発現する。
【0025】
一局面では、本開示は、可変α(Va)領域を含むα鎖および可変β(Vb)領域を含むβ鎖を含む、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合断片に関する;いくつかの態様では、Va領域は、相補性決定領域1(CDR1)、相補性決定領域2(CDR2)、および相補性決定領域3(CDR3)を含み、Vb領域は、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む;いくつかの態様では、
(1)Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:1中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:2中の相補性決定領域1、2、および3と同一である;
(2)Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:45中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:46中の相補性決定領域1、2、および3と同一である;
(3)Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:47中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:48中の相補性決定領域1、2、および3と同一である;または
(4)Va領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:49中の相補性決定領域1、2、および3と同一であり、Vb領域CDR1、CDR2、およびCDR3は、それぞれSEQ ID NO:50中の相補性決定領域1、2、および3と同一である。
【0026】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるようなTCRまたはその抗原結合断片をコードする核酸を含むベクターに関する。
【0027】
いくつかの態様では、ベクターは、発現ベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。
【0028】
一局面では、本開示は、a)ヒト抗E6 TCRのα鎖可変領域およびα鎖定常領域を含むTCRα鎖をコードする第1の核酸配列と;b)ヒト抗E6 TCRのβ鎖可変領域およびβ鎖定常領域を含むTCRβ鎖をコードする第2の核酸配列とを含む、ベクターに関する。
【0029】
いくつかの態様では、α鎖定常領域は、ヒトTCRα鎖定常領域であり、β鎖定常領域は、ヒトTCRβ鎖定常領域である。
【0030】
いくつかの態様では、α鎖定常領域は、マウスTCRα鎖定常領域であり、β鎖定常領域は、マウスTCRβ鎖定常領域である。
【0031】
いくつかの態様では、第1の核酸配列および第2の核酸配列は、リンカー配列によって連結される。いくつかの態様では、リンカー配列は、P2A配列である。
【0032】
いくつかの態様では、第1の核酸配列は、SEQ ID NO:17またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;第2の核酸配列は、SEQ ID NO:18またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含む。いくつかの態様では、第1の核酸配列は、SEQ ID NO:57またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;第2の核酸配列は、SEQ ID NO:58またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含む;いくつかの態様では、第1の核酸配列は、SEQ ID NO:59またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;第2の核酸配列は、SEQ ID NO:60またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含む。いくつかの態様では、第1の核酸配列は、SEQ ID NO:61またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含み;第2の核酸配列は、SEQ ID NO:62またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含む。
【0033】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなベクターは、チェックポイント阻害剤をコードする第3の核酸配列をさらに含む。
【0034】
いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、抗体である。
【0035】
いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体scFv、または抗CTLA4抗体scFvである。
【0036】
いくつかの態様では、抗体は、SEQ ID NO:11と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;およびSEQ ID NO:12と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0037】
いくつかの態様では、第3の核酸配列は、SEQ ID NO:13と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸配列;およびSEQ ID NO:14と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸配列を含む。
【0038】
いくつかの態様では、ベクターは、発現ベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクターである。いくつかの態様では、レトロウイルスベクターは、pMP71である。
【0039】
いくつかの態様では、ベクターは、(1)SEQ ID NO:20に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列;(2)SEQ ID NO:63に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列;(3)SEQ ID NO:64に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列;または(4)SEQ ID NO:65に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一である核酸配列を含む。
【0040】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるようなベクターを含む操作された細胞に関する。
【0041】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるようなTCRまたはその抗原結合断片を含む操作された細胞に関する。
【0042】
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合断片は、細胞に対して異種である。
【0043】
いくつかの態様では、操作された細胞は、細胞株である。
【0044】
いくつかの態様では、操作された細胞は、対象(例えば、ヒト対象)から得られた初代細胞である。
【0045】
いくつかの態様では、操作された細胞は、T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、ヒト対象から単離されたT細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、CD8+である。いくつかの態様では、T細胞は、CD4+である。
【0046】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるようなベクターをインビトロまたはエクスビボで細胞に導入する段階を含む、操作された細胞を作製するための方法に関する。
【0047】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターであり、導入する段階は、形質導入によって行われる。
【0048】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるような操作された細胞を、HPVに関連する疾患または障害を有する対象に投与する段階を含む、疾患または障害を治療する方法に関する。
【0049】
いくつかの態様では、HPVに関連する疾患または障害は、がんである。いくつかの態様では、がんは、頭頸部、子宮頚部、中咽頭、肛門、肛門管、直腸肛門、膣、陰門、または陰茎のがんである。
【0050】
一局面では、本開示は、対象における腫瘍を治療する方法であって、それを必要とする対象に、(a)HPV抗原に特異的に結合するTCRまたはその抗原結合断片をコードする核酸を含む、操作されたT細胞;および(b)チェックポイント阻害剤を投与する段階を含む、方法に関する。
【0051】
いくつかの態様では、腫瘍は、HPV誘発腫瘍である。
【0052】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるようなTCRまたはその抗原結合断片と交差競合する、TCRまたはその抗原結合断片に関する。
【0053】
一局面では、本開示は、患者における疾患、障害または状態を治療するために遺伝子操作された抗がんヒトT細胞の有効量を患者に投与する方法であって、遺伝子操作された抗がんヒトT細胞が、HPV E6抗原に対する抗腫瘍T細胞受容体を発現する、方法を提供する。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:3のヌクレオチド配列によってコードされ、β鎖は、SEQ ID NO:4のヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:78のヌクレオチド配列によってコードされ、β鎖は、SEQ ID NO:79のヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:80のヌクレオチド配列によってコードされ、β鎖は、SEQ ID NO:81のヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:82のヌクレオチド配列によってコードされ、β鎖は、SEQ ID NO:83のヌクレオチド配列によってコードされる。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む可変α(Vα)領域を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む可変β(Vβ)領域を有する。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含む可変α(Vα)領域を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、SEQ ID NO:46のアミノ酸配列を含む可変β(Vβ)領域を有する。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:47のアミノ酸配列を含む可変α(Vα)領域を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、SEQ ID NO:48のアミノ酸配列を含む可変β(Vβ)領域を有する。いくつかの態様では、抗腫瘍T細胞受容体のα鎖は、SEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含む可変α(Vα)領域を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、SEQ ID NO:50のアミノ酸配列を含む可変β(Vβ)領域を有する。疾患、障害または状態は、予宮頸がん、頭頸部がん、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、膣がんおよび陰門がんなどのがんに関連するものであり得る。
【0054】
一局面では、本開示はまた、T細胞受容体も提供する。いくつかの場合では、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のα鎖は、可変α(Vα)領域の配列(SEQ ID NO:1)を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、可変β(Vβ)領域の配列(SEQ ID NO:2)を有する。いくつかの場合では、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のα鎖は、可変α(Vα)領域の配列(SEQ ID NO:45)を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、可変β(Vβ)領域の配列(SEQ ID NO:46)を有する。いくつかの場合では、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のα鎖は、可変α(Vα)領域の配列(SEQ ID NO:47)を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、可変β(Vβ)領域の配列(SEQ ID NO:48)を有する。いくつかの場合では、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のα鎖は、可変α(Vα)領域の配列(SEQ ID NO:49)を有し、抗腫瘍ヒトT細胞受容体のβ鎖は、可変β(Vβ)領域の配列(SEQ ID NO:50)を有する。いくつかの場合では、抗腫瘍ヒトT細胞受容体の可変α(Vα)領域は、マウスT細胞受容体α鎖の定常領域に融合される。いくつかの場合では、抗腫瘍ヒトT細胞受容体の可変β(Vβ)領域は、マウスT細胞受容体β鎖の定常領域に融合される。
【0055】
一局面では、本開示は、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6に特異的に結合する遺伝子操作された抗原受容体をコードする核酸を含む、操作されたT細胞を提供する。
【0056】
一局面では、本開示は、患者特異的T細胞療法のための方法であって、遺伝子が、患者特異的T細胞内に操作され、治療剤として患者に送達し戻される、方法をさらに提供する。
【0057】
本開示は、疾患/状態を診断する方法であって、状態が、がんを含むことができ、疾患が、T細胞受容体と診断しようとする患者/哺乳動物からの試料とを接触させた結果として形成された複合体を分析することによって診断することができ、かつ、複合体が、当技術分野において周知の手段のいずれかによって検出することができる、方法をさらに提供する。いくつかの態様では、その結果を使用して、細胞療法が有効であるかどうかを判定することができる。
【0058】
本開示は、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6に対して抗原特異性を有する操作されたT細胞受容体(TCR)またはその抗原結合断片と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物をさらに提供する。
【0059】
本開示はまた、細胞にキメラ遺伝子をトランスフェクトするためのベクター系であって、ヒト抗E6 TCRのα鎖の可変領域をコードする核酸配列、同じヒト抗E6 TCRのβ鎖の可変領域をコードする核酸配列、およびリンカー配列を含む、ベクター系も提供する。
【0060】
本明細書に使用される「約」という用語は、量、時間的持続期間などの測定可能な値のことを指し、規定値からの±20%、±10%、±5%、±1%、±0.5%または±0.1%の変動を包含する。
【0061】
本明細書に使用される「HPV抗原」という用語は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に由来するポリペプチド分子のことを指す。いくつかの態様では、HPVは、HPV1、HPV2、HPV3、HPV4、HPV6、HPV10、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV27、HPV28、HPV29、HPV30、HPV31、HPV33、HPV34、HPV35、HPV39、HPV40、HPV41、HPV42、HPV43、HPV45、HPV49、HPV51、HPV52、HPV54、HPV55、HPV56、HPV57、HPV58、HPV59、HPV68、またはHPV69である。特に、HPVは、高リスクHPV、例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV58、HPV59、HPV68、またはHPV69であり得る。いくつかの態様では、HPVポリペプチド分子は、E6から選択される。
【0062】
本明細書に使用される「末梢血細胞」という用語は、好酸球、好中球、T細胞、単球、K細胞、顆粒球およびB細胞を非限定的に含む、末梢血中に通常見られる細胞のことを指す。
【0063】
本明細書に使用される「遺伝子操作された細胞」または「遺伝子改変された細胞」という用語は、ゲノムにおける1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、置換または改変を有する細胞、および外因性核酸配列(例えば、ベクター)を有する細胞(外因性核酸配列は、必ずしもゲノムに組み込まれている必要はない)を非限定的に含む、細胞中の核酸配列の改変を伴う細胞のことを指す。
【0064】
本明細書に使用される「がん」または「がん細胞」という用語は、非制御様式で分裂している細胞のことを指す。そのような細胞の例としては、急速に増殖する細胞成長によって特徴付けられる異常な状態または病態を有する細胞が挙げられる。この用語は、侵襲性の組織病理学的なタイプまたはステージに関係なく、がん性成長物、例えば、腫瘍;発がん過程、転移組織、および悪性形質転換された細胞、組織、または臓器を含むことが意味される。がん細胞は、固形腫瘍を形成し得るか、または血液中に過剰な腫瘍細胞を形成し得る(例えば、血液がん)。代替的に、または追加的に、これは、侵襲性の組織病理学的なタイプまたはステージに関係なく、あらゆるタイプのがん性成長物または発がん過程、転移組織、または悪性形質転換された細胞、組織、もしくは臓器を含むことができる。固形腫瘍の例としては、様々な臓器系の悪性腫瘍、例えば、肉腫、腺がんおよびがん腫、例えば、肝臓、肺、乳房、リンパ、胃腸(例えば、結腸)、泌尿生殖路(例えば、腎臓、尿路上皮細胞)、前立腺および咽頭を侵すものが挙げられる。腺がんには、ほとんどの結腸がん、直腸がん、腎細胞がん、肝臓がん、肺の非小細胞がん、小腸のがんおよび食道のがんなどの悪性腫瘍が含まれる。本明細書に記載される方法によって治療できるがんの例としては、例えば、骨がん、膵臓がん、皮膚がん(例えば、黒色腫)、頭部もしくは頸部のがん、皮膚もしくは眼内悪性黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、精巣がん、子宮がん、卵管のがん腫、子宮内膜のがん腫、子宮頸部のがん腫、膣のがん腫、陰門のがん腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病を含む慢性もしくは急性白血病、急性リンパ芽球性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱のがん、腎臓もしくは尿管のがん、腎盂のがん腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、および/またはT細胞リンパ腫が挙げられる。
【0065】
本明細書に使用される「HPV関連がん」という用語は、HPV感染に関連するかまたはそれによって引き起こされるがんのことを指す。
【0066】
本明細書に使用される「ベクター」という用語は、導入されるヌクレオチド配列の所望の遺伝子発現を得るために、宿主細胞にポリヌクレオチド配列(例えば、外来遺伝子)を導入することができる媒体のことを指す。クローニングベクターは、例えば、プラスミド、ファージ、ウイルスなどを含むことができる。最も有名なタイプのベクターは、「プラスミド」であり、これは、関心対象の遺伝子を含む追加のDNAセグメントをその中にライゲーションできる閉環状の二本鎖DNAループのことを指す。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、その中で輸送しようとする核酸構築物がウイルスゲノム中にライゲーションされる。ウイルスベクターは、これらが導入される宿主細胞において自律複製可能であるか、またはそれら自体を宿主細胞のゲノムに組み込むことができ、それにより、宿主ゲノムと一緒に複製される。さらに、ある特定のベクターは、これらが機能的に連結されている遺伝子の発現を指令することが可能である。そのようなベクターは、本明細書において「組換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と称される。いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)である。
【0067】
本明細書に使用される「対象」は、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒト動物である。いくつかの態様では、細胞、細胞集団、または組成物が投与される対象、例えば、患者は、哺乳動物、典型的には、霊長類、例えばヒトである。いくつかの態様では、霊長類は、サルまたは類人猿である。対象は、雄性または雌性であることができ、幼年期、若年期、青年期、成年期および高齢期の対象を含む任意の適切な年齢であることができる。いくつかの態様では、対象は、非霊長類の哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、齧歯類、ラットまたはマウスである。
【0068】
別途定義がなされない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。方法および材料が、本発明における使用のために本明細書に記載されるが;当技術分野において公知の他の適切な方法および材料を使用することもできる。材料、方法および例は、例証にすぎず、限定を意図するものではない。すべての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリー、および本明細書に言及される他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み入れられる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0069】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
例示的な態様は、参照された図面において例証される。本明細書に開示される態様および図面は、限定的ではなく例証的と見なされるべきであることが意図される。
【0071】
図1図1は、pMP71レトロウイルスベクター構築物を示す模式図である。P2Aは、2A自己切断型ペプチドをコードし;Vaは、ヒト抗E6 TCRのα鎖の可変領域をコードし;Vbは、同じヒト抗E6 TCRのβ鎖の可変領域をコードし;Caは、マウスTCRα鎖の定常領域をコードし;Cbは、マウスTCRβ鎖の定常領域をコードする。Ψは、ウイルスRNA上のパッケージング配列を示す。5'LTRおよび3'LTRは、長い末端反復である。
図2図2Aは、非形質導入ヒト初代T細胞におけるTCRの発現を示す。NTは、非形質導入対照である。培養の48時間後、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。図2Bは、E202構築物で形質導入されたヒト初代T細胞におけるE202 TCRの発現を示す。培養の48時間後、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。
図3図3Aは、抗原特異的刺激を受けた非形質導入ヒトT細胞の細胞内IFN-γ発現を示すグラフである。NTは、非形質導入対照である。非形質導入ヒトT細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図3Bは、抗原特異的刺激を受けたE202 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示すグラフである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。
図4図4は、E202 TCRを含有するTCR-T細胞の活性化曲線を示すグラフである。TCR-T細胞を、異なる濃度のHPVペプチドパルスAPCと1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
図5図5は、E202 TCR-T細胞による標的細胞の特異的殺傷パーセンテージとE:T比との関係を示すグラフである。HPV E6抗原を発現する標的細胞をCFSEで事前染色し、次いで、TCR-T細胞と1:2、1:1、3:1および10:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。標的細胞に対するT細胞の細胞傷害性を7-AAD染色によって測定した。NTは、非形質導入対照である。
図6図6Aは、pMP71レトロウイルスベクター構築物を示す模式図である。P2Aは、2A自己切断型ペプチドをコードし;Vaは、ヒト抗HPV16 E6 TCRのα鎖の可変領域をコードし;Vbは、同じヒト抗HPV16 E6 TCRのβ鎖の可変領域をコードし;Caは、マウスTCRα鎖の定常領域をコードし;Cbは、マウスTCRβ鎖の定常領域をコードする。Ψは、ウイルスRNA上のパッケージング配列を示す。5'LTRおよび3'LTRは、長い末端反復である。図6Bは、pMP71レトロウイルスベクター構築物(E202P03)を示す模式図である。P2AおよびT2Aは、2A自己切断型ペプチドをコードし;Vaは、ヒト抗HPV16 E6 TCRのα鎖の可変領域をコードし;Vbは、同じヒト抗HPV16 E6 TCRのβ鎖の可変領域をコードし;Caは、マウスTCRα鎖の定常領域をコードし;Cbは、マウスTCRβ鎖の定常領域をコードし;VHは、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の重鎖の可変領域をコードし;VLは、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の軽鎖の可変領域をコードする。VHおよびVLは、GSリンカーで連結される。Ψは、ウイルスRNA上のパッケージング配列を示す。5'LTRおよび3'LTRは、長い末端反復である。
図7図7Aは、非形質導入ヒト初代T細胞におけるTCRの発現を示す。NTは、非形質導入対照である。培養の13日後、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。図7Bは、E202構築物で形質導入されたヒト初代T細胞におけるE202 TCRの発現を示す。培養の13日後、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。図7Cは、E202P03構築物で形質導入されたヒト初代T細胞におけるE202P03 TCRの発現を示す。培養の13日後、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。
図8図8Aは、抗原特異的刺激を受けた非形質導入ヒトT細胞の細胞内IFN-γ発現を示すグラフである。NTは、非形質導入対照である。非形質導入ヒトT細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図8Bは、抗原特異的刺激を受けたE202 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示すグラフである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図8Cは、抗原特異的刺激を受けたE202P03 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示すグラフである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。
図9図9は、細胞培養上清中の抗原特異的刺激を受けたE202およびE202P03 TCR-T細胞のIFN-γ発現を示すヒストグラムである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と指定のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、細胞培養上清を収集し、上清中のIFN-γ発現を測定した。NTは、非形質導入対照である。
図10図10Aは、抗原特異的刺激を受けた非形質導入ヒトT細胞のCD107a発現を示すグラフである。NTは、非形質導入対照である。非形質導入ヒトT細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCD8サブ集団中でCD107a発現を判定した。図10Bは、抗原特異的刺激を受けたE202 TCR-T細胞のCD107a発現を示すグラフである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCD8サブ集団中でCD107a発現を判定した。図10Cは、抗原特異的刺激を受けたE202P03 TCR-T細胞のCD107a発現を示すグラフである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCD8サブ集団中でCD107a発現を判定した。図10Dは、抗原特異的刺激を受けた非形質導入ヒトT細胞のCD107a発現を示すグラフである。NTは、非形質導入対照である。非形質導入ヒトT細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCD4サブ集団中でCD107a発現を判定した。図10Eは、抗原特異的刺激を受けたE202 TCR-T細胞のCD107a発現を示すグラフである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCD4サブ集団中でCD107a発現を判定した。図10Fは、抗原特異的刺激を受けたE202P03 TCR-T細胞のCD107a発現を示すグラフである。TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、フローサイトメトリーによってCD4サブ集団中でCD107a発現を判定した。
図11図11は、E202またはE202P03 TCR-T細胞による標的細胞の特異的殺傷パーセンテージとE:T比との関係を示すグラフである。HPV E6抗原を発現する標的細胞をCFSEで事前染色し、次いで、TCR-T細胞と1:1、3:1、および10:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。標的細胞に対するT細胞の細胞傷害性を7-AAD染色によって測定した。NTは、非形質導入対照である。
図12図12は、細胞培養上清中の抗PD-1 scFv発現を示すヒストグラムである。E202またはE202P03 TCR-T細胞のいずれかを、24ウェルプレートに3×106個/mlで48時間播種した。次いで、細胞培養上清を収集し、上清中の抗PD-1発現を判定した。
図13-1】図13Aは、非形質導入(UT)ヒトPBMCにおけるTCRの発現を示す。組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。図13Bは、E203構築物で形質導入されたヒトPBMCにおけるE203 TCRの発現を示す。形質導入後5日目に、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。
図13-2】図13Cは、E204構築物で形質導入されたヒトPBMCにおけるE204 TCRの発現を示す。形質導入後5日目に、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。図13Dは、E205構築物で形質導入されたヒトPBMCにおけるE205 TCRの発現を示す。形質導入後5日目に、組換えTCRの発現を、マウスTCRβ鎖を染色することによって検出した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。
図14-1】図14Aは、抗原特異的刺激なしの非形質導入(UT)ヒトCD4+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図14Bは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した非形質導入(UT)ヒトCD4+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Cは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した非形質導入(UT)ヒトCD4+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Dは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した非形質導入(UT)ヒトCD4+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Eは、抗原特異的刺激なしのヒトCD4+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図14Fは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Gは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Hは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。
図14-2】図14Iは、抗原特異的刺激なしのヒトCD4+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図14Jは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Kは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Lは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Mは、抗原特異的刺激なしのヒトCD4+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図14Nは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Oは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図14Pは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD4+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。
図15-1】図15Aは、抗原特異的刺激なしの非形質導入(UT)ヒトCD8+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図15Bは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した非形質導入(UT)ヒトCD8+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Cは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した非形質導入(UT)ヒトCD8+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Dは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した非形質導入(UT)ヒトCD8+ T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Eは、抗原特異的刺激なしのヒトCD8+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図15Fは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Gは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Hは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E203 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。
図15-2】図15Iは、抗原特異的刺激なしのヒトCD8+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図15Jは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Kは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Lは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E204 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Mは、抗原特異的刺激なしのヒトCD8+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。図15Nは、Ca Ski E6/E7細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Oは、Ca Ski細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。図15Pは、293T細胞と1:2のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養したヒトCD8+ E205 TCR-T細胞の細胞内IFN-γ発現を示す。細胞内IFN-γ発現をフローサイトメトリーによって判定した。
図16A図16Aは、非形質導入(UT)、E203、E204、およびE205 TCR-T細胞によるCa Ski E6/E7細胞の絶対殺傷効力を示す。CellTrace(商標)CFSE標識Ca Ski E6/E7細胞とCellTrace(商標)Violet標識293T細胞とを混合し、TCR-T細胞と0:1、0.4:1、2:1、または10:1のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した。フローサイトメトリー解析の参照としてビーズを加えた。
図16B図16Bは、非形質導入(UT)、E203、E204、およびE205 TCR-T細胞によるCa Ski E6/E7細胞の競合殺傷効力を示す。CellTrace(商標)CFSE標識Ca Ski E6/E7細胞とCellTrace(商標)Violet標識293T細胞とを混合し、TCR-T細胞と0:1、0.4:1、2:1、または10:1のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した。
図17図17Aは、E203 TCRを含有するCD8+ TCR-T細胞の活性化曲線を示す。細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。図17Bは、E203 TCRを含有するCD4+ TCR-T細胞の活性化曲線を示す。細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
図18図18Aは、E204 TCRを含有するCD8+ TCR-T細胞の活性化曲線を示す。細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。図18Bは、E204 TCRを含有するCD4+ TCR-T細胞の活性化曲線を示す。細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
図19図19Aは、E205 TCRを含有するCD8+ TCR-T細胞の活性化曲線を示す。細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。図19Bは、E205 TCRを含有するCD4+ TCR-T細胞の活性化曲線を示す。細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
図20図20は、E202、E203、E204、およびE205 TCRの配列を示す表である。CDR1α、CDR2α、およびCDR3αは、それぞれTCRα鎖可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3である。CDR1β、CDR2β、およびCDR3βは、それぞれTCRβ鎖可変ドメインのCDR1、CDR2およびCDR3である。TRA_VJは、TCRのα鎖可変ドメインをコードする再配列されたVおよびJセグメントである。TRB_VDJは、TCRのβ鎖可変ドメインをコードする再配列されたV、D、およびJセグメントである。
図21-1】図21は、本開示に記載される通りのいくつかの配列を提供する。
図21-2】図21-1の続きを示す。
図21-3】図21-2の続きを示す。
図21-4】図21-3の続きを示す。
図21-5】図21-4の続きを示す。
図21-6】図21-5の続きを示す。
図21-7】図21-6の続きを示す。
図21-8】図21-7の続きを示す。
図21-9】図21-8の続きを示す。
図21-10】図21-9の続きを示す。
図21-11】図21-10の続きを示す。
図21-12】図21-11の続きを示す。
図21-13】図21-12の続きを示す。
図21-14】図21-13の続きを示す。
図21-15】図21-14の続きを示す。
図21-16】図21-15の続きを示す。
図21-17】図21-16の続きを示す。
図21-18】図21-17の続きを示す。
図21-19】図21-18の続きを示す。
図21-20】図21-19の続きを示す。
図21-21】図21-20の続きを示す。
図21-22】図21-21の続きを示す。
図21-23】図21-22の続きを示す。
図21-24】図21-23の続きを示す。
図21-25】図21-24の続きを示す。
図21-26】図21-25の続きを示す。
【発明を実施するための形態】
【0072】
詳細な説明
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、扁平上皮に感染し、皮膚疣贅などの増殖性病変を誘発する、小さな(およそ8000塩基対)二本鎖DNAウイルスである(Xavier, "Natural History And Epidemiology Of Hpv Infection And Cervical Cancer". Gynecologic Oncology 110 (2008) S4?S7; Hausen et al., "Human Papilloma Viruses." Annu. Rev. Microbial. 1994. 48;427-47)。HPVは、高度に保存された遺伝子構成を有し、潜在的なオープンリーディングフレーム(ORF)のすべてが1本のDNA鎖中に位置しており、そのリーディングフレームは、初期(E)または後期(L)遺伝子として指定される。初期遺伝子(E1~E8)は、感染の直後に活性化される一方で、後期遺伝子は、上皮顆粒層において発現する構造タンパク質をコードする。初期遺伝子の遺伝子産物は、ウイルスDNAの複製および発現の制御に関与する(Mannarini et al. "Human Papilloma Virus (HPV) In Head And Neck Region: Review Of Literature". Acta Otorhinolaryngol Ital2009;29:119-126)。
【0073】
キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、細胞内T細胞シグナル伝達および共刺激ドメインと融合された細胞外抗原認識ドメインを有する操作された細胞である。CARは、細胞表面腫瘍関連抗原(TAA)を、主要組織適合性クラス(MHC)非依存的様式で、直接的かつ選択的に認識することができる。血液悪性腫瘍の患者においてCAR T細胞療法の成功が報告されているにもかかわらず、固形腫瘍では控えめな応答しか観察されてこなかった。これは、一部、固形腫瘍における免疫抑制性の微小環境の確立に起因し得る。そのような環境は、腫瘍内でその同族リガンドと反応しているT細胞の阻害性受容体(IR)の発現増加によって媒介される、いくつかの固有の阻害性経路のアップレギュレーションを伴う(Ping et al., "T-cell receptor-engineered T cells for cancer treatment: current status and future directions." Protein & cell 9.3 (2018): 254-266.)。
【0074】
養子細胞移入(ACT)は、血液悪性腫瘍および悪性黒色腫の治療において顕著な成功が証明されたがん免疫療法のモダリティである。CD19およびGD2などの腫瘍関連抗原(TAA)を特異的に標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞を使用した、とりわけ効果的な形態のACTは、B細胞悪性腫瘍および神経芽腫のような疾患を治療するための臨床試験において有望な結果を示している(Simon et al., "CAR-T cell therapy in melanoma: A future success story?." Experimental dermatology 27.12 (2018): 1315-1321)。種々の疾患の治療のための改変されたTCRの使用は、ここ数年で重要な成果を上げており、数多くの研究の重点分野となっている。
【0075】
本開示は、細胞療法において使用することができるT細胞受容体(TCR)操作T細胞を提供する。操作されたT細胞受容体は、それ以外の正常なT細胞により認識されない細胞受容体上の表面抗原を認識可能である。操作されたT細胞は、相応の抗原を発現するがん細胞など、複数の標的に対して用いることができる。
【0076】
理論上、T細胞受容体は、あらゆるHPV抗原に対して抗原特異性を有することができる。HPVにおける腫瘍性タンパク質E6およびE7は、細胞の悪性転換に不可欠である。HPV E7タンパク質は、主に、網膜芽細胞腫タンパク質の不活性化を介してがん発生に寄与し、その結果、構成的ながん細胞周期活性化をもたらす。いくつかの態様では、改変されたT細胞は、HPVのエピトープ(例えば、HPV-16などのHPVの高リスク血清型のHLA-A 02:01拘束エピトープ)をMHC依存的に認識可能である。この状況おいて、操作されたTCR-T細胞によってHPV抗原陽性腫瘍細胞を殺傷することができる。
【0077】
T細胞受容体および結合分子
T細胞は、典型的には胸腺において発生し、免疫応答において中心的役割を果たす、リンパ球の一種である。これは、「適応免疫応答」において重要な役割を果たす。T細胞は、細胞表面上のT細胞受容体の存在によって他のリンパ球と区別することができる。分化したT細胞は、免疫応答の制御において重要な役割を有する。「キラー細胞」としても知られているCD8+ T細胞は、細胞障害性である。これらが標的細胞を認識すると、これらは、標的細胞(例えば、ウイルス感染細胞またはがん細胞)を直接殺傷することができる。CD8+ T細胞はまた、サイトカインを産生し、他の細胞(例えば、マクロファージおよびナチュラルキラー(NK)細胞)を動員して、免疫応答を開始することができる。「ヘルパー細胞」としても知られているCD4+ T細胞は、例えば、B細胞から形質細胞およびメモリーB細胞への成熟、ならびに細胞障害性T細胞およびマクロファージの活性化を促進することによって、標的細胞を間接的に殺傷することができる。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現するMHCクラスII分子によってペプチド抗原が提示されると、活性化状態となる。ひとたび活性化されると、これらは、急速に分裂し、免疫応答を調節または支援するサイトカインを分泌する。制御性T細胞は、免疫寛容性に重要であり、それにより、自己免疫応答を阻止または阻害する。制御性T細胞の主な役割は、免疫反応の終了に向けてT細胞媒介免疫を停止すること、および胸腺における陰性選択のプロセスから逃れた自己反応性T細胞を抑制することである。
【0078】
T細胞は、がん免疫において重要な役割を果たしており、がん細胞由来の抗原が、抗原提示細胞(APC)と呼ばれる特殊な免疫細胞に取り込まれ、その細胞表面上に提示されることで、他の免疫細胞が、関心対象の抗原を認識することができる。リンパ節では、APCは、T細胞を活性化し、それらが腫瘍細胞を認識するように活性化する。活性化されたT細胞は、次に、血管を流れて腫瘍に到達し、腫瘍に浸潤し、がん細胞を認識して、それらを殺傷することができる。
【0079】
T細胞の活性化は、T細胞受容体を必要とする。「T細胞受容体」または「TCR」は、可変a(もしくはα)およびb(もしくはβ)鎖(それぞれ、TCRαおよびTCRβとしても知られている)もしくは可変g(もしくはγ)およびd(もしくはδ)鎖(それぞれ、TCRγおよびTCRδとしても知られている)、またはその抗原結合部分を含有し、抗原、例えば、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合しているペプチド抗原またはペプチドエピトープに特異的に結合可能である、分子である。
【0080】
本開示は、T細胞受容体(TCR)またはその抗原結合断片、およびTCRに由来する結合分子を提供する。いくつかの態様では、TCRは、ab形態である。αβおよびγδ形態で存在するTCRは、一般に構造的に類似しているが、それらを発現するT細胞は、別個の解剖学的位置または機能を有し得る。一般に、TCRは、T細胞(またはTリンパ球)の表面に見いだされ、そこで、TCRは、一般に、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合しているペプチドなどの抗原の認識を担っている。
【0081】
いくつかの態様では、TCRは、無傷または全長のTCR、例えば、a鎖およびb鎖を含有するTCRである。いくつかの態様では、TCRは、全長TCRに満たないが、MHC分子中に結合している特異的なペプチドに結合する、例えば、MHC-ペプチド複合体に結合する、抗原結合部分である。いくつかの場合では、TCRの抗原結合部分または断片は、全長またはインタクトなTCRの構造ドメインの一部分だけを含有することができるが、それでも、完全なTCRが結合するペプチドエピトープ、例えばMHC-ペプチド複合体に結合することができる。いくつかの場合では、抗原結合部分は、特異的なMHC-ペプチド複合体に結合するための結合部位を形成するのに十分な、TCRの可変ドメイン、例えば、TCRの可変a(VaまたはVα)鎖および可変b(VbまたはVβ)鎖、またはその抗原結合断片を含有する。
【0082】
TCRの可変ドメインは、一般に抗原認識および結合能ならびにペプチド、MHCおよび/またはMHC-ペプチド複合体の特異性の主な寄与因子である、相補性決定領域(CDR)を含有する。いくつかの態様では、TCRのCDRまたはその組み合わせは、所与のTCR分子の抗原結合部位のすべてまたは実質的にすべてを形成する。TCR鎖の可変領域内の様々なCDRは、一般に、フレームワーク領域(FR)により分離されており、FRは、一般に、CDRと比較してTCR分子間でより少ない変動性を示す。いくつかの態様では、CDR3は、抗原結合もしくは特異性を担う主なCDRであるか、または所与のTCR可変領域上の3つのCDRのうち、抗原認識に、および/もしくはペプチド-MHC複合体のプロセシングされたペプチド部分との相互作用に、最も重要である。いくつかの状況では、α鎖のCDR1は、ある特定の抗原ペプチドのN末端部分と相互作用することができる。いくつかの場合では、β鎖のCDR1は、ペプチドのC末端部分と相互作用することができる。いくつかの状況では、CDR2は、MHC-ペプチド複合体のMHC部分との相互作用もしくはその認識に最も強く寄与するか、またはそれを担う主要なCDRである。
【0083】
TCRのa-鎖および/またはb-鎖はまた、定常ドメイン、膜貫通ドメインおよび/または短い細胞質尾部を含有することができる。いくつかの局面では、TCRの各鎖(例えば、αまたはβ)は、1つのN末端免疫グロブリン可変ドメイン、1つの免疫グロブリン定常ドメイン、膜貫通領域、およびC末端の短い細胞質尾部を保有することができる。いくつかの態様では、TCRは、例えば細胞質尾部を介して、シグナル伝達の媒介に関与するCD3複合体のインバリアントなタンパク質に会合している。いくつかの場合では、この構造は、TCRを、CD3およびそのサブユニットのような他の分子と会合させる。例えば、膜貫通領域と共に定常ドメインを含有するTCRは、タンパク質を細胞膜にアンカーし、CD3シグナル伝達機構または複合体のインバリアントなサブユニットと会合し得る。CD3シグナル伝達サブユニット(例えば、CD3γ、CD3δ、CD3eおよびCD3z鎖)の細胞内尾部は、1つまたは複数の免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMを含有し、一般に、TCR複合体のシグナル伝達能に関与する。
【0084】
ドメインまたは領域の正確な位置は、特定の構造もしくはホモロジーモデリングまたは特定のドメインを説明するために使用される他の特徴に応じて変動することができる。アミノ酸への参照は、TCRのドメイン編成を説明するために使用される、SEQ ID NOとして示される特異的配列への参照を含めて、例示を目的とし、提供される態様の範囲を限定するつもりはないことが理解される。いくつかの場合では、特異的ドメイン(例えば、可変または定常)は、アミノ酸数個(例えば、1、2、3または4個)より長くても短くてもよい。いくつかの局面では、TCRの残基は公知であるか、またはInternational Immunogenetics Information System(IMGT)ナンバリングシステム(例えば、www.imgt.org; Lefranc et al. "IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains." Developmental & Comparative Immunology 27.1 (2003): 55-77.を参照されたい)に従って同定することができる。TCRの構造および変動は、当技術分野において公知であり、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるWO 2019/195486に記載されている。
【0085】
いくつかの態様では、TCRのa鎖およびb鎖は各々、定常ドメインをさらに含有する。いくつかの態様では、a鎖定常ドメイン(Ca)およびb鎖定常ドメイン(Cb)は個々に、哺乳動物、例えば、ヒトまたは非ヒトの定常ドメイン(例えば、マウス定常ドメイン)である。いくつかの態様では、定常ドメインは、細胞膜に隣接する。例えば、いくつかの場合では、2つの鎖により形成されるTCRの細胞外部分は、2つの膜近位定常ドメイン、および2つの膜遠位可変ドメインを含有し、これらの可変ドメインは各々CDRを含有する。
【0086】
いくつかの局面では、本明細書に記載される通りのTCRは、ヒト定常領域、例えば、ヒトCa領域を含有するα鎖およびヒトCb領域を含有するβ鎖を含有することができる。いくつかの態様では、TCRは、完全にヒトである。いくつかの態様では、TCRの発現および/または活性、例えば、ヒト細胞、例えばヒトT細胞、例えば初代ヒトT細胞において発現した場合のTCRの発現および/または活性は、内因性ヒトTCRの存在によって影響されないか、または実質的に影響されない。
【0087】
いくつかの態様では、操作されたTCRは、内因性ヒトTCRを含有または発現するヒト細胞、例えばヒトT細胞において発現した場合、類似のヒト細胞であるが内因性TCRの発現が低減または消失しているヒト細胞における同じTCRの発現、機能的活性および/または抗腫瘍活性のレベルと比較して、細胞表面に類似のもしくは改善されたレベルで発現し、類似のもしくはより大きな機能的活性(例えば、細胞溶解活性)を示し、かつ/または類似のもしくはより大きな抗腫瘍活性を示す。いくつかの例では、本明細書に記載されるような操作されたTCRは、ヒトT細胞において発現した場合、類似のヒトT細胞において発現したが内因性TCRの発現が低減または消失している場合の同じTCRの発現レベルの少なくとも80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、もしくは120%、または少なくとも約80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、もしくは120%のレベルで、細胞表面に発現する。
【0088】
いくつかの態様では、CaおよびCbドメインの各々はヒトである。いくつかの態様では、Caは、TRAC遺伝子(IMGT命名法)によってコードされるか、またはそのバリアントである。いくつかの態様では、Caのバリアントは、少なくとも1つの非天然システインの置き換えを含有する。
【0089】
いくつかの態様では、TCRは、例えば1つまたは複数のジスルフィド結合により連結された、2つの鎖aおよびbのヘテロ二量体であり得る。いくつかの態様では、TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成する短い接続配列を含有し、それにより、TCRの2つの鎖を連結することができる。いくつかの態様では、TCRは、aおよびb鎖の各々に追加のシステイン残基を有することができ、その結果、TCRは、定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含有する。いくつかの態様では、定常および可変ドメインの各々は、システイン残基により形成されたジスルフィド結合を含有する。
【0090】
いくつかの態様では、TCRは、本明細書に記載されるようなCDR、Vaおよび/またはVbならびに定常領域配列を含む。
【0091】
いくつかの態様では、TCRは、二量体TCR(dTCR)である。いくつかの態様では、dTCRは、提供されるTCR a鎖可変領域配列に対応する配列が、TCR a鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合された第1のポリペプチド、および提供されるTCR b鎖可変領域配列に対応する配列が、TCR b鎖定常領域細胞外配列に対応する配列のN末端に融合された第2のポリペプチドを含有し、第1および第2のポリペプチドは、ジスルフィド結合によって連結されている。
【0092】
いくつかの態様では、TCRは、細胞結合形態または可溶性形態であり得る。いくつかの態様では、TCRは、細胞表面に発現した細胞結合形態である。
【0093】
いくつかの態様では、TCRは、単鎖TCR(scTCR)である。scTCRは、MHC-ペプチド複合体に結合することができるa鎖およびb鎖を含有するアミノ酸単鎖である。典型的には、scTCRは、当業者に公知の方法を使用して作製することができる。これらの方法は、例えば、WO 96/13593、WO 96/18105、W099/18129、WO 04/033685、W02006/037960、WO2011/044186;WO 2019 /195486;米国特許第7,569,664号に記載されており;これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0094】
TCR、その抗原結合断片、およびTCR由来結合分子は、関心対象の抗原(例えば、がん抗原)に関連するペプチドエピトープに結合するかまたはそれを認識することができる。いくつかの態様では、抗原は、がん細胞および/またはウイルス、例えば、HPVに感染した細胞の表面に発現するペプチドエピトープであることができる。いくつかの態様では、抗原は、MHC分子に関連して提示される。そのような結合分子には、例えば、T細胞受容体(TCR)およびその抗原結合断片、抗体およびその抗原結合断片、ならびにTCR様CARが含まれる。これらは、そのようなペプチドエピトープへの結合または認識に関して抗原特異性を示す。いくつかの局面では、提供される結合分子、例えばTCRまたは抗原結合断片を発現する操作された細胞は、がん細胞またはHPVに感染した細胞などの、ペプチドエピトープを発現する標的細胞に対して細胞傷害活性を示す。
【0095】
いくつかの局面では、TCR、その抗原結合断片、およびTCR由来結合分子は、MHC分子、例えばMHCクラスI分子またはMHCクラスII分子に関連するエピトープを認識するかまたはそれに結合する。MHCクラスI分子またはMHCクラスII分子は共に、ヒト白血球抗原(HLA)である。これらは、適応免疫系の重要な成分を担っている。HLA発現は、第6番染色体上に位置する遺伝子によって制御される。それは、T細胞上のT細胞受容体に抗原ペプチドを提示するように特殊化された細胞表面分子をコードする。
【0096】
いくつかの態様では、TCR、その抗原結合断片、およびTCR由来結合分子は、MHCクラスI分子に関連するエピトープを認識するかまたはそれに結合する。MHCクラスI分子は、その任意の1つまたは複数のサブタイプを含む、ヒト白血球抗原(HLA)-A2分子、例えば HLA-A*020l、*0202、*0203、*0206、または*0207である。ヒト白血球抗原A2 (HLA-A2)は、中でも最も一般的なヒト血清型である。いくつかの場合では、異なる集団の間のサブタイプの頻度に差があり得る。例えば、HLA-A2陽性白人集団の95%超がHLA-A*020lであり、一方で、中国人集団における頻度は、HLA-A*020lが約23%、HLA-A*0207が45%、HLA-A*0206が8%およびHLA-A*0203が23%であると報告されている。いくつかの態様では、MHC分子は、HLA-A*020lである。いくつかの態様では、本開示は、HPV-EB6/HLA-A2複合体に結合するTCRまたはその抗原結合断片を提供する。
【0097】
いくつかの態様では、結合分子、例えば、TCRまたはその抗原結合断片またはTCR由来結合分子は、単離もしくは精製されるか、または組換え型である。いくつかの局面では、結合分子、例えば、TCRまたはその抗原結合断片またはTCR由来結合分子は、完全にヒトである。いくつかの態様では、結合分子は、モノクローナルである。いくつかの局面では、結合分子は、単鎖である。他の態様では、結合分子は、2つの鎖を含有する。いくつかの態様では、結合分子、例えば、TCR、その抗原結合断片またはTCR由来結合分子は、細胞の表面に発現する。
【0098】
TCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、VaおよびVb、またはVaに類似した領域およびVbに類似した領域を有することができる。いくつかの態様では、Va領域は、SEQ ID NO:1、45、47、49またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、Vb領域は、SEQ ID NO:2、46、48、50またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、Va領域は、本明細書に記載されるような1つまたは複数のVa CDR配列を含む。いくつかの態様では、Vb領域は、本明細書に記載されるような1つまたは複数のVb CDR配列を含む。
【0099】
いくつかの態様では、TCR、TCR由来結合分子、またはその抗原結合断片は、可変α(Va)領域を含むα鎖および可変β(Vb)領域を含むβ鎖を含み、ここで、Va領域は、相補性決定領域(CDR)1、2、3を有することができ、ここで、CDR1領域は、選択されたVa CDR1アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、CDR2領域は、選択されたVa CDR2アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、CDR3領域は、選択されたVa CDR3アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、そして、可変β(Vb)領域は、CDR 1、2、3を含み、ここで、CDR1領域は、選択されたVb CDR1アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、CDR2領域は、選択されたVb CDR2アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、CDR3領域は、選択されたVb CDR3アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、90%、または95%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。選択されたVa CDR 1、2、3のアミノ酸配列および選択されたVb CDR1、2、3のアミノ酸配列は、図20に示される。
【0100】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:5;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:6;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:7のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Va)を含有することができる。
【0101】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:8;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:9;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:10のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Vb)を含有することができる。
【0102】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:27;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:28;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:29のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Va)を含有することができる。
【0103】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:30;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:31;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:32のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Vb)を含有することができる。
【0104】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:33;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:34;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:35のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Va)を含有することができる。
【0105】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:36;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:37;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:38のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Vb)を含有することができる。
【0106】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:39;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:40;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:41のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Va)を含有することができる。
【0107】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:42;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:43;ゼロ、1つまたは2つのアミノ酸挿入、欠失、または置換を有するSEQ ID NO:44のCDRの1つ、2つ、または3つを含有する可変領域(例えば、Vb)を含有することができる。
【0108】
本開示はまた、本明細書に記載されるようなTCR a(α)および/またはb(β)鎖も提供する。いくつかの態様では、a鎖は、SEQ ID NO:15、51、53、55、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、b鎖は、SEQ ID NO:16、52、54、56、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列に示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、a鎖は、本明細書に記載されるような1つまたは複数のVa CDR配列を含む。いくつかの態様では、b鎖は、本明細書に記載されるような1つまたは複数のVb CDR配列を含む。
【0109】
いくつかの態様では、TCRは、例えば1つまたは複数のジスルフィド結合により連結された、2つの鎖aおよびbのヘテロ二量体であり得る。いくつかの態様では、TCRの定常ドメインは、システイン残基がジスルフィド結合を形成する短い接続配列を含有し、それにより、TCRの2つの鎖を連結する場合がある。いくつかの態様では、TCRは、aおよびb鎖の各々に追加のシステイン残基を有する場合があり、その結果、TCRは、定常ドメインに2つのジスルフィド結合を含有する。いくつかの態様では、定常および可変ドメインの各々は、システイン残基により形成されたジスルフィド結合を含有する。
【0110】
いくつかの態様では、天然のジスルフィド結合は存在しない。いくつかの態様では、天然の鎖間ジスルフィド結合を形成する天然のシステインの1つまたは複数(例えば、a鎖およびb鎖の定常ドメイン中)は、セリンまたはアラニンなどの別の残基に置換される。いくつかの態様では、導入されるジスルフィド結合は、αおよびβ鎖上の、例えばa鎖およびb鎖の定常ドメイン中の非システイン残基を、システインに変異させることによって形成することができる。TCR aおよびb鎖中の反対側のシステインは、置換されたTCRのTCR aおよびb鎖の定常領域を互いに連結し、非置換の天然ヒト定常領域または非置換の天然マウス定常領域などの天然ジスルフィド結合が存在する非置換定常領域を含むTCR中に存在しない、ジスルフィド結合を提供する。いくつかの態様では、組換えTCR中の非天然システイン残基の存在(例えば、1つまたは複数の非天然ジスルフィド結合をもたらす)は、それが導入された細胞において、天然TCR鎖を含有するミスマッチしたTCR対の発現よりも所望の組換えTCRの産生に有利に働き得る。
【0111】
いくつかの態様では、α鎖をコードする核酸およびβ鎖をコードする核酸は、リンカー、例えば本明細書の他の箇所に記載されるいずれかを介して接続することができる。
【0112】
本開示はまた、TCR a鎖可変領域、TCR b鎖可変領域、免疫グロブリン重鎖可変領域または免疫グロブリン軽鎖可変領域を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸も提供する。可変領域は、図20に示されるようなCDRを含む。ポリペプチドが対応するポリペプチド(例えば、対応するa鎖可変領域または対応するb鎖可変領域)と対合すると、対合したポリペプチドは、関心対象の抗原(例えば、HPV E6)に結合する。
【0113】
いくつかの態様では、関心対象の抗原に結合することによって、TCRまたはその抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、T細胞を活性化することができる(例えば、TCRシグナル伝達経路を活性化することによって)。いくつかの態様では、活性化は、免疫応答をアップレギュレーションし、サイトカイン(例えば、IFNγ)および/またはCD107aの発現を増加させ、T細胞増殖およびT細胞媒介殺傷を促進することができる。
【0114】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなTCRまたはその抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、T細胞の免疫応答、活性または数を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、2倍、3倍、5倍、10倍、または20倍増加させることができる。いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、関心対象の抗原が存在する場合、IFN-γの血清中濃度を増加させることができる。いくつかの態様では、活性化は、IFN-γの血清中濃度の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、5倍、10倍、100倍、または1000倍の増加を誘導することができる。いくつかの態様では、活性化は、標的細胞の特異的殺傷の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、1倍、2倍、3倍、4倍、または5倍の増加を誘導することができる。いくつかの態様では、標的細胞の特異的殺傷は、本明細書に記載される方法を使用した、標的細胞(例えば、HPVペプチドでパルスされたAPC)の絶対または競合殺傷効力によって判定される。
【0115】
いくつかの局面では、提供される組換えTCRは、少なくとも部分的にCD8非依存的なTCRを含む。いくつかの局面では、提供される組換えTCRは、少なくとも部分的にCD8依存的なTCRを含む。
【0116】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなTCRまたはその抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、HPV E6エピトープに特異的に結合する。いくつかの態様では、エピトープは、SEQ ID NO:19の配列を有する。いくつかの態様では、エピトープは、HPV E6のアミノ酸29~38の配列(SEQ ID NO:75)を有する。結合親和性は、反応速度定数の比(KD=koff/kon)から推定することができる。いくつかの態様では、KDは、1×10-6M未満、1×10-7M未満、1×10-8M未満、1×10-9M未満、または1×10-10M未満である。いくつかの態様では、KDは、50nM、30nM、20nM、15nM、10nM、9nM、8nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、または1nM未満である。いくつかの態様では、KDは、1×10-7M超、1×10-8M超、1×10-9M超、1×10-10M超、1×10-11M超、または1×10-12M超である。抗原に対する結合分子の親和性を測定するための一般的な技法には、例えば、ELISA、RIA、および表面プラズモン共鳴(SPR)が含まれる。
【0117】
いくつかの態様では、本明細書に記載されるようなTCR、その抗原結合断片、またはTCR由来結合分子を発現するT細胞は、HPVペプチドパルスAPCに特異的に結合する。いくつかの態様では、T細胞およびAPCは、1:1のエフェクター対標的細胞比で共培養される。いくつかの態様では、EC50は、細胞内IFN-γ発現を測定することによって決定することができる。いくつかの態様では、EC50は、CD4+ T細胞集団において決定される。いくつかの態様では、EC50は、CD8+ T細胞集団において決定される。いくつかの態様では、EC50は、50ng/ml未満、45ng/ml未満、40ng/ml未満、35ng/ml未満、30ng/ml未満、25ng/ml未満、20ng/ml未満、15ng/ml未満、10ng/ml未満、5ng/ml未満、4ng/ml未満、3ng/ml未満、2ng/ml未満、または1ng/ml未満である。
【0118】
いくつかの態様では、TCRまたはその抗原結合断片、またはTCR由来結合分子は、比較的高い発現効率を有する。例えば、本明細書に記載されるTCRまたはその抗原結合断片、またはTCR由来結合分子の発現効率は、同じ条件下で参照分子(例えば、内因性TCR)よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、または100%高くなり得る。
【0119】
いくつかの態様では、結合分子、例えばTCRは、交差反応性またはオフターゲット結合、例えば、望ましくないオフターゲット結合、例えば、健常または正常組織または細胞中に存在する抗原に対するオフターゲット結合を示さない。
【0120】
いくつかの態様では、Va領域のCDRは、ヒトTRAV遺伝子セグメントおよびヒトTRAJ遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。いくつかの態様では、TRAV遺伝子セグメントは、TRAV38-2/DV8(例えば、TRAV38-2/DV8*01)、TRAV4(例えば、TRAV4*01)またはTRAV27(TRAV27*01)である。いくつかの態様では、TRAJ遺伝子セグメントは、TRAJ18(例えば、TRAJ18*01)、TRAJ12(例えば、TRAJ12*01)、TRAJ17(例えば、TRAJ17*01)、またはTRAJ31(例えば、TRAJ31*01)である。いくつかの態様では、Vb領域のCDRは、ヒトTRBV遺伝子セグメント、ヒトTRBD遺伝子セグメント、およびヒトTRBJ遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。いくつかの態様では、TRBV遺伝子セグメントは、TRBV12-4(例えば、TRBV12-4*01)またはTRBV29-1(例えば、TRBV29-1*01)である。いくつかの態様では、TRBD遺伝子セグメントは、TRBD2(例えば、TRBD2*02)である。いくつかの態様では、TRBJ遺伝子セグメントは、TRBJ1-1(例えば、TRBJ1-1*01)である。
【0121】
いくつかの態様では、TCRのVa領域のCDRは、ヒトTRAV38-2/DV8(例えば、TRAV38-2/DV8*01)遺伝子セグメントおよびヒトTRAJ18(例えば、TRAJ18*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。いくつかの態様では、TCRのVb領域のCDRは、ヒトTRBV28(例えば、TRAV28*01)遺伝子セグメント、ヒトTRBD1(例えば、TRBD1*01)遺伝子セグメント、およびヒトTRBJ1-1(例えば、TRAJ1-1*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。
【0122】
いくつかの態様では、TCRのVa領域のCDRは、ヒトTRAV4(例えば、TRAV4*01)遺伝子セグメントおよびヒトTRAJ12(例えば、TRAJ12*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。いくつかの態様では、TCRのVb領域のCDRは、ヒトTRBV12-4(例えば、TRAV12-4*01)遺伝子セグメント、ヒトTRBD2(例えば、TRBD2*02)遺伝子セグメント、およびヒトTRBJ1-1(例えば、TRAJ1-1*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。
【0123】
いくつかの態様では、TCRのVa領域のCDRは、ヒトTRAV4(例えば、TRAV4*01)遺伝子セグメントおよびヒトTRAJ17(例えば、TRAJ17*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。いくつかの態様では、TCRのVb領域のCDRは、ヒトTRBV12-4(例えば、TRAV12-4*01)遺伝子セグメント、ヒトTRBD2(例えば、TRBD2*02)遺伝子セグメント、およびヒトTRBJ1-1(例えば、TRAJ1-1*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。
【0124】
いくつかの態様では、TCRのVa領域のCDRは、ヒトTRAV27(例えば、TRAV27*01)遺伝子セグメントおよびヒトTRAJ31(例えば、TRAJ31*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。いくつかの態様では、TCRのVb領域のCDRは、ヒトTRBV29-1(例えば、TRAV29-1*01)遺伝子セグメント、ヒトTRBD2(例えば、TRBD2*02)遺伝子セグメント、およびヒトTRBJ1-1(例えば、TRAJ1-1*01)遺伝子セグメントからの配列によってコードされる。
【0125】
HPV感染症およびがん
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症は、ヒトの性行為により伝播するウイルス感染症の最も一般的な種類の1つである。ほとんどの場合、HPV感染症の症状は、軽度で自然に退縮する;しかしながら、長期間の感染は、性器の疣贅およびがんをもたらし得る。HPVに関連する公知のがんタイプには、予宮頸がん、頭頸部がん、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、膣がんおよび陰門がんが含まれる。
【0126】
HPVは、小型のエンベロープを持たないデオキシリボ核酸(DNA)ウイルスからなるパピローマウイルス科ファミリーに属する。HPVゲノムは、二本鎖DNAからなり、6つの初期タンパク質(E1、E2、E4、E5、E6、およびE7)と2つの後期タンパク質(L1およびL2)のDNA配列をコードする。E1およびE2タンパク質は、ウイルスの複製および翻訳に必要な初期ウイルスタンパク質であり、E2はまた、E6およびE7の発現も調節し、E4およびE5は、ウイルスの組み立ておよび増殖促進に関与するが、後期タンパク質L1およびL2は、マイナーおよびメジャーカプシドタンパク質である。HPVには100を超える系統があり、その配列に基づいて、これらは、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、およびミューに分けることができる。子宮頸部および中咽頭に感染するほとんどのパピローマウイルスは、アルファウイルス属に属する。さらに、これらのウイルスは、その発がん能に応じて、高リスクHPV型および低リスクHPV型に分類することができる。中でも、HPV 16は、がんを引き起こす能力が最も高いと考えられる。
【0127】
HPVのE6およびE7遺伝子産物は、がんの発症機序に寄与する。HPVウイルスは、宿主DNAのその核内に組み込まれ、それにより、腫瘍性タンパク質E6およびE7の発現を異常調節する。p53の分解は、E6によって誘導され、p53活性の喪失を導く。その分解は、p53、E6およびE6AP間の複合体の形成を通じて成し遂げられる(Bernard et al. "Proteasomal degradation of p53 by human papillomavirus E6 oncoprotein relies on the structural integrity of p53 core domain." PloS one 6.10 (2011): e25981)。生理学的状態で、p53は、細胞周期のG1期で細胞を停止するように機能して宿主DNAの修復を可能にし、重度のDNA損傷の条件下では、p53はアポトーシスを誘導することもできる。p53を阻害することに加えて、E7はまた、ある特定のサイクリン依存性キナーゼ阻害剤に結合し、その結果、細胞周期制御のさらなる喪失をもたらす。
【0128】
HPVは、通常、増殖能を有する扁平上皮細胞に感染し、また外傷または擦過傷の間に基底細胞に接近する。基底細胞において、HPV感染は、ウイルス複製を支援するウイルス遺伝子の発現を誘導する。
【0129】
HPVは、最も一般的には性行為により伝播するが、媒介物を介した性行為によらない伝播および偶発的伝播が起こることが知られている。HPV獲得に寄与し得るリスク因子は、若年の性行為、複数の性的パートナー、および経口避妊薬の使用であり得る。加えて、低い社会経済状況および喫煙習慣も、感染獲得リスクを高めると報告されている。ほとんどの場合、感染は、不顕性であり、免疫系によって取り除かれるが、持続性の感染は、腫瘍形成と関係している。
【0130】
HPV感染を検出する様々な方法が当技術分野において公知である。HPV感染は、標的増幅、シグナル増幅、およびプローブ増幅によって検出することができる。標的増幅は、標的遺伝子配列からのHPV DNA断片の複製に基づく。標的増幅技術には、ウイルス遺伝子(例えば、カプシドL1遺伝子)のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、アンプリコアヒトパピローマウイルス検査、線形アレイヒトパピローマウイルスジェノタイプ判定検査、パピローマチェック、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、およびAPTIMAヒトパピローマウイルスアッセイが含まれる。シグナル増幅技術は、DNA技術またはハイブリットキャプチャを利用してDNAシグナルを検出可能なレベルまで増加させる。これらには、ハイブリットキャプチャ、Careヒトパピローマウイルス検査、およびCervista(14種の高リスクHPV型を検出できるFDAによって承認されているジェノタイプ判定検査)が含まれる。プローブ増幅法は、指定のHPV DNA配列にハイブリダイズできる標識された分子プローブを利用する。
【0131】
HPVとがんとの間の関係性および様々なHPV検出法はさらに、Bansal et al., "Human papillomavirus-associated cancers: A growing global problem," International Journal of Applied and Basic Medical Research 6.2 (2016): 84; Brianti et al., "Review of HPV-related diseases and cancers," New Microbiol 40.2 (2017): 80-85; Chan et al., "Human Papillomavirus Infection and Cervical Cancer: Epidemiology, Screening, and Vaccination-Review of Current Perspectives," Journal of oncology 2019 (2019)に記載されており;その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0132】
いくつかの局面では、本開示は、HPV感染リスクのある対象におけるHPV感染およびHPV関連がんのリスクを抑制または低減する方法を提供する。いくつかの局面では、本開示はまた、HPV感染を示す対象におけるHPV関連がんの発症リスクを抑制または低減する方法も提供する。
【0133】
いくつかの態様では、TCR、その抗原結合断片、およびTCR由来結合分子は、HPVによってコードされる抗原に結合することができる。HPVサブタイプは、バリアントの中でも、HPV1、HPV2、HPV3、HPV4、HPV6、HPV10、HPV11、HPV16、HPV18、HPV26、HPV27、HPV28、HPV29、HPV30、HPV31、HPV33、HPV34、HPV35、HPV39、HPV40、HPV41、HPV42、HPV43、HPV45、HPV49、HPV51、HPV52、HPV54、HPV55、HPV56、HPV57、HPV58、HPV59、HPV68、およびHPV69から選択することができる。いくつかの態様では、結合分子の標的となるHPVのサブタイプは、少なくとも1つの高リスクHPV:例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV58、HPV59、HPV68、およびHPV69から選択される。
【0134】
いくつかの態様では、HPV抗原には、E1、E2、E3、E4、E6、E7、L1およびL2タンパク質が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、抗原は、E6抗原である。さらに別の態様では、抗原は、E7抗原である。いくつかの態様では、抗原は、HPV16 E6抗原である。いくつかの態様では、認識されるエピトープは、E6抗原ペプチドであり、SEQ ID NO:19の配列を有する。
【0135】
操作された細胞
本開示は、本明細書に記載されるようなTCRまたはその抗原結合断片、または他の類似の抗原結合分子を含む、操作された細胞(例えば、T細胞)を提供する。これらの操作された細胞を、本明細書に記載されるような様々な障害または疾患(例えば、ウイルス感染、がん、ウイルス誘発障害)を治療するために使用することができる。
【0136】
様々な態様では、操作される細胞は、例えば、ヒトおよび非ヒト動物から得ることができる。様々な態様では、操作される細胞は、細菌、真菌、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、サル、ブタまたは任意の他の種から得ることができる。好ましくは、細胞は、ヒト、ラットまたはマウス由来である。より好ましくは、細胞は、ヒトから得られる。様々な態様では、操作される細胞は、血液細胞である。好ましくは、細胞は、白血球(例えば、T細胞)、リンパ球または任意の他の適切な血液細胞型である。いくつかの態様では、細胞は、末梢血細胞である。いくつかの態様では、細胞は、T細胞、B細胞またはNK細胞である。
【0137】
いくつかの態様では、細胞は、T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、標的細胞の表面上の特異的な抗原性部分を認識する細胞表面受容体を発現することができる。細胞表面受容体は、標的細胞に関連する抗原性部分を認識可能である、野生型もしくは組換えT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、または任意の他の表面受容体であることができる。T細胞は、当技術分野において公知の様々な方法、例えば、患者から単離されたT細胞(例えば、腫瘍浸潤リンパ球)のインビトロ培養によって得ることができる。TCR遺伝子改変T細胞は、T細胞(例えば、患者の末梢血から単離された)をウイルスベクターで形質導入することによって得ることができる。いくつかの態様では、T細胞は、TCR遺伝子改変T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、または制御性T細胞である。いくつかの態様では、T細胞は、Tヘルパー1型T細胞およびTヘルパー2型T細胞である。いくつかの態様では、この受容体を発現するT細胞は、αβ-T細胞である。代替の態様では、この受容体を発現するT細胞は、γδ-T細胞である。
【0138】
いくつかの態様では、細胞は、NK細胞である。いくつかの態様では、操作された細胞の調製は、1つまたは複数の培養および/または調製工程を含む。結合分子、例えばTCRの導入のための細胞は、試料、例えば、生物学的試料、例えば、対象から得られたものまたは対象に由来するものから単離することができる。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とする対象、または細胞療法が投与される対象である。対象は、いくつかの態様では、そのために細胞が単離、処理および/または操作される、養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とするヒトである。
【0139】
いくつかの態様では、細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、複能性および多能性幹細胞などの幹細胞である。細胞は、初代細胞、例えば、対象から直接単離されたものおよび/または対象から単離され凍結されたものであることができる。いくつかの態様では、幹細胞は、所望の細胞型(例えば、T細胞)を得るために追加の分化因子と培養される。
【0140】
種々の細胞型は、適切な単離法から得ることができる。単離法には、細胞中の1つまたは複数の特異的分子、例えば、表面マーカー、例えば、表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸の発現または存在に基づいた、種々の細胞型の分離が含まれる。いくつかの態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法を使用することができる。いくつかの態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、いくつかの局面では、単離は、例えば、マーカーに特異的に結合する抗体または結合パートナーとのインキュベーションと、それに一般的に続く洗浄工程、および抗体または結合パートナーに結合しなかった細胞からの抗体または結合パートナーと結合した細胞の分離による、1つまたは複数のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの細胞の発現または発現レベルに基づいた、細胞および細胞集団の分離を含む。
【0141】
そのような分離工程は、試薬と結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、および/または抗体もしくは結合パートナーに結合しなかった細胞が保持される負の選択に基づくことができる。いくつかの例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。いくつかの局面では、不均一集団においてある細胞型を特異的に同定する抗体が入手不可能な場合、負の選択が特に有用であることができ、その結果、所望の集団以外の細胞が発現するマーカーに基づいて分離が最良に実行される。
【0142】
また、結合分子を発現させるため、およびそのような結合分子を発現する遺伝子操作された細胞を作製するための、方法、核酸、組成物、およびキットが提供される。遺伝子操作は、一般に、レトロウイルス形質導入、トランスフェクションまたは形質転換などによる、治療用分子、例えば、TCR、CAR、例えばTCR様CAR、ポリペプチド、融合タンパク質をコードする核酸の細胞内への導入を伴う。いくつかの態様では、遺伝子移入は、最初に、細胞を、例えばサイトカインまたは活性化マーカーの発現により測定される、増殖、生存、および/または活性化などの応答を誘導する刺激と組み合わせるなどによって該細胞を刺激し、続いて活性化細胞を形質導入し、培養して臨床適用に十分な数まで拡大増殖させることによって、達成される。
【0143】
いくつかの態様では、組換え核酸は、例えば、サルウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターなどの組換え感染性ウイルス粒子を使用して、細胞に移入される。いくつかの態様では、組換え核酸は、組換えレンチウイルスベクターまたはガンマ-レトロウイルスベクターなどのレトロウイルスベクターを使用してT細胞に移入される。いくつかの態様では、レトロウイルスベクター、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、または脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)に由来する、レトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。ほとんどのレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。いくつかの態様では、レトロウイルスには、任意のトリまたは哺乳動物細胞源に由来するものが含まれる。レトロウイルスは、典型的には、ヒトを含むいくつかの種の宿主細胞に感染可能であることを意味する、両種指向性である。いくつかの態様では、ベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの態様では、組換え核酸は、エレクトロポレーションを介してT細胞に移入される。いくつかの態様では、組換え核酸は、転位を介してT細胞に移入される。免疫細胞中に遺伝物質を導入して発現させる他の方法には、リン酸カルシウムトランスフェクション、プロトプラスト融合、陽イオンリポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子促進微粒子銃およびリン酸ストロンチウムDNA共沈が含まれる。これらの方法の多くは、例えば、WO2019195486に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0144】
いくつかの局面では、ヒト化および/または完全ヒト組換えTCRの開発は、技術的課題を提起する。例えば、いくつかの局面では、ヒト化および/または完全ヒト組換えTCR受容体は、ヒトT細胞に操作される場合、内因性TCR複合体と競合し得、かつ/または内因性TCRaおよび/またはTCRb鎖と誤対合を形成することができ、これは、ある特定の局面では、組換えTCRシグナル伝達、活性、および/または発現を低下させ、最終的には、操作された細胞の活性の低下をもたらし得る。操作された細胞は、遺伝子改変することができる。いくつかの態様では、操作された細胞は、T細胞受容体α定常(TRAC)遺伝子および/またはT細胞受容体β定常(TRBC)遺伝子の遺伝子破壊を含むことができる。いくつかの態様では、TRBC遺伝子は、T細胞受容体β定常1(TRBCJ)またはT細胞受容体β定常2(TRBC2)遺伝子の一方または両方である。いくつかの態様では、操作された細胞は、内因性TCR a鎖および/またはTRC b鎖を発現しない。いくつかの他の局面では、非ヒト定常ドメイン、例えば、齧歯類(例えば、マウス)定常ドメインが使用される。非ヒト定常ドメインの使用は、誤対合の可能性を効率的に低減することができる。
【0145】
また、操作された細胞の集団、そのような細胞を含有するおよび/またはそのような細胞が濃縮された組成物、例えば、結合分子を発現する細胞が、組成物中の総細胞の、またはT細胞、CD8+もしくはCD4+細胞などのある特定の細胞型の、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高いパーセントを構成する組成物も提供される。
【0146】
組換えベクター
本開示はまた、本明細書に開示される単離されたポリヌクレオチド(例えば、本明細書に開示されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)を含む組換えベクター(例えば、発現ベクター)、組換えベクターが導入される宿主細胞(すなわち、その結果、宿主細胞は、ポリヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドを含むベクターを含有する)、および組換え技術による組換えポリペプチドまたはその断片の作製も提供する。
【0147】
本明細書に使用される「ベクター」は、ベクターが宿主細胞に導入された際に、関心対象の1つまたは複数のポリヌクレオチドを宿主細胞に送達可能な任意の構築物である。「発現ベクター」は、発現ベクターが導入された宿主細胞に、関心対象の1つまたは複数のポリヌクレオチドをコードされたポリペプチドとして送達および発現可能である。したがって、発現ベクターにおいて、発現ベクターが導入された宿主細胞中で関心対象のポリヌクレオチドが翻訳されるように、関心対象のポリヌクレオチドは、発現のために、ベクター中に、プロモーター、エンハンサーおよび/またはポリA尾部などの調節エレメントと、ベクター内または宿主細胞のゲノム中のいずれかに、関心対象のポリヌクレオチドの組み込み部位でまたはその近傍でまたはそれに隣接して機能的に連結されることによって位置付けられる。
【0148】
ベクターは、当技術分野において公知の方法、例えば、エレクトロポレーション、化学的トランスフェクション(例えば、DEAE-デキストラン)、形質転換、トランスフェクション、ならびに感染および/または形質導入(例えば、組換えウイルスによる)によって宿主細胞に導入することができる。したがって、ベクターの非限定的な例としては、ウイルスベクター(組換えウイルスを作製するために使用することができる)、ネイキッドDNAまたはRNA、プラスミド、コスミド、ファージベクター、および陽イオン性縮合剤に関連するDNAまたはRNA発現ベクターが挙げられる。
【0149】
本開示は、病理学的疾患または状態の治療に使用することができる、細胞を遺伝子改変するのに適した核酸構築物を含む組換えベクターを提供する。
【0150】
遺伝物質を細胞に送達するために任意のベクターまたはベクター型を使用することができる。これらのベクターには、プラスミドベクター、ウイルスベクター、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、およびヒト人工染色体(HAC)が含まれるが、それらに限定されない。ウイルスベクターは、組換えレトロウイルスベクター、組換えレンチウイルスベクター、組換えアデノウイルスベクター、泡沫状ウイルスベクター、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ハイブリッドベクター、およびプラスミドトランスポゾン(例えば、スリーピングビューティートランスポゾン系、およびPiggyBacトランスポゾン系)またはインテグラーゼに基づくベクター系を含むことができるが、それらに限定されない。当技術分野において公知の他のベクターを、本明細書に記載される方法と一緒に使用することもできる。
【0151】
いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターである。ウイルスベクターは、ウイルスベクターの製造専用の培養培地中で成長させることができる。ウイルスベクターを成長させるための任意の適切な成長培地および/またはサプリメントを、本明細書に記載される態様に従って使用することができる。
【0152】
いくつかの態様では、使用されるベクターは、組換えレトロウイルスベクターである。レトロウイルスベクターは、関心対象の核酸分子の発現を指令可能である。レトロウイルスは、そのウイルスカプシド中にRNAの形態で存在し、宿主細胞内で複製されると二本鎖DNA中間体を形成する。同様に、レトロウイルスベクターは、RNAと二本鎖DNAの両形態で存在する。レトロウイルスベクターはまた、組換えDNA断片を含有するDNA形態および組換えRNA断片を含有するRNA形態も含む。ベクターは、少なくとも1つの転写プロモーター/エンハンサー、または遺伝子発現を制御する他のエレメントを含むことができる。そのようなベクターはまた、パッケージングシグナル、長い末端反復(LTR)またはその部分、ならびに使用されるレトロウイルスに適したプラスおよびマイナス鎖プライマー結合部位を含むこともできる。長い末端反復(LTR)は、レトロウイルスRNAの逆転写によって形成されたレトロトランスポゾンまたはプロウイルスDNAのいずれかの端に見られる何回も(例えば、数百回または数千回)反復する同一のDNA配列である。これらは、ウイルスによって使用され、その遺伝物質を宿主ゲノムに挿入する。任意で、ベクターはまた、ポリアデニル化を指令するシグナル、選択マーカー、例えばアンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、TK、ハイグロマイシン耐性、フレオマイシン耐性、ヒスチジノール耐性、またはDHFR、ならびに1つまたは複数の制限部位および翻訳終結配列を含むこともできる。例えば、そのようなベクターは、5' LTR、先導配列、tRNA結合部位、パッケージングシグナル、第二鎖DNA合成起源、および3' LTRまたはその一部分を含むことができる。加えて、本明細書において使用されるレトロウイルスベクターはまた、レトロウイルスgag、polおよびenv遺伝子の除去と関心対象の遺伝子との置換によって創出される組換えベクターのことを指すこともできる。
【0153】
いくつかの態様では、MP71ベクターが使用される。MP71レトロウイルスベクター構築物は、標準的な分子生物学的技法を使用して作製される。いくつかの態様では、MP71レトロウイルスベクターは、P2A配列によって連結された2つの遺伝子を含有する:(1)マウスTCRα鎖の定常領域に融合されたヒト抗E6 TCRのα鎖の可変領域;(2)マウスTCRβ鎖の定常領域に融合された同じヒト抗E6 TCRのβ鎖の可変領域(図1)。
【0154】
いくつかの態様では、ベクターは、阻害性タンパク質(例えば、チェックポイント阻害剤)をコードする追加の核酸を含むことができる。様々な態様では、細胞は、遺伝子操作された抗原受容体および阻害性タンパク質を発現する。様々な態様では、阻害性タンパク質は、構成的に発現する。
【0155】
いくつかの態様では、ベクターまたは構築物は、1つまたは複数の核酸分子の発現を駆動する単一のプロモーターを含有することができる。いくつかの態様では、そのようなプロモーターは、マルチシストロン性(バイシストロン性またはトリシストロン性)であることができる。例えば、いくつかの態様では、転写ユニットを、IRES(配列内リボソーム進入部位)を含有するバイシストロン性ユニットとして操作することができ、このことで、単一のプロモーターからのメッセージによる遺伝子産物(例えば、TCRのα鎖および/またはβ鎖をコードする)の共発現が可能になる。あるいは、いくつかの場合では、単一のプロモーターは、自己切断ペプチド(例えば、P2AまたはT2A)またはプロテアーゼ認識部位(例えば、フーリン)をコードする配列によって互いに隔てられた2つまたは3つの遺伝子(例えば、TCRのα鎖および/またはβ鎖をコードする)を単一のオープンリーディングフレーム(ORF)に含有するRNAの発現を指令し得る。したがって、ORFは、翻訳の間(2A、例えば、T2Aの場合)またはその後のいずれかに個々のタンパク質に切断される、単一のポリタンパク質をコードする。いくつかの場合では、ペプチド、例えばT2Aは、リボソームに、2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップさせることができ(リボソームスキッピング)、それによって、2A配列の端と次のペプチド下流との間の隔たりを導くことができる。
【0156】
様々な細胞株を本明細書に記載されるようなベクターと一緒に使用することができる。ポリペプチドを発現させるために使用され得る例示的な真核細胞としては、COS 7細胞を含むCOS細胞;293-6E細胞を含む293細胞;CHO-S、DG44. Lec13 CHO細胞、およびFUT8 CHO細胞を含む、CHO細胞;PER.C6(登録商標)細胞;ならびにNSO細胞が挙げられるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、特定の真核宿主細胞は、結合分子に対して所望の翻訳後修飾を行う能力に基づいて選択される。例えば、いくつかの態様では、CHO細胞は、293細胞で産生された同じポリペプチドより高いシアリル化レベルを有するポリペプチドを産生する。
【0157】
一局面では、本開示はまた、以下を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸に関する:
(1)それぞれSEQ ID NO:5、6、および7に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むa鎖可変領域(Va)を含む、TCR a鎖またはその断片であって、Vaが、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含むb鎖可変領域(Vb)と対合した際にE6に結合する、TCR a鎖またはその断片;
(2)それぞれSEQ ID NO:8、9、および10に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むb鎖可変領域(Vb)を含む、TCR b鎖またはその断片であって、Vbが、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含むa鎖可変領域(Va)と対合した際にE6に結合する、TCR b鎖またはその断片;
(3)それぞれSEQ ID NO:27、28、および29に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むa鎖可変領域(Va)を含む、TCR a鎖またはその断片であって、Vaが、SEQ ID NO:46に示されるアミノ酸配列を含むb鎖可変領域(Vb)と対合した際にE6に結合する、TCR a鎖またはその断片;
(4)それぞれSEQ ID NO:30、31、または32に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むb鎖可変領域(Vb)を含む、TCR b鎖またはその断片であって、Vbが、SEQ ID NO:45に示されるアミノ酸配列を含むa鎖可変領域(Va)と対合した際にE6に結合する、TCR b鎖またはその断片;
(5)それぞれSEQ ID NO:33、34、または35に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むa鎖可変領域(Va)を含む、TCR a鎖またはその断片であって、Vaが、SEQ ID NO:48に示されるアミノ酸配列を含むb鎖可変領域(Vb)と対合した際にE6に結合する、TCR a鎖またはその断片;
(6)それぞれSEQ ID NO:36、37、または38に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むb鎖可変領域(Vb)を含む、TCR b鎖またはその断片であって、Vbが、SEQ ID NO:47に示されるアミノ酸配列を含むa鎖可変領域(Va)と対合した際にE6に結合する、TCR b鎖またはその断片;
(7)それぞれSEQ ID NO:39、40、または41に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むa鎖可変領域(Va)を含む、TCR a鎖またはその断片であって、Vaが、SEQ ID NO:50に示されるアミノ酸配列を含むb鎖可変領域(Vb)と対合した際にE6に結合する、TCR a鎖またはその断片;または
(8)それぞれSEQ ID NO:42、43、または44に示されるアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)1、2、および3を含むb鎖可変領域(Vb)を含む、TCR b鎖またはその断片であって、Vbが、SEQ ID NO:49に示されるアミノ酸配列を含むa鎖可変領域(Va)と対合した際にE6に結合する、TCR b鎖またはその断片。
【0158】
いくつかの態様では、VLと対合した際のVHが、HPV E6に特異的に結合するか、またはVHと対合した際のVLが、HPV E6に特異的に結合する。いくつかの態様では、核酸は、cDNAである。
【0159】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるような核酸の1つまたは複数を含むベクターに関する。一局面では、本開示はまた、本明細書に記載されるような核酸の2つを含むベクターに関する。いくつかの態様では、ベクターは、一緒になってHPV抗原に結合するVa領域およびVb領域をコードする。
【0160】
一局面では、本開示は、ベクターのペアであって、各ベクターが、本明細書に記載されるような核酸の1つを含み、共に、一緒になってHPV抗原に結合するVa領域およびVb領域をコードする、ベクターのペアに関する。
【0161】
一局面では、本開示は、本明細書に記載されるようなベクターまたはベクターのペアを含む細胞に関する。いくつかの態様では、細胞は、T細胞である。
【0162】
いくつかの場合では、ある特定のTCRは、内因性TCR鎖との誤対合および/もしくは競合ならびに/または他の要因に一部起因して、低い発現または活性を示し得る。これらの課題に対応するための1つの方法は、内因性ヒトTCR aまたはb鎖との誤対合を防止するためにマウス定常ドメインを有する組換えTCRを設計することであった。しかしながら、マウス配列を有する組換えTCRの使用は、免疫応答のリスクを提起し得る。いくつかの態様では、遺伝子破壊が、例えば、遺伝子編集によって、1つまたは複数のTCR鎖をコードする内因性遺伝子に導入される。
【0163】
図1に示されるように、核酸構築物が、P2A配列によって連結された2つの遺伝子:(1)マウスTCRα鎖の定常領域に融合されたヒト抗E6 TCRのα鎖の可変領域;(2)マウスTCRβ鎖の定常領域に融合された同じヒト抗E6 TCRのβ鎖の可変領域を含有するレトロウイルスベクターpMP71内にクローニングされる。いくつかの態様では、核酸構築物は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む。
【0164】
図6Bを参照すれば、核酸構築物は、3つの配列を含み、3つの配列は、(a)「Va-Ca」(式中、Vaは、ヒトTCRのα鎖の可変領域に対応し、Caは、マウスTCRα鎖の定常領域に対応する)として特定された、マウスTCRα鎖の定常領域に融合されたヒトTCRのα鎖の可変領域;(b)「Vb-Cb」(式中、Vbは、同じヒトTCRのβ鎖の可変領域に対応し、Cbは、マウスTCRβ鎖の定常領域に対応する)として特定された、マウスTCRβ鎖の定常領域に融合された同じヒトTCRのβ鎖の可変領域;ならびに、(c)GSリンカー(例えば、SEQ ID NO:76)で連結された免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の重鎖および軽鎖の可変領域を含む。いくつかの態様では、核酸構築物は、シグナルペプチドをコードする配列をさらに含む。いくつかの態様では、TCRは、抗E6 TCRである。いくつかの態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体scFvである。核酸構築物は、構築物のトランスフェクション、形質導入、組み込み、複製、転写、翻訳、発現および/または安定化を支援および/または可能にし得る他の配列をさらに含むことができる。いくつかの態様では、核酸構築物は、リンカー配列、例えば、配列(a)、(b)および/または(c)を連結するP2Aおよび/またはT2A配列を含む。
【0165】
いくつかの態様では、GSリンカーは、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、もしくは50個のアミノ酸残基、または約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、もしくは50個のアミノ酸残基を含む。いくつかの態様では、GSリンカーは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、25、30、もしくは40個のグリシン残基、または約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、20、25、30、もしくは40個のグリシン残基を含む。いくつかの態様では、GSリンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、もしくは8個のセリン残基、または約1、2、3、4、5、6、7、もしくは8個のセリン残基を含む。いくつかの態様では、GSリンカーは、グリシン残基とセリン残基の両方を含むか、またはそれらからなる。いくつかの態様では、GSリンカーは、
に対して少なくとも70%もしくは約70%、少なくとも75%もしくは約75%、少なくとも80%もしくは約80%、少なくとも85%もしくは約85%、少なくとも90%もしくは約90%、少なくとも95%もしくは約95%、少なくとも99%もしくは約99%、または100%同一である配列を含むか、またはそれからなる。いくつかの態様では、GSリンカーは、GGGGS(SEQ ID NO:77)の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、または8つの反復を含む。いくつかの態様では、GSリンカーは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、または50個以下のアミノ酸残基を有する。
【0166】
本開示はまた、本明細書に記載されるようなTCR aおよび/またはb鎖をコードする核酸も提供する。いくつかの態様では、a鎖をコードする核酸は、SEQ ID NO:15、51、53、55、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する核酸配列に示される配列を含む。いくつかの態様では、b鎖をコードする核酸は、SEQ ID NO:16、52、54、56、またはそれに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する配列に示される配列を含む。いくつかの態様では、a鎖は、本明細書に記載されるような1つまたは複数のVa CDR配列を含む。いくつかの態様では、b鎖は、本明細書に記載されるような1つまたは複数のVb CDR配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:20、63、64、65、26、66、67、または68と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む。
【0167】
いくつかの態様では、阻害性タンパク質は、抗PD-1抗体(例えば、抗PD-1 scFV)である。
【0168】
いくつかの態様では、抗体は、SEQ ID NO:11と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン;およびSEQ ID NO:12と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0169】
いくつかの態様では、ベクターは、抗PD-1 scFVをコードする配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:24、69、70、または71と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列をコードする配列を含む。いくつかの態様では、ベクターは、SEQ ID NO:25、72、73、または74と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を含む。
【0170】
本明細書に使用される「リンカー」(L)または「リンカードメイン」または「リンカー領域」という用語は、ドメイン/領域のいずれかを一緒に連結する、約1~100アミノ酸長のオリゴまたはポリペプチド領域のことを指す。リンカーは、隣接するタンパク質ドメインが互いに対して自由に移動できるような、グリシンおよびセリンのような可動性残基から構成され得る。確実に2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉しないようにすることが望まれる場合、より長いリンカーを使用することができる。リンカーは、切断可能または切断不可能なものであることができる。切断可能なリンカーの例としては、2Aリンカー(例えば、P2A、T2A)、2A様リンカーまたはその機能的等価物およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの態様では、リンカーには、ピコルナウイルス2A様リンカー、ブタテッショウウイルス(P2A)のCHYSEL配列、トセアアシグナウイルス(Thosea asigna virus)(T2A)またはそれらの組み合わせ、バリアントおよび機能的等価物が含まれる。他のリンカーは、当業者に明らかであり、本明細書に記載される方法において使用することができる。
【0171】
本開示はまた、TCR、その抗原結合断片、および/またはTCR由来結合分子(例えば、本明細書に記載される、その機能的部分および機能的バリアント、ポリペプチド、またはタンパク質を含む)のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む核酸配列も提供する。本明細書に使用される「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸分子」を含むことができ、一般に、天然、非天然または変更されたヌクレオチドを含有することができる、一本鎖または二本鎖の、合成できるまたは天然供給源から入手できる、DNAまたはRNAのポリマーのことを意味する。さらに、核酸は、相補的DNA(cDNA)を含む。一般に、核酸が、いかなる挿入、欠失、逆位および/または置換も含まないことが好ましい。しかしながら、いくつかの場合では、本明細書において考察しているように、核酸が1つまたは複数の挿入、欠失、逆位および/または置換を含むことが好適であり得る。
【0172】
本明細書に記載されるような核酸は、当技術分野において公知の手順を使用した化学合成および/または酵素的ライゲーション反応に基づいて構築することができる。例えば、核酸は、天然に存在するヌクレオチドまたは様々に修飾されたヌクレオチドを使用して化学合成することができる。任意のそのような態様のいくつかでは、ヌクレオチド配列は、コドン最適化される。
【0173】
本開示はまた、本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列または本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、核酸も提供する。
【0174】
いくつかの態様では、α鎖をコードするヌクレオチド配列およびβ鎖をコードするヌクレオチド配列は、リボソームスキッピングを引き起こすペプチド配列によって隔てられる。いくつかの態様では、リボソームスキッピングを引き起こすペプチドは、P2AまたはT2Aペプチドである。いくつかの態様では、核酸は、合成物である。いくつかの態様では、核酸は、cDNAである。
【0175】
いくつかの態様では、ベクターは、チェックポイント阻害剤(CPI)(例えば、阻害性タンパク質)をコードする核酸配列を追加で含むことができる。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、例えば、本明細書に記載されるような任意の抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、PD-1、PD-L1、PD-L2、2B4(CD244)、4-1BB、A2aR、B7.1、B7.2、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BTLA、ブチロフィリン、CD160、CD48、CTLA4、GITR、gp49B、HHLA2、HVEM、ICOS、ILT-2、ILT-4、KIRファミリー受容体、LAG-3、OX-40、PIR-B、SIRPα(CD47)、TFM-4、TIGIT、TIM-1、TIM-3、TIM-4、またはVISTAに特異的に結合することができる。いくつかの態様では、阻害性タンパク質は、scFv(例えば、抗PD-1 scFv)である。いくつかの態様では、抗PD-1 scFVは、SEQ ID NO:22と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を有する。本開示はまた、抗PD-1 scFVをコードする核酸配列も提供する。いくつかの態様では、核酸は、SEQ ID NO:23と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を有する。
【0176】
いくつかの態様では、ベクターは、二機能性トラップ融合タンパク質をコードする核酸配列を追加で含むことができる。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-1とTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-L1とTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、PD-L1を遮断してTGF-βを隔離するように設計される。M7824(MSB0011395C)は、ヒトIgG1モノクローナル抗体(mAb)アベルマブに基づく、ヒト抗PD-L1 scFvのC末端に連結されたヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、ヒト抗PD-1 scFvのC末端に連結されたヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。
【0177】
任意のそのような態様のいくつかでは、TCRまたはその抗原結合断片は、コドン最適化されているヌクレオチド配列によってコードされる。ある特定の態様では、αおよび/またはβ鎖は、シグナルペプチドをさらに含む。特定の態様では、TCRまたはその抗原結合断片は、単離もしくは精製されるか、または組換え型である。任意のそのような態様のいくつかでは、TCRまたは抗原結合断片は、組換え型である。任意のそのような態様のいくつかでは、TCRまたはその抗原結合断片は、ヒトである。
【0178】
本開示はまた、本明細書に記載されるような任意のヌクレオチド配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一である核酸配列、および本明細書に記載されるような任意のアミノ酸配列に対して少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一であるアミノ酸配列も提供する。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載される任意のペプチドをコードするヌクレオチド配列、または本明細書に記載されるような任意のヌクレオチド配列によってコードされる任意のアミノ酸配列に関する。
【0179】
いくつかの態様では、核酸配列は、少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、もしくは600ヌクレオチド、または約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、もしくは600ヌクレオチドである。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、少なくとも5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200アミノ酸残基、または約5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200アミノ酸残基である。いくつかの態様では、核酸配列は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、150、200、250、300、350、400、500、または600ヌクレオチド未満である。いくつかの態様では、アミノ酸配列は、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200アミノ酸残基未満である。
【0180】
2つのアミノ酸配列、または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、配列が最適な比較目的のためにアラインメントされる(例えば、最適アラインメントのために第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較目的のために非相同配列は無視することができる)。次に、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されている場合、分子は、その位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適アラインメントのために導入しなければならないギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数である。
【0181】
T細胞受容体およびTCR様分子を作製する方法
本開示はまた、標的抗原を認識できるT細胞受容体を特定および作製するための方法も提供する。いくつかの局面では、該方法は、正常ドナーまたは関心対象の疾患もしくは状態を有する患者に由来するものを含む、初代T細胞などのT細胞を含有する生物学的試料を、複数ラウンドの抗原曝露および評価に供することを伴う。いくつかの局面では、ラウンドは、クラスIまたはII MHCなどのMHC上での提示を促進するための、人工または操作された抗原提示細胞、例えば自己由来の樹状細胞または所望のペプチド抗原でパルスされた他のAPCの使用を伴う。
【0182】
いくつかの局面では、複数ラウンドの抗原曝露が行われ、いくつかの局面では、T細胞は、1つまたは複数のラウンドに続いて、例えば、所望の抗原(ペプチド-MHC四量体など)に結合する能力に基づいて選別される。
【0183】
選別は、当技術分野において公知の方法、例えば、フローサイトメトリーによって行うことができる。所望の抗原に結合することができる細胞(陽性画分)および所望の抗原に効果的に結合できない細胞(陰性画分)が、例えば、単一細胞配列決定法によって解析される。いくつかの態様では、配列決定は、各試料中に存在するTCRペアを単一細胞レベルで特定するために実施される。いくつかの局面では、該方法は、試料中に存在する所与のTCRペアのコピー数を定量することができ、そのため、別の試料に対する所与の試料中の所与のTCRの存在量および/またはその濃縮度、例えば、陽性(抗原結合)画分中の、例えば、1つまたは複数のラウンドにわたる、例えば、陰性画分と比較した濃縮度または存在量を評価することができる。そのようなアッセイは、抗原特異的なT細胞受容体(TCR)を作製するために実施することができる。いくつかの局面では、クローン性T細胞株が作製され、個々のペアTCRαおよびβ鎖の配列ならびに様々な集団におけるその存在量が、ハイスループットペアTCR配列決定を使用して、単一細胞ベースで決定される。
【0184】
TCRまたはその抗原結合断片をさらに改変することができる。いくつかの態様では、本結合分子、例えば、TCRまたはその抗原結合断片は、本明細書に記載されるある結合分子、例えば、任意のTCRの配列と比較して、1つまたは複数のアミノ酸変化、例えば、置換、欠失、挿入、および/または変異を含む。例示的なバリアントには、結合分子の結合親和性および/または他の生物学的性質を改善するように設計されたものが含まれる。結合分子のアミノ酸配列バリアントは、結合分子をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入するか、またはペプチド合成によって調製することができる。そのような改変には、例えば、結合分子のアミノ酸配列からの欠失、および/またはその中への挿入、および/またはその内部での残基の置換が含まれる。最終構築物が所望の特性を保有する、例えば、抗原に特異的に結合するという条件で、欠失、挿入および置換を任意に組み合わせて、最終構築物に到達することができる。
【0185】
様々な結合分子をTCRから作ることができる。本結合分子、例えば、TCRまたはその抗原結合断片は、例えば、本明細書に記載されるある結合分子(例えばTCR)配列と比較しておよび/または天然レパートリー(例えば、ヒトレパートリー)の配列と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換を含むことができる。置換による変異誘発のための関心対象の部位には、CDR、FRおよび/または定常領域が含まれる。アミノ酸置換を、関心対象の結合分子に導入し、その産物を、所望の活性、例えば、保持された/改善された抗原親和性もしくはアビディティー、減少した免疫原性、改善された半減期、CD8非依存的結合もしくは活性、表面発現、TCR鎖対合の促進、および/または他の改善された性質もしくは機能についてスクリーニングすることができる。
【0186】
いくつかの態様では、親結合分子、例えばTCRのCDR内の1つまたは複数の残基が、置換される。いくつかの態様では、置換は、例えば、ヒト対象に投与したときに免疫原性の可能性を低減させるため、配列または配列中の位置を生殖系列配列、例えば、生殖系列(例えば、ヒト生殖系列)に見いだされる結合分子配列に戻すためになされる。
【0187】
いくつかの態様では、機能的バリアントは、TCRまたはTCR由来結合分子から作られる。本明細書に使用される「機能的バリアント」という用語は、親分子に対して適度なまたは有意な配列同一性を有する結合分子のことを指す。さらに、機能的バリアントは、親タンパク質のものと同じ生物活性を保持する。機能的バリアントは、親TCRが抗原特異性を有するまたは親ポリペプチドもしくはタンパク質が特異的に結合する、HPVエピトープに特異的に結合する能力を保持する、本明細書に記載されるTCRタンパク質(親TCR、ポリペプチド、またはタンパク質)のバリアントを包含する。さらには、機能的バリアントの結合領域(例えば、可変ドメイン)は、親TCRタンパク質と似たような範囲、同じ範囲、またはより高範囲であり得る。親TCR、ポリペプチド、またはタンパク質に関して、機能的バリアントは、例えば、親TCR、ポリペプチド、またはタンパク質に対して、アミノ酸配列が、少なくとも約30%、50%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれより高い同一性であり得る。
【0188】
置換、挿入または欠失は、そのような変更が、結合分子、例えば、TCRまたはその抗原結合断片の抗原に結合する能力を実質的に低減させない限り、1つまたは複数のCDRに対してなされ得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書に提供されるような保存的置換)をCDRにおいて行うことができる。そのような変更は、例えば、CDR中の抗原接触残基の外側にあり得る。本明細書に提供される可変配列のある特定の態様では、各CDRはいずれも未変更であるか、または、1、2、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有する。
【0189】
TCR由来抗体
本開示はまた、上述したようなCDRのいずれか1つまたは複数を含有する抗体またはその抗原結合断片も提供する。いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は、α鎖に含有されるCDR1、CDR2および/またはCDR3ならびにβ鎖に含有されるCDR1、CDR2および/またはCDR3を含有する可変重鎖および軽鎖を含有する。いくつかの態様では、抗体または抗原結合断片は、図20中のCDR配列に対して少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%、または少なくとも約80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、もしくは99%同一である1つまたは複数のCDRを含有する。
【0190】
いくつかの態様では、抗体およびその抗原結合断片、例えばTCR様抗体は、MHCクラスIなどのMHC分子に関連してペプチドエピトープ(例えば、HPV抗原)を特異的に認識する。いくつかの場合では、MHCクラスI分子は、HLA-A2分子、例えばHLA-A2*01である。
【0191】
いくつかの態様では、抗体およびその抗原結合断片は、MHC分子非依存的様式で、ペプチドエピトープ(例えば、HPV抗原)を特異的に認識することができる。
【0192】
一般に、抗体(免疫グロブリンとも呼ばれる)は、ポリペプチド鎖の2つのクラスである軽鎖および重鎖から構成される。本開示の非限定的な抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含むインタクトな4つの免疫グロブリン鎖抗体であることができる。抗体の重鎖は、IgM、IgG、IgE、IgA、もしくはIgDを含む任意のアイソタイプ、またはIgG1、IgG2、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE1、IgE2などを含むサブアイソタイプのものであることができる。軽鎖は、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖であることができる。抗体は、2つの同一の軽鎖コピーおよび2つの同一の重鎖コピーを含むことができる。各々が1つの可変ドメイン(または可変領域、VH)および複数の定常ドメイン(または定常領域)を含有する重鎖は、その定常ドメイン内でジスルフィド結合を介して互いに結合して、抗体の「ステム」を形成する。各々が1つの可変ドメイン(または可変領域、VL)および1つの定常ドメイン(または定常領域)を含有する軽鎖は、それぞれ、ジスルフィド結合を介して1つの重鎖に結合する。各軽鎖の可変領域は、それが結合している重鎖の可変領域と一直線になる。軽鎖と重鎖の両方の可変領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)間に挟まれた3つの超可変領域を含有する。
【0193】
いくつかの態様では、抗体は、インタクトな免疫グロブリン分子(例えば、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgM、IgD、IgE、IgA)である。IgGサブクラス(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4)は高度に保存されており、その定常領域、特にそのヒンジおよび上部CH2ドメインが異なる。IgGサブクラスの配列および相違は、当技術分野において公知であり、例えば、Vidarsson, et al, "IgG subclasses and allotypes: from structure to effector functions." Frontiers in immunology 5 (2014); Irani, et al. "Molecular properties of human IgG subclasses and their implications for designing therapeutic monoclonal antibodies against infectious diseases." Molecular immunology 67.2 (2015): 171-182; Shakib, Farouk, ed. The human IgG subclasses: molecular analysis of structure, function and regulation. Elsevier, 2016に記載されており;その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0194】
抗体はまた、任意の種(例えば、ヒト、齧歯類、マウス、ラクダ科)に由来する免疫グロブリン分子であることもできる。本明細書に開示される抗体にはまた、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多重特異性抗体、および別のポリペプチドに融合された免疫グロブリン結合ドメインを含むキメラ抗体が含まれるが、それらに限定されない。「抗原結合ドメイン」または「抗原結合断片」という用語は、インタクトな抗体の特異的結合活性を保持する抗体の一部分、すなわち、インタクトな抗体の標的分子上のエピトープに特異的に結合可能である抗体の任意の部分である。これには、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、およびこれらの断片のバリアントが含まれる。したがって、いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合断片は、例えば、scFv、Fv、Fd、dAb、二重特異性抗体、二重特異性scFv、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、抗体断片から形成される多重特異性抗体、および抗体結合ドメインであるかまたはそれに相同である結合ドメインを含む任意のポリペプチドであることができる。抗原結合ドメインの非限定的な例としては、例えば、インタクトな抗体の重鎖および/もしくは軽鎖CDR、インタクトな抗体の重鎖および/もしくは軽鎖可変領域、インタクトな抗体の全長重鎖もしくは軽鎖、またはインタクトな抗体の重鎖もしくは軽鎖のいずれかに由来する個々のCDRが挙げられる。
【0195】
いくつかの態様では、抗原結合断片は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部を形成することができる。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、CD3ζ膜貫通およびエンドドメインに融合された、本明細書に記載されるような単鎖可変断片(scFv)の融合物である。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体はまた、様々な共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)由来の細胞内シグナル伝達ドメインも含む。いくつかの態様では、キメラ抗原受容体は、効力を高めるために、複数のシグナル伝達ドメイン、例えば、CD3z-CD28-41BBまたはCD3z-CD28-OX40を含む。したがって、一局面では、本開示は、本明細書に記載されるようなキメラ抗原受容体を発現する細胞(例えば、T細胞)をさらに提供する。
【0196】
いくつかの態様では、scFVは、1つの重鎖可変ドメイン、および1つの軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの態様では、scFVは、2つの重鎖可変ドメイン、および2つの軽鎖可変ドメインを含む。
【0197】
TCR由来CAR
抗体またはその抗原結合部分は、細胞上に、抗原受容体などの組換え受容体の一部として発現させることができる。中でも、抗原受容体は、機能的な非TCR抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)である。一般に、MHC分子に関連するペプチドに対してTCR様特異性を示す抗体または抗原結合断片を含有するCARはまた、TCR様CARと称される場合がある。したがって、中でも、提供される結合分子、例えば、HPV結合分子は、抗原受容体、例えば、提供される抗体、例えばTCR様抗体の1つを含むものである。いくつかの態様では、抗原受容体および他のキメラ受容体は、抗原、例えばTCR様抗体の領域またはエピトープに特異的に結合する。中でも、抗原受容体は、機能的な非TCR抗原受容体、例えばキメラ抗原受容体(CAR)である。また、CARを発現する細胞、ならびにHPV抗原発現に関連する疾患および障害の治療などの養子細胞療法におけるその使用も提供される。
【0198】
TCR様CARは、MHC分子に関連してディスプレイまたは提示された場合に、T細胞エピトープまたはペプチドエピトープなどに対してT細胞受容体特異性を示す非TCR分子を含有する。いくつかの態様では、TCR様CARは、本明細書に記載されるような抗体またはその抗原結合部分、例えばTCR様抗体を含有することができる。いくつかの態様では、抗体またはその抗体結合部分は、MHC分子に関連する特異的ペプチドエピトープに対して反応性であり、その際、抗体または抗体断片は、MHC分子に関連する特異的ペプチドを、MHC分子単独、特異的ペプチド単独、一部の例では、MHC分子に関連する無関係のペプチドと、区別することができる。いくつかの態様では、抗体またはその抗原結合部分は、T細胞受容体よりも高い結合親和性を示すことができる。
【0199】
CARを含む例示的な抗原受容体、およびそのような受容体を細胞内に操作および導入するための方法には、例えば、US2002/131960、US2013/287748、US2013/0149337、U.S. 6,451,995、U.S. 7,446,190、U.S. 8,252,592に記載されているものが含まれ;その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0200】
いくつかの態様では、CARは、一般に、例えば、いくつかの局面ではリンカーおよび/または膜貫通ドメインを介して1つまたは複数の細胞内シグナル伝達成分に連結された、ペプチドに特異的な抗体またはその抗原結合断片を含む、細胞外抗原(またはリガンド)結合ドメインを含む。いくつかの態様では、そのような分子は、典型的には、TCRなどの天然抗原受容体を通過するシグナル、任意で、共刺激受容体と組み合わせてそのような受容体を通過するシグナルを模倣または近似することができる。
【0201】
いくつかの態様では、CARは、典型的には、1つもしくは複数の抗原結合断片、ドメイン、もしくは部分、または1つもしくは複数の抗体可変ドメイン、および/または抗体分子などの1つまたは複数の抗原結合分子を、その細胞外部分に含む。いくつかの態様では、CARは、モノクローナル抗体(mAh)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する単鎖抗体断片(scFv)などの、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合部分を含む。いくつかの態様では、CARは、MHC分子に関連して細胞表面に提示されたペプチドエピトープを特異的に認識する抗体または抗原結合断片(例えば、scFv)などの、TCR様抗体を含有する。
【0202】
ある特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3(例えば、CD3ζ)細胞内ドメインに連結された、CD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ細胞内ドメインに連結された、キメラCD28およびCD137(4-1BB、TNFRSF9)共刺激ドメインを含む。
【0203】
いくつかの態様では、結合分子はまた、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、C型レクチン受容体、白血球免疫グロブリン様受容体(LILR)、1型サイトカイン受容体、2型サイトカイン受容体、腫瘍壊死因子ファミリー、TGFβ受容体、ケモカイン受容体、または免疫グロブリンスーパーファミリー(IgSF)のメンバーであることもできる。
【0204】
いくつかの態様では、操作された細胞は、その治療的または予防的有効性が増加するように多数の方法でさらに改変される。例えば、集団が発現する操作されたTCRまたは他の結合分子は、直接的にまたはリンカーを介して間接的に、標的化部分にコンジュゲートすることができる。結合分子、例えば、CARまたはTCRを標的化部分にコンジュゲートする実践は、当技術分野において公知であり、例えば、Wadhwa et al. "Receptor mediated glycotargeting." Journal of drug targeting 3.2 (1995): 111-127.、および米国特許第5,087,616号に記載されており;これらは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0205】
操作された細胞の調製のための方法
本開示は、病理学的疾患または状態の治療のための、操作された細胞を調製、製造および/または使用するための方法またはプロセスを提供する。
【0206】
結合分子、例えばTCRの導入のための細胞は、試料、例えば生物学的試料、例えば、対象から得られたものまたは対象に由来するものから単離することができる。いくつかの態様では、細胞が単離される対象は、疾患もしくは状態を有する対象、または細胞療法を必要とする対象、または細胞療法が投与される対象である。対象は、いくつかの態様では、そのために細胞が単離、処理および/または操作される、養子細胞療法などの特定の治療的介入を必要とするヒトである。
【0207】
したがって、細胞は、いくつかの態様では、初代細胞、例えば、初代ヒト細胞である。試料には、対象から直接採取された組織、流体および他の試料、ならびに、分離、遠心、遺伝子操作(例えば、ウイルスベクターによる形質導入)、洗浄および/またはインキュベーションなどの1つまたは複数の処理工程から生じる試料が含まれる。生物学的試料は、生物学的供給源から直接得られた試料または処理される試料であることができる。生物学的試料には、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗などの体液、組織ならびに臓器試料が、それらに由来する処理された試料を含めて含まれるが、それらに限定されない。
【0208】
いくつかの局面では、細胞が由来または単離される試料は、血液もしくは血液由来試料であるか、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物である、もしくはそれに由来する。例示的な試料には、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ系組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸、精巣、卵巣、扁桃、もしくは他の臓器、および/またはそれらに由来する細胞が含まれる。試料は、細胞療法、例えば、養子細胞療法に関連して、自己由来および同種供給源からの試料を含む。
【0209】
いくつかの態様では、細胞は、細胞株、例えば、T細胞株に由来する。細胞は、いくつかの態様では、異種供給源から、例えば、マウス、ラット、または非ヒト霊長類から得られる。
【0210】
いくつかの態様では、対象から収集された血液細胞は、洗浄されて、例えば、血漿画分を除去し、その後の処理工程に適した緩衝液または媒質中に細胞を入れる。いくつかの態様では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。いくつかの態様では、洗浄液は、カルシウムおよび/もしくはマグネシウムならびに/または多くのもしくはすべての二価陽イオンを欠いている。いくつかの局面では、洗浄工程は、半自動「フロースルー」遠心分離で成し遂げられる。いくつかの局面では、洗浄工程は、タンジェント流濾過(TFF)によって成し遂げられる。いくつかの態様では、細胞は、洗浄後に、例えばCa2+/Mg2+不含PBSなどの多様な生体適合性緩衝液に再懸濁される。ある特定の態様では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培養培地に直接再懸濁される。いくつかの態様では、該方法は、赤血球を溶解してPercollまたはFicoll勾配により遠心分離を行うことによる末梢血からの白血球の調製などの、密度に基づく細胞分離法を含む。
【0211】
いくつかの態様では、該方法は、例えば、患者の血液からT細胞を単離する工程;T細胞集団を、遺伝子操作された抗原受容体をコードする核酸構築物を含むウイルスベクターで形質導入する工程;形質導入された細胞をインビトロで拡大増殖させる工程;および/または拡大増殖させた細胞を患者に注入する工程の1つまたは複数の工程を含み、ここで、操作されたT細胞は、抗原陽性腫瘍細胞を探し出して破壊するだろう。いくつかの態様では、核酸構築物は、阻害性タンパク質をコードする配列をさらに含む。いくつかの態様では、これらの操作されたT細胞は、PD-1/PD-L1免疫抑制を遮断し、抗腫瘍免疫応答を強化することができる。該方法は、核酸構築物を含有するウイルスベクターによるT細胞のトランスフェクションをさらに含む。
【0212】
いくつかの態様では、該方法は、本明細書に記載される任意のベクターをインビトロまたはエクスビボで細胞に導入する段階を伴う。いくつかの態様では、ベクターは、ウイルスベクターであり、導入する段階は、形質導入によって行われる。いくつかの態様では、該方法は、細胞に1つまたは複数の作用物質を導入する段階をさらに伴い、ここで、1つまたは複数の作用物質の各々は、独立に、T細胞受容体α定常(TRAC)遺伝子および/またはT細胞受容体β定常(TRBC)遺伝子の遺伝子破壊を誘導可能である。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、阻害性核酸(例えば、siRNA)である。いくつかの態様では、1つまたは複数の作用物質は、DNA標的化タンパク質およびヌクレアーゼまたはRNAガイドヌクレアーゼ(例えば、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列核酸(CRISPR)関連ヌクレアーゼ)を含む融合タンパク質である。
【0213】
T細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム、エレクトロポレーション、リポソーム媒介移入、マイクロインジェクション、バイオリステック粒子送達系、または当業者による任意の他の公知の方法などの任意の標準的な方法を使用して達成することができる。いくつかの態様では、T細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム法を使用して実施される。
【0214】
本明細書に記載される様々な態様によれば、本開示は、腫瘍、特にHPV関連がんに対する免疫療法を提供する。操作されたT細胞は、腫瘍関連HPV抗原を認識し、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)を遮断する単鎖抗体(scFv)融合タンパク質を同時に分泌する。これらの操作されたT細胞は、より強い抗腫瘍応答および低減されたT細胞疲弊を示す。実験により、PD-1チェックポイント遮断は、抗PD-1剤の送達が腫瘍部位に限局され、したがって、腫瘍部位でより高い濃度を有するため、本明細書に記載される方法においてより効果的であることが見いだされている。また、抗PD-1薬物送達が腫瘍部位に限局されるため、非特異的な炎症による毒性は低減される。本開示は、既存の代替手段と比較してT細胞活性化を改善しかつ/またはT細胞疲弊を抑制する、抗HPV TCRと抗 PD-1抗体との組み合わせを提供する。
【0215】
本開示は、個別化された抗腫瘍免疫療法を創出するための方法を提供する。遺伝子操作されたT細胞は、患者の血液細胞から作製させることができる。これらの操作されたT細胞は、次に、細胞療法製品として患者に再注入される。この製品は、予宮頸がん、陰門がん、膣がん、陰茎がん、肛門がんおよび中咽頭がんを非限定的に含むHPV関連腫瘍を有する任意の患者に適用することができる。
【0216】
操作された細胞を調製する方法およびこれらの操作された細胞を対象に投与する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第10,174,098号およびDraper et al. "Targeting Of HPV-16+ Epithelial Cancer Cells By Tcr Gene Engineered t Cells Directed Against e6." Clinical Cancer Research 21.19 (2015): 4431-4439に記載されており、それらは共に、参照によりそれらの全体が組み入れられる。
【0217】
治療方法
本明細書に開示される方法は、様々な治療目的に使用することができる。一局面では、本開示は、対象におけるがんを治療するための方法、経時的に対象における腫瘍体積の増加速度を低減する方法、転移の発症リスクを低減する方法、または対象におけるさらなる転移の発症リスクを低減する方法を提供する。いくつかの態様では、治療は、がんの進行を停止、減速、阻止または阻害することができる。いくつかの態様では、治療は、対象における、がんの1つまたは複数の症状の数、重症度および/または持続期間の低減をもたらすことができる。
【0218】
一局面では、本開示は、TCR、その抗原結合断片およびTCR由来結合分子を発現する操作された細胞の治療有効量を、それを必要とする対象(例えば、がん、例えば、HPV関連がんを有する対象、またはそのように特定されたもしくは診断された対象)に投与する段階を含む方法を特徴とする。いくつかの態様では、HPV関連がんは、予宮頸がん、頭頸部がん、中咽頭がん、肛門がん、陰茎がん、膣がんまたは陰門がんである。
【0219】
いくつかの態様では、対象は、固形腫瘍を有する。いくつかの態様では、対象は、乳がん(例えば、トリプルネガティブ乳がん)、カルチノイドがん、予宮頸がん、子宮内膜がん、神経膠腫、頭頸部がん、肝臓がん、肺がん、小細胞肺がん、リンパ腫、黒色腫、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、大腸がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、膀胱がん、尿道がん、または血液悪性腫瘍を有する。いくつかの態様では、がんは、切除不能黒色腫もしくは転移性黒色腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、小細胞肺がん(SCLC)、膀胱がん、または転移性ホルモン抵抗性前立腺がんである。
【0220】
いくつかの態様では、本明細書に開示される組成物および方法は、がんのリスクのある患者の治療に使用することができる。がんを有する患者は、当技術分野において公知の様々な方法で特定することができる。
【0221】
さらに、本開示は、対象における感染または感染関連状態を治療するための方法を提供する。いくつかの態様では、治療は、疾患の進行を停止、減速、阻止または阻害することができる。これらの方法は、一般に、本明細書に開示される遺伝子操作された細胞の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する段階を伴う。いくつかの態様では、治療される疾患または状態は、限定されないがウイルス、レトロウイルス、細菌および原生動物による感染、免疫不全、ヒトパピローマウイルス(HPV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスなどの感染性疾患または状態である。
【0222】
本明細書に使用される「有効量」とは、疾患、例えば、がんの進行を停止、減速、阻止または阻害することを含む有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量または投与量のことを意味する。有効量は、例えば、治療剤および/または治療用組成物が投与されるべき対象の年齢および体重、症状の重症度ならびに投与経路に応じて変動し、したがって、投与は、個別に決定することができる。
【0223】
本明細書に使用される「疾患の発症を遅らせる」という用語は、疾患(がんなど)の発症を延期、妨害、減速、阻止、安定化、抑制および/または先延ばしすることを指す。この遅延は、病歴および/または治療されている個体に応じて、様々な長さであり得る。当業者に明らかなように、十分なまたは有意な遅延は、事実上、個体が疾患を発症しないという点で予防を包含することができる。例えば、転移の発症などの後期がんを遅延させることができる。
【0224】
有効量は、1回または複数回の投与において投与することができる。例として、組成物の有効量は、患者におけるがんの進行を改善、停止、安定化、反転、阻害、減速および/もしくは遅延させるのに十分な量、または細胞(例えば、生検細胞、本明細書に記載されるがん細胞のいずれか、または細胞株(例えば、がん細胞株))の増殖をインビトロで改善、停止、安定化、反転、減速および/もしくは遅延させるのに十分な量である。当技術分野において理解されているように、有効量は、とりわけ、患者病歴ならびに使用される組成物の種類(および/または投与量)などの他の要因に応じて、変動し得る。
【0225】
投与の有効量およびスケジュールは、経験的に決定されてもよく、そのような決定を行うことは当技術分野の技能の範囲内にある。当業者は、投与しなければならない投与量が、例えば、治療を受ける哺乳動物、投与の経路、治療剤の特定の種類および哺乳動物に投与されている他の薬物に応じて変動することを理解しているだろう。適切な用量の選択における指針は、文献において見いだすことができる。加えて、治療は、必ずしも疾患または状態の100%または完全な治療または予防をもたらす必要はない。当業者が潜在的に有利な治療手段として認識する様々な程度の治療効果を有する利用可能な複数の治療/予防法がある。
【0226】
いくつかの局面では、本開示はまた、哺乳動物における疾患/状態を診断する方法であって、TCR、抗原結合断片、TCR由来結合分子が、対象から得られた試料と相互作用して複合体を形成し、試料が、1つまたは複数の細胞、ポリペプチド、タンパク質、核酸、抗体、または抗原結合部分、血液、全細胞、その溶解物、または全細胞溶解物の一画分、例えば、核または細胞質画分、全タンパク質画分、またはその核酸画分を含むことができ、複合体の検出が、哺乳動物における状態の存在の指標となり、状態が、がん、HPV感染、またはHPV陽性前悪性病変である、方法も提供する。さらに、複合体の検出は、限定されないが、ELISA、フローサイトメトリー、蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、マイクロアレイ、サザンブロッティング、電気泳動、ファージ分析、クロマトグラフィーなどの当技術分野において公知の多数の方法における検出であることができる。したがって、治療方法は、例えば、対象がHPV感染またはHPV関連がんを有するかどうかを判定することによって、対象が、本明細書に開示されるような治療から恩恵を得ることができるかどうかを判定することをさらに含むことができる。
【0227】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、操作された細胞、および/または少なくとも1つの追加の治療剤を、対象に、少なくとも週に1回(例えば、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、1日に1回、1日に2回、または1日に3回)投与することができる。いくつかの態様では、少なくとも2つの異なる操作された細胞(例えば、細胞は、異なる結合分子を発現する)は、同じ組成物(例えば、液体組成物)で投与される。いくつかの態様では、操作された細胞および少なくとも1つの追加の治療剤は、同じ組成物(例えば、液体組成物)で投与される。いくつかの態様では、操作された細胞および少なくとも1つの追加の治療剤は、2つの異なる組成物で投与される。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加の治療剤は、丸剤、錠剤、またはカプセル剤として投与される。いくつかの態様では、少なくとも1つの追加の治療剤は、持続放出経口製剤で投与される。
【0228】
いくつかの態様では、1つまたは複数の追加の治療剤は、操作された細胞を対象に投与する前に、それと同時に、またはその後に対象に投与することができる。
【0229】
いくつかの態様では、1つまたは複数の追加の治療剤を対象に投与することができる。追加の治療剤は、チェックポイント阻害剤(CPI)であることができる。いくつかの態様では、チェックポイント阻害剤は、阻害性タンパク質、例えば、抗体またはその抗原結合断片である。チェックポイント阻害剤は、例えば、PD-1、PD-L1、PD-L2、2B4(CD244)、4-1BB、A2aR、B7.1、B7.2、B7-H2、B7-H3、B7-H4、B7-H6、BTLA、ブチロフィリン、CD160、CD48、CTLA4、GITR、gp49B、HHLA2、HVEM、ICOS、ILT-2、ILT-4、KIRファミリー受容体、LAG-3、OX-40、PIR-B、SIRPα(CD47)、TFM-4、TIGIT、TIM-1、TIM-3、TIM-4、VISTAおよびそれらの組み合わせを含む、1つまたは複数の免疫チェックポイントを阻害または遮断することができる。いくつかの態様では、阻害性タンパク質は、PD-1またはPD-Llを遮断する。様々な態様では、阻害性タンパク質は、抗PD-1 scFvを含む。阻害性タンパク質は、PD-1もしくはPD-L1の低減された発現を導くこと、ならびに/または集団中のT細胞におけるPD-1もしくはPD-L1のアップレギュレーションを阻害すること、ならびに/またはPD-1/PD-L1複合体の形成およびその後のシグナル伝達を物理的に妨害することが可能である。いくつかの態様では、阻害性タンパク質は、PD-1を遮断する。いくつかの態様では、追加の治療剤は、抗OX40抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIGIT抗体、抗BTLA抗体、抗CTLA-4抗体、または抗GITR抗体である。いくつかの態様では、追加の治療剤は、抗CTLA4抗体(例えば、イピリムマブ)、抗CD20抗体(例えば、リツキシマブ)、抗EGFR抗体(例えば、セツキシマブ)、抗CD319抗体(例えば、エロツズマブ)、または抗PD1抗体(例えば、ニボルマブ)である。
【0230】
いくつかの態様では、追加の治療剤は、二機能性トラップ融合タンパク質である。二機能性トラップタンパク質は、免疫チェックポイントとTGF-β陰性調節経路の両方を標的とすることができる。免疫チェックポイントの発現に加えて、腫瘍微小環境は、他の免疫抑制分子を含有する。特に興味深いものは、がんにおいて複数の機能を有するサイトカインTGF-β(TGFB)である。TGF-βは、腫瘍発生の初期に腫瘍細胞の増殖を抑制し、分化およびアポトーシスを促進する。しかしながら、腫瘍の進行の間、TGF-β受容体発現の喪失または下流のシグナル伝達エレメントへの変異により、腫瘍のTGF-β非感受性が生じる。次いで、TGF-βは、血管新生、上皮間葉転換(EMT)の誘導、および免疫抑制に対するその作用を通じて腫瘍の進行を促進する。高いTGF-β血清レベルおよび腫瘍上のTGF-β受容体(TGFβR)発現の喪失は、予後不良と相関する。TGFβ標的化療法は、限られた臨床活性を示している。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-1とTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性トラップタンパク質は、PD-L1とTGF-βの両方を標的とする。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、PD-L1を遮断してTGF-βを隔離するように設計される。M7824(MSB0011395C)は、ヒトIgG1モノクローナル抗体(mAb)アベルマブに基づく、ヒト抗PD-L1 scFvのC末端に連結されたヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、二機能性融合タンパク質は、ヒト抗PD-1 scFvのC末端に連結されたヒトTGF-β受容体II(TGFβRII)の細胞外ドメインを含む。これらの二機能性トラップ融合タンパク質は、例えば、Knudson, et al. "M7824, a novel bifunctional anti-PD-L1/TGFβ Trap fusion protein, promotes anti-tumor efficacy as monotherapy and in combination with vaccine." Oncoimmunology 7.5 (2018): e1426519に記載されており、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。いくつかの態様では、対象は、本明細書に記載されるようなTCRまたは抗原結合分子を発現する細胞および1つまたは複数の二機能性トラップ融合タンパク質によって治療される。
【0231】
いくつかの態様の1つでは、追加の治療剤は、B-Rafの阻害剤、EGFR阻害剤、MEKの阻害剤、ERKの阻害剤、K-Rasの阻害剤、c-Metの阻害剤、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)の阻害剤、ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ(PI3K)の阻害剤、Aktの阻害剤、mTORの阻害剤、二重PI3K/mTOR阻害剤、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤、ならびにイソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)および/またはイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)の阻害剤からなる群より選択される1つまたは複数の阻害剤を含むことができる。いくつかの態様では、追加の治療剤は、インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)の阻害剤(例えば、エパカドスタット)である。いくつかの態様では、追加の治療剤は、HER3の阻害剤、LSD1の阻害剤、MDM2の阻害剤、BCL2の阻害剤、CHK1の阻害剤、活性化ヘッジホッグシグナル伝達経路の阻害剤、およびエストロゲン受容体を選択的に分解する薬剤からなる群より選択される1つまたは複数の阻害剤を含むことができる。
【0232】
いくつかの態様では、追加の治療剤は、トラベクテジン、nab-パクリタキセル、トレバナニブ、パゾパニブ、セジラニブ、パルボシクリブ、エベロリムス、フルオロピリミジン、IFL、レゴラフェニブ、レオリシン(Reolysin)、アリムタ、ジカディア、スーテント、テムシロリムス、アキシチニブ、エベロリムス、ソラフェニブ、ヴォトリエント、パゾパニブ、IMA-901、AGS-003、カボザンチニブ、ビンフルニン、Hsp90阻害剤、Ad-GM-CSF、テモゾロミド(Temazolomide)、IL-2、IFNa、ビンブラスチン、サロミド、ダカルバジン、シクロホスファミド、レナリドミド、アザシチジン、レナリドミド、ボルテゾミブ、アムルビシン(amrubicine)、カルフィルゾミブ、プララトレキサート、およびエンザスタウリンからなる群より選択される1つまたは複数の治療剤を含むことができる。
【0233】
いくつかの態様では、追加の治療剤は、アジュバント、TLRアゴニスト、腫瘍壊死因子(TNF)α、IL-1、HMGB1、IL-10アンタゴニスト、IL-4アンタゴニスト、IL-13アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、HVEMアンタゴニスト、ICOSアゴニスト、CX3CL1を標的とする治療、CXCL9を標的とする治療、CXCL10を標的とする治療、CCL5を標的とする治療、LFA-1アゴニスト、ICAM1アゴニスト、およびセレクチンアゴニストからなる群より選択される1つまたは複数の治療剤を含むことができる。
【0234】
いくつかの態様では、カルボプラチン、nab-パクリタキセル、パクリタキセル、シスプラチン、ペメトレキセド、ゲムシタビン、FOLFOX、またはFOLFIRIが対象に投与される。いくつかの態様では、追加の治療剤は、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよび/またはそれらの組み合わせから選択される。
【0235】
組成物および製剤
本開示は、本明細書に開示される方法によって作製された操作された細胞およびその集団を含有する組成物(薬学的および治療用組成物を含む)を提供する。また、方法、例えば、操作されたT細胞およびその組成物を対象、例えば、患者に投与するための治療的方法も提供される。
【0236】
所与の用量またはその分量での投与のための細胞数を含む単位用量形態組成物などの、薬学的組成物および製剤を含む、投与のための操作されたT細胞を含む組成物が提供される。薬学的組成物および製剤は、1つまたは複数の任意の薬学的に許容される担体または賦形剤を含むことができる。いくつかの態様では、組成物は、少なくとも1つの追加の治療剤を含む。
【0237】
薬学的に許容される担体は、有効成分以外の、薬学的組成物中の成分のことを指す。薬学的に許容される担体は、有効成分と干渉せず、対象に対して非毒性である。薬学的に許容される担体は、緩衝液、賦形剤、安定剤、または保存料を含むことができるが、それらに限定されない。薬学的製剤化は、異なる物質および/または薬剤が組み合わされて最終医薬品が生産される過程のことを指す。製剤研究は、患者に許容される薬物の調製物を開発することを伴う。加えて、調製物は、その中に含有される有効成分の生物活性を有効にするような形態であり、製剤が投与される対象に容認できないほどに有毒な追加の成分を含有しない。
【0238】
いくつかの態様では、担体の選択は、一部には、特定の細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)によっておよび/または投与の方法によって決定される。多様な適切な製剤が利用可能である。例えば、薬学的組成物は、保存料を含有することができる。適切な保存料は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、および塩化ベンザルコニウムを含むことができる。いくつかの態様では、2種以上の保存料の混合物が使用される。保存料またはその混合物は、典型的には、総組成物の約0.0001%~約2%(重量)の量で存在する。担体は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に記載されている。薬学的に許容される担体は、一般に、用いられる投与量および濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む酸化防止剤;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン類;カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースもしくはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0239】
適切な緩衝剤は、例えば、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウムならびに様々な他の酸および塩を含む。いくつかの態様では、2種以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には、総組成物の約0.001%~約4%(重量)の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は公知である。例示的な方法は、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins;21st ed. (May 1, 2005)により詳細に記載されている。
【0240】
製剤は、水溶液を含むことができる。製剤または組成物はまた、操作された細胞により治療される特定の適応症、疾患、または状態に有用な複数の有効成分、好ましくは細胞を補完する活性を有するものを含有することができ、それぞれの活性は、互いに悪影響を及ぼさないものとする。そのような有効成分は、適切には、意図する目的に有効な量で組み合わされて存在する。したがって、いくつかの態様では、薬学的組成物は、他の薬学的に活性な薬剤または薬物、例えば、チェックポイント阻害剤、融合タンパク質、化学療法剤、例えば、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、および/またはビンクリスチンをさらに含むことができる。
【0241】
薬学的組成物は、いくつかの態様では、疾患または状態を治療または予防するのに有効な量、例えば、治療有効量または予防有効量で細胞を含有する。治療有効性または予防有効性は、いくつかの態様では、治療される対象を定期的に評価することによってモニタリングされる。細胞の単回ボーラス投与によって、細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の連続注入投与によって、所望の投与量を送達することができる。
【0242】
細胞および組成物は、標準的な投与技術、製剤、および/またはデバイスを使用して投与することができる。細胞の投与は、自家投与でもよく、または異種投与でもよい。例えば、免疫応答性T細胞または前駆細胞は、ある対象から得て、本明細書に記載される様々な態様に従って遺伝子改変した後に、同じ対象または異なる適合性の対象に投与することができる。末梢血由来の免疫応答性T細胞またはその子孫(例えば、インビボ、エクスビボまたはインビトロで誘導された)を、カテーテル投与を含む局所注射、全身注射、局所注射、静脈内注射、または非経口投与を介して投与することができる。通常、治療用組成物(例えば、遺伝子改変された免疫応答性細胞を含有する薬学的組成物)を投与する場合、それは、一般に、注射用単位剤形(溶液、懸濁液、エマルジョン)で製剤化される。
【0243】
本明細書に開示される製剤は、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺内、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下または坐剤投与のための製剤を含む。いくつかの態様では、細胞集団は、非経口投与される。本明細書に使用される「非経口」という用語は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、腟内および腹腔内投与を含む。いくつかの態様では、細胞は、静脈内、腹腔内または皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。
【0244】
組成物は、いくつかの態様では、無菌の液体調製物、例えば、等張性水溶液、懸濁液、エマルジョン、分散液または粘性組成物として提供され、これらは、いくつかの局面では、選択されたpHに緩衝化することができる。液体調製物は、通常、ゲル、他の粘性組成物および固体組成物よりも調製しやすい。加えて、液体組成物は、投与に、とりわけ、注射による投与に、いくらか便利である。他方で、粘性組成物を、特定の組織とのより長い接触期間をもたらすために、適した粘性範囲内で製剤化することができる。液体組成物または粘性組成物は、例えば、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる、担体を含むことができる。
【0245】
無菌注射液は、溶媒中に、例えば、滅菌水、生理食塩水、グルコース、デキストロースなどの適切な担体、希釈剤または賦形剤と混合された溶媒中に細胞を取り入れることによって、調製することができる。組成物は、所望の投与経路および調製に応じて、湿潤剤、分散剤、または乳化剤(例えば、メチルセルロース)、pH緩衝剤、ゲル化もしくは粘性増強添加物、保存料、着香剤および/または着色剤などの補助物質を含有することができる。いくつかの局面では、適切な調製物を調製するために標準的な教科書に助言を求めてよい。
【0246】
抗菌保存料、酸化防止剤、キレート剤、および緩衝液を含む、組成物の安定性および無菌性を増強する様々な添加物を添加することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールおよびソルビン酸によって保証することができる。注射用薬学的剤形の吸収延長は、吸収を遅延させる作用物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することによってもたらすことができる。
【0247】
インビボ投与に使用されるべき製剤は、一般に無菌のものである。無菌は、例えば滅菌濾過膜で濾過することによって、容易に達成することができる。
【0248】
本明細書に記載されるような組成物または薬学的組成物は、容器、パックまたはディスペンサー中に投与の説明書と一緒に含まれ得る。
【0249】
投与の方法
また、細胞、集団および組成物を投与する方法、ならびに、がんを含む疾患、状態および障害を治療または予防するためのそのような細胞、集団および組成物の使用も提供される。いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、本明細書に記載されるような疾患、状態および障害の発症リスクを低減させることができる。
【0250】
いくつかの態様では、本明細書に記載される細胞、集団および組成物は、治療されるべき特定の疾患または状態を有する対象または患者に、例えば、養子T細胞療法などの養子細胞療法を介して、投与される。いくつかの態様では、提供される方法によって調製された細胞および組成物、例えば、操作された組成物ならびにインキュベーションおよび/または他の処理工程後の生産完了(end-of-production)組成物が、対象、例えば、疾患または状態を有するまたはそのリスクのある対象に投与される。いくつかの局面では、該方法は、それにより、操作されたT細胞が認識する抗原を発現するがんにおいて腫瘍量を低下させることなどによって、疾患または状態を治療、例えば疾患または状態の1つまたは複数の症状を改善する。
【0251】
養子細胞療法のための細胞の投与方法は公知であり、提供される方法および組成物と併せて使用することができる。例えば、養子T細胞療法は、例えば、U.S. 2003/0170238;米国特許第4,690,915号;Rosenberg, "Cell transfer immunotherapy for metastatic solid cancer-what clinicians need to know." Nature reviews Clinical oncology 8.10 (2011): 577;Themeli et al. "Generation of tumor-targeted human T lymphocytes from induced pluripotent stem cells for cancer therapy." Nature biotechnology 31.10 (2013): 928;Tsukahara et al. "CD19 target-engineered T-cells accumulate at tumor lesions in human B-cell lymphoma xenograft mouse models." Biochemical and biophysical research communications 438.1 (2013): 84-89;Davila et al. "CD19 CAR-targeted T cells induce long-term remission and B Cell Aplasia in an immunocompetent mouse model of B cell acute lymphoblastic leukemia." PloS one 8.4 (2013)に記載されており;その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0252】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞療法を受けることになる対象またはそのような対象に由来する試料からT細胞が単離および/またはその他の方法で調製される、自己移入によって行われる。したがって、いくつかの局面では、細胞は、治療を必要とする対象、例えば、患者に由来し、細胞は、単離および処理の後に同じ対象に投与される。
【0253】
いくつかの態様では、細胞療法、例えば、養子T細胞療法は、細胞療法を受けることになるまたは最終的に受ける対象、例えば、第1の対象以外の対象からT細胞が単離および/またはその他の方法で調製される、同種移入によって行われる。そのような態様では、次いで、細胞が、同じ種の異なる対象、例えば、第2の対象に投与される。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。いくつかの態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に類似している。いくつかの態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたは上位タイプを発現する。
【0254】
いくつかの態様では、対象は、細胞または細胞を含有する組成物の投与前に、疾患または状態、例えば、腫瘍を標的とする治療剤で治療されている。いくつかの局面では、対象は、他の治療剤に対して抗療性または非応答性である。いくつかの態様では、対象は、例えば、化学療法、放射線および/または造血幹細胞移植(HSCT)、例えば、同種HSCTを含む、別の治療的介入による治療の後に、持続性疾患または再発性疾患を有する。いくつかの態様では、投与は、対象が別の療法に抵抗性になったにもかかわらず、対象を効果的に治療する。
【0255】
いくつかの態様では、対象は、その他の治療剤に応答性であり、治療剤による治療は、疾病負荷を低減する。いくつかの局面では、対象は、最初は治療剤に応答性であるが、時間が経つにつれて疾患または状態の再発を示す。いくつかの態様では、対象は再発していない。いくつかのそのような態様では、対象は、再発のリスクがある、例えば再発のリスクが高いと判断され、したがって、細胞は、例えば、再発の可能性を低減するまたは再発を防止するために、予防的に投与される。いくつかの態様では、対象は、別の治療剤による事前の治療を受けたことがない。
【0256】
いくつかの態様では、細胞は、所望の投与量で投与され、投与量は、いくつかの局面では、細胞もしくは細胞型の所望の用量もしくは数および/または細胞型の所望の比を含む。したがって、細胞の投与量は、いくつかの態様では、細胞の総数(または体重1kg当たりの数)およびCD4+対CD8+比のような個別の集団またはサブタイプの所望の比に基づく。いくつかの態様では、細胞の投与量は、個別の集団における細胞の、または個別の細胞型の所望の総数(または体重1kg当たりの数)に基づく。いくつかの態様では、投与量は、所望の総細胞数、所望の比、および個別の集団における所望の総細胞数などの、そのような特徴の組み合わせに基づく。
【0257】
いくつかの態様では、CD8+およびCD4+ T細胞などの細胞の集団またはサブタイプは、所望の用量の総細胞、例えば所望の用量のT細胞の耐容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの態様では、所望の用量は、所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重当たりの所望の細胞数、例えば、細胞個/kgである。いくつかの態様では、所望の用量は、最小細胞数または単位体重当たりの最小細胞数であるか、またはそれを超える。いくつかの態様では、所望の用量で投与される総細胞の中で、個別の集団またはサブタイプは、所望のアウトプット比(CD4+対CD8+比など)でまたはそれ近くで、例えば、そのような比のある特定の耐容される差異または誤差内で存在する。
【0258】
いくつかの態様では、細胞は、細胞の個別の集団またはサブタイプのうち1つまたは複数の所望の用量、例えば、CD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量の耐容される差異でまたは差異内で投与される。いくつかの態様では、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の所望の細胞数、または細胞が投与される対象の単位体重当たりのそのような所望の細胞数、例えば、細胞個/kgである。いくつかの態様では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの最小細胞数、または単位体重当たりの集団もしくはサブタイプの最小細胞数であるか、またはそれを超える。
【0259】
したがって、いくつかの態様では、投与量は、総細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、かつ/または個別のサブタイプもしくはサブ集団の1つもしくは複数、例えば、それぞれの所望の固定用量に基づく。したがって、いくつかの態様では、投与量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4+対CD8+細胞の所望の比に基づき、かつ/またはCD4+および/またはCD8+細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0260】
ある特定の態様では、細胞、または細胞のサブタイプの個別の集団は、対象に、約100万~約1000億個の細胞の範囲で、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)、例えば約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、または前記値の任意の2つにより定義される範囲)で、場合によっては約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)またはこれらの範囲の間の任意の値で投与される。
【0261】
いくつかの態様では、総細胞の用量および/または細胞の個別のサブ集団の用量は、104または約104個~109または約109個の細胞/キログラム(kg)体重の範囲内、例えば、105個~106個の細胞/kg体重の範囲内、例えば、少なくとも1×105個の細胞/kg、1.5×105個の細胞/kg、2×105個の細胞/kg、もしくは1×106個の細胞/kg体重、または少なくとも約1×105個の細胞/kg、1.5×105個の細胞/kg、2×105個の細胞/kg、もしくは1×106個の細胞/kg体重、または1×105個の細胞/kg、1.5×105個の細胞/kg、2×105個の細胞/kg、もしくは1×106個の細胞/kg体重、または約1×105個の細胞/kg、1.5×105個の細胞/kg、2×105個の細胞/kg、もしくは1×106個の細胞/kg体重である。例えば、いくつかの態様では、細胞は、104または約104個~109または約109個のT細胞/キログラム(kg)体重、あるいはその特定の誤差範囲内で、例えば、105個~106個のT細胞/kg体重、例えば、少なくとも1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重、または少なくとも約1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重、または1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重、または約1×105個のT細胞/kg、1.5×105個のT細胞/kg、2×105個のT細胞/kg、もしくは1×106個のT細胞/kg体重で投与される。
【0262】
いくつかの態様では、細胞は、104または約104個~109または約109個のCD4+および/またはCD8+細胞/キログラム(kg)体重、あるいはその特定の誤差範囲内で、例えば、105個~106個のCD4+および/またはCD8+細胞/kg体重、例えば、少なくとも1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、または1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg体重、あるいは少なくとも約1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、または1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg体重、あるいは1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、または1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg体重、あるいは約1×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、1.5×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、2×105個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg、または1×106個のCD4+および/もしくはCD8+細胞/kg体重で投与される。
【0263】
いくつかの態様では、細胞は、1×106、2.5×106、5×106、7.5×106、もしくは9×106個のCD4+細胞、および/または1×106、2.5×106、5×106、7.5×106、もしくは9×106個のCD8+細胞、および/または1×106、2.5×106、5×106、7.5×106、もしくは9×106個のT細胞、あるいはその特定の誤差範囲内で、1×106、2.5×106、5×106、7.5×106、もしくは9×106個のCD4+細胞より多い、および/または1×106、2.5×106、5×106、7.5×106、もしくは9×106個のCD8+細胞より多い、および/または1×106、2.5×106、5×106、7.5×106、もしくは9×106個のT細胞より多い、ならびに/あるいは、少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106、もしくは約9×106個のCD4+細胞、および/または少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106、もしくは約9×106個のCD8+細胞、および/または少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106、もしくは約9×106個のT細胞で投与される。いくつかの態様では、細胞は、約108~1012個もしくは約1010~1011個のT細胞、約108~1012個もしくは約1010~1011個のCD4+細胞、および/または約108~1012個もしくは約1010~1011個のCD8+細胞、あるいはその特定の誤差範囲内で投与される。
【0264】
いくつかの態様では、細胞は、CD4+およびCD8+細胞またはサブタイプなどの、複数の細胞集団またはサブタイプの所望のアウトプット比で、またはその耐容される範囲内で投与される。いくつかの局面では、所望の比は、特定の比であることができ、または比の範囲であることができる。例えば、いくつかの態様では、所望の比(例えば、CD4+細胞対CD8+細胞の比)は、1:5または約1:5~5:1または約5:1(または、約1:5よりも大きく、約5:1よりも小さい)、または1:3または約1:3~3:1または約3:1(または、約1:3よりも大きく、約3:1よりも小さい)、例えば、2:1または約2:1~1:5または約1:5(または、約1:5よりも大きく、約2:1よりも小さい)、例えば、5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、または約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5である。いくつかの局面では、耐容される差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内であり、これらの範囲の間の任意の値を含む。いくつかの局面では、ここに記載されるTCRは、改善された発現および活性を提供し、それにより、低いエフェクター対標的(E:T)比であっても治療効果を提供する。
【0265】
療法に対する最適な応答は、TCRなどの操作された組換え受容体の、細胞の表面に一貫して確実に発現する能力および/または標的抗原に結合する能力に依存し得る。例えば、いくつかの場合では、ある特定の組換え受容体、例えばTCRの性質は、いくつかの場合では細胞療法において使用されるヒトT細胞などの細胞において発現した場合、組換え受容体の発現および/または活性に影響を及ぼし得る。いくつかの状況では、特定の組換え受容体、例えばTCRの発現のレベルは、低い場合があり、そのような組換え受容体を発現する操作された細胞、例えばヒトT細胞の活性は、低い発現または低いシグナル伝達活性に起因して制限され得る。いくつかの場合では、組換え受容体の発現の一貫性および/または効率、ならびに受容体の活性は、利用可能な治療アプローチのある特定の細胞またはある特定の細胞集団において制限される。いくつかの場合では、機能的活性を発揮するために多数の操作されたT細胞(高いエフェクター対標的(E:T)比)が必要とされる。いくつかの態様では、所望の比(E:T比)は、1:10もしくは約1:10~10:1もしくは約10:1(または、約1:10よりも大きく、約10:1よりも小さい)、または1:1もしくは約1:1~10:1もしくは約10:1(または、約1:1よりも大きく、約5:1よりも小さい)、例えば、2:1または約2:1~10:1または約10:1である。いくつかの態様では、E:T比は、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、もしくは10:1よりも大きい、または約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、もしくは10:1よりも大きい。
【0266】
疾患の予防または治療に適した投与量は、治療されるべき疾患の種類、細胞または組換え受容体の種類、疾患の重症度および経過、細胞が予防目的で投与されるか治療目的で投与されるか、事前の療法、対象の臨床歴および細胞に対する応答、ならびに担当医師の判断に依存する場合がある。組成物および細胞は、いくつかの態様では、対象に1回でまたは一連の治療にわたり適宜投与される。
【0267】
本明細書に記載される細胞は、任意の適切な手段、例えば、ボーラス注入によって、注射によって、例えば、静脈内または皮下注射、眼内注射、眼周囲注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡膜内注射、前房内注射、結膜下(subconjectval)注射、結膜下(subconjuntival)注射、テノン嚢下注射、眼球後注射、眼球周囲注射、または後強膜近傍(posterior juxtascleral)送達によって投与することができる。いくつかの態様では、これらは、非経口、肺内、および鼻腔内投与によって、局所治療が望まれる場合、病巣内投与によって投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。いくつかの態様では、所与の用量は、細胞の単回ボーラス投与によって投与される。いくつかの態様では、所与の用量は、例えば3日以内の期間にわたる細胞の複数回ボーラス投与によって、または細胞の持続注入投与によって投与される。
【0268】
いくつかの態様では、細胞は、併用治療の一部として、例えば、別の治療的介入、例えば、抗体または操作された細胞もしくは受容体または薬剤、例えば細胞障害性剤または治療剤と同時にまたはいずれかの順序で逐次的に投与される。細胞は、いくつかの態様では、1つまたは複数の追加の治療剤と共にまたは別の治療的介入と組み合わせて、同時にまたはいずれかの順序で逐次的に共投与される。いくつかの状況では、細胞集団が1つまたは複数の追加の治療剤の効果を増強する(逆もまた同様)ように、細胞は、別の療法と時間的に十分に接近して共投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の前に投与される。いくつかの態様では、細胞は、1つまたは複数の追加の治療剤の後に投与される。いくつかの態様では、1つまたは複数の追加の薬剤には、例えば、持続性を増強するための、IL-2などのサイトカインが含まれる。いくつかの態様では、該方法は、化学療法剤の投与を含む。
【0269】
細胞の投与に続いて、操作された細胞集団の生物活性が、いくつかの態様では、例えば、数多くの公知の方法のいずれかによって測定される。評価するためのパラメーターは、インビボでは、例えば、画像検査による、またはエクスビボでは、例えば、ELISAもしくはフローサイトメトリーによる、操作されたT細胞の抗原への特異的結合を含む。ある特定の態様では、標的細胞を破壊する操作された細胞の能力は、当技術分野において公知の任意の適切な方法、例えば、Kochenderfer et al. "Construction and pre-clinical evaluation of an anti-CD19 chimeric antigen receptor." Journal of immunotherapy (Hagerstown, Md.: 1997) 32.7 (2009): 689およびHermans et al. "The VITAL assay: a versatile fluorometric technique for assessing CTL-and NKT-mediated cytotoxicity against multiple targets in vitro and in vivo." Journal of immunological methods 285.1 (2004): 25-40に記載されている細胞傷害性アッセイなどを使用して測定することができる。ある特定の態様では、細胞の生物活性は、CD107a、IFNγ、IL-2およびTNFなどの1つまたは複数のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。いくつかの局面では、生物活性は、腫瘍量または負荷の低減などの臨床成績を評価することによって測定される。
【0270】
投薬スケジュールおよび治療レジメン
細胞の第1の用量が与えられた後に1つまたは複数の第2の連続用量が与えられる、反復投薬法が提供される。細胞の複数の用量のタイミングおよびサイズは、一般に、養子療法において対象に投与されたときに、本明細書に記載されるような操作された細胞の有効性および/または活性および/または機能が高まるように設計される。いくつかの態様では、反復投薬は、PD-1および/またはPD-L1などの阻害性免疫分子が操作されたT細胞上でアップレギュレーションされた際に生じ得るダウンレギュレーションまたは阻害活性を低減する。該方法は、第1の用量を投与し、一般に、それに続いて1つまたは複数の連続用量を投与することを伴い、異なる用量間には特定の時間枠を設ける。
【0271】
養子細胞療法の文脈において、所与の「用量」の投与は、細胞の所与の量または数の、単一の組成物および/または単一の継続的な投与としての、例えば、単回注射または持続注入としての投与を包含し、また、細胞の所与の量または数の、指定の期間(例えば、3日以内)にわたる、複数の個々の組成物または注入で提供される、分割用量としての投与も包含する。したがって、いくつかの状況では、第1の用量または連続用量は、単一時点で与えられるかまたは開始される、指定の数の細胞の単回または連続投与である。しかしながら、いくつかの状況では、第1の用量または連続用量は、複数回の注射または注入で、限定された期間(例えば、3日以内)にわたって、例えば3日間もしくは2日間で1日1回投与されるか、または1日間にわたる複数回の注入によって投与される。
【0272】
第1の用量の細胞は、単一の薬学的組成物で投与される。いくつかの態様では、連続用量の細胞は、単一の薬学的組成物で投与される。
【0273】
いくつかの態様では、第1の用量の細胞は、第1の用量の細胞をまとめて含有する複数の組成物で投与される。いくつかの態様では、連続用量の細胞は、連続用量の細胞をまとめて含有する複数の組成物で投与される。いくつかの局面では、追加の連続用量は、3日以内の期間にわたって複数の組成物で投与することができる。
【0274】
「分割用量」という用語は、1日を超える期間にわたって投与されるように分割された用量のことを指す。このタイプの投薬は、本方法に包含され、単回用量であると見なされる。したがって、いくつかの態様では、第1の用量および/または連続用量は、分割用量として投与することができる。例えば、いくつかの態様では、該用量は、2日間にわたってまたは3日間にわたって対象に投与することができる。分割投薬のための例示的な方法は、初日に該用量の25%を投与し、2日目に残りの該用量の75%を投与することを含む。他の態様では、第1の用量の33%を初日に投与し、2日目に残りの67%を投与することができる。いくつかの局面では、該用量の10%が初日に投与され、該用量の30%が2日目に投与され、該用量の60%が3日目に投与される。いくつかの態様では、分割用量は、3日を超えて拡張されることはない。
【0275】
第1の用量などの先行用量に関して、「連続用量」という用語は、先行用量、例えば第1の用量の後に同じ対象に投与される用量であって、その合間にいかなる介在用量も対象に投与されていない、用量のことを指す。とはいえ、この用語は、単一の分割用量の中に含まれる一連の注入または注射における2回目、3回目および/またはそれ以降の注射または注入を包含しない。したがって、別途特定されない限り、1日、2日または3日の期間内での第2の注入は、本明細書において使用される「連続」用量と見なされない。同様に、分割用量内の一連の複数用量における2回目、3回目なども、「連続」用量という意味との関連で「介在」用量と見なされない。したがって、別途特定されない限り、第1の用量または先行用量の開始後、3日を超える、ある特定の期間に投与される用量は、第1の用量の開始後に2回目またはその後の細胞の注射または注入が対象に与えられたとしても、2回目またはその後の注射または注入が第1の用量または先行用量の開始後、3日の期間内に行われている限り、「連続」用量と見なされる。
【0276】
したがって、別途特定されない限り、3日までの期間にわたる同じ細胞の複数回投与は、単一用量と見なされ、初回投与の3日以内の細胞の投与は、第2の用量が第1の用量と「連続」しているかどうかを決定する目的では、連続用量と見なされず、介在用量と見なされない。
【0277】
いくつかの態様では、複数の連続用量が、いくつかの局面では、第1の用量と第1の連続用量との間のタイミングに関するものと同じタイミングガイドラインを用いて、例えば、第1の用量と複数の連続用量を投与することによって与えられ、それぞれの連続用量は、投与された第1の用量から、対象中の細胞においてPD-1および/またはPD-L1などの阻害性免疫分子がアップレギュレートされている期間内に与えられる。末梢血または他の体液からのTCR発現細胞などの抗原発現細胞におけるPD-1および/またはPD-L1のレベルを評価することなどによって、連続用量を提供するべき時を実験的に決定することは、当業者の技能の範囲内である。
【0278】
いくつかの態様では、第1の用量と第1の連続用量との間、または第1の用量と複数の連続用量との間のタイミングは、各連続用量が、約5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日またはより長い期間内に与えられるようなタイミングである。いくつかの態様では、連続用量は、第1の用量または直前の用量の投与の後、約28日より短い期間内に与えられる。追加の複数の追加の連続用量は、後続用量またはその後の連続用量とも呼ばれる。
【0279】
細胞の第1の用量および/または1つもしくは複数の連続用量のサイズは、一般に、改善された有効性および/または低減された毒性リスクを提供するように設計される。いくつかの局面では、第1の用量または任意の連続用量の投与量またはサイズは、上述したような任意の投与量または量である。いくつかの態様では、第1の用量または任意の連続用量における細胞の数は、約0.5×106個の細胞/対象体重kg~5×106個の細胞/kg、約0.75×106個の細胞/kg~3×106個の細胞/kg、または約1×106個の細胞/kg~2×106個の細胞/kgである。
【0280】
本明細書に使用される「第1の用量」は、所与の用量のタイミングが、連続用量または後続用量の投与前であることを説明するのために使用される。この用語は、対象に、ある用量の細胞療法が今までに与えられたことがないこと、あるいはさらに、対象に、ある用量の同じ細胞または同じ組換え受容体を発現する細胞もしくは同じ抗原を標的とする細胞が今までに与えられたことがないことを意味するとは限らない。
【0281】
いくつかの態様では、複数の用量は、長期間にわたって(例えば、少なくとも1週間、2週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、1年、2年、3年、4年、または5年の期間にわたって)対象に投与することができる。熟練の医療従事者は、治療の有効性(例えば、がんの少なくとも1つの症状の観察)を診断または監視するために、本明細書に記載される方法のいずれかを使用して治療期間の長さを決定することができる。
【0282】
いくつかの態様では、連続用量における細胞によって発現される操作された受容体(例えばTCR)は、第1の用量の細胞によって発現される受容体(例えばTCR)として、少なくとも1つの免疫反応性エピトープを含有する。いくつかの態様では、連続用量で投与される細胞によって発現される受容体(例えばTCR)は、第1の用量によって発現される受容体(例えばTCR)と同一であるか、または第1の用量で投与される細胞によって発現される受容体(例えばTCR)と実質的に同一である。
【0283】
様々な用量で対象に投与される細胞によって発現される受容体(例えばTCR)は、概して、治療されている疾患もしくは状態またはその細胞において発現される分子、それに関連する分子、および/またはそれに特異的な分子を認識するか、またはそれに特異的に結合する。この分子(例えば抗原)に特異的に結合すると、受容体は、概して、免疫賦活性シグナル(例えば、ITAMによって伝達されるシグナル)を細胞に送達し、それにより、疾患または状態を標的とした免疫応答が促進される。例えば、いくつかの態様では、第1の用量における細胞は、発現した抗原に特異的に結合するTCRを発現する。
【実施例
【0284】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明されるが、実施例は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定しない。
【0285】
実施例1:ベクター構築物、細胞株および培地
E202 TCR-T細胞について、2つのコード領域:(1)マウスTCRα鎖の定常領域に融合されたヒト抗E6 TCRのα鎖の可変領域;(2)マウスTCRβ鎖の定常領域に融合された同じヒト抗E6 TCRのβ鎖の可変領域を含有する、MP71レトロウイルスベクター構築物を作製した(図1)。配列は、SEQ ID NO:20に示される。完全ベクター配列は、SEQ ID NO:26に示される。
【0286】
HEK-293T、Ca Ski、およびT2細胞を、米国培養細胞系統保存機関(ATCC)から購入した。匿名のドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)をHemacareから購入した。ヒトE6およびE7を過剰発現するベクターによるCa Ski細胞のレトロウイルス形質導入によって、Ca Ski E6/E7細胞を作製した。細胞を、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)+10% FBS(ウシ胎児血清?)、またはRPMI(ロズウェルパーク記念研究所培地)+10% FBS中で培養した。
【0287】
実施例2:レトロウイルスベクター産生、T細胞形質導入および拡大増殖、ならびにTCR染色
レトロウイルスベクターを、標準的なリン酸カルシウム沈殿プロトコルを使用したHEK-293T細胞の一過性トランスフェクションによって調製した。48時間後にウイルス上清を採取し、これを使用してT細胞を形質導入した。レトロウイルス形質導入の前に、T細胞活性化ビーズおよびヒトIL-2と培養することによって、PBMCを2日間活性化した。形質導入のために、新たに採取したレトロウイルス上清を、32℃、2,000gで2時間遠心することによって、15μgのRetroNectin/ウェル(Clontech Laboratories)で被覆した非組織培養処理24ウェルプレート上にスピンロードした。活性化されたPBMCをプレート上にロードし、32℃、600gで30分間回転させた。
【0288】
T細胞を37℃および5% CO2でインキュベートした。培養培地を2日毎に補充した。抗体はすべて、Biolegendから購入した。形質導入の48時間後に、組換えTCRの発現を検出した。抗体によってマウスTCRβ鎖を染色し、続いてフローサイトメトリー解析を行った。CD3、CD4、およびCD8染色を同時に実施した。結果は、抗E6 TCRが、ヒトT細胞において豊富に発現したことを示した(図2A~2B)。
【0289】
実施例3:インビトロTCR-T細胞内IFN-γ産生
TCR-T細胞を、HPVペプチドでパルスされたT2細胞と様々なエフェクター対標的比で共培養した。細胞内IFN-γ発現を、製造業者の説明書に従ってフローサイトメトリーにより測定した。抗E6 TCRを含有するTCR-T細胞は、標的細胞によって特異的に活性化され得ることが見いだされ、これは細胞内IFN-γ発現によって測定することができる(図3A~3B)。
【0290】
実施例4:ペプチド滴定を介したE202 TCRのEC50
さらに、TCR-T細胞を、T2抗原提示細胞にパルスされた異なる濃度のHPVペプチドと一晩共培養した。TCR-T細胞およびAPC細胞を1:1のエフェクター対標的比で共培養した。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
【0291】
図4に示されるように、E202 TCR-T細胞は、0.045μg/mLのEC50で、E6ペプチドでパルスされたAPCを認識した。
【0292】
実施例5:E202 TCR-T細胞のインビトロ特異的殺傷
E202 TCR-T細胞殺傷アッセイのために、Ca Ski E6/E7細胞をCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)で事前染色し、次いで、非形質導入またはTCR形質導入T細胞と1:2、1:1、3:1、または10:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。標的細胞に対するT細胞の細胞傷害性をアネキシンV/7-AAD染色によって測定した。図5に示されるように、E202 TCR-T細胞は、E6+標的細胞(Ca Ski E6/E7)を特異的様式で殺傷した。E:T比がより高いと、TCR-T細胞は、より高い殺傷能を有する。
【0293】
実施例6:構築物の設計
E202P03 TCR-T細胞について、標準的な分子生物学的技法を使用して、3つのコード領域:(1)マウスTCRα鎖の定常領域に融合されたヒト抗HPV16 E6 TCRのα鎖の可変領域;(2)マウスTCRβ鎖の定常領域に融合された同じヒト抗HPV16 E6 TCRのβ鎖の可変領域;(3)GSリンカーで連結された免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の重鎖および軽鎖の可変領域を含有するMP71レトロウイルスベクター構築物を作製した(図6A~6B)。E202P03についての配列は、SEQ ID NO:25に示される。
【0294】
実施例7:TCR染色
初代T細胞を、E202またはE202P03 TCRの構築物で形質導入した。形質導入の13日後に、組換えTCRの発現を検出した。抗体によってマウスTCRβ鎖を染色し、続いてフローサイトメトリー解析を行った。CD3、CD4、およびCD8染色を同時に実施した。結果は、非形質導入初代T細胞において、組換えTCRが検出されなかったことを示した(図7A)。抗E6 TCRが、E202またはE202P03の構築物で形質導入されたヒトT細胞において豊富に発現した(図7B~7C)。抗体はすべて、BioLegendから購入した。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。
【0295】
実施例8:インビトロ細胞内IFN-γ産生
TCR-T細胞を、HPVペプチドでパルスされたT2細胞と様々なエフェクター対標的比で共培養した。細胞内IFN-γ発現を、製造業者の説明書に従ってフローサイトメトリーにより測定した。抗E6 TCRを発現するE202またはE202P03の構築物によって形質導入されたTCR-T細胞は、標的細胞によって特異的に活性化され得ることが見いだされ、これは細胞内IFN-γ発現によって測定することができる(図8B~8C)。非形質導入T細胞は、標的細胞によって活性化されなかった(図8A)。
【0296】
実施例9:インビトロTCR-T IFN-γ分泌
TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:0、1:1、3:1、または10:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、細胞培養上清を収集し、ヒトIFN-γ ELISAキットを使用して製造業者の説明書に従って上清中のIFN-γ発現を測定した(図9)。
【0297】
E6 TCRを含有するTCR-T細胞は、IFN-γ発現によって測定したところ標的細胞によって活性化されることができた。ペプチドパルスAPCまたはE6+標的細胞(Ca Ski E6/E7)のいずれかによって刺激したところ、E202およびE202P03 TCR-T細胞は、非形質導入T細胞よりもはるかに高いIFN-γ産生を有していた。
【0298】
実施例10:インビトロTCR-T CD107a発現
TCR-T細胞を、HPV E6抗原を発現する標的細胞と1:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。次いで、T細胞を収集し、CD8(図10A~10C)またはCD4(図10D~10F)のいずれかのサブ集団においてCD107a発現をフローサイトメトリーによって測定した。結果は、CD107aが、CD8サブ集団において発現したが、CD4サブ集団において発現しなかったことを示した。
【0299】
実施例11:E202またはE202P03 TCR-T細胞のインビトロ特異的殺傷
HPV E6抗原を発現する標的細胞をCFSEで事前染色し、次いで、TCR-T細胞と1:1、3:1、または10:1のエフェクター対標的比で一晩共培養した。標的細胞に対するT細胞の細胞傷害性を7-AAD染色によって測定した。
【0300】
E202およびE202P03 TCR-T細胞は共に、LMP2+標的細胞(Ca Ski)を特異的様式で殺傷した。非形質導入T細胞は、E202およびE202P03 TCR-T細胞よりも弱く標的細胞を殺傷した(図11)。したがって、E202およびE202P03 TCR-T細胞は、非形質導入TCR-T細胞よりも高い殺傷能を有する。
【0301】
実施例12:E202P03 TCR-T細胞培養物におけるインビトロ抗PD-1 scFv発現
E202またはE202P03 TCR-T細胞のいずれかを、24ウェルプレートに3×106個/mlで48時間播種した。次いで、細胞培養物から上清を収集し、上清中の抗PD-1発現を測定した。結果は、E202P03 TCR-T細胞が、E202 TCR-T細胞よりも多くの抗PD-1 scFvを発現したことを示した(図12)。
【0302】
実施例13:E203、E204、およびE205 TCR-T細胞のTCR染色
また、本明細書に記載されるような方法を使用して、E203、E204、またはE205 TCRを発現するレトロウイルスベクター構築物も作製した。ヒトPBMCを、E203、E204、またはE205 TCRの構築物で形質導入した。形質導入の5日後に、組換えTCRの発現を検出した。抗体によってマウスTCRβ鎖を染色し、続いてフローサイトメトリー解析を行った。CD3染色を同時に実施した。結果は、非形質導入ヒトPBMCにおいて、組換えTCRが検出されなかったことを示した(図13A)。抗E6 TCRが、E203、E204、またはE205 TCRの構築物で形質導入されたヒトPBMCにおいて豊富に発現した(図13B~13D)。生存CD3+リンパ球ゲーティング戦略を使用した。
【0303】
実施例14:E203、E204、およびE205 TCR-T細胞のインビトロ細胞内IFN-γ産生
0.2×106個の非形質導入(UT)、E203、E204、またはE205 TCR-T細胞を、0.4×106個のCa Ski E6/E7細胞(HPV E6およびE7を過剰発現するCa Ski細胞)、Ca Ski細胞または293T細胞と一晩共培養した。次いで、細胞をブレフェルジンAおよびモネンシンで4時間処理し、その後、フローサイトメトリーによって細胞内IFN-γのレベルを測定した。CD4+(図14A~14P)およびCD8+(図15A~15P)T細胞集団の両方を解析した、特にCD8+ T細胞について、結果は、抗E6 TCRを発現するE203またはE205の構築物によって形質導入されたTCR-T細胞が、細胞内IFN-γ発現によって判定したところ、Ca Ski E6/E7細胞によって特異的に活性化され得ることを示した(図15Fおよび図15N)。対照的に、非形質導入T細胞は、Ca Ski E6/E7細胞によって活性化されなかった(図15B)。
【0304】
実施例15:E203、E204、またはE205 TCR-T細胞のインビトロ特異的殺傷
0.03×106個のCa Ski E6/E7細胞をCellTrace(商標)CFSEで標識し、0.03×106個の293T細胞をCellTrace(商標)Violetで標識した。標識されたCa Ski E6/E7細胞と標識された293T細胞とを混合し、非形質導入(UT)、E203、E204、またはE205 TCR-T細胞と0:1、0.4:1、2:1、または10:1のエフェクター対標的細胞比で(96ウェルプレートで4リプリケート)一晩共培養した。その後、生存Ca Ski E6/E7細胞および生存293T細胞をフローサイトメトリーによって定量した。フローサイトメトリー解析の参照としてビーズを加えた。ビーズに対する生存Ca Ski E6/E7細胞の比に基づいて絶対殺傷効力を算出し(図16A)、生存293T細胞に対する生存Ca Ski E6/E7細胞の比に基づいて競合殺傷効力を算出した(図16B)。結果は、標的細胞(Ca Ski E6/E7)殺傷特異性が、E203 TCR-T細胞>E205 TCR-T細胞>E204 TCR-T細胞としてランク付けされたことを示した。
【0305】
実施例16:ペプチド滴定を介したE203 TCRのEC50
E203 TCR-T細胞を、抗原提示細胞(APC)と1:1のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した。APCを異なる濃度のHPVペプチドでパルスした。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
【0306】
図17Aに示されるように、CD8+ E203 TCR-T細胞を使用してHPVペプチドパルスAPCを認識した場合、EC50は、1.045ng/mlであった。図17Bに示されるように、CD4+ E203 TCR-T細胞を使用してHPVペプチドパルスAPCを認識した場合、EC50は、17.62ng/mlであった。
【0307】
実施例17. ペプチド滴定を介したE204 TCRのEC50
E204 TCR-T細胞を、抗原提示細胞(APC)と1:1のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した。APCを異なる濃度のHPVペプチドでパルスした。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
【0308】
図18A~18Bに示されるように、E204 TCR-T細胞(CD8+およびCD4+ T細胞を含む)は、HPVペプチド依存的活性化を示さなかった。E204 TCR-T細胞について、EC50は判定されなかった。
【0309】
実施例18:ペプチド滴定を介したE205 TCRのEC50
E205 TCR-T細胞を、抗原提示細胞(APC)と1:1のエフェクター対標的細胞比で一晩共培養した。APCを異なる濃度のHPVペプチドでパルスした。次いで、T細胞を収集し、細胞内IFN-γ発現を測定して、EC50を決定した。
【0310】
図19Aに示されるように、CD8+ E205 TCR-T細胞を使用してHPVペプチドパルスAPCを認識した場合、EC50は、0.9167ng/mlであった。図19Bに示されるように、CD4+ E205 TCR-T細胞を使用してHPVペプチドパルスAPCを認識した場合、EC50は、10.42ng/mlであった。
【0311】
他の態様
本発明は、その詳細な説明と併せて記載してきたが、前述の説明は、本発明を例証することを意図しており、添付の特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定するものではないと理解されるべきである。他の局面、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16A
図16B
図17
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図21-22】
図21-23】
図21-24】
図21-25】
図21-26】
【手続補正書】
【提出日】2022-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023515763000001.app
【国際調査報告】