(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】強皮症および関連する疾病の処置のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230407BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/277 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230407BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230407BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230407BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230407BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230407BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230407BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K31/4985
A61K31/365
A61K31/4545
A61K31/277
A61K31/5377
A61K31/519
A61K31/53
A61K31/496
A61K31/506
A61K31/05
A61P37/02
A61P17/00
A61P11/00
A61P43/00 111
C07K16/28 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547943
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 US2021016666
(87)【国際公開番号】W WO2021158823
(87)【国際公開日】2021-08-12
(32)【優先日】2020-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074970
【氏名又は名称】ホライゾン セラピューティクス アイルランド デジグネイテッド アクティビティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】HORIZON THERAPEUTICS IRELAND DAC
【住所又は居所原語表記】70 St Stephen’s Green, Saint Kevin’s, Dublin 2, D02 E2X4, Ireland
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】ラーマナータン,スリニ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZC411
4C084ZC412
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
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4C086BC67
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4C086CA01
4C086CB03
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4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZC41
4C206AA01
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4C206HA13
4C206KA01
4C206MA01
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4C206MA72
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZA89
4C206ZB07
4C206ZC41
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
【解決手段】本明細書には、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)に対する抗体、ならびに、強皮症とその変形、例えばびまん型皮膚全身性強皮症の処置、およびこれら疾患での臨床的転帰の達成における抗体の使用が、提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強皮症を処置する方法であって、処置を必要とする対象にインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤を治療上有効量で投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前記強皮症が限局性強皮症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記限局性強皮症がモルフェア強皮症または線状強皮症である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記強皮症が全身性強皮症である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記全身性強皮症が、限局性皮膚全身性強皮症、全身性硬化症サイン強皮症、およびびまん型皮膚全身性硬化症からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記全身性強皮症がびまん型皮膚全身性硬化症である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
間質性肺疾患(ILD)を処置する方法であって、処置を必要とする対象にインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤を治療上有効量で投与する工程を含む方法。
【請求項8】
前記ILDが特発性肺線維症である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
強皮症または間質性肺疾患(ILD)を患う対象の線維症ならびに/あるいはコラーゲンの産生および/または蓄積を低減する方法であって、前記対象にインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤を治療上有効量で投与する工程を含む方法。
【請求項10】
前記対象が強皮症を患っている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記強皮症が全身性強皮症である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記全身性強皮症が、限局性皮膚全身性強皮症、全身性硬化症サイン強皮症、およびびまん型皮膚全身性硬化症からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記全身性強皮症がびまん型皮膚全身性硬化症である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、皮膚の弾性により測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、前記対象の改良Rodnanトータルスキンスコア(mRSSまたはmRTSS)の低下として測定される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、対象における全身性硬化症の米国リウマチ学会複合応答指数(ACR-CRISS)スコアの上昇として測定される、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記対象がILDを患っている、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記ILDが特発性肺線維症である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、対象の肺機能改善として測定される、請求項9から13、17、および18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、6分間歩行試験(6MWT)における対象の歩行距離の増加として測定される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
努力肺活量(FVC)が5%以上改善する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
酸素拡散能(DLCO)が改善する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
投与が、皮内注射、皮下注射、静脈内注射(点滴を含む)、または吸入により行われる、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記IGF-1R阻害剤が、抗体またはその抗原結合性フラグメントである、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、初回用量として約1mg/kg~約5mg/kgの投与量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、初回用量として約5mg/kg~約10mg/kgの投与量で投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、次回用量として約5mg/kg~約20mg/kgの投与量で投与される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、初回用量として約10mg/kg、および次回用量として約20mg/kgの投与量で投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記次回用量が、少なくとも21日間、3週間ごとに投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合親和性(K
D)が、IGF-1Rでは10
-8M以下である、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合親和性(K
D)が、前記IGF-1Rでは10
-13~10
-9Mである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントのIC
50値が、IGF-IおよびIGF-IIのIGF-IRへの結合では約2nM以下である、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖と、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖とを含み、前記重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに前記軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列は、(i)それぞれ配列番号85~90のアミノ酸配列、または(ii)それぞれ配列番号85、93、87、88、94、および90のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、(i)それぞれ配列番号85~90に明記される、重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、または(ii)それぞれ配列番号85、93、87、88、94、および90に明記される、重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、(i)配列番号91のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および配列番号92のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、または(ii)配列番号95のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および配列番号96のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、(i)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または(ii)配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号96のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体がテプロツムマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、精製抗体、ダイアボディ、一本鎖抗体、多重特異性抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、またはscFvである、請求項24から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体またはその抗原結合性フラグメントが、薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、または担体をさらに含む医薬組成物に入れて投与される、請求項24から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記医薬組成物の一部として、または別個のものとして、モルフェア強皮症または線状強皮症の処置のための1または複数の他の薬学的に活性な化合物を投与する工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記医薬組成物の一部として、または別個のものとして、コルチコステロイド、リツキシマブもしくは他の抗CD20抗体、トシリズマブもしくは他の抗-IL-6抗体、またはメトトレキサートから選択される化合物を投与する工程をさらに含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも4週間有効である、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも6週間有効である、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも8週間有効である、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも20週間有効である、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記IGF-1R阻害剤が、ガニツマブ、フィギツムマブ、MEDI-573、シクスツムマブ、ダロツズマブ、ロバツムマブ、AVE1642、BIIB022、キセンツズマブ、イスチラツマブ、リンシチニブ、ピクロポドフィリン、BMS-754807、BMS-536924、BMS-554417、GSK1838705A、GSK1904529A、NVP-AEW541、NVP-ADW742、GTx-134、AG1024、KW-2450、PL-2258、NVP-AEW541、NSM-18、AZD3463、AZD9362、BI885578、BI893923、TT-100、XL-228、およびA-928605から選択される、請求項1から32および38から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記IGF-1R阻害剤が、抗体またはその抗原結合性フラグメントである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記IGF-1R阻害剤が、ヒトの治療に適したヒト抗体、キメラヒト抗体、またはヒト化モノクローナル抗体、あるいはそれらの抗原結合性フラグメントである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体が、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体がIV投与される、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体が、ガニツマブ、フィギツムマブ、MEDI-573、シクスツムマブ、ダロツズマブ、ロバツムマブ、AVE1642、BIIB022、キセンツズマブ、およびイスチラツマブから選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体がガニツマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記ガニツマブが、
a.3週間ごとに1~60mg/kgもしくは75~4500mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~40mg/kgもしくは45~3000mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~20mg/kgもしくは22~1500mgでIV投与される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗体がフィギツムマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記フィギツムマブが、
a.3週間ごとに1~60mg/kgもしくは75~4500mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~40mg/kgもしくは45~3000mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~20mg/kgもしくは22~1500mgでIV投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体がシクスツムマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記シクスツムマブが、
a.3週間ごとに1~45mg/kgもしくは75~3400mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~30mg/kgもしくは45~2300mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~15mg/kgもしくは22~1200mgでIV投与される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記抗体がダロツズマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記ダロツズマブが、
a.3週間ごとに1~90mg/kgもしくは75~6800mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~60mg/kgもしくは45~4500mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~30mg/kgもしくは22~2300mgでIV投与される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記抗体がロバツムマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
前記ロバツムマブが、
a.3週間ごとに1~75mg/kgもしくは75~5700mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~50mg/kgもしくは45~3800mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~25mg/kgもしくは22~1900mgでIV投与される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記抗体がキセンツズマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項63】
前記キセンツズマブが、
a.3週間ごとに1~112mg/kgもしくは75~8400mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~75mg/kgもしくは45~5700mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~38mg/kgもしくは22~2900mgでIV投与される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記抗体がイスチラツマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項65】
前記イスチラツマブが、
a.3週間ごとに1~112mg/kgもしくは75~8400mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~75mg/kgもしくは45~5700mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~38mg/kgもしくは22~2900mgでIV投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記抗体がAVE1642である、請求項51に記載の方法。
【請求項67】
前記AVE1642が、
a.3週間ごとに1~60mg/kgもしくは75~4500mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~40mg/kgもしくは45~3000mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~20mg/kgもしくは22~1500mgでIV投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記抗体がBIIB022である、請求項51に記載の方法。
【請求項69】
前記BIIB022が、
a.3週間ごとに1~75mg/kgもしくは75~5700mgでIV投与され、または
b.2週間ごとに0.6~50mg/kgもしくは45~3800mgでIV投与され、または
c.毎週0.3~25mg/kgもしくは22~1900mgでIV投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記IGF-1R阻害剤である抗体が、
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖、
b.配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖、
c.配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖、
d.配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖、
e.配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖、
f.配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖、
g.配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号のアミノ酸配列を含む軽鎖、
h.配列番号63のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖、
i.配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖、ならびに
j.配列番号73のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号74のアミノ酸配列を含む軽鎖、
k.配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号81のアミノ酸配列を含む軽鎖、
l.配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号82のアミノ酸配列を含む軽鎖、
m.配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号83のアミノ酸配列を含む軽鎖、
n.配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号84のアミノ酸配列を含む軽鎖、
o.配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖、
p.配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号81のアミノ酸配列を含む軽鎖、
q.配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号82のアミノ酸配列を含む軽鎖、
r.配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号83のアミノ酸配列を含む軽鎖、
s.配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号84のアミノ酸配列を含む軽鎖
からなる群から選択される少なくとも1つの重鎖と少なくとも1つの軽鎖とを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項71】
前記IGF-1R阻害剤が小分子である、請求項46に記載の方法。
【請求項72】
前記IGF-1R阻害剤が経口投与される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記IGF-1R阻害剤が、リンシチニブ、ピクロポドフィリン、BMS-754807、BMS-536924、BMS-554417、GSK1838705A、GSK1904529A、NVP-AEW541、NVP-ADW742、GTx-134、AG1024、kW-2450、PL-2258、NVP-AEW541、NSM-18、AZD3463、AZD9362、BI885578、BI893923、TT-100、XL-228、およびA-928605から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記IGF-1R阻害剤がリンシチニブである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記リンシチニブが、
a.10~750mgで1日1回連続的に経口投与、もしくは10~1500mg/日で1日1回断続的に経口投与され(14日のうち最大7日間)、または
b.6~500mgで1日2回連続的に経口投与、もしくは6~1000mgで1日2回断続的に経口投与され(14日のうち最大7日間)、または
c.3~250mgで1日3回連続的に経口投与、もしくは3~500mgで1日3回断続的に経口投与される(14日のうち最大7日間)、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記IGF-1R阻害剤がピクロポドフィリンである、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
前記ピクロポドフィリンが、
a.20~2000mgで1日1回経口投与され、または
b.13~1400mgで1日2回経口投与され、
c.6~700mgで1日3回経口投与される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記IGF-1R阻害剤がBMS-754807である、請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記BMS-754807が、
a.5~600mgで1日1回経口投与され、または
b.3~400mgで1日2回経口投与され、または
c.1~200mgで1日3回経口投与される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記IGF-1R阻害剤がBMS-536924である、請求項73に記載の方法。
【請求項81】
前記IGF-1R阻害剤がBMS-554417である、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記IGF-1R阻害剤がGSK1838705Aである、請求項73に記載の方法。
【請求項83】
前記IGF-1R阻害剤がGSK1904529Aである、請求項73に記載の方法。
【請求項84】
前記IGF-1R阻害剤がNVP-AEW541である、請求項73に記載の方法。
【請求項85】
前記IGF-1R阻害剤がNVP-ADW742である、請求項73に記載の方法。
【請求項86】
前記IGF-1R阻害剤がGTx-134である、請求項73に記載の方法。
【請求項87】
前記IGF-1R阻害剤がAG1024である、請求項73に記載の方法。
【請求項88】
前記IGF-1R阻害剤がPL-2258である、請求項73に記載の方法。
【請求項89】
前記IGF-1R阻害剤がNVP-AEW541である、請求項73に記載の方法。
【請求項90】
前記IGF-1R阻害剤がNSM-18である、請求項73に記載の方法。
【請求項91】
前記IGF-1R阻害剤がAZD3463である、請求項73に記載の方法。
【請求項92】
前記IGF-1R阻害剤がAZD9362である、請求項73に記載の方法。
【請求項93】
前記IGF-1R阻害剤がBI885578である、請求項73に記載の方法。
【請求項94】
前記IGF-1R阻害剤がBI893923である、請求項73に記載の方法。
【請求項95】
前記IGF-1R阻害剤がTT-100である、請求項73に記載の方法。
【請求項96】
前記IGF-1R阻害剤がXL-228である、請求項73に記載の方法。
【請求項97】
前記IGF-1R阻害剤がA-928605である、請求項73に記載の方法。
【請求項98】
前記IGF-1R阻害剤が、
a.1~2000mgで1日1回経口投与され、または
b.0.6~1400mgで1日2回経口投与され、または
c.0.3~700mgで1日3回経口投与される、請求項80から97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
前記IGF-1R阻害剤がKW-2450である、請求項73に記載の方法。
【請求項100】
前記KW-2450が、
a.1~100mgで1日1回経口投与され、または
b.0.6~70mgで1日2回経口投与され、または
c.0.3~30mgで1日3回経口投与される、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
抗インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)である抗体またはその抗原結合性フラグメントが、半減期を延ばすためにFc領域に修飾を含む、請求項24から39および47から70のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年2月4日出願の米国仮特許出願第62/970,063号、および2020年7月8日出願の米国仮特許出願第63/049,522号に基づく利益を主張するものであり、これら出願の開示は、あたかも全体が本明細書に記載されるように参照により引用される。
【0002】
強皮症は、慢性結合組織疾患であり、一般に自己免疫性リウマチ疾患と分類される。強皮症の原因は把握されていないが、様々な遺伝子中の許容変動(permissive variation)により人々は強皮症に罹患する可能性があるという証拠が挙げられつつある。
【0003】
限局性強皮症は、限局性線維性強皮症とも知られており、筋肉に達する場合がある稀な形態を除き、患者の皮膚に影響を及ぼす強皮症に限定される。限局性強皮症には少なくとも2つの大きな下位分類としてモルフェア強皮症と線状強皮症があり、この2つは互いに相反するものではない。影響が及ぶ領域は通常、腕、手、脚、足、および頭部である。モルフェア強皮症は、様々な大きさ、形状、色の蝋様斑(waxy patches)の外観を呈する。これら班の下にある皮膚は時間が経つにつれ肥大し、付近の関節の使用が制限されるおそれがある。線状強皮症は、多くの場合にモルフェア強皮症よりも深い線状の皮膚硬化を生じさせるものであり、通常は腕、脚、または頭部に生じる。限局性強皮症は、小児、または30~50歳の間の成人に生じる場合があり、班は6か月~数年間残る場合がある。
【0004】
全身性強皮症は、皮膚、食道、胃腸管、肺、腎臓、心臓、その他の内臓を含む身体における多くの部分の結合組織に影響を及ぼすものである。全身性強皮症は、間接的に血管、筋肉、および関節にも影響を及ぼす場合がある。全身性強皮症には、限局性、サイン(sine)、びまん型といった3つの形態が存在する。限局性皮膚全身性強皮症は、限局性皮膚全身性硬化症とも知られており、前腕と下腿に影響を及ぼし、時間が経つにつれ消化器系、肺、心臓、および腎臓にも影響を及ぼす可能性がある。全身性硬化症サイン強皮症(Systemic sclerosis sine scleroderma)は、限局性全身性硬化症および進行性全身性硬化症サイン強皮症とも知られており、皮膚ではなく1または複数の内臓に影響を及ぼす。びまん型皮膚全身性強皮症は、限局性皮膚全身性硬化症またはびまん型皮膚全身性硬化症とも知られており、限局性強皮症より遥かに速く進行する。びまん型皮膚全身性強皮症は、限局性皮膚全身性強皮症(limited cutaneous systemic scleroderma)と同じすべての身体領域に影響を及ぼすが、皮膚の硬化は、胴、上腿、および腕にも生じる場合がある。全身性強皮症の発症は、しばしば30~50歳の間の成人に起こる。全身性強皮症は、最終的に1または複数の内臓、通常は肺の線維症により死に至ることが多い。
【0005】
肺線維症を伴う全身性強皮症は、より大きな間質性肺疾患(ILD)内で分類される。間質性肺疾患は、実質性肺障害の大きく多様な群を包含している。ILDは、原因、例えば非限定的な例として、珪肺症、石綿肺症、ベリリウム症、過敏性肺炎を含む物質吸入;抗生物質、化学療法薬(例えばブレオマイシン)、抗不整脈薬などの薬剤性;全身性硬化症、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなどの結合組織疾患;非定型肺炎、ニューモシスチス肺炎(PCP)、結核などの感染症;サルコイドーシス、特発性肺線維症(IPF)、ハンマン・リッチ症候群などの特発型;またはリンパ管性癌腫症などの悪性病変に応じて分類される場合がある。
【0006】
IPFは、文献中でさらに試験された線維性ILDの1つである。一部の研究論文で、IPFの肺組織線維症に対するIGF-R1の役割が示唆されている。IGF1発現および/またはシグナル伝達のアップレギュレーションは、IPF、全身性強皮症ILD、後期サルコイドーシス、塵肺症、薬剤性肺線維症、関節リウマチ関連型間質性肺疾患を含むILD疾患を患う患者に存在する。他の試験では、ヒトIPFのSCID/BgモデルでのIGF-1Rシグナル伝達の阻害は線維化促進媒介物質を減少させるのに有効であったことが認められた。この試験、および他の多くの試験で、IGF-1Rの阻害剤による、IPFやSSc ILDを含むILDの処置は有益となり得ることが示唆されている。
【0007】
強皮症の影響は米国で約300,000人に及び、その3分の1が全身性強皮症を患っている。米国では毎年、100,000人に2人に新たな全身性強皮症が見られ、その速度は過去50年で上昇している。米国ではさらに、毎年100,000人に3人に新たな線状強皮症が見られている。全身性強皮症は、男性の4倍の速度で女性に影響を及ぼしている。強皮症は、通常30~50歳の間の成人で診断されるが、最初に他の多くの種類の自己免疫疾患として発症するため、しばしば診断が困難である。
【0008】
IPFは米国で約100,000人に影響を及ぼしており、毎年新たに30,000~40,000の症例が見られる。世界中では、毎年100,000人につき13~20人の新たな症例が見られる。IPFは、通常60歳以上の人に見られるが、その発症は早期に現れる可能性があり、男女間でほぼ均等に分割される。
【0009】
現在、強皮症のすべての形態に対する処置は、症状を管理し、疾患の進行を遅くすることである。強皮症のあらゆる形態を治癒するための処置法は、現在存在していない。
【0010】
限局性強皮症の処置は、疾患の重症度に応じて変動可能である。大半のモルフェア強皮症患者に必要な処置は、皮膚を柔らかく柔軟に保つ局所用クリームである。この処置が不適当な場合、局所ステロイド、メトトレキサート(Trexall)、およびコルチコステロイドのうち1つまたはこれらの組合せによるさらなる処置が、使用可能である。光線療法は、強皮症の皮膚病変を柔らかくするのを助けることが認められている。線状強皮症の処置には、上記以外にも、強皮症の位置と重症度に依存する理学療法および/または手術も挙げることができる。これらの処置はすべて、強皮症の症状を低減するのを役立つが、疾患の根本的な原因を治癒するものではない。
【0011】
全身性強皮症の処置は、個々の患者が発症した症状に左右される。欧州リウマチ学会(EULAR)では、患者が発症する症状に基づく16の異なる処置が推奨されている。強皮症症状の処置に使用されることが多い薬として、プロトンポンプ阻害薬、アンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬、エンドセリン受容体遮断薬、プロスタグランジンアナログ、ホスホジエステラーゼ阻害薬、および免疫変調成分(ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド、メトトレキサート)が挙げられた。また、これらの治療法は症状のみを処置するものであり、全身性強皮症に伴う根本的な問題である組織線維症を止めることも消失させることもない。
【0012】
強皮症の特異的な根底にある病原性自己免疫機構に対する現在の理解は、不完全なものである。多くの機構が強皮症に関与するものであるが、どれを標的とするかは依然として試験中である。他の自己免疫疾患の処置用の生物学的製剤を含む薬物の多くが、強皮症の処置に試みられ、使用されてきた。しかし、その大半は、被験者にわずかな利益しかもたらさなかった。
【0013】
トシリズマブ、すなわちヒト化抗-IL-6受容体抗体に対する臨床試験では、強皮症被験者に対していくつかの利益が認められている。被験者は、改良Rodnanトータルスキンスコア(mRSSまたはmRTSS)の改善、および一部の試験では肺線維症の停止を呈した。他の試験では、肺機能の改善はほとんど見られなかったが、mRSSまたは28関節数疾患活性スコア(28-joint count Disease Activity score)に改善を認めた。全身性強皮症の処置に対するトシリズマブの使用については、現在第3相試験が進められている。
【0014】
TNF-αを遮断するのに使用される治療薬に対する臨床試験では、強皮症被験者に対する利益はほとんど認められなかった。インフリキシマブ、すなわちヒト化抗-TNF-α受容体マウス抗体は、mRSSの軽微な改善を呈したが、試験で16例中7例に主要な有害事象が認められた。TNF-αを遮断するのに使用される治療薬における上記および他の結果が理由で、大半の専門家は、強皮症に対しこの処置を推奨していない。
【0015】
2つの抗-TGF-β抗体の臨床試験では、結果は強皮症試験においてまちまちであった。CAT-19、すなわち、解離定数が150nMのTGF-β1にのみ結合する組換えヒト抗体では、患者のmRSSスコアに変化は認められなかった。フレソリムマブ、すなわち3つすべてのTGF-βアイソフォームに対する高親和性ヒトモノクローナル抗体に対する2014年の臨床試験では、mRSSスコアの改善、および皮膚におけるTGF-βバイオマーカーのダウンレギュレーションを認めた。抗-TGF-β抗体に対してさらなる試験は開始も完遂もされず、強皮症対象を処置する承認は得られていない。
【0016】
リツキシマブ、すなわち抗CD20キメラモノクローナル抗体の臨床試験は、完遂している。これらの試験ではmRSSスコアの改善を認めたが、努力肺活量試験で肺機能の改善は認められなかった。強皮症の処置におけるシクロホスファミドの代わりに、リツキシマブの使用に幾分の関心が集まっている。
【0017】
これらの試験をすべて考慮すると、強皮症を処置する新たな治療薬が依然として必要とされている。強皮症の症状を治療するさらなる治療薬が有用であるが、強皮症における損傷を低減かつ修復可能な治療薬、例えば、強皮症患者の線維症を軽減して、疾患の原因である細胞のアポトーシスを生じさせることのできる薬物が、患者にとってより有益となるであろう。
【0018】
インスリン様成長因子タンパク質は、細胞の成長と死の調節に不可欠なものである。2つのインスリン様成長因子リガンド(IGF1とIGF2)、2つのインスリン様成長因子受容体(IGF-1RとIGF-2R)、および6つのインスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP1-6)を含む、IGF系に関与する3種類のタンパク質が存在する。IGF系が癌および多くの自己免疫疾患の多数の形態において役割を果たすという指標が存在する。これら疾患では、患者の組織および/または血液により高量のIGFが存在する。試験では、強皮症患者の皮膚と血液により高量のIGFが認められている。より高量のIGFは、関与した細胞の正常なアポトーシスプロセスを妨げる役割を果たすと考えられている。そのため、IGF経路への過剰刺激を止めることが、強皮症患者に有益であると予測される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本明細書に開示される試験デザインの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書には、強皮症の処置に使用されるインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態では、強皮症は、限局性強皮症および全身性強皮症から選択される。いくつかの実施形態では、強皮症は限局性強皮症である。いくつかの実施形態では、強皮症は全身性強皮症である。
【0022】
本明細書には、強皮症の対象におけるコラーゲンの産生および/または蓄積を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体はインスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害する、方法も提供される。
【0023】
本明細書には、強皮症(例えば、限局性強皮症)の対象における改良Rodnanトータルスキンスコア(mRSSまたはmRTSS)を低下させる方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体はインスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害する、方法も提供される。
【0024】
いくつかの実施形態では、改良Rodnanトータルスキンスコアの低下は、2を超える、例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または15を超える可能性がある。
【0025】
いくつかの実施形態では、低下は、皮膚生検により判定したときに皮膚内でのカルシウム沈着の低下である。
【0026】
本明細書には、全身性強皮症の対象におけるコラーゲンの産生および/または蓄積を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体はインスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害する、方法も提供される。
【0027】
いくつかの実施形態では、全身性硬化症の米国リウマチ学会複合応答指数(American College of Rheumatology-Composite Response Index in Systemic Sclerosis:ACR-CRISS)スコアは、0.1以上、例えば、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、または0.20を超えて上昇する。
【0028】
本明細書には、全身性強皮症の対象における肺線維症を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体はインスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害する、方法も提供される。
【0029】
いくつかの実施形態では、6分間歩行試験(6-minute walk test:6MWT)におけるメートルでの歩行距離は、約5メートル、約10メートル、約15メートル、約20メートル、約25メートル、約30メートル、約35メートル、約40メートル、約45メートル、または約50メートル改善する。いくつかの実施形態では、歩行されたメートルの増加は、約5メートル~約25メートル、または約5メートル~約30メートル、または約5メートル~約40メートル、あるいは約5メートル~約50メートルである。
【0030】
本明細書には、限局性強皮症または全身性強皮症の対象におけるコラーゲンの産生と蓄積を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体は、インスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害し、局所製剤に入れて送達される、方法も提供される。
【0031】
いくつかの実施形態では、送達は、クリーム、軟膏、パッチ、または有効量の抗体もしくはその抗原フラグメントを患者に皮膚を介して送達する他のあらゆる方法により行われる。
【0032】
本明細書には、限局性強皮症または全身性強皮症の対象におけるコラーゲンの産生と蓄積を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体は、インスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害し、皮内注射により送達される、方法も提供される。
【0033】
本明細書には、限局性強皮症または全身性強皮症の対象におけるコラーゲンの産生と蓄積を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体は、インスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害し、皮下注射により送達される、方法も提供される。
【0034】
本明細書には、限局性強皮症または全身性強皮症の対象におけるコラーゲンの産生と蓄積を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体は、インスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害し、吸入により送達される、方法も提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、有効量の抗体またはその抗原フラグメントの送達は、吸入器により行われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、有効量の抗体またはその抗原フラグメントの送達は、ネブライザにより行われる。
【0037】
本明細書には、限局性強皮症または全身性強皮症の対象におけるコラーゲンの産生と蓄積を低減する方法であって、この対象に抗体またはその抗原フラグメントを有効量で投与する工程を含み、この抗体は、インスリン様成長因子1受容体に特異的に結合してこれを阻害し、注入により送達される、方法も提供される。
【0038】
実施形態の列挙
実施形態1として、強皮症を処置するかその作用を低減する方法であって、対象にインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤(例えば抗-IGF-1R抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または小分子IGF-1R阻害剤)を有効量で投与する工程を含む方法が、提供される。
【0039】
実施形態2. 強皮症が限局性強皮症である、実施形態1に記載の方法。
【0040】
実施形態3. 限局性強皮症がモルフェア強皮症または線状強皮症である、実施形態2に記載の方法。
【0041】
実施形態4. 強皮症が全身性強皮症である、実施形態1に記載の方法。
【0042】
実施形態5. 全身性強皮症が、限局性皮膚全身性強皮症、全身性硬化症サイン強皮症、およびびまん型皮膚全身性硬化症からなる群から選択される、実施形態4に記載の方法。
【0043】
実施形態6. 全身性強皮症がびまん型皮膚全身性硬化症である、実施形態5に記載の方法。
【0044】
実施形態7. 間質性肺疾患(ILD)を処置する方法であって、処置を必要とする対象にインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤(例えば抗-IGF-1R抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または小分子IGF-1R阻害剤)を治療上有効量で投与する工程を含む方法。
【0045】
実施形態8. ILDが特発性肺線維症である、実施形態7に記載の方法。
【0046】
実施形態9. 強皮症または間質性肺疾患(ILD)の対象における線維症ならびに/またはコラーゲンの産生および/もしくは蓄積を低減する方法であって、対象にインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤(例えば抗-IGF-1R抗体もしくはその抗原結合性フラグメント、または小分子IGF-1R阻害剤)を治療上有効量で投与する工程を含む方法。
【0047】
実施形態10. 対象が強皮症を患っている、実施形態9に記載の方法。
【0048】
実施形態11. 強皮症が全身性強皮症である、実施形態10に記載の方法。
【0049】
実施形態12. 全身性強皮症が、限局性皮膚全身性強皮症、全身性硬化症サイン強皮症、およびびまん型皮膚全身性硬化症からなる群から選択される、実施形態11に記載の方法。
【0050】
実施形態13. 全身性強皮症がびまん型皮膚全身性硬化症である、実施形態12に記載の方法。
【0051】
実施形態14. 線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、皮膚の弾性により測定される、実施形態9に記載の方法。
【0052】
実施形態15. 線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、対象の改良Rodnanトータルスキンスコア(mRSSまたはmRTSS)の低下として測定される、実施形態14に記載の方法。
【0053】
実施形態16. 線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、対象における全身性硬化症の米国リウマチ学会複合応答指数(ACR-CRISS)スコアの上昇として測定される、実施形態9から15のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態17. 対象がILDを患っている、実施形態9に記載の方法。
【0055】
実施形態18. ILDが特発性肺線維症である、実施形態17に記載の方法。
【0056】
実施形態19. 線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、対象の肺機能改善として測定される、実施形態9から13、17、および18のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態20. 線維症ならびにコラーゲンの産生および/または蓄積の低減が、対象における6分間歩行試験(6MWT)での歩行距離の増加として測定される、実施形態19に記載の方法。
【0058】
実施形態21. 努力肺活量(FVC)が5%以上改善する、実施形態19に記載の方法。
【0059】
実施形態22. 酸素拡散能(DLCO)が改善する、実施形態19に記載の方法。
【0060】
実施形態23. 投与が、皮内注射、皮下注射、静脈内注射(点滴を含む)、または吸入により行われる、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
実施形態24: インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤が局所製剤により投与され、局所製剤として、ローション、クリーム、軟膏、パッチ、または阻害剤を対象に皮膚を介して送達する他のあらゆる方法を含むことができる、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
実施形態25: インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤が皮内注射により対象に投与される、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
実施形態26: インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤が皮下注射により対象に投与される、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
実施形態27: インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤が吸入器またはネブライザにより対象に投与される、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
実施形態28: IGF-1R阻害剤が、抗-IGF-1R抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、かつ注入により対象に投与される、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態29: IGF-1R阻害剤が、抗-IGF-1R抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、かつ初回用量として約1mg/kg~約5mg/kgの投与量で投与される、実施形態1から23のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態30: IGF-1R阻害剤が、抗-IGF-1R抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、かつ初回用量として約5mg/kg~約10mg/kgの投与量で投与される、実施形態28に記載の方法。
【0068】
実施形態31: IGF-1R阻害剤が、抗-IGF-1R抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、かつ次回用量として約5mg/kg~約20mg/kgの投与量で投与される、実施形態29に記載の方法。
【0069】
実施形態32: IGF-1R阻害剤が、抗-IGF-1R抗体またはその抗原結合性フラグメントであり、かつ次回用量として約10mg/kg、および次回用量として約20mg/kgの投与量で投与される、実施形態30に記載の方法。
【0070】
実施形態35: 次回用量が、少なくとも21日間、3週間ごとに投与される、実施形態31に記載の方法。
【0071】
実施形態36: 抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合親和性(KD)が、IGF-1Rでは10-8M以下である、実施形態28から35のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態37: 抗体またはその抗原結合性フラグメントの結合親和性(KD)が、IGF-1Rでは10-13~10-9Mである、実施形態36に記載の方法。
【0073】
実施形態38: 抗体またはその抗原結合性フラグメントのIC50値が、IGF-1Rに対するIGF1およびIGF2では2nM以下である、実施形態28から35のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態39: 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む重鎖と、CDR1、CDR2、およびCDR3を含む軽鎖とを含み、重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに前記軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列は、(i)それぞれ配列番号85~90のアミノ酸配列、または(ii)それぞれ配列番号85、93、87、88、94、および90のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一である、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態40: 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、(i)それぞれ配列番号85~90に明記される、重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに軽鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、または(ii)それぞれ配列番号85、93、87、88、94、および90に明記される、重鎖のCDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列、ならびに軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3のアミノ酸配列を含む、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態41: 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、(i)配列番号91のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および配列番号92のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域、または(ii)配列番号95のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する重鎖可変領域、および配列番号96のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態42: 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、(i)配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または(ii)配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号96のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態43: 抗体が、抗体1または抗体2、あるいはそれらの抗原結合性フラグメントである、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態44: 抗体がテプロツムマブである、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態45: 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、ヒト抗体、モノクローナル抗体、ヒトモノクローナル抗体、精製抗体、ダイアボディ(diabody)、一本鎖抗体、多重特異性抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、またはscFvである、実施形態1から44のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態46: 抗体またはその抗原結合性フラグメントが、薬学的に許容可能な希釈剤または担体をさらに含む医薬組成物に入れて投与される、実施形態1から45のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態47: 医薬組成物の一部として、または別個のものとして、モルフェア強皮症または線状強皮症の処置のための1または複数の他の薬学的に活性な化合物を投与する工程をさらに含む、実施形態1から46のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態48: 医薬組成物の一部として、または別個のものとしての、コルチコステロイド、リツキシマブもしくは他の抗CD20抗体、トシリズマブもしくは他の抗-IL-6抗体、またはメトトレキサートから選択される化合物の追加の投与が、強皮症の処置に使用される、実施形態1から46のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態49: 処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも4週間有効である、実施形態1から46のいずれか1つに記載の方法。
【0085】
実施形態50: 処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも6週間有効である、実施形態49に記載の方法。
【0086】
実施形態51: 処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも8週間有効である、実施形態50に記載の方法。
【0087】
実施形態52: 処置が、最後に投与した用量を超えて少なくとも20週間有効である、実施形態51に記載の方法。
【0088】
実施形態53. IGF-1R阻害剤が抗体または小分子である、実施形態1から52のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態54. IGF-1R阻害剤が、ガニツマブ、フィギツムマブ、MEDI-573、シクスツムマブ、ダロツズマブ、ロバツムマブ、AVE1642、BIIB022、キセンツズマブ(xentuzumab)、イスチラツマブ、リンシチニブ、ピクロポドフィリン、BMS-754807、BMS-536924、BMS-554417、GSK1838705A、GSK1904529A、NVP-AEW541、NVP-ADW742、GTx-134、AG1024、KW-2450、PL-2258、NVP-AEW541、NSM-18、AZD3463、AZD9362、BI885578、BI893923、TT-100、XL-228、およびA-928605から選択される、実施形態53に記載の方法。
【0090】
実施形態55. IGF-1R阻害剤が抗体である、実施形態53に記載の方法。
【0091】
実施形態56. IGF-1R阻害剤が、ヒトの治療に適したヒト抗体、キメラヒト抗体、またはヒト化モノクローナル抗体である、実施形態54に記載の方法。
【0092】
実施形態57. 抗体が、静脈内(IV)または皮下(SC)投与される、実施形態56に記載の方法。
【0093】
実施形態58. 前記抗体がIV投与される、実施形態56に記載の方法。
【0094】
実施形態59. 前記抗体が、ガニツマブ、フィギツムマブ、MEDI-573、シクスツムマブ、ダロツズマブ、ロバツムマブ、AVE1642、BIIB022、キセンツズマブ、およびイスチラツマブから選択される、実施形態57に記載の方法。
【0095】
実施形態60. 抗体がガニツマブである、実施形態59に記載の方法。
【0096】
実施形態61. ガニツマブが、
a)3週間ごとに1~60mg/kgもしくは75~4500mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~40mg/kgもしくは45~3000mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~20mg/kgもしくは22~1500mgでIV投与される、実施形態60に記載の方法。
【0097】
実施形態62. 抗体がフィギツムマブである、実施形態59に記載の方法。
【0098】
実施形態63. フィギツムマブが、
a)3週間ごとに1~60mg/kgもしくは75~4500mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~40mg/kgもしくは45~3000mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~20mg/kgもしくは22~1500mgでIV投与される、実施形態62に記載の方法。
【0099】
実施形態64. 抗体がシクスツムマブである、実施形態59に記載の方法。
【0100】
実施形態65. シクスツムマブが、
a)3週間ごとに1~45mg/kgもしくは75~3400mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~30mg/kgもしくは45~2300mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~15mg/kgもしくは22~1200mgでIV投与される、実施形態65に記載の方法。
【0101】
実施形態66. 抗体がダロツズマブである、実施形態59に記載の方法。
【0102】
実施形態67. ダロツズマブが、
a)3週間ごとに1~90mg/kgもしくは75~6800mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~60mg/kgもしくは45~4500mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~30mg/kgもしくは22~2300mgでIV投与される、実施形態66に記載の方法。
【0103】
実施形態68. 抗体がロバツムマブである、実施形態59に記載の方法。
【0104】
実施形態69. ロバツムマブが、
a)3週間ごとに1~75mg/kgもしくは75~5700mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~50mg/kgもしくは45~3800mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~25mg/kgもしくは22~1900mgでIV投与される、実施形態68に記載の方法。
【0105】
実施形態70. 抗体がキセンツズマブである、実施形態59に記載の方法。
【0106】
実施形態71. キセンツズマブが、
a)3週間ごとに1~112mg/kgもしくは75~8400mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~75mg/kgもしくは45~5700mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~38mg/kgもしくは22~2900mgでIV投与される、実施形態70に記載の方法。
【0107】
実施形態72. 抗体がイスチラツマブである、実施形態59に記載の方法。
【0108】
実施形態73. イスチラツマブが、
a)3週間ごとに1~112mg/kgもしくは75~8400mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~75mg/kgもしくは45~5700mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~38mg/kgもしくは22~2900mgでIV投与される、実施形態72に記載の方法。
【0109】
実施形態74. 抗体がAVE1642である、実施形態59に記載の方法。
【0110】
実施形態75. AVE1642が、
a)3週間ごとに1~60mg/kgもしくは75~4500mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~40mg/kgもしくは45~3000mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~20mg/kgもしくは22~1500mgでIV投与される、実施形態74に記載の方法。
【0111】
実施形態76. 抗体がBIIB022である、実施形態59に記載の方法。
【0112】
実施形態77. BIIB022が、
a)3週間ごとに1~75mg/kgもしくは75~5700mgでIV投与され、または
b)2週間ごとに0.6~50mg/kgもしくは45~3800mgでIV投与され、または
c)毎週0.3~25mg/kgもしくは22~1900mgでIV投与される、実施形態76に記載の方法。
【0113】
実施形態78. IGF-1R阻害剤である抗体が、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号8のアミノ酸配列を含む軽鎖、
b)配列番号15のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号16のアミノ酸配列を含む軽鎖、
c)配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖、
d)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖、
e)配列番号39のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号40のアミノ酸配列を含む軽鎖、
f)配列番号47のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号48のアミノ酸配列を含む軽鎖、
g)配列番号55のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号56のアミノ酸配列を含む軽鎖、
h)配列番号63のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号64のアミノ酸配列を含む軽鎖、
i)配列番号65のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖、ならびに
j)配列番号73のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号74のアミノ酸配列を含む軽鎖、
k)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号81のアミノ酸配列を含む軽鎖、
l)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号82のアミノ酸配列を含む軽鎖、
m)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号83のアミノ酸配列を含む軽鎖、
n)配列番号31のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号84のアミノ酸配列を含む軽鎖、
o)配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号32のアミノ酸配列を含む軽鎖、
p)配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号81のアミノ酸配列を含む軽鎖、
q)配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号82のアミノ酸配列を含む軽鎖、
r)配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号83のアミノ酸配列を含む軽鎖、
s)配列番号79のアミノ酸配列を含む重鎖、および配列番号84のアミノ酸配列を含む軽鎖
からなる群から選択される少なくとも1つの重鎖と少なくとも1つの軽鎖とを含む、実施形態59に記載の方法。
【0114】
実施形態79. IGF-1R阻害剤が小分子である、実施形態36に記載の方法。
【0115】
実施形態80. IGF-1R阻害剤が経口投与される、実施形態61に記載の方法。
【0116】
実施形態81. IGF-1R阻害剤が、リンシチニブ、ピクロポドフィリン、BMS-754807、BMS-536924、BMS-554417、GSK1838705A、GSK1904529A、NVP-AEW541、NVP-ADW742、GTx-134、AG1024、kW-2450、PL-2258、NVP-AEW541、NSM-18、AZD3463、AZD9362、BI885578、BI893923、TT-100、XL-228、およびA-928605から選択される、実施形態63に記載の方法。
【0117】
実施形態82. IGF-1R阻害剤がリンシチニブである、実施形態81に記載の方法。
【0118】
実施形態83. リンシチニブが、
a)10~750mgで1日1回連続的に経口投与、もしくは10~1500mg/日で1日1回断続的に経口投与され(14日のうち最大7日間)、または
b)6~500mgで1日2回連続的に経口投与、もしくは6~1000mgで1日2回断続的に経口投与され(14日のうち最大7日間)、または
c)3~250mgで1日3回連続的に経口投与、もしくは3~500mgで1日3回断続的に経口投与される(14日のうち最大7日間)、実施形態65に記載の方法。
【0119】
実施形態84. IGF-1R阻害剤がピクロポドフィリンである、実施形態81に記載の方法。
【0120】
実施形態85. ピクロポドフィリンが、
a)20~2000mgで1日1回経口投与され、または
b)13~1400mgで1日2回経口投与され、または
c)6~700mgで1日3回経口投与される、実施形態67に記載の方法。
【0121】
実施形態86. IGF-1R阻害剤がBMS-754807である、実施形態81に記載の方法。
【0122】
実施形態87. BMS-754807が、
a)5~600mgで1日1回経口投与され、または
b)3~400mgで1日2回経口投与され、または
c)1~200mgで1日回経口投与される、実施形態69に記載の方法。
【0123】
実施形態88. IGF-1R阻害剤がBMS-536924である、実施形態81に記載の方法。
【0124】
実施形態89. IGF-1R阻害剤がBMS-554417である、実施形態81に記載の方法。
【0125】
実施形態90. IGF-1R阻害剤がGSK1838705Aである、実施形態81に記載の方法。
【0126】
実施形態91. IGF-1R阻害剤がGSK1904529Aである、実施形態81に記載の方法。
【0127】
実施形態92. IGF-1R阻害剤がNVP-AEW541である、実施形態81に記載の方法。
【0128】
実施形態93. IGF-1R阻害剤がNVP-ADW742である、実施形態81に記載の方法。
【0129】
実施形態94. IGF-1R阻害剤がGTx-134である、実施形態81に記載の方法。
【0130】
実施形態95. IGF-1R阻害剤がAG1024である、実施形態81に記載の方法。
【0131】
実施形態96. IGF-1R阻害剤がPL-2258である、実施形態81に記載の方法。
【0132】
実施形態97. IGF-1R阻害剤がNVP-AEW541である、実施形態81に記載の方法。
【0133】
実施形態98. IGF-1R阻害剤がNSM-18である、実施形態81に記載の方法。
【0134】
実施形態99. IGF-1R阻害剤がAZD3463である、実施形態81に記載の方法。
【0135】
実施形態100. IGF-1R阻害剤がAZD9362である、実施形態81に記載の方法。
【0136】
実施形態101. IGF-1R阻害剤がBI885578である、実施形態81に記載の方法。
【0137】
実施形態102. IGF-1R阻害剤がBI893923である、実施形態81に記載の方法。
【0138】
実施形態103. IGF-1R阻害剤がTT-100である、実施形態81に記載の方法。
【0139】
実施形態104. IGF-1R阻害剤がXL-228である、実施形態81に記載の方法。
【0140】
実施形態105. IGF-1R阻害剤がA-928605である、実施形態81に記載の方法。
【0141】
実施形態106. IGF-1R阻害剤が、
a)1~2000mgで1日1回経口投与され、または
b)0.6~1400mgで1日2回経口投与され、または
c)0.3~700mgで1日回経口投与される、実施形態88から105のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
実施形態107. IGF-1R阻害剤がKW-2450である、実施形態81に記載の方法。
【0143】
実施形態108. KW-2450が、
a)1~100mgで1日1回経口投与され、または
b)0.6~70mgで1日2回経口投与され、または
c)0.3~30mgで1日回経口投与される、実施形態107のいずれか1つに記載の方法。
【0144】
実施形態109. 抗インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)である抗体またはその抗原結合性フラグメントが、半減期を延ばすためにFc領域に修飾を含む、実施形態1から78のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
実施形態110として、mRSSスコアを低減する、または強皮症の対象に対する皮膚生検試験の結果を改善する方法であって、対象に抗体またはその抗原結合性フラグメントを有効量で投与する工程を含み、抗体は、インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)に特異的に結合してこれを阻害する、方法が提供される。
【0146】
実施形態111: mRSSスコアが少なくとも3点改善するか、強皮症の対象に対する皮膚生検検査に改善が認められる、実施形態110に記載の方法。
【0147】
実施形態112: mRSSスコアが少なくとも5点改善するか、強皮症の対象に対する皮膚生検検査に改善が認められる、実施形態110に記載の方法。
【0148】
実施形態113: mRSSスコアが少なくとも7点改善するか、強皮症の対象に対する皮膚生検検査に改善が認められる、実施形態110に記載の方法。
【0149】
実施形態114として、ACR-CRISSスコアを増加する方法であって、対象に抗体またはその抗原結合性フラグメントを有効量で投与する工程を含み、抗体は、インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)に特異的に結合してこれを阻害する、方法が提供される。
【0150】
実施形態115: ACR-CRISSスコアが、全身性強皮症の対象において少なくとも0.10点改善する、実施形態114に記載の方法。
【0151】
実施形態116: ACR-CRISSスコアが、全身性強皮症の対象において少なくとも0.15点改善する、実施形態114に記載の方法。
【0152】
実施形態117: ACR-CRISSスコアが、全身性強皮症の対象において少なくとも0.20点改善する、実施形態114に記載の方法。
【0153】
実施形態118として、対象における6分間歩行試験での歩行距離を増加する方法であって、対象に抗体またはその抗原結合性フラグメントを有効量で投与する工程を含み、抗体は、インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)に特異的に結合してこれを阻害する、方法が提供される。
【0154】
実施形態119: 6MWT距離が、少なくとも5メートル改善される、実施形態118に記載の方法。
【0155】
実施形態120: 6MWT距離が、少なくとも10メートル改善される、実施形態118に記載の方法。
【0156】
実施形態121: 6MWT距離が、少なくとも25メートル改善される、実施形態118に記載の方法。
【0157】
実施形態122: 6MWT距離が、少なくとも40メートル改善される、実施形態118に記載の方法。
【0158】
実施形態123から210として、実施形態23から109と同等であるが、代わりに実施形態110から122のいずれかに記載の方法に従属する実施形態も、提供される。
【0159】
さらなる実施形態は、本明細書の全体にわたり開示される。
【0160】
試験
改良Rodnanトータルスキンスコア(mRSSまたはmRTSS)による皮膚の硬度の測定。この方法では、身体の17の皮膚領域に対する触診を使用し、各領域に0~3の間のスコアを提供する。0は皮膚に肥厚なし、1は皮膚の軽度肥厚、2は皮膚の中等度肥厚、3は皮膚の重度肥厚を表す。強皮症患者の典型的なmRSSスコアは、16~27の間にある。
【0161】
全身性硬化症の米国リウマチ学会複合応答指数(ACR-CRISSまたはCRISS)スコアは、全身性強皮症に対する試験で治療効果を評価するのに一般的に使用される5つの主な評価項目:mRSS、健康評価質問表-機能障害指数(HAQ-DI)、予測努力肺活量(FVC)パーセント、全身性強皮症に関連する健康状態の患者および医師による全体評価のベースラインからの変化量から算出される。
【0162】
定義
以下の用語は、本明細書に記載の意味を持つものと理解されたい。
【0163】
「約」という用語は、数値xに関連して本明細書で使用するとき、xの±10%を意味する。
【0164】
「および/または」という用語は、2つ以上の項目の列記に使用するとき、列記した項目のいずれか1つが、それ自体で、または列記した項目の1または複数と組み合わせて利用可能であることを意味する。例えば、「Aおよび/またはB」という表現は、AとBのいずれかまたは両方、すなわち、A単独、B単独、またはAとBの組合せを意味するように意図される。「A、B、および/またはC」という表現は、A単独、B単独、C単独、AとBの組合せ、AとCの組合せ、BとCの組合せ、またはAとBとCの組合せを意味するように意図される。
【0165】
本明細書で使用するとき、「抗体」という用語は、特異性やIGF-IR阻害などの特徴が保持される限り、抗体全体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、遺伝子操作された抗体を含むがこれらに限定されない、抗体の様々な形態を包含する。
【0166】
本明細書で使用するとき、「抗原結合性フラグメント」、「フラグメント」、および「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体の一部、一般的には少なくとも抗原結合性部分またはその可変領域を含むあらゆるフラグメントを表すよう、互換的に使用される。抗体フラグメントの例として、ダイアボディ、一本鎖抗体分子、多特異性抗体、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFvが挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、「抗体」という用語は、本明細書で使用するとき、抗体とその抗原結合性フラグメントの両方を含む。加えて、抗体フラグメントは、VH鎖の特徴、すなわち、VL鎖とともにアセンブル可能である特徴、またはIGF-IRに結合するVL鎖の特徴、すなわち、VH鎖とともに機能抗原結合ポケットにアセンブルすることでIGF-IとIGF-IIがIGF-IRに結合するのを阻害する特徴を有する一本鎖ポリペプチドを含む。
【0167】
「IGF-IRへの結合」または「IGF-IRへの特異的結合」という用語は、互換的に使用され、in vitroアッセイ、好ましくは、抗体が表面に結合されてIGF-IRの結合が表面プラズモン共鳴(SPR)により測定される結合アッセイにおける、IGF-IRへの抗体の結合を意味する。結合は、10-8M以下、好ましくは10-13~10-9Mの結合親和性(KD)を意味する。IGF-IRへの結合は、BIAcoreアッセイ(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden)により調べることができる。結合親和性は、用語ka(抗体/抗原複合体からの抗体の会合における速度定数)、kd(解離定数)、およびKD(kd/ka)により定義される。本明細書に開示される方法に使用される抗体は、約10-9M以下のKDを呈する。
【0168】
「併用療法」という用語は、本開示に記載の治療上の疾病または障害を処置するための2つ以上の治療薬の投与を意味する。かかる投与は、有効成分の固定比率を有する単一のカプセル、または各有効成分のための多数の別個のカプセルなどにおいて、実質的に同時の形でのこれらの治療剤の同時投与を包含する。加えて、かかる投与は、各種の治療薬の連続的な使用も包含する。いずれの場合にも、処置レジメンは、本明細書に記載の疾病または障害を処置において、複合薬の有益な効果をもたらすこととなる。
【0169】
「相補性決定領域」、「CDR」、「超可変領域」、または「抗体の抗原結合性部分」という用語は、本明細書では互換的に使用され、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を表す。超可変領域は、相補性決定領域またはCDRからのアミノ酸残基を含む。「フレームワーク」または「FR」領域は、本明細書で規定される超可変領域残基を除く可変ドメイン領域である。そのため、抗体の軽鎖と重鎖は、N末端からC末端まで、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4を含む。特に、重鎖のCDR3が、抗原結合の大半に寄与する領域である。CDR領域とFRの領域は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))の標準定義および/または「hypervariable loop」の残基により決定される。
【0170】
「含むこと(comprising)」という用語は、「含むこと(including)」のほか、「~からなる」も包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみからなるか、例えばX+Yなど付け足しを含む場合がある。
【0171】
「疾患」という用語は、本明細書で使用するとき、全体として(内科疾患におけるような)「障害」、「症候群」、および「疾病」という用語と同義となるとともに、これらと互換的に使用されるように意図されており、これらはすべて、正常な機能を損ない、一般的に兆候と症状を鑑別することで明らかとなり、ヒトまたは動物の寿命もしくは生活の質を低下させる、ヒトもしくは動物の身体またはその一部分における異常状態を反映する。
【0172】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用するとき、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から得られる可変領域および定常領域を有する抗体を含むように意図される。「ヒト化抗体」という用語は、本明細書で使用するとき、中にあるフレームワークまたは「相補性決定領域」(CDR)が、親免疫グロブリンのものとは異なる特異性の免疫グロブリンのCDRを含むよう修飾されている抗体を表す。好ましい実施形態では、マウスCDRが、「ヒト化抗体」を調製するためにヒト抗体のフレームワーク領域へとグラフトされる。
【0173】
「IGF-1R阻害剤」という用語は、本明細書で使用するとき、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)に特異的に制限してこれを阻害する化合物(例えば、その抗原結合性フラグメントを含む小分子または抗体)を意味する。
【0174】
「IGF-IおよびIGF-IIのIGF-IRへの結合を阻害する」という用語は、本明細書で使用するとき、in vitroアッセイにおいて細胞の表面に提示されるIGF-IRへの、I125で標識したIGF-IまたはIGF-IIの結合を阻害することを表す。阻害は、IC50値が2nM以下であることを意味する。
【0175】
「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、本明細書で使用するとき、単一のアミノ酸組成物の抗体分子の調製を表す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から得られる可変領域および定常領域を有する、単一結合特異性を呈する抗体を表す。一実施形態では、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合されるヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子導入非ヒト動物、例えば遺伝子導入マウスから得られるB細胞を含むハイブリドーマにより産生される。
【0176】
「組換えヒト抗体」という用語は、本明細書で使用するとき、SP2-0細胞、NS0細胞、またはCHO細胞などの宿主細胞から、または宿主細胞へとトランスフェクトされる組換え発現ベクターを使用して発現されたヒト免疫グロブリン遺伝子または抗体を遺伝子導入される動物(例えばマウス)から単離した抗体など、組換え手段により調製、発現、作製、または単離されるヒト抗体すべてを含むように意図される。かかる組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列から得られる可変領域と定常領域を、再配列した形で有する。
【0177】
「強皮症」という用語は、局所または身体全体における、皮膚組織および結合組織の慢性的な硬化と収縮である。強皮症は、そのすべての形態、またはその1つの形態を表す場合がある。これらの形態は、モルフェア、線状、限局性全身性、およびびまん型全身性を含む。
【0178】
「対象」および「患者」という用語は、ヒトを含む哺乳動物すべてを意味するよう本明細書では互換的に使用される。対象の例として、ヒト、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、およびウサギが挙げられるが、これらに限定されるものではない。一実施形態では、対象または患者は、ヒトである。「疾患または障害の影響を受ける」、「疾患または障害に罹患」、「疾患または障害を患う」という用語は、本明細書では互換的に使用されるものであり、あらゆる疾患、障害、症候群、または疾病を抱える対象または患者を指す。障害の高度または低度の重症度は、一方の用語を他方と比較して使用することにより示唆されるものではない。
【0179】
「実質的に」という語は、「完全に」を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合がある。必要な場合、「実質的に」という語は、省略してもよい。
【0180】
「テプロツムマブ」という用語は、RV-001およびR-1507としても知られており、インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)に結合するヒトモノクローナル抗体である。テプロツムマブのCAS番号は1036734-93-6であり、本明細書に開示される配列番号1~8を含む(例えば表17を参照)。テプロツムマブは、代案として本開示の全体にわたり、「抗体1」を含み、および「抗体1」と称される場合がある。
【0181】
「治療上許容可能な」という用語は、過度の毒性、刺激、およびアレルギー反応のない患者の組織に接触した状態での使用に適しており、合理的なベネフィット・リスク比に比例し、かつその意図した使用に有効である化合物(または塩、プロドラッグ、互変異性体、両性イオン形態など)を表す。
【0182】
「治療上有効な」という句は、疾患または障害の処置に、または臨床エンドポイントの達成において使用される有効成分の量を適格とするように意図される。
【0183】
「処置すること」、「処置」などの用語は、本明細書で使用するとき、疾患の原因、進行、重症度、または疾患の症状の1または複数を低減するか、改善するか、または排除するように、あるいはその他の方法で対象の疾患を改質するように、疾患を改善する手段を意味する。患者に対する「処置すること」または「処置」への言及は、予防を含むように意図される。処置は本来、先制的なものであってよく、すなわち、疾患にさらされているかそのリスクにある対象の疾患の予防を含む場合がある。疾患の予防は、例えば、病原体による感染症の予防の場合に疾患からの完全な保護を伴うか、または、例えば糖尿病前症から糖尿病への疾患進行の予防を伴う場合もある。例えば、疾病の予防は、いかなる水準でも疾患に関連するあらゆる作用の完全な差押え(foreclosure)を意味するものではないが、代わりに、臨床上有意な水準または検出可能な水準に疾患の症状を予防することを意味する場合がある。疾患の予防は、疾患が後期に進行するのを予防することを意味する場合もある。
【0184】
可変ヒト軽鎖および重鎖の全体構造は同じであり、各ドメインは4つのフレームワーク(FR)領域を含んでおり、その配列は、3つの「超可変領域」(または相補性決定領域、CDR)により広く保存され、接続される。フレームワーク領域はβ-シート立体配座を採用し、CDRは、β-シート構造を接続するループを形成する場合がある。各鎖のCDRは、その三次元構造においてフレームワーク領域により保持され、CDRと一体となって他の鎖から抗原結合部位を形成する。抗体の重鎖および軽鎖のCDR3領域は、抗体の結合特異性/親和性に重要な役割を果たす。
【0185】
本明細書に開示される方法に使用される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、IGF-IおよびIGF-IIのIGF-IRへの結合を阻害する。この阻害は、細胞上でのIGF-I/IGF-IIのIGF-IRへの結合に関するアッセイにおいて、IC50として測定される。かかるアッセイは当業者に既知のものであり、例えば、全体が本明細書で引用される米国特許第7,579,157号に記載されている。IGF-IおよびIGF-IIのIGF-IRへの結合において、本明細書に開示される方法に使用される抗体のIC50値は、2nM以下である。IC50値は、少なくとも3つの独立した測定値の平均値または中央値として測定される。単一のIC50値は、この範囲外にあってよい。
【0186】
本開示またはその好ましい実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」は、その要素の1または複数が存在することを意味するように意図されている。「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、および「有すること(having)」という用語は、列記した要素以外の追加の要素が存在し得ることを包含するとともに、それを意味するように意図されている。
【0187】
値の範囲が開示され、かつ「n1から...n2まで」または「n1...とn2の間」という表記が使用されるとき、n1とn2は数であり、別段の定めのない限り、この表記は、数自体およびそれらの間の範囲を含むように意図される。この範囲は、終値の間にあり終値を含む整数であるか、または連続していてもよい。一例として、「2~6個の炭素」の範囲は、炭素が整数単位で生じるため、2、3、4、5、および6個の炭素を含むように意図される。一例として、「1~3μM(マイクロモル)」の範囲を例えると、1μM、3μM、およびそれらの間にあるすべての数字から有効数字のあらゆる数(例えば、1.255μM、2.1μM、2.9999μMなど)までを含むように意図される。
【0188】
抗体
本明細書に開示される方法に使用してもよい抗体の例における重鎖および軽鎖の配列であって、それぞれが重鎖上に3つのCDR、および軽鎖上に3つのCDRを含む配列を、以下に提供する。CDR、重鎖、軽鎖の配列のほか、抗体のCDR、重鎖、および軽鎖をコードする核酸分子の配列も、配列表に開示される。抗体重鎖のCDRは、それぞれCDRH1(またはHCDR1)、CDRH2(またはHCDR2)、およびCDRH3(またはHCDR3)と称される。同様に、抗体軽鎖のCDRは、それぞれCDRL1(またはLCDR1)、CDRL2(またはLCDR2)、およびCDRL3(またはLCDR3)と称される。表2は、本明細書に開示される方法に使用してもよい抗体における重鎖および軽鎖の6つのCDRそれぞれのアミノ酸配列番号を提供する。
【0189】
【0190】
一実施形態では、本明細書に開示される方法に有用な抗体または抗体フラグメントは、配列番号85~90、93、または94のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有するとともにインスリン様成長因子-I受容体(IGF-IR)を特異的に阻害する(すなわち遮断する)配列を有する少なくとも1つのCDRを含む。
【0191】
別の実施形態では、上記方法に使用可能な、重鎖を含む抗体または抗原結合性フラグメントは、抗体1または抗体2の1もしくは複数(すなわち1つ、2つ、または3つすべて)の重鎖CDRを含み、IGF-IRを特異的に阻害するか遮断する。
【0192】
また別の実施形態では、本明細書に開示される方法に有用な抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号85のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1、配列番号86または配列番号93のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2、および配列番号87のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3を含む。ある実施形態では、抗体または抗体フラグメントは、(i)CDRH1では配列番号85、CDRH2では配列番号86、およびCDRH3では配列番号87、または(ii)CDRH1では配列番号85、CDRH2では配列番号93、およびCDRH3では配列番号87のアミノ酸配列を含む重鎖を含み、IGF-IRを特異的に阻害する。
【0193】
別の実施形態では、本明細書に開示される方法に使用可能な、軽鎖を含む抗体または抗原結合性フラグメントは、抗体1または抗体2の1もしくは複数(すなわち1つ、2つ、または3つすべて)の軽鎖CDRを含む軽鎖を含み、IGF-IRを特異的に阻害する。
【0194】
また別の実施形態では、本明細書に開示される方法に有用な抗体または抗体フラグメントは、配列番号88のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1、配列番号89または配列番号94のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2、および配列番号90のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3を含む。ある実施形態では、抗体または抗体フラグメントは、(i)CDRL1では配列番号88、CDRL2では配列番号89、およびCDRL3では配列番号90、または(ii)CDRL1では配列番号88、CDRL2では配列番号94、およびCDRL3では配列番号90のアミノ酸配列を含む重鎖を含む。
【0195】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、表2に列記されるような抗体1のCDRをすべて含み、インスリン様成長因子-I受容体(IGF-IR)を特異的に阻害する(すなわち遮断する)。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメント)は、表2に列記されるような抗体2のCDRをすべて含み、IGF-IRを特異的に阻害する(すなわち遮断する)。
【0196】
本明細書に開示される方法に有用な抗体の重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)のアミノ酸配列に関する配列番号を、表3に列記する。
【0197】
【0198】
一実施形態では、本明細書に開示される方法に使用可能な抗体または抗原結合性フラグメントは、配列番号7または11に列挙した配列に対して約70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、この抗体はIGF-IRを特異的に阻害する。
【0199】
別の実施形態では、本明細書に開示される方法に使用可能な抗体または抗原結合性フラグメントは、IGF-IRを特異的に阻害し、配列番号91のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号92のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むか、あるいは配列番号95のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号96のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0200】
本明細書に開示される方法に有用な抗体の例として、抗体1と抗体2が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、抗体1はテプロツムマブである。
【0201】
変異抗体も、本開示の範囲内に含まれる。このため、本出願で詳述される配列の変異体も、本開示の範囲内に含まれる。かかる変異体として、免疫応答中にin vivoで、または不死化B細胞クローンの培養に際してin vitroで体細胞突然変異により生成される天然の変異体が挙げられる。あるいは、変異体は、遺伝子コードの変質に起因して生じるか、または転写もしくは翻訳の誤差に起因して産生される場合がある。
【0202】
親和性および/または効力が改善された抗体配列のさらなる変異体が、当該技術分野で公知の方法を用いて得られてもよく、本開示の範囲内に含まれる。例えば、さらに親和性を改善した抗体を得るためにアミノ酸置換が使用されてよい。あるいは、抗体産生のために発現系での翻訳の効率を改善するために、ヌクレオチド配列のコドン最適化が使用されてよい。さらに、本明細書に開示される核酸配列のいずれかに対する指向性進化法の適用により、抗体特異性または中和活性を最適化された配列を含むポリヌクレオチドも、本開示の範囲内にある。
【0203】
一実施形態では、変異抗体配列は、本出願で詳述される配列と70%以上(すなわち、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%以上)のアミノ酸配列同一性を共有する場合がある。いくつかの実施形態では、かかる配列同一性は、参照配列(すなわち、本出願で詳述される配列)の全長に関して算出される。いくつかのさらなる実施形態では、同一性の割合は、本明細書で言及するとき、NCBI(アメリカ国立生物工学情報センター;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により特定されたデフォルトパラメータを用いるBLASTの2.1.3版を使用して求められるとおりである[Blosum 62マトリクス;ギャップ・オープン・ペナルティ=11およびギャップ・エクステンション・ペナルティ=1]。
【0204】
本明細書に開示される方法とともに使用される抗体は、処置部位への送達のために薬物に結合するか、または目的の細胞を含む部位の撮像を促すために検出可能なラベルに結合することができる。薬物および検出可能な標識に抗体を結合する方法は、検出可能な標識を使用して撮像を行う方法と同様、当該技術分野で周知である。標識された抗体は、多種多様な標識を利用して多種多様なアッセイに利用されてよい。抗体と目的のエピトープとの間での抗体-抗原複合体の形成の検出は、抗体に検出可能な物質を付けて当業者に公知である適切な検出手段により抗体-抗原複合体を検出することにより、容易となる可能性がある。
【0205】
本明細書に開示される方法とともに使用される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、あらゆるアイソタイプ(例えばIgA、IgG、IgM、すなわちα、γ、またはμ重鎖)のものであってよい。一実施形態では、抗体はIgGである。IgGアイソタイプ内では、抗体は、IgG1サブクラス、IgG2サブクラス、IgG3サブクラス、またはIgG4サブクラスであってよい。抗体は、κ軽鎖またはλ軽鎖を有してよい。
【0206】
本明細書に開示される方法とともに使用される抗体またはその抗原結合性フラグメントは、当業者に知られるあらゆる経路により投与可能である。使用可能な経路の非限定的な実施例は、以下に提供する。
【0207】
抗体Fc変異体および半減期
IgGなどの免疫グロブリンでは、重鎖のFc領域にある部位は、新生児受容体(FcRn)との相互作用を媒介する。FcRnへの結合では、細胞に取り込まれた抗体がエンドソームから再利用されて血流に戻り、この結合は抗体輸送において重要な役割を果たす。このプロセスは、完全長の分子のサイズが大きいことに起因して腎濾過の防止と結び付けられ、その結果、in vivoでの好ましい抗体血清半減期は、1~3週間に及ぶ。このため、Fc上のこの領域の忠実度は、抗体の臨床的特性に重要である。
【0208】
抗体の他の特性は、in vivoでの抗体のクリアランス率(例えば安定性および半減期)を判定する場合がある。FcRn受容体に結合する抗体に加えて、クリアランスおよび半減期に寄与する他の因子は、血清凝集、血清中の酵素分解、免疫系による除去を引き起こす抗体固有の免疫原性、抗原媒介性の取込み、FcR(非FcRn)媒介性の取込み、および非血清分布(例えば異なる組織区画における)である。
【0209】
したがって、治療用抗体の薬物動態(PK)と薬力学(PD)を変化させることが可能な一手段は、Fc内の重定常ドメインを改質することにより抗体の血清半減期を延ばすことによるものである。加えて、本明細書に概説される方法に起因して、FcRn変異体から免疫原性が生じる可能性は、有意な免疫原性を導入することなく血清半減期が延びるように異なるIgGアイソタイプから変異体を移入することにより大幅に低下する。
【0210】
Fcドメインでの置換は、結果生じるタンパク質が野生型タンパク質と比較してin vivo血清半減期の改善を呈するように選択される。in vivoでのFcタンパク質の停留を増加させるには、結合親和性の増加をpH6付近としつつ、pH7.4付近で低親和性を維持する必要がある。理論に縛られるものではないが、エンドソーム中、pH6でのFcRnへの結合によりFcが隔離されることから、Fc領域のin vivo半減期はより長くなると考えられる。その後、エンドソーム区画は、Fcを細胞表面に再利用する。一旦、この区画が細胞外空間に通じると、より高いpH(約7.4)により血液へのFcの逆放出が誘導される。pH7.4でのFcRnに対するFcの親和性の増加は、血液へのFcの逆放出を禁ずるものと考えられる。その結果、Fcのin vivo半減期を延ばすFc突然変異は、通常は低pHでFcRnを増大するが、依然として高pHでのFcの放出が可能である。アミノ酸ヒスチジンは、pH6.0~7.4の範囲でその荷電状態を変える。そのため、Fc/FcRn複合体の重要な位置にヒスチジン残基を見出すことは、驚くべきことではない。
【0211】
いくつかの実施形態では、低pH(約6.0)で特異的に野生型におけるFcRn結合の増加は、エンドソーム中でのFc/FcRn結合を促進する。いくつかの実施形態では、FcRn結合が改質されたFc変異体は、他のクラスのFc受容体への結合が改質されている可能性があり、FcγR5への差動的結合としての、具体的にはFcγRIIIbへの結合が増加しFcγRIIbへの結合が減少するFcγR’s(FcγR’)は、有効性を増加させることが認められている。
【0212】
いくつかの実施形態では、特定の位置で1つのIgGアイソタイプからの置換の移入が達成されることで、不要な免疫原性が変異体へと導入される可能性が低下するかなくなる可能性がある。すなわち、IgG1は、高度のエフェクタ機能を含む様々な理由により、治療用抗体によく見られるアイソタイプである。特定の位置にあるIgG2残基は、より長い血清半減期を呈するタンパク質をもたらすように、IgG1バックボーンに導入可能である。
【0213】
いくつかの実施形態では、非アイソタイプのアミノ酸変化は、FcRnへの結合を改善するため、および/またはin vivo血清半減期を延ばすため、および/または安定性のための構造への順応を可能にするなどのために行われる。
【0214】
当業者に理解されるように、かつ後述のように、多数の因子が、血清中の抗体のin vivoクリアランス、したがって半減期に寄与する。1つの因子は、抗体が結合する抗原に関与する。すなわち、定常領域は同一であるが可変領域(例えばFvドメイン)は異なる抗体は、差動的なリガンド結合作用に起因して様々な半減期を有する場合がある。しかし、本開示が実証するところでは、2つの異なる抗体の絶対半減期はこれら抗原特異性作用に起因して相違する場合があるが、本明細書に記載のFcRn変異体は、同じ半減期延長の経口を提供するために様々なリガンドに移行することができる。すなわち、全体として、FcRn結合/半減期延長における相対的「順序」は、本明細書で論じられるように、異なるFvを有する抗体の同じ変異体を伴う抗体へと追跡される。
【0215】
治療用抗体内のFc変異体は、アミノ酸突然変異を親分子に導入することにより作製される。この観点での「突然変異」は、通常アミノ酸置換であるが、本明細書に示すように、アミノ酸の欠失と挿入も行うことが可能であるため、突然変異として定義される。
【0216】
本開示の変異抗体は、FcRnへの結合の増加、および/またはin vivo血清半減期の延長を呈した。「FcRn」または「新生児Fc受容体」は、本明細書で使用するとき、IgG抗体Fc領域に結合するとともにFcRn遺伝子により少なくとも部分的にコードされるタンパク質を意味する。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、サルを含むがこれらに限定されないあらゆる生物に由来するものであってよい。当該技術分野で知られるように、機能的FcRnタンパク質は、重鎖および軽鎖と称されることが多い2つのポリペプチドを含む。軽鎖はベータ-2-ミクログロブリンであり、重鎖はFcRn遺伝子によりコードされる。本明細書で別段の定めのない限り、FcRnタンパク質またはFcRnタンパク質は、FcRn重鎖とベータ-2-ミクログロブリンとの複合体を表す。場合により、FcRn変異体は、ヒトFcRn受容体に結合するか、臨床試験を促すためにげっ歯類または霊長類の受容体にも結合する変異体を設計することが望ましい場合がある。
【0217】
いくつかの実施形態では、本開示は、組成物、および対象に抗体を投与する方法を提供し、この抗体は、親Fc領域と比較して変異体Fc領域を含み、変異体Fc領域は、428位のロイシンである第1の突然変異と、434位のセリンである第2の突然変異とを含み、抗体の血清半減期は、親Fc領域を含む抗体よりも長く、番号付けはEUインデックスに従う。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される抗体は、428位のメチオニンをロイシン(Met428Leu)と置き換え、434位のアスパラギンをセリン(Asn434Ser)と置き換える突然変異を含む変異体Fc領域を含む。番号付けは、KabatにあるようなEUであり、置換は出発分子に由来するものではないことを理解されたい。以前に示されたように、これらFcRn置換は、IgG1、IgG2、およびIgG1/G2のハイブリッドバックボーンで作用し、IgG3バックボーンおよびIgG4バックボーン、ならびにあらゆるIgGアイソフォームの誘導体においても同様に特異的に含まれる。
【0218】
本開示は、抗体、Fc融合、および免疫接着に見出されるものを含む、FcRn受容体への結合が増加したFcドメインの変異体を含む。本明細書で注記されるように、FcRnへの結合により、in vivoでの血清停留が長くなる。かかる様々な置換が公知であり、米国特許第7,317,091号、第8,084,582号、第8,101,720号、第8,188,231号、第8,367,805号、および第8,546,543号に記載されており、これら文献はそれぞれ、その全体を参照することで本明細書に引用される。
【0219】
投薬と投与
化合物、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、単回用量または複数回用量で投与可能である。いくつかの実施形態では、治療用抗体は、単回用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、治療用抗体は、複数回用量で対象に投与され、数日、数週間、または数か月の間に拡散する。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、毎月、2か月ごと、または3か月ごとに投与される。
【0220】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、複数回用量で投与され、投与量は各時点で同じある。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、複数回用量で投与され、初回投与の時点の投与量は、次回の投与量とは異なる(さらに多いか少なくなる可能性がある可能性がある)。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、複数回用量で投与され、投与量は、対象の治療応答に基づき投与ごとに調整される。
【0221】
投与量は、各患者の年齢、性別、人種、体重などの様々な因子に基づき、患者間でさらに変動する場合がある。いくつかの実施形態では、投与量は、患者の体重により変動する。抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、体重1キログラムにつき約1mg~体重1キログラムにつき約100mgに及ぶ場合がある。抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、体重1キログラムにつき例えば1mg、2mg、3mg、5mg、7mg、10mg、12mg、15mg、17mg、20mg、22mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、または100mgであってよい。
【0222】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約0.3mg/kg~約10mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約0.3mg/kg~約5mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約0.3mg/kg~約1mg/kgである。抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、例えば約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約4.5mg/kg、約5mg/kg、約5.5mg/kg、約6mg/kg、約6.5mg/kg、約7mg/kg、約7.5mg/kg、約8mg/kg、約8.5mg/kg、約9mg/kg、約9.5mg/kg、または約10mg/kg、あるいは前述の値の間にあるmg/kgの10分の1のいずれかの数であってよい。いくつかの実施形態では、用量は毎週投与される。
【0223】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約0.6mg/kg~約20mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約0.6mg/kg~約5mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約0.6mg/kg~約10mg/kgである。抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、例えば0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約1.1mg/kg、約1.2mg/kg、約1.3mg/kg、約1.4mg/kg、約1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、約1.8mg/kg、1.9mg/kg、約2mg/kg、約2.5mg/kg、約3mg/kg、約3.5mg/kg、約4mg/kg、約4.5mg/kg、約5mg/kg、約5.5mg/kg、約6mg/kg、約6.5mg/kg、約7mg/kg、約7.5mg/kg、約8mg/kg、約8.5mg/kg、約9mg/kg、約9.5mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、約15mg/kg、約16mg/kg、約17mg/kg、約18mg/kg、約19mg/kg、または約20mg/kg、あるいは前述の値の間にあるmg/kgの10分の1のいずれかの数であってよい。いくつかの実施形態では、用量は2週間ごとに投与される。
【0224】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約1mg/kg~約30mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約5mg/kg~約30mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約10mg/kg~約30mg/kgである。抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、例えば約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約7mg/kg、約10mg/kg、約12mg/kg、約15mg/kg、約17mg/kg、約20mg/kg、約22mg/kg、約25mg/kg、または約30mg/kg、あるいは前述の値の間にあるmg/kgのいずれかの整数および/または10分の1のいずれかの数であってよい。いくつかの実施形態では、用量は3週間ごとに投与される。
【0225】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約1.2mg/kg~約40mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約5mg/kg~約40mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約10mg/kg~約40mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約20mg/kg~約40mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの用量は、約25mg/kg~約40mg/kgである。抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、例えば約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kg、約7mg/kg、約10mg/kg、約12mg/kg、約15mg/kg、約17mg/kg、約20mg/kg、約22mg/kg、約25mg/kg、約27mg/kg、約30mg/kg、約32mg/kg、約35mg/kg、約37mg/kg、または約40mg/kg、あるいは前述の値の間にあるmg/kgのいずれかの整数および/または10分の1のいずれかの数であってよい。いくつかの実施形態では、用量は4週間ごとに投与される。
【0226】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約1mg/kg~約5mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約5mg/kg~約10mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約10mg/kg~約15mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約15mg/kg~約20mg/kgである。
【0227】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約1mg/kg~約5mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約5mg/kg~約10mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約10mg/kg~約15mg/kgである。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約15mg/kg~約20mg/kgである。
【0228】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、複数回用量で投与され、初回投与の時点の投与量は、次回の投与量とは異なり、初回投与の時点の抗体またはその抗原結合性フラグメントの投与量は、約1mg/kg~約5mg/kg、または約5mg/kg~約10mg/kg、または約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kg、または約20mg/kg~約25mg/kgである。次回用量は、初回用量より多くても少なくてもよい。いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントの次回用量は、約1mg/kg~約5mg/kg、または約5mg/kg~約10mg/kg、または約10mg/kg~約15mg/kg、または約15mg/kg~約20mg/kg、または約20mg/kg~約25mg/kgである。
【0229】
小分子化合物は、0.01~500mg/kg/日および/または0.1mg/日~5g/日の用量で、経口投与や注射などを介して投与されてよい。ヒト成人に対する用量範囲は、一般に5mg/日~2g/日である。別個の単位で提供される錠剤または他の投与(presentation)形態は、かかる投与量で、またはその投与量の複数回投与で有効である1または複数の化合物の量、例えば、約10mg~200mgなど5mg~500mgを含有する単位を好都合に含む場合がある。
【0230】
単一の剤形を産出するべく担体物質と組み合わせてもよい有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与形態に依存して変動する。患者に投与される化合物の正確な量は、担当する医師に委ねられる。あらゆる特定の患者における特異的な用量レベルは、利用される特定の化合物の活性、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、分泌速度、複合薬、処置されている正確な障害、および処置されている適応症または疾病の重症度を含む様々な因子に依存する。また、投与経路は、疾病およびその重症度に依存して変えられる場合がある。
【0231】
追加の投与量範囲が、本開示の全体にわたり提供される。
【0232】
処置期間は、対象の治療応答に左右され、約1か月または4週間~約2年または100週間に及ぶ可能性がある。いくつかの実施形態では、処置は、約1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、14か月、16か月、18か月、20か月、22か月、または2年の合計期間にわたり提供される場合がある。いくつかの実施形態では、処置は、4、6、8、10、12、14、16、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52週間の合計期間にわたり提供されるか、56、64、72、80、88、96、または104週間に延長される場合がある。
【0233】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、24週間の期間、3週間間隔で、初回用量を体重1キログラムにつき10mgとし、その後7回の追加の処置において体重1キログラムにつき20mgとして投与される。いくつかの実施形態では、小(slam)分子化合物は、例えば24週間の適切な期間にわたり、毎日(QD)、1日2回(BID)、または1日3回(TID)投与される。
【0234】
化合物、抗体またはその抗原結合性フラグメントは、あらゆる適切な経路により投与されてよく、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、動脈内経路、髄内経路、腹腔内経路、鞘内経路、脳室内経路、経皮経路、皮膚経路、局所経路、皮下経路、鼻腔内経路、腸内経路、舌下経路、膣内経路、または直腸経路が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハイポスプレーも、本明細書に開示される医薬組成物を投与するのに使用されてよい。一般的には、治療用抗体は、冷凍乾燥(凍結乾燥)粉末、または注射可能な液体溶液もしくは懸濁液として調製されてよい。注射前に液体ビヒクル中で溶液または懸濁液に適した固体形態も、使用されてよい。
【0235】
医薬組成物
本明細書に開示される方法に使用される医薬組成物は、上述の抗体または抗体フラグメント、および薬学的に許容可能な担体または賦形剤のうち1または複数を含む。担体または賦形剤は、投与を容易にする場合があるが、それ自体では、組成物を投与される対象または個体に有害な抗体の産生を誘導することはできず、毒性ではない。適切な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、高分子アミノ酸、アミノ酸コポリマー、および不活性ウイルス粒子などの緩やかに代謝される大きな高分子であってよく、当業者に公知のものである。
【0236】
本明細書に開示される方法とともに使用される抗体またはその抗原結合性フラグメント、あるいは医薬組成物は、あらゆる多数の経路により投与されてよく、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、動脈内経路、髄内経路、腹腔内経路、鞘内経路、脳室内経路、経皮経路、皮膚経路、局所経路、皮下経路、鼻腔内経路、腸内経路、舌下経路、膣内経路、または直腸経路が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ハイポスプレーも、本明細書に開示される医薬組成物を投与するのに使用されてよい。一般的に、治療用組成物は、注射可能な溶液または懸濁液のいずれかとして調製されてよい。注射前に液体ビヒクル中で溶液または懸濁液に適した固体形態も、調製されてよい。
【0237】
一実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメント、あるいは医薬組成物は、静脈内投与される。別の実施形態では、抗体またはその抗原結合性フラグメント、あるいは医薬組成物は、点滴により投与される。
【0238】
組成物の直接送達は、一般的に注射、皮下投与、腹腔内投与、静脈内投与、または筋肉内投与により達成されるか、組織の間質腔に送達される。組成物は、病変に対しても投与可能である。処置の投与量は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであってよい。既知の抗体系薬剤は、投与頻度に関する指針、例えば、医薬品を毎日、毎週、毎月などに投与すべきかどうかに関する指針を提供する。頻度と投与量は、症状の重症度にも左右される場合がある。
【0239】
組成物中の有効成分は、抗体分子、その抗体フラグメントまたは変異体、および誘導体であることを理解されたい。そのため、有効成分は、胃腸管で分解しやすい。このため、胃腸管を用いる経路により組成物を投与することになっている場合、組成物は、抗体を分解から保護するが胃腸管から吸収されると抗体を放出する薬剤を含有する必要がある。
【0240】
mAb(約150kDa)などのより大きな分子量部分では、SC毛細管の受動的透過性は低く、体循環へのmAbの吸収は、間質腔からのリンパ取込みのほか、毛細管の内皮全体における新生児Fc受容体(FcRn)による能動的輸送を介して生じる。皮下組織の細胞外マトリクスは、一般的により大きな体積(1~2mL超)のSCの注射も制限し、組換えヒアルロニダーゼまたはそのrHuPH20などの可溶性フラグメントとの共製剤は、より高度のバイオアベイラビリティを許容する可能性がある。加えて、電荷、疎水性、および安定性を含むmAbの生理化学的特性は、そのSC吸収の速度と範囲に影響を及ぼし、例えば、高い正電荷と疎水的相互作用の組合せにより、吸収速度を低下させることができる。
【0241】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法に使用するのに適した医薬組成物は、皮下投与用に製剤化される。皮下投与に適した製剤の例として、溶液、懸濁液、エマルジョン、および、注射用の薬学的に許容可能な単体中で溶解または懸濁化可能な乾燥製品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。抗体は、当該技術分野で既知の方法を用いて皮下投与用に製剤化されており、およびそのように製剤化されてよい。
【0242】
本明細書に開示される方法に使用するのに適した医薬組成物は、薬物製造の分野、具体的には抗体薬物製造の分野で広く利用されるものなど、1または複数の薬学的に許容可能な担体を含む。特に薬学的に許容可能な担体は、非毒性であり、有効成分の有効性に干渉してはならない。担体は、抗体とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルであってよい。かかるビヒクルは、水性流体(aqueous fluids)、油、エマルジョンなどの液体であってよい。例えば、0.4%生理食塩水と0.3%グリシンが使用されてよい。この溶液は滅菌され、一般的に粒子状物質を含まない。溶液は、従来の周知の滅菌技術(例えば濾過)により滅菌されてよい。組成物は、pH調整剤、緩衝化剤、安定化剤、増粘剤、潤滑剤、着色料など、生理的条件に近似させるのに必要とされる薬学的に許容可能な補助物質を含んでよい。かかる医薬製剤中の抗体の濃度は変動する場合があり、タンパク質凝集といった他の懸念などに応じて、主に必要な用量、流体体積、粘度などに基づいて選択されることになる。
【0243】
薬学的に許容可能な担体の例は、生理学的に適合可能である、塩、緩衝液、抗酸化剤、サッカライド、水性担体、非水性担体、防腐剤、湿潤剤、界面活性剤、または乳化剤、浸透促進剤、あるいはそれらの組合せといった溶媒、分散培地、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤、吸収遅延剤(absorption delaying agent)などである。
【0244】
使用されてよい緩衝液の例は、酢酸、クエン酸、ギ酸、コハク酸、リン酸、炭酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、ホウ酸、トリス緩衝液、HEPPSO、およびHEPESである。
【0245】
使用されてよい抗酸化剤の例は、アスコルビン酸、メチオニン、システイン塩酸塩、硫化水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、レシチン、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、および酒石酸である。
【0246】
使用されてよいアミノ酸の例は、ヒスチジン、イソロイシン、メチオニン、グリシン、アルギニン、リシン、L-ロイシン、トリ-ロイシン、アラニン、グルタミン酸、L-トレオニン、および2-フェニルアミンである。
【0247】
使用されてよい界面活性剤の例は、ポリソルベート(例えばポリソルベート-20またはポリソルベート-80);ポロキサマー(例えばポロキサマー188);トリトン;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノレイル-スルホベタイン、もしくはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノレイル-サルコシン、もしくはステアリル-サルコシン;リノレイル-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、もしくはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリストアミドプロピル-ベタイン、パルミドロプロピル-ベタイン、もしくはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えばラウロアミドプロピル);ミリストアミドプロピル-ジメチルアミン、パルミドプロピル-ジメチルアミン、もしくはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ココイルメチルナトリウム-タウレートもしくはジナトリウムメチルオレイル-タウレート;MONAQUA(商標)シリーズ(Mona Industries,Inc.,Paterson,N.J.)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレンとプロピレングリコールのコポリマー(例えばPLURONICS(登録商標)、PF68など)である。
【0248】
使用されてよい防腐剤の例は、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、フェニル水銀硝酸塩、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、およびチメロサール、ならびにそれらの混合物である。
【0249】
使用されてよいサッカライドの例は、単糖類、二糖類、三糖類、多糖類、糖アルコール、還元糖、グルコースなどの非還元糖、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、デキストラン、エリスリトール、グリセロール、アラビトール、シリトール(sylitol)、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフノース(raffmose)、マンノトリオース(mannotriose)、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、またはイソ-マルツロースである。
【0250】
使用されてよい浸透促進剤の例は、組換えヒアルロニダーゼ、またはrHuPH20(Halozyme)などのその可溶性フラグメントを含む。皮下投与用の液体製剤は、rHuPH20または別の可溶性ヒトヒアルロニダーゼ酵素を含んでよい。rHuPH20は、皮下投与中に同じ液体製剤に含まれる抗体の分散の増加をもたらすのに十分な量で存在してよい。
【0251】
医薬組成物中の薬学的に許容可能な担体の量は、担体の活性、および安定性、バイオアベイラビリティ、および/または最小酸化などの所望の製剤特徴に基づく実験により判定されてよい。
【0252】
本開示の方法は、上述のような抗体またはその抗原結合性フラグメントを、単独で、または他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用することで、上記に開示されたものなどの疾病を処置することができる。さらなる薬学的に活性な化合物が、同時に(同じ投与形態、もしくは異なる投与形態で)、または連続的に投与可能である。したがって、一実施形態では、本開示は、本開示の抗体またはその抗原結合性フラグメントと1または複数の薬学的に活性な化合物とを治療上有効量で対象に投与することにより疾病を処置する方法を含む。
【0253】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、既存の治療薬と組み合わせて使用され、既存の治療薬として、コルチコステロイド、リツキシマブなどの抗-CD20抗体、トシリズマブなどの抗-IL-6抗体、またはセレンやインフリキシマブなどの抗-TNFα抗体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、本開示の抗体またはその抗原結合性フラグメントは、TSHR阻害剤と組み合わせて使用される。
【実施例】
【0254】
実施例A テプロツムマブ
先ず、テプロツムマブ(TEPEZZA)、すなわちTEDの処置に承認されたIGF-1R阻害剤を提供する。テプロツムマブおよび他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,572,897号、米国特許出願第20190225696号、および米国特許出願第20190270820号に見ることができる。ある実施形態では、テプロツムマブは、例えば実施例31のように、他のIGF-1R阻害剤の臨床試験における活性対照として使用してもよい。
【0255】
【0256】
【0257】
実施例1 ダロツズマブ
ダロツズマブおよび他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される国際公開第2005/058967号に見ることができる。
【0258】
【0259】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号1を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号2を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号3を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号1、配列番号2、および配列番号3との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0260】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号4を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号4を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号6を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号4、配列番号5、および配列番号6との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0261】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号7の重鎖アミノ酸配列、または配列番号7との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号8との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0262】
実施例2 ガニツマブ
ガニツマブおよび他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される国際公開第2006/069202号に見ることができる。
【0263】
【0264】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号9を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号10を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号11を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号9、配列番号10、および配列番号11との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0265】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号12を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号13を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号14を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号12、配列番号13、および配列番号14との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0266】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号15の重鎖アミノ酸配列、または配列番号15との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号16のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号16との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0267】
実施例3 キセンツズマブ
キセンツズマブおよび他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される国際公開第2014/135611号に見ることができる。
【0268】
【0269】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号17を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号18を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号19を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号17、配列番号18、および配列番号19との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0270】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号20を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号21を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号22を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号20、配列番号21、および配列番号22との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0271】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号23の重鎖アミノ酸配列、または配列番号23との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号24のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号24との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0272】
実施例4 AVE1642
AVE1642および他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、国際公開第2003/106621号および/または米国特許第7,538,195号に見ることができ、両文献は、全体を参照することで本明細書に引用される。
【0273】
【0274】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号25を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号26を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号27を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号25、配列番号26、および配列番号27との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0275】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号28を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号29を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号30を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号28、配列番号29、および配列番号30との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0276】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号31の重鎖アミノ酸配列、または配列番号31との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号32のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号32との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0277】
実施例5 フィギツムマブ
フィギツムマブおよび他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,037,498号に見ることができる。
【0278】
【0279】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号33を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号34を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号35を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号33、配列番号34、および配列番号35との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0280】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号36を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号37を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号38を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号36、配列番号37、および配列番号38との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0281】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号39の重鎖アミノ酸配列、または配列番号39との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号40のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号40との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0282】
実施例6 ドゥシギツマブ
ドゥシギツマブ(MEDI-573)および他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,939,637号に見ることができる。
【0283】
【0284】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号41を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号42を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号43を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号41、配列番号42、および配列番号43との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0285】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号44を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号45を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号46を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号44、配列番号45、および配列番号46との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0286】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号39の重鎖アミノ酸配列、または配列番号47との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号40のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号48との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0287】
実施例7 シクスツムマブ
シクスツムマブおよび他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,638,605号に見ることができる。
【0288】
【0289】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号49を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号50を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号51を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号49、配列番号50、および配列番号51との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0290】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号52を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号53を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号54を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号52、配列番号53、および配列番号54との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0291】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号55の重鎖アミノ酸配列、または配列番号55との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号56のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号56との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0292】
実施例8 BIIB022
BIIB022および他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,612,178号に見ることができる。
【0293】
【0294】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号57を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号58を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号59を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号57、配列番号58、および配列番号59との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0295】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号60を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号61を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号62を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号60、配列番号61、および配列番号62との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0296】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号63の重鎖アミノ酸配列、または配列番号63との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号64のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号64との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0297】
実施例9 ロバツムマブ
【0298】
【0299】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号65の重鎖アミノ酸配列、または配列番号65との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号66のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号66との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0300】
いくつかの実施形態では、上記IGF-1R阻害剤は、小分子である。
【0301】
実施例10 リンシチニブ
【0302】
【0303】
リンシチニブおよび他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第8,101,613号に見ることができる。本明細書に記載のリンシチニブおよび他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0304】
実施例11 ピクロポドフィリン
【0305】
【0306】
ピクロポドフィリン(AXL17171)および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第4,567,253号に見ることができる。本明細書に記載のピクロポドフィリンおよび他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0307】
実施例12 GTX-134
【0308】
【0309】
GTX-134および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第8,063,225号に見ることができる。本明細書に記載のGTX-134および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0310】
実施例13 AG1024
【0311】
【0312】
AG1024および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される国際公開第1995024190号に見ることができる。本明細書に記載のAG1024および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0313】
実施例14 BMS-536924
【0314】
【0315】
BMS-536924および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,081,454号に見ることができる。本明細書に記載のBMS-536924および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0316】
実施例15 NVP-AEW541
【0317】
【0318】
NVP-AEW541および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,326,699号に見ることができる。本明細書に記載のNVP-AEW541および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0319】
実施例16 BMS-754807
【0320】
【0321】
BMS-754807および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,534,792号に見ることができる。本明細書に記載のBMS-754807および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0322】
実施例17 GSK1838705A
【0323】
【0324】
GSK1838705Aおよび他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,981,903号に見ることができる。本明細書に記載のGSK1838705Aおよび他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0325】
実施例18 BMS-554417
【0326】
【0327】
BMS-554417および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,081,454号に見ることができる。本明細書に記載のBMS-554417および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0328】
実施例19 NVP-ADW742
【0329】
【0330】
NVP-ADW742および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,326,699号に見ることができる。本明細書に記載のNVP-ADW742および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0331】
実施例20 GSK1904529A
【0332】
【0333】
GSK1904529Aおよび他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第8,093,239号に見ることができる。本明細書に記載のGSK1904529Aおよび他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0334】
実施例21 KW-2450
【0335】
【0336】
トシル酸塩として上記に示されるがこれに限定されないKW-2450、および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、国際公開第2006080450号、米国特許第7,605,272号、および国際公開第2011158931号に見ることができ、これらの文献は、全体を参照することで本明細書に引用される。本明細書に記載のKW-2450および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0337】
実施例22 PL-225B
【0338】
【0339】
PL-225Bおよび他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される国際公開第2012145471号と第2012007926号に見ることができる。PL-225BはIGF-1Rを選択的に阻害し、これにより、腫瘍細胞増殖の阻害、およびIGF-1R過剰発現腫瘍細胞における腫瘍細胞アポトーシスの誘導が生じる。本明細書に記載のPL-225Bおよび他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0340】
実施例23 INSM-18、ノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)/マソプロコール、Actinex
【0341】
【0342】
INSM-18、すなわち本実施例でINSM-18と称されるノルジヒドログアヤレト酸(NDGA)(相対立体化学とともに上記で示されており、その場合、マソプロコールまたはActinexとも称されるが、これに限定されるものではない)、および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第2,373,903号に見ることができる。INSM-18は、IGF-1Rおよびc-erbB2/HER2/neu受容体の活性化を直接阻害し、それにより、影響を受けやすい腫瘍細胞集団の増殖が減少する。本明細書に記載のINSM-18および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0343】
実施例24 AZD3463
【0344】
【0345】
AZD3463および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第8,461,170号に見ることができる。AZD3463は有力なALK/IGF-1R阻害剤であり、クリゾチニブ耐性を克服してアポトーシスを誘導することにより神経芽細胞腫の増殖を阻害する。本明細書に記載のAZD3463および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0346】
実施例25 AZD9362
【0347】
【0348】
AZD9362および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、Degorce,SL et al.,“Discovery of a Potent,Selective,Orally Bioavailable,and Efficacious Novel 2-(Pyrazol-4-ylamino)-pyrimidine Inhibitor of the Insulin-like Growth Factor-1 Receptor(IGF-1R),”J Med Chem(2016),59(10),4859-4866に見ることができ、本文献は全体を参照することで本明細書に引用される。AZD9362は、IGF-1R/InsRの二重阻害剤である。本明細書に記載のAZD9362および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0349】
実施例26 BI885578
【0350】
【0351】
BI885578および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、米国特許第10,414,769号、米国特許第9,150,578号、およびSanderson MP et al.,“BI 885578,a Novel IGF1R/INSR Tyrosine Kinase Inhibitor with Pharmacokinetic Properties That Dissociate Antitumor Efficacy and Perturbation of Glucose Homeostasis,”Mol Cancer Ther 2015 Dec;14(12):2762-72に見ることができ、これらの文献は全体を参照することで本明細書に引用される。BI885578は、速やかな腸内吸収、および速やかな代謝クリアランスの結果として短いin vivo半減期により鑑別されるIGF1R/INSRチロシンキナーゼ阻害剤であり、細胞増殖を阻害し、腫瘍中にアポトーシスを誘導する。本明細書に記載のBI885578および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0352】
実施例27 BI893923
BI893923および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、米国特許第8,546,443号、およびTitze MI et al.,“An allometric pharmacokinetic/pharmacodynamics model for BI 893923, a novel IGF-1 receptor inhibitor,”Cancer Chemother Pharmacol 2017 Mar;79(3):545-558に見ることができ、これらの文献は全体を参照することで本明細書に引用される。BI893923は、抗腫瘍有効性と良好な忍容性を実証するIGF1R/INSRチロシンキナーゼ阻害剤である。本明細書に記載のBI893923および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0353】
実施例28 XL-228
【0354】
【0355】
XL-228および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国出願第20090232828号に見ることができる。XL-228は、細胞増殖、細胞生存、および細胞毒性剤に対する忍容性に寄与する広範なプロテインキナーゼ阻害剤である。本明細書に記載のXL-228および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0356】
実施例29 A-928605
【0357】
【0358】
A-928605および他の関連IGF-1R阻害剤小分子、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第7,772,231号と国際公開第2007079164号に見ることができる。A-928605は、精製された酵素および細胞内IGF-IRリン酸化の両方に対する、IGF-IRの有力な阻害剤である。本明細書に記載のA-928605および他のIGF-1R阻害剤は、本明細書に記載のTEDの処置のための活性測定または活性査定における活性を有すると予測される。
【0359】
実施例30 イスチラツマブ(MM-141)
イスチラツマブおよび他の関連IGF-1R阻害剤抗体、ならびにそれらの調製方法は、全体を参照することで本明細書に引用される米国特許第8,476,409号に見ることができる。
【0360】
【0361】
本開示のいくつかの実施形態は、可変重鎖CDR1、可変重鎖CDR2、および可変重鎖CDR3を含む重鎖を含む抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントであって、可変重鎖CDR1がアミノ酸配列番号67を含み、可変重鎖CDR2がアミノ酸配列番号68を含み、および可変重鎖CDR3がアミノ酸配列番号69を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号67、配列番号68、および配列番号69との最適なアライメントの後に少なくとも80%の配列同一性を有する、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントである。
【0362】
抗-IGF-1R阻害剤mAb、または抗体もしくはその抗原結合性フラグメントは、抗原結合性ドメインを形成するために重鎖と対をなす軽鎖をさらに含む場合がある。いくつかの実施形態では、軽鎖は、可変軽鎖CDR1、可変軽鎖CDR2、および可変軽鎖CDR3を含み、可変軽鎖CDR1はアミノ酸配列番号70を含み、可変軽鎖CDR2はアミノ酸配列番号71を含み、および可変軽鎖CDR3はアミノ酸配列番号72を含むか、または少なくとも1つのCDRが、配列番号70、配列番号71、および配列番号72との最適なアライメントの後に少なくとも80%の相同性を有する。
【0363】
いくつかの実施形態では、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号73の重鎖アミノ酸配列、または配列番号73との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。代替的に、または付加的に、抗-IGF-1R阻害剤mAbまたはその抗原結合性フラグメントは、配列番号74のアミノ酸配列を有する軽鎖、または配列番号74との最適なアライメントの後に少なくとも85%、90%、95%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する少なくとも1つの重鎖を含む。
【0364】
以下の方法を使用して、強皮症の処置に対する本明細書に開示される抗体および/またはその抗原結合性フラグメントの有効性を測定してもよい。
【0365】
強皮症の測定
びまん型皮膚全身性硬化症の処置におけるテプロツムマブに対し提唱された第1相臨床試験
びまん型皮膚全身性硬化症(dcSSc)は、皮膚および他の器官に広範な線維症をもたらす多血管自己免疫疾患である。糸球体硬化症、過形成性瘢痕、肺線維症などの器官特異的線維症は、dcSScでは複数の器官に生じる。免疫摂動と血管傷害が線維症の発症よりも先に生じてその発症に寄与し、さらには血管および免疫の損傷を悪化させてしまう(Asano,2015;Bhattacharyya,2011;Volkmann,2019;Varga,2007)。このような初期の疾患を誘発するものに対して明確な理解はなされていないが、一般に遺伝的および/または環境的要因は、免疫の活性化、炎症、小血管損傷、および細胞外マトリクスの成分の合成と堆積の増加に関与する複合病変形成を引き起こして多臓器線維症をもたらす血管系に、損傷を生じさせると認められている(Asano 2015,Asano,2017)。この複合病態形成として、皮膚線維芽細胞の活性化、Th2/Th17表現型へのTヘルパー集団の歪み(skewing)、M2表現型へのマクロファージの分化、形質細胞様樹状細胞の浸潤増加、内皮から間葉系への移行、上皮細胞活性化、および筋線維芽細胞への様々な細胞型の分化が挙げられるが、これらに限定されるものではない(Asano,2017)。
【0366】
インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R):
【0367】
インスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)は、インスリン受容体(IR)に対して全体的に約60%の相同性を共有するチロシンキナーゼ細胞表面受容体である(Schumacher,1991)。そのリガンド、インスリン様成長因子(IGF)-1、およびIGF-2により活性化されると、IGF-1Rは、細胞の増殖、分化、および炎症に関与する重要な細胞活性を調節する(Khandwala,2000,Li,2018,Ullrich,1986)。
【0368】
証拠が増えることで、罹患した個体の血清と皮膚にある高値のIGF-1および関連結合タンパク質の存在、IGF-1R刺激が筋線維芽細胞に対して線維芽細胞の移動、増殖、および分化を生じさせる能力、ならびにM2マクロファージ極性化におけるIGF-1Rシグナル伝達の要件を含む、dcSScの病態形成に対するIGF-1/IGF-1R経路の役割が裏付けられている。加えて、マウスの前臨床的証拠により、損傷後の肺線維症に対するIGF-1R受容体の役割が裏付けられている。例えば、
1.IGF-1タンパク質値、ならびに、その結合パートナーの1つであるIGFBP-3のタンパク質値は、健康な対象および全身性エリテマトーデス(SLE)または限局性皮膚全身性硬化症(lcSSc)患者と比較して、dcSSC患者の血清中で上昇する(Hamaguchi,2008)。
2.IGF-1および別の結合パートナーすなわちインスリン様成長因子結合タンパク質(IGFBP-5)のリボ核酸(RNA)値も、SSc患者から得た皮膚線維芽細胞での上昇を認められている(Feghali,1999;Hamaguchi,2008)。
3.IGF-1のRNA値とタンパク質値は、モルフェア、すなわち硬化斑と線維症増加を伴う慢性傷害の患者の皮膚と血清で上昇すると見出された(Fawzi,2008)。
4.IGF-1アンタゴニストすなわちオクトレオチドを投与した症例では、カルチノイド症候群患者においてグレーブス病を伴う難治性前脛骨粘液水腫、または皮膚硬化症が回復した(Shinohara,2000;Pavlovic,1995)。
5.in vitro試験では、IGF-1が筋線維芽細胞への線維芽細胞の分化を刺激したと実証された(Hung,2013)。
6.急性肺傷害の動物モデルでは、損傷後のIGF-1R遮断により生存率が増加し、肺内での線維症回復時間、ヒドロキシプロリン含有量、および筋線維芽細胞すなわちα平滑筋アクチン(□SMA)発現細胞の数が減少する(Hung,2013;Choi,2009)。
7.ブレオマイシン誘導型肺傷害のモデルでは、肺に条件IGF-1R欠失を伴うマウスは、死亡率の低下、肺胞損傷の減少、気管支肺胞洗浄液(BALF)中での赤血、好中球、マクロファージ、およびリンパ球の減少のほか、血管透過性変化の防止も呈した(Pineiro-Hermida,2017)。
8.IGF-1Rは、M2マクロファージ極性化にも重要であると認められている。IGF-1は、M0/M1マクロファージよりもM2マクロファージで高度に発現される(Spadaro,2017)。骨髄細胞系列の細胞中でIGF-1R遺伝子をノックアウトされたマウスが、M2極性化プロセス、M2表現型に関連する転写産物減少のほか、IFN□、すなわちM1マクロファージに通常観察される表現型に対する反応性の増加を誘導する能力の低下を示したため、IGF-1Rはさらに、マクロファージ活性化プロセスに影響を及ぼすとも認められている(Barret,2015;Spadaro,2017)。
【0369】
テプロツムマブ:
【0370】
テプロツムマブすなわち完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)は、甲状腺眼症(TED)の処置のために開発されたインスリン様成長因子-1受容体(IGF-1R)阻害剤である。
【0371】
in vitroで、IGF-1Rアンタゴニストは、複数のシグナル伝達経路(Akt、MAPK、ERKなど)を介したシグナル伝達を遮断し、サイトカイン発現を減少し、かつ疾患に関連するGAGの分泌をへらす能力を呈した(Pritchard,2003;Tsui,2008;Smith and Hoa,2004;Chen,2014)。TEDとdcSScには、線維芽細胞活性化、高値の炎症性サイトカイン、疾患組織への免疫細胞浸潤、および細胞外マトリクス成分の過剰合成を含む共通の疾患特徴がある(Bahn,2010;Boschi,2005;Smith,2010)。線維芽細胞、筋線維芽細胞、線維細胞、および免疫系の細胞中でシグナル伝達を遮断してIGF-1Rを下方調節することにより、テプロツムマブは、特異的にdcSScの重要で根本的な病態生理学を解決することにより、疾患の重症度と悪化を減らす可能性がある。
【0372】
目的:
【0373】
本試験の目的は、次のとおりである:
・びまん型皮膚全身性硬化症(dcSSc)の対象に対し、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、テプロツムマブの炎症性および線維性バイオマーカー、IGF-1受容体(IGF-1R)の完全ヒトモノクローナル抗体(mAb)阻害剤を24週にわたり3週間に1回(q3W)投与したときの安全性、忍容性、および効果の評価。
・dcSScの対象中、24週目までに治療下で発現した有害事象(TEAE)が生じる一定割合の対象に対するテプロツムマブとプラセボの安全性の評価。
・全身性硬化症の米国リウマチ学会複合応答指数(ACR-CRISS)の変化におけるベースラインから24週目までの応答率に対する、テプロツムマブとプラセボの効果の評価。
・改良Rodnanトータルスキンスコア(mRSS)、努力肺活量(FVC)%予測、患者による包括的評価(PTGA)、医師による包括的評価(MDGA)、および健康評価質問表-機能障害指数(HAQ-DI)を含むACR-CRISSの構成部分に対する、ベースラインから24週目までのテプロツムマブとプラセボの効果の評価。
・ACR-CRISSの構成部分を用いた疾患のフレアにおけるベースラインから24週目までの変化に対するテプロツムマブとプラセボの効果の評価。
・24週目で5つの中心ACR-CRISS項目のうち3つが20%以上(FVC%予測では5%以上)改善する対象の割合の評価。
・皮膚(病変)生検におけるIGF-1経路、炎症、および線維症に関連するトランスクリプトミクスに、ベースラインから経時的に24週目まで生じる変化の評価。
・血清中のIGF-1経路に関連する分泌タンパク質に、ベースラインから経時的に24週目まで生じる変化の評価。
・IGF-1Rならびに線維症および炎症マーカーにおける皮膚(病変)生検でのタンパク質発現に、ベースラインから経時的に24週目まで生じる変化の評価。
・末梢血単核球(PBMC)上でのIGF-1Rタンパク質発現に、ベースラインから経時的に24週目まで生じる変化の評価。
・赤血球沈降速度(ESR)におけるベースラインから24週目までの平均変化に対するテプロツムマブの効果の評価。
・高感度C反応性タンパク質(hsCRP)におけるベースラインから24週目までの平均変化に対するテプロツムマブの効果の評価。
・皮膚(病変)生検上の組織構造における24週目までの経時的な変化に対するテプロツムマブの効果の評価。
・クオリティ・オブ・ライフ(QOL)測定(Hand Disability in Systemic Sclerosis-Digital Ulcers[HDISS-DUR]およびUCLA Scleroderma Clinical Trial Consortium Gastrointestinal Tract[UCLA SCTC GIT 2.0)におけるベースラインから24週目まで、および24週目から48週目までの変化に対する、テプロツムマブの効果の評価。
【0374】
任意選択で、テプロツムマブの薬物動態(PK)と免疫原性も評価される。TEAE、特に注目すべき有害事象(AESI)(高血糖症、聴覚障害、輸液反応、新たな炎症性腸疾患の発症または悪化)、併用薬使用、バイタルサイン、臨床安全性の施設評価、および炎症の施設評価に基づき、テプロツムマブの安全性と忍容性を評価する。
【0375】
試験デザイン:
【0376】
本試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照反復投与多施設試験である。ベースライン(1日目)訪問前に4週間以内の試験を行うために対象をスクリーニングする。試験の適格性基準を満たす約25の対象を、1日目に3:2の割合で、テプロツムマブを8回注入する群(初回注入は10mg/kg、残り7回の注入は20mg/kg)、またはq3Wでプラセボを注入する群に無作為に割り付ける。24週間の二重盲検治療期間中、治験薬は1日目(ベースライン)、3週目、6週目、9週目、12週目、15週目、18週目、21週目に注入し、24週目(処置の終わり)に包括的訪問を行う。治験薬投与はすべて、治験担当者または看護士の監督下、臨床施設または輸液センターで行う。予定した注入すべてにおいて、注入速度を低下させるか、または忍容性に基づき投与を中断または持続してもよい(詳細はセクション9.4.6.3.2を参照)。投与日ごとに、予定した評価(来院中にモニタリングされる有害事象[AE]と併用薬使用のモニタリングを除く)は、治験薬注入前に完遂する。最初の2回の注入それぞれの翌日、対象に電話/電子メールで連絡を取る。注入に関連する事象を認めた対象すべてに対しては、追加の電話/電子メール連絡と来院を実施してもよい。
【0377】
処置期間の終わり(24週目)に、対象は24週間経過観察期間に入り、この間、治験薬は投与せず、28週目、36週目、48週目に来院を予定する。32週目と42週目に電話または電子メールを行い、対象の様子を問い合わせ、妊娠の可能性がある女性には月経周期がずれているかを尋ね、必要であれば血清妊娠検査を行う。
【0378】
処置期間の満了前に早期に試験を中止した対象は臨床施設に戻り、予定した24週目の査定を受ける。かかる対象には、24週間の経過観察期間を継続するようにも促す。本試験デザインの概要は、以下の概要に提供し、試験活動の詳細は、セクション2.1の査定計画に提供する。
【0379】
図1において、
*は治験薬の注入を示し、AE=有害事象であり、M=月であり、q3W=3週間ごとであり、W=週である。1)対象を、a)テプロツムマブ投与群(1日目は10mg/kg、その後残りの7回の注入は20mg/kgをq3W)、またはb)プラセボ投与群(全8回でプラセボをq3W)に3:2の割合(テプロツムマブ15人、プラセボ10人)で無作為に割り付け、2)来院期間は、3週目から21週目までは±3日とし、3)来院期間は、24週目から48週目までは±7日とし、4)初回注入(1日目)と2回目の注入(3週目)の翌日、すべの対象に、電話/電子メールで連絡をとり、安全性と忍容性の査定を行い、対象に注入関連AEを認めた場合は、来院後その日のうちに追加の電話/電子メールの連絡で連絡をとり、5)24週間の処置期間を完遂する前に対象が早期に試験を中止した場合、臨床施設に戻して24週目の査定を行う。対象は、24週間の経過観察期間を継続するよう促され、6)32週目と42週目にすべての対象に電話または電子メールで連絡を取り、対象の様子を問い合わせ、妊娠の可能性のある女性には月経周期を尋ね、7)24週間の追跡期間を完遂する前に対象が早期にその期間を中止した場合、臨床施設に戻して48週目の査定を行う。
【0380】
対象集団:
【0381】
びまん型皮膚全身性硬化症(dcSSc)である、18~80歳の間の男性対象と妊娠していない女性対象を約20~25名登録する。
【0382】
包含基準:
【0383】
適格な対象は、以下の基準をすべて満たす/提供する必要がある:
1.書面によるインフォームド・コンセント。
2.スクリーニング時点で18~80歳の間の男性または女性対象。
3.2013年の米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)分類基準を合計9以上満たす必要がある。
4.肘、膝、顔面、および頚部付近に皮膚浸潤があると分類される対象(dcSSc subset by LeRoy and Medsger,2001)。
5.治験責任医師が病歴および/または医療記録を通じて利用可能な次のデータに基づき、施設責任者が判定したドメインにより活性疾患が文書化された対象:
a.スクリーニング訪問前の過去6か月以内に1または複数の身体領域(あらゆる新たな浸潤領域を含む)の強皮症皮膚浸潤の悪化、
b.および/またはスクリーニング時点での腱摩擦音の存在、
c.および/またはスクリーニング訪問前過去6か月以内に強皮症皮膚浸潤がない(浸潤が3単位超と定められる)
6.登録時点で、最初にdcSSc徴候を発症してから60か月以上経過していない対象。
7.反復生検に適した前腕にdcSScによる皮膚肥厚を認める対象。
8.スクリーニング時点でmRSS単位が10以上45以下である対象。
9.CellCept(登録商標)(ミコフェノール酸モフェチル)最大3g/日またはMyfortic(登録商標)(ミコフェノール酸)2.14g/日と低用量プレドニゾン(10mg/日以下またはそれと当量のグルココルチコイド投与)の服用を認められる対象。CellCeptまたはMyforticを服用する対象は服用を20週間以上行い、用量は、1日目の訪問前に16週間以上安定している必要がある。プレドニゾンは、1日目の訪問前に4週間以上、安定用量にある必要がある。
10.糖化ヘモグロビン(HbA1c)が8.0%以上であり、スクリーニング前60日以内に新たな糖尿病薬(経口またはインスリン)を受けていないか、または現在処方されている糖尿病薬の用量変化が10%を超えていない対象。
11.スクリーニング時点での血清妊娠検査が陰性であり、すべてのプロトコルを特定した時点(protocol-specified timepoint)(すなわち、各投与前と、対象が参加する経過観察期間全体)で尿妊娠検査が陰性である、妊娠の可能性のある女性(スクリーニング前に閉経期の出現が2年未満の女性、スクリーニング前に12か月未満にわたり非治療誘導型無月経症を患う女性、または手術により妊孕力[卵巣および/または子宮]を喪失していない女性を含む)。精管切除されていない男性パートナーとの性活動のある対象は、試験中に2つの信頼できる形の避妊薬の使用を同意する必要があり、そのうち1つは、経口避妊薬などのホルモン剤であることが推奨される。ホルモン避妊薬は、ベースライン前に少なくとも1回の完全周期を始め、最後の治験薬投与後も180日間持続させる必要がある。非常に有効な避妊方法(欠陥率が1年で1%未満)は、一貫して正確に使用した場合、インプラント、注射物質、経口避妊薬の組み合わせ、一部の子宮内避妊器具、性禁欲、またはパートナーの精管切除を含む。
12.手術により妊孕力を喪失しているか、または、妊娠の可能性のある女性パートナーとの性活動がある場合、最後の治験薬投与後にスクリーニングから180日間、バリア型避妊法の使用に同意する男性対象。
13.試験期間中、処方された処置プロトコルと評価に遵守する意思も能力もある対象。
【0384】
除外基準:
【0385】
以下の基準のいずれかを満たす場合、対象は本試験への参加が不適格となる:
1.限局性皮膚SScまたはサイン強皮症と診断された対象。
2.線維筋痛症、強皮症関連型ミオパシー、およびシェーグレン症候群を除くその他の自己免疫疾患と診断された対象。
3.スクリーニング訪問の6か月以内に強皮症腎発症(SRC)を患っていない対象。SRCは、突然の高血圧症および急性腎傷害の発症と定められる。
4.努力肺活量(FVC)予測が50%未満、一酸化炭素拡散能(DLCO)予測が40%未満、1より多くの経口PAH承認治療または親治療(parental therapy)での処置を必要とする右心カテーテル法による肺高血圧症(PAH)の対象。勃起障害および/またはレイノー現象/指潰瘍に対しては、PDE-5阻害剤の断続的使用が認められている。
5.スクリーニング前の4週間以内にdcSSc以外の疾病に対してコルチコステロイドの使用歴のある対象(皮膚科学疾病用の局所ステロイド、および吸入ステロイドは認められる)。
6.初回注入前の12か月以内にリツキシマブ(Rituxan(登録商標)またはMabThera(登録商標))での治療歴がある対象。
7.スクリーニングの4週間以内に、抗マラリア薬を除く他のあらゆる非ステロイド系免疫抑制剤、細胞毒性薬物、または抗線維症薬物の使用歴のある対象。この薬物として、ミコフェノール酸モフェチルやミコフェノール酸[Myfortic]を除き、シクロホスファミド、アザチオプリン(Imuran)、メトトレキサート、または他の免疫抑制薬剤もしくは細胞毒性薬剤が挙げられる。
8.スクリーニング前4週間以内に、関節リウマチ、乾癬性関節炎、および他のリウマチ性疾患に承認された生物学的製剤または小分子の使用歴のある対象。
9.長期的、スクリーニング前、または試験期間中に使用が予想されるかに関わらず、90日または5半減期以内にあらゆる疾病に対する治験薬の使用歴のある対象。
10.過去5年に悪性疾病にある対象(基礎、皮膚癌または子宮頚癌の基底細胞/有棘細胞癌に対するin situでの処置の成功を除く)。
11.妊娠中または授乳中の女性。
12.現在薬物またはアルコール乱用、または過去2年以内にそのいずれかの既往歴があると治験責任医師が判断するか、あるいは自身で報告した対象。
13.炎症性腸疾患が生検により立証されるか臨床的に疑われる対象(例えば、腹痛もしくは筋痙攣/疝痛、切迫感、しぶり腹、または失禁を伴う出血あるいは直腸出血があるか、このような出血のない下痢が4週間以上続き、代替診断が確認されていない場合、あるいは内視鏡または放射線により腸炎/大腸炎の証拠があり、代替診断が確認されていない場合)。
14.テプロツムマブの成分のいずれかに対し過敏性であるか、または過去にmAbに対する過敏症反応を認めた患者。
15.以前に本試験に登録したことがあるか、または以前にテプロツムマブ臨床試験に参加したことのある対象。
16.ヒト免疫不全ウイルスがある、未処置である、またはC型肝炎もしくはB型肝炎感染症に対するウイルス量が陽性の対象。
17.過去に臓器移植を受けた対象(同種異系および自己由来の骨髄移植を含む)。
18.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が、正常上限(ULN)の2.5倍、すなわちスクリーニング時点で30ml/分/1.73m2未満の対象。
19.血小板が120x109/L未満の対象。
20.ヘモグロビンが10g/dL未満の対象。
21.治験責任医師の判断で本試験への参加が妨げられる他のあらゆる疾病のある対象。
【0386】
投与レジメン/投与経路:
【0387】
治験薬投与はすべて、治験担当者の監督下、臨床施設で行う。二重盲検処置期間の1日目、対象を、テプロツムマブ20mg/kg注入群(1日目は10mg/kg、残りの7回の注入では20mg/kgでq3W)、またはプラセボ注入群(全8回でプラセボをq3W)に、3:1または3:2の割合で無作為に割り付ける。
【0388】
注入速度は低下してもよく、投与は忍容性に基づき中断しても維持してもよい。初回と2回目の注入は、約90分(80分以上)にわたり投与する。注入に関連する有意な事象を認めなければ、続く注入を約60分(50分以上)にわたり投与する。
【0389】
投与形態と製剤強度:
【0390】
テプロツムマブ500mgは、単回用の20mLガラスバイアルに入れて冷凍乾燥粉体として提供する。テプロツムマブの入った各バイアルは、10mLの注射用滅菌水を用いて再構築する。結果生じる溶液の濃度は、テプロツムマブ50(例えば47.6)mg/mLに近似する。再構築したテプロツムマブ溶液は、投与前に0.9%(w/v)塩化ナトリウム(NaCl)溶液中でさらに希釈する。
【0391】
最大1800mgの用量は総注入体積100mLで投与し、1800mgを超える用量は、総注入体積250mLで投与する。注入バッグ中で体積を一定に維持するために、注入バッグに配するテプロツムマブの体積に等しい体積を、先ず滅菌シリンジと針を使用して注入バッグから取り除く。対象の用量と体重に基づき再構築した薬物製品溶液の適切な体積を引き抜き、テプロツムマブ再構築薬物製品溶液は、注入バッグの中、通常生理食塩溶液(0.9%NaCl)で希釈する。
【0392】
必要に応じて、プラセボは通常生理食塩溶液(0.9%NaCl)溶液で構成され、適宜、体重に基づく投与体積につき100mLまたは250mLの注入バッグに入れて投与される。
【0393】
処置期間:
【0394】
計画した処置期間は24週間(6か月)である。24週目、対象はすべて24週間の経過観察期間に入る。
【0395】
評価基準:
【0396】
dcSScに対する評価項目であるACR-CRISSを使用して対象を評価する。ACR-CRISSは、0.0(改善なし)~1.0(顕著な改善)に及ぶ、対象における改善の蓋然性を割り付ける2工程のプロセスである。工程1では、3週目、6週目、9週目、12週目、15週目、18週目、21週目、24週目、36週目、および48週目に評価を行い、その時点で治験責任医師は、対象がSScに起因して心肺および/または腎臓併発症(involvement)を新たに発症したか悪化させたかを査定する。工程2では、mRSS、FVC%予測、HAQ-DI、PTGA、およびMDGAの変化を含む5つの測定に基づき改善の蓋然性を算出する[Khanna,2016]]。mRSS、HAQ-DI、PTGA、およびMDGAは、1日目、12週目、24週目、36週目、および48週目に完了し、mRSSは6週目に完了する。FVC%予測は、スクリーニング時点、12週目、24週目、および48週目に完了する。QOL査定(HDISS-DUおよびUCLA SCTC GIT 2.0)は、1日目、24週目、36週目、および48週目に完了する。
【0397】
テプロツムマブPK査定における血液試料は、1日目、3週目、12週目、18週目の注入前後に採取し、単一試料は24週目と36週目に採取する。
【0398】
IGF-1経路のバイオマーカー解析におけるPBMCを含む血液試料は、1日目、3週目、12週目、18週目に採取し、追加の単一試料は24週目に採取する。
【0399】
免疫原性試験における血液試料は、1日目、3週目、12週目、18週目の注入後に採取し、単一試料は24週目、36週目、および48週目に採取する。
【0400】
合計5つの3mm生検を前腕から取得して、トランスクリプトミクスのほか、IGF-1Rならびに線維症および炎症のマーカーにおける皮膚中のタンパク質発現を解析する。2つの3mm生検は、1日目の注入前に取得し、24週目の訪問時に再び取得する。
1つの3mm生検は、3週目の注入前に取得する。
【0401】
安全性は、AEおよび併用薬使用のモニタリング、身体検査、バイタルサイン、臨床安全性の施設評価(全血球計算と化学(complete blood count and chemistry)[HbA1cを含む]、臨床的炎症の施設評価(hsCRPとESR)、妊娠検査(適用可能な場合)、スクリーニング心電図、および任意選択で免疫原性試験)により査定する。
【0402】
統計解析:
【0403】
以下のエンドポイントが、統計解析されてよい:
1.dcSScの対象中、24週目までに(国立癌研究所有害事象共通用語規準[NCI-CTCAE]5.0に規定される)TEAEを発症した対象の割合。
2.24週目の応答速度(少なくとも0.6のACR-CRISS[予測蓋然性]として規定)。
3.24週目のACR-CRISS。
4.ベースラインから24週目までのmRSSの変化。
5.ベースラインから24週目までのFVC%予測の変化。
6.ベースラインから24週目までのPTGAの変化。
7.ベースラインから24週目までのMDGAの変化。
8.ベースラインから24週目までのHAQ-DIの変化。
9.24週目で5つの中心ACR-CRISS項目のうち3つが20%以上(FVC%予測では5%以上)改善する対象の割合。
10.IGF-1経路のバイオマーカー、ならびに任意選択で炎症および線維症のバイオマーカーにおけるベースラインからの変化。
11.IGF-1R経路、炎症、および線維症に関連するトランスクリプトミクスにおけるベースラインからの変化。
12.皮膚生検およびPBMC中でのIGF-1Rタンパク質発現におけるベースラインからの変化。
13.ベースラインから24週目、および24週目から48週目までのHDISS-DUの変化。
14.ベースラインから24週目、および24週目から48週目までの、UCLA SCTC GIT 2.0および総GITスコアの各スケールの変化。
15.テプロツムマブのPK。
16.ADA発生率と力価の値。
17.TEAEおよびAESIの発生率(高血糖症、聴覚障害、輸液反応、新たな炎症性腸疾患の発症または悪化)。
18.併用薬使用
19.バイタルサイン:計画訪問ごとのベースラインからの変化。
20.臨床安全性の施設検査:計画訪問ごとのベースラインからの変化。
【0404】
有効性と安全パラメータに対する統計解析
【0405】
(1)での解析は安全性解析セットを使用して行い、このセットは、治験薬(完全または部分投与)を少なくとも1回投与した対象すべてで構成される。TEAEを発症する対象の数と割合は、処置群ごとに要約する。
【0406】
有効性の解析は治療企図(ITT)解析セットを使用して行われ、全対象が治療薬(treatment)投与群に無作為割付けされ、選択エンドポイントはさらに、最小量の治療薬を投与されデータが利用可能な対象も含まれる制限的な解析セットによっても要約される。観察における記述的な概要、およびACR-CRISSのベースラインからの変化を、処置群および訪問ごとに要約する。
【0407】
有効性の様々な査定に基づき予測した改善の蓋然性(セクション9.6.3.2を参照)であるACR-CRISS解析を、有効性評価に使用する。予測蓋然性が少なくとも0.6の対象を、改善したとみなす。24週目のACR-CRISS値から改善したとされる対象の比率には、2群間の比率の差(テプロツムマブからプラセボを差し引く)に対する正確な95%信頼区間を設ける。加えて、予測蓋然性の記述統計(n、平均、標準偏差、中央値、最大値、および最小値)も、計画した査定訪問ごとに処置群が提供する。観察におけるACR-CRISSの個々の構成部分の記述的な概要、およびベースラインからの変化も提供する。
【0408】
ACR-CRISSデータを使用し、発赤のある対象の数と割合を、処置群ごとに要約する。発赤は、以下のうち1つとして定める:
1. 3単位を超えるmRSS増加、およびそう痒、赤み、アロディニア、または対象が報告する新たな皮膚浸潤領域などの新たな症状により定められる、皮膚疾患の悪化。
2. 0.500単位以上のHAQ-DIの悪化、または3以上の患者による包括的評価(PTGA)の悪化[0~10のスケール]。
3. 10%以上のFVCの低下[絶対的変化]および呼吸困難増加の症状により定められる、肺機能の悪化
4. ACR-CRISSステップ1などの新たな臓器浸潤:新たなPAH、左心室駆出分画率(LVEF)が45%未満の左心不全、間質性肺疾患(ILD)の悪化、または新たな強皮症腎発症(SRC)。
【0409】
発赤を患う対象の数と割合は、処置群ごとに要約する。
【0410】
観察における記述的な概要、ならびにIGF-1R経路、炎症バイオマーカー、および線維症バイオマーカーのベースラインからの変化を、予定した訪問ごとに処置群ごとに要約する。
【0411】
観察における記述的な概要、およびIGF-1R阻害に関連するトランスクリプトミクスのベースラインからの変化を、予定した訪問ごとに処置群ごとに要約する。
【0412】
生活の質のデータは、治療企図解析セットを使用して解析する。
【0413】
観察における記述的な概要、ならびにHDISS-DU、UCLA SCTC GIT 2.0、およびそれらの構成部分のベースライン値からの変化を、処置群と訪問ごとに要約する。
【0414】
安全性解析は、安全性解析セットを使用して行う。
【0415】
各処置群において、TEAE、グレード3以上のTEAE、重篤なTEAE、治験薬に関連するTEAE、AESI、および処置の中止をもたらすTEAEのうち少なくとも1つの発症を報告する対象の数と割合を、処置群ごとに要約する。加えて、TEAEは、器官別大分類と優先使用語により要約する。
【0416】
併用薬は、処置群ごとの対象の数と割合を使用して、解剖治療化学(ATC)のレベル4の用語と優先使用語(PT)により要約する。
【0417】
観察における記述的な概要、およびベースライン値からの変化を、処置群および訪問ごとに、バイタルサインのパラメータそれぞれについて提示する。NCI-CTCAEグレードごとのバイタルサインおよび訪問についてシフトテーブルを、処置群ごとに要約する。
【0418】
安全性の施設査定(血液学、凝固、および化学[HbA1cを含む])、およびベースラインからの変化(適用可能な場合)を、記述統計を用いて訪問および処置群ごとに要約する。臨床検査値は、正常範囲に基づき、低、正常、高と分類する。低、正常、および高のカテゴリをもちいたベースラインから各訪問までのシフトテーブルを、処置群ごとに要約する。加えて、NCI-CTCAEグレードおよび訪問ごとのグルコースに関するシフトテーブルを、処置群ごとに要約する。要約は、高血糖症について個別に提供する。
【0419】
改良Rodnanスキンスコア
【0420】
改良Rodnanトータルスキンスコア(mRSSまたはmRTSS)による皮膚の硬度の測定。この方法では、身体の17の皮膚領域に対する触診を使用し、各領域に0~3の間のスコアを提供する。0は皮膚に肥厚なし、1は皮膚の軽度肥厚、2は皮膚の中等度肥厚、3は皮膚の重度肥厚を表す。強皮症患者の典型的なmRSSスコアは、16~27の間にある。
【0421】
結果
【0422】
テプロツムマブは、びまん型皮膚全身性硬化症(dcSSc)、および他の形態の強皮症を含む関連型疾病のほか、特発性肺線維症や間質性肺疾患の処置に対しても有効性があると予測される。強皮症は、限局性皮膚SScやサイン強皮症など、上記の臨床試験から特別に除外した強皮症の形態を含む。テプロツムマブは、以下:改良Rodnanスキンスコア(mRSS)の改善、努力肺活量(FVC)%予測の改善、患者による包括的評価(PTGA)の改善、医師による包括的評価(MDGA)の改善、および健康評価質問表-機能障害指数(HAQ-DI)を含む、ACR-CRISS測定の改善;(例えば、ACR-CRISSの構成部分を使用した)疾患における発赤の発生率および/または重症度の低下;IGF-1経路に関連する、例えば、非疾患表現型に類似するかこれに関連するトランスクリプトームの改質;皮膚生検(病変)中の炎症および/または線維症の減少;IGF-1経路に関連する、例えば、非疾患表現型に類似するかこれに関連する分泌タンパク質の改質;血清中の炎症および/または線維症の減少;末梢血単核球(PBMC)上でのIGF-1Rタンパク質発現の改質;赤血球沈降速度(ESR)の低下;ならびに高感度性C反応性タンパク質(hsCRP)の低下を含む強皮症およびdcSScに関する諸症状および測定値に対して有効性があると予想される。
【0423】
dcSScと、IPFを含む多くのILDのとの間にある、線維症の原因における多くの類似性により、テプロツムマブは、IPFを含むILDの処置に機能する可能性がある。上記プロトコルは、IPFを含むILDを試験するために改良することができる。エンドポイントの試験は改良され、FVC、6MWT、DLCO、およびSt. George’s Respiratory Questionnaire(SGRQ)を含む場合がある。
【0424】
他の実施形態
上記に明記した詳細な説明は、本開示の実施に際して当業者を助けるために提供したものである。しかし、本明細書中で記載かつ請求した開示は、本明細書に開示した特定の実施形態が本開示の様々な態様の例示として意図されることから、これら実施形態により範囲を制限されるものではない。同等の実施形態はすべて、本開示の範囲内に含まれるよう意図される。実際に、本開示における様々な改良は、本明細書に示されかつ記述された改良に加えて、本発明の発見の趣旨と範囲から逸脱することなく、前述の記載から当業者に明白となるであろう。このような改良はさらに、添付の請求項の範囲内に含まれるようにも意図される。
【配列表】
【国際調査報告】