(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】サッカロポリスポラ、及び当該サッカロポリスポラの、生体アミンの低減における使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20230407BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20230407BHJP
A23L 17/00 20160101ALI20230407BHJP
A23C 9/12 20060101ALI20230407BHJP
C12J 1/00 20060101ALI20230407BHJP
C12G 3/08 20060101ALI20230407BHJP
A23L 27/50 20160101ALI20230407BHJP
C12G 3/00 20190101ALI20230407BHJP
C12G 3/022 20190101ALI20230407BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230407BHJP
A23K 10/12 20160101ALI20230407BHJP
A23C 19/032 20060101ALN20230407BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12P1/04 Z
A23L17/00 Z
A23C9/12
C12J1/00 A
C12G3/08
A23L27/50 Z
C12G3/00
C12G3/022 119F
A23L33/135
A23K10/12
A23C19/032
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549296
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(85)【翻訳文提出日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 CN2021077378
(87)【国際公開番号】W WO2022033011
(87)【国際公開日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】202010811653.3
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(71)【出願人】
【識別番号】521555074
【氏名又は名称】江南大学(紹興)産業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】Jiangnan University (Shaoxing) Industrial Technology Research Institute
【住所又は居所原語表記】No. 19 Yangjiang East Road, Shaoxing, Zhejiang Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】毛健
(72)【発明者】
【氏名】劉双平
(72)【発明者】
【氏名】劉小剛
(72)【発明者】
【氏名】周志磊
(72)【発明者】
【氏名】姫中偉
(72)【発明者】
【氏名】韓笑
【テーマコード(参考)】
2B150
4B001
4B018
4B039
4B042
4B064
4B065
4B115
4B128
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150AB20
2B150AC12
4B001AC30
4B001BC14
4B001EC05
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4B064DA10
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AC14
4B065CA42
4B115CN41
4B128BC05
4B128BL38
(57)【要約】
本発明は、Saccharopolyspora.jiangxiensis J3、及び、当該サッカロポリスポラの、発酵アルコール飲料、発酵食品及び発酵調味料中の生体アミンを低減させるための使用を提供する。この菌株は、2020年4月30日にChina Center for Type Culture Collectionに寄託されており、その受託番号はCCTCC NO:M 2020104である。この菌株は、食品の発酵系に使用する場合、食品の正常発酵に影響を与えない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受託番号がCCTCC NO:M 2020104であり、2020年4月30日にChina Center for Type Culture Collectionに寄託された、Saccharopolyspora.jiangxiensis J3株。
【請求項2】
請求項1に記載のSaccharopolyspora.jiangxiensis J3を含む、微生物製剤。
【請求項3】
前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3の生細胞、凍結乾燥により得られた乾燥菌体、固定化された細胞、液体の菌剤若しくは固体の菌剤、又は、他の任意の形態で存在している菌株を含むことを特徴とする、請求項2に記載の微生物製剤。
【請求項4】
前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3の数量は、発酵剤1グラムあたり又は1ミリリットルあたり、1×10
6CFU以上であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の微生物製剤。
【請求項5】
請求項1に記載のSaccharopolyspora.jiangxiensis J3又は請求項2~4のいずれか一項に記載の微生物製剤を用いて調製される、純粋種の麦麹。
【請求項6】
小麦破砕処理及び湿潤処理を経った小麦をスチーミングした後、請求項1に記載のSaccharopolyspora.jiangxiensis J3又は請求項2~3のいずれか一項に記載の微生物製剤を接種して発酵させて純粋種の麦麹を得る調製方法により、調製されることを特徴とする、請求項5に記載の麦麹。
【請求項7】
前記純粋種の麦麹の調製方法は、
ステップ(1):小麦粒の組織を破砕し、そのデンプンを露出させる小麦破砕処理と、
ステップ(2):ステップ(1)で処理した材料に、当該材料の質量の30~45%の真水を加え、15分間~25分間撹拌する小麦湿潤処理と、
ステップ(3):ステップ(2)で処理した材料をスチーミングして、滅菌するスチーミング滅菌処理と、
ステップ(4):ステップ(3)で得られた材料を40℃未満の温度に下げた後、活性化された菌種を10
5~10
7CFU/mLの接種量で接種する接種処理と、
ステップ(5):発酵処理と、
を含むことを特徴とする、請求項5に記載の麦麹。
【請求項8】
請求項1に記載の菌株、請求項2~4のいずれか一項に記載の微生物製剤、又は請求項5~7のいずれか一項に記載の純粋種の麦麹の、発酵食品、飲料、調味料、タバコ又は飼料を調製するための使用。
【請求項9】
前記発酵食品は、発酵魚、発酵乳製品を含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記調味料は、食酢、料理酒、又は醤油を含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記飲料は、アルコール飲料を含むことを特徴とする、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
請求項1に記載のSaccharopolyspora.jiangxiensis J3の、発酵食品中の生体アミン含有量を低減させるための使用。
【請求項13】
生体アミンを含む環境に、前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を添加することを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記生体アミンは、チラミン、ヒスタミン、プトレシン又はカダベリンを含むことを特徴とする、請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッカロポリスポラ、及び当該サッカロポリスポラの、生体アミンの低減における使用に関するものであり、食品の発酵技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
黄酒は醸造酒の一つであり、一般的にもち米、トウモロコシ、キビを原料とし、麦麹及び酵素を糖化剤及び発酵剤として加えて、スチーミング、麦麹の添加、糖化発酵、圧搾、ろ過、酒の煎り、貯蔵、混合を経て調製されるものである。黄酒は、主成分としての水及びエタノールに加え、8種の必須アミノ酸を含む18種のアミノ酸をさらに含む。黄酒は、この8種の必須アミノ酸を、同量のワインやビールよりも数倍多く含むため、黄酒の適切な飲用は体の健康に有用とされている。黄酒は、ポリフェノール、多糖、ポリペプチドなどの抗酸化物質を豊富に含むので、抗酸化活性を有する。黄酒の醸造はビール及びワインと異なり、開放型発酵プロセスを採用する。また、その発酵系は、アミノ酸の含有量が豊富で、微生物の種類が多様で数量も多く、細菌コロニーの組成が複雑である。発酵に関与する細菌は、主に酢酸菌、乳酸菌、バチルス菌、サッカロポリスポラなどが挙げられる。しかし、微生物の代謝産物は黄酒へ独特の風味を与える反面、黄酒中に生体アミンなどの有害物質を発生させることがある。
【0003】
生体アミンは、アミノ酸の脱炭酸により形成され、動植物や微生物に普遍的に存在している窒素含有有機塩基性低分子化合物である。適量の生体アミンは、成長を促進し、フリーラジカルを除去し、代謝的活性を増強し、免疫力を高めることができるため、人体において重要な生理的機能を発揮する。しかし、過剰量の生体アミンの摂取は、動脈、血管及び微小血管の拡張を引き起こし、下痢、頭痛、腹痛、嘔吐などの不良生理反応を引き起こし、人を死に至らしめる場合すらある。生体アミンは様々な食品に広く含まれており、特にヨーグルト、チーズ、黄酒、白酒、料理酒、醤油、食酢及びワインなどの発酵食品において豊富に含まれている。
【0004】
発酵食品に含まれる生体アミンは、主に微生物の代謝によって生じたアミノ酸脱炭酸酵素が遊離アミノ酸に作用することにより形成される。発酵過程では、微生物の代謝によって生じたプロテアーゼ及びカルボキシペプチダーゼが穀物中のタンパク質に作用し、当該タンパク質を分解させて低分子ペプチド及びアミノ酸を生成することで、生体アミンの生成のための豊富な前駆体を提供する。そしてアミノ酸脱炭酸酵素により、生体アミンが大量に生成される。
【0005】
現在、サッカロポリスポラの、食品発酵における使用、及び生体アミンを低減させるための使用に関する国内外の研究はまだ報告されていない。従って、現代のバイオテクノロジーにより優れた性能を有する微生物をスクリーニングすることは、高品質、高収量、独特の風味の良質な発酵食品を生産する上で、また、発酵食品の安全性を高める上で重要な意味を持っている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、従来の醸造食品では生体アミンの含有量が高いという問題を解決するために、性能が優れた菌株Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を提供し、それを酒類(黄酒及び料理酒)、魚、食酢の発酵過程に使用して生物的強化を行うことにより、発酵食品中の生体アミンの含有量を低減させ、食品の食感と風味を向上させ、放線菌の、従来の発酵食品における使用をより良く発揮させることにある。
【0007】
本発明の第1の目的は、保存所の住所が中国武漢市武漢大学であり、受託番号がCCTCC NO:M 2020104であり、2020年4月30日にChina Center for Type Culture Collectionに寄託された、Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を提供することにある。
【0008】
本発明に係るSaccharopolyspora.jiangxiensis J3は、以下の(1)~(5)に係る優れた特性を有している。
(1)食品発酵系への使用において、食品の正常発酵に影響を与えない。
(2)当該菌株で調製した純粋種の麦麹は、黄酒の発酵に適しており、アルコールの生成速度を促進するだけでなく、黄酒中のアミノ酸の含有量を高めることができる。
(3)生体アミンの産生量は、いずれも2.5mg/L未満であり、検出された生体アミンの量は極めて少ない。
(4)チラミン、ヒスタミン、プトレシン、カダベリンのいずれに対しても分解作用がある。
(5)臭いケツギョの発酵、料理酒の発酵、及び食酢の発酵に適用することができるとともに、生体アミンを減少させる機能を有する。
【0009】
本発明の第2の目的は、Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を含む微生物菌剤を提供することにある。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記発酵剤に含まれている前記S.jiangxiensis J3の数量は、前記発酵剤1グラムあたり又は1ミリリットルあたり、1×106CFU以上である。
【0011】
本発明の第3の目的は、S.jiangxiensis J3を含む複合微生物菌剤を提供することにある。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記発酵剤に含まれている前記S.jiangxiensis J3の数量は、前記発酵剤1グラムあたり又は1ミリリットルあたり、1×106CFU以上である。
【0013】
本発明の第4の目的は、前記S.jiangxiensis J3株を用いて調製される純粋種の麦麹を提供することにある。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記麦麹の調製方法は、破砕された小麦に真水を加えて湿潤させ、さらに湿潤された材料をスチーミングして滅菌し、前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を接種して発酵させることで、麦麹を調製する調製方法である。
【0015】
本発明の一実施形態において、前記麦麹の調製方法は、
ステップ(1):小麦1粒につき3~5フレークとなり少量の粉末が生じる程度に、小麦粒の組織を破砕し、デンプンを露出させる小麦破砕と、
ステップ(2):ステップ(1)で処理された材料に、当該材料の質量の30~45%の真水を加え、15分間~25分間撹拌して当該材料に充分かつ均一に水分を吸収させる小麦湿潤と、
ステップ(3):ステップ(2)で処理された材料をスチーミングして、滅菌するスチーミング滅菌と、
ステップ(4):ステップ(3)で得られた材料を40℃未満の温度に下げた後、活性化された菌種を105~107CFU/mLの接種量で接種する接種と、
ステップ(5):発酵と、を含む。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記ステップ(5)の発酵は、以下のステップa)~d)を含む:
a)胞子発芽期:麹を皿へ供給してから6時間後、品温を34~35℃程度になるまでゆっくり上昇させ、自己制御モードを開始し、毎回5~10分間、2時間間隔で、均一な吹き抜けとなるように小風量で間欠的に通風することで、品温を32℃まで下げる。
b)菌糸成長期:間欠的に3~5回通風した後、菌糸が成長し始め、品温が35℃以上に上昇して麹が固結し始めた時、連続的に通風して品温を35±2℃に維持する。
c)菌糸繁殖期:接種してから12時間後、品温が速やかに上昇する場合、第一回の固結の状況に応じて麹を切り返し、切り返し前は先ず測温プローブを上げ、切り返し機を起動した後は、麹を平らに広げ、測温プローブを下ろし、通風及び噴霧システムを起動する。
d)麹について1回目の切り返しを行った返後、品温を36~37℃の間に保ち、スムーズな通風及び噴霧を保持し、約20時間後、目視で麹が再び固結して白くなったとき、温度を37℃以下に制御し、麹について2回目の切り返しを行いし、その後、品温を35±2℃に制御する。
【0017】
本発明の第5の目的は、前記菌株S.jiangxiensis J3の純粋種の麦麹の調製方法、及び、食品発酵、タバコ又は飼料の調製における、当該調製方法の使用を提供することにある。
【0018】
本発明の一実施形態において、前記使用は、発酵食品の分野での使用を意味する。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記使用は、発酵食品、飲料又は調味料の調製における使用である。
【0020】
本発明の一実施形態において、前記食品は、魚類の発酵食品又は半発酵食品を含む。ただし、これらに限定されていない。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記飲料は、黄酒又は料理酒を含む。ただし、これらに限定されていない。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記調味料は、食酢を含む。ただし、これに限定されていない。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記使用は、菌株を用いて純粋種の麦麹を調製し、それを酒の醸造用原料と混合した後、発酵させることである。前記発酵食品は、黄酒、料理酒、食酢、魚類、チーズ等を含む。ただし、これらに限定されていない。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記方法は、発酵槽において、純粋種の麦麹を10~16%の接種量で、米飯、酒母などの原料と混合した後、発酵させることである。発酵は伝統的な発酵プロセスを採用する。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記黄酒の発酵は、以下のステップを含む。
ステップa)酵母の活性化培養:YPD培地に酵母を接種し、30℃、150r/min(分)の条件下で24時間活性化培養を行う。
ステップb)酒母の調製:蒸し米飯を600g取り、それに1600mLの真水、60gの生麦麹、800U/gの米飯用糖化酵素を加え、糖化温度を55~65℃、糖化時間を3~4時間に制御しながら糖化させ、糖化終了後、見かけ糖度が12°Bx以上になったとき、115℃で15分間滅菌し、その後、24~31℃に冷却し、ステップa)で培養して熟成させた酵母培養液を5%の接種量で接種し、30℃を超えない培養温度下で、150r/minで18~24時間培養し、熟成した後、酒母を得る。
ステップc)伝統的な黄酒発酵の原料配合に従って、麦麹の添加量40~50g/Lにて、供料及び発酵を行う。最初の4日間では、温度を28~30℃に制御しながら、毎日、少なくとも一回加水し、最初に加水する時間を8~10時間とし、4日間発酵することで、前発酵段階を行い、後発酵段階では、温度を13~15℃とし、毎日、一回攪拌して加水し、発酵を10~15日続ける。
【0026】
本発明の一実施形態において、前記料理酒の調製方法は以下の通りである。Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を黄酒の発酵に用い、得られた黄酒に質量%で5~15%の食塩を加え、85~100℃で滅菌し、熱間充填する。
【0027】
本発明の一実施形態において、前記食酢の調製方法は以下の通りである。大糠、ふすま、黄酒を質量比で、1:4:10で攪拌して均一に混合し、5%の酢もろみ()を接種し、接種した後、最初の2日間は、毎日、材料の表面から酢もろみを切り返し、35~42℃の温度を維持する。6~8日目になると、材料の底部に至るまで切り返す。8~12日目は、毎日、底部から酢もろみを切り返して温度を自然に低減させる。酢もろみから分離して生酢を得て、85℃で30分間滅菌した後、12ヶ月間熟成させる。
【0028】
本発明の一実施形態において、前記白酒は、二次発酵法により調製される。第1回目の発酵:ソルガムを蒸した後、冷却し、麹菌の種子液を接種し、25~28℃で20~24時間培養し、もみ殻、大麹、ふすま、Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を含む純粋種の麦麹、醸造用酵母の種子液を添加し、少なくとも30日密封して発酵させた後、酒を蒸す。第2回目の発酵:蒸した原料に中温の大麹を加え、濃度が1010~1012cfu/mLである醸造用酵母の種子液を接種し、12~15日間発酵を続けた後、酒を蒸す。
【0029】
本発明の一実施形態において、発酵した臭いケツギョを調製する方法は、以下のステップを含む:
(1)試料の下処理:ケツギョの内臓を除去し、3kg分を秤量する。
(2)発酵液の調製:ケツギョと同質量の飲用水を100%とし、それに6%の塩、1%のネギ、0.6%のショウガ、0.1%のスターアニス、0.05%のアニス、0.05%のクミン、0.01%のトウガラシ、300000Uの中性プロテアーゼを加え、均一に混合して発酵液を得る。
(3)接種:ステップ(2)の発酵液に、活性化されたSaccharopolyspora.jiangxiensis J3菌種を10%の接種量、菌液濃度107cfu/mLで接種する。
(4)発酵:ステップ(3)の発酵液にケツギョを浸し、最上層を石で押し固め、20℃で6日間発酵させ、臭いケツギョを得る。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記チーズの調製方法は以下の通りである。殺菌された牛乳に、前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3又は前記発酵剤を添加して酸性化した後、凝乳酵素を添加して凝乳し、チーズ凝塊を得た後、チーズ凝塊の表面にSaccharopolyspora.jiangxiensis J3をスプレーし、培養して熟成させる。
【0031】
本発明の一実施形態において、前記タバコは、前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3又は発酵剤をタバコ葉の表面にスプレーし、30~37℃、70~80%の湿度という条件下で発酵させることにより得られる。
【0032】
本発明の一実施形態において、前記飼料は、前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3又は発酵剤を、米ぬか、ストロー及び/又は豆粕を含む混合物に接種し、発酵させることにより得られる。
【0033】
本発明の第6の目的は、魚類発酵、醸造黄酒、料理酒、食酢、チーズ、タバコ中の生体アミンの低減における、前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3の使用を提供することである。
【0034】
本発明の一実施形態において、前記生体アミンは、チラミン、ヒスタミン、プトレシン、カダベリンを含む。ただし、これらに限定されていない。
【0035】
本発明の一実施形態において、前記醸造黄酒、料理酒及び食酢は、前記Saccharopolyspora.jiangxiensis J3を用いて純粋種の麹を調製し、それを酒類及び食酢の発酵に供してなるものである。
【0036】
(本発明に係る有利な効果)
(1)本発明に係る菌株は、食品の正常な発酵に影響を与えることなく、食品発酵系に適用される。
(2)本発明に係る菌株を用いて調製された純粋種の麦麹は、黄酒の発酵に適しており、アルコールの生産率を向上するだけでなく、黄酒中のアミノ酸の含有量を高めることができる。純粋種のS.jiangxiensis J3を用いてなる発酵黄酒中のアミノ酸の含有量は、対照群と比べて有意な差がない。一方、複合菌剤を添加してなる発酵黄酒中のアミノ酸の含有量は最も高い。また、いずれの菌株についても、その添加が伝統的な黄酒の風味に与える目立った影響はない。S.jiangxiensis J3を添加した試料群は、その生体アミンの含有量が対照群と比べて35.09%低減し、黄酒中のアミノ酸の含有量及び栄養価が向上したため、黄酒中のアミノ酸の含有量及び揮発性物質の含有量を増加させて黄酒の品質を向上させるという目的は達成できた。
(3)S.jiangxiensis J3による生体アミンの生成量は2.5mg/L未満と、生体アミンの検出量が極めて少なく、生体アミンはほとんど生成されていない。S.jiangxiensis J3の、チラミンに対する分解率は81.55%に達し、S.jiangxiensis J3の、ヒスタミンに対する分解率は100%に達し、S.jiangxiensis J3の、プトレシンに対する分解率は51.8%に達し、S.jiangxiensis J3の、カダベリンに対する分解率は40.01%に達し、総生体アミンに対する分解率は69.09%に達した。これは、いずれの菌株も、生体アミンを低減する良好な能力を有していることを意味する。
(4)S.jiangxiensis J3は、生体アミンを低減する効果を有し、当該S.jiangxiensis J3を黄酒の発酵に用いる場合、S.jiangxiensis J3を添加し発酵して得た黄酒中の生体アミンの含有量は16.88±1.41mg/Lであり、対照群に比べて36.90%低減した。S.jiangxiensis J3を添加して得た臭いケツギョ中の生体アミンの含有量は、対照群と比べて23.24%低減した。S.jiangxiensis J3を添加して得た料理酒中の生体アミンの含有量は、対照群と比べて18.91%低減し、S.jiangxiensis J3を添加して得た食酢中の生体アミンの含有量は、対照群と比べて27.61%低減した。S.jiangxiensis J3を添加して得たチーズ中の生体アミンの含有量は、対照群と比べて13.33%低減した。
(5)S.jiangxiensis J3の複合菌剤は、生体アミンを低減する効果を有し、当該S.jiangxiensis J3を黄酒の発酵に用いる場合、複合菌剤Mixを添加し発酵して得た黄酒中の生体アミンの含有量は15.57±0.44mg/Lであり、対照群と比べて41.79%低減した。
(6)S.jiangxiensis J3は、品質向上及び損害低減の効果を有し、当該S.jiangxiensis J3をタバコの発酵に用いる場合、S.jiangxiensis J3を添加し発酵して得たタバコ葉中の有害物質である、タール、HCN、フェノール、NH3、及び亜硝酸塩の含有量は、対照群と比べてそれぞれ32.65%、17.55%、17.69%、25.36%及び29.17%低減した。
(7)S.jiangxiensis J3は、栄養転化率を高める性能を有し、当該S.jiangxiensis J3を飼料の発酵に用いる場合、対照群と比べて、S.jiangxiensis J3を添加し発酵して得た飼料中の有機酸の含有量は、37.26%を向上し、アミノ酸の含有量は18.57%を向上し、粗タンパク質の含有量は23.41%を向上した。
【0037】
(生物材料の寄託)
Saccharopolyspora jiangxiensis J3は、分類としてSaccharopolyspora jiangxiensis J3と命名され、2020年4月30日にChina Center for Type Culture Collectionに寄託された。その保存所の住所は中国武漢市武漢大学であり、受託番号はCCTCC NO:M 2020104である。
Saccharopolyspora hirsuta J2は、分類としてSaccharopolyspora hirsuta J2と命名され、2020年4月30日にChina Center for Type Culture Collectionに寄託された。その保存所の住所は中国武漢市武漢大学であり、受託番号はCCTCC NO:M 2020103である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】Saccharopolyspora jiangxiensis J3の生育系を示すダイヤグラムである。
【
図2】黄酒の発酵過程における物理的・化学的指標の変化を示すグラフであり、(A)アルコール度、(B)還元糖、(C)滴定酸、(D)アミノ酸態窒素をそれぞれ示す。
【
図3】黄酒の発酵サンプル中の風味物質における主成分に対する分析を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(黄酒の物理的・化学的指標の測定)
アルコール度、アミノ酸態窒素及び総酸の測定は中国国家標準GB/T 13662-2018に従って測定した。風味物質における生体アミンの含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)を用いて測定した。還元糖の含有量の測定はDNS法を用いた。
【0040】
(実施例1:Saccharopolyspora jiangxiensis J3のスクリーニング及び同定)
(1)試料の採取及び前処理
麦麹の試料は浙江省紹興市にある黄酒工場から採集し、採集した麦麹を密閉した無菌ビニール袋に置いて4℃で保存した。麦麹を5g秤量して50mLの遠沈管に入れた。当該遠沈管に蒸留水を30mL添加し、30℃のシェーカーインキュベーターに入れて30分間インキュベートした。
【0041】
(2)菌株のプレート・スクリーニング
放線菌のスクリーニング培地:硝酸カリウム 1.0g/L、リン酸二水素カリウム 0.5g/L、硫酸マグネシウム 0.5g/L、硫酸第一鉄 0.01g/L、塩化ナトリウム 0.5g/L、可溶性デンプン 20.0g/L、寒天 15.0g/L、pH7.2~7.4(25℃)。
無菌の操作環境下で、試料1mLを滅菌ピペットで吸引して15mLの滅菌遠沈管に入れ、10mLになるまで滅菌水を加えて十分に混合し、10―1の均質液試料を調製した。滅菌ピペットを用いて、10―1の均質液試料を1mL吸引して15mLの滅菌遠沈管に入れ、10mLになるまで滅菌水を加えて十分に混合し、10ー2の均質液試料を調製した。上記の操作により、10―1~10―6の十倍漸増シリーズとして麦麹、米漿水、発酵もろみの希釈均質液を作製した。
各希釈度にて、麦麹、発酵もろみ、米漿水の菌液100μLをそれぞれ吸い取って、放線菌のスクリーニング培地に塗布し、28℃で1~7日間培養した。コロニーの密度が適切なプレート上で、乳白色で、薄く、隆起又は凸面を有し、ややしわを呈する単一のコロニーを選別し、放線菌のスクリーニング培地に画線接種し、繰り返して画線することで純コロニーを特定し、スクリーニングした菌株を保存した。
【0042】
(3)菌株の同定
スクリーニングされた菌株のゲノムを抽出し、これに対して16S rDNA増幅の配列決定を行った。
PCR増幅プライマー27F(5’―AGAGTTTGATCCTGGCTCAG―3’)及び1492R(5’―GGTTACCTTGTTACGACTT―3’
PCR増幅系(50μL):2×Taq PCR Master Mixを25μL、フォワードプライマー及びリバースプライマーをそれぞれ1μL、鋳型を1μL、滅菌水を22μL加え、50μLになるまで補足したもの。
PCR増幅プロセス:94℃で3分間予変性させ、95℃で30秒間変性させ、58℃で30秒間アニールし、72℃で2分間伸長させ、合計で35回サイクル行い、最後に72℃で8分間伸長させた。
PCR産物を、1%のアガロースを用いるゲル電気泳動により測定し、遺伝子配列決定業者に遺伝子配列の決定を依頼した。その16S rDNA結果は配列番号1で示されるとおりである。
【0043】
返送された配列決定の結果(配列番号1で示されるもの)に基づき、NCBIのオフィシャルウェブサイト上でBLAST配列比較を行い、得られた16S rDNA配列を用いてBLAST配列比較を行い、生育系の解析を行った。その結果は
図1に示す。菌株J3のヌクレオチド配列は、S.jiangxiensis(GenBank類似配列番号:MG255179.1)との相同性が98.84%以上であり、当該菌株をS.jiangxiensis J3株と命名した。
【0044】
(4)菌株の生体アミン代謝能の解析
菌株の活性化:保存されたS.jiangxiensis J3を10%の接種量で放線菌の液体培地に接種し、30℃のシェーカーインキュベーターで48時間培養し、一次種子液を得た。活性化された菌株を10%の接種量で放線菌の液体培地に接種し、150r/min、30℃という条件下、シェーカーインキュベーターで48時間培養した。
【0045】
試料の前処理:生体アミンの産生を測定する培地及び生体アミンの分解を測定する培地に、菌種をそれぞれ接種し、28℃でシェーカーインキュベーターを用いて5日間培養した後、12000r/minで5分間遠心分離して上清を収集した。
【0046】
放線菌の液体培地:硝酸カリウム 1.0g/L、リン酸二水素カリウム 0.5g/L、硫酸マグネシウム 0.5g/L、硫酸第一鉄 0.01g/L、塩化ナトリウム 0.5g/L、可溶性デンプン 20.0g/L、pH7.2~7.4(25℃)。
【0047】
生体アミンの産生を測定する培地:放線菌の液体培地に、L-チロシン 0.4g/L、L-ヒスチジン 1g/L、L-リジン 1g/L、L-オルニチン 1g/L、5-りん酸ピリドキサール 0.05g/Lを添加して得たものである。
【0048】
生体アミンの分解を測定する培地:放線菌の液体培地に、50mg/Lの生体アミン(ヒスタミン、チラミン、カダベリン、プトレシン、スペルミン、スペルミジン、トリプタミン、β―フェニルエチルアミンを含む)を加え、pHを6.0~6.2に調整して得たものである。
【0049】
生体アミンの含有量の測定方法:被測定溶液を正確に1mL量り取り、それを15mLの遠沈管に入れ、NaHCO3の飽和溶液を1mL加えて均一に混合し、塩化ダンシル(5mg/mLアセトン)試薬を2mL加えて均一に混合した;その後、65℃の恒温水浴中に置いて暗いところで30分間誘導体化させ、室温下で静置した;その後、0.5mLの塩化ナトリウムの飽和溶液を加えて均一に混合した後、エチルエーテルを5mL加え、ボルテックスで20秒間振とうさせ、静置して分層した後、上層の有機相は15mLの遠沈管に移し、下層の水相はもう1回抽出した;2回分の抽出液を混合し、50℃の水浴下、窒素で吹き乾かした;アセトニトリルを1mL加え、振とう下で均一に混合して残留物を溶かし、0.22μmのろ過膜を通過させ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定する。
【0050】
S. jiangxiensis J3の、生体アミン低減効果に対する解析:生体アミンの前駆体が存在している培地中で培養した後のS. jiangxiensis J3による各類の生体アミンの産生量は、いずれも2.5mg/L未満であり、検出された生体アミンの量は極めて少なかった。これは、生体アミンの含有量がほとんど検出されていないことを示した。このため、生体アミンは産生されていないと考えられる。S.jiangxiensis J3のチラミンに対する分解率は81.55%に達し、S.jiangxiensis J3のヒスタミンに対する分解率は100%に達し、S.jiangxiensis J3のプトレシンに対する分解率は51.8%に達し、S.jiangxiensis J3のカダベリンに対する分解率は40.01%に達し、総生体アミンに対する分解率は69.09%に達した。これは、当該菌株が、生体アミンを低減する良好な能力を有していることを意味する。
【0051】
(実施例2:S.jiangxiensis J3の菌種の活性化培養)
放線菌の液体培地:硝酸カリウム 1.0g/L、リン酸二水素カリウム 0.5g/L、硫酸マグネシウム 0.5g/L、硫酸第一鉄 0.01g/L、塩化ナトリウム 0.5g/L、可溶性デンプン 20.0g/L、pH7.2~7.4(25℃)。
PDA培地:ジャガイモ粉 6.0g/L、グルコース 20.0g/L、寒天 20.0g/L、pH5.4~5.8であり、121℃でオートクレーブにより15分間滅菌した上、固体培地を添加したものである。
MRS培地:ビーフペースト 10g/L、ペプトン 10g/L、酵母ペースト 0.5g/L、グルコース 20g/L、Tween80 0.10g/L、酢酸ナトリウム 5g/L、リン酸水素二カリウム 2g/L、クエン酸水素二アンモニウム 2g/L、硫酸マグネシウム 0.58g/L、硫酸マンガン 0.28g/L。
【0052】
実施例1でスクリーニングされたS.jiangxiensis J3を10%の接種量で放線菌の液体培地に接種し、30℃のシェーカーインキュベーターで48時間培養し、一次種子液を得た。活性化された菌株を10~15%の接種量で放線菌の液体培地に接種し、150r/min、30℃という条件下、シェーカーインキュベーターで48時間培養した。これにより、菌濃度のオーダーが105~107cfu/mLである菌液を得、それを培養して熟成させた後、純粋種の麦麹の調製に用いた。
【0053】
保存されたAspergillus flavus及びAspergillus oryzaeをPDAプレートに接種し、28℃で3~5日間培養した。その後、胞子液を滅菌水で洗浄し、再びPDAナス瓶に移して28℃で3~5日間培養した。これにより、菌濃度のオーダーが105~107cfu/mLである菌液を得、当該胞子を培養して熟成させた後、純粋種の麦麹の調製に用いた。
【0054】
Lactobacillus plantarumを10%の接種量でMRS培地に接種し、37℃の恒温下で、24時間嫌気培養し、一次種子の培養液を得た。活性化された種子液を再び10%の接種量でMRS液体培地に接種し、37℃の恒温下で、24時間嫌気培養し、菌濃度のオーダーが105~107cfu/mLである菌液を得、菌種を培養して熟成させた後、純粋種の麦麹の調製に用いた。
【0055】
(実施例3:サッカロポリスポラの純粋種の麦麹の調製)
ステップ(1)小麦破砕:1粒につき3~5フレークとなり少量の粉末が生じる程度に、小麦粒の組織を破砕し、デンプンを露出させた。
ステップ(2)小麦湿潤:ステップ(1)で処理された材料に、30~45%の真水を加え、20分間~25分間撹拌して当該材料に充分にかつ均一に水分を吸収させた。
ステップ(3)スチーミング滅菌:ステップ(2)で処理された材料を121℃、30分間滅菌した。
ステップ(4)接種:ステップ(3)で得られた材料の温度を36℃に下げた後、活性化された菌種を、菌液濃度105~106CFU/mL、接種量4‰~20%にて接種した。
ステップ(5):麹を皿へ供給した後、適当な品温及び室温を維持して6時間静置培養し、その後、以下のステップa)~d)で処理した。
【0056】
a)胞子発芽期:麹を皿へ供給してから6時間後、品温を34~35℃程度になるまでゆっくり上昇させ、自己制御モードを開始し、小風量で間欠的に通風することで、品温を32℃まで下げた。なお、通風は、均一に吹き抜けとなるように、2時間間隔で、毎回5~10分間行った。
b)菌糸成長期:間欠的に3ー5回通風した後、菌糸が成長し始め、品温が35℃以上に上昇して麹が固結し始めた時、連続的に通風して品温を35℃程度に維持した。
c)菌糸繁殖期:接種してから12時間後、品温が速やかに上昇する場合、第一回の固結の状況に応じて麹を切り返し、切り返し前は、先ず測温プローブを上げ、切り返し機を起動した後は、麹を平らに広げ、測温プローブを下ろし、通風及び噴霧システムを起動した、
d)麹について1回目の切り返しを行った後、品温を36~37℃の間に保ち、スムーズな通風及び噴霧を保持し、約20時間後、目視で麹が再び固結して白くなったとき、温度を37℃以下に制御し、麹について2回目の切り返しを行い、その後、品温を35℃程度に制御した。
【0057】
(6)出麹:75~100時間培養した後、麦麹を4~7℃の冷凍庫に入れて貯蔵しておいた。
【0058】
以上の方法により、菌体のオーダーが1015CFU/gであるS.jiangxiensis J3の純粋種の麦麹、Saccharopolyspora hirsuta J2の純粋種の麦麹をそれぞれ調製した。
【0059】
(実施例4:サッカロポリスポラ麦麹の黄酒発酵における使用)
(1)本実施例で選択した伝統的な黄酒発酵の原料割合(発酵容積1リットル当たり)としては、蒸し米飯は、500gであり、真水は417mLであり、酒母は38gである。
【0060】
(2)伝統的な黄酒醸造の過程
ステップa)酵母の活性化培養:無菌操作台でグリセリン貯蔵管中の酵母菌をYPD培地に接種し、30℃、150r/minの条件下で24時間活性化培養を行った後、調製しておいた酒母に接種し、接種済の酵母を30℃、150r/minの条件下で18時間~24時間培養を行い、保管した。
ステップb)酒母の調製:蒸し米飯を600g取り、それに1600mLの真水、60gの生麦麹、800U/gの米飯用糖化酵素を加え、糖化温度を55~65℃、糖化時間を3~4時間に制御しながら糖化させ、糖化終了後、見かけ糖度が12°Bx以上になったとき、115℃で15分間滅菌し、その後、24~31℃に冷却した。熟成した酵母種子培養液を5%の接種量で接種し、30℃を超えない培養温度下で、18~24時間培養し、培養して熟成した後、酒母を得た。
ステップc)ステップ(1)に記載の伝統的な黄酒発酵の原料配合に従って供料及び発酵を行った。
【0061】
実験グループとしては、サッカロポリスポラのオーダーが1×1015CFU/gである純粋種の麦麹45.3gを用いた。対照グループとしては、生麦麹39.3g、熟した麦麹6.0gを用いた。
【0062】
最初の4日間は温度を28~30℃に制御しながら、4日間発酵する前発酵段階である。最初の4日間では、毎日、少なくとも一回加水し、最初に加水する時間を8~10時間とする。後発酵段階では、温度を13~15℃とし、毎日、一回攪拌して加水し、発酵を10~15日続ける。
【0063】
対照グループ(TF Control)としては、本実施例における(3)に係る純粋種の麦麹のかわりに、工場からサンプリングした生麦麹 39.3g/L及び熟した麦麹 6.0g/Lを用いた。
【0064】
複合菌剤グループ(Mix)としては、菌体数量1:1の割合に従って、Saccharopolyspora hirsuta J2の純粋種の麦麹及びSaccharopolyspora jiangxiensis J3の純粋種の麦麹を合計で45.3g添加した。
【0065】
(黄酒発酵過程における物理的・化学的指標の変化)
サッカロポリスポラの黄酒発酵における作用をさらに検証するために、伝統的な麦麹と純粋種の麦麹との発酵過程における物理的・化学的指標(アルコール度、還元糖、滴定酸、アミノ酸態窒素)の変化を比較した(
図2参照)。麦麹の発酵グループは、下記5グループに分けられ、それぞれ、A.flavus(黄酒発酵における常用菌)、A.oryzae(日本酒醸造における常用菌)、Mix(Saccharopolyspora jiangxiensis J3とSaccharopolyspora hirsuta J2とを混合した麦麹発酵グループ)、S.jiangxiensis J3グループ、及びL.plantarumグループである。これらの5種類の純粋種の麦麹は、本実施例のステップ(2)におけるステップa)~c)に係る伝統的な醸造方法を用いてそれぞれ醸造酵母とともに発酵させた。発酵終了までの間は、L.plantarumグループを除くその他の各グループに係る酒精度、酸性度、アミノ酸態窒素の含有量は、すべて黄酒の中国国家標準に達した。L.plantarumグループでは、滴定酸の含有量が17.50g/Lまで急速に増加し、試料は明らかな酸敗を呈した。
【0066】
(黄酒発酵試料中のアミノ酸含有量)
HPLC方法を用いて発酵黄酒中のアミノ酸含有量を分析した結果、Mix、A.flavus及びA.oryzaeの実験グループではアミノ酸含有量は大差がなかったが、対照グループ(TF Control)に比べる場合、いずれも顕著に高かった。S.jiangxiensis J3を添加した実験グループでは、総アミノ酸含有量は、対照グループとの差が低いものの、一部のアミノ酸含有量が対照グループを有意に上回った。
【0067】
【0068】
(3)サッカロポリスポラの、生体アミンを低減する効果の分析
S.jiangxiensis J3及び複合菌剤(Mixグループ)の、生体アミンを低減する効果の分析は、以下の通りである。発酵して得られた黄酒について、HPLC方法を用いてその生体アミンの含有量を測定した結果、S.jiangxiensis J3を添加した試料グループでは、対照グループと比べて35.09%低減し、Saccharopolyspora hirsuta J3を添加した試料グループでは、対照グループと比べて21.71%低減し、S.jiangxiensis J3とSaccharopolyspora hirsuta J2とを添加した複合菌剤(Mixグループ)では、対照グループと比べて42.17%低減した。
【0069】
(4)純粋種の発酵と伝統的な発酵との風味分析
主成分分析法を用いて純粋種の発酵試料と伝統的な発酵試料との風味成分の変化及び類似性を分析した。すべての試料のbiplot分析の結果、最初の2つの主成分の分散累積寄与率は83.6%であり、これはほとんどの発酵試料の風味の違いを解釈しうる結果であった。
図3から、伝統的な発酵グループはMixグループとS.jiangxiensis J3グループと同じ区分に属し、麹菌(A.flavus及びA.oryzae)グループ及びL.plantarumグループと明らかに分離したことが分かった。これは、サッカロポリスポラがほとんどの風味物質の合成に関与し、黄酒発酵において主導的な役割を果たしていることを意味する。
【0070】
(実施例5:サッカロポリスポラ菌剤の黄酒発酵における使用)
実施例4に係る伝統的な黄酒の供料配合に従って、黄酒発酵を行った。Mixグループ及びS.jiangxiensis J3グループをそれぞれ実験グループとし、それらの麦麹の接種率をいずれも10%とした。ただし、それらの相違点としては、S.jiangxiensis J3グループでは、S.jiangxiensis J3グループの純粋種の麦麹を接種し、Mixグループでは、Saccharopolyspora jiangxiensis J3とSaccharopolyspora hirsuta J2との混合菌液を用いて実施例3の方法に従って調製された複合菌種の麦麹を接種した。実施例4に従って、黄酒の醸造プロセス及び指標測定方法を実施した。
【0071】
(1)黄酒の基本的な物理的・化学的指標への影響
表2から、発酵終了後の各グループのアルコール度は14%v/v程度に達し、すべての試料の還元糖、総酸、アミノ酸態窒素の含有量はいずれも4.52~5.03g/Lの範囲にあり、いずれも、黄酒に求められる物理的・化学的要件を満たしたことが分かった。有意性の解析によると、Mixグループ及びS.jiangxiensis J3グループのアルコール度、総酸の含有量、アミノ酸態窒素の含有量は、対照グループに比べ、いずれも有意の差が表れなかった(P>0.05)ことが示された。すなわち、S.jiangxiensis J3の接種は黄酒発酵過程における重要な物理的・化学的指標にほとんど影響せず、黄酒発酵過程に悪影響を与えないことを意味する。
【0072】
【0073】
(2)サッカロポリスポラの、黄酒における生体アミン含有量への影響
発酵終了後、複合菌剤Mixグループ及びS.jiangxiensis J3グループを接種した試料の生体アミン含有量は、それぞれ15.57±0.44mg/L及び16.88±1.41mg/Lであり、いずれも対照グループ(26.75±2.39mg/L)より低かった。S.jiangxiensis J3グループは、対照グループと比べて36.90%低下した。これは、複合菌剤Mix及びS.jiangxiensis J3のいずれも、生体アミンの含有量を低減させる性能を有していることを意味する。
【0074】
以上のことから、黄酒発酵系に、複合菌剤Mix及びS.jiangxiensis J3を接種したことは、黄酒の正常な品質へ影響を与えていないとともに、総アミンに対する分解率がそれぞれ、対照グループの41.79%及び36.90%に達したことが分かった。このことからわかるように、複合菌剤Mix及びS.jiangxiensis J3のいずれかの直接添加には、黄酒製造や黄酒における生体アミン含有量のコントロールへの応用可能性があり、特に複合菌剤Mixは、黄酒における生体アミンの分解効果がより良い。
【0075】
(実施例6:S.jiangxiensis J3の、発酵魚における生体アミン含有量を低減するための使用)
菌種の活性化は、実施例1に係る方法により行った。
【0076】
中性プロテアーゼを用いて臭いケツギョを発酵させる具体的なプロセスは、以下の通りである:
(1)試料前処理:ケツギョの内臓を除去し、3kgの重量を量った。
(2)発酵液の調製:ケツギョと同質量の飲用水を100%とし、それに6%の塩、1%のネギ、0.6%のショウガ、0.1%のスターアニス、0.05%のアニス、0.05%のクミン、0.01%のトウガラシ、300000Uの中性プロテアーゼを加え、均一に混合して発酵液を得た。
(3)接種:発酵液を2部に分け、一部の発酵液に、活性化されたSaccharopolyspora.jiangxiensis J3菌種を10%の接種量で、菌液濃度107cfu/mLで接種したのに対し、もう一部は、接種しなかった。
(4)発酵:ステップ(3)の接種された後の発酵液にケツギョを浸し、最上層を石で押し固め、20℃で6日間発酵させ、臭いケツギョを得た。
【0077】
(生体アミンの測定方法)
ミンチにした魚肉試料を5.0g秤量して50mL遠沈管に入れ、20mLの5%トリクロロ酢酸を加えて超音波処理を30分間行った後、50mLの栓付けの遠沈管に移し、6,000r/minで10分間遠心分離し、その上澄み液は50mLのメスフラスコに移し、その残渣は20mLの上記溶液を用いてさらに1回抽出した。上澄み液を混合し目盛りまで希釈した後、上澄み液を正確に1mL秤量し、それを15mLの遠沈管に入れ、NaHCO3の飽和溶液を1mL加えて均一に混合した。塩化ダンシル(5mg/mLアセトン)試薬を2mL加えて均一に混合した後、65℃の恒温水浴鍋に置いて暗いところで30分間誘導体化させ、室温下で静置した。その後、0.5mLの塩化ナトリウムの飽和溶液を加えて均一に混合した後、エチルエーテルを5mL加え、ボルテックスで20秒間振とうし、静置して分層した。その後、上層の有機相は15mLの遠沈管に移し、下層の水相はもう1回抽出した。2回分の抽出液を混合し、50℃の水浴下、窒素で吹き乾かした。
【0078】
アセトニトリルを1mL加え、振とう下で均一に混合して残留物を溶かし、0.22μmのろ過膜を通過させ、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
【0079】
発酵終了後、複合菌剤Mixにより強化された臭いケツギョにおける生体アミン含有量は、対照グループと比べて20.87%低減し、S.jiangxiensis J3により強化された臭いケツギョにおける生体アミン含有量は、対照グループと比べて23.24%低減した。
【0080】
(実施例7:S.jiangxiensis J3の、料理酒における生体アミン含有量を低減するための使用)
実施例1に係る方法により生体アミン含有量を測定した。
【0081】
実施例4に係る醸造方法に従って純粋種の発酵黄酒を得た。当該発酵黄酒に質量%で10%食塩を加え、滅菌機により85℃で30分間、滅菌させ、熱間充填した。
【0082】
HPLC法を用いて料理酒における生体アミン含有量を測定し、菌株の、料理酒における生体アミン含有量を低減する効果を分析した。結果、複合菌剤Mixグループ及びS.jiangxiensis J3グループは、対照グループと比べてそれぞれ23.16%及び18.91%低減した。
【0083】
(実施例8:S.jiangxiensis J3の、食酢における生体アミン含有量を低減するための使用)
実施例4に係る醸造方法に従って純粋種の発酵黄酒を得、それを酢酸の発酵原料とした。実施例1に係る方法により生体アミン含有量を測定した。
【0084】
酢酸の発酵は、固体発酵法を用いた。具体的には、大糠、ふすま、黄酒を質量比で、1:4:10で攪拌して均一に混合し、5%の酢もろみを接種した。接種後、最初の2日間は、毎日、材料の表面から酢もろみを切り返し、35~42℃の温度を維持した。6~8日目になると、材料の底部に至るまで切り返した。8~12日目になると、毎日、底部から酢もろみを切り返して温度を自然に低減させた。酢もろみから分離して生酢を得て、85℃で30分間滅菌した後、12ヶ月間熟成させた。充填する前に、高温下で滅菌させた。その後、熱間充填した。
【0085】
複合菌剤Mix及びS.jiangxiensis J3の、生体アミン含有量を低減する効果を分析した結果、得られた固体発酵により醸造食酢における酢酸の含有量は、いずれも55g/Lであった。測定した試料における生体アミン含有量は、複合菌剤Mix及びS.jiangxiensis J3を添加した試料グループでは、対照グループと比べてそれぞれ25.08%及び27.61%低減した。
【0086】
(実施例9:S.jiangxiensis J3の、白酒における生体アミン含有量を低減するための使用)
白酒醸造に用いるサッカロポリスポラの純粋種の麦麹を、実施例3に係る麦麹の調製方法に従って調製した。実施例1に係る方法により生体アミン含有量を測定した。
【0087】
白酒醸造の方法は、二次発酵法を用いた。第1回目の発酵:ソルガムを蒸した後、風冷して25℃の温度に下げ、4%の麹菌の種子液を添加し、28下℃で24時間培養した。もみ殻10%、大麹15%、ふすま8%、実施例3で調製された純粋種の麦麹5~9%を添加し、1%の割合で醸造用酵母の種子液を接種し、その後、密封して30日発酵させた後、酒を蒸した。第2回目の発酵:中温の大麹10%を添加し、1%の割合で醸造用酵母の濃度1010~1012cfu/mLの種子液を接種し、12~15日間発酵を続けた後、酒を蒸した。
【0088】
蒸留後の白酒を60%(V/V)のアルコール度に調整し、S.jiangxiensis J3の、生体アミン含有量を低減する効果を分析した。調整後の試料における生体アミン含有量を測定したところ、S.jiangxiensis J3を添加した試料グループは、その生体アミン含有量が低減した。
【0089】
(実施例10:S.jiangxiensis J3の、醤油における生体アミン含有量を低減するための使用)
実施例1に係る方法により、菌種の活性化及び生体アミン含有量の測定を行った。醤油は、高塩希釈状態発酵法により醸造した。
【0090】
(1)まず、豆粕と小麦とを1:1の割合で均一に混合し、次いでそれを蒸した。
(2)菌液濃度が105~106cfu/mLのS.jiangxiensis J3の種子液を5‰~10%の割合で添加し、次いで、材料の質量の約1.5~2倍の塩水を添加したことにより、醤油もろみの最終塩分含有量が約18%、水分含有量が65%となるように均一に混合した。
(3)醤油もろみの発酵:発酵の開始温度を14~16℃に制御し、発酵の進行に伴って徐々に温度を約35℃に上昇させた。発酵は約5ヶ月間継続した。
(4)発酵終了後、醤油もろみをプレート&フレーム式フィルタープレスによりプレスして、醤油もろみを除去した。プレス終了後、珪藻土濾過及び膜濾過を行い、沈殿を除去した。濾過して清澄化された醤油を低温殺菌した後、充填した。
【0091】
S.jiangxiensis J3の、生体アミン含有量を低減する効果を分析した。
S.jiangxiensis J3を添加した醤油製品における生体アミン含有量は、対照グループより低減した。
【0092】
(実施例11:発酵剤の調製)
放線菌の液体培地:硝酸カリウム 1.0g/L、リン酸二水素カリウム 0.5g/L、硫酸マグネシウム 0.5g/L、硫酸第一鉄 0.01g/L、塩化ナトリウム 0.5g/L、可溶性デンプン 20.0g/L、pH7.2~7.4(25℃で測定)。
【0093】
実施例1でスクリーニングしたS.jiangxiensis J3を10%の接種量で放線菌の液体培地に接種し、30℃のシェーカーインキュベーターで48時間培養して細胞培養液を得た。細胞培養液を遠心分離し、菌体を収集し、当該菌体へ細胞保護剤を添加した。細胞保護剤には、グリセロール、トレハロース、脱脂粉乳等が含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
(実施例12:S.jiangxiensis J3の、チーズ発酵における生体アミン含有量を低減するための使用)
実施例1に係る方法により、菌種の活性化及び生体アミン含有量の測定を行った。新鮮な生乳に対して均質化処理及び低温殺菌処理を行った後、当該生乳を室温に冷却した。その後、菌体数量の比が1:1である、ブルガリア乳酸菌と植物性乳酸菌との混合菌液(菌液濃度が1×108~109cfu/mLである)を0.1mL/Lで添加し、均一に撹拌し、32~35℃で30分間酸性化した。その後、0.05g/Lの凝乳酵素を添加し、均一に混合して凝乳を形成した後、切断を行い、乳清を排出し、チーズ凝塊を得た。チーズ凝塊の表面に105~106cfu/mLのS.jiangxiensis J3をスプレーし、30~37℃で3~5日間培養し、それを生長させて熟成させ、3.0g/Lの食塩を添加した後、プレス成形を行ってチーズ製品を得た。
【0095】
発酵して得られたチーズ製品を測定した結果、S.jiangxiensis J3を添加したチーズ製品における生体アミン含有量は対照群と比べて13.33%低減した。
【0096】
(実施例13:S.jiangxiensis J3の、タバコ発酵における品質向上及び有害性低減のための使用)
実施例1に係る方法により、菌種の活性化を行った。活性化された菌液を4℃、10,000gで15分間遠心分離し、収集した菌体を無菌水で105~106cfu/mLのS.jiangxiensis J3菌液に調製し、菌液をタバコ葉の表面に均一にスプレーして十分に混合した。また、同量の無菌水で処理したものを対照とした。30~37℃、湿度70~80%の恒温恒湿槽に置いて15日間発酵・培養し、毎日換気を行った。培養終了後、タバコ葉を水分15%未満になるまで乾燥させた。
【0097】
発酵タバコ葉の品質を測定した結果、得られた発酵タバコ葉は、香気成分が大幅に増加し、その他の気体が軽減し、刺激性が弱まった。発酵タバコ葉中の有害成分であるタール、HCN、フェノール、NH3、亜硝酸塩の含有量が、対照グループと比べて、それぞれ32.65%、17.55%、17.69%、25.36%及び29.17%低減した。
【0098】
(実施例14:S.jiangxiensis J3の、飼料の発酵における栄養転化率を高めるための使用)
実施例1に係る方法により、菌種の活性化を行った。米ぬか、ストロー及び豆粕を(1~5):(1~5):2の割合で均一に混合し、粉砕して発酵物を調製した。原料と水との割合が1:0.5~0.9となるように水を加え、菌液濃度が105~106cfu/mLであるS.jiangxiensis J3を10‰~10%の割合で接種し、均一に撹拌し、発酵温度30~40℃、発酵時間4~9日間で自然発酵を行った。発酵終了後、水分含有量が15%未満になるまで乾燥させ、生物発酵飼料を得た。
【0099】
発酵飼料の品質を分析した結果、得られた発酵飼料は、特殊な香気を有し、栄養が豊富であり、アミノ酸がバランスよく含まれており、対照グループと比べて、その有機酸の含有量が37.26%向上し、そのアミノ酸の含有量が18.57%向上し、その粗タンパク質の含有量が23.41%向上している。
【0100】
以上のように、本発明を好ましい実施例により開示したが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。当業者であれば、本発明の主旨及び範囲から逸脱しない限り、様々な変更及び修正を行うことができる。したがって、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲によって定義されるものに基づくべきである。
【配列表】
【国際調査報告】