IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 嘉思特医療器材(天津)股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特表2023-515803骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法
<>
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図1
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図2
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図3
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図4
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図5
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図6
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図7
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図8
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図9
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図10
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図11
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図12
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図13
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図14
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図15
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図16
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図17
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図18
  • 特表-骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/04 20060101AFI20230407BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20230407BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20230407BHJP
   C22C 16/00 20060101ALI20230407BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230407BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230407BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20230407BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20230407BHJP
   B22F 10/00 20210101ALI20230407BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20230407BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20230407BHJP
   B22F 3/11 20060101ALI20230407BHJP
   C22C 1/04 20230101ALI20230407BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230407BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230407BHJP
【FI】
A61L27/04
A61F2/38
A61L27/40
C22C16/00
B22F1/00 R
B22F1/05
C22C1/08 F
B22F5/00 Z
B22F10/00
B22F10/64
B22F3/15 M
B22F3/11 A
C22C1/04 E
B33Y70/00
B33Y10/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549958
(86)(22)【出願日】2021-06-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 CN2021101287
(87)【国際公開番号】W WO2022088704
(87)【国際公開日】2022-05-05
(31)【優先権主張番号】202011191009.7
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522225594
【氏名又は名称】嘉思特医療器材(天津)股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲ロウ▼
(72)【発明者】
【氏名】曹 雨
(72)【発明者】
【氏名】李 建宇
(72)【発明者】
【氏名】張 景康
(72)【発明者】
【氏名】周 紅秀
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
4K018
【Fターム(参考)】
4C081AB03
4C081BA13
4C081BB08
4C081CG08
4C081DA01
4C081DC03
4C081EA04
4C097AA07
4C097BB01
4C097DD09
4C097MM04
4K018AA06
4K018BB04
4K018EA11
4K018FA24
4K018HA10
4K018KA22
4K018KA70
(57)【要約】
【課題】 骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及び製造方法を提供すること。
【解決手段】 骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法を開示する。前記方法は、ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して中間生成物を得、次に熱間静水圧加圧、極低温冷却、及び表面酸化を経て、近位トレイ骨梁層及び遠位トレイ骨梁層を含む脛骨プラトープロテーゼを得ることである。近位トレイ骨梁層の気孔径及び気孔率は、均一に設けられ、遠位トレイ骨梁層の気孔径及び気孔率が領域に分けて設けられ;本発明の脛骨プラトープロテーゼの骨梁トポロジー構造は、3次元で勾配的に分布され、有限要素モデルの64%~72%の領域の微小ひずみが最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値との間にあり、プロテーゼの力学の適合性が向上し、優れた骨の内方成長性を有し;その酸化物層は、オッセオインテグレーション界面の優れた生体適合性、骨の内方成長性及び摩擦界面の超耐摩耗性、低摩耗率を一体的に実現できる。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、不活性ガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)前記第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)前記第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)前記第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、トレイ上面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、及び
5)前記第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧不活性ガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを得るステップ、
を有する骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの製造方法であって、
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの前記第1の中間生成物、前記第2の中間生成物、前記第3の中間生成物、前記第4の中間生成物、前記第5の中間生成物は、前記骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの構造と同じであり;
前記不活性ガスは、ヘリウムガス又はアルゴンガスであり;
前記骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼは、腎臓形トレイ(1)を備え、前記腎臓形トレイの内側に湾曲した箇所の上面にダブテール形凸部(3)が設けられ、前記ダブテール形凸部(3)の2つの斜めの枝部の外側面に後部凹溝(5)が設けられ、前記腎臓形トレイ(1)の前記ダブテール形凸部(3)に対して外向き湾曲部の上面に円弧状凸部(2)が設けられ、前記円弧状凸部(2)の内側面に前部凹溝(6)が設けられ、前記腎臓形トレイの下面の中央にステム(4)が設けられ、前記腎臓形トレイの下面のステム(4)を連結する部分以外の他の部分に骨梁(9)が設けられ、前記骨梁(9)は、近位トレイ骨梁層(21)と遠位トレイ骨梁層(20)とから成り;前記近位トレイ骨梁層(21)の気孔径及び気孔率は、均一に設けられ、前記遠位トレイ骨梁層が3つの領域に分割して設けられ;対応する前記腎臓形トレイの横径(10)は、第1のマーカー(11)及び第2のマーカー(12)によって第1セクション(25)、第2セクション(26)及び第3セクション(27)に分割され、前記第1セクション、前記第2セクション及び前記第3セクションの長さが前記腎臓形トレイの横径の25%~38%:24%~50%:25%~38%の順であり、第1の領域分割線(13)は前記第1のマーカー(11)を通過し、第2の領域分割線(14)が前記第2のマーカー(12)を通過し;前記第1の領域分割線(13)及び前記第2の領域分割線(14)は、直線又は円弧線で、対応する前記腎臓形トレイの前記遠位トレイ骨梁層(20)を内側領域(15)、中間領域(16)及び外側領域(17)に分割し;前記内側領域(15)骨梁の気孔径及び気孔率は、前記外側領域(17)及び前記中間領域(16)の骨梁の気孔径及び気孔率より順次大きい
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmである
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ2)、前記ステップ3)の温度調整は、温度を-120℃~-80℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、次に温度を-40℃~-20℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、さらに温度を4℃~8℃に上げ、一定温度で1時間~3時間保持した後、温度を上げる
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記近位トレイ骨梁層(21)骨梁の気孔径は、0.36mm~0.50mmで、気孔率が55%~65%で、開気孔率が100%で、厚さが0.2mm~1mmである
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記遠位トレイ骨梁層(20)の前記第1の領域分割線(13)及び前記第2の領域分割線(14)が直線の場合、平行又は八字形に配置され;前記第1の領域分割線(13)と前記腎臓形トレイの横径(10)とのなす角度(18)は100°~60°の範囲で、前記第2の領域分割線(14)と腎臓形トレイの横径(10)とのなす角度19は80°~120°の範囲である
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記遠位トレイ骨梁層(20)の前記内側領域骨梁の気孔径は1.00mm~1.10mmで、気孔率が77.6%~85%で、開気孔率が100%であり;前記中間領域骨梁の気孔径は、0.74mm~0.85mmで、気孔率が70.0%~74.7%で、開気孔率が100%であり;前記外側領域骨梁の気孔径は、0.86mm~0.99mmで、気孔率が74.8%~77.5%で、開気孔率が100%で;前記遠位トレイ骨梁層20の厚さが0.5mm~3mmである
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ステムは、支持板が連結され異径管、支持板が連結され、底部が閉鎖された異径管、十字形リブプレート、又は湾曲した十字形リブプレートである
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の方法で製造された
ことを特徴とする骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用インプラント材料の技術分野に関し、特に、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工膝関節全置換術は、末期の膝関節症の効果的な臨床治療法で、傷んだ膝関節組織を人工的に設計された関節プロテーゼで置き換えることで、患者の痛みを和らげ、膝関節機能を回復させ、生活の品質を向上させる。人体の解剖学的構造に対して、膝関節プロテーゼのコンポーネントには、脛骨プラトー、脛骨プラトー、及びインサートが含まれる。医療機器技術の急速な発展及びプロテーゼ製品の安全性と有効性に対する人々の要求が高まり続けることに伴い、膝関節プロテーゼの設計と製造技術には、継続的な最適化と向上が必要であった。
【0003】
現在、臨床応用されている膝関節プロテーゼには、骨セメント固定及び生物学的固定(非骨セメント固定)の2つのカテゴリがある。骨セメント固定型プロテーゼは、関節プロテーゼと骨組織を機械的に固定するため、骨セメントの硬化と充填に依存している。しかし、長年の臨床応用により、骨セメント固定は、骨セメントモノマーの重合熱の放出により、周囲の組織に損傷を与え、骨セメント粒子が血液に入り、又は骨セメント充填時の骨髄腔内圧の上昇により肺塞栓症及び脂肪塞栓症につながることといった多くの安全性及び有効性の問題をもたらす可能性があることが分かっている。
【0004】
生物学的膝関節プロテーゼは、骨セメントによってもたらされる安全性及び有効性のリスクを効果的に排除し、通常、表面の多孔質構造を利用して骨の内方成長を促進し、長期的な安定性が得られる。ただし表面の多孔質構造は、通常サンドブラスト、コーティング、溶融結合などの表面処理スキルで作製されるため、実体との結合強度が低く、脱落しやすく、プロテーゼの寿命を短縮していた。また、これらの多孔質構造は有効な骨の内方成長を実現できず、臨床報告によると、人工膝関節の脛骨プラトーのわずか2%から40%に骨の内方成長があり、強力な生物学的固定を形成することができないことを示している。
【0005】
特許文献1は、EBM電子ビーム溶解技術により、領域分割骨梁構造を備えた脛骨プラトーを3Dプリントし、人体の下肢の力線がずれし、水平方向に受けた力が不均一な場合、不連続媒体による力を伝える能力が異なるため、異なる水平方向の骨梁領域分割トポロジー構造を設計して、脛骨プラトー/骨界面の応力/ひずみを均一にすることで、均一な骨の内方成長を実現する。しかし、軸方向から脛骨プラトー/骨界面を観察すると、骨梁層が唯一の移行層である。プロテーゼの金属材料の高い弾性率と骨組織の低い弾性率との間で応力遮蔽を発生する。Wolffの法則によると、応力で骨を変形させた後(微小ひずみとも呼ばれる)、元の信号が生じて骨の合成と分解代謝を調節でき、ひずみ範囲は最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値の間でのみで骨成長を促進できる。したがって、応力遮蔽を大幅に低減し、骨組織の大部分領域の微小ひずみが最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値との間にあることを実現し、オッセオインテグレーションに有利な膝関節脛骨プラトープロテーゼを設計することは重要な意味を持っている。
【0006】
ジルコニウム・ニオブ合金は、優れた耐食性、機械的性質、及び優れた生体適合性を備え、医療機器の分野で徐々に応用されている。ジルコニウム・ニオブ合金は、N、C、Oなどの元素と反応して、表面に硬い酸化門層を形成でき、優れた耐摩耗性及び低い摩耗率を備えているため、柔軟な材料の摩耗を低減でき、すなわち関節表面・界面の耐摩耗性に優れている。かつ酸化物層は、金属イオンの放出を減らすことができ、優れた生体適合性を持ち、すなわちオッセオインテグレーション界面との生体適合性に優れている。摩耗率の低いトレイ上面と骨の内方成長の特性に優れたオッセオインテグレーション界面(骨梁)との有機的な組み合わせるにより、プロテーゼは両方の界面の利点を同時に実現させることができる。しかしながら従来技術では、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを製造するためのジルコニウム・ニオブ合金の使用に関する報告はない。
【0007】
アディティブマニュファクチャリングテクノロジーとしての3Dプリント技術は、製造プロセスに向けた製品設計コンセプトを打ち破り、パフォーマンスに向けた製品設計コンセプトを実現し、すなわち複雑な部品の一体成形の難しさを解決するだけでなく、機械加工による原材料及びエネルギーの無駄を減少する。しかし3Dプリント製品の実体部分は、微細構造の不均一性、内部欠陥、機械的性質の低下などの問題が発生しやすく、骨梁部分の構造内の粉末は十分に溶融結合できず、機械的性質は劣る。したがって、機械的性質に優れ、両方の界面の利点を同時に実現し、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを製造することは重要な意味を持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許第CN109938888A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主な目的は、従来技術における上述の問題点の克服を意図しており、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを提供することである。
【0010】
本発明の第2の目的は、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の技術的手段は、次の通りである。
【0012】
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、不活性ガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃~1400℃に上げ、140MPa~180MPaにて一定温度で1時間~3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃~-120℃に下げ、一定温度で5時間~10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間~36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、トレイ上面の表面粗さRa≦0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、及び、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%~15質量%の常圧不活性ガスを導入し、5℃/分~20℃/分で500℃~700℃に加熱し、0.4℃/分~0.9℃/分で温度を400℃~495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを得るステップ、
を有する骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの製造方法であって、
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの構造と同じであり;
前記不活性ガスは、ヘリウムガス又はアルゴンガスであり;
前記骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼは、腎臓形トレイ1を備え、腎臓形トレイの内側に湾曲した箇所の上面にダブテール形凸部3が設けられ、ダブテール形凸部3の2つの斜めの枝部の外側面に後部凹溝5が設けられ、腎臓形トレイ1のダブテール形凸部3に対して外向き湾曲部の上面に円弧状凸部2が設けられ、円弧状凸部2の内側面に前部凹溝6が設けられ、腎臓形トレイの下面の中央にステム4が設けられ、腎臓形トレイの下面のステム4を連結する部分以外の他の部分に骨梁9が設けられ、骨梁9は、近位トレイ骨梁層21と遠位トレイ骨梁層20とから成り;前記近位トレイ骨梁層21の気孔径及び気孔率は、均一に設けられ、遠位トレイ骨梁層が3つの領域に分割して設けられ;対応する腎臓形トレイの横径10は、第1のマーカー11及び第2のマーカー12によって第1セクション25、第2セクション26及び第3セクション27に分割され、第1セクション、第2セクション及び第3セクションの長さが腎臓形トレイの横径の25%~38%:24%~50%:25%~38%の順であり、第1の領域分割線13は第1のマーカー11を通過し、第2の領域分割線14が第2のマーカー12を通過し;第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、直線又は円弧線で、対応する腎臓形トレイの遠位トレイ骨梁層20を内側領域15、中間領域16及び外側領域17に分割し;内側領域15骨梁の気孔径及び気孔率は、外側領域17及び中間領域16の骨梁の気孔径及び気孔率より順次大きい。
【0013】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:85.6%~96.5%、Nb:1.0%~12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmである。
【0014】
ステップ2)、ステップ3)の温度調整は、温度を-120℃~-80℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、次に温度を-40℃~-20℃に上げ、一定温度で3時間~5時間保持し、さらに温度を4℃~8℃に上げ、一定温度で1時間~3時間保持した後、温度を上げる。
【0015】
近位トレイ骨梁層21骨梁の気孔径は、0.36mm~0.50mmで、気孔率が55%~65%で、開気孔率が100%で、厚さが0.2mm~1mmである。
【0016】
遠位トレイ骨梁層20の第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14が直線の場合、平行又は八字形に配置され;第1の領域分割線13と腎臓形トレイの横径10とのなす角度18は100°~60°の範囲で、第2の分割線14と腎臓形トレイの横径10とのなす角度19は80°~120°の範囲である。
【0017】
遠位トレイ骨梁層20の内側領域骨梁の気孔径は1.00mm~1.10mmで、気孔率が77.6%~85%で、開気孔率が100%であり;中間領域骨梁の気孔径は、0.74mm~0.85mmで、気孔率が70.0%~74.7%で、開気孔率が100%であり;外側領域骨梁の気孔径は、0.86mm~0.99mmで、気孔率が74.8%~77.5%で、開気孔率が100%で、前記遠位トレイ骨梁層20の厚さが0.5mm~3mmである。
【0018】
ステムは、支持板が連結され異径管、支持板が連結され、底部が閉鎖された異径管、十字形リブプレート、又は湾曲した十字形リブプレートである。
【0019】
上記方法で製造された骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼである。
【発明の効果】
【0020】
従来技術と比較して、本発明は、次の有利な効果を有する。
【0021】
本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの骨梁トポロジー構造は、3次元で勾配的に分布され、脛骨プラトー骨梁と実体との結合強度を向上し、脛骨プラトーの骨組織の有限要素モデルの64%~72%の領域の微小ひずみが最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値との間にあることを実現し、プロテーゼの力学の適合性が向上し、優れた骨の内方成長性を有する。
【0022】
本発明は、3Dプリントで一体成形し、従来の機械加工では複雑な構造を作製できないという難題を解決し、かつ骨梁と実体との結合強度が高く、脱落し難くなり、プロテーゼの寿命を延ばす。
【0023】
本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの骨梁部分は、優れた耐圧縮性を有し、実体部分の圧縮降伏強度が向上し、可塑性が向上する。
【0024】
本発明の前記骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼは、オッセオインテグレーション界面の優れた生体適合性、骨の内方成長性及び摩擦界面の超耐摩耗性、低摩耗率を一体的に実現できる。本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの酸化物層とマトリックスとの間に酸素リッチ層があり、酸素リッチ層が遷移層の機能を有し、酸化物層とマトリックスとの間の付着力を高め、酸化物層の脱落を防ぎ、かつ酸化物層の硬度が高い。
【0025】
本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼは、アーチファクトが低く、核磁気共鳴への干渉がほぼなく、核磁気共鳴画像検査を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは湾曲した十字形リブプレートである)の等角図である。
図2】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの下面骨梁領域分割を示す図である。
図3】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは湾曲した十字形リブプレートである)の底面図である。
図4】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は円弧線である)の底面図である。
図5】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は直線で八字形に配置されている)の底面図である。
図6】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは、底部が閉鎖された異径管である)の等角図である。
図7】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは底部が閉鎖された異径管、腎臓形トレイ及び骨梁層の部分的断面)の等角図である。
図8】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは、支持板が連結され、底部が閉鎖された異径管である)の等角図(遠位トレイ骨梁層を除外する)である。
図9】本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは、支持板が連結され異径管である)の等角図である。
図10】実施例1に係る骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは湾曲した十字形リブプレートである)の第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、平行な直線で、横径(脛骨プラトーの長さ)とのなす角度が90度である場合の有限要素解析ひずみのクラウドマップである。
図11】実施例2に係る骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは、支持板が連結され、底部が閉鎖された異径管である)の第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、直線で八字形を呈する場合の有限要素解析ひずみのクラウドマップである。
図12】実施例3に係る骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは、支持板が連結され、底部が閉鎖された異径管である)の第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、円弧線を呈する場合の有限要素解析ひずみのクラウドマップである。
図13】比較例1に係る実体部分の金属組織学的微細構造画像である(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
図14】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分の金属組織学的微細構造図(Aは、倍率を50倍拡大して観察したもので、Bが倍率を500倍拡大して観察したものである)。
図15】比較例1の骨梁部分SEM画像である。
図16】製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分SEM画像である。
図17】実施例1の酸化物層及びマトリックスの横断面SEM画像である。
図18】実施例1の酸化物層表面のXRD曲線である。
図19】実施例1に係る骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(ステムは湾曲した十字形リブプレートである)の第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、平行な直線で、横径(脛骨プラトーの長さ)とのなす角度が90度である場合の等価応力クラウドマップである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下には、具体的実施例を参照しつつ本発明をさらに説明する。
【0028】
(実施例1)
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1250℃に上げ、180MPaにて一定温度で3時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-80℃に下げ、一定温度で10時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて16時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-120℃に上げ、一定温度で5時間保持し、次に温度を-40℃に上げ、一定温度で5時間保持し、さらに温度を4℃に上げ、一定温度で3時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、トレイ上面の表面粗さRa=0.012μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量5質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、5℃/分で500℃に加熱し、0.4℃/分で温度を400℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを得るステップ、
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、及び第5の中間生成物の構造は、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの構造と同じである。
【0029】
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:85.6%、Nb:12.5%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0030】
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(図1)は、腎臓形トレイ1を備え、腎臓形トレイの内側に湾曲した箇所の上面にダブテール形凸部3が設けられ、ダブテール形凸部3の2つの斜めの枝部の外側面に後部凹溝5が設けられ、腎臓形トレイ1のダブテール形凸部3に対して外向き湾曲部の上面に円弧状凸部2が設けられ、円弧状凸部2の内側面に前部凹溝6が設けられ、腎臓形トレイの下面の中央にステム4が設けられ、腎臓形トレイの下面のステム4を連結する部分以外の他の部分に骨梁9が設けられ、骨梁9は、近位トレイ骨梁層21と遠位トレイ骨梁層20とから成り(図7);前記近位トレイ骨梁層21の気孔径及び気孔率は、均一に設けられ(図8)、遠位トレイ骨梁層が3つの領域に分割して設けられ;対応する腎臓形トレイの横径10は、第1のマーカー11及び第2のマーカー12によって第1セクション25、第2セクション26及び第3セクション27に分割され、第1セクション、第2セクション及び第3セクションの長さが腎臓形トレイの横径の30%:40%:30%の順であり、第1の領域分割線13は第1のマーカー11を通過し、第2の領域分割線14が第2のマーカー12を通過し;第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、直線又は円弧線で、対応する腎臓形トレイの遠位トレイ骨梁層20を内側領域15、中間領域16及び外側領域17に分割し(図2);
近位トレイ骨梁層21骨梁の気孔径は、0.43mmで、気孔率が60%で、開気孔率が100%で、厚さが0.6mmである。
【0031】
遠位トレイ骨梁層20の第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14が直線の場合、平行に配置され;第1の領域分割線13と腎臓形トレイの横径10とのなす角度18は90°(図3)で、第2の分割線14と腎臓形トレイの横径10とのなす角度19は90°である。
【0032】
遠位トレイ骨梁層20の内側領域骨梁の気孔径は1.05mmで、気孔率が80%で、開気孔率が100%であり;中間領域骨梁の気孔径は、0.80mmで、気孔率が72%で、開気孔率が100%であり;外側領域骨梁の気孔径は、0.90mmで、気孔率が75%で、開気孔率が100%で;前記遠位トレイ骨梁層20の厚さが2mmである。
【0033】
ステムは、十字形リブプレート(図3)である。
【0034】
本実施例の有限要素解析ひずみのクラウドマップは、図10に示されている。図7に示すように、腎臓形トレイの下面の縁に側壁22を設けて骨梁層を側壁の内側に配置させることもできる。
【0035】
(実施例2)
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物を得、第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、ヘリウムガスの保護雰囲気下にて、温度を1350℃に上げ、160MPaにて一定温度で2時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-100℃に下げ、一定温度で7時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて24時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整ステップは、温度を-100℃に上げ、一定温度で4時間保持し、次に温度を-30℃に上げ、一定温度で4時間保持し、さらに温度を6℃に上げ、一定温度で2時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、トレイ上面の表面粗さRa=0.035μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量10質量%の常圧ヘリウムガスを導入し、15℃/分で600℃に加熱し、0.7℃/分で温度を450℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを得るステップ、
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの構造と同じ、
前記ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:93.4%、Nb:5.1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入した。
【0036】
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼ(図9)は、腎臓形トレイ1を備え、腎臓形トレイの内側に湾曲した箇所の上面にダブテール形凸部3が設けられ、ダブテール形凸部3の2つの斜めの枝部の外側面に後部凹溝5が設けられ、腎臓形トレイ1のダブテール形凸部3に対して外向き湾曲部の上面に円弧状凸部2が設けられ、円弧状凸部2の内側面に前部凹溝6が設けられ、腎臓形トレイの下面の中央にステム4が設けられ、腎臓形トレイの下面のステム4を連結する部分以外の他の部分に骨梁9が設けられ、骨梁9は、近位トレイ骨梁層21と遠位トレイ骨梁層20とから成り;前記近位トレイ骨梁層21の気孔径及び気孔率は、均一に設けられ、遠位トレイ骨梁層が3つの領域に分割して設けられ;対応する腎臓形トレイの横径10は、第1のマーカー11及び第2のマーカー12によって第1セクション25、第2セクション26及び第3セクション27に分割され、第1セクション、第2セクション及び第3セクションの長さが腎臓形トレイの横径の38%:24%:38%の順であり、第1の領域分割線13は第1のマーカー11を通過し、第2の領域分割線14が第2のマーカー12を通過し;第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、直線で、対応する腎臓形トレイの遠位トレイ骨梁層20を内側領域15、中間領域16及び外側領域17に分割した。
【0037】
近位トレイ骨梁層21骨梁の気孔径は、0.50mmで、気孔率が65%で、開気孔率が100%で、近位トレイ骨梁層21の厚さが1mmである。
【0038】
前記遠位トレイ骨梁層20の第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14が直線の場合、八字形に配置され;第1の領域分割線13と腎臓形トレイの横径10とのなす角度18は100°で、第2の分割線14と腎臓形トレイの横径10とのなす角度19は80°である。(ステムを除いて、遠位トレイ骨梁層を図5に示す)
【0039】
前記遠位トレイ骨梁層20の内側領域骨梁の気孔径は1.10mmで、気孔率が85%で、開気孔率が100%であり;中間領域骨梁の気孔径は、0.85mmで、気孔率が74.7%で、開気孔率が100%であり;外側領域骨梁の気孔径は、0.99mmで、気孔率が77.5%で、開気孔率が100%で、前記遠位トレイ骨梁層20の厚さが0.5mmである。
【0040】
ステムは、支持板が連結され、底部が閉鎖された異径管である(ステムを図6に示す)。
【0041】
本実施例の有限要素解析ひずみのクラウドマップは、図11に示されている。
【0042】
(実施例3)
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの製造方法であって、以下の構成を有する。すなわち、
1)ジルコニウム・ニオブ合金粉末を原料として、3Dプリントで一体成形して骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物を得、前記第1の中間生成物を熱間静水圧加圧装置に入れ、アルゴンガスの保護雰囲気下にて、温度を1400℃に上げ、140MPaにて一定温度で1時間放置しながら常圧まで下げ、200℃以下となるまで炉内で冷却して取り出し、第2の中間生成物を得るステップ、
2)第2の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第3の中間生成物を得るステップ、
3)第3の中間生成物をプログラム冷却ボックスに入れ、1℃/分の速度で温度を-120℃に下げ、一定温度で5時間放置し、プログラム冷却ボックスから取り出し、液体窒素内に入れて36時間置き、温度を室温に調整して第4の中間生成物を得るステップ、
ステップ2)、ステップ3)の温度調整の具体的なステップは、温度を-80℃に上げ、一定温度で3時間保持し、次に温度を-20℃に上げ、一定温度で3時間保持し、さらに温度を8℃に上げ、一定温度で1時間保持した後、温度を上げ、
4)第4の中間生成物を機械加工トリミング、光沢仕上げ、洗浄及び乾燥させ、トレイ上面の表面粗さRa=0.050μmとなる第5の中間生成物を得るステップ、
5)第5の中間生成物を管状炉に入れ、酸素含有量15質量%の常圧アルゴンガスを導入し、20℃/分で700℃に加熱し、0.9℃/分で温度を495℃に下げ、200℃以下に自然冷却してから取り出し、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼを得るステップ、
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの第1の中間生成物、第2の中間生成物、第3の中間生成物、第4の中間生成物、第5の中間生成物は、骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの構造と同じであり;
ジルコニウム・ニオブ合金粉末の化学組成は、質量%で、Zr:96.5%、Nb:1%を含有し、残部が不可避不純物であり;ジルコニウム・ニオブ合金粉末の粒子径は、45~150μmであり、西安賽隆金属材料有限責任会社から購入し;
骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼは、腎臓形トレイ1を備え、腎臓形トレイの内側に湾曲した箇所の上面にダブテール形凸部3が設けられ、ダブテール形凸部3の2つの斜めの枝部の外側面に後部凹溝5が設けられ、腎臓形トレイ1のダブテール形凸部3に対して外向き湾曲部の上面に円弧状凸部2が設けられ、円弧状凸部2の内側面に前部凹溝6が設けられ、腎臓形トレイの下面の中央にステム4が設けられ、腎臓形トレイの下面のステム4を連結する部分以外の他の部分に骨梁9が設けられ、骨梁9は、近位トレイ骨梁層21と遠位トレイ骨梁層20とから成り;前記近位トレイ骨梁層21の気孔径及び気孔率は、均一に設けられ、遠位トレイ骨梁層が3つの領域に分割して設けられ;対応する腎臓形トレイの横径10は、第1のマーカー11及び第2のマーカー12によって第1セクション25、第2セクション26及び第3セクション27に分割され、第1セクション、第2セクション及び第3セクションの長さが腎臓形トレイの横径の25%:50%:25%の順であり、第1の領域分割線13は第1のマーカー11を通過し、第2の領域分割線14が第2のマーカー12を通過し;第1の領域分割線13及び第2の領域分割線14は、円弧線(図4)で、対応する腎臓形トレイの遠位トレイ骨梁層20を内側領域15、中間領域16及び外側領域17に分割し;
近位トレイ骨梁層21骨梁の気孔径は、0.36mmで、気孔率が55%で、開気孔率が100%で、厚さが0.2mmである。
【0043】
前記遠位トレイ骨梁層20の内側領域骨梁の気孔径は1.00mmで、気孔率が77.6%で、開気孔率が100%であり;中間領域骨梁の気孔径は、0.74mmで、気孔率が70.0%で、開気孔率が100%であり;外側領域骨梁の気孔径は、0.86mmで、気孔率が74.8%で、開気孔率が100%で、前記遠位トレイ骨梁層20の厚さが3mmである。
【0044】
ステムは、支持板が連結され、底部が閉鎖された異径管である。
【0045】
本実施例の有限要素解析ひずみのクラウドマップは、図12に示されている。
【0046】
腎臓形トレイの下面の縁に側壁22を設けて骨梁層を側壁の内側に配置させることもできる。
【0047】
(比較例1)
ジルコニウム・ニオブ合金粉末(実施例1と同じ)を原料として、3Dプリントによる一体成形及び機械加工トリミングを経て、実施例1と同じ構造の脛骨プラトープロテーゼを得た。
【0048】
≪実験的検証≫
実施例1、2、3の有限要素モデルに対し有限要素解析を実施して得られた有限要素解析ひずみのクラウドマップは、1000~3000の範囲の微小ひずみ(影付き部分)のみを示している。脛骨プラトー骨組織全体の有限要素モデルにおける実施例1~実施例3の脛骨プラトー骨組織の有限要素モデル上の1000~3000の微小ひずみ領域の割合は、65.6%、64.4%及び68.1%(図10図11図12)で、本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼが骨組織大部分領域の微小ひずみが最小有効ひずみ閾値と超生理学的ひずみ閾値との間にあることを実現し、骨の内方成長に有利であることを示している。
【0049】
倒立顕微鏡(Axio Vert.A1、ドイツのカールツァイス社製)で比較例1の実体部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体部分に対し、金属組織学的微細構造を観察し、結果を図13及び図14に示す。比較例1の金属組織写真では、微細なαマルテンサイトが観察され、組織が比較的微細で、応力集中が発生しやすく、可塑性に劣る。実施例1の金属組織は、バスケット構造と結晶粒微細化を伴うα相を示している。結果は、本発明の脛骨プラトープロテーゼの実体部分(酸化物層を除く)が優れた強度及び可塑性を有することを示している。
【0050】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で比較例1の骨梁部分及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の骨梁部分を観察や解析した結果を図8図9に示す。比較例1と比較して、実施例1の骨梁構造中のジルコニウム・ニオブ合金粉末は、さらに溶融結合されることで、骨梁の総合特性が向上されたことを示している。
【0051】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股▲フン▼有限公司製)で前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない実施例1の実体圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)及び比較例1の実体圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)に対して圧縮試験を行い、実施例1及び比較例1の実体圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表1に示す。実施例1の圧縮降伏強度は、546.72MPaで、比較例1(P<0.05)よりも優れ、本発明で得られた骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの実体部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0052】
【表1】
【0053】
電子式万能試験機(UTM5105、中国の深セン三思縦横科技股▲フン▼有限公司製)で比較例1の骨梁圧縮試験片及び前記製造方法におけるステップ4)及びステップ5)を実施しない気孔径0.80mm、気孔率72%、開気孔率100%の実施例1の骨梁圧縮試験片(試験片のサイズ:8×8×10mm)に対して圧縮試験を行い、比較例1及び実施例1の骨梁圧縮試験片はそれぞれ5個で、結果を表2に示す。実施例1の骨梁降伏強度は、18.39MPaで、比較例1(P<0.05)よりも明らかに高く、本発明で得られた骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの骨梁部分は、優れた耐圧縮性を持つことを示している。
【0054】
【表2】
【0055】
走査型電子顕微鏡(Crossbeam340/550、ドイツのカールツァイス社製)で実施例1の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼのジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化物層の横断面を観察した(図17)。実施例2、実施例3の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼのジルコニウム・ニオブ合金マトリックス及び酸化層の横断面も観察し、酸化物層の厚さは、それぞれ10.3μm、17.2μm及び20.6μmで、酸化物層とジルコニウム・ニオブ合金マトリックスとの間に酸素リッチ層があり、ジルコニウム・ニオブ合金マトリックスと酸化物層との間の結合力を向上する。
【0056】
XRD(D8DISCOVER,ドイツのBruker社製)で実施例1の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの酸化物層を解析(図18)し、酸化物層は単斜晶の二酸化ジルコニウム及び正方晶の二酸化ジルコニウムを含んでいた。
【0057】
微小硬度計(MHVS-1000 PLUS、中国の上海奧龍星迪検測設備有限公司製)で実施例1~3の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼに対して微小硬さ試験を行い、試験荷重は0.05kgで、試験片の荷重時間が20秒で、各試験片から8点取った。実施例1~3で測定された平均硬さ値は1948.6Hv、1923.7Hv、及び1967.2Hvであり、本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの酸化物層の硬度が高いことを示している。
【0058】
実験により、実施例2、3で製造された骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの骨梁部分のジルコニウム・ニオブ合金粉末溶融結合程度、耐圧縮性、実体部分の耐圧縮性、金属組織、酸化物層の結晶構造、厚さ及び硬さは、実施例1で製造された骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼと似っていることを証明した。
【0059】
実施例1の有限要素モデルに対し有限要素解析を実施した結果を図19に示す。実施例1の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの骨梁と実体との連結部位の応力集中領域は小さく、本発明の骨梁付き酸化物層を含むジルコニウム・ニオブ合金の脛骨プラトープロテーゼの骨梁と実体との結合強度に優れていることを示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【国際調査報告】