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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】デュアルカソード燃料バイオ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20230407BHJP
   H01M 8/16 20060101ALI20230407BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230407BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20230407BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20230407BHJP
   H01M 8/06 20160101ALI20230407BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/16
H01M4/86 B
H01M8/2465
H01M8/00 Z
H01M8/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551262
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 EP2021054882
(87)【国際公開番号】W WO2021170826
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】2001980
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(71)【出願人】
【識別番号】522191325
【氏名又は名称】アンスティテュ ポリテクニーク ドゥ グルノーブル
(71)【出願人】
【識別番号】517017399
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・グルノーブル・アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ホルツィンガー ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハモンド ジュール
(72)【発明者】
【氏名】グロス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ブロック ジャン-フランシス
(72)【発明者】
【氏名】コスニエ セルジュ
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H018AA01
5H126AA02
5H126AA22
5H126BB08
5H126GG18
5H127AA00
5H127BA01
5H127BA03
5H127BB03
(57)【要約】
本発明は、電気化学電池を有するバイオ電池に関し、電気化学電池は、アノードと、第1のカソードと、第2のカソードと、第1および第2の多孔質セパレータ膜と、を含み、第1の膜は、アノードの第1の接触面と第1のカソードの第1の表面との間に配置され、第2の膜は、アノードの第2の接触面と第2のカソードの第1の表面との間に配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学電池を含むバイオ電池(10)であって、前記電気化学電池は、
第1の接触面および第2の接触面を有する固体凝集体からなるアノード(14)であって、前記第1および第2の接触面は、互いに反対側にあり、液体媒体と接触させられるように意図され、前記液体媒体は、任意選択で燃料を含み、前記アノード(14)は、燃料の酸化を触媒することができる第1の酵素および任意選択で電子の移動を可能にするメディエータと混合された導電性材料を含む、アノード(14)と、
第1のカソード(12)および第2のカソード(12’)であって、それぞれが固体凝集体からなり、それぞれが第1の接触面および第2の接触面を有し、前記第1の接触面および第2の接触面は、互いに反対側にあり、前記第1の接触面は、液体媒体と接触させられるように意図され、前記第2の接触面は、酸化剤を含むガスと接触させられるように意図され、前記第1および第2のカソードは、導電性材料を含み、任意選択で、前記酸化剤の還元を触媒することができる第2の酵素と混合される、第1のカソード(12)および第2のカソード(12’)と、
第1の多孔質セパレータ膜(16)および第2の多孔質セパレータ膜(16’)であって、それぞれが電気絶縁性であり、液体媒体に対して透過性であり、前記第1の膜(16)は、前記アノード(14)の前記第1の接触面と前記第1のカソード(12)の前記第1の表面との間に配置され、前記第2の膜(16’)は、前記アノードの前記第2の接触面と前記第2のカソード(12’)の前記第1の表面との間に配置されている、第1の多孔質セパレータ膜(16)および第2の多孔質セパレータ膜(16’)と、を含み、
前記バイオ電池は、電気受信機を用いて前記バイオ電池を電気的にスイッチオンするための手段(18、20、20’)をさらに含み、前記電気スイッチング手段は、電流が前記アノード(14)と前記第1のカソード(12)および前記第2のカソード(12’)との間を流れることを可能にする、バイオ電池(10)。
【請求項2】
前記電気化学電池は、多層スタックを形成する一連の層を含み、これらの層は、前記アノード(14)と、カソード(12,12’)と、セパレータ層(16および16’)と、回路手段(8,20,20’)と、を含む、請求項1に記載のバイオ電池(10)。
【請求項3】
前記燃料は、糖、メタノール、デンプンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載のバイオ電池(10)。
【請求項4】
前記酸化剤は、二酸化炭素、硫黄または窒素酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオ電池(10)。
【請求項5】
前記第1の膜(16)および任意選択で前記第2の膜(16’)は、セルロースをベースとする、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオ電池(10)。
【請求項6】
前記回路手段は、前記アノード(18)と接触する導電性要素と、前記第1のカソード(20)および前記第2のカソード(20’)と接触する導電性要素と、を含み、前記第1のカソード(12)および前記第2のカソード(12’)と接触する前記導電性要素は、前記カソードでの前記酸化剤の気体拡散も可能にする材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオ電池(10)。
【請求項7】
電気絶縁性であり、前記液体媒体に対して透過性である前記分離および多孔質の膜(16,16’)は、前記燃料を貯蔵し、前記液体を利用可能にするための手段でもある、請求項1~6のいずれか一項に記載のバイオ電池(10)。
【請求項8】
前記バイオ電池は、好ましくは可撓性、絶縁性および/または液体不透過性の外部コーティング(22,22’)を含み、前記外部コーティング(22,22’)は、前記アノード(14)への前記液体のアクセスおよび/または前記カソード(16,16’)への前記ガスのアクセスを可能にするように位置決めおよび寸法決めされた開口部を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のバイオ電池(10)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオ電池(10)と、電気受信機と、を含み、前記バイオ電池は、前記電気受信機に電気的に接続されている、装置。
【請求項10】
電流を発生させるための、請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオ電池(10)または請求項9に記載の装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素燃料電池またはバイオ電池、および発電のためのその使用、それを含むキット、ならびに該バイオ電池を組み込んだ電気または電子デバイスに関する。本発明はまた、このバイオ電池を製造する方法、ならびに本発明による少なくとも2つのバイオ電池を含むアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
(従来技術)
燃料電池技術は、化学エネルギーを電子エネルギーに変換することに基づいている。グルコースなどの有機分子は、多くの生物にとって最も重要なエネルギー源の1つであり、安全で取り扱いが簡単で、消費可能であるため、生分解性のバイオ燃料とみなすことができる。バイオ燃料酵素電池(バイオ電池とも称される)は、メタノール、グルコースまたはデンプンなどの生体基質からエネルギーまたは電力を生成するために酵素を使用する。
【0003】
燃料を動力源とするバイオ電池は、酵素化合物の存在下でバイオ燃料を変換し、これにより電力を生成する。グルコース酸化による最もよく知られているバイオ電池(GBFC)は、電力を生成するために、アノードに組み込まれ、反応の触媒機能を有する酵素を使用した、アノードでの酸化によってグルコースを変換するような電池である。カソードの機能は、概して、酸素を還元することであり、この反応を触媒する酵素を含んでも含まなくてもよい。
【0004】
酵素は、他の金属ベースの触媒の場合とは異なり、酵素のほとんどが中性pHおよび室温で機能し、毒性をほとんどまたは全く示さないので、貴金属触媒の有望な代替物である。したがって、バイオ燃料電池は、環境に優しく持続可能なエネルギーを電子デバイス、特に小型携帯装置、および/または医療、環境、生物防御などの用途のための単回使用デバイスに供給する魅力的な手段を提供するものである。
【0005】
酵素ベースの燃料電池は、動物または植物起源(フルーツジュース)などの生体流体(唾液、血液、尿)に豊富な基質(グルコースなど)を活性剤および/または燃料として使用して動作することができる。これに関連して、「燃料」および「バイオ燃料」という用語は交換可能である。さらに、これらの電池は、微生物の電力密度よりも高いことが多い電力密度を示しながら、環境廃水(例えば、グルコースおよび酸素)を利用することもできる。
【0006】
燃料電池は、携帯用または移植可能な小型デバイスの電力または自己電力を増加させるための興味深い可能性を提供する[1,2,3]。加えて、紙または天然繊維を用いたデバイスは、その低質量、可塑性および可撓性によって種々の表面の全範囲に適合することを可能にしており、この種のアプリケーションのための提案として人気を集めている。
【0007】
これらのバイオ電池の重要な特徴のうちの1つは、使い捨てデバイスで頻繁に使用される「ボタン」型の電池を置き換えることができるように、サイズが小さいこと(例えば、表面積が1~10cm)、さらには非常に小さいこと(表面積が0.5cm未満)である。さらに、有利には質量が小さく、好ましくは安価であることが必要である。
【0008】
燃料電池は、携帯用または移植可能な小型デバイスの電力または自己電力を増加させるための興味深い可能性を提供する[1,2,3]。
【0009】
加えて、紙ベースのデバイスは、その低質量、低環境影響、小さい形状因子、および種々の表面の全範囲に適合することを可能にする可撓性により、この種のアプリケーションのための提案として人気を集めている。かかるデバイスは、特に特許文献1に記載されており、その内容は参照により本出願に組み込まれる。
【0010】
カソードにおける電流密度は、生体燃料電池の性能における制限因子のうちの1つであり、これは、主に、電極と溶液との間の界面において利用可能な溶存酸素のより低い濃度に起因することが知られている。したがって、例えば、カソードの一部を空気に曝すようにその形態を最適化することによって、カソードの表面における酸素の量を増加させることがしばしば有利である[4,5,6]。これらのカソードデバイスは、概して、「エアブリージングカソード」またはより単純に「エアカソード」と称される。
【0011】
燃料電池電極の性能のバランスをとるための一般的な戦略は、電極のサイズを大きくすることである。この手法は、非常に嵩高いアノードを必要とする微生物バイオ燃料電池に概して使用されている[8,9]。より具体的には、この戦略は、酵素的水素バイオ電池のカソードにも適用されている[10]。
【0012】
携帯型および/または使い捨てデバイス(例えば、一人の患者に使用するデバイス)用の電源の性能は、単位面積当たりの電力(電力密度(mW・cm-2))、触媒の質量当たりの電力(mW・mg-1)または触媒活性当たりの電力(mW・kU-1)に関して測定されることが多い。これらのパラメータを増加させることは非常に困難である。
【0013】
しかしながら、特に携帯用または使い捨て用途のために、デバイスの表面積、体積および/または質量の増加を回避または最小化しながら、バイオ燃料電池の性能を改善することが強く望まれている。この文脈では、特定のデバイス(またはユニット)の面積、体積、および/または質量の所定の条件は、そのデバイスの「フットプリント」と称され得る。もちろん、この改良によってデバイスのコストが大幅に上がるようなことがあってはならない。したがって、バイオ電池のスタックによる出力向上が可能な既知の解決策は、この多面的な問題を解決するのに適していない。実際、既知の解決策には、メディエータおよび酵素の量、ならびに電極およびコレクタの数の増加、ならびに対応する厚さおよびコストの増加を伴う。カソードの表面を増大させるという解決策は、非対称で大型のデバイスをもたらすことになる。電池のフットプリントは、この場合、本来の用途ではほとんど許容されない形で変更される。波形電極を使用してそれらの活性表面を増加させると、電池の体積が増加し、より剛性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2019/234573号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、概して、本発明は特に、燃料およびガスを動力源とするバイオ電池、特に、使い捨てデバイスにおけるその使用を可能にする設計のバイオ電池を提供する問題を解決することを目的とする。このバイオ電池は、安価であり(ボタン電池またはコイン型)、かつ/または単回使用のために設計され、好ましくは小さい寸法であるが、最適化された電力を有する。
【0016】
本発明は、特に、カソード反応用のガスの供給を増加させることを目的とし、電極-溶液界面における酸化剤または基質(例えば、酸素)を増加させることによって、所与の幾何学的占有面積に限に増加されるか、または無視できる程度に増加される。同様に、電池の1つの寸法のみが影響を受け得る。したがって、1つの寸法のみが増大された電池、および/またはフットプリントの増大(例えば、厚さの増大)が元の寸法に対して、例えば、厚さに対して40%未満、好ましくは35%未満(例えば、30%以下)である電池を得ることが可能である。さらに、本発明によるデバイスにより、アノードでの酸素の消費を低減もしくは減少させることによって、またはさらには排除することによって、グルコース/O燃料電池の安定性を増加させることも可能である。本発明によるバイオ電池はまた、CR2032型リチウム電池に置き換わるのに十分な電力を生成することができる。本発明はまた、同じフットプリントかつ同じ酵素の総質量を維持しながら、バイオ電池の電力を増加/最大化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、電気化学電池を含むバイオ電池であり、該電気化学電池は、
【0018】
第1の接触面および第2の接触面を有する固体凝集体からなるアノードであって、該第1および第2の接触面は、互いに反対側にあり、液体媒体と接触させられるように意図され、該液体媒体は、任意選択で燃料を含み、該アノードは、燃料の酸化を触媒することができる第1の酵素と混合され、任意選択で、例えば電極に向かって電子の移動を可能にするメディエータと混合された導電性材料を含む、アノードと、
【0019】
第1のカソードおよび第2のカソードであって、それぞれが固体凝集体からなり、それぞれが第1の接触面および第2の接触面を有し、該第1の接触面および第2の接触面は、互いに反対側にあり、該第1の接触面は、液体媒体と接触させられるように意図され、該第2の接触面は、酸化剤を含むガスと接触させられるように意図され、該第1および第2のカソードは、導電性材料を含み、任意選択で、該酸化剤の還元を触媒することができる第2の酵素と混合される、第1のカソードおよび第2のカソードと、
【0020】
第1の多孔質セパレータ膜および第2の多孔質セパレータ膜であって、それぞれが電気絶縁性であり、液体媒体に対して透過性であり、該第1の膜は、アノードの第1の接触面と第1のカソードの第1の表面との間に配置され、該第2の膜は、アノードの第2の接触面と第2のカソードの第1の表面との間に配置されている、第1の多孔質セパレータ膜および第2の多孔質セパレータ膜と、を含み、
【0021】
該バイオ電池は、電気受信機を用いて該バイオ電池を電気的にスイッチオンするための手段をさらに含み、該電気スイッチング手段は、電流がアノードと第1のカソードおよび第2のカソードとの間を流れることを可能にする。したがって、電気化学電池は、デュアルカソード電池(1つのアノードおよび2つのカソードを含む)であり、本発明の対象であるバイオ電池は、有利には、アノードの数よりも厳密に多い数のカソードを含む。
【0022】
「バイオ電池」という用語は、その最も広い意味で使用される。したがって、「電池」は、特に、ただ1つの電気化学電池を有するデバイス、および/または再充電可能であってもなくてもよいデバイスを含む。カソードに常にガスを供給することができる限り、一部の電気化学電池のスタックを含むバイオ電池が想定される。例えば、電力供給され得るほとんどの電子デバイスは、1.5または3Vの電圧を必要としている。直列に接続された約0.7Vの電圧をそれぞれ有する約3~5個のバイオ電池によって、この必要とされる電圧を得ることができる。代替案は、単一のバイオ電池の使用を可能にし、アセンブリのサイズを低減する電圧変換器の使用である。
【0023】
[アノードおよびカソード]
【0024】
本発明によるバイオ電池に含まれる電気化学電池は、アノードおよび2つのカソードを含む。アノードはカソードに位置決めされる。これらの電極は、固体凝集体の形態であり、その基部に、好ましくは多孔性の導電性材料と、触媒される半反応の少なくとも1つの酵素とを含む。この多孔質材料は、任意のリサイクル可能な多孔質導電性材料、好ましくはカーボンフェルト、マイクロポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、活性炭、メソポーラスカーボン、カーボンブラック、導電性ポリマーなどのリサイクル可能な多孔質導電性材料であり得る。実施例において、単層もしくはより有利には多層カーボンナノチューブ(MWCNT)、またはカーボンブラックに基づくペレットは、優れた導電性に関連する優れた多孔性を提供する。「カーボンナノチューブ」とは、少なくとも1つの寸法が1500nm未満であるカーボンナノチューブを意味する。好ましくは、カーボンナノチューブは、長さ(L)/直径の比を有し、これは、100~5000のL/直径で表される。好ましくは、カーボンナノチューブは、およそ1.5μmおよび例えばおよそ10nmの直径の長さを有する。
【0025】
本出願の発明の例示的な実施形態では、選択される燃料はグルコースであり、酸化剤は空気からの酸素であるが、これは、これらの化合物の利用可能性が高く、環境への影響が低いためである。しかしながら、本発明によるバイオ電池の構造は、関連する酵素化合物(酵素)も適切である限り、グルコース以外の基質に適合することができる。したがって、本発明によるバイオ電池の燃料は、有利には、糖(例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトースなど)、メタノール、デンプンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。同様に、酸化剤は必ずしも酸素および/または空気からの酸素である必要はなく、例えば二酸化炭素、硫黄、窒素酸化物およびそれらの混合物からなる群から選択される別のガスであってもよい。
【0026】
グルコース/O酵素バイオ電池の理論的反応バランスは以下の通りである。
アノード:グルコース→グルコノラクトン+2H+2e
カソード:O+4H+4e→2H
バイオ電池:2グルコース+O→2グルコノラクトン+2H
【0027】
したがって、本発明の好ましい態様によれば、アノードで使用される酵素系は、少なくとも1つのグルコースオキシダーゼを含むことができる。グルコースオキシダーゼ(GOx)は、グルコース、より具体的にはβ-D-グルコース(またはデキストロース)の、過酸化水素およびD-グルコノ-δ-ラクトンへの酸化を触媒するEC1.1.3.4型(2018年4月の分類)のオキシドレダクターゼ酵素であり、これは次いでグルコン酸に加水分解する。グルコースオキシダーゼは、β-D-グルコピラノース(グルコースのヘミアセタール形態)に特異的に結合し、α-D-グルコースには作用しない。しかしながら、それらは、溶液中でグルコースが主にその環状形態(pH7において36.4%α-D-グルコースおよび63.6%β-D-グルコース、0.5%直鎖型)をとるので、その鏡像異性形態のグルコースに作用することができる。さらに、β型の酸化および消費により、α-D-グルコース/β-D-グルコースのバランスがβ型にシフトする。GOxという用語は、天然タンパク質ならびにそれらの誘導体、変異体および/または機能的等価物に及ぶ。この用語は、特に、構造および/または酵素活性において実質的に異なることのないタンパク質に及ぶ。
【0028】
グルコースオキシダーゼは、触媒作用を可能にする補因子を含み、必要とする。この補因子は、細胞内の主要な酸化還元成分であるフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)である。FADは初期電子受容体として機能し、FADHに還元され、分子酸素(O、これはFADよりも還元性である)によってFADに再酸化(再生)される。Oは最終的に過酸化水素(H)に還元される。補因子は市販のGOx酵素に含まれており、GOxおよびFAD-GOXという用語は等価である。
【0029】
最も広く使用されているグルコースオキシダーゼは、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から抽出されたものである。しかしながら、例えばPenicillium種またはAspergillus terreus種の特定の株などの他の供給源由来のGOxを使用することができる。
【0030】
アスペルギルス・ニガーのグルコースオキシダーゼは、各々分子量80kDaの2つの等しいサブユニットで構成される二量体である(ゲル濾過による)。各サブユニットには、フラビンアデニンジヌクレオチドおよび鉄原子が含まれている。この糖タンパク質には、およそ16%の中性糖および2%のアミノ糖が含まれている。また、3つのシステイン残基および8つのN-グリコシル化の可能性のある部位が含まれている。
【0031】
GOxの比活性は、好ましくは100,000単位/g固体(Oの添加なし)以上である。1単位とは、pH5.1、35℃で1分当たり1.0μモルのβ-D-グルコースからD-グルコノラクトンおよびHへの酸化能力として定義される。(Km=33~110mM;25℃;pH5.5~5.6)。
【0032】
GOxの使用が過酸化水素(有害種)の生成を伴う限り、カタラーゼを酵素系に添加することができる。
【0033】
カタラーゼは、反応:2H→O+2HOを触媒する四量体酵素である。各サブユニットは、プロトヘムIX型基に結合した鉄を含有する。各サブユニットは同等であり、およそ500アミノ酸のポリペプチド鎖を含む。各サブユニットの分子量は、一般に60kDa(ゲル濾過)である。カタラーゼはNADPに強く結合することができ、NADPおよびヘム基は互いに13.7Å離れて位置決めされている。メチルペルオキシドまたはエチルペルオキシドなどの他の水素化アルキルペルオキシドと反応する可能性がある。カタラーゼの活性は、一般的に4~8.5のpH範囲で一定である。その比活性は、好ましくは2,000単位/mgより大きく、特に3,000単位/mgより大きく、例えばおよそ5,000単位/mgタンパク質である。1単位は、pH7.0、25℃で1分当たり1.0マイクロモルの過酸化水素(H)を分解する能力として定義され、H濃度は、好ましくは10.3ミリモルから9.2ミリモルに低下する。「カタラーゼ」という用語は、天然タンパク質ならびにそれらの誘導体、変異体および/または機能的等価物に及ぶ。この用語は、特に、構造および/または酵素活性において実質的に異なることのないタンパク質に及ぶ。使用されるカタラーゼは、好ましくはウシ由来のものである。
【0034】
グルコースを変換する他の酵素、特に少なくとも1つのデヒドロゲナーゼを使用することも可能である。実際、この酵素が触媒する反応では過酸化水素は生成されないので有利である。デヒドロゲナーゼは、FADと組み合わせて機能する(上記を参照)。特に好ましいデヒドロゲナーゼは、フラビンアデニンジヌクレオチド-グルコースデヒドロゲナーゼ(FAD-GDH)(EC1.1.5.9)である。FAD-GDHという用語は、天然タンパク質ならびにそれらの誘導体、変異体および/または機能的等価物に及ぶ。この用語は、特に、構造および/または酵素活性において実質的に異なることのないタンパク質に及ぶ。したがって、本発明によるバイオ電池の電気化学電池のアノードを生成するために、補因子と組み合わせて、データベース(例えば、SWISS PROT)に列挙されているGDH配列と少なくとも75%、好ましくは95%、さらにより好ましくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を有するGDH酵素タンパク質を使用することができる。アスペルギルス種のFAD-GDHが特に好ましく、効果的であるが、Glomerella cingulata(GcGDH)からの他のFAD-GDH、またはPichia pastoris(rGcGDH)で発現される組換え型も使用することができる。例示的な実施形態で使用されるFAD-GDHは、以下の特徴を有するアスペルギルス種由来のFAD-GDH(SEKISUI DIAGNOSTICS,Lexington,MA,カタログNo.GLDE-70-1192)である。
外観:凍結乾燥した黄色の粉末。
活性:>900U/mg粉末、37℃。
溶解度:10mg/mLの濃度で水に容易に溶解する。
活性の単位:37℃で1分当たり1マイクロモルのグルコースを変換する酵素の量。
分子量(ゲル濾過)130kDa。
分子量(SDSページ):グリコシル化タンパク質を示す拡散97kDaバンド。
等電点:4.4。
値:5.10-2M(D-グルコース)。
【0035】
多孔質導電性材料はまた、電子交換を改善するために、1,4-ナフトキノンなどのレドックスメディエータとして作用する芳香族分子を含むことができる。9,10-フェナントロリン、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、9,10-アントラキノン、フェナントレン、1,10-フェナントロリン、5-メチル-1,10-フェナントロリン、ピレン、1-アミノピレン、ピレン-1-酪酸、およびこれらの2つ以上の混合物によって形成される群から選択される他の分子も考慮することができる。そのような化合物の使用は、FAD-GDHまたはGOxを含む酵素系の場合に特に有利であることが証明されている。
【0036】
バイオ電池の酸化剤は、有利には、分子酸素、特に空気中に含まれる酸素などの酸化剤であり得る。
【0037】
酸化剤が分子酸素Oである場合、カソードで使用することができる酵素系は、有利には、ビリルビンオキシダーゼ(BOD)、ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)[12]またはラッカーゼ(LAC)[13]を含むことができる。例えば、BODは、以下の反応を触媒するオキシドレダクターゼ酵素(EC分類1.3.3.5、CAS番号80619-01-8;2018年4月)である。
2ビリルビン+O(2)<=>2ビリベルジン+2H(2)O。
【0038】
最も広く使用されているビリルビンオキシダーゼは、Myrothecium verrucariaから抽出されたものである。しかしながら、他の供給源からのBODの使用が検討され得る。BODの活性は、有利には15単位/mgタンパク質より大きく、好ましくは50単位/mgより大きく、例えば約65単位/mgタンパク質である。1単位とは、pH8.4、37℃で1分当たり1.0マイクロモルのビリルビンを酸化する能力として定義される。「BOD」という用語は、天然タンパク質ならびにそれらの誘導体、変異体および/または機能的等価物に及ぶ。この用語は、特に、構造および/または酵素活性において実質的に異なることのないタンパク質に及ぶ。
【0039】
プロトポルフィリンIX(CAS番号553-12-8;2018年4月)は、粗式C3434のポルフィリン単位を有する化合物である[14]。これは、多孔質導電性材料、特にナノチューブを機能化し、BODなどの酵素の配向を改善するために使用される。したがって、有利には、カソードを構成する材料中に含まれる。
【0040】
ここで使用される「酵素」という用語は、アノードおよびカソードで行われる酸化-還元反応の触媒作用を可能にする分子およびタンパク質のセットによって特徴付けられる、上記のような酵素系を含むことが直ちに理解される。したがって、任意選択で、導電性材料は、例えば電極に向かう電子の移動を容易にする促進剤(またはメディエータ)と混合される。
【0041】
電極を形成する固体凝集体は、有利には、多孔質導電性材料と少なくとも一種の酵素および/または酵素系とを組み合わせ、好ましくは薄膜の形態、例えば円形または卵形であるが、ブロックまたはより厚いペレットの形態であってもよい。これらの電極は、有利には、それらの構成要素の混合物の圧縮によって得られる。凝集体は、圧縮によって容易に得ることができ、所望の特定の形状をとることができる。特に、本発明によるバイオアノードおよび/またはバイオカソードは、小さい(直径1~2cm)、または非常に小さい(直径0.5cm未満)ペレット、例えば円形または多角形の形態をとることができる。かかる電極は、5mmから0.1mmまで変化する厚さ、例えば0.25mmの厚さを有することができる。結果として、本発明によるバイオ電池は、種々の形状および小さなサイズとなり得る。特に、2cm以下、好ましくは1cm以下、またはさらに0.75cm以下の体積のみを占有することができる。特に、「ボタン型」電池を置き換えることができるように設計されてもよい。
【0042】
したがって、本発明の特に好ましい態様によれば、アノードは、好ましくはカタラーゼと組み合わされたGOx酵素、またはFAD-GDH酵素を含む。したがって、この場合、バイオ燃料はグルコースである。どちらの場合も、バイオアノードは、グルコース酸化メディエータ、例えば、1,4-ナフトキノン化合物も含む。好ましくは、バイオカソードは、有利にはプロトポルフィリンIXと組み合わされた、酸素、より具体的にはBODを還元する酵素を含む。「バイオカソード」および「バイオアノード」という用語は、その構造中に生体物質、例えば酵素が存在することを指す。本発明のバイオ電池に関連して、それらは、カソードおよびアノードと同等の方法で使用される。
【0043】
[電気絶縁性多孔質膜]
本発明によるデバイスは、一方のアノードと他方のカソードとの間に配置された、電気絶縁性で液体媒体に対して透過性の多孔質セパレータ膜を含む。有利には同じ材料からなるこれらの膜は、特にイオン種の通過を可能にし、有利にはアノードとカソードとの間の基質の通過を可能にする。
【0044】
本発明の特定の変形形態によれば、該第1および任意選択で第2の膜はセルロースをベースとする、すなわちそれらは質量で80%を超える、有利には95%を超えるセルロースからなる。それらは、薄いシート(厚さ1mm未満)、特に、低坪量(例えば、100g/m以下)である紙の薄いシートであり得る。特に、かかる膜は、50μm未満、好ましくは500μm未満、好ましくは150μm未満の紙の厚さを有し、および/または有利には生分解性である。したがって、紙の厚さ範囲は、有利には、900~75μm、好ましくは500μm~75μm、および好ましくは200μm~100μmから選択することができる。紙の重量は、300g/m~25g/m、好ましくは200g/m~50g/mで変化し得る。より詳細には、紙は、厚さ0.83mm、重量291g/m、厚さ0.42mm、重量183g/mg、厚さ0.19mm、重量88g/m、厚さ0.19mm、重量90g/m、厚さ0.16mm、重量90g/mおよび厚さ0.35mm、重量195g/mを有する紙からなる群から選択することができる。
【0045】
本発明の別の好ましい変形形態によれば、電気絶縁性であり、液体媒体に対して透過性である該第1および任意選択で第2の分離多孔質膜は、燃料を貯蔵し、かつ/または該液体を利用可能にするための手段でもある。有利には、この貯蔵手段は上記の通りであり、燃料、例えばグルコースなどのバイオ燃料をさらに含む。
【0046】
[回路手段]
本発明によるバイオ電池はまた、概して導電性材料を組み込む電気スイッチング手段を含む。これらの手段は、層、タブ、フィルムまたはワイヤの形態であり得る。かかる層、タブ、フィルム(箔)またはワイヤは、有利には、薄い厚さ、高い熱伝導性および/または電気伝導性を有し、高度に配向され、好ましくは可撓性のグラファイトを含むか、または(実質的に)それから作製され得る。したがって、熱分解黒鉛のシートまたはタブを使用することが可能である(熱分解黒鉛シート)。グラファイトの使用は、安定性、軽量性、ならびに導電性および熱伝導性を兼ね備えているので有利である。その厚さは、10~500μm、好ましくは17~300μm、有利には40~2,000μmの範囲で選択することができる。それは、10、17、25、40、50、70、100および200μmの厚さからなる群から選択され得る。その熱伝導率(シートの長手方向平面における)は、100~1,000W/(mK)、好ましくは100~1,950W/(mK)、有利には100~1,350W/(mK)であり得る。熱伝導率は、200、400、700、1,000、1,300、1,350、1,600、1,850および1,950W/(mK)の熱伝導率値からなる群から選択することができる。この層はまた、5,000S/cm超、好ましくは8,000S/cm以上、例えば約10,000S/cmの導電率を有してもよいが、特に層の厚さが40μm未満である場合には、より高い導電率、例えば約20,000S/cmを有してもよい。この層はまた、耐熱性、例えば、200℃超、有利には300℃超、例えば約400℃の温度に対する耐性を有することができる。かかる材料は、アノードおよびカソードと接触させて、それらをスイッチオンにすることができる。有利には、カソードに関して、導電性材料は、カソードにおけるガス拡散も可能にする材料を含むか、それと組み合わせられるか、またはそれからなることができる。かかる材料は、例えば、カーボンブラックおよびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の層で覆われた炭素繊維の層を含むことができる。バイオ電池は、有利には、回路手段をバイオ燃料電池の外部と接続する端子(例えば、少なくとも1つの正端子および少なくとも1つの負端子)を含む。かかる端子は、電流を出し入れすることを可能にする。これらの端子は、適切な方法で寸法決めされ位置決めされた回路手段の一部であり得る。したがって、これらの端子は、回路手段の延長部(例えば、外向きに突出するタブ)を備えることができ、または、可能な外部コーティングの開口部によってアクセス可能にされた回路手段の一部とすることができる。したがって、該バイオ電池の回路手段は、アノードと接触する導電性要素と、第1および第2のカソードと接触する導電性要素と、を含むことができ、第1および第2のカソードと接触する該導電性要素は、カソードでの該酸化剤のガス拡散も可能にする材料を含む。好ましくは、第1および第2のカソードと接触している該導電性要素は、それぞれアノードと接触している2つの別個の層を含む。
【0047】
[支持体]
本発明によるバイオ電池は、有利には、デバイスの電気化学電池を部分的に覆う保護支持体、層、またはフィルムであり得る外部コーティングを含む。これは、好ましくは、可撓性、接着性、非毒性、化学的安定性、電気絶縁性、放射線不感受性であり、および/または広い動作温度範囲(例えば、-150℃~200℃、またはさらには約260℃の温度)を有する。このコーティングまたは外側保護フィルムは、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)タイプの過フッ素化ポリマー材料またはシリコーンベースの材料などの比較的不活性な材料を含浸させたガラス繊維織物を含むか、または(実質的に)それから作製することができる。PTFEは、Du Pont de NemoursのTeflon(登録商標)、AGCのFluon(登録商標)、DyneonのHostaflon(登録商標)である。フィルムまたはコーティングは、好ましくは、50重量%を超える当該材料、有利には、フィルムの全重量に対して50~70%、好ましくは57~64%で含浸される。その厚さは、10分の数ミリまたは100分の1ミリメートルでさえある。例えば、0.03~0.50mm、好ましくは0.05~0.30mm、および好ましくは0.06~0.14mmの範囲から選択することができ、例えば0.07mmであってもよい(NF EN ISO 2286-2016年12月3日)。本発明の好ましい態様によれば、コーティングまたは保護フィルムは、本発明によるバイオ電池の電気化学電池の外面に接着することを可能にする、好ましくは耐水性の接着層を含む。外部コーティングとして使用することができる別の材料は、合成繊維(例えば、ポリエステル/レーヨンブレンド)の層と接着剤層(例えば、アクリレート系)とを含む不織接着テープタイプであってもよい。このタイプの材料は、概して医療用であり、外部コーティングとしてよく適している。
【0048】
1つの特定の態様によれば、この保護フィルムは、カソードの1つの面に直接、または回路手段の一部に直接貼り付けることができる。別の好ましい態様によれば、好ましくは可撓性かつ絶縁性であるこの外部コーティングは、アノードおよび/またはカソードにおける液体および/またはガスのアクセスを可能にするように位置決めされ寸法決めされた1つ以上の開口部を含む。この開口部は、コーティングに予め切断することができ、例えば、バイオカソードに対向して位置決めされた一連の小さな円形開口部の形態をとることができる。追加的または代替的に、この開口部は、コーティングが電気化学電池を含むバイオ電池を完全に取り囲まず、これらの要素へのアクセスを与える開口部を残すという事実によって形成することができる。
【0049】
したがって、本発明によるバイオ電池は、有利には、好ましくは可撓性、絶縁性および/または液体不透過性の外部コーティングを含むことができ、該外部コーティングは、アノードへの液体のアクセスおよび/またはカソードへの酸化剤を含むガスのアクセスを可能にするように位置決めされ寸法決めされた開口部を含む。
【0050】
本発明の有利な態様によれば、これらの開口部は、ガスがカソードの各々に直接、または唯一であり得る回路手段を介してアクセスすることを可能にする。
【0051】
[構造]
本発明の一態様によれば、電気化学電池は、一連の層、好ましくは薄く、可撓性があり、かつ/または機械的に堅牢であり、好ましくは自己支持型多層(または多層膜)スタックを形成する一連の層を含むことができる。これらの層の形状および/または寸法、特に、少なくとも1つの開口部および/または凹部の存在は、有利には、電気接続、燃料のための入口および/または酸化剤のための入口を構成するかまたは可能にするように決定される。これらの層は、本出願に記載されているように、アノード、カソード、分離層および回路手段を含む。
【0052】
特に好ましい態様によれば、本発明による電気化学電池は、酸化剤を含むガスとカソードの第2の表面との間の接触を可能にするための手段を含む。これらの手段は、上記のような多孔質構造を有する材料、および/またはカソードの第2の表面と酸化剤を含むガス源との間のアクセス経路を含む構造のいずれかを含むことができる。
【0053】
[方法およびその他]
本発明の目的はまた、本出願に記載されるようなバイオ電池を製造する方法である。この方法は、該バイオ電池の構成要素を位置決めし、接合することを含む。この方法は、上述したような外部コーティング(または支持体)の少なくとも1枚のシートを使用することを含むことができ、外部コーティングの内面、好ましくは接着剤上に、
回路手段と、
アノードを取り囲む少なくとも2つのカソードと、
アノードをカソードから分離する分離多孔質絶縁膜と、を位置決めすることを含む。
【0054】
好ましくは、位置決めは該要素の重ね合わせである。外部コーティングシートは、バイオ電池の要素が接着表面上に位置決めされると、これらの要素の周囲に自由表面が存在するような寸法にすることができる。この自由表面は、これらの要素が一緒に結合され、バイオ電池を構成できるように位置決めおよびサイズ化されている。このステップを実施するために、シートをそれ自体の上に折り返してバイオ電池の他の要素を覆うことができ、かつ/または別のコーティングシートを使用して第1のコーティングシート上にすでに位置決めされた要素を覆うことができる。これらの2つの部分は、外部コーティングの内部部分上の接着剤の存在によって有利に結合される。
【0055】
本発明はまた、本出願に記載され、水性液体をさらに含み、当該液体が任意選択でバイオ燃料を含むバイオ電池に関する。実際、仏国特許出願公開第1855014号明細書および国際公開第2019/234573号パンフレットに記載されているように、燃料は、乾燥形態および/または固体形態および/または非可溶化形態でデバイス内に既に存在していてもよく、かつ/または酵素部位に移動可能であってもよい。例えば、それは、燃料貯蔵手段に組み込まれるか、またはその近くに位置決めされ得る。水(純粋または非純粋)が添加されると、このように存在する燃料(例えば、糖)が媒体中に溶解し、電気化学的交換が起こることを可能にする。代替的または追加的に、添加される液体は燃料を含む。これは、例えば、血液、尿、唾液などの生理学的液体、またはアルコール飲料またはグルコース飲料であり得る。
【0056】
本発明の目的はまた、バイオ電池を得るための方法であり、本出願に記載されるような本発明によるバイオ電池を液体、好ましくは水性液体の存在下に置くことを含み、該液体は、任意選択で、糖(例えば、グルコース、フルクトース、サッカロースおよび/またはラクトースなど)、デンプンまたはエタノールなどの燃料を含む。
【0057】
本発明の別の目的は、本発明によるバイオ電池と、電気受信機とを備える装置(すなわち、電流を使用する(受け取る)装置)であって、該バイオ電池が該電気受信機に電気的に接続されている装置である。かかる装置は、検査、特に生体流体の検査、例えば妊娠検査または血糖検査であり得る。代替的または追加的に、本発明によるバイオ電池(および/またはデバイス)は、電子ディスプレイおよび/または発光を有する電子装置に組み込むことができる。より概しては、本発明によるデバイスは、ポイントオブケア検査(POCT)デバイス、モノのインターネット(IoT)、またはセンサ環境など、金属誘導体を使用するボタン型電池で動作するタイプのものである。本発明によるかかる装置は、有利には、使い捨ておよび/または生分解性であり得る。
【0058】
本発明の別の目的は、本出願に記載のバイオ電池を製造するためのキットであって、使用説明書と関連付けられた本出願に記載のバイオ電池と、場合によっては上記の水性液体を含む容器とを含むキットである。
【0059】
本発明の別の目的は、本発明によるバイオ電池の製造またはバイオ電池を得るためのデバイスの製造のための、上記のような吸い取り紙の使用である。
【0060】
本発明の別の目的は、電流を生成するための本発明によるバイオ電池の使用である。
【0061】
本発明の別の目的は、上述した電気化学電池である。
【0062】
本発明の別の目的は、上述した電気化学電池である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
本発明は、単に例として与えられる以下の説明を読み、添付の図面を参照することにより、より良く理解されるであろう。
図1】従来の単一カソード電池(SC)および単一空気カソード電池(SABC)の構成、ならびに本発明の原理によるデュアル空気カソード電池(DABC)の構成を示す図である。
図2】本発明に係る燃料電池の構造を示す分解正面斜視図である。
図3図2のデバイスの上面図である。
図4図2のデバイスの上面図である。
図5図2のデュアル空気カソード(DABC)デバイスのピーク電力を示すバイアス図である。
図6】単一空気カソード(SABC)デバイスのピーク電力を示すバイアス図である。
図7】DABCおよびSABCバイオ電池、ならびに直列の2つのSABC(2×2.5mg酵素)を含む電池の電流の関数としての電力曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0064】
図1に、電池(SC)の従来の構成も示されている。この図において、カソード2は、アノード4と支持体6との間に従来の方法で位置決めされる。図1はまた、空気カソード電池(SABC)を示しており、支持体8は空気透過性であり、酸素の透過を可能にする。
【0065】
本発明による電池(DABC)の部分概略構成は、アノード4の各側に位置決めされた2つのカソード2を含む。空気透過性支持体または保護層8は、各カソード2の外面上に位置決めされる。したがって、表面フットプリントは同じままであるが、電力密度は増加する。
【0066】
電気エネルギー生成デバイスの一例が提供されており、その構造が図2に示されている。デバイスは、互いの上に積み重ねられた構成材料の一連の層を含む燃料電池10である。明らかに、かかるデバイスは、その構成中、またはその使用中に、任意の所望の位置に位置決めすることができ、「下部」および「上部」という用語は、文脈および図面に関連して本発明によるデバイスの要素の相対位置を明確にするためにのみ使用される。
【0067】
電池10は、電極として、アノード14、上部カソード12、および下部カソード12’を含む。電極14、12および12’は、MWCNT「多層カーボンナノチューブ」ナノチューブの薄いシートの形態である。この用途に適したナノチューブのシートは、市販されているか、またはDMFなどの溶媒中のナノチューブの懸濁液、音波処理(例えば30分間)および濾過(Millipore PTFE社製のPTFEフィルタ(JHWP、孔径0.45μm、Φ=46mm)を用いて容易に製造することができる。この方法は、Gross et al(2017)“A High Power Buckypaper Biofuel Cell:Exploiting 1,10-Phenanthroline-5,6-dione with FAD-Dependent Dehydrogenase for Catalytically-Powerful Glucose Oxidation”ACS Catal.2017,7,4408-4416に詳細が記載されている。これらのシートは、アノード14の各面上に40μL/0.785cmの量のメディエータ(フェナントロリンキノン、アセトニトリル中10mmol/L)の溶液、および各カソード12および12’について40μL/0.785cmの体積の促進剤(プロトポルフィリンIX、水中10mmol/L)の溶液を堆積(ピペット)させることによって改質された。電極およびメディエータを乾燥させた後、酵素は、その溶液を堆積(ピペット)させることによってこれらのシートに添加される。アノード14では、5mg/LのFAD-GDHの溶液が使用され、40μL/0.785cmの体積がアノードの各面上に堆積される。カソード12および12’については、5mg/Lのビリルビンオキシダーゼ溶液が使用され、40μL/0.785cmの体積である。次いで、各シート/電極12、12’および14を室温で一晩乾燥させた。
【0068】
液体拡散層および電気絶縁層(12×18mm)が、一方のアノード14と他方のカソード12および12’との間に位置決めされる。上部拡散層16は、アノードと上部カソード12との間に位置決めされる。下部拡散層16’は、アノード14と下部カソード12’との間に位置決めされる。拡散層は、Whatman濾紙タイプの吸い取り紙でできている。それらは、所望のバイオ電池の構成に合うように切断され、190μmの厚さおよび97g・m-2の重量を有する。上部拡散層16は、下部拡散層16’とは異なる形状を有する。後者は、その角のうちの1つに切り欠き部分(6×6mm)、すなわち、アノード14と接触する導電体18へのデバイス10の外側からのアクセスを可能にし、アノード14と拡散層16’との間に位置決めされる凹部17を含む。
【0069】
導電体18は、東洋炭素FRANCE SA(ZA du Buisson de la Couldre-9-10 rue Eugene Henaff-78190 Trappes-France)によって販売され、特許第3691836号に記載されているPANASONICブランドの可撓性グラファイトシートからなる。グラファイトの使用は、安定性、軽量性、ならびに導電性および熱伝導性を兼ね備えているので有利である。寸法(10×18mm)の導電体シート18は、液体拡散層16’とアノード14との間に位置決めされ、アノード14と直接接触し、部分的に以下のものに面する。
1)拡散層16’の凹部17、および
2)支持体層22’の開口部24’。
【0070】
同様に炭素で作られ、ガス拡散(ここでは空気)を可能にする導電性ガス拡散層20が、上部カソード12と接触して配置される。より具体的には、上部拡散層16と接触していないカソード12の面に対向して配置される。後者の寸法(10×18mm)により、カソード12への酸素の供給が可能となる。この層は、カーボンブラックおよびSIGRACET(登録商標)タイプのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(SGL CARBON GmbH社(Werner-von Siemens Strasse 18,86405 Meitingen,Germany)によって販売されている)の層で覆われた炭素繊維の層を含む。ガスの拡散は、特にカソード12に向かうガスの通過を可能にする開口部23を通して行われる。上部層20と同一の下部導電性ガス拡散層20’が対称的に位置決めされ、カソード12’と接触し、開口部23’に面している。
【0071】
最後に、電池12は、PTFE接着剤(TECHNIFLON EUROPE,3,rue du bicentenaire de la Revolution,91220 LE PLESSIS PATE,FRによって販売される参照番号208AP)で被覆されたガラス繊維の上部支持シートまたは支持体22を含む。上部支持体22は、18×28mmの寸法であり、8×8mmの寸法の中央開口部23と、直径4mmの寸法の2つの円形開口部24および26とを含む。支持シート22は、上部導電性ガス拡散層20を覆う。円形開口部24は、電池の要素への液体のアクセスを可能にする。下部支持シート22’は、電池の下側を形成し、上部支持シート22と同じ組成およびサイズであってもよい。しかしながら、この例では、シート22は、ポリエステル/レーヨン繊維の層と、3M社によって販売されているアクリレートベースの感圧接着剤層とを含む不織接着テープタイプのシートである。このタイプの材料は、概して医療用であり、外部コーティングとしてよく適している。
【0072】
支持体22’は、中央開口部23’と、第1および第2の円形開口部24’および26’とを含む。この支持体22’は、下部導電性ガス拡散層20’を覆うように位置決めされている。シート22および22’の接着表面は互いに面しており、電池10の他の要素よりも寸法が大きいことを考慮すると、シート22および22’の縁部は接触して確実に接合することができる。
【0073】
したがって、カソード12および12’ならびにそれらのそれぞれの電気接触は、アノード14の両側に位置し、互いに物理的または電子的に接続することができる。
【0074】
電気を発生させるために、170mmolのグルコースを含むリン酸緩衝生理食塩水(20℃でpH7.4)を、ピペットを使用して開口部24(図3参照)を介して上部拡散層20上に注いだ。毛管現象によって、液体は、デバイス12内を伝播し、液体拡散層16’に到達し、カソード12および12’とアノード14との間のプロトンのイオン交換が可能となり、したがって、バイオ電池端子10における電流の生成が可能となる。図3および図4から明らかなように、これらの端子は、アノード用の開口部24’を通してアクセス可能な導電体18の部分と、開口部26および26’を通してそれぞれアクセス可能な導電層20およびガス拡散層20’の部分とによって構成される。本発明によるDABCデバイスのバイアス図を図5に示している。酸化剤(酸素)を含む空気は、中央開口部23および23’を通ってカソードに到達する。
【0075】
本発明によるデバイス10の効率を比較するために、単一空気カソードデバイスSABCを生成した。このデバイスは、下部カソード12’または下部導電性拡散層20’を含まないという点でのみ、本発明のデバイスと異なっていた。SABCデバイスは、前述した本発明によるデバイスと同じサイズであり、同じ総質量の酵素、メディエータ、グルコース、緩衝生理食塩水、および絶縁体/輸送層を含んでいた。SABCデバイスの場合、酵素塊は、単一カソード(2つではなく)およびアノード(2つではなく)の単一面上に分配された。液体拡散層の厚さは、本発明によるデバイスで使用されるものの正確に2倍であった。
【0076】
作製したSABCデバイスのバイアス図を図6に示している。
【0077】
これらの図は、一定の放電電流を60秒間印加した後に開回路電圧(OCV)を測定することによって得られた。放電電流の値は、最大電力が決定されるまで、次いでこの電力が崩壊するまで、一定に増加された。
【0078】
本発明によるDABCデバイスの電力ピークは、SABCデバイスのそれよりも63%高い。ピーク動作電力は、わずかにより広い電流範囲にわたって生じるように見え、これはDABCデバイスが広範囲の放電電流にわたってより良好に機能し得ることを示唆している。
【0079】
検査したデバイスについてのカソードにおける酵素の最適量(BOD)は、2.5mg/cmである。
【0080】
最後に、デバイス
SABC(曲線A、単一カソード(2.5mg酵素/cm))、および
DABC(曲線B-本発明による二重カソード(2×1.25mg酵素/cm))の電流に応じた電力曲線が得られる。
【0081】
これらは、点Cと同様に図7の図にプロットされており、直列に接続された2つのSABC(2.5mg/cm酵素)を含む550μAでのバイオ電池の電力に相当する。かかるDABC電池は、本発明のものよりも30%高い電力を可能にするが、カソードにおいて2倍多くの酵素を必要とする。
【0082】
同量の酵素を用いて、約70%の効力増加が得られた。本発明によるデバイスを用いることで、かかる増加が得られた。かかる増加は予測不能なものであった。
【0083】
本発明は、ここで説明した実施形態に限定されず、他の実施形態が当業者には明らかになるであろう。
【0084】
当然ながら、電気エネルギーを生成するためのデバイスを形成する種々の要素を形成するために、上述した材料とは異なる材料を使用することも可能である。エネルギーを生成することを可能にする化合物は、上述したもの、ならびに種々の要素(アノード、カソード、伝導および/または拡散層、端子など)の互いに対する配置とは異なることもできる。
【符号の説明】
【0085】
2 カソード
4 アノード
6 支持体
8 ガス透過性支持体
10 ガス呼吸酵素燃料電池
12 電池10の上部カソード
12’ 電池10の下部カソード
14 電池10のアノード
16 電池10の上部電気絶縁液体拡散層
16’ 電池10の下部電気絶縁性液体拡散層
17 層16’の凹部
18 電池10の導電体
20 電池10の上部導電性ガス拡散層
20’ 電池10の下部導電性ガス拡散層
22 電池10の上部支持シートまたは支持体
22’ 電池10の底部支持シートまたは支持体
23 支持体22の中央開口部
23’ 支持体22’の中央開口部
24 電池および拡散層16および16’への液体の導入を可能にする支持体22の第1の円形開口部
24’ (アノード14に向かう)電気接触のための支持体22’の第1の円形開口部
26 (カソード12’に向かう)電気接触のための支持体22の第2の円形開口部
26’ (カソード12’に向かう)電気接触のための支持体22’の第2の円形開口部
【0086】
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図1
図2
図3
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図7
【国際調査報告】