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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】層状の不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/147 20120101AFI20230407BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20230407BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20230407BHJP
   B32B 5/08 20060101ALI20230407BHJP
   B32B 5/26 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
D04H3/147
D04H3/16
D04H3/14
B32B5/08
B32B5/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552267
(86)(22)【出願日】2021-02-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 CZ2021050025
(87)【国際公開番号】W WO2021170160
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】PV2020-105
(32)【優先日】2020-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CZ
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TENSORFLOW
(71)【出願人】
【識別番号】522342086
【氏名又は名称】ピーエフノンウーヴンズ ホールディング スポレチノスト エス ルチェニム オメゼニム
(71)【出願人】
【識別番号】307036487
【氏名又は名称】ピーエフノンウーヴンズ チェク スポレチノスト エス ルチェニム オメゼニム
(71)【出願人】
【識別番号】521221205
【氏名又は名称】ピーエフエヌ-ジーアイシー アクチオヴァ スポレチノスト
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カスパルコヴァ,パヴリナ
(72)【発明者】
【氏名】カウシュケ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】メチル,ズデニェク
【テーマコード(参考)】
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK46A
4F100AK46B
4F100AT00
4F100BA02
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DG18A
4F100DG18B
4F100EC18A
4F100EC18B
4F100EJ172
4F100EJ422
4F100GB56
4F100GB66
4F100GB71
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA23
4L047AA27
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB09
4L047CA02
4L047CA05
4L047CB01
4L047CB02
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
フィラメントの第1層(T)であって,第1担体ポリマー(A1)及び第1接着ポリマー(B1)を含有するエンドレスフィラメントを含み,前記第1接着ポリマー(B1)は前記エンドレスフィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,その融点は前記第1担体ポリマー(A1)より少なくとも5℃低く,当該フィラメントの第1層(T)は,間隔を置いて配置した複数の接着点を含み,該接着点は,フィラメント同士を相互接続し,かつ,前記第1接着ポリマー(B1)から形成される,当該フィラメントの第1層(T)と,フィラメントの第2層(M)であって,剛性が前記第1担体ポリマー(A1)より低い担体材料と,融点が前記担体材料及び第1担体ポリマー(A1)より少なくとも5℃,好ましくは少なくとも10℃低い第2接着ポリマー(B2)とを含有するフィラメントを含み,該フィラメントの第2層(M)は間隔を置いて配置した複数の接着点を含み,該接着点は,第2層(M)のフィラメント同士を相互接続し,かつ,前記第2接着ポリマー(B1)から成る,当該フィラメントの第2層(M)とを含む層状の不織布。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントの第1層(T)であって,第1担体ポリマー(A1)及び第1接着ポリマー(B1)を含有するエンドレスフィラメントを含み,前記第1接着ポリマー(B1)は前記エンドレスフィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,その融点は前記第1担体ポリマー(A1)より少なくとも5℃低く,当該フィラメントの第1層(T)は,互いに間隔を置いた配置の複数の接着点を含み,該接着点は,フィラメント同士を相互接続し,かつ,前記第1接着ポリマー(B1)から形成される,当該フィラメントの第1層(T)と,フィラメントの第2層(M)であって,剛性が前記第1担体ポリマー(A1)より低い担体材料と,融点が前記担体材料及び第1担体ポリマー(A1)より少なくとも5℃,好ましくは少なくとも10℃低い第2接着ポリマー(B2)とを含有するフィラメントを含み,該フィラメントの第2層(M)は互いに間隔を置いた配置の複数の接着点を含み,該接着点は,第2層(M)のフィラメント同士を相互接続し,かつ,前記第2接着ポリマー(B1)から成る,当該フィラメントの第2層(M)と,
を含む層状の不織布。
【請求項2】
前記フィラメントの第1層(T)において互いに隣接した前記接着点間の間隔距離の中央値は8mm以下であり及び/又は,前記第2層(M)において互いに隣接した前記接着点間の間隔距離の中央値は8mm以下であることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項3】
前記フィラメントの第2層(M)中のフィラメント担体材料は第2担体ポリマー(A2)であり,該第2担体ポリマー(A2)の引張強度及び/又は曲げ強度は,前記第1担体ポリマー(A1)の引張強度及び/又は曲げ強度より少なくとも100MPa,好ましくは少なくとも200MPa,より好ましくは少なくとも300MPa,より好ましくは400MPa,好ましくは少なくとも500MPa低く,前記第2接着ポリマー(B2)は前記フィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,前記第2層(M)の前記フィラメントはエンドレスフィラメントであることを特徴とする請求項1又は2記載の不織布。
【請求項4】
前記第1接着ポリマー(B1)及び前記第2接着ポリマー(B2)の融点には0~5℃の差があるか又は,同じであることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の不織布。
【請求項5】
前記第1担体ポリマー(A1)及び/又は前記第2担体ポリマー(A2)は,ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド及び,これらの共重合体から成る群より選択されることを特徴とする請求項3又は4記載の不織布。
【請求項6】
前記第1接着ポリマー(B1)及び/又は前記第2接着ポリマー(B2)は,ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド及び,これらの共重合体から成る群より選択されることを特徴とする,請求項1~5いずれか1項記載の不織布。
【請求項7】
前記第1担体ポリマー(A1)は前記第1層(T)中のフィラメントの少なくとも55重量%を形成し及び/又は,前記第2担体ポリマー(A2)は第2層(M)中のフィラメントの55重量%未満を形成することを特徴とする請求項3~6いずれか1項記載の不織布。
【請求項8】
前記第2層(M)のエンドレスフィラメント中のポリマーの加重平均密度に対する前記第1層(T)のエンドレスフィラメント中のポリマーの加重平均密度の比は1.0~1.5,好ましくは1.1~1.3であり,及び/又は,前記第2層(M)の坪量に対する前記第1層(T)の坪量の比は1.0~1.5,好ましくは1.1~1.3であることを特徴とする請求項3~7いずれか1項記載の不織布。
【請求項9】
前記フィラメントの第1層(T)のフィラメント及び/又は前記フィラメントの第2層(M)のフィラメントは,鞘/芯型であることを特徴とする請求項1~8いずれか1項記載の不織布。
【請求項10】
前記フィラメントの第1層(T)フィラメントの太さの中央値は前記フィラメントの第2層(M)フィラメントの太さの中央値の0.8~1.5倍,好ましくは0.9~1.4倍,最も好ましくは1~1.3倍の範囲にあることを特徴とする請求項1~9いずれか1項記載の不織布。
【請求項11】
前記フィラメントの第2層(M)フィラメントの太さは30ミクロン未満,好ましくは26ミクロン未満であることを特徴とする請求項1~11いずれか1項記載の不織布。
【請求項12】
前記第1接着ポリマー(B1)及び/又は前記第2接着ポリマーは少なくとも80重量%,好ましくは少なくとも90重量%のポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1~11いずれか1項記載の不織布。
【請求項13】
層状の不織布の製造方法であって,以下の工程:
a)第1担体ポリマー(A1)及び,融点が前記第1担体ポリマー(A1)より少なくとも5℃低い第1接着ポリマー(B1)を融解し,次いで第1紡糸ビームの紡糸口金に供給し,これにより,表面の少なくとも一部が前記第1接着ポリマー(B1)から成るエンドレスフィラメントを形成し,その後,このように形成したフィラメントを冷却して引き出し,次いで走行ベルト上に堆積させ,フィラメントの第1層(T)を形成する工程;
b)フィラメントの第2層(M)を前記フィラメントの第1層に堆積させる工程であって,前記第2層(M)のフィラメントは,剛性が前記第1担体ポリマー(A1)より低い担体材料と,融点が前記担体材料及び前記第1担体ポリマー(A1)より少なくとも5℃,好ましくは少なくとも10℃低い第2接着ポリマー(B2)とを含む,工程;
c)その後に,―100℃~250℃,好ましくは120℃~220℃,より好ましくは90℃~140℃,最も好ましくは110℃~130℃に加熱した空気の効果により―フィラメント間に前記第1接着ポリマー(B1)から接着点を形成することでフィラメントの第1層(T)を一体化し,前記第2接着ポリマー(B2)から接着点を形成することによりフィラメントの第2層(M)を一体化する工程
を含む方法。
【請求項14】
前記工程b)において,前記第2接着ポリマー(B2)及び前記担体材料を融解し,前記担体材料は第2担体ポリマー(A2)であり,該第2担体ポリマーの曲げ剛性及び引張剛性は前記第1担体ポリマー(A1)より少なくとも100MPa,好ましくは少なくとも200MPa,より好ましくは少なくとも300MPa,更に好ましくは少なくとも400MPa,更に好ましくは少なくとも500MPa低く,前記第2担体ポリマー(A2)及び前記第2接着ポリマー(B2)は第2紡糸ビームの紡糸口金に供給し,それにより,表面の少なくとも一部が前記第2接着ポリマー(B2)から成るエンドレスフィラメントが形成され,そこで,このように形成されたフィラメントを冷却し,引き出し,次いで走行ベルト上の前記フィラメントの第1層(T)上に堆積させることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記工程c)において,加熱した空気は200~20,000ms,好ましくは200~15,000ms,最も好ましくは200~10,000msの間,前記層(T,M)に作用することを特徴とする請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
前記工程c)において,加熱した空気は前記層(T,M)内を通過させることを特徴とする請求項13~15いずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記工程c)において,加熱した空気は0.2~4.0m/s,好ましくは0.4~1.8m/sの範囲の速度で前記層(T,M)内を通過させることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記工程b)の後及び,前記工程c)の前に行う前記層(T,M)の予備一体化工程を更に含み,層の予備一体化は,前記層(T,M)を80~180℃,好ましくは90℃~150℃,最も好ましくは110℃~140℃の範囲の温度に加熱して接着ポリマー(B1,B2)を部分的に軟化することにより行うことを特徴とする請求項13~17いずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記工程b)の後に行う予備一体化工程において,熱風を前記層(T,M)に1~10,000ms,好ましくは2~1,000ms,最も好ましくは4~200msの範囲で送風し,予備一体化工程における熱風の送風時間は,前記工程c)における熱風の送風時間の0.5倍未満であることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記予備一体化工程において,加熱した空気は前記層(T,M)に送風し,この空気は0.1~10m/s,好ましくは0.8~4m/sの範囲の速度で前記層(T,M)を流れることを特徴とする請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
前記工程a)の後及び,前記工程b)の前に行う前記層(T)の予備一体化工程を更に含み,予備一体化は,前記層(T)を80~180℃,好ましくは90℃~150℃,最も好ましくは110℃~140℃の範囲の温度に加熱して前記第1接着ポリマー(B1)を部分的に軟化することにより行うことを特徴とする請求項13~20いずれか1項記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,少なくとも2つのフィラメントの層を含む層状の不織布に関するものである。フィラメントの第1層は,第1担体ポリマー及び第1接着ポリマーを含有するエンドレスフィラメントを含み,前記第1接着ポリマーはこれらのエンドレスフィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,前記第1担体ポリマーより少なくとも5℃低い融点を有する。前記フィラメントの第1層は,間隔を置いて配置した接着点を含み,該接着点は,フィラメント同士を相互接続し,かつ,前記第1接着ポリマーから成る。その結果,良好な復元性及び耐摩耗性を有する柔らかく嵩高なスパンメルト型不織布が得られ,これは,様々な衛生用品のみならず濾過等にも好適である。本発明は同様に,本不織布の製造プロセスを包含する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの既知の方法を用いて―すなわち,好適なポリマーの選択,フィラメント形状の変更(様々に,かつ,捲縮又は湾曲したフィラメントの様々な方法を用いる)及び,接着方法―熱的に(例えば,好適なエンボス模様を有するカレンダ処理,エアレイ処理,超音波接着等),機械的に(例えば,ウォーターレイ処理,ニードルパンチ等),又はいくつかの接着方法の組み合わせにより,不織布を嵩高にすることが可能になる。
【0003】
一般に,材料が嵩高になるほど,その構造は「より粗い目」になり,接着方法は材料を圧縮しない方が有利である。例えば,カレンダローラによる接着では一般に,接着エンボス点がその周囲の領域よりかなり薄くなる(例えば,特許出願WO2017190717,又はその前出願WO2017190717を参照されたい)。この観点から,例えば,圧縮が生じない間に熱風を用いて接着することがより有利である。
【0004】
構造の目の粗さは,主にフィラメント間の自由空間の存在であると理解され,「空隙率」又は「空隙体積」という用語で示される。フィラメント間の自由空間の割合が大きいほど,個々のフィラメントの剛性が重要となる。フィラメントが柔軟すぎると,フィラメントの構造が保てなくなり,フィラメントが曲がり,構造全体が崩れ―生地の厚さが見込みより薄くなる。これは,特にポリオレフィン系フィラメントに見られる。即ち,この問題は,より硬いポリマー(例えば,ポリエステル)を使用することにより解決される。このポリマーは,非常に目の粗い生地構造さえ維持できるほど十分に硬く,また,(特にエアレイ材料において)圧縮後に元の嵩高に復元できるという利点(即ち,復元性)を有する―例えば,いわゆる捲縮対応断面(例えば偏心芯/鞘)を有する捲縮フィラメントの利用を記載している特許出願WO2018059610及び,例えば非捲縮対応断面(例えば同心芯/鞘)を有するフィラメントの利用を記載している本出願人らのチェコ国特許出願PV2018‐647(未公開)を参照されたい。
【0005】
硬く,柔軟性の低いフィラメントは,圧縮した後にその初期の嵩高性を復元できる嵩高な構造の形成を可能にするが,フィラメントが硬く,柔軟性が低いと,特に生地が使用者の身体に近いか又は,直接接触する用途(例えば吸収性衛生用品)において重要な性質である不織布の全体的な柔らかさ,柔軟性及び,ドレープ性に悪影響が及ぶ。
【0006】
この問題を解決するために,様々な特性を有するフィラメントを積層する周知の試みがある。梳毛不織布とは異なり,スパンメルト型不織布の標準的な製造ラインでは,1本の紡糸ビームから得た複数のフィラメントを直接ブレンドすることはできない。重ねた個々のフィラメント層は,その後まとめて接着する必要があり,その結果,同じポリマーをベースとするフィラメントの組み合わせが得られる―例えば,様々な程度の捲縮を有するポリオレフィンをベースとする複数の層の組み合わせを記載しているReifenhauser社及びFibertex Personal Care社の共同特許出願である欧州特許出願第2015153790号を参照されたい。
【0007】
嵩高を達成することを目的とした当技術分野で周知の別の試みでは,例えば,既知の収縮率の層(例えばPET/PE型の二成分フィラメント)を製造することにより熱風を用いて活性化したときに延伸フィラメントの挙動が異なることを利用している。ここでその層は,収縮率が低いか,又は全く収縮しない層(例えばPP/PE)と接着点を介して,カレンダローラを用いて接着する。この構造体はその後,熱流(例えば熱風)により活性化し,収縮性の層は収縮し,非収縮性の層は接着圧痕(bonding impression)間の「クッション」になるように強制的に湾曲させる―例えば,Reifenhauser社及びKG Maschinenfabrik社による特許出願,欧州特許出願第3192910号を参照されたい。
【発明の概要】
【0008】
従来の技術水準の欠点及び欠陥は,以下を含む層状の不織布によりかなりの程度まで解消される。
‐フィラメントの第1層であって,該層は第1担体ポリマー及び第1接着ポリマーを含有するエンドレスフィラメントを含み,前記第1接着ポリマーは,前記エンドレスフィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,その融点が前記第1担体ポリマーより少なくとも5℃低く,一方,当該フィラメントの第1層は,間隔を置いた配置の複数の接着点を含み,前記接着点は,フィラメント同士を相互接続し,かつ,前記第1接着ポリマーから成る;
‐フィラメントの第2層であって,剛性(一般的に,引張剛性及び/又は曲げ剛性)が前記第1担体ポリマーより低い担体材料と,融点が前記担体材料及び前記第1担体ポリマーより少なくとも5℃,より好ましくは少なくとも10℃低い第2接着ポリマーを含有するフィラメントから成り,一方,当該フィラメントの第2層は,間隔を置いた配置で接着点を含み,前記接着点は,フィラメント同士を相互接続し,かつ,前記第2接着ポリマーから成る。
【0009】
本発明の不織布は,接着エンボス点(binding emboss points)を持たない。
【0010】
好ましくは,前記フィラメントの第1層において互いに隣接した前記接着点間の間隔距離の中央値は8mm以下であり及び/又は,前記第2層において互いに隣接した前記接着点間の間隔距離の中央値は8mm以下である。
【0011】
同様に,有利には,前記フィラメントの第2層におけるフィラメントの前記担体材料は,引張強度又は曲げ強度が第1担体ポリマーより少なくとも100MPa低い第2担体ポリマーであり,前記第2接着ポリマーは,これらのフィラメントの表面の少なくとも一部を形成し,第2層のこれらのフィラメントは,エンドレスフィラメントである。
【0012】
有利には,前記第1接着ポリマー及び前記第2接着ポリマーの融点には0~5℃の差があるか又は,同じである。
【0013】
好ましくは,第1担体ポリマー及び/又は第2担体ポリマーは,ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド及び,これらの共重合体から成る群より選択され,及び/又は,第1接着ポリマー及び/又は第2接着ポリマーは,ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド及び,これらの共重合体から成る群より選択される。
【0014】
有利には,第1担体ポリマーは第1層中のフィラメントの少なくとも55重量%を形成し及び/又は,第2担体ポリマーは第2層(M)中のフィラメントの55重量%未満を形成する。
【0015】
特に有利な構成では,第2層のエンドレスフィラメント中のポリマーの加重平均密度に対する第1層のエンドレスフィラメント中のポリマーの加重平均密度の比は1.0~1.5,好ましくは1.1~1.3であり,及び/又は,第2層の坪量に対する第1層の坪量の比は1.0~1.5,好ましくは1.1~1.3である。
【0016】
従来の技術水準の欠陥は,同様に,以下の工程を含む層状不織布の製造方法により,かなりの程度解消される。
a)第1担体ポリマー及び,融点が前記第1担体ポリマーより少なくとも5℃低い第1接着ポリマーを融解し,次いで,第1紡糸ビームの紡糸口金に供給し,これにより,表面の少なくとも一部が前記第1接着ポリマーから成るエンドレスフィラメントを形成し,そして,このように形成したフィラメントを冷却しつつ引き出し,次いで走行ベルト上に堆積させ,フィラメントの第1層を形成する。
b)剛性が前記フィラメントの第1層より低い担体材料を含むフィラメントの第2層を前記フィラメントの第1層上に堆積させる;そして,第2接着ポリマーの融点は,前記担体材料及び第1担体ポリマーより少なくとも5℃,より好ましくは少なくとも10℃低い。
c)そして,100℃~250℃,好ましくは120℃~220℃,より好ましくは90℃~140℃,最も好ましくは110℃~130℃に加熱した空気の効果により,フィラメント間において前記第1接着ポリマーから接着点を形成することでフィラメントの第1層を一体化(consolidated)し,第2接着ポリマーから接着点を形成することでフィラメントの第2層を一体化する。
工程b)において有利には,第2担体ポリマーとして担体材料を融解し,前記第2担体ポリマーは,第1担体ポリマー及び第2接着ポリマーよりも少なくとも100MPa,好ましくは少なくとも200MPa,より好ましくは少なくとも300MPa,更に好ましくは少なくとも400MPa,有利には少なくとも500MPa低い曲げ剛性及び引張剛性を有し,第2紡糸ビームの紡糸口金に供給され,これにより,表面の少なくとも一部が第2接着ポリマーから成るエンドレスフィラメントが形成され,その後すぐに,このように形成されたフィラメントを冷却し,引き出し,次いでフィラメントの第1層と共に走行ベルト上に堆積させる。
同様に,工程c)では,加熱した空気は,200~20,000ms,好ましくは200~15,000ms,最も好ましくは200~10,000msの間,層(T,M)に作用し及び/又は,工程c)では,加熱した空気は,0.2~4.0m/s,好ましくは0.4~1.8m/sの範囲の速度で層(T,M)を通って供給されることが有利である。
【0017】
有利には,方法は,工程b)の後であって工程c)の前に層の予備一体化(pre-consolidation)の工程を更に含み,層の予備一体化は,層を80~180℃,好ましくは90℃~150℃,最も好ましくは110℃~140℃の範囲の温度に加熱して接着ポリマーを部分的に軟化することにより実施する。
【0018】
定義
用語「フィラメントの層」とは,一体化の目的でフィラメント同士をまとめて接着する前の状態にあるフィラメントの形態の材料を指し,前記一体化は,例えば,通風効果やカレンダ効果等により接続部を形成するといった様々な方法を用いて行うことが可能な手段(procedure)である。「フィラメントの層」は,通常,まだ相互に固着していない個々のフィラメントから成り,これらのフィラメントは特定の方法で事前相互接続/予備一体化してよい一方で,この予備一体化は,それぞれフィラメントの堆積中に又は,フィラメントの堆積直後に行ってもよいが,この工程は,フィラメントの層の拡張の一部として行っている。しかし,この予備一体化は依然として相当数のフィラメントが自由に移動できる状態であり,従って,再配置が可能である。上記の「フィラメントの層」は,複数の紡糸ビームから徐々に堆積した1つ又は複数の層から構成してもよい。
【0019】
用語「フィラメント」とは,本明細書では基本的にエンドレスフィラメントとして定義しており,一方,用語「ステープル繊維」とは,定義した長さに切断した繊維を指す。用語「繊維」と「フィラメント」とは,本明細書では同じ意味を付与するために使用する。切断した繊維の場合,用語「ステープル繊維」のみを使用する。
【0020】
用語「フィラメント間の接着」又は「接着点」とは,通常,これらのフィラメントが互いに交差する場所,又は互いに接触する場所もしくは互いに隣接する場所において2本のフィラメントを接続する接着を指す。接着点/一体化接着により,2本を超えるフィラメントを接続するか,又は同じフィラメントの2つの部分を接続することが可能となる。
【0021】
従って,本明細書での用語「接着点」とは,低い融点を示す成分の相互接続による,接触点での2本の繊維/フィラメントの接続を表す。接着点では,融点がより高く形成されたフィラメントの成分は変形又は損傷しない。逆に,用語「接着圧痕」とは,カレンダローラの隆起が作用した表面を指す。接着圧痕は,接着ローラの隆起の大きさにより決まった領域を持ち,隣接する領域と比較して一般的に厚さは薄い。接着プロセス中,接着圧痕の領域は一般的に,大きい機械的圧力を受け,温度と共に,接着圧痕の領域内の全てのフィラメント成分の形状に影響を与える場合がある。
【0022】
用語「一成分フィラメント」又は「一成分繊維」とは,単一ポリマー又は単一ポリマーブレンドから形成したフィラメントを指し,従って,二成分フィラメント又は多成分フィラメントと区別される。
【0023】
用語「多成分繊維又は多成分フィラメント」とは,断面に2つ以上の個々の部分的成分を組み込んだ繊維又はフィラメントを指し,断面におけるこれらの個々の成分は各々,異なるポリマー化合物又は,ポリマー化合物の異なるブレンドから成る。従って,用語「多成分繊維/多成分フィラメント」は,限定するものではないが「二成分繊維/二成分フィラメント」を含む上位の用語である。多成分フィラメントの様々な成分は基本的に,フィラメントの断面に沿って配された明確に画定した領域に配置し,フィラメントの長さに沿って連続的に延在する。多成分フィラメントの断面は,任意の形状又は配列の様々な成分から成るいくつかの部分的断面に分けてもよく,例えば断面の部分的成分の同軸配置,芯/鞘,放射状,又はいわゆる海島状(lands-in-the-sea)等の形態の断面の部分的成分の任意の相互配置が挙げられる。
【0024】
フィラメントを説明するために使用する用語「2種成分」及び「二成分」は,本明細書では互換的に使用する。
【0025】
測定値「フィラメント径」は,μmの単位で表す。用語「9000m当たりのフィラメントのグラム数」(デニール又はdenともいう)又は「10000m当たりのフィラメントのグラム数」(dTexともいう)は,フィラメント径(円形フィラメントの断面を想定)に使用の材料(単数又は複数)の密度を掛けた数値と相関するので,フィラメントの繊度又は粗度の度合いを表すために使用する。
【0026】
「機械方向」(MD) ― 不織繊維材料及び実際の不織繊維材料自体の製造に関し,用語「機械方向」(MD)は,基本的にこの材料を製造する製造ライン上の不織繊維材料の前進移動方向に対応する方向を表わす。
【0027】
「直交方向」(CD) ― 不織繊維材料及び実際の不織繊維材料自体の製造に関し,用語「直交方向」(CD)は,基本的に不織繊維材料の平面上に位置しながら,この材料が製造される製造ライン上の不織繊維材料の前進移動方向に対して横方向である方向を表す。
【0028】
「不織布材料」又は「不織布」とは,方向性をもって,又は無作為に配向したフィラメントから製造したベルト状又は繊維状の形成物であって,このフィラメントは初めフィラメント層の形成中に形成し,次に摩擦,又は結束力もしくは接着力の誘発によりまとめて一体化し,最後に相互接着の形成により一体化する。この一体化は,熱的に(例えば,通風効果,カレンダ,超音波効果等により),化学的に(例えば,接着剤の使用等),機械的に(例えば,水流交絡等),あるいは,これらの方法の組み合わせにより達成される。この用語は,織物又は編み物により形成した生地,又は接着縫合を形成するために撚糸又は繊維を使用した布地を指すものではない。繊維は天然由来でも合成由来でもよく,ステープル撚糸,連続繊維,又は加工場所で直接製造した繊維であってもよい。市販の繊維の直径は約0.001mm未満から約0.2mmを超える範囲であり,様々な形態:短繊維(ステープル繊維又はカット繊維として公知),連続した個々の繊維(フィラメント又はモノフィラメント繊維),フィラメントの無撚り束(コームファイバー),及びフィラメントの撚り束(撚糸)で提供する。不織布は,ステープル繊維を用いたメルトブロー,スパンボンド,スパンメルト,溶剤を使用した紡糸,静電紡糸,カーディング,フィルム細繊維化(film fibrillation),細繊維化(fibrillation),エアレイ処理,ドライレイ処理,ウェットレイ処理及び,当技術分野で公知のこれらのプロセスの様々な組み合わせなどの技術を含む多くの方法を利用して製造できる。不織布の坪量は通常,1平方メートル当たりのグラム数(g/m2)で表す。
【0029】
本明細書で使用される意味において,用語「層」とは,生地の部分的な成分又は要素を指す。「層」は,単一の紡糸ビーム上で又は,基本的に同じフィラメントを形成する連続配置した2本以上の紡糸ビーム上で製造した複数のフィラメントの形態であってもよい。例えば,スパンボンド法を実施するために意図した2本の連続配置紡糸ビームは,基本的に同じように設定し,基本的に同じ組成のポリマーを処理することで,組み合わせて単一の層を製造することが可能である。逆に,2本のスパンボンド型紡糸ビームのうち,一方が例えば単一成分フィラメントを製造し,他方が例えば二成分フィラメントを製造する場合,2つの異なる層が形成される。層の組成は,層の形成に使用する樹脂(ポリマー)組成を決定する個々の設定及び成分の知見に基づいて,又は不織布自体の分析,例えば電子顕微鏡を使用した分析により,あるいはDSC又はNMR法による層に含まれるフィラメントの製造に使用する組成物の分析により,把握できる。フィラメントの互いに隣接する層は必ずしも厳密に区分する必要はなく,先に堆積した層のフィラメント間の隙間に後から堆積した層のフィラメントが落ち込む結果として,境界領域の層が混ざり合う場合もある。
【0030】
「スパンボンド」プロセスとは,ポリマーを直接フィラメントに変換し,直後にこのように形成したフィラメントを堆積させることにより,無作為に配列したフィラメントを有する不織フィラメントの層を形成する不織布製造プロセスある。このフィラメントの不織層はその後,フィラメント間の接着部を形成することにより,不織布を包むように一体化する。一体化プロセスは,例えば,通風効果,カレンダ効果等,様々な方法を用いて実施できる。
【0031】
「活性化」は,半安定状態(例えば,結晶化が発生していない可能な限り低いエネルギー状態)にある繊維,フィラメント又は,繊維状構造体が加熱され,その後,ゆっくりと冷却されて,上記の半安定状態が異なる,より安定した状態(例えば,異なる結晶化相に対応する状態)に変化するプロセスであると理解されている。新しい状態が元の状態とは異なる体積になると仮定した場合,即ち,体積が小さくなると仮定した場合,これを「縮小」又は「収縮」と定義する。
【0032】
本明細書における用語「捲縮による形成を可能にする断面」とは,異なる性質を有する成分が断面に渡って配列された多成分フィラメントを指す。ここでは,フィラメントの製造時又は,その後にフィラメントを活性化温度以上まで加熱して,その後ゆっくりと冷却してフィラメントを捲縮させたときに,これらのフィラメントが収縮を引き起こす力のベクトルに追従するようにフィラメントを配列している。これらのフィラメント間の相互付着により,繊維層内に含まれるフィラメントの理想的な螺旋形状の形成が妨げられるにもかかわらず,フィラメントが解かれると,いわゆる螺旋捲縮が形成される。多成分フィラメントでは,フィラメントの断面における個々の各成分の重心を決定できる(所与の断面におけるこれら成分の表面/位置の計測に基づく―図5参照)。理論的な根拠はないが,各成分の全表面の重心が基本的に同一点にある場合,活性化温度まで加熱してもフィラメント上で捲縮させることはできないと推定する。例えば,ポリマー成分のうち一方が芯,他方が鞘を形成し,両方が相対的に同心である円形断面を有する二成分フィラメントでは,両成分の重心は断面の中心にある。
【0033】
本明細書における用語「圧縮性」とは,「弾性」の測定中に定義された負荷の影響により不織布が圧縮されるミリメートル単位の距離を指す。
【0034】
本明細書における用語「復元」とは,圧縮後にその初期形状を復元する生地の能力を指す。これは主に,作用負荷の解放後の生地の厚さとこの生地の初期の厚さとの比に基づく嵩高性の再生(復元)能力に関連する。
【0035】
以下,本発明の実施形態の好ましい形態について,添付の模式図を参照し,より詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】フィラメント断面の外形の例を示す図である。
図2】繊維の捲縮に対応しない断面の例を示す図である。
図3】本発明の層の平面におけるフィラメントの方向性配置の配向を示すグラフである。
図4】活性化前後のフィラメント切断の写真である。
図5】フィラメントの捲縮に対応する断面の例を示す図である。
図6】様々なレベルの捲縮を有するフィラメントの顕微鏡写真の比較を示す図である。
図7A】エンボスを用いて接着した生地と,接着点を用いて接着した生地との断面の比較を示す図である。
図7B】エンボスを用いて接着した生地と,接着点を用いて接着した生地との断面の比較を示す図である。
図8】第2層Mの断面例を示す図である。
図9】別の第2層Mの断面例を示す図である。
図10】別の第2層Mの断面例を示す図である。
図11】第2層Mのトップダウン図である。
図12】製造ラインの概略説明図である。
図13】マーチンデール平均耐摩耗性等級試験用装置の斜視図である。
図14】マーチンデール平均耐摩耗性等級試験の評価用の等級指標を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の主題は,少なくともフィラメントの第1層(T)及びフィラメントの第2層(M)を含むスパンメルト型のエンドレスフィラメントから形成した熱接着性不織布である。
【0038】
フィラメントの第1層(T)は剛性の高いポリマーを含有する二成分又は多成分のエンドレスフィラメントを主成分とし,フィラメントの成分のうち少なくとも1種は剛性の高い第1担体ポリマーA1を主成分とし,フィラメントの表面の少なくとも一部に存在する他の成分のうち少なくとも1種は,前記第1担体ポリマーA1より融点の低い第1接着ポリマーB1を主成分とする。理論にとらわれること無く,本発明者らは,相対的に剛性の高いポリマーを含むフィラメントにより本発明の不織布が嵩高性及び復元性を得ると考えている。本発明の解決策として,フィラメントの第1層Tがスパンボンド型のエンドレスフィラメントを含むことは有利である可能性がある。
【0039】
フィラメントの第2層(M)は剛性の低いポリマーを含有する二成分又は多成分のエンドレスフィラメントを主成分とし,フィラメントの成分のうち少なくとも1種は前記第1担体ポリマーA1より剛性の低い第2担体ポリマーA2を主成分とし,フィラメントの表面の一部に存在する他の成分のうち少なくとも1種は,前記第2担体ポリマーA2より融点が低く前記フィラメントの第1層Tの第1接着ポリマーB1と相溶する第2接着ポリマーB2を主成分とする。理論にとらわれること無く,本発明者らは,相対的に剛性の低いポリマーを含むフィラメントにより本発明の不織布がより高い柔軟性及び伸展性を得て,生地の肌触り及び感触の特性が向上すると考えている。本発明の解決策として,フィラメントの第2層Mがスパンボンド型のエンドレスフィラメントを含むことは有利である可能性がある。
【0040】
あるいは,フィラメントの第2層(M)は,例えば,ポリマーB2から成る接着要素(接着フィラメント,粉末等)と組み合わせた,剛性が相対的に低い天然繊維で構成してもよい。そのような場合,単一の天然繊維の曲げに必要な力は,ポリマーA1から形成した同じ繊度(デニール)及び同じ円形断面を有する単一繊維の曲げに必要な力と比較する。本発明の解決策として,この比が1:1.1超,より好ましくは1:1.2超,有利には1:1.5超であると有利である。
【0041】
ポリマーB1とB2との相溶性は,融点が類似していること及び,非常によく接合して強く安定したブレンド(混合物)を形成する能力が同じであることとして定義する。当業者であれば,ポリマーが特定の挙動を呈することは理解しているものとする。加熱すると,初めに温度は軟化点を超え,そこでポリマーは軟化し始め,熱風接着条件下でフィラメント同士を接着することが可能であり,その後,温度は融点に達し,そこでポリマーは完全に液相に移行する。液相への移行は熱接着の観点から,完全に液体ポリマーが構造体中を自由に動き,滴り,望ましくないクラスター等を形成し得るので,望ましくない。本発明の観点から,ポリマーB1及びB2がその間隔(軟化点,融点)において共通の範囲を示すことが望ましい。一般に,融点差が10℃以下,有利に5℃以下の良好にブレンド可能な複数のポリマーは,本発明に従った使用に適しているものと仮定できる。ポリマーB1として,ポリマーB2と同じポリマーを使用することが有利である。
【0042】
接着ポリマーB1及びB2は別のポリマーとのブレンドの一部を形成してもよく及び/又は,様々な添加剤(例えば,着色顔料,ポリマーの相互相溶性を促進する添加剤,機能性添加剤,ポリマーの表面特性を改変する添加剤等)をそれら接着ポリマーにブレンドしてもよい。ブレンドポリマーB1及びB2は,未使用の新規ポリマーから構成してもよく;未使用のポリマーとリサイクルポリマー材料とのブレンドから構成してもよく;純粋にリサイクルした材料から構成してもよい。
【0043】
剛性が(A2より)高い第1担体ポリマーA1は,スパンメルト製造ラインでの処理に適した熱可塑性ポリマーであり,前記熱可塑性ポリマーは有利には,ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド,又はこれらの群の共重合体のポリマー群に属する。有利な解決策として,例えば,ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ乳酸(PLA)等が代表的である。
【0044】
剛性が(A1より)低い第2担体ポリマーA2はスパンメルト製造ラインでの処理に適した熱可塑性ポリマーであり,前記熱可塑性ポリマーは有利には,ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド,又はこれらの群の共重合体のポリマー群に属する。有利な解決策として,例えば,ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ乳酸(PLA)等が代表的である。
【0045】
担体ポリマーA1及びA2は,未使用の新規ポリマーから構成してもよく;未使用のポリマーとリサイクルポリマー材料とのブレンドから構成してもよく;又は純粋にリサイクルした材料から構成してもよい。
【0046】
ポリマーの剛性は,例えば,相互に有意に相関している曲げ弾性率(曲げ率)又は引張弾性率(ヤング率)を用いて表すことが可能である。曲げ弾性率及び引張弾性率の両方は,特定のポリマー及びポリマーのブレンドの両方に規定することが可能であり,従って,ポリマーの剛性,フィラメントの要素の剛性又は,フィラメント全体を表すポリマーの組み合わせの剛性を表すことが可能である。
【0047】
例えば,選択したポリマーの平均曲げ率を下記表に示す。
【0048】
本発明の解決策として,引張弾性率(ヤング率)に表される第1担体ポリマーA1の剛性と第2担体ポリマーA2の剛性との差が,少なくとも100MPa,より好ましくは少なくとも200MPa,更に好ましくは少なくとも300MPa,更に好ましくは少なくとも400MPa,有利には少なくとも500MPaであると,有利である。
【0049】
本発明の解決策として,曲げ弾性率(曲げ率)に表される第1担体ポリマーA1の剛性と第2担体ポリマーA2の剛性との差が,少なくとも100MPa,より好ましくは少なくとも200MPa,更に好ましくは少なくとも300MPa,更に好ましくは少なくとも400MPa,有利には少なくとも500MPaであると,有利である。
【0050】
引張弾性率及び曲げ弾性率は,特定のポリマーごとに個別に規定する必要がある。曲げ弾性率は規格ISO178:2010を用い,引張弾性率は規格CSN EN ISO527‐1(640604)を用いる。
【0051】
融点が(A1及びA2より)低い接着ポリマーB1及びB2はスパンメルト製造ラインでの処理に適した熱可塑性ポリマーであり,前記熱可塑性ポリマーは有利には,ポリオレフィン,ポリエステル,ポリアミド又は,これらの群の共重合体のポリマー群に属する。好適な解決策として,例えばポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP),ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリ乳酸(PLA),ナイロン及び,主に上記で規定した群のいわゆる低融点共重合体(例えばPP/PE共重合体,PET共重合体,PLA共重合体等)が挙げられる。
【0052】
例えば,二成分フィラメントは,フィラメントの断面内に配置した2種の要素を含む。例えば,芯‐鞘(C/S)型の二成分フィラメントは2種の要素を含み,一方はフィラメントの芯を表し,他方はその周囲を包んでフィラメントの表面を形成する。剛性を規定した担体ポリマーAは本明細書で有利には芯に使用し,担体ポリマーAは芯を直接形成するか又は,フィラメントの芯を形成するブレンドの投入原料の1つである。低融点の接着ポリマーBは,鞘を形成するか,又はフィラメントの鞘を形成するブレンドの投入原料の1つである。同様に,並列(S/S)型,偏心芯‐鞘(eC/S)型の二成分フィラメント等を挙げることが可能である。
【0053】
本発明の解決策として,二成分フィラメントの第1成分(例えば芯,並列の片側)が,第1層T中において第2層Mより高い剛性を有すると,有利である。本発明の解決策として,引張弾性率(ヤング率)に表される,第1層Tにおける二成分フィラメントの第1成分の剛性と第2層Mにおける二成分フィラメントの第1成分の剛性との差が,少なくとも100MPa,より好ましくは少なくとも200MPa,更に好ましくは少なくとも300MPa,更に好ましくは少なくとも400MPa,有利には少なくとも500MPaであると,有利である。
【0054】
本発明の解決策として,曲げ弾性率(曲げ率)に表される,第1層Tにおけるフィラメントの第1二成分構成要素の剛性と第2層Mにおけるフィラメントの第1二成分構成要素の剛性との差が,少なくとも100MPa,より好ましくは少なくとも200MPa,更に好ましくは少なくとも300MPa,更に好ましくは少なくとも400MPa,有利には少なくとも500MPaであると,有利である。
【0055】
限定する意図はないが,本発明の材料組成物の例をいくつか挙げる:
本発明の解決策は,例えば,芯がPET(=A1)から,鞘がPE(=B1)から形成される芯/鞘(C/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T及び,芯がPP(=A2)から,鞘がPE(=B2)から形成される芯/鞘(C/S)型のエンドレスフィラメントから成る第2層Mを含んでもよい。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は500MPaを超え,ポリマーB1とB2は,同一(PE)であり,かつ,融点がポリマーA1及びA2の融点より低い。
【0056】
本発明の解決策は,例えば,芯がPLA(=A1)から,鞘がPE(=B1)から形成される芯/鞘(C/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T,及び芯がPP(=A2)から,鞘がPE(=B2)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る第2層Mを含んでもよい。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は200MPaを超え,ポリマーB1とB2は同一(PE)であり,かつ,融点がポリマーA1及びA2の融点より低い。層Mのフィラメントは,捲縮する傾向又は自然に捲縮する傾向(潜在的な捲縮又は自己捲縮)を示す可能性が最も高い。
【0057】
本発明の解決策は,例えば,芯がPET(=A1)から,鞘がCoPLA(=B1)から形成される芯/鞘(C/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T及び,一方の側がPLA(=A2)から,他方がCoPLA(=B2)から形成される並列(S/S)型のエンドレスフィラメントから成る第2層Mを含んでもよい。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は100MPaを超え,ポリマーB1とB2は,同一(coPLA)であり,かつ,融点がポリマーA1及びA2の融点より低い。層Mのフィラメントは捲縮する傾向又は自然に捲縮する傾向(潜在的な捲縮又は自己捲縮)を示す可能性がある。
【0058】
本発明の解決策は,例えば芯がPET(=A1)から,鞘がPP1(=B1)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T及び,芯がPP2(=A2),鞘がPP3(=B2)から形成される芯/鞘(C/S)型のエンドレスフィラメントから成る第2層Mを含んでもよい。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は200MPaを超え,ポリマーB1とB2は,相溶性(PP1及びPP3)であり,かつ,融点がポリマーA1及びA2の融点より低い。層Tのフィラメントは捲縮する傾向又は自然に捲縮する傾向(潜在的な捲縮又は自己捲縮)を示す可能性が最も高い。
【0059】
本発明の解決策は,例えば芯がPET(=A1)から,鞘がcoPET(=B1)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T及び,芯がPLA(=A2),鞘がcoPET(=B2)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る第2層Mを含んでもよい。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は100MPaを超え,ポリマーB1とB2は,同一(coPET)であり,かつ,融点がポリマーA1及びA2の融点より低い。層T及びMの両フィラメントは捲縮する傾向又は自然に捲縮する傾向(潜在的な捲縮又は自己捲縮)を示す可能性が最も高い。
【0060】
本発明の解決策は,例えば一方の側がPET(=A1)から,他方がcoPET(=B1)から形成される並列(S/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T及び,一方の側がPLA(=A2),他方がcoPET(=B2)から形成される並列(S/S)型のエンドレスフィラメントから成る第2層Mを含んでもよい。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は100MPaを超え,ポリマーB1とB2は,同一(coPET)であり,かつ,融点がポリマーA1及びA2の融点より低い。層T及びMの両フィラメントは捲縮する傾向又は自然に捲縮する傾向(潜在的な捲縮又は自己捲縮)を示す可能性が最も高い。
【0061】
本発明の解決策は,例えば,芯がPET(=A1)から,鞘がPE(=B1)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T及び,エアレイ用途用の,粉末PEとのブレンドである短い捲縮セルロース繊維から成る第2層Mを含んでもよい。単一のフィラメントの曲げに必要な力の比は,1.5を超える。
【0062】
本発明の解決策は,例えば芯がPP1(=A1)から,鞘がPE(=B1)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る第1層T,及び芯がPP2(=A2)から,鞘がPE(B2)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る第2層Mを含み得る。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は100MPaを超え,ポリマーB1とB2は,同一(PE)であり,かつ,融点がポリマーA1及びA2の融点より低い。層(T及びM)の両フィラメントは捲縮する傾向又は自然に捲縮する傾向(潜在的な捲縮又は自己捲縮)を示す可能性が非常に高い。
【0063】
本発明の解決策は,例えば,以下のような第1層(T)及び第2層を含むことが可能である。第1層(T)は,芯がPP(=A1)から,鞘がPE(=B1)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る。第2層(M)は,芯が様々な特性を有するポリプロピレンをベースとする複数のポリマーのブレンド(=A2)(限定するものではないが,ポリマーブレンドは,例えば,ポリプロピレン,メルトフローレートの高いポリプロピレン,及び低いポリプロピレン等の単重合体及び共重合体から形成できる)から形成され,鞘がPE(B2)から形成される偏心芯/鞘(eC/S)型のエンドレスフィラメントから成る。曲げ弾性率で表すポリマーA1とA2との剛性の差は100MPaを超え,ポリマーB1とB2は,同一(PE)であり,かつ,融点が上記ポリマー(A1及びA2)の融点より低い。層(T及びM)の両フィラメントは捲縮する傾向又は自然に捲縮する傾向(潜在的な捲縮又は自己捲縮)を示す可能性が非常に高い。
【0064】
フィラメントの剛性は,使用のポリマーだけでなく,例えば,フィラメントの太さによっても影響を受け得る。用語「フィラメントの太さ」及び「フィラメント径」は,本出願では互換的に使用する。
【0065】
本発明の観点から,第1層(T)中のフィラメントの太さd1が第2層(M)中のフィラメントの太さd2より大きいと,有利になり得る。例えば,不織布の嵩高性と不織布上の表面が柔らかくなる要件とを両立することが最も重要な要因である用途において有利になり得る。
【0066】
本発明の観点から,第1層(T)のフィラメントの太さd1と第2層(M)のフィラメントの太さd2が同一であるか,又は非常に類似している場合,即ちd1/d2が0.8~1.3であると,有利になり得る。例えば,表面及び断面における材料の均質性が重要である用途において有利になり得る。
【0067】
本発明の観点から,第1層のフィラメントの太さd1が第2層のフィラメントの太さd2より小さいと有利になり得る。例えば,材料の全体的な柔らかさ及び柔軟性が重要である用途において有利になり得る。当業者であれば,本発明のフィラメントの太さのどの組み合わせがその用途に有利であるかは容易に分かるであろう。
【0068】
フィラメントの剛性は,フィラメント中のポリマー成分の比率にも影響を受け得る。例えば,配置した芯/鞘において同じ直径dを持ち,芯はポリマーAから成り,鞘はポリマーBから成る2つのフィラメントの場合,芯成分,即ちポリマーAの割合が低い(例えば30%)フィラメントは,芯成分,即ちポリマーAの割合が高い(例えば50%)フィラメントより全体的な剛性が低くなる。第1層(T)及び第2層(M)のフィラメントの各々は不織繊維に一重又は多重に含ませてもよい。
【0069】
例えば,第1層Tは基材層を形成してもよく,第2層Mは製品の表面を形成してもよい(例えば,TM,TTM,MTM,MTTM,TMM,TTMM等)。
【0070】
例えば,第1層Tは,その目の粗い構造により,第2層M内に絞り込まれた,入口領域を形成できる(例えば,TM,TTM,TMT,TMM,TTTM等)。
【0071】
例えば,層Tと層Mを交互に配置し,例えば,材料によって中間層Mの柔らかさをより緻密にし,層Tの剛性により覆い隠しても良い(例えば,MTM,MTMT,MTMTM,TMTMT等)。
【0072】
本発明の不織布は,第1層T及び第2層Mとは別に,第1層及び第2層と熱的に接着可能であるという条件下で,別の層Xを含むことも可能である。例えば,可能な組成としては,TXM,MXT,XMT,XTM,MTXTM,XMTMX,MTXMのタイプ及び,多くの他のタイプが挙げられる。
【0073】
本発明によれば,不織布はまた,複数のT‐M層の組を含んでもよい。例えば,3本の紡糸ビームS1‐S2‐S3で製造する不織布では,以下の層:S1の層T1,S2の層M1(層T1に接する)を形成可能であり,これは同時に層T2(層M2に接する)及びS3の層M2でもある。
【0074】
本発明によれば,不織布は熱的に接着する。基本的に不織布を形成する繊維層の体積を完全に熱接着することがエネルギー的に有利であり,ここでは,接着点は構造体中のフィラメント同士の任意の交差点に形成してもよい。本発明のこのタイプの熱接着の間,熱がフィラメントの層を通過することにより,両方の層のBポリマーは表面及び層間の界面の両方で軟化し,更には融解する。フィラメントの接触点では融解したポリマーが接合し,その後の冷却で硬化し,接触しているフィラメント同士を接続する。このようにして形成したフィラメントの構造は一般に,ソフトロフト型(soft-loft type)の柔らかさや柔軟性を示し,また復元性を示すことも多い。本発明の好適な接着方法としては,例えば,熱風流を用いた接着又は,特に低坪量の場合には赤外線照射を用いた接着が挙げられる。
【0075】
例えば,二成分フィラメントは,フィラメントの断面内に配置した2種の要素を含む。例えば,芯‐鞘(C/S)型の二成分フィラメントは2種の要素を含み,第1要素はフィラメントの芯を表し,第2要素はその周囲を包み,フィラメントの表面を形成する。融点が低いポリマーBは,ここでは有利には鞘に使用し,鞘を直接形成するか又は,フィラメントの鞘を形成するブレンドの投入原料のうちの1種である。剛性を規定したポリマーAは芯を形成するか又は,芯の鞘を形成するブレンドの投入原料のうちの1種である。並列(S/S)型,偏心芯‐鞘(eC/S)型の二成分フィラメント等を同様に説明することが可能である。フィラメントの成分の配置は,その製造に用いる設定に基づいて公知の配置にしてもよく,又は「フィラメント断面タイプの評価("estimation of filament cross-section type".)」という方法を用いて指定してもよい。
【0076】
本発明の解決策としては,二成分フィラメントの第2成分(例えば,鞘,並列の一方)の融点が第1成分より低いと有利である。本発明の解決策としては,二成分フィラメントの第1成分と第2成分との融点の差が少なくとも5℃,より好ましくは少なくとも10℃,有利には少なくとも15℃であると有利である。
【0077】
融点が相対的に低いポリマーBの融点は,望ましくは,剛性を規定したそれぞれのポリマーAに対して決定する。例えば,第1層では,ポリマーB1の融点はポリマーA1の融点に対して決定する。第1層T及び第2層MがポリマーB1及びB2によって相互接続していることから,ポリマーA2も考慮に入れる必要があり,従って,ポリマーB1及びB2の両方の融点をポリマーA2に対して決定する必要がある。ポリマーA2とそれぞれB1,B2との融点の差は,少なくとも5℃,より好ましくは少なくとも10℃,有利には少なくとも15℃である。
【0078】
熱接着は基本的に,得られた不織布の特性に影響を与える。その影響はフィラメントの相互接続の強度により生じ,その強度は,特に構造体中の接着ポリマーの量,接着の過程で供給される熱量及び接着温度,構造体中のフィラメントの密度等のいくつかの数値に依存する。
【0079】
例えば,芯‐鞘型二成分フィラメントを80:20の比率で構成したフィラメントの層は比較的少量の接着ポリマーを含み,フィラメント間の個々の接着点は少量の材料で構成し,フィラメント同士は比較的弱い力で分離できる。形成した構造体は,フィラメントの屈曲及び接着の緩みの影響により比較的柔らかくなる(例えば,不織布の柔軟性及び圧縮性で表される)可能性が最も高く,また,摩砕に対する耐性も低下することとなる。一方,例えば芯‐鞘型二成分フィラメントを50:50の比率で構成したフィラメントの層は比較的多量の接着ポリマーを含み,フィラメント間の個々の接着点は多量の材料から構成されている。このようにして形成した構造体は比較的硬く,復元度が高く,摩砕に対する耐性もより強い。例えば,芯‐鞘型二成分フィラメントを20:80の比率で構成したフィラメントの層は比較的多量の接着ポリマーを含み,フィラメント間の個々の接着点は,フィラメントの本来の芯から成る非常に細いフィラメントのみによって相互接続した非常に多量の材料から構成される。このようにして形成した構造体は,比較的柔らかくなるが,嵩高性には欠ける可能性が最も高い。
【0080】
例えば,接着ポリマーの軟化に対応する低温で又は,高温への非常に短い暴露により接着したフィラメントの層は,フィラメント間の接続が相対的に非常に弱く,容易に壊れる。柔らかい構造体は摩耗に対する耐性が非常に弱いことが予想できる。一方,例えば,接着ポリマーの温度を超える温度で,及び/又は適度な温度で曝露時間を長くして接着したフィラメントの層では,全ての接着ポリマーが融解して再接着することによりフィラメント間の接続が比較的強固になる。復元性及び耐摩耗性が良好な硬さの構造体が期待できる。
【0081】
例えば,非常に細いフィラメントの層は単位体積当たりの接着点の数が多く,対照的に,太いフィラメントの層は,同じ坪量で,接着点の数が著しく少なくなるが,これらのフィラメントは一般に剛性が高くなる。
【0082】
前述のパラメータを適切に設定することにより,柔らかさ,柔軟性,剛性,耐摩耗性等を意図的に向上させた不織布を製造することが可能となる。
【0083】
本発明の材料では,パラメータの異なる2層のフィラメントを組み合わせると,例えば,一方の層は相互接続性が低く,他方の層は相互接続性が高くなるような条件を設定できる。例えば,第1層Tにおいて相互接続度が低い場合,耐摩耗性の低下に相関して層の剛性が低下する一方で,層の復元性は保持される。同じ接着条件で,比較的良好な耐摩耗性を達成する剛性の低い材料を含む第2層Mの高い接着度を提供するならば,その一方で,ポリマー組成物により得られ,例えばフィラメントの繊度により促進される柔らかさが保持される場合,結果として,本発明の材料は,それ自体が非常に柔らかく,適用側(第2フィラメント層M)からの摩耗に耐性があり,また復元性も兼ね備える可能性がある。
【0084】
理論にとらわれること無く,不織布の全体積にわたる熱接着(例えば熱風接着)と,剛性が相対的に高いポリマーA1を含むフィラメントとを組み合わせたことが,層の復元性の主な理由であると考える。フィラメント同士は不織布の全体積に見られる小さな接着点で相互接続されており,個々の接着点の間には―層の嵩高さに応じて―フィラメントの比較的小さい区分が存在し,この区分は3次元空間のあらゆる方向に位置する。構造全体は,ポリマーAの固体状態を維持する程度の相対的に高い温度(接着温度)で形成するが,この温度は結晶化状態を変化させ,比較的緩徐な冷却速度で維持できるようになる。即ちz方向(不織布の厚さ方向)に圧縮した場合,この生成した構造体は初期状態に戻る(復元)傾向が大きい。一般に,ポリマーAの剛性が高いほど,不織布の元の状態に戻る(復元)傾向が大きいと考えられている。相対的に融点の低いポリマーBは,復元性がかなり低い。何故なら,熱接着プロセスの過程で,ポリマーAとは異なり,ポリマーBは,(フィラメントの相互接続を可能にするために)部分的又は完全に融解し,その位置や形状等が変化する(例えば,熱接着の過程で,ポリマーBはフィラメントの接触位置=接着点で相対的に集中し,逆に接着点の間のフィラメントでその割合が減少する)可能性があるからである。
【0085】
剛性の低いポリマーA2を含む第2層(M)は,複合体に存在していれば,第1層(T)と同じ条件下で接着する。ここでも,前述した接着点の構造体,及び接着点間にある比較的短いフィラメントの区分が形成される。ポリマーA2の剛性が低いと,層が柔らかくなり,ドレープ性が高まる傾向がある。即ち,層の剛性に対する人間の知覚は,標準的な層剛性評価方法(ハンドルオメーター(Handle-O-Meter),圧縮性,柔軟性)と異なる場合があり,剛性が相対的に低いポリマーA2を含むフィラメントの層は一般に,剛性が相対的に高いポリマーA1のフィラメントを含む層より柔らかさの点で優れていると主観的に評価され,これは,特定の場合において,例えばA1のハンドルオメーター測定値がA2と同等以上であるとしてもそのように評価される。
【0086】
驚くべきことに,本発明に従って製造した不織布は特有の特性を示すことが分かった。剛性が相対的に高いポリマーを含むフィラメントと剛性が相対的に低いポリマーを含むフィラメントとを組み合わせると,一般的に以下のような複合体が形成される。
‐ 伸長性の程度が一般的に,第2層Mのフィラメントのみから製造した材料と同等である(第1層Tのフィラメントから製造した材料よりも高い)。
‐ 復元性の程度が一般的に,第1層Tのフィラメントから製造した材料と比較して同等であるか,又は比較的低い程度を示すのみである。
‐ 不織布の圧縮性の測定により表される柔らかさの程度が一般的に,第2層Mのフィラメントから製造した材料と比較して同等であるか,又は比較的低い程度を示すのみである。
【0087】
第1層(T)が,割合が相対的に高いポリマーA1(例えば,フィラメントの総重量に対して少なくとも55重量%,より好ましくは少なくとも60重量%,更に好ましくは少なくとも65重量%,有利には少なくとも70重量%),及び割合が相対的に低いポリマーB1(例えば,フィラメントの総重量に対して,45重量%以下,より好ましくは40重量%以下,更に好ましくは35重量%以下,有利には30重量%以下)を含む相対的に太いフィラメント(太さは25ミクロン超,より好ましくは30ミクロン超,有利には35ミクロン超であるが,望ましくは,100ミクロン以下,より好ましくは70ミクロン以下,有利には50ミクロン以下)から成ると,本発明の不織布に有利になる可能性がある。同時に,第2層(M)は,割合が相対的に低いポリマーA2(例えば,フィラメントの総重量に対して60重量%以下,より好ましくは55重量%以下,更に好ましくは50重量%以下,有利には45重量%以下),及び割合が相対的に高いポリマーB2(例えば,フィラメントの総重量に対して,40重量%超,より好ましくは45重量%超,有利には50重量%超)を含む相対的に細いフィラメント(太さは30ミクロン未満,より好ましくは25ミクロン未満,有利には20ミクロン未満)から成る。驚くべきことに,このようにして製造した不織布は,第1層(T)の嵩高性及び復元性が高く,構造体中の自由空間(空隙体積)の高い割合は,フィラメントの低い接着強度(フィラメント接触位置の接着点の数が少なく,同時に接着成分B1の体積が少ないことに起因する)と共に,「ソフトロフト(soft-loft)」型の柔らかさを促進するが,「粗い」という主観的な肌触り及び感触の欠点があることが分かった。同時に,フィラメントが細く接着成分B2の割合が高い第2層(M)は嵩高性が低いが,柔らかいポリマーを使用すると,優れた肌触り及び感触特性を示し,この特性は,例えば,肌触り及び感触を向上させる添加剤(例えば,絹のような肌触りや感触のためのエルカミド,いわゆるコットンのような肌触りのための特別な添加剤等)により更に促進できる。このように組み合わせると,主観的な柔らかさをかなり感じられる嵩高な材料が得られる。
【0088】
第2層(M)の側から触ると,最初の接触時,生地に触ると同時に生地が軽い圧力下でも柔らかく撓んだときに,皮膚は心地よい感覚を覚える。このとき,第1層(T)の特定の「粗さ」は,第2層(M)の柔らかさと絹の質感により覆い隠される。圧力を上げると,嵩高い第1層(T)も徐々に圧縮され始め,圧力に対する抵抗(例えば,弾性測定値で表す)が大きくなる。必要な圧力の増加は緩やかであり,また,圧縮に対する抵抗も徐々に増加するため,材料は主観的に心地よい柔らかさ及び快適さが感じられる。
【0089】
本発明の不織布の場合,第1層(T)の坪量が第2層(M)の坪量より大きいと有利である可能性がある。例えば,層Tの坪量と層Mの坪量との比は,少なくとも55:45,より好ましくは少なくとも60:40,更に好ましくは少なくとも65:35,有利には少なくとも70:30であるが,95:5未満,より好ましくは90:10未満,有利には85:15未満であると有利である。
【0090】
本発明の不織布の場合,1つの紡糸口金から製造した第1層Tの坪量と1つの紡糸口金から製造した第2層Mの坪量の比が,これらの層中のフィラメントのポリマー組成物の平均密度にほぼ対応していれば有利になる可能性がある。この解決策は,特に製造コストの観点から有利であり,標準的なスパンボンド紡糸口金で製造する場合に両方の紡糸口金の動作性能をフルに活用できる。ポリマー加重密度平均の比,及び層状不織布の必要な総坪量に基づいて,個々の層T,Mの推奨坪量を決定するために計算を行うと,例えば,第1層T及び第2層Mの坪量が計算値から5g/m2以上異ならない場合,より好ましくは4g/m2以上異ならない場合,更に好ましくは3g/m2以上異ならない場合,有利には2g/m2以上異ならない場合に有利である。
【0091】
いくつかの例を表に示す(密度:kg/m3,坪量:g/m2):
【0092】
【0093】
【0094】
不織布が含む層が2層を超える場合にも同様に計算を行う。
【0095】
本発明の有利な解決策の1つとして,ポリマー加重密度平均は第1層Tと第2層Mとのフィラメントでは異なっている。この密度は,単位体積当たりのポリマーの重量を示す。数値の差が大きすぎると,望ましくない影響が生じ,結果として,加重密度平均が有意に高い組成物から得るフィラメントは加重平均が低い層のフィラメントに作用し,それらフィラメントを不均質に圧縮し,特に層Mのフィラメントによってフィラメント中のポリマー加重密度平均が高くなる場合に望ましくない影響が生じる。本発明の解決策の1つとして,第2層(M)のエンドレスフィラメント中のポリマーの加重平均密度に対する第1層(T)のエンドレスなフィラメント中のポリマーの加重平均密度の比は1.0~1.5,好ましくは1.1~1.3であり,及び/又は,第2層(M)の坪量に対する第1層(T)の坪量の比は1.0~1.5,好ましくは1.1~1.3である。
【0096】
上記のポリマー群(ポリオレフィン,ポリエステル)は,それらの剛性のみが異なるのではなく,他の特性も異なり,その異なる特性は不織布の所望の最終特性を促進するために利用できる。ポリエステル(例えば,PET,PLA,又はこれらの共重合体)は,いわゆる収縮性を示す。これらのポリマーを適切に結晶化するためには,一般に,スパンメルト製造工程時にフィラメントを冷却するまでの時間よりも長い時間が必要である。これらのポリマーを含むフィラメントを再加熱(例えば,狭い熱風流である「ホットエアナイフ」,熱風接着,赤外線照射)すると,一般に再結晶化が起こり,新規なより安定的な結晶化状態は一般に,初期の半安定的な結晶化状態のときの体積より小さい体積となる=収縮。
【0097】
収縮は一般的に望ましくない現象であると考えられているが,適切に制御すれば利点も得られる可能性がある。例えば,本発明者らの過去のチェコ国特許出願PV2018‐647(未公開)には,復元性及びいわゆる構造的な柔らかさを有する嵩高い材料を製造する目的で,ポリマーの収縮の制御を利用することが記載されている。
【0098】
本発明の材料では,第1層T,あるいは層MとTとの両方が,捲縮に対応しない断面を有するエンドレスなフィラメントを含むと有利であり得る。これらのフィラメントは,多成分,好ましくは二成分であってもよい。理論的な根拠はともかく,フィラメントの断面に渡って配置した成分から成る断面の重心は,他の全ての成分の断面の重心と基本的に同じ位置にあり,その断面は活性化温度まで加熱することでは捲縮を形成できないと確信する。
【0099】
本発明の層は,例えば,円形断面,三点断面,及び星型断面等を有するエンドレスなフィラメントを主に含んでもよい(図1)。
【0100】
エンドレスなフィラメントは,例えば多成分フィラメントであってもよく,一方,フィラメントの断面における個々の成分の配置は,芯と鞘(同心配置)や,区画,又は,成分の表面の重心がエンドレスなフィラメント断面内の単一の場所にある他の配置により表してもよい(図2)。
【0101】
理論的な根拠はともかく,求める性質を有するフィラメント形成に関する決定的な要素は,2種の成分の特定の組み合わせにあると確信する。まず,第一に,不織構造体を形成するためのフィラメント成分及び,例えばこの構造体の芯が,特定の条件下で収縮することが可能なポリマーA1を含むことが好ましい。その後,このポリマーA1は,フィラメント形成プロセス中―特に冷却及び延伸段階中―次の活性化段階において望ましいものとなるようにその状態を変化させることが可能である。ポリマーA1は,例えば,初めは半安定状態(例えば,進行中の結晶化を伴わない,その時点で可能な限り低いエネルギーを有する状態)にすることが可能であり,このとき,ポリマーA1は活性化段階中に加熱され,その後,前述の半安定状態から別の異なるより安定な状態に(例えば,別の低体積結晶化段階に対応する状態に)変化させるためにゆっくりと冷却する。この変化により,内力が発生し,収縮を引き起こす。ここでは前記内力のベクトルはフィラメントの中央の曲線(median curve)の方向に向いていると推測する。
【0102】
スパンメルト法で製造した不織布のフィラメント径は,ミリメートル及び/又はサブミリメートルの範囲である。一方,これらのフィラメントは一般に無指向配向であり(図3参照),フィラメント間の自由部分が同様にミリメートル及び/又はサブミリメートルの範囲の寸法になるようにフィラメント同士は互いに接触している。フィラメント間の相互の結束は,内力のベクトルに逆らって作用し,それによりそれぞれの第1抵抗点を形成する。この抵抗点は,構造的収縮に対する抵抗の閾値点とも称する場合がある。例えば,あるフィラメントが正しい状態で活性化すると,例えば,不規則な円弧や3次元的に広がる波状部分が形成される場合がある。対照的に,隣接するフィラメントが形成した周囲の周辺構造により拘束されたフィラメントはそのような自由度はない。
【0103】
本発明によれば,層は二成分フィラメントを用いて形成し,第2成分はポリマーBを含み,ポリマーBは融点がより低く,望ましくは,より心地よい肌触り及び感触特性等をもたらす柔らかさなどの他の所望の性質も提供する。ポリマー材料A1及びポリマー材料B1は,収縮に関する性質が互いに異なっている必要があり,このことは,好ましい構成において,ポリマー材料B(望ましくはフィラメントの鞘を形成する材料)は,ポリマー材料A(望ましくはフィラメントの芯を形成する材料)より縮小性(収縮性)が低いことを意味する。
【0104】
その結果,収縮を引き起こす異なる力が発生し,これらの力は互いに接触している2つのポリマー材料の内部で作用する。理論的な根拠はともかく,本発明者らはポリマー材料A及びポリマー材料Bが常に異なる性質を持つことを確信しており,このことは,収縮を引き起こす内力のベクトルが同じ時点では決して等しくならないことを意味する。この力の不均一により,収縮に対する抵抗の第2閾値点の形成が可能になる。この抵抗点は,フィラメントの収縮に対する抵抗の閾値点とも称する場合がある。
【0105】
理論的な根拠はともかく,この特定のずれの規則性が,個々のフィラメントの自由部分が規則正しく捲縮する主な理由であると確信する。これに対して,本発明によれば,同様に理論的な根拠はともかく,捲縮に対応しない断面を有するフィラメントの場合,第1成分及び第2成分中の捲縮を引き起こす力の内部ベクトルは規則的に互いにずれる可能性はなく,その結果,そのようなフィラメントは任意の方向に不規則な円弧又は波状部分を形成する。かなり要約すると,フィラメントは,その断面部又は外周部の特定の部分の方向に曲がる規則的な傾向を持たず,その結果,最終形態が不規則になると言明できる。活性化後,このようなフィラメントの断面は基本的に捲縮に対応しない状態のままである。図4を参照されたい。
【0106】
理論的な根拠はともかく,収縮を引き起こす内力が小さく,よってフィラメントの抵抗の閾値点に対応する逆向きの力に対抗できない場合,生地は変化しないままであることを確信する。しかし,収縮を引き起こす内力が十分に大きく,よってMD/CD方向の抵抗の閾値点に対応する全ての方向の力に対抗できれば,生地はMD/CD比に従って収縮し,平坦な構造を形成する。もし,収縮を引き起こす内力が,具体的に収縮に対するフィラメントの抵抗の閾値点に対抗するに十分な大きさであっても,MD/CD方向の構造の収縮に対する抵抗の閾値点に対抗するに十分でない規模であり,最も低い構造的抵抗が主にZ方向に配向していれば,生地は所望の嵩高い構造を形成することになる。収縮を引き起こすために必要な内力は,フィラメントの抵抗の内部点より大きいが,MD/CD方向の構造の収縮に対する抵抗の閾値点より小さいことは当技術分野の専門的有資格者であれば自明であろう。
【0107】
本発明の第1層(T)は,多数のフィラメントから成り,フィラメント間には多数の相互接触点が形成されている。この層をミリメートル及び/又はサブミリメートルスケールで観察すると,フィラメント,より正確にはフィラメントのミリメートル及び/又はサブミリメートルの部分が,隣接するフィラメント同士の作用の結果として特有の状態を示すことが明らかになる。この特有の状態ではフィラメントは活性化時に生じる力の独特の組み合わせに影響を受け,これにより最終構造において非常に多様なフィラメント形状を生成できる。これに反して,MD/CD方向の面ではフィラメントがほぼ完全に平面状態を保っていることは矛盾しているように見えるかもしれない。しかし,対照的に,フィラメントは「上」及び「下」にずれて,MD,CD,Z方向の全ての方向を網羅する広範な3次元構造を形成することもある。本発明によれば,理論的な根拠はともかく,層内のエンドレスフィラメントの方向が広く多様であることが,最終特性の観点から有利であると確信する。本発明によれば,層は巨視的なスケールで均質である。層内のフィラメント形状の広い多様性とこれらのフィラメント同士の相互作用とを組み合わせることにより,主に外部効果の作用に対して(例えば,圧力及びその解放に対して又は,層を通過する液体の効果に対して)層が所望の方法で応答できるという点にある本発明から利点を得ることが可能となる。
【0108】
かなり要約すると,フィラメントの方向配置は,「フィラメントの長さと生地の長さとの」比でも表現することが可能である。
【0109】
このように製造した,捲縮に対応しない断面を有する層M又はTは,以下を含む:
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2を超えるフィラメントを少なくとも20%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2を超えるフィラメントを少なくとも30%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2を超えるフィラメントを少なくとも40%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.2を超えるフィラメントを少なくとも50%;
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5を超えるフィラメントを少なくとも10%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5を超えるフィラメントを少なくとも15%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5を超えるフィラメントを少なくとも20%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5を超えるフィラメントを少なくとも25%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が1.5を超えるフィラメントを少なくとも30%;
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2を超えるフィラメントを少なくとも5%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2を超えるフィラメントを少なくとも10%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2を超えるフィラメントを少なくとも15%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2を超えるフィラメントを少なくとも20%。
【0110】
このように製造した,捲縮に対応しない断面を有する層M又はTは同時に以下を含む:
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満であるフィラメントを少なくとも10%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満であるフィラメントを少なくとも20%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満であるフィラメントを少なくとも30%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満であるフィラメントを少なくとも40%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2.5未満であるフィラメントを少なくとも50%;
「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2未満であるフィラメントを少なくとも5%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2未満であるフィラメントを少なくとも10%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2未満であるフィラメントを少なくとも15%,望ましくは「フィラメントの長さと生地の長さとの」比が2未満であるフィラメントを少なくとも20%。
【0111】
本発明の材料では,第1層T,あるいは層MとTの両方が捲縮に対応する断面を有するエンドレスフィラメントを含むと有利になる可能性がある(図5)。これらのフィラメントは多成分,望ましくは二成分であってもよい。理論的な根拠はともかく,フィラメントの断面に配置された一方の成分を用いて形成した表面の重心が他方の成分の表面の重心から離れた位置にあるような断面により捲縮が促進されると確信する。
【0112】
技術的知見の領域では,捲縮による形成を可能にするいわゆる断面の配置において捲縮レベルが異なるポリマー同士の特定の組み合わせにより,いわゆる捲縮を達成できることは周知である。同時に,この捲縮は即時の自然な捲縮であっても,先行する活性化(例えば熱活性化)の前提条件となる潜在的な捲縮であってもよい。フィラメントの断面が捲縮により形成されると,いわゆる螺旋状の捲縮を形成する規則的なカール部分ができる。かなり要約すると,捲縮により形成可能な断面を持つフィラメントは,収縮度の大きい方の成分に向かう方向に曲がる傾向があり,これにより不均一な螺旋状の捲縮が形成されると言明できる。言い換えれば,これは,捲縮により形成可能な断面によって,第1成分及び第2成分中において互いに作用する内力のベクトルが規則的に互いにずれることを意味する。
【0113】
フィラメントの層は,例えば,円形断面,三点断面,及び星型断面等を有するエンドレスフィラメントを主に含んでもよい(図1)。
【0114】
例えば,並列型,偏心芯/鞘型等の断面タイプの成分の配置において捲縮が期待できる。
【0115】
前述の場合と同様に,ここでも,フィラメント形成プロセス中―特に冷却及び延伸段階において―次の活性化段階で望ましくなるようにポリマーAの状態を変化させることが可能である。ポリマーAは,例えば,初めは半安定状態(例えば,進行中の結晶化を伴わない,可能な限り低いエネルギーを有する状態)にすることが可能であり,このとき,ポリマーAは活性化段階中に加熱され,その後,前述の半安定状態から別の異なる安定な状態へ(例えば,別の低体積結晶化段階に対応する状態へ)変化させるためにゆっくりと冷却する。この変化により,内力が発生し,収縮を引き起こす。ここでは内力のベクトルがフィラメントの成分の中央の曲線の方向に向いていると推測する。捲縮に対応する断面を持つフィラメントの場合,ポリマーAの体積が変化すると,フィラメント内の内力が増大し(互いにずれたベクトルの力が増加し),それにより,形成された円弧の半径が高い確率で減少し,フィラメントの層の場合,構造体全体に特定の「縮小」(=収縮)が起こる。
【0116】
捲縮に対応する断面を持つフィラメントは,規則的な形状,具体的には螺旋形状を形成する傾向があり,即ち,前記フィラメントのこの性質は,より高い収縮性を持つ材料を含むフィラメントの側に向かって規則的に曲がる傾向があり,それにも関わらず,同時に,層内のこれらのフィラメントは,規則的な螺旋を維持することを妨げるそれぞれの隣接したフィラメントにより規制を受ける。理論的な根拠はともかく,フィラメントをベルト上に堆積させる前に収縮する力が大きいほど,フィラメントの「単位長さ当たりの捲縮度」が大きくなり,これは繊維構造内にある螺旋状部分の数が多くなる理由であると確信する。逆に,捲縮の程度が低い場合,例えば25回/インチ未満である場合(形成した螺旋の1mm強の長さ毎に個々の「ループ」が位置する場合),フィラメントの接触点間の自由空間は螺旋の一部分でさえ維持するには不十分になり,一方,フィラメントの相互接触により生じる逆配向の力は捲縮の規模に比例して増加する。1インチ当たりの撚り数が15未満の場合(即ち,個々の「ループ」が,形成した螺旋の2mm強の長さ毎に位置する場合),螺旋の部分を区別することはすでに困難になる。1インチ当たりの撚り数が10未満の場合(即ち,個々のループが,形成した螺旋の2.5mm強の長さ毎に位置する場合),フィラメントに作用する特定の力は,内部収縮力のベクトルの規則的な相互のずれに対して作用する逆向きの力に完全に打ち負かされ,規則的な捲縮の形成を可能にし,その結果,構造体は完全に不規則な外観を得る。しかし,(捲縮に対応する断面を持つフィラメントの場合)内部収縮力のベクトルの規則的な相互のずれにより生じる嵩高構造の形成,及び(捲縮に対応しない断面を持つフィラメントの場合)フィラメントの不規則な捲縮により生じる嵩高構造の形成を促進する他の様々な要因も存在することは,当技術分野の専門的有資格者であれば気付くであろう。合成絹のフィラメントの捲縮に基づく構造の違いの例を図6に示す(その違いは,Kunal Singh及びMrinal Singh著の論文「Fiber Crimp Distribution in Nonwoven Structure」2013年に記載されている(アドレスhttp://article.sapub.org/10.5923.j.fs.20130301.03.html で閲覧可能))。
【0117】
構造体の熱活性化の間,ポリマーAの体積は減少し,その結果,構造体全体のいわゆる収縮が生じる。本発明の材料では,活性化に供される第1層T,あるいは層MとTとの両方の捲縮度が,CD又はMD方向において,20%以下,望ましくは15%以下,望ましくは13%以下,望ましくは11%以下,最も望ましくは9%以下であると有利になる可能性がある。両層の収縮度は異なっていてもよい。
【0118】
本発明の解決策の1つとして,収縮を示す第1層Tを,収縮を示さない第2層Mと組み合わせると有利である。本発明のこの材料では,活性化を受ける第1層Tにおいて,CD又はMD方向で,達成した収縮度は20%以下,望ましくは15%以下,望ましくは13%以下,望ましくは11%以下,最も望ましくは9%以下であると有利になる可能性がある。
【0119】
本発明の有利な解決策の1つでは,第1層(T)がポリマーの収縮を利用する場合(捲縮型及び非捲縮型を利用する場合),第1層(T)は円形又は3点の断面形状を有する芯/鞘タイプの二成分フィラメントから形成することが好ましい。
【0120】
この第1層Tに含まれるエンドレスフィラメントは2種以上の成分から形成する。第1成分は,例えば,ポリエステル(例えば,ポリエチレンテレフタレート(PET)などの芳香族ポリエステル,もしくはポリ乳酸(PLA)などの脂肪族ポリエステル),ポリアミド,ポリウレタン,又はこれらの共重合体もしくは好適なブレンドから成る群より選択してもよい。本発明の範囲には,第1成分が,ポリエステルの共重合体(coPET)又はポリ乳酸の共重合体(COPLA)などのポリエステルの群より選択されるプラスチックから成ること,又は基本的に成ることが含まれる。望ましく使用するポリエステルは,ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリ乳酸(PLA)である。
【0121】
第2成分B1は例えば,ポリオレフィン(即ち,ポリプロピレン又はポリエチレン),低い融点を有するポリマー,あるいは好適なポリマーの共重合体又はブレンドから成る群より選択してもよい。本発明の範囲には,第2成分が,ポリエステルの共重合体(coPET)又はポリ乳酸の共重合体(COPLA)などのポリエステルの群より選択されるプラスチックから成ること又は,基本的に成ることが含まれる。望ましく使用するポリオレフィンはポリエチレン(PE)である。
【0122】
本発明の不織層中の二成分フィラメントのために選択した成分A/Bの好ましい組み合わせは,PET/PE,PET/PP,PET/CoPET,PLA/COPLA,PLA/PE及び,PLA/PPの組み合わせである。
【0123】
捲縮に対応する断面を有する二成分フィラメントの場合,所与の組み合わせで捲縮するポリマーの組み合わせを使用すること,又は,場合によっては例えば,核生成剤,もしくは捲縮に対応する他の添加剤を利用することが必要条件である。
【0124】
二成分フィラメントは,好ましい構成において,第1成分A1の重量と第2成分B1の重量との比が50:50~90:10の範囲にある。
【0125】
更なる形態では,成分の構成は,エンドレスフィラメントの性質を改変することを目的とする添加剤も含んでよい。例えば,芯は,着色顔料又は捲縮剤を含んでもよい。当技術分野で発表された文献では,捲縮剤の様々な特別の組み合わせを特定できており,これらの組み合わせはある程度,結晶化及び収縮中のポリマーの挙動を変えることが可能である(例えば,1995年,著者Gajanan出願の米国特許第5753736号に記載されているように)。逆に,例えば,白色度をより高くするための添加剤として頻繁に使用される通常の二酸化チタンは,ポリマーの挙動をわずかに変化させるだけであるが,これは必要に応じて,プロセス条件を少し合わせて修正することが可能である。
【0126】
鞘は,例えば,着色顔料,又は(例えば,絹のような手触り及び感触の特性を達成するための)界面活性剤を含んでもよい。当技術分野の専門的有資格者であれば,特定の使用用途の要件から導かれる他の多くの可能性が存在することは自明であろう。
【0127】
構成の別の形態では,成分は,特定の量の異なるポリマーも含んでよい。従って,例えば,第1成分(例えば芯)が,第2成分(例えば鞘)を形成するポリマー(単数又は複数)をある割合で含有する構成,又は,他方で第2成分(例えば鞘)が,第1成分(例えば芯)を形成するポリマー(単数又は複数)をある割合で含有する構成が可能である。公表された文献では,ポリマーを正確に組み合わせることを可能にするための特定レベルの含有量を決定することが可能である。例えば,著者Mooreは,(3M Innovative Properties社が出願した米国特許出願第2012088424号において),ポリエステルにポリプロピレンを最大10%混和すると,安定した特性を有するフィラメントが得られると述べている。
【0128】
特定のレベルの収縮を示すこの第1層(T)と組み合わせる場合,第2層(M)は,収縮が低いレベルか,収縮が全くないフィラメント含むことが有利である。このような場合,第2層(M)自体においてフィラメント層の活性化により誘発された力は著しく小さいか,又は全く力がない。同時に,層の接着効果により,又はおそらく層間の接着点の形成の効果により,この第2層(M)は,第1層(T)の収縮の効果により,空間におけるその配置を変更するように強制される(強制収縮)。これにより,構造体内のフィラメントの位置を強制的に変化させる外力が働く。理論的に説明する意図はないが,フィラメント又はそれ自身の一部が更にz方向に配向されることにより,不織布の厚さが増加すると考えられる。有利な例では,生地の厚さの増加がMD方向及びCD方向の強制収縮より大きく,それにより層の総嵩高さが増加し,ひいては生地の嵩高さも増加する。
【0129】
接着点でカレンダローラにより接着するか,又は更に好ましくは,フィラメントを接着エンボス中でまとめて圧縮し,熱効果によりそれらを局所的に接着するフラット接着エンボスにより接着する収縮層と非収縮層との組み合わせは,当技術分野で周知である。この構造体はその後,熱流(例えば熱風)により活性化し,収縮層は収縮し,非収縮層を接着点間の「クッション」になるように強制的に湾曲させる―例えば,Reifenhauser社及びKG Maschinenfabrik社による特許出願,欧州特許出願第3192910号を参照されたい。
【0130】
本発明の不織布は特異な構造を有する。一方,前述の特許出願の場合,生地の強度は基本的に接着エンボスの規則的な配置により付与され,活性化はフィラメントが更に接着することを防止するように制御する(更なる接着は生地の剛性を高め,ドレープ性を低減するため)。本発明の不織布は,B成分の接着温度に対応する温度で収縮可能な成分A1を活性化する。本発明の生地は,(カレンダローラ上の隆起の配置により付与される)生地の表面平面にわたって規則的に配置された局所的な接着エンボスにおいて相互接続されているのではなく,むしろ,不織布の全体積内で相互接続されており,基本的にフィラメントの全ての交差点が,生地を一体化する接着点を形成する。本発明の生地は,接着エンボス及び,その間のフィラメントの自由部分の湾曲した「クッション」を含まない。それどころか,その生地の厚さは基本的に均質であり,フィラメントの自由部分(フィラメントの1つの交差点から次の交差点まで)は,はるかに短い。同時に,固定した接着エンボスがないため,活性化期間中,両層の個々のフィラメントにある程度の動きの自由が与えられる。同時に,一般的に,カレンダによる接着を施し,それにより接着エンボスの形成がエンボスのフィラメント平面の形状を変え,フィラメント平面形状を完全に平坦にする。二成分フィラメントの場合,融点の低い方の成分を融解するだけでなく,融点の高い方の成分に機械的及び熱的ストレスを与え(例えば,エンボスの平面で平坦にすることにより),弱い点(例えば,エンボスとフィラメントの自由部分との間の移行部)を形成する。理論に縛られることなく,強制的な活性化の過程における運動の自由度と共に,高い融点を有する成分(A)に対するストレスを制限することと,非常に嵩高い繊維構造体の形成を可能にする接着成分の硬化による構造体の即時固定とを正確に組み合わせると,復元性が促進され,第2層Mに特有の柔らかさ及び圧縮性が現れると推測される。
【0131】
図7A,7Bは,接合エンボスVを用いて接着した不織布の構造体(図7A)と,全体積に接着点Bを形成するために熱流を用いて接着した構造体(図7B)の違いを示す。
【0132】
一般的に適用されていることとして,カレンダを用いて接着した不織布は互いにミリメートル間隔(通常3~20mm)をとった接着エンボスを含み,この距離は,自由フィラメントの部分(通常3~30mm)も画定している。本発明の生地は,その全体積にわたって熱流を用いて熱的に接着し,構造の嵩高性に応じて約0.3~8mmの自由フィラメント部分の間隔で接着点を含む。どちらの場合も,より一般的には,下限は,より密なフィラメントについて,上限は,より粗なフィラメントについて適用する。記載した典型的な限界値は,構造体中のフィラメントの自由部分の平均長を示す。
【0133】
強制的に収縮させた第2層Mは,例えば図8に見られるように,フィラメントの規則的な配置を有する均質な層を形成してもよい。また,図9に見られるように,層Mにおけるフィラメントの局所的円弧度が多様である構造体を形成することも可能であり,あるいは図10に見られるように,フィラメントの束の膨らみを局所的に不規則に形成することも可能である。
【0134】
プロセス条件,特に生地を熱流にさらした後に加熱する過程におけるプロセス温度及び延伸力を適切に構成することにより,非均質な形態及び膨らみの形成を促進及び/又は制限することが可能である。例えば,図11に見られるような膨らみの不規則な構造を形成することが可能である。
【0135】
実施例
従って,本発明の構成の推奨形態は少なくとも2つの不織層を特徴とする。スパンボンド法を用いて製造したフィラメントの少なくとも2つの層M及びTを相互接続することにより形成した本発明の不織布は有利な構成の1つである。不織布はまた,数層から構成してもよく,ここでは1つの層が第1層Tを表し,別の層が第2層Mを表し,生地はまた別の層Xも含む。層Xは,例えば,メルトブロー型のフィラメントの層,又はステープル繊維の層等から構成してもよい。
【0136】
本発明の構成の推奨形態では,不織布の層T又はMを構成する多成分又は二成分フィラメントが存在し,それらフィラメントは紡績機又は紡糸口金を使用して紡糸し,その後,望ましくは冷却器に通過させて製造する。この冷却器の内部では,フィラメントは通常,流体媒体により,主に冷却風により冷却する。本発明の範囲には,紡糸したフィラメントがその後,延伸機構を通過し,そこで延伸により加工されることが包含される。延伸した(伸展した)フィラメントは次に,移動ベルト上に堆積させ,そこでフィラメントの層を形成する。有利な構成の1つでは,延伸比を決定する特定のパラメータを調整することにより,次に,潜在的な収縮の程度が制御されたフィラメントを層内に形成することが可能である。
【0137】
この発明の構成の好ましい形態によれば,マガジン機構として挿入型拡散装置(inserted diffuser)が使用される。この装置はフィラメントの堆積を制御し,延伸機構とフィラメント堆積位置との間に設置される。本発明の範囲には,少なくとも1つの拡散装置を用いることが包含され,この拡散装置の対向する側壁同士はフィラメントの通過方向に対して互いに分岐している。本発明の構成の特に推奨する形態は,冷却機構の駆動ユニット及び延伸機構を密閉型システムとして設計していることを特徴とする。この密閉型システムの内部では,冷却機構への外部冷却媒体又は冷却風の供給を補うような追加の空気供給源は使用していない。このような密閉型システムは,特に不織布の製造に適していることが証明されている。
【0138】
収縮を利用して本発明の不織布を製造する場合,フィラメントの収縮に伴う問題を解消する本発明の技術的解決策は,前述の密閉型ユニットを使用する場合に,特に,好ましい形態の構成とは別に,延伸機構とフィラメント堆積位置との間に配置する拡散装置も使用する場合に,機能的に信頼でき,効果的に実行可能であることが分かった。スパンボンド法により製造した不織ベルトの収縮が,延伸比,冷却風/ポリマー比及び,フィラメント速度のパラメータにより非常に特異的に適合又は調節できることは,既に述べている。
【0139】
前述の定義から,スパンボンド法による製造が,ポリマーをフィラメントに直接変換し,その後,フィラメントを堆積場所に無作為に広げ,これらのフィラメントを含む不織層を形成する工程から成ることは明らかである。スパンボンド法は,個々のフィラメントの性質のみならず最終的な不織布の性質も決定する。最終的に製造した不織布は必ずしも,例えばレオロジー特性,ポリマーの構造特性,及び収縮など,本不織布の個々の製造工程中に発生する個々のフィラメントの様々な性質及び条件を決定するために使用することはできない。不織布の潜在的な収縮により一般に,嵩高な不織布を形成する能力が判定される。この判定は,生地の構造を分解せずに,及び/又はフィラメント層の長さ及び幅を大幅に変更せずに,個々のフィラメントが収縮してフィラメント層の厚さが相対的に増加することにより可能になる。本発明の範囲には,フィラメントの組成物に含まれる様々な原料の使用により及び/又は,不織布用フィラメントの製造中に様々な材料処理条件を設定することにより及び/又は,様々なフィラメント断面形状の使用により及び/又は,様々な投入材料間の質量比を調整することにより及び/又は,様々なフィラメント配向を設定することによりフィラメントの収縮を定義することが包含される。
【0140】
本発明の構成の推奨形態は,捲縮に対応する断面を有するフィラメントと捲縮に対応しない断面を有するフィラメントとを区別していない。どちらのタイプも特定の用途に有利に使用できる。同様に,捲縮フィラメント層と非捲縮フィラメント層を使用することにより好適な組合せを形成できる。嵩高で軟らかい材料を得る際に,捲縮フィラメントとは対照的に捲縮に対応しない断面を持つフィラメントが技術的に有利であることは,当技術分野の専門的有資格者であれば自明であろう。捲縮に対応しない断面を持つフィラメントとは異なり,製造時に(自然に)捲縮が起こるフィラメントを加工する場合,製造工程の過程を制御することは容易ではない。捲縮形成が可能な断面を持つフィラメントの多くのタイプでは,堆積段階及び/又は活性化時に捲縮が形成される。この捲縮過程で,フィラメント同士は相対的に移動することから,互いに接触すること又は,互いに絡むことは容易に起こり,言い換えれば,フィラメント同士は相互干渉可能であると表現できる。自然に捲縮する能力を有するフィラメントから成る不織層では,相互移動によるフィラメントの偏在により,その形状や配列に制約を受けることが実際に多い。これらの制約により必要となったその後の基本的な対策には,処理量の削減,製造プロセスの減速,フィラメントの相対的な位置関係を確実に設定するための製造プロセスにおける特別な工程の追加が含まれる。
【0141】
紡糸,冷却,及び延伸プロセスで自然捲縮を起こさないフィラメントでは,層内のフィラメントの堆積をより均一にすることが可能であり,生地の所望の特性を保持しながらも及び/又は,製造ライン速度を高く設定しながらも,使用する坪量を可能な限り少なくすることができ,従って,加工した材料の量が増加する。従って,製造手段の過程を制御することがかなり容易になり,捲縮に対応していない断面の場合,より安価に製造された紡糸口金及び紡糸ビームを使用することも可能である。
【0142】
本発明の有利な構成には,得られたフィラメントの層を熱的に予備一体化すること,即ち層を予備一体化し,層は熱的に形成した接着を含んでいることも包含される。本発明の有利な構成の1つは,層の少なくとも1つの収縮を制御する目的で,得られた不織布を熱的に活性化することでもある。一体化及び,場合により熱的活性化は,(例えば熱風又は赤外線放射による)高温媒体流及び/又は高温表面と接触する少なくとも1つの効果により実施することが望ましい。そのような高温表面の1例としては,主にローラの一部が挙げられる。熱的活性化は,収縮が繊維層の表面全体にわたって均一に起こる条件下で行うことが望ましい。熱的活性化は,熱風が供給されるチャンバ内で又は,フィラメント層をオーブン内に通過させることにより,実施できる。また,赤外線光又は紫外線光,透過型マイクロ波,及び/又はレーザー照射により熱的活性化及び一体化を行うことも可能である。「製造ライン上で」行うこの前記手技の範囲内で,熱一体化は,製造手順の先行工程の完了直後に行ってもよく又は,熱的活性化及び一体化の両手順工程は,製造手技の先行工程とは別の「製造ライン外」で行ってもよい。従って熱的活性化は基本的に,異なる時間及び場所での「製造ライン外」で行うことが可能である。
【0143】
本発明の解決策として,高温媒体の流れが生地を通過し,その結果,不織布の体積全体にわたって熱が伝達されると有利である。
【0144】
繊維生地/フィラメント層の予備一体化に必要なレベルは,製造プロセスの条件に大きく依存する。決定的な前提条件は,フィラメント層内部のフィラメントの相互結束のレベルを正しく設定することであり,従って,製造プロセスの後続の工程の要件に基づいて,フィラメントの相互結合のレベルを制御できることでもある。製造プロセスが製造ライン上で行われ,そのベルト上で活性化が行われる場合,活性化プロセス中の顕著な望ましくない動作に引き起こされる解繊又は薄れを防止するだけでよいことから,必要な結束のレベルは比較的低い。特別な場合,例えば,フィラメント同士がそれ自体で互いに,又は基材を介して接触している間,非常に良好に結合し,その結合が例えば,その断面の形状,絡み合いの速度又は,その材料組成により可能となっている場合,フィラメントの層の結合特性は,熱的予備結合がなくとも十分に良好となる可能性がある。他の場合,例えば製造プロセスが2工程に分けられる場合又は,フィラメントの層を完全な活性化の前に予備一体化し,例えばロールの形で移送する場合,結束の所望のレベルは非常に高くなり,その結果,予備一体化のレベルを非常に高くする必要が生じる。
【0145】
活性化温度は,成分(単数又は複数)Aのガラス転移温度と軟化温度(ISO DIN306に従ったビカット軟化温度)の間にある必要がある。
【0146】
1つの有利な構成では,本発明は,これらのフィラメントの収縮が適合又は制御されたフィラメントを使用して作成した嵩高な不織布を提供する。収縮はフィラメントの層全体にわたって均等に起こり,そのおかげでこの手順は均等な不織布特性をもたらし,収縮の均等な制御が確実になる。
【0147】
対流冷却器の内部では,フィラメントは通常,流動媒体,主に冷却風により冷却する。上記のように,フィラメントの潜在的な収縮は,収縮を示す層の長さ,幅,及び厚さの全範囲にわたって均等に分布していなければならない。収縮に関する性質は,フィラメントの延伸比,冷却風/ポリマー比,及び速度を調整することにより変更できるが,本発明によれば,これらのパラメータは実際,個々のフィラメントにおいて均等である。
【0148】
本発明の範囲には,作成した不織布が数層から成り,そのうち少なくとも1つの第1層T,少なくとも1つの第1層T及び1つの第2層M又は,不織布を形成する各層を,望ましくは紡糸ビームにおいてスパンボンド法により形成することが包含される。同時に,複数の層を重ね,その後,これらの層をまとめて少なくとも1つの形成ベルト上へ移送し,最終的な一体化のための機構3へ移送することは明らかである。
【0149】
フィラメントは紡糸口金で紡糸することにより形成する。フィラメントの配置は交互に配置することにより最適化してもよく,その最適化により,個々のフィラメント各々が非常に類似した重量を有し,非常に近い温度の冷却風が供給されるという条件が達成できる。紡糸口金は様々な数の毛細管を有し,同様に,これらの毛細管の直径(d)及び長さ(l)は多様である。長さ(l)は原則として毛細管の直径の倍数として計算し,この用途の領域では,長さ(l)は2~10l/dの範囲で選択する。毛細管の数は,フィラメントの所望の最終直径及び,ポリマーの必要な総処理量又は計画した総処理量と共に,必要なフィラメントの紡糸速度に基づいて選択する必要がある。毛細管の数は,1メートルあたり800~7000本の範囲で変更してもよく,この範囲では,フィラメントの直径は8~45μmの範囲にすることが可能である。毛細管の直径及びフィラメントの速度は,最終フィラメントの潜在的な収縮のレベルを適切にできるように選択する。フィラメントの速度は1000~10000m/minの範囲に規定する必要があり,捲縮に対応しない断面を有して収縮を示すフィラメントの速度は3000~5500m/minの範囲にする必要がある。毛細管の直径は200~1000μmの範囲に選択する必要があり,円形毛細管の場合に200~1300の範囲の適切なプロセス延伸比を達成でき,一方で,製造ライン生産性の要求レベルを達成するには,これらの円形毛細管の場合には,延伸比は300~800の範囲にすることが最も有利である。非円形毛細管は基本的に高い延伸比値を示すが,これは毛細管の形状,及びその表面と体積との相対的な比率に大きく依存する。冷却風の量及び温度は,正しい延伸比及び正しい冷却条件を達成できるように設定する。本発明では,その設定は,冷却風量と紡糸ポリマーとの比率が20:1~45:1の範囲にある場合に有用であることが判明している。冷却風の量及び温度は冷却器(6)において制御する。この温度は,特定の場合に収縮の過程を制御するために冷却条件を利用できるように10℃~90℃の範囲,望ましくは15℃~80℃の範囲に設定可能である。その冷却条件により,紡糸プロセス中にフィラメントを溶融温度からガラス転移温度までどの程度の速さで冷却するかを決定する。例えば,冷却風温度を高く設定すると,フィラメントの冷却が遅くなる。実際には,本発明の目的のために,温度範囲を別々に制御できる2つの領域に冷却器を分けると,必要かつ使用可能な冷風温度範囲を容易に達成できる。紡糸口金近傍に位置する第1領域6aでは,温度を10℃~90℃の範囲,望ましくは15℃~80℃の範囲,最も望ましくは15℃~70℃の範囲に設定できる。第1領域の直近に位置する第2領域(6b)では,温度を10℃~80℃の範囲,望ましくは15℃~70℃の範囲,最も望ましくは15℃~45℃の範囲に設定できる。
【0150】
その後,フィラメントを延伸領域に導入する。ここで,フィラメントは,冷却風速の効果により生じた延伸力によって延伸する。冷却風体積及び延伸領域の調整可能な形状により,特定の風速を達成することが可能となり,その後,この速度はフィラメント速度に伝わる。このフィラメント速度はその後,処理するポリマー量と共にフィラメントの直径を決定する。潜在的収縮(縮小率)をフィラメント速度,延伸比及び,冷却風/ポリマー比により調整する。
【0151】
次の工程では,フィラメントを拡散装置に供給し,拡散装置の対向する壁同士はフィラメントの通過方向に対して互いに分岐している。均一な組成の不織布を得られるようにこれらの壁の位置を調整することが可能であり,ここで,個々に堆積したフィラメントはMD/CD面内で無指向配向した配列を形成する。
【0152】
同時に,フィラメントの堆積層は,これらのフィラメントが拡散装置に供給される効果により空気の影響を受けていることは明らかである。気流は,明らかにジグザグのフィラメントの堆積から,真円のループ,更に同様にCD方向に配向した楕円形の構造まで様々な配列を作り出すように改変できる。フィラメントを形成ベルト上に堆積させ,予備一体化のための少なくとも1つの機構に移送する。冷却風は,堆積したフィラメント層を流れ,形成ベルトを流れ,その後,処理領域から遠ざかるように運ばれる。フィラメントの堆積を容易にし,同様に,フィラメント層と形成ベルトとの効果的な接触を確実にする方法で,吸引空気の体積を調整できる。予備一体化機構は拡散装置の近傍に配置する。フィラメント層の形成は,拡散装置と予備一体化機構との間の経路の全範囲において吸引した空気により制御する。フィラメント層の予備一体化は熱風により行う。
【0153】
フィラメント層に移行したエネルギー量は,フィラメントをある程度にしか軟化又は予備溶融させず,個々のフィラメント間の結合を良好にする方法で制御する。フィラメント間の必要な結合が達成された後,繊維層は形成ベルトに移送することが可能であり,この移送中,補助機構の支援を追加することはなく,この移送時に生じた力の影響による破壊/損傷の影響又は危険性もない。この予備一体化手順は同様に,複数の紡糸ビームから成る製造ライン上でフィラメント層を別の堆積領域に移動させるには有効である。フィラメントに移行したエネルギーは,これらのフィラメントの収縮の活性化には十分ではない。本発明の方法には,予備一体化パラメータ:予備一体化温度,予備一体化風速,及び予備一体化時間の間のバランスを決定することが含まれる。予備一体化時間は,フィラメントの層を予備一体化空気により改質する時間を意味すると理解される。
【0154】
フィラメント層の推奨予備一体化時間は,1~10000msの範囲,望ましくは2~1000msの範囲,最も望ましくは4~200msの範囲にある。
【0155】
この予備一体化ユニットで使用する予備一体化風速は,0.1~10m/sの範囲,望ましくは0.8~4m/sの範囲に設定する。また,予備一体化時の推奨一体化温度は,80℃~200℃の範囲,望ましくは100℃~180℃の範囲にある。構成の1形態では,この予備一体化温度は,90℃~150℃の範囲,主に110℃~140℃の範囲にある。
【0156】
構成の様々な有利な形態によれば,不織布は以下のような2成分フィラメントの層を含む:
‐ ポリエチレンテレフタレート(PET)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレンから生成した第2成分(B)であって,予備一体化温度は望ましくは110℃~160℃の範囲,特に120℃~150℃の範囲にある;
‐ ポリエチレンテレフタレート(PET)から生成した1種の成分(A)及び,ポリエチレンテレフタレートの共重合体(CoPET)から生成した第2成分(B)であって,予備一体化温度は望ましくは110℃~180℃の範囲にある;
‐ ポリ乳酸(PLA)から生成した1種の成分(A)及び,ポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレンから生成した第2成分(B)であって,予備一体化温度は望ましくは80℃~130℃の範囲にある;
‐ ポリプロピレン(PP)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリエチレンとポリプロピレンとの共重合体から生成した第2成分(B)であって,予備一体化温度は望ましくは80℃~130℃の範囲にある。
【0157】
拡散装置に続いて配置される製造ラインの領域における有利な構成の1つでは,フィラメントの層は少なくとも1つの活性化ユニット10に移送する。フィラメントは熱風により活性化する。同時に,フィラメントの収縮可能な成分の実際の収縮は,フィラメントの収縮可能な成分の温度の関数であり,同様に,温度の影響を受ける時間の関数でもあることは理解されているものとする。更に,収縮プロセスの速度もフィラメントの収縮可能な成分の温度に依存することは明らかである。この発明に基づいて,プロセスの過程は,収縮開始を遅らせることから成る方法により制御し,これにより,この収縮の結果として層内に生じた力はフィラメント間の結合力よりも小さいものとなる。プロセスのこの制御により達成できる結果として,フィラメント構造の密度が減少した不織布の凝集構造及び均一構造が得られ,これは同様に,この不織布の厚さを増加させることにつながる。
【0158】
本発明の構成の1形態によれば,予備一体化及び/又は活性化方法の工程の実行では,予備一体化及び/又は活性化の時間,予備一体化及び/又は活性化に必要な風速,並びに予備一体化及び活性化の温度は,予備一体化及び活性化の複合機構において複合方法により制御する。
【0159】
本発明の有利な方法の1つには,活性化パラメータ:活性化温度,活性化風速,及び活性化時間の間のバランスを決定することが含まれる。活性化時間とは,フィラメントの層が活性化空気により改質される時間を意味すると理解される。これらのパラメータは,フィラメントの潜在的な収縮レベルに反応して,同様に,活性化時間,活性化温度及び,活性化風速の間の理想的な組み合わせを設定する目的で,規定範囲内で変更してもよいことは明らかである。
【0160】
フィラメント層の推奨活性化時間は,20~5000msの範囲,望ましくは30~3000msの範囲,最も望ましくは50~1000msの範囲にある。
【0161】
この活性化ユニットで使用する活性化風速は0.1~2.5m/sの範囲,望ましくは0.3~1.5m/sの範囲に設定する。熱活性化時の推奨活性化温度は,80℃~200℃の範囲,望ましくは100℃~160℃の範囲にある。構成の1形態では,この活性化温度は90℃~140℃の範囲,主に110℃~130℃の範囲にある。
【0162】
構成の様々な有利な形態によれば,不織布は以下のような二成分フィラメントの層を含む:
‐ ポリエチレンテレフタレート(PET)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレンから生成した第2成分(B)であって,活性化温度は,望ましくは90℃~140℃,特に100℃~140℃の範囲にある;
‐ ポリエチレンテレフタレート(PET)から生成した1種の成分(A),及びポリエチレンテレフタレートの共重合体(CoPET)から生成した第2成分(B)であって,活性化温度は,望ましくは120℃~160℃の範囲にある;
‐ ポリ乳酸(PLA)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレンから生成した第2成分(B)であって,活性化温度は,望ましくは80℃~140℃の範囲にある。
【0163】
本発明の有利な構成は最終一体化手順を含み,この手順は一体化機構(3)において熱風を用いてフィラメントの層を改質することから成る。この一体化機構の内部では,フィラメントの層を一体化し,この層は,単層から又は,層中で接着したフィラメントを有する複数の層からそれぞれ構成してもよい。これらの層では,同時にこのフィラメント層の厚さが著しく減少することなく,不織布の厚さ全範囲に存在する顕著な一体化勾配もない。一体化温度は,加工したフィラメント層を軟化又は崩壊させることなく不織布のフィラメント間に必要な接着を達成できるほどに十分高くなければならないため,不織布の残厚及び残余弾性は一体化温度に影響を受けることは明らかである。一体化機構の内部では,一体化温度とフィラメントの層に作用する一体化力が,低レベルの軟化力及び低い内力といった,処理に必要な効果に適合していることが必要である。同時に,それにもかかわらず,前記温度及び前記力は,不織布の製造用フィラメント層の完全性に必要な効果を得るために十分高くなければならない。このことは,例えば,ベル型ドラムを有する一体化機構,フラットベルトを有する一体化機構又は,複数ドラム型一体化機構などの複数の様々な装置により達成できる。
【0164】
一体化した不織布は最終段階で糸巻き(11)に巻き取る。不織布の表面特性を変更する必要がある場合,例えば,流体の伝達を改善する目的,又は流体の排出能を向上する目的で,噴霧機構又はディップロールを,移動ベルトと最終一体化機構との間又は,最終一体化機構と糸巻きとの間に配置する。
【0165】
本発明の構成の1形態は,活性化及び一体化の工程を組み合わせることから成り,一体化機構内では,活性化時間及び/又は一体化時間,活性化及び/又は一体化に必要な風速,並びに活性化温度及び/又は一体化温度を制御する。
【0166】
基本的な要素は,一体化パラメータ:一体化温度,一体化風速,一体化時間の間のバランスを決定することである。一体化時間とは,フィラメントの層が一体化空気により改質される時間を意味すると理解される。これらのパラメータは,フィラメント層の潜在的な一体化レベルに応じて,また同様に,一体化時間,一体化温度,及び一体化風速の間の理想的な組み合わせを達成する目的で,規定した範囲内で変更してもよいことは明らかである。
【0167】
フィラメント層の推奨一体化時間は,200~20000msの範囲,望ましくは200~15000msの範囲,最も望ましくは200~10000msの範囲である。
【0168】
この一体化ユニットで使用する一体化風速は,0.2~4.0m/sの範囲,望ましくは0.4~1.8m/sの範囲に設定する。熱一体化時の推奨一体化温度は,100℃~250℃の範囲,望ましくは120℃~220℃の範囲にある。構成の1形態では,この一体化温度は90℃~140℃の範囲,主に110℃~130℃の範囲にある。
【0169】
構成の様々な有利な形態によれば,不織布は,以下のような二成分フィラメントの層を含む:
‐ ポリエチレンテレフタレート(PET)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリエチレンから生成した第2成分(B)であって,一体化温度は望ましくは90℃~140℃,特に100℃~140℃の範囲にある;
‐ ポリエチレンテレフタレート(PET)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリプロピレンから生成した第2成分(B)であって,一体化温度は望ましくは90℃~160℃,特に110℃~160℃の範囲にある;
‐ ポリエチレンテレフタレート(PET)から生成した1種の成分(A),及びポリエチレンテレフタレートの共重合体(CoPET)から生成した第2成分(B)であって,一体化温度は望ましくは140℃~230℃の範囲にある;
‐ ポリ乳酸(PLA)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリエチレン又はポリプロピレンから生成した第2成分(B)であって,一体化温度は望ましくは80℃~140℃の範囲にある;
‐ ポリプロピレン(PP)から生成した1種の成分(A),及びポリオレフィン,特にポリエチレン,又はポリプロピレンとポリエチレンとの共重合体から生成した第2成分(B)であって,一体化温度は望ましくは90℃~140℃,特に100℃~140℃の範囲にある。
【0170】
本発明の不織布は,様々な組成の層を組み合わせ,個々の層の推奨温度の間隔での(温度の)浸透により,適切な予備一体化,活性化温度及び接着温度を得る。一体化機構が様々な領域で異なるレベルとなるにもかかわらず,一体化空気温度及び同様に一体化風速が規定範囲に留まるように,上記の規定温度範囲は様々な独立した工程で使用できる。
【0171】
本発明は,意図に従った不織布が,一方では比較的嵩高で,それにより厚さが比較的厚く,他方では満足な安定性を維持するように設計できるという所見に基づいている。本発明の層は,負荷,即ち圧力負荷の影響を受けた後でも優れた弾力を示す。これらの有利な性質は,比較的低い不織布坪量で達成できる。
【0172】
本発明の方法には,不織布の連続製造は簡単な方法で,比較的高い製造速度で,製造プロセスを中断せずに行うという特定の利点が更に存在する。不織布の製造パラメータは製造プロセス中に非常に可変であり,柔軟で適応性がある。それにより,製造プロセスを中断することなく様々な最終製品を製造できる。また,予備一体化,活性化,及び一体化から成る手順の工程は,それらのパラメータに関する限り,容易に変更できる。
【0173】
本発明の方法は,「製造ライン上」で簡単な方法により実施できるが,必要に応じて「製造ライン外」での様々な製造手技工程を実施する選択肢は残っている。従って,予備一体化,収縮活性化及び,最終一体化工程は層状材料の実際の製造から問題なく分離することが可能である。よって,非常に有利な3次元構造表面を有し,嵩高性及び厚さが大きく,簡単かつ安価で効果的な方法により満足のいく圧縮強度を示す全く新しい生地を製造することが可能であると結論付けられる。不織布又は得られた不織層の様々なパラメータは,製造手順全体において可変であり,柔軟に適応可能である。
【0174】
本発明の不織布は,例えば,ズリーンのUTB大学にあるポリマーシステムセンターの実験室製造ラインで製造した2層生地とすることが可能である。この実験室製造ラインの型番LBS‐300は,スパンボンド又はメルトブローン型不織布用一成分又は二成分フィラメントを製造することが可能である。2台の押出機から成る押出システムはポリマーを450℃まで加熱できる。寸法6×6cmの正方形領域に72個の穴(直径0.35mm,長さ1.4mm)を有するスパンボンド型押出機を用いてスパンボンド型不織布フィラメントを製造できる。二成分フィラメントを加工するための押出機では,芯/鞘,成分の並列,区画又は,アイランドなどの数種の配置にすることが可能である。システムは開放型であり,吸引空気圧は入力システム上で150kPaのレベルまで利用可能である。フィラメントはそのままの状態で取り出すことが可能であり又は,0.7~12m/minの範囲の速度で走行するベルト上に堆積させてもよい。製品の最終幅は10cm以下である。総押出量は0.02~2.70kg/hの範囲に設定できる。最終坪量は30~150g/m2の範囲に設定できる。更に,最大250℃の温度でカレンダロールを使用することによりフィラメントの層を一体化する選択肢もある。
【0175】
実験室条件下での気流による一体化のモデル(実施例1~4)を作成するために,標準的な据え付け型オーブンを使用した。静止雰囲気のオーブン内及び,生地を通過する強制的な気流の機構内に存在する熱伝達条件が非常に多様である結果として,また同様に,オーブンの開閉時に生じる熱損失の結果として,130℃で活性化+接着時間を3分に設定する必要がある。
【0176】
前述の実験室製造ラインを使用し,実施例で説明した層を作成した。実施例1~6では,最小の下方圧力と室温で紡糸ビームの後方で圧縮ローラを使用した。他の実施例では,圧縮ローラの代わりに,アタッチメント付きホットエアガンを用いて形成した熱風流(130℃)を使用した。
【0177】
不織布は,円形断面の芯/鞘型二成分フィラメントの2層から成る。芯と鞘との質量比及び製造ラインの設定を表に示す。個々の層の製造において,定義したポリマーの組み合わせについて,以下の温度プロファイルを設定した。
PET/PE:
成分A=PET(ポリエチレンテレフタレート,ポリマータイプ5520,Invista社製)
成分B=PE(ポリエチレン,ASPUN(登録商標) 6834,Dow社製)
成分Aの押出機を340℃に加熱し(3領域をそれぞれ340℃,335℃,325℃に加熱),成分Bの押出機を235℃に加熱した(3領域をそれぞれ200℃,215℃,235℃に加熱)。紡糸ビームの温度を305℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/1毛細管に設定した。フィラメントは温度20℃の空気を用いて冷却した。
PP/PE:
成分A=PP(ポリプロピレン,TatrenHT2511,Slovnaft社製)
成分B=PE(ポリエチレン,ASPUN6834,Dow社製)
成分Aの押出機を加熱し(3領域をそれぞれ195℃,220℃,240℃に加熱),成分Bの押出機を235℃に加熱した(3領域をそれぞれ200℃,215℃,235℃に加熱)。紡糸ビームの温度を240℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/1毛細管に設定した。フィラメントは温度20℃の空気を用いて冷却した。
PLA/PE:
成分A=PLA(ポリ乳酸,Ingeo,Nature Works社製)
成分B=PE(ポリエチレン,ASPUN 6834,Dow社製)
成分Aの押出機を240℃に加熱し(3領域をそれぞれ195℃,220℃,240℃に加熱),成分Bの押出機を235℃に加熱した(3領域をそれぞれ200℃,215℃,235℃に加熱)。紡糸ビームの温度を240℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/1毛細管に設定した。フィラメントは温度20℃の空気を用いて冷却した。
PLA/coPLA:
成分A=PLA(ポリ乳酸,Ingeo,Nature Works社製)
成分B=coPLA(ポリ乳酸の共重合体,Ingeo,Nature Works社製)
成分Aの押出機を240℃に加熱し(3領域をそれぞれ195℃,220℃,240℃に加熱),成分Bの押出機を235℃に加熱した(3領域をそれぞれ200℃,215℃,235℃に加熱)。紡糸ビームの温度を240℃に設定した。ポリマー処理量は0.25g/mim/1毛細管に設定した。フィラメントは温度20℃の空気を用いて冷却した。
【0178】
【0179】
実施例1~6において,フィラメントの初めの予備一体化では,室温の圧縮ローラを紡糸ビームの真後ろで使用し,これは層Tの活性化により起こる構造変化に著しく影響を及ぼし―厚さの増加(z方向)が大幅に制限された。実施例6は,層Mがそれ自体では収縮しないことを示している。実施例1は,層Tから成る生地の厚さが13%増加した程度を示している。生地の嵩高性の変化を計算すると,厚さの増加は縦横の減少にほぼ対応し,生地の総体積は変化していないことが分かる。実施例2~5は,MD及びCD方向にほぼ同じ収縮率で不織布の厚さが更に著しく増加し,これは総体積の増加(約+15%~+20%)にも対応することを示している。理論に縛られることなく,この増加は,層Mの強制収縮により起こると推測する。
【0180】
【0181】
実施例7~11では,温度130℃の熱風流を,フィラメントの初めの予備一体化のために紡糸ビームの真後ろで使用した。フィラメントは圧縮せず,活性化の過程で著しい構造変化がz方向に生じ,また材料の総嵩高さも著しく増加した。
【0182】
本発明の実施例2~8及び8~11では,第1層T中の芯はポリマーA1(ポリエチレンテレフタレート,ポリマータイプ5520,Invista社製)から成り,第2層M中の芯はポリマーA2(ポリエチレン,ASPUN6834,Dow社製)から成る。引張弾性率及び曲げ弾性率の差は500MPaより大きい。
【0183】
本発明の実施例4+5及び10+11は,本発明の実施例2+3及び8+9と比較して嵩高が低く,これは主に不織布の坪量の大きな差に起因している。総坪量が高いということは,その弾性のおかげでわずかに緩んでいる底部層への負荷が大きくなっていることも表し,従って層の総嵩高は減少する。
【0184】
【0185】
実施例13~17では,温度130℃の熱風流を,フィラメントの初めの予備一体化のために紡糸ビームの真後ろで使用した。実施例14及び15では,捲縮に対応する断面を有するフィラメント(eC/S,S/S)を層の1つに使用した。本発明の実施例13では,第1層T中の芯はポリマーA1(ポリ乳酸,Ingeo,Nature Works社製)から成り,第2層M中の第2耐荷重芯はポリマーA2(ポリエチレン,ASPUN6834,Dow社製)から成る。引張弾性率及び曲げ弾性率の差は200MPaより大きい。
【0186】
実施例14~15では,本発明によれば,第1層T中の芯はポリマーA1(ポリエチレンテレフタレート,ポリマータイプ5520,Invista社製)から成り,第2層M中の芯はポリマーA2(ポリエチレン,ASPUN6834,Dow社製)から成る。引張弾性率及び曲げ弾性率の差は500MPaより大きい。
【0187】
実施例16は,スパンボンドフィラメントから形成した層Tと,捲縮したセルロースステープル繊維(エアレイド)から形成した層Mとの組み合わせを説明している。フィラメントを90°曲げるのに必要な力の比は,2超(ポリマーA1から形成したフィラメント):1(セルロース繊維)である。
【0188】
実施例17では,本発明によれば,第1層T中の芯は第1耐荷重ポリマーA1(ポリプロピレン1=Mosten NB425,Unipetrol社製)から成り,第2層M中の第2耐荷重芯はポリマーA2(ポリプロピレン2=MR2002,Total Petrochemicals社製)から成る。曲げ弾性率の差は100MPaである。
【0189】
実施例1~5及び7~16は収縮を利用している。実施例6及び7は収縮する層を含まない。
【0190】
以下の実施例18~20は,2つの二成分スパンボンド型紡糸口金を用いるREICOFIL 5技術によりスパンメルト製造ラインで製造した不織布を説明している。
【0191】
実施例18
第1層(T)は,円形断面を有する鞘/芯(C/S)型の二成分ノズルを用いて製造した。フィラメント中の成分A:Bの重量比は70:30であった。フィラメントの芯はPET(Invista社製ポリマータイプ5520)から形成し,鞘はPE(Dow社製ASPUN6834)から形成した。製造条件は,フィラメントが任意の配向で不規則な円弧状部又は波状部を形成する条件であった。この層はHAK(ホットエアナイフ)及びHAF(熱風流)を用いて予備一体化した。第2層(M)は円形断面を持つ鞘/芯(C/S)型の二成分ノズルを用いて製造し,第1予備一体化層上に堆積させた。フィラメント中の成分A:Bの重量比は70:30であった。フィラメントの芯はPP(Borealis社製のポリマータイプHG475FB)から形成し,鞘はPE(Dow社製ASPUN6834)から形成した。フィラメント自体は層中で捲縮を示さない。両層をまとめてHAK(ホットエアナイフ)及びHAF(熱風流)を用いて更に予備一体化し,その後,接着ユニット内で熱風により完全に接続した。
【0192】
実施例19
第1層(T)は,円形断面を有する偏心芯/鞘(eC/S)型の二成分ノズルを用いて製造した(使用したノズルは,REIFENHAUSER社及びKG MASCHINENFABRIK社による欧州特許出願第3771761号に開示されているノズルであった)。フィラメント中の成分A:Bの重量比は50:50であった。フィラメントの芯はPP(Exxon社製ポリマータイプ3155)から形成し,鞘はPE(Dow社製ASPUN6850)から形成した。製造条件は,フィラメントが捲縮を形成する条件に設定した。この層はHAK(ホットエアナイフ)及びHAF(熱風流)を用いて予備一体化した。第2層Mは,第1層と同一の偏心芯/鞘(eC/S)型の二成分ノズルを用いて製造し,第1予備一体化層上に堆積させた。フィラメント中の成分A:Bの重量比は45:55であった。フィラメントの芯はPPのブレンド(4.5%のBorealis社製ポリマータイプHL712FB及び0.6%の白色TiO顔料と混合したExxon社製ポリマータイプ3155)から形成し,鞘はPE(Dow社製ASPUN6834)から形成した。フィラメントが自身で捲縮するように製造条件を設定した。両層をまとめてHAK(ホットエアナイフ)及びHAF(熱風流)を用いて更に予備一体化し,その後,接着ユニット内で熱風により接続した。
【0193】
実施例20
第1層Tは,円形断面を有する鞘/芯(C/S)型の二成分ノズルを用いて製造した。フィラメント中の成分A:Bの重量比は70:30であった。フィラメントの芯はPET(Invista社製ポリマータイプ5520)から形成し,鞘はPE(Dow社製ASPUN6834)から形成した。製造条件は,フィラメントが任意の方向で不規則な円弧状部又は波状部を形成する条件に設定した。この層はHAK(ホットエアナイフ)及びHAF(熱風流)を用いて予備一体化した。第2層Mは円形断面を持つ偏心芯/鞘(eC/S)型の二成分ノズルを用いて製造し(使用したノズルは,REIFENHAUSER社及びKG MASCHINENFABRIK社による欧州特許出願第3771761号に開示されているノズルであった),第1予備一体化層上に堆積させた。フィラメント中の成分A:Bの重量比は45:55であった。フィラメントの芯はPPのブレンド(4.5%のBorealis社製ポリマータイプHL712FB及び0.6%の白色TiO顔料と混合したExxon社製ポリマータイプ3155)から形成し,鞘はPE(Dow社製ASPUN6834)から形成した。層中のフィラメントが自身で捲縮するように製造条件を設定した。両層をまとめてHAK(ホットエアナイフ)及びHAF(熱風流)を用いて更に予備一体化し,その後,接着ユニット内で熱風により完全に相互接続した。
実施例18~20のプロセスパラメータを上記の説明に従って設定し,正確な数値を下記表に示す。
【0194】
【0195】
実施例18~20は,例えば,層重量の様々な組み合わせの可能性を示す。実施例18では,左右対称の製品(30+30gsm)が得られるように個々の紡糸口金の排出量を設定した。対照的に,実施例20では,両方の紡糸口金を最適な排出量に設定し,紡糸口金が生成するフィラメントの平均密度はより高くなり,単位面積当たりのフィラメントの重量も増加させた(35+25gsm)。実施例19では,フィラメントの密度は同一であり,単位面積当たりのフィラメントの重量も左右対称であった。
【0196】
実施例18~20は,本発明の更に可能性のある利点も示している。これらの例のように,層M及びTを複合体の外層として使用すれば,最終製品は,例えばそれ自身の「両面性」の観点から,層の異なる特性の利点を活用することができる。例えば,実施例18及び20の一方の外層は,高い耐摩耗性(等級1)を有する層Tから形成し,第2層は,ほぼ耐性がない(等級4)。実施例19では,耐摩耗性には特性の違いはないが,例えば主観的に知覚される柔らかさに違いが現れ,製品は層Mの側からより柔らかいと評価される。
【0197】
試験方法
不織布の「坪量」は,EN ISO9073‐1:1989規格(WSP130.1法に対応)に準拠した試験方法により測定する。測定には,10層の不織布を用い,試料寸法は10×10cm2である。
不織布材料の「厚さ」又は「測定高さ」は,EN ISO9073‐2:1995(WSP120.6法に対応)に従った試験測定方法により測定し,以下のように改変する:
1.材料は,高い変形力に供せずに又は,1日以上圧力(例えば,製造装置上のローラによる圧力)の影響を受けさせずに,製造工程から採取した試料を使用して測定する。そうでなければ,材料は,表面上で自由に敷設して少なくとも24時間放置する必要がある。
2.バラストを追加した測定機のトップアームの総重量は130gである。
嵩高性の「再生」又は「復元」という用語は,作用負荷の解放後の生地の厚さと,この生地の初期の厚さとの比に関連している。生地の厚さは,0.5kPaの圧力に相当する予備負荷力を掛け,EN ISO9073‐2:1995規格に従って測定する。再生の測定手順は以下の工程から成る:
1.寸法10×10cmの生地試料を調製する。
2.1枚の生地の厚さを測定する。
3.0.5kPaの圧力に相当する予備負荷力を掛け,重ねた状態の5枚の生地の厚さを測定する(Ts)。
4.厚さ測定装置上に重ねた5枚の生地に5分間負荷(2.5kPaの圧力)を掛ける。
5.装置を開放し,5分間待機する。
6.0.5kPaの圧力に相当する予備負荷力を掛け,重ねた状態の5枚の生地の厚さを測定する(Tr)。
7.下記式に従って再生率を計算する。
再生率=Tr/Ts(単位なし)
Ts=新品試料の厚さ
Tr=再生試料の厚さ
【0198】
本明細書における用語「圧縮性」とは,「弾性」の測定時に定義する負荷の影響により不織布が圧縮される距離をミリメートル単位で表したものである。また,弾性率(単位なし)×厚さ(mm)の積としても計算できる。不織布の「弾性」は,EN ISO964‐1規格に準拠した試験方法により測定し,以下のように改変する:
1.1つの生地層の厚さを測定する。
2.数個の生地試料を,積み重ねた後でそれらの総厚が少なくとも4mm,最も好ましくは5mmになるように調製する。積み重ねた生地片の群は,少なくとも1枚の生地を含む。
3.これらの積み重ねた生地試料の厚さを測定する。
4.この積み重ねた生地試料群に5Nの力を,5mm/minの負荷速度で作用させる。
5.クランプ要素の移動に相当する距離を測定する。
6.下記式に従って弾性率を計算する。
R(単位なし)=T1(mm)/T0(mm)
又は,
R(%)=T1(mm)/T0(mm)×100%
T1=5Nの負荷でのクランプ要素の移動に相当する距離[mm]=積み重ねた生地片の圧縮度
T0=厚さ(1.06Nの予備負荷力を掛けるEN ISO9073‐2:1995規格に従う)[mm]。
【0199】
「エンドレスフィラメントの長さと生地の長さとの比」は3つの異なる方法により測定できる。
a) フィラメントの長さは,捲縮させることなく,線状に伸ばすようにフィラメントを引っ張って測定する。
b) 特定のレベルに達するように一体化した生地では,フィラメント長の測定にa)の方法は使用できないため,以下のように推定する必要がある。
a.評価する層の画像をフィラメントが十分に見えるような倍率で撮影する。
b.画像の全体又は少なくとも一部を通る通路で1本のフィラメントを選択する。
c.画像内で指定したフィラメントの測定長に基づいて,このフィラメントの実際の長さを推定する。
d.上記指定したフィラメントを含む生地の長さを測定する。
e.フィラメントの推定長と生地の測定長との比(百分率)を計算する。
c) 生地中において,「不織布材料中のフィラメントの統計的形状数値の決定方法」を用いる。この方法では:
a.分析用に選択した生地の形状記述として,MD方向に8mm,CD方向に8mmであり,Z方向では試料の全厚が維持されている。
b.測定の観点から,生地において,切断した試料の片側から入り,反対側から出ているフィラメントだけが測定に関係するフィラメントである。
c.少なくとも20本のフィラメントを測定する必要がある。
d.フィラメント長と生地測定長との比(百分率)を計算する。
【0200】
接着点間又は接着エンボス間の自由フィラメント部分の長さである「自由フィラメント部分の長さ」は基本的に2つの異なる方法によってのみ決定できる。
1)生地の二次元画像を用いる推定
a.フィラメントが十分に見えるような倍率で評価層の画像を撮影する。
b.自由フィラメント部分に印を付ける。
c.印を付けたフィラメント部分の長さを測定する。
d.少なくとも100個の無作為に選択したフィラメント部分の上で,無作為選択の基本法則に従って測定を行い,統計計算により自由フィラメント部分長の中央値を決定する。
2)生地において,「不織布材料中のフィラメントの統計的形状数値の決定方法」を用いる。この方法では:
a.分析用に選択した生地の形状記述として,MD方向に少なくとも8mm,CD方向に8mmであり,Z方向では試料の全厚が維持されている。
b.測定の観点から,切断した試料において,1つの接着点の片側から他方の接着点へ又は,1つの接着エンボスから他方の接着エンボスへ又は,1つの接着エンボスから別の接着点へ通じるフィラメントだけが測定に関係するフィラメントである。
c.少なくとも100個の無作為に選択したフィラメント部分の上で,無作為選択の基本法則に従って測定を行い,統計計算により自由フィラメント部分長の中央値を決定する。
【0201】
「マーチンデール平均耐摩耗性等級試験」又は「マーチンデール」
図13は,マーチンデール平均耐摩耗性等級試験用装置の斜視図である。図14は,Procter & Gamble社による米国特許出願公開第20200170853号に記載されている,本明細書のマーチンデール平均耐摩耗性等級試験における毛羽立ち評価用等級指標である。
不織布のマーチンデール平均耐摩耗性等級は,マーチンデール摩耗試験機を用いて測定する。試験は乾燥状態で行う。
● 不織布試料を,温度23±2℃,相対湿度50±2%の条件下に24時間置いて調整する。
● 各不織布試料から,直径162mm(6.375インチ)の円形試料を10枚切り出す。直径140mmの円形になるように標準的フェルトを1枚切り出す。
● マーチンデールの各試験摩耗テーブル上に,切断したフェルトを置き,次に切断した不織布試料を置き,各試料を固定する。その後,不織布試料にシワが寄らないようにクランプリングを固定する。
● 摩耗器ホルダーを組み立てる。摩耗器は,直径38mm,厚さ1/32インチのFDA準拠シリコーンゴム(McMaster-Carr社製,品番86045K21‐50A)である。試料に9kPaの圧力が掛かるように必要な分銅を摩耗器ホルダーにセットする。操作者用ガイドでの指示の通りに,摩耗器が不織布(NW)試料に接触するように摩耗器ホルダーをモデル#864にセットする。
● 以下の条件でマーチンデール摩耗を操作する。
〇 モード:摩耗試験
〇 速度:47.5サイクル/分;及び
〇 サイクル:16サイクル
● 試験終了後,摩耗した不織布を,滑らかで光沢のない黒色の面に置き,図14の指標で毛羽立ちのレベルを評価する。各試料は,上面から欠陥の寸法及び数,側面から欠陥の突兀(loft)の高さの両方を観察して判定することにより評価する。この等級指標に最も合致するものを基準として1~5の数字で評価する。次いでマーチンデール平均耐摩耗等級を,全試料の平均評価として計算し,10段階評価で最も近い等級で報告する。
【0202】
手順条件では,「フィラメント断面タイプ」は,これらのフィラメントを形成するために使用する押出器具の形状により定義することが公知である。なお,手順条件が不明な場合は,以下のように推定することが可能である:
【0203】
不織布試料を採取し,少なくとも20本のフィラメントについてフィラメント断面の画像を撮影する。これらの断面画像は,フィラメントの自由部分を撮影したもので,接着箇所,又は他のフィラメントと接触している箇所は,これらの箇所で変形が予想できるため,撮影しない。各成分の表面は,画像内のそれぞれの断面について,つまり各成分ごとに独立して印を付ける。各成分の重心位置は,平面物体の形状中心の決定に基づいて決定し,重心位置は,フィラメント断面のこの形状中心を座標[0;0]に割り当てるデカルト座標システムを用いて記録する。下記式に従って,それぞれの成分の重心位置での及び,それぞれのフィラメント断面での歪み(D)を求める:
D=積(x×y)の絶対値,式中,x及びyは重心の座標である。数値x,yの一方が0であり,同時に他方の数値に等しくない場合,その試料は評価から除外する。
【0204】
それぞれの成分について平均値及び標準偏差を計算する。
【0205】
合計((平均歪み)+(標準偏差))と総断面積との比が5%未満である場合,フィラメントは捲縮により成形不能であると考える。
【0206】
差((平均歪み)-(標準偏差))と総断面積との比が5%未満の場合,フィラメントは捲縮により成形不能であると推測する。
【0207】
層中の「フィラメント径の中央値」の数値はSI基本単位,マイクロメートル(μm)又はナノメートル(nm)で表す。この中央値を決定するためには,互いに少なくとも5cm以上離れた少なくとも3箇所から不織布の試料を採取する必要がある。これらの各試料では,調べた各層において少なくとも50本の個々のフィラメントの直径を測定する必要がある。この目的のために,例えば(測定フィラメントの直径に応じて)光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いることが可能である。1つの試料のフィラメント径が他の2つの試料のフィラメント径と大きく異なる場合,その試料を除外し,新たな試料を調製する必要がある。
【0208】
円形のフィラメントの場合,その直径は断面の直径として測定する。フィラメントが他の断面形状を有する場合(例えば,断面が中空や三点形状であるフィラメントの場合),測定した各フィラメントの断面積寸法を求め,同じ寸法の円形の面積に再計算する必要がある。そして,この理論上の円形面積の直径がフィラメントの直径となる。
【0209】
次いで,3つの試料全てから成る各層の測定値を1式の数値にまとめ,その後,そこから中央値を決定する。フィラメントの少なくとも50%が中央値以下の直径を有し,かつ,フィラメントの少なくとも50%が中央値以上の直径を有することが求められる。所与の一式の試料数値の中央値を決定するためには,これらの数値を寸法順に並べ,このリストの中央に位置する数値を選択すればよい。一式の試料の数が偶数の場合,通常,N/2及びN/2+1の位置にある値の算術平均として中央値を決定する。
【0210】
用語「空隙率」とは,本明細書では材料中の孔の体積を指し,この材料の総体積に対する割合である。
【0211】
材料の総体積は,この場合,不織布の総体積に等しく,1m2の不織布では,下記式に従ってこの不織布の厚さ値(高さ)から総体積を計算できる:
総体積(m3/m2)=((生地の高さ(mm)/1000)×1(m)×1(m))/不織布のm2
次に,材料の空隙率を表す体積値は下記式から計算できる:
空隙率=生地の総体積(m3/m2)-体積重量(m3/m2
次に,不織布1m2当たりの体積重量の数値は下記式から計算できる:
体積重量(m3/m2)=(坪量(g/m2)/1000)/ポリマーの重量密度(kg/m3
ポリマーの重量密度の数値は,既知の組成から,又は規格ISO1183‐3:1999に従った測定により計算可能であり,フィラメントの場合,その数値は上記で規定した加重平均密度と等しい。
【0212】
次に,材料の空隙率の数値は下記式から計算できる。
あるいは,空隙率は,不織布の重量(kg)当たりの自由領域(m3)で表すことができる。この数値は下記式から計算できる。
個々の層間で空隙率の差が大きい層状材料の場合,材料全体の総空隙率を表すか,又は各層の厚さ及び坪量を設定した後に所与の層の空隙率を計算することが可能である。
【0213】
不織布の「嵩高性」は空隙率を簡略化して表現したものであり,類似組成の不織布を相互比較すること,又は簡略的に比較することのみに適している。当業者であれば,計算式はポリマー密度を含まず,この計算式によりこの計算の適否や限界が評価可能となることは理解できるであろう。
嵩高性(kg/m3)=坪量(g/m2)/生地高さ(mm)
測定「ハンドルオメーター」(HOM)で表す不織布の剛性は,国際規格WSP90.3に従って決定する。試料の寸法は,測定値について特段の記述がない限り,100×100mmである。HOMは,MD方向とCD方向とで別々に測定する。MD又はCD方向が指定されていない限り,これら2つの数値の算術平均をとる。
【0214】
「不織布材料中フィラメントの統計的形状数値の決定方法」
以下の記述部分は,形状特性を特徴付ける目的で不織布繊維材料の試料の分析に使用するソフトウェア方法に関するものである。この方法は,試料に含まれる個々のフィラメントを識別するための機械学習用手順を利用し,次いで,材料の特徴付けに適した統計データを得る目的でこれらフィラメントの形状分析を行う。結果には,フィラメントの配向分離及び密度分離が含まれる。この分析の実施に用いる作業手順はMath2Market社が開発し,デジタル材料実験室用ソフトウェアGeoDictの一部である。
【0215】
工程1:試料の3次元μCT画像の取得
初めに,μCTスキャナによりこの試料をデジタル化することにより,試料の不織布の3D画像を作成する。この3D画像は均等な直交格子から成り,格子の各セル(体積要素又はボクセル)に対して,調査対象試料の対応する位置でX線照射の減衰値を決定する。細孔のある領域は基本的に,減衰の程度が低く(グレースケールの値が低い),一方,材料相は高い減衰値を示し,減衰値の大きさは特定の材料,及び使用するμCT装置の配置に依存する。
【0216】
工程2:細孔を含む空間から材料を分離するためのμCT画像の切り出し
その後の分析のために,グレースケールで作成した画像をフィルタリングに供し,非局所的機器法によりノイズを除去する[1]。次いで,大津アルゴリズムにより導出したグローバル閾値を用い,画像を二値化する[2]。この2値化により,画像の各ボクセルを,細孔のある空間,又はフィラメント材料のいずれかに分類する。グレースケール値が閾値を下回るボクセルは,細孔のある空間として分類する。それ以外のボクセルは全て,フィラメント材料として分類する。干渉のフィルタリング及び閾値との比較の両方の手技で,GeoDictソフトウェアのImportGeoモジュールを使用する。
【0217】
工程3:材料密度分離分析
更に,材料密度分離をZ方向について計算する。各画像断面(所与の深さでZ方向に作成)において,材料密度を,白い材料のボクセル数をそれぞれの断面のボクセル総数で割った数値として計算する。この分析はGeoDictプログラムのMatDict関数を用いて行う。
【0218】
工程4:フィラメントの中心曲線を識別するためのニューラルネットワークの使用
μCTタイプの画像における個々のフィラメントの識別に伴う主な必要作業は,二値化するときにフィラメント同士が接触点の空間で分離しないことにより発生する。分離しないことにより,結果的に切り出しが不十分となり,複数の物体(フィラメント)が誤って1本のフィラメントとして分類されてしまう。
フィラメント同士を分離するために,Math2Market社は,フィラメントの中心曲線を特定することを可能にする手順を開発した。これらの中心曲線を,元の画像と同じ寸法の二値ボクセル画像に表示する。この画像では,フィラメントの中心から約1~2ボクセルの距離にあるボクセルに印を付ける。
この目的のために,ニューラルネットワークを利用した意味論的切り出し法[3]を使用した。画像は,この画像上を移動するスライド式の3D入力ウインドウにより分析する。各入力ウインドウに対して,入力ウインドウの中心に小さな出力ウインドウを画定する。ニューラルネットワークは入力ウインドウの二値ボクセル値を分析し,各出力ウインドウのボクセルを予測する。予測値により,出力ウインドウ内のボクセルが中心曲線の一部であるか否かを判定する。これら全ての出力ウインドウの結果を組み合わせることで,元の画像に含まれる材料の各ボクセルが分類された二値画像が得られる。この画像の変換は,Tensorflowソフトウェアライブラリを使用したGeoDictプログラム内のFiberFind-AIモジュールを利用して行う[4]。
【0219】
工程5:ニューラルネットワーク学習用のデータの作成
前述の変換を行うために使用する,いわゆるニューラルネットワーク学習を目的として,Math2Market社は,GeoDictソフトウェアプログラムの一部を構成する構造を生成するFiberGeo確率的モジュールを利用し,不織布材料の数個の人工3D画像を撮影した。このモジュールにより,セグメントの列としてフィラメントの分析的形状視覚画像が生成される。同時に,フィラメントの構造を二値画像の形態で出力し,これを工程2で行った二値化の結果と比較する。
分析画像内のフィラメントの寸法を約2~3ボクセル変更することで,人工繊維構造に対応する中心曲面の画像を形成できる。
次いで,この画像のペア(即ち,フィラメントの画像と中心曲線の画像)は,フィラメントの画像を中心曲線の画像に変換する目的でニューラルネットワーク学習のために使用できる。この手順により,生地は,中心曲線の方向にフィラメントを効果的に「収縮させることを学習する」。
【0220】
工程6:フィラメントの形状を表すための,フィラメントの中心曲線のトラッキング
これらのフィラメントを中心曲線のみで表現できるように収縮させた後,フィラメントの中心曲線同士は接触していないと想定する。その後,中心曲線画像の連結した成分を分析することにより個々の中心曲線を分離する際には,各成分が1本のフィラメントの中心曲線に対応していると想定する。同時に,連結した成分は材料のボクセル集合体の一部であると定義し,全ボクセルは色が同じであり,互いに接触している同じ色の他のボクセルを加えることにより拡大することはできない。
次いで,各中心曲線について,ボクセル集合体の範囲内のこの集合体をトラッキングし,相互に接続された断片の配列(破線)の形態で,対応するフィラメントの形状を表す。この工程は同様に,GeoDictプログラムのFiberFind-AI機能の一部である。
【0221】
工程7:フィラメントの配向を分離するためのヒストグラムの計算
任意の平面(例えば平面XY)における配向の配置を特定するため,初めに,フィラメントの各断片をこの平面に投影し,その後,この平面内の角度を計算する。次に,全断片の角度の配向のヒストグラムを計算する。最後に,この角度配向のヒストグラムを極座標を用いて描画することで視覚化する。ここで,所与の角度における半径は,対応する配向の発生回数に比例する。この分析は,残りの2つの面(XZ及びYZ)についても繰り返す。
【産業上の利用可能性】
【0222】
本発明は,圧縮性を高め,初期状態に復元する能力を向上させた嵩高の柔らかい不織布が必要なときは―例えば,衛生用品の工業生産において ― いつでも利用できる。この場合,本材料は,本発明によれば,吸収特性を有する衛生用品(例えば,赤ちゃんのおむつ,失禁に悩む個人のための製品,個人衛生用品,着替えマット等)の様々な部分を製造するために又は,医療において,例えば保護衣,外科用フェイスマスク,シート及び,不透過材料を含む他の製品の一部として利用できる。更に応用の可能性としては,様々な産業分野,例えば保護衣の一部としての使用,ろ過,断熱,包装及び防音製品の一部としての利用,履物,自動車又は家具産業における利用等が挙げられる。本発明は,エンドレスフィラメントの必要性と共に,特に嵩高性,圧縮性,及び繊維の復元性の必要性が高まる分野で有利に利用可能である。
【0223】
様々な不織布の用途では,様々な太さのフィラメントを使用することが望ましい。例えば,吸収性衛生用品のトップシート又はバックシートとして使用する場合,より細いフィラメントがより有利である(例えば,直径10~40ミクロンの範囲)。例えば,吸収性衛生用品の内層として使用する場合,フィラメントの太さはやや太い方が有利である(例えば,直径が15~50ミクロンの範囲)。例えば,補助層又は捕捉層の形態の濾過製品に使用する場合に有利である。補助層については一般に,フィラメントの太さは,より太いことが必要であり(約30~100ミクロン),逆に捕捉部については一般に,より細いフィラメントが適切である(10~40ミクロン)。当業者であれば,自身の用途に適したフィラメントの太さを容易に設定できるであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】