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特表2023-515853冷媒圧縮用スクロール圧縮機、及びオイル濃縮並びに分配方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】冷媒圧縮用スクロール圧縮機、及びオイル濃縮並びに分配方法
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20230407BHJP
   F04C 29/02 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
F04C18/02 311Y
F04C29/02 311Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552347
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2022-08-30
(86)【国際出願番号】 KR2021008299
(87)【国際公開番号】W WO2022005212
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020117373.3
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニザーミー,イマーン
(72)【発明者】
【氏名】アリアーズ,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】クロッテン,トーマス
【テーマコード(参考)】
3H039
3H129
【Fターム(参考)】
3H039AA03
3H039BB04
3H039BB11
3H039CC19
3H039CC33
3H129AA02
3H129AA16
3H129AB03
3H129BB01
3H129BB44
3H129CC05
3H129CC17
(57)【要約】
【課題】第2旋回ベアリングの潤滑及び周辺摩擦応力構成要素の潤滑を改善する。
【解決手段】本発明のスクロール圧縮機は圧縮機ハウジング、2つのスクロール、それぞれのベースプレート、偏心ドライブ、駆動軸、回転軸、均衡錘、第1ベアリング、第2ベアリング及び逆圧空間を含む。流体が流れることのできる内部リングと外部リング間の領域の放射状外部部分の一側で密封ウォッシャーが第1ベアリングを密封し、同時に、流体が流れることのできるギャップが維持されるように密封ウォッシャーが内部リングから放射状に離隔されるように密封ウォッシャーは回転可能な均衡錘のキャビティと第2ベアリングのキャビティを向かう第1ベアリングの一側で第1ベアリングに固定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒圧縮用のスクロール圧縮機(1)として、前記スクロール圧縮機(1)は、
圧縮機ハウジング(2)、前記圧縮機ハウジング(2)内に重畳されて、それぞれのベースプレート(3a、4a)を有する2つのスクロール(3、4)、及び前記ベースプレート(3a、4a)の前面から延びるスクロール形状壁(3b、4b)と、
ここで、スクロール(3)は、固定する方式で移動可能であり、残りのスクロール(4)は円形経路上から偏心方式で移動可能であり、前記スクロール(4)を移動して前記スクロール(3、4)間に形成された圧縮チャンバー(5)の体積を周期的に変更でき、
回転軸(7)を中心に回転できる駆動軸(6)、及び前記駆動軸(6)と共に回転することができ、前記スクロール(4)が偏心方式で前記駆動軸(6)に連結される均衡錘(8)を含み、円形経路上で前記スクロール(4)が移動されることができる偏心ドライブと、
前記圧縮機ハウジング(2)に前記駆動軸(6)が支持される第1ベアリング(10)、及び前記均衡錘(8)に前記スクロール(4)が支持される第2ベアリング(11)と、
前記均衡錘(8)のキャビティと前記第2ベアリング(11)のキャビティが形成される、前記スクロール(4)のベースプレート(4a)の後面にある前記圧縮機ハウジング(2)内の逆圧空間(12)と、を含み、
ここで、流体が流れることのできる前記第1ベアリング(10)の外部リング(10a)と内部リング(10b)間領域の放射状外部部分の一側で密封ウォッシャー(22)が前記第1ベアリング(10)を密封し、流体が流れることのできるギャップ(gap)(23)が維持されるように前記密封ウォッシャー(22)が前記内部リング(10b)から放射状に離隔されるように前記密封ウォッシャー(22)は前記均衡錘(8)のキャビティと前記第2ベアリング(11)のキャビティを向かう前記第1ベアリング(10)の一側で前記第1ベアリング(10)に固定される、ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【請求項2】
前記密封ウォッシャー(22)は、前記第1ベアリング(10)の前記外部リング(10a)に固定される、ことを特徴とする請求項1に記載のスクロール圧縮機。
【請求項3】
前記密封ウォッシャー(22)は、クランピング連結を通じて前記第1ベアリング(10)の前記外部リング(10a)に固定される、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスクロール圧縮機。
【請求項4】
前記密封ウォッシャー(22)と前記ギャップ(23)は、リング形状方式で形成される、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項5】
前記第1ベアリング(10)は、ローリングベアリング(10)であり、好ましくは前記外部リング(10a)、前記内部リング(10b)、及びその間に全体周りにわたって分布するローリング要素(10c)を有するボールベアリング(10)である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項6】
前記密封ウォッシャー(2)を固定するための円周溝(25)は、前記密封ウォッシャー(22)を収容するために前記第1ベアリング(10)の前記外部リング(10a)の内壁に形成される、ことを特徴とする請求項5に記載のスクロール圧縮機。
【請求項7】
前記第2ベアリング(11)は、ローリングベアリングであり、好ましくは外部リング(10a)、内部リング(11b)、及びその間に全体周りにわたって分布するローリング要素(11c)を有するボールベアリングである、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のスクロール圧縮機。
【請求項8】
第1項乃至第7項の中の何れか一項によるスクロール圧縮機において、ベアリングと摩擦応力構成要素の潤滑のためのオイル濃縮及び分配方法において、前記スクロール圧縮機(1)の作動の間、冷媒ガスとオイルの流体混合物が前記逆圧空間(12)に流入し、回転する前記均衡錘(8)により引き起こされる冷媒ガスとオイルの混合物の流れで発生する遠心力により前記流体混合物から分離されるオイルは前記均衡錘(8)のキャビティと前記第2ベアリング(11)のキャビティから前記第2ベアリング(11)の潤滑に充分なオイルレベル(19b)の設定までの障壁に作用する前記密封ウォッシャー(22)によって濃縮される、ことを特徴とするオイル濃縮及び分配方法。
【請求項9】
前記密封ウォッシャー(22)の障壁効果によって設定される放射状のオイルレベル(19b)に対応する内径を有し、その水平方向平面は前記第2ベアリング(11)の外部リング(11a)と前記第2ベアリング(11)の内部リング(11b)間にあるリング形状の前記密封ウォッシャー(22)が利用される、ことを特徴とする請求項8に記載のオイル濃縮及び分配方法。
【請求項10】
前記密封ウォッシャー(22)の障壁効果によって設定される放射状のオイルレベル(19b)に対応する内径を有し、その水平方向平面は前記第2ベアリング(11)の前記外部リング(11a)より前記第2ベアリング(11)の前記内部リング(11b)により近くにある前記密封ウォッシャー(22)が利用される、ことを特徴とする請求項9に記載のオイル濃縮及び分配方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷媒圧縮用スクロール圧縮機に係る。このようなスクロール圧縮機の設計はスクロール圧縮機内でベアリングと摩擦応力を受ける構成要素の潤滑のための向上したオイル濃縮及び分配システムを可能にする。本発明はまたこのようなスクロール圧縮機でオイル濃縮及び分配方法に関する。本発明は自動車空調用電気冷媒圧縮機分に適用されることができる。
【背景技術】
【0002】
スクロール圧縮機は圧縮機ハウジングを有し、それぞれのベースプレートと前記ベースプレートの前面から延びるスクロール形状の壁を有する圧縮機ハウジング内に重畳された2つのスクロールを有する。2つの重畳されたスクロールのうちの1つのスクロールは固定されており残りのスクロールは円形経路上で偏心方式で移動されることができる。この可動スクロールはまた旋回スクロールともいう。このスクロールの移動はスクロール間に形成される圧縮チャンバーの体積を周期的に変化させて、冷媒が吸入されて圧縮される。稼動スクロールは偏心ドライブ(eccentric drive)を通じて円形経路上で移動する。偏心ドライブは回転軸を中心に回転する駆動軸及び駆動軸と共に回転する均衡錘により形成される。稼動スクロールは均衡錘を通じて偏心方式で駆動軸に連結される。即ち、稼動スクロールの軸と駆動軸の軸は互いにオフセットされて配列される。稼動スクロールが旋回ベアリングともいう第2ベアリングを通じて均衡錘に支持されるのに対して、駆動軸は第1ベアリング、特にボール(ball)ベアリング(メイン(main)ベアリングともいう)を通じて圧縮機ハウジングに支持される。圧縮機ハウジング内で、稼動スクロールのベースプレート後面にはいわゆる逆圧空間が形成され、逆圧チャンバーともいうこの逆圧空間は出口圧力(高圧)より小さいが圧縮される実質的気体流体の吸入圧力(低圧)より大きい圧力を受ける。この逆圧は固定スクロールに対して稼動スクロールを押さえる役割を果たす。
【0003】
また、スクロール圧縮機は一般的に稼動スクロールの回転を防止して稼動スクロールの循環を可能にする案内装置を有する。案内装置は稼動スクロールのベースプレートの後面に一般的にそれぞれの円形開口部を有する複数のポケット形状収容部に形成される。旋回ポケットともいうこのような収容部は互いに対して特定距離に配列されて、例えば塞がっている穴に形成されることができる。また、案内装置は圧縮機ハウジングの壁から突出形成されて稼動スクロールのベースプレートに形成されたポケット形状の収容部の中の1つとそれぞれ噛み合うピンを有する。従って、ピンの第2端部が圧縮機ハウジングの壁に埋没するのに対してピンの第1端部は圧縮機ハウジングの壁から突出することができる。
【0004】
スクロール圧縮機の幾何学的設計によって逆圧空間には摩擦応力を受ける構成要素が多くある。従って、メインベアリングとしての第1ベアリングと旋回ベアリングとしての第2ベアリングの他にも、スクロール圧縮機は特に高速作動中に円周方向に充分な潤滑を全て必要とし、摩擦応力を受ける構成要素を有している。逆圧領域のオイルの全体量は所望の潤滑と関連があるだけではなくオイルの分配も重要である。特に偏心方式で動くと同時に軸を中心に回転する第2旋回ベアリングの潤滑は大きな課題である。ベアリングの疲労を防止するためには2次ベアリングの充分な潤滑が絶対に必要である。
【0005】
例えば、回路で循環するオイルを第2旋回ベアリングの周辺設置空間に供給する比較的複雑な能動オイル返還が最新技術として知られている。
【0006】
第2ベアリングと周辺摩擦応力構成要素の若干の潤滑の均衡を合せる1つの可能性は回転する均衡錘のキャビティ(cavity)をオイルで満たすことである。しかし、回転する均衡錘のキャビティにオイルが完全に満たされると圧縮機作動に必要な駆動力が増加する。この場合、均衡錘は冷媒の気体相の代わりに液体油相の流れ抵抗を克服しなければならない。
【0007】
スクロール圧縮機の機能は主に気体冷媒の返還を必要とする。そのようにすることで、冷媒流れでのオイル部品による第2旋回ベアリング及び周辺摩擦応力構成要素の受動潤滑も知られている。軸と均衡錘の回転運動は旋回ベアリングと周辺摩擦応力構成要素の潤滑に必要な精油を外部に噴出する。このようにすることで、旋回ボールベアリングと周辺摩擦応力構成要素は、冷媒ガスとオイルの混合物が流れない内部領域にある。流動案内によって、第2旋回ボールベアリングまたは周辺摩擦応力構成要素を通じて流れず、それらに充分な潤滑を提供しない油蒸気がもたらしかねない。従って、旋回ベアリングに対するオイル供給は全ての作動状態、特に高速作動に対して保障できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は第2旋回ベアリングの潤滑及び周辺摩擦応力構成要素の潤滑を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は請求項1の特徴を有する冷媒圧縮用のスクロール圧縮機によって達成される。このようなスクロール圧縮機はオイル濃縮及び分配システムや方法を可能にする。該当するシステムは特に電気空調圧縮機に適している。有益な事項は従属項にも記載される。
【0010】
本発明の一実施の例によれば、前記スクロール圧縮機は圧縮機ハウジング、前記圧縮機ハウジング内に重畳されてそれぞれのベースプレートを有する2つのスクロール、及び前記ベースプレートの前面から延びるスクロール形状壁を含む。1つのスクロールは固定であり、残りの1つのスクロールは円形経路上で偏心方式で移動可能である。前記スクロールを移動して前記スクロール間に形成された圧縮チャンバーの体積を周期的に変更できる。冷媒が吸入されて圧縮される。前記スクロール圧縮機は回転軸を中心に回転できる駆動軸及び前記駆動軸と共に回転でき、前記稼動スクロールが偏心方式で前記駆動軸に連結される均衡錘を順に含む、円形経路上で前記スクロールが移動できる偏心ドライブを含む。
【0011】
前記スクロール圧縮機は前記圧縮機ハウジングに前記駆動軸が支持される第1ベアリング及び前記均衡錘に前記稼動スクロールが支持される第2ベアリングを含む。また、前記スクロール圧縮機は前記回転可能な均衡錘のキャビティと前記第2ベアリングのキャビティが形成される、前記稼動スクロールのベースプレート後面にある前記圧縮機ハウジング内の逆圧空間を含む。本発明によれば、流体が流れることのできる前記第1ベアリングの外部リング及び内部リング間領域の放射状外部、即ち、外部部分で前記第1ベアリングの一側を密封ウォッシャーが回転軸に対して放射方向に密封するように、そして同時に流体が流れることのできるギャップが維持されるように密封ウォッシャーが前記内部リングから放射状に離隔されるように、前記密封ウォッシャーは前記回転可能な均衡錘のキャビティと前記第2ベアリングに向ける前記第1ベアリングの一側で前記第1ベアリングに固定される。
【0012】
前記密封ウォッシャーは好ましくはクランピング連結を通じて前記第1ベアリングの前記外部リングに固定される。
【0013】
前記密封ウォッシャーと前記ギャップは何れもリング形状方式で形成される。このような変形は前記第1ベアリングがローリングベアリング、特に前記外部リング、前記内部リング、及びその間に全体周りにわたって分布するローリング要素を有するボールベアリングである一般的なケースに該当する全ての実施の例に有利だ。本発明の有益な開発は前記密封ウォッシャーの固定のための円周溝は前記密封ウォッシャーを収容するために前記第1ベアリングの前記外部リングの内壁に形成されるところにある。
【0014】
一般的に、前記第2ベアリングは、ローリングベアリングで、好ましくは外部リング、内部リング、及びその間に全体周りにわたって分布するローリング要素を有するボールベアリングである。
【0015】
本発明の他の実施の例によれば、本発明による前述されたスクロール圧縮機のベアリングと摩擦応力構成要素の潤滑のためのオイル濃縮及び分配方法に関する。前記スクロール圧縮機の作動の間、冷媒ガスとオイルの流体混合物が前記逆圧空間に流入する。
【0016】
前記回転する均衡錘により引き起こされる冷媒ガスとオイルの混合物の回転流れで発生する遠心力により前記流体混合物から分離されるオイルは前記均衡錘のキャビティと前記第2ベアリングのキャビティから前記第2旋回ベアリングの潤滑に充分なオイルレベルの設定までの障壁に作用する前記密封ウォッシャーによって濃縮される。
【0017】
本発明による解決策の中心は前記密封ウォッシャーによって一側に部分的に密封される、メインベアリングともいう前記第1ベアリングにある。前記第1ベアリングの内部リングに対する放射状のギャップが開放されたままにある。前記均衡錘のキャビティの幾何学的設計とそれによる逆圧空間のこのような適応はこのキャビティ内でオイルの濃縮を誘導してスプラッシング(splashing)による損失の発生なくオイルの充分な分配を保障する。回転するぜん気均衡錘により引き起こされた均衡錘のキャビティ内の回転流れがバルブからの制御質量流れの多相混合物からオイルを分離することによって、前記密封ウォッシャーの測定により、例えば前記密封ウォッシャーが好ましくはリング形状方式で具現される場合の内径により決定される特定放射形オイルレベルが発生する。この場合、リング形状の前記密封ウォッシャーの内径に該当するオイルレベルに到達する時までオイルが濃縮されることができる。従って、前記密封ウォッシャーの障壁効果による設定された放射状オイルレベルに該当し、その水平方向平面は前記第2ベアリングの放射状外部リングと前記第2ベアリングの内部リング間にある内径を有するリング形状の前記密封ウォッシャーが利用される。前記密封ウォッシャーの障壁効果の結果で前記放射形オイルレベル設定に該当する前記放射形オイルレベルに対応する内径を有し、その水平方向平面は前記第2ベアリングの外部リングより前記内部リングにより近くにある前記密封ウォッシャーが利用される実施例は特別に好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の主要利点はより大量の、そして、より良く分配された潤滑によって摩擦応力を受ける構成要素の疲労強度の相当な増加にある。ベアリング及びその他の摩擦応力を受ける構成要素の潤滑のためのオイルの濃縮及び分配のための改善されたシステムを有する本発明によるスクロール圧縮機は寿命がより長く、より静かで、摩耗が少なく、より効率的である。今まで知られているスクロール圧縮機においてベアリング及び摩擦応力構成要素の潤滑のためのオイル供給またはオイル返還システムよりはるかに少ない電力損失を達成できる。本発明は、またオイル量の完全な減少を可能にし、費用効率的な解決策を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の実施例の追加細部事項、特徴及び利点は関連図面を参照して例示的な実施例の次の説明から明確になる。
図1】スクロール圧縮機の縦断面図である。
図2】スクロール圧縮機の逆圧空間で制御質量流れ及びオイル沈着を示す詳細図である
図3】スクロール圧縮機の逆圧空間で制御質量流れ及びオイル沈着を示す追加詳細図である。
図4】密封ウォッシャー(washer)が一側に適用された第1ベアリングの断面図である。
図5】第1ベアリングの一側に固定された密封ウォッシャーを適用する場合逆圧空間で冷媒とオイルの混合物からのオイル濃縮の概略図である。
図6A】第1ベアリングの斜視図である。
図6B】ベアリングの外部リングに円周方向溝のある第1ベアリングの斜視図である。
図7】圧縮機ハウジングに統合されて第1ベアリングに支持される駆動軸及び第1ベアリングに固定される前の密封ウォッシャーの斜視図である。
図8】圧縮機ハウジングに統合されて、第1ベアリングに固定された密封ウォッシャーで、第1ベアリングに支持される駆動シャフトの斜視図である。
図9】第1ベアリングに固定された密封ウォッシャーの平面でスクロール圧縮機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は冷媒圧縮のためのスクロール圧縮機(1)の縦断面図を図示する。図1は、スクロール圧縮機(1)の構成を図示し、本発明の全ての特徴を示すわけではなく、主に本発明の例示のために使用する。スクロール圧縮機(1)は圧縮機ハウジング(2)、圧縮機ハウジング(2)内に重畳されてそれぞれのベースプレート(3a、4a)を有する2つのスクロール(3、4)、及びベースプレート(3a、4a)の前面から延びるスクロール形状壁(3b、4b)を有する。2つの重畳されたスクロール(3、4)の中で、1つのスクロール(3)は固定されて他のスクロール(4)は円形経路上から偏心方式で移動できる。この可動スクロール(4)は旋回スクロール(4)ともいう。スクロール(4)の移動はスクロール(3、4)間に形成された圧縮チャンバー(5)の体積を周期的に変更する。冷媒が吸入されて圧縮される。稼動スクロール(4)は偏心ドライブを通じて円形経路上で移動する。偏心ドライブは回転軸(7)を中心に回転する駆動軸(6)及び駆動軸と共に回転する均衡錘(8)により形成される。稼動スクロール(4)は均衡錘(8)を通じて偏心方式で駆動軸(6)に連結される。即ち、稼動スクロール(4)の軸(9)と駆動軸(6)の回転軸(7)は互いにオフセットされて配列される。稼動スクロール(4)が旋回ベアリング(11)ともいう第2ベアリング(11)を通じて均衡錘(8)に支持されるのに対して、駆動軸(6)は第1ベアリング(10)、特にボール(ball)ベアリング(メイン(main)ベアリングともいう)(10)を通じて圧縮機ハウジング(2)に支持される。圧縮機ハウジング(2)内で、稼動スクロール(4)のベースプレート(4a)後面にはいわゆる逆圧空間(12)が形成されて、逆圧チャンバーともいうこの逆圧空間(12)は出口圧力(高圧)より小さいが圧縮される実質的気体流体の吸入圧力(低圧)より大きい圧力を受ける。この逆圧は固定スクロール(3)に対して稼動スクロール(4)を押さえる役割を果たす。
【0021】
スクロール圧縮機(1)は旋回スクロール(4)の回転を防止して稼動スクロール(4)の循環を可能にする案内装置(13)をさらに含む。案内装置(13)は稼動スクロール(4)のベースプレート(4a)の後面に一般的にそれぞれの円形開口部を有する複数のポケット形状収容部(14)に形成される。旋回ポケットともいうこのようなポケット形状収容部(14)は互いに特定距離に配列されて、例えば塞がっている穴で形成されることができる。また、案内装置(13)は圧縮機ハウジング(2)の壁(16)から突出形成されて稼動スクロール(4)のベースプレート(4a)に形成されたポケット形状収容部(14)の中の1つとそれぞれ噛み合うピン(15)を有する。従って、ピンの第2端部が圧縮機ハウジングの壁(16)に埋没するのに対して、ピン(15)の第1端部は圧縮機ハウジング(2)の壁(16)から突出できる。
【0022】
スクロール圧縮機(1)の幾何学的設計によって逆圧空間(12)には摩擦応力を受ける構成要素が多くある。従って、メインベアリングとしての第1ベアリング(10)と旋回ベアリングとしての第2ベアリング(11)の他にも、スクロール圧縮機(1)は特に高速作動中に充分な潤滑を全て必要とする円周方向で摩擦応力を受ける構成要素、例えばポケット形状収容部(14)を有する。逆圧空間(12)のオイルの全体量は正しい潤滑と関連があるだけではなく、オイルの分配も重要である。特に偏心方式で動くと同時に稼動スクロールの軸(9)を中心に回転する第2旋回ベアリング(11)の潤滑は大きな課題である。しかし、ベアリング(11)の疲労を防止するためには旋回ベアリング(11)の充分な潤滑が絶対必要である。
【0023】
図2は本発明による実質的な特徴を適用せず、図1に図示したスクロール圧縮機(1)の逆圧空間(12)での冷媒流れ及びオイル沈着の概略的な表現を詳細に図示する。
【0024】
スクロール圧縮機(1)の機能は主に気体冷媒の返還を必要とする。そのようにすることで、冷媒流れでのオイル部品による第2ベアリング、この場合、ボールベアリング(11)、及び周辺摩擦応力構成要素の受動潤滑も知られている。駆動軸(6)と均衡錘(8)の回転運動は第2旋回ボールベアリング(11)と周辺摩擦応力構成要素の潤滑に必要な精油を外部に噴出する。このようにすることで、旋回ボールベアリングと周辺摩擦応力構成要素は冷媒ガスとオイルの混合物により流れない内部領域にある。流動案内によって、第2ボールベアリング(11)または周辺摩擦応力構成要素を通じて流れずそれらに充分な潤滑を提供しない油蒸気をもたらしかねない。従って、第2ボールベアリング(11)に対するオイル供給は全ての作動状態、特に高速作動に対して保障できない。
【0025】
図2によれば、まず冷媒ガスとオイルで構成された制御質量流れ(17)の多相混合物が旋回ポケット(14)に案内される。逆圧空間(12)に進入する前に依然として高圧流れに存在する冷媒ガス流れは低い質量分率のオイルを含んで逆圧バルブを通じて逆圧空間(12)に進入する。冷媒ガスとオイルの混合物の圧力はより低い圧力水準の逆圧に減少する。制御質量流れ(17)の混合物は低圧側(18)方向に第1ベアリング(10)を通じて逆圧空間(12)を抜け出る。従って、第1ベアリング(10)の充分な潤滑が保障される。この過程で逆圧空間(12)から持続的に流れる。常時駆動の場合、逆圧空間(12)に進入する冷媒ガスとオイルの完全な混合物は第1ベアリング(10)により逆圧空間(12)外部に案内される。
【0026】
制御質量流れ(17)の冷媒ガスとオイルの混合物が旋回ポケット(14)に進入した以後、オイル(19)は均衡錘(8)により引き起こされる回転流れにより作用する遠心力によって制御質量流れ(17)の多相混合物から分離される。
【0027】
図3は本発明の主要特徴が使われていない回転流れの沈着効果をさらに詳細な図面で図示する。逆圧空間(12)、特に均衡錘(8)と第2ベアリング(11)のキャビティは気体冷媒とオイルの混合物が流れる。逆圧空間(12)への流体入口(20)は図3に第1矢印で表示されて、逆圧空間(12)外への流体出口(21)は第2矢印で表示される。回転流れは第2ベアリング(11)と回転均衡錘(8)のキャビティに設定される。この流れは図3に概略的に図示する、作動圧力設定に使われる制御質量流れ(17)からオイル相(19)の沈着を招く。冷媒とオイルは第1ベアリング(10)を通過した後、キャビティを抜け出る。従って、逆圧空間(12)の外径にオイル層(19)が形成される。このオイル層(19)の厚さは第1ベアリング(10)の外部リング(10a)の内径により影響を受ける。冷媒ガスとオイルの混合物からの分離によって捕集されたオイルの低いオイルレベル(19a)(ここで前記分離は回転する均衡錘(8)により引き起こされる回転流れで発生する遠心力の結果)は従って第1ベアリング(10)の少なくとも充分な潤滑が保障されるように第1ベアリング(10)の外部リング(10a)がオイルで覆われるように水平方向平面で逆圧空間(12)をオイル(19)で満たすのに充分である。しかし、このオイルレベル(19a)は第2旋回ベアリング(11)に到達し、そこで潤滑を保障するほど十分に高くない。これはオイル(19)のレベルが第1ベアリング(10)の外部リング(10a)の内径に該当する最も低い下流直径に到達する間だけオイル(19)が濃縮されることができるためである。逆圧空間でのオイル(19)の追加的な濃縮はこのような方式で達成されることができない。
【0028】
図4は流体が流れることができ、外部リング(10a)により囲まれる第1ベアリング領域の放射状外部部分を密封する一側に適用された密封ウォッシャー(22)を有する第1ベアリング(10)の断面図を図示する。密封ウォッシャー(22)と内部リング(10b)間のリングギャップ(ring gap)(23)が覆われないままで維持されて冷媒ガスとオイルの流体混合物が相変らずここを通じて流れることができるように密封ウォッシャー(22)は第1ベアリング(10)の外部リング(10a)に固定されて第1ベアリング(10)の内部リング(10b)から放射状に離隔される。
【0029】
図5は第1ベアリング(10)の一側に固定された密封ウォッシャー(22)を適用する場合、逆圧空間(12)で、さらに正確には第2ベアリング(11)及び均衡錘(8)のキャビティ(12a)で冷媒ガスとオイルの混合物のオイル濃縮を概略的に図示する。均衡錘(8)のキャビティ及び第2ベアリング(11)のキャビティを向かう第1ベアリング(10)側面に固定される方式で密封ウォッシャー(22)が一側に付着される。従って、キャビティに沈着されたオイル(19)用リング形状の密封ウォッシャー(22)は障壁を形成する。このような密封ウォッシャー(22)を克服できるようにするために、オイル(19)は図5に図示するように均衡錘(8)のキャビティ及び第2ベアリング(11)のキャビティで濃縮される。セッティングオイルレベル(19b)は密封ウォッシャー(22)の内径により決定される。密封ウォッシャー(22)は、密封ウォッシャー(22)の適用による障壁効果によって設定される放射状のオイルレベル(19b)に該当し、第2ベアリング(11)でのその水平方向平面は第2ベアリング(11)の外部リング(11a)と内部リング(11b)の間、即ち、ボール形状に形成された第2ベアリング(11)のローリング要素(11c)領域に置かれる内径を有する。従って、全ての作動状態に対して第2ベアリング(11)の充分な潤滑が保障されるように第2ベアリング(11)の外部リング(11a)がオイル(19)で覆われるか、さらにはオイル(19)に浸かるように、回転する均衡錘(8)により引き起こされ、リング形状の密封ウォッシャー(22)の障壁効果によって追加的に濃縮される回転流れの遠心力の結果で冷媒ガスとオイルの混合物からの分離によって収集されたオイル(19)のオイルレベル(19b)は逆圧空間(12)、特に均衡錘(8)のキャビティ(12a)及び第2ベアリング(11)のキャビティ(12a)をオイル(19)で満たすのに充分である。
【0030】
図6A及び図6Bは完全な発明を示さず、本発明の特定の有利な実施の例を例示する役割を果たす。2図面とも圧縮機ハウジング(2)で駆動軸(6)を支持するための第1ベアリング(10)に使われる既存のボールベアリングの斜視図を示す。全てのローリングベアリングと同様に、このようなボールベアリング(10)の場合も、ここでボール(10c)形態のローリング要素(10c)は摩擦抵抗を減少させるためにボールベアリング(10)の全体周りにわたって内部リング(10b)と外部リング(10a)間に分布する。駆動軸(6)はその端部面に成形、挿入または固定される第2ベアリングの偏心ドライブのための偏心移動された連結ピン(24)を有する。この連結ピン(24)は駆動軸(6)を均衡錘(図示しない)に連結する役割を果たし、稼動スクロールの軸に該当する軸は図示しない。
【0031】
図6Bは本発明の有利な実施の例によって修正されたボールベアリング(10)を図示し、リング形状の密封ウォッシャー(図示しない)を第1ベアリング(10)に固定する役割を果たす円周溝(25)が外部リング(10a)に形成される。
【0032】
図7は圧縮機ハウジング(2)に統合されて第1ベアリング(10)に支持される連結ピン(24)を有する駆動軸(6)及び第1ベアリング(10)に固定される前の密封ウォッシャー(22)の斜視図である。この図面は内部リング(10b)、外部リング(10a)及びローリング要素(10c)としてのボールを有するボールベアリング(10)としての第1ベアリング(10)を図示する。相変らず挿入されている密封ウォッシャー(22)用の円周溝(25)が外部リング(10a)に形成される。図7は均衡錘用キャビティを有する逆圧空間(図示しない)及び第2ベアリングを提供する圧縮機ハウジング(2)の一部を図示し、他の部分は図7に図示されていない。
【0033】
図8はまた圧縮機ハウジング(2)に統合されて第1ベアリング(10)に支持される連結ピン(24)を有する駆動軸(6)の斜視図である。図7の表示と対照的に、密封ウォッシャーは第1ベアリング(10)の外部リング(10a)一側に固定される。従って、密封ウォッシャー(22)と内部リング(10b)間のリング形状ギャップ(23)が冷媒ガス及びオイルの流体が相変らず第1ベアリング(10)を通じて流れることができるように覆われないままで維持されるように、第1ベアリング(10)に適用された密封ウォッシャー(22)は同時に第1ベアリング(10)の内部リング(10b)から放射状に離隔される。
【0034】
図9は第1ベアリング(10)に固定された密封ウォッシャー(22)の平面でのスクロール圧縮機(1)の断面図である。この断面図で、密封ウォッシャー(22)の他に圧縮機ハウジング、外部リング(10a)及び内部リング(10b)を有する第1ベアリング(10)、駆動軸(6)及び連結ピン(24)を示す。このようにすることで、外部リング(10a)に密封ウォッシャー(22)を固定することによって流体が流れることのできる第1ベアリング(10)の外部リング(10a)と内部リング(10b)間領域の放射状外部部分の一側で密封ウォッシャー(22)は第1ベアリング(10)を密封し、それと同時に、密封ウォッシャー(22)は流体が流れることのできるリング形状ギャップ(23)が維持されるように内部リング(10b)から放射状に離隔される。
【符号の説明】
【0035】
1 スクロール圧縮機
2 圧縮機ハウジング
3 固定スクロール
3a ベースプレート
3b 固定スクロールの壁
4 稼動スクロール
4a ベースプレート
4b 稼動スクロールの壁
5 圧縮チャンバー
6 駆動軸
7 回転軸
8 均衡錘
9 稼動スクロールの軸
10 第1ベアリング、ボールベアリング
10a 第1ベアリングの外部リング
10b 第1ベアリングの内部リング
10c ローリング要素、第1ベアリングのボール
11 第2ベアリング
11a 第2ベアリングの外部リング
11b 第2ベアリングの内部リング
11c ローリング要素、第1ベアリングのボール
12 逆圧空間
12a 第2ベアリング及び均衡錘のキャビティ
13 案内装置
14 ポケット形状収容部、旋回ポケット
15 ピン
16 圧縮機ハウジングの壁
17 制御質量流れ
18 低圧側
19 オイル、オイル層、オイル相
19a オイルレベル(密封ウォッシャー無し)
19b オイルレベル(密封ウォッシャーを含む)
20 逆圧領域への流体入口
21 逆圧空間からの流体出口
22 密封ウォッシャー
23 リングギャップ
24 連結ピン
25 円周溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
【国際調査報告】