(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230407BHJP
C08F 283/01 20060101ALI20230407BHJP
C08F 299/02 20060101ALI20230407BHJP
C09D 5/03 20060101ALI20230407BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230407BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230407BHJP
【FI】
C09D201/00
C08F283/01
C08F299/02
C09D5/03
C09D7/65
C09D7/63
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552860
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 CN2021084740
(87)【国際公開番号】W WO2022048148
(87)【国際公開日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】202010925779.3
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522348859
【氏名又は名称】佛山宜可居新材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】FOSHAN YIKEJU NEW MATERIAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Workshop 6, China-Europe Technological Cooperation Industrial Zone, Huasha Road, Shishan Town, Nanhai District Foshan, Guangdong 528000 (CN)
(71)【出願人】
【識別番号】522348893
【氏名又は名称】江蘇睿浦樹脂科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU RAP RESIN TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Yangkou Chemistry Industrial Park, Rudong Coastal Economic Development Zone Nantong, Jiangsu 226000 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宋継瑞
(72)【発明者】
【氏名】伍明
【テーマコード(参考)】
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
4J038CB002
4J038DD001
4J038DG211
4J038GA01
4J038KA02
4J038KA10
4J038LA04
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4J038MA13
4J038NA23
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4J038PB06
4J127AA03
4J127BA01
4J127BB011
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4J127BB152
4J127BB221
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4J127BC132
4J127BD132
4J127BD411
4J127BG182
4J127BG18Y
4J127BG281
4J127BG28Y
4J127DA33
4J127DA61
4J127EA12
4J127FA08
(57)【要約】
【課題】本発明は、液状UV樹脂及び乳化剤を加熱し、分散し、分散しながら脱イオン水を添加して乳化して、液状UV樹脂の乳化液を得るステップ(1)と、固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散し、液状UV樹脂の乳化液を添加し、撹拌することにより、均一となるように十分混合し、撹拌中に降温し、懸濁液を得るステップ(2)と、懸濁液を加圧濾過して、濾過ケーキを得るステップ(3)と、濾過ケーキを乾燥し、分級して、多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得るステップ(4)と、を備える多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法を開示している。対応し、本発明の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂は上記方法により製造される。本発明によれば、液状UV樹脂と粉体コーティング樹脂の性能を併せ持ち、粉体コーティングの形態でスプレー塗装施工が可能であり、樹脂の使用率を向上させ、環境に影響を与えない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状UV樹脂及び乳化剤を加熱した後、分散し、脱イオン水を添加して乳化して、液状UV樹脂の乳化液を得るステップ(1)と、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散し、完全に溶融し均一に分散した後、前記液状UV樹脂の乳化液を添加し、撹拌することにより、均一となるように十分混合し、撹拌中に降温し、多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を得るステップ(2)と、
前記UV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を加圧濾過して、濾過ケーキを得るステップ(3)と、
前記濾過ケーキを乾燥し、分級して、多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得るステップ(4)と、
を備えることを特徴とする多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記液状UV樹脂と乳化剤を50~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で600~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.5μmに制御されることを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記液状UV樹脂、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、液状UV樹脂50~70wt%、乳化剤3~10wt%、脱イオン水25~45wt%であることを特徴とする請求項2に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、前記相変化剤は、パラフィンワックスであり、その融点が、40~95℃であることを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)は、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて200~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を80~100℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うことと、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、固形UV樹脂50~60wt%、相変化剤5~15wt%、乳化剤1~5wt%、脱イオン水30~43wt%であることを特徴とする請求項5に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記液状UV樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの1種又はその混合物であり、
前記固形UV樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記固形UV樹脂が、結晶性ビニルエーテルオリゴマーの反応により製造される不飽和ポリエステル樹脂から選択されることを特徴とする請求項7に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項9】
ステップ(3)において、前記UV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を濾過機で濾過して、濾過ケーキと濾液を得て、循環利用するように濾液を集中的に収集することを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項10】
ステップ(4)において、前記濾過ケーキを沸騰床乾燥機に輸送し、沸騰床乾燥機の圧縮空気温度を25~90℃の範囲内に制御し、乾燥後の粉粒体をサイクロンで分級して、粒径が1.2~3.0μmである多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得ることを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項11】
予め乳化処理された液状UV樹脂と 、
前記液状UV樹脂の外面を被覆する固形UV樹脂と、を備え、
前記液状UV樹脂と前記固形UV樹脂は、溶融分散と降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成する
ことを特徴とする多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項12】
前記液状UV樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの1種又はその混合物であり、
前記固形UV樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項11に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項13】
前記固形UV樹脂が、結晶性ビニルエーテルオリゴマーの反応により製造される不飽和ポリエステル樹脂から選択されることを特徴とする請求項12に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項14】
前記液状UV樹脂が予め乳化処理されることは、
液状UV樹脂と乳化剤を50~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で600~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.5μmに制御されること
を含むことを特徴とする請求項11に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項15】
前記液状UV樹脂、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、液状UV樹脂50~70wt%、乳化剤3~10wt%、脱イオン水25~45wt%であることを特徴とする請求項14に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項16】
前記液状UV樹脂と前記固形UV樹脂は、溶融分散と降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成することは、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて200~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を80~100℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うことと、
を備えることを特徴とする請求項11に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項17】
前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、固形UV樹脂50~60wt%、相変化剤5~15wt%、乳化剤1~5wt%、脱イオン水30~43wt%であり、
前記相変化剤は、パラフィンワックスであり、その融点が、40~95℃であることを特徴とする請求項16に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体コーティングの技術分野に関し、特に、多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
社会経済の発展に伴い、人々の生活レベルはますます向上しており、人々の健康生活への意識が高まり、そして環境保護法規の要求の下でコーティングの発展に対する要求もますます高くなり、これにより、従来のコーティングの適用が制限されるようになり、現代のコーティングは高性能、高効果、高環境保護、高装飾性等の多機能一体化の方向に進んでいる。
【0003】
UV光硬化樹脂は、比較的低分子量の感光性樹脂であり、光硬化反応を行うことが可能な基、例えば各種の不飽和二重結合を有する。光硬化された最終の製品の各成分のうち、UV光硬化樹脂は材料の主体であり、その性能が硬化後の材料の主要な性能をほぼ決定する。したがって、UV光硬化樹脂は、疑いがなく、光硬化製品の設計における重要な一環である。
【0004】
UV光硬化樹脂の多くは液状UV樹脂であるが、液状UV樹脂の施工は少量の溶剤の希釈にかかわり、施工過程によって樹脂の一部が失われ、コストの上昇や環境への影響を招くことがある。また、固形UV樹脂からなる粉体コーティングや塗膜は、レベリング性、機械的特性、耐薬品性等が要求を十分満足できず、その適用性に対して一定の影響がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術課題は、液状UV樹脂と粉体コーティング樹脂の性能を併せ持ち、粉体コーティングの形態でスプレー塗装施工が可能であり、樹脂の使用率を向上させ、環境に影響を与えない、多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術効果を達成するために、本発明は、
液状UV樹脂及び乳化剤を加熱した後、分散し、脱イオン水を添加して乳化して、液状UV樹脂の乳化液を得るステップ(1)と、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散し、完全に溶融し均一に分散した後、前記液状UV樹脂の乳化液を添加し、撹拌することにより、均一となるように十分混合し、撹拌中に降温し、多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を得るステップ(2)と、
前記UV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を加圧濾過して、濾過ケーキを得るステップ(3)と、
前記濾過ケーキを乾燥し、分級して、多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得るステップ(4)と、
を備える多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法を提供する。
【0007】
前記提案の改良として、ステップ(1)において、前記液状UV樹脂と乳化剤を50~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で600~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.5μmに制御される。
【0008】
前記提案の改良として、前記液状UV樹脂、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、液状UV樹脂50~70wt%、乳化剤3~10wt%、脱イオン水25~45wt%である。
【0009】
前記提案の改良として、ステップ(2)において、前記相変化剤は、パラフィンワックスであり、その融点が、40~95℃である。
【0010】
前記提案の改良として、ステップ(2)は、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて200~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を80~100℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うことと、
を備える。
【0011】
前記提案の改良として、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、固形UV樹脂50~60wt%、相変化剤5~15wt%、乳化剤1~5wt%、脱イオン水30~43wt%である。
【0012】
前記提案の改良として、前記液状UV樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの1種又はその混合物であり、
前記固形UV樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂である。
【0013】
前記提案の改良として、前記固形UV樹脂が、結晶性ビニルエーテルオリゴマーの反応により製造される不飽和ポリエステル樹脂から選択される。
【0014】
前記提案の改良として、ステップ(3)において、前記UV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を枠板濾過機で濾過して、濾過ケーキと濾液を得て、循環利用するように濾液を集中的に収集する。
【0015】
前記提案の改良として、ステップ(4)において、前記濾過ケーキを沸騰床乾燥機に輸送し、沸騰床乾燥機の圧縮空気温度を25~90℃の範囲内に制御し、乾燥後の粉粒体をサイクロンで分級して、粒径が1.2~3.0μmである多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得る。
【0016】
対応して、本発明は、更に、
予め乳化処理された液状UV樹脂と、
前記液状UV樹脂の外面を被覆する固形UV樹脂と、を備え、
前記液状UV樹脂と前記固形UV樹脂は、溶融分散と降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成する
多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂を開示する。
【0017】
前記提案の改良として、前記液状UV樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの1種又はその混合物であり、
前記固形UV樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂である。
【0018】
前記提案の改良として、前記固形UV樹脂が、結晶性ビニルエーテルオリゴマーの反応により製造される不飽和ポリエステル樹脂から選択される。
【0019】
前記提案の改良として、前記液状UV樹脂が予め乳化処理されることは、
液状UV樹脂と乳化剤を50~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で600~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.5μmに制御されること
を含む。
【0020】
前記提案の改良として、前記液状UV樹脂、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、液状UV樹脂50~70wt%、乳化剤3~10wt%、脱イオン水25~45wt%である。
【0021】
前記提案の改良として、前記液状UV樹脂と前記固形UV樹脂は、溶融分散と降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成することは、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて200~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を80~100℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うことと、
を備える。
【0022】
前記提案の改良として、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、固形UV樹脂50~60wt%、相変化剤5~15wt%、乳化剤1~5wt%、脱イオン水30~43wt%であり、
前記相変化剤は、パラフィンワックスであり、その融点が、40~95℃である。
【0023】
本発明の実施は、以下の有利な効果を有する。
本発明は、液状UV樹脂、固形UV樹脂、乳化剤、相変化剤および水を原料とし、液状UV樹脂を水相に乳化させ、固形UV樹脂を水相に溶融させ、相転移技術を組み合わせて多相構造を有するUV光硬化樹脂懸濁液を得、最後に濾過、乾燥および分級処理を経て多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂を得る。
【0024】
この多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂は、液状UV樹脂と固形UV樹脂を結合し、液状UV樹脂の性能と固形UV樹脂の性能を併せ持ち、粉体コーティングの形態でスプレー塗装施工が可能であり、このようにして樹脂の使用率を向上させるだけでなく、希釈溶剤を系中に含まないため、環境に影響を与えない。本発明は、低温UV硬化を可能にし、優れた耐衝撃性能及び耐薬品性を有し、基材表面に優れた性能を有する透明/不透明コーティングを形成することができ、本木家具、硬質プラスチック等の感熱性基材への適用に適し、応用見込みが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明による多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法のフロー図である。
【
図2】本発明による多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の目的、技術案及び利点を一層明らかにするために、以下、図面を組み合わせて本発明を更に詳細に説明する。
【0027】
本発明は、液状UV樹脂の乳化技術と液状及び固形の間の相転移技術とを組み合わせた多相構造技術に関し、液状UV樹脂をコアとし、相転移及び溶融、降温被覆により、液状UV樹脂の表面に固形UV樹脂を少なくとも一層被覆し、最後に濾過、乾燥及び分級処理を経て、多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂を得ることができる。
【0028】
具体的には、
図1に示すように、本発明は、S101とS102とS103とS104とを備える多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法を提供する。
S101は、液状UV樹脂及び乳化剤を加熱した後、分散し、脱イオン水を添加して乳化して、液状UV樹脂の乳化液を得るものである。
【0029】
好ましくは、液状UV樹脂と乳化剤を50~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で600~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.5μmに制御される。
【0030】
より好ましくは、液状UV樹脂と乳化剤を60~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で800~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が30~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.2μmに制御される。
【0031】
前記液状UV樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの1種又はその混合物である。
【0032】
ウレタンアクリレート(PUAと略称)は、分子中にアクリル酸官能基とウレタン結合とを有し、硬化後の接着剤が、ポリウレタンの高い耐摩耗性、接着力、柔軟性、高い剥離強度、優れた低温耐久性、並びに、ポリアクリレートの優れた光学特性及び耐候性を有する。
【0033】
エポキシアクリレートは、エポキシ樹脂とアクリル酸またはメタクリル酸とをエステル化反応させて得られるものである。エポキシアクリレート樹脂は、光硬化速度が速く、しかも硬化後の塗膜が、硬度が高く、光沢度が良く、耐食性、耐熱性及び電気化学特性に優れているなどの特徴を有し、かつエポキシアクリレートの原料の由来が広く、安価であり、合成ステップが簡単である。
【0034】
ポリエステルアクリレートはエーテル結合を主体とするポリエステルアクリレートであり、アクリル酸とポリオールやポリエステルとの反応によって得られ、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマーに比べて低粘度の液状オリゴマーを得やすい。
【0035】
前記乳化剤は、液状UV樹脂を安定なエマルジョンとすることができるものであれば、複数種類の乳化剤を用いることができる。乳化剤は、好ましくは、トゥイーンT-80であるが、これに限定されない。
【0036】
このステップにおいて、液状UV樹脂、乳化剤、脱イオン水の好ましい使用量範囲は、重量%で、それぞれ、液状UV樹脂50~70wt%、乳化剤3~10wt%、脱イオン水25~45wt%である。より好ましくは、液状UV樹脂55~65wt%、乳化剤3~8wt%、脱イオン水30~40wt%である。最も好ましくは、液状UV樹脂60wt%、乳化剤5wt%、脱イオン水35wt%である。
【0037】
本発明は、まず、液状UV樹脂を水相に乳化して、粒径が極めて小さい液状UV樹脂の乳化液を得て、乳化により得られたUV樹脂エマルジョンが、水中油微粒子を形成し、UV樹脂の粒径がより小さく(粒径が0.8~1.5μmである)、分布が均一であり、その後、相転移と固形UV樹脂の被覆により粒子の粒径が小さく(粒径が1.2~3.0μmである)、分布が均一なコアシェル構造が得られ、後の施工におけるスプレー塗装やレベリングに有利であり、良好な装飾効果を得ることができる。
【0038】
S102は、固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散し、完全に溶融し均一に分散した後、前記液状UV樹脂の乳化液を添加し、撹拌することにより、均一となるように十分混合し、撹拌中に降温し、多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を得るものである。
【0039】
好ましくは、ステップS102は、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて200~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を80~100℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うことと
を備える。
【0040】
より好ましくは、ステップS102は、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて300~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を85~95℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うとともに、攪拌分散速度を維持することと
を備える。
【0041】
上記ステップS102は、温水系と冷水系を有する分散シリンダで行うことが好ましく、具体的には以下の通りである。
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、及び脱イオン水を分散シリンダーに入れ、高速分散機で300~400rpmの分散速度で分散させる。
同時に、分散シリンダージャケットに温水を流し、温水温度は95~100℃とした。系中の温度が85~95℃に上昇するときに、固形UV樹脂および相変化剤が完全に溶融し、乳化剤および脱イオン水と共に乳化分散を行い、分散時間が10~30minである。
高速分散機の分散速度を600~900rpmに調整するとともに、95~100℃の温水を継続して流し、分散攪拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加して20~40min分散し続ける。
温水系をオフにして冷水系に切り替え、冷水温度を20℃に制御し、系が降温開始しながら、系中の温度が30~40℃に低下するまで攪拌分散速度を900rpmに保ち。
【0042】
ポリエステル樹脂は、一般に2種類に分類され、その1つは分子構造中に非芳香族の不飽和結合を有しない飽和ポリエステル樹脂である。もう1つは、分子構造中に非芳香族の不飽和結合を有する不飽和ポリエステル樹脂である。本発明の固形UV樹脂は、結晶性不飽和ポリエステル樹脂を用いる。好ましくは、本発明の固形UV樹脂は、結晶性ビニルエーテルオリゴマーの反応により製造される不飽和ポリエステル樹脂を用いる。
【0043】
具体的には、上記不飽和ポリエステルは、以下の構造を有する結晶性ビニルエーテルオリゴマーである。
【0044】
フマル酸とテレフタル酸と1,6-ヘキサンジオールとを重縮合反応させて不飽和ポリエステルを製造する。この重縮合反応のステップは慣用手段により設計でき、重縮合条件は150~200℃であり、真空度は-0.098~-0.095MPaであり、重縮合時間は80~120minである。
【0045】
なお、不飽和ポリエステル中の不飽和結合は、マレイン酸エステルまたはフマル酸エステルの炭素-炭素二重結合に由来するものであり、電子不足二重結合に属し、ビニルエーテルの電子リッチな二重結合と電荷移動錯体(CTC)を形成することができ、光照射時にラジカル重合を起こすことができる。ビニルエーテルは、一般的に、ウレタン構造の構造的オリゴマーであり、例えば、ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)との反応から得られる生成物である。
【0046】
このようなビニルエーテルオリゴマーは、ウレタン基の極性と炭化水素セグメントの長さが長いため、結晶性が良好であり、光硬化に適している。従って、本発明の結晶性不飽和ポリエステル樹脂は、溶融後の粘度がかなり低く、融点未満と低くなった後に速やかに結晶成形でき、制御条件下で単独重合することがない。紫外線による放射硬化後、得られる塗装層の品質は、通常の光硬化粉体コーティングに比べて良好であり、密着性、耐衝撃性、耐食性に優れるとともに、レベリング性、保存性にも優れている。
【0047】
なお、本発明による固形UV樹脂は、さらに、エポキシアクリレートやウレタンアクリレートであってもよく、アクリレートを含むものであればよい。
【0048】
ステップS101において液状UV樹脂を水相に乳化させ、ステップS102において固形UV樹脂を水相に溶融させ、系中に液状UV樹脂の水中油型微粒子と液化した固形UV樹脂が存在する。固形UV樹脂は結晶性樹脂であるため、降温過程で融点以下に温度が下がると該樹脂は結晶を析出し、系中に液状UV樹脂の微粒子が存在するため、固形UV樹脂は該微粒子をコアとして結晶体を形成し、最終的に固形UV樹脂が液状UV樹脂表面を被覆するコアシェル構造が得られ、多相構造を有する製品が得られる。
【0049】
前記相変化剤はパラフィンワックスであり、その融点が40~95℃である。パラフィンワックスは、鉱物ワックスであり、C18~C30の直鎖アルカンを主成分とし、イソパラフィン、シクロパラフィンおよび少量の芳香族炭化水素をさらに含有する。
【0050】
前記乳化剤は、固形UV樹脂、相変化剤を安定なエマルジョンとすることができるものであれば、複数種類の乳化剤を用いることができる。好ましくは、前記乳化剤は、トゥイーンT-80であるが、これに限定されない。
【0051】
前記光開始剤は、紫外領域(250~420nm)または可視領域(400~800nm)で一定波長のエネルギーを吸収することができるものであれば、複数種類の光開始剤を用いることができる。好ましくは、光開始剤は、TPOであるが、これに限定されない。
【0052】
このステップにおいて、固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、脱イオン水の好ましい使用量範囲は、重量%で、それぞれ、固形UV樹脂50~60wt%、相変化剤5~15wt%、乳化剤1~5wt%、脱イオン水30~43wt%である。より好ましくは、固形UV樹脂52~58wt%、相変化剤8~12wt%、乳化剤1~3wt%、脱イオン水32~40wt%である。光開始剤の含有量は、全固形分中1~5wt%である。
【0053】
液状UV樹脂であっても固形UV樹脂であっても、その硬化反応は温度の影響を受けず、UV光線の影響を受けるだけである。この原理を利用して、本発明は、硬化UV樹脂を水相に溶融し、液状UV樹脂をコアとし、相転移及び溶融、降温被覆により、液状UV樹脂の表面に固形UV樹脂を少なくとも一層被覆する。固形UV樹脂は融点が高いため、冷却時に固形になり、その後に外殻を形成したが、液状UV樹脂は融点が低く、常温で液状であり、内部が液状で外部が固形で、多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂を形成する。
図2に示すように、多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂は、液状UV樹脂であるコア1と、固形UV樹脂であるシェル層2とを含み、コア1の外周にシェル層2が被覆される。
【0054】
S103は、前記UV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を加圧濾過して、濾過ケーキを得るものである。
【0055】
具体的には、前記UV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を枠板濾過機で濾過して、濾過ケーキと濾液を得て、循環利用するように濾液を集中的に収集し、環境に優しく、生産コストも低減する。
【0056】
S104は、前記濾過ケーキを乾燥し、分級して、多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得るものである。
【0057】
前記濾過ケーキを沸騰床乾燥機に輸送し、沸騰床乾燥機の圧縮空気温度を25~90℃の範囲内に制御し、乾燥後の粉粒体をサイクロンで分級して、粒径が0.8~1.5μmである多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得る。
【0058】
対応して、本発明は、さらに、
予め乳化処理された液状UV樹脂と、
前記液状UV樹脂の外面を被覆する固形UV樹脂と、を備え、
前記液状UV樹脂と前記固形UV樹脂は、溶融分散と降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成する
多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂を開示する。
【0059】
図2に示すように、前記コアシェル構造は、液状UV樹脂であるコア1と、固形UV樹脂であるシェル層2とを含み、コア1の外周にシェル層2が被覆される。前記コアの直径が0.8~1.5μm程度であり、前記シェル層の厚さが0.4~1.5μm程度である。
【0060】
ここで、前記液状UV樹脂、固形UV樹脂、液状UV樹脂の乳化処理、液状UV樹脂及び固形UV樹脂の溶融分散及び降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成する技術の細部は、上述した通りであるので、ここでは、その説明を省略する。
【0061】
本発明により製造された多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂は、液状UV樹脂と固形UV樹脂を結合し、レベリング性に優れ、力学的性能(付着力、耐衝撃性、耐薬品性)に優れるという液状UV樹脂の性能を有するだけでなく、粉状に粉砕することができ、粉体コーティングの形態でスプレー塗装施工が可能であるという固形UV樹脂の性能を有し、このようにして、樹脂の使用率を向上させることができるとともに、希釈溶剤を系中に含まないため、環境に影響を与えない。
【0062】
また、本発明で用いる固形UV樹脂は、結晶性不飽和ポリエステル樹脂であり、その溶融温度が80~90℃程度であり、溶融温度が低いが、液状UV樹脂は常温で液状である。本発明の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂は、80~90℃に達した後、製品が溶融液化することができ、レベリング後にUV硬化が可能となる。本発明の溶融および硬化温度は、従来の粉体コーティングと比較して低い。
【0063】
したがって、本発明は、低温UV硬化を可能にし、優れた耐衝撃性能及び耐薬品性を有し、基材表面に優れた性能を有する透明/不透明コーティングを形成することができ、本木家具、硬質プラスチック等の感熱性基材への適用に適し、応用見込みが期待される。
【0064】
以下、具体的な実施例を用いて本発明をさらに説明する。
実施例1
(1)60wt%のウレタンアクリレートと3wt%の乳化剤であるTween80とを65℃の条件下で加熱ベークを行い、ベーク時間が12hであり、液状UV樹脂と乳化剤とが完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で800rpmの分散速度で分散し、その後に37wt%の脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の平均粒径は1.0μmであった。
(2)50wt%の結晶性不飽和ポリエステル樹脂、10wt%のパラフィンワックス、2wt%の乳化剤であるTween80、及び38wt%の脱イオン水を分散シリンダに入れ、高速分散機で400rpmの分散速度で分散した。同時に、分散シリンダージャケットに温水を流し、温水温度は95℃とした。系中の温度が85℃に昇温した時に固形UV樹脂及びパラフィンワックスが完全に溶融し、脱イオン水中に乳化分散させ、分散時間が20minである。ここで、結晶性不飽和ポリエステル樹脂は、結晶性ビニルエーテルオリゴマーを反応させて得られる不飽和ポリエステルである。
(3)高速分散機による分散速度を900rpmに調整するとともに、95℃の熱水を通し続けた。分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、系中の温度が85℃に達した後、光開始剤TPOを全固形分中5wt%添加し、30min分散し続けた。
(4)温水系をオフにして冷水系に切り替え、冷水温度を20℃に制御し、系の降温を開始しながら攪拌分散速度を900rpmに保つ。
(5)系中の温度が35℃に下がった後、懸濁液を枠板加圧濾過機で濾過して、濾過ケーキと濾液を得て、循環利用するように濾液を集中的に収集した。
(6)濾過ケーキを沸騰床乾燥機に輸送し、沸騰床乾燥機の圧縮空気温度を45℃に制御し、低温乾燥の方式により濾過ケーキを乾燥した。乾燥後の粉粒体をサイクロンで分級して、平均粒径が1.5μmである多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂を得た。
【0065】
実施例2
(1)55wt%のウレタンアクリレートと3wt%の乳化剤であるTween80とを70℃の条件下で加熱ベークを行い、ベーク時間が10hであり、液状UV樹脂と乳化剤とが完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で700rpmの分散速度で分散し、その後に42wt%の脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が30minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の平均粒径は1.2μmであった。
(2)55wt%の結晶性不飽和ポリエステル樹脂、8wt%のパラフィンワックス、2wt%の乳化剤であるTween80、及び35wt%の脱イオン水を分散シリンダに入れ、高速分散機で300rpmの分散速度で分散した。同時に、分散シリンダージャケットに温水を流し、温水温度は100℃とした。系中の温度が90℃に昇温した時に固形UV樹脂及びパラフィンワックスが完全に溶融し、脱イオン水中に乳化分散させ、分散時間が30minである。ここで、結晶性不飽和ポリエステル樹脂は、結晶性ビニルエーテルオリゴマーを反応させて得られる不飽和ポリエステルである。
(3)高速分散機による分散速度を800rpmに調整するとともに、95℃の熱水を通し続けた。分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、系中の温度が85℃に達した後、光開始剤TPOを全固形分中4wt%添加し、30min分散し続けた。
(4)温水系をオフにして冷水系に切り替え、冷水温度を20℃に制御し、系の降温を開始しながら攪拌分散速度を800rpmに保つ。
(5)系中の温度が35℃に下がった後、懸濁液を枠板加圧濾過機で濾過して、濾過ケーキと濾液を得て、循環利用するように濾液を集中的に収集した。
(6)濾過ケーキを沸騰床乾燥機に輸送し、沸騰床乾燥機の圧縮空気温度を45℃に制御し、低温乾燥の方式により濾過ケーキを乾燥した。乾燥後の粉粒体をサイクロンで分級して、平均粒径が1.9μmである多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂を得た。
【0066】
実施例3
(1)70wt%のウレタンアクリレートと5wt%の乳化剤であるTween80とを60℃の条件下で加熱ベークを行い、ベーク時間が12hであり、液状UV樹脂と乳化剤とが完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で800rpmの分散速度で分散し、その後に25wt%の脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の平均粒径は1.4μmであった。
(2)60wt%の結晶性不飽和ポリエステル樹脂、8wt%のパラフィンワックス、2wt%の乳化剤であるTween80、及び30wt%の脱イオン水を分散シリンダに入れ、高速分散機で400rpmの分散速度で分散した。同時に、分散シリンダージャケットに温水を流し、温水温度は105℃とした。系中の温度が95℃に昇温した時に固形UV樹脂及びパラフィンワックスが完全に溶融し、脱イオン水中に乳化分散させ、分散時間が25minである。ここで、結晶性不飽和ポリエステル樹脂は、結晶性ビニルエーテルオリゴマーを反応させて得られる不飽和ポリエステルである。
(3)高速分散機による分散速度を700rpmに調整するとともに、95℃の熱水を通し続けた。分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、系中の温度が85℃に達した後、光開始剤TPOを全固形分中5wt%添加し、30min分散し続けた。
(4)温水系をオフにして冷水系に切り替え、冷水温度を20℃に制御し、系の降温を開始しながら攪拌分散速度を700rpmに保つ。
(5)系中の温度が35℃に下がった後、懸濁液を枠板加圧濾過機で濾過して、濾過ケーキと濾液を得て、循環利用するように濾液を集中的に収集した。
(6)濾過ケーキを沸騰床乾燥機に輸送し、沸騰床乾燥機の圧縮空気温度を45℃に制御し、低温乾燥の方式により濾過ケーキを乾燥した。乾燥後の粉粒体をサイクロンで分級して、平均粒径が2.2μmである多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂を得た。
【0067】
実施例1~3で得られたUV光硬化粉体コーティング樹脂を粉体コーティングにし、スプレー塗装、加熱、UV照射により硬化成膜し、形成された塗膜のに対して技術的検出を行った結果は、以下の通りである。
【0068】
なお、塗膜の表裏衝撃強度の測定は、GB/T1732-93に準拠して行われた結果、試験板におもりを落下させ、おもり50kg、最大高さ50cmの衝撃試験を行い、4倍ルーペで観察したところ、塗膜にクラック、しわやはがれはなかったことが確認された。
【0069】
付着力の測定は、GB/T9286-1998に準拠して行われた結果、直角格子パターンでパターンをカットして基材まで突き抜けるとき、切り込みエッジが完全に滑らかで、脱落するものもなく、付着力は0級であった。
【0070】
円柱曲げの測定は、GB/T6742-2007に準拠して行われた結果、塗膜のクラック及び/又は基板からのはがれを引き起こす最大軸径は3mmであり、この塗膜の耐クラック性は良好であった。
【0071】
耐アセトン性の測定は、GB/T9274-88に準拠して行われた結果、本発明の塗膜は、耐アセトン拭き取り性(500回)における、泡立ちや剥がれがなく、耐アセトンディッピング(24h)における、泡立ちや剥がれがなかった。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明の原理から逸脱しない前提で様々な修正及び変更を行うことができ、これらも本発明の保護範囲に属することは当業者に理解されるである。
【手続補正書】
【提出日】2022-09-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状UV樹脂及び乳化剤を加熱した後、分散し、脱イオン水を添加して乳化して、液状UV樹脂の乳化液を得るステップ(1)と、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散し、完全に溶融し均一に分散した後、前記液状UV樹脂の乳化液を添加し、撹拌することにより、均一となるように十分混合し、撹拌中に降温し、多相構造を有するUV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を得るステップ(2)と、
前記UV光硬化粉体コーティング樹脂の懸濁液を加圧濾過して、濾過ケーキを得るステップ(3)と、
前記濾過ケーキを乾燥し、分級して、多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得るステップ(4)と、
を備えることを特徴とする多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)において、前記液状UV樹脂と乳化剤を50~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で600~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.5μmに制御されることを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記液状UV樹脂、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、液状UV樹脂50~70wt%、乳化剤3~10wt%、脱イオン水25~45wt%であることを特徴とする請求項2に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項4】
ステップ(2)において、前記相変化剤は、パラフィンワックスであり、その融点が、40~95℃であることを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項5】
ステップ(2)は、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて200~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を80~100℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うことと、
を備えることを特徴とする請求項4に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、固形UV樹脂50~60wt%、相変化剤5~15wt%、乳化剤1~5wt%、脱イオン水30~43wt%であることを特徴とする請求項5に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記液状UV樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの1種又はその混合物であり、
前記固形UV樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記固形UV樹脂が、結晶性ビニルエーテルオリゴマーの反応により製造される不飽和ポリエステル樹脂から選択されることを特徴とする請求項7に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項9】
ステップ(4)において、前記濾過ケーキを沸騰床乾燥機に輸送し、沸騰床乾燥機の圧縮空気温度を25~90℃の範囲内に制御し、乾燥後の粉粒体をサイクロンで分級して、粒径が1.2~3.0μmである多相のUV光硬化粉体コーティング樹脂を得ることを特徴とする請求項1に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂の製造方法。
【請求項10】
予め乳化処理された液状UV樹脂と 、
前記液状UV樹脂の外面を被覆する固形UV樹脂と、を備え、
前記液状UV樹脂と前記固形UV樹脂は、溶融分散と降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成する
ことを特徴とする多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項11】
前記液状UV樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレートの1種又はその混合物であり、
前記固形UV樹脂が、結晶性不飽和ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項
10に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項12】
前記固形UV樹脂が、結晶性ビニルエーテルオリゴマーの反応により製造される不飽和ポリエステル樹脂から選択されることを特徴とする請求項
11に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項13】
前記液状UV樹脂が予め乳化処理されることは、
液状UV樹脂と乳化剤を50~70℃の条件下で加熱ベークを行い、液状UV樹脂と乳化剤が完全にベーキングした後に分散シリンダーに入れ、高速分散機で600~900rpmの分散速度で分散し、その後に脱イオン水を徐々に加えて乳化し、乳化時間が20~40minであり、液状UV樹脂の乳化液を得て、前記液状UV樹脂の乳化液の粒径は0.8~1.5μmに制御されること
、
前記液状UV樹脂、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、液状UV樹脂50~70wt%、乳化剤3~10wt%、脱イオン水25~45wt%、
を含むことを特徴とする請求項
10に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【請求項14】
前記液状UV樹脂と前記固形UV樹脂は、溶融分散と降温被覆により、相転移を利用してコアシェル構造を形成することは、
固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を分散シリンダーに入れて200~400rpmの分散速度で撹拌分散させることと、
温度を80~100℃に昇温し、前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤及び脱イオン水を溶融分散させ、分散時間が10~30minであることと、
分散速度を600~900rpmに調整し、同時に加熱を保ち、分散撹拌中に液状UV樹脂の乳化液を添加し、温度が80~100℃に達した後、光開始剤を添加し、20~40min分散し続けることと、
攪拌中に温度が30~40℃になるまで降温処理を行うことと、
前記固形UV樹脂、相変化剤、乳化剤、脱イオン水の使用量は、それぞれ、固形UV樹脂50~60wt%、相変化剤5~15wt%、乳化剤1~5wt%、脱イオン水30~43wt%であり、
前記相変化剤は、パラフィンワックスであり、その融点が、40~95℃、
を備えることを特徴とする請求項
10に記載の多相構造のUV光硬化粉体コーティング樹脂。
【国際調査報告】