IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘ グァン カンパニー リミテッドの特許一覧

<>
  • 特表-易剥離性塗料組成物 図1
  • 特表-易剥離性塗料組成物 図2
  • 特表-易剥離性塗料組成物 図3
  • 特表-易剥離性塗料組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】易剥離性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 155/00 20060101AFI20230407BHJP
   C09D 129/14 20060101ALI20230407BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20230407BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230407BHJP
   C09D 7/20 20180101ALI20230407BHJP
   C09D 5/20 20060101ALI20230407BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230407BHJP
【FI】
C09D155/00
C09D129/14
C09D183/04
C09D7/61
C09D7/20
C09D5/20
C09D5/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575688
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2021008556
(87)【国際公開番号】W WO2022025466
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0093206
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0081338
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522419469
【氏名又は名称】ヘ グァン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HAE KWANG CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミョンス
(72)【発明者】
【氏名】シン、ヒョンジョン
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CE001
4J038CE071
4J038CG031
4J038DL032
4J038JA17
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA06
4J038NA10
4J038PC10
(57)【要約】
本発明は、容易に塗膜層を剥離して原状回復が可能な易剥離性塗料組成物に関する。本発明の易剥離性塗料組成物は、塗料が塗布された素材から剥離が容易で原状回復効果を極大化すると共に、素材を保護して耐久性に優れた特性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PVB(ポリビニルブチラル)樹脂30ないし80重量部;
消泡剤を含む添加剤1ないし5重量部;及び
残部である水を含む水性溶剤を含む、
対象体から剥離が容易な塗料組成物であることを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項2】
請求項1において、
前記PVB樹脂の分子量は、100,000ないし210,000g/モルであることを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項3】
請求項2において、
前記PVB樹脂は、170ないし240μmの粒度を有することを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項4】
請求項1において、
前記塗料組成物は、ラテックス、アクリル共重合体、ポリビニルアセテート、ウレタン又はポリビニルアルコールを含む追加成分をさらに含むことを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項5】
請求項4において、
前記塗料組成物は、PVB樹脂と追加成分の重量比が9~12:1であることを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項6】
請求項1において、
前記塗料組成物は、離型性添加剤及び無機素材のうちいずれか一方以上を含むことを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項7】
請求項6において、
前記離型性添加剤は、シリコーンオイル、シリコーンポリマー、シリコーンエマルジョン、変性シリコーンオイル又はポリマー、シロキサン及び変性シロキサン、シリコーンゴム、ワックスタイプ添加剤、界面活性剤、オイル及びシランからなる群より選択されるいずれか1つ以上を1ないし20重量部含むことを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項8】
請求項6において、
前記無機素材は、SiO、CaCO、BaSO、Talc、Al(OH)、Al及びTiOからなる群より選択されるいずれか1つ以上を5ないし40重量部含むことを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項9】
請求項1において、
前記水性溶剤は、アルコール類、セロソルブ類及びカルビトール類のうちいずれか1つ以上をさらに含むことを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【請求項10】
請求項1において、
前記対象体は、紙、木材又はガラス素材であることを特徴とする、易剥離性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は易剥離性塗料組成物に関し、より詳しくは、色及びデザインの嗜好に変化を与えるか又は本来の製品として再び使用したい場合に、容易に塗膜層を剥離して原状回復が可能な易剥離性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ペイントは流動性のある物質であり、物体の表面に広く塗布されて薄い被膜層を形成し、時間の経過と共に乾燥及び硬化することで物体の表面を保護するだけでなく、美感を増大させる機能を有する。このようなペイントは、特に建築物などのような各種構造物に塗布され、構造物の外観を美しくするだけでなく、腐食などのような損傷を防止して耐久性を向上させるためによく用いられている。
【0003】
建築物のような構造物の保護のために主に用いられているペイントとしては、油性ペイント、エナメルペイント及び水性ペイントなどがある。このようなペイントは、建築物と素材(材料)の保護だけでなく美観を増大させ、断熱性及び難燃性などを向上させる効果を有する。
【0004】
一般的なペイントなどの塗料は、耐久性向上のために素材との接着力を向上させることを主な目的として開発されており、被加工物に塗布して乾燥/硬化した後は剥離が容易でないという特性を有する。特に紙壁紙のような素材に塗布する場合、剥離が全くできないか、無理やりに剥離すると紙が破れる問題点が発生する。上述のように一般的なペイントなどの塗料は原状回復が全くできない実情である。
【0005】
さらに、木材やガラスなどにもペイントが多く用いられているが、必要に応じて塗膜を除去しなければならないとき、これを剥離することが困難であるだけでなく、異物などが残されるようになり原状回復が困難であるという限界があった。
【0006】
これによって、好みの急激な変化、自分だけのアイテム/空間に対する要求、及び手軽なDIYへの接近などのために、場所と時間にこだわらず、塗布された素材(紙、木材、ガラスなど)から剥離が可能で剥離時に原材料に原状回復が可能なペイント又は塗料が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、塗料が塗布された素材から剥離が容易で原状回復効果を極大化すると共に、水性タイプに設計して室内インテリアー、人体と接触できる用途として開発し、場所と用途にこだわらず、素材を保護して耐久性に優れた易剥離性塗料組成物を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的及び技術的特徴は、以下の発明の説明、特許請求の範囲及び図面によってより具体的に提示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明による対象体から剥離が容易な塗料組成物は、PVB(ポリビニルブチラル)を含むポリビニル系樹脂30ないし80重量部;消泡剤を含む添加剤1ないし5重量部;及び残部である水を含む水性溶剤を含むことを特徴とする。
【0010】
前記PVB樹脂の分子量は、100,000ないし210,000g/モルであってもよく、前記PVB樹脂は、170ないし240μmの粒度を有してもよい。
【0011】
前記塗料組成物は、ラテックス、アクリル共重合体、ポリビニルアセテート、ウレタン又はポリビニルアルコールを含む追加成分をさらに含んでもよく、このとき、前記塗料組成物は、PVB樹脂と追加成分の重量比が9~12:1であってもよい。
【0012】
前記塗料組成物は、離型性添加剤及び無機素材のうちいずれか一方以上を含んでもよい。
【0013】
前記離型性添加剤は、シリコーンオイル、シリコーンポリマー、シリコーンエマルジョン、変性シリコーンオイル又はポリマー、シロキサン及び変性シロキサン、シリコーンゴム、ワックスタイプ添加剤、界面活性剤、オイル及びシランからなる群より選択されるいずれか1つ以上を1ないし20重量部含んでもよい。
【0014】
前記無機素材は、SiO、CaCO、BaSO、Talc、Al(OH)、Al及びTiOからなる群より選択されるいずれか1つ以上を5ないし40重量部含んでもよい。
【0015】
前記水性溶剤は、アルコール類、セロソルブ類及びカルビトール類のうちいずれか1つ以上をさらに含んでもよい。
【0016】
前記対象体は、紙、木材又はガラス素材であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は易剥離性塗料組成物に関し、塗料が塗布された素材から剥離が容易で原状回復効果を極大化すると共に、素材を保護して耐久性に優れた機能性塗料として用いることができる。
【0018】
本発明の易剥離性塗料組成物は、水性タイプで環境に優しく設計され、人体との接触時にも安全に使用できるため室内インテリアーに適用可能であり、この場合、場所と用途にこだわらないという利点が存在する。
【0019】
本発明の易剥離性塗料が塗布されて乾燥/硬化した塗膜は剥離が可能であり、剥離した塗膜はアルコール類に溶解してリサイクルが可能であるため、非毒性の素材で環境に優しいという特性を有する利点も存在する。
【0020】
また、本発明の易剥離性塗料に断熱素材を混合又は分散して外部窓に塗布することによって防寒及び保温効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】PVB樹脂を単独添加した塗料(A’)、離型性添加剤を含む塗料(B’)、及び無機素材を含む塗料(C’)を紙に塗布した状態を比較した写真である。
図2】本発明によるPVB樹脂を単独添加した塗料(A’)、離型性添加剤を含む塗料(B’)、及び無機素材を含む塗料(C’)が塗布された紙から剥離した状態を比較した写真である。
図3】PVBとラテックスの含量比によるガラスでの剥離の前後を示す写真を示す。
図4】PVBとラテックスの含量比によるシルク(PVC)壁紙での剥離の前後を示す写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な異なる形態に変形でき、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるのではない。また、本発明の実施形態は当該技術分野における平均的な知識を有する者に本発明をさらに完全に説明するために提供される。
【0023】
本発明は、PVB(ポリビニルブチラル)を含むポリビニル系樹脂、消泡剤を含む添加剤、及び水を含む易剥離性塗料組成物であり、離型性添加剤又は無機素材をさらに含んでもよい。前記易剥離性塗料組成物は、剥離が可能な一般的な塗料と比較して、塗布された素材を保護して耐久性に優れており、紙壁紙でも剥離が容易であるので素材の原状回復効果を極大化し、水性タイプで人体と接触可能性がある室内インテリアーに用いられ、場所と用途にこだわらずに安全に使用できるという利点が存在する。
【0024】
前記PVB(ポリビニルブチラル)樹脂は、前記水に溶解して素材の表面に塗装され、溶剤が乾燥した後に表面を保護する役割をし、素材の乾燥が完了して塗膜の剥離が必要なときに容易に剥離できる特性を有することが好ましい。前記PVB(ポリビニルブチラル)樹脂は、水分散形態で柔軟性、引張力及び靭性に優れた樹脂であり、易剥離性塗料組成物を素材から容易に剥離可能にする利点がある。
【0025】
前記PVB(PolyVinyl Butyral)樹脂は、PVAとn-ブチルアルデヒドとの縮合反応(Condensation reaction)によって製造することができる。前記PVB樹脂は、水性又はエマルジョンタイプであってもよく、素材の表面に塗装した後、溶剤が乾燥すると素材の表面を保護する役割をする。前記PVB樹脂は、柔軟性、引張力及び靭性に優れた樹脂であり、易剥離性塗料組成物を素材から容易に剥離可能とする。
【0026】
前記PVB樹脂の構造は、下記化学式1で表されるブチラル(butyral)基、アセチル基、ヒドロキシ基を繰り返し単位として含んでもよい。
【0027】
【化1】
【0028】
特に、前記PVB樹脂の分子量が100,000ないし210,000g/モルの場合、剥離性及び貯蔵安定性に優れており、前記PVB樹脂が170ないし240μmの粒度を有すると、剥離性及び貯蔵安定性がさらに向上する効果を有する。
【0029】
前記易剥離性塗料組成物に含まれたPVB(PolyVinyl Butyral)樹脂の含量が全体重量部に対して30重量部未満であると、コーティング液の安定性が低下し、塗布性が悪く塗膜の円滑な形成が困難であり、80重量部を超過すると、顔料が含まれたペイントを製造できないという問題が発生する。よって、前記易剥離性塗料組成物は、前記PVB樹脂を20ないし80重量部含み、好ましくは35ないし65重量部含む。
【0030】
前記易剥離性塗料組成物は増粘剤をさらに含んでもよく、前記増粘剤は、組成物の貯蔵安定性及び粘度を改善して塗布性を向上させる役割をする。前記増粘剤の例としては、セルロース、アクリル増粘剤、ウレタン増粘剤、ワックス、Clay系などが挙げられる。これらは単独又は2つ以上を混合して用いてもよい。
【0031】
前記増粘剤の含量が2重量部以上であると、粘度とチキソ性が高すぎるため塗膜を形成できないことがある。一方、0.2重量部未満であると、粘度が低すぎるため水のように流れ下がり塗布できないことがある。よって、前記易剥離性塗料組成物は、増粘剤を0.2ないし2重量部含み、好ましくは0.3ないし1.5重量部含むことが有利である。
【0032】
前記添加剤は、消泡剤の他、レベリング剤、湿潤分散剤、防腐剤、凍結防止剤、消泡剤及び機能性を有する添加剤などを含んでもよい。これらは単独又は2つ以上を混合して用いてもよい。前記添加剤は、易剥離性塗料組成物の作業性及び物性を均一に維持させるために通常用いられるものである。
【0033】
また、本発明の易剥離性塗料組成物は離型性添加剤をさらに含んでもよい。前記離型性添加剤は、本発明の易剥離性塗料組成物に含まれ、易剥離性塗料組成物を、塗布された素材から容易に剥離可能にすることによって剥離性を改善することができる。
【0034】
前記離型性添加剤は、塗膜剥離性の向上を確保するためのものであり、離型性を高めるか又は樹脂の凝集力を向上させることで、塗料と素材表面との接着力を低め、剥離効果を高めることができる。好ましくは、前記離型性添加剤は、シリコーンオイル、シリコーンポリマー、シリコーンエマルジョン、変性シリコーンオイル又はポリマー、シロキサン及び変性シロキサン、シリコーンゴム、ワックスタイプ添加剤、界面活性剤、オイル及びシランなどであってもよい。ただし、剥離性を改善するためには、離型性添加剤としてシリコーンオイル及びポリマー以外の離型性添加剤は過量使用しなければならず、剥離可能な塗料に、耐久性、塗膜厚さ及び塗膜強度などの問題点が発生するので、本発明の易剥離性塗料組成物に含まれる離型性添加剤としては、シリコーンポリマー又はオイル(変性シリコーンオイル及びポリマー)が好適である。前記易剥離性塗料組成物は、離型性添加剤を1ないし20重量部、好ましくは3ないし15重量部含むことが好ましい。
【0035】
また、本発明の易剥離性塗料組成物は無機素材をさらに含んでもよい。前記無機素材は、本発明の易剥離性塗料組成物に含まれ、易剥離性塗料組成物を、塗布された素材から容易に剥離可能にすることによって剥離性を改善することができる。
【0036】
前記無機素材は、塗膜の剥離性を確保するためのものであり、易剥離性塗料組成物の離型性を高めてペイントと素材表面との接着力を低めることで、剥離効果を高めることができる。また、前記無機素材は、剥離効果に加えてペイント増量効果、及び塗布性を改善する役割と塗膜の強度を向上させる役割をすることができる。好ましく、前記無機素材は、SiO、CaCO、BaSO及びTalc、Al(OH)、TiOからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むか又は混合して用いることができる。
【0037】
前記無機素材の粒度(μm)を調節して支持効果を高めて浸透性を抑制でき、樹脂/無機素材の比率を調節することによって耐久性、塗膜強度、塗膜厚さなどの従来の物性を維持すると共に剥離性を改善することができる。前記易剥離性塗料組成物は、前記無機素材を5ないし40重量部、好ましくは10ないし30重量部含んでもよい。
【0038】
前記易剥離性塗料組成物は、上記で説明した組成を含むことで、紙壁紙をはじめとする木材やガラスなどの素材に塗布した後、必要に応じて容易に剥離除去が可能であるため、素材の原状回復が可能であるという長所を有する。参照として、紙のように多くの気孔(ポーラス)と材料との間の内部凝集力が弱く、層間分離が発生し得る素材の場合は、塗料との高い接着力を有し、塗膜層を紙から剥離しにくい場合がある。
【0039】
また、前記易剥離性塗料組成物は、塗装部分の識別のために顔料をさらに含んでもよい。前記顔料の例としては、体質顔料、有色顔料及びこれらの混合顔料が挙げられる。前記易剥離性塗料組成物に顔料が含まれる場合、含まれる顔料の含量が30重量部を超過すると、ペイントの安定性が低下してペイントの役割が不可であり、塗膜剥離が不良になる問題点が発生することがある。よって、前記易剥離性塗料組成物は、前記顔料を5ないし30重量部含み、好ましくは5ないし20重量部含んでもよい。
【0040】
前記易剥離性塗料組成物に含まれる溶剤は、易剥離性塗料組成物の塗装の作業性を確保するために用いられる。好ましくは、前記溶剤は、水に加えて、セロソルブ類及びカルビトール類のうちいずれか1つ以上をさらに含んでもよい。これらは2つ以上を混合して用いてもよい。前記塗料に適用される溶剤の使用量が小さいと乾燥時間が速くなり、前記塗料に適用される溶剤の使用量が多いと乾燥時間が遅くなることがある。
【実施例
【0041】
[実験例1]:PVB樹脂を含む易剥離性塗料組成物の製造
実施例1
70gのPVB水分散樹脂PC-2を攪拌しながら、色を発揮できる水分散白色顔料を10g添加した。その後、水を15g添加し、10分間よく混合した。攪拌を続けながら、増粘剤であるTT-935Dを4g添加し、塗料の粘度が上昇すると攪拌機のrpmを上昇させて混合を容易にした。30~60分以上高速で攪拌し、気泡抑制及び発生された気泡を破泡させる消泡剤F-810を1g混合した後、30分以上高速攪拌して実施例1の塗料を製造した。
【0042】
[実験結果]
紙壁紙の試片の上に上記実施例1の塗料をエアリーススプレーやローラ(ブラシ)などで50~100μmの厚さで塗装した後に乾燥した。その後、1ヶ月間放置して形成された塗膜の剥離性と物性を確認し、その結果が表1のように導き出された。参照として、上記物性の評価は下記のような方法によって測定した。
*剥離性の測定:紙壁紙に塗布された被膜を1日後に剥離(除去)するとき、状態を5段階に区分して評価する(剥離後の素材の状態と共に評価)-優秀5、良好4、普通3、不十分2、不良1
*塗膜強度の測定:乾燥した被膜を引っ張るときに弾性及び破れる状態を5段階に区分して評価-優秀5、良好4、普通3、不十分2、不良1
*塗膜平滑度の測定:乾燥した被膜を目視で表面の平滑度及び塗布された状態を5段階に区分して評価-優秀5、良好4、普通3、不十分2、不良1
*相溶性の測定:最終塗料を透明なサンプル容器に保管して沈殿及び層分離、エマルジョン状態を評価-優秀◎、良好○、普通◇、不十分△、不良×
*光沢の測定:乾燥した被膜の光沢の程度を4段階に評価-光沢度が非常に高い(High gloss)◎、高い(Egg shell gloss)○、普通(Semi gloss)△、低い(Matt)×
*表面状態の測定:乾燥した被膜を目視及び触感により粒子状態を評価-良好、普通、不良
【0043】
【表1】
【0044】
上記の表1のように、PVB樹脂を含む塗料の場合、紙壁紙で一定部分剥離性を有することを確認し、その他に塗膜強度、相溶性、光沢及び表面状態は優れたものと評価された。参照として、紙の場合は多くの気孔があり、内部凝集力が弱く層間分離が容易に発生し得るため、ガラスなどに比べて剥離性が相対的に良好でない。
【0045】
[実験例2]:PVB分子量による塗料組成物の物性の比較
実施例2ないし5
分子量が下記表2のような分子量を有するPVBエマルジョン樹脂60gを攪拌しながら、水を11g添加して10分間混合した。その後、攪拌を続けながら、気泡抑制及び発生された気泡を破泡させる消泡剤F-810(Tego)を1g混合し、30分以上高速攪拌することで、本発明による実施例2ないし5の塗料組成物を製造した。
【0046】
【表2】
【0047】
PVB分子量による易剥離性塗料組成物の物性をテストし、それによる結果は表3のように導き出された。参照として、前記塗料組成物の物性は下記のような方法によって測定した。
*透明度の測定:透過率を活用して測定し、被膜の透明な状態を5段階に区分して判定する(相対評価)-透過率が優秀◎、良好○、普通◇、不十分△、不良×
*貯蔵安定性の測定:最終塗料を透明なサンプル容器に保管して沈殿及び層分離、エマルジョン状態などを評価する-貯蔵安定性が優秀◎、良好○、普通◇、不十分△、不良×
*引張率の測定:乾燥した被膜(20*100mm)を引っ張るときに伸びる長さを%と比較する
*ガラス遷移温度の測定:DSC(differential scanning calorimetry)装置で測定
*剥離性の測定:シルク(PVC)壁紙に塗布された被膜を1日後に剥離(除去)するとき、状態を5段階に区分して評価する(剥離後の素材の状態と共に評価)-剥離性が優秀◎、良好○、普通◇、不十分△、不良×
【0048】
【表3】
【0049】
上記表3の実験結果を参照すると、PVB樹脂の分子量が100,000~210,000g/モルである実施例2、3は、優れた剥離効果を有するものと確認され、貯蔵安定性と引張率も最も優れたものと確認された。一方、PVB樹脂の分子量が100,000未満であるか、210,000を超過する実施例4、5の場合は、剥離性及び貯蔵安定性の効果が相対的に低下することが確認された。
【0050】
[実験例3]:PVB粒度による塗料組成物の物性の比較
実施例6ないし9
分子量が100,000~160,000g/モルのPVB樹脂の粒度による塗料組成物の物性を分析するため、下記表4のような粒度範囲を有するPVBエマルジョン樹脂を対象として、上記実験例2と同一の方法によって実施例6ないし9の塗料組成物を製造した後、それぞれ製造した塗料組成物に対する物性を測定した。
【0051】
【表4】
【0052】
上記表4の実験結果を参照すると、PVB樹脂の粒度が170~240μmである実施例8が、剥離性はもちろん引張率及び貯蔵安定性に最も優れたものと確認された。
【0053】
[実験例4]:追加含有可能な樹脂成分の確認
実施例10ないし21
本発明による易剥離性塗料組成物にPVB樹脂(実施例8)に加えてさらに含有可能な成分を確認するために、ビニル系共重合体(メタアクリルアシッドMMA:アクリルアシッドAA:イタコニックアシッドitaconic acidの重量比=7:2:1のアクリルエマルジョン)と、ポリアセテートエマルジョン(PVAc、アセテート含量7重量%)、ポリビニルアルコール(PVOH)、及びSBRラテックスエマルジョン(KSL341)を下記表5ないし8のような重量比で混合した後、上記実験例3と同一の方法によって実施例10ないし21の塗料組成物を製造した。その後、それぞれ製造した塗料組成物に対する物性を上記実験例3の記載と同一の方法によって測定し、追加の塗膜強度は下記のような方法によって測定した。
*塗膜強度:乾燥した被膜を引っ張るときに弾性及び破れる状態などを5段階で評価する-塗膜強度が優秀◎、良好○、普通◇、不十分△、不良×
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【表7】
【0057】
【表8】
表5ないし8を参照すると、PVOH又はラテックス成分をPVB樹脂と一定の重量比で混合する場合、透明度、貯蔵安定性、塗膜強度又は貯蔵安定性のうちいずれか1つ以上で同等又はより良子な効果を有することが確認された。特に、PVB:PVOH又はPVB:ラテックスの重量比が9:1の場合、混合して使用したもののうちで最も優れた剥離効果を有することが分かった。しかし、上記の追加成分の含量が一定基準以上に増加してPVB含量が一定以下になるほど、透明度、貯蔵安定性、塗膜強度又は貯蔵安定性のうちいずれか1つ以上の効果が低下し得ることが確認された。図1ないし図2は、下記表9に挙げられたように、PVB(実施例8)とラテックスの含量比によるガラス及びシルク(PVC)壁紙での剥離性及び透明度を実験した写真を示す。
【0058】
【表9】
【0059】
図1のように、ガラスにおける透明度の優秀性は、#1>#11>#12>#13の順であり、剥離優秀性は、#1>#11>#12>>#13の順であることが確認された。図2でのように、シルク(PVC)壁紙における透明度の優秀性は、#1>#11>#12>#13の順であり、剥離優秀性は、#1>>#11>>#12>>>#13の順であることが確認された。
【0060】
[実験例5]:離型性添加剤が含まれた易剥離性塗料組成物の製造
実施例22
PVB水分散樹脂PC-2(Shark-Solutions)60gを攪拌しながら、色及び無機素材の特性を発揮できる水分散白色顔料(ウシンピグメント)を15g添加した。その後、水を11g添加して10分間よく混合した。攪拌を続けながら、増粘剤であるTT-935D(Dow chemical)を5.5g添加し、塗料の粘度が上昇すると攪拌機のrpmを上昇させて混合を容易にした。30~60分以上高速で攪拌し、剥離性を向上させることができるシリコーン離型性添加剤PMX200F(セハンシリケム)7.5g、及び気泡抑制及び発生された気泡を破泡させる消泡剤F-810(Tego)を1g混合した後、30分以上高速攪拌することで、本発明による易剥離性塗料組成物を製造した。
【0061】
実施例23ないし29
上記実施例22と同一の方法によって易剥離性塗料組成物を製造するが、下記表10に記載の組成の含量で実施例23ないし29によるそれぞれの易剥離性塗料組成物を製造した。
【0062】
【表10】
【0063】
[実験例6]無機素材が含まれた易剥離性塗料組成物の製造
実施例30
PVB水分散樹脂PC-2(Shark-Solutions)60gを攪拌しながら、色及び無機素材の特性を発揮できる水分散白色顔料(ウシンピクメント)20gを添加した。その後、水を14g添加して10分間よく混合した。攪拌を続けながら、増粘剤であるTT-935D(Dow chemical)を3g添加し、塗料の粘度が上昇すると攪拌機のrpmを上昇させて混合を容易にした。30~60分以上高速で攪拌した後に剥離性を向上させ、塗料の塗布性を改善できる無機素材SiO(5μm)(SOLVAY)を2g添加して高速で60分以上攪拌し、気泡抑制及び発生された気泡を破泡させる消泡剤(Tego)F-810を1g混合した後、30分以上高速攪拌することで、本発明による易剥離性塗料組成物を製造した。
【0064】
実施例31ないし37
上記実施例30と同一の方法によって易剥離性塗料組成物を製造するが、下記表11に記載の組成の含量で実施例31ないし37によるそれぞれの易剥離性塗料組成物を製造した。
【0065】
【表11】
【0066】
紙壁紙の試片の上に実験例5及び6による実施例22ないし29及び実施例30ないし37の塗料をエアリーススプレーやローラ(ブラシ)などで50~100μmの厚さで塗装した後に乾燥した。その後、1ヶ月間放置して形成された塗膜の剥離性と物性を確認した。上記物性の評価は、実験例1と同一の評価方法によって評価し、その評価結果を表12[離型性添加剤が含まれた易剥離性塗料]及び表13[無機素材が含まれた易剥離性塗料]に開示した。(数字が高いほど剥離性及び塗膜強度に優れる:1~5点)
【0067】
【表12】
【0068】
【表13】
【0069】
上記表12ないし表13を参照すると、離型性添加剤又は無機素材を含む場合の方がさらに優れた剥離性を有することが確認された(離型性添加剤又は無機素材を含んでいない実施例1と比較してより高い剥離効果を有する)。
【0070】
参照として、図3及び図4は、紙壁紙に本発明の塗料を塗布したことによる剥離性をテストしたものである。図3のA及び図4のA’は、離型性添加剤及び無機素材を含んでいない塗料(実施例1)の塗布状態と、これを剥離した状態とを示す。
【0071】
図3のB及び図4のB’は、離型性添加剤を含む塗料(実施例26)の塗布状態と、これを剥離した状態とを示し、図3のC及び図4のC’は、無機素材添加剤を含む塗料(実施例33)の塗布状態と、これを剥離した状態とを示す。
【0072】
これをよっても、紙壁紙では少なくとも離型性添加剤又は無機素材を含むものが剥離効果にさらに優れることが分かる。
【0073】
以上のように、本発明による易剥離性塗料組成物について説明したが、本発明は上記で説明された実施例に限定されるのではなく、本発明が属する技術的思想の範囲内で多様な形態に変形できることは自明であろう。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニル系樹脂30ないし80重量部;
増粘剤0.2ないし2重量部;
顔料5ないし30重量部;
消泡剤を含む添加剤1ないし5重量部;及び
溶剤5ないし30重量部を含む、
対象体から剥離が容易な易剥離性塗料組成物であって、
前記易剥離性塗料組成物は、更に離型性添加剤1ないし20重量部及び無機素材5ないし40重量部のうちいずれか一方以上を含み、
前記溶剤は水を含む、易剥離性塗料組成物。
【請求項2】
前記ポリビニル系樹脂が、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂を含む、請求項1に記載の易剥離性塗料組成物。
【請求項3】
記離型性添加剤は、シリコーンオイル、シリコーンポリマー、シリコーンエマルジョン、変性シリコーンオイル又はポリマー、シロキサン及び変性シロキサン、シリコーンゴム、ワックスタイプ添加剤、界面活性剤、オイル及びシランからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の易剥離性塗料組成物。
【請求項4】
記無機素材は、SiO、CaCO、BaSO、Talc、Al(OH)、Al及びTiOからなる群より選択されるいずれか1つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の易剥離性塗料組成物。
【請求項5】
前記溶剤は、アルコール類、セロソルブ類及びカルビトール類のうちいずれか1つ以上をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の易剥離性塗料組成物。
【請求項6】
記対象体は、紙あることを特徴とする、請求項1に記載の易剥離性塗料組成物。
【国際調査報告】