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特表2023-515912通信ベースの輸送システムにおいて干渉源をジオロケートする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-14
(54)【発明の名称】通信ベースの輸送システムにおいて干渉源をジオロケートする方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20230407BHJP
   H04W 84/00 20090101ALI20230407BHJP
【FI】
B61L25/02 G
H04W84/00 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578018
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021015788
(87)【国際公開番号】W WO2021246063
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】20305605.6
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】グエン、ヴィエト・ホア
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【テーマコード(参考)】
5H161
5K067
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161BB02
5H161BB06
5H161BB09
5H161DD21
5K067AA03
5K067DD41
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
通信ベースの輸送システムにおいて干渉源をジオロケートする方法であって、通信ベースの輸送システムは、空間内で分散し、それぞれ信号を発する複数の干渉源と、既知の軌道に沿って移動し、干渉源から信号を受信し、一時点に1つのみの干渉源の信号の信号強度を測定する車両とを備え、方法は、クラスタリング方法を用いて信号の信号強度をクラスタリングすることによって干渉源を分離することと、分離された干渉源に基づいて空間内の干渉源のロケーションを推定することとを含む方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ベースの輸送システムにおいて干渉源をジオロケートする方法であって、前記通信ベースの輸送システムは、
空間内で分散し、それぞれ信号を発する複数の干渉源と、
既知の軌道に沿って移動し、前記干渉源から前記信号を受信し、一時点に1つのみの干渉源の前記信号の信号強度を測定する車両と
を備え、
前記方法は、
クラスタリング方法を用いて前記信号の前記信号強度をクラスタリングすることによって前記干渉源を分離することと、
前記分離された干渉源に基づいて、前記空間内の前記干渉源のロケーションを推定することと
を含む方法。
【請求項2】
前記通信ベースの輸送システムは、前記通信ベースの列車制御システムであり、前記車両は列車である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記既知の軌道は、前記少なくとも1つの車両の既知の位置、速度及び方向を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
任意の時点において、前記干渉源間の衝突を回避するために、1つの干渉源のみが前記信号を発する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記干渉源は、CSMA/CA又はCSMA/CDプロトコルを用いて前記信号を発する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記干渉源はランダムにアクティブ化される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記干渉源を分離するステップ及び前記干渉源の前記ロケーションを推定するステップは、反復的に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記干渉源を分離するステップはK平均クラスタリング方法を用い、前記干渉源の前記ロケーションを推定するステップは最尤推定を用いる請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記干渉源を分離するステップ及び前記干渉源の前記ロケーションを推定するステップは、連続的に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記干渉源を分離するステップは共同ベイズクラスタリング方法を用い、前記干渉源の前記ロケーションを推定するステップは最大事後確率(MAP)推定を用いる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記干渉源を分離するステップは、前記干渉源の以前の既知の知識から漸進的に適用される請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記信号強度の測定値を連続したクラスタに幾何学的に分割することと、
1つのクラスタ内の前記干渉源の前記ロケーションを推定することと、
前記クラスタ内の前記干渉源の前記推定されたロケーションを、前記連続したクラスタにおける別のクラスタへの事前知識として利用することと、
近傍同士の大きな干渉源をフィルタリングすることと
を更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記車両は、前記既知の軌道に沿った複数の行程を有し、前記方法は、
1つの行程における前記干渉源の前記ロケーションを推定することと、
前記行程内の前記干渉源の前記推定されたロケーションを、他の行程への事前知識として利用することと
を更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
干渉源をジオロケートする通信ベースの輸送システムであって、
空間内で分散し、それぞれ信号を発する複数の干渉源と、
既知の軌道に沿って移動し、無線モジュールを有する車両であって、前記無線モジュールは、前記干渉源から前記信号を受信し、一時点に1つのみの干渉源の前記信号の信号強度を測定することが可能である、車両と、
コントローラであって、
クラスタリング方法を用いて前記信号の前記測定された信号強度をクラスタリングすることによって前記干渉源を分離し、
前記分離された干渉源によって前記空間内の前記干渉源のロケーションを推定する
ように構成されるコントローラと
を備える通信ベースの輸送システム。
【請求項15】
プロセッサによって実行されるプログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムコードは、前記プロセッサによって実行されると、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法の実行のために適応されるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオロケーションの分野に関し、特に、通信ベースの輸送システムにおいて干渉源をジオロケートすることに関する。
【背景技術】
【0002】
通信ベースの輸送システムは、車両(列車、自動車、ボート等を含む)と、トラフィック管理及びインフラストラクチャ制御のための追跡機器との間の電気通信を利用するシグナリングシステムである。通常の通信ベースの輸送システムは、通信ベースの列車制御(CBTC:Communications-Based Train Control)であり、列車の厳密な位置は、無線ネットワークに基づいて正確に知られている。この結果、安全要件を維持しながら、動作中の車両(列車)間の最大能力及び最小運転間隔を達成するように鉄道輸送を管理する、より効率的で安全な方式が得られる。
【0003】
しかしながら、CBTCシステムにおいて、列車と沿線との間の通信は公衆周波数帯域において動作する。このために、システムにおいて用いられるワイヤレス信号は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)等を用いる他のデバイスによって生じる干渉を被る。無線品質を監視するか又は無線リソースを管理するには、干渉源に関する知識が必須である。いくつかの研究において、周波数領域における干渉源の識別問題にどのように対処するかが論じられている。一方で、依然として空間領域における干渉源を識別する必要がある。換言すれば、システムにおける干渉源の地理学的特性を分析することが必要である。
【0004】
当該技術分野において、システムにおける車両内の既存の無線モジュールのみを用いることによって干渉源の正確なジオロケーションのそのような問題を解決する解決策はほとんど提案されていない。
【発明の概要】
【0005】
これに関して、本発明の1つの態様によれば、通信ベースの輸送システムにおいて干渉源をジオロケートする方法が提供され、通信ベースの輸送システムは、
空間内で分散し、それぞれ信号を発する複数の干渉源と、
既知の軌道に沿って移動し、干渉源から信号を受信し、一時点に1つのみの干渉源の信号の信号強度を測定する車両と
を備える。
【0006】
本方法は、
クラスタリング方法を用いて信号の測定された信号強度をクラスタリングすることによって干渉源を分離することと、
分離された干渉源に基づいて、空間内の干渉源のロケーションを推定することと
を含む。
【0007】
そのような構成を用いて、本発明は、現行のシステム無線ハードウェアを何ら複雑化することなく、電力測定に基づいて干渉位置を識別することができる。
【0008】
一実施形態において、通信ベースの輸送システムは、通信ベースの列車制御(CBTC)システムであり、車両は列車である。代替的に、通信ベースの輸送システムは、自動車、ボート等について用いられるものであってもよく、ここで、車両は既知の軌道に沿って進行しており、トラフィック管理のワイヤレス無線信号を受信する。
【0009】
加えて、既知の軌道は、例えば、少なくとも1つの車両の既知の位置、速度及び方向を含む。
【0010】
さらに、干渉源間の衝突を回避するために、1つの干渉源のみが信号を発することが好ましい。代替的に、干渉源はランダムにアクティブ化される。
【0011】
好ましくは、システムはCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)又はCSMA/CD(Carrier Sense Multiple Access with Collision Detection)プロトコルを用い、干渉源はCSMA/CA又はCSMA/CDプロトコルを用いて信号を発するが、他の電気通信プロトコルを用いることもできる。
【0012】
代替的に、干渉源を分離するステップ及び干渉源のロケーションを推定するステップは、反復的に適用される。一例として、干渉源を分離するステップはK平均クラスタリング方法を用い、干渉源のロケーションを推定するステップは最尤推定を用いる。
【0013】
代替的に、干渉源を分離するステップ及び干渉源のロケーションを推定するステップは、連続的に適用される。一例として、干渉源を分離するステップは共同ベイズクラスタリング方法を用い、干渉源のロケーションを推定するステップは最大事後確率(MAP:Maximum-A-Posteriori)推定を用いる。
【0014】
連続的方法が適用される場合、干渉源を分離するステップは、干渉源の以前の既知の知識から漸進的に適用される。
【0015】
この場合、連続的方法を用いることによって、本発明による方法は、
信号強度の測定値を連続したクラスタに幾何学的に分割することと、
1つのクラスタ内の干渉源のロケーションを推定することと、
上記クラスタ内の干渉源の推定されたロケーションを、連続したクラスタにおける別のクラスタへの事前知識として利用することと、
近傍同士の大きな干渉源をフィルタリングすることと
を更に含むことができる。
【0016】
これに関して、依然として1つの行程において厳密なジオロケーションを得ながら、計算複雑度を低減することが可能である。
【0017】
代替的に、車両が既知の軌道に沿って複数の行程を有する状況について連続的方法を用いることによって、本発明による方法はまた、
1つの行程における干渉源のロケーションを推定することと、
上記行程内の干渉源の推定されたロケーションを、他の行程への事前知識として利用することと
を含むことができる。
【0018】
これに関して、1つの行程における干渉源の推定されたロケーションを、他の行程における干渉源のロケーションの推定のために用いることが可能である。
【0019】
本発明の別の態様によれば、干渉源をジオロケートする通信ベースの輸送システムであって、
空間内で分散し、それぞれ信号を発する複数の干渉源(K個)と、
既知の軌道に沿って移動し、無線モジュールを有する車両であって、無線モジュールは、干渉源から信号を受信し、一時点に1つのみの干渉源の信号の信号強度を測定することが可能である、車両と、
コントローラであって、
信号の測定された信号強度によって干渉源を分離し、
分離された干渉源によって空間内の干渉源のロケーションを推定する
ように構成されるコントローラと
を備える通信ベースの輸送システムが更に提供される。
【0020】
本発明の更に別の態様によれば、プロセッサによって実行されるプログラムコードを含むコンピュータプログラムであって、プログラムコードは、プロセッサによって実行されると、本発明による上述した方法の実行のために適応されるコンピュータプログラムが更に提供される。
【0021】
この場合、本発明は、列車上の既存の無線モジュールを用いることのみによって、干渉を空間的に識別する問題を解決する。換言すれば、CBTCの無線は、干渉電力を測定し、次に距離-電力の関係、及び移動サンプリングメカニックに基づいて、干渉体をジオロケートすることができる。しかしながら、課題は、干渉のランダム性、及びそれらの間の混合挙動を推定することである。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面に関連して以下の説明において明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による例示的な通信ベースの列車システムを示す図である。
図2】本発明による通信ベースの列車システムの例示的な局所座標系を示す図である。
図3】K平均クラスタリングアルゴリズムを記述する擬似コードの例を示す図である。
図4】本発明による第1の解決策を記述する擬似コードの例を示す図である。
図5】本発明による第2の解決策を記述する擬似コードの例を示す図である。
図6】本発明による例示的な実施形態の連続的方法において相関付けられたクラスタ及び行程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明による例示的な通信ベースの列車システムを示す。この例示的なシステムにおいて、列車TAは、方向Dにおいてv m/sの速度でトラックTRに沿って進行しており、トラックTR上の位置T1、T2、T3、T4等の様々な位置を通過する。システムにおいて、図1に示すS1、S2及びS3等のいくつかの干渉源も存在し、これらの干渉源は、干渉信号を発するため、これらの干渉源の信号干渉を回避するために地理的に識別される必要がある。
【0025】
システムにおいて、列車TAは、例えば、毎秒R回のレートで移動中に干渉信号によって発せられる信号を受信及び測定することができる無線機を有する。dB単位での経路損失は、a+b×logdであり、ここで、dは受信機及び送信機(Tx-Rx)の距離であり、a及びbは経路損失係数を示す。加えて、位置T1及びT2等の2つの異なる位置間のシャドーイングは、以下のように係数と相関する:ρ_0 e^(-(|Δx|)/d_c)。ここで、d_c及びρ_0は、シャドーイング係数を表し、Δxは、列車位置の差である。
【0026】
干渉源S1、S2及びS3は、列車の無線機とランダムに干渉する異なるロケーションにある。本発明において、測定ごとに干渉源がランダムにアクティブ化される。例として、本発明においてCSMA/CAが用いられ、互いに近い干渉源間で実行され、したがって非競合条件が満たされる。
【0027】
この場合、この実施形態において、測定値は1つの瞬間に1つのみの干渉源に属する。しかしながら、干渉源は次々にランダムに切り替わり、これにより観測値が混合信号になる。加えて、データトラフィックモデルに起因して、干渉の出現もランダムである。したがって、本発明は、以下のように2つの主要ステップによってジオロケーション問題を解く。
干渉源分離:観測値は、干渉源のうちの1つにランダムに属する可能性があるため、測定値が属する干渉源を識別する必要がある。
位置推定:観測値が分離されると、干渉源の位置を推定し、これによりジオローカライズすることができる。
【0028】
2つのステップは共同依存関係にあり、一方の解が他方に影響を与える。
【0029】
図2は、本発明によるシステムの上記の例示的な実施形態の、x軸及びy軸を有する局所2D座標系を示す。干渉源S1、S2、S3…は、自身の位置θ=[θ,θ,…,θ]を有し、それらの座標は[(X,Y)(X,Y)…(X,Y)]であり、すなわち、θ=[θ,θ,…,θ]=[(X,Y)(X,Y)…(X,Y)]であり、これが本発明の出力となる。加えて、座標系において、x軸に沿ったトラック上の列車の位置は、Tとして表され、T=[T,…,T,…,T]である。さらに、干渉源と列車との間の距離は、図2においてd1、d2、d3...として表される。座標系は単に説明を目的としており、1D又は3D等の他のフォーマットも適用することができることに留意すべきである。
【0030】
本発明との関連において、以下のパラメータも定義される。
列車の無線機は、干渉電力を、Z=[Z,…,Z,…,Z]として測定する。
各時点にいずれの干渉源が送信しているかを示す潜在変数V=[V,…,V,…,V]を定義する。これは必須ではないが、以下の段落において論じられる方法を進めるのに好都合である。
θの空間を
【数1】
として離散化する。本発明において、位置の離散集合を用いて、本発明による方法を数値的に実施する。
【数2】
における全てのθについて位置-測定の依存性を以下のように定義する。
【数3】
ここで、μは、μ=a+b×log||T-θ||等の所定の関数によってT及びθから得られ、ここで、wは観測ノイズ(伝播チャネルにおけるシャドーイングに起因する)である。
選択的に、干渉源の測定値の相関を以下のように定義する。
【数4】
ここで、μ=[μ,μ
【数5】
である。この相関は、主に、移動デバイスの2つの検討される位置T及びT間のシャドーイング相関に起因する。シャドーイングは、通例、対数領域においてガウス分布である。いくつかのシステムにおいて、相関がおそらく存在しないため、これは選択的である。
【0031】
上述したように、本発明は、2つの主要ステップ、すなわち、干渉源分離及び位置推定を伴う。例として、以下のように2つの例示的な数学的手法が提案される。
反復的方法:この手法は、以下の方式で2つのステップを反復的に実施するように動作する。
干渉源分離:K平均クラスタリング方法が適用される。測定値から平均値への距離を最小化することによってVが計算される。
位置推定:分類ベクトルVを有することによって、最尤推定により干渉体の位置θを得ることができる。
連続的方法:ベイズ推論を用いることによって、相次ぐ測定により干渉源分離が漸進的に解かれる。次に、最大事後確率(MAP)推定を用いて干渉源の位置が得られる。
【0032】
これらの2つの手法は、以下の段落において更に論じられる。その前に、2つの主要ステップを実施するモデルが以下のように確立される:
非重複条件:実施形態において、干渉源間に衝突がないと仮定される。これは、或る瞬間に、1つの干渉源のみが信号を発することを意味する。この条件は、例えばCSMA/CAプロトコル又はCSMA/CDを用いることによって満たすことができる。
既知の列車軌道:任意の瞬間に、列車は、その列車の位置並びに速度及び方向を知る。
図2に示すもののような局所座標系が適用される。
時点nにおける列車と干渉源kとの間の距離:
【数6】
時点nにおいて干渉源kがアクティブである場合の列車における干渉受信電力:
【数7】
ここで、a及びbは、経路損失モデルの2つの係数であり、wn;kは、時点nにおける干渉体kに対する列車におけるシャドーフェージングを表す。
シャドーフェージングは、多変量ガウス分布に従い、2つの列車位置T及びT間の相関は以下のように表される。
【数8】
ここで、d _ρは、シャドーイングモデルの係数である(これも既知である)。
経路損失及びシャドーイングモデルは、既知であると想定される。
K個の干渉源が存在すると想定され、したがって、推定されるパラメータはそれらの位置である:
【数9】
列車において、無線モジュールは、時点1~Nの干渉の電力レベルを測定し、観測ベクトルは以下のように書くことができる。
【数10】
本発明において、K個の干渉体のうちのいずれが任意の時点にアクティブであるかは既知でない。この意味で、観測値は干渉源間で混合される。非重複条件を考慮すると、或る時点において、1つのみの干渉源が発していることが想定される。換言すれば、列車が信号を測定するとき、この信号は1つのみの干渉体に属する。これは、複数の干渉源が同時に発し、列車が測定するときに、これらの信号の組み合わせを測定する、より複雑な事例を回避するためである。
時点nにいずれの干渉源がアクティブ化されるかを示すために、以下の潜在変数が導入される。
【数11】
【0033】
このモデルに基づいて、ここで、2つの手法、すなわち、反復的方法及び連続的方法が論じられる。
【0034】
反復的方法:K平均クラスタリング+最尤位置推定
干渉源を分離するために、K平均クラスタリングアルゴリズムが、単純で効率的な方法として適用される。経路損失モデルが利用可能であるため、列車がTにあるときの干渉源kからの受信電力は、μn;k=a+b×logdn;kを中心とする。K平均アルゴリズムは、以下のように表される、観測値と平均点との間の距離を最小化することを目的とする。
【数12】
K平均クラスタリングアルゴリズムは、図3に示す擬似コードによって記述することができる。
【0035】
連続的方法:共同ベイズクラスタリング及び位置推定
連続的方法において、時点nにおいて、いずれの干渉源が発しているかを、以前のn-1の推定の結果に基づいて識別する必要がある。この目的に起因して、ベイズ手法は以下のように表される。
【数13】
【0036】
時点nの事前確率P(V|V1:n-1,Z1:n-1)に関する知識がない場合、一様分布に従うと想定する。尤度P(Z|V1:n-1,Z1:n-1,V)は、Vの各確率について以下のように計算される。
【数14】
【0037】
この式は、時点nにおいてk番目の干渉源が干渉していることがわかると、観測値Znの尤度は、k番目の干渉源に割り当てられた以前の観測値のみに依拠することを述べる結果となる。シャドーイングモデルにおいてわかるように、Z1:n;kは多変量ガウス確率変数であり、したがって、条件付き確率P(Zn;k|Z1:n-1;k,θ)はガウス分布であり、平均及び変数は以下のように表される。
【数15】
ここで、μn;kは干渉源kの時点nにおける平均を表し、
Σn|1:n-1;kは、干渉源kの時点nと時点1:n-1との間の相関行列を表し、
Σ1:n-1;kは、干渉源kの時点1:n-1の自己相関行列を表し、
μ1:n-1;kは、干渉源kの時点1:n-1における平均を表し、
Σ1:n-1|n;kは、干渉源kの時点1:n-1と時点nとの間の相関行列を表す。
【0038】
クラスタリング決定は以下のように表される:
【数16】
時点nにおける事後確率は以下のように計算される:
【数17】
【0039】
この事後確率は、次の時点n+1の事前確率のように作用し、最初の事前確率P(θ|Z0;k)は一様であると仮定される。
【0040】
最後の観測において、干渉源の位置は、最大事後確率(MAP)推定器によって以下のように推定される。
【数18】
【0041】
このアルゴリズムに基づいて、以下の2つの解決策が数値的に実施される。
解決策1
上述したアルゴリズムを数値的に実施するために、θ’の空間が離散化される。
【0042】
第1の解決策は、N個全ての観測値を一度に処理することである。この状況において、離散化は、良好な精度を得るために精緻である必要がある。したがって、高い計算複雑度及びメモリが必要とされる。
【0043】
特に、この第1の解決策は、図4に示す擬似コードによって記述することができる。
【0044】
解決策2:
代替的に、連続的手法を用いているとき、データは一度に処理される必要がない。実際に、データをより小さなサンプルに分け、離散化を緩和し、次に連続クラスタリングを用いて精度を漸進的に高めることが可能である。この方法は、低い複雑度を保証しながら良好な精度を維持するという意味で、サブセクションa)におけるアルゴリズムにより適している。このため、スケーラビリティの観点から、データの分割は、より多くの観測値を考慮に入れることを更に望む場合により適切である。
【0045】
この第2の解決策は、図5に示す擬似コードによって記述することができる。
【0046】
さらに、図6に示すように、連続的方法におけるこれらの手法は、他の列車の行程又はデータベースからの干渉源の位置に関する事前知識を考慮に入れることを可能にする。ここで、同じ干渉源S1、S2、S3…S8からの干渉を被るトラックTRに沿って2つの列車行程1及び2が存在する。最初に、干渉源に関する知識が入手可能でない場合、一様確率が課されることになる。列車行程の知識が得られると、以下の2つのデータ処理可能性が検討される。
1.バッチ単位:全てのデータが一度に処理され、出力はθの事後確率である。この事後確率は、他の行程の事前確率として作用する。
2.データ分割:測定値は、行程1におけるC11…C16及び行程2におけるC21…C26等の連続したクラスタに幾何学的に分割することができる。次に、以前のクラスタの事後確率は、現在のクラスタの事前確率とみなされ、例えば、C11はC12の事前確率であり、C12はC13の事前確率である。この手法は、正確性を維持しながら計算複雑度を低減するために、2つの方式に従ってθの選択範囲を狭めることを可能にする。
a.小さい事前確率を有するいくらかのθは除去される。残りの集合はより精緻に量子化される。
b.測定値の距離依存性を知ることによって、クラスタに対する大きな干渉体のゾーンを決定することができる。例えば、図6に示すように、クラスタC11についてゾーン1が決定され、大きな干渉源S1、S2及びS3をカバーし、クラスタC12についてゾーン2が決定され、大きな干渉源S2、S3及びS4をカバーする。この情報から、このゾーンの外側にある事前確率において何らかのθを除去することができ、例えば、ゾーン2において、干渉源S1が除去される。
【0047】
したがって、いくつかの列車行程について全ての位置の全ての測定値を収集し、これらの全体を処理するのではなく、干渉源の位置の推定を頻繁に更新することを可能にする実施態様を得ることが好ましい。
【0048】
クラスタの干渉源の推定を利用することを目的とする。この推定は、クラスタ間で相関し、このため、図6に示すように、1つのクラスタC11の推定結果が次のクラスタC12に有用であり、1つの行程内で以下同様とすることができる。すなわち、複数の行程について、第2の列車行程である行程2のクラスタC22に関連する観測値を処理しているとき、以前のクラスタC21の情報(現在の列車行程中に更新される)、並びに以前の列車行程である行程1において、現在のクラスタC11及び前のクラスタC12について既に行われた推定の双方が、推定のための事前情報として有用である。
【0049】
要するに、上述した例示的な通信ベースの列車制御システムにおいて、列車上の無線機がチャネルを観測し、列車が既知の軌道に沿って進行している間、各位置における干渉源からの干渉の電力レベルを測定する。干渉強度は、列車-干渉体距離に依拠し、このため、移動する列車は、干渉の信号強度を幾何学的にサンプリングすることを可能にし、したがって、干渉源の位置の推定を可能にする。
【0050】
これに関して、本発明は、システムにおける現行の無線ハードウェアを何ら複雑化することなく干渉源をジオローカライズするために、システムにおける無線ハードウェアの電力測定値のみに基づいて通信ベースの輸送システムにおける干渉源の空間特性を推定することができる。
【0051】
加えて、当業者に既知であるように、本発明による、上記で説明された上述の例示の解決策は、多くの方法、例えば、プロセッサによる実行のためのプログラム命令、ソフトウェアモジュール、マイクロコード、コンピュータ可読媒体上のコンピュータプログラム製品、論理回路、特定用途向け集積回路、ファームウェア等において実施することができる。本発明の実施形態は、完全にハードウェアの実施形態の形式、完全にソフトウェアの実施形態の形式、又はハードウェア要素及びソフトウェア要素の双方を含む実施形態の形式を取ることができる。好ましい実施形態において、本発明は、ソフトウェアにおいて実施され、ソフトウェアは、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含むが、これらに限定されない。
【0052】
さらに、本発明の実施形態は、コンピュータ、処理デバイス、又は任意の命令実行システムによる、又はこれらに関連した使用のためのプログラムコードを提供するコンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体からアクセス可能なコンピュータプログラム製品の形式を取ることができる。本明細書において、コンピュータ使用可能又はコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置又はデバイスによる、又はこれらに関連した使用のためのプログラムを収容、記憶、通信、又は送達することができる任意の装置とすることができる。媒体は、電子、磁気、光学、又は半導体システム(又は装置若しくはデバイス)とすることができる。コンピュータ可読媒体の例として、半導体又はソリッドステートメモリ、磁気テープ、取り外し可能コンピュータディスケット、RAM、リードオンリーメモリ(ROM)、リジッド磁気ディスク、光学ディスク等が挙げられるが、これらに限定されない。光学ディスクの現在の例として、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、コンパクトディスクリード/ライト(CD-R/W)及びDVDが挙げられる。
【0053】
本明細書において上記で説明した実施形態は、本発明の説明である。添付の特許請求の範囲から生じる本発明の範囲から離れることなく、実施形態に対し様々な変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】