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特表2023-515925トリプトファン光学プローブ及びその調製方法並びに使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】トリプトファン光学プローブ及びその調製方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230410BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20230410BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230410BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230410BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230410BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230410BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230410BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12Q1/6837 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549757
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 CN2021076315
(87)【国際公開番号】W WO2021164666
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】202010099424.3
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507166519
【氏名又は名称】▲華▼▲東▼理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 弋
(72)【発明者】
【氏名】趙 玉政
(72)【発明者】
【氏名】張 晨霞
(72)【発明者】
【氏名】黄 立
(72)【発明者】
【氏名】鄒 叶君
(72)【発明者】
【氏名】李 写
(72)【発明者】
【氏名】劉 書寧
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ80
4B063QR55
4B063QS32
4B063QS40
4B063QX02
4B064AG01
4B064CA19
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA46
(57)【要約】
本発明はトリプトファン光学プローブ及びその調製方法並びに使用に関する。一態様において、本発明は、トリプトファン感受性ポリペプチド又はその機能的バリアント及び光学活性ポリペプチド又はその機能的バリアントを含む光学プローブであって、光学活性ポリペプチド又はその機能的バリアントがトリプトファン感受性ポリペプチド又はその機能的バリアントの配列内にある、光学プローブに関する。本発明は、上記プローブの調製方法及びそのトリプトファン検出における使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリプトファン感受性ポリペプチドと光学活性ポリペプチドを含む光学プローブであって、光学活性ポリペプチドがトリプトファン感受性ポリペプチドの配列内にある光学プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学プローブであって、トリプトファン感受性ポリペプチドがSEQ ID NO:1に示される配列又はその機能断片、或いはそれと少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を有する光学プローブ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学プローブであって、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる部位、即ち、残基114~118、233~235及び/又は263~268にあり、
好ましくは、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268及び/又は267/268にあり、
好ましくは、前記トリプトファン感受性ポリペプチドが、下記部位、即ち、H13、T71、L84、D93、K105、N117、T130、V170、V192、F202、K214、Y217、K255、T259、I283から選ばれる部位における突然変異を含む光学プローブ。
【請求項4】
請求項3に記載の光学プローブであって、光学活性ポリペプチドがトリプトファン感受性ポリペプチドの残基263~268にある光学プローブ。
【請求項5】
核酸配列であって、
(1)請求項1~4の何れか1項に記載の光学プローブをコードするポリヌクレオチド、
(2)(1)の断片、
(3)(1)又は(2)の相補配列から選ばれる、核酸配列。
【請求項6】
請求項5に記載の核酸配列を含み、好ましくは、発現ベクターである、核酸コンストラクト。
【請求項7】
宿主細胞であって、
(1)請求項1~4の何れか1項に記載の光学プローブを発現し、
(2)請求項5に記載の核酸配列を含み、又は
(3)請求項6に記載の核酸コンストラクトを含む、宿主細胞。
【請求項8】
請求項7に記載の宿主細胞を培養すること、及び培養物から前記光学プローブを分離すること、を含む、請求項1~4の何れか1項に記載の光学プローブの調製方法。
【請求項9】
請求項1~4の何れか1項に記載の光学プローブ、請求項5に記載の核酸配列、又は請求項6に記載の核酸コンストラクトの、サンプルにおけるトリプトファンの検出又は化合物の選別における使用であって、前記検出がトリプトファン定性、局在又は定量検出を含む、使用。
【請求項10】
検出試薬キットであって、
(1)請求項1~4の何れか1項に記載の光学プローブ又は請求項8に記載の方法で調製される光学プローブ、
(2)請求項5に記載の核酸配列、
(3)請求項6に記載の核酸コンストラクト、又は
(4)請求項7に記載の細胞、及び
任意の光学プローブでトリプトファンを検出するためのその他の試薬を含む、検出試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学プローブ技術分野に関し、特に、トリプトファン光学プローブ及びその調製方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
L-トリプトファンは人間の成長発育に不可欠の必須アミノ酸の一つである。タンパク質を構成する20種類のアミノ酸のうち、トリプトファンは、タンパク質と細胞質に占める比率が最も小さく、タンパク質の合成を調製するほかに、その代謝物を含めて様々な生理機能にも関与し、生体内の多くの器官の発育と機能にとって非常に重要である。
【0003】
異なる組織においてトリプトファンの代謝が様々な生理機能に関わる。キヌレニン経路はヒトと哺乳動物の生体内トリプトファン代謝の主な経路であり、その大半が肝臓で発生する。当該経路において、トリプトファンは、トリプトファン-2.3-ジオキシゲナーゼ(TDO)(主に肝臓にある)又はインドールアミン-2.3-ジオキシゲナーゼ(IDO)(様々な組織に広く存在する)の作用を受けて、N-ホルミルキヌレニンとキヌレニンを産生してから、多段階酵素反応によりキノリン酸、ニコチン酸、キヌレン酸及びキサンツレン酸などの活性分子を産生する。キヌレニンは非選択的なN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の遮断剤であり、神経系の興奮を抑制する。キノリン酸は糖新生作用に関わり、NMDA受容体に結合することができ、神経伝達物質を興奮させることもできる。ニコチン酸はコエンザイムI(nicotinamide adenine dinucleotide,NAD)とコエンザイムII(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate,NADP)を合成するための前駆体であり、生体の酸化において水素キャリアの作用を果たしている。腸管と脳において、トリプトファンは、トリプトファン水酸化酵素(TPH)により触媒され、5-HTP(5-ヒドロキシトリプトファン)を合成してから、更にデカルボキシラーゼの作用を受けて、5-HT(5-ヒドロキシトリプタミン)に変換する。これは生体内のトリプトファン代謝のもう1つの重要な経路である。5-ヒドロキシトリプタミンは、脳の神経伝達物質であり、血小板の凝固因子及び全身の器官に分布する神経ホルモンであり、血管狭窄を引き起こし、大脳における5-ヒドロキシトリプタミンのレベル変化によって感情が変化する。松果体において、5-ヒドロキシトリプタミンは更にメラトニンに変換し、明らかな概日リズムがあり、睡眠と覚醒を調節することができ、抗酸化ストレスと免疫調節にも関与する。
【0004】
研究によれば、トリプトファン欠乏を特徴とする病状又は疾患が多く存在する。例えば、フルクトース吸収不良による腸管内のトリプトファン吸収異常により、血中トリプトファンの含有量が低下すると共に、憂うつにつながる。とうもろこしが多い食事又はその他のトリプトファン欠乏の食事は皮膚炎、下痢、認知症の症状を伴うナイアシン-トリプトファン欠乏症であるペラグラにつながることがある。ハートナップ病(Hartnup)はトリプトファンとその他のアミノ酸を適切に吸収できない疾患であり、その症状として、発疹、協調運動障害(小脳性運動失調)、うつ病又は精神病などの精神症状が挙げられる。特定の場合において、トリプトファンは神経毒と内毒素でもあり、長期間にわたり高レベルで不利な健康影響を生じる。例えば、グルタル酸尿症1型においてトリプトファンが長期間にわたり高レベルで発見され、ミトコンドリアのグルタリルCoAデヒドロゲナーゼ(GCDH)欠乏により、リジン、ヒドロキシリジン、トリプトファンが生体内で完全に分解できず、過量の中間分解産物が蓄積すると共に、大脳及びその他の器官を損傷する。高レベルのトリプトファンが好酸球増加-筋肉痛症候群(EMS)にも関わる。当該疾患は、治癒できないどころか、場合によって死に至るインフルエンザ様神経系疾患である。上記のことから、生理的条件下におけるトリプトファン濃度又は濃度トレンドを正確且つ迅速に測定することは、栄養状態の評価に利用されるほかに、更に様々な疾患の臨床的診断及びその後の対症療法監視にとって重要な価値を有する。
【0005】
現在、トリプトファンの最も一般的な検出方法は、HPLC法(Sadok, I.ら、J Sep Sci 2017, 40, (15), 3020-3045(非特許文献1))、高性能キャピラリー電気泳動法、質量分析法(Chen, T.ら、PLoS One 2016, 11, (9), e0162192(非特許文献2))、クロマトグラフィー、紫外線吸収法、可視光線光度法(Friedman, M. J Agric Food Chem 2004, 52, (3), 385-406(非特許文献3);Wu, Y.ら、Talanta 2018, 176, 604-609(非特許文献4))、近赤外線分光法(Fontaine, J.ら、J Agric Food Chem 2002, 50, (14), 3902-11(非特許文献5))、蛍光分光法、フローインジェクション分析法、ELISAなどがある。これらの検出分析方法は、専門的な分析機器又は煩雑な工程を必要とするため、人による誤差が出やすいほかに、インビトロ検出にのみ適用し、生細胞のトリプトファン濃度変化をリアルタイムで監視できない。そのため、細胞内外においてトリプトファンを簡易的、迅速的、且つ高特異的にリアルタイム、局在、定量、ハイスループットで検出できる新規検出方法を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Sadok, I.ら、J Sep Sci 2017, 40, (15), 3020-3045
【非特許文献2】Chen, T.ら、PLoS One 2016, 11, (9), e0162192
【非特許文献3】Friedman, M. J Agric Food Chem 2004, 52, (3), 385-406
【非特許文献4】Wu, Y.ら、Talanta 2018, 176, 604-609
【非特許文献5】Fontaine, J.ら、J Agric Food Chem 2002, 50, (14), 3902-11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、細胞内外においてトリプトファンをリアルタイム局在、ハイスループット、定量で検出するプローブ及び方法を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の発明目的を実現するために、以下の技術案を提供する。
本発明は、トリプトファン感受性ポリペプチドと光学活性ポリペプチドを含むトリプトファン光学プローブであって、光学活性ポリペプチドがトリプトファン感受性ポリペプチドの配列内にあるトリプトファン光学プローブを提供する。トリプトファン感受性ポリペプチドが光学活性ポリペプチド又はその機能的バリアントによって第1部分と第2部分に分けられている。
【0009】
本発明は、トリプトファン感受性ポリペプチドBと光学活性ポリペプチドAを含むトリプトファン光学プローブであって、光学活性ポリペプチドAがトリプトファン感受性ポリペプチドBの配列内にあり、トリプトファン感受性ポリペプチドBが第1部分B1と第2部分B2に分けられ、B1-A-B2式のプローブ構造が形成されるトリプトファン光学プローブを提供する。
【0010】
一実施形態において、トリプトファン感受性ポリペプチドがトリプトファン結合タンパク質又はその機能断片を含む。一実施形態において、トリプトファン感受性ポリペプチドが肺炎レンサ球菌Streptococcus pneumoniaeに由来する。一実施形態において、トリプトファン感受性ポリペプチドがトリプトファン結合タンパク質3lftである。一実施形態において、トリプトファン感受性ポリペプチドがSEQ ID NO:1に示される配列又はその断片、或いはそれと少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の配列同一性を有すると共にトリプトファン結合機能を保持する配列を有する。
【0011】
一実施形態において、光学活性ポリペプチドが蛍光タンパク質又はその機能的バリアントである。一実施形態において、蛍光タンパク質が黄色蛍光タンパク質(SEQ ID NO:2に示されるcpYFP)、サフランイエロー蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、緑色蛍光タンパク質(SEQ ID NO:3に示されるcpGFP)、青色蛍光タンパク質(SEQ ID NO:4に示されるcpBFP)、アップルレッド蛍光タンパク質(SEQ ID NO:5に示されるcpmApple)から選ばれる。好ましくは、光学活性ポリペプチドがcpYFPである。一実施形態において、蛍光タンパク質がSEQ ID NO:2~5の何れか1つに示される配列を有する。
【0012】
一実施形態において、光学プローブが前記光学活性ポリペプチドの側鎖上に連結される1つ又は複数のリンカーを更に含む。本発明に係るリンカーが任意長さの任意アミノ酸配列であってもよい。一実施形態において、光学活性ポリペプチドの側鎖が、5個以下のアミノ酸のリンカー、例えば、0、1、2、3、4個のアミノ酸のリンカーを含む。一実施形態において、光学活性ポリペプチドの側鎖のリンカーがアミノ酸Yを含む。一実施形態において、リンカーYが光学活性ポリペプチドのN末端及び/又はC末端にある。一実施形態において、光学プローブが、下記のように、即ち、トリプトファン感受性ポリペプチドの第1部分B1-Y-光学活性ポリペプチドA-トリプトファン感受性ポリペプチドの第2部分B2に示される。一実施形態において、本発明の光学プローブがリンカーを含まない。
【0013】
本発明に係る光学活性ポリペプチドがトリプトファン感受性ポリペプチドの任意部位にあってもよい。一実施形態において、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、残基114~118、233~235及び/又は263~268にあり、番号がトリプトファン結合タンパク質の全長に対応する。一実施形態において、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、残基114~118、233~235及び/又は263~268の、1つ又は複数のアミノ酸を置換し、番号がトリプトファン結合タンパク質の全長に対応する。
【0014】
一実施形態において、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268及び/又は267/268にある。好ましくは、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、263/265、263/266、263/267及び263/268にある。
【0015】
例示的な実施形態において、本発明のB1-A-B2式光学プローブは、cpYFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268又は267/268にあるプローブであってもよい。例示的な実施形態において、本発明のB1-A-B2式光学プローブは、cpYFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/118、115/118、116/118、117/118、233/235、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、265/266、266/267又は266/268にあるプローブであってもよい。好ましくは、本発明の光学プローブは、cpYFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、263/265、263/266、263/267及び263/268にあるプローブであってもよい。
【0016】
1つ又は複数の実施形態において、本発明の光学プローブは、cpGFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268又は267/268にあるプローブであってもよい。1つ又は複数の実施形態において、本発明の光学プローブは、cpGFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/117、114/118、115/117、116/117、116/118、117/118、233/234、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、265/267又は266/267にあるプローブであってもよい。好ましい実施形態において、本発明の光学プローブは、cpGFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、263/265、263/266、263/267及び263/268にあるプローブであってもよい。
【0017】
1つ又は複数の実施形態において、本発明の光学プローブは、cpBFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268又は267/268にあるプローブであってもよい。1つ又は複数の実施形態において、本発明の光学プローブは、cpBFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/117、114/118、115/118、116/118、233/235、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、265/266、又は266/267にあるプローブであってもよい。好ましい実施形態において、本発明の光学プローブは、cpBFPがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、263/265、263/266、263/267及び263/268にあるプローブであってもよい。
【0018】
1つ又は複数の実施形態において、本発明の光学プローブは、cpmAppleがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268又は267/268にあるプローブであってもよい。1つ又は複数の実施形態において、本発明の光学プローブは、cpmAppleがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、117/118、263/264、263/265、263/266、263/267、264/268又は265/266にあるプローブであってもよい。好ましい実施形態において、本発明の光学プローブは、cpmAppleがトリプトファン結合タンパク質の以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、263/264、263/265、263/266プローブであってもよい。
【0019】
一実施形態において、本発明の光学プローブがSEQ ID NO:6~9に示される配列を有し、又はこれらの配列からなる。
【0020】
本発明は、1つ又は複数の突然変異を有するトリプトファン感受性ポリペプチドを更に提供する。前記アミノ酸の突然変異がアミノ酸の修飾、置換、欠失又は配列の切断を含む。1つ又は複数の実施形態において、前記突然変異がトリプトファン結合タンパク質のH13、T71、L84、D93、K105、N117、T130、V170、V192、F202、K214、Y217、K255、T259、I283の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又は複数にある。例示的に、前記突然変異が、以下、即ち、H13F、H13W、T71F、T71W、L84F、L84W、D93F、D93W、K105F、K105W、N117F、N117W、T130F、T130W、V170F、V170W、V192F、V192W、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及び/又はI283Wの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又は複数から選ばれる。
【0021】
本発明は、1つ又は複数の突然変異を有するトリプトファン感受性ポリペプチドを含む光学プローブを更に提供する。1つ又は複数の実施形態において、光学プローブが上記に示されるように光学活性ポリペプチドが挿入される任意の光学プローブであると共に、前記光学プローブにおけるトリプトファン感受性ポリペプチドがH13、T71、L84、D93、K105、N117、T130、V170、V192、F202、K214、Y217、K255、T259、I283の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又は複数から選ばれる部位で突然変異を有する。1つ又は複数の実施形態において、突然変異したトリプトファン感受性ポリペプチドを含む光学プローブは突然変異していない対照物よりトリプトファンに対する応答が低くない。好ましくは、前記突然変異が、以下、即ち、H13F、L84F、L84W、D93F、D93W、K105F、K105W、N117F、N117W、V170F、V170W、V192F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及びI283Wの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ又は複数から選ばれる。
【0022】
例示的な実施形態において、本発明の光学プローブは、トリプトファン結合タンパク質の114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268又は267/268から選ばれる1つ又は複数の部位に蛍光タンパク質が挿入されると共に、以下、即ち、H13F、L84F、L84W、D93F、D93W、K105F、K105W、N117F、N117W、V170F、V170W、V192F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及びI283Wから選ばれる1つ又は複数の突然変異を有する融合ポリペプチドであってもよい。好ましくは、本発明の光学プローブは、トリプトファン結合タンパク質の263/265、263/266又は263/267から選ばれる1つ又は複数の部位にcpYFPが挿入されると共に、以下、即ち、L84F、K105F、K105W、N117F、V170F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F又はI283Wから選ばれる1つ又は複数の突然変異を有する融合ポリペプチドである。例示的な実施形態において、前記トリプトファン結合タンパク質がSEQ ID NO:1である。好ましくは、本発明の光学プローブがSEQ ID NO:10~39に示される配列を有し、又はこれらの配列からなる。
【0023】
本発明により提供される光学プローブが、アミノ酸配列SEQ ID NO:6~39の何れか1つ又はそのバリアントを含む。一実施形態において、本発明により提供される光学プローブが、アミノ酸配列SEQ ID NO:6~39の何れか1つと少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の配列同一性を有すると共にトリプトファン検出機能を保持する配列を含む。好ましい実施形態において、本発明により提供される光学プローブが、アミノ酸配列SEQ ID NO:6~39の何れか1つと実質的に類似又は同様の配列を含む。より好ましい実施形態において、本発明により提供される光学プローブが、SEQ ID NO:10~39の何れか1つを含み、又はこれらの配列からなる。
【0024】
本発明は、本明細書に記載される光学プローブとその他のポリペプチドとを含む融合ポリペプチドを更に提供する。幾つかの実施形態において、その他のポリペプチドが前記光学プローブのN末端及び/又はC末端にある。幾つかの実施形態において、その他のポリペプチドが、光学プローブを異なるオルガネラ又はサブオルガネラに局在させるポリペプチドと、精製用タグ又はイムノブロット用タグを含む。
【0025】
本発明は、本明細書に記載されるポリペプチド、プローブ又はタンパク質をコードする核酸配列或いはその相補配列若しくは断片を更に提供する。一実施形態において、本発明の核酸配列が、(1)SEQ ID NO:6~39の何れか1つに示されるアミノ酸配列のコード配列又はその相補配列、(2)(1)と少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%又は少なくとも50%の同一性を有する配列、(3)(1)又は(2)の断片、から選ばれる。1つ又は複数の実施形態において、前記断片がプライマーである。一実施形態において、本発明の核酸配列がヌクレオチド配列SEQ ID NO:40又はそのバリアントを含み、前記バリアントによりコードされるアミノ酸配列がトリプトファン検出機能を有する。好ましい実施形態において、本発明は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:40と少なくとも99%、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%又は少なくとも50%の同一性を有する配列を含む核酸配列を提供する。別の好ましい実施形態において、本発明は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:40と実質的に類似又は同様のヌクレオチド配列を含む核酸配列を提供する。
【0026】
本発明は、本発明の光学プローブ又は融合ポリペプチドの断片、類似体、誘導体、可溶性断片及びバリアントをコードする核酸配列或いはその相補配列を含む、上記核酸配列の相補配列又はそのバリアントに更に関する。
【0027】
本発明は、本明細書に記載される核酸配列又はその相補配列を含む核酸コンストラクトであって、当該核酸配列が本発明に係る光学プローブ又は融合ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトを更に提供する。1つ又は複数の実施形態において、前記核酸コンストラクトがクローニングベクター、発現ベクター又は組換えベクターである。1つ又は複数の実施形態において、前記核酸配列が発現制御配列に操作可能に連結される。幾つかの実施形態において、発現ベクターが原核細胞発現ベクター、真核細胞発現ベクター及びウイルスベクターから選ばれる。
【0028】
本発明は、本発明に係る核酸配列又は核酸コンストラクトを含む細胞を更に提供する。1つ又は複数の実施形態において、前記細胞が本明細書に記載される光学プローブ又は融合ポリペプチドを発現する。
【0029】
本発明は、本明細書に記載されるトリプトファン光学プローブ又は融合ポリペプチド、或いは本明細書に記載される方法で調製されるトリプトファン光学プローブ又は融合ポリペプチドを含む検出試薬キットを更に提供する。
【0030】
本発明は、本明細書に記載される光学プローブ又は融合ポリペプチドを発現する細胞を提供すること、前記細胞の発現条件で前記細胞を培養すること、及び光学プローブ又は融合ポリペプチドを分離すること、を含む、本明細書に記載される光学プローブの調製方法を提供する。一実施形態において、本明細書に記載されるトリプトファン光学プローブ又は融合ポリペプチドの調製方法は、1)本明細書に記載されるトリプトファン光学プローブをコードする発現ベクターを宿主細胞に移動する工程と、2)前記発現ベクターの発現に適する条件で前記宿主細胞を培養する工程と、3)トリプトファン光学プローブを分離する工程と、を含む。
【0031】
本発明は、本明細書に記載される光学プローブ又は融合ポリペプチド、或いは本明細書に記載される方法で調製される光学プローブ又は融合ポリペプチドをサンプルに接触させること、及び光学活性ポリペプチドの変化を検出すること、を含む、サンプルにおけるトリプトファンの検出方法を更に提供する。前記検出は、インビボ、インビトロ、サブオルガネラ又はインサイチュで行ってもよい。前記サンプルは、例えば、血液である。
【0032】
本発明は、本明細書に記載される光学プローブ又は融合ポリペプチド、或いは本明細書に記載される方法で調製される光学プローブ又は融合ポリペプチドをサンプルに接触させること、光学活性ポリペプチドの変化を検出すること、及び光学活性ポリペプチドの変化によってサンプルにおけるトリプトファンを定量化すること、を含む、サンプルにおけるトリプトファンの定量方法を更に提供する。
【0033】
本発明は、本明細書に記載される光学プローブ又は融合ポリペプチド、或いは本明細書に記載される方法で調製される光学プローブ又は融合ポリペプチドを候補化合物に接触させること、光学活性ポリペプチドの変化を検出すること、及び光学活性ポリペプチドの変化によって化合物を選別すること、を含む、化合物(例えば、薬物)の選別方法を更に提供する。前記方法は、ハイスループットで化合物を選別できる。
【0034】
本発明は、本明細書に記載されるトリプトファン光学プローブ又は融合ポリペプチド、或いは本明細書に記載される方法で調製されるトリプトファン光学プローブ又は融合ポリペプチドの、トリプトファンの細胞内/外局在における使用、を更に提供する。1つ又は複数の実施形態において、前記局在がリアルタイム局在である。
【発明の効果】
【0035】
本発明は下記の優位性を有する。本発明により提供されるトリプトファン光学プローブが成熟しやすく、蛍光の動的変化が大きく、特異性が良好であると共に、遺伝子操作の方法により細胞で発現でき、細胞内外においてリアルタイム局在、ハイスループット、定量でトリプトファンを検出できるため、時間がかかるサンプルの処理工程が簡略化された。実験効果によれば、本願により提供されるトリプトファン光学プローブは、トリプトファンに対する最高応答が対照組の9倍以上であり、且つ、細胞質、ミトコンドリア、細胞核、小胞体、リソソーム及びゴルジ体などのサブオルガネラ構造で細胞の局在、定性、定量検出ができると共に、ハイスループットの化合物選別及び血中トリプトファンの定量検出ができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下、図面と実施例を参照しながら、本発明を具体的に説明する。
図1図1は、実施例1に係る例示的なトリプトファン光学プローブのSDS-PAGE図である。
図2図2は、実施例2に係る例示的な、cpYFPとトリプトファン結合タンパク質を含むトリプトファン光学プローブのトリプトファンに対する応答の変化図である。
図3図3は、実施例3に係る例示的な、cpGFPとトリプトファン結合タンパク質を含むトリプトファン光学プローブのトリプトファンに対する応答の変化図である。
図4図4は、実施例4に係る例示的な、cpBFPとトリプトファン結合タンパク質を含むトリプトファン光学プローブのトリプトファンに対する応答の変化図である。
図5図5は、実施例5に係る例示的な、cpmAppleとトリプトファン結合タンパク質を含むトリプトファン光学プローブのトリプトファンに対する応答の変化図である。
図6図6は、実施例6に係る例示的なトリプトファン光学プローブの異なる濃度のトリプトファンに対する滴定曲線である。
図7図7は、実施例6に係る例示的なトリプトファン光学プローブの20種類のアミノ酸に対する特異性の検出のヒストグラムである。
図8図8は、実施例7に係る例示的な、突然変異を有するトリプトファン光学プローブのトリプトファンに対する応答のヒストグラムである。
図9A図9A~Cは、実施例8に係る例示的なトリプトファン光学プローブの蛍光スペクトル特性図である。
図9B図9A~Cは、実施例8に係る例示的なトリプトファン光学プローブの蛍光スペクトル特性図である。
図9C図9A~Cは、実施例8に係る例示的なトリプトファン光学プローブの蛍光スペクトル特性図である。
図10図10は、実施例8に係る例示的なトリプトファン光学プローブの異なる濃度のトリプトファンに対する滴定曲線である。
図11図11は、実施例8に係る例示的なトリプトファン光学プローブの20種類のアミノ酸に対する特異性の検出のヒストグラムである。
図12図12は、実施例9に係る例示的なトリプトファン光学プローブの哺乳動物細胞におけるサブオルガネラ局在の写真である。
図13図13は、実施例10に係る、例示的なトリプトファン光学プローブの哺乳動物細胞の細胞質におけるトリプトファン濃度に対する動的監視の模式図である。
図14図14は、実施例11に係る、例示的なトリプトファン光学プローブの生細胞レベルにおけるハイスループット化合物選別の散布図である。
図15図15は、実施例12に係る例示的なトリプトファン光学プローブのマウスとヒト血液におけるトリプトファンに対する定量のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
数値又は範囲を示す場合、本明細書に使用される用語「約」とは、当該数値又は範囲が所定数値又は範囲の20%以内、10%以内及び5%以内であることを指す。
【0038】
本明細書に使用される用語「トリプトファン感受性ポリペプチド」又は「トリプトファン応答性ポリペプチド」とは、トリプトファンに対して応答するポリペプチドを指す。前記応答は、感受性ポリペプチドの相互作用に関するポリペプチドの化学、生物学、電気学又は生理学パラメーターの任意応答を含む。応答は、例えば、ポリペプチドのアミノ酸又はペプチド断片の方向の変化などの小さい変化、及び、例えば、プロトン化、電気化学ポテンシャル及び/又は立体配座の変化などの、例えばポリペプチドの一次、二次又は三次構造の変化を含む。「立体配座」は、分子のうちの、ペンダント基を備える分子の一次、二次及び三次構造の立体配置である。分子の立体構造が変化した場合、立体配座が変化する。立体配座の変化の実例は、αヘリックスからβシートへの変換、又はβシートからαヘリックスへの変換を含む。検出された変更が立体配座の変更でなくても、蛍光タンパク質部分の蛍光が変更されればよいと、理解してもよい。本明細書に記載されるトリプトファン感受性ポリペプチドはその機能的バリアントを更に含んでもよい。トリプトファン感受性ポリペプチドの機能的バリアントは、トリプトファンと相互作用することで、親トリプトファン感受性ポリペプチドと相同又は類似な変化が発生できるバリアントを含むが、これらに限定されない。
【0039】
本発明に係るトリプトファン感受性ポリペプチドは、トリプトファン結合タンパク質3lft又はそれと90%以上の相同性を有するバリアントを含むが、これらに限定されない。本発明に係る例示的なトリプトファン結合タンパク質3lftが肺炎レンサ球菌Streptococcus pneumoniaeに由来する。3lftはABCトランスロケータータンパク質ファミリーであり、2つの構造ドメインからなり、2つの構造ドメインが3つの柔らかいアミノ酸のペプチド鎖により連結される。トリプトファン結合タンパク質がトリプトファン濃度変化を感知でき、トリプトファン濃度の動的変化過程においてトリプトファン結合タンパク質の立体配座が変化する。例示的な3lftタンパク質がSEQ ID NO:1に示される。1つ又は複数の実施形態において、トリプトファン感受性ポリペプチドがタンパク質のトリプトファン結合ドメインを含むが、DNA結合ドメインを含まない。本発明の光学プローブ又はトリプトファン結合タンパク質を記載する場合(例えば、挿入部位又は突然変異部位を記載する場合)に言及されるアミノ酸残基番号はSEQ ID NO:1を参照する。
【0040】
本明細書に使用される用語「光学プローブ」とは、光学活性ポリペプチドと融合するトリプトファン感受性ポリペプチドを指す。発明者は、トリプトファン感受性ポリペプチド、例えば、トリプトファン結合タンパク質が生理濃度のトリプトファンに特異的に結合することで発生された立体配座の変化により、光学活性ポリペプチド(例えば、蛍光タンパク質)の立体配座の変化が起こされて、更に光学活性ポリペプチドの光学特性の変化が起こされること、を発見した。トリプトファンの異なる濃度で測定された蛍光タンパク質の蛍光を基に検量線を作成することで、トリプトファンの存在及び/又はレベルを検出及び分析できる。
【0041】
本発明の光学プローブにおいて、光学活性ポリペプチド(例えば、蛍光タンパク質)がトリプトファン感受性ポリペプチドに操作可能に挿入される。タンパク質に基づく「光学活性ポリペプチド」は蛍光放出能力を有するポリペプチドである。蛍光は光学活性ポリペプチドの光学特性であり、本発明の光学プローブの応答性の検出手段として利用してもよい。好ましくは、未活性化と活性化の立体配座状態で容易に区別できる蛍光特性を有するように、タンパク質の基質を選択する。本明細書に記載される光学活性ポリペプチドがその機能的バリアントを更に含んでもよい。光学活性ポリペプチドの機能的バリアントは、親光学活性ポリペプチドと相同又は類似な蛍光特性の変化が発生できるバリアントを含むが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書に使用される用語「蛍光タンパク質」とは、励起光の照射により蛍光が放出されるタンパク質を指す。蛍光タンパク質は、生物学分野における基本的な検出手段として、例えば、バイオテクノロジー分野でよく使われる緑色蛍光タンパク質GFP、及び、当該タンパク質の突然変異により誘導される環状転位の青色蛍光タンパク質(cpBFP)、環状転位の緑色蛍光タンパク質(cpGFP)、環状転位の黄色蛍光タンパク質(cpYFP)などが挙げられるが、更に、本技術分野でよく使われる赤色蛍光タンパク質RFP、及び、例えば、cpmApple、cpmOrange、cpmKateなどの当該タンパク質により誘導される環状転位のタンパク質が挙げられる。本分野では、本発明に利用できる蛍光タンパク質及びその配列が知られている。例示的に、cpYFPがSEQ ID NO:2に示され、cpGFPがSEQ ID NO:3に示され、cpBFPがSEQ ID NO:4に示され、cpmAppleがSEQ ID NO:5に示される。
【0043】
「リンカー」又は「リンカー領域」とは、本発明のポリペプチド、タンパク質又は核酸において、2つの部分を連結するアミノ酸又はヌクレオチド配列を指す。例示的に、本発明において、トリプトファン感受性ポリペプチドと光学活性ポリペプチドのリンカー領域のアミノ基末端のアミノ酸数が0~3個に選択され、カルボキシ基末端のアミノ酸数が0~2個に選択されるが、組換え光学プローブは基本的なユニットとして機能性タンパク質に連結される場合、組換え光学プローブのアミノ酸又はカルボキシ基末端に融合されてもよい。リンカー配列は、例えば、Yである、1つ又は複数の柔らかいアミノ酸からなる短鎖ペプチドであってもよい。
【0044】
本発明に係るトリプトファン光学プローブは、例えばトリプトファン結合タンパク質又はそのバリアントであるトリプトファン感受性ポリペプチド(B)と、例えば蛍光タンパク質である光学活性ポリペプチド(A)とを含む。光学活性ポリペプチド(A)がトリプトファン感受性ポリペプチド(B)に挿入され、BがB1とB2の2つの部分に分けられ、B1-A-B2式のプローブ構造が形成される。トリプトファン感受性ポリペプチドBがトリプトファンと相互作用することで、光学活性ポリペプチド(A)の光シグナルが強くなる。
【0045】
本発明の光学プローブにおいて、光学活性ポリペプチドがトリプトファン感受性ポリペプチドの任意部位にあってもよい。一実施形態において、光学活性ポリペプチドがN-C方向でN-C方向のトリプトファン感受性ポリペプチドの任意部位にある。具体的に、光学活性ポリペプチドがトリプトファン感受性ポリペプチドのフレキシブル領域にある。前記フレキシブル領域とは、環状構造ドメインなど、タンパク質の高次構造に存在する幾つかの特別な構造を指す。これらの構造ドメインがタンパク質のその他の高次構造より高い移動性と柔軟性を有すると共に、当該領域は当該タンパク質がリガンドに結合した後に、立体構造の立体配座が動的に変化する。本発明に係るフレキシブル領域は、主にトリプトファン結合タンパク質における挿入部位のある領域を指し、例えば、アミノ酸残基の114~118、233~235及び/又は263~268領域である。例示的に、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268及び/又は267/268にある。好ましくは、光学活性ポリペプチドが、トリプトファン感受性ポリペプチドの以下から選ばれる1つ又は複数の部位、即ち、263/265、263/266、263/267及び263/268にある。本明細書において、「X/Y」の形で表される部位の2つの数字が連続する整数である場合、光学活性ポリペプチドが当該数字に示されるアミノ酸の間にあることを示す。例えば、挿入部位114/115は、光学活性ポリペプチドがトリプトファン感受性ポリペプチドのアミノ酸114と115の間にあることを示す。「X/Y」の形で表される部位の2つの数字が連続する整数ではない場合、当該数字に示されるアミノ酸の間のアミノ酸が光学活性ポリペプチドで置換されることを示す。例えば、挿入部位114/116は、トリプトファン感受性ポリペプチドのアミノ酸115が光学活性ポリペプチドで置換されることを示す。
【0046】
特定のポリペプチド又はタンパク質が言及される場合、本発明で使用される用語「バリアント」又は「ミュータント」は、前記ポリペプチド又はタンパク質と相同な機能を有するが、配列が異なるバリアントを含む。ポリペプチド又はタンパク質のバリアントは、相同性配列、保存的バリアント、対立遺伝子バリアント、自然発生ミュータント、誘発ミュータントを含んでもよい。これらのバリアントは、前記ポリペプチド又はタンパク質の配列に1つ又は複数の(通常は1~30個であり、好ましくは1~20個であり、より好ましくは1~10個であり、最も好ましくは1~5個である)アミノ酸が欠失、挿入及び/又は置換され、及びそのカルボキシ基末端及び/又はアミノ基末端に1つ又は複数の(通常は20個以下であり、好ましくは10個以下であり、より好ましくは5個以下である)アミノ酸が付加されることで得られた配列を含むが、これらに限定されない。これらのバリアントは、前記ポリペプチド又はタンパク質との配列同一性が少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%であるポリペプチド又はタンパク質を更に含んでもよい。理論に拘束されずに、アミノ酸残基が変化しても、ポリペプチド又はタンパク質の全体の立体配置と機能が変化しないこと、即ち、機能的保存突然変異が好ましい。例えば、本分野において、近い特性又は類似的な特性を持つアミノ酸で置換した場合、通常、ポリペプチド又はタンパク質の機能が変化することはない。本分野において、通常、類似的な特性を持つアミノ酸は、類似的な側鎖を有するアミノ酸ファミリーであり、本分野では明確に定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β-分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。また、例えば、アミノ基末端及び/又はカルボキシ基末端に1つ又は複数のアミノ酸が付加された場合でも、通常、ポリペプチド又はタンパク質の機能が変化することはない。一般的に知られている様々な非遺伝性コードアミノ酸の保存的なアミノ酸置換については、本分野で既に知られている。その他の非コードアミノ酸の保存的な置換はその物理特性と遺伝性コードアミノ酸の特性との比較によって決定される。
【0047】
2つ以上のポリペプチド又は核酸分子配列において、用語「同一性」又は「同一性パーセンテージ」は、手作業の整列によるか、又は目視検査による、配列比較アルゴリズムなどの当技術分野で公知の方法を使用して測定するとおり、比較ウィンドウ又は指定領域にわたる最大の一致について比較及び整列を行う場合に、同じである2つ以上の配列若しくはサブ配列、又は、指定領域にわたり同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの特定のパーセントを有する(例えば、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%同一である)。例えば、配列同一性パーセンテージと配列類似性パーセンテージの測定に適する好ましいアルゴリズムは、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、Altschulら(1977) Nucleic Acids Res.25:3389及びAltschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403をそれぞれ参照できる。
【0048】
遺伝子クローン操作では、適切な制限酵素切断部位を常に設計する必要があるため、発現されるポリペプチド又はタンパク質末端に1つ又は複数の無関係な残基が導入されるが、目標ポリペプチド又はタンパク質の活性に影響を与えないことは、当業者にとって周知である。また、例えば、融合タンパク質の構築、組換えタンパク質発現の促進、宿主細胞外に自動的に分泌される組換えタンパク質の取得、又は組換えタンパク質精製の支援のために、常に特定のアミノ酸を組換えタンパク質のN-末端、C-末端又は当該タンパク質のその他の適切な領域に付加する必要がある。当該タンパク質のその他の適切な領域は、例えば、適切なリンカーペプチド、シグナルペプチド、リーダーペプチド、末端延長、グルタチオン-S-転移酵素(GST)、マルトースE結合タンパク質、タンパク質A、6His又はFlagなどのタグ、又はFactor Xa、トロンビン或いはエンテロキナーゼのタンパク質分解酵素部位を含むが、これらに限定されない。
【0049】
本発明の光学プローブは突然変異を有するトリプトファン感受性ポリペプチドを含んでもよい。前記突然変異が、例えば、H13、T71、L84、D93、K105、N117、T130、V170、V192、F202、K214、Y217、K255、T259及び/又はI283などの部位の突然変異である。例示的に、前記突然変異が、H13F、H13W、T71F、T71W、L84F、L84W、D93F、D93W、K105F、K105W、N117F、N117W、T130F、T130W、V170F、V170W、V192F、V192W、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及び/又はI283Wから選ばれる1つ又は複数である。1つ又は複数の実施形態において、前記突然変異が、H13F、L84F、L84W、D93F、D93W、K105F、K105W、N117F、N117W、V170F、V170W、V192F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及びI283Wから選ばれる1つ又は複数である。好ましい実施形態において、前記突然変異が、L84F、K105F、K105W、N117F、V170F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及び/又はI283Wから選ばれる1つ又は複数である。
【0050】
例示的な実施形態において、本発明のB1-A-B2式光学プローブは、3lftの114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268又は267/268から選ばれる1つ又は複数の部位にcpYFPが挿入されると共に、以下、即ち、H13F、L84F、L84W、D93F、D93W、K105F、K105W、N117F、N117W、V170F、V170W、V192F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及びI283Wから選ばれる1つ又は複数の突然変異を有するプローブであってもよい。好ましくは、光学プローブは、3lftの263/265、263/266又は263/267から選ばれる1つ又は複数の部位にcpYFPが挿入されると共に、以下、即ち、L84F、K105F、K105W、N117F、V170F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F、I283W、及び/又はI283Wから選ばれる1つ又は複数の突然変異を有するプローブである。例示的な配列がSEQ ID NO:10~39に示される。
【0051】
本発明により提供される光学プローブが、アミノ酸配列SEQ ID NO:6~39の何れか1つ又はそのバリアントを含む。一実施形態において、本発明により提供される光学プローブが、アミノ酸配列SEQ ID NO:6~39の何れか1つと少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含む。好ましい実施形態において、本発明により提供される光学プローブが、アミノ酸配列SEQ ID NO:6~39の何れか1つと実質的に類似又は同様の配列を含む。より好ましい実施形態において、本発明により提供される光学プローブが、SEQ ID NO:10~39の何れか1つを含み、又はこれらの配列からなる。
【0052】
本明細書に使用される用語「機能断片」、「機能的バリアント」、「誘導体」及び「類似体」とは、元のポリペプチド又はタンパク質(例えば、3lftタンパク質又は蛍光タンパク質)と相同な生物学機能又は活性を基本的に保持するタンパク質を指す。本発明のポリペプチド又はタンパク質(例えば、3lftタンパク質又は蛍光タンパク質)の機能的バリアント、誘導体或いは類似体は、(i)1つ又は複数の保存的な又は非保存的なアミノ酸残基(好ましくは保存的なアミノ酸残基)が置換され、当該置換されるアミノ酸残基が遺伝コードによりコードされてもよく、或いはコードされなくてもよいタンパク質、(ii)1つ又は複数のアミノ酸残基に置換基を有するタンパク質、(iii)成熟したタンパク質がその他の化合物(例えば、ポリエチレングリコールなどの、タンパク質の半減期を延長する化合物)に融合して形成されたタンパク質、或いは(iv)付加されたアミノ酸配列が当該タンパク質配列に融合されて形成されたタンパク質(例えば、分泌配列、当該タンパク質を精製するための配列又はタンパク質構成配列、或いは抗原IgG断片と形成された融合ポリペプチド)であってもよい。本明細書に教示されるように、これらの機能的バリアント、誘導体及び類似体は、当業者の周知範囲である。
【0053】
前記類似体と元のポリペプチド又はタンパク質との相違点は、アミノ酸配列の相違点であってもよく、配列に影響を与えない修飾形態の相違点であってもよく、或いはその両方であってもよい。これらのタンパク質は天然又は誘導の遺伝的バリアントを含む。誘導バリアントは様々な技術により得られるが、例えば、放射により、又は突然変異誘起剤に暴露させることで、ランダムな突然変異を誘発し、或いは、部位特異的突然変異誘発法又はその他の既知の分子生物学技術により得られる。
【0054】
本発明の融合ポリペプチドは、本明細書に記載される光学プローブとその他のポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される光学プローブはそれと融合するその他のポリペプチドを更に含む。本明細書に記載されるその他のポリペプチドが光学プローブの特性に影響を与えない。その他のポリペプチドは前記光学プローブのN末端及び/又はC末端にあってもよい。幾つかの実施形態において、その他のポリペプチドが、光学プローブを異なるオルガネラ又はサブオルガネラに局在させるポリペプチドと、精製用タグ又はイムノブロット用タグを含む。本明細書に記載される融合ポリペプチドにおける光学プローブとその他のポリペプチドとの間にはリンカーを有してもよい。
【0055】
本明細書に記載されるサブオルガネラは、細胞質、ミトコンドリア、細胞核、小胞体、細胞膜、ゴルジ体、リソソーム及びペルオキシソームなどを含む。幾つかの実施形態において、精製するためのタグ又はイムノブロットのためのタグは、6ヒスチジン(6*His)、グルタチオン-S-転移酵素(GST)、Flagを含む。
【0056】
本発明の発現ベクターは、発現制御配列に操作可能に連結される本発明に係る核酸配列又はその相補配列を含み、当該核酸配列が本発明に係る光学プローブ又は融合ポリペプチドをコードする。幾つかの実施形態において、発現ベクターが原核細胞発現ベクター、真核細胞発現ベクター及びウイルスベクターから選ばれる。幾つかの実施形態において、好ましくは、原核細胞発現ベクターは、プラスミドpCDFが本明細書に記載される核酸配列に操作可能に連結されることで得られる。幾つかの実施形態において、発現制御配列が、複製起点、プロモーター、エンハンサー、オペロン、ターミネーター、リボソーム結合部位を含む。
【0057】
本発明は、下記の工程、即ち、1)本明細書に記載されるトリプトファン光学プローブをコードする核酸配列を発現ベクターに組み込む工程と、2)発現ベクターを宿主細胞に移動する工程と、3)前記発現ベクターの発現に適する条件で前記宿主細胞を培養する工程と、(4)トリプトファン光学プローブを分離する工程と、を含む、上記トリプトファン光学プローブの調製方法を更に提供する。
【0058】
本発明で使用される用語「核酸」、「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」又は「核酸配列」はDNA形態又はRNA形態であってもよい。DNA形態はcDNA、ゲノムDNA又は人工合成DNAを含む。DNAは一本鎖又は二本鎖であってもよい。DNAはコード鎖又は非コード鎖であってもよい。核酸が言及される場合、本明細書に使用される用語「バリアント」は、天然に発生する対立遺伝子バリアント又は天然に発生しないバリアントであってもよい。これらのヌクレオチドバリアントは、縮退バリアント、置換バリアント、欠失バリアント及び挿入バリアントを含む。本発明の核酸は、前記核酸配列との配列同一性が少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は100%であるヌクレオチド配列を含んでもよい。本発明は上記配列とハイブリダイゼーションを行う核酸断片に更に関する。例示的な実施形態において、核酸配列は、SEQ ID NO:40に示されるが、トリプトファン結合タンパク質の機能断片の263/266部位にcpYFPが挿入されると共にT259F突然変異を有するプローブのコード配列を示す。本明細書に使用される「核酸断片」の長さは、少なくとも15個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも30個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも50個のヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも100個のヌクレオチドを含む。核酸断片は核酸の増幅技術(例えば、PCR)に利用できる。
【0059】
本発明の光学プローブ又は融合ポリペプチドの全長配列或いはその断片は、通常、PCR増幅法、人工合成法又は組換え法により得られる。PCR増幅法について、本発明に開示されたヌクレオチド配列に応じてプライマーを設計し、市販されるcDNAライブラリー又は当業者の既知の通常方法により調製されるcDNAライブラリーをテンプレートとして増幅して、関連配列を得る。ヌクレオチド配列が2500bpより大きい場合、好ましくはPCR増幅を2~6回行った後に、それぞれ増幅された断片を正確な順番で結合する。本発明は、前記PCR増幅の過程とシステムについて特に限定せず、本分野における通常のPCR増幅過程とシステムを利用すればよい。更に組換え法により関連配列を大量に得ることができる。通常、それをベクターにクローニングして、細胞に導入した後に、通常の方法により増殖した宿主細胞から分離・精製して関連ポリペプチド又はタンパク質を得る。また、特に断片の長さが短い場合、人工合成方法により関連配列を合成してもよい。本発明において、光学プローブのヌクレオチド配列が2500bpより小さい場合、人工合成方法により合成してもよい。前記人工合成方法は、本分野における通常のDNA人工合成方法であり、その他の要求が特にない。通常、複数の小さい断片を合成した後に、これらを結合して長い配列の断片を得る。現在、化学合成だけにより、本発明のタンパク質(又はその機能的バリアント、誘導体或いは類似体)をコードするDNA配列を得ることができる。その後、当該DNA配列を本分野における既知の様々な既存DNA分子(例えば、ベクター)と細胞に導入する。突然変異PCR又は化学合成などの方法により突然変異を本発明のタンパク質配列に導入してもよい。
【0060】
本発明は、本明細書に記載される光学プローブ、融合ポリペプチド、ポリヌクレオチド又は本明細書に記載される方法で調製される光学プローブ或いは融合ポリペプチドを含む検出試薬キットを更に提供する。当該試薬キットは、光学プローブでトリプトファンを検出するためのその他の試薬を、更に任意に含む。本分野において通常の前記その他の試薬が知られている。
【0061】
本発明は、本明細書に記載されるポリヌクレオチド、及びこれらの配列に操作可能に連結される1つ又は複数の調節配列を含む核酸コンストラクトにも関する。本発明に係るポリヌクレオチドは、前記ポリペプチド又はタンパク質の発現を確実にするために、様々な形態で操作されてもよい。核酸コンストラクトをベクターに挿入する前に、発現ベクターの相違点又は要求に応じて核酸コンストラクトを操作してもよい。組換えDNA方法でポリヌクレオチド配列を変更する技術は本分野で既知である。
【0062】
特定の実施形態において、前記核酸コンストラクトはベクターである。ベクターは、クローニングベクター、発現ベクター、又は、例えば相同組換えベクターのような遺伝子ノックインベクターであってもよい。本発明のポリヌクレオチドは、例えば、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドなどの、様々なタイプのベクターにクローニングされてもよい。クローニングベクターは、本発明のタンパク質又はポリペプチドのコード配列の提供に利用できる。発現ベクターは細菌ベクター又はウイルスベクターの形態で細胞に提供されてもよい。通常、本発明のポリヌクレオチドをプロモーターに操作可能に連結すると共に、コンストラクトを発現ベクターに導入することで、本発明のポリヌクレオチドの発現が実現される。当該ベクターは真核細胞の複製と統合に適する。代表的な発現ベクターは、所望される核酸配列の発現の調節に利用できる発現制御配列を含む。遺伝子ノックインベクターは本明細書に記載される発現カセットを宿主ゲノムにノックイン又は組み込むために利用される。
【0063】
本明細書に使用される用語「発現制御配列」とは、ターゲット遺伝子の転写、翻訳と発現を調節すると共に、ターゲット遺伝子に操作可能に連結されるエレメントを指し、複製開始点、プロモーター、マーカー遺伝子又は翻訳制御エレメントであってもよく、エンハンサー、オペロン、ターミネーター、リボソーム結合部位などを含む。発現制御配列の選択は使用される宿主細胞によって決定される。組換え発現ベクターにおいて、「操作可能に連結」とは、ターゲットヌクレオチド配列がヌクレオチド配列発現可能な形態で調節配列に連結されることを指す。本発明の融合ポリペプチドのコード配列と適切な転写/翻訳制御シグナルを含む発現ベクターの構築方法は当業者にとってよく知られている。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、DNA合成技術、インビボ組換え技術などを含む。mRNA合成を案内するために、前記DNA配列を発現ベクターにおける適切なプロモーターに有効的に連結してもよい。これらのプロモーターの代表的な例として、大腸菌のlac又はtrpプロモーター;λファージPLプロモーター;及び、CMV前初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期及び後期SV40プロモーター、レトロウイルスのLTR、並びにその他の既知の制御可能な遺伝子の、原核細胞又は真核細胞或いはそのウイルスにおいて発現するプロモーターなどを含む真核細胞プロモーターが挙げられる。発現ベクターは、翻訳開始に利用されるリボソーム結合部位と転写ターミネーターを更に含む。一実施形態において、発現ベクターは市販されるpCDFベクターを使用してもよいが、その他の要求が特にない。例示的に、HindIIIとXhoIを使用して、それぞれ前記光学プローブをコードするヌクレオチド配列と発現ベクターに対してダブルダイジェストを行った後に、両者のダイジェスト産物を連結して組換え発現ベクターを得る。本発明は、ダイジェストと連結の具体的な工程及びパラメーターが特に限定されず、本分野における通常の工程及びパラメーターを使用すればよい。
【0064】
融合タンパク質を含むタンパク質又はペプチドを産生するために、組換え発現ベクターを得た後に、当該ベクターを宿主細胞に形質転換する。このような導入過程は、形質転換又はトランスフェクションなどの当業者が熟知する通常の技術により実施できる。本発明に係る宿主細胞とは、組換えDNA分子を受入れて収容できる細胞を指し、組換え遺伝子を増幅する場所である。望ましい受容体細胞は、容易に取得・増殖できるという、2つの条件を満たすものとする。本発明の「宿主細胞」は、原核細胞と真核細胞を含み、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞を具体的に含む。前記宿主細胞は、遺伝子産物の発現又は発酵生産に有利な様々な細胞が好ましい。これらの細胞は本分野で熟知されると共に、よく使われている。当業者は適切なベクター、プロモーター、エンハンサー及び宿主細胞の選択方法をはっきりと知っている。
【0065】
本発明に係る宿主細胞への導入方法は、本分野における通常の方法であり、リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈法、DEAE-マンナン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、ナチュラルコンピテンス、化学的に媒介される導入又はエレクトロポレーションを含む。宿主が大腸菌などの原核細胞である場合、好ましくは、前記方法はCaCl法又はMgCl法で処理することであり、使用される工程は本分野において周知である。宿主細胞が真核細胞である場合、リン酸カルシウム共沈法などのDNAトランスフェクション法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームパッケージングなどの通常機械方法を選択してもよい。
【0066】
本発明は、発現ベクターを宿主細胞に導入した後に、発現ベクターに導入された宿主細胞を増幅・発現・培養し、更に分離してトリプトファン光学プローブを得る。前記宿主細胞の増幅・発現・培養は通常の方法を使用すればよい。培養に使用される培地は、使用される宿主細胞の種類によって、様々な通常の培地であってもよい。宿主細胞の成長に適する条件で培養する。
【0067】
本発明において、光学プローブが細胞内、細胞膜に発現され、又は細胞外に分泌される。必要に応じて、その物理的、化学的、及びその他の特性を利用して、様々な分離方法で組換えタンパク質を分離又は精製してもよい。本発明は、前記トリプトファン蛍光タンパク質の分離方法が特に限定されず、本分野における通常の融合タンパク質の分離方法を使用すればよい。これらの方法は、当業者が熟知するものであり、通常の再生処理、塩析方法、遠心分離、浸透殺菌、超音波処理、超遠心分離、分子ふるいクロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びその他の様々な液体クロマトグラフィー技術、並びにこれらの方法の組合せを含むが、これらに限定されない。一実施形態において、Hisタグのアフィニティークロマトグラフィーにより光学プローブを分離する。
【0068】
本発明は、前記トリプトファン光学プローブの、トリプトファンのリアルタイム局在、定量検出及びハイスループット化合物選別における使用を更に提供する。一様態において、前記トリプトファン光学プローブは、好ましくは、細胞の異なる部位のシグナルペプチドに連結されて、細胞に導入され、細胞における蛍光シグナルの強弱を検出することで、トリプトファンに対してリアルタイム局在を行い、トリプトファン標準滴定曲線により対応するトリプトファンの定量検出を行う。本発明に係るトリプトファン標準滴加曲線は、トリプトファン光学プローブの、異なる濃度のトリプトファンにある場合の蛍光シグナルにより作成したものである。本発明に係るトリプトファン光学プローブが細胞に直接的に導入されるため、トリプトファンのリアルタイム局在及び定量検出過程において、時間がかかるサンプル処理過程を必要とせず、より正確である。本発明のトリプトファン光学プローブは、ハイスループット化合物選別を行う場合、異なる化合物を細胞の培養液に添加して、トリプトファン含有量の変化を測定することで、トリプトファン含有量の変化に影響を与える化合物を選別する。本発明に係るトリプトファン光学プローブの、トリプトファンのリアルタイム局在、定量検出及びハイスループット化合物選別における使用は、いずれも診断及び治療目的のものではなく、疾患の診断及び治療に関わることはない。
【0069】
本明細書において、濃度、含有量、パーセンテージ及びその他の数値は、レンジ形式で示すことができる。便利性と簡潔性を考慮した上で、レンジ形式を採用することにしたが、当該レンジ形式は、レンジの上限と下限としてはっきりと示される数値を含み、当該レンジに含まれる全ての単一の数値又はサブレンジを更に含むことと適切に読み替える、と理解すべきである。
【実施例
【0070】
以下、実施例を参照しながら本発明により提供されるトリプトファン光学プローブについて詳しく説明するが、本発明の請求範囲を限定するものではないと理解すべきである。
【0071】
I. 実験材料及び試薬
実施例では、主に通常の遺伝子工学分子生物学クローン方法、細胞培養及びイメージング方法などを利用する。これらの方法は当業者が熟知するものである。例えば、Jane Roskamsら、「Lab Ref:A Handbook of Recipes,Reagents,and Other Reference Tools for Use at the Bench」;Joseph.Sambrook、David W.Russell著、黄培堂ら訳、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(第3版、2002年8月、科学出版社により出版、北京);R.I.Freshneyら、「Culture of Animal Cells:a Manual of Basic Technique」(第5版)、章静波、徐存▲栓▼ら訳;Juan S. Bonifacino、M.Dassaultら、「Short Protocols in Cell Biology」、章静波ら訳、が挙げられる。
【0072】
実施例で使用されるpCDF-cpYFP、pCDF-トリプトファン結合タンパク質に基づくプラスミドは華東理工大学タンパク質実験室により構築され、pCDFプラスミドベクターはInvitrogen社より購入される。PCRに使用される全てのプライマーは上海捷瑞生物工程技術有限公司により合成・精製されるが、質量分析法により鑑定した結果、適切である。実施例で構築された発現プラスミドは配列決定された。配列決定は華大遺伝子公司と傑李シークエンシング公司により実施された。各実施例で使用されるTaq DNAポリメラーゼは東盛生物より購入され、pfu DNAポリメラーゼは天根生化科技(北京)有限公司より購入され、primeSTAR DNAポリメラーゼはTaKaRa社より購入される。3種のポリメラーゼは、購入時に対応するポリメラーゼ緩衝液とdNTPが付帯されている。BamHI、BglII、HindIII、NdeI、XhoI、EcoRI、SpeIなどの制限エンドヌクレアーゼ、T4リガーゼ、T4ホスホリラーゼ(T4 PNK)はFermentas社より購入され、購入時に対応する緩衝液などが付帯されている。トランスフェクション試薬Lip2000 KitはInvitrogen社より購入される。トリプトファンなどのアミノ酸は全てSigma社より購入される。特に断りのない限り、無機塩類などの化学試薬は全てSigma-Aldrich社より購入される。HEPES塩、アンピシリン(Amp)及びピューロマイシンはAmeresco社より購入される。96ウェルテストプレート(黒)、384ウェル蛍光テストプレート(黒)はGrenier社より購入される。
【0073】
実施例で使用されるDNA精製試薬キットはBBI社(カナダ)より購入され、一般プラスミド少量抽出試薬キットは天根生化科技(北京)有限公司より購入される。クローン株Mach1はInvitrogen社より購入される。Ni-NTAアフィニティーカラムと脱塩カラムのパッキングはGE healthcare社より購入される。
【0074】
実施例で使用される主な機器は、Biotek Synergy 2マルチモードマイクロプレートリーダー(アメリカBio-Tek社)、X-15R高速冷凍遠心機(アメリカBeckman社)、Microfuge22R卓上式高速冷凍遠心機(アメリカBeckman社)、PCR増幅装置(ドイツBiometra社)、超音波破砕機(寧波新芝公司)、核酸電気泳動装置(申能博彩公司)、蛍光分光光度計(アメリカVarian社)、COインキュベーター(SANYO)、倒立蛍光顕微鏡(日本Nikon社)を含む。
【0075】
II. 分子生物学方法及び細胞実験方法
II.1 ポリメラーゼ連鎖反応(PCR):
1.目標断片増幅PCR:
当該方法は主に遺伝子断片の増幅及びコロニーPCRによる陽性クローン鑑定に利用される。前記PCR増幅の反応系は下記の通りであり、即ち、テンプレート配列0.5~1μL、フォワードプライマー(25μM)0.5μL、リバースプライマー(25μM)0.5μL、10×pfu緩衝液5μL、pfu DNAポリメラーゼ0.5μL、dNTP(10mM)1μL、滅菌超純水(ddH2O)41.5~42μL、総体積50μLである。PCR増幅過程は下記の通りであり、即ち、95℃で2~10分間変性し、30サイクル(94~96℃で30~45秒間保持、50~65℃で30~45秒間保持、72℃で一定時間保持(600bp/min))を行い、72℃で10分間延長する。
【0076】
2.長断片(>2500bp)増幅PCR:
本発明に使用される長断片増幅は、主にインバースPCRの増幅ベクターであり、下記実施例において部位特異的突然変異を得るための技術である。変異部位にインバースPCRプライマーを設計し、そのうちの1本のプライマーの5’末端に変異したヌクレオチド配列が含まれる。増幅された産物は対応する突然変異部位を含む。長断片増幅PCR反応系は下記の通りであり、即ち、テンプレート配列(10pg~1ng)1μL、フォワードプライマー(25μM)0.5μL、リバースプライマー(25μM)0.5μL、5×PrimerSTAR緩衝液10μL、PrimerSTAR DNAポリメラーゼ0.5μL、dNTP(2.5mM)4μL、滅菌超純水(ddH2O)33.5μL、総体積50μLである。PCR増幅過程は下記の通りであり、即ち、95℃で5分間変性し、30サイクル(98℃で10秒間保持、50~68℃で5~15秒間保持、72℃で一定時間保持(1000bp/min))を行い、72℃で10分間延長し、或いは、95℃で5分間変性し、30サイクル(98℃で10秒間保持、68℃で一定時間保持(1000bp/min))を行い、72℃で10分間延長する。
【0077】
II.2 エンドヌクレアーゼによるダイジェスト反応:
プラスミドベクターに対してダブルダイジェストを行う系は下記の通りであり、即ち、プラスミドベクター20μL(約1.5μg)、10×緩衝液5μL、制限エンドヌクレアーゼ11~2μL、制限エンドヌクレアーゼ21~2μLであり、総体積50μLとなるように滅菌超純水を補充する。反応条件37℃で、1~7時間反応する。
【0078】
II.3 DNA断片5’末端のリン酸化反応
微生物から抽出されたプラスミド又はゲノム末端にはリン酸基が含まれるが、PCR産物には含まれない。DNA分子の末端にリン酸基を含まなければ、連結反応できないため、PCR産物の5’末端の塩基に対してリン酸基付加反応を行う。リン酸化反応系は下記の通りであり、即ち、PCR産物断片のDNA配列5~8μL、10×T4リガーゼ緩衝液1μL、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 PNK)1μL、滅菌超純水0~3μL、総体積10μLである。反応条件37℃で、30分間~2時間反応した後に、72℃で20分間不活化する。
【0079】
II.4 目標断片とベクターの連結反応
異なる断片によりベクターとの連結方法には相違点がある。本発明では3つの連結方法を使用した。
【0080】
1.平滑末端の短断片とリニアベクターとの平滑末端連結
当該方法のメカニズムとして、PCRにより得られた平滑末端産物がT4 PNKの作用を受けてDNA断片の5’末端に対してリン酸化反応を行った後に、PEG4000とT4 DNAリガーゼの作用を受け、リニア化されたベクターに連結して、組換えプラスミドを得る。相同組換え連結系は下記の通りであり、即ち、T4 PNKで処理されたDNA断片4μL、リニアベクター断片4μL、PEG4000 1μL、10×T4リガーゼ緩衝液1μL、T4 DNAリガーゼ1μL、合計10μLである。反応条件22℃で、30分間反応する。
【0081】
2.粘着末端が含まれるDNA断片と粘着末端が含まれるベクター断片との連結
制限エンドヌクレアーゼにより切断されたDNA断片は、通常、突出した粘着末端が産生されるため、配列と相補的な粘着末端が含まれるベクター断片に連結して、組換えプラスミドを形成することができる。連結反応系は下記の通りであり、即ち、ダイジェスト後のPCR産物断片のDNA 1~7μL、ダイジェスト後のプラスミド0.5~7μL、10×T4リガーゼ緩衝液1μL、T4 DNAリガーゼ1μLであり、総体積10μLとなるように滅菌超純水を補充する。反応条件16℃で、4~8時間反応する。
【0082】
3.インバースPCRに部位特異的突然変異が導入された後、5’末端がリン酸化したDNA断片産物の自己環化による連結反応
5’末端がリン酸化したDNA断片に対して自己環化により連結反応を行い、リニアベクターの3’末端と5’末端に対して連結反応を行って、組換えプラスミドを得る。自己環化連結反応系は下記の通りであり、即ち、リン酸化反応系10μL、T4リガーゼ(5U/μL)0.5μL、総体積10.5μLである。反応条件16℃で、4~16時間反応する。
【0083】
II.5 コンピテントセルの調製及び形質転換
コンピテントセルの調製:
1.シングルコロニー(例えば、Mach1)を選定して、5mL LB培地に接種し、37℃でシェーカーに一晩置く。
2.一晩培養したバクテリア液0.5~1mLを取り、50mL LB培地に移植し、37℃、220rpmで、OD600が0.5に達するまで、3~5時間培養する。
3.氷浴で細胞を2時間予冷する。
4.4℃、4000rpmで10分間遠心分離する。
5.上澄を捨て、予冷された緩衝液5mLで細胞を再懸濁させ、均一になってから、最終体積が50mLとなるように、再懸濁緩衝液を入れる。
6.氷浴に45分間置く。
7.4℃、4000rpmで10分間遠心分離し、氷で予冷された保存緩衝液5mLで細菌を再懸濁させる。
8.各EP管に100μLバクテリア液を入れて、-80℃又は液体窒素で凍結保存する。
再懸濁緩衝液:CaCl(100mM)、MgCl(70mM)、NaAc(40mM)
保存緩衝液:0.5mL DMSO、1.9mL 80%グリセリン、1mL 10×CaCl(1M)、1mL 10×MgCl(700mM)、1mL 10×NaAc(400mM)、4.6mL ddH
【0084】
コンピテントセルの形質転換:
1.100μLコンピテントセルを取り、氷浴で溶けさせる。
2.適切な体積の連結産物を入れて、ゆっくりと均一に吹き、氷浴で30分間置く。通常、入れた連結産物の体積がコンピテントセルの体積の1/10より小さい。
3.バクテリア液を42℃水浴に入れ、熱衝撃を90秒間与えてから、速やかに氷浴に移動して、5分間置く。
4.500μL LBを入れて、37℃恒温シェーカーを利用して200rpmで1時間培養する。
5.バクテリア液を4000rpmで3分間遠心分離し、200μL上澄を残して、菌体を均一に吹き、適切な抗生物質が含まれる寒天プレート表面に均一に塗布して、プレートを反転して37℃恒温インキュベーターに一晩置く。
【0085】
II.6 タンパク質の発現、精製及び蛍光検出
1.発現ベクター(例えば、pCDFを基にするトリプトファン光学プローブ発現ベクター)をBL21(DE3)細胞に変換し、反転して一晩培養し、プレートから選択して、250ml三角フラスコにクローニングし、37℃シェーカーに置き、OD=0.4~0.8となるように220rpmで培養し、1/1000(v/v)のIPTG(1M)を入れて、18℃で24~36時間誘導発現する。
2.誘導発現が完了した後、4000rpm、30分間遠心分離して菌体を収穫し、50mMリン酸塩緩衝液を入れて、菌体の沈殿物を再懸濁させ、菌体が透き通るまで超音波で破砕する。9600rpm、4℃で20分間遠心分離する。
3.上澄を遠心分離し、自己装填式Ni-NTAアフィニティーカラムにより精製してタンパク質を取得し、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィーにより処理されたタンパク質を、更に自己装填式脱塩カラムにより処理して、100mM HEPES緩衝液(pH7.4)に溶解されたタンパク質を取得した。
4.精製されたタンパク質をSDS-PAGEにより鑑定した後、測定緩衝液(100mM HEPES、100mM NaCl、pH7.4)で最終濃度0.2~5μMのタンパク質溶液となるようにプローブを希釈させる。測定緩衝液(100mM HEPES、100mM NaCl、pH7.4)でトリプトファンを最終濃度50mMの保存液に調製する。
5.100μlの1μMタンパク質溶液を取り、37℃で10分間インキュベートし、トリプトファンを入れて滴定し、タンパク質が420nm蛍光により励起されて放出した528nm蛍光、及び485nm蛍光により励起されて放出した528nm蛍光の強度を測定する。サンプルに対する蛍光の励起、放出蛍光の測定はマルチモード蛍光マイクロプレートリーダーにより実施する。
6.100μlの1μMタンパク質溶液を取り、37℃で10分間インキュベートし、トリプトファンを入れて、タンパク質の吸収スペクトルと蛍光スペクトルを測定する。サンプルに対する吸収スペクトルと蛍光スペクトルの測定は分光光度計と蛍光分光光度計により実施する。
【0086】
II.7 哺乳動物細胞のトランスフェクションと蛍光検出
1.pCDNA3.1+に基づくトリプトファン光学プローブプラスミドをトランスフェクション試薬Lipofectamine2000(Invitrogen)によりHeLaにトランスフェクションして、37℃、5%COのインキュベーターに置いて培養する。外来遺伝子を24~36時間で十分に発現してから蛍光検出を行う。
2.誘導発現が完了した後、接着培養されたHeLa細胞をPBSで3回洗浄し、HBSS溶液に入れて、蛍光顕微鏡とマイクロプレートリーダー検出をそれぞれ行う。
【0087】
実施例1:トリプトファン結合タンパク質プラスミド
PCRにより肺炎レンサ球菌遺伝子における3lft遺伝子を増幅させ、PCR産物に対してゲル電気泳動を行った後に回収して、HindIIIとXhoIでダイジェストした。それと同時に、pCDFベクターに対して対応のダブルダイジェストを行った。T4 DNAリガーゼにより連結した後、産物によりDH5αを変換し、変換されたDH5αをLBプレート(ストレプトマイシン100ug/mL)に塗布して、37℃で一晩培養した。成長されたDH5αトランスフォーマントに対してプラスミドを抽出した後に、PCR鑑定を実施した。陽性プラスミドに対してシークエンシングを行った結果、正確である場合、その後のプラスミド構築を行った。
【0088】
実施例2:異なる挿入部位のcpYFP光学プローブの発現及び検出
本実施例において、pCDF-3lftを基に、トリプトファン結合タンパク質の結晶構造に応じて、下記の部位、即ち、114/115、114/116、114/117、114/118、115/116、115/117、115/118、116/117、116/118、117/118、233/234、233/235、234/235、263/264、263/265、263/266、263/267、263/268、264/265、264/266、264/267、264/268、265/266、265/267、265/268、266/267、266/268又は267/268を選択してcpYFPを挿入し、対応するpCDF-3lft-cpYFPプラスミドを得た。例示的な配列は表1に示される。
【0089】
【表1】
【0090】
PCRによりcpYFPのDNA断片を産生すると共に、プライマー5’末端によりcpYFP末端相同配列を導入し、PCR増幅によりpCDF-トリプトファン結合タンパク質リニアベクターを産生し、その5’及び3’最末端のそれぞれにcpYFP両末端に対応する全く同様な配列(15bp~20bp)がある。リニア化されたpCDF-3lftとcpYFP断片に対してHieff Clone Enzymeの作用で相同組換えを行った。産物によりDH5αを変換し、変換されたDH5αをLBプレート(ストレプトマイシン100ug/mL)に塗布して、37℃で一晩培養した。PCRにより鑑定された陽性クローンからプラスミドを抽出してからシークエンシングを実施した。シークエンシングは傑李シークエンシング公司により実施された。
【0091】
シークエンシングを行った結果、正確である場合、組換えプラスミドをBL21(DE3)に形質転換して誘導発現すると共に、タンパク質を精製して、SDS-PAGE電気泳動を行った結果、サイズが約63Kdaであった。当該サイズは、pCDF-3lft-cpYFPにより発現されたHis-tag精製タグが含まれる3lft-cpYFP融合タンパク質のサイズと一致する。結果は図1に示される。
【0092】
3lft-cpYFP融合タンパク質を発現した大腸菌の破砕上澄でトリプトファン応答選別を実施した。1mMトリプトファンが含まれる融合蛍光タンパク質の検出シグナルを、トリプトファンを含まない融合蛍光タンパク質の検出シグナルで割る。結果は図2に示され、検出結果によれば、トリプトファンに対する応答が1.5倍を上回る光学プローブは、263/265、263/266、263/267及び263/268部位又はそのファミリータンパク質の対応するアミノ酸部位に挿入を行った光学プローブである。
【0093】
実施例3:異なる挿入部位のcpGFP光学プローブの発現及び検出
実施例2の方法によりcpYFPをcpGFPに変更して、トリプトファン緑色蛍光タンパク質蛍光プローブを構築した。結果は図3に示され、破砕上澄の検出結果によれば、トリプトファンに対する応答が1.5倍を上回る光学プローブは、263/265、263/266、263/267及び263/268部位又はそのファミリータンパク質の対応するアミノ酸部位に挿入を行った光学プローブである。
【0094】
実施例4:異なる挿入部位のcpBFP光学プローブの発現及び検出
実施例2の方法によりcpYFPをcpBFPに変更して、トリプトファン青色蛍光タンパク質蛍光プローブを構築した。結果は図4に示され、破砕上澄の検出結果によれば、トリプトファンに対する応答が1.5倍を上回る光学プローブは、263/266、263/267及び263/268部位又はそのファミリータンパク質の対応するアミノ酸部位に挿入を行った光学プローブである。
【0095】
実施例5:異なる挿入部位のcpmApple光学プローブの発現及び検出
実施例2の方法によりcpYFPをcpmAppleに変更して、トリプトファン赤色蛍光タンパク質蛍光プローブを構築した。結果は図5に示され、破砕上澄の検出結果によれば、トリプトファンに対する応答が1.5倍を上回る光学プローブは、263/264、263/265及び263/266部位又はそのファミリータンパク質の対応するアミノ酸部位に挿入を行った光学プローブである。
【0096】
実施例6:光学プローブの特性
実施例2で得られたトリプトファンに対する応答が1.5倍を上回る光学プローブ、即ち、263/265、263/266、263/267及び263/268部位に挿入を行った4種類の光学プローブに対してタンパク質精製と濃度勾配のトリプトファン検出を行い、420nm励起528nm放出における蛍光強度と485nm励起528nm放出における蛍光強度との比の変化を検出した。挿入部位が263/265、263/266、263/267及び263/268である4種類のトリプトファン光学プローブは、K(結合定数)がそれぞれ1.6μM、7.2μM、48μM及び152μMであり、レンジアビリティがそれぞれ4.2倍、5.3倍、3.3倍及び3.0倍である。結果は図6に示される。
挿入部位が263/265、263/266、263/267及び263/268であるプローブ(即ち、3lft-263/265-cpYFP、3lft-263/266-cpYFP、3lft-263/267-cpYFP及び3lft-263/268-cpYFP)に対して、その様々なアミノ酸に対する特異性の検出を行った。
結果によれば、挿入部位が263/265、263/266であるプローブは、フェニルアラニン及びチロシンに対する応答が類似であり、263/265の場合それぞれ1.37倍、1.25倍であり、263/266の場合それぞれ1.34倍、1.26倍である。トリプトファン、フェニルアラニン及びチロシンを除くその他のアミノ酸に対する応答がなく、263/267及び263/268の場合トリプトファンを除くその他のアミノ酸に対する応答が全てない。結果は図7に示される。
【0097】
実施例7:突然変異したcpYFP光学プローブの発現及び検出
3lft-263/265-cpYFP、3lft-263/266-cpYFP、3lft-263/267-cpYFPを基に光学プローブミュータントを構築した。PCRリニア化プラスミドpCDF-3lft-263/265-cpYFP、pCDF-3lft-263/266-cpYFP、pCDF-3lft-263/267-cpYFP、プライマーに突然変異しようとする部位が含まれる塩基配列により、PNK、T4 DNAリガーゼ及びPEG4000の作用を受けて、得られたPCR産物に対してリン酸基付加による連結を行い、H13、T71、L84、D93、K105、N117、T130、V170、V192、F202、K214、Y217、K255、T259、I283の15個部位の変異プラスミドを得て、傑李シークエンシング公司によりシークエンシングが実施された。一部突然変異した光学プローブの配列は表2に示される。例示的な核酸配列はSEQ ID NO:40(263/266-T259F)に示される。
【0098】
【表2】
【0099】
結果は図8に示される。精製タンパク質の蛍光検出結果によれば、トリプトファンに対する応答が2.5倍を上回るのは、L84F、F202W、K214F、K214W、Y217F、Y217W、K255F、K255W、T259F、T259W、I283F及びI283Wミュータントである。
【0100】
実施例8.光学プローブミュータントのスペクトル特性、滴定曲線及び特異性
精製されたトリプトファン光学プローブ3lft-263/266-cpYFP-T259Fをそれぞれ0mMと1mMトリプトファンで10分間処理した後に、蛍光分光光度計により蛍光スペクトルを検出した。
【0101】
励起スペクトルの測定として、370nm~510nmの励起範囲及び530nm放出波長で励起スペクトルを記録して、5nm刻みで数値を読取った。結果によれば、プローブは、約410及び490nmにおいて2つの励起ピークがある。結果は図9Aに示される。
【0102】
放出スペクトルの測定として、所定の励起波長がそれぞれ420nmと460nmであり、470~600nmと490~600nmの放出スペクトルを記録して、5nm刻みで数値を読取った。結果によれば、プローブは、1mMトリプトファン添加後の420nm励起における蛍光強度が0mMトリプトファン添加の1.1倍までやや向上し、460nm励起における蛍光強度が0mMトリプトファン添加の0.26倍まで低下する。結果は図9Bと9Cに示される。
【0103】
精製された3lft-263/266-cpYFP-T259Fなど、トリプトファンに対する応答が2.5倍を上回る30個のタンパク質に対して濃度勾配(0~5mM)のトリプトファン検出を行った。精製されたプローブを10分間処理した後、420nm励起528nm放出における蛍光強度と485nm励起528nm放出における蛍光強度の比の変化を検出した。結果は図10に示され、30個のトリプトファン光学プローブは、K(結合定数)がそれぞれ1.1μM~133μMである。
精製された3lft-263/266-cpYFP-T259Fなどの30個のタンパク質と20種類のアミノ酸との反応性を検出した結果、優れた特異性を有する。結果は図11に示される。
【0104】
実施例9:光学プローブのサブオルガネラ局在及びサブオルガネラにおける特性
本実施例において、異なる局在シグナルペプチドを光学プローブ3lft-263/266-cpYFP-T259Fに融合して、光学プローブを異なるオルガネラに局在した。
異なる局在シグナルペプチドに融合する光学プローブプラスミドでHeLa細胞を36時間トランスフェクションした後に、PBSで洗浄し、HBSS溶液に置き、倒立蛍光顕微鏡によりFITCチャンネルで蛍光検出を行った。結果は図12に示される。トリプトファン光学プローブは、異なる特異的な局在シグナルペプチドに融合することで、細胞質、細胞外膜、細胞核、小胞体、ミトコンドリア、核排除などのサブオルガネラに局在する。異なるサブオルガネラ構造でもいずれも蛍光が示され、蛍光の分布と強度が様々である。
【0105】
実施例10:トリプトファンの膜貫通輸送の動的監視
細胞質で発現する光学プローブプラスミドでHeLa細胞を36時間トランスフェクションした後に、PBSで洗浄し、HBSS溶液に置いてから、30minの時間内に420nm励起528nm放出における蛍光強度と485nm励起528nm放出における蛍光強度との比の変化を検出した。結果は図13に示される。1mMトリプトファンを入れて、引き続き30分間検出した。トリプトファンが添加されたサンプルは485/420が徐々に増加し、最高で初期値の1.3倍に達した。一方、トリプトファンが添加されない対照組は485/420が変わらず、0.38である。
【0106】
実施例11:生細胞における光学プローブに基づくハイスループット化合物の選別
本実施例において、細胞質で発現する3lft-263/266-cpYFP-T259FのHeLa細胞でハイスループット化合物を選別した。
トランスフェクションされたHeLa細胞をPBSで洗浄し、HBSS溶液に置いて(トリプトファンなしで)1時間処理してから、10μM化合物で1時間処理した。各サンプルにそれぞれトリプトファンを滴下した。マイクロプレートリーダーにより420nm励起528nm放出における蛍光強度と485nm励起528nm放出における蛍光強度との比の変化を記録した。任意の化合物で処理していないサンプルを対照組として標準化した。結果は図14に示される。使用される2000種の化合物のうち、大部分の化合物が細胞へのトリプトファン進入に対して影響が小さい。細胞のトリプトファンに対する摂取能力を向上する化合物は12種であり、また、細胞のトリプトファンに対する摂取を明らかに低下する化合物は9種である。
【0107】
実施例12:光学プローブの血中トリプトファンに対する定量検出
本実施例において、精製された3lft-263/265-cpYFP-F202Wでマウス及びヒトの血液上澄におけるトリプトファンを分析した。
3lft-263/265-cpYFP-F202Wと希釈された血液上澄を10分間混ぜた後に、マイクロプレートリーダーにより420nm励起528nm放出における蛍光強度と485nm励起528nm放出における蛍光強度との比を検出した。結果は図15に示され、マウス血液におけるトリプトファン含有量は約100μMであり、ヒト血液におけるトリプトファン含有量は約48μMである。
上記の実施例によれば、本発明により提供されるトリプトファン光学プローブは、タンパク質分子量が比較的に小さく、且つ成熟しやすく、蛍光の動的変化が大きく、特異性が良好であると共に、遺伝子操作の方法により細胞で発現でき、細胞内外においてトリプトファンに対してリアルタイム局在、定量検出を行うことができ、更にハイスループットで化合物選別を行うことができる。
【0108】
[その他の実施形態]
本明細書には幾つかの実施形態が記載されている。しかしながら、当業者が本発明の趣旨及び範囲から逸脱しない前提で、本明細書により知られた様々な改善も添付される請求の範囲内に含まれる、と理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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【国際調査報告】