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特表2023-515945機械的特性を示すためのシステム、方法、及びコンピュータ可読記憶媒体
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  • 特表-機械的特性を示すためのシステム、方法、及びコンピュータ可読記憶媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】機械的特性を示すためのシステム、方法、及びコンピュータ可読記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20230410BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230410BHJP
   C22C 1/11 20230101ALI20230410BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20230410BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20230410BHJP
【FI】
G06F30/23
G05B19/418 Z
C22C1/11
B22F10/64
B33Y50/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550710
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 EP2021053870
(87)【国際公開番号】W WO2021170467
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20159314.2
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520131303
【氏名又は名称】ヘレウス アムロイ テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(72)【発明者】
【氏名】ヴェヒター、ハンス、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ミルケ、オイゲン
(72)【発明者】
【氏名】シャクール シャハビ、ハメド
(72)【発明者】
【氏名】タイゼン、フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クロシュ-トラゲザー、ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
3C100
4K018
5B146
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA57
3C100AA70
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB27
3C100EE20
4K018CA29
4K018CA44
4K018DA28
4K018DA29
4K018EA51
4K018EA60
4K018KA61
5B146BA04
5B146DJ01
5B146DJ02
5B146DJ07
(57)【要約】
本発明は、機械的特性を示すためのシステム及び方法、並びにコンピュータ可読記憶媒体に関し、システム(20)は、-製造される部品の少なくとも一部の冷却挙動を決定するように設計されたシミュレーションユニット(23)であって、部品が非晶質特性を有する、シミュレーションユニットと、決定された冷却挙動を考慮して、製造される部品の少なくとも一部について少なくとも1つの非晶質性値(29)を決定するように設計されたコンピューティングユニット(24)と、製造される部品の幾何学的形状、少なくとも1つの非晶質性値(29)、少なくとも1つの製造パラメータ(31)及び/又は製造方法を考慮して、製造される部品の機械的特性(26)を示すように設計された予測ユニット(27)と、を有する。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システム(20)であって、
-製造される部品(8、79)の少なくとも一部の冷却挙動(40、53、54、72)を決定するように設計されたシミュレーションユニット(23)であって、前記部品が非晶質特性を有する、シミュレーションユニットと、
-前記決定された冷却挙動(40、53、54、74)を考慮して、前記製造される部品(8、79)の少なくとも一部について少なくとも1つの非晶質性値(29、76、AW1、AW2、AW3)を決定するように設計されたコンピューティングユニット(24)と、
-前記製造される部品(8、79)の幾何学的形状、前記少なくとも1つの非晶質性値(29、76、AW1、AW2、AW3)、少なくとも1つの製造パラメータ(31)及び/又は製造方法を考慮して、前記製造される部品(8、79)の機械的特性(26)を示すように設計された予測ユニット(27)と、
を有する、システム。
【請求項2】
非晶質性値(AW1~AW3)への材料特性(ZW1~ZW3、BW1~BW3、VW1~VW3、L1、L2)及び/又は材料情報の割り当てを記憶するように設計されたデータベースユニット(25)
を備える、ことを特徴とする、
請求項1に記載のシステム(20)。
【請求項3】
前記コンピューティングユニット(24)が、前記決定された冷却挙動(40、53、54、74)を考慮して、前記製造される部品(8、79)の少なくとも一部の冷却速度を決定するように更に設計される、
ことを特徴とする、
請求項1又は2に記載のシステム(20)。
【請求項4】
前記コンピューティングユニット(24)が、前記決定された冷却速度を臨界冷却速度(30、AR1)、特に合金依存性の臨界冷却速度と比較するように更に設計され、前記コンピューティングユニット(24)が、前記比較を考慮して前記非晶質性値(AW1~AW3)の前記決定を実行するように設計される、
ことを特徴とする、
請求項1から3のいずれか一項に記載の、特に請求項3に記載のシステム(20)。
【請求項5】
前記データベースユニット(25)が、臨界冷却速度(30、AR1)及び/又は非晶質性値(AW1~AW2)への材料特性(ZW1~ZW3、BW1~BW3、VW1~VW3、L1、L2)の割り当てを記憶するように設計される、
ことを特徴とする、
請求項1から4のいずれか一項に記載の、特に請求項4に記載のシステム(20)。
【請求項6】
前記製造される部品(8、79)が、部品記述(50、72)、特にCADモデル(50)によって示され、前記シミュレーションユニット(23)が、前記部品記述(50、72)を使用して前記冷却挙動(40、53、54、74)の前記決定を実行するように設計される、
ことを特徴とする、
請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(20)。
【請求項7】
前記部品記述(50、72)が、複数の体積要素(51、52)を示し、前記シミュレーションユニット(23)が、前記体積要素(51、52)の少なくとも一部、好ましくは全ての体積要素(51、52)の冷却挙動(53、54、74)を決定するように設計される、
ことを特徴とする、
請求項1から6のいずれか一項に記載の、特に請求項6に記載のシステム(20)。
【請求項8】
前記予測ユニット(27)が、特に前記部品記述(50、72)及び/又はFEMシミュレーションを使用して、前記製造される部品(8)の少なくとも1つの機械的負荷ケース(60)をシミュレートするように設計される、
ことを特徴とする、
請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム(20)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの製造パラメータ(30)を使用して、特に積層造形法又は射出成形法によって、前記製造される部品(8、79)を製造するように設計された製造プラント(28)
を備える、ことを特徴とする、
請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(20)。
【請求項10】
非晶質特性を有する、製造される部品(8、79)の機械的特性(ZW1~ZW3、BW1~BW3、L1、L2)を示す方法(70)であって、
製造される部品(8)の少なくとも一部の冷却挙動(40、53、54、74)を決定するステップ(73)であって、前記部品が非晶質特性を有する、決定するステップと、
前記決定された冷却挙動(40、53、54、74)を考慮して、前記製造される部品(8、79)の少なくとも一部について少なくとも1つの非晶質性値(29、75、AW1、AW2、AW3)を決定するステップ(75)と、
前記製造される部品(8、79)の幾何学的形状、前記少なくとも1つの非晶質性値(29、75、AW1、AW2、AW3)、少なくとも1つの製造パラメータ(30)及び/又は製造方法を考慮して、前記製造される部品(8、79)の機械的特性(ZW1~ZW3、BW1~BW3、L1、L2)を示すステップ(78)と、
を有する、方法。
【請求項11】
非晶質性値(AW1~AW3)への材料特性(ZW1~ZW3、BW1~BW3、VW1~VW3)及び/又は材料(L1、L2)の割り当てを記憶すること、
を含むことを特徴とする、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記シミュレートされた冷却挙動(40、53、54、74)を考慮して、前記製造される部品(8、79)の少なくとも一部の冷却速度を決定すること、
を含むことを特徴とする、
請求項10又は11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記決定された冷却速度を臨界冷却速度(30、AR1)、特に合金依存性である臨界冷却速度と比較すること(77)であって、前記比較を考慮して前記非晶質性値(29、75、AW1~AW3)が決定される、比較すること、
を含むことを特徴とする、
請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
臨界冷却速度(30)及び/又は非晶質性値(AW1~AW2)への材料特性(ZW1~ZW3、BW1~BW3、VW1~VW3、L1、L2)の割り当てを、特にデータベースユニット(25)に記憶すること、
を含む、ことを特徴とする、
請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記製造される部品(8、79)が、部品記述(50、72)、特にCADモデル(50、72)によって示され、前記冷却挙動(40、53、54、74)が、前記部品記述(50、72)を使用して決定される、
ことを特徴とする、
請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記部品記述(50、72)が、複数の体積要素(51、52)を示し、前記冷却挙動(40、53、54、74)の前記決定が、前記体積要素(51、52)の少なくとも一部、好ましくは全ての体積要素(51、52)の前記冷却挙動を決定することを含む、
ことを特徴とする、
請求項10から15のいずれか一項に記載の、特に請求項15に記載の方法。
【請求項17】
特に前記部品記述(50、72)及び/又はFEMシミュレーションを使用して、前記製造される部品(8、79)の少なくとも1つの機械的負荷ケース(60)をシミュレートすること、
を含むことを特徴とする、
請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの製造パラメータ(30)を使用して、特に積層造形法又は射出成形法によって、前記製造される部品(8、79)を製造すること
を含むことを特徴とする、
請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項10から18のいずれか一項に記載の方法を実装させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造される部品の機械的特性を示すためのシステム、方法、及び対応するコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0002】
非晶質金属は、他の材料においては実現できない物理的特性又は特性の組み合わせを有する新規の材料クラスである。
【0003】
金属合金が原子レベルで結晶構造ではなく非晶質構造を有する場合に、非晶質金属と呼ばれる。金属については珍しくない原子の非晶質配置は、物理的特性の固有の組み合わせをもたらす。非晶質金属は、一般に、従来の金属よりも硬く、より耐食性が高く、かつより強く、同時に高い弾性を有する。したがって、異なる表面電位が生じず、その結果、腐食が生じることができない。
【0004】
金属ガラスは、California Institute of Technologyにおけるそれらの発見以来、広範な研究の対象となっている。長年にわたって、この材料クラスの加工性及び特性は、継続的に改善された。第1の金属ガラスは、単純な二元合金であったが、その製造に必要な毎秒106ケルビンの範囲の冷却速度の、より新しく、より複雑な合金は、数K/秒の範囲の著しく低い冷却速度で硝子体状態に変換され得る。これは、プロセス管理及び実現可能なワークピースに大きな影響を及ぼす。溶融物の結晶化が起こらず、溶融物が硝子体状態で固化する冷却速度は、臨界冷却速度と呼ばれる。臨界冷却速度は、溶融物の組成に強く依存し、かつ最大の達成可能な部品厚さを更に画定するシステム固有の変数である。溶融物に貯蔵された熱エネルギーをシステムを通して十分に迅速に輸送して除去する必要があることを考慮すると、高い臨界冷却速度を有するシステムからは、薄い厚さのワークピースのみを製造できることが明らかになる。したがって、最初に、金属ガラスは、典型的には、溶融紡糸法にしたがって製造された。この場合、溶融物は、回転する銅ホイール上に掻き取られ、数百分の1から数十分の1ミリメートルの範囲の厚さを有する薄いリボン又は箔の形態で硝子体様に固化する。著しく低い臨界冷却速度を有する新たな複雑な合金の開発の結果として、ますます他の製造方法を使用することができる。現在の固体ガラス形成金属合金は、既に、冷却された銅の金型内で溶融物を鋳造することによって硝子体状態に変換され得る。この場合、実現可能な部品厚さは、合金に応じて、数ミリメートルから数センチメートルの範囲である。そのような合金は、固体金属ガラスと呼ばれる。今日、多数のそのような合金系が知られている。
【0005】
固体金属ガラスは、通常、組成に基づいて分類され、重量パーセントが最も高い合金元素は、基本元素と呼ばれる。既存のシステムは、例えば、金、白金及びパラジウム系固体金属ガラスなどの貴金属系合金、チタン系固体金属ガラス又はジルコニウム系固体金属ガラスなどの初期遷移金属系合金、銅、ニッケル系又は鉄系の後期遷移金属系システムだけでなく、例えばネオジム又はテルビウムなどの希土類系システムも含む。
【0006】
固体金属ガラスは、典型的には、古典的な結晶性金属と比較して以下の特性を有する:
-例えば、より薄い壁厚を可能にするより高い比強度、
-表面が特に耐擦傷性とすることができる結果としてより高い硬度、
-はるかに高い弾性伸張性及び弾性、
-熱可塑性成形性、及び
-より高い耐食性。
【0007】
金属ガラス、特に固体金属ガラスは、高強度などの有利な特性、及び固化誘起収縮がないことに起因して、原則として、成形が行われた後に更なる加工ステップが絶対に必要ではなく、射出成形などの連続製造方法で部品を製造するのに適した非常に興味深い構造材料である。冷却中の溶融物からの合金の結晶化を防止するためには、臨界冷却速度を超えなければならない。しかしながら、溶融物の体積が大きいほど、溶融物は、よりゆっくりと冷却される。特定の試料厚さを超えると、合金が非晶質に固化することができる前に結晶化が起こる。
【0008】
金属ガラスの優れた機械的特性に加えて、硝子体状態はまた、固有の加工性をもたらす。したがって、金属ガラスは、冶金溶融法によってだけでなく、熱可塑性プラスチック又はケイ酸塩ガラスと同様の方法で比較的低温での熱可塑性成形によっても成形され得る。この点において、金属ガラスは、最初にガラス転移点を超えて加熱され、その後、比較的低い力で変形され得る高粘性液体のように挙動する。変形後、材料は、再びガラス転移温度未満に冷却される。
【0009】
非晶質金属の加工中、原子が結晶配列をとることができる前に原子の移動度が除去されるように、溶融物の急冷によって自然な結晶化が防止される。結晶性材料の多くの特性は、原子構造の欠陥、いわゆる格子欠陥によって影響又は決定される。
【0010】
急冷の結果、材料の収縮が低減され、その結果、非晶質金属の場合、より正確な部品幾何学形状が達成され得る。塑性変形は、2%を超える伸びでのみ起こる。比較すると、結晶性金属材料は、一般に、著しく小さい伸びであっても不可逆的に変形する。高い降伏強度と高い弾性伸びとの組み合わせはまた、弾性エネルギーの高い貯蔵容量をもたらす。
【0011】
しかしながら、部品に含まれる熱を、表面を介して環境に放出しなければならないため、使用される材料の熱伝導率は、冷却速度を物理的に制限する。これは、部品の生産性及び製造方法の適用性に制限をもたらす。
【0012】
非晶質金属からワークピースを製造するための様々な方法が知られている。したがって、3D印刷などの積層造形法を使用してワークピースを製造することが可能である。走査速度、レーザビームのエネルギー、又は従うべきパターンなどのプロセスパラメータを調整することによって、ワークピースの非晶質特性が保証され得る。
【0013】
積層造形技術の1つの利点は、原理的に、任意の考えられる幾何学的形状を実現することができることである。更にまた、積層造形法は、ワークピースの層ごとの製造及びレーザエネルギー及びレーザの移動経路による溶融プールのサイズの調整によって良好な冷却が保証され得るため、別個の冷却プロセスを必要としないことが有利であり得る。
【0014】
積層造形法の欠点は、特に大規模なワークピースでは、適用時の蓄積率が低いことである。更にまた、高純度粉末材料を積層造形プロセスの出発材料として使用しなければならない。不純物が材料中に存在する場合、結晶化、すなわち非晶質金属が不純物部位で発生する可能性があり、これは機械的及び化学的特性の劣化につながる可能性がある。表面の近くでは、不純物に起因してワークピースを再加工する必要がある場合があり、これは複雑である。更に、積層造形は、常にワークピースの表面に特定の粗さをもたらすため、ワークピースは、ほとんどの場合研削又はフライス加工によって再加工されなければならない。
【0015】
射出成形は、更なる製造可能性を提供する。この場合、80~100gの範囲のワークピースの重量が適用時に実現され得る。使用される材料は、通常、約20秒以内に約1050℃まで誘導加熱され、均質化される。
【0016】
加熱後、溶融した材料は、スタンプによって金型に押し込まれる。金型が材料によって完全に充填されている場合、金型内の材料は、材料融点を超える温度をどこでも有する必要があることが材料特性にとって重要である。非晶質材料特性を達成するために、その後、金型内の液体材料は、ガラス転移温度未満まで急速に冷却されなければならない。
【0017】
射出成形中の可能な幾何学的形状は、材料の冷却速度に起因して0.3から7.0mmの壁厚に制限される。壁厚が大きいと、冷却速度が低すぎるため、材料がガラス転移温度未満まで冷却される前に結晶構造が形成される。壁厚が小さいと、充填される長さに応じて材料が急速に冷却されすぎ、金型が充填される前に固化する。
【0018】
構造、寸法、合金材料の選択、製造方法の選択などの間に、材料に供給される熱量が十分に迅速に環境に放出され得ることを事前に保証するために、冷却挙動がシミュレート及び分析され得る。
【0019】
製造される部品の適切な合金又は合金品質及びその特定の用途を選択する場合、多くのフレームワーク条件が考慮に入れられなければならない。合金品質は、リサイクル材料の割合、又は合金中の非晶質及び結晶質の割合のいずれかによって定義される。低品質の合金は、もはや100%の非晶質特性を有しない。したがって、合金品質の低い部品は、全ての負荷ケースに使用できない。
【0020】
したがって、部品が製造される前に、製造される部品の機械的特性を知ることが必要である。
【0021】
独国特許第10 2009 034 840号明細書は、非常に高いサイクル数で金属合金の疲労強度を予測する方法を開示している。この方法では、少なくとも1つの疲労亀裂開始部位が存在すると仮定される。疲労亀裂開始部位を考慮して、修正確率的疲労限界モデルを使用して疲労強度が計算される。
【0022】
独国特許第10 2009 034 840号明細書の解決策の欠点は、疲労強度が具体的にどのように改善され得るかに関する情報を得ることができないことである。
【0023】
独国特許第10 2015 110 591号明細書は、鋳造アルミニウム系部品の材料特性を予測するためのシステムを開示している。しかしながら、この場合、非晶質金属の特定の特性及び製造条件は考慮されない。
【0024】
欧州特許第2595073号明細書は、鋳造部品を最適化する方法を開示している。しかしながら、欧州特許第2595073号明細書の解決策では、均一な材料品質は達成されない。
【0025】
したがって、この先行技術から進めて、本発明の目的は、非晶質特性を有する部品の製造を改善することである。本発明の目的は、特に、製造される部品の機械的特性を示すことであり、部品は、非晶質特性を有する。更に、本発明の目的は特に、製造される部品に適した合金を選択することである。
【0026】
この目的は、請求項1に記載のシステム、請求項10に記載の方法、及び請求項19に記載のコンピュータ可読記憶媒体によって達成される。
【0027】
特に、この目的は、システムであって、
-製造される部品の少なくとも一部の冷却挙動を決定するように設計されたシミュレーションユニットであって、部品が非晶質特性を有する、シミュレーションユニットと
-決定された冷却挙動を考慮して、製造される部品の少なくとも一部について少なくとも1つの非晶質性値を決定するように設計されたコンピューティングユニットと、
-製造される部品の幾何学的形状、少なくとも1つの非晶質性値、少なくとも1つの製造パラメータ、及び/又は製造方法を考慮して、製造される部品の機械的特性を示すように設計された予測ユニットと、
を有するシステムによって達成される。
【0028】
本発明の中心概念は、製造される部品の機械的特性が実際の製造の前に特定され得ることである。これは、製造される部品の少なくとも一部について冷却挙動が決定され、それから機械的特性を導出することができるという点で可能にされる。特に、非晶質材料特性を有すると考えられる部品の場合、製造中の冷却速度又は冷却挙動が重要である。臨界冷却速度が達成されない場合、望ましくない結晶構造が生じる。更に、結晶構造の形成は、使用される合金に依存する。詳細に記載されるように、使用される材料の不純物は、核形成剤として役立ち、したがって結晶構造をもたらすことができる。本発明では、全ての上記特性及びパラメータを考慮して、製造される部品の機械的特性を予測することが可能である。したがって、製造される部品が適切である目的に関して決定を下すことができる。
【0029】
非晶質性値は、部品がどの程度の非晶質特性を有するかを示すことができる。例えば、部品内のより小さな結晶構造は、非晶質性値の減少をもたらすことができる。非晶質性値の使用は、100%の非晶質特性を有する部品を構築することが実際には事実上不可能であるという考察に基づく。ここで、非晶質性値の階調を示すことも可能である。特に、本発明は、上記階調から部品の機械的特性を導出することを可能にする。
【0030】
一実施形態では、システムは、非晶質性値への材料特性及び/又は材料情報の割り当てを記憶するように設計され得るデータベースユニットを備えてもよい。
【0031】
データベースユニットが使用されて、異なる材料特性を異なる非晶質性値に割り当てることができる。例えば、一実施形態では、データベースは、引張強度、曲げ強度、サイクル安定性及び/又は粘度データに関する情報を記憶することができる。この情報を、非晶質性値及び/又は材料に割り当てられることができる。したがって、予測ユニットは、特定の材料及び/又は決定された非晶質性値に関連するデータベースから材料特性を読み取るように設計され得る。更にまた、予測ユニットを、決定された非晶質性値及び割り当てられた材料特性について、製造される部品の機械的特性を導出するように設計することが可能である。
【0032】
データベースユニットに記憶されるデータは、実験により決定され得る。この場合、製造される部品は、データベースが現実的な測定値を含むように、それらの材料特性に関して実験室において検査され得る。更にまた、追加的又は代替的に、シミュレートされたデータをデータベースユニットに記憶することが考えられる。
【0033】
一実施形態では、コンピューティングユニットは、決定された冷却挙動を考慮して、製造される部品の少なくとも一部の冷却速度を決定するように更に設計され得る。
【0034】
説明される実施形態では、シミュレートされた冷却挙動を考慮して、製造される部品の一部について冷却速度を最初に決定することが可能である。したがって、部品全体の一部について冷却速度が決定されることもでき、その結果、部品の異なる部分に異なる非晶質性値を割り当てることも可能である。特に、製造される部品は、複数のサブ領域に分割されることが考えられ、コンピューティングユニットは、サブ領域の各々について個々の非晶質性値を示すように設計され得る。したがって、製造される部品の個々のサブ領域について、製造される部品の材料特性、製造パラメータ、及び機械的特性を示すことが可能である。
【0035】
一実施形態では、コンピューティングユニットは、決定された冷却速度を臨界冷却速度、特に合金依存性である臨界冷却速度と比較するように更に設計されてもよく、コンピューティングユニットは、比較を考慮して非晶質性値の決定を実行するように設計され得る。
【0036】
臨界冷却速度を使用して、製造される部品の製造中に非晶質特性が達成されるかどうかを決定することができる。この臨界冷却速度は、例えば、関連する合金又は関連する材料と共にデータベースユニットによって記憶され得る。非晶質性値は、冷却速度を臨界冷却速度と比較することによって決定され得る。
【0037】
一実施形態では、データベースユニットは、臨界冷却速度及び/又は非晶質性値への材料特性の割り当てを記憶するように設計され得る。
【0038】
製造される部品の機械的特性を決定するために、データベースユニットは、臨界冷却速度及び/又は非晶質性値の対応する材料特性を記憶することができる。これは、予測ユニットがデータベースユニットから対応する材料特性を読み取ることを可能にする。
【0039】
一実施形態では、製造される部品は、部品記述、特にCADモデルによって示されてもよく、シミュレーションユニットは、部品記述を使用して冷却挙動の決定を実行するように設計され得る。
【0040】
記載された実施形態では、製造される部品は、部品記述によって示され得る。CADモデルは、この目的に特に適している。したがって、部品記述は、製造される部品のデジタル表現と見なすことができる。部品記述は、例えば、使用される材料に関する情報を含むことができる。更に、部品記述は、個々のシステム部品間で容易に交換され得る。
【0041】
一実施形態では、部品記述は、複数の体積要素を示すことができ、シミュレーションユニットは、体積要素の少なくとも一部、好ましくは全ての体積要素の冷却挙動を決定するように設計され得る。
【0042】
記載された実施形態では、各体積要素又は体積要素の一部について冷却挙動を決定することが可能である。更にまた、コンピューティングユニットは、各体積要素の非晶質性値を決定するように設計されることが考えられる。一実施形態では、予測ユニットは、各体積要素又は体積要素のサブセットの機械的特性を示すように更に設計されてもよい。
【0043】
一実施形態では、シミュレーションユニットは、使用される合金も考慮して冷却挙動を決定するように設計され得る。
【0044】
使用される合金が考慮されると、冷却挙動の決定が改善され得る。更にまた、シミュレーションユニットを、複数の可能な合金の冷却挙動を計算するように設計することが可能である。この計算は、逐次的又は並列的に実行され得る。1つ又は複数の合金を考慮することにより、非晶質性値を個々の合金に割り当てることができる。予測ユニットは、異なる合金について製造される部品の機械的特性を示すように設計され得る。これは、部品の製造に最も適した合金を選択することを可能にする。したがって、全体として、製造される部品の製造が改善される。
【0045】
一実施形態では、少なくとも1つの製造パラメータは、成形チャンバへの射出温度の表示及び/又は成形チャンバへの射出速度の表示を含んでもよい。
【0046】
製造される部品を製造するための射出成形法を使用する場合、少なくとも1つの製造パラメータは、例えば、成形チャンバへの射出温度、又は成形チャンバへの射出速度を含んでもよい。スタンプの供給速度が少なくとも1つの製造パラメータとして示されることも考えられる。これらのパラメータは、成形チャンバ内の材料の温度、したがって非晶質特性が達成されるか否かに大きな影響を及ぼす。
【0047】
一実施形態では、予測ユニットは、特に部品記述及び/又はFEMシミュレーションを使用して、製造される部品の少なくとも1つの機械的負荷ケースをシミュレートするように設計され得る。
【0048】
記載された実施形態では、製造される部品の異なる負荷ケースをシミュレートすることが可能である。したがって、シミュレーションを使用することにより、部品の異なる点における力の作用をシミュレートすることができる。異なる環境影響の結果としての温度プロファイルもシミュレートされ得る。最後に、記載された実施形態は、製造される部品のユーザが、部品の製造前に、部品が耐えることができなければならない負荷ケースを画定することを可能にする。
【0049】
一実施形態では、機械的特性は、製造される部品の幾何学的形状、少なくとも1つの製造パラメータ及び/又は製造方法を考慮して、製造される部品が少なくとも1つの機械的負荷ケースに耐えるかどうかの表示を含んでもよい。
【0050】
したがって、機械的特性は、製造される部品が定義された負荷ケースに耐えることができるか否かを示すことができる。表示は、材料固有又は合金固有とすることができる。これは、製造される部品の機械的特性が、製造される部品によって定義された負荷ケースが可能かどうかの使用される合金の表示を含むことを意味する。
【0051】
一実施形態では、予測ユニットは、製造される部品の示された機械的特性を少なくとも1つの設定値と比較するように設計され得る。予測ユニットは、製造される部品の機械的特性が設定値から偏差するか、又は要求される品質基準を満たさない場合にシミュレーションユニットを起動するように更に設計され得る。シミュレーションユニットは、起動後に、以前に使用されたもの以外の合金の冷却挙動を決定するように設計され得る。追加的又は代替的に、シミュレーションユニットは、複数の異なる合金の少なくとも1つの非晶質性値を決定するように設計され得る。
【0052】
実施形態により、製造される部品の機械的特性が設定値に対応するか又はより良好になるまで実行され得るフィードバックが定義される。
【0053】
一実施形態では、システムは、少なくとも1つの製造パラメータを使用して、特に積層造形法又は射出成形法によって、製造される部品を製造するように設計された製造プラントを備えてもよい。
【0054】
製造される部品が、記載されたシステムによって直接製造されることも可能である。したがって、全体として、効率的なプロセスチェーンが定義される。
【0055】
一実施形態では、システムは、製造される部品の部品記述を通信ネットワークを介してシミュレーションユニットに送信するように設計され得るユーザ端末を有してもよい。
【0056】
ユーザが通信ネットワークを介して部品記述をシミュレーションユニットに送信することができる場合、特定の利点が生じる。例えば、ユーザは、例えばCADアプリケーションプログラムによって、ユーザ端末、好ましくはコンピュータにおいて部品記述を生成することができる。続いて、インターネットなどの通信ネットワークを介して、部品記述がシミュレーションユニットに送信され得る。この目的のために、シミュレーションユニットは、対応する通信ユニットを有してもよい。更にまた、一実施形態では、通信ユニットを、予測ユニットによって示される製造される部品の機械的特性をユーザ端末に送信するように設計することが可能である。したがって、ユーザは、部品記述が所望の負荷ケースを満たすかどうか、又はユーザが望むように使用され得るかどうかを直ちに認識することができる。
【0057】
この目的は更に、特に、非晶質特性を有する、製造される部品の機械的特性を示す方法であって、
-製造される部品の少なくとも一部の冷却挙動を決定するステップであって、部品が非晶質特性を有する、決定するステップと、
-決定された冷却挙動を考慮して、製造される部品の少なくとも一部について少なくとも1つの非晶質性値を決定するステップと、
-製造される部品の幾何学的形状、少なくとも1つの製造パラメータ、少なくとも1つの非晶質性値及び/又は製造方法を考慮して、製造される部品の機械的特性を示すステップと、
を含む方法によって達成される。
【0058】
一実施形態では、本方法は、非晶質性値への材料特性及び/又は材料の割り当てを記憶することを含んでもよい。
【0059】
一実施形態では、本方法は、シミュレートされた冷却挙動を考慮して、製造される部品の少なくとも一部の冷却速度を決定することを含んでもよい。
【0060】
一実施形態では、本方法は、決定された冷却速度を臨界冷却速度、特に合金依存性の臨界冷却速度と比較することを含んでもよく、非晶質性値は、比較を考慮して決定され得る。
【0061】
一実施形態では、本方法は、臨界冷却速度及び/又は非晶質性値への材料特性の割り当てを、特にデータベースユニットに記憶することを含んでもよい。
【0062】
一実施形態では、製造される部品は、部品記述、特にCADモデルによって示されてもよく、冷却挙動は、部品記述を使用して決定され得る。
【0063】
一実施形態では、部品記述は、複数の体積要素を示すことができ、冷却挙動を決定することは、体積要素の少なくとも一部、好ましくは全ての体積要素の冷却挙動を決定することを含んでもよい。
【0064】
一実施形態では、使用される合金を考慮して冷却挙動も決定され得る。
【0065】
一実施形態では、本方法は、特に部品記述及び/又はFEMシミュレーションを使用して、製造される部品の少なくとも1つの機械的負荷ケースをシミュレートすることを含んでもよい。
【0066】
一実施形態では、本方法は、少なくとも1つの製造パラメータを使用して、特に積層造形法又は射出成形法によって、製造される部品を製造することを含んでもよい。
【0067】
一実施形態では、本方法は、製造される部品の部品記述を、通信ネットワークを介して、特に通信ネットワークを介して、ユーザ端末からシミュレーションユニットに送信することを含んでもよい。
【0068】
この目的は、特に、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つのプロセッサに、上述したような方法を実装させる命令を含むコンピュータ可読記憶媒体によって更に達成される。
【0069】
システムに関連して既に説明したのと同様又は同一の利点が生じる。
【0070】
更なる実施形態は、従属請求項から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
本発明は、例示的な実施形態を使用して以下により詳細に説明される。以下が示されている:
図1】射出成形機の概略図である。
図2】ツールの概略図である。
図3】システムの概略図である。
図4】例示的なデータベーステーブルである。
図5】臨界冷却速度を有する更なる例示的なデータベーステーブルである。
図6】部品の温度プロファイルである。
図7】部品記述の体積要素への温度プロファイルの割り当て。
図8】対応する負荷ケースによって製造される部品の表現である。
図9】部品を製造する方法のフローチャートである。
【0072】
以下では、同一の又は同一に作用する部分には同じ参照符号が使用される。
【0073】
図1は、AMM(非晶質金属)射出成形システム1の概略図を示している。射出成形システム1は、ツール2内の金型と、溶融チャンバ3とを備える。非晶質固化合金(ブランク)4の固体合金セグメントは、ロボットを介して溶融チャンバ3に供給され、誘導コイル5の中央に配置される。ブランク4は、加熱素子、特に誘導コイル5によって生成される誘導場によって溶融チャンバ3内で加熱される。ブランク4は、非晶質固化合金の固体合金セグメントである。合金セグメント4は、例えば、特定の割合のパラジウム、白金、ジルコニウム、チタン、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニオブ、ケイ素及び/又はイットリウムを有する。
【0074】
ブランク4は、加熱素子又は誘導コイル5によって溶融されて溶融状態となる。好ましくは、ブランク4は、1050℃の温度まで加熱される。溶融した材料は、ピストン6によってツール2に注入される。
【0075】
図2は、射出成形ツールの概略構造を示している。成形チャンバ11は、ツール2の成形チャンバ11に通じる1つ又は複数の開口部10により、溶融物によって充填される。成形チャンバ11は、製造される部品8の陰型として設計される。図2の例示的な実施形態では、液体材料を成形チャンバ11内に案内するために開口部10が使用され得るようになっている。均一な温度分布を達成し、溶融物の乱流を低減するために、成形チャンバ11を充填するために複数の湯口を使用することが有利であり得る。均一な温度分布及び少数の乱流は、より良好な冷却動作、均一な冷却、したがって均一な非晶質材料特性をもたらす。
【0076】
成形チャンバ11内では、液体材料は、結晶化を防ぐために急速に冷却されなければならない。液体材料の冷却は、製造される部品又はワークピース8の幾何学形状に大きく依存する。
【0077】
図3は、製造される部品8の機械的特性を決定する又は示すことができるシステム20を示している。システム20は、シミュレーションユニット23と、コンピューティングユニット24と、予測ユニット27とを備える。ユーザは、入力ユニット21を使用して、通信ネットワーク22を介して、例えばCADモデルの形態の部品記述50をシミュレーションユニット23に送信することができる。例えば、ユーザは、ウェブインターフェースを介してサーバに部品記述50をアップロードすることができる。サーバは、この目的のためにウェブサーバを実行することができる。続いて、サーバは、部品記述50をシミュレーションユニット23に送信することができる。
【0078】
シミュレーションユニット23は、製造される部品8の少なくとも一部の冷却挙動を決定するように設計される。図示の例示的な実施形態では、製造される部品8は、部品記述50によって示されている。シミュレーションユニット23による冷却挙動の決定は、図6及び図7に詳細に記載されている。
【0079】
シミュレーションユニット23は、特に、特定の製造方法のための温度挙動を決定するように設計される。この場合、シミュレーションユニット23はまた、スタンプ7によって注入動作及び/又は注入動作中の温度挙動を決定するように設計され得る。特に、シミュレーションユニット23は、注入動作後の温度を決定するように設計され得る。この温度は、冷却速度を決定するための初期温度として使用され得る。製造される部品8の非晶質特性を保証するために、注入後の温度が閾値、例えば850℃よりも高い場合が有利である。
【0080】
初期温度から開始して、冷却挙動は、シミュレーションユニット23によってその後に決定され得る。
【0081】
温度挙動は、例えば、特定の時点における温度を示す要素を含むベクトルとして記憶され得る。
【0082】
コンピューティングユニット24は、製造される部品8の少なくとも一部について少なくとも1つの非晶質性値29を決定するように設計される。この場合、コンピューティングユニット24は、製造される部品8全体について単一の非晶質性値29を計算すること、又は製造される部品8の異なる領域について複数の非晶質性値29を計算することができる。特に、部品記述50が複数の体積要素を示す場合、コンピューティングユニット24は、各体積要素の非晶質性値29を決定するように設計され得る。
【0083】
図示の例示的な実施形態では、コンピューティングユニット24は、冷却挙動によって示され得る冷却速度を臨界冷却速度30と比較することによって少なくとも1つの非晶質性値29を決定するように設計される。決定された冷却速度が臨界冷却速度30を上回る場合、製造される部品8において非晶質特性が達成される。決定された冷却速度が臨界冷却速度30を下回る場合、製造される部品8において非晶質特性は達成されない。臨界冷却速度30からの決定された冷却速度の偏差の大きさに応じて、非晶質性値29は、低い値又は高い値を有することができる。例えば、決定された冷却速度が臨界冷却速度30を著しく下回る場合、低い非晶質性値が決定され得る。決定された冷却速度が臨界冷却速度30を大幅に上回る場合、高い非晶質性値が決定され得る。
【0084】
図示の例示的な実施形態では、コンピューティングユニット24は、データベースユニット25から特定の合金又は特定の材料の臨界冷却速度30を照会するように設計される。この目的のために、データベースユニット25は、複数の合金又は材料の対応する臨界冷却速度30を記憶する。
【0085】
更にまた、非晶質性値29は、製造される部品8のいくつの領域が非晶質特性を有するかの表示を含むことが考えられる。例えば、非晶質性値29は、部品記述50又は製造される部品8の関連するサブ領域のどの割合の体積要素が非晶質特性を有するかを示すパーセンテージとして解釈され得る。
【0086】
予測ユニット27は、決定された非晶質性値29及び対応する材料又は対応する合金についてデータベースユニット25から材料特性32を読み取るように設計される。データベースユニット25は、非晶質性値と合金又は材料との対についての複数の材料特性32を記憶するように設計される。
【0087】
照会された材料特性32を使用して、予測ユニット27は、製造される部品8の機械的特性26又は部品記述50を決定することができる。
【0088】
更にまた、予測ユニット27は、製造される部品8の機械的特性26がユーザ定義の負荷ケースに耐えるかどうかをチェックするように設計される。この場合、製造システム、例えば射出成形機28は、対応する製造パラメータ31を使用して部品8を製造することができる。更にまた、予測ユニット27を、通信ネットワーク22を介して機械的特性26をユーザ端末21に送信するように設計することが可能である。
【0089】
図4は、データベースユニット25によって記憶され得る表32を示している。
【0090】
表32は、非晶質性値、引張強度値、曲げ強度値、粘度値、及び/又は合金に関する情報を有する列を含む。特に、材料特性への合金及び非晶質性値の割り当てがこのようにして行われる。したがって、表30は、異なる非晶質性値が割り当てられた合金L1についての2つの行を含む。引張強度及び曲げ強度などの異なる材料特性がそこから生じる。したがって、引張強度ZW1及び曲げ強度BW1及び粘度VW1は、合金L1及び関連する非晶質性値AW1について記憶される。合金L1の場合、引張強度ZW2、曲げ強度BW2、及び粘度VW2は、第2の非晶質性値AW2に応じて記憶される。
【0091】
したがって、材料特性は、非晶質性値及び合金を示すタプルを用いてデータベースユニット25へのクエリによって照会され得る。
【0092】
図5は、合金への臨界冷却速度の割り当てを記憶する第2のデータベーステーブル33を示している。図5から分かるように、臨界冷却速度AR1は、合金L1に割り当てられる。これは、コンピューティングユニット24が特定の合金L1の対応する臨界冷却速度A1を読み取ることを可能にする。
【0093】
図6は、例示的な温度プロファイル40を示している。図6の例示的な実施形態は、製造される部品8の内側部分に関する。図示のように、温度は、時間t1における初期温度C1から時間t2において到達した温度C2まで低下する。
【0094】
したがって、t1からt2の間隔における温度降下、すなわち温度差C1~C2を示す冷却速度を決定することが可能である。更にまた、冷却速度が結晶化を防止するのに十分高いかどうかを確認することができる。結晶化が防止される冷却速度は、臨界冷却速度と呼ぶことができる。したがって、製造される部品又はワークピースが非晶質特性を有するかどうかを確認するために、部品の各点における冷却速度が臨界冷却速度よりも大きいかどうかを決定することが可能である。
【0095】
したがって、温度プロファイル40は、製造される部品8の一部の冷却挙動を記述する。したがって、コンピューティングユニット24は、温度プロファイル40を使用してデータベースユニット25から照会された臨界冷却速度AR1と比較することによって、製造される部品8が部品記述50にしたがって非晶質特性を有するかどうかを決定することができる。
【0096】
部品は、例えばCADファイルを用いて、部品記述50によってデジタル的に記述され得る。したがって、図7は、直方体の部品記述50を示しており、上記記述は、複数の体積要素51、52から構成されている。したがって、部品記述50は、例えば、シミュレーションソフトウェアを使用して個々の体積要素51、52に分割されたCADモデルとすることができる。ここで、温度挙動は、部品記述50の各体積要素51、52についてシミュレート又は予測され得る。
【0097】
したがって、図7は、第1の温度プロファイル53が第1の体積要素51に割り当てられることを示している。第2の温度プロファイル54は、第2の体積要素52に割り当てられる。温度プロファイル53、54は、初期温度C1から限界温度C2までの温度降下を示す。部品記述50によって示される部品8の材料は、例えば、それが金型2内に注入されたときに約850℃の温度を有する。例示的なZr系合金のガラス転移温度は、約410℃である。材料が臨界温度、すなわちガラス転移温度未満に十分に急速に冷却されると、非晶質構造が得られる。臨界冷却速度が不足すると、溶融物は、結晶状態で固化し、非晶質状態では固化しない。
【0098】
図7から分かるように、第1の温度プロファイル53では、時間t2において限界温度C2に到達する。第2の温度プロファイル54では、時間t3において限界温度C2に到達する。第1の温度プロファイル53及び第2の温度プロファイル54から分かるように、時間t3は、時間t2よりも前である。これは、第1の体積要素51に割り当てられた温度プロファイル53の温度が、第2の体積要素52に割り当てられた第2の温度プロファイル54の温度よりもゆっくり低下することを意味する。したがって、第2の温度プロファイル54における冷却速度は、第1の温度プロファイル53における冷却速度よりも大きい。第1の温度プロファイル53の冷却速度が非晶質構造を得るのに必要な臨界冷却速度未満であると仮定される場合、部品記述50は、第1の体積要素51の点における冷却速度が臨界冷却速度よりも大きくなるように、より迅速に部品から熱を伝達するように適合されなければならない。この目的のために、例えば、異なる臨界冷却速度を有する異なる合金が使用され得る。
【0099】
温度図53及び54は、シミュレーションユニット23を使用して生成され得る。これは、各体積要素51、52について温度挙動のシミュレーションが実行されることを意味する。したがって、温度図53及び54を非常に正確に決定することが可能である。シミュレーションユニット23の結果は、冷却挙動として、例えばオブジェクト指向プログラミング言語のオブジェクトとしてデジタル的に提供され得る。しかしながら、冷却挙動をテキストファイル又は任意の他の形式で提供することも可能である。
【0100】
個々の体積要素51、52を考慮することにより、個々の体積要素51、52ごとに非晶質性値29を決定することも可能である。特に、臨界冷却速度30に到達していない個々の体積要素を識別することが可能である。更にまた、部品記述50のどの部分がどの材料特性を有するかを確認することが可能である。これは、データベースユニット25及び予測ユニット27を使用して行うことができる。
【0101】
例えば、製造される部品のいくつかの領域において結晶構造が生じる場合、特定の用途では破損の特定のリスクが存在することがある。
【0102】
図8は、力Fが加えられた場合に製造される部品8の挙動を示す負荷ケース60を示している。図8では、部品8は、その右側において壁61に固定されている。予測ユニット27は、製造中に、製造される部品8上に結晶領域62が形成されることを、製造される部品8について決定する。ここで、製造される部品8が結晶領域62にもかかわらず定義された負荷ケースに耐えるかどうかが予測ユニット27によってシミュレートされ得る。製造される部品8が負荷ケース60に耐えられることをシミュレーションが確認する場合、製造される部品8が製造され得る。対照的に、製造される部品8が負荷ケースに耐えないことが確認された場合、例えば、結晶領域62の形成を防止するために、異なる合金が選択され得る。
【0103】
その左側には、下から作用する力Fが負荷ケース60によって示されている。シミュレーションを使用して、この力Fに応答して製造される部品8の挙動が計算され得る。力Fが左側に加えられ、右側に部品8が固定されることに起因して、製造される部品8は屈曲する。図8に示す例示的な実施形態では、製造される部品8が負荷ケースに耐えず、結晶領域62で破損が生じると仮定される。
【0104】
ここで、予測ユニット27は、シミュレーションユニット23を起動するように設計される。この場合、予め選択された合金が十分でない旨の表示がシミュレーションユニット23に送信される。したがって、シミュレーションユニット23は、第2の合金の冷却挙動を決定し、それに応じて部品記述50が対応する情報を含むように部品記述50を適合させるように設計される。
【0105】
図9は、部品79を製造するための方法70のフローチャートを示している。入力ステップ71において、ユーザは、製造される部品8を記述する部品記述72を定義する。部品記述72は、通信ネットワークを介してシミュレーションユニット24に送信され得る。シミュレーションステップ73において、シミュレーションユニット24は、部品記述72の温度挙動74を決定/シミュレートすることができる。
【0106】
ステップ75において、温度挙動を使用して、少なくとも1つの非晶質性値76を決定する。この目的のために、部品記述72によって示される合金の臨界冷却速度を、データベースユニット25から読み取ることができる。
【0107】
比較ステップ77では、決定された非晶質性値76が設定値と比較されるか、又は製造される部品8の決定された機械的特性が負荷ケースについてチェックされる。非晶質性値76が設定値の要件を満たさないこと、又は製造される部品8が負荷ケースを満たさないことが確認された場合、本方法は、ステップ73に続く。この目的のために、異なる温度挙動及び異なる臨界冷却速度が上記合金に適用されるため、本方法は、まだ使用されていない合金を用いてシミュレーションステップ73において再開される。
【0108】
非晶質性値76が設定値の要件を満たし、又は製造される部品8が負荷ケースを満たすことが確認された場合、製造ステップ78において、部品記述72を使用して部品79を製造することができる。
【0109】
この時点で、上述した全ての部分は、各々の文脈において追加的に説明された特徴がなくても、例えば、特に、好ましくは、例えば、任意に、丸括弧などを使用することによって、各々の文脈において個別に任意の特徴として明示的に識別されていなくても、各々固有のものであり、特に明細書及び特許請求の範囲の導入部において定義されているように、本発明の独立した実施形態又は開発と見なされる組み合わせ又は任意の部分的組み合わせであることに留意されたい。それらからの逸脱が可能である。具体的には、「特に」という語句又は丸括弧は、各々の文脈において必須であるいかなる特徴も意味しないことに留意されたい。
【0110】
符号の説明
1 射出成形機
2 金型
3 溶融チャンバ
4、4’ 加熱素子
5 供給ホッパー
6 スクリュー
7 スタンプ
8 液体出発材料
9 ラインシステム
10、10’、10’’、10’’’ 入口開口部
11 成形チャンバ
20 システム
21 入力ユニット
22 通信ネットワーク
23 シミュレーションユニット
24 コンピューティングユニット
25 データベースユニット
26 機械的特性
27 予測ユニット
29、75 非晶質性値
30 臨界冷却速度
31 製造パラメータ
32 データベーステーブル
33 データベーステーブル
40、74 温度プロファイル
50、72 部品記述/CADモデル
51 第1の体積要素
52 第2の体積要素
53 第1の温度図
54 第2の温度図
60 負荷ケース
61 壁
62 結晶領域
70 方法
71 入力ステップ
73 シミュレーションステップ
77 比較ステップ
78 製造ステップ
79 製造される部品
C1 初期温度
C2 目標温度
T1、T2 時間
AW1、AW2、AW3 非晶質性値
ZW1、ZW2、ZW3 引張強度値
BW1、BW2、BW3 曲げ強度値
VW1、VW2、VW3 粘度値
L1、L2 合金

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】