(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】波エネルギー変換器のための電力取出装置、及び電力取出装置を備えた波エネルギー変換器
(51)【国際特許分類】
F03B 13/16 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
F03B13/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550872
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 SE2021050143
(87)【国際公開番号】W WO2021167523
(87)【国際公開日】2021-08-26
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522334117
【氏名又は名称】ノヴィゲ アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】スクヨルドハマー,ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ポジャンヴオリ,ティモ
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA03
3H074AA12
3H074BB09
3H074BB21
3H074CC03
3H074CC11
3H074CC21
(57)【要約】
ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器のための電力取出装置は:浮遊デバイスに装着されるよう適応され、かつ第1の上端部及び第2の下端部を備えた、シリンダ(1);シリンダ(1)の内側で往復するよう配置され、かつ係留設備に装着されるよう適応されたピストンロッド(6)を有する、ピストン(5);シリンダ(1)に対して平行に配置され、かつ第1の開口部を介してシリンダ(1)の第2の端部に流体連通する第1の下端部と、第2の開口部を備えた第2の上端部と、を備えた、少なくとも1本の水圧管(13);シリンダ(1)の第1の端部の上方に配置されたハウジング(16)であって、第2の開口部を介して水圧管(13)に流体連通し、ハウジング(16)の底部における第3の開口部を介してシリンダ(1)の第1の端部に流体連通し、それによってシリンダ(1)と、少なくとも1本の水圧管(13)と、ハウジング(16)とは、電力取出装置における作動流体の閉ループを共に形成する、ハウジング(16);ならびに、ハウジング(16)の内側に配置された水力タービン(4)であって、第2の開口部を介して、少なくとも1本の水圧管(13)からハウジング(16)に入る作動流体が、水力タービン(4)を回転させて、水力タービン(4)に接続された発電機(15)を駆動するよう方向付けられた、水力タービン(4)、を備える。このような電力取出装置を備えた波エネルギー変換器も開示される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器における電力取出装置であって、
浮遊デバイスに装着されるよう適応され、かつ第1の上端部及び第2の下端部を備えた、シリンダ(1)と、
前記シリンダ(1)の内側で往復するよう配置され、かつ係留設備に装着されるよう適合されたピストンロッド(6)を有する、ピストン(5)と、
前記シリンダ(1)に対して平行に配置され、かつ第1の開口部を介して前記シリンダ(1)の前記第2の端部に流体連通する第1の下端部、及び第2の開口部を含んだ第2の上端部を備えた、少なくとも1本の水圧管(13)と、
前記シリンダ(1)における第1の端部の上方に配置され、前記第2の開口部を介して前記水圧管(13)に流体連通する、ハウジング(16)と、
前記ハウジング(16)の内側に配置された水力タービン(4)であって、前記第2の開口部を介して少なくとも1本の前記水圧管(13)から前記ハウジング(16)に入る作動流体が、前記水力タービン(4)を回転させて、前記水力タービン(4)に接続された発電機(15)を駆動するように方向付けられた、水力タービン(4)と、
を備え、
前記シリンダ(1)に対して前記ピストン(5)が下方にストロークする間に、前記ピストン(5)の下方における、前記シリンダ(1)の前記第2の端部に存在する作動流体が、前記第1の開口部を介して少なくとも1本の前記水圧管(13)に入り、前記第2の開口部を介して少なくとも1本の前記水圧管(13)を出て、
前記電力取出装置は、
前記ハウジング(16)が、前記ハウジング(16)の底部における第3の開口部を介して、前記シリンダ(1)の前記第1の端部に流体連通し、それによって前記シリンダ(1)、少なくとも1本の前記水圧管(13)、及び前記ハウジング(16)は、前記電力取出装置の作動流体のための閉ループを共に形成することと、
少なくとも1つの一方向弁(17)を有する少なくとも1本の前方導管をさらに備え、前記一方向弁(17)は、前記ピストン(5)が前記シリンダ(1)に対して上方にストロークする間に、作動流体が、前記ピストン(5)の上方における前記シリンダ(1)の前記第1の端部から、少なくとも1本の前記前方導管を介して、前記ピストン(5)の下方における前記シリンダ(1)の前記第2の端部まで通過できるよう配置されることと、
を特徴とする、電力取出装置。
【請求項2】
少なくとも1本の前記前方導管、及び少なくとも1つの前記一方向弁(17)は、前記ピストン(5)に配置される、請求項1に記載の電力取出装置。
【請求項3】
少なくとも1本の前記前方導管は、前記シリンダ(1)の外部に配置された戻り配管(19)を備える、請求項1に記載の電力取出装置。
【請求項4】
前記シリンダ(1)、前記水圧管(13)、及び前記ハウジング(16)によって形成された閉ループに流体連通するよう配置された、調節器ユニット(30)をさらに備え、前記調節器ユニット(30)は、前記閉ループを作動流体で補給するよう、作動流体を監視するよう、作動流体を洗浄するよう、ならびに/または、前記電力取出装置における摩擦及び/もしくは腐食を軽減させる添加剤を作動流体に加えるよう、配置される、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項5】
前記調節器ユニット(30)は、流体分析チャンバ(31)、混合チャンバ(32)、濾過器(33)、廃棄物チャンバ(34)、及び/または添加剤チャンバ(35)を備える、請求項4に記載の電力取出装置。
【請求項6】
前記水力タービン(4)の回転軸と同軸に回転するよう配置された、フライホイール(14)をさらに備え、前記水力タービン(4)及び前記フライホイール(14)は、前記ハウジング(16)の内側における隔壁(18)によって分離される、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項7】
前記水力タービン(4)と、少なくとも1本の前記水圧管(13)との間に、閉ループに流体連通するよう配置された圧力タンク(40)をさらに備え、前記圧力タンク(40)は、前記水力タービン(4)へ送達される作動流体に、実質的に継続した一定の圧力を提供するよう配置される、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項8】
前記発電機(15)は、作動流体が前記水力タービン(4)を回転させないときに、前記水力タービン(4)の回転速度を制御するために、前記水力タービン(4)を回転させるよう配置される、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項9】
少なくとも1本の前記水圧管(13)に配置され、かつ作動流体を、少なくとも1本の前記水圧管(13)における前記第1の下端部から前記第2の上端部へ通過させるよう構成された、少なくとも1つの弁(11)をさらに備える、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項10】
少なくとも1本の前記水圧管(13)と、前記水力タービン(4)の下方における前記ハウジング(16)または前記シリンダ(1)の前記第1の端部とに、流体連通するよう配置された、少なくとも1本の第1のバイパス導管(20)をさらに備え、少なくとも1本の前記第1のバイパス導管(20)は、所定の圧力で開いて、作動流体を、少なくとも1本の前記水圧管(13)から、少なくとも1本の前記バイパス導管(20)を介して、前記水力タービン(4)の下方の前記ハウジング(16)、または前記シリンダ(1)の前記第1の端部まで通過させるよう構成された、第1の解放弁(24)を備える、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項11】
少なくとも1本の第2のバイパス導管(9)をさらに備え、前記シリンダ(1)の前記第2の端部に流体連通した第1の下端部と、前記水力タービン(4)の下方における前記ハウジング(16)または前記シリンダ(1)の前記第1の端部に流体連通した第2の上端部とを有し、少なくとも1本の前記第2のバイパス導管(9)は、所定の圧力で開き、作動流体を、前記ピストン(5)の下方において前記シリンダ(1)の前記第2の端部から、少なくとも1本の前記第2のバイパス導管(9)を介して、前記水力タービン(4)の下方における前記ハウジング(16)、または前記ピストン(5)の上方における前記シリンダ(1)の前記第1の端部まで通過させるよう構成された、第2の解放弁(8;21)を備える、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項12】
前記第2の解放弁(21)を伴う、少なくとも1本の前記第2のバイパス導管(9)は、前記ピストン(5)に配置される、請求項11に記載の電力取出装置。
【請求項13】
前記シリンダ(1)の前記第2の端部を2つの空間に分割する、シリンダ隔壁(53)をさらに備え、前記隔壁は、前記ピストンロッド(6)を囲んだ高圧封止部(51)を伴う開口部を備え、前記シリンダ(1)の底壁は、前記ピストンロッド(6)を囲んだ低圧封止部(52)を伴う開口部を備え、下部空間(50)は、少なくとも1本の第3のバイパス導管(9)を介して、前記シリンダ(1)の前記第1の端部に流体連通して、作動流体を、前記下部空間(50)から前記シリンダ(1)の前記第1の端部への方向に通過させる、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項14】
前記ピストンロッド(6)は、上方から前記ピストン(5)に装着された第1のセクション(61)と、前記第1のセクションに対して平行で、前記シリンダ(1)の外部に配置された第2のセクション(62)と、前記シリンダ(1)の上方において前記第1及び第2のセクションに接合する第3のセクション(63)と、を備え、前記シリンダ(1)は、前記ピストンロッド(6)の前記第2のセクション(62)に沿って前記シリンダ(1)が摺動できるよう配置された、一対の摺動連結部(64)を備える、請求項1~13のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項15】
前記ピストンロッド(6)は、別個の海洋構造物に装着されるよう配置される、請求項1~14のうちいずれか一項に記載の電力取出装置。
【請求項16】
浮遊デバイス(66)、及び請求項1~15のうちいずれか一項に記載の電力取出装置を備える、ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器。
【請求項17】
電気エネルギーを水域の波力から生成するための、ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器における、請求項1~15のうちいずれか一項に記載の電力取出装置の使用方法。
【請求項18】
発電機(15)は、作動流体が水力タービン(4)を回転させないときに、前記水力タービン(4)の回転速度を制御するために、前記水力タービン(4)を回転させるよう使用される、請求項17に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体的に波からエネルギーを取入れるための電力取出(PTO)装置に関し、より詳細には、ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器(WEC)に使用されるものに関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーを引き出す可能性として、海の波における巨大な力が公知である。この可能性を役立てるための波エネルギー変換器の例が、例えば国際公開第98/20253号、欧州特許第0265594号明細書、国際公開第2009/093988号、米国特許出願公開第2004/160060号明細書、英国特許出願公開第2472055号明細書、米国特許第5701740号明細書、及び国際公開第2017/217919号で開示されている。
【0003】
しかし、当技術分野で公知である電力取出装置における、1つの潜在的な課題は、それらがシリンダの中に吸引された海水を作動流体として利用し、シリンダから水圧管を介して水力タービンにポンプで送り込み、海に戻すことである。このような解決策は、塩分を含んだ海水が、PTOシステムの構成要素に対してかなりの腐食性を有し、PTOシステムの寿命を低下させ、及び/または構成要素の交換が必要となる、といういくつかの欠点を有する。調整剤、潤滑液、及び防蝕剤などの添加剤を加えることでは、この課題を長期的に緩和しない。なぜなら添加剤は、PTOを通過する海水によって洗い流されることになるためである。追加として、このような添加剤、ならびにシステム内、封止部、金属、軸受、漏洩からの粒子は、シリンダまたはタービンハウジングの上部開口部から放出されることになり、それは経時的に周囲の海水の、汚染の起因となる場合がある。ステンレススチールなどの、より耐腐食性の高い材料で、全ての構成要素を製造することは、1つの代替となり得るが、様々な構成要素の電解腐食を伴う厳しい困難のため、ならびに関連する高い金属コストのために、これは実現性がない。
【0004】
さらに、海水の吸入は、汚染物質及び/または破片、ならびに海洋生物有機体を、シリンダの開口部を介してシステムに入るよう導き得る。これは、シリンダの内側で、水垢の付着、汚れ、及び残留物の蓄積をもたらす場合があり、シリンダは定期的な洗浄を必要とする。さらに、海洋生物を、強力で断続的な水中吸引から守るための、防護手段が必要となるであろう。これらの障害を克服するための予防改善措置として、水の入口及び出口の両方における、大容量濾過、及び洗浄ユーティリティーが挙げられる。このような大容量濾過/洗浄システムは、重量を増加させて技術的性能を低下させるので、PTOシステムの製造及び補修コストを増加させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第98/20253号
【特許文献2】欧州特許第0265594号明細書
【特許文献3】国際公開第2009/093988号
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/160060号明細書
【特許文献5】英国特許出願公開第2472055号明細書
【特許文献6】米国特許第5701740号明細書
【特許文献7】国際公開第2017/217919号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、上述の欠陥及び不利点を克服するための、改善された電力取出装置が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の目標は、上記で概要を示した課題に対処する解決策を提供することである。この目標は、本発明の第1の態様で実現される。そこでは、ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器のための、電力取出装置が提供される。この電力取出装置は、浮遊デバイスに装着されるよう適応され、かつ第1の上端部及び第2の下端部を備えた、シリンダ;シリンダの内側を往復するよう配置され、かつ係留設備に装着されるよう適応されたピストンロッドを有する、ピストン;シリンダに対して平行に配置され、かつ第1の開口部を介してシリンダの第2の端部に流体連通した第1の下端部と、第2の開口部を含んだ第2の上端部とを備えた、少なくとも1本の水圧管;シリンダにおける第1の端部の上方に配置され、かつ第2の開口部を介して水圧管に流体連通した、ハウジング;及び、水圧タービンであって、ハウジングの内側に配置され、かつ第2の開口部を介して少なくとも1本の水圧管からハウジングに入る作動流体が、水圧タービンを回転させて水圧タービンに接続された発電機を駆動するように方向付けられた、水圧タービン、を備える。ピストンの下方における、シリンダの第2の端部に存在する作動流体は、シリンダに対するピストンの下方ストローク中に、第1の開口部を介して少なくとも1本の水圧管の中に入り、第2の開口部を介して少なくとも1本の水圧管を出る。ハウジングは、ハウジングの底部における第3の開口部を介してシリンダの第1の端部に流体連通し、それによって、シリンダと、少なくとも1本の水圧管と、ハウジングとは、電力取出装置の作動流体のための閉ループを共に形成する。電力取出装置は、少なくとも1つの一方向弁を有する少なくとも1本の前方導管をさらに備える。この一方向弁は、シリンダに対するピストンの上方ストローク中に、作動流体がピストンの上方のシリンダにおける第1の端部から、少なくとも1本の前方導管を介して、ピストンの下方におけるシリンダの第2の端部への方向のみに通過するのを可能にするよう配置される。
【0008】
本開示によるデバイスは、作動流体を電力取出装置内に含んだ閉ループを提供する。シリンダに対するピストンの上下往復運動によって、作動流体はポンプで少なくとも1本の水圧管の中に送られ、さらに水圧タービンに向けて導かれ、回転させて電気エネルギーを生成する。その後、作動流体は、重力の影響によってシリンダの第1の上端部に向けてハウジングの内側で落下し、閉ループを完成させる。その結果、PTOシステムの内部構成要素は、腐食性の塩及び生物有機体を含んだ海水に露出されることはない。これは、構成要素の汚れ及び劣化を防止、または最小に抑え、同様に補修及び保守管理の必要性を減少させ、かつPTOシステムの寿命を延ばす。新しいPTO装置は、濾過/洗浄、ならびに腐食に対する防護の必要性を取り除き、それによって維持された長期の性能を保証する。さらに閉システムは、作動流体、及びその中に存在する、例えば内部構成要素の摩耗から発生するいかなる粒子も、周辺環境に放出されず、周辺環境を汚染しないことを保証する。このように、波エネルギーを取入れるための、環境にやさしい向上した解決策を実現する。追加として、この閉システムは、強力な水中吸引の危険が排除されるという点で、海洋野生生物の向上した保護を提供する。
【0009】
他の海洋エネルギーデバイスに対する、本開示によるPTO装置における他の利点として、例えばWECシステムにおける矩形フロートと組み合わせることで可能な、大きい吊上げ力と、水力発電所の良好に証明された繰り返しを伴う、遅い波運動を発電機の高速回転運動へ簡単に変換することと、波底におけるラッチングの簡単な方法と、規則的な波の共振コンセプトの非常に複雑な調整を回避する、非共振挙動と、が挙げられる。
【0010】
1つの実施形態において、少なくとも1本の前方導管がピストンに配置される。この解決策は、シリンダの外部における追加のパイプを排除し、かつ電力取出装置の小型構成を提供する。代替として、少なくとも1本の前方導管は、シリンダの外部に配置された戻り配管から成る。
【0011】
1つの実施形態において、電力取出装置は、シリンダ、水圧管、及びハウジングによって形成された閉ループに流体連通して配置された、調節器ユニットをさらに備える。調節器ユニットは、電力取出装置の閉ループに作動流体を補給するよう、作動流体を監視するよう、作動流体を洗浄するよう、ならびに/または、電力取出装置の摩擦及び/もしくは腐食を軽減させる添加剤を作動流体に追加するよう、配置される。好ましくは、調節器ユニットは、流体分析チャンバ、混合チャンバ、濾過器、廃棄物チャンバ、及び/または添加剤チャンバを備える。調節器ユニットは、潤滑剤及び/または防蝕剤が、保守管理の頻度及びそれによるコストを低減させる、最適な作動流体を提供するという点で、電力取出装置の向上した性能を実現する。電力取出装置の状態の、継続的な監視が実施され得る。作動流体の洗浄または補給は、必要に応じて実行され、電力取出装置のために最適な作動条件を保証し得る。
【0012】
1つの実施形態において、電力取出装置は、水力タービンの回転軸と同軸で回転するよう配置された、フライホイールをさらに備える。水力タービン及びフライホイールは、ハウジングの内側の隔壁によって分離される。フライホイールは、水力タービンと共に回転し、回転エネルギーを貯蔵するように配置され、それによってピストンの上方ストローク中、水力タービンの回転を維持する。すなわち、波エネルギー変換器の浮遊デバイスは波と共に下方に動くとき、作動流体は水力タービンに作用しない。
【0013】
1つの実施形態において、電力取出装置は、水力タービンと少なくとも1つの水圧管との間に配置された、圧力タンクをさらに備える。圧力タンクは、実質的に継続した一定の圧力で、水力タービンに送達される作動流体を提供するよう配置される。圧力タンクを設けることによって、実質的に一定の圧力で、作動流体の実質的に継続したフローを提供し、水力タービンに作用することを可能にして、それによってフライホイールの重量、またはフライホイールの排気を共に軽減させるのを可能にする。
【0014】
1つの実施形態において、発電機は、作動流体が水力タービンを回転させないときに、水力タービンの回転速度を制御するために、水力タービンを回転させるよう配置される。作動流体が、水力タービンを駆動するために水圧管を出ないときに、例えば波の下降段階中に、水力タービンを回転させるモータとして発電機を作用させることによって、水力タービンの動翼に当たる作動流体の速度に対して、水力タービンのRPMの最適なレベルを維持することが可能になり、それによってエネルギー損失を軽減させ、より大きい電力変換効率を実現する。
【0015】
1つの実施形態において、電力取出装置は、少なくとも1つの弁をさらに備える。この弁は、少なくとも1本の水圧管に配置され、かつ作動流体が少なくとも1本の水圧管の、第1の下端部から第2の上端部への方向のみに通過するのを可能にするよう構成される。例えば、少なくとも1本の水圧管に一方向弁を設けることによって、ピストンの上方ストローク中に、作動流体がシリンダに戻るのを防止する。この方向性フローは、電気/液圧/空気圧、または別様に作動される弁によって確保される。この弁は、浮遊体が波で下方に動くときに閉じ、フローがノズルに対して望ましい上方にあるときに開く。この弁は、ノズルとも組み合わされてもよく、スピア弁であることが多い。
【0016】
1つの実施形態において、電力取出装置は、少なくとも1本の水圧管、及び水力タービンの下方のハウジングまたはシリンダの第1の端部に流体連通するよう配置された、少なくとも1本の第1のバイパス導管をさらに備える。少なくとも1本の第1のバイパス導管は、第1の解放弁を備える。第1の解放弁は、所定の圧力で開き、作動流体が、少なくとも1本の水圧管から、少なくとも1本の第1のバイパス導管を介して、水力タービンの下方のハウジングまたはシリンダの第1の端部まで通過するのを可能にするよう構成される。
【0017】
1つの実施形態において、電力取出装置は、少なくとも1本の第2のバイパス導管をさらに備え、シリンダの第2の端部に流体連通した第1の下端部と、水力タービンの下方のハウジングまたはシリンダの第1の端部に流体連通した、第2の上端部と、を有する。少なくとも1本の第2のバイパス導管は、第2の解放弁を備える。第2の解放弁は、所定の圧力で開き、作動流体が、ピストンの下方のシリンダにおける第2の端部から、少なくとも1本の第2のバイパス導管を介して、水力タービンの下方のハウジングまたはピストンの上方におけるシリンダの第1の端部まで通過するのを可能にするよう構成される。任選択で、少なくとも1本の第2のバイパス導管は、ピストンに配置され、それによって小型のバイパス解決策を提供する。
【0018】
閉ループシステムに沿った1つまたは複数の位置において、解放弁に関連した様々な構成要素に流体連通したバイパス導管を設けることによって、作動流体のフローが妨げられるか、または遮断された場合に高まった圧力に対して、電力取出装置の冗長防護が実現される。このフェイルセーフ機構は、電力取出装置の構成要素が、入ってくる波によって生じる、ピストンの継続した上下運動によって、損傷を受けないことを保証する。
【0019】
1つの実施形態において、電力取出装置は、シリンダの第2の端部を2つの空間に分割する、シリンダ隔壁をさらに備える。この隔壁は、ピストンロッドを囲んだ高圧封止部を伴う開口部を備え、シリンダの底壁は、ピストンロッドを囲んだ低圧封止部を伴う開口部を備える。下部空間は、少なくとも1本のバイパス導管を介してシリンダの第1の端部に流体連通して、作動流体が、シリンダの下部空間から第1の端部への方向に通るのを可能にする。シリンダの第2の下端部を区分けすることによって、かつピストンロッドの周りに高圧及び低圧封止を提供することによって、周囲の水に漏洩する可能性は、さらに最小に抑えられ、同様に高圧封止の寿命を延ばす。
【0020】
1つの実施形態において、ピストンロッドは、上からピストンに装着された第1のセクションと、第1のセクションに対して平行に、シリンダの外部に配置された第2のセクションと、シリンダの上方で第1及び第2のセクションに接合した第3のセクションと、を備える。シリンダは、ピストンロッドの第2のセクションに沿ってシリンダが摺動できるよう配置された、一対の摺動連結部を備える。上からピストンに装着された、ピストンロッドの代替の構成において、シリンダはもはや下端部に封止を必要としないので、作動流体が閉ループシステムから逃げられないこと、及び逆に海水が閉ループシステムの中に入ることができないこと、を保証する。この構成の利点は、シリンダとピストンロッドとの間の封止部が、上方に延びたシリンダの中に入るピストンの部分を有することによって、海水と直接接触せずに配置できることである。
【0021】
1つの実施形態において、ピストンロッドは、油田掘削装置の脚部など、別個の海洋構造物に装着されるよう構成される。これは、波エネルギー変換器が、予め存在する設備を利用可能にする。設備の位置の水深は重要ではない。なぜなら、ピストンロッドは、海洋構造物の装着具を介して海底に対して実質的に固定されることになるからである。別個の海洋構造物に対する、ピストンロッドのこの装着具は、従来の下方に向けられたピストンロッド、ならびに上述の上方に向けられたピストンロッドを用いた新たな逆構成の、両方が可能である。
【0022】
本開示の第2の態様において、浮遊デバイス及び第1の態様による電力取出装置を備えた、ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器が提供される。
【0023】
本開示の第3の態様において、電気エネルギーを水域の波力から生成するために、ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器における第1の態様による、電力取出装置の使用が提供される。
【0024】
1つの実施形態において、発電機は、作動流体が水力タービンを回転させないときに、水力タービンの回転速度を制御するよう、水力タービンを回転させるために使用される。モータとして作用する発電機によって、水力タービンの回転速度を制御することによって、水力タービンの動翼に当たる作動流体の速度に対して、水力タービンのRPMの最適なレベルを維持することが可能になり、それによってエネルギー損失を軽減させ、より大きい電力変換効率を実現する。
【0025】
次に本発明を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の第1の実施形態による、電力取出装置の概略断面図である。
【
図2】本開示の第2の実施形態による、電力取出装置の概略断面図である。
【
図3】本開示の1つの実施形態による、圧力タンクを含んだ電力取出装置の概略断面図である。
【
図4】本開示の1つの実施形態による、調節器ユニットを含んだ電力取出装置の概略断面図である。
【
図6】本開示の1つの実施形態による、代替のピストンロッドを含んだ電力取出装置の概略断面図である。
【
図7】上から見た、
図6における電力取出装置の一部の斜視図である。
【
図8】本開示の1つの実施形態による、電力取出装置のハウジングの部分的切り取り斜視図である。
【
図9】本開示の1つの実施形態による、電力取出装置を伴う浮遊プラットフォームの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本開示によるポイント吸収タイプの、波エネルギー変換器のための電力取出装置における詳細な説明を提示する。図面において、数枚の図面を通して同じ参照番号は、同一または対応した要素を示す。これらの図面は例示のみのものであり、本開示の範囲を、いかなる制限または限定もしないことを、理解されたい。
【0028】
本開示による電力取出装置は、その内容が参照として本明細書に組み込まれた、上述の国際公開第2017/217919号で開示されたものと同じ、または類似の原則に従って作動する。以下では、「電力取出(装置)」及びその略語「PTO」、ならびに「波エネルギー変換器」及びその略語「WEC」は、交換可能に使用される。
【0029】
次に
図1を参照すると、本開示の1つの実施形態による電力取出装置が例示される。このPTOは、4つの主な構成要素、及びいくつかの補助的/任意の構成要素、ならびに当技術分野で公知の監視/感知デバイスを備え、この装置の機能及び安全性を保証する。主な構成要素は、ピストン5と、シリンダ1の内側で往復するよう配置されたピストンロッド6とを含んだ、ピストン-シリンダ装置;シリンダ1に対して平行に配置された1本または複数本の水圧管13;シリンダ1の上端部の上方に配置されたハウジング16;及びハウジング16の内側に配置された水力タービン4、から構成される。シリンダ1、少なくとも1本の水圧管13、及びハウジング16は、作動流体のための閉ループを形成するよう、互いに流体連通して配置される。この作動流体は、PTOが海の波の中で装着可能な浮遊デバイス(図示せず)の上下運動に応じて、PTOを流れ通る。
【0030】
図9を参照すると、本開示による電力取出装置を組み込んだ、ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器の例が示される。シリンダ1は、軸受3を介して浮遊デバイスまたはプラットフォーム66に、波による浮遊プラットフォームの向きに関わりなく、PTOが実質的に垂直に向けられるよう、接続され得る。これは、任意選択で自由浮遊デバイスに一般に適用可能な旋回運動のための、互いに独立した1つまたは2つの実質的に水平の軸周りの回転を可能にする、旋回接続によって実現され得る。しかし、例えばシリンダ及び浮遊体が1つのユニットとして共に固定されるか、または吊上げ力を作り出す水力のための他の手段によって、さらに固定された構造またはフレームにおける、シリンダ1に対する他の固定も適用可能である。本開示の電力取出装置と共に使用され得る、1つの例示的な浮遊デバイスは、本明細書に参照として組み込まれた、国際公開第2017/160216号で開示されている。浮遊デバイスの他の形状も、本開示に包含される。
【0031】
シリンダ1の内側にピストン5が存在する。ピストン5は、好ましくは選択されたシリンダ材料と作動するのに好適な、ピストンリング(図示せず)を有する。シリンダ1に対するピストン5の上下ストロークは、大抵2~8秒毎に方向を変え、さらに速度は0.5~1.5メートル/秒であるので、ピストンリングは、完全に封止する必要はない。これは、作動流体の体積及び速度が、僅かな圧縮漏洩によってほとんど影響を受けないためである。1つの実施形態において、ピストン5は、その中に形成された1本または複数本の前方導管を備える。これら前方導管の各々は、その中に配置されるか、または接続された一方向弁17を有し、シリンダ1に対してピストン5が上方に動くときに、ピストン5の上方におけるシリンダ1の上端部に存在する、静止している作動流体の体積を介して、作動流体が前方導管を通過するのを可能にする。ピストン5が反対方向に動くとき、弁17は閉じ、それによってシリンダ1における下端部に圧縮を生じさせる。弁17は、ピストン自体、またはピストンの上方もしくは下方に位置付けられ得る。バネも、閉鎖を支持するために装填される。この/これらの弁17は、安全圧力弁も組み込んでもよく、それによって、特定の圧力を超えると、作動流体はピストン5を介して上方へ通過することになる。
【0032】
ピストン5はピストンロッド6に接続され、ピストンロッド6は、シリンダ1の下端部のブッシング内で摺動し、シリンダ1の開口部を介して、シリンダ1から出て下方へ延びる。このブッシングの1つの目的は、ピストンロッド6をシリンダ1の中央に安定させることである。ピストンロッド6を清潔に保つためのスクレイプリング、ならびに作動流体が周辺の海に漏洩するのを防止するための、シリンダ1の内側に最も近い圧縮リング/高圧封止部51、も含む。
【0033】
図1で判るように、水圧管13は、シリンダ1に対して平行に配置され、かつシリンダ1の下端部において第1の下部開口部を介して、シリンダ1の内部に流体連通する。水圧管13は、シリンダ1に沿ってシリンダ1の上端部に向かって延び、ハウジング16の中に進む第2の上部開口部で頂点に達し、それらの間の流体連通を確立する。ハウジング16は、
図8でより詳細に示される。少なくとも1つのスピア弁12、もしくは類似のカットオフ/オン、及び/または調整機能を伴う別の弁は、場合によっては別個の圧力解放弁7との組み合わせ、または1つに結合されて、水圧管13の上部開口部に配置される。圧力解放弁7は、電気、水圧、または空圧で駆動される、ドラム、ボール、またはソレノイド弁であってもよい。追加、または代替として、一方向弁11が、水圧管13に配置される。スピア弁12は、ハウジング16の中で水力タービン4に向けて方向付けられ、水力タービン4を駆動させるよう作動流体のフローを導く。弁7、12は、水力タービン4の最適な動作のために必要な特定の圧力が得られたとき、開く。したがって、作動流体は、高速でスピア弁12から流れ出て、水力タービン4の動翼または衝撃ブレードに当たり、最適な速度で水力タービン4を駆動させる。
【0034】
圧力解放弁24を、バイパス導管の中に通じた水圧管13の頂部セクションに設けることが可能であり、推奨もされる。バイパス導管は、水圧管の圧力解放管20の形態であり、水圧管13から水力タービン4の下方におけるハウジング16まで、またはシリンダ1の上端部の中に直接入る。スピア弁12が遮断された場合、水圧管13内で高まった圧力は、水圧管の圧力解放管20を介して効果的にスピア弁12を迂回させ、作動流体をハウジング16またはシリンダ1の中に直接放出することによって、解放させることができる。
【0035】
好ましくは同軸上に配置された、水力タービン4、フライホイール14、及び発電機15のRPMは、作動流体の速度及びRPMが好ましい比率になるよう、配電網または他の受入れユニット(例えば船内に位置された水素生成のアセンブリ、または船内もしくは陸上のバッテリ貯蔵器、または近接した浮遊デバイス、または陸上など)に引寄せられた負荷によって調整される。より単純であるが、あまり効果的ではない方法において、PTOシステムは、水圧管13の第2の上部開口部において固定されたノズル孔を用い、かつ水圧管13内、または水圧管13に沿って配置された、一方向弁11のみを用いて機能させることも可能である。したがって、波底で完全にラッチングすることはできないが、ノズルの抵抗を介して、かなりの圧力を生成して、同様に高い電力の出力を送達することが可能となる。しかし、カットオフ/オン機能の性能は、多くの波条件において、より高い出力を生成することになる。
【0036】
別の実施形態において、水力タービン4及びフライホイール14(いくつかの場合では発電機15も)の共通軸の継続回転、及びRPMを、圧力、したがって水力タービン4に当たる作動流体の速度に、完全に適合させるための調整は、バッテリまたは配電網からの電流の流れが使用され得る。発電機15は、水力タービン14を回転させるためのこの段階中に、代わりにモータとして作用することになる。この解決策において、波が下降する段階で配電網への電気の送達はないが、波エネルギー変換器の配列における概ね10ユニットよりも多くを伴い、配電網への安定した電流送達に影響を及ぼさない。なぜなら電力は、より多い数のWECユニットを用いて均一になるからである。これの利点は、タービンからの最適なRPMが、タービンの周辺速度と直接関連することから成る。例えば、ペルトンタービンは、最良の効率のために、動翼に対して作動流体の2倍の速度を必要とする。
【0037】
より小さいフライホイール、可能であればフライホイールを無くすことによって、RPMを、次に来る波に適合させるよう調整することができる。やって来る全ての波は、特定の高さを有するので、スピア弁におけるノズル孔のサイズにおいて、ラッチングを解放する前に、またはラッチングのない、浮遊体の最適な喫水が存在する。やって来る波の高さを測定することによって、RPMを迅速に調整して作動流体の予測される圧力及び速度に適合させて、タービンの効率が向上され得る。最適な出力を実現するために、浮遊デバイスの側部、または離隔したブイもしくは海底に設置された、測定デバイスは、平均の波ではなく、全てのそれぞれの波のために完璧な設定を調整するよう、やって来る最も近い波を測定し得る。
【0038】
ハウジング16は、シリンダ1の上方に配置され、ハウジング16の底部における第3の開口部を介して、シリンダ1の上端部に流体連通する。それによって作動流体は、重力の影響でシリンダ1の中に落下することになる。シリンダ1の内部空間、少なくとも1本の水圧管13、及びハウジング16は、それらの中の、作動流体の循環のために、共に閉ループシステムを形成する。好ましくは、ハウジング16は、通常作動流体と接触することになる、少なくとも表面領域において、漏洩を防止するために液密である。
図1で判るように、ハウジング16は、好ましくは、シリンダ1の上端部に向けて下方にテーパーが付いており、作動流体を流し込む。この構成は、ハウジング16におけるシリンダ1の径よりも大きい装備を収納することも可能にする。
【0039】
ハウジング16の内側におけるシリンダ1の上方で、好ましくはペルトンホイール/タービンタイプ、または類似の原理で動作する水力タービン(例えばターゴタービン)である水力タービン4が、取り付けられる。代替として、フランシスタービンまたは類似の水中タービンなどの、反動タービンが使用され、これは、ハウジング16を僅かに高くすることのみが要求され、分割床部のように作用するハウジング隔壁18の下で、湿潤セクションの高さを増加させ得る。換言すると、ペルトンタービンを用いて、作動流体の高さをシリンダ1の頂部の高さ前後にし、フランシスタービンを用いて、作動流体の高さを水力タービンのホイールの高さ前後にする。代替として、液圧ポンプを駆動するタービンは、妥当であると思われる。ペルトンタービンは、完全に水没しなくても、水と仕事ができるという利点、ならびに広範な圧力及び流量で優れた性能を与えるという利点を有する。
【0040】
動作において、浮遊デバイスが下方に動き始めると、水圧管13における圧力及び作動流体のフローはゼロになり、水圧管13の上端部における一方向弁11が設置された場合は閉鎖し、同様にドラム/ボール/ソレノイド弁7が設置された場合も閉鎖することになる。スピア弁12のみによって、フローの開閉が成された場合、スピア弁は閉鎖することになる。作動流体のフローを閉鎖するために言及した、いくつかの選択肢が存在するので、主な目的は、浮遊デバイスが下降するときに、作動流体の体積の逆流を実際に回避することであり、これは、上記で説明したように、いくつかの方法によって成され得る。浮遊デバイスが下降するとき、ピストン5は、シリンダ1に対して上方に動き始める。ピストン5の上方または下方において、バネも装填され得る一方向弁17は開き、ピストン5を通して作動流体を上方から下方へ通過させる。作動流体の高さは、ピストン5がこのように作動流体を介してのみ動く際に、ほとんど一定に保たれる。他の弁が閉鎖されるため、作動流体をほとんど同じ位置に保つことに加えて、ピストン5の下方で吸引が生じる。作動流体フローを配管して、しかし同じ効果を伴う、代替の方法の概要を述べた、
図2を参照した説明にも留意されたい。
【0041】
水圧管における一方向弁11は、省略され得る。なぜなら、スピア弁12、またはドラム/ボール/ソレノイド弁7の閉鎖は、類似の効果を有するからである。同様に、ドラム/ボール/ソレノイド弁7なしで、またはスピア弁12を閉鎖して、一方向弁11のみを有することによって、フローを制御するようシステムを動かすことが可能である。この解決策が使用された場合、スピア弁12の、固定開口部または調整可能な開口部のいずれかは、以下で説明するようにラッチングが可能でなくても、システムの圧力を増加させることになる。
【0042】
浮遊デバイスの下降の終わり、すなわち波底において、ピストン5は、その上方ストロークの端部において最上位置にあることになる。シリンダ1は、常に作動流体で満たされることになり、そのためピストン5は、浮遊デバイスが下降している間、作動流体に対して上方へ動く。外側の戻り配管19を伴う代替の解決策の場合、
図2を参照して以下で説明するように、シリンダ1も、ピストン5の上下において作動流体で常に満たされることになるが、作動流体は、ピストン5の相対的な上方ストロークによって作り出された吸引による下降段階中に、ピストン5の頂部からピストン5の下方へ移動する。
【0043】
その後、浮遊デバイスが波と共に上方に動くと、シリンダ1はそれと共に動き、その一方でピストン5は静止する。ピストン5周りの大部分の作動流体も、静止する。移動する作動流体は、圧縮され、かつシリンダ1の下部分における少なくとも1つの開口部から絞り出された作動流体であり、スピア弁12及び/またはドラム弁7が開かれて作動流体が流れることができるとき、少なくとも1つの水圧管13に入り、水圧管13を介して上方に向けて押圧され、水圧タービン4に向けて導かれる。換言すると、大部分の作動流体は、周囲の作動流体に対して静止し、この作業のために引き出された僅かなエネルギーのみが存在することを意味する。ピストン5自体、及び/または戻り配管19に、1つまたは複数の一方向弁17が存在する場合がある。少なくとも1つの水圧管13を、シリンダ1の内側に配置することも考えられるが、その場合ピストン5を再設計しなければならない。
【0044】
作動流体が水圧タービン4に当たった後、作動流体は、ハウジング16とシリンダ1の上端部との間における第3の開口部を介して、シリンダ1の中に自由落下することになり、作動流体の高さを比較的一定に保ち、さらには、シリンダ1に対して下方に動くピストン5によって作り出された吸引によって補助される。シリンダ1の下端部から押圧されて出たものと同じ量の作動流体は、この原理によって閉ループに入り、シリンダ1の上端部の中に戻る。
【0045】
通常の液圧電力装置の寿命は、30年よりも長い。作動流体として海水を使用することで、水圧タービン4の動翼及び他の部品の孔食を回避するために、僅かに異なるグレードのステンレススチールを使用しなければならない。2%のモリブデンを加えることが、一般的な方法である。そうでなければ、既製のタービンの概念が使用され得る。
【0046】
しかし、本開示は閉システムを提案するので、可能であればいくらかの添加剤を伴う淡水は、海水よりも好適な作動流体であるが、両方可能である。したがって、使用される作動流体は、PTOの構成要素をあまり腐食させず、そのため寿命を延ばし、ならびに/または保守点検及び補修の頻度を減少させ、PTOの動作を最適な条件に保つ。小型の閉ループシステムを提供することに加えて、水力タービン4をシリンダ1の上方に直接取り付ける別の理由は、より限定された寿命を有する任意の可撓管を有するのを回避すること、及び電力損失を軽減させるために、作動流体圧を直接使用すること、である。したがって、水圧管13は、作動流体の高圧に耐えるよう、好ましくは硬質材料で作られる。
【0047】
シリンダ1、ピストン5、ピストンの一方向弁17、及びピストンロッド6の材料は、例えば金属または補強繊維を備えたポリマー複合材料など、いくつかの選択肢とすることができる。複合材と組み合わせたスチールまたはアルミニウムは、1つの代替である。なぜならそれによって、重量に対して頑丈で薄くなるからである。その場合、組立及び設定も、より軽量であるためにより容易になる。しかし内側で穴の補正のために穴が開けられ、同様に局所応力に適合するよう外側に下に曲げられた、スチールなどの塊状材料も、有用な選択肢である。
【0048】
次に
図2を参照すると、別の実施形態が示され、そこでは、ピストン5に一方向弁17を伴う少なくとも1本の前方導管が、戻り配管19と交換されている。戻り配管19は、シリンダ1の上端部から下端部へ延び、一方向弁17を備えて、作動流体が除法へ流れるのを防止する。
図2において、任意選択の圧力解放弁21が、ピストン5に位置付けられるが、1つまたは複数の圧力解放弁8が、互いを補うために、
図1に示されるように圧力解放管9に位置付けられ得る。圧力解放弁21の原理は、ピストン5に配置された一方向弁17と、同じ弁または互いに隣り合わせに、組み合わされ得る。水中の空気の実体積、及び最大吊上げ力が、PTO及び浮遊体の最大荷重と等しくなるように、浮遊体を設計することによって、それ自体によって安全弁として作用することになる。換言すると、浮遊体は、上述のどれかの解放弁が開かない場合に水中に沈むことになり、それによって浮遊体またはPTOに対する構造的損傷を回避する。嵐をやり過ごすことが極めて重要であるため、公知の解決策は、嵐が発生したときにWECを水中に強制的に沈めることである。これは、圧力解放弁21/24を、一定の閉鎖位置まで無効にすることによって実現でき、その後、波底における通常動作のように、弁7または12を閉鎖するが、それ以外では通常であるように、特定の圧力で開かないようにする。これは、浮遊体を、主に波運動の高い部分で沈んだままにして、それによって、波のより大きい側方波電力を回避する。この選択肢を順応させるために、浮遊体の上側部とハウジング16の下側部との間の距離は、延ばすのが望ましい。
【0049】
次に
図3を参照すると、水圧管13と水力タービン4との間で、電力取出装置の閉ループに流体連通するよう配置された圧力タンク40が示される。より具体的には、この実施形態において、スピア弁12を通過して水力タービン4に作用する前に、作動流体は水圧管13から圧力タンク40の中に進む。圧力タンク40の目的は、水力タービン4の回転を維持するために、水力タービン4に送達される作動流体の、実質的に継続した一定の圧力を提供することである。この目的で、圧力タンク40は、空気を作動流体から分けるピストンまたは膜41を伴う、ガス/空気チャンバ45を備える。代替として、ピストンまたは膜41はなくてもよく、
図4におけるライン41は、単に作動流体の高さを表わす。ガス/空気の圧力センサ42は、圧力を継続的に監視し、圧力が高すぎるか、または低すぎる場合に信号を与え、それによって必要に応じて補充または排出を、ガス/空気の補充キャップ44を介して行なうことができる。水の高さ/ピストンセンサ43は、作動流体の高さがこの高さに達したときに信号を与え、そこで信号は、(例えばソレノイド)弁46の閉鎖を始動させ、それによってガスは逃げられず、代わりに新たなサイクルにおける別の圧力の蓄積を待つ。
【0050】
次に
図4を参照すると、周囲の海水への作動流体の損失を最小に抑えるために、シリンダ1の下方の低圧セクションを有し、上方の高圧封止部51を介して漏洩する、全ての作動流体を集積することが考えられる。この目的で、シリンダ1の下端部は、シリンダ隔壁53によって2つの空間に分割される。シリンダ隔壁53は、ピストンロッド6のための貫通開口部を伴い、そこには高圧封止部51が据えられ、ピストンロッド6に対する封止を提供する。シリンダ隔壁53の下方では、下部空間50が作り出され、シリンダ1に沿って外部に延びた配管によって形成された、少なくとも1本の圧力解放管9を介して、シリンダ1の上端部またはハウジング16に流体連通する。シリンダ1の底壁は、ピストンロッド6のための貫通開口部を有し、そこで低圧封止部52が据えられる。少なくとも1本の圧力解放管9を介して、高圧封止部51を通して下部空間50の中に漏洩した全ての作動流体は、シリンダ1の上端部まで搬送されることになる。このように、作動流体の、外側環境へのいかなる潜在的な僅かな漏洩も、さらに減少されることになる。
【0051】
追加として、
図4において、図の右側に位置され、水圧管13に接続された、調節器ユニット30が示される。しかし、調節器ユニット30は、PTOの閉ループに流体連通して、以下で説明するように作動流体との相互作用を可能にする任意の箇所に設置され得る。
【0052】
次に
図5を参照すると、調節器ユニット30が、より詳細に示される。調節器ユニット30は、流体分析チャンバ31、混合チャンバ32、濾過器33、廃棄物チャンバ34、及び添加剤チャンバ35、を備える。流体分析チャンバ31において、1つまたは複数のセンサ(図示せず)が提供され、例えば透明度/濁度、化学組成物、固体の存在及びサイズなどに対する、作動流体の状態を分析する。混合チャンバ32は、潤滑剤、防蝕剤、またはPTOの動作を向上させるための他の媒体などの添加剤、を包含した添加剤チャンバ35に流体連通する。添加剤は、PTOの閉ループに入る前に、必要に応じて作動流体に加えられ、混合チャンバ32において作動流体と混合され得る。
【0053】
さらに、調節器ユニット30は、例えばPTOの構成要素の摩耗から発する固体粒子を、作動液から分離するための、廃棄物チャンバ34を備える。作動流体は、逆止弁を伴う別個の導管(図示せず)を介して、配置物チャンバ34の中にポンプで送り込まれ、濾過器33を介して閉ループに戻され、破片が廃棄物チャンバ34に残留するのを保証し得る。
【0054】
おそらくは、作動流体は経時的にいくらか損失するので、調節器ユニット30は、作動流体を補充するよう構成される。シリンダ1の上部分における作動流体の高さセンサ22は、作動流体の高さが特定の高さを下回ったときに始動され、次に調節器ユニット30は、必要に応じて作動流体を、水及び/または流体で補給することになる。雨水を、補充源とすることもできる。代替として、小型の電気ポンプが、シリンダ1の上部領域で流体を供給し得る。
【0055】
調節器ユニット30への入口及び出口の近傍において、フェアリングまたは隔壁が設けられ得る。フェアリングまたは隔壁は、水圧管13の中に延びて、作動流体のいくらかを水圧管13から逸らせることで、調節器ユニット30を通る自動フローを作り出す。
【0056】
調節器ユニット30は、いくつかの実施形態において、例えば陸上に位置された外部制御ステーションと通信する手段と、1つまたは複数のWECユニットを監視する手段と、をさらに備え得る。好ましくは、通信は、WECユニットと、当技術分野で公知の制御ステーションと、の間で確立されたワイヤレス接続を通して、または陸地に続く海中電気ケーブルに包含されたインターネットファイバケーブルによって、実行される。調節器ユニット30は、例えば作動流体が汚染された場合、添加剤が無くなった場合、廃棄物チャンバ34が満杯になった場合、作動流体の高さが低くなり過ぎた場合、任意の弁が遮断もしくは機能不良となった場合、または電力取出装置、閉ループ、もしくは任意の構成要素の機能に関する、他の考えられる状況の場合に、警報を生成し、及び/または補修が必要であることを示す信号を、制御ステーションへ送るための手段も、備え得る。好適なセンサ(例えば圧力、作動流体の高さなど)は、適切な所定の閾値が超過され、警報を始動するときを判断するために、使用され得る。
【0057】
浮遊デバイスの水平方向運動に対抗するために、ピストンロッド6は、その下端部でU型接合部23に直接接続される。U型接合部23の原理は、任意のソケットレンチセットまたは自動車のプロップシャフトと同じである。他の柔軟性のある解決策も、同様に使用され得る。PTOが、垂直運動のみを伴い、フレームまたは類似物に取り付けられた場合、堅固な接続が適切である。U型接合部またはボール接合部23は、同様に海底で吸引アンカー/吸引動翼/パイル/係留錘10に接続される。代替として、ネジまたはロッドが、穿設されて海底の岩に固定され得る。しかし、波による、ピストン5とシリンダ1との間の相対運動に対抗するため、ピストンロッド6を海底に対して固定するための他の方法も考えられ、それらは本開示の範囲内に収まる。
【0058】
波の方向の変化による、浮遊デバイス66の回転運動も、浮遊体が丸い形状ではない場合に、シリンダ1の同様の回転運動を作り出す。ピストンリング及びピストン5(海底に装着された、実質的な固定ピストンロッド6に接続される)は、組み合わされた垂直の動きによって摩擦が緩和されるので、やはりシリンダ1の内側で回転することができる。PTOにおける荷重及び摩耗を軽減させるために、ピストン5とシリンダ1との間の回転を促進するための解決策が、想定される。例えば、ピストン5には軸受が設けられ、シリンダ1に対する回転を促進することもあり得る。別の代替は、U型接合部23の上方または下方に回転接合部を導入することである。
【0059】
次に
図6を参照すると、別の実施形態が示される。そこではピストンロッド6が、ピストン5に装着され、かつ上方からシリンダ1の中に延びた、第1のセクション61と、シリンダ1の外部に配置され、かつ第1のセクションに対して平行の、第2のセクション62と、シリンダ1の上方で第1及び第2のセクション61、62を接合する、第3のセクション63と、を備える。ピストンロッド6の第1のセクション61を収納するために、ハウジング16は、傾斜した壁を伴うずれた構成で設計されており、それによって水力タービン4の回転軸は、シリンダ1の長手方向軸に対して偏心して位置される。
図6における1点鎖線は、浮遊デバイス66を表わし、そこに本開示の電力取出装置が装着され、WECユニットを形成する。浮遊デバイス66は、様々な形状とすることができ、好適な浮遊デバイスの1つの例は、その全体が本明細書に組み込まれている、国際公開第2017/160216号に開示されている。
【0060】
次に
図7を参照すると、上から見たPTOのハウジング16が示される。この図において、シリンダ1及びハウジング16の上方に位置されたピストンロッド6の第3のセクション63のみが視認可能である。波力を電気エネルギーに変換するための構成要素、すなわち水力タービン4、フライホイール14、及び発電機15のずれた位置が、
図7の右側で可視化される。PTOの実際の適用において、構成要素は、好適なカバーで覆われ、水が入るのを防止することになる。ピストンロッド6の、この逆構成において、ハウジング16は、第1のセクション61が上方からシリンダ1の中に入るよう、フィードスルー開口部を備える。
【0061】
ピストンロッド6の第2のセクション62は、その下端部において、例えば吸引アンカー/吸引動翼/パイル/係留錘10、を介して、または上述の接合部23及び/または係留設備を介して間接的に、好適な連接部65によって海底に装着されるよう、適応され得る。下端部の連接部65は、海底の中に直接ハンマーで打ち付けられてもよく、または吸引アンカー、パイル、または錘として、次に第2のセクション62に接続されてもよい。シリンダ1は、シリンダ1の外面に長手方向に離隔して配置され、かつ第2のセクション62に接続された、一対の摺動連結部64を備え、シリンダ1がピストンロッド6の第2のセクション62に沿って摺動するのを可能にする。上からピストン5に装着された、ピストンロッド6の代替の構成で、シリンダ1は、もはや下端部に封止部を必要としないので、作動流体が閉ループシステムから周囲の水の中に逃げられないこと、及び海水が閉ループシステムの中に入ることができないこと、を保証する。
【0062】
代替の実施形態において、海底に装着されたWECユニットを有する代わりに、ピストンロッド6は、例えば海面の下に沈んだ油田掘削装置の脚部など、別個の海洋構造物に装着され得る。この解決策は、PTOを改良して予め存在する海洋設備に利用するのを可能にし、この設備の場所の水深が重要ではなくなるという利点を有する。なぜなら、油田掘削及び類似の好適な海洋構造物は膨大な重量を伴い、喫水は、海底に対して実質的に変化しないままとなるからである。上記の、
図6に関連して説明したような、ピストンロッド6の逆構成において、ピストンロッド6の第2のセクション62は、そのとき油田掘削の脚部に対して平行に、かつ堅固に装着されることになる。
【0063】
水力タービン4の動翼に当たる作動流体の圧力及びフローを制御する、スピア弁12は、全ての波サイクルでも閉鎖または調節する場合、僅かに強化する必要がある。なぜなら運動の回数は従来の使用よりも多くなるためである。スピア弁12の直前における別個の弁は、標準的なスピア弁の摩耗及び破損を軽減するための選択肢としてもよい。これは、例えばドラムもしくはボール弁7、ソレノイド弁、または特定の圧力において作動流体の流れを開閉できる他の解決策、としてもよい。この弁7は、例えば電気、液圧、または空気圧で作動され得る。水力タービン4は、特に複数のノズルを有する場合、調整可能なスピア弁の代わりに固定されたノズルを用いて動作し得る。したがって水力タービン4は、別個の弁7を使用して、加圧された作動流体を、水力タービン4の周りに設けられた入口導管の中に入れ得る。
【0064】
さらなる繊細なチューニング及びシステムの最適化のために、スピア弁12の開口領域は、入ってくる全ての波のサイズに適合するよう調整され、波の上方運動中でさえ調整され得る。後者は、作動流体の速度を、可能な限り水力タービンの動翼における速度の2倍に近付けた比率を実現するためのものである。最大出力を得るために、スピア弁12またはドラム弁7は、波が最低であるときに、システムを液圧係止のように係止を維持することになる。波が上昇したとき、浮遊デバイスは静止し続け、それによって浮遊デバイスは部分的または完全に沈められ、水の下で大量の空気を捕捉して浮力を増加させることで、作動流体に加えられる圧力も増加させる。波が高いほど、浮遊デバイスの大きい喫水が可能になるが、例えば多くの領域において最大3メートルが実現的である。シリンダ1の下部セクション、ならびに水圧管13の上部セクションにおける圧力センサ64は、制御システムに情報を与える。関連の波の高さに対する所望の圧力が実現したとき、ドラム弁7またはスピア弁12は開き、高圧の作動流体を水圧タービン4に解放し、かつ同時に浮遊デバイスが上方に上昇するのを可能にする。この手順は、ラッチングと呼ばれ、他の海洋解決策とは反対に、この概念で非常に簡単な方法で実現される。より単純でより小さいWECユニットのため、それらは固定ノズルを用いても作動し、ドラム弁7も圧力センサ64も無いが、効率は低い。
【0065】
水力タービン4は発電機15に、好ましくはシリンダ1の頂部においてハウジング16に設置された垂直軸、または浮遊デバイスにおける発電機に接続された駆動シャフトを伴う水平軸で接続される。水平軸の場合、接続は、好ましくはプロップシャフトであってもよい。任意選択のフライホイール14は、水力タービン4及び発電機15に関連して設置され得る。水圧管13から来る作動流体の最適な圧力は、浮遊プラットフォームのサイズ及び吊上げ力、波の高さ及び波の速度、シリンダ1の径、内部フロー抵抗、ならびに、フライホイール14及び発電機15における抵抗、に依拠することになる。作動流体は、各うねりの動きの間に、大きい力を伴いタービン4に作用することになるので、発電機15は、フライホイール14によって減衰されたとしても、むしろ急速な加速力を受けることになる。これは、風力適用における解決策と類似して、水力タービン4及び発電機15との間の捩じれまたはトルクの結合によって、減衰され得る。浮遊デバイスにおける発電機15を伴う解決策が選択された場合、これはシリンダ1よりも様々なパターンで動き得るので、発電機15への柔軟な接続が必要とされる。これは、両端部または両端部近くにおいて、U型接合部を有するプロップシャフトによって成される。好ましくは、中間領域にスプラインが設けられる。このように、U型接合部は、矩形プラットフォームの長辺に当たる波の、頻繁かつより大きい運動に対処し、その一方で、スプラインは、波が短辺からプラットフォームを動かすときに、より小さい運動を処理することになる。風力適用において使用される概念と類似して、プロップシャフトに関連した捩じれ、またはトルクの結合が設定され得る。
【0066】
非対称のユニットとして、シリンダ1の上方のハウジング16に全て位置付けられた、水平軸タービン、フライホイール及び発電機を有することも、完全に妥当である。この構成の利点は、駆動シャフトを必要としないことであり、ハウジング16において作動流体をまき散らすノイズが場合によっては少なく、同様に水の攪乱による損失が場合によっては少ない。ハウジング16は、水力タービン4のための湿潤セクションと、発電機15及び制御システムのための乾燥セクションと、に分割するのが望ましい。これは、垂直のハウジング隔壁(図示せず)によって実現される。
【0067】
(羽根車ホイールが水平に位置付けられた)垂直軸タービン、及び水がシリンダ1の中に直接落下する、シリンダ1頂部の上方に直接位置付けられた水力タービン4、を用いた選択肢は、
図1を参照すると、より小型の解決策である。水力タービン4は、1つから複数のノズル、ならびに1つから複数の羽根車を有し得る。この実施形態において、発電機15は、水力タービン4の頂部に直接位置付けられ得る。この設定において、フライホイール14は、下部羽根車ホイールの直下、ならびに発電機15の頂部、またはそれらの間で、実用的解決策となり得る。ハウジング16は、水力タービン4のための湿潤セクションと、発電機15及び制御システムのための乾燥セクションと、に分割される。これは、
図1に示されるような、水平のハウジング隔壁18によって実現される。2つ以上のタービンホイール4を有すること、さらには異なる径及び異なる動翼サイズのものを有して、変化する波の高さに適合させ、それによってさらに効率を向上させること、も考えられる。
【0068】
シリンダ1の外側及びプラットフォームは、防汚塗料でコーティングされ得る。シリンダ1の暗い内側は、成長する生物をあまり引き付けない。当分野における有能なコンサルタントは、生物は一般的に、より明るい領域に引き付けられるので、これはほとんど、または僅かしか問題にならない、と述べている。作動流体は一定の運動にあるので、この領域におけるいかなる大きい困難も、大幅に軽減させる。先ずは、添加剤が作動流体に加えられ、この課題を回避し、さらには摩擦を減少させて、構成要素の摩耗を減少させることも可能である。添加剤は、任意の考えられる漏洩の場合のために、環境にやさしいことが望ましい。セラミックコーティングを用いた、考えられる処理は、シリンダ1壁に引き付けられる有機体を少なくするよう、さらに確実に貢献する。
【0069】
それにも関わらず、ピストン5は、上部及び下部のスクレイプリングを有し、シリンダ壁で成長し得る残留物を除去し得る/除去するのが望ましい。通常動作におけるストローク長は、最大長よりもかなり短くなり、上部及び下部領域における残留物は、周期的に洗浄することを必要とし得る。これは、接合部23を解放し、ピストンをその全長に上下させて動かすことによって、成され得る。1本または複数本のアンカーラインを解放することで、ピストン5を下方位置、したがってシリンダ1の下部セクションまで引張ることにもなる。別の選択肢は、低い高さだが同じ径の追加のスクレイプピストンを、上部領域、場合によっては下部領域にも取り付け、時々それらを中央に向けて動かすことである。
【0070】
ピストンロッド6を洗浄するために、実現可能な解決策は、ピストンロッドの周りに可動ブラシを取り付けることである。可動ブラシは、浮力によって上方に、及びそれ自体の重量または錘10のホイールを介したラインで下方に、次に浮遊デバイスまで上方に駆動される。加圧空気、加圧水、または電気モータを用いて、円形ならびに上下の両方に動かすことも可能である。第5の選択肢は、ダイバーによって外側から、または船中の遠隔制御から操作される、可動高圧水ノズルまたはロボットである。
【0071】
システムを動かす電気を、発電機15から採って、及びバッテリに繋がれた変換器を介して、システムに供給することができる。代替として、海において風のない期間は極めて短いので、小さい単純な風力または太陽光ユニットは、バッテリに十分な電力を供給し得る。配電網からの逆電流も可能である。
【0072】
任意の技術的システムにおいて、部品の故障または変形の危険が存在する。上述の圧力解放弁8、21、24に加えて、より安全な構成要素が設定され得るか、または設定されるのが望ましい。これらは、ピストンが急に止まった場合、及び/または弁の目詰まりもしくは機能不全の場合、ピストンロッド6もしくは軸受接続を壊して離すための、爆発性カートリッジもしくは弱点を含み得る。類似の解決策を、プラットフォームをその位置から側方へ動かすよう、いくつかの係留チェーンに適用することもでき、それによって、変形または部品が動かなくなった際に、必要以上の部品の衝突を回避する。同様に制御は、最大圧力バールを超過するのを回避するため、またはいくつかの定められた機能不全の場合に、圧力を完全に減衰させるために、圧力解放弁8、21、24を介して圧力を減衰させることを特徴とする。火災抑制剤システムに接続された警報センサ、ならびにビルジポンプは、同様に適用可能であろう。全ての選択肢を列挙しないが、船舶及び航空における類似の保存設定は、特に、このプラットフォーム及び電力取出概念における、より大きく、かつ費用の掛かるバージョンにおいて、必要となるものである。
【0073】
ポイント吸収タイプの波エネルギー変換器における電力取出装置の、好ましい実施形態を上記で開示した。しかし、当業者は、本発明の発想から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変化され得ることを、理解されたい。
【0074】
上記で説明した全ての代替実施形態、または実施形態の一部は、組み合わせが相反しない限り本発明の発想から逸脱することなく、自由に組み合わせることができ、または互いから分離して利用できる。
【符号の説明】
【0075】
1 シリンダ
3 浮遊体に接続するための軸受
4 水力タービン
5 ピストン
6 ピストンロッド
7 ドラム/ボール/ソレノイド弁
8 シリンダの圧力解放弁
9 圧力解放管
10 海底、錘、吸引アンカー、またはパイル
11 一方向弁
12 スピア弁
13 水圧管
14 フライホイール
15 発電機
16 ハウジング
17 ピストン一方向弁
18 ハウジング隔壁(湿潤セクションと乾燥セクションとの仕切り床)
19 交互式戻り配管
20 水圧管の圧力解放管
21 ピストンの圧力解放弁
22 作動流体の高さセンサ
23 U型接合部/ボール接合部
24 水圧管の圧力解放弁
25 上部圧力センサ
26 下部圧力センサ
30 調節器ユニット
31 流体分析チャンバ
32 混合チャンバ
33 濾過器
34 廃棄物チャンバ
35 添加剤チャンバ
40 圧力タンク
41 ピストン/膜、または作動流体の高さ
42 ガス/空気の圧力センサ
43 水の高さセンサ
44 ガス/空気の補充キャップ
45 ガス/空気チャンバ
46 ソレノイド/弁閉鎖
50 低圧チャンバ
51 高圧ブッシング/封止部
52 低圧ブッシング/封止部
53 シリンダ隔壁
61 ピストンロッドの第1のセクション
62 ピストンロッドの第2のセクション
63 ピストンロッドの第3のセクション
64 摺動連結部
65 連接部
66 浮遊デバイス
【国際調査報告】