(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】鉛と亜鉛を回収して、重金属を除去した鉄含有再生材料を生産するために、精錬所のダストおよびスラッジをリサイクルするための持続可能な方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20230410BHJP
C22B 13/02 20060101ALI20230410BHJP
C22B 19/16 20060101ALI20230410BHJP
C22B 1/14 20060101ALI20230410BHJP
C22B 5/02 20060101ALI20230410BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20230410BHJP
C22B 3/22 20060101ALI20230410BHJP
C22B 7/02 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C22B7/00 A
C22B7/00 H
C22B13/02
C22B19/16
C22B1/14
C22B5/02
C22B3/44
C22B3/22
C22B7/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551328
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 DE2021100193
(87)【国際公開番号】W WO2021170181
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】102020202575.4
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
【住所又は居所原語表記】Kaiser-Wilhelm-Strasse 100,47166 Duisburg Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100172683
【氏名又は名称】綾 聡平
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】テベック,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】パパート,エックハルト
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA02
4K001AA03
4K001AA06
4K001AA10
4K001AA20
4K001AA24
4K001AA30
4K001AA36
4K001AA38
4K001BA12
4K001BA14
4K001BA15
4K001CA09
4K001CA11
4K001CA25
4K001DA06
4K001GA19
(57)【要約】
本発明は、鉄、亜鉛、鉛および他の重金属成分を含有する少なくとも1つの精錬所ダストおよび/またはスラッジを有する第1の出発材料を提供し、少なくとも1つの塩素成分を含有する第2の出発材料を提供するステップと、出発材料を混合し、混合物を乾燥させるステップと、亜鉛、鉛および他の重金属成分を排出するために混合物を熱分解するステップと、硫酸中での熱分解の気相を単離するステップと、残留物を、亜鉛、鉛および他の重金属を除去した鉄含有再生材料として提供するステップと、によって、重金属を除去した鉄含有再生材料を生産するために製錬所ダストおよびスラッジをリサイクルして、鉛および亜鉛を回収するための持続可能な方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属を除去した鉄含有二次原料を生産し、冶金プラントダストおよび/またはスラッジから鉛成分および亜鉛成分を回収するための再生プロセスであって、
I)冶金プラントダストおよび/またはスラッジを含有する少なくとも1つの鉄、亜鉛、鉛、およびオプションでさらなる重金属成分を含む第1の出発材料と、少なくとも1つの塩素成分を含有する第2の出発材料とを提供するステップと、
II)前記第1の出発材料を前記第2の出発材料と混合し、オプションで前記混合物をオーブンユニットに移送し、オプションでその後ペレット化するステップと、
III)蒸気を排出しながら前記混合物を乾燥させ、オプションでその後ペレット化するステップと、
IV)熱分解によって、亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分を塩素成分と反応させるステップと、
V)オプションで冷却しながら、硫酸中でステップIV)による前記熱分解から気相を捕捉するステップであって、
V-a1)ステップV)に続いて、イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液をオプションでさらなる容器に移し、残留塩化物を除去するために、前記硫酸が蒸発するまで加熱し、
V-a2)ステップV-a1)からの前記イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液は、オプションで冷却され、水、硫酸および金属亜鉛の入った容器に移され、
V-c1)ステップV)からのPbSO4が固体として取り出される、
ステップと、
VI)亜鉛、鉛およびオプションでさらなる重金属成分を除去した鉄含有二次原料として残留する前記熱分解残渣を提供するステップと
を含む、再生プロセス。
【請求項2】
ステップV-a1)で形成および排出された前記SO3が捕捉され、オプションでステップV)または前記対応する容器に戻されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップV-a2)において、As、Cd、PbおよびSnを含有する群から選択される重金属が、電解セメンテーションによって前記Zn表面に堆積されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップV-a3)において、ステップV-a2)からの前記イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液から電解還元によって純粋な亜鉛が生産されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップV-a2)において前記イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液が、前記重金属の堆積後、亜鉛コーティングプラントで電解質として使用されることを特徴とする、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップV)に続いて、排出された前記塩化水素がステップV-b1)で水に導入されて塩酸を形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップV-c1)で固体として取り出された前記PbSO4が濾過されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
使用される前記冶金プラントダストおよび/またはスラッジが、転炉ダスト、コークスダスト、高炉ダスト、高炉スラッジ、二次冶金からのダスト、焼結ダスト、ミルスケール、ミルスケールスラッジ、亜鉛スラグ、銅産業スラグ、含油スラッジ、電気アーク炉ダスト(EAFダスト)、電気製鋼所からのホールダスト、フィルタダスト、酸素炉ダスト、および高炉スロートスラッジ、好ましくは二次鉄/鋼鉄生産からの冶金プラントダストおよび/またはスラッジ、より好ましくは高炉スロートスラッジおよび/または酸素炉ダストを含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
塩素成分として、塩化水素、塩酸、Cl2、PVC、PCB、PCT、PCBまたはPCTを含有する油、好ましくは塩酸、より好ましくは塩酸酸洗液を含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質が使用されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
ステップIII)で排出された前記蒸気が凝縮され、前記水が捕捉されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
排出された前記塩化水素が、前記蒸気から凝縮された前記水に導入され、オプションで再生塩酸として使用されることを特徴とする、請求項6および10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記プロセスが、連続的または不連続的に実施されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記鉄富化され重金属を除去した二次原料の塩基度が、CaOを前記出発材料またはその混合物の少なくとも1つに混合することによって調整されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップVI)からの前記二次原料が鉄富化されていることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
少なくとも1つの出発材料がアルカリ金属成分を含み、前記二次原料が前記出発材料と比較してアルカリ金属成分が除去されており、前記アルカリ金属成分は前記亜鉛およびさらなる重金属成分と共に前記プロセスを経ることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冶金プラントダストおよび/またはスラッジを含有する少なくとも1つの鉄、亜鉛、鉛、およびさらなる重金属成分を含む第1の出発材料と、少なくとも1つの塩素成分を含有する第2の出発材料とを提供し、出発材料を混合し、混合物を乾燥させ、亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分を排出するために混合物を熱分解し、硫酸中で熱分解の気相を捕捉し、亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分を除去した鉄含有二次原料として残留する残渣を提供することによって、重金属を除去した鉄含有二次原料を生産し、鉛および亜鉛を回収するための冶金プラントダストおよびスラッジの持続可能な再生プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
金属生産では、エネルギーおよび資源の実質的な展開、気候関連ガスの発生および排出の実質的な量、原料価格の上昇、エネルギー、廃棄物および埋立地のコスト、ならびに交換される排出物を考慮して、副産物の再生または再利用および廃棄物のリサイクルを強化することが将来必要である。これに関連する1つの態様は、亜鉛および鉄などの貴重な材料が大量に含まれているので、銑鉄および鋼鉄生産からのダスト、スラッジおよびスラグの再生、ならびにそれらのさらなる処理である。
【0003】
高炉スロートスラッジからの鉄成分の回収は、国際公開第2018/219464号に記載されている。ここで、高炉スロートスラッジは、酸性で水性の鉄リッチ相と炭素リッチ相とに分離するように、酸含有溶液と混合される。鉄成分は、酸化および/または還元などのさらなるステップで鉄リッチ相から単離される。
【0004】
高炉スロートスラッジまたは鉄生産からの他のダストの使用は、国際公開第2019/043261号からも知られている。しかしながら、この場合、鉄生産のこれらの副産物は、塩素を含有する廃棄物または工業副産物の精製のための、より具体的にはセメント生産からの共反応物として使用される。2つの共反応物を熱処理によって反応させる。二段階熱分解では、ZnCl2が約700℃までの温度で最初に排出され、ZnCl2およびPbCl2のさらなる除去が1000~1100℃の温度で行われる。このようにして得られたZnCl2溶液は、PbCl2とさらなる不純物との混合溶液である。それは固体材料のままであり、セメント生産に実質的にリサイクルされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2018/219464号
【特許文献2】国際公開第2019/043261号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、資源および労力を節約する経済的で持続可能なプロセスにおいて、鉄および/または鋼鉄生産の可能な限り多くの副産物および廃棄物を再処理することである。鉄および/または鋼鉄生産のプロセスチェーン内では、一次原料の量を減らすことを可能にし、それに応じて資源効率の向上をもたらし、価値のある物質を経済サイクル内に保つ回路を利用可能にすることが意図されている。
【0007】
さらなる意図は、最終製品の品質を維持または改善しながら、技術的および経済的に価値のある材料を再利用、再生およびリサイクルにより、特に内部材料回路を介して材料回路にリサイクルすることである。
【0008】
さらに、可能な限り、個々の物質への特定の適応を必要としない単一の共通プロセスで異なる物質を再処理することが意図されている。結果として、出発材料中に低濃度でのみ存在する物質についても再生を経済的にすることが意図されている。
【0009】
さらに、このプロセスは、これまで処分が困難で費用がかかっていた、重金属負荷が高い冶金プラントダストおよびスラッジの再生を確実にすることでもある。
【0010】
プロセスにおける資源および/または労力に対する経済的実行可能性、持続可能性、および節約アプローチは、以下の基準のうちの1つまたは2つ以上の組み合わせによって保証される:
鉄および/または鋼鉄生産の副産物または廃棄物として入手できない、可能な限り少ない数の反応物、出発材料、および展開用材料の使用。再利用するには費用がかかり不便であるか、または再利用することができない可能な限り少ない数の製品の生産。再利用可能な製品、より具体的には、鉄および/もしくは鋼鉄の生産または対応するさらなる処理に使用することができる可能な限り多くの製品の形成。輸送経路の回避。可能な限り少ないさらなる操作ステップで再び直接使用することができる可能な限り多くの製品の生産。費用がかかり不便な操作ステップの回避および削減。天然資源の保存と併せて、リサイクルされる廃棄物の量の増加。二次原料の使用を促進するための、物質の再生またはリサイクルにおける材料および/またはエネルギー配備の削減。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有するプロセスによって達成される。
【0012】
したがって、本発明の主題は、重金属を除去した鉄含有二次原料を生産し、冶金プラントダストおよび/またはスラッジから鉛成分および亜鉛成分を回収するための再生プロセスであって、このプロセスは、
I)冶金プラントダストおよび/またはスラッジを含有する少なくとも1つの鉄、亜鉛、鉛、およびオプションでさらなる重金属成分を含む第1の出発材料と、少なくとも1つの塩素成分を含有する第2の出発材料とを提供するステップと、
II)第1の出発材料を第2の出発材料と混合し、オプションで混合物をオーブンユニットに移送し、オプションでその後ペレット化するステップと、
III)蒸気を排出しながら混合物を乾燥させ、オプションでその後ペレット化するステップと、
IV)塩化物を得るために亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分を塩素成分と反応させて、塩化物ならびにオプションで亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分を熱分解によって排出するステップと、
V)オプションで冷却しながら、硫酸中でステップIV)による熱分解から気相を捕捉するステップと、
VI)亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分を除去した鉄含有二次原料として残留する熱分解残渣を提供するステップと
を含む。
【0013】
一実施形態では、熱分解は不活性ガスの雰囲気下で行われる。代替形態では、使用される不活性ガスは窒素N2を含む。さらなる代替形態では、空気または塩素ガスがさらに吹き込まれる。本発明の意味において、「熱分解(pyrolysis)」という用語は、化学化合物、この場合は第1および第2の出発材料の熱分解(thermal decomposition)を示し、その後の亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分と塩素成分との反応により塩化物が得られる。
【0014】
第1の出発材料は、少なくとも1つの鉄成分、少なくとも1つの亜鉛成分、少なくとも1つの鉛成分、およびオプションで少なくとも1つのさらなる重金属成分を含む少なくとも1つの冶金プラントダストおよび/または冶金プラントスラッジを含む。一代替形態では、第1の出発材料は、異なる物質の混合物、好ましくは異なる冶金プラントダストおよび/またはスラッジの混合物である。第1の出発材料は混合物として提供されるか、または個々の物質は最初にステップII)で第2の出発材料と混合される。
【0015】
一実施形態では、使用される冶金プラントダストおよび/またはスラッジは、転炉ダスト、コークスダスト、高炉ダスト、高炉スラッジ、二次冶金からのダスト、焼結ダスト、ミルスケール、ミルスケールスラッジ、亜鉛スラグ、銅産業スラグ、含油スラッジ、電気アーク炉ダスト(EAFダスト)、電気製鋼所からのホールダスト、フィルタダスト、酸素炉ダスト、および高炉スロートスラッジ、ならびにこれらの物質の2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の任意の所望の組み合わせを含有するかまたはそれらからなる群から選択される少なくとも1つの物質を含む。鉄/鋼鉄の二次生産からの冶金プラントダストおよび/またはスラッジ、より好ましくは高炉スロートスラッジおよび/または酸素炉ダストを使用することが好ましい。一代替形態では、使用される冶金プラントダストおよび/またはスラッジは、鉄含有冶金残渣が既に1回再利用されているシャフト炉、換言すれば、鉄/鋼鉄の一次生産からのダストおよびスラッジが再利用されるシャフト炉、より具体的には、高炉スラッジおよび/または転炉残渣がリサイクルされるシャフト炉から生じる高炉スロートスラッジである。したがって、例えば、一次鉄生産における高炉からのスロートスラッジの量は、シャフト炉での再利用によって約25%に低減することができる。しかしながら、このスロートスラッジでは、特に重金属が富化されている。さらなる代替形態では、酸素製鋼所から生じる、いわゆる酸素炉ダスト、転炉プロセスからのダストを使用することができる。上述のスラッジおよびダストの組み合わせも、さらなるモデルである。
【0016】
本発明の意味において、例えば鉄、亜鉛、鉛もしくは重金属成分または塩素成分などの「元素成分」という用語は、例えば形態とは無関係に、Fe、Zn、PbまたはClなどのそれぞれの元素を含む出発材料の構成物質を表す。この場合のそれぞれの元素は、原子もしくはイオンとして、または化合物もしくは分子中で共有結合して、塩もしくは酸化物として存在する。金属は、それらの金属形態で存在してもよい。
【0017】
さらなる実施形態では、塩素成分は、塩化水素、塩酸、Cl2、PVC(ポリ塩化ビニル)、PCB(ポリ塩素化ビフェニル)、PCT(ポリ塩素化ターフェニル)、PCBまたはPCTを含有する油、好ましくは塩酸、を含有するかまたはそれらからなる群から選択される少なくとも1つの物質である。一代替形態では、鉄成分および重金属成分を含む使用済み塩酸酸洗液が利用される。
【0018】
第2の出発材料もまた、少なくとも1つの塩素成分を含む複数の物質の混合物または組み合わせとして存在し得るか、または提供され得る。第2の出発材料は、気体、固体、または好ましくは液体の形態で、より具体的には水溶液または分散液としてさらに提供される。
【0019】
本発明の意味において、「重金属」という用語は、5g/cm3以上の密度を有する非鉄金属(NF金属)を表す。この種の重金属は、Pb、Zn、Cr、Cd、Co、Cu、Mn、Mo、Ni、Nb、V、Sn、BiおよびAs、好ましくはPb、Zn、Cd、SnおよびAsを含有するまたはそれらからなる群から選択される。
【0020】
本発明のプロセスの第2のステップでは、出発材料は、好ましくは混合ユニット内で混合される。一代替形態では、混合物は、乾燥および、オプションで熱分解を可能にするミキサー、オプションで加熱可能なミキサーで生産される。
【0021】
さらなる代替形態では、混合物はオーブンユニットに移される。混合物において、鉄成分の質量分率は少なくとも30%、好ましくは50%であり、鉄成分の最大質量分率は95%、好ましくは80%、70%である。
【0022】
PbおよびZnを含む上記の重金属成分と塩素成分との化学量論比は、少なくとも1:1から1:2以下、好ましくは1:1.5以下である。
【0023】
一代替形態では、混合物は、Al、CaおよびMg成分を含有するかまたはそれらからなる群から選択される金属成分をさらに含む。これらの成分は、第1および/または第2の出発材料によって導入され得る。
【0024】
一代替形態では、混合物は、ペースト、すなわち、高粘度を有する分散物の形態であり、したがって、高い固形分含有量を有する固液混合物である。
【0025】
一実施形態では、オーブンユニットへの移送の前に造粒および/またはペレット化するステップがある。「ペレット化」という用語は、個々の固体凝集体を生産するための当業者に公知のすべての方法を包含する。
【0026】
次のプロセスステップIII)として、混合物は、少なくとも95℃、好ましくは少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも105℃から150℃以下、好ましくは130℃以下、より好ましくは120℃以下、より具体的には115℃以下の温度で水を排出することによって乾燥される。
【0027】
一実施形態では、熱分解の前に造粒および/またはペレット化するステップがある。
【0028】
一実施形態では、乾燥中に排出された蒸気は凝縮され、水は完全に脱塩された脱塩水または蒸留水として捕捉される。
【0029】
さらなるステップIV)では、乾燥混合物は、900℃、好ましくは950℃、より好ましくは1000℃、より具体的には1050℃の最低温度から、1300℃、好ましくは1250℃、より好ましくは1200℃、より具体的には1150℃の最高温度で熱分解される。温度の上昇の結果として、亜鉛、鉛、およびオプションでさらなる重金属成分と塩素成分との反応が起こり、塩化物が得られる。このようにして形成された塩化物、および任意のさらなる亜鉛成分、鉛成分、およびオプションでさらなる重金属成分は、熱分解によって排出される。実質的に一代替形態では、熱分解は、Al、As、Ca、Cd、Co、Fe、Mg、Mn、Pb、SnおよびZnの塩化物を排出する。この場合、Cd、Co、Pb、SnおよびZnの塩化物の実質的に定量的な昇華が存在するが、Al、As、Ca、Fe、MgおよびMnの塩化物はわずかにしか排出されない。
【0030】
ステップIV)の熱分解によって排出された気相は、硫酸中のステップV)で捕捉されるか、または硫酸に導入される。硫酸は、少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%から95~98%以下の濃度を有する。
【0031】
硫酸中での熱分解の気相の捕捉の結果:
V-A)亜鉛およびオプションでさらなる重金属をイオンおよびオプションで金属の形態で含有する硫酸溶液が形成され、
V-B)PbSO4が沈殿し、
V-C)塩化物イオンが塩化水素として排出される。
【0032】
金属塩化物および任意の亜鉛成分、鉛成分およびオプションでさらなる重金属成分の捕捉において、PbSO4は固体(V-B)として沈殿するが、存在する他の金属は硫酸溶液中でイオンの形態をとる。
【0033】
ステップV)からの硫酸または硫酸溶液は、80℃、好ましくは85℃、より好ましくは90℃、より具体的には95℃の最低温度から、170℃、好ましくは150℃、より好ましくは130℃、より具体的には110℃の最高温度を有する。この温度は、実質的に熱分解から高温気相を導入することによって達成され、溶液/分散液および/または対応する容器の冷却が必要な場合がある。
【0034】
これらの温度では、塩化物は塩化水素の形態で排出される。一実施形態では、塩化水素ガスは、水中に捕捉される、すなわち、ステップV-b1)において塩酸を形成するために水中に導入される。
【0035】
ステップVI)において、残留する熱分解残渣は、亜鉛、鉛、およびオプションでさらなる重金属成分を除去した鉄含有二次原料として提供される。残留する熱分解残渣は、第1の出発材料および/またはステップII)からの混合物と比較して、亜鉛、鉛、およびオプションでさらなる重金属成分がより除去されている、すなわち、亜鉛、鉛およびオプションでさらなる重金属成分の質量分率は、第1の出発材料中および/またはステップII)からの混合物中の亜鉛、鉛およびオプションでさらなる重金属成分の質量分率よりも小さい。
【0036】
一代替形態では、残留する熱分解残渣は鉄富化されており、これは、二次原料中の鉄の質量分率が、第1および/もしくは第2の出発材料中ならびに/またはステップII)からの混合物中の鉄の質量分率よりも大きいことを意味する。
【0037】
さらなる実施形態では、ステップV)に続いて、Znおよびオプションでさらなる金属成分、より具体的には重金属成分を含有する、イオンの形態の硫酸溶液は、硫酸が蒸発するまで、320℃、好ましくは325℃、より好ましくは330℃、より具体的には335℃の最低温度から、355℃、好ましくは350℃、より好ましくは345℃、より具体的には340℃の最高温度に加熱される。その結果、このステップV-a1)において、残りの塩化物が除去される。
【0038】
硫酸が蒸発すると、SO3も形成されて排出される。一代替形態では、これはステップV)に戻されるか、または対応する容器内に渡される。したがって、硫酸を濃縮および/または精製するためのプロセスも提供される。
【0039】
別の実施形態では、ステップV-a1)からのイオンの形態でZnを含有する硫酸溶液、すなわち、硫酸を含有し塩化物を除去した(実質的に塩化物を含まない)硫酸亜鉛溶液は、ステップV-a2)において、水および金属亜鉛、ならびにオプションでさらなる硫酸を含む容器に移送される。一代替形態において、ステップV-a1)からの硫酸溶液は、最初に冷却されるか、または次の容器への通過時に冷却される。金属亜鉛を入れた容器では、金属Znの一部が溶解可能であり、硫酸溶液中にイオンの形態で存在する。形成される水素H2は、吸引下で引き抜かれてもよい。一代替形態では、ステップV-a2)において、As、Cd、PbおよびSnを含有するかまたはそれらからなる群から選択される重金属、および亜鉛よりも貴な金属もまた、電解セメンテーションによってZn表面に堆積される。重金属セメンテーションの別の変形は、亜鉛を生成するためのZnSO4溶液の湿式製錬からの既知のプロセスに従って行われる。金属亜鉛は、重金属に対する微量捕捉剤として働く。
【0040】
さらなる実施形態では、金属亜鉛は、他の重金属の堆積後に、ステップV-a2)からのイオンの形態でZnを含有する硫酸溶液からステップV-a3)の電解還元によって生産される。
【0041】
別の実施形態では、ステップV-a2)からのイオンの形態でZnを含有する硫酸溶液は、重金属の堆積後、亜鉛コーティングプラントで電解質として使用される。この溶液は、より具体的には、電解コイル亜鉛めっきプラントECPにおける電解質として適している。電解質として使用する前に、溶液は、所望の亜鉛濃度に希釈されてもよく、対応するpHを硫酸で調整し、および/または必要に応じて硫酸鉄および/または硫酸ナトリウムを添加する。
【0042】
得られた電解コイル亜鉛めっきプラント用の硫酸を含有する硫酸亜鉛電解質水溶液は、例えば、重金属および/または塩化物を実質的に含まない。硫酸を含有する実質的に塩化物を含まないおよび/または重金属を含まない硫酸亜鉛溶液は、本発明の意味において、±10g/l、好ましくは±5g/l、より具体的には±3g/lの偏差で約100g/lに亜鉛濃度を調整し、Pb、Cd、Cr、Moおよび/またはNiのそれぞれの濃度が<10mg/リットル、好ましくは<1mg/リットル、より好ましくは<0.5mg/リットル、より具体的には<0.1mg/リットル、および/または塩化物濃度が<100mg/リットル、好ましくは<50mg/リットル、より好ましくは<20mg/リットル、より具体的には<10mg/リットルである溶液である。この濃度は、当業者に公知の化学分析方法、より具体的にはICP-OES(誘導結合プラズマを有する発光分光計、Spectro社製のArcos)によって測定される。
【0043】
一実施形態は、ステップV)からPbSO4を固体として取り出すステップV-c1)に関する。一代替形態において、ステップV)からのこのPbSO4沈殿物は、濾過される。
【0044】
さらなる実施形態では、ステップV)で塩化水素の形態で排出された塩化物は、排出された蒸気の乾燥ステップIII)から凝縮された水に導入される。この場合、高い化学純度を有する塩酸が合成され、好ましくは工業グレードまたは合成純度を有する。
【0045】
一代替形態において、20%強度の塩酸、すなわち、20%(±5%、好ましくは±2%の偏差で)強度の水性HCl溶液が生成され、これは、好ましくは酸洗液として、より具体的には鋼鉄の加工において使用される。
【0046】
この種の20%強度溶液は、Al、As、Pb、B、Cr、Co、Fe、K、Cu、Mn、Mo、Na、Ni、Nb、P、Si、Ti、V、ZnおよびSnを含有するかまたはそれらからなる群から選択される元素/成分の1つの濃度が<1mg/リットル、好ましくは<0.5mg/リットル、より好ましくは<0.2mg/リットル、より具体的には<0.1mg/リットルであり、および/またはBa、Be、Cd、Ca、MgおよびSrを含有するかまたはそれらからなる群から選択される元素/成分の1つの濃度が<0.1mg/リットル、好ましくは<0.05mg/リットル、より好ましくは<0.02mg/リットル、より具体的には<0.01mg/リットルである。この濃度は、当業者に公知の化学分析方法、より具体的にはICP-OES(Spectro社製のArcos機器)によって測定される。
【0047】
本発明の意味において、塩化水素は気体であるのに対して、塩酸は塩化水素の水溶液である。
【0048】
したがって、本発明はまた、塩酸を合成するための、または酸洗液の直接合成のための、より具体的には鋼鉄加工のためのプロセスを提供する。
【0049】
一実施形態は、連続的な手順における本発明のプロセスに関する。別の実施形態は、不連続な手順、すなわちバッチ操作における本発明のプロセスに関する。手順に応じて、オプションでステップIII)およびIV)、オプションでV)、ならびにオプションVI)として、時間的にオーバーラップすることが可能である。
【0050】
本発明の別の実施形態は、その製品が、調整された塩基度を有する鉄富化され重金属を除去した二次原料であり、この二次原料を鋼鉄生産、より具体的には高炉で直接使用することを可能にするプロセスに関する。この目的のために、二次原料中のCaOの質量分率は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも10%、より具体的には少なくとも20%から、40%以下、好ましくは30%、より好ましくは20%、より具体的には15%以下必要である。これは、CaOを出発材料またはその混合物の少なくとも1つに混合することによるものである。一代替形態では、Caは、最終的に二次原料中にCaOを得るために、別の形態でもCa成分として混合される。CaOは、例えば酸化鉄からの酸素の存在下での熱分解中にCa含有物質から形成される。
【0051】
一代替形態において、CaOは、より具体的には、その材料が塩酸の水溶液である場合、第2の出発材料に混合される。CaOは、それに応じて、少なくとも1つのCl成分を含有する液体出発材料に有利に混合されることができる。
【0052】
さらなる実施形態では、上記の本発明のプロセスは、鉄富化された二次原料を提供する。したがって、この実施形態では、二次原料中の鉄の質量分率は、第1および/または第2の出発材料中の鉄の質量分率よりも大きい。
【0053】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つの出発材料、好ましくは第1の出発材料が少なくとも1つのアルカリ金属成分を含むプロセスに関する。「アルカリ金属」という用語は、周期表の第1の主族からの金属を包含し、本発明は、好ましくはアルカリ金属NaおよびK、ならびに上記で定義される「成分」という用語に対応して、Naおよび/またはKを所望の形態で含有する物質および化合物に関する。本発明のプロセスは、亜鉛成分およびさらなる重金属成分と共に、アルカリ金属成分も出発材料から除去する。アルカリ金属成分は、ステップIV)の熱分解によって出発材料から排出され、ステップV)において硫酸溶液中でイオンを形成し、ステップV-a2)までおよびそれを含む硫酸溶液中でこの形態のままである。電解セメンテーションでは、アルカリ金属イオンは析出せずに溶液中に残留する。イオンの形態でZnを含有する硫酸溶液が電解質として使用される場合、アルカリ金属イオンおよび/または成分は破壊的ではない。
【0054】
したがって、本発明はまた、アルカリ金属成分を除去した二次原料に関する。二次原料中のアルカリ金属成分の質量分率は、第1および/または第2の出発材料中の質量分率よりも小さい。
【0055】
本発明のプロセスは、述べられた目的のすべてを満たし、従来技術から今日まで知られているプロセスに対して以下の利点を提供する。
【0056】
・本発明のプロセスは、特に、第1の出発材料として高い重金属負荷、より具体的には少なくとも0.02%、好ましくは少なくとも0.05%、より好ましくは0.1%、より具体的には0.5%の質量分率から、10%、8%、6%、好ましくは4%、3%、より好ましくは2%の最大質量分率のPb成分、および/または少なくとも0.5%、好ましくは1.0%、より好ましくは2.0%、より具体的には5%の質量分率から、30%、20%、好ましくは18%、15%、より好ましくは12%の最大質量分率のZn成分を有する冶金プラントダストおよびスラッジの再生に使用され得る。
【0057】
・ZnCl2およびPbCl2とさらなる不純物との混合溶液を生成する従来から知られているプロセスでは、PbおよびZnを完全に分離することはできない。試験は、NH4OHを使用してpHを2に調整することによって、Pb(OH)2の形態のPb成分が塩酸溶液から定量的に分離されないことを示した。PbSの形態のPb成分も硫化アンモニウムによって定量的に沈殿しない。さらに、ZnCl2は、イオン交換体を用いた濃縮によって鉛成分から定量的に分離されることもできない。また、塩化物担体は、再生塩酸として回収されることができない。これとは対照的に、本発明のプロセスは、PbおよびZnの実質的または完全な分離を可能にする。換言すれば、PbおよびZnの分離は、少なくとも95%、好ましくは98%、より好ましくは99%、より具体的には99.9%の程度まで起こる。これは、例えば、イオンの形態の亜鉛を含有する硫酸溶液中で99.9%の分離の場合、通常の分析方法で検出可能な(より具体的にはICP-OES(Spectro社製のArcos機器)によって)Pbの質量分率はわずか0.1%であることを意味する。
【0058】
・合成した純塩酸を直接再利用することができる。
【0059】
・大量の亜鉛が再処理され、さらなる使用および操作のために供給される。特に、電解コイルコーティングプラントに直接、または場合によってはさらなる物質の添加後に適した硫酸を含有する亜鉛電解質溶液が生成される。
【0060】
・本発明のプロセスは、少なくとも95%、好ましくは97%、98%、より好ましくは98.5%、99%、より具体的には99.5%、99.9%のリサイクル率を保証する。ここでのリサイクル率は、使用される第1の出発材料の質量に対するPbSO4の質量の比率として形成される。
【0061】
・生産された二次原料は、焼結プラントおよび/または高炉で直接使用されることができる。
【0062】
・本発明のプロセスでは、亜鉛成分および鉛成分、ならびにナトリウム成分およびカリウム成分が、第1の出発材料に対して二次原料中で選択的に除去される。Al、Ca、Mg、Mn、P、SおよびSi、またはそれらの組み合わせを含有するかまたはそれらからなる群から選択されるさらなる元素/成分は影響を受けないかまたはほとんど影響を受けない。これは、後者の元素/成分の質量分率が1%以下、好ましくは0.5%、より好ましくは0.3%、より具体的には0.2%しか変化しないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】本発明のプロセスを概略的に詳細に示し、本明細書によるステップ、およびそれぞれのステップが実行される容器は、同じ符号を使用して識別される。
【発明を実施するための形態】
【0064】
[実施例]
1.高炉スロートスラッジと熱分解後の二次原料の化学分析の比較:
一次鋼鉄生産からの高炉スロートスラッジを再利用し、塩酸酸洗液と混合し、約110℃で60分間乾燥させ、オーブンユニット(実験室規模)で約1100℃で30分間熱分解した。残存する熱分解残渣が、二次原料である。使用したスロートスラッジおよび二次原料の化学分析は、ICP-OES(Spectro社製のArcos機器)によって行われた。結果は表1で照合される。
【0065】
【0066】
2.酸素炉ダストと熱分解後の二次原料の化学分析の比較:
実施例2は、実施例1と同様に実施した。分析結果は、表2で照合される。
【0067】
【0068】
表1および表2の結果から、提供される二次原料は、鉛およびZnが大幅に除去された二次原料であることが明らかである。さらに、この原料は、ナトリウム成分およびカリウム成分もより除去されている。
【0069】
3.本発明に従って生成された約20%強度のHCl溶液に対して化学分析を行った。結果は表3で照合される。
【0070】
【0071】
これらの結果から、提供される塩酸溶液が高品質かつ高純度であることは明らかである。
【0072】
4.PbCl2/ZnCl2含有溶液からのPbおよびZnの分離:
高炉スロートスラッジを実験室規模で塩酸に溶解した。
【0073】
a)溶液のpHをpH2に調整した。PbSを硫化アンモニウムで沈殿させた。沈殿した硫化物の分析により、1270mg/lのPbおよび790mg/lのZnが戻った;濾液の分析により、83mg/lのPbおよび7200mg/lのZnが戻った。
【0074】
b)イオン交換体:Lewatit交換樹脂を使用し、製造業者の情報に従って展開した。
【0075】
b-1):Lewatit M 500
出発溶液の分析により、550mg/lのPbおよび6600mg/lのZnが戻った;再生材料では、90mg/lのPbおよび3200mg/lのZnが測定された。
【0076】
b-2):Lewatit TP 207
出発溶液の分析により、120mg/lのPbおよび3700mg/lのZnが戻った;再生材料では、920mg/lのPbおよび3100mg/lのZnが測定された。
【0077】
結果は、PbCl2/ZnCl2含有溶液からのPbおよびZnの定量的分離が不可能であることを示しており、特に、Pbを含まないZnCl2溶液を生成することは不可能である。
【0078】
5.重金属のセメンテーション:
2500gの高炉スロートスラッジを本発明のプロセスにおける出発材料として使用し、さらなるステップにおいて上記のように反応させた。セメンテーション(ステップV-a2)の前後の重金属濃度を上記のように決定した。結果は表で照合される。
【表4】
【0079】
結果は、Pbを含まないZnSO4溶液が本発明のプロセスで生成されることを示す。
【0080】
6.酸素炉ダストとパイロット(kg)スケールで熱分解後の二次原料の化学分析の比較:
鋼鉄生産に使用される酸素炉ダスト100kgと塩酸酸洗液20Lとの均一な混合物を生産し、105℃で乾燥させて流動性材料を生成した。熱分解は、間接的に加熱された回転炉内のN2不活性ガス下で行われた。
【表5】
【0081】
熱分解は、それぞれ20、40、60および90分の滞留時間で3つの異なる温度で実施された。
【表6】
【0082】
アルカリ金属塩化物および重金属塩化物の大部分は、1000℃でわずか20分後に排出され、滞留時間および温度のそれぞれの上昇は、わずかな改善をもたらした。
【0083】
【0084】
表から、同じ温度で、元素K、NaおよびZnの減少率は、実験室試験(gスケール)およびパイロット試験(kgスケール)で同等であることが明らかである。平均して、これらの元素の量は98.4%減少した。パイロットスケールでの試験材料中のPb含有量は低すぎるため(<0.005%Pb)、このパラメータについて実験室試験と比較することはできなかった。
【0085】
図面の簡単な説明
本発明は、
図1を参照して以下により詳細に説明される。本発明のプロセスを概略的に詳細に示し、本明細書によるステップ、およびそれぞれのステップが実行される容器は、同じ符号を使用して識別される。
【0086】
ステップIとして、第1の出発材料I-1および第2の出発材料I-2は、それぞれの容器から提供される。ステップIIでは、出発材料を対応する容器II中で混合する。オーブンユニットはIIIおよびIVで表される。このユニットは、2つの異なる容器もしくはオーブンから構成されてもよく、または1つの単一の容器もしくはオーブンなどから構成されてもよい。その中で実行されるのは、乾燥ステップIIIおよび熱分解ステップIVでもある。
【0087】
乾燥中、蒸気Dが排出される。その後、蒸気Dは、蒸気凝縮器Kで凝縮され、識別符号V-b1の容器に水として収集される。
【0088】
熱分解IVの気相Gは、オプションで冷却Kを伴って、ステップVにおいて硫酸Sで捕捉される。この操作では、PbSO4は沈殿物Nとして沈殿する。沈殿物はステップV-c1で取り出され、濾過されてもよい。
【0089】
ステップV-a1において、イオンの形態の亜鉛を含有する硫酸溶液は、硫酸がRを蒸発させるまで加熱される。このようにして、塩素成分の残渣も排出される。これらの硫黄酸化物およびオプションでさらなるガスは、ステップまたは容器Vに戻される。
【0090】
さらに、ステップVで排出されるのは塩化水素であり、これはステップまたは容器V-b1の蒸気から凝縮した水と混合され、塩酸水溶液が得られる。この解決策は、鋼鉄の加工における酸洗液Bとしてさらに使用され得る。
【0091】
ステップV-a1からのイオンの形態の亜鉛を含有する硫酸溶液を、オプションで冷却Kを伴ってさらなる容器V-a2に移す。その中には、固体Zとしての亜鉛および水も存在し、オプションでさらなる硫酸の添加もある。ここで、オプションで冷却Kを伴って、As、Cd、PbおよびSnを含有する群から選択される重金属が、電解セメンテーションEによってZn表面に堆積される。
【0092】
硫酸を含有し、重金属および/または塩化物が除去された(実質的に重金属を含まないおよび/または塩化物を含まない)得られた硫酸亜鉛水溶液を、電解コイル亜鉛めっきプラントECPの電解質として使用することができる。
【0093】
あるいは、純粋な亜鉛は、ステップV-a3)における電解還元によって生産される。
【0094】
残留する熱分解残渣としての二次原料SRは、焼結プラントや高炉でさらに使用される。
【0095】
本発明の意味において、上述の実施形態および代替形態の組み合わせを使用することも可能である。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属を除去した鉄含有二次原料を生産し、冶金プラントダストおよび/またはスラッジから鉛成分および亜鉛成分を回収するための再生プロセスであって、
I)冶金プラントダストおよび/またはスラッジを含有する少なくとも1つの鉄、亜鉛、鉛、およびオプションでさらなる重金属成分を含む第1の出発材料と、少なくとも1つの塩素成分を含有する第2の出発材料とを提供するステップと、
II)前記第1の出発材料を前記第2の出発材料と混合し、オプションで前記混合物をオーブンユニットに移送し、オプションでその後ペレット化するステップと、
III)蒸気を排出しながら前記混合物を乾燥させ、オプションでその後ペレット化するステップと、
IV)熱分解によって、亜鉛、鉛およびさらなる重金属成分を塩素成分と反応させるステップと、
V)オプションで冷却しながら、硫酸中でステップIV)による前記熱分解から気相を捕捉するステップであって、
V-a1)ステップV)に続いて、イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液をオプションでさらなる容器に移し、残留塩化物を除去するために、前記硫酸が蒸発するまで加熱し、
V-a2)ステップV-a1)からの前記イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液は、オプションで冷却され、水、硫酸および金属亜鉛の入った容器に移され、
V-c1)ステップV)からのPbSO4が固体として取り出される、
ステップと、
VI)亜鉛、鉛およびオプションでさらなる重金属成分を除去した鉄含有二次原料として残留する前記熱分解残渣を提供するステップと
を含む、再生プロセス。
【請求項2】
ステップV-a1)で形成および排出された前記SO3が捕捉され、オプションでステップV)または前記対応する容器に戻されることを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップV-a2)において、As、Cd、PbおよびSnを含有する群から選択される重金属が、電解セメンテーションによって前記Zn表面に堆積されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ステップV-a3)において、ステップV-a2)からの前記イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液から電解還元によって純粋な亜鉛が生産されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップV-a2)において前記イオンの形態でZnを含有する前記硫酸溶液が、前記重金属の堆積後、亜鉛コーティングプラントで電解質として使用されることを特徴とする、請求項3に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップV)に続いて、排出された前記塩化水素がステップV-b1)で水に導入されて塩酸を形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
ステップV-c1)で固体として取り出された前記PbSO4が濾過されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
使用される前記冶金プラントダストおよび/またはスラッジが、転炉ダスト、コークスダスト、高炉ダスト、高炉スラッジ、二次冶金からのダスト、焼結ダスト、ミルスケール、ミルスケールスラッジ、亜鉛スラグ、銅産業スラグ、含油スラッジ、電気アーク炉ダスト(EAFダスト)、電気製鋼所からのホールダスト、フィルタダスト、酸素炉ダスト、および高炉スロートスラッジ
を含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
使用される前記冶金プラントダストおよび/またはスラッジが、転炉ダスト、コークスダスト、高炉ダスト、高炉スラッジ、二次冶金からのダスト、焼結ダスト、ミルスケール、ミルスケールスラッジ、亜鉛スラグ、銅産業スラグ、含油スラッジ、電気アーク炉ダスト(EAFダスト)、電気製鋼所からのホールダスト、フィルタダスト、酸素炉ダスト、および高炉スロートスラッジ、二次鉄/鋼鉄生産からの冶金プラントダストおよび/またはスラッジを含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
使用される前記冶金プラントダストおよび/またはスラッジが、転炉ダスト、コークスダスト、高炉ダスト、高炉スラッジ、二次冶金からのダスト、焼結ダスト、ミルスケール、ミルスケールスラッジ、亜鉛スラグ、銅産業スラグ、含油スラッジ、電気アーク炉ダスト(EAFダスト)、電気製鋼所からのホールダスト、フィルタダスト、酸素炉ダスト、および高炉スロートスラッジ、高炉スロートスラッジおよび/または酸素炉ダストを含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする、請求項8に記載のプロセス。
【請求項11】
塩素成分として、塩化水素、塩酸、Cl2、PVC、PCB、PCT、PCBまたはPCTを含有する油
を含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質が使用されることを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
塩素成分として、塩化水素、塩酸、Cl2、PVC、PCB、PCT、PCBまたはPCTを含有する油、塩酸を含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質が使用されることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
塩素成分として、塩化水素、塩酸、Cl2、PVC、PCB、PCT、PCBまたはPCTを含有する油、塩酸酸洗液を含有する(またはそれらからなる)群から選択される少なくとも1つの物質が使用されることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
ステップIII)で排出された前記蒸気が凝縮され、前記水が捕捉されることを特徴とする、請求項1から
13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
排出された前記塩化水素が、前記蒸気から凝縮された前記水に導入され、オプションで再生塩酸として使用されることを特徴とする、請求項6および
14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記プロセスが、連続的または不連続的に実施されることを特徴とする、請求項1から
15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記鉄富化され重金属を除去した二次原料の塩基度が、CaOを前記出発材料またはその混合物の少なくとも1つに混合することによって調整されることを特徴とする、請求項1から
16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
ステップVI)からの前記二次原料が鉄富化されていることを特徴とする、請求項1から
17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
少なくとも1つの出発材料がアルカリ金属成分を含み、前記二次原料が前記出発材料と比較してアルカリ金属成分が除去されており、前記アルカリ金属成分は前記亜鉛およびさらなる重金属成分と共に前記プロセスを経ることを特徴とする、請求項1から
18のいずれか一項に記載のプロセス。
【国際調査報告】