(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 23/28 20060101AFI20230410BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20230410BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230410BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20230410BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230410BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20230410BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20230410BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20230410BHJP
【FI】
H01L23/28 B
C08L101/12
C08K3/013
C08L67/04
H05K1/03 610H
H05K1/03 610R
H01L23/14 R
H01L23/36 C
H01L33/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551594
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 US2021019443
(87)【国際公開番号】W WO2021173693
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
4J002
4M109
5F136
5F142
【Fターム(参考)】
4J002CF181
4J002DJ006
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002FA046
4J002FA066
4J002FD016
4J002GF00
4J002GQ01
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA04
4M109CA21
4M109CA22
4M109DB16
4M109EB12
4M109EC06
4M109GA01
5F136BB01
5F136DA33
5F136FA51
5F136FA63
5F136FA64
5F136FA66
5F136FA68
5F142DB38
5F142DB54
5F142EA02
5F142GA29
(57)【要約】
電子デバイスが提供される。デバイスは、個片化されたキャリア部分、個片化されたキャリア部分上に成型された基板、および基板上に配置された導電トレースを含む。基板は、サーモトロピック液晶ポリマーおよび鉱物充填剤を含むポリマー組成物を含み、ポリマー組成物は、ASTM E1461-13に従って決定される約1W/m・K以上の面内熱伝導率を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスであって、
個片化されたキャリア部分、
前記個片化されたキャリア部分上に成型された基板であって、前記基板がサーモトロピック液晶ポリマーおよび鉱物充填剤を含むポリマー組成物を含み、前記ポリマー組成物が、ASTM E1461-13に従って決定される約1W/m・K以上の面内熱伝導率を示す、前記基板、および
前記基板上に配置された導電トレース
を含む、電子デバイス。
【請求項2】
前記ポリマー組成物が、IEC62631-3-1:2016に従って決定される約1×10
13オーム以上の表面抵抗率を示す、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
ポリマーマトリックスが、前記ポリマー組成物の約30wt.%~約80wt.%を構成する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記液晶ポリマーが約280℃以上の溶融温度を有する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記液晶ポリマーが、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する1種または複数の繰り返し単位を含有し、前記ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が、前記ポリマーの約40mol.%以上を構成する、請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、またはそれらの組合せに由来する繰り返し単位を含有する、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記液晶ポリマーが、4-ヒドロキシ安息香酸に由来する繰り返し単位を前記ポリマーの約30mol.%~約90mol.%の量で含有し、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸に由来する繰り返し単位を前記ポリマーの約1mol.%~約30mol.%の量で含有する、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記液晶ポリマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ヒドロキノン、4,4’-ビフェノール、アセトアミノフェン、4-アミノフェノール、またはこれらの組合せに由来する繰り返し単位をさらに含有する、請求項5に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、ASTM E1461-13に従って決定される約0.2W/m・K以上の面直熱伝導率を示す、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記鉱物充填剤が、前記ポリマーマトリックス100重量部あたり約10~約80重量部の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記鉱物充填剤が、鉱物粒子、鉱物繊維またはそれらの組合せを含有する、請求項10に記載の電子デバイス。
【請求項12】
前記鉱物粒子が、タルク、マイカまたはそれらの組合せを含む、請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項13】
前記鉱物繊維が珪灰石を含む、請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項14】
前記鉱物繊維が約1~約35マイクロメートルのメジアン径を有する、請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項15】
前記鉱物繊維が約1.1~約100のアスペクト比を有する、請求項11に記載の電子デバイス。
【請求項16】
前記ポリマー組成物が、1,000s
-1のせん断速度、および前記組成物の溶融温度を15℃超える温度で、ISO試験No.11443:2014に従って決定される約10~約250Pa・sの溶融粘度を有する、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項17】
前記個片化されたキャリア部分が金属を含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項18】
1つまたは複数の発光ダイオードを含有するLEDモジュールを含むライトアセンブリであって、請求項1から17のいずれかに記載の電子デバイスを含む、前記ライトアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出題の相互参照
[0001]本出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第62/981,667号(出願日2020年2月26日)、第62/981,681号(出願日2020年2月26日)、第63/057,345号(出願日2020年7月28日)、第63/057,349号(出願日2020年7月28日)、第63/057,353号(出願日2020年7月28日)、および米国特許出願第17/178,292号(出願日2021年2月18日)、第17/178,295号(出願日2021年2月18日)の出願利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]成形回路部品(MID)は、通常プラスチック構成部品および電子回路トレースを含む三次元電気機械部品である。プラスチック基板またはハウジングを作成し、電気回路およびデバイスをプラスチック基板にメッキする、積層する、または埋め込む。MIDは通常、従来的に生成されるデバイスに比べて部品が少ないため、省スペースおよび軽量化がもたらされる。そのようなデバイスの利益にもかかわらず、より狭いスペースで使用でき、より高速で動作できると同時に、電力の使用が少なく、製造が比較的安価である電子部品パッケージに対する必要性が依然として存在する。これらの問題の解決を促すために開発された1つの技術は、「特定用途向け電子機器パッケージング(Application Specific Electronics Packaging)(「ASEP」)」として公知である。このようなパッケージングシステムは、個片化(singulated)されたキャリア部分上に成型されるメッキされたプラスチック基板の使用に依存することにより、リールツーリール(連続フロー)製造プロセスを使用した製品の製造を可能にする。残念なことに、これらのシステムの限界の1つは、プラスチック基板に使用されるポリマー材料に導電回路トレースが容易にメッキされず、また材料が、典型的に所望される程度の耐熱性および機械強度を有さないことである。したがって、導電回路トレースを有するプラスチック基板から形成される、改善されたパッケージ型電子デバイスに対する必要性が現在存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によると、個片化されたキャリア部分、個片化されたキャリア部分上に成型された基板、および基板上に配置された導電トレースを含む電子デバイスが開示される。基板は、サーモトロピック液晶ポリマーおよび鉱物充填剤を含むポリマー組成物を含む。ポリマー組成物は、ASTM E1461-13に従って決定される約1W/m・K以上の面内熱伝導率を示す。
【0004】
[0004]本発明の他の特色および態様が、以下により詳細に記載される。
[0005]本発明の完全かつ実施可能な開示が、当業者に対するその最良の形態を含め、添付の図面への参照を含む本明細書の残り部分でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】[0006]本発明の電子デバイスを形成するために利用可能な製造プロセスの一実施形態のフロー図である。
【
図2】[0007]
図1に示された製造プロセスの斜視図であり、電子デバイスの形成中のキャリア上の様々な段階での基板が示される。
【
図3】[0008]キャリアから分離した後の
図2に示された電子デバイスの斜視図である。
【
図4】[0009]
図1に示す製造プロセスで使用可能なリールツーリールキャリアの一実施形態の斜視図である。
【
図5】[0010]基板上に回路トレースを形成するための一実施形態の概略図である。
【
図6】[0011]
図1の製造プロセスで利用可能な追加のステップを示すフロー図である。
【
図7】[0012]自動車用ライトの形態の本発明の電子デバイスの一実施形態の斜視図である。
【
図8】[0013]
図7に示された電子デバイスの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0014]本考察は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を制限するものではないことが当業者によって理解される。
[0015]一般に、本発明は、プリント回路板、フレックス回路、コネクタ、熱管理機能、EMIシールド、大電流導体、RFID装置、アンテナ、無線電力デバイス、センサ、MEMS装置、LEDデバイス、マイクロプロセッサ、メモリデバイス、ASIC、受動デバイス、インピーダンス制御デバイス、電気機械装置、またはこれらの組合せなどの電子デバイスに関する。電子デバイスは、個片化されたキャリア部分上に成型され、その上に配置された導電トレースを有する基板を含有する。特に、基板は、液晶ポリマーおよび鉱物充填剤を含有する。これらおよびポリマー組成物の他の成分の特定の性質とともに、それらの相対濃度を選択的に制御することにより、本発明者は、得られる組成物が高度の熱伝導率を達成することができ、それにより基板が電子デバイスの特定の部品(例えば、LEDモジュール)から離れる熱伝達のための熱経路を作成することができることを発見した。このようにして、「ホットスポット」を迅速に排除することができ、使用中に全体の温度を低下させることができる。組成物は、例えば、ASTM E 1461-13に従って決定される約1W/m・K以上、一部の実施形態では約1.2W/m・K以上、一部の実施形態では約1.5W/m・K以上、一部の実施形態では約1.8W/m・K以上、一部の実施形態では約2~約5W/m・Kの面内熱伝導率を示してもよい。組成物はまた、ASTM E 1461-13に従って決定される約0.2W/m・K以上、一部の実施形態では約0.3W/m・K以上、一部の実施形態では約0.4W/m・K以上、一部の実施形態では約0.5~約2W/m・Kの面直熱伝導率を示してもよい。
【0007】
[0016]注目すべきことに、そのような熱伝導率は、高度の固有熱伝導率を有する従来の材料を使用することなく達成できることが発見された。例えば、ポリマー組成物は、一般に50W/m・K以上、一部の実施形態では100W/m・K以上、一部の実施形態では150W/m・K以上の固有熱伝導率を有する充填剤を含まなくてもよい。そのような高い固有熱伝導率の材料の例として、例えば窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素マグネシウム、グラファイト(例えば、膨張化グラファイト)、炭化ケイ素、カーボンナノチューブ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、アルミニウム粉末、および銅粉末を挙げることができる。通常はそのような高い固有熱伝導率の材料の存在を最小にすることが望ましいが、それらは、それにもかかわらず特定の実施形態ではポリマー組成物の約10wt.%以下、一部の実施形態では約5wt.%以下、一部の実施形態では約0.01wt.%~約2wt.%の量のような比較的低いパーセンテージで存在してもよい。
【0008】
[0017]さらに、従来的に、高い熱伝導率を有する組成物は、同時に十分に良好な機械的特性を有することができないと考えられていた。しかし、従来の思想とは対照的に、本発明者は、利用される特定の材料(例えば、ポリマーマトリックス、鉱物充填剤などの性質)、およびそれらが加工される方法を慎重に制御することにより、ポリマー組成物から形成される電子デバイスが、優れた機械特性を依然として有することができることを発見した。例えば、組成物は、23℃でISO試験No.179-1:2010に従って測定して約10kJ/m2、一部の実施形態では約15~約60kJ/m2、一部の実施形態では約20~約50kJ/m2のノッチなしシャルピー衝撃強度を示してもよい。組成物はまた、約20~約500MPa、一部の実施形態では約50~約400MPa、一部の実施形態では約60~約350MPaの引張強度;約0.5%以上、一部の実施形態では約0.8%~約15%、一部の実施形態では約1%~約10%の引張破断歪み;および/または約5,000MPa~約30,000MPa、一部の実施形態では約7,000MPa~約25,000MPa、一部の実施形態では約10,000MPa~約20,000MPaの引張弾性率を示してもよい。引張特性は、23℃でISO試験No.527:2019に従って決定されてもよい。組成物はまた、約40~約500MPa、一部の実施形態では約50~約400MPa、一部の実施形態では約100~約350MPaの曲げ強度;約0.5%以上、一部の実施形態では約0.8%~約15%、一部の実施形態では約1%~約10%の曲げ破断歪み;および/または約7,000MPa以上、一部の実施形態では約9,000MPa以上、一部の実施形態では約10,000MPa~約30,000MPa、一部の実施形態では約12,000MPa~約25,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、23℃でISO試験No.178:2019に従って決定されてもよい。組成物はまた、1.8MPaの特定の荷重でASTM D648-07(技術的にISO試験No.75-2:2013と同等である)に従って測定して約180℃以上、一部の実施形態では約190℃~約280℃の荷重たわみ温度(DTUL)を示してもよい。
【0009】
[0018]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に記載する。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリックス
[0019]ポリマーマトリックスは、一般にポリマー組成物の約30wt.%~約80wt.%、一部の実施形態では約40wt.%~約75wt.%、一部の実施形態では約50wt.%~約70wt.%の量の1種または複数の液晶ポリマーを典型的に含有する。液晶ポリマーは、一般的に棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限り、「サーモトロピック」と分類される。ポリマーは、比較的高い溶融温度、例えば約280℃~約400℃、一部の実施形態では約290℃~約390℃、一部の実施形態では約300℃~約380℃を有する。そのようなポリマーは、当技術分野で公知のように1つまたは複数の種類の繰り返し単位から形成されてもよい。液晶ポリマーは、例えば、一般に以下の式(I):
【0010】
【0011】
(式中、
環Bは、置換または非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換または非置換の5または6員アリール基に縮合した置換または非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、あるいは置換または非置換の5または6員アリール基に連結した置換または非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
Y1およびY2は、独立してO、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である)
によって表される1つまたは複数の芳香族エステル繰り返し単位を含有してもよい。
【0012】
[0020]典型的に、Y1およびY2の少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル繰り返し単位の例として、例えば芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式I中Y1およびY2はC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式I中Y1はOであり、Y2はC(O)である)、ならびにこれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0013】
[0021]例えば、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)である。利用される場合、ヒドロキシカルボン酸(例えばHBAおよび/またはHNA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約40mol.%以上、一部の実施形態では約45mol.%以上、一部の実施形態では約50mol.%~100mol.%を構成する。一実施形態では、例えば、HBAに由来する繰り返し単位は、ポリマーの約30mol.%~約90mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約40mol.%~約85mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約50mol.%~約80mol.%を構成してもよい。同様に、HNAに由来する繰り返し単位は、ポリマーの約1mol.%~約30mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約2mol.%~約25mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約3mol.%~約15mol.%を構成してもよい。
【0014】
[0022]また、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族ジカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、および/またはNDA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約50mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約30%を構成する。
【0015】
[0023]他の繰り返し単位もポリマーに利用することができる。例えば、特定の実施形態では、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジオールとして、例えばヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約25mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約20%を構成する。また、芳香族アミド(例えば、アセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)に由来するものなどの繰り返し単位が利用されてもよい。利用される場合、芳香族アミド(例えば、APAP)および/または芳香族アミン(例えば、AP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約0.1mol.%~約20mol.%、一部の実施形態では約0.5mol.%~約15mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約10%を構成する。また、ポリマーに種々の他のモノマー繰り返し単位が導入されてもよいことが理解されるべきである。例えば、特定の実施形態では、ポリマーは、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどの非芳香族モノマーに由来する1つまたは複数の繰り返し単位を含有してもよい。当然ながら、他の実施形態では、ポリマーは非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーに由来する繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってもよい。
【0016】
[0024]必ずしも必要ではないが、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)またはこれらの組合せなどの、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を比較的低い含有量で含有する限り、「低ナフテン」ポリマーであってもよい。つまり、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNAまたはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、典型的にポリマーの約15mol.%以下、一部の実施形態では約10mol.%以下、一部の実施形態では約1mol.%~約8mol.%である。
【0017】
B.鉱物充填剤
[0025]上述のように、ポリマー組成物は、ポリマーマトリックス中に分布された1種または複数の鉱物充填剤も含有してもよい。そのような鉱物充填剤は、典型的にポリマーマトリックス100重量部あたり約10~約80部、一部の実施形態では約20~約70部、一部の実施形態では約30~約60部を構成する。鉱物充填剤は、例えば、ポリマー組成物の約5wt.%~約60wt.%、一部の実施形態では約10wt.%~約55wt.%、一部の実施形態では約25wt.%~約40wt.%を構成してもよい。さらに、導電性充填剤に対する鉱物充填剤の重量比は、約2~約500、一部の実施形態では約3~約150、一部の実施形態では約4~約75、一部の実施形態では約5~約15の範囲であってもよい。鉱物充填剤の種類および相対量を選択的に調整することによって、本発明者は、機械的特性を改善することができるだけでなく、ポリマー組成物の全体の導電率に大きな影響を与えることなく熱伝導率を増加させることができることを発見した。これにより、組成物は、「ホットスポット」を迅速に排除し、使用中に全体の温度を低下させることができるように、得られる電子デバイスから離れる熱伝達のための熱経路を作成することが可能になる。組成物は、例えば、ASTM E 1461-13に従って決定される約0.2W/m・K以上、一部の実施形態では約0.5W/m・K以上、一部の実施形態では約0.6W/m・K以上、一部の実施形態では約0.8W/m・K以上、一部の実施形態では約1~約3.5W/m・Kの面内熱伝導率を示してもよい。組成物はまた、ASTM E 1461-13に従って決定される約0.3W/m・K以上、一部の実施形態では約0.5W/m・K以上、一部の実施形態では約0.40W/m・K以上、一部の実施形態では約0.7~約2W/m・Kの面直熱伝導率を示してもよい。
【0018】
[0026]鉱物粒子、鉱物繊維(または「ウィスカー」)など、およびそのブレンドのように、ポリマー組成物に利用される鉱物充填剤の性質は変化してもよい。好適な鉱物繊維として、例えばシリケート、例えばネオシリケート、ソロシリケート、イノシリケート(例えば、珪灰石などのカルシウムイノシリケート;トレモライトなどのカルシウムマグネシウムイノシリケート;アクチノライトなどのカルシウムマグネシウム鉄イノシリケート;アントフィライトなどのマグネシウム鉄イノシリケートなど)、フィロシリケート(例えば、パリゴルスカイトなどのアルミニウムフィロシリケート)、テクトシリケートなど;硫酸カルシウムなどの硫酸塩(例えば、脱水または無水石膏);鉱物ウール(例えば、ロックまたはスラグウール)などに由来するものを挙げることができる。商品名NYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4WまたはNYGLOS(登録商標)8)でNyco Mineralsから入手可能な珪灰石繊維などのイノシリケートが特に好適である。鉱物繊維は、約1~約35マイクロメートル、一部の実施形態では約2~約20マイクロメートル、一部の実施形態では約3~約15マイクロメートル、一部の実施形態では約8~約14マイクロメートルのメジアン幅(例えば、直径)を有してもよい。鉱物繊維はまた、狭いサイズ分布を有してもよい。つまり、繊維の少なくとも約60体積%、一部の実施形態では繊維の少なくとも約70体積%、一部の実施形態では繊維の少なくとも約80体積%が、上記の範囲内のサイズを有してもよい。理論によって限定されることを意図しないが、上記のサイズ特徴を有する鉱物繊維は、成型機器を通ってより容易に移動することができ、これによりポリマーマトリックス内の分布が向上し、表面欠陥の生成が最小になると考えられる。上記のサイズ特徴を有することに加え、鉱物繊維はまた、得られるポリマー組成物の機械的特性および表面品質をさらに向上させるのを助ける比較的高いアスペクト比(平均長をメジアン幅で除したもの)を有してもよい。例えば、鉱物繊維は、約1.1~約100、一部の実施形態では約1.2~約50、一部の実施形態では約1.5~約20、一部の実施形態では約2~約8のアスペクト比を有してもよい。そのような鉱物繊維の体積平均長は、例えば約1~約200マイクロメートル、一部の実施形態では約2~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約5~約100マイクロメートル、一部の実施形態では約10~約50マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0019】
[0027]他の好適な鉱物繊維は、鉱物粒子である。粒子の平均直径は、例えば約5マイクロメートル~約200マイクロメートル、一部の実施形態では約8マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約10マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲であってもよい。粒子の形状は、例えば顆粒状、フレーク形状などのように所望通り異なってもよい。例えば約4以上、一部の実施形態では約8以上、一部の実施形態では約10~約500などの比較的高いアスペクト比(例えば、平均直径を平均厚さで除したもの)を有するフレーク形状の粒子が利用されてもよい。同様に、そのようなフレーク形状の粒子の平均厚さは、約2マイクロメートル以下、一部の実施形態では約5ナノメートル~約1マイクロメートル、一部の実施形態では約20ナノメートル~約500ナノメートルであってもよい。それらの形状およびサイズにかかわらず、粒子は典型的に、天然および/または合成ケイ酸塩鉱物、例えばタルク、マイカ、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪灰石などから形成される。タルクおよびマイカが特に好適である。例えば、白雲母(KAl2(AlSi3)O10(OH)2)、黒雲母(K(Mg,Fe)3(AlSi3)O10(OH)2)、金雲母(KMg3(AlSi3)O10(OH)2)、紅雲母(K(Li,Al)2-3(AlSi3)O10(OH)2)、海緑石(K,Na)(Al,Mg,Fe)2(Si,Al)4O10(OH)2)などを含む任意の形態のマイカが一般的に利用されてもよい。白雲母ベースのマイカが、ポリマー組成物で使用するのに特に好適である。
【0020】
C.任意選択の成分
ガラス繊維、衝撃改質剤、滑剤、顔料(例えば、カーボンブラック)、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止添加剤、核形成剤(例えば、窒化ホウ素)、導電性充填剤、ならびに特性および加工性を向上させるために添加される他の材料などの、多種多様なさらなる添加剤もポリマー組成物に含まれてもよい。例えば、滑剤は、ポリマー組成物の約0.05wt.%~約1.5wt.%、一部の実施形態では約0.1wt.%~約0.5wt.%(重量)の量でポリマー組成物中に利用されてもよい。そのような滑剤の例として、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機リン酸エステル、およびエンジニアリングプラスチック材料の加工において滑剤として一般的に使用されるタイプの炭化水素ワックスが挙げられ、これらの混合物が含まれる。好適な脂肪酸は、典型的に約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有し、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデシン酸、パリン酸などである。好適なエステルとして、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、および複合エステルが挙げられる。脂肪酸アミドとして、脂肪第一級アミド、脂肪第二級アミド、メチレンおよびエチレンビスアミド、ならびに例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどのアルカノールアミドが挙げられる。また、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィンおよび酸化ポリオレフィンワックス、ならびに微結晶性ワックスを含む炭化水素ワックスも好適である。特に好適な滑剤は、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸カルシウム、またはN,N’-エチレンビスステアラミドなどのステアリン酸の酸、塩、またはアミドである。さらに別の好適な滑剤は、内部潤滑を改善させ、また別の表面に遭遇する組成物の摩耗および摩擦特性を強化するのに役立つシロキサンポリマーであってもよい。そのようなシロキサンポリマーは、典型的に組成物に利用されるポリマーマトリックス100部あたり約0.2~約20部、一部の実施形態では約0.5~約10部、一部の実施形態では約0.8~約5部を構成する。様々なシロキサンポリマーのいずれかが一般に利用されてもよい。シロキサンポリマーは、例えば、式:
RrSiO(4-r/2)
(式中、
Rは、独立して水素または置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
rは0、1、2または3である)
を有する骨格にシロキサン単位を含む任意のポリマー、コポリマーまたはオリゴマーを包含してもよい。
【0021】
[0028]好適な基Rの一部の例として、例えば任意選択で置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルまたはアルキニル、またはシクロアルキル基が挙げられ、これらはヘテロ原子によって中断されてもよく、すなわち、炭素鎖または環中にヘテロ原子を含有してもよい。好適なアルキル基として、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびtert-ペンチル基、ヘキシル基(例えばn-ヘキシル)、ヘプチル基(例えばn-ヘプチル)、オクチル基(例えばn-オクチル)、イソオクチル基(例えば2,2,4-トリメチルペンチル基)、ノニル基(例えばn-ノニル)、デシル基(例えばn-デシル)、ドデシル基(例えばn-ドデシル)、オクタデシル基(例えばn-オクタデシル)などを挙げることができる。同様に、好適なシクロアルキル基として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基などを挙げることができ、好適なアリール基として、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、およびフェナントリル基を挙げることができ、好適なアルキルアリール基として、o-、m-、またはp-トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などを挙げることができ、好適なアルケニルまたはアルキニル基として、ビニル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギル、1-プロピニルなどを挙げることができる。置換炭化水素基の例は、ハロゲン化アルキル基(例えば、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、およびペルフルオロヘキシルエチル)、ならびにハロゲン化アリール基(例えば、p-クロロフェニルおよびp-クロロベンジル)である。1つの特定の実施形態では、シロキサンポリマーは、Si原子の少なくとも70mol%に結合したアルキル基(例えばメチル基)、任意選択でSi原子の0.001~30mol%に結合したビニルおよび/またはフェニル基を含む。シロキサンポリマーはまた、好ましくは主としてジオルガノシロキサン単位から構成される。ポリオルガノシロキサンの末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基、またはジメチルビニルシロキシ基であってもよい。しかし、これらのアルキル基の1つまたは複数が、ヒドロキシ基、またはメトキシもしくはエトキシ基などのアルコキシ基で置換されている可能性もある。シロキサンポリマーの特に好適な例として、例えばジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、およびトリフルオロプロピルポリシロキサンが挙げられる。
【0022】
[0029]シロキサンポリマーはまた、ポリマーのシロキサンモノマー単位の少なくとも一部に、ビニル基、ヒドロキシル基、ヒドリド、イソシアネート基、エポキシ基、酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシおよびプロポキシ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシおよびオクタノイルオキシ)、ケトキシメート基(例えば、ジメチルケトキシム、メチルケトキシム、およびメチルエチルケトキシム)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびブチルアミノ)、アミド基(例えば、N-メチルアセトアミドおよびN-エチルアセトアミド)、酸アミド基、アミノ-オキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基(例えば、ビニルオキシ、イソプロペニルオキシおよび1-エチル-2-メチルビニルオキシ)、アルコキシアルコキシ基(例えば、メトキシエトキシ、エトキシエトキシおよびメトキシプロポキシ)、アミノキシ基(例えば、ジメチルアミノキシおよびジエチルアミノキシ)、メルカプト基などのうちの1つまたは複数などの反応性官能基を含んでもよい。
【0023】
[0030]その特定の構造にかかわらず、シロキサンポリマーは典型的に比較的高い分子量を有するため、ポリマー組成物の表面に移動または拡散する可能性が減少し、したがって相分離の可能性がさらに最小限に抑えられる。例えば、シロキサンポリマーは典型的に、モルあたり約100,000グラム以上、一部の実施形態ではモルあたり約200,000グラム以上、一部の実施形態ではモルあたり約500,000グラム~モルあたり約2,000,000グラムの重量平均分子量を有する。シロキサンポリマーはまた、約10,000センチストークス以上、一部の実施形態では約30,000センチストークス以上、一部の実施形態では約50,000~約500,000センチストークスのような比較的高い動粘度を有してもよい。
【0024】
[0031]所望される場合、シリカ粒子(例えば、ヒュームドシリカ)をシロキサンポリマーと組み合わせて利用し、組成物中に分散するその能力の向上を助けることもできる。そのようなシリカ粒子は、例えば約5ナノメートル~約50ナノメートルの粒径、グラムあたり約50平方メートル(m2/g)~約600m2/gの表面積、および/または立方メートルあたり約160キログラム(kg/m3)~約190kg/m3の密度を有してもよい。利用される場合、シリカ粒子は、典型的にシロキサンポリマー100重量部に対して約1~約100重量部、一部の実施形態では約20~約60重量部を構成する。一実施形態では、シリカ粒子をシロキサンポリマーと組み合わせ、その後この混合物をポリマー組成物に添加することができる。例えば、超高分子量ポリジメチルシロキサンおよびヒュームドシリカを含む混合物をポリマー組成物中に組み込むことができる。そのような予め形成された混合物は、Wacker Chemie,AGからGenioplast(登録商標)Pellet Sとして入手可能である。
【0025】
[0032]実質的な量の電流が部品を通って流れないように、基板が一般に本質的に帯電防止性であることを保証するために、導電性充填剤もポリマー組成物に利用されてもよい。このような帯電防止性の挙動は、所望の抵抗率を有する充填剤のための単一の材料を選択することによって、または得られる充填剤が所望の抵抗率を有するように複数の材料を一緒に(例えば、絶縁性および導電性)ブレンドすることによって達成されてもよい。例えば、例えば約20℃の温度で決定される約1オーム・cm未満、一部の実施形態では約0.1オーム・cm未満、一部の実施形態では約1×10-8~約1×10-2オーム・cmの体積抵抗率を有する導電性炭素材料が利用されてもよい。好適な導電性炭素材料として、例えばグラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。他の好適な導電性充填剤として、同様に、金属(例えば金属粒子、金属フレーク、金属繊維など)、イオン液体などを挙げることができる。利用される場合、導電性充填剤は、典型的にポリマーマトリックス100重量部あたり約0.5~約20重量部、一部の実施形態では約1~約15重量部、一部の実施形態では約2~約8重量部を構成する。例えば、導電性充填剤は、ポリマー組成物の約0.1wt.%~約10wt.%、一部の実施形態では約0.2wt.%~約8wt.%、一部の実施形態では約0.5wt.%~約6wt.%を構成してもよい。得られる帯電防止性ポリマー組成物は、例えばIEC62631-3-1:2016に従って決定される約1×1018オーム以下、一部の実施形態では約1×1017オーム以下、一部の実施形態では約1×1016オーム以下、一部の実施形態では約1×1015オーム以下、一部の実施形態では約1×1014オーム以下の表面抵抗率、および/または約1×1016オーム・m以下、一部の実施形態では約1×1015オーム・m以下、一部の実施形態では約1×1014オーム以下、一部の実施形態では約1×1013オーム・m以下の体積抵抗率を示してもよい。当然ながら、組成物は、特に組成物の全体的な熱伝導率を最適化することが所望される場合、帯電防止性である必要はない。そのような場合、組成物は、例えばIEC62631-3-1:2016に従って決定される約1×1014オーム以上、一部の実施形態では約1×1015オーム以上、一部の実施形態では約1×1016オーム以上、一部の実施形態では約1×1017オーム以上、一部の実施形態では約1×1018オーム以上の表面抵抗率、および/または約1×1013オーム・m以上、一部の実施形態では約1×1014オーム・m以上、一部の実施形態では約1×1015オーム以上、一部の実施形態では約1×1016オーム・m以上の体積抵抗率を示してもよい。
II.形成
[0033]ポリマー組成物の成分(例えば、液晶ポリマー、鉱物充填剤など)は、一緒に溶融加工またはブレンドすることができる。成分は、バレル(例えば、円筒形バレル)内に回転可能に取り付けられて収容されている少なくとも1つのスクリューを含み、スクリューの長さに沿って、フィードセクションおよびフィードセクションの下流に位置する溶融セクションを画定することができる押出機に、別々にまたは組み合わせて供給することができる。押出機は、単軸または二軸押出機であってもよい。スクリューの速度は、所望の滞留時間、せん断速度、溶融加工温度などを達成するように選択することができる。例えば、スクリュー速度は、1分あたり約50~約800回転(「rpm」)、一部の実施形態では約70~約150rpm、一部の実施形態では約80~約120rpmの範囲であってもよい。また、溶融ブレンド中の見掛けのせん断速度は、約100秒-1~約10,000秒-1、一部の実施形態では約500秒-1~約5000秒-1、一部の実施形態では約800秒-1~約1200秒-1の範囲であってもよい。見掛けのせん断速度は、4Q/πR3(式中、Qはポリマー溶融体の体積流量(「m3/秒」)であり、Rはそれを通って溶融ポリマーが流れる毛細管(例えば、押出機ダイ)の半径(「m」)である)に等しい。それが形成される特定の方法にかかわらず、得られるポリマー組成物は、優れた熱特性を有することができる。例えば、ポリマー組成物の溶融粘度は、ポリマー組成物が小さい寸法を有する金型の空洞内に容易に流入することができるように十分に低くてもよい。1つの特定の実施形態では、ポリマー組成物は、1000秒-1のせん断速度で決定される約10~約250Pa・s、一部の実施形態では約15~約200Pa・s、一部の実施形態では約20~約150Pa・s、一部の実施形態では約30~約100Pa・sの溶融粘度を有してもよい。溶融粘度は、ISO試験No.11443:2014に従い、組成物の溶融温度よりも15℃高い温度(例えば、約325℃の溶融温度に対して約340℃)で決定されてもよい。
【0026】
III.電子デバイス
[0034]上記に示されたように、ポリマー組成物は、「個片化された」キャリア部分上に成型され、その上にメッキされた導電トレースを有する基板に利用される。本明細書で使用される用語「個片化された」は、一般にキャリア部分がより大きなキャリア(例えば、接合または連続)から分離されていることを意味する。基板は、様々な異なる技術を使用して形成されてもよい。好適な技術として、例えば射出成型、低圧射出成型、押出圧縮成型、ガス射出成型、発泡射出成型、低圧ガス射出成型、低圧発泡射出成型、ガス押出圧縮成型、発泡押出圧縮成型、押出成型、発泡押出成型、圧縮成型、発砲圧縮成型、ガス圧縮成型などを挙げることができる。例えば、ポリマー組成物が注入され得る金型を含む射出成型システムが利用されてもよい。ポリマーマトリックスが予め固化しないように、注入器内の時間を制御し、最適化することができる。サイクル時間に達し、バレルが排出のために満杯になると、ピストンを使用して金型の空洞に組成物を注入してもよい。圧縮成型システムも利用されてもよい。射出成型と同様に、ポリマー組成物の所望の物品への成形も金型内で行われる。組成物は、自動化されたロボットアームによってピックアップされることなどにより、任意の公知の技術を使用して圧縮金型に配置されてもよい。金型の温度は、固化を可能にするために所望の時間にわたってポリマーマトリックスの固化温度以上に維持されてもよい。その後、成型品を溶融温度未満の温度にすることによって固化させてもよい。得られた製品を脱型してもよい。各成型プロセスのサイクル時間は、十分な結合を達成するため、またプロセス全体の生産性を向上させるためにポリマーマトリックスに合わせて調整することができる。
【0027】
[0035]本発明の電子デバイスを形成するために利用可能な製造プロセスの実施形態のフロー図を
図1に示す。ステップ1に示すように、リードフレーム54を形成するためにアーム56が延びる外側領域を含有するキャリア40が提供される。
図4に示すように、キャリア40は、例えばバルクソースリール68aから繰り出され、その後第2リール68bに集められてもよい。キャリア40は、典型的に金属(例えば、銅もしくは銅合金)または他の好適な導電材料から形成される。所望であれば、アーム56は、そこに設けられた開口部58を含有することもできる。キャリアホール52は、同様に、キャリア40が製造ラインに沿って連続的に横断できるように、キャリア40の外側部分上に位置してもよい。ステップ2において、本発明のポリマー組成物から形成されてもよい基板42は、その後リードフレーム54の上に成型(例えば、オーバーモールド)されてもよい。フィンガー56の開口部58に対応する開口部60を基板42に設けてもよい。
【0028】
[0036]基板42がリードフレーム54の上に成型されると、次に導電回路トレースが形成されてもよい。そのようなトレースは、様々な公知の金属堆積技術によって、例えばメッキ(例えば、電気メッキ、無電解メッキなど)、印刷(例えば、デジタル印刷、エアロゾルジェット印刷など)などによって形成されてもよい。所望により、金属堆積プロセスを促進するために、最初に基板上にシード層が形成されてもよい。例えば、
図1のステップ3および3Aでは、最初に基板42の表面上にシード層44を堆積させてもよく、これによりキャリア40によって形成された内部バスバー43をシード層44に電気的に接続することができる。その後、金属(例えば、銅、ニッケル、金、銀、スズ、鉛、パラジウムなど)によってシード層44を堆積させ、電子回路トレース62を含有する部分46を形成してもよい(ステップ4)。一実施形態では、例えば、キャリア40に電位を印加し、その後電気メッキ浴に配置することによって電気メッキを行うことができる。また、トレースと回路の内部層との間に電気経路を作成するために、基板の表面にビアを任意選択で成型することができる。これらのトレースは、キャリア部分に「電気バスバー」を作成し、それにより堆積される導電ペーストを塗布した後にトレースをメッキすることが可能になる。所望により、基板の表面は、レーザーアブレーション、プラズマエッチング、紫外線処理、フッ素化などの様々な公知の技術を使用して粗面化され、その後メッキされてもよい。とりわけ、このような粗面化は、所望の相互接続パターンでのメッキを促進するのに役立つ。例えば
図5を参照すると、この目的のためにレーザーを利用するプロセスの一実施形態がより詳細に示される。より詳細には、ステップ9に示すように、最初にレーザー70を利用して基板42の表面をアブレーションし、相互接続パターン66を形成するチャネル72を作成することができる。ステップ10では、次にインクジェットプロセス、エアロゾルプロセス、またはスクリーニングプロセスなど、任意の公知の技術によって導電性ペースト74をチャネル72内に配置してもよい。あるいは、ペーストの使用に代えておよび/または加えて、メッキプロセス(例えば、無電解メッキ)を利用することもできる。しかし、利用する場合、ペースト74が基板42に十分に接着することを保証することを助けるために、ステップ11に例示するように、堆積したペースト74をレーザーまたはフラッシュ熱76を通して任意選択で焼結してもよい。任意選択で焼結されると、ペースト74はステップ12に示されるようにメッキ(例えば電気メッキ)され、電子回路トレース62を形成する。
【0029】
[0037]再び
図1を参照すると、メッキ後に、はんだ付け、ワイヤボンディングなどの様々な技術のいずれかを使用して1つまたは複数の電気構成部品50を基板42に接続することによって(ステップ6)電気デバイスを形成することができる。特定の実施形態では、構成部品50を接続する前に、はんだマスク48を任意選択で適用することができる(ステップ5)。その後、得られた電子デバイスをキャリア40から分離してもよい。
図2~3は、例えば、形成の様々な段階における電子デバイス22の一実施形態を示す。ステップAでは、例えば、成型前のキャリア40が示される。ステップBは、キャリア部分40上に成型され、電子回路トレース62が適用された後の基板42を示す。ステップCおよびDでは、任意選択のピンコンタクトおよび回路の金属化を追加して、完成した電子デバイスを形成してもよい(ステップE)。その後、完成した電子デバイス22は、
図3に示されるように隣接するキャリア40から分離され、個片化されたキャリア部分40を含有する電子デバイス22を形成することができる。得られた電子デバイスは、様々な種類の電子構成部品、例えばライト、トンネル灯、ヘッドランプなどのための光源(例えば、発光ダイオード(「LED」))用のハウジング、またはコンピュータ、電話、電子制御装置などで使用されるような他の電子機器を含有してもよい。このような製品は、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、または推進力のために電力を使用する他の種類の車両(まとめて「電気自動車」と呼ぶ)などの車両(例えば、自動車、バス、オートバイ、ボートなど)に特に有用である場合がある。
【0030】
[0038]例えば、
図7~8を参照すると、自動車製品で使用するためのライト20の形態である電子製品の一実施形態が示される。ライト20は、ハウジング24、電子デバイス22(
図2も参照されたい)、およびライトパイプ28を含む。ハウジング24は、
図8に示すように、2つの部品24aおよび24bで形成されてもよい。ハウジング24は、そこを通る通路34を形成する壁32、および壁32を通って延び、通路34と連通する開口部36を有する。開口部36は、通路34に対して横方向であってもよい。電子デバイス22は、ハウジング30の通路34内に取り付けられてもよい。ライトパイプ28は、ハウジング30の開口部36を通って延び、本明細書に記載されるように電子デバイス22の電子構成部品50の1つまたは複数として形成される発光ダイオード(LED)38の上に取り付けられる。
図6は、ライト20を形成するための代表的なプロセスを示す。ステップ7および8は、例えば、電子デバイス22が他のデバイスから個片化され、ハウジング24およびライトパイプ28とアセンブルされることを示す。デバイス22が形成された後、通路34内に取り付けられ、ハウジング24の部品24aおよび24bが一緒にアセンブルされる。ピンコンタクト64は露出したままである。ライトパイプ28は、ハウジング24の開口部36を通して取り付けられ、LED38の上方に設けられる。
【0031】
[0039]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
【実施例】
【0032】
試験方法
[0040]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、Dynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して、せん断速度1,000s-1および溶融温度を15℃超える温度で、ISO試験No.11443:2014に従って決定されてもよい。レオメーターオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および入口角180°を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mm、ロッド長さは233.4mmであった。
【0033】
[0041]溶融温度:溶融温度(「Tm」)は、当技術分野で公知のように示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定されてもよい。溶融温度は、ISO試験No.11357-2:2018によって決定される示差走査熱量測定(DSC)のピーク溶融温度である。DSC手順に基づき、TA Q2000装置上で行うDSC測定を使用し、ISO標準10350に記述されるように、試料を1分あたり20℃で加熱および冷却した。
【0034】
[0042]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重たわみ温度は、ISO試験No.75-2:2013(技術的にASTM D648と同等である)に従って決定されてもよい。より詳細には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片試料を、指定の荷重(最大外部繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ三点屈曲試験に供してもよい。検体をシリコーン油浴中に下げ、検体が0.25mm(ISO試験No.75-2:2013では0.32mm)たわむまで温度を1分あたり2℃で上昇させる。
【0035】
[0043]引張弾性率、引張応力および引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2019(技術的にASTM D638と同等である)に従って試験されてもよい。弾性率および強度の測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの同じ試験片試料で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は1または5mm/分であってもよい。
【0036】
[0044]曲げ弾性率、曲げ応力および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(技術的にASTM D790と同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、64mmの支持スパン上で実施されてもよい。試験は、切断されていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は2mm/分であってもよい。
【0037】
[0045]ノッチなしおよびノッチ付きシャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1:2010(技術的にASTM D256-10、方法Bと同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1検体サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を使用して行われてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(0.25mmベース半径)であってもよい。検体は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出してもよい。試験温度は23℃であってもよい。
【0038】
[0046]表面/体積抵抗率:表面および体積抵抗率の値は、一般にIEC62631-3-1:2016またはASTM D257-14に従って決定される。この手順によると、標準検体(例えば、1メートルの立方体)を2つの電極の間に配置する。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m単位)と単位電極長あたりの電流(A/m単位)の商であり、一般に絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するため、商において長さを約分して表面抵抗率をオームで報告するが、より説明的な単位であるオームパースクエアを見ることも一般的である。また、体積抵抗率は、材料中の電流に平行な電位勾配の電流密度に対する比として決定される。SI単位では、体積抵抗率は、その材料の1メートルの立方体の対向面間の直流抵抗(オーム・m)に数値的に等しい。
【0039】
実施例
[0047]本明細書に記載される電子デバイスの基板に使用される試料が形成される。試料は、液晶ポリマー(「LCP1」)、Nyglos(商標)8、カーボンブラック顔料、およびGlycolube(商標)Pを含有する。LCP1は、HBA60mol.%、HNA5mol.%、BP12mol.%、TA17.5mol.%およびAPAP5mol.%から形成される。配合は、18mm単軸押出機を使用して実施する。部品を射出成型し、試料を板(60mm×60mm)にする。
【0040】
【0041】
[0048]得られた試料を熱的および機械的特性について試験する。結果を以下の表2に記載する。
【0042】
【0043】
[0049]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって実施可能である。さらに、種々の実施形態の態様は、全体的または部分的の両方で相互交換可能であることが理解されるべきである。さらに、当業者は、上述の記載が単なる例示であり、したがってそのような添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を制限するものではないことを理解する。
【国際調査報告】