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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】回路構造体
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20230410BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230410BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230410BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230410BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20230410BHJP
   H05K 1/09 20060101ALI20230410BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
H05K1/03 610H
C08L101/00
C08K3/01
C08K3/013
H05K1/03 610R
H01Q1/38
H05K1/09 A
H05K1/09 C
H05K1/16 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551595
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 US2021018486
(87)【国際公開番号】W WO2021173412
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/981,667
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/981,681
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/057,345
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/057,349
(32)【優先日】2020-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤン・シン
【テーマコード(参考)】
4E351
4J002
5J046
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351BB31
4E351BB32
4E351BB33
4E351BB35
4E351BB50
4E351CC06
4E351CC07
4E351CC11
4E351CC27
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
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4E351DD21
4E351GG07
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4J002CF181
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4J002DE077
4J002DE097
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5J046PA07
(57)【要約】
基板、および基板上に配置された1つまたは複数の導電素子を含む回路構造体が提供される。基板は、ポリマーマトリックス内に分布された導電性充填剤を含むポリマー組成物を含む。ポリマーマトリックスは、1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約40℃以上の荷重たわみを有する少なくとも1種の熱可塑性高性能ポリマーを含有し、ポリマー組成物は、2GHzの周波数で決定される約4以上の比誘電率、および約0.3以下の誘電正接を示す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路構造体であって、
ポリマー組成物を含む基板であって、当該ポリマー組成物がポリマーマトリックス内に分布された導電性充填剤を含み、当該ポリマーマトリックスが、1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約40℃以上の荷重たわみを有する少なくとも1種の熱可塑性高性能ポリマーを含有し、さらに当該ポリマー組成物が、2GHzの周波数で決定される約4以上の比誘電率および約0.3以下の誘電正接を示す、前記基板、ならびに
当該基板上に配置された1つまたは複数の導電素子
を含む、前記回路構造体。
【請求項2】
前記組成物が、約-30℃~約100℃の温度サイクルに曝露された後に比誘電率を示し、前記温度サイクル後の比誘電率の前記熱サイクル前の比誘電率に対する比が約0.8以上である、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項3】
前記組成物が、約-30℃~約100℃の温度サイクルに曝露された後に誘電正接を示し、前記温度サイクル後の誘電正接の前記熱サイクル前の誘電正接に対する比が約1.3以下である、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項4】
前記熱可塑性高性能ポリマーが、1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約150℃~約310℃の荷重たわみを有する、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項5】
前記熱可塑性高性能ポリマーが、約100℃~約320℃のガラス転移温度および/または約200℃~約410℃の溶融温度を有する、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項6】
前記熱可塑性高性能ポリマーが、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、液晶ポリマーまたはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項7】
前記熱可塑性高性能ポリマーが全芳香族液晶ポリマーを含む、請求項6に記載の回路構造体。
【請求項8】
前記液晶ポリマーが、約15mol.%以下のナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位の合計量を有する、請求項7に記載の回路構造体。
【請求項9】
前記液晶ポリマーが、約30mol.%~約70mol.%の量のHBA、約2mol.%~約30mol.%の量のIAおよび/またはTA、ならびに約2mol.%~約40mol.%の量のBPおよび/またはHQを含有する、請求項8に記載の回路構造体。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、ASTM D257-14に従って約20℃の温度で決定される約1×1010オーム・m~約1×1016オーム・mの体積抵抗率および/または約1×1012オーム~約1×1018オームの表面抵抗率を示す、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項11】
前記ポリマー組成物がスピネル結晶を含まない、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項12】
前記ポリマーマトリックスが前記ポリマー組成物の約30wt.%~約80wt.%を構成する、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項13】
前記導電性充填剤が約1オーム・cm未満の体積抵抗率を有する、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項14】
前記導電性充填剤が炭素材料を含む、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項15】
前記炭素材料が、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ、またはそれらの組合せを含む、請求項14に記載の回路構造体。
【請求項16】
前記導電性充填剤が、前記ポリマーマトリックス100重量部あたり約0.5~約20重量部の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項17】
前記ポリマー組成物が鉱物充填剤をさらに含む、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項18】
前記鉱物充填剤が、前記ポリマーマトリックス100重量部あたり約10~約80重量部の量で前記ポリマー組成物中に存在する、請求項17に記載の回路構造体。
【請求項19】
前記鉱物充填剤の前記導電性充填剤に対する重量比が約2~約500の範囲である、請求項17に記載の回路構造体。
【請求項20】
前記鉱物充填剤が、鉱物粒子、鉱物繊維またはそれらの組合せを含有する、請求項17に記載の回路構造体。
【請求項21】
前記鉱物粒子が、タルク、マイカまたはそれらの組合せを含む、請求項20に記載の回路構造体。
【請求項22】
前記鉱物繊維が珪灰石を含む、請求項20に記載の回路構造体。
【請求項23】
前記鉱物繊維が約1~約35マイクロメートルのメジアン径を有する、請求項22に記載の回路構造体。
【請求項24】
前記鉱物繊維が約1~約50のアスペクト比を有する、請求項22に記載の回路構造体。
【請求項25】
前記ポリマー組成物が、1000s-1のせん断速度および前記組成物の溶融温度を15℃超える温度で、ISO試験No.11443:2014に従って決定される約10~約250Pa・sの溶融粘度を有する、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項26】
前記導電素子が、銅、ニッケルまたはそれらの組合せを含む、請求項1に記載の回路構造体。
【請求項27】
前記基板を成型するステップ、
基板の表面上にパターンを形成するステップ、および
パターニングされた表面をメッキプロセスに供し、前記導電素子を形成するステップ
を含む、請求項1~26のいずれかに記載の回路構造体を形成する方法。
【請求項28】
前記パターンが、レーザーアブレーションを含むプロセスによって形成される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記メッキプロセスの前に、前記表面上にシード層を形成するステップをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記メッキプロセスが無電解メッキを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
請求項1~26のいずれかに記載の回路構造体を含むアンテナシステムであって、
前記導電素子が、無線周波数信号を送信および受信するように構成されたアンテナ素子である、前記アンテナシステム。
【請求項32】
前記無線周波数信号が5G信号である、請求項31に記載のアンテナシステム。
【請求項33】
前記少なくとも1つのアンテナ素子が、約1,500マイクロメートル未満の特徴サイズを有する、請求項31に記載のアンテナシステム。
【請求項34】
前記アンテナ素子が、約1,500マイクロメートル未満の間隔距離によって離間された、請求項31に記載のアンテナシステム。
【請求項35】
少なくとも16個のアンテナ素子が前記基板上に配置された、請求項31に記載のアンテナシステム。
【請求項36】
前記アンテナ素子がアレイ状に配列された、請求項31に記載のアンテナシステム。
【請求項37】
前記アレイが、少なくとも8個の送信チャネルおよび少なくとも8個の受信チャネルのために構成された、請求項36に記載のアンテナシステム。
【請求項38】
前記アレイが、1平方センチメートルあたり1,000個より多いアンテナ素子の平均アンテナ素子密度を有する、請求項36に記載のアンテナシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出題の相互参照
[0001]本出願は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願第62/981,667号(出願日2020年2月26日)、第62/981,681号(出願日2020年2月26日)、第63/057,345号(出願日2020年7月28日)、および第63/057,349号(出願日2020年7月28日)の出願利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]成形回路部品(MID)は、通常プラスチック構成部品および電子回路トレースを含む三次元電気機械部品である。プラスチック基板を作成し、電気回路およびデバイスをプラスチック基板にメッキする、積層する、または埋め込む。MIDは通常、従来的に生成されるデバイスに比べて部品が少ないため、省スペースおよび軽量化がもたらされる。現行のMIDの製造方法には、2ショット成型およびレーザー直接構造化が含まれる。レーザー直接構造化は、例えば、基板の金属化を開始するためのシードとして作用するスピネル結晶(例えば、亜クロム酸銅)の使用を含む。金属層を形成した後、レーザーで部品上に配線パターンをエッチングし、金属化のために準備する。その利益にもかかわらず、レーザー直接構造化材料の限界の1つは、スピネル結晶が、アンテナシステムでしばしば遭遇する高周波での組成物の性能に悪影響を与える傾向があることである。したがって、現在、メッキが可能であり、かつ高周波範囲で良好な性能を依然として保持する改善されたポリマー基板に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本発明の一実施形態によると、基板、および基板上に配置された1つまたは複数の導電素子を含む回路構造体が開示される。基板は、ポリマーマトリックス内に分布された導電性充填剤を含むポリマー組成物を含む。ポリマーマトリックスは、1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約40℃以上の荷重たわみを有する少なくとも1種の熱可塑性高性能ポリマーを含有し、ポリマー組成物は、2GHzの周波数で決定される約4以上の比誘電率、および約0.3以下の誘電正接を示す。
【0004】
[0003]本発明の他の特色および態様が、以下により詳細に記載される。
[0004]本発明の完全かつ実施可能な開示が、当業者に対するその最良の形態を含め、添付の図面への参照を含む本明細書の残り部分でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】[0005]アンテナシステムを利用することができる電子構成部品の一実施形態の前面斜視図である。
図2】アンテナシステムを利用することができる電子構成部品の一実施形態の裏面斜視図である。
図3】[0006]アンテナシステムの一実施形態の例示的な逆Fアンテナ共振素子の上面図である。
図4】[0007]アンテナシステムの一実施形態の例示的なモノポールアンテナ共振素子の上面図である。
図5】[0008]アンテナシステムの一実施形態の例示的なスロットアンテナ共振素子の上面図である。
図6】[0009]アンテナシステムの一実施形態の例示的なパッチアンテナ共振素子の上面図である。
図7】[0010]アンテナシステムの一実施形態の例示的な多分岐逆Fアンテナ共振素子の上面図である。
図8】[0011]本開示の態様による、基地局、1つまたは複数の中継局、1つまたは複数のユーザコンピューティングデバイス、1つまたは複数のWi-Fiリピーターを含む5Gアンテナシステムを示す。
図9A】[0012]本開示の態様による5Gアンテナを含む、例示的なユーザコンピューティングデバイスを上から見た図を示す。
図9B】[0013]本開示の態様による5Gアンテナを含む、図9Aの例示的なユーザコンピューティングデバイスの側面立面図を示す。
図10】[0014]図9Aのユーザコンピューティングデバイスの一部の拡大図を示す。
図11】[0015]本開示の態様による共平面導波管アンテナアレイ構成の側面立面図を示す。
図12A】[0016]本開示の態様による大規模多入力多出力構成のアンテナアレイを示す。
図12B】[0017]本開示の態様による、レーザー直接構造化によって形成されたアンテナアレイを示す。
図12C】[0018]本開示の態様による例示的なアンテナ構成を示す。
図13】[0019]アンテナシステムを形成するために使用され得るレーザー直接構造化製造プロセスの簡略化された連続図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0020]本考察は、例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広範な態様を制限するものではないことが当業者によって理解される。
[0021]一般に、本発明は、基板およびその上に配置された1つまたは複数の導電素子を含有する回路構造体に関する。基板は、導電性充填剤を含むポリマー組成物を含有し、導電性充填剤は、高性能熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックス内に分布される。組成物の種々の態様を選択的に制御することによって、本発明者は、得られる組成物が、アンテナシステムなどの種々の種類の電子構成部品で使用するための高比誘電率と低誘電正接の独特の組合せを維持できることを発見した。例えば、ポリマー組成物は、2GHzの周波数でスプリットポスト共振法によって決定される約4以上、一部の実施形態では約5以上、一部の実施形態では約6以上、一部の実施形態では約8~約30、一部の実施形態では約10~約25、一部の実施形態では約12~約24の高比誘電率を示してもよい。そのような高い比誘電率は、薄い基板を形成する能力を促進し、さらにほんの最小レベルの電気的干渉と同時に動作する複数の導電素子(例えば、アンテナ)の利用を可能にすることができる。また、エネルギー損失率の測定値である誘電正接(dissipation factor)は比較的低くてもよく、例えば2GHzの周波数でスプリットポスト共振法によって決定される約0.3以下、一部の実施形態では約0.2以下、一部の実施形態では約0.1以下、一部の実施形態では約0.06以下、一部の実施形態では約0.04以下、一部の実施形態では約0.001~約0.03であってもよい。本発明者らはまた、比誘電率および誘電正接は、約-30℃~約100℃の温度などの種々の温度に曝露された場合でも、上述の範囲内に維持され得ることを発見した。例えば、本明細書に記載される熱サイクル試験に供された場合、熱サイクリング後の比誘電率の初期比誘電率に対する比は、約0.8以上、一部の実施形態では約0.9以上、一部の実施形態では約0.95~約1.1であってもよい。同様に、高温への曝露後の誘電正接の初期誘電正接に対する比は、約1.3以下、一部の実施形態では約1.2以下、一部の実施形態では約1.1以下、一部の実施形態では約1.0以下、一部の実施形態では0.95以下、一部の実施形態では約0.1~約0.95、一部の実施形態では約0.2~約0.9であってもよい。誘電正接の変化(すなわち、初期誘電正接-熱サイクリング後の誘電正接)も、約-0.1~約0.1、一部の実施形態では約-0.05~約0.01、一部の実施形態では約-0.001~0の範囲であり得る。
【0007】
[0022]従来的に、高比誘電率と低誘電正接の組合せを有するポリマー組成物は、基板の金属化を可能にするのに十分高い導電率を同時に有さないと考えられていた。しかし、本発明者は、ポリマー組成物が、実質的な量の電流が部品を通って流れないように、一般に本質的に帯電防止性であり続けることを可能にする制御された抵抗率を示すことができるが、それにもかかわらず、メッキおよびその上の導電トレースの形成を容易にするために十分な程度の静電気消散(electrostatic dissipation)を示すことを発見した。表面抵抗率は、例えば、例えばASTM D257-14(技術的にIEC62631-3-1と同等である)に従って決定される約1×1012オーム~約1×1018オーム、一部の実施形態では約1×1013オーム~約1×1018オーム、一部の実施形態では約1×1014オーム~約1×1017オーム、一部の実施形態では約1×1015オーム~約1×1017オームの範囲であってもよい。同様に、組成物はまた、例えばASTM D257-14(技術的にIEC62631-3-1と同等である)に従って約20℃の温度で決定される約1×1010オーム・m~約1×1016オーム・m、一部の実施形態では約1×1011オーム・m~約1×1016オーム・m、一部の実施形態では約1×1012オーム・m~約1×1015オーム・m、一部の実施形態では約1×1013オーム・m~約1×1015オーム・mの体積抵抗率を示してもよい。
【0008】
[0023]本発明のポリマー組成物はまた、優れた強度特性を有してもよい。例えば、組成物は、23℃でISO試験No.179-1:2010に従って測定して約2kJ/m、一部の実施形態では約4~約40kJ/m、一部の実施形態では約6~約30kJ/mのノッチなしおよび/またはノッチ付きシャルピー衝撃強度を示してもよい。組成物はまた、約20~約500MPa、一部の実施形態では約50~約400MPa、一部の実施形態では約60~約350MPaの引張強度;約0.5%以上、一部の実施形態では約0.8%~約15%、一部の実施形態では約1%~約10%の引張破断歪み;および/または約5,000MPa~約30,000MPa、一部の実施形態では約7,000MPa~約25,000MPa、一部の実施形態では約10,000MPa~約20,000MPaの引張弾性率を示してもよい。引張特性は、23℃でISO試験No.527:2019に従って決定されてもよい。組成物はまた、約40~約500MPa、一部の実施形態では約50~約400MPa、一部の実施形態では約100~約350MPaの曲げ強度;約0.5%以上、一部の実施形態では約0.8%~約15%、一部の実施形態では約1%~約10%の曲げ破断歪み;および/または約7,000MPa以上、一部の実施形態では約9,000MPa以上、一部の実施形態では約10,000MPa~約30,000MPa、一部の実施形態では約12,000MPa~約25,000MPaの曲げ弾性率を示してもよい。曲げ特性は、23℃でISO試験No.178:2019に従って決定されてもよい。
【0009】
[0024]上記で示されたように、本発明の1つの利益は、ポリマー組成物から形成された基板が、従来のレーザー活性化可能スピネル結晶を使用することなく容易にメッキできることであり、結晶は、一般に式AB(式中、Aは2の価数を有する金属カチオン(例えばカドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズまたはチタン)であり、Bは3の価数を有する金属カチオン(例えばクロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガンまたはスズ)である)を有する。一般的に、上記式中のAは第1の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与え、Bは第2の金属酸化物クラスターの主カチオン成分を与える。例えば、第1の金属酸化物クラスターは一般に四面体構造を有し、第2の金属酸化物クラスターは、一般に八面体クラスターを有する。そのようなスピネル結晶の特定の例として、例えばMgAl、ZnAl、FeAl、CuFe、CuCr、MnFe、NiFe、TiFe、FeCrまたはMgCrが挙げられる。ポリマー組成物は、そのようなスピネル結晶を含まなくてもよいか(すなわち、0wt.%)、またはそのような結晶は、約1wt.%以下、一部の実施形態では約0.5wt.%以下、一部の実施形態では約0.001wt.%~約0.2wt.%の量などのほんのわずかな濃度で存在してもよい。
【0010】
[0025]ここで、本発明の種々の実施形態をより詳細に記載する。
I.ポリマー組成物
A.ポリマーマトリックス
[0026]ポリマーマトリックスは、一般に全ポリマー組成物の約30wt.%~約80wt.%、一部の実施形態では約40wt.%~約75wt.%、一部の実施形態では約50wt.%~約70wt.%の量の1種または複数の熱可塑性高性能ポリマーを一般に含有する。高性能ポリマーは、1.8MPaの荷重でISO75-2:2013に従って決定される約40℃以上、一部の実施形態では約50℃以上、一部の実施形態では約60℃以上、一部の実施形態では約100℃~約320℃、一部の実施形態では約150℃~約310℃、一部の実施形態では約220℃~約300℃の荷重たわみ温度(「DTUL」)によって反映されるように、高度の耐熱性を有してもよい。高度の耐熱性を示すことに加え、ポリマーは、典型的に約40℃以上、一部の実施形態では約50℃以上、一部の実施形態では約60℃以上、一部の実施形態では約70℃以上、一部の実施形態では約80℃以上、一部の実施形態では約100℃~約320℃などの高いガラス転移温度も有する。半結晶性または結晶性ポリマーが利用される場合、高性能ポリマーは、約140℃以上、一部の実施形態では約150℃~約420℃、一部の実施形態では約200℃~約410℃、一部の実施形態では約300℃~約400℃などの高い溶融温度も有することができる。ガラス転移温度および溶融温度は、示差走査熱量測定(「DSC」)を使用して当技術分野で周知のように決定されてもよく、例えばISO 11357-2:2020(ガラス転移)および11357-3:2018(溶融)によって決定されてもよい。
【0011】
[0027]この目的のための好適な高性能熱可塑性ポリマーは、例えばポリアミド(例えば脂肪族、半芳香族、または芳香族ポリアミド)、ポリエステル、ポリアリーレンスルフィド、液晶ポリマー(例えば、全芳香族ポリエステル、ポリエステルアミドなど)、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド(例えば、ポリエーテルイミド)など、およびこれらのブレンドを含んでもよい。ポリマー系の正確な選択は、組成物中に含まれる他の充填剤の性質、組成物が形成および/または加工される方法、ならびに意図される用途の特定の要件などの種々の要因に依存する。
【0012】
[0028]例えば、芳香族ポリマーは、ポリマーマトリックスに使用するのに特に好適である。芳香族ポリマーは、実質的に非晶質、半結晶、または結晶性であり得る。好適な半結晶性芳香族ポリマーの1つの例は、例えば芳香族ポリエステルであり、これは少なくとも1種のジオール(例えば、脂肪族および/または環式脂肪族)と、4~20個の炭素原子、一部の実施形態では8~14個の炭素原子を有するものなどの少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸との縮合生成物であり得る。好適なジオールとして、例えばネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、および式HO(CHOH(式中、nは2~10の整数である)の脂肪族グリコールを挙げることができる。好適な芳香族ジカルボン酸として、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテルなど、およびこれらの組合せを挙げることができる。1,4-、または1,5-、または2,6-ナフタレンジカルボン酸におけるように、縮合環が存在してもよい。そのような芳香族ポリエステルの特定の例として、例えばポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(1,3-プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(1,4-ブチレン2,6-ナフタレート)(PBN)、ポリ(エチレン2,6-ナフタレート)(PEN)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)ならびに上述の混合物が挙げられてもよい。
【0013】
[0029]芳香族ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)の誘導体および/またはコポリマーも利用されてもよい。例えば、一実施形態では、変性酸および/またはジオールを使用し、そのようなポリマーの誘導体を形成してもよい。本明細書で使用される用語「変性酸」および「変性ジオール」は、それぞれポリエステルの酸およびジオール繰り返し単位の一部を形成することができ、かつポリエステルを変性してその結晶化度を低減させる、またはポリエステルを非晶質にすることができる化合物を定義することを意図する。変性酸成分の例として、これらに限定されないが、イソフタル酸、フタル酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、スベリン酸、1,12-ドデカン二酸などが挙げられてもよい。実際には、多くの場合、ジカルボン酸のジメチル、ジエチルまたはジプロピルエステルなどのこれらの官能性酸誘導体を使用することが好ましい。実用的な場合、これらの酸の無水物または酸ハロゲン化物も利用されてもよい。変性ジオール成分の例として、これらに限定されないが、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル1,3-シクロブタンジオール、Z,8-ビス(ヒドロキシメチルトリシクロ-[5.2.1.0]-デカン(ここで、Zは3、4または5を表す);1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルエーテル[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールA]、4,4’-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルフィド[ビス-ヒドロキシエチルビスフェノールS]、および鎖中に1つまたは複数の酸素原子を含有するジオール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどを挙げることができる。一般に、これらのジオールは、2~18個、一部の実施形態では2~8個の炭素原子を含有する。脂環式ジオールは、それらのシスもしくはトランス立体配置で、または両方の形態の混合物として利用することができる。
【0014】
[0030]上記のような芳香族ポリエステルは、典型的に、1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約40℃~約80℃、一部の実施形態では約45℃~約75℃、一部の実施形態では約50℃~約70℃のDTUL値を有する。芳香族ポリエステルは、同様に、例えばISO 11357-2:2020によって決定される約30℃~約120℃、一部の実施形態では約40℃~約110℃、一部の実施形態では約50℃~約100℃のガラス転移温度、ならびに例えばISO 11357-2:2018に従って決定される約170℃~約300℃、一部の実施形態では約190℃~約280℃、一部の実施形態では約210℃~約260℃の溶融温度を典型的に有する。芳香族ポリエステルはまた、例えばISO 1628-5:1998に従って決定される約0.1dl/g~約6dl/g、一部の実施形態では約0.2~約5dl/g、一部の実施形態では約0.3~約1dl/gの固有粘度を有してもよい。
【0015】
[0031]ポリアリーレンスルフィドも、好適な半結晶性芳香族ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。例えば、ジハロ芳香族化合物の選択的な組合せにより、2つ以上の異なる単位を含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーを生じることができる。例えば、p-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼンまたは4,4’-ジクロロジフェニルスルホンと組み合わせて使用する場合、式:
【0016】
【化1】
【0017】
の構造を有するセグメント、および式:
【0018】
【化2】
【0019】
の構造を有するセグメント、または式:
【0020】
【化3】
【0021】
の構造を有するセグメントを含有するポリアリーレンスルフィドコポリマーを形成することができる。
[0032]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状、分岐または架橋型であってもよい。線状ポリアリーレンスルフィドは、典型的に80mol%以上の繰り返し単位-(Ar-S)-を含有する。そのような線状ポリマーは、少量の分岐単位または架橋単位も含んでもよいが、分岐または架橋単位の量は、典型的にポリアリーレンスルフィドの全モノマー単位の約1mol%未満である。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上述の繰り返し単位を含有するランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであってもよい。半線状ポリアリーレンスルフィドは、同様に3つ以上の反応性官能基を有する少量の1種または複数のモノマーがポリマー中に導入された架橋構造または分岐構造を有してもよい。例として、半線状ポリアリーレンスルフィドの形成に使用されるモノマー成分は、分岐ポリマーの調製に利用可能な、分子あたり2個以上のハロゲン置換基を有する一定量のポリハロ芳香族化合物を含んでもよい。そのようなモノマーは、式R’X(式中、各Xは、塩素、臭素およびヨウ素から選択され、nは3~6の整数であり、R’は、最大約4個のメチル置換基を有し得る価数nの多価芳香族基であり、R’中の炭素原子の合計数は6~約16の範囲内である)によって表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドの形成に利用可能な、分子あたり2個より多いハロゲンで置換されている一部のポリハロ芳香族化合物の例として、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2’,4,4’-テトラクロロビフェニル、2,2’,5,5’-テトラ-ヨードビフェニル、2,2’,6,6’-テトラブロモ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0022】
[0033]上記のようなポリアリーレンスルフィドは、典型的に1.8MPaの荷重でISO 75-2:2013に従って決定される約70℃~約220℃、一部の実施形態では約90℃~約200℃、一部の実施形態では約120℃~約180℃のDTUL値を有する。ポリアリーレンスルフィドは、同様に、例えばISO 11357-2:2020によって決定される約50℃~約120℃、一部の実施形態では約60℃~約115℃、一部の実施形態では約70℃~約110℃のガラス転移温度、ならびに例えばISO 11357-3:2018に従って決定される約220℃~約340℃、一部の実施形態では約240℃~約320℃、一部の実施形態では約260℃~約300℃の溶融温度を典型的に有する。
【0023】
[0034]上記に示したように、明確な融点温度を欠く実質的に非晶質のポリマーも、利用することができる。好適な非晶質ポリマーは、例えば芳香族ポリカーボネートを含むことができ、これは典型的に、式-R-O-C(O)-O-の繰り返し構造カーボネート単位を含有する。ポリカーボネートは、R基の総数の少なくとも一部(例えば、60%以上)が芳香族部分を含有し、その残部が脂肪族、脂環式、または芳香族であるという点で芳香族である。一実施形態では、例えば、RはC6~30芳香族基であってもよく、すなわち少なくとも1つの芳香族部分を含有する。典型的に、Rは、一般式HO-R-OHのジヒドロキシ芳香族化合物、例えば以下に参照される特定の式:
HO-A-Y-A-OH
(式中、
およびAは、独立して単環式二価芳香族基であり、
は、単結合またはAとAとを分離する1つもしくは複数の原子を有する架橋基である)を有するものに由来する。1つの特定の実施形態では、ジヒドロキシ芳香族化合物は、以下の式(I):
【0024】
【化4】
【0025】
(式中、
およびRは、それぞれ独立してハロゲンまたはC1~12アルキル基、例えば、各アリーレン基上のヒドロキシ基に対してメタに配置されたC1~3アルキル基(例えば、メチル)であり、
pおよびqは、それぞれ独立して0~4(例えば、1)であり、
は、2つのヒドロキシ置換芳香族基を接続する架橋基を表し、架橋基および各Cアリーレン基のヒドロキシ置換基は、Cアリーレン基上で互いに対してオルト、メタ、またはパラ(特にパラ)に配置される)
に由来してもよい。
【0026】
[0035]一実施形態では、Xは、置換または非置換C3~18シクロアルキリデン、式-C(R)(R)-(式中、RおよびRは、それぞれ独立して水素、C1~12アルキル、C1~12シクロアルキル、C7~12アリールアルキル(arylalcyl)、C7~12ヘテロアルキル、または環式C7~12ヘテロアリールアルキルである)のC1~25アルキリデン、または式-C(=R)-(式中、Rは二価のC1~12炭化水素基である)の基であってもよい。例示的なこの種類の基として、メチレン、シクロヘキシルメチレン、エチリデン、ネオペンチリデンおよびイソプロピリデン、ならびに2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンチリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンが挙げられる。Xが置換シクロアルキリデンである特定の例は、以下の式(II):
【0027】
【化5】
【0028】
(式中、
a’およびRb’は、それぞれ独立してC1~12アルキル(例えば、メチルなどのC1~4アルキル)であり、任意選択でシクロヘキシリデン架橋基に対してメタに配置されてもよく、
は、C1~12アルキル(例えば、C1~4アルキル)またはハロゲンであり、
rおよびsは、それぞれ独立して1~4(例えば1)であり、
tは0~10、例えば0~5である)
のシクロヘキシリデン架橋アルキル置換ビスフェノールである。
【0029】
[0036]シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、2モルのo-クレゾールと1モルのシクロヘキサノンの反応生成物であってもよい。別の実施形態では、シクロヘキシリデン架橋ビスフェノールは、2モルのクレゾールと1モルの水素化イソホロン(例えば、1,1,3-トリメチル-3-シクロヘキサン-5-オン)の反応生成物であってもよい。このようなシクロヘキサン含有ビスフェノール、例えば2モルのフェノールと1モルの水素化イソホロンの反応生成物は、高いガラス転移温度および高い熱変形温度を有するポリカーボネートポリマーを作製するのに有用である。
【0030】
[0037]別の実施形態では、Xは、C1~18アルキレン基、C3~18シクロアルキレン基、縮合C6~18シクロアルキレン基、または式-B-W-B-(式中、BおよびBは、独立してC1~6アルキレン基であり、WはC3~12シクロアルキリデン基またはC6~16アリーレン基である)の基であってもよい。
【0031】
[0038]Xはまた、以下の式(III):
【0032】
【化6】
【0033】
(式中、
、R、RおよびRは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、酸素、またはC1~12有機基であり、
Iは、直接結合、炭素、または二価の酸素、硫黄、または-N(Z)-であり、ここでZは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C1~12アルキル、C1~12アルコキシまたはC1~12アシルであり、
hは0~2であり、
jは1または2であり、
iは0または1であり、
kは0~3であり、ただしR、R、RおよびRの少なくとも2つは一緒になって縮合環式脂肪族、芳香族、またはヘテロ芳香族環である)
の置換C3~18シクロアルキリデンであってもよい。
【0034】
[0039]他の有用な芳香族ジヒドロキシ芳香族化合物は、以下の式(IV):
【0035】
【化7】
【0036】
(式中、
は、独立してハロゲン原子(例えば、臭素)、C1~10ヒドロカルビル(例えば、C1~10アルキル基)、ハロゲン置換C1~10アルキル基、C6~10アリール基、またはハロゲン置換C6~10アリール基であり、
nは0~4である)
を有するものを含む。
【0037】
[0040]式(I)のビスフェノール化合物の特定の例として、例えば1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「ビスフェノールA」または「BPA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-1-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-t-ブチルフェニル)プロパン、3.3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン、2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)、および1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)が挙げられる。1つの特定の実施形態では、ポリカーボネートは、ビスフェノールAに由来する線状ホモポリマーであってもよく、ここで式(I)において、AおよびAのそれぞれはp-フェニレンであり、Yはイソプロピリデンである。
【0038】
[0041]好適な芳香族ジヒドロキシ化合物の他の例として、これらに限定されないが、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルメタン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、トランス-2,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブテン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、アルファ,アルファ’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-n-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-sec-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジブロモ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1-ジクロロ-2,2-ビス(5-フェノキシ-4-ヒドロキシフェニル)エチレン4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フロリン、2,7-ジヒドロキシピレン、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミド、2,6-ジヒドロキシジベンゾ-p-ジオキシン、2,6-ジヒドロキシチアントレン、2,7-ジヒドロキシフェノキサチン、2,7-ジヒドロキシ-9,10-ジメチルフェナジン、3,6-ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6-ジヒドロキシジベンゾチオフェン、および2,7-ジヒドロキシカルバゾール、レゾルシノール、5-メチルレゾルシノール、5-エチルレゾルシノール、5-プロピルレゾルシノール、5-ブチルレゾルシノール、5-t-ブチルレゾルシノール、5-フェニルレゾルシノール、5-クミルレゾルシノール、2,4,5,6-テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6-テトラブロモレゾルシノールなどの置換レゾルシノール化合物など;カテコール;ヒドロキノン;2-メチルヒドロキノン、2-エチルヒドロキノン、2-プロピルヒドロキノン、2-ブチルヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2-フェニルヒドロキノン、2-クミルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラ-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5,6-テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6-テトラブロモヒドロキノンなどの置換ヒドロキノンなど、およびその組合せが挙げられてもよい。
【0039】
[0042]上記のような芳香族ポリカーボネートは、典型的に、1.8MPaの荷重でISO75-2:2013に従って決定される約80℃~約300℃、一部の実施形態では約100℃~約250℃、一部の実施形態では約140℃~約220℃のDTUL値を有する。また、ガラス転移温度は、例えばISO11357-2:2020によって決定される約50℃~約250℃、一部の実施形態では約90℃~約220℃、一部の実施形態では約100℃~約200℃であってもよい。そのようなポリカーボネートはまた、例えばISO1628-4:1998に従って決定される約0.1dl/g~約6dl/g、一部の実施形態では約0.2~約5dl/g、一部の実施形態では約0.3~約1dl/gの固有粘度を有してもよい。
【0040】
[0043]上記で言及されたポリマーに加え、高結晶性芳香族ポリマーもポリマー組成物で利用することができる。そのようなポリマーの特に好適な例は、金型の小さな空間を有効に充填することを可能にする高い結晶化度を有する液晶ポリマーである。液晶ポリマーは、一般的に棒状構造を有し、それらの溶融状態(例えば、サーモトロピックネマチック状態)で結晶挙動を示すことができる限り、「サーモトロピック」と分類される。そのようなポリマーは、典型的に1.8MPaの荷重でISO75-2:2013に従って決定される約120℃~約340℃、一部の実施形態では約140℃~約320℃、一部の実施形態では約150℃~約300℃のDTUL値を有する。ポリマーはまた、約250℃~約400℃、一部の実施形態では約280℃~約390℃、一部の実施形態では約300℃~約380℃などの比較的高い溶融温度を有する。そのようなポリマーは、当技術分野で公知のように1つまたは複数の種類の繰り返し単位から形成されてもよい。液晶ポリマーは、例えば、一般に以下の式(I):
【0041】
【化8】
【0042】
(式中、
環Bは、置換または非置換の6員アリール基(例えば、1,4-フェニレンまたは1,3-フェニレン)、置換または非置換の5または6員アリール基に縮合した置換または非置換の6員アリール基(例えば2,6-ナフタレン)、あるいは置換または非置換の5または6員アリール基に連結した置換または非置換の6員アリール基(例えば4,4-ビフェニレン)であり;
およびYは、独立してO、C(O)、NH、C(O)HN、またはNHC(O)である)
によって表される1つまたは複数の芳香族エステル繰り返し単位を含有してもよい。
【0043】
[0044]典型的に、YおよびYの少なくとも1つはC(O)である。そのような芳香族エステル繰り返し単位の例として、例えば芳香族ジカルボン酸繰り返し単位(式I中YおよびYはC(O)である)、芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位(式I中YはOであり、YはC(O)である)、ならびにこれらの種々の組合せを挙げることができる。
【0044】
[0045]例えば、4-ヒドロキシ安息香酸;4-ヒドロキシ-4’-ビフェニルカルボン酸;2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-5-ナフトエ酸;3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸;2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸;4’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;3’-ヒドロキシフェニル-4-安息香酸;4’-ヒドロキシフェニル-3-安息香酸など、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する芳香族ヒドロキシカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ヒドロキシカルボン酸は、4-ヒドロキシ安息香酸(「HBA」)および6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA)である。利用される場合、ヒドロキシカルボン酸(例えばHBAおよび/またはHNA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約40mol.%以上、一部の実施形態では約45mol.%以上、一部の実施形態では約50mol.%~100mol.%を構成する。一実施形態では、例えば、HBAに由来する繰り返し単位は、ポリマーの約30mol.%~約90mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約40mol.%~約85mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約50mol.%~約80mol.%を構成してもよい。同様に、HNAに由来する繰り返し単位は、ポリマーの約1mol.%~約30mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約2mol.%~約25mol.%、一部の実施形態ではポリマーの約3mol.%~約15mol.%を構成してもよい。
【0045】
[0046]また、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4’-ジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシビフェニル、ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4-カルボキシフェニル)ブタン、ビス(4-カルボキシフェニル)エタン、ビス(3-カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3-カルボキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジカルボン酸に由来する芳香族ジカルボン酸繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジカルボン酸として、例えばテレフタル酸(「TA」)、イソフタル酸(「IA」)、および2,6-ナフタレンジカルボン酸(「NDA」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジカルボン酸(例えば、IA、TA、および/またはNDA)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約50mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約30%を構成する。
【0046】
[0047]他の繰り返し単位もポリマーに利用することができる。例えば、特定の実施形態では、ヒドロキノン、レゾルシノール、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(または4,4’-ビフェノール)、3,3’-ジヒドロキシビフェニル、3,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニルエーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなど、ならびにこれらのアルキル、アルコキシ、アリールおよびハロゲン置換体、ならびにこれらの組合せなどの芳香族ジオールに由来する繰り返し単位が利用されてもよい。特に好適な芳香族ジオールとして、例えばヒドロキノン(「HQ」)および4,4’-ビフェノール(「BP」)を挙げることができる。利用される場合、芳香族ジオール(例えば、HQおよび/またはBP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約1mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約25mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約20%を構成する。また、芳香族アミド(例えば、アセトアミノフェン(「APAP」))および/または芳香族アミン(例えば、4-アミノフェノール(「AP」)、3-アミノフェノール、1,4-フェニレンジアミン、1,3-フェニレンジアミンなど)に由来するものなどの繰り返し単位が利用されてもよい。利用される場合、芳香族アミド(例えば、APAP)および/または芳香族アミン(例えば、AP)に由来する繰り返し単位は、典型的にポリマーの約0.1mol.%~約20mol.%、一部の実施形態では約0.5mol.%~約15mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約10%を構成する。また、ポリマーに種々の他のモノマー繰り返し単位が導入されてもよいことが理解されるべきである。例えば、特定の実施形態では、ポリマーは、脂肪族または脂環式ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、ジオール、アミド、アミンなどの非芳香族モノマーに由来する1つまたは複数の繰り返し単位を含有してもよい。当然ながら、他の実施形態では、ポリマーは非芳香族(例えば、脂肪族または脂環式)モノマーに由来する繰り返し単位を含まないという点で「全芳香族」であってもよい。
【0047】
[0048]必ずしも必要ではないが、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)またはこれらの組合せなどの、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を比較的高い含有量で含有する限り、「低ナフテン」ポリマーであってもよい。つまり、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNAまたはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、典型的にポリマーの約15mol.%以下、一部の実施形態では約10mol.%以下、一部の実施形態では約1mol.%~約8mol.%である。1つの特定の実施形態では、例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「HNA」)に由来する繰り返し単位は、ポリマーの約0.5mol.%~約15mol.%、一部の実施形態では約1mol.%~約10mol.%、一部の実施形態では約2mol.%~約8mol.%のみの量で存在してもよい。そのような実施形態では、液晶ポリマーは、種々の他のモノマー、例えば約30mol.%~約70mol.%、一部の実施形態では約40mol.%~約65mol.%の量の芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBA);約2mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%の量の芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/もしくはTA);ならびに/または約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約35mol.%の量の芳香族ジオール(例えば、BPおよび/またはHQ)も含有してもよい。
【0048】
[0049]当然ながら、他の実施形態では、液晶ポリマーは、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(「HNA」)、またはそれらの組合せなどのナフテン系ヒドロキシカルボン酸およびナフテン系ジカルボン酸に由来する繰り返し単位を比較的高い含有量で含有する限り、「高ナフテン」ポリマーであってよい。すなわち、ナフテン系ヒドロキシカルボン酸および/またはジカルボン酸(例えば、NDA、HNA、またはHNAとNDAの組合せ)に由来する繰り返し単位の合計量は、典型的にポリマーの約15mol.%より高い、一部の実施形態では約18mol.%以上、一部の実施形態では約20mol.%~約60mol.%である。1つの特定の実施形態では、例えば、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸(「NDA」)に由来する繰り返し単位は、ポリマーの約10mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約12mol.%~約35mol.%、一部の実施形態では約15mol.%~約30mol.%を構成してもよい。そのような実施形態では、液晶ポリマーは、種々の他のモノマー、例えば約20mol.%~約60mol.%、一部の実施形態では約30mol.%~約50mol.%の量の芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えば、HBA);約2mol.%~約30mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約25mol.%の量の芳香族ジカルボン酸(例えば、IAおよび/もしくはTA);ならびに/または約2mol.%~約40mol.%、一部の実施形態では約5mol.%~約35mol.%の量の芳香族ジオール(例えば、BPおよび/もしくはHQ)も含有してもよい。
【0049】
[0050]ある特定の実施形態では、液晶ポリマーのすべてが上述のような「低ナフテン」ポリマーである。他の実施形態では、液晶ポリマーのすべてが上述のような「高ナフテン」ポリマーである。一部の場合では、このようなポリマーのブレンドも使用されてもよい。例えば、低ナフテン液晶ポリマーは、組成物中の液晶ポリマーの合計量の約1wt.%~約50wt.%、一部の実施形態では約2wt.%~約40wt.%、一部の実施形態では約5wt.%~約30wt.%を構成してもよく、高ナフテン液晶ポリマーは、組成物中の液晶ポリマーの合計量の約50wt.%~約99wt.%、一部の実施形態では約60wt.%~約98wt.%、一部の実施形態では約70wt.%~約95wt.%を構成してもよい。
【0050】
B.導電性充填剤
[0051]上述のように、ポリマー組成物の所望の表面および/または体積抵抗率の値を達成するのを支援するために、導電性充填剤もポリマー組成物に利用される。これは、所望の抵抗率を有する充填剤のための単一の材料を選択することによって、または得られる充填剤が所望の抵抗率を有するように複数の材料を一緒に(例えば、絶縁性および導電性)ブレンドすることによって達成されてもよい。1つの特定の実施形態では、例えば、例えばASTMD257-14(技術的にIEC62631-3-1と同等である)に従って約20℃の温度で決定される約1オーム・cm未満、一部の実施形態では約0.1オーム・cm未満、一部の実施形態では約1×10-8オーム・cm~約1×10-2オーム・cmの体積抵抗率を有する導電性材料が利用されてもよい。好適な導電性炭素材料として、例えばグラファイト、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブなどを挙げることができる。他の好適な導電性充填剤として、同様に、金属(例えば金属粒子、金属フレーク、金属繊維など)、イオン液体などを挙げることができる。利用される材料にかかわらず、導電性充填剤は、典型的にポリマーマトリックス100重量部あたり約0.5~約20重量部、一部の実施形態では約1~約15重量部、一部の実施形態では約2~約8重量部を構成する。例えば、導電性充填剤は、ポリマー組成物の約0.1wt.%~約10wt.%、一部の実施形態では約0.2wt.%~約8wt.%、一部の実施形態では約0.5wt.%~約4wt.%を構成してもよい。
【0051】
C.鉱物充填剤
[0052]所望される場合、ポリマー組成物は、ポリマーマトリックス中に分布された1種または複数の鉱物充填剤を含有してもよい。そのような鉱物充填剤は、典型的にポリマーマトリックス100重量部あたり約10~約80部、一部の実施形態では約20~約70部、一部の実施形態では約30~約60部を構成する。鉱物充填剤は、例えば、ポリマー組成物の約5wt.%~約60wt.%、一部の実施形態では約10wt.%~約55wt.%、一部の実施形態では約25wt.%~約40wt.%を構成してもよい。さらに、導電性充填剤に対する鉱物充填剤の重量比は、約2~約500、一部の実施形態では約3~約150、一部の実施形態では約4~約75、一部の実施形態では約5~約15の範囲であってもよい。鉱物充填剤の種類および相対量を選択的に調整することによって、本発明者は、機械的特性を改善することができるだけでなく、ポリマー組成物の全体の導電率に大きな影響を与えることなく熱伝導率を増加させることができることを発見した。これにより、組成物は、「ホットスポット」を迅速に排除し、使用中に全体の温度を低下させることができるように、得られる電子デバイスから離れる熱伝達のための熱経路を作成することが可能になる。組成物は、例えば、ASTM E 1461-13に従って決定される約0.2W/m・K以上、一部の実施形態では約0.5W/m・K以上、一部の実施形態では約0.6W/m・K以上、一部の実施形態では約0.8W/m・K以上、一部の実施形態では約1~約3.5W/m・Kの面内熱伝導率を示してもよい。組成物はまた、ASTM E 1461-13に従って決定される約0.3W/m・K以上、一部の実施形態では約0.5W/m・K以上、一部の実施形態では約0.40W/m・K以上、一部の実施形態では約0.7~約2W/m・Kの面直熱伝導率を示してもよい。注目すべきことに、そのような熱伝導率は、高度の固有熱伝導率を有する従来の材料を使用することなく達成できることが発見された。例えば、ポリマー組成物は、一般に50W/m・K以上、一部の実施形態では100W/m・K以上、一部の実施形態では150W/m・K以上の固有熱伝導率を有する充填剤を含まなくてもよい。そのような高い固有熱伝導率の材料の例として、例えば窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素マグネシウム、グラファイト(例えば、膨張化グラファイト)、炭化ケイ素、カーボンナノチューブ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、アルミニウム粉末、および銅粉末を挙げることができる。通常はそのような高い固有熱伝導率の材料の存在を最小にすることが望ましいが、それらは、それにもかかわらず特定の実施形態ではポリマー組成物の約10wt.%以下、一部の実施形態では約5wt.%以下、一部の実施形態では約0.01wt.%~約2wt.%の量のような比較的低いパーセンテージで存在してもよい。
【0052】
[0053]鉱物粒子、鉱物繊維(または「ウィスカー」)など、およびそのブレンドのように、ポリマー組成物に利用される鉱物充填剤の性質は変化してもよい。好適な鉱物繊維として、例えばシリケート、例えばネオシリケート、ソロシリケート、イノシリケート(例えば、珪灰石などのカルシウムイノシリケート;トレモライトなどのカルシウムマグネシウムイノシリケート;アクチノライトなどのカルシウムマグネシウム鉄イノシリケート;アントフィライトなどのマグネシウム鉄イノシリケートなど)、フィロシリケート(例えば、パリゴルスカイトなどのアルミニウムフィロシリケート)、テクトシリケートなど;硫酸カルシウムなどの硫酸塩(例えば、脱水または無水石膏);鉱物ウール(例えば、ロックまたはスラグウール)などに由来するものを挙げることができる。商品名NYGLOS(登録商標)(例えば、NYGLOS(登録商標)4WまたはNYGLOS(登録商標)8)でNyco Mineralsから入手可能な珪灰石繊維などのイノシリケートが特に好適である。鉱物繊維は、約1~約35マイクロメートル、一部の実施形態では約2~約20マイクロメートル、一部の実施形態では約3~約15マイクロメートル、一部の実施形態では約7~約12マイクロメートルのメジアン径を有してもよい。鉱物繊維はまた、狭いサイズ分布を有してもよい。つまり、繊維の少なくとも約60体積%、一部の実施形態では繊維の少なくとも約70体積%、一部の実施形態では繊維の少なくとも約80体積%が、上記の範囲内のサイズを有してもよい。理論によって限定されることを意図しないが、上記のサイズ特徴を有する鉱物繊維は、成型機器を通ってより容易に移動することができ、これによりポリマーマトリックス内の分布が向上し、表面欠陥の生成が最小になると考えられる。上記のサイズ特徴を有することに加え、鉱物繊維はまた、得られるポリマー組成物の機械的特性および表面品質をさらに向上させるのを助ける比較的高いアスペクト比(平均長をメジアン径で除したもの)を有してもよい。例えば、鉱物繊維は、約2~約100、一部の実施形態では約2~約50、一部の実施形態では約3~約20、一部の実施形態では約4~約15のアスペクト比を有してもよい。そのような鉱物繊維の体積平均長は、例えば約1~約200マイクロメートル、一部の実施形態では約2~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約5~約100マイクロメートル、一部の実施形態では約10~約50マイクロメートルの範囲であってもよい。
【0053】
[0054]他の好適な鉱物繊維は、鉱物粒子である。粒子の平均直径は、例えば約5マイクロメートル~約200マイクロメートル、一部の実施形態では約8マイクロメートル~約150マイクロメートル、一部の実施形態では約10マイクロメートル~約100マイクロメートルの範囲であってもよい。粒子の形状は、例えば顆粒状、フレーク形状などのように所望通り異なってもよい。例えば約4以上、一部の実施形態では約8以上、一部の実施形態では約10~約500などの比較的高いアスペクト比(例えば、平均直径を平均厚さで除したもの)を有するフレーク形状の粒子が利用されてもよい。同様に、そのようなフレーク形状の粒子の平均厚さは、約2マイクロメートル以下、一部の実施形態では約5ナノメートル~約1マイクロメートル、一部の実施形態では約20ナノメートル~約500ナノメートルであってもよい。それらの形状およびサイズにかかわらず、粒子は典型的に、天然および/または合成ケイ酸塩鉱物、例えばタルク、マイカ、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、パリゴルスカイト、パイロフィライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、珪灰石などから形成される。タルクおよびマイカが特に好適である。例えば、白雲母(KAl(AlSi)O10(OH))、黒雲母(K(Mg,Fe)(AlSi)O10(OH))、金雲母(KMg(AlSi)O10(OH))、紅雲母(K(Li,Al)2-3(AlSi)O10(OH))、海緑石(K,Na)(Al,Mg,Fe)(Si,Al)10(OH))などを含む任意の形態のマイカが一般的に利用されてもよい。白雲母ベースのマイカが、ポリマー組成物で使用するのに特に好適である。
【0054】
D.任意選択の添加剤
[0055]ガラス繊維、衝撃改質剤、滑剤、顔料(例えば、カーボンブラック)、酸化防止剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、難燃剤、垂れ防止添加剤、核形成剤(例えば、窒化ホウ素)、ならびに特性および加工性を向上させるために添加される他の材料などの、多種多様なさらなる添加剤がポリマー組成物に含まれてもよい。例えば、滑剤は、ポリマー組成物の約0.05wt.%~約1.5wt.%、一部の実施形態では約0.1wt.%~約0.5wt.%(重量)の量でポリマー組成物中に利用されてもよい。そのような滑剤の例として、脂肪酸エステル、その塩、エステル、脂肪酸アミド、有機リン酸エステル、およびエンジニアリングプラスチック材料の加工において滑剤として一般的に使用されるタイプの炭化水素ワックスが挙げられ、これらの混合物が含まれる。好適な脂肪酸は、典型的に約12~約60個の炭素原子の骨格炭素鎖を有し、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、モンタン酸、オクタデシン酸、パリン酸などである。好適なエステルとして、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル、ワックスエステル、グリセロールエステル、グリコールエステル、および複合エステルが挙げられる。脂肪酸アミドとして、脂肪第一級アミド、脂肪第二級アミド、メチレンおよびエチレンビスアミド、ならびに例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、N,N’-エチレンビスステアラミドなどのアルカノールアミドが挙げられる。また、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸の金属塩;パラフィンワックス、ポリオレフィンおよび酸化ポリオレフィンワックス、ならびに微結晶性ワックスを含む炭化水素ワックスも好適である。特に好適な滑剤は、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸カルシウム、またはN,N’-エチレンビスステアラミドなどのステアリン酸の酸、塩、またはアミドである。さらに別の好適な滑剤は、内部潤滑を改善させ、また別の表面に遭遇する組成物の摩耗および摩擦特性を強化するのに役立つシロキサンポリマーであってもよい。そのようなシロキサンポリマーは、典型的に組成物に利用されるポリマーマトリックス100部あたり約0.2~約20部、一部の実施形態では約0.5~約10部、一部の実施形態では約0.8~約5部を構成する。様々なシロキサンポリマーのいずれかが一般に利用されてもよい。シロキサンポリマーは、例えば、式:
SiO(4-r/2)
(式中、
Rは、独立して水素または置換もしくは非置換の炭化水素基であり、
rは0、1、2または3である)
を有する骨格にシロキサン単位を含む任意のポリマー、コポリマーまたはオリゴマーを包含してもよい。
【0055】
[0056]好適な基Rの一部の例として、例えば任意選択で置換されたアルキル、アリール、アルキルアリール、アルケニルまたはアルキニル、またはシクロアルキル基が挙げられ、これらはヘテロ原子によって中断されてもよく、すなわち、炭素鎖または環中にヘテロ原子を含有してもよい。好適なアルキル基として、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびtert-ペンチル基、ヘキシル基(例えばn-ヘキシル)、ヘプチル基(例えばn-ヘプチル)、オクチル基(例えばn-オクチル)、イソオクチル基(例えば2,2,4-トリメチルペンチル基)、ノニル基(例えばn-ノニル)、デシル基(例えばn-デシル)、ドデシル基(例えばn-ドデシル)、オクタデシル基(例えばn-オクタデシル)などを挙げることができる。同様に、好適なシクロアルキル基として、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基などを挙げることができ、好適なアリール基として、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、およびフェナントリル基を挙げることができ、好適なアルキルアリール基として、o-、m-、またはp-トリル基、キシリル基、エチルフェニル基などを挙げることができ、好適なアルケニルまたはアルキニル基として、ビニル、1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、5-ヘキセニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、エチニル、プロパルギル、1-プロピニルなどを挙げることができる。置換炭化水素基の例は、ハロゲン化アルキル基(例えば、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、およびペルフルオロヘキシルエチル)、ならびにハロゲン化アリール基(例えば、p-クロロフェニルおよびp-クロロベンジル)である。1つの特定の実施形態では、シロキサンポリマーは、Si原子の少なくとも70mol%に結合したアルキル基(例えばメチル基)、任意選択でSi原子の0.001~30mol%に結合したビニルおよび/またはフェニル基を含む。シロキサンポリマーはまた、好ましくは主としてジオルガノシロキサン単位から構成される。ポリオルガノシロキサンの末端基は、トリアルキルシロキシ基、特にトリメチルシロキシ基、またはジメチルビニルシロキシ基であってもよい。しかし、これらのアルキル基の1つまたは複数が、ヒドロキシ基、またはメトキシもしくはエトキシ基などのアルコキシ基で置換されている可能性もある。シロキサンポリマーの特に好適な例として、例えばジメチルポリシロキサン、フェニルメチルポリシロキサン、ビニルメチルポリシロキサン、およびトリフルオロプロピルポリシロキサンが挙げられる。
【0056】
[0057]シロキサンポリマーはまた、ポリマーのシロキサンモノマー単位の少なくとも一部に、ビニル基、ヒドロキシル基、ヒドリド、イソシアネート基、エポキシ基、酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシおよびプロポキシ)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシおよびオクタノイルオキシ)、ケトキシメート基(例えば、ジメチルケトキシム、メチルケトキシム、およびメチルエチルケトキシム)、アミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノおよびブチルアミノ)、アミド基(例えば、N-メチルアセトアミドおよびN-エチルアセトアミド)、酸アミド基、アミノ-オキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基(例えば、ビニルオキシ、イソプロペニルオキシおよび1-エチル-2-メチルビニルオキシ)、アルコキシアルコキシ基(例えば、メトキシエトキシ、エトキシエトキシおよびメトキシプロポキシ)、アミノキシ基(例えば、ジメチルアミノキシおよびジエチルアミノキシ)、メルカプト基などのうちの1つまたは複数などの反応性官能基を含んでもよい。
【0057】
[0058]その特定の構造にかかわらず、シロキサンポリマーは典型的に比較的高い分子量を有するため、ポリマー組成物の表面に移動または拡散する可能性が減少し、したがって相分離の可能性がさらに最小限に抑えられる。例えば、シロキサンポリマーは典型的に、モルあたり約100,000グラム以上、一部の実施形態ではモルあたり約200,000グラム以上、一部の実施形態ではモルあたり約500,000グラム~モルあたり約2,000,000グラムの重量平均分子量を有する。シロキサンポリマーはまた、約10,000センチストークス以上、一部の実施形態では約30,000センチストークス以上、一部の実施形態では約50,000~約500,000センチストークスのような比較的高い動粘度を有してもよい。
【0058】
[0059]所望される場合、シリカ粒子(例えば、ヒュームドシリカ)をシロキサンポリマーと組み合わせて利用し、組成物中に分散するその能力の向上を助けることもできる。そのようなシリカ粒子は、例えば約5ナノメートル~約50ナノメートルの粒径、グラムあたり約50平方メートル(m/g)~約600m/gの表面積、および/または立方メートルあたり約160キログラム(kg/m)~約190kg/mの密度を有してもよい。利用される場合、シリカ粒子は、典型的にシロキサンポリマー100重量部に対して約1~約100重量部、一部の実施形態では約20~約60重量部を構成する。一実施形態では、シリカ粒子をシロキサンポリマーと組み合わせ、その後この混合物をポリマー組成物に添加することができる。例えば、超高分子量ポリジメチルシロキサンおよびヒュームドシリカを含む混合物をポリマー組成物中に組み込むことができる。そのような予め形成された混合物は、Wacker Chemie,AGからGenioplast(登録商標)Pellet Sとして入手可能である。
【0059】
[0060]ポリマー組成物を形成するために使用される成分は、当技術分野で公知のように様々な異なる技術のいずれかを使用して一緒に組み合わされてもよい。1つの特定の実施形態では、例えば熱可塑性高性能ポリマー、導電性充填剤、および他の任意選択の添加剤を押出機内で混合物として溶融加工し、ポリマー組成物を形成する。混合物は、例えば約250℃~約450℃の温度で一軸または多軸押出機で溶融混練することができる。一実施形態では、混合物は、複数の温度ゾーンを含む押出機で溶融加工することができる。個々のゾーンの温度は、ポリマーの溶融温度に対して約-60℃~約25℃の範囲内で通常設定される。例として、混合物は、Leistritz 18mm共回転完全噛み合い二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融加工することができる。混合物を溶融加工するために、汎用スクリュー設計を使用することができる。一実施形態では、成分をすべて含む混合物を、定量フィーダーによって第一のバレルのフィード口にフィードすることができる。別の実施形態では、公知のように、押出機の異なる添加ポイントで異なる成分を添加することができる。例えば、ポリマーをフィード口に適用し、それより下流に位置する同一または異なる温度ゾーンで特定の添加剤(例えば、導電性充填剤)を供給することができる。いずれにせよ、得られた混合物を溶融して混合し、その後ダイを通して押し出すことができる。次に、押し出されたポリマー組成物を水浴中でクエンチして固化し、ペレタイザーで造粒し、続いて乾燥することができる。
【0060】
[0061]得られる組成物の溶融粘度は、一般に小型回路基板を形成するための金型の空洞内に組成物が容易に流入できるように十分に低い。例えば、1つの特定の実施形態では、ポリマー組成物は、1000秒-1のせん断速度で決定される約10~約250Pa・s、一部の実施形態では約15~約200Pa・s、一部の実施形態では約20~約150Pa・s、一部の実施形態では約30~約100Pa・sの溶融粘度を有してもよい。溶融粘度は、ISO試験No.11443:2014に従い、組成物の溶融温度よりも15℃高い温度(例えば、約325℃の溶融温度に対して約340℃)で決定されてもよい。
【0061】
II.基板
[0062]基板は、様々な異なる技術を使用してポリマー組成物から形成されてもよい。好適な技術として、例えば射出成型、低圧射出成型、押出圧縮成型、ガス射出成型、発泡射出成型、低圧ガス射出成型、低圧発泡射出成型、ガス押出圧縮成型、発泡押出圧縮成型、押出成型、発泡押出成型、圧縮成型、発砲圧縮成型、ガス圧縮成型などを挙げることができる。例えば、ポリマー組成物が注入され得る金型を含む射出成型システムが利用されてもよい。ポリマーマトリックスが予め固化しないように、注入器内の時間を制御し、最適化することができる。サイクル時間に達し、バレルが排出のために満杯になると、ピストンを使用して金型の空洞に組成物を注入してもよい。圧縮成型システムも利用されてもよい。射出成型と同様に、ポリマー組成物の所望の物品への成形も金型内で行われる。組成物は、自動化されたロボットアームによってピックアップされることなどにより、任意の公知の技術を使用して圧縮金型に配置されてもよい。金型の温度は、固化を可能にするために、所望の時間にわたってポリマー組成物の固化温度以上に維持されてもよい。その後、成型品を溶融温度未満の温度にすることによって固化させてもよい。得られた製品を脱型してもよい。各成型プロセスのサイクル時間は、十分な結合を達成するため、またプロセス全体の生産性を向上させるためにポリマー組成物に合わせて調整することができる。ポリマー組成物の有益な特性に部分的に起因して、得られる基板は、約5ミリメートル以下、一部の実施形態では約4ミリメートル以下、一部の実施形態では約0.5~約3ミリメートルの厚さなどの非常に小さなサイズを有してもよい。典型的に、成形部品は、1成分射出成型プロセスを使用して成型される。
【0062】
III.導電素子
[0063]メッキ(例えば、電解メッキ、無電解メッキなど)、印刷(例えば、デジタル印刷、エアロゾルジェット印刷など)などの様々な公知の金属堆積技術のいずれかを使用して、1つまたは複数の導電素子を基板上に堆積させてもよい。導電素子は、金属、例えば金、銀、ニッケル、アルミニウム、銅、およびそれらの混合物または合金などの様々な導電性材料のうちの1種または複数を含有してもよい。一実施形態では、例えば、導電素子は、銅および/またはニッケル(例えば、純粋またはその合金)を含んでもよい。所望される場合、金属堆積プロセスを容易にするために、最初に基板上にシード層が形成されてもよい。
【0063】
[0064]堆積技術としてメッキが利用される場合、プロセスは所望に応じて変化してもよい。ある特定の実施形態では、例えば、プロセスは、所望の回路相互接続パターンに基づいて基板の表面上にパターンを最初に形成することを含んでもよい。これは、種々の公知の技術、例えばレーザーアブレーションまたはパターニング、プラズマエッチング、紫外線処理、酸エッチングなどを使用して達成されてもよい。いずれにせよ、基板上に所望のパターンを形成した後、パターニングされた領域を任意選択で活性化プロセスに供し、その後の金属堆積に備えてもよい。このプロセスの間、パターニングされた基板を、パラジウム、白金、イリジウム、ロジウムなどの金属、およびそれらの混合物を含有する活性化溶液と接触させてもよい。パラジウムが特に好適である。表面を上述のように調整した後、例えば無電解メッキとして公知のプロセスにより、パターニングされた基板上に第1の金属層をその上に形成してもよい。無電解メッキは、表面上に堆積した金属がさらなる堆積のための触媒として作用する自己触媒反応によって生じてもよい。典型的に、ニッケルおよび/または銅が、パターニングされた基板の表面上に無電解メッキされる。無電解ニッケルメッキは、例えばニッケル塩(例えば、硫酸ニッケル)を含有する溶液を使用して達成することができる。所望される場合、パターニングされた基板は、最終的な金属コーティング層を形成するために、1つまたは複数の追加のステップに供されてもよい。追加のコーティング層は、典型的に、電解メッキとして公知のプロセスを使用して堆積され、その間にパターニングされた基板を金属溶液と接触させ、電流に供して金属の堆積を開始させる。例えば、第2の金属層は、第1の金属層(例えば、無電解メッキされた銅および/またはニッケル)の上に電解堆積されてもよい。第2の金属層は、例えば銅またはニッケルを含んでもよい。ある特定の実施形態では、銅および/またはニッケルなどの1つもしくは複数の追加の金属層も、第2の金属層上に電解堆積されてもよい。
【0064】
IV.電子構成部品
[0065]本発明の回路構造体は、プリント回路基板、フレックス回路、コネクタ、熱管理機能、EMIシールド、大電流導体、RFID装置、アンテナ、無線電力デバイス、センサー、MEMS装置、LEDデバイス、マイクロプロセッサ、メモリデバイス、ASIC、受動デバイス、インピーダンス制御デバイス、電気機械装置、センサーまたはこれらの組合せなどの広範な電子構成部品に利用されてもよい。一実施形態では、例えば、導電素子は、得られる部品がアンテナシステムを形成するように、アンテナ素子(例えば、アンテナ共振素子)であってもよい。導電素子は、パッチアンテナ素子、逆Fアンテナ素子、閉および開スロットアンテナ素子、ループアンテナ素子、モノポール、ダイポール、平面逆Fアンテナ素子、これらの設計の混成などから形成される共振素子を有するアンテナなど、様々な異なる種類のアンテナを形成することができる。得られるアンテナシステムは、様々な異なる電子構成部品に利用することができる。例として、アンテナシステムは、デスクトップコンピュータ、ポータブルコンピュータ、手持ち型電子デバイス、自動車機器などの電子構成部品に形成することができる。1つの好適な構成では、アンテナシステムは、利用可能な内部空間が比較的小さい、比較的コンパクトなポータブル電子構成部品のハウジング内に形成される。好適なポータブル電子構成部品の例として、携帯電話、ラップトップコンピュータ、小型ポータブルコンピュータ(例えば、ウルトラポータブルコンピュータ、ネットブックコンピュータおよびタブレットコンピュータ)、腕時計デバイス、ペンダントデバイス、ヘッドフォンおよびイヤフォンデバイス、無線通信機能付きメディアプレーヤー、手持ち型コンピュータ(パーソナルデジタルアシスタントとも呼ばれる場合もある)、リモートコントローラ、グローバルポジショニングシステム(GPS)デバイス、手持ち型ゲームデバイスなどが挙げられる。また、アンテナは、手持ち型デバイスのカメラモジュール、スピーカー、またはバッテリーカバーなど、他の構成部品と一体化させることもできる。
【0065】
[0066]図1~2に示される1つの特に好適な電子構成部品は、携帯電話機能付き手持ち型デバイス10である。図1に示されるように、デバイス10は、プラスチック、金属、他の好適な誘電材料、他の好適な導電性材料、またはそのような材料の組合せから形成されたハウジング12を有してもよい。タッチスクリーンディスプレイなどのディスプレイ14が、デバイス10の前面上に設けられてもよい。デバイス10はまた、スピーカーポート40および他の入出力ポートを有してもよい。ユーザ入力を収集するために、1つまたは複数のボタン38および他のユーザ入力デバイスが使用されてもよい。図2に示されるように、アンテナシステム26もデバイス10の裏面42上に設けられるが、アンテナシステムは、一般にデバイスの任意の所望の位置に配置することができることを理解されたい。アンテナシステムは、様々な公知の技術のいずれかを使用して電子デバイス内の他の構成部品に電気的に接続されてもよい。図1~2を再び参照すると、例えば、ハウジング12またはハウジング12の一部は、アンテナシステム26のための導電グランド面として機能してもよい。これは、図3により詳細に図示されており、この図は、正アンテナ給電端子54およびグランドアンテナ給電端子56で無線周波数源52によって給電されるアンテナシステム26を示す。正アンテナ給電端子54はアンテナ共振素子58に結合されてもよく、グランドアンテナ給電端子56はグランド素子60に結合されてもよい。共振素子58は、主アーム46、および主アーム46をグランド60に接続する短絡ブランチ48を有してもよい。
【0066】
[0067]アンテナシステムを電気的に接続するための種々の他の構成も企図される。例えば図4では、アンテナシステムはモノポールアンテナ構成に基づいており、共振素子58は曲がった蛇行経路形状を有する。このような実施形態では、給電端子54は共振素子58の一端に接続されてもよく、グランド給電端子56は、ハウジング12または他の好適なグランド面素子に結合されてもよい。図5に示される別の実施形態では、導電アンテナ素子62は、閉スロット64および開スロット66を画定するよう構成される。構造体62から形成されるアンテナは、正アンテナ給電端子54およびグランドアンテナ給電端子56を使用して給電されてもよい。この種類の配列において、スロット64および66は、アンテナ素子26のためのアンテナ共振素子として機能する。スロット64および66のサイズは、アンテナ素子26が所望の通信帯域(例えば、2.4GHzおよび5GHzなど)で動作するように構成されてもよい。アンテナ素子26の別の可能な構成が図6に示される。この実施形態では、アンテナ素子26は、パッチアンテナ共振素子68を有し、正アンテナ給電端子54およびグランドアンテナ給電端子56を使用して給電されてもよい。グランド60は、ハウジング12またはデバイス10の他の好適なグランド面素子に関連付けられてもよい。図7は、アンテナシステム26のアンテナ素子に使用され得るさらに別の例示的な構成を示す。示されるように、アンテナ共振素子58は、2つの主アーム46Aおよび46Bを有する。アーム46Aは、アーム46Bよりも短く、したがってアーム46Aよりも高い動作周波数に関連付けられる。異なるサイズの2つ以上の別個の共振素子構造体を使用することにより、アンテナ共振素子58は、より広い帯域幅または目的の1つより多くの通信帯域をカバーするように構成することができる。
【0067】
[0068]本発明のある特定の実施形態では、回路構造体は、基地局、リピーター(例えば、「フェムトセル」)、中継局、端子、ユーザデバイス、および/または5Gシステムの他の好適な構成部品で使用するための高周波数アンテナおよびアンテナアレイに特に良好に適合する可能性がある。本明細書で使用される場合、「5G」は一般に、無線周波数信号を介した高速データ通信を指す。5Gネットワークおよびシステムは、前世代のデータ通信規格(例えば、「4G」、「LTE」)よりもはるかに速い速度でデータを通信することが可能である。例えば、本明細書で使用される場合、「5G周波数」は、1.5GHz以上、一部の実施形態では約2.0GHz以上、一部の実施形態では約2.5GHz以上、一部の実施形態では約3.0GHz以上、一部の実施形態では約3GHz~約300GHz以上、一部の実施形態では約4GHz~約80GHz、一部の実施形態では約5GHz~約80GHz、一部の実施形態では約20GHz~約80GHz、一部の実施形態では約28GHz~約60GHzの周波数を指してもよい。5G通信の要件を定量化する種々の規格および仕様が発表されている。一例として、International Telecommunications Union(ITU)は、2015年にInternational Mobile Telecommunications-2020(「IMT-2020」)規格を発表した。IMT-2020規格は、5Gのための種々のデータ送信基準(例えば、ダウンリンクおよびアップリンクのデータレート、レイテンシなど)を規定する。IMT-2020規格は、アップリンクおよびダウンリンクのピークデータレートを、5Gシステムがサポートしなければならないデータのアップロードおよびダウンロードの最小データレートとして定義する。IMT-2020規格は、ダウンリンクのピークデータレート要件を20Gbit/s、アップリンクのピークデータレートを10Gbit/sと設定する。別の例として、3rd Generation Partnership Project(3GPP(登録商標))は、「5GNR」と呼ばれる5Gの新しい規格を近年発表している。3GPP(登録商標)は、2018年に5GNRの標準化のための「フェーズ1」を定義する「Release 15」を公開した。3GPP(登録商標)は、5G周波数帯を、一般に6GHz未満の周波数を含む「Frequency Range1」(FR1)、および20~60GHzの範囲の周波数帯としての「Frequency Range2」(FR2)と定義している。本明細書に記載されたアンテナシステムは、Release 15(2018)などの3GPP(登録商標)によって発表された規格、および/またはIMT-2020規格に基づき「5G」を満たすことができ、または適格とすることができる。
【0068】
[0069]高周波数での高速データ通信を実現するために、アンテナ素子およびアレイは、アンテナ性能を向上させることができる小さな特徴サイズ/間隔(例えば、ファインピッチ技術)を利用することができる。例えば、特徴サイズ(アンテナ素子間の間隔、アンテナ素子の幅)などは、一般に、アンテナ素子がその上に形成される基板誘電体を伝搬する所望の送信および/または受信無線周波数の波長(「λ」)に依存する(例えば、nλ/4(ここでnは整数である))。さらに、ビームフォーミングおよび/またはビームステアリングは、複数の周波数範囲またはチャネルにわたる受信および送信を容易にするために利用されてもよい(例えば、多入力多出力(MIMO)、大規模MIMO)。
【0069】
[0070]高周波数5Gアンテナ素子は、種々の構成を有することができる。例えば、5Gアンテナ素子は、共平面導波路素子、パッチアレイ(例えば、メッシュグリッドパッチアレイ)、他の好適な5Gアンテナ構成であってもよく、またはそれを含んでもよい。アンテナ素子は、MIMO、大規模MIMO機能、ビームステアリングなどをもたらすように構成されてもよい。本明細書で使用される場合、「大規模」MIMO機能は、一般にアンテナアレイで多数の送信および受信チャネル、例えば8個の送信(Tx)および8個の受信(Rx)チャネル(8×8と略称される)を提供することを指す。大規模MIMO機能は、8×8、12×12、16×16、32×32、64×64以上で提供されてもよい。
【0070】
[0071]アンテナ素子は、様々な構成および配列を有することができ、様々な製造技術を使用して製作することができる。一例として、アンテナ素子および/または関連素子(例えば、グランド素子、給電ラインなど)は、ファインピッチ技術を利用することができる。ファインピッチ技術は、一般に、それらの構成部品またはリード間の小さいまたは細かい間隔を指す。例えば、アンテナ素子間(またはアンテナ素子とグランド面との間)の特徴寸法および/または間隔は、約1,500マイクロメートル以下、一部の実施形態では1,250マイクロメートル以下、一部の実施形態では750マイクロメートル以下(例えば、1.5mm以下の中心間間隔)、650マイクロメートル以下、一部の実施形態では550マイクロメートル以下、一部の実施形態では450マイクロメートル以下、一部の実施形態では350マイクロメートル以下、一部の実施形態では250マイクロメートル以下、一部の実施形態では150マイクロメートル以下、一部の実施形態では100マイクロメートル以下、一部の実施形態では50マイクロメートル以下であってもよい。しかし、より小さいおよび/またはより大きい特徴サイズおよび/または間隔が本開示の範囲内で利用され得ることを理解されたい。
【0071】
[0072]このような小さい特徴寸法の結果として、アンテナシステムは、小さなフットプリントで多数のアンテナ素子を用いて実現することができる。例えば、アンテナアレイは、1平方センチメートルあたり1,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり2,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり3,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり4,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり6,000個より多いアンテナ素子、一部の実施形態では1平方センチメートルあたり約8,000個より多いアンテナ素子の平均アンテナ素子濃度を有してもよい。アンテナ素子のそのような緻密な配列は、アンテナ面積の単位面積あたりのMIMO機能のチャネル数を増加させることができる。例えば、チャネル数は、アンテナ素子の数に対応してもよい(例えば、等しいまたは比例してもよい)。
【0072】
[0073]図8を参照すると、基地局102、1つもしくは複数の中継局104、1つもしくは複数のユーザコンピューティングデバイス106、1つもしくは複数のWi-Fiリピーター108(例えば、「フェムトセル」)、および/または5Gアンテナシステム100の他の好適なアンテナ構成部品も含む5Gアンテナシステム100の一実施形態が示される。中継局104は、基地局102とユーザコンピューティングデバイス106および/または中継局104との間で信号を中継するまたは「繰り返す」ことにより、ユーザコンピューティングデバイス106および/または他の中継局104による基地局102との通信を容易にするよう構成されてもよい。基地局102は、中継局104、Wi-Fiリピーター108、および/またはユーザコンピューティングデバイス106と直接、無線周波数信号112を受信および/または送信するように構成されたMIMOアンテナアレイ110を含むことができる。ユーザコンピューティングデバイス106は、必ずしも本発明によって限定されず、5Gスマートフォンなどのデバイスを含む。
【0073】
[0074]MIMOアンテナアレイ110は、中継局104に対して無線周波数信号112を集中させるまたは導くために、ビームステアリングを利用することができる。例えば、MIMOアンテナアレイ110は、X-Y面に対する仰角114、および/またはZ-Y面で規定され、Z方向に対するヘディング角116を調整するよう構成されてもよい。同様に、中継局104、ユーザコンピューティングデバイス106、Wi-Fiリピーター108のうちの1つまたは複数は、基地局102のMIMOアンテナアレイ110に対するデバイス104、106、108の感度および/または電力送信を方向調節することによって(例えば、それぞれのデバイスの相対仰角および/または相対方位角の一方または両方を調整することによって)MIMOアンテナアレイ110に対する受信および/または送信能力を改善するためにビームステアリングを利用してもよい。
【0074】
[0075]図9Aおよび9Bは、例示的なユーザコンピューティングデバイス106を上から見た図および側面立面図をそれぞれ示す。ユーザコンピューティングデバイス106は、1つまたは複数のアンテナ素子200、202(例えば、それぞれのアンテナアレイとして配列される)を含むことができる。図9Aを参照すると、アンテナ素子200、202は、X-Y面でビームステアリングを行うように(矢印204、206によって図示され、相対方位角と対応するように)構成されてもよい。図9Bを参照すると、アンテナ素子200、202は、Z-Y面でビームステアリングを行うように(矢印204、206によって図示されるように)構成されてもよい。
【0075】
[0076]図10は、それぞれの給電ライン304を使用して接続された(例えば、フロントエンドモジュールと)複数のアンテナアレイ302の簡略化された概略図である。アンテナアレイ302は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板308の側面306に取り付けられてもよい。アンテナアレイ302は、複数の垂直に接続された素子を含むことができる(例えば、メッシュグリッドアレイとして)。したがって、アンテナアレイ302は、一般に基板308の側面306と平行に延びてもよい。シールドが任意選択で基板308の側面306上に設けられてもよく、それによりアンテナアレイ302は、基板308に対するシールドの外側に位置する。アンテナアレイ302の垂直に接続された素子間の垂直の間隔距離は、アンテナアレイ302の「特徴サイズ」に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、これらの間隔距離は、アンテナアレイ302が「ファインピッチ」アンテナアレイ302であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。
【0076】
[0077]図11は、共平面導波管アンテナ400の構成の側面立面図を示す。1つまたは複数の共平面グランド層402は、アンテナ素子404(例えば、パッチアンテナ素子)と平行に配列されてもよい。別のグランド層406は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板408によってアンテナ素子から離間されてもよい。1つまたは複数の追加のアンテナ素子410は、第2の層または基板412によってアンテナ素子404から離間されてもよく、この基板も本発明のポリマー組成物から形成することができる。寸法「G」および「W」は、アンテナ400の「特徴サイズ」に対応してもよい。「G」寸法は、アンテナ素子404と共平面グランド層406との間の距離に対応してもよい。「W」寸法は、アンテナ素子404の幅(例えば、線幅)に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、寸法「G」および「W」は、アンテナ400が「ファインピッチ」アンテナ400であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。
【0077】
[0078]図12Aは、本開示の別の態様によるアンテナアレイ500を示す。アンテナアレイ500は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板510およびその上に形成される複数のアンテナ素子520を含むことができる。複数のアンテナ素子520は、X方向および/またはY方向でほぼ等しい大きさであってもよい(例えば、正方形または長方形)。複数のアンテナ素子520は、Xおよび/またはY方向でほぼ等間隔で離間することができる。アンテナ素子520の寸法および/またはその間の間隔は、アンテナアレイ500の「特徴サイズ」に対応してもよい。したがって、一部の実施形態では、寸法および/または間隔は、アンテナアレイ500が「ファインピッチ」アンテナアレイ500であるように比較的小さくてもよい(例えば、約750マイクロメートル未満)。楕円522によって図示されるように、図12に図示されるアンテナ素子520の列の数は、単なる例として提供される。同様に、アンテナ素子520の行の数は、単なる例として提供される。
【0078】
[0079]同調アンテナアレイ500は、例えば基地局において(例えば、図8に関して上述したように)大規模MIMO機能を提供するために使用することができる。より具体的には、種々の素子間の無線周波数相互作用は、複数の送信および/または受信チャネルを提供するように制御または同調することができる。送信電力および/または受信感度は、例えば図8の無線周波数信号112に関して説明したように、無線周波数信号を集中させるまたは導くように方向制御することができる。同調アンテナアレイ500は、小さなフットプリントで多数のアンテナ素子522を提供することができる。例えば、同調アンテナ500は、1平方cmあたり1,000個以上のアンテナ素子の平均アンテナ素子密度を有することができる。このような緻密なアンテナ素子の配列は、単位面積あたりのMIMO機能のチャネル数を増加させることができる。例えば、チャネル数は、アンテナ素子の数に対応してもよい(例えば、等しいまたは比例してもよい)。
【0079】
[0080]図12Bは、アンテナ素子を形成するために任意選択で利用可能なレーザー直接構造化で形成されたアンテナアレイ540を示す。アンテナアレイ540は、複数のアンテナ素子542、およびアンテナ素子542を(例えば、他のアンテナ素子542、フロントエンドモジュール、または他の好適な構成部品と)接続する複数の給電ライン544を含むことができる。アンテナ素子542は、それぞれの幅「w」およびその間の間隔距離「S」および「S」(例えば、それぞれX方向およびY方向で)を有することができる。これらの寸法は、所望の5G周波数で5G無線周波数通信を実現するように選択することができる。より具体的には、寸法は、5G周波数スペクトル内にある無線周波数信号を使用したデータの送信および/または受信のためにアンテナアレイ540を同調するように選択することができる。寸法は、基板の材料特性に基づいて選択することができる。例えば、「w」、「S」または「S」のうちの1つまたは複数は、基板材料を通る所望の周波数の伝搬波長(「λ」)の倍数に対応し得る(例えば、nλ/4(ここでnは整数である))。
【0080】
[0081]一例として、λは以下のように計算することができる:
【0081】
【数1】
【0082】
(式中、cは真空中の光の速さであり、
【0083】
【数2】
【0084】
は基板(または周囲材料)の比誘電率であり、fは所望の周波数である)。
[0082]図12Cは、本開示の態様による例示的なアンテナ構成560を示す。アンテナ構成560は、本発明のポリマー組成物から形成され得る基板564の平行な長辺に配列された複数のアンテナ素子562を含むことができる。種々のアンテナ素子562は、所望の周波数および/または周波数範囲での受信および/または送信のためにアンテナ構成560を同調するそれぞれの長さ「L」(およびその間の間隔距離)を有することができる。より具体的には、そのような寸法は、例えば図12Bを参照して上述したように、基板材料に対する所望の周波数での伝搬波長λに基づいて選択することができる。
【0085】
[0083]図13A図13Cは、本開示の態様によるアンテナ素子および/またはアレイを形成するために使用することができるレーザー直接構造化製造プロセスの簡略化した連続図である。図13Aを参照すると、基板600は、任意の所望の技術(例えば、射出成型)を使用して本発明のポリマー組成物から形成することができる。ある特定の実施形態では、図13Bに示されるように、レーザー602を使用してレーザー活性化可能な添加剤を活性化し、アンテナ素子および/またはアレイの1つもしくは複数を含み得る回路パターン604を形成することができる。例えば、レーザーは、回路パターン604を形成するためにポリマー組成物中の導電性粒子を溶融することができる。図13Cを参照すると、基板600を無電解銅浴に浸漬して回路パターン604をメッキし、アンテナ素子、素子アレイ、他の構成部品、および/またはその間に導電ラインを形成することができる。
【0086】
[0084]本発明は、以下の実施例を参照してより良好に理解することができる。
【実施例
【0087】
試験方法
[0085]溶融粘度:溶融粘度(Pa・s)は、Dynisco LCR7001キャピラリーレオメーターを使用して、せん断速度400s-1および溶融温度を15℃超える温度(例えば、約350℃)で、ISO試験No.11443:2014に従って決定されてもよい。レオメーターオリフィス(ダイ)は、直径1mm、長さ20mm、L/D比20.1、および入口角180°を有していた。バレルの直径は9.55mm+0.005mm、ロッド長さは233.4mmであった。
【0088】
[0086]溶融温度:溶融温度(「Tm」)は、当技術分野で公知のように示差走査熱量測定(「DSC」)によって決定されてもよい。溶融温度は、ISO試験No.11357-3:2018によって決定される示差走査熱量測定(DSC)のピーク溶融温度である。DSC手順に基づき、TA Q2000装置上で行うDSC測定を使用し、ISO標準10350に記述されるように、試料を1分あたり20℃で加熱および冷却した。
【0089】
[0087]荷重たわみ温度(「DTUL」):荷重たわみ温度は、ISO試験No.75-2:2013(技術的にASTM D648と同等である)に従って決定されてもよい。より詳細には、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの試験片試料を、指定の荷重(最大外部繊維応力)が1.8メガパスカルであるエッジワイズ三点屈曲試験に供してもよい。検体をシリコーン油浴中に下げ、検体が0.25mm(ISO試験No.75-2:2013では0.32mm)たわむまで温度を1分あたり2℃で上昇させる。
【0090】
[0088]引張弾性率、引張応力および引張伸び:引張特性は、ISO試験No.527:2019(技術的にASTM D638と同等である)に従って試験されてもよい。弾性率および強度の測定は、長さ80mm、厚さ10mm、および幅4mmの同じ試験片試料で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は1または5mm/分であってもよい。
【0091】
[0089]曲げ弾性率、曲げ応力および曲げ伸び:曲げ特性は、ISO試験No.178:2019(技術的にASTM D790と同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、64mmの支持スパン上で実施されてもよい。試験は、切断されていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部で行われてもよい。試験温度は23℃であってもよく、試験速度は2mm/分であってもよい。
【0092】
[0090]シャルピー衝撃強度:シャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1:2010(技術的にASTM D256-10、方法Bと同等である)に従って試験されてもよい。この試験は、タイプ1検体サイズ(長さ80mm、幅10mm、および厚さ4mm)を使用して行われてもよい。ノッチ付き衝撃強度を試験する場合、ノッチはタイプAノッチ(0.25mmベース半径)であってもよい。検体は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出してもよい。試験温度は23℃であってもよい。
【0093】
[0091]比誘電率(「Dk」)および誘電正接(「Df」):比誘電率(または相対静的誘電率)および誘電正接は、Baker-Jarvisら、IEEE Trans.on Dielectric and Electrical Insulation、5(4)、571頁(1998年)およびKrupkaら、Proc.7th International Conference on Dielectric Materials:Measurements and Applications、IEEE Conference Publication No.430(1996年9月)に記載されるものなどの公知のスプリット-ポスト誘電共振法を使用して決定される。より詳細には、サイズ80mm×90mm×3mmの板状試料を2つの固定された誘電共振器の間に挿入した。共振器により、検体の面における誘電率成分を測定した。5つの試料を試験し、平均値を記録する。スプリット-ポスト共振器を使用し、低ギガヘルツ領域、例えば2GHzから1GHzで誘電測定を行うことができる。
【0094】
[0092]熱サイクル試験:検体を温度制御チャンバに入れ、-30℃~100℃の温度範囲内で加熱/冷却する。まず、100℃の温度に達するまで試料を加熱し、その時点ですぐに冷却した。温度が-30℃に達したとき、検体を100℃に達するまですぐに再び加熱する。3時間にわたって23回の加熱/冷却サイクルを実施してもよい。
【0095】
[0093]表面/体積抵抗率:表面および体積抵抗率の値は、IEC62631-3-1:2016またはASTM D257-14に従って決定することができる。この手順によると、標準検体(例えば、1メートルの立方体)を2つの電極の間に配置する。電圧を60秒間印加し、抵抗を測定する。表面抵抗率は、電位勾配(V/m単位)と単位電極長あたりの電流(A/m単位)の商であり、一般に絶縁材料の表面に沿った漏れ電流に対する抵抗を表す。電極の4つの端が正方形を画定するため、商において長さを約分して表面抵抗率をオームで報告するが、より説明的な単位であるオームパースクエアを見ることも一般的である。また、体積抵抗率は、材料中の電流に平行な電位勾配の電流密度に対する比として決定される。SI単位では、体積抵抗率は、その材料の1メートルの立方体の対向面間の直流抵抗(オーム・mまたはオーム・cm)に数値的に等しい。
【0096】
実施例1
[0094]試料1~4を、種々のパーセンテージの液晶ポリマー(「LCP1」および「LCP2」)、珪灰石繊維(Nyglos(商標)8)、カーボンブラック顔料、炭素繊維ならびに滑剤(Glycolube(商標)P)から形成する。LCP1は、HBA60mol.%、HNA5mol.%、BP12mol.%、TA17.5mol.%およびAPAP5mol.%から形成される。LCP2は、HBA73mol.%およびHNA27mol.%から形成される。配合は、18mm単軸押出機を使用して実施した。部品を射出成型し、試料を板(60mm×60mm)にする。
【0097】
【表1】
【0098】
[0095]試料1~4を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表2に記載する。
【0099】
【表2】
【0100】
[0096]また、試料3~4を上述の熱サイクル試験に供した。試験後、試料について得られた誘電正接は、それぞれ0.021および0.015と決定された。したがって、試料3および4の熱サイクル試験後の誘電正接の初期誘電正接に対する比は、それぞれ1.24および0.86であった。また、試験後、試料について得られた比誘電率は、それぞれ12.9および12.6と決定された。したがって、試料3および4の熱サイクル試験後の比誘電率の初期比誘電率に対する比は、それぞれ0.98および1.01であった。
【0101】
[0097]試料5~9を、種々のパーセンテージの液晶ポリマー(「LCP1」および「LCP2」)、Nyglos(商標)8、カーボンブラック顔料、グラファイト、ならびにGlycolube(商標)Pから形成する。配合は、18mm単軸押出機を使用して実施した。部品を射出成型し、試料を板(60mm×60mm)にする。
【0102】
【表3】
【0103】
[0098]試料5~9を熱的および機械的特性について試験した。結果を以下の表4に記載する。
【0104】
【表4】
【0105】
[0099]また、試料5~7を上述の熱サイクル試験に供した。試験後、試料について得られた誘電正接は、それぞれ0.0578、0.0214および0.0098と決定された。したがって、試料5、6および7の熱サイクル試験後の誘電正接の初期誘電正接に対する比は、それぞれ1.17、1.06および1.09であった。また、試験後、試料について得られた比誘電率は、それぞれ12.6、8.9および6.3と決定された。したがって、試料5、6および7の熱サイクル試験後の比誘電率の初期比誘電率に対する比は、それぞれ1.0、1.0および1.0であった。
【0106】
[00100]本発明のこれらおよび他の修正および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく当業者によって実施可能である。さらに、種々の実施形態の態様は、全体的または部分的の両方で相互交換可能であることが理解されるべきである。さらに、当業者は、上述の記載が単なる例示であり、したがってそのような添付の特許請求の範囲にさらに記載される本発明を制限するものではないことを理解する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9A
図9B
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図12A
図12B
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図13A
図13B
図13C
【国際調査報告】