(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】移植型薬剤送達装置のための高分子安定化剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/32 20060101AFI20230410BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230410BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20230410BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230410BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20230410BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20230410BHJP
A61M 37/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K45/00
A61K9/00
A61P3/10
A61K38/00
A61K38/26
A61M37/00 560
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551693
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-18
(86)【国際出願番号】 US2021019559
(87)【国際公開番号】W WO2021173770
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514140366
【氏名又は名称】ナノ プレシジョン メディカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NANO PRECISION MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ライアン オルフ
(72)【発明者】
【氏名】ライル ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーター ルーダ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C267
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA94
4C076BB11
4C076CC30
4C076EE11
4C076FF31
4C076FF68
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA59
4C084DB35
4C084MA05
4C084MA34
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4C084NA10
4C084NA12
4C084ZC012
4C084ZC352
4C267AA75
4C267EE08
4C267GG16
4C267GG41
(57)【要約】
本開示は、治療剤の長期放出のための移植型送達装置で患者を治療することの分野に関する。特に本開示は、移植の期間中に装置内部の治療剤を安定化するための装置および方法を提供する。本装置は、ナノ多孔質膜を用いて治療剤の長期放出を制御する。安定化は、膜の細孔の直径よりも大きいサイズの高分子量安定剤を使用することによって達成され、それにより安定剤の放出を防止する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用製剤であって:
治療剤;及び
架橋ポリアクリル酸、架橋ポリメタクリル酸、又はこれらの混合物もしくはアクリルとメタクリル酸とのコポリマーからなる群より選択されるメンバーである、複数のpH感受性安定化基を有する不溶性高分子を含む高分子安定化剤;
を含む、前記製剤。
【請求項2】
前記pH感受性安定化基は、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が3.5~7.5の間のpHで発達する程度に中和される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記不溶性高分子が、架橋ポリマーである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記治療剤が、ペプチド又はタンパク質である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記治療剤が、インクレチン模倣体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記治療剤が、エキセナチドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記治療剤及び安定化剤が、実質的に乾燥固体形態中に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
前記製剤が、前記治療剤のための溶媒をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
前記安定化剤が、アクリル酸残基およびメタクリル酸残基の一方または両方を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記pH感受性安定化基が、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が約4.0~約7.0の間のpHで発達する程度に中和される、請求項2~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
流体が約5.0~約6.0の間のpHで発達する、請求項10に記載の製剤。
【請求項12】
前記溶媒が、約3.5~約7.5の間のpHを有する、請求項8に記載の製剤。
【請求項13】
前記溶媒が、約5.0~約6.0の間のpHを有する、請求項8に記載の製剤。
【請求項14】
前記安定化基が、約10%~約75%の間で中和される、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
前記安定化基が、約30%~約65%の間で中和される、請求項1~14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
治療剤を徐放するための装置であって:
移植のために構成され、リザーバを有するカプセル;
複数の細孔を有するナノ多孔質膜;
リザーバ内に配置された治療剤;及び
前記リザーバ内に配置されて、複数のpH感受性安定化基を有する不溶性高分子を含む高分子安定化剤;
前記ナノ多孔質膜が、リザーバから治療剤を排出するための拡散経路を提供する;並びに
前記高分子安定化剤が、前記リザーバからの前記高分子安定化剤の放出を実質的に防止する、前記ナノ多孔質膜の孔径よりも大きい寸法を有する;
を含む、前記装置。
【請求項17】
前記不溶性高分子が、架橋ポリマーである、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記治療剤が、ペプチド又はタンパク質である、請求項16又は17に記載の装置。
【請求項19】
前記治療剤が、インクレチン模倣体である、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記治療剤が、エキセナチドである、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記治療剤及び安定化剤が、実質的に乾燥固体形態中に存在する、請求項16~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記装置が、前記治療剤のための溶媒をさらに含む、請求項16~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記安定化剤が、アクリル酸残基およびメタクリル酸残基の一方または両方を含む、請求項16~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
前記pH感受性安定化基が、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が約3.5~約7.5の間のpHで発達する程度に中和される、請求項16~23のいずれか一項に記載の装置。
【請求項25】
流体が約5.0~約6.0の間のpHで発達する、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
前記安定化基が、約10%~約75%の間で中和される、請求項16~25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記安定化基が、約30%~約65%の間で中和される、請求項16~26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記溶媒が、約3.5~約7.5の間のpHを有する、請求項22又は23に記載の装置。
【請求項29】
前記溶媒が、約5.0~約6.0の間のpHを有する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
治療剤を安定化させるための方法であって、
前記方法が、前記治療剤を徐放するための装置を提供するステップを含み、前記装置が、
移植のために構成され、リザーバを有するカプセル;
複数の細孔を有するナノ多孔質膜;
リザーバ内に治療剤を配置するステップ;及び
前記リザーバ内に高分子安定化剤を配置するステップであって、複数のpH感受性安定化基を有する不溶性高分子を含む前記高分子安定化剤;
前記ナノ多孔質膜が、リザーバから治療剤を排出するための拡散経路を提供する;並びに
前記高分子安定化剤が、前記リザーバからの前記高分子安定化剤の放出を実質的に防止する、前記ナノ多孔質膜の孔径よりも大きい寸法を有する;
を含む、前記方法。
【請求項31】
前記不溶性高分子が、架橋ポリマーである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記治療剤が、ペプチド又はタンパク質である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記治療剤が、インクレチン模倣体である、請求項30~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記治療剤が、エキセナチドである、請求項30~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記治療剤及び安定化剤が、実質的に乾燥固体形態中に存在する、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記装置が、前記治療剤のための溶媒をさらに含む、請求項30~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記安定化剤が、アクリル酸残基およびメタクリル酸残基の一方または両方を含む、請求項30~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記pH感受性安定化基が、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が約3.5~約7.5の間のpHで発達する程度に中和される、請求項30~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
流体が約5.0~約6.0の間のpHで発達する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記安定化基が、約10%~約75%の間で中和される、請求項30~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記安定化基が、約30%~約65%の間で中和される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記溶媒が、約3.5~約7.5の間のpHを有する、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項43】
前記溶媒が、約5.0~約6.0の間のpHを有する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
治療を必要とする対象における疾患を治療する方法であって、治療剤および複数の安定化機能を持たせたポリマーを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって疾患を治療することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
【0002】
本出願は2020年2月28日に出願された米国特許出願番号62/983,296に基づく優先権を主張しており、その全体がすべての目的のために本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
ヒト並びに動物の多くの対象は、治療剤による長期治療を必要としている。アドヒアランスを改善するために、多くの対象は、所望の治療剤を所望の速度及び所望の純度で長期間にわたって放出する、移植型デバイスによって提供される服薬順守の恩恵を受け得る。多くの治療剤は移植の条件下で制限された安定性を有するため、治療剤の長期安定化が必要とされ得る。
【0004】
国際公開番号第2008/061355号は、長期間にわたる徐放のための、GLP-1またはGLP-1類似体を投与するための移植型ヒドロゲルデバイス、並びにその製造方法が引用されている。
【0005】
国際公開番号第2009/158412号は、移植型デバイス、製剤、及び移植型デバイスからポリペプチドを放出するための移植型デバイスの製造の方法が引用されている。この参考文献は、ポリペプチドの徐放にヒドロゲルを使用する。
【0006】
上記を考慮すると、治療剤の長期放出および安定化のためのデバイス及び製剤、治療剤の安定化の方法、ならびに前記デバイス及び製剤の調製及び使用のための方法が必要である。本開示は、これら及びその他のニーズを満たす。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの例において、本開示の一実施形態は、治療剤を徐放するための装置を含み、
前記装置は、
―移植のために構成され、リザーバを有するカプセル;
―複数の細孔を有するナノ多孔質膜;
―リザーバ内に配置された治療剤;及び
―前記リザーバ内に配置されて、複数のpH感受性安定化基を有する不溶性高分子を含む高分子安定化剤;
―前記ナノ多孔質膜は、リザーバの外に治療剤を排出するための拡散経路を提供する;並びに、前記高分子安定化剤は、前記リザーバからの放出を実質的に防止する、前記ナノ多孔質膜の孔径よりも大きい寸法を有する;
を含む。
【0008】
いくつかの例において、前記不溶性高分子は、架橋ポリマーである。
【0009】
いくつかの例において、前記治療剤は、ペプチド又はタンパク質である。
【0010】
いくつかの例において、前記治療剤は、インクレチン模倣体である。
【0011】
いくつかの例において、前記治療剤は、エキセナチドである。
【0012】
いくつかの例において、前記治療剤及び安定化剤は、実質的に乾燥固体形態で存在する。
【0013】
いくつかの例において、前記装置は、前記治療剤のための溶媒をさらに含む。
【0014】
いくつかの例において、前記安定化剤は、アクリル酸残基およびメタクリル酸残基の一方または両方を含む。
【0015】
いくつかの例において、前記pH感受性安定化基は、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が約3.5~約7.5の間のpHで発達する程度に中和される。
【0016】
いくつかの例において、流体が約5.0~約6.0の間のpHで発達する。
【0017】
いくつかの例において、前記安定化基は、約10%~約75%の間、例えば、10%、12%、14%、16%、18%、20%、22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、54%、56%、58%、60%、62%、64%、66%、68%、70%、72%、74%、及び/又は75%で中和される。
【0018】
いくつかの例において、前記安定化基は、約30%~約65%の間で中和される。
【0019】
いくつかの例において、前記溶媒は、約3.5~約7.5の間のpHを有する。
【0020】
いくつかの例において、前記溶媒は、約5.0~約6.0の間のpHを有する。
【0021】
いくつかの例において、本開示の一実施形態は、治療剤を安定化させるための方法を含み、
前記方法は、
―前記治療剤を徐放するための装置を提供するステップを含み、
前記装置は、
―移植のために構成され、リザーバを有するカプセル;
―複数の細孔を有するナノ多孔質膜;
―リザーバ内に治療剤を配置するステップ;及び
―前記リザーバ内に高分子安定化剤を配置するステップであって、複数のpH感受性安定化基を有する不溶性高分子を含む前記高分子安定化剤;
―前記ナノ多孔質膜が、リザーバから治療剤を排出するための拡散経路を提供する;並びに、前記高分子安定化剤が、前記リザーバからの放出を実質的に防止する、前記ナノ多孔質膜の孔径よりも大きい寸法を有する;
を含む。
【0022】
いくつかの例において、前記不溶性高分子は、架橋ポリマーである。
【0023】
いくつかの例において、前記治療剤は、ペプチド又はタンパク質である。
【0024】
いくつかの例において、前記治療剤は、インクレチン模倣体である。
【0025】
いくつかの例において、前記治療剤は、エキセナチドである。
【0026】
いくつかの例において、前記治療剤及び安定化剤は、実質的に乾燥固体形態で存在する。
【0027】
いくつかの例において、前記装置は、前記治療剤のための溶媒をさらに含む。
【0028】
いくつかの例において、前記安定化剤は、アクリル酸残基およびメタクリル酸残基の一方または両方を含む。
【0029】
いくつかの例において、前記pH感受性安定化基は、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が約3.5~約7.5の間のpHで発達する程度に中和される。
【0030】
いくつかの例において、流体が約5.0~約6.0の間のpHで発達する。
【0031】
いくつかの例において、前記安定化基は、約10%~約75%の間で中和される。
【0032】
いくつかの例において、前記安定化基は、約30%~約65%の間で中和される。
【0033】
いくつかの例において、前記溶媒は、約3.5~約7.5の間のpHを有する。
【0034】
いくつかの例において、前記溶媒は、約5.0~約6.0の間のpHを有する。
【0035】
いくつかの例において、本開示の一実施形態は、治療を必要とする対象における疾患を治療する方法を含み、前記方法は、
―治療剤および複数の安定化機能を持たせたポリマーを含む、請求項1の医薬組成物の治療有効量を対象に投与し、それによって疾患を治療すること:
を含む。
【0036】
いくつかの例において、本開示の一実施形態は、治療製剤を含み、
前記製剤は、
―治療剤;及び
―架橋ポリアクリル酸、架橋ポリメタクリル酸、若しくはこれらの混合物若しくはアクリルとメタクリル酸とのコポリマーからなる群より選択されるメンバーである、複数のpH感受性安定化基を有する不溶性高分子を含む高分子安定化剤;
を含む
【0037】
いくつかの例において、前記pH感受性安定化基は、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が約3.5~約7.5の間のpHで発達する程度に中和される。
【0038】
いくつかの例において、前記不溶性高分子は、架橋ポリマーである。
【0039】
いくつかの例において、前記治療剤は、ペプチド又はタンパク質である。
【0040】
いくつかの例において、前記治療剤は、インクレチン模倣体である。
【0041】
いくつかの例において、前記治療剤は、エキセナチドである。
【0042】
いくつかの例において、前記治療剤及び安定化剤は、実質的に乾燥固体形態で存在する。
【0043】
いくつかの例において、前記製剤は、前記治療剤のための溶媒をさらに含む。
【0044】
いくつかの例において、前記安定化剤は、アクリル酸残基およびメタクリル酸残基の一方または両方を含む。
【0045】
いくつかの例において、前記pH感受性安定化基は、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が約4.0~約7.0の間のpHで発達する程度に中和される。
【0046】
いくつかの例において、流体が約5.0~約6.0の間のpHで発達する。
【0047】
いくつかの例において、前記安定化基は、約10%~約75%の間で中和される。
【0048】
いくつかの例において、前記安定化基は、約30%~65%の間で中和される。
【0049】
いくつかの例において、前記溶媒は、約3.5~約7.5の間のpHを有する。
【0050】
いくつかの例において、前記溶媒は、約5.0~約6.0の間のpHを有する。
【0051】
これら及びその他の実施形態、態様、および目的は、以下の図面と共に読み取ることで、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1A】
図1Aは、単一のリザーバを有する装置の実施形態を表す。
【
図1B】
図1Bは、2つのリザーバを有する装置の実施形態を表す。
【
図2】
図2は、モデルペプチドのpH対安定性プロファイルを表す。
【
図3】
図3Aは、本開示の治療剤のpHに対する本開示の安定化剤の効果を表す。
図3Bは、本開示の治療剤の純度に対する本開示の安定化剤の効果を表す。
【
図4A】
図4Aは、少なくとも3ヶ月(90日)にわたってより低いpHを維持したイオン交換樹脂の存在を示す。
【
図4B】
図4Bは、少なくとも3ヶ月(90日)にわたってより良好なエキセナチド純度を維持したイオン交換樹脂の存在を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本開示は、治療剤の徐放を提供する移植型デバイスによる、対象の長期治療の分野に関する。
【0054】
本開示の実施形態は、1つ以上の治療剤を、1つ以上のポリマー安定化剤と共に含む装置、方法及び製剤を含む。
【0055】
さらに、本開示の実施形態は、装置を作製するための方法を含む。
【0056】
加えて、本開示の実施形態は、本開示の装置および製剤による対象の治療方法を含む。
【0057】
定義
【0058】
「ポリペプチド」は、2以上のアミノ酸残基の主鎖を有する分子を指す。いくつかのポリペプチドは、例えば金属タンパク質における金属イオン、例えばヘムタンパク質における小有機分子、または例えば糖タンパク質における炭水化物基のような追加の関連基を有し得る。
【0059】
「ペプチド」および「タンパク質」は、ポリペプチドのサブグループを指す。本開示において、ペプチドおよびタンパク質の定義は、ペプチドを最大40アミノ酸残基を有するポリペプチドとして、およびタンパク質を40アミノ酸残基を超えるポリペプチドとして定義する、米国食品医薬品局(FDA)の慣行に従う。
【0060】
インクレチン模倣体は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)などのインクレチンホルモンのように作用する薬剤を指す。それらはGLP-1受容体に結合し、グルコース依存性インスリン放出を刺激して、抗高血糖薬として作用する。
【0061】
エキセナチド(天然、組換えおよび合成、エキセンディン-4とも呼ばれる)は、アミノ酸配列His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Ser (CAS Number:141758-74-9)を指す。
【0062】
「治療剤の製剤化」は、治療剤が製品または製品製造中間体で存在する実際の状態を指し、治療剤、加えて任意選択で、任意の使用される追加の治療剤、任意の使用される製剤賦形剤及び任意の使用される製剤溶媒を含む。
【0063】
「膜」は、構造の一方の側から他方の側への分子の物質輸送を可能にする透過性構造を指す。
【0064】
「多孔質膜」は、膜マトリックス材料が1つの相、典型的には連続相を表す、二相システムの存在によって特徴付けられる膜を指し、膜の一方の側から他方の側に延びる開放チャネルによって透過されて、かつ第2の相(多くの場合流体相)で満たされ、それを通して膜を通した物質輸送が起こり得る。
【0065】
「緻密」又は「非多孔質膜」は、流体が充填された細孔のない膜を指す。このような膜では、物質輸送は溶解-拡散機構によって行われ得、治療剤は膜材料自体の中に溶解することによって膜を透過して、それを通して拡散する。
【0066】
「ナノ多孔質膜」及び「ナノ細孔膜」は互換的に用いられて、細孔が1,000ナノメートル未満の最小径を有する多孔質膜を指す。
【0067】
「ナノチューブ膜」とは、ナノ多孔質膜を指し、細孔はナノチューブのアレイによって形成される。
【0068】
「チタニアナノチューブ膜」は、チタニアナノチューブの少なくとも一部が両端で開いており、チタニアナノチューブを通して膜の一方から他方の側に拡散を可能にすることができる、チタン基板上のチタニアナノチューブのアレイを指す。
【0069】
ポリマーの「分子直径」は、分子の大きさの物理的尺度である、ポリマーの回転球の直径を指し、分子のコアから分子内の各質量元素までの質量加重平均距離の2倍として定義される。
【0070】
「ストークス径」または「流体力学的直径」は、分子及びそれに関連する水分子が水溶液中を移動する際の寸法を指し、観察中の分子と同じ速度で拡散する等価な剛体球の半径として定義される。
【0071】
「イオン交換樹脂」は、酸性又は塩基性基、もしくはそれらの組み合わせを含む高分子を指し、例えば架橋によって不溶性になり、かつ陰イオン又は陽イオン、もしくはそれらの組み合わせを、周囲の溶媒と交換することができる。
【0072】
本開示で使用される「流体」及び「流体形態」は、物質の流動可能な状態を指し、ガス、溶液、懸濁液、エマルジョン、コロイド、分散液等を非限定的に含む。
【0073】
「流体接触」は、流体と接触している実体を指す。
【0074】
「中性 pH」は、6.5~7.5の間のpHを指す。
【0075】
装置
【0076】
図1Aにおいて示したように、本開示の装置は移植に適したカプセル101を含み、前記カプセルは、治療剤および安定化剤を保持するのに適したリザーバ102を有する。いくつかの実施形態では、複数のリザーバが存在する(
図1B)。カプセルは、任意の好適な生体適合性材料から成り立ってもよい。いくつかの実施形態において、カプセルは、チタンもしくはステンレス鋼のような医療グレードの金属、又はシリコーン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの医療グレードのポリマー材料から成り立つ。いくつかの実施形態において、カプセルは、複数の材料から成り立つ。本開示のいくつかの実施形態において、カプセルはチタンから成り立つ。
【0077】
いくつかの実施形態において、カプセルは、単一の材料片からなる。いくつかの実施形態において、カプセルは、複数の材料片、例えば、治療剤および安定化剤を保持するリザーバを有する、かつ治療剤の放出経路として膜を保持するキャップを有するカプセルから成り、前記キャップは、任意の適切な手段、例えば、溶接、接着、圧入、又はねじ付き手段の使用、もしくはこれらの任意の組み合わせによってリザーバに取り付けられ得る。
【0078】
カプセルは、任意の好適なサイズまたは形状を有し得る。本開示のいくつかの実施形態にいて、カプセルは円筒形であり、針またはトロカールなどの管状移植装置によって体内への移植を容易にする。
【0079】
本開示の装置は、少なくとも1つの膜を有し、本開示に記載されるように、カプセルに取り付けられ、かつリザーバと流体接触して、前記膜は、リザーバ内に含まれる治療剤をそのリザーバから、カプセルが移植された対象の体内に物質輸送するための経路を提供する。本開示において「カプセルに取り付けられる」とは、溶接、接着、圧入およびねじ付き手段の使用、またはこれらの任意の組み合わせによるものを含む、任意の好適な手段を用いることによって、カプセルに関して所定の位置に固定され、直接的または間接的にカプセルに接続される成分を指す。
【0080】
米国特許番号第9814867号に記載され、かつ
図1Aに例示される膜の場合、ナノチューブ膜は、ナノチューブ103のアレイの一部であり、そのいくつかが、それらが伸びた起点であるチタン基材104に依然として付着しており、基材はカプセルに取り付けられ得る。ナノチューブの少なくとも一部は、両側に開口しており、
図1Aの105は、リザーバの外への治療剤の物質輸送を可能にする。
【0081】
図1Bは、2つのリザーバ102bおよび2つの膜105bを有するカプセル101bであり、これらは、リザーバの外への治療剤の物質輸送を可能にする。この実施形態において、カプセル101bは、少なくとも2つのナノチューブ103bアレイを有し、そのうちのいくつかは、依然としてチタン基材104bに付着している。ナノチューブの少なくとも一部は、
図1Bの両側105bに開口しており、リザーバの外への治療剤の物質輸送を可能にする。
【0082】
特定の態様において、装置の充填能力は変化し得る。装置は、約0.1cm~約15cm、例えば約0.1cm、0.5cm、1cm、1.5cm、2cm、2.5cm、3cm、3.5cm、4cm、4.5cm、5cm、5.5cm、6cm、6.5cm、7cm、7.5cm、8cm、8.5cm、9cm、9.5cm、10cm、10.5cm、11cm、11.5cm、12cm、12.5cm、13cm、13.5cm、14cm、14.5cm、及び/又は15cmの長さ(L)であり得る。直径は、約0.1mm~約10mm、例えば、約0.1mm、0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mm、8.5mm、9mm、9.5mm、及び/又は10mmで、変化し得る。体積は、πr2 ×Lに等しく、ここで、rは半径または直径の1/2である。
【0083】
いくつかの実施形態において、複数の膜が存在する。いくつかの実施形態において、2種類以上の膜が存在する。膜の種類は、ナノ多孔質膜およびナノチューブ膜を含む、緻密で多孔質の膜を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、チタニアナノチューブ膜が存在する。
【0085】
本開示のいくつかの装置は、少なくとも1種のポリマー安定化剤、例えば本開示に記載されるような安定化剤を含む。安定化剤は、固体または流体形態で存在し得る。いくつかの例において、安定化剤は混合形態、例えば安定化剤の飽和溶液中に安定化剤のビーズまたは粒子などの固体形態の懸濁液で存在し得る。
【0086】
本開示のいくつかの装置は、少なくとも1つの治療剤、例えば本開示に記載されるような治療剤を含む。治療剤は、固体または流体形態であり得る。いくつかの例において、治療剤は混合形態、例えば治療剤の飽和溶液中に治療剤の固体形態の懸濁液で存在し得る。
【0087】
本開示のいくつかの装置は、カプセルの一端を封止するのに適したポリマープラグ、例えば円筒形カプセルの一端を封止するための前記ポリマープラグを含む。いくつかの実施形態において、前記プラグは、治療剤および安定化剤がリザーバ内に配置された後、装置の製造中に挿入され得る。いくつかの実施形態において、前記プラグは、皮下針などの中空針で穿刺するのに適した中隔を形成し、中空針で穿刺することによってカプセルのリザーバへのアクセスを可能にする位置でカプセルに取り付けられる。本開示のいくつかの実施形態において、前記中隔は、カプセルのリザーバを治療剤もしくは安定化剤の流体形態で、または治療剤もしくは安定化剤の流体形態の成分で充填することを容易にするために、リザーバへのアクセスポートとして使用される。前記中隔は、任意の好適な生体適合性材料、例えばシリコーン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどから作製され得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、装置は、移植用に構成されたカプセル、リザーバ、及び複数の細孔を有するナノ多孔質膜を有し、膜は、リザーバと流体接触してカプセルに取り付けられて、治療剤をリザーバ外へ大量輸送するための経路を提供する。膜は、米国特許番号9814867に記載されるようなナノチューブ膜であり得る。装置は、本開示に記載の不溶性ポリマー安定化剤を含み、前記安定化剤は、リザーバ内に含まれ、かつ膜の孔径よりも大きい寸法を有し、それゆえ膜を通したリザーバの外への放出が実質的に防止される。前記装置は、オペレーターまたは医療従事者の裁量で治療剤をリザーバに導入するように構成されている。
【0089】
いくつかの実施形態において、装置は、移植用に構成されたカプセル、リザーバ、及び複数の細孔を有するナノ多孔質膜を有し、膜は、リザーバと流体接触してカプセルに取り付けられて、治療剤をリザーバ外へ大量輸送するための経路を提供する。前記膜は、例えば米国特許9814867に記載されているようなナノチューブ膜であり得る。前記装置は、本開示に記載の不溶性ポリマー安定化剤を含み、前記安定化剤は、リザーバ内に含まれ、かつ膜の孔径よりも大きい寸法を有し、それゆえ膜を通したリザーバの外への放出が実質的に防止される。
【0090】
本開示のいくつかの装置において、安定化剤は複数の酸性基を有する。いくつかの実施形態において酸性基は、アクリル酸モノマー残基又はメタクリル酸モノマー残基、もしくは両方のタイプの残基の組み合わせで存在する。
【0091】
本装置は、本開示に記載されるような治療剤をさらに含む。
【0092】
いくつかの実施形態において、治療剤はポリペプチドである。いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドはインクレチン模倣体である。いくつかの実施形態において、前記インクレチン模倣体はエキセナチドである。
【0093】
いくつかの実施形態において、治療剤および安定化剤は、実質的に乾燥固体形態で存在する。
【0094】
いくつかの実施形態において、治療剤のための溶媒が存在し、治療剤の少なくとも一部の溶液を作成する。いくつかの実施形態において、治療剤の固体形態は、治療剤の飽和溶液中に存在する。
【0095】
例示的な実施形態において、装置は、移植用に構成された円筒形のカプセル及び約50マイクロリットルのリザーバ容量を有する。その他の例において、リザーバ容量は約1μL~約1mL、例えば約1μL、25μL、50μL、75μL、100μL、125μL、150μL、175μL、200μL、225μL、250μL、275μL、300μL、325μL、375μL、400μL、425μL、450μL、475μL、及び/又は500μLである。その他の例において、容量は約1μL~500 μL;又は10μL~250 μL;又は10 μL~100 μLである。前記膜は、円筒状カプセルの一端に取り付けられたチタニアナノチューブ膜である。
【0096】
前記カプセルはさらに、カプセルの反対側の一端に取り付けられたシリコーン中隔を有する。
【0097】
一つの例において、リザーバは、安定化剤として約10ミリグラムの架橋形態のメタクリル酸、及び治療剤として約40マイクロリットルの25%(w/w)エキセナチド水溶液を、pH5.0~5.5で、及び約154ミリモルのNaCl濃度で含有する。
【0098】
本開示のいくつかの実施形態は、本開示の装置の調製方法を含む。一般的に、本開示の装置は、治療剤を保持するための及び安定化剤を保持するためのリザーバを有するカプセルを含み、かつ治療剤のリザーバの外への物質輸送経路を提供する膜を含むが、安定化剤についてのものは含まない。本開示のいくつかの装置では、治療剤および安定化剤の流体形態をリザーバに入れることを容易にするために、穿刺可能な中隔が存在する。装置の構成要素およびそれらの組み立て方法は、本開示に記載されている。
【0099】
本開示の膜の調製方法は、米国特許番号第9814867号および第9770412号に記載されている。
【0100】
本開示のカプセル、例えば、ステンレス鋼及びチタンなどの金属からなる、またはポリウレタン及びポリカーボネートなどのポリマーから作られる円筒管などの調整方法は、多くの十分に確立された機械加工プロセスを含む。
【0101】
本開示の中隔の調製方法は、医療グレードシロキサンのような医療グレード前駆体からのキャスティングなどの多くのポリマー処理方法を含む。
【0102】
本開示のいくつかの装置は、リザーバ内に配置された、少なくとも1つの治療剤および少なくとも1つの安定化剤を含む。本開示における治療剤および安定化剤は、本開示の装置を調製する際に任意の適切な組み合わせで、任意の適切な手段によって、および任意の適切な状態で組み合わせることができる。
【0103】
いくつかの実施形態において、円筒形カプセルは一端で閉じられて、かつ膜を取り付けることによって他端で閉じられることができる。最終製剤の成分は、膜を取り付ける前にリザーバに入れられ、その後、膜を取り付けることによってカプセルが閉じられる。膜は、任意の所望の手段、例えば溶接、接着、圧入又はねじ付き手段の使用、もしくはこれらの任意の組み合わせによって取り付けることができる。いくつかの実施形態において、最終製剤のすべての成分は、膜を取り付ける前に入れられる。いくつかの実施形態において、最終製剤の成分の一部は膜を付着させる前に添加され(例えば、乾燥製剤成分)、その後、流体製剤成分が膜を通して入れられる。流体成分の収容を容易にするために、いくつかの実施形態において、例えば米国特許番号第10525248号に記載されるように、流体溶媒を入れる前に、リザーバ内の圧力を低下させる。
【0104】
いくつかの実施形態において、水性流体溶媒の受け入れは、例えば米国特許番号第9511212号に記載されるように、リザーバ内に水溶性ガスを含むことによって促進される。
【0105】
いくつかの実施形態において、円筒形カプセルは一端に取り付けられた膜を有し、かつ他端に中隔を取り付けることによって閉じることができる。最終製剤の成分は、隔壁に取り付ける前にリザーバに入れることができ、その後、隔壁を取り付けることによってカプセルを閉じることができる。隔壁は、任意の望ましい手段、例えば溶接、接着、圧入又はねじ付き手段の使用、もしくはこれらの任意の組み合わせによって取り付けることができる。いくつかの実施形態において、最終製剤のすべての成分は、中隔を取り付ける前に入れられる。いくつかの実施形態において、最終製剤の成分の一部は、中隔を付着させる前に添加されて(例えば、乾燥製剤成分)、その後、流体製剤成分が、中空針によって中隔を通して入れられる。流体成分の収容を容易にするために、いくつかの実施形態において、例えば米国特許番号第10525248号に記載されるように、流体溶媒を入れる前に、リザーバ内の圧力を低下させる。
【0106】
いくつかの実施形態において、水性流体溶媒の受け入れは、例えば米国特許番号第9511212号に記載されるように、リザーバ内に水溶性ガスを含むことによって促進される。
【0107】
流体又は固体状態の安定化剤は、流体又は固体状態の治療剤と組み合わされ得る。
【0108】
安定化剤及び治療剤は、第1のステップにおいてそれらの固体状態で組み合わされ、その後のステップにおいて流体状態にさせてもよい。
【0109】
安定化剤および治療剤は、第1のステップにおいて流体状態で組み合わせられて、その後のステップにおいて固体状態にさせてもよい。
【0110】
治療剤及び安定化剤の組み合わせは、乾燥粉末の混合、および治療剤と安定化剤との流体混合物を調製することを含む、任意の適切な方法によって行われ得る。
【0111】
これらの選択肢は、任意の適切な組み合わせ及び並べ替えで組み合わされ得る。
【0112】
膜
【0113】
本開示の実施形態は、本開示の装置のリザーバから治療剤を物質輸送するための経路を提供する少なくとも1つの膜を含む。
【0114】
多種多様な膜が、本開示の実施形態において使用され得る。
【0115】
本開示の膜は、緻密で多孔質な膜を含み;多孔質な膜には、ナノ多孔質膜およびナノチューブ膜が含まれる。
【0116】
本開示の膜に好適な材料には、有機および無機材料、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物及びそれらの組み合わせが挙げられる。前記膜に好適な材料には、シリコーン、シリカ、チタン及びチタニアが含まれる。
【0117】
いくつかの実施形態において、膜はナノ多孔質膜である。いくつかの実施形態において、膜はナノチューブ膜である。いくつかの実施形態において、膜はチタニアナノチューブ膜である。
【0118】
本開示の実施形態は、治療剤の徐放装置として特に有用であり、薬剤の放出がナノ多孔質膜によって制御される。
【0119】
本開示のいくつかの実施形態は、例えば米国特許番号第9814867号に記載のようなチタニアナノチューブ膜を含む。本開示の膜の孔径は、例えば米国特許番号第9770412号に記載のようなプロセスによって制御することができる。
【0120】
一般に、本開示の膜の平均孔径は、1~1000ナノメートルの間であり得る。いくつかの実施形態において、1000ナノメートルより大きい平均孔径が存在し得る。いくつかの実施形態において、平均孔径は1~5ナノメートルである。いくつかの実施形態において、平均孔径は5~10ナノメートルである。いくつかの実施形態において、平均孔径は10~50ナノメートルである。いくつかの実施形態において、平均孔径は50~100ナノメートルである。いくつかの実施形態において、平均孔径は15~40ナノメートルである。いくつかの実施形態において、平均孔径は、1~50ナノメートル、例えば約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、及び/又は50である。いくつかの実施形態において、平均孔径は、100~1000ナノメートルである。いくつかの実施形態において、1ナノメートル未満の細孔サイズが存在し得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、膜孔は、製剤中の治療剤などの溶解物質の流体力学的直径と同じ大きさのオーダーである直径を有する。いくつかの実施形態において、細孔は、製剤中の溶解物質の流体力学的直径よりも小さい直径を有する。細孔のサイズが限定されているため、このような膜は、薬剤送達システムの製剤における溶解物質のサイズ排除フィルターとして機能し得る。
【0122】
いくつかの実施形態において、膜孔は、それらの水相を通って拡散する薬剤分子の分子直径サイズの1~5倍または1、2、3、4、もしくは5倍またはそれ以上の範囲である直径を有する。いくつかの実施形態において、膜孔は、米国特許出願第16/204890号に記載されるような直径を有する。これらの条件下では、薬剤放出速度が、典型的なフィック拡散に見られるように、リザーバと薬剤が放出される環境との間の濃度勾配によって制御されず、時間の経過とともに、より一定の放出速度に近づき得ることが達成され得ることが示されている。
【0123】
膜孔は、リザーバ内の治療剤と流体接触しており、治療剤の分子が細孔内外および装置の周囲環境に拡散することができる。経時的な放出速度のプロファイルは、任意の所望のプロファイルであり得る。いくつかの実施形態において、前記プロファイルは、リザーバの外への定期的なフィック拡散に従う、減少プロファイルである。いくつかの実施形態において、放出速度プロファイルは、非フィックな、一定速度又は一定速度に近いプロファイルなどである。一定速度プロファイルは、ゼロ次放出速度プロファイルと呼ばれることもある。いくつかの実施形態は、プロファイルにおける早期の時点での薬剤放出速度のスパイクを有する。いくつかの実施形態は、放出速度プロファイルにおける早期の時点での放出速度のゆっくりとした増加を有する。
【0124】
本開示の移植型薬剤送達システムは、1つ以上の膜を有することができる(
図1B参照)。例えば、移植型薬剤送達システムは、1、2、3、4、またはそれ以上の膜を有することができる。膜の種類には、ナノ多孔質および非多孔質膜が含まれる。異なるナノ多孔質膜は、同じまたは異なる孔径を有することができる。移植型薬剤送達システムが、それぞれ同じ孔径を有する複数の膜を有する場合、各膜は、治療剤のための拡散経路を提供することができる。あるいは、膜は、それぞれ、1つ以上の膜が治療剤のための拡散経路を提供しないように、異なる孔径を有することができる。いくつかの実施形態において、2つの膜が移植型薬剤送達システム中に存在するとき、1つの膜のみが治療剤の拡散経路を提供する。
【0125】
治療剤
【0126】
本開示のいくつかの実施形態は、「小分子薬剤」と呼ばれることもある低分子量治療剤を含む。本開示のいくつかの実施形態は、ペプチドおよびタンパク質、炭水化物および核酸、並びに糖タンパク質のようなそれらの組み合わせ等の高分子量治療剤を含む。
【0127】
本開示のいくつかの実施形態は、2種類以上の治療剤を含む。一つの例において、第1の治療剤は、
図1Bの左側の第1のリザーバ102bにあり、第2の治療剤は、
図1Bの右側の102bのように第2のリザーバにある。
【0128】
本開示の治療剤は、流体形態及び固体形態を含む、任意の所望の状態で存在し得る。
【0129】
本開示のいくつかの実施形態は、安定化を必要とする治療剤を含む。いくつかの実施形態において、安定化はpH制御剤によって提供される。
【0130】
本開示の実施形態によって提供される安定化機構は、化学的又は物理的機構、並びに両者の組み合わせを含む。
【0131】
多くのポリペプチドは、脱アミド化反応による分解を受けやすい、アスパラギン及び/又はグルタミン残基を含む。これらの脱アミド化反応速度はpHに依存し、典型的には、約6.0~約6.5付近または約6.5のpHレベルを超えて急速に加速し始める。同様に、異性化およびラセミ化などのその他の分解反応は、pH依存性であり得、本開示の実施形態によって制御可能であり得る。
【0132】
多くのポリペプチドは、可逆的または不可逆的な形態で凝集する傾向を有し、かつ凝集の傾向は、ポリペプチドの等電点で最大に達することが多い。等電点から離れたpHレベルを維持することによって、本開示の実施形態は、ポリペプチド凝集の傾向を軽減させ得る。
【0133】
任意の好適な治療剤を、本開示の実施形態に組み込むことができる。例えば、治療剤は、約1000g/mol未満、または約750g/mol未満、または約500g/mol未満の分子量を有するものなどの、小分子薬剤であり得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、タクリン、メマンチン、リバスチグミン、ガランタミン、ドネペジル、レベチラセタム、レパグリニド、アトルバスタチン、アレファセプト、タダラフィル、バルデナフィル、シルデナフィル、フォサンプレナビル、オセルタミビル、バラシクロビルおよびバルガンシクロビル、アバレリックス、アデフォビル、アルフゾシン、アロセトロン、アミフォスチン、アミオダロン、アミノカプロン酸、アミノヒップリン酸ナトリウム、アミノグルテチミド、アミノレブリン酸、アミノサリチル酸、アムロジピン、アムサクリン、アナグレリド、アナストロゾール、アプレピタント、アリピプラゾール、アスパラギナーゼ、アタザナビル、アトモキセチン、アントラサイクリン、ベキサロテン、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブスルファン、カベルゴリン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシン、シラスタチンナトリウム、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、カンプトテシン、13-シスレチノイン酸、オールトランスレチノイン酸;ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダプトマイシン、ダウノルビシン、デフェロキサミン、デキサメタゾン、ジクロフェナク、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、デュタステリド、エレトリプタン、エムトリシタビン、エンフビルチド、エプレレノン、エピルビシン、エストラムスチン、エチニルエストラジオール、エトポシド、エキセメスタン、エゼチミブ、フェンタニル、フェキソフェナジン、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタルニド、フルチカゾン、フォンダパリヌクス、フルベストラント、ガンマヒドロキシブチレート、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、エピネフリン、L-ドーパ、ヒドロキシ尿素、イコデキストリン、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、イトラコナゾール、ゴセレリン、ラロニダーゼ、ランソプラゾール、レトロゾール、ロイコボリン、レバミゾール、リシノプリル、ロボチロキシンナトリウム、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メマンチン、メルカプトプリン、メキノール、酒石酸水素メタラミノール、メトトレキセート、メトクロプラミド、メキシレチン、ミグルスタット、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、モダフィニル、ナロキソン、ナプロキセン、ネビラピン、ニコチン、ニルタミド、ニタゾキサニド、ニチシノン、ノルエチンドロン、オクトレオチド、オキサリプラチン、パロノセトロン、パミドロネート、ペメトレキセド、ペルゴリド、ペントスタチン、ピルカマイシン、ポルフィマー、プレドニゾン、プロカルバジン、プロクロルペラジン、オンダンセトロン、パロノセトロン、オキサリプラチン、ラルチトレキセド、ロスバスタチン、シロリムス、ストレプトゾシン、ピメクロリムス、セルタコナゾール、タクロリムス、タモキシフェン、テガセロド、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、テトラヒドロカンナビノール、タリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チオトロピウム、トピラメート、トポテカン、トレプロスチニル、トレチノイン、バルデコキシブ、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ボリコナゾール、ドラセトロン、グラニセトロン、ホルモテロール、フルチカゾン、ロイプロリド、ミダゾラム、アルプラゾラム、アンホテリシンB、ポドフィロトキシン、ヌクレオシド抗ウイルス剤、アロイルヒドラゾン、スマトリプタン、エレトリプタン; マクロライド、例えばエリスロマイシン、オレアンドマイシン、トロレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、ダベルシン、アジスロマイシン、フルリスロマイシン、ジリスロマイシン、ジョサマイシン、スピロマイシン、ミデカマイシン、ロラタジン、デスロラタジン、ロイコマイシン、ミオカマイシン、ロキタマイシン、アンジスロマイシン、およびスウィノライドA; フルオロキノロン類、例えば、シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロバフロキサシン、アラトロフロキサシン、モキシフロキシシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、ゲミフロキサシン、グレパフロキサシン、ロメフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロキサシン、ペフロキサシン、アミフロキサシン、フレロキサシン、トスフロキサシン、プルリフロキサシン、イルロキサシン、パズフロキサシン、クリナフロキサシン、およびシタフロキサシン; アミノグリコシド、例えばゲンタマイシン、ネチルマイシン、パラメシン、トブラマイシン、アミカシン、カナマイシン、ネオマイシン、およびストレプトマイシン、バンコマイシン、テイコプラニン、ランポラニン、ミデプラニン、コリスチン、ダプトマイシン、グラミシジン、コリスティメート; ポリミキシン、例えばポリミキシンB、カプレオマイシン、バシトラシン、ペネム;ペニシリンG、ペニシリンVのようなペニクリナーゼ感受性薬剤を含むペニシリン;メチシリン、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フロキサシリン、フロキサシリン、ナフシリンなどのペニシリナーゼ耐性剤;アンピシリン、アモキシシリン、およびヘタキリン、シリン、並びにガランピシリンのようなグラム陰性微生物活性剤;カルベニシリン、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、およびピペラシリンのような抗シュードモナスペニシリン;セフポドキシム、セフプロジル、セフトブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セファロチン、セファピリン、セファレキシン、セフラドリン、セフォキシチン、セファマンドール、セファゾリン、セファロリジン、セファクロル、セファドロキシル、セファログリン、セフロキシム、セフォラニド、セフォタキシム、セファトリジン、セファセトリル、セフェトリル、セフェピム、セフィキシム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォテタン、セフメタゾール、セフタジジム、ロラカルベフ、およびモキサラクタム、モノバクタム類(アズトレオナムなど)のようなセファロスポリン;並びにイミペネム、メロペネム、およびエルタペネムなどのカルバペネム、ペンタミジンイセチオネート、硫酸アルブテロール、リドカイン、硫酸メタプロテレノール、ジプレピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド、サルメテロール、臭化イプラトロピウム、フルニソリド、クロモリンナトリウム、および酒石酸エルゴタミン;パクリタキセルなどのタキサン;SN-38、またはティルホスチンであり得る。治療剤はまた、パラアミノ馬尿酸ナトリウム、アンホテリシンB、ドキソルビシン、アミノカプロン酸、アミノレブリン酸、アルニノサリチル酸、酒石酸水素メタラミノール、パミドロネート二ナトリウム、ダウノルビシン、レボチロキシンナトリウム、リシノプリル、シラスタチンナトリウム、メキシレチン、セファレキシン、デフェロキサミン、またはアミフォスチンであり得る。
【0134】
本開示において有用なその他の治療剤は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体などを含み得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、GM-CSF、インターフェロンα、インターフェロンβ、ヒト成長ホルモン、イミグルセラーゼ、またはRANKリガンドであり得る。その他の実施形態において、治療剤は、Aβ、アガルシダーゼ、アレファプト、アルカリホスファターゼ、アスパリギナーゼ、アムドキソビル(DAPD)、アンチド、ベカプレルミン、A及びB型並びにボツリヌス毒素活性を有する低分子量化合物を含むボツリヌス毒素、カルシトニン、CD1d、シアノビリン、デニロイキンジフチトックス、エリスロポエチン(EPO)、EPOアゴニスト、ドルナーゼα、赤血球形成刺激タンパク質(NESP)、第V因子、第VII因子、第VIIa因子、第VIII因子、Bドメイン欠失第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XII因子、第XIII因子、フォンビルブランド因子などの凝固因子;セレダーゼ、Fcガンマr2b、セレザイム、α-グルコシダーゼ、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼ、コラーゲン、シクロスポリン、αデフェンシン、βデフェンシン、デスモプレシン、エキセンディン-4(EXENATIDE(登録商標))などのGLP-1類似体、サイトカイン、サイトカイン受容体、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、トロンボポエチン(TPO)、α-1プロテイナーゼ阻害剤、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、フィブリノーゲン、フィルグラスチム、成長ホルモンヒト成長ホルモン(hGH)、ソマトロピン、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、GRO-β、GRO-β抗体、骨形態形成タンパク質-2、骨形態形成タンパク質-6、副甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、OP-1等の骨形成タンパク質;酸性線維芽細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、線維芽細胞増殖因子21、CD40リガンド、ICOS、CD28、B7-1、B7-2、TLRおよびその他の自然免疫受容体、ヘパリン、ヒト血清アルブミン、低分子量ヘパリン(LMWH)、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンω、インターフェロンτ、コンセンサスインターフェロン;インターロイキンおよびインターロイキン受容体、例えばインターロイキン-1受容体、インターロイキン-2、インターロイキン-2融合タンパク質、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-4受容体、インターロイキン-6、インターロイキン-8、インターロイキン-12、インターロイキン-17、インターロイキン-21、インターロイキン-13受容体、インターロイキン-17受容体;ラクトフェリンおよびラクトフェリン断片、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、インスリン、プロインスリン、インスリン類似体、アミリン、C-ペプチド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチン類似体、バソプレシン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、イミグルセラーゼ、インフルエンザワクチン、インスリン様成長因子(IGF)、インスリンイントロピン、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、プラスミノーゲン活性化剤、例えばアルテプラーゼ、ウロキナーゼ、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼ、パミテプラーゼ、ラノテプラーゼ、およびテネテプラーゼ;神経成長因子(NGF)、trk A、trk B、オステオプロテゲリン、血小板由来成長因子、組織成長因子、トランスフォーミング増殖因子-1、血管内皮増殖因子、白血病抑制因子、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、グリア成長因子(GGF)、T細胞受容体、CD分子/抗原、腫瘍壊死因子(TNF)(例えば、TNF-αおよびTNF-β)、TNF受容体(例えば、TNF-α受容体およびTNF-β受容体)、CTLA4、CTLA4受容体、単球化学誘引性タンパク質-1、内皮増殖因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、PTHrP、グルカゴン様ペプチド、ソマトトロピン、サイモシンα1、ラスブリカーゼ、サイモシンα1IIb/IIIa阻害剤、サイモシンβ10、サイモシンβ9、サイモシンβ4、α-1アンチトリプシン、ホスホジエステラーゼ(PDE)化合物、VLA-4(非常に後期抗原-4)、VLA-4阻害剤、ビスフォスポン酸塩、呼吸器合胞体ウイルス抗体、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌/透過性増加タンパク質(BPI)、および抗CMV抗体であり得る。例示的なモノクローナル抗体は、エタネルセプト(IgG1のFc部分に連結されたヒト75kD TNF受容体の細胞外リガンド結合部分からなる二量体融合タンパク質)、アブシキシマブ、アダリムマブ、アフェリモマブ、アレムツズマブ、Bリンパ球に対する抗体、アトリズマブ、バシリキシマブ、ベバシズマブ、ビシロマブ、ベルティリムマブ、CDP-484、CDP-571、CDP-791、CDP-860、CDP-870、セツキシマブ、クレノリキシマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エクレコロマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、フォントリズマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、インフリキシマブ、イノリモマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、レルデリムマブ、オリズマブ、放射性標識lym-1、メテリムマブ、メポリズマブ、ミツモマブ、ムロモナド-CD3、ネバクマブ、ナタリズマブ、オドゥリモマブ、オマリズマブ、オレゴボマブ、パリビズマブ、ペムツモマブ、ペクセリズマブ、rhuMAb-VEGF、リツキシマブ、サツモマブペンデチド、セビルマブ、シプリズマブ、トシツモマブ、I131トシツマブ、トラスツズマブ、ツビルマブ、ビシリズマブ、又はこれらのフラグメントもしくは模倣体を含む。
【0135】
その他の実施形態において、治療剤は、融合タンパク質であり得る。例えば治療剤は、1つ以上の特定の有用なペプチド配列が融合された、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンの一部であり得る。前記治療剤はまた、抗体Fc断片を含有し得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、治療剤は、ヒトタンパク質またはヒトポリペプチド、例えば、異種的に産生されたヒトタンパク質またはヒトポリペプチドであり得る。対応するヒト形態が存在する多数のタンパク質およびポリペプチドが、本明細書に開示される(すなわち、タンパク質またはペプチドは、通常ヒト体内のヒト細胞において産生される)。ヒトタンパク質の例としては、非限定的に、ヒト抗体、ヒト酵素、ヒトホルモン及びヒトサイトカイン、例えば、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、インターフェロン(例えば、αインターフェロン及びβインターフェロン)、ヒト成長ホルモンおよびエリスロポエチンが挙げられる。
【0137】
治療剤のその他の例には、非限定的に、第VIII因子、第VIII因子のbドメイン欠失体、第VIIa因子、第IX因子、第X因子、抗凝固剤;ヒルジン、アルテプラーゼ、tpa、レテプラーゼ、tpa、tpa-3の5ドメイン欠失体、インスリン、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、長時間作用型インスリン類似体、補体C5、hgh、グルカゴン、tsh、フォリトロピン-β、fsh、gm-csf、pdgh、ifn α2、ifn α2a、ifn α2b、inf-α1、コンセンサスifn、ifn-β、ifn-β1b、ifn-β1a、ifn-γ(例えば、1および2)、ifh-λ、ifn-δ、it-2、il-11、hbsag、ospa、t-リンパ球抗原に対するマウスマブ、tag-72に対するマウスマブ、腫瘍会合糖タンパク質、血小板表面受容体gpII(b)/III(a)に対するキメラマブに由来するファブフラグメント、腫瘍会合抗原ca125に対するマウスマブフラグメント、リジルオキシダーゼ、LOX2、ヒト癌胚抗原に対するマウスマブフラグメント、cea、ヒト心臓ミオシンに対するマウスマブフラグメント、腫瘍表面抗原psmaに対するマウスマブフラグメント、hmw-maaに対するマウスマブフラグメント(fab/fab2ミックス)、癌腫関連抗原に対するマウスマブフラグメント(fab)、nca 90に対するマブフラグメント(fab)、表面顆粒球非特異的交差反応抗原、bリンパ球の表面に見出されるcd20抗原に対するキメラマブ、il2受容体のアルファ鎖に対するヒト化マブ、il2受容体のアルファ鎖に対するキメラマブ、tnf-αに対するキメラマブ、呼吸器シンクチアルウイルスの表面上のエピトープに対するヒト化マブ、彼女2に対するヒト化マブ、ヒト上皮成長因子受容体2、サイトケラチン腫瘍会合抗原抗ctla4を対象とするヒトマブ、bリンパ球のcd20表面抗原を対象とするキメラマブ、ドルナーゼ-αdnase、βグルコセレブロシダーゼ、tnf-α,il-2-ジプテリア毒素融合タンパク質、tnfr-lggフラグメント融合タンパク質ラロニダーゼ、ドナーゼ、アレファセプト、ダルベポエチンα(コロニー刺激因子)、トシツモマブ、マウスマブ、アレムツズマブ、ラスブリカーゼ、アガルシダーゼβ、テリパラチド、副甲状腺ホルモン誘導体、アダリムマブ(lgg1)、アナキンラ、生物学的調節剤、ネシリチド、ヒトb型ナトリウム利尿ペプチド(hbnp)、コロニー刺激因子、ペグビソマント、ヒト成長ホルモン受容体アンタゴニスト、組換え活性化プロテインc、オマリズマブ、免疫グロブリンe(lge)遮断薬、ルブリツモマブチウキセタン、ACTH、グルカゴン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、サイモシン、副甲状腺ホルモン、色素ホルモン、ソマトメジン、エリスロポエチン、黄体形成ホルモン、絨毛性ゴナドトロピン、眼下部放出因子、エタネルセプト、抗利尿ホルモン、プロラクチンおよび甲状腺刺激ホルモンが挙げられる。
【0138】
治療剤のさらなる例としては、非限定的に、転移性乳癌患者の治療のためのヒト化抗HER2モノクローナル抗体であるHERCEPTIN(商標)(Trastuzumab)(Genentech, CA);血餅形成の予防のための血小板上の抗糖タンパク質IIb / IIIa受容体であるREOPRO(商標)(アブシキシマブ)(Centocor);急性腎同種移植片拒絶反応の予防のための免疫抑制性ヒト化抗CD25モノクローナル抗体であるZENAPA(商標)(ダクリズマブ)(ロシュファーマシューティカルズ、スイス);マウス抗17-IA細胞表面抗原IgG2a抗体であるパノレック(商標)(グラクソウェルカム/セントコア);マウス抗イディオタイプ(GD3エピトープ)IgG抗体であるBEC2(イムクローン系); キメラ抗EGFR IgG抗体であるIMC-C225(イムクローン系);ヒト化抗αVβ3インテグリン抗体であるビタキシン(商標)(Applied Molecular Evolution/MedImmune);カンパス;ヒト化抗CD52 IgG1抗体(ロイコサイト)であるCampath 1H/LDP-03;ヒト化抗CD33 IgG抗体であるスマートM195(プロテインデザインラボ/カネボウ);キメラ抗CD2O IgG1抗体であるリツキサン(商標)(IDECファーム/ジェネンテック、ロシュ/ゼッティアク); ヒト化抗CD22 IgG抗体であるリンパ球(商標)(イムノメディクス);ICM3はヒト化抗ICAM3抗体(アイコスファーム)である。IDEC-114は霊長類の抗CD80抗体(IDECファーム/三菱)である。ゼバリン(商標)は放射性標識されたマウス抗CD20抗体(IDEC/Schering AG)である。IDEC-13lはヒト化抗CD40L抗体(IDEC/エーザイ)である。IDEC-151は霊長類化抗CD4抗体(IDEC)である。IDEC-152は霊長類化抗CD23抗体(IDEC/生化学);SMART抗CD3は、ヒト化抗CD3 IgG(タンパク質デザインラボ)です。5G1.1は、ヒト化抗補体因子5(CS)抗体(アレクシオンファーム)である。D2E7はヒト化抗TNF-α抗体(CATIBASF)である。CDP870は、ヒト化抗TNF-α Fabフラグメント(セルテック社)である。IDEC-151は霊長類化抗CD4 IgG1抗体(IDEC Pharm/SmithKline Beecham)である。MDX-CD4は、ヒト抗CD4 IgG抗体(メガレックス/エーザイ/ゲンマブ);CDP571は、ヒト化抗TNF-α IgG4抗体(セルテック社)である。LDP-02はヒト化抗α4β7抗体(ロイコサイト/ジェネンテック)である。オルソクローンOKT4Aは、ヒト化抗CD4 IgG抗体(オルトバイオテクノロジー)である。ANTOVATMはヒト化抗CD40L IgG抗体(バイオジェン)である。アンテグレン(商標)はヒト化抗VLA-4 IgG抗体(Elan)である。CAT-152、ヒト抗TGF-β2抗体(ケンブリッジAbテック); セツキシマブ(BMS)は、モノクローナル抗EGF受容体(EGFr)抗体である;ベバシズマ(Genentech)は、抗VEGFヒトモノクローナル抗体である。インフリキシマブ(Centocore、JJ)は、自己免疫疾患を治療するために使用されるキメラ(マウスおよびヒト)モノクローナル抗体である。ゲムツズマブオゾガミシン(ワイス)は、化学療法に使用されるモノクローナル抗体である。ラニビズマブ(Genentech)は、黄斑変性症の治療に使用されるキメラ(マウスおよびヒト)モノクローナル抗体が挙げられる。
【0139】
その他の抗体、例えば単一ドメイン抗体もまた、本開示において有用である。単一ドメイン抗体(sdAb、AblynxによってNanoneと呼ばれる)は、単一のモノマー可変抗体ドメインからなる抗体断片である。抗体全体と同様に、sdAbは特定の抗原に選択的に結合することができる。分子量がわずか12~15kDaの単一ドメイン抗体は、一般的な抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さい。単一ドメイン抗体は、約110アミノ酸長のペプチド鎖であり、重鎖抗体、または共通のIgGの1つの可変ドメイン(VH)を含む。
【0140】
いくつかの実施形態において、治療剤は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質であり得る。いくつかの実施形態において、治療剤は、β-グルコセロブロシダーゼ、インターフェロンα、インターフェロンβ、アガシダーゼα、アガシダーゼβ、エキセナチド、ヌトロピン/ソマトロピン、第VIII因子、フォンダパリヌクス、アルデスロイキナンド、リスペリドン、フォリゲリモド、NP融合タンパク質、IL-12、メラノサイト刺激ホルモン、またはバピネウズマブであり得る。
【0141】
特定の例において、治療剤の量は、リザーバ内の製剤の0.1%~約50% w/wの間、例えば約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、および/または40%w/wである。特定の例において、治療剤の量は、製剤の1%~約30% w/wの間である。特定の例において、治療剤の量は、製剤の1%~約20% w/wの間である。特定の例において、治療剤の量は、製剤の1%~約10% w/wの間である。
【0142】
特定の例において、リザーバ内の治療剤の量は、約1.0mg~1,000mg、またはさらに高く例えば10グラムまでである。特定の例において、約1mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650 mg、675 mg、700 mg、725 mg、750 mg、775 mg、800 mg、825 mg、850 mg、875 mg、900 mg、925 mg、950 mg、975 mg、及び/又は1000 mg。特定の例において、治療剤の量は約1.0mg~100mg;または約1.0mg~40mg;または約1.0mg~30mg;または約1.0mg~20mg;または約1.0mg~10mg;または約0.1~約10mg、例えば、約0.5mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、及び/又は10mgである。
【0143】
本装置および製剤のいくつかの実施形態では、治療剤はインクレチン模倣体である。
【0144】
本開示のインクレチン模倣体は、非限定的に、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド、コタズチド、デュラグルチド、アルビグルチド、リキシセナチド、シタグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、およびリナグリプチンを含む。本開示のいくつかの実施形態において、1つ以上のインクレチン模倣体が存在し得る。本開示のいくつかの実施形態において、インクレチン模倣体はエキセナチドである。
【0145】
特定の例において、インクレチン模倣体は、製剤の0.1%~約50%w/wの間、例えば約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、及び/又は40% w/wである。特定の例において、インクレチン模倣体の量は、製剤の1%~約30% w/wの間である。特定の例において、インクレチン模倣体の量は、製剤の1%~約20% w/wの間である。特定の例において、インクレチン模倣体の量は、製剤の1%~約10% w/wの間である。
【0146】
特定の例において、エキセナチドの量は、製剤の0.1%~約40% w/wの間であり、例えば約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、および/または40%w/wである。特定の例において、エキセナチドの量は、製剤の1%~約30% w/wの間である。特定の例において、エキセナチドの量は、製剤の1%~約20% w/wの間である。特定の例において、エキセナチドの量は、製剤の1%~約10% w/wの間である。
【0147】
特定の例において、治療剤は、エキセナチドなどのインクレチン模倣体である。特定の例では、リザーバ内のエキセナチドなどのインクレチン模倣体の量は、約1.0mg~1,000mgまたはさらに高い(最大10グラムなど)量である。特定の例において、約1 mg、25 mg、50 mg、75 mg、100 mg、125 mg、150 mg、175 mg、200 mg、225 mg、250 mg、275 mg、300 mg、325 mg、350 mg、375 mg、400 mg、425 mg、450 mg、475 mg、500 mg、525 mg、550 mg、575 mg、600 mg、625 mg、650 mg、675 mg、700 mg、725 mg、750 mg、775 mg、800 mg、825 mg、850 mg、875 mg、900 mg、925 mg、950 mg、975 mg、及び/又は1000 mg。特定の例において、エキセナチドなどのインクレチン模倣体の量は、約1.0mg~100mg;又は約1.0mg~40mg;又は約1.0mg~30mg;又は約1.0mg~20mg;又は約1.0mg~10mg;又は約0.1~約10mg、例えば、約0.5mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、及び/又は10mgである。
【0148】
本開示のいくつかの実施形態において、治療剤を含む培地のpH制御は、所望の期間にわたって治療剤の安定性を維持するために必要である。
【0149】
本開示の治療薬の所望のpHは、治療薬の溶液を所望のpHに滴定することによって設定することができる。多くの例において、市販の形態の治療剤は、安定性のために最適なpHで既に製剤化されている。
【0150】
pH調整が必要な場合、pH調整は治療剤を適切な追加成分と共製剤化することによって、本開示のリザーバ内で行うことができる。他の例において、リザーバ内に配置する前に治療剤のpHを調整することが望ましい場合がある。
【0151】
本開示に記載の完全な実施形態を調製する目的で、水和時に正しいpHを生じさせるように処理された治療剤の乾燥粉末を使用することが有利であり得る。前記乾燥粉末は、溶液中での治療剤の乾燥または凍結乾燥を含む任意の適切な調製方法で調製され得る。ペプチドおよびタンパク質製剤の調製のためには凍結乾燥が好ましいことが多い。
【0152】
安定化剤
【0153】
本開示のいくつかの実施形態は、複数の安定化基を有するポリマーの形態の安定化剤を含む。本開示のいくつかの実施形態において、安定化基は、pH感受性基、例えば酸性基、塩基性基、またはそれらの組み合わせを含む。
【0154】
いくつかの実施形態において、単一種のpH感受性基がポリマー上に存在し、いくつかの実施形態において種々のpH感受性基が存在する。いくつかの実施形態において、pH感受性基は、弱酸性基である。いくつかの実施形態では、弱酸性基は、アクリル酸モノマー残基上又はメタクリル酸モノマー残基上、もしくは両方の組み合わせで存在する。
【0155】
本開示のいくつかの実施形態において、ポリマー安定化剤は、本質的に不溶性の形態で存在する。
【0156】
いくつかの実施形態において、本質的に不溶性の形態は、架橋剤をポリマーに組み込むことによって得られる。
【0157】
いくつかの架橋ポリマー安定化剤は、架橋ポリ酸と呼ばれ得る。周知の架橋ポリ酸には、架橋ポリアクリル酸などの弱酸性材料および架橋ポリスチレンスルホン酸などの強酸性材料、ならびに3級アミン基を有する架橋ポリアクリレート骨格などの弱塩基性材料、および第4級アンモニウム基を有する架橋ポリスチレン骨格などの強塩基性材料が含まれる。これらの材料は、イオン交換樹脂(IER)として使用されることが多く、市販のイオン交換樹脂は、本開示における安定化剤としての使用に潜在的に適している。
【0158】
本開示のいくつかの実施形態において、弱酸性または弱塩基性イオン交換樹脂(IER)が存在する。弱酸性または弱塩基性イオン交換樹脂は、緩衝系を形成するそれらの能力を採用することによって有利に使用され得る。緩衝系は、本質的に、弱酸または弱塩基と、それぞれの共役塩基または酸(塩)との混合物である。例えば、弱酸性緩衝液は、カルボン酸R-COOHのような一定量の有機酸を、ナトリウム塩R-COO-Na+のような共役塩基と共に含み得る。同様に、弱塩基性緩衝液は、アミンR-NH2をHCl塩R-NH3
+ Cl-のような共役酸と共に含み得る。
【0159】
緩衝液系のpHは、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式で説明されるように、酸のpKaと共役酸と共役塩基の濃度の比によって決定される:
【0160】
【0161】
ここで、[A-]は共役塩基の濃度、[HA+]は共役酸の濃度である。経験則として、緩衝液系に使用可能な緩衝液範囲は、製剤中の酸のpKaより2単位低いpHレベルと、それより2単位高いpHレベルの間である。好ましい緩衝液範囲は、酸のpKaより1単位低いpHレベルとそれより1単位高いpHレベルとの間のものである。
【0162】
例えば、約4.7のpKaを有する酢酸に使用可能な緩衝液範囲は、約2.7~約6.7の間である。一緩衝液範囲では、約3.7~約5.7の間のpHである。
【0163】
緩衝架橋ポリマー安定化剤の使用は、安定性を維持するために、限られたpH範囲を必要とする治療剤との組み合わせにおいて、特に有利であり得る。
【0164】
本開示の酸性基の例としては、非限定的に、カルボン酸、炭酸、スルホン酸、スルフィン酸、スルフェン酸、ホスホン酸及びホスフェン酸が含まれる。
【0165】
本開示の塩基性基の例としては、非限定的に、第一級、第二級、第三級アミン及び四級アンモニウム基が含まれる。
【0166】
いくつかの実施形態において、安定化基は、NE Goodおよび彼の研究チームによって開発された、いわゆる「グッドバッファー」に基づいている。これらの双性イオン緩衝液は、生物学的緩衝液が満たさなければならない要件のほとんどを満たす。
【0167】
本開示のポリマーは、様々なアーキテクチャ、例えば、直鎖状、分岐状、超分枝状、星状、樹枝状、架橋状、櫛型などに存在し得る。
【0168】
本開示のポリマー骨格は、非限定的に付加及び縮合ポリマーを含む。
【0169】
ポリマー骨格は、ホモポリマー又はコポリマーであってよい。コポリマーには、非限定的に、ランダムコポリマー及びブロックコポリマーが含まれる。
【0170】
付加ポリマー骨格としては、非限定的に、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及びポリスチレンが挙げられる。
【0171】
縮合ポリマーとしては、非限定的に、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリウレア、ポリスルフィドおよびポリシロキサンが挙げられる。
【0172】
付加ポリマーのための架橋剤は、当技術分野において周知であり、限定はされないが、多種多様な二官能性オレフィン、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート及びメチレンビスアクリルアミドを含む。架橋剤のさらなるリストは、Sigma Aldrichウェブサイトのような商業ウェブサイトなど、一般的にアクセス可能な文献で入手可能である。
https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Aldrich/Technical_Ads/al_ms_ad10_crslking_agents.pdf
【0173】
縮合ポリマーの架橋は、線状ポリマー主鎖に使用される二官能性モノマー建築ブロックの三官能性または四官能性単量体類似体を含むことによって達成されることが多い。
【0174】
本開示のいくつかの実施形態において、非安定化モノマーは、ポリマー安定化剤のポリマー鎖中に存在し得る。例えば、本開示のいくつかの実施形態において、酸性または塩基性モノマー以外のアクリルモノマー、例えばメチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートモノマーが存在し得る。
【0175】
いくつかの実施形態において、単一種のポリマーが存在し、いくつかの実施形態において、複数種のポリマーが存在する。
【0176】
架橋ポリマー安定化剤の使用は、治療剤放出装置で治療される対象の体内で長期間にわたって治療剤の有効荷重を放出するように設計された、徐放薬剤送達装置と組み合わせて特に有用であり得る。多くのペプチドおよびタンパク質を含む多くの治療剤は、一般的に使用される緩衝剤の分子サイズよりも有意に大きい分子サイズを有し、比較的低分子量の薬剤、例えば、酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩および他の低分子量種などであることが多い。そのような緩衝系は、サイズが小さいため、ペプチドやタンパク質などの大きな分子よりも移動度および輸送速度が高いことが多く、保護するように設計されている薬剤よりも早く徐放性治療剤送達装置から放出される傾向がある。本開示のいくつかの実施形態は、高分子ポリマー緩衝剤、ポリアクリルおよびポリメタクリル酸などのポリ酸、またはそれらの組み合わせなどを含む。
【0177】
それらの分子サイズを踏まえると、これらの巨大分子は、ナノ孔を通ってナノ多孔質膜を横断することができない可能性がある。いくつかの例において、これらの可溶性巨大分子は、溶液の粘度に有意な影響を及ぼし得、いくつかの例において望ましくない場合がある。
【0178】
これらのポリ酸のいくつかの形態は、架橋形態と同様に、本質的に非可溶性であり、膜を通して放出されるのを実質的に防止または遅延させる。本開示で使用されるいくつかの架橋ポリマー安定化剤は、本質的に、徐放性薬物送達装置からのそれらの放出を遮断する巨視的サイズを有する超分子構造である。
【0179】
本開示に記載の架橋ポリマーは、任意の所望の物理形態において使用され得る。
【0180】
いくつかの実施形態において、架橋ポリマーは、微粉砕粉末から粗いビーズまでの範囲の粒子形態で存在し得る。平均粒径範囲は、約1マイクロメートルから本開示のリザーバ内に収まる任意のサイズまでであり得る。いくつかの例において、1マイクロメートル未満の平均粒径範囲が存在し得る。
【0181】
いくつかの実施形態において、粒子の直径は、1マイクロメートル~数ミリメートル、例えば5ミリメートルまでであり得る。いくつかの例において、5ミリメートルを超える粒子が存在し得る。粒径範囲および分布は、特定の用途のニーズまたは嗜好に基づいて決定され得る。いくつかの例では、微粉末が好まれ得、およそ10~100マイクロメートルの間の粒度分布が好適であり得る。その他の例において、ビーズが好まれ得、およそ50~250マイクロメートルの間の粒径が適切であり得る。
【0182】
例えば、本開示の実施形態の粒径は、1~10マイクロメートル、または1~100マイクロメートル、または1~1,000マイクロメートル、または1~5,000マイクロメートル、または10~100マイクロメートルまたは10~1,000マイクロメートル、または10~5,000マイクロメートル、または100~1,000マイクロメートル、または100~5,000マイクロメートル、または1,000~5,000マイクロメートル、または1~5000マイクロメートルの間の任意のサイズ範囲からであり得る。
【0183】
粒径範囲は、10マイクロメートルと1ミリメートルとの間であってもよく、より好ましい粒径範囲は、100マイクロメートルと1ミリメートルとの間であってもよい。
【0184】
粒子形状は、懸濁重合プロセスから得られるもののような、球状または球状粒子に近い等の、規則的または半規則的なものであり得る。その他の例において、粒子は、粉砕プロセスから生じるもののような、不規則な形状であり得る。いくつかの例において、ポリマーは、円柱、立方体、球体、長楕円形等の特定の形状で存在し得る。いくつかの例において、形状は、送達装置に特異的に合わせられてもよく、例えば、装置のリザーバの内径と一致するように円筒状に成形されたポリマーである。
【0185】
いくつかの例において、異なる物理的形状の混合物が使用され得る。
【0186】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、ポリマーのバルク全体にわたる分子およびイオンの輸送を容易にするために、多孔質構成で使用され得る。
【0187】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、緻密または低多孔性構成で使用され得る。
【0188】
いくつかの例において、ポリマーは水和形態において、比較的剛直であり得る。典型的には、そのようなポリマーは、水の取り込み中の膨潤を制限するために、5%(w/w)以上のような高い架橋度を有する。いくつかの例において、ポリマーは、水和形態で、軟質およびゲル状の物質であり得る。典型的に、このような構成は、1%(w/w)以下など、架橋度が低くなる。正確な所望の架橋の程度は、ポリマーの構成モノマーの親水性を含むいくつかの要因に依存し得、かつ実験的に決定され得る。
【0189】
本開示のいくつかの実施形態は、弱酸性イオン交換樹脂(IER)に基づくポリマー安定化剤を含む。弱酸性ポリマー安定化剤は、治療用ペプチドおよびタンパク質の安定化に特に有用であり得る。多くの治療用ペプチドおよびタンパク質は、アスパラギンをアスパラギン酸に変換する脱アミド化反応に対して特に脆弱なアスパラギン残基を含む。グルタミン残基は、反応速度は低いものの、同様の脆弱性を有する。
【0190】
脱アミド化反応は、高いまたは低いpHによって触媒することができ、特に約6.0~約6.5を超えるpHレベルで、特定のペプチドおよびタンパク質に応じて、これらの反応は、治療用ペプチドまたはタンパク質が製剤化される投与形態にとって許容できない速度で進行し得る。
【0191】
図2に見られるように、約5.0~6.0の間のpHレベルで、脱アミド化を受けやすいペプチドおよびタンパク質のpH駆動分解速度に鞍点が存在する可能性がある。本開示の1つの治療剤、エキセナチドは、pH6.5を超えて急速に低下する安定性半減期を有する。
【0192】
架橋ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸は、5.5~6.0の範囲のpKaレベルを有し、これは、それらの使用可能な緩衝液範囲を約3.5~8.0の間のpH範囲にして、それらの典型的に好ましいpH緩衝液範囲を約4.5~7.0の間のpH範囲にして、本開示の多くのペプチドおよびタンパク質に対してそれらを非常に好適な安定化剤にする。
【0193】
本開示の特定の文脈において、本開示の実施形態における緩衝範囲は、緩衝剤のpKaの2単位下まで低くてもよい。被験体の体内への移植時に、インプラント周囲の溶媒の生理学的pHは約pH7.4に近接するため、移植されたデバイスのリザーバ内の製剤とこの生理学的環境との間のプロトン交換は、製剤の内部pHを上昇させる傾向がある。組み込まれた緩衝液のpH範囲の下端で製剤を提供することは、所望により、追加の緩衝能を提供し得る。
【0194】
また、アクリル酸及びメタクリル酸は比較的小さいモノマーであるため、これらのモノマーのポリマー及びコポリマーは重量ベースで高密度の酸性基を保有しており、それらの安定化剤としての効果を高くする。いくつかの実施形態では、架橋ポリマー安定化剤は、架橋ポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸、またはそれらの混合物もしくはアクリルとメタクリル酸のコポリマーである。いくつかの実施形態において、架橋ポリマー安定化剤は、架橋ポリアクリル酸もしくはポリメタクリル酸、またはそれらの混合物もしくはアクリル及びメタクリル酸のコポリマーである。
【0195】
架橋ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸はイオン交換樹脂として商業的に用いられる。本開示のいくつかの実施形態において、イオン交換樹脂は安定化剤として使用される。潜在的に好適なイオン交換樹脂は、三菱化学株式会社によって「ダイヤイオン」の名称で、ピューロライト株式会社によって「ピューロライト」の名称で製造されている。いくつかの例において、ダイヤイオンWK40Lおよびピューロライト104plusならびにピューロライトC115は、ペプチドおよびタンパク質製剤の安定化に好適な安定化剤であり得る。その他のイオン交換樹脂としては、ダイヤイオンWK10、ダイヤイオンWK11、ダイヤイオンWK100、ダイヤイオンWT01Sなどが挙げられる。
【0196】
特定の例において、ポリマー安定化剤の量は、治療剤を含有する製剤の約0.1%から約25%w/w または50%w/w までである。特定の例において、ポリマー安定化剤の量は、約0.1%から約15%w/w または20%w/w までであり;または約1%~約12%w/w;または約2%~約10%w/w;または約5%~約15%w/w 、または約0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、および/または15%w/w である。
【0197】
特定の例において、リザーバ中のポリマー安定化剤の量は、約1.0mg~1,000mgであり、例えば約1 mg、25 mg、50 mg、75 mg、100 mg、125 mg、150 mg、175 mg、200 mg、225 mg、250 mg、275 mg、300 mg、325 mg、350 mg、375 mg、400 mg、425 mg、450 mg、475 mg、500 mg、525 mg、550 mg、575 mg、600 mg、625 mg、650 mg、675 mg、700 mg、725 mg、750 mg、775 mg、800 mg、825 mg、850 mg、875 mg、900 mg、925 mg、950 mg、975 mg、及び/又は1,000 mgである。特定の例において、ポリマー安定化剤の量は、約1.0mg~100mg;又は約1.0mg~50mg;又は約1.0mg~40mg;又は約1.0mg~30mg;又は約1.0mg~20mg;又は約1.0mg~10mg;又は約0.1~約15mg、例えば約0.5mg、1mg、1.5mg、2mg、2.5mg、3mg、3.5mg、4mg、4.5mg、5mg、5.5mg、6mg、6.5mg、7mg、7.5mg、8mg、8.5mg、9mg、9.5mg、10mg、10.5mg、11mg、11.5mg、12mg、12.5mg、13mg、13.5mg、14mg、14.5mg、15mgである。特定の例において、1~2グラムが用いられ得る。
【0198】
特定の例において、ポリマー安定化剤は、動作の間に移植型装置のリザーバ内に残る固体などの不溶性ポリマーである。特定の例において、ポリマー安定化剤は、動作の間に放出されない不溶性ポリマーである。特定の例において、ポリマー安定化剤は不溶性ポリマーであり、治療剤および残りの製剤との異種の固体混合物を形成する。特定の例において、ポリマー安定化剤は、ヒドロゲル、キセロゲルまたは治療剤の徐放のためのマトリックスを形成しない。特定の例において、ポリマー安定化剤は、移植型装置のリザーバ内に残る固体である。
【0199】
本開示のいくつかの実施形態において、安定化剤のpH制御は、所望の期間にわたって治療剤の安定性を維持するために必要である。本開示のポリマー安定化剤の所望のpHは、ある量の安定化剤の滴定によって、架橋ポリマー酸の場合にはNaOHなどの塩基での滴定によって、設定することができる。ポリマー酸の滴定は当技術分野において周知であり、本開示の安定化剤の滴定は、所望のpHレベルでの平衡化が達成されるまで、架橋ポリマー酸の微粒子の懸濁液を、NaOHのような適切な強度を有する塩基と共に撹拌することによって達成することができる。イオン交換樹脂の形態の安定化剤を用いた実験手順の背景は、教科書などの容易に入手可能な文献において見つけることができる。(例: Ion Exchange, F. Hellfferich, Dover Publications Inc. New York, 1995, P. 81-94) 。実施例3におけるピューロライトPPC104plusのpH調整を表1に示す。
【0200】
pH調整は、安定化剤を適切な追加成分と共製剤化することによって、本開示のリザーバ内で行うことができる。その他の例において、リザーバ内に安定化剤を配置する前にpHを調整することが望ましい場合がある。
【0201】
いくつかの実施形態において、水和時に正確なpHを生成するために予め処理された、ポリマー安定化剤の乾燥粉末または乾燥ビーズを使用することが好ましい場合がある。前記乾燥粉末またはビーズは、既知量の粉末またはビーズを適量の塩基と共にインキュベートし、次いで粉末またはビーズを濾過および乾燥することによって調製され得る。
【0202】
いくつかの実施形態は、架橋ポリマー安定化剤の水和時およびリザーバ内に治療剤が水性溶媒と共に存在する時に、製剤が所定のpHになる程度に、安定化剤のpH感受性基を部分的に中和するステップを含む。いくつかの実施形態において、pHは約3.5~約7の間、例えば3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、6.5、7.0または7.5である。いくつかの実施形態において、水性溶媒は装置が移植された対象の組織液である。
【0203】
ポリマー安定化剤およびそれらの組成物成分の上記の例の全ては、本開示の実施形態において使用することができると共に、高分子化学の分野における通常の熟練者は、本開示の実施形態の意図された目的に適した架橋ポリマー安定化剤を、同定および選択することができる。
【0204】
製剤
【0205】
本開示のいくつかの実施形態は、治療剤の製剤を含む。
【0206】
一実施形態において、本開示は治療用製剤を提供し、前記製剤は:
治療剤;及び
架橋ポリアクリル酸、架橋ポリメタクリル酸、又はそれらの混合物もしくはアクリルとメタクリル酸とのコポリマーからなる群より選択されるメンバーである、複数のpH感受性安定化基を有する不溶性高分子を含む高分子安定化剤;
を含む。
【0207】
いくつかの例において、pH感受性安定化基は、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が3.5~7.5の間のpHで発達する程度に中和される。
【0208】
いくつかの例において、pH感受性安定化基は、前記治療剤および前記安定化剤の、中性pHを有する水性溶媒との水和時に、流体が3.5~7.5の間、例えば約3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、及び/又は7.5のpHで発達する程度に中和される。
【0209】
本開示のいくつかの実施形態は、ポリマー安定化剤と共に治療剤の製剤を含む。
【0210】
本開示における任意の治療剤は、本開示における任意の安定化剤と組み合わせてもよい共に、適宜、治療剤安定化の分野における通常の技術のひとつによって決定され得る。
【0211】
本開示のいくつかの実施形態において、治療剤の製剤は、本開示の装置と組み合わされ得、前記装置は、移植用に構成されたカプセル、リザーバ、及び複数の孔を有するナノ多孔質膜を含む。膜はリザーバと流体接触してカプセルに取り付けられて、リザーバの外への治療剤のための経路を提供する。
【0212】
本開示のいくつかの製剤は、約5.0~約6.0の間のpHで、ペプチドまたはタンパク質とポリ酸とを含む。いくつかの製剤において、ペプチドはインクレチン模倣体である。いくつかの製剤において、インクレチン模倣体はエキセナチドである。いくつかの実施形態において、ポリ酸は、ポリアクリル酸またはポリメタクリル酸である。いくつかの実施形態において、ポリマー安定化剤は、ピューロライト104+又はピューロライトC115、もしくはピューロライトC104Plusもしくはその類似体である。
【0213】
本開示のいくつかの製剤は、水溶性塩を含む。種々の塩としては、非限定的に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、水溶性塩は、約1mM~1M;または10 mM~500 mM;または約70mM~約200mM;または約100mM~約170mM;または約140mM~約160mMの濃度であり得る。いくつかの例において、水溶性塩は、154mMの塩化ナトリウムであり得る。いくつかの例において、濃度が1mM未満または1M以上である塩が存在し得る。
【0214】
特定の例において、リザーバは、pH4.0~7.0の間で、安定化剤として約5~約20ミリグラムの架橋形態のメタクリル酸、および治療剤として約20~約60マイクロリットルの10%~50%(w/w)の間のエキセナチドの水溶液を含み、かつNaClを含有する。
【0215】
特定の例において、リザーバは、pH4.0~7.0の間で、安定化剤として約5~約20ミリグラムの架橋形態のポリアクリル酸、および治療剤として約20~約60マイクロリットルの10%~50%(w/w)の間のエキセナチドの水溶液を含み、かつNaClを含有する。
【0216】
特定の例において、リザーバは、pH4.0~7.0の間で、安定化剤として約5~約20ミリグラムの架橋形態のポリアクリル酸ならびに架橋メタクリル酸、および治療剤として約20~約60マイクロリットルの10%~50%(w/w)の間のエキセナチドの水溶液を含み、かつNaClを含有する。
【0217】
特定の例において、リザーバは、pH4.0~7.0の間で、安定化剤として約5~約20ミリグラムの、アクリル酸及びメタクリル酸のコポリマーの架橋形態、並びに治療剤として約20~約60マイクロリットルの10%~50%(w/w)の間のエキセナチドの水溶液を含み、かつNaClを含有する。
【0218】
本開示の製剤は、固体形態、ならびに流体形態、例えば溶液、懸濁液、エマルジョン、コロイドおよび分散液を含む、任意の所望の形態である治療剤を含み得る。本開示のいくつかの実施形態において、治療剤は、例えば正に荷電した治療剤と負に荷電した安定化剤との複合化によって、ポリマー安定剤との複合化形態で存在することができる。
【0219】
本開示の製剤は、医薬として許容される不活性成分、例えば緩衝剤、溶解度調節剤、界面活性剤、可溶性高分子量および低分子量安定剤、抗酸化剤、抗菌剤などをさらに含み得る。米国で現在市販されている医薬品に使用されている、潜在的に適切な不活性成分のリストは、米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイトで見つけることができる。
【0220】
本開示の製剤は、本開示中の任意の治療剤、および所望により、本開示における任意のポリマー安定化剤を含み得る。
【0221】
本開示のいくつかの実施形態は、1つ以上の治療剤の製剤の調製方法を提供する。いくつかの実施形態において、前記製剤はポリマー安定化剤を含む。本開示のいくつかの実施形態は、ポリマー安定化剤および治療剤を含有する、適切にpH調節された製剤を調製するための方法を含む。
【0222】
本開示のポリマー安定化剤および治療剤は、本開示の製剤中に任意の所望の方法で組み合わせられてもよい。得られた製剤は、乾燥粉末製剤および治療剤の流体製剤中のポリマー安定化剤の懸濁液を含む、任意の所望の物理的状態を有し得る。適切な流体製剤には、溶液、懸濁液、エマルジョン、コロイドおよび分散液が含まれる。
【0223】
治療剤およびポリマー安定化剤は、乾燥粉末として組み合わされてもよく、その後、液体ビヒクルが添加されるか、またはそれらを共に組み合わせる前に一方または両方の成分が液体ビヒクルに取り込まれてもよい。
【0224】
非経口使用を意図した製剤の場合、生理学的条件に類似した状態で製剤を提供することが望まれることが多く、いくつかの実施形態において、生理学的レベル(154mM)への塩化ナトリウム濃度の調整が好ましい場合がある。
【0225】
安定化の方法
【0226】
本開示のいくつかの方法は、治療剤を安定化剤と組み合わせることによって治療剤の安定化を提供し、前記安定化剤は安定化基を有するポリマー剤である。いくつかの実施形態において、前記安定化剤は不溶性ポリマー剤である。いくつかの実施形態において、前記不溶性ポリマー剤は、架橋ポリマー剤である。いくつかの実施形態において、前記安定化基はpH感受性基である。いくつかの実施形態において、前記pH感受性基は弱酸性基である。いくつかの実施形態において、前記弱酸性基は、アクリル酸モノマー残基上もしくはメタクリル酸モノマー残基上、または両方の組み合わせ上に存在する。
【0227】
本開示のいくつかの実施形態において、組み合わされた治療剤および安定化剤は、治療剤の徐放装置のカプセルのリザーバ内に配置されて、カプセルは移植用に構成される。カプセルは、米国特許番号9814867に記載されているチタニアナノチューブ膜などの少なくとも1つのナノ多孔質膜を有し、リザーバの外への治療剤の拡散経路を提供する。安定化剤の寸法は、膜の孔径よりも大きく、それによってリザーバからの安定化剤の放出を実質的に防止する。
【0228】
本開示のいくつかの実施形態において、安定化剤は緩衝系として使用され、リザーバ内の流体形態の治療剤のpHを所望の範囲内に維持する。いくつかの好ましい実施形態において、pH範囲は約3.5~約7.5の間である。いくつかの実施形態において、pH範囲は約5.0~約6.0の間である。
【0229】
本開示のいくつかの方法は、安定化剤上のpH感受性基の部分的な事前中和を含み、安定化剤の水和時に流体が所望の範囲内のpHで発達するように、部分中和された安定化剤を乾燥させる。本開示のいくつかの方法において、水和流体は、治療剤を含む。本開示のいくつかの方法において、水和はカプセルのリザーバ内で行われる。本開示のいくつかの方法において、水和はカプセルの外側で行われ、カプセルの充填は治療剤と安定化剤とを組み合わせた流体で行われる。
【0230】
本開示の方法は、ペプチドおよびタンパク質の安定化に特に有用であり得る。多くのペプチドおよびタンパク質は、約3.5~約7.5の間のpH範囲において最適な安定性を有する。いくつかのペプチドおよびタンパク質は、約5.0~約6.0の間のpH範囲において最適な安定性を有する。
【0231】
本開示のいくつかの実施形態において、治療剤はペプチド又はタンパク質である。いくつかの実施形態において、治療剤はインクレチン模倣体である。いくつかの実施形態において、インクレチン模倣体はエキセナチドである。
【0232】
対象の体内への本装置の移植に際し、リザーバ外へ治療剤の大量輸送が低分子量イオン化種と共に起こり、リザーバ外へのプロトンの正味輸送をもたらす。結果として生じるpHの上昇は、ポリマー上の安定化基のイオン化レベルの増加によって打ち消され、pH上昇速度の低下をもたらす。
【0233】
治療方法
【0234】
本開示のいくつかの実施形態は、本開示のデバイスおよび製剤を用いて対象における疾患又は健康状態を治療する方法を提供する。被験者には、ヒトおよび動物対象が含まれる。本方法は、治療剤および安定化剤を含む本開示の装置を提供し、該装置を対象に移植し、それにより疾患又は健康状態を治療するステップを含む。
【0235】
任意の好適な治療剤およびポリマーは、上述のように、本開示の方法において使用され得る。幾つかの実施形態において、治療剤はエキセナチドであり得る。
【0236】
任意の好適な型の糖尿病は、本開示の方法を用いて治療することができる。糖尿病という用語は、いくつかの異なる高血糖適応症を包含する。これらの状態には、1型(インスリン依存性真性糖尿病またはIDDM)及び2型糖尿病(非インスリン依存性真性糖尿病またはNIDDM)が含まれる。1型糖尿病患者に存在する高血糖は、血糖値を生理学的範囲内に維持するには不十分であるインスリンの欠乏、低下、または存在しないレベルと関連している。1型糖尿病の治療方法は、一般に非経口経路による置換用量のインスリンの投与を含む。
【0237】
2型糖尿病患者に存在する高血糖は、最初はインスリンの正常または上昇したレベルと関連している;しかしながら、これらの患者は、末梢組織および肝臓におけるインスリン抵抗性の状態、および疾患が進行するにつれて、インスリンの分泌に関与する膵臓β細胞の進行性の悪化のために、代謝恒常性を維持することができない。いくつかの実施形態において、糖尿病は、2型糖尿病であり得る。いくつかの実施形態において、糖尿病は1型糖尿病であり得る。いくつかの実施形態において、疾患は2型糖尿病であり得る。いくつかの実施形態において、疾患は1型糖尿病であり得る。
【0238】
特定の例において、本開示の治療薬に好適な1日用量範囲は、約0.1μg~約10,000μg、または約1μg~約1000μg、または約10μg~約750μg、または約25μg~約500μg、または約50μg~約250μgを含む。本開示の化合物の適切な1日の用量には、約1μg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000μgが含まれる。
【0239】
特定の例において、本開示は、例えば、エキセナチドなどのGLP-1類似体を投与することによって、糖尿病を治療する方法(例えば、血糖値を低下させる方法、または血糖制御を改善する方法)を提供する。移植型デバイスを用いて、GLP-1類似体は、約1μg~約100μg、又は10μg~約100μg、又は約10μg~約50μgの有効1日用量で投与される(例えば、移植型装置は、毎日約10μg~約100μg、または1日当たり約10μg~約50μgの範囲でのGLP-1類似体の放出を提供する)。
【0240】
糖尿病の治療に適した用量は、対象における治療剤の任意の適切な平均定常状態血漿濃度を提供することができる。例えば、平均定常状態血漿濃度は、10 pg/ml~10,000 ng/mlであり得る。いくつかの実施形態において、エキセナチドの平均定常状態血漿濃度は、170 pg/ml~600 pg/mlであり得る。いくつかの実施形態において、エキセナチドの平均定常状態血漿濃度は、170 pg/ml~350 pg/mlであり得る。いくつかの実施形態において、エキセナチドの平均定常状態血漿濃度は、170 pg/ml~290 pg/mlであり得る。
【0241】
特定の実施形態において、エキセナチド濃度は、少なくとも約12時間、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約1ヶ月、少なくとも約3ヶ月、または少なくとも約6ヶ月または1年以上などの期間でさえ、少なくとも約50 pg/mlのエキセナチドの平均または最小循環血漿レベルを達成するのに十分である。
【0242】
移植は、当業者に公知の任意の手段によって、例えば、中空針またはトロカールを用いた装置の皮下挿入を介して行うことができる。
【実施例】
【0243】
実施例1
【0244】
治療剤:酢酸エキセナチド(Bachem Holding AG, Switzerland)。
【0245】
安定化剤:ダイヤイオンWK40L(三菱化学株式会社、日本)。
【0246】
膜は、米国特許番号9814867に記載されるようなプロセスに基づいて開発された。
【0247】
膜をカプセルに取り付けるための50マイクロリットルポリカーボネートカプセル及びチタンスクリューキャップは、一般的に利用可能な機械加工方法によって調製した。
【0248】
シリコーンセプタは、高分子のインプレースキャストによって調製した。
【0249】
市販のシリコーンO-リングを、適切な接続部で装置を封止するために使用した。
【0250】
グループ1において、15mgの酢酸エキセナチドを、装置のリザーバに秤量した。
【0251】
グループ2において、10mgのエキセナチドおよび10mgのダイヤイオンwk40Lを装置のリザーバに秤量した。
【0252】
装置を、それらのチタンキャップにおける膜で密封し、続いて真空排気し、真空下で包装した。
【0253】
排気された装置を、-10 C~-20 Cの間の温度で、25 kGrayで電子ビーム照射することによって滅菌した。
【0254】
装置を滅菌バイオフードに開梱し、膜を通して真空排気によりリザーバに真空を適用した。
【0255】
装置は、中隔を通して皮下注射針を挿入し、pH 5.3の 0.2Mクエン酸緩衝液及び0.27%ポリソルベート 20(v/v)を含む滅菌水和緩衝液を注入することにより、水和された。水和を助けるために、水和している間に装置の膜側に真空が適用された。
【0256】
装置をスプレイグ・ドーリーラットの背側に移植し、一定の時間間隔で回収した。残りの内部溶液を、pHの測定および逆相HPLCによるエキセナチド純度の決定のために回収した。
【0257】
図3に見られるように、pHは安定化剤を有する装置において有意に低いままであり、そして純度は有意に高いままであった。
【0258】
実施例2
【0259】
治療剤:酢酸エキセナチド(Bachem Holding AG, Switzerland)。(酢酸エキセナチド、 CAS番号:914454-01-6)。
【0260】
安定化剤:ダイヤイオンWK40L(三菱化学株式会社、日本)。
【0261】
膜は、米国特許番号9814867に記載されるようなプロセスに基づいて開発された。
【0262】
膜をカプセルに取り付けるための50マイクロリットルポリカーボネートカプセル及びチタンスクリューキャップは、一般的に利用可能な機械加工方法によって調製した。
【0263】
シリコーンセプタは、高分子のインプレースキャストによって調製した。
【0264】
市販のシリコーンOリングを、適切な接続部で装置を封止するために使用した。
【0265】
グループ1において、10mgの酢酸エキセナチドおよび10mgのダイヤイオンwk40Lを、装置のリザーバに秤量した。
【0266】
グループ2において、15mgのエキセナチドを装置のリザーバに秤量した。
【0267】
装置を、それらのチタンキャップ内の膜で密封した。
【0268】
装置は、中隔を通して皮下注射針を挿入し、0.0011%ポリソルベート20(v/v)を含む注射用滅菌水をリザーバ内に注入することによってにより、水和された。水和を助けるために、水和している間に装置の膜側に真空が適用された。
【0269】
装置をpH 7.4および37 Cの滅菌ビス-トリス緩衝液4ml中に入れ、インビボ移植条件を模倣したインビトロ条件下でpHおよびエキセナチド純度を維持するイオン交換樹脂の有効性を確立した。一定の間隔で、装置をインキュベーションバッファーから取り除いた。残りの内部溶液を、pHの測定および逆相HPLCによるエキセナチド純度の決定のために回収した。
【0270】
図4A及び4Bに見られるように、イオン交換樹脂の存在は、少なくとも3ヶ月にわたってより低いpHを維持し、かつエキセナチドの純度を有意に良好にした。
【0271】
実施例3
【0272】
以下の表1は、NaOH及びNaClによるイオン交換樹脂(ピューロライトPPC104plus)のpH調整を示す。
【0273】
【0274】
ピューロライトPPC104plusは、球状ビーズ中の多孔質架橋ポリアクリル酸である。粒径は300~1600μmの範囲である。
【0275】
本明細書に引用された全ての刊行物及び特許出願は、各々の個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることを具体的かつ個々に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】