(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】RFID電子式物品監視システムにおける範囲識別
(51)【国際特許分類】
G01S 13/74 20060101AFI20230410BHJP
G08B 13/24 20060101ALI20230410BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20230410BHJP
G06K 7/10 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
G01S13/74
G08B13/24
G01S5/02 Z
G06K7/10 240
G06K7/10 236
G06K7/10 136
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551700
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 US2021019528
(87)【国際公開番号】W WO2021173752
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518000176
【氏名又は名称】エイヴェリー デニソン リテール インフォメーション サービシズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】AVERY DENNISON RETAIL INFORMATION SERVICES LLC
【住所又は居所原語表記】8080 Norton Parkway, Mentor, Ohio 44060 Uni-ted States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【氏名又は名称】北 倫子
(72)【発明者】
【氏名】フォースター,イアン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
5C084
5J062
5J070
【Fターム(参考)】
5C084AA03
5C084AA09
5C084AA13
5C084BB04
5C084CC34
5C084DD07
5C084EE07
5C084FF02
5J062CC18
5J062FF01
5J070BC05
(57)【要約】
RFIDベースの電子式物品監視システムは、第1および第2受信アンテナが備えられている。RF信号は、受信アンテナによって受信された返信信号を送信するRFID装置に送信される。RFID装置の位置は、第1アンテナによって受信される際の返信信号の強度と、第2アンテナによって受信される際の返信信号の強度との間の差に基づいて判定し得る。RF信号が受信アンテナによって送信されると、各々のアンテナによって送信されるRF信号の強度を変更し、RFID装置が信号を受信するための閾値である場合、第1アンテナによって送信されたRF信号の強度と、RFID装置が閾値である場合、第2アンテナによって送信されたRF信号の強度とを比較することによって判定し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2読み取りゾーンを有する電子式物品監視システムでRFID装置の位置を判定する方法であって、
RF信号をRFID装置に送信するステップと、
第1位置および第2位置でRFID装置からの返信信号を受信するステップと、
第1位置における返信信号の第1強度と第2位置における返信信号の第2強度との間の差を計算するステップと
第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かを判定するステップを含む、
方法。
【請求項2】
前記第1強度および第2強度の間の差に基づいて前記RFID装置が前記第1読み取りゾーンに位置しているか否かを判定するステップは、前記第1位置と第2位置との間で生じる信号損失に基づいており、前記RFID装置と、前記第1位置および第2位置のいずれかのRFID装置により近い位置との間で生じる信号損失から独立している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2位置は、前記第1位置よりも前記第1読み取りゾーンから離れて位置し、
前記第1強度および前記第2強度の間の差が正であり、正の閾値未満である場合、前記RFID装置が第1読み取りゾーンに位置していると判定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2位置は、前記第1位置よりも前記第1読み取りゾーンから離れて位置し、
前記第1強度および前記第2強度の間の差が負の閾値を超える場合、前記RFID装置が第2読み取りゾーンに位置していると判定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記RF信号は、前記第1および第2位置と異なる位置から送信される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記RF信号をRFID装置に送信するステップは、前記第1位置からの第1RF信号および前記第2位置からの第2RF信号を送信するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置のおおよその2次元位置を判定することをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
複数のRF信号を前記RFID装置に順次送信するステップと、
各々のRF信号に対する前記RFID装置のおおよその2次元位置を計算するステップと、
各々のRF信号に対する前記RFID装置の2次元位置に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置の移動方向を判定するステップと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
RF信号を受信すると返信信号を送信するように構成されたRFID装置の位置を判定するための電子式物品監視システムであって、
第1読み取りゾーンと、
第2読み取りゾーンと、
第1強度で前記返信信号を受信するように構成された第1受信アンテナと、
第2強度で前記返信信号を受信するように構成された第2受信アンテナと、
第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かを判定するように構成されたコントローラと、を含む、
電子式物品監視システム。
【請求項10】
第2位置は、第1位置よりも第1読み取りゾーンから離れて位置し、
前記コントローラは、第1強度および第2強度の間の差が正であり、正の閾値未満である場合、前記RFID装置が第1読み取りゾーンに位置していると判定するように構成される、請求項9に記載の電子式物品監視システム。
【請求項11】
第2位置は、第1位置よりも第1読み取りゾーンから離れて位置し、
前記コントローラは、第1強度および第2強度の間の差が負の閾値を超える場合、前記RFID装置が第2読み取りゾーンに位置していると判定するように構成される、請求項9に記載の電子式物品監視システム。
【請求項12】
前記RF信号を送信するように構成された送信アンテナをさらに含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の電子式物品監視システム。
【請求項13】
前記第1受信アンテナは、第1RF信号を送信するように構成され、
前記第2受信アンテナは、第2RF信号を送信するように構成される、請求項9から11のいずれか一項に記載の電子式物品監視システム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置のおおよその2次元位置を判定するように構成される、請求項9から13のいずれか一項に記載の電子式物品監視システム。
【請求項15】
前記第1および第2受信アンテナは、前記RFID装置から順次送信された返信信号を受信するように構成され、
前記コントローラは、各々の返信信号に対して前記RFID装置のおおよその2次元位置を判定するように構成され、
前記コントローラは、各々の返信信号に対する前記RFID装置の2次元位置に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置の移動方向を判定するように構成される、請求項14に記載の電子式物品監視システム。
【請求項16】
前記第1および第2受信アンテナの少なくとも1つは、ダイポールアンテナを含む、請求項9から15のいずれか一項に記載の電子式物品監視システム。
【請求項17】
前記第1および第2受信アンテナの少なくとも1つは、指向性アンテナを含む、請求項9から15のいずれか一項に記載の電子式物品監視システム。
【請求項18】
前記第1および第2受信アンテナの少なくとも1つは、伝送路アンテナを含む、請求項9から15のいずれか一項に記載の電子式物品監視システム。
【請求項19】
第1および第2読み取りゾーンを有する電子式物品監視システムでRFID装置の位置を判定する方法であって、
第1位置からRFID装置に第1RF信号を送信し、第1RF信号の電力をRFID装置からの第1返信信号が第1位置で受信される閾値に対応する第1電力に変更するステップと、
第2位置からRFID装置に第2RF信号を送信し、第2RF信号の電力をRFID装置からの第2返信信号が第2位置で受信される閾値に対応する第2電力に変更するステップと、
第1強度および第2強度の間の差を計算するステップと、
第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かを判定するステップと、を含む、
方法。
【請求項20】
RF信号を受信すると返信信号を送信するように構成されたRFID装置の位置を判定するための電子式物品監視システムであって、
第1読み取りゾーンと、
第2読み取りゾーンと、
第1RF信号をRFID装置に送信し、第1RF信号の電力をRFID装置からの第1返信信号が第1受信アンテナによって受信される閾値に対応する第1電力に変更するように構成された第1受信アンテナと、
第2RF信号をRFID装置に送信し、第2RF信号の電力をRFID装置からの第2返信信号が第2受信アンテナによって受信される閾値に対応する第2電力に変更するように構成された第2受信アンテナと、
第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいて前記RFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かを判定するように構成されたコントローラと、を含む、
電子式物品監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年2月25日に出願された米国仮特許出願第62/981,206号の利益を主張し、その全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、無線周波数識別(「RFID」)装置に関する。より具体的に、本発明は、電子式物品監視(「EAS」)システムにおけるRFID装置の位置を判定することに関する。
【背景技術】
【0003】
小売店では、陳列および/または保管中の製品の正確な数が重要である。さらに、適所に効果的な盗難防止システムを備えることが重要である。これらの機能の全てを実行するために、RFIDタグおよびラベル(本明細書では、まとめて「RFID装置」と呼ぶ)が用いられている。
【0004】
RFID技術を用いるEASシステムは、
図1に示すように、2つの主要な読み取りゾーン10および12を有し、各々は関連するRFIDリーダを含む。第1読み取りゾーン10は、製品が消費者に提示される店舗内の領域(本明細書では、「在庫ゾーン」と呼ぶ)であり、第2読み取りゾーン12は、商品を盗もうとする企てが行われていることを示す、一種の警報をトリガするよう、適切に解除されていないRFID装置が検出され得る、店舗の出口領域(本明細書では「検出ゾーン」と呼ぶ)である。顧客が正しくアイテムを購入した場合、レジ係は該当商品に関連するRFID装置を除去または解除する。RFID装置が除去または解除されなければ、RFIDリーダが装置を読み取り、検出ゾーン12で警報またはその他の警告をトリガする。
【0005】
上述のシステムは広く普及しているが、一部欠点がある。EASシステム用のRFID装置/システムを用いる場合、1つの一般的な問題は、特定の状況でのRFID装置の読み取り範囲が、在庫ゾーン10内のRFID装置が検出ゾーン12内で読み取られるほど十分に大きいか、その逆の場合も同様である。このようなリスクを減らすために、在庫ゾーン10と検出ゾーン12との間に移行ゾーン14が頻繁に備えられ、2つの読み取りゾーンを物理的に分離する。しかし、動作周波数においてより高い感度を有する異なるRFID装置および/または関連するRFID装置の性能に異なる影響を与える異なる物品のために、移行ゾーン14は、比較的大きい必要がある。移行ゾーンが大きいほど在庫ゾーンが小さくなるので、小売業者が購入のために顧客に提示できる商品が少なくなる。したがって、移行ゾーン14のサイズが減少するように構成されたRFID装置を提供することが有利である。
【0006】
多数のRFIDベースのEASシステムでは、(リーダシステムが一定の電力で送信するような時)RFID装置が応答を開始するような時および一般に受信信号強度(RSSI)と呼ばれる応答レベルなどの要因を測定することによって、RFID装置とEASリーダシステムとの間の範囲を識別する試みがある。しかし、このようなアプローチの結果は、減衰係数KおよびRFID装置の感度Tのために信頼できない場合がある。KおよびTは、RFID装置とリーダシステムとの間の反射および吸収物質などの環境条件により影響を受けることがあり、また(人体モデルまたは人体効果と呼ばれる)信号を減衰させるために泥棒がRFID装置を人体の近くに配置し得る物を盗もうとして損失がもたらされ得る。Tが高くKが低いと、遠く離れたRFID装置(例えば、在庫ゾーンにある装置)がEASゾーンにあるタグと同様のレベルで応答し、誤警報を引き起こし得る。最大出力で送信するRFIDリーダは、EASシステムを無力化しようとする意図的な試みのせいで、Kが高い時検出に理想的であるが、これはまた誤警報の可能性も増加させる。したがって、Kから独立した識別方法が有利である。
【発明の概要】
【0007】
以下に説明及び請求される装置、システムおよび方法において、個別にまたは共に実施し得る本主題の様々な態様がある。これらの態様は、単独で、または本明細書に説明する主題の他の態様と組み合わせて使用され得、これらの態様を共に記載することは、これらの態様を個別に用いたり、または本明細書に添付の請求範囲に明示されているように個別に若しくは異なる組み合わせで請求することを排除するものではない。
【0008】
第1および第2読み取りゾーンを有する電子式物品監視システムにおいて、RFID装置の位置を判定するための方法が本明細書に記載されている。この方法は、RF信号をRFID装置に送信するステップと、第1位置および第2位置でRFID装置から返信信号を受信するステップと、を含む。第1位置での返信信号の第1強度と第2位置での返信信号の第2強度との間の差が計算され、第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいてRFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かが判定される。
【0009】
RF信号を受信すると返信信号を送信するように構成されたRFID装置の位置を判定するための電子式物品監視システムもまた、本明細書に記載されている。一部の実施形態において、電子式監視システムは、第1および第2読み取りゾーンと、第1および第2受信アンテナと、コントローラと、を含む。一部の実施形態において、第1受信アンテナは第1強度で返信信号を受信するように構成される一方、第2受信アンテナは第2強度で返信信号を受信するように構成される。コントローラは、第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいてRFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かを判定するように構成される。
【0010】
第1および第2読み取りゾーンを有する電子式物品監視システムにおいて、RFID装置の位置を判定するための方法が本明細書に記載されている。一部の実施形態において、この方法は、第1位置からRFID装置に第1RF信号を送信するステップと、第1RF信号の電力をRFID装置からの第1返信信号が第1位置で受信される閾値に対応する第1電力に変更するステップを含む。第2RF信号は、第2位置からRFID装置に送信され、第2RF信号の電力は、RFID装置からの第2返信信号が第2位置で受信される閾値に対応する第2電力に変更される。第1強度と第2強度との間の差が判定され、次いで、第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいてRFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かが判定される。
【0011】
RF信号を受信すると返信信号を送信するように構成されたRFID装置の位置を判定するための電子式物品監視システムもまた、本明細書に記載されている。一部の実施形態において、電子式監視システムは、第1および第2読み取りゾーンと、第1および第2受信アンテナと、コントローラと、を含む。第1受信アンテナは、第1RF信号をRFID装置に送信し、第1RF信号の電力をRFID装置からの第1返信信号が第1受信アンテナによって受信される閾値に対応する第1電力に変更するように構成される。第2受信アンテナは、第2RF信号をRFID装置に送信し、第2RF信号の電力をRFID装置からの第2返信信号が第2受信アンテナによって受信される閾値に対応する第2電力に変更するように構成される。コントローラは、第1強度および第2強度の間の差に少なくとも部分的に基づいてRFID装置が第1読み取りゾーンに位置しているか否かを判定するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】RFID装置を用いる、従来のEASシステムの概略図である。
【
図2】本開示による、RFIDベースのEASシステムの例示的な実施形態の概略図である。
【
図3】本開示による、RFIDベースのEASシステムの別の例示的な実施形態の概略図である。
【
図4】本開示の態様による、EASシステムのゲートのアンテナの例示的な配列の概略図である。
【
図5】RFID装置の2次元位置を判定するために用いられる、本開示のEASシステムの概略図である。
【
図6A】本開示による、EASシステムを用いてRFID装置の動きを判定するアプローチを示す。
【
図6B】本開示による、EASシステムを用いてRFID装置の動きを判定するアプローチを示す。
【
図6C】本開示による、EASシステムを用いてRFID装置の動きを判定するアプローチを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
必要に応じて、本発明の詳細な実施形態が本明細書に開示しているが、開示している実施形態は、多様な形態で実施し得る本発明の単なる例示に過ぎないことを理解すべきである。したがって、本明細書で開示する特定の細部事項は限定されると解釈してはさらず、単に特許請求の範囲の根拠として、且つ実質的に任意の適切な方法で本発明を多様に使用するように当業者に教示するための代表的な根拠として解釈しなければならない。
【0014】
図2は、本開示によるRFIDベースのEASシステム16の例示的な実施形態を示す。
図2の実施形態において、EASシステム16は、送信アンテナ18と、2つの受信アンテナ20および22とを含む。本開示によるEASシステムのアンテナは、本開示の範囲から逸脱することなく多様に構成できるが、関心のあるゾーンで等しい利得を有するか、測定されたRSSI/電力の値を補償するための手段を有する、アンテナ設計を用いることが望ましい。例として、
図2の受信アンテナ20および22は、ダイポールアンテナ、指向性アンテナ、伝送路アンテナ、またはそれらの組み合わせとして構成され得る。アンテナの構成が異なれば、性能特性も異なるので利点も異なる。例えば、ダイポールアンテナは、RFID装置の2次元位置を検出するように構成されたEASシステムに適切な角度範囲を提供する。一方、指向性アンテナは、EASシステムのゲートに対する検出ゾーンを前方に焦点を保持するように構成するのがよい。したがって、本開示は、特に構成されたアンテナを有するEASシステムに限らず、本明細書に説明される態様は、異なって構成された様々なアンテナを用いて実施され得るということを理解すべきである。
【0015】
図2のEASシステム16において、送信アンテナ18は、EASシステム16である場所に位置するRFID装置24(例えば、商品に取り付けられたRFIDタグまたはラベル)にRF信号「S」を送信する。RFID装置24は、送信アンテナ18からRF信号Sを受信し、第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信された返信信号を返信する。
【0016】
環境条件により、返信信号の移動する距離が増加することによって、返信信号の強度が減少する。
図2の向きにおいて、第1受信アンテナ20は、第2受信アンテナ22よりもRFID装置24の近くに位置し、第1受信アンテナ20において、返信信号の強度またはRSSIは、第2受信アンテナ22より大きくなる。
図2において、RFID装置24と第1受信アンテナ20との間の距離は「r」で表され、第1受信アンテナ20と第2受信アンテナ22との間の距離は「θ」で表され、RFID装置24と第2受信アンテナ22との間の距離はr+θである。
【0017】
上述のように、単一のアンテナを用いてRFID装置からの返信信号の強度またはRSSIを測定することは、特に有益または有用ではない場合がある。しかし、周知の距離ほど互いに離れて位置する2つのアンテナ20および22を用いて、返信信号の強度またはRSSIを比較することによって、EASシステム16でRFID装置24のおおよその位置をより確実に判定することが可能である。上述のように、返信信号の強度またはRSSIは、返信信号が移動する距離の関数である。第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22に到達する際に返信信号が移動する共通の距離(
図2では「r」で表される)は、 第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信された返信信号の強度またはRSSIを比較することによって相殺され得る。したがって、第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信された返信信号の強度またはRSSI間の差は、返信信号が第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22の間の周知の距離θを移動する際の強度の損失を示すであろう。
【0018】
RF信号の強度またはRSSIの変化は、二乗法則に従うため、第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信された返信信号の強度またはRSSIの差は、RFID装置と第1受信アンテナ20との間の距離rを示す。一般に言えば、第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信された返信信号の強度またはRSSI間の差は、距離rが比較的小さい場合、規模が比較的大きくなり、距離rが比較的大きい場合、差の規模は比較的小さくなる。差の正確な規模は、多数の要因に依存するが、例示的な実施形態における差の規模は、r=1の場合、約6dB程度、r=5の場合、約1.6dB程度、r=10の場合、約0.83dB程度である。
【0019】
2つの受信アンテナ20および22における返信信号の強度またはRSSI間の特定の差に関係なく、強度またはRSSIにおける相当の変化を示さない任意のRFID装置24は、受信アンテナ20および22から相当の距離離れていると見なされ得ることが分かる。実施例は、長距離では非常に正確ではないが(例えば、r=5およびr=10では、信号の強度またはRSSIの差が小さい)、EASシステム16は比較的長い範囲で高い正確性を必要としないように構成され得る。例えば、一実施形態において、2つの受信アンテナ20および22(または、受信アンテナが伝送路アンテナに組み込まれる場合、1つ以上の基準面を有する単一のアンテナ)は、在庫ゾーン10と検出ゾーン12との間に配置され、第1受信アンテナ20は、第2受信アンテナ22より在庫ゾーン10の近くに位置する。RFID装置24が、検出ゾーン12より在庫ゾーン10の近くに位置する場合(つまり、第2受信アンテナ22より第1受信アンテナ20の方にさらに近い場合)、第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信された返信信号の強度またはRSSI間の差は、正であるべきである(つまり、返信信号は、第2受信アンテナ22より第1受信アンテナ20でより強くなるべきである)。
【0020】
したがって、この例示的な構成において、正であり且つ比較的小さい(つまり、例示的な実施形態において、1.6dBと6dBとの間のある箇所の正の閾値未満)第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信される返信信号の強度またはRSSIの差は、RFID装置24が在庫ゾーン10のどこかに位置しているということを示すのに十分である。在庫ゾーン内のRFID装置24の正確な位置(例えば、r=5かまたはr=10か)は、的確に判定することはできないが、RFID装置24が検出ゾーン12または移行ゾーン14ではなく在庫ゾーン10にあることが分かるだけで十分である。RFID装置24が受信アンテナ20および22から十分に離れているか否かを判定するための正確な正の閾値は、多数の要因(例えば、EASシステム16内の受信アンテナ20、22の位置、および移行ゾーン14の大きさ)に依存するので、本開示は、特定の正の閾値に限定されない。
【0021】
同様に、RFID装置24が在庫ゾーン10のどこかにあることを判定するために、本開示によるEASシステム16はまた、RFID装置24が検出ゾーン12のどこかにある時を判定することができる。第1受信アンテナ20が第2受信アンテナ22より在庫ゾーン10の近くに位置する場合、およびRFID装置24が在庫ゾーン10より検出ゾーン12の近くに位置する場合、第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信された返信信号の強度またはRSSI間の差は負であるべきである。したがって、この例示的な構成において、負であり且つ比較的小さい(つまり、負の閾値より大きいかゼロに近い)第1受信アンテナ20および第2受信アンテナ22によって受信される返信信号の強度またはRSSIの差は、RFID装置24が検出ゾーン12のどこかに位置しているということを示すのに十分である。RFID装置24が受信アンテナ20および22から十分に離れているか否かを判定するための正確な負の閾値は、多数の要因(例えば、EASシステム16内の受信アンテナ20、22の位置、および移行ゾーン14の大きさ)に依存するので、本開示は、特定の負の閾値に限定されない。
【0022】
図2の構成は単なる例示であり、本開示によるEASシステムは異なって構成され得ることを理解すべきである。例えば、
図3は、(
図2のように)第3の送信アンテナではなく、2つの受信アンテナ28および30によってRF信号が送信されるEASシステム26を示す。
図3のEASシステム26は、「モノスタティック」モードでの動作と呼ばれ得る。一方、
図2のEASシステム16は、「バイスタティック」モードでの動作と呼ばれ得る。
【0023】
図3の実施形態において、各々の受信アンテナ28、30は、RF信号をRFID装置24に送信し、返信信号を受信する。
図2の実施形態のように、第1受信アンテナ28および第2受信アンテナ30によって受信された返信信号の強度またはRSSIの差は、RFID装置24の一般的な位置(つまり、RFID装置24は、在庫ゾーン10のどこか、または検出ゾーン12のどこかに位置するか否か)を判定するために用いることができる。しかし、2つの異なるRF信号は、
図3のEASシステムでRFID装置24に送られているので、RFID装置24からの返信信号が同じ電力で送信されるように注意しなければならない。第1受信アンテナ28および第2受信アンテナ30からRF信号を受信すると、RFID装置24によって送信された返信信号の電力は、RFID装置24が(本明細書で「閾値」と呼ばれる)返信信号を送信するのに十分な電力を受信する場合と同様であり、これは一定の電源入力および一定の電源出力を表す。
【0024】
一実施形態において、各々の受信アンテナ28、30は、最初に低強度のRF信号を送信し、次に、RFID装置24から返信信号を初めて受信するまでRF信号の強度を増加させるが、それは、RFID装置24の閾値におけるその受信アンテナのRF信号の強度である。代案として、低電力で始めるのではなく、受信アンテナ28および30がRFID装置24に到達するのに十分に強い高電力のRF信号を最初に送信することによって、閾値に到達することができ、返信信号が送信されなくなるまで電力が低下する。実際に、線形掃引または二分探索を含み得るが、多数の適切なアプローチのいずれかを用いて閾値に到達し得ることを理解すべきである。
【0025】
2つの返信信号の間の強度の差がRFID装置24の一般的な位置を判定するのに用いることができるように、RFID装置24の閾値において第1受信アンテナ28によって放出されたRF信号と、RFID装置24の閾値において第2受信アンテナ30によって放出されたRF信号との間の強度の差は、RFID装置24の一般的な位置を示し得る。2つの受信アンテナ28および30によって放出されたRF信号は、RFID装置24に到達する際に同じ(または少なくとも実質的に同じ)強度またはRSSIを有する。2つのRF信号は、RFID装置24に到達する際に同じ距離rを横断するので、RFID装置24をより遠い受信アンテナ(
図3の向きでは第2受信アンテナ30であるが、RFID装置24の位置によって第1受信アンテナ28であることがある)によって閾値まで到達するために必要な追加強度は、完全に受信アンテナ28および30間の距離θに関連する損失のためである。この情報は、RFID装置24が受信アンテナ28および30から相当の距離離れているか否かを判定するために(本明細書に記載の原理を用いることによって)用いることができ、正または負の差は、RFID装置24が位置する受信アンテナ28および30の側面を示す。
【0026】
最適の性能のために、RFID装置24は、上述の測定中に、その位置に変化がないか、または比較的小さい変化のみ有することが好ましい。バイスタティックシステムは、送信アンテナ18によって送信されたRF信号の電力がRFID装置24からの応答を引き出すのに十分であるので、この点で有利であり得る一方、モノスタティックシステムは、特定のRFID装置24をより遅く閾値に保つために送信された電力を調整しなければならない。しかし、モノスタティックシステムは、特定の状況において選好され得るRFID装置24の一般的な位置を判定するための第2アプローチを可能とする。
【0027】
本開示によるEASシステムは、より長い範囲では正確性が低くなるように構成され得るが、EASシステムが移行ゾーン14から検出ゾーン12まで誤警報を防ぐためにRFID装置の動きをより正確にモニタリングすることが有利であり得る。RFID装置の動きの判定は、第1時間のRFID装置のおおよその位置と、その後の第2時間のRFID装置のおおよその位置との比較に基づき得る。例示的な一実施形態において、上述のタイプのEASシステムは、(
図2および
図3の実施形態のように)2つの受信アンテナによって受信される返信信号間の強度またはRSSIでの差、または(
図3の実施形態のように)RFID装置24を閾値まで到達させる2つの受信アンテナによって放出されるRF信号の電力の差に基づいて第1時間のRFID装置24の一般的な位置を判定するために用いることができる。同じアプローチは、第2時間の同じRFID装置24の一般的な位置を判定するために用いることができ、第1時間と第2時間の一般的な位置の差は、RFID装置24が動く方向を示す。
【0028】
図2および
図3のEASシステム16および26は、RFID装置24の一般的な位置および動きを判定するために用いることができるが、より多くの受信アンテナを有するEASシステムは、RFID装置24の位置、従って動きをより的確に判定することができる。
図4は、4つの受信アンテナ34a~34dを有するEASシステムの例示的なゲート32を示す一方、
図5は、
図4に示されるタイプのシステムを用いてRFID装置24の位置を判定するための例示的なアプローチを示す。EASシステムは、4つ以上の受信アンテナを有し得るが、そのようなアンテナは、本開示の範囲から逸脱することなく、様々に位置し得る(天井に関連する1つ以上のアンテナおよび地盤面に位置する他のアンテナのような異なる高さを含む)ことを理解すべきである。
【0029】
EASシステムの受信アンテナの正確な数および位置に関係なく、各々の受信アンテナは、EASシステム内の周知の位置、および他の受信アンテナに対して周知の位置を有する。RFID装置24と各々の受信アンテナ34(
図5)との間のおおよその距離r1~r4は、各々の受信アンテナ34によって受信された返信信号の強度若しくはRSSI、または(RF信号をRFID装置24に送信するように構成された受信アンテナの場合)RFID装置24をその閾値まで到達させる各々の受信アンテナ34によって送信されたRF信号の強度に基づいて判定することができる。微分値を同時に解くことによって、受信アンテナ34a~34dの絶対位置および相対位置、並びにRFID装置24と受信アンテナ34a~34dとの間の距離r1~r4を(つまり、三角測量によって)RFID装置の2次元位置を判定するために用いることができる。
【0030】
RFID装置24の2次元位置が第1時間で判定された後、第2時間でRFID装置24の2次元位置を判定するために、その後の第2時間でプロセスが繰り返され得る。2つの時間でのRFID装置24の位置は、EASシステムを介してRFID装置の移動方向を判定するために比較され得る。上述のように、これは、RFID装置24がいつ移行ゾーン14を通って検出ゾーン12に向かって動いているかを判定するために特に関連付けられ得るが、RFID装置24に関連付けられた商品を盗もうとする企てを示し得る。RFID装置24の2次元位置は、EASシステムを介してRFID装置24の経路をより的確に、特に追跡するために複数回判定することができる。受信アンテナ34が近距離でRFID装置24の位置をより的確に判定可能な場合であり、この場合、受信アンテナ34が検出ゾーン12に隣接して位置し、移行ゾーン14を通って検出ゾーン12に向かうRFID装置の動きを追跡することが有利であり得る。
【0031】
図6A~
図6Cは、
図4のゲート32を通って、ゲート32の片側の第1位置(
図6A)からゲート32の第2位置(
図6B)へ、ゲート32の反対側の第3位置(
図6C)へのRFID装置24の動きを示す。
図6A~
図6Cでは、RFID装置24は、ゲート32の2つの受信アンテナ34aおよび34bによってモニタリングされている。2つの受信アンテナ34aおよび34bは、(
図2および
図3のように)距離θほど離れている。RFID装置24が(
図6Aのように)ゲート32からθの4倍以上の距離(r>4×θ)離れており、RFID装置24がゲート32に向かって動いている時、(
図6Aでr1と表される)第1受信アンテナ34aとRFID装置24との間の直線と、(
図6Aでr2と表される)第2受信アンテナ34bとRFID装置24との間の直線との角度の差は小さいので、ベクトル距離は、主に、2つの受信アンテナ34aおよび34bの分離θと考えられ得る。これは、
図2および
図3に示す配列と類似し、2つのアンテナがRFID装置24と整列するように処理されるまたは見なされる。
【0032】
範囲が減少するにつれて(つまり、RFID装置24がゲート32にさらに近づくにつれて)、第1受信アンテナ34aと第2受信アンテナ34bとの間のベクトル距離間の差が減少するので、範囲推定値(並びに受信アンテナ34aおよび34bによって受信された返信信号の結合RSSIまたは強度)が増加し始める。RFID装置24が(
図6Bのように)第1受信アンテナ34aおよび第2受信アンテナ34bから正確に同じ距離にある時、推定範囲は本質的に無限である。RFID装置24がゲート32を介して通過する際、範囲推定値(並びに受信アンテナ34aおよび34bによって受信された返信信号の結合RSSIまたは強度)は再び減少し始めるが、反対方向を示すまで、(
図6Cのように)RFID装置24は、再びゲート32からθの4倍以上の距離(r>4×θ)離れて、この時点で範囲が増加し、範囲をより正確に測定できる。この通過形態は、ゲート32を通過する特徴であり、経時による計算された範囲の変化の差と、ゲート32の中央でピークに達する結合RSSIの傾向とを見ることによって分析することができる(
図6B)。
【0033】
図6A~
図6Cでは、
図4のゲート32の対の受信アンテナ34aおよび34bのみが、RFID装置24の動きを追跡するために用いられるものとして示されている。(
図4のように)複数のゲートまたは受信アンテナの対が提供されると、システムコントローラは、RFID装置24の動きをモニタリングするために最も適切な受信アンテナの対を選択し得る。範囲の最も正確な推定値は、受信アンテナの対(例えば、
図4の受信アンテナ34aおよび34bまたは受信アンテナ34cおよび34d)の最小値であり、RFID装置24が当該受信アンテナの対と最も密接に整列していることを示す。
【0034】
上述の実施形態は、本発明の原理における適用例の一部を例示するものであることを理解するであろう。本明細書で個別に開示または請求する特徴の組み合わせを含む、請求する本発明の思想や範囲を外れることなく、当業者によって多数の変更が行われ得る。かかる理由で、本明細書の範囲は上記説明に制限されないが、以下の請求範囲に記載されており、請求範囲は、本明細書で個別に開示または請求する特徴の組み合わせを含む、本明細書の特徴に関するものであることが理解される。
【国際調査報告】