(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20230410BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20230410BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A61M15/00
A61K31/137
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551707
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 US2021019359
(87)【国際公開番号】W WO2021173627
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520448463
【氏名又は名称】キンデーバ ドラッグ デリバリー リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ エム.コックス
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206FA14
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA76
4C206NA10
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】吸入器の提供。
【解決手段】40マイクロリットル以下のバルブ容量を有するバルブ、及びシランを含む第一の層と、ポリフルオロポリエーテルシランを含む第二の層とを有するバルブ、並びにアルブテロールを含む、吸入器。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
40マイクロリットル(μL)以下のバルブ容量を有するバルブと;
前記バルブの少なくとも一部上のバルブコーティングであって、前記コーティングは、前記バルブ上の第一の層と、前記第一の層上の第二の層との縮合生成物を含み;前記第一の層は、1つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランを含み、前記第二の層は、ポリフルオロポリエーテルシランを含む、前記バルブコーティングと;
前記バルブと流体連通する加圧キャニスターであって、前記加圧キャニスターは、薬学的に許容可能な吸入可能な組成物を含有し、この組成物は、
推進剤;及び
アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な、前述のもののいずれかの水和物
を含み、
前記アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な、前述のもののいずれかの水和物は、2ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)又はそれより大きい濃度で存在する、前記加圧キャニスターと
を備える吸入器。
【請求項2】
前記1つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランが、式(I)の化合物を含む、請求項1に記載の吸入器。
X
3-m(R
1)
mSi-Q-Si(R
2)
kX
3-k (I)
式中、R
1及びR
2は、C1~C4アルキルから独立して選択され、Xは加水分解性基又はヒドロキシ基であり、m及びkは、独立して0、1、又は2であり、Qは二価の有機連結基である。
【請求項3】
Qが、置換又は非置換のC
2~C
12ヒドロカルビル鎖を含み、前記ヒドロカルビル鎖は、任意選択的に、置換又は非置換のC
2~C
12アルキル鎖である、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記1つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランが、1,2-ビス(トリアルコキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリアルコキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリアルコキシシリル)オクタン、1,4-ビス(トリアルコキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリアルコキシシリル)イタコネート、及び4,4’-ビス(トリアルコキシシリル)-1,1’-ジフェニルのうちの2種又はそれより多くの混合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項5】
前記パーフルオロポリエーテルシランが、式(Ia)の化合物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸入器。
R
f[Q
1-[C(R)
2-Si(Y)
3-x(R
1a)
x]
y]
z (Ia)
式中、
R
fは、一価又は多価のポリフルオロポリエーテル部分であり;
Q
1は、二価又は三価の有機連結基であり;
各Rは、独立して水素又はC1~4アルキル基であり;
各Yは、独立して加水分解性基であり;
各R
1aは、独立してC1~8アルキル基又はフェニル基であり;
xは0、1又は2であり;
yは1又は2であり;
zは1、2、3、又は4である。
【請求項6】
前記式(Ia)の化合物が、式(Ib)の化合物である、請求項5に記載の吸入器。
R
f[Q
1-[C(R)
2-Si(O-)
3-x(R
1a)
x]
y]
z Ib
式中、
R
fは、一価又は多価のポリフルオロポリエーテルセグメントであり、
Q
1は、二価又は三価の有機連結基であり;
各Rは、独立して水素又はC1~4アルキル基であり;
各R
1aは、独立してC1~8アルキル基又はフェニル基である。
【請求項7】
前記式(Ia)又は前記式(Ib)の化合物が、式(Ic)の化合物である、請求項5又は6に記載の吸入器。
R
fQ
1
v[Q
2
w-[C(R
4)
2-Si(X)
3-x(R
5)
x]
y]
z (Ic)
式中、
R
fは、ポリフルオロポリエーテル部分であり、
Q
1は三価の連結基であり;
各Q
2は、独立して選択される二価又は三価の有機連結基であり;
各R
4は、独立して水素又はC
1~4アルキル基であり;
各Xは、独立して加水分解性基又はヒドロキシル基であり;
R
5は、C
1~8アルキル基又はフェニル基であり;
v及びwは、独立して0又は1であり、xは0、1又は2であり;yは1又は2であり;zは2、3、又は4である。
【請求項8】
前記式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)のx、y、及びzの各々が1である、請求項5~7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)のyが0である、請求項5~8のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項10】
R
fは、-(C
nF
2nO)-、-(CF(Z)O)-、-(CF(Z)C
nF
2nO)-、-(C
nF
2nCF(Z)O)-、-(CF
2CF(Z)O)-、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるパーフルオロ化された繰り返し単位を含んでよく、
式中、
nは1~6の整数であり、
Zはパーフルオロアルキル基、酸素含有パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、又は酸素置換パーフルオロアルコキシ基であり、その各々は、直鎖、分岐状、又は環式であってよく、酸素含有又は酸素置換である場合、1~5つの炭素原子及び最大4つの酸素原子を有してよく、Zを含む繰り返し単位について、連続する炭素原子の数は最大で6である、請求項5~9のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項11】
nが、1~4の整数であり、任意選択的に1~3の整数であり、更に任意選択的に1又は2である、請求項5~10のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項12】
Zが、パーフルオロアルキル基、酸素含有パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、又は酸素置換パーフルオロアルコキシ基である、請求項5~11のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項13】
R
fが、-CF
2O(CF
2O)
m(C
2F
4O)
pCF
2-、-CF(CF
3)O(CF(CF
3)CF
2O)
pCF(CF
3)-、-CF
2O(C
2F
4O)
pCF
2-、-(CF
2)
3O(C
4F
8O)
p(CF
2)
3-、-CF(CF
3)-(OCF
2CF(CF
3))
pO-C
tF
2t-O(CF(CF
3)CF
2O)
pCF(CF
3)-からなる群から選択され、式中、tは2、3又は4であり、mは1~50であり、pは3~40である、請求項5~11のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項14】
前記バルブがバルブステムを含み、前記コーティングが、前記バルブステムの少なくとも一部に配置されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項15】
前記アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な、前述のもののいずれかの水和物が、硫酸アルブテロールである、請求項1~14のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項16】
アルブテロールが、2.5mg/mL若しくはそれより大きい、任意選択的に、3mg/mL若しくはそれより大きい、更に任意選択的に、3.5mg/mL若しくはそれより大きい、更に任意選択的に、3.75mg/mL若しくはそれより大きい、更に任意選択的に、4mg/mL若しくはそれより大きい、又は更に任意選択的に、4.5mg/mL若しくはそれより大きい濃度で存在する、請求項1~15のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項17】
前記バルブ容量が、35μL以下、任意選択的に、30μL以下、更に任意選択的に、27.5μL以下、又は更に任意選択的に、約25μLである、請求項1~16のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項18】
作動させた際に、約70マイクログラム(μg)~約140μg、任意選択的に、約80μg~約125μg、更に任意選択的に、約90μg~約110μg、更に任意選択的に、約95μg~105μg、又は更に任意選択的に、約100μgのアルブテロールを前記吸入器から放出するアクチュエーターを更に備える、請求項1~17のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項19】
前記バルブが計量バルブである、請求項1~18のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項20】
用量カウンターを更に備える、請求項1~19のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項21】
前記推進剤がHFC-134aである、請求項1~20のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項に記載の吸入器を作動させて、前記アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な水和物を前記吸入器から放出することを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の吸入器を作動させる方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
アルブテロール(当分野ではサルブタモールとしても知られている)を送達するための吸入器は、商品名EVOHALER(GlaxoSmithKline plc、英国、ブレントフォード)でVENTOLINから入手可能である。EVOHALER吸入器は、63μL容量のバルブを用いて、作動ごとに約100マイクログラム(μg)のアルブテロールを硫酸アルブテロールとして、及び推進剤、特にハイドロフルオロカーボン(HFC)推進剤を提供する。バルブの容量は、各作動中に吸入器から放出される材料の容量を提供する。各EVOHALER吸入器は、アルブテロールを200用量送達する。
【0002】
米国特許公報第2017/0152396号は、吸入器構成要素のコーティングを教示し、その開示は、参照によって本開示に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0003】
詳細な説明
本開示の全体にわたって、便宜上、「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの単数形がしばしば用いられる;しかし、単数形だけが、明示的に特定されているか、文脈によって明確に示されている場合を除き、単数形は複数形を含むことを意味する。単数形だけが要求される場合、典型的には、用語「唯一の」が用いられる。
【0004】
本開示における幾つかの用語は、以下で定義される。他の用語は、当業者によく知られており、当業者がそれらに帰するであろう意味を与えられるべきである。
【0005】
(以下に限定されないが、)「一般的な」、「典型的な」、及び「通常の」、並びに「一般的に」、「典型的に」、及び「通常」などの高い頻度を示す用語は、本開示では、本発明において用いられることが多い特徴を指すために用いられ、具体的に先行技術を参照して用いられない限り、特徴が先行技術において存在することを意味することを意図したものではなく、その特徴が先行技術において一般的、通常、又は典型的であることを意味することを意図したものでもない。
【0006】
変化するものに関して用いられる用語「独立して」は、1つの変化するものの個性が、別のものの個性に関連しないことを意味する。例えば、項目X-Xにおいて各々変化するXが、A及びBから独立して選択される場合、したがってX-Xは、A-A、A-B、B-A、又はB-Bであってよい。
【0007】
特に断りのない限り、本開示において、アルブテロール、その塩、及びそれらの水和物の質量及び(質量に依存する用語で表される場合の)濃度は、遊離アルブテロール換算で表される。薬局において用いられるアルブテロールの最も一般的な形態である硫酸アルブテロール無水物、又はアルブテロールの異なる塩若しくは水和物が用いられる場合、アルブテロールの塩又は水和物の量は、用いられる物質の分子量を遊離アルブテロールの分子量と比較し、当業者に知られている使用量を決定するための適切な計算を行うことによって計算することができる。アルブテロールの質量又は濃度が塩又は水和物などの別の形態で表される場合、これは、質量又は濃度がアルブテロールの他の形態として表されているという記述で明記される。
【0008】
本開示は、アルブテロール含有吸入器についての幾つかの技術的な問題を認識している。1つの問題は、既知の吸入器が、比較的大量の推進剤、通常はHFC-227又はHFC-134aなどのハイドロフルオロカーボンを放出することであり、これは、環境に有害であり、かつ/または地球温暖化に寄与する可能性がある。この問題は、各作動において吸入器から放出される推進剤の量をいかに低減するかとして定式化することもできる。別の問題は、アルブテロールが粘着性の物質であることであり、それは、吸入器キャニスター内で高すぎる濃度で存在する場合、バルブ、特にバルブステップに付着する傾向があり、その結果、放出されるアルブテロールの量の許容できない用量間変動、バルブの損傷、又はその両方が生じる。この問題は、より高い濃度において、吸入器の構成要素、特にバルブ、とりわけバルブステムに、アルブテロールが付着するのをいかに防止するかとして定式化することもできる。更に別の問題は、より多くの医薬品が利用可能になるにつれて、吸入器などの医薬品の輸送のコスト及び環境への影響が、ますます高まることである。この問題は、吸入器当たりの同じ用量数を維持しながら、低減された質量を含む吸入器、特にアルブテロールを含有する組成物の低減された質量を含む吸入器をいかに製造するかとして定式化することもできる;この質量を低減すると、より小さいキャニスターなどのより小さい吸入器の構成要素を使用できるようになり、アルブテロール組成物の質量の低減よりも大きく、吸入器の全体的な質量を低減することができるようになる。
【0009】
簡潔に言えば、これら及び他の問題に適用できる解決策は、バルブ容量が40マイクロリットル(μL)以下のバルブを備える吸入器にある。バルブの少なくとも一部は、バルブコーティングでコーティングされる。バルブコーティングは、バルブの少なくとも一部上の第一の層と、第一の層上の第二の層との縮合生成物を含む。吸入器は、バルブと流体連通する加圧キャニスターを更に含む。加圧キャニスター内には、薬学的に許容可能な吸入可能な組成物があり、それは、推進剤と、アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な、前述のもののいずれかの水和物とを含む。アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な、前述のもののいずれかの水和物は、加圧キャニスター中で2ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)又はそれより大きい濃度で存在する。
【0010】
原則として、必要な容量を有する任意の市販で入手可能な吸入器バルブを用いることができる。例としては、APTARGROUP(米国、イリノイ州クリスタルレーク)、及びConsort Medical(英国、ハートフォードシャー州)から入手可能なバルブが挙げられる。用いることができる詳細なバルブとしては、35μL以下、特に、30μL以下、特に、27.5μL以下、又はとりわけ約25μLのバルブ容量を有するものが挙げられる。特に、バルブは、計量バルブであってよい。そのような場合、吸入器は、典型的には定量吸入器である。
【0011】
バルブコーティングは、アルブテロールがバルブに付着するのを防止するように設計されており、それによって、許容できない用量間の変動、及びバルブの損傷が低減されるか、排除される。バルブコーティングは、バルブの少なくとも一部に配置される。特に、バルブはバルブステップを含み、バルブコーティングはバルブステムの少なくとも一部に配置される;バルブコーティングは、バルブの他の部分又は吸入器の他の構成要素、たとえば加圧キャニスターの内部などに、更に配置されてよい。
【0012】
バルブコーティングは、二層コーティングの縮合生成物である。第一の層は、吸入器の少なくとも一部に直接又は間接的に配置される。第二の層は第一の層上に配置される。
【0013】
第一の層は、典型的には、バルブの少なくとも一部に直接配置されるが、間接的に配置されてもよく、第一の層は、反応性シラン基を有するシランを含有する。第二の層は、少なくとも1つの反応性シラン基、最も典型的には加水分解性シラン基又はヒドロキシシラン基のうちの1つ又はそれより多くを有する少なくとも部分的にフッ素化された化合物を含む。第二の層を第一の層上におくことにより、第一の層の反応性シラン基は、第二の層の反応性シラン基と、縮合反応などの化学反応を起こすことができる。
【0014】
第一の層に関して、少なくとも1つの反応性シラン基は、式Si(R0)nX3-n(式中、R0は実質的に非加水分解性の基であり、Xは加水分解性基又はヒドロキシ基であり、nは0、1又は2である。)であってよい。
【0015】
より一般的には、第一の層は、典型的には、有機リンカーによって分離された2つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランを含む。特定の場合において、2つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランは、式(I)である。
X3-m(R1)mSi-Q-Si(R2)kX3-k (I)
式中、R1及びR2は、独立して選択される一価基、たとえばC1~C4アルキルであり、Xは加水分解性基又はヒドロキシ基であり、m及びkは、独立して0、1、又は2であり、Qは二価の有機連結基である。
【0016】
通常、Qは、1~12個の原子の鎖、より一般的には、置換又は非置換のC2~C12ヒドロカルビル鎖を含む。好ましくは、Qは、置換又は非置換のC2~C12アルキル鎖を含む。
【0017】
2つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランの有用な例としては、1,2-ビス(トリアルコキシシリル)エタン、1,6-ビス(トリアルコキシシリル)ヘキサン、1,8-ビス(トリアルコキシシリル)オクタン、1,4-ビス(トリアルコキシシリルエチル)ベンゼン、ビス(トリアルコキシシリル)イタコネート、及び4,4’-ビス(トリアルコキシシリル)-1,1’-ジフェニル(但し、いずれのトリアルコキシ基も、独立してトリメトキシ又はトリエトキシであってよい)のうちの1種又は2種若しくはそれより多くの混合物が挙げられる。
【0018】
Qは、N、O、及び/又はSのうちの1つ又はそれより多くの原子によって置換された鎖を含んでよい。したがって、2つ又はそれより多くの反応性シラン基を有するシランの更なる例としては、例えば、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン;ビス(3-トリアルコキシシリルプロピル)エチレンジアミン;ビス(3-トリアルコキシシリルプロピル)n-メチルアミン;ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]フマラート)、及びN,N-ビス(3-トリアルコキシシリルメチル)アリルアミン(但し、いずれのトリアルコキシ基も、独立してトリメトキシ又はトリエトキシであってよい)のうちの1種又は2種若しくはそれより多くの混合物が挙げられる。
【0019】
特定の実施態様において、シランは、Qが式-(CH2)i-A-(CH2)j-(式中、AはNRn、O又はSであり;i及びjは、独立して0、1、2、3又は4であり、RnはH又はC1~C4アルキルである。)であってよいようなものである。より好ましくは、Qは式-(CH2)i-NH-(CH2)j-であってよく、i及びjは、各々独立して1、2、3又は4である。最も好ましくは、i及びjは各々3である。
【0020】
特定の第二の層は、Rfが、20~40の連結した繰り返し単位を含む式Iaによるパーフルオロポリエーテルシランであってよく、より少ない繰り返し単位を含むものと比較して追加の潤滑性を与え、これらを他の構成要素と組み合わせてバルブを構築した場合、バルブはより低い作動力を有する。
【0021】
式Iaは、
Rf[Q1-[C(R)2-Si(Y)3-x(R1a)x]y]z Ia
であり、
式中、
Rfは、一価又は多価のポリフルオロポリエーテル部分であり;
Q1は、二価又は三価の有機連結基であり;
各Rは、独立して水素又はC1~4アルキル基であり;
各Yは、独立して加水分解性基であり;
R1aは、C1~8アルキル基又はフェニル基であり;
xは0、1又は2であり;
yは1又は2であり;
zは1、2、3、又は4である。
【0022】
式Iaの幾つかの特定の場合において、x、y、及びzは各々1である。
【0023】
式Iaの幾つかの特定の場合において、YはO-である。
【0024】
より具体的な第二の層は、式Ibのパーフルオロポリエーテルシランである。
Rf[Q1-[C(R)2-Si(O-)3-x(R1a)x]y]z Ib
式中、
Rfは、一価又は多価のポリフルオロポリエーテルセグメントであり、
Q1は、二価又は三価の有機連結基であり;
各Rは、独立して水素又はC1~4アルキル基であり;
R1aは、C1~8アルキル基又はフェニル基であり;
xは0、1又は2であり;
yは1又は2であり;
zは1、2、3、又は4である。
【0025】
第二の層は、ポリフルオロエーテルシラン、特に、ポリフルオロポリエーテルシランを含んでよい。より詳しくは、ポリフルオロエーテルシランは、パーフルオロ化されたポリフルオロエーテル部分であってよく、更により詳しくは、ポリフルオロエーテルシランは、パーフルオロ化されたポリフルオロポリエーテルシランであってよい。
【0026】
ポリフルオロポリエーテルシランは、式(Ic)であってよい。
RfQ1
v[Q2
w-[C(R4)2-Si(X)3-x(R5)x]y]z (Ic)
式中、
Rfは、ポリフルオロポリエーテル部分であり、
Q1は三価の連結基であり;
各Q2は、独立して選択される二価又は三価の有機連結基であり;
各R4は、独立して水素又はC1~4アルキル基であり;
各Xは、独立して加水分解性基又はヒドロキシル基であり;
R5は、C1~8アルキル基又はフェニル基であり;
v及びwは、独立して0又は1であり、xは0、1又は2であり;yは1又は2であり;zは2、3、又は4である。
【0027】
ポリフルオロポリエーテル部分Rfは、-(CnF2nO)-、-(CF(Z)O)-、-(CF(Z)CnF2nO)-、-(CnF2nCF(Z)O)-、-(CF2CF(Z)O)-、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるパーフルオロ化された繰り返し単位を含んでよい;式中、nは1~6の整数であり、Zはパーフルオロアルキル基、酸素含有パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、又は酸素置換パーフルオロアルコキシ基であり、その各々は、直鎖、分岐状、又は環式であってよく、酸素含有又は酸素置換である場合、1~5つの炭素原子及び最大4つの酸素原子を有してよく、Zを含む繰り返し単位について、連続する炭素原子の数は最大で6である。特に、nは、1~4、より詳しくは1~3の整数であってよい。Zを含む繰り返し単位について、連続する炭素原子の数は、最大で4、より詳しくは最大で3であってよい。通常、nは1又は2
であり、Zは-CF3基であり、更にzは2であり、Rfは、-CF2O(CF2O)m(C2F4O)pCF2-、-CF(CF3)O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)-、-CF2O(C2F4O)pCF2-、-(CF2)3O(C4F8O)p(CF2)3-、-CF(CF3)-(OCF2CF(CF3))pO-CtF2t-O(CF(CF3)CF2O)pCF(CF3)-からなる群から選択され、式中、tは2、3又は4であり、mは1~50であり、pは3~40である。
【0028】
第一の層又は第二の層は、任意の適切な方法によって、例えばキャニスター又はバルブの内部に適用することができる。第二の層について用いられる適用工程とは独立して、第一の層は、噴霧、浸漬、ロール、はけ塗り、広げること、又はフローコーティングによって、特に、例えば噴霧又は浸漬によって、適用することができる。第一の層について用いられる適用工程とは独立して、第二の層は、噴霧、浸漬、ロール、はけ塗り、広げること、又はフローコーティングによって、特に、例えば噴霧又は浸漬によって、適用することができる。
【0029】
第一の層又は第二の層を適用する前述の方法のいずれにおいても、コーティング液が通常用いられる。典型的には、コーティング液は、アルコール又はハイドロフルオロエーテルを含む。
【0030】
コーティング液がアルコールである場合、好ましいアルコールは、C1~C4アルコール、特に、エタノール、n-プロパノール、若しくはイソ-プロパノールから選択されるアルコール、又はこれらのアルコールのうちの2種若しくはそれより多くの混合物である。
【0031】
コーティング液がハイドロフルオロエーテルである場合、コーティング溶媒がC4~C10ハイドロフルオロエーテルを含むことが好ましい。一般的に、ハイドロフルオロエーテルは式IIである。
CgF2g+1OChH2h+1 (II)
式中、gは2、3、4、5、又は6であり、hは1、2、3又は4である。適切なハイドロフルオロエーテルの例としては、メチルヘプタフルオロプロピルエーテル、エチルヘプタフルオロプロピルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、及びこれらの混合からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0032】
架橋剤は、第一の層、第二の層、又は第一及び第二の層両方と共に適用することができる。架橋剤は、テトラメトキシシラン;テトラエトキシシラン;テトラプロポキシシラン;テトラブトキシシラン;メチルトリエトキシシラン;ジメチルジエトキシシラン;オクタデシルトリエトキシシラン;3-グリシドキシ-プロピルトリメトキシシラン;3-グリシドキシ-プロピルトリエトキシシラン;3-アミノプロピル-トリメトキシシラン;3-アミノプロピル-トリエトキシシラン;ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン;3-アミノプロピルトリ(メトキシエトキシエトキシ)シラン;N(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン;ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン;3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン;3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート;3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート;ビス(トリメトキシシリル)イタコネート;アリルトリエトキシシラン;アリルトリメトキシシラン;3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;ビニルトリエトキシシラン;及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物を含んでよい。
【0033】
第一の層を適用する前に、前処理工程を用いてよい。前処理工程は、典型的には、洗浄液で表面を洗浄することを含む。特に有用な洗浄液は、HFE72DE(約70質量%のtrans-ジクロロエチレン;30質量%の、メチル及びエチル、ノナフルオロブチルエーテル及びノナフルオロイソブチルエーテルの混合物の共沸混合物)などのハイドロフルオロエーテルを含む。
【0034】
第一の層の適用の後に、第一の層を硬化することが望ましい場合がある。水は第一の層の硬化を促進することができるため、湿度の存在下でコーティング液を蒸発させることによって、硬化が影響を受ける可能性がある。熱は、第一の層の硬化の促進を更に助けることができる。熱を適用する場合、プラスチックで製造されることが多い(但し、常にではない)バルブ又はキャニスターが変形しないように、温度は十分に低くあるのがよい。
【0035】
バルブコーティングとして用いることができるコーティングの例は、米国特許公報第2017/0152396号において、特に、例えばその公報の例2において見ることができる。
【0036】
アルブテロール、その塩、又は前述のもののいずれかの水和物と、推進剤とは、加圧キャニスター内に存在してよい。他の薬剤又は添加剤が、更に存在してもよい。
【0037】
アルブテロール、その塩、又は前述のもののいずれかの水和物は、2mg/mL若しくはそれより大きい、2.5mg/mL若しくはそれより大きい、任意選択的に、3mg/mL若しくはそれより大きい、更に任意選択的に、3.5mg/mL若しくはそれより大きい、更に任意選択的に、3.75mg/mL若しくはそれより大きい、更に任意選択的に、4mg/mL若しくはそれより大きい、又は更に任意選択的に、4.5mg/mL若しくはそれより大きい濃度で存在してよい。
【0038】
加圧キャニスターは、推進剤を更に含有する。最も一般的には、HFC推進剤(HFA推進剤としても知られている)が用いられる。特に、HFC-134a又はHFC-227を用いることができ、とりわけ、HFA-134aを用いることができる。
【0039】
他の材料、特に添加剤は、該他の材料が吸入製剤での使用に適している限り、必要に応じて加圧キャニスター内に存在してよい。例としては、ポリエチレングリコール(PEG)などの界面活性剤、及びエタノールなどの可溶化剤が挙げられる。
【0040】
吸入器は、所望される用途及び機能に応じて他の構成要素を有することができる。特に、吸入器は、当分野において知られているものなどの用量カウンターを更に含んでよい。
【0041】
典型的には、吸入器はアクチュエーターを更に含む。作動させた場合、アクチュエーターは、吸入器から加圧キャニスターの内容物を放出する。アクチュエーターの1回の作動で、アクチュエーターは、典型的には、約70μg~約140μg、特に、約80μg~約125μg、より詳しくは約90μg~約110μg、更により詳しくは約95μg~105μg、又は更により詳しくは約100μgのアルブテロールを吸入器から放出する。本開示において、吸入器から「放出される」アルブテロールの量は、吸入器の外部で収集することができる量であり、例えば、吸入器から放出された材料のすべてを収集し、次いで収集されたアルブテロールの質量を(アルブテロールを乾燥し、秤量することによって、クロマトグラフィー、たとえば高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることによって、又は当分野において既知の他の手段によって)決定することによって、決定することができる。吸入器から放出されるアルブテロールの正確な量は、バルブ容量、及び加圧キャニスター中のアルブテロールの製剤濃度に依存するため、意図される用途及び要求される投薬量に応じて当業者が選択することができる。
【0042】
使用時に、記載の吸入器を作動させるか、そうでなければ操作して、アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその水和物を吸入器から放出させる。アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な、前述のもののいずれかの水和物は、加圧キャニスターの推進剤及び任意の他の内容物と共に、典型的にはバルブを通って放出される。
【0043】
使用方法は、対象を治療する方法であってよい。そのような方法において、アルブテロール、1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能なその塩、又は1種若しくはそれより多くの薬学的に許容可能な、前述のものいずれかの水和物は、対象の気道へ放出される。
【実施例】
【0044】
例
HFA-134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)は、ダイキン工業株式会社(日本、大阪府大阪市)から得た。ラベル付き硫酸サルブタモールである硫酸アルブテロール(報告された分析証明書を備えた微粉化物:10マイクロメートル以下(NMT)のd100、5マイクロメートル以下のd92、及び1マイクロメートル未満、25%以下)は、Sicor Societa’Italina Corticosteroidi Srl(イタリア、ミラノ)から得た。
【0045】
例1
各定量吸入器(MDI)は、フルオロカーボン重合(FCP)プラズマ処理プロセスを用いてコーティングされた内表面を有する14mLアルミニウムキャニスター(H&T Presspart、英国、ブラックバーンから入手)と、PBT(ポリブチレンテレフタレート)ステム及びEPDM(エチレン-プロピレンジエンターポリマーエラストマー)ダイアフラムシールを有する25マイクロリットルの3Mリテンションタイプバルブ(3M社、ミネソタ州メープルウッド)と、0.5mmの出口オリフィス径及び1.5mmのジェット長さを有する3M Mk6Sアクチュエーター(3M社、ミネソタ州メープルウッド)とを用いて準備された。バルブのボトル空け(bоttle emptier)、タンク、スプリング、及びフェルール構成要素は、米国特許出願公開第2017/0152396号の例2に記載された一般的なプロセスに従って、フルオロポリマーコーティングでコーティングされた。キャニスターを、HFA-134a中の硫酸アルブテロールのサスペンション(4.8026mg/mL)9.5グラム(g)で低温充填した。個々のキャニスターを低温充填するためのバルクサスペンション製剤は、硫酸アルブテロール及びHFA-134a推進剤を-40℃未満に冷却された容器内で混ぜ合わせることにより調製した。サスペンションは、シルバーソンミキサー(Silverson、英国、チェシャム)を用いて、2分間7000rpmで混合した。
【0046】
完成した各吸入器は、作動ごとに90マイクログラムのアルブテロール遊離塩基の目標量(アクチュエーター外で測定)を送達するように準備された。目標量は、比較例2のMDI(GlaxoSmithKline plc、英国、ブレントフォードからのVENTOLIN EVOHALERブランドMDI)についての作動ごとのマウスピースからの、製造業者により報告された90マイクログラムのアルブテロール(遊離塩基として)の送達に合わせるように選択した。
【0047】
比較例1
定量吸入器(MDI)は、PBTステム及びEPDMダイアフラムシールを含む、コーティングされていない25マイクロリットルの3Mリテンションタイプバルブを用いたことを除いて、例1に記載された手順に従って準備された。
【0048】
比較例2
VENTOLIN EVOHALERブランド硫酸アルブテロールMDI(GlaxoSmithKline plc製、英国、ブレントフォード)は、商業薬局から購入した。VENTOLIN EVOHALER MDIの検査は、各吸入器が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティングを有する内表面を有する19mLのアルミニウムキャニスターと、63マイクロリットルのDF316バルブ(AptarGroup社、イリノイ州クリスタルレーク)と、0.5mmの出口オリフィス径及び1.5mmのジェット長さを有するアクチュエーターとを含有したことを示した。硫酸アルブテロールの含有量は、1.582mg/mL(HFA-134a中)であると決定された。この製品は、作動ごとにマウスピースから90マイクログラムのアルブテロール(遊離塩基として)を送達することが製造業者によって報告された。
【0049】
送達用量試験-ユニット寿命の開始時の送達用量
ユニット寿命の開始時の送達用量は、フィルタが嵌合された標準ユニットスプレー収集装置(USCA)を用いて決定した。各決定において、MDIを、カプラを用いてUSCAに取り付け、1回作動させた。取り付けの直前、MDIを激しく振った。試験サンプルの収集前に、MDIを4回作動させることによって準備し、各準備作動の前にMDIを激しく振った。装置を通る流量は、28.3L/分±0.5L/分に調整した。USCAに堆積した試験サンプルは、40マイクロリットルの収集溶媒ですすぐことにより収集された。収集溶媒は、アセトニトリル/酸性水(0.1%リン酸水)の60/40(体積/体積)溶液であった。次いで、回収されたサンプルは、既知の標準物質を参照するHPLC分析を用いて、サンプル含有量について分析された。UV検出器(210nm)及びKinetex Core-shell C-18(4.6mm×150mm)カラム(Phenomenex、カリフォルニア州トーランス)を含むAgilent 1100 HPLC装置(Agilent Technologies、カリフォルニア州サンタクララ)を用いた。作動カラム温度は30℃であった。移動相Aが0.1%リン酸水であり、移動相Bがアセトニトリル中の0.1%リン酸であるグラジエント溶離法を用いた。グラジエント溶離パラメータは、93:7 A:Bから81:19 A:Bから93:7 A:Bであった。注入量は45マイクロリットルであり、流量は1.0mL/分であった。
【0050】
各例及び比較例について、3つの別個のMDIを試験方法に従って個々に評価した。(遊離塩基として決定した)アルブテロールのユニット寿命の開始時の平均送達用量(n=3)を計算した。結果は、表1にマイクログラム/作動(mcg/作動)として報告される。90マイクログラム/作動の目標アルブテロール遊離塩基送達用量に対する、測定された寿命の開始時の送達用量のパーセントを計算した。パーセントは、表1に報告される。
【0051】
【0052】
次世代インパクタ(NGI)試験
各MDIから放出される空気力学的粒度分布は、次世代インパクタ装置(MSP社、ミネソタ州ショアビュー)を用いて評価した。各試験について、MDIをNGI装置のスロート構成要素(標準米国薬局方(USP)導入ポート)に取り付け、装置の中に6回作動させた。各作動の前に、MDIを激しく振った。取り付けの直前、MDIを4回作動させることによって準備した。各準備噴射の前に、MDIを激しく振った。試験中に装置を通過する流量は、30L/分で調整した。バルブステム、アクチュエーター、スロートアセンブリ(USP導入ポート)、個別の収集カップ1~7(各収集カップは、メタノール中の50%体積/体積グリセロールの配合物でコーティングされた)、マイクロオリフィスコレクタ(MOC)、及び最終フィルタ構成要素に堆積した試験サンプル(硫酸アルブテロール)は、収集溶媒で各個別の構成要素をすすぐことにより収集された。スロートアセンブリは20mLの収集溶媒ですすぎ、他のすべての構成要素は10mLの収集溶媒ですすいだ。収集溶媒は、酸性水(0.1%リン酸水)中のアセトニトリル10%溶液(体積/体積)であった。次いで、回収されたサンプルは、既知の標準物質を参照するHPLC分析を用いて、サンプル含有量について分析された。UV検出器(210nm)及びKinetex Core-shell C-18(4.6mm×150mm)カラム(Phenomenex)を有するAgilent 1100 HPLC装置(Agilent Technologies)を用いた。作動カラム温度は30℃であった。移動相Aが0.1%リン酸水であり、移動相Bがアセトニトリル中の0.1%リン酸であるグラジエント溶離法を用いた。グラジエント溶離パラメータは、93:7 A:Bから81:19 A:Bから93:7 A:Bであった。注入量は30マイクロリットルであり、流量は1.0mL/分であった。
【0053】
例1及び比較例1~2の定量吸入器(MDI)は、記載されたNGIインパクタ試験手順に従って、アルブテロールの、合計バルブ外含有量(Total Ex-Valve Content)、合計アクチュエーター外含有量(Total Ex-Actuator Content)、FPM、及びMMADについて評価された。各例について、3つの個別のMDIを試験した。結果は平均値として示される。結果は表2に報告される。
【0054】
合計バルブ外含有量は、分析した12のすべての構成要素(バルブステムからフィルタ)からのサンプル含有量の合計として決定した。合計バルブ外含有量は、アルブテロール遊離塩基のマイクログラム/作動(mcg/作動)として計算され、報告された。
【0055】
合計アクチュエーター外含有量は、アクチュエーター構成要素の後に位置する10の分析された構成要素(すなわちスロートアセンブリからフィルタ)からのサンプル含有量の合計として決定した。合計アクチュエーター外含有量は、アルブテロール遊離塩基のマイクログラム/作動として計算され、報告された。
【0056】
微粒子質量(FPM)は、5マイクロメートル未満の粒子サイズのサンプル含有量の合計としてCITDAS(Copley Scientific、英国ノッティンガムからのCopley Inhaler Testing Data Analysis Software)を用いて計算された。FPMは、アルブテロール遊離塩基の作動ごとのマイクログラムとして報告された。
【0057】
アルブテロール粒子の空気力学的質量中央径(MMAD)は、CITDAS(Copley Inhaler Testing Data Analysis Software)を用いて計算され、報告された。
【0058】
【国際調査報告】