(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】冠状動脈の血流速度の算出方法、装置及び電子デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20230410BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230410BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20230410BHJP
A61B 5/021 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
A61B5/026 140
G06T7/00 350C
G06T7/00 612
A61B6/00 330A
A61B6/00 331E
A61B6/00 360Z
A61B6/00 350D
A61B6/00 350Z
A61B5/021
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551789
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2021073277
(87)【国際公開番号】W WO2021175039
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】202010134217.7
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522339547
【氏名又は名称】シャンハイ・パルス・メディカル・テクノロジー,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI PULSE MEDICAL TECHNOLOGY, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】トゥー,シァンシエン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァオ,チウヤン
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス=チコ,フアン・ルイス
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シゥーヂァン
【テーマコード(参考)】
4C017
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA11
4C017AC40
4C017BC11
4C017FF01
4C093AA24
4C093CA18
4C093CA22
4C093CA37
4C093DA02
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4C093EE20
4C093FA47
4C093FD03
4C093FF16
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4C093FF24
4C093FG12
4C093FG13
4C093FG14
4C093FG16
5L096BA06
5L096BA13
5L096CA04
5L096DA02
5L096HA02
5L096JA03
5L096JA11
5L096KA04
(57)【要約】
本発明は冠状動脈の血流速度の算出方法、装置、電子デバイス及び記憶媒体に関する。冠状動脈の血流速度の算出方法は、前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るステップS1(S1)と、前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出するステップS2(S2)と、算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得るステップS3(S3)と、を含む。前記冠状動脈の血流速度の算出方法、装置、電子デバイスは、冠状動脈の血流速度の算出の自動化を実現し、算出された冠状動脈の血流速度がより正確で、該算出方法が簡単である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠状動脈の血流速度の算出方法において、
前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るステップS1と、
前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出するステップS2と、
算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得るステップS3と、
を含むことを特徴とする、冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項2】
前記ステップS1は、具体的には、前記冠状動脈の造影画像を取得し、冠状動脈の主枝血管の類型選択を表示し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得ることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項3】
前記ステップS1は、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断し、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にある場合に、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得て、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、提示情報を表示すること、をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項4】
前記深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得ることは、具体的には、
U-Netモデルのエンコーダー構造により、前記冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、さらにはRefineNetモジュールを用いて前記多種の異なる解像度の特徴マップを精製して結合することで、主枝血管の分割画像を得ることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項5】
前記ステップS2は、具体的には、
前記主枝血管の分割画像を抽出し、血管骨格の造影画像を得るステップ21と、
前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出し、画素を単位とした主枝血管の長さを得て、画像のスケーリング因数と結びつけて、主枝血管の実際の物理的長さを算出するステップS22と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項6】
前記ステップS3は、具体的には、
時間を横座標とし、前記主枝血管の分割画像中の主枝血管の長さを縦座標として、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るステップS31と、
前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを選択して、前記所定セグメントの勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るステップS32と、を含むことを特徴とする、請求項5に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項7】
前記ステップS31は、具体的には、
前記主枝血管の分割画像のフレーム数を横座標とし、主枝血管の実際の長さを縦座標として、主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線を得るステップS311と、
フレーム周波数情報に基づき、前記主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線中の横座標を時間に変換し、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るステップS312と、を含むことを特徴とする、請求項6に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項8】
前記ステップS32は、具体的には、
前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理し、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の平滑曲線を得ることと、
前記平滑曲線上の主枝血管の長さの最大値を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さが前記主枝血管の長さの最大値の所定値となるセグメントを所定セグメント領域として取得し、前記平滑曲線上の所定セグメント領域に対応する前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを予選セグメントとすることと、
前記予選セグメントに対応する冠状動脈の心電情報に基づき、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含むか否かを判断し、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含まない場合には、前記予選セグメントを前記所定セグメントとすることと、
前記所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得ることと、を含むことを特徴とする、請求項6に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項9】
前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含む場合に、前記予選セグメントの中心を開始点として前記予選セグメントの両端へそれぞれ半分の心拍動周期の長さを延伸して所定セグメントを得ることを含むことを特徴とする請求項8に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項10】
前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び前記冠状動脈の造影画像並びに前記冠状動脈の造影画像に対応する前記冠状動脈の心電情報を表示し、ユーザが所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像及び前記冠状動脈の心電情報を調べ、所定セグメントの選択を検証し、所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整することを特徴とする、請求項9に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法により、前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度をそれぞれ算出し、算出された前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度に基づき、前記冠状動脈の血流予備量を得て、
好ましくは、前記の冠状動脈の血流速度の算出方法により、主枝血管の安静状態と充血状態にある前記冠状動脈の造影画像に基づいて前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度をそれぞれ算出し、前記主枝血管の安静状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間と前記主枝血管の充血状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間との間の時間差が第1の時間閾値より大きくないことを特徴とする、冠状動脈の血流予備量の算出方法。
【請求項12】
冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るための冠状動脈造影画像分割モジュールと、
前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出するための長さ算出モジュールと、
算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得るための血流速度算出モジュールと、
を備えることを特徴とする、冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項13】
前記冠状動脈の血流速度の算出装置は、ユーザに冠状動脈の主枝血管の類型選択を表示するための表示装置をさらに備え、
前記冠状動脈造影画像分割モジュールは、前記冠状動脈の造影画像を取得し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るためのものであることを特徴とする、請求項12に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項14】
前記冠状動脈造影画像分割モジュールは、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断し、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にある場合に、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得て、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、前記表示装置はユーザに提示情報を表示するためのものであることを特徴とする、請求項13に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項15】
前記冠状動脈造影画像分割モジュールは、U-Netモデルのエンコーダー構造により前記冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、さらにRefineNetモジュールを用いて前記多種の異なる解像度の特徴マップを精製して結合することで、主枝血管の分割画像を得るためのものであることを特徴とする、請求項12に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項16】
前記長さ算出モジュールは、前記主枝血管の分割画像を抽出し、血管骨格の造影画像を得て、前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出し、画素を単位とした主枝血管の長さを得て、画像のスケーリング因数と結びつけて、主枝血管の実際の物理的長さを算出するためのものであることを特徴とする、請求項12に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項17】
前記血流速度算出モジュールは、時間を横座標とし、前記主枝血管の分割画像中の主枝血管の長さを縦座標として、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得て、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを取得し、前記所定セグメントの勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るためのものであることを特徴とする、請求項16に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項18】
前記血流速度算出モジュールは、前記主枝血管の分割画像のフレーム数を横座標とし、主枝血管の実際長さを縦座標として、主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線を得て、フレーム周波数情報に基づき、前記主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線中の横座標を時間に変換し、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るためのものであることを特徴とする、請求項17に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項19】
前記血流速度算出モジュールは、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理し、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の平滑曲線を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さの最大値を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さが前記主枝血管の長さの最大値の所定値となるセグメントを所定セグメント領域として取得し、
前記平滑曲線上の所定セグメント領域に対応する前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを予選セグメントとし、前記予選セグメントに対応する冠状動脈の心電情報に基づき、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含むか否かを判断し、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含まない場合に、前記予選セグメントを前記所定セグメントとし、
前記所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るためのものであることを特徴とする、請求項17に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項20】
前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含む場合に、前記予選セグメントの中心を開始点として前記予選セグメントの両端へ半分の心拍動周期の長さをそれぞれ延伸して所定セグメントを得ることを特徴とする請求項19に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項21】
前記冠状動脈の血流速度の算出装置は、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び前記冠状動脈の造影画像並びに前記冠状動脈の造影画像に対応する前記冠状動脈の心電情報をユーザに表示するための表示装置をさらに備え、ユーザが所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像及び前記冠状動脈の心電情報を調べ、所定セグメントの選択を検証し、所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整することを特徴とする、請求項19に記載の冠状動脈の血流速度の算出装置。
【請求項22】
1つ又は複数のプロセッサと、
コンピュータ読み取り可能なコードが記憶された1つ又は複数のメモリと、を備え、
前記コンピュータ読み取り可能なコードは、前記1つ又は複数のプロセッサにより実行される場合、請求項1~10に記載の血流速度の算出方法を行うことを特徴とする、冠状動脈の血流速度の算出のための電子デバイス。
【請求項23】
コンピュータ読み取り可能なコードが記憶され、前記コンピュータ読み取り可能なコードは、1つ又は複数のプロセッサにより実行される場合、請求項1~10に記載の血流速度の算出方法を行うことを特徴とする、コンピュータ記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンピュータ技術分野に関し、特に、冠状動脈の血流速度の算出方法、装置、電子デバイス及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、心血管画像に基づいて冠状動脈FFR(血流予備量比)及びCFR(冠状動脈血流予備能)を算出する方法が多く提出され、その中で、冠状動脈血流速度はFFRとCFRの算出に必要な重要条件であり、現在冠状動脈血流速度を算出する方法は主にTIMIフレームカウント法があるが、該方法は医者がマニュアルで測定を行う必要があり、操作が複雑である。
【発明の概要】
【0003】
上記の技術課題を解決するために、本発明の1つの目的は、冠状動脈の血流速度の算出方法を提供することにあり、該算出方法は冠状動脈の血流速度の算出の自動化を実現し、算出された冠状動脈の血流速度がより正確で、該算出方法が簡単である。
本発明のもう1つの目的は、上記冠状動脈の血流速度の算出方法を含んだ冠状動脈の血流予備量の算出方法を提供することにある。
本発明のさらに1つの目的は、上記冠状動脈の血流速度の算出方法を実現する冠状動脈の血流速度の算出装置を提供することにある。
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明は次のような技術案を用いる。
本発明の第一の実施例に係る冠状動脈の血流速度の算出方法は、
前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るステップS1と、
前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出するステップ2と、
算出された前記主枝血管の長さの時間の経過に伴う変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得るステップ3と、を含む。
【0005】
好ましくは、前記ステップS1は、具体的には、前記冠状動脈の造影画像を取得し、冠状動脈の主枝血管の類型選択を表示し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得ることを含む。
【0006】
好ましくは、前記ステップS1は、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断し、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にある場合に、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得て、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、提示情報を表示することをさらに含む。
【0007】
好ましくは、前記深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割して主枝血管の分割画像を得ることは、具体的には、
U-Netモデルのエンコーダー構造により前記冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、さらにはRefineNetモジュールを用いて前記多種の異なる解像度の特徴マップを精製して結合することで、主枝血管の分割画像を得ることを含む。
【0008】
好ましくは、前記ステップS2は、具体的には、
前記主枝血管の分割画像を抽出し、血管骨格の造影画像を得るステップS21と、
前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出し、画素を単位とした主枝血管の長さを得て、画像のスケーリング因数と結びつけ、主枝血管の実際の物理的長さを算出するステップS22と、を含む。
【0009】
好ましくは、前記ステップS3は、具体的には、
時間を横座標とし、前記主枝血管の分割画像中の主枝血管の長さを縦座標として、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るステップS31と、
前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを選択して、前記所定セグメントの勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るステップS32と、を含む。
【0010】
好ましくは、前記ステップS31は、具体的には、
前記主枝血管の分割画像のフレーム数を横座標とし、主枝血管の実際長さを縦座標として、主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線を得るステップS311と、
フレーム周波数情報に基づいて前記主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線中の横座標を時間に変換し、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るステップS312と、を含む。
【0011】
好ましくは、前記ステップS32は、具体的には、
前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理し、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の平滑曲線を得ることと、
前記平滑曲線上の主枝血管の長さの最大値を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さが前記主枝血管の長さの最大値の所定値となるセグメントを所定セグメント領域として取得し、前記平滑曲線上の所定セグメント領域に対応する前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを予選セグメントとすることと、
前記予選セグメントに対応する冠状動脈の心電情報に基づき、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含むか否かを判断し、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含まない場合には、前記予選セグメントを前記所定セグメントとすることと、
前記所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得ることと、を含む。
【0012】
好ましくは、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含む場合に、前記予選セグメントの中心を開始点として前記予選セグメントの両端へ半分の心拍動周期の長さをそれぞれ延伸して所定セグメントを得る。
【0013】
好ましくは、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び前記冠状動脈の造影画像並びに前記冠状動脈の造影画像に対応する前記冠状動脈の心電情報を表示し、ユーザが所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像及び前記冠状動脈の心電情報を調べ、所定セグメントの選択を検証し、所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整する。
【0014】
本発明の第二の実施例に係る冠状動脈の血流予備量の算出方法は、
上記いずれか1つの実施例に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法により、それぞれ前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度を算出し、算出された前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度に基づき、前記冠状動脈の血流予備量を得ることを含む。
【0015】
好ましくは、前記の冠状動脈の血流速度の算出方法により、主枝血管が安静状態と充血状態にある前記冠状動脈の造影画像に基づき、それぞれ前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度を算出し、前記主枝血管が安静状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間と、前記主枝血管が充血状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間との間の時間差が第1の時間閾値より大きくない。
【0016】
本発明の第三の実施例に係る冠状動脈の血流速度の算出装置は、
前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るための冠状動脈造影画像分割モジュールと、
前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出するための長さ算出モジュールと、
算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得るための血流速度算出モジュールと、を含む。
【0017】
好ましくは、前記冠状動脈の血流速度の算出装置は、ユーザに冠状動脈の主枝血管の類型選択を表示するための表示装置をさらに備え、
前記冠状動脈造影画像分割モジュールは、前記冠状動脈の造影画像を取得し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るためのものである。
【0018】
好ましくは、前記冠状動脈造影画像分割モジュールは、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断するためのものであり、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にある場合に、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得て、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、前記表示装置はユーザに提示情報を表示するのに用いられる。
【0019】
好ましくは、前記冠状動脈造影画像分割モジュールは、U-Netモデルのエンコーダー構造により前記冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、さらにRefineNetモジュールを用いて前記多種の異なる解像度の特徴マップを精製して結合することで、主枝血管の分割画像を得るためのものである。
【0020】
好ましくは、前記長さ算出モジュールは、前記主枝血管の分割画像を抽出し、血管骨格の造影画像を得て、前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出し、画素を単位とした主枝血管の長さを得て、画像のスケーリング因数と結びつけて、主枝血管の実際の物理的長さを算出するためのものである。
【0021】
好ましくは、前記血流速度算出モジュールは、時間を横座標とし、前記主枝血管の分割画像中の主枝血管の長さを縦座標として、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得て、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを取得し、前記所定セグメントの勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るためのものである。
【0022】
好ましくは、前記血流速度算出モジュールは、前記主枝血管の分割画像のフレーム数を横座標とし、主枝血管の実際の長さを縦座標として、主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線を得て、フレーム周波数情報に基づき、前記主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線中の横座標を時間に変換し、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るためのものである。
【0023】
好ましくは、前記血流速度算出モジュールは、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理し、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の平滑曲線を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さの最大値を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さが前記主枝血管の長さの最大値の所定値となるセグメントを所定セグメント領域として抽出して、前記平滑曲線上の所定セグメント領域に対応する前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを予選セグメントとし、前記予選セグメントに対応する冠状動脈の心電情報に基づき、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含むか否かを判断し、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含まない場合に、前記予選セグメントを前記所定セグメントとし、
前記所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るためのものである。
【0024】
好ましくは、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含む場合に、前記予選セグメントの中心を開始点として前記予選セグメントの両端へ半分の心拍動周期の長さをそれぞれ延伸して所定セグメントを得る。
【0025】
好ましくは、前記冠状動脈の血流速度の算出装置は、ユーザに前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び前記冠状動脈の造影画像並びに前記冠状動脈の造影画像に対応する前記冠状動脈の心電情報を表示するための表示装置をさらに備え、ユーザは所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像及び前記冠状動脈の心電情報を調べ、所定セグメントの選択を検証し、所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整する。
【0026】
本発明の第四の実施例に係る冠状動脈の血流速度の算出のための電子デバイスは、
1つ又は複数のプロセッサと、
コンピュータ読み取り可能なコードが記憶された1つ又は複数のメモリと、を備え、前記コンピュータ読み取り可能なコードは、前記1つ又は複数のプロセッサにより実行される場合、上記いずれか1つの実施例に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法を行う。
本発明の第五の実施例に係るコンピュータ記憶媒体には、コンピュータ読み取り可能なコードが記憶され、前記コンピュータ読み取り可能なコードは、1つ又は複数のプロセッサにより実行される場合、上記いずれか1つの実施例に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法を行う。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有益な効果は以下のとおりである:
深層学習によって冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得て、フレーム毎の画像内の主枝血管の長さを算出し、さらには主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて主枝血管の血流速度を得ることで、該算出方法が冠状動脈の血流速度の算出の自動化を実現し、算出された冠状動脈の血流速度がより正確で、該算出方法が簡単である。
上記の説明はただ本発明の技術案の略述だけであり、本発明の技術案をよりはっきり理解させることができ、明細書の内容に基づいて実施できるように、以下、本発明の好ましい実施例によって図面を参照しながら下記のように詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施例の冠状動脈の血流速度の算出方法のフローチャートである。
【
図2】冠状動脈の造影画像を分割して主枝血管の分割画像を得る模式図である。
【
図3】従来のU-Netモデルの構造を示す図である。
【
図4】従来のRefineNetモデルの構造を示す図である。
【
図5】本発明の実施例における冠状動脈の造影画像を分割するために使用されたRefineU-Netの構造を示す図である。
【
図6】本発明の実施例の主枝血管の分割画像を抽出して得られた単画素幅の血管骨格の造影画像である。
【
図7】本発明の実施例の主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び平滑曲線の模式図である。
【
図9】本発明の実施例の表示装置で表示される第一表示画面を示す図である。
【
図10】本発明の実施例の表示装置で表示される第二表示画面を示す図である。
【
図11】本発明の実施例の表示装置で表示される第三表示画面を示す図である。
【
図12】本発明の実施例の表示装置で表示される第四表示画面を示す図である。
【
図13】本発明の実施例の表示装置で表示される第五表示画面を示す図である。
【
図14】本発明の実施例の冠状動脈の血流速度の算出装置の構造を示す図である。
【
図15】本発明の実施例の電子デバイスの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図と実施例を合わせて、本発明の具体的な実施形態についてさらに詳しく説明する。以下の実施例はただ本発明を説明するだけに用いられるが、本発明の範囲を制限するのに用いられるものではない。
【0030】
なお、この文章に使用されるように、用語「モジュール」は、専用集積回路(ASIC)、電子回路、1つ又は複数のソフトウエア又はファームウエアプログラムを実行するプロセッサ(共有、専用、又はグループ)及び/又はメモリ、組合せ論理回路、及び/又は記載された機能を提供するその他の適当なハードウエアコンポーネントを指すか、又は含んでもよい、あるいは、これらのハードウエアコンポーネントの一部としてもよい。
なお、本発明の各実施例では、プロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ等、及び/又はその如何なる組合せであってもよい。別の態様によれば、前記プロセッサは、シングルコアプロセッサ、マルチコアプロセッサ等、及び/又はその如何なる組合せであってもよい。
【0031】
図1に示すように、本発明実施例に係る冠状動脈の血流速度の算出方法は、次のようなステップを含む。
ステップS1、前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得る。
【0032】
具体的には、冠状動脈の血流速度を算出する際に、主枝血管中の血流速度のみに関心を持つため、冠状動脈造影画像中の主枝血管を分割して主枝血管の分割画像を得るだけでよい。しかし、Gaborフィルタリング、Hessianマトリックス等のような従来の画像処理方法は、あらゆる血管状構造に対しても非常に敏感であり、主枝血管と側枝血管との区分では無力である。したがって、深層学習の方法を用い、深層ニューラルネットワークの強大な特徴抽出能力によって主枝血管と側枝血管を区分し、主枝血管だけを分割し、続いてくる主枝血管長さの算出プロセスを極めて大きく簡素化した。
【0033】
図2に示すように、取得したフレーム毎の冠状動脈の造影画像について、深層ニューラルネットワークの入力として、深層ニューラルネットワークから一枚の原画像の大きさと同じ主枝血管の分割画像が出力され、該主枝血管の分割画像におけるその原画像上の主枝血管の位置に対応する位置の画素値を1(
図2に白色で表示される)とし、該主枝血管の分割画像のその他の位置の画素値を0(
図2に黒色で表示される)とする。
【0034】
好ましくは、ステップS1は、具体的には、冠状動脈の造影画像を取得し、冠状動脈の主枝血管の類型選択を表示し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得ることを含む。
【0035】
具体的には、冠状動脈の主枝血管は、前下行枝血管、回旋枝血管及び右冠状動脈血管を含み、表示装置によってユーザに具体的に前下行枝血管、回旋枝血管及び右冠状動脈血管のうちのどの主枝血管を選択するかを表示することができ、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、ある1つの主枝血管の分割画像を得る。また、本発明の他の実施例では、冠状動脈の造影画像に基づき、主枝血管の類型を自動的に識別し、それから、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、ある1つの主枝血管の分割画像を得るようにしてもよい。
【0036】
好ましくは、前記ステップS1は、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断し、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にある場合に、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得て、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、提示情報を表示することをさらに含む。
【0037】
具体的には、
図9に示すように、冠状動脈の造影画像を取得した後、表示装置によってユーザに冠状動脈の主枝血管の類型選択を表示し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断し、冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、表示装置は冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の受入可能な角度範囲内にないことを提示するように提示情報をユーザに表示する。
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断することで、算出された主枝血管の血流速度の正確性を確保することができる。
【0038】
好ましくは、前記深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得ることは、具体的には、
U-Netモデルのエンコーダー構造により前記冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、さらにはRefineNetモジュールを用いて前記多種の異なる解像度の特徴マップを精製して結合することで、主枝血管の分割画像を得ることを含む。
【0039】
具体的には、従来のU-Netモデルは、エンコーダー・デコーダーの構造を使用し、
図3に示すように、オリジナルの画像が2回の畳み込みによって、64チャンネルの特徴マップを得て、該特徴マップの解像度がオリジナルの画像と同じであり、該64チャンネルの特徴マップを最大値プーリング処理することにより解像度を元の半分に下げて、畳み込みによってさらに特徴を抽出すると、第2層の128チャンネルの特徴マップを得て、上記のプロセスを繰り返して、5つの異なる解像度の特徴マップを得ることができる。これはコーディングプロセスであり、該プロセスの目的は高階層の語義情報(低解像度の特徴マップ)と低階層の構造情報(高解像度の特徴マップ)を抽出し、その後、デコードプロセスに入り、低解像度の特徴マップを高解像度にアップサンプリングして、上位の高解像度の特徴マップとスプライシング処理を行い、畳み込みで特徴を抽出するように、最高解像度の特徴マップとスプライシングした後、1×1の畳み込みによってチャンネル数を調整すると所要の分割結果を得るまでに、アップサンプリング及びスプライシングの処理を繰り返す。
【0040】
従来のRefineNetモデルはU-Netモデルと類似し、
図4に示すように、異なる尺度の特徴マップの入力を受信して異なる尺度の特徴マップを合併して精製することができ、特徴マップの続いてくる処理を容易にさせる。
従来のRefineNetモデルとU-Netモデルとの区別は、主に次の2つの面にある。RefineNetモデルのエンコーダーは語義分割分野で広く用いられているResNet構造を使用し、一方、U-Netモデルのエンコーダーは単純に畳み込みを使用して特徴を抽出する。RefineNetモデルはデコーダーにおいて独創的なRefineNetモジュールを使用し、該モジュールは低解像度の特徴マップと高解像度の特徴マップの情報をより良く精製することができる。
【0041】
本発明における冠状動脈の造影画像の分割に使用されたRefine-UNetの構造図を
図5に示す。なおまた、U-Netモデルのエンコーダー構造により取得した冠状動脈の造影画像の異なる解像度の特徴マップの種類が実際のニーズによって決まり、例えば、5種であってもよく、3種であってもよく、さらに7種等であってもよい。
【0042】
U-Netモデルのエンコーダー構造、即ち畳み込みだけを使用することにより、冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、算出資源の浪費を避け、算出速度を速めた。一方、RefineNetモジュールを用いて高解像度と低解像度の特徴マップを精製した後、さらに結合することで、高階層の語義情報と低階層の構造情報をより高い効率で利用し、分割の正確性を増強することができる。
【0043】
ステップS2:前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出する。
好ましくは、前記ステップS2は、具体的には、次のようなステップを含む。
ステップS21:前記主枝血管の分割画像を抽出し、血管骨格の造影画像を得る。
具体的には、
図6に示すように、得られた前記主枝血管の分割画像を抽出し、単画素幅の血管骨格の造影画像を得ることができる。
ステップS22:前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出し、画素を単位とした主枝血管の長さを得て、画像のスケーリング因数と結合することで、主枝血管の実際の物理的長さを算出する。
【0044】
具体的には、Fast Marchingアルゴリズムを使用して前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出してもよい。
抽出によって血管骨格の造影画像を得て、血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出することで主枝血管の長さを得て、このように、算出によって得られた主枝血管の長さの正確度を高め、さらには算出された冠状動脈の血流速度の正確度を高めた。
【0045】
ステップS3:算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得る。
好ましくは、前記ステップS3は、具体的には、次のようなステップを含む。
ステップS31:時間を横座標とし、前記主枝血管の分割画像中の主枝血管の長さを縦座標として、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得る。
具体的には、
図7に示すように、該主枝血管の長さの経時的な変化曲線は、一般に、平坦-上昇-平坦の「S」字状を呈し、これは冠状動脈造影画像序列の前段に、造影剤がまだ冠状動脈に注入されていないため、主枝血管がX線で見えないからである。この時、算出によって得られた主枝血管の長さは一般に0であり、冠状動脈造影画像序列の後段に、造影剤が冠状動脈において満ちあふれているため、この時、算出によって得られた主枝血管長さは主枝血管の完全な長さであり、もう変化しない。
【0046】
好ましくは、前記ステップS31は、具体的には、
前記主枝血管の分割画像のフレーム数を横座標とし、主枝血管の実際の長さを縦座標として、主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線を得るステップS311と、
フレーム周波数情報に基づき、前記主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線中の横座標を時間に変換し、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るステップS312と、を含む。
ステップS32:前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを取得し、前記所定セグメントの勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得る。
【0047】
好ましくは、前記ステップS32は、具体的には、次のようなステップを含む。
ステップS321:前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理し、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の平滑曲線を得る。
具体的には、心臓拍動及び血管分割の誤差等の原因で、主枝血管の長さの経時的な変化曲線には一般に一定のノイズがあるので、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理することができ、K次ベジェ曲線によって主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理することができる。
【0048】
ステップS322:前記平滑曲線上の主枝血管の長さの最大値を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さが前記主枝血管の長さの最大値の所定値となるセグメントを所定セグメント領域として取得し、前記平滑曲線上の所定セグメント領域に対応する前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを予選セグメントとする。
好ましくは、前記所定値の最低値は0~20%であってもよく、所定値の最高値は80~90%であってもよい。
【0049】
ステップS323:前記予選セグメントに対応する冠状動脈の心電情報に基づき、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含むか否かを判断し、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含まない場合に、前記予選セグメントを前記所定セグメントとする。
具体的には、正常な1つの心拍動周期内の心電図は、
図8に示すように、QRS波の波動はその他の波より著しく高く、閾値等の方法によってQRS波のピークを速く検出することができ、隣り合う2つのQRS波の間の時間間隔に基づき、1つの心拍動周期の時間を得ることができる。
【0050】
ステップS324:前記所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得る。
具体的には、線形最小二乗法によって所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配は主枝血管の血流速度である。
これによって、上記の方法により主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを取得し、主枝血管の血流速度をさらに得ることで、算出によって得られた主枝血管の血流速度をより正確にさせる。
【0051】
好ましくは、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含む場合に、前記予選セグメントの中心を開始点として前記予選セグメントの両端へそれぞれ半分の心拍動周期の長さを延伸して所定セグメントを得る。
具体的には、主枝血管の血流速度が心拍動周期の異なる段階において一般に差異があるため、1つの心拍動周期に対応する主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを所定セグメントとし、算出によって得られた主枝血管の血流速度をより正確にさせる。
【0052】
深層学習によって冠状動脈の造影画像を分割することで、主枝血管の分割画像を得て、フレーム毎の画像内の主枝血管の長さを算出し、さらには主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて主枝血管の血流速度を得る。該算出方法は冠状動脈の血流速度の算出の自動化を実現し、算出によって得られた冠状動脈の血流速度がより正確になり、且該算出方法は比較的簡単である。
【0053】
好ましくは、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び前記冠状動脈の造影画像並びに前記冠状動脈の造影画像に対応する前記冠状動脈の心電情報を表示し、ユーザが所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像及び前記冠状動脈の心電情報を調べ、所定セグメントの選択を検証し、所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整する。
【0054】
具体的には、
図10及び
図11に示すように、表示装置によってユーザに主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び該変化曲線に対応する冠状動脈の心電情報を表示することができ、又、所定セグメントを直線フィッティングして得られた主枝血管の血流速度を表示した。
図10に示すように、ユーザが表示画面の右側の画像ウィンドウにおいてマウスホイールをスクロールし、又は変化曲線上の任意位置をクリックすることで、異なるフレームの冠状動脈の造影画像を調べることができる。
図11に示すように、所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像の調査や所定セグメントの選択の検証が容易になるように、マウスである機能アイコンをクリックすることで表示画面の右側の画像ウィンドウをマルチウィンドウ模式に切り替えてもよい。所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整し、表示画面に表示された主枝血管の血流速度は、所定セグメントの選択に基づいてリアルタイムに更新される。
【0055】
ユーザが自動的に選択した所定セグメントの選択が不合理であると認めた場合、マニュアルで所定セグメントの選択を調整可能であることによって、所定セグメントの選択の合理性を確保し、さらには得られた冠状動脈の血流速度が比較的正確であることを確保する。
上記冠状動脈の血流速度の算出方法を含む冠状動脈の血流予備量の算出方法は、次のようなステップを含む。
【0056】
上記のいずれか1つの実施例に記載の冠状動脈の血流速度の算出方法によって、それぞれ前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度を算出し、算出された前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度に基づき、前記冠状動脈の血流予備量を得る。
【0057】
具体的には、一序列の冠状動脈の造影画像を選択し、上記の冠状動脈の血流速度の算出方法により主枝血管の1つの状態における血流速度を算出する。
図12に示すように、表示装置の表示画面の冠状動脈の血流予備量を算出するアイコン(CFRアイコン)をクリックし、その後、別の序列の冠状動脈の造影画像を選択し、その中で、前記別の序列の冠状動脈の造影画像中の主枝血管の状態と前記一序列の冠状動脈の造影画像中の主枝血管の状態とが逆であり、表示装置は前記別の序列の冠状動脈の造影画像中の主枝血管の状態の種類選択(安静状態又は充血状態)をユーザに表示して、ユーザの選択に基づいて前記一序列の冠状動脈の造影画像中の主枝血管の状態を確定し、その後、主枝血管のもう1つの状態における血流速度を算出して、算出された主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度に基づき、前記冠状動脈の血流予備量を得る。
図13に示すように、冠状動脈の血流予備量を表示する。
【0058】
好ましくは、前記の冠状動脈の血流速度の算出方法により、主枝血管が安静状態と充血状態にある前記冠状動脈の造影画像に基づき、それぞれ前記主枝血管の安静状態における血流速度及び充血状態における血流速度を算出し、その中で、前記主枝血管が安静状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間と前記主枝血管が充血状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間との間の時間差が第1の時間閾値より大きくない。
【0059】
具体的には、第1の時間閾値は7日であってもよく、15日等であってもよく、具体的には実情に応じて決定する。主枝血管が安静状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間と前記主枝血管が充血状態にある冠状動脈の造影画像の採取時間との間の時間差が第1の時間閾値より大きくない。これによって、算出された冠状動脈の血流予備量の正確性を確保できる。
該冠状動脈の血流予備量の算出方法は、冠状動脈の血流予備量の算出の自動化を実現し、算出された冠状動脈の血流予備量がより正確になり、該算出方法は比較的簡単である。
【0060】
図14に示すように、上記発明実施例に係る冠状動脈の血流速度の算出方法を実現した本発明の実施例に係る冠状動脈の血流速度の算出装置は、冠状動脈造影画像分割モジュール20、長さ算出モジュール30及び血流速度算出モジュール40を備える。
その中で、冠状動脈造影画像分割モジュール20は、前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るためのものである。
長さ算出モジュール30は、前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出するためのものである。
血流速度算出モジュール40は、算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得るためのものである。
【0061】
好ましくは、前記冠状動脈の血流速度の算出装置は、前記表示装置が冠状動脈の主枝血管の類型選択をユーザに表示するための表示装置をさらに備える。
前記冠状動脈造影画像分割モジュール20は、前記冠状動脈の造影画像を取得し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得るためのものである。
【0062】
好ましくは、前記冠状動脈造影画像分割モジュール20は、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断するためのものである。
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にある場合に、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得る。
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、前記表示装置はユーザに提示情報を表示する。
【0063】
好ましくは、前記冠状動脈造影画像分割モジュール20は、U-Netモデルのエンコーダー構造により前記冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、さらにはRefineNetモジュールを用いて前記多種の異なる解像度の特徴マップを精製して結合することで、主枝血管の分割画像を得るためのものである。
【0064】
好ましくは、前記長さ算出モジュール30は、前記主枝血管の分割画像を抽出し、血管骨格の造影画像を得て、前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出し、画素を単位とした主枝血管の長さを得て、画像のスケーリング因数と結びつけ、主枝血管の実際の物理的長さを算出するためのものである。
【0065】
好ましくは、前記血流速度算出モジュール40は、時間を横座標とし、前記主枝血管の分割画像中の主枝血管の長さを縦座標として、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得て、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを取得し、前記所定セグメントの勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るためのものである。
【0066】
好ましくは、前記血流速度算出モジュール40は、前記主枝血管の分割画像のフレーム数を横座標とし、主枝血管の実際の長さを縦座標として、主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線を得て、フレーム周波数情報に基づいて前記主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線中の横座標を時間に変換して、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るためのものである。
【0067】
好ましくは、前記血流速度算出モジュール40は、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理し、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の平滑曲線を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さの最大値を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さが前記主枝血管の長さの最大値の所定値となるセグメントを所定セグメント領域として取得し、前記平滑曲線上の所定セグメント領域に対応する前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを予選セグメントとし、前記予選セグメントに対応する冠状動脈の心電情報に基づき、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含むか否かを判断し、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含まない場合に、前記予選セグメントを前記所定セグメントとする。
前記所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得る。
【0068】
好ましくは、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含む場合に、前記予選セグメントの中心を開始点として前記予選セグメントの両端へそれぞれ半分の心拍動周期の長さを延伸して所定セグメントを得る。
【0069】
好ましくは、前記冠状動脈の血流速度の算出装置は、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び前記冠状動脈の造影画像並びに前記冠状動脈の造影画像に対応する前記冠状動脈の心電情報をユーザに表示するための表示装置をさらに備え、ユーザが所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像及び前記冠状動脈の心電情報を調べ、所定セグメントの選択を検証し、所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整する。
【0070】
深層学習によって冠状動脈の造影画像を分割することで主枝血管の分割画像を得て、フレーム毎の画像内の主枝血管の長さを算出し、さらには主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて主枝血管の血流速度を得る、該冠状動脈の血流速度の算出装置は、冠状動脈の血流速度の算出の自動化を実現し、算出された冠状動脈の血流速度がより正確になり、該算出方法は比較的簡単である。
【0071】
図15に示すように、上記冠状動脈の血流速度の算出方法と同じ発明構想に基づき、本願は電子デバイス1400をさらに提供し、該電子デバイス1400は1つ又は複数のプロセッサ1401と1つ又は複数のメモリ1402を備え、メモリ1402にコンピュータ読み取り可能なコードが記憶されている。
その中で、コンピュータ読み取り可能なコードは、1つ又は複数のプロセッサ1401により実行される場合、次のような処理を行う。
【0072】
ステップS1:前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得る。
ステップS2:前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出する。
ステップS3:算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得る。
【0073】
好ましくは、前記ステップS1は、具体的には、前記冠状動脈の造影画像を取得し、冠状動脈の主枝血管の類型選択を表示し、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得ることを含む。
【0074】
好ましくは、前記ステップS1は、ユーザが選択した主枝血管の類型に基づき、前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にあるか否かを判断し、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にある場合に、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得て、
前記冠状動脈の造影画像の投影角度が該類型の主枝血管の要求角度範囲内にない場合に、提示情報を表示することをさらに含む。
【0075】
好ましくは、前記深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得ることは、具体的には、
U-Netモデルのエンコーダー構造により前記冠状動脈の造影画像の多種の異なる解像度の特徴マップを取得し、さらにはRefineNetモジュールを用いて前記多種の異なる解像度の特徴マップを精製して結合することで、主枝血管の分割画像を得ることを含む。
【0076】
好ましくは、前記ステップS2は、具体的には、
前記主枝血管の分割画像を抽出し、血管骨格の造影画像を得るステップS21と、
前記血管骨格の造影画像中の血管骨格の長さを算出し、画素を単位とした主枝血管の長さを得て、画像のスケーリング因数と結びつけ、主枝血管の実際の物理的長さを算出するステップS22と、を含む。
【0077】
好ましくは、前記ステップS3は、具体的には、
時間を横座標とし、前記主枝血管の分割画像中の主枝血管の長さを縦座標として、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るステップS31と、
前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の所定セグメントを取得し、前記所定セグメントの勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得るステップS32と、を含む。
好ましくは、前記ステップS31は、具体的には、
前記主枝血管の分割画像のフレーム数を横座標とし、主枝血管の実際の長さを縦座標として、主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線を得るステップS311と、
フレーム周波数情報に基づいて前記主枝血管の長さのフレーム数に伴う変化曲線中の横座標を時間に変換し、主枝血管の長さの経時的な変化曲線を得るステップS312と、を含む。
【0078】
好ましくは、前記ステップS32は、具体的には、
前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線を平滑処理し、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線の平滑曲線を得ることと、
前記平滑曲線上の主枝血管の長さの最大値を得て、前記平滑曲線上の主枝血管の長さが前記主枝血管の長さの最大値の所定値となるセグメントを所定セグメント領域として取得し、前記平滑曲線上の所定セグメント領域に対応する前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線のセグメントを予選セグメントとすることと、
前記予選セグメントに対応する冠状動脈の心電情報に基づき、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含むか否かを判断し、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含まない場合に、前記予選セグメントを前記所定セグメントとすることと、
前記所定セグメントを直線フィッティングし、フィッティングされた直線の勾配を算出し、前記主枝血管の血流速度を得ることと、を含む。
【0079】
好ましくは、前記予選セグメントが1つの心拍動周期を含む場合に、前記予選セグメントの中心を開始点として前記予選セグメントの両端へそれぞれ半分の心拍動周期の長さを延伸して所定セグメントを得る。
【0080】
好ましくは、前記主枝血管の長さの経時的な変化曲線及び前記冠状動脈の造影画像並びに前記冠状動脈の造影画像に対応する前記冠状動脈の心電情報を表示し、ユーザが所定セグメントに対応する冠状動脈の造影画像及び前記冠状動脈の心電情報を調べ、所定セグメントの選択を検証し、所定セグメントの選択が不合理である場合に、マニュアルで所定セグメントの選択を調整する。
【0081】
さらには、電子デバイス1400は、ネットワークインターフェース1403、入力装置1404、ハードディスク1405、及び表示装置1406をさらに備える。
上記各インターフェースと装置との間は、バスアーキテクチャを介して相互接続されてもよい。バスアーキテクチャは、任意数量の相互接続されたバスとブリッジを含んてもよい。具体的には、プロセッサ1401に代表される1つ又は複数の中央処理装置(CPU)、及びメモリ1402に代表される1つ又は複数のメモリ1402の各種の回路が接続されている。バスアーキテクチャは、さらに周辺装置、スタビライザやパワー管理回路などのような各種のその他の回路を一緒に接続していてもよい。なお、バスアーキテクチャは、これらのモジュールの間の接続通信の実現に用いられる。バスアーキテクチャは、データバスに加えて、電源バス、制御バス及び状態信号バスも備える。これらのいずれも本分野で公知されているので、ここではそれについて詳しく説明しない。
【0082】
ネットワークインターフェース1403は、ネットワーク(例えば、インターネット、ローカル・エリア・ネットワーク等)に接続されてもよい。ネットワークから関連データを取得して、ハードディスク1405に保存してもよい。
入力装置1404は、操作員から入力された各種の指令を受信して、プロセッサ1401に送信して実行させることができる。入力装置1404は、キーボード又はポインティングデバイス(例えば、マウス、トラックボール(trackball)、タッチパッドやタッチパネルなどを含んてもよい。
表示装置1406は、プロセッサ1401が指令を実行して得られた結果を表示することができる。
メモリ1402は、オペレーティングシステム14021の動作に必要なプログラムとデータ、及びプロセッサ1401の算出プロセスにおける中間結果等のデータを記憶するためのものである。
【0083】
なお、本願実施例中のメモリ1402は、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであってもよく、或いは揮発性と不揮発性メモリの両者を含んでもよい。その中で、不揮発性メモリは、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)又はフラッシュメモリであってもよい。揮発性メモリは、外部のキャッシュとして使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)であってもよく。本文に記載の装置と方法のメモリ1402は、これらのメモリ及び任意のその他の適切なタイプのメモリを含むが、これらに限定されない。
【0084】
幾つかの実施形態では、メモリ1402には、実行可能なモジュール又はデータ構造、或いはそれらのサブグループ、若しくはそれらの拡張グループ:オペレーティングシステム14021及びアプリケーションプログラム14014のような要素が記憶されている。
【0085】
その中で、オペレーティングシステム14021は、各種のシステムプログラム、例えば、フレームワークレイヤ、コアライブラリレイヤ、ドライバーレイヤ等を含み、各種の基礎業務を実現し、及びハードウエアに基づくタスクを処理するのに用いられる。アプリケーションプログラム14014は、各種のアプリケーションプログラム、例えば、ブラウザ(Browser)等を含み、各種のアプリケーション業務の実現に用いられる。本願実施例の方法を実現するプログラムは、アプリケーションプログラム14014に含まれてもよい。
【0086】
本願の上記実施例に開示された方法は、プロセッサ1401に使用されることができ、又はプロセッサ1401で実現される。プロセッサ1401は信号の処理能力を有する集積回路チップであってもよい。実現の過程において、上記方法の各ステップは、プロセッサ1401におけるハードウエアの集積論理回路又はソフトウエア形式の指令によって完成できる。上記のプロセッサ1401が、汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又はその他のプログラマブルロジックデバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタロジックデバイス、ディスクリートハードウエアモジュールであってもよく、本願実施例に開示された各方法、ステップ及びロジックブロック図を実現又は実行できる。汎用プロセッサが、マイクロプロセッサであってもよく、又は該プロセッサが、如何なる通常のプロセッサ等であってもよい。本願実施例に開示された方法によるステップは、直接ハードウエアデコードプロセッサで実行され完成されるように体現されてもい、又はデコードプロセッサ中のハードウエア及びソフトウエアモジュールの組合せで実行されて完成されてもよい。ソフトウエアモジュールが、ランダムメモリ、フラッシュメモリ、読み出し専用メモリ、プログラマブル読み出し専用メモリ又は電気的消去可能なプログラマブルメモリ、レジスター等の本分野で成熟した記憶媒体に位置してもよい。該記憶媒体がメモリ1402に位置し、プロセッサ1401がメモリ1402中の情報を読み取り、そのハードウエアと結びつけて上記方法のステップを完成する。
【0087】
なお、本文に記載のこれらの実施例は、ハードウエア、ソフトウエア、ファームウエア、ミドルウェア、マイクロコード又はその組合せを用いて実現することができる。ハードウエアによる実現について、処理ユニットは、1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、汎用プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、本願の前記機能を実行するためのその他の電子ユニット又はその組合せにおいて実現されることができる。
【0088】
ソフトウエアによる実現について、本文に記載された前記機能のモジュール(例えばプロセス、関数等)を実行することで、本文に記載された技術を実現してもよい。ソフトウエアコードがメモリに記憶されてプロセッサにより実行されてもよい。メモリがプロセッサの中又はプロセッサの外部で実現されてもよい。
【0089】
本願実施例では、該電子デバイス1400は、深層学習によって冠状動脈の造影画像を分割することで主枝血管の分割画像を得て、フレーム毎の画像内の主枝血管の長さを算出し、さらには主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて主枝血管の血流速度を得る。該冠状動脈の血流速度の算出のための電子デバイスによれば、冠状動脈の血流速度の算出の自動化を実現し、算出された冠状動脈の血流速度がより正確になり、該算出方法が比較的簡単である。
【0090】
また、本願実施例は、コンピュータが読み取り可能なコードが記憶されるコンピュータ記憶媒体をさらに提供し、コンピュータが読み取り可能なコードは、1つ又は複数のプロセッサで実行される場合、次のような処理を行う。
ステップS1:前記冠状動脈の造影画像を取得し、深層学習によって前記冠状動脈の造影画像を分割し、主枝血管の分割画像を得る。
ステップS2:前記主枝血管の分割画像に基づき、フレーム毎の分割画像内の前記主枝血管の長さを算出する。
ステップS3:算出された前記主枝血管の長さの経時的な変化に基づいて前記主枝血管の血流速度を得る。
【0091】
該コンピュータ読み取り可能なコードは、プロセッサに実行される時、上記冠状動脈の血流速度の算出方法実施例の各プロセスを実現し、且同じ技術効果を奏することができる。重複を避けるために、ここで、詳細なプロセスについての説明を省略する。前記のコンピュータ記憶媒体としては、例えば、読み出し専用メモリ(Read-Only Memory、ROMと略称)、ランダムアクセスメモリ(RandomAccessMemory、RAMと略称)、磁気ディスクや光ディスクなどである。
【0092】
なお、本願に提供されたいくつかの実施例では、開示された方法と装置が、その他の方式で実現されてもよい。例えば、上述した装置の実施例は、ただ例示的なものであり、例えば、前記ユニットの区分は、ただ論理機能の区分だけであり、実際に実現する時、別の区分方式を有してもよい。例えば、複数のユニット又はモジュールを組み合わせてもよい、又は別のシステムに集積されてもよく、或いは、一部の特徴が無視されてもよく、若しくは実行しなくてもよい。別の点では、表示又は討論される相互間の結合又は直接結合或いは通信接続は、幾つかのインターフェース、装置又はユニットによる間接結合又は通信接続であってもよく、電気的、機械的又はその他の形式であってもよい。
【0093】
また、本願の各実施例中の各機能ユニットは、1つの処理ユニットに集積されてもよく、各ユニットが単独で物理的に含有されてもよく、2つ又は2つ以上のユニットが1つのユニットに集積されてもよい。上記集積したユニットは、ハードウエアの形式で実現されてもよいし、ハードウエアにソフトウエア機能ユニットを加えた形式で実現されてもよい。
【0094】
上記実施例の各技術特徴を任意に組み合せてもよい。記述を簡潔させるために、上記実施例中の各技術特徴のあらゆるあり得る組合せのいずれもについて述べていないが、これらの技術特徴の組合せには矛盾さえなければ、いずれも本明細書の記載の範囲だと思われるべきである。
【0095】
上記の実施例は、ただ本発明の幾つかの実施形態を表現しただけであり、その記述は割と具体的で詳細であるが、発明の特許請求の範囲を限定するものであると理解することができない。なお、当業者にとって、本発明の構想から逸脱しない前提下で、若干の変形や改良を行ってもよい。これらのいずれも本発明の保護範囲に属する。したがって、本発明特許の保護範囲は、添付された特許請求の範囲を基準とすべきである。
【国際調査報告】