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特表2023-516017REE錯体及び他の金属イオン型混合物/鉱物を精製するための多次元配位子支援クロマトグラフィー法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】REE錯体及び他の金属イオン型混合物/鉱物を精製するための多次元配位子支援クロマトグラフィー法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20230410BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20230410BHJP
   C22B 3/24 20060101ALI20230410BHJP
   C01F 17/13 20200101ALI20230410BHJP
   C01F 17/247 20200101ALI20230410BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20230410BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C22B59/00
C22B3/04
C22B3/24 101
C01F17/13
C01F17/247
G01N30/88 B
G01N30/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552151
(86)(22)【出願日】2021-01-28
(85)【翻訳文提出日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2021015364
(87)【国際公開番号】W WO2021173290
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/982,811
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511220360
【氏名又は名称】パーデュー・リサーチ・ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】Purdue Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ワン ニェン-ファ リンダ
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴェイ デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ディン イ
【テーマコード(参考)】
4G076
4K001
【Fターム(参考)】
4G076AA16
4G076AB21
4G076BA11
4G076BC04
4G076BE06
4G076BH01
4G076CA14
4K001AA39
4K001BA01
4K001BA22
4K001CA02
4K001DB04
4K001DB35
(57)【要約】
混合物されたソースから実質的に純粋な希土類金属及び他の金属を選別するための方法であって、複数の希土類金属及び他の金属を溶液に入れて、複数のそれぞれの金属イオンを含む溶液を画定する工程と、少なくとも1つのクロマトグラフカラムにおいて、各金属のイオンをそれぞれの配位子で選択的に捕捉して、複数のそれぞれの別個のバンドを画定する工程と、それぞれの金属の捕捉されたイオンを、少なくとも1つのクロマトグラフカラムの各バンドからそれぞれ溶出して複数の精製溶液を得、各精製溶液が、高濃度のそれぞれの金属を有する工程とを含む、前記方法。バンドは、カラムに対して動かないか、又はカラムの内を移動し得る。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な(95%以上)N種の混合希土類元素(REE)を選別及び単離する方法であって、
a)N種の異なるREEを含む混合物を溶解して、溶液中でN種の異なるREEイオンを生成する工程と、
b)第(N-(N-1))ゾーンにおいて、実質的に純粋な第1のREE及び第2のREEを選別し、第1のREE及び第2のREEの第1混合バンドを第2~N種のREEの第2混合バンドから分離する工程と、
c)第1混合バンドを第1カラムの第2ゾーンに送り、第2混合バンドを第2カラムにおける第2ゾーンに送る工程と、
d)第1カラムの第(N-(N-2))ゾーンにおいて、実質的に純粋な第1のREE及び第2のREEを選別し、第2カラムの第(N-(N-2))ゾーンにおいて、第2のREE及び第3のREEの第3混合バンドを第3~N種のREEの第4混合バンドから分離する工程と、
e)第3混合バンドを第1カラムの第3ゾーンに送り、第4混合バンドを第2カラムの第3ゾーンに送る工程と、
f)第1カラムの第(N-(N-3))ゾーンにおいて、実質的に純粋な第2のREE及び第3のREEを選別し、第2カラムの第(N-(N-3))ゾーンにおいて、第3のREE及び第4のREEの第5混合バンドを第4~N種のREEの第6混合バンドから分離する工程と、
g)異なるそれぞれのREEのN個のバンドが形成され互いに分離されるまで、上記工程を繰り返す工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
選別が、LADにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
実質的に純粋な希土類元素(REE)を選別及び単離する方法であって、
h)4種の異なるREEを含む混合物を溶解して、溶液中で4種の異なるREEイオンを生成する工程と、
i)第1ゾーンにおいて、実質的に純粋な第1のREE及び第2のREEを選別し、第1のREE及び第2のREEの第1混合バンドを第2~第4のREEの第2混合バンドから分離する工程と、
j)第1混合バンドを第1カラムの第2ゾーンに送り、第2混合バンドを第2カラムの第2ゾーンに送る工程と、
k)第1カラムの第2ゾーンにおいて、実質的に純粋な第1のREE及び第2のREEを選別し、第2カラムの第2ゾーンにおいて、第2のREE及び第3のREEの第3混合バンドを第3~第4のREEの第4混合バンドから分離する工程と、
l)第3混合バンドを第1カラムの第3ゾーンに送り、第4混合バンドを第2カラムの第3ゾーンに送る工程と、
m)第1カラムの第3ゾーンにおいて、実質的に純粋な第2のREE及び第3のREEを選別し、第2カラムの第3ゾーンにおいて、実質的に純粋な第3のREE及び第4のREEを選別する工程
を含む、前記方法。
【請求項4】
工程i)の前に、前飽和剤で各ゾーンを満たす、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
元素の選別が、それぞれの元素に対してそれぞれの選択的親和性を有する、各個別のゾーンへの配位子の導入により行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
置換剤を個別のバンドに導入して、それぞれの希土類元素を溶出させる工程を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
配位子が、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ビシン、HDEHP、DGA、及びこれらの組み合わせを含む、エチレンジアミン四酢酸を含む群から選択され、前飽和剤が、銅、ナトリウム、及びエルビウムを含む群から選択され、置換剤が水素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
混合されたソースから実質的に純粋な希土類金属及び他の金属を選別するための方法であって、
a)複数の希土類金属及び他の金属を溶液に入れ、複数のそれぞれの金属イオンを含む溶液を画定する工程と、
b)少なくとも1つのクロマトグラフカラムにおいて、各金属イオンをそれぞれの配位子で選択的に捕捉して、複数のそれぞれの別個のバンドを画定する工程と、
c)それぞれの金属の捕捉されたイオンを、少なくとも1つのクロマトグラフカラムの各バンドからそれぞれ溶出して複数の精製溶液を得、各精製溶液が、高濃度のそれぞれの金属を有する工程と
を含む、前記方法。
【請求項9】
d)工程a)の前に、少なくとも1つのクロマトグラフカラムを少なくとも1つの前飽和剤で満たす工程であって、少なくとも1つの前飽和剤が、銅イオン、ナトリウムイオン、エルビウムイオン、及びこれらの組み合わせを含む群から選択されるイオンを含む溶液である前記工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
それぞれの配位子が、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ビシン、HDEHP、DGA、及びこれらの組み合わせを含むエチレンジアミン四酢酸を含む群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
各ゾーンが同一の配位子を含み、各バンドが異なる濃度の同一の配位子を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのクロマトグラフカラムにpH勾配を設けることにより、それぞれの金属を溶出する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
pH勾配が、段階的勾配である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複数の別個のバンドが、少なくとも1つのクロマトグラフカラムを通って移動する、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
複数の別個のバンドが、少なくとも1つのクロマトグラフカラム内に固定される、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
金属が、水素置換剤の導入により溶出される、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
水素置換剤が、各バンドにおいて異なる濃度を享受する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本新規技術は、一般的には化学工学の分野、特に希土類元素を鉱石及び他のソースから回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類元素(REE)のサプライチェーンは、多くの場合危険な状態にある。なぜなら、REEの生産は、世界中のごく一部の国及び地域に高度に集中しているからである。たとえ米国に、世界中で生産力を最も有するREE鉱山の1つ(マウンテン・パス(Mountain Pass)、CA)があったとしても、米国では純粋なREEが生産されていない。REE精製のための従来の液液抽出法は、効率が悪く、大量の廃棄物が出る。米国の生産者は、環境規制が厳しいため、従来の方法を使用できず、同程度のコストでREEを生産する中国と競合することはできない。そのため、費用対効果が良く、環境に対してもやさしい、REEを原料から抽出するための手段のニーズがある。本新規技術は、このニーズに対応する。
【発明の概要】
【0003】
REEを鉱石及びミネラルなどの原料源(raw sources)から精製するためのクロマトグラフィー選別法を開発した。再生資源等由来のREE粗製物からの希土類金属の精製のための汎用性のある設計方法を、複数の成分を含むREE混合物の選別のために実現した。ミネラル及び/又は再生材料由来のREE原料混合物は、多くの場合、大きく異なるREE組成を有する。単一カラムを使用する場合、生産性は、原料混合物中の微量成分についての高収率を達成することにより制限されるであろう。代わりに、多数のゾーンを使用して、全成分の高純度、高収率、及び高生産性を達成し得る。選択性加重組成係数(selectivity weighted composition factor)γは、第1ゾーンとそれに続くゾーンにおいて、高生産性で主要成分を正確に分けることに有用である。混合バンドを更に選別して2成分ペア(binary pairs)に分けることができる。最終ゾーンにおいて、2成分混合物(binary mixture)の混合バンドを、再利用して2成分原料(binary feed)と一緒に生産性に影響することなく、全収率を99%超に改善することを可能にする。
【0004】
本新規技術は、新規配位子ベースクロマトグラフィー(LBC)ゾーン分離(splitting)方法に関し、該方法は、高純度(>99%)の希土類金属と他の元素を、ミネラル鉱石及び/又は廃棄物由来の粗REE混合物から高収率(>99%)かつ高吸着生産性で生成するために開発された。REEに対して選択性を有する配位子を、移動相に添加して、REEを、配位子支援溶出(LAE)工程中に回収する配位子支援置換(LAD)を可能にするか、又は配位子を、固定相上に固定して、連続モード(LB-SMB)での配位子結合置換(LBD)を可能にする。
1以上のREEに対する親和性を有する配位子としては、クエン酸、アミノポリカルボン酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ニトリロ三酢酸(NTA)等)、ビシン等のみならず、他のREE選択的な抽出剤、例えば、HDEHP、DGAも挙げられる。
【0005】
新たな方法は、LAD中で不変パターン(constant-pattern)の状態に至る最小のカラム長さを予測するための、相関性を改良したマルチゾーン配位子支援置換クロマトグラフィー(LAD)システムを導入した。選択性加重組成係数に基づくゾーン分離方法は、2ゾーンの設計により、単一カラムの設計よりも2桁高い生産性を達成することができる。設計及び模擬実験方法は、第一原理及び固有の(又は規模に依存しない)工学パラメーターに基づくものである。それらは、幅広い原料組成又は生産規模のための方法を設計することに使用できる。マルチゾーンLADの全体的な生産性は、100kg REE/m3/日を超えることができ、これは、従来の抽出方法の生産性の100倍に相当する。
【0006】
LDAの場合、吸着剤としては、微多孔質、スルホン酸、アミノリン酸官能基等が挙げられる。LBDの場合、Cu、Ni、Coに対して高い選択性を有するが、REEに対する選択性が低い吸着剤のIDA樹脂;EDTA、DTPA、及び/又はホスフェート配位子と結合した多孔質シリカ、PMMAに結合したDGA、及びPS又はアミン官能基を有する高分子樹脂に結合したEDTAが挙げられる。
3成分混合物の精製のためのLAD及び/又はLBDは、3つのクロマトグラフィーカラム、安全な抽出剤、EDT、及び他の環境にやさしい化学物質のみを必要とする。かかる化学物質の大半は、再利用することができ、廃棄物をほとんど生じない。この方法は、廃磁石からREEを効率的で環境にやさしい方法で精製できる可能性を有する。該方法はまた、現在の直線型経済REE経済(鉱石→純粋なREE→製品→埋め立て地)を循環的で持続可能なREE経済に変換することに役に立ち得る。
設計方法を、第1の例において、同程度の濃度を有する7種のREEの混合物を使用して試験した。模擬実験の溶出プロフィールは、実験結果とよく一致し、速度モデルの模擬実験及び固有のパラメーターの精度を確認した。次に、6種のREEを含むバストネサイトの模擬混合物も第2の例において試験した。高純度(>99%)のCe及びLaを、比較的高い生産性(100kg/m3/日超)で回収した。
【0007】
別の例において、3ゾーン設計を使用して、REE軽質画分を高収率、高純度、及び高生産性で選別した。高いγ値を有するCe及びLaを高生産性で第1ゾーンにおいて選別し、Nd/Pr/Ceの混合バンドを第2ゾーンにおいて収集して2つの2成分ペアに分け、純粋なNd及びPrを第3ゾーンにおいて回収した。この3ゾーン設計において、99%収率及び>99%純度を達成するために、全体的な生産性は、単一カラムの生産性よりも3桁高かった。全体的な生産性は、従来の抽出方法よりも100倍超であつた。
マルチゾーンLADの設計により、高純度の個々のREEをミネラルから効果的に回収することができる。マルチゾーンLADの高生産性により、抽出方法と比べてはるかにコンパクトな処理量(process volume)をもたらす。大量の有機溶媒、高濃度の酸及びアンモニウム塩、並びに毒性の強い抽出剤を使用せず、無害なEDTA溶液のみをLADに使用する。酸性廃水の排出がない。95%超の化学物質は、回収及び再利用することができ、廃棄物をほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A-D】図1A~1Dは、50wt%のREOの含有量を有するバストネサイト濃縮物(左)及びモナザイト濃縮物(右)のREEの濃度及び組成を示すグラフである。
図2A図2Aは、希土類元素を混合物から回収する不変パターンクロマトグラフィー法を示す概略図である。
図2B図2Bは、マルチゾーンの不変パターン設計の概要を示す概略図である。不変パターンの相関性マップにおいて、ゾーンIの設計について、実線の曲線で示されている相関性を使用し;ゾーンIの後のゾーンの設計について、破線の曲線で示されている相関性を使用した。
図3図3は、異なるEDTA-REE錯体のUV-Vスペクトルのグラフである。
図4図4は、単一のクロマトグラフカラムによる、合成混合物中の7種のREEのLAD選別の図であり、実線の曲線は、実験溶出プロフィールを表し、破線の曲線は、模擬溶出プロフィールを表し、点線の曲線は、流出液のpHを表す。
図5図5は、バストネサイト模擬物中の6種のREEの溶出プロフィール及びVERSE模擬プロフィールとの比較のグラフである。
図6図6は、4種のREE、Nd、Pr、Ce及びLaを含む軽質画分の選別のための3ゾーン設計スキームを示す概略図である。ゾーンIは、高純度生成物としてCe及びLaの大半を回収することを目的とする。微量成分、Nd及びPrは、選別されず、Ceと一緒の混合バンド中で収集される。Nd/Pr/Ce及びCe/Laの混合バンドは、ゾーンIIにおいて更に選別される。Nd/Pr/Ceは、2つの2成分ペアに分けられ、ゾーンIIIの2つのカラムにおいて、純粋な画分に選別される。Ce/Laは、ゾーンIIのカラムBにおいて純粋な画分に選別される。
図7図7は、軽質画分の選別におけるゾーンIの溶出プロフィールのグラフである。
図8図8は、ゾーンIIにおける軽質画分の選別についての溶出プロフィールのグラフであり、破線の曲線は、模擬実験を表し、実線の曲線は、PDA検出器からのデータを表す。
図9図9は、バストネサイトの軽質画分からNd、Pr、Ce、及びLaを回収するための3ゾーンLAD設計を示す概略図である。
図10A-D】図10Aは、3ゾーン及び4つのカラムを使用する、バストネサイトの軽質画分からのLa、Ce、Pr、及びNdのLBD選別についてのゾーンIの溶出プロフィールを示すグラフである。 図10Bは、3ゾーン及び4つのカラムを使用する、バストネサイトの軽質画分からのLa、Ce、Pr、及びNdのLBD選別についてのゾーンIIの溶出プロフィールを示すグラフである。 図10Cは、3ゾーン及び4つのカラムを使用する、バストネサイトの軽質画分からのLa、Ce、Pr、及びNdのLBD選別についてのゾーンIII-Aの溶出プロフィールを示すグラフである。 図10Dは、3ゾーン及び4つのカラムを使用する、バストネサイトの軽質画分からのLa、Ce、Pr、及びNdのLBD選別についてのゾーンIII-Bの溶出プロフィールを示すグラフである。
図11図11は、3ゾーンの順次処理について、実験室規模のカラム(10cmのID及び100cmの長さ)を使用する、100kgのREEをバストネサイトの軽質画分から生成するためのキャンペーンスケジュールを示すグラフである。図6に示す直列式3ゾーン設計についての平均生産性、66877は、この順次処理と同様である。
図12図12は、LBDを使用する、Pr/Ndを、バストネサイトに由来する軽質画分から回収するための、2つのカラムを使う2ゾーン設計を示す概略図である。
図13A図13Aは、バストネサイトの軽質画分からのNd/PrのLBD選別についてのゾーンIの溶出プロフィールを示すグラフである。
図13B図13Bは、バストネサイトの軽質画分からのNd/PrのLBD選別についてのゾーンIIの溶出プロフィールを示すグラフである。
図14図14は、LBDを使用する、Eu/Gd/Smを、バストネサイトに由来する軽質画分から回収するための、2つのカラムを使う1ゾーン設計を示す概略図である。
図15図15は、LADを使用する、Sm/Eu/Gdを、バストネサイトに由来するHREEから回収する溶出プロフィールを示すグラフである。実験結果は実線であり、模擬実験結果は破線である。
図16図16は、LBDを使用する、Pr/Nd、HREEを、バストネサイトに由来する軽質画分から回収するための2ゾーン設計を示す概略図である。
図17A図17Aは、LBD選別並びにPr/Nd及び重希土類元素のモナザイトからの回収についての、ゾーンIの溶出プロフィールを示すグラフである。
図17B図17Bは、LBD選別並びにPr/Nd及び重希土類元素のモナザイトからの回収についての、ゾーンII-Aの溶出プロフィールを示すグラフである。
図17C図17Cは、LBD選別並びにPr/Nd及び重希土類元素のモナザイトからの回収についての、ゾーンII-Bの溶出プロフィールを示すグラフである。
図18A図18A~Cは、LADを使用する、La/Ce/Pr/Ndの、バストネサイトに由来するHREEからの回収についての溶出プロフィールを示すグラフである。
図18B図18A~Cは、LADを使用する、La/Ce/Pr/Ndの、バストネサイトに由来するHREEからの回収についての溶出プロフィールを示すグラフである。
図18C図18A~Cは、LADを使用する、La/Ce/Pr/Ndの、バストネサイトに由来するHREEからの回収についての溶出プロフィールを示すグラフである。
図19図19は、第1分離手順を示す概略図である。
図20図20は、第2分離手順を示す概略図である。
図21図21は、第3分離手順を示す概略図である。
図22図22は、第4分離手順を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の原理の理解を促進すること、及び現在理解されている操作のベストモードを表すために、ここで、図面に示されている実施形態を参照し、特定の言葉を使用して説明する。しかしながら、それらが本発明の範囲を限定することは意図せず、本発明に関する当業者が通常思い浮べるように、図示したデバイスにおけるかかる変更及び更なる修正、並びに本明細書に示されている本発明の原理の更なる適用も想定されることが理解されるであろう。
2018年、中国は、世界のレアアース生産量の約80%を占めた。軽質REE(La、Ce、Pr、Nd、Sm)は、主に中国北部におけるバストネサイト及びモナザイトから生産される。中国以外では重質REE鉱石がほとんどないため、すべての重質REE(Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu)は、現在、中国南部におけるイオン吸着粘土から生産される。かかるREEは、安い労賃とゆるい環境規制のため、低コストで生産される。中国以外では、REE生産の大半は、オーストラリアにおけるマウントウェルド(Mount Weld)鉱床に由来し、主に軽質REEを生産する。
【0010】
米国は、1,400,000トンの希土類酸化物に相当する希土類元素鉱物埋蔵量(mine reserve)を有すると推定される(大半の(90%)バストネサイトと多少のモナザイト)。米国は、カリフォルニア州のマウンテン・パスにおいて、世界最大のREE鉱床の1つを持っている。マウンテン・パスにおけるバストネサイトは、La、Ce、Pr及びNdを含む軽質REEに富んでおり、約99%の総REEを占めている。米国のREEの生産は、採鉱場経営者の破産申請により、2015年に停止した。それ以前は、かなりの生産力を有した。生産は最終的に2015年に停止したが、少なくとも1つのこれらの採鉱場は2018に再開し、15,000トンREOに相当するバストネサイト濃縮物(図1)を生産して、更なる精製のために中国に送った。2015年以降、米国では、精製された希土類元素が生産されていない。
米国におけるREEの供給は、中国、エストニア、フランス、及び日本からの輸入にかなり依存する。希土類元素の生産は、世界中のごく一部の国に高度に集中しており、これは、大きな供給リスクをもたらし、他の国の先端技術産業の発展を制限する。REEの生産は、様々な要因により制限されている。技術的な専門知識の欠如、REE抽出の副生成物として生成される放射性廃棄物と関連している問題、並びに従来の生産及び選別方法を使用する、新しいREE生産プラントのための高い資本コスト(最大10億ドル)はすべて、米国の供給の発展を削いだ。
【0011】
希土類元素は、実は「希少」ではなく、地殻中の多くの他の元素より豊富である。この不適切な名称は、希土類元素の分散的な分布に起因する。安定しかつ濃縮されたミネラルを有する他の金属元素と異なり、典型的なREE鉱石は、数%以下の希土類元素しか含まず、多くの場合、集団として生じる。REEの生産は、通常、鉱石の選鉱と濃縮から始まる。例えば、主要なREEソースの1つであるバストネサイトは、希土類フルオロ炭酸塩鉱物であり、希土類酸化物(REO)相当量の約7~8%を含む。破砕及び粉砕、化学的スチームコンディショニング、浮選、並びに洗浄の後、鉱石は、約60%のREOを含むREE濃縮物にアップグレードすることができ、更なる温浸、精製及び精錬を行う。トリウム及びウランを含む非REE成分を沈殿により更に取り除く。次に、軽質REEを、液液抽出を使用して重質REEから選別し、炭酸アンモニウムにより沈殿させることができる。
【0012】
化学温浸後の精製は、最も困難な工程であり、なぜなら粗原料中に一緒に存在するREEが同様の物理的及び化学的性質を有するからである。現在の工業的精製は、依然として1950年代に開発された液液抽出法を使用し、数千のミキサーセトラーユニット(mixer-and-settler unit)により高純度REEを生成する。液液抽出法は、異なる原料又は異なる規模に適用するのが難しい。また、これは、エネルギー集約型であり、有機溶剤、酸性ストリッピング(stripping)剤、及び毒性のある抽出剤の使用を必要とし、大量の酸性かつ毒性のある廃棄物を生じる。1トンのREOを生産するために、2トン超の塩基及び10トンの酸を消費し、120トン超の廃水を排出する。抽出選別のプロセスはまた、有機リン抽出剤の鹸化のために、大量のアンモニアを消費し、ストリッピング反応において、大量の塩酸も消費する。このプロセスでは、平均してわずか35%のアンモニアが塩化アンモニウムとして回収された。ライフサイクルの分析研究は、地球温暖化、発癌物質及び非発癌性の人体に対する毒性、並びに富栄養化及び生態毒性の観点から、従来の精製プロセスは、環境への影響全体の約1/3の主な原因となるおそれがあることを明らかにした。さらに、オゾン層破壊の影響の70%に寄与した。米国における厳しい環境規制のため、液液抽出法を使用して、中国と同程度のコストで精製したREEを生産するのは困難である。
【0013】
この新規技術は、効率的で経済的で環境にやさしい配位子支援置換クロマトグラフィー法を提供して、米国における高純度REEの生産を可能にする。この新規技術は、(1)錯体REE混合物から、高収率かつ高吸着生産性で高純度REEを生成する設計方法;(2)異なる組成及び異なる生産規模を有する異なるREE原料への設計方法の適用を示している。以下で説明する具体的な結果は、(1)同程度の濃度を有する7種のREEの合成混合物を使用して不変パターンの設計方法を試験し、クロマトグラムを模擬実験と比較すること;(2)6種のREEを含むバストネサイト濃縮物の模擬物を使用して設計方法を試験し、クロマトグラムを模擬実験と比較すること;(3)3ゾーンLADを設計し、MPマテリアルズにより提供されたバストネサイト(Ce、La、Nd、及びPr)からの軽質REE画分で設計方法を試験すること、及びマルチゾーン方法の高純度、高収率、及び高吸着生産性という長所を示すこと、を含む。
【0014】
ここでは、まず、フォトダイオードアレイ検出器及び誘導結合プラズマ発光分光法を用いて、水溶液中のREE濃度を決定することに使用する分析方法を確立した。次に、マルチゾーンREEの回収方法及び模擬実験モデルを、出発溶液から7種の「可視」REEを物理的に選別することにより検証した。その次に、バストネサイトと同様の組成を有する模擬物を、微量成分をグループ化して選別し、純粋なCe及びLaの画分を収集した。その後、不変パターンの設計方法を、4成分を有する軽質REE画分由来の4成分混合物の選別のためのマルチゾーン設計に修正及び改良した。実施例において、高純度のLa、Ce及びNdを回収した。全成分について、>99%収率及び>99%純度を目標とする軽質REE画分のための理論的な設計を開発した。単一カラムLADシステムと比較して、マルチゾーン設計により、3桁高い生産性を達成することができる。
【0015】
理論
REE精製用LADの不変パターンの設計方法が開発されている。この方法は、移動相中に配位子を有するイオン交換カラムを含み、選択性を実質的に向上させる。不変パターンの状態の形成に必要なカラム長さ及び流量速度は、固有の吸着、物質移動、及び配位子-溶質錯体化のパラメーターにより決定される。これにより、高吸着生産性で、高純度、高収率の選別を達成するための、強固で信頼性のある設計方法が可能になる。液液抽出における1,800ミキサーセトラーユニットは、100分の1の容量、並びに10分の1の資源消費量(footprint)及び資本コストを有するクロマトグラフィーカラム数本で置き換えることができる。処理する化学物質の大半は、無害であって再利用することができ、廃棄物をほとんど生じない。この方法により、バストネサイト、石炭フライアッシュ、廃磁石、及び多くの他のREEソースから十分な量のREEを国内で生産するのにかなり有望である。
多様で複雑なREE混合物用の新規で一般的な分離手順が開発された。該手順は、選別を複数のゾーンに分ける。この「分割統治(divide-and-conquer)」戦略を利用すれば、全体的な生産性は、単一カラムシステムと比較して桁違いに向上する。該方法の簡単なまとめを図2に提供する。多成分のREE混合物の選別用のこの設計方法の適用を以下の例で説明する。
【0016】
本新規技術の長所は、複数の選別ゾーンを使用して、様々な原料を処理する能力である。第1ゾーンにおいて、典型的には、REEイオンの原料混合物を水溶液に充填する。吸着剤は、異なるREEに対して無視できる選択性を有する。よって、原料は、カラムの入り口付近で分離することなく均一なバンドを形成するであろう。選別は、配位子溶液をカラム内に導入した後に行われる。遊離REEイオンをカラムに充填し、均一なバンドがカラムの入り口付近に形成された場合、不変パターンの形成に必要な最小カラム長さは、方程式(1)を使用して計算することができる(図2の実線を参照されたい)。
【数1】
しかしながら、その次のゾーンにおいて、原料は、前のゾーンにより得られた、配位子結合REE混合物である。これらの混合物を、前飽和剤(presaturant)(例えば、前飽和剤Cu2+)飽和カラムに充填すると、選別は、充填中に始まる。このタイプの原料について、アイソタクチックな列(isotachic train)を形成するための、理想システムにおける最小必要カラム長さの計算方法は異なる。そのため、新たな一般相関式(2)と新たな一般マップは、原料充填中に選別が始まるLADシステム用に開発された(図2の破線を参照されたい)。
【数2】
【0017】
カラム流出液中の希土類元素の分析方法
配位子支援置換(LAD)及び/又は配位子結合置換(LBD)クロマトグラフィーを使用して、希土類元素を選別した。流出液中のREEは、EDTA-REE錯体の形態であった。正確な分析方法を開発して、カラム流出液を分析して溶出プロフィールを確立した。
EDTA-REE錯体のUV-Visスペクトル
フォトダイオードアレイ検出器(PDA)を使用するEDTA-REEのオンライン検出は、カラム流出液中のREE濃度を決定する比較的単純な方法である。ランタニド系における多くのREEは、異なる波長にUV-Vis吸光度を有する。しかしながら、一部のREEイオンは、350nm未満の波長に主要な吸光度ピークを有し、流出液中のEDTAのピークと重なる。まず、PDA検出器を使用する分析方法を開発した。様々なEDTA-REE錯体の小さいパルスを検出器に導入し、オンラインスペクトルを記録して検出器からエクスポートした。
【0018】
希土類元素のICP-OES分析
オンラインPDA検出器を使用して分析できないREEの濃度は、別の元素分析方法が必要である。誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)は、ppm範囲のREE濃度を決定するための最も良い元素分析方法である。カラムからの流出液を、アジレントLC-440フラクションコレクタを使用して収集し、続いてICP分析に送った。
マウンテン・パスの軽質REE画分の溶解
約15gの軽質炭酸塩画分を秤量してビーカーに入れた。次に、200mLの1M HClをビーカーに注ぎ、二酸化炭素の泡を発生させた。その次に、混合物を一晩攪拌し、固体残留物を含まない透明な溶液を得た。その後、溶液を250mLメスフラスコに注いだ。ICP-OESを使用して、溶液中のREEの濃度を決定した。
【0019】
配位子支援置換クロマトグラフィー
硫酸銅又は塩化銅溶液をカラムに充填することにより、カラムをまず銅イオンで飽和させた。次に、カラム2容量分の水を使用してカラムを洗浄し、粒子孔又はカラムの空隙に存在する余分な銅を取り除いた。その次に、原料混合物をカラムに充填した。その後、カラム2容量分の水を使用してカラムを洗い流し、原料中のREEのすべてが吸着されたことを確認し、酸溶解工程(LREE粗製物の場合)から残っているH+を取り除いた。配位子溶液をカラムに導入すると、選別が始まった。可視REE元素を検出するためのオンラインPDA検出器を使用して、流出液をモニターした。ICP-OESを使用する更なる元素分析のために、流出液画分もまた収集した。
【0020】
少量成分を有する錯体混合物についての収率と生産性との間のトレードオフ曲線
単一カラムを使用して所望の純度を有する生成物を生成する場合、収率と生産性との間にトレード・オフがある。目的成分の収率を上げるためには、低い移動相速度が必要であり、これによって、波を鋭くし、隣接するバンドとの重なる領域の長さを短くする。しかしながら、低速度は、低吸着生産性をもたらす。高速度を使用して吸着生産性を増加させる場合、波はさらに広がり、重なる領域の長さも長くない、低収率をもたらす。収率と生産性との間のこの関係は、単一カラムについての「トレードオフ」曲線として知られている。
一般的には、単一カラムを使用して錯体混合物から単一の成分を回収する場合、生成物の純度は、ブレークスルーカットθ及び目的成分の収率により制御される。吸着生産性は、選択性加重組成係数係数γiにより制御され、γiは、方程式(2)で定義される。
【0021】
【数3】
収率Yi及び吸着生産性PR,iは、方程式(3)及び方程式(4)によりγi値と関連付けられる。
【数4】
【数5】
式中、xiは、原料混合物中の成分iのモル分率であり、βは、(1-θ)対θの比の自然対数であり、θはブレークスルーカットであり;
【数6】
は、成分iと成分iの前に溶出した成分との間の選択性であり;
【数7】
は、成分iの後に溶出した成分と成分iとの間の選択性であり;εbは、ベッド空間率(bed void fraction)であり;cdは、有効配位子濃度であり、u0は、移動相の線形間隙流速(linear interstitial velocity)であり;Lcは、カラム長さである。
【0022】
等モル混合物について、全成分についてxiが同じである場合、最も高い選択性を有する成分iは、その2つの隣接するバンド間において、最も狭い混合バンド領域を有する。この成分は、最も大きいγi値、最も高い収率、及び最も高い生産性を有する。
錯体混合物について、隣接する成分の各ペアの間の選択性が同じである場合、不変パターンの物質移動ゾーンの長さは、すべての溶質バンドについて同じであろう。xiが増加すると、置換バンドは広くなる。最も大きいモル分率を有する成分は、最も高い収率を有する。なぜなら総置換バンドの幅に対する重なり領域が最も小さく、総量に対する混合バンドに起因する収率低下も最も小さいからである。最も大きいxi値又は最も大きいγi値を有する成分は、最も高い収率及び最も高い生産性を有する。
したがって、選択性加重組成係数γiは、組成と選択性の影響を考慮している。最も大きいγi値を有する成分は、単一カラムを使用して、最も高い生産性で混合物から選別することができる。
【0023】
単一カラムを使用して、3成分すべてを、高収率かつ高純度で混合物から回収する場合、速度又は流量は、最も小さいγi値を有する成分に対する収率要件により制限される。95%収率で成分を回収することを目的とする設計の場合、低速度のため、残りの成分の生産性も小さい。
しかしながら、複数のREEの選別が2以上の別個のゾーンにおいて行われる場合、高収率かつ高生産性で、高純度REEを回収することができる。体系的な分離戦略を開発した。最も大きいγi値を有する成分を、まずゾーンIにおいて高純度かつ高生産性で回収する。次に、更なる選別のために、他のREEの組み合わせを含むゾーンIの混合バンドを、次のゾーン(ゾーンII)に送る。その次に、ゾーンIIにおける混合バンド材料をゾーンIIの入り口にリサイクルして、全成分について高収率(99%)を達成する。この方法において、各成分の生産性及び収率は、もはや単一カラムに関するトレードオフ曲線により制限されるものではない。3種のREEの混合物についての高純度(>99.5%)及び高収率(>99%)の2ゾーン設計の全体的な生産性は、同程度の生成物純度及び主成分(primary component)の95%収率の単一カラム設計の生産性の100倍超である。
【実施例
【0024】
実施例1-合成混合物中の7種の「可視」REEの選別
実験スペクトルより、La、Ce、Gd、及びTbは、PDA検出器を使用して検出することが出来なかったことが分かった。Ce、Gd、Tbの遊離イオンは水溶液中で検出可能であることは文献に報告されているが、それらのEDTA錯体は、それらの吸収波長が350nm未満であるため、EDTAによりマスクされていた。7種の元素、Pr、Nd、Sm、Eu、Dy、Ho及びErは、EDTAの干渉なしに、PDA検出器を使用して検出できた(図3)。本研究において選択された波長の大半は、遊離イオンに関する文献値に近く、例外としては、523.5nmに吸光度を有すると報告されたErであった。この波長に吸収ピークが見られたが、Ndのピークと重なった。これらの2種の元素はLADで隣接する置換バンドを形成しなかったが、別の波長、379nmをErの検出のために選択した。
【0025】
【表1】
【0026】
同程度の濃度の7種の可視REEを有する混合物(表2)を、配位子支援置換クロマトグラフィーを使用して選別した。図4において、溶出プロフィールを模擬実験と比較した。LAD選別の収率及び純度を表3に示す。
【表2】
【0027】
【表3】
図4における結果は、Ho、Dy、Eu、及びSmの模擬溶出プロフィール並びに実験溶出プロフィールがほぼ一致したことを示す。Erの偏差は、UV-Visシグナルのデコンボルーション(逆重畳積分)の誤差が原因であった可能性があり、なぜならErシグナルが、Cu吸光度によって部分的にマスクされたからである。Nd及びPrの溶出中のバンド濃度の低下は、配位子pHの低下に起因する可能性があり、なぜなら実験が、1日以上続き、塩基性配位子溶液が、空気から多少のCO2を吸収し得、pHの低下をもたらしたからであった。配位子の効率は、pHで低下し、その結果、LADプロセスの終点に向かって、Nd及びPrのバンドが広くなり、濃度が低くなる。
【0028】
実施例2-バストネサイト模擬混合物中のREEの選別
バストネサイト濃縮物と同様の組成を有する、6種のREE、La、Ce、Pr、Nd、Sm、及びGdの合成混合物を、不変パターンのLAD設計方法を使用して、単一カラムで選別した。Sm及びGdを混合物に添加して微量元素をモデル化した。この試験で使用した配位子は、pH=10.45で、0.03MのEDTAであった。この配位子の濃度及びpHは、1.7eq./Lの有効吸着能及び0.105Nのバンド濃度をもたらした。オンラインフォトダイオードアレイ(PDA)検出器を使用し、Nd及びPrについて、カラム流出液もモニターした。誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)を使用し、La及びCeの分析のために流出液の画分を収集した。詳細な実験条件を表5にまとめた。
バストネサイト模擬物の選別の設計は、選択性加重組成係数γiの値によって導かれるべきである。各成分のγi値を下の表に示す。Gdは微量であるため、該設計において考慮されていないことに留意されたい。
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【表7】
【0033】
【表8】
【0034】
模擬物中の全成分のうち、Ceが、最も大きいγi値を有し、これは、Ceを残りの成分から選別するのが単一カラムにおいて最も簡単な作業であろうことを意味する。生産性を最大化するために、Ceを第1目的成分として選ぶべきである。
上述したように、Ceの目標収率80%により、最も高い吸着生産性が得られると予想された。充填量を、設計における充填量よりも10%低下させて、物質移動ゾーンが不変パターンに至ることを確実にした。微量REE成分(Gd、Sm、Nd、及びPr)は、一群として一緒に溶出することが予想され、追加のカラムを使用して更に選別することができる。
模擬物のLAD選別の結果を図5に示す。実験クロマトグラム及び模擬クロマトグラム(VERSE)はほとんど一致している。Gdは、他のすべてのREEより早く溶出した(図5に示されていない)。バストネサイト濃縮物からの実際のREE混合物について、Gdと同等以上の配位子親和性を有する他の微量元素(Eu、Er、Dy、Ho、Tb、Y、Sc)は、Gdより早く又はGdと一緒に溶出すると予想される。この設計において意図されたように、Sm、Nd、及びPrは、選別されず、一群として溶出された。
【0035】
【表9】
CeとLaの設計目標収率は、実験収率とほとんど一致した(3%の実験誤差内、表6)。結果は、不変パターンの設計方法が、7種のREEを含むこの混合物を分離するのに効果があったことを示す。
【0036】
LaとEDTA-Naとの間の混合バンド中のLaは、純粋なLaと考えられ、なぜならNaとLaは、Laの沈殿により容易に選別することができるからである。この設計について、高純度のCeとLaを生成するための全体的な生産性は、85+54=139kg/m3/日であった。以下の次節で説明するように、LaとCeの収率は、混合バンドを再利用することにより、更に増加させることができる。
少量REEであるNd及びPr、並びに微量REEであるSm及びGdは、設計によりこのカラムにおいて選別されなかった。この結果は、不変パターンの設計方法を適用するのを意図するものであった。流量を選んで、主要成分であるLa及びCeを高純度で生成するために生産性を最大化した。設計方法を適用すれば、6種のREEのすべてを、単一カラムにおいて、高純度かつ高収率で選別及び回収することができる。しかしながら、重なる領域(混合バンド)を減らすためには、非常に低い速度が必要であり、結果、長サイクル時間と低吸着生産性をもたらす。選別は、少量REEにより妨げられるか、又はさらに微量REEにより妨げられるであろう。例えば、Ceの代わりにPrの80%収率を、5%ブレークスルーカットの設計で目標とする場合、本試験においてバストネサイト模擬物を選別するのに使用した同一のカラムを使用すると、Ce及びLaの生産性はそれぞれ、1.4及び0.8kg/m3/日に劇的に下がるであろう(Ceが目的成分である場合の生産性の60分の1となる)。廃磁石由来のREE粗製物の場合と同様、微量成分が原料に存在する場合、高純度REEの回収のためには、「分割統治」手順の効率が最も良い。次節における例で説明するように、マルチゾーンを使用して精製作業を分割することにより、生産性を少なくとも1桁向上させることができる。
【0037】
マウンテン・パス産の軽質REE粗製物からのREEの選別
マウンテン・パスの鉱石は、約8~12%REOを含む。物理的な選別と鉱石の選鉱の後、バストネサイト濃縮物は、約60%REOを含んでいた。一連の化学的な処理と予備選別の後、トリウム及びウランを含む不純物を取り除き、2つのREE炭酸塩画分、軽質REE画分(LREE)及び重質画分(HREE)を得た。軽質画分は、総REO含有量の約99%を占め、4種の炭酸塩、La炭酸塩、Ce炭酸塩、Pr炭酸塩、及びNd炭酸塩を含む。
MPマテリアルズ製のLREE粗製物を、まず酸(1M HCl)に溶解させて、REE塩化物塩の溶液を得た。溶液中のREE組成を、ICP-OESにより決定し、軽質画分の4種の成分を選別するための3ゾーンLADの開発に使用した(図6)。γi値を、各成分の組成及び選択性に基づいて評価した。実施例2におけるバストネサイト模擬物と同様、LREE中のCeは、4種の成分のうち最も大きいγi値を有する。そのため、Ceは、最も容易に選別されて最初に精製される。Laは、同程度のγi値を有し、LREE中の最後のバンドとして溶出する。設計においてCeの高純度かつ高収率を目標とすることにより、Laについて、同程度の収率及び純度も得るであろう。
【0038】
【表10】
【0039】
バストネサイト模擬物の選別についての設計と同様、第1ゾーンを設計して主要成分Ceの高生産性を保証した。LaがCeの後であってEDTAの前に溶出するため、Ceを高収率で生成するための設計により、Laも同程度の収率で生成するであろう。Nd及びPrは、選別されず、Ce及びLaのバンドより早く溶出する。更なる選別のために、Nd、Pr及びCeの混合バンドが収集され、第2ゾーンのカラムII-Aに送られる。ゾーンIからのCe及びLaの第2混合バンドをゾーンIIのカラムII-Bに送って、La及びCeの収率を>99%に更に向上させることができる。ゾーンII-Aは、3成分混合物を2つの画分、Nd及びPrの画分とPr及びCeの画分に分離することを目的とする。更なる選別のために、ゾーンIIからの2つの画分をゾーンIIIに送る。この戦略により、各混合画分を最終的に2成分混合物に減らす。最後に、Prは、ゾーンIIからの混合バンドを収集及び選別することにより、ゾーンIIIにおいて高純度で生成することができる。2成分選別カラムのゾーンIIB、ゾーンIIIA及びゾーンIIIBにおいて、混合バンドをその原料にリサイクルして、各成分の>99%収率を達成することができる。一般的には、4種の成分の原料混合物について、混合物を3つの2成分混合物に減らすために、3ゾーンが必要である。
【0040】
ゾーンIの実験的試験
第1ゾーンの設計において、ICP-OES分析における干渉のため、原料中のCeの濃度を正確に測定しなかった。ICP-OES分析によるCeの濃度は、実際の濃度より40%低かった。その結果、実際の充填分率(loading fraction)は、設計された充填分率より40%高かった。置換の列は、不変パターンの状態にまったく到達せず、設計の目標収率(77%)より低い収率(70%)をもたらした。未来の研究において、不変パターンの設計方法を修正して、原料組成、配位子の濃度及びpH、並びに流量のあらゆる不確定性を考慮に入れることを計画している。設計された充填分率を減少することができ、設計された移動相の速度を下げることができ、これらにより、不確定性にもかかわらず、不変パターン置換の列が生産システムで開発される。
ゾーンIについての模擬実験パラメーターを表8に表す。ゾーンIにおいて使用した配位子は、pH=10.5で、0.03MのEDTAであり、1.8eq./Lの有効容量(effective capacity)及び0.1Nの溶出バンドの濃度をもたらした。所定の実験条件(流量、供給量)で、CeのVERSE模擬収率は、71.9%になるはずである。99%の純度を有するCeの実験収率は、70.3%であり、模擬収率と比較して実験誤差の範囲内であった。
【0041】
【表11】
【0042】
【表12】
【0043】
【表13】
【0044】
【表14】
【0045】
ゾーンIIの実験的試験
Nd、Pr及びCeの3成分混合物の混合バンドを収集した。この試験における混合バンドの量は約390mLであり、更なる選別のために、その300mLをゾーンIIA内に直接供給した。ゾーンIIAへの原料溶液は、EDTA-REE錯体の混合物であった。ゾーンII-Aへの原料として、ゾーンIからのEDTA-REE混合物を直接再利用した結果、複雑な問題が生じた。ゾーンIにおいて、REEはすべて、塩の形態であり、はっきりした境界を持つ均一なバンドとして吸着剤に吸着するであろう。一方、EDTA-REE混合物は、原料中にEDTAが存在するため、充填中に分離して拡散始めた。その結果、実験溶出プロフィールは、Prバンドが前に出ていた(図8)。模擬実験を使用してこの説明を確認した。不変の選別係数等温線を使用して、ゾーンIIAにおける選別の模擬実験を行った。ゾーンIIAについての原料組成及び他の実験パラメーターを表9に示す。
【0046】
速い流量(10mL/分)を充填に使用して、充填時間を減少した。しかしながら、充填中の分離及び拡散のため、この流量は、波が鋭くなるには速すぎて、不変パターンの状態に到達できなかった結果、明らかにPrがNdバンド内に漏れ出し、高純度Ndの収率が低下した(図8)。
この問題を解消するための1つの方法は、混合バンドをゾーンIIに充填する前に、酸を添加してEDTA-REE溶液中のEDTAを沈殿させることである。EDTAを原料混合物から取り除くと、ゾーンIIへの充填中の速い流量は、選別に影響を与えないであろう。吸着剤は、すべてのREEに対して高い親和性及び無視できる選択性を有し、充填ゾーンは、はっきりした境界を持つ均一なREEバンドを有するであろう。各成分の収率は、充填速度の影響を受けないが、溶出中の配位子溶液の流量又は線速度のみに依存するであろう。
【0047】
【表15】
【0048】
Nd、Pr、及びCeの混合バンドを2つの2成分画分、Nd/Pr画分及びPr/Ce画分に分離することができ、それぞれ、高純度Prを得ることができるゾーンIII-A及びゾーンIII-Bにおいて選別されるであろう。
2つのゾーンにおける全収率及び生産性を以下の表10にまとめる。
【0049】
【表16】
混合バンドを、カラムに充填する前に適切に処理すれば、高純度Ndの収率はゾーンIIにおいて改善されるであろう。改良された詳細な3ゾーン設計を開発し、次節で説明する。
【0050】
4種のREEすべてについて、>99%収率に達するための理論的設計
表7に示されているように、Ceは、所定の原料において最も大きいγi値を有するため、最初に選別するのが最も容易な成分である。よって、Ceは、ゾーンIにおける目的成分であり、そこで、大半のCe及びLaが純粋な生成物として得られ、Nd及びPrのすべて並びにCeの少ない画分が、混合バンドにおいて収集されてゾーンII-Aに送られるであろう。更なる選別のために、Ce/La混合バンドをゾーンII-Bに送ることができる。
Nd、Pr、Ceの混合バンド中の組成を計算して、ゾーンIIを設計する前に3つの成分のすべてのγi値を評価する。表11に示されているように、Ndは、最も大きいγi値を有し、及びPrは、最も小さいγi値を有するため、高純度生成物の高収率を得るのが最も難しい成分であろう。ゾーンIIの目的は、Pr及びCeからNdを分離することである。Ndの目標収率は74%となり、これにより、Ceバンドは、Ndバンドに広がることなく、3成分混合物は、更なる選別のために、2つのきれいな2成分ペアに分離するであろう。
【0051】
ゾーンIからのCe/Laの混合バンドは、ゾーンIIのカラムBにおいて純粋な画分に選別されるであろう。73.4%収率のCeを、最も高い収率を得るための目標とした。ゾーンIからのCe/La混合バンドは、物質移動ゾーンが対称であるため、2成分混合物となるであろう。次に、混合バンドを、原料組成又は設計パラメーターを変更することなく、このカラムの原料に戻して再利用することができるが、全収率は>99%に向上するであろう。
2つのカラム(IIIA及びIIIB)をゾーンIIIに配置して、ゾーンIIのカラムAから得られたNd/Pr混合バンド及びPr/Ce混合バンドを選別する。目的成分の収率を選択して、吸着生産性を最大化した。混合バンドをそれぞれの原料に再利用し、これにより、3成分すべての全収率は、>99%となるであろう。
詳細な設計パラメーターを以下の表11に示す。実験において、0.03MのEDTAの代わりに0.06MのEDTAを使用することにより、設計におけるバンド濃度を0.2Nに増加させて、生産性を向上させた。表11において、最新の試験結果は、pH10で、配位子濃度を0.075Mに更に増加させると、生産性を更に25%向上させることができることを示している。実験結果は進行中である。
【0052】
【表17】
【0053】
生産性の総平均は、262.6kg/m3/日となるであろう。しかしながら、1つのカラムしか使用しない場合、63マイクロ粒径を有する1mのカラムは、物質移動の限界のため、Nd及びPrについて、99%収率でさえ達することができない。Prについて、約92%収率に達するには、全体的な生産性は、わずか0.035kg/m3/日となり、これは、3ゾーン設計における生産性の約7,700分の1である。
【0054】
1トンLREE粗製物/日を処理するためのパイロット規模プラントについてのスケールアップ設計
研究室規模で試験した3ゾーン設計を基準として使用して、1日当たり1トンのREEを処理するためのスケールアップをした。スケールアップ係数は、1,230であった。表11におけるカラム長さを同じにしたが、その直径を大きくした。262.6kg/m3/日の全体的な生産性で、1トン/日のREEを処理するには、3.81m3の総カラム容量が必要であった。
【表18】
【0055】
LADシステムと従来の液液抽出の比較
REE精製のための典型的な液液抽出プラントにおいて、複数の抽出段階が必要である。例えば、有機リン抽出剤P204を使用して軽質REE画分からNdを選別するために、80段階を、抽出、スクラビング及びストリッピングに使用する。有機相と水相の容積比は、9対1である。高濃度の酸(3M HCl)をストリッピング及びスクラビングに使用する。
LADと液液抽出の詳細な比較を以下の表にまとめる。
【0056】
【表19】
【0057】
フォトダイオードアレイ検出器及び誘導結合プラズマ発光分光法を使用する、水溶液中のREEの分析のための分析方法を開発した。これらの2つの方法により、不変パターン設計についての必須パラメーターである原料溶液中の濃度を効率的に決定することができる。
7種の可視REEの混合物をまず単一カラムで選別した。設計方法のみならず、速度モデルの模擬実験も検証した。大半の成分についての実験結果は、模擬実験結果とほとんど一致した。
次に、バストネサイトと同程度のREE濃度を有する模擬物を調製して選別した。高純度のLa及びCeを、設計方法における目標収率とほぼ一致した収率で回収した。重質REEは、より高い配位子親和性を有し、軽質REEより先に溶出するであろう。この試験において、微量成分を、選別なしに、1群として溶出した。
【0058】
マルチゾーンLADシステムを使用して、MPマテリアルズにより提供された粗LREE混合物を選別した。錯体混合物を分離するためのγ値に基づく分離方法を組み入れることにより、不変パターンの設計方法を修正及び改良した。軽質REE画分のための、不変パターン方法に基づくマルチゾーン設計を開発した。最も大きいγi値を有する成分(Ce)を対象として、ゾーンIにおいて選別した。ゾーンIIにおけるカラムAにより、3成分混合バンド(Nd/Pr/Ce)を2つの2成分ペア(Nd/Pr、Pr/Ce)に分離した。第3ゾーンを使用してこれらの2つの2成分ペアを選別し、高純度のNd、P及びCeを高い生産性で得た。ゾーンIIにおけるカラムBにより、Ce/La混合バンドを選別して、これらの2つの元素の収率を改善した。一般的には、4種の成分のREE混合物について、多成分混合物を2成分ペアに最終的に選別するために、3ゾーンが必要であった。2成分混合物の選別について、流出液中の混合バンドを、カラム入り口に戻して再利用し、原料の一部とすることができる。混合バンドは、おおよそ等モルの混合物であり、なぜなら物質移動ゾーンにおける濃度プロフィールが対称であるからである。LREE画分について3ゾーン設計を使用することにより、全体的な生産性は、単一カラムにおける生産性と比較して3桁高くなった。
【0059】
従来の液液抽出と比べて、LADにより、生産性が約100倍高まり、処理量がわずか100分の1となる。1トン/日を生産するのの、5つのカラムを備える1つのLADシステムだけを必要とする一方で、抽出方法によると、約2,000のミキサーセトラーユニットを必要とするであろう。大量の有機溶剤、高濃度の酸及びアンモニウム塩、並びに毒性の強い抽出剤を使用せず、無害なEDTA溶液のみをLADに使用する。酸性廃水は排出されない。95%超の化学物質を、回収及び再利用することができ、廃棄物をほとんど生じない。
【0060】
LBD選別の実施例
実施例1:3ゾーン及び4つのカラムを使用する、バストネサイトの軽質画分からのLa、Ce、Pr、及びNd(4種の目的生成物)のLBD選別(一般的な分離手順1)
原料は、上記表7に示されているものと同じである。4種のREEをそれぞれ、個々の高純度生成物として回収する。配位子(例えば、EDTA)結合吸着剤を使用して、バストネサイトの軽質画分から4種の高純度REEを選別する。弱吸着成分(固定されたEDTAに対し)であるNa+を前飽和剤として使用し、強吸着成分H+を置換剤として使用する。配位子親和性の高いREEであるNdが最後に溶出する一方で、配位子親和性の低いREEであるLaが最初に溶出する。
3ゾーン設計(図9)は、一般的な分離手順1に従って開発される。ゾーンIの設計は、Ceの生成性を最大化することを目的とし、なぜならCeが4種のREEのうち最も大きいγi値を有するからである。Laの収率もゾーンIにおいて80%に達し、これは、このゾーンから収集されたLaバンドも高純度(>99.5%)生成物として適格であることを示している。LaとCeとの間の混合バンドをカラム入り口にリサイクルして、両成分の全収率を改善することができる。
【0061】
PrもNdもゾーンIにおいてプラトー濃度に到達しない(図10A);したがって、Pr及びNdは、Ceと一緒に3成分混合バンドCe/Pr/Ndにお収集され、更なる精製のためにゾーンIIに送られる。Ce/Pr/Nd3成分混合物において、Ndは、最も大きいγi値を有し、ゾーンIIにおける目的生成物となるはずである。ゾーンIIにおいてNdの生産性を最大化する条件の下で、Ceを高純度生成物として引き出すこともできる(図2(b))。中間成分Prは、プラトー濃度に達し、これは、ゾーンIIにおけるCe及びNdのバンドの間のほぼ完全な選別を示している(図10B)。したがって、ゾーンIIから3成分混合バンドを2つの2成分混合バンド、Ce/Pr及びPr/Ndに分離することができ、それぞれをゾーンIIIのカラムA及びBにおいて更に選別する。ゾーンIIIの2つのカラムに供給される2成分混合物中の成分を、純粋な生成物として回収する。各カラムにより、1つの2成分混合バンドを生成し、それぞれのカラム入り口にリサイクルして、全収率を>99%に向上させる。全ゾーンについての模擬溶出プロフィールを図10A~10D及び図11に示す。
【0062】
【表20】
【0063】
【表21】
【0064】
【表22】
【0065】
【表23】
【0066】
【表24】
【0067】
実施例2:バストネサイトの軽質画分からのNd/PrのLBD選別(一般的な分離手順2&3)
実施例3及び4についての原料と同じである。しかしながら、この実施例の目的生成物は、Pr及びNdの混合物(ジジミウム)のみであり、4種のREEすべてではない。実施例1と同じ吸着剤及び置換剤を使用する。
Pr及びNdを1群にして1つの成分Pr/Ndとし、La及びCeを1群にして第2成分La/Ceとする。4種のREEの混合物を2成分混合物として扱う。組成及び選択性加重組成係数を表19に示す。Pr/Ndのγi値を計算するために、隣接するバンドの両側に対する2つの選択性を、αPr/Ce及びαH/Ndとする。
【表25】
【0068】
2ゾーン設計(図12)は、この実施例のために一般的な分離手順2&3に従って開発される。1群にした成分La/Ceは、より高いγi値を有し、ゾーンIの設計における目的生成物となるであろう。ゾーンIにおけるLa/Ceの生産性を最適化すると、Pr/Ndの収率は、80%より低く、目標純度である99.5%より低い純度となる。その結果、Pr/Ndは、Ceと一緒に収集され、ゾーンIIにおいて更に精製される。Pr/Ndを1群にして1つの成分とするため、ゾーンIから得られた混合バンドを2成分混合バンドとして扱う(図13A)。Pr/Ndは、この2成分混合バンドにおいてより高いγi値を有するため、生産性を最大化するためのゾーンIIの目的成分となる。両生成物であるCe及びPr/Ndは、高純度生成物としてゾーンIIにおいて回収される。このカラムから得られた混合バンドを、カラム入り口にリサイクルして、全収率を>99%に向上させる。両カラムについての模擬溶出プロフィールを図13A~13Bに示す。
【0069】
【表26】
【0070】
【表27】
【0071】
実施例3 単一カラムを備えるLADを使用する、バストネサイト重質画分からの1群としてのSm/Eu/Gdの回収(一般的な分離手順2&3)
この実施例は、バストネサイト由来のHREEの粗混合物からの、隣接する成である、Sm/Eu/Gdの1群の回収を示している。詳細な組成及び選択性加重組成係数を表22に示す。
【表28】
【0072】
一般的な分離手順2&3に基づいて、錯体HREE混合物を3つの群、(Yb/Er/Dy/Y/Tb)、(Gd/Eu/Sm)、及び(Nd/Pr/Ce)に分ける。原料を3成分混合物として扱う。中間の群(Gd/Eu/Sm)は、3つの群のうち最も大きいγi値を有し、ゾーンIにおける目的群となるであろう。この中間の群を回収するために必要なのは、1ゾーンのみである。ゾーンIについての実験溶出プロフィール及び模擬溶出プロフィールを図15に示す。2つの混合バンド(Gd/Tb)及び(Sm/Nd)をカラム入り口にリサイクルして、Sm/Eu/Gdの全収率を>99%に高める。カラム内での不純物の蓄積を防ぐために、他のREEを回収せず、システムが循環の定常状態に達することを防ぐ。
【0073】
実施例4 3カラムを備える2ゾーンLBDを使用する、モナザイト濃縮物からの2群、(Nd/Pr)及び(HREE)のLBD選別(一般的な分離手順4)
配位子結合吸着剤を使用して、モナザイト濃縮物からNd/Pr及びHREEを選別する。組成及び選択性を表23に示す。
【表29】
【0074】
群にした成分の組成及び選択性加重組成係数を24に示す。
【表30】
【0075】
La及びCeを群にして1つの成分とし、Pr及びNdを群にして第2成分とし、残りのHREEのすべてを群にして第3成分とする。混合物を3成分混合物として扱う。隣接する成分である(Pr/Nd)及びHREEの2群を回収するために、一般的な分離手順4を使用する。3カラムを備える2ゾーンLBDの設計を図16に示す。
La/Ceは、3つの成分のうち最も大きいγi値を有するため、生産性を最大化するためのゾーンIにおける目的成分となる。群にした成分Pr/Ndは、プラトー濃度に達し(図17A)、これは、目的生成物HREEを、不純物Ce/Laからほぼ完全に選別することを示している。したがって、混合バンド(Ce/Pr/Nd/HREE)は、2つのバンド、(Ce/Pr/Nd)及び(Pr/Nd/HREE)に分離される。次に、更なる精製のために、両混合バンドをゾーンIIにおける2つのカラムに送る(図17B~17C)。ゾーンIIの各カラムから得られた混合バンドを、それぞれのカラムの入り口にリサイクルして、収率を>99%に高める。
【0076】
【表31】
【0077】
【表32】
【0078】
【表33】
【0079】
本新規技術は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されているが、これは、例示的なものであり、限定的な性格のものではないと考えられる。実施形態は、ベストモード及び実施可能要件を満たすように、前述の明細書に示されており、説明されていることを理解されたい。当業者は、無数に近い実質でない変更及び修正を上述した実施形態に容易に行い、このような実施形態の変形のすべてを、本明細書において記載しようとすることは非現実であることを理解されたい。したがって、本新規技術の精神の範囲内にあるすべての変更及び修正が保護されるのが望ましいことを理解されたい。
図1A-D】
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A-D】
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】