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特表2023-516030無細胞系を用いて形質を特定するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】無細胞系を用いて形質を特定するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20230410BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230410BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230410BHJP
   C40B 40/06 20060101ALN20230410BHJP
   C12P 1/04 20060101ALN20230410BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/68
C12N15/09 Z
C40B40/06
C12P1/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552181
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 US2021020293
(87)【国際公開番号】W WO2021174199
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/983,007
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520046904
【氏名又は名称】シンビトロバイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】サン, ザッカリー ゼット.
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA08
4B063QA18
4B063QQ42
4B063QQ43
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR72
4B063QR73
4B063QR75
4B063QS05
4B063QX01
4B064AG01
4B064CA50
4B064DA12
(57)【要約】
インビトロ転写/翻訳(TXTL)系を用いてスクリーニングするための方法および組成物が本明細書中に提供される。いくつかの実施形態において、スクリーニング方法は、スクリーニングされる候補遺伝子のライブラリーを提供する工程であって、各候補遺伝子は、1つまたはそれを超える目的タンパク質をコードする、工程;各候補遺伝子をインビトロ転写/翻訳(TXTL)系において発現させることにより、各々がその1つまたはそれを超える目的タンパク質を含む複数の組成物を生成する工程;およびその複数の組成物を、所望の表現型を評価するためのアッセイに供することにより、前記1つまたはそれを超える目的タンパク質が所望の表現型を示すかを判定する工程を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロ転写/翻訳(TXTL)系を用いてスクリーニングするための方法であって、
(a)スクリーニングされる候補遺伝子のライブラリーを提供する工程であって、各候補遺伝子は、1つまたはそれを超える目的タンパク質をコードする、工程;
(b)各候補遺伝子をインビトロ転写/翻訳(TXTL)系において発現させることにより、各々が前記1つまたはそれを超える目的タンパク質を含む複数の組成物を生成する工程;および
(c)前記複数の組成物を、所望の表現型を評価するためのアッセイに供することにより、前記1つまたはそれを超える目的タンパク質が前記所望の表現型を示すかを判定する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記ライブラリーが、少なくとも2つ、少なくとも5つまたは少なくとも10個の候補遺伝子、好ましくは、約5~約10,000個の候補遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ライブラリーが、目的生物のゲノムを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ライブラリーが、複数のホモログを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ライブラリーが、複数のバリアントを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
各候補遺伝子が、1つの遺伝子、または複数の遺伝子を含む遺伝子経路である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
各遺伝子が、同じプロモーター、好ましくは、構成的プロモーターの制御下に存在するように操作される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各候補遺伝子が、線状DNAを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が、すべての候補遺伝子を実質的に同時に発現させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程(c)が、前記複数の組成物を前記アッセイに実質的に同時に供することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アッセイが、昆虫、植物、動物または細菌などの生物を含む、請求項1または10に記載の方法。
【請求項12】
前記所望の表現型が、前記生物の死または成長を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記供する工程が、各組成物を前記生物に与えるまたは注入することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記所望の表現型が、形質強化成分、作物強化成分もしくは作物保護成分または微生物を見出すまたは特徴付けるために、殺虫剤、除草剤、抗生物質、駆除薬、作物保護および/または種子形質から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、工程(b)の後に、前記1つまたはそれを超える目的タンパク質を精製または単離する工程を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、1ヶ月あたり少なくとも100個、少なくとも500個、少なくとも1000個の候補遺伝子をスクリーニングすることができる、ハイスループットなスクリーニング方法である、請求項1または15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の組成物を互いに比較して、所望の特徴を有する最終組成物を特定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記所望の特徴が、生成量、生成されるタンパク質、生成されるmRNA、および/または別の生成物に対する所望の応答を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
2つまたはそれを超える組成物を組み合わせる工程、および別の生成物に対する所望の応答について試験する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記候補遺伝子が、同じタンパク質をコードする代替コドンを有するバリアントであり、前記ライブラリーが、コドン最適化のために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記候補遺伝子が、同じタンパク質をコードするバリアントであり、前記ライブラリーが、内部翻訳部位を特定するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記候補遺伝子が、同じタンパク質をコードするバリアントであり、前記ライブラリーが、ドメインシャッフルされたバリアントを見出すために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記候補遺伝子が、異なる遺伝子エレメントを有する操作された遺伝子であり、前記ライブラリーが、最適な転写調節単位および/または翻訳調節単位を特定するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記1つまたはそれを超える目的タンパク質を精製する工程および前記精製されたタンパク質を前記アッセイに供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年2月28日出願の米国仮出願第62/983,007号に基づく優先権および利益を主張する。この仮出願の開示全体は、参照により本明細書中に援用される。
配列表
【0002】
2021年3月1日に作成され、2021年3月1日にEFS-Webを介して提出された、サイズが25,378バイトの、”011201seq.txt”という名称のASCIIテキストファイルの全体が参照により本明細書中に援用される。
分野
【0003】
本明細書中に開示される組成物および方法は、候補のライブラリーから、農学的形質などの所望の形質を特定するためにインビトロ転写/翻訳(TXTL)系を利用することに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
機能が不明なDNAにコードされている生物学的データは広範囲に及ぶ。このデータは、天然由来のタンパク質、ペプチドおよび分子制御成分から、それらの半合成のバリアントおよび操作されたバリアントまで様々である。ハイスループットな配列決定法の登場により、2017年現在、2兆7000億塩基を超える情報が既知となったが、そのごく一部しか発現されない。このDNAの生成物を決定できるツールは、この情報を理解する上で欠かせなくなるだろう。
【0005】
これとは別に、不可欠なプロセスを理解し、操作することができる重要な分野として、合成生物学が台頭してきた。この分野に含まれるのは、天然の遺伝子、半合成の遺伝子および操作された遺伝子、調節部分、ならびに試験を必要とする他の成分である。
【0006】
努力され、進歩してきたにもかかわらず、現在のアプローチは、ハイスループットなゲノム機能解析を行って、DNAからの生成物を決定することおよび合成生物学のアプローチを推進することに限られる。生物学、工学、グリーンケミストリー、農業および医学をはじめとする多様な分野において、既存の生命システムの再プログラミング、新しい生命システムの構築および将来の変革的な用途のための遺伝子回路の試験に必要な、設計-構築-試験サイクルを加速する工学主導のアプローチおよびシステムの開発にはまだ課題が残っている。
【0007】
細胞と同じように作用する環境(Niederholtmeyerら、2015;Takahashiら、2015)において遺伝子構築物の急速なプロトタイピング(Sunら、2014)を可能にするインビトロ転写-翻訳(TXTL)系(Shin & Noireaux 2012;Sunら、2013)が開発された。インビトロでの作業の主な目的の1つは、速い速度を出せるようにすることである。インビトロでは、反応は、8時間で済ませられ、1日に数千の反応にスケールアップすることが可能で、細胞内での同様の反応に比べて数倍改善する(Sunら、2014)。
【0008】
この系は、運用されているにもかかわらず、細胞異種発現を回避してきたことで、現在に至るまで、特に農業に関連する形質を直接同定するためにこの系を使用できることは示されていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
要旨
1つの態様において、インビトロ転写/翻訳(TXTL)系を用いてスクリーニングするための方法が本明細書中に提供され、その方法は、スクリーニングされる候補遺伝子のライブラリーを提供する工程であって、各候補遺伝子は、1つまたはそれを超える目的タンパク質をコードする、工程;各候補遺伝子をインビトロ転写/翻訳(TXTL)系において発現させることにより、各々がその1つまたはそれを超える目的タンパク質を含む複数の組成物を生成する工程;およびその複数の組成物を、所望の表現型を評価するためのアッセイに供することにより、1つまたはそれを超える目的タンパク質が所望の表現型を示すかを判定する工程を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、ライブラリーは、少なくとも2つ、少なくとも5つまたは少なくとも10個の候補遺伝子、好ましくは、約5~約10,000個の候補遺伝子を含む。いくつかの実施形態において、ライブラリーは、目的生物のゲノムを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリーは、複数のホモログを含む。いくつかの実施形態において、ライブラリーは、複数のバリアントを含む。いくつかの実施形態において、各候補遺伝子は、1つの遺伝子、または複数の遺伝子を含む遺伝子経路である。いくつかの実施形態において、各遺伝子は、同じプロモーター、好ましくは、構成的プロモーターの制御下に存在するように操作され得る。いくつかの実施形態において、各候補遺伝子は、線状DNAを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、候補遺伝子は、同じタンパク質をコードする代替コドンを有するバリアントであり、ライブラリーは、コドン最適化のために使用される。
【0012】
いくつかの実施形態において、候補遺伝子は、同じタンパク質をコードするバリアントであり、ライブラリーは、内部翻訳部位を特定するために使用される。
【0013】
いくつかの実施形態において、候補遺伝子は、同じタンパク質をコードするバリアントであり、ライブラリーは、ドメインシャッフルされたバリアントを見出すために使用される。
【0014】
いくつかの実施形態において、候補遺伝子は、異なる遺伝子エレメントを有する操作された遺伝子であり、ライブラリーは、最適な転写調節単位および/または翻訳調節単位を特定するために使用される。
【0015】
いくつかの実施形態において、工程(b)は、すべての候補遺伝子を実質的に同時に発現させることを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、工程(c)は、複数の組成物を実質的に同時にアッセイに供することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、アッセイは、昆虫、植物、動物または細菌などの生物を含む。いくつかの実施形態において、所望の表現型は、生物の死または成長を含む。いくつかの実施形態において、供する工程は、各組成物を上記生物に与えるまたは注入することを含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、所望の表現型は、形質強化成分、作物強化成分もしくは作物保護成分または微生物を見出すためまたは特徴付けるために、殺虫剤、除草剤、抗生物質、駆除薬、作物保護、および/または種子形質(またはそれらのバリアント)から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、上記方法は、工程(b)の後に、1つまたはそれを超える目的タンパク質を精製または単離する工程を含まない。
【0020】
いくつかの実施形態において、上記方法は、1ヶ月あたり少なくとも100個、少なくとも500個、少なくとも1,000個、少なくとも10,000個の候補遺伝子をスクリーニングすることができるハイスループットなスクリーニング方法である。
【0021】
いくつかの実施形態において、上記方法は、複数の組成物を互いに比較して、所望の特徴を有する最終組成物を特定する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、所望の特徴には、生成量、生成されるタンパク質、生成されるmRNA、および/または別の生成物に対する所望の応答が含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態において、上記方法は、2つまたはそれを超える組成物を組み合わせる工程および別の生成物に対する所望の応答について試験する工程をさらに含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記方法は、1つまたはそれを超える目的タンパク質を精製する工程および精製されたタンパク質をアッセイに供する工程をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、無細胞発現の概要を提供している。無細胞発現では、宿主を溶解産物に変換し、DNAからmRNAおよびタンパク質への変換を可能にするための因子を供給する。
【0025】
図2図2は、従来の異種発現と無細胞発現との比較を提供している。
【0026】
図3図3は、Manduca sextaを飼育するために使用された200uLの成長培地に対する、20uLの、無細胞発現された形質または商業的に入手可能な殺虫剤の活性を示している。7つの形質(左上から時計回りに:PBS、GFP、Mcf(2431)、市販の殺虫剤であるB.thuringensis var Kurstaki98%、TccA(2432)、TXTL(発現されるDNAなし)、CrylAc(2430))が示されている。これは、M.sextaの幼虫に食物を導入した9日後に撮影された。
【0027】
図4図4は、GFP、CrylAc、および市販の殺虫剤であるB.thuringensis var Kurstaki98%に対する図3のサブセットを示している。
【0028】
図5図5は、5uLの無細胞発現された形質の50%希釈を用いた、CrylAc、McfまたはGFPを注入した1日後のManduca sextaを示している。M.sextaが合計21匹存在し、各形質につき7匹への注入を含む。
【0029】
図6図6は、5uLの無細胞発現された形質の50%希釈を用いた、CrylAc、McfまたはGFPを注入した7日後のManduca sextaを示している。M.sextaが合計21匹存在し、各形質が7匹への注入を含む。各形質に対する生存率の測定値(measure)およびMcf形質の場合の「柔らかい」表現型も示されている。
【0030】
図7図7は、メタゲノム起源から形質を見出す方法を概説しており、完全にインビトロで、形質が測定され、遺伝的に合成され、次いで、線状DNAとしてアセンブルされ得るか;無細胞系においてインビトロで発現され、活性について直接試験され得るか;または発現され、次いで、活性について試験するために精製され得る。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上記で特定された図面は、本開示の実施形態を説明しているが、考察において述べられるように他の実施形態も企図される。本開示は、例証的な実施形態を代表として提示するのであって、限定として提示するのではない。本開示の実施形態の原理の範囲内および趣旨の範囲内に入る数多くの他の改変および実施形態が、当業者によって考案され得る。
【0032】
詳細な説明
農学的形質などの所望の形質を特定するために無細胞転写・翻訳反応を利用するための方法が本明細書中に開示される。ある実施形態では、無細胞転写・翻訳反応の生成物を直接使用することにより、ある生成物と反応する応答を特定することができる。別の実施形態では、無細胞転写・翻訳反応の複数の組成物を互いに比較することにより、理想の組成物を特定することができる。別の実施形態では、無細胞転写・翻訳反応の生成物をさらに精製することができ、次いで、それを用いて、別の生成物に対する応答を特定することができるか、またはそれを用いることにより、後に別の生成物に対して応答する新しい生成物を開発することができる。
定義
【0033】
便宜上、明細書、実施例および添付の請求項において使用されるある特定の用語をここに集める。別段定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての専門用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。
【0034】
冠詞「a」および「an」は、1つまたは1つより多い(すなわち、少なくとも1つの)、その冠詞の文法上の対象物のことを指すために本明細書中で使用される。例としては、「エレメント(an element)」は、1つのエレメントまたは1つより多いエレメントを意味する。
【0035】
本明細書中で使用されるとき、用語「約」は、20%以内、より好ましくは、10%以内、最も好ましくは、5%以内を意味する。用語「実質的に」は、50%超、好ましくは、80%超、最も好ましくは、90%超または95%超を意味する。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、「複数の」は、1より多いこと、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれを超えること、例えば、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500もしくはそれを超えること、またはそれらの間の任意の整数を意味する。
【0037】
用語「添加剤」とは、化学的性質であるか生物学的性質であるかを問わない添加物、天然であるか合成であるかを問わない添加物、または系に提供される添加物のことを指す。例としては、酵素、オキシダーゼ、オキシゲナーゼ、糖、ベタイン、シクロデキストラン、溶媒、アルコール、タンパク質、酵素、核酸、オルガネラ、ミトコンドリアおよび葉緑体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、用語「核酸」、「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」は、交換可能に使用されてよく、一本鎖(ss)と二本鎖(ds)の両方のRNA、DNAおよびRNA:DNAハイブリッドを含む。これらの用語は、デオキシリボヌクレオチドおよび/もしくはリボヌクレオチド、またはそれらのアナログもしくは修飾物を含む、様々な長さを有し得る多量体型のヌクレオチドを含むがこれらに限定されないと意図されている。核酸分子は、完全長のポリペプチドもしくはRNAまたは任意の長さのそれらのフラグメントをコードしてもよいし、非コード核酸分子であってもよい。
【0039】
核酸は、天然に存在するかまたは合成の多量体型のヌクレオチドであり得る。本開示の核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)分子またはリボ核酸(RNA)分子を形成する天然に存在するヌクレオチドから形成され得る。あるいは、天然に存在するオリゴヌクレオチドは、例えば、ペプチド核酸(PNA)またはロック核酸(LNA)におけるような、その特性を変更する構造修飾を含む場合がある。これらの用語は、等価物、ヌクレオチドアナログから作製されたRNAまたはDNAのいずれかのアナログ、および記載される実施形態に適用可能であるとき、一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチドを含むと理解されるべきである。本開示において有用なヌクレオチドとしては、例えば、天然に存在するヌクレオチド(例えば、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)、またはヌクレオチドの天然もしくは合成の修飾物、または人工塩基が挙げられる。修飾物には、安定性を高めるためにホスホロチオエート化した塩基も含まれる場合がある。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、別段述べられない限り、用語「転写」とは、DNA鋳型からのRNAの合成のことを指す。用語「翻訳」とは、mRNA鋳型からのポリペプチドの合成のことを指す。翻訳は、一般に、mRNA転写物の5’非翻訳領域(5’-UTR)の配列および構造によって調節される。調節配列の1つは、リボソーム結合部位(RBS)であり、これは、mRNAの効率的かつ正確な翻訳を促す。原核生物のRBSは、16S rRNA(30Sリボソーム小サブユニット内に位置する)の3’末端のUCCUコア配列に相補的な5’-UTRのプリンリッチな配列であるシャイン・ダルガノ配列である。様々なシャイン・ダルガノ配列が、原核生物のmRNAにおいて見出されており、通常、AUG開始コドンの約10ヌクレオチド上流にある。RBSの活性は、RBSと開始AUGとを隔てているスペーサーの長さおよびヌクレオチド組成に影響され得る。真核生物では、コザック配列が、短い5’非翻訳領域内に存在し、mRNAの翻訳を指示している。コザックコンセンサス配列を欠くmRNAが、安定した二次構造を欠く中程度に長い5’-UTRを有する場合、それもインビトロ系において効率的に翻訳され得る。大腸菌のリボソームは、シャイン・ダルガノ配列を優先的に認識し、真核生物のリボソーム(例えば、網状赤血球溶解産物中に見られるリボソーム)は、コザックリボソーム結合部位を用いる。
【0041】
本明細書中で使用されるとき、用語「宿主」または「宿主細胞」とは、任意の原核生物または真核生物の単細胞(例えば、酵母、細菌、古細菌など)の細胞または生物のことを指す。宿主細胞は、複製可能な発現ベクター、クローニングベクターまたは任意の異種核酸分子のレシピエントであり得る。宿主細胞は、Escherichia属もしくはLactobacillus属の種などの原核細胞、または酵母などの真核単細胞生物であり得る。異種核酸分子は、目的配列、転写調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リプレッサーなど)および/または複製開始点を含み得るが、これらに限定されない。本明細書中で使用されるとき、用語「宿主」、「宿主細胞」、「組換え宿主」および「組換え宿主細胞」は、交換可能に使用され得る。そのような宿主の例については、Green & Sambrook,2012,Molecular Cloning:A laboratory manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(その全体が参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、用語「選択可能なマーカー」または「レポーター」とは、宿主細胞または宿主生物において発現されたとき、比較的容易に選択、特定および/または計測され得るある特定の特徴を付与し得る、遺伝子、オペロンまたはタンパク質のことを指す。レポーター遺伝子は、ある特定の遺伝子が宿主細胞もしくは宿主生物に導入された否かかまたは宿主細胞もしくは宿主生物において発現されたか否かの指標として使用されることが多い。よく使用されるレポーターの例としては、抗生物質耐性(「abR」)遺伝子、蛍光タンパク質、栄養要求性(auxotropic)選択モジュール、β-ガラクトシダーゼ(細菌遺伝子lacZによってコードされる)、ルシフェラーゼ(ホタル由来)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT;細菌由来)、GUS(β-グルクロニダーゼ;植物でよく使用される)、緑色蛍光タンパク質(GFP;クラゲ由来)および赤色蛍光タンパク質(RFP)が挙げられるが、これらに限定されない。通常、選択可能なマーカーを発現している宿主細胞は、細胞増殖にとって有毒または阻害性である選択剤から保護される。
【0043】
本明細書中で使用される用語「操作する(engineer)」、「操作する(engineering)」または「操作される」は、遺伝子の操作、または生体分子(例えば、DNA、RNAおよび/またはタンパク質)の改変、またはバイオテクノロジーの分野で周知の同様の手法のことを指す。
【0044】
本明細書中に記載されるとき、「遺伝子モジュール」および「遺伝子エレメント」は、交換可能に使用されてよく、任意のコード核酸配列および/または非コード核酸配列のことを指す。遺伝子モジュールは、オペロン、遺伝子、遺伝子フラグメント、プロモーター、エキソン、イントロン、調節配列、タグまたはそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、遺伝子モジュールとは、コード配列、プロモーター、ターミネーター、非翻訳領域、リボソーム結合部位、ポリアデニル化テイル、リーダー、シグナル配列、ベクターおよび前述のものの任意の組み合わせのうちの1つまたはそれを超えるもののことを指す。ある特定の実施形態において、遺伝子モジュールは、本明細書中で定義されるような転写単位であり得る。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「プロモーター」とは、目的のヌクレオチド配列からmRNAへの転写を制御することができるDNA配列のことを指し、RNAポリメラーゼ結合部位、ならびに他の転写因子の結合のための1つもしくはそれを超えるオペレーターおよび/またはカタボライト活性化タンパク質(サイクリックAMPレセプタータンパク質「CAP」としても知られる)結合部位を通常含む。プロモーターは、恒常的に活性であってもよいし(「構成的プロモーター」)、化学物質、熱または光などの他の因子によって制御されてもよい。「誘導性プロモーター」の活性は、生物要因または非生物要因の有無によって誘導される。本開示の態様は、誘導性プロモーターが使用される「自己誘導性」系または「自己誘導」系に関するが、外来性のインデューサーの添加は必要とされない。よく使用される構成的プロモーターとしては、CMV、EFla、SV40、PGK1、Ubc、ヒトベータアクチン、CAG、Ac5、ポリヘドリン、TEF1、GDS、ADH1(エタノールによって抑制される)、CaMV35S、Ubi、HI、U6、T7(T7 RNAポリメラーゼを必要とする)およびSP6(SP6 RNAポリメラーゼを必要とする)が挙げられる。一般的な誘導性プロモーターとしては、TRE(テトラサイクリンまたはその誘導体によって誘導可能;TetRリプレッサーによって抑制可能)、GAL1およびGAL10(ガラクトースで誘導可能;グルコースで抑制可能)、lac(lacリプレッサー(LacI)の非存在下において恒常的;IPTGまたはラクトースによって誘導可能)、T7lac(T7とlacとのハイブリッド;lacオペレーターによって制御されるT7 RNAポリメラーゼを必要とする;IPTGまたはラクトースによって誘導可能)、araBAD(リプレッサーAraCに結合してそれを切り換えて転写を活性化するアラビノースによって誘導可能;CAP結合部位を介してまたはアンチインデューサーであるフコースの競合的結合によってグルコースの存在下で抑制されるカタボライトリプレッション)、trp(TrpRリプレッサーと結合したとき、トリプトファンによって抑制可能)、tac(lacとtrpとのハイブリッド;lacプロモーター、例えば、tacIおよびtacIIのように制御される)およびpL(温度調節型)が挙げられる。プロモーターは、宿主に応じて原核生物または真核生物のプロモーターであり得る。一般的なプロモーターおよびそれらの配列は、当該分野で周知である。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、「ライブラリー」とは、所望の機能について試験またはスクリーニングされる成分の集合または複数の成分のことを指す。ライブラリーのサイズは、その成分の性質に応じて様々であり得る。いくつかの実施形態において、ライブラリーは、少なくとも2つ、少なくとも5つまたは少なくとも10個の候補遺伝子、好ましくは、約5~約1,000,000個、または約10~約100,000個、または約100~約10,000個の候補遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、ライブラリーのサイズは、目的生物の全ゲノム(またはサブセット)の遺伝子の数に対応し得る。
【0047】
本明細書中で使用されるとき、「候補遺伝子」とは、試験またはスクリーニングされる遺伝子エレメントのことを指す。いくつかの実施形態において、候補遺伝子は、遺伝子、例えば、異種プロモーターの制御下に存在するように操作された遺伝子であり得る。いくつかの実施形態において、候補遺伝子は、細胞においてある特定の生成物または変化をもたらす、一連の分子間相互作用を細胞内で集合的に生じさせる複数の遺伝子(例えば、遺伝子経路)であり得る。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、「ゲノム」とは、ある特定の実施形態において、細胞もしくは生物に存在する遺伝子一式もしくは遺伝物質一式またはそのサブセットのことを指す。
【0049】
本明細書中で使用されるとき、遺伝子もしくはタンパク質の「ホモログ」、「相同性」または「相同」とは、別の種におけるその機能的な等価物のことを指す。ペプチドの文脈における用語「実質的な同一性」は、あるペプチドが、特定の比較領域にわたって、参照配列に対して少なくとも70%の配列同一性、例えば、参照配列に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有する配列を含むことを指す。必要に応じて、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のホモロジーアラインメントアルゴリズムを用いて、最適なアラインメントが行われる。2つのペプチド配列が実質的に同一であるという指摘は、一方のペプチドが、第2のペプチドに対して産生された抗体と免疫学的に反応性であることである。したがって、例えば、あるペプチドと第2のペプチドとが、保存的置換だけが異なる場合、それらの2つのペプチドは、実質的に同一である。「実質的に類似」であるペプチドは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸変化によって異なり得るということを除いて、上で述べたように配列を共有する。
【0050】
本明細書中で使用されるとき、ある遺伝子または核酸配列の「バリアント」は、基準とされる遺伝子または核酸配列と少なくとも10%の同一性を有する配列であり、基準とされる配列と比べて1つまたはそれを超える塩基の欠失、付加または置換を含み得る。それらの配列における差異は、天然のまたは意図的な、配列または構造の変化の結果であり得る。天然の変化は、自然界における、特定の核酸配列の正常な複製または重複の経過の間に生じ得る。意図的な変化は、特定の目的のために特別に設計され、配列に導入され得る。そのような具体的な変更は、種々の突然変異誘発法を用いてインビトロにおいて行われ得る。具体的に作製されたそのような配列バリアントは、元の配列の「変異体」と称されることがある。ペプチドまたはタンパク質の「バリアント」は、参照ペプチドまたは参照タンパク質と比べて1つまたはそれを超えるアミノ酸位置が異なるペプチド配列またはタンパク質配列である。バリアントは、天然に存在するバリアントであり得るか、またはバリアントペプチドもしくはバリアントタンパク質をコードする核酸分子に対する自然発生的な、誘導された、もしくは遺伝的に操作された、変異の結果であり得る。バリアントペプチドは、化学的に合成されたバリアントである場合もある。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、「補因子」は、生化学反応に関わる化合物であって、細胞内でリサイクルされ、ほぼ定常状態レベルのままである化合物である。嫌気的発酵に関わる補因子の一般的な例としては、NADおよびNADPおよびADPが挙げられるが、これらに限定されない。代謝において、補因子は、電子を受容または供与するように酸化還元反応において作用し得る。有機化合物が、代謝における酸化によって分解されるとき、そのエネルギーは、NADHへの還元によってNADに、NADPHへの還元によってNADPに、またはFAD3/4への還元によって別の補因子FADに、伝達され得る。その後、還元された補因子は、レダクターゼの基質として使用され得る。
【0052】
本明細書中で使用されるとき、「殺虫剤」とは、昆虫を予防、破壊、忌避、鎮静または殺滅するために使用される物質のことを指す。
【0053】
本明細書中で使用されるとき、「有機ホスフェート」とは、抗コリンエステラーゼ活性を示す有機リン化合物のことを指す。
【0054】
本明細書中で使用されるとき、「マラチオン」とは、化学名S-(1,2-ジカルボエトキシエチル(dicarbethoxyethyl))-O,O-ジメチルジチオホスフェートまたは((ジメトキシ-ホスフィノチオイル)チオ)ブタン二酸ジエチルエステル(CAS No.121-75-5)を有する有機ホスフェート駆除薬のことを指す。米国特許第3,352,664号、同第3,396,223号および同第3,515,782号に、駆除薬におけるマラチオンの使用が説明されている。これらの参考文献の開示は、参照により援用される。
【0055】
本明細書中で使用されるとき、「害虫」とは、その存在を防除することが望ましい場合がある任意の生物のことを指す。害虫としては、例えば、節足動物種、例えば、昆虫、クモ類または蛛形類、甲虫(bugs)、ハエおよび寄生生物が挙げられ得る。害虫は、例えば、Acari、Anoplura、Araneae、Blattodea、Coleoptera、Collembola、Diptera、Grylloptera、Heteroptera、Homoptera、Hemiptera:Cimicidae、Hymenoptera、Isopoda、Isoptera、Lepidoptera、Mantodea、Mallophaga、Neuroptera、Odonata、Orthoptera、Psocoptera、Siphonaptera、Symphyla、Thysanura、Thysanopteraなどの動物目に属する種であり得る。
【0056】
本明細書中で使用されるとき、「処置」は、ある病気または障害の1つまたはそれを超える症状を回復させるかまたは有利に変化させる任意の様式を意味する。処置には、本明細書中の組成物の任意の使用、例えば、任意の外寄生生物または害虫を処置、忌避および/または根絶するための使用も含まれる。予防は、疾患または障害になるリスクの低下を意味する。
【0057】
本明細書中で使用されるとき、「忌避」は、「昆虫を忌避する」の文脈において使用されるとき、任意の所与の時点において、同じ条件下における未処理の場所よりも、処理された場所にいる昆虫または害虫の数が少なくなるように、処理された表面から撃退すること、追い払うこと、追い返すこと、または遠ざけることを意味する。昆虫または害虫は、処理された表面上に乗るまたは処理表面の上を横切ることがあるが、昆虫は、長時間にわたって処理表面上に留まらないか、または留まってその表面を探索しないまたは噛み付かないまたはその他の方法で損傷させない。
【0058】
本明細書中で使用されるとき、用語「昆虫忌避剤」とは、全く処理しない場合と比べて、ある被験体または場所に対して昆虫または害虫からの保護を付与する化合物または組成物を指す。
【0059】
本明細書中で使用されるとき、「保護」とは、昆虫の数の減少のことを指し、例えば、処理された動物(ヒトを含む)および処理された無生物表面に対する昆虫の行動を観察する試験において、平均完全保護時間(「平均CPT」)を計測することによって、有用に判定することができる。
【0060】
「形質の強化」は、コントロール植物または参照を基準としたトランスジェニック植物における特徴の検出可能かつ望ましい差異を意味する。いくつかの場合において、形質の強化は、定量的に計測することができる。例えば、形質の強化は、観察された形質の少なくとも約2%の差異、少なくとも約5%の望ましい差異、少なくとも約10%の差異、少なくとも約20%の差異、少なくとも約30%の差異、少なくとも約40%、少なくとも約50%の差異、少なくとも約60%、少なくとも約70%の差異、少なくとも約80%の差異、少なくとも約90%の差異もしくは少なくとも約100%の差異またはさらにそれを超える差異を伴い得る。他の場合において、形質の強化は、単に定性的に計測される。形質には自然変動が存在し得ることが知られている。ゆえに、観察された形質の強化は、コントロール植物または参照において観察される形質の分布と比べて、トランスジェニック植物における形質の正規分布の変化を伴い、それは、本明細書中に提供される統計学的方法によって評価される。形質の強化には、非ストレス条件下での収量増加および環境ストレス条件下での収量増加を含む収量増加が含まれるが、これらに限定されない。ストレス条件としては、例えば、干ばつ、日陰、真菌病、ウイルス病、細菌病、昆虫の寄生、線虫の寄生、低温曝露、熱曝露、浸透ストレス、利用可能な窒素栄養の減少、利用可能なリン栄養の減少、高植物密度またはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0061】
「収量」は、草高、莢の数、植物上の莢の位置、節間の数、裂莢の発生率、子実のサイズ、根粒形成および窒素固定の効率、栄養同化の効率、生物的ストレスおよび非生物的ストレスへの耐性、炭素同化、植物構造、倒伏への耐性、種子発芽率、実生の生長力、ならびに幼若形質を含むがこれらに限定されない多くの特性によって影響され得る。収量は、発芽効率(ストレス条件下での発芽を含む)、成長速度(ストレス条件下での成長速度を含む)、雌穂の数、雌穂1つあたりの種子数、種子のサイズ、種子の組成(デンプン、油、タンパク質)および種子登熟(seed fill)の特徴によっても影響され得る。
【0062】
本明細書中で使用されるとき、「~を含む(including)」、「~を含む(comprising)」、「~を有する」、「~を含む(containing)」、「~を含む(involving)」およびそれらの変化形は、本明細書の以後に列挙される項目およびそれらの等価物ならびにさらなる項目を包含すると意味される。「~からなる」は、有限範囲のエレメントまたは特色に関してクローズエンド(close-ended)と理解されるものとする。「~から本質的になる」は、範囲を指定のエレメントまたは工程に限定するが、特許請求される発明の基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないものを除外しない。
【0063】
本明細書中で使用される、組換え核酸技術および分子生物学および細胞生物学および農学の分野において使用される他の用語は、適用可能な分野の当業者によって広く理解されるだろう。
スクリーニング用のライブラリー
【0064】
様々な実施形態において、候補遺伝子のライブラリーが、本明細書中に開示される方法および組成物を用いてスクリーニングされ得る。いくつかの実施形態において、スクリーニングされるライブラリーは、例えば、次世代シーケンシングを介して目的の生物から単離された遺伝子のライブラリーであり得る。対象の生物は、表現型の特色(例えば、Bacillis thurengenesisの場合、その細菌が、選ばれた昆虫を殺滅できるという観察結果)を有する可能性があり、個々の遺伝子産物がその表現型を引き起こしていると仮定されるが、生成される生成物について、従来の方法を用いて各遺伝子をスクリーニングすることは困難であり、コストがかかり、時間がかかる。この場合において、候補生物の配列決定された全コード配列を含む遺伝子ライブラリーを個々の無細胞系において個別に発現することができ、その表現型の原因となる遺伝子を特定するために個別にアッセイすることができる。
【0065】
いくつかの実施形態において、スクリーニングされるライブラリーは、メタゲノム配列から単離された遺伝子ライブラリーであり得る。例えば、ある具体的な配列が、表現型効果を有すると知られていることがあるが、改変された(例えば、より強力な)表現型効果または別の所望の表現型の結果を有する代替の遺伝子が必要とされる。Pubmedなどの配列ライブラリーからのメタゲノム配列を用いることにより、対象の遺伝子に対して実質的な類似性または相同性(例えば、95%)を有する遺伝子を特定することができる。次いで、これらのホモログを合成し、個別に発現させ、アッセイすることにより、本明細書中に開示される方法および組成物を用いて機能を特定することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、スクリーニングされるライブラリーは、仮説(例えば、機能が既知である遺伝子と同じゲノム遺伝子座に存在する遺伝子は、所望の機能を有する可能性がある)に基づいて単離された遺伝子ライブラリーであり得る。この仮説に基づいて、機能が既知の遺伝子から一定の遺伝距離内のすべての遺伝子を引き抜くなどによって、アルゴリズムセットを用いて、ライブラリーを構築することができる。次いで、これらの遺伝子を、本明細書中に開示される方法および組成物を用いて試験することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、スクリーニングされるライブラリーは、タンパク質の活性を強める種々のサブユニットおよび/または補因子を含み得る。例えば、ある特定の殺虫トキシンクラスの場合、サブユニットおよび/または補因子が、活性を強めることがあるが、その正体が不明であることがある。そのライブラリーは、後に個別に発現され得、効力を測定するためにタンパク質と組み合わされ得る、推定サブユニットおよびまたは/推定補因子であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、スクリーニングされるライブラリーは、計算工学またはタンパク質工学の遺伝子バリアントのライブラリーであり得る。計算工学またはタンパク質工学のバリアントは、ある特定の機能(例えば、得られるタンパク質安定性、得られるタンパク質毒性など)を達成するように設計され得る。これらのバリアントを新規合成し、個別に発現させ、アッセイすることにより、本明細書中に開示される方法および組成物を用いて機能を特定することができる。
インビトロ転写および翻訳の組成物
【0069】
インビトロ転写・翻訳系は、細胞外で転写および翻訳を行うことができる系である。いくつかの実施形態において、この系は、「無細胞系」、「無細胞転写・翻訳」、「TX-TL」、「TXTL」、「TX/TL」、「抽出物系」、「インビトロ系」、「ITT」または「人工細胞」とも称される。例示的なインビトロ転写・翻訳系としては、宿主から産生された精製済みまたは部分的に精製済みのタンパク質系、宿主から産生されていない精製済みまたは部分的に精製済みのタンパク質系、および「抽出物」として形成される、宿主株から産生されたタンパク質系が挙げられる。ある実施形態において、抽出物には、細胞全体の抽出物、核抽出物、細胞質抽出物、それらの組み合わせなどが含まれる。細胞全体の抽出物は、本明細書中で溶解産物とも呼ばれる。本明細書中に記載される溶解産物および溶解産物系は、抽出物の非限定的な例であると意図されており;溶解産物が本明細書中に記載される場合、他の抽出物、または抽出物とタンパク質との組み合わせが使用され得ることが企図される。
【0070】
ある実施形態において、無細胞系は、細胞由来の細胞質成分および/または核成分の組み合わせを含み得る。それらの成分には、抽出物、精製された成分またはそれらの組み合わせが含まれ得る。それらの抽出物、精製された成分またはそれらの組み合わせには、タンパク質合成、転写、翻訳、DNA複製、および/または当業者が特定できる細胞環境内で起きるさらなる生物学的反応のための反応体が含まれる。
【0071】
無細胞転写-翻訳は、図1に説明されている。上図、DNAを取り込み、反応を触媒するタンパク質を生成する、無細胞発現。下図、無細胞生成、および384ウェルプレート形式において収集されたGFP発現の代表的なデータの図。無細胞アプローチと細胞アプローチとの対比が、図2に説明されている。無細胞プラットフォームは、生細胞なしに複数の遺伝子からのタンパク質発現を可能にする。無細胞生成のバイオテクノロジー法により、組換えDNAを投入物とすることができる原核細胞由来の溶解産物が生成され、連結された転写と翻訳とが行われて、酵素的に活性なタンパク質が出力される。無細胞系では、クローニングおよび形質転換が必要ないので、発現するのに、細胞での数日から数週間ではなく8時間しかかからない。また、無細胞系は、細胞よりも少なくとも10倍安価に実行でき、反応物が試薬と同等であり、384ウェルプレートにおいて使用されるので、ハイスループットで行える。原核細胞系の通常の収率は、750μg/mLのGFP(30μM)である。無細胞系は、複数の生物は、発現を10μlから最大10mLまでのスケールで行うことができる。
【0072】
無細胞系の抽出物成分、特に大腸菌からの溶解産物の作製方法に関する指示は、その全体が参照により本明細書中に援用される(Sunら、2013)に見られ;溶解産物を作製するための他の方法は、当業者に公知である。この手順は、大腸菌無細胞系に適応されているが、他の生物および宿主(原核生物、真核生物、古細菌、真菌など)から他の無細胞系を作製するために使用することができる。他の無細胞系の作製の例としては、Streptomyces spp.(Thompsonら、1984)、Bacillus spp.(Kelwickら、2016)およびタバコBY2(Buntruら、2014)(これらの全体が参照により本明細書に援用される)が挙げられるが、これらに限定されない。溶解産物を作製するための例示的なプロセスは、宿主を富栄養培地中で対数期中期まで生育した後、洗浄し、フレンチプレスおよび/またはビーズビーティングによる均質化および/または同等の方法によって溶解し、清澄化することを含む。このように処理された溶解産物は、「溶解産物」または「処理された細胞溶解産物」と称され得、「抽出物」の非限定的な例である。ある実施形態において、細胞は、嫌気性条件下で生育され得る。ある態様において、抽出物は、嫌気性条件下で調製され得る。
【0073】
遺伝子発現を維持するために、1つまたはそれを超える添加剤が抽出物とともに供給され得る。企図される添加剤としては、溶解産物の起源生物のインビボ発現および/または代謝環境を再現するように合わせた添加剤、例えば、酸化還元緩衝剤、潜在的なリン酸緩衝剤、カスタマイズされたエネルギー再生システム、天然のリボソーム、シャペロン、種特異的tRNA、pH緩衝、金属(例えば、マグネシウムおよびカリウム)、浸透圧調節剤、ガス濃度;[O2]、[CO2]、[N2]、糖、マルトース、デンプン、マルトデキストリン、グルコース、グルコース-6-リン酸、フルクトース-1,6-二リン酸、3-ホスホグリセリン酸、ホスホエノールピルビン酸、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルベート、アセチルリン酸、酢酸キナーゼ、クレアチンキナーゼ、クレアチンリン酸、グルタメート、アミノ酸、ATP、GTP、CTP、UTP、ADP、GDP、CDP、UDP、AMP、GMP、CMP、UMP、フォリン酸、スペルミジン、プトレッシン、ベタイン、DTT、TCEP、b-メルカプトエタノール、TPP、FAD、FADH、NAD、NADH、NADP、NADPH、シュウ酸、CoA、グルタミン酸塩、酢酸塩、cAMP、天然ポリメラーゼ、合成ポリメラーゼ、ファージポリメラーゼ、温度制御条件が挙げられる。自由選択の添加剤の概説は、(Chiaoら、2016)(その全体が参照により本明細書中に援用される)に見られる。自由選択の添加剤には、転写および翻訳を支援する成分(例えば、ファージポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ(RNAP)、SP6ファージポリメラーゼ、補因子、伸長因子、ナノディスク、ベシクルおよび消泡剤)も含まれ得る。自由選択の添加剤には、DNAを保護するための添加剤(例えば、gamS、Ku、ジャンクDNA、DNA模倣タンパク質、カイ部位-DNAまたは他のDNA保護剤であるがこれらに限定されない)も含まれ得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、上記反応物は、0.1%(w/v)超のクラウディング剤を含み得る。高分子クラウディングとは、高分子を含まない溶液と比べたときの、溶液への高分子添加の影響のことを指す。そのような高分子は、クラウディング剤と呼ばれる。企図されるクラウディング剤は、単一の起源に由来し得るか、または種々の起源の混合物であり得る。クラウディング剤は、様々なサイズであり得る。いくつかの実施形態において、クラウディング剤には、ポリエチレングリコールおよびその誘導体、ポリエチレンオキシドまたはポリオキシエチレンが含まれる。
【0075】
エネルギーのリサイクル系および/または再生系は、系にATPを提供すること、ADPをATPにリサイクルすることによって系の恒常性を維持すること、pHを維持すること、ならびに転写および翻訳のための系を広くサポートすることによって、mRNAおよびタンパク質の合成を駆動する。エネルギーリサイクル系の概説は、(Chiaoら、2016)(その全体が参照により本明細書中に援用される)に見られる。使用され得るエネルギーリサイクルおよび/または系の例としては、3-ホスホグリセリン酸(3-PGA)(Sunら、2013)、クレアチンリン酸(creatinine phosphate)/クレアチニンキナーゼ(CP/CK)(Kigawaら、1999)、PANOx(Kim & Swartz 2001)およびグルタメート(Jewett & Swartz 2004)が挙げられるが、これらに限定されない。他のリサイクルおよび/または系としては、酸化還元電位([NAD(P)H]/[NAD(P+)])を再生し得るものが挙げられる。酸化還元リサイクルの例は、(Opgenorthら、2014)に記載されている。リサイクルおよび/または系は、宿主の生得的な中央代謝経路(例えば、解糖、酸化的リン酸化)、外部から供給される代謝経路またはその両方を利用し得る。
【0076】
インビトロ転写・翻訳系は、1つまたはそれを超える核酸を含む。ある実施形態において、その核酸には、DNA、RNAまたはそれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態において、抽出物中の転写・翻訳機構および/または抽出物への添加物を利用することによってタンパク質を生成し得るDNAが供給され得る。このDNAは、ラムダファージ由来のUTR1などのRBS領域とともに、OR2-ORl-Prプロモーター(Sunら、2013)、T7プロモーターまたはT7-lacOプロモーターなどのもとに、調節領域を有し得る。そのDNAは、線状またはプラスミドであり得る。いくつかの実施形態では、溶解産物の起源生物に由来するTXTL系における無細胞発現のために、例えば、改善されたTXTL連結のための5’の稀なコドン、改善されたTXTL連結のための5’AT/GC含有量、UTR、RBS、終止配列、改善されたTXTL連結のための5’融合物、改善されたTXTL連結のための遺伝子融合物、タンパク質安定性のための融合物、膜タンパク質の溶解性を促進するための配列の欠失、およびタンパク質タグなど、遺伝子配列が操作され得る。
【0077】
他の実施形態において、タンパク質を生成するために溶解産物中の翻訳成分および/または溶解産物への添加物を利用するmRNAが供給され得る。そのmRNAは、精製された天然の起源からのものであってもよいし、合成的に作製された起源からのものであってよいし、インビトロで、例えば、HiScribeTM、MAXIscriptTM、MEGAscriptTM、mMESSAGE MACHINETM、MEGAshortscriptTMなどのインビトロ転写キットから、作製することもできる。
【0078】
いくつかの実施形態において、非カノニカルアミノ酸が、組成物において使用され得る。非カノニカルアミノ酸は、細胞で生成された生成物に天然に見られる場合があるか、またはタグ化、可視化、分解に対する抵抗性または標的化などの望ましい特性をもたらすために、その生成物に人工的に付加される場合がある。非カノニカルアミノ酸の組み込みは、細胞では困難であるが、無細胞系では、非カノニカルアミノ酸で飽和状態にすることができるので、組み込み率が高くなる。非カノニカルアミノ酸の例としては、オルニチン、ノルロイシン、ホモアルギニン、トリプトファンアナログ、ビフェニルアラニン、ヒドロリシン(hydrolysine)、ピロリシン(pyrrolysine)が挙げられるがこれらに限定されないか、またはその全体が参照により本明細書中に援用される(Blaskovich 2016)に記載されているとおりである。
無細胞系において直接試験するための生成物の生成
【0079】
ある実施形態は、タンパク質が発現される組成物を提供する工程;その組成物をアッセイ成分に曝露する工程;およびそのタンパク質がそのアッセイ成分と反応するかを判定する工程を含む方法に関する。ある実施形態において、タンパク質の発現とアッセイ成分との反応は、同時に起きる。ある態様において、組成物とアッセイ成分は、同じ容器に入っている。
【0080】
上記組成物は、1つまたはそれを超える生物に由来する抽出物;および1つまたはそれを超える目的タンパク質をコードする1つまたはそれを超える核酸を含み得る。ある実施形態において、その抽出物は、転写および/または翻訳に必要な補因子一式および/または酵素一式および/または他の試薬一式を含み得る。さらなる実施形態において、転写および/または翻訳に必要な補因子一式および/または酵素一式および/または他の試薬一式は、抽出物とは別個に組成物に加えられ得る。
【0081】
ある実施形態において、アッセイ成分には、1つまたはそれを超える生物が含まれ得る。ある態様において、その生物には、昆虫が含まれ得る。ある態様において、タンパク質と生物との反応は、その生物の死をもたらすことがある。
【0082】
ある実施形態は、タンパク質が発現され、そのタンパク質の生成物が生成される組成物を提供する工程;その組成物をアッセイ成分に曝露する工程;およびそのタンパク質の生成物がそのアッセイ成分と反応するかを判定する工程を含む方法に関する。
【0083】
ある実施形態は、タンパク質が発現され、そのタンパク質の生成物が生成される組成物を提供する工程;その組成物をアッセイ成分に曝露する工程;およびそのアッセイ成分との反応が生じるかを判定する工程を含む方法に関する。
【0084】
いくつかの実施形態において、生成物のインビトロ調製が存在し、それは、1つまたはそれを超える生物に由来する抽出物;1つまたはそれを超える目的タンパク質をコードする1つまたはそれを超える核酸;転写および/または翻訳に必要な補因子一式および/または酵素一式および/または他の試薬一式の組成物を提供すること;ならびにその組成物を直接利用して、別の生成物との応答を特定することを含む。
【0085】
いくつかの実施形態において、生成物を調製する方法は、殺虫剤を見出すまたは特徴付けるために用いられる。殺虫剤は、単一または複数のタンパク質生成物であり得、それらとしては、Bt、cry、mcf、Photorhabdusの遺伝子、Xenorhabdusの遺伝子、Tc複合体、RiPP、NRPS、天然物および天然物の誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。殺虫剤をコードする推定核酸を無細胞系において発現させることにより、その殺虫剤を、感受性昆虫に対する殺虫活性を直接試験するのに十分な量で生成することができる。有毒な影響または悪影響は、ネガティブコントロール(例えば、殺虫剤が発現されない無細胞系)を用いて試験することによって判定され得る。発現後の濃縮されていない無細胞組成物は、標的に対する応答を誘発し得るが、無細胞組成物をさらに濃縮して、より大きな応答をもたらすこともできる。殺虫剤は、無細胞組成物の結果として生成される小分子であることもある。
【0086】
いくつかの実施形態において、生成物を調製する方法は、除草剤を見出すまたは特徴付けるために用いられる。除草剤は、核酸から発現されたタンパク質の反応から形成される小分子組成物であり得るか、または無細胞組成物に提供された核酸から直接発現されるタンパク質であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態において、生成物を調製する方法は、抗生物質を見出すまたは特徴付けるために用いられる。抗生物質は、核酸から発現されたタンパク質の反応から形成される小分子、または無細胞組成物中に直接生成されたタンパク質もしくは核酸から発現された他のタンパク質の反応から形成されるタンパク質であり得、農産物にとって有害な微生物を殺滅し得るか、または農産物にとって有益な様式で微生物集団を再度均衡させ得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、生成物を調製する方法は、種子形質を見出すまたは特徴付けるために用いられる。無細胞組成物を生成物に直接適用することによって特定された形質は、異種性にまたは組換え型で植物にプログラムされることにより、その形質がその植物に付与され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、生成物を調製する方法は、作物強化成分または保護成分または微生物を見出すまたは特徴付けるために用いられる。特定された形質は、有効な効果を提供すること、または植物の成長に有益な様式でマイクロバイオームもしくは根圏マイクロバイオームを改変することによって、植物生成物の成長を改善することができる。
【0090】
いくつかの実施形態において、生成物の応答は、分子レベルまたは細胞レベルである。これは、無細胞組成物が適用される生成物が、目的タンパク質であるか、または有益もしくは有害な目的微生物であるか、または細胞株であることであり得る。視覚的手法、分析的手法または他の手法を用いてそのタンパク質または微生物の応答を観察することによって、無細胞組成物の活性を見出すことができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、生成物の応答は、表現型である。これは、無細胞組成物が適用される生成物が、植物または昆虫などの多細胞であることであり得る。視覚的手法、分析的手法または他の手法を用いて表現型応答を観察することによって、無細胞組成物の活性を見出すことができる。いくつかの実施形態において、これは、無細胞組成物を消費する昆虫の成長(またはその欠如)を通じて直接観察される。他の実施形態では、これは、無細胞組成物を注入された昆虫の成長(またはその欠如)を通じて直接観察される。細胞死による柔らかい表現型などの特定の表現型応答は、その生成物の解明にさらなる光を投じ得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、上記応答は、生物の死である。無細胞組成物の利用は、生物にとって有毒な成分を特定することである。無細胞組成物は、致死量(LD)、LD50、感染量(ID)またはID50などのパラメータを理解するための有毒成分の用量設定を理解するためにも使用され得る。生物の死は、無細胞組成物が与えられた後すぐに生じ得るか、または数日後に生じ得るか、または数週間後に生じ得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、上記応答は、生物の成長である。無細胞組成物の利用は、生物にとって有益な成分を特定することである。この組成物は、生物に利点を直接もたらしてもよいし、生物に利点を間接的にもたらしてもよい。直接的な効果の例としては、成長ホルモンおよびフェロモンが挙げられるが、これらに限定されない。間接的な効果の例としては、抗毒素、生物のマイクロバイオームもしくは根茎を改変する分子、または窒素固定の光合成を促進する分子が挙げられるが、これらに限定されない。生物の成長は、無細胞組成物が与えられた後すぐに生じ得るか、または数日後に生じ得るか、または数週間後に生じ得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、上記生成物は、無細胞組成物からさらに単離される。これは、その生成物をさらに調べるための試験の後に行われ得るか、またはその生成物のさらなる試験に対する感度を上げるために行われ得る。単離は、タンパク質精製、LC-MS、HP-LC、SECまたはクロマトグラフィーの形態を含むがこれらに限定されない分析方法または物理的方法によって行われ得る。
【0095】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、給餌アッセイによる試験のために、生物に提供される。これは、経口活性を有する殺虫剤または他の形質を特定するために行われ得る。その形質は、とりわけ、昆虫に直接与えられ得るか、水の中に提供され得るか、または食物の上に重層され得る。
【0096】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、注入アッセイによる試験のために、生物に提供される。これは、全身活性を有する殺虫剤または他の形質を特定するために行われ得る。この注入は、時間に応じた種々の効果を示すために昆虫の種々の成長段階において行われ得る。
【0097】
いくつかの実施形態において、無細胞組成物に供給される核酸は、線状DNAの形式である。線状DNAの形式は、プラスミドの形態へのクローニングが回避されるので、形質配列から試験までの迅速な反復サイクルを可能にする。これにより、サブクローニングの必要性に起因する数日とは対照的に、試験までのサイクル時間を4~8時間にすることができ、農学的形質を特定するための方法にとってさらなる利点がもたらされる。
無細胞系における比較用生成物の生成
【0098】
いくつかの実施形態において、最適条件を特定するための方法が開発され、その方法は、1つまたはそれを超える生物に由来する抽出物、転写および/または翻訳に必要な補因子一式および/または酵素一式および/または他の試薬一式の組成物を提供する工程、複数の組成物をさらに行う工程であって、ここで、各組成物は、1つまたはそれを超える目的タンパク質をコードする1つまたはそれを超える核酸を含む、工程、および複数の組成物の生成物を比較して、理想的な組成物を特定する工程を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、理想的な組成物は、生成量によって判定される。これは、最終生成物の観察によって直接または間接的に判定され得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、理想的な組成物は、生成されるタンパク質によって判定される。提供される核酸鋳型は、類似の特色を共有し得、それらの鋳型間の差異に、有益な効果または有害な効果があるか探索される。生成されたタンパク質は、FloroTectまたは人為的に標識された他の蛍光アミノ酸もしくは比色アミノ酸および/あるいは荷電tRNAを用いた無細胞反応の実施、タグ(例えば、His、FIASH、Strepなど)に対する追跡、SDS-PAGE比色染色(例えば、クマシー、銀染色など)、または他の分析手法などによって、無細胞組成物から直接観察され得る。生成されたタンパク質は、無細胞組成物のさらなる処理(例えば、タンパク質精製)によって観察され得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、理想的な組成物は、生成されるmRNAによって判定される。生成されたmRNAは、アプタマー(Malachite-green、Spinachまたは等価物)を用いた無細胞組成物の実施または生成されたmRNAレベルを判断する他の方法などによって、無細胞組成物から直接観察され得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、理想的な組成物は、別の生成物に対する無細胞組成物の直接試験によって判定される。
【0103】
いくつかの実施形態において、理想的な組成物は、複数の組成物を種々に組み合わせた後、別の生成物に対する応答について直接試験することによって判定される。この実施形態において、各無細胞組成物は、1つの生成物を生成する。次いで、各組成物は、種々の組み合わせ方法で組み合わされ、その後、試験され得る。これは、2つのタンパク質を合わせたものが、各個別のタンパク質よりも遅く応答をもたらす場合、応答の増強を判定するために特に有用である。これの例が、トキシン複合殺虫剤で生じる。これは、何のタンパク質が機能複合体を構成しているかを理解するため、および適合性を判定するためにも有用である。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記方法は、効果の増強または消滅を特定するために使用される。この効果は、細胞性の効果、分子的な効果または表現型の効果であり得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、上記方法は、コドン最適化のために使用される。特に、種々の公知または未知の形質が、最終植物宿主での産生に対して最適化される必要があり得る。そのようにするために、ある形質の、コドンが最適化された種々のバリアントが、無細胞系において発現され得、それらのバリアントの生成レベルが、どのバリアントを最終宿主に移行するべきかを決定するのに役立ち得る。使用される無細胞系は、最終宿主と同様の抽出物(例えば、植物の無細胞、コムギ胚芽の無細胞、初代細胞株の無細胞、または類似のもの)を利用し得るか、または細菌抽出物を利用し得る。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記方法は、内部翻訳部位を特定するために使用される。内部翻訳部位は、最終宿主での所望のタンパク質の発現を妨害する非特異的かつ望まれないタンパク質産物を生成し得る。DNAにコードされている内部翻訳部位の発現を理解することにより、最終宿主での最終的な形質の有効性および適量を改善することができる。使用される無細胞系は、最終宿主と同様の抽出物(例えば、植物の無細胞、コムギ胚芽の無細胞、初代細胞株の無細胞、または類似のもの)を利用し得るか、または細菌抽出物を利用し得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、上記方法は、最適な転写調節単位および翻訳調節単位を特定するために使用される。プロモーター、エンハンサー、UTR、リボソーム結合部位、ターミネーター、阻害剤およびDNA配列を含むがこれらに限定されない転写調節単位および翻訳調節単位を変化させることによって、形質を、植物内での発現および種子での採用に対して迅速に最適化することができる。使用される無細胞系は、最終宿主と同様の抽出物(例えば、植物の無細胞、コムギ胚芽の無細胞、初代細胞株の無細胞、または類似のもの)を利用し得るか、または細菌抽出物を利用し得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、上記方法は、公知の殺虫剤、除草剤、抗生物質、駆除薬、作物保護成分、種子形質、作物強化成分、保護成分または微生物のバリアントを見出すために用いられる。これらのバリアントは、有向性工学アプローチ、合理的工学アプローチまたはメタゲノムアプローチによって明らかにされ得る。メタゲノムアプローチを用いる場合、公知の形質よりも強いバリアントを特定することができる。さらに、この方法を用いると、有効な知的財産権の主張によって除外または回避される既存の知的財産権で保護されたバリアントと十分に異なるバリアントを特定することができる。
【0109】
いくつかの実施形態において、上記方法は、ドメインシャッフルされたバリアントを見出すために用いられる。上記方法は、理想のドメインシャッフルされたバリアントを特定するための、各々が形質のドメインシャッフルされたバリアントを有する、種々の組成物を生成するために用いることができる。
【実施例
【0110】
実施例1.無細胞系において殺虫剤を生成することによるM.sexta害虫の直接殺滅
タバコスズメガとしても知られるManduca sextaは、とりわけタバコおよびトマト作物を破壊し得る顕著な害虫である。ゆえに、Manduca sextaを防除し得る殺虫剤の迅速な特定は、農学的形質を特定するために本方法を利用する例となる。
【0111】
4つの核酸コード配列を無細胞系によって発現させた。1、CrylAc(配列番号1)(DNA seq:2430)は、経口的にまたは注入によって殺虫剤としての活性を有するはずである。2、Mcf(配列番号2)(DNA seq:2431)は、注入によってのみ、殺虫剤としての活性を有するはずである。3、GFP(配列番号3)は、殺虫剤としての活性を有しないはずである。4、Tcca(配列番号4)(DNA seq:2432)は、殺虫剤としての活性を有するはずであるが、高投与量で活性を有するはずである。
【0112】
(Sun et.al 2013)(その全体が本明細書中に援用される)の方法を用い、gamSを組み込み、以下の修正を加えて、強力なプロモーターおよび強力なファージ由来UTR(sigma70-UTR1)の前に飽和(4nM超の線状DNA)濃度の各遺伝子を用いて、無細胞反応を行った:各反応を、24ウェルプレートにおいて29℃にて4×100μLで行った。次いで、これらを貯蔵のために-80Cに入れた。
【0113】
Manduca sextaの卵をCarolina Biological Supply,Burlington,NCから入手した。これらを、孵化して幼虫になるまで、標準的な実験条件(室温、成長のために16時間明期/8時間暗期)でインキュベートした。
【0114】
形質の経口投与を試験するために:形質が発現した無細胞反応物が必要になったとき、それらを冷凍庫から取り出した。200μLの使用準備済のHornworm Diet(Carolina Biological Supply,Burlington,NC)を各ウェルの底部に加え、20μLの無細胞反応物または市販の殺虫剤または非発現コントロールまたはPBSをそのウェルの上部に加えて、96ウェルプレートを調製した。7つの条件を確立した:CrylAc、Mcf、GFP、Tcca、TXTL、PBSおよび市販の殺虫剤(Safer Brand 5163 Caterpillar II concentrate)。各条件について、15匹の幼虫をウェルに移し、プレートを9日間インキュベートした(室温、成長のために16時間明期/8時間暗期)。
【0115】
9日後、生存率についてプレートを撮像した(図3図4)。PBSで8/15匹、CrylAcで15/15匹、TXTLで7/15匹、GFPで4/15匹、Mcfで1/15匹、市販の殺虫剤で15/15匹、Tccaで5/15匹のスズメガが死んだ。これは、無細胞発現されたCrylAcおよび市販の殺虫剤が、直接的な経口投与でスズメガに対して有毒作用を有し、他の形質またはネガティブコントロールは、スズメガに対して十分な有毒作用を有しなかったことを示している。さらなるネガティブコントロールおよびより大きなサンプルサイズは、より小さな効果または幼虫の操作によるスズメガのバックグラウンド死亡率を制御することができる。
【0116】
形質の注入を試験するために:形質が発現した無細胞反応物が必要になったとき、それらを冷凍庫から取り出した。スズメガを4齢幼虫まで飼育した。次いでそれらに、2.5μLの無細胞発現された形質と2.5μLの水との5μLの混合物を腹脚の後ろにHamilton 30ゲージシリンジ(Hamilton,Part 80208)を用いて7匹の群で注入した。各注入について、30ゲージシリンジを70%エタノールの後、水でリンスした。スズメガを氷上で維持した後、注入し、その後、腸穿刺の徴候(黄色の滲出物)についてモニターした;腸穿刺が生じた場合、サンプルを廃棄した。
【0117】
3つの形質を試験した:GFP、McfおよびCrylAc。各形質について、注入されたスズメガを、スズメガの食餌にアクセスできる3つの別個のカップの中で飼育し(図5)、7日間インキュベートした(室温、成長のために16時間明期/8時間暗期)(図6)。7日目の後、注入されたスズメガを生存率について解析した。GFPで2/7匹、Mcfで7/7匹およびCrylAcで6/7匹のスズメガが死んだことから、McfおよびCrylAcの注入による毒性が示唆された。さらに、Mcfを注入されたスズメガは、上記文献で報告されている「柔らかい」表現型を示したことから、GFPおよびCrylAcの注入と比べて、構造を失っていることが示された。これは、形質の直接注入によって、表現型および殺虫活性のスクリーニングが可能であることを示唆している。
【0118】
同じ無細胞サンプルを経口投与アッセイおよび注入アッセイに使用したところ、Mcfは、経口投与アッセイでは活性を示さなかったが、注入アッセイでは毒性を示し、CrylAcは、両方で毒性を示した。これは、上記文献において報告された予想される表現型の結果と似ている。
【0119】
当業者は、注入の用量設定を変化させることにより、所望の表現型応答をもたらすために必要な有効濃度を決定することができ、それにより、LD50/IC50などの特性が理解できるようになることを認識するだろう。さらに、生成された殺虫形質の絶対単位量を得るために、無細胞で生成された量を、精製時に回収されたタンパク質の量と相関させることができる。
【0120】
図7に示されている1つの例示的なワークフローでは、遺伝子は、メタゲノムライブラリーから供給され;遺伝的に合成されるかまたはその他の方法で単離され;インビトロで線状DNAにアセンブルされ;次いで、昆虫に対して直接試験するために無細胞系において発現され得、かつ/または発現され、精製され、次いで、精製されたタンパク質として昆虫に対して試験され得る。
等価物
【0121】
本開示は、とりわけ、本明細書中に開示される組成物および方法が、農学的形質のインビトロ転写/翻訳(TXTL)系の開発に関するものであることを提供している。主題の開示の具体的な実施形態を議論してきたが、上記明細書は例証的なものであり、限定的なものではない。本開示の多くの変更は、本明細書を検討すれば当業者には明らかになるだろう。本開示の全範囲は、請求項をその全範囲の等価物とともに参照すること、および明細書をそのような変更とともに参照することによって決定されるべきである。
参照による援用
【0122】
本明細書中で言及されたすべての刊行物、特許および配列データベースの収録項目は、個々の刊行物または特許または配列データベースの収録項目が参照により援用されると明確かつ個別に示されているかのように、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
参考文献
【化1】
【化2】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2023516030000001.app
【国際調査報告】