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特表2023-516063水素化脱酸素反応器へのバイオオイルの提供方法
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  • 特表-水素化脱酸素反応器へのバイオオイルの提供方法 図1
  • 特表-水素化脱酸素反応器へのバイオオイルの提供方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】水素化脱酸素反応器へのバイオオイルの提供方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 3/00 20060101AFI20230410BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552522
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 US2021070214
(87)【国際公開番号】W WO2021178997
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/984,260
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515252260
【氏名又は名称】アールイージー シンセティック フューエルス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アブハリ ラミン
(72)【発明者】
【氏名】トムリンソン エイチ. リン
(72)【発明者】
【氏名】ジャナシュ ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】ベシャラ ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ハニー ザ サード ジェシー
(72)【発明者】
【氏名】ティドウェル コディ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA01
4H129BA11
4H129BB05
4H129BC15
4H129KA08
4H129KC03Y
4H129KD15Y
4H129KD16Y
4H129KD22Y
4H129KD24Y
4H129NA23
4H129NA43
(57)【要約】
水素化脱酸素反応器内の触媒床上でのバイオオイルの水素化脱酸素のための方法が開示され、該方法は、水露点を有する2相希釈剤と、水露点よりも50°F低い温度~50°F高い温度であるバイオオイル温度にあるバイオオイルとを、混合する工程、を含む。2相希釈剤は、液相と気相とを含み、液相は、炭化水素を含み、気相は、水素と水とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化脱酸素反応器(「HDO反応器」)内の触媒床上でのバイオオイルの水素化脱酸素のための方法であって、
水露点を有する2相希釈剤と、前記水露点よりも50°F低い温度~100°F高い温度であるバイオオイル温度にあるバイオオイルとを、混合する工程
を含み、
前記2相希釈剤が、液相と気相とを含み、前記液相が、炭化水素を含み、前記気相が、水素と水とを含む、方法。
【請求項2】
前記バイオオイル温度が、前記水露点よりも20°F~0°F低い、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記バイオオイル温度が、前記水露点よりも10°F~0°F低い、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記バイオオイル温度が、前記2相希釈剤の前記水露点よりも0°F~20°F高い、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記バイオオイルと、前記2相希釈剤とを、混合T字管内で混合する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
静的混合器を通して、前記バイオオイルと、前記2相希釈剤とを、混合する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記バイオオイルと前記2相希釈剤とを混合する工程が、
パイプ内の中空管を通して前記バイオオイルを導くこと
を含み、
前記パイプが、前記2相希釈剤を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記バイオオイルが、家禽脂肪、家禽油、植物性脂肪、精製脂肪、精製油、レストラン用グリース、ブラウングリース、イエローグリース、使用済み食用油、廃棄する業務用揚げ油、魚油、魚脂肪、藻類油、微生物油、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
再生可能なディーゼルを生成し、
前記再生可能なディーゼルが、カリフォルニア州大気資源局のCA-GREET3.0モデルによる、30gCO2e/MJ以下の炭素強度を有する、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記HDO反応器のファウリングが、前記触媒の耐用期間における10psi以下の圧力損失の増加によって証明される、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記2相希釈剤と前記バイオオイルとを混合する工程が、希釈されたバイオオイルを提供し、
前記プロセスが、
触媒床出口生成物を提供するために、前記希釈されたバイオオイルを前記触媒床に接触させること
を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記2相希釈剤と前記バイオオイルとを混合する工程の前に、
前記バイオオイル温度を、前記水露点よりも50°F低い温度~100°F高い温度となるように調整する工程
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記2相希釈剤と前記バイオオイルとを混合する工程の前に、
前記プロセスが、
前記水露点を決定するために、前記2相希釈剤を測定すること
を含む、請求項1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月2日に提出された、米国仮特許出願第62/984,260号明細書の利益及び優先権を主張するものであり、この明細書の内容全体は、あらゆる全ての目的のために参照により組み入れられる。
【0002】
分野
本技術は、バイオ再生可能な供給原料の、炭化水素への変換に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
再生可能なディーゼル(RD)は、脂肪及び油の水素化処理によって生成されたイソパラフィン系の圧縮着火燃料である。この工程は、n-パラフィンに富む炭化水素への、脂肪酸/グリセリドの水素化脱酸素(HDO)を含む。HDOステップに続いて、n-パラフィンからイソパラフィンへの、水素異性化(HI)が行われ得る。ほとんどのHDO工程は、γ-アルミナ担体上のNiMoなどの硫化卑金属触媒を含む、断熱固定床反応器システム内で行われる。
【0004】
HDO反応は発熱性であるので、反応器全体にわたる断熱温度上昇を緩和し、望ましくない副反応を最小限に抑えるために、多くの場合、希釈剤が使用される。希釈剤は、石油系又はバイオ炭化水素液であり得る。HDOに適した石油系炭化水素希釈剤の例は、原油蒸留からの直留ディーゼルであり、その一方で、バイオ炭化水素の例は、新たな脂肪酸/グリセリド供給物と共に反応器に一部が再循環される脂肪酸/グリセリドHDOの生成物である。
【0005】
2007年にRDの商業生産が始まり、今日では世界中で15億ガロン/年を超えて拡大している。供給原料の入手可能性を確保するために、生産者は、使用済み食用油、トラップグリース、パームスラッジ油などの低品質のバイオオイル供給原料の使用を検討してきた。
【0006】
任意の所与の燃料の温室効果ガスへの影響は、燃料の炭素強度(C.I.)によって定量化され得る。C.I.は、燃焼を通じて得られるエネルギーに対する、燃料のライフサイクル温室効果ガス排出量の尺度である。供給原料に応じて、RDは、カリフォルニア州大気資源局によって提供されるCA-GREET3.0モデルを使用して推定された、30~50gCO2e/MJのC.I.値を有する。30~50gCO2e/MJのC.I.範囲は、バイオエタノールについての70~80gCO2e/MJ、石油ディーゼルについての100+CO2e/MJと比較される。一般に、最良/最低のC.I.値は、より低品質のバイオオイル供給原料によって提供される。例えば、使用済み食用油から生成されたRDは、30gCO2e/MJ以下のC.I.を有する。
【0007】
これらの低品質のバイオオイルは、HDO性能に悪影響を及ぼす多数の汚染物質を有する。例えば、反応器のファウリング(反応器の内部及び触媒のファウリングを含む)の速度は、汚染された供給物の増加に伴って高まる。先行技術は、鉄汚染物が目詰まりを加速させる可能性があることを開示している。リン及び鉄以外の金属もまた、反応器のファウリングの問題及び触媒失活を引き起こすものとして先行技術の文献に引用されている。ファウリングはまた、バイオオイル中の反応成分の重合によっても引き起こされ得る。そのような反応成分には、遊離脂肪酸、多価不飽和脂肪酸、及び脂肪酸の酸化副生成物が含まれる。
【0008】
したがって、低品質のバイオオイル供給原料が、低炭素強度の燃料に効率的に変換されるように、バイオオイルHDO反応器内でのファウリングを軽減する方法が必要である。
【発明の概要】
【0009】
概要
水は、HDO反応の副生成物である。バイオオイルの酸素含有量に応じて、水副生成物は、典型的には、液体生成物の全質量の5%~20%である。大部分の水は、気液分離及び液液分離などの従来の分離方法によって、水素及び炭化水素の再循環流から除去できるが、一部の水は、反応器への新たなバイオオイル供給物と混合されるこれらのプロセス流中に残る。
【0010】
水蒸気を含むこれらの水素及び炭化水素の流れは、水露点によって特徴付けられる。概して、水露点は、蒸気流中(又は、液体部分が炭化水素である、2相流の蒸気部分中)に水滴が形成される温度である。一般に、水露点は、気相中の水の濃度に関する関数である。つまり、水濃度が高いほど、水露点が高くなる。
【0011】
驚くべきことに、炭化水素液と水蒸気とを含む希釈剤にバイオオイルが導入されると、希釈剤の水露点と、バイオオイル温度との差が、反応器のファウリングの速度に影響を及ぼす可能性があることが観察されている。具体的には、水露点がバイオオイル供給温度よりも50°F以上高い場合、反応器のファウリングの加速が観察される。
【0012】
理論に縛られるものではないが、本発明者らは、高温で形成されるファウラント粒子が水滴の周囲で合着し凝集する可能性がある水滴の形成によってファウリングが加速されると考えている。希釈剤とバイオオイルとが一緒にされたときに発生する混合ダイナミクスに起因して、かかる水滴が形成され、水滴によって反応器内部及び触媒床のファウリングが引き起こされ得る。したがって、希釈剤の水露点、及び、バイオオイルが希釈剤に接触するときのバイオオイルの温度は、この現象の予測因子であり、低価値の/廃物の脂肪及び油を処理したときのファウリングを軽減するための本技術の方法の1つの基礎であることを示している。
【0013】
したがって、一局面では、HDO反応器内の触媒床上でのバイオオイルの水素化脱酸素のための方法が提供され、方法は、(i)水露点を有する2相希釈剤と(ii)水露点よりも約50°F低い温度~約100°F高い温度であるバイオオイル温度にあるバイオオイルとを、混合する工程を含む。方法では、2相希釈剤は、液相と気相とを含む。液相は、炭化水素を含み、気相は、水素と水とを含む。それゆえ、本明細書における工程の任意の態様では、バイオオイル温度は、水露点よりも約50°F低い、水露点よりも約45°F低い、水露点よりも約40°F低い、水露点よりも約35°F低い、水露点よりも約30°F低い、水露点よりも約25°F低い、水露点よりも約20°F低い、水露点よりも約15°F低い、水露点よりも約10°F低い、水露点よりも約5°F低い、水露点と同じ(すなわち、水露点から0°F)である、水露点よりも約5°F高い、水露点よりも約10°F高い、水露点よりも約15°F高い、水露点よりも約20°F高い、水露点よりも約25°F高い、水露点よりも約30°F高い、水露点よりも約35°F高い、水露点よりも約40°F高い、水露点よりも約45°F高い、水露点よりも約50°F高い、水露点よりも約55°F高い、水露点よりも約60°F高い、水露点よりも約65°F高い、水露点よりも約70°F高い、水露点よりも約75°F高い、水露点よりも約80°F高い、水露点よりも約85°F高い、水露点よりも約90°F高い、水露点よりも約95°F高い、水露点よりも約100°F高い、又はこれらの値の任意の2つの値を含む任意の範囲及び/若しくはこれらの値の任意の2つの値の間の任意の範囲である場合がある。方法の任意の態様では、バイオオイル温度は、水露点よりも20°F~0°F低い場合がある。方法の任意の態様では、バイオオイル温度は、水露点よりも10°F~0°F低い場合がある。方法の任意の態様では、バイオオイル温度は、2相希釈剤の水露点よりも0°F~20°F高い場合がある。
【0014】
方法の任意の態様では、方法は、バイオオイルと、2相希釈剤とを、混合T字管内で混合する工程を含む場合がある。方法の任意の態様では、方法は、バイオオイルと2相希釈剤とを、静的混合器を通して混合する工程を含む場合がある。方法の任意の態様では、バイオオイルと2相希釈剤とを混合する工程は、パイプ内の中空管を通してバイオオイルを導くことを含み、パイプは、2相希釈剤を提供する場合がある。方法の任意の態様では、バイオオイルは、家禽脂肪、家禽油、植物性脂肪、精製脂肪、精製油、レストラン用グリース、ブラウングリース、イエローグリース、使用済み食用油、廃棄する業務用揚げ油、魚油、魚脂肪、藻類油、微生物油、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む場合がある。方法の任意の態様では、方法によって、再生可能なディーゼルが生成され、再生可能なディーゼルは、カリフォルニア州大気資源局のCA-GREET3.0モデルによる、30gCO2e/MJ以下の炭素強度を有する場合がある。方法の任意の態様では、HDO反応器のファウリングは、触媒の耐用期間における10psi以下の圧力損失の増加によって証明される場合がある。方法の任意の態様では、2相希釈剤とバイオオイルとを混合する工程によって、希釈されたバイオオイルが提供され、このプロセスは、触媒床出口生成物を提供するために、希釈されたバイオオイルを触媒床に接触させることを更に含む場合がある。方法の任意の態様では、2相希釈剤とバイオオイルとを混合する工程の前に、方法は、バイオオイル温度を水露点よりも50°F低い温度~50°F高い温度となるように調整する工程を含む場合がある。方法の任意の態様では、2相希釈剤とバイオオイルとを混合する工程の前に、このプロセスは、水露点を決定するために、2相希釈剤を測定することを含む場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本技術の態様による再生可能なディーゼルを生成するための作動の概略図を提示する。
図2】R1の供給物には3%の水を加え、その一方で、R2の供給物には水を加えなかったことを除いて、同じ供給物を使用して同じ条件下で作動させた、同じ構成及び触媒組成の2つのパイロットプラントHDO反応器(R1及びR2)を含む、実施例による研究からのデータのグラフを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
様々な態様について、以下で説明する。具体的な態様は、網羅的な説明として又は本明細書で述べるより広範な局面に対する限定として意図されたものではないことに留意すべきである。特定の態様に関連して説明する一局面は、必ずしもその態様に限定されず、他の任意の態様で実施することができる。
【0017】
以下の用語は、全体にわたって下記に定義されるように使用される。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、要素を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」などの単数冠詞並びに類似の指示対象は、本明細書中に別段の指示がない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を網羅するものと解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書中に別段の指示がない限り、その範囲内に含まれる各別個の値に個別に言及する簡略な方法として機能することを意図しているにすぎず、各別個の値は、あたかも本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み入れられる。本明細書で説明する全ての方法は、本明細書中に別段の指示がない限り又は文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供するあらゆる全ての例又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、別段の明記がない限り、態様をより良く明らかにすることのみを意図しており、特許請求の範囲を限定しない。本明細書中の文言は、特許請求されていない何らかの要素が必須であることを示すものと解釈されるべきではない。
【0019】
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、使用される文脈に応じてある程度変動する。当業者に明らかでない用語の使用がある場合、これが使用される文脈を考慮すると、「約」は特定の用語の±10%までを意味する。例えば、「約10重量%」は、「9重量%~11重量%」を意味すると理解される。ある用語の前に「約」があるときには、「約」による修飾のないその用語と同様に、その「約」がある用語を開示するものとして解釈されるべきであることを理解されたい。例えば、「約10重量%」は、「10重量%」を開示しているだけでなく、「9重量%~11重量%」も開示している。
【0020】
本開示で使用される「及び/又は」という語句は、列挙された要素のいずれか1つを個別に意味するか又はこれらの要素のいずれか2つ以上の組み合わせを意味するものと理解されるであろう。例えば、「A、B、及び/又はC」は、「A」、「B」、「C」、「A及びB」、「A及びC」、又は「B及びC」を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、「アルキル」基は、直鎖及び分岐アルキル基を含む。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、及びn-オクチル基が挙げられる。分岐アルキル基の例としては、限定されるものではないが、イソプロピル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、及びイソペンチル基が挙げられる。C1~C4のアルキルなどの、「Cx~Cyのアルキル」という語句は、x~yの範囲に含まれる炭素数を有するアルキル基を意味することが理解されるであろう。
【0022】
本明細書で使用される「酸素化物」は、酸素に対する少なくとも1つの共有結合を含む、炭素含有化合物を意味する。この用語に包含される官能基の例としては、限定されるものではないが、カルボン酸、カルボン酸塩、酸無水物、アルデヒド、エステル、エーテル、ケトン、及びアルコール、並びにリン酸エステル及びリン酸無水物などのヘテロ原子エステル及び無水物が挙げられる。酸素化物はまた、本明細書で説明する芳香族、シクロパラフィン、及びパラフィンの酸素含有変種であり得る。
【0023】
本明細書で使用される「パラフィン」という用語は、非環状、分岐、又は非分岐アルカンを意味する。非分岐パラフィンはn-パラフィンであり、分岐パラフィンはイソパラフィンである。「シクロパラフィン」は、環状、分岐、又は非分岐アルカンである。
【0024】
本明細書で使用される「パラフィン系」という用語は、上記で定義したパラフィン及びシクロパラフィンの両方、並びに一又は二不飽和(すなわち、1つ又は2つの二重結合)を有する、分岐又は非分岐アルカンのいずれかのアルカンである、主に炭化水素鎖を有する領域を意味する。
【0025】
本明細書で使用される水素化処理は、限定なしに、水素の存在下で起こる様々なタイプの触媒反応を表す。最も一般的な水素化処理反応の例としては、限定されるものではないが、水素化、水素化脱硫(HDS)、水素化脱窒素(HDN)、水素化処理(HT)、水素化分解(HC)、芳香族飽和又は水素化脱芳香族化(HDA)、水素化脱酸素(HDO)、脱炭酸(DCO)、水素異性化(HI)、水素化脱蝋(HDW)、水素化脱金属(HDM)、脱カルボニル化、メタン化、及び改質が挙げられる。触媒のタイプ、反応器の構成、反応器の条件、及び供給原料の組成に依存して、純粋な熱(すなわち、触媒を必要としない)反応から触媒反応までの範囲の、複数の反応が起こる可能性がある。特定の水素化処理ユニット、例えば、HDO反応システムの主な機能を説明する場合、HDO反応は起こっている主な反応の1つにすぎず、他の反応も起こり得ることが理解される。
【0026】
脱炭酸(DCO)は、カルボキシル基が有機分子から除去されてCO2を生成するような、有機分子の水素化処理、及びCOの形成をもたらす脱カルボニル化を意味すると理解される。
【0027】
熱分解は、熱化学反応中に存在する二原子酸素又は二原子水素をほとんど又は全く有さない炭素質材料の熱化学分解を意味すると理解される。熱分解における触媒の任意選択の使用は、典型的には接触分解と呼ばれ、これは熱分解としてこの用語に包含され、水素化分解と混同されない。
【0028】
水素化処理(HT)は、有機化合物から、周期表の第3、5、6、及び/又は7族の元素を除去することを伴う。水素化処理はまた、水素化脱金属(HDM)反応を含み得る。したがって、水素化処理は、酸素、窒素、硫黄、及びこれらのいずれか2つ以上の組み合わせなどのヘテロ原子の水素化処理による除去を伴う。例えば、水素化脱酸素(HDO)は、副生成物として水を生成する、触媒水素化処理反応による酸素の除去を意味すると理解され、同様に、水素化脱硫(HDS)及び水素化脱窒素(HDN)は、水素化処理による、指定された元素のそれぞれの除去を表す。
【0029】
水素化は、分子をサブユニットに分解することなく、有機分子に水素を付加することを含む。単結合を生成する、炭素-炭素又は炭素-酸素二重結合への水素の付加は、水素化の2つの非限定的な例である。部分的水素化及び選択的水素化は、不飽和供給原料の部分的飽和をもたらす水素化反応を指すために使用される用語である。例えば、多価不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸)の割合が高い植物油は、部分的水素化を受けて、望ましくない飽和脂肪酸(例えば、ステアリン酸)の割合を増加させることなく、多価不飽和脂肪酸を一不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸)に変換させる水素化処理生成物を提供し得る。水素化は水素化処理、水素異性化、及び水素化分解とは異なるが、これらの他の反応の中で水素化が起こり得る。
【0030】
水素化分解(HC)は、水素の存在下で少なくとも2つの分子を形成する、分子の炭素-炭素結合の破壊を意味すると理解される。そのような反応は、典型的には、得られる二重結合のその後の水素化を受ける。
【0031】
水素異性化(HI)は、異性体を形成する水素の存在下での、炭素-炭素結合の骨格再構成として定義される。水素化分解は、ほとんどのHI触媒反応の競合反応であり、HC反応経路は、副次反応として、HIという用語の使用に含まれることが理解される。水素化脱蝋(HDW)は、炭化水素流体の低温特性を改善するように設計された、水素化分解及び水素異性化の特定の形態である。
【0032】
組成物が、C7~C12 n-パラフィンなどの「Cx~Cy 炭化水素」を含むと記載されている場合、これは組成物が、x~yの範囲に含まれる炭素数を有する1つ以上のパラフィンを含むことを意味することが理解されるであろう。
【0033】
「ディーゼル燃料」は、概して、沸点が約150℃~約360℃の範囲(「ディーゼル沸点範囲」)にある燃料を指す。
【0034】
本明細書で使用される「石油ディーゼル」とは、原油精製施設などで、原油から生成されたディーゼル燃料を指し、水素処理直留ディーゼル、水素処理流動接触分解ライトサイクルオイル、水素処理コーカー軽油、水素化分解FCCヘビーサイクルオイル、及びこれらの組み合わせを含む。本明細書で使用される「石油系炭化水素液」又は「石油系炭化水素希釈剤」とは、原油精製施設などで、原油から生成された炭化水素を指し、水素処理直留ディーゼル、水素処理流動接触分解ライトサイクルオイル、水素処理コーカー軽油、水素化分解FCCヘビーサイクルオイル、及びこれらの組み合わせを含む。
【0035】
組成物中の成分の「体積パーセント」若しくは「体積%」又は組成物中の異なる成分の体積比は、組み合わされた成分の最終体積ではなく、個々の各成分の初期体積に基づいて、60°Fで決定されることを理解されたい。
【0036】
本技術
本技術は、低価値の廃物の脂肪、油、及びグリース(FOG)を含むバイオオイル供給原料から、再生可能なディーゼルを生成する方法に関する。方法は、少なくとも1つの固定床反応器内のバイオオイルの水素化脱酸素を含む。バイオオイルは、水露点によって特徴付けられる加熱された希釈剤と混合される。本技術では、バイオオイル温度は、希釈剤の水露点よりも50°F以下低い温度に維持される。本開示の方法は、固定床反応器内でのファウリングの速度を低下させる。
【0037】
図1に示す非限定的な態様を参照すると、バイオオイル101は、チャージポンプのサージドラム10に移送される。バイオオイルは、家禽脂肪、家禽油、植物性脂肪、精製脂肪、精製油、レストラン用グリース、ブラウングリース、イエローグリース、使用済み食用油、廃棄する業務用揚げ油、魚油、魚脂肪、藻類油、微生物油、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む群から選択される動物性脂肪及び植物性脂肪を含む、低価値の/廃物のFOGを含む。バイオオイル101は、(i)カリナタの種子、ジャトロファの種子、トウゴマの種子などのエネルギー作物の種子から抽出又は圧搾された油、(ii)パームスラッジ油などの食用油生産作業の副産物として回収された植物油、又は(iii)(i)及び/又は(ii)のいずれか1つ以上の態様の組み合わせを、含む場合も含まない場合もある。バイオオイル101は、セルロース系バイオマスの化学的液化又は熱液化から生じる油を含み得る。高速熱分解は、熱液化工程の一例であり、そのバイオオイル生成物は、熱分解油と呼ばれることもある。前処理後でも、バイオオイルは、最大10ppmのリンと、最大10ppmの総金属(鉄、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムを含む)とを含有し得る。
【0038】
供給源及び汚染物質にかかわらず、バイオオイル101は、典型的には、約5重量%~約20重量%の酸素元素含有量を有し、バイオオイルの「酸素元素含有量」は、例えば水ではなく、脂肪酸及び他の生物学的化合物中の酸素原子に関するものである。本明細書に開示する任意の態様では、バイオオイル101は、バイオオイルの約8重量%~約16重量%の酸素元素含有量を有し得る。
【0039】
バイオオイル101は、5~80重量%の遊離脂肪酸(FFA)を含み得る。追加的に、バイオオイル101は、カールフィッシャー滴定法で測定されるように、0.1~1.0重量%の含水量を有し得る。バイオオイル中の水は、溶解水、遊離水、及び/又は乳化水として存在し得る。
【0040】
サージドラム液102は、ポンプ12によって反応器入口圧力まで加圧され、加圧されたバイオオイル103を提供する。加圧されたバイオオイル103は、バイオオイル分流104及びバイオオイル分流105の2つの流れに分割される。バイオオイル分流104は、加熱された希釈剤120とインライン混合装置16内で混合されて、第1の希釈されたバイオオイル107を提供する。
【0041】
加熱された希釈剤120は、HDO反応に必要とされる少なくともある程度の水素を含み得る。したがって、加熱された希釈剤120は、炭化水素液と水素リッチガスとを含む2相流体であり得る。本明細書における任意の態様では、加熱された希釈剤120は、炭化水素液中に水素が溶解された単相液である場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、加熱された希釈剤120は、約0.5~4.0重量%の含水量を有する場合がある。態様にかかわらず、加熱された希釈剤120は、210°F~350°Fの水露点を有する。工程は、バイオオイル分流の温度が水露点よりも50°F低い温度~水露点よりも100°F高い温度となるように、(a)加熱された希釈剤120の水露点と(b)バイオオイル分流104の温度との差を維持することを伴う。例えば、加熱された希釈剤120の水露点が300°Fである場合、バイオオイル分流104の温度は、250°F以上に維持される。本明細書に開示する任意の態様では、バイオオイルは、希釈剤120の水露点温度よりも40°F以下低い場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、バイオオイルは、希釈剤120の水露点温度よりも30°F以下低い場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、バイオオイルは、希釈剤120の水露点よりも20°F以下低い場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、バイオオイルは、希釈剤120の水露点よりも10°F~50°F低い場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、バイオオイル温度は、希釈剤120の水露点と同じか又はそれよりも高い場合がある。したがって、水滴の形成とその結果として生じる反応器のファウリングの問題が軽減される。
【0042】
インライン混合装置16は、混合T字管、静的混合器、注入用の中空管を備えたパイプ(例えば、分流104が、中空管を通って、加熱された希釈剤120と混合するためのパイプ内に入る場所)、又は当業者に既知である他の同様の装置であり得る。
【0043】
第1の希釈されたバイオオイル107は、HDO反応器20内に入る。反応器20は、少なくとも1つの触媒床22を含む。特に、本技術において、反応器が触媒床を1つしか含まない場合、加圧されたバイオオイル供給物は分割されない。
【0044】
触媒床22は、γ-アルミナ上に担持された硫化卑金属触媒を含む。硫化卑金属触媒は、Ni、Mo、Co、W、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む。
【0045】
HDO反応器20は、550°F~700°Fの加重平均床温度(WABT)で作動させる。WABTは、以下の式1:
WABT=Tin+2/3(Tout-Tin)(1)
で与えられ、ここで、Tin及びToutはそれぞれ、触媒床の入口及び出口における温度を指す。
【0046】
HDO反応器20は、600~2,200psi、好ましくは1,000~1,800psiの水素分圧下で作動し得る。水素は、加熱された希釈剤120によって及び/又は反応器(図示せず)に直接供給され得る。後者の例は、触媒床の間に導入された急冷水素である。本明細書に開示する任意の態様では、水素は、5,000SCFB~20,000SCFBのガス対油比(この比は、バイオオイルのバレルに対するH2の標準立方フィートを指す)で反応器に供給され得る。バイオオイル101は、0.2~10.0h-1(触媒の体積当たりのバイオオイルの体積/h)の液空間速度で反応器を通して処理される。これらの条件では、バイオオイル分流104は、少なくとも大部分が触媒床出口生成物108に変換される。
【0047】
触媒床出口生成物108は、水素ガスとバイオオイルHDO変換の液体生成物とを含む。したがって、触媒床出口生成物108は、炭化水素液と水素リッチガスとを含む2相流体である。本明細書に開示する任意の態様では、触媒床出口生成物108は、2.0~6.0重量%の含水量を有する。態様にかかわらず、加熱された希釈剤120は、240°F~350°Fの水露点を有する。
【0048】
バイオオイル分流105は、熱交換器14を通して加熱されて、加熱されたバイオオイル106を提供する。熱交換器14は、好ましくは、シェル側での水蒸気凝縮を伴う多管式熱交換器である。本明細書における任意の態様では、熱交換器14は、熱を与える過熱水を用いた加熱器を含み得る。本明細書における任意の態様では、熱交換器14は、熱を与える熱伝達流体を用いた加熱器を含み得る。
【0049】
加熱されたバイオオイル106は、反応器内部混合装置23内で触媒床出口生成物108と混合されて、第2の希釈されたバイオオイル109を形成する。混合装置23は、当業者によって理解されるように、混合ボックス、分配器トレイ、又は2つの異なる流れを互いに混合するのに適した他の任意の反応器内部装置であり得る。
【0050】
混合装置23にかかわらず、加熱されたバイオオイル106の温度は、触媒床出口生成物108の水露点よりも約50°F低い温度~約100°F高い温度である。例えば、触媒床出口生成物108の水露点が350°Fである場合、加熱されたバイオオイル106の温度は、300°F以上に維持される。本明細書に開示する任意の態様では、加熱されたバイオオイル106は、触媒床出口生成物108の水露点温度よりも40°F以下低い場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、加熱されたバイオオイル106は、触媒床出口生成物108の水露点よりも30°F以下低い場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、加熱されたバイオオイル106は、触媒床出口生成物108の水露点よりも20°F以下低い場合がある。本明細書に開示する任意の態様では、加熱されたバイオオイル106は、触媒床出口生成物108の水露点よりも10°F~50°F低い場合がある。本明細書における任意の態様では、加熱されたバイオオイル106は、加熱されたバイオオイル106を希釈する、触媒床出口生成物108の水露点と同じか又はそれよりも高い温度に加熱され得る。したがって、水滴の形成及び結果として生じる反応器のファウリングの問題は、(例えば、触媒床22上での付着物の形成及び蓄積の速度を低下させることによって)軽減される。本明細書における任意の態様では、触媒床22全体にわたるファウリングに起因する全体的な圧力損失の増加は、触媒の耐用期間にわたって10psi未満であり得る。
【0051】
反応器流出物110は、冷却器32内で冷却されて冷却された流出物112を提供する前に、供給物/流出物熱交換器30を通して冷却されて、部分的に冷却された流出物111を提供する。冷却された流出物112は、HDOの水副生成物がほぼ気相であるように、300°F~400°Fの温度にある。冷却された流出物112は、高圧分離器(HPS)34内でHPS液体流110Aと蒸気流124とに分離される。HPS液体流110Aは、HDO変換の液体生成物、主にC10~C24の範囲の炭化水素を含む。HPS液体流110Aは、再循環ポンプ36を通して再循環流113として一部が再循環されて、加圧された再循環流115を提供する。加圧された再循環流115は、水素132と混合されて、水素含有希釈剤流118を提供する。水素含有希釈剤流118は、前述の供給物/流出物熱交換器30を通して加熱され、部分的に加熱された水素含有希釈剤流119を提供する。その後、この流れは、希釈剤加熱器46内で加熱され、本明細書で既に説明した加熱された希釈剤120を提供する。希釈剤加熱器46は、好ましくは、熱油循環を伴う多管式熱交換器又は燃焼加熱器である。
【0052】
HPS34に戻ると、HPS分離器蒸気124を、空気冷却器40内で冷却及び凝縮の前に、洗浄水流125と接触させる。冷却され部分凝縮された流れ126は、80°F~180°Fの温度で空気冷却器40から出る。冷却され部分凝縮された流れ126は、水を含む液体流出物128が水素リッチガス流129から分離される、分離及びガス処理容器42へ導かれる。硫化水素及び二酸化炭素などのHDOの気相副生成物の除去を促進するために、分離及びガス処理容器42に吸収液127が導入され得る。吸収液127は、水酸化ナトリウム若しくはアミン化合物を含む、任意の水溶液又は水であり得る。本明細書に開示する任意の態様では、炭化水素流128Aは、分離及びガス処理容器42から引き出され、炭化水素生成物を得るために更に処理される。分離及びガス処理容器42からのガス生成物は、パージ/ブリード129Aが維持される一方で、大部分が再循環水素リッチガス130として再循環される。再循環水素リッチガス130は、補給水素131と混合され、本明細書で説明するHDO反応器システムに水素を提供するための水素圧縮機44へ導かれる。
【0053】
HPS34に戻ると、HPS液体流110Aの一部は、液体生成物114としてストリッパ50へ導かれる。ストリッピングされた液体生成物(流れ114)に対するバイオオイル希釈剤として再循環されるHPS液体110Aの流量(流れ113)は、2:1~5:1、好ましくは2.5:1~4:1である。ストリッパ50は、ストリッピングガス121を利用して、HDO反応の、溶解した副生成物、例えば、硫化水素、アンモニア、及び水をパラフィン系ディーゼル生成物122から除去する。ストリッピングガス121に加えて、ストリッピングされた成分が、流れ123としてストリッパ50から出ることが示されている。パラフィン系ディーゼル生成物122は、0.5~3.0重量%のC24+の炭化水素を含み且つ18~22℃の範囲の曇点を有する、C10~C24の炭化水素生成物である。態様では、パラフィン系ディーゼル生成物122は、ディーゼルの曇点を0℃未満の値、好ましくは-30℃~-8℃の範囲の値に低下させるために、先行技術で教示されているように水素化分解/異性化を受ける。
【0054】
本技術に従って生成された再生可能なディーゼル生成物は、50gCO2e/MJ未満、好ましくは40gCO2e/MJ未満、最も好ましくは30gCO2e/MJ未満の炭素強度を有し得る。このように開示した再生可能なディーゼルの生産工程は、触媒床全体にわたるファウリングに起因する全体的な圧力損失の増加を触媒の耐用期間にわたって10psi未満に維持しながら、かかる有利な燃料の生産を達成する。
【0055】
このように全体的に説明した本技術は、例示によって提供され、本技術を限定することを意図するものではない、以下の実施例の参照によって、より容易に理解されるであろう。
【実施例
【0056】
実施例1
同じ触媒が充填され、同じバイオオイル供給原料を用いて同じ条件下で作動する2つの商業規模のHDO反応器は、圧力損失の増加率によって証明されるように、異なる速度で汚染されることが分かった。第1の反応器への希釈剤(希釈されたバイオオイル)の水露点は、Peng Robinson気液平衡熱力学モデルを用いたHysys法シミュレーションソフトウェアによって推定し、215°Fであることが分かった。同じ方法論を使用して、第2の反応器への供給物が348°Fの水露点を有すること分かった。各反応器への希釈剤をそれぞれの反応器のすぐ上流側で同じ温度のバイオオイル(約165°F)と混合した。バイオオイル温度と希釈剤水露点温度との差が小さい第1の反応器は、耐用期間中に圧力損失の増加の兆候を示さなかった。バイオオイル温度と希釈剤水露点との差が大きい第2の反応器は、同じ期間中に圧力損失の増加を示し、停止させなければならなかった。
【0057】
実施例2
2つの同一のパイロットプラントHDO反応器に同じ触媒を充填した。ディーゼル沸点範囲のイソパラフィン系炭化水素で希釈した、11%の工業銘柄のオレイン酸を(遊離脂肪酸として)含む、精製、漂白、及び脱臭された大豆油供給原料を用いて数週間作動させた後、いずれの反応器でも圧力損失は観察されなかった。次いで、同じイソパラフィン系炭化水素希釈剤で希釈した、使用済み食用油及びパームスラッジ油を含む、低価値の脂肪、油、及びグリースの同じブレンドで作動するように、両反応器を切り替えた。反応器1(R1)には3%の水を加え、反応器2(R2)を対照(水を加えない)として使用した。図2に示すように、約7.5日後に、R1では圧力損失の急速な増加が観察されたが、R2の圧力損失は実質的に変わらないままであった。その後、反応器を開放して検査した。著しく多くのファウリング/付着物が、R2よりもR1内で観察された。
【0058】
ある特定の態様が例示され、説明されているが、当業者は、前述の明細書を読んだ後に、本明細書に記載した、本技術の化合物又は塩、医薬組成物、誘導体、プロドラッグ、代謝物、互変異性体又はそれらのラセミ混合物に対する、変更、同等物の置換及び他の種類の改変を行うことができる。上記で説明した各局面及び態様もまた、他の局面及び態様のいずれか又は全てに関して開示した変形又は局面を含むか又はそれに組み込むことができる。
【0059】
本技術はまた、本明細書で説明した特定の局面に関して限定されるものではなく、これらの局面は、本技術の個々の局面の1つの例示として意図されている。当業者には明らかであるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、この本技術の多くの修正及び変更を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本技術の範囲内の機能的に同等の方法は、前述の説明から当業者には明らかであろう。かかる修正及び変形は、添付の特許請求の範囲に含まれるように意図されている。この本技術は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、標識化合物又は生物学的システムに限定されず、これらは当然ながら変化する可能性があることを理解されたい。また、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の局面を説明するためのものにすぎず、限定的であるように意図されていないことも理解されたい。本明細書は、単なる例示的なものとみなされ、本技術の広がり、範囲、及び趣旨は、添付の特許請求の範囲、その中の定義、及びそれらの任意の同等物によってのみ示されることが意図されている。
【0060】
本明細書で例示的に説明した態様は、本明細書に具体的に開示していない、任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の限定がなくても好適に実施され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、広く、限定なしに解釈されるものとする。追加的に、本明細書で用いられる用語及び表現は、限定の用語ではなく、説明の用語として使用されており、示され、説明される特徴又はその一部のあらゆる均等物を排除するような用語及び表現の使用は意図されていないが、特許請求される技術の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。追加的に、「から実質的になる」という語句は、具体的に列挙された要素、及び特許請求される技術の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない追加の要素を含むものと理解されるであろう。「からなる」という語句は、明記されないあらゆる要素を排除する。
【0061】
加えて、本開示の特徴又は局面がマーカッシュ群に関して説明される場合、それによって本開示がマーカッシュ群の任意の個々の要素又は要素の部分群に関しても説明されることを当業者は認識するであろう。包括的な開示の範囲に含まれる狭義の種及びやや包括的な分類の各々も、本発明の一部をなす。これには、削除されたものが本明細書に具体的に列挙されているか否かにかかわらず、任意の素材をその属から除去する条件又は否定的な限定を伴う本発明の包括的な説明が含まれる。
【0062】
当業者によって理解されるように、あらゆる全ての目的のために、特に本明細書を提供する観点から、本明細書に開示する全ての範囲は、あらゆる全ての可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が、少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分けられることを十分に説明及び可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で述べる各範囲は、下3分の1、中3分の1及び上3分の1などに容易に分けることができる。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「よりも小さい」、及び類似のものなどの全ての文言は、列挙された数を含み、上記で述べた部分範囲に後に分けることができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は個々の各要素を含む。
【0063】
全ての刊行物、特許出願、発行済みの特許、及び本明細書で参照される他の文書(例えば、雑誌、記事、及び教本)は、個々の各刊行物、特許出願、発行済みの特許、又は他の文書が、参照により全体として本明細書に組み入れられるように具体的且つ個別に示されるように参照により本明細書に組み入れられる。参照により組み入れられる本文中に含まれる定義は、本開示における定義と矛盾する限りにおいて除外される。
【0064】
本技術は、以下の文字を付した項で列挙される特徴及び特徴の組み合わせを含み得るが、それらに限定されず、以下の項は、本明細書に添付の特許請求の範囲を限定するもの、又は全てのそのような特徴が必ずそのような特許請求の範囲に含まれなければならないと命令するものとして解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0065】
A. 水素化脱酸素反応器(「HDO反応器」)内の触媒床上でのバイオオイルの水素化脱酸素のための方法であって、
水露点を有する2相希釈剤と、水露点よりも50°F低い温度~100°F高い温度であるバイオオイル温度にあるバイオオイルとを、混合する工程
を含み、
2相希釈剤が、液相と気相とを含み、液相が、炭化水素を含み、気相が、水素と水とを含む、方法。
【0066】
B. バイオオイル温度が、水露点よりも20°F~0°F低い、項A記載の方法。
【0067】
C. バイオオイル温度が、水露点よりも10°F~0°F低い、項A又はB記載の方法。
【0068】
D. バイオオイル温度が、2相希釈剤の水露点よりも0°F~20°F高い、項A記載の方法。
【0069】
E. バイオオイルと、2相希釈剤とを、混合T字管内で混合する工程
を含む、項A~Dのいずれか一項記載の方法。
【0070】
F. 静的混合器を通して、バイオオイルと、2相希釈剤とを、混合する工程
を含む、項A~Eのいずれか一項記載の方法。
【0071】
G. バイオオイルと2相希釈剤とを混合する工程が、
パイプ内の中空管を通してバイオオイルを導くこと
を含み、
パイプが、2相希釈剤を提供する、項A~Fのいずれか一項記載の方法。
【0072】
H. バイオオイルが、家禽脂肪、家禽油、植物性脂肪、精製脂肪、精製油、レストラン用グリース、ブラウングリース、イエローグリース、使用済み食用油、廃棄する業務用揚げ油、魚油、魚脂肪、藻類油、微生物油、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせを含む、項A~Gのいずれか一項記載の方法。
【0073】
I.再生可能なディーゼルを生成し、
再生可能なディーゼルが、カリフォルニア州大気資源局のCA-GREET3.0モデルによる、30gCO2e/MJ以下の炭素強度を有する、項A~Hのいずれか一項記載の方法。
【0074】
J. HDO反応器のファウリングが、触媒の耐用期間における10psi以下の圧力損失の増加によって証明される、項A~Iのいずれか一項記載の方法。
【0075】
K. 2相希釈剤とバイオオイルとを混合する工程が、希釈されたバイオオイルを提供し、
前記プロセスが、
触媒床出口生成物を提供するために、希釈されたバイオオイルを触媒床に接触させること
を更に含む、項A~Jのいずれか一項記載の方法。
【0076】
L. 2相希釈剤とバイオオイルとを混合する工程の前に、
バイオオイル温度を、水露点よりも50°F低い温度~100°F高い温度となるように調整する工程
を含む、項A~Kのいずれか一項記載の方法。
【0077】
M. 2相希釈剤とバイオオイルとを混合する工程の前に、
前記プロセスが、
水露点を決定するために、2相希釈剤を測定すること
を含む、項A~Lのいずれか一項記載の方法。
【0078】
N. 触媒床上でのバイオオイルの水素化脱酸素のための方法であって、以下:
(a)バイオオイルを提供するステップと;
(b)2相希釈剤を提供するステップであって、2相希釈剤が、炭化水素を含む液体と、水素と水とを含む気相と、を含む、提供するステップと;
(c)バイオオイルを2相希釈剤と混合するステップと
を含み、
2相希釈剤が、水露点によって特徴付けられ、バイオオイル温度が、2相希釈剤の水露点よりも最大で50°F低い、方法。
【0079】
O. バイオオイル温度が、2相希釈剤の水露点よりも最大で20°F低い、項N記載の方法。
【0080】
P. バイオオイル温度が、2相希釈剤の水露点よりも最大で10°F低い、項N又はO記載の方法。
【0081】
Q. バイオオイル温度が、2相希釈剤の水露点よりも高い、項N記載の方法。
【0082】
R. バイオオイルと2相希釈剤とが、混合T字管内で混合される、項N~Qのいずれか一項記載の方法。
【0083】
S. バイオオイルと2相希釈剤とが、静的混合器を通して混合される、項N~Rのいずれか一項記載の方法。
【0084】
T. バイオオイルと2相希釈剤とが、2相希釈剤を提供するパイプ内の中空管を通してバイオオイルを提供することによって混合される、項N~Sのいずれか一項記載の方法。
【0085】
U. バイオオイルが、家禽脂肪、家禽油、植物性脂肪、精製脂肪、精製油、レストラン用グリース、ブラウングリース、イエローグリース、使用済み食用油、廃棄する業務用揚げ油、魚油、魚脂肪、藻類油、微生物油、及びこれらの組み合わせを含む、項N~Tのいずれか一項記載の方法。
【0086】
V.再生可能なディーゼルを生成し、
再生可能なディーゼルが、カリフォルニア州大気資源局のCA-GREET3.0モデルによる、30gCO2e/MJ以下の炭素強度を有する、項N~Uのいずれか一項記載の方法。
【0087】
W. 触媒床上でのバイオオイルの水素化脱酸素が、水素化脱酸素反応器(「HDO反応器」)内で起こり、
HDO反応器のファウリングが、触媒の耐用期間における10psi以下の圧力損失の増加によって証明される、項N~Vのいずれか一項記載の方法。
【0088】
他の態様は、以下の特許請求の範囲に権利が付与される同等物の全範囲と併せて、かかる特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
【国際調査報告】