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特表2023-516088生物学的サンプルのRNA標的の富化または枯渇
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(54)【発明の名称】生物学的サンプルのRNA標的の富化または枯渇
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230410BHJP
   C12Q 1/6811 20180101ALI20230410BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20230410BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230410BHJP
   G01N 33/532 20060101ALI20230410BHJP
【FI】
C12N15/10 110Z
C12Q1/6811 Z
C12N15/11 Z
C07K16/00
G01N33/532 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553079
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 US2021021147
(87)【国際公開番号】W WO2021178842
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/986,055
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520086564
【氏名又は名称】アルトラテック・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】オファーレル, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】オコンネル, クレア
(72)【発明者】
【氏名】オシャベン, ケイリン
(72)【発明者】
【氏名】アペラ, ダニエル
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ54
4B063QR82
4B063QS36
4B063QX02
4H045AA50
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
分析物を有するサンプルからの標的の富化または枯渇の方法が記載される。プローブは、左巻きのPNA対および標的化部分のうちの一方を有し、ここで上記左巻きのPNA対は、キラルでありかつ左巻きのらせん構造を誘導する環状骨格改変を有するPNAの相補的な対である。捕捉表面は、上記左巻きのPNA対の他方を有する;上記左巻きのPNA対は、捕捉表面(これは磁性ビーズであり得る)に上記プローブをハイブリダイズするために結合する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の標的富化の方法であって、前記方法は、
捕捉部分に連結された左巻きのPNA分子を含むプローブを、標的分析物を含むサンプルに導入する工程;
前記捕捉部分で、上記標的分析物を捕捉する工程;および
前記左巻きのPNA分子を、左巻きのキラル構造を含む相補的PNA分子と結合させる工程であって、前記相補的PNA分子は、表面に結合され、それによって標的分析物を富化する、工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記表面は、ビーズを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビーズは、磁性ビーズである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面は、固定された基材を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記左巻きのPNA分子は、ヌクレオチド配列を含む前記左巻きのPNA分子の一部を、標的化部分に連結するリンカーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、第2のプローブを前記サンプルへと導入する工程をさらに包含し、前記第2のプローブは、左巻きのPNA、標的化部分、および検出部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記標的化部分は、右巻きの標的化PNAである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記捕捉部分は、抗体または抗体フラグメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、左巻きのPNA対によって提供される複数のリンクを有する鎖を構築する工程を包含し、前記鎖は、標的、抗体、および検出部分のうちのいくつかまたは全てを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、18℃~80℃の範囲の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、約37℃の温度で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記標的分析物は、RNAを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記RNAは、18sリボソームRNAを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面は、ビーズの表面を含み、前記ビーズは、前記方法の工程を行った後に、さらなるアッセイにおける再使用のための清浄な捕捉表面を提供するために熱融解される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記捕捉部分は、アキラルまたはキラルPNA、デオキシリボ核酸、リボ核酸、グリコール核酸、トレオース核酸、ロックド核酸、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド、またはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー、タンパク質、ペプチド、非天然アミノ酸を有するペプチドもしくはタンパク質、酵素、抗体、単一ドメイン抗体(ナノボディ)、アプタマー、薬物分子、低分子、化合物、細胞、または上記のうちの1もしくはこれより多くの組み合わせ、のうちのいずれか1つもしくはこれより多くを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
検出部分は、前記左巻きのPNA分子と連結され、前記検出部分は、以下:蛍光標識、発光標識、発色団標識、化学発光標識、放射性標識、酵素標識、または視覚的標識(例えば、金のような金属性標識)、マイクロスフェア、ナノ粒子、ビオチン標識、アビジン標識、ジゴキシゲニン、コレステロール、またはジニトロフェニル標識、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識、または上記のうちの1もしくはこれより多くの組み合わせ、のうちの1またはこれより多くを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記左巻きのPNA分子は、リンカーを含み、前記リンカーは、1~120個の原子の長さを含む、ならびに/または元素:C、N、O、S、P、およびSiのうちの1個もしくは数個を有する、ならびに/または以下の結合:単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミノ基、エーテル結合、チオエーテル結合、およびチオエステル結合のうちの1つのみもしくは組み合わせを含む鎖の中にある、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記PNA分子は、多重化を可能にするためにプログラム可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記PNA分子は、左巻きのらせん構造を誘導する環状骨格改変で改変される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物学的サンプルの標的分子を捕捉するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
RNA標的化および増幅のための方法はしばしば、酵素による増幅法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を使用する。試薬の適切な貯蔵および取り扱いが、これらの方法では必要である。さらに、酵素の機能性は、増幅プロセスの成功を確実にするために重要である。他の難題は、酵素が温度感受性でありかつ貯蔵寿命が制限されていることである。
【0003】
配列特異的RNA富化または枯渇は、目的の配列に対して相補的な配列を有するビオチン化プローブがストレプトアビジン官能化表面(例えば、マイクロスフェア)上に捕捉されるビオチン-アビジン(または一般には、ストレプトアビジンもしくはニュートラアビジン)親和性反応を使用して達成され得る。
【0004】
ビオチン-アビジンは、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA);免疫組織化学(IHC);ウェスタンブロット法、ノーザンブロット法、およびサザンブロット法;免疫沈降;細胞表面標識;アフィニティー精製;蛍光活性化セルソーティング(FACS);ならびに電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)のような適用において広範に使用される。特筆される制限は、全てのビオチン化分子が任意のビオチン結合分子に結合し得るので、試薬が多重の実験のために他の検出-プローブシステム(例えば、一次-二次抗体)と組み合わせて使用されなければならないことである。重要なことには、サンプル中の天然に存在するビオチンは、いくつかの試験で偽の結果を引き起こすことが見出されており、検査開発業者に連絡をとって議論をするよう要求したUSFDAによる警告の対象となった。ビオチンを含む栄養補助食品は、特に問題である。
【0005】
さらに、ストレプトアビジン試薬の貯蔵および輸送は、冷蔵の必要性に起因して、物流に関する難題を呈する。アジ化ナトリウム(潜在的には、爆発物)は、長期間貯蔵する間の細菌増殖を防止するために一般に使用され、広範な洗浄工程が、使用前に、ビーズおよび生物製剤を調製するために、それを溶液から除去することが必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本発明は、生物学的サンプル中の標的分子の捕捉のための方法を提供する。本発明の方法は、標的分子の捕捉および送達のためにペプチド核酸(PNA)プローブを利用する。好ましい実施形態において、捕捉部分を含む第1のキラルPNAプローブは、標的分析物を捕捉するために使用され、次いで、固体支持体に結合された相補的な第2のキラルPNAプローブに結合される。好ましい実施形態において、上記PNAプローブは、左巻きのキラル対である。本発明のPNAプローブは、リンカーを介して結合部分に結合され得る。上記結合部分は、核酸、グリコール、タンパク質(抗体または酵素を含む)、低分子、炭水化物もしくはレクチン、または標的分子に結合され得る任意の他の結合因子であり得る。一例では、固体支持体に結合されるPNAプローブは、ハイブリダイゼーションを介して、別のPNAプローブを捕捉する。その別のPNAプローブは、リンカーを介して、結合部分で終端する別のPNAプローブへと結合される。上記PNAプローブは、好ましくは、左巻きのキラリティーを有し、その結果、それらは、天然のRNAもしくはDNAとではなく、それらのPNA相補的結合対とハイブリダイズする。本発明は、このアプローチを利用して、生物学的サンプル中の標的分子を特異的に捕捉する。上記プローブは、上記左巻きのPNAと標的化部分とを連結するリンカーを含み得る。代替の実施形態において、上記捕捉プローブは、右巻きのPNA分子であり得る。
【0007】
これら「キーチェーン(keychain)」PNA分子が結合される固体支持体は、任意の適切な固体支持体であり得る。例えば、上記固体支持体は、ビーズまたは磁性粒子の表面であり得る。よって、ある特定の実施形態において、磁場は、捕捉部分と結合した分析物を操作する(例えば、動かすまたは検出する)ために使用され得る。場合によっては、上記固体支持体は、結合した分析物を感知するために、センサーまたはセンサー表面と関連付けられる。有利なことには、この配置は、分析物のサンプルが、第1のキラルPNA分子の捕捉部分に結合される分析物を、上記第1のキラルPNA分子に相補的な第2のキラルPNA分子を有するセンサー表面を覆うように流すかまたは通過させることによって、迅速に検出されることを可能にする。上記相補的なキラルPNA分子での上記第1のキラルPNA分子の捕捉は、分析物検出を提供する。よって、本発明の方法は、マイクロ流体システムとの使用に十分に適している。そして上記キラルPNA分子は、他の分析物(例えば、DNAまたはRNA)に結合しないことから、上記キーチェーンPNA分子を使用する検出方法は、サンプル中の分析物の信頼性のある測定を提供する。
【0008】
PNAの特徴は、その安定性および多用途性である。従って、PNA分子を使用して分析物をプローブする方法は、従来のDNAおよびRNA方法を超えるいくつかの明確な利点を提供する。例えば、PNA分子は、ヌクレアーゼおよびプロテアーゼによる分解に耐性であり、酸性環境においてすら安定している。この増強された安定性は、PNA分子が最適未満の条件下で(酸性溶液または低塩溶液中で)すら、標的を捕捉することを可能にする。よって、本発明の方法は、PNA分子に依拠することによって、分析物を、サンプル(例えば、細胞溶解物)を処理するのが別の方法では困難であるものから捕捉し得る。さらに、PNA分子は、DNAもしくはRNA、またはストレプトアビジンに関しては6ヶ月間の貯蔵寿命と比較して、長い貯蔵寿命(数ヶ月から数年間)を有し、それらがヌクレアーゼ分解されにくいことから、冷蔵を必要としない。
【0009】
本発明の方法は、核酸の検出または富化のための酵素を必要としない。よって、本明細書で記載される方法は、酵素が関わる類似の方法と同じ厳密な操作条件によって拘束されない。さらに、大部分の場合には、本明細書で記載される方法において使用される試薬は、冷蔵を必要としない。よって、本発明の方法は、どこででも(例えば、遠隔地でも)、および誰にでも使用できる。例えば、本発明の方法は、広い範囲の温度(例えば、約18℃~約80℃の範囲)にわたって行われ得る。しかし、好ましい実施形態において、本発明の方法は、約37℃で行われる。
【0010】
本発明のPNAプローブは、目的の分析物を結合するために捕捉部分を使用する。場合によっては、上記分析物は、タンパク質または細胞の表面抗原であり得る。捕捉部分は、従って、抗体または抗体フラグメントを含み得る。上記捕捉部分の抗体または抗体フラグメントは、目的の分析物と関連する抗原を捕捉するために使用され得る。上記抗体捕捉部分を有するPNAプローブは、好ましくはキラルである。使用時に、上記抗体連結PNAプローブに相補的な第2のキラルPNAプローブは、標的分析物と結合した上記抗体連結PNAプローブを捕捉するために使用され得る。
【0011】
本発明のPNAプローブは、PNAの鎖の一部であり得る。PNAの鎖は、任意の数の核酸モノマーを含み得る。有利なことには、PNAは概して荷電されていないので、PNAは、DNAまたはRNAの類似のオリゴヌクレオチドより高い結合強度で会合される。よって、PNAプローブは、DNAまたはRNAの類似のオリゴヌクレオチドより少ないモノマーで相補的標的を捕捉し得る。いくつかの実施形態において、本発明のPNAプローブは、15個またはこれより少ない核酸モノマーを含む。さらに、本明細書で記載されるある特定の実施形態において、本発明の方法は、PNAの電荷を改変することを企図する。好ましくは、上記PNAは、キラルである。PNA分子の電荷を改変すること(例えば、上記PNA分子を負に荷電させること)は、他の負に荷電した核酸(例えば、DNAまたはRNA)に対する上記PNAの結合親和性を低減し、それによって、相補的キラルPNAに対する結合特異性を増大させるために有用である。
【0012】
本発明の方法は、多重化のために特に有用である。本発明の左巻きのキラルPNAプローブは、他の左巻きのキラルPNAプローブの相補的配列と特異的に結合する(かつ他の核酸とは結合しない)ことから、上記プローブは、多重反応のために容易にプログラム可能である。例えば、上記左巻きのPNAプローブは、他の相補的プローブに差次的に結合するために、長さおよび/またはモノマー配列が変化し得る。よって、いくつかの方法によれば、複数の異なる左巻きのキラルPNAプローブ(異なる標的分析物と結合される)が、相補的配列を含む相当する左巻きのPNAプローブによって差次的に捕捉および/または検出され得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、本発明のPNAプローブは、リンカーを含む。好ましくは、上記リンカーは、上記PNAプローブを捕捉部分に連結する。上記リンカーは、切断可能な結合を含み得る。例えば、上記リンカーは、プロテアーゼによって切断可能であり、それによって、捕捉された分析物が、下流の処理のためにPNAプローブから分離されることを可能にする結合を含み得る。上記リンカーは、1~120個の原子の長さのものであってもよい、および/または元素:C、N、O、S、P、およびSiのうちのいずれか1個またはこれより多くを含んでいてもよい。上記リンカーは、以下:単結合、二重結合、三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミノ基、エーテル結合、チオエーテル結合、およびチオエステル結合のうちの1つまたは組み合わせを含む鎖の中にあり得る。
【0014】
別の局面において、本発明は、本発明の方法を行うための標的富化または枯渇装置に関する。上記装置は、分析物と捕捉部分に連結された左巻きのPNA分子を含むプローブとを結合させるためのチャンバを含む。上記チャンバは、分析物と結合した相補的な左巻きのPNAプローブを含む表面を提供し得る。上記表面は、1個またはこれより多くのビーズであり得る。上記1個またはこれより多くのビーズは、上記装置の区画から放出可能であり得る。例えば、上記ビーズ(PNAプローブを有する)は、上記チャンバの区画内部の熱感受性基材(例えば、ワックス)中にパッケージされ得る。上記ビーズは、熱を適用することによって上記プローブが分析物と結合した後に上記チャンバへと放出され得る。好ましくは、上記PNAは、キラルでありかつ左巻きのらせん構造を誘導する環状骨格改変を有する相補的PNAの対を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、キラリティーを誘導するために有用な2つの改変されたモノマーを示す。
【0016】
図2図2は、ビオチン-ストレプトアビジン磁性ビーズを用いる多重化アッセイのためのプロセスを示す。
【0017】
図3図3は、左巻きのPNAを用いる多重化したアッセイを示す。
【0018】
図4図4は、磁性ビーズへのプローブ(P)のハイブリダイゼーションを示す模式図である。
【0019】
図5図5は、ハイブリダイゼーションによる標的捕捉を示す。
【0020】
図6図6は、標的捕捉のアッセイの追加の工程を示す。
【0021】
図7図7は、右巻きの標的化PNAの使用を図示する。
【0022】
図8図8は、図7に示される方法のさらなる工程を示す。
【0023】
図9図9は、標的化抗体が関わるアッセイを示す。
【0024】
図10図10は、図9のアッセイの続きである。
【0025】
図11図11は、全ヒトRNAからの18s rRNAの捕捉および繋留のデータを示す。
【0026】
図12図12は、全ヒト単離物からの18s rRNAの捕捉および繋留のデータを示す。
【0027】
図13図13は、全ヒトRNAからの18s RNAの検出のデータを示す。
【0028】
図14図14は、以前のビオチン-ストレプトアビジンアプローチと比較して、RNAの左巻きのPNA捕捉の非常に類似した性能を示すプロットである。
【0029】
図15図15は、左巻きのおよび右巻きのPNAの捕捉データを示す。
【0030】
図16図16は、全ヒトRNAサンプルからの18sリボソームRNA枯渇アッセイのアガロースゲルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
本発明は、生物学的サンプルから標的分子を捕捉するためのアッセイに関する。より詳細には、本発明は、標的分析物を捕捉するための改変されたペプチド核酸(PNA)を使用するアッセイに関する。好ましくは、上記PNAは、ある特定のモノマー(以下で記載される)を組み込んで、キラリティーを誘導することによって改変される。本発明は、その誘導されたキラリティーを利用して、非PNA分子に対する上記PNAの結合親和性を操作する。特に、本発明の好ましい方法は、PNAにおいてキラリティーを誘導して、サンプル中のDNAおよび/またはRNAに対するPNAの結合親和性を低減し、それによって、他の改変されたPNA分子に対するPNAの選択性を増大させる。
【0032】
PNAは、糖-ホスフェート骨格がシュードペプチド骨格によって置き換えられたオリゴヌクレオチドアナログである。PNAの骨格は一般に、ペプチド結合によって連結されたN-(2-アミノエチル)グリシンユニット(AEG)の非荷電性の反復を含む。合成骨格は、PNAに多くの有益な特性(例えば、イオン強度への低依存度、高い化学的安定性、高い配列特異性、ならびにヌクレアーゼおよびプロテアーゼの両方に対する耐性)を提供する。場合によっては、それらは、DNAおよび/またはRNAに高い特異性および選択性で結合し、その相当する核酸複合体より安定であるPNA-RNAおよび/またはPNA-DNAハイブリッドをもたらす。PNAを使用する核酸のハイブリダイゼーションに関するさらなる考察については、Ratilainen, 1998, Hybridization of Peptide Nucleic Acid, Biochemistry 1998, 37, 35, 12331-12342、およびWeiler, 1997, Hybridisation based DNA screening on peptide nucleic acid (PNA) oligomer arrays, Nucleic Acids Research, Volume 25, Issue 14, 1 July 1997, Pages 2792-2799(これらの各々は、参考として援用される)を参照のこと。
【0033】
核酸(例えば、RNA)に対する上記PNAの結合親和性および選択性が、不斉立体中心(例えば、D-Lysベースのユニット)を上記PNA骨格に導入ことによって改変され得、従って、改変されたPNAを標的捕捉方法の理想的な候補にすることは、本発明の見識である。好ましい実施形態において、本発明の方法は、左巻きのキラリティーを有するように合成された改変PNAを使用する。
【0034】
DNAおよびRNAのような天然に存在するヌクレオチドは、右巻きのキラリティーを有し、その中で、アキラルのおよび右巻きのPNAは、これらのヌクレオチドに結合し得、これらを標的化するために使用され得る。しかし、天然で右巻きのオリゴヌクレオチドは、らせん構造の不適合性に起因して、左巻きのキラルPNAに概して結合せず、これは、旧来のWatson-Crick塩基対合が起こることを防止する。従って、左巻きのPNAは、一般に、他の左巻きのPNAまたはアキラルPNAにしか結合できない。従って、キラルPNAは、それらのアキラルアナログより安定性の低いPNA-DNA二重鎖と会合する。この効果は、かさ高い非極性側鎖を有するアミノ酸またはDNAの負に荷電したホスフェート基との反発性の相互作用を引き起こす負に荷電したモノマー(D-またはL-アスパラギン酸およびグルアミン酸に基づく)を含む改変されたPNA骨格を使用する本発明の方法においてより顕著であり得る。
【0035】
これらの特性は、左巻きのPNAを、捕捉システムにおける使用に理想的な候補にする。その場合、上記捕捉システムの構成要素は、天然に存在するヌクレオチドと相互作用しない。特に、左巻きのPNAは、本発明の方法に従って、プローブの構成要素として使用される。上記プローブはまた、標的化部分および好ましくは、左巻きのPNAを上記標的化部分に連結するリンカーを含む。ある特定の実施形態において、左巻きのPNAはまた、ビーズの構成要素として使用されるか、または上記標的の検出のためのセンサー表面に固定される。
【0036】
図1は、キラリティーを誘導するために有用な2つの改変されたモノマーを示す。特に、(a)左巻きの103および(b)右巻きの105のキラリティーを誘導する、環状PNA骨格改変モノマー103、105の2つのエナンチオマーが示される。PNAのらせん構造は、上記PNA配列内にこれらのモノマーを含めることによって影響され得る。
【0037】
上記PNAは、例えば、Wu, 2017, Recent advances in peptide nucleic acid for cancer bionanotechnology, Acta Pharmacol ogica Sinica volume 38, pages798-805(これは参考として援用される)に記載されるように、当該分野で公知の方法によって合成され得る。好ましくは、上記PNAは、改変されたモノマーのうちの1またはこれより多くを使用して作製される。上記改変されたモノマーのうちの1つもないPNA配列は、好ましいらせん構造を有さない可能性があり、よって、アキラルであり得る。少なくとも1個の環状骨格改変モノマー103、105が含まれる場合、その拘束された骨格構造は、上記PNAにおいて左巻きの(a)または右巻きの(b)いずれかのキラリティーを誘導する。1個より多くのモノマーの包含は、PNAの長さ全体のキラリティー優先性を確実にするために所望され得る。上記PNAのキラリティーは、当該分野で公知の種々の技術によって評価され得る。例えば、上記モノマーのうちの1個またはこれより多くを含むように合成されたPNAは、核磁気共鳴法によって、またはX線結晶学によって特徴づけられ得る。
【0038】
本発明の方法は、左巻きのPNAの対を形成するために、PNAへと立体中心を組み込む。上記左巻きの対は、キラルでありかつ左巻きのらせん構造を誘導する少なくとも1個の環状骨格改変モノマーを有するPNAの相補的な対をいう。それらはときおり、本明細書において「左巻きのPNA対(left-handed PNA pair)」といわれる。それらは、γPNA(これは、異なる骨格化学を有するが、左巻きであり得る)と混同されるべきではない。
【0039】
上記左巻きのPNAは、核酸の標的化部分として使用され得る右巻きの環状改変骨格PNAに対してエナンチオマーである。しかし、以下で記載されるように、上記標的化部分または捕捉部分は、PNAに限定されない。
【0040】
左巻きのPNA対は、アッセイに、生物学的実体(例えば、RNA)の標的富化を提供するために種々の様式で使用され、ここでサンプル中の標的分子は、例えば、ビーズ(例えば、磁性ビーズ)にまたはセンサー(例えば、容量型センサー(capacitive sensor))による分析のために表面に結合される。上記左巻きのPNAはまた、さらなる検出または分析のためにより希な標的を残す枯渇タイプのアッセイにおいて比較的存在量の多い標的を除去するために使用され得る。
【0041】
例えば、好ましい実施形態において、捕捉部分と連結された第1のキラルPNA分子は、標的分子(例えば、RNA)を捕捉するために使用される。上記標的分子と上記捕捉部分を介して結合された上記第1のキラルPNA分子は、次いで、固体支持体に好ましくは結合された相補的キラルPNA分子で捕捉される。好ましい実施形態において、上記PNA分子は、左巻きのキラル対である。本発明のPNA分子は、リンカーを介して捕捉部分に結合され得る。上記捕捉部分は、上記標的分子と結合する任意の部分であり得、例えば、上記捕捉部分は、核酸、グリコール、タンパク質(例えば、抗体もしくは抗体フラグメント)、低分子、炭水化物もしくはレクチン、または上記標的分子に結合し得る任意の他の分子結合因子であり得る。
【0042】
一例では、固体支持体に結合されたPNAプローブは、ハイブリダイゼーションを介して、別のPNAプローブを捕捉する。その別のPNAプローブは、リンカーを介して、結合部分で終端する別のPNAプローブへと結合される。上記PNAプローブは、好ましくは、左巻きのキラリティーを有し、従って、相補的キラルPNA結合パートナーと特異的にハイブリダイズするが、天然のRNAまたはDNAとはハイブリダイズしない。本発明は、このアプローチを利用して、生物学的サンプル中の標的分子を特異的に捕捉する。
【0043】
有利なことには、いくつかの例では、PNAプローブは、先ず、その標的配列(一例では、18sリボソームRNA)に、次に、左巻きのPNA対を使用して上記ビーズにハイブリダイズされる。これは、本明細書において「2工程」アプローチといわれる。このアプローチは、上記プローブがビーズに最初に結合されるアプローチと比較して、遙かに改善された標的富化を達成する。
【0044】
場合によっては、プローブは、センサー表面に結合される。例えば、上記プローブは、WO 2015/086654; WO 2015/091139(これらは参考として援用される)に記載されるようにセンサーの表面に結合され得る。結合は一般に、表面に結合された左巻きのPNA相補体にハイブリダイズする捕捉部分を含む左巻きのPNAを要する。アキラルPNAは、本出願において左巻きのPNAプローブのうちの一方または両方を置き換え得る。アキラルPNAは、相補的なアキラル、右巻きまたは左巻きのPNAに対して類似のハイブリダイゼーション挙動を示す;しかし、PNAの相補的な対のうちの一方または両方における左巻きを誘導する骨格改変の除去は、プローブ捕捉の非生物的性質を排除し、内因性オリゴヌクレオチドとの潜在的なクロスハイブリダイゼーションを導入し得る。
【0045】
図2は、ビオチン-ストレプトアビジン磁性ビーズを用いる多重化アッセイのためのプロセスを示す。上記プロセスは、本発明との比較として、ビオチン-ストレプトアビジン磁性ビーズシステムを使用する多重化アッセイを提供する。標的1に関するビオチン化プローブ(P1)は、サンプル中でインキュベートされ(I)、続いて、ストレプトアビジンコーティング磁性ビーズが添加される(II)。捕捉されたプローブおよび標的を有するビーズは、除去される。引き続く標的についてプローブインキュベーションおよびストレプトアビジンコーティング磁性ビーズによる標的除去の同じプロセスが行われる(III~VI)。次いで、上記標的-プローブ複合体は、上記ビーズから除去される(VII)。左巻きのPNAシステムとは異なり、捕捉部分が全ての工程においてビオチン-ストレプトアビジンであることに起因して、内因性ビオチン分子からの潜在的な干渉および先の工程から完全には除去されなかったプローブ/標的からのクロスコンタミネーションが存在し得る。左巻きのPNAシステムは、図3に示されるように、内因性または食事性のビオチンによって影響を及ぼされない。
【0046】
図3は、左巻きのPNAを用いる多重化アッセイを示す。図は、左巻きのPNAシステムのプログラム可能性を利用することによって、本発明の多重化アッセイを行う能力を示す。この例では、3個のプローブ-ビーズセットが存在し、各々、異なる標的の(P1~3)および異なる左巻きのPNA対(L1~3、L1c-3c)を有する。全3個のプローブが、同時にサンプル中でインキュベートされ得る(I)。相補的な左巻きのPNAでコーティングされた磁性ビーズは、次いで、他のプローブまたは天然の生体分子からのクロスコンタミネーションなしに、上記相補的プローブおよび標的を除去するために逐次的に使用される(II~IV)。上記ビーズ-プローブ-標的複合体は、洗浄され得、上記プローブ-標的は、さらなる分析のために、加熱を介して上記ビーズから分離され得る(V)。各標的は、特有のプローブ対を使用して捕捉されることから、プローブ間のクロスコンタミネーションは最小限であり、上記PNAの左巻きのキラリティーが原因で、天然のDNA/RNAからの干渉は存在しない。
【0047】
左巻きのPNAを有するプローブは、全てのプローブに同じ左巻きのPNAを有し得るかまたは各プローブに異なる左巻きの配列を有し得るかのいずれかであり、その結果、それらの相補体で官能化したビーズの異なるセットが、特異的標的を捕捉するために使用され得る。よって、本発明の方法は、種々の多重化適用のために高度にカスタマイズされ得る。上記PNAモノマー配列は、配列の任意の配置に対して改変され得、それらは、例えば、図15に示されるように、ストリンジェンシーのために加熱して除去される場合に、天然に存在する核酸といかなる相互作用をも有しない。
【0048】
図4は、磁性ビーズに対するプローブ(P)のハイブリダイゼーションを示す模式図である。特に、2つの例証、すなわち、IおよびIIが示され、例証Iは、システムの構成要素を示し、例証IIは、それら構成要素の相互作用を示す。
【0049】
上記プローブ(P)上の左巻きのPNA(L)は、左巻きのPNA相補体(Lc)で官能化した磁性ビーズ(M)にハイブリダイズし、ここで上記PNAの相補的な対は、キラルであり、左巻きのらせん構造を誘導する環状骨格改変を有する。いくつかの実施形態において、左巻きのPNAの対は、ハイブリダイズするために使用される。磁性ビーズ(M)にハイブリダイズするプローブ(P1)が図示され、これは、本発明の実施形態の多くに共通する。ハイブリダイゼーションは効果的であり、例えば、サンプル中でのビーズの使用ならびに標的および/もしくは検出部分に既に結合された別個のプローブの使用を可能にするか、または代わりに、上記ビーズへのハイブリダイゼーション後に結合され得る。
【0050】
他の例では、固定した基材(すなわち、表面)が、左巻きのPNA(Lc)で官能化され、プローブ(例えば、プローブP)は、その後の標的の捕捉のために上記表面にハイブリダイズするか、または標的に既に結合しており、上記固定した表面上での捕捉は、感知を可能にする。上記感知は、例えば、上記センサー上で容量型であってもよいし、放射性または非放射性検出によるものであってもよい。
【0051】
図5は、ハイブリダイゼーションによる標的捕捉を示す。具体的には、図5は、(I)標的化部分(本明細書でときおり捕捉部分といわれる)による標的への第1のプローブP1のハイブリダイゼーション、および(II)左巻きのPNA対による磁性ビーズMへの上記プローブのハイブリダイゼーションを示す。この場合に、上記プローブP1は、上記標的に既に結合されており、次いで、上記ビーズへの結合によって、上記標的が、例えば、マイクロ流体の流れの中で運ばれることを可能にする。
【0052】
図6は、標的捕捉のさらなる工程を図示する。特に、図6(これは、図5から進んでいる)は、(III)上記標的に結合する第2のプローブ(P2)、および(IV)左巻きのPNA対による検出部分への上記第2のプローブのハイブリダイゼーションを示す。これは、当該分野で周知のタイプの蛍光センサーによって感知することを可能にする。上記検出部分は、適用に適した任意の公知のタイプのものであり得る。
【0053】
この例は、アッセイに関与する一連の複数の実体が、左巻きのPNA対を使用して、この場合には、標的への両方のプローブの間にある連結で、ビーズ-プローブ、およびプローブ-検出部分をどのように一緒に繋がれ得るかを示す。
【0054】
図7は、右巻きの標的化PNAの使用を図示する。特に、図7は、右巻きの標的化PNA、リンカーおよび左巻きのPNAを有するプローブ(P1)の使用を示し、ここで(I)上記プローブは、その右巻きの標的化PNAによって標的核酸配列にハイブリダイズする、および(II)上記プローブは、左巻きのPNA対によって上記ビーズにハイブリダイズする。これは、プローブが、左巻きのPNA対、リンカー、および任意の適切な結合実体(例えば、この場合には、右巻きの標的化PNA R1)のうちの1つを有し得ることを図示する。
【0055】
図8は、図7に示される方法のさらなる工程を示す。特に、図8は、図7の機序の拡張であり、ここで(III)プローブ(P2)は、標的NAに結合する第2の右巻きの標的化PNA(R2)を有する、および(IV)検出部分は、第2の左巻きのPNA対によって結合される。
【0056】
図9は、標的化抗体が関わるアッセイを示す。特に、図9は、(I)プローブP1が、標的化抗体、リンカー、および左巻きのPNAを有する、および(II)それが、左巻きのPNAによってビーズ(M)にハイブリダイズするアッセイを示す。
【0057】
図10は、図9のアッセイの続きである。特に、図10は、図9からのアッセイの発展を示し、ここで(III)上記プローブ(P1)抗体は、検出部分または第2の左巻きのPNA(L2)を有する第2のプローブ(P2)に結合する、(IV)上記第2のプローブは、検出部分を有する第2の抗体または第2の左巻きのPNA相補体に結合する。
【0058】
PNAが結合体化したビーズおよびRNAの富化および蛍光アキラルPNAでの繋留は、種々の例において達成される。左巻きのPNA対の使用は、長くかつ構造的に複雑なRNAを効率的に捕捉することが示された。上記第1の工程において、溶液中で遊離しているPNAプローブが上記標的RNAとハイブリダイズする機序から利益を受ける多くのアッセイが存在する。第2の工程において、例えば、マイクロスフェア(例えば「Dynabeads」)の形態にあり、上記標的RNAに結合した左巻きのPNAプローブに相補的な左巻きのPNAで官能化した磁性ビーズが、導入される。
【0059】
18sリボソームRNAは、長くかつ構造的に複雑なRNAであり、これは、インフルエンザに感染した細胞においてすら、その存在量および細胞間での一貫した発現が原因で、多くのRT-qPCR反応の内因性コントロールとして使用される。このことは、18sを、標的配列での正規化に理想的にしている。それ故に、PCRにおけるその使用と同じ理由から、それはこのアッセイにおいても重要である。上記2工程ハイブリダイゼーションを使用すると、18sリボソームRNAは、上記マイクロスフェアに共有結合された捕捉アキラルまたは右巻きのPNAを用いるより遙かに効率的に全ヒトRNA単離物から捕捉され得ることが示された。さらに、18sリボソームRNAは、この方法を使用して、異なる生物学的バックグラウンド(血液または唾液のいずれか)から富化され得る。
【0060】
1つの局面において、本発明は、標的富化の方法を提供する。上記方法は、捕捉部分に連結された左巻きのPNA分子を含むプローブを、標的分析物を含むサンプルに導入する工程を包含する。上記サンプルは、任意の生物学的サンプルであり得る。例えば、上記サンプルは、被験体から採取された流体サンプル(例えば、血液、唾液、または尿)であり得る。標的分析物は、好ましくはRNAを含む。上記RNAは、病原体のRNAであり得る。例えば、好ましい実施形態において、上記標的RNAは、18SリボソームRNA(18S rRNAと略される)である。好ましくは、上記18S rRNAは、例えば、Hadziavdic, 2014, characterization of the 18S rRNA Gene for Designing Universal Eukaryote Specific Primers, PLoS One 9(2): e87624(参考として援用される)に記載されるように、生物学的な種を同定および/または特徴づけるにあたって使用するための可変性の核酸配列を含む。
【0061】
本発明のプローブは、捕捉部分を含む左巻きのPNA分子を含み、上記捕捉部分は、好ましくは、アキラルであるかまたは右巻きのキラリティーを含む。上記左巻きのPNA分子は、パートナーの左巻きのPNAプローブに相補的な配列を含むPNAの1本鎖配列を含み得る。上記配列は、多くのヌクレオチド塩基(例えば、2個、5個、10個、15個、20個、25個、またはこれより多くの塩基)を含み得る。
【0062】
上記方法は、上記捕捉部分で上記標的分析物を捕捉する工程を包含する。捕捉する工程は、上記標的分析物への上記捕捉部分の相補的な塩基対合によって結合する工程を包含し得る。上記捕捉部分は、上記分析物に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを含み得る。上記オリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAを含み得る。上記捕捉部分は、右巻きのPNAを含み得る。上記捕捉部分は、リンカーによって、上記左巻きのPNA分子に連結され得る。上記リンカーは、1個またはこれより多くの核酸を含み得る。捕捉する工程は、上記捕捉部分プローブ配列が標的分析物のその相補的配列とハイブリダイズすることを可能にする条件下で、標的分析物を有するサンプルとPNAプローブとを接触させる工程を包含し得る。上記プローブは、その結合を可視化することを可能にする、放射性または化学的タグで標識され得る。
【0063】
上記方法は、上記左巻きのPNA分子を左巻きのキラル構造を含む相補的PNA分子と結合させる工程をさらに包含する。上記相補的PNA分子は、好ましくは、表面へと結合され、それによって、標的分析物を富化する。上記表面は、ビーズの表面であり得る。上記ビーズは、磁性ビーズ(例えば、ThermoFisherによって商品名Dynabeadの下で販売される磁性ビーズ)であり得る。あるいは、上記表面は、分析物を検出するためにセンサーと関連付けられた表面を含み得る。
【0064】
1つの局面において、本発明は、本発明の方法を行うための標的富化または枯渇装置に関する。上記装置は、分析物を、捕捉部分に連結された左巻きのPNA分子を含むプローブと結合させるためのチャンバを含む。上記チャンバは、分析物と結合される相補的な左巻きのPNAプローブを含む表面を提供し得る。上記表面は、1個またはこれより多くのビーズ(例えば、磁性ビーズ)であり得る。上記1個またはこれより多くの磁性ビーズは、上記装置の区画から放出可能であり得る。上記区画は、上記装置の蓋における区画であり得る。例えば、上記ビーズ(PNAプローブを有する)は、上記チャンバの区画内部の熱感受性基材(例えば、ワックス)中にパッケージされ得る。上記ビーズは、上記プローブが、熱を適用することによって分析物と結合した後に、上記装置を加熱することによって上記チャンバへと放出され得る。相補的プローブを含むビーズを放出することは、分析物を上記磁性ビーズへと効果的に繋留する。上記装置と関連付けられた磁石は、上記分析物が結合したビーズを溶融したワックス(これは、冷却することによって再固化され得る)へと引き出すために使用され得る。好ましくは、上記PNAは、キラルでありかつ左巻きのらせん構造を誘導する環状骨格改変を有する相補的PNAの対を含む。例えば、上記装置は、WO/2015/086652または2016/091868(これらの各々は、参考として援用される)に記載されるとおりのサンプル装置であり得る。
【実施例
【0065】
実施例
18sリボソームRNA(rRNA)を、標的配列として使用し、PNAプローブを設計した。その設計したプローブのうちの1つ(これを458Rと称し、本明細書で458R配列ともいわれる)を、3バージョンで合成した。
【0066】
第1のPNA、「458R」は、アキラルPNAであった。第2のものは、「458R RH」、458Rと同じ配列の右巻きのキラルバージョンであった。第3のものは、一方の末端に458R RH PNAを有し、左巻きのキラルPNAに連結したPNAプローブであった(「LH PNA-458R RH」と称される)。超常磁性Dynabeads(1μm)を、上記458Rまたは458R RH PNAのいずれかで、上記ビーズ上に直接官能化し、「LH PNA-458R RH」の場合に関しては、上記左巻きのPNA配列の相補体を、上記ビーズ上に官能化した。
【0067】
結果
蛍光標識した短い合成RNA配列(28塩基)での以前のデータは、5μMのPNAで官能化したビーズの全セットに関して、57℃において、0.05% Tween(登録商標) 20を含むPBS中、上記RNAのおよそ80%の捕捉を与えた。次いで、これらのビーズを、全ヒトRNA単離物に由来する実際の18sリボソームRNAで試験した。1μg(またはコントロールウェル中の0μg)の全ヒトRNAを、458Rまたは458R RHで官能化したDynabeadsTMに10分間直接的にハイブリダイズするか、または代わりに先ず、「LH PNA-458R RH」PNAプローブに10分間ハイブリダイズし、その後さらに10分間、左巻きの相補体ビーズに対してインキュベーションするかのいずれかを行った(全て57℃で、0.05% Tween(登録商標) 20を含むPBS緩衝液中)。上記ビーズによって特異的に捕捉されたRNAの量を測定するために、Atto488蛍光標識アキラルPNAを、上記捕捉した18s rRNAと、10分間、57℃においてハイブリダイズさせた。
【0068】
ビーズを、非特異的に結合したRNAを除去するために洗浄した後、蛍光PNAをハイブリダイズさせ、上記特異的18s RNAをその後、上記磁性Dynabeadsを使用してウェルへ移した。上記18s rRNAへの蛍光標識したPNAの繋留の後、上記ビーズを再び洗浄して、非特異的に結合したPNAを除去した。最後に、ハイブリダイズしたPNAを、10mM 水酸化カリウム溶液および95℃で2分間の加熱工程を使用して、上記Dynabeads上のRNAから溶離した。その溶離したPNAを、プレートリーダーで蛍光測定し、その実験の結果を図11に示す。これは、異なるPNA捕捉システムを使用する、全ヒトRNAからの18s rRNAの捕捉および繋留を示す。
【0069】
図11からのデータは、全ての場合において、蛍光がRNAなしのコントロールウェルより大きかったことから、いくつかの18s rRNAを、ビーズの各セットによって、全ヒトRNA単離物から捕捉したことを示す。458R PNAに関しては、上記RNAとRNAなしのコントロールウェルとの間の差異は、0.12であり、458R RH PNAビーズに関しては、同様であり、0.13の蛍光単位であった。しかし、最大の差異は、0.41蛍光単位の差異で、2工程システムに関して認められた。上記458Rのみが、「LH PNA-458R RH」セットが捕捉したRNAの量のうちの40%を捕捉した。
【0070】
蛍光アキラルPNAを使用する繋留を全ての実験において使用して、上記捕捉システムで代わりに使用され得る第2のPNAプローブを模倣した。左巻きのPNAシステムを使用することの1つの利点は、RNA富化または枯渇が、生物学的に適合性の温度において等温で行われ得ることである。図12を参照すると、これを示す実験が行われた。この実験において上記プローブおよび上記Dynabeadsのハイブリダイゼーションを、37℃で行った。
【0071】
図12は、37℃での全ヒト単離物からの18s rRNAの捕捉および繋留を示し(N=3)、傾向線は、平均値(灰色の点)のものである。
【0072】
線形の傾向は、37℃(通常の体温)での18s rRNAの繋留に関して観察され、これは、捕捉および繋留が、RNAへのハイブリダイゼーションのための高温に依拠しないことを示唆する。1μgおよび0μgのRNAに関して溶離したPNAの量は、57℃で行った図11に示されるように以前に見出されたものに類似であり、これは、高温が、「LH PNA-458R RH」プローブを使用して標的配列にアクセスするか、または特異性を改善するために必要とされないことを示唆する。これは、結果的に、最小限のハードウェアおよび機器類しか、上記アッセイおよび単純な加熱工程を行うために必要とされないことを意味し、これは、サーマルサイクリングが上記プロセスに必要とされないことから、最終的な機器を単純化する。
【0073】
生物学的マトリクスからの標的富化を、左巻きのPNA(2工程)システムでの使用に関して調査した。10% (v/v) リチウム-ヘパリン収集全血および10% 唾液(最終濃度)を、上記アッセイで試験した。これらの生物学的サンプルを、RNase阻害のために、20mM リボヌクレオシドバナジル複合体(RVC)を含むPBS中の50% (v/v)溶液において処理した。上記サンプルを、37℃で30分間加熱し、その後0.05% Tween(登録商標) 20を含むPBS中での10% (v/v)への希釈、ならびに1μgの全ヒトRNA(血液サンプル中)または2ピコモルのCy5標識合成28塩基18s rRNA(唾液サンプル中)のいずれかおよびPNAプローブの添加を行った。上記PNAプローブ「LH PNA-RH 458R」を、37℃で10分間加熱することによって、上記RNAにハイブリダイズさせた。この30μgのLHc官能化Dynabeadsを、ハイブリダイズしたRNA PNAを含む溶液に添加した後、37℃で10分間のさらなるインキュベーション工程を行って、上記ビーズ上のLH PNA相補体を、上記プローブ上のLH PNAにハイブリダイズさせた。血液サンプルの場合には、上記全ヒトRNAから捕捉した18s rRNAを、Dynabeads上で、PBST中で洗浄し、その後、上記ビーズを、Atto488標識アキラルPNAを含むPBST溶液中に置いた。この蛍光アキラルPNAは、上記458R位置に近い18s RNA上の部位に結合するために利用可能である。上記蛍光PNAを、37℃で10分間、上記Dynabeads上の18sにハイブリダイズさせた。次いで、上記Dynabeadsを再び洗浄し、上記RNAを、10mM 水酸化カリウムを含む溶液へと溶離し、95℃へと2分間加熱した。上記ビーズから溶離した溶液を、上記アッセイを通じて、上記18s rRNAへのハイブリダイゼーションを介して溶離プレートへともたらされたAtto488色素に相当する励起波長および発光波長において、分光測定プレートリーダーで読み取った。
【0074】
図13は、全ヒトRNAからの18s RNAの検出のデータを示す。特に、図13は、全ヒトRNAバックグラウンド、ならびにA)全血、およびB)唾液の10%マトリクスからの18s RNAの検出からのデータを示す(ここでN=3であり、傾向線は、左巻きのPNAシステムの使用を図示するために平均値(点線)のものである)。左巻きのPNAシステムは、18s RNAの直接検出を提供し、上記サンプルから観察された。データは、全ヒトRNAバックグラウンドおよびA)全血の10%マトリクスからの18s rRNAの検出、ならびにB)10% 唾液のバックグラウンドからの合成18s RNAの検出を示す(N=3)。傾向線は、平均値のものである(点線)。
【0075】
18s rRNAの捕捉は、0.05% Tween(登録商標) 20を含むリン酸緩衝食塩水の緩衝液を使用し、8mMのRNaseインヒビターRVC(最終濃度)を使用して、10%(v/v)で両方の生物学的溶液から獲得可能であった。両方のグラフの線形的な傾向は、RNA捕捉が、上記アッセイの最終工程において溶液中に溶離したPNAに比例し、上記アッセイが、手元の適用に依存して、異なるサンプルタイプに適用され得ることを示す。これは、上記2工程方法が、ビオチン-ストレプトアビジンの有利な代替の富化方法であることを示す。
【0076】
ビオチン-ストレプトアビジンとの比較
捕捉アッセイを、上記2工程方法において、ビオチン化PNAプローブ 対 左巻きのPNAプローブの性能を直接測定するために試験した。比較のために、上記「LH PNA-RH 458R」プローブを、RNA標的配列に対して同一の右巻きのPNAを含むビオチン化RH 458Rプローブと比較した。Cy5標識した28塩基の合成18s RNAを、ビオチン化プローブまたは「LH PNA-RH 458R」プローブとともに最初にインキュベートして、10分間、37℃でハイブリダイズし、その後、30μgのストレプトアビジンまたは相補的な左巻きのPNAで官能化した1μm Dynabeadsで、室温においてさらに10分間捕捉した。上記捕捉アッセイを、溶液中に残された残留RNAの蛍光を使用して評価し、プレートリーダーで測定した。上記比較アッセイの結果を、図14に示す。これは、標準的なビオチン-ストレプトアビジンアプローチと比較して、RNAの左巻きのPNA捕捉の非常に類似した性能を示す。上記結果は、類似の捕捉効率が、RNA捕捉システムの両方のセットに関して達成されたことを示す。これは、上記2工程RNA捕捉方法が、公知のビオチン-ストレプトアビジンシステムと標的富化において匹敵することを示す。
【0077】
核酸を有するDynabeadsに対する左巻きのPNAの特異性
左巻きのPNAで官能化したDynabeadsを、相補的なCy3標識した合成RNAおよび相補的なFAM標識した左巻きのPNAの両方とともにインキュベートした。上記RNAの右巻きのキラリティーに起因して、左巻きのPNAのみが、RNAが同じ配列を有するにもかかわらず、その相補体に結合するはずである。上記PNAおよびRNAを、除去する前に上記ビーズとともに10分間、57℃で一緒にインキュベートし、溶液中に残っている蛍光を、捕捉の効率に関して測定した。この実験を、同じ相補的なFAM標識したPNAおよびランダムの非相補的なCy3標識したRNAで反復した。捕捉実験の両方のセットを、室温でのビーズの除去とともに反復した。その実験の結果を図15に示す。ここではビーズを、室温(約22℃)または57℃で上記溶液から除去した。
【0078】
図15は、左巻きのおよび右巻きのPNAの捕捉データを示す。特に、図15は、ビーズ上での相補的な左巻きのPNAでの左巻きのPNAの特異的捕捉を示し、そしてRNAの天然の右巻きのキラリティーに起因して、相補的RNAの捕捉がほとんどないことを示す。より少ない非特異的RNA捕捉が、RNA配列がランダム配列である場合に、上記PNA配列と比較して観察された。ビーズを57℃で除去すると、上記ビーズへの同一塩基のRNA結合が防止される。
【0079】
上記実験から、左巻きのPNA Dynabeadsは、溶液中の上記PNAしか特異的に捕捉せず、右巻きのRNAをほとんど全く捕捉しないことが観察され得る。これは、左巻きのPNAシステムの非生物的性質を示す。上記ビーズが室温で除去される場合に、RNAが左巻きのPNA配列の正確な適合を有する最悪の場合のシナリオでは、少量の捕捉は存在する。熱を使用すると、図15に示されるように、非特異的結合は排除され、左巻きのPNAは、捕捉においてごくわずかな減少はあるが、その標的配列を捕捉し得る。上記RNAが正確な適合でない場合には、それは、室温にあってすら、左巻きのPNAによって捕捉されない。これは、上記システムの非生物的性質を示す。
【0080】
さらなる実施例
全ヒトRNAサンプルを、電気泳動を介して1% アガロースゲルに対して二連で泳動した。ここで18sリボソームRNAを、図16に示されるように、異なって官能化したDynabeadsで枯渇させた。サンプル1は、PBST中の全ヒトRNA標準であった。2は、150μg 458R RHビーズとともにインキュベートしたRNAであった。3は、210μg 458R RHビーズとともにインキュベートしたRNAであった。4は、先ず「LH PNA-458R RH」プローブと、続いて150μgのLH PNA相補体ビーズとともにインキュベートしたRNAであった。5は、150μgのストレプトアビジンビーズとともにインキュベートしたRNAを有するコントロールであった。6は、先ず、20「ビオチン化458R RHプローブ」と、続いて150μgのストレプトアビジンビーズとともにインキュベートしたRNAであった。
【0081】
全てのサンプルを、0.75μgの全ヒトRNAとともに10分間、68℃において、PBST中のビーズ(レーン2および3)またはPNAプローブ(レーン4および6)のいずれかとインキュベートし、37℃に冷却した。これに続いて、10分間、47℃で、ビーズとともにインキュベートした(レーン4、5および6)。Image Jを使用して、ゲルを分析したところ、グレーの値の線プロフィールは、垂直方向においてゲルの各レーンについて取得された。最初の各レーンを、28s rRNAバンドの曲線下面積を使用することによってレーンにおけるRNAの濃度に対して正規化した。次いで、上記18s rRNAバンドの曲線下面積を測定し、レーン1におけるRNA標準と比較した。
【0082】
レーン2は、18sバンドにおいておよそ25%の低減を有し、さらにより大きな低減が、レーン3において35%で観察された。最も対照的な差異は、レーン4においてLH PNAシステムで観察された。ここでは溶液から70%が除去された。レーン5を、ストレプトアビジンビーズに関するコントロールとして使用して、非特異的に結合するRNAが存在するか否かを評価した(そのうちおよそ20%がそうであった)、レーン6は、ビオチン化458R RHプローブで使用し、ここでRNAのうちの40%が溶液から除去された。
【0083】
データは、上記LH PNA2工程システムが、18s rRNAを全ヒトRNA単離物から除去するために、ビオチン-ストレプトアビジン2工程システムより良好に機能することが示された。それはまた、458R RH PNAで直接官能化したDynabeadsよりすぐれており、ここで上記2工程は、より大きな、より構造的なRNA標的に結合し、それらを溶液から成功裡に動かすために必要であるようである。ゲルはまた、上記ビーズ上のPNAプローブが、それらの18s標的に対して特異的であることを示した。なぜなら28s rRNAバンドは、全てのレーンにおいて概して変化しないままであり、溶液から同時に除去されなかったからである。
【0084】
利点
アビジンは、生物学的タンパク質でありかつ生物学的サンプル中に天然に存在することから、本発明は、RNA標的を富化または枯渇するにあたって使用するためのアビジンに対する非生物的代替物を提供する。この代替物は、内因性ビオチンまたは食事性ビオチンによって引き起こされる、ビオチン-アビジン試験システムを使用する場合に得られる偽陽性結果の低減に寄与するために使用され得る。DNA合成において提供されるビオチンタグに対する代替物としては、ジゴキシゲニン(DIG)、コレステロールおよびジニトロフェニル(DNP)が挙げられる。これらは、抗原-抗体ベースの検出の代替物である。他の適用において、タンパク質ベースの結合システムが使用され得る(例えば、マルトース結合タンパク質システムでのマルトースタグ、キチン結合タンパク質でのキチンタグ)。大部分の代替では、生物学的実行可能性を確実にするために、冷蔵庫または冷凍庫の中での的確な貯蔵を必要とする標識または検出プロセスにおいて要求される生物学的実体が存在する。このことは、左巻きのPNAシステムでは必要とされない。なぜならPNAは室温で数年間貯蔵され得ることが示されたからである。
【0085】
入手可能な、特に市販されている抗原-抗体/タンパク質システムのこれらのタイプは、数も制限されている。3社のDNA合成会社が、ビオチンに対する3つの代替物を提供したが、DIGまたはコレステロールタグの選択肢が、RNAオリゴ標的に関して2社から入手可能であるに過ぎない。このことは、このようなシステムを使用して達成され得る多重化の量を制限する。LH PNAシステムを、例えば、12のモノマーを含むLH PNAとともに使用すると、そのユーザーが、目的の異なる標的のために、ビーズまたは表面上に対応する相補的PNAとともに潜在的に使用され得る16,777,216の異なる左巻きのPNAを設計することが可能である。これらのビーズは、多重化適用に適切である場合、組成物材料および/または官能化に関して異なる物理的特性のものであり得る。DNAおよびRNAが、キラリティーが原因でこれらのLH PNAに結合しないことから、LH PNAシステムとともに使用される配列は、上記ビーズが、ストリンジェンシーのために上記アッセイにおける温度で除去される限りにおいて、標的核酸がLH PNAと同じ配列であるとしても干渉しない(図15を参照のこと)。
【0086】
LH PNAプローブシステムを使用することの1つの他の利点は、上記LH PNAおよび相補体が、特定の温度範囲において融解温度を有するように設計され得ることである。プログラム可能な融解温度を経る標的放出は、目的のそれらの標的に潜在的に損傷を与えることなく、上記ビーズまたは表面からそれらの標的を集めることを可能にする。これは、ビオチン化核酸を除去するために、65℃で5分間または90℃で2分間において95% ホルムアミド中での煮沸工程を要求するビオチン-ストレプトアビジン捕捉システムとは異なり、上記ビーズから標的を解離するために非常に過酷な条件の必要性を除去する。この工程は、ビオチン分子を放出するために磁性ビーズに結合体化したストレプトアビジンを変性させ、ストレプトアビジンの変性は、上記ビーズが再使用できないことを意味する。左巻きのPNAでコーティングした磁性ビーズは、両方の適用において使用されるプローブがその同じ左巻きのPNA配列を有し、以前のプローブが、その新たな適用で使用する前に、十分に熱融解されて上記ビーズから離れていれば、他の適用のために再使用できた。
【0087】
いくつかの例では、上記PNA対のうちの一方が左巻きのPNAであり、一方が非キラルPNAである場合がまた、想定される。上記システムは、このようなシナリオにおいてなお実行可能であり得るが、アキラルPNAの賢明な設計は、アキラルPNAがハイブリダイズし得、また上記PNAの相補的な対に干渉し得る天然に存在する右巻きのオリゴヌクレオチドとの相互作用を回避するために考慮されなければならない。
【0088】
18s RNAの捕捉は、ビーズ上で直接官能化されたアキラルまたは右巻きのPNAと比較して、左巻きのPNA捕捉システムを使用する場合により効率的であることが認識される。18s RNAの直接検出は、生物学的サンプル(例えば、血液および唾液)から37℃において等温で実現可能である。上記左巻きのPNAの富化システムは、ビオチン-ストレプトアビジンベースの抽出システムに対する非生物的代替物であり、将来的にRNAおよびDNA適用における使用に関して大きな潜在的能力を示す。さらに、左巻きのPNAの配列は、容易に変化され得ることから、上記システムは、対になったビーズ(これは、異なる物理的特性を潜在的に有し得る)によって捕捉される各新たな核酸標的で「プログラム可能」である。これは、これらビーズが、捕捉アレイ、磁性分離、またはさらにフローサイトメトリーのように十分に確立された方法において、選択、標的の枯渇、分析物、抗原、核酸もしくは抗体の検出もしくは多重化のような多くの適用において汎用的ツールとして使用され得ることを示唆する。これは、左巻きのPNAシステムを、非常に多目的な、適応性がありかつ魅力的なシステムにする。
【0089】
RNA標的化および増幅は、酵素による増幅法(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR))を介して旧来から行われている。このような増幅に必要とされる試薬(例えば、酵素)の的確な貯蔵および取り扱いは、生物学的な完全性、および従って、増幅プロセスの成功を確実にするために非常に重要である。これらの温度感受性かつ貯蔵寿命が制限された酵素を、RNA富化の非生物的代替物で置き換えることが示される。直接比較から、左巻きのPNAの2工程方法が、ビーズ上で直接官能化されたアキラルまたは右巻きのPNAよりほぼ4倍多くの18s RNAを全ヒトRNA単離物から捕捉することを示した。上記方法は、37℃で等温的に機能することが示され、18s RNAの捕捉を妨げることなく、全血または唾液の10% 生物学的マトリクス中で使用され得る。上記LHシステムはまた、可視化されるように、アガロースゲル上で、RH 458R官能化ビーズまたはビオチン-ストレプトアビジン2工程システムより成功裡に、18s rRNAを全ヒトRNAサンプルから除去することが可能であった。この方法は、ビオチン-ストレプトアビジンベースの標的富化に対する有望な非生物的代替物を提示する。
【0090】
本明細書で記載される方法は、以前のアプローチに伴う欠点のうちのいくつかまたは全てを回避し、安定して強いが、可逆的な親和性、多数の標的、特異的なビーズまたは基材の一部に結合するプログラム可能性、および温度条件の一定の範囲において安定でありかつ内因性核酸とのクロストークがほとんどない~全くないものを提供する。従って、本発明者らは、本明細書で記載される方法が、当該分野において変革をもたらす可能性があると考える。
【0091】
代替の実施例
本発明は、記載される実施形態に限定されず、構成および詳細において変動し得る。
【0092】
左巻きのPNAおよびリンカーを含む上記第1のまたは第2のプローブ上の標的化部分は、例えば、以下のうちの1またはこれより多くであり得る:ペプチド核酸(アキラルまたはキラルPNA);デオキシリボ核酸;リボ核酸;グリコール核酸;トレオース核酸;ロックド核酸;ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド;またはホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー;タンパク質;ペプチド;非天然アミノ酸を有するペプチドもしくはタンパク質;酵素;抗体;単一ドメイン抗体(ナノボディ(nanobody));アプタマー;薬物分子;低分子;化合物;細胞、あるいは上記のうちの1もしくはこれより多くの組み合わせ。
【0093】
上記検出部分は、例えば、以下のうちの1またはこれより多くであり得る:蛍光標識;発光標識;発色団標識;化学発光標識;放射性標識、酵素標識;または視覚的標識(例えば、金属標識(例えば、金))、マイクロスフェア(磁性、蛍光性、シリカなど);ナノ粒子(カーボンナノチューブ、量子ドットなど);ビオチン標識;アビジン標識;ジゴキシゲニン、コレステロール、もしくはジニトロフェニル標識;西洋ワサビペルオキシダーゼ標識;あるいは上記のうちの1もしくはこれより多くの組み合わせ。
【0094】
種々の例では、上記リンカーは、長さが1~120個の原子のものであり得;元素:C、N、O、S、P、およびSiのうちの1個または数個を含み得;以下の結合:単結合/二重結合/三重結合、アミド結合、エステル結合、ジスルフィド結合、イミノ基、エーテル結合、チオエーテル結合、およびチオエステル結合のうちの1つのみまたは組み合わせを含む鎖中にあり得る。
【0095】
上記左巻きのPNA配列は、上記配列が、これらが、表面上の配列特異的相補的PNAとのみ相互作用し、互いにまたは他の核酸配列と相互作用しないことを確実にするために、長さおよび/またはモノマー配列が変化され得るという点で、多重化を可能にするためにプログラム可能である。
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】