(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-18
(54)【発明の名称】歯肉健康のための口腔ケア組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20230411BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/21 20060101ALI20230411BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q11/00
A61K8/67
A61K8/49
A61K8/365
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/21
A61K8/20
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549563
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2021078040
(87)【国際公開番号】W WO2021170065
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/076797
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ、カーソン、バスコム
(72)【発明者】
【氏名】アーロン、リード、ビースブロック
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、ジョーセフ、イスフォート
(72)【発明者】
【氏名】マウゴルザタ、クルコフスカ
(72)【発明者】
【氏名】ユンミン、シ
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ストランド
(72)【発明者】
【氏名】ライアン、タッセフ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB211
4C083AB282
4C083AB331
4C083AB471
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC301
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC621
4C083AC642
4C083AC681
4C083AC682
4C083AC862
4C083AD011
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD332
4C083AD411
4C083AD412
4C083AD611
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD631
4C083AD632
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD651
4C083AD661
4C083AD662
4C083CC41
4C083DD08
4C083DD15
4C083DD21
4C083DD22
4C083EE33
(57)【要約】
歯肉健康化合物、アミノ酸、及び/又は粘膜付着性化合物を有する口腔ケア組成物。歯肉健康化合物、パルミトイルKTTKSなどのペンタペプチド、及び/又は粘膜付着性化合物を有する口腔ケア組成物。口腔ケア組成物を口腔の少なくとも1つの表面と接触させることによって、動物の口腔内における歯肉退縮の防止、歯肉退縮の停止、歯肉退縮の回復、歯肉退縮の減少、歯肉バリア保護の向上、コラーゲン合成の促進、細胞外マトリックス合成の促進、歯肉の回復力の向上、表皮の厚さの増加、及び/又はフィブリリン合成の促進の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い流さない口腔ケア組成物であって、
(a)歯肉健康化合物であって、好ましくは、歯肉健康化合物は、金属イオン源、ビタミン、アラントイン、歯肉強化ポリオール、ヒドロキシ酸、又はそれらの組み合わせを含む、歯肉健康化合物と、
(b)粘膜付着性ポリマーと、を含み、
前記組成物は、0.1~10s
-1のせん断速度範囲において22℃で測定されたときに、20Pa・s~500Pa・sの粘度稠度係数Kを有し、前記口腔ケア組成物は、蛍光強度率(「FI%」)0.3以上の粘膜付着性指数を有し、好ましくは、前記口腔ケア組成物は研磨剤を含まず、より好ましくは、前記歯肉健康化合物は、ジャスモン酸化合物、ジベレリン酸、ゼアチン化合物、又はそれらの組み合わせを含まない、洗い流さない口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記金属イオン源は、スズ、亜鉛、銅、又はそれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記スズは、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の口腔ケア組成物。
【請求項3】
前記ビタミンは、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、それらの誘導体、若しくはそれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記ビタミンはレチノイド化合物を含み、より好ましくは、前記レチノイド化合物は、ビタミンA、ビタミンAのビタマー、ビタミンAの誘導体、若しくはそれらの組み合わせを含み、又は更により好ましくは、前記レチノイド化合物は、レチノール、レチニルエステル、レチナール、レチノイン酸、トコフェリル-レチノエート、シス-若しくはトランス-レチノイン酸のトコフェロールエステル、イソトレチノイン、アリトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、アダパレン、ベキサロテン、タザロテン、若しくはそれらの組み合わせを含む、請求項1又は2に記載の口腔ケア組成物。
【請求項4】
前記レチニルエステルは、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、又はそれらの組み合わせを含む、請求項3に記載の口腔ケア組成物。
【請求項5】
前記口腔ケア組成物は、アミノ酸を含み、前記アミノ酸は、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸、酸性アミノ酸、若しくはそれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記アミノ酸は、天然起源のアミノ酸、合成アミノ酸、及びそれらの組み合わせを含み、又はより好ましくは、前記アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ジアミノ酪酸、ジアミノプロピオン酸、それらの塩、若しくはそれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項6】
前記アミノ酸は、ペプチド、ポリペプチド、若しくはそれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記ペプチドは、2アミノ酸~10アミノ酸を含み、又はより好ましくは、前記ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド、ペンタペプチド、若しくはそれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項7】
前記ペプチドは、リジン、スレオニン、セリン、グリシン、グルタミン酸、ヒスチジン、プロリン、若しくはそれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記ペプチドは、グリシン-ヒスチジン-リジン、グリシン-グルタミン酸-リジン-グリシン、リジン-スレオニン-スレオニン-リジン-セリンの配列若しくはそれらの組み合わせを有するペプチドを含み、より好ましくは、前記ペンタペプチドは、脂肪族鎖に共有結合したリジン-スレオニン-スレオニン-リジン-セリンの配列を有するペンタペプチドを含み、又は更により好ましくは、前記ペンタペプチドはPal-KTTKSを含む、請求項6に記載の口腔ケア組成物。
【請求項8】
前記組成物はフッ化物を含み、好ましくは、前記フッ化物は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項9】
前記歯肉健康化合物はレチノールを含み、前記アミノ酸はPal-KTTKSを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の口腔ケア組成物を口腔の少なくとも1つの表面と接触させることを含む、動物の前記口腔内における歯肉退縮の防止、歯肉退縮の停止、歯肉退縮の回復、歯肉退縮の減少、コラーゲン合成の促進、細胞外マトリックス合成の促進、歯肉の回復力の向上、表皮の厚さの増加、フィブリリン合成の促進、又はそれらの組み合わせの方法。
【請求項11】
キットであって、
(a)請求項1~9のいずれか一項に記載の洗い流さない口腔ケア組成物と、
(b)送達支持材料と、を含む、キット。
【請求項12】
前記送達支持材料は、ストリップ、材料のフィルム、歯科用トレイ、アライナ、スポンジ材料、アプリケータ、又はそれらの混合物を含む、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
口腔ケア組成物であって、
(a)歯肉健康化合物であって、好ましくは、前記歯肉健康化合物は、金属イオン源、ビタミン、アラントイン、歯肉強化化合物、又はそれらの組み合わせを含む、歯肉健康化合物と、
(b)粘膜付着性ポリマーと、を含み、
前記組成物は、0.1~10s
-1のせん断速度範囲において22℃で測定されたときに、20Pa・s~500Pa・sの粘度稠度係数Kを有し、前記口腔ケア組成物は、蛍光強度率(「FI%」)0.3以上の粘膜付着性指数を有し、好ましくは、前記口腔ケア組成物は研磨剤を含まず、より好ましくは、前記歯肉健康化合物は、ジャスモン酸化合物、ジベレリン酸、ゼアチン化合物、又はそれらの組み合わせを含まない、口腔ケア組成物。
【請求項14】
前記口腔ケア組成物は、単位用量口腔ケア組成物、乳化組成物、分散液、歯磨剤組成物、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス組成物、ムース、フォーム、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、義歯ケア製品、義歯用接着剤製品、又はそれらの組み合わせである、請求項13に記載の口腔ケア組成物。
【請求項15】
口腔ケアレジメンであって、
(a)歯磨剤組成物を口腔に適用するようにユーザに指示することと、
(b)洗い流さない口腔ケア組成物を前記口腔に適用するように前記ユーザに指示することであって、前記洗い流さない口腔ケア組成物は歯肉健康化合物を含む、ことと、を含み、
好ましくは、前記歯磨剤組成物は金属イオン源を含み、より好ましくは、前記金属イオン源は、スズ、亜鉛、若しくはそれらの組み合わせを含み、
好ましくは、前記歯肉健康組成物は、金属イオン源、ビタミン、アラントイン、歯肉強化化合物、若しくはそれらの組み合わせを含み、より好ましくは、前記ビタミンはレチノイド化合物を含み、又は更により好ましくは、前記レチノイド化合物はレチノールを含む、口腔ケアレジメン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯肉健康化合物及び粘膜付着性ポリマーを含む口腔ケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔上皮バリアは、宿主を環境から分離し、病原体、外因性物質、及び機械的応力に対する防御の最前線を提供する。口腔上皮バリアは、基礎となる結合組織及び基底膜を有する層化された角質化上皮を含み、その細胞は最終分化を行って機械的耐性表面を形成する。歯肉ケラチノサイトは、それぞれが特殊な構造及び特定の機能を有する、密着接合、接着接合、及びギャップ接合などの様々な膜貫通型タンパク質によって結合される。細菌は、宿主防御に有害な化合物、内毒素及び外毒素、フリーラジカル及びコラーゲン分解酵素、ロイコトキシン、細菌性抗原、老廃物、及び毒性化合物を分泌する。歯肉上皮バリアの破壊、及びその後の外因性病原体の宿主組織への浸透は、炎症反応を引き起こし、慢性感染を確立する。このよく適応している優れた防御システムが細菌の病原性及び長引く炎症に圧倒されると、サイトカイン及び細菌産物による刺激に続き、組織破壊が宿主細胞によって媒介され得る。接合上皮は、根表面で頂端に移動し、コラーゲン破壊を活性化し、最終的に歯周ポケットの形成及び歯肉退縮をもたらす。
【0003】
歯肉退縮は、セメントエナメル境(cementoenamel junction、CEJ)で歯に付着する歯肉組織の喪失であり、CEJとは、エナメル質によって被覆される歯冠と、セメント質によって被覆される歯の根とを区別するわずかに見える境界である。歯肉が退縮するとき、歯肉組織とCEJとの間に間隙が形成され、それによって歯の根のセメント質がより多く露出する。細菌及び壊死組織片は、歯の表面と歯肉組織との間に形成された間隙に蓄積し得る。
【0004】
歯肉退縮は、歯の根を露出させて、潜在的な歯の喪失につながる虫歯又は歯周病をもたらし得、審美的に不快なものと見なされ得る。歯科専門家は、蓄積された細菌、プラーク、及び/又は歯石を機械的に除去することができるが、重度の歯肉退縮を治療する唯一の方法は、歯肉移植手術であり、これは、痛みを伴い、不便であり、かつ高価であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、発症リスクの高い個人、又は現在、歯肉退縮と診断されている個人に対する非外科療法オプションが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この概要は、詳細な説明において以下に更に記載される簡略化された形態の概念の選択を導入するために提供される。この概要は、特許請求された主題の必須の又は本質的な特徴を特定することを意図するものではない。また、この概要は、特許請求された主題の範囲を制限するために使用されることを意図したものでもない。
【0007】
本明細書には、歯肉健康化合物及び粘膜付着性ポリマーを含む洗い流さない口腔ケア組成物が開示され、組成物は、0.1~10s-1のせん断速度範囲において22℃で測定したときに、20Pa・s~500Pa・sの粘度稠度係数Kを有し、口腔ケア組成物は、蛍光強度率(「FI%」)0.3以上の粘膜付着性指数を有する。
【0008】
本明細書では、歯肉健康化合物、アミノ酸、及び粘膜付着性ポリマーを含む洗い流さない口腔ケア組成物が開示される。
【0009】
本明細書では、歯肉健康化合物及びアミノ酸を含む口腔ケア組成物が開示され、組成物は、洗い流さない口腔ケア組成物、単位用量口腔ケア組成物、乳化組成物、分散液、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、フォーム、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、義歯ケア製品、義歯用接着剤製品、又はそれらの組み合わせである。
【0010】
また、本明細書には、開示される組成物及び好適な送達支持材料を含むキットが開示される。
【0011】
また、本明細書には、口腔内の歯肉の健康を改善するために、開示された組成物を使用する方法が開示される。
【0012】
また、本明細書には、開示された口腔ケア組成物を口腔の少なくとも1つの表面と接触させることを含む、動物の口腔内における歯肉退縮の防止、歯肉退縮の停止、歯肉退縮の回復、歯肉退縮の減少、歯肉バリア保護の向上、コラーゲン合成の促進、細胞外マトリックス合成の促進、歯肉の回復力の向上、表皮の厚さの増加、及び/若しくはフィブリリン合成の促進、又はそれらの組み合わせの方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】年齢による歯肉退縮を有する一般的な米国人口の割合を示す。
【
図3A】歯肉老化臨床集団における年齢に対するCAL(cor:0.64、p:1.7e-11)の増加を示す。
【
図3B】歯肉老化臨床集団における年齢に対する退縮の減少(cor:-0.63、p:1.8e-11)を示す。
【
図4】開示された組成物による処置前の(左)歯と、歯肉健康化合物及びペンタペプチドによる6か月の処置後(右)との対照比較を示す。処置後に、歯の正中線での歯肉縁の上方成長及び内向きの移動が見られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、粘膜付着性ポリマー及び/又はアミノ酸と組み合わせた歯肉健康化合物を含む口腔ケア組成物に関する。加えて、本発明は、開示された口腔ケア組成物を口腔の少なくとも1つの表面と接触させることを含む、動物の口腔内での歯肉退縮の防止、歯肉の回復力の向上、歯肉退縮の停止、歯肉退縮の回復、歯肉バリア保護の向上、コラーゲン合成の促進、フィブリリン合成の促進、又はそれらの組み合わせの方法に関する。
【0015】
老化は、皮膚及び歯肉などの上皮組織を含む多くの組織に物理的な悪影響を及ぼす。横断研究分析を通じて、老化した皮膚及び歯肉における機能の喪失に関与する共通の分子特徴を特定した。そのような特徴は、皮膚において十分に研究されており、老化関連の損傷を改善するために薬理学的に標的とされてきた。しかしながら、本明細書に記載されるように、歯肉は十分に研究されていない。予想外に、真皮の健康を改善するのに有効であることが見出された成分が歯肉に適用されたとき、歯肉退縮が停止するだけでなく、歯肉退縮が回復した。このように、本明細書に記載の口腔ケア組成物は、退縮を含む歯肉老化のいくつかの悪影響を回復させるための明白でないアプローチをもたらした。
【0016】
図1に示すように、自然の年齢に伴う歯肉退縮は、ほぼ全ての人々に発生する。
図2に示すように、歯肉退縮の3つの重要な基準がある。クリニカルアタッチメントレベル(Clinical Attachment Level、CAL)は、プロービングポケットの深さ(Probing Pocket Depth、PPD)に依存する歯肉退縮の測定である。CALは、老化及び歯周炎を含む多くの要因から生じ得る歯肉退縮の基準である。セメントエナメル境(CEJ)に対する歯肉縁の相対位置によって画定される歯肉退縮は、PPDとは無関係である(退縮メトリックは、退縮の悪化がこのメトリックの減少によって示されるように、歯肉縁がCEJより下に退縮するにつれて減少することに留意されたい)。この歯肉退縮の形態は、歯周炎とは関係なく、年齢と共に自然に発生する。
【0017】
自然老化により、人体全体の組織は、皮膚及び歯肉などの上皮組織を含む有害な物理的変化を起こす。これらの変化は、重要な遺伝子及び対応するタンパク質の発現における分子変化に関連付けられる。2つの重要な上皮組織、皮膚及び歯肉における一般的な年齢に伴う分子変化をよりよく理解するために、20歳~70歳の年齢コーホートにおいて10年刻みで老化する健康な皮膚及び歯肉組織の遺伝子発現変化の比較ヒト臨床研究を行った。予想どおり、研究対象の個人は、
図3に示すように、年齢に伴う歯肉退縮を実証した。
【0018】
皮膚及び歯肉の老化には、いくつかの新規の分子類似性が存在する。遺伝子発現の分析と老化研究間の比較により、皮膚及び歯肉の両組織における年齢の関数として重要なコラーゲン遺伝子における同様の統計的に有意な減少パターンが特定された。具体的には、主要なコラーゲン遺伝子、COL1A1及びCOL1A2(以下の表1に示される)の両方において年齢に関係する減少が観察された。
【0019】
コラーゲンは、皮膚を含む体内の多くの組織を強化及び支持するタンパク質のファミリーである。I型コラーゲンは、人体内のコラーゲンの最も豊富な形態であり、体内の全てのタンパク質の25~35%、及び皮膚中のタンパク質の75~80%を占める。COL1A1及びCOL1A2は、I型コラーゲンタンパク質を作製するタンパク質の遺伝子コードである。これらのタンパク質は、歯肉組織における皮膚及び上皮下結合組織を含む身体全体の結合組織に見られるI型コラーゲン繊維を架橋し、形成する。重要なことに、皮膚中のコラーゲンの喪失は、弛緩症、しわの形成、及び皮膚の菲薄化を含むいくつかの皮膚老化状態に関連付けられている。コラーゲン産生の増加は、皮膚の外観を改善するための薬剤及び化粧品原料組成物の共通の目標である。
【0020】
当比較老化研究における分子的類似性を考慮すると、理論に束縛されるものではないが、歯肉退縮は、少なくとも部分的には、皮膚老化中に発生するものと同様のコラーゲン発現の年齢に伴う減少によるものと理論付けられた。このように、上皮下結合組織におけるコラーゲンの喪失は、歯肉の菲薄化及び歯肉繊維の喪失をもたらし得、そのいずれも歯肉退縮の原因となる。更に、皮膚中のコラーゲン遺伝子の発現を増加させ得る化学化合物は、また、年齢に伴う歯肉退縮を回復させ得る。
【0021】
したがって、化合物スクリーニングのためのヒト臨床プロトコルで、皮膚への材料の適用後のコラーゲン遺伝子の発現について試験した。いくつかの歯肉健康化合物及び/又はペプチドは、コラーゲン発現を促進するのに有効であることが示された。
【0022】
比較皮膚及び歯肉老化遺伝子発現研究からの観察、並びにコラーゲン喪失は皮膚及び歯肉の両方の老化の原因となるという理論に基づき、粘膜付着性ゲルで局所に適用されたときのレチノールとPal-KTTKSの組み合わせの効果を評価するヒト臨床研究が実施された。開示された口腔ケア組成物による処置は、歯肉に適用されたときに皮膚コラーゲンを増加させた。重要なことに、レチノイド化合物などの歯肉健康化合物とペプチドとの組み合わせは、別々に適用される成分と比較して予想外に高い改善を実証した。
【0023】
合計で6か月の処置後に、レチノールとPal-KTTKSとの組み合わせは、粘膜付着性ビヒクル単独と比較したとき、複数の基準による歯肉退縮の統計的に有意な改善を実証し、
図4に示すように、改善は視覚的に観察可能であった(表2)。驚くべきことに、ブラッシング後の摩耗の低減によって決定されたように、損傷に対する歯肉の回復力の向上及び/又はバリア保護の改善が観察された。
【0024】
レチノールを含むいくつかのスキンケア組成物が開示されてきたが、スキンケア組成物は、摂取に適さない化合物が含まれているため、口腔内での使用には適さないことが予想される。したがって、皮膚科学的に許容可能な組成物は、必ずしも口腔ケア組成物としての使用に好適ではない。
【0025】
更に、多くのスキンケア組成物において、レチノイドはいくらかの刺激を引き起こす可能性があり、これは口腔ケア組成物には許容しがたいものである。予想外に、レチノイドは、刺激を最小限に抑えるか、刺激を与えることなく、歯肉健康を改善することが見出された。
【0026】
定義
本明細書で使用する場合、「口腔ケア組成物」は、歯の表面又は口腔組織に接触するのに十分な時間、口腔内に保持される製品を意味する。口腔ケア組成物の例としては、歯磨剤、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、フォーム、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、義歯ケア製品、又は義歯用接着剤製品が挙げられる。口腔ケア組成物はまた、口腔表面への直接適用又は付着のためのストリップ、トレイ、又はフィルム上に組み込まれてもよい。
【0027】
本明細書で理解されるように、用語「円錐貫入稠度値」は、10分の1ミリメートルでの、質量、時間、及び温度の固定条件下で標準円錐が試料に貫入するであろう深さを意味する。円錐貫入稠度値は、最初にASTM法D937-07に従って測定される。ASTM法D937-07に従って測定された円錐貫通稠度値が600以下である場合、この値は円錐貫通稠度値であり、ASTM法D937-07に従って測定された円錐貫通稠度値が600を超える場合、円錐貫通稠度値は、本明細書で指定された「ASTM法D937~07の変更版」に従って測定されており、この値は円錐貫通稠度値である。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「送達支持材料」は、歯の表面に対して多相口腔ケア組成物を保持するために使用される材料又は器具を含む。送達支持材料の例としては、ストリップ、歯科用トレイ、アプリケータ、アライナ、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
用語「ストリップ」は、本明細書で使用する場合、1)その最も長い寸法長さが、一般に、その幅よりも大きい、及び2)その幅が、一般に、その厚さよりも大きい材料を含む。ストリップは、長方形、アーチ状、湾曲状、半円状であってもよく、丸みのある角部を有してよい、その内部へとスリットカットを有してよい、その内部へとノッチカットを有してよい、三次元形状内へと湾曲してよい、又はそれらの組み合わせであってもよい。ストリップは、固体、半固体、表面模様付き、型取り可能、可撓性、変形可能、持続的に変形可能、又はそれらの組み合わせであってもよい。ストリップは、ポリエチレン又はワックスシートを含む、プラスチックシートから作製されてよい。ストリップの例としては、約66mmの長さ、15mmの幅、及び0.0178mmの厚さの、ポリエチレン部品が挙げられる。持続的に変形可能なストリップの例としては、約66mmの長さ、15mmの幅、及び0.4mmの厚さの、鋳造ワックスシート部品が挙げられる。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「又は」は、2つ以上の要素の接続詞として使用される場合に、要素を個々に、及び組み合わせで含むことを意味し、例えば、X又はYは、X若しくはY、又はこれら両方を意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、冠詞「a」及び「an」は、特許請求される又は記載される材料、例えば、「口腔ケア組成物」又は「ペプチド」の1つ以上を意味するものと理解される。
【0032】
本明細書で使用する場合、用語「安全かつ有効な量」は、健全な医学/歯学的判断の範囲内で、処置すべき状態を有意に(よい方向に)改変するか、又は所望のホワイトニング結果に影響を及ぼすには十分多いが、重篤な副作用を(妥当な利益/危険比で)回避するのに十分に少ない、構成成分の量を意味する。構成成分の安全かつ有効な量は、処置される特別な症状、処置される患者の年齢及び身体状態、症状の重さ、処置期間、併用療法の性質、用いられる特定の形態、並びに構成成分に適用する特別な溶媒により、変化し得る。
【0033】
用語「ディスペンサ」は、本明細書で使用する場合、口腔ケア組成物を分配するのに好適な、任意のポンプ、チューブ、又は容器を意味する。
【0034】
本明細書で有用な「有効物質及び他の成分」は、美容的及び/若しくは治療的効果、又はそれらが要求される作用形態若しくは機能により、本明細書において分類又は記載されてよい。しかしながら、本明細書で有用な有効物質及び他の成分が、場合によっては、2つ以上の美容的及び/又は治療的効果をもたらす、あるいは2つ以上の作用形態で機能又は作用してよい、と理解すべきである。したがって、本明細書における分類は便宜上実施されるものであり、成分を、列挙される具体的に規定した機能又は作用に制限しようとするものではない。
【0035】
用語「歯」は、本明細書で使用する場合、天然歯、並びに人工歯、又は義歯を意味し、1つの歯又は複数の歯を含むように解釈される。したがって、用語「歯の表面」は、本明細書で使用する場合、天然歯の表面、並びに人口歯の表面、又は義歯の表面を意味する。
【0036】
用語「経口で受容可能な支持材料」は、口腔内にて使用するのに好適な1つ以上の相溶性のある固体若しくは液体賦形剤、又は希釈剤を含む。用語「相溶性」は、本明細書で使用する場合、組成物の構成成分が、組成物の安定性及び/又は有効性を実質的に低下させるような方式で相互作用することなく、混合され得ることを意味する。
【0037】
本明細書全体を通して「消費者」又は「患者」への具体的な言及がなされるが、これらの用語は、多相口腔ケア組成物の任意の使用者を指すために互換的に使用される。消費者又は患者は、口腔自体に組成物を適用することができるか、又は歯科医、衛生医、歯列矯正医、又は他の医療専門家若しくは歯科専門家などの第三者によって口腔に適用される組成物を適用させてもよい。
【0038】
用語「歯肉ケア」とは、歯肉の発赤、腫脹、若しくは柔らかくなってしまっている状態、及び/又は歯肉茎部(stem gum)の出血が挙げられる、初期の歯肉疾患(すなわち、歯肉炎)の症状のうちの1つ以上を軽減することを目的とする利益を意味する。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「歯肉健康」とは、歯肉及び歯周の創傷治癒を少なくとも改善することを含む「歯肉ケア」上の利益を提供する、並びに歯肉炎、歯周炎又はこれらの両方を含む歯肉疾患に関し細菌の有害な影響を軽減するように歯肉バリアの回復力の改善及び強化を提供する、口腔ケア組成物の固有の又は促進された利益を指す。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「促進する」とは、口腔内で本発明の口腔ケア組成物を使用することに関連する歯肉健康上の利益を促進及び/又は増強することを意味する。
【0041】
本発明で使用する場合、用語「~を実質的に含まない(substantially free)」は、組成物中に、かかる組成物の総重量の0.05%以下、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.001%以下の指示物質が存在することを指す。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「~を本質的に含まない(essentially free)」は、指示物質が組成物に意図的に添加されたものでないこと、又は好ましくは分析によって検出可能な濃度では存在しないことを意味する。すなわち、指示物質が、意図的に添加されたその他の物質のうちのいずれかの不純物としてのみ存在する、組成物を包含することを意味する。
【0043】
用語「口腔衛生レジメン」又は「レジメン」とは、口腔健康のための2つ以上に分かれた異なる処置工程、例えば、練り歯磨き、マウスリンス、フロス、爪楊枝、スプレー、口腔洗浄器、マッサージ器を使用するための用語であり得る。
【0044】
本明細書で使用するとき、用語「総含水量」とは、遊離水、及び口腔ケア組成物中の他の成分によって結合される水、の両方を意味する。
【0045】
本明細書で以後使用される全ての割合及び比率は、特に指示がない限り、組成物全体の重量%(wt%)である。本明細書で言及される成分の百分率、比率、及びレベルは、特に指示がない限り、成分の実際の量に基づき、かつ市販製品として成分に組み合わされている場合がある溶媒、充填剤、又は他の物質を含まない。
【0046】
特に明記しない限り、本明細書で言及される測定は全て約23℃(すなわち、室温)で行われる。
【0047】
本明細書で指定された方法を有する全てのパラメータは、特に指示がない限り、本明細書で指定された方法を使用して測定される。
【0048】
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、歯肉健康化合物、ペプチド、及び/又は粘膜付着性ポリマーを含む。更に、口腔ケア組成物は、以下に記載されるように、他の任意の成分を含み得る。以下のセクションヘッダーは、あくまでも便宜上提供されるものである。場合によっては、化合物は、1つ以上のセクション内に含まれ得る。例えば、フッ化第一スズは、スズ化合物及び/又はフッ化物化合物であり得る。加えて、ヒアルロン酸又はその塩は、歯肉健康化合物及び/又は粘膜付着性ポリマーであり得る。
【0049】
歯肉健康化合物
本発明の口腔ケア組成物は、歯肉健康化合物を含む。歯肉健康化合物は、歯肉健康化合物を口腔の少なくとも1つの表面と接触させることを含む、動物の口腔内における歯肉退縮の防止、歯肉退縮の停止、歯肉退縮の回復、歯肉退縮の減少、歯肉バリア保護の向上、コラーゲン合成の促進、細胞外マトリックス合成の促進、歯肉の回復力の向上、表皮の厚さの増加、及び/又はフィブリリン合成の促進、又はそれらの組み合わせを行う化合物である。
【0050】
好適な歯肉健康化合物としては、金属イオン源、レチノイド化合物などのビタミン、ジャスモン酸化合物、ジベレリン酸、ゼアチン化合物、アラントイン、歯肉強化ポリオール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。化合物のそれぞれの部類は、以下でより詳細に論じられる。
【0051】
ビタミン
口腔ケア組成物は、1つ以上のビタミンを含み得る。本明細書で使用する場合、「ビタミン」は、ビタミンの全ての天然及び/若しくは合成類縁体、ビタマー、ビタミンの生物学的活性を呈する化合物及び/若しくは誘導体、これらの化合物の異性体、これらの化合物の立体異性体、これらの化合物の塩、又はそれらの組み合わせを含む。
【0052】
歯肉健康のために好適なビタミンは、レチノイド化合物などのビタミンA、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸及び/又は葉酸塩)、ビタミンB12(シアノコバラミン)を含むビタミンB、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。ビタミンはまた、コリン、カルニチン、又はそれらの組み合わせなどの他のビタミン様化合物を含み得る。
【0053】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.0001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、又は約0.01重量%~約2重量%のビタミンを含み得る。
【0054】
レチノイド化合物
本発明の組成物は、1つ以上のレチノイド化合物を含み得る。本明細書で使用される場合、「レチノイド化合物」は、ビタミンA又は皮膚内でビタミンAの生物学的活性を有するレチノール様化合物の全ての天然及び/又は合成類縁体、並びにこれらの化合物の幾何異性体及び立体異性体を含む。レチノイドは、例えば、レチノール、レチニルエステル(例えば、レチニルパルミテート、レチニルアセテート、レチニルプロピオネートを含むレチノールのC-Cアルキルエステル)、レチナール、及び/若しくはレチノイン酸(全てトランスのレチノイン酸及び/又は13-シス-レチノイン酸を含む)であり得る。いくつかの実施形態では、レチノイン酸以外のレチノイドが使用される。これらの化合物は、当該技術分野で利用可能であり、いくつかの供給元、例えば、Sigma Chemical Company(St.Louis,Mo.)、及びBoehringer Mannheim(Indianapolis,Ind.)から市販されている。他の好適なレチノイドは、トコフェリル-レチノエート、シス-又はトランス-レチノイン酸のトコフェロールエステル、アダパレン(6-3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル-2-ナフトエ酸)、及びタザロテン(エチル6-2-(4,4-ジメチルチオクロマン-6-イル)-エチニルニコチネート)である。望ましいレチノイドとしては、レチノール、レチノイン酸、パルミチン酸レチニル、酢酸レチニル、プロピオン酸レチニル、レチナール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
レチノイド化合物は、実質的に純物質として、又は天然(例えば、植物)原料からの好適な物理的及び/又は化学的単離により得られた抽出物として含まれてよい。レチノイド化合物は、実質的に純粋であり得るか、又は本質的に純粋であり得る。本発明の組成物は、口腔ケア組成物が、口腔に適用されてから、ケラチン性組織及び誤飲の状態を調節又は改善するために安全かつ有効であるように、安全かつ有効な量のレチノイド化合物を含有し得る。
【0056】
レチノイド化合物は、レチノール、レチニルエステル、レチナール、レチノイン酸、トコフェリル-レチノエート、シス-又はトランス-レチノイン酸のトコフェロールエステル、イソトレチノイン、アリトレチノイン、エトレチナート、アシトレチン、アダパレン、ベキサロテン、タザロテン、又はそれらの組み合わせを含み得る。レチノイド化合物は、口腔内での使用により、医薬品グレード、USP、又は同様のグレードであり得る。レチノイド化合物及び/又はレチノールは、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、又は少なくとも約99.9%の純度を有し得る。口腔ケア組成物は、組成物の約0.0001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、又は約0.01重量%~約2重量%のレチノイド化合物を含み得る。口腔ケア組成物は、約1ppm~約10,000ppm、約500ppm~約5000ppm、約750ppm~約10,000ppm、約1000ppm~約2500ppm、約1500ppm、又は約2250ppmのレチノイド化合物を含み得る。約10,000ppmを超えるレチノイド化合物の量は、スキンケア組成物中には存在しないであろう口腔ケア組成物を配合することによる毒性の懸念につながると考えられる。
【0057】
レチノイド化合物は、シス-及び/又はトランス-アルケン官能基を含むレチノールを含み得る。レチノールは、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、及び/又は少なくとも約99%のトランス-アルケン官能基を含み得る。
【0058】
レチノイド化合物はまた、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び/又は非イオン性界面活性剤などの界面活性剤を含み得、これは、歯肉バリア透過性を改善し得る。好適な界面活性剤としては、ポリソルベートが挙げられ得る。
【0059】
金属
本発明の口腔ケア組成物は、金属を含み得る。金属は、金属イオン源によって提供され得る。金属イオン源は、スズ、亜鉛、銅、又はそれらの組み合わせを含み得る。金属は、歯肉健康上の利益を提供し得る。口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%から約1.5重量%、若しくは約0.3重量%~約0.6重量%の金属及び/又は金属イオン源を含み得る。
【0060】
本発明の金属は、スズイオン源によって提供され得るスズを含む。スズイオン源は、口腔ケア組成物中にスズイオンを提供することができ、及び/又は歯磨剤組成物が口腔に適用されるときに、口腔にスズイオンを供給することができる任意の好適な化合物であり得る。スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、臭化第一スズ、ヨウ化第一スズ、酸化第一スズ、硫酸第一スズ、硫化第一スズ、フッ化第二スズ、塩化第二スズ、臭化第二スズ、ヨウ化第二スズ、硫化第二スズ、及び/又はそれらの混合物などの1つ以上のスズ含有化合物を含み得る。好ましくは、スズイオン源は、フッ化第一スズ、塩化第一スズ、及び/又はこれらの混合物を含み得る。
【0061】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、若しくは約0.3重量%から約0.6重量%のスズ及び/又はスズイオン源を含み得る。
【0062】
本発明の金属は、亜鉛イオン源によって提供され得る亜鉛を含む。亜鉛イオン源は、フッ化亜鉛、乳酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、ヘキサフルオロジルコン酸亜鉛、硫酸亜鉛、酒石酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、グリシン酸亜鉛、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、及び/又は炭酸亜鉛などの1つ以上の亜鉛含有化合物を含み得る。
【0063】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.001重量%~約1重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、若しくは約0.3重量%~約0.6重量%の亜鉛及び/又は亜鉛イオン源を含み得る。
【0064】
歯肉強化ポリオール
本発明の口腔ケア組成物は、歯肉強化ポリオールを含み得る。出願人は、歯肉強化ポリオールが、口腔内の上皮細胞のバリア機能を更に強化することが示されていることを発見した。
【0065】
用語「歯肉強化ポリオール」は、糖アルコール、二糖類、多糖類、及び好ましくは非還元糖であり得る。糖アルコールは、糖化合物の水素化によって得ることができるポリオールの部類であり、式(CHOH)nH2を有し、n=7以上であり、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、又はこれらの組み合わせなどである。好ましくは、nは、約7~約12である。更により好ましくは、歯肉強化ポリオールは、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、又はそれらの組み合わせである。
【0066】
非還元糖は、アルデヒド又はケトン官能基を含有する任意の化合物を生成しない糖類の部類である。非還元糖は水中で安定であり、弱い酸化剤と反応して糖アルコールを生成しない。非還元糖は、電子を他の分子に供与することはできず、典型的には、スクロース、トレハロース、ラフィノース、スタキオース、ベルバスコース、又はそれらの組み合わせなどの、ジ、トリ、テルタ、ペンタ糖である。好ましくは、歯肉強化ポリオールは、トレハロースである。歯肉バリア特性は、全てが7つ以上のヒドロキシル官能基を有するポリオールの組み合わせ混合物から得られ得る。
【0067】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.0001重量%~約20重量%、約0.1重量%~約18重量%、約0.2重量%~約15重量%、約0.5重量%~約15重量%、又は約1重量%~約12重量%の歯肉強化ポリオールを含み得る。
【0068】
歯肉強化特性は、本明細書で以下に記載されるようなバリア保護能力によって特徴付けられ得る。例えば、0.5重量%の濃度で10%超のバリア保護を示すポリオールは、歯肉強化ポリオールとして認定され得る。他の例では、歯肉強化ポリオールは、上記のバリア保護能力を提供し得る限り、5つ以上のヒドロキシル官能基を有するポリオールを含み得る。
【0069】
アラントイン
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約5重量%のアラントインを含み得る。5-ウレイドヒダントイン又はグリオキシルジウレイドとも呼ばれるアラントインは、尿酸の酸化生成物である。アラントインは、創傷及び皮膚刺激を治癒させ、健康な組織の成長を刺激するのに役立つ。いくつかの例では、アラントインは、組成物の約0.02重量%~約4重量%、又は約0.05重量%~約3重量%の量で存在し得る。例えば、アラントインは、組成物の約0.05重量%、又は約0.1重量%、又は約0.2重量%、又は約0.3重量%、又は約0.4重量%、又は約0.5重量%、又は約0.6重量%、又は約0.8重量%、又は約0.9重量%、又は約1重量%の量で存在し得る。アラントインは、ヒアルロン酸含有組成物の創傷治癒利益を改善又は増加させるのに役立ち得る。
【0070】
ヒドロキシ酸
口腔ケア組成物は、ヒドロキシ酸を含み得る。ヒドロキシ酸は、α-ヒドロキシ又はβ-ヒドロキシ酸であり得る。本発明の組成物に使用するためのヒドロキシ酸の例としては、サリチル酸、乳酸、グリコール酸、アセチルサリチル酸、及び他のサリチル酸誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、サリチル酸、並びにサリチル酸の合成及び天然起源の誘導体が本発明の組成物及び方法において使用され得る。ヒドロキシ酸は、式Iの化合物を含み得る。
【0071】
【化1】
式中、
R
1は、COOR、又は-(CH
2)
n-OXであり、
Rは、H、又はアルキル(例えば、1~20個の炭素を有する)であり、
nは、約1~約20の整数であり、
Xは、H、又は1~6個の糖残基(例えば、ヘキソース又はペントース)であり、
R
2は、COOR、-(CH
2)
n-OX、OCO-アルキル(C
1-C
20)、又はOYであり、
Yは、H、アルキル(C
1-C
20)、又は1~6個の糖残基(例えば、ヘキソース又はペントース)である。
【0072】
一般に、これらのヒドロキシ酸化合物で用いられるアルキル基は、約1~20個の炭素原子を有するが、いくつかの実施形態では、低アルキル基、例えば、約1~8個の炭素原子を有するアルキル基が使用される。更に少数の炭素原子を有するアルキル基、例えば、1~6個、又は1~3個の炭素原子を有するアルキル基も使用され得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、サリチル酸は、本発明の組成物に用いられる。サリチル酸は、式Iの化合物であり、式中、R1はCOOHであり、R2はOHである。他の実施形態では、アセチルサリチル酸は、本発明の組成物に用いられる。アセチルサリチル酸は、式Iの化合物であり、式中、R1はCOOHであり、R2はOCOCH3である。
【0074】
本発明の組成物中に存在する場合、ヒドロキシ酸は、組成物の約0.001%~約50%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約10%、又は約0.05%~約5%、又は約0.05%~約2%の量で使用され得る。本発明によれば、約10-4M~約10-6Mの範囲のアセチルサリチル酸又はサリチル酸のその場での濃縮は、細胞増殖を増加させ、哺乳動物のケラチン組織におけるコラーゲンの産生を刺激するのに有効である。
【0075】
あるいは、口腔ケア組成物は、ヒドロキシ酸を実質的に含まない、本質的に含まない、又は含まなくてもよい。口腔ケア組成物は、約0.001%未満のヒドロキシ酸を含み得る。
【0076】
ジベレリン酸
本発明の口腔ケア組成物は、ジベレリン酸を含み得る。ジベレリン酸は、ジベレリンとも称される化合物の分類を含む。ジベレリンは、種子の発芽、茎の伸長、催花、別の発達、並びに種子及び果皮の成長を含む、植物の寿命サイクル全体を通した多種多様なプロセスに影響を及ぼす植物ホルモンである。ジベレリンは、菌類及びent-ジベレラン環系を有する高等植物に見られる四環系ジテルペン酸である。
【0077】
本発明の組成物中に存在する場合、ジベレリン酸又はそれらの誘導体は、組成物の約0.001%~約50%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約10%、又は約0.05%~約5%、又は約0.05%~約2%の量で使用され得る。本発明によれば、約10-4M~約10-6Mの範囲の活性ジベレリン酸のその場濃縮は、細胞増殖を増加させ、哺乳動物のケラチン組織におけるコラーゲンの産生を刺激するのに有効である。
【0078】
あるいは、口腔ケア組成物は、ジベレリン酸を実質的に含まない、本質的に含まない、又は含まなくてもよい。口腔ケア組成物は、約0.001%未満のジベレリン酸を含み得る。
【0079】
ジャスモン酸
本発明の口腔ケア組成物は、ジャスモン酸化合物を含み得る。本発明で用いられるジャスモン酸化合物としては、当業者に利用可能なジャスモン酸及びジャスモン酸誘導体が挙げられる。そのような化合物としては、ジャスモン酸、メチルジャスモネート、及びそれらの異性体が挙げられる。本発明において、使用されるジャスモン酸及びジャスモン酸誘導体は、ジャスモン酸の合成及び天然の立体異性体、ジヒドロジャスモン酸、ヒドロキシジャスモン酸、及びジヒドロ-ヒドロキシジャスモン酸が挙げられ得る。
【0080】
本発明の組成物中に存在する場合、ジャスモン酸又はジャスモン酸誘導体は、組成物の約0.001%~約50%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約10%、又は約0.05%~約5%、又は約0.05%~約2%の量で使用され得る。本発明によれば、約10-4M~約10-6Mの範囲のジャスモン酸のその場濃縮は、細胞増殖を増加させ、哺乳動物のケラチン組織におけるコラーゲンの産生を刺激するのに有効である。
【0081】
あるいは、口腔ケア組成物は、ジャスモン酸化合物を実質的に含まない、本質的に含まない、又は含まなくてもよい。口腔ケア組成物は、約0.001%未満のジャスモン酸化合物を含み得る。
【0082】
ゼアチン化合物
本発明の口腔ケア組成物は、ゼアチン化合物を含み得る。本発明で用いられるゼアチン化合物は、ゼアチンのシス及びトランス異性体と、当業者に利用可能なゼアチン誘導体のシス及びトランス異性体と、を含む。そのようなゼアチン化合物及びゼアチン誘導体は、以下の式IIによって提供される化合物の天然及び合成誘導体であり得る。
【0083】
【化2】
式中、R
3は、H、3-ヒドロキシメチル-3-メチルアリル、アルキル、-(CH
2)
n-CH
3、又はOZであり、
Zは、H、1~6個の糖残基(例えば、ヘキソース又はペントース)、又は-(CH
2)
n-フランであり、
R
4は、H、3-ヒドロキシメチル-3-メチルアリル、アルキル、-(CH)n-C、又はOZであり、
nは、約1~約20の整数である。
【0084】
いくつかの実施形態では、ゼアチンは、本発明の組成物に用いられる。ゼアチンは、式IIの化合物であり得、式中、R3は3-ヒドロキシメチル-3-メチルアリルであり、R4はHである。
【0085】
本発明の組成物中に存在する場合、ゼアチン又はそれらの誘導体は、組成物の約0.001%~約50%、又は約0.01%~約20%、又は約0.01%~約10%、又は約0.05%~約5%、又は約0.05%~約2%の量で使用され得る。本発明によれば、約10-4M~約10-6Mの範囲のゼアチンのその場での濃縮は、細胞増殖を増加させ、哺乳動物のケラチン組織におけるコラーゲンの産生を刺激するのに有効である。
【0086】
あるいは、口腔ケア組成物は、ゼアチン化合物を実質的に含まない、本質的に含まない、又は含まなくてもよい。口腔ケア組成物は、約0.001%未満のゼアチン化合物を含み得る。
【0087】
アミノ酸
口腔ケア組成物は、アミノ酸を含み得る。アミノ酸は、本明細書に記載されるように、1つ以上のアミノ酸、ペプチド、及び/又はポリペプチドを含み得る。予想外に、レチノイド化合物とアミノ酸との組み合わせは、ユーザの歯肉健康を改善し得ることが見出された。
【0088】
アミノ酸は、式IIIにあるように、アミン官能基、カルボキシル官能基、及びそれぞれのアミノ酸に特異的な側鎖(式IIIではR)を含有する有機化合物である。好適なアミノ酸としては、例えば、正又は負の側鎖を有するアミノ酸、酸性又は塩基性の側鎖を有するアミノ酸、極性非荷電側鎖を有するアミノ酸、疎水性側鎖を有するアミノ酸、及び/又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なアミノ酸としては、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セレノシステイン、グリシン、プロリン、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、シトルリン、オルニチン、クレアチン、ジアミノブタン酸、ジアミノプロピオン酸、これらの塩、及び/又はこれらの組み合わせも挙げられる。
【0089】
好適なアミノ酸としては、天然起源の又は合成的に誘導される、式IIIに記載の化合物が挙げられる。アミノ酸は、R基及び環境に基づいて、双性イオン性であるか、中性であるか、正に帯電するか、又は負に帯電し得る。アミノ酸の電荷は、当業者に周知であろう。
【0090】
【0091】
好適なアミノ酸としては、1つ以上の塩基性アミノ酸、1つ以上の酸性アミノ酸、1つ以上の中性アミノ酸、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0092】
口腔ケア組成物は、当該口腔ケア組成物の約0.01重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約6重量%、又は約1重量%~約10重量%のアミノ酸を含み得る。
【0093】
本明細書で使用するとき、用語「中性アミノ酸」には、天然由来の中性アミノ酸、例えばアラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどだけではなく、pH5.0~7.0の範囲の等電点を有する生物学的に許容可能なアミノ酸をも含む。生物学的に好ましい許容可能な中性アミノ酸は、分子中に単一のアミノ基及びカルボキシル基を有するか、あるいは物理化学的特性は類似又は実質的に類似しているが変更された側鎖を有する官能性誘導体などといった、これらの官能性誘導体を有する。更なる実施形態では、アミノ酸は、少なくとも部分的に水溶性であり、25℃で1g/1000mLの水溶液中で7未満のpHを提供する。
【0094】
したがって、本発明での使用に好適な中性アミノ酸としては、アラニン、アミノ酪酸、アスパラギン、システイン、シスチン、グルタミン、グリシン、ヒドロキシプロリン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、タウリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、これらの塩、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物において使用される中性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、グリシン、これらの塩、又はこれらの混合物を挙げることができる。中性アミノ酸は、25℃の水溶液中で、5.0、又は5.1、又は5.2、又は5.3、又は5.4、又は5.5、又は5.6、又は5.7、又は5.8、又は5.9、又は6.0、又は6.1、又は6.2、又は6.3、又は6.4、又は6.5、又は6.6、又は6.7、又は6.8、又は6.9、又は7.0の等電点を有し得る。好ましくは、中性アミノ酸は、プロリン、グルタミン、又はグリシンから選択され、より好ましくはその遊離形態(すなわち、非錯体型)である。中性アミノ酸がその塩形態である場合、好適な塩としては、提供される量及び濃度において生理学的に許容可能であると考えられる、薬剤として許容される塩であることが当該技術分野において既知である塩が挙げられる。好ましくは、中性アミノ酸は、組成物の約0.0001重量%~約10重量%、好ましくは約0.05重量%~約5重量%、好ましくは約0.1重量%~約3重量%、好ましくは約0.5重量%~約3重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%の量で存在する。一態様では、中性アミノ酸はグルタミン(又はその塩)である。別の一態様では、中性アミノ酸はプロリン(又はその塩)である。更に別の態様では、中性アミノ酸はグリシン(又はその塩)である。
【0095】
驚くべきことに、中性アミノ酸の使用は、局所的な洗い流さない適用の範囲内で歯肉線維芽細胞のコラーゲン合成を増加させることが発見された。
【0096】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.0001重量%~約20重量%、約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約6重量%、又は約1重量%~約10重量%の中性アミノ酸を含み得る。
【0097】
ペプチド
口腔ケア組成物は、また、ペプチドを含み得る。ペプチドは、鎖内で一緒に結合したいくつかのアミノ酸残基からなる直鎖有機ポリマーであり、タンパク質分子の一部(又は全体)を形成する。ペプチドは、2アミノ酸~10アミノ酸、2アミノ酸~5アミノ酸、又は4アミノ酸~6アミノ酸を含み得る。
【0098】
限定するものではないが、ジ-、トリ-、テトラ-、及びペンタペプチド並びにそれらの誘導体を含むペプチドは、摂取にも安全かつ有効であることを含む、安全かつ有効な量で本発明の組成物に含まれ得る。本明細書で使用される場合、「ペプチド」は、天然起源のペプチド及び合成ペプチドの両方を指す。また、本明細書で有用であるのは、ペプチドを含有する天然起源の組成物及び市販の組成物である。
【0099】
本明細書で使用するのに好適なジペプチドとしては、例えば、カルノシン(β-ala-his)が挙げられる。本明細書で使用するのに好適なトリペプチドとしては、例えば、gly-his-lys、arg-lys-arg、及び/又はhis-gly-glyが挙げられる。好適なトリペプチド誘導体としては、Biopeptide CLTM(Sederma、Franceから市販されている100ppmのパルミトイル-gly his-lys)として購入され得るパルミトイル-gly-his-lysと、ペプチドCK(arg-lys-arg)と、ペプチドCK(ac-arg-lys-arg-NH2)と、Sigma(St.Louis、Mo.)からIaminとして市販されているhis-gly-glyの銅誘導体が挙げられる。本明細書で使用するのに好適なテトラペプチドとしては、例えば、ペプチドE、arg-ser-arg-lysが挙げられる。
【0100】
本明細書で使用するのに好適なペンタペプチドとしては、lys-thr-thr-lys-serが挙げられる。好ましい市販のペンタペプチド誘導体組成物は、100ppmのパルミトイル-lys-thr-thr-lys-ser(Sederma Franceから市販されている)を含有するMatrixyl(商標)である。
【0101】
ペプチドは、パルミトイル-lys-thr-thr lys-ser、パルミトイル-gly-his-lys、β-ala-his、それらの誘導体、及び/又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、ペプチドは、パルミトイル-lys-thr-thr-lys-ser、パルミトイル-gly-his-lys、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。他の実施形態では、ペプチドは、パルミトイル-lys-thr-thr-lys-ser(pal-KTTKS)及び/又はそれらの誘導体を含む。他の好適なペプチドとしては、gly-his-ly(GHK)、gly-glu-lys-gly(GEKG)、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0102】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.0001重量%~約10重量%、約0.01重量%~約5重量%、約0.001重量%~約5重量%、約0.01重量%~約2重量%、又は約0.0001重量%~約1重量%のペプチドを含み得る。口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約1重量ppm~約1000ppm、約1ppm~約100ppm、約3ppm~約50ppm、又は約1ppm~約5,000ppmのペプチドを含み得る。約5,000ppmを超えるペプチドの量は、スキンケア組成物中に存在しない、口腔ケア組成物と共に配合するための毒性の懸念をもたらすと考えられる。
【0103】
粘膜付着性ポリマー
本発明の口腔ケア組成物は、粘膜付着性ポリマーを含み得る。粘膜付着性ポリマーは、歯肉などの口腔の表面上での保持時間の増加を提供し得る。好適な粘膜付着性ポリマーとしては、ポリアクリル酸、天然ガム、直鎖硫酸化多糖類、キトサン、アルギン酸塩、アニオン性セルロース、非イオン性セルロース誘導体、ポリビニル系ホモポリマー、ポリビニル系コポリマー又は超高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシドコポリマー、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格、ヒアルロン酸、又はそれらの塩、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0104】
ポリアクリル酸(Polyacrylic acid:PAA)ポリマーとは、アクリル酸の合成高分子量ポリマーの総称である。これらは、アリルエーテルペンタエリスリトール、スクロースのアリルエーテル、又はプロピレンのアリルエーテルで架橋された、アクリル酸のホモポリマーであってもよい。また、中性pHの水溶液では、PAAはアニオン性ポリマーであり、すなわちPAAの側鎖の多くがそのプロトンを失い、負電荷を獲得する。これにより、PAA多価電解質は、水を吸収及び保持し、その元の体積の何倍までも膨潤する能力を有するようになる。ポリアクリル酸はまた、carbomerの商標名でも呼ばれる。例えば、Carbopol(登録商標)、Pemulen(登録商標)及びNoveon(登録商標)などのCarbopol(登録商標)型ポリマーは、ポリアルケニルエーテル又はジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のポリマーである。Carbomerのコマーシャルコード、例えば940(商標)は、ポリマーの分子量及び特定の構成成分を示す。
【0105】
好ましくは、天然ガムは、カラヤガム、アラビアガム(アカシアガムとしても知られている)、トラガカントガム、キサンタンガム、アルギン酸塩、キトサン、及びこれらの組合せからなる群から選択される。より好ましくは、天然ガムは、キサンタンガムである。キサンタンガムは、細菌キサントモナス・カメストリス(Xanthomonas camestris)によって分泌される多糖類である。一般に、キサンタンガムは、それぞれ2:2:1のモル比でグルコース、マンノース、及びグルクロン酸を含む、五糖繰り返し単位から構成される。(モノマーの)化学式は、C35H49O29である。一例では、キサンタンガムは、CP Kelco Inc(Okmulgee,US)製である。
【0106】
好ましくは、ヒアルロン酸又はその塩は、分子量範囲(1000~10,000,000Da)の粘弾性直鎖多糖類である。ヒアルロン酸又はその塩は、グルクロン酸とn-アセチグルコシルアミンとのポリマーである、脊椎動物の結合組織中に自然に存在し、高分子量のグルコサミンファミリーのメンバーである。ヒアルロン酸(ヒアルロナン)は、インタクトで健康な歯肉、及び口腔粘膜組織の必須構成要素である。ヒアルロン酸は、早期の肉芽組織形成を誘導し、炎症を阻害し、上皮の代謝回転を促進し、また結合組織の血管新生も促進することによって、創傷治癒を補助するための潜在的に理想的な分子を作る多くの特性を有する。好ましくは、本発明で使用されるヒアルロン酸は、約900,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、好ましくは約900,000ダルトン~約3,000,000ダルトン、より好ましくは約900,000ダルトン~約2,000,000ダルトンの重量平均分子量(M.W.)を有する。ヒアルロン酸の分子量は、ゲル電気泳動法を用いて測定することができる。
【0107】
好ましくは、直鎖硫酸化多糖類は、カラギーナンである。カラギーナンの例としては、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一例では、直鎖硫酸化多糖類は、ι-カラギーナンである。
【0108】
好ましくは、アニオン性セルロースは、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose:「CMC」)である。一例では、CMCは、アルカリ及びモノクロロ酢酸又はそのナトリウム塩で処理することによって、セルロースから調製される。異なる種は、商業上、粘度によって特徴付けられる。市販されている一例は、Ashland Special Ingredients製のAqualon(商標)ブランドのCMC(例えば、Aqualon(商標)7H3SF、Aqualon(商標)9M3SF Aqualon(商標)TM9A、Aqualon(商標)TM12A)である。
【0109】
好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、約50,000ダルトン~約1,300,000ダルトンの重量平均分子量範囲、好ましくは300~4,800の平均重合度を有する。より好ましくは、非イオン性セルロース又はその誘導体は、ヒドロキシエチルセルロース(hydroxyethyl cellulose:「HEC」)である。他の例では、非イオン性セルロースは、ヒドロキシプロピルセルロース又はヒドロキシメチルセルロースであってもよい。
【0110】
好ましくは、ポリビニルベースのホモポリマー、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、又はポリビニル系コポリマー、例えばポリピロリドン-co-ビニルアセテート(PVP/VA)又は超高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)ホモポリマー(Polyox WSRファミリー)又はポリプロピレンオキシドコポリマー(Poloxamers)を含むがこれらに限定されない、非イオン性合成ポリマーである。
【0111】
好ましくは、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマーは、約30,000ダルトン~約1,000,000ダルトンの重量平均分子量を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーからなる群から選択される。
【0112】
一例では、GANTREZ(商標)シリーズのポリマーは、約30,000ダルトン~約1,000,000ダルトンの重量平均分子量(M.W.)を有する無水マレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーである。これらのコポリマーは、例えば、GANTREZ(商標)AN139(M.W.500,000ダルトン)、AN119(M.W.250,000ダルトン)及びS-97医薬品グレード(M.W.70,000ダルトン)として、Ashland Chemicals(Kentucky,USA)から入手可能である。
【0113】
別の実施例では、ACUSOL(商標)及びSOKALANシリーズのポリマーには、アクリル酸のホモポリマー、及びマレイン酸とアクリル酸又はメタクリル酸とのコポリマーが含まれる。その例は、約2,000~約1,000,000ダルトンの重量平均分子量(M.W.)を有するマレイン酸とアクリル酸との0:1000~1000:0コポリマーである。これらのコポリマーは、Dow Chemicals(Michigan,USA)からACUSOL(商標)445及び445N、ACUSOL(商標)531、ACUSOL(商標)463、ACUSOL(商標)448、ACUSOL(商標)460、ACUSOL(商標)465、ACUSOL(商標)497、ACUSOL(商標)490として、またBASF(New Jersey,USA)からSokalan(登録商標)CP5、Sokalan(登録商標)CP7、Sokalan(登録商標)CP45、及びSokalan(登録商標)CP12Sとして市販されている。
【0114】
チオール化粘膜付着性ポリマーの使用は、それによってポリマー骨格中の遊離チオール基が、ムチンに存在するシステインリッチなサブドメインのものとのジスルフィド結合の形成に役立ち得、ポリマーの粘膜付着特性を実質的に改善し得る。チオール化ポリマーとしては、限定するものではないが、キトサン-イミノチオラン、ポリ(アクリル酸)-システイン、ポリ(アクリル酸)-ホモシステイン、キトサン-チオグリコール酸、キトサン-チオエチルアミジン、アルギン酸システイン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース-システインが挙げられる。
【0115】
口腔ケア組成物は、組成物の約0.01重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、約0.1重量%~約8重量%、又は約0.001重量%~約25重量%の粘膜付着性ポリマーを含み得る。
【0116】
追加的又は代替的に、口腔ケア組成物は、天然ガム、直鎖硫酸化多糖類、アニオン性セルロース、非イオン性セルロース誘導体、ポリビニル系ホモポリマー、ポリビニル系コポリマー又は高分子量ポリエチレンオキシド(PEO)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシドコポリマー、少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマー、及び/又はそれらの組み合わせなどのポリアクリル酸及び付加ポリマーを、より良好な感覚的利益を提供する、最適な粘度、良好な接着性、及び保持効果を提供する比で含み得る。
【0117】
加えて、口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約5重量%、約0.1重量%~約1重量%、約0.01重量%~約2重量%、約0.2重量%~約0.8重量%、又は約0.01重量%~約1重量%のヒアルロン酸、ヒアルロン酸の塩、又はそれらの組み合わせを含み得る。
【0118】
口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.01重量%~約5重量%、約0.5重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約5重量%のポリアクリル酸を含み得る。口腔ケア組成物は、組成物の約0.1重量%~約10重量%、約0.5重量%~約6重量%、約1重量%~約5重量%、又は約1.3重量%~約2.6重量%の付加ポリマーを含み得る。付加ポリマーは、天然ガム、直鎖硫酸化多糖類、アニオン性セルロース、キトサン、アルギン酸塩、非イオン性セルロース誘導体、ポリビニルピロリジン、ヒアルロン酸若しくはその塩、又は少なくともポリカルボキシル化エチレン骨格を含むポリマー、及びこれらの組合せを含み得る。
【0119】
いくつかの例では、本発明の口腔ケア組成物中のポリアクリル酸と付加ポリマーとの比は、約5:1~約1:5、好ましくは約3:1~約1:3であり得る。例えば、本口腔ケア組成物中のポリアクリル酸と付加ポリマーとの比は、約4:1、又は約3:1、又は約2:1、又は約1.5:1、又は約1:1、又は約1:1.5、又は約1:2、又は約1:2.5、又は約1:3、又は約1:4、又は約1:5であり得る。
【0120】
本発明に記載される口腔ケア組成物は、歯肉組織、及び対象の口腔内の他の軟組織(例えば、頬側粘膜)上に適用するように構成される。驚くべきことに、最適な粘度並びに良好な付着及び保持効果の両方を有する口腔ケア組成物は、ユーザにとってより良好な感覚的利益を提供し、また、ユーザに対する歯肉健康上の利益を促進するのに特に有用であることが発見されている。
【0121】
そこに記載される口腔ケア組成物は、洗い流さない組成物である。洗い流さない組成物は、歯肉組織、例えば歯肉線縁領域に適用され、2分超、好ましくは10分超、より好ましくは30分超、より好ましくは60分以上にわたって放置される。好ましくは、洗い流さない組成物は、口腔衛生レジメンの最後の工程として、歯肉組織に適用される。例えば、本発明の洗い流さない組成物は、歯をブラッシングした後、任意にはマウスリンス及び/又はフロスを用いた後に適用される。
【0122】
一態様では、本発明は、ゲル形態である口腔ケア組成物を対象とする。容易な適用、薄層形成、並びに歯肉溝/歯肉ポケット内及び歯肉の歯肉線縁に沿った均一な広がりを可能にする、本発明で使用するためのゲルを有することが望ましい。口腔ケア組成物は、本明細書に記載のレオロジー試験法によって測定した際、約20Pa・s~約500Pa・sの粘着稠度係数Kを有する。好ましくは、口腔ケア組成物は、約20Pa・s~約500Pa・s、好ましくは約30Pa・s~約400Pa・s、より好ましくは約40Pa・s~約300Pa・s、更により好ましくは50Pa・s~250Pa・sの粘着稠度係数Kを有する。この最適な粘度プロファイル範囲により、ユーザは展延性のより良好な感覚的経験が得られる。製品の粘性が高すぎる場合、ユーザが歯肉組織へ製品を均一に塗り広げることが困難になる場合がある。製品の粘度が低すぎる場合、流れやすく、指又はアプリケータによって適切な領域に保持することは困難である。あるいは、口腔用組成物は、マウストレイ/ガードの使用中に保持された状態で適用され得る。
【0123】
一態様では、本発明の口腔ケア組成物は、望ましい粘膜付着特性を有する。粘膜付着とは、一方が少なくとも粘膜である2つの表面の間における、表面エネルギーの結果的な低下を伴う界面力による一定期間の付着相互作用と定義できる。口腔ケア用途のための粘膜付着ポリマーとは、理想的には、(1)親水性及び親油性の活性成分を容易に保持し、かつそれらの放出を妨げず、(2)活性成分の浸透及び吸収を促進し、(3)生物学的基質に可能な限り迅速に付着し、かつある期間保持され、(4)安全であり、(5)費用効率が高く、並びに(6)ユーザがアクセス可能な用途を提供するべきである。
【0124】
本発明の口腔ケア組成物は、本明細書に記載の粘膜付着試験方法によって測定される場合、0.3FI%以上の範囲の粘膜付着指数を有する。好ましくは、口腔ケア組成物は、約0.5FI%以上、より好ましくは約1.0FI%以上の粘膜付着指数を有する。
【0125】
フッ化物
口腔ケア組成物は、フッ化物を含み得る。フッ化物は、フッ化物イオン源によって提供することができる。フッ化物イオン源は、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化亜鉛、及び/又はこれらの混合物などの1つ以上のフッ化物含有化合物を含むことができる。
【0126】
フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えばフッ化第一スズなどの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及びスズイオン源は、スズイオン源が塩化第一スズであり、フッ化物イオン源がモノフルオロリン酸ナトリウム又はフッ化ナトリウムである場合など、別個の化合物であり得る。
【0127】
フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン及びフッ化物イオンを生成することができる、例えばフッ化亜鉛などの同じ化合物であり得る。加えて、フッ化物イオン源及び亜鉛イオン源は、亜鉛イオン源がリン酸亜鉛であり、フッ化物イオン源がフッ化第一スズである場合など、別個の化合物であり得る。
【0128】
口腔ケア組成物は、約50ppm~約3500ppm、好ましくは約500ppm~約3000ppmの遊離フッ化物イオンを提供することができるフッ化物イオン源を含んでもよい。所望の量のフッ化物イオンを送達するために、フッ化物イオン源は、全口腔ケア組成物中に、口腔ケア組成物の約0.0025重量%~約5重量%、約0.2重量%~約1重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、又は約0.3重量%~約0.6重量%の量で存在してもよい。
【0129】
他の成分
本明細書で使用するとき、用語「経口的に許容されるキャリア」とは、本発明の活性成分を含有し、口腔内に送達するためのペースト又はゲルなどの、液体又は半固体のビヒクルを意味する。水は、その多くの利点により、口腔組成物中のキャリア材料として一般的に使用される。例えば、水は加工助剤として有用であり、口腔に対して害がなく、練り歯磨きの迅速な発泡を助ける。水は、それ自体で成分として添加されてもよく、又は例えば、ソルビトール及びラウリル硫酸ナトリウムなどの他の一般的な原料中のキャリアとして存在してもよい。本明細書で使用するとき、総含水量という用語は、別個に添加された、又は、他の原料のための溶媒若しくはキャリアとして、口腔ケア組成物中に存在する水の総量を意味するが、ある特定の無機塩の結晶化に伴う水として存在し得るものを除く。
【0130】
本発明の口腔ケア組成物は、総含水量の少なくとも約30%を含む。好ましくは、口腔ケア組成物は、約35%~約85%を超える総含水量を含む。他の実施形態では、組成物は、約40%~約80%、あるいは約45%~約75%、あるいは約50%~約70%、あるいは約50%~約60%、あるいは約45%~約55%、あるいは約55%~約65%、あるいは約65%~約75%、あるいはこれらの組合せの総含水量を含む。
【0131】
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、湿潤剤を含有してもよい。湿潤剤は、口腔ケア組成物を空気への曝露時に硬化させて、口内に湿った感触を与えるように、及び特定の湿潤剤では望ましい風味の甘味を付与する役割を果たす。
【0132】
本発明に好適な湿潤剤としては、食用多価アルコール、例えば、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びこれらの組合せが挙げられる。一実施形態では、湿潤剤は、ソルビトール、グリセリン、及びこれらの組合せから選択される。別の実施形態では、湿潤剤は、グリセリンである。更に別の実施形態では、湿潤剤は、ソルビトールである。一実施形態では、口腔ケア組成物は、組成物の約1重量%~約50重量%未満、好ましくは約10重量%~約40重量%の湿潤剤を含む。更に別の実施形態では、口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約15重量%~約30重量%のグリセリンを含有する。
【0133】
一例では、本発明の口腔ケア組成物は、エタノールを実質的に含まず、好ましくはエタノールを本質的に含まない。エタノールは、ユーザに刺激感を与え得るので、場合によっては望ましくない。
【0134】
好ましくは、本発明の口腔ケア組成物は、研磨材を実質的に含まない。用語「研磨材」とは、本発明の目的では、カルシウム含有研磨材及びシリカ研磨材を含む。カルシウム含有研磨材は、炭酸カルシウム、リン酸ニカルシウム、リン酸三カルシウム、オルトリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、カルシウムオキシアパタイト、炭酸ナトリウム、及びこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。カルシウム含有研磨材が炭酸カルシウムである一実施形態では、炭酸カルシウムは、微粉砕天然チョーク、粉砕炭酸カルシウム、沈殿炭酸カルシウム、及びこれらの組合せからなる群から選択することができる。シリカ研磨材は、一般に、0.1~30μm、好ましくは5~15μmの範囲の平均粒径を有してもよい。シリカ研磨剤は、W.R.Grace&Company,Davison Chemical Divisionから「Syloid」という商標名で市販されているシリカキセロゲル、及びJ.M.Huber CorporationからZeodent(登録商標)という商標名で市販されているような沈降シリカ材料、特にZeodent(登録商標)119、Zeodent(登録商標)118、Zeodent(登録商標)109、及びZeodent(登録商標)129という名称をもつシリカなどの沈降シリカ又はシリカゲルであり得る。
【0135】
好ましくは、本発明の口腔ケア組成物は、低濃度の研磨材を含有する。例えば、口腔ケア組成物は、組成物の0重量%~約5重量%の研磨材、あるいは組成物の0重量%~約3重量%、あるいは0重量%~約2重量%、あるいは0重量%~約1重量%、あるいは約3重量%未満、又は約2重量%未満、又は約1重量%未満、又は約0.5重量%未満の研磨材を含んでもよい。好ましくは、組成物は、研磨材を実質的に含まず、より好ましくは研磨材を含まない。
【0136】
本明細書に記載の口腔ケア組成物は、口腔ケア組成物の約0.001重量%~約5重量%、あるいは約0.01重量%から約4重量%、あるいは約0.1重量%~約3重量%、あるいは約0.5重量%~約2重量%、あるいはそれらの組合せの風味剤組成物を含んでもよい。用語「風味剤組成物」は、最も広範な意味で使用され、風味成分、若しくは感覚剤(sensates)若しくは感覚剤(sensate agents)、又はこれらの組合せを含む。風味成分は、米国特許出願公開第2012/0082630(A1)号の段落39に記載されているものを含んでもよい。そして感覚剤及び感覚剤成分は、参照により本明細書に組み込まれる段落40~45に記載されているものを含んでもよい。
【0137】
風味組成物又は風味成分の例としては、ミントオイル、ウィンターグリーン、クローブバッドオイル、カッシア、セージ、パセリオイル、マジョラム、レモン、オレンジ、プロペニルグアエトール、ヘリオトロピン、4-シス-ヘプテナール、ジアセチル、メチル-p-tert-ブチルフェニル酢酸塩、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、1-メンチル酢酸塩、オキサノン、a-イリソン、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸ブチル、酪酸エチル、酢酸エチル、アントラニル酸メチル、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、カプロン酸アリル、オイゲノール、ユーカリプトール、チモール、シンナミルアルコール、オクタノール、オクタナール、デカノール、デカナール、フェニルエチルアルコール、ベンジルアルコール、a-テルピネオール、リナロール、リモネン、シトラール、ネラール、ゲラニアール、ゲラニオール、ネロール、マルトール、エチルマルトール、アネトール、ジヒドロアネトール、カルボン、メントン、β-ダマセノン、イオノン、γ-デカラクトン、γ-ノナラクトン、y-ウンデカラクトン、又はこれらの組合せが挙げられる。一般に適切な香料成分は、構造的特徴及びレドックス反応し難い官能基を有する化学物質である。これらとしては、飽和しているか、あるいは安定な芳香環又はエステル基を含有する、香料成分の誘導体が挙げられる。
【0138】
冷涼剤、温感剤、及び刺痛剤などの感覚剤は、ユーザに信号を送達するのに有用である。最もよく知られている冷涼剤は、メントール、特に1-メントールであり、これはハッカ油中で天然に見出される。合成冷涼剤の中でも、その多くは、メントールの誘導体であるか、又はメントールと構造的に関連している。すなわち、シクロヘキサン部分を含み、カルボキサミド、ケタール、エステル、エーテル、及びアルコールを含む官能基で誘導体化されている。例としては、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド(「WS-3」として商業上知られる)などのp-メンタンカルボキサミド化合物が挙げられる。メントールと構造的に無関係である合成カルボキサミド冷涼剤の例は、N,2,3-トリメチル-2-イソプロピルブタンアミドである。更なる例示的な合成冷涼剤としては、3-1-メントキシ-プロパン-1,2-ジオール、イソプレゴール、p-メンタン-3,8-ジオールなどのアルコール誘導体;メントングリセリンアセタール(「MGA」として商業上知られる);メンチルエステル、例えば、メンチルアセテート、メンチルアセトアセテート、メンチルラクテート、及びモノメンチルスクシネートなどが挙げられる。
【0139】
メントールと構造的に無関連であるが、同様の生理学的冷涼効果を有すると報告されている更なる薬剤としては、3-メチル-2-(1-ピロリジニル)-2-シクロペンタン-1-オン(3-MPC)、5-メチル-2-(1-ピロリジニル)-2-シクロペンタン-1-オン(5-MPC);2,5-ジメチル-4-(1-ピロリジニル)-3(2H)-フラノン(DMPF);イシリン(AG-3-5、化学名142-ヒドロキシフェニル]-4-[2-ニトロフェニル]-1,2,3,6-テトラヒドロピリミジン-2-オンとしても知られる)を含む、米国特許第6,592,884号に記載されるα-ケトエナミン誘導体が挙げられる。
【0140】
温感剤のいくつかの例としては、以下が挙げられる:エタノール、ベンジルニコチネートなどのニコチネートエステル、多価アルコール、ノナノイルバニリルアミド、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体、例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、及びバニリルヘキシルエーテル、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガ抽出物、ショウガ油、ジンジェロール、ジンゲロン、又はこれらの組合せ。
【0141】
いくつかの刺感剤の例としては、以下が挙げられる:カプサイシン、ホモカプサイシン、ジャンブオレオレシン(jambu oleoresin)、サンショウ抽出物(Zanthoxylum peperitum)、サンショオール(Saanshool)I、サンショオールII、サンショアミド(sanshoamide)、ピペリン、ピペリジン、スピラントール、4-(1-メトキシメチル)-2-フェニル-1,3-ジオキソラン、又はこれらの組合せ。
【0142】
本明細書の口腔ケア組成物は、カモミール、樫皮、メリッサ、ローズマリー、及びサルビアの抽出物などの薬草成分を更に含み得る。これら、及びいくつかの薬草由来の風味付与構成要素は、より高い治療効果を提供するために、風味へ寄与するのにちょうど充分な濃度で含まれ得るか、又は1%以上といったより高い濃度で添加され得る。
【0143】
本発明の口腔ケア組成物は、防腐剤を含んでもよい。防腐剤は、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、カプリル酸ソルビタン(Velsan SC(登録商標))、1-2ヘキサンジオール及びカプリリルグリコール(Symdiol 68(登録商標))、パラベン、並びに/又は組合せであってもよい。パラベンは、メチルパラベン若しくはプロピルパラベン、又はこれらの組合せを含んでもよい。ベンジルアルコール又はフェノキシエタノールのレベルは、約0.10%超~約0.40%、好ましくは約0.15%~約0.30%、及び/又はより好ましくは約0.15%~約0.20%の量で存在し得る。Velsan C(登録商標)の濃度は、約0.10%~約0.50%、好ましくは約0.20%~約0.40%、より好ましくはあるいは約0.25%~約0.30%の量で存在し得る。Symdiol 68(登録商標)の濃度は、約0.10%~約0.80%、好ましくは約0.10%~約0.50%、より好ましくは約0.20%~約0.30%で存在し得る。パラベンの濃度は、組成物の約0.01重量%~約0.20重量%、好ましくは約0.02重量%~約0.15重量%、より好ましくは約0.05重量%~約0.10重量%の量で存在し得る。
【0144】
一実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、トリクロサン(すなわち、5-クロロ-2-(2,4-ジクロロフェノキシ)フェノール)を実質的に含まず、好ましくはトリクロサンを含まない。
【0145】
本明細書の口腔ケア組成物は、甘味剤を含んでもよい。これらとしては、サッカリン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、キシリトール、マルトース、果糖、アスパルテーム、シクラミン酸ナトリウム、D-トリプトファン、ジヒドロカルコン、アセスルファム、スクラロース、ネオテーム、及びこれらの混合物のような、甘味料が挙げられる。甘味剤は、一般に、口腔ケア組成物中で、組成物の約0.005重量%~約5重量%、あるいは約0.01重量%~約1重量%、あるいは約0.1重量%~約0.5重量%、あるいはそれらの組合せの濃度で使用される。
【0146】
本明細書の口腔ケア組成物は、着色剤(すなわち、顔料、染料、及び乳白剤)を含んでもよい。着色剤は、水溶液、好ましくは、1%着色剤水溶液の形態であってもよい。二酸化チタンもまた本発明の口腔ケア組成物に加えられてもよい。二酸化チタンは、口腔ケア組成物に不透明度を加える白色粉末である。二酸化チタンは、一般に、組成物の約0.25重量%~約5重量%を構成する。組成物のために選択された構成要素は、互いに、化学的かつ物理的に適合するものでなければならないことが理解されよう。
【0147】
口腔ケア組成物は、抗歯石剤の有効量を含んでよく、一実施形態では、この抗歯石剤は、約0.05%~約50%、あるいは約0.75%~約25%、あるいは約0.1%~約15%で存在してもよい。非限定的な例としては、米国特許出願公開第2011/0104081(A1)号の段落64に記載されているもの、及び米国特許出願公開第2012/0014883(A1)号の段落63~68に記載されているもの、並びにそれらで引用される参考文献が挙げられる。一例は、ピロリン酸イオンの供給源としてのピロリン酸塩である。一実施形態では、組成物は、ピロリン酸四ナトリウム(tetrasodium pyrophosphate:TSPP)若しくはピロリン酸二ナトリウム又はこれらの組合せ、好ましくは組成物の約0.01重量%~約重量2%、より好ましくは約0.1重量%~約1重量%のピロリン酸塩を含む。理論に束縛されるものではないが、TSPPは、カルシウムキレートにより歯垢形成を軽減するだけでなく、また、モノフルオロリン酸塩安定化(モノフルオロリン酸塩を含むそれらの処方において)の更なる利益を提供してもよい。
【0148】
成分は、口腔ケア組成物に更なる利益を提供してもよい。鎖切断又はラジカル捕捉抗酸化剤としての細胞外抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又はα-トコフェロールの使用は、宿主組織損傷を引き起こし得る細胞内活性酸素種(reactive oxygen species:ROS)の制御及び調節を助ける。デクスパンテノールの使用は、上皮化を改善し、損傷した組織の創傷治癒において増殖期を誘導し得る。
【0149】
本発明の口腔ケア組成物は、界面活性剤、抗菌剤、フッ化物イオン、及び当業者に既知の他の成分などの通常及び従来の補助的構成要素を更に含んでもよい。口腔ケア組成物のために選択された成分は、互いに、化学的及び物理的に適合するものである必要があることが理解されよう。
【0150】
使用方法
本発明はまた、対象の口腔の口腔内組織(例えば、口腔粘膜、歯肉)、特に歯肉組織へ適用し、2分超、好ましくは10分超、より好ましくは30分超、又は60分以上放置することを含む、口腔を治療する方法に関する。本明細書の使用方法は、対象の口腔粘膜(例えば、歯肉縁又は歯肉溝/歯肉ポケット)を、本発明にかかる口腔ケア組成物と接触させることを含む。
【0151】
本発明は更に、対象の口腔内組織上に口腔ケア組成物を適用する工程、好ましくは、歯肉縁又は歯肉溝に沿って、少なくとも1日1回、好ましくは少なくとも1日2回、より好ましくは毎回の歯磨きの直後に適用する工程を含む、本明細書に記載される口腔ケア組成物を用いて対象の歯肉健康を改善する方法に関する。本明細書における用語「直ちに」とは、1時間以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内、あるいは10分以内を意味する。
【0152】
口腔ケア組成物は、アプリケータを用いることによって対象の口腔内組織上に適用され得、このアプリケータは、口腔ケア組成物を、対象の歯肉縁又は歯肉溝に沿って広げるためのハンドル及びヘッドを有する。好ましくは、口腔ケア組成物は、口腔内組織上に適用される前に、アプリケータのヘッド上に適用される。
【0153】
口腔歯肉と口腔ケア組成物との間の滞留接触時間を更に増加させるために、口腔用組成物は、最初にマウスガードトレイに適用され得、次いで、マウスガードトレイが上部、下部、又はその両方のために口の中に入れられ、好ましくは30分超、又は60分以上、より好ましくは一晩装着される。
【0154】
本発明は更に、少なくとも2工程:(a)歯を、抗菌練り歯磨き、好ましくはスズ含有練り歯磨きでブラッシングする工程と、その直後に、(b)本明細書により定義される口腔ケア組成物(oral are composition)を、対象の口腔内組織上に、好ましくは歯肉縁、溝、又は歯肉ポケットに沿って適用する工程と、を含む、対象の歯肉健康を改善する方法に関する。
【0155】
本発明は更に、(a)歯磨剤組成物を口腔に適用するようにユーザに指示する工程と、続いて(b)本明細書に記載されるように、歯肉健康組成物を含む口腔ケア組成物を、対象の口腔内組織上に適用する、好ましくは歯肉縁、溝、又は歯肉ポケットに沿って適用するようにユーザに指示する工程との、少なくとも2工程を含む、対象の歯肉健康を改善する方法に関する。歯磨剤組成物は、スズ、亜鉛、若しくはそれらの組み合わせなどの金属イオン源、及び/又はフッ化物を含み得る。口腔ケア組成物は、アミノ酸及び/又は粘膜付着性ポリマーを含み得る。口腔ケア組成物はまた、歯肉健康化合物を歯肉縁により効果的に送達するために接触時間を増加させるための洗い流さない口腔ケア組成物であり得る。
【0156】
特定の組成物を適用するための用法は、歯科医又は歯科衛生士などの口腔衛生専門家によって提供され、かつ/又はいずれかの組成物若しくは両方の組成物を含むキットのための包装材料に記された用法によって提供され得る。
【0157】
本発明を実施する際に、患者は、歯肉退縮を治療するなどの所望の効果を得るための歯肉健康化合物を含有する、本明細書に記載される口腔ケア組成物を口腔に適用する。本組成物は、ペイント-オン装置、シリンジ、若しくは単位用量シリンジ、押し潰し可能なチューブ、ブラシ、ペン若しくはブラシチップ塗布具、ドウズフット塗布具、スワッブ、リップグロス塗布具、適用後に取り外されるストリップ、適用後に取り外されるトレイなど、又は指さえも使用して塗布することができる。本組成物は、材料のストリップ、歯科用トレイ、又はスポンジ材料などの送達支持材料と組み合わせて、その後に口腔に適用することもできる。特定の実施形態では、本明細書の組成物又は送達システムは、口腔に適用される場合にほとんど目立たない。所望の時間が経過した後に、歯の表面の布ぶき、ブラッシング、又はすすぎにより、任意の残留組成物を容易に除去してよい。あるいは、残留組成物は、無期限に、口腔表面に接触する所定の位置に残すことができる。
【0158】
歯科用トレイ器具は、次のようにして使用することができる。患者又は歯科専門医は、本組成物を軟性又は剛性の歯科用器具内へと分注して、次いで、参加者は、器具を参加者の歯列弓に被せて置く(又は、自分の歯の周辺に装置をフィットさせて、トレイを所定の位置に維持する)。一般に、推奨処理期間は、本明細書に記載されるように、利益を得るのに十分な期間である。処置期間の終了時に、歯科用器具を取り外し、水で洗浄して残りの組成物を除去した後、次の適用まで保管する。
【0159】
記載の組成物及び本明細書に記載の送達システムは、1.本組成物、及び2.使用説明書、を含むか、又は、1.本発明の組成物、2.使用説明書、及び3.送達支持材料を含むキットにおいて組み合わされてよい。
【0160】
送達支持材料
本発明は更に、口腔ケア組成物を消費者の口腔に又は口腔内の歯肉に直接送達するための送達システム又は方法に関し得る。口腔ケア組成物は、トレイ、アプリケータ、マウスガード、固定器具、アライナ、又はそれらの組み合わせなどの再使用可能な送達支持材料と組み合わせて使用することができる。送達支持材料が再使用可能であり得るので、本明細書に記載の口腔ケア組成物は、すすぎ可能又は水分散性であることが望ましい。口腔ケア組成物はまた、使い捨てストリップなどの、使い捨ての又は単回使用の送達支持材料と組み合わせて使用することができる。
【0161】
例えば、送達システムは、支持材料の第1の層及び本明細書に記載された口腔ケア組成物を含む第2の層を含み得、これにより、歯肉健康化合物及び/又はアミノ酸は、放出可能に本組成物内に配置される。好適な第1の層は、材料のストリップ、歯科用トレイ、スポンジ材料、及びこれらの組み合わせを含む、送達支持材料を含み得る。特定の実施形態では、送達支持材料は、恒久的に変形可能なストリップなどのストリップ状の材料であってよい。好適な材料のストリップ、又は恒久的に変形可能なストリップは、例えば、米国特許第6,136,297号、同第6,096,328号、同第5,894,017号、同第5,891,453号、及び同第5,879,691号、並びに米国特許第5,989,569号、及び同第6,045,811号、並びに米国特許出願第2014/0178443(A1)号に開示されている。
【0162】
送達支持材料は、口腔に接着され、それにより有効物質を放出することができる、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,709,671号に開示の溶解性フィルムストリップなどの溶解性フィルムを含んでもよく、溶解性フィルムは、水溶性ポリマー、1つ以上のポリアルコール、及び1つ以上の有効物質を含む。1種以上の有効物質に加えて、溶解性フィルムは、特定の可塑剤若しくは界面活性剤、着色剤、甘味剤、香味剤、風味増強剤又は口腔への適用を目的とする製剤の味を改変するために一般的に使用される他の賦形剤の組み合わせを含有してよい。得られた溶解性フィルムは、粘膜組織に適用した後すぐに溶解性フィルムの軟化を生じ、したがって患者が口内の不快感を長時間経験することを防止する即時濡れ性、及び通常のコーティング、切断、スリット、包装作業に好適な引張強度を特徴とする。
【0163】
溶解性フィルムは、水溶性ポリマー又は水溶性ポリマーの組み合わせ、1種以上の可塑剤又は界面活性剤、1種以上の多価アルコール、及び有効物質を含み得る。溶解性フィルムに用いられるポリマーは、親水性及び/又は水分散性であるポリマーを含む。使用できるポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの水溶性セルロース誘導体であるポリマー、単独又はそれらの混合物が挙げられる。他の任意のポリマーとしては、本発明を制限することなく、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、キサンタンガム、トラガカント、グアーガム、アカシアガム、アラビアガムなどの天然ガム、ポリアクリル酸などの水分散性ポリアクリレート、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマーが挙げられる。最終膜における水溶性ポリマーの濃度は、20~75%(w/w)の間、又は50~75%(w/w)の間で変化させることができる。
【0164】
材料のストリップは、浅いポケットを含んでもよい。多相口腔ケア組成物が材料のストリップ上に適用されると、漂白剤及び/又は口腔ケア有効物質が浅いポケットを充填して、追加の漂白剤及び/又は口腔ケア有効物質のリザーバを提供する。加えて、これらの浅いポケットは、送達系に質感を与えるのに役立つ。この材料のストリップは、浅いポケットの配列を有してもよい。一般に、浅いポケットは、およそ0.4mm幅及び約0.1mmの深さである。浅いポケットが材料のストリップ内に含まれ、本明細書の多相口腔ケア組成物が種々の厚さでそのストリップに適用されている場合、特定の実施形態では、送達システムの全体的な厚さは約1mm未満であり、特定の実施形態では、全体的な厚さは約0.5mm未満である。
【0165】
本明細書で使用する場合、送達システムは接着手段を含んでよく、これにより、送達システムは、口腔表面、特に歯への接着が可能である。本接着手段は、本明細書の本発明の組成物により提供されてよい、又は本接着手段は、本明細書の組成物から独立して提供されてよい(例えば、本接着手段は、本明細書の組成物から分離した相であり、組成物はまた、接着剤手段を有する)。材料のストリップは、本組成物によって提供される接着性の付着により、口腔表面上の所定の位置に保持することができる。表面を乾燥させる多相口腔ケア組成物の粘度及び通常の粘着性により、ストリップが、話し中、飲水中などに材料のストリップに対して摩擦する唇、歯、舌、及び他の口腔表面により発生する摩擦力から実質的にずれることなく、口腔表面への接着による付着を生じ得る。しかしながら、装着者が装着者の指を使用して材料のストリップを単純に剥がすことにより、材料のストリップが容易に取り外されることを可能にするのに十分なほど、口腔表面へのこの接着は低くてもよい。送達システムは、器具、化学溶媒若しくは薬品、又は過剰の摩擦を適用することなく、口腔表面から容易に取り除かれてよい。
【0166】
加えて、材料のストリップは、送達支持材料それ自体によって提供される接着手段及び付着によって、口腔表面上の所定の位置に保持され得る。例えば、材料のストリップを延伸させ、口腔軟組織へと付着、接着させることができる。加えて、送達システムを口腔軟組織へと付着させる材料のストリップの部分に、接着剤を適用してもよい。送達支持材料はまた、送達支持材料と歯を含む口腔表面との間の物理的干渉又は機械的連動により、口腔に付着されてよい。加えて、材料のストリップは、国際公開第03/015656号に開示されるように、本明細書における本発明の組成物から独立した接着手段により、所定の位置に保持されてよい。
【0167】
好適な接着手段が、当業者に周知である。接着手段が存在する場合、これは、接着剤により提供され、接着剤は、材料を歯の表面又は口腔表面の表面に接着させるために使用される、任意の接着剤であってもよい。好適な接着剤としては、皮膚、歯茎及び粘膜付着性接着剤が挙げられるが、これらに限定されず、またこれらは、口腔ケア活性物質及び/又は漂白剤が効果を発揮するために、口腔環境の湿気、化学物質、及び酵素に長い間耐え得るものでなければならないが、後に溶解及び/又は生物分解できてもよい。好適な接着剤は、例えば、水溶性ポリマー、疎水性及び/又は非水溶性ポリマー、感圧性及び感湿性接着剤、例えば、口内の水分、化学物質、又は酵素などの影響の下で、口内環境に接触すると粘着性になる乾燥接着剤を含み得る。好適な接着剤としては、天然ゴム、合成樹脂、天然又は合成ゴム、上記で「増粘剤」として列挙されたこれらのゴム及びポリマー、及び既知の接着剤の種類で使用される種類の様々な他の粘着性物質が挙げられ、これらは、米国特許第2,835,628号から周知である。
【0168】
加えて、本送達システムは、任意の剥離ライナーを含み得る。剥離ライナーは、それ自体及び材料の第1の層のストリップに関して示す第2の層の組成物よりもより小さい、第2の層の組成物に関する親和性を示す、任意の材料から形成され得る。剥離ライナーは、ポリエチレン、紙、ポリエステル、又は他の材料などの、材料の剛性シートを含んでよく、その後、非粘着性材料で被覆される。剥離ライナーは、材料のストリップと実質的に同じ大きさ及び形状に切断されてよい、又は剥離ライナーは、材料をストリップから分離するための容易にアクセス可能な手段を提供するために、材料のストリップよりも大きく切断され得る。剥離ライナーは、ストリップが湾曲した場合に割れる脆性材料、又は材料の複数の部分若しくは材料の刻み目の付いた部分から形成され得る。あるいは、剥離ライナーは、典型的な接着性包帯設計などの、重なり合った2つの部分であってもよい。剥離剤として好適な材料に関する更なる説明が、Kirk-Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Fourth Edition,Volume 21,pp.207-218に見出され、参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
送達支持材料は、装着者が、約1平方センチメートルの表面積を有する1つの指を使用して、各歯の上でストリップを押し得ることが見出されてきたので、材料のストリップが、約250,000パスカル未満の圧力下で恒久的な変形を介して、歯の形状へと実質的に適合するような、降伏点及び厚さを有する、恒久的に変形可能な材料のストリップであってもよい。これらは、典型的には、約100,000パスカル~約250,000パスカルの典型的な適用圧力範囲にて、各歯において、1秒又はそれ未満の間、力を加える。
【0170】
材料のストリップは、いくつかの歯に対して、及び装着者の口のアーチ周辺に適合させるために、材料のストリップを這わせ並びに曲げることを可能にする、粘弾性特性を有し得る。必要な恒久的変形が、装着者により適用される最小限の通常の力の下で発生する、ということが重要である。
【0171】
材料の変形可能なストリップは、単一層又は積層体などの層(複数)若しくは材料の組み合わせとして、ワックス、パテ、スズ、又は箔などの、恒久的に変形可能な材料から作製されてよい。特定の実施形態では、変形可能なストリップは、Freeman Mfg&Supply Co.(Cleveland,Ohio)により配合及び製造される、#165シートワックスなどの、ワックスであってもよい。この特定のワックスは、約133,000パスカル圧力下で、歯の形状に容易に適合し、これは、装着者が、約1平方センチメートルの領域にわたって、約3ポンド(1.36kg)の通常の力を適用する場合発生する圧力である。材料の変形可能なストリップは、約0.8mmの通常のフィルム厚を有してよく、変形可能なストリップは、実質的に平坦であり、かつ丸みを帯びた角部を有する長方形の形状であってもよい。材料の変形可能なストリップは、装着者の口の湾曲及び隣接する歯の間の間隙に適合しつつ、隣接する複数の歯を覆うのに十分な長さを有してよい。材料の変形可能なストリップが、その上にコーティングされた多相口腔ケア組成物を含む場合、本明細書に開示の多相口腔ケア組成物は、約1.5mm未満の全体の厚さを有してもよい。本明細書に記載された変形可能なストリップはまた、
図1~
図4で示す材料のストリップ12のための材料として、使用されてもよい。したがって、例えば、
図1~
図4に関連した、上記のような材料のストリップの一般的な特徴もまた、材料の変形可能なストリップに適用されてよい。加えて、剥離ライナー及び/又は浅いポケットも同様に、材料の変形可能なストリップと組み合わされてよい。
【0172】
本組成物は、歯科用トレイ及び/又は発泡材料を含む送達支持材料と組み合わせて、使用することができる。好適な歯科用トレイとしては、剛性器具、オーバサイズの剛性カスタム歯科用器具、剛性二積ラミネートカスタム歯科用器具、使い捨て軟質発泡体トレイが挙げられる。
【0173】
患者の歯列弓に正確にフィットする剛性器具。例えば、全ての歯の表面及び歯肉縁に正しく合わさるアルギン酸印象材が作製され、かつ印象材から直ちに鋳型が作製される。「オーバサイズの」剛性カスタム歯科用器具。剛性の、カスタム歯科用器具の作製は、患者の歯列弓の印象材の鋳型模型を必要とし、また患者の歯列弓の鋳型模型に対応する熱可塑性シートの加熱及び真空形成を必要とする。それほど頻繁には使用されていないが、第3の種類の剛性カスタム歯科用器具は、軟質多孔質発泡体~剛性の非多孔質発泡フィルムまでの範囲の材料の積層体から作製された、剛性二重ラミネートカスタム歯科用器具である。これらの二重ラミネート歯科用器具の、非多孔質の、剛性の熱可逆性シェルは、軟質多孔質発泡体の内側層を覆いかつ支持する。
【0174】
使い捨てU字形軟質発泡体トレイは、個包装され得、本発明の組成物の予め測定された量で飽和され得る。軟質発泡材は、一般に、開放気泡プラスチック材である。そのような装置は、Cadco Dental Products(Oxnard,Calif.)から、商標名VitalWhite(商標)にて市販されている。
【0175】
特定の実施形態では、トレイは、1つ以上の歯を覆うか又はそれに接触する表面に組み込まれたポケットを有してもよい。そのようなポケットは、口腔組成物を歯に接触させて保持するのに役立ち得る。特定の実施形態では、ポケットは、深さ約0.05~約5mm、好ましくは深さ約0.1~約3mm、より好ましくは深さ約0.3~約3mm、又は最も好ましくは深さ約0.5~約1.5mmであり得る。そのようなトレイの例としては、臨床プロトコルの段で指定されたものが挙げられる。
【0176】
特定の実施形態では、口腔にトレイを装着すると、口腔でトレイに組み込まれた許容差又は間隙が生じ得る。そのような許容差又は間隙は、口腔用組成物を口腔に接触させて保持するのに役立ち得る。特定の実施形態では、許容差又は間隙は、約0.01mm~約2mm、好ましくは約0.05mm~約1mm、より好ましくは約0.1mm~約1mm、又は最も好ましくは約0.1mm~約0.5mmであり得る。
【0177】
製品形態
本明細書に記載されるように、口腔ケア組成物は、歯肉健康化合物及び/又はアミノ酸と歯肉との間の接触時間を増加させる、粘膜付着性ポリマーを含む洗い流さないゲル組成物であり得る。しかしながら、他の製品もまた、送達支持材料の有無にかかわらず好適である。
【0178】
歯肉健康化合物及び/又はアミノ酸の送達に好適な組成物としては、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0133121号の乳化組成物、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0343732号の単位用量組成物などの単位用量組成物、詰まった乳化剤、歯磨組成物、マウスリンス組成物、マウスウォッシュ組成物、歯磨ゲル、歯肉縁下用ゲル、マウスリンス、ムース、フォーム、マウススプレー、トローチ剤、チュアブル錠、チューインガム、歯用ホワイトニングストリップ、フロス及びフロスコーティング、口臭予防用溶解ストリップ、義歯ケア製品、義歯用接着剤製品、又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【実施例】
【0179】
本発明は、以下の実施例によって更に例示され、これは、いかなる方法であっても本発明の範囲に制限を課すものとして解釈されるべきではない。本明細書の説明を読んだ後に、本発明の趣旨又は添付の特許請求の範囲の範疇から逸脱することなく、それらの様々な他の態様、修正、及び均等物が、当業者に想到され得る。
【0180】
皮膚老化研究
異なる年齢群の150人の白人(フィッツパトリックI/II)女性を、皮膚の老化研究に登録した。含まれる年齢群は、18~22歳、30歳台(30~34)、40歳台(40~44)、50歳台(50~54)、60歳台(60~64)、70歳台(70~74)、及び80歳台(80~84)であった。
【0181】
4mmの皮膚パンチ生検を単一のオペレータによって殿部から得て、液体窒素中で急速凍結し、アッセイするまで-80℃で保管した。レーザーキャプチャ法によって生検の残りの部分から真皮を分離させた。遺伝子発現レベルを決定するために、RNAを抽出し、ビオチンで標識し、ハイブリダイズさせ、製造業者の指示に従ってAffymetrix GeneTitan(登録商標)U219マイクロアレイプレートを使用して分析した。
【0182】
ゲノム分析のために、主成分分析及びMA-プロットを使用して、マイクロアレイ試料品質を評価した。60歳の対象対20歳の対象の年齢群比較を、プローブセット毎に別々に取り付けた分散分析(ANOVA)モデルを使用して評価した。計算は、limma Rパッケージで行った。0.05以下のp値カットオフは、統計的に有意であると見なされた。
【0183】
歯肉老化研究
全身健康状態及び口腔健康状態が良好な20~24歳(20歳台)、30~34歳(30歳台)、40~44歳(40歳台)、50~54歳(50歳台)、60~64歳(60歳台)、及び70~74歳(70歳台)の年齢範囲内の白人成人を登録した。適格な参加者は、少なくとも16本の天然歯を有し、紅斑又は潰瘍状態がなく、4mm超のポケットの深さ又は反発性の歯肉炎症を伴う歯周病もなかった。
【0184】
2mmの歯肉パンチ生検を、単一のオペレータによって小臼歯周りに付着した歯肉から得た。液体窒素中で急速凍結し、アッセイするまで-80℃で保管した。次いで、凍結した歯肉組織を遺伝子発現分析用に処理した。遺伝子発現レベルを決定するために、RNAを抽出し、ビオチンで標識し、ハイブリダイズさせ、製造業者の指示に従ってAffymetrix GeneTitan(登録商標)U219マイクロアレイプレートを使用して分析した。
【0185】
ゲノム分析のために、主成分分析及びMA-プロットを使用して、マイクロアレイ試料品質を評価した。60歳の対象対20歳の対象の年齢群比較を、プローブセット毎に別々に取り付けた分散分析(ANOVA)モデルを使用して評価した。計算は、limma Rパッケージで行った。0.05以下のp値カットオフは、統計的に有意であると見なされた。
【0186】
皮膚真皮上の化合物スクリーニング
化合物をスクリーニングするため、フィッツパトリック皮膚タイプI~IIIを有する60~70歳の30~40人の女性を対象とした。ベースラインで、それぞれの処置を試験するそれぞれの対象を割り当てた。製品を1日2回背側前腕に適用した。最小限の有効性の保湿剤を用いた局所処置を、それぞれの試験化合物のビヒクルとして、及び陰性対照として使用した。
【0187】
4週間の処置後、1つの4mmパンチ生検をそれぞれの処置部位から採取した。真皮を分離させ、液体窒素中で急速凍結し、アッセイするまで-80℃で保管した。次いで、凍結組織を遺伝子発現分析のために処理した。遺伝子発現レベルを決定するために、RNAを抽出し、ビオチンで標識し、ハイブリダイズさせ、製造業者の指示に従ってAffymetrix GeneTitan(登録商標)U219マイクロアレイプレートを使用して分析した。
【0188】
ゲノム分析のために、主成分分析及びMA-プロットを使用して、マイクロアレイ試料品質を評価した。マイクロアレイデータの処置と陰性対照との比較を、プローブセット毎に別々に取り付けられたANOVAモデルを使用して評価した。ANOVAモデルの仮説試験を、limma Rパッケージで利用可能な経験ベイズ法を使用して評価した。0.05以下のp値カットオフは、統計的に有意であると見なされた。
【0189】
結果
化合物スクリーニングのヒト臨床プロトコルで、皮膚への材料の適用後のコラーゲン遺伝子の発現を試験した。レチノイド(レチノール0.2%)、パルミトイルペンタペプチド(100ppmのPal-KTTKS)、及び2つの組み合わせを試験し、ビヒクル対照と比較した。皮膚及び歯肉老化研究によって決定されたように、皮膚及び歯肉組織の老化においていくつかの新規の分子類似性が観察された。遺伝子発現の分析と老化研究間の比較により、皮膚及び歯肉の両組織における年齢の関数として重要なコラーゲン遺伝子における同様の統計的に有意な減少パターンが特定された。具体的には、表1に示すように、主要なコラーゲン遺伝子、COL1A1及びCOL1A2の両方における年齢に関係する減少である。
【0190】
皮膚上の化合物スクリーニングに関するヒト臨床プロトコルで、皮膚への材料の適用後のコラーゲン遺伝子の発現を試験した。レチノイド(レチノール0.2%)、パルミトイルペンタペプチド(100ppmのPal-KTTKS)、及び2つの組み合わせを試験し、ビヒクル対照と比較した。予想外に、COL1A1及びCOL1A2は、レチノール及びPal-KTTKSの組み合わせで遺伝子発現が統計的に有意に増加したことを示したが、レチノール単独又はPal-KTTKS単独のいずれもこれを示さなかった(表1)。
【0191】
【0192】
表1は、試験された2つの一次コラーゲン遺伝子が、皮膚及び歯肉の両組織における年齢の関数として有意な(p値<0.05)下方調節を実証したことを示している。これらのコラーゲン遺伝子はまた、(同じ対象におけるビヒクル処置と比較して)レチノール及びPal-KTTKSを一緒に用いて処置する際の上方調節を実証した。しかしながら、表1に示されるコラーゲン遺伝子は、レチノール又はPal-KTTKSを別々に用いて処置する際の有意な調節を実証せず、レチノイド及びペプチド間の相乗関係を示した。調節は、2を底とする対数の平均倍率変化(Log base 2 of the average Fold Change、LFC)として示され、p値は、ANOVA試験によって決定された。
【0193】
表1の比較皮膚及び歯肉老化遺伝子発現研究からの観察、並びにコラーゲン喪失が皮膚及び歯肉の両方の老化に寄与するという仮説に基づいて、粘膜付着性ゲルに局所的に適用されたときのレチノールとPal-KTTKSとの組み合わせの効果を評価するヒト臨床研究を実施した。34~65歳の24人のコーホートは、-0.51~0.76の歯肉縁の様々な退縮を示した。
【0194】
歯肉炎の化合物評価
2つの年齢関連の退縮を有する24人の対象を、9回の研究訪問を伴うスプリットマウスデザイン臨床試験に登録した。ベースライン1日目の訪問では、対象は、経口軟組織(OST)検査、デジタル歯肉画像(DGIA)及び全歯周検査(プロービングポケットの深さ(PPD)、クリニカルアタッチメントレベル(CAL)、及び退縮(CEJ))を受けた。ベースライン2日目に、対象の歯のデジタル及び従来の印象を採取し、続いて歯肉摩耗のDanser Exam(GA)を行った。退縮のある対象の試験歯を処置群又はプラセボ群に無作為に割り付け、対象に製品を与え、これからの6か月間に1日1回その製品を使用するように指示した。対象は、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月及び6か月後(1日目及び2日目~最終訪問)後に現場に戻った。
【0195】
【0196】
結果は、6か月の処置後、レチノール及びPal-KTTKSの組み合わせが、粘膜付着性ビヒクル単独(退縮p=0.019)と比較したときに、複数の基準による歯肉退縮において統計的に有意な改善を実証したことを示し、
図4に示すように、改善は視覚的に観察可能であった。ブラッシング後の摩耗の減少によって決定されるように、歯肉バリア保護の向上も観察された。
【0197】
レチノイドとペプチドとを組み合わせた局所処置から生じる歯肉退縮の改善は、ヒト臨床設定において以前に実証されていない。驚くべきことに、歯磨き後の磨耗の減少によって決定されるように、損傷に対する歯肉の回復力の向上も観察された。
【0198】
試験方法
試験1:インビトロでのヒト歯肉線維芽細胞可溶性コラーゲンアッセイ
段階1:初代ヒト歯肉線維芽細胞(「HGF」)の培養:初代ヒト歯肉線維芽細胞(「HGF」)を抜歯患者から収集し、5mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した。この組織を小片に刻んで、15mLの遠心管に入れた。試料を、等量の1mL 8%ディスパーゼ及び1mL 6%コラゲナーゼで1時間、37℃で消化した。その間、試料は、15分毎に振盪する必要がある。消化プロセスが完了したら、管を室温で6分間、1100r.p.mで遠心分離した。遠心分離後、管の底には上清液から分離された細胞のペレットが形成された。次いでこの上清を廃棄し、細胞ペレットを3mLの新鮮な最小必須培地(Minimum Essential Medium、「MEM」、Thermo Fisherから入手可能)培養培地に懸濁させた後、ペトリ皿に移した。細胞を有するペトリ皿を、37℃、5%CO2のインキュベータ内に約10日間置いた。培地の変色について2日毎にペトリ皿を確認した。培地の変色が生じた場合、新鮮な培養培地に交換した。
【0199】
段階2:組成物による処置:ヒト歯肉線維芽細胞の継代培養:ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄した。1mLの0.25%トリプシン-EDTA溶液を添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置した。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がすために、時にはペトリ皿をタップすることが必要であった。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収した。次いで管を室温で6分間、1100r.p.mで遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを、同じ遠心管内で、4mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させた。ペトリ皿をそれぞれ、ペトリ皿上の80~90%細胞単層被覆が観察されるまで、1mLの細胞懸濁液及び9mLの新鮮なMEM培養培地と共に、37℃、5%CO2のインキュベータ内に約3~5日間置いた。ペトリ皿上の細胞単層被覆が80~90%になったとき、細胞を6mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させた。1mLの細胞懸濁液及び1mLの新鮮なMEM培地を、それぞれ6ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加した。細胞を2mLのPBSで更に洗浄して、懸濁された細胞が全く観察されなくなるまで、懸濁細胞を除去した。培養培地2mL、又は1%の比較組成物を含有する培養培地2mL、又は1%の本発明の組成物を含有する培養培地2mLをウェルに添加した。細胞を、5%CO2のインキュベータ内で72時間、37℃に維持した。
【0200】
段階3:可溶性コラーゲンアッセイ:可溶性コラーゲン(タイプI~V)レベルを、Sircolコラーゲンアッセイキット(Biocolor、UKから入手可能)によって測定した。処置後、細胞を冷却PBSで2回洗浄し、6Mの尿素で均質化した。細胞ホモジネートを15,000r.p.m.で15分間遠心分離した。100μLの上清を1mLのSircol Dye Reagentと30分間混合した。この期間中、コラーゲン色素錯体が形成され、可溶性非結合色素から沈殿した。管をマイクロ遠心機に移し、12,000r.p.m.で10分間回転させた。管を注意深く反転させ、排出させた。750μLの氷冷酸塩洗浄試薬をコラーゲン色素ペレットに穏やかに添加して、ペレットの表面及びマイクロ遠心管の内面から非結合色素を除去した。次いで、管を12,000r.p.m.で10分間遠心分離した。上清を廃棄物容器に排出させ、綿棒を使用して管のリップから全ての流体を除去した。250μLのアルカリ試薬をそれぞれの管に添加して、コラーゲン結合色素を完全に放出した。200μLのそれぞれの試料を96マイクロウェルプレートの個々のウェルに移し、それぞれのウェルの内容物の記録マップをA1~H12に保持した。マイクロプレートリーダーを555nmに設定し、試薬のブランク、標準、及び試験試料について水に対する吸光度を測定した。コラーゲン濃度は、100μLの新鮮なMEM培養培地に5、10、15、及び20μgのコラーゲン参照標準を含有する標準曲線から得た。0.05以下のp値カットオフは、統計的に有意であると見なされた。
【0201】
試験2:インビトロでの3D全厚歯肉組織モデルアッセイ
インビトロの歯肉3D組織を、組織学及び免疫科学における本発明の組成物及び対照組成物による処置の効果を評価するために使用した。
【0202】
全厚歯肉組織モデル(MatTek、USから入手可能なGIN-300-FT)の初期調製は、他の全厚組織モデルを生成するための前述の方法と同様であった(Delvenne et al.,2001;Odioso et al.,1995)。簡潔に述べると、1*106個の歯肉線維芽細胞を含有する1mLの血清をコラーゲン溶液と混合して、線維芽細胞コラーゲンゲルマトリックスを形成した。この混合は、インサートを37℃で1時間インキュベートすることによってゼラチン化することを可能にした。次いで、ゲルを2mLの成長培地で平衡化し、48時間培養した。その後、自家歯肉上皮細胞をマトリックスの上に播種し、頂端層に角質層が観察されるまで組織を37℃、5%CO2のインキュベータ内で2~3週間培養し、その結果、初代ヒト歯肉上皮細胞及び線維芽細胞に由来する多層のインビトロのヒト歯肉培養物を得た。
【0203】
本発明の組成物及び比較組成物を滅菌水で10%濃度に希釈し、次いで、10%スラリーを、0.22μLの細孔径を有するフィルターを通過させることによって滅菌濾過した。それぞれの濾過した10%スラリー100μLを組織の頂端側に添加した。組織を37℃、5%CO2のインキュベータ内で48時間培養した。
【0204】
組織学及び免疫組織化学的分析
インビトロの再構成された組織の形態を調べるために、組織を含むインサートを10%のホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、5~7μmの厚さの断面に切断した。切片を顕微鏡スライドに載せ、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E、Sigma、USから入手可能)で染色し、CoolPix 990デジタルカメラを備えたNikon Diaphot顕微鏡を使用して観察及び撮影した。
【0205】
組織を4℃のCarnoyの固定液(酢酸:エタノール:クロロホルム、10:60:30)内に一晩固定し、パラフィンに包埋し、日常組織学的検査のために切片化した。切片を脱パラフィン化し、再水和した。内因性過酸化物を、1%のH2O2/トリス緩衝生理食塩水(TBS)を使用してブロックした。二次ビオチン化抗体の供給源の3%正常血清でブロックした後、切片を一次抗体でインキュベートした。検出は、基材としてジアミノベンジジンを使用したアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体法によって行った。0.05以下のp値は、統計的に有意であると見なされた。使用される抗体は、以下の表3に示されるように、コラーゲン-1、エラスチン及びフィブリリン-1である。
【0206】
【0207】
試験3:粘膜付着試験法
試験試料を室温で1時間、フルオレセインイソチオシアネート(Fluorescein isothiocyanate:FITC)で標識した。得られた溶液を、遊離FITC分子を除去するために、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate buffered saline:PBS)中で48時間透析させた。シリカウェハを、エタノール/(3--アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)/アンモニア溶液(20:4:1、v/v/v)の混合物で8時間処理し、次いでエタノール及び水ですすぎ、乾燥させて、アミン官能化シリカウェハ(NH2-SW)を得た。NH2-SWを、ムチン溶液中において、室温で8時間インキュベートした。ムチン修飾シリカウェハを、振盪器内のPBS緩衝液中において、37℃で12時間、試験試料と共にインキュベートし、続いて脱イオン水ですすいだ。ムチン修飾シリカウェハの蛍光画像を蛍光顕微鏡法により撮影し、ImageJソフトウェアでの蛍光強度(Fluorescent Intensity:FI)の測定に使用した(National Institutes of Health、USA、(https://imagej.nih.gov/ij/))。「粘膜付着指数」を説明するために使用した蛍光強度率(「FI%」)とは、正規化された画像フィールド内の総画素に対する蛍光画素である。したがって、FI%が高い第1の試験試料は、FI%がより低い第2の試験試料と比較して、より強い粘膜付着を有した。
【0208】
試験4:レオロジー試験法
粘度プロファイルを評価するための(及び、製造指示書に従って実行される)、レオロジー試験法が記載される。粘度プロファイルを、歯磨剤マクロレオロジー試験手順を用いて、TA AR2000レオメータ(TA Instruments、New Castle、United Statesから入手可能)上で試験した。使用した幾何形状は、溶媒トラップを備えた40mmの鋼製平行プレートであった。歯磨剤をAR2000レオメータのペルチェプレート上に置き、ギャップ設定を1000μとした。歯磨剤マクロレオロジー試験は、応力掃引(stress sweep)発振試験、周波数掃引発振試験、及び定常流動試験を含んだ。重要なパラメータ設定は、以下を含んだ:(a)応力掃引工程:発振応力(Pa):0.01~500;(b)周波数(Hz):1.0;(c)周波数掃引工程:周波数(Hz):0.1~10、及び制御発振応力(Pa):1.5;(d)定常流動工程1:せん断速度(秒-1):0.01~100;及び、(e)定常流動工程2:せん断速度(秒-1):100~0.01。
【0209】
せん断流動試験とは、異なるせん断速度で粘度を測定するための粘度試験様式である。定常流動試験とは、各点における速度が時間と共に変化しない流動である。この試験における3つの主要パラメータは、粘度、せん断速度、及びせん断応力であった。べき乗則モデルは、非ニュートン流体においてせん断減粘が生じるせん断速度の範囲にわたる、粘度又はせん断応力とせん断速度との間の関係を特徴付けるために使用される、周知のモデルである。これは、ニュートン挙動からの全体的な粘度範囲及び偏差の程度を定量化した。べき乗則モデルは、η=Kγn-1として記載されており、η=粘度、及びγ=せん断速度である。Kは粘着稠度係数として知られており、モデル化されている流動曲線の部分にわたる全体的な粘度の範囲を表す。指数「n」とは、速度指数として既知である。K及びηは、べき乗則モデルフィッティングによって決定され得る。速度指数nに基づいて、べき乗則モデルは、3つの基本的なタイプの流動を表す:
n=1 ニュートン挙動
n<1 せん断減粘(又は擬塑性)
n>1 せん断増粘
【0210】
本明細書の組成物の粘度プロファイルは、0.1~10秒-1のせん断速度範囲とのべき乗則モデルフィッティングによって判定される、粘着稠度係数K(Pa・s)によって表される。
【0211】
試験5:ヒト歯肉線維芽細胞の改善された創傷治癒を測定するためのアッセイ
インビトロのヒト歯肉線維芽細胞を使用して、本発明の組成物及び対照組成物による処置の結果として、創傷治癒移行の効果を評価した。この方法は、3つの段階を含む。
【0212】
段階1:初代ヒト歯肉線維芽細胞(「HGF」)の培養:ヒト歯肉線維芽細胞を抜歯患者から収集し、5mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した。この組織を小片に刻んで、15mLの遠心管に入れた。試料を、等量の1mL 8%ディスパーゼ及び1mL 6%コラゲナーゼで1時間、37℃で消化した。その間、試料は、15分毎に振盪する必要があった。消化プロセスが完了したら、管に室温で6分間、1100RPMで遠心分離を行った。遠心分離後、管の底には上清液から分離された細胞のペレットが形成された。次いでこの上清を廃棄し、細胞ペレットを3mLの新鮮な最小必須培地(Minimum Essential Medium、「MEM」、Thermo Fisherから入手可能)培養培地に懸濁させた後、ペトリ皿に移した。細胞を有するペトリ皿を、37℃、5%CO2のインキュベータ内に約10日間置いた。培地の変色について2日毎にペトリ皿を確認した。培地の変色が生じた場合、新鮮な培養培地に交換した。
【0213】
段階2:ヒト歯肉線維芽細胞の継代培養:ペトリ皿の細胞単層被覆率が80~90%になったら、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄した。1mLの0.25%トリプシン-EDTA溶液を添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置した。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がすために、時にはペトリ皿をタップすることが必要であった。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収した。次いで、管を室温で6分間、1100RPMで遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを、同じ遠心管内で、4mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させた。4つのペトリ皿をそれぞれ、ペトリ皿上の80~90%細胞単層被覆が観察されるまで、1mLの細胞懸濁液及び9mLの新鮮なMEM培養培地と共に、37℃、5%CO2のインキュベータ内に約3~5日間置いた。最も高い細胞生存率を達成するために、この段階は創傷治癒アッセイ前に2~4回繰り返した。
【0214】
段階3:創傷治癒アッセイ:ペトリ皿上の細胞単層被覆率が80~90%になったとき、前述の培養培地を除去し、5mLのPBSで洗浄した。1mLの0.25%トリプシン-EDTA溶液を添加し、細胞が視覚的に丸い形状になるまで、細胞を37℃で約1~2分間静置した。ペトリ皿表面から剥がれにくい細胞を剥がすために、時には培養ペトリ皿をタップすることが必要であった。少なくとも1mLの新鮮なMEM培養培地を添加してトリプシンを不活性化し、細胞を15mLの遠心管に回収した。次いで、管を室温で6分間、1100RPMで遠心分離した。上清を廃棄し、細胞ペレットを、6mLの新鮮なMEM培養培地に再懸濁させた。1mLの細胞懸濁液及び1mLの新鮮なMEM培地を、それぞれ6ウェルプレートのそれぞれのウェルに添加した。プレートを、50~70%細胞単層被覆が形成されるまで、37℃、5%CO2でインキュベートした。次いで画像取得の間、ウェルの外側底部の中央に、基準線として線をマーキングした。滅菌した1mLのピペットチップで細胞単層の右半分をこすり取ることによって、創傷を手作業で作製した。細胞を2mLのPBSで洗浄して、懸濁された細胞が全く観察されなくなるまで、懸濁細胞を除去した。2mLの培養培地、及び1%の対照組成物を含有する2mLの培養培地又は1%の本発明の組成物を含有する2mLの培養培地をウェルに添加した。
【0215】
HGFの高密度デジタル画像を、Olympus(登録商標)UIS2 WHN対物レンズ(10倍)を有するOlympus(登録商標)IX71デジタルSLRカメラを用いて撮影した。第1の画像は、プレート上の中央線のマーキングを基準線として使用して、時間0時間(すなわち、ベースライン)で取得した。次いでプレートを、以下に記載されるように、37℃、5%CO2で様々な時間間隔にわたってインキュベートした。一致した撮影領域を前回と同様に取得し、画像を、ベースライン後の後の時間間隔(例えば、16時間、24時間、48時間、65時間、72時間等)で取得して、異なる処置脚部の下での創傷治癒性能の指標として、細胞被覆率(%)を評価した。画像を、Wimasis(登録商標)WimScratchソフトウェア(Wimasis GmbH、Germanyから入手可能)によって評価して、それぞれの試料のマッチングベースライン画像と比較して、点線で示されるように、HGF細胞の被覆度(すなわち、創傷治癒)の程度(すなわち、割合)を判定した。WimScratchソフトウェアは、細胞及びブランク領域を認識するために、高度なエッジ検出及びオーバレイ技法を利用した。すなわち、画像内の緑色のオーバレイは、特定の画像の細胞被覆領域を表し、灰色の領域は創傷領域を表す。読み出しは、両方の領域に対して提示され、総面積のパーセントとして正規化される。
【0216】
試験6:ヒト歯肉上皮のバリア透過性を測定するためのアッセイ
インビトロのヒト歯肉上皮を使用して、本発明の組成物及び対照組成物による処置の結果として、バリア透過性の効果を評価した。この方法は、3つの段階を含む。
【0217】
段階1:初代ヒト歯肉上皮(「HGE」)の培養:ヒト歯肉上皮を抜歯患者から収集し、5mLのPBS(リン酸緩衝生理食塩水、Sigmaから入手可能)で洗浄した。この組織を小片に刻んで、15mLの遠心管に入れた。試料を、等量の1mL 8%ディスパーゼ及び1mL 6%コラゲナーゼで1時間、37℃で消化した。その間、試料は、15分毎に振盪する必要があった。消化プロセスが完了したら、管に室温で6分間、1100RPMで遠心分離を行った。遠心分離後、管の底には上清液から分離された細胞のペレットが形成された。次いでこの上清を廃棄し、細胞ペレットを3mLの新鮮なDulbecco’s Minimum Essential Medium(「DMEM」、Thermo Fisher(登録商標)から入手可能)培養培地に懸濁させた後、ペトリ皿に移した。細胞を有するペトリ皿を、ペトリ皿上の80~90%細胞単層被覆が観察されるまで、37℃、5% CO2のインキュベータ内に約10日間置いた。アッセイが開始される前に、HGE細胞を、24ウェルのプラスチック組織培養プレート(Merck Millipore)に入れたハンギングセルカルチャーインサート(Merck Millipore、Billerica、MA、USA;5μmの細孔径)上に播種し(1.2*104セル/ウェル)、37℃、5%CO2の新鮮なDMEM培養培地で72時間、それらのHGE細胞がコンフルエンスに達するまで成長させた。上部区画及び下部区画内の培地の容積は、それぞれ0.2mL及び0.8mLであった。
【0218】
段階2:組成物による処置:HGE細胞単層を、10ug/mLのP.gingivalis-LPS(Invivogen、CA、USから入手可能)、本発明の組成物(DMEM培養培地中の1%のゲル、w/w)、及び対照組成物(DMEM培養培地中の1%のゲル)の存在下又は非存在下で、新鮮なDMEM培養培地内で更に72時間インキュベートした。次いで、培地を両方の区画から取り出し、上部区画を0.2mLのPBSで2回洗浄し、新鮮で新しい下部区画内に置いた。
【0219】
段階3:上皮バリア透過性の測定:歯科学における一般的な病原体の細胞膜透過性を調べるために、P.ジンジバリス-LPSを輸送物質として使用した。10ug/mLのP.ジンジバリス-LPSを含有する0.2mLの新鮮なDMEM培養培地を上部区画に添加し、P.ジンジバリス-LPSを含まない0.8mLの新鮮なDMEM培養培地を下部区画に添加した。細胞を有するハンギングセルカルチャーインサートを、P.ジンジバリス-LPSの添加後、37℃、5% CO2のインキュベータ内に4時間置いた。培地を、4時間の時点で下部区画から収集した。収集した培地中の内毒素単位を、Limulus Amebocyte Lysate(LAL)試験(Associates of Cape Cod,Inc.、Falmouth、MA、USA)によって、製造元の指示に従って測定した。
【0220】
【0221】
【0222】
表4及び表5の結果は、歯肉健康化合物(レチノイド20ppm)、すなわち、それぞれレチノール及びパルミチン酸レチニルを含む本発明の組成物の実施例2及び実施例3が、ベース対照と比較してコラーゲン産生性87%及び57%でコラーゲン合成を効果的に上方調節することを示している。実施例2及び3は、陽性対照TGF-Bを更に上回った。
【0223】
【0224】
結果は、10ppmのペプチド、すなわち、それぞれpal-KTTKS、GHK、GEKGを含有する本発明の組成物の実施例5、実施例6、及び実施例7が、ベース対照及び陽性対照TGF-Bと比較して14%、48%、68%のコラーゲン産生性でコラーゲン合成を効果的に上方調節することを示している。
【0225】
【0226】
表7は、レチノイド化合物とペプチドとの組み合わせがコラーゲン産生性を改善する予想外の結果を示している。驚くべきことに、ベース対照と比較したコラーゲン産生性の増加は、レチノール及びpal-KTTKS(2.44)の組み合わせに関する実施例10において、個々の合計(pal-KTTKS=(0.24)及びレチノール(0.30)対ベース対照)よりも著しく高かった。表7のこの結果は、歯肉健康化合物及びアミノ酸の組み合わせ、並びに/又はより具体的にはレチノイド化合物及びペプチドの組み合わせが、単独の成分と比較してコラーゲンの上方調節において予想外に高い改善をもたらすことを示した。
【0227】
【0228】
【0229】
表9は、歯肉健康化合物を含有する本発明の組成物の実施例12、実施例13、及び実施例14が、ベース対照と比較して30%、22%、9%のコラーゲン産生性でコラーゲン合成を効果的に上方調節することを示している。
【0230】
実施例12は、実施例13と比較して実施例12へのヒアルロン酸の添加に基づいている点のみ、実施例13と異なる。驚くべきことに、実施例13と比較して実施例12におけるヒアルロン酸の添加は、コラーゲン産生性を高めている。理論に束縛されるものではないが、ヒアルロン酸の添加は、歯肉健康化合物、この場合はレチノールの拡散速度を制御する一方、ヒアルロン酸の粘膜付着特性も提供する。高レチノール濃度の制御は、刺激及び負の感覚に関連付けられた、TRP受容体を活性化することが示されているレチノイドの刺激性及び最終的な毒性効果を低減し得る。
【0231】
更に驚くべきことに、レチノール及びアミノ酸、グリシンの組み合わせを使用した実施例14は、コラーゲン産生性を向上させ、分子サイズに基づいて、ペプチドの代替として見ることができ、ペプチドと比較して拡散性の改善及びコストの利点を有し得る。
【0232】
【0233】
表10は、歯肉健康化合物、レチノール及びペプチドを含有する本発明の組成物の実施例12が、歯肉健康化合物を表皮/皮膚領域に効果的に送達して、比較実施例11と比較してコラーゲンI及びフィブリリン産生を22%及び89%上方調節することを示している。しかしながら、レチノール及びペプチドを含有する本発明の組成物の実施例12は、アクチン、クローディン、又はe-カドヘリンで測定された表皮免疫化学タンパク質を改善せず、比較実施例11と比較したバリア機能特性の改善を示していない。驚くべきことに、他の歯肉健康化合物、レチノール及びペプチドを有する本発明の組成物実施例15(ビタミンC、ビタミンE、及びビタミンB6)の添加は、コラーゲン産生を改善するだけでなく、3D組織のバリア機能特性を上方調節して、はるかに強く、回復力のある3D構造を提供した。
【0234】
【0235】
【0236】
表11及び12は、表皮及び表皮/真皮タンパク質の両方を上方調節する歯肉化合物の組み合わせを含有する本発明の組成物実施例16及び実施例17が、創傷治癒リカバリ並びにバリア機能の回復力及び保護を更に強化し得ることを示している。これは、比較実施例11と比較した本発明の組成物の実施例16(レチノール、ペプチド、及びビタミンA、B5、E)及び実施例17(レチノール及びビタミンB3)において示されており、創傷治癒リカバリはそれぞれ111%、108%改善し、LPS透過性に対する回復力については、56%及び47%改善している。一方、実施例12(レチノール及びペプチドのみ)では、創傷治癒リカバリは改善せず、LPS透過に対する回復力は21%改善した。
【0237】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0238】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することを明言しない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいかなる発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないかなる発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語の任意の意味又は定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0239】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
【国際調査報告】