(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-18
(54)【発明の名称】極低温冷却システム及びそのためのインサート
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
F25B9/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550731
(86)(22)【出願日】2021-02-16
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 GB2021050376
(87)【国際公開番号】W WO2021170976
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】プール ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン クリス
(57)【要約】
一次インサート118と脱着可能な二次インサート128を備える極低温冷却システムが提供される。一次インサート118は、各々が一次接触面を有する複数の一次プレート111、112と、複数の一次プレート111、112を連結するように配置された1つ以上の一次連結部材117とを備えている。脱着可能な二次インサート128は、各々が二次接触面を有する複数の二次プレート121、122と、二次インサート128が自立するように複数の二次プレート121、122を連結するように配置された1つ又は複数の二次連結部材127とを備える。1つ以上の調整部材は、二次インサート128が一次インサート118に取り付けられると、調整部材がそれぞれの一次プレート111、112及び二次プレート121、122の一次及び二次接触面を熱伝導性接触状態にするように構成される。
【選択図】
図9(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温冷却システムであって、
各々が一次接触面を有する複数の一次プレート、及び前記複数の一次プレートを連結するように配置された1つ以上の一次連結部材を備える一次インサートと、
脱着可能な二次インサートであって、各々が二次接触面を有する複数の二次プレート、及び前記二次インサートが自立するように前記複数の二次プレートを連結するように配置された1つ以上の二次連結部材を備える、前記二次インサートと、
1つ以上の調整部材と、を備え、
前記1つ以上の調整部材は、前記二次インサートが前記一次インサートに装着されたときに、前記調整部材が前記一次プレート及び前記二次プレートのそれぞれの前記一次接触面及び前記二次接触面を熱伝導性接触させるように構成されている、極低温冷却システム。
【請求項2】
前記1つ以上の調整部材は、前記一次インサート及び前記二次インサートの一方又は両方の一部を形成している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記熱伝導性接触が、それぞれの前記一次接触面及び前記二次接触面の共形の平面領域間の面接触により提供される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上の調整部材は、前記脱着可能な二次インサートの複数の前記二次プレートの各々と前記一次インサートの対応する一次プレートとの間のずれを調整するように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記ずれが2ミリメートル未満、好ましくは1ミリメートル未満である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記二次インサートが非装着状態にあるとき、前記二次プレートは互いに対して二次構成で空間的に配置され、前記一次インサートの前記一次プレートは互いに対して一次構成で空間的に配置され、前記ずれは、それぞれ一次構成及び二次構成での、前記二次プレートの平面と、対応する一次プレートの平面との間のずれである、請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記脱着可能な二次インサートが装着状態にあるとき、前記一次構成及び前記二次構成がそれぞれ維持される、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記調整部材の作動は、前記一次インサートの隣接する一次プレート間の間隔又は前記二次インサートの隣接する二次プレート間の間隔を変更しない、請求項1~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記1つ以上の調整部材が、一次プレート又は二次プレートそれぞれの一部を形成する1つ以上の変形可能な部材を備える、請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記1つ以上の調整部材は、前記熱伝導性接触をもたらすように、前記一次構成又は前記二次構成の一方又は両方を調整可能にする、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つ以上の調整部材は、隣接する一次プレート又は隣接する二次プレート間の間隔を変更するように構成されている、請求項1~6及び10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記1つ以上の調整部材は、1つ以上の一次連結部材又は二次連結部材の少なくとも一部を形成する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ以上の調整部材は、前記1つ以上の一次連結部材に対する前記1つ以上の一次プレートの移動を可能にするように構成されている、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
1つ以上の一次シムをさらに備え、各一次シムは、前記一次プレートを1つ以上の一次連結部材に熱的に結合し、前記1つ以上の一次連結部材に対する前記一次プレートの移動を可能にするように構成されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記1つ以上の調整部材は、前記1つ以上の二次連結部材に対する1つ以上の二次プレートの移動を可能にするように構成されている、請求項11~14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
1つ以上の二次シムをさらに備え、各二次シムは、前記二次プレートを1つ以上の二次連結部材に熱的に結合し、前記1つ以上の二次連結部材に対する前記二次プレートの移動を可能にするように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記1つ以上の調整部材を用いて隣接する一次プレート又は隣接する二次プレート間の間隔を変更するように、前記一次連結部材又は前記二次連結部材は回転可能である、請求項11~16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記1つ以上の調整部材は、前記一次連結部材又は前記二次連結部材のそれぞれの可撓性部分を形成する、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の二次プレートのうちの1つ以上が、実験装置を収容するように構成されている、請求項1~18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記一次インサートが、希釈冷凍機、ヘリウム3冷凍機、又は1ケルビンポットを備えている、請求項1~19のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記複数の二次プレートの2つ以上が一体型の自立型アセンブリとして前記脱着可能な二次インサートから取り外せるように、前記1つ以上の二次連結部材は取り外し可能である、請求項1~20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
請求項1~21のいずれかに記載の極低温冷却システムで使用するための脱着可能な二次インサート。
【請求項23】
請求項1~21のいずれかに記載のシステムの作動方法であって、
前記脱着可能な二次インサートが、第1二次プレートと、第2二次プレートと、第3二次プレートと、前記第1二次プレートを前記第2二次プレートに連結する第1二次連結部材と、前記第2二次プレートを前記第3二次プレートに連結する第2二次連結部材と、を備え、前記一次インサートが3つの一次プレートを備え、各一次プレートが前記二次インサートのそれぞれの二次プレートに対応し、前記方法は、
前記二次プレートが前記1つ以上の調整部材を用いて対応する前記一次プレートに伝導的に熱的に結合されるように、前記二次インサートを前記一次インサートに装着するステップと、
前記二次インサートを前記一次インサートから部分的に取り外すステップと、を備え、
前記二次インサートを部分的に取り外す前記ステップは、
前記第1二次連結部材を前記二次インサートから取り外すステップと、
前記第1二次プレートを前記一次インサートの対応するプレートから取り外すことなく、前記第2二次プレート、前記第3二次プレート、及び前記第2二次連結部材を、一体型の自立型アセンブリとして前記一次インサートから取り外すステップと、を備える方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温冷却システム、特に自立型脱着可能インサートを備えた極低温冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
極低温冷却システムは、100ケルビン未満の低温で実験を行うために通常使用されている。システムは、一般的に実験装置を特定の配置で設置することにより、特定の実験用にカスタマイズされる。実験装置の設置は、システムにアクセスするためクレーン又は高所プラットフォームの使用が通常必要であり、困難で時間が掛かる。さらに、実験装置の設置後、その機能が十分であることを確認するための試験が通常必要であり、これにはかなりの時間が掛かる。設置やトラブルシューティングに時間が掛かると、実験データの収集にはより少ない時間しか掛けられなくなる。
【0003】
極低温冷却システムは、通常、室温とミリケルビン温度の間の中間温度に保持された複数のプラットフォームを含むことにより、使用時にミリケルビン温度まで到達することができる。このようにして、システムの最終プラットフォームがミリケルビン温度への連続的な冷却を提供可能なように、冷却をステージ化することができる。設置された実験装置やシステムの他のコンポーネントは、室温から最終プラットフォームまでの経路を提供することができる。これらの部品による意図しない加熱を防ぐため、各プラットフォームは追加の熱を除去するためのサーマルシンクを提供する。
【0004】
実験サービスをシステム外のモジュールに組み込んで、事前組み立て状態に設置することが可能である。この方法は、実験サービスの直接的な設置よりも一般的に速い。しかし、ミリケルビン温度が得られるように、モジュールが十分に熱平衡化されることが重要である。先行技術では、熱平衡化は、クランプ及び/又は複雑で大規模な調整工程を使用して達成される。
【0005】
わずかなオフセットがシステム内の劣悪な熱平衡化を生じることがある。
【0006】
低温物理学実験はますます複雑化しており、実験を行うために必要な実験サービスも結果的に増加している。例えば、量子情報処理(QIP)実験では、大量の量子ビットを持つデバイスに対応するため高周波(RF)配線を使用する。量子ビットの数が増えれば、必要なRF配線の量も対応して増加する。極低温冷却システムは、増大する実験サービス量に対応することが期待されている。増加する需要に対応する一つの方法は、コアシステムのためのモジュールの改良を提供することである。しかしながら、製造公差が累積すると、極低温冷却システム内に不整合な接合部や不十分な熱平衡化のプラットフォームが生じ、かくして性能を向上させるために大規模な微調整が必要になる。
【0007】
極低温冷却システムにおいて、実験サービスをより簡便に導入する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「Pressed copper and gold-plated copper contacts at low temperature - A review of thermal contact resistance」, R.C.Dhuley, Cryogenics 101 (2019)111-124
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様は、使用時に:各々が一次接触面を有する複数の一次プレート、及び複数の一次プレートを連結するように配置された1つ以上の一次連結部材を備える一次インサートと、脱着可能な二次インサートであって、各々が二次接触面を有する複数の二次プレート、及び二次インサートが自立するように複数の二次プレートを連結するように配置された1つ以上の二次連結部材を備える、二次インサートと、1つ以上の調整部材と、を備え、1つ以上の調整部材は、使用時に、二次インサートが一次インサートに装着されたときに、調整部材が一次プレート及び二次プレートのそれぞれの一次接触面及び二次接触面を熱伝導性接触させるように構成されていることを特徴とする極低温冷却システムを提供する。
【0010】
有利なことに、このシステムは、それぞれの一次及び二次プレートの一次及び二次接触面を互いに熱伝導性接触にさせる調整部材を備えている。これは、極低温冷却システムの2つの部分が効果的に熱的に連通するように、2つの部分の間のずれを克服するための多数の微調整の必要性を取り除く。非装着時には、二次インサートは、自立体として一次インサートに対して移動させることもでき、これにより、取り付け及び取り外し作業がさらに簡素化される。例えば、二次インサートの各プレートは、単一のステップで一次インサートの対応するプレートに対して整列させることができる。
【0011】
1つ以上の調整部材は、一次インサートの一部を形成してもよい。この場合、調整部材は、複数の一次プレートの一部を形成してもよいし、1つ以上の一次連結部材の一部を形成してもよいし、プレート及び連結部材の両方の一部を形成してもよい。同様に、1つ以上の調整部材は、二次インサートの一部を形成してもよい。この場合、調整部材は、複数の二次プレートの一部を形成してもよいし、1つ以上の二次連結部材の一部を形成してもよいし、プレートと連結部材の両方の一部を形成してもよい。また、調整部材は、一次インサート及び二次インサートの一部を形成することも可能である。代替的に、調整部材は、一次インサートと二次インサートの対応するプレートを結合するように構成された締結部材の形態をとることもできる。調整部材の位置の選択は、特定の実装に依存することができる。例えば、二次インサートが硬質の実験装置を収容するように設計されている場合、調整部材の位置と種類はそれに応じて選択される。
【0012】
一次プレート及び二次プレートは、典型的には、概して平面的に延び、使用時にプレートの互いに隣接する周辺面に沿って連結され、これらは、段差部を有していてもよい。好ましくは、一次プレートと対応する二次プレートとの間の熱伝導性接触は、それぞれの一次及び二次接触面の共形の平面領域間の面接触により提供される。一次プレートと二次プレートのそれぞれは、フランジを含んでいてもよい。一次プレートが対応する二次プレートに接触すると、一次プレートのフランジの下面が二次プレートのフランジの上面に一致し、連続構造を形成する。一般に、一次プレートと二次プレートは高伝導性材料から形成されるため、プレートが広い面積で密接に連結された接合部は、接合部全体にわたって良好な熱的接続を提供する。
【0013】
調整部材は、典型的には、脱着可能な二次インサートの複数の二次プレートの各々と一次インサートの対応する一次プレートとの間のずれを調整することによって、一次プレート及び二次プレートのそれぞれの一次及び二次接触面を熱伝導性接触させる。製造公差の結果として、一次プレートと二次プレートとの間に位置ずれが生じることがある。プレート間のずれは、調整されないままだと、プレート間の熱コンダクタンスを低下させる。
【0014】
極低温冷却システムは、一次インサートと二次インサートの両方を含んでいるが、二次インサート(又は、代替的に、一次インサート)は、脱着可能であり、したがって、システムから取り外し可能である。二次インサートが非装着状態にあるとき、二次プレートは、典型的には、互いに対して二次構成で空間的に位置決めされている。二次インサートは、その非装着状態において自立しており、二次インサート内の隣接するプレート間の間隔は、二次連結部材により決定されてもよい。同様に、二次インサートが非装着状態にあるとき、一次プレートは、典型的には、互いに対して一次構成で空間的に位置決めされている。一次インサート内の隣接するプレート間の間隔は、一次連結部材により決定されてもよい。
【0015】
装着工程中に、二次インサートを一次インサートに取り付けることができる。二次インサートのプレートは、好ましくは、一次インサートの対応するプレートと接触させられるように構成される。しかし、上記プレート間に位置ずれがあってもよい。ずれは、それぞれの一次及び二次構成における二次プレートの平面と、対応する一次プレートの平面との間のオフセットであってよい。プレートの各対は、異なるずれを有してもよく、ずれは、正又は負であり得る。その結果、各調整部材は、異なるレベルの調整を提供し、典型的には、ずれを調整するために、少なくとも2ミリメートル、好ましくは少なくとも4ミリメートルの可動域を提供することが可能である。
【0016】
二次インサートは、極低温冷却システムから取り外し可能である。二次インサートは、完全に取り外すことができ、すなわち、二次インサートの全てのプレートを一次インサートから分離し、取り外すことができる。オプションとして、二次インサートは部分的にのみ取り外すことができる。二次インサートが部分的に取り外される場合、二次インサートのプレートの一部は一次インサートに取り付けられたままであり、一方、二次インサートの残りのプレートは一次インサートから取り外される。好ましくは、複数の二次プレートのうちの2つ以上が、一体の自立体又はアセンブリとして、脱着可能な二次インサートから取り外され得るように、1つ以上の二次連結部材が取り外し可能である。
【0017】
二次インサートは、二次連結部材を用いて連結された第1二次プレート、第2二次プレート、及び第3二次プレートを備え、第2二次プレートは、第1二次プレートと第3二次プレートとの間に配置される。第2二次プレートと第3二次プレートとを連結する二次連結部材を取り外すと、第2二次プレートと第1二次プレートは、一体構造として取り外すことができる。部分的に取り外された二次インサート(第1及び第2二次プレート)は、完全な非装着の二次インサートの自立特性と同様に、好ましくは自立する。
【0018】
二次インサートの脱着可能な性質は、有利には、二次インサートを極低温冷却システムから離して修正することを可能にする。しかし、二次インサート全体を取り外す必要がない場合には、二次インサートの一部を一次インサートに取り付けたままにしておくことが有益な場合がある。例えば、低温実験は通常真空中で行われるため、一次インサートと二次インサートの間の接合部の1つは、大気圧と低圧の間の障壁の一部を形成することがある。したがって、ガス漏れの可能性を減らすために、Oリングや他の真空シールを使用するなど、追加のシーリングが必要な場合がある。上記の障壁を形成するプレートをそのまま残しておくことは、シールの再形成を繰り返すことを避けることができ、有益である。
【0019】
二次インサートが極低温冷却システムから取り外し可能であることの利点は、二次インサートに取り付けられた実験装置を、極低温冷却システムから離して組み立て、修正、試験することができる能力である。さらに、修正は、二次インサートの2枚又は任意の枚数のプレートに対してのみ行うことができる。必要なプレートだけを取り外し、二次インサートを部分的に取り外す方が簡単で、したがって好ましい。
【0020】
典型的には、実験サービス又は実験装置は、極低温冷却システム内に配置され、低温で実験を行うために使用される。好ましくは、複数の二次プレートの1つ以上が、実験器具を収容するように構成される。これは、二次インサートに装着される実験装置が複雑で組み立てに時間がかかる場合に特に有利である。したがって、実験サービスは、一次インサートに取り付けられる前に、極低温冷却システムから離れた場所で組み立てられ、試験されることが可能である。
【0021】
極低温冷却システムは、低温実験手順に使用することができ、冷却は多くの冷凍装置を使用して達成することができる。このようなシステムは、ミリケルビン温度を達成することが特に望まれる。この目的のために、希釈ユニットが、好ましくは極低温冷却システムの一部を形成し、例えば、一次インサートは、希釈冷凍機又はその構成要素を備えることができる。希釈冷凍機は、一次インサートの1枚以上のプレートに熱的に結合することができる。代替的に、一次インサートは、ヘリウム3冷凍機又は1ケルビンポットを備えることができる。このような方法で、一次インサートの1枚以上のプレートは、ミリケルビン温度を達成することができる。一次インサートと二次インサートの間の熱伝導性接触は、二次インサートが作動中に同様の低温に達することを保証する。
【0022】
一次プレート又は二次プレートのうちの1つ以上は、剛体部分と、1つ以上の変形可能な部分とを備えることができる。好ましくは、変形可能な部分は、ずれを調整するために剛体部分に対して変形可能である。したがって、1つ以上の調整部材は、1つ以上の変形可能な部分を備えることができる。脱着可能な二次インサートの一次インサートへの取り付けの間、1つ以上の変形可能な部分は、熱伝導性接触を引き起こすように局所的に変形することができる。プレートの変形可能な部分は、例えばフランジの形態で、プレートの縁部に設けることができる。このモードの調整の1つの利点は、それぞれのインサート内で一次構成及び/又は二次構成を維持する能力である。例えば、調整部材の操作は、一次インサートの隣接する一次プレート間又は二次インサートの隣接する二次プレート間の間隔を変化させない。このことは、実際には、一次インサート又は二次インサートはそれぞれ固定された状態を維持し、したがって、2つ以上のプレートに取り付けられる剛体の実験装置を収容することができるということを意味する。同様に、一次及び二次インサートそれぞれの対応するプレート間の間隔も固定された状態に維持することができる。変形は、実験装置が損傷しないように、しかしそれにもかかわらず熱伝導性接触が達成されるように、プレートの予め定められた領域で局所的に起こるように構成することができる。変形可能な部分は、一次プレートの一部を形成してもよい。代替的に、変形可能な部分は、二次プレートの一部を形成してもよい。変形可能な部分は、オプションとして、一次プレートと二次プレートの両方の一部を形成してもよい。
【0023】
二次インサートが非装着状態にあるとき、一次及び二次インサートは、上述したようなそれぞれの一次構成及び二次構成を有していてもよい。調整が局所的な変形によって達成される場合、脱着可能な二次インサートが装着状態にあるときでさえ、一次構成及び二次構成を維持することが可能である。1つ以上の調整部材は、代替的に、熱伝導性接触を引き起こすように、一次構成又は二次構成の一方又は両方を調整可能にすることができる。例えば、1つ以上の調整部材は、隣接する一次プレート又は隣接する二次プレート間の間隔を変更するように構成される。これは、1つ以上の一次連結部材又は二次連結部材の各々を、プレート間のずれを調整するように変形するように構成することによって達成することができる。
【0024】
1つ以上の調整部材は、1つ以上の一次連結部材又は二次連結部材の少なくとも一部を形成してもよい。例えば、1つ以上の調整部材は、一次又は二次連結部材のそれぞれの可撓性部分を形成してもよい。二次インサートの一次インサートへの取り付けの間、二次連結部材を圧縮又は引張荷重下に置くことによって、ずれを調整することができる。荷重に応答して、二次連結部材が変形し、これにより二次プレートを対応する一次プレートと整列させることによって、熱伝導性接触を引き起こすことができる。同様に、可撓性の一次連結部材の変形により、ずれを調整することができる。
【0025】
代替的に、1つ以上の調整部材は、1つ以上の前記一次連結部材に対する1つ以上の一次プレートの移動を許容するように構成されてもよく、又は、1つ以上の調整部材は、1つ以上の前記二次連結部材に対する1つ以上の二次プレートの移動を許容するように構成されてもよい。例えば、1つ以上の調整部材を用いて、隣接する一次プレート又は隣接する二次プレートの間の間隔を変更するように、一次又は二次連結部材が回転可能であってもよい。この調整は、一般に、一次又は二次連結部材の端部がねじ又はタップ部を備える場合に達成される。この場合、調整部材は、連結部材の前記ねじ又はタップ部と、ねじ又はタップ部と係合して一次又は二次インサートの隣接するプレート間の間隔を調整するように構成された受け部材との組み合わせを備えることができる。
【0026】
好ましくは、一次及び二次連結部材は、それぞれの一次及び二次プレートで熱平衡化される。一般に、一次及び/又は二次連結部材に沿って室温からシステムの低温ステージに伝えられる熱負荷がある。プレートでの熱平衡化は、有利にはこの熱負荷を遮断し、それによって、システムの作動中に一次又は二次インサートの遠位ステージがより低い温度を得ることを可能にする熱シンクを形成する。一次連結部材の効果的な熱平衡化は、1つ以上の一次シムの使用によって達成され得、各一次シムは、一次プレートを1つ以上の一次連結部材に熱的に結合し、1つ以上の一次連結部材に対する一次プレートの移動を可能にするよう構成されている。同様に、二次連結部材の効果的な熱平衡化は、1つ以上の二次シムの使用によって達成され得、各二次シムは、二次プレートを1つ以上の二次連結部材に熱的に結合し、1つ以上の二次連結部材に対する二次プレートの移動を可能にするよう構成されている。
【0027】
次に、本発明のさらなる態様を説明する。ある態様に関連して説明した特徴は、残りの特徴に関しても同様に適用可能であり、各態様は同様の利点を共有する。
【0028】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る極低温冷却システムで使用するための脱着可能な二次インサートを提供する。
【0029】
本発明の第3の態様は、第1の態様によるシステムを作動させる方法を提供し、二次インサートが、第1二次プレートと、第2二次プレートと、第3二次プレートと、第1二次プレートを第2二次プレートに連結する第1二次連結部材と、第2二次プレートを第3二次プレートに連結する第2二次連結部材とを備え、一次インサートが3つの一次プレートを備え、各一次プレートが二次インサートのそれぞれの二次プレートに対応し、該方法は、二次プレートが1つ以上の調整部材を用いて対応する一次プレートに熱的に結合されるように、二次インサートを一次インサートに装着すること;及び二次インサートを一次インサートから部分的に取り外すこと、を備え、二次インサートを部分的に取り外すことは、第1二次連結部材を二次インサートから取り外すことと、第1二次プレートを一次インサートの対応するプレートから取り外すことなく、第2二次プレート、第3二次プレート、及び第2二次連結部材を、一体型の自立型アセンブリとして一次インサートから取り外すこととを備えている。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムの概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る極低温冷却装置の斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムの分解側面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムの第1の分解斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムの第2の分解斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムの実験サービスを取り付けた状態を示す分解斜視図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムからの二次プレートの模式図である。
【
図8(a)】熱接続する前の本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す模式図である。
【
図8(b)】熱接続した後の本発明の第1実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す模式図である。
【
図9(a)】本発明の第2実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す第1の模式図である。
【
図9(b)】本発明の第2実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す第2の模式図である。
【
図10(a)】熱接続する前の本発明の第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す模式図である。
【
図10(b)】熱接続した後の本発明の第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部を示す模式図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部の第1の断面図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部の斜視図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部の第2の断面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る極低温冷却システムで使用するための3つの例示的な二次インサートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、第1実施形態による極低温冷却システムの内部を示す断面図である。このシステムは、複数のサーマルステージ1~5と、外側ステージ6とを備える。サーマルステージ1~5及び外側ステージ6は、一次及び二次ロッド17、27によって接続され、従って、ステージがロッドに平行に延びる中心軸に沿って整列し、空間的に分散された階層型アセンブリを形成している。一次ロッド17は、明瞭のために
図1には示されていない。一次及び二次ロッド17、27は、ステンレス鋼のような低熱伝導性材料から形成される。使用時には、サーマルステージ1~5は、クライオスタット36内に収容され、クライオスタット36内の任意のガスを介した対流熱経路及び伝導熱経路を除去して熱性能を改善するために、典型的には排気される。クライオスタット36は外側ステージ6に取り付けられ、外側ステージ6の外面7は室温及び圧力にさらされ、低伝導性材料から形成されている。
【0033】
極低温冷却システムは、冷却装置を備えている。冷却装置は、極低温冷却システムを室温から作動ベース温度まで冷却する。第1実施形態における極低温冷却システムは、極低温流体のリザーバとの接触によって主に冷却されないという点で、実質的に寒剤無し(当該技術分野において「ドライ」とも称される)である。しかしながら、実質的に冷媒なしであるにもかかわらず、明らかになるように、いくつかの極低温流体は、液相を含み、使用時にクライオスタット内に典型的に存在する。この実施形態では、冷却は、機械式冷凍機及び希釈ユニットの使用によって達成される。機械式冷凍機は、パルスチューブ冷凍機(PTR)、スターリング冷凍機、又はギフォード・マクマホン(GM)冷凍機であってもよい。
【0034】
本実施形態では、機械式冷凍機はPTR40であり、第1サーマルステージ1及び第2サーマルステージ2に熱的に結合されている。各サーマルステージ1~5は、銅などの高伝導性材料から形成されており、異なる作動ベース温度を有する。第1サーマルステージ1は、第1PTRステージ41と熱的に結合され、約50~70ケルビンの作動ベース温度を達成する。第2サーマルステージ2は、第2のPTRステージ42に熱的に結合され、約3~5ケルビンの作動ベース温度を達成する。この実施形態では、第2のPTRステージ42は、PTR40の最低温度ステージを形成する。
【0035】
第3サーマルステージ3、第4サーマルステージ4、第5サーマルステージ5は、希釈ユニット8に熱的に結合されている。第3、第4及び第5サーマルステージ3、4、5の冷却は、希釈ユニット8の作動によって達成され、その際、冷却回路60の周りに作動流体が循環される。作動流体は、典型的には、ヘリウム-3とヘリウム-4との混合物である。作動流体は、コンプレッサポンプ63及びターボ分子ポンプ64を用いて、凝縮ライン61及びスチルポンプライン62を備える冷却回路60を回って圧送される。なお、作動流体は、貯蔵容器65に貯蔵し、供給ライン66を用いて冷却回路60に供給することができる。第3サーマルステージ3は、希釈ユニット8の一部を構成するスチル10に熱的に結合されている。第3サーマルステージ3の作動ベース温度は、典型的には0.5~2ケルビンである。第5サーマルステージ5は、希釈ユニット8の混合チャンバ9に熱的に結合されている。第5サーマルステージ5の作動ベース温度は、典型的には3~30ミリケルビンである。第4サーマルステージ4は、第3及び第5サーマルステージ3,5の間の中間ステージを形成し、約50~200ミリケルビンの作動ベース温度を有する。
【0036】
使用時には、多数の熱放射シールド56~58がサーマルステージ1~5に取り付けられ、各シールドは残りの下部ベース温度コンポーネントのそれぞれを囲む。第1熱放射シールド56、第2熱放射シールド57及び第3熱放射シールド58は、それぞれ第1サーマルステージ1、第2サーマルステージ2、及び第3サーマルステージ3に取り付けられる。これは、サーマルステージ1~5の間の任意の不要な熱通信を低減し、各ステージに異なる作動ベース温度を達成させることを可能にする。
【0037】
図1の極低温冷却システムは、制御システム50を使用して制御することができる。制御システム50は、典型的には適切なコンピュータシステムであるが、システムの制御を手動で行うことも可能である。システムの各部の作動は、PTR40、希釈ユニット8、ポンプ63、64及び関連バルブの作動、温度及び圧力センサの監視、ならびに所望の手順を実行するための他の補助機器の作動などを含み、制御システム50を使用して制御することが可能である。
【0038】
説明したような極低温冷却システムは、一般に100ケルビン未満の低温で実験を行うために使用することができる。
図1には示されていないが、実験サービスは、クライオスタット36内に取り付けることができる。クライオスタット36内の実験サービス及びそれらの特定の装置の選択は、カスタマイズ可能である。実験サービスのそのような一例について、
図6を参照して説明する。典型的には、実験サービスの特定の装置は、設置され、試験され、一定期間固定されたままにされる。異なるタイプの実験を行うためにシステム内の装置を修正することは、実験を実行する前に多数の調整とトラブルシューティングの手順を必要とし、典型的には非常に時間がかかる。本発明の実施形態は、一次インサート18及び二次インサート28を提供し、二次インサート28は一次インサート18から脱着可能である。従って、実験サービスは、一次インサート18に、又は、取り外し及び再取り付けが容易な二次インサート28に、又は、一次及び二次インサート18、28の双方に取り付けることができる。一次インサート18は複数の一次プレートからなり、二次インサート28は複数の二次プレート21~26からなり、各一次プレートは、さらに説明するように、システムのそれぞれのサーマルステージ1~5を形成するために、対応する二次プレートに取り付けるように構成される。
【0039】
実験サービスを二次インサート28に取り付ける利点は、二次インサート28を極低温冷却システムから取り外すことができる能力から生じる。組み立てと予備試験は、実験が行われる極低温冷却システムの外側の「ベンチで」行うことができる。このように、異なる実験を実行するための実験サービスの修正又は更新を、比較的迅速かつ容易に実行することができる。希釈冷凍機などの極低温冷却システムを使った低温実験には、実行するのに通常、数日、数週間、数カ月を要する。システム内の実験サービスの変更は、通常、室温で変更を行う必要があるため、実験休止時間(実験ダウンタイム)、すなわち極低温冷却システムが作動可能なベース温度でない時間をもたらす。ベンチ上(システム自体から離れた場所)で、取り外された二次インサート28上の実験サービスを操作する能力は、実験休止時間を減少させる。例えば、所定の極低温冷却システムと共に使用するために、複数の二次インサートを提供することができる。大気圧条件下で第1の二次インサート上の実験サービスを調整する一方で、第2の二次インサート上で実験を行うためにシステム内に極低温環境が維持される。
【0040】
本発明の実施形態は、一次インサート18と二次インサート28を熱伝導性接触させる調整部材も提供する。良好な熱的接触は、低温測定を行う際に重要である。例えば冷却源の作動によって発生するような熱流束の存在下では、一次インサート18と二次インサート28との間に温度勾配が自然に生じることになる。これらの構成要素間の温度差は、熱流束に比例し、熱コンダクタンスに反比例する。任意の実用的な実験では、システムに適用され得る熱流束に限界がある(PTRステージ41、42又は希釈冷凍機8のいずれかから利用できる冷却パワーが有限であるため)。接合部の熱コンダクタンスは、その温度や接触圧を含む多数の要因によって変化する。調整部材は、典型的には、一次及び二次インサート18、28の対応するステージ間の温度差を、例えば、より高い温度のステージの絶対温度の2%以内、好ましくは1%以内に制限するように構成される。これは、これらのステージ間の熱コンダクタンスを十分に高くすることによって達成される。例えば、第2サーマルステージ2が第2のPTRステージ42によって4ケルビンに冷却される場合(1ワットの冷却電力で)、第2サーマルステージ2のための調整部材は、第2サーマルステージ2の対応する一次及び二次プレート間の温度差が40ミリケルビンを超えないようにすることができる。したがって、第2サーマルステージ2の一次プレートと二次プレートとの間の熱コンダクタンスは、4ケルビンにおいて約25W/Kである。同様に、第5サーマルステージ5が混合チャンバ9によって100ミリケルビンに冷却される場合(400マイクロワットの冷却電力で)、第5サーマルステージ5の調整部材は、第5サーマルステージ5の対応する一次及び二次プレート間の温度差が1ミリケルビンを超えないことを保証することができる。したがって、第5サーマルステージ5の一次プレートと二次プレートとの間の熱コンダクタンスは、0.1ケルビンにおいて約0.4W/Kである。
【0041】
第2サーマルステージ2と第5サーマルステージ5で予想される熱コンダクタンスに差があることは、Cryogenics 101 (2019) 111-124に発行されたR.C.Dhuleyによる「Pressed copper and gold-plated copper contacts at low temperature - A review of thermal contact resistance」でさらに論じられたように、接合部(ジョイント)の温度依存性によるものである。所与の接合部の熱コンダクタンスは、温度とともに低下する。しかし、それぞれの一次及び二次インサート18、28の各一次及び二次プレート間に適用できる実用的な熱流束も温度とともに減少するので、一次及び二次プレート間のすべての取り付け装置は、各サーマルステージ1~5で許容可能な性能を提供するために同じ方法で設計及び取り付け可能である。
【0042】
様々な調整部材が想定され、異なる調整方法を容易にする実施形態が説明される。
【0043】
図2は、
図1の一次及び二次インサート18、28をさらに詳細に示している。図示のように、各サーマルステージ1~5は、内側一次プレート11~15、内側二次プレート21~25、及び縁部片31~35を備える。外側ステージ6は、外側一次プレート16と、外側二次プレート26とを備える。内側及び外側二次プレート21~25,26の各々は、対応する内側及び外側一次プレート11~15,16に、二次プレートの周縁部に沿って接続されている。縁部片31~35のそれぞれは、対応する内側一次プレート11~15と、対応する内側二次プレート21~25とに、それぞれの内側一次及び二次プレートの周辺部に沿って接続されている。内側及び外側一次プレート11~15,16は一次ロッド17によって連結され、内側及び外側二次プレート21~25,26は二次ロッド27によって連結されている。一次及び二次ロッド17,27は、プレート間をプレートに対して垂直な方向に延びている。本実施形態では、縁部片31~35は接続されていないが、代替実施形態では、縁部片31~35は、縁部片の間に延びる縁部ロッドによって接続することができる。
【0044】
内側及び外側一次プレート11~15,16と一次ロッド17は、一次インサート18の一部を形成している。内側及び外側二次プレート21~25、26及び二次ロッド27は、二次インサート28の一部を形成している。二次インサート28は、極低温冷却システム、特に、一次インサート18から脱着可能である。二次インサート28が非装着状態にあるとき、それは自立型アセンブリを形成し、元の構成を維持するために追加の支持構造を必要とせず、一体型ボディとして一次インサート18から取り外すことが可能である。
【0045】
二次インサート28と一次インサート18の設計は、二次インサート28が装着状態にあるとき、任意の二次インサート28と一次インサート18の間に良好な熱接触が達成されるようになっている。一次又は二次プレートの一方に加えられた冷却が二次又は一次プレートの他方に効果的に加えられるように、一次インサート18及び二次インサート28の対応するプレート間の効果的な熱平衡化を確保することが重要である。
【0046】
二次インサート28が装着状態にあるときに、任意の二次インサート28と一次インサート18との間の良好な熱接触を達成することは、些細なことではない。一次インサート18又は二次インサート28の製造中、それぞれのインサート18、28内の内側及び外側一次プレート11~15、16と内側及び外側二次プレート21~25、26の相対的位置関係は、たとえ同じ仕様で作られたとしても、ある製造公差内で異なることがある。小さな相違は、二次インサート28が装着位置に持ち込まれたときに、ミスアライメント、すなわち二次プレートの平面と対応する一次プレートの平面との間のオフセットをもたらし得る。そのようなずれは、たとえ小さくても、不良な熱的接触につながり得る。これは、第3、第4及び第5サーマルステージ3、4、5の作動ベース温度などの低温において特に重要である。
【0047】
一次インサート18と二次インサート28の対応するプレート間の良好な熱接触を達成するために、極低温冷却システムは、二次インサート28が装着状態にあるときに内側一次プレート11~15と内側二次プレート21~25を熱伝導性接触させ、それによってずれを収容する調整部材(その例は、以下にさらに詳細に説明する)をも備えることができる。調整部材は、一次インサート18の一部、二次インサート28の一部、又はその両方の一部を形成することができる。
【0048】
図2において、極低温冷却システムの構成部品は、装着状態で示されている。
図3は、システムの構成部品をより明確に示すために、一次インサート18から二次インサート28及び縁部片31~35を取り外した状態の第1実施形態による低温冷却システムの分解図を提供する。
図3は、縁部片31~35と、二次ロッド27によって連結された複数の内側二次プレート21~25と外側二次プレート26とを含む二次インサート28と、一次ロッド17によって連結された複数の内側一次プレート11~15と外側一次プレート16とを含む一次インサート18とを示す。
【0049】
本実施形態では、冷却装置は、一次インサート18に取り付けられている。冷却装置は、PTR40を含み、第1サーマルステージ1の第1内側一次プレート11に熱的に結合された第1PTRステージ41と、第2サーマルステージ2の第2内側一次プレート12に熱的に結合された第2PTRステージ42とを備える。冷却装置は、希釈ユニット8をさらに備え、希釈ユニット8のスチル10は、第3サーマルステージ3の一次プレート13に熱的に結合され、希釈ユニット8の混合チャンバ9は、第5サーマルステージ5の一次プレート15に熱的に結合されている。代替の実施形態では、冷却装置は、二次インサートに取り付けられる。例えば、希釈ユニットは、代替的に、第3、第4及び第5サーマルステージ3、4、5の内側二次プレート23、24、25に取り付けることができる。
【0050】
一次インサート18の内側及び外側プレート11~15,16は、一次構成において、内側及び外側一次プレート11~15,16に垂直な方向に延びる軸39に沿って整列されている。同様に、二次インサート28の内側及び外側プレート21~25、26は、二次構成において、二次インサート28の内側及び外側プレート21~25、26に対して垂直な中心軸に沿って整列し、空間的に分散配置されている。それぞれの一次及び二次構成において、二次プレートの平面と対応する一次プレートの平面との間に、ずれと呼ばれるオフセットが存在してもよい。内側二次プレート21~25の各々は、二次インサート28が一次インサート18に装着されると、その対応する内側一次プレート11~15と熱伝導性接触するように構成されており、したがって、任意のずれ(ミスアライメント)に対応する。このような熱伝導性接触は、調整部材によってもたらされる。外側二次プレート26は、任意の適切なシール機構が可能であるが、例えばOリングの使用により、外側一次プレート16と真空シールを形成する。
【0051】
次に、二次インサート28の極低温冷却システムへの取り付けについて、
図3を参照して説明する。まず、二次インサート28は、一次インサート18と二次元的に位置合わせされ、内側及び外側二次プレート21~25,26の各々が、対応する内側及び外側一次プレート11~15,16のやや下に配置される。第2に、二次インサート28は、第3次元で整列され、第3次元は、一次インサート18の主軸39に平行である。一次インサート18との第3の次元における位置合わせは、一次及び二次プレートの各対の間に熱伝導性接触を形成するように、内側及び外側二次プレート21~25、26の各々が対応する内側及び外側一次プレート11~15、16に向かうように二次インサート28を上げることにより達成される。外側ステージ6の外側二次プレート26は、外側一次プレート16とシールを形成する。そして、内側二次プレート21~25を所定の位置に固定することができる。この実施形態では、それらは、ここでは、ねじの形態の締結部材を用いて固定される。調整部材(図示せず)は、内側一次プレート11~15と内側二次プレート21~25を、装着状態において熱伝導性接触とする。最後に、縁部片31~35は、ねじを用いて、所定の位置に固定される。
【0052】
各縁部片31~35は、より低いベース温度の構成部品を余分な放射から遮蔽するように形成されている。
図3から分かるように、各縁部片31~35の形状は、各サーマルステージ1~5を完成させるため、各内側二次プレート21~25及び各内側一次プレート11~15の形状に適合するように設計されている。代替の実施形態では、縁部片31~35は、二次インサート28を配置することなく内側一次プレート11~15に取り付け可能である。別の実施形態では、縁部片は必要ではない。その代わりに、各内側二次プレート21~25は、各サーマルステージ1~5を完成させ、隣接するステージ間の放射を遮断する熱シールドとして機能するように形成することができる。
【0053】
極低温冷却システムの二次インサート28は、一次インサート18から脱着可能である。
図4は、第1実施形態による極低温冷却システムを示し、二次インサート28が取り外された位置にあり、縁部片31~35が対応する内側一次プレート11~15に取り付けられている。
【0054】
二次インサート28が非装着位置にある間、二次インサート28、特に二次インサート28に取り付けられた実験サービスに修正を加えることができる。これは、ユーザにとって、非装着位置で達成するので実際上容易である。二次インサート28の修正は、例えば、二次インサート28に取り付けられた実験的サービスの更新又は試験を含むことができる。所望であれば、その後、更新された二次インサート28を一次インサート18に装着することができる。さらに、1つの二次インサート28を作動中、すなわち装着状態で実験的に使用とし、1つ以上の二次インサート28をベンチ上、すなわち非装着状態とするために、複数の二次インサート28を有することが有利である。非装着状態である間、二次インサート28上の実験サービスは、より容易に修正又は更新することができる。脱着された二次インサート28上の実験サービスは、室温で試験することができ、又は二次インサート28は、低温で実験サービスを試験するためにドナークライオスタットに装着することができる。上記の試験、組み立て、修正及び更新は、極低温冷却システムで行われている実験と並行して行うことができる。
【0055】
上述したように、二次インサート28は、階層化されたアセンブリを形成している。アセンブリ内の内側及び外側二次プレート21~25、26の空間分布は、
図4に示すように、5つのプレート間空間51~55を画定する。外側二次プレート26と第1内側二次プレート21との間の第1プレート間空間51、第1内側二次プレート21と第2内側二次プレート22との間の第2プレート間空間52、第2内側二次プレート22と第3内側二次プレート23との間の第3プレート間空間53、第3内側二次プレート23と第4内側二次プレート24との間の第4プレート間空間54、第4内側二次プレート24と第5内側二次プレート25の間の第5プレート間空間55である。
【0056】
図4において、4つの二次ロッド27のグループが、それぞれのプレート間空間51~55を横切って延在し、隣接する二次プレート21~26の各対を接続する。二次ロッド27の各グループの配置は、それぞれのプレート間空間51~55から各ロッドを独立して調整又は除去できるように、隣接するグループに対してオフセットされている。プレート間空間51~55のうちの1つにおける二次ロッド27のすべてを取り外すと、二次インサート28を2つの部分に分割することができる。それゆえ、二次インサート28の2つ以上のプレートは、一体構造として残りのプレートから取り外すことができる。
図5は、二次インサート28が部分的に取り外された第1実施形態による極低温冷却システムを示す。
【0057】
図5では、第4プレート間空間54の2次ロッド27が除去されている。第4プレート間空間54は、第3内側二次プレート23と第4内側二次プレート24との間にあり、したがって、上記二次ロッド27の除去により、残りの内側及び外側二次プレート21~23,26を取り付けたまま、第4内側二次プレート24及び第5内側二次プレート25を低温冷却システムから脱着することができる。第4及び第5内側二次プレート24、25は、接続する二次ロッド27によって一緒に保持されたままであり、したがって、このアセンブリは、極低温冷却システムから取り外された後も自立している。代替の実施形態では、内側及び外側二次プレート21~25、26のうちの任意の枚数を取り外すことができる。
【0058】
実験状況によっては、二次インサート28の二次プレート21~26のサブセットのみを試験又は修正することが必要な場合もある。従って、二次インサート28の部分的な取り外しは、実験サービスのより柔軟な準備及び試験を可能にするため有利である。さらに、二次インサート28の全体とは対照的に、二次インサート28の一部の再取付けは、ユーザにとって実行するのに複雑さが低い。極低温冷却システムは、内側二次プレート21~25が取り外された状態で作動させることができる。しかしながら、第1~第4サーマルステージ1~4のいずれかの内側二次プレート21~24が取り外される場合、サーマルステージ間の放射伝達を低減するために、これらは一般にブランクと交換される。
【0059】
実験サービスは、極低温冷却システムに搭載することができる。
図6は、二次インサート28に実験サービスを取り付けた状態の第1実施形態による極低温冷却システムを示している。実験サービスの例としては、RF配線であることができる配線、超高真空コンポーネント、電気デバイス(減衰器、フィルタ、サーキュレータ又は他のマイクロ波コンポーネント、増幅器、抵抗器、トランジスタ、温度計、コンデンサ、インダクタなど)、又は選択した実験に必要な他の実験サービスを含むことができる。
図6に示す実験サービスは、同軸線である。
【0060】
上述したように、二次インサートは、極低温冷却システムから全体的又は部分的に取り外され、別の極低温冷却システムに挿入されてもよい。二次インサート28が装着位置に持ち込まれるときに、各内側二次プレート21~25と対応する内側一次プレート11~15との間にずれが生じ得ると、これが不良な熱接触をもたらし得る。良好な熱的接触を確保するために、極低温冷却システムは、調整部材を備えている。ここで、可能な調整部材について、
図7~
図12を参照して説明する。
【0061】
図7は、第1実施形態に係る内側二次プレートの模式的な正面図である。以下、第1内側二次プレート21に関して説明するが、この記載は二次インサート28の内側二次プレート21~25の任意の1つ以上に適用可能である。第1内側二次プレート21は、剛体の中央部分43を有する。剛体の中央部分43の各辺に沿って、第1二次プレート21の平面内に配置されたフランジ44が設けられている。本実施形態では、各フランジ44には、フランジ44の長さに沿って均等に分布する二次孔59が設けられている。これら孔は、タップ付きでもタップ無しでもよい。第1内側二次プレート21が、ねじ又は任意の適切な取り付け機構を用いて第1内側一次プレート11に取り付けられるように、対応する一次プレート上に一致する一連の孔が配置される(
図8(a)及び
図8(b)参照)。
【0062】
フランジ44は、リンク部分又は連結部分45によって剛体の中央部分43から分離されている。リンク部分45は、フランジ44の長さに沿って延びる第1内側二次プレート21の比較的薄いストリップであり、フランジ44がその回りに移動可能な枢軸を形成している。第1内側二次プレート21は、さらに二次ロッド27を位置決めするための4つの受孔46を収容するが、もちろん、受孔46の数は、使用する二次ロッド27の数によって異なってもよい。
【0063】
第1実施形態では、フランジ44は、第1内側一次プレート11と第1内側二次プレート21とを熱伝導性接触にさせるように荷重が加えられたときに変形するように構成されている。局所的な変形により、超高真空ポートなどの剛体の実験装置を二次インサート28に取り付けることができる。そのような剛体の装置は、一旦取り付けられると、内側又は外側二次プレート21~25、26の2つ以上の間の間隔を効果的に決定することができる。この実施形態では、剛体の装置は、第1内側二次プレート21の剛体の中央部分43に取り付けられ、フランジ44は、かくして調整部材を形成する変形可能な部分を提供する。フランジ44の局所的な変形は、第1内側一次プレート11と第1内側二次プレート21との間のあらゆるミスアライメントを調整する。内側二次プレートの剛体の中央部分43を含むことは、有利には、二次インサート28と一次インサート18との間の効果的な熱平衡化を確保しながら、剛体の実験装置を任意の必要な調整によって影響を受けない状態に維持することができる。
【0064】
図8(a)及び
図8(b)は、装着工程中の第1実施形態に係る極低温冷却システムの一部を模式的に示す側面図である。
図8(a)は、非装着状態の二次インサート28の一部を示し、
図8(b)は、調整部材を使用して装着状態である二次インサート28の一部を示している。
図8(a)及び
図8(b)は、第1内側二次プレート21、第2内側二次プレート22、第1内側一次プレート11、及び第2内側一次プレート12の一部を示している。しかし、本説明は、二次インサート28の任意の隣接する内側プレートと、一次インサート18の対応するプレートに適用される。
【0065】
第1内側二次プレート21は、剛体の中央部分43と、フランジ44と、リンク部分45とを備える。第2二次プレート22は、剛体の中央部分43’と、フランジ44’と、リンク部分45’とを備える。第2内側二次プレート22と第1内側二次プレート21との間の類似の装置特徴を指定するために、プライム符号付き(’)の参照数字が使用されている。第1及び第2内側二次プレート21、22は、いずれも
図7によって示される形状をとる。第1内側一次プレート11は、一次ロッド17によって第2内側一次プレート12に接続されている。典型的には、複数の一次ロッド17が一次インサート18の隣接するプレートを接続するために使用されるが、ここでは明確にするために1つだけが示されている。
【0066】
図8(a)は、二次インサート28が非装着状態にあるときの二次インサート28の一部と一次インサート18の対応する部分とを模式的に示す。非装着状態において、第1内側二次プレート21と第2内側二次プレート22との間の分離はd
2である。第1内側一次プレート11と第2内側一次プレート12との間の分離はd
1であり、d
1>d
2である。異なる実施例において、ずれは逆方向であってもよく、すなわちd
1<d
2である。
図8(a)における相対的な横方向位置関係は例示的であり、縦方向のずれ又はミスアライメントを明確に示すためのものである。このずれは、第1内側二次プレート21と第1内側一次プレート11との間である。第1及び第2内側一次プレート11,12は、一次孔69,69’が貫通して延びる周囲に沿った段差部を備える。第1及び第2内側二次プレート21,22の二次孔59,59’は、第1及び第2内側一次プレート11,12の一次孔69,69’とそれぞれ整列するよう構成されている。
【0067】
代替の実施形態では、フランジは、二次インサート28の代わりに、一次インサート18のプレート上に配置されてもよい。これは、極低温冷却システムのための複数の交換可能な二次インサート28がある場合(そのうちのいくつかは調整部材を含んでいない可能性がある)に特に有利である。別の代替的な実施形態では、フランジ44は、一次インサート18及び二次インサート28のプレート上に配置されてもよい。これは、有利には、変形が両側で起こり得るので、より大きな可能なずれを許容し得る。
【0068】
図8(b)は、二次インサート28が装着状態にあるときの
図8(a)の二次インサート28の部分と一次インサート18の対応する部分とを模式的に示す。
図8(b)において、二次孔59、59’は、一次孔69、69’と整列している。フランジ44とリンク部分45は、変形位置にあり、第1内側一次プレート11と第1内側二次プレート21を熱伝導性接触状態にするように変形されている。したがって、フランジ44は、第1内側一次プレート11の段差部に沿って第1内側一次プレート11と面接触している。第1内側一次プレート11の段差部分の平面領域は、第1内側二次プレート21のフランジ44と形状的に一致又は共形である。
【0069】
この実施形態では、フランジ44、44’の変形は、第1内側二次プレート21及び第2内側二次プレート22の剛体の中央部分43、43’が互いに対して固定された位置に留まりつつ、d1とd2との間のずれに適応又は調整することが可能である。第1内側一次プレート11と第2内側一次プレート12も、取り付け工程の前後で、互いに対して固定された位置に留まる。
【0070】
図9(a)及び
図9(b)は、第2実施形態に係る極低温冷却システムの一部を模式的に示す側面図であり、調整部材を使用した装着状態の二次インサート128の一部を示している。この極低温冷却システムは、第1実施形態で説明したものと同様の形態をとるが、設けられた調整部材が異なる。
図9(a)及び
図9(b)のそれぞれは、二次ロッド127によって第2内側二次プレート122に接続された第1内側二次プレート121と、一次ロッド117によって第2内側一次プレート112に接続された第1内側一次プレート111とを示している。典型的には、さらなる一次ロッド117及びさらなる二次ロッド127が用いられるが、
図9(a)及び
図9(b)には、明確にするために、1つのみが示されている。二次インサート128が装着位置に示されている状態で、二次孔159、159’は一次孔169、169’と整列している。
【0071】
第2実施形態では、二次ロッド127は、隣接する内側二次プレート121、122の間の間隔を調整するように圧縮又は引張荷重が加えられると変形するように構成されている。この動きは、一次及び二次インサート118、128の対応するプレート間の任意のずれを調整する。この実施形態では、一次ロッド117は剛体であり、したがって、一次インサート118の隣接するプレート間の間隔は固定されている。二次ロッド127は、ステンレス鋼から形成され、説明したように変形が可能なように湾曲している。二次ロッド127の変形は、内側二次プレート121~125の各々を、対応する内側一次プレート111~115と熱伝導性接触状態にする。
【0072】
図9(a)において、非装着状態における第1内側二次プレート121と第2内側二次プレート122との間の距離d
2は、第1内側一次プレート111と第2内側一次プレート112との間の距離d
1よりも小さく、すなわちd
2<d
1である。二次インサート128が非装着状態にあるとき、二次ロッド127は、
図9(a)において破線を用いて示した第1位置147にある。二次ロッド127は、引張荷重に応答して、
図9(a)に実線で示す第2位置148まで伸長するように構成されており、この位置では、第1及び第2内側二次プレート121,122がさらに離間され、接触面に沿ってそれぞれ第1及び第2内側一次プレート111,112との間で良好な熱接触が可能となる。
【0073】
図9(b)において、非装着状態における第1内側二次プレート121と第2内側二次プレート122との間の距離d
2は、第1内側一次プレート111と第2内側一次プレート112との間の距離d
1よりも大きく、すなわちd
2>d
1である。二次インサート128が非装着状態にあるとき、二次ロッド127は、
図9(b)において破線を用いて示した第1位置147にある。二次ロッド127は、圧縮荷重に応答して、
図9(b)に実線で示す第3位置149まで圧縮するように構成されており、この位置では、第1及び第2内側二次プレート121,122は、第1及び第2内側一次プレート111,112とそれぞれ良好な熱接触状態にされる。
【0074】
図9(a)及び
図9(b)を参照して上述したような第2実施形態では、二次ロッド127は、極低温冷却システムの一次インサート118及び二次インサート128の対応する内側プレートの間のずれを調整することができる。二次ロッド127は、二次インサート128の各プレートを一次インサート118の各プレートと整列させるために、隣接する二次プレート間の距離を調整するように構成されている。代替の実施形態では、一次ロッドは、二次ロッド127に関連して上述したように、圧縮又は引張荷重が加えられると変形するように構成されてもよく、二次ロッドは、このように内側及び外側二次プレートの位置を互いに対して固定するように剛体であることができる。これにより、非装着状態において二次インサートをよりしっかり固定されたものとすることができる。
【0075】
図10(a)及び
図10(b)は、第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部を模式的に示す側面図である。第2実施形態(
図9(a)及び
図9(b))と同様に、また第1実施形態(
図8(a)及び
図8(b))とは異なり、第3実施形態は、インサートの隣接するプレート間の間隔を調整するように構成された調整部材を備えている。
図10(a)は、非装着状態の二次インサート228の一部を示し、一方、
図10(b)は、調整部材が使用されている装着状態の二次インサート228の一部を示している。
図10(a)及び
図10(b)は、第1内側二次プレート221、第2内側二次プレート222、第1内側一次プレート211、及び第2内側一次プレート212を図示している。
【0076】
図10(a)及び
図10(b)において、第1内側二次プレート221は、二次ロッド227によって第2内側二次プレート222と接続されている。上側の二次ロッド227’は、第1内側二次プレート221を外側二次プレート(図示せず)に接続する。下側の二次ロッド227”は、第2内側二次プレート222を第3内側二次プレート(図示せず)に接続する。二次ロッド227、227’、227”の各々は、各ロッド227、227’、227”の近位端に設けられ、グラブねじ230、230’を受けるように適合された肩部229、229”を備えている。第1内側一次プレート211は、一次ロッド217によって第2内側一次プレート212に接続されている。上側の一次ロッド217’は、第1内側一次プレート211を外側一次プレート216(図示せず)に接続する。下側の一次ロッド217”は、第2内側一次プレート212を第3内側一次プレート213(図示せず)に接続する。
【0077】
図10(a)は、二次インサート228が非装着状態にあるときの二次インサート228の一部と一次インサート218の対応する部分とを模式的に示す図である。二次孔259、259’は、二次インサート228が装着状態にあるときに一次孔269、269’と整合するように構成され、それらの間に締結部材が延在する。一次孔269、269’及び/又は二次孔259、259’は、ねじ切りされてもよいし、例えば締結部材が裏ナットと組み合わせて用いられる場合には、クリアランス孔又はばか孔を形成してもよい。
図10(a)において、非装着状態における第1内側二次プレート221と第2内側二次プレート222との間の間隔d
2は、第1内側一次プレート211と第2内側一次プレート212との間の間隔d
1より大きく、すなわちd
2>d
1である。
図10(a)の相対的な横方向の位置関係は例示であり、縦方向の位置関係を明確に示すためのものである。このずれは、第2内側二次プレート222と第2内側一次プレート212との間のものである。
【0078】
非装着状態において、第1内側二次プレート221及び第2内側二次プレート222は、それぞれ二次ロッド227及び下側の二次ロッド227”の肩部229、229”上に配置される。第1グラブねじ230が、二次ロッド227と上側の二次ロッド227’との間に配置される。二次ロッド227の上側部分及び上側の二次ロッド227’の下側部分は、第1グラブねじ230と係合するようにタップ加工又は内側ねじ切り加工されている。第2グラブねじ230’が、二次ロッド227と下側の二次ロッド227”との間に配置される。下側の二次ロッド227’の上側部分と二次ロッド227の下側部分は、第2グラブねじ230’を収容するように、タップ加工されている。この実施形態において調整部材を形成するのは、二次ロッドのタップ加工部分と、それが係合する対応するグラブねじとの組合せである。代替の実施形態では、一次ロッドが、二次ロッドについて説明したような調整機構を備えてもよいし、一次ロッドと二次ロッドの両方が、そのような調整機構を備えてもよい。
【0079】
図10(b)は、二次インサート228が装着状態にあるときの、
図10(a)に示した二次インサート228の部分と一次インサート218の対応部分とを模式的に示す図である。二次孔259、259’と一次孔269、269’は整列されており、対応する板は高い熱コンダクタンスで熱的に連結されている。第1内側二次プレート221と第2内側二次プレート222との間の間隔は、第1内側一次プレート211と第2内側一次プレート212との間の間隔と一致するように調整されている。この実施形態では、ずれは、第2内側二次プレート222を肩部229”から離間させることによって調整されている。いくつかの実施形態では、これは、二次ロッド227の回転によって達成され得る。本実施形態では、一次孔269’を通って対応する二次孔259’の中に延びる締結部材を調整する行為が、第2内側二次プレート222を肩部229”から持ち上げる。したがって、第1及び第2実施形態とは異なり、第3実施形態の調整部材は、二次ロッド227に対して、二次ロッド227の方向に沿った第2内側二次プレート222の移動を容易にすることを理解されたい。したがって、熱平衡化シム238が、二次ロッド227と第2内側二次プレート222との間に配置される。熱平衡化シム238は、二次ロッド227と第2内側二次プレート222との間の機械的支持及び熱的接続を提供し、
図13を参照して更に詳細に説明する。
【0080】
図11は、
図10(a)及び
図10(b)に示した第3実施形態に係る二次インサートプレートの一部を示す断面図である。以下では、第2内側二次プレート222について説明するが、この説明はいずれの内側二次プレートにも適用することができる。
図11は、第2内側二次プレート222と、二次ロッド227と、下側の二次ロッド227”とを示している。二次ロッド227と第2内側二次プレート222との間には、第1ねじ付きインサート219が配置されている。第1ねじ付きインサート219は、近位端で中空の二次ロッド227の中に延び、遠位端で第2内側二次プレート222の中に延びている。第2ねじ付きインサート220は、下側の二次ロッド227”と第2内側二次プレート222との間に配置されている。第2ねじ付きインサート220は、その近位端に肩部229”部分を有し、これは第2内側二次プレート222の中に延びている。その遠位端では、第2ねじ付きインサート222は、中空の下側の二次ロッド227”の中に延びている。
【0081】
この実施形態では、第1ねじ付きインサート219及び第2ねじ付きインサート220は、第2グラブねじ230’を収容するようにねじ切り又はタップ加工されている。代替の実施形態では、グラブねじは、二次ロッド227と下側の二次ロッド227”との間の距離を調整するのに適した止めねじ又は任意のねじとすることができる。第1ねじ付きインサート219及び第2ねじ付きインサート220は、真鍮又は銅のような、関連するサーマルステージの作動ベース温度において高い熱コンダクタンスを有する材料から形成されている。再び、熱平衡化シム238は、二次ロッド227と第2内側二次プレート222との間に配置される。これは、第3実施形態による脱着された二次インサート228の一部の斜視図を提供する
図12でも見ることができる。
図12において、実験サービスは、二次インサート228に取り付けられる。特に、示されている実験サービスは、第2内側二次プレート222及び第1内側二次プレート221に接続された同軸ワイヤである。
【0082】
図13は、第3実施形態に係る極低温冷却システムの一部を模式的に示す断面図であり、二次インサート228が装着状態にあるときの熱平衡化シム238の変形を示している。内側二次プレートは、ずれを調整するように二次インサート228内で二次ロッドの方向に移動可能である。
図13において、第1内側二次プレート221は、2つの二次ロッド227と2つの上側の二次ロッド227’と一緒に示されている。対応する一次プレートは、明確にするために示されていない。
【0083】
熱平衡化シム238は、二次ロッド227、227’を第1内側二次プレート221に接続し、第1内側二次プレート221が二次ロッド227、227’に沿って移動するとき、装置に機械的安定性を提供する。この実施形態では、熱平衡化シム238は、真鍮又は銅のような、関連するサーマルステージの作動ベース温度において高い熱コンダクタンスを有する材料から形成され、さらに二次ロッド227、227’の効果的な熱平衡化を提供する。熱平衡化シム238は、二次ロッド227’の端部を内側二次プレート221に熱的に結合するように構成される。有利には、各サーマルステージ201~205における二次ロッド227及び一次ロッド217の熱平衡化は、極低温冷却システムを室温から作動ベース温度まで冷却するのに必要な時間を短縮する。それはまた、二次ロッド227に沿って二次インサートの暖かい端部と冷たい端部との間の任意の不要な熱伝達を減少させる。これは、特にこれら構成要素間の相対的な移動が可能である場合、二次ロッド227と二次プレートとの間の熱コンダクタンスを増加させることによって達成される。
【0084】
グラブねじ230は、熱平衡化シム238が配置される周囲に半径方向の突出部を有する。熱平衡化シム238の外側の穴はスロット付きであり、矢印で示すように、二次ロッド227、227’に対して垂直なシムの移動を許容する。位置決めされると、熱平衡化シム238は、クランプ力によって第1及び第2ねじ付きインサート219、220の間の所定位置に保持される。また、熱平衡化シムは、シムねじ267を用いて第1内側二次プレート221にしっかりと固定される。熱平衡化シム238は、第1内側二次プレート221と二次ロッド227、227’との物理的接触を維持するように可撓性を有し、第1内側二次プレート221が二次ロッド227、227’に対して移動するときに二次ロッド227、227’の効果的な熱平衡化を保証する。この熱平衡化シム238の変形は、
図13で見ることができる。
【0085】
図14は、先の実施形態による一次インサートと共に使用するための例示的な二次インサート28’、28”、28’’’を図示している。各ケースにおいて、プレート間に軸方向に整列された多数のポートが示されている。しかしながら、示されるように、二次インサートは、様々な形態をとることができる。二次インサートの1つがポートの異なる配置を有する2つ以上の二次インサートを有することが有利であり得る。この場合、第1配置で構成された二次インサートを第2配置で構成された別の二次インサートに交換することによって、同じ極低温冷却システムを複数の種類の実験に使用することができる。
【0086】
さらなる実施形態では、先に説明した調整部材の任意の組み合わせを、単独又は組み合わせて使用することができる。
【0087】
したがって、理解されるように、装着状態で効果的な熱平衡化を達成しながら、二次インサートをシステムから取り外すことができる極低温冷却システムが提供される。二次インサートの取り外しは、遠隔組み立て、試験、セットアップを可能にする。さらに、このシステムは、更新された二次インサートの形態でモジュールのアップグレードを提供する能力のため、さらなる柔軟性を備えている。低温実験に重要な効果的な熱平衡化は、説明したように専用の調整部材を使用して達成される。
【国際調査報告】