(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-18
(54)【発明の名称】生体高分子の配列を決定する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6874 20180101AFI20230411BHJP
【FI】
C12Q1/6874 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551329
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(85)【翻訳文提出日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 US2021019428
(87)【国際公開番号】W WO2021173681
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507243142
【氏名又は名称】アリゾナ・ボード・オブ・リージェンツ・オン・ビハーフ・オブ・アリゾナ・ステイト・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Arizona Board of Regents on behalf of Arizona State University
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】リンジィ,スチュアート
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QS34
4B063QX05
(57)【要約】
本開示は、生体高分子の配列を決定することに関連するデバイス、システム、及び方法を提供する。詳細には、本開示は、関心のある酵素の活性に対応する電流変動に基づいて生体電子署名を取得する方法を提供する。本明細書に記載されるように、生体電子署名の一定の態様を使用して、生体高分子の配列を決定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ電子デバイスを使用してポリヌクレオチドの配列を決定する方法であって、
(a)前記バイオ電子デバイスに鋳型ポリヌクレオチドを導入することであって、前記バイオ電子デバイスは、第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも1つに機能的に結合されたポリメラーゼを含む、前記鋳型ポリヌクレオチドを導入すること、
(b)前記鋳型ポリヌクレオチドを含む前記デバイスに、dNTPモノマーを含む溶液を導入することであって、各dNTPは前記溶液中に所定の濃度で存在する、前記dNTPモノマーを含む溶液を導入すること、及び、
(c)各相補的dNTPモノマーが前記鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときの電流変動に基づいて、ポリメラーゼ活性の生体電子署名を取得すること、
を含み、前記生体電子署名の少なくとも1つの特性が、前記鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれた前記相補的dNTPの各々を識別する、前記方法。
【請求項2】
前記生体電子署名が、前記ポリメラーゼが開放状態にあることに対応する開放期間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記開放期間の持続時間が、特定のdNTPモノマーが前記鋳型ポリヌクレオチドに組み込まれたかどうかを識別するように、各dNTPモノマーによって異なる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液が、4つのdNTPモノマーを含み、第1のdNTPは、その開放期間の持続時間が第2のdNTPの前記開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で前記溶液に存在し、前記第2のdNTPは、その開放期間の持続時間が前記第1のdNTP及び第3のdNTPの前記開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で前記溶液に存在し、前記第3のdNTPは、その開放期間の持続時間が前記第2のdNTP及び第4のdNTPの前記開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で前記溶液に存在し、且つ、前記第4のdNTPは、その開放期間の持続時間が前記第3のdNTPの前記開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で前記溶液に存在する、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
各dNTPの開放期間の持続時間が、複数の開放持続期間の分布に基づいて決定される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1のdNTPが、飽和濃度で存在する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
重複の程度が、1%以下である、請求項4~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記生体電子署名が、前記ポリメラーゼが閉鎖状態にあることに対応する閉鎖期間を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記閉鎖期間の少なくとも1つの特性が、前記以前に取り込まれたヌクレオチドによって異なる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記閉鎖期間の前記少なくとも1つの特性が、機械学習を含む方法を使用して識別される、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記機械学習方法が、隠れマルコフモデリングまたはベイジアンノンパラメトリック分析を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記閉鎖期間の少なくとも1つの特性と前記開放期間の少なくとも1つの特性との組み合わせを使用して、前記鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれた前記相補的dNTPの各々を識別する、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記ポリヌクレオチド鋳型がDNAである、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性が無効にされる、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリメラーゼが、チオストレプトアビジンを含むリンカーを使用して、前記第1の電極及び前記第2の電極に機能的に結合される、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
リンカーが、ポリメラーゼの不活性領域に付着している、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に100mV以下の電圧バイアスを印加することを含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記dNTPモノマーが、アデニン(dATP)、シトシン(dCTP)、グアニン(dGTP)、及びチミン(dTTP)を含む、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
バイオ電子デバイスを較正する方法であって、
(a)前記バイオ電子デバイスに鋳型ポリヌクレオチドを導入することであって、前記バイオ電子デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極に機能的に結合されたポリメラーゼを含む、前記鋳型ポリヌクレオチドを導入すること、
(b)前記鋳型ポリヌクレオチドを含む前記デバイスに、dNTPモノマーを含む溶液を導入することであって、各dNTPは前記溶液中に所定の濃度で存在する、前記dNTPモノマーを含む溶液を導入すること、
(c)各相補的dNTPモノマーが前記鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときの電流変動に基づいてポリメラーゼ活性の生体電子署名を取得することであって、前記生体電子署名は、前記ポリメラーゼが開放状態にあることに対応する開放期間を含む、前記生体電子署名を取得すること、及び、
(d)各dNTPの前記開放期間の固有分布を測定または決定することと
を含み、前記バイオ電子デバイスは開放期間の前記分布に基づいて較正される、前記方法。
【請求項20】
前記生体電子署名が、前記ポリメラーゼが閉鎖状態にあることに対応する閉鎖期間を含み、前記バイオ電子デバイスが、前記閉鎖期間の少なくとも1つの特性に基づいて較正される、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔政府の支援〕
本発明は、国立衛生研究所により付与された認可番号R21 HG010522の下、政府の支援を受けて行われた。米国政府は、本発明に一定の権利を有している。
【0002】
〔関連出願〕
本出願は、2020年2月28日に出願された米国仮特許出願第62/983,417号の優先権及び利益を主張し、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
〔電子資料の参照による取り込み〕
参照によりその全体が本明細書に組み込まれるのは、本明細書と同時に提出され、2021年2月24日に作成された「2021-02-24_38882-601_SQL_ST25.txt」という名称の1つの825バイトのASCII(テキスト)ファイルとして特定されるコンピュータ可読ヌクレオチド/アミノ酸配列リストである。
【0004】
本開示は、生体高分子の配列を決定することに関するデバイス、システム、及び方法を提供する。詳細には、本開示は、関心のある酵素の活性に対応する電流変動に基づいて、生体電子署名を取得する方法を提供する。本明細書に記載されるように、生体電子署名の一定の態様を使用して、生体高分子の配列を決定することができる。
【0005】
〔背景技術〕
タンパク質が様々な機能を実行するとき、これらの機能の根底にある動きが生成される。活性タンパク質によって生成される変動に対応する電気的特性を測定するデバイス、システム、及び方法を開発する能力は、タンパク質機能のラベルフリー検出及び分析の基盤となり得る。例えば、活性酵素の機能的変動を監視することは、酵素の機能に影響を与える候補薬物分子をスクリーニングする迅速かつ簡単な方法を提供し得る。他の場合では、生体高分子(例えば、炭水化物、ポリペプチド、核酸など)を処理するタンパク質の変動を監視する能力は、それらの構造変化と構造変化が機能にどのように関連しているかについての新しい情報を明らかにし得る。さらに、診断デバイス及び分析デバイスは、活性タンパク質によって生成される電気的特性を利用するように開発することができ、実際に使用するための生体力学的特性を活用する新しい方法を提供する。
【0006】
〔発明の概要〕
本開示の実施形態は、バイオ電子デバイスを使用してポリヌクレオチドの配列を決定するための方法を含む。これらの実施形態によると、この方法は、鋳型ポリヌクレオチドをバイオ電子デバイスに導入することと、各dNTPが溶液中に所定の濃度で存在するdNTPモノマーを含む溶液を、鋳型ポリヌクレオチドを含むデバイスに導入することと、各相補的dNTPモノマーが鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときの電流変動に基づいて、ポリメラーゼ活性の生体電子署名を取得することとを含む。いくつかの実施形態では、生体電子署名の少なくとも1つの特性は、鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれた相補的dNTPの各々を識別する。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、第1の電極及び第2の電極の両方に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、生体電子署名は、ポリメラーゼが開放状態にあることに対応する開放期間を含む。いくつかの実施形態では、開放期間の持続時間は、特定のdNTPモノマーが鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれたかどうかを識別するように、dNTPモノマーごとに異なる。
【0008】
いくつかの実施形態では、溶液は、4つのdNTPモノマーを含む。いくつかの実施形態では、第1のdNTPは、その開放期間の持続時間が第2のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、第2のdNTPは、その開放期間の持続時間が第1のdNTP及び第3のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、第3のdNTPは、その開放期間の持続時間が第2のdNTP及び第4のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、第4のdNTPは、その開放期間の持続時間が第3のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド鋳型の配列は、各開放期間の持続時間から正確に決定することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの配列は、各開放期間の持続時間、及び/または閉鎖期間の1つまたは複数の特性から正確に決定することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、各dNTPの開放期間の持続時間は、複数の開放持続期間の分布に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、第1のdNTPは飽和濃度で存在する。いくつかの実施形態では、重複の程度は1%以下である。
【0010】
いくつかの実施形態では、生体電子署名は、ポリメラーゼが閉鎖状態にあることに対応する閉鎖期間を含む。いくつかの実施形態では、閉鎖期間の少なくとも1つの特性は、以前に取り込まれたヌクレオチドによって異なる。いくつかの実施形態では、閉鎖期間の少なくとも1つの特性は、機械学習を含む方法を使用して識別される。いくつかの実施形態では、機械学習方法は、隠れマルコフモデリングまたはベイジアンノンパラメトリック分析を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、閉鎖期間の少なくとも1つの特性と開放期間の少なくとも1つの特性との組み合わせを使用して、鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれた相補的dNTPの各々を識別する。
【0012】
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド鋳型はDNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド鋳型はRNAである。いくつかの実施形態では、dNTPモノマーは、アデニン(dATP)、シトシン(dCTP)、グアニン(dGTP)、チミン(dTTP)、及び/またはウリジン(dUTP)、ならびに、それらの任意の誘導体または変異体を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性が無効にされる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、チオストレプトアビジンを含むリンカーを使用して、第1の電極及び第2の電極に機能的に結合される。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリメラーゼの不活性領域に付着している。
【0014】
いくつかの実施形態では、方法は、第1の電極と前記第2の電極の間に100mV以下の電圧バイアスを印加することを含む。
【0015】
本開示の実施形態は、バイオ電子デバイスを較正する方法も含む。これらの実施形態によると、この方法は、鋳型ポリヌクレオチドをバイオ電子デバイスに導入することと、各dNTPが溶液中に飽和濃度で存在するdNTPモノマーを含む溶液を、鋳型ポリヌクレオチドを含むデバイスに導入することと、各相補的dNTPモノマーが鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときの電流変動に基づいてポリメラーゼ活性の生体電子署名を取得することであって、生体電子署名は、ポリメラーゼが開放状態にあることに対応する開放期間を含む、生体電子署名を取得することと、各dNTPの開放期間の固有分布を測定または決定することと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、開放期間の分布に基づいて較正される。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、第1の電極及び第2の電極の両方に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、生体電子署名は、ポリメラーゼが閉鎖状態にあることに対応する閉鎖期間を含み、バイオ電子デバイスは、閉鎖期間の少なくとも1つの特性に基づいて較正される。
【0018】
〔図面の簡単な説明〕
〔
図1〕本開示の一実施形態による、電流変動に基づく酵素活性の生体電子署名を示す代表的なグラフである。
【0019】
〔
図2〕本開示の一実施形態による、
図1の生体電子署名の拡大部分の代表的なグラフであり、酵素が開放状態(201)から閉鎖状態(202)に遷移する際に、新しいモノマー(例えば、dNTP)が生体高分子に取り込まれる時間の部分を含む。
【0020】
〔
図3〕本開示の一実施形態による、関心のある酵素(例えば、ポリメラーゼ)が開いた状態またはコンフォメーションで存在し、モノマー(例えば、dNTP)の到着を待っている分布時間の代表的なグラフである。
【0021】
〔
図4〕本開示の一実施形態による、関心のある酵素(例えば、ポリメラーゼ)が開いた状態またはコンフォメーションで存在し、モノマー(例えば、dNTP)の到着を待っており、各モノマーが所定の濃度で溶液中に存在する、分布時間の代表的なグラフである。
【0022】
〔
図5〕
図1の生体電子署名の拡大部分の代表的なグラフであり、酵素が開放状態(201)から閉鎖状態(202)に遷移する際に、新しいモノマー(例えば、dNTP)が生体高分子に取り込まれる時間の部分を含む。生体電子署名の一定の特性(例えば、閉鎖状態での電流変動)が、隠れマルコフモデリング及び/またはベイジアンノンパラメトリックモデリングを使用して抽出でき、これは、生体高分子の配列を決定するための基盤を形成し得る。
【0023】
〔発明を実施するための形態〕
このセクション及び本明細書の開示全体で使用されているセクションの見出しは、単に構成上の目的のためであり、限定を意図したものではない。
【0024】
1.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。相反する場合、定義を含めて、本書類が優先する。好ましい方法及び材料については後述するが、本明細書に記載されるものと類似するまたは同等の方法及び材料も、本開示の実施または試験に使用することができる。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により、それらの全体が組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、及び実施例は、例示のために過ぎず、限定することを意図していない。
【0025】
本明細書に記載されているように、開示された実施形態は、例示のみを目的として提示されており、限定ではない。他の実施形態も可能であり、本開示に含まれ、これは、本明細書に含まれる教示から明らかとなる。したがって、本開示の広さ及び範囲は、上記の実施形態のいずれによっても制限されるべきではなく、本開示によってサポートされる特許請求の範囲やそれらの等価物によってのみ定義されるべきである。さらに、主題の開示の実施形態は、方法、組成、システム、及び装置/デバイスを含んでよく、これらは、タンパク質活性の検出に対応する任意の及びすべての要素を含む、任意の他の開示された方法、組成、システム、及びデバイスからの任意の及びすべての要素をさらに含み得る。言い換えれば、1つまたは別の開示された実施形態からの要素は、他の開示された実施形態からの要素と交換可能であってよい。さらに、いくつかのさらなる実施形態が、本明細書に開示の1つ及び/または他の特徴を、方法、組成、システム、及びデバイス、ならびに参照によって組み込まれた材料に開示されたそれらの1つまたは複数の特徴と組み合わせることによって実現されてよい。さらに、開示された実施形態の1つまたは複数の特徴/要素が除かれてもよく、それでもなお、特許性のある主題をもたらす(したがって、主題の開示のさらに多くの実施形態をもたらす)。さらに、いくつかの実施形態は、先行技術の教示と比べて、1つ及び/または他の要素、構造、及び/またはステップ(該当する場合)を具体的に欠いている方法、組成、システム、及びデバイスに対応し、したがって、特許性を有する主題を表し、かつ、それらと区別できる(すなわち、このような実施形態に関する請求項は、先行技術の教示の1つまたは複数の特徴を欠いていることを記載することに対する否定的限定を含み得る)。
【0026】
本明細書で定義及び使用されるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文書内の定義、及び/または定義された用語の通常の意味に優先すると理解されるべきである。
【0027】
本明細書及び特許請求の範囲で本明細書において使用される不定冠詞「a」及び「an」は、明確に反対に示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0028】
「及び/または」という句は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「及び/または」を用いて列挙されている複数の要素も、同様に、すなわち、そのように結合された要素の「1つまた複数」と解釈されるべきである。「及び/または」節によって具体的に特定された要素以外の他の要素が、具体的に特定された要素に関連するかどうかにかかわらず、任意選択で存在してよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/またはB」は、「含む」などのオープンエンドの語と組み合わせて使用されるとき、一実施形態では、Aのみを指すことができ(任意選択で、B以外の要素を含む)、別の実施形態では、Bのみを指すことができ(任意選択でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態では、A及びBの両方を指すことができる(任意選択で、他の要素を含む)等である。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上で定義した「及び/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内のアイテムを区切るとき、「または」または「及び/または」は、包括的である、すなわち、複数の要素または要素のリストのうちの少なくとも1つだけでなく、複数、ならびに、任意選択で、列挙されていない追加のアイテムを含むとして解釈されるものとする。「の1つのみ」または「正確に1つ」、または特許請求の範囲で使用されるとき、「からなる」などの、明確に反対のことを示す用語のみが、複数の要素または要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般的に、本明細書で使用される用語「または」は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、または「のうちの正確に1つ」のなどの排他的な用語が先行するときのみ、排他的な選択肢(すなわち、「両方ではなく、一方または他方」)を示すとして解釈されるべきである。「本質的にからなる」は、特許請求の範囲で使用されるとき、特許法の分野で使用される通常の意味を持つものとする。
【0030】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1つまたは複数の要素のリストに言及した「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト内に具体的に列挙された各要素及びあらゆる要素のうちの少なくとも1つを必ずしも含まず、要素のリスト内の要素のいかなる組み合わせも除外しない、要素のリスト内の要素の任意の1つまたは複数から選択された少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきである。この定義はまた、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するかどうかにかかわらず、任意に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に、「A及び/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、Bは存在せず(及び、任意選択でB以外の要素を含む)少なくとも1つのA、任意選択で、2つ以上のAを指すことができ、別の実施形態では、Aは存在せず(及び、任意選択で、A以外の要素を含む)少なくとも1つのB、任意選択、2つ以上のBを指すことができ、さらに別の実施形態では、少なくとも1つのA、任意選択で、2つ以上のAと、少なくとも1つのB、任意選択で、2つ以上のB(及び、任意選択で、他の要素を含む)を指すことができる等である。
【0031】
特許請求の範囲及び上記明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「持っている(carrying)」、「有する(having)」、「含む(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「から構成される(composed of)」などのすべての移行句は、オープンエンドであること、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味すると理解されるべきである。米国特許庁特許審査手続マニュアルのセクション2111.03に記載されているように、移行句「からなる(consisting of)」及び「本質的に~からなる(consisting essentially of)」のみが、それぞれクローズドまたはセミクローズドの移行句とする。
【0032】
2.バイオ電子デバイス及びシステム
本開示の実施形態は、生体高分子の配列決定に関連するデバイス、システム、及び方法を含む。詳細には、本開示は、関心のある酵素の活性に対応する電流変動に基づいて生体電子署名を取得する方法を提供する。本明細書にさらに記載されるように、関心のある酵素の生体電子署名の一定の態様を使用して、生体高分子の配列を決定することができる。
【0033】
これらの実施形態によると、関心のある酵素はポリメラーゼであってよく、ポリメラーゼが鋳型ポリヌクレオチド鎖にヌクレオチドモノマーを付加するときのポリメラーゼの生体電子署名の様々な態様を使用して、その鋳型ポリヌクレオチドの配列を決定することができる。例えば、ポリメラーゼ活性の生体電子署名は、各相補的ヌクレオチドモノマーが鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときの電流変動に基づいてよく、署名は、少なくとも第1の電極及び第2の電極に機能的に結合されたポリメラーゼを含むバイオ電子デバイスを使用して取得することができる。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、第1の電極及び第2の電極の両方に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。「ヌクレオチド」という用語は、一般に、塩基-糖-リン酸の組み合わせを指し、リボヌクレオシド三リン酸、ATP、UTP、CTG、GTP、ならびにdATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPなどのデオキシリボヌクレオシド三リン酸、またはそれらの誘導体を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ分子のコンダクタンスは、分子が開放状態(入ってくるdNTPモノマーを受け入れる準備ができている)及び閉鎖状態(入ってくるdNTPを取り込み、ポリメラーゼ内で新しい二重らせんを翻訳する)から遷移するときに2倍になる。このプロセス中に得られる典型的な電気信号の代表的な図を
図1に示す。不活性状態では、ポリメラーゼを流れる電流は低いベースラインレベル(101)である。dNTPが追加されると、電流は閉鎖状態(103)に関連付けられた新しいより高いコンダクタンス(102)に跳ね上がる。各新しいヌクレオチドが取り込まれた後、電流は低下し(104)、これは次の開放状態への遷移を示す。
図1に示すトレースでは、電流の下向きのスイープは、電子機器の応答時間によって制限される。つまり、より低速の開放は、電流のバックグラウンドレベル(101)までずっと低下する。この特定の例のデータセットでは、ポリメラーゼは新しい鋳型を捕捉しておらず(105)、電流はベースラインレベル(101)に戻る。
【0035】
ポリメラーゼ活性の生体電子署名は、一過性の開放状態とその間の閉鎖領域の両方の情報を含む。例えば、
図2は、
図1の生体電子署名の拡大部分を含み、これは、酵素が開放状態(201)から閉鎖状態(202)に遷移する際に、新しいモノマー(例えば、dNTP)が生体高分子に取り込まれる時間の部分を含む。
図2の2つの一過性の開放(201)は、τ
C(閉区間、または202)として示される、三リン酸を開裂し、新しいヌクレオチドを取り込み、DNAを翻訳する反応の時間を画定する。開放状態の幅は、τ
Oとして矢印の間に示されている。第1の開放(204)とその後の再度の開放との間の電流(203)は、第1の開放(204)に捕捉されたヌクレオチドの取り込みを反映する特徴または特性(203)を含む。
【0036】
本明細書でさらに説明するように、活性ポリメラーゼの生体電子署名の様々な特徴または特性を使用して、ポリヌクレオチド鋳型の配列を決定することができる。さらに、本開示に基づいて当業者によって認識されるように、生体電子署名を取得し、本明細書に記載の様々な特性を抽出する方法を使用して、任意の生体高分子、ならびにポリメラーゼ、ヌクレアーゼ、プロテアソーム、グリコペプチダーゼ、グリコシダーゼ、キナーゼ、及びエンドヌクレアーゼを含むがこれらに限定されない任意の対応する関心のある酵素の配列を決定することができる。
【0037】
さらに
図3に示されるように、相補的dNTPの選択は閉鎖状態(201)中に起こり、τ
Oの値の分布はdNTP溶液の組成(例えば、濃度)に敏感である。
図3は、相補的dNTP、すなわちdTTPの1mM溶液中の10A塩基からなるホモポリマー鋳型(301-ドット)の所与の値τ
Oの測定された確率を示す。適合された分布曲線(302)は、0.16msにピークがあり、幅が0.3msの鋭いガウス分布である。
【0038】
対照的に、ポリメラーゼが相補的なdNTPを探索しなければならない場合、開放時間の分布は、四角形(303)で示されるように、はるかに広くなる。この例では、鋳型は、4つのすべてのdNTPのmM溶液中の配列ATCの5回の繰り返しを含んでいた。ここでは、分布は指数関数(304)によって適合されており、開放時間は3msにもなる(ただし、ボックス305で示されているように、すべての値の1%未満は約2msを超える。)。
【0039】
これらの時間は、これらのmM濃度で入ってくるdNTP間の時間を考慮することでわかるように、ポリメラーゼの固有の応答を反映している。
【0040】
分子拡散定数Dと濃度(C)粒子数/m3での半径Rp(ポリメラーゼの半径約3nmを意味する)のs球体への分子のフラックスIは、
I=4πRpD[C]である。
【0041】
dNTPの拡散定数は、Einstein-Smoluchowskiの関係とストークの法則によって次のように与えられる。
【0042】
【0043】
ここで、RNはdNTPの半径、ηは水の粘度(300Kで10-3Pa.s)である。
【0044】
したがって
【0045】
【0046】
ここで、Iは、粒子数/m3のバルク濃度[C]で、1秒あたりにポリメラーゼに入る粒子の数である。これは、モル濃度(M)掛ける1000xNA(NAはアボガドロ数)で表すことができ、
【0047】
【0048】
300Kで、kT=4.14x10-21J、水のηは10-3Pa.sなので、
【0049】
【0050】
R
p/R
n約3で、これより、1mMのdNTPで約5x10
6のフラックス(または到着間の時間は約0.2μs)が得られる。したがって、dNTPは、最速の開放事象あたり100を超えるレートでポリメラーゼに到達している。
図3に示すT時間は、したがって、ポリメラーゼの固有の応答時間を表す。正しいdNTPが常に存在する場合(301)、これは一貫して約0.16msである。4つの可能なdNTPの中から正しい相補的ヌクレオチドを見つけるためにポリメラーゼを開いたままにする必要がある場合、時間の分布は、はるかに広くなる(303)。ほとんどすべての探索事象は、dNTPのmM濃度で約3msで終了する。
【0051】
式1を使用して、濃度を下げたdNTPの到着率を予測することができる。この到着率はポアソン分布に従って分布することは重要である。
【0052】
【0053】
これは、平均到着間隔μが分布の分散でもあるという特別な性質を有する。
【0054】
図4は、原点(401)に近い指数関数として、mMのdNTPでのポリメラーゼの開放時間の固有分布を示す。隣接した分布(402)は、μ=17msで、式2を使用して計算される。式1より、
【0055】
【0056】
この例示的なデータに示されているように、17msの間隔はI=58.8、または、(402)で示される到着時間の分布を与える11nMの溶液に対応する。この場合、到着間隔はポリメラーゼの固有の応答よりもはるかに長いため、これが開放状態の存続期間を支配する。したがって、第1のdNTPがmM濃度で存在し、第2のdNTPが11nMで存在する場合、開放時間分布の重複は、曲線401と402の重複によって与えられる(これらの曲線はすべて、合計確率=1となるように正規化される)。この重複(405)は、約0.001または約10分の1パーセントである。第3のdNTPをさらに3.8nMに希釈すると、μ=50msとなり、403とラベル付けされた曲線が得られる。第4のdNTPを1.9nMに希釈すると、μ=100msとなり、結果の分布は404とラベル付けされた曲線としてプロットされる。曲線403によって表されるdNTPについて、曲線402との重複は0.004(406)であり、曲線404との重複もまた0.004(407)である。したがって、開放事象に続いて取り込まれるヌクレオチドは、1%以上の開放事象の持続時間によって識別することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1のdNTPは、約1mM~約10mM、約1mM~約8mM、約1mM~約6mM、約1mM~約5mM、約1mM~約4mM、約1mM~約3mM、または約1mM~約2mMの範囲の濃度で溶液中に存在することができる。いくつかの実施形態では、第1のdNTPは、約2mM~約10mM、約4mM~約10mM、約5mM~約10mM、約6mM~約10mM、約7mM~約10mM、約8mM~約10mM、または約8mM~約10mMの範囲の濃度で溶液中に存在することができる。いくつかの実施形態では、第1のdNTPは、約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、または10mMの濃度で溶液中に存在することができる。したがって、いくつかの実施形態では、第2のdNTPは、約5nM~約15nM、約10nM~約15nM、約12nM~約15nM、約5nM~約12nM、約5nM~約10nM、約5nM~約8nM、約7nM~約12nM、または約8nM~約10nMの範囲の濃度で溶液中に存在することができる。いくつかの実施形態では、第2のdNTPは、溶液中に約5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、10nM、11nM、12nM、13nM、14nM、または15nMの濃度で存在することができる。したがって、いくつかの実施形態では、第3のdNTPは、約1nM~約10nM、約1nM~約8nM、約1nM~約6nM、約1nM~約5nM、約2nM~約10nM、約3nM~約10nM、約2nM~約8nM、または約2nM~約6nMの範囲の濃度で溶液中に存在することができる。いくつかの実施形態では、第3のdNTPは、約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、9nM、または10nMの濃度で溶液中に存在することができる。したがって、いくつかの実施形態では、第4のdNTPは、約0.1nM~約5nM、約0.1nM~約2.5nM、約0.1nM~約1nM、約0.5nM~約5nM、約0.5nM~約2.5nM、約1nM~約5nM、約1nM~約4nM、または約1nM~約2.5nMの範囲の濃度で溶液中に存在することができる。いくつかの実施形態では、第4のdNTPは、約1.5nM、1.6nM、1.7nM、1.8nM、1.9nM、2nM、2.1nM、2.2nM、2.3nM、2.4nM、または2.5nMの濃度で溶液中に存在することができる。本開示に基づいて当業者によって認識されるように、dNTPのこれらの濃度は、限定することを意味するものではなく、本明細書に記載の方法の様々な態様(例えば、鋳型配列及び構造)に基づいて調整することができる。
【0058】
表1及び2(下記)に示すように、開放時間と閉鎖時間の分布は配列と鋳型構造によって異なる。これらのデータは、次の配列の測定された時間分布を示す(1)AAAAAAAAAA(SEQ ID NO:1)-一本鎖オリゴマー(A10)、重合緩衝液にdTTPのみ(2)ATCATCATCATCATC(SEQ ID NO:2)-一本鎖オリゴマー(ATC5)、4つの全てのdNTPが存在、及び(3)catctactacgcttagcttgctatcatctatgcttagcatga(SEQ ID NO:3)-円形鋳型、4つの全てのdNTPが存在。
【0059】
【0060】
【0061】
ホモポリマーA10は、1つの開放状態と1つの閉鎖状態という特徴がある。ヘテロポリマーATC5は、1つはA10と同じくらいの速さで、事象の約3/4であり、1/4ははるかに遅い2つの開放時間という特徴がある(表1)。同様に、その閉鎖状態の大半(約3/4)は、ホモポリマーの場合と同じくらい短い持続時間で、残りの1/4ははるかに遅い(表2)。ヘテロポリマー配列を有する円形鋳型も、開放状態と閉鎖状態の両方の2つの状態を示すが、どちらの事象も線形ポリマーの事象よりも高速である。
【0062】
総合すると、これらのデータは、開放時間が緩衝液のヌクレオチド組成に敏感であることを示している。dTTPのみが存在するA10の場合、(高速の)開放時間が1つだけである。4つのヌクレオチドがすべて存在する場合、2つの開放状態がある。短い開放状態は、最初の試みでの正しいヌクレオチドの捕捉に対応する可能性が高く、一方、より長い開放時間は、非相補的ヌクレオチドの拒絶が続く捕捉に対応する可能性が高い。データはまた、(サイクルの触媒部分に対応する)閉鎖時間も配列にどのように依存するかを示している。ホモポリマーA10の場合、高速閉鎖時間が1つだけある。ヘテロポリマーは両方とも2つの異なる閉鎖時間を持ち、1つは速く、2番目はほぼ10倍長く、ヌクレオチドの取り込みの一部がどれほど長くかかるかを示している。
【0063】
図5に示されるデータを参照すると、所与の閉鎖事象(202)を特定のヌクレオチドの取り込みと関連付ける能力により、特定のヌクレオチドに関連付けられた信号の特徴または特性のさらなる識別が可能になる。さらに、以前に取り込まれた特定のヌクレオチドに加えて特定のヌクレオチドを取り込むことにより、特定のヌクレオチドに関連付けられた信号の特徴または特性をさらに識別することも可能になり、それによって、閉鎖間隔の信号の特徴が16のそのような組み合わせを反映する(「塩基スタッキング」)。開放状態は閉鎖状態に比べて電流の大きな変化を表すが、閉鎖状態での電流の変化は確率論的であり、ノイズの影響を受ける。ただし、基になるレベルは、例えば、無限隠れマルコフモデル法をベイジアンノンパラメトリック法と共に使用して、モデルに依存しない方法で抽出することができる。結果として、特性レベルは、
図5の「隠された」基礎状態(501)によって示されるように、モデルフリーの方法で配置することができる。
【0064】
本明細書に記載の実施形態によると、本開示は、バイオ電子デバイスを使用してポリヌクレオチドの配列を決定する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、鋳型ポリヌクレオチドをバイオ電子デバイスに導入することと、dNTPモノマーを含む溶液を、鋳型ポリヌクレオチドを含むデバイスに導入することとを含む。いくつかの実施形態では、各dNTPは、所定の濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、この方法は、各相補的dNTPモノマーが鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときの電流変動に基づいて、ポリメラーゼ活性の生体電子署名を取得することを含む。いくつかの実施形態では、生体電子署名の少なくとも1つの特性が、鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれた相補的dNTPの各々を識別する。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、第1の電極及び第2の電極の両方に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、生体電子署名は、ポリメラーゼが開放状態にあることに対応する開放期間を含む。いくつかの実施形態では、開放期間の持続時間は、特定のdNTPモノマーが鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれたかどうかを識別するように、dNTPモノマーごとに異なる。いくつかの実施形態では、溶液は、4つのdNTPモノマーを含む。いくつかの実施形態では、第1のdNTPは、その開放期間の持続時間が第2のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、第2のdNTPは、その開放期間の持続時間が第1のdNTP及び第3のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、第3のdNTPは、その開放期間の持続時間が第2のdNTP及び第4のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。いくつかの実施形態では、第4のdNTPは、その開放期間の持続時間が第3のdNTPの開放期間の持続時間と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する。これらの実施形態によると、ポリヌクレオチド鋳型の配列は、各開放期間の持続時間から正確に決定することができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドの配列は、各開放期間の持続時間及び/または閉鎖期間の1つまたは複数の特性から正確に決定することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、各dNTPの開放期間の持続時間は、複数の開放持続期間の分布に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、第1のdNTPは飽和濃度で存在する。いくつかの実施形態では、重複の程度は、1%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、1%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.9%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.8%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.7%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.6%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.5%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.4%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.3%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.2%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.1%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.075%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.050%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.025%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.010%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.005%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.001%以下である。いくつかの実施形態では、分布が最小限重複する程度は、0.0001%以下である。
【0067】
いくつかの実施形態では、生体電子署名は、ポリメラーゼが閉鎖状態にあることに対応する閉鎖期間を含む。いくつかの実施形態では、閉鎖期間の少なくとも1つの特性は、以前に取り込まれたヌクレオチドによって異なる。いくつかの実施形態では、閉鎖期間の少なくとも1つの特性は、機械学習を含む方法を使用して識別される。いくつかの実施形態では、機械学習方法は、隠れマルコフモデリングまたはベイジアンノンパラメトリック分析を含む。いくつかの実施形態では、閉鎖期間の少なくとも1つの特性と開放期間の少なくとも1つの特性との組み合わせを使用して、鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれた相補的dNTPの各々を識別する。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド鋳型はDNAである。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド鋳型はRNAである。いくつかの実施形態では、dNTPモノマーは、アデニン(dATP)、シトシン(dCTP)、グアニン(dGTP)、チミン(dTTP)、及び/またはウリジン(dUTP)、ならびにそれらの任意の誘導体または変異体を含む。
【0068】
当業者は、本開示の教示から恩恵を得た後に容易に認識及び理解するように、本明細書に記載の方法は、酵素(例えば、ポリメラーゼ)の開放状態及び閉鎖状態の持続時間を感知する任意のバイオ電子デバイスと共に使用することができる。例示的な装置には、米国特許第10,422,787号及びPCT出願第PCT/US2019/032707号に開示されたバイオ電子デバイス及びシステムが含まれるが、これらに限定されず、両出願は、参照によりその全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。さらに、前述の実施形態が、dNTPをrNTPに置換し、RNAポリメラーゼを使用したRNAの配列を決定することに等しく適用される(及び含む)ことは、本開示に基づいて当業者によって容易に認識及び評価されるであろう。
【0069】
これらの実施形態によると、ポリメラーゼは、チオストレプトアビジンを含むリンカーを使用して、第1の電極及び第2の電極に機能的に結合することができる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、ビオチン化される。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリメラーゼの不活性領域に付着している。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ、第1の電極、及び第2の電極はビオチン化され、リンカーは、少なくとも2つのビオチン結合部位を含むストレプトアビジン分子を含む。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性が無効にされる。いくつかの実施形態では、ギャップは、約1.0nm~約20.0nmの幅を有する。いくつかの実施形態では、第1の電極及び第2の電極は、誘電体層によって分離されている。いくつかの実施形態では、方法は、第1の電極と前記第2の電極の間に100mV以下の電圧バイアスを印加することを含む。
【0070】
本開示の実施形態はまた、ポリメラーゼ活性の直接電気的測定のためのシステムを含む。これらの実施形態によると、システムは、本明細書に記載のバイオ電子デバイスのいずれかと、ポリメラーゼと相互作用することができるdNTPを導入するための手段と、第1の電極と第2の電極の間に100mV以下の電圧バイアスを印加するための手段と、dNTPがポリメラーゼによって鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときに生じる変動を監視するための手段とを含む。
【0071】
本開示の実施形態は、バイオ電子デバイスを較正する方法も含む。これらの実施形態によると、この方法は、鋳型ポリヌクレオチドをバイオ電子デバイスに導入することと、各dNTPが溶液中に飽和濃度で存在するdNTPモノマーを含む溶液を、鋳型ポリヌクレオチドを含むデバイスに導入することと、各相補的dNTPモノマーが鋳型ポリヌクレオチドに取り込まれるときの電流変動に基づいて、ポリメラーゼ活性の生体電子署名を取得することであって、生体電子署名は、ポリメラーゼが開放状態にあることに対応する開放期間を含む、生体電子署名を取得することと、各dNTPの開放期間の固有分布を測定または決定することと、を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、開放期間の分布に基づいて較正される。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、少なくとも第1の電極及び第2の電極に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、バイオ電子デバイスは、第1の電極及び第2の電極の両方に機能的に結合されたポリメラーゼを含む。いくつかの実施形態では、生体電子署名は、ポリメラーゼが閉鎖状態にあることに対応する閉鎖期間を含み、バイオ電子デバイスは、閉鎖期間の少なくとも1つの特性に基づいて較正される。
【0073】
本開示の実施形態はまた、接合部にまたがるポリメラーゼタンパク質からの電気信号において塩基を呼び出す方法を含む。これらの方法は、ポリメラーゼがdNTPの飽和濃度で機能する開放時間の固有分布を測定することと、少なくとも1つのdNTPが、その取り込みが開放状態の対応する時間増加によって識別できるように希釈された溶液で測定を繰り返すことと、取り込まれているヌクレオチドと以前に取り込まれたヌクレオチドに関して、開放状態と、それに続く閉鎖状態の信号の特徴を特徴付けることであって、ヌクレオチドは、本明細書に記載の希釈方法を使用して、最初に識別される、特徴付けることと、配列の所望の正確さが最速の読み取り速度で取得されるように、各ヌクレオチドの希釈と信号パラメータの使用を最適化することとを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、DNA鋳型を含む第1の溶液をデバイスに導入することによってポリメラーゼの開放状態を測定または決定することであって、デバイスは、ギャップによって分離された第1の電極及び第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に付着したポリメラーゼとを含む、ポリメラーゼの開放状態を測定または決定することと、4つのdNTPを含む第2の溶液を、DNA鋳型に相補的なdNTPの取り込みを可能にする条件下で、前のステップの生成物に導入することであって、dNTPは飽和濃度で溶液中に存在する、導入することと、ポリメラーゼの開放時間の固有分布を測定することとを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ギャップによって分離された第1の電極及び第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に付着したポリメラーゼとを含む配列決定デバイスを較正することを含む。これらの実施形態によると、この方法は、DNA鋳型を含む第1の溶液をデバイスに導入することであって、デバイスはギャップによって分離された第1の電極及び第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に付着したポリメラーゼとを含む、DNA鋳型を含む第1の溶液をデバイスに導入することと、4つのdNTPを含む第2の溶液を、DNA鋳型に相補的なdNTPの取り込みを可能にする条件下で、前のステップの生成物に導入することであって、dNTPは飽和濃度で溶液中に存在する、前のステップの生成物に導入することと、ポリメラーゼの開放時間の固有分布を測定することと、を含み、配列決定デバイスは、開放時間の測定された固有分布から較正される。
【0076】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、DNA鎖に取り込まれた塩基を識別することを含む。これらの実施形態によると、方法は、DNA鋳型を含む第1の溶液をデバイスに導入することであって、デバイスは、ギャップによって分離された第1の電極及び第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に付着したポリメラーゼとを含み、デバイスは、上記方法に従って較正された、第1の溶液をデバイスに導入することと、4つのdNTPを含む第2の溶液を、DNA鋳型に相補的なdNTPの取り込みを可能にする条件下で、前のステップの生成物に導入することであって、第1のdNTPは、その到着時間の分布が第2のdNTPの飽和濃度におけるポリメラーゼ開放時間の分布と最小限重複するような濃度で溶液中に存在し、第2のdNTPは、その到着時間の分布が第1のdNTPの到着時間の分布と最小限重複するような濃度で溶液中に存在し、第3のdNTPは、その到着時間の分布が第2のdNTPの到着時間の分布と最小限重複するような濃度で溶液中に存在し、第4のdNTPは、その到着時間の分布が第3のdNTPの到着時間の分布と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する、第2の溶液を生成物に導入することと、経時的に電流を測定することと、を含み、ここで、塩基は、所与の一連のヌクレオチド濃度におけるポリメラーゼの既知の分布開放時間から(またはそれに基づいて)識別される。
【0077】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、DNAの配列を決定することを含む。これらの実施形態によると、方法は、DNA鋳型を含む第1の溶液をデバイスに導入することであって、デバイスは、ギャップによって分離された第1の電極及び第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に付着したポリメラーゼとを含み、デバイスは、上記の方法に従って較正されている、第1の溶液をデバイスに導入することと、4つのdNTPを含む第2の溶液を、DNA鋳型に相補的なdNTPの取り込みを可能にする条件下で、前のステップの生成物に導入することであって、第1のdNTPは、飽和濃度で溶液中に存在し、第2のdNTPは、その到着時間の分布が第1のdNTPの到着時間の分布と最小限重複するような濃度で溶液中に存在し、第3のdNTPは、その到着時間の分布が第2のdNTPの到着時間の分布と最小限重複するような濃度で溶液中に存在し、第4のdNTPは、その到着時間の分布が第3のdNTPの到着時間の分布と最小限重複するような濃度で溶液中に存在する、第2の溶液を生成物に導入することと、経時的に電流を測定することとを含み、ここで、DNAは、第1、第2、第3、及び第4のdNTPの所与の濃度で、ポリメラーゼの既知の分布開放時間から(または、それに基づいて)配列が決定される。
【0078】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、生体高分子配列決定システム及び方法(例えば、DNA配列決定、RNA配列決定、または他の生体高分子配列決定)の正確さを向上させることを含む。これらの実施形態によると、この方法は、上記の方法に従って経時的に電流の記録を収集することと、開放状態信号間の閉鎖状態からの電流信号の部分を収集し、所与の開放事象で取り込まれたヌクレオチドと、以前の事象で組み込まれたヌクレオチドに関して、それらを、閉鎖状態信号の複数のセット(例えば、16セット)のコレクションを生成するように分類することであって、セットの各々は、2つの連続した取り込み事象で所与のヌクレオチドの対の取り込みに関連付けられている、分類することとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、1つまたは複数の機械学習方法を適用して、2つの連続した取り込み事象において所与のヌクレオチドの対に関連付けられた閉鎖状態電流における信号特徴を突き止めることを含む。いくつかの実施形態では、機械学習方法は、例えば、隠れマルコフモデリングまたはベイジアンノンパラメトリック分析を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】本開示の一実施形態による、電流変動に基づく酵素活性の生体電子署名を示す代表的なグラフである。
【
図2】本開示の一実施形態による、
図1の生体電子署名の拡大部分の代表的なグラフであり、酵素が開放状態(201)から閉鎖状態(202)に遷移する際に、新しいモノマー(例えば、dNTP)が生体高分子に取り込まれる時間の部分を含む。
【
図3】本開示の一実施形態による、関心のある酵素(例えば、ポリメラーゼ)が開いた状態またはコンフォメーションで存在し、モノマー(例えば、dNTP)の到着を待っている分布時間の代表的なグラフである。
【
図4】本開示の一実施形態による、関心のある酵素(例えば、ポリメラーゼ)が開いた状態またはコンフォメーションで存在し、モノマー(例えば、dNTP)の到着を待っており、各モノマーが所定の濃度で溶液中に存在する、分布時間の代表的なグラフである。
【
図5】
図1の生体電子署名の拡大部分の代表的なグラフであり、酵素が開放状態(201)から閉鎖状態(202)に遷移する際に、新しいモノマー(例えば、dNTP)が生体高分子に取り込まれる時間の部分を含む。生体電子署名の一定の特性(例えば、閉鎖状態での電流変動)が、隠れマルコフモデリング及び/またはベイジアンノンパラメトリックモデリングを使用して抽出でき、これは、生体高分子の配列を決定するための基盤を形成し得る。
【配列表】
【国際調査報告】