(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-18
(54)【発明の名称】C19 C38二特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230411BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230411BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230411BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20230411BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230411BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230411BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230411BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230411BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230411BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230411BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230411BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230411BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230411BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552176
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 US2021019685
(87)【国際公開番号】W WO2021173844
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522340657
【氏名又は名称】バイオグラフ 55,インク.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】プレスタ,レナード
(72)【発明者】
【氏名】トゥメ,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロンバーグ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】デュラマド,オマール
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064DA01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD61
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
二特異性または多価標的化分子を用いて免疫抑制性B細胞集団を標的化することは、抗腫瘍免疫応答を有効にモジュレートして治療アウトカムを向上させる治療的介入のための潜在的な経路を提示する。よって、がんの処置のために免疫抑制性B細胞集団を有効におよび選択的に標的化することができる操作された抗体ベースの治療剤に対する必要性が依然として存在する。提供されるのは、免疫抑制性B細胞を標的化する複合体結合性分子である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD19に結合するように構成されたCD19結合性成分およびCD38に結合するように構成されたCD38結合性成分を含む複合体結合性分子であって、前記CD19結合性成分が抗体またはその抗原結合性断片を含み、かつ前記CD38結合性成分が抗体またはその抗原結合性断片を含む、複合体結合性分子。
【請求項2】
前記CD19結合性成分および/または前記CD38結合性成分が、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)
2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(V
NAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(V
HH)を含む、請求項1に記載の複合体結合性分子。
【請求項3】
前記CD19結合性成分または前記CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む、請求項2に記載の複合体結合性分子。
【請求項4】
前記CD19結合性成分および前記CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む、請求項3に記載の複合体結合性分子。
【請求項5】
前記CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつ前記CD19結合性成分が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項6】
前記CD38結合性成分が、配列番号3もしくは5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、かつ/または前記CD19結合性成分が、配列番号1もしくは6に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、請求項5に記載の複合体結合性分子。
【請求項7】
前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号3もしくは5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ/または前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号1もしくは6に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、請求項6に記載の複合体結合性分子。
【請求項8】
共通軽鎖二特異性IgGである、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項9】
前記CD38結合性成分が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつ前記CD19結合性成分が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項10】
前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号3もしくは5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ/または前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号1もしくは7に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の複合体結合性分子。
【請求項11】
前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号3または5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン重鎖が、配列番号1または7に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載の複合体結合性分子。
【請求項12】
前記CD19結合性成分または前記CD38結合性成分がscFvを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項13】
前記CD19結合性成分がscFvを含む、請求項12に記載の複合体結合性分子。
【請求項14】
前記CD38結合性成分がscFvを含む、請求項12に記載の複合体結合性分子。
【請求項15】
前記CD19結合性成分または前記CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項16】
前記CD19結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、請求項15に記載の複合体結合性分子。
【請求項17】
前記CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、請求項15に記載の複合体結合性分子。
【請求項18】
前記CD38結合性成分が、配列P-X1-LG-X2-Aを含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2が、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から各々選択される、請求項1~17のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項19】
X1がHであり、かつX2がTである、請求項18に記載の複合体結合性分子。
【請求項20】
CD19に結合する重鎖可変領域が、KabatナンバリングにしたがってA84SおよびA108L改変を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項21】
CD38に結合する軽鎖可変領域が、KabatナンバリングにしたがってW32H改変を含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項22】
複合体結合性分子が、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD38に結合するCD38抗原結合性成分および抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD19に結合するCD19抗原結合性成分を含み、前記CD38抗原結合性成分が、
a)配列番号71~75のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
b)配列番号81~85、もしくは150~155のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
c)配列番号91~95のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
d)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
e)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/または
f)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)
を含み、
前記CD19抗原結合性成分が、
g)配列番号11~15のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、
h)配列番号21~25のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、
i)配列番号31~35のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、
j)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、
k)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/または
l)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)
を含む、
複合体結合性分子。
【請求項23】
前記CD38抗原結合性成分が、配列P-X1-L-G-X2-Aを含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2が、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から各々選択される、請求項22に記載の複合体結合性分子。
【請求項24】
X1がHであり、かつX2がTである、請求項23に記載の複合体結合性分子。
【請求項25】
前記CD38抗原結合性成分が、配列番号3または5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項22~24のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項26】
前記CD38抗原結合性成分が、配列番号3または5と同一のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の複合体結合性分子。
【請求項27】
前記CD19抗原結合性成分が、配列番号1または6に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、請求項22~26のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項28】
前記抗CD19抗原結合性成分が、配列番号1または6と同一のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の複合体結合性分子。
【請求項29】
前記抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域が第1の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、請求項22~28のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項30】
前記抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域が免疫グロブリン軽鎖定常領域をさらに含む、請求項22~29のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項31】
前記抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域が第2の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、請求項22~30のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項32】
第1の免疫グロブリン重鎖定常領域および/または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域が、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化に不利に働きかつ/または第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項22~31のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項33】
前記第1または前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの1つがT366W置換(EUナンバリング)を含み、かつ前記第1または前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの他のものがT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含み、その結果、前記第1および前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が、前記第1または前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化と比較して助長される、請求項32に記載の複合体結合性分子。
【請求項34】
前記CD19抗原結合性成分が、配列番号201に記載される重鎖免疫グロブリン配列および配列番号213に記載される軽鎖免疫グロブリン配列を含み、かつ前記CD38結合性成分が、配列番号202に記載される重鎖免疫グロブリン配列および配列番号213に記載される軽鎖免疫グロブリン配列を含む、請求項22~33のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項35】
CD19に結合する重鎖可変領域が、KabatナンバリングにしたがってA84SおよびA108L改変を含む、請求項22~34のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項36】
CD38に結合する軽鎖可変領域が、KabatナンバリングにしたがってW32H改変を含む、請求項22~35のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項37】
単一の二特異性結合性分子が前記CD38抗原結合性成分および前記CD19抗原結合性成分から形成されている、請求項22~36のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項38】
CD19に結合するCD19結合性成分およびCD38に結合するCD38結合性成分を含む複合体結合性分子であって、前記CD19結合性成分が、CD19に結合するscFVを含み、かつ前記CD38結合性成分が、CD38に結合する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含むFab領域を含む、複合体結合性分子。
【請求項39】
CD19に結合する前記scFvが第1の免疫グロブリン重鎖定常領域に連結されている、請求項38に記載の複合体結合性分子。
【請求項40】
前記CD38結合性成分の前記重鎖可変領域が第2の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、請求項38または39に記載の複合体結合性分子。
【請求項41】
前記CD38結合性成分の前記軽鎖可変領域が免疫グロブリン軽鎖定常領域をさらに含む、請求項38~40のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項42】
前記CD19結合性成分が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、請求項38~41のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項43】
前記CD38結合性成分が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、請求項38~42のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項44】
前記CD38結合性成分が、配列P-X1-L-G-X2-Aを含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2が、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から各々選択される、請求項43に記載の複合体結合性分子。
【請求項45】
X1がHであり、かつX2がTである、請求項44に記載の複合体結合性分子。
【請求項46】
前記CD19結合性成分が、配列番号1または7に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ前記免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項38~45のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項47】
前記CD38結合性成分が、配列番号3または5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項38~45のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項48】
前記CD19結合性成分が、配列番号1または7に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列、および配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、請求項38~47のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項49】
前記CD38結合性成分が、配列番号3または5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列、および配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、請求項38~48のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項50】
前記第1の免疫グロブリン重鎖定常領域および/または前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域が、前記抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化に不利に働きかつ/または前記第1の重鎖定常領域および前記第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項38~49のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項51】
前記第1または前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの1つがT366W置換(EUナンバリング)を含み、かつ前記第1または前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの他のものがT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含み、その結果、前記第1および前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が、前記第1または前記第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化を上回って助長される、請求項50に記載の複合体結合性分子。
【請求項52】
前記CD19結合性成分が、配列番号のいずれか1つに記載される配列を含み、かつ前記CD38結合性成分が、それぞれ配列番号213および202に記載される軽鎖および重鎖を含む、請求項38~51のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項53】
CD19に結合する重鎖可変領域が、KabatナンバリングにしたがってA84SおよびA108L改変を含む、請求項38~52のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項54】
CD38に結合する軽鎖可変領域が、KabatナンバリングにしたがってW32H改変を含む、請求項38~53のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項55】
単一の二特異性結合性分子がCD38抗原結合性成分およびCD19抗原結合性成分から形成されている、請求項38~54のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項56】
二特異性抗体またはその二重抗原結合性断片である、請求項1~55のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項57】
ネイティブな炭水化物または非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基を含むFc領域を含む、請求項1~55のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項58】
前記ネイティブな炭水化物または前記非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基が、EUナンバリングにしたがってアスパラギン297に対応する、請求項57に記載の複合体結合性分子。
【請求項59】
CD19+、CD38+ B細胞に結合する、請求項1~58のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項60】
Fc領域を含むCD19またはCD38単一特異性抗体と比較して低減された赤血球凝集を呈する、請求項1~59のいずれか1項に記載の複合体結合性分子。
【請求項61】
請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸または複数の核酸。
【請求項62】
前記複合体結合性分子をコードする前記ポリヌクレオチド配列が真核性調節配列に機能的に連結されている、請求項61に記載の核酸。
【請求項63】
請求項61または62に記載の核酸を含む細胞。
【請求項64】
原核細胞を含む、請求項63に記載の細胞。
【請求項65】
大腸菌細胞である、請求項64に記載の原核細胞。
【請求項66】
真核細胞を含む、請求項63に記載の細胞。
【請求項67】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはヒトPER.C6細胞である、請求項66に記載の真核細胞。
【請求項68】
請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子および医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む、組成物。
【請求項69】
静脈内投与のために製剤化されている、請求項68に記載の組成物。
【請求項70】
皮下投与のために製剤化されている、請求項68に記載の組成物。
【請求項71】
個体において腫瘍またはがんを処置する方法における使用のための、請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項72】
前記がんまたは前記腫瘍が血液がんである、請求項71に記載の使用。
【請求項73】
前記血液がんがB細胞悪性腫瘍である、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
前記B細胞悪性腫瘍がB細胞急性リンパ球性白血病である、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
前記B細胞悪性腫瘍が、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である、請求項74に記載の使用。
【請求項76】
前記血液がんが血漿悪性腫瘍である、請求項72に記載の使用。
【請求項77】
前記血漿悪性腫瘍が多発性骨髄腫である、請求項76に記載の使用。
【請求項78】
前記血液がんがCD19およびCD38を発現する、請求項72~77のいずれか1項に記載の使用。
【請求項79】
前記がんまたは前記腫瘍が固形組織がんである、請求項71に記載の使用。
【請求項80】
前記固形組織がんが、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、脳のがん、または頭頸部がんを含む、請求項79に記載の使用。
【請求項81】
前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり、前記肺がんが非小細胞肺がんであり、前記頭頸部がんが頭頸部扁平細胞がんであり、前記腎臓がんが腎細胞癌であり、前記脳のがんが多形膠芽腫であり、または前記皮膚がんが黒色腫である、請求項80に記載の使用。
【請求項82】
個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある腫瘍浸潤性B細胞および/または免疫抑制性B細胞の機能を低減させかつ/またはモジュレートする方法における使用のための、請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項83】
個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を低減させかつ/またはモジュレートする方法における使用のための、請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項84】
免疫抑制性B細胞の前記機能が、IL-10、IL-35、TGF-ベータ、またはこれらの組合せの放出を含む、請求項82または83に記載の使用。
【請求項85】
免疫抑制性B細胞による免疫抑制を低減させる方法における使用のための、請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項86】
前記腫瘍浸潤性B細胞または前記免疫抑制性B細胞が、CD19陽性B細胞、CD38
+陽性B細胞、CD19、CD38二重陽性B細胞、またはこれらの組合せを含む、請求項82~85のいずれか1項に記載の使用。
【請求項87】
がんまたは腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、前記がんまたは前記腫瘍に罹患した前記個体に請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物を投与し、それにより前記がんまたは腫瘍を処置することを含む、方法。
【請求項88】
前記がんまたは腫瘍が血液がんである、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記血液がんがB細胞悪性腫瘍である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記B細胞悪性腫瘍がB細胞急性リンパ球性白血病である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記B細胞悪性腫瘍が、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である、請求項89に記載の方法。
【請求項92】
前記血液がんが血漿悪性腫瘍である、方法88の使用。
【請求項93】
前記血漿悪性腫瘍が多発性骨髄腫である、方法92の使用。
【請求項94】
前記血液がんがCD19およびCD38を発現する、請求項88~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記がんまたは腫瘍が固形組織がんである、請求項87に記載の方法。
【請求項96】
前記固形組織がんが、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、または頭頸部がんを含む、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記乳がんがトリプルネガティブ乳がんであり、前記肺がんが非小細胞肺がんであり、前記頭頸部がんが頭頸部扁平細胞がんであり、前記腎臓がんが腎細胞癌であり、前記脳のがんが多形膠芽腫であり、または前記皮膚がんが黒色腫である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある腫瘍浸潤性B細胞を低減させる方法であって、前記腫瘍または前記がんに罹患した前記個体に請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物を投与し、それにより前記腫瘍中の腫瘍浸潤性B細胞を低減させることを含む、方法。
【請求項99】
腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、前記腫瘍または前記がんに罹患した前記個体に請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物を投与し、それにより前記腫瘍中の免疫抑制性B細胞を低減させることを含む、方法。
【請求項100】
腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法であって、前記腫瘍または前記がんに罹患した前記個体に請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物を投与し、それにより前記腫瘍中の免疫抑制性B細胞による免疫抑制を低減させることを含む、方法。
【請求項101】
腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法であって、前記免疫抑制性B細胞を請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子または請求項68~70のいずれか1項に記載の組成物と接触させ、それにより前記腫瘍中の免疫抑制性B細胞による免疫抑制を低減させることを含む、方法。
【請求項102】
免疫抑制性B細胞の前記機能が、IL-10、IL-35、TGF-ベータ、またはこれらの組合せの放出を含む、請求項100または101に記載の方法。
【請求項103】
前記腫瘍浸潤性B細胞または前記免疫抑制性B細胞が、CD19陽性B細胞、CD38
+陽性B細胞、CD19、CD38二重陽性B細胞、またはこれらの組合せを含む、請求項98~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子を製造する方法であって、請求項66または67に記載の細胞を細胞培養培地中で前記複合体結合性分子の発現、アセンブリー、および前記細胞培養培地への分泌を可能とするために十分な条件下でインキュベートすることを含む、方法。
【請求項105】
前記細胞培養培地から前記分子を単離および精製することを含む、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
個体のためのがん処置を調製する方法であって、請求項1~60のいずれか1項に記載の複合体結合性分子を医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と混合することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年2月26日に出願された米国特許仮出願第62/981,990号、2020年3月16日に出願された米国特許仮出願第62/990,330号、および2020年10月21日に出願された米国特許仮出願第63/094,838号の利益を主張し、これらの出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
抗体治療剤は様々な疾患を処置するために成功裏に使用されてきたが、それらの適用は、がんなどの複雑な疾患における臨床的有効性に関して限定されたものであり得る。標的結合親和性および価数を変更するための抗体ベースの治療剤の操作は、増加された有効性の達成および処置アウトカムの向上に向けた潜在的な経路を提供する。二特異性または多価抗体は、そのため、複雑な疾患の多因子的な性質に結び付けられた課題を解決するための潜在的なアプローチを与える。2つの異なる抗原分子または同じ抗原の異なるエピトープに結合することにより、二特異性抗体はより大きな機能性を与え、多数の疾患の処置のための標的化剤として多様な応用を与える。
【発明の概要】
【0003】
がん生物学と免疫系との動的な関係性は、臨床アウトカムと関連付けられる要因である。免疫応答は、がん発症の間の腫瘍微環境の調節において意義深い役割を果たす。T細胞およびB細胞などの免疫細胞は、そのため、がんの進行または転移のモジュレーターおよびエフェクターとして作用する。顕著なことに、免疫抑制細胞は抗腫瘍免疫応答において重要な役割を果たし、それにおいて、免疫抑制は、腫瘍成長および浸潤と一般に関連付けられ、負のアウトカムと相関する。B細胞は免疫応答を正にモジュレートすることが公知であるが、免疫抑制性B細胞の集団は、抗腫瘍免疫応答を抑制して腫瘍成長を促すように機能する。
【0004】
本明細書において提供されるのは、二特異性または多価標的化分子を用いて免疫抑制性B細胞集団を標的化するある特定の結合性分子である。免疫抑制性B細胞集団の標的化は、抗腫瘍免疫応答を有効にモジュレートして、(例えば上皮がん細胞集団の選択的な枯渇とは対照的に)処置アウトカムを向上させるがんにおける治療的介入のための経路を提示する。本明細書において提供される結合性分子は、B細胞系列表面マーカー(例えば、CD19、CD138、IgA、および/またはCD20)ならびに免疫抑制性B細胞の表面マーカー(例えば、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、および/または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))に結合する二特異性抗体を含むことができる。ある特定の特有の実施形態において、二特異性抗体はCD19およびCD38に結合し、そのため特異的な免疫抑制性B細胞集団に対する選択性を有する。
【0005】
本明細書において提供および記載されるように、CD19およびCD38に結合する二特異性抗体は、CD19およびCD38を発現する細胞(例えば免疫抑制性B細胞集団)の選択的な結合において利点を提供する。さらには、CD19およびCD38に結合する、本明細書に開示される二特異性抗体は、特に単一特異性CD19またはCD38抗体と比較した場合に、溶血も赤血球凝集も促進しないという点において利点を実証する。そのため、単一特異性CD19またはCD38抗体(例えば、SARCLISA(登録商標)(イサツキシマブ-irfc))で見られる重度の副作用、例えば貧血が克服される。CD19およびCD38に結合する二特異性抗体はまた、特に単一特異性対照と比較した場合に、CD19およびCD38を発現する細胞の有利な標的細胞アポトーシスを有効に促進するという点において利点を実証する。さらには、CD19およびCD38に結合する二特異性抗体は、特異的な免疫抑制性B細胞集団をより有効に標的化して、より大きな有効性および他のB細胞標的化モノクローナル抗体(例えば、リツキシマブ)で見られる副作用、例えばリンパ球減少症が潜在的により低いことに繋がるという点において、CD38およびCD19を独立して標的化する2つの独立したモノクローナル抗体の単なる使用を上回る利点をさらに提供する。
【0006】
本明細書に記載されるのは、第1の標的に結合するように構成された第1の結合性成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合性成分を含む複合体結合性分子であって、第1の標的がB細胞系列表面マーカーを含み、かつ第2の標的が免疫抑制性B細胞表面マーカーを含み、第1の標的および第2の標的が同一でない、複合体結合性分子である。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分はポリペプチドを含む。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分はポリペプチドからなる。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分はポリペプチドを含む。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分はポリペプチドからなる。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。
【0007】
一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含む。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、免疫抑制性B細胞表面マーカーは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP)を含む。一部の実施形態において、免疫抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。一部の実施形態において、免疫抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0008】
一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。
【0009】
一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分は免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分は免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。一部の実施形態において、複合体結合性分子は、免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、免疫グロブリン重鎖は、配列番号3に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、免疫グロブリン重鎖は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、複合体結合性分子は共通軽鎖二特異性IgGである。
【0010】
一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分はscFvを含む。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分はscFvを含む。一部の実施形態において、複合体結合性分子は二特異性抗体またはその二重抗原結合性断片である。
【0011】
一部の実施形態において、二特異性抗体は、以下のフォーマット:共通軽鎖二特異性IgG、Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG、scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG、scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG、およびFab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgGのうちの1つから選択される。一部の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc:scFv-Fc二特異性IgGである。一部の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgGである。一部の実施形態において、二特異性抗体はscFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgGである。一部の実施形態において、複合体結合性分子は、ネイティブな炭水化物または非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基を含むFc領域を含む。一部の実施形態において、ネイティブな炭水化物または非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基は、EUナンバリングにしたがってアスパラギン297に対応する。
【0012】
一部の実施形態において、第1の結合性成分は、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0013】
一部の実施形態において、第1の結合性成分は、配列番号1および配列番号2のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を含むか、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0014】
一部の実施形態において、第1の結合性成分は、配列番号1および配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0015】
一部の実施形態において、第2の結合性成分は、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、もしくは150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0016】
一部の実施形態において、第2の結合性成分は、配列番号3および配列番号4のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を含むか、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、第2の結合性成分は、配列番号3および配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0017】
一部の実施形態において、複合体結合性分子は、CD19+、CD38+ B細胞に結合する。
【0018】
開示されるのは、複合体結合性分子をコードする核酸を含む細胞である。一部の実施形態において、複合体結合性分子をコードするポリヌクレオチド配列は真核性調節配列に機能的に連結されている。一部の実施形態において、細胞は原核細胞を含む。一部の実施形態において、原核細胞は大腸菌(Escherichia coli)細胞である。一部の実施形態において、細胞は真核細胞を含む。一部の実施形態において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはヒトPER.C6細胞である。
【0019】
開示されるのは、複合体結合性分子および医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む組成物である。一部の実施形態において、組成物は静脈内投与のために製剤化される。一部の実施形態において、組成物は皮下投与のために製剤化される。
【0020】
提供されるのは、個体において腫瘍またはがんを処置する方法における使用のための複合体結合性分子である。一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は血液がんである。一部の実施形態において、血液がんはB細胞悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ球性白血病である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である。一部の実施形態において、血液がんは血漿悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、血漿悪性腫瘍は多発性骨髄腫である。先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態において、血液がんはCD19およびCD38を発現する(例えばがんの細胞はCD19およびCD38を発現する)。
【0021】
一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形組織がんである。一部の実施形態において、がんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、脳のがん、または頭頸部がんを含む。一部の実施形態において、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは非小細胞肺がんであり、頭頸部がんは頭頸部扁平細胞がんであり、腎臓がんは腎細胞癌であり、脳のがんは多形膠芽腫であり、または皮膚がんは黒色腫である。
【0022】
提供されるのは、個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、もしくはその周囲にある免疫抑制性B細胞または腫瘍部位から遠位にある個体の抗腫瘍免疫応答に影響する免疫抑制性B細胞を低減させる方法における使用のための複合体結合性分子である。提供されるのは、個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法における使用のための複合体結合性分子である。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞はCD19+ CD38+ B細胞を含む。さらに提供されるのは、個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、もしくはその周囲にある免疫抑制性B細胞および/または腫瘍部位から遠位にある個体の抗腫瘍免疫応答に影響する免疫抑制性B細胞の機能を低減させるか、または阻害する方法における使用のための複合体結合性分子である。一部の実施形態において、免疫抑制性B細胞の機能は、抗炎症性または免疫抑制性サイトカイン、例えばIL-10、IL 35、TGF-ベータ、またはこれらの組合せの放出を含む。
【0023】
開示されるのは、がんまたは腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、がんまたは腫瘍に罹患した個体に複合体結合性分子を投与し、それによりがんまたは腫瘍を処置することを含む、方法である。一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は血液がんである。一部の実施形態において、血液がんはB細胞悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ球性白血病である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である。一部の実施形態において、血液がんは血漿悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、血漿悪性腫瘍は多発性骨髄腫である。先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態において、血液がんはCD19およびCD38を発現する(例えばがんの細胞はCD19およびCD38を発現する)。
【0024】
一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形組織がんである。一部の実施形態において、がんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、または頭頸部がんを含む。一部の実施形態において、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは非小細胞肺がんであり、頭頸部がんは頭頸部扁平細胞がんであり、腎臓がんは腎細胞癌であり、脳のがんは多形膠芽腫であり、または皮膚がんは黒色腫である。
【0025】
開示されるのは、腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍に対する抗腫瘍免疫応答に影響する免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍またはがんに罹患した個体に複合体結合性分子を投与し、それにより、抗腫瘍免疫応答に影響する免疫抑制性B細胞を低減させることを含む、方法である。さらに開示されるのは、腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍またはがんに罹患した個体に複合体結合性分子を投与し、それにより、腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させることを含む、方法である。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19+、CD38+ B細胞を含む。
【0026】
さらに開示されるのは、個体のためのがん処置を調製する方法であって、複合体結合性分子を医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と混合することを含む、方法である。
【0027】
開示されるのはまた、複合体結合性分子を製造する方法であって、複合体結合性分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含む細胞を細胞培養培地中で複合体結合性分子の発現、アセンブリーおよび細胞培養培地への分泌を可能とするために十分な条件下でインキュベートすることを含む、方法である。一部の実施形態において、方法は、細胞培養培地から分子を単離および精製することを含む。そのような単離および精製は、細胞培養培地または1つもしくは複数の精製ステップに供された細胞培養培地を、プロテイン、プロテインG、プロテインL、プロテインA/G、またはこれらの任意の組合せを含む樹脂またはカラムと接触させること、および任意選択的に樹脂またはカラムを洗浄して、1つまたは複数の非複合体結合性分子を細胞培養培地または1つもしくは複数の精製ステップに供された細胞培養培地から除去することを含むステップを伴うことができる。
【0028】
本明細書において提供されるのは、CD19に結合するように構成されたCD19結合性成分およびCD38に結合するように構成されたCD38結合性成分を含む複合体結合性分子であって、CD19結合性成分が抗体またはその抗原結合性断片を含み、かつCD38結合性成分が抗体またはその抗原結合性断片を含む、複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19および/またはCD38結合性成分が、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19またはCD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19およびCD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0029】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列番号3に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、かつ/またはCD19結合性成分が、配列番号1に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、免疫グロブリン重鎖が、配列番号3もしくは5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ/または免疫グロブリン重鎖が、配列番号1もしくは6に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0030】
一部の実施形態において、提供されるのは、共通軽鎖二特異性IgGである、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、免疫グロブリン重鎖が、配列番号3もしくは5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ/または免疫グロブリン重鎖が、配列番号1もしくは7に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0031】
一部の実施形態において、提供されるのは、免疫グロブリン重鎖が、配列番号3または5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン重鎖が、配列番号1または7に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分またはCD38結合性成分がscFvを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分がscFvを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分がscFvを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分またはCD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0032】
さらに提供されるのは、複合体結合性分子が、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD38に結合するCD38抗原結合性成分および抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD19に結合するCD19抗原結合性成分を含み、CD38抗原結合性成分が、a)配列番号71~75のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、b)配列番号81~85、もしくは150~155のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、c)配列番号91~95のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、d)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、e)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/またはf)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合性分子である。
【0033】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD19抗原結合性成分が、g)配列番号11~15のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、h)配列番号21~25のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、i)配列番号31~35のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、j)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、k)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/またはl)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0034】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD38抗原結合性成分が、配列番号3または5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38抗原結合性成分が、配列番号3または5と同一のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19抗原結合性成分が、配列番号1または6に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0035】
一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD19抗原結合性成分が、配列番号1または6と同一のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域が第1の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域が免疫グロブリン軽鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域が第2の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、第1の免疫グロブリン重鎖定常領域および/または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域が、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化に不利に働きかつ/または第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの1つがT366W置換(EUナンバリング)を含み、かつ第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの他のものがT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含み、その結果、第1および第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が、第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化と比較して助長される、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、単一の二特異性結合性分子がCD38抗原結合性成分およびCD19抗原結合性成分から形成されている、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0036】
参照による組込み
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることを特におよび個々に指し示された場合と同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
本発明の新規の特色は、添付の請求項において精密に記載される。本発明の特色および利点のより良好な理解は、本発明の原理が利用される実例的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、および添付の図面を参照することにより得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】共通軽鎖二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図2】Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図3】Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図4】Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図5】Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図6】Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図7】scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図8】Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図9】Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図10】Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図11】scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgGの構造を図示する図である。
【
図12A】CD19およびCD38抗体の結合データを示す図である。
図12AはCD19およびCD38の細胞表面発現を示す。
図12Bおよび
図12CはCD19およびCD38抗体の結合プロファイルを示す。
図12Dおよび
図12EはCD19およびCD38対照の結合を示す。
図12FはCD19およびCD38を発現しない細胞の結合プロファイルを示す。
【
図12B】CD19およびCD38抗体の結合データを示す図である。
図12AはCD19およびCD38の細胞表面発現を示す。
図12Bおよび
図12CはCD19およびCD38抗体の結合プロファイルを示す。
図12Dおよび
図12EはCD19およびCD38対照の結合を示す。
図12FはCD19およびCD38を発現しない細胞の結合プロファイルを示す。
【
図12C】CD19およびCD38抗体の結合データを示す図である。
図12AはCD19およびCD38の細胞表面発現を示す。
図12Bおよび
図12CはCD19およびCD38抗体の結合プロファイルを示す。
図12Dおよび
図12EはCD19およびCD38対照の結合を示す。
図12FはCD19およびCD38を発現しない細胞の結合プロファイルを示す。
【
図12D】CD19およびCD38抗体の結合データを示す図である。
図12AはCD19およびCD38の細胞表面発現を示す。
図12Bおよび
図12CはCD19およびCD38抗体の結合プロファイルを示す。
図12Dおよび
図12EはCD19およびCD38対照の結合を示す。
図12FはCD19およびCD38を発現しない細胞の結合プロファイルを示す。
【
図12E】CD19およびCD38抗体の結合データを示す図である。
図12AはCD19およびCD38の細胞表面発現を示す。
図12Bおよび
図12CはCD19およびCD38抗体の結合プロファイルを示す。
図12Dおよび
図12EはCD19およびCD38対照の結合を示す。
図12FはCD19およびCD38を発現しない細胞の結合プロファイルを示す。
【
図12F】CD19およびCD38抗体の結合データを示す図である。
図12AはCD19およびCD38の細胞表面発現を示す。
図12Bおよび
図12CはCD19およびCD38抗体の結合プロファイルを示す。
図12Dおよび
図12EはCD19およびCD38対照の結合を示す。
図12FはCD19およびCD38を発現しない細胞の結合プロファイルを示す。
【
図13A】Daudi細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図13B】Daudi細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図14A】REH細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図14B】REH細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図15A】CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図15B】CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図16A】CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図16B】CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図17A】非トランスフェクトCHO細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図17B】非トランスフェクトCHO細胞に対する抗体の結合データを示す図である。
【
図18A】抗体試験品についてのDaudi細胞における直接的なアポトーシスについてのデータを示す図である。
【
図18B】抗体試験品についてのDaudi細胞における直接的なアポトーシスについてのデータを示す図である。
【
図19A】抗体試験品についてのDaudi細胞における架橋誘導性アポトーシスについてのデータを示す図である。
【
図19B】抗体試験品についてのDaudi細胞における架橋誘導性アポトーシスについてのデータを示す図である。
【
図20A】抗体試験品にわたる3人のドナーについてのADCCデータを示す図である。
【
図20B】抗体試験品にわたる3人のドナーについてのADCCデータを示す図である。
【
図20C】抗体試験品にわたる3人のドナーについてのADCCデータを示す図である。
【
図21A】抗体試験品にわたる3人のドナーについてのADCCデータを示す図である。
【
図21B】抗体試験品にわたる3人のドナーについてのADCCデータを示す図である。
【
図21C】抗体試験品にわたる3人のドナーについてのADCCデータを示す図である。
【
図22A】試験品にわたるCDCプロファイルを示す図である。
【
図22B】試験品にわたるCDCプロファイルを示す図である。
【
図23】抗体試験品にわたるADCPデータを示す図である。
【
図24】抗体試験品にわたるRBC結合データを示す図である。
【
図25A】抗体試験品についての赤血球凝集プロファイルを示す図である。
【
図25B】抗体試験品についての赤血球凝集プロファイルを示す図である。
【
図26】抗体試験品にわたる溶血データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
抗腫瘍免疫応答を抑制する免疫抑制性B細胞集団は、1つより多くの細胞表面バイオマーカーの存在により一般に定義され得る。したがって、免疫抑制性B細胞を有効におよび特異的に標的化する治療剤は、腫瘍中にあるか、それに隣接するか、もしくはその周囲において、または腫瘍環境内で免疫抑制を予防するためおよび/または免疫抑制を除去するために使用され得る。本明細書において提供されるのは、免疫抑制性B細胞を標的化する複合体結合性分子である。さらには、提供されるのは、第1の標的に結合するように構成された第1の結合性成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合性成分を含む複合体結合性分子であって、第1の標的がB細胞系列表面マーカーを含み、かつ第2の標的が抑制性B細胞表面マーカーを含む、複合体結合性分子である。本明細書に開示されるのは、抗腫瘍応答の負のモジュレーションまたは免疫抑制と関連付けられるB細胞集団に特異的に結合する多価抗体である。免疫抑制性B細胞は、細胞表面バイオマーカーCD19およびCD38を含み得るか、またはそれらにより定義され得る。本明細書において提供される二特異性抗体は、CD19およびCD38の両方を標的化して免疫抑制性B細胞の機能を阻害することができる。ある特定の事例において、免疫抑制性B細胞の機能は、IL 10、IL 35、TGF-ベータ、またはこれらの組合せの放出を含む。CD19およびCD38を標的化する多価または二特異性抗体はまた、免疫抑制性B細胞および/または免疫機能障害と関連付けられる腫瘍形成性状態および/またはがんを処置するために使用され得る。
【0040】
「免疫抑制(immunosuppression)」もしくは「免疫抑制(immunodepression)」または「負の免疫モジュレーション」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫系機能の低減または抑制を指し、すなわち、免疫抑制は、免疫系機能が低減されているか、または存在しない状態を一般に表す。ある特定の事例において、免疫抑制は、腫瘍に対する、または腫瘍微環境内、その周囲、もしくはそれに隣接する免疫系機能が低減されているか、または存在しない状態を一般に表す。全体的な免疫応答が抑制されてもよく、局所的もしくは特異的な領域内の免疫応答が低減されてもよく、または免疫学的に活性のリンパ球の特定の集団が選択的に影響されていてもよい。抗原特異的な免疫抑制は、抗原特異的な細胞の特定の集団の欠失もしくは抑制の結果、または抗原特異的な抑制細胞による免疫応答の増強された調節の結果であってもよい。免疫抑制性B細胞への言及は、免疫応答に対する負のモジュレーションを発揮するB細胞またはB細胞集団を指し、そのような集団と関連付けられる特異的な表面マーカー、例えばCD38により同定され得る。ある特定の事例において、免疫抑制は、IL-10、IL-35、TGF-ベータ、またはこれらの組合せの存在または放出により同定され得る。ある特定の事例において、免疫抑制は、IL-10、IL-35、TGF-ベータ、またはこれらの組合せの存在またはB細胞による放出により同定され得る。
【0041】
本明細書において使用される場合、「がん」という用語は、調節されない細胞増殖により典型的には特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態を指すまたは記載することができる。がんはまた、血液腫瘍および/または固形腫瘍を含むことができるが、これらに限定されない。がんは、膀胱、血液、骨、脳、乳房、子宮頸部、胸部、結腸、子宮内膜、食道、目、頭部、腎臓、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、口、頸部、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、腎臓、皮膚、胃、精巣、咽頭および子宮が挙げられるがこれらに限定されない、血液、骨、臓器、皮膚組織および血管系の疾患を指すことができる。特有のがんとしては、白血病(急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄慢性骨髄性白血病(CML)、有毛細胞白血病、成熟B細胞腫瘍(小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えばワルデンシュトレーム巨大球状腫瘍(Waldenstrom’s giant ball))、タンパク質血症または無痛性リンパ腫)、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞白血病、形質細胞腫、インプラント周囲免疫グロブリン沈着、重鎖病、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、MALTリンパ腫)、結節辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、胃腸腫瘍(例えば、消化管間質腫瘍(GIST))、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫/白血病、びまん性B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、およびバーキットのリンパ腫(バーキットリンパ腫)、成熟T細胞およびナチュラルキラー細胞(NK)腫瘍(前リンパ球性白血病、T細胞大リンパ球性白血病(T-cell large lymphocytic leukemia)、浸潤性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉症(セザリー症候群)、原発性皮膚変性性大細胞リンパ腫(primary Skin degenerative large cell lymphoma)、リンパ腫様丘疹症、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、非特定型末梢T細胞リンパ腫および変性性大細胞リンパ腫(degenerative large cell lymphoma)、ホジキンリンパ腫(結節硬化型、混合細胞型、リンパ球リッチ型、リンパ球枯渇または非低減型、結節性リンパ球型)、骨髄腫(多発性骨髄腫、不活性型骨髄腫(inert myeloma)、くすぶり型骨髄腫))、慢性骨髄増殖性疾患、脊髄形成異常症/骨髄増殖性疾患、骨髄異形成症候群、免疫不全と関連付けられるリンパ増殖性障害、組織球性および樹状細胞性腫瘍、白血球増加症、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、悪性巨細胞腫瘍、骨髄腫骨疾患、骨肉腫、乳がん(ホルモン依存性、非ホルモン依存性)、婦人科がん(小児子宮頸部、子宮内膜、卵管、妊娠性栄養膜疾患、卵巣、腹膜、子宮、膣および外陰部)、基底細胞癌(BCC)、扁平細胞癌(SCC)、悪性黒色腫、隆起性(protuberous)皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌、カポジ肉腫、星細胞腫、有毛細胞性星細胞腫、胚性毛成長神経上皮新形成(embryonic hair growth neuroepithelial neoplasia)、乏突起膠腫、上衣腫、多形膠芽腫、混合神経膠腫、乏突起膠細胞・星細胞腫(oligodendrocyte astrocytoma)、髄芽腫、網膜芽腫、神経芽腫、胚性組織腫瘍、奇形腫、悪性中皮腫(腹膜中皮腫、心膜中皮腫、胸膜中皮腫)、胃-腸-膵臓または胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP-NET)、カルチノイド腫瘍、膵臓内分泌腫瘍(PET))、結腸直腸腺癌、結腸直腸がん(knot Rectal cancer)、浸潤性神経内分泌腫瘍、平滑筋肉腫、粘液性腺癌、印環細胞腺癌、肝細胞癌、肝胆道肝臓がん(hepatobiliary liver cancer)、肝臓芽細胞腫、血管腫、肝臓腺腫、限局性結節性過形成(結節性再生性過形成、過誤腫)、非小細胞肺がん(NSCLC)(扁平細胞肺がん、腺癌、大細胞肺がん)、小細胞肺がん、甲状腺がん、前立腺がん(ホルモン難治性、非アンドロゲン依存性(non-androgen dependent Sex)、アンドロゲン依存性、ホルモン非感受性)、腎細胞癌および軟組織肉腫(線維肉腫、悪性繊維性組織球腫、皮膚線維肉腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、滑膜肉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍/神経線維肉腫、骨外性骨肉腫)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
「CD19」または「分化クラスター19」(B4、T細胞表面抗原Leu-12、およびCVID3としても公知)という用語は、ヒトにおいて遺伝子CD19によりコードされるB細胞系列表面バイオマーカーまたは膜貫通タンパク質を指す。CD19は、下流のシグナル伝達経路の活性化のためおよび抗原に対するB細胞応答のトリガーとなるための閾値を減少させる、Bリンパ球上のB細胞抗原受容体複合体(BCR)のための補助受容体として機能することができる。構造的に、CD19アミノ酸配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NM_001178098.2→NP_001171569.1またはNM_001770.6→NP_001761.3の、アミノ酸配列と、少なくとも50、100、150、200、250、300、350、400、450、500個のアミノ酸の配列長さにかけて、またはポリペプチドの全長にかけて、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。構造的に、CD19核酸配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NG_007275.1またはNCBI Gene ID 930の、核酸配列と、少なくとも300、500、750、1000、1250、1500個の核酸の配列長さにかけて、またはポリヌクレオチドの全長にかけて、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野において公知の任意のアライメントアルゴリズム、例えば、デフォルトの設定に設定されたBLAST、ALIGNを使用して行われ得る。
【0043】
「CD38」または「分化クラスター38」(ADPRC1としても公知)という用語は、ヒトにおいて遺伝子CD38によりコードされるB細胞表面バイオマーカーまたは膜貫通タンパク質を指す。CD38は、細胞の活性化および増殖に繋がるB細胞シグナル伝達において機能することができる。構造的に、CD38アミノ酸配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NM_001775.4→NP_001766.2の、アミノ酸配列と、少なくとも50、100、150、200、250個のアミノ酸の配列長さにかけて、またはポリペプチドの全長にかけて、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。構造的に、CD38核酸配列は、例えば、GenBankアクセッション番号NC_000004.12またはNCBI Gene ID 952の、核酸配列と、少なくとも300、500、750個の核酸の配列長さにかけて、またはポリヌクレオチドの全長にかけて、少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する。配列アライメントは、当該技術分野において公知の任意のアライメントアルゴリズム、例えば、デフォルトの設定に設定されたBLAST、ALIGNを使用して行われ得る。
【0044】
本明細書における「抗体」という用語は最も広い意味において使用され、多価または二特異性抗体およびモノクローナル抗体、例えばインタクトな抗体およびその機能的な(抗原結合性)抗体断片、例えば断片、抗原結合性(Fab)断片、F(ab’)2断片、Fab’断片、Fv断片、組換えIgG(rIgG)断片、単鎖抗体断片、例えば単鎖可変断片(sFvまたはscFv)、および単一ドメイン抗体(例えば、sdAb、sdFv、ナノボディ)断片を含む。該用語は、遺伝子操作されたおよび/または他に改変された形態の免疫グロブリン、例えばイントラボディ、ペプチボディ、キメラ抗体、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体、多特異性抗体、例えば、二特異性抗体、ダイアボディ、トリアボディ、およびテトラボディ、タンデムジ-scFv、タンデムトリ-scFvを包含する。他に記載されなければ、「抗体」という用語は、その機能的抗体断片を包含すると理解されるべきである。該用語はまた、インタクトなまたは全長抗体、例えば任意のクラスまたはサブクラス、例えばIgGおよびそのサブクラス、IgM、IgE、IgA、ならびにIgDの抗体を包含する。抗体はヒトIgG1定常領域を含むことができる。抗体はヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0045】
提供される抗体の中には、多特異性または多価抗体(例えば、二特異性抗体および多反応性抗体)ならびにその抗体断片がある。抗体としては、抗体コンジュゲートおよび抗体を含む分子、例えばキメラ分子が挙げられる。そのため、抗体としては、全長およびネイティブな抗体の他に、その結合特異性を保持するその断片および部分、例えばその任意の特異的結合性部分、例えば任意の数の免疫グロブリンクラスおよび/またはアイソタイプ(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、IgEおよびIgM)を有するもの、ならびに生物学的に関連する(抗原結合性)断片またはその特異的結合性部分、以下に限定されないが例えばFab、F(ab’)2、Fv、およびscFv(単鎖または関連する実体)が挙げられるがこれらに限定されない。モノクローナル抗体は、一般に、実質的に均質な抗体の組成物内にあるものであり、そのため、モノクローナル抗体組成物内に含まれる任意の個々の抗体は、微量で存在し得る起こり得る天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体はヒトIgG1定常領域またはヒトIgG4定常領域を含むことができる。
【0046】
「超可変領域」または「HVR」と同義である「相補性決定領域」、および「CDR」という用語は当該技術分野において公知であり、抗原特異性および/または結合親和性を付与する、抗体可変領域内のアミノ酸の連続しない配列を指す。一般に、各々の重鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)および各々の軽鎖可変領域中に3つのCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)がある。「フレームワーク領域」および「FR」は当該技術分野において公知であり、重鎖および軽鎖の可変領域の非CDR部分を指す。一般に、各々の全長重鎖可変領域中に4つのFR(FR-H1、FR-H2、FR-H3、およびFR-H4)、ならびに各々の全長軽鎖可変領域中に4つのFR(FR-L1、FR-L2、FR-L3、およびFR-L4)がある。所与のCDRまたはFRの精密なアミノ酸配列境界は、Kabatら、(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、第5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(「Kabat」ナンバリングスキーム)、Al-Lazikaniら、(1997) JMB 273、927~948頁(「Chothia」ナンバリングスキーム);MacCallumら、J. Mol. Biol. 262:732~745頁(1996)、「Antibody-antigen interactions: Contact analysis and binding site topography」、J. Mol. Biol. 262、732~745頁」(「コンタクト」ナンバリングスキーム);Lefranc MPら、「IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains」、Dev Comp Immunol, 2003 Jan;27(1):55~77頁(「IMGT」ナンバリングスキーム);Honegger AおよびPluckthun A、「Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains: an automatic modeling and analysis tool」、J Mol Biol、2001 Jun 8;309(3):657~70頁(「Aho」ナンバリングスキーム);およびWhitelegg NRおよびRees AR、「WAM: an improved algorithm for modelling antibodies on the WEB」、Protein Eng. 2000 Dec;13(12):819~24頁(「AbM」ナンバリングスキーム)に記載されるものを含む、多数の周知のスキームのいずれかを使用して容易に決定され得る。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される抗体のCDRは、Kabat、Chothia、IMGT、Aho、AbM、またはこれらの組合せから選択される方法により定義され得る。
【0047】
所与のCDRまたはFRの境界は、同定のために使用されるスキームに依存して変動し得る。例えば、Kabatスキームは構造アライメントに基づくが、Chothiaスキームは構造情報に基づく。KabatスキームおよびChothiaスキームの両方のナンバリングは、最も共通する抗体領域配列長さに基づき、挿入文字、例えば、「30a」により挿入が適用され、一部の抗体において欠失が現れる。2つのスキームは、ある特定の挿入および欠失(「インデル」)を異なる位置に置いて、差次的なナンバリングを結果としてもたらす。コンタクトスキームは複合体結晶構造の分析に基づき、多くの点でChothiaナンバリングスキームに類似している。
【0048】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブな抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は一般に類似した構造を有し、各々のドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つのCDRを含む(例えば、Kindtら、Kuby Immunology、第6版、W.H. Freeman and Co.、91頁(2007)を参照)。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。さらには、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用してそれぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングすることにより単離されてもよい(例えば、Portolanoら、J. Immunol. 150:880~887頁(1993); Clarksonら、Nature 352:624~628頁(1991)を参照)。
【0049】
提供される抗体の中には、抗体断片がある。「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の部分を含むインタクトな抗体以外の分子を指すことができる。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えばscFvまたはsFv)、および抗体断片から形成される多特異性抗体が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態において、抗体は、可変重鎖領域および/または可変軽鎖領域を含む単鎖抗体断片、例えばscFvである。抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質消化分解の他に、組換え宿主細胞による製造が挙げられるがこれらに限定されない、様々な技術により製造され得る。一部の実施形態において、抗体は、組換えにより製造された断片、例えば天然に存在しない構成を含む断片、例えば合成リンカー、例えば、ポリペプチドリンカーにより接合された2つもしくはより多くの抗体領域もしくは鎖を有するもの、および/または天然に存在するインタクトな抗体の酵素消化によっては製造されないものである。
【0050】
本明細書において、分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体断片は、文法的等価物を含む「二特異性」または「二重特異性」として参照され得る。二特異性分子は、少なくとも2つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する。特異的結合は、別個の非同一のアミノ酸配列が挙げられるがそれに限定されない、分子レベルで構造的に別個の2つの別個の結合性部分、または高い親和性(例えば、約1x10-6未満のKD)で2つの構造的に別個の標的に特異的に結合することができる単一の結合性部分の結果であってもよい。「多特異性」として参照される分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体断片は、少なくとも3つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する分子を指す。文法的等価物を含む「二特異性抗体」は、標的に特異的に結合することができる抗体の少なくとも1つの断片、例えば、可変領域、重鎖または軽鎖、または抗体分子からの1つもしくは複数の相補性決定領域を保存する二特異性分子を指す。文法的等価物を含む「多特異性抗体」は、標的と特異的に結合することができる抗体の少なくとも1つの断片、例えば、可変領域、重鎖または軽鎖、または抗体分子からの相補性決定領域を保存する多特異性分子を指す。
【0051】
本明細書において「リンカー」はまた、「リンカー配列」、「スペーサー」、「テザリング配列」またはこれらの文法的等価物として参照される。本明細書において参照される「リンカー」は、それら自体が標的結合性、触媒活性を有するか、または天然に発現され、別々のポリペプチドとして集合させられる2つの別個の分子を接続する、例えば、2つの別個の結合性部分または重鎖/軽鎖ペア。多数の戦略が、分子を共有結合的に連結させるために使用され得る。これらとしては、タンパク質またはタンパク質ドメインのN末端とC末端との間のポリペプチド連結、ジスルフィド結合を介する連結、および化学架橋試薬を介する連結が挙げられるがこれらに限定されない。この実施形態の1つの態様において、リンカーは、組換え技術またはペプチド合成により生成されるペプチド結合である。リンカーペプチドは、以下のアミノ酸残基:Gly、Ser、Ala、またはThrを主に含んでもよい。リンカーペプチドは、2つの分子が互いに対して相対的に正確なコンホメーションをとり、その結果、所望される活性を保持するように2つの分子を連結するために十分な長さを有するべきである。1つの実施形態において、リンカーは、約1~50個のアミノ酸の長さまたは約1~30個のアミノ酸の長さである。1つの実施形態において、1~20個のアミノ酸の長さのリンカーが使用されてもよい。有用なリンカーとしては、グリシン-セリンポリマー、例えば(GS)n、(GSGGS)n、(GGGGS)n、および(GGGS)n(ここで、nは少なくとも1の整数である)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および他の柔軟性リンカーが挙げられる。抗体断片または単鎖可変断片を連結するための例示的なリンカーは、AAEPKSS、AAEPKSSDKTHTCPPCP、GGGG、またはGGGGDKTHTCPPCPを含むことができる。代替的に、様々な非タンパク質性ポリマー、以下に限定されないが例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、またはポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのコポリマーは、リンカーとしての用途を有し得るリンカーとしての用途を有し得る。
【0052】
本開示の「断片ベース」の二特異性抗体または「単鎖可変断片」もしくは「scFv」を含む二特異性抗体は、2つの結合性部分および2つの結合性部分を接続するリンカーを含む単鎖抗体、またはその断片を指すことができる。リンカーは、ポリペプチドリンカーまたはいずれかの標的化部分の結合を阻害しないような好適な柔軟性の他のリンカーであってもよい。断片ベースの二特異性抗体フォーマットとしては、タンデムVHH抗体、タンデムscFv、scFv-Fab、F(ab)2、二重親和性再標的化抗体(DART)が挙げられる。そのような断片ベースの抗体は、所与の標的に対して特異性を有する追加の結合性部分、例えば、A2:B1、A1:B2もしくはA2:B2を含むように、または薬物動態を向上させ、もしくはADCC、ADCP、もしくはCDCを促進するためのFc領域の断片を用いてさらにマニピュレートされ得る。
【0053】
「結合性部分」は、記載される標的または抗原またはエピトープに対する特異的結合を媒介する分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体断片の部分を指す。例として、抗体の結合性部分は、重鎖/軽鎖可変領域ペアまたは1つもしくは複数の相補性決定領域(CDR)を含んでもよい。
【0054】
本明細書において参照される「標的」は、分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体断片の結合性部分と関与する分子の部分を指す。標的は、アミノ酸配列および/または炭水化物、脂質または他の化学的実体を含むことができる。「抗原」は、適応免疫分子、例えば抗体もしくは抗体断片、B細胞受容体、またはT細胞受容体により結合され得る部分を含む標的である。
【0055】
二特異性または多特異性分子の「価数」は、記載される分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体断片が結合することができる標的の数を指す。例えば、一価である分子は、特異的な標的の1つの分子に結合することができ、二価分子は2つの分子に結合することができ、四価分子は4つの標的に結合することができる。例えば、二特異性の二価の分子は、2つの標的にかつ2つの構造的に異なる標的に結合することができる分子である。例えば、二特異性の二価の分子は、標的Aおよび標的Bを含む溶液と接触させた場合、A2、B2またはA:Bに結合し得る。
【0056】
「ヒト化」抗体は、すべてのまたは実質的にすべてのCDRアミノ酸残基が非ヒトCDRに由来し、かつすべてのまたは実質的にすべてのFRアミノ酸残基がヒトFRに由来する抗体である。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも部分を含むことができる。「ヒト化型」の非ヒト抗体は、典型的には、親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながらヒトに対する免疫原性を低減させるために、ヒト化を受けた非ヒト抗体のバリアントを指す。一部の実施形態において、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、例えば、抗体の特異性または親和性を回復または向上させるために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基の由来となる抗体)からの対応する残基で置換される。
【0057】
提供される抗体の中には、ヒト抗体がある。「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞、またはヒト抗体ライブラリーを含むヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コーディング配列を利用する非ヒト供給源により製造される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。該用語は、非ヒト抗原結合性領域、例えばすべてのまたは実質的にすべてのCDRが非ヒトであるものを含むヒト化型の非ヒト抗体を除外する。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に免疫原を投与することにより調製されてもよい。そのような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン座位を置き換えるか、または染色体外に存在するか、または動物の染色体に無作為に組み込まれるヒト免疫グロブリン座位の全体または部分を含有する。そのようなトランスジェニック動物において、内因性免疫グロブリン座位は一般に不活性化されている。ヒト抗体はまた、ヒトレパートリーに由来する抗体コーディング配列を含有する、ファージディスプレイおよび無細胞ライブラリーを含む、ヒト抗体ライブラリーに由来してもよい。
【0058】
「ADCC」または「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」は、本明細書において使用される場合、FcγRを発現する非特異的な細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、その後に標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応を指す。ADCCは、FcγRIIIaに対する結合と相関することができ、FcγRIIIaに対する結合の増加はADCC活性における増加に繋がる。「ADCP」または抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシスは、本明細書において使用される場合、FcγRを発現する非特異的な細胞傷害性細胞が標的細胞上の結合した抗体を認識し、その後に標的細胞のファゴサイトーシスを引き起こす細胞媒介性反応を指すことができる。
【0059】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は交換可能に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指し、最小の長さに限定されない。提供される抗体および抗体鎖ならびに他のペプチド、例えば、リンカーおよび結合性ペプチドを含む、ポリペプチドは、天然および/または非天然アミノ酸残基を含むアミノ酸残基を含むことができる。該用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、およびリン酸化などを含む。一部の態様において、ポリペプチドは、タンパク質が所望される活性を維持する限り、ネイティブまたは天然配列に対して改変を含有することができる。これらの改変は、部位特異的突然変異誘発を通じたものなど、故意的なものであることができるか、またはタンパク質を産生する宿主の突然変異もしくはPCR増幅に起因するエラーを通じたものなど、偶発的なものであることができる。
【0060】
参照ポリペプチド配列に対する配列同一性パーセント(%)は、配列をアライメントし、必要な場合にはギャップを導入して最大配列同一性パーセントを達成した後の、配列同一性の部分としていかなる保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージである。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、例えば、公開されているコンピュータソフトウェア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、公知の様々な方法で達成され得る。比較されている配列の全長にかけて最大のアライメントを達成するために必要とされるアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメーターが決定可能である。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムは、Genentech, Inc.により作成され、ソースコードは、米国著作権局、Washington D.C.、20559にユーザードキュメンテーションと共に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。ALIGN-2プログラムはGenentech, Inc.、South San Francisco、Calif.から公開されており、またはソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含む、UNIXオペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。すべての配列比較パラメーターはALIGN-2プログラムにより設定され、変更しない。ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために用いられる状況において、所与のアミノ酸配列Bへの、それとのまたはそれに対する所与のアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に所与のアミノ酸配列Bへの、それとのまたはそれに対するある特定のアミノ酸配列同一性%を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aとしても表現され得る)は以下のように算出される:比率X/Yを100倍する(ここで、Xは、配列アライメントプログラムALIGN-2によりAおよびBのそのプログラムのアライメントにおいて同一のマッチとしてスコア付けされるアミノ酸残基の数であり、YはBにおけるアミノ酸残基の総数である)。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さに等しくない場合、Bに対するAのアミノ酸配列同一性%はAに対するBのアミノ酸配列同一性%に等しくないことが認められる。他に特に記載されなければ、本明細書において使用されるすべてのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるようにALIGN-2コンピュータプログラムを使用して得られる。
【0061】
本明細書において提供される抗体のアミノ酸配列バリアントが想定および想起され得る。バリアントは、典型的には、1つまたは複数の置換、欠失、付加および/または挿入において本明細書に特に開示されるポリペプチドから異なる。そのようなバリアントは天然に存在するものであり得るか、または、例えば、本発明の上記ポリペプチド配列の1つもしくは複数を改変し、本明細書に記載されるようにおよび/もしくは多数の公知の技術のいずれかを使用してポリペプチドの1つもしくは複数の生物学的活性を評価することにより、合成的に生成され得る。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を向上させることが望ましいことがあり、抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な改変を導入することにより、またはペプチド合成により調製され得る。そのような改変は、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基の欠失、および/または挿入および/または置換を含む。最終構築物が所望される特徴、例えば、抗原結合性を有する限り、欠失、挿入、および置換の任意の組合せを行って最終構築物に到達することができる。1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供され得る。置換による突然変異誘発のための関心対象の部位としては、CDRおよびFRが挙げられる。アミノ酸置換を関心対象の抗体に導入し、生成物を所望される活性、例えば、抗原結合性の保持/向上、免疫原性の減少、またはADCCもしくはCDCの向上についてスクリーニングすることができる。
【0062】
本開示はまた、1つまたは複数の異種分子にコンジュゲートされた抗体を指す「イムノコンジュゲート」または「抗体コンジュゲート」または「抗体-薬物コンジュゲート」を提供する。例えば、イムノコンジュゲートは、1つまたは複数の細胞傷害剤、例えば化学療法剤もしくは薬物、増殖阻害剤、タンパク質ドメイン、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性の毒素、もしくはその断片)、または放射活性同位体にコンジュゲートされた抗体を含むことができる。一部の実施形態において、イムノコンジュゲートは、本明細書に開示される複合体結合性分子、またはその断片(例えば、scFv)を含むことができる。
【0063】
本明細書に記載される抗体は核酸によりコードされ得る。核酸は、2つ以上のヌクレオチド塩基を含むポリヌクレオチドの一種である。ある特定の実施形態において、核酸は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを細胞に移入するために使用され得るベクターの成分である。本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、それに連結された別の核酸を輸送する能力を有する核酸分子を指す。ベクターの1つの種類は、ゲノム組込み型ベクター、または「組込み型ベクター」であり、これは宿主細胞の染色体DNAに組み込まれ得る。ベクターの別の種類は、「エピソーム」ベクター、例えば、染色体外複製の能力を有する核酸である。機能的に連結された遺伝子の発現を指令する能力を有するベクターは本明細書において「発現ベクター」として参照される。好適なベクターは、プラスミド、細菌人工染色体、酵母人工染色体、およびウイルスベクターなどを含む。発現ベクターにおいて、転写の制御における使用のためのプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどの調節エレメントは、哺乳動物、微小生物、ウイルスまたは昆虫遺伝子に由来し得る。複製起点により通常は付与される、宿主中で複製する能力、および形質転換体の認識を促すための選択遺伝子が追加的に組み込まれてもよい。ウイルス、例えばレンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスなどに由来するベクターが用いられてもよい。プラスミドベクターは、染色体位置への組込みのために線状化され得る。ベクターは、ゲノム中の定義された位置または制限されたセットの部位への部位特異的組込み(例えば、AttP-AttB組換え)を指令する配列を含むことができる。追加的に、ベクターは、転位可能なエレメントに由来する配列を含むことができる。
【0064】
本明細書において使用される場合、参照配列と比べてアミノ酸配列または核酸配列を記載するために本明細書において使用される場合の「相同的」、「相同性」または「相同性パーセント」という用語は、KarlinおよびAltschul(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264~2268頁、1990;Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873~5877頁、1993において改変)により記載される式を使用して決定され得る。そのような式は、Altschulら(J. Mol. Biol. 215: 403~410頁、1990)のbasic local alignment search tool(BLAST)プログラムに組み込まれている。配列の相同性パーセントは、本出願の出願日時点のBLASTの最新バージョンを使用して決定され得る。
【0065】
本明細書に記載される抗体をコードする核酸は、好適な細胞を感染、トランスフェクト、形質転換して、または他の仕方で好適な細胞を該核酸についてトランスジェニックとして、商業的または治療的使用のための抗体の製造を可能にするために使用され得る。大スケール細胞培養からの抗体の製造のための標準的な細胞株および方法は当該技術分野において公知である。例えば、Liら、「Cell culture processes for monoclonal antibody production.」、Mabs. 2010 Sep-Oct; 2(5): 466~477頁を参照。ある特定の実施形態において、細胞は真核細胞である。ある特定の実施形態において、真核細胞は哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態において、哺乳動物細胞は、抗体を製造するために有用な細胞株であり、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはPER.C6(登録商標)細胞である。ある特定の実施形態において、抗体をコードする核酸は、抗体を製造するために有用な細胞のゲノム座位に組み込まれる。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるのは、抗体を製造する方法であって、抗体をコードする核酸を含む細胞を、前記抗体の製造および分泌を可能とするために十分なin vitroの状態下で培養することを含む、方法である。
【0066】
本明細書において使用される場合、「個体」、「患者」、または「対象」という用語は、記載される組成物および方法がその処置のために有用である少なくとも1つの疾患を有すると診断されたか、それに罹患していることが疑われるか、またはそれを発症するリスクがある個体を指す。ある特定の実施形態において、個体は哺乳動物である。ある特定の実施形態において、哺乳動物は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ラマ、アルパカ、またはヤクである。ある特定の実施形態において、個体はヒトである。
【0067】
本明細書において使用される場合、特有の数を修飾するために使用される「約」という用語は、その数プラスまたはマイナスその数の10%を指す。範囲を修飾する「約」という用語は、その最小値のマイナス10%からその最大値のプラス10%までに及ぶ範囲を指す。
【0068】
本明細書において使用される場合、「処置」または「処置する」という用語は、レシピエントにおいて有益なまたは所望される結果を得るために使用される医薬的または他の介入レジメンに関して使用される。有益なまたは所望される結果としては、治療的な利益および/または予防的な利益が挙げられるがこれらに限定されない。治療的な利益は、症状の、または処置されている基礎となる障害の根絶または寛解を指すことができる。また、治療的な利益は、対象が基礎となる障害に依然として罹患している可能性があるにもかかわらず、改善が対象において観察されるような、基礎となる障害と関連付けられる生理学的な症状の1つまたは複数の根絶または寛解と共に達成され得る。予防効果は、疾患もしくは状態の出現の遅延、予防、もしくは排除、疾患もしくは状態の症状の開始の遅延もしくは排除、疾患もしくは状態の進行の緩慢化、停止、もしくは逆転、またはこれらの任意の組合せを含む。予防的な利益のために、特定の疾患を発症するリスクがある対象、または疾患の生理学的な症状の1つもしくは複数を報告する対象は、この疾患の診断が為されていなかったとしても、処置を受けることができる。処置のための潜在的な個体の所与の集団のすべてが処置に応答するか、または等しく応答するわけではないことを当業者は認識する。そのような個体は処置されたと考えられる。
【0069】
本明細書において使用されるセクションの見出しは文書編成上の目的のために過ぎず、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0070】
二特異性分子
本明細書において提供されるのは、第1の標的に結合するように構成された第1の結合性成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合性成分を含む二特異性または多価または複合体結合性分子であって、第1の標的がB細胞系列表面マーカーを含み、かつ第2の標的が抑制性B細胞表面マーカーを含む、二特異性または多価または複合体結合性分子である。免疫抑制性B細胞またはB細胞集団は、B細胞系列表面バイオマーカーおよび抑制性B細胞表面バイオマーカーを含むことができる。B細胞系列表面マーカーは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含むことができる。免疫抑制性B細胞表面マーカーは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP)を含むことができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。ある特定の実施形態において、複合体結合性分子はCD38およびCD19に結合する。
【0071】
多価または二特異性または複合体結合性分子は、少なくとも2つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する。特異的結合は、別個の非同一のアミノ酸配列が挙げられるがこれに限定されない、分子レベルで構造的に別個の2つの別個の結合性部分、または2つの構造的に別個の標的に特異的に結合することができる単一の結合性部分の結果であってもよい。「多特異性」または「多価」または「二特異性」として参照される分子、ペプチド、ポリペプチド、抗体、または抗体断片は、少なくとも2つの構造的に別個の標的に特異的に結合する能力を有する分子を指すことができる。一部の実施形態において、複合体結合性分子の第1または第2の結合性成分はポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、第1または第2の結合性成分はポリペプチドからなる。一部の実施形態において、複合体結合性分子の第1および第2の結合性成分はポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分はポリペプチドからなる。ある特定の実施形態において、第1または第2の結合性成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。
【0072】
二特異性分子は、標的と特異的に結合することができる抗体の少なくとも1つの断片、例えば、可変領域、重鎖または軽鎖、または抗体分子からの1つもしくは複数の相補性決定領域を保存する二特異性抗体であることができる。一部の実施形態において、本明細書に記載される複合体結合性分子は、二特異性抗体および/またはその二重抗原結合性断片である。二特異性抗体は、2つの構造的に別個の標的または抗原に結合する能力を有する。一部の実施形態において、二特異性抗体は、第1の標的に結合するように構成された第1の結合性成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合性成分を含み、第1の標的はB細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)を含み、かつ第2の標的は抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を含む。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0073】
免疫抑制性B細胞または免疫抑制性B細胞集団は、細胞表面バイオマーカーCD19およびCD38を含むことができる。本明細書にさらに開示されるのは、CD19およびCD38を標的化する二特異性抗体である。一部の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号1を含む可変重鎖(VH)を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、または配列番号15のいずれか1つを含むVH CDR1領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、または配列番号25のいずれか1つを含むVH CDR2領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、または配列番号35のいずれか1つを含むVH CDR3領域を含む。
【0074】
一部の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号2を含む可変軽鎖(VL)を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号45、または配列番号45のいずれか1つを含むVL CDR1領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、または配列番号55のいずれか1つを含むVL CDR2領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、または配列番号65のいずれか1つを含むVL CDR3領域を含む。
【0075】
一部の実施形態において、二特異性抗体は第1の結合性成分を含み、第1の結合性成分は、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0076】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD19結合性成分を含み、CD19結合性成分は、配列番号11に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0077】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD19結合性成分を含み、CD19の第1の結合性成分は、配列番号12に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号22に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号32に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号42に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号52に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号62に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0078】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD19結合性成分を含み、CD19結合性成分は、配列番号15に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号25に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号35に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号45に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号55に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号65に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0079】
一部の実施形態において、CD19結合性成分は、イネビリズマブ、タファシタマブ、タプリツモマブ、オベキセリマブ、ブリナツモマブ、コルツキシマブ、デニンツズマブ、またはロンカスツキシマブ、MOR208、MEDI-551、XmAb 5871、MDX-1342、またはAFM11に対応するか、または由来する可変重鎖および軽鎖またはCDRを含む。
【0080】
一部の実施形態において、CD38結合性成分は、配列番号3を含む可変重鎖(VH)を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号75、または配列番号75のいずれか1つを含むVH CDR1領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、または配列番号85のいずれか1つを含むVH CDR2領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、または配列番号95のいずれか1つを含むVH CDR3領域を含む。
【0081】
一部の実施形態において、CD38結合性成分は、配列番号4を含む可変軽鎖(VL)を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号105、または配列番号105のいずれか1つを含むVL CDR1領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、または配列番号115のいずれか1つを含むVL CDR2領域を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分は、配列番号121、配列番号122、配列番号123、配列番号124、または配列番号125のいずれか1つを含むVL CDR3領域を含む。
【0082】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分を含み、CD38結合性成分は、配列番号71に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号101に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0083】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分を含み、CD38結合性成分は、配列番号72に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号82に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号92に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号102に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号112に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号122に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0084】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分を含み、CD38結合性成分は、配列番号75に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号85に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号95に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号105に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号115に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号125に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0085】
一部の実施形態(例えば、先行する任意の実施形態)において、CD38結合性成分のCDR-H2はアミノ酸残基P(X1)LG(X2)Aを含み、X1およびX2はCD38への結合を維持しながらアミノ酸置換を許容する。ある特定の実施形態において、X1およびX2は、CDRH2アミノ酸配列の疎水性を低減させるアミノ酸から選択される。ある特定の実施形態において、疎水性を低減させるアミノ酸は、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEを含む。ある特定の実施形態において、X1はHであり、かつX2はTである。
【0086】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分およびCD19結合性成分を含み、CD38結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0087】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分およびCD19結合性成分を含み、CD38結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3と同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1と同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む。
【0088】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分およびCD19結合性成分を含み、CD38結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3、215、または218~223に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号4または223に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1、201、または216~217に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CD19結合性成分は、A84およびA108において置換を含むVHアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、置換はA84SおよびA108Lを含む。
【0089】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分およびCD19結合性成分を含み、CD38結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号3、215、または218~223と同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号4または223と同一のアミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分はVHアミノ酸配列およびVLアミノ酸配列を含み、VHアミノ酸配列は、配列番号1、201、216~217と同一のアミノ酸配列を含み、かつVLは、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CD19結合性成分は、A84およびA108において置換を含むVHアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、置換はA84SおよびA108Lを含む。
【0090】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分およびCD19結合性成分を含み、CD38結合性成分は、配列番号71に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号101に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分は、配列番号11に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0091】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分およびCD19結合性成分を含み、CD38結合性成分は、配列番号72に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号82に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号92に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号102に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号112に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号122に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分は、配列番号12に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号22に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号32に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号42に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号52に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号62に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0092】
一部の実施形態において、二特異物(bispecific)がFabまたは二特異性フォーマットのために軽鎖定常領域を要求する他の構造を含む場合、VLは、配列番号210および/または211のいずれか1つに対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、99%または同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、二特異物がFabまたは二特異性フォーマットのために軽鎖定常領域を要求する他の構造を含む場合、VLは、配列番号210および/または211のいずれか1つと同一のアミノ酸配列を含む。
【0093】
一部の実施形態において、二特異性抗体はCD38結合性成分およびCD19結合性成分を含み、CD38結合性成分は、配列番号75に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号85に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号95に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号105に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号115に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号125に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分は、配列番号15に記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号25に記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号35に記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号45に記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号55に記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号65に記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。
【0094】
一部の実施形態において、CD38結合性成分は、ダラツムマブまたはイサツキシマブに対応するか、または由来する可変重鎖および軽鎖またはCDRを含む。
【0095】
置換、挿入、または欠失が1つまたは複数のCDR内で起こってもよく、該置換、挿入、または欠失は、抗原に対する抗体の結合を実質的に低減させない。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的置換がCDR中で行われてもよい。そのような変更は、CDR「ホットスポット」の外側であってもよい。バリアントVHおよびVL配列の一部の実施形態において、各々のCDRは改変されていない。アミノ酸配列の挿入および欠失としては、1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでの長さの範囲内のアミノおよび/またはカルボキシル末端融合の他に、単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入および欠失が挙げられる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPT用)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの抗体のNまたはC末端の融合が挙げられる。抗体分子の配列内挿入バリアントの例としては、軽鎖中の3つのアミノ酸の挿入が挙げられる。末端欠失の例としては、軽鎖の末端における7つまたはそれより少ないアミノ酸の欠失を有する抗体が挙げられる。
【0096】
変更(例えば、置換)は、例えば、抗体の親和性を向上させるために、CDR中で為されてもよい。そのような変更は、体細胞の成熟の間に高い突然変異率を有するコドンをコードするCDRにおいて為されてもよく(例えば、Chowdhury、Methods Mol. Biol. 207:179~196頁(2008)を参照)、結果としてもたらされるバリアントは結合親和性について試験され得る。親和性成熟(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、CDRの無作為化、またはオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発を使用する)は、抗体の親和性を向上させるために使用され得る(例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178:1~37頁(2001)を参照)。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング突然変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に同定されてもよい(例えば、CunninghamおよびWells Science、244:1081~1085頁(1989)を参照)。CDR-H3およびCDR-L3は特に、多くの場合に標的化される。代替的に、または追加的に、抗体と抗原との間の接触点を同定するために抗原-抗体複合体の結晶構造がある。そのような接触残基および隣接する残基は、置換用の候補として標的化または排除されてもよい。バリアントは、所望される特性を含有するかどうかを決定するためにスクリーニングされてもよい。
【0097】
抗体は、それらのグリコシル化を増加または減少させるように変更され得る(例えば、1つまたは複数のグリコシル化部位が作出または除去されるようにアミノ酸配列を変更することによる)。抗体のFc領域に取り付けられた炭水化物は変更されてもよい。哺乳動物細胞からのネイティブな抗体は、典型的には、Fc領域のCH2ドメインのAsn297にN連結により取り付けられた分枝状の二分岐オリゴ糖を含む(例えば、Wrightら、TIBTECH 15:26~32頁(1997)を参照)。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、二分岐オリゴ糖構造の基部中のGlcNAcに取り付けられたマンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、フコースであることができる。抗体中のオリゴ糖の修飾は、例えば、ある特定の向上された特性を有する抗体バリアントを作出するために為され得る。抗体グリコシル化バリアントは、向上されたADCCおよび/またはCDC機能を有し得る。一部の実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)取り付けられたフコースを欠いた炭水化物構造を有する抗体バリアントが提供される。例えば、そのような抗体中のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であってもよい。フコースの量は、Asn297に取り付けられたすべての糖鎖構造の合計に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を算出することにより決定される(例えば、国際公開第08/077546号パンフレットを参照)。Asn297は、Fc領域中の約297位(Fc領域残基のEUナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指す(例えば、Edelmanら、Proc Natl Acad Sci U S A. 1969 May; 63(1):78~85頁を参照)。しかしながら、Asn297はまた、抗体中の軽微な配列バリエーションに起因して、297位の約±3アミノ酸だけ上流または下流、すなわち、294位~300位に位置してもよい。そのようなフコシル化バリアントは、向上されたADCC機能を有することができる(例えば、Okazakiら、J. Mol. Biol. 336:1239~1249頁(2004);およびYamane-Ohnukiら、Biotech. Bioeng. 87: 614頁(2004)を参照)。細胞株、例えば、ノックアウト細胞株およびそれらの使用方法は、脱フコシル化抗体、例えば、タンパク質フコシル化を欠損したLec13 CHO細胞およびアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子(FUT8)ノックアウトCHO細胞を製造するために使用され得る(例えば、Ripkaら、Arch. Biochem. Biophys. 249:533~545頁(1986); Yamane-Ohnukiら、Biotech. Bioeng. 87: 614頁(2004); Kanda, Y.ら、Biotechnol. Bioeng.、94(4):680~688頁(2006)を参照)。他の抗体グリコシル化バリアントもまた含まれる(例えば、米国特許第6,602,684号明細書を参照)。
【0098】
一部の実施形態において、本明細書において提供される複合体結合性分子は、抗体の標的に対して約10μM、1μM、100nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、5nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、0.05nM、0.01nM、または0.001nMまたはそれ未満(例えば、10-8Mまたはそれ未満、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(KD)を有する。抗体の標的は、CD19標的、CD38標的、またはCD19およびCD38の両方を含む標的であることができる。KDは、任意の好適なアッセイにより測定され得る。ある特定の実施形態において、KDは、表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定され得る(例えば、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000またはOctetを使用する)。
【0099】
一部の実施形態において、1つまたは複数のアミノ酸改変が、本明細書において提供される抗体のFc領域に導入され、それによりFc領域バリアントが生成されてもよい。Fc領域は、本明細書において、定常領域の少なくとも部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域である。Fc領域としては、ネイティブ配列Fc領域およびバリアントFc領域が挙げられる。Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位置におけるアミノ酸改変(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc領域)を含んでもよい。
【0100】
一部の事例において、免疫グロブリンのFc領域は、多くの重要な抗体機能(例えばエフェクター機能)、例えば、異なる機序によるが、標的細胞の殺傷を結果としてもたらす、抗原依存性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞傷害性(CDC)、および抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)のために重要である。よって、一部の実施形態において、本明細書に記載される抗体は、意図される使用のために抗体の生物学的活性に基づいて選択された、異なるFc領域を含む定常ドメインと組み合わせられた本発明の可変ドメインを含む。ある特定の事例において、ヒトIgGは、例えば、4つのサブクラス、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4に分類可能であり、これらの各々は、Fcγ受容体(活性化受容体FcγRI(CD64)、FcγRIIA、FcγRIIC(CD32)、FcγRIIIAおよびFcγRIIIB(CD16)および阻害受容体FcγRIIB)のうちの1つまたは複数に対する結合ならびに補体の第1の成分(C1q)についての独特のプロファイルを有するFc領域を含む。ヒトIgG1およびIgG3はすべてのFcγ受容体に結合し、IgG2はFcγRIIAH131、およびより低い親和性でFcγRIIAR131、FcγRIIIAV158に結合し、IgG4はFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、FcγRIIC、およびFcγRIIIAV158に結合し、阻害受容体FcγRIIBは、すべての他のFcγ受容体よりも低いIgG1、IgG2およびIgG3に対する親和性を有する。FcγRIはIgG2に結合せず、FcγRIIIBはIgG2にもIgG4にも結合しないことを研究は示している。同上。一般に、ADCC活性に関して、ヒトIgG1≧IgG3>>IgG4≧IgG2。
【0101】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される抗CD19または抗CD38可変領域は、1つまたは複数の活性化Fc受容体(FcγRI/CD64、FcγRIIa/CD32またはFcγRIIIa/CD16)に結合するFcに連結されており、それにより、ADCCを刺激し、一部の事例において、標的枯渇を引き起こす。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される抗CD19または抗CD38可変領域は、ヒトIgG1またはIgG3 Fcに連結されており、すなわち、抗体はIgG1またはIgG3アイソタイプの抗体である。一部の事例において、Fc領域中の改変は、親Fcと比べて(a)増加した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、(b)増加した補体媒介性細胞傷害性(CDC)、(c)C1qに対する増加した親和性および/または(d)Fc受容体に対する増加した親和性を有するFcバリアントを生成する。一部の実施形態において、Fc領域バリアントは、Fc領域中に少なくとも1つのアミノ酸改変を含む。アミノ酸改変の組合せもまた有用である。例えば、バリアントFc領域は、例えば本明細書において同定される特有のFc領域位置の、2、3、4、5個などの置換を含んでもよい。
【0102】
一部の実施形態において、ADCC活性は、Fc領域を改変することにより増加され得る。ADCC活性に関して、一部の事例において、ヒトIgG1およびIgG3は、IgG4およびIgG2と比較した場合に増加したADCC活性化を示すため、IgG2またはIgG4ではなくIgG1またはIgG3定常ドメインが、ADCCが所望される場合の抗体における使用のために選択される。一部の実施形態において、IgG3は、FcγRIIIA発現NK細胞、単球、マクロファージの活性化のために選択される。ある特定の事例において、異なるIgGアイソタイプはまた差次的なCDC活性を呈し、IgG3およびIgG1は、IgG2またはIgG4と比較してより大きいCDC活性化を示す。代替的に、一部の実施形態において、Fc領域は、以下の位置:234、235、236、238、239、240、241、243、244、245、247、248、249、252、254、255、256、258、262、263、264、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、299、301、303、305、307、309、312、313、315、320、322、324、325、326、327、329、330、331、332、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、433、434、435、436、437、438または439(Kabatナンバリング)における1つまたは複数のアミノ酸を改変することにより抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞媒介性ファゴサイトーシス(ADCP)、補体媒介性細胞傷害性(CDC)、C1qに対する親和性を増加させるため、および/またはFcγ受容体に対する親和性を増加させるために改変される。関心対象の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号明細書および同第5,821,337号明細書に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ方法が用いられてもよい(例えば、ACTI(商標)およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ)。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)、単球、マクロファージ、およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。
【0103】
抗体は、増加した半減期および新生児Fc受容体(FcRn)に対する向上された結合を有することができる(例えば、米国特許出願公開第2005/0014934号明細書を参照)。そのような抗体は、FcRnに対するFc領域の結合を向上させる1つまたは複数の置換を有するFc領域を含むことができ、EUナンバリングシステムにしたがってFc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434のうちの1つまたは複数における置換を有するFc領域を含むことができる(例えば、米国特許第7,371,826号明細書を参照)。Fc領域バリアントの他の例もまた想定される(例えば、Duncan & Winter、Nature 322:738~40頁(1988)、米国特許第5,648,260号明細書および同第5,624,821号明細書、ならびに国際公開第94/29351号パンフレットを参照)。
【0104】
一部の実施形態において、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作型抗体、例えば、「thioMAb」を作出することが望ましいことがある。一部の実施形態において、置換される残基は、抗体の接近可能な部位に存在する。反応性チオール基は、イムノコンジュゲートを作出するために、他の部分、例えば薬物部分またはリンカー薬物部分へのコンジュゲーションのための部位に配置され得る。一部の実施形態において、以下の残基のうちの任意の1つまたは複数がシステインで置換されてもよい:軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。
【0105】
一部の実施形態において、本明細書において提供される抗体は、公知および利用可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに改変されてもよい。抗体の誘導体化のために好適な部分としては、水溶性ポリマーが挙げられるがこれに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/マレイン酸無水物コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(nビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して生産における利点を有し得る。ポリマーは任意の分子量であってもよく、分枝状または非分枝状であってもよい。抗体に取り付けられるポリマーの数は変動可能であり、2つ以上のポリマーが取り付けられる場合、それらは同じまたは異なる分子であることができる。
【0106】
複合体結合性分子または二特異性抗体は、これらの分子と関連付けられる結合性部分に基づいて異なることができ、適用可能かつ本明細書において想定されるいくつかの異なるフォーマットもある。複合体結合性分子または二特異性抗体は、抗体断片、実質的にインタクトな抗体、またはこれらの組合せを含むことができる。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分は免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分は免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分はscFvを含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分はscFvを含む。
【0107】
本開示による二特異性抗体は、インタクトな抗体分子または実質的に完全にインタクトな抗体分子を含み、非対称的または対称的であってもよい。
【0108】
非対称的な二特異性抗体は、一般に、標的Aに特異的な抗体からの重鎖/軽鎖(HC/LC)ペアおよび標的Bに特異的な抗体からのHC/LCペアを含み、ヘテロ二機能性抗体を作出している。これらのようなヘテロ二機能性抗体は、製造されている時の分子の非生産的な形成という問題に直面する。HC/LC-A:HC/LC-Bは望ましいが、すべての可能な組合せから通常は熱力学的にまたは統計的に不都合である。この問題を回避するために複数のスキームが導入されている。一部の事例において、Aに対する特異性を有する抗体からのHC/LCペアおよびBに対する特異性を有する抗体からのHC/LCペアは、HC/LC-A:HC/LC-Bを有する抗体の形成の確率を増加させるためにFC領域に対する突然変異をさらに含む。これは、HC-AとHC-Bとの間のヘテロ二量体の形成を促進する構造的特色の操作、例えばHC-AのFC領域への「ノブ」、およびHC-Bへの「ホール」、またはその逆により達成され得る。HC-A:HC-Bヘテロ二量体を促進するための別のスキームは、HC-BとHC-Aとの間の静電相互作用を助長する電荷ペアを含むようにHC-AおよびHC-BのFC部分中のアミノ酸残基を操作することである。鎖会合の問題に対処するための別のスキームは、HC/LCペアのうちの1つの可変領域を一本鎖結合性分子(例えば、VHHまたはscFv)で置き換えることである。その結果、分子の半分は古典的なHC/LCペアを含み、他方は、一本鎖結合性分子に融合または他に接続されたHC定常領域を含む。さらなる改変が、適切なHC/LCペア形成を促進するために可能であり、これには、AまたはBのいずれかのHCおよびLCに対して突然変異を操作して適切なHC/LCペアの形成を助長すること、HC/LCペアの対応する定常領域の交換を活用するCrossMab技術が含まれる。対称的な二特異性抗体は、ヘテロ二機能性分子の形成に依拠しないことにより鎖会合の問題を回避する。そのような例としては、異なる特異性のスタックされた可変領域を含む、二重可変ドメイン分子、古典的な抗体分子の重鎖のc末端に融合した異なる特異性のscFvを含む、IgG-scFv分子、IgのFc領域により接続された2つのscFvを含む、(scFV)4-FC(Fcは二量体化して、二特異性の四価分子を作出する)、DART-Fcおよびtwo-in-oneが特に挙げられる。
【0109】
複合体結合性分子または二特異性抗体の構造は、複合体結合性分子または二特異性抗体の機能性または結合特性を変更するように想起および設計され得る(例えば、「Bispecific antibodies: a mechanistic review of the pipeline.」、Nat Rev Drug Discovery. 2019 Aug;18(8):585~608頁を参照)(例えば、「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁を参照)。例えば、二特異性抗体は、以下のフォーマット:共通軽鎖二特異性IgG、Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG、scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG、およびFab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgGのうちの1つから選択され得る。
【0110】
共通軽鎖二特異性IgG
共通軽鎖二特異性IgG構造を有する二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図1は、共通軽鎖二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は第1および第2のIgG重鎖を含む。各々の重鎖は、VH、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含む。第1の重鎖は、VH 102、CH1 104、CH2 106、およびCH3 108を含む。第2の重鎖は、VH 112、CH1 114、CH2 116、およびCH3 118を含む。共通軽鎖二特異性IgG構造はまた、VLドメイン120およびCLドメイン122を含む軽鎖を含む。一般に、第1の重鎖は、第1の特異性を有する抗体の重鎖に由来する配列を含み、第2の重鎖は、第2の特異性を有する抗体からの重鎖を含む。第1および第2の重鎖とペア形成する軽鎖は同一であり、いずれかの特異性、または別々の特異性を有する抗体の軽鎖に由来することができる。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合130)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合134および/または136)を介して別の重鎖に連結され得る。共通軽鎖二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を予防するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害、「ノブ」・イントゥ・「ホール」)または生化学的(例えば静電相互作用)に予防することができる。例示的なノブ・イントゥ・ホール突然変異は、1つの重鎖中のT366W(EUナンバリング)および第2の重鎖中のT366S/L368A/Y407V(EUナンバリング)を含むことができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、国際公開第2009089004号パンフレット、米国特許第8,642,745号明細書、米国特許出願公開第20140322756号明細書および「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁に開示されている。共通軽鎖二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子140またはその追加の修飾を含むことができる。
【0111】
共通軽鎖二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、第1の重鎖は、B細胞系列表面マーカーに結合するように構成されており、かつ第2の重鎖は、抑制性B細胞表面マーカーに結合するように構成されている。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0112】
一部の実施形態において、第1の重鎖は、CD19結合性成分を含むVH配列を含み、かつ第2の重鎖は、CD38結合性成分を含むVH配列を含む。ある特定の実施形態において、重鎖CD19結合性成分は、配列番号201、1、または配列番号201のA84およびA108のうちの1つもしくは両方において突然変異を含むバリアントを含み、かつ重鎖CD38結合性成分は、配列番号202、215、218~221を含む。ある特定の実施形態において、バリアントは突然変異A84SおよびA108Lを含む。一部の実施形態において、二特異性抗体は共通軽鎖を含む。ある特定の実施形態において、共通軽鎖配列はCD19結合性成分(例えば配列番号2)を含む。ある特定の実施形態において、共通軽鎖配列はCD38結合性成分(例えば配列番号4または配列番号222)を含む。
【0113】
本明細書に記載されるBS1は、CD19に結合するように構成されたCD19結合性成分およびCD38に結合するように構成されたCD38結合性成分を有する共通軽鎖フォーマットを含み、CD19結合性成分は抗体またはその抗原結合性断片を含み、かつCD38結合性成分は抗体またはその抗原結合性断片を含み、CD38抗体または抗原結合性断片は、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、かつCD19抗体または抗原結合性断片は、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、CD38抗体または抗原結合性成分は、a)配列番号71~75のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、b)配列番号81~85、もしくは150~155のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、c)配列番号91~95のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、d)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、e)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/または)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含み、かつCD19抗原結合性成分は、g)配列番号11~15のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、h)配列番号21~25のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、i)配列番号31~35のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、j)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、k)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/またはl)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む。一部の実施形態において、CD38抗原結合性成分は、配列P-X1-L-G-X2-Aを含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2は、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から各々選択される。ある特定の実施形態において、X1はHであり、かつX2はTである。一部の実施形態において、CD19重鎖配列はA84Sおよび/またはA108L置換を含む。一部の実施形態において、CD38軽鎖はW32H置換を含む。
【0114】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図2は、Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は、第1の重鎖分子および単鎖可変断片を含む改変された第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端へVH 202、CH1 204、CH2 206、およびCH3 208を含む。改変された第2の重鎖は、それぞれN末端からC末端へ単鎖可変断片(scFv)210、CH2 216、およびCH3 218を含む。単鎖可変断片(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン212、またはその断片、可変重鎖に対応する第2のドメイン214、またはその断片、およびリンカーポリペプチド215を含むことができる。Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン220およびCLドメイン222を含む軽鎖を含む。第1の重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合230)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。第1の重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合234および/または236)を介して改変された第2の重鎖に連結され得る。Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を予防するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む第1のおよび改変された第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に予防することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書および「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁に開示されている。Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子240またはその追加の修飾を含むことができる。
【0115】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0116】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖は、CD19結合性成分を含むVH配列を含み、かつ第2の重鎖は、CD38結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列を含む。ある特定の実施形態において、CD38単鎖可変断片を含む重鎖は配列番号205または配列番号206を含む。ある特定の実施形態において、VL配列はCD19結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD38結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合性成分、またはそのCD38結合性断片を含む。一部の実施形態において、第1の重鎖は、CD38結合性成分を含むVH配列を含み、かつ第2の重鎖は、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列を含む。ある特定の実施形態において、CD19単鎖可変断片を含む重鎖は、配列番号203または配列番号204または配列番号217を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合性成分、またはそのCD19結合性断片を含む。
【0117】
Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖は、CD38結合性成分を含むVH配列を含み、かつ第2の重鎖は、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列を含む。ある特定の実施形態において、VL配列はCD38結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合性成分、またはそのCD19結合性断片を含む。
【0118】
本明細書に記載されるBS2は、CD19に結合するように構成されたCD19結合性成分およびCD38に結合するように構成されたCD38結合性成分を含み、CD19結合性成分は抗体またはその抗原結合性断片を含み、かつCD38結合性成分は抗体またはその抗原結合性断片を含み、CD38抗原結合性成分は、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD38に結合するFabを含み、かつCD19抗原結合性成分は、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD19に結合するscFvを含み、CD38結合性成分は、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分は、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、CD38抗原結合性成分は、配列P-X1-L-G-X2-Aを含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2は、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から選択される。ある特定の実施形態において、X1はHであり、かつX2はTである。一部の実施形態において、CD19重鎖配列はA84Sおよび/またはA108L置換を含む。一部の実施形態において、CD38軽鎖はW32H置換を含む。
【0119】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図3は、Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は、第1の重鎖分子および改変されたIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端へVHドメイン302、CH1ドメイン304、CH2ドメイン306、CH3ドメイン308、リンカー310、第2のVHドメイン312、および第2のCH1ドメイン314を含む。改変された重鎖は、それぞれN末端からC末端へCH2ドメイン316、およびCH3ドメイン318を含む。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン320およびCLドメイン322を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン324およびCLドメイン326を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合330)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。第1の重鎖はまた、共有結合(例えばジスルフィド結合332)を介して第1および第2の鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖および軽鎖は、第1の重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。第1の重鎖および第2の軽鎖は、第1の重鎖の第2のVHドメインおよび第2のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。第1の重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合334および/または336)を介して改変された第2の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を予防するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む第1のおよび改変された第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に予防することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書および「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁に開示されている。Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子340またはその追加の修飾を含むことができる。
【0120】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0121】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば302)およびVLドメイン(例えば320)はCD19結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば312)およびVLドメイン(例えば324)はCD38結合性成分を含む。一部の実施形態において、Fab-Fc-Fab重鎖は配列番号207を含み、かつFc重鎖は配列番号208を含む。
【0122】
Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば302)およびVLドメイン(例えば320)はCD38結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば312)およびVLドメイン(例えば324)はCD19結合性成分を含む。
【0123】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図4は、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は2つの第1の重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端へVHドメイン402、CH1ドメイン404、CH2ドメイン406、CH3ドメイン408、リンカー410、および単鎖可変断片(scFv)412を含む。単鎖可変断片(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン414、またはその断片、可変重鎖に対応する第2のドメイン416、またはその断片、および第2のリンカーポリペプチド415を含むことができる。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造はまた、VLドメイン420およびCLドメイン422を含む第1の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合430)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合434および/または436)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子440またはその追加の修飾を含むことができる。
【0124】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0125】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば402)およびVLドメイン(例えば420)はCD19結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば412)配列はCD38結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD38結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合性成分、またはそのCD38結合性断片を含む。
【0126】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば402)およびVLドメイン(例えば420)はCD38結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば412)配列はCD19結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合性成分、またはそのCD19結合性断片を含む。一部の実施形態において、Fab-Fc-scFv重鎖は配列番号209を含む。
【0127】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図5は、Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は、第1の重鎖分子および第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端へVHドメイン502、CH1ドメイン504、CH2ドメイン506、CH3ドメイン508、リンカー510、および単鎖可変断片(scFv)512を含む。単鎖可変断片(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン514、またはその断片、可変重鎖に対応する第2のドメイン516、またはその断片、および第2のリンカーポリペプチド515を含むことができる。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン520およびCLドメイン522を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン524およびCLドメイン526を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合530)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合534および/または536)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を予防するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む第1のおよび改変された第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に予防することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書および「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁に開示されている。Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子540またはその追加の修飾を含むことができる。
【0128】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45、例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0129】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば502)およびVLドメイン(例えば520)はCD19結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば512)配列はCD38結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD38結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合性成分、またはそのCD38結合性断片を含む。
【0130】
Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば502)およびVLドメイン(例えば520)はCD38結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば512)配列はCD19結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合性成分、またはそのCD19結合性断片を含む。
【0131】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図6は、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は、第1の重鎖分子および第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端へVHドメイン602、CH1ドメイン604、CH2ドメイン606、CH3ドメイン608、リンカー610、第2のVHドメイン612、および第2のCH1ドメイン614を含む。第2の重鎖は、第1の重鎖におけるように、それぞれN末端からC末端へVHドメイン652、CH1ドメイン654、CH2ドメイン656、およびCH3ドメイン658を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン620およびCLドメイン622を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン624およびCLドメイン626を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合630)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。第1の重鎖および第1の軽鎖は、第1の重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。第1の重鎖および第2の軽鎖は、第1の重鎖の第2のVHドメインおよび第2のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合634および/または636)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を予防するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に予防することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書および「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁に開示されている。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子またはその追加の修飾を含むことができる。
【0132】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0133】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば602)およびVLドメイン(例えば620)はCD19結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば612)およびVLドメイン(例えば624)はCD38結合性成分を含む。
【0134】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば602)およびVLドメイン(例えば620)はCD38結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば612)およびVLドメイン(例えば624)はCD19結合性成分を含む。
【0135】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図7は、scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は2つの第1の重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端へ単鎖可変断片(scFv)712、リンカー710、VHドメイン702、CH1ドメイン704、CH2ドメイン706、およびCH3ドメイン708を含む。単鎖可変断片(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン714、またはその断片、可変重鎖に対応する第2のドメイン716、またはその断片、および第2のリンカーポリペプチド715を含むことができる。ScFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン720およびCLドメイン722を含む第1の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合730)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合734および/または736)を介して別の重鎖に連結され得る。ScFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子740またはその追加の修飾を含むことができる。
【0136】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0137】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば702)およびVLドメイン(例えば720)はCD19結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば712)配列はCD38結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD38結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合性成分、またはそのCD38結合性断片を含む。
【0138】
scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば702)およびVLドメイン(例えば720)はCD38結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば712)配列はCD19結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合性成分、またはそのCD19結合性断片を含む。
【0139】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図8は、Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は2つの重鎖分子を含む。重鎖は、それぞれN末端からC末端へ追加のVHドメイン812、および追加のCH1ドメイン814、リンカー810、VHドメイン802、CH1ドメイン804、CH2ドメイン806、およびCH3ドメイン808を含む。Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン820およびCLドメイン822を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン824およびCLドメイン826を含む第2の軽鎖を含む。重鎖分子は、共有結合(例えばジスルフィド結合830)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖および第1の軽鎖は、重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。重鎖および第2の軽鎖は、重鎖の追加のVHドメインおよび追加のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合834および/または836)を介して改変された第2の重鎖に連結され得る。Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子840またはその追加の修飾を含むことができる。
【0140】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0141】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1のVHドメイン(例えば802)およびVLドメイン(例えば820)はCD19結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば812)およびVLドメイン(例えば824)はCD38結合性成分を含む。
【0142】
Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、VHドメイン(例えば802)およびVLドメイン(例えば820)はCD38結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば812)およびVLドメイン(例えば824)はCD19結合性成分を含む。
【0143】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図9は、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を図示する。構造は2つの重鎖分子および2つの軽鎖分子を含む。重鎖は、それぞれN末端からC末端へVHドメイン902、CH1ドメイン904、CH2ドメイン906、CH3ドメイン908、リンカー910、第2のVHドメイン912、および第2のCH1ドメイン914を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、VLドメイン920およびCLドメイン922を含む第1の軽鎖を含む。Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、VLドメイン924およびCLドメイン926を含む第2の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合930)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖および第1の軽鎖は、重鎖のVHドメインおよびCH1ドメインが第1の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。重鎖および第2の軽鎖は、重鎖の第2のVHドメインおよび第2のCH1ドメインが第2の軽鎖のVLドメインおよびCLドメインとペア形成する方式で連結され得る。重鎖はまた、共有結合(例えばジスルフィド結合934および936)を介して別の重鎖分子に共有結合的に連結され得る。Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子940またはその追加の修飾を含むことができる。
【0144】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0145】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1のVHドメイン(例えば902)およびVLドメイン(例えば920)はCD19結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば912)およびVLドメイン(例えば924)はCD38結合性成分を含む。
【0146】
Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、VHドメイン(例えば902)およびVLドメイン(例えば920)はCD38結合性成分を含み、第2のVHドメイン(例えば912)およびVLドメイン(例えば924)はCD19結合性成分を含む。
【0147】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図10は、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を実証する。構造は第1の重鎖分子および第2のIgG重鎖分子を含む。第1の重鎖は、それぞれN末端からC末端へVHドメイン1002、CH1ドメイン1004、CH2ドメイン1006、CH3ドメイン1008、リンカー1010および単鎖可変断片(scFv)1012を含む。単鎖可変断片(scFv)は、可変軽鎖ドメインに対応する第1のドメイン1014、またはその断片、可変重鎖に対応する第2のドメイン1016、またはその断片、および第2のリンカーポリペプチド1015を含むことができる。第2の重鎖は、第1の重鎖におけるように、それぞれN末端からC末端へVHドメイン1002、CH1ドメイン1004、CH2ドメイン1004、およびCH3ドメイン1008を含む。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、VLドメイン1020およびCLドメイン1022を含む第1の軽鎖を含む。重鎖は、共有結合(例えばジスルフィド結合1030)を介して軽鎖分子に共有結合的に連結され得る。重鎖は、1つまたは複数の共有結合(例えばジスルフィド結合1034および/または1036)を介して別の重鎖に連結され得る。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を予防するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、2つの第1の重鎖分子または2つの第2の重鎖分子の連結を物理的(例えば立体的妨害)または生化学的(例えば静電相互作用)に予防することができる。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書および「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁に開示されている。Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子1040またはその追加の修飾を含むことができる。
【0148】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0149】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば1002)およびVLドメイン(例えば1020)はCD19結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば1012)配列はCD38結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD38結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合性成分、またはそのCD38結合性断片を含む。
【0150】
Fab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメイン(例えば1002)およびVLドメイン(例えば1020)はCD38結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)(例えば1012)配列はCD19結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合性成分、またはそのCD19結合性断片を含む。
【0151】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造を有する操作された二特異性抗体が本発明において使用され得る。
図11は、scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体を実証する。構造は、scFv、VH、およびFc領域を含む第1の重鎖分子およびFcを含む第2の重鎖分子を含む。scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造は、第1および第2の重鎖の連結を促進しかつ/または第1の重鎖の別の第1の重鎖へのもしくは第2の重鎖の別の第2の重鎖への連結を予防するCH3ドメイン内の突然変異をさらに含む第1および第2の重鎖分子を含むことができる。突然変異は、第1の重鎖分子の第2の重鎖分子への会合を物理的(例えばノブ・イン・ホール構造)または生化学的(例えば静電相互作用)に促進することができる。scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位を作出する第1の重鎖分子と会合した軽鎖分子を含む。第2の抗原結合性部位は、第1の重鎖のN末端に連結されたscFv断片により提供される。第1および第2の重鎖分子の連結を促す例示的な突然変異は、例えば、米国特許出願公開第20140322756号明細書および「The making of bispecific antibodies」、MAbs. 2017 Feb-Mar; 9(2): 182~212頁に開示されている。scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造はまた、それに連結された炭水化物分子1140またはその追加の修飾を含むことができる。
【0152】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造を有する二特異性抗体は、B細胞系列表面マーカー(例えばCD19、CD138、IgA、またはCD45)、および抑制性B細胞表面マーカー(例えばIgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP))を標的化することができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19からなる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38からなる。
【0153】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造は、第1の抗原結合性部位がCD19を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD38を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、第1の重鎖VHドメインおよびVLドメインはCD19結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)配列はCD38結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD38結合性成分、またはそのCD38結合性断片を含む。
【0154】
scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG構造はまた、第1の抗原結合性部位がCD38を標的化し、かつ第2の抗原結合性部位がCD19を標的化するように操作され得る。一部の実施形態において、重鎖VHドメインおよびVLドメインはCD38結合性成分を含み、単鎖可変断片(scFv)配列はCD19結合性成分を含む。ある特定の実施形態において、CD19結合性成分を含む単鎖可変断片(scFv)配列は、抗体重鎖および軽鎖可変配列に対応するCD19結合性成分、またはそのCD19結合性断片を含む。
【0155】
ある特定の実施形態において、第1の重鎖分子は、配列番号212に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、第1の重鎖分子は、配列番号212に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0156】
ある特定の実施形態において、軽鎖分子は、配列番号213に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、軽鎖分子は、配列番号213に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0157】
ある特定の実施形態において、第2の重鎖分子は、配列番号214に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、第1の重鎖分子は、配列番号214に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。
【0158】
フレームワーク領域
重鎖および軽鎖のフレームワーク領域内で為される生殖系列配列への突然変異または復帰突然変異は、本明細書に記載されるCD19およびCD38結合性分子の薬物動態的および薬力学的特性を向上させるために有利であり得る。ある特定の事例において、重鎖および/または軽鎖内で為される生殖系列配列への突然変異または復帰突然変異は、CD19およびCD38結合性分子(例えば本明細書に記載される二特異性抗体)の安定性を向上させる。ある特定の事例において、重鎖および/または軽鎖内で為される生殖系列配列への突然変異または復帰突然変異は、CD19およびCD38結合性分子(例えば本明細書に記載される二特異性抗体)の免疫原性を低減させる。よって、一部の実施形態において、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1、2、3、4、5、8、または10個の突然変異または復帰突然変異を含む。一部の実施形態において、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1個の突然変異または復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異または復帰突然変異までを含む。一部の実施形態において、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る少なくとも1個の突然変異または復帰突然変異を含む。一部の実施形態において、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る最大10個の突然変異または復帰突然変異を含む。一部の実施形態において、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異まで、または生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異から生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異までを含む。一部の実施形態において、重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域は、生殖系列配列に戻る1個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る2個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る3個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る4個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る5個の突然変異もしくは復帰突然変異、生殖系列配列に戻る8個の突然変異もしくは復帰突然変異、または生殖系列配列に戻る10個の突然変異もしくは復帰突然変異を含む。一部の実施形態において、CD38結合性部分は、配列番号5に記載される重鎖フレームワーク領域を含む。一部の実施形態において、CD19結合性部分は、配列番号6または7に記載される重鎖フレームワーク領域を含む。
【0159】
医薬的に許容される賦形剤、担体、および希釈剤
本開示の複合体結合性分子を含む組成物は、1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤、担体、および希釈剤を含む医薬組成物中に含まれる。ある特定の実施形態において、本開示の抗体は、無菌および/または等張溶液中に懸濁されて投与される。ある特定の実施形態において、溶液は約0.9%のNaClを含む。ある特定の実施形態において、溶液は約5.0%のデキストロースを含む。ある特定の実施形態において、溶液は、緩衝剤、例えば、酢酸(塩)、クエン酸(塩)、ヒスチジン、コハク酸(塩)、リン酸(塩)、重炭酸(塩)およびヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween 80)、ポリソルベート20(Tween 20)、およびポロキサマー188、ポリオール/二糖/多糖、例えば、グルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびデキストラン40、アミノ酸、例えば、グリシンもしくはアルギニン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン、またはキレート剤、例えば、EDTAもしくはEGTAのうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0160】
抗体の投与のための皮下製剤は、緩衝剤、例えば、酢酸(塩)、クエン酸(塩)、ヒスチジン、コハク酸(塩)、リン酸(塩)、重炭酸(塩)およびヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(Tween 80)、ポリソルベート20(Tween 20)、およびポロキサマー188、ポリオール/二糖/多糖、例えば、グルコース、デキストロース、マンノース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、およびデキストラン40、アミノ酸、例えば、グリシンもしくはアルギニン、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、メチオニン、またはキレート剤、例えば、EDTAもしくはEGTAのうちの1つまたは複数を含むことができる。追加的に、注射部位における疼痛を緩和する化合物または分子、例えば約2,000U/ml~約12,000U/mlの濃度のヒアルロニダーゼなどが含まれ得る。
【0161】
ある特定の実施形態において、本開示の複合体結合性分子は、凍結乾燥されて輸送/貯蔵され、投与の前に再構成される。ある特定の実施形態において、凍結乾燥された抗体製剤は、充填剤、例えば、マンニトール、ソルビトール、スクロース、トレハロース、デキストラン40、またはこれらの組合せを含む。凍結乾燥製剤は、ガラスまたは他の好適な非反応性材料から構成されるバイアル中に含有され得る。抗体は、製剤化される場合、再構成されるか否かによらず、ある特定のpH、一般に7.0未満のpHに緩衝化され得る。ある特定の実施形態において、pHは、4.5~6.5、4.5~6.0、4.5~5.5、4.5~5.0、または5.0~6.0であることができる。
【0162】
本明細書に記載されるのはまた、好適な容器中の本明細書に記載される複合体結合性分子のうちの1つまたは複数ならびに使用のための指示書、希釈剤、賦形剤、担体、および投与用のデバイスから選択される1つまたは複数の追加の成分を含むキットである。
【0163】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるのは、がん処置を調製する方法であって、1つまたは複数の医薬的に許容される賦形剤、担体、または希釈剤および本開示の複合体結合性分子を混合することを含む、方法である。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるのは、貯蔵または輸送のためにがん処置を調製する方法であって、1つまたは複数の本開示の抗体を凍結乾燥することを含む、方法である。
【0164】
製造および生産
本明細書に記載される複合体結合性分子(例えば二特異性抗体)をコードする核酸は、好適な細胞を感染、トランスフェクト、形質転換して、または他の仕方で好適な細胞を該核酸についてトランスジェニックとして、商業的または治療的使用のための複合体結合性分子の製造を可能にするために使用され得る。大スケール細胞培養からの抗体の製造のための標準的な細胞株および方法は当該技術分野において公知である。例えば、Liら、「Cell culture processes for monoclonal antibody production.」、Mabs. 2010 Sep-Oct; 2(5): 466~477頁を参照。
【0165】
ある特定の実施形態において、核酸配列は、本明細書に開示される複合体結合性分子または二特異性抗体をコードする。ある特定の実施形態において、複合体結合性分子をコードするポリヌクレオチド配列は真核性調節配列に機能的に連結されている。一部の実施形態において、細胞は核酸配列を含む。
【0166】
一部の実施形態において、細胞は、本明細書に開示される複合体結合性分子をコードする核酸を含む。ある特定の実施形態において、細胞は原核細胞を含む。ある特定の実施形態において、原核細胞は大腸菌細胞である。ある特定の実施形態において、細胞は真核細胞を含む。ある特定の実施形態において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはヒトPER.C6細胞である。
【0167】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるのは、複合体結合性分子を製造する方法であって、複合体結合性分子をコードする核酸を含む細胞を、複合体結合性分子の製造および分泌を可能とするために十分なin vitroの条件下で培養することを含む、方法である。
【0168】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるのは、(a)ゲノム位置において組み込まれた本明細書に記載される抗体をコードする核酸を含む哺乳動物細胞株、および(b)凍結保護剤を含む、マスターセルバンクである。ある特定の実施形態において、凍結保護剤はグリセロールを含む。ある特定の実施形態において、マスターセルバンクは、(a)ゲノム位置において組み込まれた複合体結合性分子をコードする核酸を含むCHO細胞株、および(b)凍結保護剤を含む。ある特定の実施形態において、凍結保護剤はグリセロールを含む。ある特定の実施形態において、マスターセルバンクは、液体窒素による凍結に耐えることができる好適なバイアルまたは容器中に含有される。
【0169】
本明細書に記載されるのはまた、本明細書に記載される複合体結合性分子を製造する方法である。そのような方法は、複合体結合性分子をコードする核酸を含む細胞または細胞株を細胞培養培地中で複合体結合性分子の発現および分泌を可能とするために十分な条件下でインキュベートすること、およびさらに細胞培養培地から複合体結合性分子を採取することを含む。採取は、生細胞、細胞デブリ、非複合体結合性分子タンパク質またはポリペプチド、望ましくない塩、緩衝剤、および培地成分を除去するための1つまたは複数の精製ステップをさらに含むことができる。ある特定の実施形態において、追加の精製ステップは、遠心分離、超遠心分離、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、もしくはプロテインL精製、および/またはイオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0170】
使用方法
免疫調節細胞による免疫応答の抑制は、腫瘍成長、遊走、および転移を促すことができる。免疫抑制または負の免疫モジュレーションは、免疫応答の全体的または部分的な低減を結果としてもたらすプロセスまたは経路を含むことができる。免疫抑制は、全身性のもの、または対象もしくは患者の身体の特有の部位(例えば腫瘍微環境)、組織、もしくは領域に局在化したものであることができる。B細胞は主に、病原体の中和を促す抗体の産生を通じた正の免疫モジュレーターとして公知であるが、B細胞のある特定の集団は、免疫応答を抑制または負に調節するように機能することができる。B細胞のそのような集団は、1つより多くの細胞表面バイオマーカーの発現により定義され得る。免疫抑制性B細胞またはB細胞集団は、B細胞系列表面バイオマーカーおよび抑制性B細胞表面バイオマーカーを含むことができる。B細胞系列表面マーカーは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含むことができる。B細胞表面マーカーは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP)を含むことができる。免疫抑制性B細胞または免疫抑制性B細胞集団は、抗炎症性メディエーター、例えばサイトカインの分泌を通じて、T細胞を含む、細胞サブタイプの多様なセットを抑制することにより免疫応答を抑制するように機能することができる。免疫抑制性B細胞はまた、リンパ様構造を負にモジュレートすることおよび/またはT細胞の制御性T細胞への変換を促すことにより免疫応答の減弱において機能することができる。そのため、本明細書に開示されるのは、免疫抑制性B細胞集団を標的化して応答を有効にモジュレートする方法である。
【0171】
免疫抑制性B細胞またはB細胞集団の標的化は、腫瘍または腫瘍形成性細胞に対する免疫活性化または免疫応答の正のモジュレーションを結果としてもたらすことができる。本明細書において提供されるのは、がんまたは腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、がんまたは腫瘍に罹患した個体に本明細書に開示される複合体結合性分子を投与することを含む、方法である。本明細書において提供されるのはまた、腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍またはがんに罹患した個体に本明細書に開示される複合体結合性分子を投与し、それにより、腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させることを含む、方法である。さらに開示されるのは、対象中の免疫抑制性B細胞を複合体結合性分子と接触させる方法であって、複合体結合性分子を対象に投与することを含む、方法である。ある特定の実施形態において、対象は腫瘍またはがんを有する。
【0172】
腫瘍またはがんの種類、サブタイプ、または形態は、処置戦略および方法における重要な因子であり得る。一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は血液がんである。一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形組織がんである。一部の実施形態において、がんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、または頭頸部がんを含む。
【0173】
免疫抑制性B細胞は抗腫瘍免疫応答を抑制することができる。一部の実施形態において、腫瘍またはがんは、B細胞系列表面バイオマーカーおよび抑制性B細胞表面バイオマーカーを含むB細胞を含む。B細胞系列表面マーカーは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含むことができる。B細胞表面マーカーは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、またはTGFBを含むことができる。一部の実施形態において、B細胞表面マーカーはCD19(例えばCD19+)およびCD38(例えばCD38+)を含む。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19+、CD38+ B細胞を含む。
【0174】
ある特定の実施形態において、本明細書に開示されるのは、がんまたは腫瘍の処置のために有用な二特異性抗体である。処置は、処置されている状態を改善または寛解させようとする方法を指す。がんに関して、処置としては、腫瘍体積の低減、腫瘍体積の増大における低減、無増悪生存期間、または全体的な平均余命における増加が挙げられるがこれらに限定されない。ある特定の実施形態において、処置は、処置されているがんの寛解に影響する。ある特定の実施形態において、処置は、以前に処置されたがんまたは腫瘍の再発または進行を予防することが意図される予防または維持用量としての使用を包含する。すべての個体が投与された処置に対して等しくまたは確実に応答するわけではないが、それにもかかわらずこれらの個体は処置されると考えられることが当業者により理解される。
【0175】
ある特定の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形がんまたは腫瘍である。ある特定の実施形態において、がんまたは腫瘍は血液がんまたは腫瘍である。ある特定の実施形態において、がんまたは腫瘍は、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、および肝臓腫瘍を含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体で処置され得る腫瘍は、腺腫、腺癌、血管肉腫、星細胞腫、上皮癌、胚細胞腫、膠芽腫、神経膠腫、血管内皮腫、血管肉腫、血腫、肝芽腫、白血病、リンパ腫、髄芽腫、黒色腫、神経芽腫、骨肉腫、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫および/または奇形腫を含む。ある特定の実施形態において、腫瘍/がんは、末端黒子型黒色腫、光線性角化症、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺肉腫、腺扁平上皮癌、星細胞腫瘍、バルトリン腺癌、基底細胞癌、気管支腺癌、毛細血管カルチノイド(capillary carcinoid)、癌腫、癌肉腫、胆管癌、軟骨肉腫、嚢胞腺腫、内胚葉洞腫瘍、子宮内膜過形成、子宮内膜間質肉腫、類内膜腺癌、上衣肉腫(ependymal sarcoma)、ユーイング肉腫(Swing’s sarcoma)、限局性結節性過形成、ガストリノーマ(gastronoma)、生殖系列腫瘍、膠芽腫、グルカゴノーマ、血管芽腫、血管内皮腫、血管腫、肝臓腺腫、肝臓腺腫症、肝細胞癌、インスリナイト(insulinite)、上皮内異常増殖、上皮内扁平細胞異常増殖、浸潤性扁平細胞癌、大細胞癌、脂肪肉腫、肺癌、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、平滑筋肉腫、黒色腫、悪性黒色腫、悪性中皮腫、神経鞘、髄芽腫、髄上皮腫、中皮腫、粘膜上皮癌、骨髄性白血病、神経芽腫、神経上皮腺癌、結節性黒色腫、骨肉腫、卵巣癌、乳頭状漿液性腺癌、下垂体腫瘍、形質細胞腫、偽肉腫、前立腺癌、肺芽細胞腫、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、肉腫、漿液性癌腫、扁平細胞癌、小細胞癌、軟組織癌、ソマトスタチン分泌腫瘍、扁平癌、扁平細胞癌、未分化癌、ぶどう膜黒色腫、疣状癌、膣/外陰部癌、VIPオーマ(VIPpoma)、およびウィルムス腫瘍の群から選択される。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の本発明の抗体で処置される腫瘍/がんは、脳のがん、頭頸部がん、結腸直腸癌、急性骨髄性白血病、プレB細胞急性リンパ芽球性白血病、膀胱がん、星細胞腫、好ましくはグレードII、IIIもしくはIV星細胞腫、膠芽腫、多形膠芽腫、小細胞がん、および非小細胞がん、好ましくは非小細胞肺がん、肺腺癌、転移性黒色腫、アンドロゲン非依存性転移性前立腺がん、アンドロゲン依存性転移性前立腺がん、前立腺癌、および乳がん、好ましくは乳腺管がん、および/または乳癌を含む。ある特定の実施形態において、本開示の抗体で処置されるがんは膠芽腫を含む。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の本開示の抗体で処置されるがんは膵臓がんを含む。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の本開示の抗体で処置されるがんは卵巣がんを含む。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の本開示の抗体で処置されるがんは肺がんを含む。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の本開示の抗体で処置されるがんは前立腺がんを含む。ある特定の実施形態において、1つまたは複数の本開示の抗体で処置されるがんは結腸がんを含む。ある特定の実施形態において、処置されるがんは、膠芽腫、膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、前立腺がん、または肺がんを含む。ある特定の実施形態において、がんは他の処置に対して難治性である。ある特定の実施形態において、処置されるがんは再発性である。ある特定の実施形態において、がんは、再発性/難治性の膠芽腫、膵臓がん、卵巣がん、結腸がん、前立腺がん、または肺がんである。
【0176】
ある特定の実施形態において、本明細書における複合体結合性分子で処置されるがんおよびまたは腫瘍は、成熟B細胞新生物:慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫およびワルデンシュトレームマクログロブリン血症、結節辺縁帯B細胞リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、バーキットリンパ腫、または原発性中枢神経系リンパ腫である。
【0177】
ある特定の実施形態において、本明細書における複合体結合性分子で処置されるがんおよびまたは腫瘍は、T細胞新生物、例えばT細胞非ホジキンリンパ腫、T細胞ALL、菌状息肉症、未分化大細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、Tリンパ球性白血病(T-ALL)、急性骨髄芽球性白血病、急性単球性白血病、およびその他である。
【0178】
ある特定の実施形態において、抗体は、それを必要とする対象に抗体含有医薬組成物の投与のために好適な任意の経路、例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、腫瘍内、または脳内などの経路により投与され得る。ある特定の実施形態において、抗体は静脈内に投与される。ある特定の実施形態において、抗体は皮下に投与される。ある特定の実施形態において、抗体は腫瘍内に投与される。ある特定の実施形態において、抗体は、好適な投薬スケジュール、例えば、週毎、週に2回、月毎、月に2回、2週毎に1回、3週毎に1回、または月に1回などで投与される。ある特定の実施形態において、抗体は3週毎に1回投与される。抗体は任意の治療有効量で投与され得る。ある特定の実施形態において、治療的に許容される量は約0.1mg/kg~約50mg/kgである。ある特定の実施形態において、治療的に許容される量は約1mg/kg~約40mg/kgである。ある特定の実施形態において、治療的に許容される量は約5mg/kg~約30mg/kgである。治療有効量は、処置されるべき疾患または病気と関連付けられる1つまたは複数の症状を寛解させるために十分な量を含む。
【0179】
例示的な実施形態
本明細書において提供されるのは、CD19に結合するように構成されたCD19結合性成分およびCD38に結合するように構成されたCD38結合性成分を含む複合体結合性分子であって、CD19結合性成分が抗体またはその抗原結合性断片を含み、かつCD38結合性成分が抗体またはその抗原結合性断片を含む、複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19および/またはCD38結合性成分が、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19またはCD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19およびCD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0180】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分が免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、免疫グロブリン重鎖が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列番号3に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含み、かつ/またはCD19結合性成分が、配列番号1に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、免疫グロブリン重鎖が、配列番号3もしくは5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ/または免疫グロブリン重鎖が、配列番号1もしくは6に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0181】
一部の実施形態において、提供されるのは、複合体結合性分子が共通軽鎖二特異性IgGである、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含み、かつCD19結合性成分が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、免疫グロブリン重鎖が、配列番号3もしくは5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ/または免疫グロブリン重鎖が、配列番号1もしくは7に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0182】
一部の実施形態において、提供されるのは、免疫グロブリン重鎖が、配列番号3または5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン重鎖が、配列番号1または7に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分またはCD38結合性成分がscFvを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分がscFvを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分がscFvを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分またはCD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が免疫グロブリン重鎖/軽鎖ペアを含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0183】
さらに提供されるのは、複合体結合性分子が、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD38に結合するCD38抗原結合性成分および抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域とペア形成した抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域を含むCD19に結合するCD19抗原結合性成分を含み、CD38抗原結合性成分が、a)配列番号71~75のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、b)配列番号81~85、もしくは150~155のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、c)配列番号91~95のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、d)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、e)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/またはf)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、複合体結合性分子である。
【0184】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD19抗原結合性成分が、g)配列番号11~15のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、h)配列番号21~25のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HCDR2)、i)配列番号31~35のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HCDR3)、j)配列番号101~105のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、k)配列番号111~115のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LCDR2)、および/またはl)配列番号121~125のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LCDR3)を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0185】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD38抗原結合性成分が、配列番号3または5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38抗原結合性成分が、配列番号3または5と同一のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19抗原結合性成分が、配列番号1または6に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0186】
一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD19抗原結合性成分が、配列番号1または6と同一のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変領域を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖可変領域が、配列番号4と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD38免疫グロブリン重鎖可変領域が第1の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD38免疫グロブリン軽鎖可変領域が免疫グロブリン軽鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、抗CD19免疫グロブリン重鎖可変領域が第2の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、第1の免疫グロブリン重鎖定常領域および/または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域が、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化に不利に働きかつ/または第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの1つがT366W置換(EUナンバリング)を含み、かつ第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの他のものがT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含み、その結果、第1および第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が、第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化と比較して助長される、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、単一の二特異性結合性分子がCD38抗原結合性成分およびCD19抗原結合性成分から形成されている、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0187】
提供されるのはまた、CD19に結合するCD19結合性成分およびCD38に結合するCD38結合性成分を含む複合体結合性分子であって、CD19結合性成分が、CD19に結合するscFVを含み、かつCD38結合性成分が、CD38に結合する軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む免疫グロブリン可変領域を含む、複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19に結合するscFvが第1の免疫グロブリン重鎖定常領域に連結されている、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分の重鎖可変領域が第2の免疫グロブリン重鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分の軽鎖可変領域が免疫グロブリン軽鎖定常領域をさらに含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分が、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0188】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分が、配列番号1または7に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖が、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列番号3または5に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列、および配列番号4に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分が、配列番号1または7に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列、および配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列番号3または5に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列、および配列番号4に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0189】
一部の実施形態において、提供されるのは、第1の免疫グロブリン重鎖定常領域および/または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域が、抗CD38免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化に不利に働きかつ/または第1の重鎖定常領域および第2の重鎖定常領域のヘテロ二量体化を促進する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの1つがT366W置換(EUナンバリング)を含み、かつ第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のうちの他のものがT366S/L368A/Y407V置換(EUナンバリング)を含み、その結果、第1および第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のヘテロ二量体化が、第1または第2の免疫グロブリン重鎖定常領域のホモ二量体化を上回って助長される、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、単一の二特異性結合性分子がCD38抗原結合性成分およびCD19抗原結合性成分から形成されている、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0190】
一部の実施形態において、提供されるのは、二特異性抗体またはその二重抗原結合性断片である、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、ネイティブな炭水化物または非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基を含むFc領域を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、ネイティブな炭水化物または非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基が、EUナンバリングにしたがってアスパラギン297に対応する、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0191】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD19+、CD38+ B細胞に結合する、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、Fc領域を含むCD19またはCD38単一特異性抗体と比較して低減された赤血球凝集を呈する、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0192】
提供されるのは、先行する実施形態の複合体結合性分子のいずれか1つの複合体結合性分子をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸(nucleic)である。実施形態49:複合体結合性分子をコードするポリヌクレオチド配列が真核性調節配列に機能的に連結されている、実施形態47の核酸。一部の実施形態において、提供されるのは、先行する実施形態のいずれか1つの実施形態に記載の核酸を含む細胞である。一部の実施形態において、提供されるのは、原核細胞を含む、先行する実施形態のいずれかの細胞である。一部の実施形態において、提供されるのは、原核細胞が大腸菌細胞である、先行する実施形態のいずれかの細胞である。一部の実施形態において、提供されるのは、真核細胞を含む、先行する実施形態のいずれかの細胞である。一部の実施形態において、提供されるのは、真核細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはヒトPER.C6細胞である、先行する実施形態のいずれかの細胞である。
【0193】
提供されるのはまた、医薬組成物、例えば、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子および医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む組成物である。一部の実施形態において、組成物は静脈内投与のために製剤化される。一部の実施形態において、組成物は皮下投与のために製剤化される。
【0194】
提供されるのは、個体において腫瘍またはがんを処置する方法における使用のための、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子または先行する実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物である。一部の実施形態において、腫瘍は血液がんである。一部の実施形態において、血液がんはB細胞悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ球性白血病である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である。一部の実施形態において、血液がんは血漿悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、血漿悪性腫瘍は多発性骨髄腫である。先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態において、血液がんはCD19およびCD38を発現する(例えばがんの細胞はCD19およびCD38を発現する)。
【0195】
一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形組織がんである。一部の実施形態において、固形組織がんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、脳のがん、または頭頸部がんを含む。一部の実施形態において、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは非小細胞肺がんであり、頭頸部がんは頭頸部扁平細胞がんであり、腎臓がんは腎細胞癌であり、脳のがんは多形膠芽腫であり、または皮膚がんは黒色腫である。
【0196】
提供されるのはまた、個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法における使用のための、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子または先行する実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物である。一部の実施形態において、さらに提供されるのは、個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法における使用のための、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子または先行する実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物である。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19+、CD38+ B細胞を含む。
【0197】
一部の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、配列P-X1-LG-X2-Aを含むHCDR2アミノ酸配列を含み、X1およびX2が、H、Q、T、N、S、G、A、R、K、D、またはEからなる群から各々選択される、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。ある特定の実施形態において、X1はHであり、かつX2はTである。一部の実施形態において、提供されるのは、X1がHであり、かつX2がTである、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。一部の実施形態において、提供されるのは、CD19結合性成分の重鎖定常領域がA84Sおよび/またはA108L改変を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。ある特定の実施形態において、提供されるのは、CD38結合性成分が、W32H置換を含む軽鎖配列を含む、先行する実施形態のいずれかの複合体結合性分子である。
【0198】
さらに提供されるのは、がんまたは腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、がんまたは腫瘍に罹患した個体に先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子または先行する実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与し、それによりがんまたは腫瘍を処置することを含む、方法である。一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は血液がんである。一部の実施形態において、血液がんはB細胞悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ球性白血病である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である。一部の実施形態において、血液がんは血漿悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、血漿悪性腫瘍は多発性骨髄腫である。先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態において、血液がんはCD19およびCD38を発現する(例えばがんの細胞はCD19およびCD38を発現する)。
【0199】
一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形組織がんである。一部の実施形態において、固形組織がんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、または頭頸部がんを含む。一部の実施形態において、乳がんはトリプルネガティブ乳がんであり、肺がんは非小細胞肺がんであり、頭頸部がんは頭頸部扁平細胞がんであり、腎臓がんは腎細胞癌であり、脳のがんは多形膠芽腫であり、または皮膚がんは黒色腫である。
【0200】
提供されるのは、腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍またはがんに罹患した個体に先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子または先行する実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与し、それにより腫瘍中の免疫抑制性B細胞を低減させることを含む、方法である。
【0201】
提供されるのはまた、腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍またはがんに罹患した個体に先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子または先行する実施形態のいずれか1つに記載の医薬組成物を投与し、それにより腫瘍中の免疫抑制性B細胞を低減させることを含む、方法である。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19+、CD38+ B細胞を含む。
【0202】
本明細書において提供されるのはまた、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子を製造する方法であって、先行する実施形態の細胞を細胞培養培地中で複合体結合性分子の発現、アセンブリー、および細胞培養培地への分泌を可能とするために十分な条件下でインキュベートすることを含む、方法である。一部の実施形態において、方法は、細胞培養培地から分子を単離および精製することを含む。個体のためのがん処置を調製する方法であって、先行する実施形態のいずれか1つに記載の複合体結合性分子を医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と混合することを含む、方法もまた提供される。
【0203】
そのため、本明細書において提供されるのは、第1の標的に結合するように構成された第1の結合性成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合性成分を含む複合体結合性分子であって、第1の標的がB細胞系列表面マーカーを含み、かつ第2の標的が抑制性B細胞表面マーカーを含み、第1の標的および第2の標的が同一でない、複合体結合性分子である。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分はポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、第1または第2の結合性成分はポリペプチドからなる。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分はポリペプチドを含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分はポリペプチドからなる。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分のポリペプチドは、少なくとも100個のアミノ酸残基の長さのアミノ酸配列を含む。
【0204】
B細胞系列表面マーカーは、CD19、CD138、IgA、またはCD45を含むことができる。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19を含む。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD19である。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはIgAである。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはIgAである。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD138である。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD138である。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD45である。ある特定の実施形態において、B細胞系列表面マーカーはCD45である。一部の実施形態において、B細胞系列表面マーカーは、IgA、CD19、CD138、CD45、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0205】
抑制性B細胞表面マーカーは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、または潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP)を含むことができる。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはIgDを含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはIgDである。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD1を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD1である。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD5を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD5である。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD21を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD21である。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD24を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD24である。一部の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38を含む。ある特定の実施形態において、抑制性B細胞表面マーカーはCD38である。一部の実施形態において、B細胞表面マーカーは、IgD、CD1、CD5、CD21、CD24、CD38、HM13、SLAMF7、AQP3、潜在型TGF-ベータ(例えば、TGF-ベータLAP)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0206】
複合体結合性分子は、抗体またはその標的結合性断片を含むことができる。一部の実施形態において、第1または第2の結合性成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。一部の実施形態において、第1および第2の結合性成分は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペア、scFv、F(ab)、F(ab’)2、単一ドメイン抗体、免疫グロブリン新抗原受容体からの可変領域断片(VNAR)、または重鎖抗体に由来する可変領域(VHH)を含む。ある特定の実施形態において、第1または第2の結合性成分は免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分は免疫グロブリン重鎖および軽鎖ペアを含む。ある特定の実施形態において、第1または第2の結合性成分はscFvを含む。ある特定の実施形態において、第1および第2の結合性成分はscFvを含む。
【0207】
二特異性抗体またはその二重抗原結合性断片である、本明細書に記載される複合体結合性分子。
【0208】
一部の実施形態において、複合体結合性分子は、免疫グロブリン重鎖および免疫グロブリン軽鎖を含み、免疫グロブリン重鎖は、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、または150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、免疫グロブリン重鎖は、配列番号3に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号2に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、免疫グロブリン重鎖は、配列番号3に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含み、かつ免疫グロブリン軽鎖は、配列番号2に記載されるアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、複合体結合性分子は共通軽鎖二特異性IgGである。
【0209】
複合体結合性分子は二特異性抗体であることができる。一部の実施形態において、二特異性抗体は、以下のフォーマット:共通軽鎖二特異性IgG、Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgG、Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgG、scFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgG、Fab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgG、およびFab-Fc-scFv:Fab-Fc二特異性IgGのうちの1つから選択される。ある特定の実施形態において、二特異性抗体は共通軽鎖二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc:scFv-Fc二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc-Fab:Fc二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc-scFv:Fab-Fc-scFv二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc-scFv:Fc二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc-Fab:Fab-Fc二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はscFv-Fab-Fc:scFv-Fab-Fc二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fab-Fc:Fab-Fab-Fc二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はFab-Fc-Fab:Fab-Fc-Fab二特異性IgGである。ある特定の実施形態において、二特異性抗体はIgG-scFvである。
【0210】
複合体結合性分子は翻訳後修飾を含むことができる。一部の実施形態において、複合体結合性分子は、ネイティブな炭水化物または非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基を含むFc領域を含む。ある特定の実施形態において、ネイティブな炭水化物または非フコシル化炭水化物で修飾されたアミノ酸残基は、EUナンバリングにしたがってアスパラギン297に対応する。
【0211】
一部の実施形態において、第1の結合性成分は、配列番号11~15のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号21~25のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号31~35のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号41~45のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号51~55のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号61~65のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、第1の結合性成分は、配列番号1および配列番号2のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を含むか、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、第1の結合性成分は、配列番号1および配列番号2に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を含むか、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0212】
一部の実施形態において、第2の結合性成分は、配列番号71~75のいずれか1つに記載されるHCDR1アミノ酸配列、配列番号81~85、もしくは150~155のいずれか1つに記載されるHCDR2アミノ酸配列、配列番号91~95のいずれか1つに記載されるHCDR3アミノ酸配列、配列番号101~105のいずれか1つに記載されるLCDR1アミノ酸配列、配列番号111~115のいずれか1つに記載されるLCDR2アミノ酸配列、および/または配列番号121~125のいずれか1つに記載されるLCDR3アミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、第2の結合性成分は、配列番号3および配列番号4のいずれか1つに記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を含むか、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、第2の結合性成分は、配列番号3および配列番号4に記載されるアミノ酸配列に対して少なくとも約90%、95%、97%、99%の同一性を含むか、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0213】
複合体結合性分子は第1の標的および第2の標的に結合することができ、第1の標的はB細胞系列表面マーカーを含み、かつ第2の標的は抑制性B細胞表面マーカーを含む。一部の実施形態において、複合体結合性分子はCD19陽性(CD19+またはCD19high)およびCD38陽性(CD38+またはCD19high)B細胞に結合する。
【0214】
複合体結合性分子は核酸分子によりコードされ得る。本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される複合体結合性分子をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸である。一部の実施形態において、複合体結合性分子をコードするポリヌクレオチド配列は真核性調節配列に機能的に連結されている。
【0215】
細胞は、複合体結合性分子をコードする核酸を含むことができる。一部の実施形態において、細胞は原核細胞を含む。ある特定の実施形態において、原核細胞は大腸菌細胞である。一部の実施形態において、細胞は真核細胞を含む。ある特定の実施形態において、真核細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、またはヒトPER.C6細胞である。
【0216】
本明細書に開示されるのはまた、複合体結合性分子および医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤を含む組成物である。一部の実施形態において、組成物は静脈内投与のために製剤化される。一部の実施形態において、組成物は皮下投与のために製剤化される。
【0217】
本明細書に開示される複合体結合性分子は、抗腫瘍免疫応答を抑制する免疫抑制性B細胞を阻害しかつ/またはその数を低減させることができる。そのため、本明細書における複合体結合性分子は、個体において腫瘍またはがんを処置する方法において使用され得る。一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は血液がんである。一部の実施形態において、血液がんはB細胞悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ球性白血病である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である。一部の実施形態において、血液がんは血漿悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、血漿悪性腫瘍は多発性骨髄腫である。先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態において、血液がんはCD19およびCD38を発現する(例えばがんの細胞はCD19およびCD38を発現する)。
【0218】
一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形組織がんである。一部の実施形態において、がんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、または頭頸部がんを含む。一部の実施形態において、がんは乳がんである。一部のある特定の実施形態において、乳がんはトリプルネガティブ乳がんである。一部の実施形態において、がんは肺がんである。ある特定の実施形態において、肺がんは非小細胞肺がんである。一部の実施形態において、がんは頭頸部がんである。ある特定の実施形態において、頭頸部がんは頭頸部扁平細胞がんである。一部の実施形態において、がんは腎臓がんである。ある特定の実施形態において、腎臓がんは腎細胞癌である。一部の実施形態において、がんは脳のがんである。一部の実施形態において、脳のがんは多形膠芽腫である。一部の実施形態において、がんは皮膚がんである。ある特定の実施形態において、皮膚がんは黒色腫である。
【0219】
本明細書における複合体結合性分子は、腫瘍浸潤性B細胞および/または個体の腫瘍に対する抗腫瘍免疫応答を抑制する免疫抑制性B細胞を低減させる方法において使用され得る。本明細書における複合体結合性分子は、腫瘍浸潤性B細胞および/または個体の腫瘍に対する抗腫瘍免疫応答を抑制する免疫抑制性B細胞の機能を阻害する方法において使用され得る。複合体結合性分子は、個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある抑制性B細胞を低減させる方法において使用され得る。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19+、CD38+ B細胞を含む。
【0220】
本明細書にさらに開示されるのは、がんまたは腫瘍に罹患した個体を処置する方法であって、がんまたは腫瘍に罹患した個体に本明細書に開示される複合体結合性分子を投与し、それによりがんまたは腫瘍を処置することを含む、方法である。一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は血液がんである。一部の実施形態において、血液がんはB細胞悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍はB細胞急性リンパ球性白血病である。ある特定の実施形態において、B細胞悪性腫瘍は、慢性リンパ球性白血病、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、または非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫)である。一部の実施形態において、血液がんは血漿悪性腫瘍である。ある特定の実施形態において、血漿悪性腫瘍は多発性骨髄腫である。先行する実施形態のいずれかの一部の実施形態において、血液がんはCD19およびCD38を発現する(例えばがんの細胞はCD19およびCD38を発現する)。
【0221】
一部の実施形態において、がんまたは腫瘍は固形組織がんである。一部の実施形態において、がんは、乳がん、前立腺がん、膵臓がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、食道がん、皮膚がん、結腸直腸がん、または頭頸部がんを含む。一部の実施形態において、がんは乳がんである。一部のある特定の実施形態において、乳がんはトリプルネガティブ乳がんである。一部の実施形態において、がんは肺がんである。ある特定の実施形態において、肺がんは非小細胞肺がんである。一部の実施形態において、がんは頭頸部がんである。ある特定の実施形態において、頭頸部がんは頭頸部扁平細胞がんである。一部の実施形態において、がんは腎臓がんである。ある特定の実施形態において、腎臓がんは腎細胞癌である。一部の実施形態において、がんは脳のがんである。一部の実施形態において、脳のがんは多形膠芽腫である。一部の実施形態において、がんは皮膚がんである。ある特定の実施形態において、皮膚がんは黒色腫である。
【0222】
開示されるのはまた、腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある腫瘍浸潤性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍またはがんに罹患した個体に本明細書に開示される複合体結合性分子を投与し、それにより腫瘍中の腫瘍浸潤性B細胞を低減させることを含む、方法である。開示されるのはまた、腫瘍またはがんに罹患した個体の腫瘍中にあるか、それに隣接するか、またはその周囲にある免疫抑制性B細胞を低減させる方法であって、腫瘍またはがんに罹患した個体に本明細書に開示される複合体結合性分子を投与し、それにより腫瘍中の免疫抑制性B細胞を低減させることを含む、方法である。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞または免疫抑制性B細胞は、CD19+、CD38+ B細胞を含む。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞を低減させることは、免疫抑制性B細胞の腫瘍環境または微環境中への動員を低減および/または遮断および/または予防および/または阻害することを含む。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞を低減させることは、免疫抑制性B細胞により媒介される細胞間接触誘導性免疫抑制を低減および/または遮断および/または予防および/または阻害することを含む。一部の実施形態において、腫瘍浸潤性B細胞を低減させることは、免疫抑制性B細胞の分化を低減および/または遮断および/または予防および/または阻害することを含む。
【0223】
本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される複合体結合性分子を製造する方法であって、本明細書に開示される細胞を細胞培養培地中で複合体結合性分子の発現、アセンブリーおよび細胞培養培地への分泌を可能とするために十分な条件下でインキュベートすることを含む、方法である。一部の実施形態において、方法は、細胞培養培地から分子を単離および精製することを含んだ。
【0224】
本明細書に開示される複合体結合性分子は、がんまたは腫瘍の処置において使用され得る。そのため、開示されるのは、個体のためのがん処置を調製する方法であって、本開示の複合体結合性分子を医薬的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と混合することを含む、方法である。
【実施例】
【0225】
以下の実施例は、実例的な目的のためにのみ含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0226】
実施例1:CD19およびCD38抗体の細胞結合特性
本明細書における開示を例示して、第1の標的に結合するように構成された第1の結合性成分および第2の標的に結合するように構成された第2の結合性成分を含む複合体結合性分子であって、第1の標的がB細胞系列表面マーカーを含み、かつ第2の標的が抑制性B細胞表面マーカーを含む、複合体結合性分子を、CD19およびCD38を発現する細胞に対する結合について試験した。CD19およびCD38軽鎖および重鎖を含む抗体の、CD19およびCD38を発現するRaji細胞に対する結合特性。
図12Aは、Raji細胞におけるCD19およびCD38の細胞表面発現データを示す。CD19およびCD38を発現するRaji細胞を、CD19およびCD38軽鎖および重鎖を含む抗体とインキュベートした。細胞を11の異なる濃度にわたり30μg/mLの抗体とインキュベートして、各々の試料についての結合プロファイルを生成した。商業的に入手可能な抗体を使用してCD19およびCD38の発現を検証した。試験された試料は、(A)マッチしたCD19重鎖および軽鎖であって、CD19重鎖が配列番号1を含み、かつCD19軽鎖が配列番号2を含むもの、(B)スワップさせたCD19重鎖およびCD38軽鎖であって、CD19重鎖が配列番号1を含み、かつCD38軽鎖が配列番号4を含むもの、(C)スワップさせたCD38重鎖およびCD19軽鎖であって、CD38重鎖が配列番号3を含み、かつCD19軽鎖が配列番号2を含むもの、(D)マッチしたCD38重鎖および軽鎖であって、CD38重鎖が配列番号3を含み、かつCD38軽鎖が配列番号4を含むもの、(E)配列番号1~2を含むCD19単鎖可変断片(scFv)、(F)配列番号3~4を含むCD38単鎖可変断片(scFv)、ダラザレックス(CD38対照)、抗CD19 PE(CD19対照)、抗CD38 PE(CD38対照)、ならびにIgG1アイソタイプ対照を含む。
【0227】
図12Bおよび
図12Cは、試料A~F、ダラザレックス、およびIgG1アイソタイプ対照の結合プロファイルを示す。表1および表2は、試料A~F、ダラザレックス、およびIgG1アイソタイプ対照のEC
50値および最大平均蛍光強度(MFI)を示す。試料A~Fの各々は、CD19およびCD38を発現するRaji細胞に対する結合を実証し、試料A~Fの結合プロファイルは試料間でばらついた。
図12Dおよび
図12Eは、対照抗CD19(
図11D)および抗CD38抗体(
図11E)の結合を示す。
図12Fは、試験された抗体はCD19およびCD38を発現しないCHO細胞に結合しなかったことを示す。
【0228】
【0229】
【0230】
実施例2:Octet結合データ
バイオレイヤー干渉法を使用して親および二特異性抗体の結合親和性を決定した。結合実験は、Octet Red96上で25℃で0.1%のBSA、1XPBS、0.02%のTween-20、0.05%のNaN3からなるアッセイ緩衝液を使用して行った。抗体を抗hIgG Fc Captureバイオセンサーに300秒間ロードした。リガンドをロードしたセンサーを抗原の段階希釈液(300nMで開始:CD19について2倍段階希釈、CD38について3倍段階希釈)に会合(CD19について200秒、CD38について150秒)、続いて解離(CD19について600秒、CD38について400秒)のために浸漬した。一価(1:1)結合モデルを使用して速度定数を算出した。
【0231】
親試験品は以下を含んだ:
【0232】
851A=抗CD19 3C10
【0233】
851B=抗CD19 3C10重鎖&抗CD38 003軽鎖
【0234】
851C=抗CD38 003重鎖&抗CD19 3C10軽鎖
【0235】
851D=抗CD38 003
【0236】
851E=抗CD19 3C10(scFv-Fc)2
【0237】
851F=抗CD38 003(scFv-Fc)2
【0238】
抗CD19 3C10 VHおよびVLを有する2つの親抗体(851A/851E)は、類似したKDでCD19に結合した。抗CD38 VLでの抗CD19 3C10 VLの置換(851B)は、約5倍のCD19に対する結合の低減を結果としてもたらした。予想されたように、抗CD38 003 VHおよびVLを有する親抗体(851D/851F)はCD19に結合しなかった。
【0239】
表3は結合データを示す。抗CD38 003 VHおよびVLを有する2つの親抗体(851D/851F)は、類似したKDでCD38に結合した。抗CD19 VLでの抗CD38 003 VLの置換(851C)は、CD38に対する結合の大きい低減を結果としてもたらした。予想されたように、抗CD19 VHおよびVLを有する親抗体(851A/851E)はCD38に結合せず、851BもまたCD38に結合しなかった。このデータは、抗CD38 003 VLのみが抗CD19 3C10 VHのための共通軽鎖として機能できることを示す。
【0240】
【0241】
二特異性抗体(フォーマット)試験品は以下を含んだ:
【0242】
BS1=1:1:2の比の003HC:3C10HC:003LC(共通軽鎖)
【0243】
BS1b=2:1:2の比の003HC:3C10HC:003LC(共通軽鎖)
【0244】
BS2=1:1:1の比の003Knob:3C10scFvHole:003LC(Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG1)
【0245】
BS2b=4:1:4の比の003Knob:3C10scFvHole:003LC(Fab-Fc:scFv-Fc二特異性IgG1)
【0246】
BS3=1:1:1の比の3C10scFv-003Fab-FcKnob:FcHole:003LC)(scFv-Fab-Fc:Fc二特異性IgG1)
【0247】
BS4=1:1:1の比の003Fab-FcKnob-3C10scFv:FcHole(Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG1)
【0248】
BS4b=4:1:4の比の003Fab-FcKnob-3C10scFv:FcHole(Fab-Fc-scFv:Fc二特異性IgG1)
【0249】
CM1=1:1:2の比の3C10Hole:VZVKnob:003LC抗CD19対照抗体
【0250】
CM1b=1:3:3の比の3C10Hole:VZVKnob:003LC
【0251】
CM2=1:1:2の比の003Knob:VZVHole:003LC抗CD38対照抗体
【0252】
CM2b=3:1:3の比の003Knob:VZVHole:003LC
【0253】
表4は、単一抗原フォーマットにおける二特異性試験品についての結合データを示す。二特異性抗体BS1/BS2/BS4は、親抗体の4倍以内のKDで両方の標的抗原に結合した(灰色の陰影で示される)。BS3はCD19にのみ結合し、CD38には結合せず、抗CD38 Fab結合性部位が抗CD19 scFv N末端融合物により遮断されたか、または抗CD38は結合のために遊離のVH N末端を要求するかのいずれかであることを示唆した。1アーム対照抗体(CM1、CM2)は、それらの意図される標的抗原にのみ結合した。
【0254】
【0255】
2抗原フォーマットについて、抗体を抗hIgG Fc Captureバイオセンサーに300秒間ロードした。リガンドをロードしたセンサーを500nMの第1の抗原で500秒間、続いて300nMの第2の抗原で240秒間飽和させた。一価(1:1)結合モデルを使用して速度定数を算出した。表5は、二特異性抗体BS1/BS2/BS4は親抗体(851B、851D、および851E)の2倍以内のka(1/Ms)で両方の標的抗原に同時に結合できたことを示す。1抗原フォーマットの場合と同様に、BS3はCD19にのみ結合し、CD38に結合しなかった。
【0256】
【0257】
CD19および/またはCD38に結合する能力についてバリアントをさらに試験した。結合実験をOctet Red上で25℃で行った。抗体を抗hIgG Fc Capture(AHC)バイオセンサーに300秒間ロードした。リガンドをロードしたセンサーを抗原(CD19およびCD38)の2倍段階希釈液(300nMで開始)に会合のためにCD19について240秒間、CD38について150秒間、続いて解離のためにCD19について600秒間、CD38について130秒間浸漬した。一価(1:1)結合モデルを使用して速度定数を算出した。表6は抗CD38 CDRH2バリアントの結合を示す。表7はCD38軽鎖W32Hバリアントの結合を示す。表8はCD19重鎖フレームワーク突然変異体A84S A108Lの結合を示す。
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
実施例3:細胞結合研究
細胞結合研究プロトコール:5つの細胞株(HEK293-CD19、HEK293-CD38、HEK293-CD19/CD38、Daudi、およびREH)を、無処理対照に加えて、133nM、続いて3倍希釈系列(計7点)の試験品と3連でインキュベートした。HEK293細胞株への一過的なトランスフェクトを行った。
【0262】
Daudi、RajiおよびREH細胞株上のCD19およびCD38の細胞表面発現を評価するための研究を行った。商業的に入手可能なPEにコンジュゲートされた抗体を用いて細胞を3連で染色し、洗浄し、フローサイトメトリーを介する取得を行った。細胞の表面上の分子発現を定量化するために、Bangs LaboratoriesからのQuantum Simply Cellular anti-mouse IgG kit(カタログ #815-A)を使用して、分子数/細胞値に対してMFIを補間するための標準曲線を生成した(表9)。
【0263】
【0264】
図13Aは、親抗体(851A、851B、851D)ならびに2つの対照二特異性抗体(CD19またはCD38に対する1つのアームおよび水痘帯状疱疹ウイルスに対する他のアームを各々有する)のDaudi細胞に対する結合を示す。Daudi細胞は表面上にCD38を約100万コピー有するがCD19を約200,000コピーしか有さないことを考慮すれば、
図13Aは、抗CD38 851Dおよび38K-VZVHの結合は効率的であるが、抗CD19 851A、851B、19H-VZVKの結合は中等度に過ぎないことを示す。なお、2つのCD38結合性Fabを有する851Dは、CD38のための1つの結合性Fabしか有さない38K-VZVHよりも約5倍良好に結合する。
【0265】
図13Bは、二特異性抗体BS1、BS2およびBS4のDaudi細胞に対する結合を示す。CD38およびCD19の両方に結合する二特異性抗体のアビディティは、CD38にのみ結合する38K-VZVHに対してそれらの結合を比較することにより明らかとなる。
【0266】
図14Aは、親抗体(851A、851B、851D)ならびに2つの対照二特異性抗体(CD19またはCD38に対する1つのアームおよび水痘帯状疱疹ウイルスに対する他のアームを各々有する)のREH細胞に対する結合を示す。REH細胞は表面上にCD38を約300,000コピー有するがCD19を約50,000コピーしか有さないことを考慮すれば、
図14Aは、抗CD38 851Dおよび38K-VZVHの結合は効率的であるが、抗CD19 851A、851B、19H-VZVKの結合は中等度に過ぎないことを示す。MFIの規模は、REH細胞上のCD38およびCD19の両方のより低い発現レベルに起因して、Daudi細胞と比較して有意により低い(
図2A、2B)。なお、2つのCD38結合性Fabを有する851Dは、CD38のための1つの結合性Fabしか有さない38K-VZVHよりも約5倍良好に結合する。
【0267】
図14Bは、二特異性抗体BS1、BS2およびBS4のREH細胞に対する結合を示す。CD38およびCD19の両方に結合する二特異性抗体のアビディティは、CD38にのみ結合する38K-VZVHに対してそれらの結合を比較することにより明らかとなる。
【0268】
図15Aは、親抗体(851A、851B、851D)および2つの対照二特異性抗体(38K-VZVH、19H-VZVK)の、CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。予想されたように、2つの抗CD38抗体はこれらの細胞に結合しない。なお、2つのCD19結合性Fabを各々有する851Aおよび851Bは、CD19のための1つの結合性Fabしか有さない19H-VZVKよりも有意に良好に結合する。
【0269】
図15Bは、二特異性抗体BS1、BS2およびBS4の、CD19をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。BS2およびBS4はBS1よりもわずかに良好に結合し、BS1は抗CD38軽鎖を有するので、BS2およびBS4はBS1よりも約10倍良好にCD19に結合する(Table Octetデータを参照)。
【0270】
図16Aは、親抗体(851A、851B、851D)および2つの対照二特異性抗体(38K-VZVH、19H-VZVK)の、CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。予想されたように、3つの抗CD19抗体はこれらの細胞に結合しない。なお、2つのCD38結合性Fabを有する851Dは、CD38のための1つの結合性Fabしか有さない38K-VZVHよりも良好に結合する。
【0271】
図16Bは、二特異性抗体BS1、BS2およびBS4の、CD38をトランスフェクトされたHEK293細胞に対する結合を示す。
【0272】
細胞結合研究プロトコール - 非特異的バックグラウンド結合:CHO-SおよびExpi293T細胞株に対する3つの親モノクローナル抗体(抗CD19クローン851Aおよび851Bおよび抗CD38クローン851D)、ヒトIgG1アイソタイプ対照、ならびにダラツムマブの結合を評価するための研究を行った。2つの細胞株をviability色素で染色し、次に無処理対照の他に、無処理、無二次対照に加えて、1,250nMの最高濃度、続いて5倍希釈系列(計4点)の試験品と3連でインキュベートした。
【0273】
図17Aは、親抗体(851A、851B、851D)の、非トランスフェクトCHO-S細胞に対する結合を示す。非特異的結合が、250nMに開始して3つすべての親抗体について見られ、抗CD38 851Dでより著しかった。
【0274】
図17Bは、親抗体(851A、851B、851D)の、非トランスフェクトExpi293T細胞に対する結合を示す。非特異的結合が、250nMに開始して3つすべての親抗体について見られ、抗CD38 851Dでより著しかった。
【0275】
実施例4:直接的なおよび架橋によるアポトーシス
直接的なアポトーシスの評価のために、細胞を試験品で処理し、48時間37℃/5%のCO2でインキュベートした。架橋誘導性アポトーシスの評価のために、細胞を試験品と氷上で30分間インキュベートした後に、5μg/mLのウサギ抗ヒトFcガンマ特異的F(ab’)2を加えた。細胞を次に48時間37oC/5%のCO2でインキュベートした。インキュベーション後に、細胞を洗浄し、アネキシンVで染色し、次にviability色素(ヨウ化プロピジウム;PI)を含有するアネキシンV緩衝液に再懸濁した後に、フローサイトメトリー取得を行った。早期アポトーシス細胞をアネキシンV+/PI-単一細胞として定義し、後期アポトーシス/壊死細胞をアネキシンV+/PI+単一細胞として定義した。アネキシンV+/PI-およびアネキシンV+/PI-の和を全アポトーシス/壊死細胞として定義した。アネキシンV+/PI-細胞またはアネキシンV+/PI+のパーセンテージをプロットして様々なアポトーシス条件を比較した。
【0276】
直接的なアポトーシスの評価のために、非処理対照に加えて、試験品を33nMの最終最高濃度、続いて7点の5倍希釈系列で各々3連で試験した。架橋誘導性アポトーシスのために、ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照に加えて、個々の試験品(BS1、BS2、BS4、851A、851B、および851D)ならびに試験品の組合せ(851Aおよび851D、851Bおよび851D、および38K-VZVHおよび19H-VZVK)を、非処理対照に加えて、33nMの最終最高濃度、続いて7点の5倍希釈系列で3連で各々試験した。アネキシンV染色の陽性対照として、細胞を5mMのスタウロスポリンで処理した。
【0277】
図18Aは、親抗体(851A、851B、851D)、2つの対照二特異性抗体(38K-VZVH、19H-VZVK)、ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照についてのDaudi細胞における直接的なアポトーシスを示す。ダラツムマブは最も高いレベルのアポトーシスを呈した。両方の抗CD19親(851A、851B)は、ダラツムマブと比較してより低いレベルのアポトーシスを呈した。2つの二特異性対照および抗CD38親抗体851Dは、認識可能な直接的なアポトーシスを示さなかった。
【0278】
図18Bは、二特異性抗体BS1、BS2、BS4、ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照についてのDaudi細胞における直接的なアポトーシスを示す。BS1およびBS2フォーマットは、ダラツムマブと比較して有意により高いレベルの直接的なアポトーシスを示した。二特異性フォーマットBS4は、親抗CD19 851A/851B抗体と同等のレベルの直接的なアポトーシスを示し(
図12Aの比較)、これは、BS4フォーマットはアポトーシスを開始させるためにCD19およびCD38を近接させることができないことに起因し得る。
【0279】
図19Aは、親抗体(851A、851B、851D)、親抗体の2つの組合せ(851A+851D、851B+851D)、ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照についてのDaudi細胞における架橋誘導性アポトーシスを示す。架橋は、ダラツムマブ駆動性アポトーシスのレベルを増加させた(
図12Aおよび
図7Aの比較)。架橋は、直接的なアポトーシスを示さなかった抗CD38 851Dについてアポトーシスのレベルを有意に増加させた(
図12Aおよび
図7Aの比較)。抗CD19親抗体851Aおよび851Bを架橋した場合のアポトーシスのレベルにおける増加は、恐らくはDaudi細胞上のCD38と比較したCD19のより低いレベルに起因して、CD38抗体についてより小さかった(表9を参照)。抗CD38 851Dとの抗CD19 851Aまたは851Bの組合せの架橋は、851D単独と比較してアポトーシスのレベルを増加させなかった。
【0280】
図19Bは、二特異性抗体BS1、BS2、BS4、(38K-VZVH+19H-VZVK)、ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照についてのDaudi細胞における架橋誘導性アポトーシスを示す。架橋された場合、BS1およびBS2フォーマットは、ダラツムマブと同等のレベルのアポトーシスを示した。顕著なことに、二特異性フォーマットBS4は、BS1、BS2およびダラツムマブと同等のレベルの架橋誘導性アポトーシスを示し、架橋なしで、BS4はアポトーシスを示さなかった(
図6Bを参照)。2つの対照抗体、38K-VZVHおよび19H-VZVKの組合せは、有意なアポトーシスを呈したが二特異性フォーマットのいずれよりも低く、単一の抗体中に抗CD19および抗CD38結合性部位を含むことは独立した抗体におけるよりも有利であることを示す。
【0281】
実施例5:細胞傷害性
Daudi標的細胞を試験品の用量応答で処理し、15分間37C/5%のCO2でインキュベートした。0nMの対照に加えて、試験品を133nMの最終最高濃度、続いて7点の5倍希釈系列で試験した。ダラツムマブおよびIgG1アイソタイプ対照を陽性および陰性対照として使用した。
【0282】
予備処理した標的細胞をn=3のドナーからのヒトPBMCと共培養した(E:T 25:1)。PBMCは、100U/mLのIL-2で終夜「プライム」してあった。PBMCをViaFluor 405標識した。試料を4時間37C/5%のCO2でインキュベートした後に、細胞傷害性についてのフローサイトメトリー分析を行った。細胞傷害性分析のために、細胞をヨウ化プロピジウム(P.I.)で染色し、ハイスループットフローサイトメトリーにより分析した。VF405-集団内のP.I.+細胞のパーセンテージを標的細胞の細胞傷害性の指標として分析した。
【0283】
図20A、
図20B、および
図20Cは3人のドナーについての抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を示す。3人すべてのドナーについて、結果は類似していた。3つの二特異性フォーマットであるBS1、BS2、BS4と、ダラツムマブは、類似したレベルのADCCを呈した。恐らくは標的Daudi細胞上のCD19の低いレベルに起因して、抗CD19二特異性対照19H-VZVKはADCCを誘導せず、IgG1対照抗体と同等であった(表9を参照)。対照的に、可能性としてはCD19と比較してDaudi細胞上のCD38のはるかにより高いレベルに起因して、抗CD38二特異性対照38K-VZVHは、二特異物およびダラツムマブと同等のADCCを呈した。
【0284】
図21A~Cは3人のドナーについてのADCCを示す。3人すべてのドナーについて、結果は類似していた。3つの二特異性フォーマットであるBS1、BS2、BS4は、類似したレベルのADCCを呈した。BS1、BS2、BS4の非フコシル化バージョンは、フコシル化バージョンと比較して約10倍の増加したADCCを示した。
【0285】
補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイもまた行った。標的細胞を以下の試験品:BS1、BS2、38K-VZVH、19H-VZVH、38K-VZVH/19H-VZVHの組合せの他に、対照となるダラザレックス、抗CD20、WT IgG1タファシタマブ(Tafasitimab)、およびヒトIgG1アイソタイプ対照の用量応答で処理した。無処理対照に加えて、すべてを133nMの最高濃度、続いて計7点の5倍希釈系列で試験した。37C、5%のCO2での15分のインキュベーション後に、補体を25%の最終濃度で処理された細胞に加えた。細胞を次に補体とさらに2時間37C、5%のCO2でインキュベートした。補体インキュベーション後に、細胞を洗浄し、5μg/mLのviability色素、ヨウ化プロピジウム(P.I.)と共に再懸濁し、ハイスループットフローサイトメトリーを介して取得した。
【0286】
図22Aおよび
図22Bは補体依存性細胞傷害性(CDC)アッセイの結果を示す。陽性技術的対照、抗CD20は、堅牢な用量依存性のCDC活性を誘導した。38K-VZVHおよび19H-VZVH(単独または組合せのいずれか)、抗CD19タファシタマブ(wt IgG1)、およびヒトIgG1アイソタイプ対照はいかなるCDC活性も誘導しなかった。ダラザレックス、BS1、およびBS2はすべてCDC活性を示した(但し、文献から予想されるように、抗CD20と同じ規模ではなかった)。ダラザレックスの最大細胞傷害性はBS1およびBS2の両方のそれよりも高かった。
【0287】
試験品の用量応答で処理され、15分間37C、5%のCO2でインキュベートされたpHrodo Green AM(pHG)標識Raji細胞により抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)をさらにアッセイした。pHGはpH感受性色素であり、中性pHにおいて弱い蛍光性に過ぎないが、マクロファージの成熟ファゴソームにおける低いpHにおいて高度に蛍光性である。抗CD20抗体およびIgG1アイソタイプ対照を用いたpHG標識Raji標的細胞を陽性対照および陰性対照として使用し、133nMの最高濃度、7点の5倍希釈系列、および0nMの対照を用いた。予備処理された標的細胞をn=3のドナーからのヒトマクロファージ(単球からin vitroで分化させた)と共培養した(E:T 1:2)。マクロファージをCell Trace Violet(CTV)で標識した。試料を4時間37C、5%のCO2でインキュベートした後に、ファゴサイトーシスについてフローサイトメトリー分析を行った。pHGhi/CTV+細胞のパーセンテージを標的細胞ファゴサイトーシスの指標として分析した。パーセンテージをXYチャート上で試験品濃度の対数に対してプロットし、EC50を算出した4パラメーター非線形回帰曲線に対してデータをフィッティングした。
【0288】
図23は、標的としてRaji細胞およびドナーマクロファージを使用した抗体依存性細胞ファゴサイトーシス(ADCP)アッセイの結果を示す。陽性対照、抗CD20は、4時間後に3人すべてのドナーについて用量依存性ファゴサイトーシスを実証した(5~10%の最大ファゴサイトーシス)。陰性対照、IgG1アイソタイプ対照は、4時間後に3人すべてのドナーについて用量依存性ファゴサイトーシスを実証しなかった。ダラザレックスは、4時間後に3人すべてのドナーについて用量依存性ファゴサイトーシスを実証した(4~10%の最大ファゴサイトーシス)。BS-1、BS-2、非フコシル化BS-1、および非フコシル化BS-2は、わずかな用量依存性ファゴサイトーシスを示し、非フコシル化フォーマットはADCPにおける増加を結果としてもたらした。
【0289】
実施例6:RBCとの相互作用
n=3のカニクイザルおよびn=3のヒトドナーからの赤血球細胞に対する試験品の結合を評価するためにフローサイトメトリーベースの赤血球細胞(RBC)結合研究を行った。全血を1X PBSで洗浄し、次にPBSで20倍に希釈した後に、試験品で処理した。0nMの対照に加えて、二特異物(BS1、BS2)、親モノクローナル(851A、851D)および対照(抗CD38ダラザレックス、組換え抗CD19タファシタマブ、IgG1アイソタイプ対照、Alexa Fluor 647にコンジュゲートされた抗CD47)を133nMの最高最終濃度、続いて計7点の5倍段階希釈で3連で試験した。単一アーム対照(38K-VZVH、19H-VZVK)を組合せで、共に133nMの最高濃度および同じ用量応答で、試験した。
【0290】
一次抗体との30分間の氷上でのインキュベーション後に、細胞を洗浄し、5ug/mLの二次抗体(Alexa Fluor 647で標識されたヤギ抗ヒトFcγ F(ab’)2)で染色して赤血球細胞上の試験品の結合を検出した。二次抗体は抗CD47-A647染色細胞のために使用しなかった。二次抗体とのさらなる30分間の氷上でのインキュベーション後に、染色された細胞を洗浄し、希釈し、ハイスループットフローサイトメトリーにより取得した。単一細胞集団のAlexaFluor 647幾何平均蛍光強度(MFI)を算出した。AF647のMFIをXYチャート上にプロットし、濃度の対数に対してMFIをグラフ化し、EC50を算出した非線形回帰曲線にデータをフィッティングした。
【0291】
図24は、AF647コンジュゲート抗CD47は3人すべてのヒトドナーの赤血球細胞を用いて用量応答結合曲線を示したことを示す。ダラザレックスもまた3人すべてのドナーとの結合における用量依存性の増加を示したが、最大MFIは抗CD47よりも低い桁であった。抗CD38 851Dはダラザレックスの次に高い最大MFIを示し、続いてBS1、BS2、38K-VZVH&19H-VZVKの組合せ、および抗CD19タファシタマブであった。最後に、抗CD19 851AおよびIgG1アイソタイプは、最も高い濃度においてのみMFIにおけるわずかな増加を示すに過ぎなかった。
【0292】
計3匹の健常(n=3)カニクイザル(Cyno)ドナーおよび3人の健常(n=3)ヒトドナーからの赤血球細胞においてin vitro赤血球凝集アッセイを行った。全血を研究の日に獲得し、凝固について点検した。血液を次にPBSで洗浄し、1:50に希釈して「全血基質」を得た。全血基質を96ウェル丸底プレートにプレーティングし、0nMの対照に加えて、133nMの最高最終濃度、続いて6点の5倍段階希釈のPBS中の試験品(BS1、BS2、38K-VZVH+19H-VZVK、851A、および851D)、対照(野生型IgG1を有するタファシタマブ)、ダラザレックス、およびヒトIgG1アイソタイプ対照)、または陽性技術的対照(IGM-55.5)を用いて3連で処理した。37C、5%のCO2での1時間のインキュベーション後に、プレートを写真撮影して赤血球凝集のレベルを確認した。参照として写真を使用して、各々のウェルを0~5の特有の赤血球凝集スケールでスコア付けした。各々のスコアの特有の現れは、個々のドナーに対してある程度相対的なものである。
【0293】
図25Aはヒトドナー3についての赤血球凝集アッセイの結果を示す。陽性対照、抗CD47は、0.04~1.1nMで開始して、3人すべてのヒトドナーについて赤血球凝集を誘導した。BS1、BS2、38K-VZVH+19H-VZVK、ダラザレックス、タファシタマブ、およびヒトIgG1アイソタイプ対照はすべて、3人すべてのドナーについていかなる濃度でも赤血球凝集の誘導を示さなかった。モノクローナル抗体851A(抗CD19)および851D(抗CD38)の両方は、各々について0.2または1.1nMで開始して、3人すべてのドナーについて赤血球凝集を誘導し、応答は技術的対照(抗CD47)と規模において類似していた。親モノクローナル抗体とは対照的に、BS1およびBS2は、いかなる濃度においても赤血球凝集のいかなる誘導も示さなかった。
【0294】
図25Bは、カニクイザルドナー3についての赤血球凝集アッセイの結果を示す。陽性対照、IGM-55.5(抗little i抗原IgM抗体)は、0.04または0.2nMで開始して、3匹すべてのカニクイザルドナーについて赤血球凝集を誘導した。BS1、BS2、38K-VZVH+19H-VZVK、ダラザレックス、タファシタマブ、およびヒトIgG1アイソタイプ対照はすべて、3匹すべてのドナーについていかなる濃度でも赤血球凝集の誘導を示さなかった。モノクローナル抗体851A(抗CD19)および851D(抗CD38)の両方は、各々1.1nMで開始して、3匹すべてのドナーについて赤血球凝集を誘導した。親モノクローナル抗体とは対照的に、BS1およびBS2は、いかなる濃度においても赤血球凝集のいかなる誘導も示さなかった。
【0295】
3匹(n=3)の健常カニクイザル(cyno)および3人(n=3)の健常ヒトドナーからの赤血球細胞におけるin vitro溶血アッセイも行った。全血を研究の日に獲得し、凝固について点検した。血液をPBSで洗浄し、1:10に希釈して「全血基質」を得た。全血基質をPBS中の試験品および対照で処理した。0nMの対照に加えて、二特異物(BS1、BS2)、親モノクローナル(851A、851D)および対照(抗CD38ダラザレックス、組換え抗CD19タファシタマブ、IgG1アイソタイプ対照)を133nMの最高最終濃度、続いて計7点の5倍段階希釈で3連で試験した。単一アーム対照(38K-VZVH、19H-VZVK)を組合せで、両方とも133nMの最高濃度および同じ用量応答で、試験した。サポニンを0.1%の最高濃度、計7点の3倍段階希釈で試験した。37C、5%のCO2での1時間のインキュベーション後に、プレートを遠心分離し、上清を収集した。上清をプレートリーダーを介して540nmでの光学密度(OD)について分析した。陽性対照、サポニンは、すべての種およびドナーについて、0.001%で開始して0.10%まで、用量依存的な溶血を誘導した。いずれの試験品も、試験されたいかなる濃度においてもいかなる溶血も誘導しなかった。
【0296】
図26は、試験品のいずれも、試験されたいかなる濃度においてもいかなる溶血も誘導しなかったことを示す。陽性対照、サポニンは、すべての種およびドナーについて、0.001%で開始して0.10%まで、用量依存的な溶血を誘導した。
【0297】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に示し、記載したが、そのような実施形態は例示のためにのみ提供されていることは当業者に明らかであろう。多数のバリエーション、変更、および置換が、本発明から離れることなく当業者に今や想起されるであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替が本発明の実施において用いられ得ることが理解されるべきである。以下の請求項は本発明の範囲を定義すること、ならびにこれらの請求項の範囲内の方法および構造およびそれらの均等はそれによりカバーされることが意図される。
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
【0305】
【配列表】
【国際調査報告】