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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】癌の予防または治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20230412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 15/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K31/4184
A61K31/355
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P11/00
A61P11/04
A61P17/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P13/08
A61P13/12
A61P15/00
A61P15/02
A61P13/02
A61P13/10
A61P35/02
A61P43/00 105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022531419
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(85)【翻訳文提出日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 KR2020018271
(87)【国際公開番号】W WO2021118324
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0166966
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0174443
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522336339
【氏名又は名称】株式会社ベリタスバイオセラピューティクス
【氏名又は名称原語表記】Veritasbiotherapeutics Co., LTD
【住所又は居所原語表記】1 Gwanak-ro, Gwanak-gu, Building No 85, Room No 909, Seoul 08826, Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ヨン, ソン チャン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086BC39
4C086DA11
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA67
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、タウロウルソデオキシコール酸(UDCA)およびベンズイミダゾール系化合物を含む癌の予防または治療用薬学組成物に関するものであり、前記組成物は混合物として抗癌効果に優れることが期待され、治療に用いられている従来の抗癌剤に比べて細胞毒性が少なく、副作用が少ない利点がある。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タウロウルソデオキシコール酸(UDCA(ursodeoxycholic acid))およびベンズイミダゾール系化合物を含む、癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項2】
前記UDCAは、UDCA、TUDCAおよびGUDCAからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記ベンズイミダゾール系化合物は、フェンベンダゾール、アルベンダゾール、メベンダゾール、およびフルベンダゾールからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記UDCAと前記ベンズイミダゾール系化合物は、1:0.5~5のモル比で含まれる、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記UDCAはTUDCAであり、前記ベンズイミダゾール系化合物はフェンベンダゾールである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
ビタミンEトコフェロール、ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3をさらに含む、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記UDCA、前記ベンズイミダゾール系化合物、前記ビタミンEコハク酸塩および前記オメガ3は、1:0.5~5:0.5~3:0.1~2のモル比で含まれる、請求項7に記載の薬学組成物。
【請求項9】
前記癌は、肝癌、精巣癌、膠芽腫、口腔癌、基底細胞癌、脳腫瘍、胆嚢癌、胆道癌、大腸癌、喉頭癌、網膜細胞腫、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副腎癌、非小細胞肺癌、舌癌、小細胞肺癌、小腸癌、髄膜腫、食道癌、腎盂尿管癌、腎臓癌、悪性骨腫瘍、悪性軟部組織腫瘍、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、眼腫瘍、尿道癌、胃癌、乳癌、肉腫、咽頭癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性脳腫瘍、直腸癌、膣癌、脊髄腫瘍、唾液腺癌、扁桃癌、扁平上皮細胞癌、肺癌および肛門癌からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項10】
前記癌は肝癌または子宮頸癌である、請求項1に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の予防または治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は数多くの研究がなされているにも関わらず、未だ世界的な重要問題であり、癌の征服は医療科学において大きな挑戦課題として残っている。化学療法は、癌の主な治療方法の一つであり、一般に1以上の抗癌剤(化学療法剤)を用いて癌を治療することを意味する。
【0003】
多くの抗癌剤は有糸分裂を抑制することを特徴としており、急速に分裂する癌細胞を標的として細胞の増殖を抑制する。一部の抗癌剤は細胞の分裂を中断させ、一部の抗癌剤はアポトーシス(apoptosis)を触発して細胞を死滅させる。このような伝統的な化学療法とは別に、より標的化された療法を提供するために多くの努力がなされている。
【0004】
癌の治療に使用される今までの様々な抗癌剤は、ほとんど毒性が大きい問題がある。具体的には、化学療法は腎毒性、肝毒性、深刻な吐き気及び嘔吐、骨髄抑制、脱毛、血球減少症などの多くの副作用があるため、人体に無害でありながら抗癌効果が大きい新規な抗癌剤の開発が急がれる現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ウルソデオキシコール酸(UDCA(ursodeoxycholic acid))およびベンズイミダゾール系化合物を含む、癌の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.ウルソデオキシコール酸(UDCA(ursodeoxycholic acid))およびベンズイミダゾール系化合物を含む癌の予防または治療用薬学組成物。
【0007】
2.前記項目1において、前記UDCAは、UDCA、TUDCAおよびGUDCAからなる群より選択される少なくとも1つである、薬学組成物。
【0008】
3.前記項目1において、前記ベンズイミダゾール系化合物は、フェンベンダゾール、アルベンダゾール、メベンダゾール、およびフルベンダゾールからなる群より選択される少なくとも1つである、薬学組成物。
【0009】
4.前記項目1において、前記UDCAと前記ベンズイミダゾール系化合物は、1:0.5~5のモル比で含まれる、薬学組成物。
【0010】
5.前記項目1において、前記UDCAはTUDCAであり、前記ベンズイミダゾール系化合物はフェンベンダゾールである、薬学組成物。
【0011】
6.前記項目1において、ビタミンEトコフェロール、ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、薬学組成物。
【0012】
7.前記項目1において、ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3をさらに含む、薬学組成物。
【0013】
8.前記項目7において、前記UDCA、前記ベンズイミダゾール系化合物、前記ビタミンEコハク酸塩および前記オメガ3は、1:0.5~5:0.5~3:0.1~2のモル比で含まれる、薬学組成物。
【0014】
9.前記項目1において、前記癌は、肝癌、精巣癌、膠芽腫、口腔癌、基底細胞癌、脳腫瘍、胆嚢癌、胆道癌、大腸癌、喉頭癌、網膜細胞腫、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副腎癌、非小細胞肺癌、舌癌、小細胞肺癌、小腸癌、髄膜腫、食道癌、腎盂尿管癌、腎臓癌、悪性骨腫瘍、悪性軟部組織腫瘍、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、眼腫瘍、尿道癌、胃癌、乳癌、肉腫、咽頭癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性脳腫瘍、直腸癌、膣癌、脊髄腫瘍、唾液腺癌、扁桃癌、扁平上皮細胞癌、肺癌および肛門癌からなる群より選択される少なくとも1つである、薬学組成物。
【0015】
10.前記項目1において、前記癌は肝癌または子宮頸癌である、薬学組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、UDCA(ursodeoxycholic acid)およびベンズイミダゾール系化合物を含む癌の予防または治療用薬学組成物に関するものであり、従来の抗癌剤として使用されている治療剤に比べて抗癌効果がより優れるとともに、副作用が少ない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、MTTアッセイプロセスをフローチャートで簡単に示すものである。
図2図2は、各処理群におけるHeLa細胞の細胞生存率を比較して、子宮頸癌に対する抗癌効果を確認したものである。
図3図3は、各処理群におけるHepa細胞の細胞生存率を比較してパーセントで表したものであって、肝癌に対する抗癌効果を確認したものである。
図4図4は、図3の結果をまとめて1つの直線グラフで示したものである。
図5図5は、各処理群におけるHepa細胞の細胞生存率を比較してパーセントで表したものであって、肝癌に対する抗癌効果を確認したものである。
図6図6は、各処理群におけるHepa細胞の細胞生存率を比較してパーセントで表したものであって、肝癌に対する抗癌効果を確認したものである。
図7図7は、各処理群におけるHepa細胞の生存細胞数を数えて示したものであって、肝癌に対する抗癌効果を確認したものである。
図8図8は、図7の結果をまとめて1つの直線グラフで示したものである。
図9図9は、ウェスタンブロット分析によってpH3タンパク質を確認したものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明は、UDCA(ursodeoxycholic acid)およびベンズイミダゾール系化合物を含む、癌の予防または治療用薬学組成物に関するものである。
【0020】
UDCAは、ウルソデオキシコール酸(ursodeoxycholic acid)の略語であり、本発明によるUDCAは、UDCA、UDCAにタウリン(Taurine)がコンジュゲートされたタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA(Tauroursodeoxycholic acid))、およびUDCAにグリシン(Glycine)がコンジュゲートされたグリコウルソデオキシコール酸(GUDCA(Glycoursodeoxycholic acid))のすべてを含む。
【0021】
本発明で前記UDCA、TUDCAまたはGUDCAは合成産物であるか、またはヌートリアの胆嚢から分離同定することができ、水溶性成分の抽出後に組み換えた成分を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0022】
前記ヌートリアの胆嚢から抽出される場合には、具体的にはヌートリアの胆汁から抽出することができる。前記抽出の方法としては、当該分野で公知の抽出方法を制限なく使用することができる。例えば、凍結乾燥抽出、熱水抽出、炭素数1~4の低級アルコール抽出、レジンZ-802:CDCAの場合、99%抽出、HPLC抽出、限外ろ過(ultrafiltration)抽出、超臨界流体クロマトグラフィー(supercritical fluid chromatography)抽出、キャピラリー電気泳動(capillary electrophoresis)抽出法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本発明におけるベンズイミダゾール系化合物は、例えば、フェンベンダゾール、アルベンダゾール、メベンダゾール、またはフルベンダゾールであってもよく、駆虫剤として用いられるベンズイミダゾール系化合物であればいずれも使用できるが、これらに限定されるものではない。UDCAとベンズイミダゾール系化合物との組み合わせは様々に選択でき、例えば、前記例示したUDCA、GUDCA、TUDCA、そしてフェンベンダゾール、アルベンダゾール、メベンダゾール、フルベンダゾールのすべての可能な組み合わせが使用可能である。例えば、UDCAとしてはTUDCAを、ベンズイミダゾール系化合物としてはフェンベンダゾールを使用することができる。
【0024】
UDCAおよびベンズイミダゾール系化合物の含有量比は特に限定されず、例えば、UDCAとベンズイミダゾールとを1:0.5~5のモル比で含むことができる。例えば、そのモル比は1:0.5~5、1:0.5~4、1:0.5~3、1:1~5、1:1~4、1:1~3、1:1~2.5、1:1.5~5、1:2~2.5であってもよいが、これらに限定されるものではない。前記比は、投与患者または臨床的な試みによる結果によって適宜調整することができる。
【0025】
本発明の薬学組成物は、ビタミンEトコフェロール、ビタミンEコハク酸塩またはオメガ3をさらに含むことができる。この場合には、腫瘍のサイズが減少して、抗癌効果をさらに改善することができる。
【0026】
ビタミンEトコフェロール、ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3からなる群の少なくとも1つをさらに含むことができ、例えば、ビタミンEトコフェロール、ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3をさらに含むことができ、ビタミンEトコフェロールおよびオメガ3をさらに含むことができ、ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3をさらに含むことができる。
【0027】
その混合比は特に限定されず、例えばビタミンEコハク酸塩およびオメガ3をさらに含む場合、UDCA、ベンズイミダゾール系化合物、ビタミンEコハク酸塩およびオメガ3のモル比は、例えば、1:0.5~5:0.5~3:0.1~2、1:0.5~3:0.5~1.5:0.2~1.5、1:0.8~2.8:0.8~1.2:0.4~1.2であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明における予防または治療の対象となる癌としては、全ての癌を制限なく適用できる。例えば、肝癌、精巣癌、膠芽腫、口腔癌、基底細胞癌、脳腫瘍、胆嚢癌、胆道癌、大腸癌、喉頭癌、網膜細胞腫、ファーター膨大部癌、膀胱癌、腹膜癌、副腎癌、非小細胞肺癌、舌癌、小細胞肺癌、小腸癌、髄膜腫、食道癌、腎盂尿管癌、腎臓癌、悪性骨腫瘍、悪性軟部組織腫瘍、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、眼腫瘍、尿道癌、胃癌、乳癌、肉腫、咽頭癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、前立腺癌、転移性脳腫瘍、直腸癌、膣癌、脊髄腫瘍、唾液腺癌、扁桃癌、扁平上皮細胞癌、肺癌および肛門癌からなる群より選択される少なくとも1つであってもよく、具体的には肝癌または子宮頸癌であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
本発明において、UDCA、ベンズイミダゾール系化合物は、目的とする製剤に合わせて、合成物、水溶性抽出物、その組換え物などを適宜選択して使用することができる。
【0030】
本発明における薬学組成物は、前記成分に加えて、薬剤学的に許容可能な担体をさらに含むことができる。前記薬剤学的に許容可能な担体は、通常使用されるもの、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアゴム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートおよび鉱物油などであってもよいが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明の薬剤学的組成物は、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤、その他の薬剤学的に許容可能な添加剤を含むことができる。薬剤学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1~99.9重量部含まれてもよいが、これは臨床的な実験で調整することができ、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明の薬学組成物は、経口または非経口投与(例えば、塗布または静脈内、皮下、腹腔内注射)することができ、例えば、経口投与または注射剤による投与であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0032】
UDCA、ベンズイミダゾール系駆虫剤などは経口剤として使用されるものであり、本発明の薬学組成物は経口投与することができる。このため、腫瘍内投与、血管投与などの投与方法を要する従来の抗癌剤に比べて、より簡便な方法による投与、服用が可能である。
【0033】
本発明の薬学組成物は、UDCA系化合物を含むことで肝保護の効果があり、薬服用による肝損傷を低減でき、これによる副作用が少ない。また、UDCA系化合物の抗癌相乗効果により、ベンズイミダゾール系化合物のみを含む薬学組成物よりも効果が優れており、経口剤で手軽に服用でき、服薬順応度にも優れることが期待される。
【0034】
経口投与のための固形製剤には、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、軟質カプセル剤、丸剤などが含まれるが、これらに限定されるものではない。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、エアロゾル等が挙げられるが、通常使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外にも様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれるが、これらに限定されるものではない。非経口投与のための製剤としては、それぞれ通常の方法によって滅菌された水溶液、液剤、非水性溶剤、懸濁剤、エマルジョン、点眼剤、眼軟膏剤、シロップ、坐剤、エアロゾルなどの外用剤及び滅菌注射剤の形態で製剤化して使用することができる。例えば、クリーム、ジェル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、眼軟膏剤、点眼剤、パスタ剤またはパップ(cataplasma)剤の薬剤学的組成物を調製して使用できるが、これらに限定されるものではない。局所投与の組成物は、臨床的処方によって無水型または水性型であってもよく、非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、エチルオレートなどの注射可能なエステルなどを使用できるが、これらに限定されるものではない。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明の薬学組成物の好ましい投与量は、体内での活性成分の吸収度、患者の年齢、性別および肥満の程度によって異なるが、当業者によって適宜選択され得る。しかし、好ましい効果のために、経口投与剤の場合は、一般に大人の体重1kg当たりに本発明の組成物を1日0.0001~500mg/kg、好ましくは0.001~500mg/kg投与することができる。投与は1日1回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記の投与量および投与方法は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明することとする。
【0037】
実験方法
1.細胞数の計数方法
細胞を培養し、新鮮な培地に細胞を再浮遊させる。細胞懸濁液から200μLを得た後、希釈係数2Xのトリプシンブルー10μLを加える。
【0038】
カバースリップを含む血球計数板(hemocytometer)を用意し、各チャンバーを懸濁液で満たして細胞数を数える。具体的な計数方法は以下の通りである。
1)生細胞(Live cells)/ml=カウントされた細胞の数(No.of cells counted)/カウントされたスクエアの数×希釈倍率×1000(No.of squares counted x Dilution factor x 1000)
2)死滅細胞(Dead cells)/ml=死滅細胞の数(No.of dead cells)/カウントされたスクエアの数×希釈倍率×100(No.of squares counted x Dilution factor x 100)
3)生存率=生細胞の数/細胞の総数×100(Percentage Viability=No.of live cells/Total No.of cells x 100)
【0039】
2.細胞培養
滅菌環境(クリーンベンチ、オートクレーブ、70%エタノールなど)を組成し、細胞成長培地(DMEM、FBS、Glutamine、Penicillin/Streptomycin)を用意する。前記条件で細胞を確認して培養する。
【0040】
3.MTTアッセイ
図1に示すフローチャートのように、MTTアッセイによって細胞毒性の程度を評価した。
【0041】
4.ウェスタンブロット評価
TUDCAなどで処理したHepa細胞またはHela細胞におけるpH3タンパク質の生成程度を確認するために、ウェスタンブロット評価を行った。
【0042】
全タンパク質は、放射性免疫沈降法(radio-immunoprecipitation assay)バッファーで細胞から取得した。タンパク質は、8~12%のポリアクリルアミド・ゲルで分解して、ニトロセルロース膜に移動させた。ブロッキングバッファーとしては、5%無脂肪ドライ・ミルク(nonfat dry milk)、1%Tween-20、in 20mM TBS、pH7.6を使用し、前記ブロッキングバッファー中で一次抗体と共に培養した。
【0043】
一次抗体は、米国または他の国のセル・シグナリング・テクノロジー(Cell Signaling Technology)社から入手し、二次抗体は、抗マウスまたは抗ウサギのIgGがHRPと結合したもので、GEヘルスケア社(GE Healthcare、Little Chalfont、UK)から入手した。
【0044】
その後、ウェスタンブロット分析法でバンドの密度を測定した。
【0045】
実験結果
1.HeLa細胞の細胞生存率の比較
(1)HeLa細胞は、子宮頸癌細胞株であり、本実験ではHeLa細胞に何の処理もしていない群(NT)、ドキソルビシンを処理した群(Doxo)、フェンベンダゾールを処理した群(Fen)、TUDCAを処理した群(TUDCA)、およびペンベンダゾールとTUDCAとの混合物を処理した群(Fen+TUDCA)に区分し、処理後時間経過(24h、48h)による細胞生存率(生細胞%)を比較した。TUDCAは1,000μM、フェンベンダゾールは1.2μM、ドキソルビシンは10μMの濃度で処理し、フェンベンダゾールとTUDCAとの混合物はそれぞれ前記濃度を同一容量で混合し、全ての処理群は同一容量で処理した。
【0046】
(2)図2に示すように、抗癌剤として通常使用されるドキソルビシンの効果と比較して、処理後24h(時間)、48hでフェンベンダゾール、TUDCA、フェンベンダゾールとTUDCAとの混合物は、いずれもドキソルビシンよりもアポトーシス効果が優れていた。これは抗癌効果がより良いことを意味する。また、フェンベンダゾールとTUDCAとの混合物処理群の場合は、全ての時間において効果が最も優れていた。
【0047】
2.Hepa細胞の細胞生存率の比較
(1)本発明では、肝癌細胞株として、いずれもマウス肝細胞癌(Murine hepatoma(Hepa1c1c7))細胞株を使用した(以下、「Hepa細胞」という。)。本実験では、何も処理していない群(NT)、フェンベンダゾール処理群(Fen)、TUDCA 200μmol処理群(TUDCA 200)、TUDCA 500μmol処理群(TUDCA 500)、TUDCA 1000μmol処理群(TUDCA 1000)、フェンベンダゾール1.2μmolとTUDCA 200μmolとの混合物(1.2+200)、フェンベンダゾール1.2μmolとTUDCA 500μmolとの混合物(1.2+500)、ペンベンダゾール1.2μmolとTUDCA 1000μmolとの混合物(1.2+1000)を使用する。各処理群では、それぞれ濃度を100nMに合わせて処理した。混合物は、断りのない限り1:1の割合で混合した。
【0048】
(2)図3に示すように、肝癌細胞株では、全ての処理群においてNT群に比べてアポトーシス効果が示された。具体的には、フェンベンダゾールとTUDCAとの混合物を処理した群で効果が最も優れていた。TUDCA濃度の高い混合物ほど、48hにおけるアポトーシス効果、すなわち抗癌効果が優れていることが分かった。
【0049】
図4は、図3の結果を点線グラフで示したものであり、結果は前記図3の通りである。
【0050】
3.フェンベンダゾール及びUDCA化合物処理群におけるHepa細胞の生存率の比較
(1)本実験は、フェンベンダゾールとUDCA、フェンベンダゾールとTUDCA、フェンベンダゾールとGUDCAとの混合物を肝癌細胞株に処理して細胞生存率を比較したものである。対照群ではDMSOを処理した。
【0051】
(2)図5に示すように、前記混合物を処理した群では、いずれもアポトーシス効果が優れており、フェンベンダゾールとTUDCAとの混合物において、効果が最も優れていた。特に、ペンベンダゾールとTUDCAとの混合物処理後72hでは、細胞生存率が0%に近いことが示された。下記表1は本実験の結果を数値で表したものであり、図5は下記表の平均値で示したものである。
【0052】
【表1】
【0053】
4.様々な混合物の処理による細胞生存率の比較
(1)本実験は、従来抗癌剤として使用されているシスプラチン(Cisplatin)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、パクリタキセル(Paclitaxel)とフェンベンダゾール(Fenbendazole)を含む様々な混合物を肝癌細胞株に処理して細胞生存率を確認したものである。
【0054】
(2)図6及び図7に示すように、処理後24h、48hにおける結果を見ると、従来の抗癌剤を処理した群に比べて、フェンベンダゾールを含む混合物を処理した群において、アポトーシス効果が類似しているかまたは優れていた。これはフェンベンダゾールを含む混合物の抗癌効果が優れることを意味する。処理後72hの場合は、フェンベンダゾールとTUDCAとを70:30混合物で処理した群において細胞生存率が0%に近いことが分かった。
【0055】
また、フェンベンダゾールとTUDCAとの混合物では、フェンベンダゾールの混合比が高いほど抗癌効果がさらに優れることが分かった。図8は、図7の結果を1つの直線グラフで示したもの、下記表2は、図6及び7のデータを数値で表したものである。図6及び7は、3回の実験値の平均をグラフで示したものである。
【0056】
【表2】
【0057】
5.ウェスタンブロット評価
(1)本実験で確認したpH3タンパク質は、細胞周期が中断されるときに増加するタンパク質であり、pH3タンパク質が増加してバンドがはっきりと示されたことは、細胞周期が効果的に中断されたことを意味する。
【0058】
(2)フェンベンダゾールとTUDCAとが共に処理された群では、ウエストンブロットの結果、バンドがはっきりと暗くなったことから、pH3タンパク質が顕著に増加したことがわかった。これは癌細胞株の細胞周期が中断されたことであり、抗癌効果があることを示す。図9から分かるように、フェンベンダゾールとTUDCAとの混合物処理群では、バンドが最も濃く、はっきりと示されていた。このことから、フェンベンダゾール、TUDCAの単独処理群に比べて、混合処理群において癌細胞株の細胞周期の中断がより良好であり、抗癌効果がより良いことを確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】