(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを製造するための持続可能なプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 41/50 20060101AFI20230412BHJP
C07C 43/15 20060101ALI20230412BHJP
C07C 41/58 20060101ALI20230412BHJP
B01J 31/10 20060101ALI20230412BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
C07C41/50
C07C43/15
C07C41/58
B01J31/10 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544172
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2021054979
(87)【国際公開番号】W WO2021170864
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ボンラス, ワーナー
(72)【発明者】
【氏名】ゴイ, ロマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョレイ, マルセル
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA24A
4G169BA24B
4G169BA42A
4G169BE22A
4G169BE22B
4G169CB25
4G169CB38
4G169CB71
4G169DA06
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC43
4H006AD11
4H006BA72
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BC37
4H006BD33
4H006BD40
4H006BD51
4H006BD52
4H006GN38
4H006GP01
4H039CA61
4H039CH70
(57)【要約】
本発明は、触媒としての酸性イオン交換体の存在下において、メタノールを用いて2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランから1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを製造するためのプロセスであって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、プロセスに関する。本発明は、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、メタノール及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを互いに且つH2Oから分離するプロセスであって、塩基性化合物、好ましくは塩基性金属塩又は塩基性イオン交換体が存在する、プロセスに更に関する。両方のプロセスは、選択性及び空時収率が高く、且つ既知のプロセスと比較してより少ない廃棄物が生成されるため、バッチ単位又は連続モードにおいて工業規模で実施され得、且つ持続可能である。本発明の更なる目的は、H2O、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む混合物の蒸留における塩基性化合物の使用並びに1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンへの、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのメタノールとの反応における触媒としての酸性イオン交換体の使用であって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、使用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを製造するためのプロセスであって、以下の工程:
a)任意選択で1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを含有する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを提供する工程、
b)2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの最大で79%が反応されて、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが得られるまで、任意選択で水が存在する、触媒としての酸性イオン交換体の存在下において、工程a)で提供されている、任意選択で1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが存在する、前記2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランをメタノールと反応させて、H
2O及び1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを含む混合物を得る工程であって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、工程、
c)任意選択で、H
2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む前記混合物に塩基性化合物を添加する工程、
d)H
2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む前記混合物を前記塩基性化合物の存在下で蒸留して、前記化合物を互いに分離する工程であって、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、メタノール及び未反応の2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランが得られる、工程
を含み、塩基性化合物は、工程c)で前記混合物に添加されるか、又は塩基性化合物は、工程d)の前記蒸留中に存在するかのいずれかである、プロセス。
【請求項2】
工程d)で得られた未反応の2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランは、それぞれ工程a)又はb)にリサイクルして戻される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程b)で使用される前記触媒は、少なくとも2.5当量/kg、好ましくは少なくとも3.0当量/kg、より好ましくは少なくとも4.0当量/kg、最も好ましくは5.0当量/kgの酸性部位の濃度を有する酸性イオン交換体であり、及び/又は工程b)で使用される前記触媒は、スルホン酸基を含有し、且つ少なくとも2.5当量/kg、好ましくは少なくとも3.0当量/kg、より好ましくは少なくとも4.0当量/kg、最も好ましくは5.0当量/kgの酸性部位の濃度を有する酸性イオン交換体である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酸性イオン交換体は、400μm以上の粒子サイズ分布及び60%未満の保水容量、好ましくは40~60%の範囲の保水容量、より好ましくは50~60%の範囲の保水容量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酸性イオン交換体は、400μm未満の粒子サイズ分布及び60%超の保水容量、好ましくは60~80%の範囲の保水容量、より好ましくは60~75%の範囲の保水容量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
工程b)での前記反応は、0~50℃の範囲の温度、好ましくは10~30℃の範囲の温度、より好ましくは15~25℃の範囲の温度及び/又は大気圧で実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記反応は、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの最大で75%が反応されて、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが得られるまで、好ましくは2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの20~72%が反応されて、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが得られるまで、より好ましくは2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの35~70%が反応されて、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが得られるまで、更により好ましくは2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの40~65%が反応されて、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが得られるまで、最も好ましくは2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの45~60%が反応されて、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが得られるまで実施される(工程b))、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
工程b)における、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45~1:100の範囲であり、好ましくは、工程b)における、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:50~1:90の範囲であり、より好ましくは、工程b)における、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:60~1:80の範囲であり、最も好ましくは、工程b)における、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:70~1:80の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
メタノール以外のアセタール化剤は、存在せず、好ましくは、オルトギ酸トリアルキルは、存在しない、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
工程b)の前記反応を停止させるときの水の量は、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの量に関して0~100モル%の範囲であり、好ましくは2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの量に関して20~80モル%の範囲であり、より好ましくは2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの量に関して30~65モル%の範囲である、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
H
2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む混合物から1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、メタノール及び2,5-ジメトキシ-2,5ージヒドロフランを分離するプロセスであって、以下の工程:
i)H
2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフラン及び任意選択で塩基性化合物を含む混合物を提供する工程、
ii)任意選択で、塩基性化合物を前記混合物に添加する工程、
iii)前記塩基性化合物の存在下において、H
2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む前記混合物を蒸留して、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを互いに分離する工程
を含み、塩基性化合物は、工程i)で提供される前記混合物中にすでに存在するか、又は塩基性化合物は、工程ii)で添加されるかのいずれかである、プロセス。
【請求項12】
前記塩基性化合物の量は、メタノール、H
2O、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む前記反応混合物の総重量に基づいて好ましくは0.01~1重量%の範囲、より好ましくは0.02~0.75重量%の範囲、更により好ましくは0.03~0.5重量%の範囲、最も好ましくは0.03~0.3重量%の範囲である、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記塩基性化合物は、リサイクルされ得、且つ/又は不均一な塩基性化合物であり、より好ましくは、前記塩基性化合物は、塩基性金属塩若しくは塩基性イオン交換体又はこれらの混合物である、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記塩基性金属塩は、メタノールに可溶なアルカリ、アルカリ土類及び/又はアンモニウム塩であり、好ましくは、前記塩基性金属塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム若しくはリン酸水素二アンモニウム又はこれらの任意の混合物である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記塩基性イオン交換体は、水酸基又は対応する塩を含有する強アニオン交換樹脂である、請求項13に記載のプロセス。
【請求項16】
工程iii)は、20~180℃の範囲の温度、好ましくは30~150℃の範囲の温度、より好ましくは40~110℃の範囲の温度及び/又は0.1~1013ミリバールの範囲の圧力、好ましくは0.5~500ミリバールの範囲の圧力、より好ましくは1~100ミリバールの範囲の圧力で行われる、請求項11~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
連続的に実施される、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
H
2O、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む混合物の蒸留における塩基性化合物の使用。
【請求項19】
1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンへの、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのメタノールとの反応における触媒としての酸性イオン交換体の使用であって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の概要]
本発明は、触媒としての酸性イオン交換体の存在下において、メタノールを用いて2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランから1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを製造するためのプロセスであって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、プロセスに関する。本発明は、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、メタノール及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを互いに且つH2Oから分離するプロセスであって、塩基性化合物、好ましくは塩基性金属塩又は塩基性イオン交換体が存在する、プロセスに更に関する。
【0002】
両方のプロセスは、選択性及び空時収率が高く、且つ既知のプロセスと比較してより少ない廃棄物が生成されるため、バッチ単位又は連続モードにおいて工業規模で実行され得、且つ持続可能である。
【0003】
本発明の更なる目的は、H2O、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む混合物の蒸留における塩基性化合物の使用並びに1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンへの、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのメタノールとの反応における触媒としての酸性イオン交換体の使用であって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、使用である。
【0004】
[発明の背景]
1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン(以下では「C4-ジアセタール」と呼ばれる)は、例えば、中国特許出願公開第108752178A号明細書ですでに記載されているように、2,7-ジメチル-2,4,6-オクタントリエン-1,8-ジアルデヒド(いわゆる「C10-ジアルデヒド」)の合成における重要な中間体であり、これは、カロテノイドの化学合成に必要である。
【0005】
C
4-ジアセタールは、
図1に示されるように、触媒の存在下で2,5-ジメトキシ-ジヒドロフラン(以下では「DMDF」と呼ばれる)をメタノールと反応させることによって製造され得る。望ましくない副生成物は、PMB(1,1,2,4,4-ペンタメトキシブタン)又はDMB(4,4-ジメトキシ-ブト-2-エナール)である(
図1も参照されたい)。
【0006】
欧州特許出願公開第A-1099676号明細書によるプロセスでは、この反応において、酸中心を有する固体触媒を使用する。不利なことに、PMBは、出発材料DMDFの量に基づいて少なくとも1.5%の量で生成される(実施例5を参照されたい)。
【0007】
国際公開第2006/108664号パンフレット及び欧州特許第581097号明細書に記載されているプロセスでは、アセタール化剤であるオルトギ酸トリアルキルを使用する必要があり、これにより、これらのプロセスは、より高価になり、従って非経済的であり、持続可能ではない。
【0008】
すでに上で述べたように、これらの全ての知られているプロセスには、特定の不利な点がある。従って、本発明の目的は、このような不利な点がないプロセスを提供することである。
【0009】
更に、廃棄物に関する環境への悪影響を低減するために、工業化学プロセスの効率及び持続可能性を高めることが一層求められている。
【0010】
[発明の詳細な説明]
これらの必要性は、本発明によって満たされ、これは、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン(=C4-ジアセタール)を製造するためのプロセス(「プロセス1」)であって、以下の工程:
a)任意選択で1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを含有する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを提供する工程、
b)2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの最大で79%が反応されて、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが得られるまで、任意選択で水が存在する、触媒としての酸性イオン交換体の存在下において、工程a)で提供されている、任意選択で1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンが存在する、前記2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランをメタノールと反応させて、H2O及び1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンを含む混合物を得る工程であって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、工程、
c)任意選択で、H2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む混合物に塩基性化合物を添加する工程、
d)H2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む前記混合物を前記塩基性化合物の存在下で蒸留して、これらの化合物を互いに分離する工程であって、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン、メタノール及び未反応の2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランが得られる、工程
を含み、塩基性化合物は、工程c)で混合物に添加されるか、又は塩基性化合物は、工程d)の蒸留中に存在するかのいずれかである、プロセス(「プロセス1」)に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】C
4-ジアセタールが、触媒の存在下で2,5-ジメトキシ-ジヒドロフランをメタノールと反応させることによって製造され得ることを示す。
【0012】
プロセス1の好ましい実施形態では、工程d)で得られた未反応の2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランは、それぞれ工程a)又はb)にリサイクルして戻され、従ってプロセスの持続可能性が増す。
【0013】
単一の工程は、以下でより詳細に開示される。
【0014】
[工程a)]
好ましくは、C4-ジアセタールの量は、DMDFの量に関して1モル%未満、より好ましくは0.5モル%未満、最も好ましくは0.1モル%未満である。
【0015】
[工程b)]
好ましくは、反応は、当業者に知られているように、反応器内において連続モードで実施される。特に好ましいのは、固定床若しくは管反応器又は管束反応器である。
【0016】
反応は、好ましくは、0~50℃の範囲の温度、より好ましくは10~30℃の範囲の温度、最も好ましくは15~25℃の範囲の温度及び/又は好ましくは大気圧で行われる。
【0017】
[触媒]
好ましい実施形態では、工程b)で使用される触媒は、少なくとも2.5当量/kg、好ましくは少なくとも3.0当量/kg、より好ましくは少なくとも4.0当量/kg、最も好ましくは5.0当量/kgの酸性部位の濃度を有する酸性イオン交換体である。2.5当量/kgよりも低い酸性部位の濃度を有する酸性イオン交換体を使用する場合、選択性及び回転率は、依然として高いが、反応時間が長くなる(実施例1A~1Eと比較して実施例1Fを参照されたい)。
【0018】
より好ましい実施形態では、触媒は、スルホン酸基を含有し、且つ少なくとも2.5当量/kg、好ましくは少なくとも3.0当量/kg、より好ましくは少なくとも4.0当量/kg、最も好ましくは5.0当量/kgの酸性部位の濃度を有する酸性イオン交換体である。
【0019】
驚くべきことに、特定の粒子サイズ分布及び特定の保水容量を有する、上記の通りの優先傾向を有する酸性イオン交換体の使用は、生成物、即ちC4-ジアセタールに対して更により高い選択性をもたらすことが見出された。
【0020】
このような好ましい触媒は、400μm以上の粒子サイズ分布及び60%未満の保水容量、好ましくは40~60%の範囲の保水容量、より好ましくは50~60%の範囲の保水容量を有する酸性イオン交換体又は400μm未満の粒子サイズ分布及び60%超の保水容量、好ましくは60~80%の範囲の保水容量、より好ましくは60~75%の範囲の保水容量を有する酸性イオン交換体である。
【0021】
酸性イオン交換体は、長期間にわたって高い活性を示した。それにもかかわらず、これらの活性が低下している場合、酸性イオン交換体は、極性有機溶媒で洗浄することにより、好ましくはメタノールで洗浄することにより、又は非プロトン性有機溶媒で洗浄することにより、又は酸などの非プロトン性無機溶媒で洗浄することにより再活性化され得る。
【0022】
当業者は、反応混合物の量に応じて、触媒の量、即ち床容積を選択するであろう。
【0023】
上記のような好ましい特性の1つ以上を有する任意の酸性イオン交換体は、本発明のプロセスで問題なく使用することができる。
【0024】
最も好ましい酸性イオン交換体は、上記の全ての好ましい特性を有する。
【0025】
[メタノールの量]
工程b)における、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、好ましくは、1:45~1:100の範囲であり、より好ましくは1:50~1:90の範囲であり、更により好ましくは1:60~1:80の範囲であり、最も好ましくは1:70~1:80の範囲である。
【0026】
[変換率]
好ましくは、反応は、DMDFの最大で75%が反応されて、C4-ジアセタールが得られるまで、より好ましくはDMDFの20~72%が反応されて、C4-ジアセタールが得るまで、更により好ましくはそれぞれDMDFの35~70%/DMDFの40~65%/DMDFの45~60%が反応されて、C4-ジアセタールが得られるまで、最も好ましくはDMDFの50~60%が反応されて、C4-ジアセタールが得られるまで実行される。
【0027】
[メタノール以外のアセタール化剤の不在]
本プロセスの好ましい実施形態では、メタノール以外のアセタール化剤は、存在しない。オルトギ酸トリアルキルを使用するとギ酸メチルが形成され、これにより、プロセスで生成される廃棄物が増えることから、特に除外されるのは、欧州特許第581097号明細書及び国際公開第2006/108664号パンフレットのプロセスで使用されるオルトギ酸トリアルキルの使用である。本発明のプロセスでは、メタノール以外のアセタール化剤が存在しないことから、廃棄物の量が最小限に抑えられる。
【0028】
出発材料への戻り反応及び副生成物DMBへの反応を促進する反応中にH2Oが形成されることから、十分な回転率を依然として保証するために、H2Oの量は、好ましくは、特定のレベル未満である。工程b)の反応を停止させるときの水の量は、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランの量に関して好ましくは0~100モル%の範囲、より好ましくは20~80モル%の範囲、最も好ましくは30~65モル%の範囲であることが見出された。
【0029】
工程c)及びd)の組み合わせも発明である。従って、本発明は、H2O、メタノール、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む混合物から1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン(=C4-ジアセタール)、メタノール及び2,5-ジメトキシ-2,5ージヒドロフラン(=DMDF)を分離するプロセス(「プロセス2」)であって、以下の工程:
i)H2O、メタノール、C4-ジアセタール、DMDF及び任意選択で塩基性化合物を含む混合物を提供する工程、
ii)任意選択で、塩基性化合物を前記混合物に添加する工程、
iii)前記塩基性化合物の存在下において、H2O、メタノール、C4-ジアセタール及びDMDFを含む前記混合物を蒸留して、メタノール、C4-ジアセタール及びDMDFを互いに分離する工程
を含み、塩基性化合物は、工程i)で提供される混合物中にすでに存在するか、又は塩基性化合物は、工程ii)で添加されるかのいずれかである、プロセス(「プロセス2」)にも関する。
【0030】
[それぞれ工程c及びd)/工程i)及びii)]
出発混合物は、C4-ジアセタール及びDMDFの総量に基づいて好ましくは70モル%未満のDMDF、より好ましくは20~70モル%の範囲の量のDMDF、更により好ましくは30~60モル%の範囲の量のDMDF、最も好ましくは40~50モル%の範囲の量のDMDFを含む。
【0031】
出発混合物中のC4-ジアセタールの量は、C4-ジアセタール及びDMDFの総量に基づいて好ましくは30モル%超であり、より好ましくは30~80モル%の範囲であり、更により好ましくは40~70モル%の範囲であり、最も好ましくは50~60モル%の範囲である。
【0032】
出発混合物中の水の量は、C4-ジアセタール、H2O及びDMDFの総量に基づいて好ましくは30モル%超であり、より好ましくは30~80モル%の範囲であり、更により好ましくは40~70モル%の範囲であり、最も好ましくは50~60モル%の範囲である。
【0033】
好ましくは、塩基性化合物は、不均一な塩基性化合物であり、より好ましくは塩基性金属塩若しくは塩基性イオン交換体又はこれらの混合物であり、最も好ましくは、塩基性化合物は、塩基性イオン交換体である。有利には、塩基性化合物は、リサイクルされ得る。
【0034】
一般に、メタノールに可溶な任意の塩基性塩が適切である。このような塩は、例えば、メタノールに可溶なアルカリ、アルカリ土類及びアンモニウム塩である。このような塩の好ましい例は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム及びリン酸水素二アンモニウムであり、炭酸カリウム及び炭酸ナトリウムが好ましい。これらの塩の混合物、特にこれらの好ましい塩の混合物も使用され得る。
【0035】
塩基性イオン交換体は、ヒドロキシ基又は対応する塩を含有する強アニオン交換樹脂を含む。
【0036】
前記塩基性化合物の量は、メタノール、H2O、C4-ジアセタール及びDMDFを含む反応混合物の総重量に基づいて好ましくは0.01~1重量%の範囲、より好ましくは0.02~0.75重量%の範囲、更により好ましくは0.03~0.5重量%の範囲、最も好ましくは0.03~0.3重量%の範囲である。
【0037】
より多くの量の塩基性化合物を使用することができるが、廃棄物が増えるため、プロセスの持続可能性が低下する。
【0038】
塩基性化合物の存在は、混合物の蒸留中に所望の生成物(=C4-ジアセタール)及び未反応の出発材料(=DMDF)の損失を防ぐ。塩基性化合物の存在により、C4-ジアセタール及びDMDFの両方の化合物の損失を7モル%未満、好ましくは5モル%未満の量に減らすことができる。
【0039】
[工程iii]
工程iii)は、好ましくは、20~180℃の範囲の温度、より好ましくは30~150℃の範囲の温度、最も好ましくは40~110℃の範囲の温度及び/又は好ましくは0.1~1013ミリバールの範囲の圧力、より好ましくは0.5~500ミリバールの範囲の圧力、最も好ましくは1~100ミリバールの範囲の圧力で行われる。
【0040】
本発明は、プロセス1及び2の上記の1つ以上の好ましい実施形態の任意の組み合わせを含む。
【0041】
本発明の更なる実施形態は、H2O、1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテン及び2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランを含む混合物の蒸留における、上記で定義された塩基性化合物の使用並びに1,1,4,4-テトラメトキシ-2-ブテンへの、2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのメタノールとの反応における触媒としての酸性イオン交換体の使用であって、メタノールに対する2,5-ジメトキシ-2,5-ジヒドロフランのモル比は、1:45以上である、使用である。
【0042】
ここで、本発明は、以下の非限定的な例で更に例示される。
【0043】
[実施例]
以下の酸性イオン交換体が試験される。
【0044】
[酸性イオン交換体]
Amberlyst 15WET(Dupont Water Solutions-DDP Specialty Products Germany GmbH&Co.KG,Neu-Isenburg,Germanyから市販):マクロポーラス、粒子サイズ分布:400~1200μm、保水容量:52~57%、酸性部位の濃度:イオン交換体1kg当たり5当量、
Amberlyst 46(Dupont Water Solutions-DDP Specialty Products Germany GmbH&Co.KG,Neu-Isenburg,Germanyから市販):マクロポーラス、粒子サイズ分布:400~1200μm、保水容量:26~36%、酸性部位の濃度:イオン交換体1kg当たり1当量、
Dowex88H(Dupont Water Solutions-DDP Specialty Products Germany GmbH&Co.KG,Neu-Isenburg,Germanyから市販):マクロポーラス、粒子サイズ分布:300~1200μm、保水容量:42~48%;酸性部位の濃度:イオン交換体1kg当たり5当量、
Dowex50WX4 50~100メッシュ(Dupont Water Solutions-DDP Specialty Products Germany GmbH&Co.KG,Neu-Isenburg,Germanyから市販):ゲル、粒子サイズ分布:200~400μm、保水容量:64~72%、酸性部位の濃度:イオン交換体1kg当たり5当量、
Dowex50WX4 16~25メッシュ(Dupont Water Solutions-DDP Specialty Products Germany GmbH&Co.KG,Neu-Isenburg,Germanyから市販):ゲル、粒子サイズ分布:400~1200μm、保水容量:64~72%、酸性部位の濃度:イオン交換体1kg当たり5当量、
Dowex50WX4 200~400メッシュ(Dupont Water Solutions-DDP Specialty Products Germany GmbH&Co.KG,Neu-Isenburg,Germanyから市販):ゲル、粒子サイズ分布:37~74μm、保水容量:64~72%、酸性部位の濃度:イオン交換体1kg当たり5当量。
【0045】
[塩基性イオン交換体]
Amberlyst A26(Dupont Water Solutions-DDP Specialty Products Germany GmbH&Co.KG,Neu-Isenburg,Germanyから市販):粒子サイズ分布:560~700μm、保水容量:66~75%、表面積:30m2/g(窒素BET法)、細孔直径:290Å。
【0046】
[実施例1A~H:DMDFのC4-ジアセタールへの酸触媒変換]
反応器を50mmのグラスウールで充填し、次いで表1~3に従って酸性イオン交換体(=触媒)を添加する。次いで、溶媒が無色になるまでメタノールを触媒床にポンプで送る。メタノール(1250ml、31.2モル)におけるDMDF(408ミリモル)の溶液を調製し、様々な温度(11~21℃)及び流量(1~24mL/分)で触媒床にポンプで送る。一定の条件下で3つの床容積を流した後に試料を採取する。出発溶液及び試料をガスクロマトグラフィーで分析する。
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
[実施例2A~E:DMDFのC4-ジアセタールへの酸触媒変換]
反応器を50mmのグラスウールで充填し、酸性イオン交換体Amberlyst 15WET(=触媒)を添加する。次いで、溶媒が無色になるまでメタノールを触媒床にポンプで送る。メタノール(1250ml、31.2モル)におけるDMDF(408ミリモル)の溶液を調製し、21℃、流量4mL/分で触媒床にポンプで送る。試料を一定期間後に採取する。出発溶液及び試料をガスクロマトグラフィーで分析する。以下の表4に示すように、触媒は、70時間超経過しても一定の高い選択性を示した。
【0051】
【0052】
[実施例3A~E:DMDF及びC4-ジアセタールの混合物のC4-ジアセタールへの酸触媒変換]
反応器を50mmのグラスウールで充填し、酸性イオン交換体Amberlyst 15WET(=触媒)を添加する。次いで、溶媒が無色になるまでメタノールを触媒床にポンプで送る。メタノール(1250ml、31.2モル)におけるDMDF(408ミリモル)及び様々な量のC4-ジアセタール(0~142.8ミリモル)の溶液を調製し、20℃において様々な流量(2~14mL/分)でAmberlyst 15WETの触媒床にポンプで送る。試料を一定期間後に採取する。出発溶液及び試料をガスクロマトグラフィーで分析する。結果を表5に示す。
【0053】
【0054】
選択性は、C4-ジアセタールの存在下で依然として高い。
【0055】
[実施例4A~B:DMDF、C4-ジアセタール及びH2Oの混合物のC4-ジアセタールへの酸触媒変換]
反応器を50mmのグラスウールで充填し、酸性イオン交換体Amberlyst 15WET(=触媒)を添加する。次いで、溶媒が無色になるまでメタノールを触媒床にポンプで送る。メタノール(1250ml、31.2モル)におけるDMDF(408ミリモル)、C4-ジアセタール(142.8ミリモル)及びH2O(0又は1224ミリモル)の溶液を調製し、22℃において18分の滞留時間でAmberlyst 15WETの触媒層を通してポンプで送る。試料を一定期間後に採取する。出発溶液及び試料をガスクロマトグラフィーで分析する。結果を表6に示す。
【0056】
【0057】
水がDMDFの量の3倍の量で存在する場合、DMDFのC4-ジアセタールへの変換は、減少する。
【0058】
[実施例5A~D:蒸留中の水の存在下でのDMDF及びC4-ジアセタールの安定性試験]
2000mLの丸底フラスコを、メタノール(1000ml、25モル)におけるDMDF(245ミリモル)、C4-ジアセタール(245ミリモル)及びH2O(0又は1000ミリモル)で充填し、表7による更なる塩基性化合物を添加した。反応混合物を70℃/700ミリバールで一定量まで蒸発させた。蒸発した溶液及び出発溶液をガスクロマトグラフィーで分析する。結果を表7に示す。
【0059】
【0060】
5A~5Dは、出発溶液である。
【0061】
「ev」は、表7に示す量が残るまで、対応する試料を蒸発させたことを意味する。
【0062】
試料5A(887g)は、例えば、本来、249ミリモルのC4-ジアセタール及び245ミリモルのDMDFを含み、残りは、メタノールであった。溶媒を蒸発させると(=試料「5A(ev)」)、245ミリモルのC4-ジアセタール(元の量の98,4%)及び242ミリモルのDMDF(元の量の98,8%)を回収することができた。
【0063】
しかしながら、出発溶液に水が存在し、塩基性化合物が存在しなかった場合(それぞれ実施例5B及び5B(ev)を参照されたい)、150ミリモルのC4-ジアセタール(元の量の60,3%)及び215ミリモルのDMDF(元の量の87,8%)のみが回収され得、従って目的の生成物(=C4-ジアセタール)及び反応しなかった出発物質(=DMDF)が大幅に損失することになった。
【0064】
この損失は、塩基性化合物の存在によって防ぐことができた - それぞれ実施例5C/5C(ev)及び5D/5D(ev)を参照されたい。
【0065】
出発溶液5Cに0.5gのK2CO3が存在する場合、蒸発後に244ミリモルのC4-ジアセタール(元の量の99,2%)及び245ミリモルのDMDF(元の量の100,4%*)を回収することができた。
【0066】
出発溶液5Dに2.0gの塩基性イオン交換体Amberlyst A26が存在する場合、蒸発後に237ミリモルのC4-ジアセタール(元の量の96,7%)及び244ミリモルのDMDF(元の量の100%)を回収することができた。
【0067】
*塩基性化合物の存在下では、副生成物であるDMBが反応してDMDFが得られ、本来存在するよりも多くのDMDFが回収される。
【国際調査報告】