IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビオセルゲン アーエスの特許一覧

特表2023-516288治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法
<>
  • 特表-治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法 図1
  • 特表-治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法 図2
  • 特表-治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法 図3
  • 特表-治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法 図4
  • 特表-治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法 図5
  • 特表-治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法 図6
  • 特表-治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】治療用ポリエンマクロライドの医薬組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/365 20060101AFI20230412BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230412BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230412BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230412BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230412BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230412BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K31/365
A61K9/16
A61K9/51
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/42
A61K9/19
A61K9/12
A61K47/04
A61K47/10
A61K47/08
A61K47/22
A61K47/14
A61K9/08
A61K47/20
A61K47/18
A61P31/10
A61P11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550801
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021054914
(87)【国際公開番号】W WO2021170841
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】62/981,762
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TWEEN
3.PLURONIC
4.KOLLIPHOR
(71)【出願人】
【識別番号】522333028
【氏名又は名称】ビオセルゲン アーエス
【氏名又は名称原語表記】Biosergen AS
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,ペーダー エム
(72)【発明者】
【氏名】モルシュ,イール
(72)【発明者】
【氏名】ゴシュ,トルステン
(72)【発明者】
【氏名】スレッタ,ホーヴァル
(72)【発明者】
【氏名】デグネス,クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】アスランド,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】モースワース,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン,ハイディ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ルース
(72)【発明者】
【氏名】サンドル,ユージニア
(72)【発明者】
【氏名】ボルゴス,スヴェン エヴェン
(72)【発明者】
【氏名】スニプスタ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】スルヘイム,エイナル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB02
4C076BB13
4C076BB14
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB30
4C076BB31
4C076CC15
4C076CC32
4C076DD08E
4C076DD09E
4C076DD21V
4C076DD34V
4C076DD35V
4C076DD37Q
4C076DD40Q
4C076DD46
4C076DD52
4C076DD55
4C076DD59Q
4C076DD60
4C076EE10
4C076EE23E
4C076EE24
4C076EE25
4C076EE41
4C076EE42
4C076EE48
4C076EE49E
4C076FF04
4C076FF12
4C076GG12
4C076GG23
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA03
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA38
4C086MA41
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB35
(57)【要約】
以下の構造(1)の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む複数のナノ粒子を含む医薬組成物を開示する。その使用および調製方法も開示する。
【化1】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分を含む複数のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬品有効成分は、
【化2】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
薬学的に許容されるポリマー賦形剤をさらに含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記複数のナノ粒子が薬学的に許容されるポリマー賦形剤を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬品有効成分がナノカプセル化されている、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤が、ポリ(アルキルシアノアクリレート)またはポリホスファゼンである、請求項3~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤が、ポリ(アルキルシアノアクリレート)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤が、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(n-ヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(4-メチルペンチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルブチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、またはポリ(オクチルシアノアクリレート)である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤が、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤が、乳酸・グリコール酸共重合体である、請求項3~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤がタンパク質である、請求項3~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤が、カゼイン、アルブミン、フィブロイン、ゼラチン、またはそれらの組み合わせであるタンパク質である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)と、以下の構造:
【化3】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分とを含む複数のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項14】
乳酸・グリコール酸共重合体と、以下の構造:
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分とを含む複数のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項15】
カゼイン、アルブミン、フィブロイン、ゼラチン、またはそれらの組み合わせと、以下の構造:
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分とを含む複数のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤がカゼインである、請求項12または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤がアルブミンである、請求項12または15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤がフィブロインである、請求項12または15に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤がゼラチンである、請求項12または15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
凍結乾燥組成物である、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
複数のマイクロバブルをさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
複数のマイクロバブルと、以下の構造:
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む複数のナノ粒子とを含む、医薬組成物。
【請求項23】
前記化合物が、
【化7】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記ナノ粒子が、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリホスファゼン、または乳酸・グリコール酸共重合体を含む、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記ナノ粒子が、カゼイン、アルブミン、フィブロイン、ゼラチン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22または23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記マイクロバブルが、パーフルオロカーボン、炭化水素、フッ化硫黄ガス、空気、空気の成分、またはそれらの混合物を含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記マイクロバブルが、窒素(N)、酸素(O)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、メタン(CH)、またはそれらの混合物を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記マイクロバブルがパーフルオロカーボンを含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記マイクロバブルが空気またはその成分を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記複数のナノ粒子の少なくとも一部がマイクロバブルの表面と会合している、請求項21~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
表面活性タンパク質をさらに含む、請求項21~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記表面活性タンパク質がアルブミンである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
薬学的に許容される界面活性剤をさらに含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記薬学的に許容される界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記薬学的に許容される界面活性剤が、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記薬学的に許容される界面活性剤が、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが、ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸である、請求項35または36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記ポリオキシエチレンエーテルが、ポリオキシエチレンラウリルエーテルである、請求項35または36に記載の医薬組成物。
【請求項39】
薬学的に許容される安定剤をさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
前記薬学的に許容される安定剤が、バニリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、またはビタミンEである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
前記薬学的に許容される安定剤がバニリンである、請求項40に記載の医薬組成物。
【請求項42】
粒子質量に対して0.1~10%(w/w)の薬学的に許容される安定剤を含む、請求項39~41のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項43】
粒子質量に対して0.5~8%(w/w)の薬学的に許容される安定剤を含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項44】
粒子質量に対して1~5%(w/w)の薬学的に許容される安定剤を含む、請求項31~33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
薬学的に許容される油をさらに含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記薬学的に許容される油が、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記薬学的に許容される油が、1つまたは複数の中鎖トリグリセリドである、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記1つまたは複数の中鎖トリグリセリドが、Miglyol、Captex、および Kollisolvからなる群より選択される、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
粒子質量に対して0.5~5%(w/w)の薬学的に許容される油を含む、請求項45~48のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記複数のナノ粒子が、動的光散乱によって測定した場合に、20~200nmの個数平均径を有する、請求項1~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記複数のナノ粒子が、動的光散乱によって測定した場合に、40~100nmの個数平均径を有する、請求項1~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記複数のナノ粒子が、ナノ粒子トラッキング解析によって測定した場合に、30~150nmの個数平均径を有する、請求項1~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項53】
前記複数のナノ粒子が、ナノ粒子トラッキング解析によって測定した場合に、80~100nmの個数平均径を有する、請求項1~49のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項54】
水性組成物である、請求項1~53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
前記医薬組成物のpHが4.0~8.0である、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
pHが5.0~7.0である、請求項55に記載の医薬組成物。
【請求項57】
極性有機溶媒である共溶媒をさらに含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項58】
前記極性有機溶媒が、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、またはそれらの組み合わせである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
液体クロマトグラフィーによって測定した場合に、1~15%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項60】
液体クロマトグラフィーによって測定した場合に、2~15%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項61】
液体クロマトグラフィーによって測定した場合に、3~10%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項62】
液体クロマトグラフィーによって測定した場合に、3.5~10%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項63】
液体クロマトグラフィーによって測定した場合に、5~10%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む、請求項1~56のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項64】
液体クロマトグラフィーによって測定した場合に、3~6%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む、請求項1~63のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項65】
請求項1~64のいずれか一項に記載の医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、それを必要とする対象を処置する方法。
【請求項66】
前記対象が、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、コレトトリカム属(Colletotrichum)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ホルモネマ属(Hormonema)、レシトフォラ属(Lecythophora)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、フサリウム属(Fusarium)、サッカロミケス属(Saccharomyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)、トリコフィトン属(Trichophyton)、スコプラリオプシス属(Scopularilopsis)、ヒストプラスマ属(Histoplasma)、ブラストミセス属(Blastomyces)、またはコクシジオイデス属(Cocciodioides)の菌種によって引き起こされる真菌感染症に罹患している、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記対象が、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、またはクリプトコッカス属(Cryptococcus)の菌種によって引き起こされる真菌感染症に罹患している、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記対象が、アゾール耐性アスペルギルス属菌種によって引き起こされる真菌感染症に罹患している、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記医薬組成物が、静脈内、吸入によって、鼻腔内、経口、舌下、頬側、経皮、皮内、筋肉内、膣内、非経口、動脈内、頭蓋内、髄腔内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内、または局所的に投与される、請求項65~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
有効量の化合物1、化合物1A、またはそれらの薬学的に許容される塩を対象の標的部位に送達する方法であって、請求項1~64のいずれか一項に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項71】
前記医薬組成物が静脈内投与される、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記標的部位が対象の肺である、請求項70または71に記載の方法。
【請求項73】
薬学的に許容されるポリマー賦形剤と、以下の構造:
【化8】
の化合物またはその薬学的に許容される塩とを含む複数のナノ粒子を製造する方法であって、該方法は、前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤のモノマー前駆体を、該モノマー前駆体および前記化合物またはその薬学的に許容される塩を含む液体中で重合するステップを含み、前記重合ステップにより複数のナノ粒子が製造される、方法。
【請求項74】
前記化合物が、以下の構造:
【化9】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記液体が、薬学的に許容される界面活性剤をさらに含む、請求項73または74に記載の方法。
【請求項76】
前記薬学的に許容される界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記液体が、薬学的に許容される安定剤をさらに含む、請求項73~76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
前記液体が、薬学的に許容される油をさらに含む、請求項73~77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
前記モノマー前駆体がアルキルシアノアクリレートであり、前記薬学的に許容されるポリマー賦形剤がポリ(アルキルシアノアクリレート)である、請求項73~78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
前記複数のナノ粒子が、動的光散乱によって測定した場合に、20~200nmの個数平均径を有する、請求項73~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記複数のナノ粒子が、動的光散乱によって測定した場合に、40~100nmの個数平均径を有する、請求項73~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
前記複数のナノ粒子が、ナノ粒子トラッキング解析によって測定した場合に、30~150nmの個数平均径を有する、請求項73~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記複数のナノ粒子が、ナノ粒子トラッキング解析によって測定した場合に、80~100nmの個数平均径を有する、請求項73~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
前記液体が水性組成物である、請求項73~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
前記液体のpHが0.5~8.0である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記液体のpHが0.5~3.0である、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記液体のpHが2.0~8.0である、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記液体のpHが3.0~7.0である、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
複数のマイクロバブルを添加することをさらに含む、請求項73~88のいずれか一項に記載の方法。
【請求項90】
前記複数のナノ粒子を凍結乾燥することをさらに含む、請求項73~89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
脱イオン水に対して前記複数のナノ粒子を透析することをさらに含む、請求項73~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記液体のpHを4.0~8.0の範囲に調整することをさらに含む、請求項73~91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
前記液体のpHを5.0~7.0の範囲に調整することをさらに含む、請求項73~92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
前記pHを調整するステップが、重合ステップ中に行われる、請求項92または93に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マクロライド系抗生物質は、1つまたは複数のデオキシ糖に結合した大環状ラクトン環を含む。マクロライド系抗生物質の医薬適用は、その限られた貯蔵寿命および効率的な送達の達成が困難であることによって制限されることがよくある。
【0003】
以下の構造の化合物は治療用ポリエンマクロライドである:
【化1】
【0004】
化合物1またはその薬学的に許容される塩を含む新規製剤が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、以下の構造の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分を含む複数のナノ粒子を含む医薬組成物を提供する:
【化2】
【0006】
いくつかの実施形態において、医薬品有効成分は、
【化3】
またはそのその薬学的に許容される塩である。
【0007】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容されるポリマー賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、複数のナノ粒子は、薬学的に許容されるポリマー賦形剤を含む。いくつかの実施形態では、医薬品有効成分(active pharmaceutical ingredient)はナノカプセル化(nanoencapsulated)される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)またはポリホスファゼンである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤はポリ(アルキルシアノアクリレート)である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(n-ヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(4-メチルペンチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルブチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、またはポリ(オクチルシアノアクリレート)である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤はポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、乳酸・グリコール酸共重合体(Poly(lactic-co-glycolic acid)である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、タンパク質(例えば、カゼイン、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、または卵アルブミン)、フィブロイン、ゼラチン、またはそれらの組み合わせ)である。いくつかの実施形態では、タンパク質と医薬品有効成分との重量比は、1:1~20:1(例えば、5:1~20:1、1:1~5:1、5:1~10:1、または10:1~20:1)である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)と、以下の構造:
【化4】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分とを含む複数のナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
いくつかの実施形態において、本発明は、乳酸・グリコール酸共重合体と、以下の構造:
【化5】
の化合物またはそのその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分とを含む複数のナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、カゼイン、アルブミン、フィブロイン、ゼラチン、またはそれらの組み合わせと、以下の構造:
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分とを含む複数のナノ粒子を含む医薬組成物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、または卵アルブミン)である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤はフィブロインである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤はゼラチンである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容されるポリマー賦形剤はカゼインである。
【0012】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は凍結乾燥組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、複数のマイクロバブルをさらに含む。
【0013】
別の態様では、本発明は、複数のマイクロバブルと、以下の構造:
【化7】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む複数のナノ粒子とを含む医薬組成物を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、化合物は、
【化8】
またはそのその薬学的に許容される塩である。
【0015】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリホスファゼン、または乳酸・グリコール酸共重合体を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、パーフルオロカーボン、炭化水素、フッ化硫黄ガス、空気、空気の成分、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、窒素(N)、酸素(O)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、メタン(CH)、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、マイクロバブルはパーフルオロカーボンを含む。いくつかの実施形態では、マイクロバブルは、空気またはその成分を含む。いくつかの実施形態では、複数のナノ粒子の少なくとも一部は、マイクロバブル表面と会合している(例えば、医薬組成物はピッカリングエマルション(Pickering emulsion)である)。
【0017】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、表面活性タンパク質(例えば、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミン))をさらに含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、0.1%~2%(例えば0.4%~0.6%、例えば0.5%)(w/w)の表面活性タンパク質(例えば、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミンまたはウシ血清アルブミン))を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは、ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸である。いくつかの実施形態では、ポリオキシエチレンエーテルはポリオキシエチレンラウリルエーテルである。
【0019】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される安定剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される安定剤は、バニリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、またはビタミンEである。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される安定剤はバニリンである。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、粒子質量に対して0.1~10%(好ましくは0.5~8%、より好ましくは1~5%)(w/w)の薬学的に許容される安定剤を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される油をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される油は、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される油は、1つまたは複数の中鎖トリグリセリドである。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の中鎖トリグリセリドは、ミグリオール(Miglyol)、キャプテックス(Captex)、およびコリソルブ(Kollisolv)からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、粒子質量に対して0.5~5%(w/w)の薬学的に許容される油を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、複数のナノ粒子は、動的光散乱によって測定して、20~200nm(好ましくは40~100nm)の個数平均径(mean number average diameter)を有する。いくつかの実施形態では、複数のナノ粒子は、ナノ粒子トラッキング解析(nanoparticle tracking analysis)によって測定して、30~150nm(好ましくは80~100nm)の個数平均径を有する。いくつかの実施形態では、例えば、経口投与用に製剤化された医薬組成物において、複数のナノ粒子の多分散指数は0.5以下(例えば、0.3以下)である。いくつかの実施形態では、例えば、非経口投与(例えば、静脈内投与)用に製剤化された医薬組成物において、複数のナノ粒子の多分散指数は0.3以下(例えば、0.2以下)である。
【0022】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は水性組成物である。いくつかの実施形態では、医薬組成物のpHは4.0~8.0(例えば、pHは5.0~7.0)である。
【0023】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、共溶媒(例えば、極性有機溶媒)を含む。いくつかの実施形態では、極性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、またはそれらの組み合わせである。
【0024】
特定の好ましい実施形態では、医薬組成物は、N-メチルピロリドンと、乳酸・グリコール酸共重合体である薬学的に許容されるポリマー賦形剤とを含む水性組成物である。
【0025】
特定の好ましい実施形態では、医薬組成物は、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)、バニリン、および6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸を含む水性組成物である。
【0026】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート);バニリン;6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸;ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸(例えば、Kolliphor HS 15);ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば、Brij L23);および中鎖トリグリセリド(例えば、Miglyol)を含む水性組成物である。
【0027】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、乳酸・グリコール酸共重合体、N-メチル-2-ピロリドン、およびポリソルベートを含む水性組成物である。
【0028】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、乳酸・グリコール酸共重合体、N,N-ジメチルホルムアミド、およびポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む水性組成物である。
【0029】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体クロマトグラフィーによって測定して、1~15%(例えば、2~15%;好ましくは、3~10%;より好ましくは、3.5~10%;またはより好ましくは、3~6%である)乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体クロマトグラフィーによって測定して、4.5%~5.5%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体クロマトグラフィーによって測定して、1.5%~5.5%(例えば、1.5%~3.0%)乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体クロマトグラフィーによって測定して、5%~10%乾燥(w/w)の医薬品有効成分を含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、それを必要とする対象を治療する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。別の態様では、本発明は、それを必要とする対象の治療のための医薬の製造における、本明細書に記載の複数のナノ粒子または本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。別の態様では、本発明は、それを必要とする対象の治療に使用するための本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態では、対象は、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、コレトトリカム属(Colletotrichum)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ホルモネマ属(Hormonema)、レシトフォラ属(Lecythophora)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、フサリウム属(Fusarium)、サッカロミケス属(Saccharomyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)、トリコフィトン属(Trichophyton)、スコプラリオプシス属(Scopularilopsis)、ヒストプラスマ属(Histoplasma)、ブラストミセス属(Blastomyces)、またはコクシジオイデス属(Cocciodioides)の菌種によって引き起こされる真菌感染症に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)、またはクリプトコッカス属(Cryptococcus)の菌種によって引き起こされる真菌感染症に罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、アゾール耐性アスペルギルス属菌種によって引き起こされる真菌感染症に罹患している。
【0032】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、静脈内、吸入、鼻腔内、経口、舌下、頬側(buccally)、経皮、皮内、筋肉内、膣内、非経口、動脈内、頭蓋内、髄腔内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内、または局所に投与される。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は、治療有効量の化合物1、化合物1A、またはそれらの薬学的に許容される塩を対象の標的部位に送達する方法を提供し、その方法は、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。さらに別の態様では、本発明は、治療有効量の化合物1、化合物1A、またはその薬学的に許容される塩を対象の標的部位に送達するための医薬の製造における、本明細書に記載の医薬組成物の使用を提供する。さらに別の態様では、本発明は、治療有効量の化合物1、化合物1A、またはその薬学的に許容される塩を対象の標的部位に送達するのに使用するための、本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0034】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は静脈内投与される。いくつかの実施形態では、標的部位は対象の肺である。
【0035】
さらに別の態様では、本発明は、薬学的に許容されるポリマー賦形剤および以下の構造:
【化9】
の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む複数のナノ粒子を製造する方法を提供し、その方法は、薬学的に許容されるポリマー賦形剤のモノマー前駆体を、モノマー前駆体と化合物またはその薬学的に許容される塩とを含む液体中で重合するステップを含み、重合ステップにより複数のナノ粒子が製造される。
【0036】
いくつかの実施形態では、化合物は以下の構造:
【化10】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0037】
いくつかの実施形態では、液体は、薬学的に許容される界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。
【0038】
いくつかの実施形態では、液体は、薬学的に許容される安定剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、液体は、薬学的に許容される油をさらに含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、モノマー前駆体はアルキルシアノアクリレートであり、薬学的に許容されるポリマー賦形剤はポリ(アルキルシアノアクリレート)である。
【0040】
いくつかの実施形態では、複数のナノ粒子は、動的光散乱によって測定して、20~200nm(好ましくは40~100nm)の個数平均径を有する。いくつかの実施形態では、複数のナノ粒子は、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)によって測定して、30~150nm(好ましくは80~100nm)の個数平均径を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、液体は水性組成物である。いくつかの実施形態では、液体のpHは0.5~8.0(例えば、pHは0.5~3.0)である。いくつかの実施形態では、液体のpHは2.0~8.0(好ましくは、pHは3.0~7.0)である。
【0042】
いくつかの実施形態では、方法は、複数のマイクロバブルを添加することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、複数のナノ粒子を凍結乾燥することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、脱イオン水に対して複数のナノ粒子を透析することをさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、液体のpHを4.0~8.0の範囲(好ましくは、5.0~7.0の範囲)に調整することをさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、pHを調整するステップは、重合ステップ中に行われる。
【0044】
定義
用語「約」は、本明細書で使用される場合、用語「約」に続く値の±10%の範囲内にある値を表す
【0045】
用語「乾燥(w/w)」パーセンテージは、本明細書中で使用される場合、液体の薬学的に許容される担体を除く組成物中の成分の重量パーセンテージを指す。乾燥(w/w)パーセンテージは、例えば、液体クロマトグラフィーを使用して測定され得る。
【0046】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、動的光散乱によって測定した場合に1000nm未満のZ平均径(Z-average diameter)を有する粒子の集団を表す。
【0047】
用語「医薬組成物」は、本明細書中で使用される場合、薬学的に許容される賦形剤と共に製剤化され、哺乳動物における疾患の処置のための治療レジメンの一部として使用される組成物を表す。
【0048】
用語「医薬剤形(pharmaceutical dosage form)」は、本明細書で使用される場合、さらなる修飾なしで(例えば、液体溶媒での希釈、液体溶媒中への懸濁、または液体溶媒中への溶解なしで)、そのままで対象に投与することを目的とした医薬組成物を表す。
【0049】
用語「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載の活性薬剤以外の成分(例えば、活性薬剤を懸濁または溶解させることができるビヒクル)であって、患者において実質的に非毒性でかつ実質的に非炎症性の特性を有する任意の成分を指す。賦形剤には、例えば、抗酸化剤、崩壊剤、染料(色素)、皮膚軟化剤、乳化剤、充填剤(希釈剤)、香味剤、芳香剤、防腐剤、印刷用インク、吸着剤、懸濁化剤または分散剤、甘味剤、液体溶媒、および緩衝剤が含まれ得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」は、正常な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わずにヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適しており、かつ妥当な利益/リスク比に相応する塩を表す。薬学的に許容される塩は、当技術分野において公知である。例えば、薬学的に許容される塩は、Berge et al., J. Pharmaceutical Sciences 66:1-19, 1977 and in Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use, (Eds. P.H. Stahl and C.G. Wermuth), Wiley-VCH, 2008に記載されている。塩は、本明細書に記載の化合物の最終的な単離および精製中にその場(in situ)で、または遊離塩基基を好適な有機酸と反応させることによって別個に調製することができる。そのような塩の形成に好適な酸の例としては、酢酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、重硫酸、重酒石酸、酪酸、エデト酸カルシウム、カムシル酸、炭酸、クロロ安息香酸、クエン酸、エデト酸、エジシル酸、エストル酸(estolic acid)、エシル酸(esyl acid)、エシル酸(esylic acid)、ギ酸、フマル酸、グルセプト酸(gluceptic acid)、グルコン酸、グルタミン酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキサミン酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硝酸、メチル硫酸、ムチン酸、ムコン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、p-ニトロメタンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、リン酸一水素(monohydrogen phosphoric acid)、リン酸二水素(dihydrogen phosphoric acid)、フタル酸、ポリガラクトウロン酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、スルホン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、テオクル酸およびトルエンスルホン酸が挙げられる。グルタミン酸塩が特に好ましい。
【0051】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、対象由来の試料の当技術分野で公知の臨床検査の有無にかかわらず、資格のある専門家(例えば、医師または看護師)によって決定される疾患、障害、または状態を患っているかまたはそのリスクを有するヒトまたは非ヒト動物(例えば、哺乳動物)を表す。疾患、障害、または状態の非限定的な例としては、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、コレトトリカム属(Colletotrichum)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ホルモネマ属(Hormonema)、レシトフォラ属(Lecythophora)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、フサリウム属(Fusarium)、サッカロミケス属(Saccharomyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)、トリコフィトン属(Trichophyton)、およびスコプラリオプシス属(Scopularilopsi)の菌種により引き起こされる真菌感染症が挙げられる。好ましくは、真菌感染は、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)またはクリプトコッカス属(Cryptococcus)の菌種によって引き起こされる。より好ましくは、真菌感染は、アゾール耐性アスペルギルス種によって引き起こされる。
【0052】
「処置(Treatment)」および「処置する(treating)」は、本明細書で使用する場合、疾患、障害、または状態を改善、快復、安定化、予防、または治癒させる意図を持って対象を医学的に管理することを指す。この用語は、積極的治療(疾患、障害、または状態を改善することを目的とする処置);原因療法(関連する疾患、障害、または状態の原因を対象とする処置);対症(または姑息)療法(疾患、障害、または状態の症状の軽減のために設計された処置);予防的治療(関連する疾患、障害、または状態の発症を最小限に抑えるか、または部分的にもしくは完全に阻止することを目的とする処置);および支持療法(別の療法を補足するために用いられる処置)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)AF91でチャレンジされ、未処置であるか、あるいは化合物1A 1.0mg/kg、化合物1A 0.5mg/kg、アムビゾーム(AmBisome)7.5mg/kg、アムビゾーム3.5mg/kg、ボリコナゾール(voriconazole)7.5mg/kg、カスポファンギン(caspofungin)1.0mg/kg、またはビヒクル(5%DMSOを含有する5%グルコース水溶液)で処置されたマウスの生存分析を示すチャートである。
図2】アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)AF91でチャレンジされ、未処置であるか、あるいは化合物1A 1.0mg/kg、化合物1A 0.5mg/kg、アムビゾーム1.0mg/kg、またはアムビゾーム0.5mg/kgで処置されたマウスの生存分析を示すチャートである。
図3】カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)SC5314でチャレンジされ、未処置であるか、あるいは化合物1A 0.7mg/kg、化合物1A 0.35mg/kg、アムビゾーム5.4mg/kg、アムビゾーム2.7mg/kg、ボリコナゾール4mg/kg、カスポファンギン0.35mg/kg、フルコナゾール6mg/kg、またはビヒクル(5%DMSOを含有する5%グルコース水溶液)で処置されたマウスの生存分析を示すチャートである。。
図4】カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)SC5314でチャレンジされ、未処置であるか、あるいは化合物1A 0.7mg/kg、化合物1A 0.35mg/kg、アムビゾーム0.7mg/kg、またはアムビゾーム0.35mg/kgで処置されたマウスの生存分析を示すチャートである。
図5】1.8%(w/w)の化合物1Aを含む製剤45のLC-UVトレースを示すチャートである。LC-UVトレースは、保持時間17~19分での化合物1Aとポリ(アルキルシアノアクリレート)(PACA)ポリマーとの間の望ましくない反応を示す。
図6】2.4%(w/w)の化合物1Aを含む製剤49のLC-UVトレースを示すチャートである。LC-UVトレースは、製剤プロセスにおいて化合物1Aの分解または反応が起こっていないことを示す。19.5分の不純物は製剤に使用される材料中にも存在する。
図7】0.68%(w/w)の化合物1Aを含む製剤73のLC-UVトレースを示すチャートである。LC-UVトレースは、製剤プロセスにおいて化合物1Aの分解または反応が起こっていないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
概して、本発明は、複数のナノ粒子を含む医薬組成物およびその使用方法を提供する。本発明の医薬組成物は、以下の構造:
【化11】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分を含む複数のナノ粒子を含む。
【0055】
いくつかの実施形態において、医薬品有効成分は、以下の構造:
【化12】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0056】
本明細書に記載されるナノ粒子は、ポリマー賦形剤(例えば、ポリマーナノ粒子)を含んでもよく、または脂質(例えば、リポソーム、ミセルなどの脂質ナノ粒子)を含んでもよい。
【0057】
本明細書に記載されるナノ粒子は、脂質、例えば、リン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、またはホスファチジルグリセロール)を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のナノ粒子は、ホスファチジルコリン(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、卵ホスファチジルコリンおよび大豆ホスファチジルコリン)またはホスファチジルグリセロール(例えば、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジラウリルホスファチジルグリセロール、またはジミリストイルホスファチジルグリセロール)であるリン脂質を含む。例えば、脂質(例えば、リン脂質)は、医薬品有効成分を小胞(vesicle)またはミセル中にカプセル化(封入)することができる。
【0058】
好ましくは、本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に許容されるポリマー賦形剤(例えば、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、乳酸・グリコール酸共重合体、またはタンパク質(例えば、アルブミン、フィブロイン、ゼラチン、カゼイン、またはそれらの組み合わせ))を含む。有利には、本明細書に記載の医薬組成物は、商業的に許容される貯蔵寿命を示し得る。理論に拘束されることを望むものではないが、化合物1(例えば、化合物1A)またはその薬学的に許容される塩の薬学的に許容されるポリマー賦形剤中へのカプセル化(封入)は、化合物1(例えば、化合物1A)またはその薬学的に許容される塩が商業的に許容される貯蔵寿命を有するのに充分な安定性を提供し得る。例えば、本明細書に記載の医薬組成物は、4℃で2週間保存した後、化合物1(例えば、化合物1A)またはその薬学的に許容される塩のラベル用量の90%~110%を保持し得る。
【0059】
本明細書に記載の医薬組成物は、液体クロマトグラフィーによって測定して、少なくとも2%、好ましくは少なくとも3%、特に少なくとも5%乾燥(w/w)の化合物1またはその薬学的に許容される塩(例えば、化合物1Aまたはその薬学的に許容される塩)を含有し得る。本明細書に記載の医薬組成物は、液体クロマトグラフィーによって測定して、少なくとも2%(例えば、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも3.5%、少なくとも4%、少なくとも4.5%、少なくとも5%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.5%、少なくとも7%、少なくとも7.5%、少なくとも8%、少なくとも8.5%、少なくとも9%、または少なくとも9.5%)乾燥(w/w)の化合物1またはその薬学的に許容される塩(例えば、化合物1Aまたはその薬学的に許容される塩)を含有し得る。本明細書に記載の医薬組成物は、液体クロマトグラフィーによって測定して、15%まで、好ましくは12%まで、特に10%までの乾燥(w/w)の化合物1またはその薬学的に許容される塩(例えば、化合物1Aまたはその薬学的に許容される塩)を含有し得る。範囲の非限定的な例として、液体クロマトグラフィーによって測定して、2~15%、好ましくは3~10%、特に3~6%(例えば、3.5~15%、4~15%、4.5~15%、5~15%、5.5~15%、6~15%、6.5~15%、7~15%、7.5~15%、8~15%、8.5~15%、9~15%、9.5~15%、3~10%、3.5~10%、4~10%、4.5~10%、5~10%、5.5~10%、6~10%、6.5~10%、7~10%、7.5~10%、8~10%、8.5~10%、9~10%、9.5~10%、3~7.5%、3.5~7.5%、4~7.5%、4.5~7.5%、5~7.5%、5.5~7.5%、6~7.5%、6.5~7.5%、7~7.5%、3~5%、3.5~5%、4~5%、または4.5~5%)乾燥(w/w)の化合物1またはその薬学的に許容される塩(例えば、化合物1Aまたはその薬学的に許容される塩)が挙げられる。
【0060】
本明細書に記載の医薬組成物は、複数のナノ粒子を含有する。複数のナノ粒子は、動的光散乱によって測定して、例えば、20~200nmの個数平均径を有し得る(好ましくは、個数平均径は40~100nmである)。好ましくは、複数のナノ粒子は、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)によって測定して、30~150nmの個数平均径を有する(より好ましくは、個数平均径は80~100nmである)。
【0061】
本明細書に記載の医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、例えば、薬学的に許容されるポリマー賦形剤、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)、安定剤、担体(例えば、油)、および/または香味剤を含む。
【0062】
本明細書に記載される医薬組成物において、ポリマー賦形剤は、例えば、医薬品有効成分をカプセル化(封入)するために使用され得る。薬学的に許容されるポリマー賦形剤の非限定的な例としては、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、乳酸・グリコール酸共重合体、両親媒性ポリホスファゼン、およびタンパク質が挙げられる。好ましくは、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)(例えば、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(n-ヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(4-メチルペンチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルブチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、またはポリ(オクチルシアノアクリレート))である。より好ましくは、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)(例えば、ポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート))である。好ましいタンパク質としては、アルブミン、フィブロイン、ゼラチン、カゼイン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
ポリ(アルキルシアノアクリレート)を含むナノ粒子は、化合物1、1Aまたはそれらの薬学的に許容される塩を含む組成物中におけるアルキルシアノアクリレートモノマーの重合によってin situで調製することができる。ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子を調製するプロセスは、例えば、親水性ポリマー(例えば、薬学的に許容されるポリマー賦形剤、および例えば、薬学的に許容されるポリマー賦形剤前駆体(例えば、薬学的に許容されるポリマー賦形剤を作製するモノマー)と反応することができる反応性部分を有する界面活性剤を含む)を導入することによって、ナノ粒子表面をカスタマイズすることを含み得る。このような界面活性剤を用いてモノマーの重合が開始され得る。あるいは、モノマーの重合は、アゾ開始剤(例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-l-カルボニトリル)、または2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド))などの重合開始剤を使用して開始することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、薬学的に許容されるポリマー賦形剤と化合物1、1Aまたはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分とを含むナノ粒子を含む。好ましくは、ナノ粒子はポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされる。有利には、ナノ粒子上のPEGコーティングは、例えば免疫系によるクリアランスを低減し得る。
【0064】
界面活性剤は、例えば、結晶化および機械的ストレス(撹拌および/または剪断など)に対して医薬組成物を安定化させるために使用され得る。界面活性剤は、非イオン性であってもイオン性であってもよい。非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル)、ソルビタンエステル、ポリソルベート、ソルビトール、エトキシル化フェノール、エトキシル化ジフェノール、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(例えば、ポロキサマー)、ポロキサミン、脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、多糖類(例えば、ヒアルロン酸またはシアル酸)、タンパク質(例えば、アルブミンまたはカゼイン)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテルまたはポリソルベートである。より好ましくは、界面活性剤は、ポリオキシエチレン化12-ヒドロキシステアリン酸(例えば、Kolliphor HS 15)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(例えば、Brij L23)、またはそれらの組み合わせである。イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸塩、および脂肪酸塩が挙げられる。
【0065】
界面活性剤は、ポリマー賦形剤に共有結合し得る。非限定的な例において、本明細書に記載される界面活性剤は、溶媒と、活性薬剤と、ポリマー賦形剤のモノマーとの混合物中に含まれ得る。したがって、界面活性剤(例えば、界面活性剤中の遊離-OH基)は、モノマー(例えば、アルキルシアノアクリレート)の重合を開始して、界面活性剤でコーティングされたナノ粒子(例えば、PEGでコーティングされたナノ粒子)中に活性薬剤をカプセル化(封入)することができる。
【0066】
例えば酸化ストレスに対して医薬組成物を安定化するために安定剤が使用され得る。安定剤の非限定的な例としては、バニリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ビタミンE、および6-O-パルミトイル-L-アスコルビン酸が挙げられる。好ましくは、安定剤はバニリンである。医薬組成物は、粒子質量に対して、例えば0.1~10%、好ましくは0.5~8%、特に1~5%(例えば、0.1~9%、0.1~8%、0.1~7%、0.1~6%、0.1~5%、0.1~4%、0.1~3%、0.1~2%、0.1~1%、0.1~0.5%、0.2~10%、0.2~9%、0.2~8%、0.2~7%、0.2~6%、0.2~5%、0.2~4%、0.2~3%、0.2~2%、0.2~1%、0.2~0.5%、0.5~10%、0.5~9%、0.5~8%、0.5~7%、0.5~6%、0.5~5%、0.5~4%、0.5~3%、0.5~2%、0.5~1%、1~10%、1~9%、1~8%,1~7%、1~6%、1~5%、1~4%、1~3%、1~2%、2~10%、2~9%、2~8%、2~7%、2~6%、2~5%、2~4%、2~3%、3~10%、3~9%、3~8%、3~7%、3~6%、3~5%、3~4%、4~10%、4~9%、4~8%、4~7%、4~6%、4~5%、5~10%、5~9%、5~8%、5~7%、5~6%、または5%)(w/w)の安定剤を含み得る。
【0067】
医薬組成物中の医薬品有効成分を懸濁または可溶化するために担体が使用され得る。担体は、製剤調製中のオストワルド熟成(Ostwald ripening)を防止するためにも使用され得る。懸濁化または可溶化担体は、水性担体、例えば、水または生理食塩水(例えば、等張生理食塩水)であり得る。薬学的に許容される担体のさらなる非限定的な例としては、薬学的に許容される油(例えば、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、またはそれらの組み合わせ)が挙げられる。好ましくは、薬学的に許容される油は、1つまたは複数の中鎖トリグリセリド(例えば、Miglyol、Captex、およびKollisolv)である。医薬組成物は、例えば、粒子質量に対して、0.5~5%、好ましくは1~5%、特に2~3%(例えば、0.5~5%、0.5~4.5%、0.5~4%、0.5~3.5%、0.5~3%、0.5~2.5%、0.5~2%、0.5~1.5%、0.5~1%、1~5%、1~4.5%、1~4%、1~3.5%、1~3%、1~2.5%、1~2%、1~1.5%、1.5~5%、1.5~4.5%、1.5~4%、1.5~3.5%、1.5~3%、1.5~2.5%、1.5~2%、2~5%、2~4.5%、2~4%、2~3.5%、2~3%、2~2.5%、2.5~5%、2.5~4.5%、2.5~4%、2.5~3.5%、2.5~3%、3~5%、3~4.5%、3~4%、3~3.5%、3.5~5%、3.5~4.5%、3.5~4%、4~5%、4~4.5%、または4.5~5%)(w/w)の薬学的に許容される油を含み得る。
【0068】
経口投与される医薬組成物については、香味剤を含めて、それらをより嗜好性にすることができる。任意の有効な香味剤を使用することができる。香味剤は、天然、人工、またはそれらの混合物であり得る。香味剤は、有効成分の望ましくない味を軽減するのに役立つ香味を与える。一実施形態では、香味剤は、ミント、メントール、ハチミツレモン、オレンジ、レモンライム、ブドウ、クランベリー、バニラベリー、バブルガム、またはチェリーの香味を与えることができる。香味剤は、天然または人工甘味料、例えば、スクロース、マグナスウィート(Magnasweet)、スクラロース、キシリトール、サッカリンナトリウム、シクラメート、アスパルテーム、アセスルファム、およびそれらの塩であり得る。
【0069】
本明細書に記載の医薬組成物は、水性組成物(例えば、懸濁液)であってもよい。医薬組成物のpHは、例えば4.0~8.0(好ましくは5.0~7.0)であり得る。あるいは、医薬組成物は凍結乾燥組成物であってもよい。凍結乾燥組成物は、使用前に水性組成物を作製するために再構成され得る。
【0070】
本明細書に記載される医薬組成物は、それを必要とする対象を処置するために使用され得る。対象を処置する方法は、治療有効量の本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。対象は、例えば、カンジダ属(Candida)、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、アスペルギルス属(Aspergillus)、コレトトリカム属(Colletotrichum)、ゲオトリクム属(Geotrichum)、ホルモネマ属(Hormonema)、レシトフォラ属(Lecythophora)、ペシロマイセス属(Paecilomyces)、ペニシリウム属(Penicillium)、ロドトルラ属(Rhodotorula)、フサリウム属(Fusarium)、サッカロミケス属(Saccharomyces)、トリコデルマ属(Trichoderma)、トリコフィトン属(Trichophyton)、スコプラリオプシス属(Scopularilopsis)、ヒストプラスマ属(Histoplasma)、ブラストミセス属(Blastomyces)、またはコクシジオイデス属(Cocciodioides)の菌種によって引き起こされる真菌感染症に罹患していてよい。対象は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症、慢性肺アスペルギルス症、固形臓器移植からの回復、血液移植からの回復、および癌化学療法後の免疫抑制の内の1つまたは複数に加え、真菌感染症(例えば、侵襲性真菌症)に罹患していてもよい。好ましくは、真菌感染症は、カンジダ属(Candida)、アスペルギルス属(Aspergillus)またはクリプトコッカス属(Cryptococcus)の菌種によって引き起こされる。より好ましくは、真菌感染症は、アゾール耐性アスペルギルス種によって引き起こされる。
【0071】
本明細書に記載の医薬組成物は、単回投与または複数回投与で対象に投与され得る。複数回投与で投与される場合、その投与は、例えば、1~24時間、1~7日間、1~4週間、または1~12ヶ月間、互いに隔てられ得る。医薬組成物は、スケジュールに従って投与されてもよく、または医薬組成物は、予め定められたスケジュールなしで投与されてもよい。任意の特定の対象について、特定の投与レジメンは、個体の必要性および医薬組成物を投与するかまたは投与を監督する人の専門的な判断に従って、経時的に調整されるべきであることを理解されたい。
【0072】
主治医が最終的に適切な量および投与レジメンを決定するが、本発明の化合物の有効量は、例えば、0.05mg~3000mgの間の本明細書に記載される医薬品有効成分(API)の総1日投与量であり得る。あるいは、投与量は、患者の体重を用いて計算することができる。
【0073】
本発明の方法において、複数回投与の医薬組成物を対象に投与する期間は様々であり得る。いくつかの実施形態において、医薬組成物の投与は、1~7日間;1~12週間;または1~3ヶ月間の期間にわたって対象に投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、4~11ヶ月または1~30年の期間にわたって対象に投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、症状の発症時に対象に投与される。これらの実施形態のいずれかにおいて、投与される医薬組成物の量は投与期間中に変化し得る。医薬組成物を毎日投与する場合、投与は、例えば、1~12回/日で行うことができる。
【0074】
本明細書に記載の医薬組成物の例示的な投与経路としては、静脈内、吸入、鼻腔内、経口、舌下、頬側、経皮、皮内、筋肉内、膣内、非経口、動脈内、頭蓋内、髄腔内、皮下、眼窩内、脳室内、脊髄内、腹腔内、および局所投与が挙げられる。好ましくは、投与経路は静脈内である。
【0075】
本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内または動脈内投与用に製剤化されたものを含む。本明細書に記載の医薬組成物は、本明細書に記載のマイクロバブルおよびナノ粒子を含み得る。好ましくは、マイクロバブルおよびナノ粒子を含む医薬組成物は、静脈内投与用に製剤化される。有利には、本明細書に記載されるマイクロバブルおよびナノ粒子を含む医薬組成物は、標的組織(例えば、肺および/または心臓)への化合物1または1Aの標的化送達を容易にし得る。
【0076】
医薬組成物は、マイクロバブル、例えば、Albunex(GE Healthcare)、Optison(GE Healthcare)、Sonazoid(GE Healthcare)、Sonovue(Bracco)、または当業者に公知の他の通常の造影剤マイクロバブルなどの、任意の通常の市販の造影剤マイクロバブルを含み得る。いくつかの医薬組成物において、マイクロバブル表面はナノ粒子と会合し得る。このようなマイクロバブルは、本明細書に記載されるように、例えば、ナノ粒子の溶液中で作製され得る。有利には、ナノ粒子は、マイクロバブルの表面に対して安定化効果を有し得る。マイクロバブルは、例えば、ガスまたはその前駆体が充填されたマイクロバブルであってもよい。ガスは、例えば、パーフルオロカーボン、炭化水素(例えば、メタン)、フッ化硫黄(例えば、SF)、ハロゲン、空気、空気成分(例えば、窒素(N)、酸素(O)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、ヘリウム(He)、もしくはネオン(Ne)等)、またはそれらの混合物を含んでいてよく、またはそれらであってもよい。好ましくは、ガスは、パーフルオロカーボン、空気、空気成分(例えば、窒素(N)、酸素(O)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、ヘリウム(He)、またはネオン(Ne))、またはそれらの混合物であり、より好ましくは、ガスは、パーフルオロカーボンである。
【0077】
理論に束縛されることを望むものではないが、マイクロバブル中のガスの溶解度は、血液中を循環するマイクロバブルの能力および呼吸器系に蓄積する能力に影響を及ぼし得る。例えば、パーフルオロカーボンガスが充填されたマイクロバブルは、延長された循環時間を有し得る。理論に束縛されることを望むものではないが、循環時間の延長は、血液中のパーフルオロカーボンの低い溶解度によるものであり得る。本明細書に記載の医薬組成物は、ガス、例えばパーフルオロカーボンを含むマイクロバブルを含むことができる。あるいは、ガスは、例えば、空気またはその成分であってもよい。あるいは、ガスは、例えばフッ化硫黄ガス、好ましくは六フッ化硫黄(SF)ガスであってもよい。
【0078】
市販のマイクロバブルは、典型的には、脂質、タンパク質、および/または他の界面活性剤のシェルによって安定化されたガス状マイクロバブルの懸濁液として提供される。マイクロバブルは、例えば、タンパク質、ポリマー、脂質、界面活性剤、またはそれらの混合物などの表面活性化合物(surface-active compound)を用いて製造することができる。表面活性化合物は、マイクロバブルを安定化させることができる。表面活性タンパク質の好ましい非限定的な例は、アルブミン(例えば、ヒトもしくはウシ血清アルブミン、または合成アルブミンを含む他の適切な生体適合性アルブミン供給源由来のアルブミン)およびカゼインである。表面活性脂質の好ましい非限定的な例は、リン脂質である。マイクロバブルはまた、例えば、追加の安定化剤および賦形剤、例えば、コレステロールまたはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンを含有してもよい。
【0079】
本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、修飾剤(modifying agent)を含み得る。修飾剤は、医薬組成物の成分間の相互作用を修飾することができる。修飾剤は、マイクロバブルおよび/または表面活性化合物とナノ粒子との間に複合体または架橋を形成し、それによって、例えば、医薬組成物の安定性を高めることができる。修飾剤は、例えば表面活性化合物とナノ粒子との間に、相互作用を導入することができる。修飾剤は、例えば、尿素(HN-CO-NH)であり得る。好ましくは、医薬組成物は、表面活性化合物としてタンパク質(好ましくはカゼイン)を含み、修飾剤として尿素を含む。尿素は、タンパク質の変性剤として働き得る。理論に束縛されることを望むものではないが、尿素は、タンパク質折り畳みに関与する水素結合を妨害し得ると考えられる。尿素はまた、ナノ粒子表面上の酸基と複合体を形成し、ナノ粒子の親水性を修飾し得る。
【0080】
表面活性化合物(例えば、タンパク質)および尿素を含む医薬組成物では、標的組織に送達される活性薬剤の量が増強される。表面活性化合物とナノ粒子との間のより強い相互作用を導入することによって、尿素はマイクロバブルを安定化することができる。理論に束縛されるものではないが、マイクロバブル、表面活性化合物および/またはナノ粒子の修飾は、医薬組成物中のマイクロバブルとナノ粒子との間の会合の安定性を高め得ると考えられる。マイクロバブルとナノ粒子との間の会合が増強されるため、標的肺組織に送達されるナノ粒子の数は、マイクロバブルとナノ粒子との間の会合を増強する薬剤を欠く組成物よりも多くなり得る。
【0081】
本明細書に記載の医薬組成物はマイクロバブルを含み、ナノ粒子はピッカリングエマルションであり得る。疎水性固体粒子は、非混和性流体(例えば、油-水)間の界面で強く吸着し得るため、ピッカリングエマルション(固体ナノ粒子または微粒子によって安定化されたエマルション)を形成する。したがって、マイクロバブル表面と会合したナノ粒子は、ピッカリングエマルションとして組成物を安定化させることができる。有利には、本明細書に記載される医薬組成物は、ピッカリングエマルションとしての製剤化によってさらに安定化され得る。ナノ粒子と会合するマイクロバブルの平均径(平均直径)は、例えば、0.5~30μm(例えば、1~10μm)であり得る。マイクロバブルの直径は、例えば、ImageJ画像分析器を用いたマイクロバブルの画像の二次元分析によって測定することができる。
【0082】
さらに、本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、マイクロバブル表面-会合ナノ粒子に加えて、遊離ナノ粒子を含んでいてもよい。本明細書に記載される医薬組成物は、本明細書に記載されるマイクロバブルと会合したナノ粒子、ならびに本明細書に記載される遊離ナノ粒子を含み得る。
【0083】
本明細書に記載のマイクロバブルおよびナノ粒子を含む医薬組成物は、例えば、本明細書に記載のガスまたはマイクロバブルとナノ粒子を組み合わせることを含む方法に従って調製することができる。例えば、ナノ粒子は溶液中にあってもよい。ナノ粒子は、本明細書に記載されるようにin situで調製することができ、または乾燥組成物から再構成してもよい。
【0084】
本明細書に記載されるマイクロバブルおよびナノ粒子を含む医薬組成物は、例えば、
a.本明細書に記載のマイクロバブルおよび本明細書に記載のナノ粒子を溶液に添加すること、および
b.溶液を混合して医薬組成物を製造すること
を含む方法に従って調製され得る。
【0085】
あるいは、本明細書に記載されるマイクロバブルおよびナノ粒子を含む医薬組成物は、例えば、
a.本明細書に記載されるナノ粒子を合成すること、
b.ナノ粒子と表面活性化合物とを組み合わせること、
c.ガスを溶液に添加すること、および
d.溶液を混合して医薬組成物を製造すること
を含む方法に従って調製され得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、溶液は、2秒~60分間(例えば、1~10分間)混合(例えば、撹拌)される。溶液混合方法は、当技術分野において公知であり、例えば、超音波処理、機械的撹拌、マイクロ流体力学(microfluidic)、振盪などである。マイクロバブル含有製剤のいくつかの調製方法では、マイクロバブルガスを添加する前に組成物を脱気してもよい。脱気方法は当技術分野において公知である;脱気方法の非限定的な例としては、例えば、超音波処理および凍結脱気(freeze-pump-thaw degassing)が挙げられる。
【0087】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口投与用に製剤化されたもの(「経口剤形」)を含む。経口剤形は、例えば、錠剤、カプセル、液体懸濁液、粉末、顆粒、またはペレットの形態であってよく、これらは、医薬品有効成分、および1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含有する。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤;造粒剤および崩壊剤;結合剤;および潤滑剤、滑剤、抗接着剤、着色剤、香味剤、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤などであり得る。
【0088】
経口使用のための制御放出組成物は、医薬品有効成分の溶解および/または拡散を制御することによって活性薬物を放出するように構築され得る。溶解または拡散制御放出は、APIを含有する錠剤、カプセル、ペレット、顆粒、または粒子の適切なコーティングによって、またはAPIを含有する粒子を適切なマトリックスに組み込むことによって達成することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、生分解性、pHおよび/または温度感受性ポリマーコーティングを含む。例えば、経口剤形は、医薬品有効成分(例えば、本明細書に記載のナノ粒子)を含み得る。
【0089】
本明細書に記載の医薬組成物は、本明細書に記載される技術および方法ならびに当技術分野において公知のものを使用して調製され得る。
【0090】
本発明はさらに、以下の構造:
【化13】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である医薬品有効成分を含む複数のナノ粒子の製造方法を特徴とする。
【0091】
特に、複数のナノ粒子は、例えば、薬学的に許容されるポリマー賦形剤を含み得る。
【0092】
したがって、本方法は、薬学的に許容されるポリマー賦形剤のモノマー前駆体を、そのモノマー前駆体および化合物またはその薬学的に許容される塩を含む液体中で重合させることを含む。重合ステップは、複数のナノ粒子を製造する。
【0093】
いくつかの実施形態において、医薬品有効成分は、以下の構造:
【化14】
の化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0094】
本明細書に記載の製造方法において、液体は、薬学的に許容される界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、ポリソルベート、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、またはそれらの組み合わせ)をさらに含んでもよい。好ましくは、薬学的に許容される界面活性剤は、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチル化12-ヒドロキシステアリン酸)、またはそれらの組み合わせである。
【0095】
本明細書に記載の製造方法において、液体は、薬学的に許容される安定剤(例えば、バニリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、またはビタミンE)をさらに含んでもよい。好ましくは、薬学的に許容される安定剤はバニリンである。
【0096】
本明細書に記載の製造方法において、液体は、薬学的に許容される油(例えば、中鎖トリグリセリド、長鎖トリグリセリド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される油)をさらに含んでもよい。好ましくは、薬学的に許容される油は、1つまたは複数の中鎖トリグリセリド(例えば、Miglyol、Captex、およびKollisolv)である。
【0097】
本明細書に記載の製造方法において、モノマー前駆体は、例えば、アルキルシアノアクリレート(例えば、エチルヘキシルシアノアクリレート)であってよく、薬学的に許容されるポリマー賦形剤は、例えば、ポリ(アルキルシアノアクリレート)(例えば、ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート))であってよい。
【0098】
本明細書に記載される製造方法において、複数のナノ粒子は、動的光散乱によって測定して、20~200nm(例えば、40~100nm)の個数平均径を有し得る。本明細書に記載される製造方法において、複数のナノ粒子は、ナノ粒子トラッキング解析によって測定して、30~150nm(例えば、80~100nm)の個数平均径を有し得る。
【0099】
液体は、例えば水性組成物(例えば、0.5~8.0のpH(例えば、0.5~3.0、2.0~8.0、または3.0~7.0のpH)を有する水性組成物)であってよい。
【0100】
製造方法は、複数のナノ粒子を凍結乾燥するステップをさらに含んでもよい。追加的または代替的に、製造方法は、脱イオン水に対して複数のナノ粒子を透析するステップをさらに含み得る。
【0101】
本明細書に記載される製造方法において、液体のpHは必要に応じて調整され得る。例えば、液体のpHを4.0~8.0(例えば、5.0~7.0)の範囲に調整され得る。いくつかの実施形態において、pHを調整するステップは、重合ステップ中に行われる。他の実施形態において、pHを調整するステップは、重合ステップの前または後に行われる。
【0102】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図する。これらは、決して本発明を限定するものではない。
【実施例
【0103】
実施例1.ポリホスファゼンナノ粒子組成物の調製
エチル4-アミノベンゾエート(CAS:94-09-7)および分子量7~11kDaのポリエチレングリコール置換(8~13繰り返し単位)両親媒性ポリホスファゼン(POPZ)ポリマー(SINTEF)を使用した。11mgの化合物1A(カスタム製造)を11mLのDMFおよび100mgのPOPZに溶解した。溶液を室温で激しく撹拌しながら蒸留水11mLに滴下した。試料を蒸留水に対して1回のシフトで透析した。粒子溶液を凍結乾燥して、10%(w/w)の化合物1Aの理論的ローディン(theoretical loading)の乾燥ナノ粒子粉末を製造した。
【0104】
実施例2.pH=2でのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
0.01M HCl(pH2)12mL中にPEG安定剤Kolliphor HS 15(0.12g)およびBrij L23(0.12g)を含有する水溶液を調製した。安定剤(0.05gのバニリンおよび15μLのMiglyol 812)と共に2-エチルヘキシルシアノアクリレート(0.8g)に溶解させた0.096gの化合物1A(カスタムメイド)を含有する溶液を調製し、室温で2時間撹拌し続けた。
【0105】
2つの溶液を氷上で混合し、超音波処理器(50%振幅)で30秒毎に10秒休止して3分間ホモジナイズした。ナノエマルションを、ローテーター上において室温で3時間重合させた。pHを0.1M NaOHでpH6に調整し、室温で終夜(ローテーター上で)さらに重合させた。粒子試料を蒸留水に対して透析した。最終生成物は液体懸濁液であった。理論的ローディングは10%(w/w)であった。
【0106】
実施例3.pH=4でのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
水溶液が0.01M HClの代わりに0.1mM HCl(pH=4)を含有していたことを除いて、実施例2に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。
【0107】
実施例4.pH=1でのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
水溶液が0.01M HClの代わりに0.1M HCl(pH=1)を含有していたことを除いて、実施例2に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。
【0108】
実施例5.Brij L23なしでのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
水溶液がBrij L23を含まず、かつKolliphor HS 15の量が2倍であることを除いて、実施例2~4に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。
【0109】
実施例6.より多くのバニリンを含むポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
バニリンの量を0.1gに増加させたことを除いて、実施例2~5に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。
【0110】
実施例7.より少ないバニリンを含むポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
バニリンの量を0.025gに減少させたことを除いて、実施例2~5に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。
【0111】
実施例8.pH=2、理論的ローディング=14.8%でのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
化合物1Aの理論的ローディングが14.8%(w/w)であったことを除いて、実施例2に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。化合物1Aの測定された最終ローディングは3.3%(w/w)であった。
【0112】
実施例9.pH=3、理論的ローディング=14.8%でのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製:
(1)水溶液が0.01M HClの代わりに1mM HCl(pH=3)を含有し、かつ(2)化合物1Aの理論的ローディングが14.8%(w/w)であったことを除いて、実施例2に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。化合物1Aの測定された最終ローディングは3.6%(w/w)であった。
【0113】
実施例10.pH=4、理論的ローディング=14.8%でのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子組成物の調製
化合物1Aの理論的ローディングが14.8%(w/w)であったことを除いて、実施例3に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。化合物1Aの測定された最終ローディングは3.8%(w/w)であった。
【0114】
実施例11.ナノ粒子組成物の物理化学的特徴付け
サイズおよびサイズ分布は、リン酸緩衝液(pH7)中での動的光散乱法(Malvern ZetasizerおよびNanoparticles Tracking Analyzer (NTA))を用いて測定した。乾燥重量は、3つの試料アリコートを50℃で一晩乾燥させることによって決定した。LC-DAD-QTOF分析のために、3つの試料アリコートを秤量/ピペッティングし、DMSOに溶解し、さらに希釈して、薬物ローディングおよび安定性を決定した。化合物1Aの濃度は、アムホテリシンB USPの3つの試料を標準として用いて決定した。LC-QTOF法は以下の通りであった:
移動相:0.1ギ酸%[A]およびアセトニトリル[B]
HPLCシステム:QTOFに接続された1290 DADを有するAgilent 1290 HPLC
カラム:Polaris 3 C18、150×2mm、3μm(Varian)
カラムサーモスタット:30℃
流速:0.3ml/分
注入体積:2μL
波長:化合物1A/AMBの測定用 385nm、スキャン190~600nm
ソフトウェア:MassHunter定性分析B.0.600
ポストタイム:5分間
QTOFをネガティブエレクトロスプレーモード(ESI-)で操作した
HPLC勾配を表1に示す。
【表1】
【0115】
サイズおよびサイズ分布
ナノ粒子サイズ、サイズ分布、乾燥重量、および薬物ローディングを表2に要約する。
【表2】
【0116】
表3は、NTAによって測定された粒径分布の詳細を提供する。
【表3】
【0117】
薬物ローディングおよび安定性
実施例1からの組成物において、粒子中のポリエンの42モル%は化合物1Aであった。化合物1Aのローディングは1.1%(w/w)であり、総ポリエンローディングは2.5%(w/w)であった。
【0118】
実施例2からの組成物は、全ポリエンの10%が実施例1で見られたのと同じ主要なポリエン不純物に相当するので、実施例1と同じポリエン不純物を含むが、より低いレベルであることが見出された。液体試料中の化合物1Aの濃度は0.59mg/mLであり、粒子中の2.8%(w/w)の化合物1Aのローディングを与えた。
【0119】
実施例3の組成物では、化合物1Aの有意な分解は観察されなかった。液体試料中の化合物1Aの濃度は0.40mg/mLであり、粒子中の化合物1Aの3.9%(w/w)のローディングをもたらした。少量のわずかなポリエン不純物が観察可能であったが、それらの濃度は、それらの質量を決定するには低すぎた。
【0120】
ポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子中の化合物1Aの長期安定性
実施例3の組成物を調製の2週間後に再分析した。4℃で2週間の保存による分解は、λ=385nmでのUVによって観察されなかった。
【0121】
より長い期間ならびに異なる温度および湿度レベルを使用して、組成物の貯蔵寿命を試験することができる。
【0122】
実施例12.実施例3の組成物の有効性
組成物の有効性は、最小発育阻止濃度アッセイを用いて決定し、指標生物の50%発育阻止を与える活性化合物の濃度を報告した(MIC50)。アッセイは、各条件について2つ(Mueller-Hinton培地)または3つ(M19培地)の平行細胞培養物を有するウェルプレートにおいて実施した。
【0123】
細胞培養培地:NaClを含まないミューラー・ヒントン(Mueller-Hinton)およびM19
指標生物:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231
活性化合物および対照のストック溶液:
・アムホテリシンB(USP):真空乾燥粉末をDMSOに溶解して2.5mg/mLとし、最高濃度のウェルにおいて2.5μg/mLの接種後最終濃度を与えた。
・化合物1A(カスタム製造):粉末をDMSOに溶解して2.5mg/mLとし、最高濃度のウェルにおいて2.5μg/mLの化合物1Aの接種後最終濃度を与えた。バッチは70%純粋であると仮定する。
・実施例3の組成物:製剤は、18mg/mLのナノ粒子を含む懸濁液であった。懸濁液を培地およびカンジダ・アルビカンス接種材料中に希釈して、5μg/mLの化合物1Aおよび130μg/mLのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)の最終濃度にした。この溶液から10希釈物を調製し、最低濃度で0.009μg/mlの化合物1Aを与えた。
・空のポリ(エチルブチルシアノアクリレート)粒子:空のポリ(エチルブチルシアノアクリレート)粒子を参照として使用した。空のポリ(エチルブチルシアノアクリレート)は、10%(w/w)のバニリン濃度で、pH1で調製したこと以外は、実施例2および3と同様のやり方で製造した。実施例3と同様のやり方で粒子を希釈した。試験した最も高いポリ(エチルブチルシアノアクリレート)濃度は130μg/mLであった。
発育測定(growth measurement)はOD600で行った。
【0124】
実施例11に記載されるように、化合物1Aは、実施例3の組成物中で安定であることが見出された。この物質を、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)に対するin vitro有効性アッセイで試験して、活性化合物が、純粋な化合物1Aと同じ程度までカンジダ・アルビカンス(C.albicans)を阻害するのに充分な速度で粒子から放出されることを検証した。
【0125】
測定されたMIC50値は、菌株がM19培地中でより速く発育するので、Mueller-Hinton培地中よりもM19培地中で高かった。プレートを夜通し手動で測定した。M19培地およびMueller-Hinton培地におけるアッセイは両方とも、実施例3の組成物のMIC50が純粋な化合物1AのMIC50よりも2~2.5倍高いことを示した。対照として、空のポリ(エチルブチルシアノアクリレート)粒子の阻害をM19培地中で試験した。カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)ATCC 10231の発育阻止は、試験した最高濃度である130μg/mLのポリ(エチルブチルシアノアクリレート)の濃度まで観察されなかった。試験した実施例3の組成物の最高濃度(5μg/mL)は、130μg/mLのポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)を含有した。
【表4】
【0126】
実施例13
色素搭載ナノ粒子(dye-loaded nanoparticle)の製造および特徴付け:化合物1またはその薬学的に許容される塩(例えば、化合物1Aまたはその薬学的に許容される塩)を含む他のナノ粒子を調製する。例えば、PEGコーティングされかつ色素搭載されたポリマーまたは脂質のナノ粒子を、以下のようにミニエマルションプロセスによって調製する:
【0127】
ポリマーナノ粒子:アルキルシアノアクリレート(例えば、n-ブチルシアノアクリレート)、および薬学的に許容される油(例えば、Miglyol)と添加された近赤外色素(例えば、DIR)との混合物からなる油相を調製する。次いで、1つまたは複数の界面活性剤(例えば、Brij L23および/またはKolliphor HS 15)を含有する水相を油相に添加する。Kolliphor HS 15などの特定の界面活性剤を重合開始剤として使用して、ポリエチレングリコールに共有結合したポリマー賦形剤(例えば、ポリ(アルキルシアノアクリレート))を製造することができる。油相と水相を混合することによって水中油型エマルションを調製する。分散液を水性流体に対して透析して(例えば、Spectra/Por透析膜 MWCO 100,000Daを用いる)、ナノ粒子に組み込まれていない界面活性剤を除去する。
【0128】
脂質ナノ粒子:脂質の混合物(例えば、ステアリン酸およびパルミチン酸イソプロピル)、および薬学的に許容される油(例えば、Miglyol)と添加された近赤外線色素(例えば、DIR)との混合物からなる脂質相を、融解するまで予熱する。蒸留水および添加剤(例えば、界面活性剤(例えば、レシチン8OHおよびAndean QDP Ultra))からなる水相を調製する。脂質相と水相を混合する。
【0129】
化合物1Aを搭載したナノ粒子の例示的な製造および特徴付け:PEGコーティングされ、化合物1Aが搭載されたポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子を、以下のようにミニエマルション法によって調製する:アルキルシアノアクリレート(例えば、2-エチル-ブチルシアノアクリレート)、薬学的に許容される油(例えば、Miglyol)および化合物1Aを含有する油相を調製する。界面活性剤(例えば、Brij L23およびKolliphor HS 15)を含有する水相を調製する。Kolliphor HS 15は、重合開始剤としても機能し得る。油相と水相を混合することによって水中油型エマルションを調製する。分散液を水性流体に対して大規模に透析して、粒子と結合していない界面活性剤を除去する(例えば、透析膜、MWCO 100,000Daを用いる)。
【0130】
動的光散乱法(例えば、Zetasizer)を使用して、流体力学的直径、流体力学的直径分布、およびゼータ電位を決定することができる。最終溶液の乾燥重量含有量(ナノ粒子濃度)は、充分な乾燥後に決定することができる。カプセル化された薬物の量を計算するために、薬物内容物を粒子から抽出し、抽出された化合物1Aの量をLC-MS/MS法を用いて定量する。動的光散乱法は、典型的には、薬物搭載ナノ粒子のナノ粒子サイズ(z平均)を示す。
【0131】
ナノ粒子安定化マイクロバブルの製造および特徴付け:
ナノ粒子に会合するガス充填マイクロバブルを以下のように製造する:表面活性化合物(例えば、2%(w/w)カゼイン)を含有する溶液を調製する。化合物1Aを搭載したPEG化ナノ粒子(例えば、実施例2、3、および8~10またはこの実施例に記載されるもの)をカゼイン溶液と混合する。その溶液をガス(例えば、空気またはパーフルオロプロパン)で飽和させる。バイアルを、セプタムを使用してガス充填雰囲気下で密封する。マイクロバブル含有製剤のいくつかの調製方法において、マイクロバブルガスを添加する前に組成物を脱気してもよい。
【0132】
得られたナノ粒子安定化マイクロバブルの平均サイズおよび濃度を、20倍位相差対物レンズおよび細胞計数器(血球計算盤)を使用する光学顕微鏡画像から決定する。マイクロバブルを計数し、ImageJ画像解析装置を用いて画像を解析することによってサイズを計算する。
【0133】
蛍光顕微鏡法(薬物の代わりに蛍光色素のみをカプセル化した同じタイプのナノ粒子を使用する)および電子顕微鏡法を用いて、ナノ粒子が安定化(単)層を形成するマイクロバブルと会合していることを確認する。
【0134】
実施例14
この研究では、肺を標的とする特異的薬物送達についてのナノ粒子と会合したマイクロバブルの可能性を、例えば健常動物(例えばマウス)において評価する。ナノ粒子によって安定化されたガス充填マイクロバブルによって高い局所濃度が達成される。
【0135】
方法
この研究は、各群1匹の動物で設計される。近赤外蛍光色素で標識されたナノ粒子を、実施例13に記載の手順に従って開発し、使用する。全身動物用イメージャーを用いて、これらのナノ粒子を小動物の体内に局在させる。
【0136】
実験において、試験動物を屠殺する必要がある場合、動物に麻酔をかけて実験に使用し、目覚める前に屠殺してもよい。動物施設での保管中、動物の福祉をモニターし、動物に食物および水を自由に与えた。
【0137】
動物実験:
1.動物を無作為に選択し、体重を測り、完全麻酔を提供する溶液(例えば、フェンタニル/メデトミジン/ミダゾラム/水(2:1:2:5))を皮下注射する。
2.カテーテルを設置し、静脈内注射を可能にする。
3.所望の気泡を注入する。
4.動物を、安楽死させる前に所望の時間眠らせる。
5.次いで、肺、肝臓、腎臓および脾臓を採取することができる。
6.臓器からの蛍光は、完全動物用イメージャー(例えば、Pearl)を用いて撮像することができる。
【0138】
ナノ粒子:
動物実験を行うために、近赤外標識ナノ粒子を使用する。
【0139】
ナノ粒子のみを含有する対照に続いて、マイクロバブル(例えば、実施例13に記載されるような)と会合したナノ粒子を含む医薬組成物を試験し、ここで、マイクロバブルはガス(例えば、パーフルオロプロパン)を含有する。
【0140】
結果を直接比較するために、複数(例えば、3匹)の動物からの肺を一緒に撮像する。
【0141】
脂質ナノ粒子を有するマイクロバブル:
脂質ナノ粒子を用いてマイクロバブルを製造し、試験する。
【0142】
肺の蓄積の安定性を試験して、ナノ粒子が肺に残存するか、または他の臓器に再分布するかを評価する。次いで、所望の時間後(例えば、注射の1時間後および2時間後)の動物(例えば、2匹)における生体内分布を調べる。
【0143】
肺におけるナノ粒子の高い局所濃度は、肺組織への医薬品有効成分の標的化送達に有益である。
【0144】
実施例15
この研究では、ナノ粒子によって安定化されたガス充填マイクロバブルを、肺への標的薬物送達において試験する。この研究は、例えば、健常マウスにおいて行われる。
【0145】
方法
蛍光色素(例えば、近赤外色素)で標識されたナノ粒子を、実施例13に記載のように調製する。全身動物用イメージャーを用いて、これらのナノ粒子を小動物の体内に局在させる。
【0146】
実験において、試験動物を屠殺する必要がある場合、動物に麻酔をかけて実験に使用し、目覚める前に屠殺してもよい。
【0147】
ナノ粒子安定化マイクロバブルの製造:ナノ粒子に会合するガス充填マイクロバブルを以下のように製造する:
【0148】
表面活性化合物(例えば、2%(w/w)カゼイン)を含有する溶液を調製する。色素搭載PEG化NPをカゼイン溶液と混合する。その溶液をガス(例えば、六フッ化硫黄またはパーフルオロプロパン)で飽和させる。あるバッチでは、マイクロバブルとナノ粒子との間の会合をさらに促進するために、修飾剤(例えば、尿素)を添加する。セプタムを使用してガス充填雰囲気下でバイアルを密封する。動物実験は、実施例10に記載されるように実施する。各動物に、例えば、以下のいずれかを静脈内注射する:
A)ポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子によって安定化されたパーフルオロプロパン充填マイクロバブル。
B)ポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子によって安定化された尿素を含むパーフルオロプロパン充填マイクロバブル。
C)ポリ(2-エチルヘキシルシアノアクリレート)ナノ粒子によって安定化された六フッ化硫黄充填マイクロバブル。
【0149】
注射後、画像を撮影し、蛍光強度を用いて試験動物の肺における薬物充填ナノ粒子の生体内分布を評価する。
【0150】
実施例16
最小発育阻止濃度(MIC)および最小殺真菌濃度(MFC)によって測定して、酵母および糸状菌株の広範なパネルに対して化合物1Aの有効性を試験した。アムホテリシンB(AmB)、カスポファンギン(Cas)、フルコナゾール(Flu)、およびボリコナゾール(Vor)を比較物質として試験した。
【0151】
材料:分離株は、Center for Medical Mycologyのカルチャーコレクションから取得し、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラータ(C.glabrata)、カンジダ・パラプシローシス(C.parapsilosis)、カンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)、クリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニガー(A.niger)、アスペルギルス・テレウス(A.terreus)、フザリウム属(Fusarium spp.)、およびムコールミセテス(mucormycetes)(リゾプス属(Rhizopus)およびムコール属(Mucor spp.))のそれぞれ20菌株を含んでいた。また、カンジダ・クルセイ(C.krusei)、アスペルギルス・テレウス(A.terreus)、およびペニシリウム属(Penicillium spp.)の各々の10菌株、ならびにペシロマイセス属(Paecilomyces spp.)の5菌株も含まれた。パネルは、他の現行の抗真菌剤に対して既知の高いMICを有する17種のカンジダ菌株を含んでいた;最近の臨床株も含めた。試験には、15種の二形性真菌分離株も含まれた。
【0152】
最小発育阻止濃度:MIC試験は、それぞれ酵母および糸状菌の感受性試験のためのClinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)M27-A3およびM38-A2標準に従って行った(クリプトコッカス(Cryptococcus)単離株は72時間インキュベートした)。酵母菌株の場合、インキュベーション温度および時間は、それぞれ35℃および24~48時間であり、接種材料サイズは0.5~2.5×10CFU/mlであった。糸状菌株の場合、接種サイズは0.4~5×10CFU/mlであり、インキュベーション時間は菌株および薬物に特異的であった。クリプトコッカス属(Cryptococcus)についてYNBを使用したことを除いて、全体を通して試験培地はRPMI 1640であった。化合物1Aの阻止エンドポイントは、24時間および48時間の両方のインキュベーション後に50%および100%で記録した;アスペルギルス属(Aspergillus)の菌株に対するカスポファンギンの結果は、最小有効濃度(MEC)、対照のコンフルエントな発育と比較して小さく丸みを帯びたコンパクトな発育をもたらす最低濃度として読み取った。
【0153】
最小殺真菌濃度:MFCの決定は、Canton et al., Diagn. Microbiol. Infect. Dis., 45:203-206, 2003, and Ghannoum and Isham, Infectious Diseases in Clinical Practice, 15(4):250-253, 2007によって以前に記載された改良法に従って行った。具体的には、MICアッセイからの各透明ウェルの全内容物をポテトデキストロース寒天培地上で継代培養した。抗真菌剤のキャリーオーバーを回避するために、アリコートを寒天に浸し、次いで、乾燥後に分離のために画線(ストリーク)し、細胞を薬物源から除去した。殺真菌活性は、開始接種菌数からのコロニー形成単位(CFU)数/mlの99.9%以上の減少として定義され、一方、静真菌活性は99.9%未満の減少として定義される。薬物は、そのMFC/MIC比が4以下(≦4)である場合、殺真菌性であるとみなされ、その比が4超(>4)である場合、静真菌性であるとみなされる。MICおよびMFC値は、それらが2希釈以内であれば同等であると考えられる。
【0154】
エンドポイントの決定:化合物1AのMICエンドポイントはすべて、発育対照(growth control)と比較して50%および100%阻止の両方で記録した。化合物1Aは、全てのペシロマイセス属(Paecilomyces spp.)およびカンジダ・パラプシローシス(C.parapsilosis)菌株に対して50%および100%阻止の両方を示したが、以下では、全てのMIC値を100%阻止エンドポイントで報告する。
【0155】
インキュベーション時間の決定:化合物1Aへの曝露後の発育の阻止を、24時間および48時間のインキュベーション後に記録した。これに対する例外は、それらの急速な発育速度のために24時間でのみ読み取られたムコールミセテス(mucormycetes)、および全ての他の比較対象のインキュベーション時間と一致するように72時間後に読み取られたクリプトコッカス属(Cryptococcus)の菌株である。試験した菌種のいずれにおいても、24時間で記録されたMIC値と48時間で記録されたMIC値との間に差は認められなかった。しかしながら、ペニシリウム属(Penicillium spp.)およびペシロマイセス属(Paecilomyces spp.)のいくつかの菌株は、24時間でMICアッセイにおいて目に見える発育を示さなかったので、以下においてすべてのMIC値は48時間のインキュベーション時点で報告される。
【0156】
結果
カンジダ属の菌株に対するMICおよびMFCの決定:表5は、フルコナゾール感受性株(n=13)および耐性株(n=7)の両方を含むカンジダ・アルビカンス(C.albicans)に対する化合物1Aおよび比較物質のMICおよびMFCデータを示す。MIC50は、試験した株の50%を阻止する最低濃度として定義され、MIC90は、試験した株の90%を阻止する最低濃度として定義される。MFC50は、試験した株の50%を死滅させるための最低濃度として定義され、MFC90は、試験した株の90%を死滅させるための最低濃度として定義される。
【表5】
【0157】
表6は、化合物1Aおよび比較物質のカンジダ・グラブラータ(C.glabrata)株に対する殺真菌活性を示す。
【表6】
【0158】
表7は、カンジダ・クルセイ(C.krusei)株に対する全ての薬物のMICおよびMFCデータを示す。
【表7】
【0159】
表8は、カンジダ・パラプシローシス(C.parapsilosis)に対する殺真菌活性を示す。
【表8】
【0160】
表9は、化合物1Aおよび比較物質のカンジダ・トロピカリス(C.tropicalis)に対する殺真菌活性を示す。
【表9】
【0161】
表10は、全てのカンジダ属の菌株に対する化合物1Aおよび比較物質のMICおよびMFCデータを要約する。
【表10】
【0162】
クリプトコッカス属(Cryptococcus)の菌株に対するMICおよびMFCの決定
表11は、化合物1Aおよびその比較物質のクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cr.neoformans)株に対する活性を示す。
【表11】
【0163】
アスペルギルス属(Aspergillus)の菌株に対するMICおよびMFCの決定
表12~15は、個々のアスペルギルス属の菌種に対する化合物1Aおよび比較物質のMICおよびMFCデータを示す。表16は、試験した全てのアスペルギルス属の菌株についてのMICおよびMFCデータの要約である。
【0164】
【表12】
【0165】
【表13】
【0166】
【表14】
【0167】
【表15】
【0168】
【表16】
【0169】
治療が困難な/希少菌類に対するMICおよびMFCの決定
表17は、フザリウム属(Fusarium)菌株についてのMICおよびMFCデータを示す。
【表17】
【0170】
表18は、フザリウム属(Fusarium)菌株についてのMICおよびMFCデータを示す。
【表18】
【0171】
ペニシリウム属(Penicillium)およびペシロマイセス属(Paecilomyces)の菌株に対する結果は、それぞれ表19および20に見ることができる。表20は、ペシロマイセス属の菌株の数(5)が少なすぎてMIC50およびMIC90値を計算することができなかったので、濃度範囲のみを含む。
【0172】
【表19】
【0173】
【表20】
【0174】
二形性真菌に対するMICおよびMFCの決定
表21は、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、コクシジオイデス・イミチス(Coccidioides immitis)、およびヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)の菌株のMICデータを示す。これら真菌はMFCを実施するための標準化された方法がない制限された真菌であるため、これらの真菌に対してMFCは実施しなかった。
【表21】
【0175】
他の抗真菌剤に対する高いMICを有する他のカンジダ属菌株に対するMICおよびMFCの決定
表22は、高いMICを有するカンジダ属菌株に対する化合物1AのMICデータを非ポリエン比較物質と比較する(n=17)。
【表22】
【0176】
実施例17
免疫無防備状態のマウスモデルにおける播種性アスペルギルス症の治療において化合物1Aの有効性を試験し、アムビゾーム、ボリコナゾール、およびカスポファンギンと比較した。
【0177】
それぞれ約30gの雌CD-1マウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)をモデルとして使用した。動物室の環境管理は、16~22℃の温度、30~70%の相対湿度、および12:12の明暗サイクルを維持するように設定された。
【0178】
標準接種材料の調製
生物:アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)AF91は、Culture Collection of CWRU Center for Medical Mycologyから入手した。凍結ストックから、細胞をポタトデキストロース寒天培地(PDA)プレート中で継代培養した。次いで、0.05% Tween80を含む滅菌生理食塩水を用いて細胞を回収し、遠心分離し、通常の生理食塩水(0.85% NaCl)で3回洗浄した。1xl0のチャレンジ接種材料を、血球計算盤(hemacytometer)を用いて調製した。
【0179】
接種数の検証:接種物の数を確認するために、アスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)の作業用分生子懸濁液の10倍希釈物をPDA培地上に播種した。プレートを37℃で2~4日間インキュベートし、コロニー数を決定した。
【0180】
免疫抑制:マウスに以下の用量でシクロホスファミドを皮下投与した:感染4日前に150mg/kg、感染1日前に100mg/kg、および接種2日後に100mg/kg。チャレンジ当日に、各群の1匹のマウスから血液を採取し、白血球数を計数し、免疫抑制を確認した。
【0181】
感染:各マウスに、0.1mlの生理食塩水中の1xl0分生子を(尾静脈を介して)チャレンジした。接種材料のIV投与の成功および接種材料の確認後に動物が感染したとみなした(セクション7d参照)。処置群および対照群の有効性を、組織真菌負荷(tissue fungal burden)および生存を指標として用い、組織真菌負荷について群あたり5匹のマウス(無作為に選択した)および生存について群あたり10匹のマウスを用いて評価した。
【0182】
試験化合物:スポンサーは試験物品である化合物1A(バッチELN EXP-11-AJ1675、効力928mg/g)を提供した。それを、-20℃で保存したDMSO中の化合物1Aのストック溶液から使用日に調製した5%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する5%グルコース水溶液中で静脈内投与した。比較物質(アムビゾーム、ボリコナゾールおよびカスポファンギン)は、Center for Medical Mycologyによって薬局から購入した。これらを製造業者の指示に従って滅菌水に溶解し、選択された用量を含有するアリコートを得た。
【0183】
この報告では、アムビゾームの用量および濃度は、アムホテリシンBの含有量として表される。
【0184】
処置群:感染マウスを以下の群に無作為化した(群当たり、組織真菌負荷について5匹、生存について10匹)。
【0185】
実験I-処置群は以下の通りであった:化合物1A 1.0mg/kg、化合物1A 0.5mg/kg、アムビゾーム 7.5mg/kg、アムビゾーム 3.5mg/kg、ボリコナゾール 7.5mg/kg、カスポファンギン 1.0mg/kg、ビヒクル(5%DMSOを含有する5%グルコース水溶液)、および未処置対照群。
【0186】
実験II-処置群は以下の通りであった:化合物1A 1.0mg/kg、化合物1A 0.5mg/kg、アムビゾーム 1.0mg/kg、アムビゾーム 0.5mg/kg、および未処置対照群。全ての処置を静脈内投与により行った。
【0187】
処置のスケジュール:接種から2時間後に開始して、動物を7日間処置し、化合物1Aおよびカスポファンギンは1日1回投与し、アムビゾームは実験Iでは1日おきに、実験IIでは毎日投与した。ボリコナゾールは、その急速なクリアランスのために、8時間間隔で1日2回投与した。
【0188】
組織真菌負荷:処置の最終日の1日後にマウスを屠殺した;次いで、腎臓および肺を無菌的に取り出し、秤量した。組織をホモジナイズし、リン酸緩衝生理食塩水で連続希釈した。ホモジネートをPDAプレート上で48時間培養して、コロニー形成単位(CFU)を決定した;組織真菌負荷はCFU/組織(g)として表した。
【0189】
生存分析:感染したマウスをモニターし、病気の徴候(すなわち、嗜眠、体重減少、全身成長障害)または死亡率を接種後28日まで毎日2回記録した。各処置群の平均体重も毎日記録した。食物/飲料を摂取できない瀕死の動物は安楽死させた。
【0190】
統計分析:生存の差はカプラン・マイヤー法を用いて比較し、腎臓または肺における平均CFUはノンパラメトリックな独立したマン・ホイットニー統計検定を用いて比較した。0.05未満(<0.05)のP値を統計的に有意とみなした。
【0191】
結果
in vitro活性:表23は、アスペルギルス・フミガーツス(A.fumigatus)AF91(感染株)に対する化合物1Aおよび比較薬剤ならびにアムホテリシンBのin vitro活性を示す。
【表23】
【0192】
実験I
生存:図1において、生存は、処置の1日目の群における動物の総数に対するパーセンテージとして与えられる。
【0193】
腎臓組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表24)。腎臓の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【0194】
肺組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表24)。肺の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【0195】
【表24】
【0196】
実験II
生存:図2に見られるように、生存は、処置の第1日の群における動物の総数に対するパーセンテージとして与えられた。
【0197】
腎臓組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表25)。腎臓の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【0198】
肺組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表25)。肺の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【0199】
【表25】
【0200】
実施例18
免疫無防備状態のマウスモデルにおける播種性カンジダ症の処置におけるアムビゾーム、ボリコナゾール、フルコナゾールおよびカスポファンギンと比較した化合物1Aの有効性を評価する。
【0201】
それぞれ約20gの雌BALB/cマウス(Charles River Laboratories,Wilmington,MA)をモデルとして使用した。動物室の環境管理は、16~22℃の温度、30~70%の相対湿度、および12:12の明暗サイクルを維持するように設定した。
【0202】
標準接種材料の調製:臨床カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)SC5314株をCMM Culture Collectionから入手し、感染性真菌として使用した。カンジダ・アルビカンスをサブローデキストロース寒天培地(Sabouraud Dextrose Agar)(SDA)上にプレーティングし、37℃で2日間インキュベートした。カンジダ・アルビカンス細胞を遠心分離および生理食塩水(0.85% NaCl)での洗浄によって回収した。血球計数盤を用いて5xl0のチャレンジ接種材料を調製した。
【0203】
接種数の検証:接種物質の数を確認するために、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)の作業用分生子懸濁液の10倍希釈物をSDA培地上に播種した。プレートを37℃で2日間インキュベートし、コロニー数を決定した。
【0204】
免疫抑制:マウスに以下の用量のシクロホスファミドを皮下投与した:感染4日前に150mg/kg、感染1日前に100mg/kg、および接種2日後に100mg/kg。チャレンジ当日に、各群の1匹のマウスから血液を採取し、白血球数を計数し、免疫抑制を確認した。
【0205】
感染:各マウスに、0.1mlの生理食塩水中の1xl0分芽胞子を(尾静脈を介して)チャレンジした。接種材料のIV投与の成功および接種材料の確認後に動物が感染したとみなした。処置群および対照群の有効性を、組織真菌負荷および生存を指標として用い、組織真菌負荷について群あたり5匹のマウスおよび生存について群あたり10匹のマウスを用いて評価した。実験Iの組織負荷アームと生存アームは、2つの異なる機会に別々に行った。
【0206】
試験化合物:スポンサーは試験物品である化合物1A(バッチELN Exp-11-AJ1675、効力928mg/g)を提供した。それを、-20℃で保存したDMSO中の化合物1Aのストック溶液から使用日に調製した5%ジメチルスルホキシド(DMSO)を含有する5%グルコース水溶液中で静脈内投与した。比較物質(アムビゾーム、ボリコナゾール、カスポファンギンおよびフルコナゾール)は、Center for Medical Mycologyによって薬局から購入した。これらを製造業者の指示に従って滅菌水に溶解し、選択された用量を含有するアリコートを得た。
【0207】
この報告では、アムビゾームの用量および濃度は、アムホテリシンBの含有量として表される。
【0208】
処置群:感染マウスを以下の群に無作為化した(群あたり、組織真菌負荷について5匹、生存について10匹)。
【0209】
実験I-処置群は以下の通りであった:化合物1A 0.7mg/kg、化合物1A 0.35mg/kg、アムビゾーム 5.4mg/kg、アムビゾーム 2.7mg/kg、ボリコナゾール 4mg/kg、カスポファンギン 0.35mg/kg、フルコナゾール 6mg/kg、ビヒクル(5%DMSOを含有する5%グルコース水溶液)、および未処置対照群。
【0210】
実験II-処置群は以下の通りであった:化合物1A 0.7mg/kg、化合物1A 0.35mg/kg、アムビゾーム 0.7mg/kg、アムビゾーム 0.35mg/kg、および未処置対照群。全ての処置を静脈内投与により行った。
【0211】
処置のスケジュール:接種の2時間後に開始して、動物を7日間処置した。ボリコナゾールを除いて、処置は1日1回行った。ボリコナゾールは、その急速なクリアランスのために、8時間間隔で1日2回投与した。
【0212】
組織真菌負荷:処置の最終日の1日後にマウスを屠殺し、腎臓および脳を無菌的に取り出し、秤量した。組織をホモジナイズし、リン酸緩衝生理食塩水で連続希釈した。ホモジネートをSDAプレート上で48時間培養して、コロニー形成単位(CFU)を決定した;組織真菌負荷はCFU/組織(g)として表した。
【0213】
生存分析:感染したマウスをモニターし、病気の徴候(すなわち、嗜眠、体重減少、全身成長障害)または死亡率を接種後28日まで毎日2回記録した。各処置群の平均体重も毎日記録した。食物/飲料を摂取できない瀕死の動物は安楽死させた。
【0214】
統計分析:腎臓または脳における平均log CFUの差は、ノンパラメトリックな独立したマン・ホイットニー検定を用いて比較した。生存の差はカプラン・マイヤー検定を用いて比較した。<0.05のP値を統計的に有意とみなした。
【0215】
結果
in vitro活性:表26は、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)SC5314(感染株)に対する化合物1Aおよび比較薬剤ならびにアムホテリシンBのin vitro活性を示す。
【表26】
【0216】
実験I
生存:図3において、生存は、処置の1日目の群における動物の総数に対するパーセンテージとして与えられる。
【0217】
腎臓組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表27)。腎臓の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【0218】
脳組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表27)。脳の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【表27】
【0219】
実験II
生存:図4において、生存は、処置の1日目の群における動物の総数に対するパーセンテージとして与えられる。
【0220】
腎臓組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表28)。腎臓の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【0221】
脳組織真菌負荷:組織真菌負荷は、最後の処置の1日後、または瀕死の動物の場合、死亡直後に評価した(表28)。脳の真菌負荷を分析し、平均log CFU±標準偏差として与えた。
【表28】
【0222】
実施例19
合計で74個のバッチの粒子が製造された;これらのバッチのうちの26個はPACAを使用して製造され、48個は乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を使用して製造された。
【0223】
粒子の品質は、直径(粒子径)、多分散指数(PDI)、および懸濁液中での安定性を基準として用いて評価した。特に、調製された粒子は、以下のように、挙動良好である(well-behaving)、許容可能である(acceptable)、および挙動不良である(poorly behaving)として特徴付けられた:
挙動良好である粒子製剤は、<200nmのz平均径、<0.3のPDIを有し、かつ目に見える凝集物を有さない安定な懸濁液であった;
許容可能である粒子製剤は、>0.31のPDIを有する安定な懸濁液であった;
挙動不良である粒子製剤は、相分離および沈降しやすい不安定な懸濁液であった。
【0224】
この実施例で製造した製剤の概要を表29に示す。
【表29-1】
【表29-2】
【表29-3】
【表29-4】
【0225】
製剤45は以下の成分を用いて調製した。
【0226】
製剤49は以下の成分を用いて調製した。
【0227】
製剤73は以下の成分を用いて調製した。
【0228】
この実施例で使用したポリ(ラクチド-co-グリコリド)(ラクチド・グリコリド共重合体)は、50:50のラクチド-グリコリド比を有し、エステル末端化され、38000~54000Daの重量平均分子量を有していた。
【0229】
PACA粒子
PACA粒子の製造のための複数のパラメータを以下に記載するように変化させた。
【0230】
モノマー:異なるタイプのPACAモノマーを化合物1Aのカプセル化に使用した。目的は、重合反応を開始することなく油相中に化合物1Aを可溶化することであった。ポリ(エチルヘキシルシアノアクリレート)(PEHCA)は化合物1Aと共に作用した。ポリ(ブチルシアノアクリレート)(PEBCA)も試験した。これらの試験中、化合物1AがPEBCAの重合を開始させ、得られた粒子が満足のいくものではないことが判明した。
【0231】
pH:低pH(例えば、pH=1)での粒子の重合は、優れた特性(サイズ、サイズ分布およびコロイド安定性)を有する粒子を製造した。低pHでの化合物1Aの酸化のために、pH4というより高いpHが利用された。製造中における油相中での化合物1Aの保持は、pHに対するその感受性を低減させることが見出された。より低いpHレベルを試験して、より高いローディング(loading)およびローディング効率を有する粒子かどうかを決定した。これらの製剤のLC-DAD-QTOF分析は、分解が起こらず、したがってpHが化合物1Aの安定性の重要なパラメータではないことを実証した。
【0232】
界面活性剤:Brij L35とKolliphor HS 15の混合物を、典型的には、本明細書に記載される試験を通して使用した。Kolliphorが重合プロセスを開始させることが判明した。
【0233】
安定剤:溶液中の化合物1Aの安定性に対する効果についてアスコルビン酸を試験した。重合中にアスコルビン酸を水相に添加した。化合物1Aは、高濃度のアスコルビン酸で化学的に脱水されることが見出された。アスコルビン酸は、高濃度で化合物1Aの安定性を低下させることが見出された。
【0234】
化合物1Aの安定性に対する効果についてバニリンを試験した。バニリン有りおよび無しで一連の実験を行った。これらの実験において、バニリンは化合物1Aの溶解を助けることが見出された。バニリンの添加は、化合物1A/アクリレート懸濁液の安定性を低下させることも観察された。溶解した化合物1Aは、溶解していない化合物1Aと比較して、アクリレートモノマーとより容易に反応することが観察されたので、この効果の1つの考えられる説明は、油相中の化合物1Aの溶解度の改善にあり得る。
【0235】
一般に、PACA粒子の成分は以下を含有する:
・水相:Brij L35、Kolliphor HS 15、およびpHを調整するためのHCl
・油相:アクリレートモノマー(エチルヘキシルシアノアクリレート、エチルブチルシアノアクリレート、1-ヘプチルシアノアクリレート、および2-フェニルエチルシアノアクリレート/ブチルシアノアクリレート)、ミグリオール(Mygliol)、バニリン、化合物1A。1-ヘプチルシアノアクリレートおよび2-フェニルエチルシアノアクリレート/ブチルシアノアクリレートは化合物1Aを溶解させることができなかった。
重要な所見:
・PACA粒子は、懸濁液中で化合物1A(2週間試験)を安定化することができる
・バニリンは、化合物1Aに対して可溶化効果を有する
・PACA粒子は、許容できないレベルの化合物1Aの分解を引き起こすことなく、低pHで製造され得る
・水溶性抗酸化剤であるアスコルビン酸および6-O-パルミチル-L-アスコルビン酸は、アスコルビン酸の試験濃度で化合物1Aの安定性を改善することができなかった。
【0236】
化合物1Aの最良性能PACA製剤の1つについてのLC-UVトレースを図5に示す。
【0237】
PLGA粒子
PLGAナノ粒子を、化合物1Aのビヒクルとして調査した。PLGAは、PACAを超える特定の有利な特性を有する。例えば、PLGAポリマーは予め形成される。これは、ポリマー賦形剤が反応性関連の問題を伴わないことを意味する。さらに、PLGAは有機溶媒の使用を可能にし、それによってカプセル化前に化合物1Aの完全な溶解を可能にする。
【0238】
本明細書に記載されるPLGA粒子の調製に利用される方法は、ナノ沈殿法であった。この手順は、有機相(PLGA、化合物1A、および他の任意の疎水性成分、例えばバニリンを含有する)を、界面活性剤を含有する水溶液にゆっくり添加することを含む。あるいは、例えば、固定比の有機相および水相を、マイクロ流体チャネルを通る連続流中で混合することによって、マイクロ流体を使用することができる。
【0239】
PLGA粒子の初期試験中、磁気駆動撹拌を用いて有機相を水溶液に加えた。本発明者らは、1~3つの異なる濃度で4つの異なる界面活性剤を試験した。さらに、本発明者らは、多数の有機溶媒および有機溶媒の混合物を試験した。試験した条件を表30に要約する。
【0240】
表30は、PLGA製造中に試験した条件の概要を提供する。化合物1Aのパーセンテージは、理論的最大乾燥重量ローディング(theoretical maximum dry weight loading)を表す。
【表30】
【0241】
達成された化合物1Aの現在の最大ローディングは2.4%であるが、本発明者らはこれを>5%まで増加させることを望む。
【0242】
概して、PLGA粒子は以下を含む:
・水相:ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、Pluronic F68(F68)、Pluronic F127(F127)、Tween 80。濃度は、(w/v)パーセンテージで与えられる。
・有機相:有機溶媒、化合物1A、および潜在的に他の疎水性賦形剤(例えば、バニリン)
重要な所見:
・NMPは、PLGA粒子の調製のための最良性能の溶媒であった
・Pluronic FI27およびTween 80は、本明細書に記載されるPLGA粒子の調製のための最良性能の界面活性剤の一部であった。
・バニリンはPLGA粒子の薬物ローディングを改善しなかった。
・化合物1Aは、粒子製造中に安定なままである。
・化合物1Aの濃度は、製造中の希釈のために最終懸濁液中で低い。化合物1Aの濃度は、タンジェンシャルフローろ過(tangential flow filtration)によって高めることができる。
【0243】
化合物1Aの最良性能PLGA製剤の1つについてのLC-UVトレースを図6に示す。
【0244】
脂質粒子
脂質ベースの粒子を化合物1Aのビヒクルとして調査した。異なる脂質および油における化合物1Aの溶解度の調査を以下のリストに示すように行った。
・ステアリン酸
・ミリスチン酸
・パルミチン酸
・ミリスチン酸イソプロピル
・パルミチン酸イソプロピル
・1-ノナノール
・リナロール
・オイゲノール(eugenol)
・trans-シンナムアルデヒド
・酢酸リナリル
・p-アニスアルデヒド
・テトラグリコール
試験した油または脂質のいずれも、化合物1Aをうまく溶解しなかった。化合物1Aはtrans-シンナムアルデヒドにのみいくらか可溶性であった。
【0245】
実施例20
脱溶媒和法を用いて、エタノール、アセトンまたはN-メチルピロリドンなどの有機溶媒をアルブミンの水溶液にゆっくりと添加する。これにより、アルブミンが沈殿した。沈殿したタンパク質は、グルタルアルデヒドまたはトランスグルタミナーゼを用いて架橋することができる。タンパク質粒子を遠心分離および再懸濁、続いて透析によって精製する。
【0246】
実施例21
アルブミンナノ粒子は、尿素をアルブミン溶液に加えることによって製造される。これは、タンパク質の三次構造を不安定化し、タンパク質の疎水性ドメインを水相に曝露させ、粒子形成をもたらす。沈殿したタンパク質は、グルタルアルデヒドまたはトランスグルタミナーゼを用いて架橋することができる。タンパク質粒子を遠心分離および再懸濁、続いて透析によって精製する。
【0247】
実施例22
タンパク質は実施例21で説明したように不安定化されるが、代わりに高温で行われる。これによって、タンパク質のある程度の量の架橋も誘導された。
【0248】
実施例23
タンパク質がフィブロインであることを除いて、実施例20~22に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。
【0249】
実施例24
タンパク質がゼラチンであることを除いて、実施例20~22に記載されているのと同じ手順をこの実施例に使用した。
【0250】
実施例25
実施例20~24のいずれかに対して、化合物1Aを、N-メチルピロリドンまたはDMSO中の溶液からナノ粒子に膨潤させる。
【0251】
他の実施の形態
当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、記載された本発明の様々な修正および変形が明らかであろう。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されているが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】