(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】一体化された人工関節伸筋機構を有する植え込み可能な人工膝関節
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A61F2/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551717
(86)(22)【出願日】2021-02-27
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 US2021020140
(87)【国際公開番号】W WO2021174156
(87)【国際公開日】2021-09-02
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522339031
【氏名又は名称】イクステンサー,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ストックス,グレゴリー,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ブリンカー,マーク,アール.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB01
4C097BB08
4C097CC12
4C097CC18
4C097CC19
4C097SC07
(57)【要約】
大腿骨ステムコンポーネントと、脛骨ステムコンポーネントと、少なくとも1つのヒンジピボットポイント及び制限された回転軸を有するヒンジ付き関節とを備える植え込み可能な人工膝関節であって、伸筋系が損なわれている患者の自然な運動レベルをシミュレートするように構成された人工関節伸筋系を有する、植え込み可能な人工膝関節。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植え込み可能な人工膝関節であって、
第1の関節部及び第1の髄間ステム部を含み、前記第1のステム部は大腿骨に埋め込まれるように構成され、前記第1の関節部は少なくとも前記大腿骨の端部を置換するように構成される、大腿骨コンポーネントと、
第2の関節部及び第2の髄間ステム部を含み、前記第2のステム部は前記大腿骨に関連する脛骨に埋め込まれるように構成される、脛骨コンポーネントと、
を備え、
前記第1の関節部と前記第2の関節部は、前記大腿骨に対する前記脛骨の屈曲範囲を有する屈曲関節を形成するべく作動的に結合され、
前記屈曲関節に作動的に結合され、植え込み可能な人工膝関節が人体に植え込まれるときに伸筋機構が損なわれている個人の自然な膝の運動レベルをシミュレートするべく植え込まれた人工膝関節を伸展位置に付勢するように構成される、人工関節伸筋機構と、
を備える、人工膝関節。
【請求項2】
前記伸筋機構は、ばねシステム、磁石システム、油圧システム、又は空気圧システムのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項3】
前記屈曲関節は、大腿骨に対する脛骨の回転範囲も可能にするように構成される、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項4】
前記伸筋系は、屈曲への抵抗量の増加をもたらすように構成された少なくとも1つの摩擦面を有する屈曲抵抗システムを含む、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項5】
中心配向からいずれかの方向への回転への抵抗量の増加をもたらすように構成された少なくとも1つの摩擦面を有する回転抵抗システムをさらに含む、請求項3に記載の人工膝関節。
【請求項6】
前記屈曲関節は、単純なヒンジとして動作するように構成された単心軸関節、又は複数のピボットポイントを有する多心軸関節である、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項7】
前記屈曲関節の少なくとも一部は、バイオシース内にカプセル化される、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項8】
前記大腿骨ステムは、人工膝関節の植え込みの目的のために前記大腿骨コンポーネントに取り外し可能に結合される、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項9】
前記脛骨ステムは、人工膝関節の植え込みの目的のために前記脛骨コンポーネントに取り外し可能に結合される、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項10】
前記大腿骨ステムは、前記大腿骨コンポーネントと一体化され、前記脛骨ステムは、前記脛骨コンポーネントと一体化され、前記屈曲関節は、前記大腿骨コンポーネント及び脛骨コンポーネントの植え込み後に組み立てられるように構成される、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項11】
前記大腿骨ステムは、前記大腿骨コンポーネントと一体化され、前記脛骨ステムは、前記脛骨コンポーネントと一体化され、前記人工膝関節は、前記屈曲関節を分解せずに植え込まれるように構成される、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項12】
前記伸筋機構は、膝の屈曲に抵抗するために回転面への一定の圧力に依存する一定摩擦関節を含む、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項13】
前記伸筋機構は、前記屈曲関節を0°の屈曲に向けて付勢するように構成された流体シリンダを含む、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項14】
前記流体は液体又は気体である、請求項13に記載の人工膝関節。
【請求項15】
前記伸筋機構は、屈曲速度を制御するように構成される、請求項14に記載の人工膝関節。
【請求項16】
前記伸筋機構は、固定された膝関節をシミュレートするように構成されたロック関節を含む、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項17】
前記屈曲関節は、体重により作動される姿勢制御関節を含む、請求項1に記載の膝関節。
【請求項18】
植え込み可能な人工膝関節であって、
第1の関節部及び第1の髄間ステム部を含み、前記第1のステム部は、大腿骨に埋め込まれるように構成され、前記第1の関節部は、少なくとも前記大腿骨の端部を置換するように構成される、大腿骨コンポーネントと、
第2の関節部及び第2の髄間ステム部を含み、前記第2のステム部は前記大腿骨に作動的に関連する脛骨に埋め込まれるように構成され、前記第2の関節部は少なくとも脛骨の上部を置換するように構成される、脛骨コンポーネントと、
前記大腿骨に対する前記脛骨の屈曲範囲を有し、前記第2の関節部に結合された第1の関節部を含み、前記大腿骨コンポーネントと前記脛骨コンポーネントとの間の回転範囲も有する、屈曲関節と、
前記屈曲関節に作動的に結合され、植え込まれた人工膝関節を伸展位置に付勢し、伸筋機構が損なわれている個人の自然な膝の運動レベルをシミュレートするべく屈曲に抵抗するように構成され、ばねシステム、磁石システム、油圧システム、又は空気圧システムのうちの1つ又は複数を含む、人工関節伸筋機構と、
前記屈曲関節の可動部を周囲組織から分離するように構成された屈曲関節をカプセル化するバイオシースと、
を備える、人工膝関節。
【請求項19】
前記屈曲関節は、単純なヒンジとして動作するように構成された単心軸関節、又は複数のピボットポイントを有する多心軸関節である、請求項18に記載の人工膝関節。
【請求項20】
前記大腿骨ステム及び前記脛骨ステムのいずれか又は両方は、人工膝関節の植え込みの目的のために前記大腿骨コンポーネント及び前記脛骨コンポーネントに取り外し可能に結合される、請求項18に記載の人工膝関節。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願の開示は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる2020年2月28日に出願されたImplantable Prosthetic Knee Joint with Integrated Extensor Mechanismという名称の米国特許仮出願整理番号62/983,560の開示に基づいている。本出願の開示は、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる2020年7月8日に出願されたImplantable Prosthetic Knee Joint with Integrated Extensor Mechanismという名称の米国特許仮出願整理番号63/049,612の開示に関連している。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
該当せず。
【0003】
付録への参照
該当せず。
【0004】
技術分野
本発明は、伸筋系が損なわれている又は存在しない患者のための植え込み可能な全人工膝関節に関する。
【背景技術】
【0005】
従来の膝関節置換術、例えば、膝関節全置換術は、存続できる伸筋系を必要とし、これは、本開示の目的上、膝関節に安定性を提供する及び人が膝をのばすことを可能にする、筋肉、腱、靱帯、及び膝蓋骨を指す。膝関節全置換術を行う必要があるが伸筋系が機能していない人の場合、最も一般的な選択肢は、外部人工膝関節を使用したオッセオインテグレーション又はソケット技術を伴う膝上切断、又は膝関節の全固定(インサイチュ又はエクサイチュ)のいずれかである。どちらの手技も、生活の質の低下につながる可能性がある。しかしながら、米国では毎年150,000件を超える脚切断が行われている。膝上(経大腿)切断は膝下(下腿)切断よりも行われる頻度は低いが、膝上切断は最も高次の機能障害及び能力障害をもたらす。
【0006】
人工膝関節の設計及び構成によって、歩行サイクルの様々な段階で切断者に必要とされる随意制御の度合いが決まることが知られている。膝関節置換術における主要な要件は、切断者が必要以上の精神的又は身体的労力なしに快適に安全に歩くことを可能にする装具を設計することである。1回の歩行サイクル中に、各脚は伸展期と1つの遊脚期を経由する。伸展期は、踵が床に触れる(又は当たる)ときに始まる。その後、足の裏が地面に接触する。次に、体重が支持脚の上で直接揺動し、足の上で回転を続ける(立脚中期)。足首の上の体の質量が前方に回転を続ける際に、踵が地面から持ち上がる。踵が持ち上がった後で、ふくらはぎの筋肉によって体が前方に移動する。足全体が地面から上昇したとき、サイクルが終了する。平地歩行では、正常なヒトの膝は、立脚初期及び立脚中期での完全伸展(0°)の位置から、つま先が離れた直後の70°屈曲まで、およそ70°の範囲で回転する。人工膝は、安定性と揺動制御の両方に関する筋肉制御の欠失を補償しながら屈曲を可能にするべきである。したがって、人工膝関節を設計する際に、自然な膝関節の位置及び動きにできる限り忠実に近づけることが望ましい。
【0007】
膝関節は、矢状面での屈曲及び伸展と、垂直軸を中心とした内旋及び外旋との、2つの基本的な動きを有する。膝の周りの軟骨、半月板、靱帯、及び筋肉は、日常の活動中に実質的な応力に反応する。膝の本来の軟組織の安定性が損なわれている又は存在しない場合、屈曲及び伸展のゆるみが増し、屈曲ギャップの不均衡が生じる可能性がある。したがって、人工膝関節は、正常な膝の関節のゆるみと安定性にできる限り忠実に近づけるべきである。
【0008】
外部人工膝関節の遊脚期中の制御されない動きを最小にする又は防ぐために、遊脚期中の慣性力の作用をある程度付勢、調整、又は減衰させるべく、調節可能な制動装置などの制動装置が設けられる場合がある。例えば、ブレーキは、歩行の遊脚期中に継続的に係合及び係合解除され得る。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、そうでなければ膝上切断又は全膝固定を必要とする患者に使用するための、植え込み可能な全人工膝関節に向けられている。
【0010】
以下の図面は、本明細書の一部をなし、本発明のさらなる特定の態様を実証するために含まれる。本発明は、本明細書で提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面のうちの1つ又は複数を参照することでよりよく理解され得る。しかしながら、詳細な説明も図面も、請求項の範囲を限定することを意図する又はそのために提供されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】典型的なヒトの膝の伸筋機構を例示する図である。
【
図3】伸筋機構が損なわれている人のための一体化された人工関節伸筋機構を有するインサイチュ全人工膝関節を例示する図である。
【
図4】伸筋系が損なわれている人のための一体型の伸筋機構を有するインサイチュ髄間人工膝関節を例示する図である。
【
図5】伸筋系が損なわれている人のための一体化された伸筋機構を有するインサイチュ全人工膝関節の別の実施形態を例示する図である。
【
図6A】スマート人工膝及び関連技術の一実施形態を例示する図である。
【
図6B】スマート人工膝の制御システムの一実施形態を例示する図である。
【
図7】本発明の実施形態で有用なトップレベルアルゴリズムソフトウェアの論理フローチャートを例示する図である。
【
図8】伸筋系が損なわれている人のための一体化された伸筋機構を有するインサイチュ全人工膝関節の回転機構の一実施形態を例示する図である。
【
図9】伸筋系が損なわれている人のための一体化された伸筋機構を有するインサイチュ全人工膝関節の別の実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で開示される発明は、様々な修正及び代替的な形態が可能であるが、いくつかの特定の実施形態のみが、例として図面に示され、以下に詳細に説明される。これらの特定の実施形態の図及び詳細な説明は、発明概念又は付属の請求項の幅又は範囲を決して制限することを意図するものではない。むしろ、図及び詳細な説明は、当業者に発明概念を例示し、当業者が発明概念を作製及び使用できるようにするために提供される。
【0013】
上記の図面及び以下の特定の構造及び機能の記述は、発明の範囲又は提起した請求項の範囲を制限するために提示されるものではない。むしろ、図面及び本明細書での説明は、特許保護が求められる本発明を作製及び使用することを当業者に教示するために提供される。本発明の商業的実施形態のすべての特徴が明瞭及び理解のために説明又は示されているわけではないことが当業者には分かるであろう。本発明の態様を組み込んだ実際の商業的実施形態の開発には、商業的実施形態の開発者の最終目標を達成するために多くの実装固有の決定が必要であることも当業者には分かるであろう。そのような実装固有の決定は、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約への準拠を含む場合があり、それに限定されず、特定の実装、場所、及びその時々によって異なり得る。開発者の努力は、絶対的な意味で複雑で時間がかかる可能性があるが、それにもかかわらず、そのような努力は、本開示の恩恵を受ける当業者にとって日常的なことである。本明細書で開示及び教示される発明は、多くの様々な修正及び代替的な形態が可能であることを理解されたい。最後に、限定はされないが「a」などの単数形の用語の使用は、アイテムの数を限定することを意図するものではない。また、限定はされないが「上部」、「下部」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「下」、「上」、「横」などの関係用語の使用は、本明細書での説明において具体的に図面を参照して明確にするために用いられ、本発明又は付属の請求項の範囲を限定することを意図するものではない。
【0014】
本明細書で開示される本発明の態様は、装置、システム、方法、又はコンピュータプログラム製品として具体化され得る。したがって、特定の実施形態は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態、又は「回路」、「モジュール」、又は「システム」などのソフトウェアの態様とハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態をとり得る。さらに、本発明の実施形態は、コンピュータで読み取り可能なプログラムコードを有する1つ又は複数のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体で具体化されるコンピュータプログラム製品の形態をとり得る。
【0015】
本開示でのアイテム、コンポーネント、機能、又は構造は、1つ又は複数の「モジュール」として説明又はラベル付けされる場合がある。例えば、限定ではないが、モジュールは、カスタムVLSI回路又はゲートアレイ、論理チップ、トランジスタ、又は他の個別のコンポーネントなどの既製の半導体を含むハードウェア回路として構成されてもよい。モジュールはまた、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、プログラマブルアレイ論理、プログラマブルロジックデバイスなどのプログラマブルハードウェアデバイスとして実装されてもよい。モジュールはまた、様々なタイプのプロセッサで実行するためのソフトウェアとして構成されてもよい。実行可能コードのモジュールは、オブジェクト、手順、又は関数として編成され得るコンピュータ命令の1つ以上の物理ブロック又は論理ブロックを含み得る。モジュールの実行可能ファイルは、物理的に一緒に配置される必要はないが、論理的に結合されるとモジュールを構成し、規定の目的又は機能を達成する、異なる場所に格納された異種の命令を含み得る。実行可能コードのモジュールは、単一の命令又は多数の命令であり、いくつかの異なるコードセグメントで、異なるプログラム間で、及びいくつかのメモリデバイスにわたって分散される場合もある。同様に、データは、ここではモジュール内で識別及び例示され、任意の適切な形態で具体化され、任意の適切なタイプのデータ構造内に編成され得る。データは、単一のデータセットとして収集されてもよく、又は異なる記憶装置を含む異なる場所に分散されてもよく、少なくとも部分的に、単にシステム又はネットワーク上に電気信号として存在してもよい。モジュール又はモジュールの一部がソフトウェアで実装される場合、ソフトウェア部分は、1つ又は複数のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に格納され得る。
【0016】
本開示の全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」又は類似の用語への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の多くの可能な実施形態のうちの少なくとも1つに含まれることを意味する。「含む」、「備える」、「有する」という用語及びその変形は、特に明記されていない限り、「~を含むがこれらに限定されない」を意味する。アイテムの列挙されたリストは、特に明記されていない限り、いずれか又はすべてのアイテムが相互に排他的及び/又は相互に包括的であることを意味するものではない。特に明記されていない限り、「a」、「an」、及び「the」という用語はまた、「1つ又は複数の」を指す。
【0017】
さらに、一実施形態の記載された特徴、構造、又は特性は、任意の適切な方法で1つ又は複数の他の実施形態に組み合わされ得る。以下の説明では、本開示の実施形態の十分な理解を提供するために、プログラミング、ソフトウェアモジュール、ユーザ選択、ネットワークトランザクション、データベースクエリ、データベース構造、ハードウェアモジュール、ハードウェア回路、ハードウェアチップの例などの多くの具体的な詳細が提供される。本開示の利益を享受する当業者は、本発明が、具体的な詳細のうちの1つ又は複数なしに、又は他の方法、コンポーネント、材料などで実施され得ることを理解するであろう。他の場合には、周知の構造、材料、又は動作は、本開示の態様を不明瞭にすることを避けるために詳細には図示又は説明されない。
【0018】
各図の要素の説明は、前の図面の要素を指す場合がある。同様の番号は、同様の要素の代替的実施形態を含むすべての図面において同様の要素を指す。いくつかの可能な実施形態において、図に示されている機能/動作/構造は、ブロック図及び/又は動作図に示されている順序とは異なり得る。例えば、連続して発生するように示される2つの動作は、実際には、関係する機能/動作/構造に応じて、実質的に同時に実行され得る、又は動作は、逆の順序で実行され得る。
【0019】
一般に、本発明は、伸筋系が損なわれている又は機能していない個人のための植え込み可能な全人工膝関節に関する。例えば、限定ではなく、本発明の人工関節は、正常な膝機能(例えば、伸展)レベルをシミュレート又は近似するべく関節に1つ以上の付勢力を提供するように構成された一体化された伸筋機構を備えた又は備えていない、改造された従来のエクサイチュ又は外部人工膝関節を含み得る。本発明の人工関節はまた、正常な膝機能レベルをシミュレート又は近似するべく関節に1つ以上の一定の力又は可変の力を提供するように構成された一体化された制動機構を含み得る。ソケット人工関節又はオッセオインテグレーション人工関節を使用する膝上切断者は、機能しない又は存在しない伸筋系を補償するために、付加的な機械式、油圧式、又は電子式の制動装置及び/又は伸展装置を有し得る。伸筋系が損なわれている従来の膝関節置換術を受けた個人は、転ぶことを恐れずに歩くことはできず、段差又は階段を上ることはできないことが理解されるであろう。対照的に、一体型の又は一体化された伸筋機構を有する本発明の植え込み可能な人工膝関節は、膝の屈曲を恐れることなく歩く及び/又はさらには階段を上る人の能力を改善し、これにより、膝上切断又は関節固定の要件を回避し得る。
【0020】
本発明は膝関節に関して開示されているが、本発明は、例えば足首関節などの他の関節にも適用可能であることが理解されるであろう。
【0021】
図1及び
図2は、典型的なヒトの膝関節の構成要素を例示している。これらの図面は、大腿骨102、脛骨104、腓骨106、及び膝蓋骨202を例示している。
図2は、膝蓋靱帯204、大腿四頭筋腱206、及び膝蓋支帯208を例示している。膝の伸筋機構は、大腿四頭筋210、大腿四頭筋腱206、膝蓋骨202、膝蓋靱帯204、膝蓋支帯(内側及び外側)、及び隣接する軟組織からなることが理解される。
【0022】
図3は、本発明の教示に係る一体化された人工関節伸筋機構を備えた膝関節302を有する植え込まれた全人工膝システム300を例示している。人工関節システム300は、骨102、104が感染、骨折、又は腫瘍によって深刻な損傷を受けているとき、例えば、腫瘍全膝関節形成術などのときに、大腿骨102の端部又は脛骨104の上部又はその両方を置換する。一体化された人工関節伸筋機構(図示せず)は、伸筋機構が損なわれている又は機能していない個人の膝関節の切断又は固定を回避することを可能にし、歩く及び/又はさらには段差及び階段を上る又は下りる能力を高める。
【0023】
以下に説明するように、開示される実施形態のうちのすべての実施形態で有用な人工関節伸筋機構は、人工関節システム300、したがって脚を伸展位置に付勢するべく人工関節302の1つ以上の構成要素に一定の力、変化する力、及び/又は調節可能な力を加えるように構成された付勢機構を含み得る。適切な付勢機構としては、渦巻ばね、ウェーハばね、油圧シリンダ、空気圧シリンダ、磁石、及びリニアモータが挙げられる。
【0024】
人工関節伸筋機構に加えて又はその代わりに、人工膝関節302は、関節302の運動(屈曲)速度又は範囲を遅くする又は抑制するように構成されたブレーキ又は抵抗機構を含み得る。適切な抵抗機構としては、カム面、締まりばめ面、磁石、渦巻ばね、ウェーハばね、油圧シリンダ、空気圧シリンダ、磁石、及びリニアモータが挙げられる。付勢機構は抵抗機構としても機能することができ、その逆も可能であることが理解されるであろう。
【0025】
人工膝システム300の例示において、システム300は、一体型の又はモジュール式の髄間大腿骨ステム304と、一体型の又はモジュール式の髄間脛骨ステム306を有する。一体型のステムを有する人工関節システムでは、植え込みは関節302の分解を必要とする場合がある。代替的に、植え込み中に、ヒトの膝関節を過伸展して、関節302を分解することなく人工関節システム300全体が一体型のステムとともに植え込まれる場合がある。1つ以上のモジュール式のステムを有する人工関節システム300では、ステムが植え込まれ、次いで、関節302が1つ以上のモジュール式のステム304、306に結合される。
【0026】
図4は、大腿骨102又は脛骨104からの骨の実質的な(例えば、約5cm以上の)除去を必要としない、したがって、重度の取り返しのつかない骨折、感染、又は腫瘍のためにかなりの量の骨を失っているわけではない個人に使用できる、本発明の別の実施形態を例示している。
図4に例示される人工関節システム400のほとんどは、代わりに、大腿骨408の端部及び/又は脛骨410の上部の骨内に収容される。例示されるように、人工関節402の大腿骨コンポーネント404は、上顆に実質的に収容され、人工関節402の脛骨コンポーネント406は、上顆に実質的に収容される。
【0027】
本発明で使用するのに適した関節302、402は、単純なヒンジとして動作する単心(単)軸関節、複数のピボットポイントを有する多心(多)軸関節、「ブレーキ」を使用して屈曲への抵抗を変化させる手動摩擦関節、膝の屈曲に抵抗するために回転面などの表面への一定の圧力に依存する一定摩擦関節、流体制御システムを使用して膝の曲げへの抵抗を制御する可変摩擦関節、屈曲への抵抗を変化させる空気圧流体制御関節、膝の速度を制御するように構成された油圧流体制御関節、固定された膝関節をシミュレートするべくロックすることができるロック関節、体重により作動される姿勢制御関節、及びコンピュータ化された又は「スマート」関節を含むがこれらに限定されない。
【0028】
本開示の恩恵を受ける当業者は、本発明の関節302、402として使用するために改造され得る、エクサイチュ使用のために構成された(すなわち、植え込まれない)人工膝システムが市場にあることを理解するであろう。例えば、限定ではなく、Ottobock社が、C-Legとして知られているマイクロプロセッサベースのシステムを含む膝上継手を製造している。これらの外部継手のうちの1つ又は複数は、本発明の一部として用いられる基本的な関節を形成し得る。当業者は、本発明で使用するのに適した他の外部人工膝があることを理解するであろう。
【0029】
図5は、本発明に係るインサイチュ人工膝システム500の多くの可能な実施形態のうちの別の実施形態を例示している。膝関節502は、限定されないが、2つのオフセットヒンジポイント504及び506と、衝撃パッド508とを有する、改造された多心エクサイチュ膝関節を表す。公知のように、パッド508は、超高分子量ポリエチレン(UHWMPE)などの生体適合性耐摩耗性材料から製造され得る。多心エクサイチュ全膝関節が例示されているが、本発明の教示とともにほとんどのエクサイチュ全置換膝関節が使用され得ることが理解されるであろう。
【0030】
膝関節502は、好ましくは、ヒンジ軸504又は506に実質的に垂直な、又は垂直軸に実質的に平行な軸を中心とした或る程度の回転を可能にするように構成された回転システムを備える。例えば、限定ではなく、膝関節502は、膝関節502と例えば脛骨ステム512との相対的な回転を可能にする球形の合わせ面などの回転面510a及び510bを備え得る。面510a又は510bのいずれか又は両方は、UHMWPEなどの、荷重下での正常な回転感覚を可能にするのに十分な潤滑性をもつ耐摩耗性面を含むことが好ましい。回転ポイント又は領域は、好ましくは衝撃パッド508の下の膝関節502と関連付けられるが、回転ポイントは、ヒンジポイント504又は506にある又はその上の膝関節502と関連付けられてもよいことが理解されるであろう。
【0031】
回転システムは、好ましくは、限定はされないが、相対的な回転量を制限するように構成されたストップなどの1つ以上の構造を備える。例えば、
図5に例示した膝関節502は、脛骨ステム512内に下向きに延びる突起514を備える。突起514は、脛骨ステム512と協働して回転量を約±15度などに制限する1つ以上の耳、ラグ、又は凹部516を備え得る。運動量又はタイプを制限するために設けられ得る構造は、ほとんどの患者に一般に適用可能であるように構成され得る。限定ではない例として、本発明の植え込み可能な人工膝システム内の脛骨の回転は、その運動を健康な成人の95パーセントに期待される基準に制限するように構成され得る。本明細書で開示される本発明のために、他のインサイチュ回転システムが企図される。さらに、エクサイチュ回転ヒンジ人工膝関節が、本発明とともに使用され得る。いくつかの実施形態では、回転量が増加すると回転への抵抗が増加し得る。様々な抵抗量を生み出すためにカム面又は干渉面が使用され得る。
【0032】
本明細書の他の場所で開示され、この特定の実施形態のあらゆる目的のために組み込まれているように、これらの回転の問題は、植え込み前又は植え込み後に、ストップ、制限、及び付勢をもたらす構造を調節することで対処され得る。代替的に、これらの問題は、関節置換術の候補の現在の可動範囲及び伸筋範囲を評価することで事前に対処され得る。測定範囲及び限界は、指定の許容誤差及び/又は機能に合わせて最初に調節すること又は製造することによって構成され得る。
【0033】
出願人は、「スマート」又はマイクロプロセッサベースの人工関節システムの特徴を利用するさらなる実施形態を想定している。本開示の恩恵を受ける者によって想定され得る多くの可能な実施形態のうちの1つにおいて、「スマート」関節は、特定の人及び/又は特定の状況での1つ以上の植え込まれた人工関節の範囲、限界、及び/又は機能を自己調節するべく、加速度計、位置センサ、角度センサ、圧力センサ、及び/又は負荷センサなどのウェアラブルセンサと通信するように構成され得る。
【0034】
図6Aに例示した1つの限定ではない実施形態では、「スマート」人工膝システム602は、人のベルト604a、衣類604b、靴604c、604dなどにある1つ以上のセンサなどのウェアラブルセンサから入力を受信して、システム602の範囲及び限界を設定し得る。これらの衣料品は、特定の活動のために膝に対して特定の位置に普通に装着されるという利点を有する。センサをベルト、靴、及び/又は衣類に配置することはまた、反対側の膝などの身体の特定の場所に適用する必要があるセンサを装着するよりもはるかに負担が少ない。しかしながら、本明細書で開示される本発明は、身体に取り外し可能に又は恒久的に取り付けられたセンサを利用することができる。
【0035】
この想定される実施形態では、ベルト604aにあるセンサは、脚が完全に伸展していることを靴センサが識別した場合、例えば、同側の靴が「スマート」膝602の下で最大距離にあり、対側の靴が姿勢が正常であるときの適切に近くにある場合に、振り出しステップの前兆となり得る背筋又は殿筋の収縮などであり得る圧力変化を中継し得る。ベルトに沿って検出される小さな圧力変化は、装着者が小さな又は通常の一歩を踏み出す準備をしていることを示し得る。しかしながら、検出されるより大きな圧力変化は、装着者が跳躍又は突進の準備をしていることを示し得る。次いで、「スマート」膝602は、これらの信号を処理し、この活動を予期してその限界及び範囲を瞬時に調節し得る。
【0036】
別の実施形態では、センサの集合体が、靴604c、604dがベルト604aに近づいていることを示し得る。ベルト604aが実質的に靴の垂直上方にある場合、「スマート」膝602は、装着者がしゃがんでいるか又はおそらく座る準備をしていると予想し得る。しかしながら、ベルトが靴からオフセットしている場合、装着者がひざまづく準備をしていると予想され得る。予想される動きに対する摩擦、抵抗、又は付勢量を一時的に調節するために、人工膝602にアルゴリズムを実装することができる。これらの解釈されたセンサ入力について「スマート」膝の範囲、限界、さらには付勢の適切な調節を行うことができる。
【0037】
また別の想定される実施形態では、足間の距離に関連する足の裏604c、604dの前部及び後部の圧力は、装着者が歩いている又は走っていることを示し得る。圧力差が大きく、歩幅が長いことは、走っていることを示し、これは通常の歩く歩幅よりも大きな伸展付勢を必要とし得る。同様に、一方の靴に足裏圧力604dがないことの感知と同時に高さの上昇の感知をすることは、装着者が傾斜又は平らな段差を上るために調整を行う必要があることを示し得る。
【0038】
ここで与えられた例は、人工膝に関連したベルト及び靴にあるセンサに関するものであるが、出願人は、身体に装着又は配置され、他の植え込み可能な伸筋関節に関連して使用される他のセンサでの実施形態を想定している。限定されないが、これらは、腕時計612、リング616、ブレスレット612、ネックレス、ピアス、及び身体に装着され得る任意の他のデバイスにある適切なセンサを含み得る。「スマート」伸筋関節からの距離に依存するセンサは、身体に対して又はサポートする1つ又は複数の関節に対して比較的安定した位置を維持するべきである。本明細書で説明される本発明の実施形態は、限定はされないが、温度、注視方向、呼吸、心拍などの他の情報を監視及び中継するセンサを含み得る(これらはすべて、関節の伸展を必要とする今後の動きの指標として用いられ得る)。
【0039】
「スマート」関節602は、当業者には公知の手段を通じて近くのセンサと通信し得る。これらの通信経路は、近距離無線通信(NFC)ネットワーク、Bluetooth low energy(BLE)を含むBluetooth、及びいくつかの他の無線周波数経路を含み得るがこれらに限定されない。
【0040】
出願人は、一部の人々が複数の「スマート」関節602、614を有し得ることと、「スマート」関節が互いに通信することが有益な場合があることを想定している。例として、限定されないが、第1の「スマート」膝502は、第2のスマート膝614と連携して機能し得る。第1及び第2の人工膝に組み込まれた1つ以上のセンサは、所望の機能(例えば、屈曲への抵抗)量を生み出す際に運動アルゴリズムで使用するために、各スマート膝が他方の膝の活動(非活動を含む)を監視することを可能にし得る。別の方法として、外部センサがズボンなどの衣類で各膝に隣接して装着されてもよい。
【0041】
別の例として、限定されないが、第1の「スマート」膝602は、同側の「スマート」足首(図示せず)と連携して機能し得る。多くの想定される実施形態のうちの1つにおいて、「スマート」関節はそれらの活動を調整することができる。これらの活動は、歩く、上る、もたれかかる、ストレッチする、及び人々が行う可能性があるすべての他の動きなどの正常な及び/又は予想される動きを再現するための自己調節を含み得るがこれらに限定されない。実際の例としては、階段を上るときに「スマート」関節に適切な付勢、動き範囲、及び伸展を設定することが挙げられる。この場合、「スマート」足首は、「スマート」膝が上方に移動するときに足の前部の傾斜を支援することができる。
【0042】
「スマート」関節は、センサと通信する様態と同様の様態で互いに通信することができる。しかしながら、これは体内の送信器から同じく体内にある受信器に無線周波数信号を伝搬することを必要とする可能性があり、効率的ではない可能性がある。出願人は、本明細書内で説明した方法及び当業者には公知の他の方法に加えて、他の通信手段が展開され得ることを想定している。いくつかの例は、限定されないが、これらの通信を容易にするために皮下に挿入され得る1つ又は複数のワイヤなどの導電性媒体を含み得る。
【0043】
これらの「スマート」関節はまた、外部デバイスから構成コマンドを受信し、データを外部デバイスに送信することができる。多くの限定ではない想定される実施形態のうちの1つにおいて、「スマート」膝を有する人は、公知の無線通信及び/又は遠隔測定プロトコルを使用して「スマート」膝を自分の携帯電話616又は他の同様のデバイスにリンクすることができる。携帯電話616又は他のデバイスは、スマート膝とインターフェースするように設計及び構成されたアプリケーションソフトウェアを利用することができる。例えば、患者は、ジョギング又は早歩きを始める前に、スマート膝を所望の機能レベルに「プログラム」することができる。同様に、ジョギング又はウォーキング中に、患者は要望に応じてスマート膝をプログラム又は再プログラムすることができる。
【0044】
別の例として、「スマート」膝アプリケーションは、人の位置を地理的に特定し、その方向及び速度を予想し、「スマート」膝に構成コマンドを送信するべく、マップ特徴と連携して機能し得る。例えば、マップ特徴が、その人が急勾配に近づいていることを示す場合、携帯電話が、「スマート」膝に範囲、限界、及び付勢を上るのに適切な設定に設定するように指示し得る。範囲、限界、及び付勢は、人が異なる地形に移動したことをマップ特徴が示すまで、そこで維持され得る。
【0045】
図6Bは、コントローラ652、電力システム654、限定されないが、人工関節伸筋機構及び/又は人工関節抵抗機構又はその両方などの調節又は制御することができる人工関節内の構造的及び/又は動作コンポーネント656を含む制御システム650の一実施形態を例示している。コントローラ652は、好ましくは、アルゴリズム(ソフトウェア)、ファームウェア、及び他の論理制御命令を実行するように構成されたマイクロプロセッサ・サブシステム658を備える。マイクロプロセッサ・サブシステム658は、バス668などを介して通信サブシステム660と通信するように構成される。通信サブシステム660は、前述のように1つ以上の内部又は外部センサからデータを受信し、そのようなデータをバス668を介してマイクロプロセッサ・サブシステム658に通信するように構成される。通信システム660はまた、前述のように専用アプリケーションソフトウェアを実行する外部スマートデバイスと通信するように構成され得る。制御システム652によって実装及び実行される通信プロトコルは、好ましくは、有線プロトコルと無線プロトコルの組み合わせであることが理解されるであろう。例えば、限定ではなく、人工関節の内部にあるセンサは、通信サブシステム660に有線で接続することができ、限定はされないがベルトセンサ604aなどの人工関節の外部にあるセンサは、無線で通信することができる。
【0046】
コントローラ652は、人工制御及び学習アルゴリズム、ファームウェア、及び他のアルゴリズムを格納する664、並びに、生成された制御命令などのセンサデータ及びソフトウェアデータを格納するように構成された、メモリサブシステム662を含み得る。メモリサブシステム662は、好ましくは、生センサデータを受信するように構成されたローリングバッファ666を備え得る。マイクロプロセッサ658によって実行されるアルゴリズムは、ローリングバッファ666内のセンサデータを定期的な間隔でサンプリングすることができる。通信バス667は、少なくともマイクロプロセッサ658とメモリサブシステム662との間でデータを転送する。
【0047】
コントローラ652と電力サブシステム654は、ヒトの膝関節腔に植え込まれる人工関節本体又はエンベロープと一体に関連付けられることが好ましい。例えば、コントローラ652と電力サブシステム654は、大腿骨ステム又は脛骨ステムの一部に、又はステム間の人工関節に存在するようにパッケージされ得る。代替的に、制御コントローラ652及び/又は電力サブシステム654は、人工関節から分離された体内の位置に植え込まれ、有線ソリューションを通じて人工膝656に動作可能に接続され得る。例えば、限定ではなく、電力サブシステム654は、電力サブシステム654の交換又は再充電のためのより良好なアクセスを可能にする人体の領域にあり得る。さらにまた、電力サブシステム654は、スマート針又は他のそのようなデバイスを使用して電力サブシステムの再充電を可能にするように構成された経皮アクセスポート655を含み得る。さらに、経皮ポート655はまた、コントローラ602への経皮データ転送を可能にし得る。
【0048】
コントローラ652と電力サブシステム654がどこにあるかに関係なく、コントローラ652と電力サブシステム654は、データ、電力、及び電力とデータを人工関節伸筋機構656及び人工関節抵抗機構656のうちの1つ又は複数に通信するように構成され得る。
【0049】
図7は、本発明の実施形態で有用な多くのアルゴリズム又はソフトウェアのうちの1つを例示している。
図6A及び
図6Bに記載の実施形態を限定ではなく参照すると、フローチャート702は、スマート人工膝のトップレベルアルゴリズムの論理の進行を例示している。602、614などのスマート膝は、ソフトウェア又はファームウェアなどを通じて1つ以上のセンサ752から情報又はデータを受信するように構成されたマイクロプロセッサ又はコントローラ750を備える。前述のように、これらのセンサ752は、限定はされないがベルトセンサ604aなどのように人工関節766の外部にあってもよく、及び/又は、限定はされないが角位置センサ又は加速度計などの、人工関節に関連する内部センサであってもよい。ステップ704で例示されるように、コントローラ750は、センサ752のうちの1つ又は複数からデータを受信する。
【0050】
ステップ706で例示されるように、コントローラ750はまた、ファームウェア又はソフトウェアなどを通じて、人工関節766に関連する専用のソフトウェアアプリケーションを実行する外部スマートデバイスからデータを受信するように構成され得る。例えば、限定ではなく、外部スマートデバイスは、スマートフォン616を含み得る。
【0051】
ステップ708で例示されるように、データは、センサデータ、アプリケーションデータ、又はその両方であるかどうかにかかわらず、人工関節制御アルゴリズム756で分析又は処理することができ、このアルゴリズムは、機械学習機能又は人工知能学習機能を含んでいても又は含んでいなくてもよい。人工関節制御アルゴリズム756は、人工膝の1つ以上の構造的及び動作特徴又は機能を調節、変更、又は制御するように構成及び実装され得ることが本開示の恩恵を受ける当業者には理解されるであろう。
【0052】
ステップ710において、コントローラ750のメモリシステム758は、センサ752データの一部又はすべて、及び/又は人工関節制御アルゴリズム及び/又は学習アルゴリズムによって生成されたステータス情報で更新され得る。
【0053】
ステップ712において、人工関節制御アルゴリズム756は、センサデータ752、アプリケーションデータ754、及び/又は学習データから1つ以上の制御命令760を生成し得る。1つ以上の制御命令760は、限定はされないが人工関節伸筋機構及び/又は人工関節抵抗機構などの、人工関節の1つ以上の調節可能な又は制御可能な構造又は特徴によって受信されるように構成され得る。
【0054】
ステップ714において、1つ以上の制御命令768を使用して人工膝766の1つ以上の構造的762又は動作764特徴又は機能が調節、変更、又は制御される。
【0055】
アルゴリズムは、種々のデータソースからの新しい(例えば、時間的に新しい)データを分析して人工関節の構造的特徴762及び/又は動作特徴764のさらなる変更が必要とされる又は望まれるかどうかを判断するべく、ステップ708にループバック770するように構成され得る。例えば、限定ではなく、1つ以上のセンサデータが所定の期間にわたって非活動期間を示す場合、アルゴリズム756は、患者が眠っている又は休んでいると結論付けることができ、人工関節とコントローラ750は、電力リソースを節約するためにスリープ又は非活動モードに入ることができる。
【0056】
本発明の他の実施形態の説明に戻ると、
図5のインサイチュ膝関節は、大腿骨ステム518と脛骨ステム512を例示している。ステム512、518のいずれか又は両方は、関連する膝関節502コンポーネントと一体に製造されてもよく、又は別個の又はモジュール式のコンポーネントであってもよい。一体型のステムの場合、ヒンジポイント504、506の一方又は両方を組み立てずに膝関節502(すなわち、ステム)を植え込み、次いで、ステムをセットした後に膝関節502を組み立てることができる。代替的に、一体型のステムの場合、ヒトの膝関節は、人工関節システムの植え込みに適応するために過伸展する可能性がある。一方のステムは膝関節と一体化され、他方のステムはモジュール式又は分離可能であることも企図される。ステム512及び518は、モジュール式である、一体型である、又はその組み合わせであるかどうかにかかわらず、様々な可能性ある患者のために様々な長さ及び形態で提供され得る。例えば、限定ではなく、ステム512及び/又は518は、多孔体区域520が接合された又は接合されていない、まっすぐな、溝付きの、及び/又は曲がった、様々な直径のプレスばめステムを含み得る。
【0057】
先に開示され、この実施形態に組み込まれるように、膝関節502は、好ましくは、関節を伸展位置に付勢するスマート実施形態における制御可能な付勢機構であり得る、付勢機構を備える。付勢力(すなわち、膝関節を伸展させる力)は、歩行の遊脚期中に慣性によって克服されることが好ましい。過度の伸展付勢力は固定された膝関節をシミュレートすることが理解されるであろう。様々な活動レベルのために様々な伸展付勢力が提供され得る。例えば、活動的な人は、座りがちな人よりも大きな伸展付勢力を必要とし得る。
【0058】
1つの限定ではない例示的な実施形態において、活動的な人のためにステムが取り付けられ、膝関節が設置される場合がある。人(若者など)が年齢を重ねるにつれて、ライフスタイルが変化し、対側の膝は置換膝とは異なる伸展付勢力を生じる可能性がある。その場合、モジュール式の膝は、より小さな付勢力を有するものと交換することができ、これにより、対側の膝及び受容者のライフスタイルに適合させることができる。
【0059】
膝関節502の特定の実施形態は、調節可能な又は変化する伸展付勢力を有し得ることが企図される。例えば、限定ではなく、植え込み後に、小さなツールを膝関節502に外科的に挿入して、膝関節502内のねじ又は他のコンポーネントを回転させることなどによって付勢力を調節することができる。別の限定ではない例として、非外科的な例は、1つ以上の付勢力を調節する又は伸筋機構の操作性を調節するために磁気結合、Bluetooth、又は他の近距離無線通信プロトコルなどによって膝関節502内のマイクロプロセッサ又は論理回路に電子的にリンクするように構成された外部デバイスを含み得る。例えば、リニアモータは人工膝の一部であってもよく、膝関節内のコントローラが、例えば付勢力又はブレーキ力を調節するべくモータを調節してもよい。代替的に、調節可能なロータリーオリフィスが、油圧又は空気圧付勢又は制動システムのために制御又は調節されてもよい。
【0060】
これらの非外科的な例にはそれぞれ利点があるが、実用的なソリューションは予期しない又は偶発的な調節を防ぐ必要がある。例えば、磁気結合を通じて行われる調節は、被検者がそうでなければ感知できない磁場にさらされたときの偶発的な変化に影響されやすいものであってはならない。同様に、Bluetoothインターフェースは、無許可の及び/又は認証されていない干渉にアクセス可能であってはならない。
【0061】
当業者には公知の一般的なデバイス認証及び認可機構がデータ通信インターフェースに適用され得る。例として、コンピュータ化された又は「スマート」関節は、秘密の暗号鍵と製造元の1つ以上の公開鍵を使用して製造され得る。暗号化された通信のみを使用するように構成され得るため、「スマート」関節との通信を望む人は、製造元によって署名された鍵を有するデバイスを使用する必要がある。
【0062】
これらのラインに沿って、磁気で作動される調節機構は、認可及び/又は認証された信号がデータ通信リンクを通じて受信されるまで、ロック状態に保たれる。代替的に、当業者は、磁気で作動される調節機構をロックする及びロック解除するために複数の磁場を利用してもよい。1つの限定ではない例では、一方向に配向された特定の強度の固定磁場が機構をロック解除し、可動磁石が調整を行うために機構に関連付けられてもよい。固定磁場及び配向磁場の除去により、ロックを再びかけることができる。
【0063】
伸展付勢コンポーネントは、ヒンジ504、506のうちの1つ又は複数に一体化されたねじりばねを含み得る。例えば、ねじりばねは、膝関節502の外側コンポーネント522、524に固定され、スプラインなどを通じてレバーコンポーネント526に固定され得る。ばねの自然な状態は、伸展状態であり、屈曲量が増加すると戻り付勢力の量が増加する。これは直線的に増加する戻り付勢力の量であり得るが、出願人は、多くの限定ではない例のうちの1つにおいて、戻り付勢力が円弧の中央点で最大に達し、円弧の残りの部分ではその力を維持するような、戻り付勢力が非線形であり得る実施形態を想定している。この例示的な実施形態では、伸展状態への戻りは、円弧の増加でより強力になることはない。代替的に、伸展付勢コンポーネントは、油圧システム、空気圧システム、磁気システム、又は機械システムを含み得る。また別の想定される実施形態において、これらの伸展付勢コンポーネントが組み合わされてもよい。前述のように、屈曲量の増加によって戻り付勢力の量が増加するばねの自然な状態は、限定ではない例として、制限又は支配された戻り遊脚をもたらすべく戻り付勢力の一部を打ち消す磁気コンポーネントと組み合わされてもよい。
【0064】
伸展付勢コンポーネントは、膝関節を伸展位置に解放可能に「ロックする」が、通常の又は活動的な歩行に関連する遊脚力によって克服されるブレーキを含み得る。
【0065】
図8は、従来のエクサイチュ全人工膝関節を本発明による回転でインサイチュ人工膝関節に変換するための多くの実施形態のうちの1つを例示している。球形の回転面802が、例えば脛骨ステム又は大腿骨ステムに形成され、膝関節からの突起806がその中に延び得る中央凹部804を備え得る。突起806は、ラグ808又は代替的に凹部(図示せず)を備え得る。凹部804は、ラグ又は凹部808と相互作用することによって腰又は足に対する膝関節の回転量を制限する2つのストップ810を備え得る。膝関節によって生み出される負荷には、突起806ではなく、パッド、球面、又はその両方が反応することが好ましい。本開示の恩恵を受ける当業者は、本発明の目的のために、従来のエクサイチュ膝関節に他の回転システムが実装されてもよいことを理解するであろう。
【0066】
想定される実施形態において、限定されないが、ストップ810は、レースウェイ内などで突起806の中心軸に隣接し、その周りで回転可能であり、特定の配向に向けて付勢され得る。この想定される実施形態では、回転面802内での突起806の回転は、固い不動点に到達するのではなく、回転するときに徐々に遅くすることができる。つまり、
図8で突起806が時計回りに回転する際に、突起806は左のストップ810に直面する。しかしながら、回転を止めるのではなく、協働するストップ810に適用される付勢からの時計回りのさらなる回転への抵抗を徐々に増加させることができる。この例では、協働するストップ810は、それ以上の回転が許されない限界を有することができ、したがって、突起806が回転する際に、突起806は停止点まで徐々に抵抗を受ける。
【0067】
図9は、伸筋機構が損なわれている又は存在しない場合がある個人における膝関節全置換のためにインサイチュで植え込み可能であるようにエクサイチュ膝関節902が本開示の教示に従って改造された本発明の一実施形態を例示している。この例示では、膝関節902は多心であり、大腿骨(図示せず)は、膝関節902で脛骨(図示せず)に対して±15度などの約30度の可動範囲内で回転することができる。さらに、
図9は、膝関節902に一体化される又はモジュール式であり得る大腿骨ステム904が、線形又は非線形のばね定数を有するばね、チャネル壁にシールされた空気圧ピストン、及び/又はチャネル壁にシールされた油圧ピストンなどの付勢要素を収容し得る中央チャネル906を備えることを例示している。同様に、膝関節コンポーネント908及び910は、引力を通じて膝関節902を伸展位置に付勢するように構成された磁石を備え得る。磁石の引力又は反抗力に打ち勝つのに必要な突破力は、通常の活動又は将来の任意の活動レベル中に屈曲を可能にするように設計され得る。
【0068】
チャネル906は、大腿骨ステム904に関連するものとして例示されているが、チャネル906は、回転ソケット914とともに、脛骨ステム912と関連付けられ得ることが理解されるであろう。代替的に、回転ソケット914は、チャネル906を収容していないステムと関連付けられ得る。
【0069】
代替的に又は加えて、チャネル906は、前述のように制御システム650の1つ以上のコンポーネントを収容することができる。
【0070】
人工関節402、502、602、902、及び本明細書で開示される本発明の他の実施形態は、人工関節の可動コンポーネントを周囲の軟組織及び血管構造から分離するバイオシース、カバー、又はカプセル化950を備え得る、及び備えることが好ましい。例えば、限定ではなく、適切なバイオシースは、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ステンレス鋼メッシュ、又は他の生物適合性材料を含み得る。バイオシースは、実装される場合、少なくとも所望の屈曲及び回転範囲に適応する、並びに、可動コンポーネントの所望の分離、カプセル化、又は保護量を提供するのに十分なだけ可撓性又は変形可能であるべきであることが理解されるであろう。
【0071】
前述の本発明の1つ又は複数の態様を用いる他の及びさらなる実施形態を、本発明の精神から逸脱することなく考案することができる。さらに、システムの製造及び組立の種々の方法及び方法の実施形態、並びに位置仕様が、開示された方法及び実施形態のバリエーションを生み出すために互いに組み合わせて含まれ得る。単数形の要素の言及は、複数形の要素を含む場合があり、逆もまた同様である。
【0072】
ステップの順序は、特に限定されない限り、様々な順序で発生する可能性がある。本明細書に記載の種々のステップは、他のステップと組み合わせる、記載されたステップと相互に関連させる、及び/又は複数のステップに分けることができる。同様に、要素は、機能的に説明されており、別個のコンポーネントとして具体化することができ、又は複数の機能をもつコンポーネントに組み合わせることができる。
【0073】
本発明は、好ましい実施形態及び他の実施形態に関連して説明されてきたが、本発明のすべての実施形態が説明されているわけではない。説明した実施形態への明らかな修正及び変更が当業者には利用可能である。開示された及び開示されていない実施形態は、出願人によって想定される本発明の範囲又は適用可能性を制限又は制約することを意図するものではなく、むしろ、特許法に従って、出願人は、以下の請求項の均等の領域又は範囲内に入るすべてのそのような修正及び改良を十分に保護することを意図している。
【0074】
最後に、付属の請求項およびそれらが当業者に教示する内容は、あらゆる目的のために本開示に組み込まれる。
【国際調査報告】