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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】パワー半導体デバイスの動作の解析
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20230412BHJP
【FI】
G01R31/26 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552525
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2021053440
(87)【国際公開番号】W WO2021175564
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】20160411.3
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390035459
【氏名又は名称】マシイネンフアブリーク・ラインハウゼン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ブライアント・アンガス
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA01
2G003AB03
2G003AB16
2G003AE01
2G003AH05
(57)【要約】
パワー半導体デバイスPS1,PS2,PS3の動作を解析するための方法であって、当該方法は、デバイスPS1,PS2,PS3の一組の基準電圧Vn,Vn+1,…VNと、対応する基準電流In,In+1,…INとを供給することと、Nframe個の測定点MP(1),…MP(k),…MP(Nframe)を得るため、Nframeが、2以上の整数であるときに、予め決定された1つの時間間隔内に、デバイスPS1,PS2,PS3のオン電圧Vmeas(1),…Vmeas(k),…Vmeas(Nframe)と、対応するオン電流Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe)とを測定することとを含む。Nframe個の測定点(MP(1),…MP(k),…MP(Nframe))に対して、少なくとも一回の最小二乗法による適合を実行することによって、一組の基準電圧V1,…Vn,…VNが適合される。パワー半導体デバイスPS1,PS2,PS3の動作を解析するため、当該適合された一組の基準電圧V1,…Vn,…VNが使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体デバイス(PS1,PS2,PS3)の動作を解析するための方法であって、
-前記デバイス(PS1,PS2,PS3)の一組の基準電圧(Vn,Vn+1,…VN)と、対応する基準電流(In,In+1,…IN)とを供給することと、
-Nframe個の測定点(MP(1),…MP(k),…MP(Nframe))を得るため、Nframeが、2以上の整数であるときに、予め決定された1つの時間間隔内に、前記デバイス(PS1,PS2,PS3)のオン電圧(Vmeas(1),…Vmeas(k),…Vmeas(Nframe))と、対応するオン電流(Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe))とを測定することと、
-前記Nframe個の測定点(MP(1),…MP(k),…MP(Nframe))に対して、少なくとも一回の最小二乗法による適合を実行することによって、前記一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)を適合することと、
-前記パワー半導体デバイス(PS1,PS2,PS3)の動作を解析するため、当該適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)を使用することとを含む当該方法。
【請求項2】
前記解析は、前記デバイス(PS1,PS2,PS3)の接合温度(Tj)を、当該適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)に基づいて評価することを含む請求項1に記憶の方法。
【請求項3】
前記最小二乗法による適合のため、それぞれ2つの隣接した測定点(MP(1),…MP(k),…MP(Nframe))間の区分線形近似が実行される請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記最小二乗法による適合は、
-1つの近似率(W1,…Wn,…WN)をそれぞれの基準電流(I1,…In,…IN)に対して既定し、当該近似率(W1,…Wn,…WN)は、被測定オン電流(Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe))が、それぞれの前記基準電流(I1,…In,…IN)にどの程度近いかを示すことと、
-一組の近似率(W1,…Wn,…WN)をそれぞれの測定点(MP(1),…MP(k),…MP(Nframe))に対して決定し、結果としてNframe組の近似率(Wn(1),…Wn(k),…WN(Nframe))を決定することとを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記被測定オン電流(Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe))が、特定の1つの基準電流(I1,…In,…IN)に等しいときに、当該1つの基準電流(I1,…In,…IN)に対応する1つの近似率(W1,…Wn,…WN)が1に等しい一方で、前記被測定オン電流(Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe))が、隣接した1つの基準電流(I2,…In+1,…IN-1)に等しいときに、当該1つの基準電流(I1,…In,…IN)に対応する前記近似率(W1,…Wn,…WN)が0に等しいように、複数の前記近似率(W1,…Wn,…WN)が規定される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予め決定された1つの時間間隔内の測定点(MP(k))に対して、前記近似率(W1,…Wn,…WN)が、以下の複数組の方程式:
【数1】
によって規定される請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)が、当該規定された複数の近似率(W1(1),…Wn(k),…WN(Nframe))と、当該複数の被測定オン電圧(Vmeas(1),…Vmeas(k),…Vmeas(Nframe))とに基づいて決定される請求項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)は、ベクトルに関する方程式
【数2】
を解くことによって計算される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
接合温度(Tj)を評価するステップが、一組の平均近似率(W1(av),…Wn(av),…WN(av))をNframe組の前記近似率(W1(1),…Wn(k),…WN(Nframe))に基づいて決定することと、前記接合温度(Tj)を前記一組の平均近似率(W1(av),…Wn(av),…WN(av))に基づいて評価することとを含む請求項4~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記一組の平均近似率(W1(av),…Wn(av),…WN(av))を決定することは、好ましくは以下の方程式
【数3】
によって、Nframe組の前記近似率(W1(1),…Wn(k),…WN(Nframe))の複数の近似率に相当するそれぞれの時間平均を決定することを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記接合温度(Tj)を評価するステップは、この接合温度(Tj)に対する評価された値を、この接合温度(Tj)に対する評価された値と前記適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)との間の仮定された線形関係に基づいて計算することを含む請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記接合温度(Tj)を評価するステップは、
-前記接合温度(Tj)に対する評価された複数の値を、前記接合温度(Tj)に対する評価されたそれぞれの値と前記適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)のうちの1つの基準電圧との間の仮定された線形関係に基づいて計算することと、
-評価されたそれぞれの接合温度(Tj)を、前記一組の平均近似率(W1(av),…Wn(av),…WN(av))のそれぞれの平均近似率にしたがって重み付けすることとを含む請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
パワー半導体デバイス(PS1,PS2,PS3)の動作を解析するため回路であって、
-Nframe個の測定点(MP(1),…MP(k),…MP(Nframe))を得るため、Nframeが、2以上の整数であるときに、予め決定された1つの時間間隔内に、前記デバイス(PS1,PS2,PS3)のオン電圧(Vmeas(1),…Vmeas(k),…Vmeas(Nframe))と、対応するオン電流(Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe))とを測定するように構成されている測定装置(MU)と、
-前記デバイス(PS1,PS2,PS3)の一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)と、前記デバイス(PS1,PS2,PS3)の対応する一組の基準電流(I1,…In,…IN)とを記憶するための記憶装置(SU)と、
-最小二乗法による適合を前記Nframe個の測定点(MP(1),…MP(k),…MP(Nframe))に対して実行することによって、前記一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)を適合し、
前記パワー半導体デバイス(PS1,PS2,PS3)の動作を、当該適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)に基づいて解析するように構成されている評価装置(EU)とを含む当該回路。
【請求項14】
請求項13に記載の回路(C)とパワー半導体デバイス(PS1,PS2,PS3)とを含むパワーエレクトロニクスシステム。
【請求項15】
パワーコンバータ(PC)を含み、このパワーコンバータ(PC)は、パワー半導体デバイス(PS1,PS2,PS3)を含む請求項14に記載のパワーエレクトロニクスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワー半導体デバイスの動作を解析するための方法及び回路に関し、且つ当該回路を含むパワーエレクトロニクスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーエレクトロニクスシステム、例えばパワーコンバータでは、パワー半導体デバイスの接合温度が、システムオペレーションに関する限界を決定する変数である。絶対限界を超えることは、カタストロフィックとみなされ得て、当該システムの寿命にわたる熱挙動が、信頼性及び劣化速度に悪影響を及ぼす。しかしながら、当該デバイス自体、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、MOSFET、サイリスタ又はダイオードは、電気的に「生きていて」(electrically “live”)、電気的に高いノイズ環境にあるので、当該接合温度の直接の測定は適さない。
【0003】
しかしながら、当該接合温度は、当該半導体デバイスに関する温度感受性の電気パラメータ(TSEP)に基づいて評価され得る。従来の手法では、接合温度を非常に低い電流で、すなわちミリアンペアのレンジ内でTSEPから評価していた。一般に、当該非常に低い電流は、パワーエレクトロニクスシステムの定格電流の1%未満である。したがって、このような方法は、パワーエレクトロニクスシステムの多くの用途に対して適用できず、特定の研究室の装置だけで有用であり得る。他の手法では、接合温度が、例えば定格電流の10~100%の高い電流で評価される。この場合、ルックアップテーブル又は方程式が、接合温度とオン電流(すなわち、順方向電流)との範囲にわたって測定された事前の校正データに適合されなければならない。しかしながら、当該適合は、使用前のそれぞれのシステムの綿密で且つ正確な校正を必要とする。当該校正は、産業用の用途に対しては実用的でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の課題は、少なくとも定格電流までのオン電流で適用可能であり、且つ事前の校正を必要としない、パワー半導体デバイスの動作を解析するための改良された概念を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、独立請求項に記載のカテゴリーによって解決される。さらなる構成及び実施の形態は、従属請求項に記載されている。
【0006】
当該改良された概念は、パワー半導体デバイスのオン電圧をTSEPとして利用し、オン電流に対するオン電圧の依存性を有効に排除し、接合温度に関する依存性だけを残すという思想に基づく。当該思想は、複数の測定点を予め規定された複数のビンに割り当て、最小二乗法による適合を当該所定の複数の測定点に対して実行することによって達成される。その結果、ユーザが、使用前に実際に校正を実行することなしに、校正が、通常動作中にオンラインで有効に実行される。
【0007】
当該改良された概念によれば、パワー半導体デバイスの動作を解析するための方法が提供される。当該デバイスの一組のN個の基準電圧と、当該デバイスの対応する一組のN個の基準電流とが提供される。Nは、2以上に等しい整数である。当該デバイスのNframe個のオン電圧及びオン電流が、予め決定された1つの時間間隔内に測定される。当該複数の被測定電圧及び被測定電流は、Nframe個の測定点を示す。Nframeは、2以上の整数である。当該一組の基準電圧は、最小二乗法による適合をNframe個の測定点に対して実行することによって、特にこれらの測定点に対するNframe個の被測定オン電圧に対して実行することによって適合される。主に、任意の最小二乗法が、当該適合のために使用され得る一方で、区間ごとの最小二乗法(incremental least squares method)が、より好ましい。このとき、当該適合された一組の基準電圧は、パワー半導体デバイスの動作を解析するために使用される。
【0008】
当該改良された概念による方法は、少なくとも定格電流までのオン電流に対して良好に適用可能であり、事前の校正が回避され得る。当該方法は、精度と演算負荷との有益なトレードオフを提供する。大量のデータが使用されるので、誤差が大幅に低減され得る。当該方法は、多くの既知の手法ではできない、直流電流又は非常に低い周波数の交流電流に対処できる。
【0009】
当該方法の幾つかの構成によれば、、パワー半導体デバイスの動作の解析は、当該デバイスの接合温度を、当該適合された一組の基準電圧に基づいて評価することを含む。
【0010】
幾つかの構成によれば、、パワー半導体デバイスの動作の解析は、時間に対するオン電圧のシフトを決定することを含む。
【0011】
当該オン電圧のシフトは、パワー半導体デバイスの電気的な劣化を示す。これらのステップは、温度の不変点がパワー半導体デバイスの電流-電圧の特性曲線に存在する場合に特に適し、複数の基準電流のうちの1つの基準電流が、この不変点に相当する。
【0012】
幾つかの構成によれば、、最小二乗法による適合のため、区間ごとの線形近似が、それぞれ2つの隣接した測定点間で実行され、特に複数の測定点に対するそれぞれ2つの隣接した被測定オン電流間で実行される。連続する電圧-電流の近似が実行される他の手法に比べて、誤差が、演算の低い複雑性を維持しつつ、本発明の区間ごとの線形近似によって最小に低減され得る。
【0013】
幾つかの構成によれば、、最小二乗法による適合は、1つの近似率をそれぞれの基準電流ごとに決定することを含む。この場合、当該近似率は、電流領域内の被測定オン電流がそれぞれの基準電流にどの程度近いかを示す。一般に、それぞれの基準電流と対応する基準電位とに対する複数の測定点の近似は、近似率によって示されるように、特定の測定点、特に特定のオン電流が特定の基準電流にどの程度近い又は合致しているかの指標を提供する。したがって、当該近似率は、これらの被測定オン電圧のそれぞれの近似度又は合致度にしたがって、当該被測定オン電圧を重み付けするために使用され得る重み係数を示す。当該近似率を決定することは、例えば、当該近似率を計算するための1つ又は複数の方程式を提供すること、又は近似率を読み取るためのダイアグラム若しくはルックアップテーブル提供することを含んでもよい。
【0014】
好ましくは、最小二乗法による適合は、一組の近似率をそれぞれの測定点ごとに、特にそれぞれのオン電流ごとに決定することをさらに含む。その結果、Nframe組の近似率が生成される。当該一組の近似率を決定することは、例えば、当該近似率を1つ又は複数の方程式によって計算すること、又は当該近似率をダイアグラム若しくはルックアップテーブルから取り出すことを含んでもよい。
【0015】
幾つかの構成によれば、、予め決定された時間間隔内の1つの測定点に対して、当該被測定オン電流が、特定の1つの基準電流に等しいときに、当該1つの基準電流に対応する1つの近似率が1に等しい一方で、当該被測定オン電流が、隣接した1つの基準電流に等しいときに、当該1つの基準電流に対応する当該近似率が0に等しいように、複数の当該近似率が規定される。好ましくは、対応する測定点の被測定オン電流が、基準電流と隣接した基準電流との間にあるときに、特定の基準電流に対応する近似率が、1~0の値である。好ましくは、当該近似率は、所定の基準電流から隣接した基準電流まで線形に減少する。
【0016】
幾つかの構成によれば、、当該予め規定された時間間隔内の1つの測定点に対して、当該近似率が、以下の複数組の方程式によって規定される、すなわち計算され得る:
【0017】
【数1】
幾つかの構成によれば、、適合された一組の基準電圧が、当該規定された複数の近似率と、当該複数の被測定オン電圧とに基づいて決定される、特に計算される。特に、当該適合された一組の基準電圧は、好ましくはN個の適合された基準電位のベクトルと、Nframe個の被測定オン電圧のベクトルと、当該複数の近似率を含む行列若しくは当該複数の近似率から計算された行列とを含む一次方程式(a linear system of equations)を解くことによって計算される。
【0018】
幾つかの構成によれば、、当該適合された一組の基準電圧は、ベクトルに関する方程式
【0019】
【数2】
を解くことによって計算される、又は計算され得る。この場合、 measは、上記時間間隔内の被測定オン電圧のベクトルであり、Wは、それぞれの測定点に対する被測定オン電流に対応する当該時間間隔内のそれぞれの測定点に対するそれぞれの基準電圧ごとの近似率の行列であり、は、現在の時間間隔内に適する基準電位のベクトルである。 meas及びWのそれぞれの列は、1つの異なる測定点に対応する。この方程式は、 measとWととを用いた最小二乗法による適合の一例を示す。任意の最小二乗法が、例えば擬似逆行列又はQR分解等を使用して、をそれぞれの時間間隔ごとに計算するために使用され得る。
【0020】
幾つかの構成によれば、、当該適合された一組の基準電圧の計算は、(a)全てのNframe個の測定点を当該時間間隔内に記録し、次いで全ての最小二乗行列計算を当該時間間隔の終了時に実行することによって進行され得るか、又は(b)中間行列をそれぞれの測定点ごとに計算し、次いで最後の行列計算を当該時間間隔の終了時に実行することによって進行され得る(区間ごとの最小二乗法)。
【0021】
幾つかの構成によれば、接合温度を評価するステップが、一組の平均近似率をNframe組の当該近似率に基づいて決定することと、当該接合温度を当該一組の平均近似率に基づいて評価することとを含む。
【0022】
幾つかの構成によれば、当該一組の平均近似率(W1(av),…Wn(av),…WN(av))を決定することは、好ましくは以下の方程式
【0023】
【数3】
によって、Nframe組の当該近似率の複数の近似率に相当するそれぞれの時間平均を決定することを含む。
【0024】
1つの時間間隔内の特定の基準電圧Vnに対応する平均近似率Wn(av)は、基準電圧の評価の精度における信頼度の指標を有効に提供する。この平均近似率Wn(av)は、電気特性及び熱特性の確認において当該基準電圧をどのように使用するかを決定するための校正アルゴリズムによって使用され得る。
【0025】
幾つかの構成によれば、当該接合温度を評価するステップは、この接合温度に対する評価された値を、この接合温度に対する評価された値と当該適合された一組の基準電圧との間の仮定された線形関係に基づいて計算することを含む。
【0026】
幾つかの構成によれば、当該接合温度を評価するステップは、当該接合温度に対する評価された複数の値を、当該接合温度に対する評価されたそれぞれの値と当該適合された一組の基準電圧のうちの1つの基準電圧との間の仮定された線形関係に基づいて計算することを含む。評価されたそれぞれの接合温度が、当該一組の平均近似率のそれぞれの平均近似率にしたがって重み付けされる。次いで、当該接合温度に対して当該重み付けされた複数の評価値は、合計され、例えば、当該接合温度に対する最終評価を得るために規格化される。
【0027】
改良された概念によれば、パワー半導体デバイスの動作を解析するため回路も提供される。この回路は、測定装置と記憶装置と評価装置とを含む。当該測定装置は、Nframe個の測定点を得るため、Nframeが、2以上の整数であるときに、予め決定された1つの時間間隔内に、当該デバイスのオン電圧と、対応するオン電流とを測定するように構成されている。当該記憶装置は、当該デバイスの一組の基準電圧と、当該デバイスの対応する一組の基準電流とを記憶するように構成されている。また、当該記憶装置は、近似率を決定するためにルックアップテーブル、ダイアグラム又はアルゴリズムを記憶するように構成されてもよい。当該評価装置は、最小二乗法による適合を当該Nframe個の測定点に対して実行することによって、特にこれらの測定点に対するNframe個の被測定オン電圧に対して実行することによって、当該一組の基準電圧を適合するように構成されている。さらに、当該評価装置は、当該パワー半導体デバイスの動作を、当該適合された一組の基準電圧に基づいて解析するように構成されている。
【0028】
当該改良された概念によれば、パワーエレクトロニクスシステムも提供される。当該パワーエレクトロニクスシステムは、当該改良された概念による回路とパワー半導体デバイスとを含む。
【0029】
幾つかの構成によれば、当該パワー半導体デバイスは、ダイオード、特にPINダイオード又はショットキーダイオード又はサイリスタ又は電界効果トランジスタ、例えばMOSFET、JFET又はHEMT又はバイポーラトランジスタ、例えばIGBT又はBJTを含む。
【0030】
当該パワーエレクトロニクスシステムの幾つかの構成によれば、当該パワーエレクトロニクスシステムは、パワーコンバータを含む。当該パワーコンバータは、当該パワー半導体デバイスを含む。
【0031】
当該改良された概念による回路のさらなる構成は、当該改良された概念による方法の様々な構成から容易に導かれ、且つ当該改良された概念による方法のさらなる構成は、当該改良された概念による回路の様々な構成から容易に導かれる。当該改良された概念によるパワーエレクトロニクスシステムのさらなる構成は、当該改良された概念による方法の様々な構成から容易に導かれ、当該改良された概念による方法のさらなる構成は、当該改良された概念によるパワーエレクトロニクスシステムの様々な構成から容易に導かれる。
【0032】
以下に、本発明を、図面を参照することによって代表的な構成に関して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1a】パワー半導体デバイスの2つの異なる接合温度でのオン電圧に対するオン電流を示す。
図1b】パワー半導体デバイスの異なるオン電流での接合温度に対するオン電圧を示す。
図2】改良された概念による方法の代表的な工程のフローチャートである。
図3】改良された概念による方法の代表的な工程の一部を示すI-V特性グラフである。
図4】被測定オン電流Imeasに依存する基準電流I1-I9に対する近似率W1-W9を示すダイアグラムである。
図5】被測定電流Imeasに依存する基準電流I1-I9に対する近似率W1-W9用の値を含むルックアップテーブルである。
図6】改良された概念によるパワーエレクトロニクスシステムの代表的な構成のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1aは、パワー半導体デバイスの2つの異なる接合温度である25℃及び125℃の接合温度Tjでのオン電圧Voに対するオン電流Ioの代表的なカーブを示す。これらのカーブは、交点CPで交差する。Tj=25℃での一組の6つの離散した電流I1,I2,…,I6と対応する電圧V1(25),V2(25),…,V6(25)が示されている。当然に、6つの電流の当該数は、任意の例であり、2以上のあらゆる数でもよい。
【0035】
図1bは、Tjに対する電圧V1(25),…,V6(25)の依存性を示す。交点CPより下の電圧は、一定の電流のときにTjの増大と共に減少する負の温度係数を示す一方で、交点CPより上の電圧は、一定の電流のときにTjの増大と共に増大する正の温度係数を示すことが分かる。
【0036】
交点CPは、Tj依存性を示さない。幾つかのパワー半導体デバイス、例えば幾つかのPINダイオードに対しては、交点CPは、定格電流に近いか又は定格電流より上にあり得る。他のパワー半導体デバイス、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)に対しては、当該交点は、定格電流の10%より下にあり得る。さらに他のパワー半導体デバイスは、例えばオン電圧の非線形温度依存性に起因して、単一の交点CPを有し得ない。
【0037】
上記の温度依存性に起因して、順方向電圧に基づくパワー半導体デバイスの動作の解析が複雑である。それにもかかわらず、改良された概念によれば、上記及び下記のように、有意義な解析が、従来の校正なしに、且つ適用可能な電流範囲を著しく限定することなしに実行され得る。
【0038】
以下に、当該改良された概念による方法の代表的な実施の形態を図2~5に関して説明する。
【0039】
図2のステップ100では、パワー半導体デバイスの一組の基準電圧Vn,Vn+1,…IN、特に基準オン電圧と、一組の対応する基準電流In,In+1,…IN、特にオン電流とが決定される。例えば、予め規定された接合温度に対するパワー半導体デバイスの複数の基準電圧及び複数の基準電流が、定量的に予め規定され得る、例えばデータシートにおいて規定され得る。又は、当該複数の基準電圧及び当該複数の基準電流が、定量測定によって所定の接合温度に対して予め決定され得る。
【0040】
ステップ200では、Nframe個の測定点MP(1),…MP(k),…MP(Nframe)を示す、当該パワー半導体デバイスのNframe個のオン電圧Vmeas(1),…Vmeas(k),…Vmeas(Nframe)及び対応するNframe個のオン電流Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe)が、予め規定された1つの時間間隔内に測定される。Nframeは、2以上の整数である一方で、kは、対応する測定点MP(k)を生成するオン電圧に対する電流測定の特定の繰り返し回数である。
【0041】
図3は、幾つかの測定点と5つの基準電圧V1-V5と対応する基準電流I1-I5とを例示する。基準電流I1-I5は、互いに均等に離間されていて、基準電圧V1-V5は、基準電流I1-I5に対応する電圧である。図3も、それぞれ2つの隣接した基準電流I1-I5と対応する基準電圧V1-V5との間の区間ごとの線形近似されたI-Vカーブを示す。
【0042】
ステップ300では、最小二乗法による適合(a least squares fit)を、測定点MP(1),…MP(k),…MP(Nframe)に対するNframe個の被測定オン電圧Vmeas(1),…Vmeas(k),…Vmeas(Nframe)に対して実行することによって、一組の基準電圧V1,…Vn,…VNが適合される。図3に示されているように、当該最小二乗法による適合は、測定点MP(1),…MP(k),…MP(Nframe)に対するそれぞれ2つの被測定オン電流Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe)間の区間ごとの線形近似の仮定に基づく。
【0043】
当該最小二乗法による適合では、それぞれの基準電流I1,…In,…INごとに1つの近似率W1,…Wn,…WNを規定する必要がある。当該近似率W1,…Wn,…WNは、電流領域内の被測定オン電流Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe)が、それぞれの基準電流I1,…In,…INにどの程度近いかを示し、したがって被測定オン電流Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe)が、任意の基準電流I1,…In,…INに対してどの程度近似しているかを示す。
【0044】
対応する測定点MP(k)の被測定オン電流Imeas(k)が、特定の1つの基準電流(I1,…In,…IN)に等しいときに、当該1つの基準電流I1,…In,…INに対応する1つの近似率W1(k),…Wn(k),…WN(k)が1に等しい一方で、対応する測定点MP(k)の被測定オン電流Imeas(k)が、隣接した基準電流I2,…In+1,…IN-1に等しいときに、当該1つの基準電流I1,…In,…INに対応する近似率W1(k),…Wn(k),…WN(k)が0に等しいように、予め決定された時間間隔内の測定点MP(k)ごとの近似率W1(k),…Wn(k),…WN(k)が規定される。これらの基準電流I1,…In,…IN間では、近似率W1(k),…Wn(k),…WN(k)は、到達した基準電流I1,…In,…INから隣接した基準電流I2,…In+1,…IN-1まで線形に減少する。
【0045】
この規定は、例えば以下の複数組の方程式で示され得る:
【0046】
【数4】
代わりに、近似率W1,…Wn,…WNの規定は、図4に示されているようにダイアグラムによって示され得るか、又は図5に示されているようにルックアップテーブルによって示され得る。図5及び6には、特定の測定点MPの被測定オン電流Imeasに依存する9つの基準電流I1-I9に対応する9つの近似率W1-W9が例示されている。この場合、当該被測定オン電流は、単位pu、すなわち定格電流に対する相対値で示されている(1.0puは、被測定オン電流が定格電流に等しいことを意味する)。例えば、被測定オン電流が、0.37に等しかったならば、W3=0.3及びW4=0.7以外の全てのWnは、Wn=0である。なお、この例では、0.1pu未満の電流及び0.9puよりも大きい電流は無視されている。
【0047】
上記のいずれかの既定を使用することで、一組の近似率W1,…Wn,…WNが、それぞれの測定点MP(1),…MP(k),…MP(Nframe)ごとに、特にそれぞれの被測定オン電流Imeas(1),…Imeas(k),…Imeas(Nframe)ごとに決定される、すなわち上記の方程式によって計算されるか、又は上記のダイアグラム又はテーブルから読み取られる。その結果、Nframe組の近似率W1(1),…Wn(k),…WN(Nframe)が決定される。
【0048】
次いで、適合された一組の基準電圧V1,…Vn,…VNが、当該決定されたW1(1),…Wn(k),…WN(Nframe)と当該被測定オン電圧Vmeas(1),…Vmeas(k),…Vmeas(Nframe)とに基づいて決定される。特に、当該適合された一組の基準電圧(V1,…Vn,…VN)は、方程式
【0049】
【数5】
を解くことによって計算される。この場合、 measは、上記時間間隔内の被測定オン電圧のベクトルであり、Wは、それぞれの測定点に対する被測定オン電流に対応する当該時間間隔内のそれぞれの測定点に対するそれぞれの基準電圧ごとの近似率の行列であり、は、現在の時間間隔内に適する基準電位のベクトルである。ベクトルに関するこの方程式は、擬似逆行列又はQR分解のような従来の様々な手法によって解かれ得る。
【0050】
当該適合された基準電位V1,…Vn,…VNは、被測定オン電圧Vmeas用の電流に依存しない評価として使用され得る。
【0051】
ステップ400では、平均近似率Wn(av)が、当該時間間隔の終了時に、式
【0052】
【数6】
にしたがって、適合された一組の基準電圧V1,…Vn,…VNのそれぞれの電圧Vnごとに計算され得る。その結果、一組の平均近似率W1(av),…Wn(av),…WN(av)が計算される。
【0053】
特別に適合された基準電圧Vnに対する平均近似率Wn(av)は、電圧評価の精度の信頼度を示している。
【0054】
サンプル時間間隔の存続期間は、例えば、平均値の精度を向上させる長い期間と、当該時間間隔にわたってほぼ一定の接合温度Tjと仮定される短い期間との間の妥協として選択され得る。
【0055】
ステップ500では、適合された一組の基準電圧V1,…Vn,…VNが、パワー半導体デバイスの動作を解析するために使用される。
【0056】
特に、当該解析は、最大の平均近似率Wn(av)を有する基準電圧Vnを適合された一組の基準電圧V1,…Vn,…VNから選択することと、当該接合温度Tjと当該選択された基準電圧Vnとの間の仮定された線形関係に基づいて、当該接合温度Tjに対する評価値を計算することとを含んでもよい。
【0057】
例えば、当該解析は、適合された一組の基準電圧V1,…Vn,…VNのうちの幾つかの基準電圧又は全ての基準電圧に対する当該仮定された線形関係に基づいて、当該接合温度に対するそれぞれの評価値を計算することを含んでもよい。このとき、接合温度Tjに対する評価値の重み付けされた平均値が決定されてもよい。当該重み付けは、それぞれの平均近似率W1(av),…Wn(av),…WN(av)にしたがって実行されてもよい。
【0058】
図6は、改良された概念によるパワーエレクトロニクスシステムの代表的な構成のブロック図である。特に、当該パワーエレクトロニクスシステムは、図2~5に関して説明したような改良された概念による方法を実行するように構成されている。
【0059】
当該システムは、改良された概念による回路Cと、パワーエレクトロニクス装置、例えば回路Cに結合されたパワーコンバータPCとから構成されている。パワーコンバータPCは、1つ又は複数のパワー半導体デバイスPS1,PS2,…,PS6、例えばIGBTを有する。図6中の6つに等しいパワー半導体デバイスの数は、例示にすぎず、6つでなくてもよい。図6の例では、当該デバイスPS1,…,PS6は、パワーコンバータ用の標準アプリケーションである6スイッチ三相2レベルインバータの一部として示されている。しかしながら、このインバータは、例示にすぎず、当該改良された概念は、このような構成に依拠しないので、当該パワー半導体デバイスは、このインバータに限定されない。
【0060】
ディプレッション型のIGBTのための回路記号が、図6に示されているが、この回路記号は、当該改良された概念による方法又は回路又はシステムを決して限定しない。特に、パワー半導体デバイスPS1,PS2,PS3は、エンハンスメント型のIGBT、他のトランジスタ、サイリスタ又はダイオードを有してもよい。パワーコンバータPCも、例として使用されているにすぎない。特に、パワーコンバータPCは、別のパワーエレクトロニクス装置、例えば半導体遮断器、半導体リレー、静止型無効電力補償装置又はスイッチモードオーディオアンプ(switch-mode audio amplifier)に置換されてもよい。
【0061】
パワーコンバータPCは、例えば、パワー半導体デバイスPS1,PS2,PS3を駆動及び/又は制御するための駆動制御装置DCUを有してもよい。
【0062】
図6に示されているように、回路Cは、パワーコンバータPCに対して分離していてもよい。代わりに、例えば、パワーコンバータPC又は駆動制御装置DCUが、回路Cを有してもよい。
【0063】
当該回路は、複数の半導体デバイスPS1,PS2,PS3のうちの少なくとも1つの半導体デバイスのオン電圧及びオン電流を予め決定された1つの時間間隔内に何回か繰り返して測定し、パワーコンバータPCと通信するための測定装置MUを有する。測定装置MUは、例えば1つ又は複数のアナログデジタル変換器及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を有してもよい。代わりに、測定装置MUは、マイクロコントローラユニットを有してもよい。
【0064】
回路Cは、基準電圧及び基準電流を記憶するための記憶装置SUをさらに有する。記憶装置SUは、適合された基準電圧、近似率及び平均近似率を記憶するためにも設けられている。また、上記の近似率を決定するための方程式、ダイアグラム又はルックアップテーブルが、記憶装置SU内に記憶されてもよい。
【0065】
(図示されていない)幾つかの構成では、記憶装置SUは、例えば測定装置MUのFPGA又はマイクロコントローラユニット内の測定装置MUに結合されてもよい。
【0066】
また、回路Cは、基準電圧を適合し、データを記憶装置SUに記憶し、オプションとして接合温度に対する評価値を決定するための評価装置EU、例えばマイクロプロセッサを有する。特に、評価装置EUは、図2~5に関して説明した全ての計算ステップを実行するように構成されてもよい。また、評価装置EUは、記憶装置SU及び/又は測定装置MUに結合されてもよい。
【0067】
上記の改良された概念による方法、回路又はシステムによって、パワー半導体デバイスの動作が、使用前の校正なしに、少なくとも当該パワー半導体デバイスの定格電流まで解析され得る。この解析は、最小二乗法を使用して、当該一組の基準電圧を複数の測定点に有効に適合させることによって、約100ms又は約数百ms内に達成される。当該最小二乗法による適合は、適合された電圧を計算することを可能にする。当該適合された電圧は、オンライン中に、すなわちパワー半導体デバイス又は当該デバイスを有するシステム、例えばパワーコンバータの通常動作中に、校正を有効に実行するために使用され得る。
【0068】
当該改良された概念は、精度対演算負荷のより良好なトレードオフを可能にする。例えば、簡単なビニングが使用されるならば、多数の電流ビンが必要とされる結果として、当該結果データを使用するときに、演算負荷が増大するか、又は、大きい誤差が、当該結果電圧で発生する。
【0069】
改良された概念によれば、オン電圧の低下の高電流測定が使用され得る結果として、変換装置の通常動作との干渉が回避されるか、又は、スイッチを入れ切れされる特定の低電流の供給が必要とされる。
【0070】
また、複雑なルックアップテーブルが省略され得る。
【0071】
大容量データ群が使用され得るので、測定誤差が大幅に低減され得る。
【0072】
改良された概念によるシステム又は回路は、直流電流又は非常に低い交流電流を対処できる。このような場合、2つの基準電流だけが、有効データを特定の時間間隔内に有する。この場合、オン電流は、ほぼ一定である。
【0073】
改良された概念による実行は、次世代の「スマート」パワーコンバータの幾つかの特徴を可能にし得る接合温度の評価を含み得る。当該接合温度の評価は、ダイナミックレーティング制御(インテリジェント・オーバーレイト/ディレイト)、最適化されたパラレルインバータスタックの電流共有、状況監視(摩耗及び異常動作の検出)、予測保守の実行、温度のサイクルカウンティング、残りの有用な寿命の評価、開発及び型式検査中のインバータスタックの構成の改良された確認、及び改良された過温度の検出を含む。
【0074】
パワーコンバータのメーカーに対して結果として得られる利益は、最適化された性能(例えば、定格電流又は電流効率)対(例えば、マージンの減少による)コストのトレードオフを含み得る。パワーコンバータのエンドユーザーに対する利益は、異常動作の早期の検出と削減され得る動作コストとを含み得る。
【0075】
上記と同様に、当該方法は、ダイオードの逆回復電流ピーク値、オーバーシュートピーク電圧等のようなスイッチング特性を含む、電流に依存する他のTSEPに適用されてもよい。また、TSEPは、本質的に全てのパワー半導体デバイスに対して適用されないが、同様な方法で、例えばゲート閾値電圧又は内部ゲート抵抗が適用され得る。1つの重要な側面は、動作点と温度の依存性とによる1つの測定を、温度の依存性だけによる分離した複数組の測定に変換することによって、動作点(例えば、電流)の依存性を取り除くことである。
【0076】
さらに、特に、対象となるある種のホットスポット温度が、厳しい環境のために測定困難である場合、当該概念は、パワーエレクトロニクス以外の電気機器の動作を解析するために使用されてもよい。当該場合は、例えば、電力変圧器の場合であり得る。この場合、変圧器のホットスポット温度又は巻線温度が対象となり得る。
【符号の説明】
【0077】
PC パワーコンバータ
DCU 駆動制御装置
PS1,PS2,PS3 パワー半導体デバイス
C 回路
EU 評価装置
SU 記憶装置
MU 測定装置
Io オン電流
Vo オン電圧
Tj 接合温度
V1,…Vn,…VN 基準電圧、適合された基準電圧
In,…In,…IN 基準電流
Imeas 被測定オン電流
Vmeas 測定オン電圧
MP 測定点
W1,…Wn,…WN 近似率(validity factor)
Wn(av),…Wn(av),…WN(av) 平均近似率
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】