(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】コーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20230412BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230412BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20230412BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20230412BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
C09D7/63
C09D163/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552722
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 EP2021055181
(87)【国際公開番号】W WO2021175852
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519316391
【氏名又は名称】ヨツン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】スベイン ヤーコブ カスペルセン
(72)【発明者】
【氏名】ソンドレ ボルデン
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038HA486
4J038HA506
4J038JB01
4J038JC32
4J038KA21
4J038MA09
4J038MA14
4J038NA13
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】コーティングの提供。
【解決手段】(i)バインダー;(ii)任意選択的に硬化剤;(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び(iv)中空有機球形フィラー粒子を含むコーティング組成物、好ましくは溶媒を含まない組成物であって、前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比が、少なくとも1.1:1、好ましくは1.1:1.0~10.0:1.0である、コーティング組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)バインダー;
(ii)任意選択的に硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子
を含むコーティング組成物、好ましくは溶媒を含まない組成物であって、
前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比が、少なくとも1.1:1、好ましくは1.1:1.0~10.0:1.0である、コーティング組成物。
【請求項2】
前記バインダーが、エポキシ系、好ましくはエポキシ、アクリル、アルキド、フェノール系、シリコーン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアスパラギン酸、並びにこれらのハイブリッド及び混合物から選択され、好ましくは前記バインダーはエポキシ系、特にエポキシである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記硬化剤が、脂肪族又は脂環式のアミン又はポリアミンである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記中空無機球形フィラー粒子が、ガラスを含み、好ましくはこれからなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記中空無機球形フィラー粒子が、10~100ミクロンの平均直径を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記中空有機球形フィラー粒子が、10~120ミクロンの平均直径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記中空有機球形フィラー粒子の平均直径が、前記中空無機球形フィラー粒子の平均直径より大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記中空無機球形フィラー粒子と、前記中空有機球形粒子との体積比が、1.1:1.0~10.0:1.0、好ましくは5:1:1.0~1.2:1.0である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
増粘剤、好ましくはアミドワックス増粘剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
オルガノシラン接着促進剤をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
(i)バインダー;
(ii)任意選択的に硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子
を混合することを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を調製する方法。
【請求項12】
(i)バインダー、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、及び任意選択的に中空有機球形フィラー粒子を含有する第一の容器;
(ii)硬化剤、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、及び任意選択的に中空有機球形フィラー粒子を含有する第二の容器
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を調製するためのキットであって、
前記中空無機球形フィラー粒子及び前記中空有機球形フィラー粒子の各々が、前記容器の少なくとも1つに存在し、前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比が、少なくとも1.1:1である、キット。
【請求項13】
表面、好ましくは金属表面にコーティングを提供する方法であって、前記方法が、
(i)請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物を適用すること;及び
(ii)前記組成物を硬化して、前記表面にコーティングを形成すること
を含む、方法。
【請求項14】
表面、好ましくは金属表面上のコーティングであって、前記コーティングが、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物から形成されている、コーティング。
【請求項15】
物品の少なくとも1つの表面(例えば金属表面)に、コーティング、好ましくは遮断コーティングを形成するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
導入
本発明は、熱遮断を提供するコーティング組成物に関する。組成物は、バインダー、任意選択的に硬化剤、中空無機球形フィラー粒子、中空有機球形フィラー粒子、及び任意選択的に増粘剤を含む。本発明はさらに、コーティング組成物を調製する方法、及び組成物を含有する容器に関する。加えて、本発明は、表面(例えば金属表面)に、コーティング、好ましくは遮断性コーティングを提供する方法、及び本発明の組成物から形成された表面上のコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
遮断を提供するコーティングは、広範囲の用途で用いられる。例えば、設備が高温の液体及びガスに接触することが多い石油及びガス産業において、遮断性コーティングは、金属製のパイプ、タンク及び付属品などに対して用いられる。コーティングは、十分な遮断が提供されるように、低い熱伝導率を有することが要求される。今日使用されている典型的なコーティングは、ミネラルウール、ガラスウール、及びケイ酸カルシウムの組み合わせであり、それは、通常水及び湿度から保護するためにアルミニウムシートで覆われている。
【0003】
一般的に、コーティングが適用される金属表面の温度が高いほど、遮断性コーティングを、その厚みにわたって必要な熱低減を達成するために厚くする必要がある。しかし、遮断性コーティングの厚みが大きいほど、特に温度変化(例えば、温度の急激な上昇又は降下)にさらされた場合に、コーティングが割れる傾向が大きくなる。コーティングにおけるクラックの発生は、金属表面からのコーティングの剥離又ははがれ(「フレーキング」と呼ばれることもある)を引き起こす傾向もある。さらに、クラックが生じるとすぐに、コーティングの下に水及び塩が侵入するリスクがあり、金属表面で不良環境が作り出される。これは、石油及びガス産業においてよく知られている問題であり、保温材下腐食(CUI)と呼ばれることが多い。
【0004】
さらに、比較的厚い遮断性コーティングは、特に、コーティングされる表面積が広範囲な場合(例えばパイプの長さ又はタンクの表面全体)、適用に時間がかかる。これは、通常、コーティングの第一の層を適用し、それを乾燥させ、硬化させてからコーティングの第二の層を適用することなどが必要だからである。これをすることは、コーティングのだれ、すなわちコーティングが乾燥し、硬化する前のコーティング流れを回避するために必要である。コーティングの層が厚いほど、それがだれる可能性が増加し、生じるだれの程度が大きくなる。だれは、非水平な表面、例えば垂直の表面をコーティングする場合に特に問題であり、見苦しい不均一なコーティングをもたらす。
【0005】
したがって、遮断性コーティングは、
・熱遮断性であり;
・高温でのはがれに耐性があり;
・温度変化中でさえクラックに耐性があり;
・だれに対して耐性があり;
・大きい表面積に適用可能、例えばスプレー可能であり;
・腐食を引き起こす吸水をしにくいことが要求される。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要
第一の側面から見ると、本発明は、
(i)バインダー;
(ii)任意選択的に硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子
を含むコーティング組成物であって、
前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比が、少なくとも1.1:1である、コーティング組成物を提供する。
【0007】
さらなる側面から見ると、本発明は、
(i)バインダー;
(ii)任意選択的に硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子
を混合することを含む、上文に定義された組成物を調製する方法を提供する。
【0008】
さらなる側面から見ると、本発明は:
(i)バインダー、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、及び任意選択的に中空有機球形フィラー粒子を含有する第一の容器;
(ii)硬化剤、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、及び任意選択的に中空有機球形フィラー粒子を含有する第二の容器
を含む、上文に定義された組成物を調製するためのキットであって、
前記中空無機球形フィラー粒子及び前記中空有機球形フィラー粒子の各々が、前記容器の少なくとも1つに存在する、キットを提供する。
【0009】
さらなる側面から見ると、本発明は、
(i)バインダー;
(ii)硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;
(iv)中空有機球形フィラー粒子;及び
(v)増粘剤
を含むコーティング組成物を提供する。
【0010】
さらなる側面から見ると、本発明は、
(i)バインダー;
(ii)任意選択的に硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;
(iv)中空有機球形フィラー粒子;及び
(v)増粘剤
を混合することを含む、上文に定義された組成物を調製する方法を提供する。
【0011】
さらなる側面から見ると、本発明は、
(i)バインダー、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、任意選択的に中空有機球形フィラー粒子、及び任意選択的に増粘剤を含有する第一の容器;
(ii)硬化剤、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、任意選択的に中空有機球形フィラー粒子、及び任意選択的に増粘剤を含有する第二の容器
を含む、上文に定義された組成物を調製するためのキットであって、
前記中空無機球形フィラー粒子、前記中空有機球形フィラー粒子、及び前記増粘剤の各々が、前記容器の少なくとも1つに存在する、キットを提供する。
【0012】
さらなる側面から見ると、本発明は、上文に記載されている組成物を含有する容器を提供する。
【0013】
さらなる側面から見ると、本発明は、表面にコーティングを提供する方法であって、前記方法が、
(i)上文に記載されている組成物を適用すること;及び
(ii)前記組成物を硬化して、表面にコーティングを形成すること
を含む、方法を提供する。
【0014】
さらなる側面から見ると、本発明は、表面、好ましくは金属表面上のコーティングであって、前記コーティングが、上文に記載されている組成物から形成されている、コーティングを提供する。好ましいコーティングは、遮断又は遮断性コーティングである。
【0015】
さらなる側面から見ると、本発明は、物品の少なくとも1つの表面に、コーティング、好ましくは遮断コーティングを形成するための、上文に記載されている組成物の使用を提供する。
【0016】
さらなる側面から見ると、本発明は、物品の少なくとも1つの表面、好ましくは金属表面に遮断性コーティングを形成するための、
(i)バインダー;
(ii)硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子
を含む組成物の使用を提供する。
【0017】
さらなる側面から見ると、本発明は、表面、好ましくは金属表面上のコーティングであって、前記コーティングは遮断性であり、少なくとも2mmの厚みを有し、前記コーティングは、
(i)バインダー;
(ii)硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子
を含む、コーティングを提供する。
【0018】
定義
本開示で用いられる用語「コーティング組成物」は、表面に適用された際に、その上に膜又はコーティングを形成する組成物を指す。
【0019】
本開示で用いられる用語「バインダー」は、適用された際に基材表面に連続膜を形成するポリマーを指す。組成物の他の成分は、バインダーの全体にわたって分散する。用語「有機バインダー」は、炭素を含むバインダーを指す。
【0020】
本開示で用いられる用語「ハイブリッドバインダー」は、少なくとも2つのバインダーの分類からのモノマー、例えば、エポキシ及びアクリルで形成されたポリマーを指す。
【0021】
本開示で用いられる用語「エポキシ系」は、エポキシ基及び/又は変性エポキシ基を含むポリマー又はオリゴマーを指す。用語エポキシ系バインダーは、従来のエポキシ骨格を有するが、エポキシ末端基が、エポキシ基と同じ硬化剤で硬化することができる、例えばアクリル酸又はメタクリル酸官能基で変性されているバインダー包含する。多くの場合、エポキシ樹脂は、少なくとも幾つかのエポキシ基を含む。用語エポキシは、エポキシドと交換可能に用いられる。
【0022】
本開示で用いられる用語「固体エポキシ樹脂」は、25℃、1気圧で固体のポリマーを指す。
【0023】
本開示で用いられる用語「液状エポキシ樹脂」は、25℃、1気圧で液体のポリマーを指す。
【0024】
本開示で用いられる用語「エポキシ」は3原子環状エーテルを指す。
【0025】
本開示で用いられる用語「エポキシバインダーシステム」は、1種又は複数種のエポキシ樹脂、及び1種又は複数種の硬化剤、並びに任意選択的に、反応性エポキシ希釈剤、接着促進剤、及び加速剤の組み合わせを指す。
【0026】
本開示で用いられる句「エポキシ当量」又は「EEW」は、1kgの樹脂におけるエポキシド当量数を指す。それは、ASTM D-1652によって測定される。
【0027】
本開示で用いられる句「ポリシロキサン系バインダー」は、-Si-O-繰り返し単位を含むバインダーを指す。用語ポリシロキサン系は、従来の-Si-O-骨格を有するが、末端基が変性されているバインダーを包含する。ポリシロキサンバインダーは、有機又は無機であってよいが、有機ポリシロキサンバインダーが好ましい。有機ポリシロキサンバインダーにおいて、有機基は、側鎖及び/又は末端基に存在する。
【0028】
本開示で用いられる用語「硬化可能なポリシロキサンバインダー」は、架橋反応がポリシロキサン系バインダー分子間、又は架橋剤を介して起こることを可能にする官能基を含むポリシロキサン系バインダーを指す。
【0029】
本開示で用いられる用語「ポリウレタン系バインダー」は、主成分として1種又はそれより多くのジ-又はポリ-イソシアネート成分及び2つ又はそれより多くのヒドロキシル基を含有するヒドロキシ官能成分を有するバインダー(二成分系)、又は主成分として1種又はそれより多くのイソシアネートプレポリマーを有するバインダー(典型的には一成分系)を指す。1種又は複数種のイソシアネート成分及び1種又は複数種のヒドロキシ官能成分の反応(硬化)は、ウレタン官能基の形成をもたらす。
【0030】
本開示で用いられる用語「硬化剤」は、バインダー、例えば、エポキシ系バインダーと混合された際に、ポリマー内の架橋の生成によって、硬化した(cured)、又は硬化した(hardened)コーティングを生成する化合物を指す。硬化剤は、ハードナーと呼ばれることがある。
【0031】
本開示で用いられる用語「硬化加速剤」及び「加速剤」は、同義的に用いられ、コーティングを硬化する(cure)か、硬化する(harden)硬化反応の速度を増加させる化合物を指す。
【0032】
本開示で用いられる用語「フィラー」は、コーティング組成物の体積又はかさを増加させる化合物を指す。それらは、コーティング組成物中で実質的に不溶性であり、その中で分散する。フィラー粒子サイズが本開示で言及される場合、それらが組成物に加えられる際の粒子サイズである。
【0033】
本開示で用いられる用語「中空」は、有機又は無機の球形フィラー粒子に関して用いられる場合、中心に、ガス、典型的には空気によって占有された、ボイド、キャビティ又は空のスペースを有する粒子を指す。
【0034】
本開示で用いられる用語「球形」は、有機又は無機のフィラー粒子に関して用いられる場合、実質的に球形の粒子、及び球形の粒子を包含する。実質的に球形の粒子は、x、y及びz次元の各々においてサイズが同一であり、±1.2μm、より好ましくは±0.6μmである。
【0035】
本開示で用いられる用語「平均直径」は、粒子サイズが5μmを超える場合、Malvern Mastersizer 2000を用いて、ISO 22412:2017によって決定されるZ-平均直径サイズを指す。
【0036】
本開示で用いられる用語「質量%」(質量%)は、組成物の個々の構成成分、例えば増粘剤、反応性希釈剤等に関して用いられる場合、別段の定めがない限り、構成成分の実質量、すなわち、存在する揮発性成分を含まない質量を指す。
【0037】
本開示で用いられる用語「(質量)%(質量%)」は、コーティング組成物に関して用いられる場合、別段の定めがない限り、組成物の全質量に対する質量、すなわち、不揮発性成分及び揮発性成分を含む組成物の全質量に対する質量を指す。
【0038】
本開示で用いられる用語「揮発性有機化合物」は、101.3kPaにおいて≦250℃の沸点を有する化合物を指す。これはEU指令2004/42/CEにおいて与えられた定義である。
【0039】
本開示で用いられる、用語「溶媒を含まない」は、10g/L未満のVOCを含む組成物を指す。
【0040】
本開示で用いられる用語「接着促進剤」は、ターゲット基材(例えば金属基材及び/又はコーティングの別の層)へのコーティングの層の接着を改善する化合物を指す。
【0041】
本開示で用いられる用語「オルガノシラン」は、少なくとも1つのSi-C結合を含む化合物を指す。
【0042】
本開示で用いられる用語「沈降防止剤」は、コーティング組成物の保管中の粘稠度の均一性を改善する化合物を指す。一般的に、沈降防止剤はチキソトロピーである。
【0043】
本開示で用いられる用語「増粘剤」は、コーティング組成物の粘度を増加させる化合物を指す。増粘剤は、レオロジー改質剤と呼ばれることがある。
【0044】
本開示で用いられる用語「分子量」は、別段の定めがない限り、重量平均分子量(Mw)を指す。それはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)によって決定される。
【0045】
本開示で用いられる用語「密度」は、中空球形フィラー粒子に関して用いられる場合、ガスピクノメーターによって決定される密度を指す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、
(i)バインダー;
(ii)任意選択的に硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子;
を含むコーティング組成物であって、
前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比が、少なくとも1.1:1である、コーティング組成物に関する。
【0047】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は溶媒を含まない。特に好ましくは、組成物は、0~10g/LのVOC、より好ましくは0~5g/LのVOC、さらに好ましくは0~2.5g/LのVOCを含む。
【0048】
任意選択的に、本発明のコーティング組成物は、次のものをさらに含む:(v)増粘剤;(vi)接着促進剤;(vii)反応性希釈剤;及び/又は(viii)添加剤。
【0049】
本発明のコーティング組成物は、高レベルの熱遮断を有するコーティングを提供し、これは、十分な遮断を達成するのに必要なコーティングの厚みが最小限に抑えられることを意味する。有利には、本発明のコーティング組成物によって形成されたコーティングは、高温(例えば150℃)及び熱衝撃(例えば直接150から-20℃)及び温度サイクル(例えば-20及び60℃間)への曝露中でさえ、クラック耐性、及び下にある表面、例えば、プライマー処理された金属表面などの金属表面に対する優れた接着の両方を有する。したがって、本発明のコーティング組成物によって形成されたコーティングは、従来のコーティングよりも、それらが適用された下にある表面からはがれる、又は剥がれ落ちる傾向が小さい。組み合わせにおいて、本発明のコーティングの改善されたクラック耐性及び改善された接着は、コーティングが、下にある基材(例えば金属基材)を腐食からより効果的に保護することを意味する。
【0050】
有利には、本発明のコーティング組成物は、高レベルのだれ耐性をさらに有する。これは、コーティングのより厚い層を一段階で適用できることを意味し、比較的厚いコーティングを比較的小さい工程数において調製できることを意味するため、大いに有益である。この利益は、大きい非水平の表面、例えばタンクの壁をコーティングする場合に特に有用である。
【0051】
バインダー
本発明のコーティング組成物は、バインダーを含む。存在するバインダーの種類は、主に、コーティングが最終的に存在する環境、特に、環境の温度及び環境の腐食性に依存する。好ましくは、バインダーは有機バインダーである。
【0052】
本発明のコーティング組成物中に存在してよい適切なバインダーの例としては、エポキシ系、好ましくはエポキシ、アクリル系、アルキド系、フェノール系、シリコーン、ポリシロキサン系、ポリウレタン系、ポリ尿素系、ポリアスパラギン酸系、並びにこれらのハイブリッド及び混合物が挙げられる。好ましくは、バインダーは、エポキシ系(例えばエポキシ)、ポリシロキサン系(例えばポリシロキサン)、ポリウレタン系(例えばポリウレタン)、ポリウリア系、並びにこれらのハイブリッド及び混合物から選択される。
【0053】
好ましくは、コーティング組成物中に存在するバインダーは、有機バインダー又はポリシロキサン系である。より好ましくは、バインダーは有機バインダーである。さらにより好ましくは、バインダーは、エポキシ系、より好ましくはエポキシ、ポリシロキサン系、ポリウレタン、並びにこれらのハイブリッド及び混合物から選択される有機バインダーである。
【0054】
本発明のコーティング組成物中に存在するバインダーの総量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは10~70質量%、より好ましくは15~60質量%、さらにより好ましくは15~50質量%、いっそうより好ましくは20~40質量%である。
【0055】
エポキシ系バインダー
本発明の好ましいコーティング組成物において、有機バインダーはエポキシ系、好ましくはエポキシである。任意選択的に、エポキシ系バインダーは、脂肪酸、ポリプロピレンオキシド及び/又はポリエチレンオキシドで変性される。
【0056】
エポキシ系バインダー、例えば、エポキシバインダーは、液状エポキシ系バインダー若しくは固体エポキシ系バインダー、又はその組み合わせであってよい。しかし、好ましくは、エポキシ系バインダーは、液状エポキシ系バインダーである。エポキシ系バインダーが液状である場合、その粘度は、好ましくは1000~20000mPa、より好ましくは1500~15000mPas、さらにより好ましくは1500~10000mPas、いっそうより好ましくは2000~6500mPasである。
【0057】
本発明のコーティング組成物中に存在する好ましいエポキシ系バインダー、例えばエポキシバインダーのエポキシ当量(EEW)は、150~2000g/eq、より好ましくは155~1500g/eq、さらにより好ましくは160~1000g/eq、いっそうより好ましくは160~300g/eqである。EEWの水準は、エポキシ系バインダー及び硬化剤の最適な混合比(例えば、1:1~4:1、たとえば3:1、体積固体)を達成するのに重要である。(低いEEWと関連することが多い)低Mwのバインダーはより低い粘度を有しており、したがって配合物がより少ない溶媒を要求することがよく知られている。これは低VOC含有量の、又は溶媒を含まない組成物を達成するために有益である。
【0058】
好ましいエポキシ系液状バインダーは、156~1000のエポキシ当量(EEW)を有する。より好ましいエポキシ系液状バインダーは、300未満の、より好ましくは156~300の、さらにより好ましくは156~250のEEWを有する。好ましいエポキシ系固体バインダーは、300~1000の、より好ましくは350~750の、さらにより好ましくは400~700の、特に好ましくは500~670のエポキシ当量(EEW)を有する。
【0059】
好ましいエポキシ系バインダーは、1分子当たり1つより多くのエポキシ基を含む。係るエポキシ基は、エポキシ系バインダーの、又はエポキシ系バインダーに組み入れられた環状構造の、内部又は末端位置にあってよい。好ましくは、エポキシ系バインダーは、架橋されたネットワークを形成することができるように、少なくとも2つのエポキシ基を含む。
【0060】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、芳香族エポキシ系バインダー、脂肪族エポキシ系バインダー、及び脂環式エポキシ系バインダーから選択される1種又はそれより多くのエポキシ系バインダーを含む。
【0061】
本発明の組成物において使用するのに適している脂肪族、及び脂環式のエポキシ系バインダーの代表例としては、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAノボラック、及びジシクロペンタジエン系バインダー、グリシジルエーテル(たとえば多価アルコールのポリグリシジルエーテル)、エポキシ官能性アクリル樹脂、及びこれらの任意のハイブリッド又は混合物が挙げられる。変性された、特に、アクリル酸又はメタクリル酸変性された、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAノボラック、ジシクロペンタジエン系バインダー、グリシジルエーテル(例えば多価アルコールのポリグリシジルエーテル)も好ましい。
【0062】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、芳香族エポキシ系バインダー、例えば芳香族エポキシバインダーを含む。好ましくは、芳香族エポキシ系バインダーは、少なくとも1つのエポキシド官能基を含む化合物と、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む芳香族共反応物との組み合わせから誘導される。
【0063】
本発明の組成物においての使用に適している芳香族エポキシ系バインダーの代表的例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS、レゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)などのビスフェノール型エポキシ系バインダー、フェノールノボラック型バインダー(ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールSノボラック)、及びクレゾールノボラック型バインダーなどのノボラック型エポキシ系バインダー、並びにこれらの任意のハイブリッド又は混合物が挙げられる。変性された、特に、アクリル酸又はメタクリル酸変性された、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールS、レゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)、ノボラック型エポキシ系バインダー、たとえばフェノールノボラック型バインダー(ビスフェノールAノボラック、ビスフェノールSノボラック)、及びクレゾールノボラック型バインダーも好ましい。
【0064】
本発明の組成物で使用されるエポキシ系バインダーの好ましい例は、ビスフェノールA系バインダー、4,4’-イソプロピリデンジフェノール-エピクロルヒドリンバインダー、ビスフェノールF系バインダー、ノボラック系バインダー、並びにこれらのハイブリッド及び混合物である。特に好ましいエポキシ系バインダーは、ビスフェノールA系バインダー、ビスフェノールF系バインダー、並びにこれらのハイブリッド及び混合物である。幾つかの組成物において、バインダーは、好ましくはビスフェノールAエポキシバインダーである。他の組成物において、バインダーは、好ましくはビスフェノールFエポキシバインダーである。さらに他の組成物において、バインダーは、好ましくはビスフェノールAエポキシバインダー及びビスフェノールFエポキシバインダーの混合物である。
【0065】
ビスフェノールAエポキシ系バインダーは当業者に知られており、以下の一般構造を有する。
【化1】
【0066】
特に好ましい本発明のコーティング組成物は、1種又はそれより多くのビスフェノールFエポキシ系バインダーを含む。2種又はそれより多くのビスフェノールFバインダーの組み合わせが、任意選択的に用いられてよい。ビスフェノールFエポキシ系バインダーが、より一般的なビスフェノールAエポキシ系バインダーを含むコーティング組成物に対してコーティング組成物の粘度を低減することが見出された。これにより、高固形分で溶媒を含まないコーティング組成物を調製することが可能となり、それによって、VOCが低減される。
【0067】
好ましいビスフェノールFエポキシ系バインダーは、100~350のEEWを有する。より好ましくは、EEWは300又はそれより小さい、例えば、100~300、より好ましくは150~250である。好ましいビスフェノールFエポキシ系バインダーは液状である。ビスフェノールFエポキシ系バインダーの粘度は、好ましくは1000~10000mPas、より好ましくは2000~5000mPasである。
【0068】
好ましいビスフェノールF(4’,4’-メチレンビスフェノール)エポキシ系バインダーは、ビスフェノールF及びエピクロルヒドリンの組み合わせから誘導される。二官能性エポキシ系ビスフェノールFバインダーの使用は、特に好ましい。
【0069】
エポキシ系バインダーの固形分は、好ましくは70質量%超、好ましくは80質量%超、好ましくは90質量%超、最も好ましくは99質量%超である。特に好ましくは、エポキシ系バインダーは溶媒を含まない。
【0070】
本発明のコーティング組成物での使用に適切なエポキシ系バインダーは、市販で入手可能である。コーティング組成物に適している市販で入手可能なエポキシ系バインダーの例としては、次のものが挙げられる:
・ビスフェノールA型エポキシ系バインダー:HexionからのEpikote 828、Epikote 1004、Epikote 1001 X 75、及びEpikote 1009。Huntsman Advanced MaterialsからのアラルダイトGY250、アラルダイトGZ7071X75BD、及びアラルダイトGZ7071X75CH。Dow ChemicalsからのDER664-20及びDER684-EK40;
・ビスフェノールFエポキシ系バインダー:HexionからのEpikote 862、KukdoからのYDF-170、HuntsmanからのGY285、DowからのDER354、CCPからのBFE-170、又はKolonからのKF8100;及び
・ビスフェノールA及びビスフェノールFの混合物:Dow ChemicalsからのDER352、及びDEN438-X 80、HexionからのEpikote 235。
【0071】
本発明のコーティング組成物は、1種又はそれより多くのエポキシ系バインダーを含んでよい。コーティング組成物中に液状及び固体のエポキシ系バインダーの両方が存在する場合、液状エポキシ系バインダーが固体エポキシ系バインダーに対して過剰であることが好ましい。
【0072】
本発明のコーティング組成物中に存在するエポキシ系バインダー(すなわち液状及び固体)の総量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは10~60質量%、より好ましくは15~70質量%、さらにより好ましくは15~50質量%、いっそうより好ましくは20~40質量%である。
【0073】
ポリシロキサン系バインダー
本発明のコーティング組成物中に存在するポリシロキサン系バインダーは、任意の硬化可能なポリシロキサン系バインダーであってよい。ポリシロキサン系バインダーは、物品、例えば、タンク又はパイプを、非常に高い温度、例えば100℃を超える温度にて遮断するために用いられるコーティングにおいて特に有用である。
【0074】
ポリシロキサン系バインダーは、好ましくは末端及び/又はペンダント硬化反応性官能基を含むオルガノポリシロキサンである。1分子当たり最低2つの硬化反応性官能基が好ましい。硬化反応性官能基の例は、シラノール、アルコキシ、アセトキシ、エノキシ、ケトキシム、アルコール、アミン、エポキシ、及び/又はイソシアネートである。好ましいポリシロキサン系バインダーは、シラノール、アルコキシ、又はアセトキシ基から選択される硬化反応性官能基を含有する。硬化反応は、典型的には縮合硬化反応である。ポリシロキサン系バインダーは、任意選択的に1つより多くの種類の硬化反応性基を含み、例えば、縮合硬化、及びアミン/エポキシ硬化の両方を介して硬化されてよい。
【0075】
本発明のコーティング組成物中に存在するポリシロキサン系バインダーは、好ましくは少なくとも30質量%のポリシロキサン部分、好ましくは50質量%超のポリシロキサン部分、さらにより好ましくは70質量%超のポリシロキサン部分、たとえば99.99質量%のポリシロキサン部分、又はそれより多くを含む。任意選択的に、ポリシロキサン系バインダーは、純粋なポリシロキサンである。
【0076】
ポリシロキサン部分は、ポリシロキサン系バインダーの全質量に基づいた、モチーフ-Si-O-を含む繰り返し単位として定義される。ポリシロキサン部分の質量%は、ポリシロキサンの合成における出発物質の化学量論的な質量比に基づいて決定することができる。代わりに、ポリシロキサン含有量は、IR又はNMRなどの分析技術を用いて決定することができる。市販で入手可能なポリシロキサン系バインダー中のポリシロキサン部分の質量%に関する情報は、供給業者から容易に得ることができる。
【0077】
ポリシロキサン系バインダーは、シロキサン単位の単一の繰り返し配列からなってもよく、非シロキサン部分、例えば有機部分を割り込ませてもよいことを理解されたい。有機部分は、例えば、アルキレン、アリーレン、ポリ(アルキレンオキシド)、アミド、チオエーテル、又はこれらの組み合わせを含んでよく、好ましくは、有機部分は、例えば、アルキレン、アリーレン、ポリ(アルキレンオキシド)、アミド、又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0078】
本発明の1つの好ましいコーティング組成物において、ポリシロキサン系バインダーは、末端又はペンダント位置にアミン官能基を含む。
【0079】
ポリシロキサン系バインダーは、1種類のみのポリシロキサンからなってもよく、異なるポリシロキサンの混合物であってもよい。
【0080】
1つの好ましいコーティング組成物において、ポリシロキサン系バインダーは、分岐状ポリシロキサン系バインダーである。
【0081】
本発明のコーティング組成物中に存在する好ましいポリシロキサン系バインダーは、以下の式(D1)によって表される:
【化2】
式中、
各R
1は、ヒドロキシル基、C
1~6アルコキシ基、C
1~6ヒドロキシル基、C
1~6エポキシ含有基、C
1~6アミン基、C
1~10アルキル、C
6~10アリール、C
7~10アルキルアリール
、又はO-Si(R
5)
3-z(R
6)
zから独立して選択され、
各R
2は、C
1~10アルキル、C
6~10アリール、C
7~10アルキルアリール、又はポリ(アルキレンオキシド)及び/若しくはR
1に記載の基によって置換されたC
1~6アルキルから独立して選択され;
各R
3及びR
4は、C
1~10アルキル、C
6~10アリール、C
7~10アルキルアリール、又はポリ(アルキレンオキシド)によって置換されたC
1~6アルキルから独立して選択され;
各R
5は、独立して加水分解性基、たとえば、C
1~6アルコキシ基、アセトキシ基、エノキシ基又はケトキシ基であり;
各R
6は、非置換又は置換のC
1~6アルキル基から独立して選択され;
zは0又は1~2の整数であり;
xは少なくとも2の整数であり;
yは0又は少なくとも1の整数である。
【0082】
好ましくは、R1は、ヒドロキシル基、及びO-Si(R5)3-z(R6)zから選択され、式中、R5はC1~6アルコキシ基であり、R6はC1~6アルキルであり、zは0又は1~2の整数である。より好ましくは、R1は、ヒドロキシル基、及びO-Si(R5)3-z(R6)zから選択され、式中、R5はC1~3アルコキシ基であり、R6はC1~3アルキルであり、zは0又は1~2の整数である。
【0083】
好ましくは、R2はC1~10アルキル基、C6~10アリール、C7~10アルキルアリール、又はO-Si(R5)3-z(R6)zである。
【0084】
好ましくは、R3はC1~10アルキル基、又はC6~10アリールである。より好ましくは、R3はC1~4アルキル基又はC6アリール基であり、さらにより好ましくはC1~2アルキル基又はC6アリール基であり、いっそうより好ましくはメチル基又はフェニル基である。
【0085】
好ましくは、R4はC1~10アルキル基又はC6~10アリールである。より好ましくは、R3はC1~4アルキル基又はC6アリール基であり、さらにより好ましくはC1~2アルキル基又はC6アリール基であり、いっそうより好ましくはメチル基又はフェニル基である。
【0086】
1つの好ましいコーティング組成物において、本発明のポリシロキサン系バインダーは、メチル、フェニル及びメトキシ基を含む分岐状ポリシロキサンである。
【0087】
本発明のコーティング組成物中に存在するポリシロキサン系バインダーの重量平均分子量は、好ましくは400~150,000g/molであり、より好ましくは1000~120,000g/molであり、さらにより好ましくは5000~110,000g/molである。
【0088】
本発明のコーティング組成物での使用に適切なポリシロキサン系バインダーは、市販で入手可能である。代表的な市販で入手可能なポリシロキサン系バインダーとしては、WackerからのREN 50及びREN 80、EvonikからのSilikophen P50X及びSilikophen P80Xが挙げられる。
【0089】
本発明の好ましいコーティング組成物は、組成物の全乾燥質量に基づいて、10~60質量%のポリシロキサン系バインダー、より好ましくは15~70質量%のポリシロキサン系バインダー、さらにより好ましくは15~50質量%のポリシロキサン系バインダーを含む。
【0090】
ポリウレタン系バインダー
本発明の好ましいコーティング組成物において、有機バインダーはポリウレタン系であり、好ましくはポリウレタンである。
【0091】
本発明のコーティング組成物で使用される1つの好ましいポリウレタン系バインダーは、a)ポリイソシアネート成分、及びb)少なくとも2つのヒドロキシル基を含むヒドロキシ官能成分を含む。架橋は、ポリイソシアネート成分a)及びヒドロキシル官能成分b)の間の反応由来である。
【0092】
コーティング組成物においてポリイソシアネート成分a)として使用される適切なポリイソシアネートは、当分野においてよく知られている。168~300g/molの分子量を有する適切な低分子量ポリイソシアネートの例としては、次のものが挙げられる:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-及び/又は、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4-ジイソシアナト-1-メチル-ベンゼン(トルエンジイソシアネート、TDI)、2,4-ジイソシアナト-1-メチルベンゼン、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン、2,4-及び/又は4,4’-ジイソシアナト-ジフェニルメタン、並びにこれらの異性体とその高級同族体との混合物、高級同族体は、アニリン/ホルムアルデヒド縮合体、2,4-及び/又は2,6-ジイソシアナトトルエン、並びにこれらの化合物の任意の混合物のホスゲン化によって既知の方法で得られる。
【0093】
本発明の幾つかの好ましいコーティング組成物において、ポリイソシアネート成分a)は、脂肪族ポリイソシアネート、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-及び/又は2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン、並びに2,4-及び/又は4,4’-ジイソシアナト-ジフェニルメタンから選択される。
【0094】
本発明の他の好ましいコーティング組成物において、ポリイソシアネート成分a)は、芳香族ポリイソシアネート、例えば、2,4-ジイソシアナト-1-メチル-ベンゼン(トルエンジイソシアネート、TDI)、2,4-ジイソシアナト-1-メチル-ベンゼン、及びこれらの異性体とその高級同族体との混合物から選択され、この同族体は、アニリン/ホルムアルデヒド縮合体、2,4-及び/又は2,6-ジイソシアナトトルエン、並びにこれらの化合物の任意の混合物のホスゲン化によって既知の方法で得られる。
【0095】
本発明の好ましいコーティング組成物において、ポリイソシアネート成分a)は、当分野において従来のように、前述の単量体ポリイソシアネートの誘導体である。これらの誘導体としては、ビウレット基を含有するポリイソシアネートが挙げられる。特に好ましい誘導体の例としては、N,N’,N”-トリス-(6-イソシアナトヘキシル)-ビウレット、及びこれとその高級同族体との混合物、並びにN,N’,N”-トリス-(6-イソシアナトヘキシル)-イソシアヌレート、及びこれと、1つより多くのイソシアヌレート環を含有するその高級同族体との混合物が挙げられる。
【0096】
適切な市販で入手可能なポリイソシアネートの例は、次のとおりである:
Desmodur N3900(以前はVP2410)、例えばBayer(ドイツ)、脂肪族ポリイソシアネート
Desmodur N3600、例えばBayer(ドイツ)、脂肪族ポリイソシアネート
Desmodur N3800、例えばBayer(ドイツ)、脂肪族ポリイソシアネート
Tolonate HDT-LV2、例えばRhodia(フランス)、脂肪族ポリイソシアネート
Desmodur N3390、例えばBayer(ドイツ)、脂肪族ポリイソシアネート
Tolonate HDT90、例えばRhodia(フランス)、脂肪族ポリイソシアネート
Basonat HI 190 B/S、例えばBASF(ドイツ)、脂肪族ポリイソシアネート
Desmodur N75、例えばBayer(ドイツ)、脂肪族ポリイソシアネート
Bayhydur VP LS 2319、例えばBayer(ドイツ)、脂肪族ポリイソシアネート
Tolonate IDT 70B、例えばRhodia(フランス)、脂肪族ポリイソシアネート
Desmodur H、例えばBayer(ドイツ)
Basonat HB 175 MP/X BASF-ドイツ、脂肪族ポリイソシアネート。
【0097】
適切な市販で入手可能な芳香族ポリイソシアネート樹脂の例は次のとおりである:
Desmodur L67 BA(Bayer Material Science)
Desmodur E21(Bayer Material Science)
Desmodur VL(Bayer Material Science)
Voratron EC 112(Dow Chemicals)
Desmodur E23(Bayer Material Science)
Desmodur E 1660(Bayer Material Science)
Suprasec 2495(Huntsman Advanced Materials)。
【0098】
上記の単量体ポリイソシアネート及び有機ポリヒドロキシル化合物に基づいたイソシアネート基含有プレポリマー及びセミプレポリマーも、ポリイソシアネート成分a)として使用するのに好ましい。これらのプレポリマー及びセミプレポリマーは、通常、0.5~30質量%、好ましくは1~20質量%のイソシアネート含有量を有し、上記の出発物質の、1.05:1~10:1、好ましくは1.1:1~3:1のNCO/OH当量比における反応によって既知の方法で調製され、この反応に次いで、任意選択的に、依然として存在する任意の未反応の揮発性の出発ポリイソシアネートの蒸留による除去が行われる。
【0099】
プレポリマー及びセミプレポリマーは、62~299g/molの分子量を有するポリヒドロキシル化合物から調製することができる。例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,6-ジヒドロキシヘキサン;これらのポリオールと、以下に例示される種類のジカルボン酸との低分子量ヒドロキシル含有エステル;これらのポリオールの低分子量エトキシル化及び/又はプロポキシル化生成物;及び変性された、又は変性されていない、上述の多価アルコールの混合物が挙げられる。
【0100】
好ましくは、プレポリマー及びセミプレポリマーは、比較的高い分子量のポリヒドロキシル化合物から調製される。これらのポリヒドロキシル化合物は、1分子当たり少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、より好ましくは0.5~17質量%、好ましくは1~5質量%のヒドロキシル基含有量を有する。
【0101】
市販で入手可能なポリエステルポリオールの例としては、次のものが挙げられる:
Desmophen 651 MPA、例えばBayer(ドイツ)
Desmophen VP LS 2089、例えばBayer Material Science(ドイツ)。
【0102】
適切な出発分子のアルコキシル化によって既知の方法で得られるポリエーテルポリオールも、イソシアネート基含有プレポリマー及びセミプレポリマーの調製に適している。ポリエーテルポリオールに適切な出発分子の例としては、上記の単量体ポリオール、水、及びこれらの任意の混合物が挙げられる。エチレンオキシド及び/又はポリレンオキシドは、アルコキシル化反応に特に適切なアルキレンオキシドである。これらのアルキレンオキシドは、任意の順序で、又は混合物としてアルコキシル化反応へ導入することができる。
【0103】
市販で入手可能なポリエーテルポリオールの例としては、次のものが挙げられる:
Desmophen 1380 BT 03/2008(以前はDesmophen 550 U)、例えばBayer Material Science(ドイツ)
Voranol CP 450 Polyol、例えばDow Chemicals(ドイツ)。
【0104】
上記の単量体ジオールとホスゲンとの反応によって調製することができるヒドロキシル基含有ポリカーボネート、及びジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートも、プレポリマー及びセミプレポリマーの調製に適している。
【0105】
好ましくは、成分b)は、全体的に、又は部分的に、有機ポリヒドロキシル化合物に基づき、成分b)としては、ポリイソシアネート成分a)として使用するのに適しているプレポリマー及びセミプレポリマーの調製について上文に記載された低分子量ポリヒドロキシル化合物、及び比較的高い分子量のポリヒドロキシル化合物の両方が挙げられる。
【0106】
成分b)として用いることができる特に好ましいヒドロキシル官能性イソシアネート反応性化合物は、ポリウレタンコーティングにおける使用が知られているヒドロキシ官能性ポリアクリレートである。これらの化合物は、蒸気圧又は膜浸透圧法により決定される、800~50,000、好ましくは1000~20,000、より好ましくは5000~10,000の数平均分子量(Mn)、及び0.1~12質量%、好ましくは1~10質量%、最も好ましくは2~6質量%のヒドロキシル基含有量を有するオレフィン性不飽和化合物のヒドロキシル含有コポリマーである。コポリマーは、ヒドロキシル基を含有するオレフィン性モノマー、及びヒドロキシル基を含まないオレフィン性モノマーに基づく。適切なモノマーの例としては、スチレン、α-メチルスチレン、о-及びp-クロロスチレン、о-、m-及びp-メチルスチレン、p-tert-ブチルスチレンなどのビニル及びビニリデンモノマー;アクリル酸;(メタ)アクリロニトリル;エチルアクリレート、メチルアクリレート、n-及びイソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びイソオクチルメタクリレートなどの1~8つの炭素原子を含有するアルコールのアクリル酸及びメタクリル酸エステル;アルコール成分中に4~8つの炭素原子を有する、フマル酸、イタコン酸又はマレイン酸のジエステル;(メタ)アクリル酸アミド;酢酸ビニル又はプロピオン酸ビニルなどの2~5つの炭素原子を有するアルカンモノカルボン酸のビニルエステル;及び2-ヒドロキシエチル-、2,ヒドロキシプロピル-、4-ヒドロキシブチル-アクリレート及びメタクリレート、並びにトリメチロールプロパン-モノ-又はペンタエリスリトモノ-アクリレート又はメタクリレートなどのヒドロキシアルキル基中に2~4つの炭素原子を有するアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。上述のモノマーの混合物もヒドロキシ官能性ポリアクリレートの調製に用いることができる。上文に記載されたポリヒドロキシル化合物の混合物も成分b)として用いることができる。
【0107】
好ましいポリウレタン系バインダーにおいて、成分a)及びb)は、0.8:1~20:1、好ましくは0.8:1~2:1、より好ましくは0.8:1~1.5:1、さらにより好ましくは0.8:1~1.2:1、最も好ましくは約1:1のイソシアネート基とイソシアネート反応性(ヒドロキシル)基との当量比を提供するのに十分な量で用いられる。ヒドロキシル官能性化合物b)は、好ましくは、最大で20個のヒドロキシル基が存在するような量で存在する。好ましくは、ヒドロキシル基と第二級アミノ基との当量比は、10:1~1:10である。
【0108】
適切な市販で入手可能なヒドロキシル官能性(イソシアネート反応性)樹脂の例としては、次のものが挙げられる:
Synocure 878 N 60、例えばArkem(スペイン)、芳香族炭化水素中のヒドロキシル官能性アクリル樹脂
Synthalat A 0 77、例えばSynthopol Chemie(ドイツ)
Synthalat A 045、例えばSynthopol Chemie(ドイツ)
Synthalat A 088 MS、例えばSynthopol Chemie(ドイツ)
Synthalat A 141 HS 05、例えばSynthopol Chemie(ドイツ)
Synthalat A 060、例えばSynthopol Chemie(ドイツ)
Desmophen A XP 2412、例えばBayer Material Science(ドイツ)
Synthalat A-TS 1603、例えばSynthopol Chemie(ドイツ)
Acrylamac 332-2629、例えばMomentive(ドイツ)。
【0109】
ポリ尿素系バインダー
本発明の幾つかの好ましいコーティング組成物において、有機バインダーはポリ尿素系バインダーであり、好ましくはポリ尿素である。ポリ尿素系バインダーは、ジ又はポリ-イソシアネート成分、及び少なくとも2つのアミン基を含むアミン官能性成分を含む。
【0110】
コーティング組成物で使用される適切なポリイソシアネートは、当分野においてよく知られている。適切なポリイソシアネートの例は、上記のポリウレタン系バインダーについて記載された通りである。
【0111】
アミン官能性成分中のアミン基は、好ましくは第一級又は第二級のアミン基である。より好ましくは、アミン基は第二級アミン基である。
【0112】
特に好ましくは、アミン基は、例えばマレイン酸及びフマル酸のエステルと予め反応して、ポリアスパラギン酸エステル誘導体を生成している。好ましいポリアスパラギン酸エステル誘導体は、以下の式によって表される:
【化3】
式中、
Xは、100℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性な有機基を表し;
各R
1及びR
2は、100℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性な有機基から独立して選択され;
各R
3及びR
4は、水素、及び100℃までの温度でイソシアネート基に対して不活性な有機基から独立して選択され;
nは少なくとも2の整数である。
【0113】
適切なアミン官能性成分の例としては、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-、及び/又は2,2,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノウンデカン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチル-シクロヘキサン、2,4、及び/又は2,6-ヘキサヒドロトルイレンジアミン、2,4’-、及び/又は4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン、並びに3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンが挙げられる。2,4-、及び/又は2,6-ジアミノトルエン、並びに2,4’-及び/又は4,4’-ジアミノフェニルメタンなどの芳香族ポリアミンも適切である。ポリエーテルポリアミンを用いることもできる。
【0114】
硬化剤
本発明のコーティング組成物は、任意選択的に硬化剤を含む。コーティング組成物は、バインダーが、エポキシ系、好ましくはエポキシ、フェノール系、シリコーン、ポリシロキサン系、ポリウレタン系、ポリ尿素系、ポリアスパラギン酸系、並びにこれらのハイブリッド及び混合物から選択される場合、好ましくは硬化剤を含む。バインダーがアクリル又はアルキドである場合、硬化剤は任意選択的に存在する。
【0115】
存在する場合、硬化剤は、コーティング、例えば膜コーティングを形成するための硬化中に、バインダー、例えばエポキシ系バインダーと反応する。したがって、硬化剤は、許容可能な硬化時間を有するコーティング組成物の提供を容易にする。本発明の好ましいコーティング組成物において、硬化剤は、-5~50℃、より好ましくは0~40℃の範囲の温度でバインダーを硬化させる。好ましくは、硬化剤は、環境温度で硬化する。環境の環境温度は、例えば地理的場所に応じて変化し、-5~50℃である場合がある。本発明のコーティング組成物の利点は、それがこの範囲、すなわち-5~50℃において硬化可能であることである。多くの既知のコーティング組成物と異なり、オーブン中でそれを硬化させる必要はない。
【0116】
従来の硬化剤を本発明のコーティング組成物において用いることができる。
【0117】
本発明のコーティング組成物中のバインダー及び1種又は複数種の硬化剤の合計量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、さらにより好ましくは40~60質量%である。本発明のコーティング組成物中の1種又は複数種の硬化剤の合計量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは10~40質量%、さらにより好ましくは15~30質量%である。
【0118】
エポキシ系バインダー用の硬化剤
エポキシ系バインダーを含む架橋されたネットワークを得るために、硬化剤は、少なくとも2つの「反応性」水素原子を含有する必要がある。用語「反応性」は、開環反応中に求核剤からエポキシドの酸素原子に移動することができる水素原子を指す。硬化剤は、典型的には、少なくとも2つの硬化反応性官能基を含有する。好ましくは、硬化剤は、窒素に結合した少なくとも2つの反応性水素原子を含む。
【0119】
エポキシ系バインダーと共に用いることができる適切な硬化剤の分類の代表的な例としては、チオール硬化剤、ポリチオール硬化剤、アミン硬化剤、ポリアミン硬化剤、及び/又はアミノ官能性ポリマー硬化剤が挙げられる。代わりに、硬化剤は、少なくとも1種のアミノ官能性ポリシロキサンを含んでもよい。本発明のコーティング組成物は、硬化剤の混合物を含むことができる。
【0120】
適切なポリチオール硬化剤の例としては、ペンタエリスリトールテトラメルカプトプロピオネートが挙げられる。適切な市販で入手可能なポリチオール硬化剤の例は、Gabriel performance materialsからのGABEPRO(登録商標)GPM800である。
【0121】
本発明の好ましいコーティング組成物は、アミン硬化剤、ポリアミン硬化剤、若しくはアミノ官能性ポリマー硬化剤、又はこれらの混合物を含む。より好ましくは、コーティング組成物は、少なくとも1種のアミン官能性硬化剤を含む。
【0122】
好ましくは、硬化剤は少なくとも2つのアミン基を含有する。アミン基は、第一級又は第二級であってよい。
【0123】
適切なアミン、ポリアミン、及びアミノ官能性ポリマー硬化剤は、脂肪族のアミン及びポリアミン(例えば脂環式のアミン及びポリアミン)、ポリアミドアミン(polyamido amine)、ポリアミドアミン(polyamide amine)、ポリオキシアルキレンアミン(例えばポリオキシアルキレンジアミン)、アルキレンアミン(例えばアルキレンジアミン)、アラルキルアミン、芳香族アミン、マンニッヒ塩基(例えば「フェナルカミン」として商業的に販売されているもの)、アミノ官能性シリコーン又はシラン、並びにこれらのエポキシ付加物、及びこれらの誘導体から選択される。付加物は、アミンと、エポキシバインダー、エポキシ官能性反応性希釈剤、アクリレート、マレエート、フマレート、メタクリレートなどの適切な反応性化合物との、又はアクリロニトリルなどの求電子ビニル化合物との反応によって調製することができる。好ましいアミン、ポリアミン、及びアミノ官能性ポリマー硬化剤は、脂肪族のアミン及びポリアミン(例えば脂環式のアミン及びポリアミン)、ポリアミドアミン(polyamido amine)、ポリオキシアルキレンアミン(例えばポリオキシアルキレンジアミン)、アルキレンアミン(例えばアルキレンジアミン)、アラルキルアミン、芳香族アミン、マンニッヒ塩基(例えば「フェナルカミン」として商業的に販売されているもの)、アミノ官能性シリコーン又はシラン、並びにこれらのエポキシ付加物、及びこれらの誘導体から選択される。付加物は、アミンと、エポキシバインダー、エポキシ官能性反応性希釈剤、アクリレート、マレエート、フマレート、メタクリレートなどの適切な反応性化合物との、又はアクリロニトリルなどの求電子ビニル化合物との反応によって調製することができる。
【0124】
適切な市販で入手可能なアミン官能性硬化剤の例としては、次のものが挙げられる:
EvonikからのSunmide CX-105X、Ancamine 2609、Ancamine 2695、Ancamine 2712M、Ancamine 2738、Ancamide 260A、Ancamide 500、Ancamide 506、Ancamide 2386、Ancamine 2759、Ancamine 2760、Ancamine 1618、Ancamine 2165、Ancamine 2280、Ancamine 2432、Ancamine 2519、Ancamine 2802、Ancamine 2609w、Ancamine 2806;
HexionからのEpikure 3090、Epikure 3140、及びEpikure 3115-X-70;
Admark Polycoatsからのマンニッヒ塩基AP1077;
三菱ガス化学株式会社からのMXDA及びGaskamine 240;及び
Huntsman Advanced MaterialsからのAradur 42 BD、及びAradur 943 CH。
【0125】
特に好ましくは、硬化剤は環状アミン官能性硬化剤である。
【0126】
エポキシ系バインダーを含む本発明の1つの好ましいコーティング組成物において、硬化剤はマンニッヒ塩基(フェナルカミン)硬化剤である。フェナルカミンは、カシューナッツ殻液の主成分であるカルダノールから得られる。フェナルカミンは、芳香環に結合した脂肪族又は脂環式のポリアミン置換基を含む。適切な市販で入手可能なマンニッヒ塩基(フェナルカミン)硬化剤は、Cardoliteから入手可能である。例としては、Cardolite NC 541、Cardolite Lite 2001、及びCardolite Lite 2002が挙げられる。
【0127】
エポキシ系バインダーを含む本発明の別の好ましいコーティング組成物において、硬化剤は、EvonikからのAncamine硬化剤などの脂肪族及び/又は脂環式のポリアミンである。脂環式ポリアミン硬化剤は、特に好ましい。脂環式ポリアミン硬化剤の具体例としては、1,4-シクロヘキサンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン(特に、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン)、2,2’-ジメチル-4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、ノルボルナンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンテンジアミン(MDA)、2,5-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)シクロヘキシルアミン、4-(p-アミノベンジル)シクロヘキシルアミン、2,4’-ビス(4”-アミノシクロヘキシル)-2’,4-メチレンジアニリン、4-[(4-アミノシクロヘキシル)メチル]-[4-[(4-アミノシクロヘキシル)メチル]シクロヘキサンXyl]-シクロヘキシルアミン、2,4-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリン、2,5-ジ(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリンが挙げられる。
【0128】
2種又はそれより多くの硬化剤の混合物、たとえば、脂環式及び脂肪族の硬化剤の混合物、2種又はそれより多くの脂環式硬化剤の混合物、芳香族及び脂環式の硬化剤の混合物、芳香族及び脂肪族の硬化剤の混合物なども用いることができる。
【0129】
硬化剤は、ニートで、又は溶媒中で供給されてよい。しかし、好ましくは、硬化剤は溶媒を含まない。硬化剤の主要パラメーターは、その粘度である。好ましくは、硬化剤は、1000mPas未満、より好ましくは700mPas未満の粘度を有する。そのような粘度は、より高い量の中空球形フィラーの組み込みを容易し、それによって熱遮断が改善される。
【0130】
この分野では、硬化剤の当量を「活性水素当量」で示すことが一般的である。1種又はそれより多くの硬化剤に関する「活性水素当量」の数は、1種又はそれより多くの硬化剤の各々からの寄与の合計である。1種又はそれより多くの硬化剤の各々からの活性水素当量への寄与は、硬化剤のグラムを硬化剤の活性水素当量で割ったものとして定義され、硬化剤の活性水素当量は、次のように決定される:1molの活性水素に相当する硬化剤のグラム。エポキシ系バインダーによる付加物については、付加前の反応物の寄与が、完成したエポキシ系バインダーシステムにおける「活性水素当量」の数の決定に用いられる。
【0131】
エポキシ系バインダーの「エポキシ当量」の数を示すことも一般的である。「エポキシ当量」は、1種又はそれより多くのエポキシ系バインダー、及びシラン又は反応性希釈剤などのエポキシを含有する任意の他の成分の各々からの寄与の合計である。1種又はそれより多くのエポキシ系バインダーの各々からのエポキシ当量への寄与は、エポキシ系バインダーのグラムをエポキシ系バインダーのエポキシ当量で割ったものとして定義され、エポキシ系バインダーのエポキシ当量は、次のように決定される:1molのエポキシ基に相当するエポキシ樹脂のグラム。エポキシ系バインダーによる付加物については、付加前の反応物の寄与が、エポキシ系バインダーシステムの「エポキシ当量」の数の決定に用いられる。
【0132】
本発明の好ましいコーティング組成物において、硬化剤全体の水素当量と、本発明のエポキシ系バインダーシステムの全体のエポキシ当量との比は、50:100~120:100の範囲である。さらに好ましいエポキシ系バインダーシステムは、60:100~130:100、たとえば80:100~120:100、例えば90:100~110:100の範囲の硬化剤の水素当量とエポキシ樹脂のエポキシ当量との比を有する。
【0133】
硬化剤が、バインダー、例えばエポキシ系バインダーとは別に保存され、表面への適用の直前にのみ混合されることを認識されたい。バインダー、例えばエポキシ系バインダー、及び硬化剤の混合比は、存在するエポキシ及び活性水素の相対的な量によって支配される。好ましくは、固体体積におけるバインダーと硬化剤との混合比は、1:1~10:1、より好ましくは5:1~2:1である。
【0134】
バインダー、例えばエポキシ系バインダー、及び1種又は複数種の硬化剤の合計量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、さらにより好ましくは40~60質量%である。本発明のコーティング組成物中の1種又は複数種の硬化剤の合計量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは10~40質量%、さらにより好ましくは15~30質量%である。
【0135】
ポリシロキサン系バインダー用の硬化剤
上に記載されたように、本発明のコーティング組成物中に存在してよいポリシロキサン系バインダーは硬化可能であり、シラノール、カルビノール、カルボキシル、エステル、水素化物、アルケニル、ビニルエーテル、アリルエーテル、アルコキシシラン、ケトキシム、アミン、エポキシ、イソシアネート、及び/又はアルコキシ基などの硬化反応性官能基を含有する。好ましくは、ポリシロキサン系バインダーは、少なくとも2つの硬化反応性官能基を含有する。任意選択的に、ポリシロキサン系バインダーは、1つより多くの種類の硬化反応性官能基を含む。好ましくは、ポリシロキサン系バインダーは、1つの種類の硬化反応性官能基を含む。適切な架橋剤及び/又は硬化剤は、ポリシロキサン系バインダー中に存在する硬化反応性官能基に応じて選択される。
【0136】
好ましいポリシロキサン系バインダーにおいて、硬化反応性官能基は、シラノール、カルビノール、アルコキシシラン、イソシアネート、アミン、及び/又はエポキシである。さらに好ましいポリシロキサン系バインダーにおいて、硬化反応性官能基は、シラノール、アミン、及び/又はアルコキシシランである。
【0137】
所望の架橋密度を得るために架橋剤を加えることが必要である場合がある。硬化反応性官能基がシラノールである場合、好ましい架橋剤は、以下に示される一般式によって表される有機ケイ素化合物、その部分加水分解縮合生成物、又は2つの混合物である:
Rd-Si-K4-d
式中、
各Rは、非置換若しくは置換の、1~6つの炭素原子の一価炭化水素基、又はポリ(アルキレンオキシド)によって置換されたC1~6アルキルから独立して選択され;
各Kは、アルコキシ基などの加水分解性基から独立して選択され;dは0、1又は2であり、より好ましくは0又は1である。
【0138】
この種類の好ましい架橋剤としては、テトラエトキシシラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシム(methylethyloximo))シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム(methylethyloximo))シラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、及びビニルトリイソプロペノキシシラン、並びにその加水分解縮合物が挙げられる。
【0139】
硬化反応性官能基がジ又はトリ-アルコキシである場合、別の架橋剤は通常必要ではない。
【0140】
架橋剤は、好ましくはコーティング組成物の全乾燥重量の0~10質量%の量で存在する。適切な架橋剤は市販で入手可能であり、たとえばWackerからのSilcate TES-40 WN、及びEvonikからの及びDynasylan Aである。
【0141】
硬化反応性官能基がアミン、エポキシ又はイソシアネートである場合、硬化剤は、好ましくはアミン、硫黄又はエポキシ官能性である。
【0142】
硬化剤は、例えばアミン/硫黄/エポキシ/イソシアネート、及びアルコキシシランの両方を含有する二重硬化剤であってもよい。好ましい二重硬化剤は、以下の一般式によって表される:
【化4】
式中、
LLは、非置換又は置換の、1~6つの炭素原子の一価炭化水素基から独立して選択され;
各Mは、アルコキシ基などの加水分解性基から独立して選択され;
aは、0、1又は2であり、好ましくは0又は1であり;
bは、1~6の整数であり;
Fnは、アミン、エポキシ、グリシジルエーテル、イソシアネート又は硫黄基である。
【0143】
そのような二重硬化剤の好ましい例としては、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。1つの特に好ましい硬化剤は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、たとえばEvonikからのDynasylan AMEOである。
【0144】
この種類の二重硬化剤は、単独の硬化剤として用いることも、ポリシロキサン系バインダーをエンドキャッピングして、ポリシロキサン系バインダーの末端基を硬化反応に先立って変性するようにするために用いることもできる。例えば、ポリシロキサン系バインダー及び硬化剤の混合は、物品へのコーティングの適用の直前、例えば、コーティング前1時間以内に実施することができ、またはポリシロキサン系バインダーは、硬化可能な形態であるが、早期硬化を防止するために、乾燥した状態を維持して供給することができる。幾つかの組成物において、硬化剤/エンドキャッピング剤は、コーティングが対象物に適用される前に硬化することを防止するために、コーティング組成物の残りに好ましくは別々に供給される。
【0145】
ポリウレタン系及びポリ尿素系のバインダー用の硬化剤
触媒は、硬化反応を促進するために、ポリウレタンバインダー及びポリ尿素バインダーと共に任意選択的に用いられる。適切な触媒の例としては、テトラメチルブタンジアミン(TMBDA)、N-アルキルモルホリン、トリエチルアミン(TEA)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、ペンタメチルジエチレン-トリアミン(PMDETA)、亜鉛オクトエート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、及びジブチルスズオキシドが挙げられ、特に、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、及びジブチルスズオキシドが挙げられる。
【0146】
加速剤
本発明のコーティング組成物は、任意選択的に硬化加速剤をさらに含む。幾つかの好ましいコーティング組成物において、硬化加速剤は存在しない。そのような組成物において、硬化剤は、架橋プロセスを加速するための別の触媒の使用なしで用いられる。他の好ましいコーティング組成物において、硬化加速剤は、コーティング、例えば膜コーティングを形成するための硬化反応の速度を高めるために用いられる。
【0147】
従来の硬化加速剤のいずれも、本発明のコーティング組成物中に存在してよい。例えば、硬化加速剤は、イミダゾール、無水物、ポリアミド、脂肪族アミン、エポキシ樹脂-アミン付加物、フェノール類、及び第三級アミンから選択されてよい。イミダゾール、例えば2-メチルイミダゾールは、好ましい硬化加速剤である。
【0148】
本発明のコーティング組成物中に存在する硬化加速剤の合計量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0.1~2質量%、さらにより好ましくは0.1~1質量%である。
【0149】
エポキシ系バインダー用の加速剤
バインダーがエポキシ系(例えばエポキシバインダー)である場合、硬化加速剤は、エポキシ系コーティングシステムについて知られている任意の硬化加速剤であってよい。例としては、第三級アミン、(メタ)アクリル酸エステル、イミダゾール、有機酸、フェノール類、及び有機ホスフィンが挙げられる。
【0150】
適切な第三級アミンの例は、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、トリエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザ-ビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、及び2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。1つの特に好ましい加速剤は、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、たとえばEvonikからのAncamine K54である。
【0151】
適切なイミダゾールの例は、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、及び2-ヘプタデシルイミダゾールである。
【0152】
適切な有機酸の例は、サリチル酸などの安息香酸誘導体である。
【0153】
適切な有機ホスフィンの例は、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、及びフェニルホスフィンである。
【0154】
適切なフェノール類の例は、ノニルフェノール、及びNovares LS500などのアルキルフェノールである。
【0155】
特にエポキシ系バインダーと共に使用することについて特に好ましい硬化加速剤は、(メタ)アクリル酸エステルである。(メタ)アクリル酸エステル加速剤は、好ましくは、有機リンカーによって結合された少なくとも2つの(メタ)アクリレート官能基を含む脂肪族(メタ)アクリレートである。そのようなマルチエステルは、ジエステル、トリエステル又はテトラエステルであってよい。
【0156】
(メタ)アクリル酸エステルの分子量は、好ましくは1000未満である。
【0157】
好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルは、ジオール若しくはトリオールなどのポリオール、又は糖アルコールなどの糖ベースのポリオールの(メタ)アクリレートエステルである。ポリオール内のすべてのOH基が(メタ)アクリレートエステル基を伴うことは必須ではないが、好ましくは(メタ)アクリル酸エステル中に少なくとも2つのエステル官能基が存在するのがよい。官能基化に適切なポリオールとしては、アルキレンジオール(例えばヘキサンジオール、ペンタンジオール)、糖類(例えば単糖類又は二糖類)、又はエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、及びマンニトールなどのポリオール(特に糖アルコール)が挙げられる。
【0158】
硬化加速剤として使用するのに特に好ましい(メタ)アクリル酸エステルは、式(I)である。
【化5】
式中、
各RはH又はMeであり;
各nは2~5であり;
Lは、ポリオール、糖類又は糖アルコールの残基を表し、ポリオール担体中の少なくとも2つのOH基は、式(I)において示されるように誘導化されている。
【0159】
好ましくは、LはC、H及びO原子のみからなる。好ましくは、Lの分子量は1000g/mol未満である。
【0160】
市販で入手可能な(メタ)アクリル酸エステルの例としては、SartomerからのM-Cure 400が挙げられる。
【0161】
ポリシロキサン系バインダー用の加速剤
バインダーがポリシロキサン系である場合、硬化加速剤は、好ましくは触媒を含む。用いることができる触媒の代表的な例としては、遷移金属化合物、スズ、鉄、鉛、バリウム、コバルト、亜鉛、アンチモン、カドミウム、マンガン、クロム、ニッケル、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、チタン、ホウ素、リチウム、カリウム、ビスマス、及びジルコニウムなどの様々な金属の金属塩及び有機金属錯体が挙げられる。塩は、好ましくは長鎖カルボン酸及び/若しくはキレートの塩、又は有機金属塩である。
【0162】
適切なスズ系触媒の例としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジアセテート、又はジオクチルスズジラウレートが挙げられる。市販で入手可能なスズ触媒の例としては、BNT ChemicalsからのBNT-CAT 400、及びBNT-CAT 500、PMC OrganometallixからのFASCAT 4202、並びにDOWからのMetatin Katalysator 702が挙げられる。
【0163】
適切な亜鉛触媒の例は、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、及びステアリン酸亜鉛である。市販で入手可能な亜鉛触媒の例としては、King IndustriesからのK-KAT XK-672及びK-KAT670、並びにBorchersからのBorchi Kat 22が挙げられる。
【0164】
適切なビスマス触媒の例は、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ビスマスオクタノエート、及びビスマスネオデカノエートなどの有機ビスマス化合物である。市販の有機ビスマス触媒の例は、BorchersからのBorchi Kat 24、及びBorchi Kat 315、King IndustriesからのK-KAT XK-651、ReaxisからのReaxis C739E50、及びTIB ChemicalsからのTIB KAT716である。
【0165】
適切なチタン触媒の例は、ナフテン酸チタン、チタン酸テトラブチル、テトラキス(2-エチルヘキシル)チタネート、トリエタノールアミンチタネート、テトラ(イソプロペニルオキシ)-チタネート、チタンテトラブタノレート、チタンテトラプロパノレート、チタンテトライソプロパノレートなどの有機チタン触媒、及びジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネート、ジイソプロピルビス(エチルアセトアセトニル)チタネート、及びジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)などのキレート化チタネートである。適切な市販で入手可能なチタン触媒の例は、Dorf KetalからのTyzor IBAY、及びTIB ChemicalsからのTIB KAT 517である。
【0166】
他の適切な触媒は、ステアリン酸鉄、及び2-エチルヘキサン酸鉄などの鉄触媒、鉛オクトエート、及び鉛2-エチルオクトエートなどの鉛触媒、コバルト-2-エチルヘキサノエート、及びナフテン酸コバルトなどのコバルト触媒、マンガン2-エチルヘキサノエートなどのマンガン触媒、並びにナフテン酸ジルコニウム、テトラブチルジルコネート、テトラキス(2-エチルヘキシル)ジルコネート、トリエタノールアミンジルコネート、テトラ(イソプロペニルオキシ)-ジルコネート、ジルコニウムテトラブタノレート、ジルコニウムテトラプロパノレート、及びジルコニウムテトライソプロパノレートなどのジルコニウム触媒である。
【0167】
さらに適切な触媒は、ジルコン酸エステルである。
【0168】
触媒は、トリエチルアミン、グアニジン、アミジン、環状アミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-エチレンピペラジン、及びペンタメチルジエチレントリアミンなどの有機化合物であってもよい。さらなる例としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、及びN,N-ジブチルアミノメチル-トリエトキシシランなどのアミノシランが挙げられる。
【0169】
1つの好ましい実施態様において、触媒は、スズ、チタン、ビスマス、グアニジン、及び/又はアミジン触媒であり、より好ましくは、チタン、グアニジン、及び/又はアミジン触媒である。
【0170】
好ましくは、触媒は、コーティング組成物の全乾燥重量に基づいて、0.01~5質量%、より好ましくは0.05~4質量%の量で本発明のコーティング組成物中に存在する。
【0171】
反応性希釈剤
本発明のコーティング組成物は、好ましくは反応性希釈剤をさらに含む。反応性希釈剤は、単独で、又は組み合わせて、例えば、2種又はそれより多くの反応性希釈剤の混合物で用いることができる。
【0172】
好ましくは、反応性希釈剤の粘度は、<100cp、好ましくは<50cP、より好ましくは<30cP、さらにより好ましくは<20cPである。
【0173】
好ましくは、反応性希釈剤のエポキシ当量(EEW)は、50~500、より好ましくは100~400、さらにより好ましくは100~300である。
【0174】
本発明のコーティング組成物で使用される好ましい反応性希釈剤は、変性エポキシ化合物から形成される。適切な反応性希釈剤の例としては次のものが挙げられる:フェニルグリシジルエーテル、C1~16アルキルグリシジルエーテル、ネオデカン酸のC8~10アルキルグリシジルエステル(すなわち、R1R2R3C-COO-Gly、式中、R1、R2、及びR3はC8~10アルキル基であり、Glyはグリシジル基である)、オレフィンエポキシド、CH3-(CH2)n-Gly(式中、nは11~13であり、Glyはグリシジル基である)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(すなわち、Gly-O-(CH2)4-O-Gly)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(すなわち、Gly-O-(CH2)6-O-Gly)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(すなわち、Gly-O-CH2-C(CH3)2-CH2-O-Gly)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(すなわち、CH3-CH2-C(CH2-O-Gly)3)、C1~20-アルキルフェニルグリシジルエーテル(好ましくはC1~5アルキルフェニルグリシジルエーテル、(例えば、メチルフェニルグリシジルエーテル、エチルフェニルグリシジルエーテル、プロピルフェニルグリシジルエーテル、及びパラターシャリーブチルフェニルグリシジルエーテル(p-TBPGE))、及びエピクロルヒドリンとカシューナッツの殻から得た油との反応生成物。
【0175】
特に好ましい反応性希釈剤は、C1~16アルキルグリシジルエーテル、より好ましくはC10~14アルキルグリシジルエーテルである。
【0176】
別の好ましい反応性希釈剤は、エピクロルヒドリンとカシューナッツの殻から得た油との反応生成物である。この種類の市販で入手可能な反応性希釈剤の例は、CardoliteからのCardolite NC-513である。
【0177】
反応性希釈剤の別の好ましい分類は、脂肪族反応性希釈剤である。脂肪族反応性希釈剤は、好ましくは、少なくとも1つの脂肪族エポキシド官能基を含む化合物と、脂肪族アルコール、又は1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル若しくは1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルなどのポリオールとの反応から形成される。鎖長8~14の脂肪族グリシジルエーテルも好ましい。脂肪族反応性希釈剤は、コーティング膜の柔軟性に寄与し得る。
【0178】
本発明のコーティング組成物は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは0~30質量%、より好ましくは10~25質量%、さらにより好ましくは10~20質量%の反応性希釈剤を含む。本発明のコーティング組成物中の反応性希釈剤の存在は、コーティング組成物の粘度を低減し、高固形分で溶媒を含まないコーティング組成物の調製を容易にする。
【0179】
バインダー、例えばエポキシ系バインダー、1種又は複数種の硬化剤、加速剤、及び反応性希釈剤の合計量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは20~80質量%、より好ましくは30~70質量%、さらにより好ましくは、40~60質量%である。
【0180】
中空無機球形フィラー粒子
本発明のコーティング組成物は、中空無機球形フィラー粒子を含む。適切な中空無機球形フィラー粒子は市販で入手可能である。市販で入手可能な中空無機球形フィラー粒子の例としては、(例えば3M、Trelleborg、Potters、SMC mineralsから入手可能な)FilliteCenosphere、Poraver(発泡ガラス)、Thermospheres、Omega shperes、及びHolloliteが挙げられる。
【0181】
中空無機球形粒子は、コーティング組成物の重要な成分である。これらの粒子は、コーティング組成物を用いて調製されたコーティングによって提供される熱遮断と、高温(例えば150℃)、熱衝撃(例えば直接150から-20℃)、並びに-20℃及び60℃間の温度サイクルへの曝露中でさえコーティングクラック耐性と、に寄与する。
【0182】
無機球形フィラー粒子は中空である。これは、粒子がその中心にボイド又はキャビティを有することを意味する。このボイド又は空のスペースは、ガス、好ましくは空気で充填されている。これは、コーティングの遮断性特性を提供する。本発明で使用される好ましい無機球形フィラー粒子は、実質的に中空である。したがって、好ましくは、ボイド又はキャビティの体積は、粒子の総体積の少なくとも70体積%、より好ましくは少なくとも80体積%である。好ましくは、中空無機球形フィラー粒子は、実行可能な限り低い密度を有し、例えば、中空無機球形フィラー粒子の密度は、例えば、供給業者によって提供される技術仕様書上で特定されているように、0.1~1gcm-3、より好ましくは0.2~0.8gcm-3、さらにより好ましくは0.25~0.5gcm-3であってよい。これは、粒子が中実ではなく中空であるという事実を反映する。より薄い壁を有するため、より低密度の粒子は有利であり、これにより、熱遮断が改善される。
【0183】
好ましくは、本発明のコーティング組成物中に存在する中空無機球形フィラー粒子は、例えば、窒素等方圧圧壊強度試験(Nitrogen Isostatic Crash Strength test)によって決定される、少なくとも3000psiの圧壊強度を有する。これは、フィラー粒子が処理中に破砕されず、したがって最終的なコーティングにおいて遮断を提供する能力を維持することを意味するため、有益である。フィラー粒子が処理中に形状及び/又はサイズを変化させないことも有利であり、したがって、それらは密に充填され、形成された最終的なコーティングにおいて高い構造を達成することができる。
【0184】
本発明のコーティング組成物中に存在する中空無機球形フィラー粒子は、ガラス、セラミック又は金属酸化物を含み、より好ましくはこれからなる。より好ましくは、本発明のコーティング組成物中に存在する中空無機球形フィラー粒子は、ガラスを含み、さらにより好ましくはこれからなる。これは、ガラス粒子が、圧壊強度、硬度、及び伝導率の良好なバランスを提供するためである。任意選択的に、本発明のコーティング組成物中に存在する中空無機球形フィラー粒子は、表面処理されていてもよい。表面処理の幾つかの例としては、表面の疎水性を変更するための処理、バインダーとの適合性を改善するための処理、及び/又はバインダーへ化学的組み込みを容易にするための処理が挙げられる。
【0185】
本発明のコーティング組成物中に存在する中空無機フィラー粒子は、実質的に球形であり、より好ましくは球形である。これは、フィラー粒子が本発明のコーティング組成物においてより密に充填されることを可能にするため、有利である。好ましくは、中空無機フィラー粒子は、Malvern Mastersizer 2000を用いて、ISO 22412:2017によって決定される、1~100μm、より好ましくは1~80μm、さらにより好ましくは10~50μmのZ平均直径を有する。これらの粒子サイズは、コーティングが適切な遮断性特性を有することを保証し、かつコーティングにおいて高い充填効率を達成するため好ましい。
【0186】
本発明の好ましいコーティング組成物は、組成物の総体積に基づいて、30~60体積%、より好ましくは30~55体積%、さらにより好ましくは40~55体積%の中空無機球形フィラー粒子を含む。
【0187】
本発明の好ましいコーティング組成物は、組成物の全質量に基づいて、10~40質量%、より好ましくは15~35質量%、さらにより好ましくは20~30質量%の中空無機球形フィラー粒子を含む。
【0188】
中空有機球形フィラー粒子
本発明のコーティング組成物は、中空有機球形フィラー粒子を含む。本発明のコーティング組成物中に存在する中空有機球形フィラー粒子は、エマルジョン重合、シード成長重合、及びサスペンション重合などの従来の重合プロセスによって調製することができる。重合は一段階プロセスでも多段階プロセスでもよい。代わりに、適切な中空有機球形フィラー粒子は市販で入手可能である。市販で入手可能な中空有機球形フィラー粒子の例としては、(Chaseからの)Dualite、(Dowからの)Sunsheres、及び(Nouryonからの)Expancelが挙げられる。
【0189】
中空有機球形粒子は、コーティング組成物の重要な成分である。これらの粒子は、コーティング組成物を用いて調製されたコーティングによって提供される熱遮断、並びにコーティングのクラック耐性及び接着性、すなわちはがれに対する耐性に寄与する。
【0190】
有機球形フィラー粒子は中空である。これは、粒子がその中心にボイド又はキャビティを有することを意味する。このボイド又は空のスペースは、ガス、好ましくは空気、C1~8アルカン、又はこれらの混合物で充填されている。これは、コーティングの遮断性特性を提供する。本発明で使用される好ましい有機球形フィラー粒子は、実質的に中空である。したがって、好ましくは、ボイド又はキャビティの体積は、粒子の総体積の少なくとも70体積%、より好ましくは少なくとも80体積%である。好ましくは、中空有機球形フィラー粒子は、実行可能な限り低い密度を有し、例えば、中空有機球形フィラー粒子の密度は、例えば、供給業者によって提供される技術仕様書上で特定されているように、0.005~0.9gcm-3、より好ましくは0.01~0.5gcm-3、さらにより好ましくは0.015~0.2gcm-3である。これは、粒子が中実ではなく中空であるという事実を反映する。
【0191】
本発明のコーティング組成物中に存在する中空有機球形フィラー粒子は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ポリ(ビニルエステル)、ビニリデン、ポリアセテート、ポリ(エステル)、又はこれらのコポリマーを含み、より好ましくはこれからなる。これらのポリマーを含む中空有機球形フィラー粒子は、高温においてさえ高い熱遮断及び良好なクラック耐性を有するコーティングを生み出すことが見出された。
【0192】
本発明のコーティング組成物中に存在する中空有機フィラー粒子は、実質的に球形であり、より好ましくは球形である。これは、フィラー粒子が本発明のコーティング組成物においてより密に充填されることを可能にするため、有利である。好ましくは、中空有機フィラー粒子は、Malvern Mastersizer 2000を用いて、ISO 22412:2017によって決定される、10~150μm、より好ましくは10~120μm、さらにより好ましくは15~120μmのZ平均直径を有する。これらの粒子サイズは、コーティングが適切な遮断性特性を有することを保証し、かつコーティングにおいて高い充填効率を達成するため好ましい。
【0193】
本発明の好ましいコーティング組成物は、組成物の総体積に基づいて、5~20体積%、より好ましくは10~20体積%、さらにより好ましくは10~15体積%の中空有機球形フィラー粒子を含む。
【0194】
本発明の好ましいコーティング組成物は、組成物の全質量に基づいて、0.25~1.75質量%、より好ましくは0.25~1質量%、さらにより好ましくは0.3~0.7質量%の中空有機球形フィラー粒子を含む。
【0195】
本発明の好ましいコーティング組成物において、中空有機球形フィラー粒子の平均直径は、中空無機球形フィラー粒子の平均直径より大きい。好ましくは、中空有機球形フィラー粒子の平均直径は、中空無機球形フィラー粒子の平均直径より1~5倍大きく、より好ましくは2~4倍大きい。中空フィラー粒子のこの組み合わせにより、高レベルの熱遮断、並びにはがれ耐性、及びクラック耐性を有するコーティングを提供できることが見出された。
【0196】
本発明の好ましいコーティング組成物において、中空無機球形フィラー粒子と、中空有機球形粒子との体積比は、1.1:1.0~10.0:1.0、好ましくは5:1:1.0~1.2:1.0、より好ましくは4:1:1.0~1.2:1.0、さらにより好ましくは3.8:1:1.0~1.3:1.0である。中空無機球形フィラー粒子の体積量が、中空有機球形フィラー粒子の体積量より大きいこの比により、クラック耐性とはがれ耐性の最も望ましいバランスが提供され、同時に適切な熱遮断及び硬度が維持されることが見出された。
【0197】
本発明のさらに好ましいコーティング組成物において、中空無機球形フィラー粒子と、中空有機球形粒子との質量比は、少なくとも50:2.5、好ましくは50:2.5~50:0.25である。
【0198】
本発明の好ましいコーティング組成物は、組成物の総体積に基づいて、50~80体積%、より好ましくは60~70体積%の中空無機球形フィラー粒子及び中空有機球形フィラー粒子の合計量を含む。したがって、中空球形フィラー粒子は、組成物のかなりの総体積量を構成し、その重要な熱遮断特性を提供する。
【0199】
本発明のさらに好ましいコーティング組成物は、組成物の全質量に基づいて、10~40質量%、より好ましくは15~30質量%の中空無機球形フィラー粒子及び中空有機球形フィラー粒子の合計量を含む。
【0200】
増粘剤
本発明のコーティング組成物は増粘剤をさらに含む。任意選択的に、少なくとも2種又は3種の増粘剤の混合物が存在してよい。本発明のコーティング組成物における増粘剤の存在は、有利には、貯蔵安定性、組成物の適用特性、及び組成物のだれ耐性を改善する。
【0201】
したがって、本発明の別のコーティング組成物は、
(i)バインダー;
(ii)硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;
(iv)中空有機球形フィラー粒子;及び
(v)増粘剤
を含む。
【0202】
本発明の好ましいコーティング組成物は、溶媒を含まない増粘剤を含む。これは、組成物のVOC含有量を低減し、かつその固形分を増加させるのに有益である。
【0203】
多種多様の従来の増粘剤を本発明のコーティング組成物において用いることができる。例えば、ヒュームドシリカを増粘剤として用いることができる。しかし、本発明の好ましいコーティング組成物は、オリゴマーの増粘剤を含む。理論により拘束されることは望まないが、これらの増粘剤は、結晶性繊維の相互作用ネットワークを構築することにより、低い剪断速度における粘度を高め、それによって、組成物のだれ耐性を改善すると考えられる。本発明のコーティング組成物が非水平の(例えば垂直の)表面に適用される場合、これは特に有益である。任意選択的に、本発明のコーティング組成物は、ヒュームドシリカ、及び少なくとも1種の(例えば1種の)オリゴマーの増粘剤を含む。
【0204】
適切なオリゴマーの増粘剤の例としては、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、ポリヒドロキシカルボン酸エステル、変性尿素、金属スルホネート、アクリレート化オリゴアミン、ポリアクリル酸、変性ウレタン、微粉化アミドワックス、微粉化アミド変性ひまし油ワックス、微粉化ひまし油由来ワックス、(メタ)アクリレートモノマー中に分散した、あらかじめ活性化されたアミドワックス、又はポリアミドが挙げられる。本発明の好ましいコーティング組成物は、微粉化アミドワックス、微粉化アミド変性ひまし油ワックス、微粉化ひまし油由来ワックス、(メタ)アクリレートモノマー中に分散した、あらかじめ活性化されたアミドワックスから選択されるオリゴマーの増粘剤を含む。特に好ましい増粘剤はアミドワックスである。
【0205】
本発明のコーティング組成物で使用されるオリゴマーの増粘剤は市販で入手可能である。例えば、微粉化アミドワックスは、Arkemaから商品名Crayvallacで入手可能である。
【0206】
本発明のコーティング組成物中に存在する増粘剤、好ましくはオリゴマーの増粘剤の量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0.25~3.0質量%、さらにより好ましくは0.5~3.0質量%、さらにより好ましくは0.5~2.0質量%である。
【0207】
接着促進剤
本発明のコーティング組成物は、好ましくは接着促進剤、より好ましくはオルガノシラン接着促進剤をさらに含む。そのような接着促進剤は、当分野においてよく知られている。
【0208】
シラン、特にオルガノシランは、特に低温におけるコーティング組成物の乾燥特性を改善すると考えられる。さらに、それらは、柔軟性、基材への接着、及び耐腐食性能を改善すると考えられる。
【0209】
好ましくは、シランはエポキシ基を含む。好ましくは、シランのMwは400g/mol未満である。
【0210】
本発明のコーティング組成物で使用される好ましいシランは一般式(II)又は(III)である:
(II) Y-R(4-z)SiXz
(III) Y-R(3-y)R1SiXy
式中、
zは1~3の整数であり;
yは1~2の整数であり;
Rは、1~12個のC原子を有するヒドロカルビル基であり、それは、任意選択的に、エーテル又はアミノリンカーを含有し;
R1は1~12個のC原子を有するヒドロカルビル基であり;
Yは、バインダー、例えばエポキシ系バインダー、及び/又は硬化剤と反応することができるRに結合した官能基であり;
各Xは、独立してハロゲン基又はアルコキシ基を表す。
【0211】
式(II)及び(III)の好ましい化合物において、Yは、イソシアネート、エポキシ、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、アクリレート、又はメタクリレート基である。Y基は鎖Rの任意の部分に結合することができる。Yがエポキシ基を表す場合、Rは少なくとも2つの炭素原子を有し、エポキシド環系の形成を可能にすることが理解されるであろう。
【0212】
式(II)及び(III)のさらなる好ましい化合物において、Yはアミノ基又はエポキシ基である。アミノ基は、好ましくはNH2である。好ましくは、Yはエポキシ基である。Y基が、エポキシ系バインダーと反応することができるアミノ基である場合、シランは、硬化剤と共にエポキシ系バインダーとは別に提供されることが好ましい。一般に、本発明のキットにおいて、シランは、シランが存在するキットの成分のいかなる成分とも反応しないのがよい。
【0213】
式(II)又は(III)の好ましい化合物において、Rは、好ましくは最大12個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。ヒドロカルビルとは、C及びH原子だけを含む基を意味する。それは、アルキレン鎖を含んでもよく、アルキレン鎖とフェニル又はシクロヘキシル環などの環との組み合わせを含んでもよい。用語「任意選択的に、エーテル又はアミノリンカーを含有する」は、炭素鎖が、鎖中の-O-、又は-NH-基によって分断され、例えば、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン:H2COCHCH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3などのシランを形成することができることを意味する。
【0214】
基Yは、そのようなリンカー-O-、又は-NH-に結合された炭素原子に結合しないことが好ましい。
【0215】
Rは、好ましくは2~8個のC原子を有する非置換の(言うまでもなくY以外)分岐でないアルキル鎖である。
【0216】
式(II)及び(III)の好ましい化合物において、Xは、C1~6アルコキシ基などのアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ又はエトキシ基である。2つ又は3つのアルコキシ基が存在する場合も特に好ましい。したがって、式(II)における化合物において、zは好ましくは2又は3、特に3である。式(III)の化合物において、yは好ましくは2である。
【0217】
式(III)の好ましい化合物において、R1は好ましくはC1~4アルキル、たとえばメチルである。
【0218】
本発明のコーティング組成物中に存在する特に好ましいシランは、式(IV)である:
(IV) Y’-R’(4-z’)SiX’z’
式中、
z’は2~3の整数であり;
R’は、任意選択的にエーテル又はアミノリンカーを含有する2~8つのC原子を有する非置換の分岐していないアルキル鎖であり;
Y’は、R’基に結合したアミノ又はエポキシ官能基であり;
X’はアルコキシ基を表す。
【0219】
本発明のコーティング組成物で使用される適切なシランの例としては、次のものが挙げられる:RheinfeldenのDegussaによって製造され、Dynasylan(登録商標)Dの販売名で販売されている製品、OSi Specialtiesによって製造されたSilquest(登録商標)シラン、及びWackerによって製造されたGENOSIL(登録商標)シラン。
【0220】
具体例としては、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A-174NT)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン又は3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan MTMO又は3201;Silquest A-189)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO、Silquest A-187)、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(Silquest Y-11597)、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-189)、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A-186)、γ-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-Link35、Genosil GF40)、(メタクリロキシメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 33)、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 43)、アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO;Silquest A-I 110)、アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan DAMO、Silquest A-I 120)又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン(Silquest A-1130)、ビス(γ-トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A-I 170)、N-エチル-γ-アミノイソブチルトリメトキシシラン(Silquest A-Link15)、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest Y-9669)、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest Y-I 1637)、(N-シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン(Genosil XL 926)、(N-フェニルアミノメチル)トリメトキシシラン(Genosil XL 973)、Deolink Epoxy TE及びDeolink Amino TE(D.O.G Deutsche Oelfabrik)、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0221】
他の好ましいシランとしては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(アミノエチル)-アミノプロピルトリメトキシシラン(H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3)、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、(H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2SiCH3(OCH3)2)、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリエトキシシラン(H2COCHCH2OCH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3、[3-(2,3-エポキシプロポキシ)プロピル]トリメトキシシラン(H2COCHCH2OCH2CH2CH2Si(OCH3)3)が挙げられる。
【0222】
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランは特に好ましい。シランの混合物を用いることもできる。
【0223】
本発明のコーティング組成物中に存在する接着促進剤、好ましくはオルガノシラン接着促進剤の量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0.1~10質量%、さらにより好ましくは0.5~5質量%、さらにより好ましくは0.5~3質量%である。本発明の好ましい組成物において、そこに存在するオルガノシランの合計量は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0.1~10質量%、さらにより好ましくは0.5~5質量%、さらにより好ましくは0.5~3質量%である。
【0224】
添加剤
本発明のコーティング組成物は、任意選択的に様々な添加剤を含む。本発明の組成物中に任意選択的に存在する添加剤の例としては、コ-バインダー、炭化水素樹脂、沈降防止剤、フィラー、アミノアルコール、着色顔料、乾燥剤、分散剤、及び表面改質剤が挙げられる。好ましくは組成物中に存在しない(例えば、0.1質量%未満、好ましくは0.05質量%未満で存在する)化合物の例としては、アルカリ土類金属水酸化物、アルミニウム族水酸化物、及びリン含有化合物が挙げられる。
【0225】
追加の添加剤は、コーティング組成物の全質量に基づいて、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0.1~10質量%、さらにより好ましくは0.1~5質量%、特に好ましくは0.5~5質量%の量で存在する。
【0226】
本発明のコーティング組成物は、任意選択的にコ-バインダーを含む。適切なコ-バインダーの例としては、飽和ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、酢酸ビニルのコポリマー、ビニルイソブチルエーテル、塩化ビニル及びビニルイソブチルエーテルのコポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマーなどのスチレンコポリマー、アクリル樹脂、ヒドロキシ-アクリレートコポリマー、脂肪酸、及び環化ゴムが挙げられる。
【0227】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、組成物の全質量に基づいて、0~10質量%のコ-バインダーを含む。
【0228】
本発明のコーティング組成物は、任意選択的に炭化水素樹脂を含む。様々な炭化水素樹脂が、コーティング組成物に含めるのに適切である。好ましくは、炭化水素樹脂は石油樹脂である。
【0229】
本発明において適切な石油樹脂の例としては、ナフサ分解によって副生物として製造される重質油から得られるC9フラクション(例えば、アルファ-メチルスチレンなどのスチレン誘導体、о、m、p-クレゾール、インデン、メチルインデン、クメン、ナフタレン又はビニルトルエン)の重合により得られる芳香族石油樹脂、1,3-ペンタジエン又はイソプレン、2-メチル-2-ブテン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン又はシクロペンテンなどのC5フラクションの重合により得られる脂肪族石油樹脂が挙げられる。C9フラクション及びC5フラクションの共重合により得られるコポリマーベースの石油樹脂、シクロペンタジエン又は1,3-ペンタジエンなどのC5フラクションの共役ジエンの部分が環式重合した脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂の水添より得られる樹脂、及びジシクロペンタジエンの重合により得られる脂環式石油樹脂も本発明において使用可能である。触媒条件下でのC9ブレンドの反応から得られるジアリール及びトリアリール化合物の混合物も利用することができる。
【0230】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、組成物の全質量に基づいて、0~10質量%の炭化水素樹脂を含む。
【0231】
組成物
本発明の好ましいコーティング組成物は、
(i)バインダー、好ましくはエポキシ系バインダー;
(ii)硬化剤;
(iii)中空無機(例えばガラス)球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子;
を含み、前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比は、少なくとも1.1:1である。
【0232】
本発明のさらに好ましいコーティング組成物は、
(i)エポキシ系バインダー;
(ii)硬化剤;
(iii)加速剤;
(iv)反応性希釈剤;
(v)中空無機球形フィラー粒子、好ましくは中空ガラス球形フィラー粒子;
(vi)中空有機球形フィラー粒子;
(vii)任意選択的に接着促進剤;及び
(viii)任意選択的に増粘剤
を含み、前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比は、少なくとも1.1:1である。
【0233】
本発明のさらに好ましいコーティング組成物は、
(i)15~50質量%、好ましくは20~40質量%のエポキシ系バインダー;
(ii)10~40質量%、好ましくは15~30質量%の硬化剤;
(iii)15~35質量%、好ましくは20~30質量%の中空無機(例えばガラス)球形フィラー粒子;及び
(iv)0.25~1.0質量%、好ましくは0.3~0.7質量%の中空有機球形フィラー粒子;
を含み、前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比は、少なくとも1.1:1である。
【0234】
本発明の特に好ましいコーティング組成物は、
(i)15~50質量%、好ましくは20~40質量%のエポキシ系バインダー;
(ii)10~40質量%、好ましくは15~30質量%の硬化剤;
(iii)15~35質量%、好ましくは20~30質量%の中空無機(例えばガラス)球形フィラー粒子;
(iv)0.25~1.0質量%、好ましくは0.3~0.7質量%の中空有機球形フィラー粒子;
(v)0.1~10質量%、好ましくは0.5~5質量%の接着促進剤;及び
(vi)0.25~3質量%、好ましくは0.5~2質量%の増粘剤
を含む。
【0235】
そのような組成物において、前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比は、好ましくは少なくとも1.1:1である。
【0236】
本発明の好ましいコーティング組成物の固形分は、少なくとも98質量%、より好ましくは少なくとも99質量%である。特に好ましくは、本発明のコーティング組成物の固形分は100質量%である。これは、コーティング組成物が、VOCを実質的に含まないことを意味する。
【0237】
本発明の好ましいコーティング組成物は、スプレー可能である。特に好ましくは、本発明のコーティング組成物はチキソトロピーである。したがって、コーティング組成物は、せん断がスプレー装置で適用されると流れるが、表面に適用されると流れない。これは、コーティング組成物の厚い層が適用される場合でさえ、生じるだれの量を最小限にする。
【0238】
本発明の好ましいコーティング組成物は、0.15W/mK未満の、より好ましくは0~0.12W/mKの熱伝導率を有するコーティングを提供する。
【0239】
本発明の好ましいコーティング組成物は、少なくとも5℃/mmの、より好ましくは少なくとも7℃/mmの、より好ましくは9℃/mm又はそれより大きい熱低減を有するコーティングを提供する。
【0240】
本発明の好ましいコーティング組成物は、環境温度で硬化可能なコーティングを提供する。特に好ましいコーティング組成物は、各々50%RHにおいて、100℃未満、より好ましくは50℃未満、さらにより好ましくは40℃未満の温度で硬化可能なコーティングを提供する。好ましくは、コーティング組成物は、コーティングが硬化可能である温度範囲が比較的広い(例えば、少なくとも80℃にわたる範囲、より好ましくは少なくとも100℃にわたる範囲(例えば80~150℃))コーティングを提供する。
【0241】
本発明の好ましいコーティング組成物は、例えば、例に記載の方法により決定される、少なくとも1.5mmの、より好ましくは少なくとも2mmの、より好ましくは少なくとも2.5mmのだれ耐性を有するコーティングを提供する。特に好ましいコーティング組成物は、少なくとも5mmの、より好ましくは少なくとも10mmのだれ耐性を有するコーティングを提供する。
【0242】
本発明の好ましいコーティング組成物は、DFTが少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmである場合に、150℃においてはがれに対する耐性を有するコーティングを提供する。
【0243】
本発明の好ましいコーティング組成物は、DFTが少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmである場合、例えば、例に記載の方法により決定される、-20℃から60℃の温度変化中のクラックに対する耐性を有するコーティングを提供する。
【0244】
本発明の特に好ましいコーティング組成物は、次の1つ又はそれより多くを有するコーティングを提供する:
0.15W/mK未満、より好ましくは0~0.12W/mKの熱伝導率;
少なくとも5℃/mm、より好ましくは少なくとも7℃/mmの熱低減;
50%RHにおいて、100℃未満、好ましくは50℃未満の温度で硬化可能である;
例に記載の方法により決定される、少なくとも1.5mm、より好ましくは少なくとも2.0mmのだれ耐性;
少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmの乾燥厚みにおける150℃でのはがれに対する耐性;及び/又は
少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmの乾燥厚みにおける(例えば例に記載の方法によって決定される)-20℃から60℃の温度変化中のクラックに対する耐性。
【0245】
容器及びキット
本発明はさらに、上文に記載されたコーティング組成物を含有する容器に関する。適切な容器としては、プラスチック袋を裏打ちしたダンボール箱、及びプラスチック袋(いわゆる「ビッグバッグ」)が挙げられる。
【0246】
代わりに、本発明のコーティング組成物は、キットの形態で提供することができる。キットにおいて、硬化剤は、バインダーとは別の容器中に存在することが好ましい。したがって、キットは、
(iii)バインダー、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、及び任意選択的に中空有機球形フィラー粒子を含有する第一の容器;
(iv)硬化剤、任意選択的に中空無機球形フィラー粒子、及び任意選択的に中空有機球形フィラー粒子を含有する第二の容器
を含み、
前記中空無機球形フィラー粒子、及び前記中空有機球形フィラー粒子の各々が、前記容器の少なくとも1つに存在し、前記無機球形フィラー粒子と前記有機球形フィラー粒子との体積比は、少なくとも1.1:1である。
【0247】
本発明の好ましいキットにおいて、中空無機球形フィラー粒子は、ある容器(例えば第一の容器)中に存在し、中空有機球形フィラー粒子は、別の容器(例えば第二の容器)中に存在する。代わりに、中空無機球形フィラー粒子、及び中空有機球形フィラー粒子は、第一及び第二の容器の両方に存在することができる。好ましいキットは、加速剤をさらに含み、特に好ましくは第二の容器中に含む。好ましいキットは、反応性希釈剤さらに含み、特に好ましくは第一の容器中に含む。好ましいキットは、接着促進剤をさらに含み、特に好ましくは第一の容器中に含む。
【0248】
本発明の特に好ましいキットは、増粘剤をさらに含む。増粘剤は、第一の容器、第二の容器、又は両方の容器の中に存在してよい。特に好ましいキットにおいて、増粘剤は、両方の容器中に存在する。
【0249】
製造
本発明はさらに、上文に記載されたコーティング組成物の調製方法であって、
(i)バインダー;
(ii)任意選択的に硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子
を混合することを含む、方法に関する。
【0250】
本発明の好ましい方法において、バインダーと、各々の中空球形フィラー粒子のある割合とが予備混合され、それとは別に、硬化剤と、各々の中空球形フィラー粒子の残りの割合とが予備混合される。次いで、得られた2つの混合物が合わせて混合される。
【0251】
存在する場合、好ましくは、反応性希釈剤はバインダーと予備混合される。存在する場合、好ましくは、接着促進剤はバインダーと予備混合される。存在する場合、好ましくは、加速剤は硬化剤と予備混合される。
【0252】
存在する場合、好ましくは、増粘剤は、バインダー及び硬化剤の各々と予備混合される。
【0253】
任意の従来の混合装置を用いることができる。
【0254】
表面への適用
本発明はさらに、表面をコーティングする方法に関し、前記方法は、
(i)上文に記載された組成物を適用すること;及び
(ii)前記組成物を硬化して、表面にコーティングを形成すること
を含む。
【0255】
任意選択的に、表面は、本発明のコーティング組成物の適用前に前処理される。任意選択的に、表面は、本発明のコーティング組成物の適用前に1種又はそれより多くのプライマー組成物でコーティングされる。したがって、本発明のコーティング組成物は、コーティングシステムの一部である場合がある。好ましいコーティングシステムにおいて、1種又はそれより多くのプライマーが表面に適用され、次いで、コーティング組成物がプライマー層に適用される。適切なプライマーの例としては、ポリ(ウレタン)系、及びエポキシ系のプライマーが挙げられる。エポキシ系プライマーが特に好ましい。
【0256】
組成物が適用される表面の温度は、好ましくは-10~180℃、より好ましくは範囲-5~150℃、さらにより好ましくは0~10℃、及び10~50℃の範囲である。本発明のコーティング組成物の利点は、それらを高温の表面及び低温の表面の両方に適用できることである。
【0257】
本発明のコーティング組成物は、任意の従来のコーティング方法、例えば、スプレー、ロール、浸漬などによって基材に適用することができる。好ましくは、コーティング組成物は、スプレーによって、より好ましくはエアレススプレーによって適用される。エアレススプレーは、例えば、2成分エアレススプレーポンプを用いて実施することができる。最大70℃の製品の予熱、及び/又は3~6barなどの圧力が要求される場合がある。コーティング組成物は、手動で、例えばこてを用いて適用してもよい。
【0258】
大きい表面積を均一にコーティングすることができるため、スプレーが好ましい。加えて、スプレーは、非水平面をコーティングするために用いることができる。好ましくは、基材は金属、特にスチールである。本発明はさらに、上文に記載されたコーティング組成物を含むコーティングに関する。任意選択的に、コーティングは多くの工程で適用され、この場合、コーティングの第一の層が適用され、乾燥され、硬化され、次いで、コーティングの後の層が適用される。好ましくは、適用工程の数は最小限にされる。本発明のコーティング組成物の利点は、それが高いだれ耐性を有することであり、したがって、コーティングの比較的厚い層を一段階で適用することができる。好ましくは、一段階で適用されるコーティングの層は、0.2~20mm、より好ましくは0.5~10mmである。
【0259】
本発明のコーティング組成物は、単層コーティング又は多層コーティング(すなわちコーティングシステム)を形成するために用いることができる。多層コーティングの場合、本発明のコーティング組成物は、好ましくは、プライマー層の上で、基材、例えば金属パイプに第二の層を形成するために用いられる。好ましくは、トップコートが適用される。適切なトップコート層の例は、ポリ(ウレタン)系樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、又はこれらの混合物を含む層である。しかし、本発明のコーティング組成物をプライマー層として用いることもできる。
【0260】
硬化
好ましくは、本発明のコーティングは硬化される。したがって、基材が本発明のコーティング組成物でコーティングされると、コーティングは好ましくは硬化される。好ましくは、本発明のコーティングは環境温度で硬化可能である。したがって、好ましくは本発明のコーティングは、硬化を引き起こすために加熱を要求しない。これは、本発明のコーティングが広い温度範囲にわたって、例えば、比較的低温から比較的高温(例えば高温面)まで硬化可能であることを意味する。特に好ましくは、本発明のコーティングは、-5~50℃の温度範囲において、外部加熱なしで硬化する。好ましくは、硬化時間(すなわち親指試験による表面乾燥を達成するための時間)は、0.5~10時間、より好ましくは1~5時間である。
【0261】
コーティング及び物品
本発明はさらに、上文に記載されたコーティング組成物又は上文に記載されたコーティングを用いてコーティングされた基材に関する。本発明のコーティング組成物は、任意の基材に適用することができる。基材の代表的な例としては、金属基材(スチール、亜鉛めっき鋼、アルミニウム、銅)、ガラス、セラミック、及び高分子材料(例えばプラスチック)が挙げられる。好ましい基材は金属基材である。より好ましくは、基材は炭素鋼である。本発明のコーティングは、そのような基材に熱遮断性コーティングを提供する。したがって、本発明のコーティングで好ましくコーティングされる金属基材の種類は、高温の物質又は低温の物質に接しているものである。金属基材の例としては、タンク、ラインパイプ、ベンド及び付属品、バルブ、ポンプ、マニホールド、コイル及びトレーサーが挙げられる。特に好ましい基材は、金属製タンク又は金属製パイプ、例えば、油及びガス回収のための金属製のタンク及びパイプである。好ましくは、金属製タンクの直径は5m以上である。
【0262】
基材は、部分的に、又は完全に、本発明のコーティング組成物又はコーティングを用いてコーティングされてよい。しかし、好ましくは、基材はすべて本発明のコーティング組成物又はコーティングを用いてコーティングされる。タンク又はパイプの場合には、好ましくは、外部壁が本発明のコーティング組成物を用いてコーティングされる。
【0263】
好ましくは、コーティングは、2~150mm、より好ましくは5~100mm、さらにより好ましくは8~80mmの全乾燥厚みを有する。好ましくは、コーティングは遮断性である。好ましくは、コーティングは、-196~450℃、より好ましくは-196~250℃の温度範囲で金属表面に遮断を提供する。したがって、本発明の好ましいコーティングは、金属表面にあり、前記コーティングは遮断性であり、少なくとも2mmの厚みを有し、コーティングは次のものを含む:
(i)バインダー;
(ii)硬化剤;
(iii)中空無機球形フィラー粒子;及び
(iv)中空有機球形フィラー粒子。
【0264】
好ましくは、コーティングは熱遮断性コーティングである。コーティング中に存在する好ましいバインダー、硬化剤、フィラー粒子、及び他の成分は、上文に記載されているとおりである。
【0265】
本発明の好ましいコーティングは、0.15W/mK未満の、より好ましくは0~0.12W/mKの熱伝導率を有する。
【0266】
本発明の好ましいコーティングは、少なくとも5℃/mm、より好ましくは少なくとも7℃/mm、さらにより好ましくは9℃/mm又はそれより大きい熱低減を有する。
【0267】
本発明の好ましいコーティングは、環境温度で硬化可能である。特に好ましいコーティングは、各々50%RHにおいて、100℃未満、より好ましくは50℃未満、さらにより好ましくは40℃未満の温度で硬化可能である。好ましくは、コーティングは、それらが硬化可能である比較的広い温度範囲、例えば、少なくとも80℃にわたる範囲、より好ましくは少なくとも100℃にわたる範囲(例えば80~150℃)を有する。
【0268】
本発明の好ましいコーティングは、例えば、例に記載の方法により決定される、少なくとも1.5mm、より好ましくは少なくとも2.0mmのだれ耐性を有する。
【0269】
本発明の好ましいコーティングは、DFTが少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmである場合、150℃においてはがれに対する耐性を有する。
【0270】
本発明の好ましいコーティングは、DFTが少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmである場合、例えば、例に記載の方法により決定される、-20℃から60℃の温度変化中のクラックに対する耐性を有する。
【0271】
本発明の特に好ましいコーティングは、次の1つ又はそれより多くを有する:
0.15W/mK未満、より好ましくは0~0.12W/mKの熱伝導率;
少なくとも5℃/mm、より好ましくは少なくとも7℃/mmの熱低減;
50%RHにおいて、100℃未満、好ましくは50℃未満の温度で硬化可能である;
例えば、例に記載の方法により決定される、少なくとも1.5mm、より好ましくは少なくとも2.0mmのだれ耐性;
少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmの乾燥厚みにおける150℃でのはがれに対する耐性;及び/又は
少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmの乾燥厚みにおける(例えば、例に記載の方法により決定される)-20℃から60℃の温度変化中のクラックに対する耐性。
【0272】
別の側面からみると、本発明は、次の1つ又はそれより多くを有するコーティングを提供する:
0.15W/mK未満、より好ましくは0~0.12W/mKの熱伝導率;
少なくとも5℃/mm、より好ましくは少なくとも7℃/mmの熱低減;
50%RHにおいて、100℃未満、好ましくは50℃未満の温度で硬化可能である;
例えば、例に記載の方法により決定される、少なくとも1.5mm、より好ましくは少なくとも2.0mmのだれ耐性;
少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmの乾燥厚みにおける150℃でのはがれに対する耐性;及び/又は
少なくとも5mm、好ましくは少なくとも10mmの乾燥厚みにおける(例えば、例に記載の方法により決定される)-20℃から60℃の温度変化中のクラックに対する耐性。
【0273】
使用
本発明はさらに、物品の少なくとも1つの表面にコーティング、好ましくは遮断性コーティングを形成するための上文に記載された組成物の使用を提供する。好ましくは、表面は上文に記載された金属表面である。
【0274】
ここで、本発明は、以下の非限定的な例を参照して説明される。
【実施例】
【0275】
例
材料
例において用いられる化合物及びポリマーは、すべて市販で入手可能であった。用いられる化合物及びポリマーは、以下の表においてまとめられる。
【0276】
【0277】
コーティング組成物の調製
コーティング組成物の成分は、以下の表に記載された割合で混合された。組成物の成分は、括弧なしの質量%、及び括弧付きの体積%として表において与えられる。
【0278】
成分Aの液体部分はすべてディソルバーにおいて混合された。次いで、適切な1種又は複数種のフィラーは、量られた量の予備混合液相に加えられ、容器に密封された。次いで、これは、90秒間、1800rpmで動作するSpeedmixerで均質化された。成分Bについても同じ手順に従い、その後、成分A及び成分Bを同じ容器に移動させ、90秒間、1800rpmでSpeedmixerにかけた。
【0279】
固形分は、製品の固形分について供給業者によって提供された情報に基づいて計算された。
【0280】
VOCは0.5g/L未満であった。コーティング組成物は、本質的に溶媒を含まなかった。
【0281】
試験用サンプルの調製
熱伝導率試験のために、混合された液体コーティングを円形のシリコーン型(60mm直径)に10mm及び20mmの深さまで注ぎ、次いで、放置して硬化させた(22℃において24時間、60℃において5日、22℃において24時間)。
【0282】
熱低減試験のために、鋼鈑(3mm厚み、炭素鋼、Sa 2 1/2)を適切なシリコーン型に配置し、混合された液体コーティングでコーティングした。コーティングの(湿潤及び乾燥)厚みは12mmであった。
【0283】
T字バー(炭素鋼、Sa 2 1/2、1cm厚み、L×W×Hは10×11×14cm)のコーティングは、3Dプリントされた型に、すべての側に15mmの間隔を空けてT字バーを配置することにより実施された。試験される予備混合組成物を型へ注ぎ、硬化させた(22℃で24h、60℃で5日、22℃で24h)。
【0284】
だれ試験のために、鋼鈑を適切なシリコーン型に配置し、混合された液体コーティングでコーティングした。コーティングの(湿潤及び乾燥)厚みは、1mm~15mmで変化させた。
【0285】
すべての型は、試験前に取り除かれた。
【0286】
スプレー
以下のスプレー例におけるコーティング組成物は、以下の装置及び条件を用いてスプレーされた。
【0287】
成分A及びBは、2つの別々の加圧された貯蔵タンク(4.5bar(65psi))において65℃に加熱された。2つのエアレス供給ポンプ(ラムアシストフィードプレート)が用いられた。各成分の正確な体積比が供給されることを保証するために、定量ポンプをさらに使用した(定量ポンプ圧力200~320bar(2900~4000psi))。成分の温度が適正範囲にあることを保証するために、インラインヒーターが用いられた(インラインヒーター温度、成分A45℃、成分B35℃)。ノズルチップのサイズは27~35(インチ/1000)であり、ノズルの温度は50℃~60℃であった。コーティング組成物は、コーティングのだれなく最大75mmの湿潤膜厚みでスプレーされた。
【0288】
【0289】
試験方法
・コーティング厚みは、定規又はノギスを用いて測定された。
・熱伝導率(W/mK)は、ASTM C518及び/又はC177に従って、TA InstrumentsからのFOX50装置で試験された。
・熱低減(℃/mm)は、別個の熱電対によって、コーティング表面の上の温度と共に、鋼鈑表面(コーティングの下)の温度を比較することにより測定された。加熱は、コーティングされた鋼鈑を180~210℃に設定されたホットプレートに置くことにより実施した。コーティングされた鋼板は監視され、コーティングのはがれが生じたか否かが報告された。
・温度変化試験-サイクル:コーティングされたT字バーは、以下の熱サイクルに供された:60℃で3時間、40℃/時間の温度降下で2時間、-20℃で3時間、40℃/時間の温度上昇で1時間、20℃で2時間、40℃/時間の温度上昇で1時間、サイクルを繰り返す。サンプルは監視され、視覚的に検査された。クラックが観察された場合、試験をやめた。クラックが観察されなかった場合、サンプルは1か月間試験された。
・熱衝撃試験は、コーティングされたT字バーを150℃に設定されたオーブン中で16時間放置し、その後サンプルを-20℃に設定された人工気候室に直接移し、そこで2時間放置することにより行われた。T字バーは視覚的に検査され、クラックが報告された。クラックが見られた場合、結果は「不良」として報告された。
・だれ耐性は、種々のコーティングの厚みを可能にするように、シリコーン型の底に鋼鈑を配置することにより試験された。型は、試験される組成物で充填され、直ちに垂直に配置された。スパチュラを用いて、露出したスチールまで水平線を引いた。次いで、試験サンプルを23℃、50%RHにて16時間硬化させた。サンプルを視覚的に検査し、コーティングのだれを決定した。別段の定めがない限り、だれが観察されない最も高いコーティング厚みが報告された。
・コーティングの密度は、コーティング中の各成分の質量/体積百分率に関連する各成分の密度に基づいて計算された。
【0290】
試験の結果は、以下の表にも記載され、表中、CEは比較例を意味する。
【0291】
【0292】
本発明のコーティング(例1及び2)は、特性の望ましいバランスを示す。コーティング組成物はスプレー可能であり、室温で許容可能な時間で乾燥する。コーティングは、望ましい低レベルの熱伝導率及び高レベルの熱低減を示し、温度変化試験中に劣化しない、すなわち、温度変化が急速であろうと、緩やかであろうと、温度が変化した際にはがれ又はクラックを生じない。対照的に、中空ガラス球形フィラー粒子と中空有機フィラー粒子の混合物を含まない比較のコーティング(CE1及びCE2)は、実施された試験中にはがれ又はクラックを示した。
【0293】
同様に、本発明のコーティング(例1及び2)は、中空ガラス球形フィラー粒子と中空有機フィラー粒子の混合物を含むが、ガラスフィラー粒子と有機フィラー粒子との体積比がより低い0.71:1(Cf.例1及び2ではそれぞれ3.6:1、及び1.8:1)である比較のコーティング(CE3)より良好な性能を示した。上で議論されるように、例1及び2は、温度変化サイクル中に劣化しない、すなわち、熱衝撃実験中に温度が変化した際にはがれ又はクラックを生じないコーティングを製造したが、CE3のコーティングは同じ実験において不良である。
【0294】
コーティング組成物、特に、非水平面に適用されるコーティング組成物の別の重要な特性は、だれに抵抗する能力である。より厚いコーティングは、より薄いコーティングよりだれる傾向がある。しかし、熱遮断を達成するためには、比較的厚いコーティング、例えば10~15mmのコーティングを構築することが必要であることが多く、所望の厚みを達成するのに必要なコートは少ないほどよい。様々なコーティング組成物のだれ耐性が試験された。
【0295】
例1~3及びCE1~3に類似したコーティング組成物、ここでは例1-1、2-1、3-1、CE1-1、CE2-1及びCE3-1が、増粘剤を追加で含ませることにより調製された。得られた組成物についてのだれ試験の結果は、以下の表2に示される。本発明のコーティング組成物は、だれに対する強い耐性を示し、これは、コーティングを比較的厚い層で適用できることを意味するため、有利である。
【0296】
さらなるコーティング組成物4~8及びCE4~6が調製され、試験された。結果は、以下の表3に示される。結果は、本発明のコーティング組成物が、望ましい低レベルの熱伝導率、及びだれに対する耐性を与えることを示す。
【0297】
【0298】
【0299】
表3中の結果は、本発明のコーティング組成物がだれに抵抗できることを示す。例えば、例5のコーティング組成物が>10mmの厚みで適用された場合、それが垂直に置かれた際にだれは観察されなかった。これは、コーティングを比較的少数の厚いコートで適用できることを意味するため、非常に有利である。対照的に、増粘剤を含まないCE4、増粘剤、及び中空有機フィラー粒子を含まないCE5、並びに増粘剤、及び中空無機フィラー粒子を含まないCE6は、はるかに大幅にだれる。
【0300】
試験された異なる増粘剤の中で、結果は、アミドワックスが、最も高レベルのだれ耐性を有するコーティング組成物を提供したことを示す(例5、cf.例6、7及び8)。
【国際調査報告】