(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ベバシズマブを含む薬物製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230412BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230412BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20230412BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230412BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230412BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230412BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/26
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552775
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 CN2021078395
(87)【国際公開番号】W WO2021175175
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】202010143839.6
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522033726
【氏名又は名称】上海復宏漢霖生物技術股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENLIUS BIOTECH, INC.
【住所又は居所原語表記】Room 330, Complex Building, No.222 Kangnan Road, China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Pudong District, Shanghai 201210, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】劉 慕君
(72)【発明者】
【氏名】方 源
(72)【発明者】
【氏名】韓 冬梅
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB13
4C076BB24
4C076CC50
4C076DD09F
4C076DD38Q
4C076DD41Z
4C076DD51Z
4C076DD60Z
4C076DD67Q
4C076EE23F
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF65
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG10
(57)【要約】
10-80mg/mlのベバシズマブを含む薬物製剤を提供し、前記薬物製剤の緩衝系は、好ましくは、10-30mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝液であり、安定剤としての25-50mg/mLのスクロース又はソルビトール及び界面活性剤のツイーン80を含み、pHが5.0-5.6であり、前記製剤は、繰り返し凍結融解及び40℃の高温加速条件でテストし、タンパク質安定性が良好であり、他の同類製剤処方より優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベバシズマブを含む薬物製剤であって、前記薬物製剤は、ベバシズマブと、緩衝液と、安定剤と、界面活性剤とを含み、
前記緩衝液は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、酢酸-酢酸ナトリウム、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム系のうちの一つ又は複数から選択され、
前記安定剤は、スクロース、トレハロース、ソルビトールのうちの一つ又は複数から選択され、
前記界面活性剤は、ツイーン80又はツイーン20である、ことを特徴とするベバシズマブを含む薬物製剤。
【請求項2】
前記緩衝液は、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝液であり、その濃度が10-30mMである、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項3】
前記緩衝液は、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝液であり、その濃度が10mMである、ことを特徴とする請求項2に記載の薬物製剤。
【請求項4】
前記安定剤は、ソルビトール又はスクロースであり、その含有量が20-100mg/mLである、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項5】
前記界面活性剤は、ツイーン80であり、その含有量が0.1mg/mL-0.5mg/mLである、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項6】
前記薬物製剤のpH値は、5.0-5.6である、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項7】
前記ベバシズマブのタンパク質濃度は、10-100mg/mLであり、好ましくは、10-80mg/mLであり、又は前記ベバシズマブのタンパク質濃度は、10-50mg/mLである、ことを特徴とする請求項1に記載の薬物製剤。
【請求項8】
前記製剤は、10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝液と、45mg/mLのソルビトールと、0.2mg/mLのツイーン80とを含み、pH5.3である、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の薬物製剤。
【請求項9】
前記製剤は、10mg/mL、25mg/mL、50mg/mL又は80mg/mLのベバシズマブを含む、ことを特徴とする請求項8に記載の薬物製剤。
【請求項10】
注射用の液体製剤又は凍結乾燥製剤である、ことを特徴とする請求項1のいずれか一項に記載の薬物製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬技術分野に属し、具体的には、ベバシズマブを含む薬物製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高特異性で、有効で安全なタンパク質(抗体)系薬物、特に治療性抗体薬物は、現在の世界中の薬物開発のホットスポットになっている。ベバシズマブ(別称Bevacizumab、中国語商品名:安維汀、英語商品名:Avastin)は、ロシュ社によって開発され、2004年に初めて米国FDAの承認を受けて発売され、様々な悪性腫瘍、例えば、転移性結腸直腸癌、非小細胞肺癌、腎細胞癌、卵巣癌、子宮頸癌、膠芽腫などの治療に幅広く適用される。ベバシズマブは、ヒト化モノクローナルIgG1抗体であり、血管内皮細胞成長因子と特異的に結合することができ、それによってその内皮細胞表面の受容体(Flt-1とKDR)との結合を遮断し、その後の一連のカスケード反応を回避し、異常血管の新生を抑制し、さらに腫瘍の成長と拡散を防止し、最終的に腫瘍を消滅する目的を達成する。なお、ベバシズマブは、特異性が強く、VEGF経路を遮断するとともに、通常、他のターゲットを妨害しない。ベバシズマブは、異常血管を破壊し、且つ成熟血管を正常化することができるため、通常、併用化学療法に用いられ、即ち他の薬物と共同で腫瘍組織に作用する。このような治療手段において、ベバシズマブは、他の薬物の治療効果を効果的に補助し且つ強化することができる(Presta L G,Chen H,O\’Connor S J,Chisholm V,Meng YG,Krummen L,et al.Cancer Res 1997;57:4593-9.)。
【0003】
モノクローナル系薬物の研究において、薬物製剤の研究は重要な役割を果たしている。IgG1モノクローナルは主に注射用の液体製剤を採用しているが、液体製剤において、タンパク質は重合体又は粒子を形成しやすく、安定性に影響を与える。モノクローナル液体製剤の貯蔵期間での良好な物理的安定性、化学的安定性と生物的安定性をどのように維持するかは、無視できない問題になり、製薬産業の需要を満たす、安定したタンパク質製剤の開発は急務になっている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ベバシズマブを含む薬物製剤を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、選別と処方最適化により、ベバシズマブ(HLX04タンパク質)を研究対象として、緩衝液系を考察し、単一要素実験を設計することにより、高温加速条件で、緩衝系における異なるイオン強度、pH値及び安定剤種類、界面活性剤種類及び含有量などがタンパク質安定性に対する影響を考察する。そして、実験によって製剤における各成分含有量の配合比率範囲を決定した。
【0006】
本発明において、この製剤のタンパク質の高温加速条件での安定性を評価する検出項目は、外観、タンパク質濃度(A280)、浸透圧、純度(SEC-HPLC、CEX-HPLC、CE-SDS)、タンパク質平均粒径及びPdI(DLS)、サブヴィザブル粒子数(FlowCam)を含む。
【0007】
本発明の好適な薬物製剤は、ベバシズマブと、緩衝液と、安定剤と、界面活性剤とを含み、ここでは、前記ベバシズマブは、組換えヒトのモノクローナル抗体であり、その含有量は、望ましくは、10-100mg/mLであり、好ましくは10-80mg/mLであり、又は10-50mg/mLであり、より好ましくは、10mg/mL、25mg/mL、50mg/mL、80mg/mLである。
【0008】
好ましくは、本発明の前記緩衝液は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、酢酸-酢酸ナトリウム、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム系のうちの一つを含み、より好ましくは、酢酸-酢酸ナトリウム、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝系であり、最も好ましくは、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝液系である。
【0009】
ここでは、前記薬物製剤のpH値は、望ましくは、pH5.0-5.6であり、好ましくは、pH5.3である。
【0010】
この緩衝液系において、前記ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、酢酸-酢酸ナトリウム、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝液の濃度は、望ましくは、10-30mMであり、ここでは、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝液は、好ましくは、10mMである。
【0011】
本発明の製剤には、タンパク質薬物の安定性を保護し、タンパク質薬物の機能が条件の変化(例えば、凍結、凍結乾燥又は他の調製条件の変化)の影響を受けないように保護するための安定剤がさらに含まれる。安定剤は、望ましくは、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール又はグリシンのうちの一つ又は複数から選択され、好ましくは、スクロース、トレハロース、ソルビトールであり、より好ましくは、スクロースとソルビトールである。前記安定剤の含有量は、望ましくは、20-100mg/mLであり、より望ましくは、25-50mg/mLであり、好ましくは、45mg/mLである。
【0012】
ここでは、前記界面活性剤は、当分野における従来の界面活性剤であり、望ましくは、非イオン性界面活性剤である。本明細書における界面活性剤の例は、望ましくは、ポリソルベートである。ここでは、より望ましくは、ツイーン80である。前記界面活性剤の含有量は、望ましくは、0.1-0.5mg/mLであり、好ましくは、0.2mg/mLである。
【0013】
前記薬物製剤の剤型は、当分野における従来の剤型であり、望ましくは、注射用の液体製剤又は凍結乾燥製剤などを含む。前記注射用の液体製剤は、望ましくは、皮下注射製剤、静脈内注射製剤、腹腔内投与製剤、筋肉内注射製剤、静脈内/皮下注射製剤または硝子体内注射製剤などを含む。前記注射用の液体製剤は、望ましくは、液体注射製剤、液体プレフィルド注射製剤などを含み、好ましくは液体注射製剤であり、この液体注射製剤は、静脈内注射又は硝子体内注射に用いられてもよい。
【0014】
単一要素研究の結果に基づいて、ベバシズマブの好適な製剤処方を決定しており、その組成は、25mg/mLのベバシズマブ(bevacizumab)、10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム、pH5.3、45mg/mLのソルビトール、0.2mg/mLのツイーン80である。上記配合比率に基づいて、完成品を調製し、加速安定性研究と繰り返し凍結融解安定性研究により、本発明の製剤処方の安定性を検証する。そして、異なる製剤処方との安定性テスト比較によって、高温加速試験の分子異性体、電荷異性体及びサブヴィザブル粒子の結果分析から、本発明処方の製剤におけるベバシズマブの安定性は他の処方より明らかに優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】表5に示される処方の緩衝系におけるHLX04タンパク質の物理化学的性質の考察であり、ここでは、(A)は0週目のTagg温度であり、(B)は0週目のKD値であり、(C)は緩衝系におけるHLX04タンパク質の0週目及び40℃で4週間静置したタンパク質平均粒径と分散指数PDIであり、(D)は緩衝系におけるHLX04タンパク質の0週目及び40℃で4週間静置したPk 1 Area含有率であり、(E)は40℃条件でのSEC重合体含有量の変化傾向であり、(F)は40℃条件でのCEXメインピーク含有量の変化傾向である。
【
図2】表8に示される処方の緩衝系におけるHLX04タンパク質の物理化学的性質の考察であり、ここでは、(A)は熱力学的安定性比較図であり、(B)は40℃条件でのタンパク質平均粒径の変化傾向であり、(C)は40℃条件でのSEC重合体含有量の変化傾向であり、(D)は40℃条件でのCEXメインピーク含有量の変化傾向であり、(E)は40℃条件でのFlowCamサブヴィザブル粒子数の変化傾向である。
【
図3】表11に示される処方の緩衝系におけるHLX04タンパク質の物理化学的性質の考察であり、ここでは、(A)は熱力学的安定性比較図であり、(B)は40℃条件でのタンパク質平均粒径の変化傾向であり、(C)は40℃条件でのSEC重合体含有量の変化傾向であり、(D)は40℃条件でのCEXメインピーク含有量の変化傾向であり、(E)は40℃条件でのFlowCamサブヴィザブル粒子数の変化傾向である。
【
図4】表14に示される処方の緩衝系におけるHLX04タンパク質の物理化学的性質の考察であり、ここでは、図(A)は熱力学的安定性比較図であり、(B)は40℃条件でのDLS平均流体力学的粒径とPdIの変化傾向であり、(C)は40℃条件でのSEC重合体含有量の変化傾向であり、(D)は40℃条件でのCEXメインピーク含有量の変化傾向であり、(E)は40℃条件でのFlowCamサブヴィザブル粒子数の変化傾向である。
【
図5】表20に示される処方の緩衝系におけるHLX04タンパク質の物理化学的性質の考察であり、ここでは、(A)は熱力学的安定性比較図であり、(B)は40℃条件でのDLS平均流体力学的粒径とPdIの変化傾向であり、(C)は40℃条件でのSEC重合体含有量の変化傾向であり、(D)は40℃条件でのCEXメインピーク含有量の変化傾向であり、(E)は40℃条件でのFlowCamサブヴィザブル粒子の変化傾向であり、(F)は-20℃から室温までの条件でのDLS平均流体力学的粒径とPdIの変化傾向であり、(G)は-20℃から室温までの条件でのSEC重合体含有量の変化傾向であり、(H)は-20℃から室温までの条件でのCEXメインピーク含有量の変化傾向であり、(I)は-20℃から室温までの条件でのFlowCamサブヴィザブル粒子数の変化傾向である。
【
図6】(A)(B)(C)JMPソフトウェアが取得した満足度ディスクリプタモデル図である。
【
図7】表26に示される処方の緩衝系におけるHLX04タンパク質の物理化学的性質の考察であり、(A)は熱力学的安定性比較図であり、(B)は40℃条件でのDLS平均タンパク質粒径の変化傾向であり、(C)は40℃条件でのSECメインピーク含有量の変化傾向であり、(D)は40℃条件でのCEXメインピーク含有量の変化傾向であり、(E)は40℃条件でのFlowCamサブヴィザブル粒子数の変化傾向である。
【
図8】異なるタンパク質濃度安定性の比較図であり、(A)はSEC重合体含有量の変化傾向であり、(B)はSECフラグメント含有量の変化傾向であり、(C)はIgG含有量(CE-SDS非還元)含有量の変化傾向であり、(D)はCEXメインピーク含有量の変化傾向である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の実施例は、どのように本発明を実施及び使用するかについての完全な開示と記述を当業者に提供するために用いられ、本発明の範囲を限定するものではなく、以下の実験が実施される全ての実験であるとともに全ての実施可能な実験であることを意味するものでもない。
【0017】
実施例に使用される化学試薬は、いずれも市販の分析用の純粋な試薬であり、組換えモノクローナルは、現在知られているいずれかの方法で調製したモノクローナルであってもよく、以下の例示的な抗体調製方法は、上海複宏漢霖バイオテック株式会社(Shanghai Henlius Biotech,Inc.)により提供され、この例示的な方法は本発明を限定するものではない。
【0018】
本研究に使用される抗体タンパク質はHLX04(ベバシズマブ)であり、従来技術における通常の方法で抗体を調製し、その軽重鎖配列は以下のとおりである。
【0019】
【0020】
【0021】
実施例1.検出方法
1.1.外観及び可視異物
目視検査法を採用して外観検出を行う。サンプルボルトをきれいに拭き、暗室において上海黄海薬品検査SC-4000A型透明度検出器の下に置き、照度を1000~1500 Luxに調整し、サンプルを遮光板の縁部(25cm)に置き、供試品ペニシリンボトルのネック部を手持ちし、それぞれ黒色と白色の背景で、色、透明度と可視異物などを目視で検査する。
【0022】
1.2.タンパク質含有量
Trinean Dropsense16型タンパク質濃度測定器を使用して、280nm波長におけるサンプルの吸光度を検出し、且つ濃度を計算する。消光係数は1.60mL*mg-1*cm-1である。
【0023】
1.3.pH値
Mettler Toledo型多機能パラメータ計を採用し、3つの標準液で校正し(pH値はそれぞれ4.01、7.00と9.21である)、電極傾きを95%~105%の範囲内にし、25μLのサンプルを取ってpH値を測定する。
【0024】
1.4.浸透圧モル濃度
Advanced Osmo PRO型浸透圧計を採用し、『中国薬典』(2015年版)通則0632「浸透圧モル濃度測定法」に準拠して測定し、20μLのサンプル及び290mOsmol/kgの浸透圧標準品2部を取り、氷点法でサンプル及び標準品の浸透圧値を測定する。
【0025】
1.5.粘度
BROOKFIELD DV2T型粘度計を採用してサンプルの粘度を測定する。外付けの水浴鍋のスイッチをオンにし、温度を25℃に設定し、0.5mLのサンプルを吸引してサンプルカップの中心に滴下し、測定トルクが40~60%になるようにローター回転数を設定し、サンプルの粘度を測定する。
【0026】
1.6.DLS
DynaPro PlateReader-III型ハイスループット動静的光散乱計を採用して、サンプルの粒径と粒度分布を測定する。クリーンベンチ内で25μLのサンプルを取って384オリフィスプレートの細孔に入れ、サンプルを入れた後、被膜し、被膜された384オリフィスプレートを冷凍遠心機に入れ、遠心してサンプル細孔内の気泡を除去する。計器の具体的なパラメータ設定は、表1に示されるとおりである。
【0027】
【0028】
1.7.Tagg温度
DynaPro PlateReader-III型ハイスループット動静的光散乱計を採用して、サンプルの凝集温度を測定する。クリーンベンチ内で25μLのサンプルを取って384オリフィスプレートの細孔に入れ、サンプルを入れた後、膜を被覆し、膜を被覆した後の384オリフィスプレートを冷凍遠心機に入れ、遠心してサンプル細孔内の気泡を除去する。計器の具体的なパラメータ設定は、表2に示されるとおりである。
【0029】
【0030】
1.8.DSC
TA Nano DSC示差走査熱量計を採用して、タンパク質立体配座に関する熱力学的パラメータTm onset、Tm1及びTm2値を測定する。プラセボを使用してタンパク質サンプル濃度を1mg/mLに希釈し、希釈されたタンパク質サンプルと対応するプラセボをそれぞれ96孔のサンプルプレートに入れ、脱気処理後、300±50Kpaの圧力条件に置き、前平衡化時間を600s、温度範囲を25~100℃、走査速度を1℃/minに設定し、タンパク質サンプルとプラセボのDSC曲線をそれぞれ採取し、ここでは、プラセボを3回走査し、タンパク質サンプルを1回走査する。Two State Scaledモデルを選択してデータフィッティングを行う。
【0031】
1.9.SEC-HPLC
SEC-HPLC検出は、Agilent 1260高速液体クロマトグラフィ、TOSOH TSKgel G3000クロマトグラフカラム(7.8mm×300mm、5μm)を採用し、カラム温度は室温であり(温度制御なし)、サンプル投入ディスクの温度は2~8℃であり、移動相組成は、100mMのリン酸二水素ナトリウム、0.5%の塩化ナトリウムであり、pH値は6.8であり、定組成溶離を行い、溶離時間は30minであり、流速は0.5mL/minである。検出波長は280nmであり、サンプル濃度を1mg/mLに希釈し、サンプル投入量は50μLである。
【0032】
1.10.CEX-HPLC
CEX-HPLC検出は、Agilent 1260高速液体クロマトグラフィ、Thermo ProPacTMWCX-10クロマトグラフカラム(4mm×250mm、10μm)を採用し、カラム温度は35℃であり、サンプル投入ディスクの温度は2~8℃であり、移動相Aの組成は50mMのリン酸塩緩衝液であり、pH値は6.10であり、移動相Bの組成は50mMのリン酸塩緩衝液、300mMの塩化ナトリウムであり、pH値は6.10であり、勾配溶離を行い、溶離勾配は表3に示されるとおりであり、流速は1.0mL/minである。検出波長は280nmであり、サンプル濃度を1mg/mLに希釈し、サンプル投入量は50μLである。
【0033】
【0034】
1.11.CE-SDS
『中国薬典』(2015年版)通則3127「モノクローナル分子サイズ変異測定法(CE-SDS法)」に準拠して測定する。非還元型と還元型CE-SDSを採用して検出し、Beckman Coulter PA800 plus型キャピラリー電気泳動装置を採用し、全長が67cmであり、内径が50μmである非被覆キャピラリーを使用し、5KVでサンプルを20.0s投入し、15KVで35.0min分離し、PDA検出器を使用し、波長が220nmである位置で検出し、面積正規化法で計算する。
【0035】
1.12.FlowCam
FlowCam 8100粒子分析検出器を採用して、サンプルにおけるサブヴィザブル粒子の形態及び数量を測定する。計器の具体的なパラメータ設定は表4に示されるとおりである。
【0036】
【0037】
実施例2 緩衝系及びそのpH値の選別研究
緩衝系/pH値の研究に対して、合計2回の実験を行い、単一要素試験の設計によって緩衝系の種類とpH値範囲を選別する。
【0038】
2.1緩衝系/pH値の選別研究-I
2.1.1 研究案
【表5】
【0039】
この研究は、陽イオンクロマトグラフィーによりツイーン20を除去した後のHLX04タンパク質原液(ロット番号:AS201801)を採用し、限外濾過による液体交換、タンパク質濃度の調整を行った後、タンパク質最終濃度が約25.0mg/mLである代替処方(表5)として調製する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして1mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルを40℃の恒温恒湿ボックスに入れて保存し、表6の設計要求に基づいてサンプリングと検出を行う。
【0040】
【0041】
2.1.1研究結果
0週では、タンパク質は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、酢酸-酢酸ナトリウム、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム系において、タンパク質のTagg温度が比較的高く(
図1A)、KD値が正の値(
図1B)であるとともに、タンパク質平均粒径が比較的小さく(
図1C)、この三つの緩衝系におけるタンパク質の立体配座安定性とコロイド安定性が比較的良いことが表明された。
【0042】
40℃で4週間静置した後、タンパク質濃度、pH値結果により、有意差がない(表7)ことが示された。SEC結果により、各緩衝系におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し(
図1E)、クエン酸-クエン酸ナトリウム、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、酢酸-酢酸ナトリウムの三つの緩衝系において、いずれもpH値が低いほど、安定性が比較的良くなり、優劣順位がC55>A50>H55>HA55>C60≒A55>H60(
図1E)であることが示された。DLS結果により、タンパク質は、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、リン酸二水素ナトリウム-リン酸水素二ナトリウム緩衝系において、分散指数PdIが大きくなり(
図1C)、Pk 1 Area Intの含有率が小さくなる(
図1D)ことが示され、1μmより低い可溶性高重合体が生成したことが表明された。CEX結果により、各緩衝系におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し(
図1F)、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝系におけるタンパク質の安定性が他の緩衝系より明らかに優れていることが示された。
【0043】
【0044】
2.2緩衝系/pH値の選別研究-II
2.2.1研究案
緩衝系/pH値の選別研究-Iの結果により、ヒスチジン-塩酸ヒスチジン、酢酸-酢酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝系において、いずれもpHが低いほど、SECメインピーク含有量が高くなり、安定剤と界面活性剤を含まない処方において、40℃の考察条件でタンパク質を1週間放置し、各処方では、いずれも目で見える粒子があることが示された。そのため、本実験では、比較的低いpH5.0、スクロースとツイーン80を添加する処方において、緩衝系をさらに選別する。
【0045】
【0046】
この研究は、HLX04タンパク質(ロット番号:AS201901-PT)を採用し、限外濾過による液体交換、補助材料の添加、タンパク質濃度の調整を行った後、タンパク質最終濃度が約25.0mg/mLである代替処方(表8)として調製する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして1mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルを40℃の恒温恒湿ボックスに入れて保存し、表9の設計要求に基づいてサンプリングと検出を行う。
【0047】
【0048】
2.2.2研究結果
0週では、各緩衝系におけるタンパク質の基本的な物理化学的検出結果により、有意差がなく(表10)、Tagg凝集温度の優劣順位がA50≒HA50>H50>C50(
図2A)であり、タンパク質平均粒径の優劣順位がA50≒HA50≒H50>C50(
図2B)であることが示された。酢酸-酢酸ナトリウム、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝系におけるタンパク質の立体配座安定性とコロイド安定性が比較的良いことが表明された。
【0049】
40℃で4週間静置した後、基本的な物理化学的検出結果により、有意差がない(表10)ことが示された。SEC結果により、各緩衝系におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し、優劣順位がA50≒H50≒HA50>C50(
図2C)であることが示された。CEX結果により、各緩衝系におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し、優劣順位がH50≒HA50>A50>C50(
図2D)であることが示された。FlowCamサブヴィザブル粒子の優劣順位はA50>H50≒HA50>C50(
図2E)である。
【0050】
【0051】
2.2.3研究結論
本研究結果により、酢酸-酢酸ナトリウム、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝系におけるタンパク質の立体配座安定性とコロイド安定性が比較的良いことが示された。ヒスチジン-塩酸ヒスチジン緩衝系におけるタンパク質の電荷異性体の結果が比較的良く、総合的に考慮して、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウムをタンパク質の緩衝系として選択する。
【0052】
実施例3 イオン強度の選別
3.1研究案
【表11】
【0053】
この研究は、HLX04タンパク質(ロット番号:AS201901-PT)を採用し、限外濾過による液体交換、補助材料の添加、タンパク質濃度の調整を行った後、タンパク質最終濃度が約25.0mg/mLである代替処方(表11)として調製する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして1mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルを40℃の恒温恒湿ボックスに入れて保存し、表12の設計要求に基づいてサンプリングと検出を行う。
【0054】
【0055】
3.2研究結果
0週では、塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム系におけるタンパク質のTagg凝集温度(
図3A)とタンパク質平均粒径(
図3B)の優劣順位はHA-10>HA-20>HA-30であり、10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝系におけるタンパク質の立体配座安定性とコロイド安定性が比較的良いことが表明された。
【0056】
40℃で4週間静置した後、基本的な物理化学的検出結果により、有意差がない(表13)ことが示された。SEC結果により、各緩衝系におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し(
図3C)、優劣順位がHA-10>HA-20≒HA-30であることが示された。CEX結果により、各緩衝系におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し、且つ低下傾向に有意差がない(
図3D)ことが示された。FlowCamサブヴィザブル粒子の優劣順位はHA-10>HA-20≒HA-30(
図3E)である。
【0057】
【0058】
3.3研究結論
本研究の結果により、10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝系におけるタンパク質の立体配座安定性とコロイド安定性が比較的良いことが示された。SECメインピーク含有量の低下傾向は比較的緩やかである。FlowCamサブヴィザブル粒子は比較的少ない。
【0059】
実施例4 pH値範囲の選別
4.1研究案
【表14】
【0060】
この研究は、HLX04タンパク質(ロット番号:AS201901-PT)を採用し、限外濾過による液体交換、補助材料の添加、タンパク質濃度の調整を行った後、タンパク質最終濃度が約25.0mg/mLである代替処方(表14)として調製する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして1mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルを40℃の恒温恒湿ボックスに入れて保存し、表15の設計要求に基づいてサンプリングと検出を行う。
【0061】
【0062】
4.2研究結果
タンパク質を10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム系で4週間保存し、pH5.0-5.6範囲内でタンパク質の物理化学的性質には有意差がない(表16、
図4)。そのため、最終製剤処方のpH値範囲は5.0-5.6である。
【0063】
【0064】
実施例5 安定剤種類の選別
5.1研究案
【表17】
【0065】
この研究は、HLX04タンパク質(ロット番号:AS201901-PT)を採用し、限外濾過による液体交換、補助材料の添加、タンパク質濃度の調整を行った後、タンパク質最終濃度が約25.0mg/mLである代替処方(表17)として調製する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして1mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルに対して、表18の設計要求に基づいて考察と検出を行う。
【0066】
【0067】
5.2研究結果
0週では、タンパク質は、安定剤を含む各処方において、T
agg温度優劣順位がスクロース>トレハロース>ソルビトール≒マンニトール>グリシンであり、T
m onset安定性優劣順位がグリシン>マンニトール≒スクロース≒トレハロース≒ソルビトール(
図5A)である。
【0068】
40℃で4週間静置した後、SEC結果により、安定剤を含む各処方におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し、グリシン(Glycine)サンプルの低下傾向が明らかで比較的に速い(
図5C)ことが示された。DLS結果の優劣順位は、ソルビトール≒マンニトール>グリシン>スクロース≒トレハロース(
図5B)である。CEX結果により、各安定剤を含む各処方におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し、グリシン含有サンプルの低下傾向が明らかで比較的に速い(
図5D)ことが示された。FlowCam結果により、サブヴィザブル粒子の優劣順位がソルビトール≒スクロース≒トレハロース≒マンニトール>グリシン(
図5E)であることが示された。
【0069】
繰り返し凍結融解で10回サイクルした後、SEC結果により、スクロース、トレハロース、ソルビトールを含む処方におけるタンパク質のメインピーク含有量が0週と比べて変化せず、マンニトール又はグリシンを含む処方におけるメインピーク含有量の低下傾向が明らかで比較的に速い(
図5G)ことが示された。DLS結果の優劣順位は、ソルビトール>スクロース≒トレハロース>グリシン≒マンニトール(
図5F)である。CEX結果により、スクロース、トレハロース、ソルビトールを含む処方におけるタンパク質のメインピーク含有量が0週と比べて変化せず、マンニトールとグリシンとを含む処方におけるメインピーク含有量の低下傾向が明らかで比較的に速い(
図5H)ことが示された。FlowCam結果により、サブヴィザブル粒子の優劣順位がソルビトール≒スクロース≒トレハロース>マンニトール≒グリシン(
図5I及び表19)であることが示された。
【0070】
本研究の結果により、40℃での高温静置と繰り返し凍結融解条件で、pH5.3である10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝系において、スクロース又はソルビトール安定剤を添加した処方は、タンパク質安定性が比較的良いことが示された。
【0071】
【0072】
実施例6 安定剤と界面活性剤の選別
6.1研究案
本研究は、JMP 15ソフトウェアを利用し、安定剤種類、安定剤含有量及びツイーン80含有量の3つの要素を選択し、Box-Behnken応答曲面法を採用して10個の試験グループ(表20)を設計し、凍結融解、振盪、光照射、高温などの加速条件によって、安定剤と界面活性剤の濃度(表21)を決定する。
【0073】
【0074】
この研究は、HLX04タンパク質(ロット番号:AS201901-PT)を採用し、限外濾過による液体交換、補助材料の添加、タンパク質濃度の調整を行った後、タンパク質最終濃度が約25.0mg/mLである代替処方(今回の研究はJMPソフトウェアを利用して、安定剤種類、安定剤含有量及びツイーン80の含有量という3つの要素を選択し、Box-Behnken応答曲面法を採用して10個の試験グループ(表20)を設計し、凍結融解、振盪、光照射、高温などの加速条件によって、安定剤と界面活性剤の濃度(表21)を決定する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして1mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルに対して、表の設計要求に基づいて考察と検出を行う。
【0075】
【0076】
6.2研究結果
検出データをJMP 15ソフトウェアに導入し、最小二乗法を利用して、各要素(従属変数)に対して多重線形回帰と二項方程式フィッティングを行い、統計学的に有意(P値<0.1)なモデル(表22)を得て、その補正決定係数(R2)は、いずれも0.95より大きく、モデルと実際とのフィッティング性が良く、方程式が応答値に対して比較的良い正確性と信頼性を有し、実際の試験点の代わりに、この回帰モデルで実験結果に対して分析と予測を行うことができることが表明された。
【0077】
JMP 15ソフトウェアを適用し、表22における分析結果に基づいて、最大化満足度モデルを採用して最適な製剤処方を予測する。ソルビトールを安定剤として選択する場合、処方の満足度は比較的高く、ソルビトール含有量が4.5%である場合、処方満足度は最大であり、ポリソルベート80含有量が増加し、処方満足度は低下傾向を呈し、ポリソルベート80含有量が0.01~0.03%範囲内にある場合、処方満足度は比較的大きく、中点0.02%を選択する(
図6A、6B、6Cを参照)。
【0078】
緩衝系/pH値選別研究、イオン強度選別研究、界面活性剤種類選別研究、安定剤種類選別研究、安定剤と界面活性剤選別研究により、最終的な製剤処方組成は、10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム緩衝系、pH5.3、45mg/mLのソルビトール、0.2mg/mLのツイーン80である。
【0079】
【0080】
実施例7 選定処方と他の処方との比較
7.1 研究案
【表23】
【0081】
この研究は、HLX04タンパク質(ロット番号:AS201901-PT)を採用し、限外濾過による液体交換、補助材料の添加、タンパク質濃度の調整を行った後、タンパク質最終濃度が約25.0mg/mLである代替処方(表23)として調製する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして1mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルを40℃の恒温恒湿ボックスに入れて保存し、表24の設計要求に基づいてサンプリングと検出を行う。
【0082】
【0083】
7.2研究結果
0週では、タンパク質は、3つの処方における外観がいずれも無色で微乳光がある液体であり、明らかな可視異物がない。Tagg凝集温度の優劣順位はHA53>PB62>C50(
図7A)であり、タンパク質平均粒径の優劣順位はHA53>C50>PB62(
図7B)であり、HA53処方におけるタンパク質の立体配座安定性とコロイド安定性が比較的良いことが表明された。
【0084】
40℃で4週間静置した後、タンパク質は、3つの処方において、いずれも一定の安定性を維持することができ、タンパク質の基礎物理化学的検出には有意な変化がない(表25)。SEC結果により、各処方におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し(
図7C)、優劣順位がHA53>C50>PB62であることが示された。CEX結果により、各処方におけるタンパク質のメインピーク含有量がいずれも低下傾向を呈し(
図7D)、優劣順位がHA53>C50>PB62であることが示された。FlowCamサブヴィザブル粒子の優劣順位はHA53>PB62>C50(
図7E)である。
【0085】
【0086】
高温加速試験の分子異性体、電荷異性体及びサブヴィザブル粒子の結果によると、本出願に選定された処方におけるベバシズマブの安定性は、従来のベバシズマブに使用される処方(PB62)及び他の類似処方より明らかに優れている。
【0087】
実施例8 異なるタンパク質濃度安定性の比較
8.1研究案
【表26】
【0088】
処方選別研究によって、HLX04製剤処方が10mMの塩酸ヒスチジン-酢酸ナトリウム、45mg/mLのソルビトール、0.2mg/mLのツイーン80、pH5.3であることが決定された。本研究では、40℃の高温加速条件を採用し、HLX04製剤処方において、10~80mg/mL濃度範囲内のサンプルとAvastin(登録商標)との安定性差異を比較する。HLX04 PTタンパク質(ロット番号:AS201901-PT)を採用し、限外濾過による液体交換、補助材料の添加、タンパク質濃度の調整を行った後、各代替処方(表26)として調製する。生物安全キャビネット内で0.22μm使い捨て無菌フィルターを用いてサンプルを濾過し、そして0.5mLのタンパク質溶液を2mLのペニシリンボトルに無菌的に分け、13mmのゴム栓を加え、13mmのアルミニウムプラスチック組み合わせ蓋を圧延する。分けられたサンプルと先発医薬品(ロット番号:H0154B14、符号:Avastin)を40℃の恒温恒湿ボックスに入れて保存し、表27の設計要求に基づいてサンプリングと検出を行う。
【0089】
【0090】
8.2研究結果
本研究は、高温(40℃)加速試験によって、HLX04製剤処方において、10~80mg/mL濃度範囲内のサンプルとAvastin(登録商標)との安定性差異を比較する。研究結果(表28)により、0週では、HLX04製剤処方において、10~80mg/mL濃度範囲内のサンプルの重合体含有量が2.0~2.7%であり、Avastinの重合体含有量(3.6%)より少ないことが示された。40℃で4週間静置した後、HLX04製剤処方において、10~80mg/mL濃度範囲内のサンプルの凝集速度(
図8A)、分解速度(
図8B、C)及び電荷異性体変化傾向(
図8D)は、いずれもAvastinより著しく遅い。
【0091】
以上のように、先発医薬品Avastin(60mg/mL)に比べて、10~80mg/mL濃度範囲内のHLX04製剤処方は安定性がより優れている。
【0092】
【国際調査報告】