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特表2023-516387フルオロコポリマーの溶液を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】フルオロコポリマーの溶液を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/11 20060101AFI20230412BHJP
   C08L 27/16 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C08J3/11 CEW
C08L27/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552794
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(85)【翻訳文提出日】2022-10-24
(86)【国際出願番号】 FR2021050359
(87)【国際公開番号】W WO2021176180
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】2002120
(32)【優先日】2020-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イダルゴ,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ラジュー,アリスティド
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA23
4F070AB24
4F070AC39
4F070AC43
4F070AC50
4F070AC55
4F070AC64
4F070AC66
4F070AE28
4F070CA03
4F070CA11
4F070CB05
4F070CB11
4J002BD141
4J002ED026
4J002EE036
4J002EH006
4J002EH036
4J002EH156
4J002EL066
4J002EP016
4J002ET016
4J002EU026
4J002EV206
4J002EW046
4J002HA05
(57)【要約】
本発明は溶媒中のフルオロコポリマーの溶液を製造する方法に関し、溶媒は1013hPaで150℃以上の沸点及び/又は20℃で5hPa未満の飽和蒸気圧を有し、
該方法は、前記ポリマーが前記溶媒に溶解するまで、少なくとも1枚のブレードを含む撹拌スピンドルを有する反応器中で前記フルオロポリマーを前記溶媒と、40~100℃の範囲の混合温度及び0.1m/秒以上のブレード先端撹拌速度で混合する工程を含む。本発明は、1013hPaで厳密に150℃未満の沸点及び/又は20℃で厳密に5hPaを超える飽和蒸気圧を有する共溶媒を含まないこの溶媒中の前記コポリマーの溶液にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中のフルオロポリマーの溶液を製造する方法であって、
前記フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンに由来する単位及び式CX=CX(式中、各X、X、X及びX基は、H、Cl、F、Br、I及び部分的に又は完全にハロゲン化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基から独立して選択される)の少なくとも1種の他のモノマーに由来する単位を含むポリマーであり、、
前記溶媒は1013hPaで150℃以上の沸点及び/又は20℃で5hPa以下の飽和蒸気圧を有し、
該方法は、前記ポリマーが前記溶媒に溶解するまで、少なくとも1枚のブレードを含む撹拌スピンドルを有する反応器中で、40~100℃の範囲の混合温度及び0.1m/秒以上のブレード先端撹拌速度で、前記フルオロポリマーを前記溶媒と混合する工程を含み、
前記混合工程が、1013hPaで厳密に150℃未満の沸点及び/又は20℃で厳密に5hPaを超える飽和蒸気圧を有する前記フルオロポリマーの共溶媒の不存在下で実施される、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種の他のモノマーが、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、トリフルオロプロペン、特に3,3,3-トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペンタフルオロプロペン、特に1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、特に一般式R-O-CF=CF(Rは、アルキル基、好ましくはC~Cアルキル基である)のもの、ブロモトリフルオロエチレン、1-クロロ-1-フルオロエチレン(CFE)、1-クロロ-2-フルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン及び1,1,2-トリクロロ-2-フルオロエチレンから選択される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記フルオロポリマーが、P(VDF-TrFE)、P(VDF-TFE)、P(VDF-TrFE-TFE)、P(VDF-TrFE-CTFE)、P(VDF-TrFE-CFE)、P(VDF-TrFE-CTFE-CFE)及びP(VDF-TrFE-TFE-CTFE-CFE)から選択され、
優先的には前記フルオロポリマーが、P(VDF-TrFE)、P(VDF-TrFE-CFE)、又はP(VDF-TrFE-CTFE)から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フルオロポリマーが、規格ASTM D1238に従って230℃及び10kg負荷下で測定される、0.2g/10分~20g/10分、優先的には0.5~10g/10分、さらにより優先的には0.8g/10分~8g/10分、極めて好ましくは1g/10分~6g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、3-メチルシクロヘキサノン、テトラメチル尿素、エチルアセトアセテート、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフェート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ガンマ-ブチロラクトン、イソホロン、トリエチルホスフェート、カルビトールアセテート、プロピレンカーボネート、ジメチルフタレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
優先的にはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ガンマ-ブチロラクトン、トリエチルホスフェート、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、ガンマ-ブチロラクトン又はトリエチルホスフェートである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記フルオロポリマーが、前記溶液の総重量の1重量%~40重量%に相当し、
好ましくは、前記フルオロポリマーが、前記溶液の総重量の5重量%~30重量%に相当し、
好ましくは、前記フルオロポリマーが、前記溶液の総重量の10重量%~25重量%に相当する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、前記溶液の総重量に対して11重量%超、又は12重量%超、又は13重量%超、又は14重量%超、又は15重量%超に相当し、及び/又は
前記溶液の総重量に対して24重量%未満、又は23重量%未満、又は22重量%未満、又は21重量%未満、又は20重量%未満に相当する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合温度が90℃以下であり、優先的には80℃以下であり、より優先的には70℃以下であり、極めて好ましくは65℃以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ブレード先端撹拌速度が0.25m/秒以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合工程の持続時間が30分~12時間であり、
好ましくは、前記混合工程の持続時間が1時間~5時間である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記撹拌スピンドルが少なくとも3枚のブレード、優先的には少なくとも4枚のブレードを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
攪拌直径Lに対する前記反応器の特徴的な内径Dが、0.2D≦L≦0.9D、好ましくは0.3D≦L≦0.8Dである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記混合工程を、前記溶媒に前記フルオロポリマーを1回で又は数回に分けて添加することにより行う、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
溶媒中のフルオロポリマーの溶液であって、
前記フルオロポリマーはフッ化ビニリデンに由来する単位及び式CX=CX(式中、各X、X、X及びX基は、H、Cl、F、Br、I及び部分的に又は完全にハロゲン化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基から独立して選択される)の少なくとも1種の他のモノマーに由来する単位を含むポリマーであり、
前記溶媒は1013hPaで150℃以上の沸点及び/又は20℃で5hPa以下の飽和蒸気圧を有し、
該溶液が、1013hPaで厳密に150℃未満の沸点及び/又は20℃で厳密に5hPaを超える飽和蒸気圧を有する前記フルオロポリマーの共溶媒を含まないことを特徴とする、溶液。
【請求項16】
RVDV-II+Pブルックフィールド粘度計を用いて25℃で測定される、2000mPa.s~40000mPa.s、優先的には8000mPa.s~30000mPa.s、より好ましくは12000mPa.s~28000mPa.s、極めて好ましくは15000mPa.s~25000mPa.sの粘度を有する、請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
前記フルオロポリマーが請求項2~4のいずれか1項に記載のものであり、及び/又は、前記溶媒が請求項5又は6に記載のものである、請求項15又は16に記載の溶液。
【請求項18】
前記フルオロポリマーが、前記溶液の総重量の1重量%~40重量%に相当し、
好ましくは、前記フルオロポリマーが、前記溶液の総重量の5重量%~30重量%に相当し、
より好ましくは、前記フルオロポリマーが、前記溶液の総重量の10重量%~25重量%に相当する、請求項15~17のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法により得られる、請求項15~18のいずれか一項に記載の溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーの分野、特にフッ化ビニリデン及び少なくとも1種の他のモノマーに由来するコポリマーの溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
γ-ブチロラクトン(沸点204.0℃)のような揮発し難い溶媒中のP(VDF-TrFE)の溶液を製造することは先行技術から知られている。それにもかかわらず、γ-ブチロラクトン中のP(VDF-TrFE)の分散は実際に実施するには手間がかかる。
【0003】
例えば、180℃の温度で、還流下で2時間の間顆粒の形態のポリマーを溶媒と混合することが知られている(参照Zirkl,M.,Stadlober,B.& Leising,G.(2007)).Synthesis of ferroelectric poly(vinylidene fluoride)copolymer films and their application in integrated full organic pyroelectric sensors. Ferroelectrics,353(1),173-185)。この方法の欠点は、実施するのに面倒で、適切な装置及びまた適切な安全対策を必要とする高温での加熱が必要であることである。また、このような加熱は、得られた溶液の黄変の原因であり、望ましくない。さらに、この方法に従って進行することにより、ゲルが周囲温度で得られ、均一な溶液が得られるわけではない。均一な溶液状態は、周囲温度からゲルをゆっくり加熱することによってのみ得られる。
【0004】
より穏やかな温度条件下で機能するために、例えば、US2013/0153814号では、周囲温度でマグネチックスターラーで撹拌しながら、P(VDF-TrFE)顆粒をγ-ブチロラクトン:アセトンの50:50混合物(体積比)中で24時間混合することが提案された。また、アセトンはγ-ブチロラクトンよりもはるかに揮発性の高い溶媒であり、P(VDF-TrFE)がより容易かつ迅速に溶解する溶媒でもある。
【0005】
揮発性が高いので、アセトンは40℃でロータリーエバポレーターにより減圧下で容易に蒸発する。この方法は、溶液を高温にさらさない利点があり、後者の黄変につながらない。それにもかかわらず、専用の追加の工程の間に最終的に排除しなければならない共溶媒を使用するという欠点がある。さらに、溶液中の共溶媒の残存量の存在は、薄層(フィルム)の製造につながる全ての用途、特に、薄層を形成するために溶媒を蒸発させるための条件が急速な場合(最終フィルムの連続性欠陥の出現のリスク)に悪影響を与える可能性がある。
【0006】
したがって、高い沸点及び/又は低い飽和蒸気圧を有する溶媒中のフルオロポリマー、特にかなり高濃度のフルオロポリマーの溶液を製造するための方法であって、均一な溶液を得ることを可能にし、不純物を制限し(揮発性共溶媒を含まない)、フルオロポリマー又は溶媒の分解を制限する方法を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0153814号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Zirkl,M.,Stadlober,B.& Leising,G.(2007)).Synthesis of ferroelectric poly(vinylidene fluoride)copolymer films and their application in integrated full organic pyroelectric sensors. Ferroelectrics,353(1),173-185
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、1013hPaで150℃以上の沸点及び/又は20℃での5hPa以下の飽和蒸気圧を有する溶媒中のフルオロポリマーの溶液を製造するための改良された方法を提供することであり、この方法は、妥当な時間でポリマーの完全な溶解を可能にする。
【0010】
特定の実施形態によれば、1つの目的は、先行技術の方法より実施が簡単な方法を提供することである。
【0011】
特定の実施形態によれば、1つの目的は、先行技術の方法よりも実施費用が安い方法を提供することである。
【0012】
特定の実施形態によれば、1つの目的は、先行技術の方法よりも速く実施される方法を提供することである。
【0013】
特定の実施形態によれば、1つの目的は、実質的に黄変しない組成物を得ることを可能にする方法を提供することである。
【0014】
特定の実施形態によれば、1つの目的は、揮発性共溶媒を有さない組成物、すなわち、1013hPaで150℃以下の沸点及び/又は20℃での5hPa以上の飽和蒸気圧を有する共溶媒を有さない組成物を得ることを可能にする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、溶媒中のフルオロポリマーの溶液を製造する方法に関し、
該フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンに由来する単位及び式CX=CXの少なくとも1種の他のモノマーに由来する単位を含み、各X、X、X及びX基は、H、Cl、F、Br、I及び部分的に又は完全にハロゲン化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基から独立して選択され、
該溶媒は、1013hPaで150℃以上の沸点及び/又は20℃で5hPa以下の飽和蒸気圧を有し、
該方法は、少なくとも1枚のブレードを含む撹拌スピンドルを有する反応器中で、該フルオロポリマーと該溶媒を、40℃~100℃の範囲の混合温度で、0.1m/秒以上のブレード先端攪拌速度で、該ポリマーが該溶媒に溶解するまで混合する工程を含む。本発明の発明者らは、実際、驚くべきことに、先行技術で引用されているP(VDF-TrFE)のようなフルオロポリマーが、共溶媒を使用する必要なく、又は混合物を過度に加熱する必要なく、γ-ブチロラクトンのような揮発し難い溶媒に溶解され得ることに気づいた。本発明者らは、実際、最適温度の範囲を選択し、また、均一なフルオロポリマー溶液を、簡便、迅速かつ安価に得ることを可能にする、ブレードを有する撹拌スピンドルの最適撹拌速度を規定した。
【0016】
特定の実施形態によれば、前記少なくとも1種の他のモノマーは、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)、ペルフルオロブチルエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、1,1-クロロフルオロエチレン(1,1-CFE)、1,2-クロロフルオロエチレン(1,2-CFE)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233zd)、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン及び1,1,2-トリクロロ-2-フルオロエチレンから選択される。
【0017】
特定の実施形態によれば、前記フルオロポリマーは、P(VDF-TrFE)、P(VDF-TFE)、P(VDF-TrFE-TFE)、P(VDF-TrFE-CTFE)、P(VDF-TrFE-CFE)、P(VDF-TrFE-CTFE-CFE)及びP(VDF-TrFE-TFE-CTFE-CFE)から選択される。フルオロポリマーは、特に、P(VDF-TrFE)、P(VDF-TrFE-CFE)、又はP(VDF-TrFE-CTFE)から選択され得る。
【0018】
特定の実施形態によれば、前記フルオロポリマーは、230℃、10kg負荷下で、規格ASTM D1238に従って測定される、0.2g/10分~20g/10分、優先的に0.5~10g/10分、さらにより優先的には0.8g/10分~8g/10分、極めて好ましくは1g/10分~6g/10分の間のメルトフローインデックス(MFI)を有する。
【0019】
特定の実施形態によれば、溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、3-メチルシクロヘキサノン、テトラメチル尿素、エチルアセトアセテート、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフェート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、ガンマ-ブチロラクトン、イソホロン、トリエチルホスフェート、カルビトールアセテート、プロピレンカーボネート、ジメチルフタレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。優先的には、溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド、ガンマ-ブチロラクトン、トリエチルホスフェート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
特定の実施形態によると、溶媒はガンマ-ブチロラクトン又はトリエチルホスフェートである。
【0021】
特定の実施形態によれば、フルオロポリマーは、溶液の総重量の1重量%~40重量%に相当する。好ましくは、フルオロポリマーは、溶液の総重量の5重量%~30重量%に相当する。より好ましくは、フルオロポリマーは、溶液の総重量の10重量%~25重量%に相当する。
【0022】
特定の実施形態によれば、フルオロポリマーは、溶液の総重量に対して11重量%超、又は12重量%超、又は13重量%超、又は14重量%超、又は15重量%超、及び/又は
溶液の総重量に対して24重量%未満、又は23重量%未満、又は22重量%未満、又は21重量%未満、又は20重量%未満に相当する。
【0023】
特定の実施形態によると、混合温度は90℃以下であり、優先的には80℃以下、より優先的には70℃以下、極めて好ましくは65℃以下である。
【0024】
特定の実施形態によると、ブレード先端撹拌速度は0.25m/秒以上である。
【0025】
特定の実施形態によると、混合工程の持続時間は30分~12時間である。優先的には、混合工程の持続時間は1時間~5時間である。
【0026】
特定の実施形態によると、撹拌スピンドルは少なくとも3枚のブレードを含み、優先的には少なくとも4枚のブレードを含む。
【0027】
特定の実施形態によると、撹拌スピンドルの攪拌直径Lに対する反応器の特徴的な内径Dは、以下のようになる:0.2D≦L≦0.9D、好ましくは0.3D≦L≦0.8D。
【0028】
特定の実施形態によると、混合工程は、1度に又は数回に分けてフルオロポリマーを溶媒へ添加することによって実施される。
【0029】
本発明はまた、本発明による方法によって得ることができる溶液に関する。特に、本発明は、溶媒中のフルオロポリマーの溶液に関するものであり、
フルオロポリマーはフッ化ビニリデンに由来する単位及び式CX=CXの少なくとも1種の他のモノマーに由来する単位を含むポリマーであり、各X、X、X及びX基は、H、Cl、F、Br、I及び部分的に又は完全にハロゲン化されていてもよい1~3個の炭素原子を含むアルキル基から独立して選択され、溶媒は1013hPaで150℃以上の沸点及び/又は20℃で5hPa以上の飽和蒸気圧を有する。この溶液は、1013hPaで厳密に150℃未満の沸点及び/又は20℃で厳密に5hPaより高い飽和蒸気圧を有する、前記フルオロポリマーの共溶媒を含まないことを特徴とする。
【0030】
特定の実施形態によると、溶液は、ブルックフィールドRVDV-II+P粘度計を用いて周囲温度(25℃)で測定される、2000mPa.s~40000mPa.s、優先的に8000mPa.s~30000mPa.s、より好ましくは12000mPa.s~28000mPa.s、極めて好ましくは15000mPa.s~25000mPa.sの粘度を有する。
【0031】
特別な実施形態によると、溶液は18000mPa.s~24000mPa.sの粘度を有することができる。
【0032】
特定の実施形態によると、前記フルオロポリマー及び/又は溶媒及び/又は溶液中のフルオロポリマーの量は、前記のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】斜視図において、単段4枚ブレード撹拌スピンドルを表す。
図2】側面図において、実施例2で使用した2段4枚ブレード撹拌スピンドルを表す。
図3】平面図において、図2のものと同じ撹拌スピンドルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以後、以下の説明において、より詳細に及び非限定的な方法で本発明を説明する。
【0035】
本特許出願において、「フルオロポリマー」という表現は、「1種以上のフルオロポリマー」を意味するものとして理解されるべきである。同じことが適切な他の全ての場合についてもあてはまる。したがって、例えば、「溶媒」という表現は、「1種以上の溶媒」を意味するものとして理解されるべきである。
【0036】
<フルオロポリマー>
ポリマーは(広義には)コポリマーであり、すなわち、該ポリマーはフッ化ビニリデン(VDF)モノマー及びフッ化ビニリデン以外の少なくとも1種のモノマーXに由来する単位を含む(すなわち、これらのモノマーの重合により得られる)。単一のモノマーXを用いてもよいし、必要に応じて複数の異なるモノマーXを用いてもよい。モノマーXは式CX=CXのものであり、式中、各X、X、X及びX基は、H、Cl、F、Br、I及び部分的に又は完全にハロゲン化されてもよいC1~C3(好ましくはC1~C2)アルキル基から独立して選択される。モノマーXはVDFとは異なっており、すなわち、X及びXがHを表すならば、X及びXの少なくとも1つはFを表しておらず、逆にX及びXがFを表すならば、X及びXの少なくとも1つはHを表さない。
【0037】
いくつかの実施形態において、各X、X、X及びX基は、独立して、H、F、Cl、I又はBr原子、又はF、Cl、I及びBrから選択される1つ以上の置換基を含んでもよいメチル基を表す。
【0038】
特定の実施形態において、各X、X、X及びXは、独立してH、F、Cl、I又はBr原子を表す。
【0039】
特定の実施形態において、X、X、X及びXのうちの1つのみがCl又はI又はBr原子を表し、X、X、X及びX基の残りのものは、独立してH若しくはF原子又は1つ以上のフッ素置換基を含んでいてもよいC1~C3アルキル基、好ましくは、H若しくはF原子又は1つ以上のフッ素置換基を含んでいてもよいC1~C2アルキル基、より好ましくはH若しくはF原子又は1つ以上のフッ素置換基を含んでいてもよいメチル基を表す。
【0040】
ハロゲン原子としてフッ素のみを含むモノマーXの例は、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン(TrFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、トリフルオロプロペン、特に3,3,3-トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス形又は好ましくはトランス形)、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロブチルエチレン、ペンタフルオロプロペン、特に1,1,3,3,3-ペンタフルオロプロペン又は1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、特に一般式R-O-CF=CF(式中、Rは、アルキル基、好ましくはC1~C4アルキル基(好ましい例は、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)及びペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE))である。
【0041】
少なくとも1個の塩素又は臭素原子を含むモノマーXの例は、ブロモトリフルオロエチレン、1-クロロ-1-フルオロエチレン(CFE)、1-クロロ-2-フルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(1233xf)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(シス形又はトランス形、好ましくはトランス形)、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン、1,1-ジクロロ-1,1-ジフルオロエチレン及び1,1,2-トリクロロ-2-フルオロエチレンである。
【0042】
特定の好ましい実施形態において、フルオロポリマーはVDF及びHFPに由来する単位を含み、又はVDF及びHFPに由来する単位からなるP(VDF-HFP)ポリマーである。HFPに由来する繰り返し単位のモル比は、好ましくは2%~50%、特に5%~40%である。
【0043】
特定の好ましい実施形態において、フルオロポリマーは、VDF及びCFE、及び/又はCTFE、及び/又はTFE、及び/又はTrFEに由来する単位を含む。VDF以外のモノマーに由来する繰り返し単位のモル比は、50%未満が好ましい。
【0044】
特定の好ましい実施形態において、フルオロポリマーは、VDF及びTrFEに由来する単位を含むか、又はVDF及びTrFEに由来する単位からなるP(VDF-TrFE)ポリマーである。
【0045】
特定の好ましい実施形態において、フルオロポリマーは、VDFと、TrFEと、VDF及びTrFEとは異なる上記で定義される別のモノマーXとに由来する単位を含み、又はVDFと、TrFEと、VDF及びTrFEとは異なる上記で定義される別のモノマーXとに由来する単位からなるP(VDF-TrFE-X)ポリマーである。この場合、好ましくは、他のモノマーXは、TFE、HFP、トリフルオロプロペン、及び特に3,3,3-トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、及び特に2,3,3,3-テトラフルオロプロペン又は1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス形、又は好ましくはトランス形)、ブロモトリフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン及びクロロトリフルオロプロペンから選択される。CTFE又はCFEが特に好ましい。
【0046】
VDF及びTrFEに由来する単位が存在する場合、TrFEに由来する単位の割合は、VDF及びTrFEに由来する単位の合計に対して、好ましくは5~95mol%、特に5~10mol%、又は10~15mol%、又は15~20mol%、又は20~25mol%、又は25~30mol%、又は30~35mol%、又は35~40mol%、又は40~45mol%、又は45~50mol%、又は50~55mol%、又は55~60mol%、又は60~65mol%、又は65~70mol%、又は70~75mol%、又は75~80mol%、又は80~85mol%、又は85~90mol%、又は90~95mol%である。15~55mol%の範囲が特に好ましい。
【0047】
VDF及びTrFEに加えて別のモノマーXに由来する単位が存在する場合(モノマーXが特にCTFE又はCFEである場合)、フルオロポリマー中(単位全体に対する)のこの他のモノマーXに由来する単位の割合は、例えば、0.5~1mol%、又は1~2mol%、又は2~3mol%、又は3~4mol%、又は4~5mol%、又は5~6mol%、又は6~7mol%、又は7~8mol%、又は8~9mol%、又は9~10mol%、又は10~12mol%、又は12~15mol%、又は15~20mol%、又は20~25mol%、又は25~30mol%、又は30~40mol%、又は40~50mol%で様々である。1~20mol%、好ましくは2~15mol%の範囲が特に適している。
【0048】
フルオロポリマー中の単位のモル組成は、赤外分光法又はRAMAN分光法のような種々の手段によって決定され得る。X線蛍光分光法のような炭素、フッ素及び塩素又は臭素又はヨウ素元素の元素分析の従来の方法により、ポリマーの質量組成を計算することが可能になり、該質量組成からモル組成が推定される。
【0049】
適切な重水素化溶媒中のポリマーの溶液の分析によって、多核NMR技術、特にプロトン(1H)及びフッ素(19F)NMR技術を使用することもできる。
【0050】
最後に、例えば、塩素又は臭素又はヨウ素のようなヘテロ原子のための元素分析、及びNMR分析を組み合わせることが可能である。したがって、例えば、P(VDF-TrFE-CTFE)ターポリマー中のCTFEから得られる単位の含有量は、元素分析による塩素含有量の測定によって決定され得る。
【0051】
メルトフローインデックス(MFI)により、平均分子量を間接的に特性決定することが可能になる。MFIは、Dynisco D4059Bフローメーターなどの装置を用いて、機械が230℃及び溶融ポリマーに対する10kgの負荷で操作される場合、10分後に測定ダイを通過する累積重量を決定することにより、規格ASTM D1238に従って測定することができる。特定の変形例によれば、フルオロポリマーは、これらの条件下で0.2g/10分~20g/10分、好ましくは0.5g/10分~10g/10分、さらにより優先的には0.8g/10分~8g/10分、極めて好ましくは1g/10分~6g/10分のMFIを有する。
【0052】
フルオロポリマーはランダムで直鎖状であることが好ましい。
【0053】
フルオロポリマーは均一であっても不均一であってもよい。均一ポリマーは均一な鎖構造をもち、種々のモノマーに由来する単位の統計的分布は鎖間でほとんど変化しない。不均一ポリマーでは、鎖は多峰性あるいは広がった型の種々のモノマーに由来する単位の分布を有する。したがって、不均一ポリマーは、ある単位に富む鎖及びこの単位に乏しい鎖を含む。
【0054】
フルオロポリマーは、小片、顆粒の形態であってもよく、粉末の形態であってもよい。優先的には、フルオロポリマーは粉末の形態又は顆粒の形態である。
【0055】
<溶媒>
「ポリマーの溶媒」は、ポリマーの溶解を可能にする液体を意味すると理解される。
【0056】
ポリマーの溶媒におけるフルオロポリマーの「溶解」は、溶媒中のポリマーの均一な分散物が得られることを意味すると理解され、溶媒で多少膨潤されるポリマー粒子は、連続的な溶媒相に分散される。
【0057】
分散物の均一性は、分散物が顆粒状又はマクロ分離した外観をもたない分散物を観察することによって巨視的に(すなわち、分散物が実際に均一な外観であることを肉眼で観察することによって)確認することができる。このように、「均一分散物」という用語は、「不均一分散物」、すなわち、部分的に粒状の巨視的な外観を有する分散物、又はゲルのような巨視的に見える相分離を有する分散物との対比において使用される。
【0058】
あるいは、分散物の画分の固形分を測定することにより、均一性を定量的に評価することもできる。これらの目的のために、数ミリリットルの画分を、はるかに大量の溶液、例えば100ml、又は好ましくは500ml若しくは1L、又はそれ以上からサンプリングすることができる。数ミリリットルの各画分について、溶媒の蒸発によって固形分を決定し、これには蒸発操作前後の試料の質量を記録することが含まれる。一定の温度で、十分に長い時間、大気圧又は減圧下で、オーブン中で蒸発させるなど、当業者に知られた蒸発技術によって、可能な限り完全に溶媒を蒸発させる。目安として、大気圧で換気されたオーブン中で、140℃の温度及び少なくとも2時間の蒸発時間が、本発明のような数ミリリットルの溶液について、溶媒の蒸発に十分である。起こり得る不均一性を検出するために、画分の固形分(そのうち少なくとも2つ、できれば3~10)を相互に比較することができる。
【0059】
ある液体中のポリマーの溶解度は、撹拌しながら、周囲温度(25℃)で前記液体に5重量%/重量の量のポリマーを添加し、必要に応じて60℃以下の温度(例えば60℃)で15分又は60分間(例えば、60分間)適度に加熱し、次いで周囲温度(25℃)まで冷まし、この温度で15分又は60分後(例えば、60分後)に、懸濁液中に固形ポリマーが残っているか否かを視覚的に観察することによって決定することができる。
【0060】
本発明による溶液のポリマーに適用することができる、フルオロポリマーに適した溶媒を選択するための方法は、特許出願WO19170999号に記載されている。この選択方法は、限定された数の溶解実験のみを行うことによって、特に、どの液体がフルオロポリマーの溶解のための溶媒として適しているかを容易に識別することを可能にする。ある圧力における純物質の沸点は、蒸気圧が大気圧に等しい温度である。溶媒は1013hPaで150℃以上の沸点を有する。特定の実施形態によれば、溶媒は、1013hPaにおいて、160℃以上、170℃以上、180℃以上、又は190℃以上、又は195℃以上の沸点を有する。
【0061】
これに代わりに又はこれに加えて、溶媒は20℃で5.0hPa以下の飽和蒸気圧を有する。ある温度での飽和蒸気圧は、ある物質の気相がこの温度でその液相又は固相と平衡状態にある圧力である。特定の実施形態によれば、溶媒は、20℃において、4.5hPa以下、又は4.0hPa以下、又は3.5hPa以下、又は3.0hPa以下、又は2.5hPa以下、又は2.0hPa以下、又は1.5hPa以下、又は1.0hPa以下、又は0.5hPa以下の蒸気圧を有する。
【0062】
本発明による溶液の溶媒は、特に、以下の表1に示すリスト、又はそれらの混合物から選択することができる。
【0063】
【表1】
【0064】
<設備及び方法>
フルオロポリマーの溶液を製造する方法は、少なくともフルオロポリマーを溶媒と混合する工程中に、以後その中で化学反応が起こらないにもかかわらず、「反応器」と呼ばれる、少なくとも1枚のブレードを含む撹拌スピンドルを有する撹拌槽中で実施される。
【0065】
反応器は、例えば、ガラス反応器、内壁がガラスでできている反応器、又はステンレス金属材料でできている反応器、又はPTFE若しくは他の任意のフルオロポリマーで被覆されている反応器であることができる。
【0066】
この反応器は有利には円筒形をしており、特徴的な内径Dを有する。
【0067】
この反応器は有利には垂直型である。
【0068】
攪拌スピンドルは、反応器内で中心にあることもあれば、わずかに中心から離れていることもある。攪拌スピンドルが中心にある場合には、反応器は任意にその外部壁上にカウンタブレードを含むことができる。
【0069】
反応器及びその内容物の温度の監視は、当業者に周知の様々な手段によって実施することができる。反応器の内部が等温又は準等温条件下にあることを保証する1つの簡単な手段は、例えばジャケット付きの反応器を使用し、ジャケットを通ってその温度が調節されている熱伝達流体を循環させることである。
【0070】
攪拌スピンドルは、回転軸の周りを回転することができる少なくとも1枚のブレードを含む。したがって、ブレード-先端速度は、回転軸線に対するブレードの最も遠い点の速度であると定義することができる。
【0071】
攪拌スピンドルのブレード先端速度Vは、次式から計算することができる。
【0072】
Vt=2π・N・r
【0073】
式中、Nは単位時間当たりの回転数で表した攪拌速度であり、rはスピンドルの軸とブレード先端との距離である。
【0074】
当業者に知られた多数の撹拌スピンドルが存在する。分散物及び/又は比較的粘稠な媒体に適した撹拌スピンドルは、本発明による方法に特に適している。
【0075】
基本的な撹拌スピンドルの非限定的なリストを、James Y. Oldshue: FLUID MIXING TECHNOLOGY.ニューヨーク: McGraw Hill(C) 1983の本書の59頁表3-1に示す。
【0076】
特定の実施形態では、撹拌スピンドルは主に軸方向の流れを発生させる。
【0077】
特定の実施形態では、撹拌スピンドルは主に半径方向の流れを発生させる。
【0078】
特定の実施形態では、撹拌スピンドルは接線方向の流れを発生させる。
【0079】
特定の実施形態では、攪拌スピンドルは、軸方向の流れ及び半径方向の流れを発生させる。
【0080】
撹拌スピンドルは、主に接線方向の流れを発生させないことが好ましい。
【0081】
撹拌スピンドルは、種々の形状及び名称を有していてもよく、それは、限定的ではないが、インペラ型、ブレード撹拌器、アンカー、タービン(例えば、ラシュトンタービン)、ブレードロータ又はプロペラであってもよい。好ましくは、スピンドルはブレード攪拌機又はプロペラ、又は遠心インペラタービンと呼ばれることがあるツイステッド(twisted)ブレードインペラである。
【0082】
撹拌スピンドルは、有利には、図1に代表されるように、上記の非限定的リストからの「A-2」タイプのピッチド(pitched)ブレードに基づくことができる。
【0083】
図1を参照すると、撹拌スピンドル10は4枚のブレード15を含む。ブレード15は直線状で、(xy)平面内に十字形に配置されている((90°に等しい(xy)平面内の2つの連続ブレード間の角度β)は、全て同じ方向に角度α(α=0°はブレード平面に対する垂直はz軸に対して垂直であることを意味し、α=90°はブレード平面に対する垂直はz軸と同一線上にあることを意味する)で傾斜している。L=2.rと定義される撹拌直径Lに対するブレード15の幅Wは、L=5Wとなるようなものである。
【0084】
特定の実施形態において、本発明で使用される撹拌スピンドルは、例えば、図1に提示される以下のようなスピンドルの特定のパラメータの変動によって直接得られるスピンドルである。
- 攪拌スピンドルのブレードの数nは、1≦n≦8、優先的には3≦n≦6であり、
角度βは(360/n)°に等しく、
- 角度αは、0°≦α≦80°、優先的には30℃≦α60°であり、
- ブレードの形:ブレードは直線状のブレードとは異なる形をとることがあり、特にブレードは湾曲していることがあり、
- 撹拌直径Lに対するブレードの幅Wは、1.5W≦L≦8W、優先的には2W≦L≦7Wであり、
- 撹拌スピンドルの撹拌直径Lに対する反応器の特徴的な内径Dは、0.2D≦L≦0.9D、好ましくは0.3D≦L≦0.8Dであり、ここでDは反応器の特徴的な内径であり、
- 段数、図2及び図3による撹拌スピンドルで図示されるように、同じタイプ又は異なるタイプのいくつかのブレードが異なる高さで同じ軸に取り付けられてもよく、好ましくは、段は、0.8L~1.2Lの中心間距離H(図2、側面図参照)によって分離されており、好ましくは、段は、角度オフセットθ(図3、平面図参照)を有し、1つの段と別の段との間のブレードの重なりを最小化し、例えば、2段を有する撹拌機では、各々が、2つの整列したブレードを有するスピンドルを有し、段は、好ましくは、約90°の好ましい角度オフセットを有し、4枚のブレードを有する2段を有する撹拌機では、段は、有利には、約45°の好ましい角度オフセットを有する。
【0085】
図2及び図3に提示された撹拌スピンドルを、本発明による方法の実施例2において使用した。撹拌スピンドルは2段で4枚のブレードタイプである。各段のブレードは十字形(β=90°)を形成し、撹拌直径L=5.5cmにわたって伸びる。ブレードは、反応器の上部から底部へのポンピングを促進するように、45°に等しい角度αだけ同じ方向に傾斜する。2段間の距離Hは4.5cmに等しい。ブレードの幅Wは2cmである。2段のブレード間の角度オフセットθは45°である。攪拌機のシャフトの直径は1cmである。
【0086】
方法の1つの非限定的な実施形態は、以下の工程、又は以下の工程の少なくともいくつかを含む。
【0087】
方法は溶媒で満たされた反応器を得るために、反応器を溶媒で満たす工程を含む。反応器中の溶媒レベルは、使用した反応器及び撹拌スピンドルの全容量の関数として適合される。
【0088】
溶媒を撹拌して所望の温度範囲に維持するように、反応器の撹拌スピンドルのスイッチを入れ、温度制御システムのスイッチも入れる。
【0089】
次に、混合工程を規定する溶媒にフルオロポリマーを添加する。
【0090】
混合工程は、1013hPaで厳密に150℃未満の沸点を有し、及び/又は20℃で厳密に5hPaを超える飽和蒸気圧を有する、前記フルオロポリマーの共溶媒の不在下で行われる。
【0091】
ポリマーを溶媒に多かれ少なかれ急速に1回で加えるか、あるいは数回に分けて加える。溶媒へのポリマーの最初の付加は、混合工程の開始を構成する。
【0092】
フルオロポリマーを溶媒に数回に分けて加える実施形態では、前のポーションが完全に分散された後に、各新しいポーションを加えることが有利であり得る。
【0093】
フルオロポリマーと溶媒との混合物の温度は、混合工程の期間を通して、40℃~100℃の範囲の温度に維持される。40℃の温度未満では、妥当な時間での分散を可能にするには分散動態が遅すぎると考えられる。混合物の温度は、45℃以上、優先的に50℃以上に維持することができる。
【0094】
100℃を超えると、フルオロポリマー及び/又は溶媒の熱分解が多くなりすぎると考えられる。混合物の温度は、90℃以下、優先的には80℃以下、より優先的には70℃以下、極めて好ましくは65℃以下の温度に維持され得る。
【0095】
好ましい実施形態において、混合物の温度は、混合工程の間50℃~65℃の範囲の温度に維持される。
【0096】
混合工程は、撹拌スピンドルのブレード先端速度が0.1m/秒以上で撹拌しながら実施される。ブレード先端速度が0.1m/秒未満では、妥当な時間で分散を可能にするには分散動態が遅すぎると考えられる。
【0097】
好ましい実施形態では、ブレード先端速度は0.25m/秒以上である。ブレード先端速度は、特に0.30m/秒以上、又は0.35m/秒以上、又は0.45m/秒以上、又は0.5m/秒以上、又は1m/秒以上であってもよい。一般に、ブレード先端速度は10m/秒を超えない。
【0098】
特定の実施形態において、混合物の温度は、混合工程中に撹拌スピンドルのブレード先端速度が0.25m/秒~10m/秒の範囲で撹拌しながら50℃~65℃の範囲の温度に維持される。
【0099】
混合工程は、全てのフルオロポリマーが溶媒に添加され、少なくとも肉眼的に均一な分散液を形成するように分散された後、(最も早く)終了し得る。混合工程の持続時間は30分~12時間である。好ましい実施形態では、混合工程の持続時間は1時間~5時間であることができる。
【0100】
その後、反応器の撹拌スピンドルを停止させ、温度制御システムも停止させることができる。
【0101】
本発明に従って溶液を形成するために添加剤を加えなければならない場合、添加剤は、溶媒中でのフルオロポリマーの分散前、分散中又は分散後に添加することができる。添加剤は、特に、表面張力改質剤、レオロジー改質剤、耐老化性改質剤、接着性改質剤、顔料又は染料、及び充填剤(ナノフィラーを含む)から選択され得る。
【0102】
<溶液>
ポリマーを溶媒に溶かすことで、「溶液」を得ることが可能になる。「溶液」という用語は、本明細書では、液体ビヒクル、例えばゲル中のポリマー粒子の懸濁液とは対照的に、及びコロイド分散物であるポリマーエマルション又はラテックスとは対照的に使用される。分子レベルでの混合のために、溶液は、懸濁液(不均一な外観で、懸濁液中に粒が見える)、エマルション(不均一、混濁、乳白色又は不透明な外観)、ラテックス又はコロイド分散物(乳白色、青色又は混濁、又は乳状の外観)とは異なり、均一で、完全に透明な外観のものである。
【0103】
この溶液は、周囲温度、特に15~35℃、特に25℃において均一で完全に透明な外観のものであるという利点がある。
【0104】
この溶液は、1013hPaで厳密に150℃未満の沸点、及び/又は20℃で厳密に5hPaを超える飽和蒸気圧を有する前記フルオロポリマーの共溶媒を含まない。これは、この溶液が微量であっても、そのような共溶媒を含まないことを意味する。
【0105】
この溶液は特に微量のアセトン、トリクロロエタン又はメトキシシクロペンタンを含まない。
【0106】
特定の実施形態において、透明でない「溶液」につながる添加剤(部分的に可溶性のポリマー、ナノフィラー)を添加することができる。これらは、厳密に言えば、わずかに混濁したナノ分散物又は微小分散物であっても、それにもかかわらず、上記の固形分試験によって検証できるように、それらの巨視的な均一性を保持しており、本明細書では「溶液」という用語が保持される。
【0107】
したがって、溶液は少なくとも1種のフルオロポリマー、1013hPaで150℃以上の沸点及び/又は20℃で5hPa以下の飽和蒸気圧を有する1種以上の溶媒、及び任意に1種以上の添加剤からなることができる。
【0108】
本発明による方法により、フルオロポリマー中で比較的濃縮された均一な溶液を、妥当な時間(特に12時間以下)で得ることが可能になる。特定の実施形態では、溶液は、溶液の総重量に対して1重量%~40重量%のフルオロポリマーを含むことができる。好ましくは、溶液は、溶液の総重量に対して5重量%~30重量%のフルオロポリマーを含むことができる。より好ましくは、溶液は、溶液の総重量に対して10重量%~25重量%のフルオロポリマーを含むことができる。
【0109】
溶液は、特に、溶液の総重量に対してフルオロポリマーの11重量%超、又は12重量%超、又は13重量%超、又は14重量%超、又は15重量%超のフルオロポリマー、及び/又は
溶液の総重量に対して24重量%未満、又は23重量%未満、又は22重量%未満、又は21重量%未満、又は20重量%未満のフルオロポリマーを含むことができる。
【0110】
製造された溶液が添加剤を含む実施形態において、後者は一般に溶液の総重量の15重量%未満、より好ましくは10重量%未満に相当する。
【0111】
特定の実施形態によると、溶液は、周囲温度(25℃)で、ブルックフィールドRVDV-II+P粘度計を用いて測定される2000mPa.s~40000mPa.s、優先的には8000mPa.s~30000mPa.s、より好ましくは12000mPa.s~28000mPa.s、極めて好ましくは15000mPa.s~25000mPa.sの粘度を有する。
【0112】
特別な実施形態によると、溶液は18000mPa.s~24000mPa.sの粘度を有することができる。
【0113】
<塗布>
フルオロポリマーの薄膜は、次いで、比較的高い粘度の本発明による溶液(インク)を堆積させ、次いで乾燥(溶媒を蒸発)させることによって得ることができる。
【0114】
スクリーン印刷は、印刷するパターンを有するスクリーン印刷用スクリーン又はメッシュ上のインクを適切な支持体に広げることからなる。スクリーンを支持体上に置き、スクイージーを用いてインクを広げ、次にスクリーンを持ち上げ、スクリーンを通過したインクの液層を有する支持体を乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、乾燥の間、スクリーンによって規定されたパターンを有する(「乾燥」)固体薄膜が支持体上に印字されて残る。ポリマーフィルムは、このようにして、最終的にその固体形態で、例えば、活性誘電体層(例えば、機械的信号を放出する又は受け取る層)、又は受動誘電体層(例えば、高誘電率を誘電体層)として、光電子装置の不可欠な部品を構成するために、担体、基材(例えば、プラスチック、金属、ガラス、木材、紙など)、光電子装置(太陽光電池、トランジスタ、電極、センサ、アクチュエータの一部又は全てなど)上に堆積させることができる。
【実施例
【0115】
[実施例1:溶媒として選択される可能性のある液体]
この実施例は、出願WO19170999で開発された実施例を繰り返し、任意の液体中のフルオロポリマーの溶解度が、既知のトレーニングデータセットからどのように推定できるかを示す。
【0116】
以下の表2からトレーニングデータセットを確立した。
【0117】
【表2】
【0118】
この表では、ハンセン溶解度パラメータをMPa1/2で与えられる。表記(2)又は(5)は、これらのハンセン溶解度パラメータが、Allan F.M. Barton、第2版(1991)によるCRC Handbook of Solubility Parameters and Other Cohesion Parametersの第7章の表2又は第8章の表5に由来することを示している。
【0119】
80%のVDF単位及び20%(モル比で)のTrFE単位を含むP(VDF-TrFE)ポリマーを用いて溶解性(有り/無し)に関する情報を実験的に得た。
【0120】
企業SAS社のJMP13.0.0ソフトウェアを用いて、図1に示すようなニューラルネットワークを提供した。モデルのトレーニングには表の20個の行を、検証には6個の行を用いた。得られた成功率は100%である。
【0121】
「KFold」検証法を用いた。この方法はソフトウェアマニュアルで説明されているように、データをK個のサブグループに分ける。連続して、Kサブグループのそれぞれを用いて適合又は作成されたモデルを検証し、残りのデータはサブグループKに含めないことにより、Kの異なるモデルを得ることが可能になる。最良の統計的検証(最小誤差)を有するモデルを最終モデルとして選択する。
【0122】
このモデリングから、以下の予測モデルを得た。
【0123】
隠れた層の3つのニューロンの関数:
- H1=tanh(0.5×(0.288078×δd+0.029058×δp+0.092642×δh-4.79788))、
- H2=tanh(0.5×(0.131723×δd-0.16692×δp-0.03299×δh-0.05098))、
- H3=tanh(0.5×(0.399484×δd-0.11103×δp-0.05299×δh-4.13038))。
【0124】
前述のように、ハンセン溶解度パラメータはMPa1/2で表される。
【0125】
出力ニューロンの関数:S=exp(201.3275×H1+192.4403×H2-156.203×H3-82.4311)。
【0126】
不溶性の確率はS/(1+S)であり、溶解性の確率は(1-不溶性の確率)である。
【0127】
このようにして得られたモデルは、先行するトレーニング表に存在しないいかなる新規溶媒にも適用することができる。したがって、たとえば、以下の表3は、モデルに対して未知の3種類の新溶媒について、次のような応答を与えている。
【0128】
【表3】
【0129】
実験から、80%のVDF単位及び20%のTrFE単位を含むP(VDF-TrFE)ポリマーはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及び3-メチルシクロヘキサノンに可溶であるが、1-オクタノールには可溶でないことが確認される。
【0130】
[実施例2:P(VDF-TrFE)のトリエチルホスフェート溶液の製造に関する本発明による方法-4枚のブレードタイプの撹拌スピンドル]
使用した組立体は、10センチメートルに等しい内径Dを有する垂直反応器を含み、これはジャケット付きで、ガラスでできており、最大容量が2リットルで、モーターに連結された撹拌スピンドルが通る中心部にカバーを備えている。
【0131】
ジャケットは、サーモスタット制御された浴から出る熱伝達流体を用いて加熱/冷却するための回路に接続される。
【0132】
カバーは以下を可能にするストッパーを備えている。
- (溶媒及びポリマーを導入するための)材料の流入、
- 蒸気凝縮/還流システムへの接続、
- 窒素のような不活性ガスのバブリングのための穿孔された中空管、及び/又は熱電対プローブを導入するための穿孔されていない中空管の通過。
【0133】
この反応器はポリマー溶液を排出するための底部弁を有する。
【0134】
攪拌スピンドルは、上述のように図2及び図3に示されているものである。そのL/D比は0.55に等しい。攪拌機は、中心に位置し、下部から5cmの典型的な距離での操作のために反応器の底部近くに配置される。
【0135】
トリエチルホスフェート(1440g)を周囲温度(25℃)で反応器に導入した。サーモスタットで制御された浴の設定点を50℃とし、200rpm(ブレード先端速度0.52m/秒)の速度で撹拌を開始し、蒸気凝縮/還流システムを開始した。
【0136】
Arkema社が販売しているPiezotech FC-20(R)(360g)ポリマーを、1回で反応器に粉末の形態で導入した。Piezotech FC-20(R)はVDFモノマー及びTrFEモノマーに由来するポリマーであり、20%程度の、VDF及びTrFEの合計に対するTrFEのモル比率を有する。ポリマーのMFIは、規格ASTM D1238に従い、230℃で、10kg負荷下で3.5g/10分と測定された。
【0137】
全てのポリマーを導入した後に、撹拌速度を400rpm(ブレード先端速度1.05m/秒)に上げた。
【0138】
全てのポリマーを導入した半時間後に、サーモスタットで制御された浴の設定点温度を60℃に上昇させた。
【0139】
粉末導入終了から3時間後、連続的撹拌(staring)下で、ポリマーが完全に溶解し、粘度の高い溶液(媒体中に気泡を作り出す)を形成しているのを肉眼で観察した。
【0140】
このポリマー溶液を、反応器から底部弁を通って抜き出すことにより、熱いまま回収した。
【0141】
こうして得られたインクは、気泡の発生後、7番のスピンドルを備えたブルックフィールドRVDV-II+P粘度計を用いて周囲温度(25℃)で測定された粘度18000~30000mPa.s、正確に21000mPa.sで測定された透明な液体である。
【0142】
インクの固形分は、上記文章に示すように、換気されたオーブン中で重量測定によって測定し、18重量%という理論値に近い値を与える。
【0143】
[例3:P(VDF-TrFE)のトリエチルホスフェート溶液を製造するための比較例-撹拌スピンドル:マグネチックスターリングバー
使用した組立体は、マグネチックスターリングバーを備え、加熱浴用スターラーに入れた実験室用丸底フラスコを備える。丸底フラスコを蒸気凝縮/還流システムに連結する。
【0144】
トリエチルホスフェート(610g)を、周囲温度(25℃)で丸底フラスコに導入した。次に加熱浴の温度を80℃に設定し、毎分300~500回転の公称速度で撹拌を開始した。
【0145】
Piezotech FC-20(R)ポリマー粉末(90g)を、撹拌を維持した80℃の温度の丸底フラスコに添加した。
【0146】
ポリマーの完全溶解に要する時間は17時間であった。
図1
図2
図3
【国際調査報告】