(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】タンパク質抗原を発現するように操作される生チフス菌ベクターおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20230412BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230412BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230412BHJP
A61K 39/108 20060101ALI20230412BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20230412BHJP
A61K 39/07 20060101ALI20230412BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230412BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20230412BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C12N15/31 ZNA
A61P37/04
A61P31/04
A61K39/108
A61K35/74
A61K39/07
C12N1/21
C12N1/20 E
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552868
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 US2021021206
(87)【国際公開番号】W WO2021178891
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514244893
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー オブ メリーランド バルチモア
(71)【出願人】
【識別番号】500276482
【氏名又は名称】ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ワンシュエ
(72)【発明者】
【氏名】ファム,タイン
(72)【発明者】
【氏名】ガレン,ジェームス,イー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA04Y
4B065AA29Y
4B065AA46X
4B065AA46Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
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4C085BA15
4C085BA21
4C085BA38
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4C085BB23
4C085CC07
4C085CC21
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
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4C087AA01
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4C087BC35
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4C087MA57
4C087MA59
4C087MA66
4C087NA10
4C087NA14
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、必要とする対象において免疫応答を誘導する組成物および方法であって、免疫学的有効量の生チフス菌ベクターを対象に投与することを含む方法を提供し、それにおいてチフス菌ベクターは、1つ以上の抗原、外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、および脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体を発現するように操作され、チフス菌ベクターは、対象に投与されたときに、外膜小胞を介して粘膜組織に抗原を送達することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.病原体からの1つ以上の抗原、
b.外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、および
c.脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体
を発現するように操作された生チフス菌ベクターであって、
前記チフス菌ベクターが、対象に投与されたときに、外膜小胞を介して粘膜組織に前記抗原を送達することができる、生チフス菌ベクター。
【請求項2】
前記病原体が、アシネトバクター・バウマンニおよび肺炎桿菌から選択される、請求項1に記載のチフス菌ベクター。
【請求項3】
前記抗原が外膜タンパク質である、請求項1~2のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項4】
前記抗原が、OmpWおよびOmpAから選択される外膜タンパク質である、請求項1~3のいずれか一項に記載のチフス菌ベクター。
【請求項5】
OmpWおよびOmpAの両方を発現するように操作されている、請求項1に記載のチフス菌ベクター。
【請求項6】
前記抗原が、チフス菌に染色体で組み込まれた核酸によってコードされる、請求項1~5のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項7】
前記抗原がプラスミドから発現される、請求項1~6のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項8】
guaBAおよびhtrAに欠失を含む、請求項1~7のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項9】
前記抗原が、guaBA、rpoS、htrA、ssbおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるチフス菌遺伝子座に挿入される、請求項1~8のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項10】
前記抗原が、チフス菌の前記rpoS遺伝子座に挿入されている、請求項1~9のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項11】
前記抗原がOmpWであり、OmpWが前記guaBA遺伝子座に染色体で組み込まれている、請求項1~10のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項12】
前記抗原がOmpAであり、OmpAが前記rpoS遺伝子座に染色体で組み込まれている、請求項1~11のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項13】
前記OmpAが1つまたは複数の変異を含む、請求項4~12のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項14】
前記変異が、D271AおよびR286Aから選択される1つまたは複数の置換変異を含む、請求項13に記載のチフス菌ベクター。
【請求項15】
OmpAがD271AとR286Aの変異の両方を含む、請求項13に記載のチフス菌ベクター。
【請求項16】
前記チフス菌が細胞溶解素A(ClyA)タンパク質を過剰発現して外膜小胞形成を促進する、請求項1~15のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項17】
前記ClyAが、ClyAの溶血活性を低下させるように変異されている、請求項16に記載のチフス菌ベクター。
【請求項18】
前記ClyA変異体が、ClyA I198N、ClyA A199D、ClyA E204K、ClyA C285Wおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載のチフス菌ベクター。
【請求項19】
前記ClyAが融合タンパク質である、請求項16~18のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項20】
前記ClyAが、I198N、A199D、およびE204Kの置換の変異を含む、請求項19に記載のチフス菌ベクター。
【請求項21】
前記BamAがアシネトバクター・バウマンニ由来である、請求項1~20のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項22】
前記BamAアミノ酸配列が配列番号18を含む、請求項1~21のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項23】
BamAタンパク質をコードする前記bamA遺伝子が、チフス菌のゲノムに組み込まれている、請求項22に記載のチフス菌ベクター。
【請求項24】
bamAが、チフス菌の前記guaBA遺伝子座に組み込まれている、請求項23に記載のチフス菌ベクター。
【請求項25】
bamAが誘導性プロモーターによって発現される、請求項21~24のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項26】
前記誘導性プロモーターが浸透圧で制御されている、請求項25に記載のチフス菌ベクター。
【請求項27】
前記浸透圧で制御された誘導性プロモーターが、外膜タンパク質C(ompC)遺伝子のプロモーターである、請求項26に記載のチフス菌ベクター。
【請求項28】
外膜タンパク質C(ompC)遺伝子の前記プロモーターが配列番号19を含む、請求項27に記載のチフス菌ベクター。
【請求項29】
PagLをコードする前記pagL遺伝子が、チフス菌の前記ゲノムに組み込まれている、請求項1~28のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項30】
pagLがプラスミドから発現される、請求項1~28のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項31】
PagLを発現する前記プラスミドが低コピー数発現プラスミドである、請求項30に記載のチフス菌ベクター。
【請求項32】
pagLの発現が誘導性プロモーターによって制御される、請求項1~31のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項33】
前記プラスミドが非抗生物質ベースのプラスミド選択系を有する、請求項30~32に記載のチフス菌ベクター。
【請求項34】
前記プラスミドが、チフス菌の増殖に必須であり、チフス菌において染色体変異している遺伝子を発現する、請求項33に記載のチフス菌ベクター。
【請求項35】
前記遺伝子が一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードする、請求項34に記載のチフス菌ベクター。
【請求項36】
前記誘導性プロモーターが浸透圧で制御されている、請求項32のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項37】
前記浸透圧で制御された誘導性プロモーターが、外膜タンパク質C(ompC)遺伝子のプロモーターである、請求項36に記載のチフス菌ベクター。
【請求項38】
前記プラスミドが前記抗原をさらにコードし発現する、請求項30~37のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項39】
前記PagLアミノ酸配列が、配列番号2および配列番号4から選択される、請求項1~38のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項40】
ClyAがチフス菌のプラスミドで発現される、請求項16~39のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項41】
前記プラスミドが非抗生物質ベースのプラスミド選択系を有する、請求項40に記載のチフス菌ベクター。
【請求項42】
前記プラスミドが、チフス菌の増殖に必須であり、チフス菌において染色体変異している遺伝子を発現する、請求項41に記載のチフス菌ベクター。
【請求項43】
前記遺伝子が一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードする、請求項42に記載のチフス菌ベクター。
【請求項44】
前記チフス菌ベクターが、fliC遺伝子に欠失を有する、請求項1~43のいずれかに記載のチフス菌ベクター。
【請求項45】
請求項1~44のいずれかに記載の前記チフス菌由来の前記抗原を含む単離された組換え外膜小胞を含む組成物。
【請求項46】
必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、免疫学的有効量の請求項1~44のいずれかに記載の生チフス菌ベクターを前記対象に投与することを含み、前記抗原が、前記チフス菌ベクターによって産生される外膜小胞によって前記対象の粘膜組織に送達される、方法。
【請求項47】
前記対象に、最初にプライムとして請求項1~44のいずれかに記載の前記生チフス菌ベクターを投与し、続いてブーストとして免疫学的有効量の請求項1~67のいずれかに記載の前記生チフス菌ベクターを投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記対象に、最初にプライムとして請求項1~44のいずれかに記載の前記生チフス菌ベクターを投与し、続いてブーストとして免疫学的有効量の請求項68に記載の単離された組換え外膜小胞を投与する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記チフス菌ベクターを経口投与し、前記単離された組換え外膜小胞を経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、皮下投与、または筋肉内投与によって投与する、請求項46~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、免疫学的有効量の請求項45に記載の単離された組換え外膜小胞を前記対象に投与することを含み、前記組換え外膜小胞が前記対象の粘膜組織に送達される、方法。
【請求項51】
前記対象に、最初にプライムとして前記単離された組換え外膜小胞を投与し、続いてブーストとして免疫学的有効量の前記外膜小胞を投与する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記対象に、最初にプライムとして前記単離された組換え外膜小胞を投与し、続いてブーストとして免疫学的有効量の請求項1~67のいずれかに記載の前記チフス菌ベクターを投与する、請求項50または51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記チフス菌ベクターを経口投与し、前記単離された組換え外膜小胞を経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、皮下投与、筋肉内投与、またはこれらの経路の組み合わせによって投与する、請求項50~52のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、
i.免疫学的有効量の生チフス菌ベクターであって、
a.病原体からの1つ以上の抗原、および
b.脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体、
を発現するように操作された生チフス菌ベクター、および
iii.請求項45に記載の免疫学的有効量の単離された組換え外膜小胞
を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項55】
前記病原体が、アシネトバクター・バウマンニおよび肺炎桿菌から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記抗原が外膜タンパク質である、請求項54~55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記抗原が、OmpWおよびOmpAから選択される外膜タンパク質である、請求項54~56のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記チフス菌ベクターが、OmpWおよびOmpAの両方を発現するように操作されている、請求項54に記載の方法。
【請求項59】
前記抗原が、チフス菌に染色体で組み込まれた核酸によってコードされる、請求項54~58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記チフス菌が、前記抗原に相同であり、欠失または不活性化されている遺伝子を含む、請求項54~59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記抗原がプラスミドから発現される、請求項54~58のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
前記チフス菌ベクターが、guaBAおよびhtrAにおける欠失を含む、請求項54~61のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記抗原が、guaBA、rpoS、htrA、ssb、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるチフス菌遺伝子座に挿入される、請求項54~60または62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記抗原が、チフス菌の前記rpoS遺伝子座に挿入されている、請求項54~60または62のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記抗原がOmpWであり、OmpWが前記guaBA遺伝子座に染色体で組み込まれている、請求項54~60または62のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
前記抗原がOmpAであり、OmpAが前記rpoS遺伝子座に染色体で組み込まれている、請求項54~60または62のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
前記OmpAが1つまたは複数の変異を含む、請求項57~66のいずれかに記載の方法。
【請求項68】
前記変異が、D271AおよびR286Aから選択される1つまたは複数の置換変異を含む、請求項67のいずれかに記載の方法。
【請求項69】
OmpAがD271AとR286Aの変異の両方を含む、請求項68のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記チフス菌が細胞溶解素A(ClyA)タンパク質を過剰発現させて外膜小胞形成を促進する、請求項54~69のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記ClyAが、ClyAの溶血活性を低下させるように変異されている、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記ClyA変異体が、ClyA I198N、ClyA A199D、ClyA E204K、ClyA C285Wおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記ClyAが融合タンパク質である、請求項70~72のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記ClyAが、I198N、A199D、およびE204Kの置換の変異を含む、請求項70~73のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
前記PagLが、チフス菌のゲノムに組み込まれている、請求項54~74のいずれかに記載の方法。
【請求項76】
前記PagLがプラスミドから発現される、請求項54~74のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
PagLを発現する前記プラスミドが、低コピー数発現プラスミドである、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記PagLが誘導性プロモーターによって発現される、請求項54~77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記プラスミドが非抗生物質ベースのプラスミド選択系を有する、請求項76~78のいずれかに記載の方法。
【請求項80】
前記プラスミドが、チフス菌の増殖に必須であり、チフス菌において染色体変異している遺伝子を発現する、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記遺伝子が一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードする、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記誘導性プロモーターが浸透圧で制御されている、請求項78のいずれかに記載の方法。
【請求項83】
前記浸透圧で制御された誘導性プロモーターが、外膜タンパク質C(ompC)遺伝子のプロモーターである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記プラスミドが前記抗原をさらにコードし発現する、請求項76~83のいずれかに記載の方法。
【請求項85】
前記PagLアミノ酸配列が、配列番号2および配列番号4から選択される、請求項54~84のいずれかに記載の方法。
【請求項86】
ClyAがチフス菌のプラスミドで発現される、請求項70~85のいずれかに記載の方法。
【請求項87】
前記プラスミドが非抗生物質ベースのプラスミド選択系を有する、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記プラスミドが、チフス菌の増殖に必須であり、チフス菌において染色体変異している遺伝子を発現する、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記遺伝子が一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードする、請求項88に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された材料の参照による組み込み
参照によりその全体が本明細書に組み込まれるのは、本明細書と同時に提出され、以下の、2021年3月3日に作成された「Sequence_Listing_ST25.txt」という名称の52,013バイトの1つのASCII(テキスト)ファイルと特定されるコンピュータ可読配列表である。
【0002】
本発明の分野は、概して、医学、分子生物学の分野、特にワクチンの技術に関する。
【背景技術】
【0003】
アシネトバクター・バウマンニおよびクレブシエラ・ニューモニエは、菌血症および肺炎を含む急性および慢性集中治療環境における院内感染に頻繁に関連するグラム陰性非胞子形成細菌である(McConnell et al.,FEMS Microbiol Rev 2013;37(2):130-55;Lin et al.,World journal of clinical cases 2014;2(12):787-814;Howard et al.,Virulence 2012;3(3):243-50;Tumbarello et al.,J Antimicrob Chemother 2015;70(7):2133-43;Rodrigo-Troyano et al.,Respirology 2017;Poolman et al.,J Infect Dis 2016;213(1):6-13)。公衆衛生に対する大きな懸念は、臨床分離株が現在利用可能な大半のクラスの抗生物質に耐性になる多剤耐性(MDR)の頻度の着実な増加であり、患者の治療を著しく損ない、感染に関連する罹患率および死亡率を劇的に増加させる。疾病管理予防センターは、カルバペネム耐性肺炎桿菌を公衆衛生に対する緊急の脅威として分類し、多剤耐性アシネトバクターを公衆衛生に対する深刻な脅威としてさらに分類している13。さらに、世界保健機関は、抗菌剤耐性の増大する脅威に対抗するために開発中の新しい抗生物質の不足について深刻な懸念を提起する報告書を現在発行している(World Health Organization,World Health Organization;2017.(WHO/EMP/IAU/2017.11).License:CC BY-NC-SA 3.0 IGO)。有効な抗生物質での治療法が急速に減少しているという事実があるにもかかわらず、これらの病原体のいずれに対する認可ワクチンも現在利用可能ではない。
【0004】
A.バウマンニにおける抗生物質耐性は、複数の耐性遺伝子をコードするインテグロンカセットの獲得、ならびに抗生物質のタンパク質標的の合成が自発的に欠失される機能喪失欠失変異を含む様々な遺伝的機構によって生じることが示されている(Lin et al.,World journal of clinical cases 2014;2(12):787-814;Chan et al.,Genome Biol 2015;16:143;Garcia-Quintanilla et al.,Antimicrob Agents Chemother 2014;58(5):2972-5;Moffatt et al.,Antimicrob Agents Chemother 2010;54(12):4971-7)。A.バウマンニの染色体が、持続性および持続的な増殖を促進するために遺伝子の機能を獲得および喪失することができる顕著な容易さは、ゲノム可塑性と呼ばれている。そのような遺伝的ドリフトは、潜在的に生命を脅かす感染症の治療だけでなく、理想的には疾患に対する防御効果を達成するために多種多様な臨床分離株の間で高度に保存されなければならない、抗原標的に対する体液性免疫を標的とするワクチンの開発にとっても重大な課題をもたらす。
【0005】
機能喪失変異、流出系の上方制御、およびインテグロン、トランスポゾン、および耐性プラスミドを介した抗生物質耐性モジュールの獲得も、肺炎桿菌感染症の治療に対する重大な交絡因子として報告されており、これは、菌血症、肺炎、および尿路感染症に関連する罹患率および死亡率を減少させるために利用可能な治療選択肢を大幅に減少させた(Gomez-Simmonds et al.,J Infect Dis 2017;215(suppl_1):S18-s27;Logan et al.,J Infect Dis 2017;215(suppl_1):S28-s36)。多座配列タイピングにより、ST258は、特に院内環境で全体的に播種された肺炎桿菌の高ビムレント・カルバペネマーゼ産生クローンとして同定された(Chen et al.,Trends Microbiol 2014;22(12):686-96)。ST258感染症の最適な治療戦略は、依然として、しっかりと確立させるべきものであり、いくつかの抗生物質との併用療法は有望性を示しているが、コリスチン(ポリミキシンE)を含む併用は、腎毒性含む重篤な副作用のリスクを冒し、この最後の手段である抗生物質に対する耐性が増加している(Pitout et al.,Antimicrob Agents Chemother 2015;59(10):5873-84;Qamar et al.,Infection and drug resistance 2017;10:231-6;Newton-Foot et al.,Antimicrobial resistance and infection control 2017;6:78;Mansour et al.,Journal of global antimicrobial resistance 2017;10:88-94;Granata et al.,Infect Dis Rep 2017;9(2):7104)。
【0006】
A.バウマンニおよび肺炎桿菌の臨床分離株に対して抗生物質耐性を迅速に付与するゲノム可塑性は、新しいクラスの抗生物質の発見が、潜在的に致死の感染症に対する一貫して効果的な治療的介入のためにかなり必要とされている長期的解決策が得られない可能性があることを強く示唆している。したがって、これらの病原体に対する有効な多価ワクチンの開発は、失敗率が着実に増加する高額の治療に代わる非常に魅力的な予防的代替法を提示する。防御の特異的な相関関係はまだ定義されていないが、外膜表面抗原に対する免疫の誘発が、A.バウマンニおよび肺炎桿菌の臨床分離株による負荷に対する意義のある防御を付与することを実験動物モデルが実証した。
【0007】
外膜抗原の防御効力は、A.バウマンニからの実験データによって明確に裏付けられる。精製された外膜小胞(OMV)を無細胞ワクチンとして使用したとき、病原体特異的な抗体応答が、非経口免疫化マウスにおいて観察され、完全毒性MDR臨床株による敗血症の負荷に対して完全な防御が達成された(McConnell et al.,Vaccine 2011;29(34):5705-10;Huang et al.,PLoS One 2014;9(6):e100727.。後に、脂質Aの合成が不活性化された(LPS欠損株をもたらす)A.バウマンニ由来の遺伝子操作されたOMVを使用したとき、敗血症の負荷に対する完全な防御が再び達成され、疾患に対する防御における外膜抗原の役割をさらに裏付けることが示された(Garcia-Quintanilla et al.,PLoS One 2014;9(12):e114410)。外膜複合体(OMC)と呼ばれる細菌外膜から抽出されたタンパク質のみから構成される無細胞ワクチンを使用して、マウスに筋肉内ワクチン接種したとき、MDR負荷株に対する完全な防御が再び達成され、特定の外膜タンパク質から構成される完全に特徴付けられたサブユニットワクチンの開発への道が開かれた(McConnell et al.,Infect Immun 2011;79(1):518-26)。
【0008】
A.バウマンニと同様に、肺炎桿菌による感染に対する外膜抗原の防御効果はまた、精製された外膜小胞を免疫原として使用して実証されている。致死的な負荷からの防御は、K1カプセル化株を使用した細菌性敗血症負荷モデルにおいて肺炎桿菌由来の精製OMVで腹腔内免疫化したマウスにおいて達成された(Lee et al.,Exp Mol Med 2015;47:e183)。さらに、養子移入実験において、血清および脾細胞を使用した防御も実証され、抗体媒介性体液性およびT細胞媒介性の細胞防御機構両方が示された(Lee et al.,Exp Mol Med 2015;47:el83)。莢膜多糖血清型にかかわらず、肺炎桿菌に対するTh17細胞の活性化によって抗体非依存的な防御が達成され得ることも報告されている。肺炎桿菌血清型K2莢膜型由来の精製されたOMPで鼻腔内免疫化し、肺炎桿菌K1株で気管内負荷したB細胞欠損マウスにおいて、防御が明確に実証された(Chen et al.,Immunity 2011;35(6):997-1009)。肺炎桿菌32において78を超える異なる莢膜タイプが同定されていることを考えると、莢膜非依存性の防御は、MDR肺炎桿菌による感染に対するワクチンの有効性を大幅に改善し得る(Pan et al.,PEoS One 2013;8(12):e80670)。
【0009】
A.バウマンニおよび肺炎桿菌の外膜タンパク質を標的とする防御サブユニットワクチンによる有望な結果は、最近、単量体8本鎖βバレル外膜タンパク質に焦点を当てた努力から生じている(McClean et al.,Protein and peptide letters 2012;19(10):1013-25)。これらのタンパク質は、一般に、生物学的機能に影響を及ぼす少なくとも4つの表面露出ループが点在する8から10の疎水性膜貫通型ドメイン(bバレル)から構成される(McClean et al.,Protein and peptide letters 2012;19(10):1013-25;Krishnan et al.,The FEBS journal 2012;279(6):919-31)。
【0010】
今日まで、2つのβバレルタンパク質のみが高度免疫原性のサブユニットワクチンであり、MDRのA.バウマンニ臨床分離株、AbOmpAおよびAbOmpWで、致死的に負荷されたマウスにおいて優れた防御免疫を付与することができることが報告されている(Luo et al.,PLoS One 2012;7(1):e29446;Badmasti et al.,Mol Immunol 2015;Huang et al.,Vaccine 2015;33(36):4479-85)。AbOmpAは、MDR臨床分離株の中でアミノ酸レベルで高度に保存されている38kDaの脂質付加されていないβバレルタンパク質であり、本発明者らの知る限りでは、ゲノムの可塑性にもかかわらず、ompA遺伝子を含まない臨床分離株はまだ同定されていない。さらに、AbOmpAは、A.バウマンニの表面に存在する最も高度に発現されるタンパク質である(Marti et al.,Proteomics 2006;6 Suppl 1:S82-7;Nwugo et al.,J Proteomics 2011;74(1):44-58)。AbOmpAは、付着因子として機能するようである(Schweppe et al.,Chem Biol 2015;22(11):1521-30;Sato et al.,J Med Microbiol 2017;66(2):203-12)。A.バウマンニ臨床分離株の定量的逆転写PCR(qRT-PCR)は、OmpAの過剰発現が肺炎、菌血症、および死亡に関連する重要なリスク因子であることを実証したSanchez-Encinales et al.,J Infect Dis 2017;215(6):966-74)。アジュバント化AbOmpAからなるサブユニットワクチンは、皮下免疫化マウスにおいてAbOmpA特異的血清IgG抗体応答を誘発し、これはA.バウマンニからの精製外膜中のナイーブの然AbOmpAを認識し、負荷に対する部分的防御を付与した(Luo et al.,PLoS One 2012;7(1):e29446.Badmasti et al.,Mol Immunol 2015)。A.バウマンニ臨床分離株の間で高度に保存されており、MDR分離株による敗血症の負荷に対する防御を与えることができると報告されている唯一の他の脂質付加されていないOMPは、20kDaの外膜タンパク質W(AbOmpW)である。精製およびリフォールディングされたAbOmpWのみで構成されるサブユニットワクチンは、2週間間隔で3回のアジュバント添加投与で皮下免疫化したマウスにおいてAbOmpW特異的血清IgG応答を誘発し、敗血症負荷モデルを用いてMDR A.バウマンニ臨床分離株で負荷した能動的および受動的免疫マウスの両方で優れた防御が観察された(Huang et al.,Vaccine 2015;33(36):4479-85)。
【0011】
肺炎桿菌OmpA(KpOmpA)は、抗菌ペプチドに対する耐性を付与することが報告されており、不活性化は、マウス肺炎と尿路感染モデルの両方で病原性を低下させる(Llobet et al.,Antimicrob Agents Chemother 2009;53(1):298-302;March et al.,J Biol Chem 2011;286(12):9956-67;Struve et al.,Microbiology 2003;149(Pt 1):167-76)。ワクチン免疫原としてのKpOmpAの標的化を支持するデータは、KpOmpAおよびKpOmpWが急性肺炎桿菌感染症の患者からの血清を使用して最も頻繁かつ一貫して認識されたタンパク質の1つとして同定された免疫プロテオミクス分析から得られ、これらの2つのタンパク質がヒトへの感染の間に発現され、免疫学的に検出され、したがって優れたワクチン抗原であり得、これらのタンパク質は、健康な個体からの血清を使用した場合には同定されなかったことを示している(Kurupati et al.,Proteomics 2006;6(3):836-44)。おそらくより顕著に、KpOmpAは、Toll様受容体2を介してサイトカインを産生するように樹状細胞を活性化し、自然免疫を増強することができる病原体関連分子パターン(PAMP)として機能することが報告されている(Jeannin et al.,Nat Immunol 2000;1(6):502-9;Jeannin et al.,Vaccine 2002;20 Suppl 4:A23-7;Jeannin et al.,Eur J Immunol 2003;33(2):326-33;Jeannin et al.,Immunity 2005;22(5):551-60;Pichavant et al.,J Immunol 2006;177(9):5912-9)。KpOmpAの防御効果は、KpOmpAをコードするDNAワクチンを非経口ワクチン接種し、続いて致死量の肺炎桿菌を腹腔内に負荷したマウスにおいて実証されており、DNAワクチンで筋肉内免疫化したマウスでは約60%の防御が観察されたが、皮内ワクチン接種したマウスでは約75%の防御が観察された(Kurupati et al.,Clin Vaccine Immunol 2011;18(1):82-8)。しかしながら、アシネトバクター・バウマンニに対するワクチンとは対照的に、KpOmpWを標的とするサブユニットワクチンは、肺炎桿菌を用いた実験的負荷モデルにおいて防御効果について試験すべきままである。サルモネラは、免疫系に外来抗原を送達する粘膜生キャリアワクチンとして使用するために最も研究されている生物の1つである。異種抗原を発現する多数の弱毒化株が作製され、動物モデルおよびヒトでの試験に成功している。何年にもわたり、血清型チフス菌由来のサルモネラのいくつかの弱毒化ワクチン株が開発されてきた(Tacket et al.,Infect Immun 1997;65(2):452-6;Wang et al.,Infect Immun 2000;68(8):4647-52;Wang et al.,Infect Immun 2001;69(8):4734-41)。臨床試験で最も進歩した本発明者らの弱毒化株はCVD908-htrAであり、これは菌血症の非存在下で5×109CFUまでの用量で臨床試験で十分に忍容性であることが分かった(Tacket et al.,Infect Immun 1997;65(2):452-6)。さらに、CVD908-htrAは、腸管分泌型IgA抗体、血清IgG抗体およびT細胞媒介性免疫を含む、チフス菌抗原に対する広範囲の免疫応答を誘発した(Tacket et al.,Infect Immun 1997;65(2):452-6;Tacket et al.,Infect Immun 2000;68:1196-201)。ヒト免疫系に外来抗原を首尾よく送達するCVD908-htrAの能力は、ボランティアを、緑膿菌由来の2つのプラスミドにコードされた外膜タンパク質抗原を提示する弱毒化CVD908-htrA生キャリアワクチン単回用量で経口にてプライミングし、次いで、全ボランティアを、4週間後に単回用量のアラムアジュバント化抗原で筋肉内ブーストした最近の臨床試験で、明確に実証された(Bumann et al.,Vaccine 2010;28(3):707-13)。これらのワクチンは、3つの筋肉内用量のアジュバント添加サブユニットワクチン単独で免疫化した試験の対象に匹敵する緑膿菌特異的血清IgG応答を開始した。しかしながら、経口プライミングされたボランティアは、全身免疫化された対象では観察されなかった緑膿菌特異的粘膜肺IgA応答も開始した。興味深いことに、より弱毒化された認可ワクチンTy21aに由来する生キャリアワクチンでワクチン接種されたボランティアのさらなるコホートでは、全身ブースター用量に加えて3回の経口プライミング用量が、CVD908-htrA+サブユニットブーストの単回プライミング用量のみ投与されたボランティアの免疫応答に匹敵する免疫応答を誘発するために必要であった。
【0012】
何年にもわたって、本発明者らは、弱毒化チフス菌キャリアワクチンにおける外来抗原の免疫原性レベルの発現のための効率的なプラスミドのシステムおよび染色体のシステムを開発してきた(Galen et al.,Infect Immun 2004;72(12):7096-106;Galen et al.,J Infect Dis 2009;199(3):326-35;Galen et al.,Infect Immun 2010;78(1):337-47;Wang et al.,HumVaccinImmunother 2013;9(7):1558-64;Galen et al.,Infect Immun 2015;83(1):161-72)。本発明者らの低コピー数プラスミドに基づく発現系は、本発明者らのキャリア株への安定な導入のための抗生物質耐性遺伝子の使用を含まない。むしろ、すべての発現プラスミドは、DNA複製、組換えおよび修復に必須の一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードする。これらの新規プラスミドは、本発明者らのキャリアワクチンの染色体からのssbの他の致死的な欠失を補完するように設計されており、したがってワクチン投与後のインビボでのこれらのプラスミドの保持を保証する(Chase et al.,Annual Reviews in Biochemistry 1986;55:103-36;Lohman et al.,Annual Reviews in Biochemistry 1994;63:527-70)。本発明者らはまた、外来抗原の発現をキャリア株の増殖期と同期させて、インビボでの不適切に高レベルの抗原発現によるキャリアの過剰注意を回避するように設計された染色体発現システムを開発した(Wang et al.,HumVaccinImmunother 2013;9(7):1558-64;Galen et al.,Vaccine 2014;32(35):4376-85)。しかしながら、外来抗原の安定な発現を確実にすることに加えて、本発明者らはまた、抗原特異的免疫を改善するために免疫誘導部位へのこれらの外来抗原の効率的な送達を増強した。外来抗原が免疫系に送達される様式は、結果として生じる免疫応答および最終的には生キャリアワクチンの成功に大きな影響を及ぼし得ることが現在明らかである。粘膜免疫、体液性免疫および細胞性免疫の誘導および程度は、外来抗原が細胞質に発現されるか、または生きているキャリアから輸送されるかによって顕著に影響され得る。抗原特異的体液性免疫は、抗原が細胞質に留まるのではなく、細菌の表面または細胞外の周囲環境に輸送されると、顕著に増加し得る(Galen et al.,Infect Immun 2004;72(12):7096-106;Galen et al.,J Infect Dis 2009;199(3):326-35;Kang et al.,FEMS Immunol Med Microbiol 2003;37(2-3):99-104)。したがって、本発明者らは、外来抗原ドメインが、細胞溶解素A(ClyA)と呼ばれるチフス菌の内因性外膜タンパク質のカルボキシル末端に融合されている新規な抗原輸送システムを開発した。ClyA融合物の表面発現は、融合した外来ドメインの外膜小胞を介したキャリアワクチンからの輸送をもたらす(Galen et al.,Infect Immun 2004;72(12):7096-106)。本発明者らは、この抗原送達戦略を使用して、有望なキャリアベースの炭疽ワクチンを開発することに成功した(Galen et al.,Infect Immun 2004;72(12):7096-106;Galen et al.,J Infect Dis 2009;199(3):326-35)。
【0013】
臨床試験前にチフス菌ベースの生キャリアワクチンの免疫原性を評価するための実用的な小動物モデルがないことは、生キャリアワクチンの開発を何年にもわたって深刻なほど妨げた。チフス菌は、経口接種または非経口接種のいずれかによって従来の動物モデルまたは無菌動物モデルにおいて進行性の全身感染を誘導することができない高度に宿主制限されたヒト病原体である(Carter et al.,Infect Immun 1974;10(4):816-22;O’Brien et al.,Infect Immun 1982;38(3):948-52)。しかし、本発明者らの研究室は、チフス菌ベースの生キャリアワクチンの前臨床評価のための免疫原性のマウス鼻腔内モデルを最初に開発した(Galen et al.,Vaccine 1997;15(6/7):700-8)。何年にもわたり、このモデルを用いて多数の生キャリアワクチン候補が試験されており、チフス菌ワクチンベクターによる鼻腔内免疫化の成功がマウスおよび非ヒト霊長類の両方で実証されている。本発明者らは、様々な細菌毒素に対するマウスにおける抗原特異的血清抗体の誘導、ならびにマウスおよび非ヒト霊長類の両方における炭疽毒素に対する血清中和抗体応答を示した(Galen et al.,J Infect Dis 2009;199(3):326-35;Galen et al.,Infect Immun 2010;78(1):337-47;Orr et al.,Infect Immun 1999;67(8):4290-4;Barry et al.,Infect Immun 1996;64(10):4172-81;Vindurampulle et al.,Vaccine 2004;22(27-28):3744-50;Capozzo et al.,Infect Immun 2004;72(8):4637-46)。粘膜およびT細胞媒介性免疫応答もまた、異なるワクチン構築物を使用して様々な抗原に対して誘導された(Ramirez et al.,J Immunol 2009;182(2):1211-22;Ramirez et al.,Vaccine 2010;28(37):6065-75;Gomez-Duarte et al.,Infect Immun 2001;69(2):1192-8)。最も重要なことに、これらの応答はヒトで見られるものと非常に類似している(Pasetti et al.,Vaccine 2003;21(5-6):401-18;Galen et al.,ImmunolCell Biol 2009;87(5):400-12)。免疫原性の鼻腔内モデルは、弱毒化チフス菌生キャリアワクチン候補の前臨床試験に利用可能な唯一の十分に特徴付けられた動物モデルであり、少なくとも3種の生キャリアワクチンを臨床試験に進めるために使用されている(Tacket et al.,Clin Immunol 2000;97(2):146-53;Tacket et al.,J Infect Dis 2004;190(3):565-70;Stratford et al.,Infect Immun 2005;73(1):362-8;Khan et al.,Vaccine 2007;25(21):4175-82)。
【0014】
免疫原性および防御免疫を増強するための新規な組成物および方法を開発する必要がある。本発明は、この必要性を満たし、追加の利点も提供する。
【0015】
この背景情報は、情報提供のみを目的として提供される。前述の情報のいずれかが本発明に対する先行技術を構成することを必ずしも認めることを意図しているのではなく、またそのように解釈されるべきでもない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】McConnell et al.,FEMS Microbiol Rev 2013;37(2):130-55
【非特許文献2】Lin et al.,World journal of clinical cases 2014;2(12):787-814
【非特許文献3】Howard et al.,Virulence 2012;3(3):243-50
【非特許文献4】Tumbarello et al.,J Antimicrob Chemother 2015;70(7):2133-43
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【非特許文献6】Poolman et al.,J Infect Dis 2016;213(1):6-13
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【非特許文献78】Khan et al.,Vaccine 2007;25(21):4175-82
【発明の概要】
【0017】
実施形態の前述の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方が例示であり、したがって実施形態の範囲を限定しないことを理解されたい。
【0018】
一態様では、本発明は、1つ以上の抗原、外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、および脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体を発現するように操作された生チフス菌ベクターであって、チフス菌ベクターが、対象に投与されたときに、外膜小胞を介して粘膜組織に抗原を送達することができる、生チフス菌ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、BamA、PagLおよび抗原の1つまたは複数の発現は誘導性であり、誘導性プロモーターの制御下にある。いくつかの実施形態では、プロモーターはオスモル濃度に対して感受性である。いくつかの実施形態では、浸透圧で制御された誘導性プロモーターは、外膜タンパク質C(ompC)遺伝子のプロモーターである。いくつかの実施形態では、抗原は病原体に由来し、抗原は、外膜タンパク質、その抗原断片またはその変異体を含む。いくつかの実施形態では、病原体は、アシネトバクター・バウマンニおよび肺炎桿菌から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗原は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌由来のOmpAである。一実施形態では、チフス菌は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌に対する防御効果を誘発する。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、染色体に組み込まれた、またはマルチコピー遺伝子安定化プラスミドから発現されたOmpAをコードする合成遺伝子カセットを含む。いくつかの実施形態では、ワクチンは、A.バウマンニ臨床分離株LAC-4の鼻腔内および/または全身の負荷に対する防御効果を提供する。一実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターワクチン株は、チフス菌Ty2に由来する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、生チフス菌ベクターの組み合わせを提供し、第1のチフス菌ベクターは、i)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体、iii)外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、およびiv)脂質A脱アシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体を発現し、第2のチフス菌ベクターは、i)肺炎桿菌由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)肺炎桿菌由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体、iii)外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、およびiv)脂質A脱アシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体を発現する。
【0021】
いくつかの態様では、本発明はA.バウマンニまたは肺炎桿菌由来の防御的外膜タンパク質OmpAを発現する弱毒化チフス菌細菌の生ベクターワクチン株を提供し、チフス菌細菌の生ベクターは、組換え外膜小胞(rOMV)の形成の増加を介した免疫系へのOmpAの送達の増強を示す。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、rOMVを介して生ワクチンから輸送されるClyAタンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、rOMVを介した生ワクチンからのOmpAおよびClyAの細胞外輸送が増加する。
【0022】
別の態様では、本発明は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌由来の外膜タンパク質OmpAおよびOmpWを発現する弱毒化チフス菌細菌二価生ベクターワクチン株を提供する。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、OmpAおよびOmpWの両方が濃縮されたrOMVを過剰発現する。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌二価生ベクターは、チフス菌におけるOMV形成の自然誘導に関与するClyAタンパク質を過剰発現する。他の実施形態では、ClyAは、小胞形成を促進することはできないが、未修飾ClyAタンパク質またはワクチン抗原を含むタンパク質ドメインがClyAにインフレームで遺伝的に融合されたClyA融合タンパク質のいずれかとして外膜に輸送されるのに十分低いレベルで発現される。
【0023】
別の態様では、本発明は、病原体由来の1つまたは複数の異種抗原を含むチフス菌由来の単離された組換え外膜小胞を含む組成物であって、異種抗原が外膜タンパク質、その抗原断片またはその変異体を含み、チフス菌が抗原を発現するように操作されている組成物を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、1つ以上の抗原、外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、および脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体を発現するように操作された免疫学的有効量の生チフス菌ベクターを対象に投与することを含み、チフス菌ベクターは、対象に投与されたときに、外膜小胞を介して粘膜組織に抗原を送達することができる方法を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、1つ以上の抗原、外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、および脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体を含むチフス菌由来の免疫学的有効量の単離された組換え外膜小胞を対象に投与することを含み、チフス菌ベクターは、対象に投与されたときに、外膜小胞を介して粘膜組織に抗原を送達することができる方法を提供する。
【0026】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、本発明の精神および範囲内の様々な変更および修正がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
当業者は、下段で記載される図面が例示のみを目的としていることを理解するであろう。図面は、本教示の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【0028】
【
図1】AbOmpAを発現する同質遺伝子型弱毒化チフス菌CVD910株由来の全細胞溶解物(A)および培養上清(B)のウエスタン免疫ブロット。約1×108CFUの指数関数的に増殖する培養物からの試料を、精製されたAbOmpAに対して産生されたポリクローナルマウス抗体を使用して分析した。負荷の変動を補正するために、対になったサンプルを繰り返し実行した。レーン1-2:910ΔguaBA::ompAAb(pSEC10);レーン3-4:910ΔguaBA:ompAAb;レーン5-6:910ΔompAStΔguaBA::ompAAb(pSEC10);レーン7~8:910ΔompAStΔguaBA::ompAAb;レーン9:910 ssb(pSEC10 SompAAb)。
【
図2】A.バウマンニATCC対一価910DompAStompAAb指数関数的増殖細胞、細胞のフローサイトメトリーヒストグラムを、一次マウスAbOmpA特異的ポリクローナルマウス抗血清(1:25で希釈)および二次抗マウスAlexa fluor488(1:25)抗体で染色した。50,000の事象を収集し、抗マウスAlexa fluor488のみで染色したCVD910ΔompAΔguaBA::ompAabを用いてバックグラウンド蛍光を測定した。
【
図3】AbOmpAを発現する同質遺伝子型弱毒化チフス菌CVD910生ベクター株の溶血活性。約2×107CFUの同期させた細菌培養物からのサンプルを、ヒツジの赤血球を使用して溶血活性について分析した。データは、群あたり5つの測定値を用いた3つの独立したアッセイからプールされる。レーン1:PBS;レーン2:910;レーン3:910(pSEC10);レーン4:910ΔompASt(pSEC10);レーン5:910ΔompAStΔguaBA::ompAAb(pSEC10);レーン6:910ΔompAStΔrpoS::ompAAb*(pSEC10)expo;レーン7:910ΔompAStΔrpoS::ompAAb*(pSEC10)stat。
【
図4】蛍光レポータータンパク質GFPuv(ClyA*-GFPuv)または野生型ClyA-GFPuvタンパク質に融合したClyAの非溶血性融合物を発現するDH5α由来の培養上清のウエスタン免疫ブロット。(A)培養物の上清を抗GFPポリクローナル抗体で染色して、輸送されたClyA*-GFPuv融合物を検出した。(B)細胞質タンパク質GroELに対するポリクローナル抗体で染色した培養物の上清、CVD908-htrA(pClyA-GFPuv)の溶解物を、生ベクターのバックグラウンド自己分解の対照として含めた。
【
図5】A.バウマンニ由来の防御的外膜タンパク質抗原をコードするカセットのCVD910への安定な染色体組み込みのための戦略。全カセットが、A.バウマンニ対立遺伝子が浸透圧誘導PompCプロモーターによって主に制御されるように操作される。染色体の組み込みは、染色体標的の誘導性プロモーターが保存されるように行われ、A.バウマンニ抗原の示差的発現が2つのレベルで制御される転写融合を作り出し、調節されていない構成的発現による過剰減衰を回避する。例えば、rpoS遺伝子座に組み込まれたPompC-OmpAAb*カセットは、オスモル濃度(PompC)および静止期増殖(Prpos)の両方によって転写的に調節される。
【
図6】誘導性外膜小胞化系を介した免疫エフェクター細胞への外来抗原AbOmpAおよびAbOmpWの粘膜送達のための二価粘膜チフス菌ベースの候補ワクチン株。AbOmpWの発現は指数関数的増殖速度(PguaBA)およびオスモル濃度(PompC)の両方によって誘導可能であり、AbOmpA*変異体の発現は静止期(Prpos)およびオスモル濃度(PompC)の両方によって誘導される。超小胞化の誘導は、ClyAまたはPagLのいずれかを使用して達成することができる。ここで、過剰膀胱形成PagLの誘導は、オスモル濃度(PompC)によって制御され、低コピー数S SB安定化発現プラスミドによってコードされる。
【
図7】AbOmpAを発現するCVD910生ベクターを用いた混合溶血アッセイ。溶血、約5マイクロリットルの細菌懸濁液+190マイクロリットルの10%のRBCを含むPBS+グアニンの混合、37°Cで2時間および4時間の混合。データは、チフス菌OmpAの欠失が輸送を増強すること、およびAbOmpAの導入が表面抗原の輸送を劇的に増加させることを示している。
【
図8】AbOmpAを発現するCVD910生ベクターを用いた混合溶血アッセイ。溶血、5マイクロリットルの910 pSEC懸濁液+190マイクロリットルの10%のRBCを含むPBS+グアニンの混合、37°Cで0時間、1時間、2時間、3時間および4時間の混合。データは、チフス菌OmpAの欠失が輸送を増強すること、およびAbOmpAの導入が表面抗原の輸送を劇的に増加させることを示している。データは、(溶血活性による証拠としての)表面抗原の輸送が、生存可能な生物に依存し、細菌の溶解に依存しないことを示している。
【
図9】AbOmpAを発現するCVD910生ベクターを用いた混合溶血アッセイ。溶血、5マイクロリットルの910ΔompAΔguaBA::ompAAb+190マイクロリットルのPBS+グアニン中10%のRBCの混合、37°Cでの0時間、1時間、2時間、3時間および4時間の混合。データは、(溶血活性によって証明されるように)表面抗原の輸送が生存可能な生物に依存し、細菌の溶解に依存しないことを示している。
【
図10】誘導性OMV抗原送達システムの実施形態。
【
図11】誘導性OMV抗原送達システムの実施形態。
【
図12】誘導性OMV抗原送達システムの実施形態。
【
図13】CVD910生ワクチン株からのOMVにおける抗原OmpAAbの輸送。
【
図14】PagLの過剰発現によって輸送された染色体コード化ClyAを発現する同質遺伝子型弱毒化チフス菌CVD910生ベクター株の溶血活性。約2×107CFUの同期細菌培養物からのサンプルを、1群あたり5回の測定を行って、ヒツジ赤血球を使用して、溶血活性について分析した。レーン1:PBS;レーン2:910;レーン3:910ΔguaBA::clyA;レーン4:910ΔguaBA::clyA(pPagL)。
【
図15】AbOmpAを発現する一価チフス菌ベースのキャリアワクチンに対するA.バウマンニのフローサイトメトリーヒストグラム。細胞を、一次マウスAbOmpA特異的ポリクローナルマウス抗血清(1:25に希釈)および二次抗マウスAlexa fluor488(1:25)抗体で染色した。11,000の事象を収集した。
【
図16】PagLの過剰発現によって輸送された染色体コード化ClyAを発現する同質遺伝子型の弱毒化チフス菌CVD910生ベクター株の溶血活性。約2×107CFUの同期細菌培養物からのサンプルを、1群あたり5回の測定を行って、ヒツジ赤血球を使用して、溶血活性について分析した。レーン1:PBS;レーン2:910;レーン3:910ΔguaBA::clyA;レーン4:910ΔguaBA::clyA(pPagLv1);レーン5:910ΔguaBA::clyA(pPagLv2);レーン6:910ΔguaBA::clyA(pPagLv3)。
【
図17】BamAの過剰発現によって輸送された染色体コード化ClyAを発現する同質遺伝子型の弱毒化チフス菌CVD910生ベクター株の溶血活性。約2×107CFUの同期細菌培養物からのサンプルを、1群あたり5回の測定を行って、ヒツジ赤血球を使用して、溶血活性について分析した。レーン1:PBS;レーン2:910;レーン3:910(pSEC10);レーン4:910ΔguaBA::clyA;レーン5:910ΔguaBA::clyA(pAbBamAv1);レーン6:910ΔguaBA::clyA(pAbBamAv2)。
【
図18】AbOmpAを発現するチフス菌ベースの候補ワクチンに対するA.バウマンニの免疫蛍光(パネルA)およびフローサイトメトリーヒストグラム(パネルBおよびC)。細胞を、一次マウスAbOmpA特異的ポリクローナルマウス抗血清(1:500に希釈)および二次抗マウスAlexa fluor488(1:500)抗体で染色した。パネルBおよびCの各株について10,000の事象を収集した。
【
図19】脂質Aの構造および反応原性の分析。CVD910ΔguaBA::PompC-bamAAb[パネルA]から単離した天然に存在する小胞における脂質Aの、過剰増殖性CYD910ΔguaBA::PompC-bamAAb(pPagL-AbOmpA)[パネルB]から単離したrOMVに対するMALDI-MS分析。小胞を液体培養物から低速遠心分離によって単離し、0.2μmのフィルターで濾過し、超遠心分離によってペレット化し、PBSに再懸濁した。精製された小胞をまた、マウスTLR4を発現するHEK-Blue細胞におけるTLR4活性についてアッセイした[パネルC]。AbBamAのみを発現するrOMVをOMV1(青色)と称し、PagL、AbBamAおよびAbOmpAの両方を発現するrOMVをOMV2(緑色)と称す。大腸菌由来の完全反応原性陽性対照小胞をW3110(赤色)と称する。
【
図20】チフス菌FPSおよびAbOmpAに対する抗原特異的IgG応答。パネルA:1日目と21日目にアジュバントなしで筋肉内投与された、精製されたrOMVの2回の投与後の、28日目のチフス菌LPS特異的血清IgG力価。パネルB:1日目と21日目にアジュバントなしで筋肉内投与された、精製されたrOMVの2回の投与後の、28日目のアシネトバクター・バウマンニAbOmp特異的血清IgG力価。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、図面および以下の実施例と共に本発明の原理を説明するのに役立つ本発明の本好ましい実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするために十分に詳細に記載されており、他の実施形態が利用されてもよく、本発明の精神および範囲から逸脱することなく構造的、生物学的、および化学的変更が行われてもよいことが理解される。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語および科学的な用語は、当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。
【0030】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技能の範囲にある分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来の技術を使用する。そのような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Sambrook el al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.,2nd edition(1989)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.eds.(1987))、the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、PCR:A Practical Approach(M.MacPherson et al.IRL Press at Oxford University Press(1991))、PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995))、Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Fane eds.(1988))、Using Antibodies,A Laboratory Manual(Harlow and Lane eds.(1999))、およびAnimal Cell Culture(R.I.Freshney ed.(1987))を参照されたい。
【0031】
分子生物学における一般的な用語の定義は、例えば、Benjamin Lewin,Genes VII、Oxford University Pressにより出版、2000(ISBN 019879276X);Kendrew et al.(eds.);The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Publishersにより出版、1994(ISBN 0632021829);およびRobert A.Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference、Wiley,John&Sons,Inc.により出版、1995(ISBN 0471186341)に見出すことができる。
【0032】
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載されるいずれかの定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書を含む任意の他の文書におけるその単語の使用と矛盾している場合、以下に記載される定義が、反対の意味が明確に意図されない限り(例えば、用語が元来使用されている文書において)、本明細書およびその関連する特許請求の範囲を解釈する目的で、常に統制するものとする。「または」の使用は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数形の参照を含む。例えば、「細胞」という用語は、それらの混合物を含む複数の細胞を含む。「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」の使用は交換可能であり、限定することを意図するものではない。さらに、1つまたは複数の実施形態の説明が「含む(comprising)」という用語を使用する場合、いくつかの特定の事例では、1つまたは複数の実施形態は、「から本質的になる(consisting essentially of)」および/または「からなる(consisting of)」という文言を使用して代替的に説明され得ることを、当業者は理解するであろう。
【0033】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、使用されている数の数値の±10%を意味する。
【0034】
病原体の迅速な同定、新規な治療的介入、および受動免疫は、疾患の制御において重要な役割を果たすが、既存の防御的な免疫を代替することはできない。粘膜送達細菌性生ベクターワクチンは、免疫化のための実用的かつ効果的な戦略である。このアプローチでは、無関係な病原体の防御抗原をコードする遺伝子を、弱毒化ワクチン株で発現させ、粘膜で送達して関連する局所および全身免疫応答を生成する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明は、生チフス菌ベクターを提供し、それにおいて、チフス菌ベクターは、1つ以上の抗原、外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体、および脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体を発現するように操作され、チフス菌ベクターは、対象に投与されたときに、外膜小胞を介して粘膜組織に抗原を送達することができる。
【0036】
BamAは、グラム陰性菌の外膜へβバレルタンパク質を挿入するのを触媒する5種のタンパク質の外膜のβバレル集合機構(BAM)複合体の必須成分を構成する、約90kDaのタンパク質である。本発明において使用され得るBamAは、特に限定されない。BamAは、BamA全長、ならびに生物学的に活性な断片およびBamAの変異体を包含する。いくつかの実施形態では、A.バウマンニに由来する。いくつかの実施形態では、BamAを含むヌクレオチド配列が最適化されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコドン(例えば、稀なコドン)は、発現を増強するために最適化されている。いくつかの実施形態では、推定リボソーム結合部位は、発現を増強するために最適化されている。いくつかの実施形態では、BamAのアミノ酸配列は配列番号18である。いくつかの実施形態では、BamAの核酸配列は、配列番号20である。
【0037】
いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、チフス菌におけるOMV形成の自然な誘導に関与するClyAタンパク質を過剰発現する。
【0038】
いくつかの実施形態では、チフス菌ベクターは、fliC遺伝子に欠失を有する。いくつかの実施形態では、CVD910などの候補の弱毒化チフス菌ワクチン株またはその誘導体の染色体から欠失される遺伝子(GenBank遺伝子座#AE014613)の配列は、配列番号21である。
【0039】
いくつかの実施形態では、本発明は、アシネトバクター・バウマンニまたは肺炎桿菌によって引き起こされる肺炎感染症および全身感染症に対する二価のワクチンを提供する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書に記載のように改変された生チフス菌ベクターの組み合わせを含む組成物であって、第1のチフス菌ベクターが、アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびアシネトバクター・バウマンニ由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を発現し、第2のチフス菌ベクターが、肺炎桿菌由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびOmpW、その抗原断片、または肺炎桿菌由来のその変異体を発現する組成物を提供する。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明は、1つ以上の抗原を含む本発明のチフス菌ベクターからの単離された組換え外膜小胞を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、抗原は病原体由来のもので、外膜タンパク質、その抗原断片またはその変異体を含み、チフス菌は抗原を発現するように操作されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明に記載の操作されたチフス菌ベクターからの単離された組換え外膜小胞の組み合わせを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組み合わせは、i)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を含む第1の単離された組換え外膜小胞、ならびにi)肺炎桿菌由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)肺炎桿菌由来のOmpW、その抗原断片、またはその変異体を含む第2の単離された組換え外膜小胞を含み、チフス菌ベクターが抗原を発現するように操作されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌などの病原体に対して防御するための抗原を送達するための生ワクチンプラットフォームとして、チフス菌の遺伝子操作された弱毒化株を提供する。これらの抗原は、インビボでの合成の誘導後に生ワクチンの表面に発現させ、以下により詳細に記載されるように、独自の誘導性OMV媒介性輸送システムを介して、表面から免疫誘導部位に輸送される。いくつかの実施形態では、生ワクチンは、それぞれ個々の種全体で高度に保存されているOmpAの非交差反応性バージョンをそれぞれコードするA.バウマンニおよび肺炎桿菌由来のOmpAを標的とする。いくつかの実施形態では、生ワクチンは、A.バウマンニもしくは肺炎桿菌由来のOmpW、またはA.バウマンニもしくは肺炎桿菌由来のOmpAおよびOmpWの両方を含む。
【0044】
理論に拘束されるものではないが、rOMVを介したOmpAおよびOmpWの両方の送達は、感染に対する最適な防御効果を達成するために、これらの疎水性膜タンパク質の適切な立体配座をインビボで保存すると予想される。このアプローチにより、粘膜病原体に対する粘膜免疫を誘発する可能性が得られ、これは、体液性免疫を誘発するために非経口的に投与される精製サブユニットワクチンによっては得られない利点である。いくつかの実施形態では、ワクチンは鼻腔内経路を介して送達される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、例えば肺炎鼻腔内負荷モデルを使用して、超毒性A.バウマンニLAC-4に対する防御免疫をもたらす。
【0045】
本発明においてワクチンとして使用することができるチフス菌株は限定的ではない。例えば、それは、元の臨床分離株Ty2から遺伝的に弱毒化された任意の特定の株を含み得る。Ty2に由来する任意の弱毒化チフス菌株を、本発明による生ベクターとして使用することができる。非限定的で例示的な弱毒化チフス菌株は、チフス菌Ty21a、CVD908、チフス菌CVD909、CVD908-htrA、CVD915、およびCVD910が挙げられる。いくつかの実施形態では、チフス菌株は、プラスミドで発現される必須遺伝子に1つまたは複数の追加の染色体の変異を保有し得る。いくつかの実施形態では、プラスミドはまた、本発明による異種タンパク質をコードし、プラスミドの選択および遺伝子安定化を可能にし、チフス菌の喪失を防止する。いくつかの実施形態では、チフス菌株は、選択発現プラスミド上にコードされるssb遺伝子に突然変異を保有する。
【0046】
異種抗原または他のタンパク質がプラスミドを使用して過剰発現される場合、プラスミド安定性は、良質の弱毒化チフス菌ワクチンの開発における重要な因子であり得る。プラスミドを持たない細菌細胞は、プラスミドを有する細胞よりも速く蓄積する傾向がある。この蓄積速度が増加する1つの理由は、プラスミド遺伝子の転写および翻訳が、細胞の増殖を遅らせ、プラスミドを持たない細胞に競争上の利点を与える代謝の負荷を課すことである。さらに、外来プラスミド遺伝子産物は、宿主細胞に対して毒性であるときがある。したがって、コードされた抗原が適切かつ効率的に発現され、その結果、堅牢で効果的な免疫応答が達成され得ることを確実にするために、プラスミドが何らかの形態の選択圧下にあることが有利である。
【0047】
いくつかの実施形態では、プラスミドは、非抗生物質選択系を使用してチフス菌内で選択される。例えば、プラスミドは、生ベクター染色体からのこの遺伝子座の他の致死的な欠失/突然変異を補完する必須遺伝子をコードすることができる。本発明で使用することができる例示的な非抗生物質発現プラスミドは、本明細書に記載されており、本発明で使用することができるさらなるプラスミド系は、例えば、米国特許出願公開第20070281348号明細書、米国特許第7,141,408号、同第7,138,112号明細書、同第7,125,720号明細書、同第6,977,176号明細書、同第6,969,513号明細書、同第6,703,233号明細書、および同第6,413,768号明細書に記載されている。これらは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
一実施形態では、発現プラスミド用の非抗生物質遺伝子安定化および選択系を、チフス菌生ベクターの染色体から欠失させ得るDNA複製、組換えおよび修復に関与する必須タンパク質である一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードするように操作する(Lohman T M,Ferrari M E.Escherichia coli single-stranded DNA-binding protein:multiple DNA-binding modes and cooperativities.Annu Rev Biochem.1994;63:527-570;Chase J W,Williams K R.Single-stranded DNA binding proteins required for DNA replication.Annu Rev Biochem.1986;55:103-136;Galen J E,Wang J Y,Chinchilla M,Vindurampulle C,Vogel J E,Levy H,Blackwelder W C,Pasetti M F,Levine M.A new generation of stable,nonantibiotic,low-copy-number plasmids improves immune responses to foreign antigens in Salmonella enterica serovar Typhi live vectors.Infect Immun.2010 January;78(1):337-47)。いくつかの実施形態では、チフス菌用のプラスミド発現ベクターは、一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードする。いくつかの実施形態では、発現ベクターはpSEC10Sである。
【0049】
本発明のいくつかの実施形態では、非抗生物質のプラスミド選択系に固有のランダムな分離と、触媒の限界との両方が除去された発現プラスミドが、使用される。チフス菌生ベクター内のこれらのプラスミドの分離は、チフス菌CVD908-htrAのための活性分配系(parA)を使用して改善される(Galen,J.E.,J.Nair,J.Y.Wang,S.S.Wasserman,M.K.Tanner,M.Sztein,and M.M.Levine.1999.Optimization of plasmid maintenance in the attenuated live vector vaccine strain Salmonella typhi CVD908-htrA.Infect.Immun.67:6424-6433)。いくつかの実施形態では、触媒酵素への依存は、ssb遺伝子に基づくプラスミド選択/分離後死滅システムを使用することによって回避される。
【0050】
マルチコピープラスミドおよびそれらがコードする外来抗原の不安定性に対する解決策は、外来遺伝子カセットを生ベクターの染色体に組み込むことである。しかし、コピー数の低下は利点と欠点の両方になる。コピー数の減少は確かにマルチコピープラスミド自体とコードされた外来タンパク質の両方に関連する代謝の負荷を減少させるが、外来抗原合成のこの減少は最終的にこれらの抗原の宿主免疫系への送達の減少およびおそらく免疫原性の低下をもたらす。この説明は、臨床試験において、染色体にコードされた抗原に対する血清免疫応答が、今日まで控えめなものであった理由を説明し得た(Gonzalez C,Hone D,Noriega F R et al.Salmonella typhi vaccine strain CVD 908 expressing the circumsporozoite protein of Plasmodium falciparum:strain construction and safety and immunogenicity in humans.J Infect Dis.1994;169:927-931;Khan.S,Chatfield S,Stratford R et al.Ability of SPI2 mutant of S.Typhi to effectively induce antibody responses to the mucosal antigen enterotoxigenic E.coli heat labile toxin B subunit after oral delivery to humans.Vaccine.2007;25:4175-4182)。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗原は、病原体アシネトバクター・バウマンニに由来する。いくつかの実施形態では、病原体は肺炎桿菌である。いくつかの実施形態では、病原体は細菌またはウイルスの病原体である。いくつかの実施形態では、病原体は、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、インフルエンザ菌、クレブシエラ、シュードモナス、サルモネラ、赤痢菌およびB群連鎖球菌、炭疽菌アデノウイルス、百日咳菌、ボツリヌス中毒、ウシ鼻気管炎、ブルセラ属菌、ブランハメラ・カタラーリス、イヌ肝炎、イヌジステンパ、クラミジア、コレラ、コクシジオミセス症、牛痘、野兎病、フィロウイルス、アレナウイルス、ブニヤウイルス、サイトメガロウイルス、サイトメガロウイルス、デング熱、デングトキソプラズマ症、ジフテリア、脳炎、腸管毒素原性大腸菌、エプスタイン・バーウイルス、ウマ脳炎、ウマ伝染性貧血、ウマインフルエンザ、ウマ肺炎、ウマライノウイルス、ネコ白血病、フラビウイルス、類鼻疽菌、グロブリン、インフルエンザ菌b型、インフルエンザ菌、百日咳菌、ピロリ菌、ヘモフィルス属、肝炎、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、ヘルペスウイルス、HIV、HIV-1ウイルス、HIV-2ウイルス、HTEV、インフルエンザ、日本脳炎、クレブシエラ属菌、レジオネラ・ニューモフィラ、リーシュマニア、ハンセン病、ライム病、マラリア免疫原、はしか、髄膜炎、髄膜炎菌、髄膜炎菌ポリサッカライド群A、髄膜炎菌ポリサッカライド群C、おたふく風邪、ムンプスウイルス、マイコバクテリア、結核菌、ナイセリア属菌、淋菌、ヒツジブルータング、ヒツジ脳炎、乳頭腫、SARSおよび関連コロナウイルス、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)(COVID-19)、パラインフルエンザ、パラミクソウイルス、パラミクソウイルス、百日咳、ペスト、コキエラ・ブルネッティ、ニューモシスチス・カリニ肺炎、肺炎、ポリオウイルス、プロテウス種、緑膿菌、狂犬病、呼吸器合胞体ウイルス、ロタウイルス、風疹、サルモネラ属、住血吸虫症、赤痢菌、サル免疫不全ウイルス、天然痘、黄色ブドウ球菌、ブドウ球菌属、化膿性連鎖球菌、ストレプトコッカス属、豚インフルエンザ、破傷風、梅毒トレポネーマ、腸チフス、ワクシニア、水痘帯状疱疹ウイルス、およびビブリオコレラならびにそれらの組み合せからなる群から選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、抗原はアシネトバクター・バウマンニに由来するOmpWである。いくつかの実施形態では、アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpWのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号9および10に対応する。いくつかの実施形態では、外膜タンパク質は、肺炎桿菌由来のOmpWである。いくつかの実施形態では、肺炎桿菌由来のOmpWのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13および14に対応する。
【0053】
いくつかの実施形態では、抗原はアシネトバクター・バウマンニに由来するOmpAである。いくつかの実施形態では、アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpAのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号7および8に対応する。いくつかの実施形態では、外膜タンパク質は肺炎桿菌由来のOmpAである。いくつかの実施形態では、肺炎桿菌由来のOmpAのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号11および12に対応する。
【0054】
いくつかの実施形態では、チフス菌ベクターは、アシネトバクター・バウマンニまたは肺炎桿菌由来のOmpWおよびOmpAの両方を含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、抗原は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)由来のスパイクタンパク質またはその抗原断片もしくは変異体である。いくつかの実施形態では、スパイクタンパク質は、GenBankアクセション番号QIC53213.1に見出される配列を有する。
【0056】
抗原性または生物学的に活性な断片は、ポリペプチドのうちの1つのアミノ酸配列の全部ではなく一部と完全に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドである。抗原断片は、より大きなポリペプチドの中で「自立している」のでも、または含まれていてもよく、その部分または領域を、最も好ましくは単一の連続領域として形成する。
【0057】
いくつかの実施形態では、抗原性または生物学的に活性な断片は、例えば、アミノ末端を含む連続した一連の残基の欠失、またはカルボキシル末端を含む連続した一連の残基の欠失、またはアミノ末端を含むものとカルボキシル末端を含むものとの2つの連続した一連の残基の欠失を除いて、ポリペプチドのアミノ酸配列を有するトランケーションポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、断片は、αヘリックスおよびαヘリックス形成領域、βシートおよびβシート形成領域、ターンおよびターン形成領域、コイルおよびコイル形成領域、親水性領域、疎水性領域、α両親媒性領域、β両親媒性領域、可撓性領域、表面形成領域、および高抗原性インデックス領域を含む断片などの構造的または機能的属性を特徴とする。
【0058】
断片は、任意のサイズであり得る。抗原断片は、対象において免疫応答を誘導することができるか、または特異的抗体によって認識され得る。いくつかの実施形態では、断片は、アミノ末端トランケーション変異体に対応する。いくつかの実施形態では、断片から欠落しているアミノ末端アミノ酸の数は、1~100アミノ酸の範囲である。いくつかの実施形態では、それは、1~75アミノ酸、1~50アミノ酸、1~40アミノ酸、1~30アミノ酸、1~25アミノ酸、1~20アミノ酸、1~15アミノ酸、1~10アミノ酸、および1~5アミノ酸の範囲である。
【0059】
いくつかの実施形態では、断片はカルボキシル末端トランケーション変異体に対応する。いくつかの実施形態では、断片から欠失しているカルボキシル末端アミノ酸の数は、1~100アミノ酸の範囲である。いくつかの実施形態では、それは、1~75アミノ酸、1~50アミノ酸、1~40アミノ酸、1~30アミノ酸、1~25アミノ酸、1~20アミノ酸、1~15アミノ酸、1~10アミノ酸、および1~5アミノ酸の範囲である。
【0060】
いくつかの実施形態では、断片は、アミノ末端アミノ酸およびカルボキシル末端アミノ酸の両方を欠く内部断片に対応する。いくつかの実施形態では、断片は7~200アミノ酸残基の長さである。いくつかの実施形態では、断片は、10~100アミノ酸残基、15~85アミノ酸残基、25~65アミノ酸残基または30~50アミノ酸残基の長さである。いくつかの実施形態では、断片は、7アミノ酸、10アミノ酸、12アミノ酸、15アミノ酸、20アミノ酸、25アミノ酸、30アミノ酸、35アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、50アミノ酸、55アミノ酸、60アミノ酸、80アミノ酸または100アミノ酸の長さである。
【0061】
いくつかの実施形態では、断片は、少なくとも50アミノ酸、100アミノ酸、150アミノ酸、200アミノ酸または少なくとも250アミノ酸の長さである。もちろん、より大きな抗原断片もまた、本発明に従って有用であり、本明細書に記載されるポリペプチドのアミノ酸配列のすべてではないにしても大部分に対応する断片も、有用である。
【0062】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、本明細書に記載のポリペプチドまたはその抗原性もしくは生物学的に活性な断片と、少なくとも80、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%同一のアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、変異体は、保存的アミノ酸置換によって参照から変化するもの、すなわち残基を別の同様の特徴で置換するものである。典型的な置換は、Alaの中、Valの中、LeuおよびIleの中、SerとThrの中、酸性残基AspおよびGluの中、AsnとGlnの中、および塩基性残基LysおよびArgの中、または芳香族残基PheおよびTyrの中のものである。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、いくつか、5~10個、1~5個または1~2個のアミノ酸が任意の組み合わせで置換、欠失または付加された変異体である。
【0063】
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、サルモネラにおいて好ましいコドンを使用して、サルモネラにおける高レベル発現のために最適化されたポリヌクレオチドによってコードされる。本明細書で使用されるとき、「サルモネラ菌における高レベルの発現のために最適化される」コドンは、同じアミノ酸に対応する他のすべてのコドンと比較して、サルモネラ菌にて比較的豊富であるコドンを指す。いくつかの実施形態では、コドンの少なくとも10%がサルモネラにおける高レベル発現のために最適化される。いくつかの実施形態では、コドンの少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%が、サルモネラにおける高レベル発現のために最適化される。
【0064】
いくつかの実施形態では、OmpAは、1つまたはそれを超える変異を含む。いくつかの実施形態では、変異は、アシネトバクター・バウマンニOmpAに関して、D271AおよびR286Aから選択される1つまたは複数の置換変異を含む。いくつかの実施形態では、OmpAは、D271A変異およびR286A変異の両方を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、抗原は、チフス菌のプラスミドにおいて発現される。いくつかの実施形態では、プラスミドは、非抗生物質ベースのプラスミド選択および遺伝子安定化のシステムを有する。いくつかの実施形態では、プラスミドが、チフス菌の増殖に必須であり、チフス菌において染色体変異している遺伝子を発現する。いくつかの実施形態では、遺伝子が一本鎖結合タンパク質(SSB)をコードする。
【0066】
いくつかの実施形態では、適切に折り畳まれた防御抗原を免疫系に粘膜提示することができる外膜小胞は、ClyAおよびPagLなどの1つまたは複数の小胞触媒タンパク質の誘導性過剰発現によって生成される。PagLとClyAは、PagLとClyA全長、ならびに生物学的に活性な断片およびPagLとClyAの変異体を包含する。
【0067】
ClyAは、過剰発現されたとき大きな外膜小胞の形成を触媒することができる、チフス菌の内因性タンパク質である。小胞形成のためのこのような機構は、小胞を介して、異種外来抗原を生ベクターから輸送するようにClyAを操作する興味深い可能性を高めた。これらの小胞はまた、おそらく他の点では免疫原性が低い抗原の免疫原性を改善するために免疫調節性リポ多糖(LPS)を担持することもできる。炭疽毒素からの外来防御抗原(PA83)の免疫原性を増強するためのClyAの有用性、マウスおよび非ヒト霊長類動物モデルの両方で免疫原性であることが証明された生ベクターの炭疽ワクチンを産生する戦略53、67が確認されてきた。ClyAと同様に、PagLの過剰発現もまた、外膜小胞の増殖性の形成を誘導することが最近報告されている6が、ただし、興味深いことに、pagL遺伝子はマウス病原体ネズミチフス菌に存在し、チフス菌には存在しない。
【0068】
チフス菌由来のClyAは、Wallaceらによって最初に記載され、彼らは大腸菌由来の相同なHlyE溶血素の結晶構造も報告した(Wallace,A.L,T.J.Stillman,A.Atkins,S.J.Jamieson,P.A.Bullough,J.Green,and P.J.Artymiuk.2000.E.coli hemolysin E(HlyE,ClyA,SheA):X-ray crystal structure of the toxin and observation of membrane pores by electron microscopy.Cell 100:265-276)。ClyAタンパク質は、標的細胞において溶血を引き起こし得る。本発明は、ClyAの溶血活性型および溶血不活性型の両方の使用を包含し、得られたタンパク質の抗原輸送および免疫原性の保存が維持され得る場合、溶血不活性変異型がより好ましい。いくつかの実施形態では、ClyAのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、それぞれ配列番号15および16に対応する。いくつかの実施形態では、ClyAは、ClyAの輸送機能を依然として保持しながら、ClyAの溶血活性を低下させるように変異させられる。一実施形態では、ClyA変異体はClyA I198Nである。別の実施形態では、ClyA変異体は、ClyA C285Wである。いくつかの実施形態では、ClyAが、ClyAの溶血活性を低下させるように変異させられている。いくつかの実施形態では、ClyA変異体は、ClyA I198N、ClyA C285W、ClyA A199D、ClyA E204Kからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ClyAは融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、ClyAが、I198N、A199D、およびE204Kの置換の変異を含む。変異体の配列は、配列番号16を参照する。
【0069】
本発明において使用され得る脂質A脱アシラーゼPagLは、特に限定されない。PagLは、PagL全長、ならびに生物学的に活性な断片およびPagLの変異体を包含する。いくつかの実施形態では、PagLは、サルモネラ菌由来である。いくつかの実施形態では、PagLは、ネズミチフス菌に由来する。いくつかの実施形態では、PagLを含むヌクレオチド配列が最適化されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコドン(例えば、稀なコドン)は、発現を増強するために最適化されている。いくつかの実施形態では、推定リボソーム結合部位は、発現を増強するために最適化されている。いくつかの実施形態では、PagLのヌクレオチド配列は、配列番号1、3、または5を含む。いくつかの実施形態では、PagLのアミノ酸配列は、配列番号2または4を含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、抗原は、チフス菌に染色体で組み込まれる。いくつかの実施形態では、チフス菌は、欠失または不活性化された相同抗原を発現する。遺伝子カセットを、例えばチフス菌のguaBA、htrA、ssb、および/またはrpoS遺伝子座に挿入することは、例えばラムダレッド組換え系を使用して達成することができることが、理解されよう(Datsenko K A and Wanner B L.One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products.PNAS.2000.97(12):6640-5)。いくつかの実施形態では、外膜タンパク質は、チフス菌のguaBA遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、外膜タンパク質は、チフス菌のrpoS遺伝子座に挿入される。いくつかの実施形態では、外膜タンパク質OmpWは、guaBA遺伝子座に染色体で組み込まれる。いくつかの実施形態では、外膜タンパク質OmpAは、rpoS遺伝子座に染色体で組み込まれる。
【0071】
いくつかの実施形態では、例えば、染色体組み込みの免疫原性と、プラスミドがベースの発現によって誘発される抗原特異的免疫原性とを比較するために、免疫原性カセットを、CVD910ssbのΔguaBA遺伝子座またはΔrpoS遺伝子座のいずれかに、組み込むことができる。いくつかの実施形態では、ΔguaBAおよびΔrpoSのオープンリーディングフレームのみが欠失され、これらの部位に対する元のプロモーターはそのまま残される。いくつかの実施形態では、挿入カセットは、ΔguaBAまたはΔrpoSへの組み込みが、所与のカセットの誘導性発現を2つのレベルで制御するネステッドプロモーターをもたらすように、低コピー発現プラスミド由来のPompCプロモーターを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、A.バウマンニまたは肺炎桿菌由来のOmpAおよび/またはOmpW外膜タンパク質は、チフス菌の染色体に組み込まれ、染色体で発現される。いくつかの実施形態では、OmpAおよび/またはOmpWは、チフス菌のguaBA、htrA、ssbおよび/またはrpoS遺伝子座に組み込まれる。いくつかの実施形態では、染色体への組み込みは、弱毒化チフス菌生ベクターの外面からのこれらのタンパク質の高いレベルでの発現および輸送を達成し、ワクチンの過剰な弱毒化なしに、負荷に対する防御効果を付与する。
【0073】
一実施形態では、本発明は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌由来の抗原OmpAを発現する弱毒化チフス菌細菌の生ベクターワクチン株を提供する。一実施形態では、チフス菌は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌に対する防御効果を誘発する。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、染色体に組み込まれたOmpAをコードする合成遺伝子カセットを含む。いくつかの実施形態では、防御抗原は、生ベクターワクチンの表面にて発現される。いくつかの実施形態では、ワクチンは、これらの負荷経路のいずれかによってマウスにおいて非常に毒性であることが最近報告されたA.バウマンニ臨床分離株LAC-4の鼻腔内および/または全身的な負荷に対する防御効果を付与する。いくつかの実施形態では、ワクチンは、カルバペネム耐性肺炎桿菌の鼻腔内および/または全身的な負荷に対する防御効果を付与する。一実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターワクチン株は、チフス菌Ty2に由来する。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、ClyAタンパク質を過剰発現する。いくつかの実施形態では、OmpAの細胞外輸送が増加する。
【0074】
別の実施形態では、本発明は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌由来の外膜タンパク質OmpAおよびOmpWを発現する弱毒化チフス菌細菌の二価の生ベクターワクチン株を提供する。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、OmpAおよびOmpWの両方が濃縮されたrOMVを過剰発現する。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の二価の生ベクターは、チフス菌におけるOMV形成の自然な誘導に関与するClyAタンパク質を過剰発現する。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、本発明のチフス菌ベクターにおける発現のための発現カセットをコードする単離された核酸を提供し、発現カセットは、表面提示タンパク質および1つまたは複数の抗原を含む融合タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、表面発現タンパク質が、Lpp-OmpA、Lpp-OmpT、およびClyAから選択される。
【0076】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のチフス菌生ベクターワクチンを含む医薬組成物を提供する。そのような組成物は、ヒトなどの個体のワクチン接種に使用するためのものであり得る。そのような医薬組成物は、薬学的に有効な担体を含んでいてもよく、任意選択で、当技術分野で公知の様々なアジュバントなどの他の治療成分を含んでいてもよい。薬学的に許容される担体または賦形剤の非限定的な例には、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、マイクロエマルジョンなどの標準的な薬学的担体または賦形剤のいずれかが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は、本発明の1つ以上の生きている生菌のチフス菌生ベクターを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、生チフス菌ベクターの組み合わせを含み、第1のチフス菌ベクターは、i)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を抗原として発現し、第2のチフス菌ベクターは、i)肺炎桿菌由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)肺炎桿菌由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を抗原として発現する。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の生チフス菌ベクターからの単離された組換え外膜小胞を含む組成物であって、チフス菌ベクターから発現される1つ以上の抗原を含む組成物を提供する。
【0079】
いくつかの実施形態では、本発明は、本開示の生チフス菌ベクターからの単離された組換え外膜小胞を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、生チフス菌ベクターからの単離された組換え外膜小胞の組み合わせを含む組成物であって、第1の単離された組換え外膜小胞が、i)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を含み、第2の単離された組換え外膜小胞が、i)肺炎桿菌由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)肺炎桿菌由来のOmpW、その抗原断片、またはその変異体を含み、チフス菌が異種の抗原を発現するように操作されている。
【0080】
1つまたは複数の担体は、治療成分と適合性であり、その受容者に過度に有害ではないという意味で、薬学的に許容されなければならない。1つまたは複数の治療成分は、所望の免疫学的効果を達成するのに必要な量および頻度で提供される。
【0081】
投与様式および剤形は、ワクチン接種の用途に望ましく、有効なチフス菌生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞の治療量に影響を及ぼす。本願は、ワクチンの経口投与に特に限定されず、所望される場合、舌下の投与を含む非経口または他の粘膜経路も含むことができる。細菌生ベクター材料または組換え外膜小胞は、発現された抗原に対する患者の免疫応答を増加させるのに有効な免疫反応を誘発することができる量で、送達される。
【0082】
本発明の細菌の生ベクターワクチンまたは単離された組換え外膜小胞は、任意の他の適切な薬理学的または生理学的に活性な薬剤、例えば抗原性および/または他の生物学的に活性な物質と共に、宿主動物に有用に投与され得る。
【0083】
本明細書に記載の1つ以上の抗原を発現する弱毒化チフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞は、特定の用途に対して適切であるように、ヒトを含む哺乳動物への投与のための過度の実験なしに、調製および/または製剤化することができる。医薬組成物は、それ自体公知の方法で、例えば、従来の混合、溶解、糖衣錠製造、浮揚、乳化、カプセル化、封入、噴霧乾燥、もしくは凍結乾燥プロセス、またはそれらの任意の組み合わせによって、過度の実験なしに製造することができる。
【0084】
一実施形態では、1つ以上の抗原を発現する弱毒化チフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞を、粘膜投与する。適切な投与経路としては、例えば、経口、舌、舌下、直腸、経粘膜、経鼻、頬側、頬内、膣内、または腸内投与、小胞内、尿道内、吸入による投与、鼻腔内注射または眼内注射、および任意選択でデポー製剤または持続放出製剤が挙げられ得る。さらに、標的化された薬物送達システムで、化合物を投与することができる。投与経路を組み合わせることが可能である。
【0085】
本発明の細菌の生ベクターワクチン組成物または組換え単離外膜小胞の用量比率および適切な剤形は、従来の抗体価決定技術および従来の生物学的有効性/生体適合性プロトコルの使用によって、過度の実験なしに当業者によって容易に決定され得る。とりわけ、用量比率および適切な剤形は、使用される特定の抗原、所望の治療効果、および生物活性の所望の期間に依存する。
【0086】
いくつかの実施形態では、1つ以上の抗原を発現する弱毒化チフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞はまた、経鼻投与のために調製することができる。本明細書で使用される場合、経鼻投与は、化合物を対象の鼻孔の経路または鼻腔の粘膜に投与することを含む。チフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞の経鼻投与用の医薬組成物は、治療有効量の、例えば、鼻腔スプレー、点鼻薬、懸濁液、ゲル、軟膏、クリームまたは粉末として投与される周知の方法によって調製されたチフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞を含む。チフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞の投与は、鼻タンポンまたは鼻スポンジを使用して行うこともできる。
【0087】
組成物はまた、1つ以上の防腐剤、酸化防止剤などを適切に含んでいてもよい。チフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞の製剤化および投与のための技術のいくつかの例は、参照により本明細書に組み込まれるThe Science and Practice of Pharmacy,Lippincott Williams&Wilkins Publishing Co.,21st additionに見出すことができる。
【0088】
一実施形態では、医薬組成物は、チフス菌細菌の生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞を、それらの意図された目的を達成するのに有効な量で含有する。一実施形態では、有効量は、感染症を予防または治療するのに十分な量を意味する。一実施形態では、治療することは、治療されている対象における疾患の発症を減少させる、その進行を阻害する、またはその症状を改善することを意味する。一実施形態では、例えば、主治医の意見において、対象の背景、遺伝、環境、職業歴などが、診断時または投与時に、対象がまだ疾患を有していないかまたは疾患を無症候性である場合であっても、その対象が疾患を有するリスクがあるという予想または可能性の増加を生じさせる場合、予防することは、予防的に投与することを意味する。
【0089】
治療方法
本発明はまた、対象において免疫応答を誘導する方法を含む。免疫応答は、生チフス菌ベクターによって発現される1つ以上の1つ以上の抗原に対するものであり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明は、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、1つ以上の抗原を発現するように操作された免疫学的有効量の生チフス菌ベクターを対象に投与することを含み、抗原が、チフス菌ベクターによって産生される外膜小胞によって、対象の粘膜組織に送達される方法を提供する。
【0091】
いくつかの実施形態では、本発明は、必要とする対象において免疫応答を誘導する方法であって、1つ以上の抗原を含む、免疫学的有効量のチフス菌からの単離された組換え外膜小胞を対象に投与することを含み、チフス菌が抗原を発現するように操作されており、外膜小胞が対象の粘膜組織に送達される方法を提供する。
【0092】
別の態様では、本発明は、A.バウマンニおよび/または肺炎桿菌に対する免疫応答を、必要とする対象において誘導する方法であって、免疫学的有効量の本明細書に記載される生チフス菌ベクターを対象に投与することを含む方法を対象とする。いくつかの実施形態では、生ベクターは粘膜投与される。いくつかの実施形態では、チフス菌細菌の生ベクターは、OmpAおよび/またはOmpWが濃縮されたrOMVを発現する。
【0093】
一実施形態では、本方法は、本発明の生チフス菌ベクターの組み合わせを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、組み合わせは、第1のチフス菌ベクターの組み合わせを含み、これは、i)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を抗原として発現し、第2のチフス菌ベクターは、i)肺炎桿菌由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)肺炎桿菌由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を発現する。いくつかの実施形態では、ベクターの組み合わせは同じ組成物の中に存在する。いくつかの実施形態では、ベクターは別々の組成物の中に存在する。
【0094】
一実施形態では、本方法は、単離された組換え外膜小胞の組み合わせを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、単離された組換え外膜小胞の組み合わせは、i)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)アシネトバクター・バウマンニ由来のOmpW、その抗原断片またはその変異体を含む第1の単離された組換え外膜小胞、ならびにi)肺炎桿菌由来のOmpA、その抗原断片またはその変異体、およびii)肺炎桿菌由来のOmpW、その抗原断片、またはその変異体を含む第2の外膜小胞を含む。
【0095】
ワクチン戦略は当技術分野で周知であり、したがって、本発明に包含されるワクチン接種戦略は、いかなる様式でも本発明を限定しない。本発明の特定の態様では、1つ以上の異種抗原または単離された組換え外膜小胞を発現するチフス菌生ベクターワクチンは、単回適用で単独で投与されるか、または経時的に間隔を空けて連続適用で投与される。
【0096】
本発明の他の態様では、チフス菌生ベクターワクチンは、異種プライム/ブーストレジメンの成分として投与される。「異種プライム/ブースト」の戦略は、同じまたは異なる経路による2つの異なるワクチン製剤の同じ抗原の連続投与(プライミング段階およびブースティング段階)を含む二相免疫化レジームである。異種プライム/ブーストのレジメンに引き込まれる本発明の特定の態様では、粘膜プライム/非経口ブースト免疫化戦略が使用される。例えば、本明細書で教示されるような1つまたは複数のチフス菌生ベクターワクチンは、経口で、または他の粘膜経路を投与され、その後、抗原の1つまたは複数を含むチフス菌ベクターからの単離された組換え外膜小胞を含むワクチン組成物で、非経口にブーストされ得る。
【0097】
別の態様では、本発明は、必要とする対象において抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、プライムとして免疫学的有効量の本発明の生チフス菌ベクターを対象に投与すること、および抗原の1つまたは複数を含むチフス菌ベクターからの単離された組換え外膜小胞を含む組成物を含むブーストさせた組成物を、続いて投与することを含む方法を対象とする。
【0098】
いくつかの実施形態では、チフス菌生ベクターワクチンをプライムとして投与し、本発明の単離された組換え外膜小胞でブーストする。いくつかの実施形態では、本発明の単離された組換え外膜小胞はプライムとして投与され、本発明のチフス菌生ベクターワクチンでブーストされる。いくつかの実施形態では、ブーストは、粘膜的に、例えば経口的に、または非経口的に投与される。
【0099】
いくつかの実施形態では、異種プライム/ブーストという状況で、対象が、以下を投与される。
i.病原体由来の抗原などの1つ以上の抗原を発現するように操作された生チフス菌ベクター、および脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体、および
ii.1つまたは複数の抗原を発現するように操作された生チフス菌ベクターから単離された、単離された組換え外膜小胞、脂質AデアシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体、および
病原体由来の抗原などの1つ以上の抗原、および脂質A脱アシラーゼPagLまたはその断片もしくは変異体、および外膜折り畳みタンパク質BamAまたはその断片もしくは変異体。いくつかの実施形態では、パートiの生チフス菌ベクターはプライムとして投与され、パートiiの単離された組換え外膜小胞はブーストとして投与される。
【0100】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、免疫組成物に対する対象の免疫系の生理学的応答である。免疫応答は、自然免疫応答、適応免疫応答、またはその両方を含み得る。本発明の一実施形態では、免疫応答は防御的免疫応答である。防御的免疫応答は、同じまたは類似の抗原への二次曝露が、以下の特徴、すなわち免疫化組成物への事前曝露の非存在下での選択された抗原への曝露から生じる遅滞期よりも短い遅滞期;免疫化組成物への事前曝露の非存在下での選択された抗原への曝露から生じる抗体の産生よりも長期間続く抗体の産生;免疫化組成物への事前曝露の非存在下での選択された抗原への曝露時に産生される抗体のタイプおよび質と比較した、産生される抗体のタイプおよび質の変化;免疫化組成物への事前曝露の非存在下での選択された抗原への曝露に応答して起こるよりも高い濃度およびIgMよりも高い持続性で現れるIgG抗体によるクラス応答のシフト;免疫化組成物への事前曝露の非存在下での選択された抗原への曝露から生じる抗原に対する抗体の平均親和性と比較した、抗原に対する抗体の平均親和性(結合定数)の増加;および/または二次免疫応答を特徴付けるための当技術分野で公知の他の特徴の1つまたは複数を特徴とする効果と共に、対象に免疫学的細胞記憶を付与する。
【0101】
さらなる実施形態では、免疫応答を誘導する方法は、1つまたは複数の本発明のサルモネラ菌生ベクターまたは単離された組換え外膜小胞を含む、本明細書で提供される医薬製剤を、対象において免疫応答を誘導するのに十分な量(免疫学的有効量)で対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、免疫応答は、病原体による後の感染に対して対象に防御的免疫を付与するのに十分である。いくつかの実施形態では、チフス菌生ベクターを経口投与し、単離された組換え外膜小胞を経口投与、鼻腔内投与、舌下投与、皮下投与、筋肉内投与、またはこれらの経路の組み合わせによって投与する。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の1つまたは複数のチフス菌生ベクターワクチンまたは単離された組換え外膜小胞は、約2~約10週間後に、初回プライミング投与で粘膜投与され、その後、任意選択で、生ベクターワクチンまたは単離された組換え外膜小胞の2回目の(または3回目、4回目、5回目などの)プライミング投与が続く。いくつかの実施形態では、ブースティング組成物は、プライミング投与の約3~約12週間後に投与される。いくつかの実施形態では、ブースティング組成物は、プライミング投与の約3~約6週間後に投与される。いくつかの実施形態では、ブースティング組成物は、プライミング組成物(例えば、相同プライム/ブーストレジメン)として投与されるのと実質的に同じタイプの組成物である。
【0103】
治療および/または予防のための免疫プロトコルを実施する際に、免疫学的有効量の生チフス菌ベクターまたは単離された組換え外膜小胞を対象に投与する。本明細書で使用される場合、「免疫学的有効量」という用語は、対象において増強された免疫応答を示すのに十分な、生チフス菌ベクターまたは単離された組換え外膜小胞の総量を意味する。「免疫学的有効量」が単独で投与される個々の治療薬に適用される場合、この用語はその治療薬単独を指す。併用に適用される場合、この用語は、組み合わせて投与されるか、連続的に投与されるか、または同時に投与されるかにかかわらず、治療効果をもたらす成分の組み合わされた量を指す。
【0104】
特定の投与量は、治療される対象の年齢、体重、性別および医学的状態、ならびに投与方法に依存する。適切な用量は、当業者によって容易に決定することができる。
【0105】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、哺乳動物などの動物を指す。例えば、企図される哺乳動物としては、ヒト、霊長類、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットなどが挙げられる。「対象」、「患者」および「宿主」という用語は互換的に使用される。
【0106】
いくつかの実施形態では、単離された組換え外膜小胞を含む生チフス菌ベクターまたは組成物は、急なケアを行う病院へ患者を搬送する前および搬送時の両方で感染の発生率を低下させるために、ワクチン接種が厳格な抗菌薬受託を補完する長期ケア施設において、1人または複数の対象に投与される。いくつかの実施形態では、対象には、治療の失敗またはより耐性の高い病原性株による再感染に起因する再発を防止するために、細菌性敗血症、肺炎または尿路感染の処置後に病院から退院する前に、ベクターまたは組成物を投与することができる。いくつかの実施形態では、対象は、戦場で受けた重度の外傷または熱傷から生じるアシネトバクター・バウマンニの皮膚および軟組織の感染のリスクがある軍人である56。
【0107】
本発明の生チフス菌ベクターまたは単離された組換え外膜小胞を、任意の年齢の温血動物に投与することができる。生チフス菌ベクターは、単回用量または複数回プライミング用量、続いて1つ以上のブースターとして投与することができる。例えば、対象は単回用量を投与され、次いで、最大1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、または10年、またはそれ以上後に、ブーストする用量を投与され得る。
【0108】
特定の問題へ本発明の教示を適用することは、本明細書に含まれる教示を考慮した当業者の特質の範囲である。本発明の組成物および方法の例は、以下の非限定的な例に示される。
【実施例】
【0109】
実施例1 アシネトバクター・バウマンニおよび肺炎桿菌に対するチフス菌生ワクチンの産生
病原体の迅速な同定、新規な治療的介入、および受動免疫は、疾患の制御において重要な役割を果たすが、既存の防御的な免疫を代替することはできない。粘膜送達細菌生キャリアワクチンは、免疫化のための実用的かつ汎用的な戦略を代表する。このアプローチでは、無関係な病原体の防御抗原をコードする遺伝子を弱毒化ワクチン株で発現させ、粘膜送達して関連する局所および全身の免疫応答を生成する。チフス菌生ワクチンのプラットフォームの適切な遺伝子工学を使用して、アシネトバクター・バウマンニおよびカルバペネム耐性肺炎桿菌の多剤耐性(MDR)株によって引き起こされる肺炎感染症および全身感染症に対する安全で効果的で実用的な多価キャリアワクチンを構築する。これらの病原体のいずれに対しても認可されているワクチンは現在利用できない。
【0110】
これらのMDR病原体に対する新規な多価ワクチンが開発され、それは各病原体由来の高度に保存された外膜タンパク質OmpAおよびOmpWに対する体液性、細胞性および粘膜免疫を誘発する。これらの外来抗原をコードする合成遺伝子カセットは、弱毒化生チフス菌ワクチン候補の染色体に安定して組み込まれ、キャリアワクチンの外面で、OmpAおよびOmpWの高レベルでの発現を可能にする。抗原特異的免疫を増強するために、本発明者らは、負荷に対する防御を付与するために免疫誘導部位への十分な抗原の送達を改善するための新規誘導性外膜小胞送達システムを使用して、これらのワクチン抗原をインビボで生ワクチンの表面から輸送する。OMVの形成の誘導と抗原の送達は、PagL、すなわちサルモネラ菌で過剰発現させたときに過剰小胞形成を触媒することが最近報告された脂質A脱アシル化酵素の過剰発現によって達成される(Elhenawy et al.,mBio 2016;7(4):e00940-16.doi:10.1128/mBio.00940-16)。脱アシル化が炎症応答のTLR4媒介活性化を減少させることによって脂質Aを解毒することを考え、本発明者らは、本発明者らのキャリア株からこれらの組換えOMV(rOMV)を精製し、これらの成分ワクチンの防御効果も試験することを提案する(Kawasaki et al.,J Endotoxin Res 2004;10(6):439-44;Kawasaki et al.,J Biol Chem 2004;279(19):20044-8)。
【0111】
パート1.A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれか由来の防御的外膜タンパク質OmpAおよびOmpWを発現する二価チフス菌ベースのキャリアワクチンが作製され、PagL媒介OMVを介して両方の外来抗原を効率的に輸送する。本発明者らは、ウエスタン免疫ブロット分析による高レベルのOmpAおよびOmpW発現、フローサイトメトリーによる表面発現、および反応原性が低下した精製されたOMVにおける効率的な細胞外輸送を検証する。
【0112】
パート2.二価チフス菌ベースのキャリアワクチンが作製され、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかからOmpAおよびOmpWを効率的に発現し、マウスにおける負荷に対する防御を誘発する。マウスを、相同プライム・ブースト戦略(パート2A)または異種プライム・ブースト戦略(パート2B)のいずれかを使用して鼻腔内で免疫化する。相同免疫化は、キャリアワクチン単独またはキャリア株から精製されたrOMVのいずれかを使用する。異種免疫化は、キャリアワクチンによるプライミングおよびrOMVによるブースティングを含む。抗原特異的Th17応答に特に重点を置いて、体液性および細胞性免疫を測定する。A.バウマンニに対して免疫化したマウスは、全身経路または肺経路のいずれかによって、毒性臨床分離株LAC-4に負荷される(Harris et al.,Antimicrob Agents Chemother 2013;57(8):3601-13;KuoLee et al.,Vaccine 2015;33(1):260-7)。肺炎桿菌に対して免疫化したマウスは、毒性O1:K2株B5055を全身経路または肺経路のいずれかによって致死的に負荷される(Chen et al.,Innate Immun 2008;14(5):269-78)。
【0113】
パート3:パート1およびパート2で開発され、単一病原体による負荷に対して試験されたキャリアワクチンおよび精製されたOMVは、2つのキャリアワクチンの混合物を含有する用量でプライムし、混合OMV調製物でブーストしたマウスにおいて、A.バウマンニおよび肺炎桿菌の両方による負荷に対する防御を付与する。本発明者らは、両方の病原体による連続負荷に対するキャリアワクチンプライム/OMVブーストおよびOMVプライム/キャリアワクチンブースト免疫化戦略の両方を試験する。本発明者らはまた、A.バウマンニおよび肺炎桿菌の両方の致死量を同時に試験することによって、複数の菌の感染に対する防御を試験する。
【0114】
いくつかの態様では、本発明は、弱毒化チフス菌ベースの生キャリアワクチンの外膜を、防御的外膜抗原が免疫誘導部位に粘膜送達されて防御を誘発する抗原提示プラットフォームに再構築する。4つの独立したワクチンを、キャリアワクチンおよびrOMVを単回投与製剤に混合して潜在的に防御効力を改善する柔軟性を伴って(A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかに対する2つの生キャリアワクチンおよび2つの精製されたrOMV系無細胞ワクチン)、生成することができる。
【0115】
ワクチン戦略としての外膜リモデリング。この実施例では、本発明者らは、粘膜免疫化を介した免疫系への防御的外膜タンパク質の発現および送達のための生ベクターとしてチフス菌の弱毒化株を利用する。歴史的に、弱毒化チフス菌生ベクターは、生ベクターの細胞質内での外来抗原の発現(免疫原性が低い)または生ベクターの表面上への輸送(免疫原性が高い)のいずれかのために操作されており、典型的にはプラスミドから発現される単一の外来抗原に関与している。この実施例では、本発明者らは、本発明者らの生ベクターワクチン株の外膜自体が、OmpAおよびOmpW防御抗原が特異的に濃縮されるように遺伝子操作された高度に免疫原性の組換え外膜小胞(rOMV)の抗原送達プラットフォームおよび生物学的供給源として機能するように「改造」される、A.バウマンニおよび肺炎桿菌外膜小胞で達成された以前の成功を模倣する新規戦略を提案する。本発明者らは、これらのrOMVの形成および送達を2つの新規な方法で増強する:1)本発明者らは、本発明者らの生ベクターワクチンの剛性ペプチドグリカンへOmpAを固定する特性を低下させることによってrOMVの形成を増強し、OmpAとペプチドグリカンとの非共有結合性会合を減少させるために(Park et al.,FASEB J 2012;26(1):219-28)によって最初に報告された観察結果である。加えて、本発明者らは、内因性チフス菌ompASt遺伝子を欠失させて内因性StOmpAとペプチドグリカン層との相互作用を再び減少させることによってこの効果をさらに増強する。2)本発明者らは、OMVの形成を触媒する新規タンパク質PagLの誘導性過剰発現によってrOMVの送達を増強する。
【0116】
誘導性小胞送達システム本発明者らは、適切に折り畳まれた外膜防御抗原を免疫系に粘膜提示することができる外膜小胞の形成を増加させる、小胞触媒タンパク質PagLの誘導性過剰発現による新規な抗原送達システムを開発した。PagLの過剰発現は、サルモネラにおいて外膜小胞の増殖性の形成を誘導することが示されている1。興味深いことに、PagLは、炎症誘発性のヘキサアシル化脂質Aをペンタアシル化形態に変換し、それによって炎症応答のTLR-4シグナル伝達を100分の1に減少させる3-オデアシラーゼ88である(Kawasaki et al.,J Endotoxin Res 2004;10(6):439-44;Kawasaki et al.,J Biol Chem 2004;279(19):20044-8)。したがって、PagLの過剰発現を介してサルモネラ株から輸送されたrOMVは、反応原性が低いと予想され、精製され、一次ワクチンまたはブースターワクチンとして使用された場合、これらの小胞の臨床的受容性を改善するであろう。pagL遺伝子は、マウス病原体ネズミチフス菌に天然に見られるが、チフス菌のゲノムには存在しない。この実施例では、A.バウマンニおよび肺炎桿菌に対する生ベクターワクチンの防御効果は、PagL媒介性の過剰水疱形成によって顕著に改善され、組換えOMVを介した防御OmpAおよびOmpWタンパク質の粘膜送達を増強することができる。マウスを、生キャリアワクチンまたは精製されたrOMV(すなわち、相同なプライム・ブースティング)のみで鼻腔内免疫化することになる。別の態様では、マウスをキャリアワクチンで鼻腔内プライミングし、精製されたrOMVで鼻腔内ブーストする。
【0117】
結果
弱毒化チフス菌生ベクターワクチンにおけるAbOmpA発現は病原性ではない。本発明者らは、チフス菌の新規弱毒化株、CVD910を操作し、特に、A.バウマンニおよび肺炎桿菌などの無関係なヒト病原体に対する防御免疫を誘発することができる外来抗原を提示するキャリアワクチンとしての使用を意図した。この株は、野生型病原体Ty2に由来し、第2相臨床試験において安全で高度に免疫原性であることが証明されたaroC、aroD、およびhtrAに減弱欠失変異を保有する、以前に構築された弱毒化ワクチン候補であるCVD908-htrAに取って代わる(Tacket et al.,Infect Immun 2000;68:1196-201)。CVD910は、臨床的に証明されたCVD908-htrA株と同じレベルの減衰を維持しながら、guaBAおよびhtrAに欠失を保有するように操作された。本発明者らは、ブタ胃ムチン腹腔内マウス負荷モデルを使用してCVD910の減衰の予備評価を実施して、CVD910対CVD908-htrAについてBALB/cマウス群の50%(LD50)において死を引き起こす最小致死量を比較した。このモデルについて、本発明者らは、チフス菌の腹腔内負荷について、Code of Federal Regulations for Food and Drugs,Title 21,Part 620.13(c-d),1986で推奨されているガイドラインに広く従う。この方法を使用して、本発明者らは、CVD910およびCVD908-htrAの両方のLD50が約5×105CFUであるのに対して、この負荷モデルにおける野生型Ty2のLD50は約10CFUであることを確認した(Wang et al.,HumVaccinlmmunother 2013;9(7):1558-64;Tacket et al.,Infect Immun 1992;60(2):536-41)。
【0118】
臨床的に許容されるワクチン候補CVD908-htrAの安全性に匹敵するCVD910の安全性のベースラインレベルを確立した後、本発明者らは、ペスト菌によって引き起こされる肺ペストに対するワクチンを開発および試験することによって、キャリアとして使用するためのこのワクチン株の有用性を実証した。本発明者らは、生ベクターワクチンの表面に首尾よく輸送された防御的F1莢膜タンパク質抗原、ならびにペスト菌病原性エフェクタータンパク質の分泌に必要な細胞質発現防御的LcrVタンパク質をコードする二価生ペストキャリアワクチンを構築し、F1をコードする遺伝子カセットをCVD910の欠失guaBA染色体遺伝子座に組み込み、LcrVをコードする別の遺伝子カセットをCVD910の欠失htrAに組み込んだ。この二価キャリアワクチンで鼻腔内免疫化したマウスでは、本発明者らは、完全毒性ペスト菌を用いて致死的な肺負荷に対する100%の防御を達成し66、キャリアワクチンプラットフォームとしてのCVD910の有用性、ならびに防御的多価ワクチンを操作するための重要な戦略としての染色体組み込みの実現可能性を実証した。
【0119】
次いで、本発明者らは、非抗生物質の遺伝的に安定化された低コピー数発現プラスミドpSEC10で発現される、38.6kDaのAbOmpA候補ワクチン抗原をコードする合成ompAAb合成発現カセットを設計した。このユニークなプラスミドは、CVD910の染色体から欠失された重要な一本鎖結合タンパク質SSBの発現によって維持される(Galen et al.,Infect Immun 2010;78(1):337-47)。組織培養細胞を用いて研究した場合、AbOmpAがインビトロで病原性因子として機能するという文献の報告を考慮すると、AbOmpAがこのプラスミドを保有するCVD910株[ここではCVD910(pSEC10Ab)と称していた]の病原性を許容できないほど増加させる可能性を正式に除外することが重要であった(Choi et al.,Cell Microbiol 2008;10(2):309-19;Lee J et al.,Journal of microbiology(Seoul,Korea)2010;48(3):387-92)。したがって、本発明者らは、親ワクチンCVD910に対するCVD910(pSEC10Ab)のブタ胃ムチン負荷試験を繰り返すことによって、毒性に対するAbOmpAのプラスミドベースの発現の効果を評価した。CVD910のLD50は、CVD910(pSEC10Ab)の8.73×106CFUに対して2.14×106CFUであると判定した。本発明者らは、AbOmpAの発現がCVD910の安全性に影響を及ぼさず、AbOmpAを発現するCVD910が、A.バウマンニの感染に対する生キャリアワクチンのさらなる開発のための臨床的に許容される候補を構成すると結論する。
【0120】
CVD910におけるAbOmpAの表面発現。CVD910におけるAbOmpAの発現に関するいずれかの安全性の懸念を除外して、その後、本発明者らは、肺ペストに対する高度に免疫原性で防御的な生粘膜ワクチンの開発において以前に証明された染色体組み込み技術を使用して、ompAAb合成発現カセットがCVD910の染色体に組み込まれたいくつかの一価生キャリア株を構築した(Galen et al.,Infect Immun 2015;83(1):161-72)。これらの株は、現在の例が基づくことができる堅固な科学的根拠を提供する3つの重要な問題、つまり1)AbOmpA特異的抗体によってAbOmpAを生ベクターの表面で認識することができるか、2)チフス菌由来の内因性StOmpAの発現(ompAStによってコードされる)の影響を受けることなく、AbOmpAなどの外来OmpAタンパク質をCVD910の外膜で発現させることができるか、および3)表面発現AbOmpAを外膜小胞を介してCVD910から効率的に輸送することができるか、ということに対処するように設計された:本発明者らはまず、ompAAb合成発現カセットがCVD910のΔguaBA部位に組み込まれた一価生ベクター株を構築し、CVD910ompAAbを作製した。AbOmpA発現に対するStOmpAのいずれかの影響を決定するために、本発明者らは、CVD910ΔompAStompAAbを作製するためにompAStを欠失させた追加の生ベクターを構築した。次いで、本発明者らは、ウエスタン免疫ブロット分析によって、CVD910ompAAbおよびCVD910ΔompAStompAAbの両方におけるAbOmpAの発現を確認した(データは示さず)。AbOmpAの表面発現を実証するために、本発明者らは、フローサイトメトリーを使用して、CVD910DompAStompAAbの表面標識を野生型A.バウマンニATCC17978の表面標識と比較することによって、AbOmpAエピトープの表面のアクセス可能性を判定した。両株を一次ポリクローナルマウスAbOmpA特異的抗血清で染色し、続いて抗マウスAlexa fluor488で二次染色した。
図2に示すように、一価キャリアは2つの蛍光ピークを生成し、その一方(細胞の57%)は、染色されていないCVD910陰性対照と同等であり、他方のピーク(細胞の43%)は159.4の印象的な平均蛍光を有した。ATCC17978の蛍光は、23.4の平均蛍光を有する単一のピークとして示された。本発明者らは、CVD910ΔompAStompAAbの二相性蛍光を、過剰発現したAbOmpAのキャリア株の表面への不完全な輸送を示すと解釈した。
【表1】
【0121】
OMV媒介性抗原送達プラットフォームを用いた原理証明研究。次いで、本発明者らは、外膜小胞を介した表面発現AbOmpAの細胞外輸送に対する内因性StOmpA発現のいずれの影響をも調べた。rOMVを介したAbOmpAの輸送は、過剰発現されたときに大きな外膜小胞の形成を触媒するため、Waiらによって最初に報告された、細胞溶解素A(ClyA)と呼ばれるチフス菌における新規内因性タンパク質の過剰発現によって促進された。本発明者らは、操作されたキャリア株からの外来抗原の輸送のためにClyAの過剰発現をうまく利用した(Wai et al.,Cell 2003;115(1):25-35;Galen et al.,Infect Immun 2004;72(12):7096-106)。ClyAは溶血活性を示すので、キャリア株の上清の溶血活性を測定することによって、ClyA媒介小胞形成を介したAbOmpAなどの表面発現外来抗原の輸送を間接的に監視することができる。上清の溶血活性が増加すると、OMVを介したAbOmpAのClyA媒介輸送も増加すると推測することができる。しかしながら、AbOmpAの輸送のためのClyA媒介小胞形成は、CVD910で天然に合成される内因性StOmpAの存在によって理論的に妨げられ得る。この仮説を支持して、Parkらは、OmpAタンパク質のカルボキシル末端がグラム陰性細菌のペプチドグリカン層と密接に会合することを報告している(Park et al.,FASEB J 2012;26(1):219-28。しかしながら、Parkらはまた、アラニン置換D271AおよびR286Aが、変異OmpAD271A-R286Aタンパク質の剛性ペプチドグリカンへの強い会合を阻止することを記している(Park et al.,FASEB J 2012;26(1):219-28)。したがって、本発明者らは、StOmpAが以前に欠失されていたCVD910ΔompAStにおいてこの修飾ompAAb*対立遺伝子を発現させることによって外膜を「弛緩させる」ために、これらの同じD271AおよびR286Aの置換を本発明者らの合成ompAAb遺伝子に組み込むことによって、AbOmpAのClyA媒介性輸送を改善できると仮説を立てた。したがって、この仮説を検証するために、本発明者らは、表1に示すように、本発明者らの低コピー数発現プラスミドpSEC10からClyAを過剰発現する同質遺伝子キャリア株のパネルを構築した。ompAAb*対立遺伝子をguaBA遺伝子座に組み込む複数回の試みが不成功であることが判明した後、本発明者らは、代わりに、本発明者らが以前に他の外来抗原66の発現を成功させるために利用した部位であるrpoS遺伝子座に組み込むことを選択した。したがって、guaBA遺伝子座に組み込まれたompAAb対立遺伝子の発現は、指数関数的増殖期に最適に発現されるが、rpoS遺伝子座からの最適な発現は静止期に起こる。特に明記しない限り、すべての株を37°Cで対数期中期の増殖まで増殖させ、次いで、OMVのClyA媒介性輸送を(表面発現AbOmpAと共に)、ヒツジの赤血球に対する約2×107CFUの細菌のOD540での溶血活性を測定することによって、定量的に評価した(Sansonetti et al.,Infect Immun 1986;51(2):461-9)。
図3に示すように、ワクチン株CVD910(レーン2)には溶血活性は存在しなかったが、ClyAをコードする発現プラスミドpSEC10の導入(レーン3)により、予想通り増加した。興味深いことに、溶血活性は、内因性ompAStの欠失時に再び増加し(p=0.0414;レーン4対レーン3)、OmpAがペプチドグリカンと協働し、ClyA媒介のOMV形成を減少させるという仮説を裏付けた。驚くべきことに、ompAStをguaBA遺伝子座に組み込まれたompAAbとトランス相補すると、溶血活性がさらに増加し(p=0.0017;レーン5対レーン4)、AbOmpAが野生型StOmpAほどペプチドグリカンと密接に関連していない可能性があることを示唆した。しかしながら、溶血活性は、変異ompAAb*が、ompAStが欠失した生ベクターで発現された生ベクターで最も高く(p=0.0298;レーン7対レーン5)、OmpAタンパク質(相同であろうと異種であろうと)とペプチドグリカンとの間の顕著な相互作用が減少または除去されるとき、(AbOmpAなどの外来外膜タンパク質抗原と共に)OMVのClyA媒介輸送を効率的に行うことができるという仮説を強く支持する。したがって、本発明者らは、チフス菌ベースのキャリアワクチンから輸送されたrOMVが、適切に折り畳まれ、表面にアクセス可能なOmpAおよびOmpWを免疫系に提示することができ、rOMVの過剰発現が送達を増強し、防御効力を改善すると予想する。
【0122】
PagL媒介抗原送達プラットフォームの開発ClyAは、ClyAが過剰発現される候補ワクチン株の臨床的許容性を低下させ得る細胞変性特性を有する溶血素であるので、本発明者らは、PagLに基づいてOMVの形成および輸送を誘導するための非病原性の代替物を開発しようと努めた(Ludwig et al.,Mol Microbiol 1999;31(2):557-67;Lai et al.,Infect Immun 2000;68(7):4363-7)。したがって、本発明者らは合成pagL遺伝子を構築し、それを本発明者らの非抗生物質の低コピー数発現プラスミドpSEC10に挿入し、clyA遺伝子を置換してpPagLを作製した。誘導性外膜小胞を用いた本発明者らの以前の実験と同様に、本発明者らは、ClyA媒介性小胞形成に関連する溶血活性を測定することによってOMVの輸送を監視したいと考えた。したがって、CVD910のguaBA遺伝子座にClyAをコードするカセットを組み込んだ後、得られた株にpPagLを導入してCVD910ΔguaBA::clyA(pPagL)を作成した。この特定の株では、ClyAは染色体でコードされたOmpAタンパク質の代理の溶血性レポーターとして作用しており、プラスミドコード化PagLの過剰発現は、rOMV輸送を大幅に改善すると予想される点に留意されたい。すべての株を37°Cで初期対数期増殖まで増殖させ、ヒツジの赤血球に対する約2×107CFUの細菌について、OD540で溶血活性を測定した。
図14に示すように、予想通りワクチン株CVD910に溶血活性は存在しなかった(レーン2)。驚くべきことに、CVD910(pSEC10)で観察されたプラスミドコード化溶血活性に対するコピー数の低下のために、染色体でコードされたClyAの溶血活性は、CVD910ΔguaBAv.clyA(レーン3)では検出されなかった[
図3、レーン3を参照されたい]。しかし、pPagLを910ΔguaBAv.clyA(レーン4)に導入した場合に顕著な溶血活性が観察され、PagLの過剰発現が外膜小胞を介した外膜タンパク質(すなわち、この場合、ClyA)の優れた輸送を誘導することを明確に実証した。したがって、本発明者らは、A.バウマンニおよび肺炎桿菌由来のOmpAおよびOmpW外膜タンパク質が、送達を増強し、防御効力を改善するために、PagLの過剰発現を通してrOMVを介してチフス菌ベースのキャリアワクチンから効率的に輸送され得ると予想する。
【0123】
研究の概要まとめると、本発明者らの結果は、適切に折り畳まれた外来外膜タンパク質を効率的に発現し、本発明者らの生ベクターワクチンの表面に送達することができる弱毒化チフス菌ベースの粘膜生ベクターワクチンの開発の実現可能性を堅固に確立する。これらの外来抗原は、アシネトバクター・バウマンニおよび肺炎桿菌からのOmpAおよびOmpW抗原の送達のために大型で潜在的に不安定なマルチコピー発現プラスミドを必要としない二価の生ベクターワクチンの構築を可能にする、染色体に組み込まれた遺伝子カセットから、発現させることができる。本発明者らの候補の生キャリアワクチンの臨床的許容性を改善するために、本発明者らは、本発明者らの生ベクターの病原性に対するAbOmpA発現のいずれの影響をも正式に排除した。本発明者らはまた、独自の外膜小胞抗原送達プラットフォームを操作して、組換えrOMVを介した輸送のためのモデル外膜タンパク質としてClyAを使用するPagL媒介抗原送達システムの効率を実証する原理証明研究を、成功裏に完了した。
【0124】
実験計画
パート1:チフス菌Ty2に由来し、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれか由来の防御的外膜タンパク質OmpAおよびOmpWを発現する二価チフス菌ベースのキャリアワクチンが、PagL媒介OMVを介して両方の外来抗原を効率的に輸送する。本発明者らは、ウエスタン免疫ブロット分析による、細胞に関連付けられる高レベルのOmpAおよびOmpW発現、フローサイトメトリーによる表面発現、および精製されたOMVにおける効率的な細胞外輸送を検証する。
【0125】
本発明者らは、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかに由来するOmpAおよびOmpWの両方を標的とする病原体特異的二価キャリアワクチンを構築する。両方の抗原が、染色体に組み込まれた合成遺伝子カセットによってコードされるであろう。OmpAベースのアジュバント添加サブユニットワクチンからの利用可能なデータが実験動物モデルにおける負荷に対する部分的な防御のみをもたらしたことを考え、本発明者らは、単一MDR病原体に対する二価ワクチンにOmpAおよびOmpWの両方を含めることが感染に対する最大の防御をもたらすと仮説を立てる。次いで、単一特異性ワクチンを混合することによって、防御の幅を増大させることができる。染色体に組み込まれたカセットは、ネステッドプロモーターによって転写調節され、粘膜免疫後のワクチンがインビボで遭遇する可能性が高い増殖期または環境シグナル(オスモル濃度など)のいずれかによる誘導を可能にする(
図5)。この戦略は、CVD910を使用して粘膜性ペストワクチンを操作するために本発明者らのグループによって首尾よく活用され、マウス鼻腔内免疫原性および負荷モデルを使用して、免疫原性および防御性の両方が証明された(Galen et al.,Infect Immun 2015;83(1):161-72)。OmpAおよびOmpWの調節された染色体発現は、調節されていない構成的発現によるキャリアワクチンの過剰減衰を回避し、これはまた封入体の形成または膜輸送経路の飽和による表面発現の低下によって、免疫原性を低下させる可能性もあった(Mushtaq et al.,Biophys J 2017;112(10):2089-98;Schiffrin et al.,J Mol Biol 2017)。
【0126】
アプローチ.A.バウマンニに対する二価キャリアワクチンの構築のために、本発明者らは、合成PompC-ompWAbカセットを、本発明者らの以前に構築した一価CVD910ΔompAStΔrpoS::ompAAb*キャリア株のguaBA遺伝子座に組み込む。次に、本発明者らは、必須一本鎖結合(SSB)タンパク質の発現に基づく、本発明者らが公開した非抗生物質プラスミド安定化システムを使用して、発現プラスミドpPagL(SSBを発現する)の非抗生物質バージョンを構築する。得られた安定化プラスミドを染色体ssbの欠失後に本発明者らの二価キャリアワクチンに導入し、CVD910ΔompAStΔguaBA::ompWAbΔrpoS::ompAAb*Δssb(pPagL)キャリア株を作製する(
図6、および以下でCVD910Abと称する)。合成遺伝子カセットを用いた同一の戦略を使用して、残りのキャリアCVD910Kpも構築する。免疫学的研究における比較のために、本発明者らは、guaBA遺伝子座およびrpoS遺伝子座の両方からOmpAまたはOmpWのいずれかを発現する一価キャリア株を構築し、A.バウマンニについてはCVD910-2AAbおよびCVD910-2WAb、肺炎桿菌についてはCVD910-2AKpおよびCVD910-2WKpと称する。guaBA遺伝子座の転写制御は増殖速度によって制御されるので、これらのキャリアにおけるOmpWの発現は、生ベクターの増殖速度と代謝で同期するであろう。rpoS由来のOmpAの発現は、静止期の増殖における誘導によって独立して制御される(Davies et al.,Microbiology 1996;142(Pt 9):2429-37;Hengge-Aronis et al.,MicrobiolMolBiolRev 2002;66(3):373-95、表)。この段階的な発現戦略は、OmpAおよびOmpW両方の合成を、宿主における生キャリアワクチンの増殖速度および適合性と、代謝的に同期させることを可能にし、それにより、一度に合成された両方の外来抗原の不適切に高いパルスからの過剰減衰を回避する(Galen et al.,Vaccine 2014;32(35):4376-85)。本発明者らは、既に手元にある抗血清または本発明者らのグループによって精製タンパク質で免疫化されたマウスで産生された抗血清を使用するウエスタン免疫ブロット分析によって、OmpAおよびOmpWの両方の発現を確認する。本発明者らはまた、フローサイトメトリーによって各二価キャリアワクチン候補の表面でのOmpAおよびOmpW両方の同時発現の効率を調べるために、これらの抗体を使用する。さらに、本発明者らは、ネズミチフス菌と共に使用するために開発された、よく特徴付けられた公開プロトコルを使用して、それぞれのキャリア株から一価および二価の外膜小胞を精製し、pPagLを含まないキャリアからの非修飾OMVと比較したrOMVに対するTLR4の活性化を介したNF-κB依存性ルシフェラーゼ活性を測定することによって、反応原性の低下を検証する(Rossi et al.,Clin Vaccine Immunol 2016;23(4):304-14;Kawasaki et al.,J Endotoxin Res 2004;10(6):439-44;Kawasaki et al.,J Biol Chem 2004;279(19):20044-8)。以下、一価OMVは、A.バウマンニ特異的キャリア由来のOMVAbOmpAおよびOMVAbOmpW、ならびに肺炎桿菌特異的キャリア由来のOMVKpOmpAおよびOMVKpOmpWと称される。二価小胞は、それぞれA.バウマンニ由来のOMVAbおよび肺炎桿菌由来のOMVKpと称される。非修飾OMVは、外来抗原がコードされていないCVD910(pPagL)から調製される(OMV910と呼ばれる)。
【0127】
本発明者らは、合成カセットのさらなるコピーを組み込むことによって、染色体の発現のレベルを増加させることができる。CVD910の構築は、guaBAおよびhtrAの欠失変異を減衰させることによって達成されたので、残りのhtrA遺伝子座、またはおそらくpPagLの導入のために欠失されたssb遺伝子座に組み込むことができる。
【0128】
パート2.A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかからOmpAおよびOmpWを効率的に発現する二価チフス菌ベースのキャリアワクチンが、マウスにおける負荷に対する防御を誘発する。
【0129】
この実施例の目標は、MDRのA.バウマンニおよび肺炎桿菌による潜在的に致死的な感染に対する粘膜ワクチンを開発することである。本発明者らは、このことを、それぞれ腹腔内または鼻腔内経路のいずれかで負荷された粘膜免疫マウスにおける敗血症および肺炎に対する防御を実証する概念実証有効性研究を首尾よく完了することによって、達成するであろう。本発明者らは、最初に、キャリア株または精製されたrOMV(すなわち、相同免疫戦略;パート2A)のみ、または動物がキャリアワクチンおよびrOMVによる逐次免疫化を受ける異種免疫化戦略(パート2B)を用いて誘発される防御を調べる。本発明者らは、異種プライム・ブースト戦略を使用して、マウスにおいて優れた免疫および防御を観察した(Galen et al.,Infect Immun 2015;83(1):161-72;Vindurampulle et al.,Vaccine 2004;22(27-28):3744-50)。これらの研究の主要評価項目は防御に対する有効性であるが、本発明者らはまた、潜在的な体液性および細胞性の防御の相関関係を調査する。肺炎桿菌の複数の血清型に対する莢膜非依存性CD4+Th17媒介性防御が報告されており、最近、アシネトバクター・バウマンニの感染に対するCD4+Th17媒介性防御が提唱された(Chen et al.,Immunity 2011;35(6):997-1009;Yan et al.,Mediators Inflamm 2016;2016:9834020)。したがって、抗原特異的血清IgGおよびIgA応答の測定に加えて、本発明者らは、抗原特異的CD4+Th17応答と防御との間の潜在的な相関を具体的に調べる。
【0130】
パート2A.相同プライム・ブースト免疫戦略によって誘発される防御免疫
【0131】
アプローチ.パート1で確立された一価および二価キャリアワクチンの免疫原性を、表2、パート2A、実験1に詳述されているように、5群に無作為化し、0日目および28日目に約5×109コロニー形成単位(CFU)で鼻腔内(IN)免疫化したBALB/cマウスで評価する。精製されたrOMV(パート2A、実験2)によるマウスの免疫化のために、本発明者らは、少なくとも2つの用量が筋肉内投与されたA.バウマンニおよび肺炎桿菌から精製されたOMVを使用した、以前に公開された防御の研究に基づいて、少なくとも50%の防御を誘発することを意図して、1μg、5μg、および10μgの漸増用量の非アジュバント二価rOMVで一度IN免疫化されたマウスにおいて、用量漸増パイロット研究を行う(McConnell et al.,Vaccine 2011;29(34):5705-10;Huang et al.,PLoS One 2014;9(6):e100727;Lee et al.,Exp Mol Med 2015;47:el 83)。次いで、50%の防御を与える用量を、マウスが0日目および28日目に2用量のrOMV INを受ける実験2において、完全な防御について試験する。本発明者らのグループによって以前に記載されているように、抗原特異的血清IgGおよびIgGアイソタイプを、0日目、14日目、28日目および41日目に採取した血清からELISAによって測定することになる(Galen et al,J Infect Dis 2009;199(3):326-35;Gat et al.,PLoS Negl Trop Dis 2011;5(11):el 373)。粘膜免疫を防御と相関させる試みにおいて、本発明者らはまた、以前に記載されたように、41日目に収集された肺洗浄液中のOMP特異的sIgAを測定する(KuoLee et al.,Vaccine 2015;33(1):260-7;Chen et al.,Innate Immun 2008;14(5):269-78)。次いで、マウスを42日目に完全病原性A.バウマンニ株LAC-4または完全病原性肺炎桿菌B5055で負荷した(群を等分し、半分は1×108CFUのLAC-4または5×104CFUのB5055のいずれかでINで負荷して、肺炎の負荷に対する防御効果を評価する。残りの免疫化マウスに、1×106CFUのLAC-4または1×105CFUのB5055を腹腔内(IP)で負荷して、敗血症性播種に対する防御効果を判定する(Harris et al.,Antimicrob Agents Chemother 2013;57(8):3601-13;KuoLee et al.,Vaccine 2015;33(1):260-7;Kumar et al.,Inflammation 2011;34(5):452-62)。生存率を、負荷の7日後に両方のモデルでスコア化する(すなわち、49日目)。OMP特異的Th17応答を調べるために、本発明者らは、41日目に免疫化したが、まだ負荷のないマウス(5匹のマウス)および49日目に負荷したマウスから、肺および脾臓の両方を採取する。本発明者らはまた、負荷後7日目の安楽死後の瀕死のマウスおよび防御されたマウスの両方からの、負荷後の血液、肺、および脾臓からの細菌組織の負荷を定量することになる。本発明者らは、採取した組織から脾細胞および肺リンパ球系細胞を精製し、PBS、OMVAbまたはOMVKpのいずれかで刺激し、前述のようにTh17エフェクターサイトカインIL-17AおよびIL-22を測定する(Chen et al.,Immunity 2011;35(6):997-1009)。γδT細胞およびNK細胞などの他の細胞もこれらのサイトカインを産生することができるので、本発明者らは、それらを異なる蛍光チャネルで(NKおよびγδT細胞として)分離するだけでなく、転写因子ROR-γtについてアッセイすることによって、これらのサイトカインを産生する単核細胞が実際にCD4+Th17であることも確認する(O’Brien et al.,Eur J Immunol 2009;39(3):662-6;Passos et al.,J Immunol 2010;184(4):1776-83;Yao et al.,PLoS Pathog 2010;6(2):e1000789;Chien et al.,Trends Immunol 2013;34(4):151-4;Xu et al.,J Immunol 2014;192(4):1778-86)。さらに、本発明者らはまた、ワクチン接種および/または負荷によって誘導されたCD4+Th17細胞がメモリー細胞の特徴を示すかどうかを評価する(CD45RA/CD62L分類)。
【表2】
【0132】
パート2B.異種プライム・ブースト免疫戦略によって誘発される防御免疫
【0133】
アプローチ.本発明者らは、BALB/cマウスを5つの群に無作為化し、0日目にキャリアワクチンでプライムし、28日目にrOMVでパート2Aで判定された用量でブーストして、負荷に対する50%の防御を付与した。パート2Aと同様に、体液性および粘膜免疫を判定し、42日目にマウスにLAC-4またはB5055のいずれかをIPまたはINで負荷し、CD4+Th17応答が防御と相関するかどうかを調べる。
【0134】
本発明者らはまた、50mgまで用量を漸増させて試験することができ、これは、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかによる相同的負荷に対する防御を誘発した(McConnell et al.,Vaccine 2011;29(34):5705-10;Huang et al.,PLoS One 2014;9(6):el00727;Lee et al.,Exp Mol Med 2015;47:el83)。本発明者らは、異種のプライム・ブースト免疫戦略を使用して免疫化されたマウスにおいて最高レベルの免疫および防御が誘発されると予想する。B5055(K2血清型)で負荷したマウスにおいて顕著な防御が観察された場合、本発明者らは、別個の資金供給下でマウスにおける病原性について現在試験している他の肺炎桿菌莢膜型に対する有効性について、実験および試験を繰り返す。
【0135】
パート3:パート1およびパート2で開発され、単一病原体による負荷に対して試験されたキャリアワクチンおよび精製されたOMVは、2つのキャリアワクチンの混合物を含有する用量でプライムし、混合OMV調製物でブーストしたマウスにおいて、A.バウマンニ、および肺炎桿菌の両方による負荷に対する防御を付与する。
【表3】
【0136】
ここで、本発明者らは、両方のキャリアワクチンの混合物でプライミングされ、OMVAbとOMVKpの両方の混合物でブーストされたマウスの防御効果を判定する(表3、パート3、実験1)。本発明者らはまた、異種プライム・ブースト戦略で投与されるキャリアワクチンおよびrOMVの順序が、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかによる相同的負荷に対する防御効果に影響するかどうかを研究する(パート3、実験2)。さらに、いくつかの最近の報告では、アシネトバクター・バウマンニと肺炎桿菌の両方の抗生物質耐性分離株による同時感染が記載されている(Perez et al.,J Antimicrob Chemother 2010;65(8):1807-18;Mammina et al.,Scand J Infect Dis 2013;45(8):629-34;Zhang et al.,Chin Med Sci J 2014;29(1):51-4;Timofte et al.,Eur J Clin Microbiol Infect Dis 2015;34(10):2069-74;Hammerum et al.,Int J Antimicrob Agents 2015;46(5):597-8)。したがって、本発明者らはまた、両方の病原体を含み、致死量で免疫マウスを負荷することによって、複数の菌の感染に対する堅牢な防御が達成され得るかどうかを判定する。
【0137】
アプローチ.パート2で行ったように、0日目にプライムし、28日目にブーストするように、マウスを5つの群にランダム化する。rOMVによる免疫化のために、本発明者らは、パート2Bの実験1で使用した個々の用量を合わせて単回用量にする。したがって、10mgのOMVAbまたはOMVKpのいずれかをパート2で使用した場合、併用のrOMVワクチン用量は単回用量で合計20mgを含有する。28日目にブーストを行った後、マウスは、42日目にLAC-4またはB5055のいずれかをIPまたはINで相同的に負荷する。以前のパートと同様に、体液性免疫および粘膜免疫が判定され、CD4+Th17応答が防御と相関された。
【0138】
本発明者らは、混合物における影響下の個々のワクチンのレベルを増加させて応答を改善することができる。パート2Bのように、B5055(K2血清型)で負荷したマウスにおいて顕著な防御が観察される場合、本発明者らは、他の肺炎桿菌莢膜型に対する有効性について実験および試験を繰り返す。
【0139】
結論
この実施例では、本発明者らは、チフス菌の弱毒化株に由来し、StOmpAの欠失およびPagLの誘導性発現のためにさらに操作された単一キャリアワクチンプラットフォームを使用して、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれか由来のOmpAおよびOmpWタンパク質が各輸送小胞の表面に過剰発現されるrOMVを効率的に送達するということを提唱する。rOMVの発現および輸送は、粘膜免疫化後の増殖速度およびオスモル濃度の両方によってインビボで誘導される。この実施例は、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかに対する少なくとも4つの独立したワクチン-2個の個々の生キャリアワクチンおよび2つの精製されたrOMVベースの無細胞ワクチン-を生成する。さらに、本発明者らは、ワクチン接種を最適化するために、キャリアワクチンおよびrOMVを各タイプのワクチンの単回投与製剤に混合するため比類ない柔軟性を有するであろう。このプラットフォームは、緑膿菌を含む追加のMDR病原体に対する粘膜ワクチンを開発するために使用することができ、その防御的なOmpA様タンパク質はまた、粘膜サルモネラベースのワクチンを使用する実験動物負荷モデルにおいて防御を付与することが証明されている(Zhang et al.,Microbiol Immunol 2015;59(9):533-44)。
【0140】
実施例2 PagL媒介抗原送達プラットフォームの開発
ClyAは、ClyAが過剰発現される候補ワクチン株の臨床的許容性を低下させ得る細胞変性特性を有する溶血素であるので、本発明者らは、PagLに基づいてOMVの形成および輸送を誘導するための非病原性の代替物を開発しようと努めた(Ludwig et al.,Mol Microbiol 1999;31(2):557-67;Lai et al.,Infect Immun 2000;68(7):4363-7)。したがって、本発明者らは、pagL v1(配列番号1および2)、pagL v2(配列番号3および4)、およびpagL v3(配列番号5)と命名された3つの合成pagL遺伝子の対立遺伝子を構築した。これら3つのバージョンは、各対立遺伝子の翻訳効率を制御する5’末端DNA配列が異なる。生物学的に活性なPagLの十分な合成を保証するpagLの最適な翻訳効率が、このタンパク質の潜在的に致死的な過剰発現を回避しながら、これらの実験の時点では未知であったので、この慎重な操作アプローチが採用された。pagL v2およびv3のアミノ酸配列は同一である。この目的のために、pagL v1は、最適化されたリボソーム結合部位(RBS)、ATG開始コドン、および遺伝子が翻訳効率を高め始めるときのいくつかの最適化されたコドンであるコドンを担持する。pagL v2はv1に類似しているが、翻訳効率をわずかに低下させるGTG開始コドンを含む。pagL v3は、ネズミチフス菌の中で天然に存在するpagL遺伝子の野生型染色体配列と本質的に同一である。したがって、本発明者らは、v2からの合成レベルの低下、およびv3からの合成レベルの低下とともに、v1からのPagL合成の最高レベルを予想した。
【0141】
各カセットをBamHI-NheI断片として、BamHIおよびNheIで消化した本発明者らの非抗生物質低コピー数発現プラスミドpSEC10に挿入し、clyA遺伝子を置換してpPagLを作製した。pPagL v1の予想される配列は配列番号6に列挙されている。誘導性組換え外膜小胞(rOMV)を用いた本発明者らの以前の実験と同様に、本発明者らは、ClyA含有小胞に関連する溶血活性を測定することによってOMV輸送を監視したいと考えた。したがって、CVD910のguaBA遺伝子座にClyAをコードするカセットを組み込んだ後、得られた株にpPagLを導入してCVD910DguaBA::clyA(pPagL)を作成した。この特定の株では、ClyAは染色体でコードされたOmpAタンパク質の代理の溶血性レポーターとして作用しており、プラスミドコード化PagLの過剰発現は、rOMV輸送を大幅に改善すると予想される点に留意されたい。すべての株を37°Cで初期対数期増殖まで増殖させ、ヒツジの赤血球に対する約2×107CFUの細菌について、OD540で溶血活性を測定した。
図13に示すように、予想通りワクチン株CVD910に溶血活性は存在しなかった(レーン2)。驚くべきことに、CVD910(pSEC10)で観察されたプラスミドコード化溶血活性に対するコピー数の低下のために、染色体でコードされたClyAの溶血活性は、CVD910ΔguaBAv.clyA(レーン3)では検出されなかった。しかし、pPagLを910ΔguaBAv.clyA(レーン4)に導入した場合に顕著な溶血活性が観察され、PagLの過剰発現がrOMVの優れた輸送を誘導することが、明らかに実証された(この場合、代用外膜タンパク質としてClyAを含む)。
【0142】
したがって、本発明者らは、A.バウマンニ由来のOmpAおよびOmpW外膜タンパク質が、送達を増強し、防御効力を改善するために、PagFの過剰発現を通してrOMVを介してチフス菌ベースのキャリアワクチンから効率的に輸送され得ると予想する。さらに、当業者は、この技術が、標的外膜タンパク質が防御効力を誘発する可能性を有する任意の細菌病原体に対する生粘膜キャリアワクチンの開発のため、送達プラットフォームとして機能することを、容易に理解するであろう。さらに、本発明者らは、そのようなキャリアワクチンの構築から生じるrOMVを効率的に精製し、それ自体で非経口ワクチンとして使用することができるか、またはそのようなワクチンプラットフォームの防御効果をさらに高めるために異種粘膜プライム非経口ブースト(または逆の順序)の状況で使用することができることを指摘する。
【0143】
本教示は様々な実施形態に関連して説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、改変物、および均等物を包含する。
【0144】
本開示を通して、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書は、特定の引用によって参照される。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が関係する最新技術をより完全近く説明するために、参照により本開示に組み込まれる。
【0145】
実施例3 AbOmpAワクチンの開発
新規なチフス菌生ベクタープラットフォーム技術の適切な操作により、本発明者らは、アシネトバクター・バウマンニによって引き起こされる潜在的に致死的な感染症に対する粘膜投与三価ワクチンを構築することができる。本発明者らの独自のアプローチは、弱毒化チフス菌ベースの生キャリアワクチンの外膜を、A.バウマンニ由来の防御的外膜抗原(または公衆衛生にとって懸念される他の病原体)が新規誘導性外膜小胞送達システムを介して免疫誘導部位に粘膜送達される抗原提示プラットフォームに再モデル化するように設計されている。生キャリアワクチンを介した組換え外膜小胞(rOMV)の粘膜送達は、1)粘膜誘導部位への持続的なインビボ送達、および2)適切に折り畳まれた防御抗原が濃縮された多価rOMVの送達を含む、従来の無細胞OMVベースのワクチン接種戦略を超える顕著な利点を提供する。この独特のワクチン接種戦略の防御効果を調べるために、本発明者らは、ここで、A.バウマンニ由来の防御的外膜タンパク質AbOmpAをコードする合成遺伝子の操作を完了した。このカセットは、低コピーの非抗生物質の遺伝的に安定化された発現プラスミドによってコードされる。免疫エフェクター細胞へのこの防御抗原の送達を増強し、それによってこの粘膜ワクチンの防御効力を改善するために、本発明者らは、過剰増殖性タンパク質PagLの誘導性過剰発現を通してAbOmpAを保有するrOMVの送達を増強した。AbOmpAおよびPagLの表面発現の効率は、A.バウマンニ感染に対する防御抗原であることも報告されている外膜折り畳みタンパク質AbBamAのさらなる染色体発現によって増強されている。この誘導性小胞形成系は、従来のプラスミドに基づく発現のみと比較して、AbOmpAの表面発現を増強することがフローサイトメトリーによって確認されている。
【0146】
アシネトバクター・バウマンニは、創傷および熱傷感染、菌血症、肺炎、および髄膜炎を含む、集中治療環境における院内感染に頻繁に関連するグラム陰性非芽胞形成性球桿菌である。公衆衛生に対する大きな懸念は、臨床分離株が現在利用可能な大半のクラスの抗生物質に耐性になる多剤耐性(MDR)の頻度の着実な増加であり、患者の治療を著しく損ない、感染に関連する罹患率および死亡率を劇的に増加させる。疾病管理予防センターは、多剤耐性アシネトバクターを公衆衛生に対する深刻な脅威として分類している。世界保健機関はまた、A.バウマンニおよびカルバペネム耐性腸内細菌を、ヒトの健康に対する最大の脅威をもたらす抗生物質耐性病原体が関与する優先度1の重要なリスクとして挙げている。有効な抗生物質での治療法が急速に減少しているという事実があるにもかかわらず、これらの病原体のいずれに対する認可ワクチンも現在利用可能ではない。
【0147】
誘導性小胞送達システム本発明者らは、本発明者らの弱毒化チフス菌候補ワクチン株CVD910の外膜表面に発現される外来抗原が、これらの外来表面発現タンパク質抗原を保有する組換え外膜小胞を介してワクチン株の表面から効率的に輸送され得る新規の浸透圧的誘導性ワクチン抗原送達システムを遺伝子操作した。ワクチン開発という状況でこの概念を検証するために、本発明者らは、外膜タンパク質が生きた菌株の表面に効率的に発現される、A.バウマンニに対する本発明者らの最初のプロトタイプの弱毒化CVD910候補生ワクチンを、さらに操作した。本発明者らは、PagLの誘導性過剰発現をコードする低コピー発現プラスミドを導入した。PagLは、サルモネラ菌において過剰発現されたときに過剰小胞形成を触媒することが最近報告された新規な外膜脂質Aデアシラーゼである。本発明者らは、PagLの過剰発現が、疾患に対する防御を誘発するため免疫誘導部位へ効率的に送達するために、AbOmpAを担持するrOMVの形成を触媒し得るという仮説を立てた(Elhenawy et al.,mBio 2016;7(4):pii:e00940-16.doi:10.1128/mBio.-16)。AbOmpAおよびPagLの両方の外膜への輸送効率を改善するために(rOMV媒介性抗原輸送を増強し、ワクチン有効性を改善する意図で)、本発明者らはまた、このプロトタイプワクチンの染色体に、外膜折り畳みタンパク質BamAをコードする誘導性遺伝子カセットを組み込んだ。
【0148】
BamAは、グラム陰性菌の外膜へのβバレルタンパク質の挿入を触媒する5種のタンパク質の外膜のβバレル集合機構(BAM)複合体の必須成分を構成する約90kDaのタンパク質である(Noinaj et al.,Nature reviews Microbiology 2017;15(4):197-204)。しかし、完全なBamABCDE複合体は、選択された外膜タンパク質の効率的な挿入に必要とされていない。実際、OmpAは、BamAのみが存在する脂質二重層に効率的に組み込むことができることが、いくつかのグループによって報告されている(Gessmann et al.,Proc Natl Acad Sci U S.A 2014;111(16):5878-83;Plummer et al.,Biochemistry 2015;54(39):6009-11)。したがって、本発明者らは、PagLを共発現するワクチン株におけるBamAの過剰発現がまた、AbOmpAなどの表面発現外来抗原を担持する外膜小胞のより効率的な輸送をもたらすという仮説を立てた。A.バウマンニから精製したAbBamAが、MDR A.バウマンニで負荷したマウスにおいて防御を付与したという最近の報告を考慮して、本発明者らは、A.バウマンニ5からのbamAAb対立遺伝子を使用することを選択した。興味深いことに、本発明者らの候補ワクチンへのAbBamAの組み込みは、したがって1)rOMVを介したワクチン抗原輸送の改善、および2)A.バウマンニに対するワクチン接種のための第2の防御抗原の導入(すなわちAbOmpAおよびAbBamA)、という2つの目的に役立つ。
【0149】
1つの操作された細菌の株、2つのワクチン様式。外来抗原がrOMVを介して免疫誘導部位に輸送されるA.バウマンニ感染に対する生粘膜ワクチンの構築はまた、原理的にそれ自体でワクチンとして使用することができる多価rOMVを精製する興味深い可能性を提示する。本発明者らや他者は、生キャリアワクチンによる粘膜プライミングとそれに続く標的外来抗原によるブースティング(すなわち、異種プライム・ブースティング)が、キャリアまたはアジュバント添加抗原のいずれか単独による免疫と比較して、負荷に対するより高いレベルの免疫を誘発することを報告した(Vindurampulle et al.,Vaccine 2004;22(27-28):3744-50;Galen et al.,Infect Immun 2015;83(1):161-72;Galen et al.,J Infect Dis 2009;199(3):326-35;Chinchilla et al.,Infect Immun 2007;75(8):3769-79)。
【0150】
弱毒化チフス菌生キャリアワクチンにおけるAbOmpA発現は病原性ではない。本発明者らは、チフス菌の新規弱毒化株、CVD910を操作し、特に、A.バウマンニなどの無関係なヒト病原体に対する防御免疫を誘発することができる外来抗原を提示するキャリアワクチンとしての使用を意図した。この株は、野生型病原体Ty2に由来し、第2相臨床試験において安全で高度に免疫原性であることが証明されたaroC、aroD、およびhtrAに減弱欠失変異を保有する、以前に構築された弱毒化ワクチン候補であるCVD908-htrAに取って代わる(Tacket et al.,Infect Immun 2000;68:1196-201)。CVD910は、臨床的に証明されたCVD908-htrA株と同じレベルの減衰を維持しながら、guaBAおよびhtrAに欠失を保有するように操作された。本発明者らは、ブタ胃ムチン腹腔内マウス負荷モデルを使用してCVD910の減衰の予備評価を実施して、CVD910対CVD908-htrAについてBALB/cマウス群の50%(LD50)において死を引き起こす最小致死量を比較した。このモデルについて、本発明者らは、チフス菌の腹腔内負荷について、Code of Federal Regulations for Food and Drugs,Title 21,Part 620.13(c-d),1986で推奨されているガイドラインに広く従う。この方法を使用して、本発明者らは、CVD910およびCVD908-htrAの両方のLD50が約5×105CFUであるのに対して、この負荷モデルにおける野生型Ty2のLD50は約10CFUであることを確認した(Wang et al.,HumVaccinlmmunother 2013;9(7):1558-64;Tacket et al.,Infect Immun 1992;60(2):536-41)。
【0151】
CVD910の安全性のベースラインレベルおよびキャリアワクチンプラットフォームとしてのその有効性を明確に確立したので、低コピー数発現プラスミドpAbOmpAで発現される38.6kDaのAbOmpA候補ワクチン抗原をコードする合成ompAAb発現カセットを設計した。組織培養細胞を用いて研究した場合、AbOmpAがインビトロで病原性因子として機能するという文献の報告を考慮すると、AbOmpAがこのプラスミドを保有するCVD910株[ここではCVD910(pAbOmpA)と称していた]の病原性を許容できないほど増加させる可能性を正式に除外することが重要であった(Choi et al.,Cell Microbiol 2008;10(2):309-19;Lee et al.,Journal of microbiology(Seoul,Korea)2010;48(3):387-92)。したがって、本発明者らは、親ワクチンCVD910に対するCVD910(pAbOmpA)のブタ胃ムチン負荷試験を繰り返すことによって、毒性に対するAbOmpAのプラスミドベースの発現の効果を評価した。ここで、本発明者らは、CVD910のLD50は、CVD910(pAbOmpA)の8.73×106CFUに対して2.14×106CFUであると判定した。本発明者らは、AbOmpAの発現がCVD910の安全性に影響を及ぼさず、AbOmpAを発現するCVD910が、A.バウマンニの感染に対する生キャリアワクチンのさらなる開発のための許容される候補を構成すると結論する。
【0152】
AbOmpAは、CVD910の表面に効率的に発現する。CVD910におけるAbOmpAの発現に関するいかなる安全上の懸念も除外して、次に、本発明者らは、AbOmpAが、AbOmpA特異的抗体によってCVD910(pAbOmpA)生キャリアの表面で認識され得るかどうかを調べた。本発明者らは、AbOmpA外膜ループエピトープの表面接近可能性を判定するためにフローサイトメトリーを使用した。株を一次ポリクローナルマウスAbOmpA特異的抗血清で染色し、続いて抗マウスAlexa fluor488で二次染色した。合成された全AbOmpAのおよそ何パーセントが表面に露出したかを推定するために、本発明者らはまた、抗AbOmpA抗体の一次染色の前に、CVD910のアリコート(pAbOmpA)を0.2%トリトンX-100で透過処理した。
図15に示すように、AbOmpAを発現するワクチン株では、優れた表面標識蛍光(野生型A.バウマンニと同程度)が観察された。実際、透過処理された細胞からの全蛍光と比較した場合、観察された蛍光の顕著な割合は、表面標識エピトープに起因し得る。
【0153】
PagL媒介抗原送達プラットフォームの開発本発明者らの候補ワクチン株CVD910の表面のAbOmpAの発現を実証した後、本発明者らは、免疫後に表面発現抗原を免疫誘導部位に送達するための誘導性外膜小胞抗原輸送系の開発を開始した。これを達成するために、本発明者らは、PagL、すなわちサルモネラ菌で過剰発現させたときに過剰小胞形成を触媒することが最近報告された脂質A脱アシル化酵素の使用に集中した1。PagLの過剰発現が理論的に抗原含有rOMVの過剰小胞形成を誘導することができるものとして、この戦略はまた、精製された多価rOMVを、それ自体粘膜ワクチンとして、または、それらが精製される生キャリアワクチンと組み合わせて使用する独自の機会を提示した。
【0154】
この興味深い可能性を調査するために、本発明者らは、最初に、過剰発現したときに大きな外膜小胞の形成を触媒することをWaiらによって最初に報告された、細胞溶解素A(ClyA)と呼ばれる新規の内因性サルモネラ溶血素により、表現型でタグ化する小胞によって、OMV輸送を監視することを試みた(Wai et al.,Cell 2003;115(1):25-35)。この単純な溶血性レポーター表現型を使用することにより、OMV輸送の迅速な定量的評価が可能になり、発現カセットの最適化を効率的に誘導し、潜在的に致死的な小胞形成タンパク質の過剰発現を回避した。本発明者らは、低コピー発現プラスミドによってコードされる融合タンパク質として操作されたキャリア株から外来抗原を輸送するためClyAの発現を首尾よく利用した(Galen et al.,Infect Immun 2004;72(12):7096-106)。しかし、PagL媒介小胞形成を試験するために、溶血活性(すなわち、膜表面を表現型で「タグ付け」する)を検出するのに十分なレベルでClyAが表面に放出されるが、実際にClyA媒介小胞形成を触媒するのに十分な高さではないように、ClyA溶血素の発現を低下させる必要があった。したがって、本発明者らは、ClyAをコードするカセットをCVD910のguaBA遺伝子座に組み込み、レポーター株CVD910ΔguaBA::clyAを作製した。次に、翻訳効率が、最適なATG開始コドンの5塩基上流(pagLv1)、効率の低いGTG開始コドンの6塩基上流(pagLv2)、またはこのGTG開始コドンの5塩基上流pagLv3)の一致しているリボソーム結合部位(AGGAGG)の距離により異なる3バージョンの合成pagL遺伝子を構築した。RBSの理想的な位置がATG開始コドンから7~9塩基離れたものであるとして、本発明者らは、pagLv1>pagLv2>pagLv3の順序でこれら3つの同質遺伝子の対立遺伝子の発現レベルが低下すると予想した(Ringquist et al.,Mol Microbiol 1992;6(9):1219-29)。各対立遺伝子を、浸透圧制御PompCプロモーターの下流の低コピー数発現プラスミドpSEC10に挿入して、それぞれpPagLv1、pPagLv2およびpPagLv3を作製した。得られた発現プラスミドにおけるPagLの誘導性発現は、ompCプロモーターの浸透圧誘導によって転写的に制御される(Stokes et al.Infect Immun 2007;75(4):1827-34;Galen et al.,Infect Immun 2010;78(1):337-47;Galen et al.,Infect Immun 1999;67(12):6424-33)。本発明者らは、プラスミドにコードされたPagLの発現がRBSの効率と共に増加するにつれて、ClyAタグ付きrOMVの輸送も増加し、溶血活性の増加を伴うという仮説を立てた。
【0155】
この仮説を検証するために、各プラスミドをレポーター株CVD910ΔguaBAv.clyAに導入した。次いで、株を37°Cの誘導条件下で、初期対数期増殖まで増殖させ、ヒツジの赤血球に対する約2×107CFUの細菌についてOD540で溶血活性を測定した。
図16に示すように、ワクチン株CVD910(レーン2)には溶血活性は存在しなかった。予想通り、染色体でコードされたClyAの溶血活性は、染色体からの発現レベルが低下したため、CVD910ΔguaBA::clyA(レーン3)では検出されなかった。しかし、910ΔguaBA::clyA(pPagLv1)について顕著な溶血活性が観察され、これはRBSの効率が操作されると(レーン4対レーン5および6)減少して、PagLの過剰発現が外膜小胞を介して外膜タンパク質(すなわち、この場合、ClyA)の優れた輸送を誘導するという仮説を支持する。
【0156】
AbBamAの過剰発現によるOMPの表面発現の増強。
図15においてまとめられている予備的結果は、AbOmpAがCVD910の表面に首尾よく発現されたが、透過処理されていない細胞からの発現は、透過処理された細胞で検出されたレベルに対して減少したことを示唆していた。本発明者らは、この差異が輸送速度および/または外膜へのタンパク質の適切な挿入に起因する可能性があり、転座速度に影響する輸送タンパク質の過剰発現が表面発現を増強する可能性があるという仮説を立てた。本発明者らは、AbOmpAおよびPagLが両方ともβバレル膜貫通タンパク質であることを記した(McClean et al.,Protein and peptide letters 2012;19(10):1013-25;Krishnan et al.,The FEBS journal 2012;279(6):919-31;Rutten et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 2006;103(18):7071-6)。グラム陰性細菌の外膜へβバレルタンパク質を挿入することは、βバレル集合(BAM)複合体によって媒介され、そのタンパク質BamA(それ自体がβバレルタンパク質)は必須コア成分を含む(Albrecht et al,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 2014;70(Pt 6):1779-89.;Noinaj et al.,Nature reviews Microbiology 2017;15(4):197-204.)。BamA単独で、OmpAを含むβバレルタンパク質の外膜折り畳みおよび膜挿入をインビトロで促進できることも報告されている(Gessmann et al.,Proc Natl Acad Sci USA 2014;111(16):5878-83;Plummer et al.,Biochemistry 2015;54(39):6009-11)。したがって、本発明者らは、BamAの過剰発現が、ワクチン抗原AbOmpAを含む外膜タンパク質の表面の発現を改善し得るという仮説を立てた。考えられるところでは、外膜へのPagLの輸送の増強はまた、rOMVの形成、したがって免疫誘導部位への外来抗原の送達を増強し得る。
【0157】
この仮説を検証するために、本発明者らは、AbBamAをコードする合成遺伝子カセットを操作した。興味深いことに、翻訳がATG開始コドンで開始された本発明者らの元のカセットは、低コピー発現プラスミドにうまく挿入されなかった。したがって、AbBamAの潜在的に致死的な過剰発現を回避するために、本発明者らは、GTG開始コドンの5塩基(bamAAbv1)または4塩基(bamAAbv2)上流に位置するリボソーム結合部位を操作し、翻訳のレベルをより厳密に制御させた。RBSの理想的な位置が開始コドンから7~9塩基離れているとして、本発明者らは、bamAAbv1がbamAAbv2よりもわずかに高い発現レベルを有すると予想した(Ringquist et al,Mol Microbiol 1992;6(9):1219-29)。pagL対立遺伝子と同様に、本発明者らは、PompCプロモーターの転写制御下でbamA対立遺伝子を操作し、得られたカセットを本発明者らの低コピー発現プラスミドに挿入して、pAbBamAv1およびpAbBamAv2を作製した。次いで、これらのプラスミドをCVD910ΔguaBA::clyAに導入した。ClyAはβバレル構造を持たないが、本発明者らは、OMVの形成に対するAbBamA過剰発現のいずれの潜在的効果も調査したいと考えた(Wallace et al.,Cell 2000;100:265-76)。
図17にまとめられているように、CVD910(pSEC10)におけるClyAのプラスミドベースの発現に対する溶血活性は、CVD910(pSEC10)でclyAのコピー数が増加したため、CVD910ΔguaBAv.clyAにおける染色体でコードされたClyAについて観察されたものよりも著しく高かった(レーン3対レーン4)。驚くべきことに、CVD910ΔguaBA::clyAへのpAbBamAv1の導入は、CVD910におけるプラスミドに基づく発現に匹敵するレベルまで溶血活性を増強することができ(pSEC10)、この効果は、bamAAbv2対立遺伝子をあまり効率的に発現していない株では低下した(レーン5対レーン6)。本発明者らは、これらの実験から、AbBamAが、ClyAで表現型的にタグ化され、CVD910から輸送される外膜小胞の形成を増強することができ、AbOmpA、またはワクチン開発に関連する他の外来抗原を保有する小胞の輸送も増強することができると結論する。
【0158】
A.バウマンニ防御表面タンパク質AbOmpAおよびAbBamAを標的とする二価ワクチン株の構築。本発明者らの候補ワクチン株CVD910におけるAbOmpAの表面発現を首尾よく実証すること、ならびにrOMVの輸送を増強するPagLおよびAbBamAの両方の能力も実証することによって鼓舞され、次いで、本発明者らは、AbOmpAの表面発現が単一ワクチン株におけるPagLおよびAbBamAの両方の共発現によって最適化され得るという仮説を検証した。表面発現外膜タンパク質が小胞を介して即座に輸送されないとして、本発明者らは、これらの予備実験では明確に判断されていなくとも、表面発現が増加すると外膜小胞形成も最終的に増加すると推論した。これを達成するために、本発明者らは、93.2kDaのAbBamAタンパク質(配列番号18)をコードする、浸透圧で制御されたPompC-bamAAbv1(配列番号17)をCVD910のguaBA遺伝子座に組み込んだ。次いで、得られた株に上述の(
図15参照)pAbOmpA発現プラスミドを導入し、CVD910ΔguaBA::bamAAbv1(pAbOmpA)を作製した。
【0159】
最後に、本発明者らは、pagLv1をpAbOmpAに挿入して浸透圧的に制御されたPagLv1-AbOmpAオペロンを作製した低コピー発現プラスミドを構築した。次いで、得られたプラスミドpPagLv1-AbOmpAをCVD910ΔguaBA::bamAAbv1に導入し、最終的な株CVD910ΔguaBA::bamAAbv1(pPagLv1-AbOmpA)を作製した。次いで、本発明者らは、37°Cの誘導条件下で株を増殖させ、一晩の培養に対して2時間、4時間、6時間、および8時間で、各培養物をサンプリングした。
図15について上記したように、サンプルを一次ポリクローナルマウスAbOmpA特異的抗血清で染色し、続いて抗マウスAlexa fluor488で二次染色した。染色した試料を、最初に、免疫蛍光顕微鏡法によって、蛍光について定性的に評価し(
図18A)、次いで、一晩および2時間の試料を、フローサイトメトリーによって、野生型A.バウマンニの2時間および一晩の培養物と比較した(
図18BおよびC)。AbOmpAの優れた表面発現が、CVD910ΔguaBA::bamAAbv1(pPagL-AbOmpA)についての増殖曲線全体を通して、フローサイトメトリーによって判断した場合に野生型A.バウマンニに匹敵するレベルで観察された(
図18Bおよび
図18C)。この持続的な発現レベルは、単一の候補ワクチン株におけるPagLとAbBamAの両方の共発現が相乗的に働いて、ワクチン抗原の高レベルの表面発現を促進する(また、おそらくrOMVを介して輸送する)ことを示唆している。
【0160】
まとめると、これらの結果は、適切に折り畳まれた外来外膜タンパク質を効率的に発現し、本発明者らのキャリアワクチンの表面に送達することができる弱毒化チフス菌ベースの粘膜生キャリアワクチンの開発の実現可能性を堅固に確立する。本発明者らの候補の生キャリアワクチンの臨床的許容性を改善するために、本発明者らは、本発明者らの生キャリアの病原性に対する抗原発現のいずれの影響をも正式に排除した。本発明者らはまた、AbOmpA表面発現の効率が外膜折り畳みタンパク質AbBamAの過剰発現によって増強される独自のPagL媒介外膜小胞抗原送達プラットフォームを操作した。この革新的な修正は、外膜タンパク質の表面発現を改善するとともに、A.バウマンニからの第2の防御抗原を本発明者らのワクチンプラットフォームに導入する。本発明者らは、AbBamAによって触媒される表面発現の増強は、他の表面標的外来タンパク質の表面発現も増強し、次いで、PagLの誘導は、原核生物または真核生物のいずれかからの多種多様な外来タンパク質を潜在的に有する組換えOMVの効率的な輸送を触媒すると結論付ける。この技術は、ヒトの病原体に対するワクチン開発に限定されず、獣医学的な用途にも使用することができる。さらに、本発明者らや他者が開発した表面発現カセットの利用可能性を考慮して、本発明者らは、固形腫瘍に対する免疫療法ワクチンの開発のための本発明者らの新規OMVシステムの適用も、想定している(Galen et al.,J Infect Dis 2009;199(3):326-35;Galen et al.,Infect Immun 2004;72(12):7096-106;Galen et al.,Trends Microbiol 2001;9(8):372-6;Francisco et al.,Proc Natl Acad Sci USA 1992;89(7):2713-7;Hui et al.,Biotechnol Lett 2019;41(6-7):763-77;Niethammer et al.,BMC Cancer 2012;12:361;Schmitz-Winnenthal et al.,Oncoimmunology 2015;4(4):e1001217)。
【0161】
実施例4 精製されたrOMVのインビトロでの特性評価。
CVD910試薬株(仮、
図18)の表面でAbOmpAの優れた発現を示したので、本発明者らは次いで、高浸透圧で誘導されたrOMVを精製した。小胞を、細菌細胞および残屑を除去するための低速遠心分離および0.2μmフィルターによる上清の濾過、続いてrOMVをペレット化するための高速超遠心分離によって、液体培養物から精製した。ペレットを、PBSに再懸濁した。PagLの同時発現がOMVの形成を誘導するだけでなく、ジグルコサミン骨格の3位で脂質Aを脱アシル化してTLR4の活性化を減少させる(それによって反応原性を低下させ、ワクチン候補として精製されたrOMVの臨床的許容性を増加させる)ことを考慮して、本発明者らは、質量分析によってこれらの精製されたrOMVの脂質Aの構造を調べ、さらにTLR4活性を測定した。
図19に示すように、脂質Aの脱アシル化が、PagLではなくAbBamAのみを発現する対照CYD910ΔguaBA::Pompc-bamAAbから単離された、天然に存在するOMVに対して、CVD910ΔguaBA::PompC-bamAAb(pPagL-AbOmpA)から単離されたrOMVにおいて確認された。未修飾小胞(パネルA)に存在する脂質Aの主な形態は、2位脂肪酸においてC16脂肪酸が結合したアシル-オキソ-アシルを有するビス-リン酸化ヘキサ-アシル化脂質A(m/z 1798)およびヘプタ-アシル化脂質A(m/z 2036)構造であった。PagL媒介性の過剰水疱形成株(パネルB)では、ビス-リン酸化ペンタ-アシル化脂質A(m/z 1571)が観察され、それは予想通りm/z 1797構造から産生されたが、新規なヘキサ-アシル化脂質A(m/z 1809)が観察され、これはヘプタ-アシル化m/z 2036構造から産生された。この脂質A構造は、通常、野生型サルモネラ種由来の膜では観察されない。これらのデータは、精製されたrOMVに含まれる脂質Aの脱アシル化を確認しており、サルモネラにおけるPagL媒介性の過剰水疱形成を最初に報告したElhenawyらによって以前に報告された観察結果と密接に合致する(mBio.2016 Jul 12;7(4):e00940-16.doi:10.1128/mBio.00940-16.PMID:27406567)。脱アシル化がrOMVにおける脂質AのTLR4媒介反応原性を低下させると予想されることを考慮して、本発明者らは次に、マウスTLR4(Invivogen)を発現するHEK-Blue細胞におけるTLR4活性化についてアッセイした。
図19Cに示すように、本発明者らは、rOMV(緑色、「OMV2」)対未修飾野生型OMV(青色、「OMV1」)のTLR4活性のおおよそ100分の1の減少を確認した。これらのデータは、ヒト用ワクチンとして使用するためのrOMVの臨床的許容性を強く裏付けている。本発明者らは、本発明者らのOMV小胞化プラットフォームが、A.バウマンニまたは肺炎桿菌のいずれかによって引き起こされる感染に対してワクチン接種するために、OmpAおよびBamA外膜タンパク質標的を標的とする多価rOMVを効率的に操作するための新規の戦略を提供すると結論付ける。
【0162】
実施例5 AbOmpAを発現する精製されたrOMVの免疫原性。
まとめると、本発明者らの結果は、適切に折り畳まれた外来外膜タンパク質を効率的に発現し、試薬の株の表面に送達することができる弱毒化チフス菌ベースの試薬の株の開発の実現可能性を堅固に確立する。本発明者らはまた、AbOmpA表面発現の効率が外膜折り畳みタンパク質AbBamAの過剰発現によって増強される独自のPagL媒介外膜小胞抗原送達プラットフォームを操作した。この革新的な修正は、外膜タンパク質の表面発現を改善するとともに、A.バウマンニからの第2の防御抗原を本発明者らのrOMV候補ワクチンに導入する。これらの結果に鼓舞されて、本発明者らは次に、BALB/cマウスにおける精製されたrOMVAbOmpA小胞の免疫原性を調べた。
【0163】
24匹のBALB/cマウス(6~8週齢)を無作為に3つの群に分類し、以下のようにPBSまたは精製されたrOMVのいずれかで筋肉内免疫化した。群1(6匹のマウス)には、陰性対照としてPBSを投与した。群2(6匹のマウス)に、CVD910ΔguaBA::PompC-bamAAbから精製した空のrOMV[「OMV1」と称し、上段の
図1においてインビトロで特性評価した]を投与した。群3には、CVD910ΔguaBA::PompC-bamAAb(pPagL-AbOmpA)[「OMV2」と称し、上段の
図1においてインビトロで特性評価した]から精製したrOMVAbOmpA小胞を投与した。rOMVの濃度は、R.E.W.Hanockによって規定された3-Deoxy-D-manno-Octulosonic Acid(KDO)アッセイを使用して厳密に判定した(http://cmdr.ubc.ca/bobh/method/kdo-assay/)。各マウスは、1日目および21日目にアジュバントなしで筋肉内投与された2mgの精製されたrOMVを投与された。血清を0日目および28日目にマウスから得て、抗原特異的血清IgGをELISAによって測定した。
図2に示すように、予想通り、精製されたrOMVで免疫化したマウスの両方の群で、LPSに対する堅牢なチフス菌特異的血清IgG力価が検出された(
図20A)。驚くべきことに、AbOmpA特異的力価は、精製されたrOMVAbOmpA小胞で免疫化したマウスのLPS特異的力価よりもはるかに高かった。
【0164】
これらのデータは、小胞の外面に異種抗原を発現することができる精製rOMVの免疫原性を明確に実証している。免疫化の目的のために、これらのデータは、最高レベルの抗原特異的免疫および防御有効性を達成するためのいくつかの異なる戦略による成功した免疫化を示唆しており、それには、1)1つまたは複数の用量の精製されたrOMV単独での、アジュバントなしの筋肉内免疫化、2)Rosenqvistらによって報告されているように、アルミニウムアジュバントに吸着された精製rOMVを使用した筋肉内免疫(Dev Biol Stand.1998;92:323-33.PMID:9554288)、3)プライミングおよびブースター用量が精製されたrOMV(アジュバントありまたはなし)または相同のrOMVを発現する弱毒化生チフス菌株のいずれかを含む、異種プライム・ブースト戦略を使用した免疫化が含まれる。所与のワクチンを投与する順序を試験して、誘発された免疫および防御に対する免疫の順序の任意の効果を調べることができることは当業者には明らかであろう。
【0165】
本開示を通して、様々な刊行物、特許および公開された特許明細書は、特定の引用によって参照される。これらの刊行物、特許および公開された特許明細書の開示は、本発明が関係する最新技術をより完全近く説明するために、参照により本開示に組み込まれる。
【0166】
本教示は様々な実施形態に関連して説明されているが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。逆に、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、改変物、および均等物を包含する。
【配列表】
【国際調査報告】