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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞の増殖方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20230412BHJP
   C12N 11/04 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C12N5/0783
C12N11/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552879
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 US2021020430
(87)【国際公開番号】W WO2021178383
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/984,060
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505008028
【氏名又は名称】中央研究院
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Academia Road,Section 2,Nankang Taipei,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】フ チェ-ミン ジャック
(72)【発明者】
【氏名】チェン シー-ユ
(72)【発明者】
【氏名】ワン イ-フ
(72)【発明者】
【氏名】シェ ワン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ツェン イ-シウアン
(72)【発明者】
【氏名】ル ヤ-ティン
(72)【発明者】
【氏名】リン ジュン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】シュ チュン-ヤオ
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
【Fターム(参考)】
4B033NA16
4B033NB34
4B033NC05
4B033ND02
4B033ND10
4B033NF06
4B033NG05
4B033NH04
4B065AA94
4B065BA30
4B065BB19
4B065BB40
4B065BC01
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
ナチュラルキラー細胞を増殖する方法であって、それぞれがゲル化された内部、および個々にまたは集合的にナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激することができる1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む内部ゲル化細胞の集団を準備する工程、ならびにNK細胞の増殖を可能にする条件下で、1種または複数の膜結合タンパク質に応答することができるNK細胞を含有する細胞の集団を、前記内部ゲル化細胞の集団と共に培養する工程を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナチュラルキラー細胞を増殖する方法であって、
それぞれがゲル化された内部、および個々にまたは集合的にナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激することができる1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む内部ゲル化細胞の集団を準備する工程、ならびに
NK細胞の増殖を可能にする条件下で、1種または複数の膜結合タンパク質に応答することができるNK細胞を含有する細胞の集団を、前記内部ゲル化細胞の集団と共に培養する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記細胞集団が、末梢血単核細胞(PBMC)、濃縮NK細胞、iPSC由来NK細胞、胚性幹細胞由来NK細胞、組織常在性NK細胞、脾細胞、臍帯血細胞、および造血幹細胞由来NK細胞からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1種または複数の膜結合タンパク質が、41BBL、IL-15、IL-21、B7-H6、BAT3、HLA-DP、HLA-E、HLA-C2、HLA-A、HLA-C、HLA-G、HLA-F、HLA-C、MICA/MICB、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、AICL、CD48、NTB-A、2B4、CD2、CD58、CD11a、ICAM1、CRACC、OX40L、CD137L、ネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3、ネクチン-4、necl-1、necl-2、necl-3、necl-4、necl-5、PCNA、AICL、IgG、CD27L、CD72、CEACAM-1、CEACAM-5、OCIL、N-カドヘリン、E-カドヘリン、R-カドヘリン、シアル酸、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-12、IL-18、IL-27、IL-33、IL-6、IL-11、CNTF、LIF、OSM、CT-1、CLC、IFN-a、INF-b、CCL-5、およびTLR-1のアゴニスト、TLR-2のアゴニスト、TLR-3のアゴニスト、TLR-5のアゴニスト、TLR-6のアゴニスト、TLR-9のアゴニスト、NOD-1のアゴニスト、NOD-2のアゴニスト、NOD-3のアゴニスト、またはNLRP3アゴニストからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1種または複数の膜結合タンパク質が41BBLおよびIL-15を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記培養工程が、IL-21またはIL-2の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記培養工程におけるNK細胞数の内部ゲル化細胞数に対する比が1:0.5~20である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記内部ゲル化細胞の集団が、
前記1種または複数の膜結合タンパク質を発現する抗原提示細胞の集団を準備する工程、
プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有し、フェノールレッドを含まないDMEMに前記抗原提示細胞の集団を懸濁して第1の細胞懸濁液を生成する工程、
ゲル化溶液を前記第1の細胞懸濁液に添加して、第2の細胞懸濁液を生成する工程であり、前記ゲル化溶液が前記抗原提示細胞の膜透過性を増加させることができ、光反応性架橋剤および任意に光開始剤を含有する工程、
前記光反応性架橋剤および任意に前記光開始剤が前記抗原提示細胞に入るのを可能にするのに十分な時間、室温で前記第2の細胞懸濁液をインキュベートする工程、
前記第2の細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを生成する工程、
前記細胞ペレットをフェノールレッドを含まないDMEMに再懸濁して、第3の細胞懸濁液を生成する工程、
前記光反応性架橋剤の架橋結合を可能にするのに十分な時間、前記第3の細胞懸濁液に光を当て、それによって前記内部ゲル化細胞の集団を生成する工程、ならびに
前記内部ゲル化細胞の集団を収集し、洗浄する工程を含む手順によって生成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ゲル化溶液が、前記第2の細胞懸濁液が320mOsmol~290mOsmol、320mOsmolを超える、または290mOsmol未満の浸透圧濃度を有するように調製される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の細胞懸濁液が0.1~5質量%のDMSOを含有する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の細胞懸濁液中の前記光反応性架橋剤の濃度が、5質量%~50質量%である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記光反応性架橋剤がポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)であり、前記光開始剤が2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンであり、前記光が365nmの青色光である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記2-ヒドロキシ-4’-2(-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンが0.01~1質量%の範囲であり、前記PEG-DAが前記ゲル化溶液中2~80質量%の範囲で、200Da~5000Daの平均分子量を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ゲル化溶液が、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して溶液を作製し、前記溶液を平均分子量700DaのPEG-DAと混合することによって調製される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の細胞懸濁液中のPEG-DAの濃度が、10質量%~40質量%である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抗原提示細胞の集団が人工抗原提示細胞である、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記人工抗原提示細胞が、K562細胞、PBMC、EBV形質転換LCL、721.221細胞、8866細胞、Jurkat細胞、Jurkat/KL-1細胞、U937細胞、BJAB細胞、NB4細胞、293T細胞、MCF7細胞、Jeg3細胞、Hela細胞、A549細胞、1106mel細胞、もしくはCEM細胞であるか、またはそれらから操作される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記増殖したNK細胞を単離する工程、および前記単離されたNK細胞をそれを必要とする対象に投与する工程をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
内部ゲル化細胞の集団を生成する方法であって、
1種または複数の膜結合タンパク質を発現する前駆体細胞の集団を準備する工程、
プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有し、フェノールレッドを含まないDMEMに前記前駆体細胞の集団を懸濁して第1の細胞懸濁液を生成する工程、
ゲル化溶液を前記第1の細胞懸濁液に添加して、第2の細胞懸濁液を生成する工程であり、前記ゲル化溶液が前記前駆体細胞の膜透過性を増加させることができ、光反応性架橋剤および光開始剤を含有する工程、
前記光反応性架橋剤および光開始剤が前記前駆体細胞に入るのを可能にするのに十分な時間、室温で前記第2の細胞懸濁液をインキュベートする工程、
前記第2の細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを生成する工程、
前記細胞ペレットをフェノールレッドを含まないDMEMに再懸濁して、第3の細胞懸濁液を生成する工程、
前記光反応性架橋剤の架橋結合を可能にするのに十分な時間、前記第3の細胞懸濁液に光を当て、それによって前記内部ゲル化細胞の集団を生成する工程、ならびに
前記内部ゲル化細胞の集団を収集し、洗浄する工程を含み、
前記内部ゲル化細胞それぞれがゲル化された内部および前記1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む、方法。
【請求項19】
前記ゲル化溶液が、前記第2の細胞懸濁液が320mOsmol~290mOsmol、320mOsmolを超える、または290mOsmol未満の浸透圧濃度を有するように調製される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の細胞懸濁液が0.1~5質量%のDMSOを含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の細胞懸濁液中の前記光反応性架橋剤の濃度が、5質量%~50質量%である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記光反応性架橋剤がポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)であり、前記光開始剤が2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンであり、前記光が365nmの青色光である、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記2-ヒドロキシ-4’-2(-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンが0.01~1質量%の範囲であり、前記PEG-DAが前記ゲル化溶液中2~80質量%の範囲で、200Da~5000Daの平均分子量を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ゲル化溶液が、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して溶液を作製し、前記溶液を平均分子量700DaのPEG-DAと混合することによって調製される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2の細胞懸濁液中のPEG-DAの濃度が、10質量%~40質量%である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記前駆体細胞の集団が人工抗原提示細胞である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記人工抗原提示細胞が、K562細胞、PBMC、EBV形質転換LCL、721.221細胞、8866細胞、Jurkat細胞、Jurkat/KL-1細胞、U937細胞、BJAB細胞、NB4細胞、293T細胞、MCF7細胞、Jeg3細胞、Hela細胞、A549細胞、1106mel細胞、もしくはCEM細胞であるか、またはそれらから操作される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記1種は複数の膜結合タンパク質が、個々にまたは集合的にナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激することができる、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記1種または複数の膜結合タンパク質が、41BBL、IL-15、IL-21、B7-H6、BAT3、HLA-DP、HLA-E、HLA-C2、HLA-A、HLA-C、HLA-G、HLA-F、HLA-C、MICA/MICB、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、AICL、CD48、NTB-A、2B4、CD2、CD58、CD11a、ICAM1、CRACC、OX40L、CD137L、ネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3、ネクチン-4、necl-1、necl-2、necl-3、necl-4、necl-5、PCNA、AICL、IgG、CD27L、CD72、CEACAM-1、CEACAM-5、OCIL、N-カドヘリン、E-カドヘリン、R-カドヘリン、シアル酸、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-12、IL-18、IL-27、IL-33、IL-6、IL-11、CNTF、LIF、OSM、CT-1、CLC、IFN-a、INF-b、CCL-5、およびTLR-1のアゴニスト、TLR-2のアゴニスト、TLR-3のアゴニスト、TLR-5のアゴニスト、TLR-6のアゴニスト、TLR-9のアゴニスト、NOD-1のアゴニスト、NOD-2のアゴニスト、NOD-3のアゴニスト、またはNLRP3アゴニストからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
各細胞が、ゲル化された内部および前記1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む、請求項18~29のいずれか1項の方法によって生成された内部ゲル化細胞の集団。
【請求項31】
請求項30の内部ゲル化細胞の集団を含む組成物。
【請求項32】
対象において免疫応答を誘導する方法であって、請求項31の組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年3月2日に出願された米国特許仮出願第62/984,060号の優先権を主張し、その内容全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
末梢血リンパ球の10~15%を構成するナチュラルキラー(NK)細胞は、事前に感作しなくてもがんやウイルス感染細胞を殺傷する生来の能力を有するので、免疫監視において重要な役割を果たしている。Abel et al., Front. Immunol. 9, 1869 (2018); Cerwenka and Lanier, Nat. Rev. Immunol. 16, 112-123 (2016);Adams et al. J. Immunol. 197, 2963-2970 (2016);およびChiossone et al., Nat. Rev. Immunol. 18, 671-688 (2018)を参照のこと。NK細胞は、CD56の表面発現およびT細胞マーカーCD3の欠如によって特定される。NK細胞のサブセットは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を補助することによってNK細胞の細胞傷害機能を強化するFcγRIIIタンパク質であるCD16を発現する。Cerwenka and Lanier, Nat. Rev. Immunol. 16, 112-123 (2016);Adams et al. J. Immunol. 197, 2963-2970 (2016);およびFreud et al., Immunity 47, 820-833 (2017)を参照のこと。
【0003】
NK細胞の機能は、細胞表面活性化および抑制性受容体のファミリーによって主に制御されている。活性化シグナルは、ストレス誘導性タンパク質MICAを含むリガンドを認識するNKG2Dなどの受容体を活性化することによって伝達される。抑制性受容体は、正常細胞では普遍的に発現し、がん細胞ではしばしば下方制御されるMHCクラスIなどの分子を認識する。活性化受容体と抑制性受容体とのバランスをモニターすることによって、NK細胞は、感染細胞またはがん細胞などのストレスを受けた細胞を認識して殺傷することができる。Cerwenka and Lanier, Nat. Rev. Immunol. 16, 112-123 (2016);Chiossone et al., Nat. Rev. Immunol. 18, 671-688 (2018);およびFujisaki et al., Cancer Res. 69, 4010-4017 (2009)を参照のこと。
NK細胞は、多数のマウスモデルおよびヒトの研究に基づいた腫瘍免疫監視に関与している。それらの強力な抗腫瘍活性を考慮すると、NK細胞を使用した養子細胞療法は、がんに対する魅力的な治療方法である。Cerwenka and Lanier, Nat. Rev. Immunol. 16, 112-123 (2016);Fujisaki et al., Cancer Res. 69, 4010-4017 (2009);Cheung et al., Nat. Rev. Cancer 13, 397-411 (2013);およびBrodeur et al., Nat. Rev. Cancer 3, 203-216 (2003)を参照のこと。
したがって、臨床用途のために非常に強力なNK細胞を多数取得する増殖系を確立する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
1つまたは複数の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。実施形態の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
一態様では、ナチュラルキラー細胞の増殖方法が本明細書で記載されている。この方法は、それぞれがゲル化された内部、および個々にまたは集合的にナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激することができる1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む内部ゲル化細胞の集団を準備する工程、ならびにNK細胞の増殖を可能にする条件下で、1種または複数の膜結合タンパク質に応答することができるNK細胞を含有する細胞の集団を、内部ゲル化細胞の集団と共に培養する工程を含む。
一部の実施形態では、細胞集団は、末梢血単核細胞(PBMC)、濃縮NK細胞、iPSC由来NK細胞、胚性幹細胞由来NK細胞、組織常在性NK細胞、脾細胞、臍帯血細胞、および造血幹細胞由来NK細胞からなる群から選択される。
【0005】
一部の実施形態では、1種または複数の膜結合タンパク質は、41BBL、IL-15、IL-21、B7-H6、BAT3、HLA-DP、HLA-E、HLA-C2、HLA-A、HLA-C、HLA-G、HLA-F、HLA-C、MICA/MICB、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、AICL、CD48、NTB-A、2B4、CD2、CD58、CD11a、ICAM1、CRACC、OX40L、CD137L、ネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3、ネクチン-4、necl-1、necl-2、necl-3、necl-4、necl-5、PCNA、AICL、IgG、CD27L、CD72、CEACAM-1、CEACAM-5、OCIL、N-カドヘリン、E-カドヘリン、R-カドヘリン、シアル酸、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-12、IL-18、IL-27、IL-33、IL-6、IL-11、CNTF、LIF、OSM、CT-1、CLC、IFN-a、INF-b、CCL-5、およびTLR-1のアゴニスト、TLR-2のアゴニスト、TLR-3のアゴニスト、TLR-5のアゴニスト、TLR-6のアゴニスト、TLR-9のアゴニスト、NOD-1のアゴニスト、NOD-2のアゴニスト、NOD-3のアゴニスト、またはNLRP3アゴニストからなる群から選択される。例えば、1種または複数の膜結合タンパク質は、41BBLおよびIL-15を含むことができる。
【0006】
一部の実施形態では、培養工程は、IL-21またはIL-2の存在下で実施される。
一部の実施形態ではNK細胞数のゲル化細胞数に対する比は、1:0.5~20(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:12、1:15、または1:20)である。
一部の実施形態では、内部ゲル化細胞の集団は、1種または複数の膜結合タンパク質を発現する抗原提示細胞の集団を準備する工程、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有し、フェノールレッドを含まないDMEMに抗原提示細胞の集団を懸濁して第1の細胞懸濁液を生成する工程、ゲル化溶液を第1の細胞懸濁液に添加して、第2の細胞懸濁液を生成する工程であり、ゲル化溶液が抗原提示細胞の膜透過性を増加させることができ、光反応性架橋剤および任意に光開始剤を含有する工程、光反応性架橋剤および任意に光開始剤が抗原提示細胞に入るのを可能にするのに十分な時間、室温で第2の細胞懸濁液をインキュベートする工程、第2の細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを生成する工程、細胞ペレットをフェノールレッドを含まないDMEMに再懸濁して、第3の細胞懸濁液を生成する工程、光反応性架橋剤の架橋結合を可能にするのに十分な時間、第3の細胞懸濁液に光を当て、それによって内部ゲル化細胞の集団を生成する工程、ならびに内部ゲル化細胞の集団を収集し、洗浄する工程を含む手順によって生成される。
【0007】
一部の実施形態では、ゲル化溶液は、第2の細胞懸濁液が320mOsmol~290mOsmol、320mOsmolを超える、または290mOsmol未満の浸透圧濃度を有するように調製される。
一部の実施形態では、ゲル化溶液は、第2の細胞懸濁液が0.1~5質量%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含有するように、DMSOを含有する。
一部の実施形態では、第2の細胞懸濁液中の光反応性架橋剤の濃度は、5質量%~50質量%である。
【0008】
一部の実施形態では、光反応性架橋剤はポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)であり、光開始剤は2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンであり、光は365nmの青色光である。例えば、2-ヒドロキシ-4’-2(-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンはゲル化溶液中0.01~1質量%の範囲であってもよく、PEG-DAはゲル化溶液中2~80質量%の範囲で、200Da~5000Daの平均分子量を有する。
一部の実施形態では、ゲル化溶液は、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンをDMSOに溶解して溶液を作製し、その溶液を平均分子量700DaのPEG-DAと混合することによって調製される。
一部の実施形態では、第2の細胞懸濁液中のPEG-DAの濃度は、10質量%~40質量%である。
一部の実施形態では、抗原提示細胞の集団は人工抗原提示細胞である。例えば、人工抗原提示細胞は、K562細胞、PBMC、EBV形質転換LCL、721.221細胞、8866細胞、Jurkat細胞、Jurkat/KL-1細胞、U937細胞、BJAB細胞、NB4細胞、293T細胞、MCF7細胞、Jeg3細胞、Hela細胞、A549細胞、1106mel細胞、もしくはCEM細胞であり得るか、またはそれらから操作され得る。
【0009】
一部の実施形態では、この方法は、増殖したNK細胞を、それを必要とする対象、例えば、がん、感染症、自己免疫疾患、NK細胞欠損状態、または望ましくない細胞を有する対象に投与することをさらに含む。
一態様では、本明細書では、本明細書で記載したゲル化細胞によって生成した増殖したNK細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、疾患を治療する方法を記載する。一部の実施形態では、疾患は、がん、感染症、自己免疫障害、または古典的NK欠損症および機能的NK欠損症などのNK細胞欠損状態、または望ましくない細胞を有する状態である。
【0010】
別の態様では、本明細書では、内部ゲル化細胞の集団を生成する方法を記載する。この方法は、1種または複数の膜結合タンパク質を発現する前駆体細胞の集団を準備する工程、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有し、フェノールレッドを含まないDMEMに前駆体細胞の集団を懸濁して第1の細胞懸濁液を生成する工程、ゲル化溶液を第1の細胞懸濁液に添加して、第2の細胞懸濁液を生成する工程であり、ゲル化溶液が前駆体細胞の膜透過性を増加させることができ、光反応性架橋剤および任意に光開始剤を含有する工程、光反応性架橋剤および任意に光開始剤が前駆体細胞に入るのを可能にするのに十分な時間、室温で第2の細胞懸濁液をインキュベートする工程、第2の細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを生成する工程、細胞ペレットをフェノールレッドを含まないDMEMに再懸濁して、第3の細胞懸濁液を生成する工程、光反応性架橋剤の架橋結合を可能にするのに十分な時間、第3の細胞懸濁液に光を当て、それによって内部ゲル化細胞の集団を生成する工程、ならびに内部ゲル化細胞の集団を収集し、洗浄する工程を含み、内部ゲル化細胞それぞれがゲル化された内部および1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む。
【0011】
一部の実施形態では、ゲル化溶液は、第2の細胞懸濁液が320mOsmol~290mOsmol、320mOsmolを超える、または290mOsmol未満の浸透圧濃度を有するように調製される。
一部の実施形態では、ゲル化溶液は、第2の細胞懸濁液が0.1~5質量%のDMSOを含有するように、DMSOを含有する。
一部の実施形態では、第2の細胞懸濁液中の光反応性架橋剤の濃度は、5質量%~50質量%である。
【0012】
一部の実施形態では、光反応性架橋剤はポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEG-DA)であり、光開始剤は2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2メチルプロピオフェノンであり、光は365nmの青色光である。例えば、2-ヒドロキシ-4’-2(-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンはゲル化溶液中0.01~1質量%の範囲であってもよく、PEG-DAはゲル化溶液中2~80質量%の範囲で、200Da~5000Daの平均分子量を有してもよい。
【0013】
一部の実施形態では、ゲル化溶液は、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンをDMSOに溶解して溶液を作製し、その溶液を平均分子量700DaのPEG-DAと混合することによって調製される。
一部の実施形態では、第2の細胞懸濁液中のPEG-DAの濃度は、10質量%~40質量%である。
一部の実施形態では、前駆体細胞の集団は人工抗原提示細胞である。例えば、人工抗原提示細胞は、K562細胞、PBMC、EBV形質転換LCL、721.221細胞、8866細胞、Jurkat細胞、Jurkat/KL-1細胞、U937細胞、BJAB細胞、NB4細胞、293T細胞、MCF7細胞、Jeg3細胞、Hela細胞、A549細胞、1106mel細胞、もしくはCEM細胞であり得るか、またはそれらから操作され得る。
【0014】
一部の実施形態では、1種または複数の膜結合タンパク質は、個々にまたは集合的にナチュラルキラー(NK)細胞の増殖を刺激することができる。
一部の実施形態では、1種または複数の膜結合タンパク質は、41BBL、IL-15、IL-21、B7-H6、BAT3、HLA-DP、HLA-E、HLA-C2、HLA-A、HLA-C、HLA-G、HLA-F、HLA-C、MICA/MICB、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、AICL、CD48、NTB-A、2B4、CD2、CD58、CD11a、ICAM1、CRACC、OX40L、CD137L、ネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3、ネクチン-4、necl-1、necl-2、necl-3、necl-4、necl-5、PCNA、AICL、IgG、CD27L、CD72、CEACAM-1、CEACAM-5、OCIL、N-カドヘリン、E-カドヘリン、R-カドヘリン、シアル酸、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-12、IL-18、IL-27、IL-33、IL-6、IL-11、CNTF、LIF、OSM、CT-1、CLC、IFN-a、INF-b、CCL-5、およびTLR-1のアゴニスト、TLR-2のアゴニスト、TLR-3のアゴニスト、TLR-5のアゴニスト、TLR-6のアゴニスト、TLR-9のアゴニスト、NOD-1のアゴニスト、NOD-2のアゴニスト、NOD-3のアゴニスト、またはNLRP3アゴニストからなる群から選択される。
【0015】
さらに別の態様では、本明細書では、各細胞が、ゲル化された内部および1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む、本明細書で記載した方法によって生成された内部ゲル化細胞の集団を記載する。
一態様では、本明細書では、内部ゲル化細胞の集団を含む組成物を記載する。
別の態様では、本明細書では、対象において免疫応答を誘導する方法であって、組成物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ゲル化細胞を調製する例示的な方法の概略図である。
図2】生きているK562細胞およびゲル化されたK562細胞を示す一連の画像である。生きているK562細胞(左)およびゲル化されたK562細胞(右)は、さらに実験を行う前に、同様の細胞形態を有することが視覚的に確認された。
図3】新規フィーダー細胞系によるNK細胞増殖を示す一連の図である。PBMCを、IL-21(100ng/ml)を含む場合もしくは含まない場合とで、照射したK526-41BBL-mb15細胞(GM)およびK526-41BBL-mb15細胞から調製されたゲル化細胞(GC)と共培養した。細胞集団(A)、NK細胞数(B)、および増殖倍数(C)を、0、7、および14日目に決定した(n=3)。エラーバーは平均±SDを表す。
図4】NK細胞がGCによる増殖後に細胞傷害性の増加を示したことを示す一連の図である。PBMCを、IL-21を含む場合もしくは含まない場合で、また抗CD137抗体を含む場合(B)もしくは含まない場合(A)で、GMまたはGCと共培養した。増殖したNK細胞の細胞傷害性を、殺傷アッセイによって評価した。E:T比は1:1、0.5:1、および0.25:1(n=2)であった。エラーバーは平均±SDを表す。
図5】GCがNK細胞の細胞溶解活性を増加させたことを示す一連の図である。(A)総細胞数(左)、NK集団(中央)、およびNK細胞数(右)を、GMおよびGC増殖系について決定した。(B)GMで増殖させたNK細胞およびGCで増殖させたNK細胞の増殖倍数を、7日間増殖した後に決定した。(C)NK細胞の細胞溶解活性を、7日間増殖した後に決定した。(D)NK増殖中の系内のGMおよびGC集団を決定した。
図6】GC増殖系の条件の最適化を示す一連の図である。(A)NK細胞は様々な剛性を有する様々なGCで増殖させた。総NK細胞数を、7日間増殖した後に決定した。(B)GCから増殖したNK細胞の細胞溶解活性を、7日間増殖した後に決定した。
図7-1】PBMCからNK細胞を濃縮する増殖条件の最適化を示す一連の図である。PBMCから濃縮したNK細胞は、様々な細胞比(NK:フィーダー=1:10、1:5、1:2、および1:0.5)をIL-12 10IU/mL(A~C)またはIL-2 100IU/mL(D~F)と共に使用して増殖させた。(A)(D)様々な細胞比下で増殖させたNK細胞の総細胞数(左)、NK集団(中央)、およびNK細胞数(右)を、0日目および7日目に評価した。(B)(E)様々な細胞比下での増殖倍数を、7日間増殖した後に決定した。(C)(F)様々な細胞比下で増殖させたNK細胞の細胞溶解活性を、7日間増殖した後に決定した。
図7-2】PBMCからNK細胞を濃縮する増殖条件の最適化を示す一連の図である。PBMCから濃縮したNK細胞は、様々な細胞比(NK:フィーダー=1:10、1:5、1:2、および1:0.5)をIL-12 10IU/mL(A~C)またはIL-2 100IU/mL(D~F)と共に使用して増殖させた。(A)(D)様々な細胞比下で増殖させたNK細胞の総細胞数(左)、NK集団(中央)、およびNK細胞数(右)を、0日目および7日目に評価した。(B)(E)様々な細胞比下での増殖倍数を、7日間増殖した後に決定した。(C)(F)様々な細胞比下で増殖させたNK細胞の細胞溶解活性を、7日間増殖した後に決定した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
細胞内ヒドロゲル化技術は、並外れた安定性を獲得しながら細胞原形質膜の完全性を維持することができることが実証された。Lin et al., Nat. Commun. 10, 1057 (2019)を参照のこと。この技術を使用して人工抗原提示細胞(APC)をNK細胞のフィーダー細胞として調製することによって、この増殖系は標準的なフィーダー細胞系と比較して同等のNK細胞増殖レベルを誘導できることが観察された。驚くべきことに、この増殖系はNK活性化受容体の発現レベルを増加させただけでなく、NK細胞の腫瘍に対する細胞傷害性も増強した。
【0018】
したがって、本明細書では、NK細胞を増殖する方法を記載する。この方法は、それぞれがゲル化された内部、および個々にまたは集合的にNK細胞の増殖を刺激することができる1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む、内部ゲル化細胞の集団を準備する工程、ならびにNK細胞の増殖を可能にする条件下で、1種または複数の膜結合タンパク質に応答することができるNK細胞を含有する細胞の集団を、内部ゲル化細胞の集団と共に培養する工程を含む。言い換えると、内部ゲル化細胞はフィーダー細胞として使用される。
【0019】
NK細胞の集団は、末梢血単核細胞(PBMC)、PBMCまたはその他の細胞源から濃縮したNK細胞、iPSC由来NK細胞、胚性幹細胞由来NK細胞、組織常在性NK細胞、脾細胞、臍帯血細胞、および造血幹細胞由来NK細胞からなる群から選択され得る。
【0020】
1種または複数の膜結合タンパク質は、41BBL、IL-15、IL-21、B7-H6、BAT3、HLA-DP、HLA-E、HLA-C2、HLA-A、HLA-C、HLA-G、HLA-F、HLA-C、MICA/MICB、ULBP-1、ULBP-2、ULBP-3、ULBP-4、ULBP-5、ULBP-6、AICL、CD48、NTB-A、2B4、CD2、CD58、CD11a、ICAM1、CRACC、OX40L、CD137L、ネクチン-1、ネクチン-2、ネクチン-3、ネクチン-4、necl-1、necl-2、necl-3、necl-4、necl-5、PCNA、AICL、IgG、CD27L、CD72、CEACAM-1、CEACAM-5、OCIL、N-カドヘリン、E-カドヘリン、R-カドヘリン、シアル酸、IL-1、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-12、IL-18、IL-27、IL-33、IL-6、IL-11、CNTF、LIF、OSM、CT-1、CLC、IFN-a、INF-b、CCL-5、およびTLR-1のアゴニスト、TLR-2のアゴニスト、TLR-3のアゴニスト、TLR-5のアゴニスト、TLR-6のアゴニスト、TLR-9のアゴニスト、NOD-1のアゴニスト、NOD-2のアゴニスト、NOD-3のアゴニスト、またはNLRP3アゴニストからなる群から選択され得る。例えば、1種または複数の膜結合タンパク質は、41BBLおよびIL-15を含むことができる。
【0021】
培養工程は、IL-21(例えば、50~200ng/ml)またはIL-2(例えば、5~200IU/ml)の存在下で、NK細胞の培養および増殖に適した培地で実施され得る。
一部の実施形態では、NK細胞および内部ゲル化細胞は、IL-21またはIL-2の存在下で、NK細胞:ゲル化細胞の比1:0.5~20(例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、または1:15)で共培養することができる。
内部ゲル化細胞の集団は、不活性ではあるが活性化可能な架橋剤を細胞に導入するために、前駆細胞集団の脂質膜を一時的に透過処理する工程を含む手順によって生成されてもよい。架橋剤が透過処理された細胞に入るとその後、細胞は非透過状態に戻ることが可能で、こうして架橋剤を細胞内に密閉する。次いで、例えば細胞を洗浄することによって、あらゆる残存する小胞外架橋剤を除去する。その後、内部架橋剤が活性化され、膜を乱すことなく細胞の内部ゲル化を達成する。透過処理工程は、架橋剤の存在下で実施されてもよい。国際公開第2018/026644号も参照のこと。
【0022】
得られた内部ゲル化細胞は天然の外観を保持しており、環境ストレスの影響を受けない。膜脂質およびタンパク質は、内部ゲル化に際し移動性を保持する。この方法によって生産された内部ゲル化細胞は、それらの前駆細胞の脂質膜と実質的に同一である脂質膜によって囲まれた、固定されたまたはゲル化された内部を有する。ゲル化細胞では、界面活性剤に対する感受性、膜流動性、膜タンパク質の移動性、膜透過性、膜含有量、表面電荷、膜の生物学的機能などの前駆細胞の特性を維持することができる。
当技術分野で公知の様々な技術を応用して、前駆細胞において一過性の膜穿孔または透過性を誘導することができる。この技術には、凍結解凍処理、浸透圧ショック、音響穿孔、電気穿孔、レーザー誘導膜穿孔、剪断誘導膜穿孔、および機械的手段に基づくその他の技術が含まれるが、これらに限定されない。例えば、空洞化現象が脂質膜のすぐ近くで生じると、音響穿孔が生じる。マイクロバブルと膜との間の相互作用は、アコースティックマイクロストリーミング、気泡振動、衝撃波、および脂質膜に穴をあけるマイクロジェット形成によって一時的な孔を生成する。当業者であれば、膜を永久に破壊することなく、膜に一時的な孔を生成するために技術の適用方法を決定することができるであろう。通常、一時的膜穿孔技術の適用を停止すると、生成された孔は自然に閉じる。
【0023】
透過処理された脂質膜に侵入し、細胞内で活性化されてゲル化された内部を作製することができるあらゆる架橋剤を利用して、内部ゲル化細胞を作製することができる。一部の実施形態では、架橋剤は、活性化して架橋してゲルを形成することができるモノマーまたはポリマーである。熱応答性ヒドロゲル架橋、光応答性ヒドロゲル架橋、pH感受性ヒドロゲル架橋、化学物質応答性ヒドロゲル架橋、およびゾルゲルシリカ架橋は、活性化可能な架橋技術の例である。
光重合または光反応性架橋を使用することができる。光重合とは、光、多くの場合、紫外または可視領域の電磁スペクトルに曝露すると、その特性が変化して材料の硬化および強化を引き起こすポリマーの架橋である。この方法は、光開始剤の存在下または非存在下で行われ得る。光開始剤の例には、カチオン光開始剤(例:オニウム塩、有機金属塩、およびピリジニウム塩)およびフリーラジカル光開始剤(例:ベンゾフェノン、キサントン、キノン、ベンゾインエーテル、アセトフェノン、ベンゾイルオキシム、およびアシルホスフィン)が含まれるが、これらに限定されない。光反応性架橋剤の例には、エポキシド、ウレタン、ポリエーテル、および任意の分子量のポリエステルが含まれるが、これらに限定されない。光反応性架橋剤は通常、架橋のためにアクリレートで官能化されている。例えば、分子量700のポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)は、光開始剤として(2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(I-2959)と共に使用される場合もある。
【0024】
熱応答性ポリマーは通常、疎水基または臨界温度で鎖が凝集しやすい基を含有している。熱応答性ポリマーは、特定の温度(すなわち、非反応温度)で透過処理された細胞に導入され、その後温度を臨界温度に変更することによって架橋され得る。本明細書で記載した内部ゲル化法に適用可能な温度感受性ポリマーの例には、疎水性ペンダント基を含有するポリアクリルアミド誘導体、PEG-PLGA-PEGトリブロック共重合体、ヒドロキシエチルメタクリレート-メチルメタクリレート(HEMA-MMA)、ポリアクリロニトリル-ポリ塩化ビニル(PAN-PVC)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(ポリNIPAM)、ポリ(N-ビニルカプロラクタム)、セルロース誘導体、エチレンオキシド-プロピレン、およびマトリゲルが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書で記載した方法のいずれかでは、内部ゲル化細胞は、1種または複数の膜結合タンパク質を発現する前駆細胞の集団を準備することによって生成され得る。次に、前駆細胞の集団を、プロテアーゼ阻害剤カクテルを含有し、フェノールレッドを含まないDMEMに懸濁して、第1の細胞懸濁液を生成する。ゲル化溶液を第1の細胞懸濁液に添加して第2の細胞懸濁液を生成する。光反応性架橋剤および任意に光開始剤を含有するゲル化溶液は、前駆細胞の膜透過性を増加させることができる。第2の細胞懸濁液を、光反応性架橋剤および任意に光開始剤が前駆細胞に入るのを可能にするのに十分な時間、室温でインキュベートする。次に、第2の細胞懸濁液を遠心分離して細胞ペレットを生成し、これをフェノールレッドを含まないDMEMに再懸濁して第3の細胞懸濁液を生成する。光反応性架橋剤の架橋を可能にするのに十分な時間、第3の細胞懸濁液に光を当て、それによって内部ゲル化細胞の集団を生成する。内部ゲル化細胞を収集し、洗浄する。このようにして生成された内部ゲル化細胞それぞれは、ゲル化された内部および前駆細胞によって発現した1種または複数の膜結合タンパク質を含有する流体細胞膜を含む。
【0026】
ゲル化溶液は、光開始剤(例えば、I-2959)をジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して溶液を作製し、その溶液を光反応性架橋剤(例えば、PEG-DA)と混合することによって調製され得る。一部の実施形態では、ゲル化溶液では、I-2959は0.01~1質量%の範囲であってもよく、PEG-DAは、2~80質量%の範囲で、200Da~5000Daの平均分子量を有してもよい。例えば、ゲル化溶液は、最初に750mg/mLのI-2959 20μLをDMSOに溶解し、次に得られた溶液をPEG-DA200μLと混合することによって、調製されてもよい。
【0027】
場合によっては、ゲル化溶液は、第2の細胞懸濁液が290mOsmol~320mOsmol、320mOsmolを超える、または290mOsmol未満の浸透圧濃度を有するように調製され、第1の細胞懸濁液に添加される。
ゲル化溶液は、第2の細胞懸濁液が0.1~5質量%のDMSOを含有するように調製され、第1の細胞懸濁液に添加されてもよい。
ゲル化細胞の剛性は、第2の細胞懸濁液中の架橋剤の濃度を調整することによって変えられてもよい。例えば、ゲル化溶液は、第2の細胞懸濁液中の光反応性架橋剤の濃度が5質量%~50質量%(例えば、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、および40質量%)であるように、第1の細胞懸濁液に添加され得る。
【0028】
本明細書で記載された方法によって生産された増殖したNK細胞は、それを必要とする対象に投与することができる。増殖したNK細胞は、対象または別のドナー対象から得られた細胞集団(例えば、PBMC)から得られる場合もある。増殖したNK細胞は、がん、感染症、自己免疫疾患、もしくは古典的NK欠損症および機能的NK欠損症などのNK細胞欠損状態の治療、または所望しない細胞の除去に使用され得る。
本明細書で記載した内部ゲル化細胞は、抗原提示細胞の抗原提示能力を保持しているが、増殖活性が欠如している。したがって、ゲル化細胞は、腫瘍形成のリスクなしに免疫応答を調節する能力を保持している。したがって、ゲル化細胞は、状態を治療するため、または免疫応答を誘導するために、それを必要とする対象に投与することができる。場合によっては、ゲル化細胞はワクチンとして使用される。
【0029】
ゲル化細胞は、様々な投与経路、例えば、静脈内、関節内、結膜、頭蓋内、腹腔内、胸腔内、筋肉内、髄腔内、または皮下投与経路に適した医薬組成物として処方することができる。薬学的に許容できる担体、例えば緩衝剤または賦形剤、またはアジュバントを含有することができる。
以下の特定の実施例は、単なる例示として解釈されるべきであり、決して本開示の残りの部分を限定するものではない。
さらに細かく説明しなくても、当業者は、本明細書の説明に基づいて、本開示を最大限に利用することができると考えられる。本明細書で引用される刊行物は全て、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【0030】
(実施例1)
ゲル化された人工抗原提示細胞は、ex vivoにおいてNK細胞の増殖を支持する。
NK増殖のために、十分に確立された遺伝子改変人工抗原提示細胞(aAPC)の細胞内ヒドロゲル化を実施した。K562細胞をレンチウイルスで形質導入して、41BBLおよび膜結合IL15を発現させた(K562-41BBL-mb15フィーダー細胞)。Fujisaki et al., Cancer Res. 69, 4010-4017 (2009)を参照のこと。
健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)を、照射したK562-41BBL-mb15フィーダー細胞(GM)またはゲル化されたK562-41BBL-mb15フィーダー細胞(GC)と共培養して、NK細胞の増殖を選択的に支持した。NK細胞の成熟および増殖におけるIL-21の重要な役割を考慮して、IL-21を含む場合または含まない場合で、GCおよびGMによる繰り返し刺激に応答したNK細胞の増殖を比較した。図3(A)に示したように、全条件において、aAPCと14日間共培養した後に、CD3-CD56+NK細胞の高濃縮(GM、IL-21+GMでは83.5%±10.10%、89.2%±2.35%、GC、IL-21+GCでは69.0%±22.76%、93.0%±4.55%)が観察された。7日目までに、NK細胞の増殖は、GMと共培養した場合の平均5.4倍と比較して、GCと共培養した場合は平均13.1倍であることが観察された。驚くべきことに、GCと共培養した場合はNK細胞の数が少ないにも関わらず、GC共培養にIL-21を添加すると、増殖の大幅な増加が示された(IL-21+GCでは12.6倍)。14日目までに、aAPCによるNK増殖に同様の傾向が観察され(GM、IL-21+GMでは66.7±13.0、75.8±33.5倍、GC、IL-21+GCでは39.7±9.5、75.3±6.7倍)、ゲル化されたaAPCは、ex vivoにおいてNK細胞の増殖を支持する能力を維持しており、増殖したNK細胞の選択的濃縮を促進することが示唆された。図3(C)を参照のこと。
【0031】
(実施例2)
ゲル化aAPCによって支持されたNK細胞の増殖は、NK細胞受容体の様々な発現パターンを引き起こした。
GCおよびGMは同じ遺伝子改変されたaAPCから得られたため、GCまたはGMで増殖したNK細胞は同じシグナル伝達経路を介して活性化され、同様の免疫表現型を生じると予測された。この問題を明確にするために、CD3-CD56+NK細胞を固定して、CyTOFによって増殖前後の主要なNK細胞受容体の表面発現を評価した。予期せぬことに、教師なしの階層的クラスタリング分析で示したように、増殖していない、GCで増殖した、およびGMで増殖した群という3つの異なる群は一緒にクラスター化した(データは示していない)。特に、両群は増殖していないNK細胞よりも高レベルの活性化受容体を発現したが、GCで増殖したNK細胞は、GMで増殖したNK細胞と比較して、NKp30、CD137、CRACC、およびNKG2Dを含む活性化受容体ならびにパーフォリンの発現の増加を示した(データは示していない)。これらの結果は、GCとの共培養がNK細胞に持続的な活性化シグナルをもたらし、より高発現レベルの活性化受容体およびパーフォリンを引き起こす可能性があることを示唆した。
【0032】
(実施例3)
ゲル化aAPCで増殖したNK細胞は、腫瘍細胞株に対して増強された細胞傷害性を示した。
活性化受容体およびパーフォリンの発現が高いため、GCで増殖したNK細胞は、腫瘍標的に対してより細胞傷害性である可能性がある。この問題を解決するため、増殖したNK細胞の細胞傷害性を殺傷アッセイによって評価した。実際に、IL-21を含む場合または含まない場合で、標的腫瘍細胞株であるK562に対するGCで増殖したNK細胞の特異的な殺傷は、GMで増殖したNK細胞よりもはるかに大きいことがわかった。図4(A)を参照すること。さらに、GCで増殖したNK細胞ではCD137の発現が高いため、抗CD137アゴニスト抗体を利用することによってGCで増殖したNK細胞をさらに活性化することができた。図4(B)で示したように、抗CD137アゴニスト抗体の存在下で、K562標的細胞に対するGCで増殖したNK細胞の細胞傷害性はGM群と比較してさらに増強され、治療戦略として抗CD137アゴニストとGCで増殖したNK細胞とを組み合わせる可能性が示唆された。
【0033】
(実施例4)
ゲル化aAPCはより高い持続性を有し、より高い細胞溶解活性を持つ増殖したNK細胞を生産した。
ゲル化フィーダー細胞によって増殖したNK細胞をさらに評価するために、ゲル化細胞をK562-41BBL-mb15細胞から生成した。PBMCをGMまたはGCと共培養した。総細胞数、NK集団、およびNK細胞数を、0、4、および7日目に測定した。図5(A)を参照のこと。7日間増殖した後、NK細胞を濃縮して細胞溶解活性を分析した。図5(C)を参照のこと。両群のNK集団は7日目では類似していたが、GMはGC群よりも多くのNK細胞を増殖させることができた。図5(A)および(B)を参照のこと。一方、GCで増殖したNK細胞は、GMで増殖した細胞よりも高い細胞溶解活性を示し、GCがGMよりもNK活性を促進する能力が高いことを示唆した。図5(C)を参照のこと。GCはGMよりも持続性が高いことも観察された。図5(D)を参照のこと。したがって、GCはNK細胞をより長い期間刺激し、NK細胞においてより高い細胞溶解活性を誘導できるかもしれない。
【0034】
(実施例5)
改変したゲル化細胞および培養条件がNK細胞の増殖および細胞溶解活性を改善した。
NK細胞を増殖させるGCの能力を向上させるために、効率を最適化するようにGCの特性を改変した。
以前の研究では、刺激面の剛性がNK細胞の活性化を調節できることが示唆された。Mordechay et al., Mechanical Regulation of the Cytotoxic Activity of Natural Killer Cells (2020), biorxiv.org, doi:10.1101/2020.03.02.972984を参照のこと。GCの剛性を、NK細胞の活性化に対する影響を評価するために調整した。4%、10%、20%、40%などの様々なレベルの剛性のGCを試験した。図6(A)および(B)を参照のこと。データは、GCの剛性とNK増殖効率の相関関係が釣鐘型の曲線であることを示しており、これは以前の研究と一致した。10%の剛性が最大の増殖効率を示した。図6(A)を参照のこと。一方、GCの様々な群の間には細胞溶解活性の有意差はなかった。図6(B)を参照のこと。
【0035】
NKとT細胞などの他の免疫細胞との相互作用は、NKの活性化および増殖を促進することができた。Malhotra and Shanker, NK cells: immune cross-talk and therapeutic implications. 37 (2012);およびLee et al., Sci Rep 7, 11075 (2017)を参照のこと。しかし、これらの相互作用は、様々な増殖バッチのNK細胞の品質に影響を与える可能性があった。この変動を排除するために、NK細胞は増殖前にPBMCから濃縮した。濃縮したNK細胞は、ヒトIL-2 10IU/mLまたは100IU/mLの存在化で、NK細胞のフィーダー細胞に対する様々な比(1:10、1:5、1:2、および1:0.5)で共培養した。図7を参照のこと。データは、IL-2 100IU/mLを用いて増殖させたNK細胞は、IL-2 10IU/mLを用いて増殖させた細胞よりも増殖効率が高いことを示した。図7(A)、(B)、(D)、および(E)を参照のこと。さらに、IL-2 100IU/mLの存在下で増殖させたNK細胞は、より高い細胞溶解活性を示した。図7(C)および(F)を参照のこと。これらのデータによると、剛性10%のGCで増殖させたNK細胞は、NK細胞のフィーダー細胞に対する比1:5で、IL-2 100IU/mLの存在下で、良好な増殖効率および細胞溶解活性の両方を示した。図7を参照のこと。さらに、IL-2 100IU/mLを用いて、1:10の比でGMで増殖させた細胞とGCで増殖させた細胞の間には、増殖効率およびNK細胞溶解活性の両方に関して劇的な違いがあった。図7(D)~(F)を参照のこと。
【0036】
(実施例6)
材料および方法
細胞株
K562-41BBL-mb15細胞は、NTUHのChang博士から恵与された。細胞は全て、ウシ胎児血清(Hyclone)、ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)を補給したRPMI1640培地(Gibco)で培養した。
【0037】
ゲル化細胞
ゲル化緩衝液は、まずジメチルスルホキシド(DMSO)に750mg/mLで溶解した2-ヒドロキシ-4'-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン(IrgacureD-2959;Sigma-Aldrich)20μLを、ポリ(エチレングリコール)-ジアクリレート(PEG-DA;Mn=700Da;Sigma-Aldrich)200μLと混合して調製した。5×106個のK562細胞または遺伝子改変K562細胞を収集し、1Xプロテアーゼ阻害剤を含有し、フェノールレッドを含まないDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)(CA21063-029;ThermoFisher Scientific)1mLに懸濁した。この細胞懸濁液にゲル化緩衝液を1:10の体積比で添加して、細胞懸濁液中のPEG-DA濃度を10質量%にした。室温で5分間インキュベーションした後、細胞をペレットにし、ゲル化緩衝液を含まず、フェノレッドを含まないDMEM500μlに再懸濁し、UVオーブンで5分間365nmの青色光照射を行った。得られたゲル化細胞(GC)をPBSで1回洗浄し、さらなる実験の前に視覚的に評価した。図2を参照のこと。
【0038】
PBMCからのNK細胞の増殖
末梢血単核細胞(PBMC)は、IL-21(100ng/ml)を含む場合もしくは含まない場合で、またはIL-2(10IU/mlもしくは100IU)を含む場合もしくは含まない場合で、5%ヒト血清(Gemini Bio)を補給したX-VIVO培地(Lonza)中で、照射されたK562-41BBL-mb15細胞(GM)またはGCと共培養した。増殖効率を評価するために、7日間増殖した後にNK集団および細胞数を評価した。さらに、増殖したNK細胞をパラホルムアルデヒドで固定し、NK活性化および阻害マーカーをCyTOFによって決定した。NK活性は、細胞傷害性アッセイによって評価した。
【0039】
NK集団および細胞数の測定
PBMCまたは増殖細胞をAPC-抗CD3(Biolegend)およびPE-抗CD56(Biolegend)で染色し、NK集団(CD3-CD56+)比をフローサイトメトリーによって検証した。さらに、総細胞数を血球計によって測定した。NK細胞数は次のように計算した:総細胞数×NK集団比。
細胞傷害性アッセイ
NK細胞の細胞傷害機能は、輝度を測定することによって評価した。標的細胞K562-luc+-GFP+は、ルシフェラーゼマーカーを安定して発現した。NK細胞は、指定した比で標的細胞と4時間、3連で共培養した。細胞を溶解し、ルシフェラーゼアッセイシステム(promega)によって96ウェル白色プレートで輝度を測定した。細胞溶解パーセントは次のように計算した:(標的細胞単独の輝度-NK標的共培養の輝度)/(標的細胞単独の輝度-ブランク)×100%
【0040】
単一細胞マスサイトメトリー(CyTOF)
試料を1.5%パラホルムアルデヒドで室温で10分間固定し、続いて0.5%BSAを含有するPBSで2回洗浄した。ホルムアルデヒド固定細胞試料を、表面マーカーに対する金属結合抗体で1時間インキュベートし、0.5%BSAを含有するPBSで1回洗浄し、氷上でメタノールで10分間透過処理し、0.5%BSAを含有するPBSで2回洗浄し、次いで細胞内分子に対する金属結合抗体で1時間インキュベートした。細胞内染色後、細胞を0.5%BSAを含有するPBSで1回洗浄し、次いで1.5%パラホルムアルデヒドを含有するPBS中でイリジウム含有DNAインタ-カレーター(Fluidigm)と共に室温で10分間インキュベートした。インターカレーション/固定後、細胞試料を0.5%BSAを含有するPBSで1回、水で2回洗浄した後、CyTOFマスサイトメーター(Fluidigm)で測定した。検出器感度の正規化は、前述のように実施した。測定して正規化した後、細胞長、DNA含有量、およびシスプラチン染色に基づいて、ダブレット、デブリ、および死細胞を最初にゲートアウトすることによって、個々のファイルを分析した。ヒートマップ、ヒストグラム、およびViSNEマップは、cytobank.orgで入手可能なソフトウェアツールを使用して作成した。
【0041】
GCの持続試験
NK増殖系におけるGMおよびGCの持続性をモニターするために、ハイコンテントイメージングシステムを使用してGMおよびGC数の変化をモニターした。より詳細には、PBMCおよびフィーダー細胞(GMおよびGC)を、CellTracker Far Red(Thermo Fisher Scientific)およびCFSE(Thermo Fisher Scientific)でそれぞれ標識した。PBMCおよびフィーダー細胞を、5%ヒト血清(Gemini Bio)を補給したX-VIVO培地(Lonza)中でヒトIL-2 10IU/mlと3日間共培養した。ImageXpress Microsystem(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)によって、20倍の対物レンズ、FITCおよびCy7フィルターのセットアップ、ならびに各ウェルについて9個のフィールドを使用して3時間毎に画像を取得した。画像データをImageJによって分析し、細胞数を評価した。
【0042】
GCの剛性
4%、10%、20%、および40%などの様々な剛性のGCは、ゲル化緩衝液を含有する細胞懸濁液中においてPEG-DAの濃度を調整することによって(すなわち、4質量%、10質量%、20質量%、および40質量%)生成した。PBMCを、5%ヒト血清(Gemini Bio)を補給したX-VIVO培地(Lonza)中でヒトIL-2 10IU/mlと共にGCと共培養した。培地は3日目および5日目に更新した。7日目に総細胞数およびNK細胞溶解機能を評価した。
【0043】
濃縮したNKの増殖試験
NK細胞は、NK単離キット(Miltenyi Biotec)によってPBMCから濃縮した。次に、NK細胞を、5%ヒト血清(Gemini Bio)を補給したX-VIVO培地(Lonza)中でヒトIL-2 10または100IU/mlと共に、NK細胞のフィーダー細胞(GMまたはGC)に対する様々な比で共培養した。培地は3日目および5日目に更新した。7日目にNK細胞数、集団、および細胞溶解機能を評価した。
【0044】
その他の実施形態
本明細書で開示した特徴は全て、任意の組合せで組み合わせることができる。本明細書で開示した各特徴は、同じ、同等、または同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えることができる。したがって、別段の明示的な記載がない限り、開示した各機能は、一連の一般的な同等または類似の特徴の例にすぎない。
【0045】
上記の説明から、当業者は、記載した実施形態の本質的な特徴を容易に確認することができ、それらの趣旨および範囲から逸脱することなく、実施形態の様々な変更および改変を行って、様々な用途および条件に適合させることができる。したがって、その他の実施形態も特許請求の範囲内である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
【国際調査報告】