(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ウリナスタチンポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230412BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230412BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230412BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230412BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230412BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230412BHJP
A61K 38/55 20060101ALI20230412BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20230412BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230412BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230412BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230412BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230412BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230412BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230412BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230412BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20230412BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20230412BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20230412BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230412BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/47 ZNA
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/55
A61P29/00
A61P35/00
A61P1/18
A61P1/00
A61P37/02
A61P25/00
A61P17/00
A61P19/02
A61P13/12
A61P17/02
A61P31/04
A61P9/10
A61P11/00
A61P43/00 105
A61P1/16
A61P37/00
A61P39/02
A61P37/06
A61P35/04
A61P35/02
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553090
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 US2021021148
(87)【国際公開番号】W WO2021178843
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522350483
【氏名又は名称】ダイアメディカ ユーエスエー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ポールズ, リック
(72)【発明者】
【氏名】ベルドールン, トッド
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, カール フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブレック, グレゴリー トーマス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CA19
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4H045AA10
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4H045BA41
4H045CA44
4H045EA28
(57)【要約】
ウリナスタチングリコフォーム、ウリナスタチン融合ポリペプチド、ならびに関連する組成物、混合物、ならびにウリナスタチンポリペプチドを組み換え産生する方法および疾患を治療する方法を含む、使用方法が提供される。本開示の実施形態は、(i)O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)で修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)配列番号2または4によって定義される残基である、残基T17でO-結合グリカンを含む、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドを含み、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)での修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)残基T17でO-結合グリカンを含む、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドであって、前記残基は、配列番号2または4によって定義され、前記ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2または4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、前記ウリナスタチンポリペプチドは、(i)前記修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基で前記N-結合グリカン、および(iii)残基T17で前記O-結合グリカンを含むか、または保持し、前記ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項1に記載の単離された成熟ウリナスタチンポリペプチド。
【請求項3】
配列番号2と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、前記ウリナスタチンポリペプチドは、(i)配列番号2のS10A置換、(ii)残基N45の残基で前記N-結合グリカン、および(iii)残基T17で前記O-結合グリカンを含むか、または保持し、前記ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項2に記載の単離された成熟ウリナスタチンポリペプチド。
【請求項4】
配列番号2を含む、からなる、または本質的にからなり、残基N45の残基で前記N-結合グリカンおよび残基T17で前記O-結合グリカンを含む、請求項2に記載の単離された成熟ウリナスタチンポリペプチド。
【請求項5】
前記少なくとも一つのウリナスタチン活性が、プロテアーゼ阻害活性、抗炎症活性、および抗転移活性の一つまたは複数から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された成熟ウリナスタチンポリペプチド。
【請求項6】
前記ウリナスタチンポリペプチドが、約または少なくとも約1000~3000U/mg、あるいは約または少なくとも約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、もしくは3000U/mgの特異的活性を有し、1単位(U)が、2μgのトリプシンの活性を50%阻害する前記ウリナスタチンポリペプチドの量である、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された成熟ウリナスタチンポリペプチド。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドおよび医薬的に許容される担体を含む、治療用組成物。
【請求項8】
(a)請求項1~6のいずれか一項に記載の単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドと、(b)残基N45でN-結合グリカンを含み、残基T17でO-結合グリカンを含まない、第二の成熟ウリナスタチンポリペプチドとの混合物を含み、(a)および(b)が、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項7に記載の治療用組成物。
【請求項9】
(b)が、前記O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)で修飾されたO-結合グリコシル化部位を含み、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項8に記載の治療用。
【請求項10】
(b)が、配列番号2または4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、前記修飾されたO-結合グリコシル化部位および残基N45で前記N-結合グリカンを含むか、または保持し、残基T17で前記O-結合グリカンを含まず、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項9に記載の治療用組成物。
【請求項11】
(b)が、配列番号2と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、配列番号2の前記S10A置換および残基N45で前記N-結合グリカンを含むか、または保持し、残基T17で前記O-結合グリカンを含まず、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項10に記載の治療用組成物。
【請求項12】
(b)が、配列番号2を含む、からなる、または本質的にからなり、残基N45で前記N-結合グリカンを含み、残基T17で前記O-結合グリカンを含まず、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項11に記載の治療用組成物。
【請求項13】
(a):(b)が、約20:1~約1:20の範囲内にある比、任意選択で、約20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、または1:20で前記組成物に存在する、請求項7~12のいずれか一項に記載の治療用組成物。
【請求項14】
ウリナスタチンの他のグリコシル化アイソフォーム(グリコフォーム)を実質的に含まない、請求項7~13のいずれか一項に記載の治療用組成物。
【請求項15】
約1EU/mg未満のタンパク質であるエンドトキシンレベル、約100ng/mg未満の総タンパク質である宿主細胞タンパク質、約10pg/mg未満の総タンパク質である宿主細胞DNAを有し、および/または凝集物を実質的に含まない、請求項7~14のいずれか一項に記載の治療用組成物。
【請求項16】
N末端からC末端の向きに、ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドおよびウリナスタチンポリペプチドを含む、ウリナスタチン融合ポリペプチドであって、任意選択で、前記ウリナスタチンポリペプチドは、O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)で修飾されたO-結合グリコシル化部位を含み、前記ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、ウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項17】
前記ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドが、配列番号5と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列含む、からなる、または本質的にからなる、請求項16に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項18】
前記ウリナスタチンポリペプチドが、配列番号1~4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、前記ウリナスタチンポリペプチドが、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有し、任意選択で、前記ウリナスタチンポリペプチドが、成熟ヒトウリナスタチンの配列によって定義されるS10A置換を有するか、または保持する、請求項16または17に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項19】
前記ウリナスタチン融合ポリペプチドが、配列番号6または7と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、前記ウリナスタチンポリペプチドが、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有し、任意選択で、前記ウリナスタチンポリペプチドが、成熟ヒトウリナスタチンの配列によって定義されるS10A置換を有するか、または保持する、請求項16~18のいずれか一項に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項20】
前記ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドと前記ウリナスタチンポリペプチドの間にペプチドリンカーを含み、任意選択で、前記ペプチドリンカーが、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100アミノ酸長である、請求項16~19のいずれか一項に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項21】
前記ペプチドリンカーが、プロテアーゼ切断部位を含む、請求項20に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項22】
配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる、請求項16~21のいずれか一項に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項23】
配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる、請求項16~22のいずれか一項に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項24】
前記少なくとも一つのウリナスタチン活性が、プロテアーゼ阻害活性、抗炎症活性、および抗転移活性の一つまたは複数から選択される、請求項16~23のいずれか一項に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項25】
前記ウリナスタチンポリペプチドが、約または少なくとも約1000~3000U/mg、あるいは約または少なくとも約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、もしくは3000U/mgの特異的活性を有し、1単位(U)が、2μgのトリプシンの活性を50%阻害する前記ウリナスタチンポリペプチドの量である、請求項16~24のいずれか一項に記載のウリナスタチン融合ポリペプチド。
【請求項26】
請求項16~25のいずれか一項に記載のウリナスタチン融合ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項27】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号8または9と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%である核酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる、請求項26に記載のポリヌクレオチド。
【請求項28】
プロモーターエレメントに作動可能に連結された、請求項26または27に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項29】
前記発現ベクターが、5’から3’の向きに、5’末端反復配列(LTR)、パッケージング領域、プロモーター領域、前記ウリナスタチン融合ポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチド、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント(WPRE)、および3’LTRを含む、からなる、または本質的にからなるレトロウイルスベクターである、請求項28に記載の発現ベクター。
【請求項30】
請求項26もしくは27に記載のポリヌクレオチド、または請求項28もしくは29に記載の発現ベクターを含む、組み換え哺乳類宿主細胞。
【請求項31】
HEK293細胞、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、任意選択で、GPEx CHO(GCHO)細胞から選択される、請求項30に記載の組み換え哺乳類宿主細胞。
【請求項32】
前記HEK293細胞が、gag、pro、およびpolタンパク質(任意選択で、マウス白血病ウイルス(MLV)由来)ならびに別々に遺伝子導入されたenvタンパク質を恒常的に発現し、前記ウリナスタチン融合ポリペプチドをコードする複製無能なレトロウイルス粒子を分泌する、請求項31に記載の組み換え哺乳類宿主細胞。
【請求項33】
前記CHO細胞が、前記ウリナスタチン融合ポリペプチドを発現し、フューリンポリペプチド、任意選択で、外来性フューリンポリペプチドを発現するか、または過剰発現する、請求項31に記載の哺乳類宿主細胞。
【請求項34】
ウリナスタチンポリペプチドを組み換え産生する方法であって、
(a)請求項30~33のいずれか一項に記載の組み換え哺乳類宿主細胞、任意選択で、CHO細胞またはGCHOにおいて前記ウリナスタチン融合ポリペプチドを発現させること;および
(b)前記ウリナスタチンポリペプチドを前記宿主細胞または前記宿主細胞を含有する培地から単離し、
これにより、前記ウリナスタチン融合ポリペプチドを組み換え産生することを含む、方法。
【請求項35】
前記ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドを前記ウリナスタチンポリペプチドから切断して、配列番号1~4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる組み換えウリナスタチンポリペプチドを産生することを含み、前記ウリナスタチンポリペプチドが、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ウリナスタチンポリペプチドが、請求項1~6のいずれか一項に記載の成熟ウリナスタチンポリペプチドである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
生理的条件下で、任意選択で、生理的条件の温度、塩分、および/またはpH下で、前記ウリナスタチンポリペプチドの少なくとも一つのウリナスタチン活性を測定することを含む、請求項34~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ウリナスタチンポリペプチドを含む治療用組成物を調製することを含み、前記組成物が、タンパク質ベースまたは重量対重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%の純度を有し、前記組成物が、凝集物を実質的に含まず、エンドトキシンを実質的に含まない、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
それを必要とする対象における疾患の治療において使用するための、請求項7~15のいずれか一項に記載の治療用組成物、または請求項38に記載の方法に従い調製される治療用組成物であって、任意選択で、前記疾患が、炎症性疾患または癌である、治療用組成物。
【請求項40】
それを必要とする対象における炎症性疾患または状態を治療する方法であって、前記対象に、請求項7~15のいずれか一項に記載の治療用組成物、または請求項38に記載の方法に従い調製される治療用組成物を投与し、これにより、前記対象における前記炎症性疾患または状態を治療することを含む、方法。
【請求項41】
前記炎症性疾患または状態が、膵炎(例えば、急性膵炎、慢性膵炎、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)誘発性膵炎)、全身性炎症、大腸炎、自己免疫性脳脊髄炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、関節炎、腎不全、熱傷、重症敗血症および関連する炎症促進性/続発性状態(例えば、臓器不全)を含む敗血症/敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、川崎病、腎疾患(例えば、急性腎不全、慢性腎疾患)、虚血性状態(例えば、肝臓、腎臓、心臓、肺、脳における虚血再灌流障害)、肺炎症および炎症性肺状態(例えば、肺感染症、混合性結合組織疾患と関連する感染性間質性肺炎を含む、肺炎、肺の線維症、急性呼吸促迫症候群)、肝炎を含む肝炎症、アナフィラキシー、手術後または術後合併症(例えば、腎機能、心臓手術、肺手術、認知障害、肝臓移植)、リポ多糖(LPS)誘発性炎症または組織損傷(例えば、肺、肝臓、脳)、糖尿病に続く炎症または機能不全(例えば、糖尿病誘発性心機能不全)、火傷、熱射病、炎症性または神経障害性疼痛、急性中毒、高脂血症関連炎症、自己免疫関連炎症、同種移植片または輸血関連炎症、神経炎症、ならびに癌関連炎症の一つまたは複数から選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記修飾されたウリナスタチンポリペプチドを投与することが、前記対象における、プロテアーゼ活性、内皮活性化/損傷、炎症促進性サイトカインならびにケモカイン産生/放出(任意選択で、IL-1β、MIP-1α、MCP-1、および/もしくはCXCL1)、フィブリノーゲン合成、器官への好中球の動員、ならびに/または器官損傷の一つまたは複数を低減する、請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
それを必要とする対象における癌を治療する方法、癌の症状を回復させる方法、または癌の進行を阻害する方法であって、前記対象に、請求項7~15のいずれか一項に記載の治療用組成物、または請求項38に記載の方法に従い調製される治療用組成物を投与し、これにより、それを必要とする前記対象における癌を治療する、癌の症状を回復させる、または癌の進行を阻害することを含む、方法。
【請求項44】
前記癌が、メラノーマ(例えば、転移性黒色腫)、膵臓癌、骨癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、中皮腫、白血病(例えば、リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、再発した急性骨髄性白血病)、リンパ腫、肝細胞腫(肝細胞癌)、肉腫、B細胞悪性腫瘍、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、グリオーマ、多形神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原発性CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫)、膀胱癌、子宮癌、食道癌、脳癌、頭頸部癌、子宮頸癌、精巣癌、甲状腺癌、および胃癌の一つまたは複数から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記癌が、転移性癌であり、任意選択で、前記修飾されたウリナスタチンポリペプチドの投与が、癌細胞浸潤および/または血管新生を低減する、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記転移性癌が、
(a)骨、肝臓、および/または肺に転移している、膀胱癌;
(b)骨、脳、肝臓、および/または肺に転移している、乳癌;
(c)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、結腸直腸癌;
(d)副腎、骨、脳、肝臓、および/または肺に転移している、腎臓癌;
(e)副腎、骨、脳、肝臓、および/または他の肺部位に転移している、肺癌;
(f)骨、脳、肝臓、肺、および/または皮膚/筋肉に転移している、メラノーマ;
(g)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、卵巣癌;
(h)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、膵臓癌;
(i)副腎、骨、肝臓、および/または肺に転移している、前立腺癌;
(j)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、胃癌;
(l)骨、肝臓、および/または肺に転移している、甲状腺癌;ならびに
(m)骨、肝臓、肺、膣、および/または腹膜に転移している、子宮癌、の一つまたは複数から選択される、請求項45に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月5日に出願された米国仮特許出願第62/985,499号、2020年5月8日に出願された米国仮特許出願第63/021,938号、および2020年11月2日に出願された米国仮特許出願第63/108,773号に対する35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張するものであり、その各々は参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記述
本出願に関連する配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、本明細書に参照により組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、DIAM_039_03WO_ST25.txtである。テキストファイルは、約31KBで、2021年3月5日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0003】
本開示の実施形態は、ウリナスタチングリコフォーム、ウリナスタチン融合ポリペプチド、および関連する組成物、混合物、ならびにウリナスタチンポリペプチドを組み換え産生する方法および疾患を治療する方法を含む、使用方法を含む。
【背景技術】
【0004】
ウリナスタチン(また、尿トリプシン阻害剤)は、トリプシン、キモトリプシン、乳酸、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、および様々な膵酵素の活性を阻害するヒト尿由来の糖タンパク質プロテアーゼ阻害剤である。高度に精製されたウリナスタチンは、急性膵炎、慢性膵炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、熱傷、敗血症性ショック、中毒性表皮壊死症(TEN)、および他の疾患の治療に臨床的に使用されている。
【0005】
ウリナスタチンは、膵炎を含む様々な状態のためのヒト使用が承認されている。しかしながら、ウリナスタチンは、プロテアーゼの活性部位と不可逆的に反応する強力なプロテアーゼ阻害剤であり、したがって、典型的にはその標的と1:1の化学量論で消費される、セルピンであるので、大量のウリナスタチンが必要である。この特性は、全身投与後に達成される比較的低いインビボ曝露と相まって、天然のウリナスタチンタンパク質から治療薬を生成する際に課題を生じる。
【0006】
したがって、当該技術分野において、その組み換え産生および/または治療有用性に関連する改善された特徴を有するウリナスタチンポリペプチド、ならびに組み換えウリナスタチンポリペプチドを産生する関連する方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の実施形態は、(i)O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)で修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)配列番号2または4によって定義される残基である、残基T17でO-結合グリカンを含む、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドを含み、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。
【0008】
一部の実施形態では、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2または4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、ウリナスタチンポリペプチドは、(i)修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)残基T17でO-結合グリカンを含むか、または保持し、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。一部の実施形態では、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、ウリナスタチンポリペプチドは、(i)配列番号2のS10A置換、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)残基T17でO-結合グリカンを含むか、または保持し、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。特定の実施形態では、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2を含む、からなる、または本質的にからなり、残基N45の残基でN-結合グリカンおよび残基T17でO-結合グリカンを含む。
【0009】
一部の実施形態では、少なくとも一つのウリナスタチン活性は、プロテアーゼ阻害活性、抗炎症活性、および抗転移活性のうちの一つまたは複数から選択される。一部の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、約または少なくとも約1000~3000U/mg、あるいは約または少なくとも約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、もしくは3000U/mgの特異的活性を有し、1単位(U)は、2μgのトリプシンの活性を50%阻害するウリナスタチンポリペプチドの量である。
【0010】
本明細書に記載される単離された成熟ウリナスタチンポリペプチド、および医薬的に許容される担体を含む治療用組成物もまた含まれる。一部の組成物は、(a)本明細書に記載される単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドと、(b)残基N45にN-結合グリカンを含み、残基T17にO-結合グリカンを含まない、第二の成熟ウリナスタチンポリペプチドの混合物を含み、(a)および(b)は、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。一部の実施形態では、(b)の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)に修飾されたO-結合グリコシル化部位を含み、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。一部の実施形態では、(b)の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2または4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、修飾されたO-結合グリコシル化部位および残基N45でN-結合グリカンを含むか、または保持し、残基T17でO-結合グリカンを含まず、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。一部の実施形態では、(b)の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、配列番号2のS10A置換および残基N45でN-結合グリカンを含むか、または保持し、残基T17でO-結合グリカンを含まず、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。特定の実施形態では、(b)の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2を含む、からなる、または本質的にからなり、残基N45でN-結合グリカンを含み、残基T17でO-結合グリカンを含まず、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。
【0011】
一部の実施形態では、(a):(b)の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、約20:1~約1:20の範囲にある比、任意選択で、約20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、または1:20で組成物に存在する。
【0012】
ある特定の治療用組成物は、ウリナスタチンのグリコシル化アイソフォーム(グリコフォーム)を実質的に含まない。ある特定の治療用組成物は、約1EU/mg未満のタンパク質であるエンドトキシンレベル、約100ng/mg未満の総タンパク質である宿主細胞タンパク質、約10pg/mg未満の総タンパク質である宿主細胞DNAを有し、および/または実質的に凝集物を含まない。
【0013】
ある特定の実施形態は、N末端からC末端の向きに、ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドおよびウリナスタチンポリペプチドを含むウリナスタチン融合ポリペプチドを含み、例えば、ウリナスタチンポリペプチドは、O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)で修飾されたO-結合グリコシル化部位を含み、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。
【0014】
ある特定の実施形態では、ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドは、配列番号5と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列含む、からなる、または本質的にからなる。ある特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号1~4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有し、任意選択で、ウリナスタチンポリペプチドは、成熟ヒトウリナスタチンの配列によって定義されるS10A置換を有するか、または保持する。
【0015】
ある特定の実施形態では、ウリナスタチン融合ポリペプチドは、配列番号6または7と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有し、任意選択で、ウリナスタチンポリペプチドは、成熟ヒトウリナスタチンの配列によって定義されるS10A置換を有するか、または保持する。一部の実施形態は、ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドとウリナスタチンポリペプチドの間にペプチドリンカーを含み、任意選択で、ペプチドリンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100アミノ酸長である。ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、プロテアーゼ切断部位を含む。
【0016】
一部のウリナスタチン融合ポリペプチドは、配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる。一部のウリナスタチン融合ポリペプチドは、配列番号7に記載されるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる。特定の実施形態では、少なくとも一つのウリナスタチン活性は、プロテアーゼ阻害活性、抗炎症活性、および抗転移活性のうちの一つまたは複数から選択される。ある特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、約または少なくとも約1000~3000U/mg、あるいは約または少なくとも約1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、もしくは3000U/mgの特異的活性を有し、1単位(U)は、2μgのトリプシンの活性を50%阻害するウリナスタチンポリペプチドの量である。
【0017】
本明細書に記載されるウリナスタチン融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドもまた含まれる。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号8または9と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%である核酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる。
【0018】
プロモーターエレメントに作動可能に連結された、本明細書に記載されるポリヌクレオチドを含む発現ベクターもまた含まれる。ある特定の実施形態では、発現ベクターは、5’から3’の向きに、以下の:5’末端反復配列(LTR)、パッケージング領域、プロモーター領域、ウリナスタチン融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント(WPRE)、および3’LTRを含む、からなる、または本質的にからなる、レトロウイルスベクターである。
【0019】
本明細書に記載されるポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含む組み換え哺乳類宿主細胞もまた含まれる。ある特定の組み換え哺乳類宿主細胞は、HEK293細胞、およびチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、例えば、GPEx CHO(GCHO)細胞から選択される。ある特定の実施形態では、HEK293細胞は、gag、pro、およびpolタンパク質(任意選択で、マウス白血病ウイルス(MLV)由来)ならびに別々に遺伝子導入されたenvタンパク質を恒常的に発現し、ウリナスタチン融合ポリペプチドをコードする複製無能なレトロウイルス粒子を分泌する。ある特定の実施形態では、CHO細胞は、ウリナスタチン融合ポリペプチドを発現し、フューリンポリペプチド、任意選択で、外来性フューリンポリペプチドを発現するか、または過剰発現する。
【0020】
一部の実施形態は、ウリナスタチンポリペプチドを組み換え産生する方法であって、
(a)本明細書に記載される組み換え哺乳類宿主細胞、任意選択で、CHO細胞またはGCHOにおいてウリナスタチン融合ポリペプチドを発現させること;および
(b)ウリナスタチンポリペプチドを宿主細胞または宿主細胞を含有する培地から単離し、
これにより、ウリナスタチン融合ポリペプチドを組み換え産生することを含む、方法を含む。
【0021】
ある特定の実施形態は、ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドをウリナスタチンポリペプチドから切断して、配列番号1~4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる組み換えウリナスタチンポリペプチドを産生することを含み、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。ある場合では、ウリナスタチンポリペプチドは、成熟ヒトウリナスタチンの配列によって定義されるS10A置換を有するか、または保持する。ある場合では、ウリナスタチンポリペプチドは、本明細書に記載される成熟ウリナスタチンポリペプチドである。
【0022】
一部の実施形態は、生理的条件下で、任意選択で、生理的条件の温度、塩分、および/またはpH下で、ウリナスタチンポリペプチドの少なくとも一つのウリナスタチン活性を測定することを含む。一部の実施形態は、ウリナスタチンポリペプチドを含む治療用組成物を調製することを含み、組成物は、タンパク質ベースまたは重量対重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%の純度を有し、組成物は、実質的に凝集物を含まず、実質的にエンドトキシンを含まない。
【0023】
上述のように、本明細書に記載される成熟ウリナスタチンポリペプチドを含む、本明細書に記載されるウリナスタチンポリペプチド、その混合物(例えば、異なるウリナスタチングリコフォームを含む混合物)を含む治療用組成物、および本明細書に記載される方法により調製される治療用組成物もまた、含まれる。一部の組成物は、それを必要とする対象における疾患の治療における使用のためのものであり、例えば、疾患は、炎症性疾患または癌である。
【0024】
対象に本明細書に記載される治療用組成物を投与し、これにより、対象における炎症性疾患または状態を治療することを含む、それを必要とする対象における炎症性疾患または状態を治療する方法もまた、含まれる。一部の実施形態では、炎症性疾患または状態は、膵炎(例えば、急性膵炎、慢性膵炎、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)誘発性膵炎)、全身性炎症、大腸炎、自己免疫性脳脊髄炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、関節炎、腎不全、熱傷、重症敗血症を含む敗血症/敗血症性ショックおよび関連する炎症促進性/続発性状態(例えば、臓器不全)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、川崎病、腎疾患(例えば、急性腎不全、慢性腎疾患)、虚血性状態(例えば、肝臓、腎臓、心臓、肺、脳における虚血再灌流障害)、肺炎症および炎症性肺状態(例えば、肺感染症、混合性結合組織疾患と関連する感染性間質性肺炎を含む、肺炎、肺の線維症、急性呼吸促迫症候群)、肝炎を含む肝炎症、アナフィラキシー、手術後または術後合併症(例えば、腎機能、心臓手術、肺手術、認知障害、肝臓移植)、リポ多糖(LPS)誘発性炎症または組織損傷(例えば、肺、肝臓、脳)、糖尿病に続く炎症または機能不全(例えば、糖尿病誘発性心機能不全)、火傷、熱射病、炎症性または神経障害性疼痛、急性中毒、高脂血症関連炎症、自己免疫関連炎症、同種移植片または輸血関連炎症、神経炎症、ならびに癌関連炎症の一つまたは複数から選択される。
【0025】
一部の実施形態では、修飾されたウリナスタチンポリペプチドの投与は、対象におけるプロテアーゼ活性、内皮活性化/損傷、炎症促進性サイトカインおよびケモカイン産生/放出(任意選択で、IL-1β、MIP-1α、MCP-1、および/またはCXCL1)、フィブリノーゲン合成、器官への好中球の動員、ならびに/または器官損傷の一つまたは複数を低減する。
【0026】
対象に本明細書に記載される治療用組成物を投与し、これにより、それを必要とする対象における癌を治療すること、癌の症状を回復させること、または癌の進行を阻害することを含む、それを必要とする対象における癌を治療する方法、癌の症状を回復させる方法、または癌の進行を阻害する方法もまた、含まれる。一部の実施形態では、癌は、メラノーマ(例えば、転移性黒色腫)、膵臓癌、骨癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、中皮腫、白血病(例えば、リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、再発した急性骨髄性白血病)、リンパ腫、肝細胞腫(肝細胞癌)、肉腫、B細胞悪性腫瘍、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、グリオーマ、多形神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原発性CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫)、膀胱癌、子宮癌、食道癌、脳癌、頭頸部癌、子宮頸癌、精巣癌、甲状腺癌、および胃癌の一つまたは複数から選択される。
【0027】
一部の実施形態では、癌は、転移性癌であり、任意選択で、修飾されたウリナスタチンポリペプチドの投与は、癌細胞浸潤および/または血管新生を低減する。一部の実施形態では、転移性癌は、
(a)骨、肝臓、および/または肺に転移している、膀胱癌;
(b)骨、脳、肝臓、および/または肺に転移している、乳癌;
(c)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、結腸直腸癌;
(d)副腎、骨、脳、肝臓、および/または肺に転移している、腎臓癌;
(e)副腎、骨、脳、肝臓、および/または他の肺部位に転移している、肺癌;
(f)骨、脳、肝臓、肺、および/または皮膚/筋肉に転移している、メラノーマ;
(g)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、卵巣癌;
(h)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、膵臓癌;
(i)副腎、骨、肝臓、および/または肺に転移している、前立腺癌;
(j)肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、胃癌;
(l)骨、肝臓、および/または肺に転移している、甲状腺癌;ならびに
(m)骨、肝臓、肺、膣、および/または腹膜に転移している、子宮癌、の一つまたは複数から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、全長ウリナスタチン融合ポリペプチド;配列番号6(ポリペプチド);および配列番号8(核酸)をコードする、pFCS-DM300FL-WPRE-SIN(新規ori)、GDDDA01.0002のベクターマップを示す。
【
図2】
図2は、成熟ウリナスタチン融合ポリペプチド;配列番号7(ポリペプチド);および配列番号9(核酸)をコードする、pFCS-DM300DCS-WPRE-SIN(新規ori)、GDDDA02.0002のベクターマップを示す。
【
図3】
図3は、発現したウリナスタチン融合ポリペプチドの還元SDS-PAGEゲル分析を示す。レーン4:Novex Sharp事前染色標準物質。レーン5:尿由来の対照ウリナスタチン。レーン6:培養4日目の培地(全長ウリナスタチン融合物)。レーン7:培養8日目の培地(全長ウリナスタチン融合物)。レーン8:培養12日目の培地(全長ウリナスタチン融合物)。レーン9:培養4日目の培地(成熟ウリナスタチン融合物)。レーン10:培養8日目の培地(成熟ウリナスタチン融合物)。レーン11:培養12日目の培地(成熟ウリナスタチン融合物)。
【
図4】
図4は、発現したウリナスタチン融合ポリペプチドの還元SDS-PAGEゲル分析を示す。レーン1:Novex Sharp事前染色標準物質。レーン2:空。レーン3:尿由来の対照ウリナスタチン。レーン4:尿由来の対照ウリナスタチン(PNGase処理)。レーン5:空。レーン6:全長ウリナスタチン。レーン7:全長ウリナスタチン(PNGase処理)。レーン8:空。レーン9:成熟ウリナスタチン。レーン10:成熟ウリナスタチン(PNGase処理)。
【
図5】
図5は、組み換えウリナスタチンポリペプチド(T17)が、インビトロでトリプシンを阻害することを示す。トリプシンの完全な阻害は、希釈係数(DF)200および4000で示される。トリプシン阻害活性は、ウリナスタチンの希釈係数が増加するにつれて減少し、これにより、トリプシンに対する特異的な阻害活性が証明された。
【
図6A】
図6A~6Bは、単一用量の組み換えウリナスタチンポリペプチド(T17)が、敗血症のマウスモデルにおいて、用量依存性の様式で死亡を低減したことを示す。
【
図7】
図7は、急性膵炎のマウスモデルにおける、血清α-アミラーゼレベルに対する組み換えウリナスタチンの作用(32%低減)を示す。
【
図8】
図8は、急性膵炎のマウスモデルにおける、血清リパーゼレベルに対する組み換えウリナスタチンの作用(25%低減)を示す。
【
図9】
図9は、急性膵炎のマウスモデルにおける、炎症および酸化ストレスの遺伝子マーカーに対する組み換えウリナスタチンの作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等または均等な、任意の方法、材料、組成物、試薬、細胞が、本開示の主題の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料が記載される。本明細書に引用される特許および特許出願を含むが、これらに限定されない、全ての刊行物および参考文献は、それぞれの個々の刊行物または参考文献が、完全に記載されるものとして、参照により本明細書に組み込まれることを具体的かつ個別に示されたかのように、その全体が参照により組み込まれる。本出願が優先権を主張する任意の特許出願は、刊行物および参考文献について上で記載された方法で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
本開示の実施は、反対に具体的に示されない限り、当業者であれば、ウイルス学、免疫学、微生物学、分子生物学および組み換えDNA技術の従来の方法を利用するであろうが、その多くは、例示の目的で以下に記載される。このような技術は、文献において完全に説明されている。例えば、Current Protocols in Protein Science,Current Protocols in Molecular BiologyまたはCurrent Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,New York,N.Y.(2009);Ausubel et al.,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley&Sons,1995;Sambrook and Russell,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd Edition,2001);Maniatis et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982);DNA Cloning:A Practical Approach,vol.I&II(D.Glover,ed.);Oligonucleotide Synthesis (N.Gait,ed.,1984);Nucleic Acid Hybridization(B.Hames&S.Higgins,eds.,1985);Transcription and Translation(B.Hames&S.Higgins,eds.,1984);Animal Cell Culture(R.Freshney,ed.,1986);Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning(1984)および他の同様の参考文献を参照のこと。
【0031】
組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、および組織培養ならびに形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)のための標準的な技術が使用され得る。酵素反応および精製技術は、製造元の仕様に従い、または当該技術分野で一般的に達成されるか、または本明細書に記載されるように行われ得る。これらおよび関連する技術ならびに手法は、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、また本明細書全体を通して引用および考察される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載される通り、一般的に行われ得る。特定の定義が提供されない限り、本明細書に記載される分子生物学、分析化学、合成有機化学、ならびに医薬および医薬化学に関連して利用される命名法、ならびに実験室手法および技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。組み換えテクノロジー、分子生物学、微生物学、化学合成、化学分析、医薬調製、製剤、および送達、ならびに患者の処置の標準的な技術が、使用され得る。
【0032】
本開示の目的のために、以下の用語が以下に定義される。
【0033】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の対象の一つまたは一つより多く(すなわち、少なくとも一つ)を指すために本明細書において使用される。一例として、「エレメント」は、一つのエレメントまたは一つより多くのエレメントを意味する。
【0034】
「約」とは、参照数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さに対して30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1%で変化する、数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量または長さを意味する。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「アミノ酸」は、天然に生じるアミノ酸と天然に生じないアミノ酸の両方ならびにアミノ酸アナログおよび模倣物を意味することが意図される。天然に生じるアミノ酸は、タンパク質生合成中に利用される20種の(L)-アミノ酸、ならびに4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリンおよびオルニチンなどの他のものを含む。天然に生じないアミノ酸は、例えば、(D)-アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p-フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどを含み、それらは、当業者に公知である。アミノ酸アナログは、天然に生じるおよび天然に生じないアミノ酸の修飾形態を含む。このような修飾は、例えば、アミノ酸上の化学基および部分の置換もしくは置き換え、またはアミノ酸の誘導体化を含み得る。アミノ酸模倣物は、例えば、参照アミノ酸の荷電および荷電スペーシング特徴などの機能的に類似する特性を呈する有機構造を含む。例えば、アルギニン(ArgまたはR)を模倣する有機構造は、類似の分子スペースに位置し、天然に存在するArgアミノ酸の側鎖のe-アミノ基と同じ程度の可動性を有する正に荷電した部分を有する。模倣物はまた、アミノ酸またはアミノ酸官能基の最適なスペーシングおよび荷電相互作用を維持するように、制約された構造を含む。当業者は、どの構造が機能的に均等なアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を構成するかを知っているか、または決定することができる。
【0036】
「生体適合性」は、概して、生物学的機能に有害ではなく、アレルゲン状態および疾患状態を含む、いかなる程度の許容できない毒性ももたらさない材料または化合物を指す。
【0037】
「コード配列」とは、遺伝子のポリペプチド産物のコードに関与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、用語「非コード配列」は、遺伝子のポリペプチド産物のコードに直接的には関与しない任意の核酸配列を指す。
【0038】
本開示全体を通して、文脈が別段必要としない限り、用語「含む」、「含む」、および「含むこと」は、指定された工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を含むことを意味するが、任意の他の工程もしくは構成要素または工程もしくは構成要素の群を除外することを意味しないことは理解されるだろう。
【0039】
「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものを含み、かつそれらに限定されることを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された構成要素が、必要とされるか、または必須であり、他の構成要素が存在しない場合があることを示す。「本質的にからなる」とは、語句の後に列挙される任意の構成要素を含み、列挙された構成要素について本開示に明記された活性または作用と干渉または関与しない他の構成要素に限定されることを意味する。したがって、「本質的にからなる」という語句は、列挙された構成要素が、必要とされるか、または必須であるが、他の構成要素が、任意選択であり、列挙された構成要素の活性または作用に実質的に影響を与えるかどうかに応じて、存在してもよいし、存在しなくてもよいことを示す。
【0040】
「エンドトキシンを含まない」または「実質的にエンドトキシンを含まない」という用語は、概して、エンドトキシンの最大微量(例えば、対象に対して臨床的に有害な生理的作用を有さない量)、好ましくは、検出不可能な量のエンドトキシンを含有する組成物、溶媒、および/または血管に関する。エンドトキシンは、細菌、典型的には、グラム陰性細菌などのある特定の微生物に関連する毒素であるが、エンドトキシンは、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)などのグラム陽性細菌において見出され得る。最もよく見られるエンドトキシンは、様々なグラム陰性細菌の外膜に見られるリポ多糖(LPS)またはリポオリゴ糖(LOS)であり、これらの細菌が疾患を引き起こす能力において中心的な病原性特性を表す。ヒトにおける少量のエンドトキシンは、発熱、血圧の低下、および炎症および凝固の活性化、とりわけ他の有害な生理的作用を生じ得る。
【0041】
したがって、医薬品製造では、たとえ少量であっても、ヒトにおいて副作用を引き起こす可能性があるため、しばしば、医薬品および/または薬物容器からエンドトキシンの大部分またはすべての痕跡を取り除くことが望ましい。300℃を超える温度が、典型的には、大部分のエンドトキシンを分解するために必要とされるため、脱発熱オーブンが、この目的のため使用されてもよい。例えば、シリンジまたはバイアルなどの一次包装材料に基づき、250℃のガラス温度と30分の保持時間の組み合わせが、しばしば、エンドトキシンレベルの3logの低減を達成するのに十分である。例えば、本明細書に記載され、当該技術分野で公知のクロマトグラフィーおよび濾過方法を含む、エンドトキシンを除去する他の方法が、企図されている。
【0042】
エンドトキシンは、当該技術分野で公知の日常的な技術を使用して検出することができる。例えば、リムルス・アメボサイト(Limulus Amoebocyte)可溶化液アッセイは、カブトガニ由来の血液を利用し、エンドトキシンの存在を検出するための非常に高感度のアッセイである。この試験において、非常に低いレベルのLPSは、この反応を増幅する強力な酵素カスケードにより、リムルス可溶化物の検出可能な凝固を引き起こし得る。エンドトキシンは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によって定量することもできる。エンドトキシンを実質的に含まないために、エンドトキシンレベルは、約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.08、0.09、0.1、0.5、1.0、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、または10EU/mg未満の活性な化合物であってもよい。典型的には、1ngのリポ多糖(LPS)は、約1~10EUに相当する。
【0043】
ポリペプチドの「半減期」は、生物の血清もしくは組織への投与時のこのような活性と比較して、または任意の他の定義される時間点と比較して、ポリペプチドが、その薬理学的活性、生理的活性、もしくは他の活性の半分を失うのにかかる時間を指し得る。「半減期」はまた、生物の血清もしくは組織への投与時のこのような量もしくは濃度と比較して、または任意の定義される時間点と比較して、ポリペプチドの量または濃度が、生物の血清または組織に投与される開始量の半分まで低減されるのにかかる時間を指すことができる。半減期は、血清および/または任意の一つまたは複数の選択された組織において測定することができる。
【0044】
用語「調節すること」および「変化させること」は、典型的には、対照と比較して統計的に有意もしくは生理的に有意な量または程度で、「増加すること」、「増強すること」または「刺激すること」ならびに「減少すること」または「低減すること」を含む。「増加した」、「刺激された」または「増強した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、組成物なし(例えば、薬剤の不存在)または対照組成物によって産生される量の、1.1、1.2、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30倍またはそれ以上(例えば、500、1000倍)(間の全ての整数および範囲、例えば、1.5、1.6、1.7、1.8などを含む)である増加を含み得る。「減少した」または「低減した」量は、典型的には、「統計的に有意な」量であり、組成物なし(例えば、薬剤の不存在)または対照組成物によって産生される量における1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の減少(例えば、間の全ての整数および範囲を含む)を含み得る。比較および「統計的に有意な」量の例が、本明細書に記載される。
【0045】
用語「ポリペプチド」、「タンパク質」および「ペプチド」は、互換的に使用され、任意の特定の長さに限定されないアミノ酸のポリマーを意味する。用語「酵素」は、ポリペプチドまたはタンパク質触媒を含み、ウリナスタチンに関して、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドと互換的に使用される。用語は、ミリストイル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化およびシグナル配列の付加または欠失を含む。用語「ポリペプチド」または「タンパク質」は、一つまたは複数の鎖のアミノ酸を意味し、それぞれの鎖は、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸を含み、前述のポリペプチドまたはタンパク質は、天然のタンパク質、すなわち、天然に生じる細胞および具体的には、組み換えではない細胞、または遺伝子操作もしくは組み換え細胞によって産生されるタンパク質の配列を有する、ペプチド結合によって互いに非共有結合および/または共有結合された、複数の鎖を含み得、天然のタンパク質のアミノ酸配列を有する分子、または天然の配列の一つまたは複数のアミノ酸の欠失、付加、および/もしくは置換を有する分子を含む。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、具体的には、本明細書に記述されるウリナスタチンタンパク質、またはウリナスタチンタンパク質の一つまたは複数のアミノ酸の欠失、付加、および/もしくは置換を有する配列を包含する。ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、一つまたは複数の組み換えDNA分子を含む組み換え細胞によって産生され、典型的には、そうでなければ、細胞において見出されない異種ポリヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列の組み合わせから作成される、「組み換え」ポリペプチドである。
【0046】
本明細書において言及される、用語「単離された」ポリペプチドまたはンパク質は、対象タンパク質が、(1)典型的には、天然で見出される、少なくとも一部の他のタンパク質を含まず、(2)同じ供給源、例えば、同種由来の他のタンパク質を本質的に含まず、(3)異なる種由来の細胞によって発現され、(4)それが天然で関連する、少なくとも約50パーセントのポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、もしくは他の材料から分離されており、(5)「単離されたタンパク質」が、天然で関連するタンパク質の一部と関連しない(共有結合もしくは非共有結合性相互作用によって)、(6)それが天然で関連しない、ポリペプチドと作動可能に結合した(共有結合性もしくは非共有結合性相互作用によって)、または(7)天然で生じないことを意味する。このような単離されたタンパク質は、ゲノムDNA、cDNA、mRNAまたは他のRNAによってコードされ得るか、合成期限のものであってもよく、またはその任意の組み合わせであってもよい。ある特定の実施形態では、単離されたタンパク質は、その使用(治療、診断、予防、研究またはその他)と干渉するであろう、その天然の環境で見出される、タンパク質もしくはポリペプチドまたは他の汚染物質を実質的に含まない。
【0047】
ある特定の実施形態では、組成物中の任意の所定の薬剤(例えば、ウリナスタチンポリペプチド)の「純度」が、具体的に定義されてもよい。例えば、ある特定の組成物は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、化合物を分離し、同定し、定量するために、生化学および分析化学において頻繁に使用される周知の形態のカラムクロマトグラフィーによって測定される、間にある全ての少数および範囲を含む、少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%純粋(例えば、タンパク質ベースで)である薬剤を含んでもよい。
【0048】
用語「参照配列」は、概して、別の配列が比較されている核酸コード配列、またはアミノ酸配列を指す。本明細書に記載される全てのポリペプチド配列およびポリヌクレオチド配列は、名称によって記載されるものならびに表および配列表に記載されるものをふくむ、参照配列として含まれている。
【0049】
用語「配列同一性」、または例えば、本明細書で使用される場合、「50%同一の配列」を含む用語は、配列が、比較ウィンドウにわたってヌクレオチド対ヌクレオチドベースまたはアミノ酸対アミノ酸ベースで同一である程度を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにわたって二つの最適に整列された配列を比較すること、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が、両方の配列で生じて、一致した位置の数を生じる、位置の数を決定すること、一致した位置の数を、比較ウィンドウの位置の総数(すなわち、ウィンドウサイズ)で割ること、および結果を100倍して、配列同一性のパーセンテージを得ることによって、計算され得る。比較ウィンドウを整列させるための配列の最適な整列は、アルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package Release7.0のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group、575Science Drive Madison、Wis.、USA)のコンピューター実装によって、または選択された様々な方法のいずれかによって生じる、精査および最適な整列(すなわち、コンピューターウィンドウに渡り最高パーセンテージの相同性をもたらす)によって行われてもよい。例えば、Altschul et al.,Nucl.Acids Res.25:3389、1997によって開示される、BLASTファミリーのプログラムを参照してもよい。
【0050】
用語「溶解度」は、液体溶媒に溶解するため、均一な溶液を形成するための、本明細書において提供される薬剤(例えば、ウリナスタチンポリペプチド)の特性を指す。溶解度は、典型的には、溶媒の単位体積当たりの溶質の質量(溶媒1kg当たりの溶質のg、溶媒dL(100mL)当たりのg、mg/mlなど)、モル濃度、モル濃度、モル分画または濃度の他の類似の記載のいずれかによって、濃度として表される。溶媒の量当たり溶解できる溶質の最大平衡量は、温度、圧力、pH、および溶媒の性質を含む、特定された条件下でのその溶媒中のその溶質の溶解度である。ある特定の実施形態では、溶解度は、生理的pH、または他のpH、例えば、pH5.0、pH6.0、pH7.0、pH7.4、pH7.6、pH7.8、もしくはpH8.0(例えば、約pH5~8)で測定される。ある特定の実施形態では、溶解度は、水あるいはPBSまたはNaCl(NaPを含むか、もしくは含まない)などの生理的バッファーにおいて測定される。特定の実施形態では、溶解度は、比較的低いpH(例えば、pH6.0)ならびに比較的高い塩(例えば、500mM NaClおよび10mM NaP)で測定される。ある特定の実施形態では、溶解度は、血液または血清などの生物学的流体(溶媒)において測定される。ある特定の実施形態では、温度は、約室温(例えば、約20、21、22、23、24、25℃)または約体温(37℃)であり得る。ある特定の実施形態では、薬剤は、室温または37℃で少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90または100mg/mlの溶解度を有する。
【0051】
「対象」または「それを必要とする対象」または「患者」または「それを必要とする患者」は、ヒト対象などの哺乳類対象を含む。
【0052】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ完璧または完全に、例えば、ある所定の数量の95%、96%、97%、98%、99%以上を意味する。
【0053】
「統計的に有意」とは、結果が、偶然に生じたとは考えられないことを意味する。統計的有意性は、当該技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。一般的に使用される有意性の尺度は、観察される事象が、帰無仮説が真である場合に生じる頻度または確率である、p値を含む。得られたp値が、有意性レベルよりも小さい場合、次いで、帰無仮説が棄却される。単純な場合では、有意性レベルは、0.05以下のp値で定義される。
【0054】
「治療応答」は、一つまたは複数の治療用薬剤の投与に基づく症状の改善(持続しているかどうかに関わらず)を意味する。
【0055】
本明細書で使用される場合、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)または細胞の「治療」は、個体または細胞の自然経過を変える試みで使用される任意のタイプの介入である。治療は、医薬組成物の投与を含むが、これに限定されず、予防的に、または病理学的現象の開始もしくは病因物質との接触のいずれかに続いて行われてもよい。また、治療される疾患もしくは状態の進行速度を低減すること、その疾患もしくは状態の発症を遅延させること、またはその発症の重症度を低減することに向けられ得る「予防的」治療もまた、含まれる。「治療」または「予防」は、必ずしも、疾患もしくは状態、またはその関連する症状の完全な根絶、治癒、または予防を示すものではない。
【0056】
用語「野生型」は、集団において最も頻繁に観察され、それゆえに、遺伝子の「正常型」または「野生型」形態と任意で設計される、遺伝子または遺伝子産物(例えば、ポリペプチド)を指す。
【0057】
本明細書におけるそれぞれの実施形態は、別段明示的に記載されない限り、全ての他の実施形態に必要な変更を適用されるべきである。
【0058】
ウリナスタチングリコフォームおよび融合ポリペプチド
本開示のある特定の実施形態は、概して、その活性または機能的バリアントおよびフラグメントを含む、残基スレオニン17(T17)で予想外のO-結合グリカンを有する成熟ヒトウリナスタチンポリペプチドを含む、ヒトウリナスタチンの交互グリコフォームに関する。一部の実施形態は、その活性またはそうでなければ機能的バリアントおよびフラグメントを含む、「ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチド」および「ウリナスタチンポリペプチド」を含む、「ウリナスタチン融合ポリペプチド」に関する。
【0059】
「ウリナスタチン」(尿トリプシン阻害剤(UTI)、HI-30、ASPI、またはビクニンとしても言及される)は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動による約30kDaの分子量を有する酸性糖タンパク質である。野生型、成熟ヒトウリナスタチンは、ヒト尿および血液で見られる多価のクニッツ型セリンプロテアーゼ阻害剤であり、147個のアミノ酸残基から構成されるが、二つのクニッツ型ドメインを含む(表U1を参照のこと)。それは、ウリナスタチンが、α1-ミクログロブリンに連結されている、全長前駆体(表U1を参照のこと)として肝細胞によって産生される。肝細胞において、異なるタイプのウリナスタチン含有タンパク質は、コンドロイチン硫酸鎖を介して、三つの進化的に関連する重鎖(HC)1、HC2、およびHC3の内の一つまたは二つを有する、ウリナスタチンのアセンブリによって形成され、これらのタンパク質は、IαI、プレα-阻害剤(PαI)、インター-α-様阻害剤(IαLI)、および遊離ウリナスタチンを含む、インター-α-阻害剤(IαI)ファミリーメンバーを含む。IαI、pαI、およびIαLIは、それぞれ、HC1+HC2+UTI、HC3+UTI、およびHC2+UTIからなる。
【0060】
炎症の間、ウリナスタチンは、末梢循環中または炎症部位での好中球エラスターゼによるタンパク質分解性切断を介してIαIファミリータンパク質から切断され、血漿ウリナスタチンレベルおよび遺伝子発現は、重度の炎症状態で変化する。したがって、血漿ウリナスタチンは、急性期反応の一つであると考えられる。さらに、ウリナスタチンは、感染が生じたとき、尿に迅速に放出され、尿抗トリプシン活性の大部分を構成する、優れた炎症性マーカーである。トリプシン、キモトリプシン、カリクレイン、プラスミン、顆粒球エラスターゼ、カテプシン、トロンビン、ならびに第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、および第XlIa因子などの様々なセリンプロテアーゼは、ウリナスタチンによって阻害される。さらに、ウリナスタチンは、タンパク質キナーゼC(PKC)の阻害を介して、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)発現を抑制することができる。ウリナスタチンは、これらのプロテアーゼの活性を阻害することによって、器官損傷を予防するようである。
【0061】
上述の炎症性プロテアーゼの阻害を超えて、ウリナスタチンは、抗炎症活性を示し、好中球の浸潤、ならびにそれらからのエラスターゼおよび化学メディエーターの放出を抑制する。同様に、ウリナスタチンは、LPSによって刺激されたヒト単球における腫瘍壊死因子(TNF)-αおよびインターロイキン(IL)-1の産生ならびにインビトロでのHL60細胞または気管支上皮細胞におけるLPS-または好中球エラスターゼによって刺激されるIL-8遺伝子発現を阻害する。インビトロでの、ERK1/2、JNK、およびp38などのマイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路の発現を少なくとも部分的に介して、マクロファージによって、LPSにより誘導されるTNF-αならびに続くIL-1βおよびIL-6誘導を阻害することが示されている。ウリナスタチンはまた、インビトロで好中球介在性内皮細胞損傷を阻害し、これは、それが、好中球上で直接的/間接的に作用し、活性化エラスターゼの産生および分泌を抑制することを示唆している。さらに、ウリナスタチンは、インビトロで、敗血症の病態形成に役割を果たす、トロンボキサンB2産生などの刺激されたアラキドン酸代謝を下方制御する。
【0062】
特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、ヒトウリナスタチンポリペプチド、またはそのバリアントもしくはフラグメントである。例示的なヒトウリナスタチンポリペプチドのアミノ酸配列は、以下の表U1に提供される。
【表U1】
【0063】
したがって、一部の実施形態では、成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2または4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%同一であり、配列番号2または4によって定義される残基T17でO-結合グリカンを有するか、または保持するアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。また、ある特定の実施形態では、ウリナスタチン融合ポリペプチドのウリナスタチンポリペプチド部分は、表U1から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、または99%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる(配列番号1~4)。
【0064】
ある特定のウリナスタチンポリペプチドは、修飾されたO-結合グリコシル化部位を有する。ここで、セリン10は、十分に保存されたGlu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)O-結合グリコシル化部位で結合されたコンドロイチン硫酸(CS)鎖を有する。CS鎖は、12~18個の二糖リピート(GlcUA 1,3-GalNac1,4-)および従来の結合領域(GlcUA 1-3Gal 1-3Gal 1-4Xyl 1)-O-Serを有し、比較的短い(Mwt約8000)。通常は、結合領域の近くにあるものである、GalNAcの約30%は、C-4ヒドロキシル基で硫酸化されている。炎症中に合成されたCS鎖は、硫酸化の減少に伴い短くなる。したがって、ある場合では、ウリナスタチンポリペプチドは、成熟ウリナスタチンのGlu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)残基の一つまたは複数での少なくとも一つの置換および/または欠失を含み、それは、O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する。特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、成熟ウリナスタチン配列によって定義される、位置S10で置換または欠失、例えば、S10A置換を含む。また、ある特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、残基アスパラギン45(N45)で天然に生じるN-結合グリカンを有する。
【0065】
したがって、ある特定の実施形態は、(i)O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)で修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)残基T17でO-結合グリカンを含む、単離された成熟ウリナスタチンポリペプチドを含み、残基は、配列番号2または4によって定義され、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。一部の実施形態では、成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2または4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、ウリナスタチンポリペプチドは、(i)修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)残基T17でO-結合グリカンを含むか、または保持し、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。成熟ウリナスタチンポリペプチドの具体的な例は、配列番号2と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、ウリナスタチンポリペプチドは、(i)配列番号2のS10A置換、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)残基T17でO-結合グリカンを含むか、または保持し、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。
【0066】
一部の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、少なくとも一つの「ウリナスタチン活性」を有する。用語「ウリナスタチン活性」は、(a)トリプシン、キモトリプシン、カリクレイン、プラスミン、顆粒球エラスターゼ、カテプシン、トロンビン、ならびに/または第IXa因子、第Xa因子、第XIa因子、および第XlIa因子の一つまたは複数のプロテアーゼ活性を低減することを含む、プロテアーゼ阻害活性;(b)例えば、重篤な炎症に器官損傷を低減するための、炎症および/またはサイトカイン依存性シグナル伝達経路を低減することを含む、抗炎症活性;ならびに(c)例えば、カテプシンB活性を低減すること、および/またはCD44二量体形成を低減することによって、腫瘍浸潤および転移を低減することを含み、少なくとも、その後者は、MAPキナーゼシグナル伝達カスケードを抑制し、細胞外基質(ECM)分解、腫瘍細胞浸潤、および/または血管新生を低減する、抗転移活性を含む。
【0067】
ある特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、約または少なくとも約500~5000U/mg、あるいは約または少なくとも約500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500、2600、2700、2800、2900、3000、3100、3200、3300、3400、3500、3600、3700、3800、3900、4000、4100、4200、4300、4400、4500、4600、4700、4800、4900、もしくは5000U/mgポリペプチドの「特異的活性」を有し、1単位(U)は、2μgのトリプシンの活性を50%阻害するウリナスタチンポリペプチドの量である。
【0068】
上述のように、本明細書に記載されるウリナスタチン融合ポリペプチドは、ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチド、またはそのバリアントもしくはフラグメントを含む。例示的なシグナルペプチドの配列は、以下の表S1に提供される。
【表S1】
【0069】
したがって、ある特定の実施形態では、ウリナスタチン融合ポリペプチドのウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチド部分は、配列番号5と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる。
【0070】
例示的なヒトウリナスタチン融合ポリペプチドのアミノ酸配列は、以下の表U2に提供される。
【表U2】
【0071】
したがって、一部の実施形態では、ウリナスタチン融合ポリペプチド、またはそのバリアントもしくはフラグメントは、表U2から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、それは、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。ある特定の実施形態では、表U2の融合ポリペプチドのウリナスタチン部分は、位置S10での置換または欠失、例えば、S10A置換などの、O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)で修飾されたO-結合グリコシル化部位を含むか、または保持する。
【0072】
「バリアント」配列は、一つまたは複数の置換、欠失(例えば、切断)、付加、および/または挿入で、参照配列と異なるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列を指す。したがって、ある特定のバリアントは、本明細書に記載される参照配列のフラグメントを含む。バリアントポリペプチドは、生物学的に活性であり、すなわち、それらは、参照ポリペプチドの酵素活性または結合活性を有し続ける。このようなバリアントは、例えば、遺伝子多型および/またはヒト操作から生じ得る。
【0073】
ある場合では、バリアントは、一つまたは複数の「保存的」変化または置換を含む。「保存的置換」は、ペプチド化学の技術分野の当業者が、実質的に変更されていないポリペプチドの二次構造および疎水性親水性指標性質を予測するように、アミノ酸が、類似の特性を有する別のアミノ酸に置換されているものである。上記の通り、修飾は、本開示のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの構造でなされ、依然として、所望の特徴を有するバリアントまたは誘導体ポリペプチドをコードする機能的分子を得てもよい。ポリペプチドのアミノ酸配列を変更して、本明細書に記載されるポリペプチドの均等物、または改善されてさえいるバリアントもしくは一部を作製することが所望される場合、当業者は、典型的には、コードDNA配列のコドンのうちの一つまたは複数を変化させるだろう。
【0074】
例えば、ある特定のアミノ酸は、例えば、基質分子上の抗体の抗原結合領域または結合部位などの、構造との相互作用結合能の顕著な喪失なしに、タンパク質構造における他のアミノ酸に置換されてもよい。それは、そのタンパク質の生物学的機能的活性を定義するタンパク質の相互作用能および性質であるので、ある特定のアミノ酸配列置換を、タンパク質配列、および当然ながら、その根底にあるDNAコード配列で行い、それにもかかわらず、同様の特性を有するタンパク質を得ることができる。したがって、様々な変化が、開示される組成物のペプチド配列、または前述のペプチドをコードする対応するDNA配列において、それらの有用性を顕著に損なうことなく、なされ得ることが、企図される。
【0075】
このような変化を行う際に、アミノ酸の疎水性親水性指標が考慮されてもよい。タンパク質への相互作用性の生物学的機能の付与における疎水性親水性指標であるアミノ酸指標の重要性は、当該技術分野で一般的に理解されている(Kyte&Doolittle,1982、参照により本明細書に組み込まれる)。アミノ酸の相対的疎水性親水性指標特徴が、得られたタンパク質の二次構造に関与し、順に、タンパク質の他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義することが受け入れられる。それぞれのアミノ酸に、その疎水性および荷電特徴に基づき、疎水性親水性指標が割り当てられている(Kyte&Doolittle,1982)。これらの値は、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)である。ある特定のアミノ酸が、類似の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸によって置換されてもよく、依然として、類似の生物活性を有するタンパク質をもたらす、すなわち、生物学的に機能的に均等なタンパク質を得ることは、当該技術分野で公知である。こうした変化をなす際に、疎水性親水性指標が、±2以内を示すアミノ酸の置換が好ましく、±1以内の物が、特に好ましく、±0.5の物が、なおより特に好ましい。
【0076】
同様のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて有効になされ得ることも、当該技術分野で理解される。米国特許第4,554,101号(その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる)は、その隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大の局所平均親水性が、タンパク質の生物学的特性と相関すると述べている。米国特許第4,554,101号で詳述される通り、以下の親水性値が、アミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸が、類似の親水性値を有する別のアミノ酸に置換することができ、依然として、生物学的な均等なタンパク質、特に、免疫学的に均等なタンパク質を得ることができることが理解される。こうした変化において、親水性値が、±2以内を示すアミノ酸の置換が好ましく、±1以内の物が、特に好ましく、±0.5の物が、なおより特に好ましい。
【0077】
上で概説された通り、したがって、アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、その疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。様々な前述の特徴を考慮する例示的な置換は、当業者に周知であり、アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシンを含む。
【0078】
アミノ酸置換は、残基の極性、荷電、溶解度、疎水性、親水性および/または、両親媒性性質の類似性に基づきなされてもよい。例えば、負に荷電したアミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含み、正に荷電したアミノ酸は、リジンおよびアルギニンを含み、類似の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸は、ロイシン、イソロイシンおよびバリン;グリシンおよびアラニン;アスパラギンおよびグルタミン;ならびにセリン、スレオニン、フェニルアラニンおよびチロシンを含む。保存的変化を表し得るアミノ酸の他の群は、(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、hisを含む。
【0079】
バリアントはまた、またはあるいは、非保存的変化を含有してもよい。一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、約10、9、8、7、6、5、4、3、2つ以下のアミノ酸、またはただ1つのアミノ酸の置換、欠失または付加で、天然または参照配列と異なる。バリアントはまた(またはあるいは)、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造、酵素活性、および/または疎水性親水性指標性質に対して最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加で修飾されてもよい。
【0080】
ある特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、間の全ての整数を含む、約、少なくとも約、または最大約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、または140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000以上の連続アミノ酸長であり、参照配列の全てまたは一部を含んでもよい(例えば、表U1、表S1、表U2、配列表を参照のこと)。
【0081】
一部の実施形態では、ポリペプチド配列は、間の全ての整数を含む、約または約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000もしくはそれより多く未満の連続アミノ酸からなり、参照配列の全てまたは一部を含んでもよい(例えば、表U1、表S1、表U2、配列表を参照のこと)。
【0082】
ある特定の実施形態では、ポリペプチド配列は、間の全ての範囲を含む、約10~1000、10~900、10~800、10~700、10~600、10~500、10~400、10~300、10~200、10~100、10~50、10~40、10~30、10~20、20~1000、20~900、20~800、20~700、20~600、20~500、20~400、20~300、20~200、20~100、20~50、20~40、20~30、50~1000、50~900、50~800、50~700、50~600、50~500、50~400、50~300、50~200、50~100、100~1000、100~900、100~800、100~700、100~600、100~500、100~400、100~300、100~200、200~1000、200~900、200~800、200~700、200~600、200~500、200~400、または200~300の連続アミノ酸であり、参照配列の全てまたは一部を含む(例えば、表U1、表S1、表U2、配列表を参照のこと)。ある特定の実施形態では、参照ポリペプチドの結合特性および/または活性を保持する限り、任意の参照ポリペプチドのC末端またはN末端領域は、切断されたポリペプチドが、間の全ての整数および範囲(例えば、101、102、103、104、105)を含む、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、もしくは100以上のアミノ酸、または約10~50、20~50、50~100もしくはそれより多くのアミノ酸が切断されてもよい(例えば、表U1、表S1、表U2、配列表を参照のこと)。典型的には、生物学的に活性なフラグメントは、それらが由来する生物学的に活性な参照ポリペプチドの活性の約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%以上を有する。
【0083】
一般に、バリアントは、参照ポリペプチド配列と少なくとも約30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の類似性または配列同一性または配列相同性を呈するだろう(例えば、表U1、表U2、配列表を参照のこと)。さらに、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100のアミノ酸(間の全ての整数および範囲を含む)の付加(例えば、C末端の付加、N末端の付加、両方)、欠失、切断、挿入、または置換(例えば、保存的置換)で、天然または親配列と異なるが、親または参照ポリペプチド配列の特性または活性を保持する配列が、企図される(例えば、表U1、表S1、表U2、配列表を参照のこと)。
【0084】
一部の実施形態では、バリアントポリペプチドは、少なくとも一つだが、50、40、30、20、15、10、8、6、5、4、3または2未満のアミノ酸残基(複数可)で参照配列と異なる。ある特定の実施形態では、バリアントポリペプチドは、少なくとも1%だが、20%、15%、10%または5%未満の残基で、参照配列と異なる。(この比較が、アラインメントを必要とする場合、配列は、最大の類似性についてアラインメントされるべきである。欠失もしくは挿入、またはミスマッチから「抜け出した」配列は、相違とみなされる。)
【0085】
配列間の配列類似性または配列同一性の計算(用語は、本明細書において互換的に使用される)は、以下のように行われる。二つのアミノ酸配列、または二つの核酸配列のパーセント同一性を決定するために、配列は、最適な整列のため整列される(例えば、ギャップは、最適な整列のため、第一と第二のアミノ酸または核酸配列の一方または両方に導入されてもよく、非相同配列は、比較目的のため無視されてもよい)。ある特定の実施形態では、比較目的のため整列される参照配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、好ましくは、少なくとも40%、より好ましくは、少なくとも50%、60%、なおより好ましくは、少なくとも70%、80%、90%、100%である。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが、比較される。第一の配列における位置が、第二の配列における対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占有されるとき、次いで、分子は、その位置で同一である。
【0086】
二つの配列間のパーセント同一性は、二つの配列の最適な整列のため導入される必要がある、ギャップの数、およびそれぞれのギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数の関数である。
【0087】
配列の比較および二つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。好ましい実施形態では、二つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウェイトを使用して、GCGソフトウエアパッケージにおけるGAPプログラムに取り込まれている、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444-453、1970)アルゴリズムを使用して決定される。なお別の好ましい実施形態では、二つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70、または80のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウェイトを使用して、GCGソフトウエアパッケージにおけるGAPプログラムを使用して決定される。パラメータの特に好ましいセット(および別段特定されない限り、使用されるべきもの)は、12のギャップペナルティ、4のギャップ拡大ペナルティ、および5のフレームシフトギャップペナルティを用いた、Blossum62スコアリングマトリックスである。
【0088】
二つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、PAM120ウェイト残基テーブル、12のギャップレングスペナルティおよび4のギャップペナルティを使用して、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に取り込まれているE.MeyersおよびW.Miller(Cabios.4:11-17、1989)のアルゴリズムを使用して決定することができる。
【0089】
本明細書に記載される配列を、「クエリー配列」として使用して、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連する配列を同定するための公開データベースに対する検索を行うことができる。このような検索は、Altschulら(1990、J.Mol.Biol、215:403-10)のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、本明細書に記載される核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス=12を用いて行うことができる。BLASTタンパク質検索は、本明細書に記載されるタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を用いて行うことができる。比較目的のためギャップ整列を得るために、Gapped BLASTは、Altschulら(Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997)において記載される通り、利用することができる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)の既定のパラメータを使用することができる。
【0090】
一部の実施形態では、上述のように、ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドは、BLAST整列ツールを使用して評価することができる。局所アラインメントは、単に、対の配列セグメントからなり、配列のそれぞれの一つが、比較される。Smith-WatermanアルゴリズムまたはSellersアルゴリズムの修飾により、スコアが、拡張またはトリミングによって改善されない、高スコアセグメントペア(HSP)と呼ばれる、全てのセグメント対が見出されるだろう。BLAST整列の結果は、BLASTスコアが、偶然のみから予想され得る可能性を示すための統計的尺度を含む。
【0091】
素点Sは、それぞれの整列された配列と関連するギャップおよび置換の数から計算され、類似性スコアが高いほど、より有意な整列を示す。置換スコアは、ルックアップテーブルによって与えられる(PAM、BLOSUMを参照)。
【0092】
ギャップスコアは、典型的には、G、ギャップ開通ペナルティ、およびL、ギャップ拡張ペナルティの合計として計算される。長さnのギャップについて、ギャップコストは、G+Lnであるだろう。ギャップコスト、GおよびLの選択は経験的であるが、G(10~15)、例えば11について高い値、およびL(1~2)、例えば1について低い値を選択するのが通例である。
【0093】
ビットスコアS’は、使用されるスコアリングシステムの統計的特性が考慮された、素整列スコアSからもたらされる。ビットスコアは、スコアリングシステムに関して正規化され、そのため、それらは、異なる検索からの整列スコアを比較するために使用することができる。用語「ビットスコア」および「類似性スコア」は、互換的に使用される。ビットスコアは、整列がどの程度良いかを示し、スコアが高いほど、整列が良好である。
【0094】
E値、または期待値は、類似のスコアを有する配列が、偶然、データベースで生じる可能性を記載する。それは、偶然、データベース検索で生じると予想されるSと同等またはそれより良いスコアを有する異なる整列の数の予測である。E値が小さいほど、整列がより有意である。例えば、e-117のE値を有する整列は、類似のスコアを有する配列が、単に偶然、生じることは非常に少ないことを意味する。加えて、ランダムな対のアミノ酸の整列について予測されるスコアは、負であることが必要であり、そうでなければ、長い整列は、整列されたセグメントが、関連していたかどうかに関係なく、高いスコアを有する傾向がある。加えて、BLASTアルゴリズムは、適切な置換マトリックス、ヌクレオチドまたはアミノ酸を使用し、ギャップ整列は、ギャップ生成および拡張ペナルティを使用する。例えば、BLAST整列およびポリペプチド配列の比較は、典型的には、BLOSUM62マトリックス、11のギャップ存在ペナルティおよび1のギャップ拡張ペナルティを使用して行われる。
【0095】
一部の実施形態では、配列類似性スコアは、BLOSUM62マトリックス、11のギャップ存在ペナルティおよび1のギャップ拡張ペナルティを使用して行われたBLAST分析から報告される。
【0096】
特定のスポロムサでは、本明細書において提供される配列同一性/類似性スコアは、以下のパラメータ:50のGAPウェイトおよび3のレングスウェイトを使用したヌクレオチド配列についての%同一性および%類似性を使用したGAPバージョン10(GCG、Accelrys、San Diego、Calif.)を使用し、ならびにnwsgapdna.cmpスコアリングマトリックス;8のGAPウェイトおよび2のレングスウェイト、ならびにBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff、PNAS USA.89:10915-10919、1992)を使用した、アミノ酸配列についての%同一性および%類似性を使用して得られた値を指す。GAPは、NeedlemanおよびWunsch(J Mol Biol.48:443-453,1970)のアルゴリズムを使用して、一致数を最大にし、ギャップ数を最小にする二つの完全な配列の整列を見出す。
【0097】
特定の実施形態では、バリアントポリペプチドは、参照ポリペプチド配列(例えば、表U1、表U2、配列表を参照のこと)を用いて最適に整列させて、間の全ての整数および配列を含む、少なくとも約50、60、70、80、90、100、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000以上のBLASTビットスコアまたは配列類似性スコアを得ることができる、アミノ酸配列を含み、BLAST整列は、BLOSUM62マトリックス、11のギャップ存在ペナルティ、および1のギャップ拡張ペナルティを使用したものであった。
【0098】
上述のように、参照ポリペプチドは、アミノ酸置換、欠失、切断、付加、および挿入を含む、様々な方法で変更されてもよい。このような操作の方法は、当該技術分野で一般的に公知である。例えば、参照ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、DNA中の変異によって調製することができる。変異誘導およびヌクレオチド配列変化の方法は、当該技術分野で周知である。例えば、Kunkel(PNAS USA.82:488-492、1985);Kunkelら(Methods in Enzymol.154:367-382、1987)、米国特許第4,873,192号、Watson、J.D.ら、(“Molecular Biology of the Gene,”Fourth Edition、Benjamin/Cummings、Menlo Park、Calif.、1987)およびそこで引用される参考文献を参照のこと。対象のタンパク質の生物学的活性に影響しない適切なアミノ酸置換に関するガイダンスは、Dayhoff et al.,(1978)Atlas of Protein Sequence and Structure(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D.C.)のモデルにおいて見出され得る。
【0099】
このような修飾によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングする方法、および選択された特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングする方法は、当該技術分野で公知である。このような方法は、参照ポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発によって生成された遺伝子ライブラリーの迅速スクリーニングに適合可能である。一例として、ライブラリー中の機能的変異体の頻度を増強する技術である、再帰集合変異誘発(REM)を、スクリーニングアッセイと組み合わせて使用して、ポリペプチドバリアントを同定することができる(Arkin and Yourvan,PNAS USA89:7811-7815,1992;Delgrave et al.,Protein Engineering.6:327-331,1993)。
【0100】
ある特定の実施形態では、ペプチドリンカー配列を利用して、それぞれのポリペプチドが、その所望される二次および三次構造にフォールディングされたことを確実にし、ならびに/または所望の場合、ウリナスタチンポリペプチドからのシグナルペプチドの切断を促進するのに十分な距離で、ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチド(複数可)とウリナスタチンポリペプチド(複数可)を分けてもよい。このようなペプチドリンカー配列は、当該技術分野で周知の標準的な技術を使用して、融合ポリペプチドに組み込むことができる。
【0101】
ある特定のペプチドリンカー配列は、以下の例示的な要因:(1)可動性に伸長された立体構造に適合するそれらの能力;(2)第一および第二のポリペプチド上の機能的エピトープと相互作用し得る、二次構造に適合するそれらの能力;(3)それらの生理的安定性;ならびに(4)ポリペプチド機能的エピトープと反応し得る疎水性もしくは荷電した残基の欠如、または他の特性に基づき選択されてもよい。例えば、George and Heringa,J Protein Eng.15:871-879、2002を参照のこと。
【0102】
リンカー配列は、概して、1~約200アミノ酸長であってもよい。特定のリンカーは、約1~200のアミノ酸、1~150のアミノ酸、1~100のアミノ酸、1~90のアミノ酸、1~80のアミノ酸、1~70のアミノ酸、1~60のアミノ酸、1~50のアミノ酸、1~40のアミノ酸、1~30のアミノ酸、1~20のアミノ酸、1~10のアミノ酸、1~5のアミノ酸、1~4のアミノ酸、1~3のアミノ酸、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、60、70、80、90、100以上のアミノ酸の全体的アミノ酸長を有し得る。
【0103】
ペプチドリンカーは、本明細書における他の場所で記載され、当該技術分野で公知の、任意の一つまたは複数の天然に生じるアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸(複数可)、アミノ酸アナログ、および/またはアミノ酸模倣物を利用してもよい。リンカーとして有用に利用され得るある特定のアミノ酸配列は、Maratea et al.,Gene40:39-46,1985;Murphy et al.,PNAS USA.83:8258-8262,1986;米国特許第4,935,233号および米国特許第4,751,180号に開示されているものを含む。特定のペプチドリンカー配列は、Gly、Ser、および/またはAsn残基を含有する。ThrおよびAlaなどの他の中性に近いアミノ酸も、所望の場合、ペプチドリンカー配列において利用されてもよい。
【0104】
ある特定の例示的なリンカーは、以下の:[G]x、[S]x、[N]x、[GS]x、[GGS]x、[GSS]x、[GSGS]x(配列番号11)、[GGSG]x(配列番号10)、[GGGS]x(配列番号12)、[GGGGS]x(配列番号13)、[GN]x、[GGN]x、[GNN]x、[GNGN]x(配列番号14)、[GGNG]x(配列番号15)、[GGGN]x(配列番号16)、[GGGGN]x(配列番号17)リンかー(式中、xは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20以上である)である、Gly、Serおよび/またはAsn含有リンカーを含む。これらおよび関連するアミノ酸の他の組み合わせは、当業者に明らかであろう。
【0105】
リンカーペプチドのさらなる例は、以下のアミノ酸配列:Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-(配列番号18);Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-(配列番号19);Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-Gly-Gly-Gly-Gly-Ser-(配列番号20);Asp-Ala-Ala-Ala-Lys-Glu-Ala-Ala-Ala-Lys-Asp-Ala-Ala-Ala-Arg-Glu-Ala-Ala-Ala-Arg-Asp-Ala-Ala-Ala-Lys-(配列番号21);およびAsn-Val-Asp-His-Lys-Pro-Ser-Asn-Thr-Lys-Val-Asp-Lys-Arg-(配列番号22)を含むが、これらに限定されない。
【0106】
さらに、リンカーペプチドの非限定的な例としては、DGGGS(配列番号23);TGEKP(配列番号24)(例えば、Liu et al.,PNAS.94:5525-5530,1997を参照のこと);GGRR(配列番号25)(Pomerantz et al.1995);(GGGGS)n(配列番号13)(Kim et al.,PNAS.93:1156-1160,1996);EGKSSGSGSESKVD(配列番号26)(Chaudhary et al.,PNAS.87:1066-1070,1990);KESGSVSSEQLAQFRSLD(配列番号27)(Bird et al.,Science.242:423-426,1988)、GGRRGGGS(配列番号28);LRQRDGERP(配列番号29);LRQKDGGGSERP(配列番号30);LRQKd(GGGS)2ERP(配列番号31)が挙げられる。特定の実施形態では、リンカー配列は、三つのグリシン残基を含むGly3リンカー配列を含む。特定の実施形態では、可動性リンカーは、DNA結合部位とペプチド自体の両方をモデリングすることができるコンピュータープログラム(Desjarlais&Berg,PNAS.90:2256-2260,1993;およびPNAS.91:11099-11103、1994)を使用して、またはファージディスプレイ方法によって容易に設計することができる。
【0107】
特定の実施形態では、リンカーペプチドは、自己触媒性または自己切断性ペプチド切断部位を含む。特定の実施形態では、自己切断ペプチドは、ポティウイルスおよびカルジオウイルス2Aペプチド、FMDV(口蹄疫ウイルス)、ウマ鼻炎Aウイルス、ソサアシナウイルスおよびブタテスコウイルスから得られたそのポリペプチド配列を含む。ある特定の実施形態では、自己切断ポリペプチド部位は、2Aもしくは2A様部位、配列またはドメインを含む(Donnelly et al.,J.Gen.Virol.82:1027-1041,2001)。例示的な2A部位は、以下の配列:LLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号32);TLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号33);LLKLAGDVESNPGP(配列番号34);NFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号35);QLLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号36);APVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号37);VTELLYRMKRAETYCPRPLLAIHPTEARHKQKIVAPVKQT(配列番号38);LNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号39);LLAIHPTEARHKQKIVAPVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号40);およびEARHKQKIVAPVKQTLNFDLLKLAGDVESNPGP(配列番号41)を含む。一部の実施形態では、自己触媒性ペプチド切断部位は、例えば、18のアミノ酸の配列である、アフトウイルス口蹄疫ウイルス(FMDV)ポリタンパク質の2A領域などの翻訳2Aシグナル配列を含む。使用され得る2A様配列のさらなる例としては、例えば、Donnelly et al.,Journal of General Virology.82:1027-1041,2001に記載されるトリパノソーマ属における昆虫ウイルスポリタンパク質、C型ロタウイルスのNS34タンパク質、および反復配列が挙げられる。
【0108】
適切なプロテアーゼ切断部位および自己切断ペプチドは、当業者に公知である(例えば、Ryan et al.,J.Gener.Virol.78:699-722,1997;およびScymczak et al.,Nature Biotech.5:589-594,2004を参照のこと)。例示的なプロテアーゼ切断部位は、ポティウイルスNIaプロテアーゼ(例えば、タバコエッチウイルスプロテアーゼ)、ポティウイルスHCプロテアーゼ、ポティウイルスP1(P35)プロテアーゼ、ビオウイルスNIaプロテアーゼ、ビオウイルスRNA-2コードプロテアーゼ、アフトウイルスLプロテアーゼ、エンテロウイルス2Aプロテアーゼ、ライノウイルス2Aプロテアーゼ、ピコルナ3Cプロテアーゼ、コモウイルス24Kプロテアーゼ、ネポウイルス24Kプロテアーゼ、RTSV(ライスツングロ球状ウイルス)3C様プロテアーゼ、PYVF(パースニップ黄斑ウイルス)3C様プロテアーゼ、ヘパリン、トロンビン、第Xa因子およびエンテロキナーゼの切断部位を含むが、これらに限定されない。その高い切断ストリンジェンシーにより、TEV(タバコエッチウイルス)プロテアーゼ切断部位、一部の実施形態では、例えば、EXXYXQ(G/S)(配列番号42)、例えば、ENLYFQG(配列番号43)およびENLYFQS(配列番号44)(式中、Xは、任意のアミノ酸を表す(TEVによる切断が、QとGまたはQとSの間で生じる)が含まれる。
【0109】
さらに、特定の実施形態での使用に適当な酵素的に分解可能なリンカーの例としては、トロンビン、キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、またはスブチリシンなどのセリンプロテアーゼによって切断されるアミノ酸配列が挙げられるが、これに限定されない。トロンビンで切断可能なアミノ酸配列の説明の例としては、-Gly-Arg-Gly-Asp-(配列番号45)、-Gly-Gly-Arg-、-Gly-Arg-Gly-Asp-Asn-Pro-(配列番号46)、-Gly-Arg-Gly-Asp-Ser-(配列番号47)、-Gly-Arg-Gly-Asp-Ser-Pro-Lys-(配列番号48)、-Gly-Pro-Arg-、-Val-Pro-Arg-、および-Phe-Val-Arg-が挙げられるが、これらに限定されない。エラスターゼで切断可能なアミノ酸配列の説明の例としては、-Ala-Ala-Ala-、-Ala-Ala-Pro-Val-(配列番号49)、-Ala-Ala-Pro-Leu-(配列番号50)、-Ala-Ala-Pro-Phe-(配列番号51)、-Ala-Ala-Pro-Ala-(配列番号52)、および-Ala-Tyr-Leu-Val-(配列番号53)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
酵素的に分解可能なリンカーはまた、コラゲナーゼ、ストロメライシン、およびゼラチナーゼなどのマトリックスメタロプロテイナーゼによって切断することができるアミノ酸配列を含む。マトリックスメタロプロテイナーゼで切断可能なアミノ酸配列の説明の例としては、-Gly-Pro-Y-Gly-Pro-Z-(配列番号54)、-Gly-Pro-、Leu-Gly-Pro-Z-(配列番号55)、-Gly-Pro-Ile-Gly-Pro-Z-(配列番号56)、および-Ala-Pro-Gly-Leu-Z-(配列番号57)(式中、YおよびZは、アミノ酸である)が挙げられるが、これらに限定されない。コラゲナーゼで切断可能なアミノ酸配列の説明の例としては、-Pro-Leu-Gly-Pro-D-Arg-Z-(配列番号58)、-Pro-Leu-Gly-Leu-Leu-Gly-Z-(配列番号59)、-Pro-Gln-Gly-Ile-Ala-Gly-Trp-(配列番号60)、-Pro-Leu-Gly-Cys(Me)-His-(配列番号61)、-Pro-Leu-Gly-Leu-Tyr-Ala-(配列番号62)、-Pro-Leu-Ala-Leu-Trp-Ala-Arg-(配列番号63)、および-Pro-Leu-Ala-Tyr-Trp-Ala-Arg-(配列番号64)(式中、Zは、アミノ酸である)として挙げられるが、これらに限定されない。ストロメライシンで切断可能なアミノ酸配列の説明の例は、-Pro-Tyr-Ala-Tyr-Tyr-Met-Arg-(配列番号65)であり、ゼラチナーゼで切断可能なアミノ酸配列の例は、-Pro-Leu-Gly-Met-Tyr-Ser-Arg-(配列番号66)である。
【0111】
特定の実施形態の使用に適当な酵素的に分解可能なリンカーは、例えば、-Asp-Lys-Pro-、-Gly-Asp-Lys-Pro-(配列番号67)、および-Gly-Ser-Asp-Lys-Pro-(配列番号68)などの、アンギオテンシン変換酵素によって切断することができるアミノ酸配列を含む。
【0112】
特定の実施形態での使用に適当な酵素的に分解可能なリンカーは、例えば、Val-Cit、Ala-Leu-Ala-Leu-(配列番号69)、Gly-Phe-Leu-Gly-(配列番号70)およびPhe-Lysなどの、カテプシンBによって分解することができるアミノ酸配列を含む。
【0113】
しかしながら、ある特定の実施形態では、任意の一つまたは複数のペプチドリンカーは、任意選択である。例えば、リンカー配列は、第一および第二のポリペプチドが、機能的ドメインを分け、体干渉を防ぐために使用することができる、非必須のN末端および/またはC末端アミノ酸領域を有するとき、必要とされない。
【0114】
ウリナスタチン融合ポリペプチドは、本明細書に記載される組成物、方法、および/またはキットのいずれかで使用することができる。
【0115】
ポリヌクレオチド、発現ベクター、および宿主細胞
ある特定の実施形態は、本明細書に記載されるウリナスタチン融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。したがって、ある特定の実施形態は、そのバリアントおよび/またはフラグメントを含む、表U1または表U2における個々のウリナスタチン融合ポリペプチドの任意の一つまたは複数をコードするポリヌクレオチドを含む。例えば、ある特定のポリヌクレオチドは、表U1または表U2から選択される参照アミノ酸配列と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなるウリナスタチン融合ポリペプチドをコードする。
【0116】
例示的な核酸コード配列は、以下の表U3に提供される。
【表U3-1】
【表U3-2】
【0117】
したがって、ある特定の実施形態は、ウリナスタチン融合ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド、例えば、単離されたポリペプチドを含み、ポリヌクレオチドは、表U3の核酸配列(例えば、配列番号8または9)と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%である核酸配列を含む、からなる、または本質的にからなる。
【0118】
他の使用の中でも、これらおよび関連する実施形態を利用して、宿主細胞においてウリナスタチンポリペプチドを組み換え産生してもよい。当業者であれば、遺伝コードの縮退の結果として、本明細書に記載されるポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列があることを理解するであろう。これらのポリヌクレオチドの一部は、任意の天然遺伝子のヌクレオチド配列と最小の相同性を生じてもよい。それにもかかわらず、コドン使用の違いに起因して、変動するポリヌクレオチド、例えば、ヒト、酵母、または細菌のコドン選択に最適化されているポリヌクレオチドが、具体的に企図される。
【0119】
当業者によって認識されるように、ポリヌクレオチドは、一本鎖(コードもしくはアンチセンス)または二本鎖であってもよく、DNA(ゲノム、cDNAもしくは合成)またはRNA分子であってもよい。ポリヌクレオチドは、天然配列を含んでもよいか、またはバリアント、もしくはこのような配列の生物学的な機能的均等物を含んでもよい。ポリヌクレオチドバリアントは、好ましくは、バリアントポリペプチドの活性が、修飾されていないポリペプチドと比較して、実質的に減少されないように、本明細書に記載される一つまたは複数の置換、付加、欠失および/または挿入を含有してもよい。
【0120】
追加のコードまたは非コード配列は、ポリヌクレオチド内に存在し得るが、必須ではなく、ポリヌクレオチドは、他の分子および/または支持材料に連結されてもよいが、必須ではない。ゆえに、ポリヌクレオチドは、コード配列自体の長さに関わらず、それらの全体的な長さが、かなり変動し得るように、プロモーター、エンハンスメント、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、複数のクローニング部位、他のコードセグメントなどの、他のDNAまたはRNA配列と組み合わされてもよい。
【0121】
ポリヌクレオチド配列はまた、混合されたゲノム、cDNA、RNA、および合成起源のものであってもよい。例えば、リーダーペプチドをコードするゲノムまたはcDNA配列は、ポリペプチドをコードするゲノムまたはcDNA配列に結合されてもよく、その後、DNAまたはRNA配列は、周知の手法に従い、相同組み換えのため所望されるアミノ酸配列をコードする合成オリゴヌクレオチドを挿入すること、または好ましくは、適当なオリゴヌクレオチドを使用したPCRによって、所望の配列を生成することによって、部位で修飾されてもよい。一部の実施形態では、シグナル配列は、コード配列前に含まれ得る。この配列は、宿主細胞に伝達して、ポリペプチドを細胞表面に向けるか、またはポリペプチドを培地に分泌させる、コード配列のN末端にシグナルペプチドをコードする。典型的には、シグナルペプチドは、タンパク質が細胞を離れる前に、宿主細胞によって切り落とされる。シグナルペプチドは、原核生物および真核生物の様々なタンパク質において見出すことができる。
【0122】
一つまたは複数のポリヌクレオチドは、本明細書に記載されるウリナスタチンポリペプチドをコードすることができる。さらに、ポリヌクレオチド配列は、様々な理由から操作することができる。例としては、様々な生物におけるポリヌクレオチドの発現を増強するための好ましいコドンの組み込みが挙げられるが、これらに限定されない(一般に、Nakamura et al.,Nuc.Acid.Res.28:292,2000を参照のこと)。
【0123】
ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、ならびにポリヌクレオチドおよび/または発現ベクターを含む宿主細胞もまた含まれる。ウリナスタチンポリペプチドは、周知の技術により、適当な宿主細胞において、ポリペプチドをコードするDNAまたはRNA配列を発現させることによって産生することができる。用語「宿主細胞」は、導入される細胞、または本明細書に記載されるポリペプチドの一つまたは複数をコードする核酸配列であるそれが導入され得る細胞、および任意の本明細書に記載されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドなどの、対象であるポリペプチドをさらに発現するか、もしくは発現し得る細胞を指すために使用される。この用語は、選択された遺伝子が存在する限り、子孫が、元の親と形態学的または遺伝的構成において同一であるかどうかに関わらず、親細胞の子孫を含む。
【0124】
ある場合では、ポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、追加の非コード配列を含む。例えば、発現ベクターに存在する「調節エレメント」または「制御配列」は、エンハンサー、プロモーター、5’および3’非翻訳領域を含む、ベクターの非翻訳領域であり、宿主細胞タンパク質と相互作用して、転写および翻訳を行う。このようなエレメントは、その強度および特異性において変化し得る。利用されるベクターシステムおよび宿主に応じて、構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む、任意の数の適切な転写および翻訳エレメントが使用されてもよい。
【0125】
様々な発現ベクター/宿主システムが公知であり、それを利用して、ポリヌクレオチド配列を含有し、発現させてもよい。これは、微生物、例えば、発現ベクター、例えば、組み換えバクテリオファージ、プラスミド、もしくはコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染させた昆虫細胞システム;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)または細菌発現ベクター(例えば、TiもしくはpBR322プラスミド)で形質転換された植物細胞システム;あるいはウイルス、プラスミド、エピソームまたは組み込み発現ベクターで形質転換された哺乳類細胞を含む動物細胞システムおよびより具体的には、ヒト細胞システムを含むが、これらに限定されない。したがって、ある特定の実施形態は、本明細書に記載されるポリペプチド、例えば、ウリナスタチン融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、発現ベクターを含む。特定の実施形態では、発現ベクターは、例えば、
図2~3、および表E1~E2において説明される、レトロウイルスベクター(またはレトロベクター)である。
【0126】
ポリヌクレオチドおよび/または発現ベクターを含む宿主細胞もまた、含まれる。哺乳類宿主細胞において、多数の発現系が、当該技術分野で周知であり、市販されている。例示的な哺乳類宿主細胞およびシステムは、例えば、HEK293細胞、GPEx(登録商標)チャイニーズハムスター卵巣(GCHO)細胞株を含むCHO細胞、HeLa細胞などを含む。哺乳類発現系は、当該技術分野で公知のものの中でも、例えば、Tフラスコ、ローラーボトル、シェーカーフラスコ(例えば、2.8L)、および/もしくは細胞工場、または懸濁培養物、例えば、1Lおよび5Lのスピナー、5L、14L、40L、100Lおよび200Lの攪拌タンク反応器、または20/50Lおよび100/200LのWAVE反応器において、接着細胞株を利用することができる。それゆえ、ある特定の実施形態は、本明細書に記載されるウリナスタチン融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、組み換え宿主細胞、例えば、哺乳類宿主細胞を含む。特定の実施形態では、宿主細胞は、全長ウリナスタチンを切断して、成熟ウリナスタチンを産生する、プロテアーゼ、例えば、フューリンポリペプチドを発現するか、または過剰発現する。ある特定の宿主細胞(例えば、HEK293細胞)を使用して、複製無能な高いタイターのレトロベクター粒子を産生することができ、ある特定の宿主細胞(CHO、GCHO)を、レトロベクター粒子で形質導入して、ウリナスタチン発現細胞を産生することができる。
【0127】
本明細書に記載されるウリナスタチンポリペプチド組み換え産生する方法もまた、含まれる。一部の実施形態では、ウリナスタチン融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたは発現ベクターは、宿主細胞に直接的に導入され、細胞は、コードされたタンパク質(複数可)の発現を誘導するのに十分な条件下でインキュベートされる。したがって、ある特定の実施形態は、ウリナスタチンポリペプチドを組み換え産生する方法であって、(a)本明細書に記載される組み換え哺乳類宿主細胞、任意選択で、CHO細胞またはGCHOにおいてウリナスタチン融合ポリペプチドを発現させること;および(b)ウリナスタチンポリペプチドを宿主細胞または宿主細胞を含有する培地から単離し、これにより、ウリナスタチンポリペプチドを組み換え産生することを含む、方法に関する。宿主細胞におけるウリナスタチンポリペプチドの発現は、ポリヌクレオチドを含有する組み換え宿主細胞を適当な条件下で培養することによって達成され得る(例えば、実施例1を参照のこと)。発現による産生後、ウリナスタチンポリペプチドは、任意の適当な技術を使用して単離され、および/または精製されてもよく、次いで、所望に応じて使用される。また、成熟ウリナスタチン融合ポリペプチドの発現後、ある特定の実施形態は、例えば、プロテアーゼでシグナルペプチドを切断する工程を含む。
【0128】
組み換え宿主細胞によって産生されるウリナスタチンポリペプチドは、当該技術分野で公知の様々な技術に従い、精製し、特徴付けることができる。タンパク質精製を行い、タンパク質純度を分析するための例示的なシステムは、迅速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)(例えば、AKTAおよびBio-Rad FPLCシステム)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(例えば、BeckmanおよびWaters HPLC)を含む。精製のための例示的な化学は、当該技術分野で公知のものの中でも、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Q、S)、サイズ排除クロマトグラフィー、塩勾配、親和性精製(例えば、Ni、Co、FLAG、マルトース、グルタチオン、タンパク質A/G)、ゲル濾過、逆層、セラミックHYPERD(登録商標)イオン交換クロマトグラフィー、および疎水性相互作用カラム(HIC)を含む。実施例も参照のこと。
【0129】
生理的条件下で、任意選択で、生理的条件の温度およびpH下で、産生され、精製されたウリナスタチンポリペプチドの活性を評価するか、または測定する方法もまた含まれ、ウリナスタチンポリペプチドは、生理的条件下で活性を有する。一部の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、同等の生理的条件下で、配列番号2のウリナスタチンポリペプチド(成熟ヒトウリナスタチン)と比較して、少なくとも約50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000%以上の活性を有する。
【0130】
ある特定の態様は、ウリナスタチンポリペプチドを含む組成物を調製することを含み、例えば、組成物は、タンパク質ベースまたは重量対重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%の純度を有し、組成物は、実質的に凝集物を含まず、実質的にエンドトキシンを含まない。
【0131】
組成物および使用方法
ある特定の実施形態は、ウリナスタチンポリペプチド、例えば、本明細書に記載される方法、および様々な疾患の治療のためそれを使用する方法に従い、産生されるウリナスタチンポリペプチドを含む治療用組成物を含む。
【0132】
一部の実施形態は、本明細書に記載される方法に従い調製されるか、または産生されるウリナスタチンポリペプチドを含む、本明細書に記載される成熟ウリナスタチンポリペプチド、および医薬的に許容される担体を含む、組成物、例えば、治療用または医薬組成物を含む。例えば、ある特定の組成物は、(i)O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)での修飾されたO-結合グリコシル化部位、(ii)残基N45の残基でN-結合グリカン、および(iii)残基T17でO-結合グリカンを含む、T17-O-結合グリカンを有する成熟ウリナスタチンポリペプチド、ならびに医薬的に許容される担体を含み、残基は、本明細書に記載される、配列番号2または4により定義されている。成熟ウリナスタチンポリペプチド、ならびにその活性なバリアントおよびフラグメントの具体的な例が、本明細書に記載される(例えば、表U1および関連する開示を参照のこと)。
【0133】
ある特定の組成物は、ウリナスタチングリコフォームの混合物を含む。例えば、ある特定の組成物は、(a)本明細書に記載されるT17-O-結合グリカンを含む第一の成熟ウリナスタチンポリペプチド、および(b)残基N45でN-結合グリカンを含み、残基T17でO-結合グリカンを含まない、第二の成熟ウリナスタチンポリペプチドを含む。一部の実施形態では、第二の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、O-結合グリコシル化部位でのグリコシル化を低減する、本明細書に記載される、残基Glu-Gly-Ser-Gly(配列番号10)での修飾されたO-結合グリコシル化部位、例えば、S10A置換を有する。一部の実施形態では、(b)の第二の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、配列番号2または4と少なくとも80、85、90、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、からなる、または本質的にからなり、修飾されたO-結合グリコシル化部位(例えば、S10A置換)および残基N45でN-結合グリカンを含むか、または保持し、残基T17でO-結合グリカンを含まず、少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。
【0134】
一部の実施形態では、(a):(b)の成熟ウリナスタチンポリペプチドは、約20:1~約1:20の範囲にある比、任意選択で、約20:1、15:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:15、または1:20で組成物に存在する。
【0135】
ある特定の組成物は、タンパク質ベースまたは重量ベースで実質的に純粋である。例えば、上記の通り、ある特定の組成物は、タンパク質ベースまたは重量対重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、または99%の純度を有し、凝集物を実質的に含まず、例えば、約10、9、8、7、6、または5%未満の凝集物である。ある特定の組成物は、本明細書に記載されるエンドトキシンを実質的に含まない。
【0136】
組成物は、医薬分野において周知の方法論によって調製されてもよい。例えば、注射によって投与されることが意図される組成物は、本明細書に記載されるウリナスタチンポリペプチド、および任意選択で、一つまたは複数のバッファーまたは賦形剤を含む組成物を、任意選択で蒸留水と合わせて、溶液を形成することによって、調製することができる。ある特定の組成物は、生理的食塩水溶液(例えば、0.9%の通常の食塩水)あるいはデキストロース(例えば、約1~10%デキストロース、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10%のデキストロース)を含む。界面活性剤を加えて、均一な溶液または懸濁液の形成を促進することができる。界面活性剤は、水性送達システムにおいてポリペプチドの溶解または均一な懸濁を促進するために、組成物においてウリナスタチンポリペプチドと共有結合性に相互作用しない化合物である。
【0137】
ある特定の組成物は、医薬的に許容されるpHである。例えば、ある特定の実施形態では、医薬的に許容されるpHは、間の全ての整数および範囲を含む、約5.0~約8.0(±0.01~±0.1)、または約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、もしくは8.0(±0.01~0.1)である。
【0138】
ある特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、ヒト血液の生理的pHに近いpHで少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。したがって、一部の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、約4~約10.8、または約6~約8、または約6.5~約7.5のpHで少なくとも一つのウリナスタチン活性を有する。ある特定の実施形態では、ウリナスタチンポリペプチドは、約pH7.4で有効なウリナスタチン活性を有する。
【0139】
特定の実施形態では、組成物は、約1EU未満のエンドトキシン/タンパク質mg、約100ng未満の宿主細胞タンパク質/タンパク質mg、約10pg未満の宿主細胞DNA/タンパク質mgの一つまたは複数を有し、および/または凝集物を実質的に含まない。
【0140】
それを必要とする対象における、疾患を治療する方法、疾患の症状を回復させる方法、または疾患の進行を阻害する方法であって、対象に、本明細書に記載される方法に従い産生される少なくとも一つのウリナスタチンポリペプチドを含む組成物を投与することを含む、方法もまた、含まれる。
【0141】
本明細書に記載される方法および組成物は、様々な疾患または状態の治療において使用することができる。例えば、ある特定の実施形態は、対象に本明細書に記載される治療用組成物を投与することを含む、それを必要とする対象における炎症性疾患または状態を治療する方法を含む。
【0142】
例示的な炎症性疾患または状態は、膵炎(例えば、急性膵炎、慢性膵炎、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)誘発性膵炎)、全身性炎症、大腸炎、自己免疫性脳脊髄炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、関節炎、腎不全、熱傷、重症敗血症および関連する炎症促進性/続発性状態(例えば、臓器不全)を含む敗血症/敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、中毒性表皮壊死症(TEN)、川崎病、腎疾患(例えば、急性腎不全、慢性腎疾患)、虚血性状態(例えば、肝臓、腎臓、心臓、肺、脳における虚血再灌流障害)、肺炎症および炎症性肺状態(例えば、肺感染症、混合性結合組織疾患と関連する感染性間質性肺炎を含む、肺炎、肺の線維症、急性呼吸促迫症候群)、肝炎を含む肝炎症、アナフィラキシー、手術後または術後合併症(例えば、腎機能、心臓手術、肺手術、認知障害、肝臓移植)、リポ多糖(LPS)誘発性炎症または組織損傷(例えば、肺、肝臓、脳)、糖尿病に続く炎症または機能不全(例えば、糖尿病誘発性心機能不全)、火傷、熱射病、炎症性または神経障害性疼痛、急性中毒、高脂血症関連炎症、自己免疫関連炎症、同種移植片または輸血関連炎症、ならびに神経炎症を含む。
【0143】
対象に本明細書に記載される治療用組成物を投与することを含む、それを必要とする対象における癌を治療する方法、癌の症状を回復させる方法、または癌の進行を阻害する方法もまた含まれる。本明細書に記載される方法および治療用組成物は、任意の様々な癌または腫瘍の治療において使用することができる。一部の実施形態では、癌は、原発癌、すなわち、腫瘍の進行が開始し、癌性の塊を生じた、解剖学的部位で生じる癌である。一部の実施形態では、癌は、二次性または転移性癌、すなわち、元の原発部位または組織から、一つまたは複数の異なる部位または組織に広がった癌である。一部の実施形態では、対象は、メラノーマ(例えば、転移性黒色腫)、膵臓癌、骨癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、中皮腫、白血病(例えば、リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、再発した急性骨髄性白血病)、リンパ腫、肝細胞腫(肝細胞癌)、肉腫、B細胞悪性腫瘍、乳癌、卵巣癌、結腸直腸癌、グリオーマ、多形神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原発性CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)、腎臓癌(例えば、腎細胞癌腫)、膀胱癌、子宮癌、食道癌、脳癌、頭頸部癌、子宮頸癌、精巣癌、甲状腺癌、および胃癌の一つまたは複数から選択される癌を有する。
【0144】
一部の実施形態では、上述のように、癌または腫瘍は、転移性癌である。上記の癌に加えて、例示的な転移性癌としては、とりわけ、骨、肝臓、および/または肺に転移している、膀胱癌;骨、脳、肝臓、および/または肺に転移している、乳癌;肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、結腸直腸癌;副腎、骨、脳、肝臓、および/または肺に転移している、腎臓癌;副腎、骨、脳、肝臓、および/または他の肺部位に転移している、肺癌;骨、脳、肝臓、肺、および/または皮膚/筋肉に転移している、メラノーマ;肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、卵巣癌;肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、膵臓癌;副腎、骨、肝臓、および/または肺に転移している、前立腺癌;肝臓、肺、および/または腹膜に転移している、胃癌;骨、肝臓、および/または肺に転移している、甲状腺癌;ならびに骨、肝臓、肺、腹膜、および/または膣に転移している、子宮癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
ある場合では、治療用組成物の投与は、対象における炎症または一つまたは複数の炎症反応を低減する。例えば、ある場合では、治療用組成物の投与は、対象における内皮活性化/損傷、炎症促進性サイトカインならびにケモカイン産生/放出(例えば、IL-1β、MIP-1α、MCP-1、およびCXCL1)、フィブリノーゲン合成、器官への好中球の動員、ならびに/または器官損傷の一つまたは複数を低減する。
【0146】
一部の実施形態では、本明細書に記載される方法または組成物は、患者の生存期間中央値を、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、25週間、30週間、40週間以上増加させる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載される方法または組成物は、患者の生存期間中央値を、1年、2年、3年以上増加させる。
【0147】
ある特定の実施形態では、例えば、癌の治療において、投与される組成物は、生存腫瘍の量の統計的に有意な減少、例えば、腫瘍質量における少なくとも10%、20%、30%、40%、50%以上の減少によって、または変化した(例えば、統計的有意性を伴って減少した)スキャン寸法によって示される、腫瘍退縮をもたらすのに十分である。ある特定の実施形態では、投与される組成物は、安定な疾患をもたらすのに十分である。ある特定の実施形態では、投与される組成物は、当業者に公知の特定の疾患適応症の症状の安定化または臨床的に相関する低減をもたらすのに十分である。
【0148】
本明細書に記載される疾患または状態の一つまたは複数を有する対象を同定する方法は、当該技術分野において公知である。
【0149】
投与は、様々な異なる経路によって達成され得る。投与方法は、治療または予防されるべき状態の性質に依存する。例えば、組成物は、経口的、鼻腔内、腹腔内、非経口的に、静脈内、リンパ管内、腫瘍内、筋肉内、間質内、カテーテル内、動脈内、皮下、眼内、滑膜内、上皮内、および/または経皮で投与することができる。特定の実施形態は、IV点滴による投与を含む。
【0150】
正確な投薬量および治療期間は、治療されている疾患の働きであり、公知の試験プロトコールを使用して、または当該技術分野で公知のモデルシステムにおいて組成物を試験すること、およびそれらから推定することによって経験的に決定されてもよい。対照臨床試験がまた、行われてもよい。投薬量はまた、緩和されるべき状態の重症度と共に変動し得る。医薬組成物は、概して、望ましくない副作用を最小限にしながら、治療上有用な作用を発揮するよう製剤化され、投与される。組成物は、一回投与されてもよいか、または時間間隔で投与されるべき多数のより小さな用量に分けられてもよい。任意の特定の対象のため、特定の投薬レジメンは、個々の必要性に応じて経時的に調整され得る。
【0151】
一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物の治療上有効量または治療投薬量は、対象における炎症または炎症反応を低減するのに有効である量である。ある場合では、治療は、状況下で最適な効果が達成されるまで、わずかな増加で増加させ得る、少ない投薬量で開始される。
【0152】
一部の実施形態では、投薬量は、一日約一回~二週間または三週間に約一回投与される。例えば、ある特定の実施形態では、投薬量は、1、2、3、4、5、6、もしくは7日に約一回、あるいは一週間に約一回、または一週間に約二回、または一週間に約三回、または二週間もしくは三週間に約一回投与される。
【0153】
ある特定の実施形態は、間の全ての範囲および整数を含む、約1×104U~約1×105U~約100×105U、または約1×104U、2×104U、3×104U、4×104U、5×104U、6×104U、7×104U、8×104U、9×104U、1×105U、2×105U、3×105U、4×105U、5×105U、6×105U、7×105U、8×105U、9×105U、10×105U、11×105U、12×105U、15×105U、20×105U、30×105U、40×105U、50×105U、60×105U、70×105U、80×105U、もしくは100×105Uの投薬量(例えば、一日用量)でウリナスタチンポリペプチドを投与することを含む。ある特定の実施形態は、約、少なくとも約、もしくは約未満の、50,000U/kg、125,000U/kg、250,000U/kg、500,000U/kg、750,000U/kg、もしくは1,000,000U/kg;または約50,000~1,000,000U/kg、約125,000~1,000,000U/kg、約250,000~1,000,000U/kg、約500,000~1,000,000U/kg、約750,000~1,000,000U/kg、約50,000~750,000U/kg、約125,000~750,000U/kg、約250,000~750,000U/kg、約500,000~750,000U/kg、約50,000~500,000U/kg、約125,000~500,000U/kg、約250,000~500,000U/kg、約50,000~250,000U/kg、約125,000~250,000U/kg、もしくは約50,000~125,000U/kgの範囲にある投薬量(例えば、一日用量)でウリナスタチンポリペプチドを投与することを含む。
【0154】
ある特定の実施形態は、皮下投薬量を投与することを含む。一部の実施形態は、例えば、一日用量を、約1、2、または3時間かけて静脈内注入することによって、静脈内投薬量を投与することを含む。特定の実施形態は、一日用量を、約1、2、または3時間かけて、任意選択で、一日に約1、2、または3回、および任意選択で、連続して約2、3、4、5、6、または7日以上、注入することを含む。
【0155】
本明細書に記載される方法に従い産生される一つまたは複数の組成物またはウリナスタチンポリペプチドを含む患者ケアキットもまた、含まれる。ある特定のキットはまた、水(例えば、無菌水)または食塩水などの、一つまたは複数の医薬的に許容される希釈剤または溶媒を含む。一部の実施形態では、組成物またはウリナスタチンポリペプチドは、バイアル、カートリッジ、デュアルチャンバーシリンジ、および/または充填済み混合システムにおいて保存される。
【0156】
本明細書におけるキットは、一つまたは複数の追加の治療用薬剤または治療されている適応症もしくは所望される診断適用に適当もしくは望ましい他の成分を含んでもよい。本明細書におけるキットはまた、意図される送達モード(例えば、ステント、移植可能なデポーなど)を促進するために必要または望ましい、一つまたは複数のシリンジまたは他の構成要素を含むことができる。
【0157】
本明細書において引用される刊行物、特許出願、および発行された特許は、それぞれの個々の刊行物、特許出願、または発行された特許が、参照により組み込まれるよう具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0158】
前述の発明は、理解の明瞭さを目的として、例示および実施例によっていくらか詳細に記述されてきたが、添付の特許請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の変更および修正がなされ得ることは、本発明の教示に照らして当業者にとって容易に明らかであろう。以下の実施例は、単に説明のために提供され、制限のため提供されるものではない。当業者であれば、本質的に類似する結果をもたらすよう変更または修正され得る様々な非臨界パラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0159】
実施例1
ウリナスタチン融合ポリペプチドの調製および発現
二つの融合コンストラクトを調製して、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における最適なウリナスタチン発現を得た。ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドを、全長ヒトウリナスタチンのN末端、またヒトウリナスタチンの成熟形態に融合させた。ウリナスタチン配列のそれぞれを修飾して、成熟ウリナスタチン配列の残基10(S10A)でセリンからアラニンへの変異を取り込み、その残基でのグリコサミノグリカン結合を防いだ。全長ウリナスタチン融合ポリペプチドは、成熟ウリナスタチン産生するための、CHO細胞における酵素切断(フューリン)を必要とする。成熟ウリナスタチン融合ポリペプチドは、成熟ウリナスタチンを産生するためのウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチドの切断のみを必要とする。融合ポリペプチドのアミノ酸配列を、表U2に示し、核酸コード配列を、表U3に示す。DNA配列を、DNA配列決定によって確認した。
【0160】
レトロウイルスベクター産生。
上で概説した融合タンパク質コンストラクトを、
図2(FLウリナスタチン)および
図3(成熟ウリナスタチン)で説明する通り、レトロウイルスベクターに導入した。ベクター成分の詳細を、以下の表E1および表E2において提供する。
【表E1】
【表E2】
【0161】
レトロベクターを、MLV gag、pro、およびpolタンパク質を恒常的に産生するHEK293細胞株に遺伝子導入した。エンベロープ含有発現プラスミドも、二つのレトロベクターコンストラクトのそれぞれと共遺伝子導入した。二つの共遺伝子導入は、二つの遺伝子コンストラクトのそれぞれについて、複製無能な高いタイターのレトロベクターの産生をもたらし、それを、超遠心分離によって濃縮し、細胞形質導入のため使用した(Bleck,An alternative method for the rapid generation of stable,high-expressing mammalian cell lines,Bioprocessing J.Sept/Oct.pp1-7,2005;およびBleck,GPEx(登録商標)A Flexible Method for the Rapid Generation of Stable,High Expressing,Antibody Producing Mammalian Cell Lines Chapter4 In:Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing,Biotechnology:Pharmaceutical Aspects,Edited by:S.J.Shire et al.(登録商標)2010American Association of Pharmaceutical Scientists,DOI10.1007/978-0-387-76643-0_4を参照のこと)。
【0162】
それぞれのレトロウイルスコンストラクトのためプールした細胞株を、複製無能な高タイターのレトロベクターを用いたGPEx(登録商標)チャイニーズハムスター卵巣(GCHO)親細胞株の3サイクルの細胞形質導入によって産生した。全長ウリナスタチンレトロベクターを、全長分子を消化して、成熟ウリナスタチンを産生する、フューリン酵素を過剰発現するGCHO細胞株に形質導入した。成熟ウリナスタチンレトロベクターを、正常GCHO細胞に形質導入した。
【0163】
形質導入後、二つのコンストラクトのそれぞれについてプールした細胞株を、2.8Lの攪拌フラスコにおける流加培養研究において産生をスケールアップした。それぞれの攪拌フラスコに、G12.1培地(Irvine Scientific)中1mL当たり300,000個の生細胞を播種し、80rpmでの加湿(70~80%)振盪インキュベーターにおいて5%CO2および37℃の温度でインキュベートした。二つの異なる栄養補助剤を使用した生成実行中に7回、培養物に影響を加えた。培養温度を、培養の5日目に、37℃から34℃に低げた。生存率が≦80%であったとき、培養を終えた。
【0164】
タンパク質産生の確認を、
図3に示す通り、還元SDS-PAGEゲル分析によって決定した。尿由来のウリナスタチン対照は、N-結合グリコシル化とグリコサミノグリカン(GAG)分子の両方を含有する。GAG分子のための付着部位を変異させたため、全長および成熟ウリナスタチン融合コンストラクトは、N-結合グリコシル化のみを有するべきである。全長ウリナスタチン試料は、細胞株において、付加したフューリンによって完全に切断されたように見える。ゲルは、切断したタンパク質の大きなフラグメント(186アミノ酸および2つのN-結合グリコシル化部位(上部のバンド))と成熟ウリナスタチンフラグメント(147のアミノ酸および一つのN-結合グリコシル化部位(下部のバンド))の両方を示す。
【0165】
成熟ウリナスタチン試料は、より小さいサイズの成熟ウリナスタチンフラグメントのみを含有する。より小さい分子量の成熟ウリナスタチン産物は、還元SDS-PAGEゲル上で泳動したとき、二つのバンドからなるようである。この二重を、全長試料について観察しなかった(レーン6をレーン9と比較する、
図3を参照のこと)。
【0166】
図3のレーン9において、成熟ウリナスタチン試料について観察した二つのバンドを調べるために、材料をまず調べて、第二のバンドが、N-結合グリコシル化に起因したかどうかを決定した。ゆえに、尿由来のウリナスタチン、全長ウリナスタチン、および成熟ウリナスタチン試料をPNGaseで消化して、任意の可能性のあるN-結合グリカンを除去し、次いで、ゲル上で電気泳動させた。二重が、N-結合グリコシル化によって引き起こされた場合、PNGase消化が、還元SDS-PAGEゲル上で単一のバンドをもたらすと予想する。しかしながら、
図4に示す通り、PNGase消化は、成熟ウリナスタチン試料において観察した二重を変化させなかった(レーン10を参照のこと)。代わりに、N-結合グリカンを除去し、これにより、分子量のシフトを生じた(
図4におけるレーン9および10を比較する)が、二重を維持し、これは、追加のN-結合グリコシル化が、第二のバンドを生じなかったことを示している。加えて、全長ウリナスタチンのPNGase処理は、二重修飾が、全長ウリナスタチン試料ではなく、成熟ウリナスタチン試料において飲み生じることを確かにする。
【0167】
成熟ウリナスタチン試料を、ペプチドマップにして、二重を、バリアントタンパク質配列、またはタンパク質構造への別の修飾によって生じたかどうかを決定した。分析は、成熟ウリナスタチン配列への修飾が存在しなかったことを確認したばかりでなく、驚くべきことに、成熟ウリナスタチン試料における上部のバンドが、スレオニン17(T17)でのそうでなければ非天然のO-結合グリコシル化によって引き起こされることを示した。このO-結合グリコシル化は、成熟形態のウリナスタチンを産生するためのインサイツ酵素(フューリン)切断後でさえ、全長ウリナスタチン/ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチド融合タンパク質調製物に存在しない。それは、成熟ウリナスタチン/ウシアルファ-ラクトアルブミンシグナルペプチド融合タンパク質調製物でのみ生じる。N-結合グリコシル化およびT17で予想外のO-結合グリコシル化を有する成熟ウリナスタチンを含む材料を試験し、インビトロでトリプシンを阻害することを見出した(
図5を参照のこと)。ここで、トリプシン阻害活性を、BioVision(商標)のトリプシン活性キットを使用して分析した。DF2000、DF4000、DF8000、DF16000、およびDF32000の希釈係数(DF)で、約5000U/mgの組み換えウリナスタチン(T17)を含有する試料を用いて、希釈を行った。
【0168】
実施例2
敗血症のマウスモデルにおける組み換えウリナスタチンの活性
研究を行い、敗血症マウスモデルにおける組み換えウリナスタチンの有効性を評価した(実施例1;T17でのO-結合グリコシル化を参照のこと)。オスのC57BL|6マウスは、腸管穿孔(CLP)手術を受けて、軽度から中程度のグレードの敗血症を誘導した。試験スケジュールを、表E3に示す。
【表E3】
【0169】
手術の三十(30)分後、マウスに、ウリナスタチン試験物品、0日目から4日目に一日一回の静脈内(lV)注射を介した陰性対照(リン酸緩衝生理食塩水、PBS)、または0日目ないし4日目に、皮下(SC)注射を介して一日二回、陽性対照イミペネムを投与した。CLP手術の6日後、動物の生存を追跡し、試験物品の有効性を、試験物品と陰性対照の間での生存の比較によって決定した。
【0170】
データを、
図6A~6Bに示す。一緒に、データは、22ゲージの針を使用した腸管穿孔が、オスのC57BL|6マウスにおいて敗血症感染を引き起こしたことを示す。PBSビークルCLP群が、軽度から中程度のグレードの敗血症を発症し、40%の死亡率を伴い、イミペネムで処置したマウスが、0%の死亡率を有し、それは、従前の研究で観察した範囲内である。組み換えウリナスタチンで処置した群において観察した用量応答が存在し、最低濃度(50,000U/kg)で50%の死亡率を有し、試験したより高い濃度(125,000および250,000U/kg)は、20%の死亡率のみを有した。
【0171】
実施例3
急性膵炎のマウスモデルにおける組み換えウリナスタチンの活性
実験を行い、マウスにおけるセルレイン誘導性急性膵炎モデルにおいて三つの用量レベルでの組み換えウリナスタチン(T17)の活性を評価した。
【0172】
オスのICRマウスにおける急性膵炎を、二時間間隔での三回のセルレイン(100μg/kg)の腹腔内(IP)注射によって誘導した。試験物品またはビークル(無菌のPBS)を、それぞれのセルレイン負荷(計3用量)の1時間後に静脈内(IV)投与した。参照化合物であるデバゼピドを、それぞれのセルレイン負荷の1時間後に経口(PO)投与した。マウスを、第一のセルレイン負荷の9時間後に屠殺した。血液を収集し、血清α-アミラーゼおよびリパーゼを、自動分析装置(TBA-120FR、Toshiba、Japan)によって検出した。
【0173】
結果を、
図7~8および以下の表E4に要約する。
【表E4】
【0174】
急性膵炎の指標である血清α-アミラーゼおよびリパーゼは、正常対照群と比較して、反復セレイン負荷によって有意(p<0.05)に増加し、これは、第一のセルレイン注射の9時間後に、ビークル群において急性膵炎の誘導が成功したことを示している。0.1mg/kg×3での陽性対照であるデバゼピドの経口投与は、ビークル群と比較したとき、第一のセルレイン注射の9時間後に、血清α-アミラーゼおよびリパーゼのレベルを有意(p<0.05)に低減した。
【0175】
経口経管栄養により16.5mg/kg×3(83,333U/kg×3=計250,000U/kg)および33mg/kg×3(166,667U/kg×3=計500,000U/kg)で付与した試験物品(組み換えウリナスタチン;T17)は、ビークル群と比較したとき、第一のセルレイン注射の9時間後に、血清α-アミラーゼレベルの有意(p<0.05)な減少を示した。ビークル群と比較して、全3種の用量レベルの組み換えウリナスタチンで、血清リパーゼにおいてわずかな作用が存在した。
【0176】
研究の終わりに、全ての動物の膵試料を、RNAlaterにおいて回収した。定量的リアルタイムPCRバイオマーカー分析を、膵臓試料において行った。それぞれのアッセイを、Applied Biosystems7900HTリアルタイムPCRシステム上でトリプリケートで実行し、発現の倍率変化を、内在性対照としてGAPDHを、および標準物質として試料「1-1」を用いた、比較CT方法を使用してもたらした。最終結果を、遺伝子発現におけるn倍の相違または相対的数量(RQ)として表し、対照試料のRQは、常に1と等しくした。
【0177】
図9に示す通り、炎症の遺伝子マーカー(IL-6)および酸化ストレス(HMOX1)mRNAレベルは、正常の対照群と比較したとき、反復セルレイン負荷によって有意(p<0.05)に増加した。0.1mg/kg×3でのデバゼピドの経口投与は、ビークル群と比較したとき、IL-6mRNA発現を中程度に減弱し、HMOX1mRNA発現を有意(p<0.05)に減弱した。16.5mg/kg×3PO(83,333U/kg×3=計250,000U/kg)および33mg/kg×3PO(166,667U/kg×3=計500,000U/kg)で与えた組み換えウリナスタチン(T17)は、ビークル群と比較したとき、IL-6mRNA発現を減弱した。3.3mg/kg×3PO(16,667U/kg×3=計50,000U/kg)、16.5mg/kg×3PO(83,333U/kg×3=計250,000U/kg)および33mg/kg×3PO(166,667U/kg×3=計500,000U/kg)で与えた組み換えウリナスタチンは、ビークル対照と比較したとき、HMOX1mRNA発現の逆の用量応答を示した。コラーゲンIレベルもまた、組み換えウリナスタチンを用いた処置によって、正常対照レベルに回復した。
【0178】
全体として、16.5mg/kg×3PO(83,333U/kg×3=計250,000U/kg)および33mg/kg×3PO(166,667U/kg×3=計500,000U/kg)で与えた組み換えウリナスタチンは、血清α-アミラーゼレベルを有意に減少し、血清リパーゼレベル、IL-6mRNA発現に対する著しい作用を有し、マウス急性膵炎モデルにおける第一のセルレイン注射の9時間後に、コラーゲンIレベルを回復した。
【配列表】
【国際調査報告】