(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】接線駆動降圧ポンプのシステム、ならびにレシプロエンジン、往復圧縮機、および往復ポンプ
(51)【国際特許分類】
F01B 9/02 20060101AFI20230412BHJP
F02B 75/32 20060101ALI20230412BHJP
F04B 35/01 20060101ALI20230412BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20230412BHJP
F16C 3/08 20060101ALI20230412BHJP
F16C 9/02 20060101ALI20230412BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20230412BHJP
F16C 33/06 20060101ALI20230412BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
F01B9/02
F02B75/32 A
F04B35/01 A
F04B39/00 107C
F16C3/08
F16C9/02
F16C17/02 Z
F16C33/06
F16C33/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553091
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(85)【翻訳文提出日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 US2020063642
(87)【国際公開番号】W WO2021178016
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522350520
【氏名又は名称】エンフィールド エンジン カンパニー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENFIELD ENGINE COMPANY,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】サンダース、ニコラス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】サンダース、ライアン トーマス カイリー
【テーマコード(参考)】
3H003
3H076
3J011
3J033
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AB07
3H003AC02
3H003CA02
3H003CB03
3H003CD04
3H076AA02
3H076BB21
3H076CC12
3H076CC13
3H076CC24
3H076CC25
3H076CC36
3J011AA07
3J011BA02
3J011DA01
3J011KA02
3J011NA01
3J011PA03
3J011SB01
3J011SC01
3J033AA02
3J033AB03
3J033BA01
3J033GA01
3J033GA05
3J033GA07
(57)【要約】
本システムは、基部に対するピストンアセンブリの往復運動によって、y軸に沿って往復運動するように構成された、軸方向に平行移動するy軸コンポーネントを有している。本システムは、軸受アセンブリを介して摺動可能にy軸コンポーネントに連結されて、y軸コンポーネントと共にy軸に沿って平行移動する、x軸コンポーネントも有している。x軸コンポーネントは、y軸コンポーネントに対して、y軸に略垂直をなして往復運動するように構成されており、軌道出力コンポーネントと、該軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備えている。本システムは、x軸およびy軸の両方に略垂直な方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定出力コンポーネントと、固定出力コンポーネントと略同軸の方向に基部に対して回転可能に取り付けられた固定連結コンポーネントと、をさらに有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復機構を備えたシステムであって、
少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対する前記ピストンアセンブリの往復運動によって、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成されている、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントと、
少なくとも1つの軸受アセンブリを介して摺動可能に前記少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、該少なくとも1つのy軸コンポーネントと共に前記y軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントであって、軌道出力コンポーネントと、該軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備える、少なくとも1つのx軸コンポーネントと、
前記x軸および前記y軸の両方に略垂直な方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定出力コンポーネントであって、第1の一体型相互接続出力リンクを介して前記軌道出力コンポーネントと係合している、固定出力コンポーネントと、
前記固定出力コンポーネントと略同軸の方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定連結コンポーネントであって、前記第1の一体型相互接続リンクを介して前記少なくとも1つのx軸コンポーネントの前記軌道連結コンポーネントと係合している、固定連結コンポーネントと、を備えたシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのx軸コンポーネントが、前記少なくとも1つのy軸コンポーネントに対して、前記y軸に略垂直をなして往復運動するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのx軸コンポーネントが、滑りブッシュ軸受を介して軸受シャフトに摺動可能に取り付けられている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記滑りブッシュ軸受が少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリを有し、該少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリが、前記少なくとも1つのx軸コンポーネントに固定されるとともに、シャフトを介して前記少なくとも1つのy軸コンポーネントに摺動可能に取り付けられており、
前記シャフト上を前記滑りブッシュ軸受が摺動する、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記滑りブッシュ軸受が少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリを有し、該少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリが、前記少なくとも1つのy軸コンポーネントに固定されるとともに、シャフトを介して前記少なくとも1つのx軸コンポーネントに摺動可能に取り付けられており、
前記シャフト上を前記滑りブッシュ軸受が摺動する、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記シャフトが硬化研磨鋼シャフトを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記ピストンアセンブリが、ピストンおよびピストンロッドを有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ピストンロッドが、滑りブッシュ軸受を介して前記基部に摺動可能に取り付けられている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記ピストンロッドが硬化研磨鋼シャフトを含む、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
複数のy軸コンポーネントが前記x軸コンポーネントに摺動可能に連結されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
各y軸コンポーネントが、対応するピストンアセンブリに取り付けられて該ピストンアセンブリと共に往復運動する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記軸受アセンブリの各々が、市販の軸受材料である、
バビット軟質金属、
真鍮、
ベアリンググレードのVESPEL(登録商標)プラスチック、
ベアリンググレードのTORLON(登録商標)プラスチックまたは
ベアリンググレードのPEEK(登録商標)プラスチックの少なくともいずれか1つを含む滑りブッシュ軸受を有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記軸受アセンブリが、少なくとも1つの再循環ボールブッシュアセンブリを有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記軸受アセンブリのそれぞれが、市販のプラスチック軸受材料を含む滑りブッシュ軸受を有している、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
レシプロエンジンであって、
少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対する前記ピストンアセンブリの往復運動によって、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成されている、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントと、
少なくとも1つの軸受アセンブリを介して摺動可能に前記少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、該少なくとも1つのy軸コンポーネントと共に前記y軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントであって、軌道出力コンポーネントと、該軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備える、少なくとも1つのx軸コンポーネントと、
前記x軸および前記y軸の両方に略垂直な方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定出力コンポーネントであって、第1の一体型相互接続出力リンクを介して前記軌道出力コンポーネントと係合している、固定出力コンポーネントと、
前記固定出力コンポーネントと略同軸の方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定連結コンポーネントであって、前記第1の一体型相互接続リンクを介して前記少なくとも1つのx軸コンポーネントの前記軌道連結コンポーネントと係合している、固定連結コンポーネントと、を備えたレシプロエンジン。
【請求項16】
往復圧縮機であって、
少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対する前記ピストンアセンブリの往復運動により、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成された、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントと、
少なくとも1つの軸受アセンブリを介して摺動可能に前記少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、該少なくとも1つのy軸コンポーネントと共に前記y軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントであって、軌道出力コンポーネントと、該軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備える、少なくとも1つのx軸コンポーネントと、
前記x軸および前記y軸の両方に略垂直な方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定出力コンポーネントであって、第1の一体型相互接続出力リンクを介して前記軌道出力コンポーネントと係合している、固定出力コンポーネントと、
前記固定出力コンポーネントと略同軸の方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定連結コンポーネントであって、前記第1の一体型相互接続リンクを介して前記少なくとも1つのx軸コンポーネントの前記軌道連結コンポーネントと係合している、固定連結コンポーネントと、を備えた往復圧縮機。
【請求項17】
往復ポンプであって、
少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対する前記ピストンアセンブリの往復運動により、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成された、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントと、
軸受シャフトおよび軸受アセンブリを介して摺動可能に前記少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、該少なくとも1つのy軸コンポーネントと共に前記y軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントであって、軌道出力コンポーネントと、該軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備える、少なくとも1つのx軸コンポーネントと、
前記x軸および前記y軸の両方に略垂直な方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定出力コンポーネントであって、第1の一体型相互接続出力リンクを介して前記軌道出力コンポーネントと係合している、固定出力コンポーネントと、
前記固定出力コンポーネントと略同軸の方向に前記基部に対して回転可能に取り付けられた固定連結コンポーネントであって、前記第1の一体型相互接続リンクを介して前記少なくとも1つのx軸コンポーネントの前記軌道連結コンポーネントと係合している、固定連結コンポーネントと、を備えた往復ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概してレシプロエンジン、ポンプおよび圧縮機に関する。より詳細には、本出願は、レシプロエンジン、ポンプおよび圧縮機用の動力伝達装置ならびに関連するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なレシプロエンジンは、クランクシャフト・コネクティングロッド機構を用いて、シリンダ内を平行移動する1つまたは複数のピストンの直線往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換し、またこの逆の変換も行う。このような機構は、本明細書では動力伝達装置と称する。例えば、内燃機関(ICエンジン)は、最も一般的な種類のレシプロエンジンである。レシプロエンジンは、一般的に、各種燃料(ガソリン等)の燃焼中に放出される化学エネルギーまたは熱エネルギー(蒸気から得られるエネルギー等)を、物体の移動(物体の駆動等)により適した運動エネルギー(機械的な回転運動等)に変換するために使用される。レシプロエンジンのクランクシャフトは、典型的には、自動車、発電機、トラック、飛行機、溶接機、船舶、ブルドーザー、オートバイ、ボート等の様々な装置や車両を動かすための出力装置に接続されるエンジン要素である。
【0003】
動力伝達装置の一般的な課題のひとつとして、装置によって変換される使用可能な動力量の最大化が挙げられる。これは、レシプロエンジン(内燃機関等)や、他の種類のエンジン、ポンプおよび圧縮機にも当てはまる。従来の動力伝達装置では、概して動力伝達装置自体の構造に起因する制約により、最適な動力伝達が必ずしも達成されているわけではない。特に、エネルギー損失を可能な限り最小化させることに注目の高まっている産業において動力伝達装置が使用される場合は、より効率的な動力伝達装置が求められており、例えば、以前から存在している従来型の装置と比較して効率的に動力を変換できる装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本技術の一態様は、往復機構を含むシステムに関する。本システムは、少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対するピストンアセンブリの往復運動によって、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成されている、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントを有している。本システムは、少なくとも1つの軸受アセンブリを介して摺動可能に少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、少なくとも1つのy軸コンポーネントと共にy軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントも有している。少なくとも1つのx軸コンポーネントは、軌道出力コンポーネントと、軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備えている。
【0005】
本システムは、x軸およびy軸の両方に略垂直な方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定出力コンポーネントをさらに有している。固定出力コンポーネントは、第1の一体型相互接続出力リンクを介して軌道出力コンポーネントと係合するように構成されている。本システムは、固定出力コンポーネントと略同軸の方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定連結コンポーネントをさらに有している。固定連結コンポーネントは、第1の一体型相互接続リンクを介して少なくとも1つのx軸コンポーネントの軌道連結コンポーネントと係合するように構成されている。
【0006】
本技術は、以下の特徴のいずれかをさらに含むことができる。
いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのx軸コンポーネントが、少なくとも1つのy軸コンポーネントに対して、y軸に略垂直をなして往復運動するように構成されている。いくつかの実施形態においては、x軸コンポーネントが、滑りブッシュ軸受を介して軸受シャフトに摺動可能に取り付けられている。例えば、いくつかの実施形態においては、滑りブッシュ軸受が少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリを有し、少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリが、少なくとも1つのx軸コンポーネントに固定されるとともに、シャフトを介して少なくとも1つのy軸コンポーネントに摺動可能に取り付けられており、シャフト上を滑りブッシュ軸受が摺動する。他の実施形態においては、滑りブッシュ軸受が少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリを有し、少なくとも1つの滑りブッシュ軸受アセンブリが、少なくとも1つのy軸コンポーネントに固定されるとともに、シャフトを介して少なくとも1つのx軸コンポーネントに摺動可能に取り付けられており、シャフト上を滑りブッシュ軸受が摺動する。
【0007】
いくつかの実施形態では、シャフトは硬化研磨鋼シャフトである。いくつかの実施形態では、ピストンアセンブリは、ピストンおよびピストンロッドを有している。例えば、いくつかの実施形態では、ピストンロッドが、滑りブッシュ軸受を介して基部に摺動可能に取り付けられている。いくつかの実施形態では、ピストンロッドは硬化研磨鋼シャフトである。
【0008】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のy軸コンポーネントがx軸コンポーネントに摺動可能に連結されている。例えば、いくつかの実施形態においては、各y軸コンポーネントが、対応するピストンアセンブリに取り付けられてピストンアセンブリと共に往復運動する。
【0009】
いくつかの実施形態では、軸受アセンブリのそれぞれが滑りブッシュ軸受を有している。例えば、いくつかの実施形態では、滑りブッシュ軸受は、バビット軟質金属と、Dupont社のベアリンググレードVESPEL(登録商標)SP-21、ベアリンググレードTORLON(登録商標)4540またはベアリンググレードPEEK(登録商標)等の、多くの製造会社から入手可能な、設計された工業用プラスチックと、再循環ボールタイプリニアブッシュとのうちの少なくとも1つから形成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、軸受アセンブリが少なくとも1つの再循環ボールブッシュアセンブリを有している。いくつかの実施形態においては、軸受アセンブリそれぞれが、市販のプラスチック軸受材料を含む滑りブッシュ軸受を有している。
【0011】
本技術の別の態様はレシプロエンジンに関する。本レシプロエンジンは、少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対するピストンアセンブリの往復運動によって、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成されている、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントを有している。本レシプロエンジンは、少なくとも1つの軸受アセンブリを介して摺動可能に少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、少なくとも1つのy軸コンポーネントと共にy軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントも有している。少なくとも1つのx軸コンポーネントは、軌道出力コンポーネントと、軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備えている。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのx軸コンポーネントは、少なくとも1つのy軸コンポーネントに対して、y軸に略垂直をなして往復運動するように構成されている。
【0012】
本レシプロエンジンは、x軸およびy軸の両方に略垂直な方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定出力コンポーネントをさらに有している。固定出力コンポーネントは、第1の一体型相互接続出力リンクを介して軌道出力コンポーネントと係合するように構成される。本レシプロエンジンは、固定出力コンポーネントと略同軸の方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定連結コンポーネントをさらに有している。固定連結コンポーネントは、第1の一体型相互接続リンクを介して、少なくとも1つのx軸コンポーネントの軌道連結コンポーネントと係合するように構成されている。
【0013】
本技術の別の態様は往復圧縮機に関する。本往復圧縮機は、少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対するピストンアセンブリの往復運動によって、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成されている、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントを有している。本往復圧縮機は、少なくとも1つの軸受アセンブリを介して摺動可能に少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、少なくとも1つのy軸コンポーネントと共にy軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントも有している。少なくとも1つのx軸コンポーネントは、軌道出力コンポーネントと、軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備えている。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのx軸コンポーネントは、少なくとも1つのy軸コンポーネントに対して、y軸に略垂直をなして往復運動するように構成されている。
【0014】
本往復圧縮機は、x軸およびy軸の両方に略垂直な方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定出力コンポーネントをさらに有している。固定出力コンポーネントは、第1の一体型相互接続出力リンクを介して軌道出力コンポーネントと係合するように構成される。本往復圧縮機は、固定出力コンポーネントと略同軸の方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定連結コンポーネントをさらに有している。固定連結コンポーネントは、第1の一体型相互接続リンクを介して、少なくとも1つのx軸コンポーネントの軌道連結コンポーネントと係合するように構成されている。
【0015】
本技術の別の態様は往復ポンプに関する。本往復ポンプは、少なくとも1つの軸受アセンブリを介してピストンアセンブリが摺動可能に取り付けられた基部に対するピストンアセンブリの往復運動によって、実質的にy軸に沿って往復運動するように構成されている、軸方向に平行移動する少なくとも1つのy軸コンポーネントを有している。本往復ポンプは、少なくとも1つの軸受アセンブリを介して摺動可能に少なくとも1つのy軸コンポーネントに連結されて、少なくとも1つのy軸コンポーネントと共にy軸に沿って平行移動する、少なくとも1つのx軸コンポーネントも有している。少なくとも1つのx軸コンポーネントは、軌道出力コンポーネントと、軌道出力コンポーネントと略同軸に配置された軌道連結コンポーネントとを備えている。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つのx軸コンポーネントは、少なくとも1つのy軸コンポーネントに対して、y軸に略垂直をなして往復運動するように構成されている。
【0016】
本往復ポンプは、x軸およびy軸の両方に略垂直な方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定出力コンポーネントをさらに有している。固定出力コンポーネントは、第1の一体型相互接続出力リンクを介して軌道出力コンポーネントと係合するように構成される。本往復ポンプは、固定出力コンポーネントと略同軸の方向に基部に対して回転可能に取り付けられた、固定連結コンポーネントをさらに有している。固定連結コンポーネントは、第1の一体型相互接続リンクを介して、少なくとも1つのx軸コンポーネントの軌道連結コンポーネントと係合するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、例示的な接線駆動機構の斜視図。
【
図2】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、
図1の例示的な接線駆動機構の正面図。
【
図3】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、
図1の例示的な接線駆動機構の側面図。
【
図4】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、
図1の例示的な接線駆動機構のピストンの1つを通る断面図。
【
図5】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、
図1の例示的な接線駆動機構のx軸コンポーネントの一例を示す図。
【
図6】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、
図5の例示的なx軸コンポーネントの断面図。
【
図7】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、例示的なピストンロッドブッシュ軸受アセンブリを示す図。
【
図8】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、
図7の例示的なピストンロッドブッシュ軸受アセンブリの断面図。
【
図9】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、例示的なクランクシャフトアセンブリを示す図。
【
図10】本明細書に記載の技術の実施形態に係る、
図1の例示的な接線駆動機構を用いた例示的な3連プランジャポンプを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に記載のシステムおよび方法の効果ならびにさらに別の効果は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することによって明瞭に理解される。図面は必ずしも寸法比率が等しいものではなく、記載される実施形態の趣旨の例示のみに重点が置かれている。
【0019】
本技術は、周知の技術に対して進歩性を有する複数の特徴を備えた新規の接線駆動(tangent drive)機構に関する。例えば、本明細書に記載の技術は、米国特許第9958041号明細書、米国特許第10436296号明細書、米国特許第10801590号明細書および米国特許第10851877号明細書に記載された接線駆動機構に対する改良を含む。さらに、本明細書に記載の技術は、米国特許第10138807号明細書および米国特許第9316249号明細書に記載されているスコッチヨーク機構、スティラースミス機構および両スライダ機構等の、類似している既存の駆動機構に対する改良を含む。本明細書に記載の接線駆動機構は、エンジン、ポンプおよび圧縮機等の、様々な用途向けに開発されている。上記の従来技術の各機構は、本発明の接線駆動機構と同様に、純粋な正弦波状のピストン運動を生じさせるという有益な特徴を有している。この正弦波状のピストン運動は、従来のクランクシャフト・コネクティングロッド機構のスライダ・クランク構造によってもたらされるピストン運動と比較して、いくつかの熱力学的な利点を有している。これらの熱力学的な利点は、例えばSAEインターナショナルの刊行物No.870615(スティラースミス機構の熱力学的影響(Thermodynamic Implications of the Stiller-Smith Mechanism))等の複数の技術刊行物に記載されている。しかしながら、従来技術の機構では、進歩的ではあるが複雑な設計によって上記の動きを発生させており、過度に複雑で非効率的であった。
【0020】
例えば、米国特許第9316249号明細書、米国特許第10138807号明細書、米国特許第10801590号明細書および米国特許第10851877号明細書に記載の接線駆動に関する発明では、ハイポサイクロイド伝達装置を用いてピストンの正弦波状往復運動を発生させる一般的な実施形態が記載されている。ギアを有する実施形態は、製造コストが高く、ギアによる摩擦損失が大きくなるという欠点がある。また、従来技術の接線駆動機構は、各移動軸線それぞれに対して複数のリニア軸受を必要とする。この点は、米国特許第10851877号明細書のギア付きまたはギア無しの実施形態のいずれにも該当する。各軸受によって摩擦損失が増加する。本明細書に記載するように、実施形態のピストンロッドアセンブリを実施形態の基部に対して摺動可能に直接的に接続することによって、接線駆動機構を簡素化することができ、ピストンおよびピストンロッドアセンブリをy軸コンポーネントとして機能させることが可能となる。
【0021】
さらに別の例であるスコッチヨーク機構では、ピストンロッドまたはロッドスライドのいずれかに垂直に設けられた線状スライド溝上において、回転するクランクシャフトジャーナルを直接的に係合および摺動させる必要がある。このため、この機構では、必要とされる材料強度、必要とされる公差、部品の早期摩耗および摩擦損失が非常に大きい。従来とは異なる方法でクランクシャフトジャーナルを利用する上記機構は、100年以上にわたってレシプロエンジン、ポンプおよび圧縮機での利用の主流から除外されてきた。さらに別の例であるスティラースミス機構では、多くの部品からなる複雑なリンク機構を用いて正弦波状のピストン運動を発生させている。この機構は、摩擦損失が大きく、部品が多いため信頼性に懸念があり、動釣合いに問題があるうえ、製造コストも高い。上記機構は、正弦波状のピストン運動の効果を研究するために学術研究機関で使用されたが、実用的かつ製造可能な機構に発展することはなかった。さらに別の例である両スライダ機構では、直線的摺動を制御するために、可動軸と複数のダブテールスライドとをL型ブラケット状の位置関係に固定する必要がある。L型ブラケット設計により構造が限定的であるため、用途が制限されるとともに、費用対効果が限定される。また、摺動部品に起因して、摩擦損失が大きく、動釣合いを取ることが困難であり、かつ、製造コストが高い。
【0022】
一実施形態では、本発明の接線駆動機構は、少なくとも1つのリニア滑りブッシュ軸受アセンブリ等を介してエンジン、ポンプまたは圧縮機の基部に直接的かつ摺動可能に取り付けられた少なくとも1つのピストンアセンブリを有する、少なくとも1つのy軸コンポーネントを備えている。y軸コンポーネントは、ピストンガイド(シールまたはリング)と、基部に固定されるとともに、ピストンアセンブリのピストンロッドに摺動可能に取り付けられた少なくとも1つのリニア滑りブッシュ軸受との組み合わせによって、y方向のみに往復運動するように拘束される。また、y軸コンポーネントは、ピストンロッドと、基部に取り付けられるとともにピストンロッドに摺動可能に取り付けられたガイドおよび/または拘束リニア滑りブッシュ軸受と、を含むピストンアセンブリ、および、y軸コンポーネントと共に平行移動し、y軸コンポーネントに対して略垂直に移動するように拘束されている、摺動可能に取り付けられたx軸コンポーネントを有している。y軸コンポーネントの方向の制約がピストン、ピストンロッドおよび基部に適用されているため、機構全体が大幅に簡素化される。例えば、単一のクランクスローにおいて、互いに異なる様々な角度で複数のピストンを使用できる。対応する角度で基部に摺動可能に取り付けられた、対応するy軸コンポーネント(ピストンとピストンロッド)アセンブリを介して、対応する角度に各ピストンアセンブリが拘束される。
【0023】
x軸コンポーネントアセンブリは、少なくとも1つのリニア滑りブッシュ軸受アセンブリを介してy軸コンポーネントアセンブリに摺動可能に取り付けられる。好適な実施形態においては、y軸コンポーネントまたはx軸コンポーネントのいずれかに硬化鋼シャフトが固定される。摺動可能にシャフトに取り付けられた少なくとも1つのリニア滑りブッシュ軸受が、y軸コンポーネントまたはx軸コンポーネントのいずれかと接する。x軸コンポーネントアセンブリも、滑りジャーナル軸受を介してクランクスローに回転可能に取り付けられ、クランクスローによって駆動されるか、クランクスローを駆動する。いくつかの実施形態においては、単一のクランクスロー上の単一のx軸コンポーネントに対して、複数のy軸コンポーネントが、互いに異なる様々な角度で摺動可能に取り付けられている。上記角度は、基部におけるy軸コンポーネントの配置によって設定される。いくつかの実施形態においては、単一のクランクスロー上の複数のx軸コンポーネントが、互いに異なる様々な角度で複数のy軸コンポーネントに摺動可能に取り付けられる。これらの角度も、基部におけるy軸コンポーネントの配置によって設定される。いくつかの実施形態では、クランクシャフト、滑り軸受、x軸コンポーネントアセンブリ、y軸コンポーネントアセンブリおよび装置基部アセンブリに穿孔されたオイル通路を介して、軸受の能動的な給油が行われる。いくつかの実施形態では、機構全体の動的なバランスを取るためには、自転車のクランクリンクを介した好適な接続を備えた、バランスウェイトおよび/または追加のy軸(またはyプレート)アセンブリが必要とされる。
【0024】
本明細書に記載の接線駆動機構は、軸受の摩擦損失を軽減する必要性、寿命の非常に長い軸受の必要性ならびに単動式および複動式の装置の両方で動作可能な機構の必要性、特に、y軸コンポーネントへのx軸コンポーネントの摺動接続におけるこれらの必要性を考慮して考案された。滑り軸受は、基本的に薄い油膜で動作する軸受であり、理想的な条件下では、2つの可動面の間の摩擦がほとんど発生しない。滑りブッシュ軸受を使用した場合、回転面または移動面の間の境界面に強力な強制給油が必要になる場合もある。
【0025】
一実施形態では、ブッシュ軸受は滑らかな軟質金属(バビット等)またはVESPEL(登録商標)SP-21等の工業用ベアリンググレードのプラスチックから製造され、強力に給油される。往復運動を行う装置において使用され、また、動作時にはクランクシャフトが180度回転するごとにx軸コンポーネント(またはxプレート)アセンブリが停止して方向が反転するため、比較的高い油圧を必要とする場合もある。このような動きであることから、給油は流体動力学的および流体静力学的に作用させる必要がある。動的に作用する高い油圧に起因して、方向反転時にオイル用のオイル間隙が空になることを阻止するために、チェックバルブが必要になる場合もある。xプレートは出力クランクリンクまたはシャフトに取り付けられているため、シャフトを介して強力なオイルの流れを供給できる場合が多い。ブッシュ軸受が取り付けられるプレート(xプレートまたはyプレート)によっては、オイル通路の配置が複雑化する場合もある。いくつかの実施形態においては、ブッシュ軸受アセンブリは、単純に穿孔された単一の通路を必要とするx軸コンポーネント(xプレート)アセンブリに固定される。
【0026】
いくつかの実施形態では最高品質のブッシュ軸受材料が使用される。潤滑油が施されたバビットに加えて、頑丈な工業用プラスチックを使用することによって、シンプルな設計の寿命を延長できる。3つの石油化学プラスチックである3つの異なる製造会社によるVESPEL(登録商標)、TORLON(登録商標)およびPeek(登録商標)は、本発明の接線駆動の滑りブッシュ軸受に適した材料である。上記の各製造プラスチックには、多くのグレードと種類がある。上記プラスチック材料は、接線駆動のx軸コンポーネントおよびy軸コンポーネントの両方の往復(前後)運動によって生じる、断続的、すなわち停止と駆動が繰り返される軸受の動きを伴う用途に合わせて作製および販売されているものであるため、本発明の軸受ブッシュは、これらのプラスチック材料の理想的な用途である。例えば、VESPEL(登録商標)SP-21は、無潤滑で使用できるプラスチックグレードであり、ブッシュ軸受に適用された場合、潤滑油を施したバビットと同等またはそれ以上の性能を同じ摩擦係数で発揮する。
【0027】
図1~3は、2気筒エンジン、ポンプまたは圧縮装置に適用される接線駆動機構の斜視図、正面図および側面図である。
図1~3に装置5として例示されるエンジン、ポンプまたは圧縮機は、図示を明瞭にするために輪郭線で示された装置クランクケース10およびシリンダブロック11を備えている。本発明に必須ではない他の部分は図示を省略している。
図4は、本発明の主要構成要素を示す、装置5のピストンの1つを通る断面図である。
図5はx軸コンポーネントを示す図であり、
図6はx軸コンポーネントの断面図である。
図7はピストンロッドブッシュ軸受アセンブリを示し、
図8はピストンロッドブッシュ軸受アセンブリの断面図である。
図9はクランクシャフトアセンブリを示す。
図10は3連プランジャポンプとして構成された本発明を示す図である。
【0028】
クランクシャフト20は、入力/出力リンク21a、21b、21c、21d、入力/出力動力シャフト22、主軸受ジャーナル23aおよび23b、ならびにx軸コンポーネント軸受ジャーナル24aおよび24bを有している。ポンプまたは圧縮機として動作する場合、動力入力シャフト22はクランクシャフトを円形運動で駆動する。動力入力シャフトは、電気モータまたは内燃機関(図示せず)によって駆動できる。リンクは一体構造のクランクシャフトの必須要素であり、複数の入力/出力リンクおよび軸受ジャーナルからなる。クランクシャフトには、ジャーナルに配置された軸受に圧力下でオイルを供給するために、オイル潤滑剤の通路が貫通している。2連シリンダ装置は、図に示すように、主軸受ジャーナル23aおよび23bと、x軸コンポーネント軸受ジャーナル24aおよび24bとを有している。これらの軸受ジャーナルは、滑り潤滑軸受またはボールベアリングもしくはローラーベアリングに対応して設計されている。
【0029】
好適な実施形態においては、x軸コンポーネントの軸受は滑りジャーナル軸受であり、流体力学的油膜を用いて摩擦を低減し、クランクシャフト20の回転時の金属同士の接触からジャーナルを保護する。主軸受ジャーナル23aおよび23bは、入力シャフト軸線22aに沿って配置されている。これらの主軸受ジャーナルは、x軸コンポーネント軸受と同じ動作特性を備えた滑りジャーナル軸受に対応していてもよいし、潤滑ボールベアリングまたはローラーベアリングであってもよい。装置5では、
図1~3に示すように、テーパー状のローラーベアリング25aおよび25bが使用されている。テーパー状のローラーベアリングは、クランクシャフトに沿ったスラストの発生に対処するためにクランクシャフトで使用される場合がある。2連シリンダ装置は、
図1~4に示すように、2つのクランクスロー26aおよび26bを有したクランクシャフト20を備えている。各スローは、2つのリンクと軸受ジャーナルで構成されている。クランクシャフトおよび接続されたアセンブリの回転の動的なバランスを保つために、通常の場合、2つのクランクスローは180°離して配置されている。
【0030】
図1に示すように、ピストンシリンダ11aおよび11bは、ブロック11(または基部)内に並んで配置される。つまり、シリンダブロックをz方向から見た場合、シリンダブロック11(または基部)において、2つのシリンダの中心線の間の角度は0である。これは、多くのエンジン、圧縮機およびポンプで一般的に使用されている構成である。ガス圧縮においては、2つのシリンダ11aおよび11bが、z方向から見てシリンダブロック11(または基部)内で180°離れて配置されている構成も同様に普及している。ガス圧縮では、圧縮機は単動式か、両方向のピストンストロークでピストンがガスを圧縮する複動式かのいずれかで動作するように構成できる。また、ガス圧縮においては、圧縮機は、一段式の圧縮機または二段式(またはそれ以上)の圧縮機として構成可能であり、多段式の場合、一段目で圧縮されたガスが以降の段に送られる。接線駆動機構は、上記ガス圧縮機構成のすべてにおいて実質的に同様に機能する。
【0031】
いくつかの実施形態では、クランクシャフト20の複数の特徴部に対する追加の重み付け等、他のクランクシャフト均衡化特性が採用される。本発明は、追加の均衡化手法が実質的に不要であることをその主な特徴とする。これは、クランクシャフト・コネクティングロッド機構の動きが発生しないため、これに起因するアンバランスなx軸方向の力がほとんど排除されるためである。接線駆動機構は、x軸方向のアンバランスな力を実質的に排除して、純粋な正弦波状運動を行うものであり、x軸方向のアンバランスな力は弱い摺動摩擦力によって置き換えられている。例えば、一般的な往復ガス圧縮機では、クロスヘッドに対して、クランクシャフトの回転軸線とy軸(ピストン運動の軸線)との両方に垂直な大きなx軸方向の力を加える、クランクシャフト・コネクティングロッド・クロスヘッド構成が用いられている。この力は圧縮機を介して伝達され、強い振動源となる。接線駆動機構では、コネクティングロッドおよびクロスヘッドが、摺動するx軸コンポーネントの動きに置き換えられている。したがって、発生するのは弱い摺動摩擦力のみであるため、追加の均衡化手法が実質的に不要である。
【0032】
x軸軸受ジャーナル24aおよび24bには、x軸コンポーネントアセンブリ27aおよび27bが取り付けられている。いくつかの実施形態では、2つのアセンブリ27aおよび27bは同一である。
図5および6に、x軸コンポーネントアセンブリ27aを個別に示す。x軸コンポーネントアセンブリ27aおよび27bは、クランクシャフト20と対応するy軸コンポーネント40aおよび40bとの間で動力を伝達するインターフェース部材である。x軸コンポーネントは、接線駆動機構の主要な連結要素である。x軸コンポーネントは、他の類似の正弦波状運動機構とは異なる、滑らかな低摩擦の正弦波状運動を可能にする、連結軸受要素を有している。
【0033】
x軸コンポーネントアセンブリ27aおよび27bの各々は、本体28、ジャーナル軸受キャップ29a、ジャーナル軸受キャップボルト29bおよび29c、滑りジャーナル軸受30aおよび30bならびに2つの滑りブッシュ軸受31aおよび31bから構成される。2つのブッシュ軸受によって、x軸連結要素の低摩擦運動が可能となり、他の類似機構に対する本接線駆動機構の差別化が達成されている。2つのブッシュ軸受が配置されていることによって、動きの安定性が向上している。いくつかの実施形態では、x軸本体28およびジャーナル軸受キャップ29aは、高強度鋼、高強度アルミニウムまたはチタンから形成される。滑りブッシュ軸受31aおよび31bは、y軸コンポーネント40aおよび40bにそれぞれ固定されたブッシュ軸受シャフト41aおよび41b上を自由に摺動できるように設計されている。いくつかの実施形態では、滑りブッシュ軸受31aおよび31bは軟質金属バビット材料からなり、所定箇所に鋳造するか、プレス加工部品または熱収縮部品として所定箇所に嵌合されるか、接着剤もしくは別個のネジ等の手段によって所定箇所に係止される。他の実施形態では、滑りブッシュ軸受31aおよび31bは、VESPEL(登録商標)SP-21等の工業用プラスチックで形成され、所定の位置にプレスまたは熱収縮によって配置されるか、接着剤、ダウエルピンまたは別個のネジ等によって所定の位置に係止される。熱収縮は、組み立てられた部品を、熱膨張を利用して一体的に固定する製造技術であり、一般的に用いられている。
【0034】
寿命を延ばし、摩擦を低減させるためにはブッシュ軸受の潤滑が重要である。
図4に示すように、ブッシュ軸受の潤滑を行うために、潤滑孔42a、潤滑チャネル42bおよび潤滑溝42cが設けられている。高圧のオイルが、クランクシャフト20に穿孔された給油通路を介して軸受に供給される。いくつかの実施形態では、油圧は約0.137MPa(20psig)~約1.034MPa(150psig)である。いくつかの実施形態では、オイルは、図示されていない外部ポンプによってクランクシャフト20に圧送される。滑りブッシュ軸受の代わりに、市販のボールブッシュを使用してもよい。いくつかの実施形態では、ブッシュ軸受シャフト41aおよび41bは同一であり、高強度の硬化鋼から形成され、潤滑されたブッシュ軸受31aおよび31bの強制的な摺動を考慮して非常に滑らかな表面を有するように高度に研磨されている。一般的な硬化シャフトのロックウェル硬度は、HRC50~HRC60である。表面硬度は最も重要なパラメータであることが、多くの技術文書や技術雑誌に記載されている。シャフトの表面が柔らかすぎる場合(例えば30HRC未満)、滑りブッシュがシャフトを傷付ける可能性があり、軸受の早期故障が発生して、シャフトの交換が必要になる場合がある。
【0035】
シャフト41は、y軸コンポーネント40に堅く装着されており、シャフトを所定位置に保持するために各端部に固定されたスナップリング43を有している。別の例においては、ブッシュ軸受シャフト41は、y軸コンポーネント40上の所定の位置にプレスまたは熱収縮によって配置される。シャフト41は、エンジン、ポンプまたは圧縮機のいずれの用途においても、本発明の動作時に非常に大きな負荷を受ける。動作時には、x軸コンポーネントがシャフトの長さ方向に前後に摺動する際に、変動する強い負荷または力がシャフトの軸線に対して垂直に加えられる場合が多い。負荷(力)の大きさは、エンジンにおけるピストンピンの負荷と略同等である。いくつかの実施形態では、長さが大きい(14.24cm(6インチ)~22.86cm(9インチ))場合が多く、端部でのみ支持されている構造であることから、材料の引張強度およびせん断強度は設計上の重要事項であり、非常に高くする必要がある。通常の場合、エンジンのピストンピンの製造に使用される高強度鋼が、ブッシュ軸受シャフト41aおよび41bの材料として選択される。いくつかの実施形態では、1018、4130、4340、H13およびマルエージング鋼C300等の合金鋼が使用される。
【0036】
y軸コンポーネント40aおよび40bは、それぞれピストンロッド50aおよび50bの下端に固定され、ピストンまたはピストンロッドアセンブリの一部になる。y軸コンポーネント40aおよび40bは、ピストンロッド50aおよび50bに螺合され、ロックナット51aおよび51bによって所定の位置にロックしてもよい。別の例においては、y軸コンポーネント40aおよび40bは、それぞれピストンロッド50aおよび50bに対してプレスまたは熱収縮によって配置される。いくつかの実施形態においては、ピストンロッドは、高強度の硬化鋼で形成され、潤滑された滑りブッシュ軸受61aおよび61bの強制的な摺動を考慮して非常に滑らかな表面を有するように高度に研磨されている。いくつかの実施形態では、硬化ピストンロッドのロックウェル硬度は、HRC50~HRC60である。y軸のピストンロッドの摺動に2つのブッシュ軸受を用いることは、重要な設計的特徴であり、これによって機構全体の安定性と円滑な動作が向上する。滑りブッシュ軸受61aおよび61bは、ハウジング60aおよび60b内に圧入または他の方法で固定される。
【0037】
図7および8に、軸受ハウジングアセンブリ60bを示す。いくつかの実施形態では、ハウジング60aおよび60bは、通常の場合、鋼またはステンレス鋼で形成され、装置基部に固定されている。y軸方向の動きをピストンロッドの動きに固定することは、本発明の重要な特徴である。y軸コンポーネント40aおよび40bをピストンアセンブリに固定し、次にピストンアセンブリ(ピストンロッド)を装置基部に固定することによって、重要な設計上の制約が排除されている。必要とされるスペースやピストンおよびシリンダの正確な配置を決定するy軸方向の装着やy軸方向の移動等の制約が排除されている。本発明の特徴によって、位置合わせ、公差およびスペースの問題が実質的に解消される。例えば、ピストンとシリンダボアの空間的な関係をy軸ブッシュ軸受のみで固定することによって、ピストンシリンダの位置合わせと公差が大幅に改善される。
【0038】
いくつかの実施形態では、滑りブッシュ軸受61aおよび61bは、軟質金属バビット材料で形成されており、所定箇所に鋳造するか、プレス部品として所定箇所に嵌合されるか、接着剤もしくは別個のネジ等の手段によって所定箇所に係止される。滑りブッシュ軸受61aおよび61bは、VESPEL(登録商標)SP-21等の工業用ベアリンググレードのプラスチックで形成してもよく、所定箇所にプレス加工されるか、接着剤もしくは別個のネジによって所定箇所に係止してもよい。寿命を延ばし、摩擦を低減させるためにはブッシュ軸受の潤滑が重要である。
図7および8には、潤滑孔72a、潤滑チャネル72bおよび潤滑溝72cが示されている。高圧のオイルが、クランクシャフトに穿孔された給油通路を介して軸受に供給される。一般的な油圧は約0.137MPa(20psig)~約1.034MPa(150psig)である。一般的に、オイルは、図示されていない外部ポンプによってクランクシャフトに圧送される。単一材料からなる滑りブッシュ軸受の代わりに、トムソンタイプスーパーメタル(THOMSON TYPE SUPER METRIC)ボールブッシュ等の市販のリニアボールブッシュを使用してもよい。
【0039】
ピストン80aおよび80bは、それぞれピストンロッド50aおよび50bの上端に取り付けられている。いくつかの実施形態では、ピストン80aおよび80bはピストンロッド50aおよび50bに螺合され、ロックナット51cおよび51dによって所定の位置にロックしてもよい。別の例においては、ピストン80aおよび80bは、それぞれピストンロッド50aおよび50bに対してプレスまたは熱収縮によって配置される。ポンプまたは圧縮機として動作する場合、本発明において、クランクシャフト20の入力シャフト22に動力が入力され、クランクシャフト軸線22aを中心として円軌道上をクランクシャフトが駆動される。図中において、時計回りの回転は+回転として示され、反時計回りの回転は-回転として示されている。
【0040】
図10に、液体または揮発性ガス用の3連プランジャポンプとして構成された本発明を示す。3つのプランジャポンプピストンは、入力動力シャフトによって駆動される。各ピストンを駆動するクランクスローは、クランクシャフトの周囲に120°離間して配置されている。この設計は、y軸方向の動きが、ポンプ基部に対するピストンロッドの動きに固定される本発明独自の特徴によって可能となっている。この構成によって、y軸ピストンアセンブリに摺動可能に固定されたx軸コンポーネントが、任意の数のy軸ピストンアセンブリに対して、y軸に垂直に移動可能となっている。設計がシンプルであるため、より多くのピストンスローをクランクシャフトの周囲に異なる角度で配置できる。例えば、6つのピストンクランクスローを60°の間隔でクランクシャフトの周囲に配置してもよいし、5つのピストンスローを72°の間隔で、または4つもしくは8つのピストンスローを45°の間隔で配置してもよい。
【0041】
当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された事項の変形例、変更例および他の実施例を想到できる。したがって、本発明は、上記の例示的な説明のみに限定されない。
【国際調査報告】