(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-19
(54)【発明の名称】3次元印刷された建築構成要素及び構造
(51)【国際特許分類】
E04C 2/20 20060101AFI20230412BHJP
E04C 2/30 20060101ALI20230412BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230412BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20230412BHJP
【FI】
E04C2/20 B
E04C2/20 E
E04C2/30 L
B33Y80/00
B29C64/118
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553092
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 US2021020971
(87)【国際公開番号】W WO2021178733
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521473077
【氏名又は名称】マイティ ビルディングス インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】ダボフ,アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】イワノワ,アナ
【テーマコード(参考)】
2E162
4F213
【Fターム(参考)】
2E162CD04
2E162GA05
2E162GB07
4F213AA21
4F213AB04
4F213AB11
4F213AB12
4F213AC05
4F213AF00
4F213AG03
4F213AH47
4F213AH48
4F213AR12
(57)【要約】
居住用又は商業用建物、構造、又は建物構成要素は、外装材、内装材、及び空間的にこれらの間に配置される複数のクロス材を含み得る。外装材、内装材、クロス材のそれぞれは、積層3次元印刷プロセスにより作製される高分子材料からなる多層スタックから形成され得る。すべてはモノリシックに一体化され得る。外装材の外面領域は、一体的に形成された表面仕上げを有し得る。重ね仕上げ層又は重ね接続層が追加され得る。外装材及び内装材は、矩形又は湾曲形状の建築用ブロックを形成するように平行な配置で構成され得る。外装材と内装材との間の開口に充填材料が配置され得る。内装材での内面領域は、電気ボックス、配管、又は検知デバイスのために構成されるキャビティを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタック厚さを有し、メタクリルモノマ、無機水和物及び光誘起重合剤を有する高分子材料からなる多層スタックであって、紫外光を付与することにより押し出された材料を瞬時に硬化させることにより実現される1層ごとの化学的接着を伴う1層ごとの3次元印刷プロセスから形成される多層スタックと、
高分子材料からなる前記多層スタックから形成される外装材であって、外面領域を有する外装材と、
高分子材料からなる前記多層スタックから形成される内装材であって、内面領域を有する内装材と、
高分子材料からなる前記多層スタックから形成される複数のクロス材であって、それぞれが空間的に前記外装材と前記内装材との間に配置される複数のクロス材と
を備える、建物構成要素。
【請求項2】
前記建物構成要素は、独立しているか、あるいは居住用又は商業用建物の一部を形成するように組み立てられる複数の特別設計構成要素の一部である、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項3】
前記外装材、前記内装材、及び前記複数のクロス材は、すべてモノリシックに一体化されて前記建物構成要素を形成している、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項4】
前記スタック厚さは約6から150mmであり、各層6から25mmであり、前記各層のそれぞれは、液化状態の未硬化高分子材料を押し出し、前記スタック厚さを形成する層に前記材料を固化させることにより構成される、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項5】
前記多層スタック中の高分子材料からなる各層は、約6から25mmの範囲の層厚さを有する、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項6】
前記外面領域は、約0から4mmの表面粗さを有するテクスチャにより特徴付けられる、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項7】
前記外面領域は、高分子材料からなる前記多層スタックの層ごとに約2から10mmの高さを有する、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項8】
前記外面領域での前記高分子材料は、きめの粗いテクスチャ1層ごとの押出により生じる線パターンを有する一体形成仕上げを含む、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項9】
前記仕上げは、平坦面と非薄片状のテクスチャを有するマーブル状である、請求項8に記載の建物構成要素。
【請求項10】
スタッコ、塗料、下塗り、セルフレベリング床、屋根、ワニス、又はUV保護コーティングからなる重ね仕上げ層
をさらに備える、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項11】
エポキシ、接着材、又はシーラントコーティングからなる重ね接続層
をさらに備える、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項12】
前記外装材及び前記内装材は、建築用ブロックを形成するように平行な配置で構成される、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項13】
前記建築用ブロックは、矩形構造、箱形構造、又は湾曲構造として形作られる、請求項12に記載の建物構成要素。
【請求項14】
前記外装材と前記内装材との間に配置された複数の開口
をさらに備える、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項15】
空間的に前記複数の開口内に配置された充填材料
をさらに備える、請求項14に記載の建物構成要素。
【請求項16】
前記充填材料は、絶縁材料、ポリウレタンフォーム、又は椰子繊維フォームである、請求項15の建物構成要素。
【請求項17】
前記内面領域はキャビティを含む、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項18】
前記キャビティは、電気ボックス、配管、又は検知デバイスのために構成される、請求項17に記載の建物構成要素。
【請求項19】
前記建物構成要素は、耐火性を有し、クラスAの耐火等級と、1時間の火中浸透での0~200の炎広がり指数及び0~450の煙広がり指数とにより特徴付けられる、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項20】
前記建物構成要素は、
最低限でも15年にわたる約-60℃から+80℃の熱サイクルと、
自然の湿気及び塩分の影響と、
約5から100kgの合釘への負荷と
に耐えることができる、
請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項21】
高分子材料からなる前記多層スタックは着色剤を含む、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項22】
高分子材料からなる前記多層スタックは疎水性を有する、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項23】
高分子材料からなる前記多層スタックは、
前記層に沿った方向に37±3MPa、前記層を横断する方向に50±4MPaの極限圧縮強さと、
前記層に沿った方向に1900±130MPa、前記層を横断する方向に1400±460MPaの圧縮弾性率と、
前記層に沿った方向に3.9±0.6MPa、前記層を横断する方向に2.7±0.2MPaの極限引っ張り強さと、
前記層に沿った方向に2100±750MPa、前記層を横断する方向に1100±170MPaの引っ張り弾性率と、
約0.1~0.8W/(m・K)の熱伝達率と、
約1.7permインチの透湿性と、
約650~750(J*m-2*K-l*sec-l/2)の熱慣性と、
約3%未満の気孔率と
により特徴付けられる、請求項1に記載の建物構成要素。
【請求項24】
建物用の壁、床、及び屋根の一部を形成するように構成された1以上の建物構成要素を備え、前記1以上の建物構成要素のそれぞれは、
スタック厚さを有し、メタクリルモノマ、無機水和物及び光誘起重合剤を有する高分子材料からなる多層スタックであって、紫外光を付与することにより押し出された材料を瞬時に硬化させることにより実現される1層ごとの化学的接着を伴う1層ごとの3次元印刷プロセスから形成される多層スタックと、
高分子材料からなる前記多層スタックから形成される外装材であって、外面領域を有する外装材と、
高分子材料からなる前記多層スタックから形成される内装材であって、内面領域を有する内装材と、
高分子材料からなる前記多層スタックから形成される複数のクロス材であって、それぞれが空間的に前記外装材と前記内装材との間に配置される複数のクロス材と
を備える、
建物。
【請求項25】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つは、前記建物の完全な構造的な部分を形成し、前記完全な構造的な部分は、壁、床及び屋根を含む、請求項24に記載の建物。
【請求項26】
前記建物は、居住用又は商業用建物である、請求項24に記載の建物。
【請求項27】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つについての前記外装材、前記内装材、及び前記複数のクロス材は、すべてモノリシックに一体化される、請求項24に記載の建物。
【請求項28】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つについての前記スタック厚さは約6から150mmであり、各層6から25mmであり、前記各層のそれぞれは、液化状態の未硬化高分子材料を押し出し、前記スタック厚さを形成する前記層に固化させることにより構成される、請求項24に記載の建物。
【請求項29】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つについての前記多層スタック中の高分子材料からなる各層は、約6から25mmの範囲の層厚さを有する、請求項24に記載の建物。
【請求項30】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つについての前記外面領域は、約0から4mmの表面粗さを有するテクスチャにより特徴付けられる、請求項24に記載の建物。
【請求項31】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つについての前記外面領域は、高分子材料からなる前記多層スタックの層ごとに約2から10mmの高さを有する、請求項24に記載の建物。
【請求項32】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つについての前記外面領域での前記高分子材料は、きめの粗いテクスチャ1層ごとの押出により生じる線パターンを有する一体形成仕上げを含む、請求項24に記載の建物。
【請求項33】
前記仕上げは、平坦面と非薄片状のテクスチャを有するマーブル状である、請求項32に記載の建物。
【請求項34】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つの上に、スタッコ、塗料、下塗り、セルフレベリング床、屋根、ワニス、又はUV保護コーティングからなる重ね仕上げ層
をさらに備える、請求項24に記載の建物。
【請求項35】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つの上に、エポキシ、接着材、又はシーラントコーティングからなる重ね接続層
をさらに備える、請求項24に記載の建物。
【請求項36】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つの前記外装材及び前記内装材は、建築用ブロックを形成するように平行な配置で構成される、請求項24に記載の建物。
【請求項37】
前記建築用ブロックは、矩形構造、箱形構造、又は湾曲構造として形作られる、請求項36に記載の建。
【請求項38】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つの前記外装材と前記内装材との間に配置された複数の開口
をさらに備える、請求項24に記載の建物。
【請求項39】
空間的に前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つの前記複数の開口内に配置された充填材料
をさらに備える、請求項38に記載の建物。
【請求項40】
前記充填材料は、絶縁材料、ポリウレタンフォーム、又は椰子繊維フォームである、請求項39の建物。
【請求項41】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つの前記内面領域はキャビティを含む、請求項24に記載の建物。
【請求項42】
少なくとも1つのキャビティは、電気ボックス、配管、又は検知デバイスのために構成される、請求項41に記載の建物。
【請求項43】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つは、耐火性を有し、クラスAの耐火等級と、1時間の火中浸透での0~200の炎広がり指数及び0~450の煙広がり指数とにより特徴付けられる、請求項24に記載の建物。
【請求項44】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つは、
最低限でも15年にわたる約-60℃から+80℃の熱サイクルと、
自然の湿気及び塩分の影響と、
約5から100kgの合釘への負荷と
に耐えることができる、
請求項24に記載の建物。
【請求項45】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つのための高分子材料からなる前記多層スタックは着色剤を含む、請求項24に記載の建物。
【請求項46】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つのための高分子材料からなる前記多層スタックは疎水性を有する、請求項24に記載の建物。
【請求項47】
前記1以上の建物構成要素のうち少なくとも1つのための高分子材料からなる前記多層スタックは、
前記層に沿った方向に37±3MPa、前記層を横断する方向に50±4MPaの極限圧縮強さと、
前記層に沿った方向に1900±130MPa、前記層を横断する方向に1400±460MPaの圧縮弾性率と、
前記層に沿った方向に3.9±0.6MPa、前記層を横断する方向に2.7±0.2MPaの極限引っ張り強さと、
前記層に沿った方向に2100±750MPa、前記層を横断する方向に1100±170MPaの引っ張り弾性率と、
約0.1~0.8W/(m・K)の熱伝達率と、
約1.7permインチの透湿性と、
約650~750(J*m-2*K-l*sec-l/2)の熱慣性と、
約3%未満の気孔率と
により特徴付けられる、請求項24に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2020年3月5日に提出された米国特許出願第16/810,657号の利益を主張するものであり、当該米国特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2019年2月14日に提出された「3D印刷材料、構造及びこれを製造するための方法」という表題の米国特許出願第16/276,521号に関係するものであり、当該米国特許出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0003】
本開示は、概して、建築に関するものであり、特に、3次元印刷プロセスから形成される建築構成要素及び構造に関するものである。
【背景】
【0004】
従来の居住用及び商業用建築計画及び建設プロセスは、複雑で非効率的なものとなり得る。そのようなプロセスは、建物の設計、間取りの作成、許可の取得、建築家、請負業者、大工、電気工、配管工、及び他の専門家の雇用、及び建設中の様々な時期における建物の検査を伴うことがある。典型的には、基礎、骨組、配管、電気系統、ドライ壁などを形成するために数多くの異なるプロセス及び材料が必要とされる。新しい建物の建設には、完了までに何ヶ月もかかることが多く、建設が進むとともに複数の請負業者、専門家、労働者、及び様々な検査が必要とされる。
【0005】
居住用及び商業用建物を建設する従来の方法はこれまでうまくいっているが、改善は常に有用である。特に、必要とされているものは、そのような建物を建設するために必要とされる異なる材料の量、専門家、及び合計時間における簡素化と低減である。
【概要】
【0006】
本開示の利点は、居住用及び商業用建物を建設するために必要とされる材料の量及び種類を簡素化し、これらを減らすことができる点にある。開示されている特徴、装置、システム、及び方法は、これらの建物を建設するための材料が少なく、このため建物専門家も少なく、時間も短い、改善された建物建設方法を提供する。これらの利点は、3次元(「3D」)印刷プロセスにより形成される建物、構造、及び建物構成要素を提供することにより少なくとも部分的に実現される。
【0007】
本開示の様々な実施形態においては、建物、建物構成要素、又は構造は、高分子材料からなる多層スタック、多層スタックから形成される外装材、多層スタックから形成される内装材、及び多層スタックから形成される複数のクロス材を含み得る。高分子材料は、メタクリルモノマ、無機水和物及び光誘起重合剤を有し得る。多層スタックは、1層ごとの3次元印刷プロセスにより形成され得るものであり、スタック厚さを有し得る。3次元印刷プロセスは、紫外光を照射することにより押し出された材料を瞬時に硬化させることにより実現される1層ごとの化学的接着を伴うものであり得る。高分子材料からなる多層スタックというときは、そうでないと示されている場合を除いて、3D印刷プロセスにおいて使用されるキュアされた又は硬化した複合材料を意味することは理解されよう。外装材は外面領域を有し得るものであり、内装材は内面領域を有し得るものである。複数のクロス材のそれぞれは、空間的に外装材と内装材との間に配置され得る。
【0008】
様々な詳細な実施形態において、建物、建物構成要素、又は構造は、居住用又は商業用建物の全部又は一部を形成し得る。建物構成要素は、独立していてもよく、あるいは居住用又は商業用建物の全部又は一部を形成するように組み立てられる複数の特別設計構成要素の一部であってもよい。外装材、内装材、及び複数のクロス材は、モノリシックに一体化されて建物構成要素を構成してもよい。ある構成においては、スタック厚さは約6から100mmであり得る。多層スタックにおける高分子材料の各層は、約6から25mmの範囲の層厚さを有し得る。それぞれの層は、液化状態の未硬化高分子材料を押し出し、スタック厚さを形成する層に材料を固化させることにより構成され得る。外面領域は、約0から4mmの表面粗さを有するテクスチャにより特徴付けられ得て、多層スタックの層ごとに約2から10mmの高さを有し得る。外面領域における高分子材料は、きめの粗いテクスチャと1層ごとの押出により生じる線パターンを有する、一体的に形成された仕上げを含み得る。この仕上げは、平坦面を有し、非薄片状のテクスチャを有するマーブル状であり得る。
【0009】
様々なさらに詳しい実施形態においては、建物、建物構成要素、又は構造は、スタッコ、塗料、下塗り、セルフレベリング床、屋根、ワニス、又はUV保護コーティングからなる重ね仕上げ層、エポキシ、接着材、又はシーラントコーティングからなる重ね接続層、又はその両方を含み得る。外装材及び内装材は、建築用ブロックを形成するように平行な配置で構成され得る。この建築用ブロックは、矩形構造、箱形構造、又は湾曲構造として形作られ得る。ある構成においては、外装材と内装材との間に複数の開口が配置され得る。複数の開口内に充填材料が空間的に配置され得る。この充填材料は、絶縁材料、ポリウレタンフォーム、又は椰子繊維フォームであり得る。ある構成においては、内面領域は、キャビティを含み得る。このキャビティは、電気ボックス、配管、又は検知デバイスのために構成され得る。
【0010】
さらに詳細な実施形態においては、建物、建物構成要素、又は構造は、耐火性を有し、クラスAの耐火等級と、1時間又は2時間の火中浸透での0~200の炎広がり指数及び0~450の煙広がり指数とにより特徴付けられ得る。建物、建物構成要素、又は構造建物は、最低限でも15年にわたる約-60℃から+80℃の熱サイクル、自然の湿気及び塩分の影響、及び約5から100kgの合釘への負荷に耐えることができる。高分子材料からなる多層スタックは、着色剤を含んでいてもよく、あるいは疎水性を有していてもよく、あるいはその両方であってもよい。加えて、高分子材料からなる多層スタックは、層に沿った方向に37±3MPa、層を横断する方向に50±4MPaの極限圧縮強さ、層に沿った方向に1900±130MPa、層を横断する方向に1400±460MPaの圧縮弾性率、層に沿った方向に3.9±0.6MPa、層を横断する方向に2.7±0.2MPaの極限引っ張り強さ、層に沿った方向に2100±750MPa、層を横断する方向に1100±170MPaの引っ張り弾性率、約0.1~0.8W/(m・K)の熱伝達率、約1.7permインチの透湿性、約650~750(J*m-2*K-l*sec-l/2)の熱慣性、及び約3%未満の気孔率によって特徴付けられ得る。
【0011】
本開示のさらなる様々な実施形態においては、建物は、建物の壁、床、及び屋根の少なくとも一部を形成するように配置される上述の建物構成要素を複数個含むことができる。様々な詳細な実施形態においては、これらの複数の建物構成要素のうち少なくとも1つは、建物の完全な構造的な部分を形成し得る。この完全な構造的な部分は、壁、床、及び屋根を含み得る。また、上述した詳細又は限定の任意の組み合わせのいずれか又はすべてが建物に適用され得る。
【0012】
本開示における他の装置、方法、特徴、及び利点は、以下の図及び詳細な説明を検討すれば、当業者に明らかであるか、明らかになるであろう。そのような付加的な装置、方法、特徴及び利点のすべてはこの説明の中に含まれ、本開示の範囲内であり、添付した特許請求の範囲により保護されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
含まれている図面は、説明のためのものであり、3次元の建物、構造、及び建物構成要素を作製するための開示されている装置、システム及び方法に対して考えられる構造及び構成の例を示すためだけの役割を有する。これらの図面は、いかなる方法においても、当業者が本開示の精神及び範囲から逸脱することなく可能な形態及び詳細における本開示への変更を制限するものではない。
【0014】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による例示的な押出式3D印刷プロセスの図を示している。
【0015】
【
図2A】
図2Aは、本開示の一実施形態による例示的な3D印刷建物構成要素の部分破断前方斜視図を示している。
【0016】
【
図2B】
図2Bは、本開示の一実施形態による例示的な別の3D印刷建物構成要素の上方斜視図を示している。
【0017】
【
図2C】
図2Cは、本開示の一実施形態による他の例示的な別の3D印刷建物構成要素の前方斜視図を示している。
【0018】
【
図2D】
図2Dは、本開示の一実施形態によるさらに他の例示的な別の3D印刷建物構成要素の前方斜視図を示している。
【0019】
【
図3A】
図3Aは、本開示の一実施形態による3D印刷建物構成要素の例示的な表面仕上げの上方斜視図を示している。
【0020】
【
図3B】
図3Bは、本開示の一実施形態による3D印刷建物構成要素の例示的な別の表面仕上げの側方斜視図を示している。
【0021】
【
図4A】
図4Aは、本開示の一実施形態による重ね仕上げ層を有する例示的な3D印刷建物構成要素の前方斜視図を示している。
【0022】
【
図4B】
図4Bは、本開示の一実施形態による重ね接続層を有する例示的な3D印刷建物構成要素の前方斜視図を示している。
【0023】
【
図5A】
図5Aは、本開示の一実施形態による外装材と内装材との間に配置された複数の開口を有する例示的な3D印刷建物構成要素の側断面図を示している。
【0024】
【
図5B】
図5Bは、本開示の一実施形態による外装材と内装材との間に配置された複数の開口内に配置された充填材料を有する
図5Aの例示的な3D印刷建物構成要素の側断面図を示している。
【0025】
【
図6A】
図6Aは、本開示の一実施形態による、内面に電気ボックス用キャビティが形成された例示的な3D印刷建物構成要素の前方斜視図を示している。
【0026】
【
図6B】
図6Bは、本開示の一実施形態による、内面に配管キャビティが形成された例示的な3D印刷建物構成要素の前方斜視図を示している。
【0027】
【
図7】
図7は、本開示の一実施形態による屋根、床、湾曲した壁、及び真っ直ぐな壁を有する例示的な3D印刷建物の前方斜視図を示している。
【詳細な説明】
【0028】
このセクションでは本開示による装置、システム、及び方法の例示的な利用について述べる。これらの例は、背景を追加し、本開示の理解を手助けするためだけに提供されている。本明細書で提供されているこれらの具体的な詳細の一部又は全部がなくても本開示を実施し得ることは当業者には明らかなことである。ある例においては、本開示が不必要に不明瞭になることを避けるために、公知のプロセスステップが詳細には述べられていない。他の利用も考えられるため、以下の例は限定的なものと解釈すべきではない。以下の詳細な説明では、添付図面が参照される。この添付図面は、説明の一部を構成しており、添付図面においては、本開示の特定の実施形態が例として示されている。これらの実施形態は、当業者が本開示を実施できる程度に十分に詳細に述べられているが、これらの例は限定的なものではなく、他の実施形態を用いることができ、本開示の精神及び範囲を逸脱することなく変更が可能であることは理解できよう。
【0029】
本開示は、様々な実施形態において、3D印刷プロセスを用いて建物、構造、及び建物構成要素を作製するための特徴、装置、システム、及び方法に関するものである。開示されている実施形態は、単一の3D印刷建物構成要素、3D印刷建物全体、又は建物の少なくとも一部を構成する3D印刷された構造を含み得る。特に、開示されている実施形態は、押出式3D印刷プロセスを利用して、標準的な建築基準を満足する又はこれを上回る材料特性を有する特別に配合された複合ポリマ材料により様々な複雑な形状及びサイズの建物及び建物構成要素を形成することができる。
【0030】
建物及び建物構成要素を戦略的に設計して3D印刷する様々な方法により、居住用及び商業用建物を建設するために必要とされる材料の量及び種類の簡素化と低減が可能となる。例えば、3D印刷プロセスに用いられる特別に配合されたポリマ材料は、セメント、木材、鋼、ドライ壁、及び他の構造材料に取って代わって、基礎、構造的支持部材、床、壁、天井、屋根、及び他の構造的構成要素を形成することができる。ある構成においては、様々な建物構成要素及びサブ構造を1つの場所でモジュール式で3D印刷し、後に建設現場で簡単に組み立てることができる。
【0031】
本明細書に開示されている様々な実施形態は、居住用及び商業用建物について議論しているが、開示されている特徴、装置、システム、及び方法は、納屋、貯蔵ユニット、工業的建物、ガレージ、及び多くの他の種類の建物及び建物構成要素に対しても同様に使用可能であることは容易に理解できよう。例えば、開示されている特徴及び実施形態は、工場の一部を構築するために使用することができる。図示された実施形態の他の用途、構成、及び延長も考えることができる。
【0032】
様々な詳細な例は、単に説明するものであって非限定的な性質を有するものであるが、これらの例において、3D印刷製造プロセスは、各層が紫外(「UV」)光に対する露光により動的に硬化する1層ごとの押出プロセスを伴い得る。ある構成においては、大面積アディティブ製造(「BAAM」)プロセス又は類似の大規模3D印刷プロセスが使用され得る。3D印刷プロセスのために使用される材料は、1以上の付加構成要素が含まれる特別なポリマ配合を含む複合材料であり得る。この複合材料によって、3D印刷建物構成要素又は構造は、建築基準を満足する又はこれを上回る材料特性を有することができる。
【0033】
まず、
図1Aを参照すると、例示的な押出式3D印刷プロセスが図示されている。3D印刷システム10は、複合材料源20と、加熱構成要素32及びノズル34を有する押出式3Dプリンタ30と、その周囲を3Dプリンタ30が移動可能なトラック36とを含み得る。3Dプリンタ30は、液化複合材料110を噴出して、複数の層120を有するポリマ材料からなる多層スタック100を形成することができる。様々な実施形態においては、各層120の厚さは、約6から25mmで変化し得る。多層スタック全体のスタック厚さは、約6から150mmであり得る。印刷速度は、約40から350mm/sの範囲で適用され得る。再び、高分子材料からなる多層スタックは、印刷プロセスにおいて使用されるキュアされた又は硬化した複合材料を意味することは理解されよう。
【0034】
様々な実施形態においては、3D印刷プロセスにおいて使用される複合材料110の配合は、有機マトリクス、無機水和物、機能性充填剤、及びUV開始剤を含み得る。建物又は建物構成要素として最終形態にキュアされると、硬化した複合材料(すなわちポリマ材料からなる多層スタック)は、耐火性を有し、クラスAの耐火等級と、1時間又は2時間の火中浸透での0~200の炎広がり指数及び0~450の煙広がり指数とにより特徴付けることが可能となる。加えて、硬化した複合材料は、疎水性となり、良好な熱伝達率特性を有し得る。これにより、印刷建物、構造、及び建物構成要素にコールドジョイントや熱橋が生じることが防止される。さらに、硬化した複合材料は、最低限でも15年にわたる約-60℃から+80℃の熱サイクル、自然の湿気及び塩分の影響、及び約5から100kgの合釘への負荷に耐えることができる。容易に理解できるように、合釘への負荷は、構造的材料が合釘型のコネクタ又はファスナを支持する際に耐えられる負荷の量を意味している。
【0035】
まず、特別に配合された複合材料110にのみ注目して、この複合ポリマ材料のために使用可能な様々な例示的成分、配合物、及び材料特性について述べる。様々な例示的実施形態においては、複合材料110のために使用される有機マトリクスは、トリエチレングリコールジメタクリラート(「TEGDMA」)であり得る。TEGDMAは、架橋剤として用いられる親水性の低粘度二官能性メタクリルモノマである。TEGDMAは、複合材料110用配合物の約10から55重量%の範囲であり得る透明な液体である。TEGDMAの様々な特性が以下の表1に記載されている。
【表1】
【0036】
また、複合材料110は、異なる有機成分を含み得る。ある実施形態においては、機成分の1つは、1以上のアクリル酸オリゴマを含み得る。ある構成においては、所与の複合成分は、複合物の粘度を高めるために半重合され得る。ある構成においては、少なくとも1つの機能性充填剤を含む無機充填剤と無機水和物との組み合わせが用いられ得る。無機水和物は、印刷中に自己触媒閾値よりも低い温度に複合物を維持するために必要とされる初期脱水温度範囲と、キュアされた有機マトリクスの屈折率に一致する屈折率とを有する無機鉱物であり得る。
【0037】
ある構成においては、無機水和物は四ホウ酸二ナトリウム十水和物であり得る。四ホウ酸二ナトリウム十水和物は、工業用の大型袋で提供され得る固体の白い粉体である。ある非限定的な例では、四ホウ酸二ナトリウム十水和物は、機能性充填剤と組み合わされる場合には、複合材料110用配合物の約5から45重量%の範囲であり得る。四ホウ酸二ナトリウム十水和物の様々な特性が以下の表2に記載されている。
【表2】
【0038】
様々な実施形態において、光誘起重合剤が使用され得る。例えば、特定の波長のUV光の下で有機マトリクスの重合を誘引するためにUV開始剤が使用され得る。ある構成においては、UV開始剤は、1以上のビスアシルフォスフィンオキサイド(「BAPO」)を含み得る。BAPOの様々な特性が以下の表3に記載されている。
【表3】
【0039】
複合材料110の配合物の1つの非限定的な例を「実施例配合物」と呼ぶことができる。この実施例配合物の特定の成分及び量が以下の表4に記載されている。この材料は、紫外光に曝露され発熱反応により重合する。
【表4】
【0040】
概して、この特定の実施例配合物の物理的状態及び外観は粘性のある糊状物である。この実施例配合物は、大部分は色がなく、白い含有物を含んでおり、黒色、白色、灰色、茶色、ベージュ色、薄ベージュ色、緑色、薄緑色、橙色に色付けられていてもよい。この実施例配合物は、少し臭い、pH7~8、t=20℃での粘度120000~250000cps、密度は1350kg/m3である。
【0041】
以下の表5は、印刷層に沿った方向と印刷層を横切る方向の2つの異なる方向で実施例配合物を用いることにより印刷及び硬化した部品及び構成要素の一部の機械的特性を示している。
【表5】
【0042】
上記構成要素材料、実施例配合物、及びこれらの様々な特性を例として説明したが、本明細書に開示される様々な建物、構造、及び建物構成要素を3D印刷するために、特性の異なる数多くの他の好適な構成要素材料及び複合配合物が使用され得ることは容易に理解できよう。特に、そのような好適な構成要素材料及び複合配合物のすべても使用され得ることも考えられる。
【0043】
図2Aに移ると、例示的な3D印刷建物構成要素が部分破断前方斜視図で示されている。印刷建物構成要素200は、外面領域220を有する外装材210と、内面領域240を有する内装材230と、空間的に外装材210と内装材230との間に配置される複数のクロス材250とを含み得る。外装材210、内装材230、及びクロス材250のそれぞれは、上記で詳述したような高分子材料からなる多層スタックから形成され得る。
【0044】
クロス材250は、負荷に耐え、外装材210及び内装材230を支持することができ、様々な異なるサイズ、角度、パターン、及び構成で配置され得る。例えば、一部のクロス材は、外装材210及び内装材230に垂直に配置され得るが、他のクロス材は、垂直ではない様々な角度で配置され得る。クロス材250は、同一の厚さ又は可変の厚さを有し得る。クロス材250は、同一の距離又は異なる距離だけ互いに離間し得る。モノリシックに印刷建物構成要素全体を生成する典型的な3D印刷プロセスにより、クロス材250は、外装材210及び内装材230と結合部又は交差部において一体的に形成されていてもよい。ある構成においては、様々なクロス材250は、電気ケーブル、パイプ、換気装置、及び他の所望の建築構成要素を収容するように設計されたスロット、開口、又は他の特徴を有して構成され得る。
【0045】
印刷建物構成要素200は、例えば、床、壁、天井、屋根、又は建物全体のためのこれらの一部であり得る。図示されるように、外装材210及び内装材230は、建築用ブロックが形成されるように平行な配置に構成され得る。この例では、箱形又は矩形の建築用ブロックが形成されている。印刷建物構成要素200は、多くの項目と特徴部分を有しているが、上記で述べたように、印刷建物構成要素200の全体を単一の3D印刷プロセスから形成することができることは理解できよう。様々な実施形態においては、複数のクロス材250が、印刷建物構成要素200全体の構造的一体性及び強度を提供することができ、外装材210、内装材230、又はその両方をかなり薄くすることができる。
【0046】
図2Bは、例示的な別の3D印刷建物構成要素を上方斜視図で示すものである。上述の実施形態と同様に、印刷建物構成要素201は、外面領域221を有する外装材211と、内面領域241を有する内装材231と、空間的に外装材211と内装材231との間に配置される複数のクロス材251とを含み得る。再び、外装材211、内装材231、及びクロス材251のそれぞれは、高分子材料からなる多層スタックから形成され得る。印刷建物構成要素201は、例えば、床又は建物全体のための床の一部であり得る。
【0047】
図2C及び
図2Dに続けると、さらに例示的な別の3D印刷建物構成要素が前方斜視図で示されている。印刷建物構成要素202と印刷建物構成要素203の双方は、湾曲部と他の複雑な特徴部分とを含んでいる。これらのすべては、建物構成要素全体を一度に形成する3D印刷プロセスによって簡単に形成することができる。印刷建物構成要素202は、外面領域222を有する外装材212と、内面領域242を有する内装材232と、複数のクロス材252とを含み得る。印刷建物構成要素203は、外面領域223を有する外装材213と、内面領域243を有する内装材233と、複数のクロス材253とを含み得る。再び、それぞれの部材は、高分子材料からなる多層スタックから形成され得る。
【0048】
上述の例と同様に、外装材及び各自の内装材のそれぞれは、建築用ブロックを形成するように平行な配置で構成される。しかしながら、箱形又は矩形構造ではなく、印刷建物構成要素202及び印刷建物構成要素203の双方が、湾曲構造を有する建築用ブロックを形成している。建物構成要素202は、例えば、真っ直ぐな壁の一部、湾曲した壁の一部、及び床の一部であり得る。建物構成要素203は、例えば、真っ直ぐな壁の一部、湾曲した壁の一部、及び湾曲した天井の一部であり得る。建物構成要素201、202、203、及び204のそれぞれに関して、外装材、内装材、及び複数のクロス材は、それぞれの建物構成要素が単一の3D印刷プロセスから生成されるようにすべてモノリシックに一体化され得る。3D印刷の性質により、以下に述べるように、印刷された高分子材料において様々な表面フィーチャ及び仕上げを実現することができる。
【0049】
次に
図3Aに移って、3D印刷建物構成要素に関する例示的な表面仕上げが上方斜視図で示されている。印刷建物構成要素300は、印刷された複合材料からのみ形成される外面領域320を含み得る。3D印刷の性質により、リブ付き仕上げ、凹凸仕上げ、又はテクスチャ仕上げ360が、3D印刷プロセスの一部として外面領域320で材料内に一体的に形成され得る。また、外面において表面粗さの様々な等級を用いることができる。例えば、外面領域320は、約0から4mmの表面粗さを有するテクスチャによって特徴付けることができる。
【0050】
図3Bは、3D印刷建物構成要素に関する例示的な別の表面仕上げを側方斜視図で示すものである。印刷プロセスにより一体的に形成されることに加えて、ミリング工具及び他の仕上げ機器により様々な3D印刷建物構成要素の表面を簡単に処理することができる。この処理は、コンクリート材料及び他の従来の建設材料に対してはできないものである。印刷建物構成要素301は、印刷された複合材料からのみ形成される第1の外面領域321及び第2の外面領域361を含み得る。第1の外面321の領域を研磨して平滑面としてもよい。別の仕上げ処理として、第2の外面領域361をマーブル状の表面となるようにミリングしてもよい。
【0051】
ポリマ材料の外部を処理するだけで他の種類の表面を実現できることは容易に理解できよう。加えて、印刷に先立ち1以上の不活性着色剤を複合材料に加えることによって3D印刷建物の色、構造、又は建物構成要素を必要とされるように調整してもよい。印刷建物構成要素の色は、特に、例えば、黒色、白色、ピンク色、灰色、茶色、ベージュ色、薄ベージュ色、緑色、及び橙色を含み得る。
【0052】
様々な実施形態においては、印刷プロセス後に、1以上の付加的な物又は特徴部分が、3D印刷建物構成要素内に形成されるか、あるいは3D印刷建物構成要素に追加され得る。例えば、
図4Aは、重ね仕上げ層を有する例示的な3D印刷建物構成要素を前方斜視図で示している。印刷建物構成要素400は、上記印刷建物構成要素200と同様であり得る。重ね仕上げ層470が、印刷建物構成要素400の表面領域に追加されている。この表面領域は、外面領域又は内面領域であり得る。仕上げ層470は、例えば、スタッコ、塗料、下塗り、セルフレベリング床、屋根、ワニス、又はUV保護コーティングであり得る。他の例として、
図4Bは、重ね接続層を有する例示的な3D印刷建物構成要素を示している。印刷建物構成要素401も、上記の印刷建物構成要素200と同様であり得る。重ね接続層471が、印刷建物構成要素401の表面領域に追加されている。接続層471は、例えば、エポキシ、接着材、又はシーラントコーティングであり得る。非限定的な例として、建設現場で印刷建物構成要素401を他の印刷建物構成要素に固定するのを容易にする面で接続層471を追加することができる。
【0053】
輸送の制限及び他の物流問題により、3D印刷される建物構造及び構成要素を印刷できる全体の大きさが制限され得ることは容易に理解できよう。したがって、モジュラー式で互いに結合又は固定するために様々な3D印刷建物構成要素が設計され得る。製造設備、建設現場、又はその両方において1以上の接続層471が建物構成要素に追加され得る。加えて、接続層471とともに使用することを意図された印刷建物構成要素の1以上の表面領域に付加的な高分子材料を追加してもよい。例えば、印刷建物構成要素の外装材の1以上の外面領域では、他の印刷建物構成要素と固定又は接続することを意図している箇所において厚さが増加している。そのような箇所は、壁部が他の壁部に固定される場所、あるいは壁部が天井部に固定される場所であり得る。これに代えて、あるいはこれに加えて、印刷建物構成要素上の1以上の合わせ面に、他の印刷建物構成要素と合わさるように設計された特徴部分が一体的に形成されていてもよい。これらは、例えば、スロット、突出部、他のインターロッキング特徴部分、及び/又は接続層との接着が改善されるように設計された粗い表面領域を含み得る。
【0054】
印刷建物構成要素内に形成可能又は印刷建物構成要素に追加可能なさらに付加的な特徴部分は、内部に開口及び充填剤を含み得る。
図5Aは、外装材と内装材との間に複数の開口を有する例示的な3D印刷建物構成要素を側断面図で示すものである。印刷建物構成要素500は、外面領域520を有する外装材510と、内面領域540を有する内装材530と、空間的に外装材510と内装材530との間に配置される複数のクロス材550とを含み得る。外装材510、内装材530、及びクロス材550のそれぞれは、上記で詳述したような高分子材料からなる多層スタックから形成され得る。外装材510と内装材530との間に、例えばクロス材530のうち1つ以上の内に複数の開口580が配置され得る。開口580は、印刷建物構成要素の全体をモノリシックに一体化された構造として形成可能な3D印刷プロセスの一部として形成され得る。
【0055】
図5Bに続けると、
図5Aの例示的な3D印刷建物構成要素が再び側断面図で示されているが、外装材と内装材との間に配置された複数の開口内に充填材料が配置されている。印刷建物構成要素501は、空間的に複数の開口580内に配置された充填材料581を含み得る。これは、印刷建物構成要素501を形成する3D印刷プロセス中又はその後に実現することができる。充填材料は、例えば、考えられる充填材料が他にもある中で、特に絶縁材料、ポリウレタンフォーム、又は椰子繊維フォームであり得る。
【0056】
印刷建物構成要素内に形成可能なさらなる特徴部分は、通常印刷できない又は印刷されない建物構成要素を収容するように構成されるキャビティを含み得る。そのような建物構成要素は、例えば、電気ボックス、配管、又は電子デバイスなどを含み得る。これらのキャビティは、印刷時に高分子材料内に一体的に形成され得るか、建物、構造、又は建物構成要素が3D印刷された後に高分子材料内に形成され得る。
【0057】
図6Aは、本開示の一実施形態による、内面に電気ボックス用キャビティが形成された例示的な3D印刷建物構成要素を前方斜視図で示すものである。印刷建物構成要素600は、上記の印刷建物構成要素200と同様であり得る。キャビティ690は、印刷建物構成要素の内装材の内面に形成され得る。キャビティ690は、特に、内部に電気ボックスを保持するように構成され、その寸法が決められ得る。
【0058】
図6Bは、本開示の一実施形態による、内面に配管キャビティが形成された例示的な3D印刷建物構成要素を前方斜視図で示すものである。印刷建物構成要素601は、上記の印刷建物構成要素200と同様であり得る。キャビティ691は、印刷建物構成要素の内面に形成され得る。このキャビティ690は、特に、内部にパイプ又は他の配管構成要素を保持するように構成され、その寸法が決められ得る。
【0059】
電気ボックス又は配管構成要素用のキャビティの具体例を説明したが、他の種類のデバイス及び構成要素用の様々な3D印刷建物及び建物構成要素の内部にキャビティが形成され得ることは容易に理解できよう。例えば、サーモスタット、カメラ、又は他の検知デバイスのような様々な電子デバイス用にキャビティが形成されていてもよい。
【0060】
最後に
図7を参照すると、屋根、床、湾曲した壁、及び真っ直ぐな壁を有する例示的な3D印刷建物が前方斜視図で示されている。建物700は、モノリシックに形成された単一物として印刷され得、単一の建物構成要素として考えられ得る様々な印刷部を有し得る。これらの様々な印刷部は、例えば、屋根701、床702、前方の真っ直ぐな壁703、後方の真っ直ぐな壁704、及び側方の湾曲した壁705を含み得る。これらの印刷部の一部又は全部は、様々な特徴部分を含み得る。例えば、前方の真っ直ぐな壁703は、外面領域720を有する外装材710と、内面領域740を有する内装材730と、空間的に外装材710と内装材730との間に配置される複数のクロス材750とを含み得る。外装材710、内装材730、及びクロス材750のそれぞれは、上記で詳述したような高分子材料からなる多層スタックから形成され得る。
【0061】
異なる詳細図に示されているように、床702と側方の湾曲した壁705は、同様に、外面領域を有する外装材と、内面領域を有する内装材と、クロス材とを有し得る。図示はされていないが、同様の特徴を有するという点において、後方の真っ直ぐな壁704は、前方の真っ直ぐな壁703と実質的に同様であり得、屋根701は、床702と実質的に同様であり得ることは容易に理解できよう。
【0062】
また、建物700は、高分子材料からなる多層スタックから形成されていない1以上の付加的な物を有し得る。例えば、構造的支持カラム790は、木又は鋼から形成され得る。基礎支持部791は、Iビーム又は鋼又は他の材料から形成される他の物であってもよい。ある変形例においては、これらの支持構成要素790及び791さえ、高分子材料からなる多層スタックから形成され得ることが考えられる。
【0063】
上記の開示は、説明のために、また分かりやすくし、理解しやすくするための例として述べられてきたが、上述した開示は、本開示の精神又は本質的な特徴から逸脱することなく、数多くの他の具体的な変形例及び実施形態において具現化し得ることは理解できるであろう。何らかの変更又は修正が行われ得るし、本開示は、上述した詳細に限定されるものではなく、むしろ添付した特許請求の範囲により規定されるべきであることは理解できよう。
【国際調査報告】